ポスター - 日本コンベンションサービス

一般セッション
抄 録
ポスターディスカッション
ポスターディスカッション
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閉経後 ER 陽性乳癌に対する術前内分泌療法の治療効果および予
後予測因子としての PgR の有用性について
サブタイプ別の術前化学療法前後におけるバイオマーカーの変
化と治療効果の検討
DP-1-001-01
1
3
DP-1-001-02
埼玉県立がんセンター 乳腺外科、2 埼玉県立がんセンター 病理診断科、
埼玉県立がんセンター 乳腺腫瘍内科、4 群馬大学 臓器病態外科学
1
黒住 献 1、松本 広志 1、二宮 淳 1、林 祐二 1、戸塚 勝理 1、久保 和之 1、
小松 恵 1、黒住 昌史 2、堀口 淳 4、竹吉 泉 4、井上 賢一 3、永井 成勲 3、
大久保 文恵 3、大庭 華子 2
一般セッション(ポスターディスカッション)
[目的]閉経後 ER 陽性乳癌に対する術前内分泌化学療法の効果および予後予
測因子に関しては未だ明確ではない . 今回 , われわれは閉経後 ER 陽性乳癌に対
する術前内分泌療法の治療効果および予後の予測因子について臨床病理学的
検討を行ったので報告する.[方法]対象は Aromatase Inhibitor (AI) によ
る術前内分泌療法を施行した閉経後 ER 陽性乳癌の 170 症例である . 手術検体
における治療効果判定は乳癌学会の術前薬物療法の病理学的治療効果判定に
準じて行い,治療効果と予後(観察期間中央値:62.5 か月)との関連性および
治療前の ER,PgR,HER2 の発現状況 , 残存腫瘍径 (ypT), 治療後の腋窩リンパ節
転移状況 (ypN) と予後との関係について検討を行った . PgR に関しては Allred
(A-)score と J-score で 評 価 し , 各 score と 予 後 と の 関 連 性 に つ い て 検 討 を
行った . また ,Luminal A, B の cutoff 値である 20% についても検討を行い , 最
も有意な p 値を示す cutoff を追究した .[結果]初診時年齢の中央値は 64 歳で
あり ,AI の術前投与期間中央値は 5.5 か月であった . 組織的治療効果は Grade
0-1a 群 が 99 例 ,Grade 1b 群 が 56 例 ,Grade 2-3 群 が 15 例 で あ っ た . 初 再
発転移部位は局所が 5 例 , 所属リンパ節が 7 例 , 内臓が 6 例 , 骨が 2 例であっ
た .PgR は ,A-score (score 0-8) では 7 点以上を高値とした場合 ,PgR 高値群
が低値群と比べて無再発生存率 (RFS) と乳癌特異的生存率 (CSS) は最も有意
に良好であった (p=0.007,p=0.05).proportion score (score 0-5) では ,5
点以上 ( > 2/3) を高値とした場合 , 高値群と低値群の RFS と CSS に最も有意
な 差 が 認 め ら れ た (p=0.006,p=0.04).J-score (0-3b) で は ,3b( > 50%)
を陽性とした場合が ,RFS および CSS で最も有意な差が得られた (p=0.004,
p=0.007). 単 変 量 解 析 で は PgR 以 外 に も ,ypT(RFS: p < 0.0001,CSS:
p=0.019),ypN(RFS: p < 0.0001,CSS: p=0.001) が有意な予後因子であっ
た . 多変量解析では RFS では ypT(p=0.002) と ypN(p < 0.0001) が有意な予
後因子だったが ,CSS においては ypN(p=0.024) と PgR( > 50%; p=0.049)
が有意な予後因子となった . [考察]日本人の閉経後 ER 陽性乳癌に対する術前
内分泌治療においては PgR の発現状況が長期的な予後因子となりうることが
明らかになった .cutoff については占有率 50%を cutoff 値にした場合がもっと
も低い p 値が得られることが示された . 閉経後術前内分泌療法を行う際に PgR
の発現状況により , 予後良好な群を選別できる可能性が示唆された .
兵庫医科大学 乳腺・内分泌外科、2 兵庫医科大学 放射線科
榎本 敬恵 1、今村 美智子 1、村瀬 慶子 1、柳井 亜矢子 1、宮川 義仁 1、
西向 有沙 1、八木 智子 1、高塚 雄一 1、山野 理子 2、三好 康雄 1
【背景】術前化学療法の治療効果は、乳癌のサブタイプによって異なる。また、
治療後の残存腫瘍におけるバイオロジーは、予後と相関する可能性もあるた
め、治療前後のバイオロジーの変化を解析することは重要な課題である。今
回、術前化学療法前後のバイオマーカーの変化をサブタイプ別に検討した。
【対象と方法】術前化学療法後に手術切除した原発性乳癌 80 例を対象に、ER,
PgR, HER2, Ki67 の発現を治療前後で検討した。サブタイプは ER+/HER2(Lum:36 例 ), HER2(21 例), ER-HER2-(23 例 ) とし、臨床的効果は RECIST
判 定 で CR+PR を 奏 郊 群(cResp)、NC+PD を 非 奏 郊 群 (cNon-Resp) と し、
病理学的効果は乳癌取扱い規約によってグレード 3+2b を pResp、グレード
1a, 1b, 2a を pNon-Resp とした。【結果】治療後の Ki67 は治療前に比べ有意
に低下しており、Ki67 の低下は cResp 群で有意差が認められた(前:30.3 ±
21.7, 後:16.1 ± 21.6, P=0.0006)
。また、サブタイプ別では、Lum 群で
cResp 群の Ki67 が治療後に有意に低下していた(前:26.1 ± 19.7, 後:6.8
± 6.8, P=0.0002)。一方、他のサブタイプでは治療前後で Ki67 の発現に有
意差はみられなかった。また、病理学的治療効果との相関では、pNon-Resp
群において Ki67 が有意に低下していた(前:31.5 ± 23.1, 後:19.1 ± 25.6,
P=0.0005)が、pResp 群 で は 差 は な か っ た。 そ し て、pNon-Resp 群 で の
Ki67 の有意な低下は Lum 群で認められた。ER 陽性乳癌において ER の発現は
治療前後で変化なかったが、PgR は治療後に有意に低下していた(前:36.0 ±
35.3, 後:20.3 ± 28.3, P=0.03)
。そして、PgR の低下は cResp 群において
有意であった(前:34.6 ± 37.5, 後:14.7 ± 24.7, P=0.03)
。【考察】Lum 群
では病理学的非奏郊群でも、臨床的奏郊群において Ki67 が有意に低下してお
り、Ki67 の低下が臨床効果につながっている可能性が示唆された。そして、
臨床効果が得られなかった症例では PgR が低下していなかったことから、エ
ストロゲンシグナルの維持が耐性に関与している機序が推測された。
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ER 陽性 HER2 陰性乳癌における術前化学療法の検討
ER 陽性 HER2 陽性原発乳癌における PR 発現の意義
DP-1-001-03
DP-1-001-04
1
群馬大学大学院 臓器病態外科学、2 群馬大学大学院 病理診断学、
3
狩野外科医院、4 細野医院
1
内田 紗弥香 1、堀口 淳 1、高他 大輔 1、菊地 麻美 1、長岡 りん 1、
六反田 奈和 1、佐藤 亜矢子 1、時庭 英彰 1、樋口 徹 1、荻野 美里 1、
小山 徹也 2、狩野 貴之 3、細野 治 4、竹吉 泉 1
高橋 侑子 1、林 直輝 1、岩本 高行 2、松田 直子 1、吉田 敦 1、中村 清吾 3、
矢形 寛 1、山内 英子 1
3
【目的】ER 陽性 HER2 陰性乳癌は化学療法の効果が低いとされており、術前化
学療法における pCR は予後と相関しないことが報告されている。今回、ER 陽
性 HER2 陰性乳癌に対し術前化学療法を施行した症例を検討し、治療効果や
予後を予測する因子について検索した。【対象・方法】2004 年 1 月から 2012
年 12 月までに当院で術前化学療法の後に手術を施行した原発性乳癌 225 例
のうち、ER 陽性かつ HER2 陰性の 71 例を対象とした。同時両側乳癌・男性
乳癌・遠隔転移症例は除外した。【結果】平均年齢は 50.2 歳(28 ~ 71 歳)、
PgR 強陽性(10%以上)が 52 例(73.2%)、PgR 陰性・弱陽性(10%未満)が
19 例(26.8%)であった。化学療法前の平均腫瘍径は 5.0cm(0 ~ 20cm)で、
T4b が 22 例(31%)と多かった。術前化学療法のレジメンは FEC+Taxane が
50 例(70.4%)と最も多く、Taxane のみが 18 例(25.4%)、FEC のみが 3 例
(4.2%)であった。臨床学的治療効果は cCR が 4 例、cPR が 60 例、cSD が 7
例であり、奏効率は 90.1%であった。病理学的治療効果は pCR を 5 例(7.0%)
に認め、病理学的腫瘍径の平均値は 3.2cm(0 ~ 12cm)であった。乳房温存
術は 33 例(46.5%)に施行され、33 例中 25 例は術前化学療法前には乳房温
存術不可能症例であった。観察期間中央値は 52 ヶ月で、5 年無再発生存率
(DFS)が 70.9 %、5 年 生 存 率(OS)は 93.6 % で あ っ た。pCR と non-pCR で
は、DFS(P=0.564)や OS(P=0.586)に有意差を認めなかった。PgR 強陽性
と陰性・弱陽性で比較したが、奏効率、pCR 率、DFS、OS に有意差を認めな
かった。病理学的腫瘍径が 3cm 以上の症例では有意に再発率が高く(43.8%
vs15.4%、P=0.008)
、5 年 DFS も有意に不良であった(57.9% vs81.8%、
P=0.019)。40 歳以下と 41 歳以上で比較すると、40 歳以下では有意に cCR
が 多 く(23 % vs1.7 %、P=0.006)
、pCR 率 も 高 い 傾 向 に あ っ た(15.4 %
vs5.2%、P=0.224)
。しかし、40 歳以下では再発率が有意に高く(53.8%
vs22.4 %、P=0.03)、DFS も 有 意 に 不 良 で あ っ た(34.2 % vs78.9 %、
P=0.007)
。OS には有意差を認めなかった(92.3% vs93.8%、P=0.243)
。
【結
語】ER 陽性 HER2 陰性乳癌に術前化学療法を施行した症例を検討した。pCR
率は 7%と低く、pCR と予後に関連を認めなかった。手術時の病理学的腫瘍径
が 3cm 以上の症例では、有意に再発率が高く、5 年 DFS が不良であった。40
歳以下の症例では術前化学療法は奏効しやすいものの、予後は悪い可能性が
示された。
聖路加国際病院 乳腺外科、2 岡山大学医学部 乳腺・内分泌外科、
昭和大学医学部 乳腺外科 【背景】エストロゲン受容体 (ER) 陽性 HER2 陽性原発乳癌の治療戦略は内分
泌療法、抗 HER2 療法及び化学療法の全ての併用が基本となるが、この治療
戦略におけるプロゲステロン受容体 (PR) 発現度の意義は不明である。本研究
の目的は、ER 陽性 HER2 陽性乳癌における PR 発現度と術前化学療法 (NAC)
に対する治療効果、及び予後との関連を明らかにすることである。
【対象と方法】2001 年 1 月より 2012 年 12 月までに当院で NAC 施行後外科的
切除術を施行した ER 陽性 HER2 陽性原発乳癌 119 例を対象とした。術前針生
検施行時の免疫組織学的染色 (IHC) による PR 発現度を低発現、中等度発現、
高発現の3群に分類し、NAC に対する pCR 率、全生存期間 (OS)、無病生存
期間 (DFS) を後ろ向きに比較した。さらに、Affymetrix gene chip によりプ
ロファイリングされた 864 例の全身療法非施行 ( 手術のみ施行 ) 症例のうち
ER 陽性 HER2 陽性 66 例について、PR 発現度別にカプランマイヤー法を用い
て比較し、Log-rank 検定で予後解析を行った。
【結果】当院加療患者群の年齢中央値は 50 歳 (23-76 歳 )。観察期間中央値は
47 ヶ 月 (8-136 ヶ 月 )。 全 119 例 の う ち、pCR は 30 例 (25.2%)、 非 pCR
は 89 例 (74.8%) に認めた。IHC で低発現群は 80 例 (67.2%)、中等度発現
群は 24 例 (20.2%)、高発現群は 15 例 (12.6%) であった。 pCR は低発現
群で 28 例 (93.3%)、中等度群で 2 例 (6.7%)、高発現群で 0 例 (0%) であ
り、低発現群と比較し中等度~高発現群で有意に pCR 率が低かった (Fisher's
exact test, p < 0.001)。pCR 例は、非 pCR 例に比べ OS (p=0.563)、DFS
(p=0.186) ともに延長を認めなかった。また、遺伝子解析による手術のみ
施行患者群では PR 低発現群が高発現群に比べて予後不良の傾向があった
(p=0.084)。
【結語】ER 陽性 HER2 陽性乳癌では PR 発現が高いほど NAC 後に原発巣が遺残
する可能性が高いことが示唆された。また、PR 低発現群は予後不良の可能性
があるも、内分泌療法、抗 HER2 療法及び化学療法の全ての併用により発現
度に関わらず DFS、OS が改善している可能性が示唆された。 258
ポスターディスカッション
11473
10759
HER2陽性乳癌の術前化学療法におけるトポイソメラーゼ II
α遺伝子増幅と病理学的所見についての検討
トリプルネガティブ乳癌における化学療法の必要性とタイミン
グ
DP-1-001-05
DP-1-001-06
1
1
横浜市立大学附属市民総合医療センター 乳腺甲状腺外科、
横浜市立大学付属市民総合医療センター 病理部、
3
横浜市立大学付属市民総合医療センター 臨床統計学・疫学、
4
横浜市立大学 消化器・腫瘍外科
2
慶應義塾大学医学部 一般・消化器外科、2 慶應義塾大学病院 腫瘍センター
植野 華子 1、栗原 俊明 1、竹前 大 1、松本 暁子 1、村田 健 1、関 朋子 1、
高橋 麻衣子 2、林田 哲 1、神野 浩光 1、北川 雄光 1
太田 郁子 1、石川 孝 1、田辺 美樹子 2、森田 智視 3、大場(斎藤) 真梨 3、
成井 一隆 1、喜多 久美子 1、嶋田 和博 1、山田 顕光 1、佐々木 毅 2、
市川 靖史 4、遠藤 格 4
10702
10338
術 前 化 学 療 法 と し て の EC followed by nab-PTX ±
trastuzumab の relative dose intensity と病理学的効果
N(-) 症例における Antracycline あるいは Taxane 単独療法で
の術前化学療法効果の検討
DP-1-002-01
DP-1-002-02
1
1
2
3
兵庫県立がんセンター 乳腺外科、2 甲南病院 外科、
淀川キリスト教病院 腫瘍内科、4 西神戸医療センター 外科、
5
兵庫県立西宮病院 外科、6 大阪府済生会中津病院 外科、
7
こくふ乳腺クリニック、8 高槻病院 外科、9 茶屋町ブレストクリニック、
10
福井済生会病院 外科
東京女子医科大学東医療センター 乳腺科、
東京女子医科大学東医療センター 病院病理科、
3
東京女子医科大学八千代医療センター 乳腺・内分泌外科
井上 寛章 1、平野 明 1、小倉 薫 1、服部 晃典 1、宮本 礼子 3、地曵 典恵 3、
中安 靖代 1、大久保 文恵 1、藤林 真理子 2、清水 忠夫 1
【背景】weekly paclitaxel は taxan 系において最も高い効果を示すが , 遷延
する末梢神経障害が問題となる . Nanoparticle albumin-bound paclitaxel
(nab-PTX) は添加物としてのポリオキシエチレンヒマシ油を含まないため末
梢神経障害の速やかな回復が期待される . そこで当科は術前化学療法 (PST)
と し て の EC followed by weekly nab-PTX ± trastuzumab(T) 第 II 相 試 験
を 計 画 し た【
. 目 的 】EC followed by weekly nab-PTX ± T を 用 い た PST に
お け る nab-PTX の relative dose intensity(RDI) と 病 理 学 的 効 果 に つ い て
検討する 【
. 対象】手術可能な 20 歳以上 70 歳以下の T1~4,N1 以上 ,M0 の乳
癌 . 2011 年 4 月 か ら 2013 年 3 月 ま で に PST を 開 始 し nab-PTX を 施 行 し た
38 例 【
. 方 法 】EC(90/600mg/m2) を 3 週 毎 に 4 サ イ ク ル 行 い , そ の 後 nabPTX:125mg/m2 を 3 週投与 1 週休薬で 4 サイクル ,HER2 陽性例では T:2mg/
kg を毎週 ( 初回のみ 4mg/kg), 計 15 回投与した . 有害事象の評価は CTCAE
ver.4 を用い ,nab-PTX の day1 の投与基準は血液毒性は Grade(G)1 以下 , 脱
毛 , 悪心 , 嘔吐を除く非血液毒性も G1 以下とした . また day8,15 の投与基準
は , 血液毒性では G2 以下 , その他は day1 と同基準とした . 投与基準を満た
さない場合は 1 週延期とし ,2 週延期後に基準を満たさない場合は減量とし
た .pCR の定義は浸潤癌の消失とした 【
. 結果】年齢中央値 56(31 ~ 68) 歳 ,ER
陽 性 22 例 ,HER2 陽 性 16 例 .pCR は 14 例 (36.8%).nab-PTX の 総 投 与 量 中
央値は 1500(250-1500)mg/m2, コース完遂率は 81.6%(31/38), 用量完遂
率 は 57.9%(22/38), 平 均 dose intensity(DI) は 76.4(38.9-93.8)mg/m2/
week( 予定 DI:93.8), 平均 RDI は 81%(41-100%) であった .pCR 例の平均総
投 与 量 , 平 均 RDI は そ れ ぞ れ 1280 ± 360mg/m2,78 ± 18%,non-pCR 例 は
それぞれ 1340 ± 270 mg/m2,84 ± 18% で , ともに pCR 例で低い傾向にあっ
た (p=0.6031,p=0.3085).【 考察】nab-PTX125mg/m2,3 投 1 休投与では延
期や減量する症例が多く ,RDI:81% と低値であった . しかし , pCR 症例では
non-pCR 例に比べ RDI が低い傾向にあったことから , 必ずしも用法・用量が
保てなくても効果が得られる可能性が示唆された .
高尾 信太郎 1、宮下 勝 2、重岡 靖 3、奥野 敏隆 4、小西 宗治 5、
古谷 義彦 6、国府 育央 7、家永 徹也 8、脇田 和幸 9、笠原 善郎 10
【 は じ め に 】術 前 化 学 療 法(NAC)の 適 応 を 考 え る と き、Antracycline 系 /
Taxane 系の逐次投与が標準であるが、N(-) 症例では、常に Overtreatment
で あ る 可 能 を 考 慮 す べ き で あ る。【 目 的 】N(-) 症 例 に お け る Antra. あ る
い は Taxane 単 独 療 法 で の NAC 効 果 の 検 証 を 試 み た。【 対 象 と 方 法 】対 象
は、 乳 癌 術 前 化 学 療 法 Epirubicin+Cyclophosphamide(EC) vs. weekly
Paclitaxel(PTX) の無作為化比較臨床試験 (KBCOG - 02) に登録された 174
例 の う ち、 術 前 N(-) が 確 認 さ れ た 62 例。EC(75/600mg/m2) を 3 週 間 ご
と4コース投与する群 (EC 群 )25 例、PTX80mg/m2 を毎週 12 コース投与
する群(PTX 群)37 例。いずれの群も 80% 以上投与完遂症例につき、臨床
的効果、組織学的効果を検討した。【結果】1)臨床的奏効率 (ORR) は、EC
群 68%(17/25) ,PTX 群 67.6 %(25/37)。Subtype 別 に み る と、Luminal
type で は、EC 群 88.9%(8/9)、PTX 群 52.9%(9/17),HER2 type で は、EC
群 63.6%(7/11)、PTX 群 66.7%(10/15),Triple negative type で は、EC 群
40.0%(2/5)、PTX 群 80.0%(4/5) であった。2)pCR(ypT0/isypN0) 率は、
EC 群 8%(2/25), いずれも HER2 type であるが 18.2%(2/11) と低い。 PTX
群は 18.9%(7/37)、Luminal type11.8%(2/17), HER2 type26.7%(4/15),
Triple negative type20.0%(1/5) で あ っ た。【 考 察 】N(-) 症 例 に お け る
Antracycline あるいは Taxane 単独療法の NAC 効果は subtype で異なる可能
性があり、
ORR でみると、
EC は Luminal type により効果があり、
PTX は ,Triple
negative type により効果があった。いずれの regimen も pCR 率は低いが、
全症例 NAC 効果によらず、術後化学療法が regimen をクロスオーバーしてな
されており、N(-) 症例における最適な NAC regimen の選択についても考察
する。
259
一般セッション(ポスターディスカッション)
背景と目的)HER2陽性乳癌とアンソラサイクリンに対する感受性との関連
が以前から指摘されているが、術後補助療法や転移性乳癌を対象とした最近
の研究でトポイソメラーゼ II α遺伝子(TOP2A)の増幅がアンソラサイクリン
に対する感受性に重要であることが報告された。今回、術前化学療法を行っ
たHER2陽性乳癌症例を用いて、TOP2A の増幅とアンソラサイクリンの
感受性について関連性を検討した。方法)針生検でHER2陽性と診断され
た乳癌症例 17 人の TOP2A 遺伝子の増幅をFISH法で検査し、術前化学療
法としてエピルビシン (90 mg/m2) とシクロフォスファミド (600 mg/m2)
を 3 週間ごとに 4 クール施行後に手術し、病理学的奏功率(Grade 2b と 3)と
TOP2A 遺伝子の増幅との関連性を解析した。結果)HER2 陽性乳癌 17 例中
35.3%(6 例)に FISH 法で TOP2A 遺伝子増幅を認めた。病理学的奏功率は、
全体では 29% (5 例 ) に認め、TOP2A 遺伝子増幅例の 6 例中 4 例で完全奏功し
ており、TOP2A 遺伝子増幅と病理学的奏功率は、統計学的有意な関連を認め
た(P < 0.001)。カットオフを 2.0 に設定すると、感度 80%、特異度 83.3%、
精度 82.4%であった。結論)FISH 法による TOP2A 遺伝子増幅は、アンソラ
サイクリン系抗癌剤治療の効果予測因子であることを術前化学療法で証明し
た。今後、臨床応用には検討を要するが、HER2陽性かつ TOP2A 増幅の症
例ではタキサン系抗癌剤を併用しないアンソラサイクリン系抗癌剤治療のみ
の治療で治癒の可能性がありうると思われた。
【背景】トリプルネガティブ乳癌に対する systemic therapy は化学療法の
みである。しかし、化学療法のタイミングとその必要性に関してはいまだ
controversial である。【対象と方法】2007 年 3 月から 2013 年 11 月までの期
間に当院で治療したトリプルネガティブ乳癌 Stage I-II 63 例を対象とし、
アンスラサイクリン系薬剤とタキサン系薬剤の順次投与による化学療法を術
前および術後に施行した症例の比較と、さらに化学療法を省略した症例の予
後につき検討した。【結果】症例全体の年齢の中央値は 61.0 歳(26 歳 -83 歳)、
平均腫瘍径は 2.63cm(T1 25 例、T2 38 例)、N+ 20 例 (31.7%) であった。
術前化学療法の 30 例と術後化学療法の 24 例を比較すると、術前群において、
平均腫瘍径は有意に大きく(3.30 cm vs. 1.89 cm、p < 0.01)、N+ が有意
に多く(14 例(53.8%)vs. 2 例(14.2%)、p < 0.01)、若年であった(51.8 歳
vs. 60.8 歳、p=0.050) 。病理学的浸潤径(1.04cm vs. 1.62cm、p=0.69)
および病理学的リンパ節転移陽性率(30.8% vs. 21.4%、p=0.63)は同等
であった。観察期間中央値 727 日の時点において再発をそれぞれ、0 例およ
び 1 例(7.1%)に認めた。術前群と術後群の無病日数はそれぞれ 932 日および
544 日であり、術前群で延長している傾向を認めた (p=0.435)。術前化学療
法で臨床的完全奏効を得た 9 症例に関しては現在まで再発を認めていない。化
学療法を施行しなかった 9 症例の年齢の中央値は 76.0 歳 (58 歳 -80 歳 )、平均
腫瘍径は 2.0cm (T1 5 例、T2 5 例 )、すべて N- であった。病理学的には平均
浸潤径 1.19cm、全例 n0 であった。観察期間中央値 611( ± 479.22) 日の時点
において、再発を認めていない。【結語】術前化学療法群は術後化学療法群と
比較して腫瘍径が大きく、N+ の割合も多く、若年であったが、予後は同等で
あり、術前化学療法の有用性が示唆された。一方、トリプルネガティブ乳癌
であっても高齢で腫瘍径が小さくリンパ節転移を認めない場合は化学療法を
省略できる可能性が示唆された。
ポスターディスカッション
10386
11125
日本人における乳癌術前化学療法に対する Body Mass Index
(BMI) の影響
進行・再発乳癌に対する nab-paclitaxel と腫瘍内 SPARC 発現
との相関
DP-1-002-03
1
2
DP-1-002-04
1
千葉県がんセンター 乳腺外科、
千葉大学大学院医学研究院 臓器制御外科学
東海大学八王子病院 乳腺・内分泌外科、
東海大学医学部 乳腺・内分泌外科、3 東海大学医学部 病理診断科、
4
東海大学八王子病院 病理診断科
2
岩瀬 俊明 1、中村 力也 1、味八木 寿子 1、吉井 淳 1、山本 尚人 1、
宮崎 勝 2
一般セッション(ポスターディスカッション)
【目的】肥満患者は乳癌薬物療法において治療効果が減弱することが現在まで
に報告されている。それらの多くは欧米からの報告であり、日本人は肥満人口
が少なく欧米とは異なるため、日本人における肥満の影響は明らかではない。
今回我々は以前から用いられている WHO BMI 分類と、近年 WHO experts
により提唱されているアジア人向けの肥満分類である Asian adjusted BMI
classification (AABC) を用い、日本人における乳癌術前化学療法に対する肥満
の影響を検討した。
【対象と方法】2000 年の 4 月から 2010 年の 11 月までの期間で、術前化学療法
施行後に手術を施行した 269 例を対象とした。初診時に stageIV と診断された
症例は除外した。BMI は WHO BMI 分類 (underweight(BMI < 18.5 kg/m2),
normal range(18.5 ≦ BMI < 25 kg/m2), overweight(25 ≦ BMI < 30 kg/
m2), and obese(BMI ≧ 30 kg/m2)) と AABC (underweight(BMI < 18.5 kg/
m2), increasing but acceptable risk(18.5 ≦ BMI < 23 kg/m2), increased
risk(23 ≦ BMI < 27.5 kg/m2), and high risk(BMI ≧ 27.5 kg/m2)) を用いて
分類した。また、relative dose intensity を用いて dose intensity を算出した。
【 結 果 】37 例 (15%) が pCR を 得 ら れ た。 全 体 の relative dose intensity は
97-98% と BMI にかかわらず dose intensity は保たれていた。化学療法に伴
う有害事象は BMI によって頻度に違いは認めなかった。多変量解析の結果、
overweight/obese group は normal range と 比 較 し て 有 意 に Disease free
survival (DFS) が 短 縮 し て い た (log rank test, P < .05)。 ま た、high risk
group は increased but acceptable group と 比 較 し て 有 意 に DFS と overall
survival (OS) が 短 縮 し て い た (P < .05)。Non-pCR 群 に お け る BMI と OS・
DFS と の 関 係 を 検 討 す る と、overweight group は normal range group と
比較して有意に DFS が短縮しており、また high risk group は increased but
acceptable risk group と 比 較 し て 有 意 に DFS が 短 縮 し て い た (P < .05)。
Subtype と BMI との関係について検討した結果、non-pCR group において、
ER (+), HER (-) type において obese group が有意に DFS が短縮していた (P
< .05)。また HER2 type においては high risk group が有意に DFS が短縮して
いた (P < .05)。
【結論】本検討の結果、日本人において術前化学療法後 non-pCR となった例の
うち、ER (+), HER (-) type または HER2 type でかつ BMI 高値の患者は再発
の高リスク群と考えられた。
鈴木 育宏 1、森岡 徹 1、寺田 瑞穂 2、扇屋 りん 2、大下内 理紗 2、
寺尾 まやこ 2、津田 万里 2、新倉 直樹 2、岡村 卓穂 2、齋藤 雄紀 2、
徳田 裕 2、熊木 伸枝 3、田尻 琢磨 4
【はじめに】nab-paclitaxel は進行・再発乳癌に対する key drug であり、最
も頻用されているタキサン系薬剤で、腫瘍から分泌される SPARC(Secreted
Protein Acidic and Rich in Cysteine)と結合し腫瘍へ取り込まれると言われ
ているが、SPARC の発現と nab-paclitaxel の治療効果との相関については不
明な点も多く、詳細に検討されていない。
【 方 法 】2010 年 9 月 か ら 2013 年 7 月 ま で、 当 院 お よ び 関 連 施 設 で nabpaclitaxel を使用して治療した進行・再発乳癌 36 例を対象にした。年齢は 36
歳~ 84 歳(中央値 57 歳)、全例女性。投与方法は weekly 投与 14 例(3 投 1 休
が 12 例、2 投 1 休が 2 例)、tri-weekly 投与が 22 例であった。対象 36 例のうち、
切除標本か針生検で原発巣もしくは転移巣の SPARC 発現を免疫組織学的に検
討した 33 病変において、核、細胞質、間質での陽性細胞数を測定した。
【 結 果 】奏 効 率 は CR+PR が 8 例、SD が 7 例、PD が 6 例 で、RR22.2 %、
CBR41.7%であった。SPARC の発現は、エストロゲン受容体陰性、プロゲス
テロン受容体陰性症例での陽性例が多かった(p = 0.0355、p = 0.0140)。ま
た、核、細胞質での SPARC の発現と治療効果との関連性は認められなかっ
た が、 間 質 で の SPARC 高 発 現 例 で 奏 効 例 が 多 い 傾 向 で あ っ た。Invasive
micropapillary pattern を呈する 2 例では、細胞質に染色されなかった。
【結語】今回の検討では、間質での SPARC 高発現例で nab-paclitaxel の奏効例
が多い傾向であったが、その治療効果との間に有意な相関関係は見られなかっ
た。他癌種でも同様の検討がされており、間質での SPARC 発現との相関関係
が報告されているが、本会ではさらに詳細に検討を加え、報告する。
10724
10356
Bone Modifying Agents 投与乳癌症例における骨転移・骨関
連事象と予後の検討
乳癌骨転移に対するデノスマブの治療効果判定としての尿中
NTx の有用性
DP-1-002-05
DP-1-002-06
北海道がんセンター 乳腺外科
市立四日市病院 乳腺外科
渡邊 健一、萩尾 加奈子、馬場 基、佐藤 雅子、富岡 伸元、高橋 將人
倉田 信彦、水野 豊、雫 真人、森 敏宏、宮内 正之
【はじめに】乳癌骨転移の進行に伴い骨関連事象(skeletal related event:
SRE; 病 的 骨 折、 脊 髄 圧 迫 症 状、 外 科 治 療、 放 射 線 治 療、 高 カ ル シ ウ ム
血 症 )が 発 生 し QOL を 低 下 さ せ る。SRE を 防 ぐ た め、Bone Modifying
Agents(BMA) としてゾレドロン酸またはデノスマブの投与が標準治療で
ある。ほとんどの骨転移症例に使用され終末期まで継続されることが多く、
BMA 単独の治療効果は評価しづらい。また特有の有害事象への対応が必要
である。【目的】当科での BMA 投与症例を Retrospective に検討し、その背
景、投与状況、SRE、予後、有害事象をあきらかにする。【対象】2006 年 4 月
以降、ゾレドロン酸を投与した 237 例、2012 年 4 月以降デノスマブを投与
した 48 例、重複を除く計 252 例の乳癌骨転移症例。【結果】骨転移診断から
の観察期間中央値は 29M(0-181)、死亡 134 例、生存 118 例、診断時の年齢
は 平 均 57.3 歳(29-92)。ER(+)HER2(-)71%、ER(+)HER2(+)6%、ER(-)
HER2(+)7%、ER(-)HER2(-)14% で あ っ た。BMA 開 始 時、 す で に SRE を
伴っていたものは 107 例(42.6%)、内訳は病的骨折 23 例、脊髄圧迫 22 例、
外科治療 7 例、放射線治療 88 例、高カルシウム血症 9 例。ほかに疼痛を 29
例(11.5%)に認め、無症状は 116 例(46.0%)であった。BMA 開始後に発生
した SRE は、病的骨折 9 例、脊髄圧迫 5 例、外科治療 10 例、放射線治療 50
例、高カルシウム血症 7 例で、計 60 例(23.8%)に SRE が発生した。開始時
に SRE を伴った群は有意に続発する SRE も多かった。全生存期間では Triple
negative、骨以外の転移臓器あり、BMA 開始時 SRE ありが予後不良因子で
あった。骨転移のみでも ADL が低下した症例に死亡例が多く、脊椎圧迫後に
麻痺が残存すると有意に予後不良であった。ゾレドロン酸で腎機能低下 16 例
(6.8%)、顎骨壊死 5 例(2.1%)、非定型骨折 2 例(0.8%)を経験した。デノ
スマブで低カルシウム血症が 18 例(37.5%)発生したがすべて G2 以下で重篤
な症例はなかった。
【考察】BMA は日常臨床で効果を実感にしくい薬剤である
が、SRE の減少により QOL と予後を改善していると推定できる結果を得た。
特有の有害事象に注意を要する。今後ゾレドロン酸とデノスマブの使い分け
についての検討が必要である。
【背景】再発乳癌の多くは骨転移を認め、骨転移が進行すると骨関連事象
(skeletal related event: SRE)を引き起こし QOL の低下と、病的骨折により
死亡リスクを上昇させるとの報告がある。これまでにビスホスホネート製剤
が広く使用されてきたが、近年では作用機序の異なる治療薬として抗 RANKL
モノクローナル抗体であるデノスマブの有効性が報告されている。乳癌骨転
移における治療効果のモニタリングとして骨シンチや PET などの画像診断が
行われることが多く、一方非侵襲的な骨代謝マーカーの測定に関してはまだ
十分に検討されていない。【目的】乳癌骨転移症例に対するデノスマブの治療
効果のモニタリングとして、骨吸収マーカーである尿中 NTx の有用性を検討。
【対象と方法】2012 年以降乳癌骨転移に対して、初回もしくはゾレドロン酸か
らの切り替えでデノスマブを投与している 12 例。デノスマブ投与前、投与後
4 週ごとに尿中 NTx を測定した。年齢は中央値 66 歳(31 ~ 84 歳)、多発転移:
9 例、単発転移:3 例、デノスマブ初回投与:9 例、ゾレドロン酸からの切り
替 え:3 例。Luminal type:8 例、HER2 type:1 例、triple negative:3
例、併用治療は化学療法:7 例、内分泌療法:4 例、内分泌療法から化学療法
へ変更:1 例。【結果】デノスマブの投与回数は中央値 7.5 回(5 ~ 15 回)であ
り、投与前の尿中 NTx は平均 177.1 nmol BCE/mmol Cre(11.2 ~ 842.5)。
12 例中 11 例において初回投与後に尿中 NTx の減少を認め、2 回投与後には全
例 50 nmol BCE/mmol Cre 以下まで減少した。癌性髄膜炎による病勢進行の
ため投与中止した 1 例と顎骨壊死が疑われ投与中止した 1 例(投与中止後 5 カ
月後に 100 nmol BCE/mmol Cre 以上に上昇)を除いた 10 例は継続投与中で
50 nmol BCE/mmol Cre 以下にコントロールでき、これまでに SRE の発症は
認めてはいない。【考察】デノスマブ投与によりすみやかに尿中 NTx は減少し、
また投与中止となった症例では遅れて尿中 NTx の著明な上昇を認めたことか
ら、デノスマブ投与患者における尿中 NTx の変化は骨吸収抑制を鋭敏に反映
し治療効果のモニタリングとして有用であると考えられた。
260
ポスターディスカッション
10880
11591
ホルモン受容体陽性進行再発乳癌におけるフルベストラントの
治療効果に関する検討
当院におけるフルベストラントの使用経験について
DP-1-003-01
DP-1-003-02
昭和大学 乳腺外科
1
国立病院機構大阪医療センター 乳腺外科、
2
国立病院機構大阪医療センター 外科
桑山 隆志、中村 清吾、明石 定子、沢田 晃暢、榎戸 克年、吉田 玲子、
高丸 智子、池田 紫、渡邊 知映、奥山 裕美、中島 恵、金田 陽子、
大山 宗士
水谷 麻紀子 1、増田 慎三 1、田中 希世 2、田口 裕紀子 2、苅田 真子 1、
八十島 宏行 1、増田 紘子 1、関本 貢嗣 2、中森 正二 2
閉経後 estrogen receptor(ER) 陽性再発乳癌に対する新規内分泌治療薬とし
てフルベストラントが 2011 年 10 月より本邦で使用可能となっている。本剤
は selective estrogen receptor downregulator といわれる薬剤であり、こ
れまでの薬剤とは作用機序が異なる点で内分泌療法抵抗性の閉経後 ER 陽性乳
癌に対して有効な薬剤と期待されている。今回、我々は当院でフルベストラ
ントにて治療された患者について検討した。【対象】2011 年 12 月から 2013
年 7 月までにフルベストラントの投与を受けた閉経後乳癌 66 例 ( 術後再発 59
例、Stage IV 7 例 )。前治療として内分泌療法として平均 2.5 レジメンの治療
歴があり、36 例では化学療法による治療歴があり、平均 1.6 レジメンであった。
40 例(60.1%)に内臓転移が認められ、肝転移は 21 例(31.8%)、肺転移は
29 例(43.9%)であった。骨転移は 44 例(66.7%)、皮膚・軟部転移は 36 例
(54.5%)で認められた。【治療成績】90 日以上の観察が可能であった 39 例に
おける治療成績では、Time to progression は約 11 カ月(326.1 日)であった。
治 療 効 果 と し て は CR 0 例、PR 6 例、SD 26 例、PD 7 例 で あ っ た。SD と
なった症例のうち 6 か月以上 SD が継続した long SD は 21 例であり、clinical
benefit rate は 82.1%であった。肝転移・肺転移を有する症例で PR もしくは
long SD を得られた症例はそれぞれ 8 例・13 例に認められた。有害事象とし
ては Grade 3 以上は認められず、Grade 2 の関節痛を 2 例に認めるのみであ
り、長期使用であっても安全し使用できた。本剤は閉経後 ER 陽性再発乳癌に
おいてアロマターゼ阻害剤の逐次使用と比較しても良好あるいは同等の成績
が期待できる。今後さらなる症例の集積を行い、有効な症例や早期使用例な
どについても検討したい。
10981
11134
フルベストラントの効果予測因子と生命予後への影響
転移・再発乳癌に対するフルベストラントの有用性の検討
DP-1-003-03
DP-1-003-04
1
大阪市立大学大学院 腫瘍外科学
聖マリアンナ医科大学 乳腺・内分泌外科、
聖マリアンナ医科大学付属研究所 ブレスト&イメージング先端医療セン
ター、
3
乳腺クリニック ブレスティアたまプラーザ
2
小野田 尚佳、浅野 有香、倉田 研人、森崎 珠実、柏木 伸一郎、野田 諭、
川尻 成美、高島 勉、平川 弘聖
[ はじめに ] フルベストラント(FUL)が閉経後ホルモン受容体陽性転移・再発
乳癌に対して使用されることが多くなり、使用経験の報告が散見されるが、
効果が期待できる症例の選択や予後への影響を検討している報告は少ない。
今回われわれは FUL の使用経験から効果を予測しうる因子の同定と FUL 投与
が予後へ及ぼす影響について検討した。[ 対象と方法 ] 対象は 2011 年 11 月か
ら 2013 年 12 月の間に FUL を投与した進行・再発乳癌患者 42 例。全例女性、
年齢中央値は 66.5 歳、41 例がエストロゲン受容体陽性で 1 例は詳細不明で
あった。切除不能局所進行例が 6 例、Stgae IV が 6 例、術後再発が 30 例であっ
た。年齢、BMI、プロゲステロン受容体(PR)発現の有無、HER2 蛋白過剰発
現の有無、転移部位個数、内臓転移の有無、既内分泌療法のレジメン数や効果、
前治療の PD の理由などの臨床病理学的背景から FUL の効果に関連する因子を
検討した。さらに OS に影響を及ぼす因子を多変量解析にて検討した。[ 結果 ]
全 体 で の 治 療 効 果 は、PR4 例、SD14 例、PD24 例、 奏 効 率 9.5%、Clinical
Benefit(CB) 率 28.6% であった。FUL による CB は、年齢(67 歳以上)、既内
分泌療法の数(3 以上)、以前のアロマターゼ阻害剤の効果(CB を得られた症
例)と相関した。その他、PR 発現の有無や転移部位数、内臓転移の有無、前
治療の PD 理由などとは相関しなかった。無増悪生存期間(PFS)では上記 3 因
子に加え、以前のタモキシフェン治療の効果がある群においてもない群と比
較して有意に PFS が延長されていた。全生存期間(OS)では、BMI が 21 未満、
FUL で CB が得られなかった症例において予後不良であった。多変量解析にお
いて BMI と FUL の効果は独立した予後不良因子であった。 [ 考察 ]67 歳以上、
late line の症例、過去にアロマターゼ阻害剤やタモキシフェンが効果を示し
た症例には、フルベストラントの効果が期待できることが示唆された。また、
今回検討したフルベストラント投与群においては BMI が低い症例が予後不良
であり、フルベストラントの効果の有無が予後予測因子となりうる可能性が
示唆された。
西川 徹 1、大井 涼子 1、黒田 貴子 1、小島 聖子 1、永澤 慧 1、松崎 邦弘 2、
河原 太 3、川本 久紀 2、福田 護 2、津川 浩一郎 1、岩重 玲子 1、
志茂 彩華 1、上島 知子 1、土屋 恭子 1、小島 康幸 1、志茂 新 1、
速水 亮介 1、白 英 2、首藤 昭彦 2
【はじめに】フルベストラントはホルモン感受性閉経後転移・再発乳癌に対す
る内分泌療法剤であり、近年使用する機会が増加している。ガイドラインで
はタモキシフェン抵抗性 2 次内分泌療法として推奨されているが、現時点で
はアロマターゼ阻害剤や抗癌剤使用後の 3rd line 以降での使用例が多い。当
院での使用経験について後方視的に解析した。【対象】2011 年 12 月から 2013
年 11 月までに転移・再発乳癌に対してフルベストラントを使用した 107 例
を対象とした。治療効果判定は画像所見、一部は腫瘍マーカーを参考に判定
した。【結果】年齢中央値は 65.1 歳(39-92)ホルモン受容体の発現状況は ER
and/or PgR 陽性かつ HER2 陰性が 96 例(90%)、HER2 陽性が 11 例(10%)
であった。前治療ライン中央値は 3.7(0 - 13)。投与継続中が 31 例、死亡例
が 20 例、投与終了例が 56 例であった。臨床効果は CR 2 例(1.9%)、PR 9
例(8.4%)、SD 53 例(50%)、PD 43 例(40%)であった。ORR は 10.3%、
CBR は 59.8%であった。前治療フェーズ別では 2 以下群 /3 以上群では、40
例(37.4 %)/67 例(62.6 %)で あ り ORR は 12.5 % / 9.0 %、CBR は 67.5 %
/55.2%であった。有害事象は Grade1 の注射部位反応が数例認められたが自
然軽快している。Grade2 の関節痛が 1 例認められ中止となっている。【考察】
治療効果は前治療歴を多数有する症例があったが、CONFIRM 試験とほぼ同
等の結果が得られた。今回の検討では SD, 特に long-SD 症例が 20 例 /53 例と
多く、その中でも 5th line 以降においても 9 例が long-SD の判定を得られた。
今回の検討ではフルベストラントの導入時期は多数の前治療歴を有する症例
に使用する機会が多かったが、近年はより早いフェーズにおいて導入する例
が多くなっており、より治療効果が期待できると考える。しかし、遅いフェー
ズでの使用においても long- SD を得られる症例もあることから引き続き症例
の集積を継続していく予定である。
261
一般セッション(ポスターディスカッション)
【背景】fulvestrant が 2011 年 9 月に承認されホルモン受容体 (HR) 陽性進行
再発乳癌に対する治療選択肢が増えた。使用開始から2年以上が経過し当
院での使用経験も増加した。そこで我々は今回 fulvestrant 前の治療内容と
fulvestrant の臨床効果、および fulvestrant 抵抗性後の治療について検討し
た。【対象と方法】当院で 2011 年 11 月から 2013 年 11 月に fulvestrant を使
用した進行再発乳癌 50 例を対象に後ろ向きに有効性を検討した。【結果】全例
女 性、 年 齢 中 央 値 66 歳 (41 ~ 81 歳 )、 再 発 45 例、stageIV5 例、HR 陽 性 /
HER2 陰性 44 例 ( うち PgR 陰性 21 例 )、HR 陽性 /HER2 陽性 6 例。術後再発
日、および stagIV は確定診断日からの観察期間中央値は 4.1 年(0.23 ~ 12.7
年)、また使用開始からの観察期間中央値は 10.6 カ月(1 ~ 25 か月)。全体
を fulvestrant 前の最終ホルモン治療の奏効期間別に A)3 カ月未満 B)3 カ
月以上 1 年未満 C)1 年以上と分けた。A/B/C 例 =6/14/30 例、fulvestrant
の 使 用 ラ イ ン は A)1 次 /2 次 /3 次 以 降 =0/2/4 B)1/6/7 C)7/15/8。 臨 床 的
効 果 は A)PR/longSD/SD/PD/NE=0/2/0/4/0 B)1/6/2/4/1 C)3/19/1/5/2
で あ り、 臨 床 的 有 用 率 は そ れ ぞ れ 33 %、50 %、73 %、 各 群 の Time to
progression(TTP)中央値は 84 日、209 日、322 日。3 次以降の症例でみる
と A)longSD:PD=1:3B)longSD:SD:PD=4:2:1C)longSD:PD:NE=5:2:1、
各群 longSD 以上の効果を得られた症例の 1 次・2 次ホルモン治療の奏効期間
中央値は A)1 次 /2 次 =903/90 日 B)844/271 日 C)625/769 日。直近に化学
療法施行症例はそれぞれ 4/3/5 例あり効果は A)PR:longSD:SD:PD=0:1:0:3
B)0:1:1:1 C)1:2:0:2。longSD 以上の効果を得られた症例の1次ホルモン治
療の奏効期間中央値は 625 日。Fulvestrant 抵抗性の症例は 28 例あり次治療
は 19 例が化学療法であった。このうち fulvestrant が無効症例は 10 例。【考
察】fulvestrant は前治療歴でホルモン治療の効果が低い時は効果が低い可能
性がある。一方で早い治療ラインで使用する方が有効といわれるが、3 次治
療以降に使用しても前治療歴でホルモン治療が有効であれば効果を期待でき
る可能性がある。fulvestrant の次治療に当院は化学療法施行症例が多いが、
fulvestrant の効果を得られた症例では、再度ホルモン治療も効果を期待でき
るかもしれない。
ポスターディスカッション
11804
11731
閉経前転移・再発ホルモン受容体陽性乳癌に対する LH-RH アナ
ログとアロマターゼ阻害薬併用療法の治療効果
術後内分泌療法中乳癌患者に活性化 VitD と arendronate が与
える骨事象予防効果と安全性の検討
DP-1-003-05
DP-1-003-06
1
国立がん研究センター中央病院 乳腺・腫瘍内科
3
下井 辰徳、清水 千佳子、佐々木 小百合、橋本 淳、公平 誠、
温泉川 真由、山本 春風、米盛 勧、田村 研治、藤原 康弘
順天堂大学医学部 乳腺内分泌外科、2 順天堂医院 看護相談室、
順天堂医院 歯科口腔外科、4 順天堂大学医学部 臨床研究センター
齊藤 光江 1、奥出 有香子 2、篠原 光代 3、松岡 浄 4
一般セッション(ポスターディスカッション)
目的:閉経前ホルモン受容体陽性乳癌患者において、タモキシフェン (TAM)
治療後の標準的内分泌療法は確立していない。症例に応じて、LH-RH アナロ
グ (LH-RHa) とアロマターゼ阻害薬 (AI) 併用療法や、酢酸メドロキシプロゲ
ステロンなどが使用されている。方法:当院で治療された、閉経前の転移・
再発乳癌患者において、エストロゲン受容体またはプロゲステロン受容体陽
性であり、LH-RHa と AI の併用療法を受けた患者の治療効果について、後方
視的に検討した。結果:1999 年 8 月から 2010 年 4 月までに LH-RHa が使用
された閉経前乳癌患者 150 例のうち、転移・再発で LH-RHa と AI の併用療法
を受けた 30 例を対象とした。年齢中央値は 44 歳 ( 範囲;32-54)。4 例は初発
時から遠隔転移を伴う StageIV であり、26 例は術後再発患者であった。骨転
移など測定不能病変のみの再発患者は 4 例であった。再発患者 26 例において
は、術後内分泌療法は 21 例 (81% ) で施行されており、16 例が TAM 単独、3
例が TAM に LH-RHa 併用であった。術後化学療法は 20 例 (77% ) で施行され
ていた。手術から再発までの期間の中央値は 72 か月 ( 範囲;13-178) であった。
また、転移・再発乳癌に対する先行化学療法歴のある患者はいなかった。内
分泌療法として LH-RHa と併用された初回 AI としては、アナストロゾール 28
例、レトロゾール 1 例、ファドロゾール 1 例が選択されていた。治療効果は
完全奏効 2 例と部分奏効 4 例であり、奏効率は 6 例 (20%)、Clinical Benefit
rate(CBR) は 22 例 (73% ) であった。無増悪生存期間中央値は 12.6 か月 ( 範
囲;1.9-69.8) であり、1 次治療で行われた 7 例の場合 12.6 か月 ( 範囲;6.354.7)、2 次治療で行われた 17 例の場合 16.0 か月 ( 範囲;1.9-69.8)、3 次治
療で行われた 6 例の場合 10.5 か月 ( 範囲;3.3-18.3) であった。内分泌療法の
みで病勢がコントロールされた期間は中央値 23.6 か月 ( 範囲;5.7-56.7) で
あった。生存期間中央値は 63.9 か月 ( 範囲;26.2-136.7) であった。考察:
過去の LH-RHa と AI 併用療法における、アナストロゾールやレトロゾールで
報告されている第 2 相試験の結果と比較して、当院の後方視的検討でも同程度
の奏効率と CBR を示していた。TAM 抵抗性閉経前ホルモン受容体陽性乳癌患
者において、LH-RHa と AI 併用療法は安定した病勢の患者の場合に、良い治
療候補となると考えた。結論:閉経前ホルモン受容体陽性転移再発乳癌にお
いて LH-RHa と AI の併用療法は、奏効率 20%、CBR73%であった。
【背景】閉経後乳癌患者には、少なくとも 5 年のホルモン療法が推奨されて
いる。中でもアロマターゼ阻害 (AI) 剤を投与する場合、安全で有効な骨事
象予防の支持療法が示される必要がある。【目的】AI 剤服用中の骨密度低下
予防に、arendronate + VitD が VitD より優れているか(主要評価項目)、重
篤な有害事象の発生はないか(副次的評価項目)を調査した。【方法】2008 年
3 月~ 2010 年 9 月 AI 剤服用中で、DEXA 法での骨密度が同年齢の平均を下
回 る 患 者 58 例 に 同 意 取 得 後、 活 性 化 VitD(1 μ g)daily 投 与 群 (D) と、 こ れ
に arendronate(35mg)weekly 投与を上乗せした群(A)に 1:1 に無作為割付
(割付因子は 70 歳以上か、骨塩量が YAM の -1SD 以下か、AI 剤の種類)し、
DEXA を 6 ヶ月ごと、BAP,1CTP, 尿中 NTX、消化器症状調査(Gastrointestinal
Symptom Rating Scale)、歯と骨関節症状の問診を 3 ヵ月ごと、計 2 年間
の投与と観察を実施した。【結果】D 群 29 例中 2 名試験薬へのアレルギーと
転移出現で 3 ヶ月以内の脱落、A 群 29 例中 1 例開始後 1 ヶ月以内に転倒時の
骨折があった。観察期間中、D 群は年齢による骨塩量減少率を上回らなかっ
た。一方 A 群は 2 年で 0.768 から 0.807g/cm2 の上昇を見た。重篤な上部消
化管症状の出現は両群とも無く、下顎骨壊死の発生も無かった。短期的には、
NTX,BAP の動きが 2 年後の DEXA の結果を予測する示標になっていた。
【考察】
骨粗鬆症に対するガイドラインはあるが、AI 剤を長期に投与する乳癌術後補
助療法に関しては、骨粗鬆症予備軍患者に対する骨事象回避の予防策を講じ
る必要があり、本研究はその示唆を得るものと考えられた。【結語】AI 服用中
の乳癌患者の骨事象予防に、活性化 VitD + arendronate は安全かつ有効であ
る可能性が示唆された。
10605
11638
センチネルリンパ節転移陽性症例における非センチネルリンパ
節転移予測
センチネルリンパ節転移陽性例における腋窩リンパ節郭清省略
の可能性について
DP-1-004-01
DP-1-004-02
1
大阪市立大学大学院 腫瘍外科学講座
野田 諭、浅野 有香、倉田 研人、森崎 珠実、柏木 伸一郎、川尻 成美、
高島 勉、小野田 尚佳、平川 弘聖
[ はじめに ] 近年、一定の条件を満たせばセンチネルリンパ節(SN)転移陽性
の場合の腋窩郭清省略が妥当性を有する可能性が示唆されている。適切な補
助薬物療法や放射線療法が行われれば、潜在性の非 SN 転移の顕在化を抑制で
きるとの考え方である。しかしながら乳癌診療ガイドラインにおいては SN に
微小転移(SN mic)や macrometastasis(SN mac)を認める場合の郭清省略
は推奨グレード C1 あるいは C2 であり、多くの課題が残されている。今回わ
れわれは局所制御の観点から非 SN に転移がない症例を同定できれば、腋窩郭
清を省略できる可能性があると考え、当院における SN 転移陽性例における非
SN 転移の予測因子を検討した。[ 対象と方法 ] 当院では SN 生検の適応は cT12、cN0 であり、NAC 後の症例は適応外としている。2006 年 1 月から 2011 年
12 月の間に 471 例に SN 生検が施行された。SN 同定率は 99%、偽陰性率は
4.6% であった。SN 転移陽性例は 70 例あり、そのうち追加で腋窩郭清を施行
した 57 例を検討対象とし、非 SN 転移の有無と臨床病理学的背景を解析した。
[ 結果 ] 57 例の SN 転移陽性例のうち非 SN 転移は 25 例(43.9%)に認め、全
例非 SN 転移は macrometastasis であった。SN mic 6 例のうち、非 SN 転移
は 3 例(50%)、51 例の SN mac のうち非 SN 転移を 22 例(43.1%)に認めた。
全例にサブタイプに応じた術後補助療法が施行され、観察期間 45 か月にて、
非 SN 転移陰性例に 1 例ずつの局所再発と遠隔転移再発を認め、非 SN 転移陽
性例に 4 例の遠隔転移再発を認めたが、腋窩リンパ節再発は認めなかった。非
SN 転移陽性例は転移陰性例と比較して、腫瘍径が大きい、転移陽性 SN/ 摘出
SN 個数比(SN 比)の高い症例が有意に多かった。その他、年齢、閉経状況、
多発性、リンパ管侵襲、核異型度、ホルモンレセプターの発現、HER2 過剰
発現には差は認めなかった。多変量解析にて非 SN 転移陽性と関連する独立し
た予測因子は腫瘍径、SN 比、摘出非 SN 個数であった。SN 比の非 SN 転移の
有無に対する AUC は 0.70 で、最適閾値は 0.667 となり、陽性反応的中度は
62.1%、偽陰性率は 28% であった。[ 考察 ] 術前・術中に判断可能で腋窩郭
清の省略に影響を与える非 SN 転移予測因子は腫瘍径と SN 比であった。また、
SN 比を用いることで、より具体的に非 SN 転移率を予測できる可能性が示唆
された。
262
3
近畿大学医学部 外科、2 近畿大学医学部堺病院、
大阪府立呼吸器アレルギー医療センター
安積 達也 1、濱田 未佳 1、新崎 亘 1、藤島 成 3、橋本 幸彦 1、乾 浩己 1、
北條 敏也 1、大和 宗久 2、菰池 佳史 1
乳癌腋窩リンパ節転移は局所制御と予後因子として有用であり、特に腋窩リ
ンパ節転移の有無とリンパ節転移個数が術後療法決定の際重要であるが、腋
窩リンパ節郭清の生存率改善への寄与は疑問視されている。センチネルリン
パ節転移陽性乳癌を対象とした腋窩リンパ節郭清省略ついて検討したランダ
ム化比較試験 (ACOSOG Z0011) では、センチネルリンパ節転移陽性例にお
いても、腋窩リンパ節郭清省略の可能性が示されたが、どのような症例で腋
窩リンパ節郭清省略が可能であるかが議論されている。今回われわれは、術
前造影CTおよび超音波検査による腋窩リンパ節転移診断と OSNA 法による
センチネルリンパ節生検の結果から、センチネルリンパ節転移陽性症例にお
ける腋窩リンパ節郭清省略について検討した。2010 年 5 月より 2013 年 10 月
までに、画像検査(CT および超音波検査)により臨床的に腋窩リンパ節転移陰
性もしくは陽性疑いと診断され、センチネルリンパ節生検を施行した浸潤癌
407 例を対象とした。OSNA 法では、陰性:328 例、1+:37 例、2+:65 例
であった。83 例(1+:24 例、2+:59 例)に腋窩リンパ節郭清が施行された。
OSNA 法によるセンチネルリンパ節転移陽性症例は、画像検査 (CT および 超
音波検査 ) との組み合わせにより、1)cN0・OSNA1+,2)cN0・OSNA2+,3)
cN1 疑・OSNA1+,4)cN1 疑・OSNA2+ に分類された。3 個以上の非センチ
ネ ル リ ン パ 節 転 移 を 認 め た の は、cN1 疑・OSNA2+ 群 は 35%, cN1 疑・
OSNA1+ 群は 22% であった。術後治療を検討する上で、これらの群への腋
窩リンパ節郭清省略は困難であると考えられた。一方 cN0・OSNA1+ 群は 3
個以上の非センチネルリンパ節転移を認めず、非センチネルリンパ節転移を 1
例(7%)に認めるのみで、腋窩リンパ節郭清の省略は可能であると考えられた。
cN0・OSNA 2+ 群では 3 個以上の非センチネルリンパ節転移を 13% に認め、
これらの群における腋窩リンパ節郭清省略は検討課題である。OSNA 法と画
像診断の組み合わせで、センチネルリンパ節転移症例における腋窩リンパ節
郭清省略症例の絞り込みが可能である。
ポスターディスカッション
10651
10594
センチネルリンパ節マクロ転移陽性例からみた腋窩リンパ節郭
清省略の可能性について
OSNA 法によるセンチネルリンパ節転移陽性例に対する腋窩リ
ンパ節郭清省略は可能か。
DP-1-004-03
DP-1-004-04
1
兵庫県立加古川医療センター
2
石川 泰、藤本 由希枝、松本 綾希子、小松 雅子、佐古田 洋子
社会医療法人博愛会相良病院 乳腺科、
社会医療法人博愛会相良病院 病理診断科
10194
10824
多発浸潤巣を有する乳がんにおける非センチネルリンパ節転移
予測
安全な乳癌腋窩郭清省略に向けた試み
DP-1-004-05
DP-1-004-06
1
国立病院機構大阪医療センター 乳腺外科、
国立病院機構大阪医療センター 臨床検査科、
3
国立病院機構大阪医療センター 外科
1
2
麻賀 創太 1、木下 貴之 1、北條 隆 1、神保 健二郎 1、吉田 正行 2
田口 裕紀子 1、増田 慎三 1、増田 紘子 1、八十島 宏行 1、水谷 麻紀子 1、
森 清 2、児玉 良典 2、眞能 正幸 2、中森 正二 3、関本 貢嗣 3
国立がん研究センター中央病院 乳腺外科、
2
国立がん研究センター中央病院 病理科
臨床的に腋窩リンパ節転移陰性(cN0)乳がんに対し乳房温存療法が施行され
る場合、センチネルリンパ節(SN)転移が 2 個以下であれば腋窩郭清を省略可
能とする報告がある。一方、乳房切除術(Bt+SN)が施行される場合において
のエビデンスは不十分である。特に Bt が選択される症例では多発浸潤巣の存
在が永久標本で確認されることがあり、この場合複数の浸潤巣からのリンパ
流の存在が非センチネルリンパ節(non-SN)転移の確率を高める懸念がある。
今回我々は、Bt+SN → Ax 施行例における non-SN への転移について、多発浸
潤巣の存在が及ぼす影響と転移予測因子を明らかにする目的で検討を行った。
対象は 2008 年から 2012 年までに Bt+SN → Ax を施行された cN0 の原発乳が
んのうち、術前薬物療法施行例を除外した 190 例である。このうち永久標本
で多発浸潤巣を認めた症例(多発群)は 47 例、単一の浸潤巣であった症例(単
発群)は 143 例であった。多発群と単発群で、年齢、閉経状態、BMI、臨床的
最大腫瘍径、病理組織型といった術前患者背景に差はなく、また、SN の同定
法と同定個数にも差はなかった。病理診断結果では、最大浸潤径(pT)は単発
群が、乳管内進展を含めた全体範囲は多発群が有意に大きかった。一方、リ
ンパ管侵襲や SN 転移個数、SN マクロ転移の割合には両群で差がなく、さら
に non-SN 転移も、多発群で 15 例(32%)、単発群で 51 例(36%)に認めら
れ、有意差を認めなかった。つぎに病理学的因子として、pT、乳管内進展を
含めた病変全体の長径、組織異型度、リンパ管侵襲、ER、PgR、HER2、SN
摘出個数、陽性 SN 数、SN 転移径(マクロ転移か微小転移か)の 10 項目を挙げ、
多発群、単発群それぞれに non-SN 転移の予測因子を単変量、多変量解析で
検討した。その結果、多発群においては pT2 以上のみが有意な non-SN 転移
予測因子であり、単発群ではリンパ管侵襲陽性と SN マクロ転移が有意な予測
因子であった。以上より、多発浸潤巣の存在は必ずしも non-SN 転移のハイ
リスクとはならないこと、また多発浸潤巣を有する症例ではそのうちの最大
浸潤径の大きさが non-SN 転移予測因子となることが確認された。
【背景】センチネルリンパ節 (SLN) の概念の浸透により腋窩郭清手術の適応は
限定され、SLN(+) でも郭清省略の可能性に向け腋窩機能温存への機運が高
まってきた。当院では、SLN 生検 (SLNB) の術中診断で SLN(-)、永久診断で
SLN(+) である症例の多くに対して、術後全身療法を導入することで腋窩郭
清省略を試みてきた。その結果、腋窩再発の増加は認めず比較的良好にコン
トロールできている。そこで今回は、術中診断で SLN(+) のため腋窩郭清に
移行した症例を後方視的に検討し、今後の乳癌腋窩手術の展望を考察したい。
【対象と方法】2003 年 5 月~ 2012 年 10 月において、視触診、CT、エコーに
て臨床的に腋窩リンパ節腫大を認めず cT1 ~ 3N0 の診断で SLNB を実施した
全 1394 例のうち、術前薬物療法後の 296 例を除外した 1098 例を対象とし
た。RI/ 色素併用法にて SLNB を実施し、術中診断は 2mm 細切捺印細胞診法
で行い、SLN(+) の場合は腋窩郭清に移行した。さらに SLN(+) 症例に対し
て、non-SLN 転移予測モデルとして普及している Memorial Sloan Kettering
Cancer Center(MSKCC) ノモグラムを用いて non-SLN 転移予測値を算出し、
実際の転移状況や腋窩再発と比較検討した。
【結果】術中診断で SLN(+) であっ
た 186 例のうち、185 例に腋窩郭清またはサンプリング郭清を追加実施し
た。これら 185 例の永久診断は、96 例が non-SLN(+)(A 群 )、77 例が nonSLN(-)(B 群 )、12 例が SLN(-) であった。185 例を対象として (1)SLN を 2 個
検索して 1 個 (+)、(2)SLN を 3 個以上検索して 1 個 (+)、(3)SLN を 3 個以上
検索して 2 個 (+)、の症例における A 群の割合をみると、それぞれ 45.5%、
29.4%、46.2%であった。術中診断で SLN(-) であった 912 例のうち 83 例は
永久診断で SLN(+) であったが、1 例を除く 82 例は非郭清のまま経過観察 (C
群 ) を行った。ノモグラムで算出した non-SLN 転移予測値の平均値は A 群:B
群:C 群= 17.4%:10.5%:9.0% であった。さらに A 群における (1)(2)(3)
の non-SLN 転移予測値平均値は、それぞれ 13.1%、5.8%、20.5%であっ
た。平均観察期間約 7 年で、同側腋窩再発は A 群で 1 例 (1.0%)、C 群で 1 例
(1.2%)、非郭清の pN0 群で 3 例 (0.4%) 認めるのみであった。以上のことか
ら (2) の症例は郭清が省略可能であると考えられ、少なくとも 3 個の SLN を検
索することで非郭清の可能性を高められることが推測される。また (1) のなか
でも省略可能な臨床病理学的因子が存在する可能性があり、本会ではこれら
に関しても検討を加えて報告したい。
263
一般セッション(ポスターディスカッション)
四元 大輔 1、相良 安昭 1、大井 恭代 2、松方 絢美 1、寺岡 恵 1、
目的:センチネルリンパ節(SLN)にマクロ転移を認めた場合どのような症例
金光 秀一 1、馬場 信一 1、相良 吉昭 1、雷 哲明 1、相良 吉厚 1、
に腋窩リンパ節郭清省略が許容されるかを知る目的で、ACOSOG Z0011 試
川野 純子 1、松山 義人 1、安藤 充嶽 1
験のエントリー基準に適合する当院の既手術症例について後方視的に検討し
た。方法:2005 年から 2013 年 11 月までの約 9 年間に当院にて術前薬物療法
(目的)ACOSOG Z0011 では、センチネルリンパ節 (SLN) の転移症例におけ
を行わず乳房温存+センチネルリンパ節生検手術を施行した症例(616 例)の
る腋窩郭清 (ALND) 省略の可能性が示唆された。OSNA 法はセンチネルリンパ
うち ACOSOG Z0011 試験のエントリー基準(T2N0 以下、SLN 転移 2 個以
節生検において定量的に CK19mRNA を測定することで転移を判断する。SLN
下、照射を伴う温存手術、術後薬物療法あり)に適合する SLN マクロ転移陽
転移陽性の CK19mRNA コピー数を合計したものを total tumor load(TTL)
性症例は 90 例、全例腋窩リンパ節郭清を行った。SLN を 2 個以上摘出した症
とし、SLN 転移陽性症例における non-SLN 転移陽性率、さらには高度なリ
例(76 例)を対象に非 SLN 転移個数から郭清省略の可能性を検討した。結果:
ンパ節転移症例を予測可能か調べ、ALND 省略可能な症例を予測できるか
SLN を 2 個以上摘出し SLN1 個転移群(63 例)と SLN2 個転移群(13 例)につい
を 検 討 し た。( 対 象 と 方 法 )2009 年 8 月 か ら 2013 年 10 月 ま で に OSNA 法
て非 SLN 転移個数を比較すると、1 個転移群では非 SLN 転移例が 27%(17 例、
でセンチネルリンパ節生検 (SLNB) を施行した cN0 の 1474 症例を対象とし
計 4 個以上転移は 1 例)
、2 個転移群では非 SLN 転移例が 62%(8 例、計 4 個以
た。(結果)346 人 (23.5%) が SLN 陽性。そのうち ALND を施行した 233 症
上転移は 5 例)であり、1 個転移群と 2 個転移群では悪性度に差がみられ郭清
例 (OSNA1+:80 人、OSNA2+:153 人 ) を 解 析 し た。OSNA+i、 偽 陰 性 症 例
省略を考慮するには別個に扱うべきと考えられた。サブタイプ別にみると非
は除外した。平均年齢 56.11 歳 (29-86 歳 )。平均 SLN 個数 1.20 個 (1-4 個 )。
SLN 転移率に差は見られなかった。術前の腫瘍径別(1.0cm 以下、1.1-2.0cm、
平均 SLN 転移個数 1.14 個 (1-4 個 )。平均郭清リンパ節個数 13.10 個 (4-30
2.1cm 以上)にみると非 SLN 転移率に差は見られなかったが、腫瘍径 1.0cm
個 )。平均リンパ節転移個数 2.38 個 (1-28 個 )。non-SLN 転移陽性症例は、
以下の SLN1 個転移群では非 SLN 転移は認めなかった。平均観察期間 45 か月
OSNA1+:25.0%(20 人 /80 人 )、OSNA2+:52.2%(80 人 /153 人 ) で あ っ
(2-87 か月)での遠隔再発例は 3.3%(3 例)、トリプルネガティブ例に 33%
た (p < 0.0001)。また浸潤径、脈管浸潤 (LVI) で有意に関連があったが、年
(2/6 例)の遠隔再発を認めた。局所再発は 1 例であった。結論:ACOSOG 齢、組織型、核異型度、ER、PgR、HER2、Ki67、SLN 転移個数、subtype
Z0011 試験に適合する当院の既手術例からは SLN を 2 個以上検索し 1 個のみ
とは関連なし。4 個以上のリンパ節転移症例は、OSNA1+:7.5%(8 人 /80 人 )、
転移がみられた症例では郭清省略を検討してもよい、術前腫瘍径が 1.0cm 以
OSNA2+:24.8%(38 人 /153 人 ) で あ っ た (p=0.001)。 ま た LVI、SLN 転
下の症例では郭清を省略できる可能性がさらに高いと考えられた。SLN に 2
移個数で有意に関連があったが、その他の因子は関連がなかった。ROC 曲線
個転移を認める症例では郭清省略は慎重であるべきと考えられた。
から non-SLN 転移陽性率と 4 個以上のリンパ節転移率の TTL のカットオフ値
をそれぞれ 5.0 × 103/ μ l(AUC:0.669, 95%CI:0.599-0.738, p < 0.0001)、
1.5 × 104/ μ l(AUC:0.656, 95%CI:0.575-0.736, p=0.001) と し た。 多 変
量解析では non-SLN 転移陽性率について浸潤径、LVI、5.0 × 103/ μ l が独立
した予測因子であった。4 個以上のリンパ節転移については LVI、SLN 転移個
数、TTL ≧ 1.5 × 104/ μ l が独立した予測因子であった。また non-SLN 転移陽
性率において TTL < 5.0 × 103/ μ l では、negative predictive value(NPV) は
75.0%、positive predictive value(PPV) は 53.3% となった。(結語)OSNA
法において TTL は non-SLN 転移や高度なリンパ節転移の予測因子であった。
TTL が低値であれば non-SLN 転移陽性の可能性は低く、SLN 転移個数や LVI
を考慮すれば ALND は省略可能である。
10199
11305
DP-1-005-01
ポスターディスカッション
DP-1-005-02
ACOSOG Z0011 適応症例に腋窩郭清省略は可能か?
当院における臨床的 N0 症例の腋窩リンパ節再発についての検討
1
聖マリアンナ医科大学病院 乳腺・内分泌外科、2 聖マリアンナ医科大学付
属研究所 ブレスト&イメージング先端医療センター、3 聖マリアンナ医科大
学病院 放射線科、4 同 病院病理部
広島市立安佐市民病院 外科
船越 真人、向田 秀則、大森 一郎、吉満 政義、恵美 学、加納 幹浩、
池田 拓広、中島 亨、平林 直樹、多幾山 渉、佐伯 修二、中島 一記、
瀬尾 慎吾、荒木 洋一朗、甲斐 佑一郎、山本 将輝
一般セッション(ポスターディスカッション)
【目的】ACOSOG Z0011 の条件を満たすセンチネルリンパ節(SLN)転移陽
性乳癌に対する腋窩郭清省略の機運が高まってきた。自験例で SNB 施行例中
SLN 転移陽性例を後方視的に検討し、Z0011 適応例での腋窩郭清省略の妥当
性を検索した。【対象と方法】対象は 2010 年から 2012 年に手術を施行した
乳癌症例 360 例のうち,SNB を施行した 302 例。(T1-2,N0 例。PST 例は
適応外。平均観察期間 2.2 年)SNB は色素 +RI 法。迅速病理にて SLN 陽性例
は全例腋窩廓清を施行した。SLN 転移は永久病理で判断し、術中迅速陰性永
久病理陽性例は原則腋窩非郭清とした。SNB 施行全例を SLN 転移陽性例、陰
性例と分類し臨床病理学的因子との相関を検討した。次に SLN 転移陽性例
を,SLN のみへの転移群,Non-SLN への転移群に分類し,臨床病理学的因子
との相関を検討した。さらに SLN 転移陽性例中 Z0011 適応例にしぼり同様の
解析を行った。加えて再発症例、SLN 転移陽性腋窩非郭清例の検討を行った。
【結果】SLN 転移症例は 38 例(12.5%)。SLN 転移陰性、陽性群の比較では腫
瘍径、リンパ管侵襲において有意差を認めた。SLN 陽性例中 SLN のみへの転
移例は 25 例(65%)であり,Non-SLN への転移例は 13 例(35%)であった.
SLN 転移個数別 non-SLN 転移率は,1 個(micrometa)0%,1 個(macrometa)
18%,2 個 32%,3 個以上 100%。non-SLN 転移 陽性 / 陰性例は,原発巣の病
理組織学的比較ではリンパ管侵襲において有意差を認めた。38 例中 Z0011 適
応例は 31 例(81.5%)で6例(19.8%)に non-SLN 転移を認めた。さらにリン
パ節転移4個以上で治療方針変更の可能性がある症例は2例(6%)であった。
SLN 転移陽性腋窩非郭清は6例で micrometa5 例、macrometa 1例で全例
再発は認めていない。SLN 転移陰性術後再発は 3 例(1.1%)で 3 症例とも SNB
は 0/2、luminal B 例で化学療法は未施行例。2例は腋窩リンパ節再発のみで
rescue 出来たが、1例は全身転移を認めた。【考察】1)Z0011 適応症例とな
る SLN 転移 2 個以下では 19.8%に non-SLN 転移を認めた。SLN の転移状況,
腫瘍の性質から non-SLN 転移予測が可能か検討したが,転移 1 個 micrometa
以外は non-SLN 転移陰性が予測できなかった。2)Z0011 適応例のうちリン
パ節転移4個以上で治療方針変更の可能性がある症例は2例(6%)であった。
3)当院では SLN micrometa 例は腋窩非郭清を開始している。Z0011 試験
適応症例への適応拡大を早期に開始したい。
志茂 彩華 1、大井 涼子 1、黒田 貴子 1、小島 聖子 1、永澤 慧 1、
岩重 玲子 1、上島 知子 1、土屋 恭子 1、小島 康幸 1、志茂 新 1、
速水 亮介 1、西川 徹 1、白 英 1,2、川本 久紀 1,2、首藤 昭彦 1,2、福田 護 2、
中島 康雄 3、前田 一郎 4、津川 浩一郎 1
【背景】乳癌診療ガイドラインでは、センチネルリンパ節(SLN)が陰性であれば、
腋窩リンパ節郭清(ALND)は省略可能である。さらに、SLNにmicrometastasis
やITCが 認 め ら れ た 場 合 に お い て も 非SLN陽 性 率 が 低 い と い う 報 告 か ら、
ALND省 略 す る 傾 向 に あ る。 ま た、ACOSOG Z-0011の 結 果 よ り、SLNに
macrometastasisが認められた場合においても、非郭清適格基準に合致する症例
であれば、ALNDは省略可能の可能性がある。但し、乳房照射を伴う乳房温存術、
全身治療を施行するという条件が伴っている。そこで今回、当院で施行したセン
チネルリンパ節生検(SLNB)後の腋窩リンパ節再発について調査し、乳房照射を
行わない乳房全摘術においてもALND省略が可能かどうかをretrospectiveに検
討した。
【対象】2002年4月~ 2013年1月当院でSLNBを施行した臨床的N0の
2348症例(乳房温存術:1677症例、乳房切除術:671症例)。臨床的N0の判断は、
術前超音波、CT、細胞診などで評価。術中迅速病理診断で陽性となり、ALNDに
至った症例は除外した。乳房温存術は全例、術後に全乳房照射を施行。一方、乳
房切除術は全例、乳房照射を省略したもので検討した。
【結果】SLNB省略し、永
久病理検査でSLN陽性であった症例は、乳房温存術で48症例(2.9%)、乳房切除
術で27症例(4.0%)。内訳はpN(i+)が6症例(8%)、pN1micが62症例(83%)、
pN1macが7症例(9%)であった。腋窩リンパ節再発は乳房温存術で16症例
(1.0%)、乳房切除術では8症例(1.2%)と有意差は認められなかった。乳房切除
後に腋窩リンパ節再発を認めた症例は、組織型では浸潤性乳管癌4症例(50%)、
浸潤性小葉癌3症例(37.5%)、非浸潤性乳管癌1症例(12.5%)、腫瘍径ではTis
1症 例(12.5%)、T1 1症 例(12.5%)、T2 4症 例(50%)、T3- 2症 例(25%)、
subtypeではtriple negativeが3症例(37.5%)、Luminal typeが3症例(37.5%)、
HER2 typeが2症例(25%)であった。3症例(37.5%)は全身治療を施行していな
かった。また2症例(25%)はSLN陰性であったが、永久病理でmicrometastasis
であり、腋窩郭清を省略していた。全身治療の選択肢の増加および個別化治療が
進んできたために、ALNDを省略する方向になりつつある。今回の当院での検討
により、臨床的N0症例に対してはALNDの省略に加えて、乳房照射も省略可能
である可能性がある。た但し、今後さらなる症例を蓄積検討し、臨床的N0症例
の乳房切除術においても非郭清適格基準を検討する必要があると考える。
11929
11432
センチネルリンパ節生検後の腋窩再発症例の検討
Axillary reverse mapping 法とセンチネルリンパ節生検
DP-1-005-03
DP-1-005-04
1
名古屋大学大学院 腫瘍外科学、
2
名古屋大学医学部附属病院 乳腺・内分泌外科
金沢医科大学 乳腺・内分泌外科
野口 美樹、森岡 絵美、大野 由夏子、中野 泰治、野口 昌邦、
小坂 健夫
角田 伸行 1、村田 嘉彦 1、伊東 悠子 1、佐藤 直紀 1、中西 賢一 2、
武内 大 2、都島 由希子 2、林 裕倫 2、菊森 豊根 2、梛野 正人 1
【背景】センチネルリンパ節(以下 SLN)転移陽性症例における腋窩郭清省略
の可能性を検討した複数の大規模臨床試験において、郭清省略を支持する結
果が発表され、郭清省略に積極的な施設も見られるようになっている。実際
に、SLN 陽性でも郭清リンパ節は転移陰性の症例を多く経験するので、この
流れに異論はない。一方、SLN 生検後郭清省略例において、腋窩リンパ節に
初再発を認めた症例の詳細な検討は少ない為、本調査を行った。【対象】2005
年より SLNB による腋窩郭清省略を導入し、2013 年 11 月までに 873 例の
SLNB を行った。このうち、腋窩郭清を省略した 732 例を調査対象とした。
【結果】初再発病巣として 8 例に腋窩リンパ節再発を認めた。Luminal 型 1 例、
Luminal/HER2 型 2 例、HER2 型 1 例、triple negative 型 4 例( 髄 様 癌 2 例 を
含む)。術後補助薬物治療は、無治療 3 例、化学療法 3 例(トラスツズマブなし)、
内分泌療法 2 例。初回手術後初再発までの中央値は 23.5 ヶ月(12 ~ 52 ヶ月)。
同時に遠隔転移巣を認めたのは 2 例(多発骨 1 例、同側頚部リンパ節 1 例)
で、骨転移を伴った症例は他院転院し追跡不能であった。追跡可能な 7 例全例
で腋窩郭清が追加されていた。同側頚部リンパ節転移を伴っていた症例では、
再手術前に化学療法実施後に手術が行われていた。郭清リンパ節は pN1 が 2
例、pN2 が 3 例、pN3 が 2 例であった。腋窩郭清を行った 7 例中 6 例に再手術
前後で薬物治療が追加されていた。この 6 例中 4 例は無病生存中で、2 例は遠
隔再発を来たした(1 例は再手術後 3 年で原病死し、1 例は担癌生存中)。再手
術後に無治療であった 1 例は、術後 4 ヶ月で遠隔転移が出現し、その後も無治
療を希望され 3 ヶ月後に原病死された。【まとめ】8 例中 7 例が 3 年以内に腋窩
再発を来していた。再手術を行った 7 例中 3 例で術後短期間に遠隔再発を認め
ていたので、外科治療に加えて全身治療がより重視されるべきと考えられた。
【背景】Axillary reverse mapping (ARM) 法は、高度リンパ節転移症例では
ARM リンパ節にも転移を認めるため,有用ではないが,c N0 症例では腋窩
リンパ節郭清を行っても ARM リンパ節に転移を認めないため,有用である可
能性があると報告してきた.【目的】c N0 症例はセンチネルリンパ節に転移
を認めた場合,ARM リンパ節を温存した腋窩リンパ節郭清が可能であるか検
討する。【方法】術前に N0 と診断した症例にはセンチネルリンパ節生検を行
い、術中に ICG による蛍光リンパ管造影を行い、ARM リンパ管・ARM リンパ
節を同定する.転移を認めた場合 ARM リンパ節を含めて腋窩リンパ節郭清を
行う。【結果】センチネルリンパ節生検を行った 228 例中、センチネルリンパ
節が ARM リンパ節であった症例は 54 例(24%)であった。また、センチネル
リンパ節に転移を認めた症例 40 例(18%)であり、これらの症例に腋窩リン
パ節郭清を行ったところ、郭清した ARM リンパ節に転移を認めた症例が 1 例
(0.4%)あった。また,センチネルリンパ節生検のみを行った症例のうちセン
チネルリンパ節が ARM リンパ節であった 2 例(0.9%)に浮腫を認めた。
【結語】
228 例の乳癌手術症例に ARM 法を施行した。センチネルリンパ節生検症例で
センチネルリンパ節に転移を認めた症例で、郭清した他の ARM リンパ節に転
移を認たのは 0.4% であり、ARM リンパ節が温存できる可能性が示唆された。
また,センチネルリンパ節が ARM リンパ節であった場合に浮腫を発生する危
険が高くなり,リンパ浮腫に対する指導が必要であると考える。
264
ポスターディスカッション
10121
10137
非浸潤癌初回治療後の二次乳癌発生に関する検討
温存乳房内再発乳癌に対し乳房全切除を施行したにもかかわら
ず同側局所に再々発するリスク因子の解析
DP-1-005-05
DP-1-005-06
1
がん研有明病院 乳腺センター乳腺外科、
2
がん研有明病院 乳腺センター乳腺内科、3 がん研有明病院 画像診断部、
4
がん研有明病院 放射線治療部、5 がん研究会がん研究所 病理部
日本乳癌学会 班研究石飛班
田辺 真彦、石飛 真人、岩瀬 拓士、奥村 恭博、枝園 忠彦、増田 慎三、
吉田 敦、有馬 信之、西村 令喜、稲治 英生、中務 克彦、菰池 佳史、
田中 暁、田中 健大、田口 哲也
蒔田 益次郎 1、坂井 威彦 1、飯島 耕太郎 1、森園 英智 1、宮城 由美 1、
荻谷 朗子 1、中島 絵里 1、荒木 和浩 2、高橋 俊二 2、伊藤 良則 2、
五味 直哉 3、小口 正彦 4、秋山 太 5、岩瀬 拓士 1
【背景と目的】温存乳房内再発 Ipsilateral Breast Tumor Recurrence(IBTR)
に対し、乳房全切除施行後にもかかわらず同側局所に再々発する場合があ
る。IBTR 対し乳房全切除後、同側局所再々発リスク因子を明らかにするこ
とを目的とした。【対象と方法】班研究分担 8 施設 271 症例の IBTR に対し乳
房全切除を施行した 122 症例を対象とした。ER,PgR,HER2 の免疫染色は各
施設染色 / 判定、Ki67 は中央染色 / 判定とした。〈初発癌〉年齢中央値 46(2680)歳、術前化学療法 (NAC) 症例 7 例(6%)。非浸潤癌 10%, 浸潤癌(浸潤
径 別 )t1 42%; t2 26%。 リ ン パ 節 転 移 n0 60%; n1-3 個 23%; n ≧ 4 個
7%。部分切除断端:陽性 5%; 1-4mm 20%; 5mm 以上 70%, 脈管 (ly,v)
侵襲陽性 43%、ER 陽性 52%; PgR 陽性 43%; HER2 陽性 14%, 術後 : 化学
療法あり 35%; ホルモン療法あり 47%; 放射線照射あり 49%。〈IBTR〉5 年
未満で発生 57%、再発形式(各施設判断):New Primary(NP) 15%; True
Recurrence(TR) 77%。 非 浸 潤 癌:10%; 浸 潤 癌: 浸 潤 径 < 2cm 62%;
2cm < 33%。ER 陽 性 51%; PgR 陽 性 39%; HER2 陽 性 29%; Ki67 <
14%(25%); < 20%(41%); < 30%(59%); 30% < (23%)、 脈 管 侵 襲 陽
性 45%。術後 : 化学療法あり 30%;ホルモン療法あり 48%;放射線照射あ
り 2%。IBTR 手術日から局所再々発診断日までの期間を算出し、各因子毎に
Kaplan-Meier 法で生存曲線を求め、ログランク検定で各群の差を検討した。
【結果】同側局所再々発 16 例 (13%)、無 - 局所再々発率は、5 年 86% ; 10 年
78%、NAC 症例では局所再々発 0 例。初回手術時脈管侵襲陽性 (p=0.011)、
IBTR 発生まで術後 5 年以内 (p=0.012)、IBTR 浸潤径 2cm 以上 (p=0.028)
で有意差を認め、IBTR 手術時脈管侵襲陽性も同様の傾向を認めた(p=0.054)。
NP が TR より予後良好な傾向であったが有意差は認めなかった (p=0.211)。
IBTR の Ki67 カットオフ値による差は、14%(p=0.047), 20%(p=0.027),
30%(p=0.300) であった。初回 /IBTR 手術時年齢、各種受容体発現の有無、
初回 /IBTR 手術後の治療(薬物療法、放射線照射)の有無では有意差を認め
なかった。【まとめ】脈管侵襲陽性(初回 /IBTR)、術後 5 年以内の IBTR 発生、
IBTR 浸潤径> 2cm、IBTR Ki67 > 14-20% の場合、乳房全切除を施行して
も局所に再々発を来す可能性が高いことが示唆された。本研究では、術後治
療の有無による明らかな差は認められなかったが、再々発高リスク群である
ことを念頭に手術および術後療法を選択することが必要と推察した。
10765
10951
温存乳房内再発は遠隔転移に影響を与えるのか
長期成績からみた乳頭温存乳房切除術後の再発に関連する因子
に関する検討
DP-1-006-01
DP-1-006-02
国立がん研究センター東病院 乳腺外科
1
岡田 淑、和田 徳昭、米山 公康、山内 稚佐子、康 裕紀子
【背景・目的】温存乳房内再発の遠隔転移発生時期と予後は十分に解明されて
いない . 乳房内再発に遠隔転移をきたした症例の特徴と予後について検討し
た【
. 対象と方法】93 年 4 月から 10 年 1 月まで当院で手術を施行した原発乳癌
3394 例のうち ,stageIV を除く乳房温存術は 1934 例であった . このうち温存
乳房皮膚再発を含む乳房内再発 70 例 (3.6% ) を遠隔転移の発生時期別に 3 群
に分け検討した 【
. 結果】乳房内再発 70 例の初回手術からの観察期間中央値は
119 ヶ月 [27-247 ヶ月 ], 年齢中央値 53 歳 [27-85 歳 ], 腫瘍径中央値 2cm[04.5cm], 切除断端陰性 54 例 (77.1% ), 術後照射施行 39 例 (55.7% ), 薬物療法
施行は 34 例 ( 術前化学療法 7 例を含む ) であった . 乳房内再発と同時に遠隔転
移を認めた「同時群」は 7 例 (10.0% ), 乳房内再発後に遠隔転移を認めた「後発
群」は 11 例 (15.7% ), 遠隔転移を伴わない「無遠隔転移群」は 52 例 (74.3% )
であった .3 群での初回手術から温存再発までの平均期間 (RFS) は各々 56 ヶ
月 ,39 か月 ,76 ヶ月であり , 後発群は無遠隔転移群に比べ有意に短かった (P <
0.05) が , 同時群と後発群に差を認めなかった .2 年以内の乳房内再発 11 例の
うち後発群は 6 例認めたが同時群はなかった . また後発群の平均無遠隔転移期
間は 81 ヶ月であり同時群より長いが有意差を認めなかった .3 群での平均全生
存期間 (OS) は各々 93 ヶ月 ,98 ヶ月 ,140 ヶ月で , 死亡は各々 5 例 ,7 例 ,1 例
( 他癌死 ) に認めた .Kaplan-Meier 生存曲線を Log-Rank test にて比較すると
同時群 , 後発群ともに無遠隔転移群に比べ有意に短かった (P < 0.01) が , 同時
群と後発群に差を認めなかった . 臨床病理学的因子の比較では , 同時群で T2 以
上 , 脈管侵襲陽性が有意に高く , 若年 , リンパ節転移個数 , 術前化学療法率 , 薬
物療法率は有意ではないがやはり同時群で高い傾向がみられた 【
. まとめ】RFS
の長い症例は遠隔転移リスクが低い . 一方 , 初回手術時の臨床病理学的因子は
同時群で悪いが , 早期の乳房内再発は後発群に多く , その遠隔転移発症時期は
同時群よりやや遅いものの有意差はなかった .OS も同時群と同等 , つまり遠隔
転移発症後の予後は短かった 【
. 結語】同時群と後発群の無遠隔転移期間や OS
に有意差がないことから , 遠隔転移をきたす症例は最初から決まっており , 乳
房内再発は遠隔転移発症に影響を与えないのかもしれない . しかし早期の乳房
内再発は遠隔転移の前兆とも解釈でき , 乳房内再発後の十分な治療は遠隔転移
を減らし予後を改善するのに役立つ可能性がある .
3
和歌山県立医科大学付属病院紀北分院 外科、2 串本有田病院、
紀和ブレストセンター、4 岸和田市民病院乳腺科、5 さくらい乳腺クリニック
櫻井 照久 1、甚田 恵里 1、鈴間 孝臣 2、梅村 定司 3、吉村 吾郎 4、
櫻井 武雄 5
我々は、乳頭温存乳房切除術(以下 NSM)を 1978 年より開始し 800 例以上の
経験を有している。NSM は近年、欧米でも増加傾向にあり、本邦では昨年に
乳癌術後の人工乳房による再建が保険適応になったこと、JOPBS 学会が発足
したことなどから、近年急速に増えつつある。しかしながら、従来の乳房切
除とは異なり NSM は乳頭乳輪ならびに皮弁を温存する術式であり、乳頭壊
死や皮弁壊死などの手術合併症の問題や、乳頭乳輪再発、皮弁再発など腫瘍
学的問題があり、手術法(乳頭乳輪下の処理、皮弁の厚さ)を含めて議論され
ている。これまで、術式の安全性に関して乳頭壊死症例は皆無で合併症頻度
は極めて低頻度であること (SABCS2008、Med Oncol 2013)、全例非照射
にて長期の DFS、OS において乳房切除術と同等である (SABCS2008、Med
Oncol 2013)、人工乳房による再建例の予後は非再建例の予後に遜色ない
(SABCS2011、日本乳癌学会 2013)、乳頭乳輪再発の頻度 (%,10y) は stage
0/1/2A/2B/3 で そ れ ぞ れ 0/2.9/5.0/2.4/5.3 で、 皮 弁 再 発 の 頻 度 (%,10y)
は 0/3.9/3.3/4.0/14 であり、乳頭乳輪再発は全例 salvage surgery が可能
で予後は 93%(5 生 )、皮弁再発の予後は 70%(5 生 ) であり、乳頭乳輪再発
に比較し有意に予後不良である(日本乳癌学会 2013)、乳輪腫瘍間距離 (D)
が 1cm 以上であれば乳頭乳輪再発が 10 年で 2% 未満 ( 日本外科学会 2010、
JOPBS2013) を報告している。自験例の長期成績より非照射の場合は stage3
未満であること、D が 1cm 以上であることが局所再発を低頻度に抑える観点
から重要であると考えている。今回、1991 年から 1994 年までに NSM を施行
し詳細な病理組織学的検討が行われた 124 例(観察期間 120 カ月)を対象に再
発例(乳頭乳輪 3 例、皮弁例、リンパ節 2 例、遠隔再発 7 例)、非再発例に分類し、
腫瘍径(2cm 未満、以上)、リンパ節転移、組織型、EIC、NG (1&2 vs 3) な
らびに免疫染色による ER、PgR、Her2、Ki67 に加え、p53、Bcl2、BRCA1
(腫瘍内発現)に関し再発例と非再発例を比較検討した。結果は腫瘍径、組織
型、EIC、NG、ER、PgR、Her2、Ki67 ならびに Bcl2 発現においては両者に
差はなかったが、リンパ節転移、BRCA1 発現においては有意差を認め、p53
発現は関与する傾向を認めた。本検討ではリンパ節転移、BRCA1 発現が NSM
後の再発に関与する可能性が示唆された。
265
一般セッション(ポスターディスカッション)
非浸潤癌は局所再発がなければ治癒可能な疾患であるが、近年二次乳癌の発
生率が高いことが報告されてきた。浸潤性の二次乳癌が発生すれば生命予後
を脅かす状況になりうる。非浸潤癌の二次乳癌発生の状況と特徴について検
討した。[ 対象および方法 ] 1994 年~ 2003 年の 6697 件の手術例から治癒
手術として乳房切除・乳房部分切除を施行した症例で、男性乳癌、同時手術
の両側乳癌、術前治療症例を除外し、非浸潤癌 685 例と浸潤癌の割面腫瘍径
3 cm以下 3139 例の合計 3824 例を対象とした。二次乳癌の定義は対側乳癌
と乳房部分切除症例の乳房内再発のうち NP(New Primary)とした。NP の
定義はお互いの病変に非連続性が証明されお互いの病変が乳管内成分を有す
る場合とした。NP 以外の局所再発と領域・遠隔再発、死亡は打ち切りとし、
Kaplan-Meier 法で 10 年累積イベント発生率を算出、有意差検定は Log-rank
検定を用いp< 0.05 を有意差ありとし、多変量解析は Cox の比例ハザード
モデルを適用した。観察期間中央値は 10.0 年であった。[ 結果 ]NP44、対側
乳癌 154 で二次乳癌は 191 例にみられた。浸潤の有無で 10 年発生率をみる
と非浸潤癌 11%、浸潤癌 3.9%で有意な差がみられた(p< 0.0001)。二次
乳癌発生に関連する因子は多変量解析により初回局所治療 ( 乳房切除、照射
温存、非照射温存 ) の乳房切除 (HR 0.55, 95%CI:0.38-0.796,p=0.0015)、
出 産 歴 あ り (HR 0.593, 95%CI:0.42-0.835,p=0.0028) 、 浸 潤 癌 (HR
0.524, 95%CI:0.319-0.861,p=0.0108)、 年 齢 45 歳 以 上(HR 0.635,
95%CI:0.445-0.906,p=0.0122)で あ っ た。 非 浸 潤 癌 で 検 討 す る と 40 歳
以 上 (HR 0.453, 95%CI:0.221-0.929,p=0.0306)、 乳 房 切 除 (HR 0.515,
95%CI:0.277-0.957,p=0.0359) であった。年齢と浸潤の有無で 4 群に分け
て二次乳癌発生率をみると浸潤癌 40 歳以上 3.6%、浸潤癌 40 歳未満 5.8%、
非浸潤癌 40 歳以上 9.2%、非浸潤癌 40 歳未満 21.8%であった。腫瘍径ごと
に初回イベント ( 遠隔再発、領域再発、真の局所再発、二次乳癌 ) をみると 2
cm以下と 3 cm以下は遠隔転移が 43.7%、55.7%と大半を占めていたが、
非浸潤癌、1 cm以下では二次乳癌が 86.9%、54.3%と大部分を占めた。非
浸潤癌治療後に発生した二次乳癌のうち 49 病変(59.2%)が浸潤癌であった
が、浸潤性二次乳癌による死亡は 1 例のみだった。[ 結語 ] 非浸潤癌は二次乳
癌の発生率が高く、とくに 40 歳未満では将来的な二次乳癌発生のことも考慮
する必要があると思われる。
ポスターディスカッション
10959
11664
乳頭・乳輪温存乳房切除術後の局所再発リスク因子の検討
皮下乳腺全摘術(一期的乳房再建併用)を施行した乳癌 266 例の
治療成績の検討
DP-1-006-03
1
DP-1-006-04
川崎医科大学附属病院 乳腺甲状腺外科、2 川崎医科大学附属病院 病理学 2
1
山下 哲正 1、紅林 淳一 1、齋藤 亙 1、太田 裕介 1、小池 良和 1、
下 登志朗 1、山本 裕 1、田中 克浩 1、鹿股 直樹 2、森谷 卓也 2、
緒方 良平 1、川野 汐織 1、森 彩子 1
2
一般セッション(ポスターディスカッション)
乳癌の根治術である乳房切除術では、腫瘍直上の皮膚も同時に切除され
て き た。 手 術 の 縮 小 化、 整 容 性 の 向 上 を 目 指 し、 乳 頭・ 乳 輪 や 腫 瘍 直 上
皮膚の切除を行わず、同時乳房再建を可能とする皮膚温存乳房切除(skinsparing mastectomy, SSM)や乳頭・乳輪温存乳房切除術(nipple-sparing
mastectomy, NSM)が 1990 年代から実施されてきている。これらの術式の
局所再発のリスクに関するレビューでは、乳房切除術と比べ有意の差が認め
られないことが示されているが、大規模な比較試験はなく、未だ検討の余地
が残る。当院では,1983 年を皮切りに 2012 年までに、原則として腫瘍径 3
cm 以下で広範な乳管内進展が予想される原発乳癌症例を対象に計 131 件の
NSM を施行してきた.今回、NSM 後の局所再発とそのリスクについて検討
した。当院で 1995 年 1 月~ 2010 年 12 月に根治手術を施行した Stage 0-3
の原発性乳癌は 1,877 件(1831 例、乳房切除術 838 件、乳房温存術 926 件、
NSM113 件)であった.全症例における局所再発は 33 件 (1.8%、観察期間の
中央値 21.2 月 )、乳房切除症例では 18 件 (2.1%、観察期間の中央値 30.8 ヶ
月 )、NSM 症 例 で は 10 件 (7.1%、 観 察 期 間 の 中 央 値 127.3 ヶ 月 ) で あ り、
NSM における局所再発率は他と比較してやや高率であった。NSM 後の局所再
発リスク因子について,年齢,術前生検の有無,臨床的および病理学的腫瘍径,
組織型,ホルモン受容体,HER2,核グレード,リンパ管侵襲,静脈侵襲,サ
ブタイプを単変量及び多変量解析を用いて検討した.合わせて無再発生存の
リスク因子ついても検討した.単変量解析では、(1) 年齢が 40 歳以下 (Logrank
検定 , p 値 =0.036),(2) 術前に生検あり (p 値 =0.082),(3) 浸潤癌(非浸潤
癌と比較)が局所再発のリスク因子として抽出された。多変量解析では、(1)( ハ
ザード比 1.176, p 値 =0.030) と (2) ( ハザード比 8.850, p 値 =0.016) が独
立したリスク因子であった。一方、遠隔再発を含めた再発率に関しては、多
変量解析において、40 歳以下 ( ハザード比 3.413, p 値 =0.048),エストロゲ
ン受容体陰性 ( ハザード比 0.247, p 値 =0.043),リンパ節転移陽性 ( ハザー
ド比 3.289, p 値 =0.047) が独立したリスク因子であった。
大阪大学医学部附属病院 乳腺・内分泌外科、
大阪大学医学部附属病院 形成外科
渡邉 法之 1、金 昇晋 1、直居 靖人 1、加々良 尚文 1、下田 雅史 1、
丸山 尚美 1、下村 淳 1、島津 研三 1、矢野 健二 2、野口 眞三郎 1
【はじめに】皮下乳腺全摘術(一期的乳房再建併用)を施行した乳癌症例の治
療成績、特に局所再発と合併症を retrospective に検討した。【方法】対象は
2001 年 1 月 ~ 2012 年 12 月 に 当 科 で 手 術 を 施 行 し た 266 例 (skin-sparing
mastectomy 164 例、nipple-sparing mastectomy 102 例 )。術後観察期間
の中央値は 66.5 か月。【結果】患者の年齢は 22 ~ 73 歳(中央値:45 歳)。病
期は0期 77 例、1 期 107 例、2 期 70 例、3A 期 5 例、3B 期 1 例、局所再発
例 6 例。浸潤癌は 187 例で、ER / PR / HER2 陽性の割合は 159/150/37 例
であった。非浸潤癌は 79 例で、ER / PR 陽性は 61/56 例であった。乳房再
建術式はエキスパンダー留置 108 例、広背筋皮弁 93 例、深下腹壁動脈穿通枝
皮弁 57 例、腹直筋皮弁 8 例。補助療法は、浸潤癌例では化学療法 68 例、内
分泌療法 152 例、放射線治療 11 例で、非浸潤癌例では内分泌療法 24 例のみ
であった。浸潤癌症例の 5 年の局所再発/領域再発/遠隔転移率はそれぞれ
3.2%(6 例 )、2.7%(5 例 )、1.1%(2 例)であった。また、非浸潤癌症例では
それぞれ 2.5%(2 例 )、1.3%(1 例 )、0% であった。局所再発 8 例に対しては、
手術±放射線治療+全身薬物治療を実施したが、その後 2 例が遠隔再発し死亡
した。局所再発の危険因子は、腫瘍径(3cm 以上)が多変量解析にて有意な危
険因子であったが、浸潤癌/非浸潤癌、年齢、組織学的グレード、HER2、リ
ンパ節転移、MRI 上の皮膚-腫瘍間距離などは有意な因子ではなかった。術
後合併症は全体で 41 例 (15.4%) に認め、乳輪乳頭・創縁壊死 29 例 (10.9%)、
感染 9 例 (3.4%)、後出血・血腫 6 例 (2.3%) で、外科的処置を要するものは
27 例 (10.2%) であった。エキスパンダー/インプラント除去を 8 例 (7.4%、
8/108 例 ) で実施した。【結語】皮下乳腺全摘術(一期的乳房再建併用)の 5 年
の局所再発率 / 領域再発率 / 遠隔再発率は許容範囲であると考えられる。局所
再発の危険因子は、腫瘍径(3cm 以上)であった。外科的処置を要する合併症
が 10.2% に認められ、それらを減少させる工夫が必要であると考えられた。
10422
10115
Nipple-sparing mastectomy 後の胸壁再発症例の検討
主観的整容性評価と BCCT.core による客観的整容性評価の比較
と問題点
DP-1-006-05
DP-1-006-06
亀田総合病院 乳腺科
坂本 尚美、中川 梨恵、沖永 昌悟、寺岡 晃、佐川 倫子、池田 奈央子、
山城 典恵、角田 ゆう子、坂本 正明、福間 英祐、淺野 裕子
【目的】Nipple-sparing mastectomy(NSM) 後の胸壁再発に関わる因子を検
討すること。【対象と方法】2003 年 1 月から 2011 年 6 月までの間に内視鏡下
に施行した NSM443 例 462 乳房を対象とし、胸壁再発率および再発症例の臨
床病理学的検討をおこなった。【結果】経過観察期間 13 ~ 125 ヶ月 ( 中央値
53.6 ヶ月 ) の間で、胸壁再発は 12 例 12 乳房 (2.6%、乳頭乳輪部 1 例、皮膚
皮下 11 例 ) に認めた。12 例中 10 例は胸壁のみの再発であった。12 例の初回
手術時の年齢中央値は 40 歳、組織型は非浸潤性乳管癌 (DCIS) が 4 例、浸潤
性乳管癌 (IDC) が 6 例、粘液癌が 2 例で、病期は 0 が 4 例、I が 2 例、IIA が 2 例、
IIB が 2 例、IIIA が 2 例であった。またリンパ節転移は 5 例に認めた。初回手
術では 4 例で病変が切除断端に近接していた。胸壁再発までの期間は 12 ~
105 ヶ月(中央値 26.2 ヶ月)、再発の発見契機は自覚症状が 10 例(腫瘤触知 9
例、乳頭分泌 1 例)、画像発見が 2 例であり、全例初回手術の原発巣付近に再
発した。再発巣の切除は 9 例に施行され、組織型は DCIS が 2 例、IDC が 5 例、
粘液癌が 2 例であった。無再発の症例に比べると、胸壁再発症例は若年で初
回の切除断端近接症例、そして粘液癌の割合が高かった。一方、リンパ節転
移の有無や ER あるいは HER2 発現の有無とは関連がなかった。【結論】初回手
術時は断端を陰性にすることが大切であり、特に粘液癌症例では注意が必要
である。また胸壁再発の 8 割は自覚症状で発見されているため、mastectomy
後でも自己触診は推奨されると考えられた。
266
三重大学医学部附属病院 乳腺外科
野原 有起、野呂 綾、今井 奈央、澁澤 舞衣、柏倉 由実、中村 卓、
木村 弘子、山下 雅子、花村 典子、小川 朋子、伊藤 みのり、稲上 馨子、
三井 貴子
乳房温存療法後の整容性評価法は統一されていないが、現在、主観的評価
である Harris らの方法 ( 以下 Harris)、乳癌学会班研究沢井班による方法 ( 以
下沢井班 )、客観的評価であり欧米で用いられている BCCT.core 等がある。
Harris は 4 段階で全体的な印象で評価する方法で簡便だが客観性に乏しい。
沢井班は乳房の大きさ・形・硬さ、瘢痕、乳頭・乳輪の大きさ・形・色調、
乳頭位置、乳房最下垂点位置の 8 項目をスコアリングする方法でどの項目が
整容性に影響したかを理解できるが煩雑である。BCCT.core は正面写真をコ
ンピュータ解析する方法で結果は 4 段階評価で得られる。これらを使用し主
観的評価と客観的評価を比較し差異から問題点を検討した。【対象と方法】同
一術者の乳房温存術 163 例を対象に Harris、沢井班、BCCT.core で整容性
評価を行い、主観的評価と客観的評価の差異とその要因を検討し 3 者の信頼
性を級内相関関数 (Intraclass Correlation Coefficient;以下 ICC) で評価し
た。【結果】Harris は Excellent( 以下 E)41 例、Good( 以下 G)104 例 (E と G を
合 わ せ た Acceptable 145 例 :89%)、Fair( 以 下 F)18 例、Poor( 以 下 P) 0 例
(F と P を 合 わ せ た Unacceptable 18 例 :11%)。 沢 井 班 は E 46 例、G 93 例
(Acceptable 139 例 :85.3%)、F 23 例、P 1 例 (Unacceptable 24 例 :14.7%)。
BCCT.core は E 30 例、G 93 例(Acceptable123 例 :75.5%)、F 36 例、P 4
例 (Unacceptable40 例 :24.5%)。Harris と沢井班は 155 例 (95.1%) が一致。
BCCT.core が Acceptable だ が 他 2 者 が Unacceptable は 7 例 ( 内 6 例 で 瘢 痕
を 自 動 認 識 で き ず )。BCCT.core が Unacceptable だ が 他 2 者 が Acceptable
は 22 例 ( 内 19 例 で 形 は 等 し い が volume 不 足 )。BCCT.core で 写 真 撮 影 時
の 明 る さ が 影 響 し た の は 4 例。ICC は BCCT.core vs Harris0.399(Fair)、
BCCT.core vs 沢 井 班 0.499(Moderate)、Harris vs 沢 井 班 0.912(Almost
perfect)。【 考 察 】Harris と 沢 井 班 は 155 例 (95.1%) で 評 価 が 一 致 し ICC は
Almost perfect だが、BCCT.core との比較では ICC が Fair 及び Moderate と
なり、主観的評価と客観的評価で差異があった。BCCT.core の方が判定が良
くなった 7 例中 6 例で手術創の認識ができず自動解析の限界と考えられた。
BCCT.core の方が評価が悪くなった 22 例中 19 例は、volume 不足も形状が良
好であったため主観的評価が良くなったと考えられた。主観的評価法と乖離
の無い、評価者に左右されない客観的評価法が理想であるが、現状では限界
があると考えられた。
ポスターディスカッション
11128
11877
乳がん早期発見のためのセルフケアを促す DVD 教材の開発と妥
当性の検討
乳がん周術期患者の睡眠障害と不安にアロマテラピー有効性を
検討するランダム化比較試験
DP-1-007-01
1
4
DP-1-007-02
兵庫医療大学 看護学部、2 聖路加看護大学、3 聖路加国際病院、
茶屋町ブレストクリニック、5 桜新町濱岡ブレストクリニック
1
那覇西クリニック 看護部、2 那覇西クリニック 乳腺外科
小松 亜紀子 1、玉城 信光 2、鎌田 義彦 2、上原 協 2、玉城 研太朗 2、
山城 和子 1
鈴木 久美 1、林 直子 2、大畑 美里 3、片岡 弥恵子 2、脇田 和幸 4、
濱岡 剛 5
10409
11528
乳がん看護認定看護師が行う看護専門外来の看護支援に関する
患者の満足度調査
乳がん体験者ボランティアによる患者支援活動の現状と今後の
課題
DP-1-007-03
1
2
DP-1-007-04
1
埼玉医科大学国際医療センター 看護部、
埼玉医科大学国際医療センター 乳腺腫瘍科
2
小島 真奈美 1、岡部 みどり 1、佐伯 俊昭 2
【背景】外来において患者や家族の多様かつ複雑な不安や問題に対応するため、
認定看護師による看護専門 外来を設立した。看護専門外来において患者個々
のニーズへの対応や問題解決の可否は看護専門外来の評価 に大きく関与する
と考える。そこで、より良い看護専門外来を行うための評価を行う必要がある。
【目的】看護専門外来を受けた患者の看護支援に対する主観的評価から、看護
支援の満足度を検討する。【方法】2012 年 10 月~ 2013 年 10 月までに看護
専門外来を受けた患者で、本研究に同意を得られた者に質問紙調査を行った。
分析は単純集計とし、自由記載は対象者の言葉をそのまま引用した。【倫理的
配慮】院内IRBの承認を得た後、対象者に文書にて説明し同意を得た。【結
果】対象者は 10 歳代~ 70 歳代の女性 30 名。看護専門外来利用回数平均 1.83
回。相談内容は、リンパ浮腫 11 件、化学療法や内分泌療法の治療や副作用に
ついて7件、病状について 3 件、手術後の生活方法や治療に ついて 2 件、再
建について 1 件、療養中の相談 1 件、未記入 5 件。 質問項目は 1.不安は解消
したかは、大変そう思う 14 件(47%)、そう思う 15 件(50%)
、どちらでもな
い 1 件(3%)、そう思わない、全く思わない 0 件(0%)。2.問題は解決したか
は、大変そう思う 10 件(33%)、そう思う 17 件(57%)、どちらでもない 3 件
(10%)、そう思わない、全く思わないは 0 件(0%)。 3. 相談して良かったかは、
大変そう思う 17 件(57%)、そう思う 12 件(45%)、どちらでもない 1 件(3%)、
そう思わない、全く思わないは 0 件(0%)。4. また相談したいかは、大変そう
思う 13 件(43%)、 そう思う 17 件(57%)、どちらでもない、そう思わない、
全く思わないは 0 件(0%)であった。 看護支援への意見、要望については、
「詳
しいことを聞けた」「分かりやすいアドバイスだった」「医師は 診察時間が限
られていて相談は難しい、もっと早く認定看護師を紹介してもらえば良かっ
た」「安心した 前向きに治療に専念できる」などがあった。【考察】看護専門外
来における看護支援は、高い評価を得られ、患者の満足いく看護支援の提供
が出来ている と考える。しかし、今回の調査では一部の対象者の主観的評価
であることから、今後継続した調査が必要と 考える。また、より良い看護専
門外来を行うためには、看護支援による患者の理解や行動変容など客観的な
評価もさらに検討していく必要がある。
兵庫県立加古川医療センター 看護部、
兵庫県立加古川医療センター 乳腺外科
成松 恵 1、石川 泰 2、小松 雅子 2、松本 綾希子 2、藤本 由希枝 2、
佐古田 洋子 2
【目的】当院では、2009 年より乳がん体験者ボランティアによるピアサポート
の体制を導入し、医療者との協働による患者支援活動を行っている。本研究
の目的は、患者支援活動の現状を明らかにし今後の活動への示唆を得ること
である。【活動の実際】本活動はボランティアによる個別相談と患者会で構成
される。個別相談の対応ボランティアは 6 名で、化学療法体験者 2 名と、乳
房再建術体験者 4 名(自家組織、人工物、各 2 名)である。年代や再建方法な
ど患者の希望を聞いて、外来看護師がマッチングし場の設定を行う。【方法】
2013 年 2 月~ 12 月に、個別相談を利用した患者の記録から相談に関する内
容を抽出し、ボランティア調整表と共に分析を行った。【倫理的配慮】データ
は個人が特定されないように加工しまとめた。【結果】(1) 利用状況:利用者数
は 20 名で、内訳は化学療法体験者による相談(以下、傾聴ボランティア)が 8
名、乳房再建術体験者による相談(以下、再建ボランティア)が 12 名であった。
利用回数は 22 回であった(2 名が再建ボランティアを 2 回利用)。年齢は 50 歳
代が最も多く(8 名)、次いで 40 歳代であった(平均年齢 54.7 歳)。(2) 利用時
期:傾聴ボランティアは術後 1 ヵ月以内が最も多く(6 名)、再建ボランティア
は術後 1 週間~ 5 年以上の経過まで幅を認めた。(3) 相談内容と面談後の反応:
傾聴ボランティアの利用者は病気や今後の治療に対する不安を相談し、面談
後は「行った甲斐があった」「私も頑張ろうと思った」など前向きな反応を示し
た。一方、再建ボランティアの利用者は乳房再建の実施や方法の選択に悩ん
でいる状況で、実際の体験を聞いて参考にするために相談していた。面談後
1 名が乳房再建を決定したが、中には「想像していたものとは違った、皮弁形
成は希望しない」といった反応もあった。【考察】個別相談では体験の共有や傾
聴、情報提供によるピアサポートが行われ、利用者の反応は概ね良好であった。
しかし、再建ボランティアおいては相談内容が治療選択の意思決定に関わる
難しさや、患者個々の背景や価値観により受け止め方が異なり、相談後のフォ
ローが必要であると考えられた。また、対応するボランティアが抱える困難
や悩みについて、医療者は十分把握できていない現状であった。今後は患者
支援活動をより充実させるために運営体制を見直し、ボランティアが安心し
てピアサポートを継続できるような支援を強化する必要性がある。
267
一般セッション(ポスターディスカッション)
当院乳がん手術を受けた 66%(2013 年6~7月乳がん手術患者計 31 名中 20
名)の患者が手術前夜に不眠を訴え睡眠剤を服用しており、またアンケートに
おいて多くの患者さんが服用しても熟睡感を得られていないという結果が得
られた。昨今アロマテラピーが緩和ケアなどの現場で用いられ、精神的苦痛
の解除等の効果があるという研究、報告が数多く行われてきた。しかしなが
ら周術期における研究は今までほとんど行われておらず、その効果は未知数
である。2013 年 8 月より 2014 年 7 月までの研究期間で、鎮静・リラックス
効果のある精油を用い、術前夜にアロマテラピーを追加することにより、睡
眠障害や不安の軽減・解消の効果が得られるのか、ランダム化比較試験を開
始した。プライマリーエンドポイントは QOL、セカンダリ-エンドポイン
トは血圧や心拍数などの理学所見、製油ごとの効果効能などである。手術を
受けるすべての患者へ研究参加の意思を確認し、同意を得られた患者にはく
じ引きでランダム化を行い、手術前日・当日朝(手術入室前)・手術翌日に
EORTCQLQ-C30(version3)を用いたアンケートを実施し、アロマテラピー
効果の比較検討を行っている。2013 年 11 月末日現在の登録者数は 51 名(全
手術患者の 76%)で登録者年齢は 30 ~ 80 代で 40 代が 29%と一番多い。今
回使用している精油はラベンダー・オレンジスイート・イランイランの 3 種類
で患者自身に好きな香りを選んでもらっている。介入群 61%の中での一番人
気はなじみの深いオレンジスイートでついでラベンダーとなっている。今回
は試験概要と登録状況の報告を主とし、2014 年 7 月の登録終了後に解析を開
始、プライマリーエンドポイントの結果に関しては 2015 年以降に発表の予定
である。
【目的】乳がん検診受診率や早期発見率の向上をめざし、成人女性の乳がんの
知識や乳房への関心を高めるために、乳房セルフケアを促す DVD 教材を作成
し、その妥当性を検討することを目的とした。【教材の開発】DVD の内容は、
3 部構成とし、1 部は乳腺外科医による乳がんの特徴や乳がん検診の意義と方
法の解説、2 部はがん看護専門看護師による乳房セルフケアの大切さと年齢
に応じたケアの方法、自己検診の具体的方法の解説、3 部はがん看護専門看
護師による乳房モデルを装着した自己検診の実演とした。【方法】関東、関西
の乳腺クリニックに来院した 20 歳以上の女性、ならびに研究メンバーが機縁
法でリクルートした 20 歳以上の女性で同意が得られた 60 人を対象に、DVD
の視聴および乳房モデルを装着した自己検診を実施してもらい、DVD の難易
度、有用性、マンモグラフィ検診や自己検診への動機づけを含んだ質問紙の
自己記載を依頼した。【結果】平均年齢 44 歳、クリニック対象者の受診理由は
80%が乳がん検診であった。DVD の内容について「わかりやすい」と回答した
者が 71.2%、難しい項目として「乳房モデルの装着」(6.8%)、「年齢に応じ
たセルフケア」と「自己検診の指の使い方」(1.7%)があげられた。また、今
後の乳房ケアに「役立つ」が 75.4%、時間は「適切」が 87.9%であった。さらに、
DVD を視聴して定期的に乳がん検診を受けようと「非常に思った」が 66.1%、
自己検診を実施しようと「非常に思った」が 61%、乳がんを身近な病気と「非
常に思えるになった」が 75.9%であった。定期的に乳がん検診を受けようと
思った理由として「早期発見が大切」「乳がんを知り意識できた」「安心を得る
ため」などがあげられた。改善点としては、「乳がん体験者の話があると良い」
「乳房モデルの装着の説明が速い」があげられた。【結論】DVD の内容は概ね適
切と評価され、検診への動機づけにつながっていた。さらに乳がん体験者の
話などを含め改良することにより乳がんおよび検診への意識づけがより一層
高まると考える。また、この DVD は、乳腺クリニックや検診センターにおい
て乳がんの啓発に役立つ教材として活用できると考える。
11293
11471
DP-1-007-05
DP-1-007-06
「リンパ浮腫予防指導」ケアマップを使用しての患者の変化と課
題
1
上肢リンパ浮腫におけるリンパ管静脈吻合術と術前後複合的理
学療法の効果についてのアンケート報告
北里大学病院 看護部、2 北里大学病院 外科
1
1
1
1
1
ポスターディスカッション
2
加藤 牧子 、東海林 ちえみ 、児玉 美由紀 、渡辺 亜咲 、谷野 裕一 、
仙石 紀彦 2、小坂 愉賢 2、藁谷 美奈 2
一般セッション(ポスターディスカッション)
当院では 2012 年 7 月より、これまで作業療法士(以下、OT)が行っていたリ
ンパ浮腫予防指導を見直し、新たに集団指導と個別化対応を組み合わせたケ
アマップを作成し運用を開始した。ケアマップにより 1) 患者はリンパ浮腫の
初期症状に気づくための知識・予防行動の知識を得ることができる。2) 郭清
患者への個別指導を加えることで、患者状況に応じた生活指導が可能となる。
3) 患者がリンパ浮腫に関する専門的な指導を望んでいる場合、直接アクセス
できるシステムが構築される。という効果が得られた。今回、ケアマップの
評価を目的とし、導入後のリンパ浮腫発症患者を分析したためここに報告す
る。【ケアマップ】1) 乳がん手術目的で入院した全患者を対象とし、パンフレッ
トを用いたリンパ浮腫予防集団指導を行う。指導内容は、リンパ浮腫の病因・
病態、リンパ浮腫の治療方法の概要、セルフケアの重要性と生活上の注意点、
発症時の対応と受診相談方法である。2) リンパ節廓清患者は、入院中に個別
指導を追加。加えて退院後の初回外来で生活指導とセルフマッサージの指導
を行う。【介入結果】運用が開始された 2012 年 7 月 25 日から 2013 年 11 月 27
日までのリンパ浮腫発症患者は 46 名、うちリンパ浮腫予防指導を受けた患者
は 12 名であった。ケアマップ導入以前は、“主治医に症状を相談” や “主治医
が症状に気付き受診を勧める” ことでリンパ浮腫ケアを受ける患者が多かった
が、ケアマップ導入後は、“早期に症状に気付き、自ら受診行動を起こす” 患
者が多かった。そのうち 2 名は、蜂窩織炎や浮腫の増悪を認めてから受診行動
を起こしていた。【考察と今後の展望】ケアマップ導入前は、リンパ浮腫に対
する知識がないために受診やリンパ浮腫ケア介入が遅れていたと考えられる。
ケアマップが導入され指導を受けた患者の多くは、自ら症状に気付き、受診
行動が取れていた。リンパ浮腫は、腋窩リンパ節廓清をした患者の QOL を低
下させる要因ともなりうるが、予防行動や発症時の対応がとれる患者が増え
たことは、ケアマップの指導効果と考えられる。今はケアマップ導入から期
間が短く、発症人数は少ないが、早期受診に至らないケースが増加した場合
には、その要因を分析し個別指導のタイミングや内容の修正を行うことや、
患者が生じた症状と知識を関連付け、受診行動へつなげられるような指導内
容を検討することが求められる。
東神奈川とさき治療院、2 横浜市立大学医学部 形成外科
戸崎 綾子 1、松田 奈菜絵 1、橋本 紘吉 1、前川 二郎 2
【はじめに】近年リンパ浮腫治療においてリンパ管静脈吻合手術(以下LVA)
を受ける患者は増加しているが、術後患者のアンケートによる実態報告は少
ない。今回リンパ管静脈吻合手術と複合的理学療法を行った続発性上肢リン
パ浮腫患者について、アンケート調査を行ったので報告する。【対象と方法】
アンケートは個人情報の取り扱いに関しての同意を得た術後 6 ヶ月以上経過
した続発性上肢の患者を対象とした。同一術者によって LVA を実施した片側
性 32 人( 女 31 人 男 1 人、 年 齢 30 代 12 %、40 代 19 %、50 代 31 %、60 代
22%、70 代以上 16%)。実施期間は 2013 年 2 月から 3 月。【結果】症例は全
て乳癌手術治療を受け、その後放射線のみ・化学療法のみ・放射線と化学療
法の併用治療を行った群で浮腫発症時期について検討した。LVA を受ける動
機(複数回答)は、太さの改善 (81% )・セルフケアの負担軽減 (53% )・重
さ、だるさ(体調)の改善 (47% ) が上位であった。太さは、術前「維持できて
いなかった」(12 人)は、術後「変らない」(2 人 ) を除いて「細くなった」であっ
た。セルフケアの負担軽減を弾性着衣装着状況からみると、「毎日着用」21 人
(66% ) が術後 9 人(28%)へ減少し、
「着用なし」と「浮腫み憎悪時のみ」となっ
た。術後満足度は「とても満足・満足」が 26 人 (81% )、「わからない・かわら
ない」が 3 人 (9% )、「不明」3 人 (9% ) となり「不満」はなかった。満足と「か
わらない・不明」で術前後の項目別満足度をみた。項目は「蜂窩織炎の頻度・
太さの改善・皮膚の硬さ・皮膚の乾燥・皮膚の色・体調・関節の動き」の 7 項
目を各 5 段階評価で行った (5 が高い評価 )。満足は 7 項目の平均が術前 3.21
から術後 3.37 となり、「太さの改善・体調・関節の動き」が術後高い評価と
なった。
「かわらない・不明」グループは術前 2.89 が術後 3.20 の評価であった。
両グループで共通したのは太さの改善と関節の動きが術後の評価が高かった。
【結語】上肢リンパ浮腫治療においてリンパ管静脈吻合手術と複合的理学療法
の併用治療は蜂窩織炎の減少、皮膚状態の柔らかさの変化による関節可動改
善、また半数の患者において保存療法だけでは困難である太さの維持をしな
がらの弾性着衣からの離脱がみられ、QOL向上に結び付くことが示唆され
た。
11233
10145
当院の役割拡大実践能力育成プログラムにおける患者・家族の
意思決定支援
乳がん患者の術式選択における影響要因と術後の満足度
DP-1-008-01
1
DP-1-008-02
愛知県がんセンター中央病院
徳島大学病院 看護部、2 徳島大学病院 食道乳腺甲状腺外科
高木 礼子、岩田 広治、奥村 誠子、新貝 夫弥子、瀬古 志桜
一宮 由貴 1、森本 雅美 2、中川 美砂子 2、武知 浩和 2、田所 由紀子 2、
丹黒 章 2
【背景】医療制度の変革に伴う在院日数の短縮等を背景に、診断名の告知や治
療説明の場が外来に移行している。患者は「がん」という告知を受け、その後
の治療選択など重要な意思決定を外来医師による短時間の説明だけで迫られ
ることが多い。このような状況からも医師と看護師等の役割分担の推進が提
示され、看護師による患者・家族への補足説明に期待が高まっている。
【プログラム開発の目的】当院では平成 22 年度文部科学省「看護師の人材養成
システムの確立」事業において、役割拡大実践能力育成プログラムの開発に取
り組んだ。これは外来での医師の説明場面に同席し、
患者のニーズを明確にし、
補足説明することで患者の意思決定の過程を支援することにより、医師の説
明義務を補足できる看護師を育成するものである。プログラムは専門的知識
を深める基礎編と実習中心の実践編で構成されている。実習では医師の説明
の場に同席し、診察前後で患者・家族に面談することで理解度を確認し、必
要があれば補足説明を行い、患者・家族が意思決定する過程を支援する試み
を開始した。今回実習で関わった事例から、外来看護のあり方を考察する機
会を得たので報告する。倫理的配慮としては、結果の公表に際しての匿名性
を保証し、包括的な同意を得た。
【症例】1)40 歳代女性、左乳がん(多発)に対し手術予定。バッドニュースを
受ける準備ができないまま告知を受けたことで危機的状況に陥り、治療方針
の決定が困難であった。
2)50 歳代女性、同時性両側乳がんに対し両側乳房切除予定。本人の理解度
は良好であったが、キーパーソンである夫の抱えるストレスが大きく、家族
の危機に直面していた。
【結果】医師の説明場面に同席し、患者・家族の反応からそれぞれの危機状況
をアセスメントし、見守り、寄り添うことで安全を保証した。面談を行う中
でそれぞれの理解度とニーズを確認し、タイムリーな補足説明を行うと同時
に医師、臨床心理士と共同し、患者・家族がその人らしい意思決定が行える
よう調整した。2 事例の患者・家族共に危機状況に適応し、患者自ら主体的な
意思決定を行うことができた。
【考察】告知後の患者の多くが大きな衝撃を受け危機的状況に陥ることから、
看護師による初診時のアセスメントと早期からの介入の重要性を感じた。患
者・家族のニーズが満たされるよう、外来、病棟間の連携や他職種とのチー
ム医療の意識向上も今後の課題である。
【研究背景】 乳がん手術の意思決定に関して国府は、[ 希望貫徹型 ][ 段階的納
得型 ][ 動揺型 ][ 振り回され型 ] の 4 つのタイプに分類した。またその影響要因
を尾沼らは [ 保健行動 ][ 医療者に対する信頼 ][ 感情 ]、瀬戸山らはヘルスリテ
ラシー(健康に関する意思決定能力)と報告している。本研究では先行研究を
もとに、乳房全摘術と乳房温存術の術式選択における影響要因と術後の満足
度を検討した。【研究方法】独自に作成した自記式質問紙を用いてデータを収
集し、統計的分析、検討を行う。1. 研究対象:乳がん術後 1 ~ 2 年で無再発、
20 ~ 80 歳、アンケート調査が可能な患者。2. 研究期間 2013 年 9 月―
2013 年 11 月 3. 質問紙の内容:基本属性、手術の満足度(0-100%)、影響要
因 1(5 段階):再発不安、価値観、他者の意見 等、影響要因 2(5 段階):対
処規制 等、手術前後の生活の変化(自記式)4. 倫理的配慮:研究の主旨、中
途辞退の自由,個人情報の保護、利益と不利益、研究の公表について口頭と
文書で説明し、アンケートの郵送にて同意を得たとする。【結果】乳がんの術
式決定への影響要因は、入浴、着替え、ファッション、趣味・スポーツの項
目で全摘群の方が高く、再発不安では有意差(p< 0.005)があった。また全
軍とも医師の意見が最も影響していた。対処規制は、Bp+Ax 群が情報収集の
特典が高く Bp 群との有意差(p< 0.005)があった。【考察】今回、Bp+Ax の
満足度が高いのは、進行度がんにも関わらず温存術ができたことと考える。
また全摘群は再発不安が高いが現在の満足度は低く今後支援が必要である。
今後対象数を増やし検証していく。
268
ポスターディスカッション
10305
11055
手術を受けた乳がんサバイバーの現在の自己概念
Initial adjuvant aromatase inhibitor (AI) の非継続率と
その要因分析
DP-1-008-03
DP-1-008-04
1
静岡県立静岡がんセンター 看護部、
2
埼玉医科大学国際医療センター 看護部
三河乳がんクリニック
森田 公美子 1、小島 真奈美 2
佐々木 俊則、水谷 三浩
{ 背景 };閉経後ホルモン感受性乳癌に対する術後補助ホルモン療法におい
て、さまざまな臨床試験の結果より initial AI 剤が投与される場合が多い。そ
の一報で、術後ホルモン療法の非継続率が 30% 以上もあるという報告が散見
される。また、術後ホルモン療法はアドヒアランスを保つことで生存率が改
善するとの報告もある。そこで、当院における AI 剤の非継続率、非継続理由
とその要因分析を行い検証した。{ 対象と方法 };2009 年 4 月~ 2013 年 9 月
の間に initial adjuvant AI として開始された 182 例を対象とした。内訳とし
て、エキセメスタン (EXE)71 例、アナストロゾール (ANA)57 例、レトロゾー
ル (LET)54 例であった。その 182 例について、電子カルテより AI 剤の非継
続率を調査した。非継続率とは、AI 剤を中止した症例と Selective estrogen
receptor modulator(SERM) に変更した症例とした。また、それに影響を与
える因子 (AI 剤の種類、年齢、BMI など ) について解析を行った。{ 結果 };
平均内服観察期間は 770 ± 431day であり、非継続率は 14.8%(182 例中 27
例 ) であった。AI 剤の中止時期は、6 ヵ月~ 18 ヵ月が一番多く全体の 48.1%
を占めていた。非継続理由としては、関節痛が 56.7% と一番多かった。し
かし、ほとんどの症例において SERM に変更し内服が継続できていた。非継
続例の要因として、AI 剤の種類においては、EXE=16.9%、ANA=12.3%、
LET=14.8% であり、各 AI 剤の中止理由も差はなかった。また、内服非継続
に影響を与える正の相関は、乳房温存術、関節痛に影響をあたえる既往症あ
り、負の相関としては HER2 陽性、リンパ節転移 4 個以上、T3 以上であった。
その他の因子については相関が見られなかった。{ 結論 };initial adjuvant
AI 剤の非継続率は 14.8% であり、他の報告に比べると当院では少ない傾向で
あった。非継続率に影響を与える因子として、AI 剤の種類による影響は少なく、
早期乳がん例と既往症ありで高い傾向にあった。AI 剤の内服継続率を保つた
めに、関節痛などの副作用対策を行うことや、早期乳がん例の継続率を向上
するために、今後患者への教育が重要と思われる。
10925
11669
Fulvestrant の逐次投与法と同時投与法の QOL に関するランダ
ム化比較試験
フルベストラントを安全に投与するための取り組み~エコーガ
イド下投与の有用性~
DP-1-008-05
1
2
3
DP-1-008-06
公立法人横浜市立大学附属市民総合医療センター 看護部、
公立法人横浜市立大学附属市民総合医療センター 乳腺甲状腺外科、
公立法人横浜市立大学附属市民総合医療センター 薬剤部
三河乳がんクリニック
日置 あずみ、吉田 直子、佐々木 俊則、水谷 玲子、水谷 三浩
岩崎 有紀 1、和田 伸子 1、峰尾 敦子 1、木下 美由紀 1、二宮 弥生 1、
大月 菜穂子 1、石川 孝 2、成井 一隆 2、嶋田 和博 2、縄田 修一 3
【背景】Fulvestrant はその製剤特性により、投薬 1 本あたり 1 ~ 2 分の時間を
かけて薬液を緩徐に左右の中臀筋へ注射しなければならない。従来の 1 名で
実施する投与方法(逐次投与法)から 2 名で同時に実施する方法 ( 同時投与法 )
も取り入れることで患者の痛みの軽減や看護師側の精神的負担の軽減も緩和
されると考えた。当院でパロットスタディとして 16 名(延べ 85 人)に同時投
与法を実施したところ、患者から好感度を得たため、2012 年 12 月より本研
究を開始した。【目的】Fulvestrant の逐次投与法と同時投与法の患者の QOL
と作業の効率を比較検討する。【方法】(1) 初回投与時に、筋注の方法を逐次
投与法と同時投与法にランダム化して施行し、2 回目は筋注方法をクロスオー
バーする。3 回目以降は、患者の希望方法で治療を継続する。初回および 2 回
目にアンケートを実施、さらに痛みを VAS スケールで測定して、2 種類の方
法の QOL に関する比較を行う。症例数は 2 群間の VAS1cm の差を対応のある
t 検定(両側:α =0.05, β =0.2)で統計学的に検討できるよう算出した 37 例
に脱落を加味し、40 例(1 群 20 例)と設定した。(2) 投与実施時間の計測およ
び看護師側の注射実施業務アンケート調査を行い、二つの方法における施行
者側の利便性を検討する。【結果】登録状況:2013 年 11 月末現在では患者 22
名が本研究に参加し、試験終了 20 名。現時点での平均年齢 60.36 歳、平均
BMI23.33。処置時間(mean ± SD)は 6.05 ± 4.53 分(逐次投与法 8.67 ± 4.50
分、同時投与法 3.43 ± 2.73 分)であった。主要評価項目の中間解析 (VAS ス
ケール ) は設定していないが、現時点での 3 回目以降の希望は、逐次投与 8 名・
同時投与希望 11 名である。看護師からは 2 名で行ったほうが安心との意見が
現時点で多く聞かれた。【考察】逐次投与法、同時投与法ともに有害事象はな
く研究は順調に進んでおり、本会で結果を報告する予定である。【結語】解析
結果を待たなければならないが、Fulvestrant の投与法に関する問題点に対す
る看護師の工夫が患者・看護師双方の QOL の向上につながればよいと考えて
いる。
269
{ 背景 } フルベストラントの投与マニュアルでは、筋注部位の中殿筋深層の
上殿動静脈・神経の誤穿刺を防ぐことや、確実に中殿筋まで注射針を刺入す
ることなどの諸注意が与えられている。さらにクラークの点(C 点)での刺入
が第一選択として推奨されている。同部は皮下組織厚が薄く、中殿筋に薬液
を注入できる可能性が高く、血管・神経の損傷を最も回避できると考えられ
るからである。しかし同マニュアルを遵守しても、当院ではしびれ感や電撃
痛、投与部位の硬結の訴えがあった。検証により動静脈・神経の誤穿刺では
なく、中臀筋に達しても、薬液が筋肉内から皮下へ漏れ、皮下組織傷害をき
たした疑いが強いと判断した。その対策として適切な針の到達部位と深度を
絶対に確保し、中臀筋内に薬液を確実に全量注入しきることを両立しうる手
法を考案した。すなわち C 点の垂線上で適切な深度のポイントを正確に針先
端でヒットし、かつそのポイントに薬液の注入終了まで針先端を安定的に留
置できる方法である。このために当院では超音波ガイド下の穿刺吸引細胞診
用アダプターを利用し、同ガイド下にフルベストラントの投与を行い、その
効果を検討した。{ 対象と方法 } 対象はフルベストラントの投与を受けた 19
名、投与回数はのべ 146 回である。投与法はマニュアル通りの穿刺(M 法)11
名のべ 65 回、超音波ガイド下穿刺(E 法)11 名のべ 81 回。疼痛などで M 法か
ら E 法へ変更(M → E 法)3名が含まれていた。E 法では穿刺細胞診用アダプ
ターと 22G カテラン針を使用。超音波は臨床検査技師が、針の穿刺と薬液注
入は看護師が担当した。M 法と E 法のフルベストラントの注射部位反応や疼
痛の比較を行った。{ 結果 } 注射部位反応の頻度:発赤 M 法 /E 法 4.5/0%、掻
痒感 35/4.9%、硬結 47/30.8%、疼痛の頻度:M 法 /E 法 18/9.8%(M → E
法 26.9/3.3 %)、 疼 痛 の 程 度(NRS 評 価 ):M 法 /E 法 1.98/1.54(M → E 法
2.9/1.8)、E 法の副作用の中にはM法からの硬結や硬結に伴う疼痛があるた
め頻度が高めとなっていた。{ 考察 } 注射部位反応の頻度および疼痛の頻度・
程度の全てにおいて、E 法が M 法より優れていた。特に硬結や疼痛で苦しみ、
M → E 法へ変更した3名における効果は著明であった。人手とコストの問題は
あるものの、フルベストラントの注射部位反応や疼痛を訴える症例では超音
波ガイド下投与を勧めたい。
一般セッション(ポスターディスカッション)
【目的】手術を受けた乳がんサバイバーの現在の自己概念を明らかにする。【方
法】対象:1 年以上過去に乳がんの手術を受けた乳がん体験者。データ収集方法:
自己概念の 3 つの構成要素を研究者が平易な表現に変えた質問紙による自己
記述式質問紙調査。分析:データから質問の解答を表現している部分を抽出、
簡潔な一文とし類似するものを集め分類し名称を付けた。倫理的配慮:研究
者が所属する施設内倫理審査委員会の審査を受け承認を得た。【結果と考察】
対象者は 25 名、年齢は 40 ~ 77 歳で平均 59.9 歳、手術後の期間は 1 ~ 26 年
であった。結果を表 1 に示す。物質的(身体的)な自己概念は、<以前とかわ
らない>があり、対象者は乳がんの手術を経験した後も自分のからだはかわ
らないと受けとめていた。また<健康>と、その一方で<自分でいたわる>
<病気からのがれられない>があったことから、対象者は、<健康>ではあ
るが、がんとは共存している意識があり、慎重に観ていかなければならない
からだであると捉えていると考えられた。社会的な自己概念は、<職場・家
庭でがんばっている><人の役に立っている>があり、対象者は社会での人
との関わりのなかで、自己の存在意義を感じとることができていると考えら
れた。さらに精神的な自己概念では<自分が好き>があり、対象者は乳がん
の体験をしたからこそ改めて見出された自己に気づき、自分に誇りをもって
いると考えられた。これらの結果から手術を受けた乳がんサバイバーは、現
在において肯定的な自己概念を持ち得ていることが明らかになった。看護師
は、状況に応じて乳がんサバイバーが自己概念を形成するプロセスに寄り添っ
ていくことが重要と考える。
ポスターディスカッション
11178
11225
患者背景因子におけるカペシタビンによる手足症候群と爪障害
の出現リスクの検討
術後補助化学療法の完遂率とそこから見えた課題
DP-1-009-01
DP-1-009-02
ブレストピアなんば病院
1
独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 外来化学療法室、
2
独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 臨床腫瘍科、
3
独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 乳腺外科
三根 明、樋口 美穂、壱岐 のり子、井上 梨恵、児玉 裕文
中井 真由美 1、小島 勇貴 2、杉山 圭司 2、加藤 彩 3、林 孝子 3、
小暮 啓人 2、北川 智余恵 2、佐藤 康幸 3、坂 英雄 2
一般セッション(ポスターディスカッション)
【はじめに】カペシタビンの有害事象である手足症候群(HFS)は、皮膚乾燥や
手足への加圧、紫外線などがリスク因子とされている。今回、我々は患者の
身体所見や生活背景によって HFS と爪障害の出現におけるより重要なリスク
因子を検討した。【対象・方法】2010 年 8 月から 2013 年 11 月の期間にカペシ
タビン内服治療を受けた進行再発乳がん患者 38 例を対象とした。全例女性、
年齢中央値は 56 歳(32 ~ 76 歳)、投与サイクル中央値 17 サイクル(4 ~ 58
サイクル)であった。年齢、PS、就労、家事、スポーツ習慣、戸外活動、育
児・介護、保湿ケア習慣、白癬症、手・足の HFS と爪障害の出現を診療録か
ら後方視的に調査した。Gr.2 以上の HFS と爪障害について有意に相関する因
子について単変量解析(カイ二乗検定)を行った。【結果】手の HFS は「スポー
ツを習慣的にしている」と「爪白癬を有する」で有意に相関していた(p=0.032,
p=0.044)。足の HFS は「仕事をしている」
、「爪白癬を有する」で有意に相関
していた(p=0.047, p=0.017)。手の爪障害は「仕事をしている」
、「家事を
毎日している」、
「スポーツを習慣的にしている」、65 歳以上で有意に相関して
いた(p=0.012, p=0.008, p=0.032, p=0.031)。足の爪障害は「仕事をして
いる」、「爪白癬を有する」で有意に相関していた(p=0.032, p=0.010)。PS、
保湿ケア習慣の有無は HFS と爪障害の発症に有意差は認めなかった。【結語】
仕事やスポーツによる加圧、白癬症は特に注意すべき HFS と爪障害のリスク
因子であり、症状管理においてはより注意が必要であると考えられた。
【背景/目的】乳癌手術後の転移・再発を抑える有効な手段として、化学療法
は重要な役割を担っている。しかし、化学療法には重篤な有害事象(以下 A/
E と略記)を生じる可能性があり、時としてその A/E が患者の QOL を著しく
低下させるケースや、A/E の重篤化を回避するための治療中断が転移・再発
のきっかけとなってしまうケースがある。そこで今回、化学療法のリスクマ
ネージメント体制を見直すために、術後補助化学療法の完遂率、そして完遂
できなかった症例の理由について調査を行い、当院が苦手としている A/E 対
策を再考する。【方法】2008 年から 2012 年の 5 年間、当院において手術を行っ
た症例のうち、術後補助化学療法を行った 565 例を対象として、現在当院で
行っている術後補助化学療法 CMF、CE、DTX、PTX、TC 療法の完遂率と、完
遂できなかった症例についてはその理由を調査した。【結果】完遂率は CMF
療 法 で は 91.3%、CE 療 法 で は 88.5%、DTX 療 法 で は 83.2%、PTX 療 法 で
は 71.4%、TC 療法では 64.7% であった。また、各レジメンで最も多かった
中止の理由については、CMF 療法では肝機能異常、CE 療法では白血球減少、
DTX 療法では皮膚障害、PTX 療法では末梢神経障害と肝機能異常、TC 療法で
は皮膚障害であった。【考察】今回の結果からは、特にタキサン系薬剤を使用
しているレジメンにおいて完遂率が低いことがはっきりとした。その中でも
特に多かった皮膚障害に関しては、日常の業務において、患者教育が不十分
で病識の理解がないために A/E が重篤化するケースや適切な処置が行われて
いないケースを目にすることがあり、医療スタッフ間での理解を深めること、
そして患者への十分な指導の必要性を感じた。
10676
11943
通院化学療法を受ける乳癌患者に対する治療当日の看護師のリ
スクマネジメント
抗がん剤による手足症候群に対する外用アロプリノール製剤の
有用性
DP-1-009-03
DP-1-009-04
1
1
3
東北大学病院、2 国立病院機構大阪医療センター、
がん・感染症センター都立駒込病院、
4
千葉大学大学院看護学研究科、5 京都大学大学院医学研究科、
6
一般社団法人 JBCRG(Japan Breast Cancer Research Group )
2
3
大阪府立成人病センター 薬局、
大阪府立成人病センター 乳腺・内分泌外科、
大阪府立成人病センター 臨床腫瘍内科、4 早石病院
中多 陽子 1、元村 和由 2、吉波 哲大 3、玉木 康博 2、下村 英二 4
金澤 麻衣子 1、増田 慎三 2,6、黒井 克昌 3,6、阿部 恭子 4、戸井 雅和 5,6
【目的】通院化学療法(FEC・EC・TC)を行っている乳がん患者に対する治療当
日の看護師の判断と対応を調査し支援方法を検討する。【方法】平成 23 年 6 月
~ 9 月、日本乳癌学会専門医が所属する 130 施設の看護師を対象に、質問紙
を郵送し調査を実施した (JBCRG-Q03)。質問紙は、通院化学療法の支援体制
について項目を設定した。得られた回答は記述統計を行い、自由記述は質的
帰納的に分析した。本研究の目的、結果の公表、データの取り扱いについて
文書で説明し、参加は自由意思とし返信をもって同意を得た。【結果】回答は、
56 件から得られた(回収率 43.0%)。すべての施設に通院治療室が設置されて
いた。看護師の経験年数は平均 17.9 年(7 ~ 30 年)。所属は、通院治療室が
31 件、外来が 9 件、外来・通院治療室兼務が 7 件、他 7 件であった。看護師
の 36 件が、医師が治療可能と判断した後に、患者の状態から治療の開始の判
断に迷うと回答し、その際患者や家族に情報収集し、医師に報告し、他部門
看護師や医療連携室と話し合う対応をしていた。治療終了後に、帰宅後の患
者の状態に対して気がかりを経験したのは 52 件。気がかりの場面は、「治療
中の副作用症状の発症」
「セルフケア困難が予測される」
「社会的支援が不十分」
「治療に対する理解が不十分」等があげられた。看護師は、患者に緊急時の連
絡先や相談支援窓口を明確に提示し、電話をして状態を確認し、情報を記録
に残す対応をしていた。さらに、医師や薬剤師等の多職種が集まる場で問題
提起し、情報を共有していた。【考察】治療可能と判断された患者の治療開始
を迷った看護師が 2/3 いることから、患者の治療方針に対して、医療者の把
握や患者の理解が不十分であること、医師や外来看護師、通院治療室看護師、
医療連携室等との間での患者の身体的、心理的、社会的状況の情報共有が不
十分であることが考えられた。外来という限られた時間の中での情報収集と、
患者を取り巻く周囲の支援体制の強化が課題となることが示唆された。
【目的】手足症候群 (HFS) はカペシタビンやタキサン系抗がん剤で高率に出現
するが、いまだ有用な治療法は確立されていない。一方、抗がん剤による口
内炎に対しアロプリノール咳嗽液が奏効することがよく知られている。その
作用機序はフリーラジカルの発生を抑制すると考えられ、HFS にも有効であ
る可能性がある。そこで、抗がん剤による HFS に対して外用アロプリノール
製剤の有用性を検討した。【方法】カペシタビンやタキサン系抗がん剤の投与
により、grade 1以上の HFS が出現した乳がん症例に対し 0.1%アロプリノー
ル液 ( アロプリノール 100mg 錠を 100ml の水に溶解 ) を一日二回患部に塗布
した。この間、HFS に対する他の治療(保湿クリーム、ステロイド外用薬、ビ
タミン B6 製剤)は行わなかった。効果の評価のために投与前と投与後の HFS
の grade を比較した。Grade 分類は、CTCAE (ver.4) における手掌足底発赤
知覚不全症候群の基準を用いた。【結果】乳がん 18 例が登録された。平均年齢
は 54 歳(35-74 歳)。投与開始時の grade は、grade 1 が 4 例、grade 2 が 14
例であった。抗がん剤はカペシタビンを含むものが 8 例 ( 再発例 )、ドセタキ
セルを含むものが 10 例 ( 術後補助療法例 ) であった。投与後 grade が一段階
改善したものは 10 例 (56%)、二段階改善は 2 例 (11%)、同じであったもの
は 6 例 (33%) で、増悪例はみられなかった。有害事象として 1 例に手指の疼
痛 (grade 1) がみられたが 2 週目には消失した。【結論】カペシタビンやタキ
サン系抗がん剤による HFS に対して外用アロプリノール製剤は新たな治療法
として有用であると考えられた。
270
ポスターディスカッション
11342
10924
タキサン系薬剤の爪障害および末梢神経障害に対するフローズ
ングローブ・ソックスによる予防効果の検討
パクリタキセルによる末梢神経障害に対する冷却法の有用性に
関する検討
DP-1-009-05
1
DP-1-009-06
埼玉県立がんセンター 看護部、2 埼玉県立がんセンター 乳腺腫瘍内科
1
1
1
1
1
2
1
上田 尚代 、相良 ルミ 、高橋 裕子 、石井 浩子 、吉田 絢美 、
三須 かおり 1、武藤 絵夢 1、前原 みゆき 1、田口 範子 1、井上 賢一 2
和歌山県立医科大学付属病院紀北分院 看護部、
和歌山医科大学付属病院紀北分院 外科
鈴木 沙知 1、津川 蔦美 1、櫻井 照久 2
【目的】パクリタキセルの副作用である末梢神経障害は、患者の精神的・身
体的苦痛の原因となることが予測されるが、治療法や予防法は確立されてい
ない。今回、パクリタキセルによる末梢神経障害に対する冷却法の有用性を
4 通りの評価法を用いて検討したので報告する。【対象と方法】対象は、研究
協力の同意が得られたパクリタキセル投与患者 4 名ならびに nab- パクリタ
キセル投与患者 8 名の計 12 名であった(術前 2 名、術後 6 名、再発 4 名)。研
究に先立ち、当大学倫理委員会の承認を得た。方法は、対象者の片側上肢な
らびに下肢をフローズングローブとフローズンソックスを用い、パクリタキ
セル点滴中とその前後 15 分間の冷却を行った。末梢神経障害の評価として、
CTCAEv4.0、PNQ、がん患者の特異的 QOL 尺度である FACT-Taxane(PNQ、
FACT-Taxane は開発者の使用許諾を取得)、ならびにタッチテスト(糖尿病患
者の末梢神経障害の評価では広く用いられるフィラメントを用いた評価法)の
4 通りの評価法を用いて検討した。同一患者の冷却側と非冷却側の比較検討に
CTCAEv4.0、PNQ、タッチテストを用いた。FACT-Taxane を用い、調査期
間中の末梢神経障害の主観的評価である TaxS score の変化、ならびに身体面、
社会・家族面、心理面、活動面から構成される FACT-G score の変化を評価した。
治療開始前、2 クール時、全クール終了時、終了後 2 か月、終了後 6 か月の評
価を行った。【結果】CTCAEv4.0、PNQ、タッチテストのいずれの評価におい
ても、冷却側の末梢神経障害は、非冷却側に比較し軽度であり、冷却の有用
性を認めた。また、タッチテストは PNQ と有意に相関した。TaxS score によ
る評価では、投与開始前に比較し、有意に score の低下を認めたが、FACT-G
score は調査期間中に有意な変化は認めなかった。1 名においては末梢神経障
害に加えて、手の皮膚障害が出現したが、冷却側の皮膚障害は非冷却側に比
較して明らかに軽度であった。冷却法の中止例はなく、冷却による副作用は
認めなかった。新たな試みであるタッチテストは、圧力知覚の変化を定量的
かつ経時的に測定することが可能で有用であった。【結語】フローズングロー
ブ・ソックスによる冷却法は、パクリタキセル投与患者において重大な副作
用である末梢神経障害の程度を軽減できる可能性が示唆された。
11440
10091
乳管内病変における血清中の DJ-1 蛋白質の濃度
血漿中アミノ酸濃度に基づくスクリーニング検査 AICS( 乳腺 )
の乳癌切除術前後でのモニタリング
DP-1-010-01
DP-1-010-02
1
東京医科大学病院 乳腺科、2 防衛医科大学校 病態病理学講座、
3
東京医科大学 茨城医療センター 乳腺科、4 防衛医科大学病院 外科学講座
1
3
河手 敬彦 1、岩屋 啓一 1,2、海瀬 博史 1、小田 美規 1、山田 公人 1、
越川 佳代子 3、津田 均 2、藤森 実 3、山本 順司 4、河野 範男 1、
木村 芙英 1、松村 真由子 1、中村 幸子 1、宮原 か奈 1、上田 亜衣 1、
長谷川 翔 3、山岸 陽二 4、守屋 智之 4、山崎 民大 4、藤田 知之 3
横浜市立大学附属市民総合医療センター、2 神奈川県立がんセンター、
味の素株式会社、4 横浜市立大学大学院医学研究科
成井 一隆 1、宮城 洋平 2、山本 浩史 3、新原 温子 3、嶋田 和博 1、
喜多 久美子 1、山田 顕光 1、菅江 貞亨 4、石川 孝 1、遠藤 格 4
【はじめに】DJ-1 は多機能蛋白質であり、Akt や Erk 経路などに関与する複数
のシグナル伝達因子、p53 などの転写因子、ミトコンドリア蛋白質を介し、
アポトーシスを抑制し細胞増殖を司るなどの機能が報告されている。我々は
癌細胞の特性に関与する DJ-1 蛋白質の役割に着目し、治療前の生検材料を用
いた DJ-1 の免疫染色結果が、乳癌術前化学療法における効果予測因子である
ことを報告した(Kawate et al, Breast Cancer Res Treat 2013)。また数種
類のヒト乳癌細胞株を用いた DJ-1 のウエスタンブロット法を用いて、細胞破
砕液中から DJ-1 蛋白質を検出するとともに培養液中からも DJ-1 蛋白質が検
出され、乳癌細胞が DJ-1 蛋白質を分泌することを明らかにした。さらには、
ヒト乳汁分泌中の DJ-1 蛋白質濃度の測定では、乳癌を有する症例で有意に高
値であることが見出され、in vivo における乳癌組織からの分泌が強く示唆さ
れた。以上の結果を踏まえて、血清中に含まれる同蛋白質の解析を進めてい
る。【目的】非浸潤性乳管癌(DCIS)と乳管内病変(IDP)は臨床診断が困難な
症例が存在することから、血清中の DJ-1 蛋白質を定量的に解析し、DCIS と
IDP の鑑別診断における有用性を検討する。【方法】2012 年 3 月から 12 月ま
でに、健診異常または乳房異常を自覚し来院した外来初診患者のうち、針生
検または摘出生検にて組織学的診断を得た IDP 6 例、DCIS 13 例を対象とし
た。初診時に採血を行い、遠心分離で分離した血清を ELISA 法を用い血清中
の DJ-1 蛋白質濃度を測定し、濃度差と組織学的診断を比較し、両疾患の鑑別
診断に応用できるかを検討した。【結果】DJ-1 の血中濃度を測定した 184 例の
うち、対象症例の DJ-1 平均濃度は 19.6 ng/ml(n = 19)、IDP 群 13.0 ng/
ml、DCIS 群 22.5 ng/ml、両群の単変量解析では両群間で有意差を認めた (P
= 0.0278)。本検討における cut off 値は 14.9 ng/ml、感度は 76.9%、特異
度は 83.3%であった。【結語】乳管内病変に対する血清 DJ-1 蛋白質の濃度測
定は、乳管内病変の鑑別診断法として有用である可能性が示唆された。乳癌
細胞によって血清中に分泌される DJ-1 蛋白質濃度の測定が、乳癌の新規血清
診断として開発されることが期待される。
【背景】血漿中アミノ酸濃度は、悪性腫瘍患者において変動することが知られ
ている。われわれは、乳癌患者と健常者の血漿中アミノ酸濃度を比較し、統
計解析することにより、アミノインデックス R がんリスクスクリーニング
(AICS)( 乳腺 ) 検査を開発した。AICS( 乳腺 ) 値は、0.0 ~ 4.9 がランク A、5.0
~ 7.9 が ラ ン ク B、8.0 ~ 10.0 が ラ ン ク C と 判 定 し、 ラ ン ク C で は 特 異 度
95%以上の条件で、担癌であるリスクを評価する検査であり、現在一部の検
診に採用されている。
【目的】AICS( 乳腺 ) の治療のモニタリング指標としての可能性および血漿
中アミノ酸変化の機序を探索するために、乳癌の根治切除術前後における
AICS( 乳腺 ) の変化について検討した。
【対象と方法】乳癌患者 58 例について、手術前と手術後 1 ~ 5 年経過後の血漿
中アミノ酸濃度を LC/MS 法により測定し、AICS( 乳腺 ) 値を算出した。
【 結 果 】対 象 58 例 中、 前 値 が ラ ン ク C の 症 例 は、27 例 で あ っ た た め、 こ
の 27 例 に つ い て 検 討 し た。
AICS( 乳腺 ) は、63%(17/27)
の症例で術後にランク A もし
くは B に低下し、AICS( 乳腺 )
値は 70%(19/27) の症例で低
下した。27 例の平均で比較し
ても、前値は 8.9 ± 0.5、後値
は 6.9 ± 2.3 で、有意な低下で
あった (p < 0.01)。
【 結 論 】AICS( 乳 腺 ) 値 が 術
後 に 低 下 を 認 め た こ と か ら、
AICS( 乳腺 ) は、乳癌患者の腫
瘍量の減少を反映する有用な
マーカーと思われた。すなわ
ち、ACIS( 乳腺 ) は、各症例の
体質ではなく、腫瘍量を反映
している可能性が高いと考え
られた。
271
一般セッション(ポスターディスカッション)
【背景】タキサン系抗がん剤の副作用として爪障害や末梢神経障害は患者の
QOL を低下させる重要な副作用である。先行研究において、爪障害の予防と
してフローズングローブ・ソックス(FGS)の効果が報告され、実践されてい
る。一方、末梢神経障害に対しての予防手段としては確立されていない。【目
的】乳癌術前術後化学療法であるタキサン系薬剤に起因する爪障害と末梢神経
障害に対する FGS の有効性を検討する。主要評価項目を Grade1 以上の爪障
害(変色、線状隆起、脱落、爪囲炎)の発現率(CTCAE ver. 4)、副次評価を
末梢神経障害の発現率(CTCAE ver. 4、タッチテスト値及びライデル音叉値
の変化)、日常生活における症状、タキサン系薬剤の投与完遂割合、FGS 装着
による苦痛とし以下の研究を計画した。【対象】本試験参加について本人より
文書同意が得られている症例。タキサン系薬剤未治療の乳癌患者で術前術後
化学療法にてパクリタキセル、ドセタキセル、パクリタキセル注射剤 ( アルブ
ミン懸濁型 ) の投与を受ける患者。【方法】-20℃以下に冷却した FGS をタキサ
ン系薬剤の投与中とその前後 15 分間装着する。各項目の評価時期は初回治療
前、3 ~ 4 週毎の薬剤投与日、治療終了から 1 か月後、3 か月後とする。【結果】
2013 年 3 月より研究開始。2013 年 11 月末時点で、登録症例 60 症例中 19 例
が評価を終了している。爪障害について、変色、線状隆起はほぼ全症例に見
られるが、多くは前治療(アンスラサイクリン系薬剤)から持続している症状
である。タキサン系薬剤開始後出現した症状は軽微であることが多い。爪の
脱落は、登録症例中 1 例のみである。末梢神経障害について、自覚的評価で
は ADL を制限する症状の出現は少数である。タッチテスト値は自覚症状と同
様に低下する傾向にある。ライデル音叉値は、自覚症状がない場合でも治療
経過に伴い軽度低下する傾向がみられる。2013 年 11 月末時点の薬剤の投与
完遂割合は 100%。冷却不耐症例は 2 例であり冷却せず評価のみ実施してい
る。冷却不耐の理由は、寒冷の強い苦痛である。2 例を除いては、寒冷の苦痛
はあるが、途中交換をしない、一時的に外す等により、冷却を実施できている。
現在研究継続中であり解析結果は学会にて報告する。
ポスターディスカッション
11447
10399
骨代謝マーカー及び炎症マーカーを用いた乳癌骨転移リスク分
類法の確立
Ki67 高発現 ER 陽性・HER2 陰性乳癌における増殖期特異的
マーカー geminin 発現の意義
DP-1-010-03
1
2
DP-1-010-04
1
兵庫医科大学病院 乳腺・内分泌外科、
ニットーボーメディカル株式会社 研究開発部
3
柳井 亜矢子 1、柴田 直哉 2、菊地 渉 2、二渡 弘貴 2、石原 英幹 2、
井上 奈都子 1、三好 康雄 1
兵庫医科大学 乳腺・内分泌外科、2 市立伊丹病院 外科、
兵庫医科大学 病院病理部
八木 智子 1,2、柳井 亜矢子 1、村瀬 慶子 1、今村 美智子 1、宮川 義仁 1、
榎本 敬恵 1、西向 有紗 1、高塚 雄一 1、廣田 誠一 3、三好 康雄 1
一般セッション(ポスターディスカッション)
【背景及び目的】乳癌における骨転移は、骨痛、病的骨折、脊髄圧迫、高カル
シウム血症などの骨関連事象を伴い、患者の QOL を著しく低下させる。よっ
て骨転移を早期に検出し治療することは、重要な課題である。現在、骨転移
診断は術後の定期検査で腫瘍マーカーや画像解析により行われているが、積
極的に骨転移治療を要する患者を選択するための骨転移リスク診断法は確立
されていない。術後の骨転移モニタリングの補助的指標として様々な骨代謝
マーカーが認可を受けているが、それら血清マーカーは特異性が低いため骨
転移リスク診断には適応できないと考えられてきた。そこで、われわれは原
発腫瘍の血管新生状態を反映することが示唆されている炎症マーカー CRP を
骨代謝マーカーの 1 つである TRACP-5b に組み合わせることにより、骨転移
リスク分類法の確立が可能であると考え本後ろ向き臨床試験を実施した。【方
法】当院において 2010 年 8 月 5 日から 2013 年 10 月 31 日に手術を実施した
351 例のうち、術前化学療法を実施した患者を除いた 266 例の乳癌患者を対
象とし、手術時に採取した血清を用いて、TRACP-5b 及び CRP を測定した。
TRACP-5b 及び CRP のカットオフ値は、それぞれ 380mU/dL(基準値上限)及
び 0.016mg/dL(中央値)とし、双方のカットオフ値を超えた患者群(+/+)と
それ以外の患者群における術後の骨転移発症頻度を比較した。【結果】測定値
を得た 266 例のうち、TRACP-5b 及び CRP の測定値がカットオフを超えた検
体が 61 例、双方または一方がカットオフに満たなかった検体が 205 例であり、
術後に骨転移が観察された症例は、それぞれ 61 例中 3 例(4.9%)、205 例中
1 例 (0.5%) であった。この 2 群において骨転移の発症頻度を比較したところ、
オッズ比は 10.6(95%CI 1.1-103.4, p=0.043) となり、+/+ 患者群におい
て骨転移の頻度が統計的有意に高いことが示された。一方、骨転移を含む全
遠隔転移の頻度を 2 群で同様に比較したところ、統計的有意差は見られなかっ
た ( オッズ比 :3.5, 95%CI 0.7-17.7, P=0.133)。また、TRACP-5b 単独で 2
群に分類した際の骨転移の発症頻度を比較したところ、統計的有意差は無かっ
た(オッズ比 :0.2, 95%CI 0.02-2.2, P=0.192)。【結論】本試験結果から、
骨代謝マーカー TRACP-5b 及び炎症マーカー CRP の組み合わせによる骨転移
リスク分類法の臨床有用性が示唆された。今後、施設数、症例数を増やし本
診断コンセプトの検証試験を実施する予定である。
【背景】ER 陽性・HER2 陰性乳癌は、Ki67 の発現割合に基づき Ki67 低 値 群
(luminal A-like)あるいは Ki67 高値群(luminal B-like)に分類され、術後化
学療法の適応が決定されている。しかしながら Ki67 高発現群のすべてが化学
療法に高感受性を示すわけではないことから、Ki67 高発現群のなかで化学療
法の不要な群を選別することは重要な課題である。Ki67 は G0 期以外の細胞
が陽性となるため、増殖期の細胞を正確に検出しているわけではない。そこで、
増殖期特異的なマーカーである geminin(S 期から G2/M 期に発現)が、Ki67
高値群のなかで化学療法の不要な群を選別するのに有用かどうかを検討した。
【対象と方法】当科で手術切除された ER 陽性・HER2 陰性乳癌 80 例を対象と
し、非浸潤癌は除外した。免疫組織染色により、ER、PgR、HER2、Ki67、
geminin の発現割合を検討し、HER2 以外は核における陽性細胞数をカウント
した。カットオフ値は、Ki67:15%、geminin:6% とした。観察期間の中央
値 40.5 か月で、9 例が遠隔再発をきたした。【結果】臨床病理学的因子との相
関では、Ki67、geminin ともに高値群は有意に核グレードが高かった。Ki67
と geminin の発現割合は有意に相関し(相関係数 0.6、P < 0.0001)、Ki67
低 値 の 28 例 で は 26 例(92.9%)が geminin も 低 値 で あ っ た。 一 方、Ki67
高値の 52 例中 31 例(59.6%)が geminin 高値であった。遠隔無病生存期間
(DDFS)は、Ki67 の発現とは相関しなかったが(log-rank 検定:P=0.16)
、
geminin 高値群は低値群に比べ有意に DDFS は不良であった(log-rank 検定:
P=0.009)。比例ハザードモデルによる多変量解析では、geminin 高値群は独
立して予後と相関する傾向が認められた(ハザード比:7.81、P=0.05)。さら
に Ki67 高値群で解析した結果、geminin 低値群 21 例は再発がなく、geminin
高値群(31 例)において再発が認められた。【考察】増殖期特異的マーカーであ
る geminin は、Ki67 高発現群における予後不良な群を選別するマーカーとし
て有効であり、化学療法の適応を決定するのに有用である可能性が示唆され
た。
10212
11347
腋窩リンパ節転移陽性乳癌における ALDH1 と転写因子の共発
現は予後予測因子となり得るか
浸潤性乳管癌における HIF-1 α 誘導遺伝子群の再発予測因子の
検討
DP-1-010-05
1
DP-1-010-06
岡山大学病院 乳腺内分泌外科、2 岡山大学病院 病理部
1
4
伊藤 麻衣子 1、枝園 忠彦 1、鳩野 みなみ 1、溝尾 妙子 1、岩本 高行 1、
野上 智弘 1、元木 崇之 1、平 成人 1、松岡 順治 1、土井原 博義 1、
大森 昌子 2
東北大学 腫瘍外科、2 東北大学 保健学科、3 東北大学 公済病院、
東北大学 病理部、5 那覇西クリニック
佐藤 章子 1、鈴木 貴 2、甘利 正和 3、高木 清司 2、三木 康弘 4、
玉城 研太朗 5、渡辺 みか 4、石田 孝宣 1、笹野 公伸 4、大内 憲明 1
【背景】ALDH1 は乳癌幹細胞マーカーの一つであり、その発現は予後不良因
子となることが知られている。上皮間葉形質転換 (epithelial-mesenchymal
transition:EMT) は癌細胞の浸潤や転移に関与していると同時に、癌細胞に
幹細胞としての性質を与えると考えられている。EMT を促進する転写因子の
発現と予後との相関については多くが原発巣の評価であり、見解の一致を見
ていない。今回、乳癌原発巣と腋窩リンパ節転移巣での ALDH1 と転写因子
の発現と、予後との相関について検討した。【対象と方法】2002 年から 2008
年までの間に当院にて手術を施行した腋窩リンパ節転移陽性乳癌患者、47
症例を対象とした。原発巣での臨床病理学的特徴と、原発巣と腋窩リンパ節
転移巣両方での ALDH1、Ki67、転写因子として Snail、Slug、Twist の発現
を、免疫組織学的染色によって評価した。これらのバイオマーカーの発現
と、予後との相関について後ろ向きに検討した。【結果】47 症例中、原発巣で
の ALDH1、Snail、Slug、Twist の発現率はそれぞれ 19、49、40、26%、腋
窩リンパ節転移巣での発現率はそれぞれ 21、32、13、23%であった。各々
のマーカーの原発とリンパ節での発現の有無の一致率は、それぞれ 77、57、
60、64%であった。いずれのマーカーも、原発巣、リンパ節のどちらにおい
ても単独での発現は予後との相関を示さなかった。原発巣で ALDH1 と Snail、
Slug、Twist のいずれか一つの転写因子が共発現を示した症例では有意に
DFS が短い傾向があった (p=0.0066)。また、原発巣で ALDH1 と Slug が共
発現を示した症例で有意に DFS が短かった (p=0.0094) が、ALDH1 と Snail、
ALDH1 と Twist の共発現や、リンパ節転移巣での各々の共発現は予後との相
関を示さなかった。いずれのマーカーの発現も OS には影響しなかった。
【結語】
腋窩リンパ節転移陽性乳癌における ALDH1 と転写因子の共発現は、予後予測
因子となり得る可能性がある。EMT による癌幹細胞特性の獲得が治療抵抗性
にも関与していることが示唆されており、使用薬剤と転写因子発現の関係や
予後との相関を検討することで、新たな治療ターゲットの発見につながる可
能性がある。
【背景・目的】癌組織の低酸素暴露により増加する Hypoxia-inducible factor
1 α(低酸素誘導因子:HIF1- α )は予後不良と関連があるとの報告が多く 60
以上の遺伝子を直接誘導する転写因子として機能するタンパク質である。し
かし多数の遺伝子を誘導している HIF-1 α の癌の悪性度を決定している作用
機序の詳細は未だ不明である。今回我々は HIF-1 α 誘導遺伝子群をマイク
ロアレイによる遺伝子発現プロファイルデータを用いて網羅的に解析した。
更に免疫組織化学的に解析し予後規定因子である新規バイオマーカーを解明
することを目的とした。【対象と方法】2001 ~ 02 年に当院で手術を行った
IDC10 例の網羅的遺伝子発現解析データを用いて、64 の HIF-1 α誘導遺伝子
を再発、無再発群、Ki-67 高値群、低値群に分けて遺伝子発現量を解析した。
次に 2004 ~ 08 年に手術した IDC118 例の切除標本を対象としてマイクロア
レイのデータ解析にて再発群、Ki-67 高値群で発現比が高かった遺伝子発現タ
ンパク 4 種類:HKII、HIF-1 α、VEGF、MDR-1 と微小血管密度(MVD)を含
めて免疫組織化学的に解析した。【結果】HIF-1 α 誘導遺伝子群で最も再発に
関与するのは HK2 であった。HKII(HexokinaseII)発現は HIF-1 α 発現と正
の相関関係にあり Ki-67 標識率や核グレード、組織学的グレードと相関してい
た。HKII 高発現は、DFS、OS ともに有意に予後規定因子であったが、術後補
助療法として化学療法、内分泌療法を加えた群においても予後不良の傾向が
みられた。多変量解析では、HKII、Ki-67 LI は独立した再発予測因子となり、
ホルモン受容体陽性乳癌でも同様の結果となった。【考察】HKII は解糖系の第
一段階を触媒する律速酵素である。多くの癌細胞では酸素呼吸を抑制させて
解糖系を顕著に亢進させており、これは Warburg 効果とよばれる癌細胞の特
徴の一つである。胃癌、肝癌では予後不良因子として報告があるが、原発乳
癌では今回初めて検討した。高い増殖能、悪性度と相関し、ホルモン受容体
陽性乳癌でも再発予測因子となることから HKII 発現は術後補助療法決定の際
の指標の一助となる可能性がある。また、HIF-1 α の予後不良性に HKII 発現
が密接に関与しており、その阻害は新たな治療標的になる可能性がある【結論】
乳癌の HIF-1 α 誘導遺伝子群の中で HK2 が最も再発に関与することが判明し
た。HKII 発現は高い増殖能、悪性度に関与し独立した再発予測因子となるこ
とが解明された。
272
11167
10230
当院における Oncotype DX の使用状況と有用性に対する検討
乳癌晩期再発の臨床病理学的特徴
DP-1-011-01
ポスターディスカッション
DP-1-011-02
1
聖マリアンナ医科大学附属ブレスト & イメージングセンター 乳腺外科、
2
聖マリアンナ医科大学 乳腺・内分泌外科
慶應義塾大学医学部 一般・消化器外科
白 英 1、岩重 玲子 2、志茂 彩華 2、上島 知子 2、劉 孟娟 1、速水 亮介 1、
川本 久紀 1,2、首藤 昭彦 1、福田 護 1、津川 浩一郎 2、大井 涼子 2、
黒田 貴子 2、小島 聖子 2、永澤 慧 2、土屋 恭子 2、小島 康幸 2、志茂 新 2、
西川 徹 2、矢吹 由香里 2
【目的】乳癌再発は術後 5 年未満の早期再発が多いとされるが、術後 5 年以降
の晩期再発も散見される . 我々は再発乳癌を対象として晩期再発群の特徴を
検討した 【
. 対象と方法】1989 年 1 月から 2003 年 12 月までに手術を施行した
1051 例のうち、術後再発を認めた原発性乳癌 306 例を対象に解析を行った . 年
次再発リスクの比較は smoothed hazard model を用いた 【
. 結果】再発症例全
体では年齢中央値 49.5 歳、平均腫瘍径 2.8cm、ホルモン受容体 (HR) 陽性率
66.7%、リンパ節 (LN) 転移陽性率 63.1%、乳房温存率 23.2%、補助化学療
法施行率 72.5%、初回再発部位は局所 106 例 (34.6%)、肺 74 例 (24.2%)、
骨 61 例 (20.0%)、 肝 27 例 (8.8%)、 遠 隔 リ ン パ 節 17 例 (5.6%)、 脳 4 例
(1.3%)、その他 17 例 (5.6%) であった . 早期再発は 193 例 (63%)、晩期再
発は 113 例 (37%) に認められた . 晩期再発群は早期再発群に比べ腫瘍径が小
さ く (3.0cm vs. 2.5cm、p=0.005)、LN 転 移 陽 性 率 (68.4% vs. 54.0%、
p=0.016)、LN 転移個数中央値 (2 個 vs. 1 個、p=0.001)、脈管浸潤 (LVI) 陽
性率 (81.3% vs. 65.5%、p=0.003) いずれも有意に低値であり、HR 陽性
率 (58.0% vs. 81.4%、p < 0.001) は有意に高値であった .HR 陽性乳癌にお
いて晩期再発群 (92 例 ) は早期再発群 (112 例 ) と比べ LN 転移陽性率 (71.4%
vs. 55.4%、p=0.026) および LN 転移個数中央値 (2 個 vs.1 個、p < 0.001)、
LVI 陽性率 (81.3% vs. 66.3%、p=0.023) が有意に低値であったが、腫瘍
径には有意差を認めなかった .HR 陰性乳癌において早期再発群 (81 例 ) は晩
期再発群 (21 例 ) に比べ LN 転移個数中央値 (3 個 vs.0 個、p=0.008) のみ有
意に高値であった .smoothed hazard model にて年次再発リスクを比較する
と、LN 転移陽性症例では術後 5 年目以降の再発リスクは HR status による有
意差を認めなかった .LN 転移陰性症例では術後 5 年未満の再発リスクは HR 陰
性群で高値であったが、術後 5 年目以降では HR 陽性群が陰性群に比べ高値で
あった .HR status 別の再発後生存期間は、早期再発群で陽性 99.1 ヶ月 vs. 陰
性 60.0 ヶ月 (p < 0.001)、晩期再発群で陽性 127.1 ヶ月 vs. 陰性 98.8 ヶ月
(p=0.982) となり、HR 陽性乳癌は HR 陰性乳癌に比べ早期再発群では有意に
再発後生存期間が延長していたが晩期再発群では有意差を認めなかった 【
. 結
論】HR 陽性で LN 転移陰性であることは早期再発と比較した晩期再発の予測因
子と考えられ、長期内分泌療法を考慮すべき患者群と考えられた .
