クリプトスポリジウム症・ジアルジア 症等の原虫性下痢症 目 Ⅰ 次 検 査 法 の 概 要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 診断手順一覧 Ⅱ 形 態 学 的 診 断 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 顕微鏡の取り扱い 《 ク リ プ ト ス ポ リ ジ ウ ム 症 の 診 断 》 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 1. 検 査 材 料 の 採 取 2. 濃 縮 ・ 精 製 3. 観 察 《 ジ ア ル ジ ア 症 の 診 断 》 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 1. シ ス ト の 検 査 法 2. 栄 養 型 虫 体 の 検 査 法 《 サ イ ク ロ ス ポ ラ 症 、 お よ び イ ソ ス ポ ラ 症 の 診 断 》 ・・・・・・・・・・・・ 25 1. 検 査 の 概 要 と 臨 床 材 料 2. オ ー シ ス ト の 検 査 法 Ⅲ 遺 伝 子 検 査 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26 1. 原 虫 検 査 に お け る 遺 伝 子 検 査 法 ポ イ ン ト 2. 主 な 試 薬 と 実 験 器 具 3. DNA の 抽 出 と 精 製 4. 制 限 酵 素 処 理 と 電 気 泳 動 5. 塩 基 配 列 決 定 《 ク リ プ ト ス ポ リ ジ ウ ム の PCR》 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32 1. 各 種 プ ラ イ マ ー に よ る PCR 2. 単 個 の オ ー シ ス ト を 用 い た PCR 《 ジ ア ル ジ ア の 遺 伝 子 型 別 を 目 的 と し た PCR》 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 47 《 サ イ ク ロ ス ポ ラ の 検 出 ・ 同 定 を 目 的 と し た PCR》 ・・・・・・・・・・・・ 54 Ⅳ 免 疫 学 的 検 査 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55 引 用 文 献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 56 参 考 資 料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 59 ii Ⅰ 検査法の概要 はじめに 原 虫 類 の 寄 生 に 起 因 する主 要 な消 化 器 疾 患 としてクリプトスポリジウム症 、ジ アルジア症 、赤 痢 アメーバ症 、サイクロスポラ症 およびイソスポラ症 等 々が知 られ ている。これらのうち、前 3 疾 患 は平 成 11 年 4 月 1 日 に施 行 (平 成 15 年 10 月 16 日 一 部 改 正 、平 成 15 年 11 月 5 日 施 行 )された感 染 症 法 (感 染 症 の予 防 及 び感 染 症 の患 者 に対 する医 療 に関 する法 律 )において、 5 類 感 染 症 の全 数 把 握 疾 患 として病 原 体 サーベイランスの対 象 疾 患 に位 置 付 けられている。病 原 体 としてのクリプトスポリジウム属 パルバム(遺 伝 子 型 がⅠ型 、Ⅱ型 のもの)は、感 染 症 法 に基 づく四 種 病 原 体 として適 正 な管 理 が求 められている(平 成 18 年 12 月 8 日 一 部 改 正 、平 成 19 年 6 月 1 日 施 行 )。クリプトスポリジウム等 は強 い塩 素 耐 性 を有 し水 系 感 染 が 問 題 と なる こと から、 水 道 に おける クリ プト スポリ ジウム 等 検 査 法 が整 備 されている(健 水 発 第 0330006 号 、平 成 19 年 3 月 30 日 、厚 生 労 働 省 健 康 局 水 道 課 長 通 知 )。 糞 口 感 染 する こと から性 的 接 触 や 食 品 を介 し た感 染 経 路 もあり、食 中 毒 事 件 票 における食 中 毒 病 因 物 質 の分 類 『その他 』の 欄 には「クリプトスポリジウム、サイクロスポラ、アニサキス等 」と例 示 されている (平 成 11 年 12 月 28 日 付 衛 食 第 166 号 、衛 乳 第 248 号 、衛 化 第 66 号 、厚 生 省 生 活 衛 生 局 食 品 保 健 課 長 、乳 肉 衛 生 課 長 、食 品 化 学 課 長 通 知 )。 しかし、統 計 上 はクリプトスポリジウム等 原 虫 症 の国 内 の報 告 は工 業 先 進 国 を 含 む海 外 諸 国 での報 告 に比 べて桁 違 いに少 なく、検 査 診 断 の重 要 性 が指 摘 さ れる 1) 。 原 虫 性 下 痢 症 の 診 断 に あ た っ ては 、 感 染 症 法 の 施 行 当 初 よ り 顕 微 鏡 に よ る 検 便 検 査 、 す なわ ち 形 態 学 的 な 検 査 が 第 1 選 択 であ っ た。 抗 原 検 出 と 遺 伝 子 検 出 は有 用 性 が報 告 されており、平 成 23 年 4 月 1 日 に届 出 基 準 に加 えられた (平 成 23 年 3 月 4 日 付 け健 感 発 0304 第 1 号 厚 生 労 働 省 健 康 局 結 核 感 染 症 課 長 通 知 )。報 告 数 の少 ない、しかし実 際 の患 者 数 が多 いと想 定 される原 虫 性 下 痢 症 の 検 査 診 断 の 機 会 を 増 やすに は 、 複 数 の 検 査 法 が 整 備 さ れ てい る こ と が 有 用 と 考 え られ 、 ま た適 切 な検 査 診 断 が 行 わ れ れ ば、 顕 微 鏡 検 査 法 に 限 定 する理 由 はない。一 方 、事 前 に試 薬 の備 蓄 や使 用 期 間 の制 限 からコストの上 昇 1 を招 いたり、難 しい糞 便 由 来 の PCR に偽 陰 性 の恐 れがあったり、特 定 の原 虫 に 特 化 した検 査 では他 の寄 生 虫 卵 が検 出 できなかったり等 々の理 由 から、当 面 は 顕 微 鏡 検 査 が主 に使 用 され、顕 微 鏡 検 査 の重 要 性 は現 在 も大 きく変 化 してい ないと考 えられる。本 マニュアルでは、顕 微 鏡 検 査 を中 心 に説 明 し、製 品 取 扱 説 明 書 や論 文 に詳 細 が記 述 されているその他 の検 査 法 については参 考 に留 め た。 顕 微 鏡 検 査 は 、 多 分 に 経 験 や習 熟 度 が 問 題 と なる 領 域 と い え る 。 とこ ろ が わ が国 では原 虫 性 下 痢 症 は比 較 的 稀 な疾 患 で、経 験 を積 むことが難 しい分 野 で ある。本 マニュアルの作 成 にあたってはこの点 を最 大 限 に考 慮 し、初 心 者 であっ ても本 マニュアルを参 照 しながら実 務 がこなせるよう心 がけた。なお、赤 痢 アメー バ症 の診 断 法 については別 のマニュアルにまとめられている。 原 虫 感 染 に 起 因 す る 下 痢 症 ( 赤 痢 アメ ーバ症 を 除 く )は 、 い ずれ も さま ざ ま な 程 度 の非 血 性 水 様 下 痢 を主 症 状 としており、臨 床 所 見 からの区 別 は困 難 である。 以 下 のケースでは原 虫 性 下 痢 症 を検 討 対 象 とすべきである。 1. 原 因 細 菌 やウイルスなどが検 出 されない下 痢 症 の場 合 2. 下 痢 症 、特 に海 外 旅 行 者 の下 痢 症 で、既 知 の腸 管 病 原 体 を検 出 した症 例 にあってなお説 明 のできない腹 部 症 状 を持 続 する場 合 3. 集 団 下 痢 症 にあって通 常 の病 原 体 が検 出 されない場 合 4. 免 疫 不 全 宿 主 にあって長 期 間 持 続 する原 因 不 明 の下 痢 症 の場 合 検 査 の進 め方 顕 微 鏡 検 査 による原 虫 検 査 の基 本 は、主 に患 者 便 を検 査 試 料 と し、試 料 中 に原 虫 (オーシスト、シスト、場 合 によって栄 養 型 虫 体 )を顕 微 鏡 下 で検 出 するこ とによる。検 査 手 技 としては、検 査 試 料 をそのまま試 料 とする直 接 塗 抹 法 と、(オ ー)シストを濃 縮 ・精 製 することで検 出 感 度 を高 める集 嚢 子 法 とに分 けられる。ま た、得 られた試 料 を無 染 色 のままで観 察 する方 法 (直 接 観 察 法 )と、染 色 法 (蛍 光 抗 体 法 等 )とにも分 けることができる。これらの組 み合 わせのうちで最 も簡 便 な 方 法 は直 接 薄 層 塗 抹 法 +蛍 光 抗 体 染 色 法 で、この方 法 は少 量 の糞 便 材 料 を 直 接 スライドグラスに取 って生 理 食 塩 水 など等 張 液 で希 釈 し、蛍 光 抗 体 試 薬 と 混 合 して蛍 光 顕 微 鏡 観 察 するものであ る。 蛍 光 抗 体 で染 色 さ れる( オー ) シスト 2 以 外 に、自 家 蛍 光 を発 する虫 卵 の検 出 、微 分 干 渉 顕 微 鏡 下 では運 動 性 を有 する栄 養 型 虫 体 の検 出 にも有 効 である。しかしながら、この方 法 では微 量 の検 査 試 料 しか扱 えないことや、食 物 残 渣 など夾 雑 物 が多 量 に含 まれる標 本 から極 めて小 さな(オー)シストを検 出 しなくてはならず、(オー)シストの特 徴 的 な内 部 構 造 を観 察 するのが困 難 となり、充 分 な検 査 精 度 が保 証 されない難 点 がある。した がって、原 虫 性 下 痢 症 の確 定 診 断 にあたっては集 嚢 子 法 の併 用 が必 須 と考 え る。 集 嚢 子 法 には遠 心 沈 殿 法 、浮 遊 法 、免 疫 磁 気 ビーズ法 等 があるが、本 マニュ アルでは遠 心 沈 殿 法 を一 義 的 に選 択 するよう推 奨 している。その理 由 は、遠 心 沈 殿 法 で は 検 査 試 料 の 調 製 段 階 でホ ルマリ ン 水 を用 い た希 釈 ・ 固 定 が 行 わ れ ることから、検 査 担 当 者 への感 染 事 故 が回 避 できる利 点 があるからである。その 他 、 糞 便 中 の 未 消 化 の 脂 肪 分 が 除 去 さ れる こ と に より観 察 が 容 易 と なる 利 点 も ある。 分 子 疫 学 的 な解 析 のための PCR の試 料 調 製 など高 度 な精 製 が必 要 な際 に は、浮 遊 法 、免 疫 磁 気 ビーズ法 が有 用 である。ちなみに、現 時 点 における PCR 等 の遺 伝 子 検 査 法 は、顕 微 鏡 法 検 査 による診 断 の後 に、感 染 経 路 の特 定 等 の 分 子 疫 学 的 解 析 に用 いられている。 便 中 の病 原 体 抗 原 検 出 では、主 に患 者 便 を検 査 試 料 とし、原 虫 由 来 の抗 原 を ELISA 法 、イムノクロマト法 により検 出 する。 ところで、原 虫 性 下 痢 症 の検 査 方 法 は原 虫 種 の如 何 を問 わず基 本 的 に同 じ 方 法 が 適 用 さ れ る 。 し た が っ て 、 本 マ ニュ ア ル では ク リ プ ト ス ポ リ ジ ウム の 検 出 方 法 を中 心 に説 明 し、ジアルジア他 の原 虫 の検 査 に関 しては特 筆 すべき点 につい て虫 種 別 に項 を立 てて説 明 した。また、各 検 査 機 関 にあっては顕 微 鏡 の整 備 状 況 に格 差 があるものと推 測 される。そこで、別 表 に顕 微 鏡 の整 備 状 況 に応 じて 選 択 すべき基 本 的 な検 査 法 をまとめておいた。なお、これら原 虫 類 の(オー)シス トは糞 便 中 に常 に排 出 されるとは限 らないことから、可 能 ならば日 を置 いて 3 回 程 度 の 繰 り 返 し 検 査 が 推 奨 さ れ る 。 ま た、 検 査 の 実 施 に 制 限 が あ る 機 関 で は 、 確 定 診 断 に際 して国 立 感 染 症 研 究 所 はじめ他 の関 係 機 関 の協 力 を要 請 するこ とも選 択 肢 の1つと考 えられよう。 3 〔別表〕 原虫性下痢症の診断手順 顕微鏡の 基本的手順 手 順 の 概 説 整備状況 蛍光装置 + 微分干渉装置 + 遠 心 沈 殿 法 + 蛍光抗体染色(湿式) 生物顕微鏡 蛍光装置 + 生物顕微鏡 遠 心 沈 殿 法 + 蛍 光 抗 体 染 色 + 抗 酸 染 色 /ヨ ー ド 染 色 1. 遠心沈殿法で精製濃縮 2. 蛍光抗体法(湿式)で染色注1 3. 蛍光顕微鏡下でスクリーニング注2 4. 微分干渉顕微鏡で確認 1. 遠心沈殿法で精製濃縮 2. 蛍光抗体法(湿式)で染色注1 3. 蛍光顕微鏡下でスクリーニング注2 4. 別 途 作 製 の 抗 酸 染 色 /ヨ ー ド 染 色 標 本 で確認 微分干渉装置 + 生物顕微鏡 遠 心 沈 殿 法 + ネガティブ染色 + 抗 酸 染 色 /ヨ ー ド 染 色 1. 遠心沈殿法で精製濃縮 2. ネガティブ染色標本でスクリーニング 3. 微分干渉顕微鏡で確認 4. 別 途 作 製 の 抗 酸 染 色 /ヨ ー ド 染 色 標 本 で確認 遠 生物顕微鏡 心 沈 殿 法 + ネガティブ染色 + 抗 酸 染 色 /ヨ ー ド 染 色 1. 遠心沈殿法で精製濃縮 2. ネガティブ染色標本でスクリーニング 3. 別 途 作 製 の 抗 酸 染 色 /ヨ ー ド 染 色 標 本 で確認 注1 クリプトスポリジウムおよびジアルジアの同 時 染 色 用 蛍 光 抗 体 試 薬 が市 販 さ れている。FITC の特 異 蛍 光 は B 励 起 下 で観 察 。 注2 サイクロスポラおよびイソスポラに対 する蛍 光 抗 体 試 薬 は開 発 されていない が、両 原 虫 のオーシスト壁 は自 家 蛍 光 を有 するので蛍 光 顕 微 鏡 下 でスクリ ーニングすることができる。自 家 蛍 光 は UV 励 起 下 で観 察 。 4 Ⅱ 形態学的診断法 顕 微 鏡 の取 り扱 い 顕 微 鏡 による検 査 は経 験 ・習 熟 を必 要 とするかもしれないが、検 鏡 時 間 は一 般 的 な 遺 伝 子 増 幅 時 間 に比 べて短 く、今 もなお迅 速 な検 査 法 である。本 試 験 方 法 で用 いる 顕 微 鏡 には、蛍 光 装 置 、微 分 干 渉 装 置 、20、40、100 倍 の対 物 レンズがあることが望 ま しい。 この ほか、 粒 子 サイズ 測 定 の ために 、 接 眼 ・ 対 物 スケ ールあ るい は測 定 機 能 付 き の顕 微 鏡 カメラ等 を付 属 させる。良 好 な像 を得 るには装 置 のおよそ全 てを操 作 すること が必 要 である。指 で回 せるところは調 整 が必 要 な場 所 、六 角 レンチを使 うネジは観 察 で は調 整 しない場 所 と区 分 すると理 解 しやすい。 10 倍 の対 物 レンズなら、対 物 レンズとプレパラートはぶつからずにフォーカス合 わせを 行 うことができる。一 旦 フォーカスが合 えば、他 の倍 率 に変 更 してもフォーカスは微 調 整 で済 む。対 物 レンズの 60 から 100 倍 、時 に 40 倍 が油 浸 オイルを使 用 する油 浸 レンズ で、対 物 レンズに OIL の刻 印 があれば油 浸 レンズと見 分 けることができる。油 浸 レンズで は 光 学 解 像 度 が 格 段 に 高 くな り、 細 部 を 観 察 で き る 。 油 浸 オ イ ルを 一 度 使 用 す ると 試 料 から取 り除 けないので、油 浸 オイルに代 わってアニソールを 使 用 することがある。アニ ソール は 容 易 に 試 料 からふき 取 ること が でき る。 油 浸 オ イル 等 の 使 用 後 は、 レ ンズペー パーでレンズからオイルを拭 きとる。レンズペーパー以 外 の紙 は、細 かな石 が入 っていて レンズ等 を傷 つけるので使 用 しない。エタノールは接 着 剤 を溶 かしてレンズ等 を壊 す恐 れがあることから使 用 せず、所 定 のレンズクリーナーを使 用 する。 陥 りやすい誤 りの一 つは、光 量 を開 口 絞 りで調 整 することで、本 来 、光 量 は光 源 電 圧 とその直 後 の減 光 フィルターで調 整 する。開 口 絞 りは、コントラスト、解 像 度 、焦 点 深 度 の 調 整 に 使 用 する 。 開 口 絞 り を 絞 ると コ ント ラ スト は 増 すが 、 解 像 度 が 低 下 し て 像 は 汚 くな る。 よ り詳 細 に 言 えば、 焦 点 深 度 が 深 く なり、 見 える 範 囲 が 深 く 厚 くな るか ら物 が 折 り重 なっ て見 えづらくなる。 従 って、観 察 ・ 写 真 撮 影 にはなるべく開 口 絞 りを開 け、絞 るのはわずかに留 める。 