品質の信頼性と安全への取り組み [13

重点課題❶
品 質・安 全 性
品質の信頼性と安 全への取 組み
昨今、食品などの商品への偽装表示が相次いで社会問題となり、品質管理の重要性が高まっています。三越・伊勢丹
では、長年にわたり築いてきた品質管理体制のもと、
お客さまに安心・安全な商品をお届けできるよう対策を重ねています。
経営統合に伴い、
お互いの優れた取組みを共有することで、
さらに品質管理体制を向上させる試みにも着手しています。
食の安 全を徹 底します
て指導を行ない事故防止に努めています。
店頭に展開する前に
また三 越・伊 勢 丹ともに、保 健 所 講 師
による「 衛 生 講 話 」や「 食 品 衛 生 責 任
三 越では、お取 組 先との新 規 契 約お
よび契 約 更 新 時に「 品質管理調査票」
者」の資格取得を推進するなど、
レベル
と該当商 品の商 品 表 示、および 細 菌 検
アップを図っています。
査結果などの提出をご協力いただいて
います。お取組先の品質管理体制や商
品の品 質などを確 認し、不 適 がある場
食品衛生点検の様子(三越日本橋本店)
三越・伊勢丹では、商品検査を自社で
行なう設備を整え品質管理体制の徹底
合は改善指導および取引の適否を判断
終了後には反 省 会を実 施するなど、食
しています。
また、新 規 取 扱い品につい
品衛生管理の徹底に取り組んでいます。 を図っています。両 社で食 品の細 菌 検
ては、安 全 性や適 正な表 示の裏 付けと
そのほか、厨房の衛生点検、ふき取り細
査を行なう施設を備えているほか、伊勢
して残留農薬データや産地証明書など
菌検査なども定期的に実施しています。
丹では衣料品の染色強度・耐洗濯性な
も適宜確認しています。
伊勢丹でも、新規調達時にはバイヤー
正しい知識で安全を守る
どの試験検査、ホルムアルデヒドの残留
検査なども自社で行なっています。陳列
が分析データなどを確認し、特に直輸入品
三越では、
独自の「食品衛生顧問制度」
前の検査から、抜取検査、お客さまから
(チョコレートなど)は品質管理室と連携
を設け、各店舗で保健所OB等を顧問とし、
のお申し出に対する検 査と原 因 究 明ま
厨房の衛生管理や商品の取扱いについ
で迅速かつ幅広い対応が可能です。
して、品質の事前確認を行なっています。
安心してお買い上げいただくために
三越では、各店舗の「社内食品衛生管
理者」が、冷蔵庫の温度検査、手指・調理
器具のふき取り細菌検査など、毎月テー
マを決めて衛生活動に取り組んでいます。
伊 勢 丹では、お取 組 先と連 携して毎
月第 3 金 曜日に安 全 衛 生 点 検を行ない、
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迅速な対応を支えるしくみ
三越 伊勢丹グループ CSRレポート 2 0 0 8
VOICE
~お取組先の声
安全な商品を提供します
製造や出荷時だけではなく、店頭でも様々な安全体制を整えています。
賞味期限や主な原材料の産地について店頭でご案内したり、自分の店で
の販売商品に貼付する販売日シールを他の店の販売員が確認する「クロ
(株)虎屋
三越日本橋本店
や爪が伸びていないかを毎日確認・記録し、衛生管理を徹底しています。 店長 筑間 正平氏
スチェック」を実施しています。また、店頭の販売員に対して、健康状態
品質 管理の 徹 底が 私たちの責 務です
ブサイトで公 開しています。現 在 、三 越
正しい表示を徹底するために
では全掲載品(約1,700点)の開示が完
三 越では、品 質 管 理を徹 底するため、
了。伊 勢 丹では約 7 5 0 点の開 示を行な
2 0 0 1 年 度に「 全 店 検 品 制 度 」を設けま
っており、順次、他商品にも広げていく予
した。毎月2回の「検品デー」では、朝礼
定です。
また、伊勢丹本店の生鮮食料品
