特集イングリッシュローズデビッド・オースチンのバラその歴史と美しさの秘密ひらおかデビッド・オースチン・ローゼス社社長デビッド・J・C・オースチン（訳：平岡まこと誠）デビッド・オースチンは、イングランド北西部にあるオルブライトンの農場で、バラの育種を半ば趣味のように始めました。その時はまだ、自分の楽しみのためだけの育種で、60年後に全世界で有名になるとは本人も考えていなかったのです。世界中のロザリアンの心を捉えて離さないバラ、イングリッシュローズはいかに生まれ、いかに浸透していったのか、オースチンの功績とともにそのルーツをたどります。デビッド・J・C・オースチン 1958年、イングランドのシュロップシャー州で、デビッド・オースチンの長男として生まれた。13歳のころより父親の仕事を手伝い始め、マンチェスターのサルフォード大学で経営学を学んだ後、1990年よりデビッド・オースチン社に社長として就任。世界中を旅してイングリッシュローズが異なる気候の中でどう育つかを見つめている。ガーデンにも非常に興味があり、２エーカーのガーデンを拡大し続けている。趣味はスキーとテニス、ゴルフ。平岡誠 1973年大阪生まれ。海外の代理店業務も行うバラ販売会社に就職したことを機に、バラに開眼。バラ関連各社で生産、販売を担当後、2005年8月より、国際協力事業団のバラ戦略短期専門家として、ブルガリアのカザンラク（通称：バラの谷）に派遣され活躍している。 2007． 11．はなとやさい 5 特集イングリッシュローズデビッド・オースチン・ローゼス社のキャナル・ガーデン。ジュード・ジ・オブスキュアセプタード・アイルガーデン・パスと呼ばれる小道では、見応えある開花が楽しめる。プランツ・センター（売店）も見どころの1つ。イングリッシュローズの作出に今も情熱を傾けるデビッド・オースチン氏。 6 2007． 11．はなとやさいうな状況だったのです ︒ そんな中 ︑ で細々とコレクションされているよといった少数のコレクターの中だけヴィタ・サックヴィル・ウエスト氏ローズは ︑ グラハム・トーマス氏や ︑ 勢いで減少していました ︒ オールド重要な品種を栽培する人が ︑ 急速なオールドローズと呼ばれる歴史的に品種を育てるのが全盛で ︑ いわゆるハイブリッド・ティーに分類されるぎませんでした ︒ 当時のバラ栽培は ︑ ガーデンを愛する趣味の園芸家にすめた初期のころ ︑ 彼はただ ︑ 植物とところでした ︒ ドピンクか紫 ︑ もしくは白といったかったからです ︒ せいぜい ︑ シェーず ︑ しかもごく限られた花色しかな咲きで夏︵日本の春︶一回しか咲かに見ていました ︒ 多くの品種が一季ある種の限界をこのオールドローズし ︑ オースチンはその時点ですでに ︑ 花自体の愛らしさにあります ︒ しかしていますが ︑ 最も重要な特性は ︑ シュラブという奔放に伸びる樹形をが多弁で ︑ ふんだんに香りをもち ︑ オールドローズの多くの品種は花魅オせーらルれドてローズにデビッド・オースチンが育種を始になっていきました ︒ にそれらオールドローズの魅力の虜ーなどの品種には目もくれず ︑ 即座オースチンは ︑ ハイブリッド・ティ初めて発表されたイングリッシュローズ、コンスタンス・スプライ（上）。壁面を覆うように用いる仕立て方も可能（右）。イングリッシュローズの人気を不動のものとし、今も愛されてやまない歴史的品種グラハム・トーマス。