機械設計製図第一 設計および計算書(表紙を除く) 例 与えられた仕様:最大荷重 W=5000kgf 特に断りが無い場合には,ページ数はテキスト(機械設計製図Ⅰ)のページ数を表す. (1) 仕様および機構定数の仮定(第 1 次設計値) 最大荷重 W = 5000×9.8 = 49000 N 仕様より レバー長さ l = 800×10-3 = 0.8m p.3 脚注より大きめの値を選択 -3 支点-プランジャ距離 l1 = 40×10 = 0.04 m 実物を参考に仮定 レバー操作力 P0 = 20×9.8 = 196 N p.3 より大きめの値を選択 プランジャ荷重 P1 = lP0/l1 = 0.8×196/0.04 = 3920 N p.1 式(1) を使用 総合効率 η=0.75 p.4 より プランジャ内径 dp = 10×10-3 = 0.01 m p.28 の O リングの規格を参考に仮定 fs = 3 安全率 p.34 の 鋼-静荷重 の場合を用いる (2) シリンダ内径 Dc の設計 Dc = 計算シリンダ内径 d p2W P1η = 0.012 × 49000 = 0.0405 m 3920 × 0.75 p.27 L 形皮パッキンの規格を参考に,皮パッキン L-42 の使用を仮定して, 設計シリンダ内径 Dc = 42×10-3 = 0.042 m (第 1 次設計値) このとき,シリンダ内圧 pc = 4W 4 × 49000 = 3.54 × 10 7 Pa = 2 2 πDc 3.14 × 0.042 (3) シリンダ肉厚 tc の設計 p.2 の表を参考に,シリンダ材質を機械構造用炭素鋼鋼管 STKM13C (p.18) と仮定. STKM13C 引張強さ σmax = 510 N/mm2 = 5.1×10 8 Pa 許容引張応力 σta =σmax/fs = 5.1×10 8/3 =1.7×10 8 Pa 計算シリンダ肉厚 t c = p c Dc 2W 3.54 × 10 7 × 0.042 = = = 4.37 × 10 −3 m 2σ ta πσ ta Dc 2 × 1.7 × 10 8 機械構造用炭素鋼管の規格(p.18) を参考にすると,外径 48.5 mm,厚さ 3.2 mm,(内径 42.1mm) が最も近いが,内径の仕上げ代がなく肉厚も薄すぎるため,設計値を変更する. (2-2) シリンダ内径 Dc の設計 必要なシリンダ肉厚を薄くするためにシリンダ内径を大きくする必要があるが,(5) に示すよ うに,プランジャ内径と独立にシリンダ内径のみを大きくすると一定のラム上昇量を得るのに 必要なレバーストロークが大きくなってしまう.そこでプランジャ内径 dp を大きくし同時に シリンダ内径 Dc を大きくする. dp = 16×10-3 = 0.016 m 設計プランジャ内径 Dc = 計算シリンダ内径 d p2W P1η = (第 2 次設計値) 0.016 2 × 49000 = 0.06531 m 3920 × 0.75 p.27 L 形皮パッキンの規格を参考に,皮パッキン L-70 の使用を仮定して, 設計シリンダ内径 Dc = 70×10-3 = 0.070 m (第 2 次設計値) このとき,シリンダ内圧 pC = 4W 4 × 49000 = = 1.27 × 10 7 Pa 2 2 πDc 3.14 × 0.070 (3-2) シリンダ肉厚 tc の設計 規格品の機械構造用炭素鋼管(p.18),外径 76.3 mm,厚さ 3.2 mm,(内径 69.9mm) を使用し, 内径 70.0 mm に仕上げると,厚さは 3.15 mm となる. 設計シリンダ肉厚 tc =3.15×10 -3 m (第 2 次設計値) p.2 の表を参考に,シリンダ材質を機械構造用炭素鋼鋼管 STKM13C (p.18) と仮定. STKM13C 引張強さ σmax = 510 N/mm2 = 5.1×10 8 Pa 許容引張応力 σta =σmax/fs = 5.1×10 8/3 =1.7×10 8 Pa 計算シリンダ肉厚 t c = p c Dc 1.27 × 10 7 × 0.070 = = 2.62 × 10 −3 m 2σ ta 2 × 1.7 × 10 8 設計シリンダ肉厚は計算シリンダ肉厚よりも厚いため,設計条件を満足する. シリンダの上下に切る管用ねじは,規格(工学製図 p.75)を参考に,G2 1/2 に決定. G2 1/2 n = 11,h = 1.479 mm, おねじ d = 75.184mm,d2 = 73.705 mm,d1=72.226mm めねじ D =75.184 mm,D2 = 73.705 mm,D1=72.226mm (4) プランジャ内径 dp の設計 プランジャ内径は (2-2) で, dp = 16.0×10-3 m (第 2 次設計値) と仮定したが,この値が強度の面で設計値として許容できるか確認をする. p.2 の表を参考に,プランジャ材質を機械構造用炭素鋼鋼材 S43CN (p.13) と仮定. S43CN 引張強さ σmax = 569 N/mm2 = 5.69×10 8 Pa 圧縮強さ σmax = 569 N/mm2 = 5.69×10 8 Pa (p.34 より) 許容圧縮応力 σca =σmax/fs = 5.69×10 8/3 =1.90×10 8 Pa 計算プランジャ内径 dp = 4 P1 πσ ca = 4 × 3920 = 5.13 × 10 −3 m 8 3.14 × 1.9 × 10 設計プランジャ内径は計算プランジャ内径よりも大きいため,設計値として許容できる. (5) ラム上昇量およびレバー操作量の確認 与えられた仕様が W =5000kgf であるから,ラム上昇量を Sr = 1.0 ×10-3 m とすると, 計算プランジャストローク S p = Dc2 (70 × 10 −3 ) 2 = S × 1.0 × 10 −3 = 19.14 × 10 −3 m r 2 −3 2 dp (16 × 10 ) l 0.8 Sp = × 19.14 × 10 −3 = 3.828 × 10 −1 l1 0.04 計算レバーストローク Sl = 計算レバー角 θ max = sin −1 ( S l / l ) = sin −1 (3.828 × 10 −1 / 0.8) = 28.59 deg m 1mm のラム上昇量を得るのに必要なレバーストロークおよびレバー角は許容範囲内と考えら れる. 注) テキストでは軽荷重の場合として,ラム上昇量 Sr = 2.0 ×10-3 m 程度としているが,設計 シリンダ内径を Dc ≥ d p2W P1η とすると,ラム上昇量とレバーストロークには S l ≥ W Sr P0η の関係があるので,仕様より W/(P0η) =333 であり,l = 0.8m に対してレバー角を 30deg 程度とし,Sl < 0.4 m とすることを考えると,Sr は 1.0×10-3m 程度とならざるを得ない. (6) ここまでの設計値のまとめ レバー 長さ l = 800×10-3 = 0.8 m 支点-プランジャ距離 l1 = 40×10-3 = 0.04 m プランジャ 材質 S43CN 内径 dp = 16×10-3 = 0.016 m O リング P12 を使用 シリンダ 材質 内径 STKM13C 外径 76.3 mm,厚さ 3.2 mm のものを使用 Dc = 70.0×10-3 m tc = 3.15×10-3 m 肉厚 上下に管用ねじ G2 1/2 を切る. L 形皮パッキン L-70 を使用 (参考 5.77kg/m)
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