資料 - 日本コンクリート工学協会

JCI-TC131A
性能設計対応型ポーラスコンクリートの施工標準と品質保証体制の確立研究委員会
品質・性能WG 報告書
「最近10年の国内外の文献からみたポーラスコンクリートの研究動向」
目次
2.1 研究動向調査の概要
三島直生(三重大学) 2
2.2 一般特性
2.2.1 空隙・力学特性
平岩陸(名城大学) 4
2.2.2 透水性
平岩陸(名城大学) 11
2.2.3 耐久性(乾湿・凍害)
片平博((独)土木研究所) 16
2.2.4 耐久性(その他)
麓隆行(近畿大学) 25
2.2.5 使用材料(リサイクル、繊維補強、新材料)
齋藤俊克(日本大学) 33
2.3 用途
2.3.1 舗装
石田征男((株)太平洋セメント) 51
2.3.2 緑化
武田字浦(明石工業高等専門学校) 62
2.3.3 生物共生
十文字拓也(日本大学) 67
2.3.4 浄化・吸着
三島直生(三重大学) 79
2.3.5 温度特性
上野敦(首都大学東京) 83
2.3.6 吸音特性
三島直生(三重大学)
88
2.4 海外の動向
2.4.1 中国
張茂剛(中国無錫城市職業技術学院) 94
2.4.2 韓国
李建哲(韓国交通大学校) 97
2.4.3 タイ
Chindaprasirt Prinya(タイコンケン大学) -
1
2.1
研究動向調査の概要
(1)
文献の収集条件
本 WG では、前回のポーラスコンクリートに関する JCI 委員会(2001~2002)以降の国内外の研
究動向を調査し、今後のポーラスコンクリートの規準化に向けたデータ整備の方針を明確にする
ことを 1 つの目的としている。文献の収集条件は、Web 等で各委員が本文を入手可能なものを対
象とした(詳細は文献リスト参照)ため、当該期間に世に出された全ての文献が調査されたもの
ではない。ただし、国内外の主要な文献は収集、調査されていると考えており、研究動向につい
ては把握されたものと考えている。
収集文献数は、国内文献が 587 編、海外文献が 58 編である。ここで、海外文献とは web および
雑誌で入手可能な英語文献を指す。国内の文献数が非常に多いが、これは査読のない口頭発表論
文なども含めた数字であり、それらの文献を国内文献の方が海外文献と比べて入手しやすい状況
にあることの影響が大きいと考えられる。
(2)
研究動向
図-2.1.1 に、論文発表件数の推移を示す。研究動向としては、国内文献が減少傾向であるの
に対し、海外文献は増加傾向であると見ることができる。ここで、国内と海外で絶対数が異なる
発表件数(件)
が、これは前述の論文の入手のし易さの影響が大きい。
70
国内
60
海外
50
40
30
20
10
0
03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13
発表年(年)
図-2.1.1 論文発表件数の推移
図-2.1.2 に、論文が対象とする用途毎の論文件数を示す。用途については、国内では緑化、
生物共生、舗装の順に件数が多く、ポーラスコンクリートの適用先として広範囲に検討を進めて
いる傾向が伺える。一方、海外では緑化や生物共生に関する研究は見られず、ほとんどが舗装関
連となっている。これは、海外のポーラスコンクリートに対する認識が Pervious Concrete(透
水性コンクリート)という認識であることによると思われる。
2
発表件数(件)
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
国内
海外
景観
水質浄化
生物共生
緑化
舗装
図-2.1.2
用途ごとの論文件
図-2.1.3 に、製造方法および使用材料ごとの論文件数を示す。使用材料については、国内論
文では新材料やリサイクルに関する論文が比較的多い。繊維補強については海外では検討例が見
られない。
図-2.1.4 に、特性ごとの論文件数を示す。熱特性、吸着、吸音、植栽、保水・揚水など、海
外であまり検討されていないことも国内では盛んに研究されており、国内ではより広い分野への
適用が考えられていることを示している。
300
国内
200
発表件数(件)
発表件数(件)
250
海外
150
100
50
海外
200
150
100
50
保水・
揚水性
植栽性
吸音性
吸着性
透気性
透水性
熱特性
耐久性
力学特性
製造方法・使用材料ごと
の論文件数
空隙特性
0
リサイクル
繊維補強
新材料
設計法
試験法
図-2.1.3
製造・
施工
配調合
0
国内
250
図-2.1.4 特性ごとの論文件数
[担当
3
三島直生]
2.2 一般特性
2.2.1 空隙・力学特性
(1)前回委員会(2003)報告書の概要
1)基本性状
前回委員会報告書では,ポーラスコンクリートの基本性状を,材料,空隙性状,強度,フレッ
シュ性状の各観点から示している。
a. 材料
用いられる材料は一般のコンクリートとほぼ変わらないが,目的に応じて異なるセメント,粗
骨材径のものが使用されている。セメントについては,植生目的としてアルカリ溶出量が少ない
高炉セメント,早期使用を考えて早強セメントなどの例が,骨材については,河川護岸用に最大
寸法20mm,歩道用に最大寸法5mmなどの例が挙げられている。
b. 空隙性状
ポーラスコンクリートの最大の特徴として空隙性状が挙げられている。その特徴として,空隙
には全空隙と連続空隙とがあること,
空隙径が骨材径によって異なることが示されている。また,
連続空隙率は全空隙率より3~5%程度小さいとされている。
c. 強度
強度に影響する要因として,空隙率,水セメント比,粗骨材最大寸法が挙げられている。その
他,骨材の品質や,締固め方法による影響も示されている。基本的には,空隙率が大きくなると
圧縮強度が低下する傾向がある。
d. フレッシュ性状
ポーラスコンクリート全体のフレッシュ性状は,主として骨材同士を連結するペーストの流動
性によって決まる。ペーストのフロー値が大きくても小さくても問題があるため,適切な範囲に
する必要がある。ただし,その範囲は粗骨材寸法や締固め方法などによっても異なるため,それ
らの影響を考慮する必要があると述べられている。試験方法としてフロー値以外の方法も提案さ
れている。
2)ポーラスコンクリートの評価と試験方法(案)
空隙・力学特性に関しては,ポーラスコンクリートに必要な品質として,その値が要求される
項目となることが多いため,評価および試験方法を確立する必要がある。このため,前回委員会
報告書では,ポーラスコンクリートの試験方法(案)として,強度,空隙率に関して,以下のもの
が提案されている。
・ポーラスコンクリートの供試体の作り方
・ポーラスコンクリートの空隙率試験方法
・ポーラスコンクリートのフレッシュ時の空隙率試験方法
・ポーラスコンクリートの静弾性係数試験方法
また,試験結果にかかわる供試体作成時の注意点として,下記のものが挙げられている。
・型枠面近傍の空隙による不均質性
・打込み時に層間に生じる空隙による不均質性
・締固め不足により生じる不均質性
・部材の高さ方向に生じる不均質性
4
(2)最近の研究紹介
1)空隙性状
空隙の状況を検討するために,微小焦点X線CTスキャンシステムを行った測定結果を図-
2.2.1.1に示す。3次元で様々な角度から測定した結果,空隙はどこかの個所で連続性を有してお
り,連続部に大小の違いはあるものの,すべて連続した空隙と考えられるとの結論が示されてい
る[1]。
空隙率の種類については,前回委員会案では,連続空隙と独立空隙が定義されているが,表-
2.2.1.1では準連続空隙が定義されている[2]。これは,連続した空隙と考えられるが,空隙径が
小さいなどの理由により飽和・排水に若干の時間を要する空隙と定義されている。また,この表
では空隙率の試験方法についても示されている。新提案の方法として図-2.2.1.2に示すような容
積圧力法が示されている。
さらに,
試験時間の短縮のために準連続空隙の排水を促す方法として,
図-2.2.1.3に示すような遠心脱水処理を行う方法も示されている。これらの方法により,準連続
空隙率および連続空隙率の測定が可能としている。また,超音波法によって空隙率の概略値を推
定する方法[3]や,広レンジエアメータを使用して圧力法を硬化後のポーラスコンクリートに適用
する方法[4]も提案されている。
空隙率に与える振動締固めの影響を検討した報告書[5]の図-2.2.1.4に示すように,起振力や
振動エネルギ,締固め時間によって底面の空隙状態は変化する。また,図-2.2.1.5では,振動締
図-2.2.1.1 空隙状況[1]
表-2.2.1.1 空隙の種類[2]
図-2.2.1.2 容積圧力法[2]
図-2.2.1.3 遠心脱水処理[2]
5
図-2.2.1.4 底面の状態[5]
図-2.2.1.5 高さ方向の空隙率分布[5]
支持枠
水槽
秤量器
図-2.2.1.7 仕上げ機[7]
図-2.2.1.6 浮力法[6]
固めによって空隙率が変化するとともに,供試体上下の空隙率分布の違いが生じることが示され
ている。このような高さ方向の連続空隙率の分布を非破壊で測定できる方法として,図-2.2.1.6
に示すように,水中で作用する浮力を測定することで,連続空隙率を測定する方法(浮力法)が
提案されている[6]。
仕上げ方法については,図-2.2.1.7に示すような実施工に使用できるポーラスコンクリート用
の仕上げ機が考案されており,振動締固めエネルギによって締固めの程度,つまり空隙率を制御
することが可能であるとされている[8]。
また,大粒径および小粒径の骨材を使用することで,空隙径を大きく変化させ多様な目的に適
したポーラスコンクリートを作る検討が進められている。この概念図を表-2.2.1.2に示す。従来
の骨材は図中でいう中粒径の2.5~20mmの範囲で,主として透水性舗装や,植生基盤を目的として
きた。これに対し,小粒径では0.6mm程度までの骨材を使用して揚水や保水用途に,また大粒径で
は400mmまでの骨材を使用しての漁礁用途が研究されている。
2)力学特性
ポーラスコンクリートの圧縮強度推定式として下記の式が提案されている。
Fc = 12.6k(0.48(C/W)-0.87)e0.61Dd-0.06Va
式(2.2.1.1)[10]
ここに,Fc:圧縮強度(N/mm )
2
6
表-2.2.1.2 小粒径~大粒径ポーラスコンクリートの概念[9]
k:セメント種類による影響係数
(普通,早強ポルトランドセメントおよび高炉セメントB種については,k=1)
C/W:セメント水比,Dd:骨材の絶乾密度(g/cm3),Va:空隙率(%)
Y = A exp (-Bx)
式(2.2.1.2)[11]
B = 0.0024C + 0.0602
ここに,Y:圧縮強度(N/mm2),A:結合材強度(N/mm2),x:全空隙率(%),
C:粗骨材の粒径範囲の最大粒径と最小粒径の平均値(mm)
いずれの推定式も,その適用範囲は限定的であるとされているが,強度に大きな影響を及ぼす
のは結合材強度(セメント種類,セメント水比など),空隙率および骨材の性質(骨材強度,絶
乾密度,粒径など)であることがわかる。推定式(2.2.1.2)から得られる圧縮強度-空隙率に与
える結合材強度および粗骨材粒径の影響を概念的に示すと図-2.2.1.8のようになる。
また,ポーラスコンクリートの圧縮強度について,理論的な検討を行ったものもみられる
[12][13]。これらは,球体と仮定した骨材を,立方格子,斜方格子,体心立方格子の各配置とし
図-2.2.1.8 圧縮強度-空隙率に与える各要因の影響[11]
7
て,その間隙を結合材が埋めたモデル化を行い,
そのモデルによって圧縮強度-空隙率関係の説明
を試みている。また,ポーラスコンクリートの強
度の変動係数に関する検討においては,結合材の
垂れなどの影響が小さい場合にはおよそ10%程度
の変動係数との結論を示している[14]。
ポーラスコンクリートの圧縮強度に影響を与え
る要因として,初期養生方法や端面処理方法,高
さ/直径比(h/d)などが取り上げられ,検討が行
図-2.2.1.9 養生方法の影響[15]
われている[15]。
初期養生方法の影響については,図-2.2.1.9に示すように湿度50%RHでは水中養生に比べて
65%程度まで強度が低下する結果が得られている。しかし,シート養生などにより80%RH程度の
高湿度に保たれれば,水中養生の80%程度の強度が期待できるとしている。
端面処理については,硫黄キャッピングとセメントペーストキャッピングの比較が行われてお
り,強度が高いものでは影響はほとんど見られないが,強度の低いものでは硫黄キャッピングの
強度がわずかに大きくなる結果が得られている。
高さ/直径比(h/d)の影響については,図-2.2.1.10に示すような結果が得られている。また,
これから図-2.2.1.11に示すような補正係数が算出されており,これによるとポーラスコンクリ
ートの補正係数は,通常のコンクリートの規定値よりも若干小さいという結果である。
図-2.2.1.11 圧縮強度の補正係数[15]
図-2.2.1.10 H/D の影響[15]
(3)課題
空隙特性は,ポーラスコンクリートの特徴の根幹をなすものである。また,力学特性はコンク
リートとしてもっとも基本的な性質である。このため,これらに関する検討は多く,現状では各
会社の独自技術ではあるものの,目標となる空隙率,強度を設定し,それをほぼ製造できる技術
が得られていると考えられる。しかし,これまでみてきたように,空隙率の分類や,理論的な裏
付け,打設方法や養生方法などの影響についての詳細な検討については不十分な面があり,今後
の課題と考えられる。
また,ポーラスコンクリートの施工を広める上で,もっとも基本的な性質である空隙・力学特
性を管理する方法を共通化することは重要であり,前回委員会で試験方法(案)が提案されている。
8
しかし,これについてはまだ課題が多く,
表-2.2.1.3 円柱供試体とコア供試体の相違[17]
修正事項をとりまとめた文献[17]が報告さ
れている。この中では,実施工時の品質管
理に用いる供試体の作成方法,適切な締固
め方法,空隙の定義および測定方法,養生
方法の4つの項目について,最新の知見をも
とに検討がなされ,修正事項が示されてい
る。特に,品質管理に用いる供試体の作成
方法については,
表-2.2.1.3に示されるよ
うに通常のコンクリートと同様のφ10×20
の円柱供試体と,実際に施工されたものか
ら抜き取ったコア供試体において相違点が
あることが示されている。このため,円柱
供試体を用いた場合,壁効果により実際の
ものとの相違が生じ,強度や透水係数への
影響が生じる可能性がある。一方,コア供試体を用いた場合には,コア抜き作業が必要になると
ともに,高さ直径比の影響が生じることが考えられる。ここでは,供試体としてコアボーリング
による採取することを基本とすることが提案されている。
この項で述べたような知見をもとに,施工標準および試験方法,品質管理手法が確立されるこ
とが望まれる。
<参考文献>
[1]大友鉄平,大塚浩司,武田三弘:緑化ポーラスコンクリートの空隙性状に関する基礎的研究,
土木学会第60回年次学術講演会,第5部,pp.895-896,2005
[2]中川武志, 畑中重光, 三島直生, 湯浅幸久, 前川 明弘:空気室圧力法を応用したポーラスコ
ンクリートの空隙率測定方法,日本建築学会構造系論文集,73(620),pp.1043-1050,2008.7
[3]吉田知弘,音野琢也,北野嘉乙,国枝稔,鎌田敏郎,六郷恵哲:超音波法によるポーラスコン
クリートの空隙評価に関する基礎的検討,土木学会第59回年次学術講演会,第5部,pp.339-340,
2004
[4]夏目実穂,内田寿久,三島直生,畑中重光:フレッシュコンクリート用エアメータを使用した
ポーラスコンクリートの簡易な空隙率の測定方法の提案,コンクリート工学年次論文集,35(1),
pp.1447-1452,2013.7
[5]湯浅幸久,宮本高秀,三島直生,畑中重光:ポーラスコンクリートの内部構造に及ぼす表面振
動締固めの影響,コンクリート工学年次論文集,24(1),pp.1263-1268,2002.7
[6]古屋貴之,國府勝郎,梶尾聡:上野敦ポーラスコンクリート円柱供試体の連続空隙率分布試験
方法,土木学会第62回年次学術講演会,第5部,pp.771-772,2007
[7]森鼻泰大,中川武志,三島直生,畑中重光:ポーラスコンクリートの実施工における敷均しお
よび仕上げ方法が空隙率に与える影響,コンクリート工学年次論文集,32(1),pp.1397-1402,
2010.7
[8]森鼻泰大,中川武志,三島直生,畑中重光:実施工における振動締固めがポーラスコンクリー
9
トの空隙率および諸特性に与える影響,コンクリート工学年次論文集,33(1),pp.1481-1486,
2011.7
[9]前川明弘,畑中重光,三島直生,湯浅幸久:大粒径ポーラスコンクリートの製造および魚礁ブ
ロックとしての応用,コンクリート工学,46(2),pp.24-32,2008.2
[10]大谷俊浩,村上聖,佐藤嘉昭,三井宜之,平居孝之:ポーラスコンクリートの圧縮強度推定
式の構築に関する研究,日本建築学会構造系論文集,70(590),pp.25-30,2005.4
[11]畑中重光,三島直生,湯浅幸久:ポーラスコンクリートの圧縮強度 : 空隙率関係に及ぼす結
合材強度および粗骨材粒径の影響に関する実験的研究,日本建築学会構造系論文集,70(594),
pp.17-23,2005.8
[12]大谷俊浩,村上聖,佐藤嘉昭,三井宜之,平居孝之:理想球形骨材によるポーラスコンクリ
ートモデル供試体の圧縮強度理論に関する研究,日本建築学会構造系論文集,69(586),
pp.7-13,2004.12
[13]前川明弘,畑中重光,三島直生,湯浅幸久:ポーラスコンクリートの圧縮強度-空隙率関係に
関する実験とそのモデル化,日本建築学会構造系論文集,73(625),pp.363-368,2008.3
[14]山本貴正,畑中重光,三島直生,小池狹千朗,湯浅幸久:ポーラスコンクリートの圧縮強度
特性の確率変動に関する実験的研究,日本建築学会構造系論文集,71(601), pp.9-14,2006.3
[15]三島直生,中川武志,畑中重光:初期養生方法がポーラスコンクリートの圧縮強度発現に与
える影響に関する実験的研究,日本建築学会大会講演梗概集,pp.195-196,2011.7
[16]中川武志,畑中重光,三島直生:供試体の高さ/直径比がポーラスコンクリートの圧縮強度に
及ぼす影響,日本建築学会構造系論文集,75(650),pp.695-699,2010.4
[17]畑中重光・三島直生・森鼻泰大・中川武志:ポーラスコンクリートの施工標準(案)の作成
にむけて,コンクリート工学,49(4),pp.30-37,2011.4
[担当:平岩
10
陸]
2.2.2 透水性
(1)前回委員会(2003)報告書の概要
前回委員会報告書では,ポーラスコンクリートが適用できる環境負荷低減分野の 1 つとして透
水・排水・保水性能が挙げられている。これらの性能が要求される分野としては,舗装用途や緑
化基盤用途が考えられる。
透水性は,一般に透水係数で評価される。透水係数は,ポーラスコンクリートの空隙性状(量,
形状)に左右され,一般には空隙率が大きくなるほど透水係数も大きくなる。しかし,同一の空
隙率であっても,骨材粒径が小さいほど透水係数が小さくなる傾向がある。また,ペーストの垂
れが著しいなど施工に問題があるような場合には透水係数が低下することもあり,適用条件に応
じた製造,施工を行うことが重要であるとされている。
舗装分野の透水係数は,「JIS Z 1218 土の透水試験方法」の定水位透水試験方法に準拠した方
法が適用されている。また,現場透水試験も採用されており,空隙率が 15%以上であれば
1,000cc/15sec の現場透水能力を確保できるとの実験結果が示されている。
また,前回委員会報告書では,定水位透水試験に基づいたポーラスコンクリートの透水試験方
法(案)が提案されている。これは円柱供試体によるものであるが,付属書(参考)として角柱
試験体による方法も提案されている。
(2)最新の研究紹介
透水係数は,ポーラスコンクリートの基礎物性の 1 つとして目標値を設定されることが多い。
ポーラスコンクリート舗装では,
排水性アスファルト舗装の透水係数の目標値が 0.01cm/sec であ
り,これを目標とした場合,図-2.2.2.1 に示すように,全空隙率を 15%以上とすると満足できる
との結果が示されている。このような空隙率と透水係数の関係については,断面における連続空
隙のモデルとして図-2.2.2.2 に示すようなモデルをもとに,式(2.2.2.1)が示されている。
(2.2.2.1)
ここに,K:透水係数,g:重力加速度,w:水の動粘性係数,n:空隙数
Atp:断面積,i:個々の連続空隙径と平均径の比,Vc:連続空隙率%
図-2.2.2.2 断面における連続空隙のモデル[2]
図-2.2.2.1 透水係数と全空隙率の関係[1]
11
図-2.2.2.3 透水係数と空隙率の関係[4]
図-2.2.2.4 内部構造の構築方法[5]
この式は,透水係数を連続空隙率による二次関数式で示したものであるが,高さ方向の連続空隙
率の分布は一様ではなく,実際の透水性は,連続空隙率が最小となる層によって支配されると考
えられる。このため,実験においては,透水係数と連続空隙率最小値との関係を検討し,その関
係を確認している。また,粗骨材粒径やペースト粗骨材空隙比の影響を受けるとしている。
ポーラスコンクリートの内部構造を充填シミュレーションで構成した上で,その透水性を予測
する文献[3,4]もみられる。図-2.2.2.3 は,格子ボルツマン法を使用した結果を示したものであ
り,3D にすることで,実験値への適合性が上がっていることがわかる。また,図-2.2.2.4 に示す
ような方法で平面画像から内部構造を構築し,それに基づいて透水性を予測した結果を実験結果
と比較したものを図-2.2.2.5 に示す。予測した透水係数は,実験結果に近い値を示していること
がわかる。
また,骨材粒径を小さくした小粒径ポーラスコンクリートについて,基礎物性の 1 つとして透
水係数の検討が行われている[6]。図-2.2.2.6 に示すように,透水係数は,従来のポーラスコン
クリートよりも小さい 1cm/s 程度であり,透水係数が供試体の空隙率分布の最小値に依存する可
能性を示している。
図-2.2.2.5 各条件における透水係数の推定値と実験値の比較[5]
12
図-2.2.2.6 小粒径ポーラスコンクリートの
透水係数と全空隙率の関係[6]
図-2.2.2.7 透水円筒に用いた素材[7]
表-2.2.2.1 透水試験に及ぼす円筒素材の影響[7]
*1:[7]で提案されている方法
透水試験に関して,定水位試験に用いる透水円筒の素材を変化させて供試体側面への密着度が
透水係数に与える影響を検討した文献がある[7]。透水円筒に用いる素材として図-2.2.2.7 に示
すような鋼製型枠,熱収縮フィルムおよび円筒ゴムを使用している。これらは供試体側面のせき
板効果の影響を増減させ,透水係数に影響を及ぼすことを明らかにしている。これらの特徴をま
とめると表-2.2.2.1 のようになる。また,図-2.2.2.8 に示すような変水位透水試験方法を提案し
[8],本方法と通常の定水位試験の 2 種類の結果を比較したものを図-2.2.2.9 に示す。この図に
よると,定水位透水試験による値は変水位透水試験の値よりも 3 倍程度大きいが,両者の相関係
数が高いことがわかる。変水位透水試験は定水位透水試験よりも試験が簡便であり、さらにテー
プを周囲に密着させることによって容易にせき板効果の低減を期待できる点に利点があるとして
いる。
図-2.2.2.9 定水位透水係数と
変水位透水係の関係[8]
図-2.2.2.8 変水位透水試験概要図-[8]
13
図-2.2.2.10 水平方向への水流に関する実験方法[9]
図-2.2.2.11 透水量の変化[10]
図-2.2.2.13 目詰まりによる
透水係数の変化[11]
図-2.2.2.12 目詰まり状況[11]
実際にポーラスコンクリートを用いて都市型水害を減少させようと考えた場合,ポーラスコン
クリート内を流れる水流は主として水平方向になると考えられる。このため,図-2.2.2.10 に示
すような方法で水平方向に流れる水の動きについての検討がなされている[9]。このような検討を
もとに,ポーラスコンクリートを施工した領域における雨水の排水遅延効果について推定を行え
るとしている。
舗装に用いられるポーラスコンクリートは,経年によって目詰まりが生じて透水係数が低下す
る可能性が指摘されており,施工後の追跡調査をした例を図-2.2.2.11 に示す。施工直後は現場
透水量の目標値である 1,000cc/15sec を確保しているが,供用後に低下する傾向がわかる。この
ような透水係数に及ぼす目詰まりの影響について検討した研究的な文献[11]では,図-2.2.2.12
に示すように,空隙率の大きいもので砂が内部まで浸透しやすい結果や,図-2.2.2.13 に示すよ
うに,砂によって透水係数が低下し,さらにそれを水圧によって洗浄してもあまり透水係数は回
復しない結果が示されている。
(3)課題
14
透水性は,ポーラスコンクリートの特性ともいえる性質であり,目標値を設定しそれをクリア
