第14回石炭利用技術会議 【 講 演 Ⅲ 】 各国の石炭灰関連規格とその将来動向 ○田 野 崎 隆雄、 加藤 将裕 太 平 洋 セ メ ン ト (株 ) 1.はじめに 地球の環境保全に配慮して持続可能な発展を行うためには、石炭利用に伴う環 境負荷の低減が必要である。中でも燃焼後に発生する石炭灰の処理は、限られた 化石燃料を適切に利用するために不可欠であり、そのための環境負荷の定量化が 求められている。灰排出を負の側面と見る だけではなく、灰活用の正の部分を加 味 し た 、 総 合 的 な 政 策 判 断 の ツ ー ル と し て の 判 定 「 標 準 」設 定 が 必 要 と さ れ て い る 。 フ ラ ン ス 環 境 省 で は こ の 正 負 の 総 合 を 「 バ ロ リ ゼー シ ョ ン 」判 定 と し て 、 埋 立 税 算 出 の 基 礎 と し て い る 1 )。 従 来 よ り 、石 炭 灰 の 大 部 分 を 占 め る「 フ ラ イ ア ッ シ ュ 」の 処 理 は 、石 炭 利 用 面 ・ 環境影響評価面・有効利用面から多くの検討・研究がなされてきた。学術用語と し て の「 フ ラ イ ア ッ シ ュ 」と は 、熱 処 理 工 程 に お い て 発 生 す る 大 気 汚 染 物 質 の「 ば い じ ん 」を 捕 集 し た 「 飛 灰 」の こ と で あ る が 、 国 際 的 に 流 通 す る 「 フ ラ イ ア ッ シ ュ 」と は 、 石 炭 微 粉 砕 燃 焼 後 に 捕 集 さ れ た 飛 灰 を 特 に 「 管 理 し て 出 荷 す る 製 品 」 と さ れ て い る 。1950 年 代 よ り 米 国 で セ メ ン ト 混 合 材 と し て 規 格 化 さ れ て 以 来 、日 本 の JIS 策 定 等 、 各 国 で 各 種 の 品 質 保 証 の 取 組 み が な さ れ 、 各 種 建 設 用 途 に 世 界 中で利用されてきた。 2004 年 12 月 現 在 の 時 点 で 、 「 フ ラ イ ア ッ シ ュ 」の 国 際 規 格 ISO は 存 在 し な い が 、 その萌芽となるべきものが欧州で策定されつつある。それは近年の環境問題への 関 心 の 高 ま り を 配 慮 し た も の で 、 ISO 化 さ れ た 場 合 、 日 本 や ア ジ ア 地 域 に 大 き な 影響を与えることが予想される。そこでこれら各種の関連規格類の策定の状況を 説明することにより、日本の石炭利用促進の一助としたい。 2 .石 炭 灰 の 発 生 状 況 と 石 炭 灰 関 連 規 格 類 の 策 定 状 況 2.1 COP3 以 前 の 策 定 状 況 表 1 に 1995 年 時 点 で の OECD 加 盟 国 の 石 炭 灰 発 生 状 況 を 示 す 。ま た 、世 界 の 有 効 利 用 の 総 計 を ま と め た の が 図 1 で あ る 。 規 格 化 が 行 われ た の は 建 設 資 材 の 中 で も セメント・コンクリート用途となっており、その製品仕様が各国で策定されてき た 。表 2 に そ の 一 覧 を 、表 3 に 規 格 項 目 の 比 較 を 示 す 。こ の 時 点 で は EU 統 合 の 経 済 統 合 も 本 格 化 し て き て お り 、1994 年 に BS3892 な ど 欧 州 各 国 規 格 を 総 括 す る「 コ ン ク リ ー ト 用 フ ラ イ ア ッ シ ュ 」と し て EN450 の 策 定 が 始 ま っ た 。 第14回石炭利用技術会議 表1 1995 年 時 点 で の 各 OECD 加 盟 国 の 石 炭 灰 統 計 統計年 日本 韓国 アメリカ カナダ メキシコ オーストラリア 英国 フランス ドイツ スペイン イタリア オランダ ベルギー デンマーク ギリシア トルコ 1993 1992 1994 1992 1992 1992 1994 1993 1992 1994 1994 1994 1992 1992 1992 1992 石炭灰発生量kt フライアッシュ発生量kt 灰有効利用率% 6,402 5,569 66,677 8,464 2,000 8,175 8,443 1,723 20,040 8,459 587 941 892 1,176 7,630 13,866 5,264 1,868 49,780 7,309 1,700 7,351 6,830 1,436 14,300 7,140 648 841 776 1,043 7,000 12,426 62 94 29 12 2 11 48 95 99 72 80 103 63 78 89 25 セメントコンクリート用 土木関連 建築関連 道路用 その他有効利用 埋め立て 図1 表2 1995年度における世界のフライアッシュの有効利用用途 1995 年 時 点 で の 各 国 の コ ン ク リ ー ト 用 フ ラ イ ア ッ シ ュ 規 格 表3 カナダ CAN/CSA-A23.5 1986 アメリカ ASTM C618 1992 オーストラリア AS3582 1991 日本 JIS A 6201 1991 韓国 K4SL5405 1982 ロシア GOST 6269 1963 中国 GB1596 1991 インド IS3812 1981 イギリス BS3892 1982 EU EN450 1994 各国のコンクリート用フライアッシュの仕様 第14回石炭利用技術会議 CAN/CSA AS3582 JISA6201 K4SL5405 GOST6269 GB1596 1991 Ⅰ Ⅱ Ⅲ ≦3 ≦1 ≦1 ≦1 ≦1 ≦1 − ≦6 ≦6 ≦5 ≦5 ≦10 ≦5 ≦8 ≦15 ≧45 ≧70 ≧70 ASTM C618 IS3812 ClassC/ClassF ClassC/ClassF 付着水分% ig.Loss% SiO2 % ≦3 ≦6 ≦3≦3 ≦6≦6 ≧50 SiO2+Al2O3+Fe2O3% Cl % FreeCaO% 反応性CaO% MgO% SO3% Na2O% FreeNa2O% FreeP2O5 ≦12 ≧35 ≧70 EN450 prEN450-1(2004) 1994 A B C ーー ー ー ≦7 ≦7 ≦9 ≦11 反応性SiO2≦22 ≦0.1 ≦0.1 ≦2.6 ≧65 ≦0.1 ≦2.6 ≦4.5 ≦4.5 ≦3 ≦3.5 ≦5.5 ≦10 ≦5 ≦4 ≦3 ≦5 ≦5 ≦5 ≦3 ≦3 ≦3 ≦3 ≦1.5 ≦5 ≦2.75 ≦4.5 ≦2.5 ≦11 ≦1.5 ≦0.011 ≧2400 ブレーン法表面積 cm2/g ≦34 45μ篩い通過率% ≦34 ≦34 ≦34 密度 ≧2500 ≦40 ≦12 ≦20 ≦45 ≦12.5 ≧2.00 ≧1.95 ≧75 ≧75 活性度7日齢% 活性度28日齢% 活性度91日齢% 水量比% ≧75 ≧75 ≧75 ≧75 ≧75 ≧75 ≦105≦105 ≦0.8 ≦0.03 ≦0.02 オートクレーブ膨張率% 乾燥収縮率% アルカリ反応性% BS3892 Part1 ≦0.5 ≦7 膨張として≦60 ≧60 ≧70 ≦102 ≧85 ≦105 ≦0.5 ≦0.03 ≧85 ≧95 ≧105 ≧115 ≦105 ≧80 ≦105 ≦95 ≦40 ±0.15 ±15% ±0.225 ≧75 ≧85 ≧70 ≧80 >97(粒度ばらつきが13%以上のときのみ) し か し そ の 作 業 は SI 単 位 へ の 移 行 、 セ メ ン ト 規 格 EN197 と の 整 合 性 が 主 で あ り 、 新しい仕様を取り込もうというものではなかった。