2015 年 12 月 04 日 マスコミ各社 御中 大阪泉南地域の石綿国賠訴訟を受けて アスベスト被害国家賠償訴訟の提訴 <鹿児島地裁では初めて> 2014 年 10 月 9 日、最高裁は、大阪泉南アスベスト国家賠償訴訟の第 1 陣及び第 2 陣について、国の責任を認める原告勝訴の判決を言い渡しました。最高裁は、昭和 33 年 5 月 26 日から昭和 46 年 4 月 28 日までの間、国が規制権限を行使して石綿工場に 局所排気装置の設置を義務付けなかったことが、国家賠償法の適用上、違法であると 判断したのです。 これにより、大阪泉南地域にとどまらないアスベスト被害者に対する国家賠償が行 われることになりました。具体的には、石綿工場で就労していた元労働者やその遺族 が、国に対して訴訟を提起し、一定の要件を満たすことが確認された場合に、国は訴 訟手続の中で和解により損害賠償金を支払うことになりました。 1.和解の要件 ① 昭和 33 年 5 月 26 日から昭和 46 年 4 月 28 日までの間に、局所排気装置を設置 すべき石綿工場内において、石綿粉じんにばく露する作業に従事したこと。 ② その結果、石綿肺・肺がん・中皮腫などの石綿による健康被害を被ったこと。 ③ 提訴の時期が損害賠償請求権の期間内であること。 2.賠償金 賠償金の額は、石綿関連疾患の種類と症状に応じて下記の額。 最高裁は、国は2分の1を限度として損賠賠償の責任を負うと判断。 ①じん肺管理区分の管理2で合併症がない場合 1100万円 ②管理2で合併症がある場合 1400万円 ③管理3で合併症がない場合 1600万円 ④管理3で合併症がある場合 1900万円 ⑤管理4、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚の場合 2300万円 ⑥石綿肺(管理2・3で合併症なし)による死亡の場合 2400万円 ⑦石綿肺(管理2・3で合併症あり又は管理4) 肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚による死亡の場合 2600万円 3.大阪泉南地域以外におけるアスベスト被害国賠訴訟の現状 厚生労働省が公表している 2013 年度までの石綿労災認定事業場の情報から、 「石綿 製品製造工場」 (*1)であって、 「昭和 46 年 4 月までに操業を開始した」又は「操業 開始期間が不明」という条件で抽出すると 340 事業場が該当します。この 340 事業場 における石綿労災認定件数(時効救済分を含む)は、1,210 件です。 しかも、厚労省の認定事業場情報には、①労災認定を受けていない被害者(石綿肺 管理区分2.3で合併症のない方) 、②2010 年度までは石綿肺による労災認定(石綿 肺管理 2 及び3で合併症のある方、管理区分4)被害者、が含まれていません。 少なくとも全国で 300 を超える事業場、1000 名を超える被害者が国家賠償訴訟の対 象になると考えられます。ただし、この数字はかなり控えめです。 (*1)厚労省石綿労災認定事業場情報における「石綿ばく露作業状況」の記載欄に おいて下記の項目が含まれる事業場とした。 ・石綿糸、石綿布等の石綿紡績製品の製造工程における作業 ・自動車、巻揚機等のブレーキライニング等の耐摩耗性石綿製品の製造工程にお ける作業 ・石綿セメント、石綿スレート、石綿高圧管、石綿円筒等の石綿製品の製造工程 における作業 ・電気絶縁性、保温性、耐酸性等の性質を有する石綿紙、石綿フェルト等の石綿 製品又は電解隔膜、タイル、プラスター等の充填剤、塗料等の石綿を含有する 製品の製造工程における作業 ・ボイラーの被覆、船舶用隔壁のライニング、内燃機関のジョイントシーリング、 ガスケット(パッキン)等に用いられる耐熱性石綿製品製造工程における作業 昨年 10 月の泉南国賠訴訟最高裁判決から 1 年が経過しました。大阪泉南地域におけ る被害者は第 3 陣(原告 29 人、被害者 21 人)が提訴しましたが、その他の地域にお いては国家賠償訴訟の提起は進んでいません。 当会が把握しているこれまでの提訴事案(大阪泉南以外)は、①大阪地裁 6 件(原 告 8 人、被害者 6 人) 、②さいたま地裁 4 件(原告 35 人、被害者 19 人) 、③東京地裁 1 件(原告 1 人、被害者 1 人) 、④神戸地裁 2 件(原告 4 人、被害者 2 人)だけです。 泉南地域の第 3 陣を含め、これまでに提起した被害者は、僅か 49 名です。 少なくとも 1000 人を超える国家賠償訴訟の対象となる被害者の存在が推認できる にも関わらず、国側が周知を怠っているため提起が進んでいないのが現状です。 4.鹿児島地裁初の提訴 被害者: 前村一己さん(男) 1931(昭和 6)年 1 月 27 日生(死亡時 76 歳) 1965(昭和 40)年頃から 1973(昭和 48)年まで、大阪府茨城市のカナ エ石綿工業(株)において、石綿とガラス繊維を混合させたものを型に 入れてプレス機械で成型する作業に従事。 2002(平成 14)年 10 月に小倉記念病院において悪性胸膜中皮腫と診断 され、2007(平成 19)年 8 月 4 日に同疾病により死亡。 2005(平成 17)年 10 月に茨木労働基準監督署(大阪)に労災申請を行 い、同署は 2006(平成 18)年 3 月にカナエ石綿工業における石綿粉じ ん曝露作業に起因するものとして業務上災害の決定を行った。 原告は、前村一己さんの遺族(子)4 名。 請求金額は、1430 万円 カナエ石綿工業(株)における労災認定件数 肺がん1、中皮腫2、時効肺がん2 弁護団: アスベスト訴訟関西弁護団 担当:位田 浩弁護士 / 06-6363-1053 井上健策弁護士 5.今後の相談対応 アスベスト被害国賠訴訟は、泉南国賠訴訟を闘った原告団、弁護団、支援団体の皆 さんの大変な努力によって、国による損害賠償の道が開かれました。 これを受けて、できるだけ多くの同様に被害者が国家賠償訴訟を提起し、現在進行 中の甚大な石綿被害における国の責任がいかに大きなものであったかを明らかにさせ ていくことが重要だと考えます。 中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会(会長・古川和子)は、石綿国家賠償訴 訟を全国的に拡大する運動を進めています。また、この取り組みを通じて、国家賠償 責任の及ばないとされた被害者をはじめ、補償・救済の格差と隙間で苦しんでいる多 くの石綿被害者のおかれた状況についても広く明らかにし、格差・隙間のない補償を 実現するため、全ての石綿被害者の声を結集していきたいと思います。 アスベスト健康被害に関する相談や国家賠償訴訟に関する相談は、下記の電話番号 で受け付けます。 中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会 03-5267-6007 中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会南九州支部 0995-63-1700 アスベスト訴訟関西弁護団 06-6363-1053 ■アスベスト健康被害相談会&ホットラインの開設について 日時: 2015 年 12 月 5 日(土)10 時 00 分~17 時 00 分 会場: 鹿児島市 中央公民館 中会議室 鹿児島市山下町 5-9 内容: 内容:面談による相談対応と電話による相談対応 面談を希望される方は直接会場にお越し下さい。 下記の電話番号でも相談対応いたします。 070-5264-1670 070-5264-1671 主催:中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会南九州支部 担当:続 博 治 中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会 南九州支部事務局長 電話: 0995‐63‐1700 携帯: 090-3016-0127
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