日本財団補助事業

PSC って何ですか?
人と海と、安全な航海のために
財団法人
東京エムオウユウ事務局
1
PSC って何ですか?
PSC
Port State
PSC とは、ポート・ステート・コントロール(
とは、ポート・ステート・コントロール(Port
State Control=PSC)の
Control=PSC)の
略で、入港した外国籍船に対して、船舶の構造・設備及び海洋汚染防止機器並
略で、入港した外国籍船に対して、船舶の構造・設備及び海洋汚染防止機器並
びに船員の資格要件等が国際条約に適合しているかどうかについて行われる検
びに船員の資格要件等が国際条約に適合しているかどうかについて行われる検
査のことです。
査のことです。
PSC の必要性と目的は?
海上における人命の安全や海洋環境の保全を図るため、船舶の構造・設備と海洋汚染
防止機器及び船員の資格要件等については、SOLAS 条約(海上人命安全条約)、MARPOL
条約(海洋汚染防止条約)、STCW 条約(船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関
する条約)など IMO(国際海事機関注)や ILO(国際労働機関注)において採択された
国際条約で定められています。
旗国としての義務
寄港国の権利
自国に船籍のある船舶(自国籍船)に
しかし、現実には、船舶の条約不適合
対しては、国際条約の規定に従って国内
に起因すると考えられる大きな海難事故
法令を整備し、これに基き船舶の構造・
や海洋汚染が後を絶たない状況です。海
設備等に関する検査を行い、船員の資格
上における人命の安全や海洋環境保全が
要件をチェックすることになっています。
一層強く叫ばれる今日、こうした条約不
これが締約国の旗国としての義務です。
適合船(サブスタンダード船)をなくす
すべての締約国が自国籍船に対する検
ことが喫緊の課題となっているのです。
査やチェックを十分に行い、かつ、船主・
運航者がこれらに従っているならば、締
約国に属するすべての船舶は条約の規定
に適合しているはずです。
このためには、まず第一に、締約国自身による自国の海事行政の強化を図らなけ
ればならないのは当然ですが、これを補完することになる第二の方策として、条約不適
合船を寄港国において外国からの指摘により是正させることがきわめて有効であると考
えられています。これが条約上認められている「寄港国による監督(PSC)」です。
2
海
海事
事関
関係
係国
国際
際条
条約
約
締約国
締約国
A
B
旗国としての
寄港国として
監督
の監督(PSC)
A 国籍船
A 国籍船
B 国の港
IMO(国際海事機関):国連の専門機関のひとつ。海運関係の技術的規制・慣行の国際的
統一を目的とし、多くの海事関係条約の締結・改正の場となっている。本部ロンドン。
ILO(国際労働機関):国連の専門機関のひとつ。労働立法や適正な労働時間、賃金、労
働者の保健、衛生に関する勧告が主な活動だが、船員労働関係の条約の締結の場とも
なっている。本部ジュネーブ。
3
東京 MOU って何ですか?
PSC は海事関係国際条約で定められている締約国の権利ですから、それぞれ
の締約国が単独で行うことができます。しかし船舶は国際間を移動するのが常
ですし、海洋汚染防止への取り組みは一国だけでは不十分であることを考えれ
ば、近隣の地域ぐるみで互いに連絡を取りながら実施することの意義はきわめ
て大きいといえます。
アジア太平洋地域における PSC の協力体制を確立するため、1993 年 12 月東
京 に お い て 「 ア ジ ア 太 平 洋 地 域 に お け る PSC の 協 力 体 制 に 関 す る 覚 書
(Memorandum of Understanding on Port State Control in the Asia-Pacific
Region)」が関係国の間で合意され、1994 年 4 月より、どの国からも独立した
非営利の事務局を東京に置き活動を開始しています。この覚書は東京で合意さ
れたので「東京 MOU」と略称されています。
¾ 東京 MOU の参加国は?