バンダのリカ系のデンティ・メイドベル・イシスとフとロのリた ︒ このバラはオールドローズでガのとしコてン発ス表タしンたス品・種スはプ ︑ ラ１イ９６で１し年彼が最初にイングリッシュローズイ最ン初グのリッシュローズ生み出していきました ︒ 色 ︑ アプリコットなどの花色までもめる繰り返し咲きの性質や ︑ 赤や黄す ︒ それだけでなく ︑ 長く花が楽しーズに準ずる品種を作り出したのでだけでなく ︑ 香りもまたオールドロた ︒ そうしていくうちに ︑ その花姿ルドローズを掛け合わせることでしティーやフロリバンダなどと ︑ オー彼の当初の考えは ︑ ハイブリッド・に反映していくことを思い立ちます ︒ 中で ︑ 自分のアイデアをその新品種に感銘を受け ︑ バラを育種していくースチンはベーカー氏の仕事に非常介する責任者でした ︒ デビッド・オューム ︑ シバザクラなどの新種を紹ベーカー氏はルピナスやデルフィニベーカー氏と親しくしていました ︒ 地元の農場経営者であるジェームズ・の父 ︑ チャールズ・オースチンは ︑ ところで ︑ デビッド・オースチン 2007． 11．はなとやさい 7 特集イングリッシュローズルネッサンス・ガーデンに咲き誇る満開のバラ。 8 は ︑ オールドローズの花姿と ︑ さまたイングリッシュローズ ︒ その要因の間で絶大な人気を誇るようになっ世界中のバラ愛好家やガーデナーつに大別できます ︒ 香︵クローブのような香り︶﹂の５ーツとフローラルの香り﹂﹁ムスクルラ香︵アニス種の香り︶﹂﹁フルな飛躍を遂げたのです ︒ 人イ気ンのグ秘リッ密シュローズしくあけた時のような香り︶﹂﹁ミ 2007． 11．はなとやさいローズ香﹂﹁ティー香︵中国茶を新います ︒ 香りの種類は ︑ ﹁オールド香りの強さや多様性がよく知られてイングリッシュローズはその中でも ︑ もっていることが特異な点ですが ︑ 発表によって ︑ ナーセリーは革新的比べて ︑ 多種多様な香りのタイプをける品種グラハム・トーマスのバラという植物は ︑ ほかの植物とでも世界中のバラ愛好家に愛され続れているポイントでしょう ︒ メアリー・ローズ ︑ また ︑ 今日世界中の多くのガーデナーに支持さた ︒ 83 年と 84 年にとまでにはかなりの時間がかかりましその後 ︑ 満足のいく品種ができるため ︑ その強健さや耐病性なども ︑ 消毒回数を減らしていく傾向にあるまた ︑ 最近は多くのガーデナーがヘリテージ含まれていました ︒ ーン新広せサグし範るーリい囲こッカなとやシテ品とュゴ種なカロリとっンーーとたタズでものベもあにでリある ︑ すーり６彼 ︒ ︑ 品のそな種作こどチのっにもョイたは ︑ ローズ・ナーセリー﹂をスタートさ６９年に﹁デビッド・オースチン・つ新たな品種を生み出すため ︑ １９イルをもちながら ︑ 返り咲き性をもそこで彼は ︑ オールドローズのスタるバラとしても使用が可能です ︒ 方をすることがあるため ︑ 多くはつ自由度のあるボーダーに最適なのでなどと絡み合うようにして咲くので ︑ シュローズは ︑ 近くに植えた宿根草内での伸び方でしょう ︒ イングリッなかでも特筆すべきは ︑ ガーデンも暑い夏の国では ︑ かなり強い伸びできます ︒ 日本のように ︑ 英国より感じの花壇などでも使用することがす ︒ また ︑ 芝生の中やフォーマルなは ︑ 返り咲き性がありませんでした ︒ すばらしいピンク色の香り高い花に交配で生まれました ︒ しかし ︑ この感じに伸びる樹形にありました ︒ ュラブ系のもつ自由でナチュラルなざまなタイプの違う香り ︑ それにシがっているのです ︒ 多くのガーデナのとなり ︑ 信頼のおける品種に仕上表品種は以前に比べてより強健なもされています ︒ そのため ︑ 最近の発れず ︑ 非常に厳しい状況下でテストも権威ある勲章です ︒ ツなどにも授与された ︑ 英国内で最た ︒ これはビートルズやビル・ゲイ芸界における貢献により受章しまし︵そして本年６月には﹁大英帝︶国を勲 ︑ 章園﹂ル・ローズ・アワード﹂などです ︒ ィーンマザーズ・インターナショナま枝める苗ませをしよの寒たん守まう接冷イ ︒ るす ︑ ぎ地ンこ ︒ 深目でグとまめが実リもたに土際ッ必 ︑ 植のにシ要雪え下植ュに囲るに栽ロないこ 10 すーるやと㎝るズかバをく場はもーおら合 ︑ しクすいは英れです入 ︑ に丈夫です ︒ イーン・オブ・スウェーデン﹁イ今ン﹂グリッシュローズのの強美やぱけ今で実で健点香らに ︑ すデ生すなをり﹁向彼がビ品 ︒ 品備を強いの ︑ ッ種種えは健て情まドはのなじさお熱だ・選育がめ﹂りはまオ抜種ら ︑ に ︑ 新だー段にもさあ近し農ス階力 ︑ まり年い場チでをなざまの品でン一注おます興種現は切いかな ︒ 味の役現消でつバ美は作で在毒いよラしも出す 81 さるりのさっだ ︒ 歳交配作業の様子。