日本アルテラ株式会社

Premium Talk Session
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日本アルテラ株式会社 ゲスト:富士ゼロックス株式会社
Cortex-A9の可能性を広げる
FPGA を「コンパニオンチップ」として使
う方法は一般的なのでしょうか?
ハードとソフトの融合に高まる期待
だ。最近では高度なドキュメントマネージメント機能も搭載され、日々のオフィス業務の効率化を支えている。今回の「プレミ
富士ゼロックス株式会社
コントローラ開発本部
コントローラプラットフォーム第五開発部
マネジャー
アムトークセッション」では、20 年以上に亘って複合機市場をリードしてきた富士ゼロックスでコントローラ開発を手掛けてき
柳澤 克彦 氏
た柳澤克彦氏をお招きし、同社の取り組みと、ARM ® Cortex TM-A9 MPCore TM プロセッサを搭載した新しい ARM デバイスの可能
性について伺った。
の使い方をしているお客様もいらっしゃい
アルテラは2011年10月に、ARM Cortex-A9
ます。ひとつの ASIC で全部のプロトコルに
MPCore プロセッサを搭載した「SoC FPGA」
対応しようとすると大変なので、ラインカー
を発表しました。概要を紹介してください。
ドごとに必要なプロトコルだけを FPGA に
小 山: ア ル テ ラ の「SoC FPGA」は、800
組み込んでサポートする、といった方法で
MHz 動作のデュアルコアの ARM Cortex-A9
す。当社としてもコンパニオンチップとい
MPCore プロセッサをハード IP として内部
う使い方は FPGA の訴求ポイントのひとつ
に搭載した最新の FPGA デバイスです。アル
と考えていて、さまざまな機会で提案して
テラでは「Nios® II」というソフト IP のプロ
います。
セッサコアを 10 年以上に亘って提供してき
ま し た が、 今 回 の ARM Cortex-A9 MPCore
FPGA ベンダーとしてアルテラを選んだ理
採用した理由をもう少し詳しく教えてくだ
由についてお聞かせください。
プロセッサは、より高速なシステム性能を
求めるお客様のニーズに応えるものとなり
柳澤:コンパニオンチップとしての FPGA
ます。ラインアップとしては、ミッドレン
柳澤:マイコンコアや画像処理エンジン
にモデルごとの機能を作り込むには、各回
ジの「Arria V SoC FPGA」と、ローエンドの
などで構成した SoC にモデルごとの機能も
路モジュールを簡単に取捨選択できる開
「Cyclone V SoC FPGA」の 2 シリーズでまず
積、ユーザーインタフェースの制御なども
すべて統合しようとすると、SoC の規模が
発 ツ ー ル が 不 可 欠 で し た。 ア ル テ ラ は 当
は製品化します。なお、システムに必要な
担当します。構成としては、マイコンコア
大きくなるばかりか、個々のモデルで見た
時、必要なモジュールだけを指定して FPGA
USB インタフェース、イーサネットコント
柳澤:入社当時はかつて存在したワーク
に画像処理エンジンやネットワークインタ
ときに使わない機能も搭載することになり、
を 構 成 す る「SOPC Builder」
( 現「Qsys」
ローラ、ブート ROM インタフェース、DDR
ステーションの開発を手掛けていましたが、
フェースなどを統合した独自開発の SoC(シ
コスト的にも冗長になってしまいます。そ
システム統合ツール)という開発ツールと、
メモリコントローラなども内蔵しています
先ほども述べたようにデジタル化によって
ステム・オン・チップ )と、モデル別の機能
こで、フレキシブルなモデル展開を実現す
「Avalon」という内部バスを唯一提供してい
柳澤:富士ゼロックスが最初にデジタル複
コピー機やプリンタにもネットワーク機能
を搭載した FPGA とを組み合わせています。
るために、SoC で構成されるベース部分は共
て、それが採用の決め手になりました。こ
合機を商品化したのは 1989 年です。それま
やコンピュータ的な要素が求められるよう
堀内:柳澤さんには当社の FPGA を 10 年
通化を図りシンプルにして、一方でモデル
ういったツールや内部バスの考え方は今で
でアナログ的に処理していたコピー機やレー
になり、ワークステーションを担当してい
近く使っていただいています。ちなみに一般
ごとの個別機能は回路を変更できる FPGA に
は 当 た り 前 に な っ て い ま す が、 私 た ち が
ザープリンタの内部がデジタル化されてきた
た知見を生かそうということで、1980 年の
のハードウェア回路は一度設計すると変更が
統合した、「SoC + FPGA」というアーキテク
FPGA を 採 用 し 始 め た 2000 年 前 半 に そ う
時期で、コピー機、ファクシミリ、レーザー
後半に複合機部門に移りました。現在は海
できませんが、
「フィールド・プログラマブ
チャをプラットフォームとして採用してい
いった環境を提供しているのはアルテラだ
プリンタ、あるいはスキャナ機能を一緒にし
外向けのローエンドモデルを中心に、「コン
ル・ゲート・アレイ」を略した FPGA デバイ
ます。2 年から 3 年おきに訪れる SoC の世代
けでした。
ようというアイディアが自然に生まれ、複合
トローラ」と呼んでいるハードウェア開発を
スには回路を自在に書き換えられるという特
交代時の機能ギャップを FPGA で吸収すると
機が誕生しました。その後、ネットワークな
担当しています。
徴があり、コミュニケーション、インダスト
いう目的もあります。
FPGA をコンパニオンチップとして活用
モデルごとの機能を FPGA に搭載
まず始めに複合機の歴史を簡単に説明し
ていただけますか?
