重点課題❷ 雇 用 ・人 材 働きがいのある職 場づくりへの取 組み 百貨店は、 日々お客さまと接し、 ご要望を聞き取り、それにお応えしていく場であり、従業員が生き生きと働くことが できてこそ、お客さまに満足していただけます。三越伊勢丹グループは、従業員にとって働きがいのある職場環境 を整え、一人ひとりが能力や技術を高められる教育や処遇に配慮するとともに、心身の健康もサポートしています。 多様な雇 用形態(ダイバーシティ)の取 組み 三越では2006年度から、伊勢丹では 様々な働き方 2005年度から、 リーダーシップを発揮で 雇用形 態が異なる従 業員がともに働 きる自律性の高い有期雇用契約社員を く職 場 で、一 人ひとりがモチベーション 社員採用する制度を導入しています。 ま を高くもち、能 力を最 大 限に発 揮できる た、伊勢丹ではサムタイマー社員からメ ように、三 越・伊 勢 丹では制 度などの改 イト社員への登用制度も1998年以来実 善を推進しています。三越では、 スタッフ 施しています。 社員を対象に進級制度を導入したほか、 2 0 0 8 年から社員以 外の従 業員への福 利 厚 生 利 用 枠を拡 大しました。伊 勢 丹 2008年4月の入社式(伊勢丹) 有期雇用契約から社員への登用数 三越 伊勢丹 2006年 22人 8人 年からメイト社員、サムタイマー社員の処 2007年 39人 8人 遇の見直しを順次行なっています。 2008年 43人 11人 でも均 衡 待 遇の考え方に基づき、2 0 0 5 VOICE ~社員の声 有期雇用社員から社員への登用 スタッフ社員から社員になり、自分が担 従業員数内訳 (人) 三越 伊勢丹 6,541(59%) 社員 1,516(13%) 有期 雇用 プロスタッフ、 スタッフ社員 フェロー 2,546 スタッフ (23%) 516(5%) シニアスタッフ 3,566 (43%) 1,342(16%) メイト社員 パート 3,077 サムタイマー タイム (37%) 社員 その他 定年後の 再雇用など 291(4%) エルダー社員など 三越2月29日現在、伊勢丹4月1日現在 ( )内はシェア 17 三越 伊勢丹グループ CSRレポート 2 0 0 8 三越では、1998年から定年後の再雇 用制 度としてシニアスタッフ制 度を設け、 当する日々の業務だけではなく、お買場 の業務全体の流れをつかんで仕事をす るようになりました。また他のメンバー 経 験や知 識が豊かな6 0 歳 以 上の従 業 との連携にも配慮するようになり、視野 員が働く機 会を広げるとともに、次 世 代 が広がったのではないかと思います。努 育 成の役 割も担っています 。伊 勢 丹に も2 0 0 0 年からエルダー社員制 度があり、 ベテラン社員が活躍しています。 力して成果を上げれば評価されるのだ と実感でき、自信がつきました。 2005年スタッフ社員 として入社 2007年4月に 社員登用 三越日本橋本店 特選雑貨部 関根 彩乃 人 材 育成の取 組み 障がい者を戦力に 三 越では、それぞれの障がいに配 慮 した職 場 配 置を行なっています。2 0 0 7 させてきました。2 0 0 8 年 度からは「自律 研修施設が完成 性」 「構造性」 「継続性」 「実効性」の4 年度の障がい者雇用率は1.8%でした。 2 0 0 8 年4月、 「ファッションの 伊 勢 丹 つを基本スタンスとして人材育成プログ 伊勢丹は、主に知的障がい者の雇用 を支える創 造の発 信 拠 点と優しさの共 ラムの 体 系 化を進めています 。特に商 を促 進 する百 貨 店では唯 一の特 例 子 生 」をコンセプトに、研 修 施 設を備えた 品領域別教育については、販売責任者 会 社( 株 )伊 勢 丹ソレイユを2 0 0 5 年 1月 「ナレッジパーク落合ビル」が完成しまし が個人の販売力を強化するための手法 に設 立 。ギフトボックスの組 立てなどの た。