試 料 を観 察 する際 、フォーカスを合 わせた後 に、試 料 に光 を当 てるコンデンサーレン ズの 高 さと 中 心 位 置 を 調 整 し、 よ り高 い解 像 度 が得 ら れるようにする。 明 視 野 観 察 、 微 分 干 渉 観 察 に必 要 で、蛍 光 観 察 には関 係 しない。この調 整 方 法 は発 明 者 (アウグス 5 ト・ケーラー1866~1948)の名 前 からケーラー照 明 と呼 ばれている。 < ケーラー照 明 法 > (1) 顕 微 鏡 に染 色 標 本 をのせて焦 点 を合 わせる。 (2) 視 野 絞 りを絞 り、視 野 に絞 りの影 を確 認 する。その際 、開 口 絞 りを適 度 に絞 ると、 視 野 絞 りの影 が見 やすくなる。 (3) コ ン デ ン サ ー を 上 下 し て 、 視 野 絞 り の 影 が 最 も シ ャ ー プ に 見 え る 位 置 に 合 わ せ る。 (4) 視 野 絞 りの開 口 部 を視 野 の中 心 に位 置 させる(センタリング)。 (5) 視 野 絞 りを 開 け る。その際 、 開 口 率 を 80%程 度 に 設 定 すると 対 物 レンズの も つ 解 像 力 がほぼ完 全 に引 き出 される。 (6) 対 物 レ ンズを かえ た場 合 に は 視 野 絞 りを 絞 っ て、 絞 りの影 が 明 瞭 に 見 え る ことを 確 認 する。 ① 蛍光顕微鏡装置 落 射 型 と透 過 型 の 2 種 類 があり、現 行 の顕 微 鏡 の多 くは落 射 型 である。落 射 型 は不 透 明 な支 持 体 上 の標 本 でも観 察 が可 能 である。個 々の蛍 光 色 素 は、特 有 の励 起 波 長 の照 射 により、励 起 光 より長 波 長 の蛍 光 を発 する。したがって、染 色 に用 いた蛍 光 色 素 にあわせて、励 起 波 長 と観 察 波 長 が選 択 される。 ② 微分干渉装置 微 分 干 渉 装 置 はポラライザー(偏 光 板 )、DIC 用 コンデンサー、DIC プリズム、DIC 用 対 物 レンズ、アナライザー(偏 光 板 )からなり、それらが生 物 顕 微 鏡 に組 み込 まれる。光 源 として偏 光 が用 いられ、光 線 が標 本 を通 過 する際 に標 本 中 の光 学 的 厚 さの差 によっ て生 じる光 路 差 (二 次 光 線 の 位 相 の差 )をコントラストの差 (あるいは色 の差 )に変 換 する 装 置 で、 像 としては物 の左 上 が明 るく右 下 に影 がある、といった見 え方 をする。プリズム の調 整 で影 の強 弱 や色 調 を調 整 したり、影 の方 向 を逆 にして左 上 に影 があって右 下 が 明 るい状 態 に変 化 させたりすることができる。装 置 の組 み合 わせが決 まっており、そのと おりに使 用 しないと微 分 の効 果 が得 られず、単 なる明 視 野 観 察 になってしまう。 6 <FITC 蛍 光 染 色 試 料 における顕 微 鏡 の使 い方 の例 > 1. 10 倍 対 物 レ ン ズ で フ ォ ー カ ス を 合 わ せ る (1) 高 圧 水 銀 ラ ン プ と 本 体 ( ハ ロ ゲ ン ラ ン プ ) の 電 源 を 入 れ 点 灯 を 確 認 、 蛍 光 シャッターが閉じていることを確認 (2) ス ラ イ ド を ス テ ー ジ に 乗 せ る (3) ハ ロ ゲ ン ラ ン プ の 明 る さ を 調 整 し 、 明 視 野 、 あ る い は 微 分 干 渉 観 察 を 行 う (4) フ ォ ー カ ス を あ わ せ る ( 泡 、 大 き な 粒 子 、 カ バ ー ガ ラ ス の ふ ち で あ わ せ や すい) (5) 接 眼 レ ン ズ の 目 の 幅 、 視 度 、 椅 子 の 高 さ を 調 整 2. 20 倍 対 物 レ ン ズ で ス ラ イ ド を 精 査 す る (1) 対 物 レ ン ズ を 20 倍 に 切 り 替 え 、 フ ォ ー カ ス を 確 認 す る (2) 蛍 光 観 察 B 励 起 に 切 り 替 え る ① ハロゲンランプを消す ② 微 分 干 渉 の フ ィ ル タ ー 、 偏 光 板 と DIC プ リ ズ ム を 外 す ③ 蛍光フィルターを B 励起フィルターに切り替え ④ 蛍光シャッターを開ける (3) ス ラ イ ド を 精 査 し 、ア ッ プ ル グ リ ー ン に 光 る 5μm( ク リ プ ト ス ポ リ ジ ウ ム ) な い し 10μm( ジ ア ル ジ ア ) の 粒 子 を 探 す ① 微動ハンドルを動かしてフォーカス面上下方向にも注意を払う ② G 励起で粒子が赤色に光らない、植物ではないことを確認する ③ DAPI 染 色 し て い れ ば U 励 起 で フ ォ ー カ ス を 移 動 し な が ら 核 を 観 察 ④ (サイクロスポラ、イソスポラ、その他の虫卵は U 励起で精査し、赤 痢アメーバ栄養体とシスト並びにジアルジア栄養体は微分干渉像を精 査する) 3. 40 倍 対 物 レ ン ズ を 使 用 し て 、 微 分 干 渉 で 内 部 構 造 を 観 察 す る (1) 蛍 光 シ ャ ッ タ ー を 閉 じ 、 B 励 起 蛍 光 フ ィ ル タ ー を 外 す (2) 微 分 干 渉 の フ ィ ル タ ー 、 偏 光 板 と DIC プ リ ズ ム を 入 れ る (3) 対 物 レ ン ズ を 40 倍 に 切 り 替 え 、 対 応 す る コ ン デ ン サ ー に 切 り 替 え る (4) ハ ロ ゲ ン ラ ン プ の ス イ ッ チ を 入 れ 、 光 量 を 調 整 、 フ ォ ー カ ス 確 認 (5) コ ン デ ン サ ー の 高 さ を 調 整 す る ( ケ ー ラ ー 照 明 ) ① 視野制限絞りを絞る ② 視 野 に 見 え る 絞 り の ふ ち を 見 て( 見 に く い 場 合 は 開 口 絞 り を 少 し 絞 り )、 はっきり見える位置にコンデンサー高さ、中心を合わせる ③ 視野制限絞りを視野一杯より少し大きく開く (6) 解 像 度 を 得 る た め に 開 口 絞 り を 開 け る (7) フ ォ ー カ ス を 移 動 し な が ら 内 部 構 造 を 観 察 (8) 対 象 が 規 定 の 大 き さ で あ る こ と を 確 認 (9) 必 要 に 応 じ て DIC プ リ ズ ム を 調 整 し 、 影 の 強 さ と 方 向 を 変 え る 4. ( 必 要 に よ り ) 60、 100 倍 対 物 レ ン ズ を 使 用 し て 内 部 構 造 を 観 察 7 (1) ス ラ イ ド に ア ニ ソ ー ル ( ま た は 油 浸 オ イ ル ) を 一 滴 落 と し 、( ス テ ー ジ を 下 げ な が ら ) 対 物 レ ン ズ を 切 り 替 え 、( ス テ ー ジ を 戻 し た ら ) 対 物 レ ン ズ を少し左右に揺らしてなじませる (2) 対 応 す る コ ン デ ン サ ー に 切 り 替 え る (3) フ ォ ー カ ス を 合 わ せ る (4) コ ン デ ン サ ー 高 さ 調 整 ( ケ ー ラ ー 照 明 ) (5) フ ォ ー カ ス を 移 動 し な が ら 内 部 構 造 を 観 察 (6) 必 要 に 応 じ て DIC プ リ ズ ム を 調 整 し 、 影 の 強 さ と 方 向 を 変 え る 5. ( 必 要 に よ り ) 写 真 を 撮 影 す る (1) 写 真 撮 影 装 置 を 準 備 す る (2) 先 に 蛍 光 像 を 撮 影 す る ① 偏 光 板 と DIC プ リ ズ ム を は ず し 、 蛍 光 フ ィ ル タ ー を 入 れ る ② 撮影の感度、秒数は陽性コントロールで確認しておく、例えば標準感 度で 1 秒のシャッター速度 ③ 撮 影 の XY 位 置 と フ ォ ー カ ス は 微 分 干 渉 で 合 わ せ て お く ④ 光 路 を カ メ ラ 100% に 切 り 替 え る( ラ イ ブ 像 が 得 ら れ る カ メ ラ な ら 、微 分干渉像でフォーカスを合わせる) ⑤ B 励 起 の 撮 影 を 実 施 、蛍 光 シ ャ ッ タ ー を 開 け 、カ メ ラ の シ ャ ッ タ ー を 押 し、撮影完了後直ちに蛍光シャッターを閉じる(退色が早いので蛍光 を当てる時間は秒単位に抑える) ⑥ 必要により U 励起で同様に実施、核の観察にはフォーカスを若干ずら して、複数枚撮影する (3) 次 い で 微 分 干 渉 像 を 撮 影 す る ① 画面を見ながら特徴ある像になるようフォーカスを合わせて撮影 ② さらにフォーカスをずらしながら沢山撮影 (前後の情報が立体構造の把握に有用) (画面を見ながらフォーカスを合わせることができない撮影装置の場 合、微動ネジをわずかに動かしながら、対象物の上から下までの断層 写真を数十枚撮影し、後から必要な像を選別する) ③ サイズ計測機能等を用いて対象の大きさを測定 (4) 写 真 の ト リ ミ ン グ を 行 い 、 報 告 に 備 え る ( Word な ど に 貼 る の で は な く 、 圧 縮 さ れ た tif や jpg フ ァ イ ル で 扱 う ) 6. 顕 微 鏡 の 後 片 付 け (1) 使 用 し た 油 浸 レ ン ズ を レ ン ズ ペ ー パ ー で 拭 く (2) 本 体 ( ハ ロ ゲ ン ラ ン プ の 電 源 )、 高 圧 水 銀 ラ ン プ の 電 源 を 切 る 8 A)明 視 野 観 察 B)蛍 光 観 察 C)微 分 干 渉 観 察 図 顕微鏡主要操作部位 顕微鏡フル活用術イラストレイテッド基礎から応用まで、稲澤譲治ら(秀潤社)より 9 《 クリプトスポリジウム症 の診 断 》 クリプトスポリジウム 症 は クリ プトスポリジウム 属 原 虫 の感 染 に起 因 するもので、 非 血 性 水 様 下 痢 を主 症 状 とする消 化 器 症 状 を呈 する疾 患 である。その他 の 症 状 としては、腹 痛 、倦 怠 感 、食 欲 低 下 、悪 心 などで、軽 い発 熱 を伴 う例 もある。下 痢 は一 日 数 回 程 度 から 20 回 以 上 の激 しいものまであり、数 日 から 2~3 週 間 持 続 する。抗 生 物 質 は無 効 であるが、免 疫 機 能 に異 常 がなければ自 然 治 癒 する。 一 方 、エイズを初 めとする免 疫 不 全 宿 主 には重 症 ・難 治 性 ・再 発 性 ・致 死 性 下 痢 症 を発 症 させる。本 症 はエイズ診 断 の指 標 疾 患 の 1 つで、HIV 陽 性 者 で本 原 虫 感 染 による下 痢 が 1 カ月 以 上 持 続 した場 合 はエイズと診 断 される。下 痢 の程 度 は 軟 便 ・泥 状 便 から水 様 便 ま である が、免 疫 不 全 の 進 行 とともに 重 症 化 する 傾 向 がある。重 症 例 ではコレラに見 られるような大 量 の水 様 便 や失 禁 を伴 う症 例 が報 告 され、直 接 死 因 となることもありえる。近 年 はエイズに対 しては多 剤 併 用 療 法 (HAART)による免 疫 機 能 の回 復 が行 われる。 病 原 種 は Cryptosporidium parvum(人 獣 共 通 寄 生 性 の C. parvum ともっぱ らヒトから検 出 される C. hominis)が主 であるが、C. meleagridis の感 染 も知 られ るようになった。免 疫 不 全 者 では C. baileyi や C. muris の感 染 も考 えられる。 寄 生 部 位 は腸 管 、とくに小 腸 であるが、AIDS では膵 臓 、胆 道 、胆 嚢 、呼 吸 器 へ の 感 染 も 報 告 され ている 。 ヒト 以 外 でも 多 くの 哺 乳 類 、 特 にその 幼 獣 に 感 染 が 認 められる。 クリプトスポリジウムの診 断 は検 便 によりオー シストを検 出 することによる。急 性 期 の患 者 便 には多 数 のオーシストが排 出 されるが 2) 、オー シストは小 さいために通 常 の顕 微 鏡 観 察 では 見 落 とされ る危 険 性 が高 い。 したがって、 遠 心 沈 殿 法 ( MGL 変 法 ) や 浮 遊 法 、 密 度 勾 配 遠 心 法 (遠 心 浮 遊 法 )によりオーシストの濃 縮 ・精 製 を行 い、さらに得 られた試 料 を蛍 光 抗 体 染 色 、抗 酸 染 色 、ネガティブ染 色 などで染 色 して 観 察 に供 すことが望 まれる。多 数 排 出 されてい 10 図 1 :ショ糖 浮 遊 法 により患 者 便 か ら 検 出 さ れ た Cryptosporidium のオーシスト る場 合 は簡 易 迅 速 ショ糖 浮 遊 法 3) 、あるいは直 接 薄 層 塗 抹 法 +蛍 光 抗 体 染 色 により容 易 にスクリーニング可 能 である。最 も高 い検 出 感 度 が期 待 される方 法 は 蛍 光 抗 体 染 色 で、 簡 便 な 染 色 用 キッ ト が 市 販 さ れ てい る (検 査 試 薬 と して未 承 認 のため保 険 適 用 外 である)。 1.検 査 材 料 の採 取 患 者 の 便 材 料 を然 るべき容 器 (試 験 管 、蓋 付 き採 便 管 等 で、保 存 培 地 の 入 っていないもの)に数 グラム程 度 採 取 する。検 査 までに時 間 を要 する場 合 は検 体 を冷 蔵 庫 保 存 する。長 期 間 の 保 存 が 避 けられない場 合 には 、顕 微 鏡 検 査 には 10%ホルマリン水 で固 定 (後 述 の遺 伝 子 検 査 目 的 に試 料 を分 割 して冷 凍 保 存 ) する。可 能 であれば、後 述 の集 嚢 子 を 行 ってから保 持 するように努 める。糞 便 量 に余 裕 が あればオーシスト をできるだけ 多 く 回 収 する。オー シストと して保 存 して おくことで遺 伝 子 解 析 の結 果 、新 規 のタイプであった場 合 に、オーシストの形 態 的 特 徴 を迅 速 に確 認 することができるし、遺 伝 子 検 査 にも都 合 が良 い。 検 査 材 料 の輸 送 上 の注 意 検 査 材 料 の輸 送 に際 しては、内 容 物 が漏 出 しないように適 切 に密 閉 し、冷 蔵 (4℃)あるいは冷 凍 (-20℃)で輸 送 する。クリプトスポリジウムと同 定 された後 に、試 験 研 究 等 を目 的 に生 きた状 態 のクリプトスポリジウムを取 り扱 う場 合 、クリプ トスポリジウムは四 種 病 原 体 としての施 設 基 準 、保 管 、使 用 、運 搬 、滅 菌 等 の基 準 (厚 生 労 働 省 令 )の遵 守 が求 められ、事 故 の届 出 と災 害 時 の応 急 措 置 は法 律 上 の義 務 ・直 罰 に該 当 する。都 道 府 県 公 安 委 員 会 宛 の運 搬 の届 出 には該 当 しない。 2.濃 縮 ・精 製 (1) 主 な器 具 および試 薬 類 ① 15 ml用 螺 子 蓋 付 きポリプロピレン製 スピッツ管 (以 下 、スピッツ管 ) ② ピペット ③ ガーゼ ④ 綿棒 11 ⑤ 60mmΦ程 度 のロート ⑥ 竹 串 、または割 箸 (以 下 、竹 串 ) ⑦ 金 属 性 ループ(直 径 6 - 7mmのニクロム線 のループ) ⑧ 10%ホルマリン水 溶 液 (以 下 、ホルマリン水 ) ⑨ 酢 酸 エチル(試 薬 特 級 ) ⑩ 高 比 重 液 (本 文 中 に記 載 ) ⑪ ボルテックスミキサー ⑫ 遠心機 ⑬ 簡 易 濃 縮 キット(本 文 中 に記 載 ) (2) 遠 心 沈 殿 法 (MGL変 法 、あるいはFEA法 ) 注 1 1. 糞 便 検 体 を少 量 (≦1g)スピッツ管 に取 る。 2. ホルマリン水 を1ml加 えて竹 串 で糞 便 塊 を充 分 ほぐす。 3. 全 量 が5mlとなるようにホルマリン水 を加 え、ボルテックスミキサーで充 分 攪 拌 する。 4. 攪 拌 後 、室 温 に20分 間 以 上 放 置 して固 定 する。 5. 再 度 、 よ く 攪 拌 し て か ら ロ ー ト に 4 枚 重 ね の ガ ー ゼ を 敷 き 、 試 料 液 を ろ 過 す る。 6. ホルマリン水 でガーゼ上 のろ過 残 渣 を軽 く洗 浄 し、全 量 で8mlのろ液 をスピッ ツ管 に回 収 する。 7. ろ液 に2mlの酢 酸 エチルを加 え、密 栓 をして短 時 間 激 しく振 盪 ・混 和 する。 8. 速 やかに1,050×g (通 常 の卓 上 遠 心 機 で2,500~3,000rpm程 度 に相 当 )、 5分 間 遠 心 する。 9. 液 層 は上 から酢 酸 エチル層 、浮 遊 糞 便 層 、希 釈 液 層 、沈 渣 の4液 層 に分 離 する。 10. 予 め浮 遊 糞 便 層 を竹 串 等 で管 壁 から離 し、上 部 の3液 層 を捨 て、沈 渣 を回 収 する。さらに、スピッツ管 内 壁 の付 着 物 を綿 棒 で拭 き取 る。 11. 得 られた沈 渣 を直 接 顕 微 鏡 観 察 (400倍 以 上 の倍 率 )、又 は密 度 勾 配 遠 心 法 等 の試 料 に供 する。 注1 本 変 法 では、①バイオハザードの観 点 から、生 理 食 塩 水 での洗 浄 工 程 を省 略 して 12 いる。