さい。
柳澤様ご自身はどのような仕事をされて
きたのでしょうか?
して設計しておいていただければ、
「SOPC
で幅広く採用されています。アルテラでは現
LSI )との対比で論じられることが多く、開
Builder」と い う ツ ー ル を 使 っ て、 こ の 機
在、高性能と高集積を志向したハイエンドの
発費、量産コスト、開発期間といった観点
能は FPGA に入れる、この機能は入れない、
柳澤:「コントローラ」は複合機に内蔵さ
「Stratix® V FPGA」シリーズ、ミッドレンジ
で、それぞれの優劣が比較されることが少
といった指定が簡単にできるのが特徴で
れるメインコンピュータのような位置付け
の「Arria® V FPGA」シリーズ、およびロー
なくありません。しかし柳澤さんのチーム
す。 当 社 や サ ー ド パ ー テ ィ が 提 供 す る 標
堀内:本当に便利になりましたよね。ネッ
にあり、スキャンユニットが出力するデー
コストかつローパワーを狙った「Cyclone®
はそういった「FPGA vs ASIC」という対立軸
準 IP も 同 じ よ う に 選 択 可 能 で す。IP 同 士
トワークで端末とつながっているので、最
タを受けて、画像処理を行い、レーザーや
V FPGA」シリーズをラインアップしています。
ではなく、FPGA を「コンパニオンチップ」
を結ぶロジックを設計する必要がないの
近ではコピーした書類を PDF 化して自分の
感光ドラムを制御するエンジンユニットに
として使うフレキシブルなアプローチを早
で、 お 客 様 は 製 品 価 値 に 直 結 す る 本 来 の
ディスクスペースに保存する、といった使
デ ー タ を 出 力 す る の が 主 な 役 割 で す。 ま
先ほど SoC + FPGA でコントローラを構成
くから採用されています。きわめて合理的
設計に注力できるといったメリットがあ
い方もしています。
た、ネットワークなどの制御、データの蓄
しているとの説明がありましたが、FPGA を
で、しかも先進的な使い方だと思います。
ります。
タフェースの工夫、セキュリティ機能の搭載、
カラー化など、機能や性能のさまざまな面で
進化を遂げてきました。
ARM PARTNERS SUCCESS
その「コントローラ」について教えてくだ
さい。
プロセッサコアとして ARM アーキテク
チャを選んだ理由を教えてください。
小山:さまざまなアーキテクチャのサー
に 基 づ い て お 客 様 の 機 能 ブ ロ ッ ク を IPと
堀 内:FPGA はしばしば ASIC( カ ス タ ム
像度の向上、消費電力の削減、ユーザーイン
ので、高度な機能統合が可能です。
堀内:当社が定めた内部バス「Avalon」
リアル、放送機器、コンシューマなどの分野
どのコネクティビティの強化、印字速度や解
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高いレベルのフレキシビリティを実現
堀内:たとえばネットワーク機器で同様
「SoC FPGA」
ワールドワイドでの年間出荷台数が 300 万台を超え、組込み分野を代表するアプリケーションのひとつとなっているのが複合機
Cortex-A9 MPCoreを FPGAに統合
日本アルテラ株式会社
マーケティング部
部長
堀内 伸郎 氏
ARM PARTNERS SUCCESS
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日本アルテラ株式会社 ゲスト:富士ゼロックス株式会社
たいというのが私どもの願いのひとつでは
ミングの拡張を加えた C 言語ベー
柳澤:新規開発のシステムであれば「SoC
あるのですが、柳澤さんがおっしゃるよう
ス の オ ー プ ン な 規 格 で Khronos
FPGA」で ワ ン チ ッ プ 化 す る と い う 使 い 方