10293
11711
遺伝子マーカー時代における臨床病理学的マーカーの位置づけ:
1,373 例の検討
HER2 受容体のサブタイプは転写レベルで制御されているの
か?
DP-1-011-03
1
3
岡山大学病院 乳腺・内分泌外科、2 岡山大学病院 緩和支持医療科、
岡山大学病院 消化器外科学、4 聖路加国際病院
DP-1-011-04
1
3
岩本 高行 1、松岡 順治 2、溝尾 妙子 1、野上 智弘 1、元木 崇之 1、
枝園 忠彦 1、平 成人 1、林 直輝 4、藤原 俊義 3、土井原 博義 1、
鳩野 みなみ 1、原 暁生 1、三好 雄一郎 1、伊藤 麻衣子 1
虎の門病院 乳腺・内分泌外科、2 冲中記念成人病研究所、
虎の門病院 病理部
三浦 大周 1,2、門脇 正美 1、田村 宜子 1、川端 英孝 1、木脇 圭一 3、
藤井 丈士 3
背景: Estrogen receptor(ER) 陽性乳がんにおける抗がん剤の適応判定は、
これまで臨床病理学的因子が用いられていたが、近年では特に欧米におい
て、本来予後予測マーカーである遺伝子マーカーで代用されることが多くなっ
ている。しかし、これまでの臨床病理学的マーカーと遺伝子マーカーの有用
性について直接比較した報告はほとんどない。そこで今回われわれは組織学
Grade と遺伝子マーカーについて比較検討した。方法:ER 陽性 / Human
epidermal growth factor receptor2 陰性原発性乳がん 1,373 例のマイクロ
アレイデータより得られた遺伝子マーカー(リスク分類 Low/ Intermediate
/ High リ ス ク 群、http://www.recurrenceonline.com/) と 組 織 学 Grade に
ついて予後予測(手術のみ)とタキサン系+アンスラサイクリン系を含む術前
化学療法の効果予測について検討を行った。結果:Grade 分類では半数以上
が GradeII:804 例 (59%)、リスク分類では半数以上が Low リスク群 :751 例
(55% ) に分類された。GradeIII と High リスク群には、ほぼ同程度の 19%
と 17% が分類された。GradeIII のうちリスク分類でも High リスク群に分類
されたのは 42%(265 例中 112 例)、GI,II のうちリスク分類では High リス
ク群に分類されたのは 11%(1,108 例中 126 例)であった。予後予測(手術
のみ)に関しては、多変量解析でリスク分類は有意差を認めたが、Grade で
は認めなかった。また、GradeI,II はリスク分類で予後に関して層別化可能で
あった。術前化学療法による病理学的完全寛解 (pCR) 率は Grade とリスク分
類ではそれぞれ I:3.4% / Low:4.6%、II:3.8% / Intermedicate:5.7%、
III:15.9% / High:16.5% と各群のばらつきに有意差はなかった。(P=0.226)
また、GradeI,II(N=189)のうちでリスク分類で High リスク群となったとき
pCR 率は 2.8%(1/36) にとどまった。多変量解析による抗がん剤の効果予測
は 2 つのマーカーともに有意差は認められず、リスク分類の Grade に対する
優位性を示すことはできなかった。結語:遺伝子マーカーは Grade に比べて、
より多くの再発低リスク群を予測することができ、予後予測能は良好であっ
たが、抗がん剤の効果予測では優性を示すことができなかった。今後、ER 陽
性乳がんの抗がん剤に対する効果判定のさらなる精度向上が必要である。
273
背景:p95HER2 いわゆる Her2 C-terminal fragment (H2CT) は主にプロテ
アーゼなどにより切断されることによって生じ、trastuzumab 耐性と報告さ
れている.一方 H2CT を有する細胞では通常の Her2 full length (H2FL) を有
する細胞と異なる性質があるとの報告やチロシンキナーゼドメインを持たな
い Her2 N-terminal fragment (H2NT) の存在も明らかにされてきている.
目的:HER2 受容体のサブタイプ (H2FL, H2CT, H2NT) が転写レベルで制御
を受けるという仮説のもと、それを検証しそれぞれの生物学的特徴を明らか
にする.
対 象 と 方 法: 術 前 化 学 療 法 (FEC/EC followed by wPAC with T) と し て
trastuzumab 投 与 を 受 け、 化 療 前 生 検 FFPE の 使 用 可 能 な HER2 陽 性 乳
癌 20 例(ER+ 10 例 , ER- 10 例 )を 抽 出 し、mRNA を 高 感 度 に 検 出 可 能 な
QuantiGene viewRNA(Affymetrix) を用いて in situ hybridization を行った.
erbb2 の 1-2068bp(5’ 領域 ) および 2069bp 以降 (3’ 領域 ) を特異的に標識す
るプローブ (5’ : 赤 , 3’ : 青 ) をそれぞれ設計し 2 種の同時染色を行い ebbb2
mRNA が有している配列領域を検証した.
結果:全例で 5’ 領域、3’ 領域いずれも検出可能であった.染色パターンから 5’
領域、3’ 領域がほぼ同レベルである H2FL 群と 5’ 領域が優位な H2NT 群 (H2FL
も充分に存在するが H2NT も存在 )、3’ 領域優位な H2CT 群 (H2FL も充分に存
在するが H2CT も存在 ) に分けることができた.H2FL 群は 12 例、H2NT 群 4
例、H2CT 群 4 例であった.H2CT は 4 例いずれも ER- であり、内 3 例は術前
化療 pCR であった.3’ 領域の mRNA が高発現している症例に有意差をもって
pCR を認めた.20 例中 3 例に遠隔再発を認めたが、内訳は H2FL 1 例、H2NT
2 例であった.
結語:H2CT や H2NT といった H2FL とは異なるサブタイプが生ずる原因の一
つとして mRNA もしくは転写の異常があることが明らかになった.術前化療
に対する反応は H2NT よりも H2CT の方が高く、予測していた Trastuzumab
に対する反応性とは逆の傾向を認めたが、それぞれの生物学的特徴は明らか
に異なると予想された.
一般セッション(ポスターディスカッション)
Oncotype DX はホルモン受容体陽性乳癌に対する予後予測および化学療法の
効果予測を検証することで、患者さんへの個別化治療を実現することができ
ると期待されている。当院において 2012 年 1 月~ 2013 年 9 月まで術後ホル
モン受容体陽性乳癌と診断された症例 72 例(閉経前 41 例、閉経後 31 例)に対
し Oncotype DX を測定した。結果は recurrence score(RS)
としてカテゴリー
分類した。低リスク群:40 例(56%)、中間リスク群:27 例(37%)、高リス
ク群:5 例(7%)であった。高リスク群には全例、中間リスク群でも 3 例に
対して化学療法の上乗せが行われた。RS とリンパ節転移、核異型度、脈管侵
襲、ER 発現量では関連性は認めなかった。但し Ki-67 と RS には関連性が示
唆された。高リスク群は 5 例中4例が Ki-67 30% 以上で、1 例は 10% であっ
た。しかし Ki-67 が 50% 以上と高くても7例は低~中間リスク群に分類され
た。閉経後症例 31 例中、pN(+) は 23 例、pN0 は 8 例で、pN(+) に 2 例(Ki67
は 40%、10%)、pN0 に 1 例 (Ki67 は 50%) と合計 3 例に高リスクを認めた。
リンパ節転移があっても化学療法が適応となる例は 8.7% であった。閉経前症
例 41 例中、今回患者さんの強い希望があった pN(+)(micrometastasis も含
めて)の 18 例に対し RS の測定を行った。しかし pN(+) 例には高リスクは認
めず、pN0 例に 2 例の高リスクを認めた。但しこの2例は Ki-67 60~70% と
高値であった。現在 Southwest Oncology Group(SWOG) ではホルモン受容
体陽性、HER2 陰性、リンパ節転移陽性 (1~3 個まで ) で、RS が中間リスク群
の患者が化学療法を受けるメリットがあるかどうか検証する前向き試験であ
る RxPONDER trial が行われており、Oncotype DX の適応拡大の可能性が期
待される。個別化医療の実現のため、引き続き OncotypeDX の症例の積み重
ねと検討が必要と思われる。
村田 健、高橋 麻衣子、林田 哲、神野 浩光、北川 雄光
ポスターディスカッション
10443
11417
完全無補助療法乳癌症例群における Bcl-2 の独立した臨床病理
学的意義
術前化学療法における DJ - 1 蛋白発現の解析:化療による発現
変化・再発予後因子の検討
DP-1-011-05
DP-1-011-06
1
1
2
3
東京都健康長寿医療センター研究所 老年病理学、
がん研 病理部、3 京都大学大学院医学研究科 標的治療腫瘍学講座、
4
がん研有明病院 化学療法科、5 がん研有明病院 乳腺センター
東京医科大学病院、2 東京医科大学病院 医学総合研究所、
防衛医科大学校 病理部
海瀬 博史 1、河手 敬彦 1、小田 美規 1、山田 公人 1、木村 芙英 1、
松村 真由子 1、上田 亜衣 1、佐藤 永一 2、岩屋 啓一 3、河野 範男 1
本間 尚子 1,2、堀井 理絵 2、佐治 重衡 3、新井 冨生 1、伊藤 良則 4、
岩瀬 拓士 5、秋山 太 1
一般セッション(ポスターディスカッション)
【緒言】アポトーシス抑制因子 Bcl-2 は種々の腫瘍の発生・増殖に重要な役割を
果 た す が、 乳 癌 に お け る Bcl-2 発 現 は estrogen receptor (ER) お よ び
progesterone receptor (PR) の発現と相関し、予後良好因子として知られて
いる。Bcl-2 発現の予後良好性は、ホルモン療法の効果などが、共発現する
ER/PR を介して間接的に表れているにすぎないかもしれない。本研究では補
助療法を全く施行されていない乳癌症例群において、Bcl-2 の臨床病理学的意
義を検討した。
【対象と方法】術前術後とも補助療法を施行されていない乳癌症例 634 例。
Bcl-2 発現は免疫組織化学的に検索し、予後を含む臨床病理学的諸因子との関
係を解析した。
【結果】Bcl-2 発現は、ER/PR の発現とは正の、核グレード、HER2、腫瘍径
とは負の相関関係を示していた。対象全体についての、閉経状況、腫瘍径、
リンパ節転移、核グレード、HER2、ER、PR を考慮した多変量解析では、
Bcl-2 発現は独立した予後不良因子だった(表)。ホルモン受容体(HR)陽性群
では、Bcl-2 発現は予後と関係していなかったが、HR 陰性群あるいは triplenegative (TN) 群では、Bcl-2 発現は有意な予後不良因子で、多変量解析で
も独立した予後不良因子だった(表)。この傾向は特に閉経後に顕著で(表)、
Bcl-2 陰性の閉経後 HR 陰性群 /TN 群の予後は極めて良かった。
【考察】補助療法の影響のない HR 陰性群 /TN 群では、Bcl-2 発現は独立した予
後不良因子だった。このような癌では、Bcl-2 本来のアポトーシス抑制作用
が明瞭にあらわれた可能性がある。予後予測あるいは治療法選択の観点から、
特に閉経後の HR 陰性群 /TN 群における Bcl-2 検索の有用性が示唆された。
【はじめに】DJ - 1 蛋白は多機能蛋白であり、コードする遺伝子は家族性パー
キンソン病(PARK7)の原因遺伝子である。また発癌に関連する蛋白としても
知られる。分泌蛋白としても知られ、乳癌患者の血清中・乳汁分泌液にも認
められ、新規の乳癌診断マーカーとして期待される。これまで我々は、異常
分泌液中に高濃度の DJ - 1 を認め、良悪性の鑑別マーカーであることを報告
し、さらに、術前化学療法における強力な pCR 予測因子であることを報告した。
(kawate ら BCRT2013)【目的】術前化学療法後手術症例において、治療前針
生検および術後遺残組織中の DJ-1 蛋白発現状況が予後予測因子となりうるか
を検討する。【対象・方法】 2002 年から 2010 年までに術前化学療法施行し
た 198 例・術後 non-pCR60 例を対象とした。症例背景は、年齢(平均 51.4
歳± 10.7)閉経(前 -97、後 -101)ER 発現(陽性 -145、陰性 -53)PR 発現(陽
性 -85、陰性 -113)HER2 発現(陽性 -70、陰性 -128 例)Ki-67(55(≧ 14%)、
139( ≦ 14 %))Sub-type(Lum-A(44),L-B(54),L-Her2 (46),HER2(24) ,
TN(29))治療前 DJ-1 蛋白発現(低発現 -91、高発現 -107)、遺残組織中 DJ-1
蛋白発現(低発現 -35、高発現 -25)。統計解析は、χ二乗検定、多変量解析
は logistic 解析、Kaplan-Meier 法による生存時間の推定を行った。【結果】
多変量解析による pCR 予測因子は治療前 DJ-1( < 0.0001) が最も強力な因
子であった。今回の予後予測因子の検討では、1)治療前 DJ-1 発現と再発は
p=0.2817、生存は p=0.2436 といずれも有意ではなかった。2)治療後 DJ-1
蛋白発現の陽転化 20%(5/25)、陰転化 43%(15/35) に認めた。陽転化には
再発なく、陰転化に 1 例再発を認めた。3)通常低発現群が予後悪いとされる
が、HER2 陽 性 症 例 に 関 し て は、DJ-1 低 発 現 群 (96%)、 高 発 現 群 (70%)、
log-rank(p=0.0935) と高発現で再発リスクが高かった。4)遺残腫瘍 60 例
について 50 か月時点の Kaplan-Meier 法による DFS の解析では、<治療前>
DJ-1 低発現群 (76%)、高発現群 (91%)、log-rank(p=0.0969) <遺残腫瘍
> DJ-1 低発現群 (80%)、高発現群 (92%)、log-rank(p=0.1897) であった。
【結語】 DJ-1 蛋白発現は、術前化学療法の強力な pCR 予測因子であるが、有
意な予後予測因子としては抽出されなかった。今後さらに遺残腫瘍での発現、
Sub-Type に関する検討を加えたい。
10745
11086
トリプルネガティブ乳癌における BRCAness による治療効果予
測と予後
トリプルネガティブ乳癌の予後、及び術前化学療法の病理学的
完全奏功における LVSI の重要性
DP-1-012-01
1
DP-1-012-02
昭和大学医学部 乳腺外科、2 昭和大学 第一病理
千葉大学大学院医学研究院 臓器制御外科学乳腺甲状腺外科
明石 定子 1、渡邊 知映 1、桑山 隆志 1、榎戸 克年 1、沢田 晃暢 1、
吉田 玲子 1、高丸 智子 1、池田 紫 1、広田 由子 2、中村 清吾 1、
橋本 梨佳子 1、森 美樹 1、大山 宗士 1、金田 陽子 1、奥山 裕美 1
大久保 嘉之、長嶋 健、榊原 雅裕、三階 貴史、藤本 浩司、
鈴木 ティベリウ浩志、藤咲 薫、椎名 伸充、榊原 淳太
トリプルネガティブ乳癌(以下TN)では術前化療で病理学的完全消失(pCR)
率と予後が相関することが知られ、pCR を得ることが重要である。アンスラ
サイクリン+タキサンによる標準レジメンで高い pCR 率(30-40%)を示す一
方、タキサン系薬剤に増悪をきたす症例も約 20%と高率に存在し、両者の鑑
別はこれまで困難であった。近年TNに対し術前化療でアンスラサイクリン、
タキサンに追加してカルボプラチンを投与することで、pCR が向上すること
が幾つかの臨床試験で示された。一方カルボプラチン投与で中止に至る有害
事象の増加も認め、タキサン、カルボプラチンに対する効果予測により更な
る治療の個別化が重要である。BRCA1 変異陽性例では PARP 阻害薬や白金製
剤の感受性が高くタキサンに抵抗性を示すことが報告されている。BRCAness
は BRCA12 遺伝子変異のみならず、BRCA1 の promotor 領域の methylation
などによって惹起される遺伝子修復機能不全状態であり、BRCA12 変異陽性
乳癌と同様の薬剤感受性を有することが期待される。今回我々は当院で術前
化療施行例に対し、MLPA 法にて BRCAness を測定し、化学療法(特にタキサ
ン)に対する効果予測が可能か検討した。対象は 2010 年 10 月以降当院にて
タキサンもしくはアンスラサイクリンによる術前化療を施行した 74 例。針生
検標本及び手術検体のホルマリン固定標本用いて検討した。針生検標本では
BRCAness 陽性は 38% で、奏効率は陽性例で低い傾向であった ( 陽性 63%、
vs 陰性 88%、p = 0.056)。TN 20 例中陽性は 65%、陽性で有意に奏効率は
低く (54% vs100%、p=0.04)、陰性では全例奏功した。TNでタキサン投
与中に PD となった 4 症例は全例 BRCAness 陽性であった。手術標本では pCR
10 例を除く 64 例で計測、陽性は 15.6%、TN 19 例中陽性は 42% で、奏効
率は全例でも (p < 0.01)TN だけでも(p < 0.05)陽性例で有意に低かった。陽
性例は抵抗例では化療後も陽性であったが、奏功例では陰転化する傾向があっ
た。観察期間中央値 1 年半と短期間の経過観察ながら TN28 例中再発を 28%
と高率に認めた。再発例はいずれも BRCAness 陽性例であり、PD2 例他病理
学的効果 Grade2a と効果良好症例も 3 例認め、予後予測性が示唆された。以
上より BRCAness 測定によりTN乳癌に対する適切な薬剤選択及び予後予測
可能性が示唆され、陽性例に対しカルボプラチン投与で pCR 率ひいては予後
が改善するのか、今後多施設共同前向き試験において検討予定である。
【背景】トリプルネガティブ乳癌(TNBC)においては標的治療が存在せず、非
標的治療としての標準的な化学療法に頼らざるを得ないのが実情である。ま
た、TNBC の術前化学療法(NAC)においては、ホルモン感受性乳癌に比し病
理学的完全奏功(pCR)率が高く、pCR が得られた患者の予後は他のサブタイ
プと同等に良好である一方、腫瘍が遺残する場合の予後は極めて不良である
という paradox は周知のとおりである。このため化学療法施行前に、予後と
直結する抗癌剤の奏効性に関与する因子、すなわち NAC における pCR に関
与する因子の同定は必須である。今回我々は、TNBC の予後因子と、TNBC
の NAC において pCR と相関する臨床病理学的因子を検討した。【患者・方
法】1996 年 1 月から 2009 年 12 月の期間に当科において当科で手術を施行し
た TNBC 乳癌 157 症例(NAC 症例も含む)を対象とした。年齢や腫瘍径、腋
窩リンパ節転移の有無、組織学的グレード、脈管侵襲(LVSI)の有無といっ
た臨床病理学的因子と TNBC の予後、TNBC の NAC 症例における pCR との相
関について統計学的手法を用いて検討した。【結果】多変量解析により TNBC
の予後と有意に相関した臨床病理学的因子は腫瘍径(p=0.0008*、95%CI:
2.2673-197.63) と LVSI(p=0.0132*、95%CI:1.2444-6.5371) で あ
り、生存曲線分析においてもそれら(pT2-4、LVSI 陽性症例)の予後は有意
に短縮していた(腫瘍径:p=0.0002*、LVSI:p=0.0002*)。また TNBC の
NAC 症例における pCR と有意に相関した臨床病理学的因子は LVSI のみであ
り(p=0.0124*、odds ratio:6.2590)、生存曲線分析においても LVSI 陽性
症例の予後は有意に短縮していた(p=0.0013*)
。【結論】腫瘍径と脈管侵襲は
TNBC における独立した予後規定因子であり、TNBC の NAC 症例において脈
管侵襲陰性例は有意に pCR と相関する。腫瘍径の大きいものや脈管侵襲陽性
例にあっては治療の強化、特に新規レジメンの開発や新規薬剤を用いた臨床
試験の実施が求められる。
274
ポスターディスカッション
11018
11277
トリプルネガティブ乳癌に対するエリブリン化学療法における
治療効果予測マーカーとしての TLE3 発現の有用性
Caudin-3 および basal-marker,腫瘍浸潤リンパ球は TNBC
の術前化学療法における予測因子となる
DP-1-012-03
1
DP-1-012-04
大阪市立大学大学院 腫瘍外科、2 大阪市立大学大学院 診断病理学
1
1
1
1
1
3
1
柏木 伸一郎 、石原 沙江 、浅野 有香 、倉田 研人 、呉 幸枝 、
徳本 真央 1、森崎 珠実 1、青松 直撥 1、野田 諭 1、川尻 成美 1、高島 勉 1、
小野田 尚佳 1、大澤 政彦 2、平川 弘聖 1
東京慈恵会医科大学 乳腺内分泌外科、2 東京慈恵会医科大学 病理学講座、
東京慈恵会医科大学 腫瘍血液内科
野木 裕子 1、井廻 良美 1、三本 麗 1、神尾 麻紀子 1、加藤 久美子 1、
鳥海 弥寿雄 1、鈴木 正章 2、小林 直 3、内田 賢 1、武山 浩 1
11058
11406
アンドロゲン受容体陽性トリプルネガティブ乳癌の予後解析お
よび臨床病理学的検討
トリプルネガティブ乳癌の亜分類は化学療法剤の選択に重要で
ある
DP-1-012-05
1
DP-1-012-06
大阪市立大学大学院 腫瘍外科、2 大阪市立大学大学院 診断病理学
1
浅野 有香 1、柏木 伸一郎 1、石原 沙江 1、倉田 研人 1、呉 幸枝 1、
徳本 真央 1、森崎 珠実 1、青松 直撥 1、野田 諭 1、川尻 成美 1、高島 勉 1、
小野田 尚佳 1、大澤 政彦 2、平川 弘聖 1
【目的】トリプルネガティブ乳癌 (TNBC) のサブタイプの一つとて,アンドロ
ゲン受容体 (AR) 過剰発現が確認される AR 陽性症例が注目されている.抗 AR
陽性の TNBC に対する海外第 II 相試験も進行中であり,TNBC に対する個別
化治療の進展が期待されている.今回われわれは TNBC における AR 発現を免
疫組織化学的に検討し,その予後解析および臨床病理学的評価を行った.【対
象と方法】2000 年から 2006 年に手術を行った初発乳癌症例 1036 例を対象と
した.ER, PR, HER2, Ki67 の発現から免疫組織化学的に TNBC を確認し,抗
AR 抗体 (clone AR441, dilution 1:50; Dako) を用いて AR 陽性 TNBC を同
定した.AR の判定は,癌細胞の浸潤部において 1% 以上の核が染色されたも
のを陽性とした.臨床病理学的検討の項目は,年齢,閉経状況,病期,腫瘍径,
リンパ節転移の有無,リンパ管侵襲,脈管侵襲,組織型,核グレード,Ki67
などとした.統計解析には SPSS 13.0 (SPSS Inc, Chicago, USA) を使用し
た.AR 陽性 TNBC における臨床病理学的因子の検討には,カイ 2 乗検定を用
いた.また全生存率の算出には Kaplan-Meier 法を用い,有意差検定は logrank 検定にて評価した.p 値 0.05 未満を統計学的に有意差ありとした.
【結果】
初発乳癌手術症例 1036 例のうち TNBC は 190 例 (18.3%) であった.TNBC
は non-TNBC と比較して,全生存率は有意に不良であった (p < 0.001, logrank).一方で TNBC の中では,AR 発現症例は 56 例 (29.5%) であり,非発現
例 134 例 (70.5%) と比し有意に予後良好であり (p=0.019, log-rank),多
変量解析では有意に生存率と相関しており,
独立した予後良好因子であった (p
= 0.039).また臨床病理学的背景における検討では,各因子との相関は認め
られなかった.【結語】TNBC において,AR 発現は予後良好な亜分類マーカー
として有用であり,抗アンドロゲン内分泌療法の対象となる可能性が示唆さ
れた.
275
横浜市立大学附属市民総合医療センター 乳腺甲状腺外科、
横浜市立大学附属市民総合医療センター 病理部、
横浜市立大学附属市民総合医療センター 臨床統計センター、
4
横浜市立大学 消化器・腫瘍外科
2
3
石川 孝 1、成井 一隆 1、菅江 貞亨 4、嶋田 和博 1、喜多 久美子 1、
田辺 美樹子 2、市川 靖史 4、大庭(斉藤) 真梨 3、森田 智視 3、遠藤 格 4
背景:トリプルネガティブ乳癌 (TN) は分子生物学的には6つに亜分類され、
薬剤に対する感受性にも差があると報告されている。しかし現時点の TN の
治療は、一律にアンソラサイクリンとタキサンが併用され、亜分類が臨床的
に有用であったという報告はない。目的:TN を Basal と non-Basal タイプ
に亜分類して、アンソラサイクリンとタキサンに対する感受性を観察し、各
サブタイプにおける各薬剤の効果予測因子を観察して、この亜分類の臨床的
有用性を検討することを目的とした。対象と方法:術前化学療法の多施設共
同 臨 床 試 験 (KBOG1101) の TN 症 例 66 例 を 用 い た。TC (75/600mg/m2)
x6(TC6) ま た は FEC(500/100/500mg/m2)x3-Docetaxel(100mg/m2)
x3(FEC-D) をランダムにそれぞれ 33 例ずつ術前に投与した。全 66 例の治
療前の針生検用いて Cytokeratin5/6(CK5/6) の免疫染色を行い、Basal タイ
プ 43 例と non-Basal タイプ 23 例に分類した。それぞれのサブタイプにおけ
る TC6 と FEC-D の病理学的効果(Grade3 pCR)を観察し、効果予測因子と
して、年齢、腫瘍径、核異型度、Ki-67、P53、TOP2A、ALDH1 などの臨床
病理学的因子を観察した。さらに化学療法後の手術標本で各因子の変化を観
察した。結果:pCR は、Basal および non-Basal タイプで、それぞれ全体で
12 例(27.9%)と 7 例(30.4%)に観察された。治療法別にみると、Basal で
は FEC-D では 42.9%、TC で 13.6%、non-Basal では、FEC-D では 25.0%、
TC で 36.4%であり、有意に Basal における TC の効果が低かった(p=0.033)。
pCR と関連が認められた因子は、ALDH1 だけであり、特に FEC-D の効果とは
有意に逆相関していた (p=0.047)。さらに手術標本では Ki67 は有意に低下し
ていたが (p < 0.01)、ALDH1 の発現は上昇していた。考察:今回の Basal に
対して TC の効果が有意に低いという結果は、BRCA の機能異常がある症例は、
分裂期に作用する薬剤の効果が低いという報告と一致する。すなわち現時点
では、Basal には DNA を標的とするアンソラサイクリンなどが必須であると
考えられ、CK5/6 による TN の亜分類は臨床的に有用であることが証明された。
現在、BRCAness について解析中であり、学会ではその結果も合わせて報告
したい。また ALDH1 陽性の乳癌は、癌幹細胞の性質を有し、従来の化学療法
の効果が低いと考えられ、新たな治療薬の開発が必要であると考えられた。
一般セッション(ポスターディスカッション)
【背景,目的】トリプルネガティブ乳癌 (TNBC) の術前化学療法による病理
学的完全奏功 (pCR) 率は他のタイプに比較して高い.しかし,半数以上の
TNBC は pCR を得ることができず,予後不良である.網羅的遺伝子解析によ
り,TNBC も さ ら に basal-like, mesenchymal stem cell-like(claudin-low)
などを含めた 6 つに分類されることが報告された.また,腫瘍浸潤リンパ球
(TIL) が治療の予測因子になるとの報告もなされた.今回われわれは basalmarker であるサイトケラチン (CK)5/6,上皮成長因子受容体 (EGFR) および
Claudin-3 の発現を免疫組織学的にて解析し,TIL とともに化学療法効果予測
因子としての有用性を検討した.【対象,方法】アンスラサイクリンとタキサ
ンを同時または逐次使用による術前化学療法を施行した 412 名の乳癌患者を
対象とした.針生検で得た検体における ER,PgR,HER2,EGFR,CK5/6,
Claudin-3 の発現を免疫組織学的に評価し,さらに TNBC を basal/claudinhigh(BCH),basal-claudin-low(BCL), non-basal/claudin-high(NBCH)
および non-basal/claudin-low(NBCL)に分類し,TIL とともに pCR 率を検
討した.【結果】pCR 率は全体 19%,TNBC 36%,non-TNBC 15% であり,
有意に TNBC における pCR 率は高かった(p < 0.0001).4 群間における pCR
率は有意に異なり,BCH: 50%,BCL: 25%,NBCH: 83%, NBCL: 43% で
あった(P=0.039).TNBC において TIL を高度に認めた群のうち 60%,TIL
軽度または無しの群のうち 33%において pCR を認め,強い相関を認めた
(p=0.06).【結論】今回の研究は Claudin-3 および basal-marker は TNBC の
術前化学療法における予測因子となり得ることを示した.術前化学療法とし
てカルボプラチンを上乗せすることで TNBC 全体の pCR が向上するという報
告がなされたが,患者へのハームも大きく,従来の方法で良好な成績を得る
群を掌握する必要がある.網羅的遺伝子解析を臨床的に施行するには医療経
済的に困難であれば,安価に治療の選択をするうえで免疫学的検討や TIL の検
討は今後重要であると考える.
【目的】エリブリンメシル酸塩は,タキサンやビンカアルカロイドとは異な
る作用機序を持つ微小管ダイナミクス阻害剤である.微小管の重合部位に高
親和性に結合し,微小管の伸長を阻害する.第 III 相 EMBRACE 試験にて進
行再発乳癌における全生存期間の延長が示され,進行再発乳癌に使用される
ようになった.また,ER, PR, HER2 陰性のいわゆるトリプルネガティブ乳
癌 (TNBC) は化学療法が奏効する例がみられる一方で奏効しない例を多く含
み,治療効果を予測し得るバイオマーカーの解明が望まれる.さらに第 III 相
301 試験におけるサブ解析にてエリブリンは TNBC により効果的であったこ
となどから,今後の TNBC に対する化学療法の key drug として期待されてい
る.今回われわれはタキサン系薬剤の治療効果予測マーカーとしてこれまで
報告されている TLE3, β -tubulin class III, GSTP1 などの因子を用いて,エ
リブリン化学療法における治療効果予測マーカーの検討を行った.【対象と方
法】2011 年 8 月から 2013 年 6 月までにエリブリンにて化学療法を行った手術
不能もしくは転移・再発乳癌症例 52 例を対象とした.その有効性についてク
リニカルベネフィット率 (CBR) を算出し,治療前の針生検標本における ER,
PR, HER2, Ki67, β -tubulin class III, GSTP1 および TLE3 の発現状況から免
疫組織化学的に検討を行った.抗腫瘍効果は,RECIST に準拠した治療効果の
判定基準に基づいて評価した.尚,当科では第 II 相臨床試験として初回化学
療法としての有用性および安全性の検討しており,本検討ではこれらの症例
も一部に含めた.
【結果】
TNBC は 21 例 (40.4%), non-TNBC は 31 例 (59.6%)
であった.CBR は 22 例 (42.3%) に認められ,TLE3 やβ -tubulin class III
発現の有無による有意差はなかった (p=0.328, p=0.523).臨床病理学的背
景と TLE3 の発現を検討したところ,TNBC では non-TNBC と比較して TLE3
の発現を有意に高率に認めた (p=0.035).さらに TLE3 発現のある TNBC 症
例は,TLE3 発現のない TNBC 症例に比べて CBR が有意に高率 (p=0.003)
であったが,non-TNBC 症例では TLE3 発現による効果の差を認めなかった
(p=0.135).一方でβ -tubulinIII, GSTP1 発現においては,いずれも有意な
差は認められなかった.【結語】TNBC において,TLE3 はエリブリン化学療法
における治療効果予測マーカーとして有用である可能性が示唆された.
ポスターディスカッション
10032
10410
病理医間の Ki67 の一致率の検討 Ki67 リングスタディの結果
から
ホルモン陽性乳癌における月経周期と Ki67 発現についての検討
DP-1-013-01
DP-1-013-02
1
2
1
東海大学医学部 乳腺内分泌外科、
2
自治医科大学 病理診断部・病理学講座、3 熊本市民病院 病理診断科、
4
相良病院 病理診断科、5 東京都健康長寿医療センター研究所 老年病理学、
6
川崎医科大学 病理学 2、7 北福島医療センター 乳腺疾患センター、
8
広島大学原医研 腫瘍外科、9 那覇西クリニック 乳腺外科、10 岡山大学、
関西医科大学
新倉 直樹 1、坂谷 貴司 2、有馬 信之 3、大井 恭代 4、本間 尚子 5、
鹿股 直樹 6、吉田 一也 7、角舎 学行 8、玉城 研太朗 9、森谷 卓也 6、
熊木 伸枝 1、岩本 高行 10、杉江 知治 10
一般セッション(ポスターディスカッション)
背景:Ki67 ラベリングインデックス (Ki67LI) の測定方法は施設によって違
いがあり、Ki67LI の値が施設間、測定者間によって違う事が指摘されてい
る。そこで我々は病理医の間での Ki67LI の相関、一致率を検討し、何が原因
となっているかを検討するためにリングスタディを行った。方法:2007 年
に東海大学において手術をされた ER 陽性、HER2 陰性の 110 人の手術標本か
ら作成されたスライドを使用した。乳癌学会班研究(Ki67 の測定評価の標準
化に関する研究)に参加している 6 人の病理医にスライドを送付した。測定方
法はそれぞれの病理医のやり方で最低 500 個の浸潤性乳癌細胞をカウントし
た。6人の病理医から結果を回収し予後データと結合し解析を行った。結果:
96 例が今回の研究の対象となった。6 人すべてで Nuclear grade3 と grade1,
grade3 と Grade2 の間の Ki67LI は統計学的有意に違いが認められた。更に
Spearman's rank correlation test を用いて検討すると 6 人の病理医間の相
関係数は (Rho: 0.73-0.88) と強く相関が認められた。しかし Ki67LI のカッ
トオフを 13.25%とすると、Low の一致率は 0.452-0.778、High の一致率
は 0.862-0.979 であり ( κ = 0.429-0.660)、一致率としてはよくなかった。
一致率が良くなかった原因としてはカウントする部位、核の染色の度合いが
最も影響を及ぼしていると考えられた。次に 5 年の無再発生存期間を 6 人の
病理医ごとに検討したところ、1 人の病理医のみ Ki67(Low vs High) で有意
差を認めた。結語:6 人の病理医の間で測定方法の標準化をせずに Ki67LI の
計測を行った。カットオフ値を定めた場合、一致率は高くなかった。今後の
Ki67LI を臨床で使用する場合は計測方法の標準化が必要である。班研究とし
て測定方法の統一を行った後に再度リングスタディを計画している。
順天堂大学医学部 乳腺・内分泌外科学、
順天堂大学医学部 人体病理病態学
堀本 義哉 1、清水 秀穂 1、猪狩 史江 1、荒川 敦 2、田辺 真彦 1、
齊藤 光江 1
【背景】Ki67 の発現は細胞周期中での活動状態を反映する。今回我々は ER 陽
性乳癌において、月経周期に伴うエストラジオール(E2)の血中濃度の変化
によって Ki67 の発現が変化する可能性を予想し、以下の検討を行った。【方
法】ER 陽性乳癌細胞株の Ki67 の発現が E2 濃度依存性に変化するか否かを調
べた。次に閉経前の ER 陽性浸潤癌 50 例について、月経のタイミングと同一
患者の針生検・手術検体の Ki67 発現の関連性について検討を行った。月経周
期については月経開始前 14 日間の排卵期をA期、それ以外の期間をB期と定
義した。なお術前治療施行例は除外した。【結果】E2 枯渇培地中の MCF7 では
E2 添加により用量依存性に Ki67 の発現が上昇した。同一患者の針生検と手術
検体における Ki67 発現の比較では、A → A 期及び B → B 期で採取された場合、
手術標本の Ki67 の発現は針生検よりそれぞれ 1.8 倍、1.7 倍に上昇していた。
この主な原因として針生検が腫瘍の一部をランダムに採取するために真の hot
spot を捉えきれない結果と解釈した。これらに比較し A → B 期での Ki67 の変
化率は 1.1 倍、B → A 期では 2.6 倍であった。以上より針生検と手術標本間の
discrepancy を考慮しても、排卵期の Ki67 の発現が高い傾向がみとめられた。
【結語】Ki67 発現が治療選択を左右しうる ER 陽性乳癌においては、結果の解
釈の際に検索のタイミングを考慮する必要がある可能性が示唆された。
10851
11049
Ki67の目測5段階判定 (eye-5) は簡単で、labeling index(LI)
の代用となり、判定者間・判定者内格差も少ない
Ki-67 の計測の標準化は可能か-術前針生検・術後手術標本で
の比較-
DP-1-013-03
DP-1-013-04
1
松山赤十字病院 病理診断科、2 済生会今治病院 病理診断科、
愛媛大学 病理学、4 愛媛県立中央病院 病理診断部、
5
市立宇和島病院 臨床検査科、6 松山市民病院 病理部、
7
四国がんセンター 臨床検査科、8 松山赤十字病院 乳腺外科、
9
四国がんセンター 臨床研究推進部、10 川崎医科大学 病理学2
1
3
昭和大学 乳腺外科、2 昭和大学医学部 病理診断学講座
高丸 智子 1、明石 定子 1、渡邊 知映 1、池田 紫 1、大山 宗士 1、
桑山 隆志 1、榎戸 克年 1、沢田 晃暢 1、広田 由子 2、中村 清吾 1、
中島 めぐみ 1、金田 陽子 1、橋本 梨佳子 1、吉田 玲子 1、森 美樹 1
飛田 陽 1、坂東 健次 2、杉田 敦郎 3、前田 智治 4、植田 規史 3、
松影 昭一 5、中西 護 5、木藤 克己 4、大朏 祐治 6、西村 理恵子 7、
宮崎 龍彦 3、大城 由美 1、川口 英俊 8、井上 博道 8、青儀 健二郎 9、
森谷 卓也 10
【 背 景 】ER 陽 性 /HER2 陰 性 乳 癌 は、 増 殖 能 や PgR に よ り ’ luminal A-like’
と’ luminal B-like’ にサブタイプ分類され、後者には化学療法の追加が考慮さ
れる。St.Gallen2013 では 20%という閾値が提唱されたものの、増殖能を判
定する Ki67 免疫染色の評価方法は標準化されていない。
【方法】対象は、当院で切除された原発性浸潤性乳管癌 406 例。Ki67 免疫染色
(MIB-1, DAKO) の弱拡大で hot spot を同定し、強拡大 ( 対物 40 倍 ) の印刷物
上で癌細胞をカウントした ( 平均 1077 個 ; LI)。次に、中拡大 ( 対物 20 倍 ) で
同部位を鏡検し、目測で5段階に評価した (eye-5: < 10[1:9], ~ 14[1:6],
~ 33[1:2], ~ 50[1:1], > 50% )。また、うち 100 例を病理専門医 10 名に
送付し、同部位での eye-5 判定を依頼した。更に他の 100 例では、各自が hot
spot を選んだ上で eye-5 を判定した。ER + /HER2 -のうち 222 例は、病理
医 2 名が約 1 年後に改めて hot spot を同定し、eye-5 を判定した。
【結果】eye-5 は LI と正の相関を示し ( 図 )、組織学的グレードやリンパ節転
移とも相関した。eye-5 で score 1 と判定した 56 例の LI は全て 20%未満で、
score 4-5 とした 136 例の LI は全て 20%以上であった ( 図 )。病理医 10 名に
よる eye-5 の判定者間格差は少なく (weighted κ = 0.831)、各自が hot spot
を選んだ場合の暫定結果 (60 例・5 名 )
も同様である (weighted κ = 0.832)。
同一判定者内の再現性も良好であった
(weighted κ = 0.78)。
【考察】eye-5 は簡便で速く、多くの症
例でカウントによる LI 測定を不要とす
る。判定者間格差が少なく、再現性も
高いと考えられ、Ki67 評価の標準化に
向けた有力な候補となる。学会では、
eye-5 に組織グレードを組み合わせた
新たな3段階分類法を提唱したい。
【目的】ホルモンレセプター (HR) 陽性、HER2 陰性の Luminal type 乳癌にお
いて Ki-67 の値は化学療法施行の指標となっている。現在多くの施設では病
理医の目視によって測定されている。しかし、病理医による測定は多大な時
間と労力を要し、施設間のバラツキもあり標準化が最大の課題となっている。
その中で自動計測器での判定は診断の迅速化や再現性の向上や判定の均一化
が期待できる。また、術前・術後の Ki-67 の値の変化が術前内分泌療法の効果
判定の指標とされることがあるが、腫瘍内の不均一性もあり判定には注意を
要する。今回、術前の針生検と手術標本で Ki-67 の値が一致するか検討を行っ
た。さらに、自動計測器と病理医の測定結果が一致するか検討を行った。
【方法】2012 年 1 月~ 12 月に当院で針生検と手術を施行した原発性浸潤性乳
癌のうち、HR 陽性、HER2 陰性の 100 例を対象とした。術前薬物療法例は除
外した。針生検と手術標本の Ki-67 陽性細胞割合を自動計測器 15 視野および
病理医による目視によって測定した。1) 自動計測器による針生検、手術標本
の陽性細胞割合の一致率を比較した。2) 自動計測器と病理医による目視との
結果の一致率を比較した。
【結果】自動計測器による測定細胞数は針生検で平均 2123 個 (468-3440 個 )、
手術標本で平均 2102 個 (655-3742 個 ) であった。
1) 陽性細胞割合の比較:陽性率の平均値は針生検 7.97% (0.33-71.79%)、
手術標本 10.04% (1.27-77.69%) であった。陽性率 20% をカットオフ値と
した場合一致率は 100% であった。10%をカットオフ値とすると一致率は
79% であり、21% で乖離を認めた。 (p = 0.289,McNemer 検定 , κ= 0.426)。
2) 自動計測器と目視の比較:陽性率 20% をカットオフ値とした場合、一致
率は針生検、手術標本ともに 91.4% であった。10% ではそれぞれ 77.1%、
68.6% であった。不一致例について検討を行ってみると、針生検、手術標本
ともに自動計測機において低く判定される傾向にあった。原因としては、自
動計測器が、リンパ球など腫瘍細胞以外もカウントしてしまう場合があり、
検体が小さい針生検でその影響が顕著に現れたと考えられる。
【結語】1) 術前針生検と術後手術標本でカットオフ値を 20%とした場合、特
に Ki-67 は良好な一致率を示していた。
2) 目視と自動測定器の測定で高い一致率を示し自動計測機による標準化は可
能と考えた。
276
ポスターディスカッション
11405
10756
吸引式組織生検標本と手術標本の Ki67 値の不一致は月経周期と
の関連はあるか?
乳癌再発巣切除による新たな臨床知見と治療戦略
DP-1-013-05
DP-1-013-06
1
2
愛知県がんセンター中央病院 乳腺科
椎野 翔 1、木下 貴之 1、垂野 香苗 1、神保 健二郎 1、麻賀 創太 1、
北條 隆 1、吉田 正行 2
藤田 崇史、澤木 正孝、服部 正也、近藤 直人、堀尾 章代、権藤 なおみ、
井戸田 愛、市川 茉莉、岩田 広治
【目的】乳癌の術後薬物療法は、原発巣のホルモン受容体 (ER、PgR) や HER2
受容体の結果をもとに行われているが、近年、原発巣と再発巣の受容体発現
の不一致が報告されている。再発巣の受容体に応じた治療で予後が改善する
か、不一致が単に予後予測因子なのかに関する詳細は明らかではない。今回
我々は、当院での乳癌の原発巣と再発巣における免疫組織学的染色結果を集
計し、受容体発現変化や予後を比較検討した。【方法】1991 年 1 月~ 2013
年 7 月までに、当院で手術を行った 7,248 例のうち再発巣の切除ないし生検
を行った 158 症例に関して、原発巣と再発巣の ER、PgR、HER2 の免疫組織
学的染色を再度行い、比較検討した。陽性判定基準は J-score および Allred
score を参考とし、生存期間分析は Kaplan-Meier 法と Log-rank 検定を、予
後因子解析は Cox 比例ハザード回帰を使用した。【結果】再発部位の内訳は、
局所再発 105 例、遠隔転移 53 例であった。原発・再発巣の ER、PgR、HER2
受容体の不一致例は、17.8% (28 例 )、28.5% (45 例 )、3.8% (6 例 ) であり、
サブタイプ別の不一致例は、一致例より予後が悪い傾向であった(p < 0.017)。
ホルモン受容体陰転化と陽転化は 18 例と 5 例であり、陰転化例は、陽転化例
より遠隔転移が多い傾向であった。HER2 陰転化と陽転化は 2 例と 4 例であっ
た。これら 29 例のうち治療変更となった症例は、41.4% (12 例 ) であった。
J-score と Allred score の陽性判定基準ともに、ER、PgR 陰転化例は、不変
例と比較して予後不良であった。PgR では、再発巣で Allred score が低下す
るほど予後が悪い傾向であった (p = 0.026)。さらに多変量解析において、ホ
ルモン受容体陰転化例は、独立した予後因子であった。( ハザード比 [HR] =
2.72; 95% CI 1.24-5.95, p = 0.012)【結論】再発巣を積極的に切除ないし
生検することによって、受容体発現の不一致に関する臨床的に新たな情報が
得られ、再発乳癌における治療方針の変更および患者の予後を改善する可能
性が示唆された。さらに、受容体変化による治療変更と予後との関連、受容
体不一致例における癌の heterogeneity、術後治療と受容体変化の関連も同様
に検討し、報告する。
10315
11315
Semi-dry dot-blot(SDB) 法を応用した新規乳癌リンパ節転移
診断法キット化の試み
RI 法によるセンチネルリンパ節生検のおける、RI 注射部位の
放射線カウント数は転移陽性の予測因子となりうる
DP-1-014-01
1
DP-1-014-02
長崎大学病院 腫瘍外科、2 日赤長崎原爆病院 外科
1
2
大坪 竜太 1、矢野 洋 1、松本 恵 1、福嶋 絢子 1、柴田 健一郎 2、
畑地 登志子 2、谷口 英樹 2、永安 武 1
【背景】Semi-dry dot-blot(SDB 法)は通常リンパ節内に上皮成分が存在しな
い事を利用し,乳癌リンパ節転移を上皮細胞の成分である Cytokeratin(CK)
に対して anti-pancytokeratin antibody(AE1/AE3)を用いて膜上で迅速免
疫染色を行い,癌の転移を検出する方法である.SDB 法は入割したリンパ節
の洗浄液を用いて転移を診断するため,残ったリンパ節組織を迅速または永
久標本による病理学的診断を併用できる利点がある.これまで我々は前視方
的多施設臨床研究を行い,100 症例,174 リンパ節における SDB 法と永久病
理標本の比較において,感度 93.3%,特異度 96.9%,一致率 96.6%とい
う成績を報告してきた.今回我々は SDB 法を応用した新規乳癌リンパ節転移
診断法キット化の試みと抗 Cytokeratin18+19 抗体を用いた転移検出法を報
告する.【対象と方法】2013 年7月から 11 月にかけて長崎大学病院腫瘍外科
と日赤長崎原爆病院外科で乳癌手術を行った症例のうち,病理学的に転移陽
性と判断されたセンチネルリンパ節 3 例 3 リンパ節と郭清リンパ節 3 例 5 リ
ンパ節,転移陰性と判断された 6 例 12 リンパ節を対象とした.術前化学療法
や術前内分泌療法を行った症例は除外した.これら合計 20 リンパ節を AE1/
AE3 を用いた SDB 法と抗 CK18+19 抗体を用いた SDB 法で評価し,永久病
理標本による病理診断の結果と比較した.【結果】転移陽性 8 リンパ節におい
て,AE1/AE3 と抗 CK18+19 抗体を用いた SDB 法ともに全て転移陽性と判断
し,転移陰性 12 リンパ節においても AE1/AE3 と抗 CK18+19 抗体を用いた
SDB 法ともに全て転移陰性と判断した.感度,特異度,一致率は全て 100%
であった.【結論】CK19 陰性乳癌は約 3%存在する.CK18+19 ではほぼ全て
の乳癌を検出できるとされ,今回の検討でも高い精度が得られた.今後この
抗 CK18+19 抗体を用いて,SDB 法を応用した転移診断キットを作成する.
東京医科大学八王子医療センター 乳腺科、
静岡県立静岡がんセンター 女性内科、3 八王子乳腺クリニック
林 光弘 1、中村 慶太 1、生魚 史子 1、石川 裕子 1、柴崎 ゆかり 1、
松尾 聡美 1,2、天谷 圭吾 1、三坂 武温 1,3
【 背 景 】以 前 よ り、 我 々 は リ ン フ ォ シ ン チ グ ラ フ ィ ー の 集 積 パ タ ー ン と
Sentinel Node(SN) の転移予測の研究を行ってきた。複数個の SN への集積す
る症例は 1 個の SN への集積する症例より有意に SN 転移が多いが、SN への集
積の程度を視覚的に評価した場合、SN への集積の多寡は SN の転移予測にな
らないことを報告してきた(EBCC8, Vienna)。一方、Radioisotope(RI)法
にて Sentinel Lymph node biopsy(SNB) を行う際用いるガンマプローベは、
RIの集積の多寡を音や数値で表示する。我々の使用する、Gamma Finder II R
(GF)(WORLD OF MEDICINE GmbH, Germany) には 10 秒間の放射線カウ
ント数を測定し、1 秒間の平均カウント数 (count/sec) を測定する機能を有
する。今回我々は、この機能を用いて RI 注射部位の集積数と SN 転移の相関
を検討した。【対象と方法】2011 年 8 月より 2013 年 11 月までに RI 法による
SNB を施行し、術中 RI 注入部位の集積を測定した 174 例を対象とした。全
例術前 MRI と超音波検査にて腋窩リンパ節の腫大が無いことを確認した。平
均 11.1Mbq の 99 m Tc フチン酸を手術開始約 2 時間前に乳頭乳輪部へ皮下注射
し、術中 GF を用い注入部位の平均カウント数 (count/sec) を測定した。また、
SN への転移評価は One Step Nucleic Acid Amplification(OSNA) 法で行い、
OSNA score 0:転移陰性、1+:微小転移、2+:macrometastases と判定した。
【結果】OSNA の score 毎の平均集積数は、OSNA score 0:3521.3、OSNA
score1+:4426.6、OSNA score 2+:3539.1 であり、OSNA score0 と 1+
間で有意差 (p=0.00372) であったが OSNA score0 と 2+ 間には有意差を認
めなかった。OSNA2+ 群は症例数が 16 例と少ないため、1+ と 2+ 症例を合
わせて OSNA 陽性群(n=50)とし OSNA score0 の陰性群 (n=124) と比較し
た。OSNA 陰性群平均 3521.3 に対し陽性群は 4641.3 と有意に転移陽性群が
高かった (p=0.0042)。【考察と結論】OSNA2+ 群より 1+ 群のカウント数が
高いという事実からは単純にリンパ管の閉塞が注入部位のフチン酸の残存を
高めるという説明はつかないため、別の機序が推察される。しかし、SN 転移
陽性症例は有意に高いカウント数であり、簡便なこの方法は SN 転移予測の指
標となり得る可能性が示唆された。
277
一般セッション(ポスターディスカッション)
【目的】術前化学療法を施行しない乳癌患者において、吸引式組織生検標本と
手術標本では、ER、HER2 は 95%以上一致するのに対し、PgR、Ki67 の一
致率は 85 ~ 89%程度と低い(Kamei, et al. ASCO Breast 2013,abstract
# 37)。理由として分布の不均一性も考えられるが、吸引式組織生検はコア
針生検より 10 ~ 20 倍量の組織が採取可能であるため PgR の一致率は高くな
るはずであるが、コア針生検とほぼ変わりがない報告が多く、不均一性だけ
では説明がつかない可能性も残る。また PgR の発現については月経周期が影
響を与えるという報告があるが、Ki67 については、検討した報告は少ない。
このため吸引式組織生検標本と手術標本の Ki67 値の不一致と月経周期との関
連を検討した【対象・方法】2009 年から 2012 年までに当院にて吸引式組織生
検を施行し浸潤癌と診断され、乳癌の根治手術を行った 133 例(術前化学療法
は施行せず)を対象に、閉経後、閉経前で月経が同じ時相、閉経前で異なる時
相の 3 群で、吸引式組織生検標本と手術標本の Ki67 の変化を検討した。月経
の時相は、35 日周期に換算して、low oestrogen level 期 (day1-6, day2735) と high or intermediate oestrogen level 期 (day7-26) と し た(Haynes
BP, et al. Breast Cancer Res Treat 2013)し、同じ時相を同時相群、異なる
時相を異時相群とした。Ki67 値は、20%を cut-off とした。今回の検討では、
Ki67 以外の ER、PgR、HER2 一致率は、96.4%、90.2%、97.0%であった。【結
果】閉経後(閉経後群)77 例、閉経前 56 例(同時相群、25 例、異時相群 18 例、
不順・不明 13 例)。Ki67 の不一致率は、全体で 12.0%(16/133 例)、閉経後
10.4%(8/77 例)に対し、閉経前 14.8%(8/56 例)であった。閉経前におい
ては、同時相群 4.0%(1/25 例)に対し、異時相群は 22.2%(4/18 例)と不
一致率が高い傾向を示したが、有意差は認められなかった(p = 0.088)。 さ
らにホルモンレセプター陽性症例に限って検討すると閉経後群 10.9%、
(6/55
例)閉経前同時相群 4.8%(1/21 例)
、閉経前異時相群 23.5%(4/17 例)と
同様な結果を示した。【結語】今回検討では吸引式組織生検標本と手術標本の
Ki67 値の不一致は月経周期が関与する可能性までは指摘できなかった。症例
数が少ないため限られた検討であるため、今後さらなる症例を集積して検討
したい。
国立がん研究センター中央病院 乳腺外科、
国立がん研究センター中央病院 病理科
ポスターディスカッション
11362
11788
術前の腋窩リンパ節の評価はどこまで必要か?腋窩郭清省略に
むけて
cN1 症例における NAC 後センチネルリンパ節生検による郭清省
略の検討 –ICG 蛍光法と NAC 後の超音波検査の介入 –
DP-1-014-03
DP-1-014-04
愛知県がんセンター中央病院 乳腺科
神鋼病院 乳腺科
近藤 直人、藤田 崇史、澤木 正孝、服部 正也、堀尾 章代、権藤 なおみ、
井戸田 愛、市川 茉莉、岩田 広治
山神 和彦、結縁 幸子、松本 元、出合 輝行、橋本 隆
一般セッション(ポスターディスカッション)
【背景】術前の腋窩リンパ節(AxLN)転移の評価に関して、ガイドラインでは
画像にて転移を疑うリンパ節を認める場合は細胞診(FNA)を施行し、転移
の有無を診断すべきとされている。また、ACOSOG Z-0011 試験、EORTC AMAROS 試験の結果から本邦においてもセンチネルリンパ節生検(SNB)陽性
症例に対して腋窩郭清(ALND)省略が標準的になっていくと考えられる。そ
の状況下で、術前の精密な AxLN の評価で少数・微小な転移を診断し、ALND
を施行することが、患者に恩恵をもたらすかどうか疑問である。【目的】術前
に AxLN 転移陽性と診断された症例において、AxLN の評価方法と転移数との
関連を調べ、ALND 省略可能な対象を見出すことを目的とした。【対象・方法】
2008 ~ 2012 年に当院にて術前に AxLN 転移陽性と診断され ALND を施行
した 346 例のうち、術前薬物療法、原発不明癌、残存乳房再発を除いた 141
例を対象とした。データベース、カルテをもとにした後方視的検討。術前の
AxLN 転移の評価方法を次の 3 群に分けた。A 群:超音波(US)にて転移を疑
うリンパ節を認め、FNA で陽性と診断、B 群:US にて画像上、明らかな転移
リンパ節を認めるが単発である、C 群:US にて明らかな転移リンパ節を2個
以上認めるもの。なお、US によるリンパ節の評価はリンパ門の消失、10mm
以上、類円形腫大のすべてを認めた場合、明らかな転移とし、これら要項を
満たさない場合は転移の疑いと診断した。【結果】A 群 :41 例、B 群:47 例、C 群:
53 例のうち、AxLN 転移数が 3 個以下である症例は 25 例(61%)、32 例(68%)、
13 例(24%)であり、C 群で有意に低かった。また、同時期の SNB 陽性症例
の 83% が転移数 3 個以下であり、A 群、B 群はこれと比べ転移数が多い傾向
であった。次に、A、B 群において AxLN 転移が 3 個以下(57 例)、4 個以上(31
例)に分類し術前に予測可能かどうか検討するために各因子についてそれぞれ
検討した。組織型、腫瘍径、悪性度、エストロゲンレセプターについては両
群で差はなかったが、HER2 に関してのみ、4 個以上の群で有意に陽性率が高
かった。【結語】本検討からは、術前にリンパ節転移陽性と診断された症例は
その方法にかかわらず SNB 陽性症例に比べ、リンパ節転移が多かった。術前
の腋窩の評価は細胞診を含め、現状通り精密に行うべきである。今後、ALND
省略にむけて、その適応拡大は控えるべきと考える。
【背景】術前化学療法(NAC)前の臨床的腋窩リンパ節転移(cN1)症例において、
センチネルリンパ節生検(SNB)は偽陰性率が高いため推奨できない(C2: 乳
癌診療ガイドライン治療編 2013 年版)
。同定にラジオアイソトープ法や色素
法を用いた ACOSOG Z1071 試験では偽陰性率は 12.8% であり、偽陰性率の
改善が提唱されている。また、NAC により約 40% の症例で腋窩リンパ節転移
の消失を認めるとの報告もあり、郭清が省略できる症例の割合が高いと推測
される。しかしながら、大多数の症例では、NAC 後の術後補助療法にて化学
療法が施行されない故、低い偽陰性率を追求する必要がある。ICG 蛍光法(I 法)
によるセンチネルリンパ節(SN)の同定は色素法(D 法)に比して 100 倍以上の
感度とされ、系統的なリンパ流に沿い検出されるリンパ節の個数が多い事が
特徴である。さらに、NAC 後に乳房超音波検査(US)を施行することで、明ら
かな転移残存症例を排除できる可能性がある。【目的】NAC 後、US にてリンパ
節転移残存症例を排除、SN の同定個数の多い I 法を用いた場合の SNB の偽陰
性率を検出する。さらに I 法と D 法による SN の同定率、偽陰性率を比較検討
する。
【対象】本科で施行された乳癌手術 636 症例(2011 年 1 月 ~2013 年 7 月)
中、cN1 で NAC を施行した 51 例。【方法】NAC 後、US にて cN0 症例(Group
1: G1)、cN1 症例(Group 2: G2)に分類した。SNB は乳輪皮内に ICG とイ
ンジゴカルミン(色素)の混合液を注入。近赤外線観察カメラ (Photodynamic
Eye) を用い、色素による青染リンパ節あるいは PDE により蛍光を発している
リンパ節を摘出した。全例に Back up 郭清を付加した。
【結果】G1 群 (n=34):
SNB+Back up 郭清の採取リンパ節の平均個数は 14.4 個。 同定 SN の平均個
数 I 法:D 法 = 3.2 個:1.6 個。同定率 I 法:D 法 = 97%:85%。偽陰性率 I
法:D 法 = 9.1%:27%。G2 群 (n=17) では全症例にリンパ節転移を認めた。
G1+G2 群での I 法の偽陰性率(US を施行しない場合を想定)は 17.9%。また、
NAC によりリンパ節転移消失の割合は 45%であった。【結語】NAC により、
cN1 症例のリンパ節転移が高率に消失する。NAC 後、US にて転移リンパ節残
存が明らかな症例を除き、さらに系統的に複数の SN を同定できる ICG 蛍光法
を用いれば偽陰性率を軽減できる可能性がある。また、色素法での SNB は同
定できるリンパ節の個数が少ないため、偽陰性率が高い。
10127
10213
C l i n i c o p a t h o l o g i c a l f i n d i n g s fo r e p i t h e l i a l - t o mesenchymal transition in TNBC
乳癌におけるアンドロゲンレセプターの発現についての検討
DP-1-014-05
DP-1-014-06
1
2
1
国立がん研究センター中央病院 乳腺・腫瘍内科、
2
国立がん研究センター中央病院 病理科、
3
国立がん研究センター中央病院 乳腺外科
田辺 裕子 1、津田 均 2、山本 春風 1、公平 誠 1、温泉川 真由 1、米盛 勧 1、
清水 千佳子 1、田村 研治 1、木下 貴之 3、藤原 康弘 1
Background: By gene expression profiling analyses, the expression
of epithelial-to-mesenchymal transition (EMT)-associated genes were
shown to be correlated with chemoresistant phenotype of breast
cancer cell lines. To reveal clinical implication of EMT-associated
molecules on the acquisition of cPD property, we designed a
retrospective case-control study. Methods: From database of patients
who received surgical resection, 86 patients with early TNBC were
identified: 23 patients suffered cPD during NAC (PD group) and 87
control group patients did not receive NAC (C group), in whom > 95%
of patients was estimated to be non-PD group if NAC was performed.
As EMT markers, we immunohistochemically examined the expressions
of vimentin, Twist, Zeb and Snail. The chi-square test was used to
assess statistically significant differences between the groups. Results:
Histologically, PD group comprised 12 invasive ductal carcinomas (IDCs)
(52%) and 11 metaplastic carcinomas (MPCs) (48%). In C group, 64
(74%) were IDCs and 21 (24%) were histological types other than IDC
or MPC, and there was only 2 MPC (2%) (p < 0.001). Vimentin was
positive in 91% of PD group and the incidence was higher than that
in C group (52%) (p =0.012). Twist-2 and Snail expressions were not
significantly different between PD group and C group. Nuclear Zeb1 expression was more frequent in PD group (35%) than in C group
(15%) (p =0.024). In PD group, a total of 17 cases comprising 9 MPCs
and 8 IDCs, were positive for vimentin. In these 17 vimentin-positive
cases, 14 were stable disease or partial response with an anthracyclincontaining regimen while all 16 patients receiving a taxane-containing
regimen became cPD during the taxane-containing regimen.
Conclusion: EMT features detected by metaplastic phenotype and
vimentin and Zeb-1 expression could be predictors for cPD during NAC
for TNBC. The tumors of these phenotypes were likely to be resistant
to a taxane-containing regimen.
愛知県がんセンター中央病院 乳腺科、
愛知県がんセンター中央病院 遺伝子病理診断部
小谷 はるる 1、近藤 直人 1、谷田部 恭 2、安立 弥生 1、久田 知可 1、
石黒 淳子 1、市川 茉莉 1、井戸田 愛 1、権藤 なおみ 1、堀尾 章代 1、
服部 正也 1、澤木 正孝 1、藤田 崇史 1、岩田 広治 1
【背景】多くの乳癌細胞ではエストロゲン受容体だけでなくアンドロゲン受容
体(AR)の発現も高頻度に認められ何らかの役割を担っていると考えられる。
しかし、原発性乳癌において各 Intrinsic subtype における AR 発現の頻度や
臨 床 的 意 義 に つ い て は 未 だ に 統 一 の 見 解 は 得 ら れ て い な い。
【 目 的 】ER、
HER2 、AR の発現と臨床病理組織所見との関係を検討する。【方法】対象は
2012 年 1 月~ 8 月に当院で手術を施行した浸潤性乳癌 176 例。AR は IHC で
判定し、Allred score3 点以上を陽性とした。【結果】原発性乳癌 176 例のうち、
AR 陽 性 の 頻 度 は Luminal A type(n=77):73 例(95%)、Luminal B type
(n=54):47 例(87%)、Luminal-HER2 type(n=21 例):20 例(95%)、
HER2 type(n=9):5 例(56%)、TN type(TN、n=15):7 例(47%)であり
HER2 type、TN type で有意に発現頻度が低かった。また AR 発現は腫瘍径の
大きなもの(2cm 未満 vs 2cm 以上)、高悪性度(Histological grade 1、2 vs
3)、Ki67 高値(≦ 20% vs > 20%)の群で有意に発現率が低かったが、リン
パ節転移の有無については、その発現に差を認めなかった。さらに、この傾
向は ER 陽性群においては有意なものでなかったが、ER 陰性群においてより
顕著であった。【考察】ER 陰性乳癌において AR 発現は腫瘍悪性度との相関が
認 め ら れ た。
AR 発現は ER
陰 性、 と く
に TN 乳 癌 に
おいてはそ
の発現が治
療選択因子
の一つとな
る可能性が
ある。
278
ポスターディスカッション
10436
11833
針生検で乳管内癌と診断された症例の手術標本での浸潤の有無
を予測する因子の検討
HER2 陽性非浸潤性乳管癌(DCIS)の臨床病理学的特徴
DP-1-015-01
DP-1-015-02
1
静岡県立静岡がんセンター 乳腺外科、
静岡県立静岡がんセンター 生理検査科、
3
静岡県立静岡がんセンター 病理診断科
1
2
森 美樹 1、Gregor Krings2、Loretta Chan2、
Denise Wolf2、Yunn-Yi Chen2、Karla Kerlikowske2、Thea D. Tlsty2、
Jean-Philippe Coppe2、松田 直子 3、鈴木 高祐 4、中村 清吾 1、
Laura van't Veer2
高橋 かおる 1、林 友美 1、佐藤 睦 1、米倉 利香 1、菊谷 真理子 1、
西村 誠一郎 1、植松 孝悦 2,3、杉野 隆 3
昭和大学 乳腺外科、2 カリフォルニア大学サンフランシスコ校、
3
聖路加国際病院 乳腺外科、4 聖路加国際病院 病理診断科
10218
10468
髄様癌の診断についての検討
乳腺神経内分泌型乳管癌の臨床病理学的検討
DP-1-015-03
DP-1-015-04
1
1
東海大学医学部付属病院 乳腺・内分泌外科、
2
東海大学医学部 基盤診療学系病理診断学、
3
東海大学医学部 外科学系乳腺・内分泌外科、
4
日本大学医学部 病態病理学系腫瘍病理学分野
関西医科大学附属滝井病院 乳腺外科、
関西医科大学附属枚方病院 病理学講座、
3
関西医科大学附属枚方病院 乳腺外科
2
奥川 帆麻 1、遠藤 香代子 1、末岡 憲子 3、坪田 優 3、小路 徹二 1、
坂井田 紀子 2、山本 大悟 1
扇屋 りん 1、熊木 伸枝 2、新倉 直樹 3、増田 しのぶ 4、徳田 裕 3
【背景】乳癌特殊型に属す髄様癌は全乳癌の 0.6 ~ 2% 程度とされ,まれな組
織型である.予後は他の組織型に比べ良好であるとされている.
【対象と結果】当院データベースより,1991 年 4 月~ 2011 年 4 月の間に手術
を施行した乳癌症例 4072 例中,髄様癌と診断された症例は 31 例であった.
全ての症例を再薄切し,WHO 分類(2012 年)の Carcinomas with medullary
features を参考に鏡検したところ,全ての基準を満たす古典的髄様癌は 6 例
で,非定型髄様癌は 4 例,他は充実腺管癌などであった.古典的髄様癌・非定
型髄様癌について報告する.
古典的髄様癌について年齢は 27 ~ 57 歳,平均 42 歳であった.手術は 3 例
に乳房温存手術を施行し,3 例に乳房切除術を施行した.リンパ節転移は全
例で認めず,pStage は I 期 4 例,IIA 期 2 例であった.サブグループの内訳は
triple negative が 4 例,ER 陰性,HER2 陽性が 1 例,ER 陽性,HER2 陰性が
1 例であった.Ki-67 は 15-75%( 中央値 53%) であった.術後補助療法は,2
例に化学療法,3 例に内分泌療法を施行し,1 例は患者希望で補助療法は行わ
なかった.術後は 5 例で再発を認めず,1 例で局所再発・肺転移を認めている
が全例生存している.
一方,非定型髄様癌について年齢は 52 ~ 70 歳,平均 61 歳であった.手術は
1 例に乳房温存手術を施行し,3 例に乳房切除術を施行した.リンパ節転移は
全例で認めず,pStage は全例 IIA 期であった.サブグループの内訳は triple
negative が 2 例,ER 陽性,HER2 陽性が 1 例,ER 陽性,HER2 陰性が 1 例であっ
た.Ki-67 は 17-34% ( 中央値 29%) であった.術後補助療法は,全例内分泌
療法を施行した.術後は 1 例が術後 5 年で死亡,3 例は再発を認めず生存して
いる.
古典的 / 非定型髄様癌でそれぞれ無病生存期間は中央値 9 年 (2-18 年 )/9.5 年
(5-19 年),全生存期間は中央値 14.5 年 (2-21 年 )/9.5 年(5-19 年)であった.
【結語】古典的・非定型髄様癌でリンパ節転移を全例で認めず,従来の報告の
傾向と一致する.しかし,サブグループで triple negative が多いという傾向
は認めなかった.また,古典的・非定型髄様癌で明らかな違いは認めなかった.
31 例の髄様癌と診断がついた中で現在の基準では大半が違う診断に変わって
おり,髄様癌のサブグループや予後の傾向については再検証する必要がある.
279
2007-2013 年 9 月までの過去 6 年間で当院において経験した乳腺神経内分泌
型乳管癌 25 例(非浸潤癌 14 例 , 浸潤癌 11 例)について報告する . 患者は , 平均
67.72 歳(43-83 歳), うち女性 24 例 , 男性 1 例であった .ER および PgR は共
に不明1例を除く全例陽性 ,HER2 は DCIS 症例を除く全例で陰性であった . 腫
瘤や血性乳頭分泌を自覚して受診する割合がそれぞれ半数であった . 多くは
MMG で腫瘤性病変や FAD を示しており , カテゴリーは 3 か 4 が多数であっ
た . 免疫染色では CD56 が 25 例中 23 例陽性 ,synaptophysin が 25 例中全例陽
性 ,chromograninA 染色は測定されていない症例を除いた 19 例中 13 例陽性
であり , 少なくとも 2 つの免疫染色を施行して神経内分泌方向への分化を確認
している .Ki-67 は 12 例中 5 例で高値を認めた .2007 年から 2013 年 9 月に手
術を施行した症例で , 当院にて経過をみている患者について再発症例は認めて
いない . 乳腺神経内分泌型乳管癌は乳癌全体の約 2 ~ 5%を占める比較的稀な
疾患であり , 本邦の乳癌取扱い規約では , 悪性腫瘍の特殊型のその他に分類さ
れている . 治療および予後に関して現在統一した見解は得られていない . 今後
は症例を蓄積し , 治療や予後に関して検討する必要があると考えられた .
一般セッション(ポスターディスカッション)
目的 針生検で乳管内癌と診断された場合に、手術標本で浸潤の有無を予測
する因子はまだ確立されていない。多くの因子は臨床・組織学的なものであ
り、分子生物学的因子について検討された報告は少ない。一方で非浸潤性乳
管癌の局所再発を予測する因子については分子生物学的因子を検討された多
くの報告がある。本研究では従来の臨床・組織学的因子にこれら分子生物学
的因子を加えることで、より正確な浸潤予測が可能となるのではないかと考
え検討した。方法 聖路加国際病院において 2006 年から 2008 年に針生検で
乳管内癌と診断され、その後手術を施行された 69 例を対象とした。発見契
機、針生検器具、年齢の情報に加えて、針生検検体から作製した HE 標本から
核グレード、コメド壊死を評価した。また同じ針生検検体を用いて ER、PgR、
HER2、Ki-67、p16、p53、COX-2 について免疫染色を行い評価した。これ
らの結果を手術標本での浸潤の有無と比較した。また、リンパ節転移の有無
についても検討した。結果 69 例中 46 例 (67%) が手術標本では非浸潤生乳
管癌であり、23 例 (33%) が浸潤癌であった。吸引式針生検の使用(従来型に
比べ)
、ER 陽性、p53 陰性では、有意に手術標本が純粋な非浸潤性乳管癌で
あった (p < 0.05)。また各因子の組み合わせでは、ER 陽性かつ HER2 陰性で
は有意に手術標本に浸潤が認められず (p < 0.05)、p16 陰性かつ COX-2 陰性
かつ Ki-67 陰性の症例では手術標本に浸潤が認められない傾向にあった (p =
0.051)。また、69 例中センチネルリンパ節生検は 57 例で施行され、内リン
パ節転移を 4 例で認めたが、いずれも浸潤のある症例であった。12 例ではセ
ンチネルリンパ節生検は施行されなかった。結論 従来の因子に加えた分子
生物学的因子の評価では手術標本の浸潤の有無と相関が認められた。またそ
れら因子の組み合わせにより相関が認められたものもある。今後はこれらの
因子の有用性をより多くの症例について評価・検討したい。
【背景・目的】ごく早期の癌である非浸潤性乳管癌 (DCIS) も、最近では個々
の性格を考慮して、low grade に対する手術適応の再考や、HER2 陽性 DCIS
の温存術後照射にトラスツヅマブを併用する臨床試験も行われている。そこ
で HER2 陽性 DCIS が臨床病理学的にどのような症例に対応するのかを検討
した。【対象・方法】2008 ~ 2012 年の DCIS(微小浸潤除く)から対側乳癌に
伴う術前薬物療法施行例を除外、ER,PgR,HER2 未検6例を除いた 170 例を
対象に、病歴・画像・病理から、HER2 陽性 DCIS の特徴を検討した。【結果】
DCIS170 例 中 ER ≧ 10% は 128 例 (75%)、HER2 陽 性( た だ し IHC 法 3+ の
み)は 38 例 (22%) であった。以下 HER2 陽性 38 例につき検討する。33 例が
無症状で 27 例 (71%) が検診または他疾患フォローの MMG 石灰化発見であっ
た。MMG は 32 例が石灰化主体で 24 例 (63%) が多形性区域性石灰化、US は
27 例 (71%) が点状高エコーを伴う低エコー域の像を呈し、MRI 施行 37 例中
36 例で病変部の造影を認めた。病理では 34 例に壊死や comedo 型の石灰化
を認め、low grade は1例のみ、Ki-67(MIB-1) は検査された 28 例中 23 例で
≧ 20% で あ っ た。 形 態 は solid ~ comedo 主 体 (cribri-comrdo 含 む ) が 29
例 (76%) を占め、石灰化を伴う micropapillary type も6例あったが、嚢胞
内癌や papillary type は1例もなかった。Apocrine 化生が8例にみられ、う
ち3例で apocrine 化生した硬化性腺症に癌の一部が進展していた。病巣の広
がりは 5cm 以上が 19 例 (50%) を占め 2cm 以下は4例のみ、平均 5.0cm で
HER2 陰性 DCIS の平均 3.3cm に比べ進展が広範であり、25 例 (66%) で乳房
切除術が施行されていた。【結論】1) HER2 陽性 DCIS の多くが石灰化を伴い、
MMG 検診が発見に寄与していると思われるが、進展が広く乳房切除となるこ
とが多い。2) 組織学的には主に solid ~ comedo type、一部 miceopapillary
type の中~高悪性度の DCIS と対応しており、早い進展が小範囲のうちに見
つけにくい要因と推測される。3) 上記以外の組織型も一部ありさらに検討を
要するが、low grade の papillary type に関しては HER2 陽性の可能性は極
めて低い。
ポスターディスカッション
10868
10766
乳腺扁平上皮癌の臨床病理学的検討と予後予測、個別化治療の
可能性
乳房腫瘤診断における液状化検体細胞診の有用性
DP-1-015-05
1
DP-1-015-06
1
大阪府立成人病センタ- 臨床検査科病理細胞診、
大阪府立成人病センタ- 病理細胞診断科、
3
大阪府立成人病センタ- 乳腺内分泌外科
2
北海道がんセンター 乳腺外科、2 同 病理診断科
萩尾 加奈子 1、馬場 基 1、佐藤 雅子 1、富岡 伸元 1、渡邊 健一 1、
山城 勝重 2、高橋 將人 1
一般セッション(ポスターディスカッション)
【背景】乳腺扁平上皮癌は乳癌取扱い規約上、浸潤癌の特殊型に分類されて
おり、全乳癌の約 0.1 ~ 0.2% と稀な組織型である。その特徴として急速な
増大に伴い、約 6 割に内部に壊死巣、出血巣、嚢胞形成、炎症性変化を伴う
とされ、通常型乳癌に比べ腫瘍径も 5cm 以上と比較的大きい。多くが ER、
PgR、HER2 陰性 ( トリプルネガティブ ) で、ER、PgR は陽性であっても、20
~ 30% とやや低率である。また、多くに基底細胞サイトケラチンや EGFR な
どの発現を認める。扁平上皮癌は明確な治療法がなく、特に再発後の予後が
不良であることから、全体として通常型乳癌に比べ予後不良となっている。
【目的】今回我々は、当院で経験した乳腺扁平上皮癌の臨床病理学的特徴、治
療反応性や予後との関連性などについて検討した。【対象】1998 年から 2013
年までに当院で手術を施行し、病理学的に扁平上皮癌の所見が認められた 15
例中、扁平上皮癌成分が腫瘍全体の 50% 以上を占めた 7 例について検討し
た。【結果】年齢は 49 歳から 66 歳 ( 平均 57.4 歳 )、腫瘍径は 20-80mm(平均
61mm)、うち嚢胞形成が見られたものが 4 例であった。術前化学療法が施行
されたのは 2 例、術後化学療法は 5 例、術後内分泌療法は 2 例に施行された。
病期は stageI が 2 例、stageII が 2 例、stageIII が 3 例であった。リンパ節転
移陽性は 2 例、ER/PgR は 2 例で陽性 (10 ~ 30%)、HER2 は全例陰性で、ト
リプルネガティブは 5 例であった。また、Ki67 は 20 ~ 30% が 2 例、50 ~
60% が 2 例、70 ~ 80% が 3 例であった。4 例が無再発生存中で、3 例が 1 年
以内に再発し、うち 1 例が死亡している。【今後の検討】本症例のように治療
抵抗性を示したものと無再発生存中の違いから、さらに我々は、代表的な癌
抑制遺伝子である p53、基底細胞サイトケラチン CK5/6、EGFR 等のバイオ
マーカーを調べ、扁平上皮癌をさらに亜分類することにより、各症例の治療
効果予測や予後予測、また抗 EGFR 抗体療法などを含め個別化治療の可能性に
ついて考察した。
龍 あゆみ 1、芦村 純一 1、竹中 明美 2、松下 亜子 3、石飛 真人 3、
中山 貴寛 3、元村 和由 3、玉木 康博 3、冨田 裕彦 2
【はじめに】Fine Needle Aspiration Cytology(FNAC)の精度は診断技術の
みならず、病変の性状、穿刺技術および標本作製手技が関与する。液状化検
体細胞診(Liquid based cytology;LBC)は採取した材料を直接細胞保存固
定液に入れ標本作製を行うもので、一定の品質の標本作製が可能である。平
成 24 年度には LBC 加算(既に作製した標本で診断がつかず LBC による標本
を追加して診断した場合に適応)が保険収載された。今回、乳房腫瘤診断に
おける LBC 併用の有用性について検討した。【対象と方法】2012 年 3 月から
2013 年 10 月までに施行された FNAC の内、従来法に LBC を併用した乳房腫
瘤 169 件を対象とした(判定不能症例は除外)。標本作製は直接塗抹標本を作
製後(従来法)、通常は廃棄していた穿刺針およびシリンジを溶血作用のある
CytorichTMRED で洗浄し BD SurePathTM 用手法により標本作製を行った(LBC
法)。従来法と LBC 法を併用して判定した後、盲検化して従来法、LBC 法の標
本を個別に判定した。【結果】169 件中、細胞成分が認められたのが従来法の
みが 68 件、LBC 法のみが 11 件、双方が 90 件であった。90 件中、従来法で上
皮性細胞の出現数が少数であったものは 27 件、血液の混入が過多で観察範囲
が限られていたものは 14 件であり(重複が5件)、従って 36 件は診断として
不十分な標本であった。LBC 法を併用することで 6.5%(11 / 169 件)の判
定不能と 21.3%(36 / 169 件)の判定困難な検体が診断可能となった。90
件中、組織診により乳癌と診断された 43 件(浸潤性乳管癌 39 件、浸潤性小葉
癌 3 件、粘液癌 1 件)の感度は併用で 84%(36 / 43)、従来法のみで 74%(32
/ 43)、LBC 法のみで 93%(40 / 43)であった。感度は LBC 法単独で最も
良く、LBC 法から得られる所見が重要と考えられた。陽性的中率はいずれの
方法でも 100%であった。【結語】LBC 法は重力による細胞沈下と荷電による
吸着により細胞を塗抹するもので、細胞の回収が良好であった。また均等に
塗抹されアーチファクトの影響が少ないので、細胞質内小腺腔や篩状構造、
乳頭状構造などが観察しやすく、従来法単独よりも診断に必要な情報量が増
加した。特に診断に苦慮する低異型度の癌の診断に適していた。一方 LBC 法
では双極裸核、粘液など背景の所見が減少することは避けられず、LBC 法単
独では判定に慎重を要する。従って背景の所見をみる目的でまず従来法を行
い、その後に LBC 法を併用して診断すべきと考えられた。
10096
10242
非浸潤性乳管癌における ALDH1 陽性癌幹細胞の同定と臨床病
理学的解析
乳癌サブタイプにおける癌幹細胞マーカー ALDH1 の発現と治
療感受性および予後に関する検討
DP-1-016-01
DP-1-016-02
1
大阪大学大学院医学系研究科 乳腺・内分泌外科
2
塚部 昌美、島津 研三、直居 靖人、加々良 尚文、下田 雅史、下村 淳、
丸山 尚美、金 昇晋、野口 眞三郎
【 目 的 】非 浸 潤 性 乳 管 癌 (DCIS) に お け る ALDH1 陽 性 乳 癌 幹 細 胞 ( 以 下、
CSCALDH1) の同定、および、CSCALDH1 陽性 DCIS の臨床病理学的特徴を明ら
かにすべく以下の解析を行った。【方法】当院で治療した 194 例の DCIS を対
象とした。CSCALDH1 は抗 ALDH1 抗体を用いて免疫染色で同定した。ALDH1
陽 性 の DCIS に 対 し て は、ALDH1/ER、ALDH1/PgR、ALDH1/HER2、 お
よび、ALDH1/Ki67 の免疫二重染色を行い陽性細胞の局在を検討した。ま
た、ALDEFLUOR assay を用いて乳癌細胞株における CSCALDH1 陽性率を測
定し intrinsic subtype および Ki67 との関係を検討した。【結果】CSCALDH1 は
31 例(16.0 %)に 同 定 さ れ た。CSCALDH1 陽 性 の DCIS の 割 合 は、luminal A
(8.6%)が他のサブタイプに比して有意に(P < 0.001)低率であった(luminal
B(50 %)、luminal-HER2(36.8 %)、HER2(35.3 %)、triple negative
(26.7 %))。 二 重 染 色 で は、CSCALDH1 の 局 在 は、ER 陽 性、PgR 陽 性、Ki67
陽性の腫瘍細胞とは一致せず、HER2 陽性乳癌において HER2 陽性の腫瘍
細胞と一致した。全癌細胞中の CSCALDH1 の割合を乳癌細胞株(luminal A、
luminal-HER2、HER2、triple negative、 そ れ ぞ れ 2 株、 計 8 株 )を 用 い て
ALDEFLUOR assay で解析したところ、CSCALDH1 の割合は、luminal-HER2
細胞株(9.1%、9.5%)、HER2 細胞株(13.9%、33.2%)、triple negative 細
胞株(28.4%、30.7%)に比して luminal A 細胞株で最も低かった(0.02%、
0.4 %)。 ま た、ALDEFLUOR assay で 同 定 さ れ た CSCALDH1 の Ki67 陽 性 率
はそれ以外の細胞(non- CSCALDH1)よりも有意に(P < 0.05)低率であった
(48.7% vs 93.5%)。【結語】DCIS における CSCALDH1 の多くは G0 期に存在し
(Ki67 陰性 )、ER および PgR を発現せず、HER2 陽性 DCIS においては HER2
を発現していることが示唆された。
3
横浜市立大学大学院 医学研究科、
横浜市立大学附属市民総合医療センター 乳腺甲状腺外科、
横浜市立大学附属市民総合医療センター 病理部
喜多 久美子 1、石川 孝 2、嶋田 和博 2、太田 郁子 1、成井 一隆 2、
山田 顕光 1、菅江 貞亨 1、田辺 美樹子 3、市川 靖史 1、遠藤 格 1
【背景】乳癌の治療抵抗性および予後と癌幹細胞との関連が示唆されているが、
サブタイプ分類を踏まえた検討は少ない。【目的】乳癌幹細胞マーカーである
Aldehyde dehydrogenase 1(ALDH1) の発現をサブタイプごとに観察し、化
学療法感受性および予後との関連を検討する。【対象と方法】1) 浸潤性乳癌
653 例を対象に ALDH1 発現を免疫組織染色で検索し、サブタイプ毎の発現
率、各病理学的因子 (ER・PgR・HER2・Ki67・p53・CK5/6・EGFR・核グ
レード )・臨床学的因子 ( 腫瘍径・リンパ節転移・病期 ) との関連を解析した。
さ ら に、ALDH1 発 現 と Disease Free survival (DFS), と Overall survival
(OS) との相関をサブタイプ別に統計解析した。2) 術前化学療法症例 234 例
を対象に、治療前の針生検検体を用いて ALDH1 の発現を免疫組織染色にて
検索し、ALDH1 および上記臨床病理学的因子と、化学療法の病理学的効果
判定との相関をサブタイプ別に多変量解析した。【結果】1) 全 653 症例中の
ALDH1 発現は、139 例 (21.3%) に認め、腫瘍径、リンパ節転移、病期、核グ
レード、HER2 陽性と有意に相関を認めた。サブタイプ別の ALDH1 発現率は、
Luminal type(HER2陰性 )12.2%、Luminal-HER2 type36.5%、HER2enriched type37.9%、Triple negative type30.0% であり、HER2 陽性癌と
triple negative type に発現率が高かった。ALDH1 発現は DFS(p < 0.0001)
および OS(p=0.044) ともに有意に予後不良との相関を認めた。サブタイプ
別では、特に Luminal type で強い関連を示した。2) 術前化学療法症例 234
例のうち ALDH1 発現は 37.6%(88 例 ) に認め、全体の pCR 率は 23.9%(56
例 ) であった。pCR 率は ALDH1 陽性例で有意に低かった (13.5%vs30.3%,
p=0.003)。単変量解析では pCR 率は、ALDH1(p=0.003)、ER(p=0.001)、
PgR(p=0.004)、Ki67(p=0.04)、p53(0.017) と相関を認め、多変量解析で
は ALDH1 と ER のみが有意であった。サブタイプ別では、pCR 率と ALDH1 は
Triple negative type で強い関連を示した (p=0.003)。
【結語】
乳癌幹細胞マー
カー ALDH1 は、化学療法耐性および予後との関連する重要な因子であったが、
サブタイプにより ALDH1 の影響は異なっていた。化学療法耐性因子としては
Triple negative type で関連が強い一方で、予後不良因子としては Luminal
type で強く認められた。ALDH1 の発現で治療方法を変える戦略を考慮すべき
と考えられた。
280
ポスターディスカッション
10302
11828
重粒子単独或は Cisplatin との併用による Triple Negative 乳
癌幹細胞に対する細胞生存及び DNA 損傷
ヒト脂肪由来幹細胞の抗癌剤感受性分析および移植脂肪内乳癌
モデルの作成
DP-1-016-03
DP-1-016-04
1
放射線医学総合研究所 重粒子医科学センター、
順天堂大学医学部付属順天堂病院 乳腺科、
3
東京医科大学八王子医療センター 乳腺科
ピッツバーグ大学医学部 形成外科
2
1
1
2
辻 和香子
3
崔 星 、唐澤 久美子 、堀本 義哉 、林 光弘 、白井 敏之
1
10106
11190
EMT レポーターを用いた乳癌幹細胞標的遺伝子同定の試み
化学療法が無効な TN type 乳癌増殖機構の基礎的研究
DP-1-016-05
DP-1-016-06
1
1
京都大学大学院医学研究科 メディカルイノベーションセンター悪性制御研
究ラボ、
2
京都大学大学院医学研究科 外科学講座乳腺外科学、
3
ハーバード大学 ダナファーバー癌研究所
3
東邦大学医学部 教育開発室、2 東邦大学医学部 免疫学講座、
東邦大学医学部 一般消化器外科乳腺内分泌部門
岡田 弥生 1,2、齋藤 芙美 3、緒方 秀昭 3、石川 文雄 2、近藤 元就 2
松本 純明 1,2、酒井 浩旭 1、島崎 雅広 1、エリス ラインヘルツ 3、
戸井 雅和 1,2、吉川 清次 1
ホルモン受容体陰性・HER2 陰性のトリプルネガティブ乳癌(TNBC)は、
分子標的が未だ同定されておらず、治療上の問題となっている。ヒト乳癌組
織では、CD44hi CD24lo 細胞集団が乳癌幹細胞を内包するマーカーとして用
いられている。TNBC は遺伝子発現解析上 basal 乳癌に対応し、なかでも腫
瘍形成能の高い CD44hi CD24lo 細胞は、遺伝子発現パターンから claudinlow 乳癌に分類され、epithelial-mesenchymal transition (EMT) を起こし
ていると考えられている。以上より、EMT と乳癌幹細胞特性および TNBC の
claudin-low 乳癌が密接な関係にあることが判ってきたが、未だ乳癌幹細胞
を一意的に定義できるマーカーが存在せず、EMT の特徴と幹細胞特性を持つ
間葉系乳癌の治療標的も未同定である。3 次元培養の乳癌幹細胞モデルを用い
た我々の検討で、造腫瘍性には癌遺伝子と EMT の両方が必要であることがわ
かっている。
我々は、EMT 並びに乳癌幹細胞特性に関わる遺伝子の同定を目的として高
感度 EMT レポーター乳腺細胞系を構築し、間葉系乳癌細胞株 MDA-MB-231
および BT549 細胞由来の cDNA library をスクリーニングした結果、単独で
EMT を誘導する遺伝子としては Snail, Twist2 を同定した。さらに、単離さ
れた cDNA の中から、EMT と協調して正常乳腺上皮細胞株に軟寒天コロニー
形成能を付与する遺伝子が複数同定された。コロニー形成能の高かった遺伝
子には Lactate Dehydrogenase B (LDHB) を始めとして代謝に関連するもの
が多く、EMT を起こした細胞に代謝上の変化を引き起こすことで、細胞増殖
能を上昇させている可能性が示唆された。
現在、解糖系並びにミトコンドリア呼吸鎖に関する EMT 細胞特異的な代謝
変化を検証中である。これら代謝関連遺伝子を制御することで、間葉系乳癌
細胞の増殖抑制を含めた、乳癌幹細胞治療法の確立を目指している。
【目的】近年、TN 乳癌で化学療法剤感受性や BRCA1,2 遺伝子発現率の多様性
が明らかになってきた。昨年度は paclitaxel 感受性が弱い TNtype 乳癌細胞株
にて mTOR シグナル伝達抑制剤 (rapamycin) との併用でより強い増殖抑制を
示すこと、この抑制に P38 が関連していることを報告した。そこで本研究で
は、乳癌細胞株においてその増殖に関与するシグナル伝達系をさらに詳細に
検討し、mTOR 阻害と BRCA1 発現との関係、mTOR 阻害剤と paclitaxel 併
用による BRCA1 発現系への影響を検討したので報告する。【方法】乳癌細胞
株には MDA-MB231、MCF-7、ZR-75-1、SKBR3 を用いた。これらの細胞
は全て ATCC より購入、RPMI-1640+10%FCS 培養液にて培養した。各種薬
剤の細胞増殖への影響は、培養系に各濃度の薬剤を添加して、細胞の 3H-TdR
uptake 能により検討した。シグナル分子解析には各細胞株を 1x10 7 個用意し、
NP-40 を用いて可溶化後、各シグナル分子に対する抗体を用いて免疫沈降し
た。この沈降タンパクを protein G を用いて回収、これを SDS で可溶化して
SDS-PAGE を行った。次に、イムノブロッティングにより各シグナル分子の
発現を蛋白レベルで同定した。【結果】TN type 細胞株である MDA-MB231 で
は rapamycin+paclitaxel 処理によってみられる増殖抑制に P38,ERK,Akt の
関与が明らかとなった。一方、4 種の乳癌細胞株すべてに BRCA1 が検出され、
そのタンパク量は MDA-MB231 が一番低かった。また MDA-MB231 において
BRCA1 発現に関与するシグナル伝達系を検討したところ、mTOR 阻害剤で
ある rapamycin 処理で BRCA1 発現増強が観察された。さらに、rapamycin
と paclitaxel の併用で BRCA1 発現がより増強された。現在、BRCA1 発現と
mTOR 系および MAPK 系との関連を詳細に検討中である。【結論】paclitaxel
耐性乳癌細胞株では mTOR シグナル系の阻害が重要であることを明らかにし
た。また、paclitaxel+mTOR 阻害剤で BRCA1 発現も増強したことから、そ
の増殖抑制に BRCA1 の関与も示唆された。
281
一般セッション(ポスターディスカッション)
【目的】Triple Negative 乳癌 (TNBC) は原発性乳癌の約 15% を占めるが、他
のサブタイプに比べ予後不良である。本研究では、炭素線単独或は Cisplatin
との併用による放射線抵抗性や薬剤耐性と強く関与している癌幹細胞への影
響を調べる。【方法】超高速セルソーターを用いて TNBC 細胞 MDA-MB231 よ
り癌幹細胞を同定・分離し、炭素線単独或は Cisplatin との併用によるこれら
癌幹細胞に対するコロニーや spheroid 形成能、細胞死関連遺伝子発現変化及
び DNA 損傷の違いを X 線照射のものと比較検討した。【結果】MDA-MB231 細
胞において CD44+/CD24-、ESA+/CD24- 細胞集団はコロニーや spheroid
形成能、腫瘍形成能が高いことから癌幹細胞性質を有することが認められた。
X 線単独或は Cisplatin との併用処置は炭素線単独或は Cisplatin との併用に比
べこれら癌幹細胞集団の割合をより増加させた。RT PCR Array 解析では、炭
素線と Cisplatin との併用は X 線照射のものに比べ、apoptosis や autophagy
関連遺伝子 Cytochrome c、LC3、ATG7 などの発現をより増強させた。ま
た、炭素線単独或は Cisplatin との併用は X 線照射のものに比べ、コロニーや
spheroid 形成能を顕著に抑制し、処置 24h 後のγ H2AX foci 残存がより多い
ことが認められた。【結論】以上より、炭素線と Cisplatin との併用は炭素線単
独或は X 線と Cisplatin との併用に比べより強く apoptosis や autophagy を誘
導し、複雑な修復しにくい DNA 損傷を与え、TNBC 癌幹細胞をより有効に殺
傷することが示唆された。
【背景】自家脂肪移植は美容目的および乳癌術後に広く行われている。しかし、
脂肪細胞・脂肪由来幹細胞が乳癌細胞の増殖を促進する可能性については完
全に解明されていない。ドラッグデリバリーシステムを用いて抗癌剤を移植
脂肪内に徐放させることができれば、局所再発を抑制しながらより自然な乳
房を再建することができると考える。そこでヒト脂肪由来幹細胞および乳癌
細胞株の薬剤感受性について検討を行った。また、ヒト脂肪組織および乳癌
細胞株を用いて移植脂肪内乳癌モデルの作成を試みた。【方法】インフォーム
ドコンセントのもと、脂肪吸引術を受ける 35 歳以上 60 歳以下の女性より脂
肪組織を得た。ヒト脂肪由来幹細胞はこれをコラゲナーゼ処理することによ
り分離した。脂肪由来幹細胞、MDA-MB-231 および BT-474 を様々な濃度の
ドキソルビシン、パクリタキセル、4OH タモキシフェンとともに 72 時間培養
し、細胞毒性、成熟脂肪分化能を分析した。一方、MDA-MB-231, BT-474 を
フィーダー細胞とともに 300 μ L の脂肪組織内に混入し、免疫不全マウスの背
部皮下に注入した。コントロールとして、同数の乳癌細胞株をマトリジェル
とともにマウス皮下に注入した。6 週間後に移植した脂肪組織、肺、肝を摘出
し、組織学的評価(H&E, human specific pan-cytokeratin, Ki67)を行った。
【結果】いずれの細胞もドキソルビシン、パクリタキセル、4OH タモキシフェ
ンに対して濃度依存性の増殖阻害効果を示した。脂肪由来幹細胞は乳癌細胞
株に比し抗癌剤感受性が低かった。脂肪由来幹細胞が生存可能な抗癌剤の濃
度下であれば、抗癌剤への曝露後も成熟脂肪細胞への分化能を保持していた。
一方、マウスより摘出した標本の免疫組織化学染色の結果、移植脂肪組織内
に多数の MDA-MB-231 が増殖しているのが観られた。BT-474 移植脂肪組織
内には明らかな陽性細胞が観られなかった。【考察】In vitro および in vivo の
結果より、乳癌術後の移植脂肪内に至適な濃度の抗癌剤を徐放することがで
きれば、局所再発を抑制しながら自然な乳房を再建する方法が選択肢の一つ
となる可能性がある。
ポスターディスカッション
11219
10228
乳癌の化学療法効果におけるエストロゲンレセプター蛋白の発
現と活性による評価の検討
フルベストラント耐性ヒト乳癌細胞株における 5-FU とフルベ
ストラントの併用効果
DP-1-017-01
DP-1-017-02
1
1
2
2
順天堂大学医学部附属順天堂医院 乳腺内分泌外科、
埼玉県立がんセンター 臨床腫瘍研究所、
3
東北大学大学院医学研究科 分子機能解析学
大鵬薬品工業株式会社 癌分野育薬研究所、
大阪大学大学院医学系研究科 乳腺・内分泌外科
糠塚 守 1、野口 眞三郎 2
徳田 恵美 1、高橋 由佳 1、堀本 義哉 1、清水 秀穂 1、田辺 真彦 1、
中井 克也 1、齊藤 光江 1、清野 祐子 2、山口 ゆり 2、林 慎一 3
一般セッション(ポスターディスカッション)
<背景>乳癌治療の個別化に有効な因子について多くの検討が重ねられてお
り、化学療法に対する治療効果予測の手段としてホルモン受容体や HER2 な
どの蛋白発現や遺伝子発現プロファイリングなどがあげられる。補助化学
療法において ER 陰性例は陽性例よりも生存率の改善においてより高いベネ
フィットがあることがいくつかの臨床試験で確認されたが、ER 陽性であって
も生存率の改善は認められており、化学療法の適応に関して ER の蛋白発現が
決定的な意味をもつとは言いきれない。今回 ER の蛋白発現と、ER の活性(機
能)を測定する GFP 法を比較し、ER の機能評価が化療効果予測因子の1つと
なりうるかを検討した。<方法・結果>当院にて術前化学療法を施行した 35
例が対象。針生検・手術検体を用い、免疫染色法 (IHC 法 ) よる ER 蛋白の発現
と検体から採取した乳癌細胞に ERE-GFP を導入したアデノウイルスを感染さ
せ ER の活性を蛍光で測定する GFP 法で検討した。IHC 法での ER 陽性は 29 例、
うち 15 例が GFP 法で陰性であった。中でも IHC 法での ER 陽性 PgR 陰性 5 例
はすべて GFP 法で ER 活性を認めなかった。化学療法で完全奏功 (pCR) を得た
7 例中、IHC 法では 1 例が ER 陰性症例であったが GFP 法では 5 例で ER 活性を
認めなかった。化学療法前後の ER 発現は、IHC 法では術前 ER 陽性は 23 例、
術後は 22 例とほぼ同じであったが、GFP 法では術前 ER 陽性 13 例中 7 例が陰
性へ、ER 陰性 15 例中 4 例が陽性へ変化した。また早期再発症例 3 例は、IHC
法では CNB にて全例 ER 陽性であったが、GFP 法では ER 陽性 1 例、ER 陰性 2
例であった。<考察> ER 蛋白発現が陽性症例であっても ER 活性の低い症例
があり、特に PgR 陰性症例は ER 活性が低いことが示された。また pCR 症例
の多くは GFP 法ではより化学療法に効果のあるとされている ER 陰性と判定さ
れた。早期再発において、GFP 法では早期再発しやすいとされる ER 陰性症例
をより認めることができた。以上より IHC 法に加え、ER の活性を測定できる
GFP 法も治療効果予測に有用なツールの1つとなりうる可能性が示唆された。
【目的】タモキシフェン (TAM) やアロマターゼ阻害剤に耐性となった ER 陽性乳
癌に対してはフルベストラント (FUL) が汎用されている。今回,我々は FUL
と 5-FU の併用効果について検討した。また,ER 陽性ヒト乳癌株 R-27 細胞を
FUL 存在下で長期培養することで作製した FUL 耐性株に対する 5-FU と FUL の
併用効果及び耐性機構につても検討した.【方法】ER 陽性ヒト乳癌株 MCF-7,
T-47D 及び ER 陽性で TAM 耐性であることが報告されている R-27 の 3 株を用
いた。FUL, 4-OH-TAM, 5-FU の細胞増殖阻害効果はクリスタルバイオレット
染色法で評価した。薬剤の併用効果は combination index (CI) 法で評価し,
CI 値が約 1 の場合を相加,低値の場合を相乗,高値の場合を効果減弱と評価
した。FUL 耐性株は FUL 濃度を段階的に増加させながら 15 代培養することで
樹立した.また耐性機構を解析するため ER、および、5-FU の標的酵素である
チミジル酸合成酵素 (TS) のレベルをウエスタンブロットで測定した.【結果】
3 細胞株(MCF-7,T-47D, R-27)に対する FUL の 50% 増殖阻害濃度はいずれ
も 50nM 程度であった。3 細胞株に対して 5-FU と FUL を併用した場合の CI 値
は 0.8 ~ 1 と相加若しくは相加以上の効果が観察された。FUL 耐性株の FUL
に対する耐性度は約 90 倍であり,4-OH-TAM に対しても約 90 倍と交叉耐性
が観察されたが,5-FU に対する耐性度は 1.1 倍であった.FUL 耐性株におい
て 5-FU と FUL を併用した場合の CI 値はほぼ 1 と相加的な効果が観察された
が,5-FU と 4-OH-TAM を併用した場合の CI 値は 1.3 ~ 1.5 程度で併用効果
は観察されなかった。耐性メカニズムについて検証したところ,FUL 耐性株
は親株に比べ,ER の発現量が顕著に増加していた。親株の ER は FUL 存在下
ではほぼ消失したのに対し FUL 耐性株では FUL による ER 低下は軽度であっ
た。また、親株、FUL 耐性株とも 5-FU が ER を低下させ、FUL が TS と ER を
低下させた。【結論】FUL 耐性には ER の発現増加が関与していること、また、
FUL と 5-FU の併用効果の機序として、5-FU の ER 低下作用と FUL の TS 低下
作用が関与していることが示唆された。
10262
10870
ホルモン感受性乳癌における Aromatase 非依存的 Steroid 代
謝経路の役割
ER 陽性乳癌細胞株 MCF-7 におけるエストロゲン枯渇耐性かつ
mTOR 阻害剤耐性の分子生物学的特徴
DP-1-017-03
DP-1-017-04
1
1
2
2
東北大学大学院医学系研究科 分子機能解析学分野、
信州大学医学部付属病院 乳腺内分泌外科、
3
4
群馬大学大学院 臓器病態外科学、
埼玉県立がんセンター 臨床腫瘍研究所、
5
埼玉県立がんセンター 病理診断科、6 日本医科大学付属病院 乳腺科
花村 徹 1,2、丹羽 俊文 1、遠藤 恵 1、郷野 辰幸 1、樋口 徹 1,3、山口 ゆり 4、
黒住 昌史 5、武井 寛幸 6、伊藤 研一 2、林 慎一 1
アロマターゼ阻害剤 (AI 剤 ) は閉経後 ER 陽性乳癌に対しアンドロゲンからの
エストロゲン産生を阻害し効果を発揮する . 一方 3 β -diol や A-diol などのアン
ドロゲン代謝産物も ER を活性化することや E1S からのエストロゲン産生経路
が報告されアロマターゼ非依存的ステロイド代謝も ER を活性化しうることが
示唆される . 我々は過去に AI 剤耐性モデル細胞株で HSD3B1 や STS などのス
テロイド代謝酵素の発現上昇を報告しておりアロマターゼ非依存的ステロイ
ド 代 謝 が AI 剤 耐 性 メ カ ニ ズ ム の 一 つ と な り う る と 考 え て い る .SRD5A1HSD3B1 の作用により 3 β -diol が ,STS-HSD17B1 の作用により E2,A-diol が
産生されうる ( 図 ). しかしこれらの経路が実際の乳癌組織で ER 活性に寄与す
るか検証されていない . 今回 ER 陽性乳癌 45 例で血中 E2 濃度 , 腫瘍組織におけ
る上記 4 種のステロイド代謝酵素 mRNA 発現 ,ER 活性を解析した . 検体の初代
培養系に ERE-GFP レポーターを組み込んだアデノウィルスベクターを感染さ
せた際の GFP 蛍光陽性細胞率 ,ER 標的遺伝子である PgR の mRNA 発現をそれ
ぞれ Ex-vivo,In-vivo ER 活性と定義した . 血中 E2 濃度が低い閉経後でも高い
ER 活性を維持した症例を認め腫瘍局所でのステロイド代謝が ER 活性に寄与
することが示唆された .SRD5A1 と HSD3B1,STS と HSD17B1 の発現量はそ
れぞれ正相関し同一経路上の酵素が共発現する傾向を認めた . 閉経後症例にお
い て SRD5A1,HSD3B1 の 発 現 量 は Ex-vivo,In-vivo ER 活 性 両 者 で 正 相
関 ,STS、HSD17B1 の 発 現 量 は In-vivo ER 活 性 と 正 相 関 し た . 以 上 か ら
SRD5A1-HSD3B1,
STS-HSD17B1 に よ
るステロイド代謝経
路が閉経後乳癌で
ER 活 性 に 寄 与 す る
可 能 性 が あ り ,AI 剤
不応例,耐性症例に
対する新規の治療標
的となりうることが
示唆される .
282
東北大学大学院医学系研究科 分子機能解析学分野、
横浜市立大学大学院 医学研究科、3 埼玉県立がんセンター 臨床腫瘍研究所
木村 万里子 1,2、金子 陽介 1、藤木 夏 1、丹羽 俊文 1、山口 ゆり 1,3、
遠藤 格 2、林 慎一 1
エストロゲンレセプター (ER) 陽性乳癌の内分泌療法耐性獲得機序として
ER と PI3K/Akt/mTOR 経 路 の cross talk の 重 要 性 が 認 識 さ れ て お り、 第
III 相臨床試験においても non-steroidal AI 耐性乳癌に対する mTOR 阻害剤
(everolimus) と exemestane 併用療法の有効性が示されている (BOLERO-2
trial)。当研究室では MCF-7 を親株としてアロマターゼ阻害剤への耐性を
mimic するエストロゲン長期枯渇耐性乳癌細胞株 (EDR 細胞 ) を複数種樹立
したが、ER の恒常的リン酸化に依存する系 (EDR-type1) は最も一般的な
エストロゲン枯渇耐性機序として、広く世界で報告されている。昨年の当
総会においてこの系を含む EDR 細胞への everolimus の効果について報告
し た が、 そ の 後、EDR-type1 細 胞 を マ ウ ス に 移 植 し、xenograft モ デ ル に
お け る everolimus の 効 果 を 検 討 し た。 ま た、EDR-type1 細 胞 に 対 し 長 期
everolimus を曝露することでエストロゲン枯渇耐性、かつ everolimus 耐性
の細胞を得た。この細胞は再発一次治療の AI 剤耐性後の everolimus + AI
剤併用療法への耐性獲得を再現したものである。親株 EDR-type1 と同じく、
everolimus 耐性株は ER 陽性を保っており、fulvestrant は単剤で増殖抑制効
果を示したが、親株 EDR-type1 に対するよりも抑制効果は劣っていた。更に
everolimus の薬剤効果メカニズムの一つとして、細胞周期の G1 期停止があ
げられるが、親株 EDR-type1 において everolimus 投与により認められた S 期
の減少と G1 期の増加は everolimus 耐性株ではみられず、もはや everolimus
が細胞増殖抑制効果を失っていることが示された。また、everolimus 耐性
株では親株と比較し MAPK 経路の亢進がみられ、増殖依存経路が PI3K/Akt/
mTOR 経路から MAPK 経路へと移行していることが示唆された。このように
ER 陽性乳癌細胞株における everolimus 耐性獲得後は、ER 活性の保持と細胞
内リン酸化シグナル伝達経路依存性の変化から、ER と MAPK 経路の両者を標
的とした治療の有効性が期待される。
ポスターディスカッション
10131
10771
手術時の月経周期(血清エストロゲン濃度)が乳癌組織の PgR 発
現および増殖関連因子に及ぼす影響について
A s c o f u ra n o n e S u p p r e s s e s H I F - 1 α a n d Tu m o r
Angiogenesis Induced by EGF in Human Breast
Cancer Cells
DP-1-017-05
1
DP-1-017-06
名古屋市立大学病院 乳腺内分泌外科、2 名古屋市立大学病院 病態病理学
1
浅野 倫子 1、佐藤 慎哉 2、高橋 智 2、吉本 信保 1、遠藤 友美 1、
波戸 ゆかり 1、遠山 竜也 1
2
中嶋 啓雄 1、Jeong Yun-Jeong2、Shin Jae-Moon2、馬替 純二 3、
Chang Young-Chae2
Ascochlorin-related compounds are prenylphenol anti-virus antibiotics.
They exhibits various physiological effects such as hypolipidemic activity,
suppression of hypertension, immune-modulation, and amelioration
of type II diabetes. We have reported that ascochlorin selectively
suppresses growth of a triple negative breast cancer cell line through
the mechanism involving AP-1 suppression. Hypoxia-inducible factor
(HIF)-1 plays an important role in tumor progression, angiogenesis and
metastasis. Here we found that ascofuranone, one of the derivatives
of ascochlorin, suppressed growth factor induced HIF-1 α expression
and tumor angiogenesis. EGF dramatically increased HIF-1 α protein in
a triple-negative breast cancer cell (TNBC) line, MDA-MB-231, leading
to transcription activation of VEGF, a downstream target of HIF-1 α .
The treatment with ascofuranone suppressed the HIF-1 α increase
and VEGF transcription in a dose-dependent manner. The effect of
ascofuranone was specific for EGF-stimulated cells, because the
antibiotic did not suppress HIF-1 α protein accumulated by CoCl2 or
hypoxic condition. We further investigated the effect on angiogenesis
in vivo, using matrigel plug assay. EGF included in the matrigel plugs
mixed with MDA-MB-231 induced new blood vessel formation from the
nearby tissue. Ascofuranone significantly inhibited the EGF-induced
angiogenesis. The result was also confirmed by measuring hemoglobin
contents in the plugs. Those results were verified in other subtypes of
breast cancer cells. Our results indicate that ascofuranone is a potent
angiogenesis inhibitor and anti-tumor agent effective for any subtypes
of human breast cancers.Acknowledgments: This work was supported
by the National Research Foundation of Korea (NRF, Personalized
Tumor Engineering Research Center) grant funded by the Korea
government (MEST) (NO. 2008-0062611).
10502
10268
ナノ粒子を用いた乳がん腫瘍組織へのドラックデリバリー量的
解析
Multi-stage vector Abraxane を用いた乳癌及び肺癌肝転移
マウスモデルに対する治療研究
DP-1-018-01
DP-1-018-02
1
久留米大学医学部 外科学講座、
3
クリーブランドクリニック 外科、
久留米大学病院 がん集学治療センター、
4
久留米大学医学部 放射線医学講座
1
2
2
岩熊 伸高 1、唐 宇飛 1、Grobmyer Stephen2、三島 麻衣 1、竹中 美貴 1、
古川 実奈 1、岩本 周子 1、藤井 輝彦 3、赤木 由人 1、白水 和雄 1、
淡河 恵津世 4
多根井 智紀 1,2、Fransisca Leonard2、Xuewu Liu2、Alexander Jenolyn2、
Mauro Ferrari2、Biana Godin2、Kenji Yokoi2
【背景】乳がん薬物治療においては、必要最小限の抗がん剤を、がん腫瘍組織
のみに、適切なタイミングと期間で供給し、薬物効果が最大限に発揮される
ことがドラックデリバリーシステム(DDS)の理想である。しかし実際には、
臨床試験において薬物の投与量を設定しつつ、安全性とのバランスを取りな
がら、薬物効果を上げていくのが現状であり、薬物動態のモニタリングや到
達性の検証には至っていない。【目的】ゴールドナノ粒子を応用し、in vivo 研
究にてがん腫瘍組織への薬物到達性を経時的にモニタリングし、更にがん腫
瘍組織への取り込みを量的解析し、主要臓器の取り込み量と対比し検証する。
【方法】ゴールドナノ粒子 (10mg/mL) をヒト乳がん担癌マウスモデルへ 200 μ
L 経静脈的に投与し、光音響トモグラフィー (PAT) を用いて腫瘍のナノ粒子取
り込みを経時的にモニタリングを行った。また、投与 5 時間後の腫瘍組織お
よび主要臓器へのナノ粒子取り込み量を、誘導結合プラズマ質量分析計(ICPMS)を用いて組織内金含有量を量ることで解析した。【結果】ナノ粒子の腫瘍
への到達性は、静脈投与後 30 分で速やかに取り込まれた後、投与後 5 時間を
ピークに漸増性にナノ粒子の蓄積を認めた。がん腫瘍組織の金含有量は 0.65
± 0.28 μ g/g で、主要臓器との比は(腫瘍:心臓:肺:肝臓:脾臓:腎臓= 1:1.26:
3.23:10.6:39.4:0.44)であった。【考察】肝臓や脾臓でのナノ粒子の取り
込みが多く、DDS の今後の課題が明らかになったが、問題解決のため今後の
標的ナノ粒子の開発が期待される。ゴールドナノ粒子が非標的ナノ粒子であっ
たため、がん腫瘍組織への取り込み量は少量であったが、腫瘍内でのナノ粒
子動態のモニタリングが可能であり、更なる DDS 構築への寄与が期待される。
283
大阪警察病院 乳腺外科、
Houston Methodist Research Institute, Department of Nanomedicine,
Houston, TX
乳癌肝転移は life thereatening の重要な因子の一つであり、抗癌剤などの治
療が奏効しない場合、予後不良となる。我々は抗癌剤の効果を最大限に引き
出す為に、マクロファージを介した Drug delivery system(薬物を必要な量
を必要な部位と時間に伝達させる技術)としてシリコンナノ粒子 (Multi-stage
vector (MSV)) を開発した。現在、Abraxane (ABX) は最も治療効果の高い
Taxane 系抗癌剤とされている。今回、我々は肝臓がマクロファージを多く含
有する臓器であることに着目して、乳癌及び肺癌肝転移のマウスモデルに対
するシリコンナノ粒子合成抗癌剤 (MSV-ABX) の治療効果を確認した。乳癌細
胞(4T1)及び肺癌細胞(3LL)を脾臓に注入して肝転移のマウスモデルを作成
し、3 群 ( 無治療,free ABX, MSV-ABX) での治療を用いて肝転移に対する治
療効果を検討したところ、全群間にて副作用に差は認めず、MSV-ABX が ABX
に比して有意に治療効果が高く、増殖能を阻害し細胞死を引き起こした。また、
MSV-ABX 治療マウスは ABX に比べて有意に予後の延長を認めた。さらに LCMS/MS を用いてマウスの血液中及び肝臓組織中の paclitaxel の薬物濃度を測
定したところ、血液中の薬物濃度については両群間で差を認めなかったが、
肝臓組織において MSV-ABX は ABX と比べて有意に paclitaxel の薬物濃度の
上昇を認めた。また、マクロファージを用いた細胞実験において、MSV-ABX
治療後のマクロファージは ABX 治療後と比べて、有意に高濃度の paclitaxel
薬剤を保持する能力があり、その後、高濃度の paclitaxel を放出することがで
きることがわかった。また、放出された paclitaxel は癌細胞に対して増殖を抑
えることが可能であることを解明した。今回、我々の MSV-ABX を用いた動
物実験において、肝臓内により高濃度の paclitaxel を集積させることが可能で
あり、肝転移に対して良好な治療効果を発揮することができた。今後、MSVABX は肝転移の患者に対する臨床治療としての大きな可能性が見込まれる。
一般セッション(ポスターディスカッション)
【背景】手術により採取された乳癌組織におけるエストロゲン・レセプター(ER)
およびプロゲステロン・レセプター(PgR)発現レベルは術後ホルモン療法の
適応を決める上で重要な因子であるが、近年閉経前乳癌において PgR 発現は
手術時の血清エストラジオール(E2)値に大きく影響を受けることが報告され
た。今回われわれは、閉経前乳癌において手術時の血清 E2 レベルと PgR 発現
および ER 下流遺伝子、PgR 下流遺伝子、増殖関連因子との関連性について検
討したので報告する。【対象】2001 ~ 2012 年までに当院にて手術を施行した
乳癌 1,961 症例のうち、閉経前 ER 陽性で、凍結組織と手術時の血清が保存し
てある 91 例。【方法】手術時の血清 E2、プロゲステロン、FSH、LH を ECLIA
法にて測定し、ER および PgR 蛋白発現は免疫組織学的方法にて、PgR を含む
4 つの ER 下流遺伝子(PGR、GREB1、TFF1、PDZK1)と 2 つの PgR 下流遺伝
子(RANKL、Wnt-4)、3 つ の 増 殖 関 連 遺 伝 子(Ki67、CyclinD1、Survivin)
は TaqMan による定量的 RT-PCR 法にて解析した。【結果】乳癌組織の PgR
mRNA および蛋白発現は、手術時の血清 E2 濃度に影響されることがわかっ
た。PgR 以外の ER 下流遺伝子についても同様に検討したが、血清 E2 濃度に
よって変化するのは GREB1 のみだけであった。さらに、PgR 下流遺伝子であ
る RANKL、Wnt-4 や増殖関連遺伝子の Ki67、CyclinD1 と PgR 発現について
も検討した結果、正の相関関係がみられた。【結語】閉経前 ER 陽性乳癌の PgR m RNA と蛋白発現は月経周期によって変化する手術時の血清 E2 に影響を受
けることが明らかになった。この変化は 21 遺伝子の評価で recurrence-score
を表す Oncotype Dx ような ER 下流遺伝子を含める遺伝子発現プロファイル
への解釈に影響を及ぼすかもしれない。また、閉経前乳癌においては PgR 発
現と細胞増殖性に何らかの関連性があるのかもしれない。
社会医療法人弘道会寝屋川生野病院 乳腺外科、
デグカソリック大学 生物医工学研究所、3 馬替生物科学研究所
ポスターディスカッション
11121
10067
抗 insulin-like growth factor 療法に感受性のある乳癌患者の
同定
HER2 陽性乳癌における CD24 発現の意義
DP-1-018-03
DP-1-018-04
1
2
大阪大学大学院医学系研究科 乳腺・内分泌外科
下田 雅史、渡部 亜実、綱島 亮、直居 靖人、加々良 尚文、丸山 尚美、
下村 淳、島津 研三、金 昇晋、野口 眞三郎
一般セッション(ポスターディスカッション)
【背景】Insulin-like growth factor 1 (IGF1) およびその受容体を介した細胞
増殖経路の活性化は、乳癌細胞の増殖促進や luminal 乳癌の内分泌療法抵抗性
に関与している。IGF1 経路を標的とした薬剤は多く臨床試験に供されている
にも関わらず、有効なものは見出されていない。その原因として、試験対象
となった乳癌患者の中に細胞増殖が IGF1 経路に依存しない群が多く含まれて
いた可能性や、insulin 経路による IGF1 経路の代償が生じる可能性が指摘さ
れている。我々は抗 IGF1 療法が有効な患者を選別するためのバイオマーカー
の候補として、肝細胞癌における IGF1 経路の標的遺伝子である ASPH に着目
した。ASPH は乳癌や肝細胞癌など多くの癌種で過剰発現し、肝細胞癌にお
いては術後の予後不良因子である。【目的】乳癌細胞において ASPH の発現が
IGF1 経路および insulin 経路で増強されるかどうか、また抗 IGF1 薬の添加で
ASPH の発現が抑制されるかどうかを in vitro で検討する。さらに ASPH の発
現と術後生存率の間に相関があるかどうかをサブタイプ別に検討し抗 IGF1 療
法が有効な可能性のある患者群を見出す。【方法・結果】Luminal 乳癌細胞株
6 種類のうち血清添加で ASPH の発現が上昇する MCF7 および ZR75-1 を用い
た。いずれも IGF1 や insulin を無血清培地中に添加すると ASPH の発現が上昇
し、IGF1 と insulin に共通の下流の経路である MAPK および PI3K/AKT 経路の
阻害により ASPH の発現が抑制された。IGF1 受容体と insulin 受容体の dual
blocker である linsitinib 添加により、IGF1 や insulin による ASPH の発現上昇
が抑制された。Gyorffy らの 2878 例のマイクロアレイデータセットを用いて
サブタイプ別に ASPH の発現と予後を検討したところ、リンパ節転移陰性 (N0)
の luminal B 乳癌において ASPH 高発現群の無再発生存率が低下すること、さ
らに術後ホルモン療法を受けた患者に限るとその差が顕著になることを見出
した。直居らによる当科 105 例の luminal 乳癌において再検討したところ、
同様の結果を得た。【考察】ASPH は乳癌細胞において IGF1 経路および insulin
経路により発現が制御される。また、N0 luminal B 乳癌では ASPH 高発現群
がホルモン療法薬抵抗性である可能性が示唆される。【結語】N0 luminal B 乳
癌における ASPH 高発現群は抗 IGF1 療法の良い適応になる可能性が考えられ
た。今後 ASPH 発現と抗 IGF1 薬の効果との間に関連があるかを検討する予定
である。
東京医科大学病院 乳腺科、
慶應義塾大学医学部先端医科学研究所 遺伝子制御部門
細永 真理 1、有馬 好美 2、河野 範男 1、佐谷 秀行 2
【 背 景 】HER2 陽 性 乳 癌 に 対 す る 抗 HER2 療 法 薬 と し て、trastuzumab、
lapatinib、pertuzumab など様々な薬剤が開発され臨床応用に至っている。
しかしながら、進行・再発乳癌に対するこれらの薬剤の効果は一時的であり、
分子標的療法に対する薬剤耐性は臨床上の大きな問題である。CD44+/CD24は乳癌の幹細胞マーカーとして知られる一方、乳癌の CD24 過剰発現と予後
不良の相関の報告もあり、CD24 の乳癌における役割にはいまだに不明な点
が多い。【目的・方法】HER2 陽性乳癌では CD24 陽性細胞が多くみられるこ
とから、HER2 と CD24 の関連性が予測される。トリプルネガティブ乳癌細胞
株 MDA-MB-231 に野生型 HER2 遺伝子を導入することにより HER2 陽性細胞
株を樹立し、HER2 陽性乳癌における CD24 の役割を解析した。【結果】フロー
サイトメトリー解析において、HER2 過剰発現により CD24 発現細胞の増加
が見られた。HER2 陽性乳癌細胞株である BT-474、HCC202、SKBR3、ZR75-1、HCC1596 においても、CD24 発現細胞の割合は HER2 陽性分画におい
て、HER2 陰性分画よりも多い傾向がみられた。CD24 と HER2 の相互関係を
調べるために、siRNA (small interfering RNA) を用いて CD24 の発現を抑制
したところ、HER2 発現の低下がみられ、HER2 の下流シグナル分子である
Akt のリン酸化レベルも同時に抑制されていた。PI3K-Akt 経路は主に細胞の
生存に関与しており、HER2 陽性乳癌における活性化が報告されている。BT474 細胞において、CD24 の発現を siRNA により抑制した上で lapatinib 処理
を行ったところ、lapatinib によって誘導される細胞死が有意に増加した。【結
論】CD24 と HER2 の発現には正の相関がみられた。CD24 の発現抑制により
HER2 の下流分子のひとつである Akt の活性化が抑制され、HER2 陽性乳癌に
おける lapatinib の効果が増強した。これらの結果から、CD24 は乳癌幹細胞
マーカーとしてだけでなく、HER2 陽性乳癌の細胞内シグナル伝達にも関与し
ており、抗 HER2 療法耐性機序の一因と考えられる。現在の抗 HER2 療法に加
え、CD24 を標的とした治療戦略が望まれる。
10220
11912
Triple negative 乳癌における miR-182 発現と PARP 阻害剤
の検討
簡易型次世代シーケンサーを用いた非浸潤性乳管内病変の体細
胞変異解析
DP-1-018-05
1
3
DP-1-018-06
亀田メディカルセンター 乳腺科、2 昭和大学医学部 医科薬理学、
亀田総合病院附属幕張クリニック 乳腺科
1
2
3
角田 ゆう子 1、佐々木 晶子 2、坂本 尚美 1、坂本 正明 1、池田 奈央子 1、
山城 典江 1、佐川 倫子 1、寺岡 晃 1、原 博子 3、片山 信仁 3、戸崎 光宏 1、
小口 勝司 2、福間 英祐 1
【目的】Triple negative 乳癌 (TNBC) は現在標的治療法が確立されていないが、
近年 Gemcitabine(GEM) と PARP 阻害剤 (PARP-I) の併用効果が報告された。
microRNA(miRNA) は転写後翻訳抑制の働きによってタンパク質を特異的に
抑制することが知られている。しかし、薬剤感受性と miRNA 発現の研究は少
ない。今回、TNBC の乳癌細胞を用いて miRNA 発現と PARP-I の効果を検討
した。【方法】TNBC 乳癌細胞 (MDA-MB-436, MDA-MB-231, BT-549) を用
いて、GEM(1mg/ml) と PARP-I(1%) 添加前後の miRNA 発現を miRNA PCR
array で調べた。薬剤感受性は細胞数の測定と cell analyzer で apoptosis 分
画を算出し検討した。【結果】84 個の miRNA のうち、PARP 発現を抑制する
miR-182 は MDA-MB-436 と BT-549 の 方 が MDA-MB-231 よ り 多 く 検 出 さ
れ た。GEM と PARP-I の 添 加 後 48 時 間 の 細 胞 数 (x105) は MDA-MB-436 で
は control 2.55 ± 0.34, GEM only 0.65 ± 0.07, GEM+PARP-I 0.26 ± 0.20
と有意な併用効果 (P < 0.001) がみられ、BT-549 でも control 6.52 ± 0.39,
GEM only 3.35 ± 0.22, GEM+PARP-I 1.54 ± 0.34 と 有 意 な 併 用 効 果 (P <
0.001) がみられた。MDA-MB-231 では control 1.8 ± 2.0, GEM only 0.81 ±
0.14, GEM+PARP-I 1.44 ± 0.42 と有意な併用効果は認められなかった (P =
0.094)。cell analyzer の 結 果、MDA-MB-436 と MDA-MB-231 と も に GEM
添加により early apoptosis の有意な増加と GEM と PARP-I の併用により late
apoptosis の 有 意 な 増 加 が 認 め ら れ た (P < 0.05)。GEM と PARP-I 添 加 後、
MDA-MB-436 では DNA 損傷を修復する miR-181a, -181b が 3.94 倍,4.23
倍 増 加 し、miR-182 は 10.63 倍 増 加 し た。MDA-MB-231 で は miR-181b は
2.43 倍増加したが、miR-181a は -1.00、miR-182 は -1.04 と減少傾向を示
した。
【結論】TNBC 乳癌細胞において miR-182 の存在が PARP-I の有効性に
関与していることが明らかとなった。今後、TNBC の治療において miR-182
が PARP-I の効果予測因子になりえる可能性が示唆された。
聖マリアンナ医科大学 病理学、
聖マリアンナ医科大学大学院医学研究科 応用分子腫瘍学、
聖マリアンナ医科大学 乳腺内分泌外科
岡南 裕子 1、安田 秀世 2、福田 貴代 2、永澤 慧 2,3、小島 康幸 2,3、
速水 亮介 3、前田 一郎 1、津川 浩一郎 3、太田 智彦 2
【背景】乳癌治療においては臨床病理学的因子とともに生物学的特性を考慮に
入れた治療選択が必要である。生物学的特性を知るための手がかりとして、
最近、500 例を超える浸潤性乳癌の exome 解析から体細胞変異の全貌が明ら
かとなった(Nature, 490:62, 2012)。しかし、非浸潤性乳管癌(DCIS)ある
いは良性乳管内病変についての網羅的な変異解析の報告はいまだにない。今
回我々は、浸潤性乳癌で認められる体細胞変異が、乳癌の前癌病変あるいは
早期病変と考えられている乳管内乳頭腫および DCIS において認められるか、
簡易型次世代シーケンサーを用いたターゲット・リシーケンスにて解析した。
【方法】2009 年より 2012 年の間に当病院で手術を施行した乳管内乳頭腫 10
例および DCIS 9 例 (low grade 5 例、high grade 4 例 ) について、ホルマリ
ン固定・パラフィン包埋検体からゲノムDNAを抽出し、増幅およびシーケ
ンス用のタグを付加したゲノムライブラリを作製した。前述の網羅的解析で
報告された浸潤性乳管癌で高頻度に変異を来す 106 遺伝子の exon を増幅し
うるオリジナルのプライマーパネルを用いて、エマルジョン PCR で遺伝子を
増幅し、簡易型次世代シーケンサー :Ion Personal Genome Machine(Life
Technology 社)にてシークエンスを行い、得られたゲノム配列データをゲノ
ム解析ソフト CLC Genomics Workbench(CLC Biotechnology 社)にて解析
した。【結果】DCIS 3 例に PIK3CA 変異を認め、このうち 2 例は N345K、1
例は Q546E 変異であった。N345K の 1 例は high grade、残りの 2 例は low
grade であった。またこれらの症例とは異なる high grade の 1 例に TP53 の
E286K 変異を認めた。一方、乳管内乳頭腫 10 例では有意な変異を認めなかっ
た。【考察】浸潤性乳管癌で高頻度に認められる変異は主に DCIS から浸潤癌に
移行する際に獲得されるもので、DCIS では変異の頻度はそれほど高くないこ
とが示唆された。特に乳管内乳頭腫の段階では変異はあまり生じていないも
のと思われる。さらに症例を重ね、報告したい。
284
ポスターディスカッション
11375
11526
HER2陰性進行・再発乳癌におけるpaclitaxel + bevacizumab
併用療法の臨床因子別の効果
転移・再発乳癌における Bevacizumab 併用化学療法効果予測
因子の検討
DP-2-019-01
1
3
DP-2-019-02
福山市民病院 乳腺甲状腺外科、2 いしいクリニック、
うだ胃腸科内科外科クリニック、4 かわの医院
大阪市立大学大学院 腫瘍外科
青松 直撥、柏木 伸一郎、浅野 有香、倉田 研人、森崎 珠実、野田 諭、
高島 勉、川尻 成美、小野田 尚佳、平川 弘聖
池田 雅彦 1、久保 慎一郎 1、山本 真里 1、突沖 貴宏 1、河田 健吾 1、
中本 翔伍 1、白河 千加子 1、石井 辰明 2、宇田 憲司 3、川野 亮 4
【背景】Bevacizumab(以下 Bev)は血管内皮増殖因子を標的とするヒト化抗
Vascular endothelial growth factor( 以下,VEGF)モノクローナル抗体で
あり,パクリタキセル (PTX) と併用することで無増悪生存期間を延長するこ
とが示され,2011 年 9 月に日本でも承認を得た.一方で米国では全生存期
間の延長が示せなかったことにより,承認が取り消された . しかしながら,
PTX+BV 併用化学療法は,国内 II 相 JO19901 試験において,約 70% もの高
い奏効率を示し,Life-threatening な手術不能・転移再発乳癌症例において,
Life threatening な状況からの離脱が期待できる.あらかじめ治療効果が乏
しい症例が予測できれば,不要な Bev 投与を回避でき,費用対効果を上げる
ことができる.そこで今回,Bev 併用化学療法に対する効果予測因子を検討
したので報告する.【対象と方法】2011 年 9 月から 2012 年 8 月に Bev 併用化
学療法を施行した転移・再発乳癌 15 例に対して一次治療に限らず,1 サイク
ル以上行った症例を対象とした.Bev 投与前生検標本の VEGF-A および VEGF
receptor(以下 VEGFR)1,2, phospho- VEGF receptor ( 以下 pVEGFR)-1,2
を免疫組織化学染色し,奏効率および予後との関連を検討した.【結果】年
齢 は 31-75 歳( 中 央 値 57 歳 ),Intrinsic subtype は luminal A/ luminal B/
HER2 type/ triple negative=10/1/0/4 例であった.前治療歴は中央値が
3(0-9) レジメン,治療効果は CR/PR/SD/PD が 0/9/4/2 であり,全奏効率は
60%(9/15) であった.15 例のうち,VEGF-A 発現は,陽性 10 例,陰性 5 例
であった.VEGF-A 陽性 10 例中奏功例は 8 例(奏効率 80%)であり,VEGF-A
陰性 5 例中奏功例は 1 例(奏効率 20%)であった.VEGF-A 陰性例の非奏効率
は 80%(4/5) であり,VEGF-A 陽性例の非奏効率 20%(2/10) に比べ有意に
(p=0.047) 高率であった.VEGFR-1,2,p-VEGFR-1,2 は,明らかな有意差
は認めなかった.無病生存期間・全生存期間にはいずれも明らかな有意差は
認めなかった.【結論】VEGF-A 発現は,Bev 併用化学療法の効果予測因子と
なりえることが示唆された.VEGF-A 陰性例は,Bev 併用化学療法に治療効果
が乏しく,不要な Bev 投与を避けることが出来る可能性が示唆された.今後,
症例数をさらに重ね検討を続けていきたい.
