プラスチックの実用強さと耐久性(8)

第5章 プラスチックの劣化と寿命(その2)
5一目.紫外線による劣化
する。劣化のスキームとしては,つぎのようになる2〕。
1騰蕪i㌫… ・
(1)劣化の原理と抑制
2ROOH→R・+ROO・ グロッツス・ドレーノf一(Grotthus
あるいは
連鎖開始
Draper)の法
則〔光化学の第1法則)によれば,「物質によって吸
RH十加→RH*
収した光のみが光化学反応を起こす」となっている。
RH*+02→ROO甲(中間過程を経て )
言い換えれば,光化学反応にはまず光エネルギーを
吸収することが必要である。また,エネルギーを扱
収した分子自身が反応するとはかぎらないので,そ
のエネルギーが他の分子に移動して反応する,いわ
ROO・十RR→ROOH十R・
ゆる増感作用もある.
さて,物質には固有の吸収波長領域があり,その
吸収エネルギーがその物質分子に作用して変化をお
こす。光の波長とエネルギーの関係は表1のとおり
であり,吸収される波長が短いほど作用が激しくな
ることが分かる。一般にポリマーに光線を当てる場
合,太陽光線では劣化現象を示す波長は約400mμ
以下である。表21》は,各種ポリ マ}を劣化させる波
長を示しているが,290∼370mμ近辺の波長領域で
あることが分かる。
ポリマーの紫外線劣化では,紫外線による純粋な
分解反応だけではなく,空気中の酸素が関与する。
したがって,酸化が著しく進むことになり,真空
または不活性ガス中で紫外線を当てる場合に比べて
著しく分子の切断その他の変化を起こす。また,劣
化を促進する他の要因としては温度と水分がある。
紫外線が関与する1次過程では温度の影響は小さい
が,引き続いて起こる2次過程の自動酸化反応では
温度や湿度が大きく影響する。
紫外線による劣化を防止する方法としては,紫外
線吸収剤,光安定剤,光遮蔽剤などをポリマーに添
加する方法(またはこれらの 添加剤を併用)がある。
紫外線吸収剤は光が当たると,フェノール性水酸
基の近くのカルボニル基(またはトリアゾール基)
が共鳴構造をとり,光のエネルギLを吸収し振動エ
ネルギーに変換する。その後,振動エネルギーは熱,
つまり,紫外線によって遊離ラジヵルが生成すると,
引き続いて酸素によって自動酸化反応が進行し劣化
表2 プラスチッタを劣化させる波長21
材 料
ポリエステル
ポリスチレン
零Seiichi HONMA,本間技術士事務所所長
〒254−08!1神奈’r:県平塚市八重咲町19−23
ボリ塩化ビニル
325
318
3DO
310
310
塩ビー一酢ビ共重合体
322∼364
ポリエチレン
ポリプロピレン
表1光の波長とエネルギー
波長(mμ)
75D 650 590 575 490 455 395 300 200
波長〔mμ)
アインシュタイン(kcalll38.0 43、948.349.6 58.2 62.772,2 95.0 143
ホルムアルデヒド樹脂
300∼320
注〉光量子1mDlのエネルギーをアインシュタインという。各波長のアイン
硝酸セルローズ
ポリカーボネート
ポリメチルメタアクリレート
310
295
シュタインは,「コラム(㏄1umn,p.93)』に示した波長λとアインシュ
タインの関係式に,各波昊の値を入れて計算した値である。
Vo旦,55,No.5
290∼3ユ年
85
0 光エネルギー(hの吸収 〇
H0
占と℃ _ び◎
図1 紫外線吸収剤の紫外線吸収機構
〔ベンゾフェノン系の場合)
JIS K7219
[99臼
パ
目
ヨ
ペ
q霞 20
一サンシャインカーボン
…一一
陽光
乞
鰹
阻i lo
燕
鎖
表3 耐紫外線暴露試験方法
規 格
30
名 称
プラスチックー直接屋外暴露,アンダーグラ
ス屋外暴露及び太陽集光促進暴露試験方法
JIS K7350−1 ヨ995 プラスチックー実験室光源による暴露試験
方法 第1部こ通則
JIS K7350−2旧旧5 プラスチック 実験室光源による暴露試験
2CO− 4CO 6CO 8CG 【,(ゆ0 1,孤G
波長(nm)
図2サンシャインカーボンアークと太陽光の分光波長
照度分布(サンシャインカーボンアーク1ガラスフ
ィルタなし。試料面は光源中心から4呂O mm)
方法τ第2部キセノンアーク光源
JISK7350−3一’]s96
JIS K7350−4一一]995
プラスチック 実験室光源による暴露試験
方法一第3部紫外線蛍光ランプ
プラスチック 実験室光源による暴露試験
方法一オープンフレームカーボンアークラ
ンプ
光,蛍光などのエネルギーに変換し,ポリマー内の
発色団が紫外線により励起されるのを防止する。エ
ネルギーを放出すると,紫外線吸収剤は元の構造に
もどる(図12))。このような効果を有する紫外線吸収
剤としては,サルシレート系,ベンゾフェノン系,
ベンゾトリアゾール系,シアノアクリレート系,ニ
