今、こうして皆さんと元気な姿で再会できたことを本当に嬉しく思います。テ レビや新聞では中学生の海や山や川での事故が報道されました。事故に遭った 誰もが事故に遭遇したいとは思っていなかったと思います。それでも事故に遭 い、命を落とした中学生がいました。こうして当たり前の日常が送れる幸せを噛 みしめたいと思います。また只今、各学年の代表4名の2学期に向けての決意や 思いが詰まったスピーチが行われました。皆さん、とても立派なスピーチでした。 更にそのスピーチをしっかりと聴いていた全校生徒の皆さんが何よりも立派で した。今日は全員が予定時刻の2分前には整列が完了していました。お見事です。 さて2学期始業式に当たり、皆さんにお話ししたいことがあります。題名は 「9人目の選手・・・思いは人を成長させる」です。聴いてください。この夏は リオのオリンピックで話題が持ちきりでしたね。夜中までテレビをみていた人 も多かったことでしょう。そんな中、読売新聞の8月21日付けの小谷実可子さ んのコラムに目が奪われました。皆さんも知っての通り、シンクロナイズドスイ ミングでは日本は団体で銅メダルを獲得しました。井村雅代ヘッドコーチの下、 一日12時間の過酷な練習に耐えての栄冠でした。皆さんはシンクロの団体が 何名で行われているか知っていますか。答えは8名です。しかしリオの代表選手 は9名選ばれました。1名は補欠です。その1人が林愛子さんと言います。彼女 は8人のメンバーの誰かが怪我をしたり体調が優れなくなってリタイアしない 限り、リオの本番の舞台には上がれない役目を負っていたのです。 そんな林選手にも井村コーチからの厳しい叱咤激励がとびます。リオのオリ ンピックには出られないことをわかった上で辛い練習と厳しい罵声を受け入れ る林選手の気持ちはいかばかりだったのでしょうか。皆さん考えてみてくださ い。どんな競技にも補欠選手はいます。しかし8人がレギュラーで1人が補欠と いう状況は過酷な精神状態だったと思います、自分以外は全てレギュラーです。 自分と同じ立場や思いを持つ人は誰もいないで、長い合宿や遠征や共同生活を するのです。ましてや林選手は地元ではきっとスーパースターだったはずです。 誰かが怪我をすればよいという邪悪な心との闘いの日々だったことでしょう。 そんな林選手は8人の選手を全力で支え励まします。自分の役割や立場を自分 自身の心に言い聞かせ、精一杯レギュラー8人を支え続けました。そして見事日 本チームは銅メダルを獲得するのです。表彰台には9人目の選手として林選手 も銅メダルが授与されました。林選手は大粒の涙を流していました。その光景を 小谷さんは、 “林選手がどんな思いで涙を流しているかはわかりません”と物語 を美化することなく冷静に見つめていました。私も単に嬉しさや苦しさや悔し さといった単純な気持ちで涙したわけではないことは察します。きっと林選手 にしかわからない思いが涙を流させたのだと思っています。 人の役に立つことや人を支えるとは、自分の欲求を抑えて陰の役割に徹した り、目立たない苦しいことの連続かもしれません。しかしその貴重な経験こそが 人を大きく成長させることになると信じています。もう一度言います。人の役に 立つこと、人を支えることは自分を一番成長させる近道です。きっと林選手には 素晴らしい未来が待っていると確信しています。いよいよ2学期が始まりまし た。2学期には合唱祭、修学旅行、進路決定などがあります。どうか自分の為だ けでなく、となりの人やクラスのため、部活動や学校の為に皆さんの持てる力と 時間を注いでください。そして人の役に立つ人になってください。難しいことは 何もありません。心の持ち方を少し変えるだけでいいのです。自分と同じように 他の人を大切に思って行動してくれればいいのです。そんな2学期が実現する ことを心から期待しています。しっかり聴いてくれてありがとう。 H28.8.25 始業式にて
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