た だセメント物質としてのフ ラ イ ア ッ シ ュ の ポ ゾラ ン 活 性 を 表 現 す る も の と し て 、k 値 が 注 目 さ れ 、Rilem( 国 際 材 料 構 造 試 験 研 究 機 関 連 合 )な ど で そ の 数 値 化 に 着 手 す る と い う 動 き も 生 じ た 。 ア ジ ア 諸 国 で は ASTMC618 規 格 の 方 が 知 ら れ て い た 。 一 方 で 有 効 利 用 ・ 廃 棄 の 実 態 に 関 わら ず 適 用 さ れ る 環 境 影 響 評 価 は 、 1994 年 刊 行 の IEA レ ポ ー ト 68− Legislation for the management of coal ash using residues に 総 括 さ れ て い る よ う に 、水 を 介 し た も の が 主 と な り 、そ れ は Leaching テ ス ト を 行 う 形 で 各 国 と も 暗 黙 の 合 意 が 形 成 さ れ て い た 。Leaching テ ス ト と は 水 へ の 注 目 物 質 展 開 を 、 室 内 で 迅 速 に 行 わせ る 模 擬 試 験 で あ り 、 表 4 に そ の 一 例 を 示す。 表 4 1995 年 時 点 で の 各 国 公 定 の Leaching テ ス ト 方 法 日本 米国 ドイツ フランス オランダ EU 環境庁告示13号 TCLP DIN38414S4 NFX31-210 NEN7345 prEN12457(1994) 粒径(mm) <5 <9.5 <10 <4 <3 <4 展開溶液 蒸留水+HCl pH2.88の酢酸 イオン交換水 イオン交換水 pH4の硝酸 イオン交換水 L(液体)/S(固体)比 10 5 10 10 2 10 試験試料量(g) >50 100 100 100 40 100±5 振とう時間(時間) 6 18 24 16 24 24 振とう方法 直線 回転 回転 直線 回転 回転 5μメンブレンフィルターろ過 0.6μガラスフィルターろ過 5μメンブレンフィルターろ過 5μメンブレンフィルターろ過 5μメンブレンフィルターろ過 5μメンブレンフィルターろ過 固液分離法 こ れ ら は 各 国 の Compliance 規 定 で あ り 、有 害 性 物 質 か ど う か の 判 定 に 用 い ら れ る も の で あ る 。日 本 で は 環 境 庁 告 示 1 3 号 法 が そ れ に 当 た る 。米 国 で は RCRA( 資 源 保 全 回 収 法 )に よ り 1988 年 に 石 炭 灰 を C 型「 危 険 性 廃 棄 物 」か ら 除 外 し た 。1989 年 に 締 結 さ れ た バ ー ゼ ル 条 約 で も 、石 炭 灰 は 有 害 物 質 と し て 選 定 さ れ ず 、OECD 諸 国内では石炭灰は、有害レッドリストに記載される廃棄物ではないという地位が 確立された。 第14回石炭利用技術会議 2.2 COP3 以 降 の 策 定 状 況 し か し 1999 年 か ら 施 行 さ れ た 欧 州 IPCC 指 令 で は 、こ れ ま で 大 気・水 質・廃 棄 物 といった環境質毎の対策ではなく、環境を一体として捉え総合的な対策を推進す ることとなった。例えば、これまでは環境基準をもとに手続的に処理計画を策定 する国と、排出基準をもとに実際的に規制を策定する国との間で廃棄物管理の差 が 大 き か っ た が 、2002 年 12 月 19 日 に 最 終 的 に 両 者 か ら 選 択 で き る こ と で 同 意 に 達した。その結果欧州では、発電所より発生する副産物も、最初は「廃棄物 」と みなすという考え方が採用されることとなった。米国においても、石炭燃焼時の 環 境 負 荷 を 問 題 視 す る 環 境 団 体 が 強 い 発 言 力 を 持 ち、 米 EPA に 石 炭 灰 を 有 害 物 質 と 指 定 す る よ う に 働 き か け る 動 き が 盛 んと な っ た 2 )。 米 国 で は 石 炭 火 力 発 電 所 か ら の 重 金 属 排 出 問 題 に 関 心 が 集 ま り 、ま た 発 展 途 上 国 に 石 炭 火 力 発 電 所 を ODA( 政 府開発援助)で建設するための環境影響評価を、世界銀行が義務付けた。 し か し 、よ り 直 接 的 に 影 響 を 及 ぼ す で あ ろ う も の は 地 球 温 暖 化 問 題 へ の 関 心 の 高 表5 prEN450−1(2004)の目次 まりであり、それは欧州規格 はじめに 1 適用の範囲 2 関連規格 3 用語と定義 4 混焼に伴うフライアッシュに対する特記事項 4.1混燃物 4.2混燃によるフライアッシュ適合性について 4.3環境との共存性 5 細目 5.1 概論 5.2 化学的特性 5.3 物理的特性 5.4 他の特性 5.5 ユーザーに対する情報提供 6 パーケージングとCEラベリング 7 サンプリング 8 適合判定 8.1一般事項 8.2統計的適合性 8.3一点データによる検定 AA 危険物質および放射能の放出に関して AB Sフライアッシュに対する水量比の検定法 AC 溶解性P2O5の計量法について AZA EU指令に対応した条項 文献 EN450 の 改 定 に も 現 れ て い る ( 表 3 に 併 記 )。2004.12 現 在 同 規 格 は 改定審議中であり、大きなターニ ングポイントの時期を迎えている。 表5にその目次を示す。改定に至 る背景はこの規格には明記されて はいないが、 「コンクリート用途へ の 技 術 仕 様 」の み な ら ず 、 「環境側 面 へ の 配 慮 」が 前 面 に 押 し 出 さ れ たものである。 特に注目すべきは表6に示すよ う な 、「 石 炭 以 外 の 燃 料 の 混 合 燃 焼 」を 前 提 と し た 灰 品 質 の 管 理 で ある。これは化石燃料使用量の削 減を図る地球温暖化対策に対応す るとともに、特に「廃棄物燃料」 利用のリスクへの懸念を配慮した ものとなる予定である。廃棄物利用に伴う重金属含有量の測定など(必須ではな い ) ユー ザー の リ ク エス ト に 対 応 す る よ う に と し て い る 。 表6 1 2 3 4 5 6 7 prEN450‑1 記 載 の 混 焼 燃 料 一 覧 植物性物質、木屑・麦藁・オリーブ殻他植物性繊維 非乾燥木材、栽培バイオマス 肉骨粉 都市下水汚泥 ペーパースラッジ 石油コーク 実質上無灰の気体及び液体燃料 第14回石炭利用技術会議 表 3 で EN450 の 1994 年 バ ー ジ ョ ン と BS3892 を 比 較 す る と 、 BS を そ の ま ま 採 用 し た 項 目( Cl や MgO 含 有 量 )が あ る 反 面 、水 量 比 や SO3 量 な ど は 緩 和 さ れ て い る。