近年では強健な品種の作出が目指されている。 Order of British Empire ーン・ホール・メダル﹂ ︑ また﹁ク国王立バラ協会から贈られる﹁ディ賞﹁ヴィクトリア・メダル﹂や ︑ 英園芸協会において最高に権威のある数々の賞を受賞しました ︒ 英国王立デビッド・オースチンは最近でもサもコ寒よ︶冷く地育でちアはますブラエ ︒ ハグムラ・ンダターイビンー︵がマ特クく湿度の高い夏がある状況でもとては ︑ 日本のような非常に寒い冬と暑ってきています ︒ 病気にかかることなく育つようにな軽い病気にかかる程度か ︑ あるいはーが少しくらい消毒をしなくても ︑ デビッド・オースチン・ローゼス社の交配温室。地道な交配を通じて、数多くの品種が世に送り出される。交配されてできたタネ。年間50万粒がまかれ、約10年後、その中からたった数種が世に送り出される。とでコンパクトな樹形を保つことががある場合は ︑ 夏季の剪定を施すこもし ︑ 大きめに育ちすぎた枝などでよく育ちます ︒ ブレーションピア２０００などは ︑ 暖かい土地ジュビリー・セレッーまりスシす豊ルョ ︒ かン特にに広ウがィアゴりリルー ︑ アンル生ムウデ育・ィンもシッ・旺ェクセ盛ー・レにクキブなスャレり花のクオリティーが増し ︑ 香りもよ国よりも暖かい地域を好むようです ︒ ザ・ジェネラス・ガーデナーたいていのイングリッシュローズイ日ン本グでリのッシュローズ 2007． 11．はなとやさい 9 特集イングリッシュローズパット・オースチンは西日を避けて育てると生育がよくなる。寒冷地で特に育てやすいエグランタイン（マサコ）。暖かい気候でよく育つゴールデンセレブレーション（上）とウィリアム・シェークスピア2000 （右）。ズの世界をお楽しみください ︒ 10 で生こけよでーてぜすかとるうすズいまひ ︒ しがこながはまた ︑ た分とい ︑ 多す ︑ 日植かにく少 ︒ お本栽っよつパの多もでにてっかッ日くしイすいてのト陰のろンるま生品・でイいグこす長種オあン特リと ︒ がはーっグ性ッもこ助 ︑ スてリもシおの長西チもッ見ュす特さ日ン育シつロす性れをつュかーめをる避ののロっ 2007． 11．はなとやさいできるでしょう ︒ 品のつるバラとして使用することがェネラス・ガーデナーン・セレブレーションなどは一級やたくさんの枝が出ます ︒ ゴザー・ルジデは高めのシュラブとなり ︑ 根元からイングリッシュローズのつるバラ返し咲きます ︒ のつるバラとして生長し ︑ 花も繰りすし ︑ 伸ばして育てれば ︑ ２〜４ｍればシュラブタイプとして楽しめまるといえるのです ︒ 強い剪定を続けローズは﹁２つの性格﹂をもっていす ︒ つまり ︑ 多くのイングリッシュバラになる﹂ということを意味しま述のように ︑ 裏を返せば﹁よいつるつ﹁よく伸びる﹂という特性は ︑ 前この ︑ イングリッシュローズのもがります ︒ でき ︑ 次の花を促進することにつなイングリッシュローズ日本でのおすすめ品種バラは数々の優れた面をもっています。花の時期が長く、それぞれの品種がすばらしい花と香りをもっている、こんな植物がほかにあるでしょうか？しかも多くのイングリッシュローズは、ガーデンでほかの植物と見事に調和するという利点も兼ね備えています。