「東京 MOU」に基き PSC 実施の協調体制に参加して
いる国は、アジア太平洋地域の 18 カ国(地域)です。
¾ 東京 MOU のめざすもの
「東京 MOU」の参加国は PSC 委員会の場を通じて、
検査、改善命令及び航行停止をはじめとする PSC に関する
手続と実施の調和と促進を図ります。
東京 MOU の活動
参照
¾ 東京 MOU 事務局は、
事務センターとしての業務を行うほか、
① PSC 委員会を開催・運営し、
② 各参加国の PSC 検査官を対象に各種のトレーニングや
セミナーを開催し、検査官の質の向上と検査手順の周知を
図ります。
③ ロシアのウラジオストックにデータベースセンター
(APCIS)を置き、この情報システムを活用し、各参加国
間および他の MOU との検査情報等の情報交換を行ってい
ます。
4
東
東京
京M
MO
OU
Uの
の概
概念
念図
図
オブザーバー
メンバー国
ILO
z オーストラリア
z マレーシア
z ブルネイ
z カナダ
z ニュージーランド
z 朝鮮民主主義 人
z チリ
z パプアニューギニア
z 中国
z フィリピン
z マカオ
ESCAP
z フィジー
z ロシア
z ソロモン諸島
黒海 MOU
z 香港
z シンガポール
z アメリカ合衆国
インド洋 MOU
z インドネシア
z タイ
パリ MOU
z 日本
z バヌアツ
ヴィニャデルマ
z 韓国
z ベトナム
ール協定
民共和国
IMO
参加
データベース交換
検査履歴取得
取り決め
参加
ポ
ポー
ート
ト・・ス
ステ
テー
ート
ト・・コ
コン
ント
トロ
ロー
ール
ル委
委員
員会
会
東京 MOU 事務局
検査結果
報告
PSC 実施
データベースセンター
(APCIS)
SHIPS
旗国 船主 船級協会注
5
通報・連絡
通報・連絡
((PPSSC
CC
C))
PSC の目的と仕組み
ポート・ステート・コントロール(PSC)の目的は、本来、責任ある旗国の監
督の下に関係条約に適合した状態で運航すべき船舶が旗国の監督不足により条
約不適合の状態にある船(サブスタンダード船)を、寄港国の監督により条約
に合致した状態にさせることです。
このため、国際海事機関(IMO)や国際労働機関(ILO)では、各条約の締約
国が実施する PSC について、標準的な手順(IMO 総会決議 A.787(19))を規定
しています。
z サブスタンダード船横行の責任
いうまでもなく条約は履行が遵守されてこそ意味があり、一般
には締約国各々が国内法をもって自国の国民、財産、海域に対し
てその責任を負うことになっていることは周知のとおりです。こ
の内、自国の船員・法人と船舶に対しての監督のためには、国内
法令の整備、行政機構の整備、船級協会等の政府代行機関の認証、
海難事故調査体制の確立、船員の訓練と資格証明等がいわゆる「旗
国としての権利・義務」であり、自国の港湾にある外国籍船舶に
対しての監督が「寄港国としての権利・義務」といえましょう。
IMO は条約要件を履行するため旗国がとるべき措置として、1993
年に決議 A.740(18)「当面のガイドライン」を採択しました。これ
は「旗国としての権利・義務」を遵守し、多くの条約と付随する
規則類に適合した状態で自国籍の商船隊を保有・維持をすること
を求めていますが、実際は、そのガイドラインにそった十分な組
織と能力を有する締約国は決して多くはありません。これらの旗
国は、いわば条約の履行に失敗した「サブスタンダード旗国」で
あり、ここにサブスタンダード船(サブスタンダード船級協会、
サブスタンダード船員を含む)が発生する淵源があります。
☛ 一口メモ
具体的な検査項目と欠陥の例です。
国際人命安全条約関連:①、救命器具、生存艇など数量は十分か、劣化はないか。
②火災探知機、消火設備、緊急遮断装置などを備えているか、劣化はないか。
満載喫水線条約関連:①閉鎖装置、水密・風雨密扉など適切に配置されているか。
②過積載はないか。
海洋汚染防止条約関連:①油水分離装置、油分排出監視装置など適切に配備されているか。
②承認されていない排出バイパス管はないか。
6
— 旗国と船級協会
船級協会:船体保険付保などの
殆どの旗国は、条約を確実に履行すべき「旗国」のとる
資料に供するため、独自の規則
べき処置についての一部または全部をいわゆる船級協会
をもって船主に対し船舶の構
に権限を委任しているのが通例です。この場合、IMO の決
造、設備に関する検査を行い、
議 A.739(18)「管海官庁の代行機関の認定に関するガイド
証書を発行するサービスを行
ライン」および決議 A.789(19)「認定される管海官庁の代
う団体。政府の委任を受けて国