これは欧州統合に伴い、良質のフライアッシュを入手できない諸国の状況に 配慮した結果である。特記すべきことはドイツなどでの湿灰の利用を踏まえ、湿 分 の 項 目 を 削 除 し た 点 で あ る 。 EN450‑1994 年 バ ー ジ ョ ン と prEN450‑1(2004)の 比 較 で は 、化 学 成 分 の 測 定 項 目 が 増 え て い る 。ま た 、オ プ シ ョ ン な が ら も Leaching に よ る 化 学 物 質 放 出 の リ ス ク 計 測 、放 射 能 測 定 も 加 え ら れ て い る (現 在 の と こ ろ そ の 検 定 法 は 指 定 さ れ て い な い )。 こ の EN450 の 改 定 動 向 は 今 後 、 予 断 を 許 さ な い 。 な ぜ欧 州 動 向 が 日 本 に 関 係 す る か と い う と 、 EN (European Normalization) 規 格 が 審 議 な く し て ISO 規 格 化 さ れ る こ と が 可 能 と な っ て い る か ら で あ る 。そ し て ISO 化 さ れ た 場 合 、 ISO と 矛 盾 し な い JIS 規 格 制 定 の 義 務 を 負 っ て い る か ら で あ る 。 2.3 EN 規 格 類 の ISO 規 格 化 1947 年 に NGO と し て 発 足 し た ISO(International Organization for Standardization)は 、「 物 資 及 び サ − ビ ス の 国 際 交 換 を 容 易 に し 、 知 的 、 科 学 的 、 技術的及び経済的活動分野の協力を助長させるために世界的な標準化及びその関 連 活 動 の 発 展 開 発 を 図 る こ と 」を 目 的 に 活 動 を 行 う 組 織 に 位 置 付 け ら れ た 3 )。 し か し 、欧 州 は ISO の 他 国 際 規 格 に お け る 優 位 性 を 保 持 し て い る 。1989 年 に 発 効 し た ウイ ー ン 協 定 は 、欧 州 の 策 定 規 格 EN を ISO の 委 員 会 審 議 を 経 る こ と な く 、全 体 投 票 に か け る こ と が で き る こ と を 定 め た 。そ の た め 、EN が そ の ま ま ISO 原 案 に な る 状 況 も 生 じ 得 る た め 、 日 本 な ど 欧 州 外 の 諸 国 も 欧 州 標 準 化 委 員 会 (CEN: Committee of European Normalization)の 決 定 事 項 に 影 響 さ れ る こ と と な っ て い る 。 ISO 規 格 と な っ た 場 合 、 世 界 貿 易 機 構 (WTO: World Trade Organization)の 技 術 的 理 由 に よ る 自 由 貿 易 の 阻 害 防 止 (TBT: Technical Barriers to Trade)協 定 に よ り 、 WTO 加 盟 各 国 は そ の ISO 規 格 と 国 内 法 と の ハ − モ ニ ゼ− シ ョ ン を 行 わ ね ば な ら な い た め 、 ISO 規 格 が 国 際 貿 易 の 共 通 の 試 験 法 と し て 参 照 さ れ る こ と が 多 く な っ て い る 。 従 っ て ISO14000 シ リ ‑ズな ど に 従 い 環 境 影 響 評 価 を 行 う 場 合 は 、 EN 規格策定段階からその動向に注意していなければならないことになる。 3.欧州における規格類の「標準」化の動向 3.1 ハーモニゼーションの意味 上 記 EN450 へ の 対 策 の た め に 欧 州 事 情 の 理 解 が 必 要 で あ る 。 我 々 は 法 規 を 含 め た さ ま ざま な 規 範 に 従 い 活 動 し て い る 。 そ の 規 範 に 対 す る 適 否 の 判 断 は 社 会 的 に 合 意 さ れ る べ き で あ る が 、 昨 今 の よ う に 国 際 化 (グ ロ − バ リ ゼ− シ ョ ン )が 進 展 す ると、多様な価値観をもつ人々が多様な規範に基づき判断することになり、容易 に 合 意 を 得 る こ と が で き な い 。そ こ で 規 範 の ハ − モ ニ ゼ − シ ョ ン (調 和 あ る い は 標 第14回石炭利用技術会議 準 化 )が 必 要 と な る 。 ハ ー モ ニ ゼ ー シ ョ ン は 限 ら れ た 地 球 の 資 源 を 有 効 に 活 用 し 、 持続可能な発展のためには不可欠の作業である。その意義は以下のように整理さ れる。 ① 共通認識:同じ単位を用いて測定した結果は、どこでも同じ量を意味する ② 製品の互換性:どの製造工場の、どのメ−カ−の部品であっても同じ用途 に使える ③ 安全確保:漏電防止・難燃性など安全性を数値化し客観性を持たせる ④ 消 費 者 利 益 : JIS マ − ク の 表 示 な ど で 一 定 の 品 質 で あ る こ と が 保 証 さ れ る ⑤ 技 術 普 及 の 促 進 : ハ − ド ウ エ ア の 規 格 が 設 定 さ れ て ソフ ト ウ エ ア が 発 展 す る 日本には、不言実行、以心伝心あるいは魚心水心などの習慣が存在する。この ような社会的あるいは商習慣的な不文律文化は、島国として、また単一民族国家 として培 われてきた文化であり、今日の発展の礎であろう。一方、ハーモニ ゼー ションは全てを明らかにすることから始まる。すな わち、透明性・一貫性・信頼 性が必要とされ、その結果として何事も成分化することが要求される。したがっ て 、 不 文 律 文 化 の よ さ は 認 め ら れ ず 、 例 え ば キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー 会 計 や ア カ ウン タ ビ リ テ ィー (accountability)に 代 表 さ れ る 国 際 会 計 基 準 な ど 、 全 て を 成 分 化 す る こ と が 必 要 と な る 。実 際 に は 、JIS(日 本 工 業 規 格:Japanese Industrial Standard) の ISO へ の 整 合 化 と い う 命 題 が 課 せ ら れ 、 各 業 界 や 各 分 野 に お い て 整 合 化 作 業 が 行 われ て い る 。 今 後 は 、 さ ら な る グ ロ ー バ リ ゼー シ ョ ン の 進 展 に よ り 、 企 業 の 多 国籍化と商習慣や文化のボーダーレス化が加速され、企業活動のみならず日常生 活 に お い て も ハ ー モ ニ ゼー シ ョ ン が 求 め ら れ る よ う に な る 。 こ の ハ ー モ ニ ゼー シ ョ ン を さ ま ざ ま な 観 点 か ら 実 践 し て い る の が 欧 州 連 合 (EU: European Union)で あ る 。 