10661
10517
当 院 に お け る 進 行・ 再 発 乳 癌 21 例 に 対 す る Paclitaxel +
Bevacizumab 併用療法の検討
富山県における転移・再発乳癌に対するベバシズマブの使用状
況と有効性に関する報告 (TBCRG-2)
DP-2-019-03
DP-2-019-04
1
乳腺外科 仁尾クリニック
2
仁尾 義則、玉置 美賀子、玉置 将司、壷井 和彦
【目的】Avastin (Bevacizumab, BV) は、本邦では 2011.9. に Paclitaxel (PTX)
との併用で手術不能または再発乳癌に承認され、2 年以上経過した。今回、当
院で PTX+BV を投与した進行・再発乳癌 21 例での効果と予後を検討した。
【対象と方法】2013.3. までに治療を開始した 21 例で、平均 58 才 (39-83)、
ER(+) 14/21(67%)、PgR(+) 8/21(38%)、HER2(+) 11/21(52%)、全例
が Taxan 既治療例で、内分泌治療既治療 20 例、放射線療法既治療 20 例、脳
転移 6 例、胸水 4 例、内臓転移 16 例である。BV は、1 回 10mg/kg を点滴静
脈内注射し、患者の状態により適宜減量し、進行確認まで継続した。【成績】
PTX+BV 治療期間中央値は 6.9 ヶ月 (208 日 : 21-301)、初回再発後治療期間
中央値は 46 ヶ月 (1379 日:387-2010)、奏効は 6 例(28.5%)、治療継続期
間 (Time to treatment failure, TTTF) 中央値は 6.8 ヶ月(204 日:21-322)
であった。単変量解析では、初発から再発までの無再発期間が 2 年以上の症例
がそれ以下の症例よりも、また PgR(-) 例が (+) 例よりも、TTTF が有意に長
かった ( 各々 p=0.0058、p=0.0311)。一方、ER、HER2、転移個数、脳転移、
胸水、内臓転移の有無別では有意差がみられなかった。多変量解析 (MVA) で
は、BV 治療の TTTF に及ぼす有意の因子はみられなかった。再発治療開始か
らの 50% 生存期間は 2010 日で、PTX+BV 開始からの 50% 生存期間は 233
日であった。MVA では、初発再発からの生存期間に及ぼす有意の因子はなく、
転移個数が有意傾向の予後不良因子で(p=0.0621)、PTX+BV 開始からの生
存期間に及ぼす有意の因子もなく、HER2(+) と年令が有意傾向で予後良好の
因子であった ( 各々 p = 0.0717、p = 0.0943)。重篤な有害事象は観察され
なかった。【結論】今回の検討では、平均 TTTF 7ヶ月前後と、全例が Taxan、
anthracyclin の治療後で、大半が 3 次治療後であることを考慮すると良好な結
果といえる。症例数不足のため、PTX+BV 治療の効果と乳癌の生物学的特性
との関連は明らかではなかったが、今後症例を増やしてさらに検討を進める
必要がある。
285
富山大学 消化器・腫瘍・総合外科、
Toyama Breast Cancer Research Group
松井 恒志 1、江嵐 充治 2、前田 基一 2、福島 亘 2、島多 勝夫 2、
長田 拓哉 2、清水 哲朗 2、野崎 善成 2、尾山 佳永子 2、岩田 啓子 2、
吉本 勝博 2、小林 隆司 2、吉川 朱実 2、澤田 幸一郎 2、清原 薫 2、
伊井 徹 2
TBCRG は富山県における乳癌治療の現状把握のために立ち上げられた多施
設共同の研究グループである。県内の乳癌治療を担当する主力医師が連携し、
主要な新薬や治療手技の実施状況を把握するとともに、その有効性と有害事
象の現状を把握・共有するために発足した。TBCRG の調査・研究の第二弾と
して選択したのが、転移・再発乳癌に対するベバシズマブ(アバスチン)の使
用状況と有効性、有害事象に関する調査である。調査期間は 2013 年1月から
スタートし、県内でのベバシズマブ使用例全例の集積を目指した。 2013 年
11 月末日現在、富山県内で 46 例のベバシズマブ使用例が確認され、臨床デー
タが集積された。 対象患者の年齢(中央値)は 57 歳であった。(ER/PgR/
HER2) の陽性率は (23.9%/46.7%/77.8%) であった。ベバシズマブ治療継
続期間の中央値は 149 日(14 ~ 876 日)であった。ベバシズマブの奏功率は
58.7%、病勢コントロール率 (CR+PR+SD) は 67.4%と良好な結果が得られ
ていた。 有害事象(非血液毒性)では、脱毛(Grade3,4)が 2 例(2.2%)、感
覚性神経障害(Grade3,4)が 3 例((6.5%)、高血圧(Grade3,4)が 4 例 (8.7%)、
蛋白尿(Grade3,4)が 1 例 (2.2%) に認められた。いずれも認容範囲内であり
治療継続の妨げとはなっていなかった。 さらに、サブグループ別検討におい
て、ベバシズマブ治療継続期間を log-rank 検定により検討した。Taxan 治療
歴 (+) 群の治療継続期間が有意に長く(p=0.03)、HER2(+/-)(p=0.81)、腫
瘍縮小別 (PR ≦ vs PR > )(p=0.93)、治療ライン別 (1st line vs 2nd line 以
降 )(p=0.74)では差を認めなかった。 今回、富山県内でのベバシズマブの
使用状況を調査・分析を行なったが、転移・再発乳癌に対する治療選択とし
てベバシズマブは充分有用であった。このような症例集積はさらに大規模な
症例集積・分析の窓口としても充分有用となると考えられ、今後も追跡を継
続する事が重要と考えられた。
一般セッション(ポスターディスカッション)
【背景】HER2 陰性進行・再発乳癌に対する paclitaxel + bevacizumab 併用療
法(以下 PB 療法)は、1st line と 2nd line に限定した各種臨床試験の層別解析
において subtype や taxane 系薬剤治療歴(paclitaxel 以外を含む)を問わず高
い有効性が示されている。3rd line 以降での投与については有効性を示すエ
ビデンが皆無にも関わらず実臨床では汎用されている。【目的】PB 療法の臨床
的効果について、subtype 別、paclitaxel 治療歴の有無別、投与 line 別(1st
+ 2nd vs 3rd 以降)に後方視的検討を行う。【対象と方法】2011 年 11 月から
2013 年 12 月まで、当院で PB 療法を施行した HER2 陰性進行・再発乳癌 44
例中、効果判定が終了した 38 例。上記臨床因子別に奏効率(以下 RR)、臨床
的有用率(以下 CB)、治療成功期間(以下 TTF)を比較検討した。【結果】全体
の年齢中央値 60 才(36 ~ 89 才)、33 例(86.8%)に臓器転移あり、既化学療
法レジメン数中央値 1(0 ~ 9)、PB 療法の RR は 84.2、CB は 92.1%、TTF 中
央値は 7 ヵ月(0 ~ 17 ヵ月)であった。subtype 別の検討では luminal type(27
例)/ triple negative type(11 例)の RR、CB、TTF 中央値はそれぞれ 84.6%
/ 90.9%、92.6% / 90.9%、7 ヵ月 / 5 ヵ月であった。paclitaxel 治療歴の
有無別の検討では、投与歴なし(24 例)/ 投与歴あり(13 例)の RR、CB、TTF
中央値はそれぞれ 91.7% / 71.4%、100% / 78.6%、7 ヵ月 / 5 ヵ月であっ
た。投与 line 別の検討では 1st + 2nd(24 例)/ 3rd 以降(13 例)の RR、CB、
TTF 中央値はそれぞれ 91.7% / 71.4%、100% / 78.6%、7 ヵ月 / 5 ヵ月
であった。【結語】PB 療法は、subtype に関わらず高い抗腫瘍効果を示した。
Paclitaxel 未投与例での有効性は絶大である一方、既投与例でも比較的高い臨
床的効果を認めた。1st + 2nd line での有効性は絶大である一方、3rd line
以降では若干劣るものの、それでもなお比較的高い有効性が示された。
ポスターディスカッション
11158
10697
当院における転移性乳癌に対するベバシズマブとパクリタキセ
ルの併用療法の検討
ベバシズマブ(AVA)+パクリタキセル(PTX)による発声障害・
dysphonia について
DP-2-019-05
1
3
DP-2-019-06
日本医科大学付属病院 乳腺外科、2 日本医科大学千葉北総病院 外科、
日本医科大学付属病院 放射線科、4 日本医科大学付属病院 病理部
刈谷豊田総合病院 乳腺外科
柳原 恵子 1、栗田 智子 1、岩本 美樹 1、飯田 信也 1,2、山下 浩二 1、谷 瞳 3、
村上 隆介 3、大橋 隆治 4、土屋 眞一 4、武井 寛幸 1
一般セッション(ポスターディスカッション)
転移性乳癌に対する治療として、ベバシズマブ+パクリタキセル(Bev+
w PAC)は効果出現までが短期間であり、奏効率も高く、有用であると報告
されている。また、Bevacizumab は血管透過性抑制や膜透過性抑制効果があ
り、腹水や胸水がコントロールされやすく、胸水、腹水貯留例では QOL 改善
が得られることが多い。当院で、転移性乳癌に対して 2012 年 1 月から 2013
年 8 月までの 1 年 8 カ月間に、13 例の Bev+wPAC 治療を経験したので有用性
と安全性について検討した。年齢は 39 歳から 78 歳(平均 56 歳)で、転移巣 1
臓器が 5 例、2 が 4 例、3 以上が 4 例であった。転移部位は肝が 6 例、肺(胸膜)
4 例(全例が胸水貯留あり)、骨 8 例、胸壁 3 例、リンパ節 5 例。前化学療法レ
ジメン数は 0 が 7 例、1 が 3 例、2 が 1 例、3 以上が 2 例であった。原発巣のサ
ブタイプは luminal タイプが 10 例、triple negative タイプが 3 例で HER2 陽
性は含まれなかった。治療期間は 1 - 16 か月で、中央値は 7 か月、2 例が継
続中である。最大治療効果は、CR が 0 例、PR7 例、SD5 例(うち longSD は 2
例)、PD が 1 例。奏効までの期間は 1-3 か月で、胸水貯留例 4 例ではいずれも
約 1 か月で胸水の減少を認め、呼吸苦改善が得られた。投与中止理由は、PD7
例、自己中止 2 例、有害事象 2 例であり、それらの治療期間は1- 15 か月であっ
た。有害事象は、末梢神経障害を 8 例に認め、Grade(Gr)1 が 5 例、Gr2 が 3 例、
Gr2 の 1 例は末梢神経障害のために投与中止した。血圧上昇は 2 例で、Gr1 が
1 例、Gr3 が 1 例。蛋白尿は Gr2 が 1 例に認められた。好中球減少は、Gr3 が
1 例、Gr4 が 2 例に認められた。Gr2 の血尿が 1 例に認められ、鼻出血は Gr1
が 4 例、Gr4 が 1 例で、緊急止血術と輸血の緊急処置を要した。好中球減少や
末梢神経障害に対しては、パクリタキセルの投与量や投与回数の減少で継続
可能であり、Gr3 の血圧上昇、Gr2 の蛋白尿でベバシズマブの休薬、Gr4 の鼻
出血症例でベバシズマブの投与中止を必要とした。有害事象による治療中止
は 2 例に認められたが、奏効率 54%(7/13 例)、臨床的有用率は 69%(9/13
例)であり、転移性乳癌に対する Bev+ w PAC 治療は有用で、特に胸貯留例で
は早期に呼吸苦改善に結びつき、QOL の改善が得られた。
加藤 克己、内藤 明広、川口 暢子、西本 真弓
は じ め に: ベ バ シ ズ マ ブ の 発 声 障 害・dysphonia の 頻 度 は 1 ~ 5 % 程 度
と記載されているが、AVA+PTX療法をおこなってみると発声障害・
dysphonia を訴える症例が多くみられた。今回、当科のAVA+PTX療法
施行例について発声障害・dysphonia を検討した。対象および方法:当科で
施行したAVA + PTX療法17例(全例女性。平均年齢61歳。全例HER
2陰性再発乳癌)の有害事象、特に発声障害・dysphonia の発現状況について
検討した。結果:AVA+PTX療法の主な有害事象は鼻出血47%、発声
障害・dysphonia 47%、味覚異常18%、高血圧12%、湿疹12%であっ
た。発声障害・dysphonia の具体的な訴えは「声がかすれる」「声が出にくい」
「カラオケが歌えない」などであり、多くが投与後2,3日目に発現し、治療中
は症状が繰り返し発現した。治療中止により自然に治癒した。BMIで発声
障害の有無を比較すると有:18.47 vs 無:21.14 であり、やせ型の女性に多
い傾向があった。考察:発声障害・dysphonia はPTXよりはAVAに起因
する副作用である。発生機序は解明されていないが、VEGFと喉頭神経と
の関連が示唆されている。AVAによる発声障害・dysphonia の発現頻度は
臨床試験などでは10%以下であるが、学会発表などでは20%以上と報告
されており、程度は軽いことが多いが、以外に多い副作用の一つである。こ
の差は発声障害・dysphonia の程度が軽度で患者が訴えないことと、医師が
認識していないことにあると思われる。AVA治療中に声の変調や嗄声を認
めた場合AVAの副作用と認識することが重要である。症状が軽度であれば
治療を継続し、高度あるいは悪化する時は治療の中止を検討すべきである。
比較的軽度の副作用ではあるが、患者にとって声が出しにくいことは不安で
あり苦痛なようである。患者に副作用であることを理解させ、安心させるこ
とは重要と思われる。
10742
11103
演題取り下げ
転移乳癌におけるエリブリンの投与間隔に関する後方視的解析
DP-2-020-01
DP-2-020-02
1
3
がん研有明病院 乳腺内科、2 がん研有明病院 総合腫瘍科、
がん研有明病院 乳腺センター外科
小林 心 1、伊藤 良則 1、河合 祐子 2、深田 一平 2、柴山 朋子 1、
小林 隆之 2、荒木 和浩 1、高橋 俊二 2、岩瀬 拓士 3
【背景】エリブリンは進行再発乳癌に対して、単剤で全生存期間を延長した薬
剤であるが、骨髄抑制のために投与延期となることが多い。次投与は減量し
て day1、day8 と連投する方法が一般的だが、通院頻度の少ない方法を患者
が希望する場合は、減量せずに day1、day15 と隔週投与することもある。し
かしながらこれらの方法の効果と安全性は確立されていない。【方法】がん研
有明病院で承認以来 2013 年 10 月までにエリブリンの投与を開始した症例の
うち、3 サイクル以上継続可能であった 128 例の投与状況を後方視的に調査
し、PFS および OS と副作用の状況を調べた。【結果】128 例のうち、< 1 >推
奨用量(1.4mg/m2 day1、day8 投与)を継続したものは 73 例(57%)、何
らかの投与量やスケジュールの変更を必要としたものは 55 例(43%)であっ
た。推奨用量で投与できない場合に、< 2 >隔週へと総投与量を減量する群と、
< 3 > 1 回投与量を減量して day1,day8 で投与する群の 3 つに分けて解析し
た 場 合、PFS・OS は 以 下 の 通 り で あ っ た; < 1 > n=73、PFS 5.3M、OS 19.1M < 2 > n=16、PFS 9.1M、OS 18.4M < 3 > n=39、PFS 7.4M、
OS 20.6M【結語】隔週投与群では、減量群と比較し治療効果が劣ることは示
されなかった。有害事象のために投与延期になった場合、1 回投与量を減量せ
ずに隔週投与を行う方法は検討の価値があると考えられた。
286
ポスターディスカッション
10526
11324
富山県における転移・再発乳癌に対するエリブリンの使用状況
と有効性に関する報告 (TBCRG-1)
転移性乳癌に対する新規抗癌剤エリブリンの臨床効果―多施設
共同観察研究(中間報告)
DP-2-020-03
1
2
DP-2-020-04
1
藤聖会八尾総合病院 外科、
Toyama Breast Cancer Research Group (TBCRG)
東京大学医学部付属病院 乳腺内分泌外科、
国際医療福祉大学三田病院 乳腺センター、
3
公立昭和病院 乳腺・内分泌外科、4 虎の門病院 乳腺・内分泌外科、
5
虎の門病院 臨床腫瘍科、6 国立国際医療研究センター 外科、
7
関東中央病院 乳腺外科
2
江嵐 充治 1,2、前田 基一 2、福島 亘 2、島多 勝夫 2、長田 拓哉 2、
松井 恒志 2、清水 哲朗 2、野崎 善成 2、尾山 佳永子 2、小林 隆司 2、
岩田 啓子 2、吉本 勝博 2、吉川 朱実 2、澤田 幸一郎 2、清原 薫 2、
伊井 徹 2
10093
【目的】エリブリンが 2011 年 7 月より手術不能、又は再発乳癌に対し新規に使
用可能となり、2 年以上が経つ。しかし、実臨床下においてその有効性を示し
た報告はまだ少ない。今回我々は同薬剤の有効性について、多施設共同観察
研究を実施し検討した。【対象】研究参加施設にて、2013 年 12 月 1 日時点で
106 例が登録されたうち、調査が完了した 85 例について解析した。背景とし
て、年齢、サブタイプ、転移部位、前治療数(手術不能又は再発に対する化学
療法)について、治療成績として、最良効果、治療期間、生存期間、有害事象
について集計し解析を行った。【結果】平均年齢は 58.4 歳で、サブタイプ別に
みると、ルミナルタイプで 57.6%、HER2 タイプは 27.1%、トリプルネガティ
ブ(TN)タイプは 15.3%であった。前治療レジメン数は中央値 1 で前治療歴の
少ない患者が多かった。CT 評価が実施された 83 例について、奏功率(ORR)
は 45.8%、病勢コントロール率 (DCR) は 86.7% で、国内第 2 相試験と比較
し良好な結果であった。前治療数別では 1 レジメン以下の ORR は 57.5%、
DCR は 87.5%、2 レジメン以上は ORR が 37.2%、DCR は 86.0% と、1 レジ
メン以下で有意に奏効率が高かった。無増悪生存期間(PFS)の中央値は 254
日だった。サブタイプ別ではルミナルタイプが 294 日、HER2 タイプで 335 日、
TN タイプが 141 日であり、ルミナル、HER2 タイプが TN タイプに比し、有
意に有効であった。前治療数別では 1 レジメン以下が 355 日、2 レジメン以
上が 188 日と、1 レジメン以下で有意に長かった。また内臓転移の有無では
有りの症例で 294 日、無しでは 194 日と転移有症例の PFS が長い傾向であっ
た。生存期間中央値は 768 日と国内第 2 相試験に比し良好な結果であった。
有害事象に関しては、グレード 3 以上の好中球減少が 45.9%、発熱性好中球
減少症 16.5%、末梢神経障害 9.4%であり、骨髄抑制の対応をすることで忍
容性は比較的良好であった。【結語】エリブリンは実臨床下においても有効性、
忍容性は高く、有効な選択肢であることが示唆された。特にルミナル、HER2
タイプ、内臓転移症例、および早期の使用にて有用性が高いことが示唆された。
今後観察期間を延長し、全生存率の検討に関しても解析を進めていきたい。
10835
DP-2-020-05
DP-2-020-06
転移性乳癌患者を対象とした nab-Paclitaxel/S-1 併用療法の
臨床第 I 相試験
HER-2 陰性進行・再発乳癌に対する weekly パクリタキセル・
ゲムシタビン併用療法の第 II 相試験 (KMBOG1014)
1
近畿大学医学部附属病院 腫瘍内科、2 がん・感染症センター東京都立駒込
病院 外科、3 埼玉医科大学国際医療センター 乳腺腫瘍科、4 近畿大学医学
部附属病院 外科
1
関西医科大学附属滝井病院 乳腺外科、
大阪市立総合医療センター 臨床腫瘍科、3 八尾市立病院 乳腺外科、
大阪市立大学附属病院 腫瘍外科、5 大阪赤十字病院 乳腺外科、
6
国立病院機構大阪医療センター 乳腺外科
2
4
鶴谷 純司 1、黒井 克昌 2、佐伯 俊昭 3、宮崎 昌樹 1、仁科 慎一 1、
牧村 ちひろ 1、谷崎 潤子 1、岡本 邦男 1、岩朝 勤 1、菰池 佳史 4、
山下 年成 2、有賀 智之 2、重川 崇 2、中川 和彦 1
山本 大悟 1、徳永 伸也 2、森本 卓 3、高島 勉 4、露木 茂 5、増田 慎三 6
【背景】nab-Paclitaxel(nab-P)は転移性乳癌(MBC)における一次治療の選択
肢の一つであり、毎週投与法でより高い有効性が示唆されている。S-1 は経口
のフッ化ピリミジン系製剤であり、乳癌を初めとした様々な固形癌で高い抗腫
瘍効果が示されている。これら二つの薬剤は、細胞障害の機序・毒性のプロファ
イルが異なっていることから、両薬剤を併用することでより高い抗腫瘍効果が
期待できると考え、HER2 陰性の MBC を対象に nab-P/S-1 併用療法の第 I 相試
験を実施した。主目的は nab-P/S-1 併用療法の最大耐用量(MTD)及び推奨用
量(RD)の推定であり、副次的に抗腫瘍効果、薬物動態学的な検討も行った。
【方法】21 日間を 1 サイクルとした。開始レベル(レベル 1)の投与方法は、S-1
65 mg/m2 を 14 日間連日経口投与し、nab-P 100 mg/m2 を day1 及び day8
、及
に静脈内投与とした。投与レベルは、S-1 の用量(65 または 80 mg/m2)
び nab-P の投与回数(day1、8、または day1、8、15)によりレベル 1、2a、
2b、3 と設定した。
【結果】本試験は 2010 年 8 月から実施され、計 15 例が登録された。そのうち 9
例は 1 次治療例で、6 例はアンスラサイクリンを含む化学療法の治療歴のある
2次治療例だった。レベル 3(S-1 80 mg/m2 day1-14/nab-P 100 mg/m2、
day1、8、15)の 6 例中 1 例で DLT が確認された。DLT は好中球減少によるサ
イクル開始遅延だった。MTD には達していないが、2 サイクル以降の減量、休
薬、副作用発現状況からレベル 3 より上のレベルを設定することは適切ではな
いと判断し、RD をレベル 3 と決定した。7 例は 15 サイクル以上投与でき、そ
の内 4 例は 20 サイクル以上の投与が可能だった。RECIST v1.1 で定義された
測定可能病変を有する症例 12 例での最良総合効果は、CR1 例、PR5 例、SD4 例、
NE 1例であり、PD は1例のみだった。SD の 4 例はいずれも 16 週以上継続し
た。20% 以上の主な Gr3/4 の有害事象は骨髄毒性だったが、発熱性好中球減
少はみられなかった。末梢性感覚ニューロパチーは全例で認められたが、Gr3
を発現した症例は 2 例のみだった。両薬剤の薬物動態はそれぞれの単剤投与時
における 5-FU、paclitaxel の薬物動態と大きな差異はなかった。
【まとめ】本併用療法は長期投与可能であり、病勢のコントロールも長期間継続
する傾向であったことから、HER2 陰性の MBC において有望な治療法となりえ
ることが考えられた。当学会では本試験の最終解析結果を報告する予定である。
【背景】HER-2 陰性進行・再発乳癌に対する一次化学療法として、アンスラサ
イクリンまたはタキサンを含むレジメンが推奨される。パクリタキセル・ゲ
ムシタビン併用療法とパクリタキセル単剤療法を比較する無作為化第 III 相比
較試験において、主要評価項目である生存期間で統計学的に有意な延長が示
された。ただし、パクリタキセルは 3 週毎投与法が用いられており、現在標準
である毎週投与法ではないために普及が進んでいない。【目的】パクリタキセ
ルとゲムシタビンの分割併用療法の有効性と安全性を評価する。【対象】対象
はタキサン未治療の HER-2 陰性進行・再発乳癌とし、タキサンによる術前後
化学療法の場合、12 か月以上経過していれば登録可とした。【方法】投与スケ
ジュールは 28 日を 1 コースとして、第 1, 8, 15 日にパクリタキセル 80mg/
m2 を投与し、第 1, 8 日目にゲムシタビン 1200mg/m2 を投与した。主要
評価項目は奏効率 (RR)、副次評価項目は無増悪生存期間 (PFS)、全生存期間
(OS)、治療成功期間 (TTF)、安全性とした。35 例の集積を予定した。【結果】
試験登録期間内に 12 例の登録があった。年齢中央値 54.5 歳、PS 0 / 1 : 8 /
4、ER 陽性 / 陰性 : 8 / 4、PgR 陽性 / 陰性 6 / 6、腫瘍状況 StageIV / 再
発 : 3 / 9、術後化学療法 あり / なし : 8 / 4、術後内分泌療法 あり / なし :
5 / 7、転移臓器個数 1 / 2 / 3 / 4 : 7 / 3 / 1 / 1、転移臓器名 肺 / 肝 / 骨
/ リンパ節 : 6 / 4 / 4 / 4、治療 line 1st / 2nd / 3rd / 4th 以降 : 6 / 3 / 2
/ 1 であった。主要評価項目である奏効率は 58% で、CR 0%, PR 58% であっ
た。副次評価項目は、PFS 中央値 175 日、OS 中央値 609 日、TTF 中央値 175
日であった(経過観察期間中央値 536.5 日)。G3 以上の有害事象は、白血球減
少 33.3%, 好中球減少 33.3%, 血小板減少 8.3%, 血清 ALT 上昇 8.3%, 倦怠
感 8.3% であった。RDI は、パクリタキセル 95.0%、ゲムシタビン 95.6%
であった。【結論】パクリタキセルとゲムシタビンの分割併用療法は有効性が
期待できるレジメンで、有害事象も比較的軽度であると思われる。
287
一般セッション(ポスターディスカッション)
TBCRG は富山県における乳癌治療の現状把握のために立ち上げられた多
施設共同の研究グループである。県内の乳癌治療を担当する主力医師が連携
し、主要な新薬や治療手技の実施状況を把握するとともに、その有効性と有
害事象の現状を把握・共有するために発足した。TBCRG の調査・研究の第一
弾として選択したのが、転移・再発乳癌に対するエリブリン(ハラヴェン)の
使用状況と有効性、有害事象に関する調査である。調査期間は 2013 年1月
からスタートし、県内でのエリブリン使用例全例の集積を目指した。 2013
年 11 月末日現在、富山県内で 39 例のエリブリン使用例が確認され、臨床
データが集積された。 対象患者の平均年齢は 54.9 歳であった。治療開始時
の Stage(1/2/3/4) は (8%/39%/29%/24%)、(ER/PgR/HER2) の 陽 性 率 は
(61.6%/46.2%/28.2%) であった。前治療歴の中央値は2、平均値は 2.3 レ
ジメンであった。エリブリンの奏功率は 42.0%、病勢コントロール率 (PR+SD)
は 71%と良好な結果が得られていた。有害事象(非血液毒性)では、脱毛が(全
Grade/G3,4)、(58.9%/0%)、味覚障害が(全 Grade/G3,4)、(41.0%/0%)、
感覚性神経障害が(全 Grade/G3,4)、(48.7%/0%) に認められた。いずれも
認容範囲内であり治療継続の妨げとはなっていなかった。有害事象(血液毒性)
では、白血球減少が(全 Grade/G3,4)、(68.4%/15.4%)、好中球減少が全
Grade/G3,4)、(58.3%/16.7%) に認められた。いずれも重篤な状況に至っ
ておらず治療継続の妨げとはなっていなかった。 今回、富山県内でのエリ
ブリンの使用状況を長波・分析を行なったが、このような症例集積はさらに
大規模な症例集積・分析の窓口としても充分有用となると考えられる。今後
も追跡を継続する事が重要と考えられる。転移・再発乳癌に対する治療選択
としてエリブリンは毒性も制御範囲内であり奏功率も充分期待しうる、有効
な薬剤と考えられた。
菊池 弥寿子 1、小川 利久 1、内田 惠博 2、金内 一 3、川端 英孝 4、
高野 利実 5、安田 秀光 6、館花 明彦 7、白川 一男 2、丹羽 隆善 3、
橋本 政典 6、菊山 みずほ 7、多田 敬一郎 1、辻 英一 1、西岡 琴江 1、
瀬戸 泰之 1
ポスターディスカッション
11396
11051
完全奏効後に化学療法併用から trastuzumab 単独療法に移行
した HER2 陽性転移性乳癌の検討
脳転移を有する Her2 陽性乳癌患者の抗 Her2 治療による影響
DP-2-021-01
DP-2-021-02
1
2
1
福山市民病院 乳腺甲状腺外科、2 うだ胃腸科外科クリニック、
3
いしいクリニック、4 かわの医院
東海大学医学部付属病院外科学系 乳腺・内分泌外科、
東海大学医学部付属八王子病院
大下内 理紗 1、新倉 直樹 1、扇屋 りん 1、寺尾 まやこ 1、津田 万里 1、
岡村 卓穂 1、齋藤 雄紀 1、奥村 輝 1、徳田 裕 1、鈴木 育宏 2
中本 翔伍 1、池田 雅彦 1、久保 慎一郎 1、山本 真里 1、突沖 貴宏 1、
河田 健吾 1、白河 千加子 1、宇田 憲司 2、石井 辰明 3、川野 亮 4
一般セッション(ポスターディスカッション)
目的:抗 HER2 治療により Her2 陽性転移再発乳癌患者の生存期間が延長し
た結果,これまで顕在化してこなかった脳転移症例が目立つようになってい
るが、HER2 陽性乳癌における脳転移巣に対する治療は確立されていない。
我々は当院における脳転移を有する HER2 陽性転移再発乳癌患者の抗 HER2
治療による影響を検討した。方法:当院における 1999 年から 2012 年まで
に乳癌脳転移と診断された Her2 陽性乳癌患者 52 例を対象とした。今回の検
討では脳転移診断時に髄膜転移を伴っていたものや重複癌は除外した。生存
曲線は Kaplan-Meier 法を用い、有意差の検定には Log-rank 検定、多変量解
析は Cox 比例ハザードモデルで行った。結果:脳転移診断からの生存期間中
央値は 18.4 か月 (0.9 ~ 36 か月 ) であった。脳転移診断後の全身治療の内訳
はハーセプチン単独群 27 例、ラパチニブ単独群 4 例、両剤使用群 9 例、全身
治療なしが 12 例であり、それぞれの脳転移後生存期間は 10.0 か月、22.6 か
月、37.8 か月、7.4 か月であった。検討対象の 52 例中 48 例(92%)は手術や
放射線治療などの脳への局所治療を受けていた。局所・遠隔再発後治療の生
存期間を比較すると、ハーセプチン単独群とラパチニブ使用例 ( ラパチニブ単
独または両剤使用群 ) との間には有意差を認めなかった(中央値 60.6 か月対
35.8 か月、P =0.190)。また脳転移後の治療においてもハーセプチン単独群
とラパチニブ使用例では有意差を認めなかったが、ラパチニブ使用群で脳転
移後の生存期間が延長する傾向が認められた(中央値 15.7 か月対 37.8 か月、
P =0.086)。多変量解析では脳転移個数 ( ≦ 3 個か> 3)、ホルモン受容体 (ER
陽性か陰性 )、脳転移への初期治療 ( 全脳照射か局所治療 )、脳転移診断時の症
状の有無では優位差を認めなかったが、ラパチニブ使用の有無(Hazard ratio
0.411[95%信頼区間:0.169-0.999])でのみ有意差を認めた (P=0.05)。考
察:Her 2陽性脳転移患者の抗 HER2 治療は脳への局所治療だけでなく、全
身治療が重要であり、ハーセプチンとラパチニブの両剤が使用された症例に
生存期間延長の可能性が示唆された。
【背景】HER2 陽性転移性乳癌においては、化学療法と trastuzumab 併用療法
で治療を開始することが推奨されている。T 単独療法で治療を開始すると、後
から化学療法を上乗せしても前者に比較して明らかに全生存期間が劣るのが
その理由である。しかし、開始から長期間に及ぶ化学療法は有害事象により
患者の QOL を低下させることにもつながる。一方で、奏効が得られたのちに
化学療法のみを中断して T 単独療法に移行した場合の臨床的意義については
臨床試験で検討されたことはない(CLEOPATRA 試験のコントロール群の成績
から T 単独療法の無増悪生存期間の中央値は 6 カ月程度と推測は可能)。
【目的】
化学療法と T 併用療法を一定期間施行し、完全奏効を確認後に T 単独療法へ移
行した症例における、T 単独療法の成績を検討し、その臨床的意義について考
察する。【対象と方法】2009 年 4 月から 2013 年 12 月に当院で治療を施行した
HER2 陽性進行・再発乳癌 37 症例のうち、上記条件を満たした 10 例。併用し
た化学療法、治療 line、完全奏効までの期間、T 単独療法の無増悪期間を調査
した。【結果】年齢中央値 60 才(36 ~ 69 才)、Stage4:5 例 / 再発乳癌:5 例、
HER2 enriched:6 例 / luminal B:4 例、治療 line の中央値 1(1 ~ 6)で 1 例
を除いて全て 1st line であった。6th line の 1 例は直前の治療が capecitabine
と lapatinib の併用療法であった。T との併用化学療法は paclitaxel が 8 例、
vinorelbine が 2 例であった。完全奏効までの期間の中央値は 3 ヵ月(2 ~ 7 ヵ
月)、化学療法併用期間の中央値は 5 ヵ月(5 ~ 7 ヵ月)、T 単独療法の無増悪
生存期間の中央値は 18 ヵ月(5 ~ 49 ヵ月)であった。化学療法を含めた無増
悪期間の中央値は 23 ヵ月(11 ~ 54 ヵ月)であった。【考察】化学療法と T 併
用療法で完全奏効後に T 単独療法へ移行した症例は、T 単独療法によって非常
に長期間病状をコントロールすることができていた。完全奏効後の T 単独療
法は有用な治療選択肢となる可能性があるので、実臨床でのさらなる症例集
積による解析、もしくは前向きコホート研究、あるいは無作為化比較臨床試
験による検証が望まれる。
10620
10425
HER 陽性乳癌におけるホルモン受容体発現別にみた分子標的薬
を含む薬物療法の有効性についての検討
術 後 ト ラ ス ツ ズ マ ブ 投 与 を 受 け て い る HER2 陽 性 症 例 で の
pHER3 とトラスツズマブ直接ラベル法免疫染色の検討
DP-2-021-03
1
DP-2-021-04
北海道がんセンター 乳腺外科、2 北海道がんセンター 病理部
1
馬場 基 1、萩尾 加奈子 1、富岡 伸元 1、佐藤 雅子 1、渡邊 健一 1、
山城 勝重 2、高橋 將人 1
川崎医科大学 病理学 2、2 川崎医科大学 乳腺甲状腺外科学
鹿股 直樹 1、紅林 淳一 2、森谷 卓也 1
【背景】HER2 陽性乳癌は乳癌の約 20-25% を占める。トラスツズマブ ( 以下
Tr) 登場により劇的な予後改善を認め、新たな分子標的薬により更なる改善が
期待されている一方で、ホルモン受容体発現の違いによる分子機構を踏まえ
た治療選択が新たな課題となっている。【対象】2003 年 1 月から 2012 年 12 月
の間に当科で手術を施行し、浸潤性乳癌と病理学的に診断された HER2 陽性
症例 267 例 (StageIV 症例除く ) を対象とした。【方法】無再発生存期間、初再
発部位、再発後生存期間等を観察項目とした。1)2008 年 2 月以降浸潤径 1cm
以上の症例に抗 HER2 療法を行っていることから、2008 年 2 月を境に前群
後群に区切り、かつ 2)ER 陽性 HER2 陽性;Luminal-HER2 群 ( 以下 Luminal
群 ) および ER 陰性 HER2 陽性;HER2enriched 群 (enrich 群 ) の 2 群に分ける
ことで、全体を 4 群に分けてトラスツズマブ使用歴の有無を基に比較検討を
行った。【結果】年齢(中央値)は 55.2(26-86) 歳、臨床病期は Stage0:24 例、
StageI:67 例、StageII:130 例、StageIII:48 例だった。Luminal 群は 112 例、
enrich 群は 155 例であった。抗 HER2 薬使用歴は、Luminal 群は全体 65 例
/112 例 (58.0%);前群 4 例、後群 61 例に対し、enrich 群は全例 68 例 /155
例 (43.9%);前群 16 例、後群 52 例であった。未使用理由は浸潤径 10mm 未
満、心不全、高齢であった。例補助薬物療法は計 238 例に施行され、うち 69
例が術前薬物療法症例で , 非浸潤病変遺残を含めた全 pCR は 29 例 (42.0%)
で、Luminal 群 pCR は、 前 群 1 例 /6 例 (16.7%)・ 後 群 14 例 /28 例 (50.0%)
に対し、,enrich 群 pCR は、前群 3 例 /17 例 (17.6%)・後群 11 例 /18 例 (61.1%)
であった。術後平均観察期間 ( 中央値 ) は 61.0 ヵ月で、再発症例は全 37 例
(13.8%)に 認 め、Luminal 群 は、 前 群 5 例 /34 例 (14.7%)・ 後 群 3 例 /78
例 (3.8%) に 対 し、enrich 群 は 前 群 19 例 /93 例 (20.4%)・ 後 群 10 例 /62 例
(16.1%) であった。初再発部位の特徴は luminal 群では、前群は肺・肝 3 例ず
つ認め、後群は骨・肺・肝 1 例ずつに認めたのに対し、enrich 群は、前群は骨・
肺 7 例ずつ・縦隔 5 例と多く、後群は領域 LN、皮膚・肝・骨・脳と認めたが
差はなかった。再発後生存期間 ( 中央値 ) は全体 29.0 ヵ月であり、Luminal群では Tr 使用群 40.7 ヵ月、Tr 未使用群 41.9 ヵ月に対し、enrich 群では Tr 使
用群 20.2 ヵ月、Tr 未使用群 54.0 ヵ月であったが、Tr 使用群は観察期間がよ
り短期間であったためと推察された。【結語】抗 HER2 療法が標準化された後
の再発率は大きな改善傾向を認められた。
【目的】HER2 陽性乳癌症例に対しては,術後にトラスツズマブ投与が行われ
るのが一般的となってきた。しかし,約 20%の症例は,適切なトラスツズ
マブ投与にもかかわらず術後 5 年以内に再発する。こういったトラスツズマ
ブに耐性を示す症例を認識することによって,新たな治療法の開発を目指
す。【方法】2005 年~ 2010 年に手術が施行された HER2 陽性乳癌症例 87 例
を用いた。代表的なパラフィンブロックを抽出し,薄切切片を作成し免疫染
色 を 施 行 し た。HER1,pHER2,HER3,pHER3,HER4,p53 に 対 す る 免
疫染色,およびトラスツズマブに FITC を直接標識し免疫染色を施行した。こ
れらの結果を既に得ている Hercept test やホルモン受容体,pTNM 等のデー
タと合わせ解析を施行した。
【結果】観察期間中に 8 例で再発が認められた。
骨転移が 5 例,肝転移が 3 例,局所リンパ節が 2 例,肺転移が 2 例,胸膜転
移・局所の皮膚再発・脳転移が各々 1 例ずつであった ( 重複あり )。死亡例
はなかった。無病生存率の Cox 単変量解析において,年齢 (p=0.9029),腫
瘍 径 (p=0.2725), リ ン パ 節 転 移 (p=0.9194), 核 グ レ ー ド (p=0.4767),
ER(p=0.7181),PgR(p=0.9307),Hercept test(p=0.1263),Ki67 LI(p=0.5330),HER1(p=0.6079),pHER2(p=0.0861),
HER3(p=0.3780),HER4(p=0.4608),p53(p=0.1023), ト ラ ス ツ ズ マ
ブ FITC 直接標識法 (p=0.9005) は各々有意差を示さなかったが,pHER3 は
p=0.0257,
HR=5.586 (95% CI:1.232 ~ 25.320) と有意差を示した。
【考察】
pHER3 高発現は,トラスツズマブ耐性のマーカーになり得るものと思われる。
このため,pHER3 高発現症例では,術後にトラスツズマブ以外の HER3 をも
阻害する薬剤の追加投与等を考慮すべきと考える。
288
ポスターディスカッション
10151
10828
Paclitaxel followed FEC75 に trastuzumab を併用投与す
る ACOSOG Z1041 レジメンの検討~心毒性を中心に~
化学療法の副作用に対する鍼治療- Paclitaxel 誘発性末梢神経
障害に対して-
DP-2-021-05
DP-2-021-06
1
大阪大学大学院 生体機能補完医学、2 明治国際医療大学 臨床鍼灸学、
九州看護福祉大学、4 大阪ブレストクリニック、
5
大阪大学大学院医学系研究科 乳腺・内分泌外科、
6
京都府立医科大学大学院 内分泌・乳腺外科
姫路赤十字病院
3
佐々木 陽子、下島 礼子、大塚 翔子、渡辺 直樹
福田 文彦 1,2、久保 春子 1,2,3、櫛引 絵美 1、石崎 直人 1,2、廣瀬 富紀子 4、
徳島 裕子 4、住吉 一浩 4、井口 千景 4、小池 健太 4、山本 仁 4、
丸山 尚美 5、田口 哲也 6、玉木 康博 5、芝 英一 4、野口 眞三郎 5、
伊藤 壽記 1
【背景】Paclitaxel(PTX) は、高頻度に末梢神経障害(しびれ)を生じるが、確立
された治療法はない。我々は、化学療法により誘発された下肢末梢神経障害
に対して補完・支持療法として鍼治療を行い、その安全性と有効性について
報告してきた。【目的】研究 1:PTX により誘発された下肢末梢神経障害に対し
て鍼治療を行い、その効果及び軽減群、不変群の患者背景を検討した。研究 2:
PTX 初回投与時から鍼治療を介入することが、下肢末梢神経障害を予防でき
るか否かについて検討した。【方法】研究 1:PTX 誘発性の下肢末梢神経障害
を有する乳癌患者 (n=15) を対象とした。研究 2:weekly-PTX(12 週 ) を行う
乳癌患者に対して経過観察を行う群 ( 対照群、n=16)、ならびに初回投与時か
ら介入する鍼治療群 (n=28) を対象とした。鍼治療:下腿外側 ( 陽陵泉 GB34
-懸鍾 GB39)、下腿内側 ( 陰陵泉 SP9 -三陰交 SP6) に低周波鍼通電療法、足
背 ( 太衝 LR3) へ行った。評価:末梢神経障害 ( しびれ ) の自覚症状は、Visual
Analogue Scale(VAS)、 感 覚 閾 値 は、Semmes-Weinstein Monofilament
Test(SWMT)、QOL は、M.D. Anderson Symptom Inventory(MDASI) を行っ
た。
【結果】研究 1:鍼治療により自覚症状 (VAS) は、60 ± 6.2 が 38 ± 8.9(mean
± S.E.) へ有意に改善した。改善群では、年齢が若い傾向(p=0.064)、NCI -
CTCAE の Grade が低い傾向 (p=0.063) が認められた。研究 2:自覚症状 (VAS)
は、対照群 (0mm が 45 ± 9.1mm)、鍼治療群 (0mm が 24 ± 4.9mm) と両群
間に有意差 (p=0.011) が認められた。感覚閾値 (SWMT) も両群間に有意差
(p=0.004) が認められた。支持療法は、両群とも牛車腎気丸、ビタミン B6 剤
が投与されたが、鍼治療群での追加投与は認められなかった。【考察・結語】
PTX 誘発性の下肢末梢神経障害に対する鍼治療は、症状軽減、増悪抑制 ( 予
防 ) に効果を示し、早期からの介入が効果的であることが明らかとなった。有
効な治療法がなく、しびれや疼痛のために化学療法薬の減量や変更、中止を
余儀なくされる例は少なくない PTX 誘発性の末梢神経障害に対する鍼治療は、
有効な補完・支持療法であることが示唆された。
10582
10784
MR ガイド下集束超音波手術による次世代乳癌局所治療への挑
戦
原発乳癌に対しての非切除凍結療法(cryoablation)の現在ま
での治療成績と今後の展望
DP-2-022-01
1
2
DP-2-022-02
ブレストピアなんば病院 乳房腫瘍外科、
ブレストピアなんば病院 放射線診断科
亀田総合病院 乳腺科
寺岡 晃、中川 梨恵、佐川 倫子、池田 奈央子、山城 典恵、角田 ゆう子、
坂本 尚美、坂本 正明、戸崎 光宏、福間 英祐、沖永 昌悟、鈴木 貴子、
中島 裕一、浅野 裕子
古澤 秀実 1、志戸岡 純一 2、平原 恵美子 1、猪股 益子 1、山口 由紀子 1、
中原 浩 2、山本 隆 1
【背景】「乳房内に viable cancer を残さない」との前提において,局所治療の
方法が患者の予後を規定することはない.一方,従来から癌巣を 60℃以上に
できれば数秒で熱凝固できること,高出力超音波を高密度で集束させると高
い熱エネルギーが得られることが明らかとなっている.さらに,乳癌の画像
診断において,最もすぐれた空間分解を有するのは造影 MRI であり,位相変
化感知能は組織温度計としての利用が可能である.これらの原理を融合,応
用した MR ガイド下集束超音波手術(MRgFUS)による乳癌局所治療の可能性
を求めて,2004 年より臨床試験を切除から非切除へと段階的に進めてきた.
【目的】MRgFUS が次世代の標準的局所治療の選択肢のひとつとなり得るかの
検証および克服すべき課題と解決への展望の検討.【方法】5 年局所再発率を
primary endpoint とした非切除臨床試験(MRgFUS + 放射線療法 RT)の解
析.(適応基準)受容体状況が判明し,pN0 で造影 MRI 上限局した 15mm 以下
の腫瘤.(除外基準)術前化学療法施行例.純型粘液癌.コンピュータによる
術前治療シミュレーションを元にした治療チームの判断.MRgFUS 後,針生
検にて viable cancer の遺残のないことを確認し,通常温存療法と同様の RT
を行う.MRI, マンモグラフィ,超音波にて経過観察.【結果】登録 80 例 , 除
外 13 例で,67 例に一連の局所治療を完遂し,経過観察した.年齢中央値 57
歳(29-79),最大腫瘍径中央値 11.0mm(5-15),平均超音波照射回数 40 回
(16-96), 平均治療時間 126 分(41-246)で,観察期間中央値は 67 ヵ月(295),60 ヶ月以上観察した症例が 34 例,24 ヵ月以上は 55 例で,局所再発,
遠隔再発および重篤な有害事象の経験はない.selection bias はあるが,同時
期に wide excision を行った 549 例の平均手術時間は,
63 分
(26 - 203)
であっ
た.MRgFUS による治療の律速段階は,照射時間の 2 倍を要する熱傷回避の
ための冷却時間であった.電子化保存された治療記録を見直すと,より低い
照射音響エネルギーでも癌巣での温度上昇は充分であった.【結論】症例を厳
選すれば MRgFUS(+RT) は,局所制御効果において乳房温存療法 (BCS+RT)
と同等である可能性が示唆され,整容性は温存手術に優る.MRgFUS が標準
的局所治療の選択肢となるためには治療時間の短縮が課題であるが,現在よ
り低い音響エネルギーでも治療効果を担保できる可能性は高く,症例に応じ
た至適音響エネルギーの探索が急務である.
【背景と目的】現在 oncoplastic surgery の概念が急速に広がり、治療の効果
だけではなく整容性を保持した病巣の制御が試みられている。一般的外科手
術以外に、ラジオ波熱凝固療法 (RFA)、超音波集束療法 (FUS) そして凍結療法
(cryoablation) という手技選択が行われるようになり、近年では重粒子線治
療の試みも始まっている。当院では 2006 年 6 月より凍結療法(cryoablation)
を導入し治療を行ってきたので、現在までの原発乳癌に対しての非切除凍結
療法(cryoablation)の治療成績に関して報告と検討を行うとともに、今後の
展望を報告する。
【対象と方法】2006 年 6 月から 2013 年 11 月までに当院で凍結療法施行基準を
満たし非切除凍結療法(cryoablation)を施行した原発性乳癌 69 症例の中で、
外来にて経過観察が行えている 68 例を対象とした。当院での凍結療法基準と
しては(1)施行前の画像評価の超音波または MRI での腫瘍径が 15mm 以下
( 平成 23 年までは 10mm 以下 )(2)ホルモン陽性 HER2 陰性乳癌(3)浸潤性
小葉癌は除く(4)施行後に内分泌療法と乳房放射線治療が行えること を基
準とした。これらの凍結療法施行基準を満たさない症例、Fibroadenoma 等
の良性病変に対して施行した症例は該当より除外し、再発の有無に関しては
定期的に外来にて視触診所見、血液検査、画像検査を施行していることを条
件とし検討した。
【結果】対象の非切除凍結療法施行時の年齢中央値 58 歳(34 - 82 歳)、平均観
察中央値 40 ヶ月(1 - 91)。生検病理診断は DCIS24 例(35%)、浸潤性乳管
癌 44 例(64%)、特殊型 2 例 (2% )。現在までの所全例で局所再発、遠隔転移
は認められていない。対象症例からは外れているが、術後放射線加療を施行
していない症例、HER2 陽性乳癌に関しても現在までの再発、転移所見は認め
られていない。
【結論】原発乳癌の中で凍結療法施行基準を満たす症例に対して非切除凍結療
法を施行した。現在までの所、全症例で局所再発、遠隔転移は認めていない。
今後の更なるデータの集積は必要であるが、症例を厳選することにより原発
乳癌に対しての非切除凍結療法が通常手術の代替として行える可能性が高い。
289
一般セッション(ポスターディスカッション)
【 は じ め に 】Buzdar ら に よ っ て 2005 年 に 報 告 さ れ た 術 前 化 学 治 療 の た め
の レ ジ メ ン q1w paclitaxel(P) + q1w Trastuzumab(H) → q3w 5FU +
Epirubicin + cyclophosphamide (FEC)75 + H は Anthracycline(E) と H を
同時併用投与するもので、その意味において NCCN 推奨レジメンの中では
ユニークである。そして心毒性の面から、投与に関して注意が喚起されてい
る。しかしこのレジメンは、NAC では 6 か月投与期間すべて H が投与される。
また化療期間の Total が 1 年と短くなるなどさまざまな利点がある。【対象と
方法】2010 年 10 月から現在までこのレジメンで治療された 52 例 (ER+ 29
例 , ER- 23 例 ) に関して、化療前、PH 後、化療後、さらに 1 年後の 4 点で心
臓 US 検査による心機能評価を行い、同時期に行われた P → FEC100 の 46 症
例と比較検討を行った。【結果】最終的に PH → FEC75H 群での pCR(Grade 3
+ 3(n))率は 55.5%であった。副作用による Grade 3 以上の NE 減少による
Dose down は 2 例(P → FEC100 では 7 例)で必要であった。化療終了前後の
PH → FEC75H 群 の EF は 63.2 → 60.7(%) と、P → FEC100 群 の 63.2 → 62.4
と比較して下降率が不良であった。しかし 1 年後には 61.0%(P → FEC100
群 61.6%)とほぼ同様なレベルに回復した。化学治療施行中で見たところ、
EF の下降はむしろ PH 期間中に強く、FEC75H 期間中にはむしろ回復するデー
タが示された。上記 52 例とは別に、脱落群として PH 期間前後に心機能異常(EF
10%以上の低下)で中止となった 3 例を経験した。完遂可能であった群では、
嘔気、嘔吐、好中球減少などの AE は PH → FEC75H 群でむしろ軽く、1 年の
経過期間中臨床的に問題となる心毒性は経験されなかった。【結果】ACOSOG
Z1041 での報告通り PH → FEC75H は E に H を同時並行投与するレジメンでは
あるが、このことによる危惧された心毒性は観察されず、安全に施行できた。
心不全の潜在性の高危険群は PH を先行させることによりスクリーニングでき
る可能性が示唆された。
ポスターディスカッション
10866
10272
3D-CT リンパ管造影と SPECT 合成画像の内視鏡手術映像への
投影
乳癌に併発する肺結節性病変に対して切除手術を施行した症例
の検討
DP-2-022-03
DP-2-022-04
日本医科大学 乳腺外科
大津市民病院 外科
山下 浩二、岩本 美樹、栗田 智子、柳原 恵子、飯田 信也、武井 寛幸
洲崎 聡、矢内 勢司、橘 強、中右 雅之、柳橋 健
一般セッション(ポスターディスカッション)
【背景】3D-CT 乳腺リンパ管造影 (LG) により、乳房からのリンパ流を精細に描
出し、正確なセンチネルリンパ節 (SN) を同定することが可能となり、内視鏡
的 SN 生検を容易にした。また、第 2・第 3SN もリンパ系マップ上に同定でき、
SN 転移陽性例の腋窩郭清省略に貢献できる。今回、SPECT 合成画像を内視鏡
画像へ投影することを試み、さらに術中の内視鏡下リアルタイムナビゲーショ
ンの可能性を検討した。【方法】3D-CT LG は、イオパミロン 300 を各 2 ml、
腫瘍直上と乳輪縁に注射し、1 分後に 16 列 MD-CT にて撮影し、リンパ管とリ
ンパ節を 3D 再構築した。SN として同定された部分を体表皮膚にマーキング
した。手術前日、99mTc フチン酸 74MBq を腫瘍上と乳輪縁に注射し、2 時間
後に SPECT を撮影し 3D-CT LG と合成する。SN 生検は色素法との併用法で、
マーキング位置に皮切 1 cm でビジポートを使用し、内視鏡下に色素と RI カ
ウントで確認し、SN を採取した。その際の内視鏡画像に SPECT 合成像を投
影した。また、Free-hand SPECT system との同期を試みた。SN 転移陰性
は腋窩温存し、SN 陽性は第 2・第 3SN 生検と鏡視下バックアップ腋窩郭清を
行った。【結果】内視鏡的 SN 生検を 350 例中に施行し、平均摘出個数 2.2 個、
SN 陽性は 80 例であった。内 SN のみ 32 例、第 2 まで 8 例、第 3 まで 7 例であっ
た。腋窩内リンパ系マップにおける解剖学的位置を RI プローブで手術中に容
易に同定でき、内視鏡画像に投影することにより、内視鏡の進入方向を誘導
できた。さらに、第 2・第 3SN への内視鏡到達も容易になり、生検が可能となっ
た。第 2・第 3SN に転移がなければ、全例 SN のみの転移であり、腋窩温存が
可能と判断された。偽陰性なし。内視鏡的 SN 生検は、腋窩操作が少なく低侵
襲かつ整容性が高く、術後最大 10 年経過で腋窩再発なし。【考察】内視鏡画像
への 3D-CT LG 投影は、SN 同定率を向上させるが、内視鏡操作の動作との同
期が有効である。さらに、リアルタイムナビゲーションにより内視鏡操作を
遙かに向上出来ると考え、乳腺部分切除への応用も視野に入れ、画像処理技
術を改良中である。
【結語】3D-CT LG は、詳細なリンパ経路を評価できるので、
内視鏡画像との同期により、術中探索が容易となり、低侵襲で、腋窩温存の
指標として有用である。
乳癌の遠隔転移に対する外科的切除は、2013 年ガイドラインでは推奨グレー
ド C2 であるが、肺の oligo-metastasis のみの場合は肺切除が長期生存をもた
らす可能性も示唆されており、診断と治療を兼ねた切除は考慮されるとも記
載されている。今回、乳癌に併発する肺結節性病変に対して切除手術を施行
した症例について検討を行った。【対象】2004 年 4 月から 2013 年 11 月の間
に、乳癌経過中に認めた肺結節性病変に対して当院で肺切除術 (VATS) を施行
した 12 例。2 例は乳癌診断時より肺病変を認めていた。肺切除術時に他病変
は全例で認めていない。【結果】初回治療時年齢中央値 58.5(34~69)歳。病
期 I は 2 例、II が 9 例、III が 1 例。サブタイプは luminal type10 例(HER2 陽
性 1 例)、TN1 例、不明 1 例。初回治療から肺病変発見までの期間は中央値
61.7(0~233)ヶ月。肺切除までの経過観察期間は中央値 6.4(1~58.1)ヶ月
で、診断当初より肺病変を認めていた 1 例以外全例で画像(CT)での病変増大
を契機に手術となっている。肺切除時年齢中央値 63.5(52~69)歳、PS は全
例 0。転移 8 例、原発性肺癌 3 例、良性 1 例であった。転移症例 8 例中 2 例で
HER2 陰性→陽性に変化を認め、術後分子標的療法を施行されている。ホルモ
ン受容体が変化した症例はみられなかった。転移症例の肺切除後観察期間は
中央値 56.4(4.3~89.2)ヶ月。肺切除後 DFI は中央値 34.5(4.3~89.2)ヶ月
で、2 例が現病死(肺切除後 56 ヶ月、62.4 ヶ月)、1 例に骨転移が出現、5 例
が無再発生存中である。【考察】今回の検討では、安全に VATS 可能な症例が
対象ではあるが、これらの症例おいては良好な経過が認められた。肺の小病
変は画像上原発性肺癌との鑑別が困難である場合が多く、また転移巣でのバ
イオロジーの変化がみられることもある。切除により確定診断がつけば薬物
療法の選択に有用であるし、原発性肺癌の場合には早期治療となる。乳癌経
過中に認める孤立性の肺結節性病変に対しての外科的切除 (VATS) は、患者条
件に応じて積極的に考慮すべきと考える。
11227
10640
乳癌肺転移切除例の予後予測因子の検討 Oligometastases と
乳癌幹細胞
ホルモン受容体陽性乳癌における術後再発時期の検討
DP-2-022-05
DP-2-022-06
1
東京慈恵会医科大学 乳腺内分泌外科、2 東京慈恵会医科大学 病院病理部、
3
東京慈恵会医科大学 腫瘍・血液内科
三本 麗 1、井廻 良美 1、神尾 麻紀子 1、加藤 久美子 1、野木 裕子 1、
鳥海 弥寿雄 1、廣岡 信一 2、小林 直 3、内田 賢 1、武山 浩 1
【背景】乳癌の転移巣切除の予後に対する意義は前向きランダム化比較試験が
困難なため、未だ議論されている問題である。【目的】当院で乳癌肺転移巣切
除を施行した症例を再評価し、全生存期間 (OS)、無増悪生存期間 (PFI) に関
する予後予測因子を明らかにする。【対象・方法】2004 年から 2011 年に乳癌
の肺転移巣切除を施行した 17 例(手術時疑い症例を含む)。転移巣の切除は全
例鏡視下で行われた。OM(Oligometastases) の定義は 2 個以下の転移臓器、
1 臓器あたり転移巣 5 個以下、転移巣最大腫瘍径 5 cm以下の全条件を満たす
例とした。乳癌幹細胞は、二重免疫染色にて CD24( - ) かつ CD44( + ) とした。
【結果】乳癌初回手術時の組織型は浸潤性乳管癌 15 例、粘液癌 1 例、悪性葉状
腫瘍 1 例であった。DFI(Disease Free Interval) 中央値は 81 ヶ月。肺転移発
見後 17 例中 4 例は転移巣切除前に化学療法施行し、1 例 pCR となった。術後
療法として 10 例が化学療法を、11 例がホルモン療法を、2 例が抗 HER2 療法
を施行した(重複例あり)。全症例の 2 年 OS は 87%、2 年 PFI は 64%、OS 中
央値は 65 ヶ月、PFI 中央値は 39 ヶ月であった。年齢、転移巣完全切除、原
発巣の ER、HER2、DFI、単一病変、転移巣切除前の化学療法、OM の8つの
因子について単変量解析を行った。PFI の予後因子として、ER 陽性、DFI 8 年、
OM が、OS の予後因子として、OM が同定された。更に、OM と non-OM の
乳癌幹細胞の存在比率は 9% vs 73% と OM では有意に比率が少なかった。存
在比率 10%をカットオフとして比較すると、10% 未満の症例では 10%以上
の症例と比較して有意に PFI が長かった(PFS 69 ヶ月 vs 15.3 ヶ月)。【考察】
DFI やホルモン受容体陽性に加え、OM が予後に関与することが示された。乳
癌の OM については化学療法や局所療法を用いることで長期予後が得られる
ことが報告されている。Tumor burden が少ない転移性乳癌の予後良好な理
由としては、OM に内在する腫瘍生物学的因子が必ず存在すると推測しており、
その一つとして乳癌幹細胞の存在が関与している可能性が示唆された。
290
東京女子医大東医療センター 乳腺科
服部 晃典、平野 明、小倉 薫、井上 寛章、阪口 志帆、上村 万里、
大久保 文恵、木下 淳、中安 靖代、清水 忠夫
ホルモン受容体 (HR) 陽性乳癌は術後 6 年目以降の再発も稀ではなく,再発の
ハザード比は術後 5 年以内と 6 年目以降でほぼ等しいともいわれている (ATAC
trial).現在、術後ホルモン療法は 5 年間投与が標準治療とされているが,10
年投与の方が再発、死亡リスクが減少するという報告 (ATLAS) もあり注目さ
れている.今回,当院の HR 陽性乳癌手術症例における術後の再発時期および
予後について検討を行った.( 対象・方法 ) 対象は 1993 年~ 2012 年に再発
を認めた HR 陽性乳癌 217 例.同期間の HR 陰性再発乳癌 106 例を対照とし、
腫瘍径,リンパ節転移および再発時期 ( 術後 5 年以内を早期再発,6 年目以降
を晩期再発 ) の検討を行った.また再発後の生存率についても各因子と比較し
た.( 結果 ) 平均年齢;HR 陽性 52.4 歳,陰性 55.6 歳,平均観察期間;HR 陽
性 93.0 か月,HR 陰性 59.9 か月.晩期再発は HR 陽性 73 例 (33.6%),HR 陰
性 13 例 (12.3%),HR 陽性で晩期再発が HR 陰性で早期再発が有意に多かっ
た (p < 0.0001).HR 陽性について再発時期と腫瘍径 (2.0cm 以下 /2.1cm 以
上 ) でみると再発時期に差は認めなかった.また,リンパ節転移の有無でみる
と,転移陽性 29 例 (26.1%),転移陰性 45 例 (42.5%) が晩期再発で,転移陽
性で早期再発が転移陰性で晩期再発が有意に多かった (p=0.0112).再発後の
生存期間を比較すると,HR 陽性の中央値 56.6 か月,HR 陰性の中央値 30.2
か月(ハザード比 2.02,p=0.0006)で HR 陽性が有意に良好であった.さらに、
HR 陽性について再発時期で比較すると早期再発 52.8 か月,晩期再発 60.9 か
月(ハザード比 1.80,p=0.0111)で晩期再発が有意に良好であった.腫瘍径
別では,2.0cm 以下(ハザード比 4.17,p=0.0041)で、リンパ節転移の有無
では,転移陰性(ハザード比 2.14,p=0.0237)で晩期再発が有意に良好であっ
た。また、多変量解析 ( 腫瘍径,リンパ節転移の有無,早期 / 晩期再発 ) では
早期 / 晩期再発においてハザード比 1.76,p=0.0117 と有意差を認めた.( 考
察 ) 諸家の報告通り HR 陽性乳癌において 6 年目以降の再発が多く、早期再発
に比べ予後良好であるという結果であった.ホルモン療法を 10 年に延長する
目安については議論があるが,その一つとして再発リスクの高いリンパ節転
移陽性が条件に挙げられる.しかし今回の検討からは HR 陽性乳癌の再発はむ
しろリンパ節転移陰性の晩期再発が多く,リンパ節転移の有無がホルモン療
法期間の延長の指標にならないことが示唆された.
ポスターディスカッション
11756
11960
当院における DIEP 皮弁による乳房再建の成績
遊離皮弁を用いた乳房再建における second recipient vein と
しての逆行性内胸静脈の有効性
DP-2-023-01
DP-2-023-02
1
国立がん研究センター東病院 形成外科、
2
国立がん研究センター中央病院 形成外科、
3
国立がん研究センター東病院 乳腺外科、
4
国立がん研究センター中央病院 乳腺外科
1
2
櫻庭 実 1、宮本 慎平 2、茅野 修史 2、藤木 政英 1、大島 梓 1、和田 徳昭 3、
木下 貴之 4
菅原 順 1、佐武 利彦 1、竹澤 優佳 1、黒田 真由 1、渋谷 麻衣 1、黄 聖琥 1、
安村 和則 1、石川 孝 1、前川 二郎 2
(はじめに)乳癌切除後の遊離皮弁を用いた 2 次乳房再建ではリンパ節廓清時
に腋窩の血管が損傷している可能性や瘢痕による術後血管トラブルを考慮
し、吻合血管に内胸動静脈が用いられる事が多い。ただ内胸静脈の走行に
はいくつかのバリエーションがあり、2本の静脈を確保できないことがあ
る。近年、内胸静脈には弁がないことが指摘されており、逆行性内胸静脈を
second recipient vein に用いる報告が散見される。われわれも遊離皮弁を用
いた乳房再建で ICG を用いて吻合部の血流評価に行っているが、逆行性内胸
静脈を second recipient vein として用いた症例ではこれまでの報告とは異な
る所見を得た。また同時期に順行性内胸静脈に2本吻合した症例と術中の血
管吻合回数、術後血栓の有無、皮弁の生着率、脂肪壊死に関して比較検討を
行ったので合わせて報告する。(対象・方法)2010 年 6 月~ 2013 年 11 月に
recipient vessel に内胸動静脈を用いて遊離皮弁による乳房再建を施行し、さ
らに静脈吻合を 2 本施行した 109 症例を対象とした。静脈を 2 本とも順行性に
吻合した A 郡と second recipient vein に逆行性内胸静脈を用いた B 郡に分け
比較検討を行った。対象症例は A 郡 55 例、B 郡 54 例であった。今回 second
recipient vein に逆行性内胸静脈を用いた B 郡の中で、術中に近赤外線を用い
て血流評価を行っていたのは 40 症例であった。逆行性内胸静脈への血流評価
は、吻合部で ICG 染色を確認できれば stain( + )、逆行性内胸静脈へのスムー
ズな血流を確認できれば flow( + ) とした。また A、B 郡間の比較では、患者
背景、術中血管吻合の回数、術後静脈血栓の有無、皮弁の生着率、脂肪壊死
に関して比較検討した。(結果)A 群の平均年齢 48.8 歳 (21 ~ 70 歳 )、B 群で
は 49.9 歳 (38 ~ 70 歳 ) であった。また両群間の患者データには明らかな優位
差は認めなかった。逆行性内胸静脈への血流は、全例で吻合部に stain を認め
たが、flow( + ) であったのは 40 例中 29 例のみであり 72.5%であった。術中
の血管再吻合、術後血栓の有無、皮弁の生着率、脂肪壊死に関しては両群間
に明らかな優位差はなかった。(考察)一方で、今回の検討のように術後に近
い状況では約 72.5%にのみに逆行性に血流があることがわかった。ただこれ
までの報告から順行性内胸静脈の血栓が生じた際に、逆行性内胸静脈内に血
栓が生じていなければバックアップとして機能している可能性があると思わ
れる。
11063
11853
インプラントを入れるだけで綺麗に再建できるのか? ―乳房切
除術の違いによる問題と対策
演題取り下げ
DP-2-023-03
1
2
DP-2-023-04
がん・感染症センター都立駒込病院 形成再建外科、
東京慈恵会医科大学 形成外科
寺尾 保信 1、冨田 祥一 2、谷口 浩一郎 2
【目的】乳房インプラントの保険収載により再建を前提とした乳房切除術の
増加が予測され、術後の乳房形態は患者と再建外科医だけの関心ごとではな
く、乳癌治療の中で評価されることになると思われる。インプラントで再建
する場合、術後形態は乳房切除術の影響を大きく受けるが、乳房切除術は症
例によって、あるいは術者によって大きく異なるのが現状である。乳腺周囲
の組織を切除するだけのものもあれば鎖骨下から乳房下溝を超える範囲で積
極的に切除するものもあり、後者ではインプラントで綺麗な乳房を再建する
のが困難となる。切除範囲の議論は乳腺外科医に委ねることになるが、再建
外科医としては根治を優先して十分切除した上での再建を考えたい。鎖骨下
から乳房下溝を超えた広範囲の切除に対応するために、我々が行っている
工夫を紹介する。【方法】インプラント頭側の組織が薄いと、インプラント
上端に段差が生じ滑らかな曲線が得られない。これに対応するために、組織
拡張器からインプラントに入れ換える際に下腹部などから浅筋膜下の脂肪を
perifascial areolar tissue(PAT) とともに薄く採取し大胸筋下に移植して段
差を埋めている。PAT は毛細血管が発達した膜状の組織で、頭頸部領域など
で死腔の充填に用いられるものである。脂肪幹細胞注入を行わなくとも、生
着に有利な脂肪を生着に有利な部位に移植することで、吸収、硬化の少ない
脂肪移植が期待できる。インプラント尾側は乳房下溝を正しい位置に正しい
形態に再現することが重要である。われわれが行っている drawstring suture
法は、真皮内で乳房下溝を形成する簡便な方法で、インプラント埋入後に座
位で調節することも可能である。【結果・結論】根治と整容の両立において、
根治のためには切除を妥協せず、再建においてはインプラントを入れるだけ
のなおざりの再建で終わらないことが求められる。本法だけでは問題点を全
て解決できないが、従来インプラントでは再建が困難であった症例に対して、
特別な道具や技術を必要とせずに比較的良い結果が得られるようになった。
手技、成績、合併症を報告する。
291
一般セッション(ポスターディスカッション)
【目的】当院で腹部自家組織による乳房再建の場合、腹直筋襟帯を採取しない
進化腹壁動脈穿通枝皮弁を第一選択としている。当院における DIEP 皮弁によ
る乳房再建の安全性について報告する。【対象と方法】2005 年 1 月~ 2013 年
11 月の間に国立がん研究センター中央病院・東病院で施行した DIEP 皮弁に
よる乳房再建 160 例を対象とした。平均年齢は 49.3 歳(28 ~ 72 歳)であっ
た。うち二次再建が 14 例、一次再建が 146 例で、両側同時再建は 8 例であっ
た。術後合併症の頻度について後ろ向きに検討した。【結果】術後合併症によ
る全麻下の再手術は 7 例であった。再手術の原因は血管吻合部血栓が 4 例、術
後出血が 2 例、皮弁うっ血が 1 例であった。移植皮弁の全壊死は 1 例で、部分
壊死または脂肪壊死は 13 例で認められた。部分壊死の 1 例では移植組織の著
明な吸収を認め、後日再度乳房再建術を行った。その他の合併症として乳切
の際に温存した胸部皮膚の壊死を 10 例で認めた。【考察】遊離皮弁による乳房
再建では、人工物による再建に比して自然な動きのある乳房形態が得られる
が、血管吻合のトラブルによる皮弁壊死のリスクは避けられない。今回の検
討では吻合部血栓の発生率は 2.5%、血栓による皮弁の全壊死発生率は 0.6%
であった。同時期に当院で行われた遊離皮弁による頭頸部再建の全壊死発生
率は 2.8% であり、DIEP 皮弁による乳房再建は安全な術式であると考えられ
る。一方移植皮弁の部分壊死や脂肪壊死、胸部皮膚壊死は比較的多くの症例
で認められ、組織の血流を正確に把握して対処するなどの工夫が必要と思わ
れた。
横浜市立大学附属市民総合医療センター 形成外科、
横浜市立大学附属病院 形成外科
ポスターディスカッション
11047
11229
当院における乳腺全摘術後の一次的乳房再建症例の検討
乳房再建における広背筋採取後肩関節運動についての前向き追
跡研究
DP-2-023-05
1
DP-2-023-06
大阪大学医学部 形成外科、2 佐賀大学医学部 形成外科
1
宮坂 美和子 1、矢野 健二 1、冨田 興一 1、細川 亙 1、菊池 守 2
一般セッション(ポスターディスカッション)
目的:乳房切除後の一次的乳房再建は、近年増加傾向にあるが、術後治療や
転移再発への影響を考えると、適応症例は慎重に議論される必要がある。乳
腺全摘術は乳輪乳頭を温存する Nipple-sparing mastectomy(NSM) と乳輪乳
頭を含めて切除する Skin-sparing mastectomy(SSM) に大別される。今回、
当院における NSM、SSM 後の一次的乳房再建症例について比較検討を行った
ので報告する。方法:当院で 2001 年 1 月から 2013 年 8 月までに施行された
NSM 後の一次的乳房再建症例 110 例 , SSM 後の一次的乳房再建症例 176 例
について乳癌 stage、再建方法、合併症、補助療法、再発、転移等について
比較検討した。結果:患者はすべて片側乳癌、平均年齢は NSM 群で 44.5 歳、
SSM 群で 45.0 歳であった。再建法は NSM 群では広背筋皮弁:44 例、深下腹
壁動脈穿通枝皮弁:18 例、エキスパンダー:48 例であり、SSM 群は広背筋
皮弁:66 例、深下腹壁動脈穿通枝皮弁:52 例、エキスパンダー:45 例であっ
た。局所再発は NSM 群において 4 例(3.64%)認めたが乳輪乳頭部への再発は
なかった。SSM 群は 7 例 (3.97% ) の局所再発を認めた。考察:NSM は、乳
輪乳頭を含む本来の乳房皮膚が温存されるため整容性に優れた乳癌術式とい
える。術後の転移再発のフォローは乳腺外科にて行われていたが、再発の発
見はすべて視触診や超音波検査で、再建により再発の発見が困難になること
はなかった。各群で乳癌 stage などに違いはあるが、今回の結果から NSM 群
は SSM 群と比較しても局所再発率は変わりなく慎重に適応を考慮すれば NSM
後も安全な再建が可能であった。従って、NSM 後の一次的乳房再建はこれか
ら更なる検討は必要であるが整容性を兼ね備えた優れた術式であると考えら
れた。
京都府立医科大学 形成外科、2 京都府立医科大学 内分泌・乳腺外科
素輪 善弘 1、中務 克彦 2、坂口 晃一 2、藤田 佳史 2、沼尻 敏明 1、
田口 哲也 2、西野 健一 1
【目的】自家組織による乳房再建において広背筋皮弁は良好な血流を有し比較
的安全に使用できる再建材料の一つとして頻用される。また過去の報告など
の裏付けでも筋採取による脱落症状は軽微とされている。しかし、これまで
に肩関節各方向の ROM や筋力について再現性の高い客観的な手法で術後の肩
関節機能推移を追跡計測した報告は意外と少なく、そのほとんどが後向き調
査である。今回、一次一期再建に対して、広背筋皮弁再建を施行した 19 症例
について、その肩関節機能 ( 問診・ROM・筋力 ) について前向き調査を行った。
これらについて独自の新知見を得たので報告する。【方法】乳房温存一期再建
に対して、有茎広背筋皮弁再建を施行した 19 例を対象とした。術式は、皮島
がブラジャーラインに沿った長軸が横の紡錘形にデザインしたもので、筋の
停止部は完全切断し、胸背神経を温存したものに統一した。これらの症例に
対して問診、肩関節 ROM( 屈曲・伸展・内転・外転・内旋・外旋 )、筋力 ( 屈曲・
伸展・内転・外転・内旋・外旋・Bear hug) の値を、術前、術後1か月・3 か
月・6 か月の推移で評価した。筋力測定は等尺性筋力測定器を用いた。【成績】
多くの検討項目において術後 1・3 か月の時点で一旦低下し、その後時間経過
で改善していく傾向がみられた。6 か月の時点で ROM はほぼ回復し、術前に
比較して有意な低下は見られなくなった。しかし筋力については伸展・2nd
内旋・2nd 外旋・Bear hug において 5 ~ 20% の有意な低下を示し、またそ
れに起因する一部の ADL に影響がみられた。【考察・結論】今回の前向き検討
においても広背筋採取による肩関節機能に与える影響はけっして大きいもの
ではなく、過去の報告と矛盾はなかった。一方で筋力について有意に低下す
る肩関節運動も明らかとなった。以上の結果は今後、術後 ADL の具体的なイ
メージ理解や有効なリハビリ法考案の一助になると思われる。また筋体を可
能な範囲で温存するような手術法の有用性も示唆しているものと考えられた。
11563
11856
乳癌原発巣と転移・再発巣間における ER/PgR/HER2 の変化
の検討
再発乳癌における re-biopsy の臨床的有用性に対する検討
DP-2-024-01
DP-2-024-02
九州がんセンター 乳腺科
岐阜大学 腫瘍外科
秋吉 清百合、石田 真弓、厚井 裕三子、井川 明子、猿渡 彰洋、
及川 将弘、古閑 知奈美、西村 純子、中村 吉昭、大野 真司
名和 正人、二村 学、森光 華澄、森川 あけみ、兼松 昌子、吉田 和弘
【背景】近年 , 乳癌原発巣と転移巣間でのホルモンレセプターや HER2 などの
バイオマーカーの変化が着目され , 転移巣での変化に応じた薬物治療が推奨
されている . しかし , これらの変化と転移・再発病巣の部位 , 再発形式 , 再
発時期 , 薬物治療さらには予後との関連はいまだ明らかになっていない 【
. 対
象】当院で組織検査を行った乳癌の転移・再発病巣のうち、原発と転移巣の免
疫染色がともに判定可能であった 36 病変 (32 症例 ).【方法】原発巣と転移巣
での ER, PgR, HER2 の各々の一致率を転移・再発部位 , サブタイプ , 再発時
期 , 薬物療法の有無等に分けて比較検討した . また , 変化があった群となかっ
た群での PFS/OS についても検討した 【
. 結果】患者の再発時年齢中央値は 58
歳 , 再発後の観察期間中央値は 40 カ月 , 再発部位は局所 23 病変、遠隔 13 病
変だった . 各バイオマーカーの一致率は全体では ER/PGR/HER2 がそれぞれ
94.4%/86.2%/91.7% であった . 局所再発病変では ER/PgR/HER2 一致率は
それぞれ 95.7%/91.3%/100% であったのに対し , 遠隔再発病変ではそれぞ
れ 100%/84.7%/76.9% であり , 遠隔再発病変にて HER2 の一致率が低い傾
向があった . なお , 同じ遠隔再発病変であっても脳転移病変ではバイオマー
カーが変化したものはみられなかった . 今回の検討ではバイオマーカーの変化
があった群となかった群での PFS/OS については有意な差はみられなかった .
【考察】遠隔再発病変では局所再発病変に比しバイオマーカーが変化する可能
性が少なからずあるため , 治療抵抗性を示す転移・再発病変には re-biopsy が
望まれる .
【背景と目的】近年、再発乳癌におけるエストロゲン受容体(ER)
、プロゲス
テロン受容体(PgR)や HER2 の発現が、原発巣と再発巣において変化する
ことが報告されている。しかしながら、再発巣に対する re-biopsy の必要性
や、その臨床的有用性に関しては未だ議論されている。そこで、当院におけ
る再発乳癌において re-biopsy の現状を検討した。【対象と方法】2004 年か
ら 2013 年に、当院で治療した再発乳癌患者のうち、re-biopsy を施行した患
者 59 例を対象とした。原発巣と再発巣における ER、PgR、HER2 の変化と、
re-biopsy を施行したことによる治療法の変更の有無や、治療の効果と予後
を検討した。【結果】当院で治療した再発乳癌患者で、re-biopsy を施行した
患者 59 例中、原発巣における ER 陽性 HER2 陰性症例は 35 例(59%)、ER 陽
性 HER2 陽性は 8 例(14%)、ER 陰性 HER2 陽性は 5 例(8%)、ER 陰性 HER2
陰性は 11 例(19%)であった。原発巣 ER 陽性 HER2 陰性 35 例中、再発巣で
ER が陰転化(HER2 陰性)したのは 4 例(11%)であり、HER2 が陽転化(ER 陽
性)したのは 2 例(6%)であった。原発巣 ER 陽性 HER2 陽性 8 例中、再発巣で
ER が陰転化(HER2 陽性)したのは 3 例(38%)であり、HER2 が陰転化(ER 陽
性)したのは 2 例(25%)であった。また、原発巣 ER 陰性 HER2 陰性 11 例中、
再発巣で ER が陽転化(HER2 陰性)したのは 2 例(18%)であった。原発巣 ER
陰性 HER2 陽性 5 例は再発巣での変化は認めなかった。ER が陰転化した 7 例
は、無再発生存期間(DFI)が短い傾向を認めた。また、ホルモン療法が奏効
した症例はなく、予後不良な症例が多い傾向であった。ER が陽転化した 2 例
のうち 1 例では、DFI が長く、ホルモン療法が奏効し良好な予後を得ている。
HER2 が陰転化した 2 例では、再発後の予後は不良であった。【考察】当院で
行った re-biopsy は、再発の診断を目的に施行したものが多く、生検部位は胸
壁や領域リンパ節なども含まれており、また症例数も少ないため、予後の比
較は困難であったが、ER 陰転化に関しては、ホルモン療法よりも化学療法を
選択する一つの因子となる可能性が示唆された。【結語】原発巣のサブタイプ
から推測する再発時期が異なるといった biology の変化を疑うときには、rebiopsy が適切な治療法選択の一助となり、予後を改善する可能性があると考
えられた。
292
ポスターディスカッション
11623
10393
当院における再発乳癌の長期生存症例についての検討
再発乳癌の予後は改善しているか?―subtype 別の検討―
DP-2-024-03
DP-2-024-04
1
東京都立駒込病院 外科
3
堀口 和美、後藤 理紗、本田 弥生、井寺 奈美、北川 大、宮本 博美、
有賀 智之、山下 年成、黒井 克昌
中野 正啓 1、藤末 真実子 1、田嶋 ルミ子 2、奥村 恭博 1、西山 康之 1、
大佐古 智文 1、豊住 康夫 3、有馬 信之 3、西村 令喜 1
【背景】再発乳癌の予後は不良であるが、2000 年 MD アンダーソンから、年
代を経て治療法の開発が進み、予後の改善が示された。2001 年以降アロマ
ターゼ阻害剤や trastuzumab といった様々な治療薬の開発・導入があり、さ
らなる予後の改善が期待されている。【目的】Biology 等の観点から再発後の
予後を経年的に検討した。予後として手術後および再発後の生存期間 (overall
survival: OS) を評価した。【対象と方法】1979 年から 2013 年 7 月までに原
発乳癌にて手術を行い、再発をきたした 813 例を retrospective に検討した
(subtype の評価ができた症例は 1996 年以降の 467 例 )。再発時期を (1)2000
年 以 前、(2)2001 年 か ら 2005 年、(3)2006 年 以 降 の 3 群 に わ け、subtype
別、 初 再 発 部 位 別、 手 術 か ら 再 発 ま で の Disease-free interval (DFI) 別
に 予 後 の 検 討 を 行 っ た。subtype は ER/PgR(1% 以 上 を 陽 性 )、HER2 お よ
び Ki-67(cutoff:20%)の免疫染色を用い、Luminal-A, -B,- HER2, HER2
enriched, Triple Negative (TN) と分類した。【結果】再発率についてみると、
TN、HER2 enriched 例の再発は少なくなっていたが Luminal B は増加して
いた。再発例全体での予後は再発時期 (1) < (2) < (3) の順に有意な手術後・
再発後 OS の改善が見られた (p < 0.0001)。subtype 別に解析すると、HER2
enriched では手術後、再発後 OS ともに著明な延長を認めた。Luminal B と
Luminal-HER2 では手術後 OS は 2006 年以降有意に延長していたが、再発後
OS の改善はなかった。一方、Luminal A と TN では手術後、再発後 OS ともに
延長はみられなかった。初再発部位別に検討すると、局所 / リンパ節、骨、内
臓転移のいずれも手術後、再発後 OS は著明に改善していた。DFI 別にみると、
5 年以上群の再発後 OS に改善はなく、5 年以下群では手術後、再発後 OS とも
に有意な延長を認めた。【結論】再発乳癌の予後は 2000 年以降も確実に改善
されていたが、とくに HER2 陽性例は多大な治療の恩恵を受けていた。一方、
Luminal A や TN では 2000 年以前と治療成績の改善は見られなかった。前者
の予後は元来良好であるが、内分泌療法への耐性獲得後の予後改善には寄与
していないことが示唆される。後者は一旦再発を来すと有効な治療法がない
ためと考えられる。また、Luminal B や Luminal-HER2 では術後補助療法が
手術後 OS の改善に寄与しているが、再発後の治療成績は依然厳しい状況であ
る。今後、さらなる治療法の開発が必要と考えられた。
10451
11414
乳癌脳転移における症候の有無と予後の相関に関する検討
ラパチニブによる難治性下痢を代表とする難治性有害事象に対
しての漢方製剤の有用性
DP-2-024-05
DP-2-024-06
静岡県立静岡がんセンター
聖マリアンナ医科大学 乳腺内分泌外科
松尾 聡美、渡邉 純一郎
【はじめに】転移性乳癌 (MBC) において、脳転移 (BM) はしばしばみられる病
態である。現在のコンセンサスとして、脳転移に対するスクリーニングは予
後に寄与しないとされている。しかしながら、診断能力および局所放射線治
療の発展に伴い、無症候性脳転移の診断が予後の改善に寄与する可能性があ
る。【対象と方法】2002 年 9 月から 2013 年 11 月まで当科にて加療を行った
MBC 患者 558 名に関し、BM をみとめた患者における診断時の症候の有無と
予後の相関を後方視的に解析した。【結果】MBC 患者 558 名中、184 名 (32% )
に脳転移をみとめた。( 観察期間中央値 1074.5 日 ) サブタイプ別の BM 発症率
は ER + HER2 - 25.2%、ER + HER2 + 52.9 %、ER - HER2 + 49.3 %、 ト
リプルネガティブ 32.5%であった。MBC から BM 発症までの期間は、中央値
としてそれぞれ 604.0 日 /703.0 日 /450.0 日 /561.0 日であった。無症候性脳
転移は 99 名 (53.0%)、症候性脳転移は 85 名 (46.0%) であった。BM 診断か
らの生存期間中央値はそれぞれ 356.0 日 /258.0 日 (p=0.2) と有意差はないも
のの後者において短縮される傾向が認められた。BM 関連死の割合は、それぞ
れ 18.8%/40.5% であった。【考察】予後の改善および診断能力の向上に伴い、
MBC の 25 ~ 34% が BM を発症するとされている。当科における観察でも
32.0% に脳転移がみとめられ、特に HER2 + MBC においては半数近くに BM
を認め、かつ MBC 発症から BM 診断までの期間も短い傾向がみられた。BM に
対するスクリーニングの有用性に関しては、HER2 + MBC 患者を対象にした
検討において、スクリーニングは予後に寄与しないが、BM 関連死の割合は低
下することが報告されている。当科における後方視的検討においても、症候
性 / 無症候性 BM の予後には有意差は認められなかったが、BM 関連死は少な
い傾向を認めた。【結語】現状において、症候性 / 無症候性 BM の予後に有意な
差は認めなかったことから、BM のスクリーニングは予後の改善に寄与しない
可能性がある。しかしながら、無症候性 BM においては BM 関連死が少ない傾
向があることから、全身療法の進歩に伴い、今後は BM のスクリーニングが予
後の改善に寄与する可能性がある。
志茂 新、大井 涼子、黒田 貴子、小島 聖子、永澤 慧、岩重 玲子、
志茂 彩華、上島 知子、土屋 恭子、津川 浩一郎、小島 康幸、速水 亮介、
白 英、西川 徹、川本 久紀、首藤 昭彦、福田 護
【背景】HER2 陽性乳癌においてペルスツマブを代表に様々な分子標的薬が使
用可能となった。ラパチニブは経口投与で、通院期間や投与方法は患者へ負
担が少ない薬剤である。しかしラパチニブはその有用性にもかかわらず、重
篤な副作用の頻度が多い薬剤である。特に下痢に関しては最も頻度が多く、
約 60 ~ 70%と報告されており、特に grade3 以上の重篤な難治性下痢の頻度
は約 10%もある。難治性下痢に対しては、整腸剤はほとんど効果が無く、ロ
ペラミド等の止痢薬を1時間おきという頻回な投与方法で使用し、それでも
効果が無い難治性下痢では休薬、減量を余儀なくされている。それゆえ治療
効果がある場合でも投与中止せざるをえない場合をしばしば認める。【目的】
ラパチニブ使用での下痢に対して漢方製剤である半夏瀉心湯の有用性を検討
する。【方法】今回我々は、2009 年 7 月から 2013 年 10 月までの期間中に,ラ
パチニブを使用した 54 症例での下痢の発現頻度、及び半夏瀉心湯の服用によ
る下痢の発現頻度の変化、及び半夏瀉心湯の予防内服による下痢の発現頻度
の変化を観察した。下痢の有害事象は CTCAE 日本語版を用いて評価した。
【結
果】半夏瀉心湯の使用により、下痢の発症例では全ての症例で改善し、内服後
は grade2 以上の難治性の下痢は 1 例も認められなかった。予防投与を行った
症例群に関しては、grade2 以上の難治性の下痢の発生も認められなかった。
イリノテカンでは UGT1A1 の変異が下痢発現の予測因子となっている。ラパ
チニブで UGT1A1 の変異の有無が下痢発現の予測因子になるか検討した。
UGT1A1 の変異の有無が、ラパチニブの下痢発現の予測因子になるような結
果は認められなかった。 半夏瀉心湯の投与により下痢の頻度を改善させたが、
その事によりラパチニブの平均投与期間を延長させる事が出来るか検討した。
半夏瀉心湯の内服を行った 16 例と、半夏瀉心湯の内服を行っていない 38 例
のラパチニブの平均投与期間を観察したところ、半夏瀉心湯投与群では平均
10.54 ヵ月、未投与群では平均 5.39 ヵ月と 2 群間で有意差を認めた。(P値
= 0.002) 当院ではラパチニブを使用する際に半夏瀉心湯を投与することで、
難治性下痢の出現がなくなり、ラパチニブ投与の継続が容易となった。ラパ
チニブの難治性下痢に対する新しい画期的支持療法として半夏瀉心湯の有効
性を報告する。
293
一般セッション(ポスターディスカッション)
【背景】抗体医薬の開発など薬物療法の進歩を筆頭に、集学的治療の選択肢
が増加した結果、乳癌に対する治療はこの数十年間で飛躍的に進化を遂げ
た。再発乳癌もこれらの成果を受けて、症例によっては再発後の長期生存を
達成し得ている。今回我々は、当院における再発乳癌の長期生存症例につい
て検討した。【症例】1976 年 3 月から 2003 年 11 月までに当院において乳癌
初再発を来たし、以降 10 年以上の生存期間を認めた 48 例について検討をお
こなった。【結果】症例は当院初診時に StageIV であった 5 例を含めた 48 例、
初再発時年齢の中央値は 51(36 - 78)歳、初再発後の生存期間の中央値は
4655(3717 - 9938)日であった。StageIV の症例を除くと、治療開始から
初再発までの期間の中央値は 760(107 - 6934)日であった。当時の状況に
対する現行の Stage 分類では、Stage I,II, III, IV はそれぞれ、8, 23, 9, 5 例
(16.7% ,47.9% ,18.8% ,10.4%)(不明 3 例)であった。初再発巣の局在は、
骨 15 例(31.3%)、局所 12 例(25%)、肺 12 例(25%)、リンパ節 6 例(12.5%)、
肝 3 例(6.3 %)で あ り、 ま た、7 例(14.6 %)に 異 時 性 対 側 乳 癌 を 認 め た。
1970 年代の症例に関してはそのステイタスが不明の症例もあったが、ホルモ
ン受容体陽性例は 29 例(62.5%)であり、HER2 は 10 例(20.8%)において強
陽性であった。再発治療期間中に確認し得た再発巣は 1 症例平均 2(1 - 5)箇
所で、そのうち、局所・骨・リンパ節に限局し内臓への転移を来さなかった
症例を 20 例認めた。治療は内分泌療法を平均 2.8(0 - 10)レジメン、化学療
法を平均 3.3(0 - 10)レジメン行っており、HER2 強陽性症例に関しては全例、
トラスツズマブ使用経験があった。ホルモン受容体別、あるいは HER2 別に
解析した生存期間に有意な差を認めなかったが、内臓転移のある HER2 強陽
性症例に関しては有意に生存期間の延長が認められた(p=0.0019, Logrank
test)。【まとめ】再発乳癌の治療は、QOL を保ちつつ行うことが望ましいこと
は言うまでも無いが、個々の症例の状況に応じて適宜、治療を選択していく
ことが極めて重要である。より詳細に検討し、文献的考察を加えて報告する。
熊本市民病院 乳腺・内分泌外科、2 熊本市民病院 外科、
熊本市民病院 病理診断科
ポスターディスカッション
11798
10921
当院における浸潤性乳癌手術症例の発見契機と subtype 別検討
当院検診における中間期乳がんの検討
DP-2-025-01
DP-2-025-02
1
聖路加国際病院 乳腺外科、2 聖路加国際病院 放射線科、
3
聖路加国際病院 病理診断科
1
トヨタ記念病院 健診センター、2 トヨタ記念病院 乳腺内分泌外科
渡辺 絵美 1、伊藤 和子 2、川瀬 麻衣 2
村井 美知子 1、角田 博子 2、鈴木 高祐 3、矢形 寛 1、林 直輝 1、吉田 敦 1、
山内 英子 1
一般セッション(ポスターディスカッション)
目的:乳癌検診において非浸潤癌の発見率が向上する中、欧米では検診にお
ける死亡率低下が明らかでないとする見解もあることから国内でも検診内容
の是非が問われている。今回当院の中間期乳癌を把握することで検診の問題
点を考察する。方法:2007 年1月から 2012 年 12 月までに当院検診を受診し
た 32,125 例の中で、検診時異常なしとされたが 2 年以内にしこり自覚もしく
は分泌物で当院外来受診し、癌と診断された患者を中間期がんとし、検診発
見がんと比較検討する。対象:2007 年から 2012 年の 6 年間の検診で発見さ
れたがん 85 例(検診群)と中間期がん 9 例(中間期群)。結果:中間期群 9 例の
外来受診契機はしこり自覚 7 例、分泌物 1 例、しこり自覚と分泌物 1 例であっ
た。検診時の MMG・US 所見はカテゴリー 1 もしくは 2 で、背景乳腺は高濃
度 2 例、不均一高濃度 6 例、乳腺散在 1 例であった。平均年齢は中間期群 45 才、
検診群 54.2 才 (p < 0.01) で中間期群の年齢が低かった。浸潤癌の平均腫瘍径
は中間期群 1.6cm、検診群 1.3cm(p > 0.05)で大きな差はなかった。Stage
分類では、中間期群が0期 1 例、(11.1%) 1期 3 例(33.3%)2期 4 例(44.4%)
3 期 1 例(11.1 %)、 検 診 群 が 0 期 16 例(19 %)1 期 62 例(72.9 %)2 期 5
例(5.8%)不明 7 例(8%)、と中間期群がより進行していた。浸潤癌の HR・
HER2 分 類 で は 中 間 期 群 HR 陽 性 HER2 陰 性 (HR + HER2 - )3 例(33.3%)、
HER2 陽性もしくは TN(HER2+orTN)5 例(55.5%)、検診群は (HR + HER2
- )47 例 (77%)、(HER2+orTN)14 例 (22.9%)(P < 0.05) と 中 間 期 群 の ほ
うが HER2 陽性もしくは TN が多かった。また中間期群の検診から外来受診ま
での平均受診期間は平均 404 日。(HR+HER2 - )458 日、(HER2+)336 日、
(TN)397 日と悪性度が高いものは短期間に受診していた。考察:中間期がん
は検診発見がんより年齢は若く、腫瘍計が 2cm 以下にもかかわらずリンパ節
転移を起こしているような生物学的にも悪性度が高いものが多く、検診精度
管理の問題以外に現状の検診での早期発見が難しい乳癌が存在していること
を示唆していた。
【背景】現在の検診では比較的増殖速度の遅い乳癌が発見されている可能性が
指摘されており、乳癌の subtype によって発見契機が異なることが予想され
る。特に生物学的悪性度の高い Triple negative breast cancer(TNBC) は進行
が速く、自覚症状での発見が多いと推察される。【目的】当院における浸潤性
乳癌患者の発見契機別の特徴を検討し、よりよい早期発見の手段を考えるこ
と。【対象および方法】2012 年 1 月から 2012 年 12 月までに当院で手術を行っ
た浸潤性乳癌症例 639 例を対象とした。年齢は 26 歳から 89 歳、中央値は 50
歳である。発見契機と subtype を調べ、発見契機別の subtype に特徴がある
のか否か、逆に subtype 別の発見契機についても検討した。【結果】subtype
の割合は Luminal A
(LumA)
178 例 28%、
Luminal B
(LumB)
352 例 55%、
A,B
不明例を併せた全 Luminal type は 543 例 85% であった。TNBC(TN)は 69
例 11%、HER2(HER)は 27 例 4.2% であった。発見契機は自覚症状群(自覚
群)311 例 49%、検診発見群(検診群)240 例 38% と 2 群で 9 割弱を占めてお
り、乳房に異常を指摘され経過観察中の検出群(経過群)
・偶発発見群(偶発群)
は各々 6% であった。発見契機別に subtype を比較すると、自覚群は LumA
17%、LumB 60%、TN 16%、HER 5%、 検 診 群 は LumA 38%、LumB
52%、TN 6%、HER 3% であった。また subtype 別に発見契機を比較すると、
LumA は自覚群 30%、検診群 52%、LumB は自覚群 53%、検診群 35%、TN
は自覚群 73%、検診群 19%、HER は自覚群 59%、検診群 26% と LumA 以
外の subtype は自覚群で発見されることが多かった。なお、それぞれの発見
契機別年齢中央値は自覚群 49 歳、検診群 51 歳、経過群 49 歳、偶発群 51 歳
と明らかな差異は認められなかった。【考察】自覚群は、他の発見契機と比較
して TN の割合が高く、LumA の割合が低い傾向が見られた。また LumA は検
診群が多かった。悪性度の高い TNBC は検診では検出しにくい傾向があるこ
とが示され、検診に携わる医療者はそれを認識する必要がある。また受診者
にも検診の限界と、症状を自覚した際には速やかに外来を受診するべきであ
るという知識を広めることが重要である。
11683
11290
高知県における対策型乳がん検診発見乳癌と外来発見乳癌の検
討
長野県における MMG 単独検診の 14 年間の成績
DP-2-025-03
1
DP-2-025-04
1
2
伊藤外科乳腺クリニック、 高知県健康診査管理指導協議会乳癌部会、
高知県乳がん検診読影医師の会、4 高知県の乳がんを考える会、
5
やまかわ乳腺クリニック、6 高知大学医学部 外科学講座外科1、
7
高知赤十字病院 乳腺外科、8 高知医療センター 乳腺外科、
9
国立病院機構高知病院 外科、10 高知県立幡多県民病院 外科
長野県健康づくり事業団、2 増田医院
増田 裕行 1,2
3
安藝 史典 1,2,3、伊藤 末喜 1、山川 卓 2,3,4、杉本 健樹 2,3,5、藤島 則明 2,3,6、
尾崎 信三 3,5、甫喜本 憲弘 3,6、高畠 大典 3,7、福山 充俊 8、沖 豊和 9、
高橋 聖一 3,10
(はじめに)乳癌検診におけるマンモグラフィ検診の有用性は諸家の報告にあ
るが、マンモグラフィ検診では予後の良い乳癌を発見しているだけではない
かという指摘もある。高知県では 2004 年からマンモグラフィ検診が導入され、
40 歳以上の女性に対して隔年検診が行われている。2012 年までの総受診者
数 163,070 名、要精検率 6.65%、乳癌発見率 0.33%、陽性的中率は 4.91%
と順調に行われている。高知県における対策型マンモグラフィ検診発見乳癌
と外来発見乳癌を比較し、マンモグラフィ検診の有用性について検討した。
(対
象・方法)2004 年から 2006 年までの 3 年間の、高知県の対策型検診で発見さ
れた乳癌 179 例のうち自覚所見のなかった(以下、対策型発見乳癌)130 例と、
高知県で年間 10 例以上原発乳癌を治療している全 7 医療機関で診断治療され
た原発乳癌から任意型検診で発見されたものを除いた 40 歳以上の乳癌(以下、
外来発見乳癌)634 例、合計 764 例について、TNM 分類、臨床病期、病理組織型、
病理学的浸潤径、核グレード、ER、PgR、HER2、リンパ節転移、再発、生
死について比較検討行った。同時期に高知県地域がん登録された乳癌は 462
例であった。(結果)対策型発見乳癌と外来発見乳癌を比較すると、平均年齢
は 61.1 歳と 62.2 歳、閉経前は 27.3% と 26.2% であった。臨床病期 0 期 I 期
の早期率は 78.1% と 51.6%、非浸潤癌率は 22.0% と 9.1%、平均病理学的
浸潤径は 3.9cm と 5.8cm、リンパ節転移率は 16.0% と 25.8% と有意に対策
型発見乳癌が早期であった。ER 陽性率は 65.6% と 64.0%、HER2 陽性率は
27.4% と 25.0% と差がみらないが、再発率は 6.6% と 13.4% であり外来発
見乳癌で高かった。(まとめ)対策型発見乳癌は外来発見乳癌と比較して、ER
陽性率と HER2 陽性率は差がないが、再発率が低いことより、マンモグラフィ
検診は、早期発見により乳癌の治療成績の向上に寄与することが示唆された。
【はじめに】本県では MMG 単独法による乳房検診を平成 11 年に開始した。こ
れまでの検診成績を検討した。【対象・方法】自覚症状のない 40 歳以上の女性
を対象に、問診と MMG 2 方向撮影を行い、視触診を省いた隔年検診とした。
視触診がないため、検診を受けることが出来ない方の条件を厳しく定めた。
また自己検診を励行するよう啓蒙した。ハード面・ソフト面ともに、精中機
構の定める条件を満たした。【成績】14 年間の累計は検診総数 190,507 人、要
精検者数 16,504 人、要精検率 8.7%、精検受診率 94.9%、発見乳がん数 561
人、がん発見率 0.29%、陽性反応的中率 3.81%。「乳がん検診に関する精度
管理指標」の要精検率、がん発見率、陽性反応的中率の指標をクリアしてい
る。乳がん発見数は増加傾向にあり、50 ~ 60 歳代合わせて 7 割と多かった。
また Stage 0 期と I 期で 7 割以上を占めていた。平成 22 年 6 月よりデジタル
マンモグラフィ検診を開始し、順次デジタル化を進めている。これまでのと
ころアナログ MMG に比べデジタル MMG の方が、要精検率が高くなっている。
中間期乳がんは 10 数例のみであり、報告体制の見直しなどが必要と思われた。
【まとめ】過去 14 年間の検診成績はほぼ満足出来る結果であった。発見乳がん
症例の特徴および中間期乳がん症例についても合わせて報告する。
294
ポスターディスカッション
11423
10117
2001 年から 2010 年までの香川県乳がん登録、疫学的調査結
果報告
沖縄県における生活習慣の変遷と乳癌発症リスクの研究
DP-2-025-05
DP-2-025-06
1
3
1
たけべ乳腺外科クリニック、2 高松赤十字病院、3 屋島総合病院、
4
滝宮総合病院、5 香川労災病院、6 伊達病院、7 三豊総合病院、8 高松市民病院、
9
栗林病院、10 香川乳腺研究会
武部 晃司 1,10、吉澤 潔 2,10、斉藤 誠 3,10、大越 祐一 4,10、村岡 篤 5,10、
伊達 学 6,10、久保 雅俊 7,10、井内 正裕 8,10、堀 志郎 9,10、近藤 昭宏 10、
小笠原 豊 10、紺谷 桂一 10
玉城 研太朗 1、玉城 信光 1、鎌田 義彦 1、上原 協 1、新垣 美羽 2、
石田 孝宣 3、宮下 穣 3、大内 憲明 3、笹野 公伸 4
【緒言】第二次世界大戦以降、沖縄県の食生活、生活習慣は急速に欧米化し、
かつて長寿日本一であった当県も現在は一位の座を譲り渡してしまった。そ
の一番の原因として肥満が挙げられるが、沖縄県における急激な生活習慣の
変遷と乳癌発症リスクについて検討を行った。
【対象と方法】 沖縄県女性
9006 人 (Case: 3431 人、Control: 5575 人 ) を 対 象。 乳 癌 の 発 症 リ ス ク と
BMI との関連を月経状況と年齢別に検討を行った。加えて閉経前後における
ホルモン受容と HER2 タンパクの発現との比較検討を行った。【結果】 閉経
前後に関わらず Overweight(25 ≦ BMI < 30) 群、Obesity(30 ≦ BMI) 群とも
に有意差をもって乳癌の発症リスクが高いという結果となった。また年齢別
の検討では 40 歳以上で肥満が乳癌の発症リスクと相関しており (40 代 50 代
60 代:p < 0.001, 70 歳以上:p=0.043)、30-40 歳ではその傾向が認められ
た (p=0.055)。またホルモン受容体は閉経後肥満群で BMI25 未満群と比較し
ホ ル モ ン 受 容 体 陽 性 率 が 有 意 に 高 か っ た が (Odds: 1.55, 95%CI: 1.221.99, p < 0.001)、閉経前では両群間に有意差を認めなかった (Odds: 0.77,
95%CI: 0.57-1.65, p=0.118)。HER2 タンパク発現においては統計学的有
意差を認めなかった。【結語】 本研究において急速な生活習慣の欧米化にお
いて閉経後のみならず閉経前においても肥満が乳癌発症リスクとなる可能性
が示唆された。従来のエストロゲン代謝機能の限界に伴い、閉経期同様の高
濃度エストロゲン暴露により肥満が閉経前乳癌のリスクファクターになった
と考えられた。
10345
10874
当院における乳腺細胞診検査の現状と今後の展望
乳癌組織生検 2820 例から検討した捺印細胞診の有用性
DP-2-026-01
DP-2-026-02
1
1
独立行政法人国立病院機構東京医療センター 臨床検査科、
2
独立行政法人国立病院機構東京医療センター 乳腺科、
3
独立行政法人国立病院機構東京医療センター 外科
大阪市立大学大学院 腫瘍外科、2 同 診断病理学
石原 沙江 1、柏木 伸一郎 1、浅野 有香 1、森崎 珠実 1、野田 諭 1、
川尻 成美 1、高島 勉 1、小野田 尚佳 1、大澤 政彦 2、平川 弘聖 1
村田 有也 1、松井 哲 2、雨宮 愛理 2、平形 侑子 2、笹原 真奈美 2、
松本 純夫 3
【はじめに】細胞診検査は安価で簡便であり,手技的にも組織診検査よりは安
全である.近年,乳腺領域においては細胞診検査が減少し,組織診検査の数
が増加していると言われている.検体不適正,鑑別困難症例の存在と,それ
らに起因する偽陰性,偽陽性の問題などから,確定診断の得られる組織診検
査の方に傾きつつあるものと考えられる.【目的】当院における乳腺細胞診検
査の現状を把握し,今後の展望と更なる精度向上に向けた取り組みについて
考察する.【対象】2009 年 4 月~ 2013 年 9 月までに,乳腺領域の疾患に対し
て細胞診検査を施行した 1308 例.【成績】検体不適正率は 14.1%.鑑別困難
例は 7.3%で,その中の約 46%が最終的に悪性の診断となった.検体不適正
例,鑑別困難例を除いた症例における感度は 93%,特異度は 99%である.偽
陽性症例は 5 例あり,2 例が線維腺腫,2 例が乳管腺腫,1 例が授乳期乳腺組
織である.偽陰性例は 15 例で,非浸潤性乳管癌,硬癌の頻度が高かった.
【考
察】検体不適正率は本邦の目標値より若干高値であったが,大きく逸脱はして
いない.諸家も報告・提唱していることであるが,細胞診検査が向いている
疾患,そうでない疾患が存在することが改めて認識できた.臨床と病理にお
ける情報共有とコミュニケーションの重要性は乳腺細胞診検査に限ったこと
ではないが,正診率向上のためには欠かせないことである.特に鑑別困難例,
悪性疑いの症例や,細胞診結果と画像所見の解離が認められる症例などは積
極的なコミュニケーションが必要である.また,細胞検査士を含めた施設の
診断能力の向上は言うまでもないことである.【まとめ】細胞診検査は 100%
の精度を保証するものではなく,検体不適正例や鑑別困難例も必ず存在する
が,全ての症例に組織診検査を行うというのは極論である.細胞診検査と組
織診検査の上手な使い分け,臨床と病理間の相互理解があれば,乳腺細胞診
検査は有用な検査として今後も行われていくものと考える.
【目的】乳腺組織の質的な診断には,針生検 (CNB) や穿刺吸引細胞診 (ABC)
が行われているが,感度・特異度ともに 100 % には至っていない.CNB に関
するこれまでの報告では感度 86 ~ 90 %,特異度 89 ~ 96 % であり,偽陰
性症例が存在することになる.正診率を上げることを目的に,われわれの施
設では CNB を施行する際に捺印細胞診 (AIC, adjunctive imprint cytology
of the core-needle biopsied specimen) を同時に行っている.CNB では良
性であるにもかかわらず AIC では悪性を疑い,MammotomeR などを追加で
行うことにより悪性の診断に至るというケースも存在する.本来,悪性であ
るにもかかわらず CNB により良性と診断を受け経過観察となり増悪した症例
の存在も危惧される.今回,当科で CNB と同時に AIC を行った症例を対象と
し,AIC の有用性および忍容性をレトロスペクティブに検討した.【対象と方
法】2007 年 5 月から 2013 年 3 月までに乳癌を疑い当施設にて CNB と AIC を
同時に施行した 2820 症例を対象とした.AIC は CNB にて採取した組織切片
を即座にプレパラートの上に載せ,23 G 針の針先を用いて切片をころがすよ
うにして生検切片周囲の表面をプレパラートに捺印した.【成績】CNB による
診断では,全 2820 症例のうち CNB 悪性 1356 例 (48.1 %), CNB 良性 1464
例 (51.9 %) であった.このうち,CNB 良性で捺印細胞診にて悪性が疑われ
た症例は 47 例 (1.7 %) であった.CNB 良性で AIC にて悪性が疑われた 47 例
中 42 例 (89.4 %) が実際に悪性であった.このなかで AIC で” 悪性の疑い”
は 20 例,” 悪性” は 22 例であった.これらの症例には MammotomeR などが
追加で行われ,33 例 (78.6 %) が浸潤性乳管癌,9 例 (21.4 %) が非浸潤性
乳管癌との診断に至った.これに反して,CNB 良性で AIC にて悪性が疑われ
た 47 例中 5 例 (10.6 %) が良性であった.最終診断では良性 1422 例 (50.4
%),悪性 1398 例 (49.6 %) と診断された.つまり CNB と AIC を組み合わ
せることで,感度 100 % (1398/1398), 特異度 99.6 % (1417/1422) を得
ることが可能であった.【結論】乳癌組織の CNB における捺印細胞診は,偽陰
性の症例を確実にひろい上げることが可能であり,新たな標準的診断方法と
して有用な手段であることが示唆された.
295
一般セッション(ポスターディスカッション)
( はじめに ) 香川乳腺研究会は 2001 年より香川県の全域の病院に対して、毎
年乳癌症例登録を依頼し集計してきた。乳癌学会の癌登録に準じ、その年に
手術した乳癌症例、非手術例も含めて術前薬物療法を施行した症例を毎年調
査した。 香川県という一定地域を 100%網羅し 10 年継続した癌統計は意義有
るものと考えここに報告する。( 対象 ) 今回の検討は疫学的動向を目的とし
た。乳癌症例の性別年齢、来院経緯、組織型、腫瘍径、リンパ節転移、ER を
検討項目とした。( 結果 ) 2001 年に初回手術、治療を受けた県内在住者の症
例は(男性を除き同時両癌を 1 例として算出)343 例であった。01 年から 07
年までは毎年増加し 546 例になり、6 年間で 59%の増加した。その後 10 年ま
ではやや減少した。発見契機の検討では腫瘤自覚が 01 年から 07 年にかけて
32%増加した。検診・集検の割合は 01 年 21%、07 年 32%、10 年 42%となり、
10 年は 01 年の2倍に増加した。組織型別症例数の検討では、浸潤性乳管癌は
01 年の 288 例から 07 年に 413 例に増加し 1.4 倍になったが、その後漸減し
2010 年に 329 例になった。非浸潤性乳管癌は増加傾向にあり、01 年から 10
年に 3.9 倍に増加した。その比率は 2001 年 8%、2010 年 21%であった。腫
瘍径では 10mm 以下は増加し、21 ~ 50mm は減少し、11 ~ 20mm は変化
しなかった。 リンパ節の検討ではリンパ節転移陰性例数の増加が顕著であっ
た。ER の検討では、陰性例は年々減少する一方、陽性例は 01 年 184 例から
07 年 413 例と著明な増加を認めたが、10 年では 430 例とわずかに減少した。
若年者乳癌の検討では若年者乳癌の検討では、34 歳以下の乳癌比率は 2005
年以降減少傾向にあった。29 歳以下の乳癌症例はこの 10 年では年平均 1.6 人
と少なかった ( 結語 ) 1. 香川県内の乳癌は 01 年から 07 年にかけて 68%の増
加を認めたが、それ以降は漸減した。その増加は検診の普及などがその要因
になり、小型でリンパ節転移のない ER 陽性の症例が著しかった。一方、リン
パ節転移、腫瘍径5cm 以上、ER 陰性症例数は変化なしか、もしくは減少した。
2. 香川の乳癌患者数をもとに日本全体の乳癌罹患者数を推定すると、66000
から 70000 人になり、一般に流布している全国の乳癌罹患者推定数よりも多
かった。3.30 ~ 49 歳までの乳癌罹患率は米国と同等であった。4.55 歳以上
の乳癌症例が増加し 10 年には全体の 63%に達したが、年齢層別罹患率のグラ
フは米国型の右肩上がりにならないことが判明した。
那覇西クリニック 乳腺外科、2 那覇西クリニック 臨床試験センター、
東北大学 腫瘍外科、4 東北大学 病理診断学講座
ポスターディスカッション
10405
11659
ステレオガイド下マンモトーム生検(ST-MMT)にて発見された
異形乳管過形成(ADH)に関する検討
当院における針生検(CNB)と手術標本での Ki67 発現率の一致
度に関する検討
DP-2-026-03
1
2
DP-2-026-04
1
医療法人英仁会大阪ブレストクリニック 医療技術部、
医療法人英仁会大阪ブレストクリニック 乳腺外科
2
藤井 直子 1、竹川 直哉 1、小西 章子 1、山本 絹子 1、住吉 一浩 2、
石井 由紀 2、小池 健太 2、井口 千景 2、山本 仁 2、芝 英一 2
日本生命済生会付属日生病院 乳腺外科、
日本生命済生会付属日生病院 化学療法室
橘高 信義 1、西田 幸弘 1、畠山 明子 2、大畠 千春 2
一般セッション(ポスターディスカッション)
【目的】MMG 併用検診が普及し石灰化で発見される病変に対する ST-MMT は
低侵襲で正確な診断を得られるため、広く普及している。当院では 2005.10
か ら ST-MMT を 開 始 し、2013.11 現 在 1995 例 を 経 験 し た。ADH(atypical
ductal hyperplasia)と診断された症例は乳癌になるリスクがある増殖性の
変化であり、ST-MMT では組織の一部しか採取されないため、切除生検に
より乳癌と診断される場合がある。今回 ADH 症例に対して検討を行った。
【 対 象 】ST-MMT1995 例 に お い て、 石 灰 化 を 採 取 し た 1974 例( 中 止 4 例、
distortion・mass を対象とした 17 症例を除く)中、ADH と診断された 53 症
例。【検討項目】ADH53 例に対し (1)MMG のカテゴリー分類(2)MMG にて指
摘された部位に対する初診時 US 所見・MRI の濃染の有無(3)ST-MMT による
ADH 診断後の経過観察症例と切除生検施行症例を検討【結果】(1)カテゴリー
分類:カテゴリー 5・4・3-2・3-1 の順に 2 例・20 例・24 例・7 例(2)US 施
行 49 例(未施行 4 例)中、病変部の同定可能な 15 例の 4 例に ABC を施行した
が悪性所見は無く、良性または判定不能・不適切との判定で、11 症例は ABC
未施行。MRI 施行 28 例中 9 例(25 例未施行)に軽度の濃染を認めた。US・
MRI 共に MMG カテゴリー別の所見に差は無。(3)当院経過観察 26 例(6 ヶ月
毎に MMG 施行)・切除生検 19 例・他院紹介 8 例。経過観察中に、石灰化の増
加:1 例・別部位に新たに石灰化出現:1例を認めた。石灰化増加部・新病変
部に対して再度 ST-MMT を行った。前者は Mastopathy 、後者は ADH と診断
され、後者には切除生検を行い Mastopathy の診断であった。その他症例の石
灰化に変化無。切除生検を施行した 19 例中、最終病理診断 DCIS:4 例 ADH:
7 例 Mastopathy:8 例。約 2 割に DCIS が存在したが、特徴的な画像診断項目
はなかった。【考察】ADH 症例では US 所見の有無・MRI の濃染の有無等の画
像所見に乏しく、石灰化増加症例においても良性の診断であった為、ADH に
対して積極的に切除生検を進めるのに十分な項目は同定できなかった。しか
し、切除生検を施行した ADH 症例の中には約 2 割の DCIS が存在したことか
ら、患者様には少なからず悪性が存在することを説明した上で、個々の希望
にも考慮し経過観察・切除生検等の選択に対応していくことが重要である。
【緒言】術前療法の普及に伴い、針生検による intrinsic subtype 分類の重要性
はますます高まっている。とくに細胞増殖の指標とされる Ki67 は予後因子と
してだけでなく化学療法の効果予測因子としても有用な可能性が示唆されて
いるが、染色およびスコアリング方法によって陽性率の変動が大きいため各
施設での制度管理が求められている。今回われわれは術前の針生検(CNB)に
おける Ki67 発現率の精度を評価すべく、手術標本における発現率との一致度
を検討したので報告する。【対象・方法】2011 年 4 月から 2013 年 10 月まで
の術前療法を施行していない乳癌手術症例 65 例を対象に、針生検(CNB)と
手術標本における Ki67 発現率の一致度を kappa 係数にて評価した。【結果】
針生検と手術標本における Ki67 発現率の一致度は閾値 15% とした場合で
kappa=0.66 であり、閾値 20% の場合でも kappa=0.68 とほぼ同様であった。
また腫瘍径別(0 < T1 ≦ 20mm、20mm < T2)でみた場合、kappa 係数はそ
れぞれ 0.73、0.58 であり、腫瘍径が大きいほど Ki67 の一致度は低くなる傾
向がみられた。組織型別でも検討したところ、乳頭腺管癌と硬癌においては
kappa 係数がそれぞれ 0.68 と 0.72 であり、いずれも良好な一致度を示した。
【結論】今回のわれわれの検討では、針生検(CNB)と手術標本における Ki67 の
発現率において比較的良好な一致度が確かめられた。しかしながら、腫瘍サ
イズが大きい場合には CNB による Ki67 の評価はやや精度が低下する可能性も
示唆され、より多くの組織量を採取できるマンモトームやバコラ生検での評
価が望ましいと考えられた。
11045
11647
当院における超音波ガイド下 Mammotome Elite 生検の有用性
超音波所見別の吸引式針生検の有用性の検証
DP-2-026-05
DP-2-026-06
1
北里大学北里研究所病院 ブレストセンター臨床検査科、2 同 外科、
3
同 病理診断科
1
千葉労災病院 外科、2 千葉労災病院 病理科
笠川 隆玄 1、藤森 俊彦 1、竹林 三喜子 1、尾崎 大介 2
根本 奈津美 1、関 大仁 2、森永 正二郎 3、中嶋 純子 2、木村 さゆり 1、
小平 まさみ 1、山田 洋子 1、久壁 直子 1、久保畠 香織 1、浅沼 史樹 2、
山田 好則 2
【背景・目的】組織生検は確定診断を得る上で最も重要な方法である。乳
癌領域における組織生検は近年著しい変化を遂げ、従来から使用されて
い る core needle biopsy(CNB) に 加 え、 様 々 な Vacuum Assisted Core
Biopsy(VACNB) が 広 く 用 い ら れ て い る。 今 回 我 々 は、 針 生 検 に お け る デ
バイスの有用性を比較検討したので報告する。【対象と方法】2012 年 4 月
か ら 2013 年 11 月 ま で に 当 院 で 施 行 し た CNB44 例、VACORA108 例、
Mammotome54 例、Mammotome Elite72 例 に つ い て、 穿 刺 開 始 か ら 最
終抜針までの検査時間、標本サイズ、合併症として皮下出血の有無および
簡便性を検討項目とした。穿刺に使用した針の太さはそれぞれ CNB18G、
VACORA11G、Mammotome11G、Mammotome Elite14G で あ っ た。【 結
果】一症例あたりの平均所要時間は、時間の短い順に Mammotome Elite:
2.6 分、Mammotome:2.8 分、CNB:6.1 分、VACORA:6.1 分 で あ っ た。
乳癌と診断された組織で標本サイズを比較した場合、VACORA:20mm >
Mammotome:18mm = Mammotome Elite:18mm > CNB:15mm の
順であった。検査施行後に皮下出血が生じる頻度はそれぞれ、CNB:4%、
Mammotome Elite:13%、Mammotome:15%、VACORA:19%であった。
【考察】Mammotome Elite および Mammotome では他の 2 つのデバイスと比
較して、明らかに所要時間が短かった。これは一度の穿刺で複数の検体を効
率よく採取できたためと考えられる。標本サイズの比較では VACORA が最も
大きかったが、Mammotome Elite と Mammotome では同等であり、病理診
断に必要な検体量としては三つの VACNB で有意な差は認められなかった。合
併症の比較では Mammotome Elite で有意に皮下出血が少なく、傷が最も目
立ちにくかった。これは使用する針が他の VACNB と比較して針が細く先端が
鋭利な構造のためと考えられた。【結語】Mammotome Elite は他の VACNB と
比べて針が細いにも関わらず診断に十分な検体量が採取可能である。操作の
簡便性や効率的な組織の採取、安全性の観点から他の針生検装置と比較して
Mammotome Elite は有用性の高い新規吸引式針生検である可能性が示唆さ
れた。
乳腺疾患の確実な診断法として針生検が標準化すると共に、機器や手技の発達
もあり現在では様々な太さのコア針生検 (CNB)・吸引式針生検 (VAB) が選択
できるようになった。当院でも従来からの 16G CNB に加え 2009 年 7 月より
10G 及び 14G の VAB を用いるようになった。今回当院での VAB の使用経験に
基づき、病変の超音波所見別にその有用性を検証した。対象としたのは 2009
年 7 月以降超音波ガイド下に VAB を施行した 171 例 (10G:97 例 14G:74 例 )。
針の太さごとに診断確定率を求め 2005 ~ 2011 年の CNB 施行 530 例での診
断確定率と比較した。なお超音波所見は日本乳腺甲状腺超音波診断会議編ガ
イドラインの分類を用いた。各診断法の正診確定率を 10G VAB・14G VAB・
CNB の順に示すと、充実性腫瘤:100% (31 例 /31 例 ) ・96.6% (28 例 /29
例 )・97.7% (383 例 /392 例 )、混合性腫瘤:91% (10 例 /11 例 ) ・75% (3
例 /4 例 )・73.3 % (11 例 /15 例 )、 嚢 胞 性 腫 瘤:100 % (5 例 /5 例 ) ・100 %
(3 例 /3 例 )・該当症例なし、単区域性乳管拡張:92% (12 例 /13 例 )・100%
(7 例 /7 例 ) ・80% (4 例 /5 例 )、乳腺内低エコー域:100% (26 例 /26 例 ) ・
85.7% (24 例 /28 例 )・89.6% (69 例 /77 例 )、多発小嚢胞:75% (6 例 /8 例 )
・100% (2 例 /2 例 )・83.3% (5 例 /6 例 )、構築の乱れ:100% (3 例 /3 例 ) ・
100% (1 例 /1 例 )・100% (3 例 /3 例 ) の結果であった。10G VAB で採取さ
れた検体をプレパラート上で面積測定すると中央値 42.4mm2(20.4-462.9)
と ラ ン ダ ム に 抽 出 し た 10 例 の 中 央 値 14G VAB:19.2mm2(7.5-28.8)、
CNB:9.4mm2(7.2-21.1) よりも病変のタイプによらず安定して大きな検体が
採取されていた。診断確定における CNB の有用性は周知のとおりであるが、
嚢胞成分を含む病変や超音波上乳管内主体の病変を想定する場合には VAB を
用いる事で更に診断確定の確実性を高め得ることが確認された。この他様々
な biomarker 検索にもより大きな検体を採取できる VAB の有用性は高いと考
えられる。
296
ポスターディスカッション
11161
10189
CRP 1846C > T 遺伝子多型による浸潤性乳管癌のリンパ節転
移リスク診断
マイクロアレイを用いた乳癌リンパ節転移予測モデルの構築;
センチネルリンパ生検省略の可能性
DP-2-027-01
DP-2-027-02
1
秋田赤十字病院 乳腺外科、
秋田大学医学部 外科学講座呼吸器・乳腺内分泌外科学分野、
3
秋田大学大学院医学系研究科 地域がん包括医療学講座
大阪大学大学院医学系研究科 乳腺・内分泌外科
2
寺田 かおり
1,2
、本山 悟
2,3
1
2
、鎌田 収一 、伊藤 亜樹 、南谷 佳弘
中内 千暁、直居 靖人、島津 研三、綱島 亮、西尾 美奈子、丸山 尚美、
下村 淳、加々良 尚文、金 昇晋、野口 眞三郎
2
【目的】現在の乳癌治療においては、N0 乳癌に対してはセンチネルリンパ節
生検(SLNB)が標準治療となっているが、N0 乳癌でのリンパ節転移の陽性
率は 20% -30%程度である。また、SLNB にも頻度は低いが合併症が見られ
る。そこで、SLNB を省略し得るリンパ節転移陽性率の低い患者群の同定を
目指して、腫瘍組織におけるマイクロアレイによる遺伝子発現解析を用いた
リンパ節転移の予測モデルを構築すべく以下の検討を行った。【対象と方法】
サブタイプごとにリンパ節転移陽性率が異なるので、今回は最も症例数の多
い luminal A(LA)乳癌 550 例(当科と public data base の症例)を対象とし
た。Training set(388 例)を用いて 292 probes からなるリンパ節転移予測モ
デル (genomic nodal index: GNI) を構築し、1st validation(59 例)、およ
び、2nd validation(103 例)に適応しその診断精度を検証した。【結果】GNI
の正診率・感度・特異度・陽性的中率・陰性的中率は、training set において
は、それぞれ、77.3%,77.6%,77.1%,77.6%,77.1%であった。また、
1st validation set においては、71.2%,71.0%,71.4%,73.3%,69.0%
であり、2nd validation set においては、68.9%,78.8%,58.8%,66.1%,
73.2%であった。更に、ROC 解析での AUC は、training set、1st validation
set、2nd validation set において、それぞれ 0.820,0.717,0.749 であった。
また、GNI は、多変量解析において既存の因子とは独立した最も強力なリン
パ節転移の予測因子であった。【結論】マイクロアレイのデータを用いてリン
パ節転移の予測モデルである GNI を構築した。GNI は既存のモデルよりも高
精度にリンパ節転移を予測し得た。GNI で低リスクと判定された T1N0 乳癌に
おけるリンパ節転移の陰性的中率は> 95%と予測される。マイクロアレイは
針生検サンプルでも測定可能なので、このような症例では術前にリスクを判
定し低リスク症例では SLNB を省略できる可能性が示唆された。
10313
10155
ER 陽性乳癌における閉経状況と ER 関連蛋白発現の臨床的意義
乳癌術前化学療法の病理学的完全寛解に対する独立した予測因
子としての腫瘍内制御性 T 細胞
DP-2-027-03
DP-2-027-04
北海道大学病院 乳腺外科
1
細田 充主、山本 貢、中野 基一郎、市之川 一臣、山下 啓子
【背景】乳癌組織の ER と PgR の発現は内分泌療法の感受性因子である。PgR の
発現量は閉経後 ER 陽性乳癌の予後因子であると報告されているが、閉経前
ER 陽性乳癌についての報告はない。ER 陽性 HER2 陰性乳癌における PgR を
含む ER 関連蛋白と Ki67, p53 蛋白発現、血清性ホルモン濃度の臨床的意義に
ついて閉経前後に分けて検討した。【対象と方法】2004 年から 2010 年に手術
を行った ER 陽性 HER2 陰性乳癌 289 例(閉経前 89 例、閉経後 200 例)を対象
とした。乳癌組織における ER, エストロゲン応答遺伝子(PgR, TFF1)
、プロ
ゲ ス テ ロ ン 応 答 遺 伝 子(RANKL)
、ER 関 連 蛋 白(FOXA1, GATA3)
、HER2,
Ki67, p53 蛋白発現量(陽性細胞率)を免疫組織化学法で評価し、閉経前/後
それぞれでの臨床病理学的因子、予後との相関を解析した。血清が保存され
た 68 例(閉経前 19 例、閉経後 49 例)については E1、E2、プロゲステロン、
テストステロン濃度を測定した。【結果】PgR, TFF1, RANKL, GATA3 は閉経
前症例が閉経後症例に比べて有意に高発現していた。閉経前症例では FOXA1
低発現、GATA3 低発現、Ki67 高発現が予後不良であった。閉経後症例では
Ki67 高発現、p53 高発現が予後不良であった。閉経前/後ともに ER, TFF1,
RANKL 発現量と予後との相関は認められなかった。血清 E2 濃度は閉経前症
例において Ki67 発現
と有意に正相関して
い た が、 閉 経 後 症 例
では相関を認めな
か っ た。【 考 察 】閉 経
前後ともに Ki67 高発
現は予後不良因子で
あるものの、FOXA1,
GATA3, p53 発現の臨
床的意義は閉経前後
で異なる可能性が示
唆 さ れ た。 閉 経 前 後
で血清 E1、E2、プロ
ゲステロン濃度は大
きく異なるが、ER 陽
性乳癌の生物学的特
性への関与について
はさらなる検討が必
要である。
大阪労災病院 外科、2 大阪大学大学院医学系研究科 乳腺・内分泌外科
小田 直文 1、島津 研三 2、直居 靖人 2、盛本 浩二 2、下村 淳 2、
下田 雅史 2、加々良 尚文 2、丸山 尚美 2、金 昇晋 2、野口 眞三郎 2
【目的】近年、化学療法の効果と腫瘍浸潤リンパ球との関連が注目を集めてい
る。我々は術前化学療法の系を用いて、乳癌おける化学療法の効果と腫瘍浸
潤リンパ球サブセット(CD8 陽性 (cytotoxic T cell)
、FOXP3 陽性(regulatory
T cell)
、IL17F 陽性(helper T cell)) の関連を明らかにすべく以下の検討を
行 っ た。【 方 法 】Stage II-III の 乳 癌 患 者 180 例 か ら 術 前 化 学 療 法 (weekly
paclitaxel-FEC 療法 ) 施行前に採取したマンモトーム生検腫瘍組織及び、化
学療法後の手術標本における FOXP3、CD8、IL17F 陽性リンパ球を免疫組
織学的に定量した。病理学的完全寛解(pCR)は浸潤癌とリンパ節転移の完
全消失と定義した。【結果】FOXP3 陽性乳癌は陰性乳癌に比して (31.3% vs
5.9%、P < 0.001)、CD8 陽性乳癌は陰性乳癌に比して (25.7% vs 5.6%、
P=0.007)pCR 率が有意に高率であったが、IL17F の発現と pCR は有意な相関
を示さなかった。FOXP3 陽性 /CD8 陽性乳癌(33.0%)は FOXP3 陰性 /CD8 陰
性乳癌(3.7%)よりも pCR 率が有意に高かった(P=0.001)
。また、FOXP3 陽
性乳癌および CD8 陽性乳癌はともに、ER 陰性(P < 0.01)、PR 陰性(P < 0.01)、
Ki67 陽性(P < 0.01)と有意に相関した。多変量解析の結果、FOXP3 と Ki67
のみが独立した pCR の予測因子であった。FOXP3 と Ki67 が共に陽性の乳癌
の pCR 率が 39.0% であるのに対し、FOXP3 陽性 /Ki67 陰性乳癌、FOXP3 陰
性 /Ki67 陽性乳癌、FOXP3 陰性 /Ki67 陰性乳癌の pCR 率はそれぞれ 14.3%
(P=0.014)
,12.0%(P=0.009),2.3%(P < 0.001)と有意に低率であった。
【結語】乳癌の化学療法の感受性には、細胞増殖(Ki67)と腫瘍免疫(制御性 T
細胞、細胞障害性 T 細胞)が関与していること、また、FOXP3 と Ki67 の組み
合わせが臨床的に有用な化学療法効果予測因子になる可能性が示唆された。
297
一般セッション(ポスターディスカッション)
【背景】腋窩リンパ節の転移状況は乳癌の治療を決定するうえで重要な因子で
ある。より的確なリンパ節転移診断が望まれる。われわれはこれまで、食道
癌と肺癌において C-reactive protein (CRP) 1846C > T 遺伝子多型がリンパ
節転移リスク診断として有用であることを報告してきた ( Ann Surg Oncol.
2009 / Ann Surg Oncol. 2013 / Tumor Biology. 2010 )。そこで、浸潤
性乳管癌における CRP 1846C > T 遺伝子多型診断の有用性を検討した。【対
象と方法】2002 年から 2011 年に手術 ( 乳房温存術または乳房切除術、セン
チネルリンパ節生検または腋窩郭清 ) を施行され、病理学的に浸潤性乳管癌
と診断された 185 人を対象とした。患者の血液サンプルから DNA を抽出し、
polymerase chain reaction 法により CRP 1846C > T 遺伝子多型を抽出し、
リンパ節転移との相関を検討した。【結果】対象患者 185 人中、52 人 (28% )
がリンパ節転移陽性であった。CRP 1846C > T 遺伝子型は、C/C (23 人 ) +
C/T (86 人 ) と T/T (76 人 ) であった。C/C + C/T 群、T/T 群の 2 群に分けた
場合、患者背景に差は認めなかったが、病理学的ステージの進行例とリンパ
節転移陽性例は T/T 群で有意に多かった。また、リンパ節転移は、T/T 群で
有意に多かった (Fisher の正確確率検定 P = 0.0049 )。多変量解析でも CRP
1846 C > T 遺伝子多型はオッズ比 2.2 以上でリンパ節転移に関する独立因子
であった。【結論】浸潤性乳管癌において CRP1846C > T 遺伝子多型はリンパ
節転移に関する独立した因子であった。これより、CRP1846C > T 遺伝子多
型は浸潤性乳癌においてリンパ節転移リスク診断として臨床応用できる可能
性が示唆された。
ポスターディスカッション
11646
10018
術前化学療法の治療効果予測因子としての PD-1 および PDL-1
近赤外光イメージングによる腫瘍血管・低酸素を標的とした単
剤 Bevacizumab の治療効果モニターリング
DP-2-027-05
1
DP-2-027-06
昭和大学医学部 乳腺外科、2 昭和大学 病理学講座
1
沢田 晃暢 1、伊達 由子 2、金田 陽子 1、渡辺 知映 1、池田 紫 1、
吉田 玲子 1、桑山 隆志 1、榎戸 克年 1、明石 定子 1、中村 清吾 1
一般セッション(ポスターディスカッション)
背景)腫瘍細胞に発現する PD-L1(programmed cell death 1 ligand-1)が T
細胞上の PD-1 受容体と結合し T 細胞の活性化を抑制する。PD-1 受容体は、T
細胞上にあって T 細胞の活性化を抑制する機能を持っており、自己に対する
免疫反応を抑制するなどの機能が明らかにされている腫瘍細胞は PD-L1 を発
現し、T 細胞中もしくは腫瘍表面に出現する PD-1 受容体と結合することで免
疫反応を抑制し、免疫反応から逃れられることが明らかになった。通常、腫
瘍周囲に出現するリンパ球は T 細胞が 70~80% を占めている。今回、T 細胞
に関与している PD-1 と PD-L1 が腫瘍細胞 (T) と腫瘍細胞周囲のリンパ球浸
潤(TIL)の各々で、発現する割合を乳癌の術前化学療法の治療効果と比較し
検討した。対象と方法)2005 年 1 月から 2012 年 12 月に当院で術前化学療
法を受けた症例で、core needle biopsy の組織標本が免疫染色に適した 88
例を対象とした。T リンパ球に関与している PD-1, PD-L1, FOXP3 を免疫染
色し、染色の割合と術前化学療法における治療効果との関係を検討した。化
学 療 法 の 種 類 は、Taxane 系、Anthra 系、trastuzumab で 分 類 し た。PD-1
と PD-L1 はそれぞれ腫瘍細胞 (T) と腫瘍周囲のリンパ球浸潤 (TIL) につい
て分けて検討した。結果)この 88 症例は 29-74 歳で平均 52 歳。バイオマー
カ ー 別 で は Luminal type:32 例 , triple positive:9 例 , HER-Enrich:19 例 ,
Triple Negative: 28 例であった。免染割合の平均は PD1-T:20.1%, PD1TIL 9.6%, FOXP3 70.8%, PDL1-T 76.7%, PDL1-TIL 38.8% であった。全
症例での治療効果は、PD1-T で therapeutic grade 0,1 vs 2,3 が 10% を基
準に有意差 p=o.0026 を認めた。同様に FOXP3 においても 10% を基準に有
意 差 p=0.014 を 認 め て い た。Luminal と TN type で は 10% 未 満 の 染 色 で
あれば、therapeutic Grade2.3 は存在せず、治療効果を期待できなかった。
PDL1-T は全症例で高染色率のため治療効果を認めなかった。PDL1-TIL では
taxane+Anthra を投与した 61 例の染色率が 60% を超えると pCR が有意に
p=0.021 高かった。さらに、trasutuzumab を投与した症例は、60% の染色
率を境に治療効果(0,1 vs 2,3)が認められた。Luminal type で、PD1-T も
しくは PDL1-TIL 一方の染色が 0% の場合には、21/22 で therapeutic grade
0, 1 であった。逆にそれ以外であれば化学療法の治療効果が期待できた。結論)
PD1-T, PD1-TIL, FOXP3, PDL1-TIL は乳癌術前化学療法の治療効果予測因子
として期待できた。
埼玉医科大学 国際医療センター、2 同 核医学科
上田 重人 1、佐伯 俊昭 1、重川 崇 1、中宮 紀子 1、廣川 詠子 1、
杉山 迪子 1、杉谷 郁子 1、島田 浩子 1、大崎 昭彦 1、久慈 一英 2
(緒言)Bevacizumab の薬理効果は腫瘍の血管新生の抑制だけでなく、血管リ
モデリングにより組織低酸素を改善させることにある。我々は近赤外光イメー
ジングを用いて組織ヘモグロビン濃度(Hb)を測定し、腫瘍血管や組織酸素化
を画像化・定量化する手法により、腫瘍の血液動態が代謝や細胞増殖と密接
に関連することを報告した (BMC cancer 2013)。今回、近赤外光イメージン
グを用いて、Bevacizumab による超早期の血液動態の変化を観察し、治療効
果との相関を検討した。(方法)Stage3/4 の乳がん患者 7 名に Bevacizumab
+ Paclitaxel の標準療法を施行した。初回導入時に単剤 Bevacizumab を投与
し、 拡 散 光 ス ペ ク ト ロ ス コ ピ ー(TRS20:Hamamatsu)を 用 い て 治 療 前
(Day-1)、Day1,Day3,Day6,Day8,Day13 に担癌乳房と対側正常乳房の組織
Hb をマッピングし、腫瘍血液量 (tHb) と組織酸素化 (stO2) を計測した。2 サ
イクル後の FDG-PET で治療効果判定し、同時に FMISO-PET、MRI による腫
瘍の細胞内低酸素と形態学的変化を追跡した。(結果)早期反応群 (R, n = 4)
は非反応群 (NR, n = 3) と比較して、腫瘍縮小が著明で、FMISO による細胞
内低酸素のレベルが低い傾向があった。両群において Bevacizumab 投与直後
から腫瘍 tHb の減少が見られた。NR 群では stO2 は著しく低値で、治療開始
後も大きく改善されない一方、R 群の中には stO2 の著明な改善が見られる症
例を観察した。図は奏功例である。(結論)近赤外光イメージングを用いた腫
瘍血管・低酸素のモニターリングに成功した。これらは Bevacizumab による
腫瘍血管リモデリングの指標になる可能性がある。
11335
10071
当院における乳癌緩和ケアパスの現状について
大阪府三島医療圏乳がん地域連携パスの現状
DP-2-028-01
DP-2-028-02
大垣市民病院 外科
大阪医科大学 一般・乳腺・内分泌外科
森 治樹、磯谷 正敏、原田 徹、金岡 祐次、亀井 桂太郎、前田 敦行、
高山 祐一、尾上 俊介、大塚 新平、川勝 章司、米川 佳彦、千馬 耕亮、
堀米 香世子、渡邉 夕樹
木村 光誠、碇 絢菜、冨永 智、前沢 早紀、佐藤 七夕子、寺沢 理沙、
藤岡 大也、高橋 優子、田中 覚、岩本 充彦
【目的】乳がん患者の数は増加の一途をたどっており、その全てを基幹病院で
対応するのは困難である。当院では 2009 年 1 月から乳癌手術症例に対して地
域連携パスを作成し、開業医と連携して診察にあたっている。また 2010 年 7
月以降は再発乳癌患者に対して緩和ケアパスを導入し、再発後の質の向上に
努めている。当院における緩和ケアパス導入の状況を報告し、その有用性を
検討した。【対象】乳癌緩和ケアパス導入の 2010 年 7 月以降に乳癌で死亡した
31 症例を対象とした。【結果】31 症例の内 12 症例(38%)に緩和ケアパスが
導入された。自宅での看取り症例は緩和ケアパス導入群(以下 A 群)では 5 例
(42%)、非導入群(以下 B 群)では 2 例(11%)と有意に A 群において多かった。
入院での看取り症例における最終入院期間は A 群で平均 24.2 日(7-41 日)、B
群で 19.5 日(2-58 日)であり、両群間に有意な差を認めなかった(P=0.23)。
終末期の質をはかる指標の一つである、最終化療後生存期間に関しては A 群
で 144.2 日(31-411 日)、B 群で 50.2 日(14-155 日)と有意に A 群で長い結
果となった(P < 0.01)。【考察】緩和ケアパス導入のプロセスにおいて癌専門
看護外来を通して精神的看護がなされること、および緩和ケア担当医による
きめ細やかな疼痛コントロールや栄養管理がなされること、ソーシャルワー
カーの介入による介護負担の軽減などが複合的に作用することで、患者のの
ぞむ場所での看取りが可能となり、最終治療(化学療法)後の生存期間が延長
したものと考えられる。緩和ケアパスへの移行時期は再発時を予定している
が、主治医の裁量に任せられており、タイミングを逸した症例も少なくない。
また乳癌地域連携施設が緩和ケアパスの受け皿となることを期待しているが、
全施設で緩和ケアに対応ができるわけではないことも緩和ケアパスの導入が
38%にとどまった理由と考えられる。【結論】緩和ケアパスによって患者のの
ぞむ場所での看取りが可能となる症例が増加し、最終治療後の生存期間も延
長した。今後の課題として地域連携パスから緩和ケアパスへのタイミングを
逸しないスムーズな移行が重要であると考えられた。
【目的】大阪府三島医療圏に属する当院の乳がん地域連携パスの現状と問題点
を検討する。【方法】パスを導入した平成 23 年 3 月から平成 24 年 3 月(H23
年度)、平成 24 年 4 月から平成 25 年 3 月(H24 年度)、平成 25 年 4 月から 9
月(H25 年度)のパス導入例、バリアンス例、患者背景について検討する。ま
たパス導入症例に対するアンケート調査をおこないパスの問題点を検討す
る。【成績】平成 25 年時点で連携保険医療機関は 31 施設。パス導入対象は術
後内分泌療法のみを施行する症例とした。手術件数とパス導入件数の推移は、
H23 年 度 132 例 中 63 例(48%)、H24 年 度 129 例 中 62 例 (48%)、H25 年 度
58 例中 26 例(45%)。このうちバリアンス例は 19 例(30%)、33 例 (53%)、
15 例 (58%) であった。バリアンス原因を検討したところ、最終病理結果判明
により術後化学療法が追加となりバリアンスとなった症例が当初多くみられ
たが、H25 年度では減少していた。一方、患者希望、手続きの不備によりバ
リアンスとなった症例の増加がみられた。アンケート結果からは、パス導入
に伴いこまめなフォローが可能となり安心という意見があった反面、頻回の
通院や検査が煩わしい、医療費負担の増加につながるという意見もみられた。
【考察】バリアンス発生原因の検討から、パス導入患者の適正化が図られてい
るものの、患者・医療者療法へのパスの必要性の啓蒙、パス導入手続きの簡
略化などの改善が必要と考えられた。パス導入に伴い定期通院の医療費負担
の増加がみられるものの、内分泌療法に対するアドヒアランスが向上し、再
発率低下が達成された場合、再発治療費の軽減につながるものと期待される。
298
10860
10757
DP-2-028-03
DP-2-028-04
「広島乳がん医療ネットワーク」における地域連携の現状と問題点
1
ポスターディスカッション
地域で支える乳癌終末期患者の緩和医療
香川乳腺クリニック、2 中央通り乳腺検診クリニック
1
3
香川 直樹 1、稲田 陽子 2
池田 文広 1、安東 立正 1、佐藤 浩二 2、中井 正江 3、竹尾 健 4
【はじめに】乳癌患者にとって望ましい QOL は患者ごとに多様である.特に終
末期には患者・家族が希望するどの場所でも切れ目のない緩和ケアが提供さ
れ,患者や家族が過度の負担を感じることなく安心して療養できることが必
要である.今回,当院の乳癌終末期患者における療養施設の現状とその分析
から今後の終末期医療のあり方について検討した.【対象】平成 19 年 1 月から
平成 25 年 10 月までに当院乳腺内分泌外科で診療した乳癌終末期患者 56 人.
平均年齢は 59 歳(29 ~ 88 歳)で全例が乳癌終末期の告知を受けている.【現
状】1)地域医療の提案は,乳癌再発で余命が 6 ヶ月以内と予想される患者に
対して今後の経過観察として担当医より説明を行う.2)積極的に地域での緩
和医療を希望する患者には,緩和ケア支援チームと医療相談室に介入しても
らい療養施設の選択を行う.3)当初は希望がなくとも,その後の病状の進行
に応じて適宜希望を確認する.地域での緩和医療を希望された患者に対して
は,担当医,緩和ケアチームが本人,家族と面談し,各個人の療養目標(アウ
トカム)を設定することで患者・家族からみた望ましい QOL の達成に努めて
いる.【結果】乳癌終末期患者56人の療養施設は,当院の一般病棟 33 人,療
養型病院 5 人,在宅 6 人,近隣の緩和ケア専門病棟で 12 人を看取って頂いた.
当院に入院した患者のうち 11 人は入院期間が 14 日以内で,在宅療養患者 8
人,療養型病院への入院待ち 3 人,いずれも病状の急変による緊急入院であっ
た.当院以外の地域医療機関もしくは自宅での療養を希望した患者は 23 人で,
設定された療養目標(アウトカム)は,苦痛なく過ごしたいが最も多く,次い
で家族の負担になりたくない,自宅で過ごしたいであった.【展望】現在,前
橋市近隣地区には在宅療養支援診療所 57 施設,療養型病院 19 施設,緩和ケ
ア専門病棟を持つ病院が 4 施設ある.患者・家族の望まれる最善の緩和医療の
ために,院内の地域連携室を中心としてこれらの施設との緩和ケアネットワー
クの構築を更に進めていきたい.
10290
10280
乳癌化学療法における治療費計算ツールの開発及び臨床応用
周術期乳癌患者のうつ状態・QOL 低下に対する軽度運動療法の
有用性について
DP-2-028-05
DP-2-028-06
1
松山赤十字病院 乳腺外科、2 薬剤部、3 がん診療推進室、4 臨床腫瘍科、
5
外科
1
2
川口 英俊 1、橋本 浩季 2、篠崎 恭子 3、村上 通康 3、白石 猛 4、
仙波 昌三 3、西崎 隆 5
【はじめに】がん薬物療法において、医師や薬剤師は効果や副作用を説明し治
療法を選択していただいているが、治療費に関しては十分に説明していない。
医療費について患者から尋ねられた際は、事務職員やメディカルソーシャル
ワーカーに計算を依頼するが、レジメン・スケジュール・投与量などが分か
らず、治療費を即座に計算する事は困難である。一方、商品の購入やサービ
スの利用に当たり、価格は最も重要な判断要素の1つである。そこで、当院
の薬剤師とともに、臨床応用可能な治療費計算ツールを作成し利用している
ので報告する。【治療費計算ツールの開発】Microsoft Excel 2010 を使用して
計算ツールを作成した。作製したツールは、電子カルテ端末からアクセス可
能な共有フォルダ上に配置し、職種を問わず院内の端末より利用できる。利
用者は、レジメンを選択し、身長と体重を入力する事だけで、体表面積等を
自動計算し標準投与量が計算される。その際、投与レジメンにあわせた溶解
剤や制吐剤等の支持療法も含めた金額が、投与回数毎、1 クール毎に自動的に
計算される。又、レジメンごとの金額を同時に表示機能も作成し、レジメン
毎の比較が容易にできるようにした(図)。内分泌療法では、30 日処方、60 日
処方、90 日処方の金額が表示することができる。患者さんの前で計算するこ
とにより、薬物療法の効果、副作用に加え、経済的負担を提示する事が可能
と な っ た。【 今 後
の展開】治療費に
関する情報提供
が、患者の治療法
選択にどのような
影響を与えるかに
ついての報告は少
なく検討する必要
がある。現在、前
向きに臨床試験を
開始している。そ
の内容は本学会に
て当院薬剤師の橋
本浩季が発表する
予定である。
東京慈恵会医科大学 外科学講座乳腺・内分泌外科、
東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 外科
神尾 麻紀子 1、三本 麗 1、加藤 久美子 1、野木 裕子 1、川瀬 和美 2、
鳥海 弥寿雄 1、内田 賢 1、武山 浩 1
【目的】癌患者における精神症状の発症頻度は高く、当施設における検討では
早期乳癌患者のうち約 3 割が手術前にうつ状態と判定された。乳癌患者のう
つ状態に対しては運動療法が有効であるという報告が複数あり、様々な種類
や強度の運動による検討が行われている。本研究では軽度有酸素運動として
ウォーキングを導入することで、周術期の乳癌患者の精神状態や QOL に変化
が見られるか検討した。【方法】手術適応と診断された乳癌患者(臨床病期 0 ~
3)25 名を対象とした。年齢:53.5 ± 12.9 (38-84) 歳。手術後退院時より活
動量測定器を装着させ、退院後の外来受診時までベースラインの身体活動量
測定を行った。手術後 1 ヶ月目より運動(ウォーキングあるいはそれに準ずる
軽度有酸素運動)を行い、身体活動量がベースラインを上回るように指導した。
手術前、手術後 1 ヶ月目(運動開始前)と運動開始後 2 ヶ月目に自己記入式評
価尺度の CES-D(16 点以上でうつ状態と判定)、SF-36v2(包括的健康概念を
8 つの下位尺度で測定)を使用しうつ状態のスクリーニングと QOL の評価を
行った。【結果】運動開始前の平均身体活動量(8.5 ± 5.5 メッツ・時 / 週)と
比較し、運動開始後 2 ヶ月間の平均身体活動量(12.3 ± 6.9 メッツ・時 / 週)
は有意に増加した(p=0.02)。手術前の調査で 25 名中 9 名(36%)が CES-D
によりうつ状態と判定された。手術前、手術後 1 ヶ月目(運動開始前)、運動
開始後 2 ヶ月目の比較で、CES-D の点数は減少傾向を認め、運動開始後 2 ヶ
月目の時点でうつ状態の患者は 5 名(20%)に減少した。SF - 36v2 に包括さ
れる 8 つの下位尺度のうち、心の健康 (mental health) は手術前と運動開始後
2 ヶ月目の比較で改善が認められた(p=0.001)。また、身体的日常役割機能
(role-physical)は運動開始前と運動開始後 2 ヶ月目の比較で改善傾向を認め
た。運動開始後 2 ヶ月間の身体活動量と、運動開始後 2 ヶ月目の CES-D、SF
- 36 の下位尺度のうち身体的日常役割機能(role-physical)
、活力 (vitality)、
精神的日役割機能(role-emotional)の点数は相関関係を示した。【結語】周術
期乳癌患者への軽度有酸素運動の導入は、うつ状態と QOL の改善に寄与する
ことが示唆された。
299
一般セッション(ポスターディスカッション)
【はじめに】広島県では「広島乳がん医療ネットワーク」として、広島県内の乳
癌にかかわる施設をその機能に応じて、検診実施施設・精密検査実施施設・
周術期治療施設・フォローアップ治療施設の4つのグループに分類している。
それぞれに定めた登録要件を満たして、申請のあった施設を登録し、各医療
を分担して地域連携をするシステムで、医療者向けの連携パスと、患者向け「わ
たしの手帳」を作成し、平成 21 年 4 月から使用開始した。当院では、フォロー
アップ治療施設として、725 例の術後乳癌症例を周術期治療施設3病院と連
携したので、その結果と問題点について検討したので報告する。
【結果】連携期間は 1 ~ 56(中央値 34)か月で、術直後から連携したのは 479 例、
術後フォローアップ途中から連携したのは 246 例だった。がん治療連携指導
料算定が可能な症例は 277 例で、「わたしの手帳」を使用したのは 499 例だっ
た。地域連携パスを継続して使用できたのは 574 例だった。パスを継続して
使用した症例のうち、主なバリアンスは 103 例(17.9%)に 108 件生じた。バ
リアンスの内訳は、転居・高齢・地域連携拒否などの患者側因子 37 件(6.4%)、
BOOP・放射線性肺炎・関節痛でホルモン療法変更などの副作用 27 件(4.7%)、
異時重複癌などの他疾患 19 件(3.3%)、再発 15 件 (2.6%)、リンパ浮腫 10
件(1.7%)だった。バリアンスのうち、47 件(43.5%)は、連携施設と連携し
治療した。
【結語】「広島乳がん医療ネットワーク」によって、乳癌の地域連携はスムーズ
に導入されたが、まだまだ各がん拠点病院の努力に負う部分が多い。バリア
ンスを生じて、治療が必要な症例は、連携施設と連携して早急な対応が可能
だった。しかし、周術期治療施設の 3 病院とも、それぞれが別のパスやフォロー
アップ形式をとっており、フォローアップ施設では、個別の対応が必要だった。
今後、より多くの症例をより長期にわたって地域連携を行うことが予想され
る。それらのバリアンス分析をおこなうとともにパスの見直しや、共通した
パスの運用や、作成も必要である。
前橋赤十字病院 乳腺内分泌外科、2 前橋赤十字病院 緩和ケアチーム、
医療相談室、4 マンモプラス竹尾クリニック
ポスターディスカッション
10485
10647
薬物療法を受ける患者に対するカウンセリングと妊孕性温存
~大学での試みから地域ネットワーク発足へ
当院における乳癌患者妊孕性温存治療への取り組み
DP-2-029-01
DP-2-029-02
1
聖マリアンナ医科大学 乳腺・内分泌外科、
聖マリアンナ医科大学附属ブレスト&イメージングセンター 乳腺外科、
3
聖マリアンナ医科大学附属ブレスト&イメージングセンター 放射線科、
4
聖マリアンナ医科大学 診断病理学、5 聖マリアンナ医科大学 産婦人科
2
岡山大学病院 乳癌治療再建センター
枝園 忠彦、露無 裕子、鳩野 みなみ、伊藤 麻衣子、三好 雄一郎、
野上 智弘、岩本 高行、元木 崇之、平 成人、土井原 博義、松岡 順治
土屋 恭子 1、小島 康幸 1、志茂 新 1、速水 亮介 1、川本 久紀 2、
首藤 昭彦 2、杉下 陽堂 5、鈴木 直 5、福田 護 2、津川 浩一郎 1、
澤田 紫乃 5、印牧 義英 3、前田 一郎 4、小島 聖子 1、永澤 慧 1、
岩重 玲子 1、志茂 彩華 1、上島 知子 1、白 英 2、矢吹 由香里 1
一般セッション(ポスターディスカッション)
【背景】乳癌薬物療法が妊孕性や生殖機能に与える影響は挙児希望を持つ乳癌
患者にとって非常に重要な問題であり、こういった患者に対する妊孕性温存
(FP) は生殖医療の進歩および倫理的な面からも今後広く行われることが予想
される。ただし、現時点では対象の選定、カウンセリングの方法、手技の安
全性や予後への影響など明確にされるべき点は多い。当院で開始した妊孕性
に関するカウンセリングと実際の FP の結果とともに、地域のがん専門医と生
殖医療専門医の円滑な連携を実現するため構築したネットワークの活動の現
状を報告する。【方法】2009 年 4 月より当院にて乳腺専門医・外来看護師・生
殖心理カウンセラー・生殖医療専門医により「挙児希望を有するまたはその可
能性のある乳癌患者」に対してカウンセリングを開始した。内容は「乳癌治療
の一連の流れ」「薬物療法の生殖機能への影響」「FP の具体的な方法と乳癌治
療に及ぼす影響」に加えて各患者の家庭や社会的な立場を考慮したその後のラ
イフプランに関する相談等を行った。カウンセリング後希望のあるものに関
しては実際に FP を速やかに行った後乳癌治療を継続した。【結果】2013 年 10
月までに治療を行った 45 歳以下の乳癌患者 149 名中、52 名 (35%) がカウン
セリングを希望した。年齢中央値は 36 歳 (24-45)。未婚患者は 18 名 (35%)
だった。カウンセリングは初診時から初期治療開始後 1 月までの間に行われ、
10 名 (7%) の患者が薬物療法開始前に FP を行った。(卵子温存 5 名、受精卵
温存 5 名)温存を行った患者は全員子供がいなかった。薬物療法は内分泌療法
のみ 1 名 (10%)、化学療法のみ 2 名 (20%)、両方行った患者は 7 名 (70%) だっ
た。逆にカウンセリングを受けて、FP を行わなかった理由は「再発への不安」
「FP がまだ不確実であること」「FP の費用が高い」点が挙げられた。現在この
カウンセリングシステムは若年女性の癌を治療する血液内科・整形外科・小
児科にも広げ、地域の生殖医療専門医とがん専門医を結ぶ「がん患者の生殖医
療を考えるネットワーク」を発足し、これを必要とする患者がスムーズにがん
の治療と妊孕性温存を受けられる環境を作った。【まとめ】45 歳以下の患者の
うち FP 希望は7%であった。異なる環境をもつ患者の中からカウンセリング
や FP を必要とする患者をもれなく効率的に拾い上げて対応するためには、そ
れぞれの専門家が同じ目標のもと密に連携していけるネットワークシステム
が不可欠である。
若年乳癌患者の増加に伴い , 当院では 2010 年より産婦人科と共同で乳癌患者
の妊孕性温存治療に取り組んでいる . 適応症例に対しては卵巣組織凍結等の
治療を行っている . 2010 年 4 月~ 2013 年 11 月に当科より産婦人科へコ
ンサルテーションを行った患者は計 79 名 , 平均年齢は 34.2 歳であった。患
者背景は , 全例が浸潤癌であり , ER+HER2-;55%, ER+HER2+;31%, ERHER2+;2%, ER-HER2-;12% であった . 産婦人科受診後の経過は , (A) カウ
ンセリングのみで妊孕性温存治療なしの患者が 39 名 (49%),(B)卵巣凍結 17
名 (22%), (C) 受精卵凍結 11 名 (14%), (D) 卵子凍結 12 名 (15%) であった . 乳癌患者では , 標準治療である術後 5 年間のホルモン療法を終了する頃には妊
娠が困難な年齢に達している事も多い . 一方 , 術後ホルモン療法の期間を短縮
させる事についての安全性はエビデンスがまだない . 患者の妊娠希望と , 乳癌
再発に関しての安全性確保を両立させるためには , どのような患者において術
後早期から妊娠に向けての治療を再開して良いか検証する必要がある . 妊娠を
希望する乳癌患者の治療には , 診療科や職種を超えた多種の医療者が関わる必
要性があり , 当院では産婦人科との合同カンファレンスを行っている . また ,
妊孕性温存治療への理解を深めるために , スタッフ向けレクチャーや患者向け
冊子作成も企画している . 妊孕性温存についての当院でのこれまでの取り組み
と , 今後の展望について報告する .