するポーラスコンクリートを製造する必要がある。この製造技術そのものは,現状では各社が保
持しているものと考えられる。
しかし,
指標値となる透水係数が試験方法によって異なることや,
実施工の際に見られる目詰まりによって透水性が低下していくなどの問題がある。前者は,再現
性がありかつ簡便な試験方法の確立が,後者は目詰まりを回復させる方法の確立が課題となる。
<参考文献>
[1]梶尾聡,中村秀三,野田悦郎,中原大磯:ポーラスコンクリート舗装の品質特性と供用性に関
する報告,コンクリート工学,42(7),pp.24-31,2004.7
[2]梶尾聡,國府勝郎,上野敦,宇治公隆:ポーラスコンクリートにおける空隙率と透水係数に関
する研究,セメント技術大会講演要旨,第 66 回,pp.70-71,2012
[3]出雲健司:格子ボルツマン法によるポーラスコンクリートの透水シミュレーションの検討,コ
ンクリート工学年次論文集,27(1),pp.1279-1284,2005.7
[4]出雲健司:3 次元格子ボルツマン法によるポーラスコンクリートの透水シミュレーションへの
適用性,コンクリート工学年次論文集,29(2),pp.283-288,2007.7
[5]SUMANASOORIA Milani S. , NEITHALATH Narayanan , BENTZ DaleP. : Planar Image-Based
Reconstruction of Pervious Concrete Pore Structure and Permeability Prediction, ACI
Materials Journal, Vol.107 No.4, pp.413-421, 2010.07
[6]前川明弘,山本晃,三島直生,畑中重光:小粒径ポーラスコンクリートの各種特性に関する実
験的研究,コンクリート工学年次論文集,28(1),pp.1397-1402,2006.7
[7]坂口稔,天野佑樹,上原匠,尾澤敏行:ポーラスコンクリートの透水試験及び空隙率試験方法
に関する研究,コンクリート工学年次論文集,31(1),pp.1699-1704,2009.7
[8]鈴木徹,加賀谷誠,石川洋:舗装用ポーラスコンクリートの透水特性,土木学会第 58 回年次
学術講演会,第 5 部,pp.1423-1424,2003
[9]畑中重光,酒井俊典,中川武志,三島直生:都市型水害の減災に資する地盤内の水流制御技術
の開発研究
その 1: 水流の制御に関する基礎的研究,日本建築学会大会講演梗概集,
pp.205-206,2013.7
[10]梶尾聡,村田芳樹,國府勝郎:車道用ポーラスコンクリート試験舗装の施工および長期供用
性試験,舗装,41(6),pp.5-10 ,2006
[11]スニル プラダン,三島直生,畑中重光:ポーラスコンクリートの透水係数に及ぼす目づまり
の影響に関する基礎的研究,日本建築学会大会講演梗概集,pp.603-604,2008.7
[担当:平岩
15
陸]
2.2.3
耐久性(乾湿・凍害)
(1)前回委員会(2003)報告書の概説
1)乾湿
ポーラスコンクリートは粗骨材の周囲に,モルタルまたはペーストを薄層で付着した状態であ
り,多量の連続空隙を有する。このため,乾湿の繰り返し作用を受けた場合に,粗骨材とペース
ト(またはモルタル)との乾燥収縮率や線膨張係数の違いから,微視的なひび割れが生じること
が懸念された。また,そのような研究報告も見受けられた。
そのため,前回委員会では,表-2.2.3.1 に示す条件で共通試験を実施した。共通試験では,
ポーラスコンクリートの配合として,W/C=25%とし,粗骨材に5号または6号砕石を用い,細
骨材を混入しない配合と混入する配合を設定した。この共通試験の結果によれば,粗骨材最大寸
法が小さいほど,また,細骨材を使用した配合のほうが,乾湿繰り返し抵抗性は向上する結果が
得られている。
表-2.2.3.1 乾湿繰り返し共通試験方法
項目
試験条件
1) 養生方法
材齢 28 日まで標準養生とする
2) 湿潤条件
20℃水中浸漬を1日とする
3) 乾燥条件
40℃気中乾燥を2日と3日を交互に行う
4) 測定時期
2サイクルないし4サイクル毎に行う
5) 終了サイクル
30 サイクルまでとする
なお,同一の条件による乾湿試験方法(案)(以下,JCI 試験案という)も提案されているが,
評価試験方法の確立には,更になる検討が必要であると述べている。
2)凍害
ポーラスコンクリートは多量の連続空隙を有する構造であることから,普通コンクリートに比
較して,空隙中に浸入した水の凍結によって劣化が生じやすいことが懸念された。既往の研究報
告によれば,JIS A 1148「コンクリートの凍結融解試験方法」のA法(水中凍結・水中融解)に
準拠した試験を行った場合,ポーラスコンクリートの供試体に,試験の早い段階から劣化が生じ、
耐久性指数は相当に小さいことが報告されている。その一方で,同 JIS A 1148 B法(気中凍結・
水中融解)や,1面からの凍結融解試験方法,あるいは部分的に凍結させる方法などでは,顕著
な劣化は確認できないとの研究報告も示されている。
また,耐凍害性を向上させる方法としては,AE 剤の使用,シリカフュームや繊維などの混和
材料の添加などが報告されている。
実環境におけるポーラスコンクリートの耐凍害性の確認には,現地での長期におよぶ追跡調査
が必要であり,また,耐凍害性の評価試験方法の確立は,その後の研究に委ねられた。
(2)最近の研究紹介
1)乾湿繰繰り返し促進試験方法に関する研究
前回委員会において JCI 試験案が提案されたこともあり,この JCI 試験案に準拠した試験結果
16
が比較的多く報告されている。報告の中では,JCI 試験案による試験によってポーラスコンクリ
ート供試体の動弾性係数が低下したという報告(斉藤ら[1],藤田ら[2],山口[3])と,低下しな
かったという報告(本田ら[4])の双方が認められた。その試験結果の一例を図-2.2.3.1 に示す。
図の(a)に示す文献[1]の配合は粗骨材寸法 20-5mm,W/C=22.5%,目標空隙率 20%の配合,図の
(b)に示す文献[4]の配合は粗骨材寸法 13-5mm,W/C=25%,目標空隙率 25%の配合である。
前回委員会では,乾湿による劣化は骨材寸法や細骨材混入の有無の影響を受けると報告されて
いる。また,近年のコンクリートの乾燥収縮に関する研究[5]によれば,粗骨材の乾燥収縮率が粗
骨材の種類によって大きく異なることが報告されている。これらを考え合わせると,ポーラスコ
ンクリートの乾湿抵抗性は,粗骨材とペーストとの乾燥収縮率の違いが大きく影響すると考えら
れ,これによって試験結果に差が生じたことが予想される。
(a)動弾性件数が低下した例[1]
(b) 動弾性件数が低下しなかった例[4]
図-2.2.3.1 JCI 試験案による乾湿繰り返し試験結果
また,文献[3]では,JCI 試験案以外に,ポーラスコンクリートが実際に施工される建物屋上の
環境条件(JCI 試験案の条件よりも乾燥条件は緩やかで温度変化は大きい)を模擬した乾湿試験
を4年間実施している。これによれば,JCI 試験案の条件では圧縮強度やヤング係数の低下が確
認されたが,実環境を模擬した試験条件では,圧縮強度等の低下は認められなかったと報告して
いる。
片平ら[6]は,乾湿繰り返し試験で動弾性係数が低下したポーラスコンクリートを詳細に観察し
た結果,図-2.2.3.2(a)に示すような微細なひび割れを確認している。また,この供試体を1年
間水中浸漬したところ,図-2.2.3.2(b)のように空隙が次第に埋められ,動弾性係数もある程度
回復していることを報告している。このように,水分供給のあるような場所では,自己治癒的な
挙動も考えられる。
17
(a)乾湿試験によって生じたひび割れ
(b) 水中浸漬後のひび割れの状態
図-2.2.3.2 乾湿繰り返し試験によって生じたひび割れの観察[6]
2)使用材料と乾湿繰り返し抵抗性に関する研究
ポーラスコンクリートの乾湿繰り返しに対する抵抗性を向上させる検討としては,繊維等の混
入についての論文が数件発表されている。斉藤らの研究[1]によれば,図-2.2.3.1(a)に示すよう
に繊維を混入することで,相対動弾性係数の低下が幾分軽減できる傾向が報告されている。本田
ら[4]の研究では,炭素繊維やビニロン繊維,ポリマーやシリカフュームの混入やアルミナセメン
トの使用等の検討を行っている。しかしながら図-2.2.3.1(b)に示すように,全ての配合で相対
動弾性係数の低下が見られなかったので,繊維等の効果を確認するには至らなかった。
大友ら[7]は,Gmax=10mm または 20mm,W/C=30%のポーラスコンクリートを対象に,乾湿
繰り返し試験による微細なひび割れ発生量に着目した検討を行っており,繊維の混入でひび割れ
発生量が軽減したことを報告している。このように,繊維の混入によって乾湿繰り返しに対する
抵抗性を幾分改善することは可能と考えられるが,大きな改善効果を得るには至っていないよう
である。
使用骨材の影響を検討した事例として,渡邉ら[8]は,ローモンタイトを含有する粗骨材を使用
したポーラスコンクリートの乾湿繰り返し試験を行っており,著しい劣化を確認している。
3)乾燥による物性の変化と乾燥収縮率の研究
乾湿繰り返しの研究ではないが,張らはポーラスコンクリートの乾燥による強度および弾性係
数の変化を測定している[9]。粗骨材は6号砕石,W/C=25~35%の配合である。供試体は材齢 14
日まで水中養生,その後は気中養生とし,材齢 28 日と 174 日で圧縮強度および弾性係数の測定
を行っている。この結果を図-2.2.3.3 に示すが,材齢 28 日に比較して,その後乾燥条件に置い
た材齢 174 日の供試体の強度,弾性係数は,ともにやや低下する傾向が確認されている。
また,張らはポーラスコンクリートの W/C,空隙率,粗骨材の岩種,粒径,締固め方法を変え
たポーラスコンクリートの乾燥収縮率を測定し,その結果から,表-2.2.3.2 に示すポーラスコ
ンクリートの乾燥収縮率の推定式を提案している[10]。なお,近年のコンクリートの乾燥収縮の
研究によれば,使用する粗骨材の種類の違いによる影響が大きいことが指摘されており[5],ポー
ラスコンクリートの乾燥収縮率の推定式においても,この影響を組み込むことが必要となると考
えられる。
18
図-2.2.3.3 ポーラスコンクリートの乾燥による圧縮強度と弾性係数の変化[9]
表-2.2.3.2 ポーラスコンクリートの乾燥収縮率の推定式[10]
19
4)暴露調査による凍害に関する研究
鳥居南ら[11]は,2次製品である河川護岸用ポーラスコンクリートブロックを対象として,寒
冷地に施工したブロックを4年間観察し,劣化が確認されないことを報告している。
唐沢ら[12]は,ポーラスコンクリートの河川護岸模型を青森県に3年2ヶ月(4冬経過)暴露
し,強度および弾性係数の低下,スケーリング劣化が認められなかったことを報告している。
唐沢ら[13]は,寒冷地の鉱山残壁に施工され 25 年が経過したポーラスコンクリートの植栽枠,
ならびに5年を経過したポーラスコンクリート河川護岸ブロックの健全性について調査を行い,
外観,強度,植栽機能に低下が見られないことを報告している。
中村ら[14]は,北海道に施工されたポーラスコンクリートの調査を行っている。調査対象は,
I7:供用3年の歩道ブロック,R6:供用4年の河川護岸ブロック,P7:供用 10 年の歩道ブロッ
クである。調査の結果,図-2.2.3.4 に示すように I7 と R6 では顕著な劣化は認められなかった
が,P7 では,激しいスケーリング劣化が認められ,巨視的なひび割れが発生している箇所も確認
された。P7 の箇所は,国道に面しており,融雪剤が散布されていた可能性があり,より厳しい凍
害環境(塩化物を含む凍結融解作用)であったことが想定されている。
図-2.2.3.4
寒冷地で数年間供用されたポーラスコンクリートの劣化状態[15]
上記のように,前回委員会の終了以降,比較的多くの暴露結果の報告がなされている。これに
よると,河川護岸での劣化の報告は無く,河川環境では比較的高い耐久性を発揮しているようで
ある。一方で,舗装(上記では歩道ブロック)に関して,特に凍結防止剤が散布される条件下に
おいて著しいスケーリング等の劣化が報告されている。この原因について考えると,本来,ポー
ラスコンクリート舗装は透水性を有するものであるが,目詰まりが生じるとポーラスコンクリー
トの空隙中に水が停滞し,凍結時に大きな氷結圧が作用すること,更に,凍結防止剤が散布され
る地域では,凍結防止剤の塩化物によって凍害作用が促進されることが劣化の促進に繋がってい
ることが予想される。
5)凍結融解促進試験方法に関する研究
片平ら[15]は,JIS A 1148 コンクリートの凍結融解試験方法のA法(気中凍結,水中融解法)
を採用した場合の破壊メカニズムについて,図-2.2.3.5 に示すように,供試体の周辺から内部
に向かって凍結が進行することから,内部の水が凍る時の氷結圧の逃げ場が無く,結果として,
その氷結圧によってポーラスコンクリートに引張破壊が発生すると想定している。一方で,河川
護岸等では,河川水の凍結は水面から下方向に進行することから,氷結圧は常に下方向に逃げる
20
ことになり,促進試験のような氷結圧が作用する可能性は低い。そこで,実環境を想定した独自
の促進試験方法を提案している。図-2.2.3.6 に示すように,凍結融解試験装置のブライン液上
に鋼製容器を置き,そこにポーラスコンクリート供試体と水を入れるもので,下面からの1面凍
結融解試験としている。1面凍結融解試験の場合は,一般に凍結融解に長時間を要するが,本試
験方法では供試体寸法を 40×40×160mm と小型化することで,試験時間の短縮を図っている。
図-2.2.3.5 促進試験と自然環境下での凍結の違い[15]
図-2.2.3.6 文献[15]で提案されたポーラスコンクリートの1面凍結融解試験方法(案)
鳥居南ら[12]は,2次製品であるポーラスコンクリートブロックについて,寒冷地に施工した
ブロックを4年間観察し,劣化が確認されないことを報告している。また,現場での温度環境を
考慮し,プログラム式恒温恒湿層内に図-2.2.3.7 に示すような容器と供試体を配置し,水温が
-5℃~+5℃となるように凍結8時間,融解8時間を1サイクルとして 300 サイクルまで試験を実
施し,劣化が生じなかったことを報告している。
図-2.2.3.7
文献[11]で実施された凍結融解試験
21
中村ら[17]は,RILEM CIF/CDF 法のポーラスコンクリートへの適用について検討している。
この結果によれば,スケーリング量と相対動弾性係数との間に対応関係があることや,寒冷地で
10 年間供用されたポーラスコンクリート舗装ブロックの凍害損傷の程度は,CDF 法の凍結融解
40 サイクル程度の劣化と良く対応するものであることが報告されている。
6)使用材料と耐凍害性に関する研究
前川ら[17]は,6号砕石を使用する一般的な配合に対して8号(2.5-1.2mm),9号砕石
(1.2-0.6mm)といった小粒径の骨材を使用したポーラスコンクリートの耐凍害性について検討
している。試験方法には JIS A 1148 コンクリートの凍結融解試験方法のB法(気中凍結,水中
融解法)を採用し,結論として,設計空隙率 20%以下の小粒径ポーラスコンクリートの凍結融解
抵抗性は,一般的なポーラスコンクリートよりも大きいとしている。ただし,小粒径ポーラスコ
ンクリートの高い保水性能は凍結融解作用に不利に働く恐れも指摘している。
繊維やシリカフュームを混入することで,ポーラスコンクリートの耐凍害性を向上させようと
いう研究も行われている[18][19]。これらの結果によれば,繊維やシリカフュームの混入によっ
て動弾性係数の低下は僅かながら低減できるが,根本的な改善には至っていないようである。な
お,結合材と骨材の界面に発生する微細ひび割れは,繊維の混入でやや低減できることが報告さ
れている。
Yang は,実際の環境条件に合わせた遅いサイクル(1日1サイクルなど)での凍結融解試験
を行っている[20]。粗骨材寸法は 6-12mm,W/C=30%の標準配合に対して,シリカフュームや
繊維を混入した配合を設定した。供試体打設後の養生条件として,7日間封緘した後に 60 日間
水中養生の条件と,60 日間気中養生の2つの条件を設定した。凍結融解試験は,凍結融解サイク
ルを実環境に近い条件で設定し,真水に浸す条件と塩水に浸す条件を設定した。この試験結果で
は,気中養生では水中養生に比較して劣化が早いこと,塩水環境では劣化が早いこと,シリカフ
ュームや繊維の使用は凍結融解耐久性の向上に有効であること等が報告されている。
Vancura らは,舗装用透水コンクリートについて,1~5年経過した舗装からサンプルを採取
し,顕微鏡写真観察によってひび割れの発生状況を観察している[21]。この結果によれば,ひび
割れの発生はペースト中の微小気泡の有無と密接に関連していることが報告されている。
(3)課題
乾湿繰り返しに関しては,前回委員会いおいて乾湿試験方法(案)が提案されており,この試
験方法に準拠した試験報告が多く見られた。この結果によれば,劣化が生じた事例と生じなかっ
た事例の双方が認められる。この結果の相違については骨材物性等の違いが大きく影響している
ことが予想され,このような材料物性と乾湿抵抗性の関係について整理していく必要があろう。
また,乾湿試験方法(案)に従った試験では劣化が生じるが,実環境を模擬した実験では劣化が
確認できなかったという報告もあり,提案した試験方法(案)の適用範囲や評価基準についても
検討する必要がある。
凍結融解に関しては,統一した促進試験方法の確立が課題となっている。また,暴露環境下の
調査結果によれば,河川護岸ブロックに関しては,比較的高い耐凍害性を有していると考えられ
るが,一方で,凍結防止剤を散布するような箇所でのポーラスコンクリート舗装では,激しい劣
化が報告されている。寒冷地におけるポーラスコンクリート舗装の耐久性,適用性については,
22
重要な検討課題と考える。
<参考文献>
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湿繰返し及び凍結融解に対する抵抗性,コンクリート工学年次論文集,Vol.30,No.2,
pp.307-312,2008.7
[2] 藤田純,大谷俊浩,佐藤嘉昭,村上聖,清原千鶴,三井宜之:産業副産物を使用したポーラ
スコンクリートの乾湿繰返し抵抗性に関する研究,日本建築学会大会講演梗概集,
pp.407-408,2004.7
[3] 山口信 :比較的長期間の乾湿繰返しによるポーラスコンクリートの圧縮性状の変化,セメン
ト・コンクリート論文集,Vol.65,pp.334-338,2011
[4] 本田陵二,水口裕之,西川浩史,石丸啓輔:ポーラスコンクリートの乾湿繰り返し抵抗性に
関する一検討,コンクリート工学年次論文集,Vol.28,No.1,pp.1421-1426,2006.7
[5] 坂田憲次ほか:コンクリートの収縮問題検討委員会報告書,(社)日本コンクリート工学協
会,2010.3
[6] 片平博,渡辺博志:ポーラスコンクリートの乾湿繰り返し抵抗性に関する実験的検討,セメ
ント技術大会講演要旨,第 60 回 ,pp.222-223,2006
[7] 大友鉄平,武田三弘:乾燥湿潤繰り返し作用によって発生したポーラスコンクリートの微細
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[8] 渡邉晋也:ローモンタイト含有骨材を使用したポーラスコンクリートの乾湿繰返し抵抗性に
関する研究,セメント・コンクリート論文集,Vol.59,pp.305-310,2005
[9] 張茂剛,三島直生,畑中重光:ポーラスコンクリートの圧縮強度および弾性係数に及ぼす乾
燥養生の影響, 日本建築学会大会講演梗概集,pp. 1099-1100,2010.7
[10] 張茂剛,三島直生,畑中重光:ポーラスコンクリートの乾燥収縮特性とその幾何学モデルに
関する研究,日本建築学会構造系論文集,Vol.76,No.665,pp.1205-1212,2011.7
[11] 鳥居南康一,小山実,中西崇雄,林賢:即脱ポーラスコンクリート製品の凍結融解抵抗性の
検討,コンクリート工学年次論文集,Vol.25,No.1,pp.1187-1192,2003.7
[12] 唐沢明彦,城國省二,土田保,水上克朗:実環境下におけるポーラスコンクリート河川護岸
の凍結融解耐久性の評価,土木学会第 59 回年次学術講演会,第 5 部,pp.461-462,2004.9
[13] 唐沢明彦,小柳直昭,高橋重松,土田保:植栽を目的としたポーラスコンクリートの長期耐
久性に関する評価,日本緑化工学会誌,Vol. 27 , No. 1,pp.219-222,2001
[14] 中村拓郎,堀口敬,志村和紀:寒冷地に施工されたポーラスコンクリートの耐凍害性,コン
クリート工学年次論文集,Vol.32,No.1,pp.1385-1390,2010.7
[15] 片平博,渡辺博志:新しいポーラスコンクリートの凍結融解試験法の検討,第 59 回セメン
ト技術大会講演要旨,pp.230-231,2005.5
[16] 中村拓郎,堀口敬,志村和紀,石井剛:ポーラスコンクリートの凍害劣化に及ぼすスケーリ
ング抵抗性の影響,コンクリート工学論文集,Vol.21,No.1,pp.63-72,2010.9
[17] 前川明弘,三島直生,張茂剛,畑中重光:小粒径ポーラスコンクリートの凍結融解抵抗性に
関する基礎実験,日本建築学会東海支部研究報告集(48),pp. 33-36,2010.2
[18] 十文字拓也,齋藤俊克,出村克宣:結合材を繊維補強セメントモルタルとした繊維補強ポー
23
ラスコンクリートの耐凍結融解性,日本建築学会大会講演梗概集,pp.197-198,2013.7
[19] 大友鉄平,大塚浩司,北辻政文,阿波稔:シリカフュームおよび微細繊維を混入したポーラ
スコンクリートの耐凍害性と植物の生長,コンクリート工学論文集,Vol.18,No.3,pp.9-22,
2007.9
[20] Yang Zhifu: Freezing-and-Thawing Durability of Pervious Concrete under Simulated
Field Conditions, ACI Materials Journal, Vol.108 No.2,pp.187-195,2011.3
[21] Vancura, Mary; MacDonald, Kevin; Khazanovich, Lev: Microscopic analysis of paste and
aggregate distresses in pervious concrete in a wet, hard freeze climate, Cement and
Concrete Composites, Vol.33, No.10, pp.1080-1085,2011.11
[担当:片平
24
博]
2.2.4
耐久性(その他)
(1)前回委員会(2003)報告書の概要
2003 年の前回委員会報告書では,ポーラスコンクリートに関するその他の耐久性として,淡
水・海水の影響,中性化,すり減り作用,繰り返し荷重,および植物の影響について報告されて
いる。以下に概要をまとめるが,詳細は,前回委員会報告を参照して頂きたい。
淡水・海水の影響に関して,室内実験により,流水や海水への水酸化カルシウムの溶脱とそれ
による強度低下,そして,シリカフュームの添加による改善の有効性が報告されている。
中性化に関して,表面積の大きいポーラスコンクリートの炭酸化は,早期に急激に進み,強度
の増加や溶脱の抑制がみられるとの報告がなされていた。
すり減り作用に関して,ラベリング試験による摩耗抵抗性試験,砂礫によるエロ-ジョン摩耗
(ASTM C 1138)や表面疲労摩耗試験(ミュンヘン工科大式)によるすり減り抵抗性を調べた文
献などが紹介され,曲げ強度が高いほど,使用骨材径が大きいほど,すり減り減量が小さいこと
が報告されている。
繰り返し荷重への抵抗性に関して,ポーラスコンクリートの圧縮疲労および水中圧縮疲労を
検討した文献が紹介され,平均疲労寿命は,ばらつきは大きいが,舗装コンクリートと同程度で
あるとの報告があった。
植物の影響に関して,ポーラスコンクリートは低い草本や細根の植物に適しており,計算上で
は植物の根の成長圧を上回る引張強度を有しており,分泌物であるクエン酸の影響も小さいと
の報告がされている。
すなわち,現場で考えうる多様な耐久性に対しての検討がみられた。しかしながら,現場での
長期耐久性の検討事例やアルカリ骨材反応など不足している項目もあった。
(2)最近の研究紹介
1)全体概要
表-2.2.4.1 本調査でみられたキーワード
2004 年以降で,ポーラスコンクリートの
番号
キーワード
国内
海外
1
淡水・海水
11
0
2
中性化
0
0
3
すり減り作用
6
3
4
繰り返し荷重
1
1
5
植物による劣化
1
0
に関する研究が多かった。また,アルカリ骨
6
アルカリ骨材反応
2
0
材反応や凍結防止剤の影響など,新たな対象
7
凍結防止剤
3
0
に関する研究もあった。
8
目詰まり
1
4
9
鉄筋腐食
0
2
25
10