また、②エチルエーテルに替 えて、引 火 性 の低 い酢 酸 エチルを用 いている。 (3) 密 度 勾 配 遠 心 法 (遠 心 浮 遊 法 ) 1. スピッツ管 に比 重 1.2 のショ糖 液 注 1 、 2 を 4ml程 度 取 り、糞 便 を溶 いた試 料 液 注 3 を重 層 する。 2. 1,050×g で 10 分 間 遠 心 し、比 重 の異 なった 2 つの液 層 の界 面 付 近 を 新 しいスピッツ管 に回 収 する。 3. 充 分 量 の精 製 水 を加 えて希 釈 し、再 度 、遠 心 沈 殿 して沈 渣 を得 る。 4. 沈 渣 を顕 微 鏡 観 察 に供 する。 注1 ショ糖 500g を精 製 水 650ml に溶 解 する。 注2 コロイド PVP 処 理 シリカ-ショ糖 混 合 液 (比 重 1.10)を用 いても良 い。液 の調 整 は、精 製 水 45mlにコロイド PVP 処 理 シリカ(Percoll またはそれと同 等 のも の)45mlと 2.5M ショ糖 液 10ml(8.55g のショ糖 を精 製 水 に溶 解 して全 量 を 10ml としたもの)を加 えて混 合 する。 注3 便 材 料 に 未 消 化 の 脂 肪 分 が 多 量 に 含 ま れて い る 場 合 に は 、 検 体 を そ の まま では浮 遊 法 に供 することができない。前 処 理 として遠 心 沈 殿 法 を行 い、得 ら れた沈 渣 を試 料 とする。 (4)ショ糖 浮 遊 法 1. 0.5 ~ 1g の糞 便 材 料 注 1 を比 重 1.2のショ糖 液 注 2 に溶 く。 2. 試 験 管 立 てに立 てた試 験 管 に糞 便 液 を満 たす。その際 、表 面 張 力 を利 用 して液 面 を試 験 管 よりも盛 り上 げる(後 に金 属 ループを使 用 する場 合 は、試 験 管 上 端 より下 1cm位 まで満 たす)。 3. 20分 間 程 度 、室 温 に静 置 する。 4. カバーグラス(あるいは金 属 ループ)を液 最 上 面 に接 着 して、液 表 面 に浮 遊 してきたオーシストを回 収 する。 5. 直 接 、顕 微 鏡 観 察 に供 する 注 3 か、回 収 液 を十 分 量 の精 製 水 で希 釈 し、遠 沈 して沈 渣 を観 察 に供 する。 13 注1 下 痢 便 等 で未 消 化 の脂 肪 分 が多 量 に含 まれている場 合 には、前 処 理 とし て遠 心 沈 殿 法 を行 い、得 られた沈 渣 を試 料 とする。 注2 用 いる高 比 重 液 の組 成 により飽 和 食 塩 水 浮 遊 法 、硫 苦 (硫 酸 マグネシウ ム)・ 食 塩 水 浮 遊 法 、ショ 糖 液 浮 遊 法 などの名 前 で 区 別 さ れる。ク リプトス ポ リジウムの検 査 では一 般 に比 重 1.2のショ糖 液 が用 いられる。 注3 ショ糖 液 中 のオーシストは通 常 の顕 微 鏡 像 と著 しく異 なる。観 察 には通 常 の 生 物 顕 微 鏡 を用 いる。 (5)簡 易 迅 速 ショ糖 浮 遊 法 1. スライドグラス上 に少 量 の検 体 を置 く 2. ショ糖 液 を加 えて混 合 する 3. カバーガラスを被 せて数 分 間 、静 置 する 4. カバーガラス付 近 に焦 点 を合 わせて、浮 いた粒 子 を観 察 する (6)簡 易 濃 縮 キットと遠 心 浮 遊 法 を組 み合 わせた方 法 1. 糞 便 か ら の 寄 生 虫 卵 な ど の 簡 易 濃 縮 キ ッ ト ( VERITAS : Parasep ; EVERGREEN : FECAL PARASITE CONCENTRATOR ) に 含 ま れ る 遠 心 チューブに、糞 便 約 1g(小 指 頭 大 )と蒸 留 水 を適 当 量 加 えボルテックスミキ サ ーで十 分 撹 拌 後 に 遠 心 ろ 過 する 。 こ の 操 作 で 糞 便 中 の 挟 雑 物 が キッ ト のメッシュで除 去 され、オーシストは沈 澱 物 中 に回 収 される。 2. 沈 澱 物 に少 量 の PBS を加 え使 い捨 てピペットを用 いてピペッティングしその 0.5~1ml を 15ml の目 盛 りつきプラスチック製 遠 沈 管 に入 れ、さらに比 重 1.2 のショ糖 溶 液 を 10ml まで加 えピペッティングする。 3. キャップを外 し、遠 沈 管 を少 し傾 けて蒸 留 水 を 13ml 程 度 まで使 い捨 てピペ ッ ト を用 い てゆ っく りと 重 層 す る ( ショ 糖 層 に 直 接 蒸 留 水 を 滴 下 す る と 界 面 層 が乱 れるので、ピペット先 端 を管 壁 につけて蒸 留 水 が管 壁 をつたってシ ョ糖 層 に流 れるようにする)。 4. 2,000 回 転 10 分 間 遠 心 するとオーシストなど寄 生 虫 卵 を含 む層 がショ糖 層 と 水 層 の 境 界 に で き る の で、 水 層 と と も に その 層 を回 収 し 蒸 留 水 を 入 れ た 別 の 15ml 遠 沈 管 に入 れる。 14 5. 撹 拌 後 に 2,500 回 転 10 分 間 遠 心 し、沈 澱 物 を 1.5ml のエッペンチューブ に採 取 して再 度 蒸 留 水 で遠 心 洗 浄 後 、2.5%重 クロム酸 カリウム液 などの保 存 液 中 で冷 蔵 保 存 する。 (7)免 疫 磁 気 ビーズ法 本 法 は 免 疫 反 応 を 利 用 してク リプトスポリ ジウムと ジアルジアを特 異 的 に 磁 気 ビー ズと 結 合 さ せ、 磁 力 に より回 収 する 方 法 で、 免 疫 磁 気 ビ ーズ法 試 薬 と 磁 石 等 が 必 要 と なる 。 本 法 は 精 製 度 が 高 く 、 高 感 度 な 検 出 、 核 酸 抽 出 用 試 料 の 精 製 に適 している。水 環 境 試 料 の検 査 用 に、製 品 が市 販 されている。 3.観 察 (1) 器 具 および試 薬 類 ① スライドグラス ② カバーグラス ③ ネイルエナメル(パラフィン類 を溶 かして用 いても良 い) ④ 生 物 顕 微 鏡 (微 分 干 渉 装 置 付 きが望 まれる) ⑤ 蛍 光 顕 微 鏡 (一 般 に落 射 型 が便 利 ) ⑥ 各 種 染 色 液 (本 文 中 に記 載 ) ⑦ 燐 酸 緩 衝 生 理 食 塩 水 pH 7.2(PBS) ⑧ 市 販 の蛍 光 抗 体 試 薬 (検 査 用 試 薬 として未 承 認 のため、保 険 適 用 外 ) ⑨ DAPI 保 存 液 : メ タ ノ ー ル 1ml に DAPI (4',6-diamidino-2-phenylindole) 2mg を溶 解 する。密 閉 容 器 に入 れ、遮 光 して冷 蔵 庫 に保 管 する。使 用 に際 して DAPI 保 存 液 10μl を PBS 50ml に加 えて混 合 する。 ⑩ 水溶性封入剤 (2) 直 接 観 察 1. 糞 便 希 釈 液 、又 は精 製 試 料 注 1 をスライドグラスに少 量 取 り、カバーグラスをか ける。 2. カバーグラスの四 縁 を封 じて 注 2 、微 分 干 渉 顕 微 鏡 注 3 で観 察 する。通 常 の生 15 物 顕 微 鏡 注 4 では他 の粒 子 との区 別 は困 難 である。 注1 高 比 重 シ ョ 糖 液 中 の オ ーシストは 微 分 干 渉 装 置 での観 察 に は適 さない 。 観 察 は通 常 の生 物 顕 微 鏡 を用 いるが通 常 の像 とは著 しく異 なる。 注2 ネイルエナメル、またはパラフィン類 を溶 かしてシールする。周 囲 をシールするこ とで試 料 液 の流 れが止 まり、観 察 が容 易 となる。 注3 微 分 干 渉 顕 微 鏡 は一 般 の生 物 顕 微 鏡 に微 分 干 渉 装 置 を組 み込 んだもので、 光 源 には 偏 光 が 用 いら れる。 標 本 中 の 光 学 的 厚 さの 差 に よって 生 じ る光 路 差 (二 次 光 線 の位 相 の 差 ) をコントラスト の差 、ま たは 色 の 差 に 変 換 して 可 視 化 す る顕 微 鏡 で ある。 顕 微 鏡 観 察 に 先 立 って 、 後 述 の ケー ラ ー 照 明 法 に 準 じ た照 明 の調 整 が重 要 である。オーシストの内 部 構 造 の観 察 に適 しているが、スクリ ーニングには適 さない。標 本 作 製 上 の注 意 点 は被 検 物 が重 積 しないこと、す なわちできるだけ希 薄 な標 本 を作 製 すること。水 道 水 等 の検 査 では原 虫 の確 定 に用 いられている。 注4 被 写 界 深 度 を調 整 (コンデンサーの位 置 や開 口 絞 りの調 整 )して、最 適 の像 を 得 ること。 <観 察 像 > オー シスト は 類 円 形 ( 4.5~5.4 × 4.2 ~5.0μm)で 、 微 分 干 渉 顕 微 鏡 像 では オーシスト内 に 4 個 のスポロゾイトや残 体 、その他 に大 小 の顆 粒 が観 察 される。 高 比 重 ショ糖 液 中 のオーシストの観 察 には通 常 の生 物 顕 微 鏡 を用 いるが、通 常 の像 とは著 しく異 なる。コンデンサーの位 置 、開 口 絞 りなどを適 正 に調 整 する と、屈 折 率 の関 係 でオーシストは薄 いピンク~オレンジ色 に見 える。その際 、酵 母 などは緑 色 に見 えるために識 別 が可 能 である。なお、ショ糖 液 中 のオーシスト は内 部 構 造 の観 察 には適 さない。内 部 構 造 の確 認 や染 色 標 本 作 成 にはショ糖 液 を精 製 水 に置 換 する操 作 が必 要 となる。また、ショ糖 中 のオーシストは長 時 間 おくと収 縮 したり、壊 れたり、特 にホルマリン固 定 した材 料 はより早 く見 えづらくな ったりすることがあり、観 察 に注 意 を要 する。 (3)蛍 光 抗 体 染 色 16 本 法 は免 疫 反 応 を利 用 してオーシスト壁 を特 異 的 に染 色 する方 法 で、観 察 に は蛍 光 顕 微 鏡 装 置 が必 要 となる。本 法 は感 度 が高 く、スクリーニング法 として優 れている。染 色 方 法 には間 接 蛍 光 抗 体 染 色 法 と直 接 蛍 光 抗 体 法 の 2 つの方 法 がある。糞 便 等 の試 料 では染 色 工 程 の少 ない直 接 蛍 光 抗 体 法 が便 利 なので、 以 下 に説 明 する。 <湿 潤 試 料 の直 接 蛍 光 抗 体 染 色 (湿 式 )> 1. 精 製 材 料 を小 試 験 管 に取 り、少 量 の PBS に希 釈 ・混 和 する。 2. 必 要 量 (市 販 キットにより異 なるが、目 安 として試 料 の 1/10~20 量 )の蛍 光 抗 体 試 薬 原 液 を添 加 し、遮 光 して室 温 で所 定 時 間 (15~30 分 程 度 )反 応 さ せる。 3. 必 要 に応 じて、染 色 終 了 5 分 前 に適 当 量 の DAPI 染 色 液 を加 えて反 応 を続 ける。 4. 反 応 後 、PBS で遠 心 洗 浄 (1,050×g で 5 分 間 程 度 )し、沈 渣 に水 溶 性 封 入 剤 を滴 下 する。 5. スライドグラスにとり、カバーグラスを掛 けて、周 囲 をシールして顕 微 鏡 観 察 に 供 する。 6. 蛍 光 顕 微 鏡 注 1 (B 励 起 下 )で FITC の特 異 蛍 光 (緑 色 )を示 す粒 子 を観 察 す る。 7. DAPI 染 色 を行 った場 合 には UV 励 起 に切 り替 え、青 色 に染 まったスポロゾ イトの核 (4 核 )を観 察 する。 注1 広 帯 域 ( long pass)の 蛍 光 フィルター を用 い ると夾 雑 物 が他 の 色 調 を呈 し 、 観 察 が容 易 である。 <乾 燥 標 本 の直 接 蛍 光 抗 体 染 色 (乾 式 )> 1. スライドグラスに糞 便 材 料 、または精 製 試 料 を薄 く塗 布 して乾 燥 させる。 2. PBS で軽 く洗 浄 した後 、スライドグラスを湿 箱 に移 し、試 料 部 分 に蛍 光 抗 体 試 薬 を滴 下 、遮 光 して室 温 で所 定 時 間 (15~30 分 程 度 )反 応 させる。 3. 必 要 に応 じて染 色 終 了 5 分 前 に DAPI 染 色 液 を加 え、ピペットで静 かに液 を 撹 拌 、反 応 を続 ける。 17 4. 反 応 後 、PBS で丁 寧 に洗 浄 、充 分 水 を切 ってから封 入 剤 を滴 下 、カバーグ ラスをかける。 5. 蛍 光 顕 微 鏡 B 励 起 下 で FITC の特 異 蛍 光 (緑 色 )を示 す粒 子 を観 察 する。 6. DAPI 染 色 を行 った場 合 には UV 励 起 に切 り替 え、青 色 に染 まったスポロゾ イトの核 (4 核 )を観 察 する。 <観 察 像 > 蛍 光 抗 体 染 色 像 では緑 色 の特 異 蛍 光 を示 す粒 子 注 1 として観 察 される。オー シストの染 色 パターンは基 本 的 に辺 縁 部 の蛍 光 のみで、中 心 部 にはほとんど蛍 光 は認 められない。したがって、全 体 としてはドーナッツ状 の染 色 像 となる。 DAPI 染 色 を行 った場 合 には、UV 励 起 下 でオーシスト中 にスポロゾイトの核 が 4 核 明 瞭 に観 察 される 注 2 。 注1 市 販 の蛍 光 抗 体 試 薬 は一 部 の藻 類 等 と交 叉 反 応 することが報 告 されており、 環 境 試 料 では他 の方 法 による確 認 が必 要 である。 注2 新 鮮 オーシストでは DAPI に染 まらない場 合 がある。 (4) ネガティブ染 色 蛍 光 顕 微 鏡 がない場 合 の便 宜 的 方 法 である。 <染 色 液 > ニューメチレン青 2.5g シュウ酸 カリウム・1水 塩 8.0g 精製水 500ml 上 記 の2薬 を精 製 水 に溶 解 し、ろ過 してから試 薬 瓶 に移 し、室 温 で保 存 する。 <手 順 > 1. スライドグラス上 に糞 便 材 料 、または精 製 試 料 を少 量 取 り、過 剰 のニューメチレ ン青 染 色 液 を加 えて攪 拌 する 注 1 、 2 。 2. カ バ ー グ ラ ス を か け 四 縁 を シ ー ル し て か ら 100 ~ 200 倍 で 観 察 す る 。 観 察 に は 18 生 物 顕 微 鏡 を用 いる。開 口 絞 り(コンデンサーに付 属 の絞 り)を絞 り込 み、焦 点 をわずか上 方 にずらして観 察 すると、無 色 のオーシストは青 い背 景 の中 に(白 く)浮 かんでみえる。 3. オーシストらしい粒 子 が検 出 された場 合 には高 倍 率 で観 察 する。 4. 陽 性 と判 断 された試 料 については別 の方 法 注 3 でオーシストの確 認 を行 う。 注1 試 料 に対 して十 分 量 の色 素 を加 えると、過 剰 分 の色 素 が残 ってフィルター の役 目 をする。細 菌 等 の混 入 が多 いと色 素 が消 費 されてフィルター効 果 を 失 う こ と が あ る 。 18×18mm の カ バ ー グ ラ ス に 対 し て 試 料 の 量 は 10μl 以 下 程 度 にする。 注2 沈 渣 の一 部 を別 の試 験 管 に取 り、色 素 液 と混 和 してからスライドグラスに移 してもよい。 注3 微 分 干 渉 顕 微 鏡 観 察 、抗 酸 染 色 、蛍 光 抗 体 染 色 法 など。 <観 察 像 > 細 菌 類 、酵 母 、その他 の食 物 残 渣 は濃 青 色 に染 色 されるが、オーシストは 染 色 されない。液 中 に過 剰 の色 素 が残 ることで、青 色 の背 景 の中 に無 色 のオーシ スト が 浮 い て見 え る 。 高 倍 率 の 観 察 では オー シスト の 内 部 構 造 が 不 均 一 で、 不 明 瞭 ながらスポロゾイト等 の内 部 構 造 が確 認 される。酵 母 や結 晶 様 構 造 物 等 が 同 じく白 く見 える場 合 があるが、経 験 を積 むと内 部 構 造 の違 いから区 別 される。 (5) 抗 酸 染 色 クリプトスポリジウムやサイクロスポラのオーシストは抗 酸 性 を示 すことから、抗 酸 染 色 が用 いられてきた。以 下 に一 例 として Kinyoun の石 炭 酸 フクシン染 色 法 を 紹 介 する が、抗 酸 染 色 法 は いろいろ改 良 され ており、 各 研 究 室 で常 用 している 方 法 があればその方 法 を踏 襲 すべきである。 <染 色 液 > ☆ Kinyoun の石 炭 酸 フクシン液 塩 基 性 フクシン 4 g 19 95% エタノール 石 炭 酸 精 製 水 20ml 8ml 100ml 塩 基 性 フクシンをエタノールに溶 かし、これに石 炭 酸 と精 製 水 の混 合 液 を加 え る。充 分 に攪 拌 した後 、ろ過 して褐 色 試 薬 瓶 に保 存 する。 ☆ Loeffler のアルカリ性 メチレン青 液 メ チ レ ン 青 95% エタノール 0.01% 水 酸 化 カリ液 0.3g 30ml 100ml エタノールにメチレン青 を溶 かし、水 酸 化 カリ液 を加 えて試 薬 瓶 に保 存 する。 <手 順 > 1. スライドグラス上 に糞 便 材 料 を直 接 、又 は精 製 試 料 を薄 く塗 抹 して風 乾 する。 2. メタノールで1~2分 固 定 し、乾 燥 する。 3. Kinyounの石 炭 酸 フクシン液 を試 料 塗 布 面 に載 せて5分 間 染 色 する。 4. 50%エタノールで染 色 液 を剥 がすように洗 浄 する 注 1 。 5. 精 製 水 洗 浄 後 、1%の硫 酸 水 で約 2分 間 、または標 本 から赤 い色 素 が溶 け出 なくなるまで脱 色 する 注 2 。 6. 水 洗 後 、Loeffler のアルカリ性 メチレン青 染 色 液 で1分 間 程 度 、後 染 色 する。 7. 水 洗 、乾 燥 後 にバルサム等 で封 入 して観 察 する。 注1 染 色 液 の 表 面 には 色 素 の 酸 化 膜 ( 不 溶 性 ) が 形 成 さ れるこ とが あり 、 酸 化 膜 が 標 本 上 に付 着 しないように洗 い流 す。多 量 に付 着 した場 合 には50%エタノール 液 で漬 け洗 いする。 注2 目 安 として、標 本 に混 在 している細 菌 類 の赤 味 がやや残 る程 度 まで脱 色 すると 良 い。 <観 察 像 > オーシストは淡 いピンクから赤 色 、さらに濃 赤 色 に染 まる。染 色 状 況 は一 様 で 20 は なく 、 馬 蹄 形 に 染 まるも のが 多 い。 同 時 に 染 ま らない オーシストも 少 なく ない 。 後 染 色 を強 めに行 うと赤 の色 調 は低 下 するが、内 部 が顆 粒 状 に染 め出 される。 結 果 の判 定 は他 の検 査 法 で得 られた結 果 を合 わせて総 合 的 に判 断 すべきであ る。ホルマリン処 理 されたオーシストは抗 酸 染 色 性 が低 下 するとの指 摘 もあるが、 不 都 合 はないとも言 われる。 (6) ヨウ素 ・ヨウ化 カリ染 色 クリプトスポリジウムのオーシスト観 察 用 に改 良 した染 色 方 法 を紹 介 するが、利 用 可 能 な顕 微 鏡 が生 物 顕 微 鏡 に限 られている場 合 の便 宜 的 な染 色 方 法 である。 スクリーニング法 としては推 奨 できない。染 色 と熱 固 定 を同 時 に行 うことでオーシ スト内 部 とオーシスト壁 の存 在 を観 察 することができる。 <ヨウ素 ・ヨウ化 カリ液 > ヨウ素 ヨウ化 カリ 精製水 5g 10g 100ml ヨウ化 カリを水 に溶 かし、攪 拌 しながらヨウ素 を徐 々に加 えて完 全 に溶 解 し、ろ 過 してから褐 色 試 薬 瓶 に密 閉 保 存 する。(市 販 の希 ヨードチンキで代 替 できる) <手 順 > 1. 精 製 試 料 を1.5ml用 サンプルチューブ等 に取 る。 2. 試 料 量 の1/2~1/3量 のヨウ素 ・ヨウ化 液 を加 えて、1~2分 間 熱 湯 に湯 煎 ・振 盪 する。 3. 試 料 をスライドグラスに取 り、カバーグラスをかけ、四 縁 をシールして観 察 する。 <観 察 像 > オーシストの内 部 構 造 が褐 色 に染 色 される。熱 処 理 によって色 素 が内 部 にま で浸 透 する。また、 オーシスト 壁 と 内 部 構 造 が 分 離 する ためにオーシスト 壁 が 明 瞭 に 観 察 でき る ように なる 。 酵 母 など で は 細 胞 壁 の 分 離 は 起 こ らない こ と から明 瞭 に区 別 される。 21 《 ジアルジア症 の診 断 》 ジ アル ジ ア 症 (ラン ブ ル 鞭 毛 虫 症 )は ジア ルジ ア 属 原 虫 の 感 染 に 起 因 する 消 化 器 疾 患 で、主 症 状 は激 しい水 様 下 痢 から軟 便 を認 め、少 数 寄 生 の場 合 はほ とんどが無 症 状 で糞 便 中 に持 続 的 にシストを排 出 する。本 原 虫 の感 染 は患 者 糞 便 中 に 排 出 され るシストを経 口 摂 取 することによる。シストを排 出 するシスト 保 有 者 (無 症 状 キャリアー)が他 のヒトへの感 染 源 として重 要 である。臨 床 的 に他 の 下 痢 症 と区 別 することは容 易 でない。 病 原 種 は Giardia duodenalis(G. lamblia、G. intestinalis と synonym)である。 寄 生 部 位 は腸 管 、特 に十 二 指 腸 から空 腸 上 部 にかけてであるが、胆 嚢 や胆 管 粘 膜 にも寄 生 範 囲 が拡 大 することがある。本 症 のリスクファクターは発 展 途 上 国 への渡 航 である。また、男 性 同 性 愛 者 もリスクグループを形 成 する可 能 性 があ る。 ジアルジア症 の診 断 は糞 便 中 の直 径 10μm 前 後 の楕 円 形 のシスト(嚢 子 )、 または 栄 養 型 虫 体 (ト ロフォ ゾイト、 栄 養 体 ) を検 出 する ことに よる 。 シストの 観 察 方 法 と栄 養 型 虫 体 の観 察 方 法 は異 なる。シストは一 般 に有 形 便 に認 められ、下 痢 便 では栄 養 型 虫 体 が検 出 される。また、十 二 指 腸 ゾンデ採 取 液 中 からも栄 養 型 虫 体 が検 出 される。 1. シストの検 査 法 (1) 検 査 材 料 の採 取 シストの検 出 を目 的 とした試 料 の採 取 方 法 はクリプトスポリジウムの検 査 材 料 の 採 取 を参 照 のこと。 (2) 濃 縮 ・精 製 基 本 的 にクリプトスポリジウムの検 査 法 に準 じ、遠 心 沈 殿 法 (MGL変 法 )、密 度 勾 配 遠 心 法 (遠 心 浮 遊 法 ) 注 1 、簡 易 迅 速 ショ糖 浮 遊 法 注 1 、免 疫 磁 気 ビーズ法 の 各 方 法 が適 用 できる。一 般 的 には遠 心 沈 殿 法 による集 嚢 子 が第 1選 択 となる。 注1 ホルマリン等 で長 期 に固 定 されたシストは浮 遊 法 により回 収 しづらいことがある。 22 (3) 観 察 1) 直 接 塗 抹 法 および蛍 光 抗 体 染 色 法 クリプトスポリジウムの検 査 法 に準 じて行 う。蛍 光 抗 体 試 薬 は直 接 法 用 の試 薬 が市 販 されている(検 査 試 薬 として未 承 認 のため保 険 適 用 外 である)。 <観 察 像 > シストは楕 円 形 (8~12 × 6~8μm)で、成 熟 したシストでは 4 個 の核 を持 つ。 主 に泥 状 便 や有 形 便 中 に観 察 される。微 分 干 渉 顕 微 鏡 像 では核 、鞭 毛 、軸 糸 、曲 刺 等 が観 察 できる。 蛍 光 抗 体 法 で染 色 され たシストは 緑 色 の 特 異 蛍 光 を示 す粒 子 と して観 察 さ れる。その染 色 パターンは辺 縁 部 の蛍 光 が強 く、中 心 部 にはほとんど蛍 光 が認 められない。DAPI 染 色 を行 った場 合 には 4 核 が観 察 される。 2) ヨウ素 ・ヨウ化 カリ染 色 法 利 用 可 能 な顕 微 鏡 が生 物 顕 微 鏡 に 限 られる 場 合 の 便 宜 法 と してヨ ウ素 ・ヨ ウ 化 カリ染 色 が用 いられている。 <染 色 液 > 13頁 (6)ヨウ素 ・ヨウ化 カリ染 色 を参 照 のこと。 <染 色 手 順 > 1. 糞 便 、または精 製 試 料 を1.5ml用 サンプルチューブ等 に取 る。 2. 試 料 量 の1/2~1/3量 のヨウ素 ・ヨウ化 液 を加 えて、撹 拌 する。 3. 試 料 をスライドグラスに取 り、カバーグラスをかけ、周 囲 をシールして観 察 する。 内 部 構 造 が褐 色 に染 色 され、核 等 が観 察 可 能 となる。 2. 栄 養 型 虫 体 の検 査 法 (1) 検 査 材 料 の採 取 栄 養 型 虫 体 の検 出 を目 的 とする場 合 には試 料 の採 取 後 、速 やかに検 査 を行 う 必 要 がある。試 料 の希 釈 は生 理 食 塩 水 等 の等 張 液 を用 いる。検 査 までに時 間 を 23 要 する場 合 は検 査 材 料 を冷 蔵 保 存 すべきであるが、栄 養 型 虫 体 の 運 動 性 が 冷 蔵 状 態 でどの程 度 保 持 されるかは不 明 である。観 察 に際 して温 めて観 察 する。 <直 接 塗 沫 法 > 1. 便 を生 理 食 塩 水 で希 釈 してスライドグラスに取 り、カバーグラスをかける。 2. カバーグラスの周 囲 をシールしてから顕 微 鏡 観 察 に供 する。 3. 観 察 に際 して、37℃程 度 に暖 めると栄 養 型 虫 体 の 運 動 が活 発 となり検 出 し 易 い。 <十 二 指 腸 ゾンデ採 取 液 からの検 出 方 法 > 1. 十 二 指 腸 ゾ ン デ 採 取 液 を ス ピ ッ ツ 管 に 取 り 、 1,050 × g ( 汎 用 遠 沈 機 で 約 2,500rpm) 5分 程 度 遠 心 して沈 渣 を得 る。粘 稠 性 が高 い場 合 にはPBS等 で 希 釈 洗 浄 するとよい。 2. 沈 渣 を ス ラ イ ド グ ラ ス に 取 り 、 カ バ ー グ ラ ス を 掛 け 、 周 囲 を 封 じ て か ら 顕 微 鏡 観 察 に供 する。 <ギムザ染 色 > 1. 沈 渣 をスライドグラス上 に薄 く塗 布 し、速 やかに風 乾 する。 2. 充 分 乾 燥 させた後 に、メタノール固 定 (2~3 分 間 )する。 3. 薄 い液 で染 色 し、風 乾 後 、バルサム等 で封 入 し、顕 微 鏡 観 察 に供 する。 <観 察 像 > 栄 養 型 虫 体 は体 長 15~17μm、幅 5~7μm で左 右 対 称 の洋 梨 型 で、運 動 中 の原 虫 は“木 の葉 が舞 うようにヒラヒラ”とした動 きを呈 する。固 定 染 色 標 本 では 2 核 、4 対 8 本 の鞭 毛 、吸 着 円 盤 等 が観 察 される。猿 の面 容 に似 た特 徴 的 な形 態 を有 することから、モンキ-フェイスと形 容 される。 24 《 サイクロスポラ症 、およびイソスポラ症 の診 断 》 サ イ ク ロ ス ポ ラ 症 お よ び イ ソ ス ポ ラ 症 は 、 Cyclospora cayetanensis お よ び Isospora belli の感 染 に起 因 する消 化 器 疾 患 である。いずれも臨 床 的 には他 の 下 痢 症 との区 別 は容 易 でない。寄 生 部 位 は腸 管 、特 に十 二 指 腸 から空 腸 上 部 にかけてである。 サイクロスポラ症 は、1996 年 から続 けて米 国 で中 南 米 産 のラズベリーを介 した 比 較 的 規 模 の大 きな分 散 型 集 団 感 染 (Diffuse Outbreak)が発 生 したことで有 名 となった。イソスポラはとくにエイズを初 めとする免 疫 不 全 宿 主 に発 症 するはげ しい下 痢 症 の原 因 微 生 物 として重 要 である。 いずれの原 虫 種 においても患 者 の糞 便 に混 じって排 出 されたオーシストは 環 境 中 で一 定 の 発 育 (スポロゾイト 形 成 ) をして感 染 性 を有 するように なる。 この 点 はクリプトスポリジウムやジアルジアとは大 きく異 なる。 1.検 査 の概 要 と臨 床 材 料 診 断 は糞 便 中 のオーシストを検 出 することによる。サイクロスポラのオーシストは 直 径 8μm の 球 形 で 、 内 部 に は 多 数 の 顆 粒 が 観 察 さ れ る 。 か つ て こ の 原 虫 は "Cyanobacterium-like body"と呼 ばれたことがあり、形 態 的 に藻 類 に似 る。 イソスポラのオーシストは長 径 20~33μm 短 径 10~19μm のフットボール型 を呈 する。新 鮮 便 中 に検 出 されるオーシストは単 細 胞 である。このオーシストは大 きいことから見 落 とすことは稀 である。 2.オーシストの検 査 法 基 本 的 にクリプトスポリジウムの検 査 法 に準 じる。 これら2種 の原 虫 に関 しては蛍 光 抗 体 試 薬 が開 発 されていない。しかしながら、 オーシスト壁 はUV 励 起 下 でいずれもネオン青 色 の自 家 蛍 光 を発 することから、 蛍 光 顕 微 鏡 観 察 による検 出 が第 一 選 択 となる。 なお、サイクロスポラのオーシストは抗 酸 染 色 で陽 性 に染 まる。 25 Ⅲ 遺伝子検査法 遺 伝 子 検 査 法 は、すでに各 種 の病 原 体 検 索 に用 いられている。 原 虫 類 の検 査 においても同 様 で、疫 学 的 調 査 への利 用 が進 んでいる。ここでは原 虫 検 査 に おける遺 伝 子 検 査 法 のポイント、特 に原 虫 あるいは検 査 材 料 の特 性 から生 ずる 問 題 点 について紹 介 する。 1. 原 虫 検 査 における遺 伝 子 検 査 法 のポイント 遺 伝 子 検 査 法 の 利 点 は 、 種 間 あ るい は 種 内 の 遺 伝 学 的 変 異 を 知 るこ と がで きることで、これを利 用 することで汚 染 源 の特 定 などといった疫 学 的 に重 要 な情 報 を得 ることが期 待 できる。 腸 管 寄 生 性 原 虫 類 への適 用 に際 しての問 題 点 は、壊 れにくい(オー)シストか らの核 酸 抽 出 である。また、糞 便 材 料 では目 的 外 の核 酸 の混 入 が避 けられない ことや、PCR 反 応 の阻 害 要 因 も多 く含 まれていることが問 題 となる。いずれにせよ、 前 処 理 としての試 料 精 製 が重 要 となる。また、反 応 に際 してはテンプレートの濃 度 範 囲 を広 く取 るなど、確 実 に反 応 を得 るための工 夫 が必 要 となる。 現 行 の解 析 法 は、検 出 された原 虫 を解 析 対 象 としてさらに詳 細 な情 報 を得 る ことを目 的 としているもので、検 出 を目 的 とするのはまだ一 般 的 ではない。一 方 、 水 環 境 試 料 中 の 検 査 を 目 的 と した 検 査 試 薬 が 市 販 さ れ て い る 。 こ の 場 合 は 免 疫 磁 気 ビ ー ズ 法 に より 徹 底 し て 反 応 阻 害 物 質 を 除 き 、 その 上 で 逆 転 写 反 応 を 行 って rRNA 分 子 を標 的 とした高 感 度 な増 幅 が行 われている。その他 、細 胞 培 養 と RT-PCR を応 用 した方 法 などが開 発 されている。詳 細 は文 献 等 を参 照 され たい。 2. 主 な試 薬 と実 験 器 具 遺 伝 子 検 査 に 共 通 する実 験 器 具 と試 薬 類 、および各 操 作 に必 要 なものとに 分 けて示 した。 〔共 通 するもの〕 ① 0.5ml(又 は 0.2ml)PCR チューブ ② 1.5ml 遠 心 チューブ ③ 疎 水 性 フィルター付 きピペットチップ 26 ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ 微 量 ピペット(10、200、1000μl) 微量高速冷却遠心機 恒温水槽 滅 菌 精 製 水 (DW/MiliQ 水 など)、 TE バッファー(10mM, Tris-HCl, 1mM EDTA, pH8.0 ) 〔核 酸 抽 出 用 〕 ① 加 熱 用 ブロックヒーター(1.5ml チューブ対 応 ) ② 3M 酢 酸 ナトリウム ③ TE 飽 和 フェノール:フェノールを加 熱 ・融 解 し、等 量 の TE バッファーを加 え、混 合 し、その後 静 置 して、水 層 を除 く。この操 作 をもう一 度 繰 り返 し、 得 られたフェノールを TE 飽 和 フェノールとする。 ④ フェノール/クロロフォルム混 液 (TE 飽 和 フェノール:クロロフォルム:イソアミルアルコール=25:24:1) ⑤ 10% SDS ⑥ TritonX-100 ⑦ 10mg/ml proteinase K ⑧ エタノール ⑨ ミネラルオイル ⑩ 核 酸 抽 出 精 製 キット 〔PCR ならびに DNA 電 気 泳 動 用 〕 ① サーマルサイクラー ② 電気泳動装置 ③ Taq DNA polymerase キット ④ 抗 Taq 抗 体 ⑤ プライマー ⑥ 制 限 酵 素 /専 用 バッファー ⑦ アガロース ⑧ TBE バッファーあるいは TAE バッファー ⑨ 泳 動 用 サンプルバッファー ⑩ DNA サイズマーカー ⑪ エチジウムブロマイド溶 液 (EtBr) 3. 核 酸 の抽 出 と精 製 原 虫 類 の(オー)シスト壁 は硬 く壊 れにくく、界 面 活 性 剤 の存 在 下 での加 熱 処 理 、超 音 波 処 理 、 凍 結 融 解 等 が行 わ れている。核 酸 の 抽 出 と精 製 には市 販 キ ットも利 用 される。 (1)DNA 精 製 キットを用 いた方 法 オーシストを多 数 認 める場 合 には検 体 の少 量 を、あるいはキットの規 定 量 を、 市 販 の DNA 分 離 キット(例 :QIAamp DNA Stool Mini kit)に用 いる。 27 精 製 した DNA 試 料 を用 いて PCR を行 ったが DNA 増 幅 が見 られない、という ことがある。