ッケル錯塩などの種類がある。
光安定剤は,紫外線吸収能はなく,劣化によって
発生するヒドロペルオキシドラジカルの安定化,安
定N一オキシルの再生を伴う有害ラジカルの補足除
去などの機能を有するもので,ヒンダードアミン系
(HALS)がある。光遮蔽剤としては, 無機充填材,
有機およぴ無機顔料があり,これらをプラスチック
に混入すると,紫外線を表面で遮断するために光劣
化を抑制する。原則的には,これらの物質が紫外線
を吸収するための効果であるから,吸収能が大きい
ものほどよい。カーボンブラックはすべての材料に
もっ ともよい遮蔽剤である。
(
2)耐紫外線性の試験方法
プラスチックの耐紫外線暴露試験方法としては,
表3のような∫IS規格がある。
[促進暴露試験]
促進暴露試験の代表的な方法としては,キセノン
アーク光源(JIS K7350−2 正995 によるもの,カーボ
ンアークランプ(JIS K7350−4一二9喝によるものがあ
る。この2つの方法による暴露条件の比較を表1に
示す。選択する条件にもよるが,基本的にはブラッ
クパネル温度,相対湿度,水噴霧サイクルなどは同
86
じである。波長分布については,キセノンアー
ク光源は290㎜以下の紫外線を含んでいない
が,カーボンアークランプは290㎜以下の紫
外線も含んでいる。地表における太陽光線の波
長別分布は,表4のとおりであり,290mμ以下
の波長は含まれていないので,キセノンアークの方
が,太陽光線の波長分布に近いと言われている。ま
た,わが国で普及しているサンシャインカーボンァ
ーク促進暴露試験法の波長分布も,図23)のように
290mμ近辺の紫外線を多く含んでいる。紫外線カ
ーボン,サンシャインカーボンの場合は,低波長側
の紫外線を含んでいるため紫外線劣化を短時間で評
価するに1ま効果があるといわれる。一方,紫外線蛍
光ランプによる促進暴露試験法は(JISK7350
3一且996),太陽光中の特定の紫外線領域に相当する分
光出力を得ることができるもので,ランプとしては,
1型とII型がある。1型は300mm末満の放射が,
全放射出力の2%末満の紫外線蛍光ランプ.(UV−A
ランプ),工1型は30Dmm未満の放射が,全放射出力
の10%を超え る紫外線蛍光ランプ(UV−Bランプ)
である。一般には,UV−AとUV−Bを組み合せて用
いるのが望ましいとされているgまたゲその他の試
験条件としては,表5に示すような2つの試験モー
ドがある。このように紫外線蛍光ランプ促進暴露法
は,紫外線放射照度を使用条件に合わせた試験モー
ドに設定して材料や材料処方のスクリーニングに用
いることを目的にしている。
[屋外暴露試験法]
屋外暴露試験方法はJIS K7219−1998に規定され
ている。方法としては,直接屋外暴露法,アンダー
グラス屋外暴露法,太陽集光促進暴露試験法などが
ある。それぞ紅の装置の概略,試験場所などを,表
6,図3,4に示す。
プラスチックス
表4 キセノンアークとカーボンアーク促進暴露試験の比較
キセノンアータ促進暴露試験方法
試験方法
カーボンアーク促進暴露試験方法
(JISK7350−2 [995
目
(JIS
K7350−4
199。
人コ〔光源アンダーグラス暴露
人工光源暴露試験の
対放射照度の分布 試験の相対放射の分布
波長分布
(B法)
(A法1
枢対放射照 波長度の分布1】
波長
nml
相対放射照
(nm) (%)
特定波長におけるガラス製フィルタの分光透過率
の分布三レ
(使用前)
(%〉
29CI∼6CO
29CI以下
90∼230
320∼360
60∼4GO
100.0 300∼8DD
波昊
騨 300以下
.6±0.2 300∼32D
o
.1未満
㎜〉
4.2±0.5 32D∼360
.2土1.D 36D∼400
3.0±O.5
255
6.O±1.O
D2
注1)290∼800隆mの範囲の放射照度を100%とする。
≧360
m形
II形
1形
民OCI、O
透過率
透過率
脹(nm)
%)
275
≦1
20
/∼86
nml (%)
≦2
295 ≦1
5∼80
40D∼70D
〉91
波長 透過率
l器)
≧冊
20 1≧4 )
400∼7〔10 ≦90
2)3DO∼800nmの範囲の放射照度を100%とする。
)A法によるキセノンアークは, 29D皿n以下の光
を少量放射する。ある場合には,
れが屋外暴露
では生じない劣化反応をもたらすこ とがある。
プラックパネル温度
(参考)65±3℃または100±3℃
63±3℃
相対湿度
(50±5)%または(65±5)%
(50±5)%
水噴霧サイクル
水噴霧サイクル
水噴霧時間
水噴霧時問 18分±O,5分
水噴霧停止時間 102分±0.5分
表5紫外線蛍光ランプ促進暴露試験の試験モード(J正SK7350
モード1
102±O.5
2±D.5
8±O.5
