学校給食費無料化の概要 栃木県大田原市教育委員会事務局 教育総務課 日本一「ありがとう」があふれる 学校づくり・まちづくり 学校給食費を無料化した経緯 大田原市における学校給食は、学校給食法第11条第2項に定める学校給食費を小学 生は月額4,200円、中学生は月額4,900円として安全で安心な食材を調理して提 供しています。 学校給食費の無料化は、津久井富雄市長がマニフェストとして第1に掲げる「すべて は、子どもたちの未来のために」を実現するための施策の1つとして始められました。 その全額を無料とする時期を平成24年4月に設定していましたが、平成23年3月 11日に発生した東日本大震災で被災したため、復興を優先して完全無料化を一時延期 し、1児童生徒につき月額2,000円を補助することによって、小学生については2, 100円、中学生については2,800円の負担を保護者にお願いしました。 平成24年の半ばを過ぎた頃、一部に工事中の校舎、体育館があるものの、復興の見 込みが立ったため、10月から給食費の完全無料化を開始しました。 Ⅰ 学校給食費無料化の趣旨について 1 食育推進の必要性と重要性 最近の児童生徒の中には、朝食の欠食、肥満傾向、過度の痩身が見受けられること があります。これらは、将来の生活習慣病との関係も指摘され、身に付いた食習慣は 大人になって改めることは困難です。 成長期にある子供への食育・徳育は、健やかに生きるための基礎を培うことを目的 としています。また、地域を理解することや食文化の継承、自然の恵みや勤労の大切 さを理解する上で、食は重要な教材になります。学校における食育の中心は給食で、 学校給食は生きた教材でもあります。 核家族化の進展、共働きの増加、調理済み食品や外食の機会の増加など食生活の有 り様が大きく変化しているなか、子どもに対する食育については、学校においても積 極的に取り組んでいくことが重要です。学校・家庭・地域が連携して次代を担う子ど もたち、すなわち次の世代の親への教育という視点も必要であると考えています。 食育基本法は、食育を生きる上での基本であって、知育、徳育及び体育の基礎とな るべきものと位置付け、子どもに対する食育を重視しています。 第2次食育推進基本計画では、 ① 生涯にわたるライフステージに応じた間断ない食育の推進 ② 生活習慣病の予防及び改善につながる食育の推進 ③ 家庭における共食を通じた子どもへの食育の推進 を3つの重点課題として掲げ、子どもの健全な食生活の確立のため食育が重要な役 割を果たすことを認識したうえで、食育の推進を図るよう求めています。 -1- 2 人材の育成 「市民が一番に望む本当に必要な施策は何か」を考えるとき、加速する少子化、子ど もの貧困など、その対策は急務であり、保護者に求められる教育に関する負担の軽減 を図り子育て環境の向上を目指すために、地域社会全体で子育てを支える方策として 給食費を無料化することは意義深く、大きな価値のあるものです。 給食費の無料化の目的の一つは将来を担う子ども達(=人材)を養成していく過程 において保護者の負担を軽減することですが、この施策の実現にあたっては、予算確 保のため議員及び職員の手当等を減額し、市職員の定員の見直しや予算の削減などの 行財政改革を断行し、市を挙げて知恵を振り絞って取り組んでいるところです。 子どもたちに対しては、働くことの大切さ、税金を納めることの大切さを教育の現 場において継続的に伝えていくことも必要であると考えます。 3 地域社会の役割 食育基本法は、児童生徒の食育の担い手はまず家庭であり、学校も積極的に取組む ものとしていますが、家庭や学校だけがその役目を果たせば食育の目的が達成される というものでもありません。 子どもたちを心身共に健康な大人に育て上げることは保護者だけではなく市民全体 の責務でもあります。 子どもたちが、心身共に健康で未来の大田原市を支える存在になることを考えたと き、学校給食に関して今の大人たちに何ができるかを真剣に考える必要があります。 欧米では、教育は親の責任という考え方より社会が育てるという発想で、教育費に充 当される税金の割合が高いことが特徴です。日本では、長引く景気の低迷により、家 計の中では教育費の占める割合が高くなっており、子育ての環境は悪化が懸念されて います。 子どもたちに感謝するということを具体例に体験させて学ぶことは、たいへん重要 であると思います。給食の食材の調達では、多くの動植物の命が原材料となること、 調理では調理員や調味料を作る人のご苦労に、食べるときには誰かが費用の負担をし てくれていることに感謝することを学びます。無料化によってこの誰かが大田原市民 全体であることに気付き、知らない人も支えてくれているという協働の仕組みや大人 への尊敬を学習する生きた教材になると思われます。 市民みんなで子どもを育てるという精神が根付くことは、国を挙げて取り組んでい る少子化対策のヒントにもなります。 子どもたちがやがて大人になり、給食費無料化の理念を理解し、進んで納税や自分 の子どもに積極的に教育を受けさせたとき、食育・徳育が実を結ぶことになります。 -2- 4 地産地消の取組について 大田原市の給食費会計は私会計で行っており、自校調理の学校(小学校 16校、中 学校 8校)は標準献立に基づき栄養教諭・栄養職員又は調理員が食材を発注、学校給 食センターが調理する学校(小学校 4校、中学校 1校)は栄養教諭が発注を行ってお ります。 給食食材の調達先は、大半を公益財団法人栃木県学校給食会としておりますが、米 や、にら、卵などは大田原市産のものを調達するようにしています。 