行機関にかかわる検査と証書発給機能に関する仕様書」を
際条約にかかる検査や証書発
満足していなくてはなりません。後者は特に、管海官庁の
給 を 行 う 場 合 に は 、 RO
代行機関を認定する際の最低限の執行能力基準を定めて
(Recognized
います。しかしながら、世界には約 60 のいわゆる船級協
Organization)
会があり、この中には、管海官庁の代行として定められた
と呼びます。
業務を効果的に執行するための技能と資質を持たないも
のが多数存在するのが現状です。
PSCの根拠となる条約
.1
1966年の国際満載喫水線に関する国際条約
.2
1966年の国際満載喫水線に関する1988年の議定書
.3
1974年の海上における人命安全のための国際条約
.4
1974年の海上人命安全条約に関する1978年の議定書
.5
1974年の海上人命安全条約に関する1988年の議定書
.6
1973年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する1978年の議定書
.7
1978年の船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約
.8
1972年の海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約
.9 1969年の船舶のトン数測度に関する国際条約
.10 1976年の商船の最低基準に関する条約(ILO条約第147号)
PSC の手順ができるまで
国連貿易開発会議(UNCTAD)や経済協力開発機構(OECD)は、国際海運の健全な競争力確
保のという観点から、サブスタンダード船問題を便宜置籍船による問題として IMO に投げかけ
たのですが、IMO としては船籍にかかわりなく、サブスタンダード船の撲滅に関与すべきだと
の見解のもと、PSC のための具体的手続きとして、1975 年に決議 A.321(IX)「船舶の監督手続
き」を採択しました。これが「サブスタンダード船」への最初の取組みです。
この後、PSC は 1993 年の決議 A.742(18)「船舶の安全と汚染防止にかかる操作要件の監督手
続き」により、船舶の配置や設備のみならず、操作要件をカバーするまで拡大、明示されました。
現在では、これらの監督手続きは 1995 年の決議 A.787(19)「PSC の手順」として集大成され、
1999 年に決議 A.882(21)で改正され現在に至っており、PSC の実務上の基本文書となっていま
す。
7
PSC の実際の流れ
PSC は、IMO の.787(19)「PSC の手順」に沿って行われます。
—
検査対象船の選定
入港してくる外国船のなかから、過去の検査履歴や国籍、船種、船齢などをデータベー
ス(APCIS)で検索し、基準に照らして検査する船を選定します。
—
初期検査
船体の概観、船内の様子を観察しながら乗船して、船長から積荷や航海の状況を聴取し、
当該船舶が必要とする証書類を検査します。
—
詳細な検査
船が有効な証書を所持していない場合、または、船内を巡視して観察した結果、PSC
検査官(PSCO)が、船舶または船舶の設備の状態が証書の個々の項目に合致していない
こと、特に、船長または乗組員が非常時の際の救命や消防設備の操作に習熟していないの
ではないか、あるいは適切な資格を持った船員が乗組んでいないのではないかと判断した
場合には、より詳細な検査が実施されます。
—
検査の中断
詳細な検査の結果をもとに、乗組員の状態・船舶及び船舶の設備の全体的な状態が、明
らかにサブスタンダード船と認められる場合には、PSCO は検査を中断し、旗国かその代
理の船級協会(RO)に是正を求めます。
—
拘留
欠陥の具体例は
6ページ
一口メモ参照
安全、健康又は環境に対して明らかに危険となる欠陥が存在する場合は、この危険が除
去されるまで、船舶の出航は許可されません。ただし、その港で修理などが不可能な場合
には、最低限の安全を確保した上で修理港への出港が認められます。
船が拘留処分とされた場合には、主管庁は、速やかに旗国の領事又は旗国政府に通知し
ます。証書の発給機関が船級協会(RO)である場合は、RO にも通知されます。
—
拘留の解除
欠陥が是正されたことが確認され次第、出航が許可され、旗国政府あるいは RO に通知
されます。
—
報告
検査の結果は、拘留の有無にかかわらず、すべての欠陥の種類、とった措置について
データベースセンターの APCIS に報告され、即時にインターネット上に公開されます。
8
PSC 検査の流れ
査の流れ
初期検査
書類審査
有効な証書か?