試験片を,ある期間紫外線に暴露し,続いて照射なしの期間をと
lmin)
ガラス板
枠内の使用面積
ふたの枠
鋳
試料保持枠
るサイクルを繰り返す。
推奨条件:63℃±3℃のブラックスタンダードの温度で,4時間照
射,次いで,照射なし,プラックスタンダード温度50℃±3℃で,
水分凝縮状態で4時間暴露する。
試験
モード2
水噴霧停止時間
865×560
方 法
モード
試験
3−1996)
lmin)
1S±D.5
紫外線連続照射の下で試験片に水を噴射するサイクルを繰り返す。
推奨条件1プラックスタンダード温度50℃±3℃および相対湿度
(10±5)%で,5時間の紫外線照射し,次いで,紫外線照射への連
続暴露下に,ブラックスタンダード温度20℃±3℃で,1時間の水
墳射を行う。
\黛
通風孔
鰻
2
金属製
の網団
外枠
直接屋外暴露法は,もっとも一般的に行われてい
る暴露試験法である、風,雨,日光などの自然環境
に試験片を直接暴露する試験である。ただ,屋外暴
露では,太陽光(紫外線),温度,湿度,天候(雨,
風,雪)や空気中の塵埃,ガスなどの環境要因によ
って,劣化の程度は異なってくる。標準的な暴露試
験場所としては,アメリカではフロリダ,アリゾナ,
(革位lmmン
図3太陽光によるアンダーグラス暴露
試験装置の例
ている。
ガラスを透過した日光に暴露する試験法である。こ
れは窓越しの太陽光を想定した暴露試験法である己
アンダーグラス屋外暴露試験法は,図3のように
試験片を板ガラスで覆った試験箱内に取りつけ,板
太陽集光促進暴露試験法は,図4のように太陽光
の放射する方向を追跡し・太陽光をフレネル反射鏡
国内では千葉県銚子市,沖縄県宮古島などで行われ
Vol.55,No.5
a7
1
表5屋外暴露試験法と装置および暴露場所(JIS K7219−L99り
太陽光
通風間
\焦点板
方法
装置の
名 称
暴 露 場所
略
樹木や建物から十分離れた広い場所でなけれ
試料
A法
重心およぴへ
回転軸
直接暴露法
ならない。南面45。の場合は,赤道及び東西
一
向に隣接する暴露台を含めて仰角20。には
害物はなく,また,極方向には仰角45。以上
天笙
さ 、\
放射光
−
B法
い/、!
は障害物があってはならない。南面300以
アンダーグラ
図3
屋外暴露法
の暴露の場合には,仰角2じ〕以上に障害物
あってはならない。
、、『
く面鏡
フレネル集光型暴露法は,乾燥した天気のよ
C法
図4 フレネル反射鏡集光促進暴露試験装置
(光学系の概要)
年間350D時間以上の日照時間があり・年問
日中の平均相対湿度が,30%以下の場所で
太陽集光促進
外暴露試験
用され・るのが最もよい。C法を使て強めた
図4
を照射する試験を行うための最低条件は,
陽に垂直な面での直接照射と全天照射との
は0.8とするσ
(3〉 ω (ll
$OD
3.0
150
、
600
、
、
、
40D
2.o
訓o
L、5
写真1 紫外線照射(フェードメータ)による
10GOh
o
O.55
I
1500h
o
ヤ
ム、、
喬へ勉『
0
承
図6
A
5D
、
翼
睦
尽
〕o.50
旦DO
、
Oh
500h
(2
、
、
五
、
、
、、 ム
ヤ
o 、、
50
0,60
(1)
、
2.5
100
表面のクラック発生状態(POM)
● o
$oo
0
1.O
O 200 400 {鵡0 800 1000
くア (
寓o 承
匙棄 照射時間(h) 這
) ㎏,
Σ
PCのサンシャインウエザーメータによる促進暴露
劣化(厚み0.2mmの場台)り
D、45
1
ウェザ』メーター
G.40
0 0.5 1.O l,5
表面よりの湶さ(㎜)
図5厚み方向での促進暴露劣化の挙動
(PCの場台)4}
で集光する部位に試験片を保持枠に取りつけた状態
で暴露する試験法である。太陽に追尾して,集光す
る方法であるので,通常の屋外暴露試験より加速促
進劣化ができる試験方法である。
(3)耐候囲特性
プラスチックを屋外で使用する場合には,太陽光
(特に紫外線)>以外に,温度,湿度,天候(雨,雪,
風など)や空気中の塵埃,ガスなどの外的環境も加
わって劣化が起こる。これらの外的環境に対する抵
83
抗性を耐候性という、また,太陽光や屋内で使用す
る光線(白熱灯,蛍光灯,水銀灯,殺菌灯)に対し
ての抵抗性を耐光性という。ここでは,前者の耐候
性を中心に述べる。
プラスチヅクは紫外線によって,照射される表面
から劣化が進行する。紫外線照射によって,劣化す
ると分子量低下,架橋化などによって脆化し,表面
か らクラックが発生すると同時に,脆化した表面が
チョーキング現象白化,黄変などの現象を示し劣
化が進行する。
紫外線劣化の挙動として,チョーキングを示しな
がら劣化するタイプと,表面が白化または黄変現象
を示しながら劣化するタイプ炉ある。前者のタイプ
としては,PE,PP,PA,POMなどがある。後者の