EU は 1991 年 に EEC(European Economic Community)と し て 発 足 し 、 2004 年 度 現 在 25 ケ国 よ り 成 る 、 4.5 億 人 の 人 口 を 抱 え る 連 合 体 と な っ た 。1987 年 の 単 一 欧 州 議 定 書 発 効 に よ り 、統 一 通 貨 (ユー ロ )の 導 入 、加 盟 国 間 国 境 の 自 由 越 境 、 労 働 力 ・ 商 品 流 通 の 活 発 化 等 、 多 方 面 で の ハ ー モ ニ ゼー シ ョ ン が 着 実 に 進 み つ つ あ る 。 こ の 経 済 統 合 に 伴 い 、 各 国 間 で の 法 体 系 の ハ ー モ ニ ゼー シ ョンも進められている。特に、環境問題の国際化に伴い、環境対策の国際的な枠 組みの構築が求められ、それにより各国に対して新たな仕組みや制度の導入が要 求されることになる。しかしながら、各国に既存の枠組みがある場合、新たな枠 組 み と の ハ ー モ ニ ゼー シ ョ ン は 困 難 な も の と な る ( こ れ を オ ー ル ド ア プ ロ ー チ の 欠 点 と 称 す )。 そ こ で 合 意 形 成 の た め に 採 用 さ れ た 方 法 が 1985 年 の「 ニ ュ ー ア プ ロ ー チ 」指 令 である。 ニ ュ ー ア プ ロ ー チ に よ り 以 下 の 項 目 が 実 現 さ れ る と し て い る 4 )。 ・ 立 法 の 整 合 化 措 置( ハ ー モ ニ ゼー シ ョ ン )は 必 須 要 求 事 項 に 限 定 さ れ る べ 第14回石炭利用技術会議 きである。 ・ CEN は 必 須 要 求 事 項 に 沿 っ た 技 術 仕 様 を 策 定 す る 。 こ の 規 格 を 「 整 合 」規 格と呼ぶ。 ・ 規格は、必須ではない。 ・ そ れ に 従 う と 、 関 連 「 欧 州 指 令 に 適 合 す る 」と の 仮 定 が 与 え ら れ る 。 ・ 一 つ の 加 盟 国 に お い て 適 合 条 件 に 合 致 す る も の は 基 本 的 に す べ て の EU お よ び EFTA 加 盟 国 の 市 場 適 合 品 と み な さ れ 、 CE マ ー ク が 貼 ら れ る 。 3.2 欧 州 標 準 EN の 策 定 5 ) 規格、基準および指針等を総称して「標準 」と呼ぶ。欧州における環境基準と は、行政用語であり、以下の4種類に分類される。 a) 法 的 強 制 力 を も つ 基 準 (standard) b) 行 政 的 対 策 の た め の 指 針 (guideline) c) 技 術 的 対 応 の た め の 目 標 (goal) d) 環 境 の 質 を 判 定 す る た め の 条 件 (criteria) こ こ で 、日 本 語 で は 、上 記 の 基 準 (standard)を「 規 格 」と 訳 し 、JIS( 日 本 工 業 規 格 ) に 対 応 さ せ て い る 。 フ ラ ン ス の NF(Norme Française) 、 ド イ ツ の DIN(Deutsches Institut für Normung)、 英 国 の BS(British Standard)な ど 、 欧 州 各 国 に も 日 本 の JIS 同 様 に 国 毎 に 規 格 が あ る 。EU 域 内 の 市 場 統 合 を 進 め 、自 由 な物流を実現するためには、各国規格の統合が必要であり、図2に示すように欧 州 規 格 EN を 策 定 す る こ と と な っ た 。そ の 策 定 作 業 の 主 体 と な っ て い る の が 、1965 年 に 設 立 さ れ た NGO で あ る 欧 州 標 準 化 委 員 会 (CEN: Committee of European Normalization)で あ る 。EN 策 定 を 、第 三 者 NGO で あ る CEN に 委 ねよ う と い う 方 針 が 、ハ − モ ニ ゼ− シ ョ ン の ひと つ の 手 法 で あ る 。2002 年 現 在 の CEN の 構 成 メ ン バ ー (参 加 資 格 は 各 国 の 規 格 協 会 )は 、現 在 EU 加 盟 25 ケ国 に ス イ ス・ノ ル ウ エ ー・ア イ ス ラ ン ド を 加 え た 計 28 ケ国 で あ り 、 約 8000 の EN 規 格 ・ 文 書 を 策 定 し て い る 。 第14回石炭利用技術会議 市場誘導 政 府 ・政 府 間 任意規格 JIS ,A S T M な ど 整 合 規 格 (E N 規 格 が 相 当 ) 公的資金を提供 一般公開仕様書 作業委員会 (TC: Technical Committee) 設 置 技 術 法 規 ・勧 告 暫 定 版 prEN (pre‑European Norm) CEN投 票 委員会原案 ( C D : C o m m i t t e e ’s D r a f t ) 作 成 引用規格 CEN内 の 自由回覧 仏独英語への翻訳 (ENV: European Norm by Vote バージョン) 発 行 EN 自 動 的 に IS O 規 格 化 各国における 規格化 ウイーン協定 欧州規格が日本に影響 図2 EU に お け る 仕 様 ( Specifications)の 法 的 立 場 EN は 各 国 規 格 よ り 優 先 さ れ 、EN と 各 国 規 格 が 整 合 性 を 有 さ な い 場 合 に は 、各 国 規 格 を 改 正 す る こ と に な る 。 EN 策 定 の 手 続 き を 図 2 に 示 す 。 EN は 、 EU 加 盟 各 国 共 通 の 規 格 と し て 極 め て 重 要 な も の で あ り 、各 国 法 規 に お け る 公 定 の 試 験・検 査・ 監査方法ともなっている。現在策定されている「標準 」の多くは、技術仕様であ る「 規 格 」で は な く 、設 定 し た「 目 標 」達 成 の た め の 、 「 指 針 」作 り で あ る こ と が 特記される。 3.3 EU に お け る 廃 棄 物 関 連 規 格 の ハ ー モ ニ ゼー シ ョ ン 6 ) EN450‑1(2004)の 4.3 に あ る「 環 境 と の 共 存 」を 理 解 す る た め に 、こ こ で は 現 在 進行中の、土壌および廃棄物関連規格の標準化の中で、それらのキャラクタリゼ − シ ョ ン (Characterization)方 法 の 標 準 化 の 考 え 方 と そ の 進 捗 状 況 を 紹 介 す る 。 その標準化は、 「 も の 」の 持 つ キ ャ ラ ク タ − に よ り 、そ の「 も の 」を 管 理 す る 共 通 政策を、国家間を超えて、公明・公正・客観的に行おうという意図を持って行わ れ て い る 。EU 法 体 系 で は 、新 た な 法 律 や 規 制 等 に 関 し て は 、拘 束 力 が 大 き い 順 に 、 規 制 (regulation)、 指 令 (directive)、 決 定 (decision)、 勧 告 (recommendation)、 意 見 (opinion)と い う EU 法 と し て 制 定 さ れ 発 効 す る こ と に な っ て い る 。 