耐久性に関して検討されているキーワード
を表-2.2.4.1 に示す。関連する文献は,国
内 25 件,海外 10 件であった。番号 6~9 は
新たに追加されたキーワードである。
国内では,淡水・海水に対する耐久性に関
する研究が多くみられ,次いですり減り作用
一方,海外では,目詰まりやすり減り作用
合計
に関する検討が多く見られ,鉄筋腐食に関す
25
る研究もあった。中性化に関する研究は,国内外でみられなかった。これは,中性化によるポー
ラスコンクリートの性能低下への影響が小さいためと考えられる。
2)淡水・海水の影響
ポーラスコンクリートに及ぼす淡水・海水の影響に関する研究としては,前回委員会報告書で
課題となっていた暴露試験結果や長期室内試験結果が多く報告されている。
暴露試験結果では,渡邉ら[1]は,1 年の海中暴露で,骨材に転炉スラグ,高炉スラグを使
用した場合より,図-2.2.4.1 に示すように砕石を使用した場合のポーラスコンクリートの強度
や動弾性係数の低下が大きいことを示している。一方,石川ら[2]は,ダム湖岸法面での 3 年
間の暴露試験の結果,ポーラスコンクリートからの水酸化カルシウムの溶脱や凍結融解作用は
起こりえるが,圧縮強度の低下は見られなかったと報告している。
長期室内試験結果では,松川ら[3]は,3 ヶ月のウォッシュアウト試験を実施した結果,質
量低下は 2%以下で,圧縮強度の低下はみられないことを示している。さらに,空隙率や空隙径
が小さく,
透水係数が低くなると,ウォッシュアウトの影響は小さいことを報告している。
一方,
片平ら[4]は,図-2.2.4.2 に示すように通水筒を使用したポーラスコンクリートの通水試験
(毎分 15L)を 650 日まで実施した結果,
図-2.2.4.3 に示すように,100 日以降に,
水酸化カルシウムの溶脱によりポーラスコ
ンクリートのペースト部分が脆弱化し,相
対動弾性係数が 15~50%,割裂強度比が 40
~70%低下する傾向を確認している。6 号砕
石を用いた配合が最も相対動弾性係数が低
下しており,これは比表面積が大きいこと
が原因と推察している。また,高炉セメント
を用いると溶脱に対する抵抗性がやや向上
することを示している。
図-2.2.4.2 通水試験の概要[4]
図-2.2.4.1 海水浸漬期間と圧縮強度の関係[1]
(CS と MS:砕石,C:転炉スラグ,B:高炉スラグ)
図-2.2.4.3 通水日数と相対動弾性係数との関係[4]
26
3)すり減り作用による影響
前回委員会報告書では,アスファルト合材に適用されているすり減り作用に関する試験をポ
ーラスコンクリートに適用した事例が多く報告されていた。しかし,アスファルトとポーラスコ
ンクリートでは骨材と結合材のすり減りや剥落のメカニズムが異なる可能性がある。そこで,中
川ら[5]は,図-2.2.4.4 のような六角柱型に試験体を取り付け,鋼製ロッドを回転させて,衝
撃力を繰り返し与える奥田式すり減り試験を使用した高精度なポーラスコンクリートの剥脱耐
性評価方法を提案している。この装置を用いて,5~6 号砕石を使用した空隙率 15~25%の長さ
300×幅 150×厚さ 60mm のポーラスコ
ンクリート板にて試験を実施した結果,
圧縮強度が 15N/mm2 程度以上となるポ
ーラスコンクリートでは,普通コンクリ
ートと同程度の耐摩耗・剥脱性を有する
ことを示している。一方,空隙率や骨材
粒形がポーラスコンクリートの耐摩耗・
剥脱性に及ぼす影響が小さいことを示
図-2.2.4.4 剥脱耐性評価に使用した試験機[5]
している。
4)繰り返し荷重による影響
現場へのポーラスコンクリートの適用を想定した疲労試験の実施例が報告されている。奥山
ら[6]は,舗装構造として,プレキャスト PC 舗装版上にポーラスコンクリートを敷設した模
擬試験体を作製した。主要幹線道路として,設計期間 40 年,計画交通量 3000 台/日以上の交通
を想定すると,標準的な荷重 49kN を 1.4×108 回負荷する必要がある。奥山らは,それと同等の
負荷を,段階的に荷重を増やした 15 ス
テップの繰返し載荷で再現している。
得られた疲労載荷試験荷重と変位曲線
の関係を図-2.2.4.5 に示す。その結
果,ひび割れ等の損傷はなく,普通コ
ンクリートとの界面剥離やポーラスコ
ンクリートの圧壊もみられない。すな
わち,ポーラスコンクリートは設計期
間内では十分な疲労耐力を有している
ことを明らかにしている。
図-2.2.4.5
疲労載荷試験荷重-変位曲線[6]
5)植物の影響
新材料を混合したポーラスコンクリートを植生ブロックに適用することを目的に,植物由来
のクエン酸に対する耐久性についての検討事例が報告されている。徳重ら[7]は,イオン交換
27
写真-2.2.4.1 浸漬後のスケーリングの様子[7]図-2.2.4.6 クエン酸浸漬後の曲げ破壊荷重[7]
機能や吸着性能を利用して,保水性や水質浄化などの性能を有する 2 次製品の開発を目的とし
て,天然ゼオライトのイオン交換機能や吸着性能を利用したポーラスコンクリートを作製し,ク
エン酸 2%水溶液(20 度,pH2.0)に材齢 14 日から 56 日間浸漬している。その結果,10%程度
の質量減少があり,写真-2.2.4.1 に示すようなスケーリングがみられたものの,図-2.2.4.6 に
示すように大幅な強度低下は認められないことを明らかにしている。
6)アルカリ骨材反応による影響
室内試験でのポーラスコンクリートへのアルカリ骨材反応の影響について検討事例が報告さ
れている。
小林ら[8]は,W/C=28%として空隙率 25%のポーラスコンクリートを作製し,JCI「コンクリ
ートの潜在反応性試験法(案)」に準じて促進養生を 6 ヶ月間実施している。ポーラスコンクリー
トと普通コンクリートを比較した結果,図-2.2.4.7 に示すようにポーラスコンクリートでは,
膨張量が小さいため,ひび割れの発生や超音波伝播速度の低下につながる過度な膨張は起こら
なかったとしている。
一方。阿部ら[9]は,W/C=25%として空
隙 率 25% の ポ ー ラ ス コ ン ク リ ー ト に ,
NaOH をセメントに対して 1.2,2.5mass%添
加し,40℃の水中養生で材齢 180 日まで JIS
A 1129-2 に準拠して試験を実施している。
その結果,図-2.2.4.8,図-2.2.4.9 に示
すように膨張ひずみの増加とともに,ポー
ラスコンクリートの空隙率が増加し,圧縮
強度が低下する傾向にあると報告してい
図-2.2.4.7 骨材の種類別の膨張量[8]
る。
28
図-2.2.4.8 膨張ひずみと空隙率変化[9]
図-2.2.4.9 膨張ひずみと圧縮強度[9]
7)凍結防止剤の影響
ポーラスコンクリート舗装への新たな課題として,凍結防止剤散布の影響を検討した事例が
報告されている。内田ら[10]
,
[11]は,W/C=20,35,50%のペーストや W/C=20~40%,設計
空隙率 20%のポーラスコンクリートを 20℃,30wt%の塩化カルシウム水溶液に浸漬した実験を
行っている。その結果,写真-2.2.4.2 に示すようにペーストを水酸化カルシウム水溶液に浸漬
後に,劣化生成物が観察されている。また,図-2.2.4.10 に示すように,ポーラスコンクリー
トでは,高炉セメント B 種を用いた場合,水酸化カルシウム水溶液の影響を受けないが,普通
セメントを用いた場合,W/C=35,40%においては水槽中で崩壊し,W/C=30%においても強度低
下が見られたとしている。
写真-2.2.4.2 CaCl2aq 浸漬後のペースト
の様子[10]
図-2.2.4.10 CaCl2aq 浸漬後のポーラスコン
クリートの圧縮強度の推移[11]
8)目詰まりの影響
ポーラスコンクリートの目詰まりに関する検討には,比較的海外で多く報告されている。
Kayhanian[12]らは,駐車場に用いたポーラスコンクリート舗装の透水性や写真-2.2.4.3 に
示すように採取したコアの X 線 CT を用いた目詰まり深さの計測の結果について,交通経路,気
29
温,堆積物,管理状況,降雨,植被など,
多くの要因との多変量解析を実施して
いる。その結果,38μm 以下の粒子の影
響が大きく,目詰まり深さの平均は上か
ら 25mm 程度であるが,最大で 100mm
に達したものあったとしている。また,
図-2.2.4.11 に示すように目詰まりに
よる空隙率の変化と透水係数との関係
を示している。
Haselbach ら[13]は,ポーラスコン
写真-2.2.4.3 X 線 CT 画像と空隙率分布例[11]
クリートに砂が被覆したことによる透
水性の低下は,被覆前のポーラスコンク
リートの透水性と,砂の透水性に関係す
ると考え,室内実験にて,表面に 1.3~
5cm の厚さの砂(透水係数 0.02cm/s)を
被覆した傾斜の異なるポーラスコンク
リート(透水係数 0.2cm/s)に関して,カ
リフォルニアで想定される降雨強度に
対する透水量と表面流出量を計測して
いる。その結果,砂に被覆された舗装の
透水係数は約 0.004cm/s となり,100 年
に 1 度の降雨強度で 30 分継続する程度
図-2.2.4.11 目詰まり後の空隙率と透水係数[12]
であれば透水可能であることを示して
いる。
一方,国内でも,Pradhan ら[14]が,
複層のポーラスコンクリートへの砂の
被覆の有無による透水性の変化を独自
の試験装置で検討している。その結果,
6 号砕石を用いたポーラスコンクリート
の上に 8 号砕石を用いたポーラスコンク
リートを重ねた試験体では,8 号砕石を
用いた単層よりも透水性に優れ,図-
2.2.4.12 に示すように砂が被覆しても
洗浄により 70%程度まで透水性が回復
図-2.2.4.12 洗浄による透水係数の回復率[14]
することを示している。
30
9)鉄筋腐食の影響
ポーラスコンクリートを舗装だけでなく,パネル等に利用することを目的とした,鉄筋補強に
関する研究事例が報告されている。Carsana ら[15]は,骨材とセメントの比が 4~8 のポーラス
コンクリートに埋め込んだ鉄筋の腐食試験を実施している。その結果,無加工の鉄筋では,2~
3 週間で腐食し始めるが,水分吸収を遅らせるための防水混和剤の使用や,図-2.2.4.13 に示
すように亜鉛メッキ鋼やステンレス鋼の利用により改善できることを明らかにしている。
図-2.2.4.13 腐食試験後に試験体から取り出した鉄筋の様子[15]
(a:炭素鋼,b:炭素鋼(グラウト塗布),c:ステンレス鋼,d:亜鉛メッキ鋼)
(3)課題
ポーラスコンクリートの適用用途が多岐にわたること,また要求される性能が強度だけでな
く,空隙率や空隙構造の保持など多様であることから,個々の耐久性の評価やその対策の提示が
必要であるとともに,複合した検討も重要となる。
現状では,淡水・海水によるカルシウムの溶脱や疲労特性,植物の影響など,ある程度の結果
が得られている。今後も,現場への適用事例の追跡調査等の検討を進め,環境条件に応じた要求
性能の確保に繋げていく必要がある。
一方,すり減り作用,凍結防止剤,目詰まりに関しては,さらなる室内屋外における実験的研
究により,メカニズムの解明とその耐久性を評価する試験方法の検討が,今後の課題といえる。
また,アルカリ骨材反応によるポーラスコンクリートの挙動では,強度低下だけではなく,空
隙構造にも変化をもたらす可能性がある。この場合,上記の様々な耐久性にも影響を与えると考
えられ,今後も知見を積み重ねる必要があると考えられる。
<参考文献>
[1] 渡邉晋也,迫田恵三,藤井文彦:鉄鋼スラグを使用したポーラスコンクリートの海洋環境
下における諸性質,セメント・コンクリート論文集,No. 60,pp. 355-360,2006
31
[2] 石川嘉崇,天野功二,柳橋邦生:植栽型ポーラスコンクリートのダム護岸への適用に関す
る研究,コンクリート工学年次論文集,Vol. 26,No. 1,pp. 1461-1466,2004
[3] 松川徹,玉井元治,南勝之:ポーラスコンクリートのウォッシュアウトに対する耐久性,
セメント・コンクリート論文集,No. 59,pp. 297-304,2005
[4] 片平博,渡辺博志:ポーラスコンクリートの溶脱抵抗性に関する長期実験,第 62 回セメ
ント技術大会講演要旨,pp. 118-119,2008
[5] 例えば,中川武志,畑中重光,三島直生,犬飼利嗣:ポーラスコンクリートの耐摩耗・剥
脱性評価に関する実験的研究,セメント・コンクリート論文集,No. 60,pp. 169-176,2006
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年次論文集,Vol. 26,No. 1,pp. 1407-1412,2004
[7] 徳重英信,亀島博之,川上洵,鈴木弘実:天然ゼオライト混和ポーラスコンクリート複合
平板の曲げ強度とクエン酸抵抗性,セメント・コンクリート論文集,No. 64,pp. 257-264,
2010
[8] 小林隆芳,長岡誠一,君島健之:反応生骨材を用いたポーラスコンクリートの膨張特性,
第 58 回セメント技術大会講演要旨,pp. 230-231,2004
[9] 阿部和宏,半井健一郎:アルカリ反応生骨材を用いたポーラスコンクリートの性能評価,
土木学会第 66 回年次学術講演会,pp. 1089-1090,2011
[10] 内田寿久,畑中重光,三島直生,前川明弘:塩化カルシウム水溶液によるセメントペー
スト硬化体の劣化に関する実験的研究,コンクリート工学年次論文集 Vol. 35,No. 1,pp. 733738,2013
[11] 内田寿久,畑中重光,三島直生:塩化カルシウム水溶液によるポーラスコンクリートの
劣化に関する基礎的研究,第 67 回セメント技術大会講演要旨,pp. 48-49,2013
[12] Kayhanian, Masoud; Anderson, Dane; Harvey, John T.; et al.: Permeability measurement and scan
imaging to assess clogging of pervious concrete pavements in parking lots, JOURNAL OF
ENVIRONMENTAL MANAGEMENT, Vol.95, No.1, pp.114-123, 2012.
[13] Haselbach, Liv M.; Valavala, Srinivas; Montes, Felipe: Permeability predictions for sand-clogged
Portland cement pervious concrete pavement systems, JOURNAL OF ENVIRONMENTAL
MANAGEMENT, Vol.81, No.1, pp.42-49, 2006
[14] Sunil PRADHAN, Naoki MISHIMA and Shigemitsu HATANAKA: EFFECT OF CLOGGING
ON PERMEABILITY OF SINGLE AND DOUBLE LAYERED POROUS CONCRETE, Proceedings
of the Japan Concrete Institute, Vol. 31, No. 1, pp. 1735-1740, 2009.
[15] Carsana, M.Tittarelli, F.; Bertolini, L.: Use of no-fines concrete as a building material: Strength,
durability properties and corrosion protection of embedded steel, CEMENT AND CONCRETE
RESEARCH, Vol. 48, pp. 64-73, 2013.
[担当 麓
32
隆行]
2.2.5
使用材料
(1)前回委員会報告書の概説
前回委員会報告書[1]における使用材料に関する項目としては,ポーラスコンクリート材料へ
の各種産業廃棄物の利用(リサイクル)が取り上げられている。その利用方法としては,骨材へ
の利用と結合材への利用に大別し,研究成果が報告されている。
ポーラスコンクリートの骨材への利用としては,再生骨材,廃プラスチック,木炭など,結合
材への利用としてフライアッシュ,各種スラグなどに関する研究が行われている。その際,単に
材料を再利用するのではなく,その特性を有効利用することで,ポーラスコンクリートの各種性
能を向上させる試みが行われている。
(2)最近の研究紹介
本節では,前回委員会報告以降に発表されたポーラスコンクリートに用いる使用材料に関する
研究をリサイクル,繊維補強,新材料に分けて紹介する。
1)リサイクル
ポーラスコンクリート材料へのリサイクルを,前回委員会報告同様に,骨材への利用と結合材
への利用に大別し,以下に報告する。
a)骨材への利用
①再生骨材
図-2.2.5.1 には,摩砕処理の異なる再生粗骨材を用いたポーラスコンクリートの圧縮強度と
空隙率の関係を示す[2]。再生骨材に磨砕処理を行ってもポーラスコンクリートの圧縮強度は改
善されず,原コンクリート強度の違いによって,グルーピングされる傾向が見られる。又,図-
2.2.5.2 に示すように,摩砕処理の程度が比較的軽微で,全ての再生骨材にモルタル分が多く付
着していたためであり,又,粗骨材強度の影響が表れる領域(領域 A)と影響がない領域(領域
B)に区分できるとしている。
図-2.2.5.3 には,低品質再生骨材を用い
たポーラスコンクリートの圧縮強度と空隙率
の関係を示す[3]。再生骨材に付着したモル
R:再生粗骨材
Y:原コンクリート強度=15,25N/mm2
RXY
X:摩砕処理の
種類
図-2.2.5.1
N:摩砕処理なし
O:振動攪拌型ミキサ(水)
L:ロサンゼルス試験機(鋼球)
図-2.2.5.2
再生粗骨材を用いたものの圧
再生粗骨材を用いた圧縮強度と
空隙率の関係に及ぼす粗骨材強度の影響[2]
縮強度と空隙率の関係[2]
1
33
タル及びモルタル塊の混入により再生骨材を用いたポー
ラスコンクリートの圧縮強度は,砕石を用いたもののそ
れに比べて低い傾向にあるとしている。又,再生骨材(小)
を用いた場合に,ポーラスコンクリートの圧縮強度は著
しく低下すると報告している。
黒田らは,再生骨材を用いたポーラスコンクリートは,
締固めによって,粗骨材接点に,写真-2.2.5.1 のよう
な角かけが発生し,圧縮強度に影響を及ぼすという図-
2.2.5.4 に示すような仮説を立てた上でその性能評価を
図-2.2.5.3
低品質再生粗骨材を
行っている[4]。
用いた圧縮強度と空隙率の関係[3]
図-2.2.5.5 に示すように,締固め方法によって,ポーラスコンクリートの上層と下層の空隙
率が異なることから,その圧縮強度が異なり(図-2.2.5.6)[4],又,測定される圧縮強度は,
供試体の最高空隙率部分に依存しているといえる。
図-2.2.5.7 には,屋外暴露試験における再生骨材及び砕石を用いたポーラスコンクリートと
写真-2.2.5.1
図-2.2.5.5
締固め後の骨材[4]
図-2.2.5.4
上下層の空隙率の分布[4]
図-2.2.5.7
締固めによる再生骨材接点の状況[4]
図-2.2.5.6
上下層と全層の圧縮強度比較[4]
普通コンクリートとの表面温度差と 72h 吸水量及び保水量の関係[5]
2
34
普通コンクリートとの表面温度差と 72 時間吸水量及
表-2.2.5.1
大粒径ポーラスコンク
び保水量の関係を示す[5]。再生骨材の付着モルタル
リートの作製方法による比較[6]
分が吸水量や保水量の増加に寄与しており,ポーラス
コンクリートに再生骨材を用いることで冷却効果の向
上が認められている。
②大粒径コンクリートがら
前川らは,大粒径のコンクリートがらを粗骨材とし
て用いた大粒径ポーラスコンクリート(写真-
2.2.5.2)を表-2.2.5.1 に示
す方法によって製造し,従来
のポーラスコンクリートでは
得ることのできない大きな空
隙の有用性を検討している
[6]。図-2.2.5.8 には,コ
ンクリートがらの表面に結合
材を吹付け,結合することに
写真-2.2.5.2
よって製造した大粒径ポーラ
ラスコンクリートの断面[6] 付着厚さの関係[7]
大粒径ポー
図-2.2.5.8
結合材の FL と平均
スコンクリートの結合材のフ
ロー値(FL)と平均付着厚さ
の 関 係 を 示 す [ 7 ]。 FL が
300mm の場合においても,大
粒径ポーラスコンクリートは
10mm 以上の付着厚さが確保
されている。又,図-2.2.5.9
には,大粒径ポーラスコンク
リートの曲げ強度と空隙率の
関係を示す[6]。大粒径ポー
ラスコンクリートの曲げ強度
は,既往の研究結果と比べて,
図-2.2.5.9
大粒径ポーラスコン
クリートの曲げ強度と空隙率の関
写真-2.2.5.3
空隙を利
用するイセエビ[8]
係[6]
極端に小さい。これは,粗骨材であるコンクリートがらの強度が小さいこと及び粗骨材粒径が極
端に大きく,
その不均質性によって応力及びひずみの集中が起こることによると考えられている。
一方,写真-2.2.5.3 に示すように,イセエビが大粒径ポーラスコンクリートを生息場所として
活用していることが観察され,大きな空隙が有効に機能しているといえる[8]
。
③廃瓦
図-2.2.5.10 には,愛知県西三河地方で産出される三州瓦の規格外品を破砕・粉砕処理した瓦
廃材及び砕石を粗骨材としたポーラスコンクリートの保水性試験結果を示す[9]。廃瓦を用いた
ポーラスコンクリートは,砕石のものに比べて保水量が多く,蒸発散能力が高いと報告している。
3
35
図-2.2.5.10
廃瓦を粗骨材とした保水性
[9]図-2.2.5.11
単位体積あたりの吸水量[10]
X POC
ポーラスコンクリート
7G:7号砕石
6G:6号砕石
Bd:家屋解体廃瓦
図-2.2.5.12
家屋解体廃瓦ポーラスコンクリートと砕石ポーラスコンクリートの中心温度差[11]
又,図-2.2.5.11 には,各ポーラスコンクリートの単位体積
あたりの吸水量を示す[10]。家屋解体時に発生した廃瓦を粗
骨材としたポーラスコンクリートが単位体積あたりに吸水で
きる量は,他のものに比べて多く,高い吸水性能を有してい
る。図-2.2.5.12 に示すように,家屋解体廃瓦を用いること
により,温度上昇抑制機能が上昇している[11]。
写真-2.2.5.4 に示すように,瓦くずを粗骨材としたポー
ラスコンクリートは,保水性が良好であることから,は種 2
写真-2.2.5.4
植生状況[12]
週間後に西洋芝の良好な発育が観察されており,緑化用ポーラスコンクリートの粗骨材として,
瓦くずを利用することが有用であることが示されている[12]。
④貝殻
図-2.2.5.13 には,牡蠣殻を粗骨材としたポーラスコンクリートの圧縮強度と全空隙率の関係
を示す[13]
,[14]。牡蠣殻を用いたものの圧縮強度は,牡蠣殻骨材自体の強度が小さいため,普
通のポーラスコンクリートに比べて,著しく小さい。そのため,牡蠣殻を用いたポーラスコンク
リートは,結合材の強度を変化させても,圧縮強度に及ぼす影響は認められない。又,図-2.2.5.14
には,牡蠣殻を粗骨材としたポーラスコンクリートの透水係数と連続空隙率の関係を示す[15]。
骨材粒径の大きい牡蠣殻を用いたポーラスコンクリートほど,透水係数が大きい傾向にあるとし
ている。これは,牡蠣殻骨材は粒径が大きくなるにつれて,牡蠣殻自体の湾曲した形状が現れる
ため,ポーラスコンクリート内部に大きな空隙を成形しやすいためとされている。
図-2.2.5.15 には,ホタテ貝殻を混入したポーラスコンクリートの圧縮強度とホタテ貝殻混入
4
36
Oy-PoC:牡蠣殻を粗骨材としたポーラスコンクリート
図-2.2.5.13
牡蠣殻を粗骨材とした圧縮強度と全空隙率の関係[13][14]
Oy-A20
粗骨材最大寸法
牡蠣殻を粗骨材
図-2.2.5.14
牡蠣殻を粗骨材とした透水係
数と連続空隙率の関係[15]
図-2.2.5.15
ホタテ貝殻を混入した圧
縮強度とホタテ貝殻混入率の関係[16]
N:普通コンクリート
C-P:砕石+ペースト
C-M:砕石+モルタル
R-M:再生+モルタル
S-M:高炉徐冷+モルタル
図-2.2.5.16
高炉徐冷スラグを粗骨材とし 図-2.2.5.17
骨材の水分放散速度の比較[17]
た曲げ強度の経時変化[17]
率の関係を示す[16]
。ホタテ貝殻を混入したポーラスコンクリートの圧縮強度は,ホタテ貝殻混
入率の増加に伴い,低下する傾向にあるとしている。
⑤高炉徐冷スラグ
図-2.2.5.16 に示すように,高炉徐冷スラグ骨材を用いたポーラスコンクリートは,乾湿繰返
しサイクルの経過に伴う曲げ強度の低下が小さい[17]。これは,図-2.2.5.17 に示すように,
高炉徐冷スラグ骨材の水分放散量は非常に大きく,表面の結合材から乾燥が進行し,それと同時
5
37
に内部の骨材から水分が供給されるため,結合材の急激な乾燥を防ぎ,結合材及び骨材界面の劣
化の進行を抑制するためとされている。なお,水分放散量とは,表乾状態の各粗骨材 500g を 40℃
で乾燥させ,その質量減少量を求めたものである。
b)結合材への利用