タイプとしては,PS,ABS樹脂,PC,PET,PBT
プラスチックス
(5)(3)(2)(1)
1500
(4)
3.0
150
表7物性がある値まで劣化する時間と促進係数(PC)
(図6と図7を元にした値)
、
¥
2.5
50
1αD
(2)
、
各特性値のエンドポイント
v
1000
L
』
50
(1)
1.5
50
87.6
0.5
APHAが100に達するま
、ふr暫
ロロムロじ
0 0 0 0
0
7.0
(1752〉
するまでの時間
(APHA(黄色さ)〉
、 (4)
BIA
0.2
初期分子量より2000低下
1
500
250
(粘度平均分子量)
(3)
し
促進係数
h(A)
100
O o
2.0
5G
サンシャイン 屋外暴露試験
進暴露試験
(h)(B)
(4380)
での時間
150
駒_( 0 1 2 3 4
謹墜話も 寂
(霞度)
墨樋取 暴鮒間(年) 蕎
霞度が10%に達するまで
ゆ 艘 〉
の時間
Σ
図7PCの屋外暴露による劣化
破断伸びが初期値の50%
(厚み0.2mmの場合)41
に低下するまでの時間
380
(引張破断伸び)
58.6
1.0
(8760)
18.4
0.8
(7007)
(4)〈3)(2〉(1) (5)
表8各種プラスチックの50%以上劣化する屋外暴露期間5
3.0
田00
800
陶 (4)
屋外暴露月数
●
伸び率
引張強さ
衝撃力
150
2,5
。.(1)
2カ月以内
600 5
100
1:嘗:/i△副。・薫
50
HDPE,LDPE
6カ月以内
SAN
POM
6カ月超過
HDPE,LDPE
4カ月以内
上限不明)
D
護酪も012345求
ミ。誕 暴職(年)至
図8 PCの屋外暴露による劣化
P,PC,HIPS
MMA,ABS
P,ABS
HIPS
POM
PMMA
AN
ABS樹脂
PC,PP
AS樹脂,PMMA
IPS
OM
DPE,HDPF
などがある。
たものである。これらの各特性についてエンドポイ
ントを決めて,そのポイントに達する時間をそれそ
れの図から読みとり,促進試験と屋外暴露の場合の
写真1は,POMに紫外線照射したときの表面に
促進係数(相関性)を計算すると,表7のとおりで
おける微細クラックの発生状態である。この時点で
は,クラックとともにチョーキング現象も示してい
る.図53)は,PC試験片をウエザーメータ処理した
後に, 表面側から削り出し,表面からの深さと極限
粘度の関係を測定した結果である。ζの図から,照
射時間が長くなると,表面側から劣化が進行する様
ある。
(厚み3.2mmの場合)41
同表から分かるように,それぞれと特性によ
って促進係数は7㌣90と幅がある。したがって,促
進暴露試験と屋外暴露試験の相関は,どのような特
性に注目するかによっても違ってくると言える。一
方,試験片の厚みの影響もある。図84〕は,試験片厚
みが3.2mmの場合の屋外暴露データである。図7
の試験片厚み200μの屋外暴露の場合に比較する
子がうかがわれる。屋外暴露においては, このよう
に紫外線によって成形品の表面層が劣化して,ぽろ
ぽろになり,雨や風で表面の劣化層が流されたり,
一方,各種プラスチックについて, 屋外暴露によ
飛ばされたりして,さらに内部へと劣化が進行する。
促進劣化と屋外暴露の関係にっいては,プラスチ
ックの種類によって異なる。たとえば,PCについ
て,サンシャインウエザー促進試験と屋外暴露試験
る劣化で,初期物性が50%まで低下する屋外暴露時
間に注目して分類すると表85)のとおりである。
PMMAは,全体的に優れているが,他のプラスチッ
クは,評価する物性項目によって,ランクが分かれ
による劣化を図64),74)に示す。両図とも,性能とし
ている。
ては,粘度平均分子量,APHA(黄色度の相当〉,引
張破断伸び,霞度などにっいて,劣化の挙動を示し
以上述べたことを含め,促進暴露や屋外暴露のデ
ータを利用する場合には,つぎのような点を配慮し
VoL55,No.5
と,劣化の速度は緩やかになっていることがわかる。
89
表9ガンマ線照射による各種プラスチックの分解発生ガス
CO2
H2
ポリカーボネート
32.5
1.5
ポリエステル1
ポリエステル2
56.3 33.5
ポリマー
CO
メタン
lμmDレg沖
ブタン
エタン
ブテン
メチルクロライド
ペンテン
4.6
4.0
1.6
3.8
0.3
メタノール
66.O
82.0 18,D
ポリエチレン(高密度),
3.0
92.0
5.D
ポリエチレン(低密度〉
1.0
1.D
ポリプロピレン
1.0
91.0
95.0
6 6ナイロン
1.0
71.0 24.o
66.0 29.0
8.7
85.8
69.0
7.5
5.0
11ナイロン
塩素化ポリエーテル
ポリアセタール
1.D
3.5
2.0
1.5
3.0
4.0
工.4
15.0
1
2.0