11288
10773
若年乳がん患者におけるAMHと月経再開についての検討
センチネルリンパ節生検施行例におけるリンパ浮腫の検討
DP-2-029-03
DP-2-029-04
1
国家公務員共済組合連合会虎の門病院 乳腺・内分泌外科、
2
国立がん研究センター中央病院 乳腺・腫瘍内科、
3
国立がん研究センター中央病院 婦人腫瘍科、
4
筑波大学附属病院 乳腺甲状腺内分泌外科、
5
医療法人浅田レディースクリニック
田村 宜子 1,2、清水 千佳子 2、加藤 友康 3、坂東 裕子 4、浅田 義弘 5、
藤原 康弘 2
【背景】乳がん罹患率の増加に伴い若年の乳がん罹患者数も増加している。現
代女性の出産希望年齢は上昇していることから未産乳がん患者も増加するこ
とが予測され、乳がん罹患後の妊娠出産が予後に影響しないという多くの後
方視的研究から将来の妊娠出産希望する患者は増加すると考えられる。しか
し治療終了後の卵巣機能を治療開始前に予測することは困難であるのが現状
である。生殖医療で卵巣予備能の指標として AMH( アンチミューラリアンホ
ルモン)が用いられるが , 乳がん症例での報告はまだ少ない。【方法】2006 年 1
月~ 2008 年 12 月に初回化学療法を施行された Stage I-III の原発性乳癌症例
で 30 歳未満 6 例に加え 30-35 歳・36-40 歳・41-45 歳の各群から無作為に抽
出した 15 例ずつ 51 例と ,2010 年 9 月以降に化学療法開始前に本研究に同意
した 20 症例全 71 症例のうち , 検討が可能であった 53 例に対し AMH の変化と
月経再開の有無について検討した。【結果】年齢中央値は 36 歳 , 観察中央期間
は 673 日であった。ホルモン受容体陽性 44 例 (83%), 陰性 9 例 (17%),HER2
受容体陰性 42 例 (79%), 陽性 11 例 (21%), アンスラサイクリン系のみ施行 21
例 (40%), アンスラサイクリン系+タキサン系施行 32 例 (60%), 化学療法後
内分泌療法施行 37 例 (70%), 未施行 16 例 (30%), 治療前 AMH 2.44ng/ml 以
上 29 例 (55%),2.44ng/ml 未満 24 例 (45%), 化学療法中に無月経となった
のは 49 例 (92%), 月経停止しなかった症例は 4 例 (8%), 治療終了後月経を認
めたのは 14 例 (27%), 観察期間内に再開を認めなかったのは 39 例 (73%) で
あった。全症例で治療終了直後の AMH 値は測定下限以下まで低下したが、そ
の後回復した症例は 15 例 (28%), 測定下限以下のままの症例は 38 例 (72%)
であった。AMH の回復について Cox’s proportional hazard 解析を行ったと
ころ、治療開始前の AMH が高い症例に有意に回復が認められた(OR 12.0,
95% CI 2.4-218, p=0.0008)。観察期間内の月経再開の有無についての検討
でも治療開始前の AMH が高い症例で有意に月経再開が認められた(OR 10.6,
95% CI 1.9-196.8, p=0.004)。【考察】今回の検討では観察期間を延長した
ことで、AMH 回復症例・月経再開症例共に増加し、各々と治療開始前の AMH
値に相関が認められた。月経再開した症例が妊娠可能である訳でないことか
ら , 治療終了後の妊娠可能性について更に検討を深めてゆく必要があると考え
る。
1
香川県立中央病院 乳腺センター、2 香川県立中央病院 外科
小笠原 豊 1、川崎 賢祐 1、白岩 美咲 1、吉川 武志 2、治田 賢 2、
久保 孝文 2、大橋 龍一郎 2、青江 基 2
【目的】センチネルリンパ節生検では術後にリンパ浮腫を発症させないことが
重要であるが、稀にリンパ浮腫を発症することがある。今回、センチネルリ
ンパ節生検後のリンパ浮腫について検討した。【対象】2008 年 5 月から 2012
年 10 月までにセンチネルリンパ節生検が施行された原発性乳癌 127 例。両
側乳癌は除外した。【方法】センチネルリンパ節生検は、CT リンパ管造影を
補助診断として利用し、RI 法で行った。術後 1 年毎に健側と患側の上腕周囲
径を肘上 10cm、肘上 5cm、肘下 5cm、肘下 10cm、手関節の 5 か所で測定
し、1 か所でも患側の周囲径が 2cm より大きい場合をリンパ浮腫とした。【結
果】術後観察期間は 12 ~ 62 か月 ( 中央値 25 か月 ) で、127 例のうちリンパ浮
腫を発症した症例は 12 例 (9.4% ) であった。発症例 (12 例 ) と非発症例 (115
例 ) で、年齢 (61.9 歳 vs61.5 歳 )、腫瘍径 (1.8cm vs 2.0cm)、術式 (Bt/Bp,
1/11 vs 25/90)、術後ホルモン療法の有無 ( 有 / 無 , 12/0 vs 106/9)、術後
化学療法の有無 ( 有 / 無 , 1/11 vs 21/94)、術後照射の有無 ( 有 / 無 , 8/4 vs
65/50) では、有意差はなかったが、BMI では有意差を認めた (28.6 vs 23.2,
p < 0.0001)。CT リンパ管造影によりセンチネルリンパ節の位置を検討した
ところ、発症例と非発症例で、リンパ節の位置 ( 中心腋窩リンパ節 / 中心腋窩
リンパ節以外 , 7/5 vs 67/48) や腋窩静脈との距離 (36.7mm vs 30.4mm) で
は、差を認めなかったが、皮膚との距離は発症例の方が大きかった (27.5mm
vs 21.4mm, p = 0.0346)。リンパ浮腫発症例の診断時期の中央値は術後 25
か月で、自覚症状を認めた症例はなく、12 例中 7 例で左右差が最少の 2cm で
あった。【結語】センチネルリンパ節生検後においてもリンパ浮腫を認めるこ
とがある (9.4% ) が、全例軽症で自覚症状は認めなかった。肥満例で皮膚と
センチネルリンパ節の距離が大きい症例では術後リンパ浮腫を発症する可能
性が高く、CT リンパ管造影によりリンパ節位置を術前に把握し、剥離範囲の
少ない慎重な術中操作が必要である。
300
ポスターディスカッション
10662
10714
日本乳癌学会会員を対象とした女性医師の労働問題に関するア
ンケート調査結果
当院における乳癌患者に対する就労支援について
DP-2-029-05
DP-2-029-06
1
3
1
大阪府立成人病センター 乳腺内分泌外科、
2
北九州市立医療センター 外科、3 東京医科大学 乳腺科、
4
兵庫県立がんセンター 乳腺外科、5 日本医科大学 乳腺科、
6
JCHO 久留米総合病院 乳腺外科、7 川崎市立川崎病院 一般消化器外科、
8
日本乳癌学会労働問題小委員会
松山赤十字病院 外科、2 松山赤十字病院 乳腺外科、
松山赤十字病院 看護部、4 松山赤十字病院 臨床腫瘍科
越智 友洋 1、川口 英俊 2、篠崎 恭子 3、白石 猛 4、西崎 隆 1
玉木 康博 1,8、阿南 敬生 2,8、河野 範男 3,8、高尾 信太郎 4,8、武井 寛之 5,8、
田中 真紀 6,8、萬屋 京子 2,7,8
10348
11171
BRCA 遺伝子検査を組み込んだ乳癌診療体制の構築
遺伝性乳癌卵巣癌症候群に対する当院での取り組みについて
DP-2-030-01
DP-2-030-02
1
山梨県立中央病院 外科、2 山梨県立中央病院 婦人科、
3
山梨県立中央病院 ゲノム解析センター、4 山梨大学医学部 環境遺伝学、
5
山梨大学医学部 看護学科
1
中込 博 1、坂本 育子 2、中山 裕子 1、古屋 一茂 1、弘津 陽介 3、
雨宮 健司 3、久保田 健夫 4、中込 さと子 5、小俣 政男 3
小林 蓉子 1、川端 英孝 1、田村 宜子 1、門脇 正美 1、三浦 大周 1、
中澤 英樹 1,3、新井 正美 4、下村 昭彦 2、高野 利実 2
国家公務員共済組合連合会虎の門病院 乳腺・内分泌外科、
虎の門病院 臨床腫瘍科、3 中澤プレスセンタークリニック、
4
がん研有明病院 遺伝子診療部
2
【目的】当院ではゲノム解析センター(GAC)を開設し、BRCA 遺伝子変異の検
索を可能とした。自施設での BRCA 検査を組み入れた当院の診療体制と遺伝
性乳癌が想定される患者が示した BRCA 検査に関する意識について報告する。
【方法】山梨県在住の乳癌卵巣癌患者で遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)が想
定される患者を対象に、BRCA1,2 遺伝子変異を解析する研究目的および患者
がその検査結果を知ることの利益・不利益を担当医が説明、検査の実施およ
び開示についての意思を書面で確認。BRCA 検査は連結可能匿名化サンプルと
して、
Ion AmpliSeq BRCA1 and BRCA2 Panel および Ion PGM シーケンサー
(ライフテクノロジー社)を用いて解析した。BRCA 変異陽性者およびその近
親者には臨床遺伝専門医と認定遺伝カウンセラーよる遺伝カウンセリングを
実施する体制を構築した。
【成績】2013 年9月~11月外来を受診した乳癌既
治療の患者626名に詳細な家族歴を聴取した。1 ~ 2 度近親者に乳癌の家
族歴をもつ頻度は 86/626(13.7%), 1~2度近親者に2人以上 40 例 1度
近親者に1人 35 例 2度近親者に1人 11 例であった。そのうち6例は卵巣
癌、4例は膵癌の家族歴が認められた。ホルモンリセプター(HR)Her2 の発
現による subtype 別にみると HR(+)Her2(-) 68例 HR(+)Her2( + ) 6例
HR(-)Her2(+) 6例 HR(-)Her2(-)6 例 であった。家族歴がない症例からも
男性乳癌2例、TNBC 10例 その他 若年発症や両側発症を考慮して96
例を HBOC の素因をもつ症例として BRCA 検査を紹介した。患者の BRCA 検
査に対する受け入れ状況は検査同意・開示希望66例 検査同意・開示拒否
5例 検査拒否13例 返信未12例であった。【結論】自施設での BRCA 検
査を可能とした当院の体制のなかで78%(66/84)の患者は BRCA 検査を積
極的に受ける方向であった。今後 BRCA 変異の有無で生じる患者および家族
の精神的負担について十分な配慮と適切な診療体制の構築が必要であると考
えられた。
301
<背景>近年、遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)に関連した診療が本邦でも
実臨床として行われるようになってきた。遺伝学的検査の結果、BRCA1/2 に
病的変異が確認された場合は、乳房温存療法が相対的禁忌となること、また
リスク低減両側卵巣卵管切除術(RRSO)が選択肢になることの2点を伝える
ことは、HBOC の診療の実際のなかでも特に重要な課題である。<対象と方
法> 2011 年 5 月以降、当院で遺伝性乳癌卵巣癌症候群の可能性があると考え
られた患者のうち、22 例が遺伝検査を実施した。10 例は変異を認めず、3 例
に意義の明らかでない変異を認め、9 例に病的変異を認めた。これら 9 例に関
して、臨床経過を検討するととともに、RRSO を施行した患者と定期的フォ
ローアップの患者について、満足度や QOL などの調査を検討している。なお、
当院では、BRCA 遺伝子変異検査および RRSO 実施については、がん研有明病
院遺伝子診療部および婦人科にお願いしている。<結果と考察> BRCA に病
的な遺伝子変異を認めた 9 例について、乳癌発症時の中央値は 41 歳であった。
9 例のうち 5 例に BRCA1 の病的変異を , また 4 例に BRCA2 の病的変異を認め
た。9 例中 4 例が RRSO を受け、1例が RRSO を予定しており、残りの 4 例は
定期的なフォローアップの予定となっている。BRCA1 に変異を認めた 5 例は
いずれも 50 歳未満のトリプルネガティブ乳癌症例で、卵巣癌あるいは濃厚な
乳癌の家族歴を有していた。卵巣癌は早期発見が難しく、また進行癌の予後
は不良であり、このため遺伝子変異を認める患者に対する卵巣癌対策は重要
である。また、RRSO に関する調査や患者の声はまだ少なく、結果を臨床に
還元していくことは意義のあることだと考える。<まとめ> BRCA1/2 に病的
変異が確認された 9 例を中心に、文献的考察を加え報告する。
一般セッション(ポスターディスカッション)
【背景】近年、乳腺専門医を目指す女性医師が増加している。出産や育児、介
護などによるキャリアパスの中断、休職等に伴う同僚医師の労働負担増加、
復職時の再教育など、女性医師をとりまく労働環境には様々な問題が存在し
ている。そこで日本乳癌学会労働問題小委員会では、女性医師の休職・復職
およびキャリア継続における課題を明らかにするため日本乳癌学会会員を対
象にアンケート調査を行った。【方法】平成 25 年度日本乳癌学会評議員会なら
びに第 21 回日本乳癌学会学術総会期間中(6 月 27 日 -29 日)に無記名による
アンケート調査を行った。評議員会では全員にアンケート用紙を配布して回
収し、総会期間中は受付付近に用紙をおいて自由意思により記入されたもの
を回収した。【結果】320 名からの回答を得た。女性 117 名(一般会員 78 名、
評議員 39 名)、 男性 198 名(一般会員 36 名、評議員 162 名)で、女性会員の
関心が高いことが示された。年齢分布は女性では 40 歳代(34.4%)、男性で
は 50 歳代(51.0%)が最も多かった。また管理職の割合は男性では 53% で、
女性は 21% であった。このような背景でのアンケート結果では、男女ともに
約 60% が女性医師の結婚がキャリアプランに影響すると考えていることがわ
かった。出産・育児・介護に関しては男女とも約 40% が現在の職場ではその
ための休暇を取りやすいと考えている反面、93% がキャリアパスの中断や同
僚の仕事量が増加することを危惧し、女性の 64%、男性の 55% が職場の理
解が必要と答えた。また、復職にあたっては元の職階級や収入(14%)より、
託児所・ベビーシッターを確保できること(79%)を重視すると回答した(複
数回答あり)。女性医師が仕事と育児などを両立するために必要なシステムと
しては、51% が院内託児所、46% が職務軽減措置、44% が複数担当医制、
37% がフレックスタイム制、35% が時間内就労制を選択した(複数選択可)。
【考察】女性医師が出産・育児・介護などのための休暇を取りやすい環境とし
て職場や同僚の理解が重要であり、そのための人的、経済的支援対策が必要
と考えられる。また復職にあたっては、託児所やベビーシッターなど子供を
預けることのできる環境が整っていることが最も重視されており、行政だけ
でなく各施設での対応も考慮する必要があると思われる。
【背景】一般の人にとって「癌は治り難い大病」というイメージから、癌と診断
されると、依願退職するなどの早まった決断をすることが少なくない。実際
に「癌患者の就労と家計に関する実態調査 2010(CSR project)」によると、
癌と診断された後、少なくとも 3 割は職を失い、16% は依願退職している。
また一方で、一端職を失うと、再就職するのは非常に困難である。【目的】乳
癌と診断された患者さんに対し、就労に対する調査を行い、助言と積極的な
介入を行っているので、その効果を検証する。【対象と方法】2013 年 4 月より
11 月までに、乳癌と診断し告知を行った患者さんを対象とした。告知に際し、
年齢・家族背景・職種・勤務形態・職場環境などを調査した。就労がありと
答えた患者さんに対して、1. 仕事を止めようと思っても、その判断を先送り
する事。2. 再就職は非常に困難である事。3. 会社側に辞めることを勧められ
た場合、主治医より会社の人事担当者に説明する事も可能である事。の3つ
の助言を伝え、必要があれば、患者の同意のもと職場に対し主治医より介入
を行った。その後通院時に就労の継続状態を調査した。【結果】50 症例の乳癌
患者が対象となった。8 名が就労者であり、そのうち 1 名(12.5%)が退職し
た。退職した 1 名は乳癌と診断される前より辞職する事が決まっていた。退
職者を除いた 7 名のうち、会社より辞職を勧められたのは 2 名であり、2 名と
も主治医の働き掛けで解雇を免れた。1 名は主治医からの助言のもと患者が会
社と相談することで就労の継続が可能となり、1 例は人事担当者と主治医が面
談し、会社側が療養に有利な勤務形態をとれるように配慮してくれた。また、
退職していない 7 人中休職者が 2 名いるが、就労に関する助言を繰り返し、2
人とも復職予定である。【まとめ】乳癌診断後の就労問題に対し、調査、助言
そして積極的な介入を行う事により、退職を減少させる可能性が示唆された。
今後は症例を重ねると同時に、この取り組みに対するアンケートによる調査
を予定している。
ポスターディスカッション
10671
11270
遺伝性乳がん卵巣がん症候群を疑う患者に対する遺伝カウンセ
リングと予防的両側卵巣卵管切除の有用性の検討
家族集積性の高い乳がん症例における治療法の選択について
DP-2-030-03
DP-2-030-04
北野病院 乳腺外科
愛知県がんセンター中央病院 乳腺科
山内 清明、大瀬戸 久美子、吉本 有希子、萩原 里香、高原 祥子
堀尾 章代、藤田 崇史、澤木 正孝、近藤 直人、服部 正也、権藤 なおみ、
井戸田 愛、市川 茉莉、安立 弥生、石黒 淳子、小谷 はるる、久田 知可、
岩田 広治
一般セッション(ポスターディスカッション)
【目的】遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)に於いて温存療法は相対禁忌と
されている。家族集積性から HBOC を疑うが、遺伝子検査を希望されない症
例においては術式の決定に苦慮することが多い。今回は当院で経験した遺伝
子検査を希望されない症例での術式決定までの経過を報告し、その方針を考
【背景】BRCA 遺伝子変異をもつ女性に対する予防的乳房切除術(PM)は乳癌発
察する。【対象症例】2013 年 12 月までに遺伝カウンセリンを受けられた方は
症リスクを減少させ , さらに予防的両側卵巣卵管切除術(PBSO)においては卵
38 名で、そのうち9名に術前カウンセリングを実施した。さらにうち 5 名が
巣癌 , 卵管癌 , 乳癌の発症リスクと総死亡率を減少させる事は確実である . し
術前に遺伝子検査を受け、1 名に BRCA2 の変異を認めた。この HBOC 症例に
かし現在 PM や PBSO は保険適応がなく , 早急に実施可能な環境を整える必要
は患側にのみ乳頭合併皮膚温存乳腺全摘(SSM)およびセンチネルリンパ節生
性がある 【
. 目的】当院において BRCA 遺伝子変異をもつ患者に対して PM と
検(SNB)を施行したが、今回は HBOC が強く疑われたが術前には遺伝子検査
PBSO を提供できるよう体制整備を進めている.そこで乳癌と卵巣癌の手術を
を実施しなかった4症例を提示する。1)28 歳の妊娠中 Triple negative(TN)
施行した患者を対象に , 乳癌発症時に HBOC のリスクを適切に評価した場合の
症例で母が TN 乳がん再発、祖母が乳がんのため 35 歳で他界。希望により遺
遺伝カウンセリングや PBSO の有用性を検討した 【
. 対象】1990 年~ 2013 年
伝子検査は施行せずに、出産後に乳房切除術(BT)およびセンチネルリンパ節
当院において卵巣癌の手術を施行した 812 人中 58 人(7%)で乳癌の既往を認
生検(SNB)を施行、その後術後補助化学療法を施行した。卵巣がんリスクを
め , 当院で乳癌の手術を施行した 34 人のうち乳癌を先行して発症した 31 例を
知るためにためいずれ遺伝子検査は受けたいとのことである。2)35 歳の女
対象とした 【
. 方法】乳癌発症時に NCCN ガイドラインにより遺伝カウンセリン
性で乳頭分泌を主訴として来院。超音波検査で右 CD 領域に径 1cm の LDA を
グが推奨された症例の割合 , 卵巣癌発症までの期間 , 卵巣癌の発見動機 , 乳癌・
認めた。針生検の結果 TN 乳がんであったため、遺伝カウンセリング施行した
卵巣癌の臨床病理学的特徴 , 予後などを後方視的に検討した 【
. 結果】乳癌発症
が、遺伝子検査は希望されなかった。術式は相談の結果、SSM + SNB を選択
年齢中央値 48 歳(31-75), 卵巣癌発症年齢中央値 62 歳(41-80),乳癌発症か
された。3)40 歳の Luminal A の左乳がん症例で、喉頭がんの母親以外の血
ら卵巣癌発症までの期間中央値 7 年(0-37). 乳癌発症時 NCCN ガイドライン
縁者が海外在住で、家族歴が不明であったため遺伝カウンセリングを受けた
一次拾い上げ対象者は 22 人(70.9%)であった . 乳癌の病理学的特徴:ER
が、母親が遺伝子検査に同意しなかった。病変は左 CD 領域に広く散在して
陽 性 16 例(51.6 %),Triple negative9 例(29 %). 充 実 腺 管 癌 8 例(25.8 %),
いたために SSM+SNB を施行した。4)39 歳の TN 両側乳癌症例で、8 年前の
乳頭腺管癌 7 例(22.5%), 硬癌 7 例(22.5%), 髄様癌 4 例(12.9%). 卵巣癌
術後症例であるが、姉も若年性乳がんで死亡していたため HBOC を疑い相談
発見動機:腹部膨満・腹痛などの自覚症状 13 例(41.9%), 他疾患精査中の画
の結果 SSM+SNB とシリコン再建術を施行した。今回遺伝子検査を行ったと
像検査 7 例(22.6%). 卵巣癌の病期:1 期 7 例(22.6%),2 期 4 例(12.9%),3
ころ、BRCA1 に変異を認めた。倫理委員会でリスク低減卵巣卵管切除術の施
期 15 例(48.4 %),4 期 5 例(16.1 %). 17 例(54.8 %)が 漿 液 性 腺 癌 で あ っ
【考察】術前に遺伝カウンセリングを実施した9例中5例は
た , 卵巣癌発見時 CA125 上昇は 28 例(90.3%)で認めた . 乳癌の再発 2 例 行が承諾された。
術前に遺伝子検査を実施した。遺伝子検査を希望しなかった残り4例は遺伝
(6.5%), 卵巣癌の再発 11 例(35.5%), 乳癌による死亡 0 例 , 卵巣癌による死
カウンセリングの後に、家族歴からも自身は遺伝的要因が濃いと判断し、BT
亡 9 例(29%)であった 【
. 結論】乳癌を先行した卵巣癌患者の 70%が乳癌発症
あるいは SSM を選択した。一方乳房温存療法を選択した場合は慎重な術後の
時の遺伝カウンセリング対象症例であり , 卵巣癌発見時 90%の症例で CA125
フォローが必要と考える。また卵巣がんリスクを知るために将来的にはどこ
の上昇を認めたが , 多くが病期 3 以上の進行癌であった . BRCA 遺伝子変異の
かで遺伝子検査を実施すべきであると考える。
有無は明らかではないが , これらの HBOC を疑う症例において , 遺伝カウンセ
リングや腫瘍マーカーの測定が卵巣癌の早期発見につながり , さらに RBSO に
よって卵巣癌を予防できた可能性が示唆された .
10646
10331
HBOC 診療の取り組みと課題:二次予防検診における MRI ガイ
ド下生検を用いた乳癌早期発見の試み
Ion PGM シーケンサーを用いた BRCA1/2 遺伝子の包括的な
変異検出法の確立
DP-2-030-05
DP-2-030-06
1
広島大学病院 乳腺外科
地方独立行政法人山梨県立中央病院 ゲノム解析センター、
地方独立行政法人山梨県立中央病院 乳腺外科、
地方独立行政法人山梨県立中央病院 婦人科、
4
山梨大学大学院医学工学総合研究部 環境遺伝医学講座、
5
山梨大学大学院医学工学総合研究部 看護学科
2
恵美 純子、梶谷 桂子、網岡 愛、小林 美恵、重松 英朗、松浦 一生、
舛本 法生、春田 るみ、片岡 健、角舎 学行、岡田 守人
【背景と目的】遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)診療は、乳癌診療における重要
課題であるが、高価な検査料や遺伝子診療体制の整備、一次予防の倫理的問
題、卵巣癌に対する二次予防検診の確立など、未だ課題は多い。HBOC 症例
に対する二次予防としての乳がん検診では年一回の MRI を施行するが、この
ような二次予防検診中には MRI のみで指摘される早期病変が予測される。そ
こで、当院では MRI ガイド下に穿刺吸引組織診(バコラ)を用いた組織診を行っ
ているが、精度や保険適応の問題もある。【方法】BRCA1/2 遺伝子検査施行者
の遺伝子変異陽性の有無について検討し、遺伝子変異陽性者に関しては、ガ
イドラインに従った乳癌・卵巣癌二次予防検診を推進し、陽性者における乳癌・
卵巣癌の発症率を解析する。また、遺伝子変異陽性者に対する乳癌二次予防
検診では年一回の MRI 検査を施行し、MRI のみで指摘された病変に対しては
MRI ガイド下生検を行う。【結果】2012 年 8 月~ 2013 年 12 月の遺伝カウン
セリング受診者は 26 例(院内乳腺外科 20 例、婦人科 1 例、院外 5 例)で、そ
のうち遺伝子検査を実施したのは 9 例であった。遺伝子検査を実施した 9 例中、
BRCA1/2 遺伝子変異陽性者は 4 例、検査結果待ち 2 例であった。変異陽性者
は二次予防検診を行っているが、現在のところ新たな悪性病変の指摘はない。
【考察】HBOC 対象者に関する診療を通常の保険診療で行う場合、対象者をカ
ウンセリングにリクルートすることはできても、高額な検査費用の問題など
で遺伝子検査実施率は低下するのが現状である。当院では BRCA1/2 遺伝子変
異陽性乳癌患者に対しては、卵巣および付属器摘出手術を含めた卵巣癌に関
する HBOC 診療を準備しており、今後も症例を集積し報告したい。また、遺
伝子変異陽性者に対する乳癌二次検診予防では年一回の MRI も施行している
が、当院では MRI でのみ指摘された病変に対しては MRI ガイド下生検を行い、
乳癌の早期発見に努めている。このように乳癌・卵巣癌に対する一次 / 二次予
防検診体制を整え、BRCA1/2 遺伝子検査によって享受される乳癌・卵巣癌に
関する予防検診の有効性とメリットを検討し、ハイリスク患者の BRCA1/2 検
査の意義、必要性とメリットを啓発していくことが課題である。
3
弘津 陽介 1、雨宮 健司 1、中込 博 2、坂本 育子 3、久保田 健夫 4、
中込 さと子 5、小俣 政男 1
【目的】BRCA1 と BRCA2 遺伝子(BRCA1/2)は、DNA 損傷に対して相同組換
え修復をし、ゲノム安定性を維持する機能を持つ。BRCA1/2 遺伝子の生殖系
列細胞変異は、乳がんや卵巣がんを高率に発症させ、遺伝性乳がん卵巣がん
症候群(HBOC)の原因と考えられている。しかしながら BRCA1/2 の変異は、
遺伝子上に散在的に生じるため、BRCA1/2 遺伝子のすべてのエクソン領域に
コードされる全 5281 アミノ酸の配列を決定する必要がある。巨大なタンパク
質である BRCA1/2 の全エクソン領域の配列を解析することは自施設では困難
であった。本研究では、Ion PGM シーケンサー(ライフテクノロジー社)を用
いて BRCA1/2 遺伝子の全塩基配列を解析するシステムを構築したので報告す
る。
【方法】BRCA1/2 遺伝子検査に同意を得た 17 名の患者から採血をし、ゲノ
ム DNA を 抽 出 し た。 ゲ ノ ム DNA を 鋳 型 に BRCA1/2 の 全 エ ク ソ ン 領 域 を
Ion AmpliSeq BRCA1 and BRCA2 Panel を用いて増幅しライブラリーを作
成した。シークエンス反応は Ion PGM シーケンサーを使用した。シークエ
ンス解析はレファレンスゲノムへのマッピングを Ion Torrent サーバーで行
い、変異検出は Variant Caller を用いて同定した。シークエンス解析の結果、
BRCA1/2 全エクソン領域の増幅を確認した。
【結果】17 名中 2 名 (11.8%) の患者に BRCA1/2 遺伝子の病的変異を認め、そ
のうち 1 名は nonsense 変異、もう 1 名は frameshift 変異であった。これらの
変異の有無はサンガーシークエンス法で再検証を行った。また病的変異を持
つ1名の家系においては、近親者の遺伝子変異解析も実施した。
【結論】自施設で BRCA1/2 遺伝子検査を実施する体制を整えることができた。
今後、この遺伝子検査を組み入れた遺伝性乳がん卵巣がん症候群の診療・治
療の展開が期待される。
302
ポスターディスカッション
10320
10473
マンモグラフィで所見が認められなかった乳癌症例の臨床病理
学的特徴の解析
デュアルモードトモシンセシスによる臨床性能評価
DP-2-031-01
DP-2-031-02
1
名古屋医療センター 臨床研究センター高度診断研究部、
名古屋医療センター 放射線科、3 名古屋医療センター 乳腺科、
4
国立病院機構浜田医療センター 乳腺科、5 香川県立中央病院 乳腺科、
6
公立学校共済組合東海中央病院 外科、
7
富士フイルム株式会社 機器システム開発センター、
8
名古屋医療センター 研究検査科病理、9 国立病院機構東名古屋病院 乳腺科
2
信州大学医学部附属病院 乳腺内分泌外科
大場 崇旦、家里 明日美、岡田 敏宏、花村 徹、渡邉 隆之、金井 敏晴、
前野 一真、伊藤 研一
【はじめに】40 歳以上に視触診と MMG 併用による検診が推奨されており ,US
併用に関しての是非も問われている ,MMG 陰性乳癌の臨床病理学的特徴を解
析し ,MMG 検診,ならびに視触診 ,US 併用の意義について検討した 【
. 対象と
方法】2008 年 1 月 -2012 年 12 月に当科で手術を施行した乳癌症例のうち , 病
理学的特徴を解析するため初診時 stageIV 症例 , 術前化学療法施行症例を除い
た 470 例について ,MMG 陰性群 71 例 (15.1% ),MMG 陽性群 399 例 (84.9% )
に分け , 臨床病理学的特徴を解析した .MMG 読影認定 A 判定を有する医師が複
数で確認し C-2 以下であった症例を MMG 陰性乳癌とした 【
. 結果】MMG 陰性
群で有意に年齢が低く (P < 0.01), 背景乳腺は高濃度や不均一高濃度が多かっ
た (P < 0.01). また腫瘍の局在に関して,MMG 陰性群では統計学的有意差は
認めないものの,E 領域に多い傾向を認めた . 年齢別の偽陰性率は 40 歳未満
37.9% ,40 歳以上 70 歳未満 15.5% ,71 歳以上 8.1%であり , 年齢が低いほど
偽陰性率が高かった . 病理学的には MMG 陰性群と陽性群で腫瘍径はそれぞれ
0.59 ± 0.69,1.53 ± 1.49cm, リンパ節転移陽性例は 10 例 (14.1% ),117 例
(29.3% ) で ,MMG 陰性群で有意に腫瘍径が小さく (P < 0.01), リンパ節転移
陽性例も有意に少なかった (P < 0.01). また臨床病期も MMG 陰性群で有意に
低かった (P < 0.01).ER,PgR,HER2 に有意差は認めなかった。MMG 陰性群で
は局所所見として腫瘤触知を 30 例 (42.3% ),乳頭分泌を 10 例 (14.1% ) に
認めたが ,E 領域の病変では局所所見を認めなかった . しかし , 超音波検査では
全例に所見を認め , 腫瘤形成性病変 53 例 (74.6% ),腫瘤非形成性病変 18 例
(25.4% ) であった .DFS,OS に関しては 2 群間で有意差は認めなかった 【
. 考
察】低年齢 , 背景乳腺が高濃度もしくは不均一高濃度 , 小さな腫瘍径が MMG 偽
陰性の要因となる可能性がある .MMG 陰性乳癌は 56.4%に局所所見 ,100%に
US 所見を認め , 腫瘍径が小さく , リンパ節転移陰性例が多いことから , 視触診
併用 ,US 併用は早期発見や診断精度向上には有用ではあると思われ ,US 併用
に際しては特に E 領域の所見の有無に留意すべきと思われた . これまでのとこ
ろ DFS,OS に差を認めていないが , 観察期間が短いためとも考えられ , 視触診
併用 ,US 併用検診が乳癌死亡率減少に寄与する可能性に関しては更なる検討
を要する .
遠藤 登喜子 1,2,3,9、大岩 幹直 1,2,3、森田 孝子 1,3、須田 波子 1,3、
吉川 和明 1,4、白岩 美咲 1,5、林 幸枝 1,2、堀場 隆雄 6、佐藤 康幸 3、
千代 知成 7、荒井 毅久 7、市原 周 1,8
11421
11325
ステレオガイド下マンモトーム (SMT) 適応決定における石灰化
カテゴリー 3 の二段階評価の検討
乳腺造影超音波検査による乳頭側への乳管内進展の評価法と有
用性についての検討 DP-2-031-03
1
3
DP-2-031-04
市立貝塚病院 乳がん高度検診・治療センター放射線科、2 同・乳腺外科、
同・病理
旭川医科大学 乳腺疾患センター
林 諭史、北田 正博、石橋 佳、松田 佳也
沢井 ユカ 1、西 敏夫 2、中野 芳明 2、井上 共生 2、中矢 泰裕 1、
矢竹 秀稔 1、亀山 澄子 1、山崎 大 3、稲治 英生 2
【目的】ステレオガイド下マンモトーム (SMT) は非触知石灰化の診断に有効だ
が、適応を拡げすぎると乳癌検診において過剰な精密検査という不利益の増
加につながる。当院では診療マンモグラフィ (MMG) のカテゴリー 3(C3) を、
C3-1( 良性疑い )、C3-2( 悪性否定できず ) の 2 段階に分けて評価している。
SMT を施行した石灰化 C3 症例を retrospective に調査し、2 段階評価の妥当
性と SMT の適応症例の選択に寄与する可能性を検討した。【対象と方法】SMT
を 施 行 し た 連 続 症 例 276 例 中、MMG で C3 で あ っ た 164 症 例 に つ き C3-1,
C3-2 の 二 段 階 に 評 価 し SMT の結果および手術での結果を比較検討した。
C3-1 は微小円形石灰化優位で濃度が高く均一、石灰化の分布密度が疎なもの
等とし、淡く不明瞭な石灰化優位、高密度、過去画像と比較して石灰化の増
加などを C3-2 とした。
【結果】
C3-1 群は 61 例で、SMT の結果は悪性 3 例 (5%)、
境 界 6 例 (10%)、 良 性 52 例 (85%)。C3-2 群 103 例 で、 悪 性 27 例 (26%)、
境界 14 例 (14%)、良性 62 例 (60%)。C3-2 群で悪性の割合が有意に高かっ
た (p < 0.00001)。また C3-1 群の悪性 3 例の手術結果はいずれも non-highgrade DCIS であったのに対し、C3-2 群の悪性及び境界例中 7 例が浸潤癌、3
例が high-gade DCIS であった。【結論】SMT の結果から石灰化 C3 症例の 2 段
階評価は妥当性があり、C3-1 症例での診療方針は SMT の代替方法として画像
による経過観察が選択肢となりうる可能性が示唆された。
【目的】ペルフルブタン (Sonazoid) による造影超音波検査 (CEUS) はベッドサ
イドで簡易に腫瘍の微細血流を評価できる点で,他モダリティより利点があ
る.今回,乳房温存手術における切除範囲の決定に関し,乳頭側への乳管内
進展を診断可能かどうか,乳房造影 MR マンモグラフィ (MRM) と比較し検討
した.【対象】2013 年 6 月から 2013 年 12 月までに当科で連続して施行した乳
房温存手術 80 症例のうち,ペルフルブタンの使用に同意が得られた患者 33
例を対象とした.【方法】CEUS は全身麻酔導入後,ペルフルブタン懸濁液を添
付文書の通りに投与し,ハーモニック B モードで撮像した.超音波診断装置
は Aplio400 (TUS-A400,TOSHIBA),探触子はリニア式電子スキャンプロー
ブ (PLT-1204BT,TOSHIBA) を用いた.乳頭側の造影所見が不均一であった
り,ちらちらと造影が持続する場合に進展陽性と診断した.また MRM,非造
影超音波検査 (US) と比較し,感度・特異度について検討した.なお,永久病
理標本で乳頭側に癌が露出しているものを断端陽性と定義した.【結果】施行
症例は断端陽性 15 例,断端陰性 18 例で,全例女性であった.平均年齢は断
端陽性で 56.2 歳,陰性で 54.9 歳であった.CEUS では,永久標本における断
端陽性 15 例中 13 例で乳頭側に不均一な造影効果を認めた.また,CEUS の造
影効果は腫瘤本体と同様の所見のものが多かった.MRM で乳頭直下までの造
影効果を認めた症例は,CEUS では正常血管や乳管拡張像として描出され,断
端陰性と判断できた.US で乳頭側に低エコー領域を認めた症例では,CEUS
を行うことで,確診度 ( 検者が断端陽性あるいは陰性と診断する程度 ) を上
げることができた.各モダリティにおける感度・特異度・陽性的中率・陰性
的 中 率 は,CEUS(81%,83%,81%,83%),MRM(46%,79%,60%,
68%),US(40%,79%,60%,63%) であった.有害事象は認めなかった.
【考察】造影剤の性質の違いから,CEUS は MRM に比べ,正常血管と腫瘍の微
細な血流を区別できるため,感度あるいは特異度の上昇に寄与できる可能性
がある.手術室でリアルタイムに検査が施行可能な点においても,MRM と比
較し有用である.さらに,造影することで,US に比べ,断端評価に対する確
診度が高くなり,乳腺切除範囲の決定の一助となると考える.
303
一般セッション(ポスターディスカッション)
【目的】同一被験者の 2D 画像を Reference としてトモシンセシス画像を追加
読影することで得られる臨床効果を検討する。 【方法】H25.8.19 から精密検
査目的に当院に来院し、かつ、本研究に参加同意した被験者 85 症例から 2D
画像とトモシンセシス画像(ST モード:撮影角度± 7.5deg、HR モード:撮
影角度± 20deg、それぞれ 43 症例、42 症例ずつ)を収集した。精中委 A 認定
読影医 7 人の読影者が、最初に 2D 画像のみ、引き続いて ST モードまたは HR
モードのトモシンセシス画像を追加して、病変の位置、所見、カテゴリー分
類および悪性度を記録した。得られた読影結果から、感度、特異度、要精査率、
ROC 分析 (DBM MRMC 2.2) による AUC 値を比較した。 【成績】ST モードの
群では、感度:2D 画像単独とトモシンセシス画像で 64.9% と 74.4%(向上
率 1.15 倍、p < .01)、特異度:2D 画像単独とトモシンセシス画像で 89.4%
と 89.0%(向上率 1.00 倍、p=.73)、HR モードの群では、感度:2D 画像単
独とトモシンセシス画像で 52.9% と 68.9%(向上率 1.30 倍、p < .001)、特
異度:2D 画像単独とトモシンセシス画像で 94.0% と 88.9%(向上率 0.95 倍、
p < .01)となった。また、AUC 値は 2D と ST モード、2D と HR モードでそれ
ぞれ 0.919 と 0.963(p=.05)、0.856 と 0.875(p=.61)となった。 【結論】
HR モードでは、2D 画像単独に対して感度の向上率は大きいが、特異度が低
下した。この原因は小腫瘤、乳腺症および乳管拡張など、2D 画像では描出で
きない小さな病変を描出したためであるが、読影の感度が高く、病変などの
構造を詳細に描出できるため、精密検査での利用が期待されることが示唆さ
れた。一方、ST モードは HR モードほどの感度向上はなかったが、2D 画像単
独よりも高い感度で特異度が同等となっていることから検診での利用が期待
できることが示唆された。トモシンセシス画像では、現在のカテゴリー分類
の C3 以上を要精査とすると、特異度の低下が避けられない。このため、C3
を C3-1( 経過観察 ) および C3-2( 要精査 ) とすることで、感度の向上と偽陽性
抑制による得意度の向上を両立できる可能性が示唆された。今後、症例数を
増やして、臨床効果と AUC 値の更なる検証を進める。 ポスターディスカッション
10407
10563
ソナゾイドを用いた造影超音波検査による腋窩リンパ節の術前
良悪性度診断
乳癌手術症例における造影 CT での偶発的検出病変に対する
RVS を併用した Second-look US の有用性
DP-2-031-05
1
2
DP-2-031-06
社会福祉法人北海道社会事業協会帯広病院 外科、
社会福祉法人北海道社会事業協会帯広病院 臨床検査科
千葉大学大学院医学研究院 臓器制御外科学
永生 高広 1、松澤 文彦 1、阿部 厚憲 1、鈴木 崇 1、濱口 純 1、及能 健一 1、
加賀 輝美 2、田村 悦哉 2、高田 裕美子 2、大村 雅子 2、竹田 千恵 2、
藤部 綾子 2
一般セッション(ポスターディスカッション)
【目的】乳癌患者の腋窩リンパ節に対する術前良悪性度診断は現在超音波検
査や CT・MRI、PET-CT といった画像検査を用いて行われているが感度・特
異度とも十分な結果とは言えないのが現状である.大きさや形状などの形態
学的評価に加え血流評価を実施するとさらに正診率が向上するとの報告が認
められる。第二世代造影剤であるソナゾイドを用いた造影超音波検査(以下
CEUS)ではカラードプラーを用いた画像と比較しさらに微細な血流信号をと
らえることが可能である。以上より我々は現在用いられているモダリティー
(CT、カラードプラー)と CEUS による腋窩リンパ節の術前良悪性度診断につ
いて検討を実施した。【方法】対象は当院において 2013 年 7 月以降に行われた
乳癌術前患者 14 名。方法は術前検査として造影 CT 検査、カラードプラーを
含む超音波検査、CEUS を行い術前腋窩リンパ節の良悪性度診断を実施。そ
の後の病理結果との比較検討を実施した。【結果】各モダリティーの正診率は
CT 10/14(71%)、カラードプラーを含む超音波検査 11/14(79%)、CEUS
14/14(100%) と CEUS の高い診断能を認めた。カラードプラーでリンパ節へ
の血液の流入がリンパ節門からのみと判断し良性と診断したが CEUS でリン
パ節門だけではなく他方向からもリンパ節に流入しているのが明瞭となり悪
性と術前診断を変更したものが 2 例。逆にカラードプラーでリンパ節門以外か
らリンパ節に血流を認め悪性と診断したが CEUS を用いることですべての血
流がリンパ節門からのものであることが明瞭となり良性と術前診断を変更し
たものが 1 例存在した。【結論】CEUS を用いたリンパ節の良悪性度診断の正診
率は現在のところ 100%。リンパ節への血流評価が術前良悪性診断に有用で
ある。
榊原 淳太、長嶋 健、榊原 雅裕、三階 貴史、藤本 浩司、鈴木 浩志、
大久保 嘉之、椎名 伸充、藤咲 薫、宮崎 勝
造影 CT や MRI は US や MMG では検出できない多発病変の検出に優れており、
同側の多発病変の存在は乳房温存手術の適応を決定する際の重要な因子であ
る。しかしながら造影 CT や MRI などにより描出された病変を US で同定する
際、区域性の進展を伴う非腫瘤性病変や多発病変の場合はその同定に苦慮す
ることも少なくない。そこで当科では US 単独では同定困難な病変について
は、US 画像とそれに一致する CT の再構築画像を同期させ、同一モニター上
に並列表示させる画像診断装置である Real-time Virtual Sonography( 以下
RVS) を活用している。RVS は US や MMG で同定されず、CT や MRI で指摘さ
れた偶発病変を second- look US で同定する際や良悪性を問わず関心病変の
継時的な観察の際、センチネルリンパ節を同定する際に使用されるなど、そ
の適応については多岐に渡っている。その中でも主に当科では second-look
US の際に US 単独では同定困難な病変について CT 画像と US 画像を同期させ
た RVS を施行している。近年、RVS の有用性についての報告も認められるよ
うになってきており当科における RVS の有用性について検討した。【患者方
法】2012 年 10 月~ 2013 年 11 月の原発性乳癌と診断された、42 症例、82
乳房。全例に対して造影 CT、腹臥位造影 MRI 施行し偶発的に検出された病変
に対して second-look US を施行。US 単独では同定困難な症例については、
RVS を用いて CT 画像と同期させた second-look US を施行し、同定率を比較
検討した。【結果】13 症例において偶発病変は 17 ヶ所で認め、9 ヶ所につい
ては US 単独で同定され (53% )、残りの 8 ヶ所については RVS 併用で全て同
定 (100% ) できた (p=0.0012)。RVS のみで同定された病巣の病理学的内訳
は DCIS6 病変、乳管内乳頭腫 1 病変、血管腫 1 病変であった。【結論】偶発的
に造影検出された非腫瘤性病変の同定における RVS を併用した second-look
US の有用性が示唆された。
11354
10033
乳腺造影 MRI における BPE の検討
乳癌骨転移検索における拡散強調像併用全身 MRI と骨シンチグ
ラフィの比較
DP-2-032-01
DP-2-032-02
1
愛媛大学医学部 乳腺センター、2 肝胆膵・乳腺外科学、3 地域救急医療学、
4
放射線医学
1
山下 美智子 1,2、亀井 義明 1,2、村上 朱里 1,2、杉森 和可奈 1,2、本田 和男 1,3、
中島 直美 4、松田 恵 4、平塚 義康 4、井手 香奈 4
3
市立川西病院 外科、2 大阪船員保険病院 放射線科、
大阪府立成人病センター 放射線科
中口 和則 1、土居 貞幸 1、橋本 達 2、中西 克之 3
乳 腺 造 影 MRI に お い て 背 景 乳 腺 の 増 強 効 果(background parenchymal
【緒言】我々は拡散強調像(DWI)を併用した全身 MRI(WB-MRI)検査による骨
enhancement,BPE)は、乳癌の存在・広がり診断に影響を及ぼす因子であ
転移診断の有用性を報告してきた.今回,パラメータ変更により撮影時間の
る。EUSOBI のガイドラインでは月経周期開始後 5~12 日目に撮影すること
短縮をした同検査を骨シンチグラフィ(BS)と比較検討したので報告する.【対
が望ましいとされている。しかし、多忙な外来診療で月経周期を全例に考慮
象】骨転移検索を目的として撮像された乳癌術後患者 77 例.【方法】使用機種
することは現実的には困難である。今回、我々は乳腺診療において必須の検
は Philips Master 1.5T,撮影法は Fast SE T1 強調像と STIR 像で矢状断によ
査である MMG、US の画像所見との対比を調べることによって、BPE を来し
る全脊髄 scan と FFE T1 強調像と STIR 像での冠状断全身 scan,および DWI
やすい群を同定できないかを検討した。【方法】対象は当科で 2011 年 12 月
である.今回,従来法より分割回数を減らすためにパラメータを変更し,撮
か ら 2013 年 11 月 ま で に 造 影 MRI を 施 行 し た 114 例。GE Healthcare 社 製 影時間を3分の2に短縮した.BS は Tc-HMDP,740MBq 投与後3時間で撮
SignaHDXt OptimaEdition 1.5T MRI 装置を用い腹臥位にて乳房専用コイル
像.両画像は別々の放射線科医師により読影された.【結果】転移なしは 77 例
を使用し撮像した。BPE は背景乳腺全体に対する造影増強域の容積の割合を
中 WB-MRI(M)
;68 例,BS(シ)
;38 例,要経過観察は M;1 例,シ;20 例,
指標とした分類を用い、minimal、mild、moderate、marked の 4 段階で評
転移疑いおよび転移は M;8 例,シ;19 例であった.要経過観察以上を CT,
価し、minimal、mild を低 BPE 群、moderate、marked を高 BPE 群とした。
局所 MRI,経過観察等で精査を加え,6 例が転移と確認され,両群を統計学的
年齢、閉経、MMG における乳房の構成、US での豹紋状エコーの有無との関
に検討した.感度に有意差はなかったが,特異度は M で 95.8%,シで 53.5%
連について検討した。【結果】対象 114 例中、高 BPE 群 15 例、低 BPE 群 99 例
(p < 0.05),陽性反応的中度は M で 66.7%,シで 15.4%(p < 0.05),偽陽
であった。年齢は 22 ~ 84 歳 ( 中央値 56 歳 ) であった。年齢との関連につい
性率は M で 4.2%,シで 46.5%(p < 0.001),有効度は M で 96.1%,シで
ては、高 BPE 群の年齢の中央値は 46 歳、低 BPE 群では 59 歳であり、高 BPE
57.1%(p < 0.05)であり MRI が有意にすぐれていた.【考察】今回の結果よ
群では有意に年齢が低かった。(p=0.0027) 閉経前と閉経後では閉経前 47 例、
り,乳癌術後の骨転移検索において短縮版 WB-MRI は BS と同等以上の検出
閉経後 67 例で検討し、有意に閉経前に高 BPE 群が多かった。(p < 0.0001 )
能を有し,かつ精査,経過観察の必要のない症例の振り分けにも優れていた.
MMG における乳房の構成は脂肪性・散在性を低濃度群、不均一高濃度・高濃
これは BS が腫瘍以外の OA 変化等による骨形成の有無に左右されるのに対し
度を高濃度群として 2 群に分けて検討した。その結果、高濃度群では高 BPE
MRI では溶骨性変化を含めた転移病変そのものを表すことが可能なためであ
群 15 例、 低 BPE 群 58 例、 低 濃 度 群 で は 高 BPE0 例、 低 BPE41 例 と 有 意 に
る.乳癌術後診療においては,予後改善効果が明らかでないためマンモグラ
MMG 高濃度群に高 BPE が見られた。(p=0.000957) US での豹紋状エコーの
フィ以外の画像検査は推奨されていない.特に骨転移診断での BS は偽陽性も
有無に関してはあり・なしの 2 群で検討した。あり群では高 BPE 群が 13 例、
多く評価は低いと思われる.しかし,乳癌術後の骨転移は病的骨折や骨痛を
低 BPE 群が 49 例、なし群では高 BPE 群 2 例、低 BPE 群 50 例と豹紋状エコー
生じ患者の QOL を低下させるだけでなく,進行すれば高カルシウム血症,脊
あり群で有意に高 BPE が見られた。(p=0.0104)BPE の高・低における感度は、
髄神経障害や造血障害などをきたし生命予後にも影響を与える.ビスフォス
MMG 高濃度群では感度 100%、特異度 41.4%、US での豹紋状エコーであり
フォネート製剤等の新規薬物が登場し早期に的確に骨転移を診断することの
群は感度 86.6%、特異度 50.5% であった。【まとめ】MMG での乳房の構成が
重要性が高まっている.今回の結果より,BS 以外の診断手段として DWI 併用
高濃度、不均一高濃度の症例、および US にて豹紋状エコーが見られる症例で、
WB-MRI はその選択肢の1つと考えられる.【結論】短縮版 DWI 併用 WB-MRI
有意に高 BPE を来すことが分かった。このような症例に対しては月経周期を
は骨転移について BS と同等以上の検出能を有し,偽陽性所見の多い BS に比
考慮した MRI の撮像時期の決定をすることが勧められる。
べ質的診断能も高く,乳癌の骨転移検索に有用である.
304
ポスターディスカッション
10051
10202
BI-RADS-MRI 第 2 版に基づいた乳房 MRI 読影とは~特に乳
管病変の評価について~
乳房 MRI 検出病変に対する検索の方法と病理学的意義
DP-2-032-03
DP-2-032-04
1
1
JA 広島総合病院 乳腺外科、2JA 広島総合病院 放射線治療科、
3
JA 広島総合病院 外科
三重大学 乳腺外科、2 三重大学 健診センター、3 三重大学 病理部
木村 弘子 1、小川 朋子 1、小林 茂樹 2、小塚 祐司 3、花村 典子 1、
山下 雅子 1、中村 卓 1、伊藤 みのり 1、柏倉 由実 1、野原 有起 1、
今井 奈央 1、澁澤 麻衣 1、稲上 馨子 1
吉村 紀子 1、川渕 義治 1、安井 大介 1、桐生 浩司 2、中光 篤司 3
【目的】両側乳房 MRI 検査により増加した偶発病変への対応を検討する 【
. 対
象】2010 年 1 月~ 2013 年 9 月に原発性乳癌で術前 , 当院で両側乳房 MRI を
施行した 795 例中 , 悪性を否定できない腫瘤や非腫瘤性の増強効果を認め
た 170 例 .【方法】1)170 例を second-look US( 以下 2ndUS) で病変同定可能
例 , 病変同定不可例 , 乳房切除術等で 2ndUS 未施行例に分け , 同定率や病理結
果から 2ndUS の有用性を検討 .2)MRI ガイド下吸引式組織生検 (VAB) 施行例
. 結果】
の検討 .3)2ndUS 後 , 病理学的検査未施行で経過観察した症例の検討 【
1)2ndUS を施行した 128 例中 97 例 (76%) は病変が同定可能で , うち 90 例に
細胞診 (FNA), 針生検 ,US-VAB による病理検査が行われ , 良性 71 例 (79%), 悪
性 15 例 (17%), 悪 性 疑 い 1 例 (1%), 鑑 別 困 難 1 例 (1%), 検 体 不 適 2 例 (2%)
であった . 病変同定不可 31 例中 1 例 (3%) は ST-VAB で良性と診断され ,4 例
(13%) は病変が切除範囲に含まれたが ,1 例に乳管内乳頭腫を認めた以外 , 切
除標本でも確定診断できなかった .2 ndUS 未施行の 42 例中切除範囲を拡大する
ことで病変が切除範囲に含まれた 26 例 (62%) は手術標本で病理学的検査が
行われたが , 悪性 5 例 (12%), 良性 3 例 (7%) で ,18 例 (43%) は手術標本でも
同定不可であった . 偶発病変で最終診断が悪性の症例は 170 例中 24 例 (14%)
で , 浸潤癌 7 例 (29%), 非浸潤性乳管癌 (DCIS)17 例 (71%) であった . うち 19
例 (79%) は 2ndUS で同定可能で浸潤癌は全例同定されていた .2)MRI-VAB 施
行例は 3 例あり ,US で同定可能も FNA が検体不適・鑑別困難のため施行が 2
例 ,US で病変同定不可が 1 例であった .FNA で鑑別困難の 1 例は DCIS, 他の 2
例は良性であった .3) 病理学的検索が未施行で経過観察のみの 43 例は , 9 例
(21%) が患側病変 , 34 例 (79%) が健側病変であった . 患側病変は全例 , 温存
術後の放射線療法を施行 , 健側病変中 , 術後薬物療法は 21 例で施行 , 11 例は
未施行であった . 転居等で経過不明の 3 例を除き , 現在までに悪性と診断され
た症例はない 【
. 考察】MRI 指摘病変に対する 2ndUS は同定率が 76% で , 特に
浸潤癌は全例同定可能であった .US で同定できれば簡便に病理検索が施行で
き ,2nd US は有用と考えられた .MRI 指摘病変のうち悪性は 14% あり ,MRIVAB で診断された症例も認めた . また , 経過観察のみの症例でその後悪性と診
断された症例を現在まで認めていない . 以上より 2ndUS は有用であるが全病変
の同定は不可能である . 症例によっては MRI-VAB が有用となるが ,MRI-VAB
が施行できない場合には厳重な経過観察で対応すべきと考えられた .
10833
11522
乳腺石灰化病変のステレオガイド下マンモトーム生検適応決定
における 3T MRI の有用性の検討
不要な針生検を安全で効率的に減少させるための乳房 MRI 検査
の活用
DP-2-032-05
1
3
DP-2-032-06
島根大学医学部 放射線科、2 国立病院機構浜田医療センター 乳腺科、
島根大学医学部 消化器・総合外科、4 島根大学医学部 病理部
1
北斗病院 乳腺・乳がんセンター、2 北斗病院画像診断部、
北斗病院腫瘍研究所、4 北海道大学医学部 第2病理学教室、
5
坂元記念クリニック
3
山本 伸子 1、吉廻 毅 1、石橋 恵美 1、荒木 和美 1、吉田 理佳 1、北垣 一 1、
吉川 和明 2、百留 美樹 3、板倉 正幸 3、丸山 理留敬 4
【目的】ステレオガイド下マンモトーム生検(以下 ST-MMT)はマンモグラフィ
(以下 MMG)で検出された微細石灰化病変の診断に有用である。しかし、侵襲
を伴うため ST-MMT には適切な症例選択が重要である。一方、乳癌診断に 3T
MRI の有用性が報告されている。今回、MMG で検出された乳腺石灰化病変の
ST-MMT 適応決定における 3T MRI の有用性を retrospective に検討した。
【対
象・方法】2009 年 4 月~ 2013 年 10 月に ST-MMT を施行した症例のうち、生
検前に当院で 3T MRI を施行した 57 症例 57 病巣が対象である。年齢は 29 ~
81 歳。MMG カテゴリー(以下 C)は C2:1 例、C3:44 例、C4:11 例、C5:1 例。
MRI 診断は 2 名の放射線科医が合議のもと ACR の BI-RADS-MRI に基づいて
評価し、BI-RADS-MRI の C4 以上を悪性、C3 以下を良性と診断した。手術
標本、生検標本を golden standard とし、MRI の精度を検討した。【結果】病
理診断は悪性 21 例(浸潤性乳管癌 (IDC):5 例、非浸潤性乳管癌 (DCIS):16
例)、良性 32 例、異型乳管過形成 (ADH) 2 例、鑑別困難 2 例であった。MRI
で悪性と診断した症例は 22 例で、病理では 19 例が悪性(IDC:4 例、DCIS:15
例)、良性 1 例であった。MRI で良性と診断した症例は 35 例で、内 2 例が悪
性(IDC:1 例、DCIS:1 例)であった。MRI 診断は感度 90%、特異度 91%、
PPV 86%、NPV 94%、正診率 91%であった。偽陰性 2 例は 5mm 未満の
小濃染が病巣以外にも多発していた症例と、病巣部と背景乳腺の増強効果と
の区別が難しかった症例であった。偽陽性 3 例は ductal adenoma と ADH 、
鑑別困難例であった。【結語】今回の検討における 3T MRI の正診率は高く、
MMG で検出された微細石灰化病変の評価に有用であることが示唆され、STMMT の適応を決める上でも有用であると思われた。
難波 清 1、川見 弘之 1、中島 恵 1、森山 兼司 2、前道 仁美 2、赤羽 俊章 3、
西原 広史 4、秋山 太 5、坂元 吾偉 5
【背景と目的】乳房内病変に対する針生検の標準的な陽性反応的中率(positive
predictive value, PPV)は概ね 25% 前後とされている。しかし、針生検の侵
襲性や心理的影響、さらに経済的負担などの問題点も指摘されており、安全
な PPV 向上が望まれる。当院では乳房 MRI 検査を生検適応評価に用いる試み
を実施してきたので、成績を示し、その意義を検討した。【対象】2009 年 7 月
から 2013 年 11 月までに、生検適応評価のための MRI を実施した 624 件。【方
法】画像検査や血性乳頭分泌で針生検が必要とされた症例に対し、乳房造影
MRI(GE, 3T)で評価し、悪性の可能性が高いとされた場合のみ、画像ガイド
下吸引式針生検(VAB), (Vacora と EnCore, 10G 針 ) を実施し、PPV1(MRI 前)
と PPV2(MRI 評価後針生検)とを比較した。【結果】1) FNAC(6 件)を除く
425 件 に VAB を実施。2)624 件の内、425 件(68%)が生検適応となり、悪
性 は 267 件(43%)で、PPV1 は 43%, PPV2 は 63%(267/425)だ っ た。3)
腫瘤、石灰化、乳頭分泌のすべての病態で、PPV2 は大きく向上した(表1)。3)
PPV2 の4年間の経年推移では、超音波ガイド下で 46, 56, 63, 69, 78 (%)、
ステレオガイド下で 68, 47, 42, 59, 69 (%)、全体で 48, 55, 60, 67, 76
(%) と向上した。6)費用と時間効率は、造影 MRI 検査4万円弱と病理診断の
7 ~8万円に比し約半額で、検査時間ほぼ同等だった。7) 経過観察も良好に
推移中である。【考察】乳房 MRI による生検適応評価の導入は、針生検の PPV2
を一般的な 25% 前後から直近の 70% 台へと安全かつ効率的に向上させた。
【結語】乳房 MRI による針生検の適応評価は、効率的に無駄な針生検を減らし、
患者の QOL を向上させることが示唆された。
305
一般セッション(ポスターディスカッション)
【背景と目的】近年 BI-RADS-MRI が第 2 版に改訂されることを受け ( 以後、
第 2 版 と す る )、 新 た に brush up さ れ た 概 念 あ る い は 用 語 の 中 で も、 乳
腺外科医にとって病変の切除決定あるいは切除範囲決定に影響があると考
え ら れ る Background parenchymal enhancement(BPE) と non-mass
enhancement(NME) の評価について当施設の MRI 記録を基に検討した。【対
象】2011 年 10 月から 2013 年 9 月までに当院で施行した乳房 MRI 243 件に
ついて retrospective に、特に [1]BPE、[2]NME に絞って検討した。【結果】
全 243 例で年齢は 24-92 歳。閉経前が 95 件、閉経後が 168 件、男性乳癌が
2 例。施行理由は、病理学的に確定診断された乳癌 ( 術前、治療中を含む ) が
180 例 (Category 6)、 良 性 疾 患 が 63 例 (Category 1-5) で あ っ た。[1]BPE
を年代別に比較すると 40 代が有意に moderate 以上の頻度を高く認めた (p
< 0.05)。また、術前化学療法の効果判定において同一患者で比較すると閉
経前症例において化学療法後の BPE が有意に低下し (p < 0.05)、切除断端陽
性例は認めなかった。[2]NME について、乳癌術前の 148 例のうち乳管病変
が指摘された 52 例について liner/ liner branching distribution、Clustered
ring enhancement を示した領域は他の所見と比較して有意に病理検査で
悪性であった (p < 0.05)。また、一部の乳腺症において segmental や liner
branching などの症例を認め切除生検や厳重なフォローの根拠となっていた。
【結語】第 2 版における BPE と NM Eは、乳腺外科医の間で乳管病変のイメー
ジを共有し得ると考えられた。
ポスターディスカッション
11445
11600
乳房 MRI による乳腺小葉癌広がり診断 過小評価リスク因子に
ついての検討
術前化学療法後の clinical CR と pathological CR の乖離につ
いての検討
DP-2-033-01
DP-2-033-02
1
京都府立医科大学大学院医学研究科 放射線診断治療学、
京都府立医科大学大学院医学研究科 人体病理学、
3
京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌乳腺外科学
大阪大学大学院医学系研究科 乳腺・内分泌外科
2
1
2
3
後藤 眞理子 、小西 英一 、中務 克彦 、田口 哲也
道下 新太郎、金 昇晋、加々良 尚文、下田 雅史、直居 靖人、丸山 尚美、
下村 淳、島津 研三、野口 眞三郎
3
一般セッション(ポスターディスカッション)
【背景と目的】乳房 MRI は他のモダリティと比較して乳腺小葉癌描出能、広
がり診断に優れると報告されているが、小葉癌の広がり診断は MRI でも難
しいことが多く、乳管癌と比し過小評価となりやすい。このため小葉癌と診
断された場合は乳房切除の適応となることが多いが、術後組織では比較的限
局した小葉癌もしばしば経験する。本研究の目的は乳房 MRI における乳腺
小葉癌の広がり過小評価リスク因子を明らかにすることである。【対象と方
法】対象は 2009 年 1 月から 2013 年 9 月の期間に当院で乳癌手術を受け小葉
癌と診断された症例のうち、術前治療非施行の 29 例 29 病変。乳房 dynamic
MRI(dMRI) に お け る 造 影 径、lesion type [non-mass(NM), uniforcal
mass, not-unifical mass] 及び kinetic pattern、T2 強調像、拡散強調像所見
を retrospective に評価し、術後組織の浸潤巣と管内病変それぞれを対比、広
がり過小評価となりやすい MRI 所見を検討した。【結果】dMRI/lesion type、
NM は管内病変、浸潤巣とも過小評価が多く(管内・浸潤巣とも 6/9 67%)、
not-unifocal mass は管内病変の過小評価が多かった(管内:9/13 69%、浸
潤巣:4/13 31%)。一方 unifocal mass は管内病変過小評価が 1/7 例(14%)
見られたが、浸潤巣過小評価はなく、dMRI/lesion type において管内病変、
浸潤巣とも広がり評価に単変量解析で有意差が認められた(管内:p = 0.008、
浸潤巣:p = 0.007)。多変量解析でも管内病変、浸潤巣とも unifocal mass
の広がり評価は有意差をもって適切である一方、NM は過小評価リスクが最も
高い結果となった。【結論】乳腺小葉癌において、術前乳房 MRI は広がり過小
評価のリスクを dMRI/lesion type で予測できる可能性が示唆された。
【はじめに】術前化学療法 (NAC) の臨床的治療効果判定には、造影 MRI 検
査が既存の検査法の中では病理学的治療効果判定に最も相関するために汎
用 さ れ て い る が、 両 検 査 間 で 乖 離 を 認 め る こ と も 多 い。 今 回、NAC 後 の
clinical complete response (cCR) と pathological CR (pCR) の乖離に相関
する因子について検討を行った。【方法】対象は、NAC (weekly paclitaxel ±
trastuzumab → FEC ) の前後に造影 MRI を施行し、2005 年 12 月~ 2013
年 10 月 に 手 術 を 行 っ た 原 発 性 乳 癌 243 例 ( 平 均 52.1 歳 , StageIIA 83 例 ,
StageIIB 114 例 , StageIIIA 25 例 , StageIIIB 17 例 , StageIIIC 4 例 )。
cCR は NAC 後 の 造 影 MRI 検 査 で 判 定 し た。 病 理 組 織 検 査 で は、 原 発 巣 で
浸潤癌および DCIS 病変が消失していれば pCR と判定した。ホルモン受容
体、HER2、Ki67 は NAC 前に採取した癌組織で検討した。【結果】NAC 後に
cCR であったのは 94 例で、その内 pCR は 51 例 (54.3%)、non-pCR は 43 例
(45.7%) であった。cCR と pCR の一致例と不一致例の間で、腫瘍径、Ki67、
HER2 の発現に有意差は認めなかった。しかし ER では、ER( + ) 群における
一致率は 28.3%(13/46) であったのに対し、ER( - ) 群では 79.2%(38/48)
と有意に高い一致率であった (p < 0.001)。同様に、PR( - ) 群の一致率
は 70.3%(45/64) で、PR( + ) 群 の 一 致 率 20.0%(6/30) よ り 有 意 に 高 率
で あ っ た (p < 0.001)。 ま た、NAC 前 の 造 影 MRI の 形 態 分 類 に お い て、
non-smooth type であった腫瘍の一致率は 44.9%(31/69) であったのに対
し、smooth type の 腫 瘍 で は 80.0%(20/25) と 有 意 に 高 率 で あ っ た (p =
0.003)。
【結語】NAC 後の造影 MRI で cCR であっても 46% は non-pCR を示し、
cCR と pCR の間に乖離を認めた。特にホルモン受容体陽性例や、NAC 前の造
影 MRI で non-smooth type の腫瘍では、cCR であっても実際は non-pCR で
ある不一致率は 55 ~ 80% と高率であり、このような症例においては手術術
式の選択に際して注意が必要と思われる。
10912
10665
造影超音波検査による乳癌術前化学療法の効果判定
乳癌骨転移治療における BONENAVITM を用いた骨関連事象の
検討
DP-2-033-03
1
DP-2-033-04
広島大学病院 乳腺外科、2 広島大学病院 腫瘍外科
1
網岡 愛 1、舛本 法生 1、梶谷 桂子 1、恵美 純子 1、重松 英朗 1、
松浦 一生 1、角舎 学行 1、春田 るみ 1、片岡 健 1、岡田 守人 2
【目的】造影超音波検査 (Contrast-enhanced ultrasonography : CEUS) は
腫 瘍 血 管 内 の 血 流 を 描 出 す る こ と が で き る。Sonazoid( 一 般 名:
Perflubutane) を用いた CEUS による輝度の変化を数値化し、術前化学療法の
効果判定に有用かを検討した。【方法】2012 年 10 月~ 2013 年 10 月までに術
前化学療法 (Neoadjuvant chemotherapy : NAC) を施行した浸潤性乳癌
患者 23 症例 (48.4 ± 10.8 歳 ) を対象とした。CEUS は手術前日に行い、超音
波診断装置は HI VISION ASCENDUS (Hitachi Aloka Medical Corp.) を用い
て以下の手順で解析を行った。(1)Sonazoid を静注後、輝度の強さと時間変
化 か ら Time Intensity Curve(TIC) を 作 成。(2) 腫 瘍 内 血 流 の 造 影 強 度 の
parameter と し て Peak intensity (PI) = maximum intensity - baseline
intensity を定義し数値化 ( 添付 Figure)。(3)PI と pCR の結果から ROC 曲線を
作成し PI の cut off 値を算出、CEUS を用いた効果判定の有用性を検討した。
【結果】23 人中 6 人が NAC により pCR となり、それらの PI は 3 ~ 15 であった。
ROC 曲線から PI の cut off 値を 16.4 と算出し、その値に基づいた CEUS の正
診 率 は 82.6% (95%CI:61.2-95.0) だ っ た。 正 診 率 は 単 純 超 音 波 検 査 で
73.9% (95%CI:51.6-89.8)、 造 影 MRI で 77.3% (95%CI:54.6-92.2)、
PET-CT で 73.9% (95%CI:51.6-89.8) であり、CEUS と各検査間にはいず
れも有意差が認められ ( いずれも p=0.0088)、CEUS の正診率が高いことが
確 認 さ れ た。
( 添 付 Table)。
【 結 語 】Sonazoid
を 用 い たCEUS
は、輝度の変化
をPeak intensity
として数値化す
ることで術前化
学療法の効果判
定に有用と考え
られる。
千葉県がんセンター 乳腺外科、2 千葉県がんセンター 核医学診療部
山本 尚人 1、岩瀬 俊明 1、中村 力也 1、吉井 淳 1、味八木 寿子 1、
市原 裕紀 2、戸川 貴史 2
【目的】乳癌骨転移治療において骨関連事象 (skeletal related events, SRE) の
予防は重要であり、画像診断によりそのリスクを定量的に評価することが求
められている。近年骨シンチグラフィにおいて、診断支援ソフトウェアを用
いた定量的評価が可能となってきた。今回我々は BONENAVITM を用い、定量
化されたスケールと SRE との関連を検討した。【対象と方法】2005 年から
2013 年までに初診時に骨転移を認めた症例、または術後に骨転移再発を認め
た症例のうち、骨転移に対する初期治療開始前と開始後に骨シンチを施行し
BONENAVITM を用いた解析が可能であった 45 例を対象とした。治療開始前後
の Bone scan index(BSI)、ANN 値、Hotspot 数 を 測 定 し、 治 療 開 始 後 の
SRE との関連を検討した。【結果】初回治療により BSI が低下した群は 20 例 (A
群 )、反応なし、または BSI が増加した群は 25 例だった (B 群 )。15 例に SRE
を 認 め、A 群 で SRE が 生 じ た 例 は 3 例。B 群 で は 12 例 だ っ た (p < 0.05)。
Event free survival は B 群で有意に低下を認めた (p < 0.05, hazard ratio:
8.31 (95%CI: 1.33 to 12.14))。Overall survival では両群に有意差は認め
なかった (p=0.54)。BSI と骨代謝マーカー、腫瘍マーカーとの間で相関係数
を求めると、
LDH(R=0.12, p=0.45)、
ALP(R=0.69, p < 0.05)、
CEA (R=0.01,
p=0.93)、CA15-3(R=0.04, p=0.79) で、BSI は ALP と有意に相関していた。
【考察】本検討では、初期治療にたいする BSI の反応性と SRE が有意に関連し
ていた。今後、BONENAVITM を用いて SRE のハイリスクグループを同定でき
る可能性が示唆された。
306
ポスターディスカッション
11287
11557
BSI による乳癌骨転移患者の骨関連事象 (SRE) 発現の予測
乳癌センチネルリンパ節に対する ICG 色素を用いた US ガイド
下マーキング
DP-2-033-05
DP-2-033-06
1
島根大学医学部 消化器・総合外科、2 島根大学医学部 放射線科、
3
安来第一病院 乳腺外科
山口大学大学院 消化器・腫瘍外科学
板倉 正幸 1、百留 美樹 1、山本 伸子 2、杉原 勉 3、田島 義証 1
(はじめに)色素法によるセンチネルリンパ節 (SLN) 生検 (SLNB) は、定義上
の SLN を同定するには色素の流入したリンパ管を追求し、それが最初に到達
する LN を見つけ出す必要がある。しかし、色素法単独では、SLN が複数個存
在する場合など、複数のリンパ管の追求が必要とされ、難易度は増し、すべ
ての SLN を同定し摘出できているかは疑問である。我々は術前画像情報より
同定した SLN のすぐ外側にインドシアニングリーン ( 以下 ICG) 色素を US ガ
イドで注入しマーキングすることで、容易に SLN を同定する方法を考案しルー
チンに施行している。(方法)1. 山口大学で考案した乳輪皮内・腫瘍直上に CT
造影剤を注入する 3D CT -lymphography (3D CT-LG) にて、
SLN を同定する。
2. 3D CT-LG の画像データを Hitachi-Aloka の超音波装置に搭載されている、
Real-time virtual sonography (RVS) システムに取り込む。3. 3D CT-LG で
描出された、すべての SLN を、RVS システムの US 像で同定する。4. 手術直
前にインドシアニングリーン ( 以下 ICG) を、US ガイド下に、SLN に接する脂
肪組織内に 0.08-0.1ml 注入する。複数個の SLN を認める症例では、各々の
SLN に注入する。5. ひきつづいて従来のインジゴカルミン ( 以下、インジゴ )
を用いた色素法 SLNB(乳輪皮内・腫瘍直上)を行う。(結果)258 例中 257 例
(99.6%)で注入した ICG が SLN 周囲に確認され、SLN 同定率 100% であった。
インジゴの流入したリンパ管を SLN まで追求困難であった症例は 25 例 (9%)
であったが、ICG の緑色が指標となり全例 SLN が同定可能であった。ICG で
SLN がマーキングされているため、ストレスなく容易に SLN を同定できた。( 結
語 ) 乳癌センチネルリンパ節に対する US ガイド下 ICG 色素マーキングは、イ
ンジゴの流入したリンパ管が追求困難であっても容易に SLN を同定可能であ
る。
10108
10939
早期乳癌に対する乳房温存手術・術中単回高線量照射の多施設
共同第 II 相試験 - 中間報告 -
乳房温存療法における短期照射の臨床的検討―標準法との比較―
DP-2-034-01
DP-2-034-02
1
広島大学病院 放射線治療科、2 県立広島病院 放射線科、
広島大学病院 乳腺外科
1
3
2
兼安 祐子 1、和田崎 晃一 2、土井 歓子 1、永田 靖 2、角舎 学行 3、
片岡 健 3
名古屋大学医学部附属病院 乳腺・内分泌外科、
名古屋大学医学部附属病院 放射線科、
群馬県立がんセンター 乳腺科、4 愛知県がんセンター中央病院 乳腺科、
5
愛知県がんセンター中央病院 放射線治療部
3
佐藤 成憲 1、林 裕倫 1、菊森 豊根 1、伊藤 善之 2、宮本 健志 3、
藤澤 知巳 3、柳田 康弘 3、近藤 直人 4、岩田 広治 4、古平 毅 5、
澤木 正孝 4
【背景】早期乳癌に対して乳房温存手術および残存乳房に対する全乳房照射
50Gy(±ブースト)が標準治療であるが、全乳房照射に 5 週間の通院期間を要
するため、治療期間を短縮できる照射法の開発が必要とされている。術中部
分照射 (21Gy) は症例の選択を適切に選択すれば、全乳房照射と同等の乳房内
再発率であることが最近の第 III 相試験で示されている (Veronesi U, Lancet
Oncol 2013;14:1269)。しかし日本人のデータはない。【目的】多施設共同
試験による乳房温存手術・術中放射線照射の安全性と有効性の検討 (Phase
II, UMIN000003578)。【対象と方法】主な適格基準 : 1) 温存術希望 , 2) ≧
50 才 , 3) T < 2.5cm, 4) 術中断端病理陰性 , 5) n0、主な除外基準 : 1) 放射
線禁忌 , 2 ) 広範囲な癌の進展。手術手順 : 1) SLNB, 2) 部分切除術 , 3) 大
胸筋上にディスクの設置 , 4) 残存乳腺の縫合 , 5) 移動型術中照射電子線専
用装置の設定、あるいは放射線治療室に移動し電子線照射装置の設定を行
う , 6) 21Gy(90% 線量 ) の照射。主要評価項目 : 有効性(患側乳房局所再発
率)、副次的評価項目 : 安全性(術後から 5 年間)、美容的評価、術中組織照射
量測定、患側乳房局所再発率のヒストリカルコントロールとの比較。目標症
例数:140 例。中間解析はプロトコール上規定された初期登録 29 例の短期安
全性の解析評価である。【結果】2013 年 11 月現在、約 90 例に試験治療を行っ
ている。観察期間中央値 29.0 ヶ月 (21.5-42.0)。Stage 0: 2/29, Stage I :
27/29, Luminal type; 26/29, Triple Negative: 3/29, HER2: 0/29. 有害
事象 (CTCAE v4.0) は以下であった。線維化 - 深部結合組織 G1: 24/29、血
腫 G1: 3/29、感染 G3: 1/29, G2: 2/29、軟部組織壊死 G2: 1/29、創嘴開
G1: 2/29、疼痛 G1: 7/29。局所再発例なし。【結語】21Gy の術中照射の忍容
性は良好である。適切な症例選択の上、試験を予定通り進行させる。長期観
察期間の経過の解析が必要である。
【目的】乳房温存療法における短期照射例について、従来の標準的方法と比
較し , その有用性を検討した。【対象と方法】2007 年 4 月 1 日~ 12 月 31 日
までの間に乳房温存術後に乳房のみへ放射線療法を施行した 44 例を対象と
した。鎖骨上窩への予防照射を要する症例は除外した。標準的照射(C 群 :
conventional)か短期照射(S 群 : short)を患者の選択により決定したところ ,
C 群は 26 例、S 群は 18 例であった。放射線療法は 6MV の X 線を用いた乳房
への接線照射を C 群の場合、2Gy/ 回、50Gy/25 回 /35 日(断端陽性例は腫瘍
床へ 10Gy/5 回ブースト)、S 群の場合 2.66Gy/ 回、42.56Gy/16 回 /22 日(断
端陽性例は腫瘍床へ 10.64 Gy /4 回ブースト)の照射を施行した 【
. 結果】C 群
の年齢は 34 ~ 74 歳 ( 平均 58 歳 )、S 群の年齢は 34 ~ 78 歳 ( 平均 54 歳 ) 観察
期間中央値はそれぞれ 70 ヶ月と 64 ヶ月であった。切除断端陽性例は S 群が
C 群より多かった (31% vs 61%,P=0.046).5 年全生存率、無再発生存率、無
局所再発生存率は、C 群では 96%,96%,100%, S 群では 100%, 89%, 94%
と、両群に有意差はなかった。C 群は肺転移 1 例、S 群は肺転移 1 例、乳房内
再発 1 例 ( 断端陽性例 ) であった。両群ともに急性期の有害事象による照射の
休止はなかった。2 週間以内の Grade2 以上の皮膚炎は C 群 29%(12/42)、S
群 22%(5/23) で有意差はなかった (P=0.55)。角質水分量の減少率は照射直
後は C 群で 11.8%,S 群で -0.4% で、C 群は照射による影響が S 群より高かっ
た。一方、5 年後は 0%, 4% と両群の差は低下し照射による影響が C 群で改善、
S 群で不変の傾向にあった。【結語】乳房温存療法における短期照射法は従来
の標準的照射法と比較し , 無再発生存率と急性期の有害事象は同等であり、有
用な治療法のひとつと考えられる。一方、有意差はないが、S 群に乳房内再発
が 1 例認められ、今後更に長期予後の観察が必要である。
307
一般セッション(ポスターディスカッション)
【背景と目的】乳癌の骨転移の評価は視覚的評価が主体であり、その程度を定
量的に評価することが困難であった。近年 MSKCC のグループから骨転移の定
量指標として、骨シンチ像を基にした Bone Scan Index(BSI: 全骨量に対す
る高集積部位の割合を示した指標 ) が提唱され、本邦でも BONENAVI という
解析ソフトを用いて骨シンチの濃度スケールを統一化し、自動的に算出され
た automated BSI を得ることが可能となっている。我々は第 21 回日本乳癌
学会総会において、BSI を用いた乳癌骨転移症例の治療効果判定の可能性につ
いて報告したが、今回 BSI と骨関連事象 (SRE) 発現の関連について検討した
ので報告する。【対象と方法】2000 年 1 月から 2012 年 12 月の間に当科で加療
した乳癌骨転移症例 47 例 (40 ~ 90 才、平均 62.3 才 )( 終末期に骨転移が判明
した症例は含まず ) を対象とし、BSI と臨床所見、視覚的画像所見、骨関連事
象 (SRE) の発現、腫瘍マーカー、臨床病理学的因子等との関連を検討した。【成
績】BONENAVI を用いて骨シンチの濃度スケールを統一化することにより、
骨転移の視覚的評価が容易となった。乳癌骨転移症例 47 例のうち、骨転移診
断時に他臓器転移を合併した症例が 30 例、骨転移単独の症例は 17 例であっ
た。骨転移単独症例のうち 10 例はその後他臓器転移を合併したが、骨転移単
独で長期に治療を行った 7 例はすべて Luminal A type であった。また骨転移
単独での死亡症例はみられなかった。骨転移単独症例の解析から見ると、BSI
は乳癌骨転移の病勢を比較的良く反映し、ホルモン療法やビスフォスフォネー
ト製剤による乳癌骨転移の治療効果判定の指標となるものと考えられた。骨
転移診断時の BSI 値と生命予後との間には明らかな相関は認められなかった
が、骨関連事象 (SRE) 発現との関連では BSI ≧ 1.0 群は BSI < 1.0 群と比較し
て有意に SRE の発現が多く、SRE の発現を予測できる可能性が示唆された。
【結
語】乳癌骨転移の評価において、BSI の有用性が認められた。BSI は乳癌骨転
移患者の QOL を予測した Bone Management 戦略を立てるための有用な補助
ツールとなると考えられる。
山本 滋、北原 正博、井上 由佳、兼清 信介、徳光 幸生、前田 和成、
前田 訓子、吉村 清、岡 正朗
ポスターディスカッション
10044
11344
内側発生乳癌は領域リンパ節照射の候補である
ガンマナイフ治療において乳癌脳転移局所制御に関与する因子
DP-2-034-03
1
DP-2-034-04
東京大学医学部 放射線科、2 三井記念病院
1
3
白石 憲史郎 1、小林 伶子 1、芝田 紫野 1、山本 健太郎 1、井垣 浩 1、
福内 敦 2、西 常博 2、中川 恵一 1
福岡輝栄会病院 脳神経外科、2 製鉄記念八幡病院 ガンマハウス、
新古賀病院 ガンマナイフセンター
鈴木 聡 1,2,3
一般セッション(ポスターディスカッション)
【目的】早期乳癌に対する乳房温存療法 (BCT) 後の予後は一般に良好で、照射
範囲としては全乳房がターゲットに設定される。しかしながら MA.20 に代
表されるように pN1 症例には領域リンパ節照射も考慮され得ることに加え、
EORTC22922/10925 では腋窩陽性例のみならず腋窩陰性でも内側発生例に
は領域リンパ節照射の追加による予後改善効果が報告された。これら 2 つの大
規模 RCT は今後の照射範囲の個別化につながるランドマーク試験と考えられ
る。実臨床では照射範囲については放射線腫瘍医の裁量に委ねられているが、
本邦でのガイドライン構築に向け、発生部位に着目した長期予後の解析を行
い、領域リンパ節照射の妥当性を検証する。
【方法】2012 年末までに乳房温存療法が施行された 2,713 例中、同時性両側
乳癌と非浸潤癌を除く 2,506 例を解析対象とした。領域リンパ節照射が行わ
れた症例は除外した。診断時年齢中央値 52 歳(範囲 23-85 歳)、病理組織は浸
潤性乳管癌 91.8% であった。原発巣の浸潤径は T1 が 64.7%、T2 が 31.4%、
T3 が 1.1% で、pN 陽 性 は 27.1% だ っ た。adjuvant ま た は neoadjuvant
chemotherapy 施行群が 34.1% で、67.6% にホルモン療法が行われていた。
全例が術後 42.56-50Gy の全乳房照射を受け、39.8% には 10-14Gy のブー
スト照射まで施行されていた。
【 成 績 】観 察 期 間 中 央 値 は 106 ヶ 月(2-340 ヶ 月 )、 内 側 発 生 例 は 915 例
(36.5%)、外側発生例は 1540 例 (61.5%) だった。EORTC trial に準じて中
心部位症例は内側発生例に含めて解析した。
全 体 の 10 年 生 存 率 は 内 側 / 外 側 で 91.7%/93.5% と 良 好 で、 内 側 / 外
側 の 局 所 無 再 発 率、 遠 隔 転 移 無 再 発 率、 無 病 生 存 率 は 95.6%/96.8%、
88.1%/91.0%、75.9%/78.7% で有意差は認めなかった。また腋窩陽性例
では、内外側発生症例で領域リンパ節無再発率 (p = .829)/ 遠隔転移無再発率
(p = .995)/ 無病生存率 (p = .815)/ 全生存率 (p = .882) いずれも有意差が認
められなかった。一方、腋窩陰性例では、領域リンパ節無再発率 (p = .014)/
遠隔転移無再発率 (p = .011)/ 無病生存率 (p = .019)/ 全生存率 (p = .045) の
すべてで統計学的有意差をもって内側発生例は予後不良であった。
【結論】内側発生症例に対しては現時点で全乳房照射が標準的であるが、直近
の RCT の結果も考慮し、特に腋窩陰性の場合は内胸リンパ節も含めた領域リ
ンパ節照射を考慮するべきである。
【目的】ガンマナイフ治療(GKRS)においてどのような因子が局所制御に関
与するかを乳癌脳転移症例において検討した。【方法と対象】2007 年 7 月か
ら 2013 年 10 月までの間に 2 回以上の GKRS を受けた乳癌からの脳転移患者
につき、後ろ向きに検討した。Karnofsky Performance Status (KPS)、性
別、年齢、全脳照射の有無、頭蓋外転移の有無、human epidermal growth
factor receptor-2 (HER2) に対する分子標的治療薬使用の有無、腫瘍の個数
と体積、嚢胞性か否か、再治療か否か、治療した GK のモデル、線源のロード
からの年数、外科的手術の有無、後頭蓋窩か否か、最低線量、処方線量、処
方線量を設定した % 等線量線などにつき検討した。【結果】90 人の患者に対し
て 123 回の GKRS が施行され、治療された腫瘍は 623 個であった。経過観察
の中央値は 9 ヶ月(1-41 ヶ月)。年齢の中央値は 53 才、KPS の中央値は 90%
であった。頭蓋外転移は 77 回(62.6%)の GKRS でみられた。HER2 分子標的
治療薬は 22 人(24.4%)で使用された。53 個(8.5%)の腫瘍が制御不良であっ
た。制御不良まで要した期間の中央値は 12 ヶ月(2-41 ヶ月)であった。単変
量解析を行うと、頭蓋外転移(hazard ratio (HR) 0.54, p = 0.019)、HER2
分子標的薬使用(HR 0.32, p < 0.001)、単発転移(HR 3.57, p < 0.001)、
腫 瘍 体 積 >1.2 cm3(HR 4.47, p < 0.001)、 嚢 胞 性 腫 瘍(HR 2.67, p =
0.047)、再治療(HR 5.83, p < 0.001)、GK モデル B の使用(HR 2.87, p <
0.001)
、そして処方線量≧ 18 Gy(HR 0.29, p < 0.001)が制御不良の予測
因子であった。多変量解析を行うと HER2 分子標的薬使用(HR 0.34, 95%
CI 0.13-0.87, p = 0.025)、腫瘍体積 >1.2 cm3(HR 3.94, 95% CI 1.977.85, p < 0.001)、GK モデル B の使用(HR 2.54, 95% CI 1.15-5.57, p =
0.021)、処方線量≧ 18 Gy(HR 0.21, 95% CI 0.06-0.61, p = 0.0059)が
GKRS による制御不良の予測因子であった。【結論】乳癌脳転移に対して GKRS
を行う場合、腫瘍体積≦ 1.2 cm3 或いは HER2 陽性は良好なコントロールの
指標になる可能性がある。GK モデル C 或いは Perfexion を使用するとモデル
B を使用したときより局所制御が良好であった。 また、処方線量は≧ 18 Gy
である必要がある。
10005
11839
乳癌脳転移に対する定位放射線治療における各種 grading の有
用性の検証
乳癌脳転移症例における全脳照射後の再発病変に対する定位放
射線治療
DP-2-034-05
1
2
DP-2-034-06
1
築地神経科クリニック 東京ガンマユニットセンター(脳神経外科)、
千葉県循環器病センター ガンマナイフ治療部(脳神経外科)
2
芹澤 徹 1、永野 修 2
千葉県循環器病センター 脳神経外科、
築地神経科クリニック 東京ガンマユニットセンター
永野 修 1、芹澤 徹 2
【目的】乳癌脳転移症例に対する定位放射線治療における各 grading の有用性
を検証する.【方法】過去5年間に筆頭筆者がガンマナイフ治療を施行した
乳癌脳転移 154 例中,genetic phenotype の明らかな 134 例を対象とした.
Recursive Partitioning Analysis (RPA, Gaspar, 1997),Score Index for
Stereotactic Radiosurgery (SIR, Weltman, 2000),Basic Score for Brain
Metastases (BSBM, Lorenzoni, 2004),Qualitative Survival Score (QSS,
Serizawa, 2013) modified-RPA (m-RPA, Yamamoto, 2013), DiagnosisSpecific Graded Prognostic Assessment (DS-GPA, Sperduto, 2011) の
各 grading において,その有効性を検証した.各 grading の隣接する 2 class
間で Log-rank 法で比較,p < 0.05 を統計学的有意とした.【成績】女性 133
例,男性 1 例.年齢は中央値で 59.5 歳(27-86).死亡 90 例,生存 44 例,全
症例のガンマナイフ治療後の MST は 13.7 か月.各 grading における MST は,
RPA class I 8 例で 30.4 か月,class II 109 例で 16.1 か月,class III 17 例で
5.8 か 月.SIR は 0-3・21 例 で 4.9 か 月,4-7・99 例 で 16.1 か 月,8-10 で
14 例・30.4 か月.BSBM 0・12 例で 5.5 か月,1・55 例で 8.7 か月,2 で 51 例・
20.7 か月,3 で 16 例・30.4 か月.QSS では low risk group・26 例で 30.4
か 月,intermediate risk group・47 例 で 16.1 か 月,high risk group・61
例で 8.8 か月.m-RPA では I+IIa・25 例で 30.4 か月,IIb・34 例で 16.6 か月,
IIc+III・75 例で 8.8 か月.DS-GPA group 1・11 例で 8.4 か月,group 2・
32 例で 5.0 か月,group 3・63 例で 17.0 か月,group 4・28 例で 30.4 か月
と DS-GPA では class group 1 と 2 において MST が逆転していた.Stratified
p value は,RPA で 0.0015,SIR で 0.0018,BSBM で 0.0003,QSS で 0.0004,
m -RPA で 0.0033,DS-GPA で 0.0014 といずれの grading でも有意であった
が,
隣接する class 間ですべて有意差を認めた grading system はなかった.
【結
論】乳癌脳転移例における予測 grading として DS-GPA が最も理論的に優れる
と考えられるが,ガンマナイフ治療を行った自験例においては class 1 と 2 の
MST が逆転していた.隣接する class 間ですべて有意差を認めた grading はな
かったが,今後症例数を増やしさらなる検討が必要と考えられた.
【目的】乳癌脳転移症例における全脳照射 (WBRT) 後の再発病変に対するガン
マナイフ治療(GKS)の成績を報告する.【対象,方法】1998 年 1 月~ 2013 年
8 月までに千葉県循環器病センターで GKS を行った乳癌脳転移症例 237 例の
うち全脳照射後の再発病変に対して GKS を施行した 22 例を対象とし,原発巣
診断~ WBRT,WBRT ~ GKS の各々の期間,GKS 後の生存期間,腫瘍制御率,
神経死予防率,ADL 維持率,について検討した.【結果】女性 22 例,平均年齢
53.2 歳(33-77 歳),脳転移巣の個数は中央値で 5 (1-22),最大病変の腫瘍径
は中央値で 2.0cm であった.原発巣診断~ WBRT 間は中央値で 44 ヵ月(1227),WBRT ~ GKS 間は 9 ヵ月 (1-107) であった.GKS 後の生存期間中央値
は 8.5 ヶ月,累積腫瘍制御率は 1 年で 88%,神経死予防率および ADL 維持率
は 1 年で 86%,58%であった.【まとめ】WBRT 後の再発病変に対し積極的に
GKS を行うことで腫瘍制御の向上ならびに神経死予防,ADL の維持が期待で
きると考えられた.
308
10788
10581
潜在性乳癌 12 例の局所治療と予後
潜在性乳癌 9 症例の検討
DP-2-035-01
ポスターディスカッション
DP-2-035-02
国立がん研究センター東病院 乳腺外科
自治医科大学附属病院 乳腺科
康 裕紀子、和田 徳昭、米山 公康、山内 稚佐子、岡田 淑
相良 由佳、宮崎 千絵子、芝 聡美、上徳 ひろみ、大澤 英之、櫻木 雅子、
塩澤 幹雄、竹原 めぐみ、水沼 洋文、穂積 康夫、吉澤 浩次
【目的および背景】潜在性乳癌の定義は、臨床上両側乳房内に腫瘍を指摘し得
ず、腋窩または鎖骨上窩などの領域リンパ節への転移を唯一の兆候とし、病
理学的には乳癌が強く疑われ、かつ原発巣が明らかではないものとされてい
る。頻度は全乳癌の 0.09 ~ 1%と稀であり、予後や治療方針に明確な指標は
存在しない。今回我々は潜在性乳癌の予後や特徴を明らかにすることを目的
として当院での 9 症例を検討した。【対象と方法】1993 年 12 月から 2013 年
11 月までの 20 年間に当院で潜在性乳癌と診断した 9 症例を対象とし、臨床病
理学的項目について後ろ向きに検討した。【結果】平均年齢 53 歳(42-75 歳)
で、この期間の全乳癌 2816 例の 0.3%であった。観察期間の中央値は 61 カ
月。腋窩腫瘤で発見された症例が 8 例で、1 例は腰部病的骨折の原発巣スクリー
ニングで診断された。病理組織学的には ER 陽性が 9 例中 7 例、HER2 陽性は 8
例中 1 例のみであった。初回治療時に腋窩郭清を施行したものが 6 例、腫大リ
ンパ節のみ摘出した症例が 1 例であった。乳房への放射線治療を行った症例
は 3 例で、3 例は全身治療を先行し、残りの 1 例は全身治療を行わず経過観察
の方針となった。全身治療は通常の乳癌と同様の治療内容を施行した。術後
経過観察中に同側乳房内に乳癌が出現した症例が 3 例あり、うち 2 例は放射線
治療を行っていなかった。1 例が遠隔再発で死亡した。【考察】潜在性乳癌は予
後不良と考えられているが、集学的な治療により、当科においては 1 例をのぞ
き現在も生存中である。乳房局所治療については乳房切除や放射線治療など
標準化されたものはなく、今後多施設でのコホート研究を含めた検討が必要
である。
10706
11215
同時性両側乳癌 30 例の検討
異時性両側乳癌の第 1 癌と第 2 癌の比較検討
DP-2-035-03
DP-2-035-04
1
順天堂大学医学部附属順天堂医院 乳腺・内分泌外科学、
2
順天堂大学医学部附属順天堂医院 人体病理病態学
札幌ことに乳腺クリニック
三神 俊彦、増岡 秀次、桜井 美紀、白井 秀明、下川原 出、浅石 和昭
岩間 敬子 1、酒田 円佳 1、明神 真由 1、猪狩 史江 1、吉田 悠子 1、
倉田 麻美 1、毛利 かの子 1、徳田 恵美 1、清水 秀穂 1、三浦 佳代 1、
堀本 義哉 1、田辺 真彦 1、中井 克也 1、荒川 敦 2、齊藤 光江 1
【背景・目的】画像診断技術の進歩等により、家族性乳癌や小葉癌以外でも術
前検査中に多発病変や対側の病変が見つかることが少なくない。今回我々は
同一患者に発生する乳癌同士の性格が類似するか否かを明らかにするために、
同時性 両側乳癌の症例についての解析を行った。【対象】対象は 2011 年 1 月
から 2013 年 7 月に当院で手術を施行した乳癌症例 1006 人のうち、同時性乳
癌の 30 人 (3.0%)。多発症例は真に多発か一連の病変かの判断が困難である
こと、異時性両側症例は第一癌の治療介入や年齢・生活環境の相違等が存在
する可能性がある ことから、今回の検討は同日に治療を開始した同時性両側
乳癌のみを対象とした。これら 30 人の臨床病理学的因子の比較を行った。
【結
果】年齢 は中央値が 58 歳 (34-81 歳 ) で、閉経前が 13 人、閉経後は 17 人で
あった。左右で共に浸潤癌が 14 人、浸潤癌と非浸潤癌の組み合わせが 13 人、
共に非浸潤癌が 1 人であった。浸潤癌の組織型は硬癌 57%と比較的多く、左
右の病理組織が一致したものは 64%であった。小葉癌を伴うものは 13% で、
両側とも小葉癌であったものは 1 人であった。ER、PgR、HER2 の一致率は
それぞれ 77%、77%、80% であった。ER 発現の組み合わせとして、左右共
に陽性が 77%、陽性 / 陰性が 23%、共に陰性は 0% であった。一般的な ER
陽性率 70% から算出される両側陽性率、片側陽性率、両側陰性率それぞれの
期待値 は 49%、42%、9%であり、本検討で ER 陽性率が高かったことが示
唆された。浸潤癌と非浸潤癌の組み合わせで HER2 不一致が多かった。また、
家族性乳癌の定義を満たすものは存在しなかった。【考察】今回の検討で同時
性両側乳癌の組織型は硬癌の割合が多く、ER の発現が両側とも陽性の頻度が
高かった。若年症例、小葉癌、家族歴を有する症例は少なく、既知の因子に
とらわれることなく対側乳癌の可能性を意識して診療にあたる必要があると
考えられた。
【目的】乳癌の罹患数の増加とともに異時性両側性乳癌も増加している。異
時性乳癌は第1癌と第2癌の手術間隔が 6 ヶ月以上あり、第2癌手術時まで
に局所再発、遠隔転移のないものとし、その第 1 癌と第 2 癌の臨床的特徴や
生物学的差異について検討した。【対象と方法】対象は当院で 2012 年 12 月
までに手術を施行した原発乳癌は 3866 例である。その間の両側乳癌は 268
例(6.9%)である。平均観察期間 8.46 年の間に異時性乳癌は 172 例(4.4%)
に認められ、当院で第 1・2 癌ともに手術した症例は 116 例(3.0%)を解析
の対象とした。Intrinsic Subtypes は Luminal A(ER+HER2-), Luminal B
(ER+HER2+), HER2, TrippleNegative (TN) ( (ER-HER2-) の 4 型に分類し
た。【結果と考察】第 1 癌の平均年齢は 50.1 才、第 2 癌は 55.7 才であった。第
1癌から第2癌発生までの期間は、最小約 1 年、最大約 18 年、平均約 8 年であっ
た。浸潤癌と非浸潤癌でみると、第 1 癌と第 2 癌ともに浸潤癌が 83 例 (71.6%)
と最も多かった。病期を比較すると StageI は第 1 癌 55 例 (47.4%) 第2癌
81 例 (69.8%) で第 2 癌が早期で発見されることが多かった。異時性乳癌うち
Subtype の判明しているのは第 1 癌 36 例、第 2 癌 63 例である。第 1・2 癌そ
れぞれの Subtype 別の割合は Luminal A(52.8%・73%) LuminalB(8.3%・
6.3%) HER2(8.3%・9.5%) TN(30.6%・11%) で 第 1 癌 で は T N が 多 く、
第 2 癌では Luminal A が多かった。つぎに第 1 ~第2癌発生までの期間を第
1 癌の subtype により比較すると Luminal A= 平均 4.6 年とその他 (Luminal
B, HER2, TN)= 平均 4.7 年と差がなかった。視点を第 2 癌の subtype から
発生間隔の平均を比較すると第 2 癌が LuminalA は 7.0 年、LuminalB は 3.5
年、HER2 3.0 年、TNBC3.9 年 で あ り、luminal A が 有 意 に 長 か っ た。 第
1・2 癌ともに subtype の判明している症例のうち第 1 癌が Luminal A の症
例 17 例についてみると第 2 癌も Luminal A の症例は 12 例で第 2 癌がその他
の subtype は 5 例である。Lum A → LumA の第 2 癌発生までの間隔は平均は
LumA →その他に比べ有意に長く、後者では 5 年以降に第 2 癌の発生は少な
い。第 1 癌が luminal A の場合ホルモン療法を補助療法として選択し 5 年施行
する。しかし、その期間に 5 例 41.7%の luminal A の第 2 癌が発生しており、
これらの症例では PgR の陽性率が低い傾向にあった。
309
一般セッション(ポスターディスカッション)
【目的】当院における潜在性乳癌の臨床病理学的特徴と治療法、予後を明らか
にすることを目的とした.【方法】2003/3-2013/3 に、腋窩リンパ節から病理
学的に癌が確認されているものの、理学的所見・画像検査(MMG、US、MRI
すべて)で乳房に明らかな原発巣を認めなかった 12 症例を潜在性乳癌として
解析の対象とし、後向きに検討した.【結果】年齢中央値 60 歳[35-74 歳].
全例が腋窩腫瘤を主訴とし、臨床的腫瘤径の中央値 2.0cm[1.2-9.0cm]、
cN1/2/3 はそれぞれ 0 例 /8 例 /4 例であった.手術として腋窩郭清は全症例
に施行されたが、乳房は腋窩腫瘤が C’ 領域付近のために部分切除された 1 例
と腫瘤が 9cm と大きいため乳房切除となった1例のみであった.放射線治
療は乳房+鎖骨上照射 5 例、胸壁+鎖骨上 1 例、乳房のみ 2 例、鎖骨上のみ
1 例、照射なし 3 例であった.化学療法は 11 例(術前 8 例、術後 3 例)に施
行され、うち 10 例にはアンスラサイクリン系+タキサン系薬剤が使用され
た.分子標的治療は 1 例、内分泌療法は 5 例に施行された.郭清による摘出
リンパ節数中央値 19 個[11-36 個]、転移リンパ節数中央値 1.5 個[0-16 個]
、
pN0(pCR)/1/2/3 は 2 例 /7 例 /2 例 /1 例.リンパ節の組織型は腺癌 8 例、低分
化癌 4 例、サブタイプは Luminal B 3 例、LB-HER2 陽性 1 例、HER2 type 1
例、Triple Negative 7 例と Triple Negative の割合が高かった.術前化療施行
例のうち HER2 陽性の 2 例は腋窩転移が消失していた.観察期間中央値 35.5
か月[7-122 カ月]で乳房に局所再発を認めた例はなかった.5 例が遠隔再発(脳
2 例、肺 1 例、肝+腹腔リンパ節 1 例、頚部リンパ節 1 例)をきたし、手術か
ら遠隔再発までの期間中央値は 5 ヶ月[3-27 ヶ月]で、その後全例死亡し、死
亡症例の手術からの全生存期間中央値は 13 か月[11-58 カ月]であった.死亡
症例に特異的な臨床病理学的特徴はなく、乳房局所治療やリンパ節転移個数、
サブタイプによる予後に有意差は認めなかった.【結語】潜在性乳癌に対して、
当院では MRI を含む画像検査にて乳房内病変が存在しない症例は原則乳房切
除を施行せず腋窩郭清のみ施行していた.照射も初期でリンパ節転移個数が
少ない患者を除き原則施行していた.その結果、乳房・局所領域再発は認め
ず再発は遠隔転移のみであった.局所制御という意味では乳房切除を省略し
腋窩郭清+照射のみで対応可能と思われるが、遠隔転移は極めて短期間に発
生・死亡しており本症例の予後は不良であった.
ポスターディスカッション
11510
10024
当科における同時性両側性乳癌の検討
早期乳癌の検出における近赤外光イメージング有用性の検討
DP-2-035-05
DP-2-035-06
一般セッション(ポスターディスカッション)
三重大学医学部附属病院 乳腺外科
埼玉医科大学国際医療センター 乳腺腫瘍科
澁澤 麻衣、今井 奈央、野原 有起、柏倉 由実、中村 卓、伊藤 みのり、
木村 弘子、山下 雅子、花村 典子、小川 朋子
中宮 紀子、上田 重人、佐伯 俊昭、島田 浩子、杉谷 郁子、杉山 迪子、
廣川 詠子、佐野 弘、重川 崇、竹内 英樹、高橋 孝雄、大崎 昭彦
【はじめに】近年検診の普及や画像診断の進歩に伴い同時性両側性乳癌を経験
する機会が増加している。今回我々は当科における同時性両側性乳癌症例に
ついて検討した。【対象と方法】2010 年 1 月から 2013 年 11 月までの間に当
科で手術を施行した原発性乳癌 1032 例のうち、初回手術時に両側乳癌と診
断された 39 例に対して臨床的特徴を検討した。【結果】発症時年齢は 40 ~ 82
歳 ( 平均 58.0 歳 )。発見契機として自覚症状を有した例は 19 例 (48.7%)、自
覚症状がなく検診で病変を指摘された例は 20 例 (51.3%) であった。両側に
自覚症状を有した例はなく、全例が何らかの画像診断で両側の病変を指摘さ
れた。特に対側病変が初診時の MMG・US で検出されず、術前両側乳房 MRI
でのみ検出された 14 例には当院で second look US を施行。検出された病変
に対して病理学的検査を行い、悪性と診断された例が 13/14 例、他の 1 例は
second look US でも病変が検出されず、MRI ガイド下吸引式乳房組織生検を
施行して悪性と診断された。全体の組織型では DCIS が 27/78 (34.6%) と最
も多く、自覚症状として異常乳頭分泌を有した 1 病変以外は、検診異常また
は術前 MRI での異常で発見された。T 分類では Tis が 27/78(34.6%)、T1 が
37/78(47.4%)、T2 が 14/78(18.0%)、N 分 類 で は pN0 が 65/78(83.3%)、
pN1 が 9/78(11.5%)、pN2 が 3/78(3.9%)、pN3 が 1/78(1.3%) で あ り、
比較的早期の病変が多くリンパ節転移の頻度も低かった。術式では Bt が
31/78(39.7%)、NSM が 16/78(20.6%)、Bp・Bq が 31/78(39.7%) に 施 行
されており、現在のところ転移・再発を認めた症例はない。【考察】初診時に
片側の病変のみ指摘されている場合でも、両側乳癌の可能性を念頭において
診察・画像検査の検討を行うことが必要である。特に MRI は病変検出の感度
が高く、病変の存在診断においても有用と考えられた。初診時 MMG・US で
明確な病変が認められずとも、術前 MRI で疑わしい病変が検出された場合は
second look US などのさらなる精査を行い、積極的に病理学的検査で診断を
試みることが推奨される。また検診の普及やスクリーニング能力の向上によっ
て DCIS 自体の検出頻度が上昇しており、受診者の半数が検診異常である当
科ではより早期に同時性両側性乳癌を診断することができたと考える。外科
的治療については早期病変が多いことから温存療法の適応となる症例も多く、
根治性と両側乳房の整容性を考慮した術式の慎重な検討が必要となる機会が
増えると考える。
( 目的 ) 非侵襲的に血液量と酸素化が測定可能な Diffuse Optical Spectroscopic
imaging ( 以下 DOSI) は、乳癌の次世代イメージングとして期待されている。
我々は、
DOSI の早期乳癌の検出の臨床的有用性について検討した。( 方法 )2012
年 7 月から 2013 年 4 月の間、当センターにて組織学的に診断された原発性乳
癌 101 人対象に、治療前に DOSI システム (TRS20, Hamamatsu) を用いて、
患側と健側乳房の観測を行い、検出率を検討した。また腫瘍総ヘモグロビン量
(tHb)
、組織酸素飽和度(stO2)と臨床病理学的因子との相関を検討した。
(結
果)DOSI による腫瘍の検出感度は 63% (64/101) であり、T stage 別にみると、
そ れ ぞ れ Tis: 23.1% (3/13), T1: 41.2%(13/34), T2: 84.8%(39/46), T3:
100%(8/8) であった。腫瘍 tHb(32.0uM, ± 19.0SD, 95%CI 28.2-35.8)は
正常乳腺 (21.4 uM, ± 15.1SD, 95%CI 18.4-24.4) より有意に高く、年齢、腫
瘍径と組織学的 Grade と相関する一方、腫瘍 stO2(68.7%, ± 5.3SD, 95%CI
67.7-769.8)は正常乳腺 (66.2%, ± 8.4SD, 95%CI 64.6-67.9) よりも有意に
高かった。腫瘍 tHb、stO2 は組織型によって特徴的な変化を示した。 ( 結論 )
DOSI による乳癌の検出率は、早期ステージほど低いものであったが、腫瘍 tHb
と stO2 の値は、それぞれ血管新生と組織酸素化を反映していると考えられ、腫
瘍の血液動態を表すバイオマーカーとして有用性が示唆される結果となった。
11716
11620
当院で実施している総合的機能評価に従った高齢者の化学療法
施行について
当科における高齢者乳癌の特徴および治療法に関する検討
DP-2-036-01
DP-2-036-02
1
秋田大学医学部 呼吸器・乳腺内分泌外科学講座、
秋田大学医学部 地域がん包括医療学講座、3 秋田大学医学部 放射線科、
4
秋田大学医学部附属病院 病理部
2
社会医療法人博愛会相良病院
松方 絢美、相良 安昭、川野 純子、四元 大輔、寺岡 恵、金光 秀一、
相良 吉昭、松山 義人、大井 恭代、雷 哲明、安藤 充嶽、相良 吉厚
【目的】高齢者は 65 歳以上と定義されているが、個々人で能力障害や社会的
ハンディキャップに差がある。この能力障害やハンディキャップを正確に測
定する医学検査はないが、徐々に臨床現場でも包括的に評価する様々な方法
「高齢者総合的機能評価 Comprehensive Geriatric Assessment:CGA」が浸
透しつつある。当院では 2012 年5月より 65 歳以上に CGA を施行し治療選択
の目安としている。今回当院にて経験した高齢者乳癌症例、特に化学療法施
行例の有害事象について CGA の点から検討した。【対象と方法】2012 年 6 月
~ 2013 年 8 月まで乳癌と診断され手術を施行した 776 例、うち 65 歳以上は
300 例、年齢中央値:72 歳(65-101)、65 歳未満は 476 例、年齢中央値:52
歳 (22-64) についてサブタイプ、化学療法を施行例での有害事象を評価した。
65 歳以上には脆弱調査 (VES-13) と 2011 年に Arti H らが報告した化学療法
有害事象予測因子を参考にスコアリングを行い、化学療法施行と有害事象に
ついて検討した。
【結果】サブタイプ割合は 65 歳以上と 65 歳未満でかわらず
(p=0.821)、Luminal B が多かった。化学療法施行は高齢者で 82 例 (27.3%),
65 歳未満で 218 例 (45.8%)、両群間で PS(p=0.700)、嘔吐 (p=0.621)、発
熱 (p=0.700) などの 9 項目で有害事象を比較したが有意な差は得られなかっ
た。VES-13 を行った 141 例の中で、化学療法省略 176 例は平均 3.05 点(0-10
点)、化学療法施行 65 例は平均 1.44(0-8 点 ) と高値つまり脆弱であるほど化
学療法が省略される傾向にあった(p < 0.001)。VES-13 スコアと化学療法に
よる有害事象を 59 例で検討したが、PS(p=0.410) や発熱 (p=0.230) などす
べての項目で有意な差は得られなかった。【まとめ】高齢者乳癌における化学
療法施行例での有害事象発現率は 65 歳未満と同等であった。脆弱な症例は化
学療法省略の傾向があった。【考察】CGA 評価により化学療法施行可能かどう
か判断したことで、高齢者と 65 歳未満で有害事象に差が見られなかったと考
えられる。今後 CGA を重ね、さらに検討していく必要がある。
伊藤 亜樹 1,2、寺田 かおり 1、石山 公一 3、南條 博 4、南谷 佳弘 1
(背景)平均寿命の延長に伴い高齢者乳癌症例も増加しているが、若年者と比
較して外科治療や術後補助療法、再発後の化学療法は画一的には行なう事が
できず、年齢および ADL に応じた治療戦略が必要であると考えられる。今回
当施設で加療を行なった 75 歳以上の高齢者原発乳癌症例において、生物学的
特徴および治療法について検討を行なったので報告する。(対象)2003 年 1 月
~ 2013 年 12 月に当科において加療を行なった原発性乳癌症例 501 例のうち
75 歳以上の症例 53 例。年齢中央値 78 歳(75-92 歳)。74 歳以下の症例と比較
し て 組 織 型、Intrinsic subtype, histological grade・nuclear grade,Ki-67
などの病理学的因子や Stage や予後、治療法について解析した。(結果)組織
型は DCIS 2例、乳頭腺管癌 18 例、充実腺管癌 20 例、硬癌 8 例、粘液癌 2 例、
アポクリン癌 2 例、不明1例。Intrinsic subtype では 74 歳以下の症例に比較
して Triple negative(以下 TN)が多く(25%)HER2 type が少なかった。TN
症例においては比較的予後は良好であった。異型度では高齢者と若年者間に
差は認めなかったが、Ki-67 は高齢者で低値の症例が多かった。高齢者におい
て初期治療として手術療法を 47 例に施行し乳房切除は 19 例(40%)、部分切
除術 25 例(53%)、腫瘤摘出術2例(4%)、腋窩郭清のみ1例(2%)であった。
部分切除および腫瘤摘出後の残存乳房への照射は 17 例 (68%) に施行され、
10 例 (32%) は非照射であった。術後療法として Luminal type においては全
例ホルモン療法が開始されたが様々な理由から途中で中止した症例があり期
間にばらつきがあった。術後補助化学療法は 6 例に施行された。Luminal A の
予後は良好であったが、多病死による死亡が多かった。Luminal B・TN にお
いては Ki-67 高値 , 化学療法未施行症例の予後が不良であった。(結語)今後も
増加するであろう高齢者の乳癌に対しては治療を控える傾向にあるが、年齢
のみで判断するのではなく ADL および腫瘍学的特性を考え積極的な治療を考
慮する必要性が示唆された。
310
ポスターディスカッション
11180
11242
当院における妊娠授乳期乳癌の検討
妊娠期乳癌における集学的治療と遺伝カウンセリングの実際
DP-2-036-03
DP-2-036-04
1
1
筑波大学附属病院 乳腺甲状腺内分泌外科、
2
筑波大学 医学医療系乳腺甲状腺内分泌外科
聖路加国際病院 乳腺外科、
相良病院 乳腺科、3 聖路加国際病院 腫瘍内科、4 昭和大学病院 乳腺外科、
5
聖路加国際病院 放射線科
2
古屋 舞 1、坂東 裕子 2、澤 文 1、市岡 恵美香 1、斉藤 剛 1、清松 裕子 1、
池田 達彦 2、井口 研子 2、原 尚人 2
【背景】妊娠期乳癌は、時期と方法を考慮することで、妊娠継続しながらの治
療が可能であり、選択肢となりうる。しかし、最適な化学療法の投与薬剤や
時期、妊婦及び胎児の合併症や経過などの安全性に関する報告は世界的にも
少なく、不明な部分が多い。また、妊娠期乳癌患者には若年女性が多いもの
の、遺伝性乳癌卵巣癌症候群との関連も不明であり、検討が必要である。【目
的】当院で診断された妊娠期乳癌患者における、周産期の妊婦及び胎児に対す
る治療の影響を評価する事、そして遺伝カウンセリングと遺伝子検査の実施
状況と結果を検証する事を目的とした。【対象と方法】1999 年 11 月から 2013
年 11 月までに当院で原発性妊娠期乳癌と診断され、化学療法または手術を
施行した 59 例を対象に、診断後の治療と周産期管理、妊婦及び胎児の変化、
遺伝カウンセリングと遺伝子検査の実施状況について、チャートレビューを
行った。【結果】診断時年齢中央値 35 歳 (26-44 歳 )、初診時週数中央値 16 週
(4-33 週 )。観察期間中央値 24 ヶ月 (1-167 ヶ月 )。診断時臨床病期は、1 期 :18
例 (30.5%)、2 期 :26 例 (44.1%)、3 期 :10 例 (16.9%)、4 期 :2 例 (3.4%)
で、11 例は授乳期に診断された。妊娠中に手術したのは 36 例 (61.0%)、
化 学 療 法 を 行 っ た の は 34 例 (57.6%)(FAC:16 例、AC:16 例、PTX:1 例、
PTX+Trastuzumab:1 例 ) で、化学療法は全例妊娠中期以降に開始した。妊
娠期合併症は、切迫早産 4 例 (11.8%)、妊娠糖尿病 2 例 (5.9%)、羊水過少 1
例 (2.9%) であった。児心拍数低下 1 例、分娩停止 2 例、前置胎盤 1 例の計 4
例 (11.8%) で緊急帝王切開となり、癒着胎盤と恥骨結合開離が出産時に 1 例
ずつみられたが、胎児に重篤な合併症や発育遅延はなかった。患者の経過は、
初診時 4 期 :2 例を含む 7 例 (11.9%) で遠隔転移再発、うち 3 例 (5.1%) が死
亡、52 例が無再発生存中である。遺伝カウンセリング受診者は 21 例であった。
遺伝子検査を受けた 6 例中 3 例 (50%) で BRCA1 遺伝子変異陽性であった。
【結
語】妊娠期乳癌の治療には、治療効果を最大限に引き上げる事と胎児の安全性
確保が欠かせない。本研究では、化学療法施行例も出産時の安全性は通常の
分娩と比べ劣らない事が示唆されたが、今後、児の長期予後調査を行う。また、
遺伝子検査施行例では、BRCA 遺伝子変異陽性率が高い可能性が示唆された。
更なる症例の集積と、遺伝カウンセリングや遺伝子検査についての十分な説
明を行う必要がある。
10764
10063
婦人科ホルモン治療(低用量ピルと HRT)歴のある乳癌患者の特
徴と治療アドヒアランス
乳癌診断後のライフスタイルと予後に関する多施設共同前向き
観察研究:瀬戸内乳がんコホート研究
DP-2-036-05
DP-2-036-06
1
岡山大学病院 乳腺・内分泌外科、2 福山医療センター 乳腺・甲状腺外科、
四国がんセンター 乳腺科、4 香川県立中央病院 乳腺・内分泌外科、
5
岡山赤十字病院 乳腺・内分泌外科、6 愛媛県立中央病院 乳腺・内分泌外科、
7
岡山医療センター 外科、8 水島協同病院 外科、9 屋島総合病院 外科、
10
国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 保健政策研究部
対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座 乳腺外科
3
片岡 明美、市田 美保、倉林 理恵、野村 幸世、明石 定子、高丸 智子、
菊池 弥寿子、石橋 祐子、吉田 玲子、対馬 ルリ子
【背景と目的】近年、不妊や月経困難・更年期障害の治療目的で低用量ピル
(OC)や女性ホルモン補充療法(HRT)を受ける女性が増加しているが、婦人
科ホルモン治療歴のある女性(OC+HRT 群)における乳癌の特徴や術後内分
泌療法の治療実態は明らかではない。【対象と方法】1)当院の '07 年 ~'12 年
の乳癌検診成績、及び2)当院で診断された OC+HRT 群における乳癌の臨床
病理学的因子を retrospective に解析した。【結果】1)乳癌検診のべ 29,942
件 (15,683 例 ) の背景は、平均年齢 40.6 歳、出産経験なし 72.4%、乳癌家
族歴あり 16%、OC+HRT 群は 27.3% (6,803 例 ) であった。乳癌検診は原則
として視触診+マンモグラフィ 2 方向を行い、触診で有所見、A 判定読影医
による category3 以上、半年以内の経過観察となったものを要精検とすると
要精検率 14.4%、癌発見率 0.59%、陽性反応的中率 3.81%、早期癌 (DCIS,
StageI) は 56.8% であった。OC+HRT 群の癌発見率は 0.24%、非 OC+HRT
群では 0.67%(年齢調整後 0.63%)であった。2)OC+HRT 群における乳癌
39 例の臨床病理学的特徴は、平均年齢 44.5 歳、出産経験なし 51.4%、乳癌
家族歴あり 29.7%、DCIS 28.9%、Stage I 50%、ER 陽性 90%、浸潤癌で
の Triple negative 22%、HER2 陽性 12.5% であった。治療は乳房温存療法
56.5%、全摘 43.5%(うち同時再建 90%)、内分泌療法(tamoxifen ± LHRH)
は 66.6% に施行され、婦人科ホルモン療法は全例中止された。観察期間中央
値 1.1 年では乳癌再発を認めなかったが更年期障害 17.9%、子宮筋腫・内膜
症 5%、卵巣癌 1 例、肝炎 1 例を認めた。更年期障害には漢方薬、抗不安薬等
が併用されたが 2 例(5%)は tamoxifen の継続が困難であった。【考察】本研
究では OC+HRT 群における乳癌発見率が非 OC+HRT 群より高い傾向は認め
なかった。しかし、OC+HRT 群は少子・高齢出産の傾向があるために間接的
に乳癌発症の危険群となっている可能性は否定できない。また、本検討は平
均年齢 40 歳とまだ若年での解析であるため、今後の経過観察による再評価が
必要と考えられた。一方、OC+HRT 群における乳癌は、乳癌学会の年次報告
に比べて発症が若く、家族歴を有し、早期発見例が多い、ER 陽性率が高いと
いう特徴が明らかとなった。婦人科医からの検診勧告や本人の高い意識が早
期発見に繋がった可能性が高い。治療アドヒアランスのためには乳癌内分泌
療法で急激にホルモン環境が変化することへの患者の理解と支持療法の確立
が重要課題である。
平 成人 1、野村 長久 2、高橋 三奈 3、高嶋 成輝 3、小笠原 豊 4、
大住 省三 3、吉富 誠二 5、清藤 佐知子 3、松岡 欣也 6、高畠 大典 3、
枝園 忠彦 1、石部 洋一 8、川崎 賢祐 4、秋山 一郎 7、斉藤 誠 9、原 文堅 3、
溝尾 妙子 1、溝田 友里 10、山本 精一郎 10、土井原 博義 1
【背景】様々なライフスタイルと乳癌罹患リスクとの関連性が明らかにされ
ているが,乳癌診断後のライフスタイルと予後との関連性に関する知見は少
ない.【目的】本研究の目的は,1. 乳癌診断後の modifiable lifestyle(食品,
運動,喫煙,飲酒,嗜好品,代替療法など)が乳癌アウトカム(無病生存期
間,全生存期間,HRQoL,有害事象)に及ぼす影響を明らかにし,2.Cancer
survivorship research を通じて,乳癌の診断や治療が身体面,機能面,心理
面,社会面に及ぼす長期的な影響を包括的に調査し,cancer survivor の実態
やニーズの把握,長期的な影響に関する予測因子の同定,乳癌アウトカムと
の関連性を明らかにすること.【試験デザイン】多施設共同コホート研究.【方
法】対象:文書による同意の得られた,Stage4 を除く原発性乳癌患者.調査
票:登録時,化学療法の前後(化学療法施行例のみ),登録から 1 年,2 年,3 年,
5 年の各々の時期に自記式質問票を用いて以下を調査;乳癌診断後のライフ
スタイル(食生活・飲酒・喫煙・身体活動),心理社会的要因(Public Health
Research Foundation- Stress Check List,ストレス評価尺度,ストレス・
コーピング評価尺度,Hearth Hope Index, Perceived positive change,ソー
シャルサポート・生きがい,Hospital Anxiety and Depression Scale),社
会生活や就労問題,生殖要因(月経因子,性生活,妊孕性),倦怠感(Cancer
Fatigue Scale),HRQoL(FACT-G, B, ES, Taxane, PNQ, SF-36),症状,情
報ニーズ,代替療法.評価項目:主要評価項目は無病生存期間,副次的評価
項目は全生存期間,HRQoL,身体症状,有害事象.臨床病理学的事項・予後
調査は共用データベースにて集積.研究期間:登録期間 2013/3-2018/3,観
察期間 2018/3-2023/3.予定登録数:2000 人.付随研究:血液サンプル,
組織検体を収集し関連バイオマーカー研究を実施.【研究資金】NPO 法人瀬戸
内乳腺事業包括的支援機構,文科省科学研究費補助金,厚労省がん研究助成.
【進捗】2013/11 現在,全登録数は 360 例.
311
一般セッション(ポスターディスカッション)
【はじめに】近年、乳癌罹患率の上昇と出産年齢の高齢化により妊娠授乳期の
乳癌患者を診察する機会は今後増加していくと思われる。妊娠授乳期乳癌は
検査および治療の時期と内容を考慮することが必要である。
【対象と方法】対象は 2005 年から 2013 年までに妊娠期および産後 3 年以内に
乳癌と診断され、当院で治療を行った 40 歳以下の 22 症例。乳癌診断時の年齢、
初産、臨床病期、subtype、生存期間などについて retrospective に検討した。
【結果】同時期の 40 歳以下の若年者乳癌患者は 116 例であり、周産期乳癌患
者は 22 例 (19% ) であった。診断時年齢中央値は 35 歳 (25-40 歳 ) で、妊娠
期 3 例、 産 後 1 年 以 内 7 例、 産 後 1 年 ~ 2 年 が 5 例、 産 後 2 年 ~ 3 年 が 7 例
だった。初産症例が 36%。発見契機は 20 例が腫瘤を自覚、2 例は検診であっ
た。診断時の病期は 0 期 1 例 (5%)、I 期 3 例 (14% )、II 期 10 例 (45% )、III
期 6 例 (27 % )、IV 期 2 例 (9 % )。Subtype は Luminal type が 8 例 (36 % )、
Luminal HER2 type が 4 例 (18% )、HER2 type が 1 例 (5% )、Triple
Negative type(TNBC) が 8 例 (36 % ) で あ っ た。 妊 娠 期 ~ 産 後 2 年 以 内 の
46%は TNBC である一方、産後 2 年~ 3 年に発見された 7 例中 TNBC は 1 例の
みであった。第 2 度近親以内に乳癌家族歴を有する症例は 7 例(32%)であっ
た。治療は 18 例に手術を施行した。術前化学療法を 14 例、術後化学療法を 3
例に行った。観察期間中央値 36 ヶ月時点で、再発を 4 例 (20% )、死亡を 4 例
(20% ) に認めた。TNBC と非 TNBC の予後は同等であったが、DFS は妊娠期
から産後 1 年以内の発症症例で短い傾向があった。2 症例は乳癌治療後新たに
妊娠/出産を経験した。
【考察】今回の我々の検討では、妊娠授乳期乳癌は、診断時には進行例が多かっ
た。非妊娠授乳期若年性乳癌患者症例との臨床病理学的特徴について比較を
行い若干の文献的考察を加えて検討する。
北川 瞳 1、林 直輝 1、川野 純子 2、北野 敦子 3、吉田 敦 1、矢形 寛 1、
中村 清吾 4、角田 博子 5、山内 英子 1
一般セッション
抄 録
ポスター掲示
ポスター掲示
10088
10942
MLPA と FISH を用いた乳管小葉混合癌(mixed lobular and
ductal carcinoma)のゲノム解析の一例
乳癌における ARID1A 発現異常の予後因子としての検討
GP-1-001-01
GP-1-002-01
1
岐阜大学大学院医学系研究科 がん先端医療開発、
岐阜大学大学院医学系研究科 腫瘍外科、
3
岐阜大学大学院医学系研究科 乳腺・分子腫瘍、
4
岐阜大学大学院医学系研究科 免疫病理
2
1
金沢大学医学研究科 分子細胞病理、
2
金沢大学 消化器・乳腺・移植再生外科 、3 金沢大学 乳腺科
大井 章史 1、井口 雅史 2、川島 博子 3
森川 あけみ 1、櫻谷 卓司 2、兼松 昌子 2、森光 華澄 3、名和 正人 2、
二村 学 3、竹内 保 4、吉田 和弘 2
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】浸潤性乳管癌と浸潤性小葉癌の組織像をあわせもつ乳管小葉混合癌
(mixed lobular and ductal carcinoma, 混合癌と略)は稀であり、其の分子生物
学的な特徴は不明である。今回、組織学的、免疫組織化学的に典型的な混合癌1
例について、其の組織発生を示唆する細胞遺伝学的情報がえられたので報告す
る。
【症例】30代の女性。右乳腺C領域に腫瘍を認め、針生検を行ったところ、
浸潤性乳管癌
(硬癌)
、
ハーセプテスト陽性
(20%)
であった。全身検索でリンパ節、
肝及び骨転移を認めた。Luminal HER2 乳癌に対する化学療法を施行後、乳房
切断術を施行した。
【外科切除標本】
CDEAB領域を占める8x7cm大の腫瘍を認め、
組 織 学 的 に は、 小 葉 癌 優 位 の 混 合 癌 と 診 断 し た。
【 免 疫 染 色 】乳 管 癌 は
E-cadherin, HER2, cyclin D1陽 性、 小 葉 癌 はcyclin D1陽 性、E-cadherinと
HER2陰 性 で あ っ た。
【Multiplex ligation-dependent probe amplification
(MLPA)】乳管癌と小葉癌の部位から抽出したDNAを使って検索した結果、
CCND1は乳管癌と小葉癌で高度増幅, HER2は乳管癌でのみ高度増幅がみられ
た。
【Fluorescence in situ hybridization (FISH)】
乳管癌ではCCND1とHER2
のHSR型の増幅が見られ、小葉癌では、CCND1のHSR型増幅を認めたがHER2
の増幅は見つからなかった。また小葉癌ではCDH1 (E-cadherin遺伝子) のコ
ピー数の減少がみられた。
【結論】乳管癌と小葉癌でCCND1のHSR型増殖が見
られたことより、両者は共通するprogenitor cell から分離したと考えられ、
HER2及 びCCND1
陰性乳管癌細胞は
paclitaxel によって
消失し、HER2増幅
陽性乳管癌細胞も
t ra s t u z u m a b に
よって、細胞数の
減少をきたしたと
考えられた。(図1)
はじめに:クロマチン再構成因子複合体は ATP 依存性にヌクレオソーム構造
を変換し種々の転写因子が、DNA へ結合しやすくする、あるいは逆に結合し
にくくすることで細胞周期に密接に関係しており、その変異、機能不全が腫
瘍発生、進行に関わることが、明らかにされつつある。我々の研究グループ
は国内外に先駆けてクロマチン再構成因子複合体の DNA 結合因子であるヒト
ARID1A(synonyms: p250, BAF250) を同定し変異型 ARID1A が細胞周期促
進作用を担い癌発生、進行に関わっていることを報告してきた。目的:乳癌
における ARID1A 発現異常が進行、予後と関係するのかを明らかにする。対
象と方法:2004 年 6 月から 2008 年 9 月までに岐阜大学腫瘍外科にて浸潤性
乳癌手術を受けた Stage I ~ III の 108 例を対象とした。男女比は 2:106、
年 齢 は 33 ~ 98 歳 で Stage I、II、III は そ れ ぞ れ 44、53、11 例 で あ っ た。
ER(+)、( 境 界 域 )、( - )は 85、7、16 例 で あ っ た。HER2( + )、( - )、 未
検は 14、91、3 例であった。両側乳癌、術前治療例は除外した。手術標本
のパラフィンブロックを用いて ARID1A に特異的な抗体を用い、ARID1A の
発現異常を免疫組織染色方法を用いて染色濃度、染色低下面積割合で検討し
た。結果:乳癌における ARID1A の発現を免疫組織染色方法で検討したとこ
ろ、77.8% の症例で ARID1A の発現減弱や消失あるいは細胞内局在の異常が
みられた。10 ~ 20% 染色面積低下がみられる群(全体の 6.5%)では、有意
に DFS が短縮した(p=0.0056)。OS でも同様に有意差を認めた(p=0.011)。
染色濃度については予後との相関関係を認めなかった。考察:乳癌でも
ARID1A の発現異常が認められる。なぜ、10 ~ 20% 染色面積低下がみられ
る群で、予後が悪化するかを明らかにするために、ARID1A の不完全な発現
低下が、もたらす遺伝子経路変調を網羅的遺伝子解析で検討中であり、この
結果も併せて報告する。
10853
10182
The new set of 5genes による乳癌症例の予後予測の検討
DCIS 乳癌における p53 発現の臨床病理学的意義
GP-1-002-02
GP-1-002-03
1
1
東京医科大学八王子医療センター 乳腺科、
2
Bologna University, Anatomic Patolhology, Bellaria Hospital、
3
群馬大学医学部 臓器病態外科学、4 群馬大学医学部 臓器病態学
自衛隊熊本病院、2 熊本市民病院 乳腺内分泌外科、3 熊本市民病院 病理
菊地 勝一 1、大佐古 智文 2、西山 康弘 2、中野 正啓 2、藤末 真実子 2、
田嶋 ルミ子 2、西村 令喜 2、豊住 康夫 3、有馬 信之 3
石川 裕子 1,2,4、Morandi Luca2、田中 和美 3、堀口 淳 3、小山 徹也 4
<背景>近年乳癌の治療において、予後予測検査法である遺伝子発現解析が
広く行われるようになっている。主要な検査として、“MammaprintR” や
“oncotype DXR” 等があるが、両検査とも高価で、検査症例対象にホルモン
レセプターやリンパ節転移の項目等で制限を設けている。“MammaprintR”
は 70 の遺伝子を検索し、予後測定を行うが、使用検体を fresh 又は frozen
section と し て お り、 術 後 に 希 望 し て も 施 行 は 不 可 能 で あ る。 ま た Triple
Negative 乳癌などには、予後予測困難な症例が含まれているが、このサブタ
イプは両検査の対象外である。Mustacchi G 等は公表されている様々な遺伝
子発現解析を分析し、20 遺伝子に注目し、早期乳癌 261 症例でその遺伝子発
現解析を行った。その結果、さらに 5 遺伝子を抽出し、それらを解析すること
により、術後5年の無病期間を評価し、再発危険群3群(high/intermediate/
low)に分けることに成功した。今回我々は、日本人の乳癌症例において、こ
の new set of 5genes の解析が有効であるかを検討した。<方法> 20062007 年に群馬大学で手術を施行した乳癌 75 症例で解析を行った。手術時摘
出物の FFP 切片を使用し、total RNA を抽出し、それらの cDNA を作成し、5
遺伝子の発現解析を施行した。<結果>症例の年齢範囲は 27-82 歳(中央値
54.3 歳)。75 例中、67 例が high risk に、3 例が inter mediate risk に、5 例
が Low risk に分類された。また、再発症例 11 例中 10 例が high risk 群に分
類され、残り 1 例が intermediate risk に分類された。<考察>今回使用し
た new set of 5 genes の検査は近い将来、市販検査になる予定であるが、
FFP 切片で検査が可能であることと、症例に適応条件がなく、比較的安価であ
ることが利点である。しかし今回の結果では、多くの症例が high risk 群に分
類されてしまったため、DFS において有意な結果が出なかったと考えられる。
症例母集団の比較検討や、さらなる因子の解析を踏まえ、報告したい。
背景:我々は、癌抑制遺伝子である p53 の過剰発現が乳癌、とくに Luminal
type における予後因子であることを報告した (Anticancer Res. 2013)。一
方、消化器癌では p53 の変異は進行癌晩期脱分化の段階で発現するとされ、
これが p53 過剰発現として認識される。しかし、乳癌においては、p 53 過
剰発現が DCIS の段階で認められており、局所再発との関連が報告されている
(J Surg. Res. 2007)。 今回、DCIS 症例における p53 の過剰発現を免疫染色
(IHC) にて評価を行い、臨床病理学的因子との関連性を検討するとともに、わ
ずかな浸潤を認める T1a 症例との比較を行った。対象および方法:2001 年か
ら 2010 年まで , 熊本市民病院で初回手術を施行した 2497 例のうち、DCIS と
診断された 260 例(10.4%)、および浸潤径 5mm 以下の T1a:74 例を対象と
した。検討項目は年齢、閉経状況、核グレード(NG: I, II vs III)、ER/PgR
( 陽 性:1% 以 上 )、HER2( 陽 性:2+ か つ FISH +、3+)
、Ki-67 index (cut
point: 20%)、p53 過剰発現、などである。統計解析はカイ二乗検定で行った。
結果:DCIS と診断された 260 名の平均年齢 57 歳 (25 ~ 87 歳 )(中央値は 56
歳)、閉経前 / 後は 101/156 であった。このうち、
p53 過剰発現 35 名 (13.5% )、
Ki-67index;20% 以上:75 名 (28.8% )、HER2 陽性:37 名(14.2%)、ER 陽
性 217 名(83.5%)、PgR 陽性 200 名(76.9%)、NG III:19 名(7.3%)であっ
た。p53 と臨床病理学的因子との関係では HER2、Ki-67、NG との有意な相
関があったが(各々p< 0.0001、< 0.0001、< 0.0001)、年齢、閉経状況、
腫瘍の広がりとの有意な相関は認められなかった。T1a における p53 過剰発
現例は 16 名 (22% ) であったが、これは DCIS での発現率に対し高率であった。
DCIS と T1a との比較検討では ER/PgR 陰性、HER2 陽性、NG III、Ki-67 高
値例、p53 過剰発現例が T1a に多くなる傾向であった ( それぞれ p=0.003、
0.001、0.04、0.04、0.07、0.06)。T1a での再発はなかった。結論:乳癌
においては DCIS の段階で p53 過剰発現が 14%に見られたが、浸潤例では有
意に高率となっていた。また、ER/PgR 陰性、HER2 陽性、NG III 、Ki-67 高
値との有意の関連がみられたが、予後についての明らかな関連は見られなかっ
た。
314
ポスター掲示
10112
11113
エストロゲン受容体陽性乳癌を対象とした次世代ディープシー
クエンシング法による TP53 遺伝子変異解析
次世代シーケンサーを用いた葉状腫瘍および線維腺腫の体細胞
変異解析
GP-1-002-04
GP-1-002-05
1
大阪大学大学院医学系研究科 乳腺・内分泌外科
聖マリアンナ医科大学大学院医学研究科 応用分子腫瘍学、
聖マリアンナ医科大学 乳腺内分泌外科、
3
聖マリアンナ医科大学 診断病理学
2
宇治 公美子、直居 靖人、加々良 尚文、下田 雅史、下村 淳、丸山 尚美、
島津 研三、金 昇晋、野口 眞三郎
【背景】次世代シークエンサーを用いた 500 例を超える乳癌の exome 解析から
乳癌で生じる体細胞変異の全貌が明らかとなった(Nature, 490:62, 2012)。
今後、簡易型次世代シークエンサーの普及に伴い、網羅的な体細胞変異解析
は診断や治療の前提となる乳癌の生物学的な個別化を行う上で遺伝子発現プ
ロファイルとともに重要な手法となるものと考えられる。一方、乳腺良性腫
瘍に関しては次世代シークエンサーを用いた体細胞変異に関する報告はない。
今回我々は臨床上でもしばしば鑑別が問題となる乳腺線維腺腫と葉状腫瘍に
ついて変異解析を行った。【方法】2000 年より 2010 年の間に聖マリアンナ医
科大学付属病院で手術が施行された線維腺腫 11 例と葉状腫瘍(境界悪性)11
例について、ホルマリン固定・パラフィン包埋(FFPE)検体からゲノムDNA
を抽出し、癌および肉腫で高頻度に変異を認める 409 遺伝子の exon 領域をエ
マルジョン PCR にて増幅し、簡易型次世代シーケンサー(Life Technology 社 Ion PGM)にて体細胞変異を解析した。【結果】FFPE 検体であっても 10ng の
DNA 収量があればシーケンス解析は可能であった。PIK3CA や TP53 など、乳
癌で高頻度に変異が認められる遺伝子の変異は認めなかった。線維腺腫およ
び葉状腫瘍、両疾患に共通な変異をきたす遺伝子として DPYD と THBS1 など
が、線維腺腫に特異的な遺伝子として PAX5 などが候補として挙げられた。【考
察】これらの遺伝子の変異は、間葉系腫瘍に共通、または線維腺腫に特異的な
遺伝子変異である可能性があり、葉状腫瘍との鑑別に有用であることが期待
される。さらに多くの検体を用いて解析を行いそれぞれの腫瘍に共通な遺伝
子変異を特定するとともに、それら変異の腫瘍形成への関与を細胞生物学的、
分子生物学的手法により検討していきたい。
11429
11807
Wnt5a 陽性乳癌の生物学的特徴と分子標的治療への臨床応用の
可能性
HER2 過剰発現乳癌における d16-HER2 splice variant の蛋
白発現の生化学的および組織学的検討
GP-1-002-06
1
GP-1-002-07
広島大学病院 乳腺外科、2 広島大学 病理診断科
弘前大学大学院医学研究科 分子病態病理学講座
角舎 学行 1、小林 美恵 1、網岡 愛 1、梶谷 桂子 1、恵美 純子 1、
重松 英朗 1、松浦 一生 1、舛本 法生 1、有廣 光司 2、岡田 守人 1
和田 龍一
【目的】分泌蛋白質 Wnt5a は、Wnt シグナル伝達経路の一つであるβ - カテニ
ン非依存性経路の代表的なリガンドであり、胃癌、前立腺癌、肺癌などでは
予後、悪性度に関連していることが報告されているが、乳癌における Wnt5a
発現の臨床的意義は解明されていない。我々は、Wnt5a 陽性乳癌の生物学的
特徴、悪性化のメカニズムについて解析を行い、Wnt5a を標的とした新しい
乳癌治療法の可能性について検討した。【方法】2011 年 4 月~ 2013 年 8 月に
手術を行った浸潤性乳癌症例を対象とした。乳腺組織パラフィン包埋切片を
用いて、Wnt5a、ER、PgR、HER2、Ki67 などの免疫組織学的染色を含む病
理学的検索を行い、Wnt5a 発現と乳癌病理学的因子との関連を調べた。また、
Wnt5a 発現乳癌培養細胞株を新たに作製し、Wnt5a 発現と関連する新規分子
の同定を DNA マイクロアレイにより行った。【結果】乳癌病理検体の免疫染色
では、浸潤癌 111 例中 64 例 (58%) に Wnt5a が発現しており、Luminal タイ
プ乳癌(ER 陽性、PgR 陽性、HER2 陰性)と強い相関(P < 0.001) があった。
また、DNA マイクロアレイを用いた解析から、Wnt5a 発現により誘導される
新 規 蛋 白 質 の 一 つ と し て Activated leukocyte cell adhesion molecule
(ALCAM)が同定され、病理検体による免疫染色でも、Luminal タイプ乳癌の
Wnt5a 陽性乳癌 61 例中 49 例に ALCAM が共発現していた。【結論】我々の結
果から、Luminal タイプ乳癌の中には Wnt5a/ALCAM 陽性乳癌が存在する。
ALCAM は、これまでに細胞接着や浸潤を介して乳癌の悪性度、予後に関与し
ていることが報告されていることから、Wnt5a/ALCAM 経路は ER 陽性乳癌に
おける分子標
的となる可能
性がある。
315
d16-HER2 splice variant は、HER2 の細胞外領域をコードする exon 20 の
48 塩基を欠損した分子である。これまで我々は、HER2 過剰発現乳癌におい
て 野 生 型 (wt)-HER2 mRNA と d16-HER2 mRNA の 定 量 を 行 い、wt-HER2
mRNA の発現増加とともに、d16-HER2 mRNA の発現が増加していること、
また、wt-HER2 mRNA に対する d16-HER2 mRNA の発現比率の高い症例で
は、リンパ節転移や遠隔転移といった悪性病態の頻度が高いことを明らかに
した。しかしながら、d16-HER2 が実際に蛋白質として発現しているのか、
また、腫瘍組織内における発現の局在については明らかでなかった。そこで
今回、d16-HER2 に対する特異的抗体を作成し、HER2 過剰発現乳癌における
d16-HER2 蛋白質の発現について、生化学的に、また、免疫染色により組織
学的に検討した。生化学的検討には、4 症例の HER2 過剰発現乳癌の凍結新鮮
組織を用いた。Western blot 解析では、4 症例すべてにおいて wt-HER2 の高
い発現を認め、d16-HER2 特異的抗体を用いた解析では、wt-HER2 よりやや
分子量が小さなバンドが、4 症例中 1 症例で確認され、実際に蛋白質として発
現していると考えられた。そこで、パラフィン包埋標本を用いて d16-HER2
抗体による組織学的検討を行った。その結果、d16-HER2 は腫瘍細胞全体
にわたり細胞質に弱く発現しており、さらに細胞質に高発現する腫瘍細胞が
散在して見られた。高発現する細胞の頻度は症例によって異なり、ごく散在
性に存在する症例から、非常に多数存在する症例まで見られた。d16-HER2
を高発現する細胞が高頻度に見られる症例について、ホルモンレセプター、
Ki67、幹細胞マーカーの一つである aldehyde dehydrogenase (ALDH) に対
する抗体と d16-HER2 抗体を用いた二重免疫染色による検討を行った。ホル
モンレセプターは d16-HER2 を高発現する細胞と周囲の腫瘍細胞で発現に差
を認めなかった。一方、腫瘍全体における Ki67 は陽性率が高いものの、d16HER2 を高発現する細胞では Ki67 は陰性となるものが多く、細胞増殖能は低
い細胞と考えられた。d16-HER2 を高発現する腫瘍細胞は ALDH には陰性で
あった。以上のことから、HER2 過剰発現乳癌では d16-HER2 splice variant
蛋白質が発現しており、高発現する細胞は増殖能の低い特徴的な形質を示す
細胞であることが明らかにされた。
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】従来の TP53 変異検出法であるサンガー法によるシークエンシングや
p53 の免疫染色の検出感度は何れも十分ではない。我々は新しい技術である
次世代シークエンサー(Next-generation sequencing : NGS)を用いてよ
り正確に変異を同定し、TP53 変異陽性乳癌の臨床病理学的特徴(特に予後と
の相関)を解明すべく本研究を実施した。また、マイクロアレイによる TP53
関連遺伝子の発現シグニチャー(TP53 gene expression signature (TP53
GES))と予後との相関についても合わせて解析した。【対象・方法】115 例の
ER 陽性乳癌患者を対象にサンガー法と NGS 法による TP53 変異解析、免疫
染色による p53 タンパクの発現解析、マイクロアレイ(Affymetrix)による
TP53 GES 解析と intrinsic subtype 分類を実施した。* P < 0.05 以下を有
意と判定した。【結果】サンガー法では 20 例に変異を認め ( 以下 SS-TP53 変異
とする )、NGS 法では更に 7 例に変異を同定した(計 27 例、以下 NGS-TP53
変異とする)。SS-TP53 変異陽性乳癌は、有意に腫瘍径が大きく、組織学的異
型度が高く、luminal A に比べ HER2-enriched や basal-like で多く認められ
た。NGS-TP53 変異陽性乳癌は、これら以外に更に PR 陰性および HER2 陽性
と有意の相関を示した。SS-TP53 変異と TP53 GES 解析は、それぞれ有意に
予後との相関を示したが、p53 免疫染色と NGS-TP53 変異は予後と有意の相
関を示さなかった。多変量解析では SS-TP53 変異よりも TP53 GES の方が有
意水準の高い独立した予後因子であった。【結論】NGS 法によってより高感度
に TP53 変異を同定することができたが、NGS-TP53 変異は予後と有意の相
関を示さなかった。NGS 法によってのみ変異が同定された 7 例では、リンパ
球や正常乳腺組織の高度のコンタミネーションが認められこのような癌では
たとえ TP53 に変異があっても予後が不良とならない可能性が推察された。一
方、TP53 GES は ER 陽性乳癌における強力な予後因子であることが示唆され
た(Uji K. et al. Cancer Letters 2014)
。
永澤 慧 1,2、安田 秀世 1、岡南 裕子 3、前田 一郎 3、福田 貴代 1、
小島 康幸 2、速水 亮介 2、西川 徹 2、津川 浩一郎 2、太田 智彦 1
ポスター掲示
10221
11532
術前内分泌療法による乳癌組織の FOXA1,GATA3 発現変化に関
する研究
ER 陽性乳癌における ER, PR, HER2 の mRNA 発現と臨床病理
学的因子との関連
GP-1-003-01
GP-1-003-02
1
1
2
3
九州大学大学院 消化器・総合外科、
九州大学大学院 九州連携臨床腫瘍学講座、
3
4
九州がんセンター 統括診療部病理診断科、
九州がんセンター 臨床研究部、
5
博愛会相良病院 乳腺科、6 博愛会相良病院 病理診断科
田中 仁寛 1、徳永 えり子 1,2、山下 奈真 1、相良 安昭 5、大井 恭代 6、
田口 健一 3、岡野 慎司 1、大野 真司 4、森田 勝 1、前原 喜彦 1
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】ER 陽性 HER2 陰性乳癌における術前内分泌療法の治療効果予測因子は
明らかではない。
ER 関連転写因子である forkhead-box protein A1 (FOXA1)、
GATA-binding protein 3 (GATA-3) はホルモン感受性制御に重要な役割を果
たすことが知られている。【目的】術前内分泌療法による乳癌組織の FOXA1、
GATA3 発現変化を解析し、術前内分泌療法の効果予測因子となるか検証す
る。【対象】九州大学病院、九州がんセンター、相良病院にて、2000 年 1 月
か ら 2012 年 12 月 に 術 前 内 分 泌 療 法 後 手 術 を 行 っ た ER 陽 性 HER2 陰 性 乳
癌 66 例。【方法】術前内分泌療法前後の乳癌組織における ER、PgR、Ki67、
FOXA1、GATA3 発現を免疫組織化学法にて評価し、臨床病理学的因子、治療
効果との関連を解析した。【結果】閉経前 24 例 (36%)、閉経後 42 例 (64%)、
cStage I 6 例 (9%)、II 58 例 (88%)、III 2 例 (3%) であった。術前内分泌療
法は、アロマターゼ阻害薬またはタモキシフェン ( ± LHRH-agonist) により
行われた。最良効果は PR 21 例 (32%)、SD 45 例 (68%)、組織学的治療効
果は Grade 0/1a 35 例 ( 57%)、Grade 1b 以上 26 例 (43%)、乳房温存率 56
例 (85%)、pStage I 25 例 (38%)、II 39 例 (59%)、III 2 例 (3%) であった。
治療前の GATA3 は ER(p < 0.01) および FOXA1(p < 0.01) と有意な正の相関
を認め、FOXA1 は PgR(p < 0.01) と有意な正の相関を認めた。治療前後の発
現変化(平均値)は ER 90.6 → 87.9% (p=0.64)、PgR 57.8 → 16.6% (p <
0.01)、Ki67 19.2 → 11.1% (p < 0.01)、FOXA1 90.2 → 80.2% (p < 0.01)、
GATA3 77.2 → 78.7% (p=0.55) であり、PgR、Ki67、FOXA1 で有意に低下
した。また PR、SD 症例、核グレード 1、2 において Ki67、FOXA1 の発現低
下が有意であった。FOXA1 の低下の大きいもので Ki67 低下も大きい傾向があ
るが、有意な相関ではなかった。【結語】ER 陽性 HER2 陰性乳癌に対する術前
内分泌療法により、Ki67、FOXA1 の発現は有意に低下した。FOXA 1の内分
泌効果予測因子としての意義はさらに検証が必要である。
群馬大学大学院 臓器病態外科学、2 東北大学大学院 分子機能解析学、
群馬大学大学院 病理診断学
樋口 徹 1,2、長友 隆将 2、郷野 辰幸 2、時庭 英彰 1、丹羽 俊文 2、堀口 淳 1、
小山 徹也 3、林 慎一 2、竹吉 泉 1
【目的】ER 陽性乳癌においては,HER2 の発現状況や ER の標的遺伝子である
PR の発現状況が predictive factor もしくは prognostic factor となり得るこ
とが広く知られている.また,ER と HER2 を介した増殖経路においては両者
のクロストークが想定されており、ER のみを標的とした治療よりも両者を標
的とした治療の方が高い治療効果を示している。しかし,ER,PR,HER2 の
3 者の機能的な関連性はまだ十分に明らかにされてはいない。そこで、臨床検
体における ER,PR,HER2 における mRNA の発現量と,臨床病理学的因子と
の相関を確認することによりこれら因子の関連性を検討する。【方法】2011 年
5 月から 2012 年 5 月の間に当院で手術を施行された ER 陽性乳癌患者 43 例の
組 織 か ら mRNA を 抽 出 し,ER,PR,HER2 の mRNA を real-time PCR 法 で
それぞれ定量し,定量された mRNA に対して臨床病理学的因子との関連性を
統計学的に検討した.検討した臨床病理学的因子は,ER Allred,PR Allred,
HER2,年齢,閉経状況,組織型(特殊型 vs 浸潤癌),浸潤部(乳腺・脂肪組織 f
vs 皮膚・大胸筋),リンパ節転移の有無,ly,v,NG,MI,NA,腫瘍径であった.
組織標本を採取した 43 例の ER 陽性乳癌患者からは包括同意を手術時に得た.
【結果】ER,PR,HER2 の mRNA における各々の相関を検討したところ,有意
な結果は得られなかった.ER mRNA 発現に関しては,ER Allred score と年
齢について有意に正の相関を示し,閉経後患者において有意に高かった.ま
た,HER2 陽性群において有意に発現が低かった.PR mRNA と HER2 mRNA
発現に関しては,統計学的に有意な臨床病理学的因子はなかった.【考察】ER
mRNA 発現に関しては,年齢・閉経状況という体内の内分泌環境に関連して
いることが示唆された.mRNA レベルでは ER の標的遺伝子である PR との関
連が認められなかったが,PR の遺伝子発現と蛋白質発現が相関する傾向は認
められており,症例数の問題である可能性も考えられた.また,ER 陽性乳癌
における HER2 シグナルが ER の転写制御に関わっている可能性が示唆され
た.今後症例を増やしさらに解析を行う予定である.
11181
10857
当院の乳癌症例における AR 発現と臨床病理学的検討
Androgen receptor 陽性 triple negative 乳癌の臨床病理学
的特徴
GP-1-003-03
1
GP-1-003-04
県立宮崎病院 外科、2 同 臨床検査科、3 同 病理診断科、4 同 化学療法室
1
植田 雄一 1、大友 直樹 1、牧野 裕子 1、大山 真有美 1、石川 恵美 2、
島尾 義也 3、林 透 3、仲田 恵美 4
【はじめに】乳癌における androgen signal と androgen receptor(AR) は古
くから研究がなされているが、近年 AR に関する研究結果が多く報告されるよ
うになってきている。また、欧米ではアンドロゲン受容体拮抗薬の臨床試験
も進められており、今後は AR を標的とする治療薬の開発が飛躍すると考えら
れる。それにともない各施設における AR 測定の意義が高まると考えられる。
今回我々は当院で施行した原発性乳癌症例を対象として AR 発現とその臨床病
理学的検討を行ったため報告する。【目的と方法】2011 年 9 月から 2012 年 8
月までに当院で経験した原発性乳癌(DCIS や初診時に転移を認めた症例は除
外。AR を測定していない症例も除く。)70 症例を対象として、臨床病理学的
因子との関連を解析した。【結果】閉経前症例(21 例)において AR 発現が低く
(11 例)、閉経後症例(59 例)で AR 発現が多い(発現率 75% 以上で 25 例)傾向
を認めた。核グレードにおいては grade3 症例(29 例)において AR 発現が少
ない(17 例)傾向を認め、ki67 発現率においても逆の相関を認めた。リンパ節
転移数に関しては、転移数が多い群(8 例)においては AR 発現が少ない傾向に
あった。Luminal 群(50 例)において AR 発現が有意に高く(発現率 75%以上
で 24 例)、non-luminal 群(20 例)において AR は有意に低発現(16 例)であっ
た。Subtype 別に分類すると、” luminalA” 群(47 例)においては有意に高発現
(発現率 75%以上で 24 例)であり、HER2type(4 / 5 例)・Triple negative
type 群(11 / 15 例)においては有意に低発現であった。【結語】種々の文献
の如く、悪性度が低いないしホルモン感受性が高い群では AR 発現率が高い傾
向であったが、すべての症例に当てはまる結果ではなかった。さらなる検討、
文献的考察を含め報告する。
昭和大学医学部 乳腺外科、2 昭和大学医学部 病理学講座
中島 恵 1、明石 定子 1、池田 紫 1、金田 陽子 1、橋本 梨佳子 1、
高丸 智子 1、大山 宗士 1、吉田 玲子 1、森 美樹 1、中村 清吾 1、
桑山 隆志 1、榎戸 克年 1、澤田 晃暢 1、広田 由子 2、渡邊 智映 1
【背景】Triple negative 乳癌 (TNBC) を遺伝子パターンにより更に分類し、そ
れぞれに有効な治療法についての研究が進んでいる。その中で androgen
receptor (AR) 陽 性 乳 癌 は、TNBC の 約 10 ~ 43 % 認 め ら れ、histological
grade が低い、Ki-67 が低い、リンパ節転移が少ない、DFS が長い、OS が長
い等の予後良好な乳癌として報告されているものが多いが、乳癌の AR の意義
については明らかにされていない。今回、我々の施設において AR 陽性 TNBC
の臨床病理学的特徴を分析した結果を報告する。
【対象と方法】2010 年~ 2013 年に当院で手術をした原発性 TNBC、50 例 51
乳房の手術標本の AR の免疫染色 (novocastra、AR27) を施行し、年齢、治療
前 CNB 標本の Nuclear Grade、Ki-67 との相関を分析した。対象のうち 17 例
34% (AR 陽性 2 例、AR 陰性 15 例 ) は術前化学療法を施行している。今回の
検討では 1%以上の AR 陽性細胞を認めた場合を AR 陽性と定義した。
【結果】TNBC のうち AR 陽性率は 23.5% (12/51) であった。AR 陰性 TNBC
と 比 較 し、AR 陽 性 TNBC の 平 均 年 齢 は 有 意 に 高 く (54.9 歳 vs 66.3 歳、p
= 0.001)、Ki-67 は 10%以下の症例が有意に多かった (0/40、0% vs 4/9、
44.4%、p ≦ 0.001)。Nuclear Grade は 1、2 の割合が高い傾向であること
が示された (7/40、17.5% vs 5/11、45.5%、p=0.053)。
【考察と結論】今回の分析では TNBC の中で AR 陽性乳癌は高齢者に多く、増殖
能の低い乳癌という結果であった。AR 陽性の triple negative 乳癌に対して抗
androgen 薬 (bicalutamide) の有効性を検討した臨床試験では、19%が 6 か
月以上の SD を維持できており、その中で 231 週間 SD を維持している症例も
報告されている。現在は抗 androgen 薬である enzalutamide の有効性を検証
する臨床試験が進行中である。AR の染色は TNBC の適切な治療法の選択のた
めに有用な検査の一つになることが期待できる。今後も症例を増やして検討
する予定である。
316
ポスター掲示
10175
11074
乳癌細胞の細胞周期進行制御における K+-Cl- 共輸送体の役割
TALEN 法を用いた BRCA1 遺伝子改変ヒト細胞株の樹立と機能
解析
GP-1-004-01
1
GP-1-005-01
京都府立医科大学 消化器外科学、2 京都府立医科大学 細胞生理学
1
北川 真希 1,2、丸中 良典 2、新里 直美 2、塩崎 敦 1、市川 大輔 1、
大辻 英吾 1
2
福田 貴代 1、安田 秀世 1、呉 文文 2、津川 浩一郎 2、太田 智彦 1
家族性乳癌および Basal-like 乳癌の原因遺伝子である BRCA1 はその変異と表
現型の解析に遺伝子改変マウスが使われてきた。しかし、BRCA1 ヘテロ欠損
マウスは p53 変異と掛け合わさない限り乳癌を発症しないこと、ヒトでは乳
癌を発症する変異型でもマウスでは発症しないことなど、ヒトとマウスでの
表現型の相違が認められる。原因としてヒトとマウスではゲノムの相違のみ
ならず、ヘテロクロマチンなど、エピゲノムの相違があげられ、マウスと平
行したヒト細胞の解析が重要である。これまでヒト細胞の遺伝子改変は困難
であったが、TAL エフェクターヌクレアーゼ (TALEN) を用いた特異的な DNA
切断によってその技術は特段に向上した。今回、TALEN 法を用いてヒト細胞
の BRCA1 遺伝子改変細胞を樹立したので報告する。1)ヘテロ変異体の作成。
片アレルにピューロマイシン (puro) 耐性ターゲティングコンストラクト -1
(図)を作成した。相同組換え能の高い HCT116 細胞に exon2 の I26 付近を切
断する TALEN 発現ベクターとともにトランスフェクションし、puro 耐性株を
選択し、PCR およびシーケンサーにて遺伝子改変を確認した。この際 BRCA1
のホモ欠損は致死的であるため Cre/loxP によるコンディショナルな遺伝子改
変が可能な改変とした(図 )。2)対側アレルの改変。I26*(ストップコドン)
変異 , I26A(E3 死活型)変異を導入するためのネオマイシン (neo) 耐性ターゲ
ティングコンストラクト -2 を上記ヘテロ変異細胞株に導入し、puro/neo 耐
性株を選択した。得られた細胞で BRCA1 の haploinsufficiency、変異細胞株
の薬剤感受性および DNA 損傷応答機能を解析予定であり、これらの結果を合
わせて報告する。
10153
11367
GP-1-006-01
GP-1-006-02
ヒト乳がん細胞に対してインスリンがプロゲステロン受容体
(PgR)に及ぼす影響ついての検討
1
Glycoprotein Nonmetastatic B(GPNMB) の 発 現 と 増 殖 因
子シグナル伝達の検討
藤田保健衛生大学 乳腺外科、2 藤田保健衛生大学医学部 生化学
1
3
引地 理浩 1、林 孝典 2、伊藤 幸 1、宮島 慎介 1、小林 尚美 1、原田 信広 2、
内海 俊明 1
【背景と目的】糖尿病は乳癌のリスク因子であり、かつ予後不良因子であると
の報告がある。その機序として IGFR(insulin-like growth factor 1 receptor)
シグナル伝達経路が関与している可能性がある。近年、IGF-1 がエストロゲン
受容体α (ER α ) S167 のリン酸化を亢進させ、乳がん細胞の増殖を促進する事
が報告された。また、ER 陽性乳癌において PgR は予後因子であり、低発現例
や陰性例は予後不良である。詳細なメカニズムは不明だが、IGF-1 が PgR の
発現を抑制するとの報告もある。このことから、IGF-1 のみでなくインスリ
ンも乳がん細胞の増殖に関与し、予後にも影響を与えている可能性が考えら
れる。そこで、ER 陽性ヒト乳がん細胞株(MCF-7、T47D)を用い、インスリ
ンが PgR に及ぼす影響について検討した。【方法と結果】PgR mRNA は SYBR
Green を用いて定量的 PCR にて測定し、PgR 蛋白は Western blotting 法を用
いて定量した。PgR および ER α S118 抗体を用いて免疫染色を行い、共焦点
顕微鏡で観察した。MCF-7、T47D にエストラジオール(E2)1nM を添加し3
日間培養した結果、ともに PgR mRNA 量は E2(-) に比べて約 4 倍に増加した。
両細胞株を用いて E2 存在下で IGF-1 またはインスリンを 0.01 μ g/ml および
1μ g/ml( 最終濃度 ) 添加したところ、IGF-1 とインスリンは、ともに E2 によ
る PgR mRNA 量の増加を濃度依存的に抑制した。インスリンは PgR mRNA
量と蛋白量を時間依存的に減少させた。ER α S118 のリン酸化はインスリン
処理後 1 時間で減少し、12 時間後には処理前と同レベルまで回復した。共焦
点顕微鏡で観察したところ、PgR はインスリン添加後 72 時間後には発現が抑
制され、ER α S118 はインスリン添加後 1 時間でリン酸化が抑制され、72 時
間後には処理前のレベルに回復した。【考察】インスリンは PgR を減少させる
ことが明らかとなり、一過性ではあるが、インスリンが ER α S118 のリン酸
化を阻害することも示唆された。インスリンが PgR の発現を抑制する経路の
詳細は不明であるが、本研究からインスリンによる ER α S118 のリン酸化の
阻害が関与している可能性が考えられた。PgR の発現は、E2 ならび増殖因子
受容体からのシグナルで修飾される。インスリンによる PgR の発現の抑制と
予後との関連は不明だが、その機序も含めさらに検討する必要がある。
岐阜大学医学部 腫瘍外科、2 岐阜大学医学部 乳腺・分子腫瘍学、
岐阜大学医学部 がん先端医療開発講座
兼松 昌子 1、二村 学 2、名和 正人 1、森光 華澄 2、森川 あけみ 3、
吉田 和弘 1
【背景】GPNMB は細胞膜に存在する I 型膜貫通タンパクで,骨や造血器,皮
膚など正常組織に広く発現するほか,悪性黒色腫・肝細胞癌・神経膠腫など
悪性腫瘍で高発現することが確認されている.基礎的研究では GPNMB は乳
癌の転移・浸潤を促進するとされる.Rose らの乳癌における検討では Triple
negative(TN) で GPNMB 発現の割合が高く,早期再発や生存率低下と関連し
ていることから GPNMB を予後不良因子と報告している.【目的】GPNMB の
乳癌転移における役割と,subtype との関連について臨床検体を用いて検討
する.【対象】2005 年 4 月~ 2009 年 3 月の期間中,岐阜大学腫瘍外科およ
び関連病院にて治療されたリンパ節転移陽性乳癌 87 例 (Luminal A: 30 例 ,
Luminal B: 25 例 , HER2: 16 例 , TN: 16 例 ).【方法】摘出標本の原発巣およ
び腋窩リンパ節転移巣に対して,免疫組織化学染色を用いて GPNMB の発現を
確認し,1. 陽性率,2. 臨床病理学的所見,3. 原発巣とリンパ節転移巣の差異,
4. 予後について検討した.【結果】1.GPNMB は乳癌原発巣で 58.3%,腋窩リ
ンパ節転移巣で 47.5% の陽性率であった.2.subtype 別では,腋窩リンパ節
転 移 巣 の GPNMB 陽 性 率 は TN で 74%,HER2 で 35%,Luminal B で 46%,
Luminal A で 41% と,TN で高い傾向がみられた.3. 原発巣と腋窩リンパ節
転移巣での染色スコアには正の相関がみられた (r=0.604).4. 無再発生存率
は GPNMB 陽性群で低い傾向がみられた.【結語】自験例でも GPNMB の発現
が転移に関連し,予後不良因子となることが示唆された.原発巣では TN だけ
でなく HER2 でも GPNMB 発現の割合が高かったことから,現在 GPNMB と増
殖因子シグナル伝達との関連について乳癌細胞株 BT474,SK-BR3 に対して
siRNA を用いた GPNMB knockdown の系にて HER2 とのシグナルトークの有
無を検討中である.それも含めて GPNMB 発現の意義について発表する.