Yes
不審な点はあるか?
No
Yes
詳細検査
出航許可
詳細検査
欠陥があるか?
No
No
Yes
検査中断
全体的な船の状態が
検査中断
Yes
サブスタンダードか?
No
欠陥は安全・健康・環境
欠陥を記録
Yes
に危険な拘留欠陥か?
No
欠陥是正
欠陥是正
欠陥は是正されたか?
Yes
出航許可
No
出航停止(拘留)
船舶航行停止(拘留)
危険な欠陥は検査港で
最寄の修理工場・修理港
No
へ出航許可
是正可能か?
Yes
欠陥是正
欠陥是正
すべての欠陥は是正されたか?
No
9
Yes
出航許可
東京 MOU の活動
東京MOU
MOUはアジア太平洋地域の各国の海事当局による
はアジア太平洋地域の各国の海事当局によるPSC
PSCの有効な実施と調和
の有効な実施と調
東京
和のための組織です。各国の代表により構成されるポートステートコントロー
のための組織です。各国の代表により構成されるポート・ステート・コントロー
ル委員会(PSCC)が開かれ、各国の実施したPSC
PSCの実績を踏まえながら、より効
の実績を踏まえながら、より
ル委員会(PSCC)が開かれ、各国の実施した
効果的で調和のとれた
の強化策、PSC
検査官の教育・訓練などさまざま方策
果的で調和のとれた
PSCPSC
の強化策、PSC
検査官の教育・訓練などさまざま方策を
を検討し実施しています。
検討し実施しています。
¾ PSCC 会議
約 9 ヶ月ごとにメンバー各国の代表により、PSC の手順、
通報・連絡体制、新しい条約・規則についての PSC 実施
方法、目標検査率の設定、検査船舶の選定基準、拘留基準、
他の MOU との協調策などを検討し決議します。
¾ データベースマネジャー(DBM)会議
PSC の効果的実施には、事前の検査履歴の掌握、検査後
の結果報告及び未是正欠陥の追跡などが欠かせません。こ
PSCC14 議長
のためにはデータベースシステム(APCIS)の構築・運用
マンセル氏
が重要な役割を担います。PSCC 会議の開催に合わせて、各
国のデータベース・マネジャーにより、検査結果報告手順、
各種コードのあり方、検査履歴の検索、統計処理などが議
論されています。
¾ PSC 検査実績の取り纏め・解析・公表
2004 年におけるメンバー各国による PSC は、21,400 件
実施され、このうち約 1,400 件が航行停止(拘留)処分と
されています。航行停止処分の欠陥を含めすべての欠陥総
数は約 84,000 件に上っており、各国の検査官はこれらに
対して是正を指導し、改善させています。
DBM 議長
東京 MOU での PSC の検査結果は、各検査毎にリアルタイ
リンゼー氏
ムでインターネット(www.tokyo-mou.org)で公表すると
ともに、毎月の航行停止処分船リストを掲載しています。
また、各種の統計・解析は毎年発行する「年次報告書」に
掲載しています。
10
(第 14 回 PSCC 会議 2004 年 11 月 上海)
東京 MOU の PSCC 会議の開催
PSCC01
1994 年 4 月
北京
PSCC09
2000 年 11 月
ナディ
PSCC02
1995 年 1 月
クアラルンプール
PSCC10
2001 年 10 月
東京
PSCC03
1995 年 12 月
香港
PSCC11
2002 年 6 月
マニラ
PSCC04
1996 年 9-10 月 オークランド
PSCC12
2003 年 3 月
レニャーカ
PSCC05
1997 年 8 月
ウラジオストック
PSCC13
2004 年 2 月
ポートヴィラ
PSCC06
1998 年 6 月
ソウル
PSCC14
2004 年 11 月
上海
PSCC07
1999 年 4 月
ケアンズ
PSCC15
2005 年 11 月
バンコク
PSCC08
2000 年 2 月
シンガポール
PSCC16
2006 年 9 月
ビクトリア
東京MOUの検査実績
2,000
25,000
