屋上空間の利用によるエネルギー対策

本郷キャンパスの環境計画
C班 池田 大森 高橋 麻
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現在の電力消費量の推移
現状では本郷キャンパスにおける電力消費量は漸増傾向にあり、対
策を講じなければ、この後も増え続ける恐れがある。
(データ出典
東京大学環境報告書2008)
これに対しTSCP2012において、大学全体のCO2排出量を2012年
までに13%削減することを目標に掲げており、電力消費量もこれに
合わせて削減しなければならないといえよう。
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屋上全面を太陽光発電に利用した場
合
仮に本郷キャンパスの建物全てに太陽光発電を設置した場合、どれだけ
の電力がまかなえるのか試算する。計算にはシャープの産業用大出力
ソーラーパネルND-VOL7Hを使用した。
年間予想発電量は、
太陽電池容量×単位当たり年間予想発電量×a
で求められる。太陽電池容量=太陽電池の瞬間最大出力。ただし太陽光
発電は天候などの関係から最大でも80%程しか出力できないので、
係数a(a=0.6~0.8)をかける。
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太陽電池容量の計算
太陽電池容量=
太陽電池モジュールの公称最大電力×設置枚数
公称最大電力:機種によって異なる。ここでは210w
設置枚数:
計算の簡略化のためパネルを水平に並べて敷きつめていくものとする。
本郷の建物の屋上面積の合計は約30万㎡
パネルの寸法は1652×994×46.5mm≒1.642㎡
300000÷1.642≒182704
約18万枚!!
太陽電池容量=210×182704=38367840w
≒3万8400kw
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単位当たり年間予想発電量の計算
Ep=H×K×365÷1
Ep=年間予想発電量
H=設置面1日当たりの年平均日射量(kwh/㎡/日)
東京、真南の方角、角度30°の条件でH=3.74
K=損失係数‥‥約73%(年平均セルの温度上昇15%
パワーコンディショナ8%
配線、受光面の汚れ7%
)
365=日数
1=標準状態の日射強度(kw/㎡)
これを計算すると、太陽電池容量1kw当たり997kwhが年間予想
発電量になる
(参考:JPEA 太陽光発電協会 http://www.jpea.gr.jp/index.html )
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以上から、太陽電池容量=3万8400kw
単位当たり年間予想発電量=997kwh/kw
a=0.6
として計算すると、
3万8400×997×0.6=2297万8百kwh
≒23Gwh
これは本郷キャンパスの年間電力使用量(2007年)
207Gwhのうち約11%分に相当する。
ちなみにこの電力全てを火力発電で発電した場合、
CO2排出量は約7200t
(0.3145kg/kwhで換算)
本郷キャンパスの年間CO2排出量(2007年)
10.9万tのうち、約6.6%約削減できる。
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太陽光パネルの問題点
ƒ 初期投資コストが高い。
※例えば院庄林業株式会社(岡山県津山市)の場合、約5億円
かけて4020枚のパネルを設置した。単純計算では、
5億×18万/4千=225億円!
学生と教職員計3万6千人が一人当たり62.5万円出せば
設置できる計算になる。
(産業用太陽光発電には各省庁から最大で50%までの補助金が
出る場合があるが、今回の計算では考慮に入れない。)
参考:資源エネルギー庁HP(http://www.enecho.meti.go.jp/)
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屋上全面を緑化した場合
商業施設での施工例を元に、本郷キャンパスにおける屋上緑化の効果を算
出してみる
イオン豊中緑丘ショッピンセンターの折板屋根4,671m² の緑化を参考にする。同店で
は屋上を全面緑化したことで年間のCO2排出量を75トン削減できたとしている。
(http://www.bgpro.jp/)
東大本郷キャンパスの建物の屋上の総面積は297400㎡なので
75×297400/4671=494.5
おおよそ500tのCO2が削減できる計算になる
2007年度の本郷キャンパスのCO2排出量はおおよそ10万tなので、こ
れはその0.5%にあたる。残念ながら劇的な効果とは程遠い。
ちなみに施工費用は200㎡規模で18000円/㎡(工事費込)この場合
約5億7千万円になると予想できる。
参考:ブルー・ジー・プロ株式会社
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現在学内で行われている取り組み
TSCP2012の基本方針
①電力計設置による意識向上
②省エネ機器への更新支援
(・投資回収年数が機器更新年数の半分以下のもの
・年間CO2削減量と初期投資額との比が大きいもの
・回収年数が4年を超える分は,初期投資の補助も考える
・大型熱源系の省エネ化により約6%削減(初期投資額合計約5億円)
・照明・個別空調・冷蔵庫などの更新で約7%削減(初期投資額合計
約26億円) )
③大量調達による省エネ機器導入普及モデルの作成
④初期投資が回収でき,その後は光熱水費が削減でき
るその他対策も含め実施
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例: 蛍光灯の省エネ化
蛍光灯の交換
大学内の全蛍光灯の約二割(36000台)を、
消費電力半分のインバータ式蛍光灯に交換
年間1960tのCO2削減
初期投資は5億7千万円
6~7年で初期投資を回収する予定
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各対策の比較
初期投資
CO2削減量 割合
(年間)
費用対効果
(円/t)
太陽光発電
225億円
7200t 6.6%
312.5万円
屋上緑化
5億2千万円
500t 0.5%
104万円
蛍光灯の
省エネ化
5億7千万円
1960t 1.2%
29万円
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まとめと考察
ソーラーパネルの導入など、エコロジカルな施策
を施すことで、たしかに電力消費量を減らすことが
可能であり、目標に比しても、決して小さくはない
効果を得られることが実証できた。しかしその導
入・維持にかかる費用も非常に大きく、安易に推奨
できる額ではない点も判明した。
これらを鑑みると、ソーラーパネルの導入は本郷
におけるエネルギー計画の主力になるとは言えない
かもしれない。また屋上緑化も、同様である。一方
の省エネルギー蛍光灯の導入はすでに一部でも実施
され、費用対効果が大きいといえるため、その導入
は積極的に推進されるべきであろう。
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