東京都医薬品情報 - 東京都健康安全研究センター

東京都医薬品情報
№ 4 5 7
平成24年10月号
海外医薬情報から‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥2
一般財団法人
日本医薬情報センター
安全性情報
1
抗うつ剤の使用と院外心停止のリスク:デンマークのケース・タイム・コント
ロール研究
2
妊娠中の抗うつ剤使用と妊娠高血圧症候群のリスク:ネステッドケースコント
ロール研究
3
禁煙補助剤 Varenicline に関連した鼻出血およびその他の出血性イベント:ニ
ュージーランドおよびオランダのファーマコビジランスセンターからのケース
シリーズ
海外医薬情報2012年9月号から
一般財団法人
性
情
日本医薬情報センター
安
全
報
1
抗うつ剤の使用と院外心停止のリスク:デンマークのケース・タイム・コントロール
研究
Weeke P.(Copenhagen Univ. Hosp.,Gentofte/Denmark),ほか
Clin. Pharmacol. Ther. 92(1)72-79/(2012.7)
【目的】デンマークの非選択コホートにおいて,特定の抗うつ剤治療と院外心停止(OHCA)
リスクの関連性を検討した。
【方法】デンマークで 2001~2007 年に OHCA を経験した全患者を特定した。特定の抗うつ
剤治療と OHCA との関連性について,ケース・タイム・コントロールモデルの条件付きロジ
スティック回帰分析によって調査した。
【結果】19110 例(年齢中央値 70.5 歳)を特定した。2913 例(15.2%)が OHCA 発生時に
抗うつ剤治療を受けており,citalopram が最も高頻度(50.8%)に使用されていた。三環
系抗うつ剤(TCAs;オッズ比 1.69,95%信頼区間 1.14~2.50),選択的セロトニン再取り
込み阻害剤(SSRIs;1.21,1.00~1.47)はどちらも OHCA リスク増加と関連していた。一
方で,セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害剤/ノルアドレナリン・特異的セロ
トニン作動性抗うつ剤(SNRIs/NaSSAs;1.06,0.81~1.39)と OHCA リスクに関連性は認
められなかった。OHCA リスク増加を引き起こした主な薬剤は,citalopram(1.29,1.02~
1.63),nortriptyline(5.14,2.17~12.2)であった。
【結論】SSRI と TCA に分類される抗うつ剤において,心停止との関連性が確認された。
参照文献 45
antidepressants tricyclic,selective-serotonin-reuptake-inhibitor,citalopram(INN),
nortriptyline(INN)
「JAPIC Pharma Report 海外医薬情報」速報 No.839 掲載
抄録番号 201250703
<参考:代表的な先発医薬品名(保険薬事典より)>
citalopram,国内未承認
nortriptyline,ノリトレン【情動調整剤】(大日本住友製薬)
【掲載理由】
・ 掲載基準1-(1)
※シタロプラムは国内未発売であるが、国内ではシタロプラムのエナンチオマー(鏡像異
性体、光学異性体)であるエスシタロプラム(レクサプロ)が販売されている。
2
妊娠中の抗うつ剤使用と妊娠高血圧症候群のリスク:ネステッドケースコントロール
研究
De Vera M. A.(Univ. Montreal,Montreal/Canada),ほか
Br. J. Clin. Pharmacol. 74(2)362-369/(2012.8)
【目的】妊娠中の抗うつ剤使用が妊娠高血圧症候群の発症リスクに及ぼす影響を評価した。
【方法】Quebec Pregnancy Registry を使用し,子癇前症の有無に関わらず,妊娠前の高
血圧既往歴がない妊娠高血圧症候群患者 1216 例を対象にネステッドケースコントロール
研究を実施した。各症例につき対照 10 例をマッチングさせた。