検査件数
拘留件数(右目盛り)
14,545 14,931
15,000
12,243
検査件数
10,000
19,588
8,000
12,957
1,061
17,379 1,349
16,034
1,071
1,307
1,101
830
8,834
1,600
1,400
1,200
1,000
800
689
600
524
5,000
400
282
200
0
0
1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005
11
拘留件数
20,000
1,709
1,428 1,097
20,124 21,400 21,058 1,800
■
検査船舶の選定基準
航海の安全と海洋汚染防止についての危険度から、PSC がターゲットとする船を船種(客
船、タンカーなど)によって優先度を示す方法があります。これに加え、条約不適合の責任
を問う立場から、旗国、船級協会などの分類ごとに過去の検査実績から判断して欠陥の多か
った旗国名、船級協会名などに狙いを付ける方法が採用されてきています。
今後はこれら船舶の属性ごとの検査履歴を総合した指標として、個々の船舶について「ター
ゲットファクター」を計算して付与し、ターゲットファクターの大きい順に検査船舶を選定
することとしています。
— 一斉集中検査(CIC)の実施
ISM コード:国際人
PSCC 会議での合意に基づき、通常の PSC に加えて、特定
命安全条約のなか
のテーマについて重点的に一定期間、各国一斉に行う検査
の船舶管理会社に
(CIC)を適宜実施しています。これまで、ISM コード注の
ついての規定
導入期に合わせて ISM コードの履行に関する CIC、GMDSS 注
の船上設備に関する CIC、バルクキャリアーの安全に関す
る CIC、ISPS コード注の履行に関する CIC などを実施し、
そのつどプレス発表を行っています。
GMDSS:国際人命
安全条約のなか
の全世界的な海
上遭難・安全制度
¾ 拘留審査会の運用
PSC による船舶の航行停止処分は船長、船主、運航者に
とっては重大関心事であることから、条約上も船側からの
異議申し立ての権利が明記されていますが、一般にはなか
なか法廷に持ち込むまでには到っていません。航行停止処
分を発した寄港国に対し正式な異議申し立てを行う前に、
寄港国と旗国あるいはその権限代行船級協会との間で合
ISPS コード:
意が得られることを期待して、東京 MOU では拘留審査会制
国際人命安全
度を設けています。
条約のなかの
船舶・港湾施
設の保安のた
めの規則
z パリ MOU など他の MOU との協調促進
世界各地域の MOU との連携の促進をはかるため、パリ
MOU、黒海 MOU、などとは、PSC 検査データベースの共有化、
CIC の共同実施などが実現されています。また、パリ MOU
とは、両 MOU 各国の PSC 担当大臣会議を開き、両 MOU を中
心とするグローバルな PSC 発展のための行動指針(大臣宣
言)を策定しています。
PSC の地域協力
体制参照
12
旗国別船舶拘留率 (2005年)
22.67
モンゴリア
21.56
インドネシア
20.19
朝鮮民主主義人民共和国
18.24
ベトナム
14.72
カンボディア
旗国
グルジア
13.04
台湾
12.93
ツバルー
11.27
ミャンマー
10.81
10.77
ベリーゼ
7.96
タイ
マレーシア
7.53
インド
7.06
6.94
トルコ
拘留率が平均値以上の旗
国
6.28
セントヴィンセント・グラナディン
5.93
アイルオブマン(UK)
5.33
イタリア
0
10
20
30
40
50
60
拘留率(%)
東京 MOU のターゲットファクター値の算定方式
(毎日更新されるデータベースを基にそのつど再計算される。)
要素
船齢
ターゲットファクター値
要素
5 年以下:0
航行停止処
過去 4 回の検査において