317
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】イオンチャネルやイオン輸送体は細胞容積の制御ばかりでなく、細胞
の増殖、分化、遊走など様々な細胞機能の制御に重要な役割を果たしている。
胃癌細胞株 MKN28 細胞を低 Cl- 培地で培養すると細胞周期が G0/G1 期に停止
し、細胞増殖が抑制されることを我々は明らかにしている。一方、K+-Cl- 共輸
送体(K+-Cl- cotransporter; KCC)が乳癌細胞を含むいくつかの癌細胞におい
てその増殖制御に関与していることが報告されている。【目的】本研究ではヒ
ト乳癌細胞株 MDA-MB-231 細胞を用いて細胞周期の進行制御における KCC
の役割を解明することを目的とした。【方法】無血清培養と hydroxyurea 処理
により MDA-MB-231 細胞を G1 期の後期に同調した。Hydroxyurea を除去し、
KCC 阻害剤(dihydro-indenyloxy-alkanoic acid; DIOA)存在下および非存
在下に 10% FBS を含む DMEM 培地で細胞を培養し、細胞増殖および細胞周
期に対する DIOA の作用を解析した。【結果】無血清培養と hydroxyurea 処理
により約 75% の細胞が G0/G1 期に停止した。Hydroxyurea を除去し、10%
FBS を含む DMEM 培地で培養すると細胞は同期して増殖を開始した。コント
ロール群と比較して、DIOA を添加すると細胞の増殖速度は少し遅くなった
が、細胞周期は 1 回転した。しかし、2周目の細胞周期は著しく阻害され、約
70% の細胞が G0/G1 期に停止した。細胞周期の制御に関与する分子(cyclin
D1、cyclin E2 および p21)の発現は細胞周期の進行に伴い、特徴的な変化を
示した。DIOA 添加による細胞周期の停止は cyclin D1 および cyclin E2 タン
パク質発現量の低下、および p21 タンパク質発現量の増加を伴っていた。こ
れらの分子のなかで、G1 期から S 期への移行に必須の分子である cyclin E2
の発現が DIOA 添加により著しく抑制された。これらのタンパク質分子の発現
量の変化は転写レベルで制御されていた。【考察】同調した MDA-MB-231 細胞
を用いた解析から、細胞周期に伴う cyclin D1、cyclin E2 および p21 発現量
の変化が DIOA によってそれぞれ特異的な制御を受け、細胞周期が G0/G1 期
に停止して、細胞増殖が抑制されることが明らかになった。これらの結果は、
KCC が G1 期における細胞内 Cl- 濃度のダイナミックな変化に関与し、cyclin
D1、cyclin E2 および p21 発現を転写レベルで制御することによって、細胞
周期の進行制御に重要な役割を果たしていることを示唆しており、KCC が癌
治療における分子標的になりうる可能性を示唆している。
聖マリアンナ医科大学大学院 応用分子腫瘍学、
聖マリアンナ医科大学 乳腺内分泌外科 ポスター掲示
10187
11755
乳癌の組織別テロメア長と臨床病理学的検討
血小板が EMT を誘導し乳癌原発巣の化学療法抵抗性と関連する
GP-1-007-01
GP-1-008-01
1
甲状腺病研究所金地病院 外科、2 東京女子医科大学 内分泌外科、
3
東京女子医科大学 第 1 病理学、4 よしもとブレストクリニック
1
金沢大学 消化器・乳腺・移植再生外科、2 金沢大学付属病院 乳腺科
石川 聡子 1、井口 雅史 1,2、川島 博子 2、宮下 知治 1、高村 博之 1、
二宮 致 1、北川 裕久 1、伏田 幸夫 1、藤村 隆 1、太田 哲生 1
神森 眞 1,2、福森 龍也 1、吉川 啓一 1、岡本 高宏 2、小林 槇雄 3、
吉本 賢隆 4、山田 哲 1
【背景】近年、血小板ががん細胞の浸潤や転移を促進する微小環境の一つであ
ることが認識されている。脈管に侵入した腫瘍細胞は血小板に shield され、
直接的に周囲ストレスから保護されるとともに血小板から放出される液性因
子により免疫回避を達成すること、上皮間葉転換が誘導されることが報告さ
れている。脈管侵襲をきたす以前の血小板の動態に関しては明らかではなく、
特に原発巣における血小板の存在や働きに関する報告はない。核のない血小
板は通常の病理検査 (HE 染色 ) では観察することができない。我々は乳癌原
発巣の血小板の存在を免疫組織化学検査により評価した。【対象】2012 年~
2013 年にかけて、当院で生検にて診断し術前化学療法を施行した原発性乳
癌 30 例、患者背景は平均年齢 52 歳、Stage1/2/3 5/13/19 例、Luminal A
or B/Luminal HER2/HER2/Triple negative 14/4/5/7 例。【方法】免疫組織
化学検査として血小板膜糖タンパク GP1ba に対する抗 CD42b 抗体(abcam)
を使用し乳癌生検標本で血小板の局在を評価した。【結果】生検標本 30 例中
20 例(67%)で腫瘍細胞周囲をとりまく血小板を認めた。血小板付着腫瘍細
胞はいずれも極性の喪失を伴い、特に腫瘍先進部に観察され上皮間葉転換の
誘導が示唆された。これらの結果から、さらに anti-beta catenin antibody
(abcam) を使用し、血小板付着腫瘍細胞と上皮間葉転換との関連を評価した。
血小板付着腫瘍細胞においてβ -catenin の核内移行が観察され、EMT( 上皮 間葉転換 ) の誘導が示された。また化学療法後の切除標本を評価すると、血小
板付着腫瘍細胞は 78%に観察された。残存腫瘍において高率に血小板付着が
観察されたことから、生検標本の血小板付着の有無と化学療法の効果を比較
すると血小板付着症例では有意に浸潤癌の残存を認めた。【結語】血管外であ
る乳癌原発巣において、腫瘍細胞周囲に血小板が付着する事象が起きており、
EMT を誘導している可能性がある。臨床的にはこれらは化学療法の効果予測
因子となる可能性があり、このメカニズムを解明することにより、さらには
治療のターゲットとなることが期待される。
[ 背景 ] テロメアは染色体末端に存在する遺伝子で細胞分裂や活性酸素被曝に
よってその長さが短縮する。癌細胞では速い細胞分裂に伴いテロメア長は短
縮するといわれている。また、テロメア長が一定の長さ (crisis) 以下になると
多くの細胞は apoptosis に至るが、癌細胞ではテロメアを伸長させる酵素テ
ロメレースを獲得し最短のテロメア長を維持しつつ不死化する。我々は、組
織切片上で Q-FISH 法により細胞ごとのテロメア長を比較する方法を確立し
た。[ 方法 ] 手術を施行した乳癌 44 例 ( 硬癌 17 例 , 充実性腺管癌 12 例 , 乳頭
腺管癌 15 例 ) を対象とし腫瘍と非腫瘍部組織のテロメア長を組織 Q-FISH 法
(TCR) にて測定比較し , 病理組織学的因子 ( 腫瘍径 , リンパ節転移 , 病期分類 ,
脈管侵襲 ) との関係を検討した。また、同時に免疫組織学染色法を用いて ER,
PR, HER2 蛋白 , Ki67 index, p53 発現の発現との関係も検討した。[ 結果 ]
テロメア長 ( 平均 TCR) は乳癌細胞全体で非癌部乳管細胞より有意に短く、そ
れぞれの癌細胞 ( 硬癌 , 充実性腺管癌 , 乳頭腺管癌 ) でも有意差を認めた。腫
瘍径、リンパ節転移(pN0, pN1, pN3)、病期分類(I-III)、Ki67 index、p53
index と TCR との相関係数を求めると、腫瘍径のみ有意な負の相関がみられ
た。リンパ節転移(pN0, pN1, pN3)、病期分類(I-III)、脈管侵襲(+/-)につ
いて平均 TCR を比較するといずれも有意差がみられ、pN3、病期 III、脈管侵
襲(+)の症例では有意にテロメアが短縮していた。 [ 結論 ] 今回の研究で乳
癌組織のテロメア長短縮が腫瘍径 , リンパ節転移 , 病期分類 , 脈管侵襲との間
で関連性を示したことで , テロメア代謝が乳癌の悪性度や予後に重要な役割を
担っている可能性が示唆された。
一般セッション(ポスター掲示)
11264
11096
DCIS と LCIS および併発した乳頭腫における urokinase-type
plasminogen activator(uPA)/PA inhibitor-1 の発現
腋窩リンパ節転移陰性乳癌の再発に関する解析
GP-1-009-01
GP-1-009-02
済生会唐津病院 外科
1
滋賀医科大学 外科学講座乳腺・一般外科、2 同 病理部、
3
同 救急集中治療学講座
梅田 朋子 1、石田 光明 2、森 毅 1、河合 由紀 1、田中 彰恵 1、北村 美奈 1、
坂井 幸子 1、久保田 良浩 1、江口 豊 3、谷 徹 1
【背景】癌の浸潤転移においてセリンプロテアーゼの一つである uPA は癌細
胞や周囲の線維芽細胞から分泌され細胞外マトリックスを溶解するものと考
えられている。また PAI-1 は効率よく uPA と結合し、その活性を阻害する
とともに uPA-PAI-1 として細胞内に取り込まれ、癌細胞の増殖活性にも関
与するといわれる。ASCO では n0 乳癌前向き試験において陽性例において
化学療法の効果が有意に高く、他方では uPA receptor に対する抗体療法も
考案されている。DCIS、LCIS や乳頭腫における uPA/PAI-1 の発現につい
て免疫組織染色法にて検討した。【対象】2004 年 8 月~ 2013 年 10 月に手術
を行った DCIS26 例、LCIS2 例、乳癌に併発した乳頭腫 8 例である。抗体は
American diagnostic 社の mouse monoclonal antibody を用いた。【結果】
uPA は high-grade DCIS 10/12 (83%), intermediate-grade1/2(50%),
low-grade6/15(40%) LCIS2/2(100%) 乳頭腫 0/8(0%) の細胞質および核
に強陽性であった。【考察】High-grade DCIS は low grade と比べて高率に
uPA/PAI-1 を認めた。8 例の乳頭腫+癌においては癌には uPA/PAI-1 が発現
しているにもかかわらず近傍の乳頭腫には全く発現をみとめなかった。いず
れの LCIS にも uPA/PAI-1 は強く発現しており、小葉癌は乳管癌と比較して微
小な非浸潤癌の段階から高い浸潤転移能を有するものと考えられた。【結語】
これらの性質は DCIS においても個々の症例の転移浸潤能を示すものと考えら
れた。また、乳頭腫を日常診療で診断する際、低悪性度の DCIS との鑑別にお
いてある程度の手掛かりとなる可能性が示唆された。
久松 雄一、川久保 英介、橋本 直隆、宮崎 充啓、福田 篤志、山懸 基維、
園田 孝志
【はじめに】乳癌の再発パターンはリンパ節転移や組織学的グレード、ホルモ
ン受容体 HR や HER2 の発現など予後因子に影響され、再発までの期間や再
発部位は様々であることが知られている。またリンパ節転移陰性乳癌におい
て、subtype 別で異なった遠隔臓器の再発パターンがあることが報告されて
いる。【目的】リンパ節転移陰性の乳癌患者における再発に関して、再発まで
の期間や危険因子を明らかにする。【対象】2006 年 5 月~ 2012 年 11 月まで
に当科で手術した浸潤性乳癌 116 例のうち、術中センチネルリンパ節生検も
しくは腋窩郭清を行い、病理学的に腋窩リンパ節転移陰性であった 84 例。【方
法】術後腋窩リンパ節陰性乳癌の再発率や再発部位、予後を分析する。またこ
れらと古典的バイオマーカーである ER、PR、HER2 に核グレードを考慮した
乳癌 subtype(Luminal A like “LA”、Luminal B like “LB”、HER2 enriched、
Triple negative TN)や臨床病理学的因子と関連があるかを検討する。【結果】
平均年齢は 60.2 歳、組織型は腺管癌:40 例、硬癌:34 例、その他:10 例であっ
た。subtype は “LA”:46 例、“LB”:21 例、HER2 enriched:5 例、TN:12
例であった。フォローアップ期間の中央値は 35.6 ヶ月であり、12 例(14.3%)
に再発を認め、再発部位は残存乳房:2 例、病側胸壁:2 例、腋窩・鎖骨上リ
ンパ節:3 例、肺:3 例、肝転移:3 例、骨:1 例、脳:1 例であった(重複あり)。
再発までの期間は 1 年以内:6 例、2 年以内:3 例、3 年以内:2 例、5 年以上:
1 例(HR 陽性)であった。Subtype 別の再発では、“LA”:4 例(8.7%)、“LB”:
5 例(23.8%)、TN:3 例(25%)であった。乳癌再発に関して、核グレードや
HR status、組織型などを含んだ多変量解析では、腫瘍径(2cm 以上)が独立
した危険因子であった。【考察】腋窩リンパ節転移陰性乳癌に対するフォロー
は、腫瘍径が大きい “LB” および TN subtype において、画像評価を慎重に行
うべきであると考えられた。【結語】腋窩リンパ節転移陰性乳癌の再発は比較
的早期に認められ、腫瘍径と subtype が関連している可能性が示唆された。
318
ポスター掲示
11356
10600
乳癌における原発巣 CXCR4 と腋窩リンパ節転移との相関につ
いての検討 ( 第 2 報 )
乳癌における KIF18A 発現と臨床病理学的因子との関係の検討
GP-1-009-03
GP-1-009-04
1
2
愛知医科大学 乳腺・内分泌外科
安藤 孝人、中野 正吾、藤井 公人、手塚 理恵、高阪 絢子、塩見 有佳子、
吉田 美和、今井 常夫、福富 隆志
【背景および目的】CXC chemokine receptor type 4 ( 以下 CXCR4) は,細胞
膜を 7 回貫通する G タンパク共役受容体で、癌の転移に関与しているとされ
る。癌細胞は CXCR4 受容体を発現し体循環へ侵入し、CXCR4 のリガンドで
ある CXCL12(SDF-1/PBSF) を産生する臓器の血管床に止められ増殖し、転移
腫瘍を形成することが報告されている。つまり、腫瘍の転移が起こりやすい
臓器において CXCL12 が発現、同時に腫瘍細胞では CXCR4 自体の発現が亢進
している。乳癌領域において、術後再発の危険因子としてリンパ節転移の有
無は重要であるが,今回 CXCR4 の原発巣での発現とリンパ節転移の相関につ
いて検討を行った。【方法】当科において T1-2N1M0 で手術を行った原発性乳
癌 34 例(ケース群)と、コントロール群として T1-2N0M0 の 68 例を対象とし
た。CXCR4 は原発巣のパラフィン切片を用いて免疫組織学的染色法にて評価
し、ケース群とコントロール群での発現状態を比較した。CXCR4 抗体は life
science 社の zymed35-8800 を用いた。【結果】CXCR4 の発現は細胞質で評価
した。ケース群では 27 例が陽性、7 例が陰性であった。コントロール群では
31 例が陽性、37 例が陰性であった。感度 46.6%、特異度 84.1% であった。ケー
ス群とコントロール群間では P=0.001 と染色性に有意差が見られた。【考察】
CXCR4 は乳癌のリンパ節転移を予測するマーカーとして有効と考えられた。
原発巣の評価は,針生検でまず行われることが多いが,この時に CXCR4 の発
現も同時に検討出来れば,術前にリンパ節転移の有無も予測可能となると考
えられた。
東京医科歯科大学医学部附属病院 乳腺外科、
東京医科歯科大学大学院 腫瘍外科
笠原 舞 1、永原 誠 1、中川 剛士 1、佐藤 隆宣 1、杉原 健一 2
【はじめに】近年、様々な癌において、微小管ダイナミクスを制御する因子
の1つであるキネシンと癌との関係が報告されている。今回我々は、キネシ
ン Family の1つである KIF18A に着目し、KIF18A と乳癌との関係を検討し
た。【対象と方法】対象は、NAC 施行例や DCIS、男性乳癌、多発乳癌などは
除外した 2004 年 1 月から 2006 年 12 月までに当科で手術を行った乳癌症例
144 例を用いた。保存してある FFPE を用いて免疫染色を行い、癌部における
KIF18A 発現を確認した。この発現を Image-J を用いて数値化し、臨床病理
学的因子との関係を検討した。【結果】KIF18A 発現値を高発現群、低発現の 2
群に分類し臨床病理学的因子との関係を検討したところ、KIF18A 高発現群の
方がリンパ節転移率が高く、KIF18A 発現と N 因子との間には統計学的な有意
差を認めた(p < 0.05)。しかしながら、腫瘍径やホルモン感受性などとは関
連を認めなかった。また KIF18A 発現 2 群間の間では、RFS でも統計学的な有
意差をもって高発現群の方が予後不良であった。多変量解析では、腋窩リン
パ節転移と KIF18A との間には統計学的な相関関係を認め、リンパ節転移を規
定する因子になりえることが示された。結論:乳癌における KIF18A 高発現は
リンパ節転移の risk factor となりうるため、術後補助治療を決定する上で考
慮すべき因子であることが示唆された。
10849
非浸潤性乳管癌と浸潤性乳管癌における CD147 の発現差異に
ついて
培養正常乳腺及び乳癌株細胞の機械刺激による ATP 放出及び
TGF β 1 の与える影響について
GP-1-009-05
GP-1-010-01
1
日本大学医学部 乳腺内分泌外科
2
長島 沙樹、櫻井 健一、鈴木 周平、榎本 克久、天野 定雄、越永 従道
3
【背景】CD147 は多機能膜糖蛋白であり、腫瘍の浸潤に関与するとされ、前
立腺癌や腎細胞癌で過剰発現していることが報告されている.しかしながら、
乳癌における CD147 発現の意義は明らかにされていない.【目的】非浸潤性乳
管癌 (DCIS) と浸潤性乳管癌 (IDC) における CD147 の発現パターンを比較検
討することを目的とした.【対象】1995 年から 2002 年までに手術が施行され
た、術前未治療で予後の明らかな乳癌原発巣 156 例を対象とした.【方法】手
術検体の病巣のパラフィン包埋連続切片を用いて、免疫組織化学染色をおこ
なった.判定は光顕的に行ない、癌組織最深部の先端部 5 視野において、陽
性細胞数が 5% 以下を陰性、6% 以上を陽性とした.得られた結果を DCIS 群
と IDC 群にわけて臨床病理学的因子について検討を行った.2 群間の検定に
はχ 2 test および一般化 Wilcoxon 検定を用い、多群間の検定には多変量分散
分析法を用い、p < 0.05 を有意差ありとした.【結果】対象症例の平均年齢は
61.8 歳、全例女性であった.Stage 0: 36 例、Stage I:52 例、Stage II:50 例、
Stage III:18 例であった.年齢、閉経状態、内分泌受容体陽性率、HER-2 陽
性率、病理組織型について差を認めなかった .CD147 発現程度は DCIS 群に比
べて IDC 群に高かった.また、臨床病期が進行するほど CD147 陽性率が高く、
リンパ節転移陽性症例は陰性症例と比較し CD147 陽性率が高かった.【結語】
CD147 の発現程度は DCIS 群で低く、IDC 群で高かったことより、DCIS から
IDC に移行する過程で、CD147 が関与する可能性が示唆された.
319
大阪医科大学 一般・乳腺・内分泌外科、
名古屋大学大学院医学系研究科 細胞生物物理学教室、
大阪医科大学 一般・消化器外科
高橋 優子 1,2、古家 喜四夫 2、岩本 充彦 1、田中 覚 1、木村 光誠 1、
藤岡 大也 1、佐藤 七夕子 1、寺沢 理沙 1、碇 絢菜 1、富永 智 1、
前沢 早紀 1、内山 和久 1,3
近年、癌の増殖・進展は周囲の環境(微小環境)との相互作用が大きく影響し
ていることがわかってきた。微小環境には、成長因子やサイトカインなどの
化学的(ケモ)シグナル伝達だけでなく、細胞外基質の硬さや構造、細胞間接
着等の細胞構造の変化による機械的(メカノ)シグナル伝達も含まれる。基
質の硬さが癌細胞の増殖・分化に影響することや、癌細胞では接触障害が消
失することがよく知られているが、最近アクチン細胞骨格の張力を感知する
Hippo 経路及びその構成蛋白 YAP/TAZ がこれらに関与していることが明らか
となり、メカノシグナリングの分子機構も徐々に明らかにされつつある。ATP
はすべての細胞が有し、その受容体が殆どの細胞に発現している、生体にお
ける普遍的な細胞間シグナル伝達分子であり、その放出にはメカノ刺激が関
与することが多い。ATP 受容体は癌細胞でも多く認められ、細胞死や成長抑
制への関与や ATP 濃度が細胞増殖を反映すること、高悪性度の乳癌での ATP
合成酵素αサブユニットの過剰発現などの報告もあり、新たなバイオマーカー
としての可能性も秘めている。また、TGF β 1 は癌の微小環境に豊富に分泌さ
れていることが知られているが、肺癌細胞において、TGF β 1 による細胞遊走
とアクチンの再構築の誘導に ATP 放出とその受容体の活性化が関与している
ことが報告されている。このような観点から、乳癌の微小環境におけるメカノ、
ケモ両シグナリングの相互作用を、ATP が担っていることが予測される。
これを明らかにするため、まずヒト正常乳腺上皮株細胞 (hTERT-HME) 及
び乳癌株細胞 (MDA-MB-231) を用いてコラーゲンゲルによる 2D、3D 培養
を行い、伸展あるいは低浸透圧などの機械的刺激を与え、ATP 放出の違いを
Luciferin-Luciferase 反応を用いたリアルタイムルミネッセンスイメージング
法で測定し比較した。その結果、機械的刺激により高濃度の一過性の ATP 放
出が生じ、それが微小環境に拡散・維持されることを明らかにした。その頻
度は癌細胞群において顕著であった。また、TGF β 1 処理により線維芽細胞様
の形態変化と共に ATP 放出の増大が認められた。これらのことは癌の微小環
境においてメカノ・ATP シグナリング系が機能している可能性を示唆してい
ると考えられた。
一般セッション(ポスター掲示)
10149
ポスター掲示
10291
10107
乳癌腫瘍における PD-L1 発現の臨床的意義
乳癌細胞における MHC Class1 発現は HER2 発現と逆相関する
GP-1-011-01
GP-1-011-02
1
山口大学医学部 消化器・腫瘍外科
2
前田 訓子、吉村 清、山本 滋、北原 正博、井上 由佳、松井 洋人、
兼清 信介、前田 和成、岡 正朗
山梨大学医学部 消化器外科、乳腺・内分泌外科、
山梨大学医学部 人体病理、3 市川三郷町立病院 外科
井上 正行 1、井上 慎吾 1、大森 征人 1、井上 亜矢子 1、川崎 朋範 2、
松田 啓 3、藤井 秀樹 1
【目的】PD-L1(Programmed death-ligand 1)は腫瘍細胞ならびに抗原提示
細胞表面に発現するリガンドである。これが活性化した T 細胞の膜表面上に
発現する分子(PD-1)に結合し、T 細胞の effector 機能を抑制することが近
年、癌の免疫逃避機構の一つとして注目されている。今回乳癌腫瘍における
PD-L1 発現とその臨床意義について検討した。【方法】当科で手術を施行した
浸潤性乳管癌 47 例を対象とした。乳癌原発腫瘍に抗ヒト PD-L1 抗体を用い
た免疫組織学的染色を施行し、臨床病理学的因子との関連について検討した。
免疫染色の評価は染色陰性、弱陽性、中等度陽性、強陽性の 4 段階で判定し、
陰性・弱陽性を低発現群、中等度陽性・強陽性を高発現群として検討を行った。
【結果】年齢の中央値は 54 歳(31 - 83 歳)。臨床病期別の PD-L1 高発現群の割
合は stageI:26%(5/19)、stageII:36%(9/25)、stageIII:50%(1/2)、
stageIV:0 %(0/1)であった。サブタイプ別での PD-L1 高発現群の割合は
Luminal:14%(3/22)、Luminal HER2:70%(7/10)、HER2:17%(1/6)、
triple negative:44%(4/9)であった。PD-L1 高発現群(15 例)は低発現群(32
例)に比べ無病生存期間が有意に短かったが(p = 0.0387)、全生存率では有
意差を認めなかった。【まとめ】少数例の検討ではあるが、Luminal HER2、
triple negative 群で、PD-L1 の発現が高い傾向が認められた。また PD-L1 高
発現群の予後は不良であり、乳癌腫瘍における PD-L1 の予後因子としての意
義が示唆された。
一般セッション(ポスター掲示)
はじめに:乳癌治療は、外科治療、薬物治療、放射線治療が標準治療として
汎用され、これらの治療法の進歩により治療成績は明らかに向上してきてい
る。しかし、一部にはこのような集学的治療をもってしても予後不良な症例
も存在し、このような症例を経験すると標準治療の限界を感じざるを得ない。
そこで、第 4 の治療として近年注目されているのが、免疫治療である。中で
も癌細胞を特異的に攻撃する CTL を利用した癌ペプチドワクチン療法は、他
臓器癌ではすでに臨床応用が開始されている。しかし、実用化にはクリアす
べき課題が多く残されており、その一つが癌細胞の CTL による免疫監視から
の逃避である。乳癌においても、諸家の報告によると HER2 は CTL の恰好の
標的とされているが、その一方でその免疫監視から逃れやすいとも言われて
いる。目的:乳癌における CTL による免疫逃避機構を明らかにすること。対
象と方法:1. 当科において切除術がなされた 70 例の乳癌症例に対し、免疫染
色を用いて HER2 発現と MHC Class1 発現の関連を検討した。2.HER2 発現レ
ベルの異なる 3 種のヒト乳癌細胞株において siRNA を用いた HER2 silencing
を行うことでも両者の関連を検討した。結果:1.70 例の免疫染色による検討
では、ハーセプテスト 0、1+ の HER2 陰性症例に比べ、2+、3+ の HER2 陽
性症例では MHC Class1 の発現は著明に抑制されていた(p=0.031)。2.HER2
発現レベルが低発現、中等度発現、高発現である 3 種のヒト乳癌細胞株に対
し、siRNA を transfect することにより HER2 の抑制を行ったところ、いずれ
の細胞株においても MHC Class1 の発現は増加した。つまり、HER2 は MHC
Class1 の発現を抑制し、その結果 CTL による免疫監視から逃れていること
が明らかとなった。考察:今回の我々の検討から、乳癌では HER2 が MHC
Class1 発現を抑制することが明らかとなり、HER2 を抑制することで有効な
CTL による免疫治療が可能となることが示唆された。
11448
11909
ペプチドワクチンの効果予測因子としての CH401MAP による
in vitro 刺激の検討
ホルモン感受性乳癌の晩期再発制御を目指した MUC1 ペプチド
ワクチンの確立
GP-1-011-03
1
2
GP-1-011-04
1
東海大学医学部外科学系 乳腺・内分泌外科、
東海大学医学部基礎医学系 生体防御学
岩手医科大学医学部 外科学講座、2 岩手医科大学医学部 分子診断病理講座
柏葉 匡寛 1、小松 英明 1、石田 和茂 1、川岸 涼子 1、松井 雄介 1、
大槻 花恵 1、上杉 憲幸 2、石田 和之 2、菅井 有 2、若林 剛 1
津田 万里 1,2、亀谷 美恵 2、宮本 あすか 2、齋藤 雄紀 1、鈴木 育宏 1、
徳田 裕 1
<背景>現在は抗 HER2 薬の効果予測因子は存在していない。我々が開発し
ている新規抗 HER2 ペプチドワクチン CH401MAP は in vitro 刺激の系におい
て HER2 の発現に依存して抗 CH401MAP 抗体の上昇が認められた事を報告し
ている。<目的>乳癌患者の末梢血単核球 PBMC を抽出し T 及び B 細胞を詳
細に比較解析し、新規 HER2 ペプチドワクチン CH401MAP で in vitro 刺激し、
抗 CH401MAP 抗体価を測定することで抗 HER2 薬の効果予測因子となりうる
かを検討する。<方法>東海大学病院で初発乳癌患者5名から採血し、一部
の血液を HLA 型の解析に用い、残りの血液より PBMC を抽出した。PBMC を
フローサイトメトリー Fortessa にて T 細胞系列は CD3, CD4, CD8A, CD25,
CD45RA, CD45RO, CD197 で、B 細胞系列は IgD, CD5, CD19, CD21, CD24,
CD27, CD38, CD45 で染色し、T 細胞・B 細胞の比率及び分化過程を解析した。
CH401MAP 刺激群と対照群に PBMC を 5x105 個 /well ずつ 48well プレートに
播種した。培養開始後 14 日目に抗 CH401MAP 抗体をサンドイッチ法で ELISA
にて測定した。培養開始後 21 日目にリンパ球増殖反応及び再度細胞表面マー
カーの解析を行った。解析には t 検定を使用した。<結果>刺激前の細胞表面
マーカーの解析では、症例ごとにナイーブ T および B 細胞の比率が高く、メモ
リー T および B 細胞が低い傾向が認められた。全例で抗 CH401MAP 抗体の産
生が認められた。細胞増殖反応の解析では、HER2 発現に依存して CH401MAP
投与群で増殖の亢進が認められた。刺激後の細胞表面マーカーの解析では T 細
胞に関しては刺激前と比較して、メモリー細胞が上昇する傾向が見られ、その
反面ナイーブ細胞の比率が低下する傾向が認められた。B 細胞に関する評価は
細胞数が少ないため困難であった。<考察>乳癌患者の PBMC を in vitro 刺激
した今回の研究では癌の進行度、HER2 発現レベルに依存せず一定の反応が得
られた。今後さらに症例を集積し、臨床情報と照らし合わせる事で CH401MAP
は抗 HER2 ペプチドワクチンとしてだけでなく、HER2 治療の効果予測因子と
なりうる可能性があると思われた。
【背景】乳癌は進行ステージや急速増殖の腫瘍は3年までの再発が多い一方、
ホルモン感受性早期癌の術後5年以降の晩期再発が臨床的に問題であり効果
的な新治療の開発が求められている。微小かつ dormancy にあるがん細胞へ
の遠隔治療効果から癌ワクチンは1つの重要な戦略である。MUC1(可溶性抗
原:CA15-3)はホルモン感受性乳癌での発現が高く、乳腺の分化にも関わる
膜貫通型癌抗原である。今までに HLA-A2 に対するペプチドは同定されている
が、日本人に最も多い A24 型ペプチドは発表されていない。【目的】ホルモン
感受性乳癌に高頻度に発現する MUC1 に対するペプチドワクチンを同定、晩
期再発予防に対するモデル形成を試みる。【対象と方法】MUC1 ペプチドパル
スを用いて1)HLA-A24 陽性 / 陰性 MUC1 陽性 / 陰性細胞株(MCF7・KMN1)
への CTL 活性の誘導を試みる。【結果】HLA 非拘束性で MCF7 細胞株 (A24-/
MUC1+) お よ び KMN1 細 胞 株 (A24+/MUC1+) に お い て 比 対 象 で +33%、
+9% の CTL 活 性 が、 一 方 HLA 拘 束 性 ペ プ チ ド で は MCF7 細 胞 株 (A24-/
MUC1+) で +4.5%、KMN1 細 胞 株 (A24+/MUC1+) で +11.4% と HLA 依 存
性の CTL 活性が認められた。次に A24 陽性 CA15-3 陽性乳癌術後患者末梢血
を用いた precursor frequency 試験で x1-3.2 の細胞性免疫の誘導が可能で
あった。【考察】諸家のように In vitro モデルでは抗腫瘍活性は検出可能であっ
たが、臨床を考慮すると免疫寛容等の重大な問題が残る。CA15-3 陽性乳癌術
後患者末梢血を用いた細胞性免疫の誘導での症例数を増やし、感受性症例の
臨床病理学的因子を検証すると共に、MUC1 陽性細胞株切除後マウスへのワ
クチン、抗 CTLA4 抗体同時接種による効果増幅の実験を予定している。
320
ポスター掲示
11636
11558
HER2 type 乳癌の臨床病理学的特徴とバイオマーカー発現との
対比
長期にアロマターゼ阻害薬を投与した ER 陽性再発乳癌患者にお
ける EE2 治療前後の遺伝子発現の免染での検討
GP-1-012-01
1
3
GP-1-013-01
東京女子医科大学 第二外科、2 東京女子医科大学 第二公衆衛生学、
東京女子医科大学 病院病理科
1
熊本大学大学院生命科学研究部 乳腺内分泌外科、
熊本大学医学部附属病院 乳癌分子標的治療学寄附講座、
3
熊本大学医学部附属病院 乳腺内分泌外科
2
玉木 雅子 1、神尾 孝子 1、神尾 英則 1、西澤 昌子 1、野口 英一郎 1、
大地 哲也 1、小島原 典子 2、山口 直人 2、西川 俊郎 3、亀岡 信悟 1
【目的】バイオマーカー発現プロファイルを含めた HER2 type の乳癌の特徴と
臨床病理学的データや蛋白発現との関連性を明らかにすることを目的とした。
【方法】2004 年 7 月から 2007 年 11 月までに経験した女性の原発乳癌手術症
例のうち術前治療症例を除外した連続する 471 例のうち、HER2 type (ER, PR-,HER2+)59 例を対象とし、臨床病理学的因子(閉経状況、病期、組織
型、組織学的グレード、腫瘍径、リンパ管浸襲、脈管浸襲、リンパ節転移)
と ER,PR,HER2, CK5/6, EGFR, PTEN, IGF-1R, Bcl-2, c-Kit, c-Met、HIF1a ,PDGFRA, survivin, VEGFR2,VEGR-A の 15 分 子 の 蛋 白 の 発 現 を 検 討
した。【結果】 HER2 type は全体の 12.5%であった。臨床病理学的データ
をみると組織型では乳頭腺管癌、硬癌、充実腺管癌の割合が同程度であり、
histolologic grade が有意に高かった。蛋白発現では EGFR、c-Met、survivin
の発現は高く、PTEN Reduced の発現と Bcl-2 の陽性率は低かった。【考察】
本研究で認められた特徴は HER2 type の乳癌の予後が悪いことに寄与してい
る可能性があると考えられた。
大本 陽子 1、竹下 卓志 1、指宿 睦子 1、藤原 沙織 3、末田 愛子 3、
林 光博 3、山本 聡子 3、稲尾 瞳子 2、奥村 恭博 2、村上 敬一 3、山本 豊 2、
岩瀬 弘敬 1
11663
10166
ER 陽性乳がん細胞のエストロゲン枯渇下における遺伝子発現変
化の解析
アンドロゲン受容体依存性 AI 耐性乳癌のバイオマーカー候補蛋
白の再発乳癌組織における発現検討
GP-1-013-02
1
2
GP-1-013-03
1
熊本大学付属病院 乳腺内分泌外科、
熊本大学発生医学研究所 細胞医学分野
東北大学医学系研究科 分子機能解析学分野、
東北大学医学系研究科 腫瘍外科学分野、
東北大学医学系研究科 病理検査学分野、
4
東北大学医学系研究科 病理診断学分野
2
3
藤原 沙織 1,2、斉藤 典子 2、冨田 さおり 1,2、アブダラ オサマ モハメド 2、
岩瀬 弘敬 1、中尾 光善 2
アロマターゼ阻害薬は、閉経後 ER 陽性乳癌患者に対する第一選択薬として
用いられ、再発・乳癌死の減少に効果を示している。しかし、長期間治療を
うけると腫瘍細胞は環境の変化に適応し、再発をきたすことがある。ER 陽
性乳がん細胞株 MCF7 をエストロゲン枯渇下で長期培養 (LTED;long term
estrogen deprivation) すると、エストロゲン非依存的に増殖可能となり、こ
れはアロマターゼ阻害薬治療耐性のモデルの一つとなっている。乳がんがア
ロマターゼ阻害薬治療耐性を獲得する分子メカニズムを理解するために、我々
はエストロゲン枯渇下における MCF7 の遺伝子発現変化について解析した。
qRT-PCR と FISH 法による遺伝子発現解析を行ったところ、MCF-7 細胞をエ
ストロゲン枯渇状態 (LTED) におくと、エストロゲン受容体遺伝子(ESR1)の
発現が上昇し、それに伴って肥大した FISH シグナル領域が検出された。この
FISH シグナルは RNaseA 感受性を示し、タンパク質をコードしない領域由来
のシグナルを含むことより、非コード RNA が核内に蓄積しクラウド様の構造
体を形成していると考えられた。また LTED では、ESR1 の上流の 3 遺伝子の
mRNA 発現も上昇していることを qRT-PCR で確認した。ESR1 と隣り合った
上流遺伝子 C6ORF97 をコードする BAC クローンをプローブに用いた FISH シ
グナルも ESR1 遺伝子座と同様に肥大し、かつ RNaseA 感受性であった。同
領域において遺伝子コピー数の増幅は認めなかった。
これらのことより ESR1 とその上流遺伝子座領域では、エストロゲン枯渇に応
じて非コード RNA が産生され、遺伝子群は協調的に制御されている可能性が
示唆された。
藤井 里圭 1,2、鈴木 貴 3、柴原 裕紀子 4、丹羽 俊文 1、石田 孝宣 2、
笹野 公伸 4、大内 憲明 2、林 慎一 1
【はじめに】昨年本会にて、T-47D を由来として樹立したアンドロゲン受容体
(AR) 依存性増殖機構を持つアロマターゼ阻害剤 (AI) 耐性乳癌細胞株につき報
告した。耐性株はエストロゲン受容体 (ER) 非依存性な性質となるとともに、
アンドロゲンをリガンドとして AR 依存性に増殖することを示した。また、耐
性株では ER が陰転化し、AR とその標的遺伝子である PSA の発現が亢進して
おり、それらの蛋白は AR を介する増殖経路を持つ乳癌のバイオマーカーとな
り得る可能性があると考えた。【目的・方法】AI 耐性乳癌症例の中に AI 耐性モ
デル乳癌細胞株と同様な蛋白発現傾向を有し、AR を介する増殖経路を持つ可
能性のある症例が実在するのかを検証することを目的とした。術後補助療法
として AI 内服中に局所再発がみられ再発巣の切除を行った、AI 耐性再発症例
と考えられる 21 例の初発・再発ペア標本について ER、PgR、HER2、Ki67、
AR、PSA の免疫組織化学染色を行った。【結果・考察】再発組織では 6 例で ER
の陰転化がみられ、ER 非依存性の性質となっていることが示唆された。初発
時に AR が陰性であった症例は 9 例であり、再発時に陽転化した症例は 3 例で
あった。PSA 陽性例は初発組織には認められなかったが、再発組織では 2 例
であり、そのような症例では AR 活性が初発時に比べて亢進していることが
考えられた。再発時に PSA が陽転化した症例では ER・AR は初発時・再発時
共に陽性であった。臨床研究にて初発 ER 陽性乳癌では AR 陽性例で予後良好
と報告されており、AR は ER に拮抗し増殖抑制的に働くという仮説が一般的
である。しかし AI 耐性再発乳癌と AR の関連性についての報告は存在しない。
本研究の結果では AR 活性が亢進しているにも関わらず再発した症例が存在す
ることから、AR は増殖抑制的な効果だけではなく、AI 耐性獲得において何ら
かの役割を果たしている可能性が示唆された。【まとめ】AI 耐性再発乳癌の中
に AR 活性が亢進している例を認め、AR シグナル経路が AI 耐性に寄与する役
割を担っている可能性が示唆された。AR 依存性に増殖をする乳癌の実在性に
ついては証明できていないため、今後さらなる検討が必要である。
321
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】エストロゲンレセプター (ER) 陽性乳癌はエストロゲン依存性増殖を示
すと考えられ、エストロゲンを枯渇させる、あるいはエストロゲンレセプター
の作用を阻害するといった抗エストロゲン治療が行われている。しかしこの
中で、ER が陽性あるにもかかわらず抗エストロゲン治療に耐性となる症例が
存在し、このような症例では、逆説的ではあるが、エストロゲン剤を投与す
ることで治療効果が見られることが近年報告されている。さらにその後 EE2
に不応となった際には再び AI への感受性を取り戻し、このメカニズムを理解
することは、再発乳癌患者の ADL を保つ治療を延長させることにつながり大
変意義が深い。【方法】当科では、ER 陽性再発乳癌患者に長期間アロマターゼ
インヒビター (AI) を投与し、AI 耐性となった症例に対し、エチニルエストラ
ダイオール(EE2)による治療を行い、一定の期間奏功した症例の治療前、治
療中、治療終了時の組織サンプルを可能な限り採取、保存している。その中
より今回、6 名より採取時期の異なる合計 23 検体の組織検体を用い、各種の
免疫染色を行った。6 名のうち 5 名は EE2 療法に対し PR、1 名は SD であった。
染色は ER, PgR, HER2, Ki67, AR, BRCA1, IGF1Rb, TGFbR1, AKT, pAKT,
PI3K, Fas, TUNEL を行った。【結果】EE2 投与前後の組織の比較にて、EE2 の
投与により明らかに ER の発現の減少、及び PgR の発現の増加が観察できた。
さらに AR の優位な核染色の低下を認めた。他の染色では同一個体内での変動
は見られたが、個体による差が大きく、染色検体全体としては優位な変動は
見られなかった。【結論】免染では、培養細胞などで確認されていた ER, PgR
の変動が、ヒト検体でも確認することができた。しかし、他の抽出した遺伝
子の全般的な変動は確認することができなかった。これは今回 EE2 の投与期
間が長めであったため、EE2 長期投与により定常状態となった遺伝子発現を
観察しているためと推定される。発表では、個体による遺伝子発現の違いに
ついて個別にデータを提示し検討を加え報告する。
ポスター掲示
11495
10329
Fulvestrant 耐性乳癌細胞株の分子生物学的特徴
rapamycin 耐性ヒト乳癌株 BT474 を用いた rapamycin 耐性
メカニズムの解明
GP-1-013-04
GP-1-014-01
1
東北大学大学院医学系研究科 分子機能解析学分野、
2
信州大学大学院医学系研究科 外科学分野、
3
東北大学大学院医学系研究科 腫瘍外科学分野、
4
聖路加国際病院 臨床検査科
1
千葉大学 臓器制御外科学、2MD Anderson Cancer Center
三階 貴史 1、長嶋 健 1、榊原 雅裕 1、藤本 浩司 1、鈴木 Tiberiu 浩志 1、
大久保 嘉之 1、椎名 伸充 1、藤咲 薫 1、榊原 淳太 1、宮崎 勝 1、
岩瀬 俊明 1、羽山 晶子 1、Akcakanat Argun2、Meric-Bernstam Funda2
金子 陽介 1,4、花村 徹 1,2、藤井 里圭 1,3、坪井 洸樹 1、長友 隆将 1、
丹羽 俊文 1、林 慎一 1
一般セッション(ポスター掲示)
【 背 景 】乳 癌 の 約 7 割 を 占 め る エ ス ト ロ ゲ ン 受 容 体 (ER) 陽 性 乳 癌 に お い
て、ホルモン療法に対する耐性獲得が問題となっている。SERD(Selective
Estrogen Receptor Down-regulator) である Fulvestrant に関しても例外で
はないが、耐性化に関する研究は少なく、未だ詳細が分かっていない。
【目的】Fulvestrant 耐性機序の解明を目的として、ER 陽性乳癌細胞株 MCF7,
T47D をそれぞれ Fulvestrant 存在下で約半年ほど培養して得られた細胞を
Fulvestrant 耐性株 MFR, TFR として樹立し、その分子生物学的特徴を比較検
討した。
【結果・考察】親株 MCF7, T47D 共にエストロゲン濃度依存的に細胞増殖し、
Fulvestrant 添加によってその増殖は抑制されるが、耐性株はどちらもエスト
ロゲンによる増殖促進はみられず、Fulvestrant 添加によっても増殖は抑制さ
れないため、Fulvestrant 耐性を獲得していることが確認された。また、どち
らの耐性株でも ER の蛋白質と mRNA の発現がほぼ消失していた。
親株 MCF7, T47D は、Fulvestrant24 時間添加により ER 蛋白質の発現はほ
ぼ消失したが、mRNA の発現は上昇しフィードバック機構が機能しているこ
とが示唆された。その後、Fulvestrant を除去した培地に戻して少なくとも 2
週間ほど培養を続けると ER の蛋白質発現が回復し、その短期暴露による ER
減少効果は一過性であることが示された。しかし、MFR は Fulvestrant を除い
た培地に戻して培養を続けると、半年を経過しても ER 発現は回復せず、TFR
においては Fulvestrant を除いた培地に戻して 2 週間程で ER 発現回復の傾向
がみられた。このように ER 発現回復の可逆性は耐性株間で差が見られ、耐性
獲得における ER の発現制御が親株の違いによって異なることが示唆された。
現在、この点について ER 遺伝子のエピゲノム制御を中心に解析を進めている。
一方、耐性株の細胞増殖は ER 非依存的なシグナル伝達経路に依存している
と考え、代表的なチロシンキナーゼ型受容体の発現を検討したところ MFR で
は HER2 と HER3 の発現が亢進しており、特に HER3 のリン酸化亢進が顕著で
あった。以上のことから、Fulvestrant 耐性株では ER 非依存性の性質となっ
ていること、長期間の Fulvestrant 暴露によって ER 発現は転写レベルで抑制
されるようになり、発現低下の可逆性は親株の性質に依ること、Fulvestrant
耐性機序の一つに HER3 経路が関与していることが示唆された。更なる検討
により Fulvestrant 耐性獲得乳癌の治療に貢献できると考える。
【 背 景 】PI3K/Akt/Mammalian Target of Rapamycin (mTOR) pathway は
細胞の代謝、cell cycle や細胞死に関わる重要な signaling pathway で、そ
の異常な活性化が多くの固形癌で腫瘍の増殖や薬剤耐性の獲得に関わって
い る と 報 告 さ れ て い る。rapamycin は mTOR の allosteric inhibitor で あ り
mTOR の複合体である mTORC1 を阻害する事で抗腫瘍効果を発揮する。す
でに腎細胞癌に対して単剤で、また乳癌に対しては内分泌治療薬との併用に
より、臨床使用されているが開発当初に期待された程の抗腫瘍効果は認め
られていない。Rapamycin 耐性のメカニズムとして mTORC1 阻害による
negative feedback が Akt の活性化を引き起こす事が示唆されているが、そ
の詳細は未だ明らかではなく更なる解明が期待される。【目的】rapamycin 耐
性ヒト乳癌株を用いて rapamycin 耐性メカニズムの解明を試みた。【方法】ヒ
ト乳癌細胞株 BT474 を rapamycin を含む培養液内で継代し、その濃度を漸
増する事で、高濃度の rapamycin を含む培養液中でも増殖する rapamycin
耐 性 BT474 (BT474RR) を 樹 立 し た。BT474 及 び BT474RR を DMSO ま た
は rapamycin で 処 理 し、reverse phase protein arrays (RPPA) を 用 い て
比較解析した。RPPA は PI3K/Akt/mTOR pathway を中心に細胞内シグナル
に関連する 154 種類の分子に特異的な抗体を用いて染色、定量した。【結果】
BT474 と BT474RR を rapamycin で処理しない状態で比較し発現の異なる 15
種類の蛋白質を同定した。24 時間の rapamycin 処理により両者の間で発現の
異なる蛋白が 49 種類同定された。rapamycin 処理により経時的に変化する蛋
白が BT474 で 78 種類、BT474RR で 66 種類同定された。rapamycin の濃度
変化により発現の変化する蛋白が BT474 で 42 種類、BT474RR で 10 種類同
定された。【考察】樹立したヒト乳癌細胞 rapamycin 耐性株 BT474RR を用い、
ヒト乳癌における rapamycin 耐性のメカニズムを解明できる事が示唆された。
11904
10244
タモキシフェン耐性になった ER 陽性乳癌細胞では,抗癌剤感受
性も変化している場合がある
進 行・ 再 発 乳 癌 に 対 す る 後 期 regimen と し て の eribulin と
Paclitaxel+Bevacizumab の使用成績比較
GP-1-014-02
GP-1-014-03
1
信州大学医学部 乳腺・内分泌外科
2
渡邉 隆之、伊藤 研一、前野 一真、金井 敏晴、岡田 敏宏、花村 徹、
家里 明日美、大場 崇旦
【背景】ER 陽性乳癌が内分泌療法に耐性となった場合に化学療法が選択さ
れるが , その際の薬剤選択の指標は確立されていない . また , 長期にわたる
内分泌療法剤投与が , 再発乳癌の化学療法剤に対する感受性を変化させて
いる可能性も推測される . そこで我々は , 内分泌療法に耐性となった ER 陽
性細胞の化学療法剤に対する感受性の変化を解析した 【
. 方法】ER 陽性細胞
株 (T47D,MCF7,BT474) で タ モ キ シ フ ェ ン (TAM) 耐 性 株 (T47D/T,MCF7/
T,BT474/T) を樹立し , ドキソルビシン (DOX),5FU, パクリタキセル (PTX) に
対する感受性を WST 法と ELISA 法アポトーシス定量で解析し ,RT-PCR で薬
剤感受性因子の mRNA 発現解析を行った . また , ヌードマウス背部に細胞株を
移植し xenograft を作成し ,in vivo での薬剤感受性を解析した 【
. 結果】T47D
と T47D/T,BT474 と BT474/T で は DOX,PTX,5FU に 対 す る 50% 阻 害 濃 度
(IC50) には変化が認められなかった . 一方 ,MCF7 では ,TAM 耐性株 (MCF7/
T) の 5FU に対する IC50 が 1/15 に ,DOX に対する IC50 が 1/5 に低下してお
り ,5FU,DOX に対する感受性の増加とアポトーシス誘導の増加が認められ ,
特に 5FU でその差が著明であった .5FU の代謝に関与する酵素の発現解析で
は , い ず れ の 細 胞 株 に お い て も TAM 耐 性 株 で Thymidylate synthase(TS)
発 現 の 有 意 な 低 下 が 認 め ら れ た . さ ら に ,MCF7 で は T47D,BT474 に 比 べ
Dihydropyrimidine dehydrogenase(DPD) が有意に高発現していたが ,TAM
耐性になると DPD の著明な減少が認められた .In vitro で 5FU 感受性に差が認
められた MCF7 と MCF7/T でマウス xenograft を作成しカペシタビンを投与
すると ,MCF7 では 1/2MTD で腫瘍縮小は認められなかったが ,MCF7/T では
1/2MTD で明らかな腫瘍縮小が認められ ,in vivo モデルでも MCF7/T の 5FU
感受性が高まっていることが確認された 【
. 考察】MCF7 では TAM 耐性株で
5FU 感受性の著明な増加が認められ , その機序のひとつとして DPD の著明な
低下と TS の発現増加が考えられた . 今回の結果から内分泌療法剤に耐性を獲
得した際に化学療法剤感受性にも変化が誘導される可能性が示唆され ,TAM 耐
性となった一部の ER 陽性乳癌での 5FU の有効性が示唆され , 再発乳癌の治療
戦略の個別化の一助となる可能性がある .
国際医療福祉大学三田病院 乳腺センター、
東京大学医学部付属病院 乳腺内分泌外科
白川 一男 1、小川 明子 1、木村 聖美 1、内田 恵博 1、小川 利久 2
【 目 的・ 方 法 】進 行・ 再 発 乳 癌 に 対 す る、 後 期 (5 以 上 )regimen と し て の、
Eribulin(2w1r、1.4mg /m2) 54 症例、Paclitaxel(3w1r、904mg /m2)
+Bevacizumab(1w1r、10mg/m2) 48 症例の使用成績を解析する。比較対象
として、Eribulin は、EMBRACE、W221 臨床試験を、Paclitaxel+Bevacizumab
は E2100 臨 床 試 験 を 用 い た。 各 regimen を sequential に 使 用 し た 24 症 例
(E → P 14 例、P → E 10 例 )において、2regimen total での、TTF、TTP、OS を
比較検討した。
【成績・結論】有害事象は、各 regimen において、各臨床試験と
有意な差を認めなかった。Eribulin は、TTF、TTP、OS において、EMBRACE、
W221 臨床試験と比較して、有意な延長を認めた。subtype 解析では、triple
negative type が Luminal、HER2 type と 比 較 し て、TTP、OS に お い て 有
意に不良であったが、EMBRACE、W221 臨床試験成績より良好であった。
Paclitaxel+Bevacizumab は、TTF、TTP、OS において、E2100 臨床試験と同
等の成績であった。同 regimen の sequential 解析では、E → P 群が、P → E 群と
比較して、TTF、TTP、OS において、有意に延長していた。
322
ポスター掲示
11482
11817
スフィンゴシン -1- リン酸(S1P)は乳癌の血管新生・リンパ管
新生を誘導する
乳癌症例における発癌関連遺伝子多型 8q24 上の non coding
RNA 発現の臨床的意義について
GP-1-015-01
1
2
GP-1-016-01
1
新潟大学大学院 消化器・乳腺内分泌外科学分野、
バージニア州立大学医学部 腫瘍外科
九州大学病院別府病院 外科、
うえお乳腺外科、3 たなか乳腺・外科・内科クリニック、
4
鹿児島大学大学院 腫瘍制御学講座 消化器・乳腺甲状腺外科学
2
永橋 昌幸 1,2、高部 和明 2、山田 顕光 2、小山 諭 1、若井 俊文 1
【背景・目的】タンパク質をコードしない RNA(non-coding RNA, ncRNA) に
は、20 数塩基長の小分子 RNA (microRNA 等 ) と、mRNA 同様の構造をもつ
長鎖ノンコーディング RNA (long non-coding RNA; lncRNA) とが存在する。
後者はクロマチンを構成する DNA やヒストンタンパクのメチル化を制御する
等のエピジェネティックな機構に関与している。ncRNA は全ゲノムの98%
以上をしめると言われる非翻訳領域から転写されるが、癌に関する研究はま
だその途についたばかりである。他方、多くのゲノム領域のなかで発癌関連
多型が存在し、中でも 8q24 は乳癌をはじめとする様々な癌腫における関連
性が知られているが、具体的な発癌機構については明らかではない。われわ
れは乳癌症例における発癌関連 8q24 多型上に存在する ncRNA の同定とその
発癌機構の解明、さらに臨床的意義について明らかにする。【対象と方法】1)
大腸癌からのアプローチ:大腸癌株化細胞 COLO320 を用いて、発現解析、
機能解析を施行。また大腸癌症例における発現と臨床的意義について解析を
した。2)乳癌症例を用いた検証:乳癌 129 症例の原発巣 TN ペアにおける
CCAT2 発現と無病再発率とを比較した。【結果】1)大腸癌株化細胞において、
COLO320 は RNA レベル過剰発現および DNA レベルの増幅を認め、CCAT2
強制発現により浸潤能、転移能、コロニー形成能、造腫瘍能いずれも高まっ
た。また臨床検体では MSI 大腸癌症例よりも MSS 症例において CCAT2 発現
は有意に高値を示していた。さらに MYC 発現とも有意に関連をして発現をし
た。2)CCAT2 高発現乳癌症例は 68 例、CCAT2 低発現例は 61 例存在し、無
病再発率について CCAT2 高発現例は有意に再発率が高いことを明らかにした
(HR=2.01[1.20-3.35], Log Rank p=0.006)。
【結語】われわれは、ごく最近、
染色体8番の遺伝子多型直上において存在する転写産物 CCAT2 を同定した。
CCAT2 は linc RNA に属し、遺伝子多型のアリルの違いにより発現量が異なる
ことを明らかにしており、下流遺伝子として MYC 経路が重要であることも明
らかにしている。
11443
10171
乳癌のエピジェネティックな異常の同定 放射線障害との関連
正常乳腺上皮細胞における BRCA1・GSTP1 遺伝子のメチル化
解析
GP-1-016-02
GP-1-016-03
国立病院機構東広島医療センター 外科
大阪大学大学院医学系研究科 乳腺・内分泌外科
宮本 和明、貞本 誠治、豊田 和広、池田 昌博、中谷 玉樹、倉吉 学、
志々田 将幸、溝田 志乃里、山根 宏昭、高橋 忠照
エピジェネティックな機構は遺伝子発現制御に関わる後成的修飾であるが、
がんに代表されるような遺伝および環境要因が複雑に関与する疾患の発症機
構として、また可塑性の特徴から疾患の予防や治療の標的として重要である
と考えられている。放射線障害に基づく乳癌発生の新たな分子機構としてエ
ピジェネティックな異常に着目し被爆者乳癌の生物学的特徴について解析し
た。被爆者乳癌においてはサブタイプとして HER2 陽性乳癌の頻度が高い傾向
にあった。また、P53、
BRCA1 および PTEN について免疫組織学的な解析を行っ
た結果では PTEN 不活化の頻度が高いことが示された。被爆線量と HER2 陽性
乳癌のサブタイプとの比較では放射線影響研究所の Life Span Study(LSS)A
群 (被爆線量 4-1466mGy)および B 群(被爆線量 1-3mGy)のうち、被爆線
量の多い A 群より被爆線量の少ない B 群に HER2 サブタイプがより多く認めら
れた。以前に報告されたエピジェネティックな異常と HER2 陽性乳がんの関
連性、および広島の被爆者乳癌における HER2 陽性乳癌の頻度上昇から、エ
ピジェネティックな異常が放射線障害に基づく乳癌発生においても寄与して
いる可能性あると考えられた。
大谷 陽子、三宅 智博、加々良 尚文、下田 雅史、直居 靖人、丸山 尚美、
下村 淳、島津 研三、金 昇晋、野口 眞三郎
【背景】乳癌組織では、BRCA1・GSTP1 遺伝子のプロモーターのメチル化が比
較的高頻度に認められると報告されている。一方、これらの遺伝子の正常乳
腺組織におけるメチル化に関してはあまり報告されていない。正常乳腺組織
でのメチル化の有無や特にその分布を調べることで、乳癌の発生に関する新
たな知見を得ることができると考え以下の検討を実施した。【方法】BRCA1 メ
チル化陽性乳癌 10 例、同陰性乳癌10例、GSTP1 メチル化陽性乳癌 11 例、
同陰性乳癌 9 例を対象とした。各症例において、乳癌組織(パラフィンブロッ
ク1個)および周囲の正常乳腺組織(パラフィンブロック 1 ~ 4 個)から作成
した組織切片を用いて、実体顕微鏡下に腫瘍細胞と正常上皮細胞を用手的に
micro dissection し DNA を抽出した。メチル化解析にはリアルタイム MSP を
用いた。【結果】BRCA1 メチル化陽性乳癌 10 例中 6 例で正常乳腺組織のメチ
ル化が少なくとも 1 領域(1 ブロック)で認められた。一方で、BRCA1 メチル
化陰性乳癌では正常乳腺組織には全くメチル化を認めなかった。GSTP1 に関
しては乳癌組織のメチル化の有無にかかわらず正常組織にメチル化は全く認
められなかった。また、magnetic-activated cell sorting 法で正常乳腺上皮
細胞を単離することにより、正常組織に認めた BRCA1 のメチル化は乳腺上
皮細胞由来であることを確認した。【結論】BRCA 1のメチル化を有する正常
乳腺上皮細胞は、メチル化陽性乳癌の前駆体となることが示唆された。一方、
GSTP1 にはそのような所見は得られなかった。
323
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】スフィンゴシン -1- リン酸(S1P)は細胞情報伝達を行う脂質として最
近注目されている。S1P は癌細胞内でスフィンゴシンキナーゼ 1 型(SphK1)
によって産生され、S1P 輸送体を介して細胞外へ排出され、細胞表面の S1P
特異的受容体に作用することにより、癌細胞の増殖・遊走などの生理活性を
示す。これまでに乳癌患者では、腫瘍における SphK1 の高発現が報告されて
いる。一方、S1P の腫瘍血管・リンパ管新生における働きは未だ明らかでない。
【目的】S1P の乳癌腫瘍血管・リンパ管新生における働きを明らかにする。【方
法】4T1-luc2 乳癌細胞を BALB/c マウスに移植する同系移植モデルを用いた。
当研究室において開発された SphK1 の特異的阻害剤である SK1-I を用い腹注
した。腫瘍の増殖、転移は In Vivo Imaging System(IVIS) により定量した。
動物サンプル及び Stage IIIa の患者血清中 S1P はマススペクトロメトリーに
より測定した。腫瘍及びリンパ節における血管・リンパ管新生は免疫組織染
色とフローサイトメトリーにより定量した。細胞レベルの血管・リンパ管新
生は、チューブ形成アッセイで評価した。【結果】4T1-luc2 細胞は SphK1 の
mRNA 高発現を認め、マウスに移植後更に有意な増加を認めた。4T1-luc2 細
胞培養上清は細胞レベルで有意に血管・リンパ管新生を誘導したが、4T1luc2 細胞内の SphK1 を shRNA により抑制することで、その効果の減少を認
めた。担癌マウスは腫瘍及び血清中の S1P の上昇を認めた。興味深いことに
Stage IIIa 乳癌患者においても、人種・年齢をマッチングさせた正常群と比
較して血清 S1P の有意な上昇を認めた。マウスモデルにおいて、SK1-I によっ
て腫瘍及び血清中 S1P 値の有意な減少を認め、さらに治療群では腫瘍関連マ
クロファージの抑制を認め、腫瘍及びリンパ節における血管・リンパ管新生
が有意に抑制された。IVIS による評価において、SK1-I は原発巣の増殖のみ
ならず、リンパ節及び肺転移を減少させた。【結論】われわれの結果は、腫瘍
の SphK1 により産生された S1P が乳癌の血管新生・リンパ管新生において重
要な因子の一つであることを示唆した。SphK1 は乳癌治療において有用な標
的のひとつと考えられる。
新田 吉陽 1、上尾 裕紀 1、上尾 裕昭 2、田中 文明 3、貴島 祐子 4、
夏越 祥次 4、三森 功士 1
ポスター掲示
11688
10045
トリプルネガティブ乳癌における TCGA データを用いた同時共
起性および相互排他性遺伝子解析
乳癌 41 症例の次世代シーケンサー (NGS) による解析
GP-1-017-01
GP-1-017-02
1
3
東京医科大学茨城医療センター 外科(乳腺)
北斗病院 病理診断科、2 北斗病院 乳腺外科、
北斗病院 乳腺・乳がんセンター、4 北海道大学医学部 探索病理学講座
赤羽 俊章 1、川見 弘之 2、中島 恵 2、難波 清 3、西原 広史 1,4
藤森 実、越川 佳代子、西村 基、近藤 亮一、藤田 知之
一般セッション(ポスター掲示)
が ん 化 に は 遺 伝 子 の 同 時 共 起 性(co-occurrence)と 相 互 排 他 性(mutual
exclusivity)が関与し、肺癌における EGFR と KRAS 変異が相互排他的である
ことは良く知られている。しかし、いつ、どこで、どのようにこれらが関連
し機能しているのかは不明である。乳癌は 4 つのサブタイプに分かれ、ホル
モン受容体および HER2 の発現により標的治療がなされる一方、トリプルネ
ガティブ乳癌(TNBC)は標的がなく、化学療法に頼らざるを得ないのが現状
である。近年 The Cancer Genome Atlas(TCGA)など大規模なゲノムプロ
ジェクトによる全ゲノムシーケンス(WGS)の結果により、各サブタイプの遺
伝子変異などの特徴が明らかになり、basal-like タイプではゲノム不安定性
と p53 変異頻度が高いことが最大の特徴であることがわかってきた。さらに、
これらのデータは一般でも使用できるが大変複雑なため、The cBioPortal for
Cancer Genomics(http://cbioportal.org)のように、容易に解析できるツー
ルが登場してきた。そのため、これらのデータ解析ツールを用い解析し、そ
れをもとに新たな知見や治療法、臨床試験へ結びつけることが可能な時代が
到来した。Luminal A タイプ乳癌では、エストロゲン受容体の転写制御機能
に関わるコリプレッサー N-Cor-SMRT 複合体の相互排他的変異が同定され、
それによるエストロゲン受容体の転写活性を低下させる可能性が示唆され、
内分泌療法抵抗性乳癌に対する治療に結びつく可能性が期待されている。現
在まで TNBC および basal-like タイプにおいて同時共起性と相互排他性解析
の結果は報告されていない。TNBC の約 80% は basal-like タイプ、basal-like
タイプの約 70% が TNBC であるが、実臨床では gene profiling を使うこと
はまれなため、今回われわれは TCGA より TNBC68 例を抽出し、全生存期間
情報をもとに 2 群に分類し、TNBC で変異頻度が高い p53 を含む 10 遺伝子を
query とし、ヒトタンパク質をコードする 20630 遺伝子を対象として、それ
ぞれの群で同時共起性と相互排他性解析を行ったので報告する。
【目的】
次世代シーケンサー (NGS) による解析は低頻度の変異検出や多検体多変異
同時解析等多くの利点がある。臨床においての解析ではパラフィンブロック
(FFPE) からの DNA 抽出と解析が病理学的な観点からも重要視されるが、その
解析結果の臨床診断への応用は確立していない。今回我々は乳がん FFPE を使
用しての DNA 抽出条件検討および NGS 解析をおこなったので、その結果を報
告する。
【方法】
数社の FFPE DNA 抽出 kit を使用し、スタート時のパラフィン組織の量などを
変更し検討した。illumina cancer panel(癌関連 48 遺伝子)を使用して DNA
ライブラリ作成後に Agilent 2100 Bio analyzer にて解析し、その後 illumina
MiSeq にて解析をおこなった。対象は Hormone Receptor Negative (HRN
群 ) 20 例、Hormone Receptor Positive (HRP 群 ) 21 例。得られた SNP の
結果から対象組織に対し5種類のターゲット分子に対し免疫染色を施行、病
組織学的評価をおこなった。
【結果】
メーカー推奨のスタート DNA 量は 250ng であるが、パラフィンロールの量を
増やしても、その収量を FFPE から得ることは困難であった。本検討の結果で
は 250ng 以下でも、3 桁以上の depth が得られ、少なくとも 100ng の DNA 量
があれば解析が可能であった。しかし2~3年経過した FFPE では十分な DNA
濃度が得られていても十分な depth が得られない傾向にあった。また簡易的
な DNA 抽出 kit で得られた DNA では十分な depth が得られず、シリカメンブ
レンを使用した抽出 kit が推奨された。検出された SNP のほとんどが COSMIC
などの data base に登録されていない SNP であった。これらの SNP の一部が
免疫染色判定結果と一致した。
【結論】
NGS の解析ではスタート時の単純な組織量 (DNA 量 ) よりは抽出方法(DNA の
質 ) が重要であり FFPE の場合、ブロック作成後に早期に DNA を抽出し保管す
ることで NGS 解析が可能であると考えられた。今回検証した cancer panel で
は HR の発現有無と変異との間に傾向は認めなかったが、いくつかの遺伝子で
共通して認められる SNP が存在し、これらの SNP が治療応答性や耐性、予後
への関与等治療に応用できるよう今後検討する必要がある。
10893
10004
乳癌細胞株における抗癌剤耐性獲得の新規関連蛋白質の検索と
機能解析
ホルモン感受性乳癌組織における新規悪性度関連タンパク質の
検索
GP-1-018-01
GP-1-018-02
1
大阪医科大学 一般・乳腺内分泌外科
藤岡 大也、寺沢 理沙、佐藤 七夕子、高橋 優子、木村 光誠、田中 覚、
岩本 充彦、内山 和久
2
大阪医科大学医学部 一般・乳腺内分泌外科、
大阪医科大学医学部 臨床検査医学教室
佐藤 七夕子 1,2、中西 豊文 2、寺沢 理沙 1、藤岡 大也 1、高橋 優子 1、
木村 光誠 1、田中 覚 1、岩本 充彦 1、内山 和久 1
【背景と目的】 タキサン系抗癌剤は、アンスラサイクリン系抗癌剤と並んで
再発乳癌患者に用いられる代表的な抗癌剤である。しかしその奏効率は 30 ~
(目的)近年、乳癌は遺伝子解析によっていくつかの intrinsic subtype に分類
60%であり現在のところ治療における効果予測や耐性獲得に関するエビデン
されるようになった。しかし、日常臨床においてすべての症例に網羅的遺伝
スは不十分である。 耐性獲得の機序として P 糖蛋白、MAP2、MAP4、tau
子解析を行うことは不可能であるため、ホルモン受容体、HER2、Ki-67 の発
の過剰発現やβ -tublin の変異といったものが報告されているが、主に in vitro
現状況を免疫染色法で検索することで近似的にサブタイプ分類を行っている。
でのものでありエストロゲン受容体、HAR2 蛋白といった治療効果の予測因
それにより、乳癌を luminalA,luminalB,HER2 陽性 , トリプルネガティブの4
子や治療の適応決定に活用されているものはない。 われわれは、添加でき
つのグループに分類して術後の治療方針決定の指標としている。ホルモン感
る蛋白量を増やし再現性を高め CBB 染色を用いた定量性も高い IPG 法(改良
受性乳癌には Luminal A と Luminal B の2つのサブタイプが存在し、薬物療
型 IPG 法)を用い paclitaxel 耐性に関連する蛋白質を同定する。【材料と方法】 法の効果や予後などの生物学的特性が異なることが指摘されている。その分
乳癌細胞株(MCF -7、以下親株)とパクリタキセル耐性株(MCF -7/tax、
類には増殖能を示す Ki-67 の発現状況で分けられているが、必ずしも遺伝子解
以下耐性株)を用いる。個々の細胞株から可溶性蛋白を抽出し、改良型 IPG 法
析による intrinsic subtype 一致せず、より良い治療効果が得られない場合が
を用い2次元電気泳動にて蛋白質を分離する。両者間での発現する蛋白スポッ
ある。今回、乳癌切除標本を解析対象に、マトリックス支援レーザー脱離飛
トを定量し、質量分析器(MALDI-TOF MS/MS)を用いて同定する。同定され
行時間型質量分析イメージング(以下 MALDI-IMS)法を用い、乳癌組織内に存
た蛋白質を認めた場合、その機能を論文検索し関連性の高いと思われる蛋白
在する癌関連タンパク質を質量イメージング法にて同定し、タンパク質の発
質においてノックダウンを行い、その発現を抑制させることで耐性の消失が
現と乳癌悪性度(増殖能)との関連性を検証した。(方法)乳癌手術に際して摘
あるかを MTT assay にて確認する。【結果】 電気泳動で分離された蛋白のう
出した新鮮凍結乳癌組織20例を、MALDI-IMS 解析にかけ、可視化された画
ち、親株と比較して有意に蛋白発現の亢進や抑制した蛋白を耐性株に認め質
像(heat map)を HE 染色像と比較し、癌部、非癌部、正常組織など関心領域
量分析器にてその蛋白質を同定した。【考察】 今回の結果でその耐性克服の
(ROI:Region of interests)を設定し、タンパク質プロファイルを可視化する。
機序解明や治療効果の予測因子としての臨床応用が期待される。
Luminal A 乳癌と Luminal B 乳癌で分類し、両者で異なる分子イオンを選出
し、コンピューター解析により有意差のある分子イオンを見出す。それらに
対して、酵素消化及びマトリックス支援レーザー脱離飛行時間型質量分析(以
下 MALDI-MS/MS)解析にて両者間で発現の異なるタンパク質を同定する。ま
た、従来の病理組織学的検索結果と比較検討し、両者の分布が一致する事を
明らかにする。(結果)MALDI-IMS 解析で複数認めた分子イオンを、MALDIMS/MS 解析で同定する。
(考察)今回の結果で、
乳癌関連タンパク質発現パター
ンは Luminal 乳癌の生物学的特性に関与している可能性が示唆された。乳癌
の悪性度に関わる可能性があるため、今後検討を進めていく予定である
324
ポスター掲示
11230
11821
ホルマリン固定パラフィン包埋標本でのプロテオミクス解析の
可能性
当院の de novo B 型肝炎における HBV スクリーニング及びモ
ニタリング状況
GP-1-018-03
GP-1-019-01
新潟大学大学院 医歯学総合研究科 社会医療法人敬愛会中頭病院 薬剤部
長谷川 美樹、小山 諭、坂田 英子、辰田 久美子、利川 千絵、萬羽 尚子、
五十嵐 麻由子、若井 俊文
山本 紗織、森脇 典子
背景:2011 年 10 月「免疫抑制・化学療法により発症する B 型肝炎対策ガイ
ドライン」( 以下、ガイドライン ) が発表され、化学療法施行前の HBV スクリー
ニングや HBs 抗原陽性の高リスク患者の核酸アナログ投与、HBs 抗原陰性者
で HBs 抗体ないし HBc 抗体陽性者の低リスク患者では HBV の再活性化、い
わゆる de novoB 型肝炎が起こることが近年明らかになっており、化学療法
中・終了後 12 ヶ月の HBV-DNA 定量モニタリングが推奨されている。当院は
2012 年 12 月、院内化学療法で全ての化学療法患者に HBV スクリーニングを
行うことを決定したが、乳腺科ではガイドライン発表後よりスクリーニング
を開始していた。今回は乳がん化学療法患者における HBV スクリーニング及
びモニタリング状況について報告する。方法:(1)2011 年 11 月~ 2013 年 12
月の乳がん化学療法施行者 ( 抗 HER2 薬単剤投与を除く )181 人を対象とし、
スクリーニング検査 (HBs 抗原、HBs 抗体、HBc 抗体 )、高・低リスク患者に
おける化学療法中の HBV-DNA 定量検査状況を調査した。(2)2011 年 11 月~
2012 年 11 月の術前・術後療法を受けた高・低リスク患者 24 人の化学療法終
了後 12 ヶ月の医師による HBV-DNA 定量モニタリング状況を調査した。結果:
(1)HBs 抗原検査は全例に実施され、高リスク患者は 4 人 (2.2% ) で治療開
始とともに核酸アナログ薬が投与された。HBs 抗体・HBc 抗体検査は 166 人
(91.7%) の患者に実施されており、モニタリングが必要な者は 53 人 (29.3% )
で、ガイドラインに準じた毎月 1 回のモニタリング施行率は 42 人 (79.2% )
であった。うち 2 人に再活性化がみられたが、HBV キャリアからの再活性化
のみで de novo B型肝炎を発症はなかった。(2) 化学療法後の抗 HER2 薬投
与の有無でモニタリング施行状況に差がみられた。抗 HER2 薬投与のある患
者では、モニタリング回数中央値 4 回 (1-12 回 ) と比較的継続した検査がされ
ていたが、抗 HER2 薬投与のない患者では中央値 1 回 (0-3 回 ) であった。ガイ
ドラインに準じて毎月のモニタリングが施行されていたのは 1 人のみであっ
た。考察:化学療法を安全に行う上で B 型肝炎スクリーニング及びモニタリ
ングは重要である。薬剤部は HBV スクリーニング結果やモニタリング状況の
確認は化学療法処方監査項目としている。そのため化学療法後も抗 HER2 薬
が投与されている患者へは、主治医へのモニタリングの促しを薬剤部で行う
ことができるが、抗 HER2 投与のない患者へのモニタリング介入率の向上が
今後の課題と考える。
11568
11601
飛行時間型二次イオン質量分析法 (TOF-SIMS) を用いた乳癌
一細胞脂質解析
閉経後乳癌の subtype、
病理所見及び Ki-67 と Androstenedion
血清濃度の相関性
GP-1-020-01
1
GP-1-020-02
浜松医科大学 外科学第一講座、2 浜松医科大学 解剖学講座細胞生物学分野
愛知医科大学 乳腺・内分泌外科
井手 佳美 1,2、脇 紀彦 2、瀧 由美子 1、細川 優子 1、松沼 亮一 1、
小倉 廣之 1、椎谷 紀彦 1、瀬藤 光利 2
手塚 理恵、藤井 公人、安藤 孝人、塩見 有佳子、高阪 絢子、吉田 美和、
今井 常夫、中野 正吾、福富 隆志
(背景)癌病巣は不均一な細胞の集団で、再発や治療抵抗性の原因となる亜集
団の存在が近年提唱されている。癌細胞を単一細胞レベルで解析する試みは、
癌の再発機序・予防・治療を考える上で極めて重要である。これまでに単一
細胞を対象としたプロテオーム解析、ゲノム解析等が報告されているが、乳
癌細胞を単一細胞レベルで脂質解析した研究は未だ報告されていない。また、
一細胞レベルの測定が可能な質量分析手法である飛行時間型二次イオン質量
分析法 (time-of-flight secondary ion mass spectrometry; TOF-SIMS) は、
個体試料上の原子・分子を測定し、100nm 以下の分解能で分布を観察するこ
とが可能で、近年、生体試料観察にも応用が試されている。(目的)TOF-SIMS
を用いて、乳癌一細胞を対象とした網羅的脂質解析を行う。前段階として試
料調整条件と測定条件の適正化を行う。(方法)SKBR3 乳癌細胞株を polyL-lysine によりコートした indium-tin-oxide(ITO) ガラス上に遠心により接
着させた。TOF-SIMS による脂質測定には PHI TRIFT IV を、脂質解析には
WinCadenceN ソフトウェア ( 共に ULVAC-PHI Inc.) を用いた。(結果・考察)
ITO ガラスに接着させた SKBR 細胞表面を酢酸アンモニウムで洗浄すること
により、イオン化を阻害する残存バッファー成分を除去することに成功した。
TOF-SIMS 測定では、陽イオンモードにおいてコリンリン酸塩 (m/z 184.1)
が、陰イオンモードにおいて各種リン酸塩 (m/z 79.0、97.0) および各種脂
肪酸 (m/z 253.2、255.2、281.3、283.3) が由来のシグナルがバックグラ
ンドからは検出されず、細胞が貼付された部分のみから検出された。これら
はいずれも細胞表面に含まれるリン脂質に由来するものと考えられた。また、
これらの分子が細胞表面に偏りなく局在する様子を可視化するのに成功した。
陰イオンモードで検出された各種脂肪酸シグナル強度を、質量スペクトルか
ら算出し比較したところ、炭素数 16 で不飽和結合が 1 の脂肪酸 [FA(16:1)]
が FA(16:0) に比して有意に少ないのと対照的に、FA(18:1) と FA(18:0) に
はほとんど差が見られなかった。ステアロイル CoA 不飽和化酵素 (SCD1) は
FA(18:0) に特異的に作用し FA(18:1) に変換する一方で、FA(16:0) の不飽和
化には特異性を持たないことが知られており、乳癌で SCD1 が高発現してい
るとする我々のかつての報告と矛盾しない結果であったと考えている。
「背景」閉経後乳癌患者において多くの性ホルモンは悪性度や予後に関連して
いると考えられるが、副腎で産生される Androstenedion の役割はよく知られ
ていない。今回我々は、閉経後乳癌患者の腫瘍の subtype、病理学的所見及
び Ki-67 スコアと Androstenedion の血清濃度の相関性を調べた。「対象・方
法」2003 年 7 月から 2004 年 4 月の間に手術を施行した閉経後乳癌患者 37 名
を対象とした。術前の Androstenedion 血清濃度と、腫瘍の subtype、病理所
見および Ki-67 スコアとの相関性を比較検討した。
「結果」平均年齢は 61 歳(範
囲:46-81 歳 )。Androstenedion 血 清 濃 度 (ng/ml,mean ± SD) は ER(+)
と ER(-) において各々 1.2 ± 0.7、1.4 ± 0.6(p=0.273)、PR(+) と PR(-) にお
い て 各 々 1.3 ± 0.7、1.3 ± 0.6(p=0.555)、HER2(2+,3+) と HER2(0,1+)
において各々 1.5 ± 0.6、1.2 ± 0.6(p=0.120) であった。また、grade I 及
び II と grade III に お い て 各 々 1.2 ± 0.7、1.6 ± 0.6ng/ml(p=0.010) で
あった。TNM 分類では、tis 及び t1 と t2 以上において各々 1.1 ± 0.3、1.5
± 0.8(p=0.054) で あ っ た。Ki-67 ス コ ア の 回 帰 曲 線 は y=4.047+7.32x、
相 関 係 数 は 0.086、p=0.082 で あ っ た。「 考 察 」Androstenedion 血 清 濃 度
は、histological grade の上昇に対して正の相関性を認め、腫瘍径の増大に
伴う血清濃度の上昇傾向もみられた。Ki-67 とも正の相関性の傾向を示した。
Androstenedion は容易に血清濃度を測定できるもので、かつ腫瘍悪性度の判
断材料となり得ることが示唆された。
325
一般セッション(ポスター掲示)
個別化治療のためのバイオマーカー探索を目的としたプロテオミクスは盛ん
におこなわれているが、いまだ有用なバイオマーカーの発見には至っていな
い。複雑で動的な性質を持つタンパク質の網羅的解析では、症例数を増やし
ても個体差や実験誤差が大きく、比較対照群間のわずかな差異を見出すこと
は困難である。症例背景が均一な試料での解析が解決法となる可能性がある
が、多数の臨床検体を凍結保存することは時間的・物理的に困難である。一
方で、ホルマリン固定パラフィン包埋 (FFPE) 病理標本は、臨床病理学的デー
タとともに多数保管されているが、標本からのタンパク質抽出が困難であっ
た。今回我々は、わずかな量の FFPE 標本からタンパク質を抽出し、プロテオ
ミクス解析を行うことに成功した。【目的】微量の FFPE 標本から抽出した試
料でのプロテオミクス解析の可能性について明らかにする。【対象と方法】免
疫組織染色結果や保管期間など、Ki67 index 以外の症例背景がほぼ一致する
Luminal A 乳癌 (LABC)3 例と Luminal B HER2 陰性乳癌 (n-LBBC)3 例を抽
出した。病理ブロックを 10 μ m に薄切し、顕微鏡下で腫瘍内から各 1mm2 ず
つ回収した。トリプシン消化後に精製し、ペプチド総量を確認した後、一回
測定量を一定にして質量分析計で解析した。【結果】精製後のペプチド総量は
1.6-3.9 μ g であった。解析の結果、LABC では 2479 個、n-LBBC では 2927
個のタンパク質を同定した。同一サンプルでのタンパク質同定の再現率は
78.3-83.9%で、95%が 0.22-4.3 倍の定量差であった。LABC、n-LBBC 各
群の全症例で同定されたタンパク質は、それぞれ 252 個と 440 個で、95%が
0.07-9.9 倍の定量差であった。LABC 全症例で同定され n-LBBC では同定さ
れなかったタンパク質は 13 個で、その逆は 29 個であった。両群ともに同定
されたタンパク質で測定誤差や個体差以上の定量差を示したのは 6 個であっ
た。LABC では構造タンパク質と受容体やトランスポーターの活性に関与する
機能を持ったタンパク質、n-LBBC では結合タンパク質と酵素活性に関与する
機能を持ったタンパク質を多く認めた。【結語】針生検の一部からでも採取可
能な程度のごくわずかな量の FFPE 標本から採取した試料でも、Luminal A 乳
癌と Luminal B HER2 陰性乳癌のタンパク質レベルでの質的量的差異を検出
できた。臨床病理学的データを加味したタンパク質の網羅的解析は、新規バ
イオマーカーの発見につながることが期待される。
ポスター掲示
10417
10805
乳癌における Cancer/testis antigens 発現に関する免疫組織
学的検討
乳癌における MACC1 発現の意義、HGF/c-Met 系制御に関す
る検討
GP-1-020-03
1
3
GP-1-020-04
久留米大学医学部 病理学講座、2 久留米大学医学部 外科学講座、
久留米大学医学部 先端癌治療センター、4 久留米大学病院 病理部
熊本大学 乳腺内分泌外科
末田 愛子、山本 豊、林 光博、山本 聡子、指宿 睦子、岩瀬 弘敬
竹中 美貴 1,2,3,4、関 直子 3、唐 宇飛 2、河原 明彦 4、三島 麻衣 2、
岩熊 伸高 2、山口 倫 1、矢野 博久 1、白水 和雄 2、鹿毛 政義 4
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】MACC1(metastasis-associated with colorectal cancer-1) は、c-Met
の転写因子の一つと考えられており、近年、大腸癌をはじめ、いくつかの癌
腫で、MACC1 高発現と予後不良との関連が報告されている。乳癌における
MACC1 発現の意義については不明であり、今回、MACC1 発現の臨床学的意
義と、細胞株を用いて MACC1 による HGF/c-Met 経路の制御について検討す
ることを目的とした。【対象と方法】当院での手術可能原発乳癌 300 例を用い
て、MACC1 発現 (mRNA、蛋白 ) と予後、臨床病理学的因子との関連を検討し
た。また、乳癌細胞株(MCF7、MB-MDA231)、大腸癌細胞株(SW480)を用
いて MACC1、c-Met 発現を比較検討した。各細胞株に MACC1 を遺伝子導入し、
細胞の形態及び運動能の変化、c-Met 経路発現の変化を比較した。核内での
MACC1 の c-Met への結合はクロマチン免疫沈降(ChIP)法にて評価した。【結
果】観察期間の中央値は 61 ヶ月。MACC1 高発現は、低発現に比べ予後良好で
あり、生存に関する多変量解析において、MACC1 発現は独立した予後良好因
子として規定された。ただし、他の臨床病理学的因子との相関はほとんどなく、
c-Met との相関もほぼ見られなかった(Spearman γ =0.16, P < 0.001)。In
vitro では、MCF7, MB-MDA231, SW480 いずれにおいても MACC1 の発現
は低い傾向にあり、これらに MACC1 遺伝子導入を行った結果、SW480 のみ
c-Met 蛋白発現の有意な上昇を認めた。また、癌細胞の遊走能については、乳
癌細胞株では変化は見られなかったが、SW480 では野生株に比べ、MACC1
導入株で有意な亢進を認めた。ChIP 法では、SW480 への MACC1 導入株にお
いてのみ、MACC1 の c-Met promoter 領域の結合が認められた。【結論】乳癌
における MACC1 発現の意義は、大腸癌や他の癌腫とは異なる可能性が示唆さ
れる。さらに乳癌細胞では c-Met 経路への MACC1 の転写制御が弱い可能性も
あり、癌の悪性化への関与が少ないことが推測される。これらの機序解明に
は更なる研究の蓄積が必要である。
[ 背 景 ]Cancer/testis antigens(CT-A: 癌 精 巣 抗 原 ) と は 正 常 組 織 で は 発 現
がなく、唯一免疫系から隔絶された精巣の胚細胞にのみ強発現している遺伝
子群の総称であり、悪性黒色腫、肺癌、膵臓癌、肝癌など様々な癌組織での
発現が報告されている。CT-A 発現と stage や転移との関連も見られ、新し
い癌治療のターゲットとして注目されているが、多くはその機能が不明であ
る。近年、乳癌での発現も認められ、Triple negative や BRCA 関連乳癌との
相関が報告されている。[ 目的 ] 乳癌において CT-A の機能、癌の増殖・進展
への寄与についてはまだ明らかにされていない。乳癌組織における CT-A 発現
を免疫組織学的検討に加え、乳癌細胞株を用いての PCR 解析を行い、予後や
リスクファクターとの相関について検討する。[ 方法 ]1995 ~ 2005 年まで
の病理組織学的検討可能であった浸潤性乳癌 100 手術例を対象とし、腫瘍細
胞でのCT-A発現について抗 NY-ESO-1(E978)、MAGE-A(6c1)、MAGEC1(CT7-33) 抗体を用いて免疫染色を行った。同時に stem cell marker であ
る ALDH-1 発現についても検討を行い、CT-A 発現との相関を検討した。さら
に Tiriple negative 乳癌細胞株を用いて ALDH-1 陽性細胞を採取し、PCR 解
析を行った。[ 結果 ] 腫瘍細胞内における NY-ESO-1、MAGE-A、MAGE-C1
発 現 は そ れ ぞ れ 6%、15%、12% で あ っ た。NY-ESO-1 発 現 は Triple
negative(p=0.002) および ER 陰性症例群で (p=0.033)、MAGE-A 発現は
Triple negative(p=0.006) および PgR 陰性症例群 (p=0.033) で多くみられた
が、OS や RFS との有意な相関は認められなかった。ALDH-1 は 22% の症例
で発現を認め、Triple negative と有意な相関を示した (p < 0.001)。ALDH-1
陽性例中 41% が CT-A いずれかに陽性を示したが、ALDH-1、CT-A3 種全て
陽性を示したものは 1 例のみで、Triple negative、核グレード 3 の症例であっ
た。[ 結語 ] ヒト乳癌組織における CT-A 発現は Triple negative との相関を示
し、乳癌 Triple negative 症例において、CT-A は有用な免疫ターゲット抗原と
なり得る可能性が示唆された。また ALDH-1 と相互の発現を認める症例もあ
り、癌幹細胞における CT-A 発現と治療応用の可能性について今後の検討が必
要だと思われる。
11368
10694
ホルモン陰性乳癌におけるアンドロゲンレセプターと FOXA 1
の発現
精密検査実施医療機関から見たマンモグラフィ検診の現状と問
題点
GP-1-020-05
GP-1-021-01
順天堂大学医学部附属順天堂医院 乳腺内分泌外科
1
吉田 悠子、堀本 義哉、岩間 敬子、酒田 円佳、明神 真由、猪狩 史江、
毛利 かの子、徳田 恵美、清水 秀穂、三浦 佳代、田辺 真彦、中井 克也、
齊藤 光江
白水 光紀 1、横江 亜沙子 1、矢次 直子 1、朝野 香菜美 1、田代 美智子 1、
溝口 美和子 1、濱田 雄蔵 2
【背景・目的】乳癌におけるアンドロゲンレセプター< AR >や FOXA1 の意義
はまだ不明な点が多い。トリプルネガティブ< TN >乳癌において、AR 陽性
が予後良好因子である可能性が報告されている。一方でエストロゲンレセプ
ター< ER >のシグナルに不可欠な転写制御因子 FOXA1 は、前立腺癌におい
て AR シグナルの制御に関わるとされるが ER 陰性乳癌における意義は未だ不
明である。そこで今回我々は ER 陰性乳癌における AR と FOXA1 の意義を追
求するために、それらの発現の解析を行った。【対象】2006 年から 2008 年
に術前化学療法を施行した ER 陰性乳癌 40 例<サブタイプの内訳は TN15 例、
HER2 type 25 例>を対象とした。治療前の針生検の検体を用いて免疫染色
により AR、FOXA1 の発現を明らかにするとともに、臨床病理学的因子との
関連性を検討した。発現の判定は AR、FOXA1 ともに 51% 以上の染色性を陽
性と判定した。【結果】AR 及び FOXA1 の陽性率は 45%、43%であり、ともに
陽性のものは 28%であった。AR 陽性率は TN で 26%、HER2 type で 92%、
FOXA1 陽性率はそれぞれ 40%、44%であった。TN、HER2 type 共に、AR
と FOXA1 の発現に相関は認められなかった。化学療法の効果については、病
理学的完全奏効がサブタイプによらず FOXA1 陽性群で有意に高かった p: <
0.05。AR や FOXA1 の発現と核異型度、Ki67、再発の有無等との間に関連性
は認められなかった。
【考察】AR は TN に比較し HER2 陽性乳癌で発現が高かっ
た。また、FOXA1 陽性群では化学療法の効果が高い傾向がみとめられた。今
後さらに症例を重ね特に予後との相関について詳細な検討を進める予定であ
る。
白水乳腺クリニック、2 広瀬病院
【背景】当院は、福岡県乳がん検診実施医療機関および乳がん検診精密検査実
施医療機関であり、医師 1 名(乳腺専門医、読影 AS 判定)と放射線技師 3 名(全
て A 判定)で、乳がん検診および精密検査を行っている。マンモグラフィ検診
で FAD で異常ありとされる受診者が非常に多く、精密検査の結果その多くが
異常なしであるという印象を以前より持っていた。そこで今回、マンモグラ
フィ検診の読影結果をまとめて検討してみることにした。【対象、方法】H21
年 4 月~ H25 年 9 月の間にマンモグラフィ検診で異常ありと判断され、当院
で精密検査を施行した 2261 例を対象に、検診結果の記載用紙より、1、検診
の種類(市町村検診、その他(職域、人間ドックなど))、2、報告書の形式(撮
影方向、シェーマ、所見、カテゴリー、2 重読影、読影医の記載)、3、検診の
読影結果(腫瘤、石灰化、FAD、構築の乱れ、その他、不明に分類)を調査し、
当院での読影結果と比較し、最終結果(超音波結果や組織検査結果)とも照ら
し合わせて検討した。また、検診の種類の違いによる結果もあわせて報告す
る。【結果】検診時の読影をカテゴリー(C)別にみると、C3 が 2105 例(93.1%)
と 最 も 多 く、C4:59 例、C5:13 例、 不 明:84 例 で あ っ た。 検 診 時 C3 症
例は、精密検査では 1325 例(62.9%)が C1、2 と判定された。乳癌は 2261
例中 110 例(4.9%)発見された。所見毎の検討では、検診時 FAD が 1031 例
(45.6%)と最も多く、腫瘤 593 例(26.2%)、石灰化 494 例(21.8%)、構築
の乱れ 125 例(5.5%)、不明 18 例(0.8%)であった。検診時 FAD と判断され
た症例中、精密検査では C1、2 と判断されたものが 791 例(76.7%)認められ
た。検診時構築の乱れと判断された症例は、精密検査では 95 例(76.0%)が
C1、2 と判断された。検診時石灰化と判断された症例は、精密検査で石灰化
が認められた 471 例中 249 例(52.9%)が C1、2 であった。検診時腫瘤と判断
されたものの内、37 例がリンパ節(C2)であった。【まとめ】現状では、FAD、
構築の乱れとして拾うかどうか、石灰化が集簇性なのか領域性なのか、腫瘤
なのかリンパ節なのか、などの判断が十分にできない読影医による読影によ
り、不必要な要精検者を増やしている可能性がある事がわかった。
326
ポスター掲示
10441
11206
マンモグラフィ併用検診の継続受診による発見乳癌症例の検討
乳がん検診の精度向上に有効なマンモグラフィ読影力の検討
GP-1-021-02
GP-1-021-03
1
王子病院、2 順天堂大学医学部 乳腺科、3 浅草病院、4 津田沼中央総合病院、
5
順天堂大学医学部 放射線科
織畑 剛太郎 1、崔 賢美 2、伊藤 真由子 2、瀬沼 幸司 2、毛利 かの子 2、
猪狩 史江 2、倉田 麻美 2、吉田 範敏 3、朝蔭 直樹 4、白石 昭彦 5、
氷室 貴規 2
当院では、平成 17 年 5 月よりマンモグラフィ(MMG)併用の乳がん検診を
開始し、平成 25 年 11 月までに、のべ 6727 件施行した。当院に於いて同期間
に、2 回目以降の乳癌検診受診時に発見された乳癌症例 8 例について検討した。
乳癌診断時の年齢は、平均 54 才(43 才~ 67 才)。前回の検診から、最終の検
診までの経過期間は、平均 32 ヶ月(15 ~ 48 ヶ月)であった。6 例が 2 回目、
1 例が 3 回目、1 例が 4 回目の検診受診後に、乳癌と診断された。8 例全例が、
前回受診時には、異常所見を指摘されなかった。2 例は、腫瘤自覚を契機に再
度検診を受診し、それ以外の 6 例は、自覚症状を認めなかった。精査が必要と
なった MMG 所見は、カテゴリー 4 が 2 例(腫瘤 1 例、構築の乱れ 1 例)。カテ
ゴリー 3 が 6 例(集簇する石灰化 3 例、FAD3 例 ) であった。針生検の結果、3
例が DCIS、5 例が浸潤癌であった。浸潤癌の腫瘍径は、T1 が 3 例、T2 が 2 例
であった。8 症例全例に、リンパ節に転移を認めなかった。クーポン配布を契
機に前回検診から 15 ヶ月後に再度受診した 1 例を除く 7 症例は、前回受診か
ら、精査につながる検診受診まで平均で 3 年度後の受診となっており、今後、
さらなる早期乳癌発見のために、推奨されている1年おきの受診を促してい
きたい。
1
古妻クリニック、2NPO 日本乳がん検診精度管理中央機構教育・研修委員会
古妻 嘉一 1,2、遠藤 登喜子 2、岩瀬 拓士 2、大貫 幸二 2、角田 博子 2、
東野 英利子 2、鈴木 昭彦 2、古川 順康 2、森本 忠興 2
11551
11497
当院におけるマンモグラフィ検診 5 年間の結果と、マンモグラ
フィ二重読影の効果の検討
当院における 3D マンモグラフィの検討
GP-1-021-04
1
GP-1-021-05
1
3
2
白水乳腺クリニック、 広瀬病院
田代 美智子 1、溝口 美和子 1、横江 亜沙子 1、矢次 直子 1、朝野 香菜美 1、
白水 光紀 1、濱田 雄蔵 2
【はじめに】当院は福岡県春日市にあり、福岡県乳がん検診実施医療機関およ
び乳がん検診精密検査実施医療機関であり、医師 1 名(乳腺専門医、読影 AS
判定)と放射線技師 3 名(全て A 判定)で、乳がん検診および精密検査を行って
いる。地域検診としては H17 年より春日市の個別検診を行っているが、H21
年より無料クーポン券による乳がん検診が始まり、広域からの当院受診が可
能となり、今年で 5 年目となる。そこで今回、最近 5 年間のマンモグラフィ検
診(春日市個別検診 + クーポンによる検診)の結果をまとめた。さらに、H22
年度からは二重読影が必須となったため、二重読影の結果もまとめ考察した。
【対象、方法】H21 年 4 月~ H25 年 9 月の間に当院でマンモグラフィ検診を受
診した 7633 名を対象とした。各年度別の受診者数、要精密検査者数(精検率)、
当院での精密検査実施者数、発見乳癌数(発見率)を調査した。また、H21 年
度(単独読影)と H22 年度以降(二重読影)の結果を比較し、二重読影について
は、異常ありを、第一読影、第二読影共に異常あり、第一読影異常あり-第
二読影異常なし、第一読影異常なし-第二読影異常ありの 3 つに分類し、二重
読影の結果、効果を検討した。
【結果】各年度の検診受診者数は、H21 年:1673 名、H22 年:1987 名、H23 年:
1988 名、H24 年:1606 名、H25 年:379 名あり、要精検率は年度順に 7.4%、
10.1%、9.4%、8.8%、5.2%であった。当院での精密検査実施者は 109 名、
133 名、124 名、86 名、9 名であり、発見乳癌(発見率)は 6 名(5.5%)
、8 名
(6.0%)、16 名(12.9%)、6 名(7.0%)、3 名(33%)であった。また、単独
読影と二重読影の比較では、要精検率が 7.4%と 9.2%であり、二重読影の要
精検率が 1.8%高くなっていた。二重読影を分類した結果、異常あり-異常あ
り:304 名、異常あり-異常なし:12 名、異常なし-異常あり:40 名で、発
見乳癌(発見率)は 32 名(10.5%)、0 名(0%)、1 名(2.5%)であった。
【まとめ】当院でのマンモグラフィ検診の結果は、受診者数 7633 名、要精検者
数:672 名(要精検率 8.8%)
、当院での精密検査実施者:461 名(当院受診率
68.6%)、発見乳癌 39 名(発見率 8.4%)であった。二重読影により(第 2 読影
医のおかげで)、1 名の乳癌(石灰化、DCIS)が見落とされずに拾われた。
327
関西医科大学附属滝井病院、2 リボン・ロゼ田中完児乳腺クリニック、
小路医院、4 仁寿会高槻駅前クリニック、5 すずかけの木クリニック
遠藤 香代子 1、山本 大悟 1、田中 完児 2、小路 徹二 3、森 毅 4、
奥川 帆麻 5
当院では、2013 年 8 月から3D マンモグラフィを導入している。富士のリア
ル3D マンモグラフィワークステーション(薬事販売名:富士画像診断ワーク
ステーション SMV658 型)を診断に用いた。原理は、異なる角度から2枚
の画像を撮影して両眼視することで立体視できる原理を応用したものである。
従来のマンモグラフィと比較すると、3D マンモグラフィで特異度や要精査
率を下げることができるとの報告があり期待されている。とりわけ、血管や
乳腺との重なりで判断しにくい構築の乱れや FAD、皮膚の石灰化の識別がし
やすいと言われている。今回、我々は3D マンモグラフィと2D マンモグラフィ
とで診断の差がどうであるか、比較・検討した。また、どのような症例に有
用となる可能性があるか考察した。診断は、マンモグラフィ検診精度管理中
央委員会読影試験 A 評価の医師 2 名にて行った。対象は、2013 年 8 月から 12
月までに3D マンモグラフィを撮影し、生検・手術により病理学的診断がつ
いた 18 例について検討した。結論として、2D マンモグラフィと比較して3
D マンモグラフィで明らかに優位だという結果は得られなかった。症例が少
数のため有用な結果は得られなかったが、乳腺組織と病変が重なっている症
例(特に dense breast)、腫瘤が重なっており辺縁境界明瞭か不明瞭かはっき
りしない症例、腫瘤内に石灰化があるかどうかはっきりしない症例などで有
用となる可能性がある。今後、さらなる症例を経験して報告していきたい。
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】有効な乳がん検診にはマンモグラフィ(MG)検診、特に MG の読影精
度の向上が求められる。その目的のため MG 読影認定取得後の読影力維持向
上を目指し、平成 19 年度より更新制にて更新試験(以下試験)を実施してい
る。試験は、更新講習会、ランクアップ試験、通常講習会のいずれの試験で
も受験できる。試験の結果は、検診読影の精度を反映していると考え試験結
果の集計と解析から読影精度の検討を行い報告してきた。試験でのA、B評
価取得率(以下、更新取得率)は 19 年度の更新開始後年々低下し MG 検診精度
の悪化が危惧され改善が望まれる。【目的】MG 検診が広まるにつれ、検診によ
る利益を多く不利益を少なくすること、すなわち病変の見落とし(感度)と拾
いすぎ(特異度)の両方を少なくすることが要求される。このレベルに対応で
きるため試験問題には検診で発見された所見が小さい、淡い症例も含まれて
おり、これが更新取得率の低下に繋がる一つの要因と考え読影力の向上策を
検討した。【対象と方法】19 年度から 24 年度までの更新試験全受験者(8,017
人)を対象に試験の評価とアンケートを集計した。全更新取得率は平成 19 年
71.1% から 22 年は 56.7% まで低下した。改善のために、指導者研修会を通
して地域での読影勉強会を精中委 HP に掲示や講師経験者には特に普段の読影
結果の feedback を行ない、感度と特異度がともに向上できるよう指導の要請
を行い、改善に有効であったかを検討した。【結果と考察】22 年まで低下して
きた更新取得率は 23 年 62.7%、24 年 66.2%と改善の傾向にある。認定取得
の約8割を占め、更新取得率の変動の大きい B 評価の更新率は検診 MG 読影精
度に大きな影響を及ぼす。B 評価の精中委主催更新講習会受講者(全更新講習
会の 90.5%)では、更新率は 22 年 54.6% と最悪になって以後 23 年 57.5%、
24 年 63.0% と改善の傾向にある。さらに、評価 A の更新率の検討も合わせて、
更新講習会やランクアップの試験での更新率の差異をアンケートの回答と合
わせて解析し、更新講習会の講義の内容やランクアップ試験のあり方につい
て検討を加えて報告する。
10188
10803
乳癌一次検診トモシンセシス併用読影結果の報告
超音波検査の有無による乳癌検診精度の比較
GP-1-021-06
ポスター掲示
GP-1-022-01
1
国立国際医療研究センター病院 放射線診療部門、
2
国立国際医療研究センター病院 乳腺外科
金沢メディカルステーション ヴィーク 乳腺科
横山 浩一、藤井 久丈
皆川 梓 1、杉浦 良子 2、橋本 政典 2、安田 秀光 2
[ はじめに ] 当院では 2012 年 3 月よりトモシンセシス ( 以下 TOMO) 撮影型乳
房撮影装置 (Selenia Dimensions - HOLOGIC 社 ) を導入した。Dimensions
は、TOMO と 2D を一回のポジショニングで同時に撮影する。TOMO 撮影時間
も 4 秒程度であり、非常にスループットが良い。導入1年の結果を報告する。
[ 対象 ] 2012 年 7 月から 2013 年 7 月の 1 年間。一次検診において、TOMO 撮
影に同意を得た 119 名。[ 方法 ]2DMG 読影後に 2D 画像カテゴリー ( 以下 C.)
と TOMO 併用読影カテゴリーを 236 乳房で比較した。 [ 結果 ]236 乳房中、癌
は 2 例。TOMO 併用により C.1・2 から 3 に上昇した 4 例中、不均一高濃度乳
腺 1 例に DCIS が検出された。C,3 から C.5 に上昇した 1 例の最終診断は硬癌
であった。 C.3 は 2D で 22 乳房、TOMO 併用 15 乳房であった。併用により C.3
から 1・2 に降下した乳房が 9 例あった。(FAD6 例,腫瘤 2 例,構築の乱れ 1 例,
石灰化 0 例)TOMO 併用読影では 2D 単独読影に対し要精検率 9.3%から 7.2%
に減少した。また陽性反応的中率は 4.5%から 11.8%に上昇した。[ 結語 ] 今後、
TOMO 併用読影は要精検率の減少、高濃度乳腺の情報追加として、効率よい
検診に役立つ可能性が示唆された。[ 利益相反の有無 ] 特記事項なし
当院では年間 2500 名以上の乳癌検診を行っている。職域検診が住民検診より
多く、若年受診者も多い。若年者はマンモグラフィでの偽陰性も多いことから、
超音波検査を追加した乳癌検診の方が精度も高いと思わる。そこで、マンモ
グラフィ検診(M 検診)と超音波検査を追加した検診(MU 検診)とを比較した。
対象は 2013 年8月から 10 月までの検診受診者である。MU 検診は 618 名、M
検診は 654 名、計 1272 名について検討した。振り分けは、可能な限り検査順
に交互に行った。受診者の平均年齢は MU 検診は 45.9 歳、M 検診は 46.9 歳と
有 意 差 は 認 め な か っ た。 要 精 査 率 は MU 検 診 の 1.46% に 対 し M 検 診 で は
6.73% と有意に高かった (p < 0.1)。発見乳癌は MU 検診で 1 例、M 検診では
3 例であった。PPV は MU 検診で 11.1%、M 検診は 6.82% と MU 検診で高い
傾向であったが有意差は認めなかった (p=0.53)。マンモグラフィ検診に超音
波検査を追加する検診では、要精査率の有意な低下と PPV の上昇傾向を認め
た。以上より超音波検査を追加した検診の方が検診精度は高くなると思われ
た。
一般セッション(ポスター掲示)
11328
10474
超音波併用検診の成績 - 小さな浸潤癌発見を目指して -
温存乳房内癌の発見動機についての検討―超音波を用いた術後
サーベイランスの有用性について―
GP-1-022-02
1
GP-1-022-03
ブレストピアなんば病院 乳腺科、2 ブレストピアなんば病院 放射線科
1
山本 隆 1、古澤 秀実 1、山口 由紀子 1、前田 資雄 1、駒木 幹正 1、
中原 浩 2
3
がん研究会有明病院 乳腺センター、2 がん研究会有明病院 画像診断部、
がん研究会有明病院 病理部
師尾 典子 1、坂井 威彦 1、佐藤 綾花 1、蒔田 益次郎 1、五味 直哉 2、
<背景と目的>近年、がん検診について様々な議論が展開されている。乳が
堀井 理絵 3、秋山 太 3、岩瀬 拓士 1、中島 絵里 1、荻谷 朗子 1、
ん検診においても超音波併用検診の比較試験(J -START)が進行中である。当
森園 英智 1、宮城 由美 1、飯島 耕太郎 1
施設では 1998 年から触診を省いたマンモグラフィ・超音波併用検診を開始し、
検診バスを主体とした近年の受診者数は年間4万人を超えている。一方、年間
【背景】温存乳房内には年率 1%以下の一定の割合で温存乳房内癌(IBTR)が
手術 350 例の乳腺専門病院として機能している。そのため、病院での治療成績
発生する . 乳癌診療ガイドラインでは乳癌術後サーベーランスは問診・視触
を常にフィードバックできる体制で検診の精度管理を行ってきた。乳がん検診
診と MMG が推奨されているのみである . 当院では半年毎の視触診と年1回の
の目的は死亡減少効果にある。当院では、予後の期待できる小さな浸潤癌とり
MMG,US(MMG,US は半年毎交互)で行っている .IBTR の発見動機とその感
わけ 1cm 以下の浸潤癌の発見を課題とし、超音波併用検診に取り組んできた。
度を明らかにし , 各画像診断の術後スクリーニングの有用性を検討する 【
. 対
以下に成績を報告する。<検診成績 1998 ~ 2009 年> 総受診者数 218.464
象と方法】当院で初回乳癌に乳房温存手術を行い ,2005 年 4 月~ 2013 年8月
人 要 精 検 率 2.7% 精 検 受 診 率 88.9% 発 見 乳 癌 584 発 見 率 0.27% に IBTR と診断され手術を行った 153 例を対象とした .IBTR の発見動機と , 画
早 期 率 72% < マ ン モ グ ラ フ ィ と 超 音 波 検 査 の 比 較 2004 ~ 2009 年 >
像診断による病変描出能力を MMG,US,MRI で比較検討した 【
. 結果】初回手
要 精 査 数 4097 人 要 精 査 率 1.85 % MMG:1.21%vsUS:1.48% , 発 見 癌
術時の平均年齢は 47 歳 ,IBTR 時は 53 歳で ,DFI は平均 70 ヶ月であった . 初
470 人 発見率 0.21% MMG:0.18%vsUS:0.17%、US 単独発見は 19.4%,45
回 手 術 後 , 化 学 療 法 が 45 例 (29 % ), 内 分 泌 治 療 が 40 例(26 %), 放 射 線 治
歳未満に限ると 27.2%,T1 症例に限ると 22.5% <まとめ>また、同時期の当
療が 42 例 (27% ) に行われていた .IBTR をその発生原因毎に New primary
院手術例の解析では、T1a,b 症例すなわち 1cm 以下の浸潤癌の約 40%が US
tumor(NP),True Recurrence(TR)に分類すると , それぞれ 88 例 (57% ), 65
単独発見であった。もちろん小さな浸潤癌発見と死亡率減少効果の相関につ
例 (43% ) であった . IBTR は自覚他覚症状なく定期画像検査で 66%(US
いては、十分な検討が必要である。しかしながら、現行のモダリティーでは、
40% , MMG 26%)が発見されており ,US での発見率が有意に高かった(p <
小さな浸潤癌の発見に超音波検査は必要不可欠である。
0.01)。患者自身の腫瘤を自覚は 23% , 自覚症状なく診察時の視触診が 5% ,
その他が 6% ( 血性乳頭分泌 4 例 , 色調変化自覚 1 例 , 疼痛 1 例 , CT 1 例 ) で
あった . また , 全 IBTR の各項目別検出率は , 視触診 43% , MMG 42% , US
69% , MRI 92%であり ,US は MMG より有意に検出率が高かった(p < 0.01).
MMG で発見された IBTR の US での悪性所見描出率は 53%であるのに対し
て ,US で発見された IBTR の MMG での悪性所見描出率は 22%と低かった 【
. ま
とめ】US で発見される IBTR が 40%と最も多く , 続いて MMG, 腫瘤自覚であっ
た .MRI の IBTR の描出感度は約 9 割と非常に高かったが ,IBTR の疑いや確定
がついてから検査が実施されたためバイアスがかかっている可能性があっ
た . また ,US は MRI に次ぐ 62%の IBTR 描出率であり , 発見動機にかかわらず
高い割合で悪性所見を描出し ,MMG で描出されない IBTR を US で検出できる
可能性が示唆された .IBTR の約半数は NP で ,NP は早期発見が予後改善につな
がる可能性が高い乳癌である . 温存乳房の定期スクリーニングに US を加える
ことで , より早期に IBTR を発見できると考えられた .
328
ポスター掲示
10772
10341
マンモグラフィー、乳腺エコー併用検診における独立判定と総
合判定の違い
腫瘤性病変における ShearWave エラストグラフィの検討
GP-1-022-04
GP-1-022-05
医療法人成和会山口病院
静岡済生会総合病院
栗栖 美穂
土屋 智敬、田中 顕一郎、寺崎 正起、岡本 好史、鈴村 潔、児島 敬子
超音波検査は所見の質的診断に有用で非侵襲的な検査である。エラストグラ
フィは体表からの用手的圧迫で組織の歪みを検出する方法と Shear Wave 伝
搬速度の測定による2種類に大別されている。用手的圧迫は均一な反復圧迫
を必要とし施行者により差が生じる可能性がある。これに対し Shear Wave
エラストグラフィではプッシュパルス照射により発生した Shear Wave 伝
搬速度の数値化で客観的な硬さのイメージが得られると考えられる。平成
25 年 4 月より 11 月までの乳癌検診における超音波施行症例の腫瘤性病変を
Shear Wave エラストグラフィを用いて検討した。使用した機器は SIEMEN
社 ACUSON S-3000 で Virtual Touch IQ を使用した。Velocity mode を用
いて腫瘤内の最速点を測定した。B モードで検出された腫瘤性病変は 244 症
例 276 病変であった(但し嚢胞は除く)。B モード上悪性を否定できなかった
29 病変のうち 26 病変が悪性で平均速度は 4.80m/s であった。良性 250 病変
の平均速度は 2.69m/s であり悪性病変の方が優位に高値を示した。良性で悪
性の平均を超えた 4 病変は線維腺腫 3 病変と乳腺炎 1 病変であった。また、悪
性の中で 5mm 程度の 6 病変は良性平均より高かったものの平均 3.3m/s と悪
性平均より低値であった。Shear Wave エラストグラフィは、腫瘤性病変の
良悪性鑑別の一助となりうる可能性が示唆された。
【目的】エコー併用検診において独立判定と総合判定をした場合の受診者の要
精検率の差について考察する。【対象】2012 年 4 月ー 2013 年 9 月の 1 年半の
間、当院併設の検診センターでマンモグラフィー (MMG)、乳腺エコー (US)
併用検診を受けた受診者 300 人である。【方法】独立判定 (MMG, US の片方で
も要精査なら要精検とする従来からの判定法 ) での要精検者について、精査結
果が正常乳腺、経過観察、乳がんと診断された者に分類しそれらの結果を用
いて、もしも総合判定 (MMG, US 両者の結果を照らし合わせて要精検者を決
める方法 ) を用いたとした場合、不要な精検目的の受診がどれだけ減少するか
分析する。【結果】乳がん検診受診者の年代は 40-60 歳代が 80% を占め、乳が
ん発見率は 0.75% であった。受診者 300 人のうち、要精検は 58 人 (19.3%)
で MMG のみ要精査が 17 人、US のみ要精査が 30 人、両者とも要精査が 11
人であった。MMG または US のみ要精査で結果が正常乳腺であった受診者が
3.4%, 正常乳腺に経過観察の受診者も含めると 5.3% であった。【考察】MMG
単独と US 併用検診とを比較する J-START は現在、データ解析中とのことで
あるが独立判定を採用しているせいか、要精検率が高いと聞く。結果的には
精査が不要であった受診者が少なからずいたと考えられ、総合判定の考え方
を導入することで不要な受診を減らせないかと考えた。今回、試算した結果
からは総合判定をすることで最大で受診者の約 5%が精査を回避できる可能性
が示唆された。精密検査を回避できることは不要な検査が減らせるだけでな
く、同時に要精検とされた場合の受診者の不安も回避できるという点でも有
益と思われる。
10299
50 歳未満の女性に対するマンモグラフィ検診の安全性
医科大学所属のクリニックにおける乳癌検診の現状
GP-1-022-06
GP-1-023-01
1
慶應義塾大学 一般・消化器外科、
2
北里大学北里研究所病院 ブレストセンター外科、
3
北里大学北里研究所病院 ブレストセンター臨床検査科、
4
北里大学北里研究所病院 ブレストセンター病理診断科、
5
北里大学北里研究所病院 ブレストセンター中央放射線科
大阪医科大学健康科学クリニック
野原 丈裕、岩本 充彦、田中 覚、木村 光誠、後山 尚久
中村 理恵子 1,2、関 大仁 3、浅沼 史樹 3、山田 好則 3、中嶋 純子 4、
森永 正二郎 4、矢内原 久 5、金田 宗久 2、鈴木 慶一 2、大作 昌義 2
【背景】現在の乳癌診療ガイドラインでは 50 歳以上の女性に対する MMG 検診
は高いエビデンスをもってその有用性が報告されており、40 歳代の女性に関
しても MMG 検診は推奨されている。US を併用した乳癌検診の有効性が確立
していない一方で、実際の検診では MMG では要精査とならず、US で乳癌が
発見されるケースが少なくない。MMG 単独乳癌検診の安全性を検討したので
報告する。【対象・方法】2008 年 4 月から 2013 年 9 月までに当院で MMG と
MUS の併用で乳癌検診を施行し、針生検で乳癌と診断された 194 例を対象
とした。MMG でカテゴリー3以上であった症例を MMG 陽性乳癌、MMG が
カテゴリー2以下であり、かつ、US でカテゴリー3以上であった症例を US
陽性乳癌と定義し、統計学的解析をおこなった。【結果】全体の年齢中央値
は 58 歳 (37-91 歳 )、最大腫瘍径中央値は 1.5cm(5-47mm) であった。194
例中 MMG 陽性乳癌が 157 例 (81%) であるのに対して、US 陽性乳癌は 37 例
(19% ) であった。171 例が浸潤癌であり、23 例が非浸潤癌であった。浸潤
癌 の う ち 87% が ER 陽 性、64% が PgR 陽 性、17% が HER2 陽 性 で あ っ た。
MMG 陽性乳癌と US 陽性乳癌の臨床病理学的背景因子を比較した結果、組
織型やサブタイプ別では有意差が認められなかった。50 歳以上では MMG 陽
性 乳 癌 が 85.2%(110/129)、US 陽 性 乳 癌 が 14.7% (19/129) で あ っ た の
に対して、50 歳未満では MMG 陽性乳癌が 72.3%(47/65)、US 陽性乳癌が
27.2%(18/65) であり、50 歳以上と比較して 50 歳未満では US 陽性乳癌の割
合が有意に多かった(p=0.028)。また、乳腺濃度別に比較すると MMG 陽性
乳癌における不均一・高濃度乳腺は 47.8%(75/157) であったのに対して US
陽性乳癌では 97.3%(36/37) であり、US 陽性乳癌には不均一・高濃度乳腺が
有意に多かった(p < 0.001)。【結語】乳癌検診は触診と MMG の併用が推奨さ
れている。しかしながら今回の検討では、50 歳未満では不均一高濃度もくし
は高濃度乳腺を有する女性が多いため、MMG のみでの検診は不十分であり、
US による乳癌検診が有効である可能性が示唆された。
【はじめに】大学病院における乳腺外科の外来診療の中で、通常の乳癌検診を
行うことは時間的な制約も多く困難である。地域における乳癌を含めて未病
の発見による健康寿命の促進を図ることを目的とし、2009 年 6 月より医科大
学所属のクリニックを開設し、人間ドックおよび検診に特化した診療を開始
した。今回、平成 24 年度における乳癌検診の結果を報告する。【対象および
方法】クリニックにおけるレディースドックおよび市民検診の受診者を対象と
した。MMG撮影装置は FDR-MS-1000(フラットパネル)を使用し、ワーク
ステーションは FDR-1000AWS、読影には 5M Monochrome LCD モニター
を使用し、乳腺外科および放射線科の精中委読影認定医師により判定を行っ
た。なお、30 歳代の一部の検診者に対してはエコー検査を行った。【結果】レ
ディースドックの総件数は 3121 件で、要精検者は 228 名であり、要精検率
は 7.2%であった。市民検診の総件数は 2696 件で、要精検者は 277 名であり、
要精検率は 9.7%であった。また乳癌症例はレディースドックで 8 例(0.25%)、
市民検診で 19 例(0.7%)であった。また乳癌症例における DCIS の占める割
合はレディースドックで 37.5%(8 例中 3 例)、市民検診で 15.7%(19 例中 3
例)であり、レディースドックにおいて早期乳癌の占める割合が高かった。乳
癌発見率はレディースドックに比べ市民検診の方が高い傾向にあったが、レ
ディースドックでは毎年受けるリピーターが多いのに対し、市民検診では生
涯初検査率が高いことが影響しているものと考えられた。【結語】平成 24 年度
における乳癌検診において要精査率および乳癌発見率は共にレディースドッ
クに比べ市民検診の方が高い傾向にあった。開設後 4 年を経過した当クリニッ
クの精度管理を含めた今後の展望を含めて報告する。
329
一般セッション(ポスター掲示)
11488
ポスター掲示
10588
11903
婦人科クリニックでの乳癌検診
マンモグラフィ・超音波検査同時併用検診の導入における成果
と問題点
GP-1-023-02
GP-1-023-03
まつ婦人科クリニック
岩手県立中央病院
松 敬文
【緒言】当院は、婦人科のクリニックで乳癌検診と子宮癌検診を主に行ってい
る。宮崎市の乳癌検診は、基本的には視触診+超音波検診であり、施設検診
で行っている。宮崎市の平成 24 年度のデータでは対象 82,145 人に対し、受
診率が 15.9%であった。当院では、マンモグラフィ同時検診を検診受診者に
勧め、より精度の高い検診を目指している。今回、当院の平成 25 年度の検診
結果について検討した。【対象】平成 25 年 4 月 1 日から 11 月 30 日までに当院
で行った、市から委託された乳癌検診受診者 2,741 人と自費で検診を受けた
260 人のあわせて 3,001 人について検討した。【結果】当院で乳癌検診をおこ
なった 2,741 人の検診受診者のうち、同日に自費でマンモグラフィを希望し、
撮影した人が 2,304 人 (84.1% ) だった。自費で検診 (US+MMG) を受け他人
も合わせ、91.7%の受診者が、マンモグラフィを同時に受けていた。乳癌と
診断した症例は 16 症例で、乳癌発見率は 0.53% であり、昨年より減少した。
【考案】昨年の同時期の癌発見率は、0.77%であったが、今年度は、0.53% と
減少した。開院 8 年目になり、繰り返し受診者が多くなっていることががん発
見率の低下の原因と思われる。今後も、より多くの乳癌をより早期に発見で
きるように、検診精度を上げて生きたいと思う。
佐藤 未来、大貫 幸二、梅邑 明子、宇佐美 伸
【目的】平成 23 年度よりマンモグラフィ(MMG)と超音波検査(US)の同時併
用検診を一部の自治体で開始した。要精検者は、JABTS 検診班の総合判定基
準を用いて決定し、それらが要精検率の低下にいかに寄与したかを検討した。
【対象】49歳以下の同時併用検診受診者 1,687 名【方法】問診後、放射線技師
がマンモグラフィ(MLO/CC)を撮影し、超音波技師は MMG を参考に気にな
るところをマークしてから US を施行、報告書を作成した。判定は、第一読影
医は MMG のみを読影、第二読影医は MMG 読影、US の判定、さらに総合判
定を行い要精査者を決定した。【結果】MMG 単独でカテゴリー3以上は 52 例
(3.1%)、US 単独では 13 例(0.8%)であったが総合判定により要精検者は 43
例(2.5%)に減少し、要精検率は 1.4% 低下した。【考察】MMG の読影精度が
保たれていれば、超音波にて明らかなのう胞と線維腺腫と判断できる場合が
多く、総合判定において要精検率を低下させることができる。 しかし、問題
点としては、MMG 病変の位置推定が困難な例があること、US 病変位置のボ
ディーマークの個人差があることがある。また、MMG,US の精度管理が重要
である。
一般セッション(ポスター掲示)
11583
11451
巡回胸部 X 線撮影に医師は不要となるが、巡回マンモグラフィ
撮影では医師が必要なままである法改正後の対策
デジタルマンモグラフィを用いた乳癌検診におけるモニター診
断導入による要精査率の変化と偽陽性の特徴
GP-1-023-04
GP-1-024-01
1
吉岡医院
2
吉岡 泰彦
【はじめに】次世代の巡回マンモグラフィ乳がん検診は、視触診を省略し、医
師不在で行えるものにすべきという意見が多い。しかし法令上は視触診を省
略しても巡回検診には医師の帯同が必要である。
もし違法な医師不在の巡回を行えば、合法と信じている受診者への倫理違
反、保健所に毎月提出する巡回報告に記載される実施責任医師の名義貸し、
違法な検診データが研究に紛れ込む学術上の危機がうまれる。
そこで当院は医師不在で巡回マンモグラフィ撮影が可能となるよう規制緩
和窓口へ要望してきた。一方、日本放射線技師会等も巡回 X 線撮影時の医師
の立会いを不要とする要望を厚生労働省へ提出した。その後平成 25 年 11 月
22 日の第 36 回社会保障審議会医療部会にて、平成 25 年度厚生労働特別研究
事業の調査研究に基づき、緊急対策や精度管理、教育・研修体制整備下で「診
療放射線技師法第 26 条第 2 項を改正し、病院又は診療所以外の場所において、
健康診断として、胸部 X 線撮影のみを行う場合に限り、医師又は歯科医師の
立会いを求めないこととする」こととなり、平成 26 年に法改正が予定されて
いる。
【目的】法改正後、巡回マンモグラフィ乳がん検診で医師の帯同を不要とする
ための対策を検討する。
【方法】平成 25 年度厚生労働特別研究事業の調査研究、法改正、関連法令を分
析する。
【結果】巡回でのマンモグラフィ撮影で医師の「立会い」を不要とするためには、
1) 胸部 X 線と同様に「立会い不要な検査」にマンモグラフィ撮影を追加する法
改正をめざす。そのためにマンモグラフィ撮影中の事故を大規模に調査し、
医師不要である根拠を示す。2) 分離併用 B 方式の視触診後の巡回撮影につい
ては診療放射線技師法第 26 条第 2 項第 1 号『「医師又は歯科医師が診察した患
者について、その医師又は歯科医師の指示を受け、出張して百万電子ボルト
未満のエネルギーを有するエツクス線を照射する場合」撮影可能』の「患者」を
「者」にすれば可能であり、その法改正をめざす。
巡回検診で医師の「帯同」を不要とするためには、通知医政発 1001 第 7 号を
「巡回健診実施責任者を医師以外にも広げたもの」に変更することをめざす。
【考察】マンモグラフィ撮影は精度管理、教育・研修体制等は確立しているこ
とから根拠を示せば規制緩和は容易と考えられた。乳癌学会会員としては違
法行為「医師の名義貸し」は行わず、実態として規制緩和が必要であることを
示すことが重要と考えられた。
医療法人慈桜会瀬戸病院、
医療法人徳洲会東京西徳洲会病院 乳腺腫瘍センター
瀬戸 裕 1、堀 慎一 1、藤井 和之 1、外村 光康 1、林 崇 1、太田 寛 1、
竹田 奈保子 2、渕上 ひろみ 2、水野 嘉朗 2、佐藤 一彦 2
【はじめに】所沢市では乳癌検診として 40 歳以上を対象に 2 年に 1 回、問診・
視触診・マンモグラフィ検査を行っている。当院は協力医療機関施設として
デジタルマンモグラフィによる検診を行ってきた。しかしながら、読影診断
はフィルムを用いて行われており、その保管や比較読影の困難性などより
2013 年よりモニター診断を導入した。今回はモニター診断の意義を検証すべ
く、導入前後の要精査率及び偽陽性率を比較しその要因を検討した。【対象と
方法】2012 年1月~ 12 月までのフィルムによる診断例(フィルム群)と 2013
年1月~ 11 月までのモニターによる診断例(モニター群)について , カテゴ
リー3以上の要精査率及び偽陽性率とその要因を検討した。尚、両群とも比
較読影は行っておらず、モニター群におけるコンピュータ検出支援機能の使
用は読影者に一任した。【結果】フィルムによる診断は 2,991 例(平均 47.4 歳)
に、モニターによる診断は 2,501 例(平均 48.0 歳)に行われたが、両群間に年
齢による差は認められなかった。要精査例(率)においては、それぞれ351
例(11.7%)/ 308例(12.3%)であり、そのうち乳癌症例は 30 例(8.5%)/
23例 (7.5%) といずれも両群間において有意な差を認めなかった。しかし
ながら、偽陽性の内訳を検討した場合、局所的非対称性陰影や腫瘤で要精査
となったものがそれぞれ 203 例(6.8%)/96 例 (3.8%) でありフィルム群に
おいて有意に多く (p < 0.0001)、一方で石灰化所見による要精査は 130 例
(4.3%)/183 例 (7.3%) とモニター群において有意に多い傾向にあった (p <
0.0001)。【考察】モニターによる診断により大画面による細部観察が可能と
なり、局所的非対称性陰影や腫瘤による偽陽性率は減少したものの、逆に石
灰化所見に対する過剰評価が危惧された。今後はモニター診断の導入により
比較読影が容易となるため、偽陽性例の減少が期待される。
330
ポスター掲示
11333
10508
マンモグラフィ指導者研修会アンケートからみた検診精度向上
における問題点と対策
乳がん検診の年齢階級別検診精度:検診方法別の検討と検診方
法間の比較
GP-1-024-02
GP-1-024-03
精中委教育・研修委員会
公益財団法人三重県健康管理事業センター診療所
古川 順康、古妻 嘉一、遠藤 登喜子、岩瀬 拓士、大貫 幸二、角田 博子、
東野 英利子、森本 忠興
中井 昌弘
【目的、方法】乳がん検診受診者の年齢による検診精度を、検診方法別や検診
方法間の差を明らかにする目的で、20 - 24 年度に実施した乳がん検診を、年
齢階級別(10 歳刻み、20 歳代から 80 歳代までの 7 階級)、検診方法別(MMG、
US、視触診)に、要精検率、がん発見率、がん発見率/罹患率(国立がん研究
センターがん対策情報センター罹患データ・全国推計値)を算出し、検討した。
【成績】20、80 歳代は受診者数が少く、30 - 70 歳代の成績を示す。MMG:
要精検率は 40 歳代(5.46%)、がん発見率は 60 歳代(0.254%)が最も高く、
がん発見率/罹患率は 40 歳代を除き 1 以上であった。US:要精検率は 40 歳
代(7.99%)、がん発見率は 70 歳代(0.215%)が最も高く、がん発見率/罹
患率は 40 歳代を除き 1 以上であった。視触診:要精検率は 40 歳代(1.71%)
が最も高く、がん発見率は全歳代で 0.06%以下と低く、がん発見率/罹患率
は全歳代で約 0.3 と低かった。MMG と US の比較:MMG は US に比し、要精
検率は 30 - 40 歳代で低く(P<0.05)、50 - 70 歳代で有意差はなかった。が
ん発見率、がん発見率/罹患率は、全歳代で有意差はなかった。MMG、US
と視触診の比較:視触診は MMG、US に比し、要精検率、がん発見率、がん
発見率/罹患率の全歳代で低かった(P<0.001-0.05)
。【結論】検診精度から
みると、MMG と US は、30 - 40 歳代の要精検率以外同等であった。視触診は、
全歳代で、がん発見率、がん発見率/罹患率が低いため、検診には不適と考
えられた。
10798
11626
無料クーポン乳がん検診受診者の次回受診行動に関する評価
マンモグラフィ -3D トモシンセシス装置導入による撮影時間の
検討
GP-1-024-04
GP-1-025-01
揖斐厚生病院 外科
1
熊澤 伊和生、土屋 十次、川越 肇、西尾 公利、小森 充嗣、操 佑樹
3
【はじめに】乳がん検診の無料クーポン券受診者の次回検診行動の定着度を数
量的に評価した。【方法】無料クーポン検診が開始された 2009 年と 2010 年に
当院で乳がん検診を行った 11,616 名 ( ユニーク ID) を対象とした。全検診受
診者のうち 2 年以内に再び受診した方の比率をリピート率と定義、算出した。
全検診受診者をクーポン群 vs 非クーポン群、初回群 vs 繰り返し群で分け、
その組み合わせの 4 群でリピート受診したか否かで比較し、オッズ比を算出
した。【結果】全体のリピート率は 69.9%(8121/11616) で、当病院が担当す
る住民の繰り返し受診意欲が高いことが伺えた。繰り返し群のリピート率は
75.6% であったのに対し、初回群では 45.2% で有意 (p < 0.001) に低かった。
また非クーポン群のリピート率が 74.6% であったのに対し、クーポン群では
51.6%(1221/2363,p < 0.001) と低かった。一方非クーポンで繰り返し群、
クーポンで繰り返し群、非クーポンで初回群、クーポンで初回群 4 群のリピー
ト率は、それぞれ 78.9%、61.3%、53.7%、22.5%(132/587) であった。
特に 50 歳のクーポンで初回群では 15.7%(14/89) しかリピート受診していな
かった。非クーポン群に対するクーポン群、繰り返し群に対する初回群のオッ
ズ比は、0.36(95%CI 0.33-0.40)、0.27( 同 0.24-0.29) であった。一番リ
ピート率の高い非クーポンで繰り返し群を基準としたオッズ比は、クーポン
で繰り返し群、非クーポンで初回群、クーポンで初回群でそれぞれ 0.42( 同
0.38-0.47)、0.31( 同 0.28-0.35)、0.078( 同 0.063-0.095) で、 無 料 ク ー
ポン券がなくても繰り返して受診するプロファイルは、無料クーポン券で初
めて検診をうけた人々の約 13 倍検診を受ける人々であることが判明した。
【考
察】無料クーポン検診の導入後、初回率がクーポン年齢層群 21.3%, 非クーポ
ン年齢群 7.6% から、各々 15% , 3.5% と低下おり、また繰り返し受診率が
高い状況から乳がん検診を受ける人と受けない人の二極化が進んでいると考
える。また無料クーポン券で初めて検診をうけた方々のリピート率は低いも
のの全く受けなかった状況から 22.5% リピート受診されたことは、無料クー
ポン検診は一定の効果があると思われたが、今後検診行動の定着にむけて一
層の方策が必要であると判断する。
医療法人明和病院 放射線部、2 医療法人明和病院 乳腺・内分泌外科、
医療法人明和病院 外科、4 医療法人明和病院 放射線科
増田 奈々子 1、岸本 昌浩 2、上瀧 麻衣子 1、友松 宗史 3、後野 礼 3、
興津 茂行 4
【緒言】通常のマンモグラフィ検査では、乳癌と乳腺の重なりにより false
negative が存在する。逆に乳腺同士の重なりによる false positive も多く存
在し、局所非対称性陰影 (FAD) として再検査に至る例が非常に多い。そこで
われわれは乳腺の重なりのない 1mm 断層像が得られる 3D トモシンセシス
(MAMMOMAT Inspiration:シーメンス社製)を導入した。しかし、その分
撮影時間が長くなり患者負担が増え、なおかつ撮影件数を制限する事が懸念
された。今回われわれは 3D トモシンセシス導入に伴い、従来のマンモグラフィ
撮影に 3D トモシンセシス撮影を加えた場合の時間的変化を検討した。【方法】
2013 年 6 月より 12 月におこなった 1 方向撮影(MLO 撮影)、2 方向撮影(CC・
MLO 撮影)、2 方向 +3D トモシンセシス撮影においてそれぞれ装置導入から
(1) 1~ 25 例、(2)26 ~ 50 例、(3) 直近の 50 例(2 方向+ 3D トモシンセシ
ス撮影においては 37 例)について[受検者の呼び込み~検査着への着替え~説
明~撮影~画像データ収集完了]までに要した時間を撮影時間とし、それぞれ
の平均時間を算出し比較検討した。【結果】この間 2 方向 +3D トモシンセシス
撮影は 176 例に施行された。1 方向撮影(MLO 撮影)(1)4 分 18 秒±1分 42 秒、
(2)3 分 56 秒± 59 秒、(3)3 分 55 秒± 41 秒。2 方向撮影(CC・MLO 撮影)(1)5
分 51 秒± 1 分 9 秒、(2)6 分 15 秒± 2 分 10 秒、(3)5 分 29 秒± 1 分 32 秒。2 方
向 + トモシンセシス撮影 (1)11 分 31 秒± 2 分 56 秒、(2)11 分 25 秒± 2 分 39
秒、(3)10 分 48 秒± 5 分 15 秒であった。【考察】いずれの撮影方法においても
初期より直近で撮影時間が短縮した。これは前装置とのフットペダルによる
圧迫板スピードの違いや装置動作スイッチの場所の違いによる戸惑いによる
ものと考えられた。また、2 方向撮影と 2 方向撮影+ 3D トモシンセシスの撮
影時間を比較すると約 5 分 30 秒から約 11 分とおよそ2倍の時間を要す事が
わかった。しかしながら検査時間 10 分程度で乳房内組織の重なりの影響をほ
とんど受けないトモシンセシス画像を得る事が出来ると言うことは、高濃度
乳腺が多い日本人にとって非常に有用と考える。【結語】今回われわれは 3D ト
モシンセシスの撮影に要する時間の検討をおこなった。今後更に時間短縮の
試みを勧めていくべきと考えられた。
331
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】マンモグラフィ検診の精度向上には読影精度の維持、向上が必須
であり、当委員会ではその目的のため各種講習会、試験を通じで読影の精度
管理に寄与している。検診の普及とともにより小さな、淡い乳癌がみられる
ようになり試験問題も検診発見乳癌症例を取り入れている。また読影講習会
講師経験者を対象として年 1 回指導者研修会を開催し、講師経験者自身のレ
ベルアップを兼ね 100 症例の読影と講習会の新たな教材や試験問題の検討と
検診における現況や意識等のアンケート調査をおこなっている。
【対象と方法】
平成 25 年の指導者研修会は全講師経験者(平成 24 年末で 905 名))を対象とし
た。アンケートは研修会申し込み時に WEB による調査(回答者 497 名回答率
53.8%)と、研修会当日に参加者 389 名に対する調査を行いその結果を集計
解析した。【結果】全体でみると読影に自信ありは 54.1%、自信なしは 43.4%
であり、読影結果の検証があるは 66.2%、なしは 31.1% であった。「自信あ
り」の 74.9% は検証されており、「自信なし」で検証のないのは 38.9%、検
証ありは 58.2% であった。逆に「検証あり」の中の 61% は自信ありと回答し
ている。「自信あり」の 40.8%「自信なし」の 49.5% は拾い上げが多いと回答
しているが、「自信なし」の 26.4% は見落としが多いのに対し「自信あり」の
43.1% は見落としも拾い上げも少ないと回答している。また地域での勉強会
は 35.5% が開催しているが精中委の HP に掲載しているのはその 3 分の1に
すぎなかった。地域での開催を当委員会では HP でアピールしているが HP を
見て参加した人がいると回答したのは 7% であった。【まとめ】講師経験者で
も読影に自信がないと答えており一般の読影医師にとっては自信がないのは
当然のことだと考えられる。この結果から自信ありとしている根拠はやはり
適切な読影結果の検証があるためであることがうかがえる。また検証されて
いるといえども拾い上げが多いことが分かった。まだ読影勉強会の HP 掲載が
少ない傾向がありこれを増加させるとともに、参加者が少ないので HP を見て
ぜひとも勉強会に参加していただきより自信を深める場としていただきたい。
また講師経験者には B、C、D 評価者に対し読影勉強会などを通じて読影精度
の向上に貢献していただきたい。
ポスター掲示
10726
10446
効果的乳がん検診の検討
大阪府羽曳野市における乳癌検診の現状と問題点
GP-1-026-01
1
GP-1-026-02
江尻東クリニック、2 岡本外科クリニック
1
春秋会城山病院 消化器・乳腺センター外科、2 大阪医科大学 乳腺外科、
大阪府立呼吸器・アレルギーセンター 外科、4 医仁会藤本病院 外科、
5
あべの松井クリニック、6 すずかけの木クリニック
3
袴田 安彦 1、岡本 恭和 2
乳がん検診の受診率を5年以内に 50% 以上にすることを目標にしたがん対策
推進基本計画が開始されたが、残念なことに、その目標は全国的には達成さ
れていない。当院のある静岡市も同様に、平成 24 年度の受診率は 23.4% で
あり、平成 25 年度も 9 月現在、検診受診者数は 5818 名(平成 24 年度 6001
名)であり、前年と比べて大きな変化がなく、大幅な受診率の向上は望めな
い。さらに、平成 26 年度からは、無料クーポンの対象者が 40 歳の女性のみ
となるため、来年度は受診率低下も危惧される。そこで、より効果的検診を
するために、静岡市の乳がん検診の現状と問題点を検討した。平成 22 年より
24 年の年齢階層別乳がん発見者数を比較すると、40 歳代 23 名、50 歳代 22
名、60 歳代 43 名、70 歳以上 21 名と他の年代と比べ 60 歳代で最も多くの乳
癌が認められた。それに反して、年齢階層別受診率は 40 歳代 73.3%,50 歳代
40.5% ,60 歳代 18.9% と 60 歳代の受診率は低かった。さらに、平成 24 年度
の年齢階層別初回受診者の割合でも、40 歳代 63.6%,50 歳代 50.1%,60 歳代
38.3% と 60 歳代が、最も低かった。今後、効果的検診をするためには、罹患
率が高く、受診率が低い 60 歳代にターゲットを絞り、検診受診を勧奨する必
要があると思われた。また、60 歳代は検診のリピーターが占める割合が高い
ため、更なる効果を期待して、初回検診受診者の掘り起こしも重要と思われた。
次に精検受診率を検討した。平成 22 年 64.6%,23 年 73.1%,24 年 60.4% と
国が定める許容値を大幅に下回っていた。年齢階層別の精検受診率は、年代
による差は認めなかった。精検受診有無の把握にも問題があるかもしれない
が、どんなに受診率を上げても精検を受けなければ意味がないため、1次検
診施設での精検受診の勧奨が重要であると思われた。
藤井 研介 1、新田 敏勝 1、佐藤 七夕子 2、木村 光誠 2、三好 和裕 1、
藤島 成 3、辻 大 4、松井 英 5、奥川 帆麻 6、岩本 充彦 2、石橋 孝嗣 1
【はじめに】大阪府羽曳野市におけるマンモグラフィ(以下 MMG)検診の現状
と問題点を明らかにするため検討を行った。当市の乳癌検診は、集団検診と
個別検診とで行われている。そのうち個別検診として同市内の3カ所1)3)
4)の医療機関と沿線の医療機関の2カ所5)6)に委託されている。【対象】
羽曳野市内在住の 40 歳以上の方を対象に、視触診および MMG が施行されて
いる。【方法】平成 21 年度から 23 年度までの3年間にわたって、全国平均と
当市の受診率、要精査率、がん発見率、陽性反応適中度を比較した。【結果】
当市は3年間とも全国平均に比べ受診率(13.1%)、がん発見率(0.48%)、陽
性反応適中度(4.6%)も高かった。また、要精査率(10.4%)は全国平均に
比べ低かった。(詳細は平成 23 年度分)【考察】全国平均に比べ大阪府羽曳野
市が受診率、がん発見率、陽性反応適中度が高かったこと、および、要精査
率も低かったことは、当市の検診は、精度も十分と判断され、この結果を踏
まえ、検診機関としての motivation を高めることが出来得た。しかしなが
ら、がん対策推進基本計画に則る、無料クーポン利用率も 20%前後に留まり、
J.POSH( 日本乳がんピンクリボン運動 ) の日曜日の MMG 検診が受けることの
できる医療機関に当市も2カ所登録1)6)されているが、目標値である受診
率 50%には到達せず、さらなる MMG 検診の啓蒙が必要である。【まとめ】大
阪府羽曳野市における乳癌検診の現状について検討した。精度も保たれてい
るが、受診率がまだまだ低く、MMG 検診の必要性をさらに啓蒙していく必要
があると考えられた。
一般セッション(ポスター掲示)
11428
10103
当院における乳がん検診受診率向上のための取り組み
外来で、がん検診受診の有無を確認することは、がん検診受診
率向上につながる
GP-1-026-03
GP-1-026-04
1
山鹿市民医療センター 看護部ブレストケアチーム、
2
熊本大学医学部附属病院 乳腺内分泌外科、
3
山鹿市民医療センター 薬剤科ブレストケアチーム、
4
山鹿市民医療センター 乳腺外科ブレストケアチーム、
5
山鹿市民医療センター リハビリ科ブレストケアチーム
聖隷浜松病院 乳腺科
吉田 雅行、諏訪 香、鈴木 やすよ
浦部 幸 1、柴田 佳代 3、村上 敬一 2,4、脇山 美紀 5
【背景・目的】厚労省の発表によると当院のある熊本県の乳がん検診受診率は、
平成 23 年度では 17.2% と、全国平均 18.2% を下回り第 32 位と低く、さら
なる受診率の向上が求められる。各団体による啓発活動が行われているが、
乳がん死亡減少を図る上での検診受診の重要性に関して市民の理解を深める
ため、当院も個人が特定されないように匿名化した上で診療状況などを病院
広報誌などで公表し、乳がんに関する情報提供を行っている。今回は、当院
の乳がん患者に関して、受診背景などについて調査した。【方法】市町村合併
後の平成 17 年 1 月以降に、当院にて乳がんの診断となったに患者について、
診断日、年齢、受診動機、病期、住所(合併前の旧自治体)を調査した。【結
果】161 人が乳がんと診断され、その受診動機については「自己検診での発見」
が一番多く、86 人(53.4%)を占めた。次いで「検診での指摘」62 人(38.5%)
であった。【結論】今回当院にて乳がんと診断された 161 人について、受診の
背景についてレトロスペクティブに調査した。結果は「自己検診=自覚症状が
出現するまで進行してから」の受診が半数を超えている実態が浮き彫りとなっ
た。地域住民の乳がん検診受診率が向上するよう、これからも活動を継続し
ていく必要性があると思われた。
【はじめに】病院通院(精密検査、良性疾患の経過観察、乳がん治療)中の患者
さんは、「全身をチェックしてもらっているので安心」と思い込まれる方も少
なからずある。病院受診までは、検診や人間ドックで定期的にがん検診など
を受けていたにもかかわらず、受診を契機に止めてしまわれる方も見受けら
れる。一方、通院中に、乳腺以外の根治が難しい進行がんが見つかり、がん
検診を受けておられない現実が判明し、お互いに心を痛めることもある。そ
こで、通院中の患者さんが、少なくとも乳がん以外のがんに関して根治可能
な段階で見つかることを期待して、2008 年 11 月から、外来受診時に、可能
な限り全ての受診者に、がん検診および特定健診の受診の有無を確認する様
にしている。今回は、がん検診の受診の有無を確認する事で、受診者の行動
変容に繋がり、乳がん以外のがん検診受診率が向上しているかを検証する事
を目的としてカルテレビューを行なった。【対象・方法】対象は、2009 年 1 月
5 日以降の外来受診者の内、自己検診、がん検診、特定健診の受診の有無が確
認されている連続50名である。方法は、自己検診、乳がん以外(胃・大腸・
肺・子宮)のがん検診(検査)および特定健診受診の有無を確認し、2009 年の
初回と 2009 年~ 2013 年 10 月現在までの年毎に各項目毎の受診率を算出し、
推移を検討した。【成績】対象が主に乳癌術後患者であるため、自己検診と肺
については、2009 年初回から、各々 81.8、89.2%と 80%以上の施行率であ
り,経年的に更に高率を維持した。子宮がん検診も術後内分泌療法の影響を
考慮して勧めているため、初回 55.9%と 50%をすでに超えており、経年的に
も 70 ~ 80%前後の高水準を維持した。胃、大腸、特定健診は、2009 年初回は、
各々 29.7、27、32.4%と一般的な受診率に近く低率であるが、経年的に上昇し、
目標の 50%を遥かに超える 70%前後(2013 年胃 67.6%、大腸 73.5%、特定
健診 76.5%)となった。精密検査機関の外来で行なうがん検診啓発活動によ
り、検診受診率の上昇効果が確認された。【結論】精密検査機関の外来でのが
ん検診受診啓発活動により、がん検診受診率向上効果が認められたことから、
米英国と同様、かかりつけ医のがん検診啓発活動により地域のがん検診受診
率向上が期待出来る。
332
ポスター掲示
11040
10967
アンケートによる乳癌検診の意識調査と現状把握~任意型検診・
対策型検診受診者の比較~
マンモグラフィー (MMG) 検診に対する女性職員の意識調査
ー職員 MMG 検診受診率向上をめざしてー
GP-1-026-05
1
2
GP-1-026-06
1
北里大学北里研究所病院 ブレストセンター、
北里大学北里研究所病院 予防医学センター
3
福元 里紗 1、関 大仁 1、浅沼 史樹 1、山田 好則 1、大作 昌義 1、
馬場 彰泰 2
大阪府済生会富田林病院 外科、2 大阪府済生会富田林病院 放射線科、
大阪労災病院 外科
荻野 信夫 1、竹内 智子 2、小田 直文 3、林部 章 1
【はじめに】職員検診に乳がん検診を導入すべく、当院女性職員の乳がん検診
の現状把握、乳がん検診に対する意識調査を行い、職員乳がん検診の受診率
向上に役立てることを目的とした。【対象・方法】院内女性職員 415 名を対
象に乳がんへの関心度、乳がん検診受診の有無、自己触診の実施割合、検診
方法の希望、費用負担についてアンケートを実施した。【結果】1) 回答者は
343 名(83%)であった。そのうち看護職は 238 名 (69%) を占めた。2) 年齢
は 20 歳代 55,30 歳代 83,40 歳代 116,50 歳代 76,60 歳以上 13 名であっ
た。乳癌検診対象 (40 歳以上 ) は 205 名 (60%) であった。3) 乳がんへの関心
度は 30 歳未満より 30 歳以上で高い傾向にあった。4) 検診受診経験は 36%
で年齢別では 40 歳以上 52%、40 歳未満は 11.5%であった。検診内容は住
民検診 52%、ドック 20%、外来受診 19%であった。定期的受診は 21%にと
どまった。5) 自己触診は未経験者が 38%にのぼり、毎月施行は 10.5%にと
どまっていた。7) 検診方法の希望は MMG(+ 触診)が 96、超音波(+ 触診)が
91、MMG+ 超音波 + 触診が 112、検診不要が 18 名だった。検査技師の性別
は 88% が女性を希望した。 6) 検診費用負担の希望は 1000 円、無料希望が
合わせて 4 分の 3 を占めた。【考察】医療機関職員といえども” 乳がん “への関
心はあるが乳がん検診への関心は十分でなく、定期的受診者は少数であった。
アンケートを実施することにより乳がん検診への意識づけがなされた。アン
ケート回収後、40 歳以上の職員に対し女性技師による MMG 単独検診 ( 自己負
担 1000 円 ) を施行し、83 名の受診者があった。今後は院内で乳がん検診につ
いての講演会を催し、次年度以降は 30 歳代職員に対する女性技師による超音
波検診を追加する予定である。
11456
11173
演題取り下げ
一施設におけるピンクリボンキャンペーンの取り組み
GP-1-026-07
GP-1-026-08
1
女性クリニック We 富山、2 八尾総合病院
加藤 直美 1、溝口 明子 1、清水 恵 1、中村 亜希子 1、吉田 史子 1、
小宮 裕文 1、江嵐 充治 1、本吉 愛 1、藤井 久丈 2
【背景】乳がんの正しい知識を広め乳がん検診の早期受診の推進を目的として、
毎年 10 月に世界規模でピンクリボン運動が開催されている。当施設でも今回
はじめて「ピンクリボンキャンペーン in We 富山 2013」と題し当施設の特徴
をいかした女性の健康に関するイベント及び乳がん検診の普及啓発として日
曜検診を企画した。今回イベント参加者にアンケート調査を行い、得られた
結果より今後の企画運営の方向性が示唆されたので報告する。
【イベント内容】
日曜検診、乳がんのミニレクチャー、がんのパネル展示、自己触診指導、リ
ハビリ相談、重心バランス体験、身体チェック、婦人科相談、ウィッグ展示、
補整下着展示、乳がん患者会コーナー、ミニコンサートなど乳がん及び女性
の健康への関心が高まる内容とした。【研究方法】アンケート調査用紙に本研
究の目的を明記し、本研究に同意した参加者 129 人のアンケート調査の内容
を分析した。調査内容は、年齢・性別・職業・イベント参加の目的・乳がん
の理解・イベント内容で良かったこと・今後もイベントに参加したいと思っ
たかなどを調査した。【結果・考察】アンケート調査の結果、参加者は 40 歳代
が最も多く次いで 30 歳代で全体の約半数を占めていた。性別は女性が大多数
を占めていたが、中には子連れの夫婦の姿もあった。職業は主婦が最も多く
次いで会社員であった。これらのことより、幼い子供が居るため検診を受け
ることができない、また企業検診に乳がん検診は無く、平日は仕事があるた
め検診を受けることができない現状があると考えられる。乳がんについて理
解できましたかの問いに 80%の人が理解できたと答えていた。イベントの参
加理由として、日曜検診が最も多く次いで当施設に関心があった、乳がん及
び女性の健康についての知識習得が多く、当施設に対する期待が大きいこと
が伺えた。またイベントで良かった内容について、日曜検診が最も多く次い
で自己触診指導、重心バランス体験、身体チェックがあり、来年も 80%の人
が参加したいと答えていることより、自身の健康に対する関心が高いことが
考えられる。また当施設で治療を行っている乳がん患者3名が作成したイラ
ストや写真、小麦粘土細工の展示を行ったことで、患者自身の生き甲斐に繋
がっていた。次年度も、当施設の特徴をいかしながら本イベントを継続して
いきたい。
333
一般セッション(ポスター掲示)
【背景・目的】
本邦における乳癌検診受診率は約3割であり、その多くは視
触診のみで済まされているのが現状である。検診実施には受診者の意識が大
きく影響するため、当院では平成25年6月より検診精度向上と受診率改善
を目的に任意型検診受診者及び対策型検診受診者へのアンケート調査を実施
している。受診動機や受診方法の異なる任意型・対策型検診において調査結
果を比較したので報告する。【方法】 任意型検診(人間ドック)1524 名、対策
型検診(港区・目黒区検診)1559 名の計 3083 名を対象に、単一回答形式 17 問、
自由記述形式1問のアンケートを配布しデータを集計した。【結果】 回答率
は全体で 44%(任意型 78%、対策型 21%)であった。両群における受診年齢
分布はいずれも 40 歳代が最も多い結果となった。「乳癌への関心あり」は任意
型が 85%、対策型が 89%で、さらに「早期発見の重要性を認識している」と
の回答はいずれも 88%と高い反面、自己触診施行率は任意型が 11%、対策型
が 13%と低い傾向であった。任意型検診における画像検査実施状況に関して
は、MMG 単独が 31%、US 単独が 32%、MMG と US の併用が 37%であった
が、
「MMG と US の検査の違いを知っている」と回答したのは 22%であり、
「な
んとなく知っている」との回答が 47%であった。一方、2 年に 1 回の MMG と
指定されている対策型検診受診者は、自由記述においてマンモグラフィの年
1回の実施やエコー検査の要望が多かった。「今後も検診を受けるか」という
問いに対する「はい」との回答は、任意型が 72%、対策型が 82%であった。【考
察】検診受診者の乳癌に対する関心は任意型検診と対策型検診ともに高いが、
いずれも自己触診の実施率が低く、自己検診の啓蒙活動が必要と考えられた。
また、任意型検診に対し、MMG と US の検査それぞれの利点を説明し、年齢
や乳腺濃度などに応じて個々の受診者に適切な画像検診を勧めること、また、
対策型検診受診者に対しては画像検査との併用を推奨することが検診精度の
向上や受診率の改善に寄与すると考えられた。
11710
10211
産婦人科医師によるピンクリボン活動の実践、検診率50%を
目指して
乳がん検診無料クーポン券の効果と課題
GP-1-026-09
GP-1-026-10
1
3
医療法人社団正裕会井上レデイースクリニック
徳島市医師会乳がん検診委員会、2 医療法人倚山会田岡病院 乳腺甲状腺科、
徳島市保健センター、4 徳島大学病院 食道・乳腺甲状腺外科
三木 仁司 1,2、日野 直樹 1、古味 勝美 3、小田 芳栄 3、辻 優子 3、豊崎 纏 1、
丹黒 章 1,4
井上 裕子、竹田 奈保子、小泉 さおり
一般セッション(ポスター掲示)
1980年アメリカで発足したピンクリボン活動は、日本でも近年認知率は
年々上がり、認定NPO法人乳房健康研究会の調査によると、2013年に
は94%と上昇しました。先進国で唯一高かった乳がん死の割合も2013
年減少、これは乳がん治療の進歩と乳がん検診率上昇のための多くの取り組
みの成果と考えます。しかし2007年に施行された「がん対策推進基本計画」
で目標だった5年間で乳がん検診率50%を達成していない状況であり、配
布されてきた無料クーポン券は廃止見直しとなりました。当法人は産婦人科
有床診療所として出産・不妊治療・乳腺診療(乳がん検診、乳腺良性疾患の診
察)
・婦人科検診を扱う施設です。乳腺に痛みやしこりなどの症状がある場合、
多くは産婦人科外来を受診する患者は多いです。若年性乳がん、遺伝性乳がん、
妊娠関連乳がんなど、乳がんは女性にとって関心が深くマスコミで報道され
る機会も増えました。根拠がない情報には注意が必要です。医学的な根拠の
ある正しい情報を伝える担い手として産婦人科医師、産婦人科医療機関は大
切です。高齢出産の当たり前のこの時代、産む世代と乳がん発症の好発世代
が重なります。卵の凍結の報道に興味を持つ30歳代、40歳代の女性の相
談に乗るのは乳がんについてに知識が豊富産婦人科医師です。がんという病
気は治癒しても、がんサバイバーとしての女性のQOLをサポートしていく
のは、地域密着型のかかりつけ医、家庭医の存在が必要です。乳がんとまだ
診断されないカテゴリー3の定期観察も実施しています。当施設では、実施
しているピンクリボン活動は、妊婦に対して乳がん検診を実施、更年期、婦
人科腫瘍など婦人科疾患の患者、経口避妊薬使用の患者、不妊治療患者など、
外来を受診するすべての女性に対して、年齢に応じたに乳がん検診を啓発・
実施しています。かかりつけ医師による、親身で正しいピンクリボンアドバ
イザーとしても関わりが必ず乳がん検診率50%を実現する1つの手段と考
えます。
乳がん検診無料クーポン券(以下クーポン)が発行されて 5 年間が経過し 64 歳
までの女性全員に配付されたことになる。そこで今回、徳島市における乳が
ん検診状況からクーポンの効果と課題を検討した。【対象および方法】徳島市
のマンモグラフィ併用乳がん検診(対象人口はほぼ 5 万人)で、クーポン発行
前 3 年間(以下発行前)と発行後 4 年間(以下発行後)のデータを比較検討した。
また平成 24 年度クーポン未利用者へのアンケート調査(1000 名にアンケート
を送付し回答率 23.2%)も行い課題を検討した。【結果】1.受診率と乳癌発見
数:クーポン発行前の受診率は 17.5~18.0%、平均 17.8% であったが、発行
後は 20.9 ~ 24.5%、平均 22.6% と上昇し、発行前後で約 5% の差がみられた。
年齢別でみるとクーポン発行後は 40 ~ 64 歳までの各年代で受診率が上昇し
ており、特に 40 ~ 54 歳では 15% 以上の受診率上昇がみられた。2.乳癌発
見数:クーポン発行による受診率の増加に伴い各年度の乳癌発見数も発行前
は 22 ~ 26 名、平均 23.3 名であったのが、発行後は 25 ~ 36 名、平均 28.3
名と約 5 名/年の増加がみられた。3.乳癌発見率:発行前は平均 0.53% であっ
たが、発行後は 0.47% とやや低下した。4.クーポン利用率:利用率は各年
齢とも平均 20% 前後で低率であった。発行初年度の利用率は 27.7% であっ
たが毎年徐々に減少し、平成 24 年度は 20.2% となった。5.クーポン未利用
者へのアンケート調査:回答者の 81% は自宅へクーポンが送付されているこ
とを認識していた。クーポンを利用しなかった理由として、忙しくて時間が
ない、予約が面倒、無症状だから、男性スタッフだと恥ずかしい等が多かっ
たが、人間ドックや保険診療ですでに受診している人も回答者の半数近くい
た。【考察】クーポン発行後は受診率、乳癌発見数とも増加しておりクーポン
の効果は認められた一方、クーポン利用率は 20% 前半と低迷しており、特に
徐々に利用率が減少しているという課題もみえた。未利用者へのアンケート
結果からは利用率を上昇させる方策として、週末や夕方の検診の実施、女性
スタッフの充実等が考えられた。しかし対策型検診以外で乳がん検診を受け
ている人も多く存在する可能性があり、今後の検診のあり方自体の検討も必
要と思われた。
11212
11851
検診発見トリプルネガティブ乳癌についての検討
非触知乳癌に関する検討
GP-1-027-01
GP-1-027-02
大垣市民病院 外科
1
堀米 香世子、磯谷 正敏、原田 徹、金岡 祐次、亀井 桂太郎、前田 敦行、
高山 祐一、山口 淳平、尾上 俊介、渡邊 学
鬼頭 礼子 1、石山 暁 1、千葉 泰彦 2
【背景】当院におけるクーポンを利用した検診発見乳癌のトリプルネガティ
ブ (TN) の 頻 度 を 調 査 し た 結 果 , 非 検 診 発 見 乳 癌 で は TN 症 例 が 15.6% で
あったのに対し , クーポン利用発見乳癌 , クーポン非利用検診発見乳癌では
0%,6.6% と有意に少ないことがわかった .TN 症例は増殖スピードが速い
ため , 自覚症状が出現してからの受診が多いのではないかと推察される 【
. 目
的】検診発見 TN 症例の特徴を明らかにし , 自覚症状が出現する前に TN 症例
を発見するために検診をどのように生かせばいいかを検討する 【
. 対象と方
法】2006 年 1 月~ 2013 年 10 月に当院で施行した乳癌手術症例のうち , 検
診発見 TN 症例 22 例 ( 検診発見群 ), 非検診発見 TN 症例 115 例 ( 非検診発見
群 ) の画像結果 , 病期 , 病理結果 , 診断の契機を比較検討した 【
. 結果】検診発見
群のうち有症状は 2 例 (8.7%) にあり , 非検診発見群では全て有症状で , うち
87.8% で腫瘤の触知が主訴であった .MMG で Cat3 以上となった症例は検診
発見群 19 例 (86.4%), 非検診発見群 108 例 (93.9%) であった . 腫瘤性病変 ,
石灰化病変は検診発見群で 5 例 (22.7%),8 例 (36.4%), 非検診発見群で 90 例
(78.3%),19 例 (16.5%) に認められた .US で Cat3 以上となった症例は検診発
見群で 18 例 (81.8%), 非検診発見群で 110 例 (95.7%) であった . 検診発見群
で腫瘤は 16 例 (72.7%) であり , 非腫瘤の 2 例では微細石灰化 , 小嚢胞集簇が
認められた . 非検診発見群では 104 例 (90.4%) で腫瘤が認められた . 検診発
見群のうち ,MMG のみで所見を認めるものが 4 例で , すべて石灰化病変であっ
た . また ,US のみで所見を認めるものは 3 例で , すべて腫瘤であった . 病期は検
診発見群で 0:2 例 (9.1%),I:17 例 (77.3%),IIA:3 例 (13.6%) で ,stageIIB
以上の症例はなかったのに対して , 非検診発見群では 0:9 例 (7.8%),I:34 例
(29.6%),IIA:40 例 (34.8%),IIB:11 例 (9.6%),IIIA:8 例 (7.0%),IIIB:5
例 (4.3%),IIIC:6 例 (5.2%) であり , 検診発見群の方が stage の早い段階のも
のが多かった . 病理径の平均は検診発見群 8.2mm であったのに対して非検診
発見群では 22.2mm と検診発見群の方が小さく ,10mm 以下の症例は検診発
見群で 13 例 (59.0%), 非検診発見群で 26 例 (22.6%) であった . 検診発見群の
うち検診発見時の精査で癌と診断されたものは 19 例 (86.4%) であった 【
. 結
論】TN 乳癌は増殖スピードが速いため検診では見つけにくいが ,US を併用す
ることにより早期に発見できる可能性がある .
