直交復調の解説

直交復調の解説
15 Nov.2012
第1章 直交復調(直交検波)の原理
復調とは変調された信号を取り出して元に戻すことです。いろいろな方法がありますが、
デジタル処理を利用した直交復調の原理を示します。I は波形の同相(In-phase)成分、Q
は直交位相 (Quadrature) 成分を示します。I と Q は 90 度の位相差を持った直交波形で
す。アナログ信号を A/D 変換したデジタル信号を処理します。
変調波は f (t)= Asin (ωt+φ) と表現されます。振幅 A や角周波数 ω を音声信号で変調し
ます。
直交復調は外部から直交する2つの信号を変調信号に混合して、ローパスフィルタ
(LPF:Low Path Filter)を通した I と Q を利用する構造です。
I と Q から A と ω を計算できます。具体的には I と Q ベクトルの長さから振幅 A、I と Q
の角度から ω を求めます。原理からすればあらゆる変調を復調できます。
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なぜこのようなことができるかを直感的に捉えてみましょう。まず三角関数の公式
sin2 ( x)+cos2 ( x)=1 があります。そして 1 の掛け算は必ず元の数字です。つまり1の掛
け算は影響を与えません。これを巧みに利用したのが直交復調です。直交する sin と cos
を変調信号に掛けておき、それぞれを自乗して足せば sin と cos の影響を取り除けます。
I と Q を PC などソフトウェアで処理した場合、ソフトウェアラジオと呼ばれ、DSP など
ハードウェアで処理した場合、DSP ラジオと呼ばれます。行っている処理は同じです。
さて原理を理解してしまうと直交変調の前段も含めてデジタル処理してしまえばと気がつ
きます。現在は計算処理能力の関係で前段はアナログ処理が一般的です。計算処理能力が
十分あれば直交信号の混合からローパスフィルタも含めてソフトウェアあるいはハード
ウェアでデジタル処理できます。計算上の sin 波と cos 波を発生させ、混合処理は掛け算
すればよいだけです。ローパスフィルタも FIR フィルタあるいは IIR フィルタで実現でき
ます。つまり、はじめからおわりまでデジタル処理できます。
•
直交信号の混合=掛け算
•
ローパスフィルタ=FIR フィルタあるいは IIR フィルタ
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第2章 振幅変調(AM:Amplitude Modulation)
搬送波(carrier)
V c =C sin(2πf c t)
fc=搬送波周波数
C=搬送波振幅
信号波(signal)
V s=S cos (2πf s t)
fs=信号波周波数
S=信号波振幅
振幅変調波
S
S
V am=(V s+C )sin (2πf c t)=C sin( 2πf c t)+ sin(2π( f c − f s) t)+ sin (2π ( f c + f s ) t)
2
2
スペクトルとしては、fc,fc-fs,fc+fs が現れます。
変調度
S
m=
C
変調度は 100%を超えないようにします。
波形
信号を振幅変調し、振幅復調する様子を示します。波形は表計算上でシミュレーションし、
グラフ化したものです。
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搬送波形(10KHz)
AM 放送では 954KHz などですが、わかりやすいように周波数を落としています。
信号波形(1KHz)
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振幅変調波形
局発信号(3276.8Hz)
90 度位相のずれた信号を生成します。I 信号と Q 信号です。わかりやすいように
3276.8Hz とします。
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混合
振幅変調に I 信号と Q 信号を混合(掛け算)します。それぞれを I,Q とします。
振幅変調信号を Vs+C=X とおくと
V am=(V s+C )sin (2πf c t)= X sin (2πf c t)
X
X
I = X sin( 2πf c t)sin( 2πf i t )= cos ( 2π( f c − f i ) t)− cos (2π( f c + f i )t)
2
2
X
X
Q= X sin(2πf c t)cos( 2πf i t)= sin (2π ( f c + f i )t)+ sin(2π ( f c − f i) t)
2
2
fc+fi 成分は高周波ですので、ローパスフィルタで除去します。
計算上は fc+fi 成分を省略し、I'と Q'のみを使用します。
X
I ' = cos( 2π ( f c − f i) t)
2
X
Q ' = sin (2π ( f c − f i )t)
2
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ローパスフィルタ後の I'と Q'の波形
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振幅復調は I,Q ベクトルの長さを計算します。
√ I 2 +Q2
√ I ' 2+Q ' 2=
√
(
X2 2
X2
X V C
sin (2π ( f c − f i )t)+
cos 2 (2π ( f c − f i )t ))= = s +
4
4
2
2 2
C/2 という DC 成分を除去すれば、信号 Vs/2 が得られます。
AM 復調波形を示します。
こうしてみると局部発振は化学反応の触媒の役目を果たしているといえます。
外見的には復調に関係していないように見えます。
参考:三角関数の公式
sin2 ( x)+cos2 ( x)=1
1
1
cos (x) cos ( y)= cos (x− y)+ cos( x+ y )
2
2
1
1
sin( x) sin( y )= cos( x− y)− cos ( x+ y )
2
2
1
1
sin( x) cos( y)= sin( x+ y)+ sin( x− y)
2
2
1
1
cos ( x)sin( y)= sin( x+ y)− sin( x− y)
2
2
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第3章 周波数変調(FM:Frequency Modulation)
搬送波(carrier)
V c =C sin( ωc t)
fc=搬送波周波数
C=搬送波振幅
信号波(signal)
V s=S cos (ω s t )
fs=信号波周波数
S=信号波振幅 ひとまず 1 とします。
周波数変調波
t
V fm=C sin(ωc t+m ∫ Vs dt )=C sin(ωc t+
0
m
sin (ω s t))
ωs
m:変調指数
Δω Δf
m=
=
ωs
fs
Δf :最大周波数偏移(FM 放送では 75KHz)
参考:三角関数の微分公式
d
sin( x)=cos( x)
dx
d
cos ( x )=−sin ( x )
dx
参考:三角関数の公式
sin( x)
tan ( x )=
cos( x)
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搬送波形(20KHz)
FM 放送では 80MHz などですが、わかりやすいように周波数を落としています。
信号波形(1KHz)
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周波数変調波形
局発信号(20KHz)
90 度位相のずれた信号を生成します。I 信号と Q 信号です。FM 復調では局発に搬送波と
同じ fc を使用します。局発の信号生成には DDS:Direct Digital Synthesizer という技術が
あります。
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混合
周波数変調に I 信号と Q 信号を混合(掛け算)します。それぞれを I,Q とします。
計算しやすいように X =m∫ Vs dt とおくと
C
C
I =C sin (ω c t+ X ) sin(ω c t)= cos( X )− cos( 2ωc t+ X )
2
2
C
C
Q=C sin (ωc t+X )cos (ω c t)= sin(2ωc t+ X )+ sin( X )
2
2
2ωct+X 成分は高周波ですので、ローパルスフィルタで除去します。
計算上は 2ωct+X 成分を省略し、I'と Q'のみを使用します。
C
I ' = cos ( X )
2
C
Q ' = sin( X )
2
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ローパスフィルタ後の I'と Q'の波形
FM 復調は I と Q ベクトルの角度を計算します。
Q'
=tan( X )
I'
元の信号を含む X =m∫ Vs dt を知りたいので、arctan をとります。
−1 Q '
X =tan ( )
I'
最後に両辺を t で微分すると元の信号 Vs が求まります。
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FM 復調波形を示します。微分前の X 波形です。
sin ですので微分すると元の波形の cos になります。
微分はグラフの傾きですので、前後2点から傾きを計算すればよいだけです。
難しい計算は必要ありません。
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