10.利子率による国民所得の決定 前項では投資が一定であることを前提としていましたが、投資は利子率により変 動します。今までの理論を統合すると、総需要により決定する国民所得は、所得によ り決定する消費F(Y)と、利子率rにより決定する投資I(r)の和 Y = F(Y) + I(r) ・・・・・・・・・・・・(10-1) となります。これは財市場から決定する国民所得を捉えることでした。 財市場からは、消費と投資(Y=C+I) と消費と貯蓄(Y=C+S) により国民 所得が決定するとしてきましたが、均衡所得水準(三面等価の原則) では、I=Sに なります。 貯蓄のすべてが投資に回るときの、利子率と国民所得の関係を図 10-1 から図 10-3 に示します。 図表 10-1 図表 10-2 図表 10-3 図表 10-1 では利子が減少すれば投資が増大し、図表 10-2 では投資が増大すれば 国民所得が増えることを示しています。したがって、利子率が下がれば国民所得が増 える図表 10-3 のIS曲線が導かれます。 次に貨幣市場における国民所得について考えてみましょう。市場の貨幣供給量M は、消費や投資に使用された貨幣(所得の関数である貨幣)L1(Y)と、投機にまわる 貨幣(利子率に関わる貨幣)L2(r)の和です。しかし貨幣の実質価値は、物価 P によっ て左右されますから、実質貨幣供給量は、 M/P = L1(Y) + L2(r) で表されます。 図表 10-4 図表 10-5 短期的にはM/Pは 一定と見なせますから、利子率と投機の貨幣量、および国民 所得の関系は、図表 10-4、 図表 10-5 のようになります。図表 10-4 では利子率が減 少すると、投機にまわる貨幣が増えることを示しています。投機の貨幣が増えると、 M/Pが一定ならば、国民所得に関わる貨幣L1(Y)が減ることになります。つまり、 図表 10-5 のLM曲線に示すように、利子率の低下は国民所得の減少につながるので す。 財の購入によって決まる国民所得を示すIS曲線と、貨幣の供給によって決まる 国民所得を示すLM曲線を同一グラフに記載すると、図表 10-6 になります。 この 両曲線の交点で財市場と貨幣市場とが均衡することになり、利子率と国民所得はこ の点の値に決定します。 図表 10-6
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