ポスター掲示
横浜市立市民病院 乳腺外科、2 横浜市立市民病院 検査部
【背景】、MMG 単独検診を行う自治体が増加しているが、当院で診断した乳癌
の 5.6%は MMG 陰性だった。わずかにえられた死亡率減少の傾向が MMG 検
診導入によるものかは日本においては不明であり、視触診との併用も比較的
やせ型である日本人では有用な可能性もある。またガイドラインで推奨され
ていなくても職域検診では視触診のみの検診が行われていることも事実であ
る。【目的】非触知乳癌について、当院手術症例から検証する。【結果】2011
年1月から 2012 年 12 月までに当院で乳癌と診断し手術を行った 160 例を対
象とした。触知不能だった乳癌は 20 例(12.5%)であった。平均年齢は 59.7
歳、病理型は、DCIS が 5 例、乳頭腺管癌が 9 例、充実腺管癌が 2 例、硬癌が
2 例であった。浸潤癌の浸潤径は 0.9mm ~ 61mm で、lumA が 12 例(80%)、
ほ か は lumB が 1 例、HER2enriched が 2 例 だ っ た。MMG も 陰 性 の 症 例 は 5
例(3.1%)だった。いずれも US で所見があったが、年齢は、40 代1例、50
代2例、70 代 2 例であった。BMI は 16.8 ~ 32.5(平均 22.9)であり、特に
BMI が高いものに限られてはいなかった。【考察】非触知乳癌の頻度は当院手
術症例の 12.5%だった。これは診断がついてから改めて乳癌診療に専従して
いる乳腺外科医が触っての結果であり、一般的な視触診検診や自己検診では
もっと高いと考えられる。MMG 陰性症例はすべて US で所見を認めたが、40
代はその 1/5 だった。また、非触知乳癌は BMI の高い症例に限られたもので
はなかった。
334
ポスター掲示
10591
10648
豊胸術後女性に対する乳がん検診とその対応
福井県の視触診併用乳癌検診の問題点と今後の課題
GP-1-027-03
GP-1-027-04
黒沢病院附属ヘルスパーククリニック 乳腺外科
1
栗原 照昌
笠原 善郎 1、市橋 匠 2、大田 浩司 2、田中 文恵 2、前田 浩幸 2、
嶋田 俊之 2
【目的】より高い cosmesis を得るため,様々な方法で豊胸術を受ける女性が増
えている。一方で,豊胸術後の女性においては,インプラント例では原則と
してマンモグラフィを行えないなどの制約があること,脂肪注入やヒアルロ
ン酸注入例では申告を嫌うなどの個人のプライバシー保持の点から,任意型
乳がん検診を受ける場合が多い。今回,当センターでの豊胸術後女性の検診
状況とその成績を検討した。【対象と方法】2009 年 7 月~ 2013 年 8 月までの
当センターの人間ドック乳がん検診受診総数は延べ 35,922 名で,うち豊胸術
後は延べ 65 名,実数は 38 名であった。年齢は 24 ~ 53 歳,平均 42 歳であった。
豊胸術の有無は問診票での自己申告と,保健師による受診当日の問診で確認
した。乳腺科医師による診察の場では,画像検査法の選択と追加を助言する
とともに,豊胸術に関する悩み・不安などの相談にも応じた。【成績】豊胸術
の方法はインプラント 26 例,脂肪注入 5 例,ヒアルロン酸注入 2 例,その他
の異物注入 5 例であった。検診方法は視触診のみが 26 例,視触診+画像検査
が 36 例,画像検査のみが 3 例であった。画像検査はマンモグラフィ (MG)4 例、
超音波検査 (US)32 例、MG + US が 2 例,非造影 MRI が 3 例であった。判定
で要精査となったのは 10 例、経過観察が 10 例であった。有所見例の最終結
果は線維腺腫 5 例、嚢胞 6 例、乳腺症 3 例,肉芽腫 1 例であった。インプラン
ト除去の希望が 3 例あり,うち 1 例に摘出手術を行った。【考察】豊胸術後女性
に対しては,視触診のみの検診は不十分であることを伝え,インプラント例
では US 併用を推奨する必要がある。また,診察の場では豊胸術の合併症等も
説明し,異物・脂肪・ヒアルロン酸注入例では MG・US は判定困難な場合が
多いため、ドックではなく乳腺外来での定期的フォローを勧める必要がある。
福井県済生会病院 外科、2 福井県外科医会乳癌部会
10039
11842
当科における乳癌二次検診例の検討
前回の検査で確定診断に至らなかった乳癌の検討
GP-1-028-01
1
GP-1-028-02
長崎労災病院 外科、2 長崎労災病院 看護部
JA 愛知厚生連豊田厚生病院 外科
森内 博紀 1、岩田 亨 1、前川 妃史 2、廣田 純子 2
【緒言】今回我々は , 最近 4 年間 (2009. 1-2012. 12) の当科二次検診症例の
見直しを行った .【対象】2009. 1-2012. 12 までの乳癌二次検診症例 333 例
( 一次検診内訳 ; 自治体検診 297 例 , 職場健診 18 例 , 人間ドック 18 例 ).【検
討項目】1) 一次 , 二次検診の各 modality 及び二次検診乳癌診断率 / 要精査率
/ 陽性反応適中度 (PPV) を検討 . 2) 一次 US 検診陽性例 vs. 一次 MMG 検診陽
性例で二次検診乳癌診断率 / 要精査率 /PPV を比較 . 3) 二次検診後の生検実施
までの期間について検討 .【結果】1) 一次検診の内訳は触診 /MMG が 201 例 ,
MMG/US が 108 例 , その他 24 例で、要精査内訳は MMG で C3 以上 ;250 例 ,
US で C3 以上 ;58 例 , 触診が 46 例であった . 二次検診の内訳は触診 /MMG/
US を 98 % (328/333), MRI 8 % (28/333), 生 検 24%(81/333) に 行 っ た .
二次検診乳癌診断率は 4.2%(14/333), 二次検診要精査率は 24%(81/333),
PPV は 17%(14/81) であった . 2) 一次 US 検診陽性例 vs. 一次 MMG 検診陽性
例:二次検診乳癌診断率 12% vs. 3.6%/ 二次検診要精査率 43% vs. 24%/
PPV28% vs. 15% で あ っ た . 3) 生 検 78 例 ( 当 科 フ ォ ロ ー 症 例 の 3 例 を 除
く ) で は , VAB/CNB 実 施 ま で の 日 数 は 4.4 ± 6.1 日 ( 中 央 値 1 日 , 0-33) で ,
47%(37/78) が二次検診受診当日に生検 ( 全例 CNB) を実施されていた .【結
語】1. 二次検診精密検査実施施設では , 一次要精査例に対してより積極的に確
定診断を行うべきだが精度向上にも努める必要がある . 2. US 検診では要精査
例が増加するも , 乳癌検出能は上昇する可能性がある . 3. 生検は患者負担軽
減や早期診断の為にも早期に行うべきと考える .
丹羽 多恵、久留宮 康浩、世古口 英、小林 聡、深見 保之、青山 広希、
冨田 明宏、白月 遼、宮村 径、金森 明
【背景】乳がん検診の精度向上には精密検査実施機関における的確な診断が求
められる。【対象と方法】2011 年1月から 2012 年 12 月までに当院で乳がん
の診断・初期治療を実施した 197 例のうち、過去 2 年以内に検診もしくは診
療歴(他院を含む)を有した 56 例(28%)が前回検査時に確定診断に至らなかっ
た理由を検討した。発見状況の内訳は自己発見 16 例、検診 37 例 ( うち自覚症
状あり 2 例 )、その他 3 例。平均年齢 55.5 歳(29 ~ 80 歳)。【結果】前回検査
で画像所見を有したのは 56 例中 15 例で、他院検診でカテゴリ- 2 が 2 例、要
精査であったが本人が放置したのが 1 例、残り 12 例は外来(他院 6 例含む)を
受診していた。12 例中 7 例は外来で経過観察となり(他院1例含む)、6 ヶ月
~1年後に確定診断された(うち 3 例は Tis/T1mi)。5 例は良性と診断された
が、うち 4 例は 1 ~ 2 年後に自覚症状により、1 例は検診異常により来院され
診断に至った。最終的に病期 II A/B と診断された 5 例中 4 例は前回の他院で
の穿刺吸引細胞診(FNAC)では良性と診断されていた。Subtype は luminal
A(LA) 11 例、HER2 陽性 (HER2)2 例、triple negative (TN)2 例。前回他院
検診でカテゴリ- 2 とされた 2 例はそれぞれ 4 ヶ月後、1年後に検診で要精査
となり、診断に至ったが、HER2 と TN 各 1 例と診断された。前回検査では異
常のなかった 41 例中 HER2 陽性は 6 例、TN 4 例。マンモグラフィでは確定
診断時でも 56 例中 11 例で所見をとれなかった。前回検査で異常なしとされ
た乳房構成の多くが不均一高濃度以上であり、非石灰化所見であった。US で
は複数の腫瘤を認めた例、ベースの乳腺構造が不均一であるときに検出が困
難であった。乳房の厚い例では画像の設定調整に問題があったため所見がと
りづらかったと考えられた症例があった。【結語】小病変の診断に FNAC は有
用であるが、確定診断とするには難しい症例があることが周知されていない。
精査の基本である丹念な US 走査や症例に応じた精密検査の内容と手順がある
ことを考慮しつつ、診療に臨む必要がある。
335
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】乳癌検診の死亡率減少には、1)有効な検診を、2)正しく(精度管理)、
3)多くの人に施行する必要がある。
【目的】福井県(以下当県)における視触診併用検診の問題点を上記の 3 点か
ら 検 討 し 今 後 の 方 針 を 探 る。【 当 県 の 現 状 】: 対 策 型 検 診 20,205 名( バ ス
14,435 名、個別 5,770 名)、任意型検診 17,159 名 16.0% 受診率 22.0%、
対策型検診プロセス指標:要精検率 9.5 精検受診率 91.3%、癌発見率 0.38%、
PPV3.9%、(以上 2011 年度)癌登録照合による感度 77.3%特異度 87.7%
(2004-08 年度分析結果)
【問題点】1)に関しては資源利用と特異度の観点から視触診の必要性を再考す
る必要がある。2)に関しては高い要精検率と癌登録照合によるプロセス指標
の検討が継続的になされてないこと、3)に関しては低い受診率が問題である。
【これまでの施策】2)に関しては読影の精度管理(読影研修会の実施と FAD の
チエック項目を徹底、第二読影委の責務の確認、比較読影システム構築)と癌
登録照合作業が開始され3)に関しては電話による個別 call-recall の実施と予
約システムの構築が進んでいる。
【今後の課題】1)に関してはバス検診における視触診医の精度管理と数不足に
対し、視触診廃止を模索中である。また任意型検診を含めた死亡率減少効果
確認システムの構築が必要である。2)に関しては来年度から、継続的癌登録
照合作業と厚労省研究班(斎藤班)の指導に基く市町別のチエックリストの HP
への公開の予定である 3)に関しては 50% 受診率達成にはバス検診で 4,000
名、個別検診で 11,000 名の増加が必要であり、受け皿の整備とともに、エビ
デンスに基く call-recall を中心とした現施策を更に強化する予定である。
【結語】当県の乳癌検診の現状と課題、今後の施策を述べた。有効な検診のた
めには1)2)3)各方面にわたる総合的な施策が必要である。将来的には1)
の死亡率減少効果(任意型検診含む)の確認ために、個別認識(パーソナルカー
ド)システムが必要と考えられる。
11208
11205
マンモグラフィー非検出乳癌の検討
乳癌検診で見つかる粘液性病変の問題点
GP-1-028-03
GP-1-028-04
1
マリンクリニック、2 国立病院機構名古屋医療センター 乳腺科、
名古屋大学医学部附属病院 化学療法部、
4
愛知医科大学医学部 外科学講座乳腺・内分泌外科
日本大学医学部 乳腺内分泌外科
3
原 由起子、櫻井 健一、和賀 瑛子、松本 京子、萩原 美桜、前田 哲代、
平野 智寛、榎本 克久、天野 定雄
(目的)当院の手術症例で精査のマンモグラフィーでも検出できなかった症例
の特徴を検討することを目的とした。(方法)当院で過去 1 年間に経験した乳
癌手術症例のうち、術前のマンモグラフィーにて所見を認めなかった 15 例に
ついて検討した。(結果)平均年齢は 55.2 歳(27-75 歳)。すべて女性であっ
た。主訴は乳房痛が 2 例、乳房腫瘤が 2 例、乳頭分泌が 3 例であった。その他
の症例の受診動機は、他疾患で施行された胸部 CT で乳房腫瘤を指摘された症
例が 2 例、検診で要精査となった症例が 6 例(触診異常 5 例、対側の MMG 異
常 1 例)であった。超音波の所見では低エコー腫瘤が 10 例、嚢胞内病変が 2
例、乳管拡張が 2 例、低エコー域が 1 例であった。MRI では造影結節を認めた
ものが 9 例、区域性の濃染域を認めたものが 2 例、所見を認めなかったものが
3 例であった。術前の生検で診断のついた症例が 10 例、摘出生検が必要となっ
た症例が 5 例あった。術後の病期は stage0 が 5 例、stageI が 9 例であったが、
stagellB の症例が 1 例存在した。(考察)今回は検診マンモグラフィーではな
く精査マンモグラフィーでも検出できない乳癌について検討した。石灰化を
伴わない DCIS や腫瘍径が 1.5cm のものが多かった。しかし、stagellB の症
例もあり、化学療法の必要な症例も存在することから注意が必要と考えられ
た。(結語)マンモグラフィー非検出であった乳癌症例について検討した。
須田 波子 1,2、森田 佐知 1,3、森田 孝子 2、今井 常夫 4
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】乳腺粘液性病変には、粘液癌、粘液産生性の DCIS などが含まれ、外科
的生検などで病変の全体像をみることが望ましいとの報告が多い。1) 粘液性
病変に対してどのような精査アプローチ・どのような経過観察をすればよい
のか考察する。また、2) 検診から粘液性病変が発見される率を試算する。【対
象と方法】1) 当院精密検査外来(自施設要精査例の 6 割を精査、他施設検診の
精査も行う)過去 10 年の細胞診で粘液を認めた 19 名 23 乳房の発見契機、画
像所見、外科的生検の有無、診断後の経過を調査した。2)H21 と H22 の自施
設マンモグラフィ (MG) 検診、超音波 (US) 検診ののべ受診者数に対し、精査
時の細胞診で粘液を認めた症例の数を求めた。【結果】1) 検診 ( 他施設検診を
含む ) からの粘液性病変の発見契機は、画像の異常 19 名・自覚症状や触診で
の異常 0 名、画像所見は、US では、粘液癌による腫瘤以外に、限局した目立
つ乳管拡張、
・石灰化を伴う・嚢胞内に不定形の高エコー部分、小嚢胞集簇、
D/W 大の嚢胞など、MG では石灰化で、一見粗大、微小円形・瀰漫性のこと
があった。生検できたのは 23 乳房中 5 乳房で(22%)で、残りのケースが踏み
切れない理由は、多発(同側・対側)
・切除範囲が広くなる・病変がごく小さ
いなどであった。生検しても粘液性病変が断端に遺残することがあった。経
過観察中、多発したり、所見が出たり消えたりすることがあった。変化は緩
徐で、28 歳から粘液を両側多発性に認めていた経過観察例で 11 年目に浸潤径
8mm の粘液癌が発生した。2)MG 検診 4904 名中 1 名、US 検診 6299 名中 10
名に精査で粘液を認めた。2 年間の検診のべ受診者の少なくとも 0.1%に粘液
性病変があった。【考察】検診で見つかる粘液性病変の頻度は約 0.1% で当初
から広範囲・両側性のことがあり、画像で貯留した粘液を認めるが細胞診で
は上皮がない・または異型の乏しい上皮が少数含まれる、といった程度での
生検は侵襲が大きくなる可能性が高い。現時点での疾患概念、広がりを受診
者に説明した上で注意深く経過観察していくことが求められる。
10974
11738
当院における硬化性腺症例の検討
当院における乳癌検診の現況
GP-1-028-05
1
ポスター掲示
GP-1-029-01
福岡和白病院 外科、2 福岡和白病院 乳腺外科
札幌北辰病院 外科
徳永 裕貴 1、早野 史子 2、久保田 博文 2、古賀 淳 2
高橋 学、松岡 伸一
【目的】硬化性腺症は、マンモグラフィ上、
「構築の乱れ」の所見で要精査となり、
遭遇する機会が多くなってきている。また、癌特に非浸潤癌の併存例も報告
されている。そこで、針生検や癌の切除標本で、硬化性腺症のみ、または乳
癌切除標本で硬化性腺症の併存を認めた症例について、当院での経験を報告
する。【対象】平成 16 年 4 月より平成 25 年 12 月までの針生検または外科的切
除がなされた 35 症例。【成績】病理組織学的に硬化性腺症と診断された例は
35 例であった。このうち、マンモグラフィ上構築の乱れを認める 16 例と、構
築の乱れを認めない 19 例に分けて検討した。片側性構築の乱れ症例は 12 例
であり、このうち 2 例 (11%) において乳癌の併存が診断された。残り 10 例で
は、最長 5 年の経過観察中に乳癌の発生は認めず、3 例 (30%) においてはマ
ンモグラフィ上、構築の乱れの改善が認められた。両側性構築の乱れ症例は 4
例であり、このうち 3 例 (75%) において乳癌の併存が診断された。1 例は初
回受診時に両側性に非浸潤性乳管癌の併存が診断された。1 例は初回受診時に
片側性に非浸潤性乳管癌の併存が診断され手術施行し、対側は経過観察中で
ある。1 例は 6 年間の経過観察後に片側性に非浸潤性乳管癌の併存が診断され
手術施行し、対側は経過観察中である。1 例は、乳癌の併存が指摘されず、経
過観察中である。なお、経過観察中に、マンモグラフィ上、構築の乱れの改
善を認めた症例はなかった。乳癌併存症例 5 例 6 乳房での乳癌組織型であるが、
4 例は非浸潤性乳管癌、1 例は非浸潤性小葉癌、1 例は微小浸潤癌と診断された。
マンモグラフィ上構築の乱れを認めない 19 例中 1 例において、乳頭腺管癌の
併存を認めた。
【結論】両側性構築の乱れを呈する症例では、
乳癌併存率が高く、
初診時に注意深い診断が必要であるが、初診時に乳癌の併存を認めなくとも、
経過中に乳癌発生を認めた症例があり、長期間の経過観察が必要と考えられ
る。片側性構築の乱れを呈する症例では、
乳癌併存率は両側性に比べて低いが、
同様に初診時の注意深い診断が必要である。一方、マンモグラフィ所見の改
善を認めることがあり、過剰な処置を避けるためにも、長期間の経過観察が
必要と考えられる。
336
当院では平成 17 年度より健診センターにおける乳癌検診を行っている。過
去 8 年間の当センターの受診者と検診で発見された乳癌症例について検討し
た。当センターでの乳癌検診は 40 歳以上では視触診とマンモグラフィを行っ
ており、希望者には超音波検査も追加している。また、40 歳未満の乳癌検診
希望者の方には視触診と超音波検査を基本として行っている。【結果】受診者
の年間総数は平成 17 年度は 1,918 人でありその後徐々に増加していたが、平
成 21 年の無料クーポン導入時には 3,649 人と急増した。その後は微増し平成
24 年度は 3,842 人となった。平成 24 年度の無料クーポン利用割合は 15% で
あった。年代別の構成は平成 24 年度では、20 歳代 2%、30 歳代 9%、40 歳
代 39%、50 歳 代 30%、60 歳 代 16%、70 歳 代 4% と な っ て お り 40、50 歳
代の受診者が多かった。平成 18 年から平成 24 年度までの 7 年間に検診で指
摘された乳癌症例は 46 例であり乳癌発見率は 0.22% であった。年代別では、
30 歳代 3 例、40 歳代 13 例、50 歳代 19 例、60 歳代 10 例、80 歳代 1 例であり、
50 歳代の症例が多かった。年代別の乳癌発見率は、30 歳代で低く 0.15% で
あり、60 歳代が高く 0.29% であった。乳癌症例 46 中発見のきっかけとなっ
たのは、触診によるもの 15 例、マンモグラフィでの腫瘤影 23 例、マンモグ
ラフィでの石灰化 17 例、超音波検査での腫瘤影 4 例であり、マンモグラフィ
が発見のきっかけとなった症例が多かった。
【結論】乳癌検診において無料クー
ポンの導入を契機として受診者が増加した。また、乳癌の発見のきっかけと
なったのはマンモグラフィによる症例が多かった。
ポスター掲示
10309
10519
当院の乳癌手術症例における検診発見群と自覚症状群の比較検討
任意型検診専門施設における乳癌検診受診者の傾向
GP-1-029-02
GP-1-029-03
松本市立病院 外科
バリュー HR クリニック
武田 美鈴、高木 洋行、坂本 広登、三澤 俊一、桐井 靖
三井 洋子、手塚 真紀
【目的】当院の手術症例における検診発見群と自覚症状群を比較検討して、検
診の有用性を考察する。【対象と方法】2005 年 1 月から 2013 年 7 月までの当
院における乳癌手術症例 233 例から、術前化学療法と男性症例を除いた 228
例のうち、受診契機が明らかであり比較項目を満たしている 207 例において、
検診発見群、自覚症状群に分け、発見契機、年齢、病理組織学的特性などを
比較検討した。解析はχ 2 検定を用いた。【結果】検診発見群 60 人(平均 54.8
歳)、自覚症状群 147 人(60.9 歳)と検診発見群の方が若年の傾向があり、特
に 70 歳以上の割合については検診発見群の方が有意に低かった。発見契機に
ついては、検診発見群はマンモグラフィ 80%、超音波 17%、視触診 3% だった。
自覚症状群では、腫瘤 90%、乳頭分泌異常と疼痛がそれぞれ 5% だった。分
類については、検診発見群では硬癌 37%、DCIS32%、乳頭腺管癌 18% であっ
た。自覚症状群では、硬癌 35%、乳頭腺管癌 28%、DCIS16%、充実腺管癌
13% だった。DCIS について検診発見群と自覚症状群を比較したところ、検
診発見群の方が自覚症状群よりも有意に割合が高かった (p < 0.01)。脈管侵
襲についても自覚症状群の割合が有意に高かった (p < 0.01)。リンパ節転移
についても自覚症状群の方が有意に割合が高かった (p < 0.01)。乳房切除術
が選択される割合も自覚症状群の方が有意に高かった (p < 0.01)。ER 陽性例、
HER2 陽性例については両群に有意差は認められなかった。同じく核 Grade
についても両群に差はなかった。【考察】検診発見群は自覚症状群より DCIS の
割合が高く、乳房温存術が選択される割合も高かった。また、脈管侵襲やリ
ンパ節転移の割合が低いことより、検診発見群では比較的早期の段階で発見
でき、侵襲の少ない治療が選択できていることがわかった。【結語】検診は早
期発見、早期治療に有用であると思われた。
[ 背景 ] 国立がん研究センターがん対策情報センターの調査によると本邦での
乳がん検診受診率は 2010 においても 22.86% である。乳癌検診受診率は多く
の啓蒙活動にもかかわらずなかなか改善されないが、検診に行かない理由の上
位には「時間が取れない」
「検診の敷居が高い」などがある。これは自治体主体
の対策型検診が、増加を続ける就労女性の勤務条件と合わず受診しにくい現
状も一因と考えられる。そしてその一部は任意型検診を選択していると考え
られる。当施設は任意型検診専門施設であり主に企業検診を担当しているが、
乳癌検診受診希望者は年々増加している。[ 目的 ] 当施設の乳癌検診受診者の
判定結果を詳細に検討し、任意型検診の受診者傾向を把握する。任意型検診
専門施設の今後の役割についても考えていきたい。[ 症例 ]2010 年 10 月から
2012 年 12 月までに当施設乳がん検診を受診した のべ 5734 人 MUS 3954
人 MMG 2904 人 [ 使 用 機 器 ]MMG 撮 影 装 置 MANMMOMAT Inspiration
(SIEMENS) 超音波機器 MUS ACUSON S2000 (SIEMENS) 画像管理システ
ム Syngo.via (SIEMENS) 読影コンソール Syngo MammoReport Syngo
MammoCAD (SIEMENS)[ 判 定 方 法 ] マ ン モ グ ラ フ ィ 超 音 波 と も に モ ニ
ター診断 日本乳がん検診精度管理中央機構の読影認定医による二重読影 [ 結
果 ] 乳腺超音波検査受診者のべ 3954 人中 総合判定で要精査とされた症例は
104 人 (2.6%) 40 歳 未 満 2975 人 中 63 人 (2.1%) 40 歳 以 上 979 人 中 41
人 (4.2%) マンモグラフィ検査受診者のべ 2904 人中 総合判定で要精査と
された症例は 100 人 (3.4%) 40 歳未満 1576 人中 42 人 (2.6%) 40 歳以上
1328 人中 58 人 (4.4%)[ 考察 ] 当施設の精査基準は妥当なレベルを保ってい
ると思われる。施設の特徴として若年齢からの乳癌検診希望が増加しており
健康に対する意識の高まりを反映していると思われる。年代別の有所見率の
詳細についても報告する。
10138
自己発見乳癌―職域検診対象年齢前後での比較
ホルモン補充療法とマンモグラフィ検査所見の関連についての
検討
GP-1-029-04
GP-1-029-05
1
市立砺波総合病院 健診センター、2 市立砺波総合病院 外科、
3
市立砺波総合病院 病理、4 市立砺波総合病院 放射線科、
5
市立砺波総合病院 核医学科
1
瀧 鈴佳 1、清原 薫 2、金木 昌弘 2、村杉 桂子 2、寺畑 信太郎 3、杉口 俊 3、
西嶋 博司 4、川井 恵一 4、高田 治美 4、絹谷 啓子 5
MMG 検診は乳癌の早期発見において主要な役割を担っているが、職場で検
診を受ける機会のない年齢層の存在や、中間期乳癌の問題もあり、自己検診
の啓発も重要と思われる。そこで、自覚症状を契機に発見された乳癌につい
て、職域検診の対象となる 59 才以下と、それ以上の年齢とで、早期癌や中間
期乳癌の割合を比較し、その傾向を分析した。2010 年 1 月から 2013 年 10 月
までに当院で病理学的に乳癌と診断された女性は 198 例で、発見契機は、自
覚症状(自己発見)が 99 例、検診が 60 例、その他が 39 例であった。自己発
見例の主訴は、腫瘤の自覚が 86%、異常乳頭分泌 7%、その他 7% であっ
た。自己発見例と検診発見例の全体に占める割合は、それぞれ 59 才以下では
43.5%(40/92) と 42.4%(39/92) で あ り、60 才 以 上 で は 55.7%(59/106)
と 19.8%(21/106) であった。自己発見例のうち、早期癌 (0-1 期 ) の割合は
59 才以下で 16.3%(15/92)、60 才以上では 24.5%(26/106) であり、2 年以
内に検診受診歴のあった人は、59 才以下で 19.6%(18/92)、60 才以上では
2.8%(3/106) であった。60 才以上の職域検診を受ける機会の少ない年齢で
は、それ以下の年齢に比べて自己発見例の割合が多かったが、自己発見例の
中での早期癌の割合も多かった。59 才以下での自己発見例のうち、約 2 割が
中間期乳癌であり、MMG 検診と併せて自己検診の啓蒙を行うことは意義のあ
ることと思われた。
東京女子医科大学附属青山病院、2 東京女子医科大学 第 2 外科
青山 圭 1,2、神尾 孝子 2、亀岡 信悟 2
【目的】乳癌の危険因子としてアルコール摂取、閉経後の肥満、身体活動があ
る。また、更年期障害の治療として行われるホルモン補充療法(HRT)は乳癌
の罹患リスクを増加させることや、その他乳腺濃度を上昇させることが知ら
れている。乳腺濃度の高い女性は乳癌リスクが高まることから乳腺濃度の正
確な評価も重要な問題である。HRT がマンモグラフィ(MMG)検査による乳
がん検診に及ぼす影響について検討する。【対象】2011 年 5 月から 2013 年 4
月の期間に、当院にて乳癌検診を施行した 45 歳以上の閉経後女性。HRT 群
(1 年以上 HRT を施行中)140 例(平均年齢 57.9 歳)と非 HRT 群 660 例(平均
年齢 63.3 歳)の MMG 像を精中委の乳腺濃度分類を用いて比較した。【結果】
HRT 群は高濃度群 35.9%、不均一高濃度群 51%、非 HRT 群は高濃度群 8.5%、
不均一高濃度群 58.6% であった。圧迫乳房厚の平均値は HRT 群高濃度群
33.6mm・不均一高濃度群 36.8mm、非 HRT 群高濃度群 29mm・不均一高
濃度群 37.4mm であった。乳房圧迫圧の平均値は HRT 群と非 HRT 群いずれ
も 10kgf であった。MMG 検査にて偽陰性となる要因は乳腺濃度が高いため淡
い石灰化や腫瘤陰影は背景乳腺に埋もれてしまい正確な評価が困難となる。
他にデジタルでは様々な画像処理がかけられるため、病変が存在しても写真
濃度が一定になってしまうこともあることを認識しなければならない。また、
高濃度乳腺のために偽陽性となることもある。乳腺の変化を早期に察知する
ためには、MMG 検査だけでなく超音波検査の併用を要する。更年期女性の乳
腺画像を理解したうえで、不必要な精密検査を行うことなく、精度の高い検
診を行っていくことが必要である。
337
一般セッション(ポスター掲示)
10688
10980
10323
ホルモン補充療法中のマンモグラフィー乳腺濃度と読影に及ぼ
す影響について
妊婦乳房スクリーニングの実際
GP-1-029-06
1
ポスター掲示
GP-1-029-07
1
井上レディースクリニック、2 東京西徳洲会病院 乳腺腫瘍センター
医療法人社団赤恵会赤川クリニック、2 千川産婦人科医院
赤川 元 1、土橋 一慶 2
竹田 奈保子 1,2、佐藤 一彦 2、水野 嘉朗 2、渕上 ひろみ 2、井上 裕子 1
妊娠関連乳癌 (PABC) の多くは妊娠・授乳による乳房変化によって視触診のみ
で早期に発見されることは少なく、多くは進行癌の状態で発見される。母親、
妻として、家庭の中心的存在である女性に降り掛かる不幸を1例でも少なく
するため、妊娠初期に視触診・超音波検査 (US) 併用の妊婦乳房スクリーニン
グ (S) が有用であることを明らかにし発表してきた。同時に、適切な妊婦乳房
スクリーニング確立には、妊娠という特殊な生理現象を理解した産婦人科医
が参加することの重要性を指摘してきた。【方法】妊婦 4,502 名を対象に、妊
娠初期に US 併用 S を行った。視触診で乳頭分泌、硬結、腫瘤、US で腫瘤性、
非腫瘤性病変を認めたものを要精検とした。【成績と考察】視触診で異常が
9.1%、US のみで異常が 12.3%。触診で腫瘤を触れたものの 87.3% に US で
異常を認めた。US の異常所見は嚢胞 77.6%、充実性腫瘤 15.9%、非腫瘤性
低エコー域 6.5%。要精検 291 例の結果は乳癌1例、妊娠性変化 43.3%、線
維腺腫 31.0%、嚢胞 11.3% であった。S 成績報告に加え、産褥期に経験した
乳癌症例も紹介し、一般的な乳癌検診とは異なる、女性の乳癌検診への第一
歩となることを願う妊婦乳房 S への理解を深めて頂こうと考えている。利益
相反なし。
【はじめに】ホルモン補充療法 (HRT) による乳癌発生リスクの増加から ,HRT
を行う機会の多い婦人科医には定期的な乳房検査が推奨される . 乳房検査に
は主にマンモグラフィー (MMG) が用いられるが , 高濃度乳腺の偽陽性率増加
も報告されており HRT による乳腺濃度の変化が読影に及ぼす影響が懸念され
る . 今回は , MMG 検診偽陽性症例を用いて HRT の施行が読影に与える影響を
検討した 【
. 方法】2010 年 1 月から 12 年 12 月の間 , 当院にて MMG 検診 ( 市検
診および任意型検診 ) を行い最終的に乳癌と診断されなかった 5,890 症例を
対象とした . まず HRT 施行の有無別に偽陽性 ( カテゴリー 3 以上 ) 率を検討し ,
次に HRT による乳腺濃度上昇が MMG の読影に及ぼす影響も併せて検証すべ
く , 同年代における両群間の乳腺濃度について視覚的な評価を比較した . 尚 , 読
影結果による判定は HRT の有無を知らされていない状況で行われていた 【
. 結
果】偽陽性は全体で 535 例 (9.1%) に認められたが , 局所性非対称陰影 (FAD)
によるものが最も多かった (71.4%). その内訳は ,HRT 施行中の HRT(+) 群
107 例 ( 平均 53.6 歳 ) と未施行の HRT(-) 群 5,783 例 ( 平均 52.4 歳 ) であった
が , 両群間に年齢の差は認められなかった . しかしながら , 偽陽性率において
は HRT(+) で 19.6%(21 例)と HRT(-) 群の 8.9%(514 例)に比して有意に高
い傾向が認められた (p < 0.01). マンモグラフィーによる乳腺濃度は比較的判
定の容易な脂肪性乳房などの乳房全体が透見できる症例は ,HRT(+) 群の 4 例
(3.7%)に対し HRT(-) 群は 589 例(10.2%)と ,HRT(+) 群で有意に少ない傾
向が見られた(p = 0.03)【
. 考察】HRT 施行中の患者に MMG 検診を行う場合 ,
高い乳腺濃度に起因して ,FAD によるカテゴリー 3 以上の偽陽性を生じる傾向
があるものと考えられた .
一般セッション(ポスター掲示)
11739
10428
原発性乳癌のステージ分布と 2 年以内医療機関受診率の検討
マンモグラフィによる部位の推定に関する検討
GP-1-029-08
GP-1-029-09
1
がん研有明病院 乳腺センター、2 がん研有明病院 乳腺センター 内科、
3
がん研有明病院 臨床病理部、4 がん研究会がん研究所 乳腺病理部
1
小野 寿子 1、坂井 威彦 1、小林 心 2、伊藤 良則 2、堀井 理絵 3、秋山 太 4、
岩瀬 拓士 1
広利 浩一 1、伊関 恵美子 2、井上 泰彦 2、伊藤 智美 2、松尾 容子 1、
三木 万由子 1、田根 香織 1、高尾 信太郎 1、鯨岡 結賀 3、大貫 幸二 4
3
【はじめに】
昨 年、NEJM か ら 出 さ れ た 論 文 ‘Effect of Three Decades of Screening
Mammography on Breast-Cancer Incidence’ (Bleyer AB et al. New Engl
J Med 2012;367:1998-2005)により、Mammography 検診の意義につい
て話題となった。日本でマンモグラフィ検診が導入されたのは 2000 年からで
あるが、当院におけるその時期からの乳癌症例のステージ分布を明らかにし、
また乳癌への関心度として 2 年以内医療機関受診率を検討した。
【対象と方法】
当院で 2001 年から 2010 年に診断された原発性乳癌症例 7853 例(同時、異
時両側乳癌を除く。Paget、LCIS は除く。)のステージ別推移を調べた。また
2007 年から 2010 年の手術症例で、2 年以内医療機関受診の有無と診断時の
腫瘤径、リンパ節転移率の関係を検討した。臨床病理学的情報は当院の原発
性乳癌症例のデータベースを用いた。
【結果】
乳癌患者が増加するなかで非浸潤性乳管癌(DCIS)の患者数は増加していた。
また early(=DCIS、Txn0M0) と late(Txn1 ~ M0、TxNxM1)stageにわけ
て年次ごとの患者数をみると early stage は増加傾向であるのに対し、late
stage はほぼ横ばいであった。乳癌診断前 2 年以内医療機関受診率は、腫瘤
径が大きくなるにつれて低下し、リンパ節転移がある症例では有意に低く、
StageIV 症例では著しく低かった。
【まとめ】
現在日本では、乳癌患者が増加している一方で乳癌死が減少していないこと
が指摘されており、検診受診率が低いことがその原因とされている。今回の
検討は当院に来院した患者数をベースに検討しているため、自治体検診の効
果について疫学的な結論が言えるものではない。しかしステージの高い患者
群が医療機関にかかっていない傾向があった。病悩期間の長い患者も多く存
在していたことが予想され、検診というきっかけで病院を受診することで少
し早いステージで発見されていた可能性があると考えられた。
338
兵庫県立がんセンター 乳腺外科、2 兵庫県立がんセンター 放射線部、
筑波記念病院 放射線科、4 岩手県立中央病院 乳腺・内分泌外科
乳癌検診での総合判定における病変部位の推定は ,US において , 特にどの
部位を超音波プローブで慎重に走査するかにおいて重要である.[目的]日
本乳癌検診学会総合判定委員会で準備している総合判定マニュアルに基づい
て ,MMG 2方向撮影から位置の推定を行い , その精度を確認し , また誤差が大
きくなる因子を検討する.[対象と方法]当院で診療を行った 2cm 以下の腫瘤
が MMG および同時期に撮影された CT にて確認できた 100 例を対象とした.
MMG と CT の部位の比較は乳頭を中心とした直交座標系(X 軸、Y 軸)を用い
た .MLO 撮影では体表に乳頭を通り撮影角度に一致する線(O 軸 : oblique)
を想定し、この O 軸が MMG 上乳頭からフィルム縁に下ろした垂線(MLO 部
位推定基準線)に投影されるとしてこの基準線から病変までの距離を計測し
た.CC を用い同様な方法で計測し,2方向からの情報で病変の部位を算出し
た.また同時期に撮影された CT の画像データより , 乳頭を中心とした 3D 構
成 MPVR(Multi Projection Volume Reconstruction)を作成し , 病変の部位
を計測した.それら MMG と CT で算出した位置情報の誤差を X 座標 ,Y 座標
ごとに算出した.また誤差の大きくなる(≧ 15mm)因子として ,Body Mass
Index, 乳房の構成 , ポジショニング , 撮影角度 , 乳房厚(CT), 乳房厚(MMG),
乳頭腫瘍間距離 (NTD) に関して X 座標 ,Y 座標ごとに評価を行った.[結果]
その誤差は X 座標方向 6.2mm (2. 9-12.0),Y 座標方向 10.0mm (6.5-17.
5) median (IQR) であった.誤差が大きくなる因子の検討では , 多変量解析
において X 座標では乳房厚(CT)で ,(20mm 未満に対して 40mm を超えるも
の Odds ratio 21.3 95%CI(2.28-492.8) ,p=0.006), Y 座標では NTD で有
意差を認めた. (40mm 未満に対して 40mm 以上で Odds ratio 7.36 (2.3926.3), p=0.004)[考察]本法はおおむね良好な結果であり ,MMG と US の同
時併用検診の際にも , 位置の推定の際に有用であると思われた.ただし X 座標
では乳房厚 (CT) 大きいもの ,Y 座標では NTD が大きい症例では誤差が大きく
なることがあり注意を要する. [ 結語 ] 今回の提唱されている位置の推定の方
法は比較的簡便で再現性があり , 有用な方法である.
10961
10931
乳がんの超音波診断用モデルの製作
乳がん検診のメリットの検討
GP-1-029-10
ポスター掲示
GP-1-029-11
広島大学歯学部 口腔健康科学科口腔工学専攻
1
濱本 有美
久芳 さやか 1、南 恵樹 1、川上 総子 1、崎村 千香 1、山之内 孝彰 1、
松本 恵 2、矢野 洋 2、永安 武 2、江口 晋 1
【背景】乳癌検診による生存率向上の報告は複数みられるが、長崎県の乳癌検
診受診率は 25% 強であり受診率が向上しない。無症状のうちに乳癌を診断
することのメリットは生存率向上以外に何があるだろうか。【目的】当院での
レトロスペクティブスタディより、乳癌を無症状で見つける事のメリットを
明らかにする。【対象・方法】2002 年から 2010 年までに当院で原発性乳癌
に対し治療を行い、発見契機の明らかな 512 例を対象とした。無症状で発見
した割合、年代ごとの変遷、症状の有無と発見時の Stage、サブタイプ、術
式、予後を検討した。【結果】512 例中無症状は 171 例 (33%)、有症状は 341
例 (67%) であった。無症状では MMG 異常 71 例、検診での触診異常 28 例、
CT 異常 18 例の順であった。有症状では腫瘤が 304 例、乳頭分泌 15 例、疼痛
9 例の順であった。無症状での発見は 2002 年から 2005 年では 27%、2006
年から 2010 年では 37% と有意に無症状で発見される割合は増加している
(p=0.03)。発見時の Stage0, 1 の割合は無症状では 68%、有症状では 36%
と有意に無症状では早期乳癌の割合が高かった(p < 0.0001)。術式におい
て、乳房部分切除術は無症状では 75%、有症状では 55% で、無症状での発
見は乳房部分切除術をより選択できた (p < 0.0001)。サブタイプにおいて、
Luminal ( ホルモン受容体 (HR) 陽性、HER2 陰性 ) は無症状では 76%、有症
状では 66% と無症状では有症状と比べ Luminal が多く、無症状での発見は化
学療法の絶対適応のサブタイプの割合が低かった (p=0.04)。Stage をあわせ
た予後解析では、Stage 2 の 5 年 disease specific survival(DSS) は無症状で
は 100%、有症状では 91% であった (p=0.03)。Stage 1、3、4 では差を認
めなかった。Stage 2 で症状の有無で DSS に差が出た理由として、リンパ節
転移は両群に差を認めなかったが、腫瘍径の平均値は有症状で 27.6cm、無症
状で 21.8cm と有症状の方が大きかった (p=0.006)。今後リンパ節転移の個
数や Grade などの検討も加えたい。【結語】無症状で発見された症例は有症状
と比較し、早期乳癌・乳房部分切除術・Luminal の割合が多かった。予後の
改善以外にも検診のメリットはあり、適切な啓蒙により検診受診率の上昇に
つなげたい。
11949
11035
検診受診から精密検査を受け診断を受けるまでの必要な看護
乳癌検診受診者のニーズにこたえる自己検診の指導
GP-1-029-12
GP-1-029-13
1
ちば県民保健予防財団総合健診センター 乳腺科
2
齋藤 智子、高忠 ミキ、森塚 智子、橋本 秀行
千葉県の乳がん検診受診者数は、年々増加しており、当施設では1年間にマ
ンモグラフィ検診、超音波検診を合わせ約16万人の検診を実施している。
検診から受診のため自覚症状のない患者が精密検査を受け乳がんと告知を受
け医療機関紹介に至るまでの過程を行っている。精密検査を受診までの過程
では、要精密検査になると乳がんと思い込み精密検査の内容や結果がいつ出
るのか、受診までに乳がんが悪化するのではないかなど様々な不安が交差し、
乳がんに対しての情報収集を行う。検診実施自治体や当施設に電話で問い合
わせをし、検診実施自治体と当施設で対応を行うこともある。また、当施設
を受診した患者は、検査に対しての不安を抱え検査となるため不安を訴える
ことが多い。このため、検診実施自治体で検診を受け精密検査を受診し乳が
んと告知されるまでには継続した看護支援が必要となる。乳がんと診断を受
けた方だけが看護の対象ではなく、検診から乳がんと診断を受ける診断過程
も看護を必要とする。検診実施自治体と検診機関が一体となり患者のサポー
ト体制が必要となる。したがって、当施設と検診実施自治体との連携した体
制作りが患者を支えるうえで重要である。今回、検診受診から精密検査まで
の実施主体での看護と精密検査で乳がんと診断を受けるまでの必要な看護支
援は何かを報告する。
医療法人倚山会田岡病院 外来看護部、
医療法人倚山会田岡病院 乳腺甲状腺科
谷崎 圭 1、林 陽子 1、古田 麻実子 1、添木 早予子 1、富田 沙郁 1、
米田 佳世子 1、三木 仁司 2、開野 友佳理 2、沖津 奈都 2、森本 忠興 2、
岡田 絵里 1、鏡 美帆 1、藤島 智子 1、藤原 洋子 1
【はじめに】乳癌死亡率の減少にはなによりも早期発見が肝要である。そのた
めに乳癌検診の受診が非常に有用であるが、乳癌は体表臓器の癌であるがゆ
えに定期的自己検診も重要である。そこで自己検診を行っている人はどの程
度いるのか、自己検診をしない人はどのような理由によるのか、また自己検
診を行うように指導するためにはどのような指導方法がよいのかなどを検討
した。【対象及び方法】2013 年 8 月から 11 月までに当院で乳癌検診を受診し
た 247 名に自己検診に関する無記名のアンケート調査を行い、161 名(回答率:
65%)から回答を得た。当院での自己検診指導法は、医師による検診後、看護
師がパンフレットと乳癌触診モデル(置き型モデルおよび装着型モデル)を用
いて約 10 分間の個別指導を行った。【結果】1)自己検診実施率と自己検診をし
ない理由:自己検診を実施していると回答したのは 39%と低率であった。自
己検診を行っていない理由として 29%の回答者は「自己検診の方法がわから
ない」、25%が「自分が触ってもわからない」、23%が「面倒・時間がない」と、
多くの人が自己検診の知識不足や必要性を実感していないことなどを理由に
挙げた。また、17%が「検診で医師が見てくれるから」と医師任せの回答をした。
2)自己検診指導後の認識の変化:指導前に自己検診を実施していないと回答
していた人の 91%が指導後に「今後、自己検診をしようと思う」と回答した。
3)自己検診指導方法に関して:ほとんどの人が「パンフレットによる説明」
「置
き型モデルと装着型モデルによる触診法の実習」のすべてが必要であると回答
していた。しかし、6%は「装着型モデルによる実習」は不要と回答しており、
その半数はモデルの装着などに時間がかかることを理由に挙げていた。
【考察】
自己検診の実施率は 39%と低率であり、その大きな要因として検診方法に関
する知識不足や必要性を実感していないことなどが考えられた。自己検診指
導後の認識の変化から、自己検診指導は知識不足に対して有用で今後の自己
検診実施への動機づけに寄与しうると思われた。自己検診の指導内容に関し
てはパンフレットのみでは不十分で、触診モデルを用いた実習が有用である
と考えられた。今後の課題として、医師による定期検診に安心し自己検診を
不要と考えている人に対する自己検診の重要性の啓発などが必要であると考
えられた。
339
一般セッション(ポスター掲示)
【緒言】 我が国では、女性が生涯で乳癌に罹患する割合は 16 人に 1 人であり、
年間約 6 万人の女性が乳癌と診断されている。乳癌は、比較的悪性度の低い
癌の 1 つとされ、早期発見・早期治療により高い確率で完治させることがで
きる。乳がん検診は、乳癌の早期発見のためにも非常に重要であり、主とし
てマンモグラフィが用いられているが、特に若年者の場合、乳腺実質も病変
部も白く高濃度に描出されるため、乳腺内の異常がわかりにくいことがあり、
超音波検査の方がより有用とされている。【目的】 現在、乳腺外科若手医師
や研修医の教育用として乳腺穿刺用ファントムモデルがあるものの、超音波
検査では実際の乳腺外来患者における描出画像とは異なる画像しか得られて
いない。そこで本研究では、エピテーゼの製作技術を応用して、臨床画像に
より近似した画像が得られる超音波診断用乳癌モデルを製作し、その有用性
を明らかにすることを目的とした。【材料および方法】 赤外分光法(infrared
spectroscopy;IR)により穿刺用ファントムモデルの材料特性を明らかに
し、それに近似した材料を用いて超音波診断用乳癌モデルを製作した。乳腺
組織層としてはポリアクリル酸ナトリウムおよびシリコーン(KE-1310ST;
信越化学工業社製)を、皮下脂肪層はシリコーン単独を、大胸筋層は数枚重
ねたアルミホイルをそれぞれ用いた。また、乳腺組織内には病変(癌腫)を仮
想したものとして、中にサラダ油を入れた小カプセルを 3 か所埋入した。な
お、製作した乳癌モデルの画像評価は、デジタル超音波診断装置(HI VISION
Ascendus;日立アロカメディカル社製)を用いて、日本乳癌学会認定乳腺専
門医および臨床検査技師により行った。【結果および考察】 超音波検査で生
体に近似した画像が得られる乳癌モデルを製作することができ、評価者から
良好な評価を得た。ただし、乳腺組織として用いたポリアクリル酸ナトリウ
ムは、操作性や保存条件が悪く、埋入した病変部のモデル内での移動が認め
られたため、乳腺組織相当部のシリコーンに塩化ナトリウムを加え、改良を
施した。【結論】 本研究で、エピテーゼの製作技術を応用して製作した超音
波診断用乳癌モデルは、超音波検査・診断の教材として利用可能であること
が示唆された。
長崎大学大学院 移植・消化器外科、2 長崎大学大学院 腫瘍外科
ポスター掲示
11361
10934
精神科病院看護師の精神疾患患者の乳がん検診に対する意識
当科で施行した乳房石灰化病変に対するステレオガイド下マン
モトーム生検の検討
GP-1-029-14
GP-1-030-01
福岡逓信病院 看護部
長岡赤十字病院 外科
竹尾 寒奈
萬羽 尚子、島影 尚弘
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】精神科病院に入院中の患者が検診を受けることができていない現
状があり、精神科病院の職員が患者の乳がん検診の現状や必要性に対してど
のように考えているか疑問に思い、職員の意識調査を行った。
【目的】精神科病院看護師の患者の乳がん検診への意識の実態について把握し、
保健行動の一助とする。
【方法】A 県の精神科 B 病院に勤務する職員 270 名を対象に患者の乳がん検診
に関する調査用紙を配布し、自記式質問紙調査を実施した。
【結果】看護師は 195 名中 159 名より回収し、回収率 81.5%であった。精神
科患者の乳がん検診の必要性について 94%が必要と答え、理由として「精神
疾患に関係なく平等」「自らの気づきや訴えが少ない」「乳がんに罹患した患
者がいた」という意見が多かった。そして、少数であるが「検診の案内を配送
してほしい」「患者や家族も安心する」という意見もあったが、「どちらとも
言えない」と答えた看護師は 4.4%であった。次に患者の乳がん検診について
考えたことがあるかという設問に対して「ない」と答えた看護師は 76.1%で
あった。対象施設の地域では病院に住所がある患者は、集団検診での介助や
付添いが困難という理由で検診案内の配送がされていないことを「知らない」
と答えた看護師が 91.8%となった。更に、入院中の患者の乳がん検診経験を
知っている看護師は 14.5%と少なく、患者から検診を受けたいと相談を受け
た者は 4%、家族からの相談は 5%と少ない結果となった。精神科において乳
がん検診が普及しない要因の設問では「検診に対する理解や同意の難しさ」が
83.6%と最も多く、次に「家族の理解や意識」「機会がない」「患者自身の情報
不足」が約 60%、「患者の病状」「医療者の理解や意識、情報不足」が約 50%
という結果となった。
【考察】B 病院の看護師は患者に対する乳がん検診の必要性は感じているが、
患者と接する中で意識的に関わった経験が少ないことが明らかとなった。精
神科単科病院のもつ背景として、精神疾患をもつ患者の特性から検診への理
解や同意の難しさがあること、援助費用や地域、病院としての検診システム
の確立が不十分であること等の課題があると考える。そのような現状の中で、
早期発見につなげるために、看護師の知識や意識の向上と日頃の観察や関わ
り、家族への教育や検診への啓発活動ができる看護師の教育体制が必要であ
ると考える。
当科で施行した乳房石灰化病変に対するステレオガイド下マンモトーム生検
の検討長岡赤十字病院外科 萬羽尚子、島影尚弘【目的】当施設でステレオガ
イド下マンモトーム生検 ( 以下、ST-MMT) を施行した症例について臨床病理
学的に検討した。【対象・方法】2009 年 1 月から 2013 年 3 月までに ST-MMT
を施行した 263 例のマンモグラフィ ( 以下、MMG) と病理学的所見、組織診
断後の方針や経過等について検討した。【結果】受診契機は、2 次検診 224 例
(85.2%)、他院からの ST-MMT 依頼が 6 例 (2.3%)、有症状が 21 例 (8.0%)、
術後フォロー中の MMG での異常指摘が 12 例 (4.5%) であった。MMG のカテ
ゴリーの内訳は、3 が 155 例 (58.9%)、4 が 85 例 (32.3%)、5 が 22 例 (8.3%)
であった。なお、血性乳汁分泌の精査のため、カテゴリー 2 の石灰化に対し
ST-MMT を施行した症例が 1 例 (0.5%) であった。初診の段階で ST-MMT を
施行した症例の内訳は、カテゴリー 3 が 130 例 (83.9%)、カテゴリー 4 が 83
例 (97.6%)、カテゴリー 5 が全例であった。ST-MMT の結果、乳癌と診断さ
れた症例は 78 例 (29.7%) で、カテゴリー 3 群が 25 例 (16.1%)、カテゴリー
4 群が 35 例 (40%)、カテゴリー 5 群が 18 例 (81.8%) であった。全例、手術
を施行したが、最終病理診断で非浸潤性乳管癌 ( 以下 DCIS) と診断された症例
は、 そ れ ぞ れ、19 例 (76%)、22 例 (62.8%)、12 例 (66.7%) で あ り、 全 乳
癌のうち 67.9% を占めていた。なお、良性と診断され経過観察中の症例で、
後に乳癌の診断に至った症例は認めていない。石灰化の形態・分布による内
訳は以下のとおりである。悪性は、微小円形・集簇・区域群では 8 例 (15.3%)、
淡 く 不 明 瞭・ 集 簇 群 で は 15 例 (16.2%)、 淡 く 不 明 瞭・ 区 域 群 で は 21 例
(37.5%)、多形不均一・集簇群では 13 例 (41.9%)、多形不均一・微細線状・
区域群では 17 例 (81.0%) であった。初診の段階で、経過観察の方針となった
症例は 27 例 ( カテゴリー 3 群 25 例、カテゴリー 4 群 3 例 ) であった。27 例の
初回 ST-MMT までの観察期間の中央値は 6 か月 (2~26) で、このうち 21 例が
石灰化の形態や分布所見の増悪を契機とし、7 例は本人希望を契機としていた。
悪性と診断された症例は 10 例 ( カテゴリー 3 群が 8 例、カテゴリー 4 群が 2 例 )
で、いずれも術後の永久診断で DCIS と診断された。【結語】今後も症例を重ね、
特にカテゴリー 3 群の ST-MMT の適応について、検討を重ねていきたい。
10595
11706
マンモトーム生検で診断のついた石灰化症例の検討
当院でステレオ下マンモトーム生検を施行した、淡く不明瞭な
石灰化病変を呈した症例の検討
GP-1-030-02
1
GP-1-030-03
さきたクリニック、2 兵庫医科大学 乳腺内分泌外科
総合上飯田第一病院 外科
先田 功 1、三好 康雄 2
背景:乳がん検診の不利益を減少させるためには不必要な精密検査を減少さ
せなければならない。マンモグラフィ検診においては、しばしば確定診断に
苦慮する微小石灰化症例に遭遇する。これらに対してステレオガイド下マン
モトーム検査をするかどうかのより厳密なふるい分けが重要と思われる。目
的:マンモグラフィで微小石灰化の所見がありステレオガイド下マンモトー
ム生検にて確定診断のついた症例の良悪性特徴について検討した。方法:
2012年に当院で実施したマンモグラフィ検査は3149例であった。そ
のうち微小石灰化にて確定診断のためステレオガイド下マンモトーム生検を
必要としたものは46例であった。そのうち悪性は12例、良性は34例で
あった。石灰化の形状、分布、密度およびカテゴリー分類につき良悪性の特
徴について検討した。結果:形状では多形、淡く不明瞭、微小円形が悪性で
それぞれ25%、25%、50%に対して良性では6%、32%、62%であっ
た。分布については区域性、集簇性が悪性で17%、83%に対して良性で
は44%、56%であった。密度については密、多、粗に分類したところ悪
性で25%、25%、50%に対して良性では21%、21%、58%であっ
た。カテゴリー分類では3と4と5が悪性で75%、17%、8%に対して
良性では76%、24%、0%であった。考察:診断困難な微小石灰化症例
につき形状では多形の場合に悪性の比率が高い傾向にあった。分布では区域
性の場合、必要以上に悪性よりに解釈する傾向があった。密度とカテゴリー
分類に関しては良悪性に特徴の差は認められなかった。結語:微小石灰化症
例においては画像診断のみによるふるいわけには限界があり、確定診断のた
めにはステレオガイド下マンモトーム生検が必要と思われた。
山内 康平、窪田 智行、三浦 重人、雄谷 純子、加藤 万事
【背景】検診マンモグラフィの普及により、石灰化病変で見つかる乳癌症例が
増えてきている。マンモグラフィでの石灰化病変の中でも、形態により悪性
頻度が異なるため、より細かい形態診断が重要である。【対象と方法】2010 年
1 月より 2012 年 12 月までに当院でステレオ下マンモトーム生検(ST-MMT)
を施行した全 509 例 (23 ~ 83 歳 ) を対象とした。このうち、ST-MMT 前のマ
ンモグラフィ診断で、淡く不明瞭な石灰化病変を呈した 113 例 (23 ~ 70 歳 )
について検討した。【結果】全 509 例の ST-MMT の結果、良性疾患;342 症
例、悪性疾患;157(30.8%)、鑑別困難;11 例であった。石灰化の形態毎の
症例数は、微小円形;329 例、淡く不明瞭;113 例、多型性;59 例、微細線
状 / 分枝状;8 例であった。その内、悪性であった割合はそれぞれ、微小円形;
99 例 (30.1%)、淡く不明瞭;17 例 (15.0%)、多型性;32 例 (54.2%)、微細
線状 / 分枝状;7 例 (87.5%) であった。淡く不明瞭であった 113 例の内、分
泌型石灰化;90 例 (79.6%)、壊死型石灰化;2 例 (1.8%)、間質型石灰化;4
例 (3.5%)、嚢胞内石灰化;8 例、不明;9 例であった。壊死型石灰化症例は 2
例とも悪性症例であった。【考察】微小円形病変では ST-MMT 施行症例に主治
医のバイアスが入り、より良性を考える症例では経過観察となるため悪性診
断率が高くなる。一方、多型性病変では超音波検査下で石灰化病変が同定で
きる症例もあり ST-MMT での悪性診断率は下がる傾向にある。しかし淡く不
明瞭な石灰化病変を呈した症例では、超音波検査では同定しにくいことが多
く、診断は ST-MMT に頼ることとなる。当検討においても悪性診断率は 15%
と、形態別での診断率は低かった。今回、淡く不明瞭な石灰化病変で見つかっ
た乳癌 17 症例の多くは分泌型石灰化病変であったが、2 例に壊死型石灰化病
変を呈していた。淡く不明瞭な石灰化病変症例では悪性の可能性があり、STMMT による診断、もしくはより慎重な経過観察が重要と考える。
340
11878
10628
C ‐ 3 と判定された乳腺石灰化病変の画像検査と病理組織学的検
討
FAD における 3D マンモグラフィーの有用性
GP-1-030-04
1
ポスター掲示
GP-1-030-05
医療法人明和病院 乳腺内分泌外科
日本大学医学部外科学系 乳腺内分泌外科、2 日本大学駿河台病院 外科
友松 宗史、岸本 昌浩、後野 礼、小野 朋二郎
前田 哲代 1、榎本 克久 1、櫻井 健一 1、平野 智寛 1、原 由起子 1、
松本 京子 1、和賀 瑛子 1、長島 沙樹 1、鈴木 周平 1、天野 定雄 1、
阪上 雅史 1、谷 眞弓 2、飯塚 美紗都 2
[ 目的 ]MMG 画像分解能の向上により要精査率が増加している。要精査とされ
る C3 石灰化病変の中には良性疾患も多く含まれる。現在のカテゴリー分類で
要精査となるC3石灰化の超音波画像や病理組織診断を照らし合わせて精査
を要する石灰化の特徴を検討する。[ 対象と方法 ]2012 年 1 ~ 12 月に当院に
て C3 石灰化を指摘された 136 名の MMG、超音波画像、病理組織標本を検討
した。[ 結果と考察 ] 全症例中 10.5%であった。石灰化は、密度が高く、拡大
写真をとると、棍状・数珠状を呈し多形石灰化としてC4にカテゴリーが上
がる症例、区域性とは言えないまでも腺葉を反映した分布を取る特徴が見ら
れた。乳癌症例 14 例を検討すると、US で乳癌を疑う症例 (C4,5) は 6 例。良
性疾患を疑うが DCIS を否定出来ない症例 (C3) は 2 例。良性疾患を考えた症
例 (C2) が 2 例。単発嚢胞 (C2) 症例が 2 例。乳腺内に高輝度点状エコーのみ描
出したもの (C2) が 1 例。異常所見なしが 1 例。異常なし又は良性病変と思わ
れる症例でも浸潤癌を認めた。[ 結論 ] 過剰な生検は避けるべきだが他画像を
参考に悪性が疑われる時は US で良性の所見でも積極的な生検が大事である。
10100
11043
当院 MMG において FAD(C3) と判定された症例について臨床病
理学的検討
乳癌診断における Digital Breast Tomosynthesis の有用性の
検討
GP-1-030-06
GP-1-030-07
竹田クリニック
国家公務員共済組合連合会平塚共済病院 外科
東 純子、竹田 靖
谷 和行、松浦 仁、嶋田 裕子、菅野 健児
( 目的 ) 当院 MMG において FAD(C3) と判定された症例について臨床病理学的
検討を行った。( 対象 ) H20.1~H24.12 までの当院乳腺外来と検診受診者に
MMG 検 査 お よ び US 検 査 を 施 行 し、MMG に お い て FAD(C3) と 判 定 さ れ た
187 症例を対象とした。(結果)今回 MMG にて FAD(C3) と判定された 187 症
例に US を併用させる事で 89 例 (48%) が要精査不要との判定が可能となり、
要精査となった US で C3 以上の 98 症例 (52%) の内 90 症例 (48%) に FNA を
施行した。その結果 FAD 全体では線維腺腫が 38 例 (20%)、乳腺症が 26 例
(14%)、乳癌は 14 症例 (7.5% ) であった。また US で C3 と判定した症例の臨
床診断では、線維腺腫が 51%、乳腺症が 36%、乳癌が 4% を占め、US で C4
と判定した症例では乳癌が 72%、線維腺腫が 21%、乳腺症が 7% を占め、
US で C5 と判定した症例では乳癌が 100% であった。MMG において FAD(C3)
で発見された乳癌の病理所見では scirrhous が 9 症例 (64%) と最も多く、病
期では stage 1が 9 症例で 64% を占めた。( 結語 ) 今回 MMG にて FAD(C3)
と判定された 187 症例の内、US を併用する事によって約半数が要精査不要と
でき US は有用であった。当院 MMG の FAD(C3) の臨床病理学的検討において
は乳癌が 14 症例 (FAD 全体の 7.5% ) で全癌 (H20~H24:346 例 ) の 4% だっ
た。
【目的】当院では 2013 年 3 月に Digital Breast Tomosynthesis(シーメンス社
製「MAMMOMAT Inspiration」
)<以下3D >を導入した。従来の MMG <以
下2D >と比較し , 前後の乳腺の重なりを排除できることや、病変の位置情報
が明瞭になるなどの長所が唱えられている一方で、被曝量の増加や撮影時間
の延長、小さな良性病変を拾いすぎるなどの問題点も指摘されている。今回
我々は、2D での診断に3D を加えることで所見および診断がどのように変化
するかを検討し、3D の有用性を検討することを目的とした。【対象および方
法】2013 年 3 月から 2013 年 12 月までに当科で施行した3D 症例 268 症例の
うち術前乳癌症例は 21 例(22 乳房)であり、また乳房温存術後のフォローアッ
プ MMG 症例は 21 例(21 乳房)であった。これらの2D の所見をもとに3D を
上乗せすることで腫瘤、FAD、石灰化、構築の乱れなどの所見がどのように
変化するか、またそれによりカテゴリーがどのように変化するかを検討した。
そしてこれらの結果をもとに、乳癌診断における3D の有用性について検討
した。【結果】乳癌症例 22 乳房のうち3D を加えることでカテゴリーが変化し
た症例は 5 例(23%)で、その内訳はカテゴリー4から5に上昇した症例が 3
例、カテゴリー3から5に上昇した症例が 1 例、カテゴリー1から 3 に上昇し
た症例が1例であった。カテゴリー 5 に上昇した4例はいずれも spiculated
mass の出現がその理由であり、カテゴリー3に上昇した 1 症例は FAD の出現
であった。また 22 乳房のうち2D で異常を認めなかった症例は 3 例(14%)で
あったが、これらはいずれも3D でも異常所見を認めなかった。一方、温存
術後フォローアップ症例 21 例に関しては、2D でも3D でもいずれも異常所
見を認めなかった。【考察】3D 施行により2D の約 1.5 倍の被曝量の増加と約
30 秒間要する圧迫時間が必要となるが、3D の施行で 20%以上の乳癌症例の
カテゴリーが上昇し、より診断能が高まる可能性が示唆された。特に3D によ
り spiculated mass が描出されやすい可能性が示唆された。一方で3D を使
用しても病変の描出できない乳癌は存在し、他の modality での診断を要した。
また今回の検討では明らかとならなかったが、温存術後乳房の MMG では術後
変化のため2D での診断が困難なことがあり、3D が局所再発検索に有用とな
る可能性があると思われた。【おわりに】上記に加え MMG 検診二次精検におけ
る3D の有用性に関しても検討し報告する。
341
一般セッション(ポスター掲示)
【緒言】通常のマンモグラフィ(以下 2DMMG)では乳腺の重なりにより 20%
の false negative が存在するが、false positive も多く存在し局所非対称性陰
影 ( 以下 FAD) として多くが再検査に至る。また近年、乳癌検診は乳腺超音波
検査 ( 以下 US) を併用する方向に向かいつつあるが、病変の過剰な検出が示唆
されている。今回われわれは 3D トモシンセシス ( 以下 3D) の有用性につき、
2DMMG、US、視触診と比較し検討した。【対象】2013 年 6 月から 12 月まで
に 3D トモシンセシス(MAMMOMAT Inspiration:シーメンス)を併用して精
密検査を行った 176 例。【結果】2DMMG ではカテゴリー ( 以下 Cat)3 の腫瘤
陰影 21 例(3D で 1 が 4 例、2 が 1 例、3 が 16 例)、Cat3 の石灰化 21 例(3D で
2 が 6 例、3 が 15 例)、構築の乱れ 20 例(3D で 1 が 4 例、3 が 2 例、4 が 2 例、
5 が 12 例)であった。Cat3 の FAD は 33 例あり(3D では 1 が 13 例、3 腫瘤陰
影 19 例、5 腫瘤陰影 1 例)、実際に乳癌であったのは 3D Cat 5 の 1 例のみで
あった。また、2DMMG で異常を指摘されなかった 1 例において 3D にてスピ
キュラを伴う腫瘤陰影で検出された乳癌が 1 例あった。US では腫瘤陰影が 87
例 あ り、Cat3 が 41 例(3D で 1 が 3 例、5 が 4 例 )、Cat 5 が 15 例(3D で 1 が
0 例、5 が 10 例)であり、US で検出された病変のうち乳癌のみが 3D と同様の
結果を示した。乳腺が非常に厚く US で検出されなかった 1 例において 3D で
乳癌が検出された。視触診では腫瘤 63 例(3D で 3 が 20 例、5 が 15 例)、硬結
17 例(3D で 3 が 4 例、5 が 1 例)であった。視触診で異常を指摘されなかった
4 例において 3D で乳癌が検出された。【考察】今回の検討では 2DMMG で Cat3
の FAD を指摘されたにも関わらず結果的に異常がなかった例は、3D ですべて
異常を指摘されず、無駄な FAD の精密検査をかなり省略し得る可能性が示唆
された。また、US で検出された良性腫瘍のうち 25% が 3D で検出されず、良
性病変の過剰な検出を抑える可能性が示唆された。逆に US で乳癌と診断され
た 11 例のうち 7 例 (64%) が 3D で検出可能であり、特異度においては US の
方が良好であった。視触診において異常を認めた乳癌症例は全て 3D で検出が
可能であった。また視触診で異常を指摘されなかった 4 例においてすべて 3D
で乳癌として検出され、今後 3D の導入により視触診を省略し得る可能性が示
唆された。【結語】3D トモシンセシスは、2DMMG、US、視触診と比較し、い
ずれも検出率が高く有用であった。
ポスター掲示
10328
11418
当院におけるトモシンセシスマンモグラフィ (3D-MMG) の有
用性の検討
乳房温存術中標本撮影での乳癌検出能:デジタルマンモグラフィ
とデジタルトモシンセシスの比較
GP-1-030-08
1
GP-1-030-09
八尾市立病院 乳腺外科、2 同 外科、3 同 病理診断科、4 同 看護科
1
2
2
3
4
野村 孝 、松山 仁 、徳岡 優香 、竹田 雅司 、吉野 知子 、森本 卓
1
名古屋市立大学病院 放射線科、
名古屋市立西部医療センター 放射線診断科、
3
名古屋市立大学病院 乳腺内分泌外科
2
1
一般セッション(ポスター掲示)
【背景・目的】通常のマンモグラフィ (2D-MMG) は、特に高濃度の乳腺で、病
変 の 描 出 力 に 限 界 が あ る。 当 院 で は 2013 年 4 月 3D-MMG 装 置 (Hologic 社
Selena Dimensio) が導入されたため診療および検診の一部に使用し、有用で
あった症例を経験している。しかし、不要な症例も多い。今回当院での既診
断例について、超音波検査 (US) を含む各モダリティの感度 ( カテゴリ (C)3 以
上を陽性と判定 ) と画像所見、対象乳腺の濃度を比較することで 2D のみに対
する 3D-MMG 追加の有用性について検討し、今後の検診への利用方法につい
て考察した。【対象・方法】2013 年 4 月~ 12 月に当院で施行した乳癌症例中、
2D、3D-MMG および US のすべてを施行した症例 67 例(71 病変:浸潤癌 56、
非浸潤癌 15)について、各々のモダリティの感度、画像所見、診断 C を比較した。
年齢 41 歳~ 83 歳(中央値 62 歳)腫瘍径 4.9mm ~ 50mm(15.5mm)。画像
の比較は以下のように有用性の順に分類して検討した。A:2D で描出できない
病変を 3D では描出。B:3D でより悪性の特徴があきらかとなり C が上昇。C:C
の変化はないが、病変が明瞭となる。D:2D-3D 間にあまり差がない。E:2D、
3D ともに描出せず。【結果】全病変の検討では、2DMMG での感度 78.9% か
ら 3D で 84.5% と上昇したが、非浸潤癌では 2D、3D ともに感度 60% で差が
なかった。全病変の画像の比較では A:5、B:10、C:30、D:15、E:11 病変で
あり、3D が有用ではなかった D、E が計 26 病変みられた。差のない D につい
ては乳腺濃度の低い症例が多く 11/15 例で乳腺散在以下であった。最も有用
性が高いと考えられる A 病変はすべて浸潤癌で、それらの乳腺濃度は、不均
一高濃度 4 例、乳腺散在 1 例であった。また、MMG で描出されない E 病変は
浸潤癌では 5/56 (8.9%) であるのに対し非浸潤癌で 6/15(40%) であり、非
浸潤癌に対する 3D 追加の有用性は低かった。また、全例 US での描出は可能
であった。(MR 後の 2nd US で指摘された 2 病変を含む)【考察】3D-MMG の
追加は、検診時の感度・特異度がともに上昇するとの報告があるが、被爆量
は増加する。乳腺濃度の低い症例では 3D-MMG の追加効果が少ないことから、
少なくとも繰り返し検診時には前回乳腺濃度による 3D 追加の選択を考慮すべ
きと思われる。また、US が併用可能な検診では 3D-MMG は不要と考える。
浦野 みすぎ 1、白木 法雄 2、後藤 多恵子 1、遠山 竜也 3、吉本 信保 3、
遠藤 友美 3、波戸 ゆかり 3、浅野 倫子 3
【目的】術中標本撮影における、デジタルマンモグラフィ ( 以下 DM) とデジ
タルトモシンセシス(以下 DBT)での乳癌検出能と広がり診断能を比較する。
【方法】対象は 2013 年 4 月~ 10 月までに術前化学療法未実施にて、乳房温
存術を施行した女性 39 人 (34-86 歳、中央値 64 歳 ) の 39 標本(浸潤癌:32
例、 う ち 21 例 で 乳 管 内 進 展 あ り、DCIS:7 例。T 因 子 は Tis:7、T1:26、
T2:6)。摘出標本の乳頭方向断端に長い縫合糸を結紮、皮膚方向断端に短い
縫合糸を結紮あるいは皮膚の一部を残し、方向付けを行った。MAMMOMAT
Inspiration (Siemens 社製 ) を用い、DM モード:25-34 kVp, 13-322 mAs、
DBT モード:25-34kVp, 13-137 mA で前後方向 (AP view) と切除標本割面
方向(LL view)で撮影した。いずれも圧迫は必要最小限とした。得られた画
像から病変同定の可否を判定し、組織所見(標本マッピングとルーペ像)と比
較し浸潤癌の浸潤巣・乳管内進展と、DCIS の範囲同定能を検討した。【結果】
AP view では DM・DBT モードとも、39 例中 37 例 (95%) の病変の存在が同
定された。DM・DBT モードとも、浸潤巣では 32 例中 31 例(97%)、乳管内
進展では 21 例中 14 例(67%)が同定された。DCIS は 7 例のうち DM モードで
1 例(14%)、DBT モードで 2 例(29%)が同定された。LL view では DM モー
ドで 39 例中 11 例 (28%)、DBT モードで 26 例(67%)の病変の存在が同定さ
れた。DM モードでの浸潤巣 32 例中 5 病変(16%)と乳管内進展 21 例中 3 例
(14%)に比し、DBT モードでは浸潤巣の 32 例中 23 例(72%)と乳管内進展
の 21 例中 8 例(38%)が同定された。存在判定、浸潤巣における両モード間
検定で有意差(p < 0.05)を認めた。DCIS は DM・DBT モードとも 7 例中 1 例
(14%)しか同定されなかった。【結論】LL view において、DBT モードは DM
モードより存在判定、浸潤巣同定が優れており、胸筋側断端評価に有用な可
能性がある。AP view では両モードで病変範囲同定能に優位差がなかった。
DCIS については両モードとも検出能が低かった。
11708
11459
乳癌診断における造影マンモグラフィの有用性
造影デジタルマンモグラフィにおける浸潤性乳管癌の病変長径
の検討
GP-1-030-10
GP-1-030-11
昭和大学病院 乳腺外科
1
国立がん研究センター東病院 放射線診断科、
国立がん研究センター東病院 乳腺外科、
国立がん研究センター東病院 臨床腫瘍部、
4
国立がん研究センター東病院 放射線部
池田 紫、森 美樹、明石 定子、橋本 梨加子、高丸 智子、吉田 玲子、
桑山 隆志、榎戸 克年、澤田 晃暢、中村 清吾、中島 恵、金田 陽子、
佐藤 大樹、渡邊 知映、奥山 裕美
【背景】造影マンモグラフィ Contrast Enhanced Spectral Mammography(CESM)
は、ヨード造影剤を用い高低2種の異なるエネルギーで乳房撮影を行い、新生血
管から造影剤が漏出しやすい腫瘍部位をサブトラクション下で造影剤の集まった
部位の差を強調するようにコンピューターで再構成する技法であり、CESMでは
癌細胞に集まった強調するため、通常のマンモグラフィ (MMG)では診断が困難
な乳腺濃度が高い乳房での病変検出に期待され ている。また構築の乱れや石灰
化、FADなどの良悪の判断に迷う症例に対しても有用と考えられている。今回、
MMGと診断精度を比較しCESMの有用性について検討し、した。さらに石灰化、
構築の乱れ、FAD症例に対し考察を加えた。
【対象・方法】2011 年 5 月 -2013 年 9 月に、MMG または乳房超音波でカテゴ
リー 3 以上の症例を対象とし、CESM を施行した。経静脈的に 1.5ml/kg のヨー
ド造影剤を注入し、2 分後に患側 MLO 像を低エネルギーと高エネルギーの 2
種類で撮影、続いて CC 像と通常の MMG と同様に撮影した。乳房辺縁より強
い造影効果を陽性とし病理組織結果との対比を行い、その精度について MMG
と比較検討した。
【結果】62 症例の病理学的背景は、悪性 43 例、良性 18 例であった。そのう
ち悪性では 39 例 (90.7%)、良性 15 例 (83.3%) で造影効果を認めた。悪性
の存在診断の感度 88.7%、特異度 83.3%、であった。一方 MMG では感度
55.8%、特異度 44.4% であった。悪性症例のうち 19 例は MMG では所見を認
めず、いずれも高濃度乳腺症例であった。そのうち 15 例(79%)は CESM で
病変が検出された。石灰化は 21 例で認め、悪性 14 例のうち 13 例、良性 7 例
のうち 1 例で造影効果が見られた。また FAD 症例 5 例中悪性は 4 例あり、その
全例で造影効果があり、構築の乱れ 3 例は全て悪性症例、3 例とも造影効果を
認めた。
【結論】CESM は感度、特異度ともに高く、高濃度乳腺症例における乳癌診断で
の CESM の有効性が示唆された。また石灰化、FAD、構築の乱れなど判断の難
しい症例でも有効であった。CESM は、被爆線量は MMG の 1.2 倍以下に抑え
られており国際的ガイドラインの「American Collage of Roentogenology」
の推奨線量を下回る。また撮影時間も約 5 分と短く MRI より簡便に施行でき
るため、今後臨床の場における発展が期待される。
2
3
岩田 良子 1、佐竹 光夫 1、和田 徳昭 2、米山 公康 2、山内 稚佐子 2、
久野 博文 1、西川 祝子 4、柳沢 かおり 4、康 祐紀子 2、藤井 誠志 3
【目的】造影マンモグラフィの検討では、乳癌の検出について行われることが
多いが、乳癌の広がり診断に対しても関心がもたれている。MRI が乳癌の広
がり診断では有用であり、CESM を MRI と比較することは興味深いところで
ある。dual energy 造影デジタルマンモグラフィ (CESM) を行い、病理組織
で病変長径が測定された浸潤性乳管癌において、CESM 病変長径を MRI、病
理と比較し検討したので報告する。【方法】対象は、2011 年 6 月~ 2013 年
11 月に CESM と MRI を施行し、病理組織で病変長径が測定された、浸潤性
乳管癌 38 症例 39 病変 ( 平均年齢 54.6 歳 )。乳頭腺管癌 13 病変、充実腺管癌
6 病変、硬癌 20 病変。撮影機器は GE メディカルシステムズ製 Senographe
Essential である。造影剤静注 2 分後に,低・高エネルギー領域で1組として
撮影し,再構成サブトラ画像を作成した。病変の長径を CESM と MRI で測定し、
病理と比較した。【結果】病理組織で病変長径は平均 18.8mm(7 ~ 36mm)、
CESM では 16.5mm、MRI で 16.3mm であった。CESM で病理組織より小さ
く計測された病変は 18 病変で平均 -8.9mm(-4 ~ -22mm)、MRI では 19 病
変で平均 -9.0mm(-3 ~ -19mm)、CESM で病理組織より大きく計測された
病変は 15 病変で平均 4.5mm(1 ~ 25mm)、MRI では 14 病変で平均 5.6mm
(1 ~ 38mm) であった。
【考察】CESM の病変長径測定は MRI に近い結果となっ
た。現在 CESM を行っている対象は通常のマンモグラフィで不明瞭な症例だ
けであるため小病変が多く、進展範囲が比較的限局されていたことが一因と
考えられる。CESM の対象範囲を広げると成績はかなり異なると予想される。
また、今回、乳管内進展の著明な症例も結果的に含まれていなかった。なお、
乳腺症の強い 2 症例は CESM で病変は検出されたが病変長径の計測が困難で、
今回対象とできなかった。さらに、CESM における検出の問題ではあるが、
MRI では病変が検出されたにもかかわらず CESM では病変が検出されなかっ
た 2 症例も対象外である。【結論】CESM は乳癌の範囲の把握において有用で
ある可能性が示唆された。
342
ポスター掲示
10287
11188
デジタル画像とフィルム画像の濃度分布特性
MMG で片側がカテゴリ- 1 と診断された両側乳癌 (MRI との比
較)
GP-1-030-12
GP-1-030-13
1
医療法人明和会辻村外科病院 放射線部、
2
医療法人明和会辻村外科病院 外科
1
2
川島 健 、辻村 享 、森垣 暁子
1
3
2
小橋 肇子 1、渡辺 博隆 1、辻本 正彦 2、多根井 智紀 3、岩本 崇 3、
芝 瑞穂 3、吉留 克英 3
【背景及び目的】マンモグラフィ ( 以後 MMG) は , 乳癌の発見に用いる第一のモ
ダリティで , 乳癌検診にて救命効果が証明されている . 一方 , MRI は術前検査
として必要不可欠であり , しばしば対側病変が指摘される . 今回 ,MMG で片側
が カ テ ゴ リ ー ( 以 後 C -)1 と 診 断 さ れ た 両 側 乳 癌 症 例 を 用 い ,MRI と 比 較
し ,MMG の問題点を検討した 【
. 対象】2006 年 5 月~ 2013 年 7 月まで , 細胞診
にて悪性と診断され , 術前に MRI を受けた両側乳癌患者 5 症例 10 乳房【方法】
MMG は ,BI-RAD に基づき C- 分類した .MRI は , 高分解能造影 T1W 画像を検
討 ,BI-RAD 及び戸崎らの提唱する乳管内進展の造影パタ - ンを用い ,C- 分類し
た .( 但し , 細胞診で悪性と診断された症例は造影パタ - ンに基づき分類した .)
【結果及び考察】結果は表に示す .2/5 例は異時性であるが , 最初の病変発見時
の術前 MRI で , 対側病変も指摘できた . MRI は ,Mammary Paget's は ,C-1 で
あったが , 残りは ,C-3 と 4 が 1 例づつで ,C-5 が 2 例だった .MRI は , 拾い上げ
も質的診断も可能であった . 一方 ,MMG で C-1 とされた症例に於て ,4/5 例中
は乳腺評価は不均一高濃度であった . この内 3 例の病変存在部位は ,A ~ C 領
域で , 乳腺密度の高い領域であった . 高濃度の乳腺の中からの病変の拾い上げ
は困難であると考えられた . 残り 1 例は乳腺評価は脂肪性であるが ,Mammary
Paget's で あ り ,MRI 同 様 ,MMG で 診 断 は 困 難 で あ る と 考 え ら れ た 【
. 結語】
MMG は 背
景乳腺に
より検出
能に限界
が あ る
が ,MRI は
拾い上げ
も質的診
断も可能
である .
10333
11768
iPad 用マンモグラフィデータベースを使った教材活用の試み
Her2 陽性乳癌のマンモグラフィ画像の特徴と伸展形式の考察
GP-1-030-14
1
GP-1-030-15
国家公務員共済組祭連合会立川病院 外科、2 服部外科胃腸科医院
1
1
1
1
1
5
1
服部 裕昭 、三島 江平 、金岡 里枝 、田渕 悟 、大高 均 、
服部 昭夫 2
【目的】現在マンモグラフィの読影はシャウカステンによるフィルム診断から
モニター診断へと急速に移行している。今回マンモグラフィ研修用教材とし
て「mhFiles」という独自フォーマットを用いたマンモグラフィデータベース
を制作することによりデジタル時代の研修方法とこのファイルの活用方法を
検討した。
【方法】以下の3種類のファイルを制作した。
(1)症例ファイル(MLO
+ CC + Spot + 解説で1症例)を1701症例制作。項目ごとに分類(乳癌、
SOL、石灰化、正常乳腺、その他)した。(2)各論ファイル(MLO + CC + 解
説で1症例)を585症例制作。項目ごとに分類(腫瘤、石灰化、構築の乱れ、
FAD)した。(3)模擬試験ファイル(30問で1ファイル)を12ファイル(計
360問)制作。この模擬試験のファイルは JavaScript を用いて点数計算(感
度、特異度、C 感度)が自動で計算され、自己の評価(AS/A/B-1/ B-2/C/D)
が表示されるようにした。
【結論】計2646症例のマンモグラフィデータベー
スのファイルを iPad で持ち歩く事ができるだけでなく以下のことが可能と
なった。
(1)PDF がベースのため特別な知識を必要としないでマンモグラフィ
の閲覧が出来るようになった。(2)時間や環境に左右されることなく自己学
習が出来るようになった。(3)症例の少ない施設や偏りのある施設において、
良性悪性含め多くの症例を閲覧することが出来るようになった。(4)デジタ
ルデータの特長を生かし、保存に対してフィルムのように劣化することがな
く、希な症例の蓄積・保存が出来るようになった。また PDF がベースとなっ
ているため将来的にもファイル形式の変更が必要ないと考えられた。(5)デ
ジタル時代の勉強会として事前にファイルを制作しておいて、当日症例をイ
ンストールした iPad(50台)とフィルムの読影を同時に行い、全員参加型の
ディスカッションをしながらの勉強会が出来るようになった。また当日だけ
でなく、後日ディスカッションを元に当日の症例で模擬試験のファイルを制
作し配布することで復習が容易に出来るようになった。今後のデジタル時代
の勉強方法の提案として学会当日はサンプルを配布しながら解説いたします。
名古屋医療センター 乳腺科、2 同 放射線科、3 同 臨床検査科、4 同 外科、
同 高度診断研究科
森田 孝子 1、大岩 幹直 1,2、須田 波子 1、佐藤 康幸 3、林 孝子 3、加藤 彩 3、
市原 周 4、森谷 鈴子 4、長谷川 正規 4、遠藤 登喜子 2,5
【はじめに】マンモグラフィ(MG)検診によって、
死亡率減少効果得るためには、
予後不良乳癌を早期に発見することが重要である。予後不良のサブタイプで
ある HER2 陽性乳癌について MG 画像の特徴と伸展形式を検討したので報告す
る。【対象と方法】2007 年 ~2012 年までの当院 HER2 陽性乳癌 86 例(検診発
見 25 例、自覚例 61 例)の MG 所見と病理結果を retrospective に検討した。
【結
果】図1で病理結果と MG 所見を示す。多形性石灰化が検診発見、自覚例とも
多かった。FAD を呈する DCIS は検診では US 発見、自覚例では、乳頭びらん・
乳頭分泌により、MG 単独での検出は難しかった。自覚例の IDC の腫瘤±石灰
化所見では、スピキュラは少なかった。検診発見の再発、乳癌死はなかった。
自覚例で手術不能例 6 例、再発治療中 2 例、再発後追跡不能例 1 例、乳癌死 9
例を認めた。【考察】Her 2陽性乳癌 MG 所見は、1. 壊死型石灰化 2. 淡く不明
瞭な石灰化 3.FAD ±石灰化 4. 腫瘤±石灰化 5. 構築の乱れであると考える。1
は検診のみならず、自覚例にも認められたことから、DCIS である時間も長く、
DCIS から IDC への伸展も考えられる。2 は検診発見の DCIS でのみ認められ、
自覚例では、FAD ±石灰化、腫瘤±石灰化症例が増加することより、2 → 3 → 4
の伸展形式が考えられる。Her2 陽性乳癌は、組織学的悪性度が高く、DCIS
であっても広範な乳管内伸展を来し、広範な DCIS から IDC へ一気に浸潤し、
局所進行乳癌となってしまうことが考えられた。局所進行乳癌に対しては分
子標的薬での治療でさえも抵抗性であることが示唆された。
343
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】昨年本総会にて、マンモグラフィ撮影装置にヒール効果として知
られる管軸方向(乳頭胸壁方向)だけでなく管軸垂直方向(左右方向)にも濃度
差が発生することについて報告した。今回この研究を進める中でデジタル画
像とフィルム画像の間に特異な濃度差が生じていることが判明したため報告
する。【方法】アクリル板(厚さ 10 mm)を 4 枚重ねて撮影し、得られた画像
を ImageJ によるデジタルデータ解析と拡散光濃度計によるフィルム濃度測定
の 2 通りの方法で解析し、濃度分布グラフを作成した。またIPを消去して
何も写っていない均一な画像を作成し、同様の方法でグラフを作成した。【結
果】アクリル板を撮影した画像の管軸垂直方向において、デジタル解析では左
側から約 5cm まで濃度上昇し約 13cm までピークを維持、以降は濃度低下し
続けるグラフ A が得られた。フィルム濃度測定では左側から約 8cm まで濃度
上昇、以降は濃度低下し続けるグラフ B が得られた。また管軸方向において、
デジタル解析では胸壁側から約 2cm まで少し濃度上昇し、移行は濃度低下し
続けるグラフ C が得られた。フィルム濃度測定においてもほぼ同様のグラフ
D が得られた。次に消去したIPから得られた画像の管軸垂直方向において、
デジタル解析では均一の画素値を持つ平坦なグラフ E が得られた。フィルム濃
度測定では左側約 5 cmから約 13 cmまで濃度低下、以降は濃度上昇し続け
るグラフ F が得られた。また管軸方向において、デジタル解析では均一の画素
値を持つ平坦なグラフ G が得られた。フィルム濃度測定においてもほぼ同様
のグラフ H が得られた。【考察】グラフ A と B、E と F に発生した濃度分布グラ
フの違いより管軸垂直方向ではデジタル画像とフィルム画像で濃度分布特性
が異なっていることが判明し、グラフ A と F を重ね合わせると B に近い形状の
グラフが得られたことから、撮影時に得られたデジタルデータはフィルミン
グ時にイメージャーの特性によって異なるデータに変化している可能性が示
唆された。一方、管軸方向においてはグラフ C と D、G と H は同様の形状となっ
ているためデジタル画像とフィルム画像で大きな違いは無いと思われる。【結
語】同一の画像データもフィルミングする際に管軸垂直方向における濃度分布
特性が変化しており、デジタル画像とフィルム画像で異なる特性を持つこと
が確認できた。
育和会記念病院 放射線科、2 大阪警察病院 病理診断科、
大阪警察病院 乳腺外科
10318
11619
フォトンカウンティング技術を用いたマイクロドーズマンモグ
ラフィの使用経験―腫瘤性病変の描出能の評価―
乳癌の MMG 所見と CAD 検出能の検討
GP-1-030-16
ポスター掲示
GP-1-030-17
1
中日病院 乳腺科、2 オリエンタルクリニック 乳腺外科、
名古屋大学附属病院 乳腺・内分泌外科、4 名古屋医療センター 乳腺科
1
3
土田 千賀 1、岩崎 俊子 3、深田 由香里 4、泉 俊昌 2
西川 美紀子 1,2,3、佐々 実穂 1,2、都島 由紀子 1,3、高橋 優子 1,2、大畑 麗子 1、
須田 波子 4、森田 孝子 4
福井総合病院 放射線科、2 福井総合病院 外科、
3
福井総合クリニック 放射線科、4 福井総合クリニック 放射線課
一般セッション(ポスター掲示)
我々の施設では 2013 年 3 月よりマイクロドーズマンモグラフィ(MDM)を導
入し、CR フィルム診断からモニター診断に移行した。MDM は第一報(第 23
回乳癌検診学会にて)で報告したように従来 CR 装置の約 1/2 の低線量を実現
し、石灰化の描出能は明らかに優れていた。MDM ではタングステン(W)陽極
を用いていることも低線量に寄与しているが、モリブデン(Mo)陽極に比し腫
瘤の描出能低下をきたしうることが危惧される。第一報においては腫瘤性病
変は症例数が少なく充分な評価が出来なかった。今回我々は、MDM での腫瘤
性病変の描出能を評価することを目的とした。〈対象および方法〉
(1)2013 年
3 月から 8 月に MDM でマンモグラフィを施行し 3 年以内に CR でのマンモグラ
フィ過去歴のある症例のうち、境界明瞭な腫瘤性病変 9 例の描出能を過去 CR
フィルムと比較評価した。US では 3 例が嚢胞、6 例が FA であり、明らかに増
悪しているもしくは消褪している例は除いている。(2)2013 年 5 月~ 9 月に
MDM でマンモグラフィを施行し腫瘤で検出された乳癌 7 例(1 例の DCIS を除
きいずれも浸潤癌)において、腫瘤の辺縁評価と構築の乱れ等の付随する所
見を評価し、カテゴリ-分類を行った。その後乳房 MRI の造影画像にても腫
瘤の辺縁評価と付随する所見の評価を行い両者の対比を行った。〈結果〉(1)
境界明瞭な腫瘤性病変の描出能は 2 例で MDM の方が CR に比し良好、5 例で
MDM と CR は同等、2 例で CR が MDM に比し良好であった。(2)腫瘤で検出
された乳癌 7 例のうち辺縁は 2 例がスピキュラ、2 例が微細鋸歯状で一部スピ
キュラ伴い、2 例が微細鋸歯状、1 例が境界明瞭であった。カテゴリ-は 1 例
の境界明瞭腫瘤のカテゴリ- 3 を除き、3 例がカテゴリー 5、3 例がカテゴリー
4 と癌を充分疑うことが出来た。構築の乱れは 2 例に認められた。MRI との対
比にて腫瘤の辺縁の評価は全例で一致し、構築の乱れの有無も MRI の所見と
一致した。〈考察〉(1)の結果より良性腫瘤の描出能は CR と MDM はほぼ同等
であると考えられる。また(2)の結果より乳癌は全例でコントラスト良く、辺
縁明確に描出され、MR 画像ともよく一致した。これらの結果から W 陽極に
ても腫瘤の描出能の低下は招いておらず、腫瘤辺縁は散乱線がほとんどない
機種の特性も加わり高精細な画像として描出され、良悪性の鑑別に役立って
いると考えられた。
[ 目的 ] 乳癌マンモグラフィ読影の補助システム CAD の検出能について乳癌
の MMG 所見と対比を行い検討した。[ 対象・方法 ]2012 年 12 月~ 2013 年
11 月までに当院で乳癌と診断された 32 例中 MMG で所見のある 29 例(1 例
は両側乳癌)を対象に PCM(25 μm ) 装置で撮影、15MsP の LCD モニタ、コ
ニカミノルタ社製 CAD;NEOVISTA I-PACS CAD typeM を使用し検討した。
[ 結果 ]MMG での所見(全 30 所見)の内訳は腫瘤 5 例、石灰化 9 例、FAD7 例、
FAD+distortion5 例、distortion4 例であった。CAD で検出できたのは腫瘤
4 例、石灰化 9 例、FAD5 例、FAD+distortion4 例、distortion1 例であった。
[ 考察 ]CAD で全く指摘できなかった症例は全例乳房の性状が不均一高濃度
で、10cm 以上ある腫瘤、FAD、広範な distortion の 3 例、乳腺内に埋もれる
FAD、
distortion の 4 例の計 7 例(検出率;76.7%)であった。大きすぎる病変と、
乳腺内に埋もれる小さな病変に対しては CAD 検出能に限界があるものの石灰
化病変に対しては全例指摘可能であった。CAD の特性を知ることで乳癌の診
断に有用に働くと考えられた。
10141
11345
マンモグラフィで有意所見を指摘し得なかった乳癌症例の検討
ソナゾイドを用いた乳房造影超音波検査所見の検討とその有用性
GP-1-030-18
GP-1-031-01
1
公益財団法人結核予防会複十字病院 放射線科、
2
公益財団法人結核予防会複十字病院 複十字病院
公立松任石川中央病院 外科
石井 要、宮永 章平、能登 正浩、竹田 利弥、谷 卓、八木 雅夫
小柳 尚子 1、武田 泰隆 2
【はじめに】マンモグラフィ(MMG)による乳癌検診の死亡率減少効果は欧米
を中心に検討され、その効果が証明されている。しかし欧米に比較して高濃
度乳腺が多いとされる本邦において、同様の検診方法がそのまま適応されて
いいのか疑問が残る。当院で経験した、MMG で有意所見を指摘し得なかっ
た乳癌症例を検討し、その傾向を分析した。【対象と方法】2011 年 12 月から
2013 年 10 月までに当院で原発性乳癌として手術された 175 症例のうち、術
前の MMG にて 2 名以上の読影医師がカテゴリー 2 以下と判定した 18 症例
(10.3%)を対象とした。診断時の年齢、腫瘍サイズ、腫瘍部位、背景乳腺の
構成、家族歴、ホルモン歴、受診契機、stage、理学的所見、臨床病理学的項
目について検討した。【結果】18 症例の診断時の年齢は 37 ~ 83 歳(中央値:
52 歳)、腫瘍サイズ(浸潤径)4 ~ 45mm(平均:14.4mm)、腫瘍の存在部位
はランダムであった。背景乳腺の構成は 15 例(83%)が(不均一)高濃度で、3
例は散在性乳腺であった。乳癌家族歴のある症例が 3 例、妊娠歴のない例が 7
例であった。受診契機は有症状(腫瘤自覚、疼痛など)が 8 例と US 検診発見が
7 例であった。腫瘤触知など触診所見のある症例は 7 例であった。stage は 0
期が 1 例、I 期が 11 例、IIA 期が 5 例、IIB 期が 1 例であった。組織型は乳頭腺
管癌が 11 例(61%)で最も多く、NG1 が 10 例であった。ER 陽性 15 例、PgR
陽性 14 例、HER2 score0 14 例と luminal タイプが多く、リンパ節転移陰性
症例は 16 例であった。
【考察と結語】MMG で有意所見のみられなかった乳癌
症例の 83% が(不均一)高濃度であったことから、背景乳腺の構成は重要な因
子と思われた。非経妊症例が 18 例中 7 例と多かったのは、非経妊が高濃度乳
腺であると同時に、乳癌のリスクファクターとも関連すると思われた。また
病理学的には、乳頭腺管癌・stageI・luminal タイプ・NG1・リンパ節転移陰
性と比較的早期で悪性度の低いタイプが多い傾向であった。有症状症例も 18
例中 8 例と多く見られたことから、検診受診者の不安をあおらないように注意
した上で、MMG で異常所見を指摘し得ない乳癌もあることや腫瘤触知など自
覚症状がある時は検診ではなく専門外来を受診すべきであることを啓蒙して
いくことが乳癌の早期発見につながると思われた。
【背景と目的】乳癌診療において乳房超音波検査の有用性は広く認められてい
るところである。しかし、その特異度はやや低いことが問題ともされている。
一方で造影乳房 MRI 検査は特異度が高いことで知られており、乳管内進展の
診断にも有用とされており、近年では乳腺領域では広く用いられている。そ
の他にも、さまざまな画像診断に用いるモダリティが開発されてきている。
今回われわれは、第二世代の超音波造影剤であるソナゾイドを用いた乳房超
音波検査を乳腺腫瘍に対して施行してきたので、その所見について検討を行っ
た。【対象と方法】ソナゾイドによる乳房超音波検査を施行した乳房腫瘤患者
25 名を対象とした。すべて女性、平均 52 歳であった。全例で、針生検施行し
診断がついた後に行った。組織診断の内訳は乳癌が 23 名、線維腺腫 1 名、葉
状腫瘍 1 名であった。乳癌症例 23 名のうち、術前化学療法症例が 2 例、DCIS
症例が 3 例であった。ソナゾイドの投与は規定通り行い、投与後 5 - 10 分間
観察を行った。【結果】乳癌に対する超音波検査所見としては、腫瘍の小さい
DCIS2 例と粘液癌の 1 例を除いた 20 例においては、腫瘍内部の造影効果は不
均一であり、周囲より比較的早期に染まるように観察されることが多かった。
粘液癌に関しては、時間経過に関わらず内部の造影は弱く、内部も不均一で
あった。術前化学療法症例では、腫瘍の縮小とともに周囲の血管走行が乏し
くなり、腫瘍自体の造影効果も減少された。線維腺腫や葉状腫瘍は、乳癌と
は異なり比較的均一に造影されるように観察されたが、両者を鑑別出来るだ
けど所見の差異は認めなかった。広がり診断に有用な症例を 1 例に認めた。
【ま
とめと考察】造影乳房超音波検査は、腫瘍および周囲の血管走行などを詳細に
観察することが可能であった。これまでのモダリティを凌駕するだけの有用
性があるかは、今後さらに症例の蓄積を要すると思われた。また今後は、腫
瘍の乳管内進展や術前化学療法の効果判定に使用出来る可能性が考えられた。
344
ポスター掲示
10267
10324
乳房腫瘤性病変に対するソナゾイド造影超音波所見の有用性
造影超音波検査における造影パターンと乳癌病理所見、サブタ
イプ分類との関連の検討
GP-1-031-02
GP-1-031-03
1
東海大学医学部付属八王子病院 乳腺内分泌外科、
2
東海大学医学部付属病院 乳腺内分泌外科
1
1
2
1
2
2
2
森岡 徹 、鈴木 育宏 、大下内 理紗 、寺尾 まやこ 、寺田 瑞穂 、
津田 万里 2、新倉 直樹 2、岡村 卓穂 2、齋藤 雄紀 2、徳田 裕 2
【目的】超音波造影剤ソナゾイドは 2012 年 8 月に乳房腫瘤性病変に対して適
応拡大された。当院では文書によるインフォームド・コンセントを得た上で、
乳房ソナゾイド造影超音波(以下 CEUS)を行ってきた。今回、それらの症例
をもとに、乳房腫瘤性病変に対する CEUS 所見の特徴を検討した。【対象と方
法】対象は 2013 年 6 月から 2013 年 11 月までに CEUS を施行した乳房腫瘤性
病変のうち、細胞学的もしくは組織学的に良悪性の診断のついた 18 症例(良
性 10 例、悪性 8 例)。超音波診断装置は 6 月から 9 月までは Ascendus(日立
アロカメディカル)、探触子は高周波リニアプローブ(EUP-L73S、EUP-L52、
EUP-L74M)
、10 月から 11 月までは超音波診断装置は Aplio500(東芝メディ
カルシステムズ)、探触子は高周波リニアプローブ(PLT-1005BT)を使用した。
ソナゾイドは推奨投与量の半量(0.0075mL/kg)を静脈内投与した。CEUS
所見はソナゾイド投与後 1 分間の動画より、1.拍動性流入(有 / 無)2.腫瘍
外染影(有 / 無)3.腫瘍内不染域(有 / 無)を後方視的に評価した。【結果】各
CEUS 所見を呈した症例数を示す。1.拍動性流入:良性(0/10)、悪性(6/2)、
2.腫瘍外染影:良性(0/10)、悪性(6/2)、3.腫瘍内不染域:良性(0/10)、
悪性(8/0)。【結論】悪性では拍動性流入、腫瘍外陰影を伴うものが多くみられ、
腫瘍内不染域は全例に認められた。一方、良性では拍動性流入、腫瘍外染影、
腫瘍内不染域を伴うものはみられなかった。なお、通常の B-mode では良性
腫瘍を考えたが、CEUS では悪性を疑い、組織学的には乳癌と診断し CEUS が
診断の一助として有用であった 1 例を経験した。今後更なる症例を蓄積し、画
像所見を呈示する。
国立がん研究センター中央病院 乳腺外科、
国立がん研究センター中央病院 病理科
垂野 香苗 1、木下 貴之 1、新崎 あや乃 1、椎野 翔 1、神谷 有希子 1、
小倉 拓也 1、神保 健二郎 1、麻賀 創太 1、北條 隆 1、吉田 正行 2
10327
11527
当科における Sonazoid 造影超音波の位置づけ
乳腺病変に対する造影超音波 time intensity curve 解析の有
用性
GP-1-031-04
GP-1-031-05
静岡済生会総合病院
1
田中 顕一郎、寺崎 正起、岡本 好史、鈴村 潔、土屋 智敬
3
【目的】
一般病院でSonazoid造影超音波(Contrast-Enhanced Ultra Sonography,
以下 CEUS) がどのように利用できるか考察する。【対象】2013 年 9 月以降、
当院に CEUS を導入後、施行した症例。現状では良性結節 3 例、悪性結節 11
例である。【方法】Sonazoid は推奨量である 0.01ml/kg、約 0.5 バイアルを静
脈内投与した。超音波診断装置は Prosound F-75( 日立アロカメディカル株式
会社 )、探触子は超音波リニアプローブ UST-5415 を用いた。造影剤投与後 1
分間の動画とその後、10-15 秒間の積算画像を作成し腫瘍内部・周囲の染影
を評価した。【結果】CEUS を悪性結節 11 例、良性結節 3 例に使用、腫瘍内部
が不均一に造影された症例が 10 例、腫瘍内で染まらない部分 ( 欠損 ) が生じ
た症例が 1 例、均一に造影された症例が 2 例、造影されなかった症例が 1 例
であった。腎機能障害で造影 MRI 検査ができなかった患者では、単純 MRI で
病変の範囲がはっきりしなかったが CEUS で広がり診断が可能で、CEUS の画
像を参考にしながら乳房温存術施行直前に腫瘍の広がりを皮膚にマーキング
することが出来た。マグネビスト造影剤にアレルギーを持つ患者も Sonazoid
造影剤は使用できることを経験した。MRI で写るが US では写らない病変が
あった場合、2nd look US 時に CEUS が利用できた。【考察】乳房温存術では
術直前に B モードエコー ( 以下 US) で腫瘍の位置を皮膚にマーキングする。広
がり診断は一般には MRI が適していると言われているが、US とはモダリティ
の異なる画像であるためマーキング時に広がりを感覚的にイメージしにくい。
その点、CEUS なら US との対比によって広がりをより感覚的にイメージしや
すかった。また CEUS で写る病変なら Sonazoid で造影しつつ穿刺検査を施行
することも可能と考えられた。CEUS は安価で簡便な検査であるのにもかかわ
らず、一般的に MRI に劣らぬ正診率、感度、特異度が評価されている。小回
りの効く CEUS の特徴はもっと一般病院で生かされるべきと思われる。実際
の症例を供覧しつつ、報告する。
345
福岡大学医学部 放射線医学教室、2 福岡大学 呼吸器・乳腺・小児外科教室、
福岡大学 病理学教室
藤光 律子 1、島倉 樹子 1、吉永 康照 2、鍋島 一樹 3、濱崎 慎 3、
榎本 康子 2、吉満 研吾 1
目的:乳腺病変に対する造影超音波の time intensity curve(TIC)解析の有
用性を検討する。対象と方法:対象は、2012 年 10 月から 2013 年 11 月の
間に造影超音波を行い病理学的確証の得られた 62 病変。内訳は DCIS 8、浸
潤癌(以下 IDC)22、粘液癌 5、FA 10、乳管内乳頭腫(以下 IP)9、境界病変
2、その他 6 である。使用機種 GE healthcare 社 LOGIQE9、使用プローブは
9-15MHz。MI 値は 0.2 程度、フォーカスは病変の最深部に設定。ソナゾイド
は 0.01ml/Kg 体重を静注後生食にてフラッシュを行い、約 60 ~ 120 秒まで
断面を固定、その後病変全体を観察した後、積算画像、TIC を作成し、濃染開
始からピークまでの時間(ピーク時間)、とその傾き(濃染の傾き)を指標とし
て種々の腫瘍因子との関連を検討した。結果: 62 病変中 TIC 作成可能であっ
た病変は 60 病変であった。TIC 作成されなかった 2 病変は粘液癌であったが
観察時間内に濃染がみられなかった。60 病変中、癌 33 病変 vs 非癌 27 病変、
および組織型間(FA、IP、ADH、DCIS、IDC、粘液癌、その他)の検討では、ピー
ク時間、濃染傾き共に有意差は認めなかった。一方、乳癌内因性サブタイプ
が判明している病変は 23 病変(HER2 2、Luminal A 17,TN 3、TP 1)間の
解析では、濃染の傾きが HER2(3.262 ± 0.478)と Luminal A(1.714 ± 0.163)
間においてのみ、有意差を示した。結語:造影超音波の TIC 解析により得ら
れる濃染の傾きは、乳癌の内因性サブタイプ HER2 vs LuminarA の鑑別にお
いて有用である可能性が示唆された。
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】ソナゾイドを使用した乳癌の乳腺造影超音波所見(Contrast-enhanced
ultrasonography: CEUS)の特徴と乳癌病理所見(組織型、サブタイプ、EIC、
脈管侵襲)との検討を行う。【対象および方法】2013 年 8 月から 12 月の間に、
当院にて乳癌手術を施行した 103 症例(平均年齢 55.8 歳、平均 BMI21.6)に
対し、手術前にソナゾイドを使用した造影超音波検査を施行し病変の評価を
行った。超音波機器は、HI vision Preirus(日立アロカメディカル社製)を使
用した。全身麻酔導入後、ソナゾイドを 0.0075ml/kg を静脈内投与し、超音
波にて画像評価を行った。画像評価は最大割面にて固定し、造影モードにて
行った。【結果】症例の内訳は、病理組織は、DCIS12 例、浸潤性乳管癌 59 例
(乳頭腺管癌 14 例、硬癌 32 例、充実腺管癌 13 例)、ILC11 例、特殊型 9 例で
あった。サブタイプは、luminalA30 例、luminalB39 例、HER2type7 例、ト
リプルネガティブ 7 例。腫瘍内部の造影効果認めたのは 60 例、認めないまた
は、非常に弱いものは 43 例であった。造影効果均一なものは 6 例、不均一は
54 例であった。腫瘍辺縁に強い造影効果を示し、腫瘍内部に造影効果なしま
たは弱い造影効果を示す Crab-crow-like pattern を 49 例認めた。これらは、
組織型では硬癌が多く、DCIS では認めなかった。サブタイプでは TNBC7 例中、
6 例が含まれていた。腫瘍径は大きい傾向にあった。Ki67、組織学的 Grade、
リンパ節転移の有無、EIC の有無は、この造影パターンを示すものとそうで
ないものに有意差は認めなかった。乳腺ソナゾイド造影超音波検査で、悪性
を疑う所見として、不均一造影効果や造影欠損が挙げられる。そのなかでも、
いわゆる Crab-crow-like pattern を示す例があり、これらは、サブタイプで
は予後不良因子とされる TNBC が多く含まれる傾向にあり、腫瘍径も大きい
傾向にあった(p = 0.043)。K i67、組織学的異型度、リンパ節転移には相関
を認めなかったが、Crab-crow-like pattern は、乳癌細胞の増殖能を反映す
ることが考えられ、より悪性度の高い所見であることが考えられる。【結語】
Crab-crow-like pattern は腫瘍径が大きく、TNBC など増殖能が高い腫瘍に
特徴的な所見と考えられる。
ポスター掲示
11942
10656
エラストグラフィにおける Fat Lesion Ratio (FLR) 測定の自
動化 -Assist Strain Ratio の feasibility test-
エラストグラフィから求めた乳癌組織の硬さと悪性度の関係:
浸潤癌と非浸潤癌、浸潤癌サブタイプによる比較
GP-1-031-06
GP-1-031-07
1
筑波メディカルセンター・ブレストセンター、
筑波メディカルセンター・つくば総合健診センター、
3
筑波メディカルセンター・乳腺科
1
2
2
植野 映 1、東野 英利子 2、森島 勇 3、梅本 剛 3
杉本 卓司 1、松本 真由美 1、渡邉 太郎 2、金 昇晋 3、島津 研三 3、
稲留 遵一 3、道下 新太郎 3、下村 淳 3、田口 哲也 4
純幸会東豊中渡辺病院、
純幸会豊中渡辺病院 外科、3 大阪大学医学部附属病院 乳腺・内分泌外科、
4
京都府立医科大学 内分泌・乳腺外科
FLR の測定をより客観的にかつ容易に測定できるように自動化のアルゴリ
ズムを作成し、その feasibility test を行った。期間は 2013 年 3 月 4 日から同
年 12 月 5 日まで。対象は試験に同意の得られた乳房の腫瘤性病変 97 例。【方
法】使用装置は日立 HI VISION Preirus, 探触子は EUP-L65 および EUP-L74M
を使用した。ソフトウェアは、FLR の自動化を目標として作成された “Assist
Strain Ratio”(以下 ASR)を用いた。はじめに従来の手作業による FLR の測
定を行い、その後に ASR を用いて自動的に FLR を測定した。これを各症例に
3 回施行し、平均を求めて従来の FLR(M 群 ) と自動化測定した FLR(A 群)とし
て 2 群間の比較を SAS Institute Inc. 社 統計解析ソフトウェア JMP8 を用い
て行った。【結果】登録症例は 97 例、うち悪性 29 例、良性 68 例であった。平
均年齢はそれぞれ 62.1 歳± 12.4 歳、48.8 歳± 10,0 歳。腫瘍最大径はそれ
ぞれ 13.0 ± 5.3 mm,8.1 ± 4.2 mm。腫瘍の低エコー域の歪みに関しては 2
群間の相関係数は 0.97 と高い値を示したが、FLR 値では 2 群間の相関係数は
0.67 とやや低値であった。Cut-off は 5 として解析したところ M 群の感度、特
異度、正診率、AUC は 0.85, 0.80, 0.82, 0,885、A 群ではそれぞれ 0.74, 0.84,
0.81, 0.871 であった。感度においてやや低い値を示したものの正診率、AUC
で は 同 等 で あ り、
Cut-off 値 の 調 整
により臨床的な利
用が可能と考えら
れた。
一般セッション(ポスター掲示)
目的:組織の硬さはエラストグラフィの歪みから簡便に比較できる。乳癌組
織の硬さと生物学的悪性度の関連性を明らかにするため乳癌組織の歪みを超
音波エラストグラフィを用いて算出し、病理組織やサブタイプ別に比較した。
方 法: 浸 潤 性 乳 管 癌 55 例、 非 浸 潤 性 乳 管 癌 17 例 を 対 象 と し 超 音 波 装 置
HITACHI AVIUS で歪み画像を記録した。腫瘍の最大横径を含む幅 2-5mm の
長方形を取り出し、中央 1/2 部分の相対歪みをカラースケールを参照して算
出 ( 最大値 1080)、症例ごとに 2-5 枚の画像から平均した相対歪みを求めた。
結果:非浸潤癌は浸潤癌に比べて 1.6 倍大きく歪み(p 0.002)浸潤癌よりも
軟らかいと考えられた。浸潤癌のサブタイプによる比較では有意差はないが、
Luminal A、B、triple negative 乳癌の順に歪みが小さく、硬い腫瘍組織にな
る傾向が見られた。しかし大きな腫瘍では歪み画像が得にくく過度に圧迫さ
れる傾向が見られた。考察:浸潤癌は非浸潤癌より硬く、浸潤癌のサブタイ
プ別比較でも癌組織の硬さが悪性度に対応することが示唆された。用手圧迫
による歪画像では脂肪織などを内部基準として歪みを補正する必要があるが、
過度な圧迫がなければ補正なしに直接比較可能と思われた。組織の増殖や形
態は接着因子を介した細胞外マトリックス (ECM) との間に作用する機械的な
力によって制御される事も知られており、培養乳腺細胞の形態も ECM の硬さ
で変化し ECM が硬くなると乳腺の構造が消失することが報告されている。エ
ラストグラフィの歪みから求めた乳癌組織の硬さ(粘弾性)と悪性度の関係は
組織内の機械的な力による増殖の制御が癌の生物学的悪性度に関与すること
を裏付ける結果と思われた。
10737
11364
Virtual Touch Tissue Quantification による乳癌硬度の検討
超音波組織弾性イメージングによる乳がん術前化学療法の治療
効果早期予測の可能性の検討
GP-1-031-08
GP-1-031-09
東京大学医学部附属病院 乳腺内分泌外科
多田 敬一郎、西岡 琴江、内田 惠博、山村 純子、倉林 理恵、尾辻 和尊、
菊池 弥寿子、辻 英一、小川 利久、瀬戸 泰之
(背景)Virtual Touch Tissue Quantification(VTTQ)による乳腺組織硬度の
測定は、容易に定量化できるメリットがある反面、どこまで臨床応用が進む
かは今後の課題である。われわれは乳癌組織硬度を測定し、その特徴を明ら
かにすることを試みた。( 方法 )2011 年 5 月から 2013 年 3 月まで 111 乳癌病
変に対して VTTQ を実施した。各症例は原則として3回正常と考えられる組
織の硬度を測定した後、病変部の硬度を原則として 3 回測定した。5 × 5mm
の関心領域(ROI)は原則的に病変の中央部においた。(結果)正常組織の硬度
測定値は安定していた。一方、乳癌の定量的硬度測定は不安定であり、111
症例中 85 症例(76.6%)は少なくとも 3 回の測定中 1 回以上 X.XXm/s を表示
した。X.XXm/s を示さなかった 26 病変は非浸潤癌、1cm 以下の小病変が多
い傾向があった。(結論)VTTQ で測定が安定せず X.XXm/s と表示するのは現
時点では乳癌の可能性を示唆することと考えられ、現時点でも一定の意義が
あることと考えられる。今後 ROI をさらに小さくして、精度を高めることが
期待される。
1
3
公立福生病院 医療部臨床検査科、2 公立福生病院 外科、
公立福生病院 臨床検査科病理
佐瀬 久恵 1、田島 花菜 1、十山 由理 1、深町 茂 1、江口 正信 3、
五月女 恵一 2
pCR の予測因子の一つに NAC2 サイクル後の反応性が報告されており、我々
も同様の結果を得ている。一方で NAC に良好な反応性を示す例では腫瘍の硬
さの変化を経験することも珍しくない。そこで組織弾性率を画像と数値にて
評価できる超音波検査に注目し、術前化学療法の早期における効果予測の可
能性を検討した。対象は 2010 年 8 月以降、組織学的に乳癌と診断され NAC
を施行した 38 症例。超音波 B モード、elastography、fat lesion ratio(FLR)
を評価した。NAC 施行前、1 サイクル後、2 サイクル後、4 サイクル後、NAC
終了後の FLR 値と超音波 B モード長径について、著効群(Grade2b 又は 3)と
非著効群(Grade0 ~ 2a)間で比較検討した。その結果、長径ではいずれのサ
イクルでも 2 群間に有意差を認めなかったのに対し、FLR 値では NAC 前では
2 群間に差は無いが(p = 0.1171)、NAC1 サイクル後ですでに有意な差をもっ
て著効群が柔かくなっていることが示され(p = 0.0123)、さらに NAC2 サイ
クル後(p = 0.0297)、4 サイクル後(p = 0.0048)においても同様に有意差を
認めた。NAC1 サイクル後の FLR 値の評価は、NAC 終了時の Grade2b 又は 3
のサロゲートマーカーとなりうる可能性が示唆された。
346
ポスター掲示
10768
11494
造影 MRI 検査で病変が指摘された症例に対する 2nd look 超音
波検査における造影超音波検査の有用性
乳房MRI発見病変に対するvolume navigationを用いたsecondlook USの有用性
GP-1-031-10
GP-1-031-11
1
1
2
2
東邦大学医学部 外科学講座乳腺・内分泌外科分野、
東邦大学医療センター大森病院 臨床生理機能検査部、
3
東邦大学医療センター大森病院 放射線科、
4
東邦大学医療センター大森病院 病院病理部
都立多摩総合医療センター 放射線科、
都立多摩総合医療センター 乳腺外科
荒木 潤子 1、輿石 剛 1、片瀬 七朗 1、喜多 みどり 1、高見 実 2、
田辺 直人 2
金澤 真作 1、三塚 幸夫 2、尾作 忠知 1、久保田 伊哉 1、馬越 俊輔 1、
白神 伸之 3、寺原 敦朗 3、根本 哲夫 4、渋谷 和俊 4、緒方 秀昭 1
10947
10521
Second look US の有用性
乳房 MRI 後のセカンドルック超音波像の検討
GP-1-031-12
GP-1-031-13
1
白水乳腺クリニック
2
横江 亜沙子、矢次 直子、朝野 香菜美、田代 美智子、溝口 美和子、
白水 光紀
【背景】マンモグラフィと超音波検査(US)は、それぞれ単独でカテゴリー診断
されるが、乳癌の検出率向上のためには、それぞれの特徴をふまえて両検査
を併用することが望ましいとされている。
当院での超音波検査は通常、マンモグラフィの読影結果を参考にして技師が
行っている。マンモグラフィでカテゴリー 3 以上の所見が認められるか、あ
るいは視触診で異常が指摘されたが、技師によるスクリーニングの超音波検
査で同部位と思われる箇所に所見が見つからなかった場合には、医師による
second look US を行っている。
【 対 象 】H.15 年 11 月 ~ H.25 年 8 月 の 間 に、 当 院 に て 乳 が ん と 診 断 さ れ た
1184 例のうち、スクリーニング超音波検査では発見されず、second look
US を施行したことによって発見された乳がん症例 19 例について検討した。
【結果】second look US を施行したことによって発見された乳がんは、全乳が
ん症例数の約 1.9% であった。乳がん症例 19 例のうち、マンモグラフィで異
常が認められた症例は 18 例であり、読影結果は、カテゴリー 3 であった症例
が 7 例、カテゴリー 4 が 10 例、カテゴリー 5 が 1 例であった。所見別にみる
と、石灰化所見が 12 例、腫瘤が 3 例、FAD が 2 例、構築の乱れが 1 例であっ
た。マンモグラフィで異常がなく、触診のみで異常を認め、second look US
を施行し発見された症例が 1 例あった。腫瘤径は最大のもので 8mm であっ
た。19 例全例に針生検を施行しており、組織診断結果は、DCIS が 12 例 ( 約
63% )、乳頭腺管癌が 3 例 ( 約 16% )、硬癌が 3 例 ( 約 16% )、粘液癌が 1 例(約
5%)であった。
【まとめ】超音波検査は、マンモグラフィや視触診の結果を参考にして行い、
同部位に異常が見つからない場合は second look US を施行することが有用で
あると考える。
順天堂大学医学部附属浦安病院 臨床検査医学科、
順天堂大学医学部附属浦安病院 外科
荻原 恵理子 1、福永 正氣 2、菅野 雅彦 2、永仮 邦彦 2、須田 健 2、
吉川 征一郎 2、伊藤 嘉智 2、伊藤 真由子 2、平崎 憲範 2、宮川 彩子 1、
東 大輔 2
【はじめに】セカンドルック超音波 ( US ) は、術前乳房MRIで初めて検出さ
れた病変や病巣の広がりについて手術体位で確認を行うため、切除範囲の確
定などに有用である。今回我々は乳房MRI後に検出された別の病変および
初回USとMRIの所見が異なる病変に対しセカンドルックUSを行い、初
回USにて検出が困難であった病変について再検討を行った。【対象・方法】
2012 年 1 月~ 2013 年 12 月までに乳癌で手術された 286 症例に対し、初回
USで確認できず乳房MRIで初めて検出された病変に対し、セカンドルッ
クUSを行った 12 症例 12 病変 ( 浸潤性乳管癌:8 症例、浸潤性小葉癌:1 症
例、非浸潤性乳管癌:3 症例 ) を対象とした。乳房MRIは腹臥位にて両側撮
影し、冠状・矢状断像およびMIP画像から検出病変の存在部位を把握しセ
カンドルックUSを行った。US装置は初回、セカンドルックともに同機種
を使用し体位は仰臥位または半側臥位で挙上にて行った。
【結果】セカンドルッ
クUSを行った 12 症例 12 病変のうち、再度のUSで確認できた病変は 7 例で
あり、腫瘤性病変は 2 例、非腫瘤性病変は 4 例、胸骨傍リンパ節が 1 例であった。
腫瘤性病変の平均径は 5mm(4-6mm)、非腫瘤性病変 4 例中 3 例の平均径は
10mm(8-13mm)、残りの 1 例は主病変と乳頭間に拡張乳管が区域性に認め
られ範囲が不明瞭であった。12 症例の病理組織診断は、浸潤性乳管癌 8 症例、
浸潤性小葉癌 1 症例、非浸潤性乳管癌 3 症例であった。また、主病変と異なる
症例が 1 例(主病変が乳頭腺管癌、他 1 病変が硬癌)に認めた。胸骨傍リンパ
節は術中穿刺吸引細胞診を行い陰性であった。腫瘤性病変のUS像は嚢胞性
パターンが 1 例、不整形で後方エコーの減衰を伴うものが 1 例であった。非腫
瘤性病変のUS像は構築の乱れを伴う低エコー域が 1 例、構築の乱れを伴う等
エコー域が 1 例、背景の乳腺症の変化に紛れる不整な低エコー域が 1 例、区域
性の拡張乳管が 1 例であった。また、3 例は主病変から 30mm 以上離れた部
分に存在した。【まとめ】初回 US 時、乳癌が疑われた場合には主病変の組織像
を把握し、背景乳腺に紛れる不整形の低エコー域や構築の乱れや主病変から
離れた部分にも病変がないか常に注意し走査を行いフィードバックしていく
ことが重要である。
347
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】スクリーニング超音波検査で病変の指摘がない症例でも、マンモ
グラフィ検査や造影 MRI 検査で指摘された病変に対する 2nd look 超音波検
査をしばしば経験する。2nd look 超音波検査でも病変が指摘可能な場合と不
可能な場合があるが、病変が指摘出来た場合でも、その病変が悪性であると
は限らない。今回、2nd look 超音波検査に併用した造影超音波検査で、病変
の良悪性鑑別に有用性が認められたので報告する。【目的】造影 MRI 検査で病
変が指摘された症例に対する 2nd look 超音波検査における造影超音波検査の
有用性の検討。【対象と方法】対象は、マンモグラフィ検査で病変の存在が疑
われたがスクリーニング超音波検査では病変が指摘出来ず、造影 MRI 検査で
マンモグラフィ検査に一致する病変の存在が疑われた 6 症例の 7 乳房、いずれ
も女性で年齢中央値は 49.5 歳(33 ~ 63 歳)だった。超音波診断装置とプロー
ブは、Aprio XG と PLT805AT を使用。超音波造影剤にはソナゾイドを使用
し、規定通りに調整した懸濁液として 0.0075 mg/kg を 10 ml の生理食塩水
にて 1 ml/sec の速度で静脈内投与した。【結果】全 7 乳房で 2nd look 超音波
検査によりマンモグラフィ検査および造影 MRI 検査で病変を疑われた一致し
た部分に何等かの変化が指摘できた。6 乳房では腫瘤性病変を否定できない所
見を認めた。2nd look 超音波検査では必要に応じて、MRI での体位に準ずる
姿勢で超音波検査を行っている。全例に造影超音波検査を行った。造影超音
波検査では 2 乳房に、2nd look 超音波検査で指摘された変化に一致して周囲
より強い造影効果を認めた。残りの 5 乳房には明らかな造影効果の変化は認
めなかった。2nd look 超音波検査で腫瘤性病変を疑われた 6 乳房のうち 5 乳
房に吸引生検が行われた。2 乳房に非浸潤性乳管癌が認められ、残りの 3 乳房
には線維化や過形成、乳管拡張や乳管内乳頭腫など乳腺症の所見が認められ
た。非浸潤性乳管癌が認められた 2 乳房はいずれも造影超音波検査で周囲より
強い造影効果を認めていた。【考察】造影 MRI 検査では血管外漏出をした造影
剤による造影効果を観察しているのに対し、血管造影剤である超音波造影剤
を用いた造影超音波検査では、病変内部の血流や血管の増加を観察している。
この違いが今回の検討の結果に現れたと思われた。【結果】乳房造影超音波検
査は、造影 MRI 検査の 2nd look 超音波検査における良悪性鑑別に有用であっ
た。
【 背 景 と 目 的 】乳 房 MRI に よ り 初 回 US で 同 定 さ れ な い 副 病 変 が 発 見 さ れ
た場合、術式決定のために組織学的検索が必要となる。MRI での volume
navigation を用いた second-look US(V-navi US) を行い、病変の検出率と特
徴、術式決定に寄与したかを検討した。【対象】2010 年 6 月から 2013 年 10
月までに V-navi US を行った 78 例 104 病変。乳癌 75 例、血性乳頭分泌 3 例。
MRI 撮像時と同一の 30 度傾斜支持台を用いた仰臥位で V-navi US を施行し
た。【結果】104 病変中 96 病変で検出可能であった。病変は主病変と異なる領
域に 77 病変、同一領域に 24 病変、乳頭直下に 3 病変存在した。58 病変に対
し CNB、22 病変に対し FNA、11 病変に対し病変マーキングを施行した。5 病
変は同定のみ行った。悪性 39 病変、良性 42 病変、検体不良 9 病変であった。
手術は乳房温存術が 54 例、乳房全摘術が 13 例、腫瘍摘出術が 1 例に施行され
た。22 例では V-navi US の結果により術式や切除範囲が大幅に変更となった。
検出不能 8 病変のうち MRI では全病変が結節性であったが、US では乳腺症と
思われる低エコー域が広がり結節として同定されないものが 1 例あった。3 例
では脂肪との区別が困難であった。【結論】乳房 MRI 発見病変に対し V-navi
US は有用で術式決定に寄与した。
11006
10652
GP-1-031-14
GP-1-031-15
本院における MRI 画像から探す second-look US の有効性の
検証
1
4
ポスター掲示
「画像的境界病変における乳腺超音波立体所見診断研究」終了報
告
神鋼病院 乳腺エコー室、2 神鋼病院 乳腺科、3 神鋼病院 放射線診断科、
神鋼病院 病理室
1
3
山神 真佐子 1、曽山 ゆかり 1、松本 元 2、結縁 幸子 2、出合 輝行 2、
山神 和彦 2、門澤 秀一 3、伊藤 智雄 4、伊藤 利江子 4、西川 ユウコ 4、
大矢 ミカ 4
がん研究会がん研有明病院 乳腺センター、2 同 画像診断部、
同 超音波検査室、4 同 病理部、5 癌研究会癌研究所 病理部
何森 亜由美 1、國分 優美 1,2、藤井 祐次 3、坂井 威彦 1、堀井 理絵 4、
秋山 太 5、岩瀬 拓士 1
一般セッション(ポスター掲示)
(はじめに)乳癌の診断領域において、MRI 画像は病変の存在診断・質的診断・
広がり診断の検査方法として汎用されている。MRI 撮像の一般化に伴い、乳
房超音波検査(US)では、描出困難な MRI 検出病巣を認め、second-look US
を試みる頻度が増加している。近年、超音波走査と同期して、取得した MRI・
CT データから同一断面を描出する Real-time Virtual Sonography(RVS)が
開発されたが、装置は高価、腹臥位 MRI においては検査体位が異なる、超
音波装置の探触子で圧迫することにより乳房の変形を認める等で補正が必
要。今後の改良機材に対する期待は高まるも現時点では一般的ではない。一
方、正常構造物や良性病変を用いて病変の位置関係を判断する MRI detected
lesion に対する MRI second-look US の簡便性、有用性が何森らにより提
唱されている。一般総合病院である本院において高分解能 US を用いた MRI
second-look US の有効性を検証した。
(対象)2013 年 6 ~11 月、MRI second-look US を施行した 19 症例 20 病変(年
齢:32 ~ 75 歳)。
(方法)ダイナミック MRI 画像(横断像・矢状断像)から病変と乳頭との位置関
係(距離および方向)を判定。病変と正常構造物(脂肪組織の形・血管・大胸
筋・クーパー靭帯等)や微小嚢胞などの良性病変との位置関係を把握し、乳房
US で病変を同定する。その後、穿刺吸引細胞診・針生検・手術標本の病理診
断にて検討した。
(結果)MRI で悪性を否定できないと指摘された 20 病変中、18 病変が MRI
second-look US にて検出可能であった(90%)。US では良性疑い 14 病変(I
群)、悪性疑い 4 病変(II 群)と判断した。各群の病理結果は I 群:良性 6、悪性 2、
手術標本で病変なし 1、判定不能で経過観察 5、II 群:良性 1、悪性 3。以上
より、この期間の乳癌手術 154 例中 5 例(3.2%)が新規悪性病変ありと診断さ
れた。この 5 例はすべて手術予定乳癌が存在し、新たに微小乳癌が判明(同側
3 例、反対側 2 例)した。また、MRI second-look US は病変の近くにある指
標となる正常構造物を指標にしながら検索する為、手技に慣れれば、短時間
にて、病変の同定が可能であった。
(結論)MRI second-look US はその描出技術に習熟できれば、既存の装置の
みで、US では見落としがちな微細な病変を短時間で検出できる有用な方法と
考える。さらに、手術時における正確な切除範囲決定に有効であった。
【目的】JABTS ガイドラインでカテゴリ 3~4 となる画像的境界病変について、
立体的所見による判定を行う事により「要精査」と「経過観察」の判定が可能か、
客観性のある判定基準かを検討した。前回の中間報告に症例を追加し研究終
了報告を行う。【方法】カテゴリ 3~4 となった「腫瘤」「非腫瘤」「distortion」
病変それぞれに対する動画データを取得した。図に基づく「立体判定基準」を
設定し、病変を判定した後、針生検または手術材料による組織結果と照合した。
「立体判定基準」による判定は、「経過観察」「要精査」「判定困難」を超音波検
査室技師 14 人の合議により行った。「経過観察」の組織結果が良性、および「要
精査」の組織結果が悪性の場合、一致とした。【結果】合議判定と組織結果の一
致 率 は「 経 過 観 察 / 組 織 良 性 」腫 瘤 14 例 93%、 非 腫 瘤 18 例 100%、
distoriton7 例 100%。「 要 精 査 / 組 織 悪 性 」腫 瘤 16 例 81%、 非 腫 瘤 12 例
83%、distoriton9 例 78%。 画 像 的 判 定 不 能 数 / 腫 瘤 2 例、 非 腫 瘤 4 例、
distortion2 例。技師間判定一致率は平均 75%。【考察】現行ガイドラインのカ
テゴリ判定は静止画に基づいて行う事になっている。しかし実際はリアルタ
イムで立体的観察を行うものであり、術者の経験や技術による差は立体的所
見の考慮にあると考えている。今回の結果から図示した「立体判定基準」は 、
客観性のある判定基
準であると思われた。
さらに「経過観察」と
判定したものは、ほ
とんどが組織良性で
あった事から、超音
波の「特異度が低い」
という課題を克服で
きる可能性を示唆し
ていた。この「立体的
所見」を広く活用する
為には、今後も様々
な検討を続け、まず
は立体所見の為の判
定基準作りが必要と
考えられた。
11845
10022
乳癌の広がり診断における超音波自動ブレストボリュームス
キャナ (ABVS) の有用性
乳癌症例における症状と腫瘍倍加時間との関連について
GP-1-031-16
1
GP-1-031-17
1
2
北福島医療センター 乳腺疾患センター、 川崎医科大学 病理学 2
川上診療所、2 ちば県民保健予防財団、3 株式会社ブレストサービス
横溝 十誠 1、橋本 秀行 2、宮内 充 3、川上 義弘 1
伊藤 淳 1、君島 伊造 1、吉田 一也 1、鹿股 直樹 2、森谷 卓也 2
超 音 波 自 動 ブ レ ス ト ボ リ ュ ー ム ス キ ャ ナ Automated Breast Volume
Scanner( 以下 ABVS)は、シーメンスによって開発された新しい超音波検査
システムである。検査者の習熟度に依存せず信頼性・再現性の高いデータを
得ることができること、およびそれぞれの乳房を 1 ~ 3 回自動スキャンする
ことにより乳房全体のボリュームデータが得られ、これまでの乳房超音波検
査では困難であった Coronal 断面の画像を得られることが大きな特徴である。
われわれはこの ABVS の coronal 像を用いた乳癌の広がり診断について検討
を行ったので報告する。対象は 2011 年 12 月から 2013 年 12 月まで当院で乳
癌の手術を行い、術前日に ABVS を施行した女性 170 例(23 歳~ 88 歳、平均
年齢 56.4 歳)。最終病理診断は浸潤性乳管癌 129 例、非浸潤性乳管癌 25 例、
浸潤性小葉癌 12 例、非浸潤性小葉癌 1 例、粘液癌 3 例である。術前に施行し
た ABVS により得られる腫瘍径、病理診断における腫瘍径(乳管内進展を含
む)、また術前の CT(multi-detector row computed tomography ; MDCT)
および MRI から得られる腫瘍径について、retrospective に比較検討を行った。
ABVS は、colonal 像によって乳房内の病変の広がりをより全体的に把握しや
すいことから、温存手術の切除範囲の決定などにおいても役立つものと考え
られた。
348
背景
乳房に何らかの症状を自覚し、その症状を契機に乳癌が発見されるケースが
少なからず存在する。これらの症状と超音波検査上の腫瘍径から算出された
腫瘍倍加時間との関連について、経過観察中に診断された乳癌症例から検討
した。
対象と方法
1999 年 7 月から 2012 年 9 月までの間に、当診療所で診断された乳癌症例の
うち、経過観察中に診断された 62 症例を対象とした。診断時の検査を最終検
査として、最終検査前に新たに何らかの症状が出現した症例を有症状群、症
状が無いかもしくは有っても以前と変わらない症例を無症状群とした。腫瘍
倍加時間の計測には、超音波検査上の腫瘍最大径と、これに直交する断面の
最大径、さらに最大径面における高さを使用した。最終検査時とその前検査
時の各腫瘍径および検査間隔から腫瘍倍加時間を算出した。前検査時に対象
病変を認めなかった症例については、超音波検査の検出限界を 5mm と考え、
各腫瘍径をそれぞれ 5mm として計算した。
結果
有症状群は 18 例、症状の内訳はしこりの自覚が 12 例、痛みや違和感が 6 例
であった。有症状群と無症状群 47 例における平均年齢はそれぞれ 47.3 歳、
52.8 歳であり、有症状群は無症状群と比べ有意に年齢が低かった (p=0.03)。
有症状、無症状群の平均腫瘍倍加時間はそれぞれ 112 日、254 日であり有症
状群は無症状群と比べ有意に腫瘍倍加時間が短かった。無症状群において年
齢と腫瘍倍加時間の間に有意な相関を認めなかったが、有症状群においては
年齢と倍加時間の間に強い相関を認めた(Rs=0.69、p < 0.01)。
まとめ
症状を引き起こす因子として、年齢や腫瘍倍加時間が関連している。有症状
群において年齢と腫瘍倍加時間に相関があるが、これらの理由については更
なる検討を要する。
11204
11399
当院で経験した乳腺超音波検査で悪性を疑い病理検査で良性で
あった症例の検討
乳腺超音波検査の経過観察
GP-1-031-18
ポスター掲示
GP-1-031-19
1
2
市立三次中央病院 外科
田辺 直人 1、中川 綾子 1、三好 哲太郎 1、荒木 潤子 2、喜多 みどり 2、
高見 実 1
橋詰 淳司、花岡 香織、桑田 亜希、越智 誠
【目的】高分解能超音波装置の登場で、超音波像から腫瘍の周囲、内部構造を
判読し、病理組織を推定することも難しくなくなった。その一方で、乳癌と思っ
ていても乳癌でなかった症例、乳癌と思っていなくても乳癌だった症例は少
なくない。今回乳腺超音波検査で悪性を疑い、病理検査で良性であった症例
を検討することにより、今後の診断により正確な判断ができると考慮した。
【方法】乳腺超音波検査(以下 US)でカテゴリー 4 以上とされた症例で、後の
病理検査(針生検等)で良性であった症例を検討した。対象は 2010 年 11 月~
2013 年 10 月、高分解能超音波機器購入後、当院乳腺外来に来院された患者
2328 人を対象とした。US カテゴリーの内訳はカテゴリー 2 以下 1833 例、カ
テゴリー 3 325 例、カテゴリー 4 95 例、カテゴリー 5 75 例であった。
カテゴリー 3 以上の患者に対し、良性を強く疑う症例、針生検が困難な症例
に対しては吸引細胞診を、悪性を疑う症例、細胞を多く摂取したい症例は針
生検や vacora 生検を行った。吸引細胞診で class 3以上の症例は後に針生検
や vacora 生検を加えた。針生検 /vacora 生検 339 例の結果は正常もしくは良
性 129 例、鑑別困難・境界病変 42 例、悪性疑い・悪性 168 例であった。これ
らのうち、US カテゴリー 4 以上で病理検査で良性であった 10 症例に対して
検討した。US カテゴリーでばらつきの出る可能性のある非腫瘤性病変は除外
して検討した。5 例が乳腺症、2 例が線維腺腫、手術瘢痕、乳管内乳頭腫、脂
肪壊死が 1 例ずつあった。前方境界線が断裂、もしくは断裂様ととった症例
は 7 例、Halo を認めた症例は 4 例あった。こられの症例を一部呈示し、どの
ような点が悪性を考慮したのかを検討、報告する。
東京都立多摩総合医療センター 乳腺外科、
東京都立多摩総合医療センター 放射線科
11057
11873
超音波を用いた乳癌術前化学療法2クール時の縮小率評価によ
る pCR 予測
術前腋窩リンパ節診断の検討
GP-1-031-20
GP-1-031-21
国立がん研究センター中央病院 乳腺科
1
公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構倉敷中央病院 臨床検査科、
2
公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構倉敷中央病院 外科
岩本 恵理子、木下 貴之、北條 隆、麻賀 創太、神保 健二郎、
垂野 香苗
寺尾 陽子 1、今井 史郎 2、山口 和盛 2、佐原 朗子 1
【はじめに】
乳癌の術前化学療法(以下 NAC)は化学療法感受性の予測や温存率向上のため
の標準治療となっている。NAC で病理学的完全奏功(以下 pCR)が得られた症
例は予後が良好である事が知られており、画像上 pCR の予測ができれば臨床
上有用である。今回我々は pCR が得られた症例 (pCR 群 ) と pCR が得られな
かった症例(NpCR 群)に分け、レトロスペクティブに超音波での腫瘍縮小率
を計測し、治療早期の段階での治療効果判定予測が可能かを検討した。
【対象】
対象は 2009 年 4 月から 2013 年 7 月までの 5 年間に当院外科を受診し乳癌と
診断され NAC を施行した 56 例。pCR 群 15 例、NpCR 群 41 例。化学療法 2 クー
ル終了時点で超音波にての縮小率を検討。使用装置は東芝社製 aplio 500、
XG、XV。使用探触子は 8MHZ、12MHz リニアプローブ。サイズの評価は腫
瘍の最大断面で行い長径と縦径の積を用いた。乳房全体に広がる腫瘍、2 クー
ル目に超音波検査を施行しなかった症例は今回の検討から除外した。腫瘍が
複数個ある症例では最大断面が最も大きい腫瘍で検討を行った。
【結果】
術前化学療法 2 クール目での腫瘍縮小率は pCR 群で平均 63.9%であったのに
対し NpCR 群は 31.3%で統計学的有意差を認めた。pCR 群では 2 例を除き縮
小率が 60%以上であったのに対し NpCR 群では縮小率 60%以上の症例は 3 例
のみであった。
【結語】
今回の検討から NAC において 2 クール終了時の縮小率が 60%を超えている場
合、最終的に pCR を得られる可能性が高いことが示唆された。
349
背景・目的)臨床的腋窩リンパ節転移陰性の乳癌手術治療において、センチネ
ルリンパ節生検は標準治療とされている。超音波画像によるリンパ節転移診
断では、皮質部分の限局性肥厚、リンパ門の消失、類円形腫大など、形状の
変化やエコーレベルの低下があるとき、リンパ節転移が疑われる。超音波画
像による腋窩リンパ節術前診断の精度につき検討する。対象)当院にて 2013
年 1 月~ 11 月にセンチネルリンパ節生検または腋窩郭清を伴う手術を行っ
た原発性乳癌 396 例。平均年齢 56.6 歳 (24-89 歳、中央値 56 歳)。臨床病期
Stage 0/1/2A/2B/3A/3B (9/231/128/21/3/1 例 )、他院切除生検後にて評
価困難 3 症例。方法)術前超音波検査で診断した腋窩リンパ節(腋窩リンパ節
転移あり / 転移疑い / 反応性疑い / 反応性またはリンパ節腫大なし)と術中セ
ンチネルリンパ節生検および永久病理診断とを比較、他臨床病理的因子につ
き検討する。リンパ節の診断基準は、類円・分葉、低エコーを示すもの、皮
質部分(辺縁低エコー)の偏在性・不整な肥厚を認めるもの、を転移または転
移疑い、皮質(辺縁低エコー)厚めであるも偏在や不整の目立たないものを反
応性疑い、扁平で中心高エコー認め辺縁低エコーの薄いものを反応性とした。
結果)術前リンパ節診断にて転移あり / 転移疑い / 反応性疑い / 反応性・または
腫大なし、とした症例はそれぞれ 21/36/28/246・65 症例。病理結果にて転
移を認めたのは、それぞれ 95.2%(20/21)、75%(27/36)、46.4%(13/28)、
21.5%(54/246)・15.4%(10/65) であった。結論)術前腋窩リンパ節転移診
断に超音波診断は有用と考えられる。
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】年々、乳腺外科受診者数も増え、それに伴い乳がんと診断されていな
い経過観察の数も増え、外来診療、及び、検査に占める割合が多くなってき
ている。しかし、経過観察中にも乳癌は少ないながら存在し、経過観察を中
止にすることができない。今回、経過観察中に乳がんと診断された症例、お
よび、経過観察の意義を検討する。【対象】2003 年 9 月から 2011 年 3 月に当
科受診し 3 カ月以上経過観察された症例を対象とする。【方法】3 カ月以上経過
し乳癌と診断された症例の検討し、腫瘤像を認め 6 カ月以上経過し乳癌と診断
された群(悪性群 ) と 6 カ月以上経過観察を良性と診断された群(良性群)に分
けて大きさの変化を比較した。【成績】経過観察中に乳癌と診断された症例は
初診時に生検を行われないことが多くあった。また、主訴は乳腺腫瘤、マン
モグラフィの石灰化、乳頭異常分泌症であった。乳頭異常分泌がもっとも診
断まで経過を要していたが、stage は初期乳癌が多かった。2003 年~ 2010
年を前半、後半に分けて検討したが症例数は変化なかったが stage0 の増加を
認め、また、手術件数で比較した場合、経過観察された乳癌は相対的に減少
していた。超音波の経過観察での大きさの変化は乳癌が良性より増加する傾
向にあった。しかし、43 例中 22 例で大きさが変化しておらず、経過観察中に
変化がなかった症例は 322 例であり、大きさの変化しなかった乳癌 22 例は
6% に 過 ぎ な い が
安定性があると判
断はできない。【結
論 】現 状 で は 診 断
されていない乳癌
の率は低くはなく
経過観察はやめる
ことは難しい。し
かし、以前と比べ
てその率も減少を
しており、経過観
察の必要性は低く
なってきている。
ポスター掲示
11145
10340
超音波による術前腋窩リンパ節転移診断精度の検討
エコーガイド下マンモトーム生検におけるカテゴリー分類有用
性の検討
GP-1-031-22
GP-1-031-23
1
がん研究会がん研有明病院 超音波検査部、
2
がん研究会がん研有明病院 乳腺センター、
3
がん研究会がん研有明病院 病理部、4 がん研究会がん研究所 病理部
伊勢崎市民病院 外科
加藤 千絵子 1、坂井 威彦 2、富樫 保行 1、五十里 美栄子 1、何森 亜由美 2、
森園 英智 2、山田 恵子 1、堀井 理絵 2,3、秋山 太 2,4、岩瀬 拓士 2
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】センチネルリンパ節に少数の転移があっても、腋窩郭清が省略される
ことが一般化されつつあり、術前の腋窩リンパ節転移診断がより重要になっ
てきている。当院の超音波による術前腋窩リンパ節転移診断の精度について
検討を行った。【対象と方法】2012 年 1 月から 10 月に手術を施行した原発性
乳癌症例で、術前に腋窩リンパ節超音波を施行した 922 例を対象とした。術
前に転移が疑われた症例は、超音波ガイド下細胞診を行った。また術前にリ
ンパ節転移がないと診断された症例は、センチネルリンパ節生検により転移
の有無を確認した。超音波診断が、細胞診と術中(OSNA 法を含む)、術後
の病理診断と一致しているかを検討した。超音波における転移の有無は左右
差、リンパ門の有無、皮質の厚み、形状などの点に着目して総合的に判断し
た。【結果】超音波で転移なしと診断された 759 例(82.3%)、転移ありと診断
された 163 例(17.7%)のうち、病理診断で転移を認めたのはそれぞれ 149 例
(19.6%)と 140 例(85.9%)であった。感度 48.4%、特異度 96.4%、正診率
81.3% であった。転移ありと診断されたうち、微小転移(2mm 以下)と診断
された 68 例を除外すると、感度 62.4%、特異度 96.4%、正診率 88.3% であっ
た。また、超音波診断が偽陰性となった 149 例のうち、最終病理結果で転移
が 4 個以上となった症例が 25 例(16.8%)存在した。このうち微小転移と診
断された 6 例を除く 19 例中、超音波で軽度腫大が指摘されていたものは 7 例
であった。超音波で指摘できなかった 12 例の超音波画像は全てリンパ門を認
め、皮質の厚みは平均 2.1mm で正常構造を呈していた。これらの組織型は硬
癌 8 例、浸潤性小葉癌 3 例、充実腺管癌 1 例であった。【まとめ】微小転移を除
外すると、超音波による腋窩リンパ節転移診断の精度は感度 62.4%、特異度
96.4%、正診率は 88.3% であった。しかし、転移なしと診断した 759 例中、
リンパ節転移が 4 個以上で、超音波画像では正常構造を呈していた症例が 12
例(1.6%)存在し、その組織型は 90% 以上が硬癌、浸潤性小葉癌であった。
これらの組織型はリンパ節の転移診断が難しいことが示唆され、検査時に十
分な検索が必要と考えられた。腋窩郭清を省略していく上で、転移個数の多
いものをいかに除外診断していくかが課題である。
平方 智子、田邊 恵子、岡田 朗子、片山 和久
【はじめに】近年超音波検査 (US) が普及してきており , 乳癌検診への導入も検
討されている。今回当院における US カテゴリー (C) 分類の有用性について検
討した。【対象・方法】2010 年 10 月から 2013 年 05 月まで当院にて乳房 US
を施行した 3086 例のうち ,US ガイド下マンモトーム (MMT) 生検を施行し病
理診断のついた 378 例。2012 年に 195 例でまとめた結果に、さらに症例を
加えて検討した。US 上の C 分類は日本乳腺甲状腺超音波診断会議 (JABTS)
によるガイドラインに従って 5 段階評価で行い ,C 分類と MMT 生検による病
理結果を比較検討した。【結果】各 C 分類における陽性反応的中度 (Positive
Predictive Value; PPV) と乳癌含有率は ,C1 では 1 例中悪性 0 例 (PPV 0.0%)
( 前回報告と同 ), C2 で は 16 例中悪性 0 例 (PPV 0.0%)( 前回と同 ), C3 では
162 例中悪性 24 例 (PPV 14.8%)( 前回は 9.6%), C4 では 123 例中悪性 65 例
(PPV 52.8%)( 前 回 は 45.6%), C5 で は 76 例 中 悪 性 70 例 (PPV 92.1%)( 前
回は 83.8%) であった。【考察】C3,C4,C5 の PPV は今回の方が高かった。C が
高くなるほど PPV も高くなっており ,C 分類はやはり診断に有用であると考え
る。しかし最も高頻度に診断される C3 については、その生検必要性の判断に
エラストグラフィー併用法を確立する等のさらなる検討が今後も必要と考え
られた。
10523
11676
血性乳頭異常分泌症に対する超音波画像の検討
当院における乳腺超音波診断と穿刺吸引細胞診の診断能の検討
GP-1-031-24
GP-1-031-25
1
日本大学医学部外科学系 乳腺内分泌外科分野、
2
医療法人社団 藤崎病院 外科
1
櫻井 健一 1,2、藤崎 滋 2、原 由起子 1、鈴木 周平 1,2、富田 凉一 2、
長島 沙樹 1,2、前田 哲代 1,2、平野 智寛 1、榎本 克久 1、天野 定雄 1
藤島 成 1、武本 昌子 1、重岡 宏典 1、河原 邦光 2
2
【背景】異常乳頭分泌の原因となる乳管内病変や嚢胞内腫瘍は画像上マンモグ
ラフィ、超音波検査、MRI 検査において良・悪性を判定することが難しく、
組織検査結果との対比が重要である.【目的】乳頭異常分泌症を呈する症例に
ついて、超音波画像と病理組織診断を検討する.【対象】2009 年 1 月~ 2012
年 12 月までに単孔性の異常乳頭血性分泌を主訴に来院した 153 例を対象とし
た.【方法】分泌物の潜血反応、分泌液の CEA 値、マンモグラフィ検査所見、
超音波検査所見、造影 MRI 検査所見、病理組織検査所見について検討を行った.