後の一定の時間を利用し、販売員全員
「フレッシュマーケット」では、生 産 履 歴
で重 点テーマ項目を中心に商 品および
その表 示に不 適はないかといった検 品
繊維の検査の様子(伊勢丹品質管理室)
を実施しています。
これにより、定期的な
果などはフィードバックされ、各営業部と
検品が徹底されるとともに従業員の意識
お取組先および品質管理室で共有され
も高まり、接客していない時の確認作業
る仕組みになっています。
も日常 化 するなど、不 適 品 販 売の未 然
防止につながっています。検品の記録は、
従業員への教育・徹底方法
を閲 覧できるタッチパネル「 生 産 情 報モ
ニター」を2006年11月に設置しました。
課題とこれからの展開
経 営 統 合を機に、
さらに安 心・安
全な商品をお客さまにお届けできる
データ化し全 店で共 有、再 発 防 止に役
品 質 管 理を向 上させるためには、制
よう、それぞれの強みを学びあい、互
立てています。改善が必要な場合は、商
度を整えるのと同 時に、従 業 員 への教
いの優れた仕組みを最大限に生か
品 担 当や品 質 管 理 担 当からお取 組 先
育と現 場での一 人ひとりの実 践が不 可
した品質管理体制を整えていきます。
へ改善要請を実施し、重要な案件は担
欠です。
共 同 の 取 組 み の 第 一 歩として 、
当部を通して全店で情報を共有します。
三越では、通信講座用テキストをすべ
2008年1月に品質管理部会を立ち
伊勢丹では、計量担当と衛生担当が
ての従業員に配布し、
その内容に沿って
上げました。基本的な考え方を共有
毎月1回表示点検を行なうほか、改善が
「繊維」
「雑貨・家庭用品」
「食品」の部
するとともに、特に品 質 管 理上の問
必要な場合は、
「注意指導カード」で現
門ごとに通信講座を実施しています。各店
題が発 生しやすい物 産 展・外 国 展
場 管 理 者に報 告し、改 善 策を確 認して
舗ごとの解答結果を踏まえ、弱点をフォロ
の基本選定基準を策定し、本年より
います 。2 0 0 8 年 度からは、特に商 品の
ーする実践的な講習会も行なっています。
一部、現場での運用を開始しました。
入 替えが 頻 繁に発 生する本 店 地 下 催
伊勢丹では、毎年「繊維知識基礎講
今後は、三越の従業員全員での
事場の点検に専門機関を加え、表示確
座 」を開 催し、従 業 員のレベルアップを
品質チェックの徹底や、伊勢丹の充
認体制をさらに強化しました。
また、品質
図っています。
実した検査・試験体制による迅速な
管 理 室 が 定 期 的に衣 料 品などの表 示
確 認を実 施し、改 善が必 要な表 示につ
正しい情報提供
判 断・対 応など、互いの良さを学び
あいながら、日常 的な検 査 業 務 や
いては「表示点検報告書」で各営業部
三 越・伊 勢 丹では、商 品の品 質や産
基準、運用方法などを統一していく
に報告し、改 善を促しています。改善結
地などの情報を、適切な表示によってお
ために、引き続き品質管理部会でも
客さまにお伝えするよう努めています。
検討を進めていきます。
三越の食品表示点検スケジュール
いつ
毎朝
誰が
何を
店頭の販売員 消費期限の点検
毎月
店頭の販売員
第1・3水曜
表示や不適の
点検
伊勢丹の食品表示点検スケジュール
いつ
毎朝
誰が
店頭の販売員 消費期限の点検
毎週木曜 店頭の販売員
毎月1回
何を
品質管理室
三 越 全 店のレストランで行なっている
アレルギー情 報 開 示については、他の
百 貨 店にない厳 格な確 認ルールのもと
に、情報提供を行なっています。
三越・伊勢丹ともに、お中元、お歳暮の
カタログの一 部 商 品について販 売 期 間
表示の点検
中、賞味期間、原材料、添加物、特定原
表示の点検
材料(アレルゲン)
などの品質情報をウェ