に、既存システムの構成や制約を踏まえた
Group(クロノス・グループ)とい
はたしかにあると思います。本格的な SoC
うえで、お客様にどういう提案をしていく
う業界団体が開発しています。メ
を開発するよりもはるかにお手軽ですよね。
かが、私どもの課題といえそうですね。
インプロセッサで実行する「ホス
化できるようにも思えるのですが。
柳 澤: ロ ー パ ワ ー か つ 高 性 能 な ARM
トコード」と、他のプロセッサコ
すでに存在するシステムを「SoC FPGA」で
Cortex-A9 MPCore プロセッサがデュアルで
アまたは外部のプロセッサやアク
置き換えたほうがいいかというと、ソフト
載っていて、しかも高速な FPGA ロジックも
セラレータが実行する「カーネル
ウェア資産をどう継承するか、あるいは再
使えるので、かなり複雑な処理を実現でき
コード」とで構成され、並列処理
検証や再評価をどうするか、といった問題
るだろうというのが今の期待値ですね。具
を実行する仕組みです。
が出てきます。さらに「SoC FPGA」は FPGA
体的な検討はこれからで、どのような差異
こ の O p e n C L の 手 法 を「 SoC
のこれまでの変遷の中ではかなり大きなト
化をしていくかは富士ゼロックス側の宿題
FPGA」の ソ フ ト ウ ェ ア プ ロ グ ラ
ランジションになるので、エンジニアにとっ
ですが、さらにいえば「SoC FPGA」という
ミ ン グ に 適 用 す る と、 上 位 の C/
ベイを行った結果、ARM に対するお客様の
ては、文化的かつ技術的なギャップを飛び
入れ物を与えられたときに、組込み業界と
C++レベルからは ARM Cortex-A9
ニーズがもっとも高かったことや、最新の
越えなければなりません。ですから、最初
してどういう付加価値を創造していけばい
MPCoreプロセッサとFPGAロジッ
28nm プロセスノードに最適と判断して、採
から全部を置き換えようとするのではなく
いかが問われているのかもしれません。
クとがシームレスになり、ソフト
用を決定しています。
て、もう少し現実的な導入戦略を立てたほ
いわば「お手軽 SoC」が実現できると。ただ、
日本アルテラ株式会社
プロダクト・マーケティング・マネージャ
小山 崇之 氏
堀内:ARM には強固なエコシステムが確
うがいいのかなという考えです。
立されているという点も挙げられます。また、
ハードとソフトの設計を効率化する
識することなく、お互いの機能分担を柔軟
手く進みません。「OpenCL」のお話がありま
サを利用するには、既製のマイコン製品を
シームレスな開発環境を提供
に変更することも可能です。現在アルテラ
したが、デザインエントリーの段階からハー
利用するか、費用と時間をかけて独自 SoC
では、カーネルコードを FPGA に実装する為
ドウェアとソフトウェアをシームレスに結
を 開 発 す る し か あ り ま せ ん で し た。「SoC
の研究開発プログラムを精力的に進めてい
ぶ設計インフラの整備はぜひお願いしたい
FPGA」の登場によって、自社製品に最適な
るところです。
ところです。
ユーザーベースが将来ハイエンドに広がって
具体的な構想はありますか?
いく可能性を踏まえると、現在 Cortex-M シ
柳澤:ひとつは、モデルごとの差異化の
「SoC FPGA」は、ハードウェア設計者とソ
リーズで構築している組込みシステムを、よ
部分を組み込んでいる現在の FPGA の置き
フトウェア設計者の協調設計が鍵になるよ
り高性能な Cortex-A シリーズにマイグレー
換えを考えています。今後要求されるであ
うに思います。アルテラではどのような設
ションする機会も増えてくるはずで、そう
ろう複雑な機能を、FPGA のロジックと ARM
計環境を提供する予定ですか?
