Ⅲ 調査結果の 調査結果の考察 1 男女平等 性別役割分担意識(問1)については、前回調査(平成 17 年)と前々回調査(平成 13 年)の 間ではあまり変化がなかったのに対し、今回調査では「あまり同感しない」 「同感しない」をあわ せた性別役割分担に否定的な割合(否定派)が 44.6%と前々回調査(平成 13 年)から 4.0 ポイ ント低くなっている。「同感する」「ある程度同感する」をあわせた性別役割分担に賛成する割合 (肯定派)については、これまでの調査と同様、女性より男性で高いが、男女間における差は前 回調査(平成 17 年)の 16.6 ポイントから今回調査では 4.6 ポイントに縮まっている。それは、 男性で『肯定派』が 7.4 ポイント減少していることもあるが、女性では反対にその割合が 4.6 ポ イント増加していることも影響を与えている。また、就業形態別にみると「二人ともフルタイム で働いている」家庭で『否定派』の割合が 54.7%と高く、二人の働く時間が同等であるほど性別 役割分担意識に否定的になる傾向があると考えられる。 男女の地位の平等感(問2)については、前回調査(平成 17 年)同様、 「学校教育の場」で「平 等である」が 58.4%と高く、8項目の中で最も男女の地位が平等であると考えられている。一方、 「社会通念・慣習・しきたりなど」では「平等である」が 10.3%と、前回調査(平成 17 年)か らは増加しているものの依然として低い割合となっている。福岡県調査、全国調査と比較して差 がみられるのは、 「家庭生活」 「地域(自治会)活動・社会活動の場」 「社会通念・慣習・しきたり など」であり、それぞれ「平等である」の割合が福岡県調査、全国調査を下回り、 「どちらかとい えば男性の方が優遇されている」 「男性の方が優遇されている」をあわせた『男性が優遇』の割合 が上回る結果となっている。さらに、すべての項目において男性より女性で『男性が優遇』と回 答している割合が高く、なかでも男女間の差が大きいのは「家庭生活」であり、その他、 「地域(自 治会)活動・社会活動の場」「法律や制度のうえ」 「社会全体」でも差が目立っている。 女性の優先枠(問3)については、 「賛成」「どちらかといえば賛成」をあわせた『賛成派』は 62.6%と前回調査(平成 17 年)を 4.9 ポイント上回っており、前回調査(平成 17 年)同様、男 性より女性で『賛成派』の割合が高くなっている。 ■ 調査結果をふまえた 調査結果をふまえた今後 をふまえた今後の 今後の課題 ・依然として性別による固定的な役割分担意識は残っており、女性ではその意識が強まっている。 就労環境等さまざまな要因が考えられることから、今後はそれらへの対応が求められる。 ・ 「家庭生活」 「地域(自治会)活動・社会活動の場」 「社会通念・慣習・しきたり」など身近な場 において、男女の地位が平等でないとの意見が多いことから、あらゆる場を通じた意識啓発や 日常生活など身近なところでの男女共同参画の浸透を図っていく必要がある。 ・女性の優先枠に対しては、賛成派の意見が多いことから、今後とも女性の能力を積極的に活用 できる環境づくりに努める必要がある。 114 2 結婚や 結婚や家庭生活について 家庭生活について 結婚、家庭、離婚についての考え方(問4)については、前回調査(平成 17 年)とほぼ同様の 傾向がみられるが、 「結婚しても相手に満足できないときは離婚すればよい」については「賛成」 「どちらかといえば賛成」をあわせた『賛成派』の割合が 47.1%となっており、前回調査(平成 17 年)と聞き方に違いはあるものの、離婚に対して賛成する割合が低くなっている。また、「結 婚しても必ずしも子どもをもつ必要はない」に対する『賛成派』の割合は、全国調査を 19.0 ポイ ント上回っており、子どもをもたない夫婦への容認度は高いという本市の傾向は前回調査(平成 17 年)から継続しているようである。さらに、「結婚は個人の自由であるから、結婚してもしな くてもどちらでもよい」 「結婚しても必ずしも子どもをもつ必要はない」をはじめとする、すべて の項目において、60 歳代・70 歳以上で『賛成派』の割合が低く、若い世代ほど高い傾向にあるこ とから、結婚、家庭、離婚に対する考え方は世代によって差がみられる結果となった。 夫婦別姓(問5)については、 「夫婦は同じ姓を名乗る方がよい」が 54.1%と半数を超え、前 回調査(平成 17 年)からも 5.3 ポイント増加している。