6-10 年:5
分
1 回:15
11-15 年:10
16-20 年:10+
20 年超:15+
船種
ターゲットファクター値
2 回:30
15 年を超える年数毎に 1
3 回:60
20 年を超える年数毎に 2
船齢 15 年以上のタンカー、ケミカル、バルク、
4 回:100
船級協会
IACS 以外:10
残留欠陥数
直近の検査における残留欠
Ro-Ro、一般貨物船、冷凍貨物船、Ro-Ro 客船、客
船:4
その他:0
旗国
3 年間の平均航行停止処分率:全体の平均値を超え
る%の 1 ポイント毎に+1
欠陥数
陥数:欠陥毎に 2
過去 4 回の検査で指摘された欠陥数:欠陥毎に 0.6
検査間隔
6-12 ヶ月:3
12-24 ヶ月:6
24 ヶ月超及び東京 MOU で
未検査(含む新造船):50
13
¾ 域内検査官資質向上プログラム
東京 MOU ではメンバーの多様性を考慮して、検査官の資
質向上に特別の重点を置いています。
(1)PSC 検査官セミナーの開催
海事関係国際条約・規則は毎年何らかの改定が行われ、
これらに対応する PSC の手続きが PSCC 会議で合意されま
す。各国の検査官が PSC の実施に当たってこれらの手続き
を適正かつ統一的に運用できるよう、毎年セミナーを開催
しています。
(2)PSC 検査官養成プログラムの実施
PSC が十分な知識と能力を持った検査官により実施され
ることは、検査の信頼性を確保するために基本的に重要な
ことです。メンバー国の中には、自国での検査官の養成が
困難な国があるため、東京 MOU 事務局ではこれらの検査官
に対して、各種の訓練コースを設け検査官の質の向上を目
指しています。
(3)PSC 検査官交流プログラムの実施
PSC 検査の調和と公平性を図るには、PSCC 会議での取り
決めに加えて、実際に各国の検査官が他のメンバー国に出
向き PSC に立ち会う機会を得、彼我の検査要領の差異を指
摘し合う検査官交流プログラムを実施しています。
域内検査官資質向上プログラム
初級検査官
1995
1996
1997
1998
1999
20 名
50 名
48 名
49 名
49 名
2000
9名
2001
2002
2003
2004
2005
10 名
10 名
10 名
10 名
10 名
9名
10 名
養成コース
専門家派遣
73 名
111 名
57 名
107 名
34 名
32 名
-
中級検査官
20 名
20 名
20 名
20 名
20 名
20 名
養成コース
8名
5名
4名
2名
-
-
検査官交流
セミナー
27 名
30 名
102 名
127 名
3名
3名
3名
4名
4名
5名
5名
5名
5名
35 名
36 名
26 名
22 名
28 名
26 名
29 名
32 名
39 名
(これらの事業は日本財団の資金援助によるものです。)
14
(検査官研修 座学)
(検査官研修 船上)
15
PSC の地域協力体制
PSC は海事条約上の各締約国政府が単独で実施していてはその効果には限
界があります。船は国境を越えて移動するのが常ですし、船による海洋汚染
などの影響は近隣諸国に及ぶのですから、船の安全と海洋環境保全の対策を
地域ぐるみで実施することの意義はきわめて大きいといえるでしょう。サブ
スタンダード船は PSC による指示を無視して出港したり、当該港では欠陥是
正のための措置が出来ない場合もあるため、追尾して欠陥を是正させるため
にも地域的捕捉網は有効であると考えられます。このため、世界の各地域で
PSC の協力組織が形成されつつあります。
¾
PSC 地域協力の特徴
現在、活動中あるいは発展中の PSC 地域協力は、アメリカ合衆国の
場合のようにいずれの地域協力体制にも属さずに単独で PSC を推進し
ているのを除くと、当然のことながら海域を共有・隣接している国々
が地域的な協力体制を形成しています。また、それぞれの地域協力体
制は、最初の協力体制である「パリ MOU」をモデルとした覚書(MOU)