①スラグ石膏セメント+高炉徐冷スラグ
図-2.2.5.18 に示すように,高炉スラグ微粉末に石膏を加え,少量のアルカリ刺激剤を使用す
ることで水和反応するスラグ石膏セメントを使用し,高炉徐冷スラグを粗骨材としたポーラスコ
ンクリートは,水酸化カルシウムを粉末質量に対して 0.2%混入することによって,普通ポルトラ
ンドセメントを使用したものと同等の圧縮強度を得ることができるとしている[18]。又,図-
2.2.5.19 に示すように,気中凍結融解試験を行った結果,スラグ石膏セメントを使用し,高炉徐
冷スラグを粗骨材としたポーラスコンクリートは,普通ポルトランドセメントを使用したものに
比べて,凍結融解抵抗性に劣ると報告している[19]。
②スラグ石膏セメント+転炉スラグ
図-2.2.5.20 に示すように,スラグ石膏セメントを使用し,転炉スラグを粗骨材としたポーラ
スコンクリート(S-S,SM-S)の乾湿繰返しに対する抵抗性は,普通ポルトランドセメントを使
用したものと同様の傾向を示すとされている[20]。又,図-2.2.5.21 に示すように,気中凍結
置換率(%)
S95-5-0:スラグ 95
S95-4.8-0.2:スラグ 95-石膏 5-Ca(OH)20.2
C:セメント 100
図-2.2.5.18
X-Y
N:天然砕石,S:高炉徐冷スラグ粗骨材
C:セメント
S4:比表面積4000g/m2の高炉スラグ微粉末
S6:比表面積6000g/m2の高炉スラグ微粉末
圧縮強度と材齢の関係[18]
図-2.2.5.19
気中凍結融解試験結果[19]
X-Y
粗骨材N:天然砕石,S:製鋼スラグ
結合材S:高炉スラグ微粉末,SM:高炉スラグ微粉末+製鋼スラグ,
C:セメント,CM:セメント+製鋼スラグ
図-2.2.5.20
乾湿繰返し試験結果[20]
図-2.2.5.21
6
38
気中凍結融解試験結果[20]
融解試験を行った結果,スラグ石膏セメントを使用し,転炉スラグを粗骨材としたポーラスコン
クリートの凍結融解抵抗性は,早期に動弾性係数が低下する傾向にあると報告している[20]。
③砕石粉
図-2.2.5.22 には,増粘材として砕石粉を用いたポーラスコンクリートの材齢 7 日のおける曲
げ強度と全空隙率の関係を示す。砕石粉の種類がポーラスコンクリートの曲げ強度に影響を及ぼ
す可能性が示唆されている[21]。又,図-2.2.5.23 には,カンタブロ損失率と全空隙率の関係
を示す。いずれの砕石粉を用いたポーラスコンクリートにおいても,カンタブロ損失率は 20%を
下回っており,一般的なポ-ラスアスファルト混合物と同程度の性質を持つとされている[21]
。
④ホタテ貝殻
図-2.2.5.24 には,粉砕したホタテ貝殻を細骨材に置換したポーラスコンクリートの圧縮強度
に及ぼすホタテ貝殻混入率の影響を示す。ホタテ貝殻を混入したポーラスコンクリートの圧縮強
度は,同一空隙率の無混入のものに比べて,高い傾向にあるとしている[22]。
A:流紋岩
B:流紋岩
C:石英斑岩
D:硬質砂岩
E:硬質砂岩
F:流紋岩
G:石灰岩
H:石灰岩
図-2.2.5.22
材齢 7 日における曲
げ強度と全空隙率の関係[21]
図-2.2.5.23
材齢 7 日におけるカンタブ
ロ損失率と全空隙率の関係[21]
X-Y
貝殻混入率%(20,30,40)
SS1:1.2mm以下のホタテ貝殻
SS2:1.2~2.5mmのホタテ貝殻
図-2.2.5.24
材齢 28 日における圧縮強度と全空隙率の関係[22]
7
39
2)繊維補強
ポーラスコンクリートは,骨材が点接着した組織構造を有しており,一般に通常のコンクリー
トに比べて,力学的性質や耐久性に劣ることが指摘されている。そのため,ポーラスコンクリー
トの用途拡大のためには,それらの性能を改善することが重要であり,それを繊維補強によって
試みる研究がなされている[23]~[30]。しかし,ポーラスコンクリートにおける繊維補強の研
究はわずかである。なお,ポーラスコンクリートは連続した空隙を有することから,鋼繊維を用
いる場合には腐食するため,合成繊維が用いられており,中でもビニロン繊維が多く使用されて
いる。又,ポーラスコンクリートへの繊維補強としては,図-2.2.5.25 に示すような粗骨材間を
架橋する長さを有する繊維を用いたポーラスコンクリート組織をマクロに補強する(マクロ繊維
補強)と微細な長さの繊維を用いてセメントペースト(又はモルタル)を補強する繊維補強(ミ
クロ繊維補強)が挙げられている[23]。
Cement Matrix
Coarse Aggregate
Fiber
Macro Reinforcement
図-2.2.5.25
Micro Reinforcement
繊維補強ポーラスコンクリートの概念図[23]
a)繊維補強ポーラスコンクリートの調合設計
65
実積率と目標とする連続又は全空隙率から結合材量を求
めることが一般的である。しかし,図-2.2.5.26 に示す
ように,繊維補強ポーラスコンクリートにおいては,用
いる繊維によって,粗骨材と繊維で構成される実積率が
変化し,コンクリートの空隙率に影響を及ぼすため,所
Absolute Volume (%), y
ポーラスコンクリートの調合設計は,用いる粗骨材の
60
55
50
45
y = -7.42x+61.9
(γ=0.99)
定の空隙率となるように結合材量を調整する必要がある
としている[24]。なお,図タイトル中の F40 は,繊維
長さ 40mm を意味している。
0
0.5
1.0
1.5
2.0
Fiber Content (%)(volume fraction), x
図-2.2.5.26
ビニロン繊維及び粗
骨材の混合物の実積率とビニロン繊
維 F40 混入率の関係[24]
8
40
b)繊維補強ポーラスコンクリートの機械的性質
図-2.2.5.27 に示すように,繊維長さ及び粗骨材最大寸法にかかわらず,ビニロン繊維補強ポ
ーラスコンクリートの曲げ強度は,繊維混入率 0.5%までの増加に伴い増大し,その後減少する傾
向にある[25]。一方,粗骨材最大寸法にかかわらず,無補強ポーラスコンクリート(繊維混入率
0%)の曲げタフネスはほぼ 0 に近い値であるのに対して,繊維補強ポーラスコンクリートの曲げ
タフネスは相当に大きい値を示している[25]
。このことから,繊維補強することによって,ポー
ラスコンクリートの曲げタフネスは著しく改善されることが明らかである。又,図-2.2.5.28 に
示すように,繊維混入率にかかわらず,ビニロン繊維補強ポーラスコンクリートの曲げ強度及び
曲げタフネスは,繊維長さ粗骨材最大寸法比 2 の時に最大値を示すことから,繊維長さ粗骨材最
大寸法比を変数とした場合,機械的性質には屈曲点が存在することが示唆されている[25]
。
Fiber Length (mm)
●:30 △:40
4
3
2
1
0.5
1.0 0
0.5
0.5
1.0 0
Fiber Content (%)(volume fraction)
0
図-2.2.5.27
5
Flexural Strength (MPa)
30
25
Gmax (mm)
15
20
Fiber Length (mm)
●:30 △:40
20
15
10
5
0
0.5
1.0 0
0.5
1.0 0
0.5
Fiber Content (%)(volume fraction)
1.0
F40 又は F30 を用いた曲げ強度及び曲げタフネスと繊維混入率の関係[25]
30
4
Fiber Length (mm)
40
30
Fiber Content (%)(volume fraction)
●:0.3 △:0.5 □:1.0
3
2
1
0
図-2.2.5.28
1.0
Flexural Toughness (kN・mm)
Flexural Strength (MPa)
5
10
20
Flexural Toughness (kN・mm)
Gmax (mm)
15
10
1
2 3 4 0 1 2
Fiber Length-Gmax Ratio
3
4
30
25
Fiber Length (mm)
40
Fiber Content (%)(volume fraction)
●:0.3 △:0.5 □:1.0
20
15
10
5
0
1
2 3 4 0 1 2
Fiber Length-Gmax Ratio
3
4
F40 又は F30 を用いた曲げ強度及び曲げタフネスと繊維長さ粗骨材最大寸法比
の関係[25]
図-2.2.5.29 に示すように,ビニロン繊維補強ポーラスコンクリートの曲げ強度及び曲げタフ
ネスは,ポリプロピレン繊維補強ポーラスコンクリートのそれらより大きい[26]。形状が波形で
あるポリプロピレン繊維の場合,練り混ぜ時にファイバーボールができやすく,ポーラスコンク
リート中に均等に分散しなかったこと,ビニロン繊維がポリプロピレン繊維に比べて,弾性係数
が大きいこと及びセメントマトリックスとの付着性が良好なことに起因するものと推察している。
9
41
Flexural Strength (MPa)
5.0
4.5
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
0
15
25
●:Vinylon
△:Polypropylene
0.5
1.0 0
0.5
0.5
1.0 0
Fiber Content (%)(volume fraction)
図-2.2.5.29
1.0
Flexural Toughness (kN・mm)
Target Voids (%)
20
15
30
25
Target Voids (%)
20
25
●:Vinylon
△:Polypropylene
20
15
10
5
0
0.5
1.0 0
0.5
0.5
1.0 0
Fiber Content (%)(volume fraction)
1.0
ビニロン又はポリプロピレン繊維を用いた曲げ強度及び曲げタフネスと繊維混
入率の関係[26]
図-2.2.5.30 に示すように,ミクロ繊維補強とした繊維補強ポーラスコンクリートの曲げ強度
及び曲げタフネスは,繊維混入率 0.16%又は 0.3%の時に最大値を示す[23]。この曲げ性状の改
善は,繊維の混入による結合材としてのセメントモルタルの曲げ強度の改善によるものと考えら
れている。なお,これらの繊維混入率は,一般的な繊維補強コンクリートにおいて補強効果が得
られる繊維混入率に比べて小さな値である。
4.0
φ0.04×12mm
3.0
2.0
1.0
0
図-2.2.5.30
10
Target Voids:20%
Flexural Toughness (kN・mm)
Flexural Strength (MPa)
5.0
φ0.027×6mm
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
Fiber Content (%)(volume fraction)
8
Target Voids:20%
φ0.04×12mm
6
4
2
0
φ0.027×6mm
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
Fiber Content (%)(volume fraction)
F12 又は F6 を用いた曲げ強度及び曲げタフネスと繊維混入率の関係[23]
繊維補強ポーラスコンクリートへのポリマーの混入によって,粗骨材と短繊維間の付着性が向
上し,その性状を改善させる試みがされている。図-2.2.5.31 及び図-2.2.5.32 に示すように,
繊維長さにかかわらず,ポリマーセメント比の増加に伴って,ポリマー混入短繊維補強ポーラス
コンクリートの曲げ強度及び曲げタフネスは増大する傾向にある[27],[28]。これは,ポリマー
の混入による結合材の接着性改善,ポリマーセメント比の増加に伴う水セメント比の減少の複合
効果によるものと推察されている。
10
42
Fiber Content (%)(volume fraction)
○0 ▲0.3 □0.5 ▼1.0
6
4
2
0
図-2.2.5.31
Flexural Toughness (kN・mm)
Flexural Strength (MPa)
8
25
Fiber Content (%)(volume fraction)
○0 ▲0.3 □0.5 ▼1.0
20
15
10
5
0
2
4
6
Polymer-Cement Ratio (%)
2
4
6
Polymer-Cement Ratio (%)
F40 を用いた曲げ強度及び曲げタフネスとポリマーセメント比の関係[27]
3
Flexural Toughness (kN・mm)
Flexural Strength (MPa)
8
7
6
5
4
3
0
図-2.2.5.32
30
Fiber Content (%)
(volume fraction)
●0 ▲0.1
▽0.15 □0.3
2
4
6
Polymer-Cement Ratio (%)
2
Fiber Content (%)
(volume fraction)
●0
▲0.1
▽0.15 □0.3
1
0
2
4
6
Polymer-Cement Ratio (%)
F12 を用いた曲げ強度及び曲げタフネスとポリマーセメント比の関係[28]
c)繊維補強ポーラスコンクリートの耐久性
図-2.2.5.33 には,F40 のビニロン繊維を用いたポーラスコンクリートの相対動弾性係数と
JCI-SPO6[ポーラスコンクリートの乾湿繰返し試験方法(案)]の乾湿繰返し及び JIS A 1148(コ
ンクリートの凍結融解試験方法)の凍結融解(A 法)サイクルの関係を示す。繊維混入率にかか
わらず,繊維補強ポーラスコンクリートの相対動弾性係数は,乾湿繰返し及び凍結融解初期にお
いて若干増大し,その後低下する傾向にあるとしている[29]。又,無補強ポーラスコンクリート
(繊維混入率 0%)の乾湿繰返し及び凍結融解に伴う相対動弾性係数の低下の程度が緩慢である
100
90
80
Fiber Content
(%)(volume fraction)
0
0.3
0.5
1.0
110
100
Relative Dynamic Modulus
of Elasticity (%)
Relative Dynamic Modulus
of Elasticity (%)
110
70
60
50
40
0
図-2.2.5.33
90
80
70
60
50
40
0
20
40
60
80
100
Drying and Wetting Cycle (Numbers)
Fiber Content
(%)(volume fraction)
0
0.3
0.5
1.0
20 40 60 80 100 120 140 160
Freezing and Thawing Cycle (Numbers)
相対動弾性係数と乾湿繰返しサイクル及び凍結融解サイクル(A 法)の関係[29]
11
43
図-2.2.5.34
写真-2.2.5.5
相対動弾性係数と凍結融解
凍結融解試験(A 法)95 サイ
クル後の繊維の付着状況[30]
サイクル(B 法)の関係[30]
としている[29]。これは,粗骨材間を架橋する繊維が増加すると共に,単位セメント量が増加す
ることによって,粗骨材と繊維間の付着性が改善されたためと推察されている。
図-2.2.5.34 に示すように,JIS A 1148 の凍結融解試験(B 法)においても,ポーラスコンク
リートの凍結融解抵抗性に及ぼす繊維混入効果が認められている[30]。又,微細な繊維がペース
トと良好に付着していることが写真-2.2.5.5 から確認されていることも凍結融解抵抗性の改善
を裏付けている[30]。
12
44
3)新材料
ポーラスコンクリートの分野における新材料としては,構成材料の特性によって新たな機能を
付与することや各種性能の改善を図ることができる材料などが挙げられる。ここでは,前述の「リ
サイクル」,
「繊維補強」以外の材料を利用することで,ポーラスコンクリートに新たな機能を付
与する「新材料」を紹介する。
a)天然ゼオライト
ゼオライトはナノレベルの空隙や構造を利用し
た保水,吸水,イオン交換,吸着などの機能に優
れた鉱物であり,ポーラスコンクリートに適用し,
そのような性能を付与することを試みている。
図-2.2.5.35 には,天然ゼオライト及び砕石を
骨材に用いたポーラスコンクリートの乾湿繰返し
試験結果を示す。天然ゼオライトを骨材に用いた
ポーラスコンクリートは,骨材内空隙と供試体外
X-32-Y
s/a %(0,40,100)
p/a %
Z:ゼオライト骨材,N:砕石
気との間でセメントペーストを介して水分の移動
があり,砕石を用いたものに比べて,高い保水性
能を有する[31]。
図-2.2.5.35 天然ゼオライトを用いた乾
湿繰返し試験結果[31]
図-2.2.5.36 に示すように,天然ゼオライトを
用いたポーラスコンクリートを植栽基盤とした屋
外暴露試験において,ケンタッキーブルーグラス
(KG)の成長は,植栽基盤を土のみとした場合に
比べて,発芽時期は同様であるが,発芽から 40
日程度経過後の葉の長さは 3 倍程度となっている
[2]。又,図-2.2.5.37 に示すように,屋内植栽
試験においては,普通骨材を用いたものに比べて,
Z0-X
天然ゼオライトを骨材に用いたポーラスコンクリ
WS:供試体底面から1/3程度を水で浸した
EM:供試体周囲を土で覆った
SL:供試体を用いず土のみ
ートは,生育が若干早い傾向にある[32]。
天然ゼオライト
図-2.2.5.38 には,クエン酸水溶液浸せき期間
終了時の天然ゼオライトを用いたポーラスコンク
図-2.2.5.36 天然ゼオライトを用いた KG
の成長に関する屋外暴露試験結果[32]
リート 2 層平板の曲げ試験結果を示す。いずれの
供試体においても,標準養生供試体と比較して,
クエン酸水溶液浸せき試験供試体の曲げ破壊荷重
は 10%程度低下している。しかし,曲げ強度に及
ぼす植栽時の根酸の影響は大きくないものと考え
られる[33]
。
X-Y
s/a %(0,40,100)
z:ゼオライト骨材
cs:砕石
図-2.2.5.37 天然ゼオライトを用いた KG
の成長に関する屋内植栽試験結果[32]
13
45
CMC-0&ZPC 36-0-X
ゼオライト粉末混和率 %(0,30)
s/a %
p/a %
天然ゼオライト混和ポーラスコンクリート単体
ゼオライト粉末混和率 %
セメントモルタル単体
図-2.2.5.38
クエン酸水溶液浸せき終了時の天然ゼオライトを用いた 2 層平板の曲げ破壊荷重
[33]
b)酸化チタン
窒素酸化物除去機能を有する高強度酸化チタンモルタルを結合材とすることで,ポーラスコン
クリートに水質浄化性能を付与することを試みている。
図-2.2.5.39 には,酸化チタン粉末混和ポーラスコンクリートの分解活性指数と酸化チタン混
和率の関係を示す。酸化チタン無混和のポーラスコンクリートの分解活性指数はほぼ 0nmol/L/min
であるものの,酸化チタンを混和したもののそれらは,3.9~5.3 nmol/L/min である。又,酸化チ
タン混和率 10%以上においては,ポーラスコンクリートの分解活性指数は若干低下する傾向にあ
るとしている[34]。
c)NOx 除去
微細空孔を有し,表面積の大きい火山性軽量骨材
であるぼらを用いたポーラスコンクリートの NOx 除
去性能を検討している。
図-2.2.5.40 に示すように,ぼらに存在する微細
空隙が NOx をより効果的に吸着するために,石灰石
砕石,フェロニッケルスラグに比べて,NOx 除去量
が大きい[35]。又,図-2.2.5.41 に示すように,
ポーラスコンクリートに光触媒酸化チタンを塗布す
ることで NOx 除去性能は大幅に向上する。目標空隙
図-2.2.5.39 分解活性指数と酸化チタ
ン混和率の関係[34]
率 20%とした光触媒酸化チタンを塗布したポーラス
コンクリートは,NOx 減少速度が若干大きくなる
[36]。更に,図-2.2.5.42 に示すように,骨材で
あるぼらを被覆するペースト厚さが小さくなるほど,
ポーラスコンクリートの NOx 除去性能は向上する
[37]。
図-2.2.5.40
[35]
14
46
骨材単体の NOx 除去特性
Pumice fall:ぼら
Limestone:石灰石砕石
FNS:フェロニッケルスラグ
X-Y
T:光触媒酸化チタンを塗布
Z:ゼオライト
目標空隙率%(20,25,30)
図-2.2.5.41
図-2.2.5.42
試験開始 20 分間の NOx 減少速度[36]
ぼらを用いた NOx 減少速度とペースト厚さの関係[37]
d)シリカフュームプレミックスセメント(SFPC)
水セメント比が 15%以下の配合条件においても,良好な流動性を得ることが可能な SFPC を結
合材とすることで,ポーラスコンクリートの高強度化を試みている。
図-2.2.5.43 には,SFPC を用いたポーラスコンクリートの圧縮強度,曲げ強度及び透水係数
と空隙率の関係を示す。空隙率
20 ~ 25% ( 透 水 係 数 : 0.20 ~
0.50cm/s)において,ポーラス
コンクリートの圧縮強度は 25
~40N/mm2 であり,コンクリー
ト舗装における標準的な設計基
準曲げ強度 4.5N/mm2 を満足し
ている。又,透水係数 1.00cm/s
においては,約 20N/mm2 の圧縮
強度及び 4.0~5.0N/mm2 の曲げ
図-2.2.5.43
強度を有するポーラスコンクリ
数と空隙率の関係[38]
15
47
SFPC を用いた圧縮強度,曲げ強度及び透水係
ートが製造可能である[38]。
(3)課題
ポーラスコンクリートに用いる使用材料としてのリサイクル,繊維補強,新材料に関する様々
な研究において,各種性能を改善できることが報告されており,それらの有用性が明らかとなっ
ている。しかし,現状では,使用用途によって要求性能が異なるポーラスコンクリート用材料と
して,どの材料をどのように使えば良いかが明確ではない。そのため,今後,それらの材料を用
いたポーラスコンクリートが施工される時に必要である,使用用途における要求を満足するため
の材料の選択手法,配(調)合設計法の確立が望まれる。
<参考文献>
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委員会
委員会報告書,pp.101-114,2003.5
[2]畑中重光,湯浅幸久,三島直生:再生骨材を用いたポーラスコンクリートの圧縮強度性状
に関する実験的研究,日本建築学会構造系論文集,Vol.68,No.570,pp.31-36,2003.8
[3]音野琢也,国枝稔,古川浩司,六郷恵哲:低品質再生骨材を用いたポーラスコンクリート
の力学特性,コンクリート工学年次論文集,Vol.24,No.1,pp.1149-1154,2002.6
[4]黒田萌,畑中重光,三島直生,前川明弘:再生骨材を用いたポーラスコンクリートの圧縮
強度-空隙率関係に及ぼす締固め方法の影響,コンクリート工学年次論文集,Vol.29,No.2,
pp.295-300,2007.6
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リート工学年次論文集,Vol.34,No.1,pp.1468-1473,2012.6
[6]前川明弘,畑中重光,三島直生,黒田萌:大粒径ポーラスコンクリートの曲げ破壊性状に
関する基礎的研究,コンクリート工学年次論文集,Vol.27,No.1,pp.1273-1278,2005.6
[7]前川明弘,畑中重光,三島直生,湯浅幸久:リサイクル型大粒径ポーラスコンクリートの
製造・施工に関する基礎的研究,コンクリート工学年次論文集,Vol.26,No.1,pp.1455-1460,
2004.6
[8]前川明弘,畑中重光,三島直生,湯浅幸久:リサイクル型大粒径ポーラスコンクリートの
製造および魚礁としての適用性に関する基礎的研究,日本建築学会構造系論文集,Vol.70,
No.589,pp.43-48,2005.3
[9]坂口稔,上原匠,猪飼元紀:瓦廃材を用いたポーラスコンクリートの基本的物性,セメン
ト・コンクリート論文集,Vol.65,pp.501-508,2011.2
[10]坂口稔,上原匠,杉浦領亮,亀井則幸:家屋解体時に発生する廃瓦を用いたポーラスコン
クリートの基本的物性,コンクリート工学年次論文集,Vol.34,No.1,pp.1552-1557,2012.6
[11]坂口稔,上原匠,西尾秀登,亀井則幸:家屋解体廃瓦を用いたポーラスコンクリートの温
熱物性,コンクリート工学年次論文集,Vol.35,No.1,pp.1531-1536,2013.6
[12]斎藤俊克,出村克宣:かわらくずを粗骨材とした緑化用ポーラスコンクリートの開発,日
本建築学会大会講演梗概集,pp.409-410,2004.8
16
48
[13]堀口至,竹村和夫:牡蠣殻骨材を用いたポーラスコンクリートの基礎特性,セメント・コ
ンクリート論文集,Vol.62,pp.538-543,2008.2
[14]堀口至,竹村和夫:牡蠣殻ポーラスコンクリートの基礎特性に及ぼす異方性および水セメ
ント比の影響,セメント・コンクリート論文集,Vol.63,pp.577-583,2009.2
[15]堀口至,三村陽一:粒径の異なる骨材を使用した牡蠣殻ポーラスコンクリートの基礎特性,
セメント・コンクリート論文集,Vol.64,pp.530-536,2010.2