津)6Mra4in vac皿m
なければならなし㌔
(a)試験片厚みの影響
(b)屋外暴露場所の天候の差
(c)屋外暴露した年での天候の順不順の差
(d)試験機の差
(e)試験する特性の選び方による違い
5−4,その他の劣化
5−4−1.短波長放射線照射による劣化
紫外綜より波長の短い放射線としてはX線やガ
ンマ(,・)線がある。これらの放射線は紫外線よりさ
てオゾン(Oa)が生成する。03は光線の内,特定波
長部200∼300mμを吸収する。したがって,70km
以下の高度で生成する03のため,この層を通過し
た光は300mμ以下の短波長を断ち切ることにな
る。また,0ヨは短波長を吸収し,そのエネルギーに
よって分解するが,微量な03は対流によって地表
に到達する.この微量な03の影響で,ポリマーの構
造によっては分解することがある。03によるポリマ
ーの分解作用は,二重結合に作用して,つぎのよう
なオゾナイトになり,オゾナイトはさらに分解す
る7)。
らに波長は短いので,エネルギーは大きい。これら
の放射線による劣化の原理は,紫外線の場合と同様
であるが,エネルギーは大きいので,照射によって
劣化しやすい。γについては,医療器具の滅菌に使用
する関係もあり,照射による劣化に関するデータは
C−C+息一Cく1 1〉C
比較的多い。
よって劣化するスキームは,つぎのとおりである7〕。
0.27×工06rad!hの線量率で7線を真空中6×106
radで照射した場合,発生ガスのモル比は表96)のと
おりである。ポリマーの分子構造によって,分解発
生ガスの組成は異なっている。たとえば,PCの場合
には,一酸化炭素や二酸化炭素が検出されることか
ら主鎖の切断が起こったと考えられる。また,分解
ガスの発生量では,ポリエステル系,ポリスチレン,
ハロゲン化ポリエチレンなどは少ないが,PE,PP,
POMなどは発生量が多く不安定である。
5−4−2.オゾン劣化
地表の日光の波長は約30Dmμ以上の波長である
O
したがって,ゴムのように二重結合を有するポリ
マーは03によって分解する。天然ゴムがオゾンに
C且3
1
CO十
・00 H
\
Cド
/
(AII
C義 CH3
一と一㎝
現く
〉CH
O
IB)
CH3
\ 00・
C/ 十〇HC一
(C〕 (D)
同スキームからわかるように,オゾナイトを経過
して,カルボニル基が生成する。また,分解物(c)
が,高度160kmに達すると紫外部は200mμまで
同志が再結合すると,レピュリン酸ジパーオサイド
が生成しさらに分解は進行する。
のスペクトルが得られる。02は240mμ以下の短波
以上のように,自然環境でのオゾンによる劣化は・
長によって解離して0になる。大体90km以上の
微量な量であるので,二重結合を有するゴムのよう
なポリマーに限られるe
高度では,この解離作用が強くなるため0として存
在することになる。70km以下では02と0によっ
90
プラスチックス
5−4−3.微生物による分解
一般のプラスチックは,微生物の酵素によって,
劣化することはないが,生体高分子,多糖類,たん
ぱく質などは酵素によって分解される。プラスチッ
クについても,環境負荷の低減という観点から,微
生物による分解を意図的に起こすポリマー(生分解
性プラスチック,グ1」一ンプラスチック)の開発が
表10生分解性プラスチックの分鯉陸評価法のJIS
規 格
名 称
JIS K6950−200。
JIS K6951
200。
進められている。 これらのポリマーの開発について
述べることは本章の目的ではないので,分解に関す
JISK6953=呂o。D
る原理の記述にとどめたい。
微生物の酵素作用に適した反応形態は加水分解で
ある。したがって,加水分解される基をもつものは
生物劣化可能なポリマーではある。ただ,芳香族系
のポリエステルやポリアミドでは,生物分解性は認
められす,脂肪族ポリエステルや脂肪族ポリアミド
は,微生物の酵素作用によって生物劣化を示す言わ
れている8)。たとえば,ポリカプロラクトンはかなり
の高分子量でも生物分解性を示す。ただ,ポリカプ
ロラクトンの実用性能は低いので,この点を改良す
るためにアミド結合やウレタン結合を導入して性能
を改良している。
一般に,生物分解性を有するポリマーの作り方と
しては,上述の化学合成系以外に微生物産生系,天
然物利用系などもある。また,生物分解性ポリマー
は,酵素(菌体外酵素)によって,低分子量化合物
に分解し,好気的分解〔酸素の存在下)では最終的
に水と二酸化炭素に,嫌気的分解(酸素が存在しな
い条件下〕では,メタンと二酸化炭素に分解される。
生分解性ポリマーの好気的分解については,表10に
示すような生分解度の測定法がJIS化されている。
5−5.プラスチックの寿命評価法
プラスチック製品の寿命は,その製品の性能・機
能・商品価値などの点で,さまぎまな使用目的を果