を締結していますが、現在のところ各地域の協力体制は、それぞれ発
展段階に大きな違いがあるのが実情です。
¾
地域間協力―地域ネットからグローバルネットへ
船は地域内を航行するばかりでなく全世界を移動するものですから、
欠陥船の捕捉・追尾網ひとつとっても世界の MOU 間の連携がより効
果的なことはいうまでもありません。東京 MOU は、パリ MOU、イ
ンド洋 MOU、ヴィニャデルマール協定、カリブ海 MOU、黒海 MOU
等と相互に PSC 委員会のオブザーバーとして認めあい情報交換を行っ
ています。東京 MOU は、パリ MOU 及び黒海 MOU との間で既にデ
ータベースの交換を始めています。また、パリ MOU とは共同で両
MOU 各国の担当大臣会議を開き、両 MOU を中心とするグローバルな
PSC 発展のための行動指針(大臣宣言)を策定しています。
これら世界各地の MOU は、IMO を核とする現在の枠組みを補完す
るかたちで各地域ごとに足元から条約適合を促進して行かなくてはな
りません。しかし、地域間の真のネットワークを組むには、各地域 MOU
の成長と発展を待つ必要があるのも事実です。
16
(東京 MOU、パリ MOU 合同大臣会議 2004 年 11 月 バンクーバー)
☛
一口メモ
PSC 地域協力の始まり
1970 年代の初期、世界の海運界は、ヨーロッパと北米船主を中心に伝統的な
海運国からの国籍離脱が盛んにおこなわれ、パナマ籍とリベリア籍の合計だけを
見ても、1965 年から 1975 年の 10 年間に 22 百万総トンから 79.5 百万総トンへと
3.6 倍(世界の船腹量の伸びは 2.1 倍)の著しい増加を示し、便宜置籍船の増加
とともに、これまで船舶を置籍し監視・監督の経験のほとんどない新興海運国の
台頭が、サブスタンダード船の増加に拍車をかけたのです。
1977 年の IMO 決議 A.390(X)及び A.391(X)を契機にサブスタンダード船撲
滅のための PSC の有効性が強く認識されるようになり、ヨーロッパでは地域内で
の統一的アプローチを確立しようという動きが生まれました。1978 年、ブルター
ニュ沖で「アモコカディス号」座礁による大規模油汚染事故発生がこれを加速さ
せ、1982 年、ヨーロッパの14カ国は、「ポート・ステート・コントロールに関
する覚書」(パリ MOU)を採択し7月1日から実施に移ったのです。
この後、個々の国ベースでも PSC 活動は活発になりましたが、1991 年、IMO
は各国政府に IMO 決議による PSC 手続きの適用につき、パリ MOU のような地
域的な協定を締結するよう検討を求めるため、決議 A.682(17)「船舶の排出と監
督のための地域協力に関する決議」を採択しました。これを受けて、アジア太平
洋地域においては、日本政府のイニシアチブで 1992 年、PSC に関する準備会合
が開催され、その後シドニー、バンクーバーで 2 回の会合重ね、1993 年、第 4
回目の準備会合において「アジア太平洋地域におけるポート・ステート・コント
ロールに関する覚書」(東京 MOU)が合意され、署名されました。
このように 1992 年以降、IMO のてこ入れにより各地域で同様の合意が相次い
で成立しています。これは海上における人命安全と海洋環境保全に対する世界的
な関心の高まりの反映であると同時に、毎年増加と改定を続ける多くの詳細な規
則の責任ある履行が、旗国政府の監督のみでは手に余る現状を反映していると見
ることもできます。
17
世界各地の PSC 協力体制
①
パリ MOU
1982 年(欧・北大西洋 20 カ国)
参加国:ベルギー、カナダ、クロアチア、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイスラ
ンド、アイルランド、イタリア、オランダ、ノルウエー、ポーランド、ポルトガル、ロシア連邦、スロベニア、