[16]菅田紀之,橋本篤志:ホタテ貝殻を粗骨材として活用したポーラスコンクリートの特性に
ついて,セメント・コンクリート論文集,Vol.63,pp.255-260,2009.2
[17]大谷俊浩,村上聖,佐藤嘉昭,三井宜之:産業副産物を使用したポーラスコンクリートの
力学特性および耐久性に関する研究,コンクリート工学年次論文集,Vol.26,No.1,
pp.1431-1436,2004.6
[18]三岩敬孝,天羽和夫,中本純次,戸川一夫:スラグ石膏セメントを使用したポーラスコン
クリートに関する基礎研究,コンクリート工学年次論文集,Vol.26,No.1,pp.1449-1454,
2004.6
[19]三岩敬孝,天羽和夫,横井克則,中本純次:スラグ石膏セメントを使用したポーラスコン
クリートの耐久性に関する研究,コンクリート工学年次論文集,Vol.27,No.1,pp.1285-1290,
2005.6
[20]三岩敬孝,天羽和夫,横井克則,中本純次:スラグ系材料を使用したポーラスコンクリー
トに関する基礎研究,コンクリート工学年次論文集,Vol.28,No.1,pp.1391-1396,2006.6
[21]麓隆行,柏木洸一:砕石粉の物理的性質が舗装用ポーラスコンクリートの性状に及ぼす影
響,コンクリート工学年次論文集,Vol.32,No.1,pp.1391-1396,2010.6
[22]菅田紀之,渡邊稔明:粉砕したホタテ貝殻を混入したポーラスコンクリートの特性につい
て,セメント・コンクリート論文集,Vol.60,pp.596-602,2006.2
2)繊維補強
[23]十文字拓也,齋藤俊克,出村克宣:結合材をビニロン繊維補強セメントモルタルとした繊
維補強ポーラスコンクリートの機械的性質,コンクリート工学年次論文集,Vol.34,No.1,
pp.1462-1467,2012.6
[24]齋藤俊克,出村克宣:ビニロン繊維補強ポーラスコンクリートの調合設計法の提案,日本
建築学会構造系論文集,Vol.75,No.657,pp.1947-1953,2010.11
[25]齋藤俊克,有岡大輔,出村克宣:繊維長さ粗骨材最大寸法比がビニロン繊維補強ポーラス
コンクリートの力学的性質に及ぼす影響,コンクリート工学年次論文集,Vol.32,No.1,
pp.1421-1426,2010.6
[26]有岡大輔,齋藤俊克,出村克宣:ビニロン及びポリプロピレン繊維補強ポーラスコンクリ
ートの力学的性質,コンクリート工学年次論文集,Vol.31,No.1,pp.1717-1722,2009.6
[27]齋藤俊克,出村克宣:ポリマー混入繊維補強ポーラスコンクリートの圧縮及び曲げ性状,
セメント・コンクリート論文集,No.65,pp.470-476,2012.2
[28]十文字拓也,齋藤俊克,出村克宣:結合材を繊維補強ポリマーセメントモルタルとした繊
維補強ポーラスコンクリートの機械的性質に及ぼすポリマー混入効果,コンクリート工学
年次論文集,Vol.35,No.1,pp.1435-1440,2013.6
17
49
[29]齋藤俊克,寒河江賢伍,有岡大輔,出村克宣:ビニロン繊維補強ポーラスコンクリートの
乾湿繰返し及び凍結融解に対する抵抗性,コンクリート工学年次論文集,Vol.30,No.2,
pp.307-312,2008.6
[30]大友鉄平,大塚浩司,北辻政文,阿波稔:シリカフュームおよび微細繊維を混入したポー
ラスコンクリートの耐凍害性と植物の生長,コンクリート工学論文集,Vol.18,No.3,pp.9-22,
2007.9
3)新材料
[31]徳重英信,川上洵,鈴木弘実:天然ゼオライトを骨材に用いたポーラスコンクリートの物
理的性質,セメント・コンクリート論文集,Vol.58,pp.195-200,2004.2
[32]徳重英信,川上洵,鈴木弘実,近藤智也:天然ゼオライトを骨材に用いたポーラスコンク
リートの物理的性質と植栽機能,セメント・コンクリート論文集,Vol.60,pp.589-595,2006.2
[33]徳重英信,亀島博之,川上洵,鈴木弘実:天然ゼオライト混和ポーラスコンクリート複合
平板の曲げ強度とクエン酸抵抗性,セメント・コンクリート論文集,Vol.64,pp.257-264,
2010.2
[34]徳重英信,古村崇,川上洵:酸化チタン混和モルタルおよびポーラスコンクリートのメチ
レンブルー湿式分解性能に関する研究,コンクリート工学年次論文集,Vol.31,No.1,
pp.1753-1758,2009.6
[35]向泰尚,中澤隆雄,今井富士夫,尾上幸造:骨材種類と空隙率がポーラスコンクリートの
NOx 除去性能に及ぼす影響,コンクリート工学年次論文集,Vol.31,No.1,pp.1747-1752,
2009.6
[36]向泰尚,中澤隆雄,尾上幸造:光触媒酸化チタンを用いたポーラスコンクリートの NOx 除
去性能に及ぼす使用骨材および空隙率の影響,セメント・コンクリート論文集,Vol.62,
pp.289-294,2008.2
[37]向泰尚,中澤隆雄,尾上幸造:骨材にぼらを用いたポーラスコンクリートの NOx 除去性能
に及ぼすペースト厚さおよび水セメント比の影響,セメント・コンクリート論文集,Vol.63,
pp.268-273,2009.2
[38]早川隆之,梶尾聡,牧隆輝:超高強度コンクリート用セメントを用いたポーラスコンクリ
ートの基礎的性能,土木学会第 64 回年次学術講演会,pp.777-778,2009.9
[担当
18
50
齋藤俊克]
2.3.1 舗装
(1)前回委員会(2003)報告書の概説
2003 年報告書において,舗装は,ポーラスコンクリートの主要な用途として紹介されている。
ポーラスコンクリートを用いた舗装は,ポーラスコンクリートが有する排水・透水・保水性能,
吸音性能,温熱性能などを活かして,環境負荷の低減に有効とされている。
ポーラスコンクリートの排水・透水・保水性能により,雨水の貯留浸透による地下への還元,
都市型洪水のピークカット,ヒートアイランド現象抑制への貢献,交通事故防止などの効果が期
待され,すでに実用化されている。透水・排水性能は,一般に透水係数で評価され,全空隙率が
高く,使用する骨材の粒径が大きいほど優れる。
ポーラスコンクリート舗装の騒音低減効果については,ヨーロッパを中心に検討されており,
約 1000Hz の周波数領域における最大の吸音性状を示すための条件や,騒音低減効果が大きい周
波数域などが確認されている。
ポーラスコンクリートを用いた舗装の温熱性状に関しては,舗装表面温度や顕熱流量日積算値
について比較・評価しており,アスファルト舗装よりも優れることを示している。
ポーラスコンクリートの耐久性に関して,舗装に関連する項目は,すり減り作用と繰返し荷重
に対する疲労強度が挙げられる。ポーラスコンクリートのすり減り抵抗性はポーラスアスファル
トよりも小さく,曲げ強度の影響を受ける。また使用する骨材の影響を受けるとの報告もある。
骨材飛散抵抗性については,試験方法によって結果が異なるため更なる検討が必要である。
コンクリート舗装の構造設計は,曲げ疲労特性を用いて行われる。ポーラスコンクリートの曲
げ疲労特性は,応力比(上限応力比)が比較的小さい範囲では普通コンクリートと同等である。
また,ポーラスコンクリートの施工例として,透水・排水・保水や温熱特性の向上を目的とし
て舗装に適用した実績や事例が示され,更なる適用拡大が期待されている
(2)最近の研究紹介
車道用のポーラスコンクリート舗装については,1990 年代後半に実用化されて以降,県道や高
速道路の料金所などにおいて数多く使用されてきた。しかし,
ポーラスコンクリート舗装の性能,
設計技術,利用技術,供用環境下における耐久性などについては明らかになっていない部分が多
く,利用の拡大に向けて現在でも様々な研究・開発が行われている。
現在行われているポーラスコンクリート舗装に関する研究・開発は,大きく舗装用途に適用す
るポーラスコンクリートを対象とした研究と,ポーラスコンクリート舗装を対象とした研究に分
類することができる。舗装用途のポーラスコンクリートを対象とした研究は,使用材料,配(調)
合,物性,耐久性などが挙げられ,これらの研究に関しては前章のポーラスコンクリートの一般
特性に関する研究内容に含まれるため,ここではポーラスコンクリート舗装を対象とした最近の
研究について調査した結果を説明する。
1)ポーラスコンクリート舗装の性能および利用技術に関する検討
道路舗装の要求性能には,曲げ疲労耐久性,曲げ強度,耐摩耗性,すべり抵抗性など特有の項
目を含んでいる。ポーラスコンクリート舗装は,透水性,保水性,吸音性,熱緩和特性などの多
くの機能を有しており,これらの特長を活かした利用の拡大や付加価値の創出などを目的とした
検討が行われている。以下では,ポーラスコンクリート舗装の利用技術に関する検討例について
紹介する。
1
51
a)ポーラスコンクリート舗装の工法に関する研究
セメント系材料であるポーラスコンクリート舗装の特長を活かした工法に関する検討として,
既設アスファルト舗装上に薄層のコンクリートを付着オーバーレイさせる図-2.3.1.1 のような
ホワイトトッピング工法への適用が検討されている。実供用を想定した規模の試験施工を行い,
性能を確保するために必要な目地間隔を示すとともに,荷重伝達性の評価や夏季の長時間におけ
る静止荷重に対して高い塑性変形抵抗性を有することを実証し,実用化の可能性が示されている
[1]。
文献[2]では,既設ポーラスコンクリート舗装の機能性(主に低騒音性)回復工法として,図-
2.3.1.2 に示すような超早強型ポーラスコンクリートによる薄層付着型オーバーレイ工法の実用
化に向けた検討を行い,同工法が既
設ポーラスコンクリート舗装の低騒
音性回復工法の一つとなりうる可能
性を示している(図-2.3.1.3)
。ま
た,超早強型ポーラスコンクリート
を使用することによって,図-
2.3.1.4 のように強度発現性を高め
図-2.3.1.1 ホワイトトッピング工法の構造断面[1]
ることが可能となり,早期の交通開放が実現可能であるとされている。
文献[3]では,建築分野における住空間の快適性を向上させるための一つのツールとしてポー
ラスコンクリートを有効活用した複層(基層+表層)ポーラスコンクリートを提案している。基
層に用いる比較的低い強度のポーラスコンクリートは,透水性歩道に十分な性能を有し,取扱い
が比較的容易であること,表層を細粒度の樹脂製ポーラス硬化体とすることにより,歩道の意匠
性や質感を改善できることなどを確認している。
図-2.3.1.2 機能性回復工法の概念図[2]
図-2.3.1.3 環境騒音の経年変化[2]
図-2.3.1.4 超早強型 PoC の強度発現性[2]
2
52
b)ポーラスコンクリートを用いたプレキャスト複合版に関する研究
ポーラスコンクリート舗装を含むコンクリート舗装全般の課題である早期交通開放や維持管理
の面を考慮して,写真-2.3.1.1 に示すような鉄筋コンクリート版の表層にポーラスコンクリー
トを使用した,プレキャスト排水性舗装版の適用に向けた検討が行われている[4]。検討では,試
験施工を実施し,機能性や騒音低減効果について評価しており,排水性舗装としての機能と騒音
低減効果を有することが確認されている。
また,ポーラスコンクリート舗装版の力学性能を向上する試みとして,PC 部材との複合版の静
的な力学性状や疲労性状について検討が行われており,図-2.3.1.5 に示されるような高い性能
を有することを示されている[5],[6]。
写真-2.3.1.1 プレキャストポーラスコンクリート舗装版設置図[4]
図-2.3.1.5 荷重-変位曲線[5]
2)ポーラスコンクリート舗装の付加価値向上を目的とした新規用途に関する研究
近年大きな問題となっている都市型水害の防止もしくは減災による総合治水対策を考慮した研
究として,ポーラスコンクリート舗装内部において雨水の貯水・排水を可能とし,雨水の流出遅
延効果と流出量の低減効果を付与する工法が提案されている[7]。図-2.3.1.6 に示すような試験
方法でポーラスコンクリート内を水平に流れる水の動きを評価し,水平方向の透水係数は,骨材
粒径が大きいほど,初期水位が高くなるほど高くなること,水平方向の長さ(供試体)が長くな
るほど低く,次第に一定値に近づく傾向があることが確認されている(図-2.3.1.7 および図-
2.3.1.8 参照)
。また,工法の実用化に向けて,雨水の排水遅延効果の試算が行われており,豪雨
時の水害対策として十分に効果が期待できることが明らかになっている。
3
53
図-2.3.1.6 ポーラスコンクリート内の水流に関する実験方法[7]
図-2.3.1.7 見かけの透水係数と骨材粒径
図-2.3.1.8 見かけの透水係数と供試体長さの
およびと水位の関係[7]
関係[7]
3)舗装構造に関する検討
ポーラスコンクリート舗装を実施工に適用するにあたっては,舗装構造を決定し,ポーラスコ
ンクリートの必要強度を明らかにしなければならない。しかし,現状ではポーラスコンクリート
舗装に関する構造設計に関する検討事例が少ないため,ポーラスコンクリートの疲労特性を考慮
せずに設計基準曲げ強度 4.4MPa を満足する配合を用いて,通常のコンクリート舗装と同様の方
法で構造設計が行われているのが現状である。このような中,ポーラスコンクリートの舗装構造
設計を理論的に行うための検討が行われており,性能設計の実施に向けた環境が整ってきている
といえる。以降では,ポーラスコンクリート舗装の構造に関する検討例を紹介する。
文献[8]では,高速道路サービスエリアの小型車用駐車場に適用するポーラスコンクリート舗装
の舗装構造およびそのときのポーラスコン
クリートの強度に関する検討が行われてい
る。本検討では,図-2.3.1.9 に示すよう
に既設アスファルト舗装の上部 5cm をポー
ラスコンクリートに置き換えるホワイトト
ッピング工法を適用することとしており,
舗装構造の設計には 3 次元有限要素プログ
ラムを用い,実際の荷重条件,温度条件お
図-2.3.1.9 検討断面[8]
よび交通量を想定して発生応力を計算し,
4
54
設計供用期間 10 年を満足するポーラスコンクリートの設計曲げ強度を算出している。この検討に
よって,ポーラスコンクリートの設計基準曲げ強度を 3.0MPa 程度とすることで設計期間を満足
するホワイトトッピング構造を適用できること,また,荷重条件や既設アスファルト舗装の荷重
支持条件が変化した場合は適切な条件で解析を行う必要があることが示されている。
また,文献[9]では,ポーラスコンクリート舗装の舗装構造設計に用いる疲労特性について検討
している。検討では,表-2.3.1.1 に示すような構成を有する構造体の疲労特性を明らかにし,
理論的設計法により構造評価を行っている。全層をポーラスコンクリートとした場合の疲労特性
は,通常の舗装用コンクリートよりも低い結果であったが(図-2.3.1.10 中
舗装構成①)
,表
層 5~10cm のポーラスコンクリートと基層の転圧コンクリートを一体化した二層構造を採用する
ことで,ポーラスコンクリートを単体で使用する場合よりも疲労特性を向上できることが示され
ている(図-2.3.1.10 中 舗装構成②)
。
表-2.3.1.1 検討舗装構成[9]
図-2.3.1.10 各舗装構成の破壊確率 0.5 の
疲労曲線[9]
4)温熱環境への影響
ポーラスコンクリート舗装の適用において期待される効果としては,ヒートアイランド現象の
緩和など,街路空間の温熱環境改善が挙げられる。ポーラスコンクリートの温度特性に関しては
「2.5 温熱特性」に記載されているため,ここではポーラスコンクリート舗装が周辺の温熱環境
に及ぼす影響に着目して行われた研究を紹介する。
ポーラスコンクリート舗装のヒートアイランド現象抑制効果に関する検討の一環として,舗装
路面温度の抑制効果に関する検討が行われている[10]。図-2.3.1.11 に示されるように,降雨後
のポーラスコンクリート舗装や貯水機能を付与した場合において,水分の蒸発による気化熱によ
る放熱によって土系地盤と同様の温度抑制効果が期待できることが示されている。
5
55
(降雨後)
(貯水機能)
図-2.3.1.11 コンクリート表面温度の日変化[10]
文献[11]では,道路舗装面における反射特性や熱収支に着目して検討を行っている。ポーラス
コンクリート舗装は顕熱流量が普通コンクリートよりも高いものの,アスファルト舗装よりも低
い結果になっており,ヒートアイランド現象の緩和に効果があることを示している。
また,文献[12]では,ポーラスコンクリート舗装の基本的な熱特性を把握する目的で,ポーラ
スコンクリート舗装面の温度に及ぼす影響因子に関する実験を行っている。結果の一部を図-
2.3.1.12 および図-2.3.1.13 に示すが,ポーラスコンクリートおよびコンクリートの温度は湿潤
状態のほうが乾燥状態の場合よりも表面温度の上昇速度が低下し,最高温度も低くなること,湿
潤状態の場合のポーラスコンクリートの表面温度は,アスファルトよりも低く,普通コンクリー
トよりも高いこと,ポーラスコンクリートの表面温度には,骨材粒径,試験体厚さ,仕上げ方法
および結合材の水セメント比の影響は認められないこと,ポーラスコンクリートと他材料との表
面温度の違いには日射反射率だけでなく容積比熱の影響が含まれていることなどを明らかにして
いる。
図-2.3.1.12 表面温度の経時変化に及ぼす
各要因の影響[12]
図-2.3.1.13 表面温度と経過日数の
関係[12]
6
56
5)実供用環境下における性状
車道舗装用のポーラスコンクリートは,1996 年に開発され,1998 年に国内で初めて新潟県奥三
面ダム内管理用道路に適用された。その後,1999 年からは(社)セメント協会(現 (一社)セ
メント協会)
が中心となって県道などで試験施工を行い,
施工性や供用性の調査が行われてきた。
また,同時期に日本道路公団(現 NEXCO)でも 23 箇所の料金所で試験施工が行われ,その実用
性を評価している。これらのポーラスコンクリート舗装については,供用開始から 3~10 年後の
舗装性能に関する調査結果が数多く報告されている[13]。それらの結果は,ほぼ類似した傾向を
示しており,いずれも平坦性,わだち掘れ,ひび割れ,目地部の段差はほとんど変化が認められ
ず良好であった。すべり抵抗性は,供用開始後1年程度において一旦低下するが,その後はほと
んど低下が認められず十分な性能を有している。供用開始後 1 年においてすべり抵抗性が低下す
る原因として,タイヤによるポリッシング作用を受けたことが挙げられている。透水性と低騒音
性については,供用年数の経過にともない低下する。これらは,土砂などによる空隙詰まりが生
じたことに起因するとされている。文献[14]では,高圧水による機能回復処理を行っており,図
-2.3.1.16 のように,
不透水となった箇所が最大で施工直後の 40%程度まで回復する可能性が示
されている。透水性能および騒音低減効果を維持するためには空隙が閉塞しない段階で機能回復
処理を行うことが必要である。
また,最近では高強度コンクリートの技術を応用することによって,従来よりも高い空隙率を
有することで透水性を向上したポーラスコンクリートが開発され,試験施工によるコンクリート
の品質評価,施工性,供用性等の評価が行われている[15],[16]。これまでに,ポーラスコンクリ
ートの品質および供用後 1 年までの舗装版体の性能を確認しており,図-2.3.1.17 に示すように
図-2.3.1.14 路面調査対象箇所の例[13]
(平坦性)
(動的摩擦係数)
図-2.3.1.15 舗装路面の調査結果[13]
7
57
(浸透水量)
供用開始直後において従来よりも高い透水性と吸音率を有することを確認している[16]。供用開
始から 1 年経過後までに,すべり抵抗性および透水性の低下が認められるものの,いずれも舗装
版体として十分な性能を有する結果となっている。今後は追跡調査を継続し,実用化に向けて性
能を実証することが望まれる。
図-2.3.1.16 浸透水量の経年変化[14]
図-2.3.1.17 高性能ポーラスコンクリート舗装の吸音率測定結果[16]
6)その他
近年,環境への意識の高まりや社会インフラの効率的な運用などの観点から,耐久性が高く,
環境負荷軽減に高い効果を有するコンクリート舗装が再評価されている。このような中で,ポー
ラスコンクリート舗装は,多くの優れた機能を有しており,コンクリート舗装の有用性を高める
技術といえる。2013 年には高速道路の車道に国内で初めてポーラスコンクリートを使用されるな
ど,その期待の高さがうかがえる。車道部への適用にあたっては,これまでの検討によって得ら
れた知見を基にコンクリート配合の選定や舗装構造の設計が行われている[18],[19]。
(3)課題
以上のように,ポーラスコンクリート舗装は,ポーラスコンクリートの主要な用途としてすで
に実用段階に入っているといえる。これまでに,ポーラスコンクリート舗装の実施工は数多く行
われており,その施工性や実供用環境下での耐久性・路面性能に関する検討が行われているが,
いずれも 10 年以内の評価に止まっている。コンクリート舗装の一般的な設計耐用期間が 20 年で
あることを考慮すると,更に長期間での評価を行うことが必要である。また,これまでの検討結
果において,供用開始後早期にポーラスコンクリート中の空隙が目詰まりを起こし,透水係数や
騒音低減効果の低下が認められている。ポーラスコンクリート舗装の機能を長期にわたって活用
8
58
するためには,機能回復技術などの維持管理技術の検討が望まれる。コンクリートの製造や施工
技術に関しても,これまでは各社が保有する知見を元に行われることが多く,統一した課題や注
意点などが十分に整理されているとはいえない。今後,より高品質で高耐久なポーラスコンクリ
ート舗装を実現するためには,これらの知見をとりまとめ,最適な製造・施工技術を確立する必
要がある。そのためには,舗装用のポーラスコンクリートおよびポーラスコンクリート舗装が確
保すべき必要な性能を明らかにし,その性能を評価するための試験方法を確立することが望まれ
る。
9
59
<参考文献>
[1] 野田悦郎,中原大磯,梶尾 聡:ポーラスコンクリートを用いたホワイトトッピングの構造
的性能の一検討,舗装,40-5,pp.7-12,2005.5
[2] 中原大磯,小梁川雅,梶尾 聡,村田芳樹:車道用ポーラスコンクリートによる薄層付着型
オーバーレイ試験舗装結果,第 64 回セメント技術大会講演要旨,pp.92-93,2010
[3] 中川武志,畑中重光,三島直生,松村 豪:住空間における意匠性に配慮した複層ポーラス
コンクリート歩道の施工実験,コンクリート工学,Vol.46,No.12,pp.20-27,2008.12
[4] 草間祥吾,吉田 行,田口史雄:試験施工したプレキャストポーラスコンクリート舗装版の
機能性と騒音低減効果,土木学会第 64 回年次学術講演会,V-135,pp.267-268,2009.9
[5] 伊藤雄輔,国枝 稔,古川浩司,六郷恵哲:ポーラスコンクリート複合版の力学挙動,コン
クリート工学年次論文集,Vol.24,No.1,pp.1143-1148,2002
[6] 奥山和俊,鳥屋隆志,佐藤雄輔:ポーラス PC 舗装版の疲労載荷試験,コンクリート工学年
次論文集,Vol.26,No.1,pp.1407-1412,2004
[7] 畑中重光,酒井俊典,中川武志,三島直生:都市型水害の減災に資する地盤内の水流制御技
術の開発研究(その 1:水流の制御に関する基礎的研究)
,日本建築学会大会学術講演梗概集
(北海道)
,pp.205-206,2013.8
[8]
例えば小関裕二他:小型車用駐車場におけるポーラスコンクリートの適用に関する一検討,
土木学会第 60 回年次学術講演会,5-095,pp.189-190,2005.9
[9] 谷口 博,久保田純司,小梁川雅:舗装用ポーラスコンクリートの構造評価に関する一検討,
土木学会第 63 回年次学術講演会,5-015,pp.29-30,2008.9
[10] 三岩敬孝,戸川一夫,中本純次,天羽和夫:舗装用ポーラスコンクリートの温度抑制効果,
土木学会第 58 回年次学術講演会,V-651,pp.1299-1300,2003.9
[11]
君島健之,大石英夫,西岡真稔,森山正和:コンクリート舗装のヒートアイランド緩和効
果,セメント・コンクリート論文集,No.60,pp.635-641,2006
[12]
三島直生,中川武志,畑中重光,北野博亮:屋外実験によるポーラスコンクリート舗装の
熱特性に関する基礎的研究,コンクリート工学年次論文集,Vol.30,No.2,pp.337-342,2008
[13]
例えば野田悦郎,小梁川雅,梶尾
聡,村田芳樹:宮城県道で実施したポーラスコンクリ
ート舗装の設計・施工とその供用性,第 63 回セメント技術大会講演要旨,pp.94-95,2009
[14] 梶尾 聡,村田芳樹,國府勝郎:供用 5 年を経た車道用ポーラスコンクリート舗装の性能,
舗装,41-5,pp.10-14,2006.5
[15] 井坂幸俊他:高性能ポーラスコンクリートの試験施工,土木学会第 67 回年次学術講演会,
V-356,pp.711-712,2012.9
[16] 石田征男他:高性能ポーラスコンクリート舗装の路面性能に関する検討,土木学会第 67 回