し得なくなる終点(エンドポイント)までの時間で
ある。したがって,寿命を推定する方法にっいては,
水系培養液中の好気的
極分解度の求め方一閉鎖呼吸計を用
る酸素消費量の測定による方法
プラスチック
プラスチッター水系培養液中の好気的
究極分解度の求め方一発生二酸化炭素
の測定による方法
プラスチック 制御されたコンポスト
条件下の好気的究極分解度及び崩壊度
の求め方一発生二酸化炭素量の測定に
よる方法
表11製品の劣化原因と関係する要因
劣化原因
要
因
分子切断,架橋
熱,紫外線,オゾン,ガンマ線などに
クラック
成形品中の欠陥
ストレスクラック,ソルベントクラッ
クによるクラック発生,クリープ破壊
可塑性がブリードすることによる材料
の硬化〔PVC)。紫外線吸収剤のブリー
ドによる性能低下
成形時のボイド,傷,ウエルド,異物
その他
摩耗,クリープ変形,色相変化
よる劣化
添加剤のブリード
など
(劣化と概念は
異なる)
チックの寿命は左右される。
基本的には,性能・機能の低下はつぎの原因によ
り起こる。
a,応力の存在下でクテッタが発生する,または破
壊する。
b,環境要因のもとで,プラスチックが劣化(分解)
して強さが低下する。
c一
プラスチックに意図的に添加した成分がフリ
ードすることによって性能・機能が低下する。
d,
その他,寸法,外観などが変化して使用ヨ的に
耐えなくなる。
一般的な方法があるわけではなく,製品の使用目的
これらの原因と関係する要因を表11にまとめた。同
によって寿命の考え方は異なってくる。また,本稿
の主題である「強さ」だけではなく,機能や外観な
ども寿命に関係する要素である。ここでは,本章ま
表を踏まえなが転製品のエンドポイントに関する
でに述べてきた内容と重複する点もあるが,寿命と
いう観点からまとめる。また,本テーマから離れる
が,機能や外観の問題にっいても寿命という観点か
ら若干触れる。
(1)寿命の終点(エンドポイント)の考え方
応力,温度,その他の環境要因によって・プラス
Vo】.55,No.5
考え方を整理するとっぎのとおりである。
①初期強さの50%まで低下する時間
正確な基準があるわけではないが,初期強さの
50%に低下する時間を寿命とする考え方がある。降
伏応力,破断応力,破断伸びなどの値が初期値の
50%まで低下する時間を寿命として,各温度におけ
る劣化時間を求めて,アレニウスの式から実用温度
を求める。この方法はULのRTI(比較温度インデ
91
ックス)の例がある(第5章,5 1,項参照)。
②延性破壌から脆性破壊へ移行する時問
延性破壊状態を示す材料が脆性破濃に移行する変
化点近鰐では,延性破壊と脆性破壊が混在し,強さ
のぽらつきが大きい。このため個々の測定値の平均
値から50%破壊時間を求めると,誤差が大き い。こ
のような場合には,延性 脆性転移点近傍における
定できる。
②使用中の温度が変化する場合のトータル寿命の
予想
いろいろな温度条件下で使用する場合のトータル
時間での寿命を推定するには,つぎの式がある9)。
1,乞51!ΣL4τパ……・・………………一・(5−2)
ただし・L:推定寿命 現:ある温度における推
(延性または脆性破壌数1全試料数)が50%になる時
定寿命 諏二Lπに対する時問割合
間を求める方法がとられる。
たとえば,
③クラックの発生するまで時間,破壊するまでの
温度
時間
クラックは破壊に結びつく前駆的現象と考えて,
負荷応力とクラックの発生するまでの時間をもとに
寿命を決める。また,定ひずみの状態では,クラッ
クの発生しない限界応力をもとに設計する場合もあ
る。これは寿命を無限大時問とする考え方である。
疲労破壊,クリープ破壊のような場合,破断する
までの時間を求める。グリープ破壊の場合には,ラ
ルソンミラーの法則から,任意温度での破壊するま
での時間を求める。
④特性値が,ある値まで低下する時間
平均分子量,極限粘度,MI値,色相,黄色度,光
線透過率などが,ある値まで変化する時間または初
期値からの差が,ある値になるまでの時間を寿命と
する考え方である。これは,それぞれのプラスチッ
クの特性が関係するので,一定の基準があるわけで
はない。
(2)理論式と実験値から寿命を求める方法
一般に,室温近傍の温度では材料の劣化寿命の評
価には時間がかるので,高温下または高応力下で試
験して,理論式を用いて,長時問側の寿命を推定す
その温度での寿命 時間割合
須昂端矯
L]
αわoゴ
の場合には,以下の式で計算できる。
1 1 1 工 1
τ立1ノガL21わ+π+L4’廿…’(5、3)
③クリrプ破壊寿命の予測
第3章,3−3−4.項で述べたが,クリープ破壊では,
負荷応力σ,温度丁でクリープ破壊時間した時間あ
を測定し,T(10g≠β+C)を横軸,σを縦軸にすると
直線関係になる。このようにしてクリープ破壊寿命
を推定する方法をラルソンミラー法という。これに