大 教 室 前には、 「ファッションの伊 勢 を学ぶ研 修や、全 社 員を対 象にした商 販 売 支 援 業 務を担っています。その他 丹」の概要や歴史を伝えるパネル、現物 品 知 識セミナーの実 施を、 日本 橋 本 店 の部 門も含め2 0 0 7 年 度の障がい者 雇 資 料を展 示し、伊 勢 丹の強みや独自性 婦人用品部門から始めています。 用 率は2 . 0%でした。今 後も、三 越 伊 勢 などについて学べる場を設けています。 伊 勢 丹 では、 「 市 場 性ある専 門 性と 丹グループは、障がい者が十 分に能 力 自律 性をあわせもつ人 材 」の育 成をめ を発 揮できる職 務の提 供、職 場 環 境の ざし、人 材 育 成とキャリア開 発の2 本 柱 整備を推進していきます。 で教 育 研 修を展 開しています。百 貨 店 プロセールス資 格のほか、 「マタニティ・ VOICE ベビー コンシェルジュ」 「 パーソナルカ ~社員の声 ラーアナリスト」など、 より専 門 性の高い 社内資格を設け、お客さまのご要望によ 私たちも業績向上の戦力です 伊 勢 丹ソレイユでは、店頭の販 売員が 接客に専念できるよう、障がい者の正確 かつ持続的に作業する能力を活用して、 伊勢丹の概要・歴史を伝える展示 り深くお応えできる人 材 育 成を行なって います。2 0 0 8 年 4月には、教 育体 系と内 教育制度の充実 容を全 従 業 員に公 開 。一 人ひとりが 教 販売の支援業務を担っています。百貨店 で働くうえでの基本である「給料はお客 三越では、能力開発を通じてお客さま 育 研 修 の 全 体 像を把 握し、キャリア設 さまからいただいている」ことをきちん 満足の向上を図るため、社内外の資格 計に結びつけるための情 報を提 供して 取 得 推 奨 制 度や社 内 留 学 制 度を充 実 います。 と理解し、企業人としての責任をもって 業務に従事しています。 青木聡(写真左)は、2005年1月に入社。 「働き出してから3年たち、素直に人の話 す。得意な仕事は伝票のスタンプ押しで VOICE す。お客さまに喜んでもらえるよう、もっ 「マタニティ・ベビー コンシェルジュ」講師 を聞くようになり、父親も安心していま ともっとうまくなりたいです(本人談)。 」 星野浩子(写真右)は、2 0 0 5 年7月に 入社。 「不出来なものをつくるとお客さ まに迷惑がかかります。定年までソレイ ユで働いていたいです。試着用のフェイ スカバー折りが得意です。伝票の記入が できるように、帰宅後に毎日1時間字の 練習をしています(本人談)。 」 ~キャリアアップをめざせる研修制度 授乳室など設備が充実している百貨店には赤ちゃ 資格取得を通じて出産の仕組み、 ん連れのお客さまが訪れる機会も多く、正しい情報 妊 娠 中ならではの不 安 やつらい に基づいた心豊かなアドバイスが求められます。妊 気持ちがわかるようになり、お客 娠・出産・育児の世界動向や最新情報とともに妊娠 さまにかける言葉が変わりました。 カップルの出産に向けたレッスン立会いなど、妊婦 専門的な知識を得たことが自信に の気持ちに寄り添うことを重視した研修を実施して つながっています。これからもお います。お客さまとの絆を深め、モノ(商品)だけで 客さまに信頼してご相談いただけ なく、物語(命が生まれるストーリー)を伝えられる るコンシェルジュをめざして会話 ような販売員をめざしてほしいと思っています。 力を磨いていきます。 (有) バースセンス研究所 バースコーディネーター 大葉 ナナコ氏 青木 聡 資格を取得した社員の声 伊勢丹本店 ベビー子供用品 金森 理恵 星野 浩子 三越 伊勢丹グループ CSRレポート 2 0 0 8 18 ワークライフバランスに向けて います。2 0 0 7 年 1 0 出産・育児・介護への支援 月には、こうした制 三越・伊勢丹では、従業員の日々の生 度や就 業 管 理、給 活に大きな変化が生じても安心して働け 与 、福 祉 制 度など るように、出産休暇、育児休職や時間短 の総 務・厚 生に関 縮 勤 務、介 護 休 職などの制 度を充 実さ する疑 問に答える 「 サンキューコール せ、改善を重ねています。 