年次学術講演会,V-357,pp.713-714,2012.9
[17]
石田征男,梶尾
聡,嶌田聖史,朴
希眞:高性能ポーラスコンクリートを用いた排水性
舗装の追跡調査,第 67 回セメント技術大会講演要旨,pp.112-113,2113
[18]
高田佳彦,藤林健二,鈴木威:開削トンネルにおける信頼性を考慮したコンクリート舗装
の理論的設計方法の適用検討,土木学会第 67 回年次学術講演会,V-345,pp.689-690,2012.9
[19]
鈴木威,高田佳彦,中山栄作:都市高速の開削トンネルに適用するポーラスコンクリート
の配合試験報告,土木学会第 67 回年次学術講演会,V-354,pp.707-708,2012.9
10
60
[担当 石田征男]
11
61
2.3.2
緑化
(1)前回のポーラスコンクリート委員会(2001~2002)の報告書の概説
ポーラスコンクリートに植物を生長させる場合,根の伸長空間の確保,有効保水量の確保,環
境条件や施工方法によって溶出アルカリ量の低減,肥料成分の保持が必要となる。
根の伸長空間の確保するために,初期から植生を期待する場合には連続空隙率 25%以上,長期
的な植生を期待する場合には連続空隙率 21%以上,植生の可能な範囲として連続空隙率 18%以上
が目安とされている。また,使用骨材として,4~6 号砕石,20~05mm,20~15mm,25~15mmm
を使用することで,空隙の大きさを調整することが可能である。ポーラスコンクリートそのもの
の有効保水量は低いため,補助的にポーラスコンクリートの空隙部分に保水性材料の充填か,表
層に覆土を行って保水性の向上を図ることが望ましい。現場での打設後,短期間で植栽を実施す
る場合には,アルカリ溶出量の低減を図ることが望ましい。使用材料上の工夫として,潜在水硬
性やポゾラン反応によるアルカリ分の消費が期待できる高炉セメントやフライアッシュセメント
などの混合セメントを利用することが挙げられる。普通ポルトランドセメントを使用する際には,
水中や気中で一定期間置く方法,蒸気養生を行う方法,硬化後に中和処理を行う方法がある。肥
料成分の供給については,固形や液体の肥料を用いて施肥することが望ましい。
(2)最近の研究紹介
1)緑化分野への利用状況
ポーラスコンクリートの緑化分野への実験を含む利用状況は,水際部と水際部以外に大別され,
そのほとんどが水際部となっている。水際部における植栽では,河川護岸[1],湖岸[2],ダム湖岸
[3],人工水路[4]における実施が挙げられ,水際部以外では,屋上[5] ,路面電車軌道[6]における
植栽実験結果も報告されている。
地方自治体におけるポーラスコンクリート施工実績のうち,約 60%が緑化を目的とした施工と
なっており,そのうち河川護岸を目的とした施工が約 55%を占めている[7]。本調査は 2004 年に
報告されているため,同様の調査を実施することで,ポーラスコンクリート施工の動向を把握す
ることが可能である。
2)植栽実験による植物の生育評価
ポーラスコンクリートを用いた植栽実験による報告のほとんどが、目標空隙率を 20~30%に設
定されていた。また,植栽対象植物としてヨシや芝などがもっとも多く,水際部では,ヨシ,オ
オバコ,リュウノヒゲ,シバ,ヨモギ,クサヨシなどがあり,水際部以外では,セイヨウシバ,
クローバ,ハダイコンなどの報告が挙げられる。植栽形態としては苗の状態で植栽するもの,種
子を客土に混合して数週間の養生の後,発芽したものを植栽するといった事例が多く報告されて
いた。
生育評価には,目視観察結果による緑被率(植被率)の算出,草丈,茎個体数による生存率・
活着率の算出によるものが多く,その他に定点観測,茎径,葉・根の生長長さ,茎・根などの乾
燥質量などが指標として用いられていた。しかし,報告によりその指標が異なるため,植栽効果
を比較することが困難な状況を招いている。また,ほとんどの報告では植栽期間が 1 年未満のも
のが多く,長期間に渡り経年的に観察した報告事例は少なく,ポーラスコンクリートによる長期
的な植栽効果が確認できないのが現状である。
62
石川ら[3]の報告では,ダム湖岸水際部分の法面緑化への適用を目指して,1 年 2 ヶ月の植生観
察がされている。ダム湖岸では貯水位の変動や水面に生じる波浪により斜面表層の侵食や長期冠
水に伴う植物の衰退が発生しているため,冠水実験で有効とされているオオバコ(苗),リュウ
ノヒゲ(苗),シバ(種子),ヨモギ(種子),クサヨシ(種子)の 5 種類の草本類についての
植栽実験がなされた。ポーラスコンクリートへの植物の据付方法として,事前に植物の種子,苗
を客土とともに袋詰めした植生マットを,ポーラスコンクリート上に設置し約 3 ヶ月十分に生育
させた方法と,植生マットをポーラスコンクリートの上に貼り付け固定した方法の 2 種類の方法
がとられた(図-2.3.2.1)。植生調査においては,植物の活着状況および植栽基盤の状態の観察
がされている。その結果,前者の生育状況の方が良く,植物の根系が表層基盤の土壌の流出を抑
え植生マットが比較的安定化するが,より耐水没性があり過酷な気象条件に耐え得る植物の検討
が必要となるとされている。
図-2.3.2.1 試験体への植物導入方法[3]
武田ら[2]の報告では,ポーラスコンクリート植栽基盤による琵琶湖のヨシ帯再生を目的とした
5 年 10 ヶ月の植栽実験の結果が報告されている。本報告では,ヨシの生育調査として,ヨシ茎個
体数,ヨシ高さ,最長ヨシ高さ,株内最長ヨシの茎径の測定を,植栽 1 年目から実験終了の 7 年
目までの 4 月~11 月に毎月実施されている。また,植栽実験終了時には,株内に伸びた根の観察
および乾燥質量を測定し,ポーラスコンクリート植栽基盤による周辺環境への影響評価として,
地盤高さの変化,植栽基盤側面および内部に生息する生物についての調査が実施されている。茎
個体数の結果より,生存率を算出し経時変化を観察すると(図-2.3.2.2),植栽 1 年目から 2
年目にかけて大幅な水位上昇の影響で減少したヨシの生存率が,7 年目には 60%にまで回復した。
また,比較として植栽されたヤシマット工法によるものよりも,ポーラスコンクリート植栽基盤
の植栽効果の方が大きいことが確認されている。ポーラスコンクリート植栽基盤周辺や内部から
は,エビや貝などの生き物も確認されている,ヨシ帯だけでなくポーラスコンクリート植栽基盤
自体も,生物の生息場として機能していることが報告されている。
堀口ら[6]は,牡蠣殻ポーラスコンクリートによる実地実験を,広島県内の路面電車の軌道にお
いて実施している。植栽植物は,日本芝の一種である野芝が用いられている。芝の根の伸長しや
すさを考慮し,粒径の大きい牡蠣殻が用いられたため,植栽基盤の保水性が低下し,夏期の高温
時(30 以上)には芝の生長が遅く部分的に枯れていた芝が確認されている。気温が 30 を下回
る時期になると,枯れた芝の部分からも芝の生長が確認されたと報告されている。
63
図-2.3.2.2 ヨシの生存率の経時変化[2]
水際部以外での植栽においては,ポーラスコンクリート植栽基盤の保水性をいかに確保するか
が大きな課題となる。
3)産業副産物などの利用による緑化基盤の性能向上
ポーラスコンクリートの緑化基盤としての性能向上を目指した報告として,保水性の向上,廃
棄物の有効利用による環境負荷低減機能の向上を目指した取り組みの報告が多く見られた。
まず,保水性の向上を目的として,廃ガラス発泡体[8],破砕瓦[9],木くず,木炭微粉末[10],
セラミック炭[11],パルプスラッジ焼却灰[12]などの廃棄物・副産物の利用や,保水性ポリマー[13],
天然ゼオライト[14]の利用が報告されている。また,1 層構造よりも,2 種類のポーラスコンクリ
ートを使用した 2 層版の保水量が高くなるといった結果も報告[15]されている。しかし,現段階
では,確実で効果的な保水機能を持つ材料および配合は確立されていない。
その他,植栽基盤としての性能向上と廃棄物の低減を目的として牡蠣殻[16],高炉徐冷スラグ,
ごみ溶融スラグ,ポーラスコンクリートのペーストの高強度化を目的としてシリカフュームおよ
び微細繊維[17],軽量化を目的として人工軽量骨材などを使用したポーラスコンクリート植栽基
盤[18]についての報告がなされている。
(3)課題
ポーラスコンクリート施工の普及動向を確認するため,各地方自治体におけるポーラスコンク
リート施工実績とその目的について再度調査することが,今後のポーラスコンクリート施工の発
展のために有効であると考えられる。ポーラスコンクリートを用いた植栽において,植栽基盤の
アルカリの低減や,客土の流失,水際部以外での植栽においては植栽基盤の保水性が大きな課題
として残っている。
植物の活着の評価には 3 年以上の経過観察が必要とされているが,長期的にかつ総合的に評価
された研究および施工事例が少ないことから,より短期間でかつ効果的に植栽効果が評価できる
指標を定義する必要がある。また,植栽だけではなく周辺環境および生態系との関わりも重要と
なるため,総合的な評価指標が求められる。
64
ポーラスコンクリートの植栽基盤としての機能を追求すると,その耐久性が損なわれることが
懸念される。凍結融解などの自然作用による外力だけでなく,植物の根の成長による内部からの
力に対する耐久性の向上[19]についての研究成果をさらに蓄積することが望まれる。
<参考文献>
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-ポーラスコンクリート河川護岸-,コンクリートテ
クノ,Vol.22,No.7,pp.65-71,2003.7
[2] 武田字浦,加藤勇人,岡本享久,児島孝之:琵琶湖のヨシ帯再生を目的としたポーラスコン
クリート植栽基盤の実用性,土木学会論文集 E2(材料・コンクリート構造),Vol.67,No.1,
pp.89-102,2011
[3] 石川嘉崇,天野功二,柳橋邦夫:植栽型ポーラスコンクリートのダム湖岸への適用に関する
研究,コンクリート工学年次論文集,Vol.26,No.1,pp.1461-1466,2004
[4] 張日紅,三井光彦,衣川直紀,金丸和生:人工水路設置したポーラスコンクリートが水路の
生態環境に与える影響,コンクリート工学年次論文集,Vol.25,No.1,pp.1199-1204,2003
[5] 黒田萌,三島直生,松田憲,畑中重光:軽量ポーラスコンクリートを用いた水耕栽培による
屋上緑化に関する研究,コンクリート工学年次論文集,Vol.28,No.1,pp.1409-1414,2006
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コンクリートテクノ,Vol.23,No.1,pp.29-35,2004.1
[8] 本田悟,椎葉大和,古賀悠:廃ガラス発泡体の有効利用に関する研究 その 3 粗骨材を使用し
たポーラスコンクリートの諸性状,日本建築学会大会学術講演梗概集(九州),pp.501-502,
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[9] 斎藤俊克,出村克宣:かわらくずを粗骨材とした緑化用ポーラスコンクリートの開発,日本
建築学会大会学術講演梗概集(北海道),pp.409-410,2004.8
[10]川幡栄治,田村友法,山田雅裕,今井洋一:木炭微粉末を混入したコンクリートの基礎性状 そ
の 5. ポーラスコンクリートへの応用と植生に関する研究,日本建築学会大会学術講演梗概
集(関東),pp.1021-1022,2006.9
[11]西澤卓史,小野博宣,渡辺健治:セラミック炭を混入したポーラスコンクリートの研究,日
本建築学会大会学術講演梗概集(北海道),pp.405-406,2004.8
[12]牟田口克洋,村上聖,武田浩二,内藤海,浦野登志雄:パルプスラッジ焼却灰造粒物を骨材
としたポーラスコンクリート緑化基盤材への適用,日本建築学会九州支部研究報告,第 50
号,pp.173-176,2011.3
[13]石川嘉崇,江耀宗:保水性ポリマーの屋上緑化用ポーラスコンクリート植栽基盤への適用性,
日本建築学会構造系論文集,No.622,pp.41-48,2007.12
[14]山地功二,天羽和夫,横井克則,亀山剛史:各種リサイクル材料を混入したポーラスコンク
リートの植生に関する検討,コンクリート工学年次論文集,Vol.25,No.1,pp.1193-1198,2003
[15]松本淳,村上聖,武田浩二,河上晃一郎,浦野登志雄:産業副産物を活用した緑化基盤用ポ
ーラスコンクリートの開発 –芝植生試験結果-,日本建築学会九州支部研究報告,第 47 号,
pp.61-64,2008.3
65
[16]堀口至,竹村和夫,島津邦彦:牡蠣殻ポーラスコンクリートの保水性および緑化性能,土木
学会第 64 回年次学術講演会,p.V-388,2009.9
[17]大友鉄平,大塚浩司,北辻政文,阿波稔:シリカフュームおよび微細繊維を混入したポーラ
スコンクリートの耐凍害性と植物の生長
[18]黒田萌,三島直生,松田憲,畑中重光:軽量ポーラスコンクリートを用いた水耕栽培による
屋上緑化に関する研究,コンクリート工学年次論文集,Vol.28,No.1,pp.1409-1414,2006
[19]源田早也佳,塚越雅幸,石原沙織,上田隆雄:植栽型ポーラスコンクリートの耐根性評価試
験,コンクリート工学年次論文集,Vol.35,No.1,pp.1441-1446,2013
[担当:武田字浦]
66
2.3.3
生物共生
(1)前回委員会(2003)報告書の概説
前回委員会報告書では,水際及び淡水中の生物,海岸及び海水中の生物,微生物(陸上),微生
物(水中)について報告されている。以下に,それらの概要を示す。
1)水際及び淡水中の生物
水際の生物に関しては,水際域の陸上昆虫類に着目した研究事例を示している。ポーラスコン
クリート護岸施工後の水際域における昆虫類の種類及び多様性指数の経年変化を基に,ポーラス
コンクリート河川護岸における生態系の復元効果を実証している。ポーラスコンクリート護岸(実
験区)における昆虫の種別及び多様性指数は,平成 11 年度から平成 12 年度の間の経年と共に増
加する傾向にあり,実験区の多様性指数が対照区と同等の値を示すことから,ポーラスコンクリ
ート護岸による生態系復元が達成されたと評価している。一方,淡水中の生物においては,水深
50cm の所に沈設したポーラスコンクリート供試体及び実施工されたポーラスコンクリート根固
めブロックでの調査が行われ,ポーラスコンクリートは,水中生物にハビタットを提供し,生態
系を豊かにできることが考えられると報告されている。
2)海岸及び海水中の生物
海中に設置したポーラスコンクリートへの生物付着に関する報告がある。海中に設置した空隙
率を 10,12,16,17,19,34,36 及び 39%とするポーラスコンクリートは,空隙率が 35%以上
になるにつれて付着生物が多くなる傾向にある。又,ポーラスコンクリートは普通コンクリート
や岩よりも多くの海洋性生物が付着する傾向にあると報告している。更に,普通コンクリートや
岩石に比べて,ポーラスコンクリートの方が天敵から身を守る棲息空間として良好であることが
報告されている。又,潮間帯近傍でのポーラスコンクリートの付着生物については,ポーラスコ
ンクリート及び従来のコンクリートを海中浸せきし,生物付着量を比較している報告がある。浸
せき試験 6 ヶ月におけるポーラスコンクリートの生物付着量は,鉛直護岸形状であっても従来コ
ンクリートの 2 倍,凹凸をつけることによって約 2.6 倍になると報告している。
3)微生物(陸上)
ポーラスコンクリートを施工して 5 年経過した場所の土壌を分析し,植生や生態系への影響の
有無を陸上の微生物について着目した研究例が報告されている。この施工区は,栄養が豊富で植
生が盛んであり,土壌微生物量も十分であると報告している。又,ポーラスコンクリートの空隙
内にも多数の微生物が存在しているとの報告がある。
4)微生物(水中)
水質浄化を行うに当たって重要であると考えられる,好気性微生物と嫌気性微生物の主要種と
ポーラスコンクリートの関係についての報告例の概要について報告している。空隙率 20,25 及び
30%で,かつ骨材粒径がそれぞれ 5~7mm,10~13mm の供試体を海水に 2 ヶ月浸せきすると,空
隙率 25 及び 30%で骨材粒径 10~13mm の試料が他のものよりも細菌が多いことを報告している。
又,好気性菌,嫌気性菌ともに従属栄養細菌がポーラスコンクリート内外壁面に高密度に検出さ
れたこと,硝化菌と脱窒菌の双方が共存して検出されたことは,ポーラスコンクリートを用いる
ことで,有機物(BOD)と窒素の除去が可能であることを報告している。
67
(2)最近の研究紹介
ポーラスコンクリートは,空隙を有する組織構造であり,その特性は生物のハビタットとして
活用されている。ハビタットは,
「形容的に一定の集まりをもった場所のうち,生物が生活史の各
段階(採餌,休息,産卵,羽化,蛹化,営巣,避難等)で利用する特定の場所」と定義されてい
る[1]。近年,魚礁及び藻場などの海洋環境下,水際や淡水中,水路などでポーラスコンクリート
を用いてハビタットを形成し,生物共生に資する研究が増加している。そこで,それぞれの用途
におけるポーラスコンクリートの有用性についての調査結果を記す。
1)海洋環境下の生物生息環境
近年,ポーラスコンクリートは海洋環境下において,海生生物が棲息するための魚礁ブロック
及び藻場の形成に用いられている例が多い。そこで,魚礁用及び藻場復元用としてポーラスコン
クリートを用いた研究について以下に示す。
a)魚礁としてのポーラスコンクリートの適用性
①ハイブリッド魚礁用ポーラスコンクリート及び高機能人工魚礁の開発
大谷らは,魚礁及び藻場としての機能を有するハイブリッド魚礁用ポーラスコンクリートを開
発している[2]。ハイブリッド魚礁用ポーラスコンクリートは,水セメント比 25%,目標空隙率
20%,結合材のフロー値を 200±10mm とする調合で,粗骨材として粒度 5~20(2005)及び 5~
13(1305)mm の再生骨材を用いている。パネル状(2600×1000×200mm)及び強度試験用に円
柱供試体(φ100×200mm)を作製し,それらを大分県佐伯市大入島沿岸の水深 5,10,15 メー
トル(10 メートル地点においては 2 ヶ所)の海域において 10 週間海中浸せき実験を行っている。
図-2.3.3.1 及び図-2.3.3.2 には,海中浸せき 10 週における生物生息状況調査結果並びにポー
ラスコンクリートの圧縮強度の経時変化を示す。供試体を海中浸せきした結果,骨材粒径の小さ
な 1305(R1305)骨材を使用したものにおいて,生息生物数が多い傾向にあり,特に節足動物の
数が非常に多い傾向にある。このことから,海中浸せき 10 週において,ポーラスコンクリートに
生息する生物の生息状況は良好であり,その場合のポーラスコンクリートの圧縮強度に低下は見
られないと報告している。
図-2.3.3.1
生物生息状況調査結果[2]
図-2.3.3.2
圧縮強度の経時変化[2]
又,ポーラスコンクリートと鋼製魚礁を組み合わせた高機能人工魚礁を開発している[3]。図-
2.3.3.3 に は , 人 工 魚 礁 構 造 詳 細 図 を 示 す 。 鋼 製 魚 礁 の 低 層 部 に 鋼 材 で 補 強 し た 寸 法
2600×1000×200mm のポーラスコンクリートパネルを放射状に配置している。なお,低層部に配
68
置するポーラスコンクリートパネルは,粗骨材に粒径 5~20mm の再生骨材を用いており,水セ
メント比を 23%,目標空隙率を 20%としている。この人工漁礁は,2004 年 3 月 3 日に大分県佐伯
市大入島沿岸の水深約 30m の地点に沈設された。表-2.3.3.1 には,付着生物測定結果,図-
2.3.3.4 及び図-2.3.3.5 には,設置後 38 週及び 90 週における付着生物測定結果並びに圧縮試験
結果を示す。付着生物測定の結果,節足動物の付着が突出しており,多くの生物の付着が確認さ
れていることから,魚の餌の供給源として十分に機能しているものと考えられ,1 年程度の期間
で魚礁として十分な集魚効果が得られている。又,その期間において圧縮強度の低下は見られな
いと報告している。
表-2.3.3.1
図-2.3.3.3
付着生物測定結果[3]
人口魚礁構造詳細図[3]
図-2.3.3.4
付着生物測定結果[3]
図-2.3.3.5
圧縮強度の経時変化[3]
②大粒径ポーラスコンクリートの魚礁としての適用性
海洋環境下において,ポーラスコンクリートの空隙にイセエビを棲息させることを目的とした
研究報告は見当たらない。そこで,前川らは,粒径小(100~200mm),中(200~300mm)及び
大(300~400mm)の再生骨材を用いて,リサイクル型大粒径ポーラスコンクリートの製造並び
に魚礁としての適用性について検討している[4]。リサイクル型大粒径ポーラスコンクリートの製
造には,再生骨材へ結合材を吹付けることによる手法を採用している。その吹付け方法を図-
2.3.3.6 に示す。本文献においては,一層吹付け(粗骨材を一層だけ並べた後,上部から吹き付
69
けを行い,その上の層の粗骨材を並べ,さらに,吹き付けすることを繰り返し一体化させる。)を
適用し,粒径小,中及び大の再生骨材を用いて,S,M 並びに L サイズの供試体を作製している。
吹付けモルタルについては,水セメント比 W/C=0.25,砂モルタル比 s/m=0.35,フロー値を 200
(±10)としている。作製した試験体については,魚礁としての適用性評価を行うために,コン
クリート水槽(2.5×2.0×1.5m)を用い,海水を水深約 1m まで注入後,イセエビを投入し水槽内
で 7 日間飼育した。その後に各試験体に棲息するイセエビ数を計数することで適用性を確認して
いる。なお,イセエビは大きさを変更して 2 回投入しており,S,M 及び L の試験体の空隙率は,
それぞれ,23.0%,22.9%及び 25.5%である。実験開始後 7 日目の観察によると,イセエビ小(平
均頭胸甲長 31.3mm)は,すべての 15 個体が L サイズを利用していた。又,イセエビ大(平均頭
胸甲長 50.9mm)は,S サイズを 4 個体,M サイズを 1 個体,L サイズを 10 個体が利用していた。
このようにイセエビ大が分散したのは,イ
セエビ大の数に対して,供試体の持つ空隙
数が少ないためであると述べている。以上
のことから,いずれのサイズの大粒径ポー
ラスコンクリートにおいても,イセエビ用
の魚礁として適用できる可能性があるとい
える。
又,大粒径ポーラスコンクリート(LPOC)
の曲げ破壊性状に関する基礎的研究が行わ
れている[5]。既報において,粗骨材に結合
図-2.3.3.6
吹き付けによる大粒径ポーラス
コンクリートの製造方法[4]
材を吹付ける製造方法を検討した結果,粗
骨材の下側に結合材が部分的に付着していないことが確認されたため,本文献では浸せきによる
製造手法を併せて検討している。表-2.3.3.2 には,大粒径ポーラスコンクリートの製造方法を
示す。なお,結合材は,水セメント比 W/C=0.25,モルタル中の細骨材容積率 s/m=0.35,フロー値
FL=300 又は 200 に変化させたものとしている。製造された大粒径ポーラスコンクリートの空隙率
は,FL=300 の場合 30%前後,一方,FL=200 の場合は 23~25%である。図-2.3.3.7 には,吹付け
及び浸せきによって作製された大粒径ポーラスコンクリートの曲げ強度と破断総面積の関係を示
す。それらの曲げ強度は,吹付け法では応力の分布が集中しやすいことや空隙率が大きくなるた
めに,浸せきする方法に比べて,曲げ強度が低下する傾向が見られる。ただし,製造方法は製造
条件や製品の大きさ,形状などを総合的に考慮し決定する必要があると報告している。
表-2.3.3.2
LPOC の作製方法による比較[5]
図-2.3.3.7
70
曲げ強度と破断総面積との関係[5]
更に,前川らは,大粒径ポーラスコンクリート製魚礁ブロックの製造及び海底沈設実証実験を
行っている[6]。魚礁ブロックの粗骨材としては,粒径を小(100~200mm),中(200~300mm)
及び大(300~400mm)の 3 サイズに分級したコンクリートがらを用いている。又,結合材とし
ての吹き付けモルタルについては,水セメント比 W/C=0.25,砂モルタル比 s/m=0.35 とし,フ
ロー値のみ 150,200,250 及び 300 に変化させている。この条件で作製した試験体は,20~30%
程度の空隙率を有している。図-2.3.3.8 には,大粒径ポーラスコンクリート製魚礁ブロックの
形状及び寸法を示す。このような魚礁ブロックを三重県志摩市の外海沿岸の水深 7~10m の場所
に 70 個設置した(設置範囲 25×25m 以内)。
設置 9 ヶ月後において魚礁ブロックの海底調
査を行っている。その結果,魚礁ブロック表
面に着生した海藻の生育が確認でき,その表
面又は内部にはアワビ,ナマコ,サザエなど
の多くの海生生物が生息している。その様子
を写真-2.3.3.1 に示す。更に,魚礁ブロッ
クの周辺では,鯛やメバルなどの魚類が集ま