女性より男性で夫婦同姓を支持する割合 が高くなっているが、30 歳代・40 歳代の女性と 20 歳代の男性では「夫婦は、同じ姓を名乗るか、 別々の性を名乗るか、選択できる方がよい」が約6割と高い。 家庭内の役割分担(問6)については、 「炊事、掃除、洗濯などの家事」では妻中心、 「家計を 支える(生活費を稼ぐ) 」では夫中心の傾向がうかがえ、 「炊事、掃除、洗濯などの家事」につい ては変えたいと思う家庭内の仕事としても上位にあがっている。また、 「土地・家屋の購入の決定」 や「子どもの教育方針や進学目標の決定」、「家庭の問題における最終的な決定」については、男 女で同程度に分担している割合が比較的高く、若い世代でその割合は高い。 ■ 調査結果をふまえた 調査結果をふまえた今後 をふまえた今後の 今後の課題 ・世代によって、結婚や家庭生活に対する考え方は変化しており、家庭内の仕事も男女で分担し つつある状況もみられるものの、炊事などの家事は妻、生活費を稼ぐのは夫というように、性 別役割分担意識にもとづく仕事の分担が依然として残されている。このことから、それぞれの 家庭の状況に応じて仕事の役割分担を進めることができるよう、夫婦間の話し合いによる役割 分担の決定など家庭における男女共同参画の推進に取り組むことが求められる。 115 3 子育てや 子育てや教育 てや教育について 教育について 子育てについての考え方(問7)については、前回調査(平成 17 年)と同じような傾向がみら れ、大多数が女らしさや男らしさを大事にしながら、女の子、男の子にかかわらず、職業人とし ての経済的自立や炊事、掃除、洗濯などの仕方を身につけることを望んでいる。しかし、 「男の子 も女の子も炊事、掃除、洗濯などの仕方を身につけさせる」では、「賛成」 「どちらかといえば賛 成」をあわせた『賛成派』の割合が女性より男性で低く、特に 50 歳代以上の年代で低くなってい る。また、 「男の子は男らしく、女の子は女らしく育てる」では若い世代ほど「賛成」の割合が低 く、性別や年代によって違いがみられる。 学校教育において力を入れるべき取り組み(問8) については、 「生活指導や進路指導において、 男女の区別なく能力を生かせるように配慮をする」が約6割と最も高く、また、 「男女平等の意識 を育てる授業をする」についても前回調査(平成 17 年)から高くなっている。教育プログラムの 作成や相談体制などの環境整備が求められていた前回調査(平成 17 年)から、今回調査では性別 にかかわらずそれぞれが能力を発揮できるような指導、子どもたち自身の男女平等意識を育む教 育へとニーズが変化している。 ■ 調査結果をふまえた 調査結果をふまえた今後 をふまえた今後の 今後の課題 ・男女共同参画を進めるため、ニーズに応じた学校教育における取り組みを検討していくことが 求められる。 4 就労・ 就労・働き方について 「女性が職業をもつこと」への考え方(問9)については、 「結婚や出産にかかわらず、職業は 一生もち続けた方がよい」が 39.3%と最も高く、次いで「子どもができたら職業をやめ、大きく なったら再び職業をもつ方がよい」が 35.9%となっている。 「子どもができたら職業をやめ、大 きくなったら再び職業をもつ方がよい」の割合は前回調査(平成 17 年)から減少し、今回調査で は職業を継続することと一時中断し再就職することの割合が逆転している。 女性が職業をもち続けるうえでさまたげになっていること(問 10)については、育児や介護の ためのサービス・施設等が不十分であることとあわせ、家事や育児などへの家族の協力が不十分 であることが上位にあがっている。家事や育児などへの家族の協力が不十分であることについて は、特に女性で割合が高く、前述の家庭内の役割分担において家事の大部分を妻が担っている現 状からも、その負担の軽減は女性が職業を継続するうえで重要なものであると考えられる。 「仕事」 「家庭生活」 「地域・個人の生活」の優先度(問 11)については、 「 “仕事”と“家庭生 活”と“地域・個人の生活”をともに優先」を理想としながらも、実際は女性では家庭生活、男 性では仕事を優先しており、理想と現実では差があることがうかがえる。 116 職業をもっている人の仕事内容(問 12-1)については、性別による違いがみられ、女性では「専 門技術職」 「販売・サービス業」 、男性では「技能・労務・作業職」が多くなっている。