いった応用に「SoC FPGA」を活用していた
Cortex-A MPCore プロセッサを使ったソフ
だきたいという狙いもあります。
「マイSoC 」あるいは「 マイARM 」を比較的
堀内:もうひとつ、アルテラではソフト
小 山:「SoC FPGA」は、FPGA の エ ン ジ
ウェアエンジニア向けに「SoC FPGA Virtual
ニ ア の 方 々 か ら 見 る と ARM Cortex-A9
小 山:FPGA 部 分 の 設 計 に は こ れ ま で ど
Target」と い う 仮 想 プ ロ ト タ イ ピ ン グ の
MPCore プ ロ セ ッ サ が 追 加 さ れ、 一 方 で
や「SoC」というキーワードから難しそうと
トウェアで実装すれば、FPGA 単体を使う場
おり「Quartus® II」という統合環境を提供
仕 組 み も 提 供 し ま す。 パ ソ コ ン 上 に 再 現
ARM ソフトウェアのエンジニアの方々から
いったイメージを抱くエンジニアのかたも
合に比べて、きわめてフレキシブルかつ高
す る 一 方 で、ARM Cortex-A9 MPCore プ ロ
し た 仮 想 的 な「SoC FPGA」を 使 っ て ARM
見ると FPGA というテクノロジが追加される
多いと思うのですが、アーキテクトやエン
性能な機能拡張が実現できるでしょう。し
セッサ向けのソフトウェアの開発には ARM
Cortex-A9 MPCore プロセッサや各ペリフェ
ことになるので、もしかしたらハードルが
ジニアの皆さんにとって自分たちの味方に
かも FPGA なので、SoC や ASIC に比べて開発
コミュニティのエコシステムをご紹介する
ラルの挙動をシミュレーションできるツー
すごく高いものに感じられる可能性がある
なる選択肢が増えると考えていただければ
柳澤:もちろんです。ARM アーキテクチャ
期間が短くて済み、タイムリーな市場投入
ことになります。「SoC FPGA」には ARM の
ルで、ソフトウェアエンジニアの皆さんに
わけです。そのハードルを下げていかない
と思います。たとえばソフトウェアでは性
ということもあり、評価ボードなどがリリー
が図れます。そういった方法が最初の落と
標準デバッグポートが装備されていますの
充実した開発環境をお届けしたいという取
と、お客様にとってもアルテラにとっても
能が出なかったときに、機能をハードウェ
スされたらぜひ導入してみたいと考えてい
しどころで、その次に既存の SoC を含めた
で、デバッグ方法は他の ARM プロセッサと
り組みの一環となります。FPGA ロジック部
ハッピーになりませんので、デバイスの提
ア化して FPGA 側にオフロードする、といっ
ま す。 最 近 で は ARM マ イ コ ン の 評 価 ボ ー
統合という話が出てくるのだろうと考えて
なんら変わりありません。このほか、ハー
分をハードウェア的に連動させることも可
案だけではなく、開発環境、応用方法、さ
た使い方も簡単にできるようになります。
ドが雑誌の付録として手に入るほどですが、
います。
ドウェアとソフトウェアの機能をハイレベ
能で、ソフトウェアとハードウェアの協調
らには、「文化」も含めた提案をしていかな
柳澤さんからいただいたいろいろなご意見
検証が実現されます。
いといけないなと感じています。
も参考にしながら、組込み機器の付加価値
このアルテラの「SoC FPGA」に興味はあ
りますか?
そういったお手軽な感じで評価できたらい
堀内:先ほど FPGA をコンパニオンチップ
ルかつシームレスで扱えるように、並列コン
ろいろなアイディアも沸いてきて面白いか
として活用されているというお話がありま
ピュータの開発環境として注目を集めてい
もしれません。とにかく期待と興味がある
したが、「SoC FPGA」によってソフトウェア
る「OpenCLTM」にも対応する予定です。
のは確かです。
を含めたコンパニオン化を実現しようとい
う考え方ですね。
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ウェア・エンジニアは FPGA を意
複合機ではどのような使い方が想定され
小山:お客様の既存のシステムを「SoC
ますか? 現在の SoC + FPGA をワンチップ
FPGA」を使ってワンチップ化していただき
ARM PARTNERS SUCCESS
「OpenCL」についてもう少し説明してく
ださい。
小山:OpenCL は、C 言語に並列プログラ
簡単に実現できるようになりますね。
堀内:もちろんそう願っています。
「FPGA」
柳澤:しばらくはアルテラと当社のよう
を上げる手段のひとつとして、さまざまな
アとソフトウェアにどのように機能を振り
なユーザーとがキャッチボールをしながら、
分野に価値や使い方を提案する活動を進め
分けるかが難しくなってきます。また、ソ
事例や応用範囲を広げていく必要があるで
ていきたいと考えています。
フトウェアで処理しているところをハード
しょうね。
柳澤:高度な集積化が進むとハードウェ
いろいろな可能性が拓けそうで楽しみで
ウェアに移したいとき、あるいはその逆の
ときに、お互いに断層があっては設計は上
これまで ARM Cortex-A シリーズプロセッ
すね。本日はありがとうございました。
ARM PARTNERS SUCCESS
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