っいては第3章,3一肝4項で述べたので詳細は割愛
する。
また,負荷応力σとクリープ破壊時間なの間に
は,っぎの関f系力∼ある。
109彰=log A−Bσ…・…・…・一・…・……』(5−4)
ただし,AおよびBは温度に依存する定数
(5−4)式を用いて,高応力側での実験データから,
る方法がと られる。ただ,プラスチックの場合には,
低応力におけるクリープ破壊寿命を予測する。
必ずしも理論式のように直線性を示さないこともあ
るので,理論式の適用性について,事前に検証して
みる必要はある。また,速度論をべ一スとする理論
式は,本来確率的現象として扱わねばならないので,
実験により検証する場合は,試料の鷺数を多くし
て,データは確率値として取り扱うことも忘れては
(3)加速劣化試験による寿命推定
ならない。
①熱劣化寿命の予測
反応速度論により,アレニウスの式から誘導され
る次式を用いて求める(第5章の1項で述べたので
詳細は割愛する)。
1n≠8=Aノ十Ea㌍丁 ………・…一…一… 5−1〉
(5−1)式において,高温下であを実験して,定数
A’ヲE。などを決定すれば,低温側における寿命を推
92
理論式を用いて寿命を予測することは,現実的に
は困難なことが多い。特に,上述の理論式は材料の
劣化に関するものであり,応力,温度・その他の環
境条件などの複合条件下で,製品7 生能・機能に関す
る寿命は予測できない。このような点から,使用条
件を厳しくした条件下で実用寿命試験をして,製品
寿命の信頼性評価をすることが多い。特にプラスチ
ヅクは試験温度の影響を受けるので,温度条件を適
切に設定することによって加速寿命試験をすること
ができる。すなわち,温度が高くなると,つぎの傾
向があるので,これらの特性を利用して過酷な条件
で寿命を予測することができる。
・ストンスクラックの限界応力は低くなる。
プラスチックス
理由は,ポリマー分子の結合エネルギーより,紫外
線,X線,γ線のエネルギーの方が大きいからである。
これをもう少し,科学的に考えてみよう。
さて,物質からエネルギーが波動として空間に放出
されることを放射(または輻射)という。物質から放
射される放射線の波長を図に示す。
光化学反応にっいては,次の法則がある5
(1)物質は,光を吸収する場合にのみ反応は起こる
(光化学の第1法則)
(2)放射によって物質がエネルギーを放出したり,
吸収したりする場合にほ,エネルギーに最小単位があ
って,その整数倍だけが放出または吸収する。最小エ
ネルギ」単位をエネルギー量子ε(光量子)といい,次
100km
正Olcm
図 放射線の種類と波長
50m
103cm
lDm
に代入して,1モルのエネ
lmm
10−lcm
ルギーと光の波長の関係で
表すと,つぎの式になる。
E(1モル)=(6.02×
1023)(6』62×
10
800mμ 8×10−5cm
赤可
視
紫線
27)(2.998×
1010)
/4.187×107λ
[cai・cm/mol]
400mμ 4×10−5cm
200mμ
近紫
10−1mμ
10罰6cm
ここで,ン:振動数〔s−1涜=プランクの常数(6.62×
=2.3535λ[ca1。cm/
mol]
=28535/λ(kcal・m
10−27erg g s)
μ/mol〉…(3)
10−4mμ
(3)光の吸収は常に光量子を単位として行われ,吸
収は常に分子や原子が一時にただ1個の光量子を取P
込む形で起こる(光化学の第二法則一Einsteinの光化
たとえば,(3〉式に紫外線
線
10−6mμ
学当量の法則〉
の値を代入すると,それぞれ98kcal,28.5×104kca1,
ここで,1粒の光量子のエネルギーは加であるが,
光量子1モルのエネルギー(E〉は次の式で示される。
28.5×105kca1となる。
の式で表される(量子説)。
εihレ?……・・一…・甲……一…一…・一一・(1〉
10 ユmμ
線10 8cm
10旧9cm
10−ncm
(290mμ),X線(0.1mμ〉,
γ線(0.01mμ)などの波長
Ei銑レ……一……・…一……一…・……・(2〉
ところで,一C−C一結合の結合エネルギーは83
kcal/mo1〉, C二Hの結合エネルギ」は85kca1・md
ただし,1〉:アボガドロ数(6.02×1023)
であるから,紫外線以上の短波長放射線のエネルギー
(2)式にFCμ(C=光の速度2.998×10艮oCm/S,
は,これらの分子結合エネルギーを上回っているので,
λ:波長),1cal;4.18×107ergなどの関係を(2)式
これらの放射線を吸収する場合は分解が起こる。
・ソルベントクラックは,限界応力が低くなるも
のと高くなるものがある。
・疲労強さ,クリープ破断強さは低くなる。
・応力緩和速度は速くる。
・熱劣化速度は速くなる。
・熱膨張は大きい(温度変化による膨張・収縮)