廃 棄 物 の 埋 立 て に 関 す る EU 指 令 (91/689)に よ り 、廃 棄 物 の キ ャ ラ ク タ リ ゼ ー シ ョ ン に 関 し 、 以 下 の 各 レ ベ ル の ハ ー モ ニ ゼー シ ョ ン が 必 要 と 考 え ら れ て い る 。 ■レ ベ ル 1 : 長 期 的 浸 出 特 性 に 伴 う 基 本 的 キ ャ ラ ク タ リ ゼー シ ョ ン 第14回石炭利用技術会議 ■レ ベ ル 2 : Compliance(規 制 )試 験 の 浸 出 特 性 パ ラ メ − タ − の 検 証 ■レ ベ ル 3 : 迅 速 評 価 試 験 ( 現 場 で の 確 認 ) こ の 標 準 化 は CEN の 中 の TC292(廃 棄 物 キ ャ ラ ク タ リ ゼ ー シ ョ ン 委 員 会 )と い う 作 業 委 員 会 が 担 当 し 、 そ の 下 に レ ベ ル 1 に つ い て は オ ラ ン ダ 幹 事 で 作 業 部 会 WG6 が 、 レ ベ ル 2 に つ い て は フ ラ ン ス 幹 事 で WG2 が 、 レ ベ ル 3 に つ い て は ド イ ツ 幹 事 で WG5 が 組 織 さ れ 、 検 討 す る こ と と な っ た 。 そ の 後 、 生 態 毒 性 評 価 の 必 要 性 を 踏 ま え 、フ ラ ン ス 幹 事 で WG7 が 追 加 さ れ た 。TC292 に よ る Leaching 試 験 法 規 格 の 策 定例の概要を図3に示す。 バ ッ チ L E A C H IN G テ ス ト (塊 状 E N 12457) タ ン ク L eachingテ ス ト (モ ノ リ ス ) pH ST A T prE N 14429 T E ST カラム式 L E A C H IN G テ ス ト (塊 状 p rE N 14405) 図3 TC292 策 定 の Leaching テ ス ト の 分 類 ≪ EN12457 の 発 行 ≫ EN12457 は 埋 め 立 て 処 分 場 な ど に お け る Compliance テ ス ト に 用 い る 規 格 で あ る 。 1997 年 か ら 着 手 さ れ た 、Leaching の バ ッ チ 試 験 に お け る 固 体 (汚 泥 )と 抽 出 溶 媒 と の 接 触 条 件 の ハ ー モ ニ ゼ ー シ ョ ン は 、 フ ラ ン ス 規 格 (NFX31‑210) と ド イ ツ 規 格 (DIN38414S4)の 差 異 が 大 き く 、盛 んに 議 論 さ れ た 。接 触 条 件 と し て 試 料 の 粒 径 (4mm vs 10mm)と 、 溶 媒 /固 体 比 (L/S 比 = 2 vs 10)が 大 き な 争 点 で あ っ た が 、 2002 年 11 月 に 採 択 さ れ た EN12457 で は 両 者 を 折 衷 し た 4 方 法 が 選 択 で き る こ と と な っ た 5 )。 ≪ ENV12920 の 回 覧 ≫ ENV と は 加 盟 各 国 の 技 術 標 準 が 存 在 す る 場 合 に は 、 そ れ と ENV と の 選 択 が 可 能 で あ る 暫 定 規 格 の こ と で あ る が 、 V が と れ た バ ー ジ ョ ン で は 強 制 力 を も ち、 各 国 独 自 の 技 術 標 準 は 欧 州 標 準 EN へ の 転 換 が 求 め ら れ る 。 CEN‑TC292 が 1996 年 に 、 フ ラ ン ス 規 格 を も と に 策 定 し た ENV12920 は 、将 来 の 欧 州「 廃 棄 物 コ ー ド 」へ の 転 換 を 意 図 し た も の で あ る 。 各 種 条 件 に お け る 廃 棄 物 の キ ャ ラ ク タ リ ゼ− シ ョ ン の 方 法 を 定 め た も の で あ り 、廃 棄 物 の Leaching テ ス ト の 前 に 物 理 学 的・化 学 的・生 第14回石炭利用技術会議 物学的評価を行い、適切な再現実験をすることとしている。ここで条件とは「シ ナ リ オ 」に 記 載 さ れ た 環 境 影 響 評 価 モ デ ル の 適 用 限 界 の こ と で あ り 、 有 効 利 用 の み な ら ず 、 廃 棄 − 保 管 シ ナ リ オ 等 も 含 むも の で あ る 。 ≪ prEN14429 の 策 定 ≫ EN12457 の 策 定 を 検 討 す る 際 に 、 Leaching 条 件 の p H 依 存 性 問 題 が 顕 著 化 し た こ と に と も な い こ の 規 格 化 が 行 わ れ た 。CEN‑TC292 で は pH を 2 ユ ニ ッ ト 刻 み で 変 化 さ せ 、成 分 移 行 量 の 差 を 確 認 す る 暫 定 規 格 prEN14429 を 2002 年 4 月 に 策 定 し た 。 ≪ prEN14405 の 策 定 ≫ CEN‑TC292 で は 2002 年 5 月 に 上 向 流 で 行 う カ ラ ム 試 験 方 法 を 、オ ラ ン ダ 規 格 を も と に prEN14405 と し て 提 案 し た 。 フ ラ ン ス で は 不 活 性 廃 棄 物 (ClassⅢ相 当 : 不 活 性 廃 棄 物 )の 埋 め 立 て 基 準 を 策 定 す る た め に こ の prEN14405 に よ る 試 験 法 が 国 内 法 で 策 定 し た 。 2003 年 6 月 、 TC190 の 土 壌 の 評 価 に あ っ て も 同 じ 方 法 が 提 案 さ れている。 3.4 EU に お け る 環 境 影 響 評 価 ( 化 学 物 質 ) の 方 法 Leaching/Extraction テ ス ト に 代 表 さ れ る 廃 棄 物 に 関 す る 試 験 方 法 の 標 準 化 は 、 各 国 既 存 試 験 法 を 基 本 と し た Compliance 規 格 の 国 家 間 ハ ー モ ニ ゼー シ ョ ン と み な す こ と が で き る 。 一 方 Leaching/ Extraction テ ス ト は 廃 棄 物 の キ ャ ラ ク タ リ ゼー シ ョ ン 方 法 と し て だけ で な く 、 多 く の 分 野 、 例 え ば 、 汚 泥 、 コ ン ク リ ー ト 、 あ る い は 骨 材 な ど に 対 す る 環 境 影 響 評 価 (安 全 性 評 価 )の 試 験 法 と し て も 利 用 さ れ ている。したがって、異なる特性を有する対象物に対して、同じあるいは類似し た Leaching/Extraction テ ス ト が 適 用 さ れ る こ と に な り 、 そ れ ら の 結 果 の 解 析 に 際 し て は 留 意 す べ き 点 が 多 々 発 生 す る と 予 想 さ れ る 。