三越 総合企画部
品質管理担当
工藤 尚一
伊勢丹 営業政策部
品質管理
霧生 賢次
三越 伊勢丹グループ CSRレポート 2 0 0 8
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地 域の 安 全のために
隊爆発物処理班など約150人が参加。不
大地震を想定した避難訓練が行なわれ、
審物発見という想定のもと、通報、避難誘
商 店 街の一 員として三 越・伊 勢 丹が参
導、爆発物探知犬の出動、X線撮影装置
加しました。広域避難場所である新宿御
2008年7月の洞爺湖サミット開催に向
による確認・処理を行ないました。
こうした
苑までの避 難 誘 導、けが人の搬 送など
け、三越日本橋本店では2007年10月、国
訓練を通し、災害が発生した場合でも適
の訓練を通じて、
日本一の乗降客数を誇
際テロ災害を想定した爆発物処理訓練
切に対応し、
お客さまの安全を守れるよう、
る新宿駅周辺の混乱防止のため、地域
を警視庁と合同で実施しました。訓練に
従業員の危機管理意識を高めています。
が協力して何をどの程度できるのか検証
お客さまの安全を守ります
テロ対策訓練
は、三越の従業員をはじめ警察署や機動
帰宅支援の訓練にも取り組んでいます
していくことの重要性を再認識しました。
2 0 0 7 年 1月に千 代 田 区において、災
害時に帰宅者を支援するための総合防
災 避 難 訓 練が行なわれ、伊 勢 丹は、地
図や情報を提供する掲示訓練に参加し
ました。翌 2 0 0 8 年 1月には、
「新宿駅周
機動隊員が爆発物を特殊車両に収容
辺滞留者対策訓練協議会」が主催する
広域避難場所の新宿御苑まで、避難誘導
安心してお買物いただくための店舗・施 設
快適で安心な店舗
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より安全な建物になりました
AEDを設置しています
三 越日本 橋 本 店 本 館の耐 震 改 修に
三越日本橋本店本館は、1914年の落
三越・伊勢丹の本支店では、お客さま
伴い、すべてのお客さまが 快 適で安 全
成以降1964年まで増築を重ねて建設さ
の緊急事態に迅速に対応するため、AED
にご利用いただける店舗づくりの一環と
れ、東京都選定歴史的建造物第1号に
(自動体外式除細動器)
を設置していま
して、地 下 1 階 床の南 北 約 1メートルの
指 定された建 物です。
この貴 重な建 物
す。従業員への普通救命講習などを通じ
高低差を解消する工事を行ない、バリア
を保存するため、そして何よりもお客さま
て使用方法の教育を実施し、万一の場合
フリーを実現しました。
に安心してお過ごしいただけるより安全
に備えた救急救命体制を整えています。
伊勢丹本店では、副都心線開通に先
な建 物にするため、新たに免 震 装 置を
2007年8月、三越仙台店前で心肺停
立ち、地下1階のお客さま用玄関スペー
組み込むことで地震による揺れを1/3~
止状態の男性を警備部員がAEDを使
スを広くとることで、ゆとりのある空 間を
1/5程度に低減する免震工事を行ない
用し救助するなど、人命救助に役立てら
実 現しました。混 雑 時にもスムーズに目
ました。約 3 年の歳月をかけて2 0 0 8 年 6
れています。
的 地 へ 移 動できる導 線を確 保し、一 層
月に完成。免震装置の一部は地下中央
安全で快 適な環 境 整 備を行ないました。
口と銀座線口でご覧いただけます。
新宿三丁目駅につながる伊勢丹本店本館地下東南玄関
免震工事後のイメージ
三越 伊勢丹グループ CSRレポート 2 0 0 8
救助にあたった(株)三越環境ビル管理
警備部の加納卓也
重 点 課 題 ❶ 品 質・安 全 性
品 質の信 頼 性と安 全 への取 組み
信頼できる商品やサービスの 提案による信頼 作り