これは DNA 試 料 中 にまだ PCR 阻 害 物 質 が混 入 しているためと考 え られ、DNA 精 製 用 のカラムやグラスパウダー等 で再 度 精 製 をする場 合 もある。 (2)SDS を用 いた基 本 的 抽 出 方 法 SDS(Sodium Dodecyl Sulfate)は基 本 的 な抽 出 用 試 薬 として各 種 材 料 に利 用 されており、(オー)シスト壁 の溶 解 にも有 効 である。ただし、 SDS はその後 の PCR 反 応 に阻 害 的 なために、充 分 な除 去 が必 要 となる。 <手 順 > 1. 20μl の試 料 を 160μl の TE buffer に浮 遊 し、さらに 20μl の 10%SDS を PCR チューブに入 れ、軽 く混 和 する。 2. ミネラルオイル(2 滴 )で液 面 をシールする 注 1 。1.5ml の遠 心 チューブを用 い る時 は蓋 をロックする。 3. 100℃のヒートブロックあるいは沸 騰 水 中 で 15 分 間 、加 熱 する 注 2 。 4. 室 温 にて 5 分 間 ほど冷 却 し、3,000rpm 程 度 で数 秒 、遠 心 する。 5. オイルの混 入 がないように、ピペットで水 層 部 分 をとり 1.5ml 遠 心 チューブに 回 収 する。 6. 10mg/ml Proteinase K 溶 液 を全 量 の 1/20 となるよう加 えて軽 く混 和 し、数 秒 遠 心 する。 7. 60℃で 1 時 間 加 熱 処 理 する。 8. 室 温 で 5 分 間 冷 却 する。 9. 400μl のフェノール/クロロフォルム混 液 を加 え、チューブを転 倒 混 和 する。完 全 に白 濁 するまで、穏 やかに混 和 する 注 3 。 10. 12,000×g、室 温 で 5 分 間 遠 心 する。 11. 水 溶 液 部 分 を新 しい遠 心 チューブに 300μl 程 度 回 収 する 注 4 。 12. 400μl のクロロフォルムを加 え、全 体 が混 ざるまで遠 心 チューブを転 倒 ・混 和 する 注 5 。 13. 12,000×g、室 温 で 5 分 間 遠 心 する。 14. 水 溶 液 部 分 を新 しい遠 心 チューブに回 収 する。 28 15. 約 400μl の上 清 に 40μl の 3M 酢 酸 ナトリウムと冷 99.5%エタノール 1ml を 加 え、2~3 分 間 混 和 する。 16. 12,000×g、室 温 で 15~20 分 間 遠 心 する。 17. 上 清 を捨 て、冷 70%エタノールを 1ml 加 え、2~3 回 遠 心 チューブを転 倒 ・ 混 和 する 注 6 。 18. 12,000×g、室 温 で 5 分 間 遠 心 する。 19. 上 清 を捨 て、再 び冷 99.5%エタノール 1ml を加 え 2~3 回 遠 心 チューブを 転 倒 する。 20. 12,000×g、室 温 で 5 分 間 遠 心 する。 21. 上 清 を捨 て、さらに 3,000rpm 程 度 で数 秒 、遠 心 する。 22. 管 底 に残 ったエタノールを除 き沈 殿 を自 然 乾 燥 させる 注 7 。 23. 100μl の TE バッファーを加 え、沈 殿 を溶 かす。 24. ‐20℃で保 存 する。 注1 オイルを滴 下 後 3,000rpm程 度 で数 秒 遠 心 し管 壁 のオイルを落 とす。オイルで シールすることで水 分 の気 化 を防 ぎ、DNA により PCR チューブ内 が汚 染 される ことを防 ぐ。 注2 加 熱 時 は内 圧 の上 昇 で必 ずフタは開 くので、固 定 して開 かないようにする。 注3 有 機 溶 媒 を混 ぜると直 ちに白 濁 するが、水 層 とすぐに分 離 してしまうので、全 体 的 に白 濁 が維 持 されるように遠 心 チューブを 1 秒 毎 程 度 に転 倒 する。3 分 間 ほど続 ける。 注4 上 からゆっくりと吸 引 ・回 収 し、界 面 付 近 の浮 遊 物 を回 収 しないように注 意 す る。 注5 初 めの数 秒 間 強 くチューブを振 盪 する。その後 緩 やかに 2 分 間 ほど転 倒 混 和 を続 ける。 注6 上 清 はピペットで除 去 する。チューブの底 まで徹 底 的 にエタノールを除 去 する 必 要 はない。50μl ほど残 して 70%エタノールを加 える。 注7 沈 殿 を取 らないように気 をつけて、エタノールは 10μl ほど残 しても問 題 ない。む しろ乾 燥 しすぎに注 意 する。 29 (3) TritonX-100 を用 いた簡 易 抽 出 法 非 イオン系 の界 面 活 性 剤 は一 般 に SDS より穏 やかな作 用 を示 し、PCR を阻 害 しない(TritonX-100 は終 濃 度 2%まで添 加 可 能 )。したがって、抽 出 後 の界 面 活 性 剤 除 去 工 程 を省 略 することができる利 点 がある。充 分 量 の精 製 (オー)シス トが入 手 可 能 な場 合 には便 利 な方 法 である。手 順 としては、精 製 (オー)シストを 10%Triton-X100 を含 む 200μl の TE バッファーに浮 遊 し、100℃のヒートブロッ クあるいは沸 騰 水 中 で 15 分 間 、加 熱 する。3,000rpm 程 度 で数 秒 間 、遠 心 分 離 した上 清 をテンプレートとして使 用 する。 (4) 免 疫 磁 気 ビーズ法 、凍 結 融 解 、ProteinaseK、超 音 波 処 理 の組 み合 わせ 免 疫 磁 気 ビーズ法 を用 いることで阻 害 物 質 を徹 底 して除 き、精 製 した試 料 か ら核 酸 を抽 出 する 4) 。免 疫 磁 気 ビーズとクリプトスポリジウム等 が結 合 した状 態 で、 界 面 活 性 剤 添 加 の PBS で夾 雑 物 がなくなるまで繰 り返 し洗 浄 を行 う。塩 酸 処 理 で解 離 したクリプトスポリジウム等 を回 収 後 、水 酸 化 ナトリウムで中 和 し、さらに TE バッファーで遠 心 洗 浄 する。得 られた試 料 を凍 結 融 解 (5 回 )、ProteinaseK 溶 解 処 理 、超 音 波 処 理 、加 熱 失 活 処 理 を行 い、RNA を含 む核 酸 抽 出 物 を得 る。 4. 制 限 酵 素 処 理 と電 気 泳 動 (1) 電 気 泳 動 電 気 泳 動 の操 作 手 順 は常 法 に準 じて行 う。 (2) PCR 産 物 の制 限 酵 素 解 析 PCR 産 物 を一 度 精 製 してから制 限 酵 素 処 理 をすると酵 素 処 理 時 間 を短 縮 す ることができ、結 果 も良 好 となる。精 製 にはカラム法 等 が使 用 可 能 で、PCR 産 物 の収 量 が 少 ない 時 には積 極 的 に濃 縮 を行 うべき である。以 下 に制 限 酵 素 処 理 の一 例 を示 す。 <手 順 > 1. PCR 産 物 を電 気 泳 動 し、DNA 増 幅 とその量 を確 認 する。 2. 必 要 により PCR 産 物 を精 製 する。 30 3. 0.5ml の PCR チューブ内 で 17μl の DNA 液 と 2μl の制 限 酵 素 用 バッファー 保 存 溶 液 (10 倍 濃 度 )、そして 1μl の制 限 酵 素 を加 え、2 時 間 、37℃で保 温 する。 4. 反 応 後 、常 法 に従 って電 気 泳 動 する。 5. 塩 基 配 列 決 定 精 製 後 の PCR 産 物 を BigDye Terminator v1.1 Cycle Sequencing Kit などを 用 いてサ イクルシーケンス反 応 を行 う。 シーケンスを正 確 に 読 み 取 るため、両 方 向 からのシーケンスを解 読 する(反 応 には PCR で用 いた forward、reverse のプラ イマーを用 いる)。反 応 産 物 は BigDye XTerminator 精 製 キットなどを用 いて過 剰 の蛍 光 物 質 を除 去 し、シーケンサーにセットする。この試 薬 は反 応 産 物 に 2 種 類 の専 用 試 薬 を加 えて、混 ぜて、そのままシーケンサーにセットするだけなので、 セット前 のヒートショックが不 要 であり多 数 検 体 を処 理 する場 合 には作 業 時 間 を 大 幅 に短 縮 できる。 500bp→ M 1 図. 2 2 3 4 5 6 7 8 9 1 0 11 1 2 1 3 1 4 M M 15 16 17 18 19 20 21 A B PCR/RFLP 解 析 の例 cry373 および cry44 プライマーによる PCR 産 物 を Rsa I で制 限 処 理 した。3 種 類 の泳 動 パターンが見 られる。パターンの模 式 図 を写 真 右 に示 した。レーン 1~6 および 9 はウシ型 (模 式 図 では B)、レーン 7、8、10~14、17、18、20 はヒト型 (同 じく A)、レーン 15、16、19 は meleagridis 型 (C)であった。レーン 21 は 9 と同 じ産 物 である。レーン M には 100-bp ラ ダーを使 用 した。レーン 1~6 はウシより分 離 された C. parvum、 レーン 7~20 はヒトより分 離 された C. parvum を用 いている。 31 C 《 クリプトスポリジウムの PCR 》 臨 床 例 の主 な原 因 種 は、ヒトから検 出 されることが多 い C. hominis(あるいは C. parvum genotype I ) 、 人 獣 共 通 寄 生 性 の C. parvum ( あ る い は C. parvum genotype II)の 2 種 であるが、オーシストの観 察 で両 種 を区 別 することはできない。 さらに以 下 の表 に示 したように、本 来 動 物 を宿 主 とする種 または遺 伝 子 型 のヒト 感 染 例 も報 告 されており、その同 定 には遺 伝 子 検 査 を要 する。本 検 査 マニュ ア ルでは国 内 の患 者 から検 出 例 が多 い 5) C. parvum、C. hominis、C. meleagridis の 3 種 の型 別 が可 能 な SSU rDNA(小 亜 粒 子 リボソーム RNA 遺 伝 子 )と COWP (Cryptosporidium oocyst wall protein 遺 伝 子 )の PCR-直 接 塩 基 配 列 決 定 、あ るいは RFLP 法 6-8) と、GP60(60-kDa glycoprotein 遺 伝 子 )の配 列 の比 較 によ る C. parvum と C. hominis のサブタイプ型 別 9、10) 、その他 の方 法 について、紹 介 する。 精 製 されたオーシストを用 いた場 合 は、単 個 のオーシストからでも DNA 増 幅 は 可 能 である。この場 合 、マニュピュレーション等 は 技 術 的 な熟 練 を要 する。多 量 のオーシストを DNA 抽 出 に用 いた場 合 は、阻 害 物 質 の混 入 を避 けるため DNA を希 釈 して用 いた方 が良 い。また、複 数 の種 類 による重 複 感 染 など、同 一 試 料 中 に異 なる遺 伝 集 団 が混 在 する可 能 性 もあるので注 意 が必 要 である。 表 ヒトから検 出 されている Cryptosporidium の種 と遺 伝 子 型 種 名 ・遺 伝 子 型 名 宿主 寄生部位 ヒトの症 例 種 C. C. C. C. C. C. C. C. andersoni bovis baileyi canis cuniculus fayeri felis hominis ウシ ウシ ニワトリ イヌ ウサギ コアラ、カンガルー ネコ ヒト、稀 に他 の哺 乳 動 物 胃 腸 ファブリキウス嚢 ,気 管 腸 腸 腸 腸 腸 稀 稀 稀 稀 稀 稀 稀 多い C. meleagridis シチメンチョウ、オカメインコ 腸 比較的多い C. C. C. C. ネズミ ヒト、家 畜 、野 生 哺 乳 動 物 ブタ シカ、ウシ、ヒツジ 胃 腸 腸 稀 多い 稀 稀 muris parvum suis ubiquitum 32 遺伝子型 ブタ Pig II シマリス Chipmunk ウマ Horse サル Monkey アカネズミ、ハタネズミ Mouse スカンク Skunk 網 かけはヒトでの症 例 が多 い寄 生 種 宿 主 は代 表 的 な動 物 を示 す 稀 稀 稀 稀 稀 稀 腸 1. 各 種 プライマーによる PCR <Xiao et al, (1999)のプライマー> Xiao et al, (1999)のプライマーは SSU rDNA 遺 伝 子 の一 部 領 域 を増 幅 する 8 ) 。 増 幅 は nested PCR にて行 い、First、Second PCR ともにサイクル数 は 30 回 、 840-bp 前 後 の産 物 が増 幅 される。DNA polymerase は一 例 として TaKaRa Ex Taq Hot Start Version (HS)を使 用 し、PCR Buffer と dNTP は同 Taq に添 付 され ているものを使 用 する。 <反 応 液 の組 成 > First PCR 精製水 28.75 μl 10 x Ex Taq Buffer 5 μl dNTP Mixture (2.5mM each) 4 μl Forward primer (5μM) 5 μl Reverse primer (5μM) 5 μl Template 2 μl TaKaRa Ex Taq HS 0.25 μl 反応液総量 50 μl Second PCR のテンプレートは First PCR 産 物 Second PCR 29.75 μl 5 μl 4 μl 5 μl 5 μl 1 μl 0.25 μl 50 μl <プライマー> First PCR(forward):5'-TTC TAG AGC TAA TAC ATG CG-3' First PCR(reverse):5'-CCC ATT TCC TTC GAA ACA GGA-3' Second PCR(forward):5'-GGA AGG GTT GTA TTT ATT AGA TAA AG-3' Second PCR(reverse):5'-AAG GAG TAA GGA ACA ACC TCC A-3' 33 <温 度 条 件 > Frist PCR と Second PCR 共 通 95℃5 分 ,94℃30 秒 →55℃30 秒 →72℃1 分 を 30 サイクル,72℃7 分 塩 基 配 列 決 定 に よ り 、 デ ー タ ベ ー ス ( DDBJ/GenBank/EMBL ) の 登 録 配 列 と の比 較 により、詳 細 な型 別 が実 施 できる。 PCR-RFLP では制 限 酵 素 SspI と VspI(別 名 PshBI)を使 用 する。SSU rDNA の PCR-RFLP で second PCR の産 物 に非 特 異 な増 幅 を認 める場 合 は、RFLP パ タ ー ン の 判 定 を 惑 わ す 結 果 と な る こ と が あ る の で 、 QIAquick Gel Extraction kit などを用 いて特 異 サイズの産 物 を切 り出 し精 製 する。 SSU rDNA の PCR 泳 動 像 を図 3 に示 した。First(second)PCR のサイクル数 やテンプレート量 が多 いと特 異 サイズ以 外 の産 物 も増 幅 され、その後 の RFLP 処 理 で特 異 サイズを切 出 して精 製 する必 要 がある。下 痢 症 例 では多 数 のオーシス トが排 出 されているので、そうした検 体 の SSU rDNA の PCR ではテンプレート量 、 反 応 サイクル数 を少 なめにした方 が良 い。SSU rDNA を制 限 酵 素 SspI で処 理 し た場 合 (図 4A)、3 種 はともに約 450-bp、250-bp、110-bp の切 断 パターンを認 め M1 2 3 M 4 5 6 1000 bp 500 bp 100 bp 図 3:SSUrDNA と COWP の PCR 電 気 泳 動 像 。SSUrDNA で は 約 840-bp( A)、 COWP で は 約 550-bp( B) の 産 物 が 増 幅 さ れ る 。 レ ー ン 1、 4、 C. hominis ヒ ト 由 来 株;レ ー ン 2、5、C. parvum ヒ ト 由 来 株;レ ー ン 3、6、C. meleagridis ヒ ト 由 来 株 。 レ ー ン M、 サ イ ズ マ ー カ ー ( 100-bp ラ ダ ー )。 ゲ ル は 3% 濃 度 ( NuSieve 3:1 Agarose 使 用 ) 34 明 確 に区 別 できないが、VspI の RFLP パターン(図 4B)は各 々異 なり 3 種 の鑑 別 が可 能 である。RFLP パターンは当 初 報 告 された 7、8) 切 断 パターン(以 下 の 表 )と同 様 である。 1 2 3 M4 5 6 A M 1 2 3 B C 1000 bp 1000 bp 500 bp 500 bp 100 bp 100 bp 図 4:SSUrDNA の SspI(A)、VspI(B)による RFLP パターンと COWP の RsaI(C)による PCR-RFLP パターン。