そ こ で 、1993 年 よ り 、地 盤 環 境 (ISO‑TC190)、 汚 泥 (CEN‑TC308)、 セ メ ン ト 及 び 建 設 用 石 灰 (CEN‑TC51)、 コ ン ク リ − ト (CEN‑TC104)、骨 材 (CEN‑TC154)、建 築 用 木 材 (CEN‑TC38)、履 物 (CEN‑TC309) な ど の 各 委 員 会 で 試 験 方 法 が ば ら ば ら で あ っ た Leaching/Extraction 試 験 を 、 TC292 を 中 心 に 統 一 し よ う と い う 異 分 野 間 ハ ー モ ニ ゼー シ ョ ン が 行 われ た 。 こ れ は廃棄物側から上流に向けて環境評価のあり方を統一しようという試みであり、 日 米 加 豪 な ど の 研 究 者 も 加 わり そ の 中 間 結 果 が ま と め ら れ た 6 )。 さ ら に 、2000 年 よ り「 ホ リ ゾン タ ル プ ロ ジ ェ ク ト 」と 称 さ れ る 欧 州 プ ロ ジ ェ ク トが始まった。このプロジェクトは、ドイツにおいて土壌環境基準が策定されて いない状況下で汚泥をコンポストとして農業用途に利用するために、今まで「廃 棄 物 」・「 水 質 」・「 土 壌 」と 別 々 に 策 定 し て い た 試 験 方 法 を 標 準 化 す る 必 要 が 生 じ た こ と に 端 を 発 す る 。 こ の プ ロ ジ ェ ク ト は 、 図 4 に 示 す よ う に 主 に 10 の WP(Warking Project)か ら な る Project Team で 構 成 さ れ 、 CEN‑TC(TC292 も 含 む) や ISO‑TC も 参 加 し た Steering Committee の 調 整 の も と で 図 5 の よ う に 推 進 す る ことになった。 第14回石炭利用技術会議 W P 1 S a m p le c o lle c tio n a n d p r e p a r a tio n O b s e rv e rs O th e r s M S a n d A S W P 2 S a m p lin g P re tr e a tm e n t C EN TC 223 C EN TC 230 M S ’s C o - f in a n c in g CEN C CMC W P 3 H y g ie n ic P a r a m e te r s C EN TC 260 E U D G E N V /J R C S te e r in g C o m m itte e W P 4 B io lo g ic a l P a r a m e te r s C EN TC 292 廃棄物 EU DG RES W P 5 O rg a n ic C o n ta m in a n ts C EN TC 308 W P 6 In o r g a n ic P a r a m e te r s C EN TC 335 汚泥 ENV_TC C o o r d in a tio n g r o u p B T T a s k F o rc e P R O JE C T TEAM W P 7 M e c h a n ic a l P ro p e r tie s D r a f t E N ’s W P 8 L e a c h in g te s t W P 1 0 P r o je c t M anagem ent IS O T C 1 9 0 C EN TC 345 土 IS O T C 1 4 7 水 T e c h n ic a l a n d s tr a te g ic is s u e s W P 9 D a ta h a n d lin g a n d in te rp re ta tio n T C = C E N T e c h n ic a l C o m m itte e , M S = M e m b e r S ta te s ( E U ) , A S = A c c e s s io n S ta te s 図4 ホ リ ゾン タ ル プ ロ ジ ェ ク ト 実 施 体 制 (2002 年 現 在 ) 分析目的物質群 吸 水 性 有機 ハロゲン フタル酸 類 多環芳香族炭化水素 PCB 試料母体 底質 分離手段 ガスクロマトグラフィー 微生物的汚染土 検出方法 質量分析 電子捕獲型検出 廃棄物 改良土 図5 ホ リ ゾン タ ル プ ロ ジ ェ ク ト の 構 造 性 具 体 的 な 作 業 は 、表 7 に 示 す よ う に 、土 壌 、汚 泥 等 毎 の Leaching 試 験 、PCB 類 の 分 析 な ど の 試 験 ・検 査 方 法 を 整 理 し 、 空 欄 と な っ て い る 部 分 を 埋 め て い く こ と (= 標 準 化 作 業 )で あ る 。現 在 の 欧 州 に お け る 試 験 ・検 査 方 法 の ハ ー モ ニ ゼー シ ョ ン は Leaching/Extraction テ ス ト に 留 ま ら ず 、 様 々 な 廃 棄 物 ・ 環 境 質 の 各 項 目 を 網 羅するように進められている。これは方法及び費用の簡素化の面で当然の流れと いえよう。 表7 ホ リ ゾン タ ル プ ロ ジ ェ ク ト に お け る 標 準 化 項 目 (抜 粋 ) 第14回石炭利用技術会議 項 目 サンプリング 土 壌 汚 泥 ISO/DIS10381-1 EN/ISO5667ISO/DIS10381-4 13 コンポスト 廃棄物 EN12579 5WI CEN TC292 292001/002/017/18/19 ENV12506 pH ISO10390 EN12176 EN13037 PCB ISO/DIS10382 [CD10382] [CD10382 ] Leaching Compliance Leaching Characterization 肥 料 EN1482 WI292028 EN12457 (Part 1-4) WI292032 WI292033 WI292034 4 . 性 能 規 定 と 建 設 材 料 の ユー ロ コ ー ド 環境標準の場合、国際的整合性が要求され、各国ともその試験・検査法のハー モ ニ ゼー シ ョ ン へ の 協 力 は 比 較 的 容 易 で あ っ た と も い え る 。 一 方 、 コ ン ク リ ー ト 用 な ど 建 設 材 料 の 「 製 品 仕 様 」と な る と 、 す で に 各 国 と も 既 存 の 技 術 標 準 が 存 在 し、それは地域性が強く、気候風土・歴史性・文化に大きく影響したものが多い た め 、EU 地 域 内 に お い て も 、一 国 の 仕 様 の 欧 州 標 準 へ の 採 用( オ ー ル ド ア プ ロ ー チ ) は 他 国 へ の 文 化 の 強 制 と も 受 け 取 ら れ か ねな い 、 政 治 問 題 化 に 転 化 す る セ ン シブルな作業であり、実現不可能との結論に至った。そこで採用されたのが、構 造 物 や 施 設 に 必 要 と さ れ る 「 性 能 」を 明 示 し て 、 材 料 ・ 工 法 ・ 手 順 な ど を 詳 細 に 規 定 し な い 「 性 能 照 査 型 」設 計 手 法 で あ る 。 こ れ が す な わ ち前 述 し た 「 ニ ュ ー ア プ ロ ー チ 」で あ る 。