概ね前回 調査(平成 17 年)と同様の傾向であったが、 「専門技術職」については前回調査(平成 17 年)で は女性より男性での割合が高かったものの、今回調査では女性の方が 8.8 ポイント高い結果とな った。職種により男女の垣根がなくなりつつあることがうかがえる一方、 「管理的職業」について は依然として男性の割合が高く、就労の場における男女共同参画にはいまだ課題があるといえる。 さらに、就業形態(問 12-2)についても、 「正社員・正職員」では男性、 「パートタイマー、アル バイト」では女性の割合が高く、男女間の差は大きい。 「パートタイマー、アルバイト」について は、30 歳代~50 歳代の女性で高いことから、結婚・出産・子育て期だけでなく、その後も「正社 員・正職員」として復帰している人が少ないことがうかがえる。 職業をもっていない人の仕事をやめたきっかけ(問 12-4)については、男性では「定年になっ たため」が高い一方で、女性では「結婚やその準備のため」 「出産や育児のため」を理由とする人 が多い。女性が一生職業をもち続けることへの支持は高いが、結婚や出産を機に離職をする女性 は多いようである。 育児休業や介護休業の利用(問 13)については、どちらも「利用したい」が4割以上と高くな っている。しかし、男性では「利用したいが利用できそうにないと思う」の割合も女性と比較し て高く、その理由としては「職場に休める雰囲気がないから」 「経済的に生活が成り立たなくなる から」との回答が多い。仕事と家庭を両立していくために必要な条件(問 14)においても、「代 替要員の確保など、育児休業・介護休業制度を利用できる職場環境をつくること」が 34.4%と最 も高いことから、育児休業・介護休業制度の取得に向けた環境整備は今後対応すべき一つの課題 であるといえる。また、仕事と家庭の両立のための条件として、ここでも女性では家族や周囲の 理解・協力を求める割合が高いことから、就労を継続していくためには家庭での協力が不可欠で あると考えられる。 ■ 調査結果をふまえた 調査結果をふまえた今後 をふまえた今後の 今後の課題 ・就労の継続を希望する人が結婚・出産を機に離職を強いられることがないよう、育児・介護な どの各種サービスの充実や、家庭における家族の理解や協力を促すための取り組みを進める必 要がある。 ・女性管理職の積極的登用や、育児休業・介護休業取得のための職場環境づくりなど、働く場に おける男女共同参画、ワーク・ライフ・バランスの推進を図ることが求められる。 117 5 地域活動などへの 地域活動などへの参加 などへの参加・ 参加・参画について 参画について 現在参加している地域活動(問 15)については、自治会や消防団などの防災活動への参加は男 性が中心となっており、活動によって男女の参加に差があることがうかがえる。 女性が地域の役職に推薦されたときの対応(問 16)については、どの項目においても「断る(断 ることをすすめる) 」の割合が高く、なかでも「自治会長(区長) 」でその割合が高い。推薦を断 る理由としては、役職の種類にかかわらず「役職につく知識や経験がないから」が最も高く、次 いで「家事・育児や介護に支障がでるから」と続く。また、すべての項目において「引き受ける (引き受けることをすすめる) 」の割合は女性より男性で高く、 「断る(断ることをすすめる)」の 割合は女性で高くなっていることから、女性の中には自らの意思で断るとの判断をしている人も 多いことがうかがえる。すべての項目において 20 歳代の男性で「引き受ける(引き受けることを すすめる) 」の割合が他の年代と比較して高くなっているが、これは前回調査(平成 17 年)でも 同様の傾向がみられている。その要因としては、役職を断る理由として家事や育児など家庭のこ とに支障がでるとの意見が多い若い世代のなかで、それが該当しない未婚者が 20 歳代の男性では 多いこと、また、それだけでなく役職への積極性も比較的高いことが考えられる。 地域における男女共同参画の状況(問 17)については、男女ともに「わからない」が高い割合 を示しているが、女性では「女性がお茶くみや準備・片づけなどを担当することになっている」、 男性では「男女不平等はない」 「地域の活動には女性の方が積極的である」がそれぞれと比較して 高く、男女間で捉え方・感じ方に違いがあることがうかがえる。 ■ 調査結果をふまえた 調査結果をふまえた今後 をふまえた今後の 今後の課題 ・家族の理解・協力やだれもが参加しやすい環境づくりなど、家庭や地域において、地域活動へ の積極的参加を促すための意識・体制をつくっていく必要がある。 ・地域活動への参加は個人の積極性も重要となることから、意識改革に向けた啓発や活動内容の 魅力向上への取り組みなどを進めることが求められる。 118 6 暴力などの 暴力などの人権侵害 などの人権侵害について 人権侵害について 配偶者等からの暴力(問 18)については、身体的暴力、精神的暴力、性的暴力、経済的・社会 的暴力それぞれの区分における計 13 項目のうち、 1つでも暴力を経験している割合は 24.9%と、 前回調査(平成 17 年)の 26.8%からはわずかに減少しているものの、依然として2割以上の人 が暴力を受けた経験がある状況となっている。被害経験が最も多いのは、前回調査(平成 17 年) と同様、精神的暴力であり、特に「何を言っても無視し続ける」 「子どもや他人の前で侮辱したり、 ばかにしたりする」 「大声でどなる」では約1割が経験があると回答している。これについては、 女性だけでなく男性でも経験がみられるが、身体的暴力については女性の経験者が多い。 暴力を受けた際の相談(問 18-1、18-2)については、経験があると回答した人のうち女性の約 2割、男性の約1割が相談しており、友人・知人・親族など身近な人が主な相談先となっている。 相談をしなかった人の理由(問 18-3)については、 「相談するほどのことではないと思ったから」 が 55.1%、 「自分にも悪いところがあると思ったから」が 30.8%と高くなっている。 男女間における暴力を防止するために必要なこと(問 19)については、全国調査と違いがみら れ、全国調査では「家庭で保護者が子どもに対し、暴力を防止するための教育を行う」が 67.1% と最も高いが、本市では「被害者が早期に相談できるように、身近な相談窓口を増やす」が 66.2% と最も高くなっている。それ以外の項目については4割以下にとどまっており、本市においては 身近な相談窓口の整備・充実が求められていることがうかがえる。 ■ 調査結果をふまえた 調査結果をふまえた今後 をふまえた今後の 今後の課題 ・暴力防止に向けた啓発活動・教育に取り組むとともに、配偶者等からの暴力を受けた人が早期 に相談できるよう、身近な相談先の設置や相談体制の充実、相談先の周知などに取り組む必要 がある。 7 男女共同参画社会の 男女共同参画社会の実現について 実現について 男女共同参画にかかわることがらの認知度(問 20)については、ほとんどの項目において前回 調査(平成 17 年)から認知度が下がっており、全国調査と比較しても多くの項目において本市の 認知度が下回っている。特に「男女共同参画社会」や「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バ ランス) 」については全国調査を 20 ポイント以上下回る認知度となっている。また、 「福津市男女 がともに歩むまちづくり基本条例」や「男女共同参画宣言都市・ふくつ」についても認知度は約 2割にとどまる結果となった。 男女共同参画社会の実現のために市が推進すべき施策(問 21)については、「育児休業や介護 休業制度の普及啓発をすすめる」が 34.7%と最も高く、次いで「男性も女性と同様に家事や育児、 介護などを担うことができるような啓発活動を行う」が 32.5%となっている。就労・働き方の分 野においても同様の意見が求められていることから、男女共同参画社会の実現に向けて、それら の取り組みを強化する必要がある。 119 ■ 調査結果をふまえた 調査結果をふまえた今後 をふまえた今後の 今後の課題 ・ 「福津市男女がともに歩むまちづくり基本条例」をはじめ男女共同参画にかかわることがらにつ いて、あらゆる年代に向けて周知を行っていくとともに、男女共同参画を真に浸透させていく ための工夫や具体的な取り組みを進める必要がある。 ・育児休業・介護休業制度の普及啓発や、家庭における仕事の分担・協力を促すための取り組み など、企業等と連携を図りながら男女共同参画社会の実現に向けて取り組んでいくことが求め られる。 120
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