【結果】妊娠期間中に抗うつ剤を使用したのは症例群 45 例(3.7%)であったのに対し,
対照群では 300 例(2.5%)であった(オッズ比 1.52,95%信頼区間 1.10~2.09)。潜在的
交絡因子を調整後,妊娠中の抗うつ剤使用により妊娠高血圧症候群の発症リスクは有意に
増加した(1.53,1.01~2.33)。層別解析の結果,選択的セロトニン再取り込み阻害剤(1.60,
1.00~2.55),特に paroxetine(1.81,1.02~3.23)単独の使用により妊娠高血圧症候群
の発症リスクが有意に増加した。
【結論】妊娠中に抗うつ剤を使用した女性は,子癇前症の有無に関わらず妊娠高血圧症候
群の発症リスクが増加し,それは抑うつまたは不安状態に起因する高血圧発生リスクを上
回るものであった。
参照文献 31
selective-serotonin-reuptake-inhibitor,paroxetine(INN),antidepressants
「JAPIC Pharma Report 海外医薬情報」速報 No.841 掲載
抄録番号 201250747
<参考:代表的な先発医薬品名(保険薬事典より)>
paroxetine,パキシル【選択的セロトニン再取り込み阻害剤】(グラクソ・スミスクライン)
【掲載理由】
・ 掲載基準1-(1)
3
禁煙補助剤 Varenicline に関連した鼻出血およびその他の出血性イベント:ニュージ
ーランドおよびオランダのファーマコビジランスセンターからのケースシリーズ
Harrison-Woolrych M.(Univ. Otago Med. Sch.,Dunedin/New Zealand),ほか
Eur. J. Clin. Pharmacol. 68(7)1065-1072/(2012.7)
【目的・方法】ニュージーランドのファーマコビジランスセンターの Intensive Medicines
Monitoring Programme(IMMP)およびオランダのファーマコビジランスセンターLareb に
おいて特定された,禁煙補助剤 varenicline に関連した鼻出血およびその他の出血性イベ
ントの報告を評価した。WHO Uppsala Monitoring Centre(WHO-UMC)データセットから更
に報告を特定し,因果関係を評価した。
【結果・結論】合計 30 件(IMMP 16 件,Lareb 14 件;高齢者を含む)の出血性イベントが
報告された。鼻出血症例 6 例が特定され,4 例が varenicline の中断で改善したことから
因果関係が示唆された。他に歯肉出血の報告 5 件が特定され,3 例が本剤の中断で改善し
た。投与中に喀血が発生した 1 例は本剤の中断で改善し,再投与で再発した。WHO のデー
タセットでは更に,鼻出血 49 件,喀血 39 件,血小板減少症 21 件の報告が特定された。本
剤に関連した出血性イベントは,セロトニン(5-HT)レセプターシステムとトランスポー
ターとの相互作用による可能性がある。この評価結果から,本剤とこれらの有害事象との
因果関係の可能性が示唆された。
参照文献 31
varenicline(INN)
「JAPIC Pharma Report 海外医薬情報」速報 No.839 掲載
抄録番号 201250696
<参考:代表的な先発医薬品名(保険薬事典より)>
Varenicline,チャンピックス【禁煙補助薬】(ファイザー)
【掲載理由】
・ 掲載基準1-(1)
東京都医薬品情報 №457
(平成24年10月号)
平成24年9月編集
平成24年10月発行
編集委員
阿部 和史(都立府中療育センター薬剤科長)
舩津 久美(都立大塚病院薬剤科長)
右川 浩 (都立多摩総合医療センター薬剤科主任技術員)
濱野 朋子(東京都健康安全研究センター薬事環境科学部医薬品研究科長)
早乙女芳明(東京都健康安全研究センター広域監視部薬事監視指導課長)
垣
弘一(東京都健康安全研究センター企画調整部食品医薬品情報担当課長)
発
東京都健康安全研究センター企画調整部健康危機管理情報課
郵便番号169-0073 東京都新宿区百人町3丁目24番1号
電話(ダイヤルイン) 03(3363)3472
行