こ の 考 え か た は 欧 州 の み な ら ず 、1995 年 に 締 結 さ れ た WTO の TBT 協 定 に お い て も 「 デ ザイ ン も し く は 記 述 的 に 示 さ れ た 特 性 よ り も 性 能 に 直 目 し た 産 品 の 要 件 に 基 づ く 強 制 基 準 ま た は 任 意 規 格 を 定 め る 」こ と と さ れ 、 規 格 が 非関税障壁にならないことが要請された。 建設資材も、域内各国間で輸出入されることが多いと考えられ、ニューアプロ ー チ 政 策 の 対 象 と な っ た 。適 用 さ れ た の は 1987 年 の「 建 設 製 品 指 令( Constraction Producs Directive:CPD)」で あ る 。 CPD に は 以 下 の 特 徴 が あ る 。 ・ 建 設 製 品 は 、そ れ 自 身 が 建 設 物 ユ ー ザー の 安 全・健 康 等 に 影 響 を 与 え る わ け で は 必 ず し も な い 。建 設 材 料 の 特 性 は 、そ れ が 建 設 物 に 組 み 込 ま れ た 状 態 で 建 設 物 の 特 性 に 影 響 を 及 ぼ す こ と に よ っ て 間 接 的 に ユー ザー に 影 響 す る 。こ の こ と か ら CPD に お け る 基 本 的 用 件 は 建 設 製 品 そ の も の で は な く 、 建設物に対して規定される。 ・ 従 っ て 、建 設 材 料 と い う カ テ ゴリ に 含 ま れ る 材 料・資 材 は 、建 設 物 に 組 み 込まれた状態での特性を発揮することが期待される。 ・ こ の 分 野 は 技 術 革 新 が 著 し い 分 野 で も あ る の で 、あ る 製 品 ジ ャ ン ル に つ い て 欧 州 規 格 と し て 標 準 化 す る こ と が 適 切 で な い 場 合 や 、標 準 化 が 追 い つ か ないようなものがあることが認識され、個々の評価製品の品目について、 第14回石炭利用技術会議 個 別 の 評 価・認 定 を 行 い CE マ ー キ ン グ の 表 示 を 行 う 仕 組 み が 導 入 さ れ た 。 し か し 「 建 設 物 の 特 性 」と そ れ に 組 み 込 ま れ る 「 建 設 製 品 の 特 性 」 を 関 連 づ け る 仕 組 み は 非 常 に 複 雑 で わか り に く い 。 そ の た め に 以 下 の 仕 組 み の 導 入 も 必 要 と なった。 ・ 同じ製品であっても建設物に組み込まれて使用される部位や使用目的に よ っ て 求 め ら れ る 特 性 が 異 な る 。「 意 図 さ れ る 用 途 」に 対 応 し て 定 め る 必 要がある。 ・ 規 定 す べ き 建 設 製 品 の 特 性 は 、当 該 製 品 に ど の よ う な 役 割 を 与 え て い る か 、 どのような特性を全体の性能評価に用いるパラメータとして規定してい る か 、 に よ り 変 わっ て し ま う 。 そ こ で 必 須 条 件 の 「 基 本 的 用 要 件 」と 組 み 込 ま れ る 「 建 設 製 品 の 特 性 」の 関 係 を 明 ら か に す る「 解 釈 文 書 」の 設 定 が 必 要 と な っ た 。こ れ ら の 設 計 法 や 性 能 評 価 ・ 検 証 法 の 「 標 準 」を 策 定 す る こ と で あ る 。 そ の 役 目 を 担 う の が 「 ユ ー ロ コ ー ド 」 で あ る 。 CEN に よ る ユ ー ロ コ ー ド は 当 初 62 の ENV 版 と し て 策 定 さ れ 、 1992‑1998 年 に 出 版 さ れ た 。試 行 期 間 を 経 て 2004 年 度 か ら 投 票 が 始 ま り 、加 盟 各 国 の 法 制 化 が 義 務 づ け ら れ て い る 。 図 6 に コ ン ク リ ー ト 用 フ ラ イ ア ッ シ ュ 規 格 EN450 の 、 ユ ーロコードにおける位置づけを示す。 ユ ー ロ コ ー ド 0 E N 1990 構造設計の基礎 ユ ー ロ コ ー ド 1 E N 1 9 9 1 (1 ) E N 1 9 9 1 - 1 .2 密 度 ・自 重 ・積 載 荷 重 火災時 の構造 物へ の作用 E N 1 9 9 2 - 1 .1 な ど 構造 設計のルールなど E N V 1 3 6 7 0 -1 コンクリート EN197− 1 普 通 セ メン トの 構 成 ・ 仕 様 ・適 合 性 基 準 コンクリー ト構 造 物 の 施 工 EN450− 1 コン クリー ト用 フライア ッシ ュの 仕 様 ・適 合 性 基 準 EN197− 2 EN450− 2 セ メントの 適 合 性 評 価 フライア ッシ ュの 適 合 性 評 価 EN196 EN451 セ メントの 試 験 方 法 フライア ッシ ュの 試 験 方 法 <基礎> E N 1 9 9 1 -4 〜 7 熱 ・ 風 ・ 施 工 中 の 作 用 雪 荷重 ユ ー ロ コ ー ド 2 E N 1 9 9 1 (2 ) 仕 様 ・性 能 ・製 造 ・適 合 管 理 地盤データ E N 1 9 9 1 - 1 .3 コンクリー ト構 造 の 設 計 E N 2 0 6 -1 ユ ー ロ コ ー ド 7 E N 1997 < 荷 重 ・作 用 > 構造 物への作用 E N 1 9 9 1 - 1 .1 など <構造安全性> EN12620 コン クリー ト用 骨 材 <設計及び詳細化> < コン クリー ト製 品 > EN1008 混 練用水 EN10080 グ ラ ウ ト・プ レ ス トレ ス 鋼 材 な ど 鉄 筋 現 在 の と こ ろ 欧 州 内 で す ら 非 常 に 合 意 形 成 に 難 儀 し て い る の に 、 ISO 化 は よ り 図 6 ユー ロ コ ー ド の パ ッ ケ ー ジ と 適 用 製 品 規 格 群 一 層 の 合 意 困 難 が 予 想 さ れ る の で 、 直 ちに ユ ー ロ コ ー ド が ISO 化 さ れ る 動 き は 見 られないがその動向は予断を許さない。しかし、この ユーロコードがより共通性 の高いものとして欧州を越えて普及していくことは確実と考えられる。例えば地 盤 工 学 に お け る 「 土 の 判 別 と 分 類 」に あ っ て 欧 州 は 0.063mm を シ ル ト と 砂 の 境 界 と し て い る が 、日 米 で は 0.0075mm で あ る 。こ れ が 欧 州 基 準 に 統 一 さ れ る と 、日 米 の 検 査 機 関 が こ う むる 被 害 が 甚 大 で あ る 。こ れ ら に 対 し て は 日 本 の 立 場 を 踏 ま え 、 日 本 案 の 並 列 に 努 め る な ど の 活 動 が 行 われ て い る 7 )。 ISO‑TC71( コ ン ク リ ー ト ・ 第14回石炭利用技術会議 鉄 筋 コ ン ク リ ー ト 及 び プ レ ス ト レ ス コ ン ク リ ー ト )の 近 年 の 活 動 状 況 は 、ISO/TC71 第 12 回 総 会 報 告 な ど で 紹 介 さ れ て い る 8 )。 