B の矢 印 は C. hominis の VspI 処 理 で微 かに認 められる 70-bp の切 断 産 物 。C の矢 印 は C. parvum の RsaI 処 理 で微 かに認 める 106-bp の切 断 産 物 。 レーン 1、4、C. hominis ヒト由 来 株 ;レーン 2、5、C. parvum ヒト由 来 株 ;レーン 3、6、C. meleagridis ヒト由 来 株 。レーン M、サイズマーカー(100-bp ラダー)。ゲルは 3%濃 度 (NuSieve 3:1 Agarose 使 用 )。 表 C. parvum 、 C. hominis 、 C. meleagridis の PCR-RFLP パターン SSUrDNA COWP 種 SspI VspI RsaI C. parvum 449/254/108/12/11 628/104/102 413/106/34 C. hominis 449/254/111/12/11 561/104/102/70 284/129/106/34 456/171/104/102 373/147/34 C. meleagridis 449/254/108/11/11 RFLP パターンは原 著 論 文 7 、 8 ) から引 用 太 字 のサイズは電 気 泳 動 像 で認 められる切 断 産 物 のサイズ 35 SSU rDNA の PCR-RFLP は 2 種 類 の制 限 酵 素 を必 要 とするが、PCR の感 度 が 高 い こ と 、 およ び 多 く の 種 と 遺 伝 子 型 で 当 該 サ イ ズ の 産 物 が 増 幅 さ れ そ の シ ー ケ ン スの 系 統 樹 解 析 でも 鑑 別 でき る こ と から海 外 では 広 く 用 い られ てい る 。 し かし PCR-RFLP 法 では種 または遺 伝 子 型 により同 様 のパターンを示 す場 合 があ り(例 えば C. hominis とサル型 、マウス型 とフェレット型 などは同 様 のパターンを 示 す)、さらに RFLP パターンは全 ての種 と遺 伝 子 型 で確 認 されてはいないので 11 ) 、この手 法 による鑑 別 には限 界 がある。一 方 、後 述 の COWP の PCR-RFLP は 制 限 酵 素 1 種 類 を用 いて種 鑑 別 を行 う方 法 であるが、SSU rDNA のそれと同 様 に異 種 (遺 伝 子 型 )間 で同 様 のパターンを示 す場 合 があり(C. parvum とマウス 型 、C. hominis とサル型 など)、また人 体 寄 生 例 のある C. canis、C. baileyi、C. muris などでは PCR 増 幅 が弱 い場 合 がある 7 ) 。しかしサル型 やマウス型 などの人 体 寄 生 は 極 め て稀 であること を考 慮 すれば、 国 内 で検 出 される 頻 度 が 高 い C. parvum、C. hominis、C. meleagridis を鑑 別 する上 で SSU rDNA または COWP の PCR-RFLP 法 は有 用 性 のある鑑 別 法 と考 えられる。 <Spano et al, (1999)のプライマー> COWP を増 幅 するプライマーと PCR のサイクル反 応 を以 下 に示 した。反 応 液 の組 成 は前 述 の通 りで(Xiao et al, (1999))、553bp の増 幅 産 物 が得 られる。 RFLP では RsaI(別 名 AfaI)を使 用 し、詳 細 は上 述 のとおりである。 <プライマー> cry-15 :5'-GTA GAT AAT GGA AGA GAT TGT G-3' cry-9 :5'-GGA CTG AAA TAC AGG CAT TAT CTT G-3' <温 度 条 件 > 95℃5 分 ,94℃30 秒 →55℃30 秒 →72℃1 分 を 40 サイクル,72℃7 分 <Peng et al, (2001)のプライマー> GP60(あるいは CPGP60、CPGP40/15)を増 幅 するプライマーと PCR のサイクル 36 反 応 を以 下 に示 した 9) 。反 応 液 の組 成 は前 述 と同 じで(Xiao et al, (1999))、増 幅 は nested PCR にて行 い、サイクル数 は First、second PCR ともに 35 回 。 <プライマー> C. parvum 、 C. hominis 増 幅 用 AL3531(First PCR、forward):5'-ATA GTC TCC GCT GTA TTC-3' AL3534(First PCR、reverse):5'-GCA GAG GAA CCA GCA TC-3' AL3532(Second PCR、forward):5'-TCC GCT GTA TTC TCA GCC-3' AL3533(Second PCR、reverse):5'-GAG ATA TAT CTT GGT GCG-3' C. meleagridis 増 幅 用 AL3531(First PCR、forward):5'-ATA GTC TCC GCT GTA TTC-3' First PCR、reverse:5'-AAT TCG CAC GAA AGA TTT CC-3' AL3532(Second PCR、forward):5'-AAG GAT GTT TCT GTT GAG-3' AL3533(Second PCR、reverse):5'-TGC AAC CAA ACT GTA C-3' <温 度 条 件 > C. parvum 、 C. hominis 増 幅 用 、C. meleagridis 増 幅 用 共 通 95℃5 分 ,94℃30 秒 →55℃30 秒 →72℃1 分 を 35 サイクル,72℃7 分 シーケンスを解 読 する際 、泳 動 後 に非 特 異 な増 幅 産 物 を認 める場 合 はアガロ ースゲル電 気 泳 動 にて目 的 のバンドを精 製 する。非 特 異 産 物 を認 めなくともプラ イ マ ー ダ イ マ ー や 過 剰 な プ ラ イ マ ー を 除 去 す る た め に 、 QIAquick PCR Purification Kit などを用 いて精 製 する。 シ ー ケ ン ス の 波 形 を Sequencher な ど の ソ フ ト で 確 認 し 、 DNA databank (DDBJ/GenBank/EMBL)に登 録 されている代 表 的 な C. parvum、C. hominis の GP60 サブタイプファミリーのデータと比 較 し系 統 樹 解 析 に用 いるシーケンスの範 囲 を決 める。検 体 シーケンスと各 サブタイプファミリーのシーケンスを Fasta 形 式 ま た は clustal 形 式 に 保 存 し 、 DDBJ ( DNA Data Bank of Japan ) が 提 供 す る ClustalW ( http://clustalw.ddbj.nig.ac.jp/top-j.html ) の 解 析 配 列 デ ー タ に upload させる。“より詳 細 な設 定 ”の「TYPE」で DNA を選 択 し、「ALIGN」はデフ 37 ォルトのまま、「TREE」の DISTANCE は適 宜 選 択 (Kimura または Tamura-Nei など)、OUTPUTTREE は phylip distance を選 択 する。「BOOTSTRAP」を ON に し、DISTANCE は TREE での設 定 に合 わせる。以 上 の操 作 で入 力 内 容 の送 信 をすると、10 数 分 ほどで解 析 データがメールで送 られてくる。データは query.aln、 query.dnd 、 query.dst 、 query.ph 、 query.phb と 続 き 、 系 統 樹 の 作 成 に は 最 後 の query.phb を用 いる。「query.phb」直 下 の片 括 弧 から最 後 までを選 択 ・テキスト形 式 で 保 存 し そ れ を njplot ( http://pbil.univ-lyon1.fr/software/Njplot.html ) な ど 描 画 ソフトで開 いて系 統 樹 を作 成 する(図 5)。同 様 の解 析 はフリーソフト ClustalX ver 2、MEGA5 などを用 いても可 能 である。 今 回 示 したプライマーによる GP60 の second PCR では、550-bp 前 後 の産 物 を 認 める(図 6)。GP60 を増 幅 させるプライマーペアは他 にも幾 つか報 告 されている が、今 回 のものを含 めこれらのプライマーが全 ての C. parvum、C. hominis 分 離 株 の GP60 を増 幅 できるわけではないので、増 幅 できない場 合 は他 のプライマー ペア 11 、 1 2 ) で試 みる。解 読 されたシーケンスは図 7 に示 したように、TCA または TCG の ト リ ヌ ク レ オ チ ド の 繰 り 返 し 配 列 が 認 め ら れ 、 ま た そ の 配 列 の 直 後 に ACATCA が 1 つ ま た は 2 つ ( な い 場 合 も あ る ) 続 く 。 こ れ ら ト リ ヌ ク レ オ チ ド 、 ACATCA の繰 り返 し配 列 のコピー数 によりサブタイプが決 まる 12) 。すなわち、図 7 では TCA(二 重 下 線 )が 15 個 、TCG(波 線 )が 2 個 、ACATCA が 1 個 あるの で、A15(A は TCA を指 す)G2(G は TCG を指 す)R1(R は ACATCA を指 す) となり、系 統 樹 解 析 などでサブタイプファミリーが IIa の場 合 、IIaA15G2R1 と表 わ される。C. parvum と C. hominis には多 数 のサブタイプファミリーが報 告 されてお り、C. parvum では少 なくとも 12 のサブタイプファミリー(IIa、IId:人 獣 共 通 寄 生 性 ;IIb、IIc、IIe~IIl:ウシ、ヒト、野 生 動 物 などに特 異 的 )が、また C. hominis で は少 なくとも 7 つのサブタイプファミリー(Ia~Ig)が報 告 されている 13) 。分 離 株 が どのサブタイプファミリーに含 まれるか、あるいは新 規 のファミリーなのかを決 定 す るためには、解 読 されたシーケンスデータを基 に系 統 樹 解 析 を行 う必 要 がある (FASTA または BLAST を用 いた相 同 性 検 索 によりサブタイプファミリーを予 想 す ることも可 能 である)。 38 0.02 HJ2 (AY167593) CH-46 (AB237138) Ie (C. hominis) A10 (AY382668) 134 (AF402290) 5632 (AY738184) 10 (AF440629) If (C. hominis) 1000 754 CH-146 (AB237133) A53 (AY382674) G1958 (AF403176) G1954 (AF403174) CH-158 (AB237135) G1844 (AF403173) 8906 (AY738196) 999 1000 1000 582 A62 (AY382675) 900 Ib (C. hominis) 7490 (AY738188) A13 (AY382669) IIe (C. parvum) HJ3 (AY167594) HN6 (AY167595) CH-117 (AB237130) CRD-154 (AB237137) IIk (C. parvum) 7499 (AY738190) 1000 HNJ-1 (AB237136) CC-153 (AB237134) CC-140 (AB237131) CC-141 (AB237132) G1946 (AF402285) 5635 (AY738186) 813 7498 (AY738189) 1000 5634 (AY738185) 1000 883 IIc (C. parvum) IIf (C. parvum) Id (C. hominis) Ia (C. hominis) IIa (C. parvum) IIb (C. parvum) IId (C. parvum) 図 5:GP60 のシーケンスデータに基 づく、分 子 系 統 樹 の例 C. parvum、C. hominis は複 数 のサブタイプファミリーに分 類 され、さらに各 ファミリー には多 数 のサブタイプが存 在 する。分 離 株 名 の後 の括 弧 内 は DNA databank に登 録 されている accession numbers M 1 2 3 4 5 図 6:GP60 の second PCR 電 気 泳 動 像 。レー ン 1-3、C. parvum ヒト由 来 株 ;レーン 4、5、C. hominis ヒト由 来 株 。レーン M、サイズマーカ 1000 bp ー ( 100-bp ラ ダ ー ) 。 Second PCR で は 約 500 bp 550-bp 前 後 の 産 物 が 増 幅 さ れ る が 、 そ の サ イズは株 によって若 干 異 なるので、泳 動 像 を 見 ただけでも GP60 領 域 で異 なる株 かどうか 100 bp が 分 か る 。 ゲ ル は 3 % 濃 度 ( NuSieve 3:1 Agarose 使 用 ) 39 図 7:GP60 の second PCR 産 物 のシーケンス(419-bp)。トリヌクレオチド(TCA:二 重 下 線 、TCG:波 線 )と ACATCA(破 線 )の繰 り返 し配 列 数 でサブタイプが決 まる 以 上 の こ と か ら 分 離 株 の サ ブ タ イ プ を 決 定 す る た め に は 、 ① 分 離 株 が C. parvum か C. hominis かを確 かめ、②GP60 の系 統 樹 解 析 または相 同 性 検 索 に より、分 離 株 のサブタイプファミリーを決 定 する、③GP60 のトリヌクレオチドなどの 繰 り返 し配 列 のコピー数 を検 索 してサブタイプを決 定 する。C. meleagridis でも 遺 伝 子 型 別 が試 みられ GP60 あるいは HSP(heat shock protein)70 のシーケン スの比 較 で少 なくとも 6 つのタイプに分 類 されている 14) 。 <Johnson et al,(1995)のプライマー> Johnson et al, ( 1995 ) の プ ラ イ マ ー [CPB-DIAGF 、 CPB-DIAGR] は C. parvum、C. muris、C. bailey、C. wrairi、C. meleagridis の少 なくとも 5 種 につ いて 18S リボソーム RNA 遺 伝 子 内 の 435bp を増 幅 する り分 離 株 の遺 伝 子 型 別 ができる。 <反 応 液 の組 成 > 試 薬 容 滅菌精製水 10 × Taq 用 buffer 量 13.1μl 2.5μl 40 15) 。塩 基 配 列 決 定 によ dNTPs 20μM primer TaqDNA polymerase Taq Start(抗 Taq 抗 体 ) 50mM MgCl 2 精 製 DNA 溶 液 計 2.0μl 0.5μl ×2 0.2μl 0.2μl 1.0μl 5.0μl 25.0μl DNA ポリメラーゼは、最 も汎 用 されている TaqDNA polymerase を使 用 している が、非 特 異 的 反 応 を抑 える等 の目 的 から、他 種 の DNA polymerase を使 用 する こともある。また、同 じ TaqDNA polymerase でもメーカーにより至 適 Mg + + 濃 度 に 違 いが見 られる。酵 素 については予 備 実 験 として至 適 Mg + + 濃 度 を調 べておい た 方 が 良 い 。 な お 、 本 法 で は 非 特 異 反 応 を 抑 え る 目 的 で 抗 -TaqDNA polymerase 抗 体 を使 用 したホットスタート法 を採 用 した。TaqDNA polymerase と 抗 体 は予 め別 の PCR チューブ内 で混 ぜ、5 分 間 室 温 に置 き、その後 他 の試 薬 とともに混 合 する。 <プライマー> CPB-DIAGF : 5’- AAG CTC GTA GTT GGA TTT CTG -3' CPB-DIAGR : 5’- TAA GGT GCT GAA GGA GTA AGG -3' < 手 順 > 1. 用 意 する PCR チューブの本 数 は試 験 に要 する本 数 +陽 性 、陰 性 対 照 各 1 本 とし、精 製 DNA 溶 液 を除 いた試 薬 類 を全 本 数 分 混 合 し、反 応 液 とする。 2. 各 々の PCR チューブに 20μl の反 応 液 を分 注 する。 3. 陰 性 対 照 には滅 菌 精 製 水 を、陽 性 対 照 および試 験 群 の PCR チューブには DNA 試 料 を各 5μl ずつ加 える。 4. PCR チューブの底 を軽 くたたいて混 合 し、軽 く遠 心 する。 5. 必 要 に応 じてミネラルオイルを 1 滴 落 とし、再 び軽 く遠 心 する。 