センター」を設 置し、 支援制度の利用者数(2007年度) 三越 伊勢丹 育児休暇 116人 120人 育児勤務 334人 44人 介護休暇 8人 6人 従業員の制度活 用をサポートしてい ます。 伊 勢 丹 では、育 復職準備質問会の様子 児中や復職後のさらなる支援のため、育 さらにメイト社 員に対しては、子 供 が 小 児 休 職 後の職 場 復 帰にあたって制 度 学校に入学するまでの期間限定でサム 三越では、法定で1歳6か月までとなっ 取 得 経 験 者から体 験 談やアドバイスを タイマー社員へ 転 換できる制 度を2 0 0 8 ている育 児 休 職を、最 長で子 供 が 満 2 聞ける「ワーキングマザー・セミナー」を 年 4月に新 設し、1 0月から1 人が制 度を 歳になるまで取得することができます。育 2 0 0 2 年から開 催し、2 0 0 8 年 度には5 9 利 用しています。 また、やむを得ず育 児 児短時間勤務については、法定では満 人が参加しました。 また、2007年には新 や介護、配偶者の転勤を理由に退職し 3歳までですが、2007年度に小学校3年 たに育 児 中の従 業 員 が 悩みや情 報を た社 員やメイト社 員を対 象に、退 職 後 8 生 終了までに改 定しました。 また、2 0 0 4 共 有 できる「ワーキングマザー情 報 交 年 以 内は優 先 的に再 雇 用する制 度を 年度からは、男性従業員も毎年1人ずつ、 換 会 」、育 児 休 職中の従 業 員を対 象と 2008年4月に新設しました。 2007年度は2人が育児休職を取得して する「復職準備質問会」 も開催しました。 VOICE 仕事と家庭の両立支援 三越・伊勢丹では、従業員が家族と過 ~社員の声(育児休暇取得者) ごす時 間や、 プライベートな時 間を十 分 復職前は、育児(短時間)勤務、保 妻の二度目の妊娠が双子だとわかったとき、長男 に取れるように、年間20日の有給休暇取 育園などのことが不安でしたが、休 がまだ2歳だったこともあり、育児休職の取得を真 職中に送られてくる社内報で会社の 剣に考え始めました。取得にあたっては、上司の理 得を促進する制度を整えています。三越 動きを理解することができ、また復 解、同僚のサポートもあって、100%家族と向きあ では、家 族の誕 生日や記 念日に有 給 休 職 準備質問会や復職後のワーキン い、家事・育児に専念できました。休職前の引き継 暇を取 得できる「アニバーサリー休 暇 」、 グマザー・セミナーなど、きめ細や ぎを通して、仕事を見直す良い機会にもなりました。 かなフォローがあり、スムーズに復 休職中はスムーズに復職できるか不安でしたが、仲 定期健康診断や子供の運動会の日など 職できました。短時間勤務で成果を 間の支援のおかげで、無事に仕事に戻ることができ に取得できる「健康増進休暇」などを設 出すことの難しさを感じていますが、 ました。 け、2007年度には「ボランティア休暇」 も 職場の仲間の理解や、制度が整って 加わりました。 いることを心強く感じます。 伊 勢 丹 では、社 員の 年 間 有 給 休 暇 消 化 率が7 割を越えていますが、 さらに 取 得しやすくするために2 0 0 6 年に有 給 伊勢丹本店 ギフトサロン 岡本 真季 19 三越 伊勢丹グループ CSRレポート 2 0 0 8 休暇の取得条件を1週間単位から分割 三越伊勢丹ホールディングス 管理本部総務部 佐藤 朋広 可 能に改 定し、有 給 休 暇 取 得をさらに 推進しています。 重点課題❷ 雇 用 ・人 材 働きがいのある職 場 づくりへの取 組み 課題とこれからの展開 生き生きと働くために ステムなどをさらに整 備するとともに、必 これまで三 越・伊 勢 丹は、職 場 環 要に応じて、 自己と部下に対する健康づ 境や人材育成制度の充実を図って 従業員が心身ともに健康で、生き生き くり研修なども実施してきました。 