5 .中 国 の 規 格 化 動 向 世界最大の石炭灰発生国である中国の動向も見逃せない。表8に中国など非 OECD 諸 国 の 石 炭 灰 発 生 量 と そ の 有 効 利 用 率 を 示 す 。中 国 で は 相 当 長 い 間 、化 学 的 に フ ラ イ ア ッ シ ュ は 有 害 物 質 と 見 な さ れ て き た 。そ の 評 価 方 法 は 米 国 の TCLP 法 で あった 9) 。し か し 中 国 が WTO に 加 盟 し 、中 国 国 内 で ISO14000 シ リ − ズ取 得 が 進 む に つ れ 上 記 欧 州 規 格 EN450 に よ る 試 験 結 果 も 見 ら れ る よ う に な っ て き た 。 背 景 に 地 球 温 暖 化 政 策 な ど に 見 ら れ る 米 国 影 響 力 の 低 下 も 影 響 し て い る 。 LCA な ど 元 来 米国発の考えかたであったが、現在では完全に欧州勢が主流となっている。 一 方 で 中 国 の フ ラ イ ア ッ シ ュ の 環 境 側 面 で の 研 究 は 、放 射 能 測 定 で 進 んで お り 、 そ の 面 で の 検 討 規 格 化 が 行 われ 、 1986 年 に 策 定 さ れ た GB6763、 GB6566 で は 基 準 値 と し て 0.93Bq/kg,0.73Bq/kg の 値 を 示 し て い る 。 そ れ ぞ れ γ線 の 発 生 リ ス ク を 含 有 核 種 ( 226R a ,232T h ,40K ) か ら 計 算 し て い る 。 表 9 に 中 国 の 文 献 に 見 ら れ た測定結果を示す 9) 。フライアッシュの放射能が環境に与える危害には2つのシ ナ リ オ が あ る 。 ひと つ は 建 設 材 料 か ら 輻 射 さ れ る 放 射 線 に よ り 人 間 の 健 康 に 影 響 を及ぼすこと、もう ひとつは水系移行した後、最終的に人間の健康に影響を与え ることである。 表8 1995 年 次 統計年 ロシア ポーランド 中国 インド タイ 南アフリカ コロンビア 表9 1992 1992 1992 1992 1992 1995 1992 非 OECD 諸 国 の 石 炭 灰 発 生 統 計 石炭灰発生量kt 62,000 11,995 91,139 66,677 2,400 26,000 1,050 フライアッシュ発生量kt 灰有効利用率% 56,513 14,010 80,641 49,780 2,000 24,000 924 34 86 37 2 0 18 56 フ ラ イ ア ッ シ ュ と 比 較 材 料 中 の 放 射 性 核 種 含 有 量 ( Bq/kg) 9) 第14回石炭利用技術会議 建築材料の類型 単位Bq/kg 最大値 中国フライアッシュ 平均値 最小値 中国セメント 平均値 最小値 ルーマニアの建築材料 コンクリート レンガ 加圧コンクリート 石膏 オランダの建築材料 コンクリート レンガ 加圧コンクリート 石膏 226 Ra 218.5 154.6 64.4 66.3 27.8 11-78 16-100 4-32 4-43 10-60 40-50 20-30 3˜-10 232 Th 125.9 88.8 51.9 97.4 17.8 4-78 20-53 4-37 5˜-27 10-60 40-50 5˜-10 3˜-10 40 K 944.9 566.8 38.5 152 504 14-450 318-833 4-504 4-277 150-300 500-1000 150-175 5-50 6 .ま と め 日 米 と の 経 済 競 争 を 意 識 し て 行 われ た 欧 州 統 合 が 、 結 果 的 に 欧 州 の 国 際 競 争 力 を 増 す こ と と な っ た 。 中 で も 規 格 化 戦 略 に は 、 欧 州 内 ハ − モ ニ ゼシ ョ ン の 経 験 が 活 か さ れ 、 性 能 規 定 に よ る 技 術 水 準 の 標 準 化 が 行 われ て い る 。 こ れ は 石 炭 灰 関 連 規格にも少なからず影響を及ぼしている。その体系はシステマッテックであり、 学 ぶ べ き 点 が 多 い 。特 に ポ ス ト COP3 以 降 、各 種 環 境 側 面 へ の 配 慮 も 不 可 欠 と な り 、 将 来 ISO 化 さ れ る で あ ろ う EN450 規 格 改 定 に 大 き く 反 映 さ れ て い る 。 こ の 場 を 借 りて、早急にその動向を紹介した。 ISO 規 格 は JIS の 上 位 概 念 と な り 、 将 来 JIS 規 格 の 方 を ISO に 整 合 さ せ る ハ − モ ニ ゼ− シ ョ ン が 求 め ら れ る こ と は 必 須 で あ る 。 つ い て は 、 現 在 日 本 に あ っ て は それに対応した規格化戦略を立て、石炭灰利用先進国、日本の力量を示すべきで は な い だろ う か 。 日 本 は 外 国 で は ほ と んど 発 言 し な い 国 と し て 知 ら れ て い る 。 不 言実行は国際社会では通用しないルールである。優れている日本のシステムを認 め さ せ た い な ら ば 、 積 極 的 に 発 信 せ ねば な ら な い 。 文 献 1 )田 野 崎 隆 雄 ほ か (2002),石 炭 灰 フ ラ イ ア ッ シ ュ の バ ロ リ ゼ− シ ョ ン 評 価 (1)、14 回廃棄物学会講演論文集 2 ) ク リ ー ン コ ー ル デ イ 実 行 委 員 会 CCUJ(2004) , 2004 年 石 炭 利 用 国 際 会 議 Proceedings 3 ) 藤 田 昌 宏 ほ か (1998),国 際 標 準 が 日 本 を 包 囲 す る ,日 本 経 済 新 聞 社 4 ) 日 本 規 格 協 会 編 (2003)、ヨー ロ ッ パ か ら 見 た 国 際 標 準 の 常 識 、 日 本 規 格 協 会 5 ) 田 野 崎 隆 雄 ほ か (2003),欧 州 に お け る 廃 棄 物 及 び 土 壌 の 評 価 方 法 の 規 格 化 、環 境 科 学 会 誌 16(6) 6 ) H.A.van del Sloot et al. (1997) Harmonization of Leaching/Extraction Test. Elsevier, 281pp 第14回石炭利用技術会議 7 )木 幡 行 宏 ほ か (2003)、設 計 国 際 標 準 の 最 新 動 向「 ISO へ の 対 応 」に 関 す る 第 4 回 シ ン ポ ジ ュ ウム 、 土 木 学 会 技 術 推 進 機 構 8 ) ISO/TC71 対 応 国 内 委 員 会 (2004)、 ISO/TC71 第 12 回 総 会 報 告 、 コ ン ク リ ー ト 工 学 42(12) 9 ) 銭 覚 時 (2002)、 粉 煤 灰 特 性 及 粉 煤 灰 混 擬 土 、 科 学 出 版 社 ( 北 京 ) 278pp
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