6. PCR チューブをサーマルサイクラーにセットする。 7. 以 下 の温 度 プログラムで PCR 反 応 を行 う。 41 Step Step Step Step Step 1 2 3 4 5 : : : : : 98 94 55 72 72 °C °C °C °C °C 5 30 30 1 7 分 秒 秒 分 分 ┐ │ ┘ Step 2~4 を 40 回 反 復 8. 2%アガロースで電 気 泳 動 する。EtBr で染 色 、DNA 増 幅 を確 認 する。 PCR の一 般 的 な注 意 点 であるが、目 的 が検 出 ・同 定 にあるので試 料 間 の相 互 汚 染 は必 ず避 けなければならない。具 体 的 な注 意 事 項 として、 ○ フィルター付 きのピペットチップを使 用 する。 ○ ゲルへのサンプル添 加 用 に専 用 のピペッタ-を用 意 する。 ○ 手 順 の最 後 に DNA 溶 液 を取 り扱 う。 ○ 同 時 に複 数 の PCR チューブの蓋 を開 けない。 ○ 試 薬 類 は小 分 けして保 存 する。 ○ 陰 性 、陽 性 コントロールをつける。特 に、PCR では、DNA 増 幅 産 物 そのものがテンプレート DNA として多 量 に生 産 されるため、非 常 に汚 染 しやすい環 境 がつくられることに注 意 する。 ○ PCR チューブと蓋 との隙 間 や蓋 の裏 面 等 に飛 散 した DNA は、ピペ ット操 作 の際 に汚 染 の原 因 となるので DNA を含 む反 応 液 を攪 拌 した ら必 ず短 時 間 の遠 心 (3,000rpm 程 度 )を励 行 する。 <Awad-El-Kariem et al,(1994)のプライマー> [CRY-RF、CRY-RR2] は C. parvum、C. muris、C. bailey の 3 種 類 につい て 18S リボソーム RNA 遺 伝 子 内 の 539bp を増 幅 する 16) 。MaeⅠ-RFLP に より分 離 株 の種 の同 定 ができる。 <プライマー> CRY-RF : 5’- AGT GCT TAA AGC AGG CAA CTG -3' CRY-RR2: 5’- CTC CAC CAA CTA AGA ACG GCC -3’ 温度条件 42 Step Step Step Step Step 1 2 3 4 5 94 94 53 72 72 : : : : : °C °C °C °C °C 3 30 30 30 5 分 秒 秒 秒 分 ┐ │ ┘ Step 2~4 を 40 回 反 復 <Carraway et al.(1997)のプライマー> [CRY-44、CRY-373] は C. parvum のポリスレオニン遺 伝 子 内 の 518bp を増 幅 する 1 7 ) 。RsaⅠ-RFLP により分 離 株 はヒト型 、ウシ型 、meleagridis 型 に分 けること ができる。ページ 26 の図 1 に例 を示 した。 <プライマー> CRY-44 5’- CTC TTA ATC CAA TCA TTA CAA C-3’ CRY-373 5’- AGC AGC AAG ATA TGA TAC CG-3' 温度条件 Step 1 : Step 2 : Step 3 : Step 4 : Step 5 : 94 94 53 72 72 °C °C °C °C °C 3 30 1 30 5 分 秒 分 秒 分 ┐ │ ┘ Step 2~4 を 40 回 反 復 <Spano et al.(1998)のプライマー> [Cp.E、Cp.Z] は C. parvum の Thrombosporidin-Related Adhensive Protein of Cryptosporidium-1 (TRAP-C1) 遺 伝 子 内 約 1,200bp を増 幅 する 18) 。RsaⅠ -RFLP により分 離 株 はヒト型 と動 物 型 に分 けることができる。 <プライマー> Cp.E: 5’-GGA TGG GTA TCA GGT AAT AAG AA-3’ Cp.Z: 5’-CAA CTA GCC CAG TTC TGA CTC TCT GG-3’ 温度条件 Step 1 : Step 2 : 94 94 °C °C 3 50 分 秒 ┐ 43 Step 3 : Step 4 : Step 5 : 55 72 72 °C °C °C 30 60 10 │ ┘ 秒 秒 分 Step 2~4 を 35 回 反 復 <市 販 製 品 等 > 環 境 試 験 用 のリアルタイム PCR 試 薬 、LAMP 試 薬 が販 売 されており、これらは rRNA 分 子 の逆 転 写 により、1 個 未 満 に相 当 するクリプトスポリジウムの鋳 型 量 か ら、高 感 度 な検 出 が可 能 となっている。糞 便 試 料 への適 否 については不 明 であ るが、キットに付 属 の陽 性 対 照 が使 用 可 能 であること、性 能 が製 造 元 により管 理 されていること、PCR 産 物 の塩 基 配 列 決 定 を委 託 することで検 査 環 境 の汚 染 が 防 止 できる利 点 がある。 2. 単 個 のオーシストを用 いた PCR 単 個 のオーシストの PCR は蛍 光 抗 体 で染 色 された疑 わしい粒 子 の確 定 、また、 複 数 の種 または株 による重 複 感 染 の可 能 性 を判 断 するうえで有 効 な手 段 である。 オーシストの単 離 は micro-manipulation 法 (手 製 の≦20μmφ程 度 の先 細 ピペ ットを用 いて顕 微 鏡 下 でオーシストを釣 る)、あるいは限 界 希 釈 法 が用 いられる。 精 製 DNA を用 いた PCR と異 なる点 は、界 面 活 性 剤 による DNA 抽 出 と PCR に よる増 幅 を同 一 チューブ内 で行 うことである。ここでは、 Johnson のプライマーを 用 いたリボソーム RNA 遺 伝 子 領 域 を増 幅 する例 を示 す。 <反 応 液 の組 成 > A 精製水 10 × Taq用 buffer 10%Triton X-100 dNTPs 20μM primer TaqDNA polymerase 抗 Taq抗 体 50mM MgCl2 単 離 オーシスト 計 <手 順 > 44 液 15.5μl 2.5μl 5.0μl ― ― ― ― ― 2.0μl 25.0μl B 液 11.0μl 2.5μl ― 4.0μl 2.5μl ×2 0.25μl 0.25μl 2.0μl ― 25.0μl 1. オーシスト浮 遊 液 (低 濃 度 に調 整 )を 60mm 径 シャーレに入 れる。 2. キャピラリーガラスピペットを加 工 して micro-manipulation 法 によりオーシスト を単 離 ・吸 引 する。 3. 別 のシャーレを用 意 し、その水 の中 にキャピラリーの内 容 を吹 き出 し、オーシ ストであることと単 個 であることを確 認 する。 4. あらためてオーシストを micro-manipulation により回 収 し、PCR 用 チューブに 移 す。 5. A 液 を入 れ、軽 く遠 心 し、ミネラルオイルを 1 滴 加 える 注 1 。 6. ‐80℃と室 温 の間 で凍 結 融 解 を 3 回 繰 返 す。 7. サーマルサイクラー、ヒートブロックなどを用 いて 15 分 間 、100℃の加 熱 処 理 をする。 8. 室 温 で 5 分 間 冷 却 した後 、遠 心 する 注 2 。 9. B 液 を加 え軽 く遠 心 する。PCR チューブごとにピペットチップは交 換 する。オ イル上 に水 分 が残 っていないことを確 認 する。 10. チューブをサーマルサイクラーにセットする。 11. 以 下 の温 度 プログラムで PCR 反 応 を行 う。 Step Step Step Step Step 1 2 3 4 5 : : : : : 98 94 55 72 72 °C °C °C °C °C 5 30 30 1 7 分 秒 秒 分 分 ┐ │ ┘ Step 2~4 を 40 回 反 復 12. 生 成 産 物 を 2%アガロースで電 気 泳 動 、EtBr で染 色 し、DNA 増 幅 を確 認 す る。 注1 オイルを重 層 することで、加 熱 による気 化 を防 止 することができる。 25μl の抽 出 用 溶 液 が 少 量 で も 気 化 し て 液 量 が 減 少 す れ ば 、 バ ッ フ ァ ー とし て の イ オ ン 濃 度 が 高 ま り 、 DNA ポリメラーゼの活 性 に影 響 を与 える。 注2 オイルでシールされてはいるが、チューブ内 は抽 出 された DNA が充 満 してお り、極 め て 汚 染 し や す い 状 況 に な っ て い る と 考 え て 取 り 扱 う 。 加 熱 さ れた チ ュー ブ を 冷 却 し 遠 心 することで DNA との接 触 を最 小 限 にする。 45 <単 離 用 マイクロキャピラリーの作 り方 > 1. 市 販 の 10μl 用 のガラス製 キャピラリーピペットを用 意 する。 2. 両 手 の親 指 と人 指 し指 で両 端 をつまみ、キャピラリーピペットを回 転 させなが ら中 央 部 を幅 2cm くらいにわたって加 熱 する。 3. 自 然 に折 れ曲 る程 度 に柔 らかくなったら、炎 から離 すと同 時 に両 端 を 10cm ほど引 き伸 ばす。この時 、引 き伸 ばされたキャピラリーピペットの先 に 120°程 度 の 角 度 がつく ように 両 手 首 を外 側 に 開 く ように 引 く と よい 。ま た、 キャピ ラリ ーピペットを引 きちぎることなく、細 い管 (マイクロキャピラリー)が形 成 されるよ うにすることが重 要 である。 4. 引 き伸 ばされ細 くなったキャピラリーピペットの中 央 部 付 近 を、手 で折 る。 5. マイクロキャピラリー の先 端 部 分 は、 角 度 のつい た部 分 から先 端 ま でが 2~ 3cm となるように調 整 する。 6. 吸 引 用 チューブにマイクロキャピラリーを差 込 み、水 中 で空 気 を噴 き出 す。微 小 な気 泡 が連 続 して出 てくるものを選 択 し、使 用 する。 46 《 ジアルジア の遺 伝 子 型 別 を目 的 とした PCR 》 Giardia はヒト以 外 の他 の哺 乳 類 、鳥 類 、両 生 類 にも見 られ、由 来 宿 主 、トロ フォゾイトとシストの形 態 学 的 差 異 から、これまでに 6 種 類 が確 定 種 として知 られ ている(G. muris、げっ歯 類 ;G. microti、マスクラット、野 ネズミ;G. agilis、両 生 類 ;G. ardeae、サギなど鳥 類 ;G. psittaci、インコなど鳥 類 ;G. duodenalis、ヒト、 家 畜 、 野 生 哺 乳 動 物 ) 1 9 、 2 0 ) (表 1)。 その中 の G. duodenalis( G. lamblia、 G. intestinalis はシノニム)はヒトに寄 生 する種 として認 識 されており、臨 床 由 来 株 や 動 物 由 来 株 の遺 伝 子 解 析 から現 在 までに少 なくとも 8 つの遺 伝 子 型 (assemblages A-H)に分 類 されている 19、20) 。すなわち、assemblages C と D はイ ヌに寄 生 し、E は反 芻 動 物 、ブタ、F はネコ、G はマウス、ラット、H はハイイロアザ ラシに寄 生 する宿 主 特 異 的 な遺 伝 子 型 である(表 1)。 表 ジアルジアの種 類 と遺 伝 子 型 種 名 ・遺 伝 子 型 名 G. agilis G. ardeae G. microti G. muris G. psittaci G. duodenalis Assemblage A (G. duodenalis)* Assemblage B (G. enterica)* Assemblage C (G. canis)* Assemblage D (G. canis)* Assemblage E (G. bovis)* Assemblage F (G. cati)* Assemblage G (G. simondi)* Assemblage H *:最 近 提 唱 されている種 名 宿主 両生類 鳥類 マスクラット、野 ネズミ げっ歯 類 鳥類 ヒト、霊 長 類 、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ウ マ、フェレット、有 袋 類 、げっ歯 類 、野 生 哺乳動物 ヒト、霊 長 類 、イヌ、ウマ、ウシ、ビーバー、 マスクラット、ウサギ イヌ、野 生 イヌ科 動 物 イヌ、野 生 イヌ科 動 物 反 芻 動 物 、ブタ ネコ マウス、ラット アザラシ ヒトには A と B が見 られ、A にはヒトと他 の哺 乳 動 物 から検 出 される AI と主 に 47 ヒトから検 出 される AII、有 蹄 動 物 (ウシ、ネコ、シカなど有 蹄 動 物 )とヒト(症 例 は 少 ない)に見 られる AIII の 3 つのサブタイプが知 られている。また B には人 獣 共 通 寄 生 性 と考 えられる BIII、主 にヒトから検 出 される BIV の 2 つのサブタイプが ある。ヒトと他 の哺 乳 動 物 から検 出 される G. duodenalis はその形 態 学 的 特 徴 で は区 別 できないため、感 染 経 路 、感 染 源 、事 例 間 の因 果 関 係 などを調 査 する 際 に、分 離 株 の遺 伝 子 型 別 は必 要 不 可 欠 である。G. duodenalis を遺 伝 子 型 別 する簡 便 な方 法 として PCR 産 物 の制 限 酵 素 切 断 パターン(PCR-RFLP)も利 用 されているが、それらは少 数 の遺 伝 子 領 域 についてのみ行 われ、さらに多 くの 遺 伝 子 型 でのパターンは明 らかではない。また G. duodenalis は遺 伝 的 に多 様 であるため、異 なる遺 伝 子 型 が同 じ RFLP パターンを示 すこともある。このことから 現 在 G. duodenalis の遺 伝 子 型 別 は、複 数 の遺 伝 子 領 域 をターゲットとした分 子 系 統 樹 解 析 などで試 みられている 20) 。 <手 順 > クリプトスポリジウムの種 同 定 を目 的 とした PCR(27 頁 )を参 照 。 < Homan et al.(1998)のプライマー > [GDH1、GDH4]はジアルジアの Glutamate dehydrogenase(GDH)遺 伝 子 内 768bp を増 幅 する 21) 。DdeⅠ-RFLP により分 離 株 は 2 つの genotype ( Polish type および Belgian type )に分 けることができる。GDH、β-giardin、TPI の PCR 泳 動 像 を図 8 に示 した。どの PCR でも非 特 異 な増 幅 を認 めることがあり、シーケ ンス反 応 を行 うためには特 異 産 物 の切 り出 し精 製 が必 要 である。 <プライマー> GDH1: 5’-ATC TTC GAG AGG ATG CTT GAG-3’ GDH4: 5’-AGT ACG CGA CGC TGG GAT ACT-3’ <反 応 液 の組 成 > First PCR 28.75 μl 5 μl 精製水 10XEx Taq Buffer 48 Second PCR 29.75 μl 5 μl dNTP Mixture (2.5mM each) 4 μl 4 μl Forward primer (5μM) 5 μl 5 μl Reverse primer (5μM) 5 μl 5 μl Template 2 μl 1 μl TaKaRa Ex Taq HS 0.25 μl 0.25 μl 50 μl 50 μl 反応液総量 GDH は First PCR のみ行 い、後 述 のβ-giardin、TPI では Nested-PCR を行 う。Second PCR のテンプレートは First PCR 産 物 を使 用 する <温 度 条 件 > 95℃5 分,94℃30 秒→55℃30 秒→72℃1 分を 35 サイクル,72℃7 分 M 1 2 3 M 1 2 3 M 1 2 3 1000 bp 1000 bp 1000 bp 500 bp 500 bp 500 bp 100 bp A 100 bp B 100 bp C 図 8:GDH、β-giardin、TPI の PCR 電 気 泳 動 像 。GDH で は 約 760-bp( A)、 β-giardin で は 約 380-bp( B)、 TPI で は 約 530-bp( C) の 産 物 が 増 幅 さ れ る 。レ ー ン 1~ 3、G. duodenalis ヒ ト 由 来 株 ; レ ー ン M、サ イ ズ マ ー カ ー ( 100-bp ラ ダ ー ) 電 気 泳 動 後 に非 特 異 な増 幅 産 物 を認 める場 合 は、特 異 サイズの産 物 を切 り 出 し精 製 する。精 製 後 の PCR 産 物 の塩 基 配 列 を決 定 する。