また、元 きました。両 社の優れた点や強みを と業務を遂行できるように、三越・伊勢丹 気をなくしかけている従 業 員 への対 応 学びあい、 グループとしてより充実し では、従 業 員の健 康 づくりのために、定 として、職 場 で抑えていた感 情 や 思い た仕組みを構築できるよう定期的な 期 健 康 診 断 、健 康 相 談・指 導などの健 を表出したり、悩みや問 題を相 談できる 協議を進めています。 心身の健康管理 康支援活動を充実させています。 「 ハーフタイム」を設 置したりしたことで、 雇用に関しては、今後少子高齢化 三越では、2007年度から特にメンタル 重 症 化 防 止に効 果を上げています。一 の進行に伴い、労働力の確保が困難 ヘルスケアに力を入れ、全 国 店 舗の店 方、適 正な時 間 管 理に向けた取 組みと になることが予想されます。優秀な人 頭の責任者を対象に「メンタルヘルス研 して、適 切なタイムレコーダー打 刻の推 材を採用するためにも、現場で豊かな 修」を実施しています。従業員の悩みの 進によるサービス残業の抑止、週2回の 経験を積んだ従業員の流出を防ぐた 聞き方、産業医につなぐ場合の判断など ノー残 業デーの実 施などを職 場ごとに めにも、 さらに魅力的で充実した人事 を学び、職場で早期発見・予防に取り組 徹底しています。 制度への改善が必要と考えています。 めるよう支 援しています 。年 1 回の定 期 ワークライフバランスの観 点から 健康診断では、個別面談でのストレス度 は、育 児 休 職から復 帰した従 業 員 チェックを一部の店舗で実施しています。 のモチベーションの向上、育児短縮 また、マンモグラフィを取り入れ、女 性 従 勤 務 制 度を利用している従 業員の 業 員と従 業 員の 配 偶 者 の 乳ガン早 期 処遇など、一人ひとりの多様な条件 発見にも努めています。 に応じてさらに使いやすく制 度を改 善することも課題です。 伊勢丹では、2004年からメンタルヘル ス予防教育、病休者対象の復職支援シ 健康相談の様子(三越日本橋本店) 教 育 研 修 制 度については、お客 さまの声を聞き取る能 力 、お客さま VOICE のご要望を迅速に実現する能力の ~社員の声 ~総括産業医の声 開発を行なうために、従業員が向上 気軽に相談してください 言葉にすることが大切です 心をもち、自律した人 材になれる仕 企業には安全の確保および健康の保持増 からだの健康だけでなく、こころの健康管 組みをつくっていきます。 進を図ると同時に快適な職場環境の形成 理も行なっています。シフトや交代休日で、 が求められます。快適な職場環境づくりに 職場内のコミュニケーションがなかなか取 は 、ハラスメントやメンタルヘルスなどの れないなか、元気で仕事に従事してもらう 問 題は避けられない重 要な課 題です。こ ために、気軽に相談してもらえるよう心が れら人間関係の問題のほか、職場復帰時 けています。昨今、労働時間の問題などが の相 談など、従 業 員への支 援を目的とし 取り上げられますが、ワークライフバランス て、2004年9月に「従業員相談室」が開設 は個人が自覚して努力することも大切です。 されました。現在は産業カウンセラー2人 自分たちが笑顔になることでお客さまから のほか、ベテラン社員2人の計4人で守秘義 も笑顔をいただけるのですから、働く一人ひ 務のもと、三越グループで働く従業員から とりに幸せになってほしいと願っています。 相談を受けています。 三越 従業員相談室 室長 渋谷 信司 三越 人事部 人材育成担当 早川 正一 伊勢丹 人事部 人事キャリア担当 長澤 文 伊勢丹健康管理センター 所長 中谷 龍王 三越 伊勢丹グループ CSRレポート 2 0 0 8 20
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