オースチンが生んだ、利用価値が非常に高い品種の中から、日本での栽培に特におすすめの品種をいくつかご紹介します。アルンウィック・キャッスルクィーン・オブ・スウェーデン濃いピンク色をしたカップ咲きの花で、オールドローズ香にラ比較的新しい品種ですが、非常に人気が出てきています。インズベリーの香りがほんのりのっています。やや直立ぎみに伸びまグリッシュローズとしてはかなりユニークで、直立して育つ性質すが、シュラブ樹形にもなります。をもっています。花の名前は、北イングランドの庭園にちなんでいます。そこでは、クラシカルな花形で、多めの花弁が完璧に配置され、花色はソ多数のイングリッシュローズのコレクションを有する巨大なローフトなアプリコットピンクです。非常に丈夫な品種で、愛らしいズガーデンが有名です。ミルラ系の香りがします。ジェントル・ハーマイオニーエグランタイン（マサコ）ザ・ジェネラス・ガーデナー花形はそれぞれ違いますが、いずれも愛らしいソフトピンクのデビッド・オースチンの耐病性に対する追求の結果、2002年ロゼット咲きで、すばらしい香りがあります。樹形は、ジェンに生まれた品種でとても丈夫です。非常に大きく育つ部類で、3 トル・ハーマイオニー〜4mくらいのつるバラにもなりますが、切り詰めて1.5mぐらいが魅力的に広がるタイプであるのに対し、エグランタイン（マサコ）は直立して伸びていきます。どんなガーデンにも向きますが、後者は特にフォーマルな雰囲気の庭に合うようです。の大きめのシュラブにするのも魅力的です。美しい花形をもち、花色は外側にいくほど薄いペールピンクになっていきます。オールドローズとムスク、ミルラの混ざった強い香りがします。 2007． 11．はなとやさい 11 特集イングリッシュローズジュビリー・セレブレーションゴールデン・セレブレーション花の大きさは、イングリッシュローズの中で最も大きい部類です。世界中のガーデナーたちから、よい報告をいただいている品種多雨の時でも花が垂れ下がりすぎないことは、雨の多かった今シです。花形はとても大きなカップ形で、花色はリッチなゴールデン・ーズンの英国の気候で実証されました。花色はリッチなピンクで、イエローです。香りもすばらしく、ティー系の香りから、柑橘系、花弁の下にいくほど黄金色が入ります。ソルティーヌ・ワイン、イチゴの混ざった香り、そしてクロフサ強いフルーツ系の香りがあり、レモンの香りやラズベリーの香りが混ざったりもします。グラスゴーの試作では香りの賞を受賞しました。スグリの香りへと移行していきます。樹形はしっかりとしたシュラブ樹形にできるほか、2.5m程度のつるバラとして仕立てることも可能です。どのように仕立てても繰り返し咲いてくれ、強健で、とげも少なめです。グラハム・トーマス最高といわれているバラの1つで、大最も大きな花径をもつ品種の1つです。ウィリアム・シェークスピア2000 赤のイングリッシュローズの中で最高きな濃いイエローの花は、強いティー系さらに最も強い香りをもつ品種の1つで峰の品種です。花は濃い深紅色の花弁での香りがします。多くのイングリッシュもあり、フルーツ系の香りがあります。埋め尽くされています。香りは強めのオローズはつるバラとしてもよく育ちます花色は、全体的に見るとアプリコット・ールドローズ香で、花色と見事にマッチが、このバラも同様です。返り咲き性をピンクに見えるのですが、近づいて見るもち、強健で豊かな香りをもちます。まと、ピンクと黄色、黄金色が混ざり合っ樹形は、1.5mくらいの高めのシュラた比較的下部にも花がつきます。ています。アーチ状に長く広がる枝は、ブとなり、比較的暖かい土地でも寒冷地壁づたいに伸ばすか、トレリスに誘引しでも、高いパフォーマンスを発揮します。冬季に強い剪定をすると、1.5mぐらいのシュラブ樹形にも仕立てられます。 12 アブラハム・ダービー 2007． 11．はなとやさいてもよいでしょう。しています。