スペイン、スウェーデン、イギリス
事務局:ハーグ(オランダ)
情報システム名/所在地:SIRENAC/サンマロー(フランス)
②
ヴィニャデルマール協定
1992 年(ラテン米 13 カ国)
参加国:アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、チリ、コロンビア、キューバ、エクアドル、ホンジュラス、メキ
シコ、パナマ、ペルー、ウルグアイ、ヴェネズエラ
事務局:ブエノスアイレス(アルゼンチン)
情報システム名/所在地:CIALA/ブエノスアイレス(アルゼンチン)
③
東京 MOU
1993 年(アジア太平洋 18 カ国)
参加国:オーストラリア、カナダ、チリ、中国、フィジー、香港、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、ニ
ュージーランド、パプアニューギニア、フィリピン、ロシア連邦、シンガポール、タイ、バヌアツ、ベトナム
事務局:東京(日本)
情報システム名/所在地:APCIS/ウラジオストック(ロシア連邦)
④
カリブ海 MOU
1996 年(カリブ海 11 カ国、*未決定)
参加国:アンギラ*、アンチグアバーブーダ、アルーバ、バハマ、バルバドス、バーミューダ*、英領バージン
諸島*、ケイマン諸島、キューバ、ドミニカ*、ドミニカ共和国*、グレナダ、ギアナ、ハイチ*、ジャマイカ、
モンセラット*、オランダ領アンティルス、セントキッツネーヴィス*、セントルシア*、セントヴィンセント
グレナディン*、スリナム*、トリニダッドトバコ、タークスカイコス諸島*
事務局:キングストン(ジャマイカ)
情報システム名/所在地:--- /スリナム
⑤
地中海 MOU
1997 年(地中海 10 カ国、*未決定)
参加国:アルジェリア、キプロス、エジプト、イスラエル、ヨルダン、レバノン、マルタ、モロッコ、チュニジ
ア、トルコ、パレスチナ*
事務局:アレクサンドリア(エジプト)
情報システム名/所在地:MedEA/カサブランカ(モロッコ)
⑥
インド洋 MOU
1998 年(インド洋 12 カ国、*未決定)
参加国:オーストラリア、バングラデッシュ*、ディプチ*、エリトレア、インド、イラン、ケニア、モルディ
ブ、モーリシャス、モザンビーク*、ミャンマー*、オーマン、セイシェル*、南アフリカ、スリランカ、スー
ダン、タンザニア、イエメン*
事務局:ゴア(インド)
情報システム名/所在地:IOCIS/ゴア(インド)
⑦
アブジャ MOU
1999 年(西・中央アフリカ 19 カ国、*未受諾)
参加国:アンゴラ*、ベニン*、カメルーン*、ケープヴェルデ*、コンゴ、コートジヴォアール*、赤道ギニ
ア*、ガボン*、ガンビア*、ガーナ、ギニア、リベリア*、モーリタニア*、ナミビア*、ナイジェリア、セ
ネガル、シェラレオネ、南アフリカ*、トーゴー*
事務局:ラゴス(ナイジェリア)
情報システム名/所在地:AMIS/ラゴス(ナイジェリア)
⑧
黒海 MOU
2000 年(黒海沿岸 6 カ国)
参加国:ブルガリア、ジョージア、ルーマニア、ロシア連邦、ウクライナ、トルコ
事務局:イスタンブール(トルコ)
情報システム名/所在地:BSIS/ノヴォロシスク(ロシア連邦)
⑨
リャド(GCC)MOU 2004 年(ペルシャ湾沿岸 6 カ国)
参加国:バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦
事務局:マスカット(オマーン)
情報システム名/所在地:―/―
18
世界の PSC 地域協力体制
パリ MOU
黒海 MOU
地中海 MOU
東京 MOU
カリブ海 MOU
ヴィニャ・デル・マール協定
インド洋 MOU
アブジャ MOU
19
GCC
MOU
本文は、
の補助事業
として纏められた冊子から抜粋し、書き改めたものです。
〒105-0004
東京都港区新橋6丁目19番19号
アセンド新橋ビル 8F
財団法人
東京エムオウユウ事務局
20