っており,一定の集魚能力を確認している。
これらのことから,大粒径ポーラスコンクリ
ート製魚礁ブロックは,大型海生生物を対象
とした魚礁としての適用性を有することが明
らかであると報告している。
(a)アワビ
写真-2.3.3.1
図-2.3.3.8
(b)ナマコ
魚礁ブロックの形状及び寸法[6]
(c)ノコギリモク
棲息が確認できた海生生物の一例[6]
3)ポーラスコンクリートを利用した藻場復元効果の検討
a)産業副産物を骨材として用いたポーラスコンクリートの藻場への適用性
大谷らは,藻場復元用ポーラスコンクリートの骨材としての産業副産物である再生骨材及び高
炉徐冷スラグ骨材の適用性を明らかにするために,強度試験及び海洋浸せき実験を行っている[7]。
藻場復元用ポーラスコンクリートの製造には,粗骨材に砕石 5 号,高炉徐冷スラグ及び再生骨材
を用いている。表-2.3.3.3 には,調合を示す。なお,セメントには高炉セメント B 種,細骨材
に銅スラグ細骨材をそれぞれ用いている。又,混和材料として,海藻の付着生長促進用の栄養剤
に粒状の肥料と貝殻粉末の 2 種類を用い,コンクリートの色の違いが海洋生物の付着量に及ぼす
影響を検討するため黒色粉体,緑色アクリル樹脂系及び赤色アクリル樹脂系塗料を用いている。
作製した供試体(上面 20×40cm,下面 30×40cm,高さ 30cm)を,2002 年 9 月に大分県臼杵市
の黒島近海の 2 ヶ所に浸せきし,3 ヶ月後に海藻及び海生生物の生息状況の調査を行っている。
71
その結果を図-2.3.3.9 及び図-2.3.3.10 に示す。
表-2.3.3.3
調合[7]
海藻の付着状況は,再生骨材と粒状の肥料を組み
合わせた調合と塗料を混入した調合(調合番号 9)
において良い結果が得られており,粗骨材として
高炉徐冷スラグ骨材を用いた調合で良い結果が得
られている。
図-2.3.3.9
図-2.3.3.10
生息生物数[7]
供試体上面における海藻付着面積[7]
又,ポーラスコンクリートの藻場への適用例として,廃棄瓦及びフライアッシュを用いた石川
らの報告がある[8]。これは,骨材として粉砕し粒度調整を行った廃棄瓦を利用し,フライアッシ
ュを混入したポーラスコンクリートを製造して,その適用性について検討しているものである。
調合条件としては,水結合材比 W/(C+F)=30%を標準とし,ポーラスコンクリートの藻場基質は,
72
28 日圧縮強度 10N/mm2 を必要とすることから,フライアッシュの混和量は 20%を上限としてい
る。試験体としては,コンクリート人工魚礁(高さ 2m,最外径 5m,重量 15t)の上部にポーラ
スコンクリート基質(縦 50cm,横 50~70cm,厚さ 10cm)を貼付けしたものを製造している。な
お,ポーラスコンクリート基質については,1 週間気中養生後,2 週間散水によるエイジング処理
を行っている。試験体は,平成 14 年 12 月に兵庫県淡路島の三原郡西淡町湊地先の水深 6~10m
の海中に沈設した。その後,平成 16 年 3 月の時点(約 15 ヶ月後)において,目視観察及びポー
ラスコンクリート基質,コンクリート基質における坪刈調査を行っている。表-2.3.3.4 及び表
-2.3.3.5 には,海藻の目視観察結果並びに坪刈調査結果を示す。目視観察において,試験体全
体における海藻の出現種は 11 種類であり,藻場構成種としてカジメ,ホンダワラ類が確認されて
いる。付着被度は,ポーラスコンクリート基質及びコンクリート基質でそれぞれ,85%及び 95%
であった。坪刈調査を 25cm 方形枠内で行い,ポーラスコンクリート基質には 10 種(131.3g)
,コ
ンクリート基質では 6 種(63.2g)の小型海藻が確認された。これらのことから,コンクリート基
質に比べて,ポーラスコンクリート基質の方が藻の生育が良好であることが明らかになった。な
お,ポーラスコンクリートの耐久性と藻場の生育状況について長期的な調査観察が必要であると
している。
表-2.3.3.4
海藻目視観察結果[8]
表-2.3.3.5
坪刈調査結果[8]
武田らは,廃ガラス発泡軽量骨材ポーラスコンクリート及び,ポーラス状になるように結合材
により固化成型した廃木材チップ固化成型体を藻場復元材料試験体として作製し,海中に沈設し
その効果の検証を試みている[9]。図-2.3.3.11 に試験体の寸法及び形状を示す。試験体の寸法・
形状は 600×600×100mm 厚の版状であり,比較用として,砕石を骨材とするポーラスコンクリ
ート及びプレーンコンクリートを加えた 4 種類を海中沈設実験している。なお,廃ガラス発泡軽
量骨材ポーラスコンクリート及び砕石を骨材とするポーラスコンクリートの目標空隙率は,20 並
びに 30%である。これらを,2004 年 12 月下旬に熊本県八代海に海中投下沈設を行い,2005 年 2
月下旬及び 4 月中旬の 2 回,海藻の定
着・育成状況についてダイバーによる
潜水調査を行った。その結果,アオサ
図-2.3.3.11
試験体の外観[9]
図-2.3.3.12
73
海藻類の定着状況の調査結果[9]
ノリ,イワノリ,ヒトエグサ,テングサと思われる海
藻の定着が見られている。その後の引き上げ調査の結
果を図-2.3.3.12 に示す。廃ガラス発泡軽量骨材ポー
ラスコンクリートでは,紅藻類,廃木材チップ固化成
型体では緑藻類,砕石ポーラスコンクリートでは褐藻
類の定着が多くみられる傾向にある。これらの調査に
おいて,沈設期間や季節により定着する海藻の種類や
定着量に相違がみられるものの,海藻類の定着効果が
確認できている。
又,武田らは,寸法 400×400×60mm の藻場復元用
写真-2.3.3.2
表-2.3.3.5
試験体を配置した小型魚礁の藻場復元効果を検討して
いる[10]。写真-2.3.3.2 には小型魚礁の外観を示す。
又,表-2.3.3.5 には各試験体の素材特性を示す。な
お,廃ガラス発泡軽量骨材,廃木材チップ及び高炉ス
ラグを骨材として,パルプスラッジ焼却灰を混和材料
として利用したポーラスコンクリートにおいては,海
藻の良好な定着性能が既往の研究により確認されてい
る[9,11,12]。表-2.3.3.5 に示す 6 種類の試験体を
1 セットとし,全 4 セットを熊本県上天草市の有明海
沿岸の海域において,いかだを設置しその周辺の海底
に試験体を水平又は斜めに配置した小型魚礁を沈める
方法,いかだから試験体をロープで吊り下げる方法及
びいかだ周辺の海底に試験体を直接設置する方法の 3
図-2.3.3.13
定着量調査結果[10]
74
小型魚礁[10]
各試験体の素材特性[10]
種類についての藻場の復元効果を検討している。設置開始の 2007 年 10 月から引き揚げ作業を行
った 2008 年 5 月までの期間で沈設実験を行っており,引き上げ後には海藻の定着状況を調査して
いる。図-2.3.3.13 には,海藻の定着量調査結果を示す。海藻の定着が良好であったのは,いか
だから吊り下げた試験体であることがわかる。一方,海底に直接設置した試験体においては,海
藻の定着量が少ない傾向にある。小型魚礁に固定した試験体においては,試験体を斜め 45°に設
置したものより水平に設置したものの方の定着量が多い傾向にある。これは,潮流の方向と関係
しており,その方向と試験体の角度は十分に考慮する必要があるといえる。以上のことから,板
状の藻場復元材料を配置して小型魚礁とする場合,その配置角度を考慮することで実用的である
ことを報告している。
4)淡水中の生物生息環境
ポーラスコンクリートを水路に用いることによって,淡水中に棲息する生物の生息環境を創造
するものとして,次のような研究報告が成されている。
a)ポーラスコンクリートを用いた水路の生物生息環境
佐藤らは,ポーラスコンクリートを用いた水路における生物生息環境について報告している
[13]。図-2.3.3.14には,実験水路断面を示す。又,図-2.3.3.15には,水路構造を示す。ポー
ラスコンクリート水路には,粗骨材の粒径を0~40mm及び5~13mmとした2水準のポーラスコン
クリート(それぞれを3号POC及び6号POCと称する。)を用いている。3号POCにおいては,水セ
メント比25%,空隙率25%,6号POCにおいては,水セメント比30%,空隙率25%としている。な
お,ポーラスコンクリートの空隙には土壌を充填し,アルカリの緩衝及び保水性・保肥性の向上
を図っている。又,充填材の流出抑制と植生基盤の浸食抑制を目的として,ヤシ繊維マットをポ
ーラスコンクリート表面に敷設している。図-2.3.3.16には,試験区の概要を示す。植生はPOC 水
路の各試験区(A,B,C)の植被率で評価し,調査は,40cm×40cm のコドラードを法面上部よ
り水面方向に向かってU,M,L の3 区設け,これを各試験区で2 回実施している。水生昆虫の
調査については,RC水路の各試験区中央部,POC水路の各試験区中央部(底泥域)及び水際部(植
生域)において行っている。又,調査は,2002年7月~2003年1月までの7ヶ月間であり,
図-2.3.3.17,
図-2.3.3.18及び図-2.3.3.19には,植被率,水生昆虫の生息状況及び多様度指数を示す。3号
POC とヤシ繊維マットを組み合わせたB 試験区は,最も水際から離れた位置まで植生が成立す
る結果となっている。又,植生域及び底泥域からは,多くの生息生物が確認できている。多様度
指数は,種類数と個体数がバランスよく出現している場合に値が高く,特定の種が卓越している
地点は低くなるとしている。POC 水路の多様度指数は、RC 水路と比較して高い値を示し,特に
植生域でその傾向が顕著であった。これらのことから,3号POCへの土壌の充填には,ヤシ繊維マ
ットをフィルターとして用いる工法が有効であること,ポーラスコンクリートは,植生域と底泥
域という異なる環境を並存させることにより,多様な生物の生息環境を成立させることができる
ことを報告している。
75
図-2.3.3.14
実験水路断面[13]
図-2.3.3.16
図-2.3.3.18
試験区[13]
図-2.3.3.15
水路構造[13]
図-2.3.3.17
水中昆虫の生息状況[13]
図-2.3.3.19
植被度[13]
多様度指数[13]
一方,張らは,直径25cm の球形ポーラスコンクリート単体から構成されるユニット内の容積
の変化に富んだ空間特性に着目し,その空間特性がもたらす微生物,植物,水生生物など総合的
な生物多様性に対する効果を,人工水路を用いて評価している[14]。人工水路は,幅2m,長さ24mm
であり,ポーラスコンクリートの設置及び様々な実験条件を加える水路を「実験水路」,ポーラ
スコンクリートの設置及び実験条件を
加えない水路を「対照水路」として2レ
ーン設けている。球状ポーラスコンク
リートとしては,空隙率25%,透水係数
の 平 均 実 測 値 1.9cm/s , 平 均 圧 縮 強 度
14N/mm2 ,寸法φ25cmのものを用い,
それらを縦・横に連結してユニット化
している。その様子を写真-2.3.3.3に
写真-2.3.3.3
使用した POC 及び POC ユニット[14]
示す。なお,実験区をA,B及びCと区分し,実験区Aにおいては,ポーラスコンクリートの設置
76
及び生物投入を行い,生息生物状況調査,水質調査及び堆積物調査の結果を対照水路と比較して
いる。又,実験区Bにおいては,水生植物の植栽実験を行っている。実験区Cでは,魚類の投入を
行い,その生息環境としての評価を行っている。これらの調査結果から,ポーラスコンクリート
を用いて,空間に多様性を与えた水路には,何も入れない水路や川砂を敷設した水路に比べて,
付着性生物以外に高次の動植物も含めた豊かな生物相が早期から現れること及び水路内の生物
種・量が豊かになり,適切な生態系が形成された場合,その食物連鎖により物質循環が活発にな
り,水質改善につながること,さらに沈殿有機物の分解も促進され,堆積物が減少することを報
告している。
(3)課題
ポーラスコンクリートを魚礁や藻場,水路などの用途に用いることは,集魚能力や生物生息環
境としての適用性が十分に認められることから有効であることが報告されている。しかしながら,
それらの用途において,長期的な生物生息環境や製品の性能評価についての報告がないため,設
置方法や製造方法の改善点は現在見当たらない。そこで,今後の強度性状や集魚性能の持続性,
耐久性調査を基に,生物共生に必要なポーラスコンクリートの適切な空隙率や空隙径の設定,実
用上の製造方法及び運搬方法などを検討することが重要である。
<参考文献>
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魚礁の開発,日本建築学会九州支部研究報告集,No.45,pp.117-120,2006.3
[4]前川明弘,畑中重光,三島直生,湯浅幸久:リサイクル型大粒径ポーラスコンクリートの製
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ロックとしての応用,コンクリート工学,Vol.46,No.2,pp.24-32,2008.2
[7]大谷俊浩,佐藤嘉昭,三島
剛:藻場復元用ポーラスコンクリートへの産業副産物の適用性
に関する研究,セメント技術大会講演要旨,第 57 回,pp.256-257,2003
[8]石川嘉崇,玉井元治,松谷
茂,棚田教生:フライアッシュと破砕瓦骨材を用いたポーラス
コンクリートの藻場への応用,セメント・コンクリート論文集,No.58,pp.585-592,2005.2.
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聖:産業副産物を活用した藻場復元用ポーラスコンクリートの開発,セメ
ント・コンクリート論文集,No.60,pp.541-546,2007.2
[10]武田浩二,村上
聖,金丸健太郎,浦野登志雄:小型魚礁に設置したポーラスコンクリート
の藻場復元効果,コンクリート工学年次論文集,Vol.31,No.1,pp.1723-1728,2009.7
[11]武田浩二,村上
聖,河上晃一郎,浦野登志雄:産業副産物を活用したポーラスコンクリー
トの藻場復元材料への応用,日本建築学会大会学術講演梗概集,pp.861-862,2007.8
77
[12]武田浩二,村上
聖,河上晃一郎,松本
淳,浦野登志雄:産業副産物を活用した藻場復元
用ポーラスコンクリートの開発-沈設方法の影響-,日本建築学会九州支部研究報告集(中
国),No.47,pp.583-584,2008.7
[13]佐藤健司,長岡誠一,増岡 臣一:ポーラスコンクリートを用いた水路の生物生息環境,土木
学会第 58 回年次学術講演会,第 5 部,pp.1179-1180,2003
[14]張 日紅,三井光彦,衣川直紀,金丸和生:人工水路に設置したポーラスコンクリートが水路
の生態環境に与える影響,コンクリート工学年次論文集,Vol.25,No.1,pp.1199-1204,2003.7
[担当
78
十文字拓也,齋藤俊克]
2.3.4
浄化・吸着
(1) 前回委員会(2003)報告書の概説
1)
水質浄化性能
リンや窒素の除去率の他に,TOC(全有機炭素),BOD(生物化学的酸素要求量),DO(溶
存酸素量)など,各種の指標値が用いられて評価が行われているが,定量的な目標値や閾値は示
されておらず,効果の有無,およびその効果の発現条件や使用材料の影響などに関する基礎研究
が中心である。
研究成果の総括としては,リンや窒素の除去に関して効果は確認されるが,その効果にはばら
つきがあるとされている。使用材料の影響に関しては,例えば多孔質材料を骨材として用いた場
合には,結合材で覆われてしまうために効果が見られなくなるが,人工ゼオライトや高炉スラグ
を結合材に混入した場合には効果が期待できると報告されている。また,リンの除去には空隙に
生息する微生物が好影響を与えるが,空隙が目詰まりするとその効果が失われ,水質が悪化する
との報告もある。施工例としては,水路やビオトープにポーラスコンクリートを適用したものが
紹介されており,植生やばっ気などと併用することでより効果的な水質浄化が可能となると報告
されている。
2)
吸着性能
人工ゼオライトや酸化チタンを結合材に混入した場合の NOx 除去性能の評価が報告されてい
るが,これらはその使用材料や使用方法の最適条件を見つけるための基礎研究であり,性能の目
標値等を示すには至っていない。CO2 の吸収(中性化)に関する研究は,ポーラスコンクリート
の圧縮強度との関係を議論したものが多く,CO2 の吸収自体を目的とした評価は行われていない。
他に,数は少ないが調湿性能に関する報告がある。
(2)
1)
最近の研究紹介
水質浄化性能
ポーラスコンクリート自体に水質浄化性能を期待する例としては,セメントに含まれるカルシ
ウムと水中のリンとの反応に期待する例[1]や,木炭[2]やホタテ貝[3]などの多孔質材料をポーラス
コンクリートに混入することで吸着による浄化を期待する例などが報告されている。また,ポー
ラスコンクリートへの植生や生物共生による,間接的な水質浄化を期待した例として,河川水に
浸けたポーラスコンクリートブロックの表面に付着した微生物による水質浄化を期待した例[4]
や,水深の浅い海中にポーラスコンクリートを設置して,表面の微生物や空隙に生息する昆虫な
どによる堆積物の分解に期待する例[5],池水の水質上問題となるアオコ(浮遊性藍藻類)をポー
ラスコンクリート内に誘導し,微生物により分解することを試みた研究 [6]などが報告されてい
る。この他に,排水中の亜鉛などの重金属をポーラスコンクリートに吸着させることができると
いう報告[7]や,新しい試みとして,人工ゼオライトを骨材としたポーラスコンクリートにより水
中の放射性物質を除去する試み[8]なども進められつつある。
一方で,ポーラスコンクリート単独で水質浄化性能を充分に得るのは難しいため,ポーラスコ
ンクリートブロックと吸リン材[1]や芝生[9],ばっ気[10]などと組み合わせて水中のリンや窒素を
除去するシステムなど,何らかのシステムの一部としてポーラスコンクリートを使用した例や,
酸化チタンなどの光触媒の適用[11]など,水質浄化性能のある材料をポーラスコンクリートの表
面に使用するなどの手法も多く報告されている。図-2.3.4.1 および写真-2.3.4.1 には,ばっ気
79
を併用したシステムの例を示す。
図-2.3.4.1
ばっ気を併用した水質浄
写真-2.3.4.1
化システム[10]
2)
同左システムの設置
状況[10]
吸着性能
大気中の窒素酸化物 NOx や VOC(室内揮発性有機化合物)の吸着・分解性能を期待して,ポ
ーラスコンクリートの活用が試みられている。多くの研究が光触媒として酸化チタンを用いてお
り[12],[13],[14],その適用方法は,表面への塗布あるいは結合材中に混入する形で用いられてい
る。表面に塗布した場合には,光触媒の一部が光の届かないポーラスコンクリートの空隙中に付
着するため,通常のコンクリートと比べて低い光触媒効率となることなども報告されている[12]。
また,骨材などに多孔質な人工ゼオライトや火山性軽量骨材などを用いることでさらに吸着・
分解性能を高める試みも行われているが,これらの多孔質骨材がセメントペーストで被覆される
ことで,その性能は低下すると報告されている[13]。図-2.3.4.2 に,酸化チタンおよびゼオライ
トを用いた NOx の吸着性能の評価結果の例を示す。
ポーラスモルタルの調湿性能に関する研究結果[15]からは,普通モルタルと同程度であると報
告されている。
○
△
□
×
空隙率20%
空隙率25%
空隙率30%
blank
白抜き:ゼオライト無し
黒塗り:ゼオライト有り
(a) 酸化チタン無し
図-2.3.4.2
(b) 酸化チタン有り
酸化チタンおよびゼオライトを用い
た NOx の吸着性能評価の例[13]
(3)
課題
表-2.3.4.1 に,水質浄化性能および吸着性能に関する評価方法の概要を示す。浄化・吸着性
能については,適用方法やシステムがある程度具体的に決められた上で性能評価が行われる例が
80
多く,それぞれの研究条件における適用結果として効果の可否が議論されている。このため,評
価方法や測定項目は研究ごとに異なる状況であり,統一的な評価がなされるには至っていない。
その中でも,メチレンブルー水溶液を用いた評価方法に関しては,実験室レベルの評価となるも
のの,JIS R 1703-2(ファインセラミックス-光触媒材料のセルフクリーニング性能試験方法-第
2 部:湿式分解性能)がいくつかの研究で採用されている。
また,各研究で取り扱われている浄化・吸着システムや各材料の作用機構は複雑であり,適用
対象やその環境条件などにより効果は大きく変動すると考えられ,汎用的なポーラスコンクリー
トの調配合や使用条件などの影響が示されるには至っておらず,ポーラスコンクリートの設計時
に用いる必要条件などの提示については今後のさらなる検討結果が待たれる。
表-2.3.4.1 水質浄化性能および吸着性能に関する評価方法の概要
文献
水質浄化システム構成
番号
[1]
測定対象
POCブロック、吸リン材 池水
測定項目
透視度、全リン(TP)濃度、全窒素(TN)濃
-
度、脱窒菌数
[4]
POCブロック(木炭使
用)
POCブロック(ホタテ貝
殻使用)
POCブロック
全リン濃度
TP濃度
1mg/Lの水溶液
河川水
pH、TP濃度、TN濃度、DO
[5]
POCブロック
海水
[7]
POCブロック
酢酸亜鉛水溶液 残存亜鉛濃度
[8]
POCブロック(人工ゼオ
POCブロック
ライトペレット使用)
[2]
[3]
水質浄化
性能
[9]
[10]
[11]
[12]
[16]
[12]
[13]
吸着性能
[14]
評価基準
合成洗剤水溶液 COD
溶存酸素(DO)
(汚染水透過後の)放射能濃度
pH、一般細菌、大腸菌群数、硝酸性およ
POCブロック、芝生、天 貯留水槽内およ び亜硝酸性窒素、鉄、塩素イオン、硬
然石や砂によるろ過層 び親水池の水 度、有機物等、臭度、色度、濁度、蒸発
残留物
pH、生物化学的酸素要求量(BOD)、化
POCブロック、ばっ気ま
池水
学的酸素要求量(COD)、懸濁物質(SS)、
たは天然ろ過材
TP濃度、TN濃度
POCブロック(酸化チタ メチレンブルー水 RGB値より算出したメチレンブルー濃度、
ン粉末使用)
溶液
分解活性指数
POCブロック(可視光応 メチレンブルー水
吸光度
答型光触媒塗布)
溶液
POCブロック(天然ゼオ
メチレンブルー水
ライトおよび酸化チタン
吸光度、RGB値
溶液
粉末使用)
POCブロック(可視光応 トルエンまたはア
揮発性有機化合物(VOC)濃度
答型光触媒塗布)
セトアルデヒド
POCブロック(ぼら、フェ
ロニッケルスラグ、酸化
NOガス
NOx濃度およびNOx減少速度
チタン、人工ゼオライト
使用)
自動車排気ガ
POCブロック(二酸化チ ス、トルエン、トリ
各種ガス濃度および減少率
タン粉末塗布)
メチルベンゼン、
NOガス
-
-
-
貧酸素化の基準
(3.5mg/L)
日本の環境基準
(0.03mg/L)
-
上水道の水質基
準値
生活環境の保全
に関する環境基
準(環境省告示)
-
-
-
-
-
-
<参考文献>
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スコンクリートのメチレンブルー吸着特性の評価,第 66 回セメント技術大会講演要旨,
pp.74-75,2012.5
[担当
82
三島直生]
ࠉ㸰㸬㸱㸬㸳ࠉ ᗘ≉ᛶ
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[1]ࠉ⠛ᓮ┿⃈㸪༙஭೺୍㑻㸸෌⏕㦵ᮦࢆ⏝࠸ࡓ࣏࣮ࣛࢫࢥࣥࢡ࣮ࣜࢺࡢ⵨Ⓨ෭༷ຠᯝ㸪ࢥࣥࢡࣜ
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[2]ࠉ୕ᓥ┤⏕㸪୰ᕝṊᚿ㸪⏿୰㔜ග㸪໭㔝༤ு㸸ᒇእᐇ㦂࡟ࡼࡿ࣏࣮ࣛࢫࢥࣥࢡ࣮ࣜࢺ⯒⿦ࡢ⇕
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[3]ࠉᆏཱྀ⛱㸪ୖཎ໶㸪すᑿ⚽Ⓩ㸪ட஭๎ᖾ㸸ᐙᒇゎయᗫ⎰ࢆ⏝࠸ࡓ࣏࣮ࣛࢫࢥࣥࢡ࣮ࣜࢺࡢ ⇕
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[4]ࠉᇛ㛛⩏Ⴙ㸪ᖖ኱೧㸪㝞ᬡ↩㸪ຍ㈡㇂ㄔ㸸ⅆᒣ♟࣏࣮ࣛࢫࢥࣥࢡ࣮ࣜࢺࡢኟᮇᩓỈ࡟ࡼࡿẼ పῶຠᯝ㸪ᅵᮌᏛ఍➨ 62 ᅇᖺḟᏛ⾡ㅮ₇఍ㅮ₇ᴫせ㞟㸪➨ 5 㒊㸪pp.777-778㸪2007
[5]ࠉỌ஭కⱥ㸪ᑎすᾈྖ㸪ྜྷỌ⨾㤶㸸ᥭỈᛶ⬟ࢆ㧗ࡵࡓ࣏࣮ࣛࢫࢥࣥࢡ࣮ࣜࢺࣈࣟࢵࢡࡢ ᗘୖ
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[6]ࠉ㧗ᶫ⠜ྐ㸪ᶫᮏぶ඾㸪Ώ㎶೺㸪▼୸ၨ㍜㸸 ᗘୖ᪼ᢚไຠᯝ⬟ຊࢆࢥࣥࢡ࣮ࣜࢺ࡟௜୚ࡍࡿ
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[7]ࠉᖹᒾ㝣㸪⏣୰Ύே㸸࣏࣮ࣛࢫࣔࣝࢱࣝࡢసᡂ࡜ࡑࡢ ⇕ᛶ⬟࡟㛵ࡍࡿᇶ♏ⓗ◊✲㸪ࢥࣥࢡࣜ
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[8]ࠉ௦⏣ဴᮁ㸪ୖ㔝ᩔ㸪኱㔝೺ኴ㑻㸪Ᏹ἞බ㝯㸸㐽⇕ᛶṌ㐨ࣈࣟࢵࢡࡢኟᏘ ᗘపῶ࡟㛵ࡍࡿᇶ