また、地産地消の推進のため、一定規模の学校では地元農協と契約し地場産品を調 達しており、小規模校においても、地元農家や農産物直売所から購入しております。 Ⅱ 課題について 年間約3億円の固定経費が必要となることから、市長マニフェストの第1に掲げる 「すべては、子どもたちの未来のために」の実現に向け、子育てしやすい環境を作る という方針のもと、市を挙げて行財政改革の推進を図り、経費の節減及び合理化等に より予算の重点配分を可能としています。 また、無料化して時間が経過すると、どうしても「当然のことである」と意識され、 感謝の気持ちが薄らいでしまうことが懸念されますので、機会あるごとに学校を通し て、保護者に向けて無料化の趣旨を伝えております。 Ⅲ 1 2 資料 小中学校数及び児童・生徒数(平成27年5月1日現在) ○ 小学校 ※( )は前年度の数字 ① 学校数 20校 ② 児童数 3,770名(3,817名) ○ 中学校 ① 学校数 9校 ② 生徒数 2,043名(2,101名) ○ 小中学校合計 29校 5,813名(5,918名) 無料化に向けての経過 ○ 平成22年 4月 1日 ○ 12月 1日 ○ 平成23年 4月 1日 月額 100円の補助を開始 月額 300円の補助に変更 月額2,000円の補助に変更 -3- 〇 平成24年10月 〇平成26年 3 4月 1日 1日 全額補助による完全無料化実施 (小学生4,100円、中学生4,800円) 消費増税に伴い、月額を増額 (小学生4,200円、中学生4,900円) 学校給食に関する平成27年度歳出予算の概要 ① 学校給食センター費 (小学校4校、中学校1校) 109,433千円(110,402千円) うち賄材料費 51,494千円( 53,489千円) ② 小学校費(16校分) 292,755千円(340,477千円) うち学校給食サービス事業費等補助金 168,630千円(175,560千円) ③ 中学校費( 8校分) 170,673千円(233,523千円) うち学校給食サービス事業費等補助金 107,800千円(113,190千円) ①+②+③ (29校) 572,861千円(684,402千円) うち学校給食サービス事業費等補助金+学校給食センター賄材料費 327,924千円(342,239千円) ※ 人件費を除く 【参考】大田原市一般会計当初予算 32,930,000千円 うち教育費予算総額 5,038,257千円 4 大田原市学校給食サービス事業費等補助金の交付対象者等 ① 小中学校長(学校給食サービス事業を行う給食管理者) 児童(生徒)数×4,200円(4,900円)×11月 ※1 要保護、準要保護世帯の児童・生徒を除く。 ※2 特別支援学級に在籍する児童・生徒は、就学奨励費補助金が交付され るため、2分の1以内とする。 ② 特別支援学校等市立小中学校以外の小中学校に通学する児童・生徒の保護者 月額4,200円(4,900円)を上限とする。 5 学校給食法に規定する保護者負担(第11条第2項)との整合 学校給食法(昭和29年6月3日法律第160号)抜粋 (経費の負担) 第11条 学校給食の実施に必要な施設及び設備に要する経費並びに学校給食の運 営に要する経費のうち政令で定めるものは、義務教育諸学校の設置者の負担とする。 -4- 2 前項に規定する経費以外の学校給食に要する経費(以下「学校給食費」という。) は、学校給食を受ける児童又は生徒の学校教育法第16条に規定する保護者の負担 とする。 平成22年の補助金導入に際し、文部科学省(学校健康教育課 健康教育企画室 校給食係)に問い合わせをしたところ、次のような回答があった。 学 【回答】 学校給食法では給食に係る経費の負担区分を定めている。 (施設、設備等は設置者の負 担、それ以外の材料費、光熱水費は保護者の負担とする。)学校給食費とされるのは食材 料費及び光熱水費となり、原則として保護者負担となる。 しかし、これは経費の負担関係を明らかにしたものであり、法律の趣旨は、設置者の 判断で保護者の負担を軽減(負担なしも含む。)することは可能とされている。 この解釈は、 「学校給食執務ハンドブック」の質疑応答(学校給食の保護者負担)の中の 説明にある。 保護者の負担軽減を禁止する趣旨のものではない。また、負担軽減の手続き論まで定め ていないので、軽減の方法に制約はないと思われる。 以上のことから、法的に問題ないものと判断し、「大田原市学校給食サービス事業 費等補助金交付要綱」を制定し、事業を実施している。 6 保護者の評価 ○保護者アンケート結果 ※ 詳細は市ホームページに掲載しています。 実施期間 平成25年7月5日~ 24日 ■調査対象 市内小中学校保護者 ■調査方法 学校を通して配布・回収 ■回収状況 保護者数 5,203人 集計枚数 3,762枚 回収率 72.3% ・継続を望む者 66%(一部変更継続4%を含む。) ・その他 19%(献立の内容、他施策との関連、要望など) ・廃止 15% 保護者は3分の2が継続を望むとしており、廃止してもよいという意見の中にも 給食費の無料化に感謝しつつ高齢者対策、福祉施策、校舎の冷房化などを優先すべ きとする声がありました。しかし、保護者の視点に立てば「ありがたい」と感じる、 他市町に誇れる継続すべき支援であると総括できると考えます。 -5-
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