①ヒートサイクル試験
ヒートサイクル試験,温湿度サイクル試験,ヒー
トショック試験などがある。
温度変化または湿度変化を繰り返すことにより,
プラスチック成形品は膨張,収縮を繰り返すこどに
基づくひずみ変化の影響をみる方法である。特にア
センブルされた状態では,プラスチック成形品が拘
束されることによるひずみも発生する。また,湿度
変化によって吸水・乾燥による寸法変化の影響も加
わるQ
VG1.55,No.5
温度については,製品の使用温度の上限値より
10∼20。C程度高く設定してヒートサイクル試験をす
る。ヒートサイクルのプログラムは,それぞれ製品
の使用条件に合せるとよい。また,ヒートサイクル
試験の繰り返しサイクル数にっいては,過去の試験
実績から決めなければならない。
②環境劣化試験
熱工一ジング試験,温度・湿度工一ジング試験,
温水劣化試験,薬品浸漬試験,塩水噴霧試験などが
ある。これらの試験は温度条件に加えて,プラスチ
ック成形品への化学的影響も負荷される試験方法で
ある。プラスチックによって劣化の挙動や度合いが
異なるので,特性を考慮して適切な方法や条件を設
定しなければならない。
③ストレスクラツグ試験
ストレスクラック試験,ヅルベントクラック試験
93
については,第4章で詳しく述べたので,参照され
たい。
④耐候劣化試験
耐候試験にっいては,本章5
3.項で述べたので,
るか,モデルを製作して実装試験後のサンプルを回
収して,データを時系列的に整理し,外挿して寿命
予測する方法である。長期信頼性の要求される自動
車部品のプラスチック化では,このような寿命予測
参照されたい。
法が取り入れられている。
⑤動的寿命試験
疲労試験,歯車試験,摩擦摩耗試験などは,実用
条件とは異なることが多いので,実用条件に近い装
置を製作して寿命試験をすることが多い。
①類似製品で過去の使用実績データをもとに評価
する方法
市場で使用実績のある製品で,類似製品がある場
合には,つぎのデータから寿命を予測する。
a,類似製品について,当初製品化する場合に取得
した検討データと市場での製品実績を調べる。
b,類似製品で,市場で使用中のサンプルを回収
し,使用期聞と物性劣化の経時変化を調べる。
c,類似製品と,開発する製品の製品設計,使用条
件,設定寿命などの違いについて検討し,寿命
を推定する。
②モデルを製作して,製品に取りつけて実装試験
疲労試験は,JIS規格による疲労試験では応力負
荷の繰り返し速度が速いと,試験片が自己発熱を起
こし,温度上昇により破壊応力が低下することがあ
る・また,試験片の加工法の影響もある。実際の製
品の場合には,実使用条件の負荷応力,繰り返し数
に合せた条件で手製の試験機で実験することが多
いo
歯車試験も,疲労試験の場合と同様であるので,
実際の歯車の使用条件に合せて手製の試験機で試験
することが多い。特に歯車の場合,相手歯車の材質,
試験歯車の寸法精度なども寿命評価に関係するの
で,実使用条件に合せなければならない。また,用
途によっては,歯車から発生する騒音を測定するこ
ともある。
摩擦摩耗試験は,試料の表面あらさ,面圧, 摺動
速度などが関係するので,実用条件に合せ左条件で
寿命試験をする方がよい。
(4)市場回収品,実装試験品などによる
寿命評価法
基本的には,市場で使用されている製品を回収す
をする。
この場合には,っぎのことを配慮しなければなら
ない。
a,加工法によってモデル自体の強さと実際の成
形品の強さとは異なることがある。例えば,丸
棒,板材などから切削加工する場合には,素材
は高分子量のグレードを使用することが多い
こと(強さは大きい),モデルの表面には切削
による微細な凹凸がある こと(応力集中による
低下)などを考慮しなければならない。
b,何個か実装試験にかけ,一定のインターバルで
取り外し,製品の劣化の経時変化を追跡し,寿
命を予測する。
く参考文献〉
1)電気学会有機材料劣化専門委員会編,高分子材料の劣化,
4∼8,コロナ社(1962〉
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(2001)
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資料物性編
5)鈴木,日本ゴム協会誌,42(2),80(1962)
6)V.J.Krasmansky,B.G.Achhammer and M.S.Par−
ker,SPE Trans.,133∼138(1961)
7)電気学会有機材料劣化専門委員会編,高分子材料の劣化,
351,コロナ社(1962)
8〉Wolfman Schnabel著,相馬純吉,高分子の劣化 原理と
その応用一,183∼196,裳華房
8)高野菊雄,ポリアセタール樹脂ハンドブック,171,日刊工
業新聞社(1992)
94
プラスチックス