統計学的検定はχ二乗検定および分散分析法を用い、p < 0.05 を有意差ありと
判定した.【結果】年齢 23 歳 -82 歳 ( 平均 48 歳 )、超音波検査にて乳管拡張の
みを認めたのは 33 例.乳管拡張と乳管内病変を認めたのは 56 例、嚢胞を認
めたのは 13 例、嚢胞内腫瘍を認めたのは 9 例、腫瘍を認めたのは 12 例、異常
を認めなかったのは 25 例であった.病理組織学的診断がついた症例のうち乳
管内乳頭腫は 41 例.乳腺症は 7 例、乳癌は 31 例であった.乳癌症例は非乳癌
症例に比べて有意に分泌液の潜血反応陽性率が高く、分泌液中の CEA 値が高
かった.病変の描出率は感度・特異度ともに超音波検査が一番高かった.【結
語】乳管内病変や嚢胞内腫瘍の描出には超音波検査が有用であるが、良・悪性
の鑑別診断は困難である.画像所見と病理組織検査との対比により診断精度
の向上をはかる必要がある.
大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター 消化器・乳腺外科、
大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター 病理診断科
【はじめに】近年,乳癌検診における超音波検査の併用が検討されており,乳
がん発見における乳腺超音波検査の重要性が注目されている。2004 年には日
本乳腺甲状腺超音波診断会議から乳腺超音波診断ガイドラインが発行されて
おり、当院では 2013 年 4 月から乳腺超音波診断ガイドラインのカテゴリー分
類を用いた乳腺超音波診断を行い、カテゴリー 3 以上(以下 C-3)の症例に対
し穿刺吸引細胞診(以下 FNA)を施行している。今回我々は当院の乳腺超音波
診断のカテゴリー分類の診断精度と、FNA の診断精度を検討し、超音波診断
カテゴリーと FNA の有用性を検討する。【対象と方法】2013 年 4 月から 2013
年 12 月までに当院で乳腺超音波検査を施行した 360 例中、乳腺超音波診断ガ
イドラインを用いて C-3 以上と判定し FNA を施行した 129 例。C-3 以上の超
音波検査症例の陽性反応的中度(PPV)と FNA の診断精度を検討した。【結果】
超音波検査で 129 例中 C-3:105 例(81%)、C-4:21 例(16%)、C-5:3 例(3%)
であった。C-3 の 105 例中 4 例が悪性で PPV は 4%、C-4 の 21 例中 13 例が悪
性で PPV は 62%、C-5 は全例悪性で PPV は 100% であった。FNA は 129 例中
101 例(78%)が判定可能、28 例(22%)が判定不能であった。FNA の 101 例
(判定不能 28 例除く)の感度 75%(15 例 /20 例)、特異度 98%(79 例 /81 例)、
正診率 93%(94 例 /101 例)であった。FNA で偽陰性の 2 例は超音波診断で
C-4 であった。FNA で偽陽性の 5 例は超音波診断で C-3:4 例、C-4:1 例で
あり、4 例は鑑別困難、1 例は悪性と判定されていた。FNA で判定不能であっ
た 28 例(C-3:22 例、C-4:5 例、C-5:1 例)中 9 例(C-3:5 例、C-4:3 例、
C-5:1 例)に経皮的針生検を施行し 3 例(C-4:2 例、C-5:1 例)が乳癌であっ
た。FNA で判定不能症例は腫瘤像非形成性病変に多く認められる傾向があっ
た(p=0.08)。【考察】今回の検討では全症例の組織診断を確認しておらず診断
精度が正確とは言えないものの、超音波診断カテゴリーが高くなるにしたが
い陽性反応的中度は上昇し,超音波診断におけるカテゴリー 分類は有用であ
ると考えられた。当院では FNA の判定不能が多く、穿刺方法や採取検体の取
り扱いの工夫が必要である。C-4 以上の腫瘤像非形成性病変に対して FNA で
は判定が得にくく、悪性の可能性があるため積極的に経皮的針生検を行うべ
きである。
350
ポスター掲示
11435
11076
乳腺外来診療における Comprehensive Ultrasound( 総合超
音波診断 ) の有用性
超音波で診断された “石灰化を主体とする非腫瘤性病変” ―良悪
性と浸潤の評価
GP-1-031-26
1
3
GP-1-031-27
川崎医科大学附属川崎病院 総合外科学、2 多度津三宅病院、
川崎医科大学附属病院 国立国際医療研究センター 外科
安田 秀光、橋本 政典、杉浦 良子、日野原 千速、山澤 邦宏、
須田 竜一郎、三原 史規、三宅 大、矢野 秀朗、清水 利夫
水藤 晶子 1,2、中島 一毅 1、林 次郎 1、園尾 博司 3
【はじめに】乳管の変化、低エコー域、構築のみだれ,などをほとんど伴わな
い石灰化を主体とする非腫瘤性病変(NM-Calc)の部位同定、良悪性の鑑別、
浸潤の有無の評価の可能性について検討した.【対象・装置・方法】対象;当
科で 2008 から 2013 までに組織診断の得られた NM-Calc 30 例.内訳は良
性 16 例、DCIS14 例(同時期乳癌 403 例,DCIS54 例)。装置は東芝 APLIOXG,PLT-805AT(9MHz)
、PLT-1204BX( マ ト リ ッ ク ス ア レ イ,18MHz)
。
Differential Harmonic を用いた。NM-Calc のうち,3 例の DCIS は,US が発
見の契機であったが,他の NM-Calc の同定は,MG を参照し、second look
US で病変の部位、範囲を確認できた .stereo-MMT は 12 例に行った。カラー
ドプラで Vascularity も評価した.【結果・考察】(1) US で石灰化のみ同定さ
れたのは良性8例,悪性7例(DCIS6 例).微小浸潤は1例であった.良性は,
点状高エコー (EF) の輝度が不揃い散在し、音響陰影 (AS) が少なく、1例の
み Vascularity 軽度増加がみられた.悪性は EF の輝度が高く,密集し AS を伴
い、4例で Vascularity が増加.(2) US で NM-Calc の周囲にわずかに不明瞭
な低エコー域を伴うのは,良性8例,悪性7例(DCIS4 例).微小浸潤を3例
認めた.Vascularity 増加が良性では1例,悪性では5例であった.【結語】石
灰化を主体とする非腫瘤性病変は High End な超音波装置で評価可能であり,
点状高エコー密度が高い事や Vasculariy の増加は悪性を示唆する所見で,不
明瞭な低エコー域の存在は浸潤の可能性を示唆した
10085
11725
非浸潤性乳管癌に対する超音波検査の有用性 ( マンモグラフィ
との比較検討 )
体表用超音波診断装置における近距離分解能の検討
GP-1-031-28
GP-1-031-29
1
2
大阪府済生会千里病院 外科
北條 茂幸、吉岡 節子、豊田 泰弘、野間 俊樹、松永 寛紀、真貝 竜史、
福永 浩紀、太田 博文、大東 弘明、前浦 義市
【対象と方法】2004 年 11 月から 2013 年 10 月までに当院にて手術を施行した
乳癌症例 738 例中、非浸潤性乳管癌と診断された 79 例の内、超音波検査 (US)
所見を評価できた 73 例を対象に、US とマンモグラフィ (MMG) におけるそれ
ぞれの所見による検出精度を検討した。【結果】US 所見では、乳腺内低エコー
域が 31 例、充実性腫瘤像が 29 例、嚢胞内腫瘤像が 9 例、多発小嚢胞像が 2
例、乳管拡張が 1 例、構築の乱れが 1 例に認められた。MMG にてカテゴリー
3 以上は 56 例であり、カテゴリー 2 以下は 14 例であった。MMG にてカテゴ
リー 2 以下の 14 例中、US では 10 例が充実性腫瘤像を呈しており、その平均
腫瘤径は 13mm(7 ~ 30mm) であった。カテゴリー 3 以上の 56 例中、27 例
が乳腺内低エコー域、18 例が充実性腫瘤像、8 例が嚢胞内腫瘤像を呈してお
り、それらの平均腫瘤径は 19mm(7 ~ 61mm) であった。MMG にてカテゴ
リー 3 以上の微細石灰化を認めた 21 例の内、US では 9 例にて点状高エコーと
して描出でき、その平均腫瘤径は 25mm(9 ~ 61mm) であった。12 例では
点状高エコーが描出できず、その平均腫瘤径は 14mm(7 ~ 41mm) であった。
MMG にてカテゴリー 3 以上の 56 例中、FAD を呈する 15 例の内、US では 10
例が乳腺内低エコー域を呈しており、4 例が充実性腫瘤像を呈していた。腫
瘤影を呈する 20 例の内、US では 17 例が充実性腫瘤像または嚢胞内腫瘤像を
呈していた。構築の乱れを呈する 9 例の内、6 例が乳腺内低エコー域を呈して
おり、2 例が充実性腫瘤像を呈していた。以上、MMG にて検出不可能な小腫
瘤径の病変に対しては、US が有用であった。MMG 上の微細石灰化症例に対
する US での検出率は 21 例中 9 例 (42.9%) であり、広い低エコー域内の点状
高エコーとして検出しやすい傾向にあるも、US 腫瘤径との関連は認められな
かった。FAD や構築の乱れ等の MMG 上の所見に対しては、US にて質的診断
のための追加所見を得ることができた。【結語】非浸潤性乳管癌に対する超音
波検査は、マンモグラフィの精度や質的診断を補完できるものと考える。
東京医科大学病院 放射線診断部外来エコーセンター、
東京医科大学 放射線医学教室
河本 敦夫 1、赤田 壮市 2
【目的】超音波画像におけるビーム集束前の深度は dead zone と呼ばれ,装
置・探触子の近距離分解能を表しているものとされる (Thijssen JM. et al.
Ultrasound in Med. and Biol. 33(3): 2007).今回,乳腺超音波検査に用
いられる数種類の超音波診断装置・探触子の近距離分解能を検討した.【方
法】深度 1 ~ 10mm まで 1mm 間隔に並べられたストリングターゲット ( 多
目的ファントム N365:京都科学 ) を撮影,その描出数を測定した.設定条件
は各装置標準の乳腺用パラメータを使用し,撮像法は基本波イメージ (FI),
組織ハーモニックイメージ (THI),そしてコンパウンドイメージ (CI) で行っ
た.超音波装置 7 台 (Siemens ヘルスケア Elegra,Antares,東芝メディカル
システムズ Aplio XV,XG,日立アロカメディカル Preirus,富士フィルムメ
ディカル FAZONE CB,GE ヘルスケア LOGIQ E9),探触子 11 種類 (7.5L40,
VFX13,PLT604AT,805AT,1204BT,1204BX,EUP L52,L65,L74M,
FZT L10-5,ML6-15) に対し評価を行った.【成績】1)FI と CI では全探触子
で総てのターゲットが描出され dead zone は 1mm 以下と考えられた.2)
THI は 7 種類の探触子で描出ターゲットが低下した.3) 最大の dead zone で
深度 2mm であった.【結論】近年,高周波探触子の近距離分解能は改善がな
され,カプラなど stand-off デバイスが必要とされる場面は少なくなった,た
だ dead zone は装置・撮像法により様々であり,使用装置の特性把握が重要
と考えられる.
351
一般セッション(ポスター掲示)
乳腺外来診療では、視触診に加えてマンモグラフィや超音波検査、生検などが
行われる。しかし、近年、有症状での受診者だけでなく、乳がん検診の要精
査者などが急増しており、多くの新患患者が訪れる乳腺外来において、検出
されたすべての病変に細胞診や針生検による組織学的検査を行うことは事実
上困難である。また、患者サイドからも、可能であれば侵襲的な検査は避け
たいという希望は少なくない。近年、超音波診断装置の多くに Elastography
が搭載されてきた。本機能は形態診断が中心の B モードと異なり、組織の質
的情報である、硬さ・柔らかさを色により表現する機能である。ボタン一つ
で切り替えて使用することが可能であるため、ほとんど時間をかけずに実施
でき、検者、患者ともストレスが小さい。また、2013 年には日本超音波学会
から乳房エラストグラフィガイドラインも発行されていて、現在、急速に普
及しているモードである。Doppler もボタン一つで切り替えが可能なモード
であるが、ここ数年、その分解能と感度、SN 比は大きく向上し、血管造影に
近い画質を得ることも可能となった。当科ではこの Elastography と Doppler
を B モードに併用する Comprehensive Ultrasound 法を提唱し、すでに乳が
ん術前の切除範囲決定に関する有用性を報告した。本法は最初に述べた乳腺
外来の初期診療においても有用であり、特に Elastography の導入により特異
度が改善し、不要な生検が減少することを確認した。具体的には、要精検と
された腫瘤像から高率に嚢胞や線維腺腫、Fat Island を鑑別でき、生検を行
うことなく良性と判断可能としている。このため、乳腺外来診療は短時間で
進行し、医師、患者とも負担が軽減している。また、生検数が減少すること
から医療費も軽減していると思われる。今回、これらの症例の画像を提示し、
Comprehensive Ultrasound の有効性を紹介したい。
ポスター掲示
11751
11480
当院のトリプルネガティブ乳癌の検討ー超音波像の解析を中心
にー
当院において経過観察中に発見された乳癌の検討
GP-1-031-30
GP-1-031-31
1
三河乳がんクリニック
札幌ことに乳腺クリニック、2 札幌臨床検査センター 病理部
白井 秀明 1、桜井 美紀 1、吉田 佳代 1、三神 俊彦 1、増岡 秀次 1、
下川原 出 1、浅石 和昭 1、成松 英明 2
吉田 直子、小島 美由紀、渡辺 恵美、水谷 三浩
一般セッション(ポスター掲示)
{ 背景 };トリプルネガティブ (TN) 乳癌は、初発・再発ともに診療に苦慮す
る症例が少なくないことから、可及的に早期発見治療に努めたいところであ
る。そこで TN 乳癌の超音波像の特徴を抽出すべく、当院にて TN と診断され
た乳癌例について検討した。 { 対象と方法 };2009 年 4 月から 2013 年 11 月
までの当院の乳癌手術例で、TN と診断された浸潤癌 54 例(充実腺管癌 22 例、
硬癌 15 例、乳頭腺管癌 5 例、特殊型 12 例)のうち、高度に潰瘍形成した 1 例
(扁平上皮癌)を除外し 53 例を対象とした。同例の超音波所見における腫瘤像
の有無、形状、境界部、内部エコー(パターン・レベル)、後方エコー、腫瘍
径などについて評価し検討するとともに、臨床・病理を鑑み考察を加えた。 { 結
果 };腫瘤像:腫瘤像(+)50 例、(-)3 例。腫瘤の形状:分葉状 18 例、不整
形 18 例、円形 10 例、多角形 4 例。境界部:境界明瞭平滑 10 例、明瞭そぞう
35 例、不明瞭 8 例。内部エコー:均質 36 例、不均質 17 例、エコーレベル低
51 例、等1例、高エコー 1 例。後方エコー増強 38 例、不変 12 例、減弱 3 例。
腫瘍径:0.5 ~ 10 cm(平均 2.1 cm)。{ 考察 };当院の TN 乳癌の組織型を
みると、いわゆる充実腺管癌くずれの硬癌も合わせ、約 6 割が充実腺管癌で
あった。これらの超音波像はやはり充実腺管癌の特徴(cell rich の圧排増殖性
腫瘤像)を有するものが多い。充実腺管癌は嚢胞、線維腺腫との鑑別困難なも
のもあり、実際今回の症例で急速増大例や術後早期死亡例も含まれていたた
め、慎重な対応が必要と思われた。さらに TN 乳癌 54 例のうち早期再発した
症例は 7 例あり、そのうち充実腺管癌(充実腺管癌くずれも含め)が4例と半
数以上を占めた。充実腺管癌以外の TN 乳癌例は予想外に多く、組織型も超音
波所見においても多様性に富むものであった。ただしこれらの症例は TN の充
実腺管癌と一線を画する可能性があるまいか。この命題については、さらに
症例を蓄積し、その臨床・病理所見および経過を総合的に評価し議論を深め
る必要があろう。{結論}
;超音波所見で充実腺管癌を疑われる症例は、TN 乳
癌を想定し慎重に対処すべきである。
【はじめに】近年増加をたどる乳癌の早期発見の為,当院では主にマンモグラ
フィ(MMG)と超音波検査(US)を用いて,6 ~ 12 か月間隔で経過観察を
行っている.今回この経過観察中に発見された乳癌について検討した.【対象
と方法】2013 年 1 月から 11 月までに乳癌と診断され,手術を施行した原発性
乳癌 261 例の内,2 年以内の経過観察中に発見された乳癌 31 例を対象とした.
方法はそれら乳癌の発見時の腫瘍径や発見契機,また組織型など調べるとと
もに,どの画像診断のどのような所見によって発見されたかについても検討
した.【結果】発見時のインターバルは最短が 6 か月で平均は 12.4 か月であっ
た.また腫瘍径の最小は 0.5cm で平均は 1.2cm であったが,1cm 以下の症例
が 15 例,1.1cm から 2cm 以下では 13 例であることより,90%以上が 2cm
以下で発見されていた.組織学的な内訳をみると、非浸潤癌 10 例(DCIS
9 例,LCIS 1 例)で,浸潤癌は 21 例(浸潤性乳管癌 17 例,浸潤性小葉癌 3
例,粘液癌 1 例)であった.つまり非浸潤癌が全体の約 3 分の 1 弱を占めてい
たことになる.またそれぞれの発見についてみた場合,MMGは 31 例中 23
例(74.2%)が指摘可能であり,USでは全例指摘が可能であった.それぞれ
具体的な画像所見では,MMGは微細石灰化によって指摘出来たものが 13 例
(非浸潤癌 8 例,浸潤癌 5 例)あり,MMGの有所見の内の 56.5%と最も多く
を占め,この内 1 例はMMGが発見の契機になっていた.一方USによって発
見されたものの内訳は、腫瘤性病変として捉えたものが 22 例(非浸潤癌 3 例,
浸潤癌 19 例),非腫瘤性病変(地図上低エコー域)は,7 症例(非浸潤癌 5 例,
微小浸潤癌 2 例),また石灰化集簇像 1 例(非浸潤性小葉癌)についても指摘可
能であった.【考察】発見契機として本人が腫瘤を自覚できたのは,約 2 年間
の間隔をおいて来院された1例のみであり,いわゆるこれが中間期乳癌とい
うことになるものと考える.この腫瘤の大きさは 3.6 × 3.5 cm あったが,病
理組織型はDCISであった.したがってこの他の乳癌は無自覚であり,経
過観察の有用性が示されたものと考える.特にUSに於いては非浸潤癌が 10
例中 7 例までが地図状低エコー域として捉えられていたが,浸潤癌は 90%以
上が腫瘤像として指摘されていたことより,外来経過観察に於いて,USに
よる腫瘤像の検索は,早期の浸潤癌を捉える上でその有用性が高いものと考
えた.
10418
11969
乳腺嚢胞内腫瘤の診断における超音波検査の有用性
鑑別に苦慮する小腫瘤における前方境界線の形状変化による比
較検討
GP-1-031-32
GP-1-031-33
1
大阪警察病院 臨床検査科、2 大阪警察病院 乳腺外科、
3
大阪警察病院 病理診断科
福岡県済生会大牟田病院
長谷部 愛 1、水谷 哲 1、吉留 克英 2、辻本 正彦 3
【はじめに】乳腺嚢胞内腫瘤は良悪性の鑑別が困難なことがある。当院におけ
る嚢胞内腫瘤の超音波所見について検討したので報告する。【対象】2010 年 1
月~ 2013 年 11 月に当院において超音波検査 (US) で検出された嚢胞内腫瘤の
うち、病理診断が確定した 40 例を対象とした。年齢、腫瘍径、US 所見と局在、
術式を比較検討した。【結果】嚢胞内腫瘤像を示した 40 例中 19 例が悪性(浸潤
癌 3 例、非浸潤性乳管癌 16 例)、残り 21 例は良性であった。性別は 1 例のみ
男性で、嚢胞内乳頭癌であった。年齢の中央値は悪性群 60 歳、良性群 49 歳。
閉経後の占める割合は悪性群 68%、良性群 48%。US での平均腫瘤径は悪性
群 29.1mm、良性群 22.4mm。病変の局在を、乳輪部にかかる中心性と乳頭
から離れた末梢性に分けると、中心性は悪性群で 6 例(男性嚢胞内乳頭癌 1 例
を含む)、良性群で 13 例であった。嚢胞内充実部の形状は整~不整形と様々
であった。悪性の割合は、充実部分が平坦で広基性なもの 15/22 例、不整な
隔壁を伴うもの 2/3 例、液面形成を伴うもの 3/6 例、充実部の嚢胞壁からの
立ち上がりが急峻なもの 0/11 例。US 動画で確認したところ浸潤癌 2 例で嚢
胞壁外への浸潤像を認めた。悪性群の術式は乳房部分切除術 12 例、乳房切除
術 6 例。センチネルリンパ節生検は 13 例で施行され、1 例のみ腋窩郭清が追
加された。【考察】嚢胞内病変の良悪性群を比較すると、従来の報告のように
嚢胞内乳頭腫の方が若年で、腫瘍径が小さい傾向がみられた。病変の局在は、
良性群で中心性が 62%、悪性群で末梢性が 68%を占めた。US 所見は多彩で
あったが、悪性群の 78%は充実部が平坦で広基性であり、US による詳細な
観察が重要である。また、経過観察中に腫瘤径および充実部が変化した例が
浸潤癌であり、経時変化を示す症例においては慎重な経過観察が必要である。
US 動画記録は、他の読影者にても浸潤所見が確認でき、より客観的な評価が
可能であった。動画記録は嚢胞性病変の壁外浸潤の診断に有用であると考え
られた。嚢胞内病変は浸潤の可能性もあるため、悪性を疑う場合にはセンチ
ネルリンパ節生検が必要であると考えられる。【結語】US における嚢胞内腫瘤
像は多彩であり、良悪性の鑑別には年齢、局在、腫瘤径を考慮し、嚢胞内部
の充実部分を注意深く観察することが重要であり、慎重な経過観察が必要で
ある。また、US 動画記録による再評価は嚢胞性病変の壁外浸潤の診断に有用
であった。
田中 夕貴、坂元 晴子、小野 崇典、佐土原 順子、財前 翠、村上 嘉治、
野中 利勝、清松 伸弘
【背景・目的】超音波検査において小腫瘤は良悪性鑑別に苦慮する場合があ
る。しかし , 小腫瘤であっても良性に比べ悪性腫瘤が組織の硬さがあると考
え , 腫瘤組織の硬さに着目した。すなわち硬い腫瘤であれば前方境界線の形
状変化(前方境界線を押し上げる像)がより目立ち , 急峻な立ち上がりになる
のではと予想した。エラストグラフィが導入されてない施設や機器でも硬さ
の評価が前方境界線の形状変化で反映されないか比較検討した。【方法】2011
~ 2013 年に当院で経験した鑑別に苦慮した小腫瘤のうち病理組織診断にて悪
性と診断された 6 例(1:アポクリン癌 , 2:乳頭腺管癌 , 3:乳頭腺管癌 , 4:
浸潤性小葉癌 , 5:乳頭腺管癌 , 6:硬癌)良性と診断された 6 例(1:濃縮嚢
胞 , 2:乳管過形成 , 3:線維腺腫 , 4:拡張乳管 , 5:乳管内乳頭腫 , 6:線維
腺腫)を対象とした。最大径 10 mm以下 , 前方境界線断裂なく , 前方境界線か
ら 2.0mm 以内に腫瘤が存在する事を条件とした。前方境界線の形状変化を角
度の視点から検討した。正常乳腺と腫瘤によって押し上げられた乳腺の立ち
上がりの角度を計測。両端から計測し , より急峻な角度を捉え比較検討した。
【結果】腫瘤の平均最大径は 6.1(3.9 ~ 9.4)mm, 前方境界線から腫瘤までの
平均距離 0.9(0.5 ~ 1.5)mm, 悪性 6 例(1:27°, 2:43°, 3:32°, 4:42°,
5:43°, 6:59°)良性 6 例(1:49°, 2:32°, 3:34°, 4:43°, 5:42°, 6:
31°)悪性腫瘤の平均角度は 41(27 ~ 59)°, 良性腫瘤の平均角度は 38.5(31
~ 49)°であった。【まとめ】今回角度においては良悪性の有意差は認める事が
出来なかったが , 悪性腫瘤 6 の硬癌は最大径 5.0mm と小さいながらも 12 例
中一番前方境界線の形状変化があり , 急峻な乳腺の立ち上がり・角度がみられ
た。硬癌は間質結合織の増生を伴って発育することより組織が硬く , 急峻な乳
腺の立ち上がり・角度がみられたと考える。乳頭腺管癌は乳管内進展優位な
発育を特徴とするため明らかな角度がつかなかったと考える。硬さや組織型
により角度に違いでると示唆される。今後は症例を重ね、さらに組織型や乳
腺の構造を詳しく考慮した上で比較検討していきたいと思う。
352
ポスター掲示
10298
11513
サブタイプ別にみた乳癌の MRI 所見:術前化学療法の効果との
関連
乳癌の術前薬物療法施行例における組織学的効果判定からみた
MRI 所見の検討
GP-1-032-01
GP-1-032-02
1
1
2
3
川島 博子 1,2、井口 雅史 2、古河 浩之 2,3、石川 聡子 2、池田 博子 4、
北村 星子 4、大井 章史 4,5
山野 理子 1、安藤 久美子 1、石藏 礼一 1、廣田 省三 1、今村 美智子 2、
村瀬 慶子 2、西向 有紗 2、榎本 敬恵 2、柳井 亜矢子 2、三好 康雄 2、
渡邉 隆弘 3、廣田 誠一 3
金沢大学 医薬保健研究域保健学系、
金沢大学附属病院 乳腺科、3 金沢医療センター 外科、
4
金沢大学附属病院 病理部、5 金沢大学医学系研究科 分子細胞病理
【目的】乳癌の MRI 所見をサブタイプ別に検討し,またそれらの所見が術前化
学療法の効果の有無とどのような関連があるかもあわせて検討する.【対象と
方法】対象は術前化学療法を施行した乳癌 116 例(Luminal A 24 例 , Luminal
B 29 例 , HER2 23 例,Triple negative 40 例)である.MRI は 3.0T 装置を
使用した.MRI において,腫瘤の形状,腫瘍内壊死の有無,腫瘤周囲への
進展所見の有無,造影剤投与後最初の2分の relative signal enhancement
(RSE) を評価した.ダイナミックカーブは washout, plateau, persistent の
3種類に分類した.【結果】HER2 および Triple negative 乳癌は分葉形腫瘤を
呈し,腫瘤周囲への進展が高頻度にみられる傾向にあった.Luminal B およ
び HER2 乳癌は RSE 高値を,Luminal A 乳癌は RSE 低値を示した.HER2 乳
癌の 61% は washout パターンを示した.腫瘍内壊死の存在とダイナミック
カーブの persistent パターンは化学療法無効例に多い傾向にあった.【結論】
乳癌の MRI 所見をサブタイプ別にみると,ある程度の特徴,傾向がみられた.
腫瘍内壊死の存在とダイナミックカーブの persistent パターンは化学療法無
効の予測因子と考えられた. 兵庫医科大学 放射線科、2 兵庫医科大学 乳腺外科、
兵庫医科大学 病院病理部
10140
11170
術前化学療法後の MRI 所見と組織学的効果判定との比較検討
乳癌術前化学療法後の MRI による治療効果判定
GP-1-032-03
1
GP-1-032-04
大阪労災病院 乳腺外科、2 大阪労災病院 外科、3 大阪労災病院 看護部
1
1
1
2
1
2
神奈川県立がんセンター、2 横浜市立大学附属病院
中山 博貴 1、嘉数 彩乃 1、西山 幸子 1、山中 隆司 1、吉田 達也 1、
稲葉 将陽 1、清水 哲 1、吉田 明 1、利野 靖 2、益田 宗孝 2
森島 宏隆 、松並 展輝 、小田 直文 、三方 彰喜 、清水 潤三 、
廣田 昌紀 2、人羅 俊貴 2、濱沢 智美 3、長谷川 順一 2
【はじめに】術前化学療法後の臨床的効果判定時に pCR が正確に予測できれ
ば手術省略が可能だと考えられている。現在 pCR を 100%予測しうるモダリ
ティーは存在しないが、日常診療では造影 MRI が pCR の予測において正診率
が比較的高いとされており、non pCR を pCR と判定される率 ( 偽陽性率 ) が低
ければ手術省略に向けて検討する価値があるかもしれない。
【目的】術前化学療法後に pCR の予測において MRI が有用であるか否かを検討
した。
【対象および方法】2007 年 1 月から 2013 年 11 月までに術前化学療法後に手
術を施行した 182 例中、化学療法施行前後に MRI で検索し得た 155 例 ( うち 3
例が両側乳癌 ) の 158 病変を対象とした。術前化学療法のレジメは A のみ 2 例、
T のみ 11 例、A+T144 例、その他 1 例であった。また 43 例に trastuzumab を ,2
例 に bevacizumab を 併 用 し た。MRI は Siemens 社 の MAGNETOM Avanto
1.5T を用い、造影 Dynamic 撮像を行い、造影される腫瘍が完全に消失してい
る場合のみを cCR とした。組織学的効果判定は ypT0、ypTis のほかに 5mm
以下の浸潤巣の残存を near pCR、その他を non pCR と定義した。なおリン
パ節転移に関しては問わなかった。
【 結 果 】MRI で cCR が 得 ら れ た 58 例 の 内 訳 は ypT0 27 例 (46.6 % )、ypTis
17 例 (29.3%)、near pCR 9 例 (15.5%)、non pCR 5 例 (8.6%) で あ っ た。
non cCR で あ っ た 100 例 の 内 訳 は ypT0 8 例 (8.0%)、ypTis 7 例 (7.0%)、
near pCR 9 例 (9.0%)、non pCR 76 例 (76.0%) で あ っ た。 ypT0、ypTis
を pCR と定義した場合、敏感度 74.6%、特異度 85.9%、pCR 的中率 75.9%、
偽陽性率 14.1%、正診率 81.6%であった。ホルモン受容体陽性乳癌では敏
感度 68.0%、特異度 85.3%、pCR 的中率 60.7%、偽陽性率 14.7%、正診
率 81.0 %、HER2 陽 性 乳 癌 で は 敏 感 度 81.0 %、 特 異 度 71.6 %、pCR 的 中
率 89.5 %、 偽 陽 性 率 28.6 %、 正 診 率 78.6 %、triple negative 乳 癌 で は 敏
感度 76.9%、特異度 94.1%、pCR 的中率 90.9%、偽陽性率 5.9%、正診率
86.7%で triple negative 乳癌で高い pCR 的中率と低い偽陽性率が得られた。
【考察】現時点では MRI による手術省略の判断は時期尚早と考えられるが、
triple negative 乳癌に限ればで偽陽性率が低く、さらに症例の集積を進め検
討する価値があると思われる。
【結語】MRI による pCR 的中率は 75.9%、偽陽性率は 14.1%であり、術前化
学療法後の pCR の予測に有用とはなり得なかったが、triple negative 乳癌で
は有用となり得る可能性が示唆された。
【目的】乳癌に対する術前化学療法における pCR を MRI により予測可能か検討
した。【対象と方法】2011 年 1 月から 2013 年 10 月までに当院で術前化学療法
を施行後に手術をした 103 例を対象とした。術前に治療効果判定のため MRI
を施行し、その画像所見と病理による組織診断結果と比較検討した。【結果】
対象症例 103 例、治療開始時の平均年齢は 53.7 歳。Luminal type が 39 例
(37.9%)、Luminal HER2 が 20 例 (19.4%)、HER2-enrich が 11 例 (10.7%)、
Triple negative が 33 例 (32%) であった。術前 MRI にて腫瘤の造影効果が完
全に消失していた (cCR) 症例は 19 例 (18.4%) であり、その内訳は Luminal
type が 4 例、Luminal HER2 が 4 例、HER2-enrich が 4 例、Triple negative
が 7 例であった。MRI で cCR と診断した 19 例のうち、術後の病理組織診断で
pCR と診断されたのは 17 例 (89.5%) であり、残りの 2 例は組織学的治療効果
判定基準で Grade 2a と 2b であった。一方、MRI で腫瘤の造影効果が残存し
ている症例の中でも pCR となっていたものが 12 例あった。Luminal type が 1
例、Luminal HER2 が 3 例、HER2-enrich が 6 例、Triple negative が 2 例であっ
た。MRI の cCR を陽性所見とした場合の感度は 58.6%、特異度は 97.3%、陽
性的中度は 89.5%、陰性的中度は 85.7%となった。【結論】MRI で cCR と診
断した症例の 89.5% に pCR を認めており、MRI での cCR は pCR の予測に有
用であると考えた。一方、偽陰性を 41.4% に認めており、MRI により pCR 症
例をすべて予測するのは困難と考えた。
353
一般セッション(ポスター掲示)
【背景・目的】乳癌の術前治療の効果判定において MRI は精度が高い modality
とされている。また、治療効果には細胞増殖能に関与する因子との関連も報
告されている。術前薬物療法を施行した浸潤性乳癌の組織学的所見から MRI
による治療効果判定の精度を検証し、HER2 発現の有無、Ki-67 値との関連
を検討する。【方法】術前薬物療法を施行した浸潤性乳管癌で術前に 3T MR
装置で効果判定を行った後、手術が施行された 65 症例。組織学的効果判定
を gold standard として病理診断での病巣の広がりと術前の MRI での造影
域と対比させた。HER2 の発現および Ki-67 値との関連も検討した。造影域
は dynamic study の 2 分後 3D 画像から作成した MIP 画像で enhance が残存
している範囲を基準として測定した。【結果】組織学的効果判定では grade3,
grade 2, grade 1 がそれぞれ 13 例、18 例、34 例であった。奏功群(grade
3 + grade2b)17 例のうち 10 例(59%)で MRI 上も完全に病変が消失してい
た。Grade 3 を示した 13 例中 5 例で数 mm 大の結節・点状影が残存し、その
うち 3 例に ductal component が確認された。ただし、ductal comoponent
が残存していた症例(8 例)でも造影域が同定できないもの(5 例)もあった。
奏功群には HER2 陽性 15 例のうち 10 例(67%)が入り、非奏功群との間に有
意差(p < 0.002)がみられ、非奏功群 5 例 (34%) に対して有意に Ki-67 値が
高かった(p < 0.02)。非奏功群 (grade 2a + grade 1) 48 例では 35 例 (73%)
で、組織学的浸潤径と MRI 上の造影域がほぼ一致(10mm 未満)したが、13
例 (27%) では 10mm 以上の乖離が見られた。乖離が見られた症例の治療前病
変は広範に広がる non mass like enhancement を示すものが多かった。MRI
上の造影域が組織学的浸潤径と一致したものは 4 例、組織学的浸潤径< MRI
造影域となったものは 31 例にみられた。13 例で組織学的浸潤径> MRI 上造
影域となり、これらはすべて HER2 陰性症例であった。【結論】術前薬物療
法症例の奏功群にみられた MRI 上の結節・点状の造影域は、必ずしも ductal
component と合致するとはいえず、ductal component の有無は評価困難で
ある。非奏功群では MRI 上の造影域と組織学的浸潤径がほぼ一致する。ただし、
HER2 陰性症例では造影域よりも広範に浸潤域が広がっている可能性がある。
ポスター掲示
11895
11654
術前化学療法後の乳房温存手術例における NAC 後造影 MRI 所
見と断端陽性にかかわる因子の検討
乳癌術前化学療法施行時における MRI の役割と限界
GP-1-032-05
GP-1-032-06
1
日本赤十字社和歌山医療センター 乳腺外科部、
日本赤十字社和歌山医療センター 放射線科部、
3
日本赤十字社和歌山医療センター 病理診断科部
2
熊本大学 乳腺内分泌外科
藤木 義敬、山本 豊、村上 敬一、指宿 睦子、岩瀬 弘敬
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】術前化学療法(NAC)後の手術において切除範囲の決定に難渋するこ
とがあり、断端陽性となることも少なくない。今回、NAC 後手術例について
NAC 後も MRI 上腫瘤形成を伴う腫瘍遺残例を用いて、切除断端の状況と BIRADS MRI 評価に基づいた MRI 所見との関連について検討した。
【対象と方
法】2004 年 8 月から 2011 年 10 月までに NAC 後の乳房手術例(温存を含む)
のうち造影 MRI を NAC 前後に施行した 105 例中、乳房温存手術を行い、遺残
腫瘍として腫瘤を認めた 66 例を用いて検討を行った。切除断端陽性は断端に
癌が接している場合と定義した。NAC 後造影 MRI の評価は BI-RAD - MRI に
基づき、腫瘤の Shape、Margin、Internal enhancement characteristics を
評 価 し、 さ ら に Shape を Round、Oval、Lobulated、Irregular、Margin を
Smooth、Irregular、Spiculated、Internal enhancement characteristics
を Homogeneous、Heterogeneous、Rim enhancement、Dark internal
septations、Enhancing internal septations、Central enhancement に 分
類し評価した。この MRI 所見や臨床病理学的所見と切除断端陽性との関連
に つ い て 検 討 し た。Subtype は ER+/HER2-、ER+/HER2+、ER-/Her2+、
ER-/Her2- の4つに分類した。【結果】乳房温存術施行例中、断端陽性は 12 例
(18%)、断端陰性は 54 例 (82%) であった。患者背景では閉経前(p=0.0388)、
2cm 以上の腫瘍径(p=0.0272)、lv+(p=0.0190)、および ER+/HER2-type
(p=0.0351)が断端陽性と有意に相関した。また、NAC 後の造影 MRI におい
て Internal enhancement characteristics が Heterogeneous な も の で は 断
端陽性と有意に相関し(p=0.0450)、他の Shape、Margin を構成する所見に
ついては断端陽性と関連がなかった。Heterogeneous な造影効果を持つ遺残
腫瘍と臨床病理学的因子との比較では、lv+ が Heterogeneous な造影効果と
有意に相関した(p=0.0374)
。【結論】NAC 後の造影 MRI において、遺残腫瘍
が Heterogeneous な造影効果を有する場合は、乳房温存手術時には切除断端
が陽性となりやすいことに留意する必要がある。
西村 友美 1、川口 佳奈子 1、矢本 真子 1、山田 晴美 1、芳林 浩史 1、
西尾 直子 2、嶋田 巧太郎 2、則久 佳毅 2、小野 一雄 3、加藤 博明 1
【背景】乳腺の画像診断、特に乳癌の広がり診断における造影 MRI の重要性
は広く認識されている。また、術前化学療法施行時の治療効果判定やその後
の術式決定に際しても重要な役割を果たすようになってきている。【目的】乳
癌術前化学療法施行時の治療効果判定および至適切除範囲決定における MRI
の役割とその限界について検討する。【方法】2009 年 4 月 1 日から 2013 年 4
月 30 日までに当院で術前化学療法後に手術を行った原発性乳癌の症例に対
し、術前の MRI 所見(= 2 レジメン目の中間評価)と病理所見との相違につい
てレトロスペクティブに検討する。【結果】2 レジメン目の中間 MRI の腫瘍径
と病理の腫瘍径を比較すると、術前化学療法症例 63 例のうち 44 例(70%)で
誤差は 10mm 未満であったが、11 例では MRI が 10mm 以上過小評価して
いた。Subtype 別に検討すると、HER2 陰性症例は HER2 陽性症例に比較し
10mm 以上の過小評価となる割合が多かった(30% v.s. 8%、P < 0.05)。一
方、MRI で CR(cCR)と評価された症例 19 例のうち、病理学的にも CR(pCR)
であった症例は 15 例(陽性一致率:79%)であり、MRI による CR 評価の感度
は 52%、特異度は 87% であった。Subtype 別に検討すると、MRI における
CR 評価の陽性一致率は HER2 陰性症例の方が陽性症例よりも低かった(33%
v.s. 88%、P < 0.05)。ER の発現状況と、MRI と病理の一致率の間には明ら
かな相関を認めなかった。【考察】今回の検討では、ER 発現の有無に関わらず、
HER2 陽性症例では経時的 MRI 変化は病理像を反映することが多く、HER2 陰
性症例では MRI で過小評価する可能性がやや高いことが示唆された。術前化
学療法施行症例の手術の際には、MRI 所見に加えて、術前治療前の腫瘍の性
質も加味して切除範囲を決定することを検討していく必要があると思われる。
10645
10034
術前画像により病理学的完全寛解はどこまで予測できるか ?
3.0T MRI を用いた乳癌術前薬物療法後の効果判定
GP-1-032-07
GP-1-032-08
1
愛知県がんセンター中央病院 乳腺科、
2
愛知県がんセンター中央病院 遺伝子病理診断部
1
服部 正也 1、市川 茉莉 1、藤田 崇史 1、澤木 正孝 1、近藤 直人 1、
堀尾 章代 1、権藤 なおみ 1、井戸田 愛 1、谷田部 恭 2、岩田 広治 1
金尾 昌太郎 1、片岡 正子 1、河合 真喜子 1、飯間 麻美 1、大西 奈都子 1、
三上 芳喜 2、戸井 雅和 3、富樫 かおり 1
2
画像評価による術前化学療法後の残存腫瘍評価は外科治療選択において重要
である.画像上完全寛解と評価しても病理学的に腫瘍残存が認められること
を経験する。病理学的完全寛解(pCR: pathological complete response)の
率は乳癌のサブタイプにより異なり、さらには pCR 定義も様々である.今回,
術前化学療法後の乳房内残存腫瘍の画像評価と病理学的評価の一致率を pCR
定義と乳癌サブタイプにより検討した.【方法】対象は愛知県がんセンター中
央病院で 2003 年 1 月~ 2012 年 7 月までに術前化学療法が施行された 326
例.術前画像評価(造影乳房 MRI のみ,乳房超音波と造影乳房 MRI)の感度
(病理学的遺残が術前画像で病理学的遺残ありと判定された率)と特異度(pCR
が術前画像で pCR と判定された率),陰性適中率(術前画像で pCR と判定さ
れ, 実 際 に pCR で あ る 率 )を 乳 癌 サ ブ タ イ プ(ER+/HER2-, ER+/HER2+,
ER-HER2+, ER-/PR-)毎に各 pCR 定義(ypT0, ypT0/is)で評価した.各画
像の CR 評価は MRI では早期相での造影域の消失とし、超音波は画像上での
認識不能とした.【結果】各乳癌サブタイプ(ER+/HER2-, ER+/HER2+, ERHER2+, ER-/PR-)における MRI の感度と特異度は,それぞれ ypT0 で 78.6
と 83.3%,68.4 と 77.8%,80.0 と 56.3%,81.6 と 58.8%,ypT0/is で
79.1 と 85.7%, 78.1 と 80.0%,90.5 と 52.0%,90.3 と 58.3% であり、陰
性 適 中 率 は ypT0:13.9%,36.8%,60.0%,56.8%,ypT0/is:16.7%,
63.2%,86.7%,82.4% であった。MRI と US をあわせた評価での感度と特
異度は ypT0 で 97.2 と 50.0%,94.7 と 11.1%,96.7 と 12.5%,100 と 5.9%,
ypT0/is で 97.2 と 42.9%, 96.9 と 13.3%,100 と 12.0%,100 と 4.2% で,
陰性適中率は ypT0:42.9%,33.3%,66.7%,100%,ypT0/is:42.9%,
66.7%,100%,100% で あ っ た。【 結 語 】ER-/HER2+,ER-/HER2- の サ
ブタイプにおいて,術前造影 MRI で pCR と判定されれば 86.7%,82.4% で
ypT0/is の定義による pCR と一致していた.一方,ER+ のサブタイプでは特
異度は高いものの陰性適中率は低く,画像と病理学的 CR の一致率は低かった.
CR 評価に超音波で描出できない病変までを含めた場合,陰性適中率は高まる
ものの特異度が低く,偽陽性率が高かった.
京都大学医学部附属病院 放射線診断科、
京都大学医学部附属病院 病理診断科、3 京都大学医学部附属病院 乳腺外科
【目的】3.0T MRI を用いた乳癌術前薬物療法後の Complete Response (CR)
の評価について、病理との対比を行った。【方法】対象は 2008 年から 2013
年に、乳癌術前薬物療法の最終効果判定を目的として 3.0T MRI が撮像され、
手術が施行された 198 例。撮像機器は Magnetom Trio Tim (Siemens) で、
4ch あるいは 16ch の乳房専用コイルを用いた。2008 年~ 2010 年の 101 例
を前期(4ch コイル使用)、2011 ~ 2013 年の 97 例を後期 (16ch コイル使用 )
とした。MRI の効果判定は、CR、near CR、PR、SD、PD の 5 段階で評価し、
術前のレポートに記載されている内容を Prospective 評価、今回再検討した結
果を Retrospective 評価とした。全例において手術が施行され、病理学的効
果判定が乳癌取扱規約に基づいて施行された。Grade 3 を pCR= 陽性と定義
し、MRI おける 5 段階評価の陽性的中率を評価した。また Prospective 評価と
Retrospective 評価が一致しない症例についても検討を行った。【結果】手術標
本において pCR であったのは、前期では 101 例中 17 例 (16.8%)、後期では
97 例中 28 例(28.9%)全体で 45 例 (22.7%) であった。CR、near CR、PR、
SD、PD の 陽 性 的 中 率 は Prospective 評 価 で は、82.6%, 53.3%, 10.5%,
0%, 0%、 で あ っ た の が Retrospective 評 価 で は 90.9%, 57.1%, 8.2%,
0%, 0% と向上した。Prospective と Retrospective 評価が一致しなかった症
例は 7 例あり、すべて前期の症例であった。原因は、所見の見落とし (washout、
単純高信号、単純低信号 ) が 4 例、診断基準のぶれ(淡い造影効果の判定)が 2
例、画質不良 ( 脂肪抑制不良 ) が 1 例であった。【結論】3.0T MRI を用いた乳
癌術前薬物療法後の効果判定では、高い精度で pCR を層別化可能である。診
断精度向上のためには症例経験を積み、pitfall に配慮することが望ましいと考
えられた。
354
ポスター掲示
10950
10500
閉経後 Luminal A 乳癌の術前ホルモン療法における MRI 所見
の変化-術前化学療法との比較-
浸潤性乳癌の apparent diffusion coefficient (ADC)( 見か
けの拡散係数 ) と増殖能および造影パターンとの相関
GP-1-032-09
1
4
GP-1-032-10
国立病院機構長崎医療センター 放射線科、2 同 外科、3 同 臨床検査科、
聖フランシスコ病院 放射線科
1
国立病院機構九州医療センター 乳腺センター放射線科 臨床研究セン
ター、2 九州厚生局健康福祉部 医事課、3 国立病院機構九州医療センター 乳腺センター乳腺外科 臨床研究センター
中島 一彰 1、前田 茂人 2、遠山 啓亮 2、渡海 由貴子 2、溝脇 貴志 1、
伊東 正博 3、磯本 一郎 4、松岡 陽治郎 1
【 目 的 】現 在 で は 乳 癌 術 前 評 価 の MRI に お い て、 拡 散 強 調 画 像(diffusionweighted image, DWI)を撮像することが一般的となっている。拡散強調画
像から得られる apparent diffusion coefficient (ADC)( 見かけの拡散係数 )
は、細胞密度等で変化し、腫瘍性病変の良悪性鑑別に有用とされている。ま
た近年では、ADC と、乳癌の増殖態度、組織構築との相関が報告されている。
本研究では、腫瘍細胞の増殖態度を反映する MIB-1 labeling index (Ki-67)、
ホルモンレセプターの発現程度、造影パターンと ADC の相関の有無を検討す
る。これにより、乳癌の生物学的特性を術前、画像的に予測可能であれば、個々
の症例に応じた適切な治療選択に有用な情報の付加に寄与することが期待さ
れる。
【対象と方法】2013 年 4-11 月の間、当院にて術前 MRI を施行し、ADC 計測
可能であった浸潤性乳癌 51 症例(全員女性)。術前 MRI 撮像時に拡散強調画
像 (b=1000) を撮像し全例 ADC map を作成。さらに切除標本にて、MIB-1
labeling index, HER2(c-erbB-2), estrogen receptor (ER), progesterone
receptor (PR) の 発 現 程 度 を 評 価 し た。MRI の 造 影 パ タ ー ン は、BI-RADS
MRI にて解析した。
【結果】MIB-1 labeling index と、ADC とは有意な相関があり、ADC は増殖能
を反映するとして臨床的有用性が高いと考えられた(p=.0355)。また、MIB1 labeling index と、ER の発現程度にも明らかな相関が見られた(p=.0019)。
ホルモンレセプター発現程度と ADC の直接の相関は見られなかったが、PR の
発現の有無と年齢とは有意な相関が見られた(p=0.028)。さらに ER と PR 相
互の発現の有無に関しても相関が見られた (p=0.0021)。BI-RADS との対比
では、non-mass enhancement の場合、ADC との相関は明らかではなく、
mass enhancement の場合は統計的に有意ではないものの、相関傾向がみら
れた。
【結論】現在、乳癌の治療はオーダーメードの時代となっている。本研究により、
ADC により乳癌の増殖態度がある程度推測可能であることから、さらにきめ
細かな治療戦略の構築の為に、生体内での腫瘍の動的状態を観察でき、かつ、
非侵襲的に腫瘍の特性を評価できる MRI の役割はさらに大きくなると考えら
れた。
11876
11830
乳房温存手術における切除断端の術中迅速病理診断省略の可能
性の検討
HER2 陽性乳癌における縮小手術の可能性
GP-1-032-11
GP-1-032-12
1
国立病院機構大阪医療センター 外科・乳腺外科、
国立病院機構大阪医療センター 放射線診断科、
3
国立病院機構大阪医療センター 臨床検査科
2
大阪大学医学部附属病院 乳腺・内分泌外科
稲留 遵一、金 昇晋、道下 新太郎、加々良 尚文、直居 靖人、下田 雅史、
丸山 尚美、下村 淳、島津 研三、野口 眞三郎
[ 目的 ] 乳房温存手術における切除断端の術中迅速病理診断の省略の可能性に
ついてレトロスペクティブに検討した。[ 患者と方法 ]2008 年 1 月から 2012
年 3 月までに当院で乳房温存術を施行した乳癌患者(508 例)を対象とした
(術前化学 / ホルモン療法施行例 104 例を含む)。術直前に腫瘍の進展範囲を
エコーで確認し 15 から 20mm の safety margin をとって部分切除を実施し
た。断端の迅速病理診断に提出した標本の残りから永久標本(HE 染色)を作
成して断端を評価した。切除断端に癌細胞の露出がある場合を断端陽性とし
た。術前乳房造影 MRI で腫瘍を以下の 5 つのカテゴリーに分類した:Diffuse
type(多発、乳管内伸展、娘病巣を伴う)、Spiculated type(スピキュラを
伴う)、Lobulated type(辺縁分葉状・微細鋸歯状)、Smooth type(辺縁が
整)、Others(腫瘍が微小または造影されない症例)。[ 結果 ]85 例(17%)が
断端陽性であった。断端陽性と臨床病理学的因子の相関を検討したところ、
T > 20mm は T < 20mm に比して有意に断端陽性率が高率であった (27%
vs. 15%, P=0.020)。MRI に よ る カ テ ゴ リ ー 別 の 断 端 陽 性 率 は、Diffuse
type(24%)、Spiculated type(5%)、Lobulated type(8%)、Smooth
type(9%)、Others(14%)で あ り、Diffuse type(24%)の 陽 性 率 は Nondiffuse type(7%)
(Diffuse type 以外の 4 types を合わせたもの)よりも有意
に(P= 1.8 1e-06)高率であった。また、断端陽性率は、閉経、リンパ節転移、
組織学的異型度、ホルモン受容体、HER2、Ki67、術前治療の有無、safety
margin (2cm 以上 vs. 2cm 未満 ) とは有意な相関は示さなかった。[ 結果 ] 術
前治療の有無にかかわらず MRI で T < 20mm、かつ、Non-diffuse type であ
れば (185 例 ) 、断端陽性率は 6%(11 例 ) と低率であり、術中迅速診断を省
略し術後に断端陽性が判明しても許容できる範囲と考えられた。
八十島 宏行 1、増田 慎三 1、田中 希世 1、田口 裕紀子 1、増田 紘子 1、
水谷 麻紀子 1、栗山 啓子 2、森 清 3、児玉 良典 3、眞能 正幸 3、
中森 正二 1、関本 貢嗣 1
【目的】昨今、術前化学療法が局所進行性乳癌に対してだけではなく、乳癌の
biology から早期乳癌にも適応拡大されるようになった。術前化学療法後のエ
コーや MRI を用いての画像診断を用いて、遺残細胞の有無やその viability の
検索は手術における切除範囲を決定するが、その正確な評価は難しい。それ
ゆえ術前化学療法後に clinical CR(cCR) と診断されても、必ずしも術後標本
にて pathological CR(CpCR) とは一致しない。それゆえ結果的に過剰切除と
なる場合に遭遇することがある。抗 HER2 療法の治療戦略により HER2 陽性
乳癌では 40 ~ 50%の CpCR 率が得られるようになったことから、HER2 陽
性乳癌に限って術前化学療法後 MRI 画像の理解により手術の適格な縮小手術
が可能かを検討した。【対象】 2007 年から 2013 年までの HER2 陽性乳癌で
術前化学療法にトラスツズマブを併用し、術前化学療法前後の MRI を実施し
た 67 例を対象とした。【方法】術前化学療法後の cCR 率、手術標本での CpCR
率、cCR と CpCR の一致率やホルモン受容体別、更に閉経前後でのその一致率、
また一致する症例と病理組織学的因子との関連性についても検討した。
【結果】 年齢中央値は 53 歳(32 - 69 歳)、閉経前 28 例、閉経後 41 例、ER 陽性例が
39 例、陰性例が 28 例であった。全体の CpCR 率は 24/67 例 (35.8%) で、ER
陽性では 6/39 例 (15.3%) に対して ER 陰性では 18/28 例(64%)であった。
cCR と CpCR の一致率は 19/29 例 (65.5%) で、ER 陽性では 5/14 例 (35.7%)、
ER 陰性では 14/15 例 (93%) と高い一致率であった(P=0.001)また閉経前後
での比較では閉経前では 5/13(38%)、閉経後では 14/16(87.5%) と有意に
高い一致率であった(P = 0.016)。その他の臨床病理学的因子と一致症例に
は相関は認めなかった。閉経後 ER 陽性での一致率は 4/21 例 (19%) で閉経後
ER 陰性では 10/20 例(50%)(P=0.051)で高い一致率の傾向があった。【結
論】術前化学療法により高い CpCR 率を期待できる HER2 陽性乳癌では、特に
閉経後 ER 陰性乳癌での cCR 例と CpCR 例との一致率が高い傾向があることか
ら、このような症例で術前化学療法後の MRI にて cCR を予想された際には過
剰な切除を避けることができる。
355
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】閉経後 Luminal A 乳癌に対する術前ホルモン療法は広く行われてい
るが、治療による画像の変化とその意義については明らかにされていない。
Luminal A 乳癌の術前ホルモン療法における MRI 所見の変化について、術前
化学療法を施行した症例と比較検討した。【方法】2008 ~ 13 年にレトロゾー
ルによる術前ホルモン療法を行った閉経後 Luminal A 乳癌 18 例(H 群)を対象
とし、ホルモン療法前後の MRI(造影 T1 強調像、拡散強調像)における病変の
性状、サイズの変化と治療効果について後ろ向きに検討した。また、2007 ~
12 年に FEC → DOC による術前化学療法を行った Luminal A 乳癌 27 例のう
ち、治療前の病変径が 40mm 未満の 13 例(C 群)との比較も行った。【結果】
H 群は治療前病変の最大径平均 22mm、治療後の平均縮小率 23%、PR4 例、
SD14 例であった。治療後にサイズ不変あるいは腫瘤の形態を保ったまま軽度
縮小したものが 14 例、わずかな foci に縮小したものが 3 例であった。1 例は
造影 T1 強調像での縮小は軽度だが組織学的治療効果は Grade 3 と乖離が見ら
れ、拡散強調像では病変が不明瞭化していた。拡散強調像では 16 例(89%)
で治療後も高信号が残存し、ADC 値変化率(治療後/前)は 1.08 であった。
縮小率が高いほど ADC 値変化率も高かった(p < 0.01)。C 群は最大径平均
31mm、平均縮小率 43%、PR10 例、SD3 例、拡散強調像では 12 例(92%)
で治療後も高信号が残存し、ADC 値変化率 1.52 であった。縮小率、ADC 値
変化率はいずれも C 群の方が H 群より有意に高値であった(p < 0.01)。
【結語】
閉経後 Luminal A 乳癌の術前ホルモン療法は化学療法に比べ造影 T1 強調像で
の縮小率、ADC 値変化率が低い。治療後も腫瘤像が残存することが多いため
拡散強調像で認識しやすく、治療効果予測の補助となり得る。
名本 路花 1,2、筒井 佳奈 1、高橋 龍司 3、井上 有香 3、赤司 桃子 3、
原田 詩乃 1、中川 志乃 3
ポスター掲示
11547
11831
乳房 MRI を用いた手術シミュレーション作成への試み―非線形
有限要素解析による乳房変形予測手法の開発
Oncoplastic breast surgery における超早期相乳腺造影 MR
への取り組み
GP-1-032-13
1
2
GP-1-032-14
山口大学大学院医学系研究科 応用医工学系専攻、
NTT 西日本大阪病院 放射線科
広島市立広島市民病院 乳腺外科
伊藤 充矢、吉村 友里、梶原 友紀子、河内 麻里子、大谷 彰一郎、
檜垣 健二
田中 佑 1、徳田 由紀子 2、陳 献 1
一般セッション(ポスター掲示)
乳房温存療法が比較的早期の乳癌に対する標準的治療と位置づけられるよう
になってから久しい.乳房温存術で断端陰性となる切除が達成されるために
は,術前に乳管内癌が正確に検出され,手術体位においてもその広がりの位
置情報が反映されることが望まれる.しかし,乳管内癌の検出が最も良い
MRI は,腹臥位で撮像されているために,手術体位での広がりを認識しにく
いのが現状である.医用画像技術の進歩により,CT や MRI 等を用いて生体器
官の形状を精密に再構築することが可能となっているが,術中の画像情報が
入手できない場合は,術前の画像情報のみで術中器官の形状を構築すること
は困難である.一方,構造解析など工学的分野で成功を収めている有限要素
法は,力学原理に基づき,器官の力学的特性及び術中の操作に対応する境界
条件を与えれば,計算機による数値シミュレーションにより,術中器官の変
形を予測することができ,これを基に術中操作に伴う器官の形状変化及び内
部組織の移動を予測することが可能となるため,近年手術ナビゲーションの
有力手段として注目されている.本研究では有限要素法を用いた乳房変形シ
ミュレーション手法を開発し,さらに乳がん手術ナビゲーションシステムの
構築を目指す.現段階ではまず腹臥位で取得した MRI 画像をもとに,有限要
素解析による仰臥位における乳房形状の予測を行い,乳房変形シミュレーショ
ンにおける問題点及び実現の可能性について検討を行う.このため,まず医
用画像処理ソフト Zedview を用いて,腹臥位の MRI 画像から乳房の輪郭及び
乳腺と脂肪組織の界面を抽出し,乳腺と脂肪組織を区別した乳房の形状モデ
ルを作成した.さらに,作成した形状モデルを有限要素メッシュ作成ソフト
ANSYS ICEM CFD に導入して有限要素メッシュモデルを構築した上,乳腺及
び脂肪組織に対応した材料特性及び境界条件を与えて有限要素解析モデルを
作成した.特に,乳房はほかの器官より柔らかく,変形が大きいため,非線
形有限要素法を導入する必要があり,乳腺及び脂肪組織の材料モデルとして,
超弾性体モデルを導入し,大変形による幾何学的非線形性を考慮した有限要
素解析による乳房変形シミュレーションを試みた.解析結果より,有限要素
法による乳房変形予測が実現できる可能性があると考えられた.
【はじめに】乳癌手術は縮小・低侵襲化の傾向にあり、乳房温存手術やセンチ
ネルリンパ節生検が標準治療となっている。温存術の場合は、正確な広がり
診断を行い、可能な限り不必要な切除を行わない事が整容性を保つ事には肝
要である。一方、広範囲な病変への温存術施行は、著しい乳房変形の原因と
もなる。近年では広範囲病変に対する、全摘+乳房再建も徐々に増加傾向に
あり、根治性のみならず整容性も重視した Oncoplastic breast surgery といっ
た概念が注目されている。【目的】今回われわれは原発性乳癌への初回根治手
術症例に対し、整容性を加味した適切な術式決定の為、術前の広がり診断と
して、通常の乳腺 MRI の Dynamic study を施行した症例と、造影開始 30 秒
での超早期相を加えて検査した症例を比較し、その有用性について検討し報
告する。【対象と方法】2012 年 1 月から 2012 年 5 月までの原発性乳癌 121 例
を対象とし、術前化学療法症例は除外した。通常 MRI 検査を施行した前期症
例 55 例と、造影開始後 30 秒での超早期相 MRI を含む後期症例 66 例について
乳房温存率および温存術施行時の切除断端陽性率を比較した。5mm 以内に癌
を認める場合を断端陽性とし、癌の露出や 5mm 以内に浸潤癌や広範囲な非
浸潤癌を認める場合に追加切除の適応とした。【結果】前期症例および後期症
例において温存率は前期症例は 55 例中 40 例 (72.7%)、後期症例は 66 例中
48 例 (72.7%) と全く同様であった。断端陽性率は前期症例 32.5%、後期症
例 33.3% とほぼ同等であったが、追加切除を要する場合はそれぞれ 15.0%、
9.6% であり、さらに追加切除時の癌遺残は 7.5% 、2.0% と後期症例に良好
な成績であった。【考察】温存率や追加切除率に有意な差はなかったが、後期
症例では追加切除時に残存病変を認めない場合が多く、超早期相造影 MRI が
有用である可能性が示唆された。切除範囲の決定や術者の違いによる問題も
あるが、症例を蓄積し今後も検討を重ねる必要がある。
10396
10636
体位による乳房の変形を考慮した指摘病変重畳呈示法の検討
乳腺 MRI における患側背景乳腺の造影増強を亢進させる病理学
的所見について
GP-1-032-15
GP-1-032-16
1
滋賀医科大学外科学講座 乳腺・一般外科、
2
滋賀医科大学外科学講座 消化器外科、3 滋賀医科大学付属病院 放射線科、
4
沢井記念乳腺クリニック
田中 彰恵 1,4、梅田 朋子 1、山田 篤史 2、森 毅 1、河合 由紀 1、冨田 香 1、
北村 直美 1、金子 智亜紀 3、久保田 良浩 1、谷 徹 2
【背景】近年、MRI 装置や撮影法の進歩にともない MMG や US では判別困難な
症例や微小な乳管内病変を術前検討する機会が増えてきた。腹臥位 MRI で検
出された微小乳管内病変の位置は仰臥位では異なるため、術前のマッピング
に苦慮することが多い。これに対する解決策として、有限要素法を用いた乳
房の変形シミュレーションと画像レジストレーションを併用し、腹臥位 MRI
を用いて検出された病変位置を、転移検索に用いる仰臥位 CT 画像上に重畳表
示するシステムを構築した。これにより腹臥位で検出された病変位置を仰臥
位で正しく把握した上で、Second look US による病変検出が可能になるため、
より正確なマッピングが期待できる。【方法】2013 年 10 月~ 12 月に術前検査
を行った 51 歳~ 73 歳女性、浸潤性乳管癌 3 例、非浸潤性乳管癌 1 例に対して
術前 MRI 検査の際に仰臥位 MRI 撮影を追加し、画像を提案システムに基づき
仰臥位 CT に重畳した。【結果】いずれの症例も術前マッピングに有用であった
が、特に乳房が大きい症例では、MRI で確認できるも US のみでは同定困難で
あった微小副病変を、より簡便にマッピングし切除することができた。【考察】
本システムが完成すると、追加撮影することなく仰臥位画像に投影できるの
で、患者の負担を増やすことなく、より詳細かつ正確な術前マッピングを行
うことに寄与するものと考えられた。【結語】本システムを活用し、より正確
な術前マッピングと変形予測、再建法予測へつながる可能性が示唆された。
356
1
順天堂大学医学部附属練馬病院 放射線科、
順天堂大学医学部附属練馬病院 乳腺外科、
順天堂大学医学部附属練馬病院 病理診断科、
4
順天堂大学医学部附属順天堂医院 放射線科
2
3
天野 真紀 1、尾埼 裕 1、玉井 光邦 1、菅野 直美 1、稲葉 玲子 1、
太田 優子 1、北畠 俊顕 2、小坂 泰二郎 2、児島 邦明 2、小倉 加奈子 3、
桑鶴 良平 4
背 景: 乳 腺 MRI に お い て 背 景 乳 腺 の 造 影 増 強(background parenchymal
enhancement:BPE)は病変の存在診断や拡がり診断を困難にするが、通常
は左右対称性である。しかし、左右の乳腺で BPE の程度や分布が異なり診断
に苦慮する症例を経験する。目的:患側乳腺の BPE の亢進と病変の病理学的
特徴との関連について検討すること。対象:対象は 2012 年 2 月~ 2013 年
7 月に乳腺 MRI が施行された閉経前女性 84 例(26-50 歳、平均 43.0 歳)。乳
房術後・化学療法後・両側乳癌例は除外した。乳癌 62 例(IDC 47、ILC 2、
tubular ca. 2、mucinous ca. 1、DCIS 10)、ADH1、 硬 化 性 腺 症 2、 線
維 腺 腫 1、 顆 粒 細 胞 腫 1、 正 常 組 織 ま た は 乳 腺 症 6 は、CNB 11、MMT 7、
tumorectomy 1、Bp 32、Bt 22 により病理学的に診断された。残り 11 例
は MRI 所見ならびに臨床的に正常と診断し組織診断は行わなかった。方法:
造影早期相(造影剤注入後 120 秒)の MIP 画像を用いて、BPE の程度を視覚
的に 0 ~ 3 の 4 段階にスコア化し、BPE の左右差を [ 患側スコア―健側スコ
ア ] で +3 ~ -3 の 7 段階で表した。BPE の左右差と比較した病理所見は、病
変の良悪性、浸潤癌と非浸潤癌、および、手術が行われた浸潤癌 44 例の腫瘍
径、リンパ管侵襲の有無、乳管内進展の有無、LN 転移の有無である。結果:
BPE の左右差スコアごとの症例数 ( ) は、+3(0)、+2(1)、+1(20)、0(48)、
-1(14)、-2(1)、-3(0) であった。患側の BPE が亢進している症例は非浸潤癌
例と比べ浸潤癌例で有意に多かった(χ 2 片側検定 p = 0.048)。しかし、浸
潤癌の腫瘍径、リンパ管侵襲の有無、乳管内進展の有無、LN 転移の有無はい
ずれも BPE の左右差に関連しなかった。考察:今回の検討では、浸潤癌が患
側 BPE を亢進させる因子であり、癌の間質への浸潤が患側乳腺の血行動態に
影響している可能性があると考えた。しかし、浸潤癌の組織学的所見の内、
BPE を亢進させる因子は明らかでなかった。浸潤癌では患側の BPE の亢進に
より拡がり診断が困難になる場合が予想され慎重な評価が必要と思われた。
結論:浸潤癌が乳腺 MRI の患側の BPE を亢進させる因子である。
ポスター掲示
10608
10101
乳房 MRI 診断における T1 強調画像・T2 強調画像所見の意義
3T MRI 拡散強調像を用いた Luminal A 乳癌における原発巣の
最小 ADC 値による腋窩リンパ節転移予測
GP-1-032-17
GP-1-032-18
1
東京医科歯科大学医学部附属病院 医療情報部、
2
東京医科歯科大学医学部附属病院 放射線診断科、
3
東京医科歯科大学医学部附属病院 乳腺外科
1
3
久保田 一徳 1,2、町田 洋一 2、岡澤 かおり 2、藤岡 友之 2、永原 誠 3、
中川 剛士 3、佐藤 隆宣 3
北海道大学病院 放射線診断科、2 北海道大学病院 乳腺外科、
北海道大学病院 病理部、4 北海道大学大学院医学研究科 放射線医学分野
加藤 扶美 1、工藤 與亮 1、山下 啓子 2、畑中 佳奈子 3、細田 充主 2、
真鍋 徳子 1、山本 貢 2、三村 理恵 1、宮本 憲幸 4、白土 博樹 4
【目的】乳癌において腋窩リンパ節転移の程度は重要な予後因子である。本検
討の目的は Luminal A 乳癌のリンパ節転移評価において、MRI 拡散強調像
における原発巣の最小 ADC 値の有用性を検討することである。【方法】平成
24 年 2 月から平成 25 年 6 月に 3T 装置により拡散強調像(b 値 0, 1000 sec/
mm2)を含む乳腺 MRI および CT を撮像し、その後の術後病理にて浸潤性乳
癌 Luminal A(Ki-67 のカットオフは 14%)と診断された 39 症例 42 結節を対
象とした。ADC map 上で乳癌病変部に ROI を設定して最小 ADC 値を計測し、
CT にて患側の最大の腋窩リンパ節の短径を計測した。主観評価として、患側
の腋窩リンパ節について、皮質の肥厚の有無、類円形の形態かどうか、さら
に左右差の有無(数、大きさ、形、造影効果の程度の総合評価)を一人の放射
線診断医が評価した。腋窩リンパ節転移陽性群(n = 10)と 陰性群(n = 32)
で、MRI 拡散強調像における乳癌病変部の最小 ADC 値および CT における最
大の腋窩リンパ節の短径(Mann-Whitney U 検定)、CT 主観評価項目(χ 2 検
定)を比較した。また、最小 ADC 値とリンパ節転移の有無につき ROC 解析
を行った。最小 ADC 値とリンパ節転移個数との相関を検討した(スピアマ
ンの順位相関係数)。【結果】リンパ節転移陽性群における乳癌病変部の最小
ADC 値は陰性群と比し有意に低かった(698.5 ± 140.6 vs. 933.2 ± 259.5 ×
10-6mm2/s, p = 0.0079)。腋窩リンパ節の短径には両群で有意差はなかった
(陽性群 3.6 ± 1.5 vs. 陰性群 3.2 ± 1.3mm, p = 0.3136)。CT 主観評価項目
では、腋窩リンパ節の左右差は、腋窩リンパ節転移陽性群で陰性群に比し有
意に高頻度に認められた(あり:なし = 6:4 vs. 5:27, p = 0.0176)。皮
質の肥厚の有無や類円形の形態かどうかに有意差はなかった。最小 ADC 値を
用いた ROC 解析では、AUC(area under the curve)は 0.781(p = 0.0002)
であり、881.961 × 10-6mm2/s を閾値とすると、感度 100%、特異度 50%
であった。最小 ADC とリンパ節転移個数には中等度の負の相関を認めた(r =
-0.424, p = 0.0051)。【結論】Luminal A 乳癌において 3T MRI での拡散強
調像を用いた原発巣の最小 ADC 値は、CT による形態診断と比較して腋窩リン
パ節転移に対する診断能が高く、腋窩リンパ節転移の存在を高い感度で予測
することが可能である。
10243
10476
当院における乳腺 MRI 診断プロセスの有用性検討
乳癌の MRI 診断における新たな試み ―拡散テンソル画像の有
用性―
GP-1-032-19
GP-1-032-20
医療法人社団そらち乳腺・肛門外科クリニック
1
叶 亮浩、小西 勝人
【目的】当院では乳癌の広がり診断や多発乳癌検索の他に、MMG や US で乳癌
を疑うが診断に難渋する症例に対して一定の基準を設け乳腺 MRI を施行し、
その後の診療方針を決定している。今回この診断プロセスの有用性について
検討を行った。【方法】MRI 施行基準は、MMG,US でカテゴリー4以上、又は
カテゴリー 3 でも血性分泌や憎悪傾向が有る等の悪性を疑う所見が有るが、
はっきりとした腫瘤形成が無いものや、径 1cm 以下の小腫瘤が多発しており
標的選択が難しい等、US ガイド下での CNB が困難な症例を対象とした。MRI
の撮像方法は NMLE(Non Mass Like Enhancement) 等の微細な造影所見の
評価を優先して、コントラスト決定時間が造影後 90 秒付近になるような患
側の高分解能像を主体とした両側 Dynamic MRI を施行した。悪性を示唆す
る所見として BI-RADS-MRI カテゴリー 3 以上の所見を認める場合は second
look US やステレオガイド下マンモト―ム等の追加検査を行い乳癌の有無を
確認し、無い場合は慎重 follow とした。MRI で悪性を示唆した症例について
MMG,US との所見を対比し、その傾向や特徴等について検討した。【結果】
2012 年 11 月から 2013 年 11 月の期間で診療方針決定の為の MRI 対象となっ
たのは 13 例(平均年齢 :55.2 歳)あり、当院での MMG,US 受診者の約 0.8%
に相当した。悪性を示唆する所見があったのは 7 例 (MRI C3:2 例、C4:3 例、
C5:2 例)で、そのうち追加検査により乳癌が検出されたのは 5 例 (DCIS:3 例、
DCIS+IDC:1 例、IDC:1 例)あり、同期間に当院で検出された全乳癌(21 例)
の 23.8% に相当した。これらの乳癌症例では造影高分解能像にて区域性の
NMLE(MRI C4:3 例、C5:1 例)や spiculated lesion(MRI C5:1 例)が見られ、
MMG,US で前者は不均一な区域性石灰化や FAD, 形状不整で小さな low echo
の点在、後者は構築の乱れを示していた。また、MRI 所見陰性例(MRI C2 以
下)は 6 例で、現在 follow 中である。【考察】MMG や US で診断に難渋するよう
な症例に対して、一定の施行基準を定めて MRI を行うことは診断確定のため
に有用であると思われた。また、今回検出された乳癌症例で DCIS の割合が多
かった事から、当院のプロトコールとして設定した高分解能撮像を主体とし
た Dynamic MRI が、NMLE 等に代表される MRI detected legion の描出に優
れており、腫瘤形成が見られないような早期の乳癌検出に寄与するものと思
われた。以上から今回設定した当院の乳腺 MRI 診断プロセスは有用であると
思われた。
佐賀大学医学部 一般・消化器外科、2 佐賀大学医学部 放射線科
中村 淳 1、山口 健 2、中園 貴彦 2、佐藤 博文 1、北原 賢二 1、入江 裕之 2、
能城 浩和 1
【背景】乳腺 MRI 検査は乳腺領域において良悪性の鑑別や、乳癌の術前評価な
どさまざまな適応のもとに頻用されており、とくに乳癌の広がり診断におい
ては、乳癌診療ガイドラインでも推奨度 B とされている。しかしながら、MRI
検査ではガドリニウム造影剤の使用がほぼ必須と考えられており、腎障害の
ある症例では腎性全身性線維症などの副作用が問題となる。そこで近年、造
影剤を使用せずに水分子の自由運動(拡散能)を画像化する拡散強調画像の有
用性が注目されている。拡散テンソル画像とは、この拡散強調画像を複数枚
用いて算出した多次元画像である。【目的】乳癌の術前評価における拡散テン
ソル画像の有用性について、従来の拡散強調画像との比較検討を行う。【対
象と方法】針生検で病理学的に乳癌と確定診断のついた患者 20 人を対象とし
た。すべての患者において拡散強調画像を含む従来の MRI 検査に加え、拡散
テンソル画像を撮影した。画質のパラメーターとして、lesion conspicuity
(病変の顕著性)、geometric distortion(解剖学的ひずみ)、ghost artifact
(アーチファクト)、fat suppression(脂肪抑制)に関して、拡散強調画像と
拡散テンソル画像の比較を行った。さらに拡散テンソル画像においては、乳
癌領域と正常乳腺領域における FA(fractional anisotrophy)値(拡散異方性
の程度)を測定し比較検討した。上述の画像評価は 2 人の放射線科専門医が個
別に行った。【結果】拡散テンソル画像は、lesion conspicuity、geometric
distortion、ghost artifact に関しては従来の拡散強調画像より優れていたが、
fat suppression に関しては劣るという結果であった。また、乳癌領域の FA
値は同じ症例の正常乳腺に比較して有意に低値であった。【まとめ】拡散テン
ソル画像は fat suppression 以外のパラメーターにおいて、従来の拡散強調画
像よりも優れており、今後乳癌の術前評価において臨床応用が期待される。
357
一般セッション(ポスター掲示)
【背景・目的】乳房 MRI 診断では造影での所見が最も重視される。しかし、造
影前の T1 強調画像および T2 強調画像所見も副次的な所見として診断に有
用な場合がある。次版 ACR BI-RADS においても造影前所見について nonenhancing lesions 等として定義されるといわれている。実際の MRI 診断に
おいてどのような非造影所見を検出し、どのような意義があったかについて
を検討した。
【対象と方法】2010 年 1 月~ 2012 年 10 月までに当院で主に術前検査として
撮像された全 490 件の乳房 MRI 診断を対象とした。撮像は GE Signa HDxT
3T にて乳房専用コイルでの腹臥位両側撮像が行われ、造影前に拡散強調画像、
T2 強調画像(IDEAL 法で脂肪抑制あり・なしを同時撮像)、T1 強調画像(脂肪
抑制なし・ありともに撮像)を撮像。全例で造影 dynamic study(1 分、2 分、
5 分)および遅延相矢状断像を撮像。読影レポートは BI-RADS に準拠して作成。
これらの読影レポートから、造影前 T1 強調画像および T2 強調画像の所見に
ついて記載されたものを検索し、分類・集計を行った。嚢胞そのものの存在
記載、診断に直接影響しない非特異的な信号所見や、乳房以外の部位の記載
については対象外とした。
【結果】T1 強調画像では全て特異的な高信号の所見記載であり、高信号乳管を
39 件で、嚢胞内の高信号成分を 19 件で、生検後を含む出血や血腫を 12 件で、
腫瘍内出血を 5 件で、石灰化を 5 件で、脂肪含有を示唆する良性所見を 2 件で
報告していた。T2 強調画像では腫瘤に伴う特異的な高信号(線維腺腫等良性
腫瘤 29 件、粘液癌 3 件、葉状腫瘍 4 件)、特異的な低信号を 1 件(陳旧性線維
腺腫)、脂肪を含む過誤腫 2 件、腫瘍内の内部壊死・嚢胞成分を 8 件、皮膚や
深部の浮腫を 6 件、繊維化による低信号を 4 件、乳管拡張を 4 件、乳房内リン
パ節を 1 件、穿刺後の修飾・血腫を 2 件で記載していた。これらの所見のう
ち、T1 強調画像での高信号乳管の存在時には、病変の区域の同定に役立った
ほか、広がり診断の考慮にも使用された。良性を示唆する脂肪含有の所見が
あった場合には、これをもって BI-RADS カテゴリー 2(良性)の判定が行われ
た。穿刺にともなう修飾については、病変の広がりと混同を防ぐことが可能
であった。T2 強調画像で線維腺腫を考える高信号の際に、造影 study とも併
せて BI-RADS カテゴリー 3( おそらく良性)と診断できたものがあった。
【結語】MRI 読影において、特異的な造影前の信号の理解が役立つ場合がある。
ポスター掲示
10898
10910
乳房 MRI のみで検出された病変に対する RVS ガイド下マンモ
トーム生検は乳房 MRI ガイド下生検の代用と成り得る
3T-MR における Readout-Segmented EPI 法による拡散強
調画像の描出能について
GP-1-032-21
1
5
GP-1-032-22
静岡がんセンター 生理検査科、2 乳腺外科、3 女性内科、4 乳がん集学治療科、
病理診断科
1
3
植松 孝悦 1、高橋 かおる 2、西村 誠一郎 2、佐藤 睦 2、米倉 利香 2、
渡邉 純一郎 3、山﨑 誠二 4、杉野 隆 5、大石 琢磨 5
群馬県立がんセンター 放射線診断部、2 群馬県立がんセンター 乳腺科、
群馬県立がんセンター 病理
小林 倫子 1、堀越 浩幸 1、柳田 康弘 2、藤澤 : 知巳 2、宮本 健志 2、
飯島 美砂 3
一般セッション(ポスター掲示)
背景目的:乳房 MRI の乳腺病変に対する感度は非常に高いが、その特異度が
中等度であるために術式および治療方針変更のために乳房 MRI のみで検出さ
れた病変に対する組織採取は必須であり、乳房 MRI ガイド下生検が有用と言
われている。しかし、日本においてはその保険適応がないことと乳房 MRI ガ
イド下生検手技で MRI 装置を 1 ~ 2 時間占拠することは大半の施設において
まず不可能である。近年、real-time virtual sonography (RVS) を使用する
ことにより、乳房 MRI のみの検出病変を描出することが可能であることが報
告されている。今回、われわれは乳房 MRI 画像と同期させた RVS ガイド下マ
ンモトーム生検が有効であるかを検証するとともにその適切な方法および手
技となるプロトコールを提示する。方法:非触知でマンモグラフィ、セカン
ドルックエコーで描出不可能かつ乳房 MRI のみで検出された病変に対して、
仰臥位セカンドルック乳房 MRI 画像データと同期させた RVS ガイド下マンモ
トーム生検を施行した。病理診断結果をもとに悪性病変は手術を施行し、良
性病変と病理診断された症例は画像病理の不一致および生検手技後乳房 MRI
画像で生検部位の適切性を判定して経過観察とする。結果:連続 11 病変 11
症例に対して RVS ガイド下マンモトーム生検を計画した。11 病変全ては
non-mass lesion type であり、乳房 MRI 上のサイズは平均 18mm であった。
2 病変は仰臥位セカンドルック乳房 MRI にてターゲット病変が消退していた
ので乳房 MRI 診断の偽陽性と判定した。残りの 9 病変に対して RVS ガイド下
マンモトーム生検を施行して、DCIS 1 例、線維腺腫 1 例、線維腺腫様結節 1 例、
乳腺症 6 例の病理組織診断を得た。RVS ガイド下マンモトーム生検手技に要
する平均時間は 25 分であった。生検手技後乳房 MRI 画像で全例生検部位の的
確性を確認した。手技に伴う有害事象は認めなかった。結論:乳房 MRI のみ
で検出された病変に対する RVS ガイド下マンモトーム生検は安全かつ有用で、
乳房 MRI ガイド下生検の代用と成り得る。
【目的】3T-MRI における single shot Echo Planar Imgaing(SS-EPI) を用いた
拡散強調画像(Diffusion weighted imaging: DWI)は susceptibility artifact
のため,画像が歪み,脂肪抑制が均一でないなどの問題を抱えている.今回,
画像の歪みを抑える Readout-segmented DWI(RESOLVE, WIP) と SS-EPI
DWI の両画像と病理像との対比が可能であった乳癌に対し , 描出能,歪みの
大きさの比較検討を行った.【対象と方法】対象は術前化学療法無施行で手術
を施行し病理像との対比が可能であった腫瘤性病変 43 例である.使用機種は
MAGNETOM Trio A Tim(シーメンス社製)で 16 channel breast coil を用い
て SS-EPI, RESOLVE-EPI による DWI,DCE を撮影した.マッピングされた
病 理 画 像 と SS-EPI DWI(sDWI), RESOLVE-EPI DWI(rDWI), DCE-MRI と
の fusion 画像(fsDWI, frDWI)の 4 種類の画像を対比し 2 名の医師の合議制
で描出能を 5 段階 (5: 最良 ) に評価した . また , 腫瘤性病変の縦横比を sDWI,
rDWI, DCE-MRI の後期相で測定し , 統計解析(分散分析,Holm 法)を行っ
た【
. 結果】sDWI, rDWI, fsDWI, frDWI の描出能の各平均値は 4.1 ± 0.9, 4.4
± 0.8, 4.6 ± 0.7, 4.7 ± 0.6 で frDWI の描出能が高く , sDWI と rDWI, fDWI,
frDWI 間 , rDWI と frDWI 間に有意差を認めた (p < 0.01, Holm 法 ). また,
sDWI, rDWI, DCE-MRI における腫瘤性病変の各縦横比は 1.30 ± 0.51, 1.08
± 0.32,1.13 ± 0.39 で , sDWI と rDWI, DCE-MRI 間 に 有 意 差 を 認 め (p <
0.01, Holm 法 ), sDWI の歪みが高度であった 【
. 結論】RESOLVE 法を用いた
DWI では,歪みの低い画像が得られ,描出能は向上した.また,frDWI の描
出能が高いことから RESOLVE 法は fusion 画像でも利用すべきと考えられた.
10783
11031
造影 MRI 検査でリング状濃染を呈した乳癌症例の検討
当施設で行われたステレオガイド下乳房生検と乳腺 MRI の検討
GP-1-032-23
GP-1-032-24
1
1
公立学校共済組合東海中央病院 外科、
2
公立学校共済組合東海中央病院 放射線科、
3
公立学校共済組合東海中央病院 健康管理科、
4
公立学校共済組合東海中央病院 看護部
聖マリアンナ医科大学病院 放射線医学講座、
聖マリアンナ医科大学附属研究所ブレスト & イメージング先端医療センター
附属クリニック 放射線科、
3
聖マリアンナ医科大学病院横浜市西部病院 一般外科 ( 乳腺・内分泌外科 )、
4
聖マリアンナ医科大学病院 乳腺内分泌外科、
5
聖マリアンナ医科大学附属研究所ブレスト & イメージング先端医療センター
附属クリニック 乳腺外科、
6
聖マリアンナ医科大学病院 診断病理学
2
堀場 隆雄 1、長尾 康則 2、仲尾 里菜 2、上田 貴世 3、石黒 千春 3、
澤井 美穂 4、福田 元美 4
【目的】乳腺疾患の精査では病理診断確定前後でしばしば MRI 検査が行われて
いる。造影 MRI 検査では円形から多角形の様々な形態が示されるが、時にリ
ング状の濃染像を認める。今回われわれは、造影 MRI 検査でリング状濃染を
呈した症例について検討を行ったので報告する。【方法】対象は 2007 年 7 月か
ら 2013 年 11 月までに精査のため MRI 検査を受けた当科外来受診者。リング
厚、撮影方向については特に定めなかった。病理組織像、腫瘍径、リング厚
等について検討した。
【結果】対象期間中の乳癌症例は 226 名、229 件であった。
MRI 検査でリング状濃染は 7 名で認められた。7名の平均年齢は 65 歳 (50-76
歳 )。病理組織像は浸潤性乳管癌 4 例 ( 乳頭腺管癌 2 例、充実腺管癌1例、硬
癌1例 )、粘液癌1例、アポクリン癌1例、Adenomyoepithelioma 1例であっ
た。平均腫瘍径は 22mm(12-40mm)、ホルモン感受性は3例で陽性、3例
で陰性であった。HER2 遺伝子の発現は検索された6例でいずれも認めなかっ
た。腋窩リンパ節転移は7例のいずれも認めなかった。リング厚は4例でドー
ナツ状のリング状濃染を、3例で線状のリング状濃染を示していた。【考察】
造影 MRI 検査でリング状濃染を呈した乳腺腫瘍の組織像は多様であり、浸潤
性乳管癌を除く特殊型の組織型も多く見られた。ホルモン感受性が半数で認
められ、全例でリンパ節転移は指摘されず、悪性度が高い可能性は示唆され
なかった。当科の経験症例に文献的考察を加え報告したい。
岡本 聡子 1、嶋本 裕 2、印牧 義英 2、中島 康雄 1、矢吹 由香里 3、
速水 亮介 4、津川 浩一郎 4、福田 護 5、前田 一郎 6
【はじめに】当施設のステレオガイド下乳房生検(マンモトーム:MMT)では緒
家の報告に比べ高い悪性率が得られている。その要因として多くの症例で生
検前に乳腺造影 MRI を施行し、MMT の適応を判断していることが挙げられる。
【目的】MMT の適応を判断するにあたり、乳腺造影 MRI が有用であったかどう
かを検討する。【対象】2010 年 4 月から 2013 年 3 月に当施設で MMT を行った
283 例のうち、生検前に乳腺造影 MRI を撮像した 136 例。【結果】全症例の悪
性率は 65%(89/136) で、病理の内訳は DCIS 84 例、浸潤癌 5 例であった。
乳腺造影 MRI の陽性的中率は 76%(81/107) で、陰性的中率 100% (20/20)
であった。また FEA などの前癌病変は 10 例で MRI 陽性、4 例で MRI 陰性で
あった。しかし MRI 陰性のもので、明らかな悪性病変は認められなかった。
一方で 9 例が背景乳腺の染まりが強いために評価困難であったが、そのうち 8
例は悪性病変という結果であった。【考察】乳腺造影 MRI では陰性的中率が高
いという特性が見られるため、乳腺造影 MRI が陰性でマンモグラフィで C3 以
上の石灰化を示す症例は、すぐに侵襲的な MMT を行うのではなく経過観察を
行う選択肢もあると考えられる。これにより極力不要な生検を避けることが
可能であると考える。また一方で、乳腺造影 MRI では背景乳腺の染まりによ
り悪性病変が隠れる可能性があるという概念についても理解する必要がある
(BPE:background parenchymal enhancement)。この場合は、他の検査
所見と併せた判断が特に重要となると考える。乳腺造影 MRI は今や乳癌診療
に必要不可欠なツールとなっており、特に本邦では乳癌の広がり診断がその
主な目的となっている。また当施設のように石灰化の良悪鑑別目的としての
利用方法も有効であると考える。
358
ポスター掲示
10167
10528
カテゴリー 3 石灰化に対する乳腺 MRI 検査の有用性の検討
マンモグラフィー カテゴリー 3症例におけるMRI有用性の検討
GP-1-032-25
GP-1-032-26
1
1
聖マリアンナ医科大学附属ブレスト&イメージングセンター 乳腺外科、
2
聖マリアンナ医科大学附属ブレスト&イメージングセンター 放射線科、
3
聖マリアンナ医科大学 乳腺内分泌外科
3
獨協医科大学越谷病院 放射線科、2 獨協医科大学越谷病院 乳腺センター、
多摩北部医療センター 放射線科
川島 実穂 1、野崎 美和子 1、川上 睦美 3、石綱 一央 2、奈良橋 健 2、
瀧澤 淳 2、二宮 淳 2、小島 誠人 2、大矢 雅敏 2
首藤 昭彦 1、嶋本 裕 2、印牧 義英 2、岩重 玲子 3、志茂 彩華 3、
速水 亮介 3、白 英 1、川本 久紀 1、福田 護 1、津川 浩一郎 3
【目的】乳腺 MRI は乳がんの広がり診断のみでなく質的診断や存在診断にも
しばしば用いられる。そこで、マンモグラフィー(以下 MMG)でカテゴリー
3 であった症例について MRI 所見の検討を行った。【対象】2013.3 以降、当
院で MMG 施行しカテゴリー3と判定され MRI が施行された 44 症例(46 乳
房)。年齢は 31 歳- 78 歳、中央値 53.5 歳。【方法】MRI はシーメンス社製
Skyra3.0T。脂肪抑制単純 T1,T2 強調像、拡散強調像、ダイナミック造影(1,2,5
分)、2 - 5 分間およびダイナミック終了後に他の断面による造影 T1 強調像を
撮像。MMG の検査目的別、所見別に MRI 所見を比較した。【結果】MMG の検
査目的は乳がん術前 9、良性腫瘍術前 1、MMG 検診異常 15、US 異常 5、有症
状 9、石灰化経過観察 5 であった。このうち検査前に乳がんの確定診断がつい
た 9 例を除くと 35 例 37 乳房がカテゴリー 3 であった。37 乳房の MMG 所見
は腫瘤 8、石灰化 11、FAD16、構築の乱れ疑い2であった。MMG の所見別に
MRI 所見をみると MMG -腫瘤 8 例(うち乳がん 1 例)〔MRI 腫瘤 6、腫瘤+
非腫瘤 1、所見なし 1〕、MMG -石灰化 11 例(うち乳がん 1 例)
〔MRI 非腫瘤3、
腫瘤+非腫瘤1、腫瘤2、乳管拡張1、所見なし4〕、MMG - FAD16 例(う
ち乳がん 4 例)〔MRI 腫瘤 8、非腫瘤 4、乳管拡張1、所見なし3〕、MMG
-構築の乱れ疑い 2 例(うち乳がん 1 例)〔MRI 腫瘤 1、非腫瘤1〕であった。
37 例中、悪性であった 7 例はいずれも MRI で悪性が強く疑われた。7 例のう
ち 4 例は無症状受診症例であった。乳がん術前検査 9 症例の MMG 所見は腫瘤
5、FAD3、石灰化 1 であった。MMG で石灰化を呈した DCIS の 1 症例は MRI
では marked BPE を呈し病変を描出できなかった。他の症例は全例病変の評
価が可能であった。【結語】検査前に乳がんの確定診断が得られていない MMG
カテゴリー 3 症例 37 例中 7 例に乳がんを認めた。いずれも MRI で悪性を疑う
診断が可能であった。また乳がん術前症例 1 例では marked BPE のため MRI
で病変の評価が困難であった。術前広がり診断目的以外での MRI 検査が有用
であり、MMG カテゴリー 3 であっても症例によっては積極的に MRI を考慮
してもよいと考えられた。
11774
10124
乳腺造影 MRI による偶発所見の頻度と性状についての検討
腹部 MRI で偶然発見された乳腺疾患の検討
GP-1-032-27
GP-1-032-28
1
1
聖フランシスコ病院 放射線科、2 長崎大学病院 放射線科、
長崎原爆病院 放射線科、4 長崎大学病院 乳腺内分泌外科、
5
長崎大学病院 病理部
国際医療福祉大学三田病院 放射線診断センター、
2
国際医療福祉大学三田病院 乳腺センター
3
國松 奈津子 1、内田 恵博 2
【背景】近年、乳腺 MRI の適応は多岐にわたっており、検診マンモグラフィ後
の精査として施行されることも多く、乳腺 MRI 検査の件数は増加している。
これに伴い、造影 MRI による偶発病変に遭遇する頻度も増加している。【目的】
造影 MRI による偶発所見(含む background parenchymal enhancement)
の頻度と性状を評価する。対象と方法:2013 年 4 月から 12 月に両側乳腺造
影 MRI を施行された 147 症例について、MRI の検査目的である病変以外の
有所見の頻度を評価した。有所見は 1.mass、2.non-mass enhancement、
3.background parenchymal enhancement が moderate ま た は marked、
の 3 項目に分類した。【目的】147 例中、検査目的である病変以外の mass
は 8 例(5.4%)、non-mass enhancement が 13 例(8.8%)、moderate ま
た は marked の background parenchymal enhancement の 症 例 が 39 例
(26.5%)であった。これらの症例に対しては、経過観察や、既知の悪性病変
がある症例に関しては PET-CT や生検等が施行され、MRI 所見に加えて患者背
景を考慮した対応を行った。【結論】今後さらに増えると予想される造影 MRI
による偶発所見に対する対応については、検査目的となった病変が悪性か否
か等の患者背景によって、その後の対応を適切に行う事が重要であり、さら
なる検討が必要と考えられた。
磯本 一郎 1、石山 彩乃 2、瀬川 景子 2、小川 直美 2,3、矢野 洋 4、南 恵樹 4、
安倍 邦子 5
【目的】腹部 MRI で偶然に発見される乳腺疾患について検討する。【方法】
2010 年 1 月から 2013 年 12 月までに長崎大学病院にて施行された腹部 MRI
検査のうち、レポーティングシステムにおける所見または結果に「乳房」、「乳
癌」、「乳腺」が含まれる症例を抽出し、それらを retrospective に検討した。
なお、すでに他の画像で指摘された病変は除外した。【結果】観察期間中の腹
部 MRI 件数は 1308 件であった。14 例に乳房の異常を指摘されたが、10 例
は乳房温存術後であった。残り 4 例のうち最終診断が乳癌と診断された症例
は2例(0.15%)であった。1 例は 74 歳の女性で、肝腫瘤の精査目的に施行
された腹部 EOB- プリモビスト造影 MRI にて、右乳房に 6mm 大の濃染する
腫瘤が認められた。最終診断は微小浸潤癌であった。他の1例は 74 歳の女性
で、EC junction の腫瘍性病変の精査目的で行われた Gd-DTPA による腹部造
影 MRI にて右乳房に異常濃染域を指摘され、最終診断は apocrine carcinoma
であった。他 2 例は膝窩部の平滑筋肉腫の乳房転移と乳腺嚢胞であった。【考
察】近年、胸部 CT にて偶然発見される乳癌に関する報告は散見され、発見率
は 0.11-1.85%と報告されている。一方、腹部 MRI で発見された乳癌の報告
はほとんどない。今回の我々の検討では腹部 MRI で偶然発見される乳癌の頻
度は 0.15%であり、胸部 CT 発見乳がんと同程度であった。【結語】腹部 MRI
においても乳房の病変が発見される可能性があることを念頭において読影す
る必要がある。
359
一般セッション(ポスター掲示)
カテゴリー(以下C)3 石灰化に対する乳腺MRI検査の有用性について検討
した。当ブレストセンターにて 2012 年 2 月から 2013 年 3 月の間に C3 石灰化
にて要精査とされたうち、超音波検査では明らかな腫瘤形成や血流信号など
の異常を認めなかったものの乳腺 MRI 検査にて C4 bと診断されたものが 3 例
存在した。3 例の所見として、マンモグラフィーにおける石灰化所見は微小円
形あるいは淡い石灰化の集簇で、乳腺超音波検査では微小石灰化の存在を示
唆する点状高エコーは認められるものの、石灰化部位に一致した明らかな腫
瘤形成や血流信号などはみられなかった。一方で乳腺 MRI 検査では乳房内の
石灰化部位に一致していずれも non-mass segmental distribution の所見が
認められた。この段階で石灰化病変に対してステレオマンモトーム生検を行
い、病理学的に乳癌であることを確認の後に 3 症例とも乳房温存術が施行さ
れた。病理所見は 3 例ともに non-comedo DCIS(非浸潤がん)であることが
確認された。乳腺 MRI 画像における病変のひろがり(範囲)所見と、実際に病
理学的に確認された乳管内病変の分布範囲とを比較検討すると、1 例ではほぼ
範囲が一致したものの他の 1 例で実際の広がりよりも過小評価され、またも
う 1 例では病変部位は過大評価であった。病理学的には全例ともホルモン受
容体(ER,PgR ともに)陽性、Her2 陰性で Ki67 陽性細胞率は低く、luminal A type の DCIS であった。C3石灰化を示す乳癌発見に乳腺 MRI 併用は有効と
考えられる一方、乳腺 MRI における造影異常所見で発見される乳癌の生物学
的悪性度は高くなく、要精査における乳腺 MRI 検査の併用も必ずしも有用性
が高いとはいえないかもしれない。現実的にはC3石灰化に対しては定期的
な超音波検査による経過観察を行うほうが有効であるとも考えられる。
11118
11127
MRI を契機に発見された一側多発性乳癌の検討
当施設での乳腺 MRI 読影の検討
GP-1-032-29
ポスター掲示
GP-1-032-30
1
札幌乳腺外科クリニック
聖マリアンナ医科大学病院付属研究所ブレスト&イメージング先端医療セン
ター付属クリニック 放射線科、2 聖マリアンナ医科大学病院 放射線医学講
座、3 聖マリアンナ医科大学病院付属研究所ブレスト&イメージング先端医療
センター付属クリニック 乳腺外科、4 聖マリアンナ医科大学病院 乳腺内分
泌外科、5 聖マリアンナ医科大学病院 病院 病理部
山岸 妃早代、岡崎 稔、渡部 芳樹、佐藤 文彦、米地 貴美子、石井 沙織、
玉田 香織、渡辺 千里、大杉 美幸、岡崎 亮
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】過剰診断あるいは取り残しを防ぐ目的で、MRI を契機に発見される一
側多発乳癌がどの程度存在し、その特徴などを検討した。【対象と方法】’09 年
6 月~ ‘12 年 12 月に GE 社製 Signa1.5T による超早期相を加えた MRI を撮像
し、組織学的診断を得た 1126 例を対象とした。MRI 撮像の目的は切除範囲の
決定にあるため、体位は仰臥位で、dynamic 画像は基本的に患側を冠状断で
撮像している。後期相で水平断の両側撮像を行っている。dynamic の超早期
相はコントラスト中心を 20 ~ 30 秒後(20 秒間息止め)、早期相は 1 分後(20
秒間息止め)、後期相は 2 分後から 2 ~ 3 分間撮像している。【結果】MRI を契
機に発見された一側多発癌は 17 例(約 1.5%)存在した。また、同時期に一側
多発癌を疑って MRI の enhance 部位を組織検索した良性病変は 20 病変存在
し、陽性反応的中率は約 46% であった。17 例の組織型の内訳は非浸潤性乳
管癌、硬癌、乳頭腺管癌、小葉癌、その他の順に、6 例(35%)、4 例(23%)、
3 例(18%)、2 例(12%)、2 例(12%)であった。MRI 検出の一側多発癌 17
例のうち同時・異時を含める両側乳癌は 4 例(24%)認められ、同時期に手
術を行った 1570 例中の同時両側乳癌 61 例の 3.9%(異時を含めると 86 例:
5.5%)の頻度より一側多発癌における両側性乳癌の頻度が有意に高かった。
(P
< 0.05)また、MRI 検出の悪性副病変の描出タイミングは、主病巣と同じ(16
例)あるいはさらに早い時相(1 例)で描出されていた。一方、良性であった副
病変は主病巣と同じ(13 例)あるいはさらに遅い時相(7 例)で描出されていた。
血行動態の観点で比較すると、悪性副病変では、主病巣と同じパターンが 15
例 (88%) で、主病巣よりも ‶ 血流の抜け” が早いのが 2 例(12%)であり、良
性では、主病巣と同じパターンが 17 例(85%)で、主病巣よりも ‶ 血流の抜け”
が遅いのが 3 例(15%)と良悪性で対照的な結果であった。【まとめ】MRI を契
機に発見される一側多発乳癌の頻度は約 1.5% であった。また、MRI 検出の
一側多発乳癌は両側性乳癌が比較的多く、副病変の組織型は DCIS が約 1/3 強
を占めていた。また、造影のタイミングと ‶ 血流の抜け” が早い副病変に絞っ
て組織検索することで、過剰な診断を抑制できると考えられる。MRI は広が
り診断のみならず一側多発乳癌の検出にも有用であることから、今後、両側
性乳癌における一側多発乳癌の頻度についても検討していきたい。
嶋本 裕 1、岡本 聡子 2、印牧 義英 1、中島 康雄 2、白 英 3、川本 久紀 3、
首藤 昭彦 3、津川 浩一郎 4、福田 護 3、前田 一郎 5
【背景・目的】 米国放射線医学会(ACR:American College of Radiology)
が作成した BI-RADS(Breast Imaging Reporting and Data System MRI)MRI では、どのモダリティにおいても実際の読影方法については言及され
ていない。読影基準が定められていなければ適切かつ再現性のあるカテゴ
リー分類は困難であるため、病変の形態と血流情報を組み合わせた簡便な読
影方法も提案されている。当施設では戸崎らが作成したフローチャートを用
いた読影を行っており、その検討を行う。【対象】 当施設では 1.5T の MRI
装 置 (Achieva、Philips Healthcare) で 16Ch ブ レ ス ト コ イ ル を 用 い た 乳 腺
MRI 検査を全例で施行している。2011 年 1 月から 12 月の 1 年間で 1185 件
の乳腺 MRI 検査を施行しており、うち 945 例が生検もしくは手術により組織
学的診断がつけられており、これらについて検討した。平均年齢は 51 歳で
あった(19-85)。【結果】 悪性率はカテゴリー 5 で 95.28%(mass lesion
96.97%、non-mass lesion 92.91%)、 カ テ ゴ リ ー 4b で 73.96% (mass
lesion 84.95%、non-mass lesion 67.60%)、 カ テ ゴ リ ー 4a で 36.59%、
カテゴリー 3 で 29.27% であった。【結語】 カテゴリー分類による悪性率の
分布に大きな偏りはなく、戸崎らの作成したフローチャートには信頼度が高
いと考えられる。
10839
11319
当院で施行した FDG/PET-CT で異常集積を示した乳腺腫瘍の
検討
乳癌術前化学療法症例における FDG/PET-CT maxSUV と予後
との関連について
GP-1-033-01
1
GP-1-033-02
神戸大学医学部 乳腺内分泌外科、2 神戸大学医学部 病理診断科
1
山下 祐司 1、河野 誠之 1、山崎 たかし 2、伊藤 智雄 2、高尾 信太郎 1
広島大学病院 乳腺外科、2 秋本クリニック
梶谷 桂子 1、秋本 悦志 2、角舎 学行 1、網岡 愛 1、恵美 純子 1、
重松 英朗 1、松浦 一生 1、舛本 法生 1、春田 るみ 1、片岡 健 1、
岡田 守人 1
【はじめに】近年 FDG-PET/CT は癌臨床における有用な機能画像診断法として
急速に普及しており、乳癌スクリーニングにおいても FDG-PET/CT の有用性
が検討されている。【目的】当院で施行した FDG-PET/CT で異常集積を示した
乳腺腫瘤について検討する。【対象と方法】2011 年 1 月から 2013 年 12 月まで
に FDG-PET/CT を施行乳腺腫瘍に異常集積を認めた 16 例について、SUVmax
値と、腫瘍の良悪性、また悪性と診断された場合の subtype との関係につい
てそれぞれ検討した。【結果】16 例中 12 例が悪性であり、4 例が良性であっ
た。SUVmax 値で良悪性を比較したところ、悪性 12 例の SUVmax 値の中央
値は 3.99 であり良性 4 例の SUVmax 値の中央値は 4.09 で差がなかった。良
性 4 例のうち 3 例は乳管内乳頭腫などの増殖性病変であり 1 例は炎症性肉芽腫
であった。悪性では DCIS が 2 例、浸潤性乳管癌が 10 例であり、浸潤性乳管
癌のうち Luminal A が 7 例、Luminal B が 2 例、Triple negative が 1 例であっ
た。SUVmax 値で subtype を比較したところ、Luminal A の SUVmax 値の
中央値は 3.94、luminal B の SUVmax 値の中央値は 6.54、Tripple negative
1 例の SUVmax 値は 20.42 であった。しかし Luminal A であっても腋窩リン
パ節転移のあった 1 例は SUVmax 値が 14.42 と高値であった。また、DCIS2
例の SUVmax 値の中央値は 4.38 であった。【考察】乳腺腫瘤における FDGPET/CT による良悪の鑑別では、SUV Max 値が 2.0 ~ 2.5 以上を悪性と判定
する報告が多い。しかし、今回のように良性腫瘍でも SUVmax 値が高値を示
すことに留意する必要がある。また、悪性の場合 subtype によって SUVmax
値に差がある傾向がみられたが、腋窩リンパ節転移の有無別でも原発巣の
SUVmax 値が反映している可能性があると考えられた。この点をふまえ、文
献的考察を加えて報告する。
[ 目的 ] FDG/PET-CT は、形態学的診断だけでなく非侵襲的に腫瘍の代謝活性
を maxSUV (maximum standardized uptake value) として評価する。我々
は、術前化学療法 (NAC) 未施行例において maxSUV が ER とともに乳癌の予
後因子となることを報告している。しかし、NAC 施行例においては maxSUV
の治療効果 (pCR) 予測や予後への関連性は明らかでない。そこで、NAC 症例
において、NAC 前後の maxSUV およびその変化率が、NAC の効果予測因子、
予後因子となり得るか検討した。[ 方法 ] 当院で NAC 後に手術を行った乳癌症
例のうち、NAC 前後に FDG-PET/CT を施行した 125 例を対象とした。NAC
は全例にアンスラサイクリン系とタキサン系の順次投与を行い、HER2 陽性例
には trastuzumab を併用した。NAC 前後の maxSUV (pre-maxSUV・postmaxSUV)、maxSUV の 変 化 率 ( δ maxSUV) と pCR、 再 発 と の 関 連 性 を
retrospective に 検 討 し た。[ 結 果 ] NAC に よ り pCR が 得 ら れ た の は 27 例
(21.6%) であり、luminal type 65 例中 2 例 (3.0%)、HER2 type 33 例中 15
例 (45.5%)、triple negative type 27 例中 10 例 (37.0%) であった。術後経
過観察中の再発症例は 7 例 (5.6%) で、すべて triple negative type であった。
pCR および再発と pre-maxSUV、post-maxSUV、δ maxSUV に対する ROC
曲線を作成したところ、再発
と pre-maxSUV の ROC 曲 線
に お け る AUC が 最 も 高 く
(AUC=0.828)、maxSUV の
cut off値 は8.6で あ っ た。
maxSUV>8.6群とmaxSUV≦
8.6 群 に 分 け て 比 較 す る と、
maxSUV > 8.6 群では有意に
無再発生存期間が短かった
(log rank p < 0.001)。また、
多変量解析では ER 陰性、PgR
陰 性 と 有 意 な 相 関 を 認 め た。
[ 結 語 ] NAC 症 例 に お け る
FDG-PET/CT の maxSUV に
ついては、化学療法前の値が
最も予後と相関する。
360
ポスター掲示
10775
10593
乳癌におけるFDG - PET / CT検査の役割について - 検診か
ら腋窩リンパ節転移診断まで
乳がん術前化学療法による腋窩リンパ節転移陰性化予測におけ
る FDG-PET/CT 検査の有用性
GP-1-033-03
1
GP-1-033-04
慈泉会相澤病院 外科、2 放射線画像診断センター、3 病理診断科
広島大学病院 乳腺外科
橋都 透子 1、唐木 芳昭 1、中村 将人 1、田内 克典 1、中山 俊 1、
井出 大志 1、小口 和浩 2、竹内 亮 2、樋口 佳代子 3
重松 英朗、角舎 学行、網岡 愛、梶谷 桂子、恵美 純子、松浦 一生、
舛本 法生、春田 るみ、片岡 健、岡田 守人
乳癌領域におけるFDG - PET / CT検査の有効性についての報告は増え
てきているが、機能画像検査としての役割が期待がされる一方、空間分解能
が低いために検診等においても有用性を見出す報告は少ない。2009 年から
2012 年まで当院で PET/ CTがん検診を受けた女性 1260 人の解析では、要
精査率は 13.02%、乳癌発見率は 0.71%(9 人)、陽性反応的中度は 5.49%
と高い精度を示していた。また、2011 年から 2012 年まで当院で乳癌手術を
施行した 176 乳房について検討を行った。術前にPET / CTを行った 162
乳房で、NAC症例 17 例を除き、原発巣に集積を認めたのは 132 乳房(91.0%)
であった。集積を認めなった 13 例はDCIS 6 例、浸潤性乳管癌が 5 例、浸
潤性小葉癌 2 例であった。腫瘍の大きさ別の描出感度はTis 78.3%、T 1
a 57.1%、T 1 b 93.3%、T 1 c 94.5%であった。センチネルリンパ節生
検を含む腋窩リンパ節の手術を行った 143 乳房では、腋窩リンパ節に集積を
認めたのは 22 例であった。このうち病理結果で 20 例に転移を確認し、感度
50.0%、特異度 98.0%であった。PET / CTで偽陰性を示した 20 例のうち
リンパ節転移の個数が 1 個であったのは 16 例、そのうち 9 例が微小転移であっ
た。PET / CTは、当院において広い範囲で高く活用されており、大きな役
割を担っている。
(目的)腋窩リンパ節転移陽性乳癌において術前化学療法により約 4 割の症例
では病理学的に腋窩リンパ節転移(ypN0)の消失を認めることが報告されて
おり、これらの症例においては腋窩リンパ節郭清を省略できる可能性があ
る。ypN0 予測検査としての FDG-PET/CT の有用性を検討した。
(対象と方法)
2008 年 4 月から 2013 年 12 月までに当院にて腋窩リンパ節転移陽性乳癌に対
して術前化学療法を施行した後に腋窩リンパ節郭清術を施行した乳癌症例の
うち、術前化学療法前後に FDG-PET/CT を施行した 58 症例を対象とした。術
前化学療法後における腋窩リンパ節への FDG 消失の消失を ycPET N0 と定義
し、ycPETN0 と ypN0 の相関を検討した。(結果)術前化学療法により 48 例
(82.8%)に ycPET N0 を認め、27 例(46.6%)に ypN0 を認めた。ycPET N0
による ypN0 の予測は、感度 56%、特異度 100%、正診率 63.8% であり、術
前化学療法後に腋窩リンパ節に FDG 集積を認める症例(ycPET N+)では全例
(10/10 例)に病理学的腋窩リンパ節転移の遺残(ypN+)を認めた。ycPET N0
が得られた 48 症例における ypN0 の予測因子として術前化学療法前における
腋窩リンパ節 SUV max(high vs. low, HR 11.1, p=0.017)および術前化学
療法後における原発巣への FDG 集積消失(PET-CR vs. non PET-CR, HR 8.2,
p=0.035)が有意な因子として挙げられた。これらの因子を満たす 15 症例
において 14 症例では ypN0 を認めた。(結論)乳癌術前化学療法前後の FDGPET/CT 検査において ycPET N+ は ypN+ を正確に予測した。ycPET N0 が得
られた症例において、治療前に腋窩リンパ節への高度の FDG 集積を認めた症
例および原発巣 PET CR 症例では ypN0 が得られている可能性が高く、腋窩リ
ンパ節省略を検討しうるものと考えられた。
10738
FDG-PET による乳癌術前化学療法の治療効果判定の有用性
原発性乳癌における治療前 PET-CT の乳癌描出率及び SUVmax
値と臨床病理学的因子の検討
GP-1-033-05
1
GP-1-033-06
東京医科歯科大学 乳腺外科、2 東京医科歯科大学 放射線科
1
愛媛大学大学院医学系研究科 肝胆膵・乳腺外科、
愛媛大学医学部附属病院 乳腺センター、
愛媛大学 地域救急医療学講座、4 愛媛大学医学部附属病院 病理部、
5
愛媛大学大学院医学系研究科 放射線医学
中川 剛士 1、佐藤 隆宣 1、久保田 一徳 2、町田 洋一 2、岡澤 かおり 2、
藤岡 友之 2、永原 誠 1、杉原 健一 1
2
3
【目的】術前化学療法(NAC)のメリットとしては pCR 症例などの予後予測,乳
房温存率の増加,原病死の原因である微小転移巣に対しての早期治療,薬剤
の効果判定などがあげられる。我々は 2006 年より NAC 前後に FDG-PET を施
行し,pCR 診断能、予後予測因子、遠隔転移出現の有用性について検討した。
【対
象、方法】対象は 2006/9-2013/9 に NAC を開始し、アンスラサイクリンとタ
キサン 2 種類を完遂した StageII,III 乳癌 83 例とした。術前にハーセプチン
使用症例は含んでいない。FDG-PET は化学療法開始前と、終了後に撮影した。
原発巣の「FDG 異常集積あり」は SUVmax 1.7 以上とした。【結果】FDG-PET
により、2 例(2.6%)に NAC 施行中の骨転移の出現が確認され、そのうち 1 例
は手術を施行せず化学療法継続となり、82 例に対して手術施行した。pCR は
17 例であったが 1 例は異常集積が残存していた。「NAC 後に FDG 異常集積が
ある場合は non-pCR である」検査感度は 28%(特異度 94%)であった。再発
は 23 例に認め,そのうち 14 例は原病死した。NAC 後の FDG 異常集積がある
症例は有意に予後不良であり、特に ER 陰性群においてはさらにその傾向が強
い。【考察】NAC 後に原発巣に FDG 異常集積がある場合、non-pCR の感度が
低く,NAC の効果判定には有用ではない。FDG 異常集積がある症例は、全般
的に予後不良であるが、特に ER 陰性群では予後不良因子となる可能性がある。
ER 陽性群では、NAC 効果が十分に得られなくても、術後のホルモン療法が有
効であることも多いと思われ、FDG 異常集積がある場合が必ずしも予後不良
とはならない。NAC 施行中に遠隔転移が出現することが稀にあり、その検索
には FDG-PET は有用である。【結論】NAC 前後の FDG-PET の施行は,ER 陰
性群における予後予測因子と、NAC 中の遠隔転移出現の確認に有用である可
能性がある。
村上 朱里 1、亀井 義明 1,2、山下 美智子 1,2、杉森 和加奈 1,2、本田 和男 1,3、
水野 洋輔 4、曽我 美子 4、杉田 敦郎 4、井手 香奈 5、宮川 正男 5、
平塚 義康 5、松田 恵 5、中島 直美 5
【目的】原発性乳癌に対し、治療前 PET-CT 検査における病変描出率及び原発
巣の FDG 取り込み(SUVmax 値)と臨床病理学的因子の関連を検討すること
で、治療前の PET-CT 検査の臨床的意義について検討した。
【対象】2011 年 11 月~ 2013 年 11 月の 2 年間に当院で PET-CT 検査を受け、
手術もしくは針生検による病理検査を受けた原発性乳癌の 56 症例。
【方法】原発巣の描出率及び SUVmax 値と病理検査結果(NG・リンパ節転移
の有無・リンパ管侵襲・ER・PgR・HER2・TN・Ki67)の比較検討を行った。
検定には Mann-Whitney U-test 及び Kruskal-wallis H-test を用い、p値 0.05
未満を有意水準とした。
【結果】SUVmax 値 2.5 以上を陽性とした場合、病変描出率は 40 例/ 56 例で
71.4%であり、臨床的腫瘍径別の描出率は cT1 で 59.1%、cT2 で 90%であ
り、cT2 で描出出来なかった症例は粘液癌 2 例、浸潤性小葉癌 1 例であった。
cT3 以上の描出率は 100%であった。組織型別では粘液癌、浸潤性小葉癌で
描出率が低い傾向がみられた。Ki67 20% 以上(p=0.03)
、腋窩リンパ節転移
有(p=0.001)、 脈 管 侵 襲 あ り(p=0.024)、ER 陰 性(p < 0.001)、PgR 陰 性
(p=0.006)、TN(p < 0.001)において有意に SUVmax が高い傾向がみられた。
NG は grade が上がるほど SUVmax 値が高い傾向がみられた(P=0.06)
。
【考察】今回の検討において、治療前 PET-CT 検査での原発巣の SUVmax は
Ki67 20% 以上、腋窩リンパ節転移有り、脈管侵襲あり、ER 陰性、PgR 陰性、
triple negative で有意に高値であった。治療前の PET-CT 検査の SUVmax が
病理学的因子と相関しており、近年報告のある術前化学療法の効果判定や再
発予測因子、予後因子となる可能性が示唆された。観察期間が短く、予後と
の関連には今後の長期間の検討が望まれる。
361
一般セッション(ポスター掲示)
10501
ポスター掲示
11390
11752
FDG-PET/CT による乳がん術前化学療法の効果判定の可能性
Dual energy イメージングを用いた乳癌広がり診断
GP-1-033-07
GP-1-033-08
1
公益財団法人結核予防会複十字病院 放射線診療部放射線技術科、
2
公益財団法人結核予防会複十字病院 乳腺センター、
3
公益財団法人結核予防会複十字病院 放射線診療部放射線科
1
長崎大学病院 放射線科、2 聖フランシスコ病院 放射線科、
長崎大学病院 病理部、4 長崎大学病院 腫瘍外科(第一外科)、
5
長崎大学病院 乳腺内分泌外科(第二外科)、6 長崎大学病院 放射線部
井上 博矢 1、小柳 尚子 3、武田 泰隆 2
瀬川 景子 1、磯本 一郎 2、安倍 邦子 3、矢野 洋 4、久芳 さやか 5、
南 恵樹 5、福田 徹 6
3
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】乳がんに対する術前化学療法(Neo-adjuvant chemotherapy=NAC)
は、比較的進行した乳癌に対してはいまや標準治療となっている。NAC の効
果判定は、通常、局所評価には超音波や MRI で、遠隔転移には造影 CT や腹部
超音波、骨シンチなどで行われている。FDG-PET/CT は全身を 1 度の撮影で
行える。また形態学的(量的)評価と生物学的(質的)評価を同時に行うことが
可能である。当院では NAC 前後に FDG-PET/CT を施行し、その効果の評価を
行ってきた。そこで NAC 前後に FDG-PET/CT を施行し、得られた SUVmax
値を用いて効果判定の可能性について検討した。【対象と方法】2008 年 1 月か
ら 2012 年 12 月までの間に乳癌と診断され、NAC 後手術を施行した 26 症例
を対象とした。NAC としてはアンスラサイクリン4コース後、タキサン 4 コー
スを施行した。NAC 前、およびレジュメ変更時、NAC 後に FDG-PET/CT を施
行し、そのそれぞれに主腫瘤の SUVmax を計測して、その減少率を NAC 前腫
瘍径、サブタイプおよび組織学的治療効果との相関を検討した。【結果】NAC
前半のアンスラサイクリン終了後では全症例に SUVmax 値の減少が見られた
ものの、NAC 後半のタキサン終了時には 5 症例に上昇が見られた。形態学的
には治療効果が上がっているように見えても、実際は腫瘍細胞の viability が
上昇し、腫瘍内では再燃してきていることが、FDG-PET/CT では示唆される
結果と考えられた。サブタイプ別では、各タイプで大きな差は見られなかっ
たものの、有意差こそなかったが ER(-)で抗がん剤が効き難い傾向がみられ
た。また、組織学的治療効果との相関ではおおよそパラレルにあることが示
され、NAC 前腫瘍径が大きいほど抗がん剤の効果が得られにくい傾向であっ
た。これは、抗がん剤の効果が充分に腫瘍全体へ及ばないことによると考え
られた。【結論】乳癌診療ガイドラインにおいて、FDG-PET/CT は化学療法の
効果判定で推奨されている。FDG-PET/CT では、形態学的評価と生物学的評
価の双方を同時に観察できることから、総合的な治療効果判定には有用であ
ると考えられた。
乳癌の広がり診断について、乳癌診療ガイドラインでは、CT による広がり診
断は、推奨グレード C1 であり、基本的には造影 MRI による広がり診断が行
われる。我々は、様々な理由により MRI が施行不可能であった4症例にたい
し、dual energy CT を用いて広がり診断を行ったので報告する。使用機種
は SIEMENS 社「SOMATOM Definition」で、胸部全体の単純 CT を撮影後、造
影剤注入開始 70 秒後に dual source CT にて乳房のみを撮影し、90 秒後に胸
部全体の撮影を行った。対象症例はすべて腫瘤形成病変の浸潤性乳癌で、腫
瘍平均サイズは 1.8cm であった。1例に1cm ほどの乳管内進展を指摘した。
手術標本との検討では、腫瘍サイズの誤差は5mm 以下で乳管内進展の範囲
も一致していた。Dual energy imaging を用いた iodine map や virtual noncontrast imaging との fusion 画像は、通常の造影 CT に比較し、CNR( コント
ラストノイズ比 ) が高く、病変の広がり診断に有用であった。
11729
11881
再 発 乳 癌 に 対 す る ホ ル モ ン 療 法 に お け る 16 α -[18F]fluoro-17 β -estradiol (FES)-PET の有用性の検討
乳腺造影 CT における背景乳腺の増強効果の検討
GP-1-033-09
GP-1-033-10
1
名古屋市立大学病院 放射線科、
名古屋市立西部医療センター 放射線診断科、
3
名古屋市立大学病院 乳腺内分泌外科
2
1
神戸市立医療センター中央市民病院 乳腺外科、
2
先端医療センター 分子イメージング研究グループ、
3
神戸市立医療センター中央市民病院 臨床病理科、
4
神戸市立医療センター中央市民病院 外科
後藤 多恵子 1、浦野 みすぎ 1、白木 法雄 2、遠山 竜也 3、吉本 信保 3、
遠藤 友美 3、波戸 ゆかり 3、浅野 倫子 3
加藤 大典 1、大西 章仁 2、千田 道雄 2、佐々木 将博 2、下山 京子 1、
岡本 明子 1、木川 雄一郎 1、市川 千宙 3、今井 幸弘 3、細谷 亮 4、
松岡 亮介 3
初発時エストロゲン受容体(ER)陽性の乳癌の再発病変については、ER陰性の
ものも混在してくる場合がある。全ての病変に対して病理組織を採取すること
は困難であるため、再発患者の癌全体が均一な生物学的特性をもっているとい
う仮定の下に治療が行われている。ERを非侵襲的に評価できるPET用製剤とし
て、エストラジオールをポジトロン放出核種の[18F]で標識したFESが報告され
ている。PETでのFES集積はER発現と関連性があり、FES-PETによりホルモン
療法の効果予測が可能との報告もある。 FDG-PETと併用し、比較することによ
り、再発病巣に対するホルモン療法の有効性や、治療中の腫瘍のホルモン感受性
の変化が評価可能で、その後の治療に有用な情報となりうると期待される。今回
我々は、ER陽性乳癌の術後補助ホルモン療法後の再発患者に対して、ホルモン
療法の前後でFES-PET、FDG-PETを行い、治療効果ならびにER発現の変化と
代謝活性の変化を評価し、FES-PETの臨床的有用性を検討することを目的とし
た臨床研究を開始した。その内容について中間報告をする。症例1:72歳、女
性、9年前、右乳癌に対してBt+Axを施行。病理検査結果は、T1N0M0、ER(+,
15%)、PgR(+, 15%)、HER2(0+)。 術 後5年 間、Exemestane 投 与。 右 頸 部
腫脹の訴えに対して、CTで右頸部、右鎖骨上、縦隔のリンパ節腫脹を確認。右
頸部リンパ節の針生検で、乳癌転移、ER(-), PgR(-), HER2(2+), HER2 FISH
ratio: 2.16の病理診断を得た。FDG-PETで、右頸部から右鎖骨上、縦隔、傍胸
骨にかけてFDG集積を確認。右坐骨、左仙骨にもFDG集積を確認。FES-PETで
は、FDG集積を認めた部位を含め、どこにも異常なFES集積を認めなかった。
HER2 enriched typeのリンパ節と骨への転移と診断し、抗HER2療法を開始し
た。症例2:62歳、女性、2年前、右乳癌に対してBt+Axを施行。病理検査結果
は、T2N2M0、ER(+, 50%)、PgR(-)、HER2(2+)、HER2 FISH ratio: 2.07。術
後には、FEC x 4→DTX x 4 + Trastuzumab → PMRT → Trastuzumab(1年)+
Letrozole(1年半)という治療を実施。定期検査の腹部エコーで肝S5に8 mm径
の腫瘍を確認。肝腫瘍の針生検で、乳癌転移、ER(+, 80%), PgR(-), HER2(1+)
の病理診断を得た。FDG-PETで、肝S5にFDG集積を確認。FES-PET上、肝臓は
FESの生理的集積がびまん性に強く、FDG集積を認めた部位のFES集積を同定で
きなかった。Luminal B typeの肝転移と診断し、Fulvestrant投与を開始した。
【目的】CT は MMG や US と比較し、乳癌の進展をより正確に描出するモダリ
ティーであるが、MRI との比較では、感度・特異度とも劣るとされている。
MRI では、乳癌検出の偽陰性の一因として背景乳腺増強があげられるが、CT
での背景乳腺増強に関するデータは少ない。そこで、乳腺造影 CT における
背景乳腺増強効果を評価し、それに影響を与える因子を検討する。【方法】対
象は 2012 年 8 月~ 2013 年 9 月に乳癌を疑い造影 CT 検査を施行した女性 50
例(年齢 31 ~ 86 歳、中央値 60 歳)。42 例で病理組織学的に乳癌と診断され
た。撮影装置は SIEMENS 社の SOMATOM Definition Flash。パラメーターは
512 x 512 matrix、35cm field of view、120kV 固定、再構成スライス厚
3mm、pitch 3mm、1 rotation per 0.8 second。背臥位で単純 CT を撮影後、
健側肘静脈より非イオン性ヨード造影剤 100ml を 2ml/s で注入した。造影 60
秒後の 3mm slice の横断像を用い、背景乳腺の不均一増強効果の有無を視覚
的に評価し、月経の有無、年齢(60 歳未満、60 歳以上)、健側の乳腺厚(15mm
未満、15mm 以上)、MMG での乳房の構成(脂肪性・乳腺散在、不均一高濃
度・高濃度)、乳癌のホルモン感受性の有無との関連について検討した。ま
た、乳癌の視認性について (Good、Excellent) の2段階で評価し、乳癌と背
景乳腺の CT 値の比較を行った。【結果】背景乳腺の不均一増強は 35 例で認め、
15 例で認めなかった。不均一増強の有無は月経の有無、年齢、健側の乳腺厚、
MMG での乳房の構成、ホルモン感受性のいずれとも関連性を認めなかった。
乳癌は 42 例全例で同定可能であった。計測が可能だった 41 例の乳癌の CT 値
は 74 ± 23HU で背景乳腺の 15HU ± 19HU より有意に高かった (p < 0.0001)。
乳癌の視認性は Good:8 例、Excellent:34 例で背景乳腺増強の有無と視認性
に関連性を認めなかった。【結語】乳腺造影 CT における背景乳腺の増強効果は
乳癌検出の妨げにならないが、乳腺造影 CT における背景乳腺の増強効果の因
子は同定できなかった。
362
10941
11496
CT における偶発乳腺病変についての検討 CT にて偶発的に発見された乳腺病変の検討
GP-1-033-11
1
ポスター掲示
GP-1-033-12
浜松医科大学 放射線科、2 浜松医科大学 第一外科
独立行政法人国立病院機構別府医療センター
那須 初子 1、芳澤 暢子 1、小倉 廣之 2、井手 佳美 2、松沼 亮一 2、
細川 優子 2、瀧 由美子 2、阪原 晴海 1
武内 秀也
【目的】原発性乳腺病変症例において、過去に他病変検索目的で施行された CT
における偶発乳腺病変について後方視的に検討した。【方法】2010 年 4 月 1 日
から 2011 年 3 月 31 日にかけて、当院乳腺外科にて原発性乳腺病変を手術し
た 104 症例のうち、手術目的の原発性乳腺病変以外の検索目的で、過去に CT
を撮影した症例を抽出し、件数と内容などについて検討した。【結果】今回の
原発性乳腺病変以外の検索目的で過去に CT を撮影していたのは 18 症例で、
計 89 件の CT が撮影されていた。
(1 症例につき 1 件~ 19 件)。全例女性であっ
た。このうち、今回の原発性乳腺病変が過去の CT の撮影範囲に含まれていた
のは、18 症例で 59 件であった。後方視的に、今回の原発性乳腺病変が過去
の CT で同定不可能であったものは 35 件、同定可能であったものは 15 件(8
症例)、判断に迷うものは 9 件(3 症例)であった(重複あり)。同定可能であっ
た 15 件の病変の性状は、腫瘤が 9 件、非腫瘤状濃染が 4 件、単純 CT での腫瘤
様所見が 2 件であった。判断に迷う 9 件の性状は、非腫瘤状濃染が 7 件、腫瘤
様所見が 2 件であった。測定が可能であった 22 病変の長径は 4 mm-14 mm
(中央値 7.5 mm)で、同定可能かつ測定可能であった 13 病変の長径は 6mm14 mm(中央値 9 mm)で、判断に迷うものは 4 mm-11 mm(中央値 4 mm)
であった。同定可能であった 15 件ならびに判断に迷う 9 件(合計 9 症例)は、
病理組織学的に 7 例が浸潤癌、2 例が非浸潤性乳管癌であった。浸潤癌はいず
れも T1N0M0 病期 I であった。これらのうち CT を契機に発見されたのは 4 症
例でいずれも浸潤癌であった。【結論】今回の検討では、原発性乳腺病変手術
症例のうち 2 割弱の症例で、他病変検索目的で過去に乳腺を含む CT が撮影さ
れていた。そのうち約半数の症例で、後方視的に当該乳腺病変が確認された。
【背景】CT の空間分解能の向上により、短時間で広範囲の詳細な画像が得られ
るようになったため、CT で偶発的に乳腺病変を指摘される機会が増えること
が予想される。当院にて CT が契機となり指摘された乳腺病変について検討し
た。【対象】2009 年 1 月より 2012 年 12 月までに乳腺外科以外の診療科依頼で
実施された CT にて偶発的に乳腺病変を指摘された 21 例。単純撮影が 2 例で造
影撮影は 19 例で、CT 撮影は 64 列マルチスライス CT(Aquilion 64:東芝メ
ディカルシステムズ)を用い管電圧 120kV、管電流 Auto mA、撮影スライス
厚 0.5mm、再構成スライス厚 / 間隔 /5mm/5mm で行い、CT 読影は放射線
科医により 3M モニターにて行われた。【結果】1. 撮影依頼した診療科は、呼
吸器科 10 例(48%)、消化器科 5 例(24%)、救急科 4 例(20%)、婦人科 2 例
(10%)、で、撮影目的は、疾患の follow 13 例(60%)、外傷の精査 4 例(20%)、
検診での精査 4 例(20%)であった。2. 最終診断は良性疾患 10 例(48%)(線
維腺腫 4 例、乳腺症 6 例)、乳癌 11 例(52%)であった。乳腺所見は腫瘤 14 例
(67%)(良性 5 例、乳癌 9 例)、石灰化 4 例(20%)(良性 4 例)、非腫瘤状濃
染域 3 例(13%)(良性 2 例、乳癌 1 例)であった。3. 乳癌は平均年齢 72.9 歳、
平均腫瘍径 26.7mm(15-46mm)で、マンモグラフィーでは全例カテゴリー
IV 以上の所見を認めた。Stage 別では 0 期 4 例(36%)、I期 4 例(36%)、II
期 1 例(9%)、IV 期 2 例(18 例)であった。なお、MMG 背景乳腺は脂肪性 9 例
(82%)、乳腺散在性 2 例(18%)であった。
【結論】症例が少なく今後の検討を
要するが、偶発的に発見された乳腺病変の半数は悪性で、そのうちの約 70%
は早期癌であった。石灰化にて乳腺病変を指摘された場合は良性である可能
性が高く、また背景乳腺は高濃度症例を認めなかったことより MMG 同様に背
景乳腺の影響をうける可能性が示唆された。
10464
Thin slice CT、超音波検査によるセンチネルリンパ節転移診断
についての検討
当院におけるセンチネルリンパ節転移陽性症例 20 例の検討
GP-1-033-13
GP-1-033-14
八戸市立市民病院 乳腺外科
岩手県立中央病院 乳腺・内分泌外科
梅邑 明子、宇佐美 伸、佐藤 未来、大貫 幸二
【はじめに】当科では乳癌術前の病変の広がり診断および腋窩リンパ節転移診
断の向上を目的として、2011 年 12 月より thin slice CT(1mm slice)を導入
している。今回、リンパ節陽性症例における thin slice CT 画像と超音波画像
について比較検討した。【対象・方法】2011 年 12 月から 2013 年 3 月までに
センチネルリンパ節生検を施行した N0 乳癌 117 例。当科では術前診断は超音
波検査および CT にて行い、画像上転移を疑う場合腋窩リンパ節穿刺吸引細胞
診を施行、転移陽性を確認できない場合センチネルリンパ節生検を施行して
いる。センチネルリンパ節陽性例の原発巣組織型、原発巣腫瘍径、thin slice
CT 画像における脂肪含有、皮質偏在的肥厚、左右差(短径または長径)、左
右差(CT 値)、リンパ節短径、超音波検査における脂肪含有、皮質偏在的肥
厚、左右差について retrospective に検討した。【結果】センチネルリンパ節
陽性率は 20%(23/117)、マクロ転移は 17% (20/117)、3 個以上転移は 2%
(2/117) であった。センチネルリンパ節陽性例 23 例の Thin slice CT 画像に
おいて脂肪含有なし 2 例、皮質偏在的肥厚 14 例、左右差(短径または長径)あ
り 6 例、左右差(CT 値)あり 3 例で、いずれかが重複していたのは 6 例あった
が、4 項目とも該当するものはなかった。また、センチネルリンパ節陽性例 /
陰性例でそれぞれリンパ節短径中央値 4.5mm/2.5mm、原発巣腫瘍径中央値
18mm/10mm であった。超音波画像では脂肪含有なし 0 例、皮質偏在的肥厚
6 例で、そのうち腋窩リンパ節穿刺吸引細胞診は 4 例に施行されており、いず
れも陰性であった。【まとめ】Thin slice CT は超音波検査と比較して遜色のな
い結果であった.腋窩リンパ節の脂肪含有なし、皮質偏在的肥厚、左右差の
いずれかを認めた場合、転移陽性の可能性も否定できないため、second look
で超音波検査を施行し、再度腋窩リンパ節の評価を慎重に行うべきである。
谷内 亜衣、田澤 篤
当院にて 2012 年 10 月から 2013 年 9 月までの 1 年間に手術を行い、その際に
センチネルリンパ節転移陽性であった 20 症例について、術前 CT での所見及
び臨床像を同時期のセンチネルリンパ節転移陰性例と比較検討した。(対象)
当院にて 2012 年 10 月から 2013 年 9 月までの 1 年間に術前診断で cN0 であ
り、術中のセンチネルリンパ節生検にて転移陽性と診断された 20 症例及び同
時期のセンチネルリンパ節転移陰性 89 症例を対象とした。(方法)術前施行し
た造影 CT でのリンパ節の形態的特徴(縦横比、二層性の有無、皮質の厚さ、
造影効果、リンパ節の大きさと左右差)及び臨床像(腫瘍の局在、Ki-67LI)
を両群間で比較検討した。(結果)造影 CT 所見:縦横比は転移陽性例では平
均 0.86、転移陰性例では平均 0.62 となり、仮にカットオフ値 0.7 とすると、
陽性例で 80%、陰性例では 40% となる。二層性の欠如は、転移陽性例で
70% に対し、陰性例では 10% と差を認めた。皮質の厚さは転移陽性例で平
均 3.8mm であり、陰性例の平均 2.7mm に対しやや肥厚している傾向であっ
た。リンパ節の大きさは転移陽性例で平均 9.3mm, 陰性例で平均 8.5mm と大
きな差はなかった。造影効果は転移陽性例 80% で、転移陰性例 30% に対し、
転移陽性例で造影される傾向であった。左右差を認めるものは、転移陽性例
で 80%、陰性例で 20% であった。臨床所見:腫瘍占拠部位が C 領域と D 領域
のものが他の領域のものに対し転移陽性である確率が高率であった。(C 領域
24%、D 領域 30%、A 領域 6%)Ki-67LI については転移陽性例で平均 32.2%
に対し、転移陰性例で平均 24.9% であり、仮にカットオフ値 14% とすると、
陽性例では 70%、陰性例で 36% となった。(考察)造影 CT では、円形に近く
(縦横比 0.7 以上)、二層性の欠如または、皮質の肥厚、左右差を認めるものに
転移陽性の傾向があり、臨床像では占拠部位が外傷領域のものに転移陽性が
多く、また転移陽性例では Ki-67LI が高値の傾向を認めた。(結語)術前の造
影 CT 及び臨床像からセンチネルリンパ節転移陽性例の検討を行った。今後更
に症例を蓄積し、腋窩リンパ節郭清の省略が安全に行える症例を明らかにし
ていきたい。
363
一般セッション(ポスター掲示)
11717
ポスター掲示
10891
11005
3DCT 乳管造影を用いた腺葉切除術 8 症例の検討
乳房造影超音波を用いた乳房部分切除範囲決定の試み
GP-1-034-01
GP-1-035-01
1
東都文京病院 乳腺外科、2 東京逓信病院 外科、
3
足利赤十字病院 放射線科
1
奈良県立医科大学附属病院 消化器外科・小児外科・乳腺外科、
奈良県立医科大学附属病院 中央内視鏡・超音波部、
3
三重大学附属病院 乳腺センター
2
武藤 泰彦 1、朝蔭 正弘 1、和田 由美恵 2、潮田 隆一 3
一般セッション(ポスター掲示)
血性乳頭分泌を主訴とし乳癌が疑われる症例に対する手術として腺葉区域切
除術が行われるが、当院では切除すべき腺葉の範囲を 3DCT 乳管造影で描出
し体表へ投影して決定している。2009 年以降当院で腺葉切除術を行った 8 症
例を対象に検討を行ったので報告する。
【症例】47 歳~ 68 歳の血性乳頭分泌を主訴とする女性 8 名。
【触診所見】全例に血性乳頭分泌を認めた。2 例に硬結を認めたが明らかな腫瘤
は触れなかった。
【MMG・乳腺エコー】乳腺エコーで全例に責任腺葉の乳管拡張が認められた。
【分泌液 CEA 値】5 例に施行し、4 例は CEA > 1000ng/ml でいずれも乳癌で
あった。1 例は 100ng/ml > CEA で乳管内乳頭腫であった。
【捺印細胞診】クラス 5 1 例、クラス 3a 1 例、クラス 1 3 例、判定不能 3
例
【乳管洗浄細胞診】クラス 5 3 例(乳癌 3 例)、クラス 4 2 例(乳癌 2 例)、ク
ラス 3 2 例(乳癌 1 例・乳管内乳頭腫 1 例)、判定不能 1 例(乳管内乳頭腫)
【乳管造影】乳管洗浄の後に 4 倍希釈のイオパミドール 300 を 0.5ml 程度注入
して胸部 CT を撮影。ボリュームレンダリングを行って造影された乳管の 3D
画像を構築した。腺葉の拡がりを中心角で表記すると最小 37.5 度、最大 115
度、平均 72.8 度であった。A 領域・C 領域の 4 例で広い傾向があり(平均 94.5
度)、CD 領域・AC 領域・BD 領域の 4 例では狭い傾向が見られた(平均 51.3 度)。
乳管の拡張は 8 例、虫食い像は 3 例(乳癌 3 例)、乳管途絶は 3 例(乳癌 3 例)に
認められた。
【手術】乳管造影写真を実寸大にプリントし、体表に投影して切除範囲を決定
した。全例で腺葉区域切除を行い、責任腺葉は充分切除できた。
【病理組織検査】6 例が乳癌(非浸潤性乳管癌 4 例、乳頭腺管癌 2 例)
、2 例が乳
管内乳頭腫であった。
【考察】3DCT を用いた乳管造影では責任腺葉の位置や乳管分枝の様子が把握
しやすい。他のモダリティの画像検査では乳管の拡がりが充分把握できない
ため腺葉区域切除術を行う際には 3DCT 乳管造影での評価が望ましいと考え
られる。一方、乳管内の病変の形状や拡がりは必ずしも充分には表現できず、
切除範囲に病変が含まれることの証明は乳管洗浄細胞診が必須と思われる。
小林 豊樹 1、中村 卓 1,3、平井 都始子 2、中島 祥介 1
【背景】2012 年 8 月に超音波造影剤ソナゾイドが乳房腫瘤性病変に適応が追加
された。今後,乳房造影超音波が多施設で行われるようになると思われるが、
標準的なプロトコールや診断基準も確立されていない。我々は 2008 年より
当院倫理委員会承認のもと、文書によるインフォームド・コンセントを得た
上で乳房造影超音波を行っており、良悪性の鑑別診断や、乳癌の広がり診断、
セカンドルック US、乳癌薬物療法の効果判定に対する有用性について報告し
てきた。現在、広がり診断には造影 MRI が実施されるが、腹臥位で撮影する
ため、MRI で確認した濃染域を手術体位で正確に把握するのは困難なことも
多い。手術体位で実施できる造影超音波により広がり診断が可能になれば、
直接造影超音波をガイドに切除範囲をマーキングすることによってより適切
な温存手術が可能になる。【目的】今回我々は、乳房部分切除範囲決定に乳房
造影超音波を用いて、その有用性や問題点について述べる。【方法】使用装置
は LOGIQE9。造影剤はソナゾイドを懸濁液として 0.01ml/kg 静脈内投与し
た。撮像方向は、病理所見と対比可能なように、乳頭と腫瘍を結ぶ線上とそ
の直行方向で広がりを測定した。また、実際のマーキングの際には多方向に
広がりを確認しながら行った。surgical margin を 1.0cm とし、乳房部分切
除を行った。【対象と結果】2013 年 1 月から 10 月までに当科で乳癌の手術を
行った 56 例中、乳房部分切除術を施行した 29 例のうち造影 MRI と乳房造影
超音波を行ったのは、22 症例 23 病変であった。浸潤癌の断端陽性は 1 例も認
めなかったが、乳管内進展による断端陽性を 6 例に認めた。断端陽性を 6 例の
うち、5 例は未閉経症例で、造影 MRI でも両側乳房に結節上の濃染域を認め、
乳腺症との鑑別が困難な症例であった。【まとめ】乳癌の広がり診断に対する
造影超音波の臨床応用はまだ始まったばかりであるが、今後症例の蓄積によ
り、適切な温存手術が可能になると考える。
10709
11090
MRI/CT で指摘された病変に対するインターベンションにおけ
る造影超音波検査の有用性
ソナゾイド造影超音波を使い術前マーキングを施行した症例の
検討
GP-1-035-02
GP-1-035-03
1
大垣市民病院 外科
2
亀井 桂太郎、磯谷 正敏、原田 徹、金岡 祐次、前田 敦行、高山 祐一、
尾上 俊介、渡邊 学、大塚 新平、川勝 章司、森 治樹、米川 佳彦、
千馬 耕亮、堀米 香世子、渡邉 夕樹
【背景】2012 年 8 月に超音波造影剤ソナゾイドの乳腺診断に対する保険適応
が認められた。しかし,その適応については未だ定まっていない。一方,乳
癌の拡がり診断目的で行った MRI/CT で発見された新規病変と,その後の
Second look US で指摘した病変が必ずしも同一のものとは限らない。
【目的】
MRI/CT で発見された新規病変に対する Second look US 時に行う造影超音
波検査の有用性。造影超音波検査を併用した Second look US で指摘された
病変に対するインターベンションの診断能。以上を検討するために,乳癌の
拡がり診断目的の MRI/CT で指摘された新規病変に対して,造影超音波補助
下で行った Second look US で同定できた病変に対して穿刺吸引細胞診検査
を行った。【対象・方法】2012 年 12 月から 2013 年 11 月までに行った造影超
音波検査 41 例中,MRI/CT で発見された新規病変に対し造影超音波補助下に
Second look US で同定した 3 例に対して穿刺吸引細胞診検査を行い,MRI/
CT 所見,造影超音波所見,病理所見を比較検討した。【結果】対象となる 3 例
中 2 例は,乳癌の乳管内進展部,1 例は偶然他の腺葉に発見された小結節であっ
た。乳管内進展部の病理診断は 1 例は非浸潤性乳管癌,他の 1 例では浸潤を認
めた。偶然他の腺葉に認めた小結節は浸潤性乳管癌であった。穿刺吸引細胞
診検査の結果は他の腺葉に発見された浸潤癌では悪性であったが,乳管内進
展部の 2 例では鑑別困難であった。【結語】MRI/CT で発見された病変に対し,
造影超音波補助下に行う Second look US は有用な可能性がある。選択するイ
ンターベンションは,これまでは穿刺吸引細胞診検査を行ってきたが,乳管
内進展部よりの検体では鑑別困難となることが多く確定診断に至らない可能
性があるので,今後はさらに最適な方法を模索している。造影超音波検査は
他の造影検査に比し簡便に行うことが可能であり,今後は様々な目的で使用
されるようになるであろう。
東京医科歯科大学附属病院 放射線科、
東京医科歯科大学附属病院 乳腺外科
藤岡 友之 1、久保田 一徳 1、岡澤 かおり 1、町田 洋一 1、永原 誠 2、
中川 剛士 2、佐藤 隆宣 2
【目的】造影超音波検査(CEUS)の広がり診断に関してのまとまった報告は少
ない。CEUS が広がり診断に有用であったか後ろ向きに検討し報告する。
【対象と方法】対象は術前マーキングの際に CEUS を行った乳癌患者のうち
B-mode 超音波検査(B-mode US)にて腫瘤として描出された 31 名、31 例。
B-mode US、CEUS、MRI 等の所見等を総合的に判断し、マーキング行った。
画像所見と手術病理を比較し広がり診断ができていたか、どのモダリティが
有用であったか、CEUS が広がり診断に寄与していたか後ろ向きに検討した。
【結果】手術病理で 11 例に広がり病変(腫瘤の周囲に乳管内癌を主体とした 5
mm以上の病変と定義)があり、7 例で予測できていた。6 例は B-mode US、
MRI にて広がりを疑う所見があり、CEUS で造影が確認できていた。1 例は
MRI のみ病変を同定できていた。CEUS にて新たに同定可能であった病変はな
かった。
3 例は広がりを予測していたが、手術病理では広がりはなかった。1 例は MRI
のみ、1 例は B-mode US のみ、1 例は MRI 及び B-mode US で広がりを疑う
所見があり、2 例は CEUS にて造影が確認できていた。手術病理では 1 例で
ADH、1 例で SA を認めており、これらが CEUS にて描出されていたと思われ
た。
3 例は MRI の方が、1 例は B-mode US+CEUS の方が正確な広がり診断がで
きていた。
【結論】B-mode US に CEUS を追加することで広がり診断の確診度を上げるこ
とができる可能性がある。しかし、CEUS のみでの広がり診断には限界があり、
複数モダリティを併せ総合的に判定することが必要と思われる。
364
ポスター掲示
10985
10377
乳がん術前化学療法施行例におけるトモシンセシスの有用性に
関する検討
浸潤性小葉癌におけるデジタルブレストトモシンセシス (DBT)
の有用性
GP-1-035-04
1
2
GP-1-035-05
1
国立がん研究センター中央病院 乳腺外科、
国立がん研究センター中央病院 放射線診断科
2
神谷 有希子 1、内山 菜智子 2、垂野 香苗 1、神保 健二郎 1、麻賀 創太 1、
北條 隆 1、木下 貴之 1
菊池 真理 1、内山 菜智子 1、木下 貴之 2、北條 隆 2、麻賀 創太 2、
神保 健二郎 2、吉田 正行 3、町田 稔 1、谷 瞳 1、荒井 保明 1
【背景】浸潤性小葉癌は癌細胞自体がおとなしく、周囲間質の変化も少なく、
既存の乳腺構造を壊さずに浸潤していく病理組織学的特徴からこれまで通常
のマンモグラフィ(2D)での検出および広がり診断は他の浸潤癌より困難と
されてきた。近年デジタルブレストトモシンセシス (DBT) は既存乳腺の重な
りを除去し、病変検出能は 2D を上回ると報告されている。【目的】浸潤腺小葉
癌の検出および広がり診断における DBT の有用性について検討した。【対象・
方法】2009.10 ~ 2013.7 の間に 2D,DBT 共に撮影され、手術病理標本にて浸
潤性小葉癌と診断された 32 例(MRI 施行 22 例)に対して、レトロスペクティ
ブに画像評価を行い、病理組織標本との対比を行った。画像評価項目は 1. 検
出能の比較:2D と DBT 各々の所見、カテゴリー分類、広がり範囲の測定、さ
らに 2D と比較して DBT での spicula(構築の乱れ)、周囲乳腺と腫瘤の濃度
差、腫瘤辺縁の明瞭化について 2. 広がり診断:2D,DBT,MRI での広がり範囲
と手術病理標本の進展範囲との比較を行い、統計学的解析を行った。【結果】
年齢は 34 ~ 78 歳(平均 54.3 歳)2D 所見:なし 18.8%,FAD9.4%,distortion
18.8%,mass53.1%、2D カテゴリーは 1:15.6%,2:3.1%,3:21.9%,4:28.1
%,5:31.3%、DBT 所見:distortion3.1%,mass 96.9%、DBT カテゴリーは
3:6.3%,4:12.5%,5:81.3%、Spicula 明 瞭 化 :100% (spicula の な い も の 7
例を除く )、周囲乳腺との濃度差上昇 :100%、腫瘤辺縁の明瞭化 :100%、カ
テゴリー変更:なし ( いずれも 5 → 5) 31.3%、あり (1 → 3 :6.3%、1,2,3 → 4
:12.5%, 1,3,4 → 5 :50%)。広がり範囲は 2D:1-8.4cm(n=25),DBT:0.89.7cm, MRI:1.2-7.7cm(n=22), 病 理 手 術 標 本:1.6-10cm で あ っ た。 検
出率は 2D 81.3%, 2D+DBT 100%。画像と手術病理標本の進展範囲の差の
平 均 値 は 2D(-3.3cm),2D+DBT(-0.9cm),MRI(-2.3cm) で、 統 計 学 的 解 析
(paired T 検定 ) にて 2D 単独よりも 2D に DBT を加える事により有意に正確な
広がり診断が可能となる事がわかった (p < 0.001, 95%CI -3.9 ~ -1.6)。ま
た 2D+DBT と MRI の比較では有意差はなかったが (p:0.217, 95%CI -0.4
~ 1.5)、2D+DBT の方がより手術病理の範囲との乖離が小さかった。【結語】
浸潤性小葉癌のデジタルマンモグラフィでは2D 単独よりも2D に DBT を加
える事により腫瘍濃度、辺縁および構築の乱れの描出能いずれも上昇した。
浸潤性小葉癌の検出能および広がり診断能向上に DBT は非常に有用である事
が示唆された。
11703
10400
微小乳癌における 2D マンモグラフィと乳房トモシンセシスの
比較
乳房デジタルトモシンセシス読影における 3D マンモグラフィ
の有用性
GP-1-035-06
1
GP-1-035-07
石川県立中央病院 放射線診断科、2 石川県立中央病院 乳腺内分泌外科
1
国立がん研究センター中央病院 放射線診断科、
国立がん研究センター中央病院 乳腺外科、
日本医科大学付属病院 放射線科、4SIEMENS Japan、5SIEMENS AG、
6
日本医科大学付属病院 乳腺科
2
片桐 亜矢子 1、吉野 裕司 2、村田 智美 2、金子 真美 2
3
【目的】乳房トモシンセシス(以下,3D)は複数の角度からの撮影で得られた
データより断層像を再構成し,正常乳腺と病変との重なりを軽減する撮影技
術である。微小乳癌における,従来の 2D マンモグラフィと 3D での腫瘍の検出,
カテゴリー分類について比較検討を行った。【方法】対象は,2012 年 4 月より
2013 年 9 月に当院にて手術を施行し,腫瘍の進展範囲が 1cm 以下の乳癌症例
15 例で,うち 1 例は対側の乳房切除術後のため片乳房,2 例は患側のみ 3D 撮
影を行っているため患側のみを対象とした。また,1 例は対側に径 1cm を超
える癌があり,対側は今回の検討からは除外した。1 例は両側に微小乳癌を認
めた。微小乳癌を伴う 16 乳房,カテゴリー 1,2 の 10 乳房について,精中機
構マンモグラフィ読影試験 A 評価の医師 3 名が,それぞれ独立して,まず 2D
のみで読影してカテゴリー分類を行い,次いで 2D + 3D で読影しカテゴリー
分類を行った。【結果】感度は 2D,3D とも 3 名の平均が 89.6% で腫瘍の検出
率には差を認めなかった。特異度は 2D で 93.3%,3D で 100% であった。読
影者 1 名が 2D でカテゴリー 1 とした微小乳癌 1 病変を 3D にてカテゴリー 3
で拾い上げられたが,他の 2 名では 2D で指摘できなかった微小乳癌はいずれ
も 3D でも指摘できなかった。2D でカテゴリー 3 以上をつけた病変が 3D でカ
テゴリーが上がったものは平均 5.7 病変であり,カテゴリー 3 が 4 に上がった
のが平均 4.7 病変,カテゴリー 4 が 5 に上がったのが平均 1 病変であった。逆
に,1 名が 2D でカテゴリー 5 とした 1 病変を 3D でカテゴリー 4 に下げ,別の
読影者 1 名は 2D でカテゴリー 3 とした 1 病変を 3D でカテゴリー1に下げて
いた。【結論】今回の検討では微小乳癌の検出において 2D と 3D の間に差を認
めなかったが,カテゴリー 3 以上と診断した病変では 3D においてカテゴリー
がより高い傾向にあり,3D が確信度の向上に寄与できる可能性が示唆された。
谷 瞳 1,3、内山 菜智子 1、木下 貴之 2、町田 稔 1、菊池 真理 1、村上 隆介 3、
吉田 民子 3、箱崎 謙太 3、桑子 智之 3、汲田 伸一郎 3、大塚 恭一 4、
Anna Jerebko5、
Andreas Fieselmann5、
Thomas Mertelmeier5、
荒井 保明 1、
柳原 恵子 6、飯田 信也 6、武井 寛幸 6
【背景と目的】乳房デジタルトモシンセシス (DBT) は、断層像を用いて乳腺組
織の重なりや高濃度の背景乳腺を軽減させることによって、従来の 2D マンモ
グラフィ (FFDM) で診断が困難であった腫瘤の描出に優れている。しかし石
灰化病変については、DBT では石灰化の形態や広がりの詳細な評価が困難で、
FFDM での診断が優れていることがある。そこで我々は、DBT のボリューム
データを用いて、石灰化の描出に重点をおいた 3D マンモグラフィ (Rotating
Mammogram: RM) の画像再構成を行った。今回、DBT 読影における RM の
有用性について検討した。
【方法】乳癌 34 病変を含む 110 乳房の画像セット (1.