新たな信頼を生み出す商品
マザーハウスとの取組み
三 越 は 、2 0 0 7 年 5 月から福 岡 店 で
( 株 )マザーハウスの 製 品 の 取 扱 いを
始め、多くのお客さまから高い評 価をい
ただいています。
を力強く実現しているマザーハウスの製
品を扱うことは、三 越の企 業 活 動として
非常に意義深いことだと考えています。
オンリー・アイ商品
肌にも、地球にもやさしいグリーンウール
タイからやってきた
安全で環境にもやさしい玩具
樹液の採れなくなったゴムの木は、以
前は廃棄されるだけでしたが、
タイのプラ
ントイ社では、子供向けの知育玩具に生
お客さまに本当に安心していただける
まれ変わります。環境にやさしいだけでな
マザーハウスは、先 進 国の市 場で通
ものをつくりたいとの 思いから、伊 勢 丹
く、その品 質と安 全 性は国 際 基 準の認
用する高 品 質な商 品を後 発 開 発 途 上
は畠山メリヤス( 株 )
と共 同し、約 2 年か
証を受け、デ ザイン性も世 界 各 国 で評
国バングラデシュで生 産することで、現
けて肌 へのやさしさだけでなく、地 球 環
価されています。伊勢丹は、2004年から、
地 の 人たちが 誇りとプライドをもって自
境にも配慮したオーガニックウール「グリ
国内の百貨店で初めてプラントイを展開。
力で前 進できることをめざし、山口絵 理
ーンウール」を完 成させました。原 毛 が
現地生産者との交流会にも参加し、産業
子 氏 が 2 0 0 6 年 に 設 立したブランドで
製 品になるまで、紡 績、編み立て、縫 製
発展のために情報提供も行なっています。
す 。地 元 産の天 然 繊 維ジュートや革な
の 各 段 階において公 的 機 関 の 認 証を
ど地 球 環 境にやさしい素 材を使ったバ
受けています。企 画に賛 同いただいた
ッグや 財 布 は 、現 地 の 従 業 員 が 高 い
ブランドやデザイナーとコラボレートし、
フ
意 欲を保てる契 約 条 件・労 働 環 境のも
ァッション性も兼ね備えた商 品を提 案し
と、丁 寧に製 造しています 。
また、現 地
ています。
のストリートチルドレンの 就 学 支 援など
の社 会 貢 献 活 動も推 進しています。
現地の工場を視察するバイヤー(一番左)
「デザイン・品質管理を徹底し、お客さ
着物の相談、お任せください
まに満 足していただく」ことを第 一の企
業理念とし、持続可能な新しいビジネス
三越日本橋本店では、着物の染み抜
き、洗 い 張り、仕 立て直しなど 、お手 入
れ全 般に関するご相 談を承っています。
2 0 0 4 年 1 0月から「きものお手 入れ相 談
コーナー」を常設し、他店でお求めの着
物に関するご相 談も受け付けています。
三越福岡店マザーハウスコーナー
VOICE
ホームページで生産情報が確認できます
www.greenwool.co.jp
長 年 呉 服の販 売を経 験しているベテラ
ンの社員が的確かつ迅速に対応してお
り、昨年度は約5,000件のご相談を受け
ました。
~お取組先の声
大量消費の流れのなかで、安くて品質の悪い商品を、希望をもてずに
うつむいて作っているバングラデシュの人たちを目の当たりにし、
高品質な製品作りによるビジネスを実現させることで社会を変えた
いと強く思い起業しました。
「百貨店での販売」は品質の高さが認め
られた証でもあり、起業当初からの目標のひとつでした。三越との取
引の実現で、当社の信用が高まるとともに、より多くのお客さまとの
温かな信頼関係が広がり、前進する活力となっています。
(株)マザーハウス
代表取締役
山口 絵理子氏
きものお手入れ相談コーナー
三越 伊勢丹グループ CSRレポート 2 0 0 8
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