解 読 されたシーケン ス の 波 形 を Sequencher な ど の ソ フ ト で 確 認 し 、 さ ら に DNA databank (DDBJ/GenBank/EMBL)に登 録 されている代 表 的 な G. duodenalis 各 遺 伝 子 型 のデ ー タと比 較 して系 統 樹 解 析 に 用 いるシーケ ンスの範 囲 を決 め る。検 体 シ 49 ーケンスと G. duodenalis 各 遺 伝 子 型 のシーケンスを Fasta 形 式 または clustal 形 式 に 保 存 し 、 DDBJ ( DNA Data Bank of Japan ) が 提 供 す る ClustalW ( http://clustalw.ddbj.nig.ac.jp/top-j.html ) 等 を 利 用 し 、 ア ラ イ メ ン ト と 系 統 樹 を 作 成 する(図 9)。分 離 株 の遺 伝 子 型 (assemblage レベル)を同 定 する場 合 は、 今 回 示 した遺 伝 子 領 域 のどれか 1 つを解 析 すれば可 能 であるが、感 染 源 や感 染 経 路 、 事 例 間 の 因 果 関 係 を調 査 す る際 には疫 学 情 報 の分 析 も 必 要 であり、 さらに G. duodenalis は遺 伝 的 にとても多 様 (特 に assemblage B)であるため、1 つの遺 伝 子 領 域 の部 分 シーケンスが完 全 に一 致 したとしても他 の領 域 のシーケ ンスは異 なる場 合 があることから、変 異 が多 いとされる GDH、β-giardin、TPI など 複 数 の領 域 のシーケンスを比 較 した方 が良 い。 0.02 2436 (AY368163) 2434 (AY368165) Assemblage B GS/M (L02116) 5409 (AY368171) GF-2 (AB509383) 4218 (AY368160) JH (U57897) 1000 1000 1503 (AY368157) Assemblage A WB (L02120) GF-3 (AB509384) 1000 Not named (AY655704) 540 Guangzhou calf (DQ157270) 1000 2643 (AY228641) Assemblage C GM Dog 60 (DQ246216) 1000 Assemblage E Not named (AY655706) Assemblage D GM Dog 19 (DQ220289) 図 9: PCR で 増 幅 さ れ た TPI の 部 分 シ ー ケ ン ス( 512-bp)の デ ー タ を 基に構築された、分子系統樹の例 50 < Homan et al.(1998)のプライマー[P1F、P3R][B1F、B3R]> Homan ら(1998)のプライマー[P1F、P3R] および[B1F、B3R]はそれぞれ Polish type 株 および Belgian type 株の Glutamate dehydrogenase 遺伝子内 800bp および 1500bp を増幅す る 21)。DdeⅠ-RFLP により各 genotype をいくつかの subtype に分 けることができる。 <プライマー> P1F: 5'-CTG CAG GGG CAA GGC GTA GAT-3' P3R: 5’-CCA CCG TGC CAG TCT TCT GGG-3’ 温度条件 Step 1 : Step 2 : Step 3 : Step 4 : Step 5 : 94 94 55 72 72 °C °C °C °C °C 7 1 1 2 7 分 分 分 分 分 ┐ │ ┘ Step 2~4 を 30 回 反 復 <プライマー> B1F:5’-CTG CAG TAA CAC TGG CAA G-3’ B3R:5’-CTG CAG AGT TCT CCG CAG CG-3’ 温度条件 Step 1 : Step 2 : Step 3 : Step 4 : Step 5 : 94 94 55 72 72 °C °C °C °C °C 7 1 1 1 7 分 分 分 分 分 ┐ │ ┘ Step 2~4 を 30 回 反 復 <Caccio et al, (2002)のプライマー> β-giardin を増 幅 する。反 応 液 の組 成 は GDH(Homan et al.(1998))と同 じ で、first PCR で 753bp、secound PCR で 385bp の増 幅 産 物 が得 られる <プライマー> First PCR 51 22) 。 G7(forward):5'-AAG CCC GAC GAC CTC ACC CGC AGT GC-3' G759(reverse):5'-GAG GCC GCC CTG GAT CTT CGA GAC GAC-3' Secound PCR G376 (forward):5'-CAT AAC GAC GCC ATC GCG GCT CTC AGG AA-3' G759 (reverse):5'-GAG GCC GCC CTG GAT CTT CGA GAC GAC-3' <温 度 条 件 > 95℃5 分 ,94℃30 秒 →65℃30 秒 →72℃1 分 を 30 サイクル,72℃7 分 <Sulaiman et al, (2003)のプライマー> TPI を増 幅 する。反 応 液 の組 成 は GDH(Homan et al.(1998))と同 じで、first PCR で 605bp、secound PCR で 530bp の増 幅 産 物 が得 られる 23) 。 <プライマー> First PCR AL3543 (forward):5'-AAA TIA TGC CTG CTC GTC G-3' AL3546 (reverse):5'-CAA ACC TTI TCC GCA AAC C-3' Secound PCR AL3544 (forward):5'-CCC TTC ATC GGI GGT AAC TT-3' AL3545 (reverse):5'-GTG GCC ACC ACI CCC GTG CC-3' <温 度 条 件 > 95℃5 分 ,94℃30 秒 →50℃30 秒 →72℃1 分 を 35 サイクル,72℃7 分 <Hopkins et al, (1997)のプライマー> SSU rDNA を増 幅 し、292bp の産 物 が得 られる 2 4 ) 。反 応 液 は、高 GC 用 バッフ ァーを使 用 するか、終 濃 度 5%で DMSO を添 加 しなければ産 物 が得 られない。 <プライマー> RH11 (forward):5'-CAT CCG GTC GAT CCT GCC-3’ 52 RH4 (reverse):5'-AGT CGA ACC CTG ATT CTC CGC CAG G-3' <温 度 条 件 > 96℃2 分 ,96℃20 秒 →59℃30 秒 →72℃30 秒 を 40 サイクル,72℃7 分 <Read et al, (2002)のプライマー> SSU rDNA を増 幅 し、174bp の産 物 が得 られる 2 5 ) 。反 応 液 は、高 GC 用 バッフ ァーを使 用 するか、終 濃 度 5%で DMSO を添 加 しなければ産 物 が得 られない。 <プライマー> GiarF (forward):5'-GAC GCT CTC CCC AAG GAC-3’ GiarR (reverse):5'-CTG CGT CAC GCT GCT CG-3' <温 度 条 件 > 96℃2 分 ,96℃20 秒 →55℃30 秒 →72℃30 秒 を 35 サイクル,72℃7 分 <市 販 製 品 等 > 環 境 試 験 用 のリアルタイム PCR 試 薬 、LAMP 試 薬 がクリプトスポリジウムと同 様 に販 売 されており、1 個 未 満 に相 当 するジアルジアの鋳 型 量 から、高 感 度 な 検 出 が可 能 となっている。糞 便 試 料 への適 否 については不 明 であるが、キットに 付 属 の 陽 性 対 照 が 使 用 可 能 であること、性 能 が 製 造 元 に より管 理 さ れているこ と、PCR 産 物 の塩 基 配 列 決 定 を委 託 することで検 査 環 境 の汚 染 が防 止 できる 利 点 がある。 53 《 サイクロスポラの検 出 ・同 定 を目 的 とした PCR 》 Cyclospora cayetanensis は 食 品 由 来 感 染 症 の病 原 体 として知 られる。大 き さ 8‐10μm、ほぼ真 球 型 で自 家 蛍 光 をもつ。迅 速 確 定 診 断 には自 家 蛍 光 観 察 と合 わせ、PCR による同 定 が可 能 となった。 <手 順 > クリプトスポリジウムの種 同 定 を目 的 とした PCR(27 頁 )を参 照 。 <Relman et al.(1996)のプライマー> [F1E、R2B]および[F3E、R4B]は small subunit リボゾーム RNA 遺 伝 子 領 域 を対 象 に nested PCR を行 う目 的 で設 計 されている 26) 。[F1E、R2B]は約 600bp を増 幅 し、[F3E、R4B]はその内 側 約 300bp を増 幅 する。オーシストが多 数 精 製 された場 合 は、[F1E、R2B]を用 いた PCR で結 果 が得 られる。 <プライマー> F1E :5’-GGA ATT CCT ACC CAA TGA AAA CAG TTT-3’ R2B :5’-CGG GAT CCA GGA GAA GCC AAG GTA GG-3’ 温度条件 Step 1 : Step 2 : Step 3 : Step 4 : Step 5 : 95 94 50 72 72 °C °C °C °C °C 3 1 1 2 7 分 分 分 分 分 ┐ │ ┘ Step 2~4 を 30 回 反 復 <プライマー> F3E: 5’-GGA ATT CCT TCC GCG CTT CGC TGC GT-3’ R4B: 5’-CGG GAT CCC GTC TTC AAA CCC CCT ACT G-3’ 温度条件 Step 1 : Step 2 : Step 3 : Step 4 : Step 5 : 95 94 60 72 72 °C °C °C °C °C 3 1 1 2 7 分 分 分 分 分 ┐ │ ┘ 54 Step 2~4 を 30 回 反 復 Ⅳ 免疫学的検査法 ELISA 法 、イムノクロマト法 等 の免 疫 学 的 検 査 法 は、すでに各 種 の病 原 体 検 索 に用 いられている。原 虫 類 の検 査 においても同 様 で、前 述 の蛍 光 抗 体 染 色 も 免 疫 学 的 検 査 法 の 一 種 と 言 える。なお、本 マニュアルでは、顕 微 鏡 観 察 による 形 態 の確 認 を基 本 にしているので蛍 光 抗 体 染 色 の詳 細 は、Ⅱ形 態 学 的 診 断 法 において紹 介 している。 クリプトスポリジウム、ジアルジアの検 査 を目 的 とした ELISA 法 、イムノクロマト 法 は、複 数 の製 品 が海 外 で発 売 され、報 告 も複 数 なされており、所 定 の性 能 が 得 られ る と 考 え られ る 27 ) 。 他 に 原 虫 で は 赤 痢 ア メー バの 検 出 に も 使 用 さ れ る 。 ELISA 法 は検 査 センターにおけるスクリーニング、イムノクロマト法 は臨 床 におけ る迅 速 診 断 に有 用 と考 えられる。一 方 、使 用 期 限 を考 えると試 薬 の常 備 を避 け たかったり、少 数 の検 査 や原 虫 の網 羅 的 検 査 には経 済 性 に難 が生 じたりするこ とから、本 マニュアルでは紹 介 に留 める。蛍 光 抗 体 法 は、水 道 クリプトスポリジウ ム等 検 査 を目 的 に、試 薬 の保 有 と使 用 の頻 度 が高 いと考 えられ、少 数 の検 査 にも対 応 できる。 55 引用文献 (1) 八 木 田 健 司 、泉 山 信 司 、国 内 外 に お け る ク リ プ ト ス ポ リ ジ ウ ム 症 な ら び に ジ ア ル ジ ア 症 の 発 生 動 向 の 現 状 と 比 較 、 第 68 回 日 本 寄 生 虫 学 会 東 日 本 支 部 大 会 、 2008 年 10 月 4 日 浜 松 市 (2) 山本徳栄, 砂押克彦, 山口正則, 他. クリプトスポリジウム症患者における オ ー シ ス ト 排 出 数 の 推 移 と 排 出 期 間 . 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(27) 小 林 正 規 、 鈴 木 淳 、 竹 内 勤 、 化 学 療 法 の 領 域 、 腸 管 感 染 症 の 全 て 、 III 寄 生 虫・ウイルスを原因とする腸管感染症 Vol.23, S-1, 141- 147 58 3. 腸 管 原 虫 症 の 迅 速 診 断 、 2007、 <参考資料> 1. 標 本 に フ ォ ー カ ス を 合 わ せ る 2. 視 野 制 限 絞 り を 絞 っ た ら 、 コ ン デンサーの上下方向を合わせると、 絞りの縁が明瞭に見えるようにな り 、コ ン デ ン サ ー 高 さ の 調 整 が で き た( そ の フ ォ ー カ ス に 適 し た コ ン デ ンサーの位置に調整した) 3. コ ン デ ン サ ー の 中 央 を 合 わ せ た (芯出し) 手で操作しているコンデンサーの 芯出し用の調整ネジ 後ろに高さ調整の黒のノブ(←) 参考資料 1 ケーラー照明の操作 顕 微 鏡 観 察 の 基 礎 知 識 、 H.G.カ ピ ッ ツ ァ 、 Carl Zeiss、 1994 よ り 抜 粋 59 A) オ ー シ ス ト 微 分 干 渉 像 B) オ ー シ ス ト 蛍 光 像 C) オ ー シ ス ト 模 式 図 D) オ ー シ ス ト 蛍 光 像( 対 比 染 色 入) E) ネ ガ テ ィ ブ 染 色 参考資料 2 F) 抗 酸 染 色 各種クリプトスポリジウムオーシスト像 60 B A C 参考資料 3 D ジアルジア顕微鏡像 A) 左 側 DAPI 染 色 像 で 1 個 の 核 が 良 く 見 え て 、 右 側微分干渉像ではその核(→)が 1 個見える B) フ ォ ー カ ス を 変 え る と DAPI 染 色 像 で は 3 核 が 見える一方、微分干渉像では最初の A での核は 見えなくなり、別の 1 つがはっきり見えるよう になった。軸糸(→)が中央縦方向に走るのが E 見え始めた C) さ ら に フ ォ ー カ ス を 変 え る と 、 DAPI 染 色 像 で は 2 核が良く見える D) さ ら に フ ォ ー カ ス を 変 え る と 、 DAPI 染 色 像 で は今までよく見えなかった 4 つ目の核が見える 61 A B C D 参考資料 4 ジアルジア栄養体 A)下 痢 便 中 に 検 出 さ れ た ジ ア ル ジ ア 栄 養 体 、B) 中 の シ ス ト ( → )、 C) 像 )、 E) 同 じ く 栄 養 体 と 、形 成 途 培地で培養した栄養体(ここまで無染色の微分干渉 培養した栄養体のギムザ染色像(明視野観察) 62 A 参考資料 5 B Cyclospora cayetanensis の オ ー シ ス ト A) UV 励 起 蛍 光 像 、 無 染 色 で オ ー シ ス ト 壁 が ネ オ ン 青 の 自 家 蛍 光 を 発 す る B) 微 分 干 渉 像 ( 8~ 10µm ) A 参考資料 6 A) B Isospora belli の オ ー シ ス ト UV 励 起 蛍 光 像 、 オ ー シ ス ト 壁 及 び ス ポ ロ シ ス ト 壁 が 無 染 色 で ネ オ ン 青の自家蛍光を発する B) 微 分 干 渉 像 ( 10~ 19×20~ 23µm) 63 A 参考資料 7 B クリプトスポリジウムオーシストのフォーカス面の微調整 A) オ ー シ ス ト は 立 体 物 な の で 向 き に よ っ て は 内 部 構 造 の 見 や す さ が 異 な り 、 オ ーシストの中心にフォーカスが合うとスポロゾイトが見えづらい(→) B) オ ー シ ス ト 上 部 に フ ォ ー カ ス が あ る と 、特 徴 的 な ス ポ ロ ゾ イ ト が 見 え る( → ) A 参考資料 8 B 開口絞りの調整(ジアルジア例) A) 開 口 絞 り を 絞 っ て 被 写 界 深 度 が 深 い と 、 シ ス ト 内 の 構 造 が 重 な り あ っ た 解像度の低い像になり、内容が不明瞭 B) 開 口 絞 り を 開 け て 被 写 界 深 度 が 浅 い と 、 フ ォ ー カ ス 面 の 狭 い 範 囲 の み 観 察可能となり、解像度の高い微細構造が鮮明な像が得られる 参考資料 9 赤色自家蛍光の例 G 励起で赤く光る粒子の蛍光像 64 執 筆 者 一 覧 阿部仁一郎 : 大阪市立環境科学研究所微生物保健担当 吉田 永祥 : 堺市衛生研究所ウイルス検査担当 鈴木 淳 : 東京都健康安全研究センター 黒木 俊郎 : 神奈川県衛生研究所企画情報部 八木田健司 : 国立感染症研究所寄生動物部 泉山 : 国立感染症研究所寄生動物部 信司 65
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