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[9]ࠉྩᓥ೺அ㸪኱▼ⱥኵ㸪すᒸ┿⛱㸪᳃ᒣṇ࿴㸸ࢥࣥࢡ࣮ࣜࢺ⯒⿦ࡢࣄ࣮ࢺ࢔࢖ࣛࣥࢻ⦆࿴ຠᯝ㸪
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86
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87
2.3.6
吸音
(1) 前回委員会(2003)報告書の概説
ポーラスコンクリートは多量の連続空隙を持つため,吸音性能を期待できるとして,特に交通
騒音の低減を目的とした研究が行われた。吸音性能の評価指標としては吸音率が用いられ,測定
方法の違いにより,音の入射角度が直角に限定されるものの測定が容易な垂直入射吸音率(JIS A
1405),音の入射角がランダムで実環境に近いが測定が困難な残響室法吸音率(JIS A 1409),およ
び規格化はされていないが道路交通騒音に対する評価では合理的とされる斜入射吸音率が用いら
れている。各吸音率の違いをポーラスコンクリートを用いて比較した結果からは,垂直入射吸音
率と残響室法吸音率には大差がないものの,斜入射吸音率は小さくなるとしている[1]。
研究報告としては,測定が容易な垂直入射吸音率を採用したものが多く,ポーラスコンクリー
トの特性と吸音率の関係として,表-2.3.6.1 に示すような各研究結果が報告されている[2]。
表-2.3.6.1 ポーラスコンクリートの特性と吸音率の関係
ポーラスコンクリートの特性
含水状態
空隙率
骨材粒径
骨材種類
試験体厚さ
背面の空気層
吸音率の変化
影響なし
大きいほどピーク吸音率が高くなる
大きくなると吸音率がやや低下し吸音周波数帯が狭くなる
軽量骨材などの多孔質骨材を用いても影響なし(結合材に覆われるため)
厚くなるほど吸音ピークが低周波数域に移行しピーク吸音率は上昇する
厚くなるほど吸音ピークが低周波数域に移動する
吸音特性の良好なポーラスコンクリートの例としては,6~7 号砕石を用いて空隙率を 20%以上,
厚さを 10cm 以上とすると 400~500Hz の周波数域で 0.8 以上の高い吸音率が得られるとしている。
また,ポーラスコンクリートを舗装へ適用した場合の騒音低減効果についても報告されており,
ヨーロッパを中心に自動車騒音の低減に対するポーラスコンクリート舗装の有効性が報告されて
いる。タイヤによる騒音が最も大きくなるといわれる 1000Hz 付近の周波数領域で最大の吸音性
状を得るためには,例えば,厚さ 4~5cm,空隙率 25%以上,粗骨材最大寸法 8~10mm などの条
件が示されている。
この他に,吸音特性に及ぼす各種要因を検討した結果からは,ポーラスコンクリートの空隙構
造から得られる指標のうち,内部表面積が吸音特性に最も大きな影響を及ぼしているとする報告
[3]も紹介されている。
(2)
最近の研究紹介
1)吸音率
Kim ら[4]は,セメントペーストの流動性および粗骨材の種類がポーラスコンクリートの吸音特
性に及ぼす影響に関して検討している。セメントペーストのフローを 3 水準(80, 110, 140%)と,
粗骨材種類を 5 種類(8-13mm および 13-19mm の普通骨材,4-8mm, 8-12mm および 12-19mm の
軽量骨材)使用している。また,セメントペーストに対する AE 剤の効果も確認している。吸音
率は垂直入射吸音率を用いている。実験の結果,セメントペーストフロー,AE 剤の添加,およ
び粗骨材の粒径は,吸音率にはほとんど影響しておらず,この傾向は普通骨材でも球形に近い軽
量骨材でも同じであったとしている。一方で,二層化したポーラスコンクリートは単層の場合と
比べて吸音特性が改善され,二層のポーラスコンクリートの最小吸音率は,400Hz 以上の周波数
88
範囲で 0.6 以上であったとしている。
さらに,Kim ら[5]は,ポーラスコンクリートの骨材粒径,骨材形状および空隙率を考慮した吸
音モデルを構築している。ポーラスコンクリートの空隙構造のモデル化には,空気層を考慮した
多層孔あきパネルモデルが採用されている。解析パラメータは実験結果から得ており,解析の結
果,過去の実験結果と良く適合したとしている。
寺島ら[6]は,残教室法によるポーラスコンクリートの吸音特性の評価を行っている。その結果,
試験体厚さによって吸音率が低下する周波数が異なることに関して,入射する音波と試料背面ス
ラブから反射する音波が重なりあって生じる 1/4 波長に相当する位置(腹の位置)がほぼ試料厚
さと一致する場合に吸音率が低下するとしている。
Park ら[7]は,再生骨材を用いたポーラスコンクリートの吸音特性に関して検討を行った。測定
はまず音響管を用いた垂直入射法を用い,評価指標としては,250, 500, 1000, 2000Hz における吸
音率の平均値である騒音低減係数(NFC),および 250~2000Hz の範囲の吸音率曲線から求めた吸
音面積比(SAA)を用いている。実験の結果,空隙率 20~30%の範囲において,SAA では空隙率が
大きいほど,また,NFC は空隙率 25%が最も吸音特性が良好(0.52~0.56)であるとしている。
再生骨材の使用は圧縮強度が低下するものの,吸音特性には影響がないとしている。また,同じ
空隙率 25%,再生粗骨材の混入率 50%としたポーラスコンクリートに対して,残響室法を用いた
結果からは,NFC が 0.6 となり,垂直入射法と比べて大きくなったとしている。
張ら[8]は,石灰岩および火山性軽量骨材のぼらを粗骨材としたポーラスコンクリートの垂直入
射吸音率の測定を行っている。測定結果の例を図-2.3.6.1 に示す。図によれば,粗骨材種類に
よって吸音ピーク周波数が変化するものの,ピーク吸音率については変化はなかったとしている。
図-2.3.6.1
粗骨材種類による吸音率と周波数の
関係の比較[8]
城門ら[9]は,粗骨材に火山礫(表乾密度 1.18g/cm3,吸水率 70.45%,実積率 60.0%)を用いた
ポーラスコンクリートの吸音効果の測定を行っている。測定は垂直入射吸音率を採用し,空隙率
は 20~40%の範囲としている。測定の結果,図-2.3.6.2 に示すように,ピーク時平均吸音率が
空隙率によらず 0.91 以上とかなり大きい値となり,これは多孔質な火山礫の吸音特性が影響して
いるとしている。
89
図-2.3.6.2
火山礫を用いたポーラス
コンクリートの吸音率[9]
三浦ら[10]は,ポーラスコンクリート製防音壁に植生基材を吹き付けて緑化機能を付与した場
合の騒音低減効果について実験的に検討している。写真-2.3.6.1 にポーラスコンクリート製防
音壁の外観を,図-2.3.6.3 に測定方法を示す。実験の結果,緑化型ポーラスコンクリートパネ
ルは,通常のポーラスコンクリートパネルと比べて高い騒音低減性があり,特に 1000~2000Hz
の高周波数領域の騒音低減に効果が認められたとしている。
写真-2.3.6.1
ポーラスコンクリート製防音壁の外
観(左:ポーラスコンクリート面,
右:緑化面)[10]
図-2.3.6.3
音源・受音点およびポーラスコンクリ
ートパネルの位置[10]
2)吸音特性の耐久性
梶尾ら[11]は,供用 5 年を経過した車道用ポーラスコンクリートの品質評価を行っている。目
標空隙率は 15~20%で,粗骨材は 6 号砕石を用いている。密粒度アスファルトとポーラスコンク
90
リートの騒音レベルの比較からは,図-2.3.6.4 に示すように,供用直後のポーラスコンクリー
ト舗装には,密粒度アスファルトに対して 3~5dB の騒音低減効果があったが,供用 5 年では空
隙が詰まることで逆に騒音レベルが大きくなる結果となったとしている。また,図-2.3.6.5 に
示すように騒音レベルは現場透水試験による現場透水量と良い相関があり,適切な機能回復処理
により透水性能を維持することで,低騒音効果も持続するとしている。
同様な傾向は他文献[12]でも報告されている。
図-2.3.6.4
ポーラスコンクリート舗装
と密粒度アスファルト舗装
の騒音レベルの差[11]
図-2.3.6.5
騒音レベルの差と現場透
水量の関係[11]
田畑ら[13]は,凍結融解作用後のポーラスコンクリートの吸音率の変化を測定している。凍結
融解試験は ASTM C 672 に準拠し,吸音率の測定は垂直入射吸音率を用いている。測定結果を図
-2.3.6.6 に示す。交通騒音の主たる周波数帯域である 500~1000Hz において,空隙率が大きく
なるほどピーク吸音率が大きくなる傾向が見られ,凍結融解作用後には吸音率は低下したものの,
吸音材料の目安となる吸音率 30%以上[14]は満足したとしている。また,プレキャストポーラス
コンクリート舗装版を試験施工した結果からは,施工直後~2 年後までの間に,バラツキはある
ものの,アスファルト舗装と比べてプレキャストポーラスコンクリート舗装のタイヤ蹴り出し騒
音は,概ね 0~5dB 低くなり,透水性アスファルト舗装と同程度の騒音低減効果(アスファルト
舗装と比べて約 3dB 程度)があるとしている。
図-2.3.6.6 凍結融解前後の吸音率の変化[13]
91
(3)
課題
吸音特性に関する測定方法としては,垂直入射吸音率の測定結果が多い。また,車両走行時の
騒音レベルを実測した結果なども,実際の舗装を対象とした測定結果が比較的多く報告されてい
る。
吸音特性の指標値としては,(1)節で示した 3 つの吸音率の他に,図-2.3.6.7 に示す吸音
面積率(図中の面積 abef の面積 acdf に対する比率)や NRC(Noise Reduction Coefficient: 周波数
250, 500, 1000, 2000Hz における吸音率の平均値)[7], [15],および図-2.3.6.8 に示すような,ポ
ーラスコンクリートパネル Box の中に入れた音源からの騒音を測定して得られる等価騒音レベル
Leq[15]などの指標値も用いられている。
図-2.3.6.7 吸音面積率の概要[15]
図-2.3.6.8 等価騒音レベルの測定状況[15]
性能目標としては,吸音パネルに関する研究において,吸日本道路公団が定めた道路用吸音パ
ネルの性能である「400Hz で 0.7,1000Hz で 0.8 以上の残響室法吸音率を有すること」に関する
言及[15]が見られるくらいである。
特徴的なのは,道路舗装の供用後の吸音特性の劣化に関する報告であり,この場合には現場で
の試験となるため,吸音率ではなく騒音レベル(dB)が用いられることが多いようである。
以上の結果からは,吸音性能に関する耐久性の議論がさらに重要となると考えられ,規準化に
向けた議論においては,この耐久性まで含めた目標性能の設定および評価方法の確立が重要とな
ると考えられる。
<参考文献>
[1] 張雪梅,中澤隆雄,張日紅,三浦功:ポーラスコンクリートの吸音率に及ぼす種々の影響要
因に関する検討,セメント・コンクリート論文集,No.56,pp.283-290,2002
[2] 玉井元治,他:ポーラスコンクリートの設計・施工法の確立に関する研究委員会報告書,日
本コンクリート工学協会,pp.19-25,2003.5
[3] 藤原浩巳,堂園昭人,丸岡正知,沼野友伸:ポーラスコンクリートの空げき構造と吸音特性
の関係に関する研究,セメント・コンクリート論文集,No.56,pp.291-297,2002
[4] H.K. Kim, H.K. Lee: Influence of cement flow and aggregate type on the mechanical and
acoustic characteristics of porous concrete, Applied Acoustics, No.71, pp.607-615,
2010
[5] H.K. Kim, H.K. Lee: Acoustic absorption modeling of porous concrete considering the
92
gradation and shape of aggregates and void ratio, Journal of Sound and Vibration,
Vol.329, No.7, pp.866-879, 2010
[6] 寺島貴根,池野美帆,畑中重光,三島直生,中川武志:ポーラスコンクリートの吸音特性の
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[7] Seung Bum Park, Dae Seuk Seo, Jun Lee: Studies on the sound absorption characteristics
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Cement and Concrete Research, No.35, pp.1864-1854, 2005
[8] 張 雪梅・中澤 隆雄 ・今井 富士夫:ポーラスコンクリートの吸音特性に関する検討,コン
クリート工学年次論文集,No. 24(1),pp.1161-1166,2003
[9] 城門義嗣,加賀谷誠,大野誠彦:火山礫を用いたポーラスコンクリートの環境負荷低減特性,
土木学会第 58 回年次学術講演会,V-487,pp.973-974,2003.9
[10] 三浦功・中澤隆雄・今井富士夫・張日紅:緑化機能を有するポーラスコンクリートパネルの
騒音低減性状,コンクリート工学年次論文集,No.30(2),pp.313-318,2009
[11] 梶尾聡,村田芳樹,国分勝郎:供用 5 年を経た車道用ポーラスコンクリート舗装の性能,舗
装,No.41-5,pp.10-14,2006
[12] 黒岩義仁,小梁川雅,佃美伸,野田潤一:車道用ポーラスコンクリート舗装の供用 5 年の性
能,第 61 回セメント技術大会講演要旨,pp.182-183,2007
[13] 田畑浩太郎,田口史雄,草間祥吾:ポーラスコンクリートの積雪寒冷地での適用に関する研
究,寒地土木研究所月報,No.710,pp.2-11,2012.7
[14] 環境管理設備辞典編集委員会編:環境管理設備辞典「騒音・振動防止」産業調査会
[15] 三浦功・中澤隆雄・今井富士夫:ポーラスコンクリートパネルの騒音低減効果に及ぼす使用
骨材の種類およびパネル厚さの影響,コンクリート工学年次論文集,No.29(2),pp.325-330,
2008
[担当:三島直生]
93
2.4 海外の動向
2.4.1 中国
(1)概説
中国では,経済の高度成長に伴い,環境悪化は急激に進行し,経済の成長や住民の生活に悪影
響を与えてきた。この情勢に対し,各分野では環境改善技術の開発や応用活動が盛んになりつつ
ある。土木建設分野において,環境改善機能を持つポーラスコンクリートに関する製造,施工や
基本性状の研究が進められており,北京オリンピック公園(写真-2.4.1.1)や上海万博会場(写
真-2.4.1.2)の透水舗装を含めた,ポーラスコンクリートの施工例も増えてきた。本報告では,
中国国内で行われたポーラスコンクリートの研究情報を収集し,特徴のある研究,又は代表的な
研究成果を紹介する。
写真-2.4.1.1 北京オリンピック公園の透水舗装
写真-2.4.1.2 上海万博会場の透水舗装
(2)研究状況
1993年から,中国建築材料科学研究院では,透水コンクリートおよび透水舗装ブロックの開発
を目的として,ポーラスコンクリートの製造方法や基本性状に関する研究を実行した。1995年以
降,開発された透水舗装ブロックが舗装工事に適用されたが,同研究院の王武祥[1],[2]は,透
水舗装ブロックの性能を改善する研究を継続し,空隙率5%~30%,圧縮強度5MPa~20MPaのポー
ラスコンクリートの製造に成功した。(注:中国の基準により,コンクリートの圧縮試験は
150mm×150mm×150mmの立方供試体を用いる)
同済大学陳志山教授[3]~[5]や東南大学の高建明教授[6],[7]は,ポーラスコンクリートの水
質浄化に関する研究を進めた。陳志山教授は,生活汚水が流れる川筋に,ポーラスコンクリート
を取り込んだ水質浄化装置を据え付け,CODMN(Chemical oxygen demand by KMnO4)、BOD5(Five
day biochemical oxygen demand)やTP(Total phosphate)などの経時変化を計測した。高建明
教授は,空隙率20%~25%,圧縮強度15MPa程度のポーラスコンクリート,およびタニシや水草な
どの水中生物と併せて汚水中に据え付け,CODMN ,TPやTN(Total nitrogen)などの有害物質の除
去効果を確認した。
長安大学の鄭木蓮教授[8]~[12]は,ポーラスコンクリートを道路排水基層に適用するため,そ
の調合設計,力学性能,透水性や耐久性などの特性に関して,多くの研究を進めた。また,その
研究成果を応用した河北省や陝西省などの道路工事に対し,施工方法や品質管理などの面につい
ても検証を行った。
江蘇大学の劉栄桂教授[13]~[15]は,混和剤および骨材処理などの方法より,ポーラスコンク
リートの性能改善を試した。その結果,ZS-1剤(CaCO3が主な成分となる懸濁液)の使用は,強度
を最大2MPa程度向上させ,SR-3剤(CaCO3とSiO2が主な成分となる懸濁液)の使用は,強度の向上
やアルカリ性の低減に効果があると報告した。これらの手法が植生型護岸や透水舗装に適用され
た施工例もある。
中国建築一局集団(株)[16],[17]は,新たな工法を取り込んだ露骨材透水コンクリートを開
発した。その施工方法は,仕上げした直後のポーラスコンクリートの表面に凝結遅延剤を吹きか
94
けておき,内部の結合材が硬化した後,表面を高圧水で洗浄して骨材を露出させる(写真-
2.4.1.3)。露骨材透水コンクリートは,2007年から北京オーリンピック公園などの舗装工事に適
用され,従来の透水舗装と比べ,その美観性がよくなった上、耐摩耗性も向上した。その他,ポ
ーラスコンクリートの製造に工業廃棄物の利用も進められている。その例としては,写真-
2.4.1.4に示す高炉スラグを骨材としたポーラスコンクリートが挙げられる。
写真-2.4.1.3 露骨材ポーラスコンクリート
a)実施工
b)骨材(高炉スラグ)
写真-2.4.1.4 高炉スラグを骨材としたポーラスコンクリ
(3)今後の課題
中国では,ポーラスコンクリートの研究や施工技術が推進された一方,その設計,施工や試験
方法に対応した基準がまだ確立していない。これまでの研究は,試験方法などの相違より,その
汎用性が限られている。また,ポーラスコンクリートの力学特性や耐久性などの基礎的研究がま
だ不足しており,その研究や施工技術をさらに推進するために,これらの問題を重視した研究が
期待される。
参考文献
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[8] 鄭木蓮,陳栓発,王秉纲:基于正交试验的多孔混凝土配合比设计方法,同济大学学报(自然
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[9] 鄭木蓮,陳栓発,王崇涛:多孔混凝土的强度特性,长安大学学报(自然科学版),Vol.26,No.4,
pp.20-25,2006.7
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[12] 鄭木蓮,陳栓発,王秉纲:多孔混凝土排水基层路用性能研究,西安科技大学学报,Vol.27,No.4,
pp.603-607,2007.12
[13] 劉栄桂,呉智仁,陸春華,呉春ドウ,彭振華:护堤植生型生态混凝土性能指标及耐久性概述,
混凝土,pp.16-28,2005.2
[14] 張ヨウ,劉栄桂,徐栄進:透水型生态混凝土性能试验研究,混凝土,pp.97-102,20012.4
95
[15] 劉栄桂,張ヨウ,徐栄進,何政欽:再生透水型生态混凝土试验研究,混凝土,pp.89-92,2012.7
[16] 宋中南,石雲興,呉月華,薛剛,呉克辛:露骨料透水路面在奥运工程中的应用,施工技术,
Vol.37,No.8,pp.79-81,2008.8
[17] 張燕剛,石雲興,劉永清,屈鉄軍,張涛,霍亮,華成謀:露骨料透水混凝土施工技术,施工
技术,Vol.40,No.345,pp.87-90,2011.7
[担当 張茂剛]
96
2.4.2
韓国におけるポーラスコンクリートの研究動向
(1) ポーラスコンクリートの研究動向
韓国コンクリート学会(KCI)で検索(検索語:ポーラスコンクリート、多空性コンクリート、
植生コンクリート、植栽コンクリート、透水コンクリート)した結果、約 113 件の論文が検索さ
れた。最初の論文は 1996 年
Kim Jin-Chun などにより初めに発表された。その後、1998 年から
Han Cheon-Goo、Park Seung-Bum などにより活発に研究され始めた。2007 年には 15 編が発表さ
れた。全般的に、2007 年以前にはポーラスコンクリートの調合、製作方法などがほとんどであ
る。一方、その以後ではポーラスコンクリートとして高炉スラグ、ボトムアッシュ、再生骨材な
どの産業副産物、建設廃棄物を用いた研究がほとんどである。
用語の選択については建築分野では、植生コンクリート、植栽コンクリート、ポーラスコンク
リートなどの単語を多く使用した。また、土木では透水コンクリート、ポーラスコンクリートな
どの 単語が多く使用された。
図-1
KCI における年度別論文発表数
(2) ポーラスコンクリートの使用状況(実際にどの様な現場があるか)
ポーラスコンクリートの使用方法はいくつかあるが、韓国では護岸ブロックなどの2次製品と
して作られて物が多い。現場打ちポーラスコンクリートは、道路などで使用された透水コンクリ
ートが多く見られる。人工漁礁用としては、いくつが見られるが多くはない。
97
図-2 ポーラスコンクリートの使用状況
(3) ポーラスコンクリートに関する規準類の整備状況
現在、ISO TC71 SC1では、透水コンクリートの試験方法規格を準備しているが、韓国建設技術
研究院では、ISO規格の登録が終わったら、これにあわせてKS(Korean Industrial Standards)
規格を制定する予定である。また、団体規格としては、韓国コンクリート工業協同組合連合会
(SPS-KCIC0001-0703:コンクリート護岸および擁壁ブロック)の規格がある。2012年には、大
韓透水コンクリート工業協同組合(会員社:54社)が設立認可をとり、 透水コンクリートの性
能規準などについて団体規格を準備している。
<参考文献>
[1]
Kim Jin-Chun, Kim Ki-Soo, Choi Kwang-il, Oh Hee-Hap
: The fundamental properties
and plantin experiments on the concrete with continuous voids, Proceedings of the
Korea Concrete Institute, Vol.8, No.1, pp.153-159, 1996
[2]
Yoon Gi-Won, Lee Sang-Tae, Kim Gi-Cheol, Hwang Jung-Ha, Han cheon-Goo : A fundame
ntal study on the development of porous concrete for planting, Proceedings of the
Korea Concrete Institute, Vol.10, No.2, syupp.912-915, 1998
[3]
Park Seung-Bum, Kwon Hyuk-Joon, Seo Dae-Seuk, Yoon Duck-Yeol : An experimental st
udy on the evaluation of porous concrete using industrial by-products of planting
factory, Proceedings of the Korea Concrete Institute, Vol.14, No.1, pp.779-784, 20
98
02
[4]
Chae Chang-U : Physical properties of porous concrete using admixtures, Journal o
f the Corea Concrete Institute, Vol.14, No.2, pp.257-265, 2002.4
[5]
Song Tae-Hyeob, Yoon Sang-Hyuck, Lee Sea-Hyun, Choi Oan-Chul : A study on the per
meability test for pervious concrete, Proceedings of the Korea Concrete Institute,
Vol.22, No.2, pp.47-48, 2010
[6]
韓国コンクリート工業協同組合連合会:コンクリート護岸および擁壁ブロック (SPS-KCIC0
001 - 0703), 2012.11
[李建哲]
99