FFDM 単独 , 2. DBT 単独 , 3. DBT+RM: DBT と RM をあわせて評価する ) を 4
人の放射線科医が読影した。読影の判定には、カテゴリー分類と悪性確信度
(POM: 0-100%) の 2 スケールを用いた。各読影者について ROC 解析を行い、
AUC を測定した。また石灰化を認めた症例においては、読影者は石灰化の描
出について DBT と RM を視覚的に比較した。【結果】カテゴリー分類において、
4 読影者の平均 AUC は DBT+RM 0.902、DBT 0.901、FFDM 0.795 であった。
POM において、平均 AUC は DBT+RM 0.918、DBT 0.911、FFDM 0.811 で
あった。DBT+RM の診断能は FFDM と比較して有意に優れており (p < 0.05)、
DBT と比較してもわずかな改善がみられた。カテゴリー分類では、DBT+RM
は DBT と比較してすべての読影者で特異度に改善を認めた。また画像上石灰
化を主体とする乳癌病変において、石灰化の描出は DBT よりも RM が有意に
優れていた (p < 0.05)。【結語】DBT 読影に RM を用いることによって、従来
の DBT では困難であった石灰化病変のより詳細な診断が容易になると期待さ
れる。
365
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】乳がん手術における術式決定のためには病変の正確な把握は欠かせな
い . しかし術前化学療法施行後の患者においてはそれが困難な場合が多い . 術
前検査項目としてマンモグラフィ (DM), エコー (US), 造影 MRI に加え , 近年
トモシンセシス (DBT) の有用性が言われている . DBT とは , 1 回の断層撮影で
任意の高さで裁断面を再構成する三次元撮影技術である . DBT の最も優れた
能力は , 乳腺を裁断面で観察できるため乳腺の重なりがなく , 腫瘍の内部およ
び辺縁の微細を鮮鋭に描出し詳細な評価が可能である点である . また , US に
比べて瘢痕性変化を生じた組織においても辺縁の評価が可能であるとされて
いる . 術前化学療法後の腫瘍径の計測において現在最も正確な検査は MRI で
あると言われているが , DBT はそれに優るとも劣らない可能性がある . 造影剤
を使用せず簡便に施行できるという利点もある . 我々は術前化学療法後の腫
瘍径の評価における DBT の有用性を検証した .【方法】術前化学療法後に DM,
DBT, US, 造影 MRI を全て施行したうえで原発巣を切除した 20 症例 , 23 病変
を対象とし , 各検査機器での腫瘍径と病理学的腫瘍径を比較 , 検討した .【結
果】年齢の中央値は 46.5 歳 . 背景乳腺は高濃度が 2, 不均一散在性が 7, 散在性
が 11, 脂肪性が 3 病変であった . 組織型別内訳は浸潤性乳管癌 19, 浸潤性小
葉癌 1, アポクリン癌 1, 浸潤性微小乳頭癌 1, 非浸潤性乳管癌 1 病変であった .
病期は stage 0/I/IIA/IIB/IIIA/IIIC がそれぞれ 1/1/3/11/6/1 病変であった .
術前化学療法の病理学的効果判定としては grade 1a/1b/2a/2b/3 がそれぞ
れ 2/8/8/1/4 病変であった . Grade 3 の 4 病変を除く 19 病変の病理学的腫
瘍径の平均値は 24mm であった . 各検査機器の腫瘍径と病理学的腫瘍径との
一致率は , DM 60.9%, DBT 82.6%, US 60.9%, MRI 56.5% であった . 過
大評価は DM 13.0%, DBT 8.7%, US30.4%, MRI 13.0%, 過小評価は DM
26.1%, DBT 8.7%, US 8.7%, MRI 30.4% であった .【結語】DBT は術前化
学療法後の症例において腫瘍辺縁の微細な描出が可能であり , 正確な切除範囲
の決定や術式の選択に有用であると考えられた .
国立がん研究センター中央病院 放射線科、
国立がん研究センター 乳腺外科、3 国立がん研究センター 病理科
11957
11232
ポジショニングが乳房トモシンセシス画像に及ぼす影響
トモシンセシスを用いた広がり診断の有用性
GP-1-035-08
ポスター掲示
GP-1-035-09
1
岐阜大学医学部附属病院 放射線部、2 岐阜大学医学部附属病院 放射線科、
3
岐阜大学医学部附属病院 乳腺外科
1
山口 香織 1、大野 裕美 2、後藤 雪乃 2、名和 正人 3、森光 華澄 3、
二村 学 3
行友 奏子 1、船越 真人 2、金子 真弓 3
一般セッション(ポスター掲示)
【背景・目的】
乳房トモシンセシスは近年注目されている新しい撮影技術であり、当院では
1 回の撮影で 2D 画像とトモシンセシス画像が得られる撮影モードを用いて検
査を行っている。この撮影モードでは、1 枚目に 2D 像(X 線管球 0°)、その後
-25°から 25°の計 50°の振り角で X 線管球が移動し、25 回の照射においてト
モシンセシスの projection 像を撮影するが、2D 画像における各種アーチファ
クトがトモシンセシス画像に影響を及ぼす可能性が危惧される。
【使用機器】
SIEMENS 社製 MAMMOMAT Inspiration
【方法】
当院にて 2013 年 3 月から 2013 年 12 月に、乳房トモシンセシス撮影が施行
された全例の 2D 画像、トモシンセシス画像を対象とし、肩や手、皮膚の皺
による影響、モーションアーチファクトについて、2 名の放射線科医が視覚
評価を行い、その原因を projection 像で確認した。尚、トモシンセシス画像
は、projection 像データを取得後、filter back projection 法にて再構成され、
1mm のスライスピッチでの画像を得ている。
【結果・考察】
照射野内に写りこんでいる肩や手等は、2D 画像では乳房の描出に影響は
及ぼさないが、トモシンセシス画像ではアーチファクトとして出現した。
projection 像では、振り角が大きくなるにしたがい乳房に重なる面積が増加
し、その重なりがアーチファクトとして描出されたためと考えられた。一方、
皮膚の皺は 2D 画像では目立つが、トモシンセシス画像では皮膚表面にのみ
アーチファクトとして確認され、乳腺にはほとんど影響しなかった。
【結語】
トモシンセシス撮影においては、X 線管球の動きを考慮した正しいポジショニ
ングが必要である。
3
広島市立安佐市民病院 放射線科、2 広島市立安佐市民病院 乳腺外科、
広島市立安佐市民病院 病理部
【はじめに】当院ではトモシンセシス機能を搭載したシーメンス社製デジタル
マンモグラフィ装置を導入した。トモシンセシスを用いると腫瘤の辺縁、特
にスピキュラを伴った病変は見やすくなり、存在診断や組織診断は向上する。
そこで、広がり診断についてどの程度描出出来ているかレトロスペクティブ
に検証したので報告する。【対象】2012.11 から 2013.11 までにトモシンセ
シスを施行した 265 症例の内、術前化学療法を施行していない、最終病理診
断で浸潤病巣を超える乳管内進展が見られた浸潤性乳管癌 19 例と非浸潤性
乳管癌 5 例。年齢は 41 歳から 80 歳、術式は、部分切除術 19 例、乳房切除術
5 例であった。【方法】モニタ画像と全割マッピング病理組織の乳管内病巣を
含む腫瘍最大径を比較した。最大径の差が 1.5cm 未満のものを一致とし、計
測上は一致しないが、マッピングと照らし合わせてほぼ描出出来ているもの
は、ほぼ一致とした。【結果】主腫瘍の組織型は、乳頭腺管癌 12 例、DCIS5
例、硬癌 3 例、浸潤性小葉癌 2 例、invasive micropapillary carcinoma1 例、
metaplastic carcinoma1 例であった。最大径が一致した症例は 17 例、ほぼ
一致は3例、描出困難は 4 例だった。乳管内進展描出例には、充実性、篩状
性の増殖が多く見られた。全く描出出来ていないものは DCIS3 例、浸潤性小
葉癌 1 例だった。【考察】乳管内進展巣が充実性、篩状性の増殖を示すものは、
トモシンセシスで描出できた。これらは、密着撮影でやや不良でもトモシン
セシスでは描出出来た。今回、ほぼ一致も含め 24 例中 20 例で描出出来ていた。
主腫瘤が乳頭腺管癌、硬癌の場合の広がりは、全例一致していた。一致しなかっ
た 4 例のうち、solid-papillary carcinoma が 1 例、浸潤性小葉癌が 1 例あっ
た。残り 2 例の DCIS について、1 例は全割病理標本上でも進展していく乳管
が 1 本と少ない為、X 線吸収差がつかなったものと思われる。もう 1 例は、進
展部位が乳腺に重なり、且つ間質変化がないため、画像上捉えられなかった
と考えられる。トモシンセシスは曝射回数が 25 回と多い為、1 回当たりの線
量は非常に少ない。そのため、粒状性の悪い画像になる。しかし、多くの症
例で広がり診断は出来ており、トモシンセシスの使用は有用と思われた。
11811
10689
乳癌術前の Real-time virtual sonography(RVS)を併用し
た 2nd-look US 評価の有用性
MR 造 影 病 変 に た い す る 新 し い ア プ ロ ー チ 法:Volume
Navigation System
GP-1-035-10
GP-1-035-11
1
愛知医科大学 乳腺・内分泌外科
吉田 美和、中野 正吾、藤井 公人、高阪 絢子、塩見 有佳子、安藤 孝人、
手塚 理恵、今井 常夫、福富 隆志
【目的】Real-time virtual sonography (RVS) は磁気センサーによる位置追
尾システムを用いて、US 断面とそれに一致する MRI の再構築画像を同期させ、
同一モニター上に描出することができる装置である。本研究では、乳癌手術
(2011/1-2013/9)の術前評価でマンモグラフィと 1st-look US では検出され
ず、MRI でのみ検出する追加病変の 2nd-look US 評価における RVS 併用の有
用性を検討した。【対象と方法】術前の視触診・マンモグラフィ・US 所見と患
者の希望から温存手術の適応を満たし、かつ造影 MRI が禁忌でない乳癌患者
に腹臥位両側乳房造影 MRI(マンモコイル使用)を施行。MRI 追加病変を認め
た場合、2nd-look US でその同定・評価を行った。同定困難な症例では RVS
を併用し、追加撮影した仰臥位片側乳房 MRI(体表コイル使用)の再構築画像
を同期させて 2nd-look US を施行。2nd-look US/RVS で同定できた患側乳房
の MRI 追加病変を Multifocal/Multicentric/MRI-detected extensive disease
の 3 つに分類し、Multicentric disease は術前に US/RVS ガイド下針生検でそ
の組織型を確認。針生検で良性と診断された症例を除き、MRI 追加病変を含
むよう切除範囲を拡大した。最終的に切除標本組織所見より 2nd-look US/
RVS 評価に基づく切除範囲の決定が適切であったかを検討した。【結果】腹臥
位 MRI で全 118 名中 50 名の患側乳房に 53 追加病変を検出した。MRI 追加病
変の 2nd-look US による同定率は RVS 併用なしで 43%(23/53)だったのに
対し、RVS 併用により 91%(48/53)へと向上した。MRI 追加病変を検出し
た 50 乳房中 42 乳房で、2nd-look US/RVS 評価に基づき切除範囲を拡大した
(乳房切除 23 乳房、温存切除範囲拡大 19 乳房)。組織学的検索の結果、乳房
切除を施行した 23 乳房では全例に広範な乳管内病変を認め、2nd-look US/
RVS 評価は適切だった。温存切除範囲を拡大した 19 乳房中 16 乳房でも MRI
追加病変に一致する乳管内進展または多発癌病変を認めた。しかし、残りの
3 乳房で過大評価があった。結果的に、温存術後の切除断端陽性は 95 例中 15
例(16%)で、これらの大半は MRI による検出困難な low-grade DCIS の不完
全切除であり、浸潤癌成分の切除断端陽性は 2 例(2%)のみであった。【結論】
乳癌術前の MRI 追加病変の 2nd-look US 評価に RVS を併用することにより、
MRI で得られた画像情報をより正確に評価することができ、その結果として、
浸潤癌の不完全切除の減少につながった。
366
3
慶應義塾大学病院 腫瘍センター、2 慶應義塾大学医学部 一般・消化器外科、
慶應義塾大学病院 中央放射線技術室、4 慶應義塾大学医学部 放射線診断科
高橋 麻衣子 1、林田 哲 2、神野 浩光 2、根本 道子 3、土屋 ひろこ 3、
谷本 伸弘 4、北川 雄光 2
[ 背景 ] 臨床において MMG/US では描出困難な MRI 造影病変や偶発的に発見
される MRI 造影病変を経験することがあるが、これらの病変に対する MRI
ガイド下針生検は未だ一般的ではない。近年、US に MRI データを同期さ
せ、US 断層面に一致した再構築 MRI 画像を描出できる Volume Navigation
(V-Navi) という技術が開発され乳腺への応用も試みられている。MMG/US に
おいて描出困難な MRI 病変に対する診断アプローチ法として V-Navi ガイド
の有用性について検討した。[ 対象と方法 ]2011 年 1 月から 2013 年 12 月ま
で当院にて MMG/US/ 造影 MRI を施行した 513 例中、MMG/US において描
出困難な MRI 造影病変と診断された 36 例を対象とした。V-Navi 適応と判断
された症例は、まず仰臥位造影 MRI を施行し、second look US にて再度病
変を確認し、同定困難の場合は MRI 画像データをワークステーションに取り
込み、V-Navi ガイドに針生検またはマーキング後切除生検を行った。[ 結果 ]
MMG/US/ 造影 MRI を施行した 513 例中、MMG/US において描出困難な MRI
造影病変は 36 例 (7.0%) であった。このうち 33 例 (91.7%) は V-Navi によ
る MRI 造影病変の同定が可能であり、V-Navi ガイド下針生検またはマーキ
ング後切除生検を施行した。MRI 造影病変の大きさの平均値は 8.8mm (5.048.0mm) であった。V-Navi ガイド針生検の平均所要時間は約 42 分であり、
合併症は認めなかった。MRI 造影病変の病理組織学的所見は、浸潤性乳管癌
が 8 例 (22.2%)、非浸潤性乳管癌が 8 例 (22.2%)、17 例 (47.2%) は乳管乳
頭腫症及び線維腺腫症を伴う乳腺症であった。[ 結語 ]MMG/US において描出
困難な MRI 造影病変に対する診断アプローチ法として VolumeNavigation ガ
イドは有用である可能性が示唆された。
ポスター掲示
11152
10285
US による 3D ボリュームデータを用いた乳癌化学療法での効果
判定に関する検討
癌細胞に高発現するγ-glutamyltranspeptidase と特異的に
反応する新規蛍光プローブの乳癌臨床応用について
GP-1-035-12
1
GP-1-035-13
岐阜大学医学部 乳腺・分子腫瘍学講座、2 岐阜大学医学部 腫瘍外科
1
1
2
2
1
4
2
森光 華澄 、二村 学 、名和 正人 、兼松 昌子 、森川 あけみ 、
吉田 和弘 2
上尾 裕紀 1、新田 吉陽 1、甲斐 裕一郎 2、久保田 陽子 2、渋田 健二 2、
藤吉 健児 3、田中 文明 4、上尾 裕昭 2、浦野 泰照 5、三森 功士 1
【背景と目的】癌細胞を光らせ、組織内の癌細胞の検出や可視化について
の研究が現在盛んに行われている。悪性腫瘍の細胞膜に高発現している
γ -glutamyltranspeptidase(GGT) と反応し、癌細胞を特異的に光らせるこ
とを可能とした新規蛍光プローブ (gGlu-HMRG probe:液状試薬 ) を用い
て、乳癌腫瘍と腋窩リンパ節における乳癌細胞検出の可否を検証し、その臨
床的意義を検討した。【対象】乳癌腫瘍 56 症例、乳癌 41 症例から乳癌手術
時に摘出された腋窩リンパ節 160 個。【方法】サンプル割面に蛍光プローブ
試薬を散布し、経時的に癌部と非癌部の蛍光強度をポータブル・デバイス
(Fairfax camera from NIH、励起光 450-500 nm、510 nm 以上の光のみを
透過するフィルターを内蔵)を用いて撮影した。試薬投与 15 分後の蛍光強度
を TBR(target to background ratio) 法を用いて定量的に評価し、蛍光陽性
領域と病理学的所見と対比した。【結果】浸潤癌 :3/33 例(91%)、非浸潤癌:
9/10 例(100%)、乳癌転移巣:3/3 例(100%)、良性腫瘍 7/10 例 (70%) であっ
た。摘出した乳癌患者の腋窩リンパ節で gGlu-HMRG probe 投与による蛍光
陽性率は 75.6%(121/160 個)であった。蛍光陽性領域と病理結果の比較を
行い、gGlu-HMRG probe による原発巣の感度、特異度は 89.3%、91.4%、
リンパ節転移陽性に対する感度、特異度は 94.9%、63.9%であった。【結論】
gGlu-HMRG probe による乳癌腫瘍および腋下リンパ節へ転移した乳癌細胞
の標識性は良好で、15 分という短時間で腫瘍存在部位、リンパ節転移判定が
可能であった。乳癌細胞に対する gGlu-HMRG probe は高感度であることか
ら、乳腺断端の診断や腋窩リンパ節においては蛍光陰性の場合はセンチネル
リンパ節転移の省略が可能となる可能性が示唆された。
10238
10918
時間分解分光法と超音波での同時測定による正常乳腺および乳
癌病変の光学特性の検討
乳癌組織の光学特性の検討
GP-1-035-14
GP-1-035-15
1
1
浜松医科大学医学部附属病院 放射線科、
浜松ホトニクス(株)中央研究所 第 7 研究室、
3
浜松医科大学医学部附属病院 乳腺外科、
4
浜松医科大学医学部附属病院 病理診断科
小倉 廣之 1、芳澤 暢子 2、那須 初子 2、瀧 由美子 1、細川 優子 1、
松沼 亮一 1、井手 佳美 1、和田 英俊 1、椎谷 紀彦 1、阪原 晴海 2
2
芳澤 暢子 1、上田 之雄 2、矢巻 悦子 2、那須 初子 1、細川 優子 3、
松沼 亮一 3、井出 佳美 3、瀧 由美子 3、馬場 聡 4、小倉 廣之 3、
阪原 晴海 1
【 目 的 】近 赤 外 光 を 用 い て 組 織 代 謝 の 評 価 可 能 な 時 間 分 解 分 光 法(TimeResolved Spectroscopy; TRS)と、超音波(US)プローブを組み合わせた機能
情報と組織構造を同時に計測評価可能なプローブを用い、正常乳腺、乳癌病変
について光学特性を比較検討する。
【対象】2013 年 6 月から当院乳腺外科を受
診し、上記のプローブで測定を行った乳癌患者 17 人および健常ボランティア 5
人。
【方法】時間分解分光装置(浜松ホトニクス、TRS-20 光源 - 検出器間距離
=3cm)と US プローブ(日立 EUB-7500、EUP-L65)を観測部位が直交するよ
う配置したプローブを用いて、乳癌の病変部および対側乳房の同一部位を、光
学係数と US 画像を同時に測定した。ボランティアでは適宜健常部を数か所測
定した。TRS により得られる光学係数、総ヘモグロビン(tHb)濃度等と、US
画像から得られる皮膚から胸壁までの距離、病変の深さ、腫瘍径等を測定、比
較検討した。
【結果】正常乳腺の測定による tHb 濃度を縦軸に、胸壁までの距離
を横軸にとりプロットすると、胸壁までの距離が近い範囲では距離が大きくな
るにつれ tHb 濃度が小さくなり、十分胸壁までの距離が大きくなるとほぼ一定
となる。このことから胸壁までの距離が近い例では、胸壁による吸収が測定値
に大きく影響することが分かった。また正常乳腺の tHb 濃度の測定値から近似
曲線を描き、病変の測定値を同様にプロットすると、大多数は正常乳腺の近似
曲線よりも上位にプロットされた。健常側より病変部の方が tHb 濃度が低く計
測された例で、上記グラフ上で評価すると病変部は正常乳腺の近似曲線より上
位に位置する例が確認された。更に前述の正常乳腺の tHb 濃度の近似曲線と病
変の測定値との差(δ tHb 値)を求めると、δ tHb 値は腫瘍径と正の相関を、病
変の深さとは負の相関を示した。これまでも TRS の測定で病変部では対側と比
較し tHb 濃度が有意に高いことが報告されているが、これまでの TRS による測
定値は深さ方向の情報が一塊となっていたため、病変自体の tHb 濃度の評価が
難しかった。今回、US 画像から得られる情報を TRS で測定される tHb 濃度に
付加することにより、組織代謝のより実用的な臨床評価が可能になったと考え
られ、US 画像で得られる情報での補正の有効性が示された。現在測定値と病
変の組織型等との更なる比較を行っている。
【結語】TRS と US での同時測定に
より、光学特性が乳癌の新たなバイオマーカーとなる可能性がある。
浜松医科大学医学部 乳腺外科、2 浜松医科大学医学部 放射線科
【目的】乳癌直上部と対側健常領域の光学特性を比較することにより、乳
癌組織の光学的特徴を明らかにする。【対象】2007 年1月から 2013 年 11
月までに当院で加療された原発性乳癌症例のうち、光学係数を測定した
249 例のうち、化学療法後症例や両側症例等を除いた 152 例。【方法】波長
760nm,800nm,830nm のパルス光を生体内に照射し、伝播した時の時間応
答特性を測定し、光拡散方程式で解析することにより組織の吸収係数(μ a、
1/cm)、散乱係数(μ S ‘、1/cm)、酸素飽和度(SO2、%)、及び総ヘモグロ
ビン濃度(tHb、μ M)を求めた。 計測は、両側乳房の計 10 箇所及び腫瘍直上
部において施行し、腫瘍直上部と対側健常領域を比較検討した。
【結果】波長
760nm,800nm,830nm のいずれにおいても腫瘍直上部の吸収係数(1/cm)
は、対側健常領域と比較して有意に高かった(760nm:直上;0.078 対
側;0.063 p < 0.001、800nm 直 上:0.071, 対 側;0.050、p < 0.001、
830nm:直上;0.084 対側;0.063 p < 0.001)。一方散乱係数は、両者
の間に統計学的に有意な差は認められなかった(760nm:直上;9.58 対側;
9.71、800nm 直上:9.23, 対側;9.40、830nm:直上;9.07 対側;9.22)。
また腫瘍直上部の tHb(μ M)は、対側健常部と比較して有意に高かった(腫瘍
直上:32.3 対側健常部;22.0、p < 0.001)。SO2 は、両群間で有意な差は
認められなかった(腫瘍直上:73.2 対側健常部;73.6)。【結語】乳癌直上部
は対側健常部と比較して吸収係数、総ヘモグロビン濃度が有意に高いことが
確認された。
367
一般セッション(ポスター掲示)
(はじめに)最近、乳癌化学療法早期での治療反応性によって治療法を変更す
ることで、一部のサブタイプでは DFS や OS に差がでることが示唆されてお
り、化学療法早期での治療反応性の評価が重要視され始めている。一方で、
US 画像を位置情報と共に 3D ボリュームデータとして保存する技術が開発さ
れ、乳腺領域での臨床応用が進んでいる。この技術により、保存した US 画
像を用いて腫瘍長径や体積の計測が可能で、簡便かつ非侵襲的であり、空間
分解能も高く、頻回の検査が可能である。我々はこの技術を用いて、腫瘍長
径や体積を経時的に計測し、治療効果・病理組織学的因子との関連を検討し
た。(対象)2010 年 2 月から 2013 年 11 月までに当院で化学療法を施行し、原
発巣が超音波検査にて描出可能であった原発性乳癌 16 例 (Luminal type11
例、triple negative type( 以下 TN)4 例、HER2 type1 例 )。(方法)化学療法
施行例に対し原発巣の腫瘍長径及び体積測定を GE 社 LogiqE9 による Volume
navigation を用いて経時的に行い、US による治療効果判定と RESIST による
判定との比較を行った。また ER、PgR、HER2、Ki67 などの病理組織学的因
子と治療効果の関連を検討した。さらに 3D ボリュームデータを同時期に複数
回作成し、計測した腫瘍長径及び体積の再現性の検討を行った。(結果)US で
の腫瘍長径及び体積による化学療法の効果判定は RESIST による効果判定と
15 例中 12 例で一致した。判定が不一致であった症例のうち 2 例は腫瘍が著明
に縮小し CT にて索状物のみとなった症例であった。Luminal type では Ki67
が 20% 以上の症例で腫瘍の縮小率が高い傾向がみられたが、Ki67 と縮小率に
明らかな相関はなく、TN では縮小率が高い症例と低い症例の 2 相性を認めた。
測定値の再現性の検討では、腫瘍長径・体積ともに2回の計測値に高い相関
を認めた。(結語)US 画像での化学療法の治療効果判定は可能であり、化学療
法早期での治療反応性を判断するのに有用な手段であると考えられた。
九州大学病院別府病院、2 うえお乳腺外科、3 藤吉乳腺クリニック、
田中乳腺・外科・内科クリニック、5 東京大学 生体情報学分野
ポスター掲示
11945
10564
光超音波マンモグラフィを用いた腫瘍内酸素飽和度の初期評価
乳癌術前化学療法における拡散光 spectroscopy を用いたシリ
アル代謝モニタリングの試み:2 症例の検討
GP-1-035-16
GP-1-035-17
1
京都大学医学部附属病院 乳腺外科、
2
京都大学医学部付属病院 放射線診断科、
3
京都大学医学部付属病院 病理診断科、4 京都大学医学部 人間健康学科、
5
キヤノン株式会社
1
埼玉医科大学病院 乳腺腫瘍科、
埼玉医科大学国際医療センター 乳腺腫瘍科、
3
Beckman Laser Institute and Medical Clinic, University of California,
Irvine
2
常盤 麻里子 1、高田 正泰 1、鳥井 雅恵 1、山賀 郁 1、金尾 昌太郎 2、
片岡 正子 2、三上 芳喜 3、椎名 毅 4、浅尾 恭史 1,5、戸井 雅和 1
一般セッション(ポスター掲示)
緒言:我々は光超音波マンモグラフィ(PAM)によって腫瘍近傍の血中ヘモ
グロビン酸素飽和度(SO2)を評価できることを報告したが 1)、PAM 信号と造
影 MRI 像との対比により腫瘍の位置を推定し評価したものであった。診断精
度向上のためには、より正確な信号位置の把握が求められる。今回、光音響
像と超音波像を同時撮像可能な PAM を採用し、腫瘍組織の内外における血中
SO2 の差異を評価した。方法:2012 年 8 月以降、京都大学病院において手術
施行を予定した乳腺腫瘍を有する患者を対象に被験者をリクルートし撮像を
行った。PAM と同時に撮影したエコー像より腫瘍局在を判定した。二つのレー
ザ波長(756, 797nm)での光音響信号を用いて、腫瘍の内外における SO2 を
画像化した。着目する血管に 1 辺が 0.5mm の正方形の ROI を複数設定して
SO2 値を求め、腫瘍内外それぞれでの SO2 の中央値を用いて評価した。結果:
代表的な症例 2 例の結果を示す。いずれもホルモン陽性タイプの浸潤性乳癌
であった。症例1)年齢 51 歳、腫瘍径 70mm。腫瘍内部の SO2 は、中央値
64.4%(N = 10)であった。腫瘍外部の SO2 は、中央値 77.7%(N = 15)で
あった。腫瘍内外での SO2 には有意差が見られた(p = 0.00012)。症例2)年
齢 45 歳、腫瘍径 19mm。腫瘍内部 SO2 は、中央値 62.1%(N = 8)であった。
腫瘍外部の SO2 は、中央値 76.4%(N = 11)であった。腫瘍内外での SO2 に
は有意差が見られた(p = 0.011)。結語:今回、エコー診断機能を搭載した
PAM を採用することによって腫瘍内外の SO2 の違いを精度よく画像化できる
可能性が示唆された。SO2 が腫瘍低酸素状態を反映している可能性があるが、
更なる検討が必要である。謝辞:文部科学省イノベーションシステム整備事
業「高次生体イメージング先端テクノハブ」より支援を受けたものです。参考
文献:1) T. Kitai et al., Breast Cancer, Online First, 2012
竹内 英樹 1,2,3、Bruce Tromberg3、上田 重人 2、大崎 昭彦 2、
佐伯 俊昭 2
【諸言】乳癌術前化学療法における議論は,いかに早い段階で病理学的治療効果
を予見できるかに急速にシフトしている.response guided therapy の概念は
その必然性から生まれ,各種モダリティを用いた検討が進められているものの,
既存の診断には限界がある.今回我々は,化学療法による腫瘍組織の生物学的
変化に着目し,近赤外光を用いた低侵襲な方法によって,術前化学療法全行程
における腫瘍の詳細なシリアル代謝モニタリングが可能かどうか検討した。
【方
法】University of California, Irvine において原発性乳癌と診断された 2 症例に
対し,術前化学療法として Abraxane+Carboplatin+Bevacizumab を 12 サイ
クル施行した.拡散光spectroscopic imaging (DOSI, Beckman Laser Institute,
UCI, USA)を用い,超早期(初回投与日,
各薬剤間複数回)から早期(1週間連日,
1回/日),遅延期(6サイクル,12サイ
クル)の全ポイントで腫瘍の各種ヘモグ
ロビンや脂質,水などの代謝変化を経
時的にモニタリングした.
【結果】症例
1(52歳女性,T1cN1M0 stageIIA,triple
negative),症例2(61歳女性,T2N1M0
stageIIB,luminar B)について,実際の
測定結果を供覧する.
【結語】DOSIによ
る シ リ ア ル 代 謝 モ ニ タ リ ン グ は、
response guided therapyの至適方法論
を探るkey deviceとなる可能性が示唆さ
れた.米国の前向き試験が進行中である
が,当施設でも臨床試験の準備中である.
11862
11464
演題取り下げ
石灰化病変の濃度数値化による良悪性鑑別の探査的研究
GP-1-035-18
GP-1-035-19
1
2
近畿大学医学部奈良病院 乳腺内分泌外科、
近畿大学医学部奈良病院 放射線科
綿谷 正弘 1、磯野 小百合 1、湯川 真生 1、白石 愛 2、岡嶋 馨 2
【目的】乳癌検診へマンモグラフィが導入され、良悪性の鑑別を要する石灰化
病変を主訴とした精検施設への受診が増加している。受診動機となる石灰化
病変のカテゴリー分類は形態と分布を組み合わせてなされているが、いずれ
も検者の主観的判断で行われている。今回、マンモトーム生検がなされた症
例の摘出標本撮影を用いて石灰化病変周囲の濃度を測定し濃度差数値化が石
灰化病変の良・悪性鑑別に有用な方法であるかを探査的に検討した。
【対象と方法】2012 年 7 月から 12 月まで施行されたマンモトーム生検 22 例を
対象に、生検後の標本撮影を DICOM 画像変換し ImageJ ソフトウェアを用い
て石灰化およびその周辺の濃度測定を行う。少なくとも2か所以上で濃度計
測を行い測定範囲内における最大濃度と最小濃度から濃度差を求め、計測範
囲を考慮した濃度勾配(最大濃度-最小濃度)÷(10 ×計測長 (mm))を算出し
病理所見と対比。
【結果】22 例の年齢中央値 54 歳(35-75 歳)で、MMG 上乳腺散在 8 例、不均一
高濃度 14 例。石灰化形態は微細円形 3 例、不明瞭 13 例、多形性 6 例で、石灰
化分布は集簇性 14 例、区域性 3 例、領域性 5 例。診断カテゴリー判定でカテ
ゴリー 2;4 例、3-1;3 例、3-2;9 例、4;5 例、5;1 例。マンモトーム生検病理
で非浸潤性乳管癌 (DCIS)4 例、乳腺症 16 例、線維腺腫 2 例。14 例の集簇性
石灰化病変のうち 3 例は DCIS で、それら 3 例の最大最小濃度差は 180 以下で、
計測範囲を考慮した濃度勾配は 1 以下であった。一方、11 例の良性病変のう
ち 9 例での濃度差は 200 以上で、濃度差が 180 以下を示した 2 例においては
濃度勾配がそれぞれ 7.5、8.3 であった。5 例の領域性石灰化病変(すべて良性
病変)の濃度差はすべて 200 以上であったが、区域性 3 例の石灰化では集簇性
石灰化病変で見られた傾向は明らかでなかった。
【まとめ】石灰化病変周囲の濃度計測で濃度差が低くかつ濃度勾配が低いこと
は石灰化病変を中心に密度の高い細胞増殖の存在が示唆される。今回の探査
的研究から、集簇性や領域性分布を示す石灰化病変の良悪性鑑別に石灰化病
変周囲の濃度を客観的に評価することは有望な方法と考えられる。
368
ポスター掲示
11562
10355
invasive micropapillary carcinoma の検討
病理学的検索を行った MRI 非造影 / 造影不良充実性腫瘤性病変
4 例の検討
GP-1-036-01
GP-1-036-02
社会医療法人博愛会さがらパース通りクリニック
1
名古屋市立西部医療センター 放射線診断科、
名古屋市立西部医療センター 乳腺内分泌外科、
3
名古屋市立西部医療センター 外科
佐々木 道郎
2
Invasive micropapillary carcinom(IMPC)は浸潤癌の特殊型に分類されてい
る。全乳癌に対する発生頻度は腫瘍の一部が IMPC を呈するものが約 6%、腫
瘍の 50% が IMPC を呈するものが約 2% とされ、リンパ管浸襲やリンパ節転
移率が高いことが特徴といわれている。今回われわれは IMPC と診断された
12 例について画像診断を中心に検討したので発表する。MMG 上は腫瘤を形
成するものが多く(8/12 例)、スピクラ (5/12) や微細分葉状など悪性をより
示唆する所見を呈していた。石灰化所見はカテゴリー 3,4 以上を呈するもの
は少なかった。(5/12 例 ) 超音波所見は前方境界線の断裂、ハロー、後方エコー
の減弱を 75% 以上に認めた。術前の腋かリンパ節エコーでは転移を疑う所見
が 8/11 例、CT では 8/12 例に見られた。エコーおよびCTで長径 10mm 以
上あるいは短径 5mm 以上の明らかに腫大したリンパ節を認めることが多くこ
の疾患の特徴に合致していた。
白木 法雄 1、杉浦 博士 2、西川 さや香 2、小林 俊三 2、田中 宏紀 3、
川口 暢子 2
11737
11826
小さな浸潤径の TNBC の画像所見:早期発見のために
乳癌の進展と脾臓の体積の関連性に関する検討
GP-1-036-03
GP-1-036-04
1
がん研究会有明病院 画像診断部、2 がん研究会有明病院 乳腺センター、
3
がん研究会有明病院 病理部、4 がん研究会がん研究所 病理部
焼津市立総合病院
宮戸 秀世、平松 毅幸
五味 直哉 1、國分 優美 1、蒔田 益次郎 2、坂井 威彦 2、宮城 由美 2、
飯島 耕太郎 2、森園 英智 2、堀井 理絵 3、秋山 太 4、岩瀬 拓士 2
【 背 景 と 目 的 】早 期 の 発 見 が 難 し い と さ れ て い る triple negative breast
cancer (TNBC) で浸潤径 10mm 以下の病変における画像所見の特徴を明ら
かにすること。【対象と方法】2011 年 1 月~ 2012 年 12 月に手術を施行した
浸潤性乳管癌 1714 例中、ER(-) , PgR (-), Her2(-) の TNBC で、病理組織の
浸潤径が 10mm 以下であった 25 例(乳頭腺管癌 6 例 , 充実腺管癌 8 例 , 硬癌
6 例 , 紡錘細胞癌 1 例 , アポクリン癌 3 例、基質産生癌 1 例)。浸潤径の平均は
7.04mm。retrospective に MMG 所見 ,US 所見 ,MRI 所見について検討した。
【結果】MMG で描出されたのは 18 例(72%)で腫瘤 10 例(平滑な腫瘤1例 , 石
灰化を伴った腫瘤 3 例), FAD2 例 , 構築の乱れ1例 , 石灰化のみ 5 例であった。
7 例(28%)は MMG で描出されなかった。US では 25 例全例が描出され、カ
テゴリ 5 または 4 が 20 例 , カテゴリ 3 で良性との鑑別を要したものが 5 例で
あった。US で腫瘤を呈したのは 22 例(88%), うち 2 例で多発腫瘤 , 3 例で腫
瘤+腫瘤像非形成性病変を認めた。腫瘤像非形成性病変のみを呈したのは 3
例(12%)であった。腫瘤の形状は円形または楕円形 8 例 , 不整形 14 例であっ
た。縦横比が 0.7 未満だったのは 14 例であった。腫瘤のうちカテゴリ 3 の 5
例では線維腺腫 , 濃縮嚢胞 , 乳管内乳頭腫 , 硬化性腺症が鑑別にあがった。腫
瘤像非形成性病変の 3 例は全例で点状高エコーが認められ , そのうち 2 例が
乳管内癌優位の浸潤癌であった。MRI は 25 例中自施設で施行した 22 例にて
ついて検討し全例で病変が検出されていた。17 例(77%)で mass もしくは
mass および non-mass lesion (nonmass) を呈していた。2例では多発腫瘤
を認めた。Mass の形状は円形または楕円形 9 例 , 分葉形 4 例 , 不整形4例で ,
辺縁は 7 例で平滑であった。内部の造影パターンは rim enhancement を呈し
た例が 10 例で最も多かった。ダイナミックカーブは rapid-washout pattern
を呈したのが8例で最も多く , 次いで rapid-plateau pattern が6例に認めら
れた。nonmass のみだったのは 22 例中5例(23%)でいずれも区域性の分布
を示していた。【まとめ】浸潤径の小さな TNBC は MMG の検出能がやや低かっ
た。US、MRI は検出率が高いが , mass(多発を含む)、mass + non-mass
lesion, non-mass lesion のみと所見は多彩であった。US 所見で多くは悪性
が疑われたが、良性病変との鑑別を要するものがあり注意が必要である。
【目的】近年の研究により癌の進展は癌細胞自体の増殖のみで成り立つのでは
なく、癌をとりまく微小環境が大きな影響を与えること解明されつつある。腫
瘍により骨髄由来の細胞が末梢組織へと誘導され異常に増殖することにより、
癌特異的免疫能の低下などを介して(myeloid-derived suppressor cell)
、腫
瘍の進展を促進すると考えられている。動物実験ではこれらの細胞は腫瘍組
織内で増殖すると共に脾臓においても増加し脾腫を伴うことが知られている。
実際に乳癌患者においても、癌の進展とともに骨髄由来の細胞が末梢組織に
おいて増殖しているのではないかと考え調査を行った。【方法】2012 年に当院
で手術を行った乳癌患者、17 人において術前 CT を用いて、脾臓の体積を測定
した ( 体表面積で割ることにより体格の差を補正 :spleen volume/BSA(cm3/
m2))。これと臨床病理学的因子との関連性について調査した。【成績】深達度
別に評価すると、Tis - T1 癌患者 (10 例 ) に比べ T2 - T4 癌患者 (7 例 ) では脾
臓の体積は高値の傾向を認めた (Tis - T1:55.7 ± 4.8 vs T2-T4:75.8 ± 10.6、
p=0.074)、ステージ別にみてもステージが進んだものほど高値の傾向を認め
た (stage0/I(8 例 ):53.6 ± 4.8 vs stageII-IV(9 例 ):73.2 ± 8.7、p=0.077)。
【結論】乳癌患者において腫瘍の進行と共に脾臓の増大を認め、骨髄由来の細
胞が腫瘍の進展に関与している可能性が示唆された。
369
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】
当院開院後 2 年 4 ヶ月中に精査目的の乳腺 MRI 検査が 426 件施行さ
れ、大部分は造影病変と病的所見なし症例だが、非造影もしくは造影不良腫
瘤性病変に遭遇することがある。ほとんどは嚢胞として矛盾しないが、稀に
マンモグラフィ(以下 MMG)、エコー(以下 US)所見を含めて考察すると非
造影もしくは造影不良の解釈や病変の画像診断に苦慮することがある。今回
我々は MMG/US で非造影もしくは造影不良と判断し病理学的検索を行った充
実性腫瘤 4 例につき、その画像所見、病理所見を紹介し、非造影/造影不良の
原因を検討した。【方法】2011 年 5 月から 2012 年 6 月に施行された乳腺 MRI
上、非造影もしくは造影不良と判断し、病理学的検索を行った充実性腫瘤性
病変 4 例を対象とした。年齢 38 ~ 82 才、中央値 68 才、すべて女性、右 2 例、
左 2 例、吸引式組織生検 3 例、腫瘍摘出術 1 例。病理結果 乳腺症 3 例 萎縮
乳腺組織 1 例。触診、MMG 所見、US 所見、MRI 所見につき検討した。【結果】
長径は 46 ~ 7mm、中央値 12mm。触知 2 例、非触知 2 例。MMG では腫瘤
で 3 例認め、すべて境界明瞭平滑であった。カテゴリーはすべて 3。US 所見
では腫瘤形成性病変が 3 例、後方エコーは増強 1 例、不変 2 例で様々であった。
ハローや境界線断裂の所見は見られなかった。カテゴリー 2,3 がそれぞれ 1
例、3 例であった。MRI では形態評価で腫瘤 3 例、腫瘤非形成 1 例で腫瘤すべ
て形状は卵形、辺縁平滑であった。病理では、いずれも症例も腺上皮に比較し、
間質の線維成分が目立った。【結語】今回検討した MRI 非造影 / 造影不良病変
はすべて良性病変であった。乳腺症や加齢性萎縮乳腺組織が画像上、腫瘤性
病変として描出されることがある。非造影 / 造影不良の原因として、腺上皮退
縮と線維増生による血管減少~血流低下が挙げられる。非造影悪性腫瘍との
鑑別が必要だが、US や MMG で悪性所見を呈することが多く、自検例の良性
病変との判別は比較的容易と考えられた。
ポスター掲示
11199
11126
各種画像診断を用いた術前化学療法後の組織学的効果判定に関
する検討
画像所見による術前化学療法の治療効果予測の検討
GP-1-036-05
GP-1-036-06
岡山大学病院 乳腺・内分泌外科
1
横浜労災病院 乳腺外科、2 横浜労災病院 腫瘍内科、
3
横浜労災病院 病理診断科
溝尾 妙子、鳩野 みなみ、伊藤 麻衣子、岩本 高行、野上 智弘、
元木 崇之、枝園 忠彦、平 成人、松岡 順治、土井原 博義
足立 祥子 1、千島 隆司 1、山本 晋也 1、戸田 陽子 2、有岡 仁 2、
長谷川 直樹 3、角田 幸雄 3
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】術前化学療法(NAC)の進歩に伴い、高い奏功率(Grade 2b, 3)が得
られるようになってきている。画像診断で組織学的効果の診断が可能となれ
ば、局所治療を縮小し、より安全に乳房を温存することが可能となってくる。
【目的】我々は、NAC 後の組織学的効果に対するモダリティ別診断能について
検討した。【方法】2012 年 12 月から 2013 年 11 月まで当院で NAC を施行し
た 34 例を対象とし、画像診断モダリティとしては超音波、CT、MRI を用い
た。画像評価の方法は、超音波で低エコー領域、CT、MRI で造影領域(腫瘤)
が確認された場合は「遺残癌あり」と診断した。また、MRI で線状造影を認め
た場合、rapid-enhance and washout pattern 以外は瘢痕病変として「遺残
癌なし」と診断した。画像で遺残癌を認めずに組織学的効果が Grade 2b, 3
の場合、もしくは画像で遺残癌を認めて組織学的効果が Grade 0, 1, 2a の
場合を正診とし、モダリティ別に正診率、感度、特異度を算出した。NAC
の レ ジ メ ン は FEC100 x4 + Docetaxel (75) x4 と し、HER2 陽 性 症 例 で は
Trastuzumab を併用した。
【結果】症例の平均年齢は 55 歳、臨床病期の内訳
は Stage I / IIA / IIB / IIIA / IIIB / IIIC / IV : 5 (14.7%) / 12 (35.3%) /
9 (26.5%) / 1 (2.9%),4 (11.8%), 1 (2.9%),2 (5.9%) 例 で あ っ
た。 ま た サ ブ タ イ プ の 内 訳 は Luminal A / Luminal B / Luminal-HER2 /
HER-2type / Triple Negative : 2 (6.3%) / 11 (34.4%) / 5 (15.6%) / 4
(12.5%) / 10 (31.3%) 例であった。
NAC 後の組織学的効果は Grade 0 / 1a /
1b / 2a / 2b / 3 : 0 / 4 (11.7%) / 5 (14.7%) / 5 (14.7%) / 2 (5.8%) /
18 (52.9%) 例であった。喘息、アレルギー等で NAC 後の画像評価が出来な
かったのは CT: 2 例、MRI: 4 例であった。評価可能症例に対するモダリティ
別正診率は 超音波 / CT / MRI : 84.4% / 96.9% / 80.0% であり、感度は
超音波 / CT / MRI : 20.0% / 94.0% / 62.5% であった。いずれのモダリ
ティにおいても「遺残癌あり」と判断した場合は組織学的にも遺残癌を認めて
おり特異度は 100% であった。【結語】組織学的効果の診断能は CT が最も優れ
ており、正診率、感度、特異度はいずれも 90% 以上であった。
【背景】近年、術前化学療法は原発性乳癌に対する標準的治療となっている
が、サブタイプによって治療効果は異なり、また同じサブタイプであっても
著効する症例と全く効果のない症例がみられる。今回我々は、画像所見に
よって術前化学療法の効果を予測できるか検討した。【方法】2007 年 4 月か
ら 2013 年 10 月までに、術前化学療法施行後に手術を施行した 113 症例を対
象。術前化学療法前のマンモグラフィ、超音波、MRI、PET/CT(SUV max)
の各所見と薬物治療効果との関連についてサブタイプ別に検討した。組織学
的治療効果判定 Grade3 を pCR とし、それ以外を non-pCR、進行例を PD と
した。化学療法レジメンは anthracycline 系+ taxane 系を基本とし、HER2
陽 性 例 は Trastuzumab を 併 用 し た。【 結 果 】全 症 例 中 pCR は 33 例 (29%)、
non-pCR は 77 例 (68%)、PD は 3 例 (3%) で あ り、 サ ブ タ イ プ 別 の pCR 症
例 は、LuminalA は 7 例 (15%)、Luminal HER2 は 2 例 (16%)、HER2 は 15
例 (54%)、Triple negative は 9 例 (33%) であった。画像所見のうち、マン
モグラフィで石灰化を有する症例は pCR 群で有意に多かった (pCR 群の石灰
化 率 57% vs non-pCR 群 35% p=0.04)。 サ ブ タ イ プ 別 で は、luminalA、
HER2ty、Triple negative で pCR 群の方が石灰化率が高い傾向がみられた ( そ
れぞれの pCR 群の石灰化率:50%、67%、63%)。超音波所見 ( 形状、辺縁、
内部エコー、後方エコー)、MRI 所見 ( 形状、造影パターン )、PET/CT 所見
(SUVmax) は、pCR 群と non-pCR 群で明らかな違いは見られず、サブタイプ
別でも同様であった。【結語】luminalA、HER2、triple negative では術前化
学療法前のマンモグラフィ石灰化所見の有無が、術前化学療法の治療効果予
測因子となる可能性が考えられた。
11795
11327
センチネルリンパ節同定における術前 SPECT の有用性
BONENAVI を用いた乳癌骨転移の定量化と治療効果判定の試
み
GP-1-036-07
GP-1-036-08
岡山大学病院 乳腺内分泌外科
順天堂大学医学部 放射線医学講座
原 暁生、枝園 忠彦、鳩野 みなみ、溝尾 妙子、野上 智弘、岩本 高行、
元木 崇之、平 成人、松岡 順治、土井原 博義
【背景】近年、センチネルリンパ節生検(以下、SLNB)に際して、ラジオアイ
ソトープ法(以下、RI 法)に SPECT を併用することで、センチネルリンパ節(以
下、SLN)の同定に役立つという報告が散見される。当院でも 2012 年 4 月か
ら乳癌 SLN に対する SPECT を導入した。乳癌の SLN の同定に際して SPECT
の意義について検討する。
【方法】当院で SLN に対する SPECT を導入した 2012 年 4 月以降、現在までに
SLNB を 158 例に行い、うちリンパシンチグラフィーを 131 例に施行した。
リンパシンチグラフィーで集積を確認できた 121 例に術前 SPECT を併施し
た。うち 2 例は両側手術症例であった。術前 SPECT で同定された SLN と、術
中に実際同定され摘出された SLN の個数・部位・色素法との一致などに関し
て比較検討した。
【結果】患者年齢:24 歳~ 86 歳、中央値 58 歳。術式:乳房全摘 25 例(20.3%)、
乳房温存術 98 例(79.7%)。SPECT で腋窩以外への集積を確認したものが 5
例(4.1%)で、内訳は乳腺内 3 例、傍胸骨 1 例、腋窩 2 か所と傍胸骨 3 か所の
計 5 か所のものが 1 例であった。転移陽性(OSNA 法による)は 21 例(17.1%)
で、うち 2 例(1.6%)は転移リンパ節への RI の集積を認めず、色素法もしく
は肉眼的腫大により同定した。SPECT で同定されたが術中に RI 法での同定が
できず、色素法のみで同定したものが 4 例(3.3%)で、うち 2 例は GPS の故障
であった。SPECT で腋窩に複数の集積を確認したにもかかわらず術中に同定
できたリンパ節数が減少したものが 5 例(4.1%)で、内訳は 2 個→ 1 個が 3 例、
3 個→ 1 個が 1 例、4 個→ 1 個が 1 例であった。SPECT での腋窩の同定個数よ
り術中に RI 法で同定した腋窩リンパ節数が増加したものが 20 例(16.3%)で、
内訳は 0 個→ 1 個が 3 例、1 個→ 2 個が 15 例、1 個→ 3 個が 1 例、2 個→ 3 個が
1 例であった。
【考察】リンパシンチグラフィーで集積が陰性の症例をあらかじめ除外してお
り、これまでの報告と単純な比較はできない。しかし、腋窩以外への集積、
特に乳腺内リンパ節との鑑別に関しては、従来のリンパシンチグラフィーで
は困難であり、その点では SPECT は有用であると考えられた。腋窩リンパ節
と乳腺内リンパ節を鑑別する意義については今後検討の必要がある。
會田 真理、白石 昭彦、道正 理恵、山城 雄貴、鈴木 一廣、桑鶴 良平
【背景・目的】骨転移の画像診断には MRI, CT, 骨シンチグラフィなどが行わ
れている。骨シンチグラフィは骨転移の評価に簡便で有用な診断ツールとし
て認知されているが、その評価は客観性に乏しい。BONENAVI は骨シンチグ
ラフィ用のコンピュータ診断支援ソフトであり、転移の広がりを定量的に評
価(BSI: Bone Scan Index)することが可能で、Artificial Neural Network
(ANN)による値から転移予測を行うこともできる。今回、BONENAVI を用
いて乳癌症例を評価し、乳癌骨転移の定量評価と治療効果判定の可能性につ
いて検討した。【対象と方法】2012 年 1 月以降、当院において骨転移の疑いで
99mTc-MDP を用いて骨シンチグラフィが行われた乳癌患者について、BSI と
ANN から骨転移の定量化と転移予測を行った。最終的な確定診断は、フォロー
アップの骨シンチグラフィと臨床検査、画像診断(フォローアップ期間中の
MRI, CT, X 線など)を含む臨床診断に基づいて行った。【成績】BONENAVI を
用いて骨シンチグラフィの濃度スケールを統一化することにより、骨転移の
視覚的評価が容易となった。また BSI の値は骨転移の定量的評価や乳癌骨転
移の治療効果判定の指標となる可能性が示唆された。【結語】乳癌骨転移の評
価において、BONENAVI の有用性が示唆された。今後さらに症例の集積と解
析を進める予定である。
370
ポスター掲示
10890
11139
当院における乳癌初診時骨シンチグラフィの検討
日常診療でいかに多くの非浸潤性乳管癌(DCIS)を診断、治療
するか
GP-1-036-09
GP-1-036-10
1
東大阪市立総合病院 乳腺外科、2 東大阪市立総合病院 放射線科、
3
東大阪市立総合病院 外科
1
1
3
2
古妻 康之 、富永 修盛 、松本 謙一 、古市 欣也 、岡田 博司
1
2
大阪ブレストクリニック、2 関西電力病院 病理部
芝 英一 1、山本 仁 1、住吉 一浩 1、井口 千景 1、小池 健太 1、河合 潤 2
【背景】わが国でもマンモグラフィ(MMG)検診の普及に伴い DCIS の頻度は増
加しているが、DCIS の占める割合は乳癌全体の未だ 10% 以下で、乳癌をか
なり専門に取り扱っている施設においても 10 数 % である。しかしながら欧米
のように MMG による乳がん検診受診率が 70% を超えているような国におい
ては DCIS の割合は 20% を超えている。【方法】当院では 2005 年の開院以来
DCIS の割合が 20% を超えており、どのようにアプローチして診断をすれば
DCIS の割合が 20% を超えるのかを、当院の症例を retrospective に解析し検
討した。非浸潤癌の病理診断は手術標本を約 7mm の間隔で割を入れて検索し、
通常の HE での診断が困難な症例では筋上皮マーカーによる免疫染色により微
小浸潤癌の有無を判定した。【結果】2009 年 1 月より 2013 年 11 月末までに
当院で手術を施行した 1446 例中 DCIS は 364 例で、全体の 25.2% であった。
年 度 別 で も 2009 年 23.8%、2010 年 24.1%、11 年 24.6%、12 年 26.6%、
13 年 25.7% と年度別では大きな差を認めなかった。診断方法別では石灰化病
変に対するステレオ下マンモトーム生検(STMT)にて診断された症例が 153
例 42.0% を占めていた。一方エコー下細胞診、エコー下 CNB やエコー下マン
モトーム生検にて診断された症例は 211 例 58.0% であった。石灰化病変での
MMG の カ テ ゴ リ ー 別 で は、2:1 例、3-1:9 例、3-2:55 例、4:59 例、5:29
例であった。手術術式は乳房温存手術が 247 例 67.9% に施行されていたが、
腫瘤が大きかったり、乳管内進展広範が認められたり、広範な石灰化病変を
認めた 117 例 32.1% では皮下乳腺全摘術や乳房切除術が選択されていた。腋
窩リンパ節に関しては 20 例を除く 344 例にセンチネルリンパ節生検が施行さ
れており、すべて転移陰性であった。【結語】当院で非浸潤癌が多く診断され
ているのは MMG のカテゴリー 3-2 以上の石灰化病変に対して積極的に STMT
生検を行うこと。またエコー検査にて DCIS を疑う微小病変に対しても、積極
的にエコー下細胞診を施行していることが考えられる。
11684
10055
発見契機別にみた乳癌の病理学的悪性度の検討
硬化性腺症を伴う乳癌術後に好発する第 2 癌再発を早期発見す
るための経過観察手段の検討
GP-1-036-11
GP-1-036-12
1
とくしまブレストケアクリニック、2 東徳島医療センター、
3
徳島大学病院 病理部
1
高橋 雅子 1、本田 純子 2、廣瀬 千恵子 2、坂東 良美 3、笹 三徳 1
はじめに:検診発見乳がんは、比較的増殖の遅い癌が多い傾向にあることが
言われている。一方、自己発見で見つかる中間期乳癌は生物学的悪性度が高
いという報告もある。今回我々は、発見契機別に乳癌の臨床病理組織学的悪
性度を検討した。 対象と方法:2012 年 3 月から 2013 年 1 月に当院で施行さ
れた乳癌手術症例のうち腫瘍径が 2cm 以下であった 77 症例を対象とした。
乳癌発見契機は、腫瘤触知 36 症例、血性乳頭分泌 2 症例、画像検出(マンモ
グラフィ、超音波検査、MRI)39 症例であった。発見契機(血性乳頭分泌を除
く)により腫瘤触知群、画像検出群にわけ、臨床所見、Her2 スコア、Ki67 値、
ER、PgR 陽性率を比較検討した。 有意差検定は、χ二乗検定、2 標本 t 検定を
用いた。結果: 画像所見(マンモグラフィ、超音波検査)において腫瘤触知群、
画像検出群で差はなかった。臨床病理学的所見では腫瘤触知群は画像検出群
に対し有意に腫瘍径の大きいもの、浸潤癌、リンパ節転移が多い結果であった。
免疫組織化学的検討では、腫瘤触知群は画像検出群に対し Ki67 値が有意に高
く、ER 陽性率が低い傾向であった。浸潤癌の intrinsic subtype 分類では画像
検出群がルミナル A が有意に多く、腫瘤触知群ではルミナル B やトリプルネガ
ティブが多い傾向であった。 考察:腫瘤触知群は画像検出群に対し生物学的
悪性度が高いことが示唆された。2cm 以下の乳癌において自己発見されるも
のの中には増殖速度の速い症例が含まれている可能性が示唆された。
名古屋医療センター 放射線科、2 同 乳腺外科、3 同 検査科病理
大岩 幹直 1、遠藤 登喜子 1、佐藤 康幸 2、森田 孝子 2、林 孝子 2、
加藤 彩 2、市原 周 3、森谷 鈴子 3、長谷川 正規 3、岩越 朱里 3
【目的】硬化性腺症(SA)を伴う乳癌では、同側、対側に乳癌が多発することが
示唆されており、多発病変による温存乳房再発、対側乳癌の発生リスクが高い。
早期発見に必要な経過観察手段を検討した。【方法】当院で 2005-2013 年 3 月
に、SA を伴う乳癌で根治術後に同側もしくは対側乳房に第 2 原発乳癌による
と考えられる再発を認めた 24 人、25 乳房が対象。検討項目は MG、US 単独
での増悪の有所見率、MRI での悪性の有所見率である。【結果】初回手術時の
平均年齢は 52 歳(range 27-74, SD 9.7)、再発手術時まで平均 47 ヶ月(11148, 33)
。
再発形式は同側 : 3、
対側 : 20、
両側 : 1 例。
非触知例が 84%
(21/25)
で、 腫 瘍 径 は pTis+1mi: 17、T1a+b: 6 例、T1c: 2 例。Intrinsic subtype
は Luminal: 14 例、HER2: 5 例、triple negative: 6 例。診断契機は触診 : 3、
MG: 13、US: 7、MRI: 2 例。悪性の有所見率 / 病変描出率は MG: 64/68、
US: 84/100、MRI: 100/100%。MG は C1, 2 で、US で悪性を疑った例は 7 例。
不均一 5 例、散在 2 例で、いずれも乳腺内に埋没した病変であった。FNA は
24 例に施行され、C3: 6、C4: 3、C5:15 例。【考察】pN1(1/18) で Stage2A
の 1 例を除き全例 Stage0 - 1 で診断しえた。MG は経時的比較が容易であり、
比較増悪が発見契機となった症例が 52%あったが、偽陰性も 32%にみられた。
US は病変の描出能は優れているが多発病変の評価が難しい。今回の検討でも
単独では背景病変と区別できず、MG、MRI で癌の発生が疑われたことにより
病変を同定できた例が 4 例、他にも MG から病変の存在を疑って走査できたた
めに病変をより容易に同定できたと思われる例が少なくない。FNA は、US で
non-mass が 64%の高率にもかかわらず、全例で増殖性病変を、さらにその
60%で悪性を診断できており極めて有用であった。MRI は全再発症例で悪性
病変を疑いえた。前向きには MRI のみで疑いえた病変が 2 例あり、MRI を積
極的に用いればより早期に診断できる可能性はあるが、過剰診断に加えて造
影剤のリスクとコストの問題がある。今回の検討では MG、US の定期検査で
早期に病変を疑いえており、MRI は病変の確診を高めるために用いるのが適
切と思われる。【結語】第 2 癌再発を早期に発見するためには MG での経時的変
化をとらえ、US で病変を同定する。Dense breast では US での所見の変化に
気を付ける。病変の確認には FNA が有用である。
371
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】乳癌初診時診断において骨転移検索には骨シンチグラフィが用
いられることが多く、その感度は 33 ~ 100%(中央値 98.0%)、特異度は
85 ~ 100%(中央値 93.5%)、偽陽性率は 10 ~ 22%と報告されている。症
状がある場合や進行病期ではその有用性が報告されているものは多いが,遠
隔転移率の低い病期 I、II の初発乳癌の術前検査として行っている報告は少な
く,骨シンチグラフィは推奨されていない。しかし、遠隔転移の有無は治療
方針に大きな影響を与えるため、適切に骨シンチグラフィの適応ある症例を
選択することは重要である。当院において乳癌初診時に骨シンチグラフィを
施行した症例をレトロスペクティブに検討したので報告する。
【方法】2009 年 1 月から 2012 年 12 月までに組織学的に原発性乳癌と診断さ
れ、骨シンチグラフィと CT による遠隔転移検索がされた 328 症例を対象と
した。必要に応じて MRI で診断した。骨シンチグラフィによる感度、特異度、
偽陽性率を検討し、その他の項目として T 因子、リンパ節転移の有無、骨痛
の有無、アルカリフォスファターゼ、カルシウム、腫瘍マーカーについて関
連を検討した。
【結果】328 例のうち遠隔転移は 24 例、骨転移は 15 例であった。骨シンチグ
ラフィは感度 86.7%、特異度 48.2%、偽陽性率 13.3% であった。初診時の
T 因子(触診またはエコー)で検討すると、T0・1 では 0%(0/154)、T2 は 4.1%
(5/123)、T3 は 0%(0/5)、T4 は 21.7%(10/46)に骨転移を認めた。T4 症
例では、リンパ節転移陽性例で 30 例中 9 例、骨痛ありで 3 例中 3 例、CEA 高
値で 16 例中 6 例、CA15-3 高値で 10 例中 4 例、カルシウム基準値以上症例で
は 8 例中 4 例に骨転移を認め、アルカリフォスファターゼ基準値以上症例では
骨転移を認めなかった。T2 症例では、リンパ節転移陽性例では 36 例中 1 例、
骨痛ありでは 3 例中 3 例、CEA 高値では 15 例中 2 例、CA15-3 高値では 3 例中
1 例に骨転移を認め、カルシウム、アルカリフォスファターゼ基準値以上症例
では骨転移を認めなかった。
【考察】T0・1 症例では骨転移を認めず、骨シンチグラフィは不要と考えられ
た。T4 では 21.7% に骨転移を認め、
骨シンチグラフィの有用性が示唆された。
T2 では骨痛がある症例、腫瘍マーカー高値の症例に対して骨シンチグラフィ
の有用性が示唆された。
ポスター掲示
10844
11625
当院における乳房 MRI 検査で使用する顔当ての改良
乳腺良性疾患における Dual energy 技術を用いた造影デジタル
マンモグラフィの有効性の検討
GP-1-036-13
GP-1-036-14
杏嶺会一宮西病院 放射線科
三河乳がんクリニック
平岩 あゆみ
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】当院の乳房 MRI 検査は SIEMENS MAGNETOM Verio 3T の MRI 装置を
使用し、単純撮影とダイナミック造影検査をルーチンとして行っている。患
者様には装置専用の厚みのある U 字型の固めのウレタンスポンジ素材の顔当
てを両頬と額に当て、乳房撮影専用コイルの上にうつ伏せで寝てもらい、検
査を行っていた。検査時間が約 30 分と長時間なため、痛みによる検査中の体
動、検査終了時には両頬に顔当ての跡が深く残っていた。
【目的】患者様から苦痛との指摘を受けたため、痛みの軽減、また痛みから起
こるモーションアーチファクトを防ぐため、顔当ての改良を行った。
【方法】検査を終えた患者様からの意見を参考に顔当てを作成し、患者様の感
想、撮影技師による検査効率も踏まえて評価を行った。顔当て A は、頬に荷
重がかかりすぎない様、厚みが少なくまた柔らかい素材のタオルを使用して
作成。タオルの縫い目を内側にいれて折りたたみ U 字型に配置。顔当て B は、
顔に跡の残りにくい柔らかいウレタンスポンジを使用して作成。圧迫しても
弾力が残る様にウレタンスポンジを 2 枚重ねて筒状にし、汚れ防止のためペー
パーで包み、両頬・額に当たる様3つ作成して配置。顔当て C も、柔らかい
ウレタンスポンジを使用して作成。ウレタンスポンジを 2 枚重ね、厚みをなく
すためにコイルの顔を置く位置に直接巻きつけるよう設置。汚れ防止のため
ペーパーをスポンジの上にのせて使用。
【結果】顔当て A は頬の跡、患者様から痛みの訴えあり。また、タオルのクリー
ニング費用がかかる。顔当て B は頬の跡、患者様からの痛みの訴え減少。し
かし、ポジショニングの時間は増加した。顔当て C は頬の跡、患者様からの
痛みの訴え減少。また、ポジショニングの時間も短縮した。以上より顔当て C
が一番有効的である。
【考察】顔当て B でも頬の跡、患者様の痛みの訴えは改善前に比べ減少したが、
3つの顔当てを患者様が納得のいく位置に設置するまでに時間を要した。そ
の点顔当て C は、顔当てをコイルに設置している為、ポジショニングの時間
短縮が可能となった。
【まとめ】顔当て改良により当初に比べ苦痛の訴えは減少し、検査中の体動軽
減に繋がった。故により鮮明な画像提供が可能となった。今後も検査後患者
様の意見を聞き、より検査効率の高く苦痛のない検査になる様努めていきた
い。
渡辺 恵美、森 美由紀、大久保 美晴、野村 亜紀、水谷 三浩
【背景・目的】:当院では Dual energy 技術を用いた造影デジタルマンモグラ
フィ (Contrast Enhanced Digital Mammography : CEDM) を導入し、基礎・
臨床ともに様々な解析を行っている。乳癌の CEDM に関する研究は多いが、
良性疾患に関する報告はまだ少ない。今回、CEDM を施行した良性症例につ
いて検討し報告する。
【対象】:2011 年 1 ~ 7 月に CEDM を施行した 72 例のうち、細胞診、組織診
で良性疾患と確定診断された 22 例(乳腺症 6 例、線維腺腫 5 例、乳管内乳頭腫
5 例、嚢胞 2 例、過誤腫 2 例、糖尿病性乳腺症 1 例、放射状瘢痕 1 例)。
【方法】:CEDM の撮影法は、ヨード造影剤オムニパーク 350(第一三共社製)
を造影剤注入装置オートエンハンス A-300(根本杏林堂社製)により注入し
(1.5ml/kg、3ml/sec)、GE Healthcare 社製 SenoBright にて撮像した。造
影剤注入 2 分後から撮影を開始し、両側の MLO と CC の撮像を行った。前述の
22 例における CEDM 所見を含む臨床および病理所見を総合的に解析し検討し
た。
【結果】:CEDM で濃染を認めたのは乳腺症 3 例、線維腺腫 3 例、乳管内乳頭腫
4 例、過誤腫 1 例、糖尿病性乳腺症 1 例、放射状瘢痕 1 例の 13 例であった。こ
れらの症例には細胞増殖や間質反応の著明な例が多く含まれていた。
【考察】:今回の対象例のごとく、悪性疾患のみならず、良性疾患にも多く
CEDM で濃染される症例が存在する。すなわち単に濃染の有無を鑑別の基準
とするならば、その特異度はかなり低くなる懸念がある。これは CEDM を乳
腺疾患の画像診断として、その適応や位置づけを考案するうえで非常に重大
な問題である。造影検査における悪性疾患の濃染の要因として細胞密度、血
管新生、間質反応などが重要条件とされており、良性疾患の濃染する機序の
解明も必須課題であろう。そのうえでさらに良悪性を問わず造影パターンを
解析し、診断基準の確立につなげることが肝要と思われた。
10358
10557
画像診断における MMG、US の弱点を intrinsic subtype から
検討
マンモグラフィおよび超音波検査で良性と診断された乳癌症例
の検討
GP-1-036-15
GP-1-036-16
1
ベルーガクリニック
4
富永 祐司
【目的】臨床上重要な intrinsic subtype のどのタイプの乳癌が MMG、US で
描出されないのかを検討する。
【方法】2006 年 6 月~ 2013 年 11 月までに
当院で精密検査を行い診断した浸潤癌 734 例、subtype は Luminal A:576
例、Luminal B:47 例、HER2:40 例、Triple Negative:71 例を検討した。【結
果 】MMG 撮 影 を 行 っ た 734 例 中 50 例 (6.8%) が MMG で 描 出 さ れ ず。 全 て
Luminal A の み で、Luminal A 中 8.7% を 占 め、 腫 瘍 径 10mm 未 満 28 例、
10 ~ 15mm 未満 17 例、15mm 以上 5 例で、90% が 15mm 未満であった。
年齢別には、40 歳未満 14 例、40 ~ 55 歳未満 36 例で、全て閉経前症例であっ
た。自覚症状は、腫瘤触知 25 例、血性乳汁 1 例、違和感・疼痛 2 例、無症状
22 例であった。MMG 高濃度乳腺は 20 例 (40%) で、乳腺濃度にあまり影響を
受けていなかった。組織型では硬癌が 25 例、乳頭腺管癌 16 例、浸潤性小葉
癌 5 例、充実性腺菅癌 3 例、粘液癌 1 例であった。US 所見を認めないものは 2
例 (0.27%)。共に HER2 type であった。これは MMG で壊死型石灰化のみの
所見を認め、ステレオガイド下 VAB にて診断され、共に術前検査は DCIS と
診断さたが、術後微小浸潤を認め診断され、共に組織型は乳頭腺管癌であっ
た。【考察】Luminal A、Luminal B、Triple Negativve は T1 症例が最も多い
が、Luminal A のみ MMG では描出できない症例があり、閉経前の腫瘍径の小
さな Luminal A は乳腺濃度に無関係に描出できない特徴を発見した。これに
対して、US では微小浸潤以外の症例では全て描出された。【結語】MMG おい
て Luminal A では描出できない乳癌が存在するが、US では浸潤癌では描出で
きないものが殆ど存在せず、画像診断において精度の高い検査である事が証
明された。閉経前の対策型検診において、US を導入する事が今後不可欠であ
る。
372
市立貝塚病院 乳がん高度検診・治療センター、2 乳腺外科、3 放射線科、
臨床検査科病理、5 看護局
加藤 玲子 1、西 敏夫 1,2、梅本 郁奈子 5、矢竹 秀稔 1,3、井上 共生 1,2、
沢井 ユカ 1,3、中野 芳明 1,2、山崎 大 1,4、稲治 英生 1,2
1997 年 3 月から 2013 年 8 月までの当院における乳癌手術症例 1542 件中、病
理組織検査の結果が判明している 1508 症例から、マンモグラフィ、超音波検
査ともに良性とされた 13 症例 (13/1508 0.86%) について検討した。[1] マ
ンモグラフィ、超音波検査ともに良性であった乳癌の発見事由 ( 表 )[2] 全症
例の組織型の内訳と組織型別にみたマンモグラフィ、超音波検査良性症例の
率 非 浸 潤 性 乳 管 癌 は 219 症 例 中 8 例 (4%)、 乳 頭 腺 管 癌 は 316 症 例 中 2 例
(1%)、充実腺管癌は 228 症例中 0 例 (0%)、硬癌は 515 症例中 0 例 (0%)、特
殊型は 230 症例中 3 例 (1%) であった。[ 考察 ] 充実腺管癌、硬癌では画像診
断の偽陰性例は認められず、非浸潤性乳管癌で 4%と高率であった。また良性
腫瘤形成性病変と診断されたものが悪性病変であった。画像診断上線維腺腫
と診断 ( 粗大石灰化のあるものを除く ) されたものについては、細胞学的検査・
follow up が必要と考えられる。また今回のデータに基づき、画像・組織像の
検討を今後の課題とする。
10139
11818
当院での授乳性腺腫の検討
乳管腺葉区域切除術を施行した 39 例の検討
GP-1-037-01
1
ポスター掲示
GP-1-038-01
藤枝市立総合病院 外科、2 同 病理診断科
1
高畑 史子 1、金丸 仁 1、横山 日出太郎 1、甲田 賢治 2
【対象】2004 年 1 月から 2013 年 10 月までに、単孔性の血性乳頭分泌に対して
局所麻酔下乳輪切開法による乳管腺葉区域切除術を施行した 39 例を対象とし
た。【結果】年齢は 32-85 歳 ( 中央値 49 歳 )。触診で硬結や腫瘤を触知する症
例は認めなかった。マンモグラフィでは、3 例 (8%) に淡い FAD・カテゴリー
( 以下 C)3 を認め、36 例 (92%) は異常を認めなかった。乳汁細胞診は 35 例に
施行され、良性が 22 例 (63%)、鑑別困難が 10 例 (29%)、悪性の疑いが 1 例
(3%)、不適正が 2 例 (6%) であった。超音波で、異常を認めなかった症例 (C
1) が 15 例 (38%)、乳輪下に乳管拡張のみを認めた症例 (C2) が 5 例 (14%)、
乳管拡張と内部に充実性病変を認めた症例 (C3) が 19 例 (49%) であった。超
音波で C3 の 19 例に細胞診が施行され、良性が 8 例 (42%)、鑑別困難が 6 例
(32%)、悪性の疑いが 2 例 (11%)、不適正が 3 例 (16%) であった。切除標本
の病理診断は、乳管内乳頭腫が 20 例 (51%)、非浸潤性乳管癌 (DCIS) が 10 例
(25%)、乳腺症が 8 例 (21%)、ADH が 1 例 (3%) であった。マンモグラフィ
で C3 だった 3 例はすべて DCIS であった。DCIS10 例では、超音波 C1 が 2 例
(20%)、C2 が 2 例 (20%)、C3 が 6 例 (60%) と有所見率が高かった。乳管腺
葉区域切除術で DCIS だった 10 例中断端陽性の 7 例に乳房温存術と放射線療
法が追加され、最終病理診断で 1 例が浸潤癌、6 例は DCIS の診断であった。
断端陰性の 3 例には放射線療法のみ追加された。全例、エストロゲン受容体強
陽性、プロゲステロン受容体陽性、HER2 陰性、Ki-67:5% 以下、核異型度 1
であった。観察期間で 15-89 ヶ月 ( 中央値 60 ヶ月 ) で局所再発・遠隔転移を
認めた症例はない。【結語】乳管腺葉区域切除術は、異常乳頭分泌を呈する存
在診断が難しい非触知病変の診断に有用であり、悪性の場合でも組織学的に
は DCIS が多く、予後良好であると考えられる。
11458
10434
演題取り下げ
当院におけるDCISの検討
GP-1-038-02
GP-1-038-03
1
こくふブレストクリニック 乳腺外科、2 市立伊丹病院 外科
国府 育央 1、馬場 將至 2、八木 智子 2、山本 正之 2、平塚 正弘 2
近年、MMG検診の普及、画像診断、病理診断の向上によりDCISの発見
が以前より増加していると思われる。DCISは多彩な病態を示し、早期で
の診断が困難なことが多く、また切除にあたっては正確な範囲が問題となる。
今回、当院におけるDCISについて検討を行ったので報告する。対象は、
2008 年7月より手術を行った 462 例であり、62 例(13.4%)にDCIS認め
た。クーポンによるMMG検診が始まってからでは 14.4%であった。年齢は、
34 ~ 84 歳(中央値 53 歳)、観察期間は、2~ 86 ヶ月(中央値 42 ヶ月)であっ
た。嚢胞内癌が6例、乳頭腫との混在例が2例あった。両側乳癌を9例に認
めた(片側はいずれも浸潤癌)。診断のきっかけは、検診が 32 例、腫瘤が 21 例、
対側病変時のMRIが7例、乳頭異常分泌が2例であった。MMGは、所見
として石灰化が 29 例、腫瘤が 15 例、FADが6例、所見なしが 10 例であった。
エコーでは、60 例に所見を認め(Second look を含めて)、2例に所見を認め
な か っ た。MMG(+)US(+) が 50 例、MMG(+)US(-) が 2 例、MMG(-)US(+)
が 10 例であった。細胞診は、C -3以上が 56 例、陰性が2例であった。診
断は、摘出が 28 例、細胞診が 23 例、CNBが5例、マンモトームが5例で
あった。術式は、部分切除術+SLNが 18 例、部分切除のみが 42 例、全
切除術が2例であった。腫瘍の範囲は、10 mm以下が 13 例であった(最小
5mm)。断端陽性が 22 例、陰性が 40 例であり、陽性例は、3例に追加切除
を行い、19 例はブーストを行った。ホルモンレセプターは、ER(+)PgR(+)
が 47 例、ER(+)PgR(-) が8例、ER(-)PgR(-) が7例であった。術後、放射線
照射を 48 例に行い、ホルモン剤投与を 46 例に行い、6例が無治療であった。
観察期間は短いが、現在まで再発を認めていない。DCISの画像診断は、
診断困難例では全例MRIを行っており、現在ではエコーの診断能の向上に
よりほぼ全例描出可能と考えられる。術式では、当院は温存例が多く、また
断端陽性例も少なくないが、ブースト照射で対応が可能と思われた。DCI
Sは、石灰化、嚢胞内癌、血性分泌など様々な病態のものが含まれており、
それぞれの病態を念頭において、診断、治療を行うべきであると思われた。
373
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】
授乳性腺腫は妊娠・授乳期にみられる分泌性変化を示す比較的稀な腫瘍で , 上
皮成分の増殖を主体とし比較的間質に乏しい , 周囲組織との境界が鮮明な腫瘤
である . 乳癌取り扱い規約第 17 版では腺腫の中に管状腺腫とともに記載され
ている .
我々は、妊娠・授乳期に腫瘤を主訴に来院され , 授乳性腺腫と診断した症例を
後ろむきに検討し , 診断や鑑別疾患 , フォロー方法について検討した .
【対象と方法】
2008 年 1 月~ 2013 年 11 月までに当院で施行された穿刺吸引細胞診(FNA)
1972 件のうち , 授乳期の症例は 10 例あった . その 10 例の臨床経過 , および
細胞像を再検討し , 授乳性腺腫と診断できた 4 症例について , 後ろ向きに検討
を行った .
【結果】
当院で 71 ヶ月の間に施行された FNA1972 件中 , 授乳期の症例は 10 例 . そ
のうち授乳性腺腫と診断したものは 4 例 (0.2%) であった . 年齢は 28 歳~ 37
歳 , 全例が新規に腫瘤を自覚していた . 3 例は授乳中 , 1 例は妊娠後期での受
診であった . 画像診断は妊娠中の 1 例を除き 3 例でマンモグラフィ(MMG)が
施行され , 全例で乳腺超音波検査(US)が施行された . MMG での腫瘤指摘は困
難であったが , US では全例で腫瘤を指摘可能であり , 線維腺腫や葉状腫瘍な
どが疑われた . 悪性腫瘍を疑われた症例はなかった . FNA は妊娠中の症例は出
産後に施行された . 細胞像では , 明瞭な核小体が見られ , 淡く染まる泡沫状の
細胞質を有する細胞を孤立散在~小集塊で認め , 授乳期特有の変化を示して
いた . 診断後は自己触診を指導し , 増大や増加などの有症状時に再診する方針
としたが , 増大を訴えて再診となった症例はなかった(観察期間 8 ~ 62 ヶ月、
平均 41.25 ヶ月).
【考察】
妊娠可能な年齢の乳腺はもともと高濃度であることが多く , さらに妊娠・授
乳期には乳管や腺房の発育 , 増大により , MMG では腫瘤の検出能は低下する .
腫瘤の検出にかけては US のほうが有用であり必須と考えられる . しかし , 石
灰化病変やその他の所見を有する悪性疾患の存在の除外のため , MMG を施行
しておくのは悪くないと思われた .
診断には FNA が有用で , 妊娠・授乳中という状況に加え , 細胞像で授乳期特有
の所見が得られれば , 自己触診による経過観察のみで頻回のフォローは必要な
いと考えられた .
大阪厚生年金病院 乳腺内分泌外科、2 病理科
木村 綾 1、大井 香 1、樋口 奈苗 1、西前 綾香 1、宮本 景子 1、笠島 綾子 1、
塚本 文音 1、春日井 務 2
10749
11318
当院における非浸潤性乳管癌の穿刺細胞診成績についての検討
ホルモン感受性陰性 DCIS の検討
GP-1-038-04
ポスター掲示
GP-1-038-05
1
1
大阪ブレストクリニック 医療技術部、
2
大阪ブレストクリニック 乳腺外科、3 関西電力病院 病理
たけべ乳腺外科クリニック、2 高松平和病院
松本 昌子 1、綾野 はるな 1、安毛 直美 1、新井 貴士 1、武部 晃司 1、
佐藤 明 2
米川 みな子 1、小池 健太 2、井口 千景 2、住吉 一浩 2、山本 仁 2、
芝 英一 2、河合 潤 3
【はじめに】乳腺穿刺細胞診は減少傾向にあるが、簡便で安価、そして患者に
負担の少ない検査法である。また乳癌取扱い規約では推定組織型を記載する
ことが求められており、当院でも推定組織型を記載している。そこで非浸潤
性乳管癌(DCIS)の診断成績についての検討を行った。【対象】当院での 2012
年 4 月から 2013 年 10 月までの乳癌の手術例は 498 例で、その 26%の 129 例
が DCIS であった。そして石灰化病変で超音波所見が乏しいためステレオガイ
ド下マンモトーム生検を行った 38 例と、他施設の生検で診断が確定した 18
例を除いた 73 例に対し穿刺細胞診が施行された。そのうち検体不適正を除い
た 56 例【結果】56 例の判定結果は、良性 1 例、鑑別困難 8 例、悪性疑い 9 例、
悪性 38 例であった。推定組織型は、良性の 1 例は乳頭腫。鑑別困難の 8 例は、
乳管内病変が 2 例、乳頭状病変が 2 例、DCIS の混在を疑うが 3 例、乳管腺腫
を疑うが 1 例。悪性疑いの 9 例は、low grade DCIS が 6 例、DCIS か粘液癌
が 1 例、多量の壊死物質とほとんどが変性細胞で comedo type DCIS 疑いが
1 例、少数のため組織型不明が 1 例。悪性の 38 例は、comedo type の DCIS
が 10 例、low grade DCIS が 5 例、DCIS か DCIS 優位が 16 例、乳管内病変を
多く伴う乳頭腺管癌が 3 例、浸潤癌が 4 例(乳頭腺管癌 3 例、充実腺管癌 1 例)
であった。【まとめ】High grade DCIS のうち 92%を悪性、8%を悪性疑いと
判定でき、組織型推定も 92% DCIS と推定できた。Low grade DCIS のうち
悪性疑い以上が 80%で、組織型推定は DCIS が 27%で、DCIS あるいは DCIS
優位が 43%であった。Low grade DCIS は異型も弱いため 18%は鑑別困難と
せざるを得なかった。以上より穿刺細胞診は組織型推定も含め DCIS の術前診
断に有用と思われた。
一般セッション(ポスター掲示)
(序言)検診で発見される病変は予後良好なものが大半を占め、乳癌死減少に
は寄与しないとする議論がある。すなわち Luminal A DCIS の検出などの是
非が問われているのであろう。それではホルモン陰性の DCIS は早期発見する
ことは有意義なのか?当院のホルモン感受性陰性 DCIS( 以下 HR-DCIS) を検
討したので報告する。(対象)2006 年から 12 年に当院で手術を施行した DCIS
は 335 例、そのうち HR-DCIS は 36 例 (10.7%) であった。この画像所見、組
織学的所見を検討した。対照として 2012 年のホルモン感受性陽性 DCIS40
例 ( 以 下 HR+DCIS) を 比 較 検 討 し た。( 結 果 )HR-DCIS は 平 均 52 歳、Her2
は IHC 法で 32 例に対して施行、3+ は 23 例 (66%)2+ は4例 (13%) ですべ
Fish- であった。0 ~ 1+ は 5 例 (16%) であった。核異型度 (nuclear atypia)1
は 1 例(3%)、2 は 4 例(11%)、3 は 31 例(86%)であった。組織型としては
comedo22 例、apocrine7 例、non comedo 7 例であった。 Van Nuys 分類
は 1 が 5 例、2 はなし、3 は 31 例であった。VanNuys1 の 4 例は apocrine で 1
例が non comedo であった。画像所見は石灰化を有する症例が 23 例 (58%)、
FAD/mass/distortion が 6 例 (17%)、異常なし 7 例 (19%)。石灰化のカテゴ
リーは 5 が 9 例 (25%)、4 が 7 例 (19%)、3 が 7 例 (19%)。HR+DCIS は平均
55 歳、Her2 は 3+1 例、2+2 例うち Fish+1 例、その他 37 例は 0~1+ であっ
た。核異型度は 1 は 14 例 (35%)、2 は 25 例 (63%)、3 は 1 例 (2%) であった。
HR - DCIS と比して Her2、NA とも有意な差が認められた。画像所見は石灰
化を有する症例が 23 例 (58%)、FAD/mass/distortion が 5 例 (12%)、異常
なしが 12 例 (30%) であった。石灰化のカテゴリーは 5 が 3 例 (8%)、4 が 7 例
(18%)、3 が 13 例 (33%) であった。HR-DCIS と比して MMG 所見なしと石
灰化カテゴリー 5 が少なかったが有意な差は認められなかった。(結語)HRDCIS は DCIS 全体の 10% を占めていた。組織型は comedo と apocrine 型で
大勢を占めた。HR+DCIS に比して Her2 陽性例、核異型度の高いものが有意
に多く、HR-DCIS を早期に発見する意義は高いと判断された。MMG 所見で
は石灰化を有する率は両者に差はなく、カテゴリー分類別の検討でも差は少
なかった。石灰化を検出して今の様なカテゴリー分類を用いることだけでは、
HR-DCIS を特異的に検出することは難しいことがわかった。
11388
10277
腫瘤非形成性病変における上皮間葉移行 (EMT) に関しての検討
DCIS 温存手術症例における乳房 MRI 画像と病理組織像との比
較検討
GP-1-038-06
1
GP-1-038-07
東京女子医科大学 第二外科、2 東京女子医科大学 病理診断科
1
三浦 弘子 1、神尾 孝子 1、大地 哲也 1、青山 圭 1、野口 英一郎 1、
西澤 昌子 1、神尾 英則 1、亀岡 信悟 1、西川 俊郎 2
3
【背景】上皮間葉移行 (EMT) によって、癌細胞は間葉系細胞の形質を獲得して
運動性が亢進し、癌の浸潤・転移を促進することが知られている。非浸潤性乳
管癌 (DCIS) から浸潤性乳管癌 (IDC) へ進展する過程において、EMT の関与が
示唆されており、病変の浸潤部分では、EMT の獲得により上皮系マーカーの
発現が抑制され、あらたに間葉系マーカーが発現すると考えられる。上皮系
マーカーとして E-cadherin(E-cad)、間葉系マーカーとして Vimentin(Vim)
による免疫染色を施行し、EMT 獲得により E-cad 陰性・Vim 陽性になるとの
予測を立てた。【目的・方法】2012 年 9 月からの 1 年間に腫瘤非形成性病変で
発見され、ステレオガイド下マンモトーム生検を施行し、DCIS の診断を得て
当科で手術を施行した 18 例を対象とした。術後診断で微小浸潤を伴っていた
症例は 18 例中 7 例であり、非浸潤部と微小浸潤部における E-cad、Vim の染
色性を検討した。さらに、pureDCIS 群と微小浸潤を伴っている群を比較し、
DCIS 内の浸潤巣の有無が予測可能かどうかを検討した。【結果】pure DCIS
群において、E-cad は全例で陽性を示し、Vim は 11 例中 1 例でのみ陽性を示
した (9 %)。一方、微小浸潤を伴う群において、E-cad は 7 例中 6 例が陽性を
示し (85.7 %)、Vim は 5 例で陽性を示した (71.4 %)。微小浸潤を伴う群で
は、DCIS 部分においても 7 例中 2 例が Vim 陽性を示した (28.5 %)。【考察】
E-cad は pureDCIS 群、微小浸潤を伴う群ともに陽性率が高かった。Vim は
微小浸潤を伴う群で陽性率が高かった。また、微小浸潤を伴う群では、DCIS
部分においても浸潤部と同様に Vim 陽性を示す症例が認められ、DCIS 内の浸
潤巣の有無を予測できる可能性が示唆された。【まとめ】今回の検討では、2
群間の差は明らかとは言えないものの、EMT を獲得した症例においては免疫
染色で Vim 陽性となる可能性が高いことが示唆された。この検討においては、
E-cad が両群ともに陽性を示しており、今後は症例数を増やし、E-cad 発現に
関わる snail、slug などの核内染色についても検討を加えていく。
374
市立伊丹病院 外科、2 こくふブレストクリニック、
市立伊丹病院 臨床検査科、4 市立伊丹病院 放射線科
馬場 將至 1、八木 智子 1、国府 育央 2、勝山 晋亮 1、山本 正之 1、
福田 春樹 3、玉岡 紅一 4、平塚 正弘 1
術後病理診断 DCIS の症例に於いて、乳房 MRI 画像と病理組織像の比較検討
を後方視的に行った。【対象と方法】2010 年 5 月から 2013 年 10 月までに当
院で手術を施行した DCIS 52 例 {40 ~ 88 歳、平均 58 歳、乳房切除 4 例、乳
房温存 48 例、SN 27 例、Ax 1 例 } 中の温存手術症例で、乳房 MRI を施行し
造影強調像が描出された 42 例を対象に、病理腫瘍径(X):病理組織検査によ
る DCIS の癌巣の伸展範囲、乳房 MRI 造影強調像最大径(以下 MRI 径)(Y):
MRI 造影強調像で癌の伸展を予測する範囲、を測定し各症例で X - Y を計算し
た。さらに温存手術切除断端の陰性群と陽性群に分類し比較検討した。
【結果】
上記 42 例の結果、病理腫瘍径(X):0.5 ~ 7.5cm 平均 3.0cm 中央値 3cm、
MRI 径(Y)
:0.5 ~ 7.2cm 平 均 2.6cm 中 央 値 1.8cm、(X - Y)
: - 2.7 ~
4.1cm 平均 0.4cm 中央値 0.2cm。その中で切除断端陽性(断端 5mm 以内に
癌を認める)症例 9 例を検討した。病理腫瘍径(X):0.6 ~ 7cm 平均 4.1cm
中央値 5cm、MRI 径(Y)
:0.6 ~ 5.3cm 平均 2.9cm 中央値 2.9cm、(X - Y)
:
- 2.2 ~ 4.1cm 平均 1.1cm 中央値 1.4cm。SN 5 例に施行。核異型度 G1:7
例、G2:2 例。組織型は面疱型 6 例に、乳頭状型 2 例に、低乳頭状型 1 例に、
篩 状 型 6 例 に、 充 実 型 3 例 に 認 め た。ER 陽 性 7 例、ER 陰 性 2 例。MRI 所 見
は mass enhancement ( 以下 ME) を 3 例に、non-mass enhancement ( 以
下 NME) を 8 例に認め、1 例は ME のみ認めた。区域性、分枝状や線状の像を
7 例 に 認 め た。 さ ら に 切 除 断 端 陰 性 33 例 を 検 討 し た。 病 理 腫 瘍 径(X):
0.5 ~ 7cm 平均 2.7cm 中央値 2.5cm、MRI 径(Y)
:0.5 ~ 7.2cm 平均 2.5cm
中央値 1.7cm、(X - Y)
:- 2.7 ~ 3.9cm 平均 0.2cm 中央値 0cm。SN 16 例、
Ax 1 例に施行。核異型度 G1:28 例、G2:5 例。組織型は面疱型 14 例に、乳頭
状型 7 例に、低乳頭状型 1 例に、篩状型 22 例に、充実型 8 例に認めた。ER 陽
性 28 例、ER 陰性 5 例。MRI 所見は ME 21 例に NME 16 例に認め、ME のみは
14 例。区域性、分枝状や線状の像は 12 例に認めた。断端陰性群では病理腫瘍
径と MRI 径に差が無いのに対し、断端陽性群は病理腫瘍径が平均値で 1.1cm、
中央値で 1.4cm 長かった。断端陽性群は NME の割合が多く、区域性、分枝状
や線状の像が多い傾向にあった。【考察】MRI 造影強調像で 3cm 以上、NME、
区域性、分枝状や線状の症例は MRI 像より広く癌が伸展している場合があり、
より広範囲切除の必要性があると思われる。ME だけの症例は癌が MRI 像を超
えて広がっている可能性は低く温存手術適応と考えられる。
11610
11309
当院における triple negative 乳癌 93 例の検討
当院の Triple negative 乳癌手術症例の検討
GP-1-039-01
1
ポスター掲示
GP-1-039-02
水戸医療センター 外科、2 水戸医療センター 病理診断科
福井赤十字病院 外科
森 千子 1、中島 護雄 1、稲毛 芳永 1、植木 浜一 1、大谷 明夫 2
田中 文恵、仁尾 万里華、皆川 知洋、我如古 理規、吉田 誠、
土居 幸司、川上 義行、青竹 利治、藤井 秀則、広瀬 由紀
水戸医療センターでは 2006 年から 2013 年 12 月までに、検索し得た範囲で
93 例の triple negative 乳癌症例を経験した。病理組織型は充実腺管癌、つい
で硬癌の割合が高かったが、扁平上皮癌や髄様癌、浸潤性小葉癌の症例もみ
とめられた。過半数の症例で腋窩リンパ節転移を認めなかった。また、EGFR
と CK5/6 の免疫染色を行った症例では、いずれかまたは両方が陽性の basallike subtype の割合が 9 割を占めていた。組織学的悪性度はグレード3の割合
が高かったが少数ながらグレード1の症例があり、Ki67 はほとんどの症例で
高値であったが、まれに 20%以下の症例も認められた。このことから Triple
negative 症例でも比較的予後の良好な群があるのではないかと推測された。
93 例中これまでに 11 例に再発を認めた。再発症例については3年以内の再発
が多かった。浸潤性小葉癌でリンパ節転移を多数認めた進行症例ではいずれ
も2年以内に再発を起こしていた。Triple negative 乳癌の生物学的特徴や治
療法、予後については未解明の点が多い。当院における Triple negative 乳癌
症例を検討し、文献的考察もあわせて報告する。
福井県での MMG 検診発見乳癌に対して検診偽陰性症例 ( 中間期癌 ) に Triple
negative 乳癌 ( 以下 TNBC) が有意に多かった結果を踏まえ、当院での TNBC
手術症例の現状を検討した。HER2 検査を実施するようになった 2004 年 9
月から 2012 年 12 月までの乳癌手術症例は 635 例あり、そのうち浸潤癌症
例は 553 例 (87.1%)、このうち HER2 および ER/PgR が判明している 529 例
を対象とし TNBC 乳癌を抽出した。ER および PgR、HER2 陰性乳癌は 76 例
(14.4%) で 平 均 年 齢 は 59.9 歳 (26-90 歳、 中 央 値 61 歳 )、 全 体 の 年 齢 ( 平
均 :59.9 歳、中央値 :60 歳 ) との差はみられなかった。しかし年齢階層でみる
と、35 歳以下では他の階層と比較して 4 名 (30.8%) と高かった。発見動機で
は自覚症状での受診が 55 例 (72.4%)、医療機関での指摘が 11 例、検診やドッ
クが 10 例であった ( うち半数は自覚症状あり )。T1 症例は 40 例 52.6% を占
め、また n(+) 症例は 23 例 (30.2%) であった。組織型では特殊型が 10 例含
まれ、これらに遠隔再発症例は認めなかった。治療面では術前化学療法を 15
例 (26-72 歳 ) に実施し、6 例に pCR を得た。転帰は 12 例 (31-90 歳 ) に再発
し ( 平均 DFI が 13.8 ヶ月 )、うち 7 例が死亡 ( すべて原病死 ) していた。無再
発症例のうち n0:48 例に対して n(+) が 15 例、T1:32 例、T2 以上 :32 例であっ
たのに対し、再発症例では n0:3 例、n(+):8 例、T1:8 例、T2 以上 :4 例とい
う結果を得た。再発症例の初再発部位がリンパ節 :5 例、局所皮膚 :2 例、肝 :2
例、肺 :1 例、脳 :1 例、乳房内 :1 例であることからも、腫瘍径よりもリンパ
節転移の有無が予後を反映している可能性が考えられた。これらの結果から、
増殖能が高く腫瘍径に頼れない TNBC 乳癌の早期発見は他の Subtype と比較
して難しいと考えられ、診断後の治療での予後改善を期待するためにも薬剤
やレジメンなどの検討が重要と考えられた。
10977
当院で経験した乳腺原発 Neuroendocrine carcinoma 4 例の
検討
神経内分泌への分化を示す乳癌症例についての検討
GP-1-040-01
1
GP-1-040-02
1
2
埼玉県済生会川口総合病院 外科、 病理診断科
埼玉社会保険病院 外科、2 埼玉社会保険病院 病理部
遠藤 まり子 1、櫻井 孝志 1、吉水 信就 1、中島 顕一郎 1、清水 健 2
高橋 由佳 1、田代 良彦 1、藤原 大介 1、齋藤 徹也 1、佐藤 雅彦 1、
伴 慎一 2、佐藤 英章 2
2003 年の WHO 分類では乳腺の神経内分泌腫瘍は「神経内分泌への分化を有
する腫瘍が 50%以上を占める症例」と定義されている。その頻度は、乳癌
全体のわずか 0.5%前後と比較的稀な腫瘍である。今回、2011 年 11 月から
2013 年 11 月までの間で、当院で経験した乳腺原発の浸潤性神経内分泌癌
(Neuroendocrine carcinoma:NEC)4 例について検討した。平均年齢は 70
歳(51-77 歳)、全例女性。平均腫瘍径 3.38cm。発見契機は、1 例が他疾患の
経過観察中に腫瘤を指摘され、2 例は腫瘤を自覚、1 例は血性乳汁分泌と腫瘤
を自覚し発見。術式は温存術が 3 例、乳房切除術が 1 例。腋窩リンパ節は N0
にて全例センチネルリンパ節生検を施行したが、うち 2 例は術後病理組織検査
でセンチネルリンパ節に転移を認めた。1 例は Parkinson 病の既往のため、も
う 1 例は本人が希望せず、2 例とも追加腋窩郭清は行っていない。全症例とも
に ER 陽性、PgR 陽性、Her2 陰性であった。術後補助療法は 2 例が内分泌療法、
1 例で化学内分泌療法を施行し、もう 1 例は患者本人が治療を希望されず経過
観察のみ。温存術症例は、全例温存乳房への放射線照射を施行した。現在に
至るまで全例が無再発で生存中である。文献的には ER/PgR は陽性、Her2 は
陰性を認め、また核異型度は低く、リンパ節転移や Ki67 は通常の乳癌と差が
ないとの報告もあるが、臨床学的意義やその予後については、まだ一定の見
解は示されていない。今回、乳腺原発 Neuroendocrine carcinoma 4 例を経
験したので、若干の文献的考察とともに報告する。
(背景)神経内分泌乳癌は WHO の乳腺腫瘍分類上「50% を超える腫瘍細胞に
神経内分泌マーカーが発現する原発性乳癌」と定義されており、近年の報告
では全乳癌の約 5% を占めるとされている。臨床像については国内でもいく
つか報告があるものの、その予後を含めて一定の見解は得られておらず、当
院での臨床経験を基に、文献的報告と比較し検討する。(対象)2008 年 1 月か
ら 2013 年 11 月までに組織学的に神経内分泌成分を含む乳癌(浸潤癌または
DCIS)と診断された 9 例ついて、その病理所見や臨床像につき検討を行った。
(結果と考察)平均年齢は 55.6 歳(29 ~ 81 歳)。両側同時乳癌を 9 例中 3 例に
認めた。主訴は腫瘤 4 例(44.4%)、乳頭血性分泌 3 例(33.3%)、検診発見 2
例(22.2%)と腫瘤自覚が半数を占めた。マンモグラフィ所見では腫瘤影 4 例
(44.4%)、局所非対称性陰影 3 例(33.3%)であり、石灰化として指摘された
ものはなかった。超音波所見ではすべて腫瘤として指摘された。病理学的に
は DCIS4 例、浸潤癌 5 例であった。9 例とも NG1、免疫染色を行ったレセプター
などを検索し、8 例では全例 ER、PgR 強陽性、HER2 陰性であった。術後補
助療法は通常型の乳癌に準じて行ったが、最長7年 11 か月の経過観察期間で
局所再発や転移は認められていない。平均年齢を DCIS、浸潤癌で分けてみる
と、DCIS53.0 歳、浸潤癌 59.8 歳と浸潤癌のほうが高く、非浸潤癌から浸潤
癌への経過をたどる可能性が示唆された。画像所見や病理所見は従来の報告
と概ね一致した。今回の検討では両側乳癌が多かった。
375
一般セッション(ポスター掲示)
11159
10350
10462
当院で経験した乳腺原発 Carcinomas with neuroendocrine
features の 5 例
当院における乳腺アポクリン癌 12 例の検討
GP-1-040-03
1
ポスター掲示
GP-1-040-04
1
3
社会医療法人宏潤会大同病院 外科、2 社会医療法人宏潤会大同病院 病理部
市立島田市民病院 外科、2 市立島田市民病院 病理診断科、
山梨大学医学部 消化器乳腺内分泌外科
中田 晴夏 1、磯野 忠大 1、上村 和康 1、木村 貴彦 1、橘 充弘 2、
井上 慎吾 3
鈴木 和志 1、山崎 由紀子 1、宇野 雄祐 1、河原 健夫 1、小島 伊織 2、
堀部 良宗 2
アポクリン癌は浸潤癌であり、乳腺取扱い規約の乳腺腫瘍の組織学的分類で
特殊型に分類され、アポクリン化生細胞像を呈する。発生頻度は 0.4 ~ 0.6%
との報告があり、稀とされる。比較的高齢者に多く、ホルモンレセプターが
陰性の症例が多いとされ、術後の治療方針に苦慮することが多い。今回我々
は当院で経験したアポクリン癌について治療方針と経過について検討を行っ
た。1999 年 1 月から 2013 年 11 月までの 14 年間で、当院でアポクリン癌と
診断され、手術を受けた症例は 12 例であり、12 例中 5 例(41%)は直近 3 年
での経験症例であった。同時期、当科で手術を行った原発性乳癌(両側乳癌を
含む)は 504 例であり、アポクリン癌の占める割合は 2.3%であった。アポク
リン癌と診断された症例の平均年齢は 67 歳であり、75 歳以上は半数を占め
た。いずれもT 1 T 2 の症例であり、リンパ節転移を認めたものは 3 例(25%)
のみで、遠隔転移を認めたものは存在しなかった。ER陽性例は 2 例(16%)
であった。術後治療はER陽性例ではすべての症例で内分泌療法が施行され
ており、陰性例では 1 例のみで化学療法が施行されていた。12 例中 8 例が当
科外来で経過観察されているが、いずれも生存していた。近年増加傾向にあ
るといわれている組織型であるが、当科でも同様の傾向が見られた。
【 諸 言 】神 経 内 分 泌 癌 は 独 特 な 免 疫 組 織 化 学 的 所 見 を 呈 す る 比 較 的 ま れ
な 組 織 型 で あ る が、2012 年 の WHO 分 類 第 4 版 で は Carcinomas with
neuroendocrine features の 疾 患 名 が 採 用 さ れ、Neuroendocrine tumor,
well-differentiated、Neuroendocrine carcinoma, poorly differentiated/
small cell carcinoma、Invasive breast carcinoma with neuroendocrine
differentiation の 3 つの組織亜型に分類された。今回我々は、当院で経験し
た乳腺原発 Carcinomas with neuroendocrine features につき、その臨床病
理学的因子につき検討を行ったので報告する。【対象】2010 年 6 月から 2013
年 8 月までの間に当院で診断と初回治療を行い、病理組織学的に神経内分泌
マーカー(クロモグラニン A、シナプトフィジン、CD56)の発現が確認さ
れた 5 例。【結果】全例が女性で、年齢中央値は 60 歳(39 ‐ 69 歳)、術式は
Bp+SN が 1 例、Bt+SN が 3 例、Bt+Ax が 1 例で、腫瘍径の中央値は 25mm
(4 ‐ 51mm)、1 例にリンパ節転移を認めた。組織学的亜分類では、4 例が
Invasive breast carcinoma with neuroendocrine differentiation で、1 例
が Neuroendocrine tumor, well-differentiated であった。組織グレードは全
例がグレード 1 であり、全例で ER が高発現していたが、HER2 の高発現を認
めた症例はなく、全例 Luminal A 型と判断した。病期は 1 例が stage I、3 例
が stage IIA、1 例が stage IIB であった。全例で術後補助内分泌治療が施行
されており、観察期間中央値は 27 ヵ月(2-41 ヵ月)と短いが、全例が無再発
生存中であった。【まとめ】Carcinomas with neuroendocrine features のま
とまった報告例は少なく、その臨床病理学的な特徴は十分に明らかにされて
いない。当院の症例に若干の文献的考察を加えて報告する。
一般セッション(ポスター掲示)
10312
11914
当科における過去 10 年間の乳腺アポクリン癌の検討
乳腺アポクリン癌の免疫組織学的検討
GP-1-040-05
GP-1-040-06
1
綜合病院社会保険徳山中央病院
東京医科大学八王子医療センター 乳腺科、
静岡県立静岡がんセンター 女性内科、3 八王子乳腺クリニック、
4
八王子山王病院 乳腺外科、5 東京医科大学八王子医療センター 病理診断部
2
林 雅規、藤田 雄司、宮下 洋
乳腺アポクリン癌は全乳癌の 0.1 ~ 0.4% を占める稀な疾患で、乳癌取り扱
い規約では浸潤癌特殊型に分類される。予後良好群とされるが性格が不明な
点も多く、薬物療法に関しては一定の見解を得られていない。今回、当科
における過去 10 年間の乳腺アポクリン癌を検討したので報告する。対象は
2004 年より 2013 年までの 10 年間に当科で手術を施行した原発性乳癌 788
例のうち、病理組織学的に乳腺アポクリン癌と診断された 8 例(1.02%)とし
た。年齢分布は 57 ~ 74 歳(平均 66.5 歳)で、原発性乳癌の平均年齢(60.7 歳)
に対し高い傾向にあった。部位は右:3 例、左:5 例、C 領域:6 例、A 領域:
1 例、E 領域:1 例、であった。術前のマンモグラフィ所見ではカテゴリー 4
が 6 例、カテゴリー 5 が 2 例だった。術式は乳房切除術 4 例、乳房温存術 4 例で、
6 例にセンチネルリンパ節生検が施行された。最大割面腫瘍径は 0.8 ~ 3.5cm
(平均 2.0cm)であり、TNM 分類では TIS:1 例、T1:3 例、T2:4 例、N0:
7 例、N1:1 例、M0:8 例であった。ホルモンレセプターは ER 陽性が 1 例、
PgR は全例陰性であり、HER2 も全例陰性であった。ER 陽性症例には術後ホ
ルモン療法が行われ、トリプルネガティブ症例 7 例中 3 例に術後化学療法が施
行された。術後観察期間中央値は 34.7 ヶ月(1-105 ヶ月)で、全例無再発経
過観察中である。乳腺アポクリン癌はトリプルネガティブが多いが比較的予
後が良く、一部の症例では薬物療法が省略できると思われる。しかし、その
ためにはさらなる症例の集積と検討が必要と思われた。今回、当科における
過去 10 年間の乳腺アポクリン癌の検討を行ったので、若干の文献的考察を加
え報告する。
天谷 圭吾 1、石川 祐子 1、中村 慶太 1、生魚 史子 1、柴崎 ゆかり 1、
松尾 聡美 1,2、三坂 武温 1,3、金 慶一 1,4、松永 忠東 1、林 光弘 1、
脇谷 緑 1,5、塚本 哲 1,5、芹澤 博美 1,5
【背景】乳腺アポクリン癌は乳癌取り扱い規約の特殊型に分類され、乳癌全
体の 1%程度と比較的まれな組織型である。従来より予後は良好、あるい
は通常の浸潤癌と同等とされている (Rosen)。また、2009 年の St,Gallen
Recommendation でも低リスクに分類され、化学療法の省略も可能とされて
いた。しかし、特殊型ではあるが免疫染色から見た intrinsic subtype の概念
から考えると Triple negative type が多いなど、その生物学的特性には不明
な点も多い。そこで我々は当科で経験したアポクリン癌を臨床病理学的因子、
治療、無再発生存期間について検討した。【対象】2009 年 4 月から 2013 年
12 月までに当科で経験した乳癌患者 807 例中、アポクリン癌と診断した 13
例 (1.6%)。【結果】年齢は 49-82 歳(平均年齢 70.7 歳)、平均腫瘍径 4.1cm、
Nottingham Grade は Grade1 が 6 例、Grade2 が 5 例、Grade3 が 1 例で
あ っ た。Intrinsic subtype 別 に は Triple negative type は 10 例、Luminal
B(HER2 陽性 )type は 1 例、HER 2 type は 2 例であった。術前精査にて腋窩
リンパ節転移 1 例に認め、術前化学療法を施行した。術後は 3 例に補助化学療
法、1 例にホルモン療法を施行した。現在まで全症例が無再発生存中である
( 無再発生存期間 77 - 2096 日 中央値 935 日 )。【考察】当科の症例では頻度
や、予後良好であることは諸家の報告と同様であった。最近では乳癌の治療
において、Androgen 受容体阻害剤が注目を集めているが、アポクリン癌は
Androgen receptor(AR) 陽性例が多く、高率に Estrogen receptor- β (ER- β )
を発現するため、これらが予後予測因子になりうるとも考えられる。当科の
症例の AR・ER- βの発現と AR・ER- β・Subtype 別の術後治療の必要性や生
存期間を、文献的考察を加えて報告する。
376
10915
10612
当科における浸潤性小葉癌の検討
当院における浸潤性小葉癌 41 症例の検討
GP-1-040-07
ポスター掲示
GP-1-040-08
1
川崎医科大学 乳腺甲状腺外科
3
森 彩子、山本 裕、川野 汐織、緒方 良平、齋藤 亙、太田 裕介、
小池 良和、山下 哲正、下 登志朗、田中 克浩、紅林 淳一
浸潤性小葉癌の臨床的特徴としては、1. 早期発見が困難な症例がある。1. 両側・
対側に多発する。3. 腹腔内転移が多い。などが報告されており、注意が必要
な組織型である。さらに最近増加傾向にあるため、今回当科で治療を浸潤性
小葉癌の検討を行ったので報告する。2008 年 1 月から 2013 年 11 月に当科で
治療を行った浸潤性小葉癌 66 例を対象とした。年齢の中央値は 60 歳で、術
前 Stage は 1 が 35 例、2 が 21 例、3 が 5 例、4 が 5 例であった。両側性乳癌は
5 例(異時性 3 例、同時性 2 例)に認めた。術式は 31 例に乳腺部分切除を、34
例にセンチネルリンパ節生検を行った。ER は 86.4%(57/66)で陽性であり、
PR は 62.1%(41/66)で陽性で、HER2 陽性は 9 例であった。術後薬物療法は、
化学療法を 18 例、ホルモン療法を 47 例、トラスツズマブを 5 例に投与した(重
複あり)。観察期間の中央値 21.5 カ月の時点で、4 例に再発を認め、Stage4
を含めた 9 例中 1 例に膀胱、後腹膜転移を認めた。7 例が死亡し、Stage4 の 2
例は担癌生存中である。
兵庫県立塚口病院 乳腺外科、2 兵庫県立塚口病院 外科、
兵庫県立塚口病院 病理診断科
諏訪 裕文 1、清水 華子 1、岩間 英明 2、今村 卓司 2、田村 淳 2、
安水 良知 3
【はじめに】浸潤性小葉癌は比較的頻度が低いが、多発や両側性発生も散見さ
れ、腹膜などへの特異な再発形式が知られている。今回、当院で 2003 年から
2013 年までに経験した浸潤性小葉癌 41 例の臨床的特徴および再発例につい
て検討した。【対象】41 症例は全員女性、年齢中央値は 62 歳(36-87 歳)であっ
た。【結果】ER 陽性は 38 例 (92.7%)、陰性は 3 例 (7.3%)、HER2 は全例陰性
であった。進行度は 1 期 14 例、2A 期 16 例、2B 期 11 例で、3 期以上の症例
はなかった。リンパ節転移は 17 例 (41%) に認められた。3 例は両側乳癌(2
例は異時性、1 例は同時性)であった。手術術式は Bp 32 例、Bt 9 例で、断端
陽性はそれぞれ 14 例 (44%)、1 例 (11%) であった。31 例に術中センチネル
リンパ節生検を行ったが、術中迅速標本で転移陰性とされた 24 例のうち 3 例
(12.5%) において永久標本のサイトケラチン染色で転移陽性と判明した。3
例はいずれも追加郭清を行わなかったが、24 か月後 1 例に腋窩リンパ再発が
出現した。術後補助療法として、ER 陽性の 38 例では全例で内分泌療法を行い、
12 例で化学療法の追加を行った。ER 陰性の 3 例ではすべて化学療法を施行し
た。術後 20-114 か月の間に、6 例 (14.6%) に再発を認め、部位は骨 4 例、肝
2 例、腹膜 1 例、リンパ節 1 例(重複あり)であった。再発 6 例はいずれも ER
陽性で、手術時に 5 例はリンパ節転移陽性、2 例は断端陽性であったが、Bp 3
例、Bt 3 例であり術式に関係はなかった。【結語】浸潤性小葉癌は乳房温存手
術を施行する際には断端陽性となることが多く、切除範囲には十分な注意が
必要である。センチネルリンパ節は術中診断では偽陰性となることがあるた
め、適応に際し慎重な対応が望まれる。ER 陽性、HER2 陰性の症例が多いが、
リンパ節転移陽性例では化学療法の追加を考慮すべきである。
10113
当院における浸潤性小葉癌の臨床病理学的検討
当院における浸潤性小葉癌の臨床病理学的特徴の検討
GP-1-040-09
GP-1-040-10
相良病院
静岡赤十字病院 外科
寺岡 恵、四元 大輔、相良 安昭、大井 恭代、松方 絢美、川野 純子、
金光 秀一、馬場 信一、相良 吉昭、雷 哲明、松山 義人、安藤 充嶽、
相良 吉厚
宮部 理香
【目的】浸潤性小葉癌 (ILC) は他の組織型と比較し特異な再発転移様式で知ら
れているが、日本でも近年増加傾向といわれている。今回当院での浸潤性
小葉癌において臨床病理学的に検討し、また浸潤性乳管癌 (IDC) との予後比
較を行った。
【対象】2002 年 4 月から 2011 年 3 月に当院で手術を施行した
Stage 4を除く浸潤性小葉癌 112 例 (2.7%)。( 浸潤性乳管癌 2974 例 )【 結
果】平均年齢 58 歳 (40-89 歳 )、観察期間中央値 52.5 ヶ月、乳房全摘術 65 例
(58%)・温存術 47 例 (42%)。 病理学的因子は、T1(36 例 )T2(46 例 )T3(25
例 )T4(3 例 )、ER 陽 性 102 例 (91%) 陰 性 9 例 (8%)、HER2 陽 性 89 例 (79%)
陰 性 4 例 (3.6%) 不 明 19 例 (17%)、 リ ン パ 節 転 移 陽 性 59 例 (52%) 陰 性 53
例 (47%)、ly(+)29 例・v(+)3 例、切除断端陽性 20 例 ( うち 5 例で追加切除 )
であった。うち再発症例は 16 例 ( 局所 5 例・遠隔 11 例 ) であり、初再発部
位として 11 例中 9 例が骨であった。2 例に骨髄癌症を認め貧血の進行を呈し
た。またいわゆる内臓転移は少なくこれらは従来の報告と同様であった。再
発の予後因子としては単変量解析で ER 因子 (p=0.024)、ly 因子 (p=0.011)、
v 因子 (p=0.002) が挙げられた。多変量解析では ly 因子 (p=0.017)、v 因子
(p=0.036) のみが独立した予後因子であった。ILC と IDC での予後を比較す
ると DFS・OS 共に有意差を認めなかったが、ILC においては晩期再発・死亡
が多い傾向を認めた。【まとめ】当院における ILC の検討では臨床病理学的特
徴は従来の報告とほぼ同様の傾向を示した。画像診断困難例も多く進行して
発見されることも少なくないが、IDC と比較して予後は同等と考えられた。
377
浸潤性小葉癌の発生頻度は約 5%とされているが,近年増加傾向にあることが
報告されている . 今回我々は,当院で治療を行った浸潤性小葉癌の臨床像と病
理組織学的特徴について検討を行ったので報告する . 対象:2010 年 1 月から
2013 年 9 月までに当院で浸潤性小葉癌の診断で手術,術後加療を行った 15
例である.年齢,術式,腫瘍径,病理組織像,ホルモン受容体・HER2 蛋白
過剰発現の有無,術後治療について検討した.結果:観察期間内に当院で診
断・手術を行った 275 例中,浸潤性小葉癌と診断された症例は 15 例,5.45%
であり,既存の報告と同様の頻度であった.年齢中央値は 66.8 歳(41 - 85
歳)であり,浸潤性乳管癌よりも高い傾向にあった.検診発見されたものは
2 例のみで,自己検診で腫瘤を自覚し来院した症例が大多数であった.術式
は全摘が 12 例 (80%),温存手術が 3 例 (20%) であった.病理学的腫瘍径
の中央値は 3.0cm(1.2~9.5cm)であり,特に高齢者で腫瘍径が大きい傾向
で,広範な LCIS を合併する症例が散見された . リンパ節転移を認めたものは
4 例 (27%) であった.サブタイプは,Luminal A が 11 例 (73%)、Luminal B
Her2 enriched が 2 例 (13%),triple negative が 2 例 (13%) であった.化療
は 5 例に行われ,そのうち 2 例は術前 N1 にて術前化療を施行した.観察期間
の中央値は 2 年 2 ヶ月 (3 ヶ月 ~3 年 6 ヶ月 ) であり,全例が生存中である.2
例が局所再発を認めているが,内蔵転移を来した症例は認めていない.考察:
自己検診にて発見した 2cm を超える腫瘤を形成した高齢者の症例が多い傾向
にあり,今後乳癌患者も高齢化が進む中で更に増加することが予想された.
予後は良好との報告が多いが,pT3 以上の症例で術後 2 年以内に局所再発を認
めた症例もあり,局所制御も一つの課題であると考えられた.
一般セッション(ポスター掲示)
11655
11754
10020
Invasive micropapillary carcinoma, micropapillary
component を伴う浸潤性乳管癌症例の検討
当院における浸潤性微小乳頭癌症例の検討
GP-1-040-11
ポスター掲示
GP-1-040-12
1
東北中央病院
大和高田市立病院 外科、2 済生会中和病院 病理部
加藤 達史 1、林 雪 1、佐多 律子 1、堤 雅弘 2、岡村 隆仁 1
鈴木 幸正、斎藤 善広
浸潤性微小乳頭癌は特殊型乳癌に分類される比較的まれな癌であるが、脈管
侵襲やリンパ節転移の頻度が高く、温存手術を考慮する際に注意が必要とさ
れている。当院では過去 5 年間に 10 例の浸潤性微小乳頭癌を経験し、そのう
ち 5 例に乳房温存手術を行っているが、それらの症例にはリンパ節転移は認め
ておらず、現在まで再発の所見は認めていない。また手術前および手術時に
リンパ節転移を認めた症例は乳房切除+腋窩郭清を行っており、術後補助化
学療法を行っているものの、早期に再発を来した症例もある。報告によれば
疾患そのものが予後不良であるというよりは、発見時に進行した状態でみつ
かることが多いことがいわれており、術式も乳房切除をすすめる報告がある
のに対し、温存手術後に局所再発を来した症例の増加は知られていない。今
回我々は温存手術を行った症例の術前画像所見と術後病理所見から、温存術
の適応について検討したので報告する。
乳腺 invasive micropapillary carcinoma(IMPC) は浸潤癌の特殊型に分類
され、リンパ節転移が多く予後不良であるとされている。また最近は、一部
に micropapillary component(MC) を伴う浸潤性乳管癌も同様に予後不良で
あると報告されている。今回我々は当科で経験した IMPC について報告する(対
象)2009 年1月から 2012 年 12 月までに当科で経験した純粋型2例と混合型
4例の計 6 例の IMPC を対象とした。(結果)年齢は 45 才から 74 才で平均 56
才、
腫瘍径は 0.5cm から 2.3cm で平均 1.4cm、
Stage I が 3 例、
II が 3 例であっ
た。手術は 5 例に乳房切除、1 例に乳房部分切除術を施行した。術後の病理組
織所見では全症例でリンパ管侵襲が陽性であり、3 例にリンパ節転移を認めた。
全例 ER 陽性で、HER2 は2例で陽性であった。術後は乳房切除の1例および
温存手術を施行た1例に放射線照射を行った。高齢で化学療法を拒否した 1 例
を除き5例が補助化学療法を行い、全例で内分泌療法を行った。現在最長で
術後4年5ヶ月(平均3年2ヶ月)であるが、再発無く全例生存中である。
一般セッション(ポスター掲示)
11296
10829
浸潤性微小乳頭癌 5 手術例の免疫組織学的検討
当科における粘液癌の検討
GP-1-040-13
GP-1-040-14
筑波学園病院 乳腺内分泌外科
川崎医科大学 乳腺甲状腺外科
石川 智義
川野 汐織、山本 裕、森 彩子、緒方 良平、斉藤 亙、太田 祐介、
小池 良和、山下 哲正、下 登志朗、田中 克浩、紅林 淳一
【諸言】浸潤性微小乳頭癌 (IMPC) には他の組織型が共存する Mixed form と
IMPC のみの Pure form がある .【目的】Pure form と Mixed form の免疫組織
学的検討を通じて , IMPC の発癌過程の多様性を明らかにすることを目的と
した .【症例】過去 14 年 11 ヵ月間に当院で手術した IMPC の 5 例 . Pure form
群は , 症例 1 (67 歳 , pT1cN1M0, pStage 2A) と症例 2 (59 歳 , pT1bN0M0,
pStage 1). Mixed form 群は 3 例で , 症例 3 (51 歳 , pT3N3aM0, pStage 3C)
は乳頭腺管癌 (P-T), 充実腺管癌 (S-T) と硬癌 (S), 症例 4 (65 歳 , pT1cN1M0,
pStage 2A) は P-T と S, 症 例 5 (43 歳 , pT3N3aM0, pStage 3C) は P-T と S
の Mixed form で あ っ た .【 方 法 】ER と PgR は J-score で , HER2 は ASCO/
CAP ガイドラインに準じた判定基準を用いた 【
. 結果】Pure form 群では症例
1: ER; Score 3a, PgR; Score 0, HER2; 3+, 症例 2: ER; Score 3b, PgR;
Score 0, Her2; 3+ で あ っ た . Mixed form 群 で は , 症 例 3 が IMPC: ER;
Score 3b, PgR; Score 2, HER2; 3+, P-T: ER; Score 3b, PgR; Score 3b,
HER2; 3+, S-T: ER; Score 3b, PgR; Score 3b, HER2; 3+, S: ER; Score
1, PgR; Score 1, HER2; 3+. 症例 4 は IMPC: ER; Score 3b, PgR; Score
3a, HER2; 0, P-T と S: ER; Score 3b, PgR; Score 3b, HER2; 0, 症例 5 は
IMPC: ER; Score 3b, PgR; Score 3a, HER2; 0, P-T と S: ER; Score 3b,
PgR; Score 3b, HER2; 0, Pure form 群と Mixed form 群全例で HER2 の判
定スコアは一致していた . Mixed form 群では IMPC よりも PgR 陽性細胞占有
率が高い組織型を認めた .
粘液癌の特徴としては、ホルモン受容体陽性例が多く、予後良好であると報
告されている。今回当科で治療を行った粘液癌の検討を行ったので報告する。
2003 年 1 月から 2013 年 11 月に当科で治療を行った粘液癌 40 例を対象とし
た。粘液癌の定義としては、腫瘍全体の 70% を粘液癌で占めるものを対象と
した。年齢の中央値は 63 歳で、術前 Stage は 1 が 24 例、2 が 14 例、3- が 2
例であった。術式は 25 例に乳腺部分切除を施行した。Pure type は 62.5%
(25/40)で、mixed type は 35.0%(14/40)であった(1 例は分類不能)
。腋
窩リンパ節転移は 10.0%(4 例)に認め、ER は 95.0%(38/40)で陽性で、PR
は 85.0%(36/40)で陽性であった。HER2 陽性は 1 例のみであった。乳腺部
分切除を施行した 25 例中断端陽性は 8 例(32%)に認め、そのうち、2 例は追
加切除(1 例は乳房切除、1 例は部分切除)を行い、6 例は追加切除せず boost
照射を行った。術後薬物療法は、ER 陰性 HER2 陽性の 1 例を除き、全例ホル
モン療法を施行した(化学療法追加は 6 例)。観察期間 54.9 カ月で、1 例にの
み再発(骨転移)を認めた。
378
ポスター掲示
10391
10512
基質産生癌の 4 例
乳腺原発の spindle cell carcinoma の臨床病理像の検討
GP-1-040-15
GP-1-040-16
1
JA 北海道厚生連帯広厚生病院
東京慈恵会医科大学附属柏病院 外科、
東京慈恵会医科大学附属柏病院 病理、
3
東京慈恵会医科大学 乳腺内分泌外科
2
吉岡 達也、大野 耕一、大竹 節之、村川 力彦、鯉沼 潤吉、武藤 潤
基質産生癌は 1989 年に Wargotz and Norris によって提唱された組織型で、
本邦の乳癌取扱い規約では第 16 版より特殊型の一つに新たに分類されてい
る。2010 年度に報告された日本乳癌学会全国乳がん患者登録調査報告によ
ると基質産生癌の全乳癌症例数に占める割合は 0.1%と比較的まれである。
今回我々は当院で基質産生癌 4 例を経験したので報告する。【対象】2009 年
から 2013 年 11 月までに当科で経験した基質産生癌 4 例(当院手術施行症例
の 1.02%)。【 結 果 】平 均 年 齢 58.3 歳(36 ~ 76 歳 )。 病 期 は StageI が 2 例、
StageIIA が 1 例、StageIIIB が 1 例であった。術前化学療法(FEC → PTX)を 1
例に施行した。手術は全 4 例に対して乳房切除術が施行され、術前化学療法症
例を含めた全 4 例に対しセンチネルリンパ節生検を行った。全例がセンチネル
リンパ節転移陰性で、腋窩リンパ節廓清は省略した。全例が ER 陰性、HER2
陰性のトリプルネガティブ乳癌であった。術後化学療法として EC → PTX を 1
例、FEC → PTX を 1 例に施行した。術前化学療法を施行した症例および患者
の同意が得られなかった症例は術後化学療法を施行しなかった。術後平均観
察期間は 17.8 ヶ月(2-32 ヶ月)で全例再発所見は認めていない。今回の症例
の特徴として 4 例中 2 例が異時両側乳癌症例であり、ほか 2 例は同時同側多発
乳癌症例であった。【まとめ】基質産生癌はトリプルネガティブ乳癌症例が多
いと報告されているが、今回経験した 4 例はいずれもトリプルネガティブ乳癌
であった。基質産生癌に対する化学療法の報告は限られており、症例の集積
と有効な治療法に関する検討が必要である。
京田 茂也 1、伏見 淳 1、榎本 浩也 1、平野 明夫 1、木下 智樹 1、
秋葉 直志 1、金綱 友木子 2、内田 賢 3、武山 浩 3
11404
10793
核グレードと Ki-67 の大きな乖離を示した乳癌症例の検討
乳房温存術後に Paget 型再発を来した 4 例の検討
GP-1-040-17
GP-1-041-01
1
聖路加国際病院 乳腺外科、2 聖路加国際病院 病理診断科、
3
川崎医科大学 病理学2
千葉大学大学院医学研究院 臓器制御外科学
中山 可南子 1、矢形 寛 1、吉田 敦 1、林 直輝 1、森谷 卓也 3、鈴木 高祐 2、
山内 英子 1
<背景> Ki-67 は細胞増殖能を評価する有用なマーカーであり、乳癌の治療選
択に重要な役割を果たしている。しかし、核グレードが1と低値にも関わら
ず、Ki-67 が異常高値を示す症例を認めたため、その特徴について検討を行っ
た。<対象と方法> 2010 年 1 月から 2012 年 12 月までに手術を施行した術前
治療施行例を除く浸潤性乳癌。核グレード1かつ Ki-67 (MIB-1 抗体 ) が 70%
以上の症例を抽出し、Ki-67 の抗体であるクローン 30-9 抗体、核分裂マーカー
である PHH3 にて免疫染色を行った。HE 染色にて神経内分泌分化が疑われる
症例についてはクロモグラニンA、シナプトフィジンによる特殊染色を行っ
た。<結果>核グレード1で Ki-67 が 70% 以上の症例は 3 年間に 3 例認めた。
年齢は 43 歳、39 歳、44 歳で全例閉経前であった。腫瘍径は浸潤径 0.05cm(in
situ 含む 0.7cm)、1.2cm(in situ 含む 9.1cm)、1.8cm(in situ 含む 2.7cm)、
いずれも通常型の浸潤性乳管癌で、エストロゲン受容体、プロゲステロン受
容体ともに強陽性、HER2 は陰性、腋窩リンパ節転移は認めなかった。MIB-1
抗体を用いた Ki-67 はそれぞれ 95.5%、97.4%、86.1% であった。クローン
30-9 抗体を用いても同様に異常高値を示していた。しかし核分裂マーカーで
ある PHH3 では、陽性細胞数はごく少量であった。またいずれの症例も神経
内分泌顆粒を認めた。<考察>核分裂数が極めて少ないことから増殖率は低
いものと考えられ、これらの症例では Ki-67 は増殖能を正確に反映していない
と結論づけられる。いずれも神経内分泌分化を伴っており、Ki-67 異常高値と
の間に何らかの関連があるものと予想された。<結語>核グレード 1 にも関わ
らず Ki-67 異常高値を示し、神経内分泌分化を伴う乳癌がまれに存在すること
が明らかとなった。このような乖離を認める症例では治療方針の決定に慎重
な配慮が必要である。
佐藤 豊、長嶋 健、榊原 雅裕、三階 貴史、藤本 浩司、鈴木 浩志、
大久保 嘉之、椎名 伸充、藤咲 薫、榊原 淳太、宮崎 勝
【はじめに】今日、本邦における早期乳癌に対しての乳房温存手術と温存乳房
への術後放射線照射を併用した乳房温存療法施行率は全乳癌手術の約 60%を
占め、胸筋温存乳房切除術よりも高頻度で実施されている。また乳房温存療
法が困難な腫瘍径の大きな症例においても術前化学療法または内分泌療法に
よって縮小した場合は、乳房温存療法は可能である。多発癌が異なる乳腺腺
葉領域に認める場合や広範囲にわたる乳管内進展を認める場合に乳房温存療
法 が 困 難 で あ っ て も、skin-sparing mastectomy(SSM) や nipple-sparing
mastectomy(NSM) などを施行し再建を行えば整容性は確保できる。その一
方で Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group のメタアナリシス
では局所再発率が高率となった場合、生存率に悪影響を与えることが判明し
ており、乳房温存手術や SSM、NSM などの術式決定の際は、病変の拡がり診
断を的確に行う必要がある。今回、乳房温存療法後に乳頭乳輪部のびらんで
発見された Paget 型再発症例についての臨床病理学的因子を検討したので報
告する。【患者方法】当科にて 2000 年から 2010 年の期間に施行した乳房温存
手術 922 症例における Paget 型再発症例の臨床病理学的因子を検討した。【結
果】922 症例のうち局所再発は 25 症例 (2.7% ) であり、Paget 型再発をきた
したのは 4 症例 (0.43% ) であった。症例は 34 歳~ 67 歳 ( 平均 48 歳 )。3 例
が浸潤癌、1 例が非浸潤癌であった。リンパ節転移陽性が 2 症例、HER2 陽性
が 2 症例、断端陽性が 3 症例に認められた。術後全身治療として化学療法は 2
症例、内分泌療法は 1 症例に施行された。温存乳房への boost 照射は 4 例とも
行われた。Paget 型再発までの期間は術後 29 ~ 82 ヶ月 ( 平均 67 ヶ月 ) であっ
た。【結論】乳房温存術後に Paget 型再発を来した 4 症例を経験した。術式決
定の際は画像による拡がり診断はもとより臨床病理学的因子を加味し検討す
る必要があると思われた。乳房温存術後に乳頭乳輪部にびらんを認めた場合
は Paget 型再発を念頭におく必要がある。
379
一般セッション(ポスター掲示)
乳腺原発の spindle cell carcinoma は , 乳がん取り扱い規約では「紡錘形細胞
からなり , 肉腫様に見えるが , 一部に上皮性性格の明らかながん細胞巣や扁平
上皮化生を示す部分が見られることが多い . 肉腫様部分も上皮性のがん細胞が
紡錘形となったものである」と定義され , 浸潤がんの特殊型に分類される . そ
の発生は非常に稀で乳がんの 0.1 ~ 0.2% とされている . 今回 , 我々の施設で
経験した 4 例について , 臨床病理像の検討を行ったので文献的考察を加え報告
する .【対象 , 方法】過去 10 年間 , 当施設で手術が行われた原発女性初治療乳
がん症例の中で , 病理組織学的に spindle cell carcinoma と診断された 4 例を
対象とし , chart review により検討を行った .【結果】<臨床背景>平均年齢
58.5 ± 5.9 歳 (52 ~ 67 歳 ), 主訴は腫瘤自覚が 3 例、乳房痛が 1 例。腫瘤径は
5.2 ± 1.1cm(3.8 ~ 6.5cm), 発赤 , 腫脹を伴う皮膚所見を 1 例に認めた . 臨
床病期は stage IIA:1 例 , IIB:2 例 , IIIB:1 例 . <画像所見>嚢胞内腫瘍 :1 例 ,
充実性腫瘍 :2 例 , 内部に壊死性変化を伴う充実性腫瘍 :1 例 . <術式> Bt+Ax
を 2 例 , Bt+SLNB を 2 例に施行 . <病理組織像および免疫組織学的検索>内
部に空洞形成を伴う壊死性変化または嚢胞性変化を全例に認めた . Intrinsic
subtype は basal like type 3 例 , luminal B/HER-2(-) type 1 例 . <術後治療>
全例に FEC 療法を施行し , うち 2 例にタキサン系を追加投与した . luminal B/
HER-2(-) type の 1 例には tamoxifen を 5 年間追加した . <転帰>平均観察期
間 44.0 ± 27.1 ヶ月 (10 ~ 74 ヶ月 ) で全例再発の徴候無く健存中である .【考
察】spindle cell carcinoma の病理組織学的特徴は , 紡錘型細胞よりなる肉腫
様構造と上皮性の癌胞巣の移行する部分が認められる化生癌である . 腫瘍形態
は限局性のものが多く , 壊死性変化や嚢胞形成を伴いやすい . また , 自験例で
も 4 例中 3 例が basal like であったが , これまでの報告例でも大部分が basal
like であるため , 化学療法 , 放射線療法ついては通常の浸潤性乳管癌に準じて
施行されることが多い . しかしながら , 症例数が少ないためその有効性に関し
ての consensus は未だ得られておらず , 今後の症例蓄積による解析が待たれ
るところである . いずれにしても肉腫的性格を有する悪性腫瘍であることか
ら , 外科的に完全に切除することを念頭に初期対応をすることが肝要と考え
る .【結語】我々の施設で経験した spindle cell carcinoma4 例について報告し
た.
10589
10076
乳房 Paget 病の検討~ Paget vs Pagetoid ~
当院における乳腺葉状腫瘍の検討
GP-1-041-02
ポスター掲示
GP-1-042-01
1
東邦大学医療センター大橋病院 外科、
2
東邦大学医療センター大橋病院 病院病理部
綜合病院社会保険徳山中央病院
多田 耕輔、中須賀 千代、宮原 誠、久保 秀文
高橋 亜紗子 1、岡本 康 1、柴山 朋子 1、有馬 陽一 1、能戸 保光 1、
桐林 孝治 1、西牟田 浩伸 1、萩原 令彦 1、石井 智貴 1、勝碕 譲児 2
乳腺葉状腫瘍はまれな腫瘍であり良悪性を含め術前診断に苦慮することもあ
り術前に線維選手と診断されていても急速に増大し手術となる症例も存在す
る。対象 2003 年 12 月より 2012 年 12 月までの 9 年間に当院にて手術を施行
した乳腺葉状腫瘍 8 例を対象とし検討・報告した。結果 平均年齢は 49.9 歳
(41 ~ 66 歳 ) 平均腫瘤最大径は 90 ミリ (35-290 ミリ )、であった。手術に至
るまでの経過は初診時に ABC もしくは針生検が 7 例に施行されており 6 例は
良性腫瘍 ( 線維腺腫 ) と診断され経過観察中に急速に増大し、手術が施行され
ていた。このように術前に葉状腫瘍との診断がついた症例はなく線維腺腫と
診断され経過観察中に増大した症例がほとんどであった。なお病理結果は 7 例
が良性葉状腫瘍であり 1 例が境界域の葉状腫瘍と診断された。手術は 1 例にお
いて乳房全摘、7 例は乳腺部分切除であり最近の症例では整容性を重視し乳輪
に沿った皮切で行っており現在までに再発を認めた症例はない。考察 葉状
腫瘍は術前診断にて線維腺腫と診断されていても急速に増大し手術に至る症
例がある。これは同一腫瘍内の間質成分の密度は様々であり、線維腺腫とほ
ぼ同じ密度を示す部分があり初診時の細胞診及び針生検では線維線種と診断
されたと考えられ定期的な経過観察が必要である。
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】乳房 Paget 病は、乳癌細胞が乳頭・乳輪表皮内への進展により、
乳頭・乳輪の湿疹様変化を特徴とする癌である。乳頭表皮にびらんを認めて
も乳腺内に浸潤性腫瘤を認める場合には Pagetoid 型と分類され、浸潤性病巣
を認めない Paget 型とは区別される。今回、当院で経験した乳房 Paget 病に
対して、Paget 型と Pagetoid 型の臨床病理学的な比較検討を行った。【対象】
1983 ~ 2013 年に当院で手術を行った乳房 Paget 病 22 症例(Paget 型 12 例、
Pagetoid 型 10 例)。【結果】同期間の乳癌手術症例 1,303 例中、乳房 Paget 病
は 22 例(1.7%)、腫瘤を伴わない Paget 型は 12 例(0.9%)であった。全例
で初診時に乳頭びらんを認めた。平均年齢は Paget 型 68.0 歳(38 ~ 84 歳)、
Pagetoid 型 60.9 歳(39 ~ 80 歳)で、Paget 型でやや高齢であった。Paget 型
は 4 例が擦過細胞診、8 例が皮膚生検で診断された。手術は、Paget 型では乳
房部分切除 2 例、単純乳房切除 4 例、乳房切除+センチネルリンパ節生検 3
例、胸筋温存乳房切除 3 例、Pagetoid 型では、乳房切除+センチネルリンパ
節生検 1 例、胸筋温存乳房切除 9 例、胸筋合併乳房切除 1 例が行われていた。
部分切除を行った Paget 型の切除断端は全例陰性だった。Paget 型のうち 2 例
で組織学的に微小浸潤を認めた。ホルモンレセプターは検索し得た症例(Paget
型 4 例、Pagetoid 型 7例)のうち陽性例は Paget 型で 2 例であり、Pagetoid
型はすべて陰性であった。また、HER2 は Paget 型 4 例、Pagetoid 型 1 例で
測定したが、全例で陽性であった。リンパ節転移については Paget 型で 2 例
(16.6%)、Pagetoid 型で 5 例(50%)で、Pagetoid 型でリンパ節転移陽性例
を多く認め、病理学的 stage は、Pagetoid 型において進行症例を多く認めた。
Paget 型/ Pagetoid 型において遠隔転移・再発症例は 0 / 3 例、原病死は 0
/ 2 例であり、Pagetoid 型の方が予後の悪い傾向にあった。【考察】Paget 型
は浸潤巣のない非浸潤癌であり予後良好であるのに対し、Pagetoid 型には進
行例も含まれ、予後不良である可能性が示された。Paget 型でもリンパ節転移
を伴う症例もあり、センチネルリンパ節生検以上の腋窩治療の必要性も示唆
される。
10398
11059
当院における乳腺葉状腫瘍切除例の検討
当院における乳腺葉状腫瘍の検討
GP-1-042-02
GP-1-042-03
兵庫県立がんセンター
1
松尾 容子、高尾 信太郎、廣利 浩一、田根 香織、三木 万由子、
佐久間 淑子
末岡 憲子 1、坪田 優 1、山本 大悟 2
【はじめに】葉状腫瘍に対する標準的治療は外科的切除であり、放射線治療や
化学療法はともに無効例が多いとされている。切除には断端を陰性にするこ
とが最も重要とされており、NCCN ガイドラインでは margin を 1cm 以上離
しての切除が推奨されている。【目的】当院における初発葉状腫瘍手術症例に
おける手術術式、断端結果の解釈について検討する。【対象と方法】当院での
2003 年から 2013 年の手術を施行した初発葉状腫瘍 29 例を対象に臨床病理
学的因子と断端の対処法、再発様式について検討した。【結果】29 例の内訳は
組織学的に良性 18 例、境界悪性 5 例、悪性 6 例であり、年齢中央値が 48 歳(25
~ 69 歳)
、腫瘍径の中央値が 5.0cm(1.5 ~ 22.0cm)であった。手術術式は
腫瘍切除術もしくは乳房部分切除術が 22 例、乳房切除術が 4 例、乳房切除術
+センチネルリンパ節生検が 3 例であった。乳房切除術が行われた 7 例は腫瘍
径が大きい傾向にあった(中央値 8.0cm)。センチネルリンパ節生検を施行し
たうちの 2 例は、術前の針生検で間葉系の悪性腫瘍が疑われていた。明らかな
断端陽性の症例はなかったが、断端が近接していたものが 3 例、近接あるいは
露頭の疑いとされたものが 1 例認められた。近接していた 3 例はいずれも良性
であり、慎重な経過観察がなされた。近接あるいは露頭の疑いとされた 1 例は、
術中に露頭が疑われたため可及的に追加切除を行い、断端部分の焼却が行わ
れた。観察期間中央値は 25 ヶ月(1 ヶ月~ 119 ヶ月)で再発は 1 例。組織学
的に悪性であり、断端は陰性であったが乳房切除術後に胸壁再発を認め、胸
壁切除術と放射線治療を行った。【考察】断端陽性が局所再発の再発因子とさ
れているが、腫瘍径の大きい悪性葉状腫瘍では、広範切除術後に局所再発が
多いことも報告されている。腫瘍径が大きい場合は乳房切除術も考慮すべき
と考えられ、また、断端が陰性であっても術後長期にわたって定期的に経過
観察を行う必要がある。
関西医科大学枚方病院、2 関西医科大学滝井病院
【はじめに】乳腺葉状腫瘍は乳腺腫瘍の 1%未満と比較的稀な腫瘍である。遠
隔転移は 2%未満とまれであるが、経過中 20%程度が局所再発を来す。今回
我々は、当院における葉状腫瘍手術症例の臨床病理学的検討を行った。【対
象・方法】2009 年 1 月~ 2013 年 11 月の間に手術を行った乳腺葉状腫瘍の
24 症例について検討した。年齢、腫瘍径、良悪性、術式、再発の有無をまと
めた。【結果】年齢は平均 37.1 歳(18-59 歳)。腫瘍径は 0-2 cmが 7 例、2-5
cmが 12 例、5 cm以上が 5 例。術式は腫瘍摘出術が 19 例、乳腺全摘術が 5
例であった。術後病理診断は良性 15 例、境界 7 例、悪性 2 例。再発は 24 例中
2 例(8.3%)に認めた。うち 1 例は術後病理診断にて境界病変であったが、再
発腫瘍には悪性転化を認めた。初回手術より 3 年後に再発し腫瘍摘出術施行
したが、さらに半年後同側乳房内に再発来たし、皮下乳腺全摘術施行した。【ま
とめ】乳腺葉状腫瘍は術後病理診断で良性または境界病変であっても局所再発
と再発時の悪性転化を念頭に置き、注意深く観察することが必要である。
380
10445
10673
当院における乳腺葉状腫瘍の臨床病理学的検討
当院における乳腺葉状腫瘍手術症例の検討
GP-1-042-04
ポスター掲示
GP-1-042-05
1
栃木県立がんセンター 外科、2 栃木県立がんセンター 腫瘍内科、
3
栃木県立がんセンター 病理部
けいゆう病院 外科
嶋田 昌彦、伊藤 亜里沙、坂田 道生、阿賀 健一郎、原田 宏輝、
由良 昌大、冠城 拓示、関 博章、安井 信隆、松本 秀年
矢野 健太郎 1、安藤 二郎 1、北村 東介 1、原尾 美智子 1、水口 知香 1、
山中 康弘 2、星 暢夫 3、五十嵐 誠治 3
10376
11570
遠隔転移をきたした悪性葉状腫瘍 4 例の検討
乳房原発悪性リンパ腫の 5 例
GP-1-042-06
GP-1-043-01
1
順天堂大学医学部附属順天堂医院 乳腺・内分泌外科、
2
順天堂大学医学部附属順天堂医院 放射線科、
3
順天堂大学医学部附属順天堂医院 病理診断科
和歌山県立医大 第一外科
平 郁 1、明神 真由 1、酒田 円 1、岩間 敬子 1、猪狩 史江 1、氷室 貴規 1、
吉田 悠子 1、毛利 かの子 1、徳田 恵美 1、高橋 由佳 1、清水 秀穂 1、
堀本 義哉 1、中井 克也 1、荒川 敦 3、笹井 啓資 2、齊藤 光江 1
【背景】乳腺葉状腫瘍は全乳腺腫瘍の約 0.3 ~ 0.5%を占める比較的稀な腫瘍
であり、そのうち 1.9 ~ 49%が悪性であると報告されている。悪性葉状腫瘍
の 25 ~ 40%は遠隔転移をきたすとされているが、その治療法としては外科
的切除しか有効な治療法はなく、化学療法に関しては確立されたものはない。
当院にて診断された悪性葉状腫瘍例のうち、遠隔転移をきたした 4 例を報告
する。
【症例】遠隔転移診断時の年齢は 38 歳~ 55 歳(中央値 51.5)
、原発巣の
手術から再発までの期間は 6 ヶ月~ 22 ヶ月(平均 11.75 ヶ月)であった。転
移先臓器は肺(2 例)
、骨(2 例)、副腎、腎、心室壁であった。3 例に対して
Doxorubicin, Ifosfamide を中心とした化学療法が施行され、2 例については
13 ヶ月、32 ヶ月の奏功期間を認めた。1 例は多発肺転移に対し無治療のまま
経過観察を行い、36 ヶ月後に死亡した。遠隔転移診断からの予後は 1 ヶ月~
43 ヶ月(中央値 25 ヶ月)であった。経験例に加え、文献的考察を含め報告する。
西口 春香、尾浦 正二、吉増 達也、粉川 庸三、川後 光正、平井 慶充、
清井 めぐみ、大橋 拓矢、松谷 雅子、本田 麻理子、岡村 吉隆
【目的】当院で経験した乳房原発悪性リンパ腫について後方視的に検討を行っ
た。【対象】当科にて乳腺疾患で治療を施行した 2000 年 1 月から 2013 年 12
月の 1860 例中、0.27% にあたる 5 例。年齢は 64 ~ 70 歳、いずれも女性、
乳房腫瘤径は 3 ~ 8cm、4 例の発見契機は乳房の腫瘤自覚、1 例は乳癌術後
経過観察中の超音波検査にて対側に発見された。超音波所見は 2 例は典型的
な極低~低エコーであったが、3 例においては極低と高エコーの混在するモ
ザイクパターンを示した。MMG はいずれもカテゴリー4、組織型はいずれも
diffuse large B-cell lymphoma であった。病期は stageIA が 2 例、IIA が 2 例、
IVB が 1 例であった。【治療】1 例に CHOP 療法、2 例に R-CHOP 療法を施行し
cCR、CHOP 療法を施行した 1 例は、併存する HCC のため局所コントロール
目的で乳房部分切除術を施行し pCR を確認した。2 例は現在治療継続中であ
る。
【転帰】1 例は併存する HCC で死去、2 例は再発を認めず経過観察中である。
【結語】diffuse large B-cell lymphoma に対し(R)-CHOP 療法を施行し、良
好な成績を得た。超音波所見は一般的に極低~低エコーと言われるが、3 例に
極低と高エコーの混在するモザイクパターンを示す症例を認め、診断に注意
を要すると思われた。
381
一般セッション(ポスター掲示)
乳腺葉状腫瘍は全乳房腫瘤の 0.3 - 0.5%と比較的稀な疾患で、多くは良性で
あるが、急激に増大し、乳房切除術となる症例も多く報告されている。当院
における乳腺葉状腫瘍につき検討した。
【対象と方法】1997 年 11 月から 2013 年 12 月の間に当院で加療を行った葉状
腫瘍患者 19 人を対象に、後ろ向きに観察研究を行った。患者背景、手術術式、
組織型、再発の有無、経過観察期間を評価した。
【結果】観察期間中央値は 61 か月 (1 か月- 193 か月 ) であった。初回手術時の
年齢中央値は 45 歳 (19 - 71 歳 ) で全例女性であった。再発を含め手術症例数
は 39 例で、患者ごとの手術回数は 1 回から 5 回であった。全手術症例において、
遠隔転移は認めておらず、葉状腫瘍による死亡症例はなかった。
術式は 33 例が腫瘤摘出術、6 例が乳房切除術 (1 例でセンチネルリンパ節生検
施行 ) であった。初発時に乳房切除術を施行した症例は 2 例で、組織型はどち
らも境界病変で、腫瘍径が大きいため (14.7 - 35cm) 乳房を温存することが
できなかった。再発時に乳房切除術を施行した症例は 4 例であった。2 例は境
界病変、2 例は悪性で、3 例は腫瘍径が大きいため、1 例は頻回再発のため乳
房温存不能であった。
非再発症例は 10 例で観察期間中央値は 36.5 か月 (1 か月- 88 か月 ) であっ
た。組織型は 6 例が境界病変、4 例が良性であった。
葉状腫瘍再発症例は 7 例 ( 手術症例数ではのべ 25 例 )、葉状腫瘍再発はないが
乳癌発症した症例が 2 例あり、この 9 例の観察期間中央値は 99 か月 (54 か月
- 193 か月 ) であった。初回手術から再発までの期間および再発から次の再発
までの期間を再発期間とすると、再発期間中央値は 11 か月 (3 か月- 91 か月 )
であった。3 回以上の手術を行った 6 症例の組織型は 1 例が悪性、3 例が境界
病変、2 例が良性であった。
【結語】葉状腫瘍では組織型に関係なく、短期間で急激に増大する症例があり、
長期間に渡る厳重なフォローアップを行うことが必要である。腫瘍径が大き
いために乳房切除術となる症例を少しでも減らすために、乳房温存可能な段
階で外科的治療を行うことが重要である。また、非再発症例では経過観察期
間が短い症例が含まれており、今後も十分な経過観察を予定している。
当院において治療した乳腺葉状腫瘍症例について検討し,その臨床病理学的
特徴を明らかにする.【対象】1986 年 9 月の当院開院から 2011 年 9 月までに
当院で治療を開始した乳腺葉状腫瘍初回手術例 32 例を対象とし,年齢,腫瘍
径,病理組織診断,再発,予後などについて検討した.【結果】治療開始時年
齢 20~74 歳 ( 平均 45.3 歳 ),全例女性,発見契機は全例腫瘤の自覚,腫瘍径
は 1~28cm( 中央値 4.1cm),病理組織診断では良性 22 例 (68.8%),境界病
変 2 例 (6.3%),悪性 8 例 (25%) であった.局所再発は良性 1 例に認められ再
切除されている.遠隔転移は悪性 3 例に認められ,転移再発部位は肺,脳,胸
壁であった.死亡は 4 例あり原病死 3 例,他病死 1 例であった.原病死 3 例の
再発までの期間は 0,12,13 カ月,全生存期間は 3,14,16 カ月であった.再発
後の放射線療法や化学療法施行にもかかわらず,再発後生存期間は 2~3 カ月
と非常に短かった.【結論】乳腺葉状腫瘍では病理組織診断による良悪性の判
定が非常に重要である.また悪性病変において再発をきたした症例の予後は
非常に悪く,今後再発症例に効力のある新規薬剤の開発が望まれる.
11191
11165
乳腺原発悪性リンパ腫 5 例の検討
硬化性腺症の検討
GP-1-043-02
GP-1-044-01
1
独立行政法人国立病院機構東京医療センター 外科、
2
独立行政法人国立病院機構東京医療センター 臨床検査科、
3
上野毛あだちクリニック
札幌乳腺外科クリニック
前田 祐助 1、松井 哲 1、平形 侑子 1、雨宮 愛理 1、島田 敦 1、大石 崇 1、
磯部 陽 1、松本 純夫 1、村田 有也 2、足立 幸博 3
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】乳腺原発悪性リンパ腫は乳腺悪性腫瘍の 0.04 ~ 1.1%、全節外性リン
パ腫の 1.7 ~ 2.2%と報告され、非常に稀な疾患である。当院においては乳腺
腫瘤を伴った悪性リンパ腫はこれまで 6 例あり、その中で乳腺原発悪性リン
パ腫の 5 例を対象として臨床病理学的特徴を調べた。
【結果】5 例は全員女性で、
平均年齢は 66.2 歳(44-88 歳)であった。全員が乳房腫瘤を自覚して受診して
おり、平均腫瘍径は 5.8cm(2-11cm)であり、乳癌に比してやや大きな腫瘤
を呈する例が多い。画像検査では 3 例は境界明瞭な腫瘤像を、2 例では境界不
明瞭な腫瘤像を呈していたが、乳癌との区別は容易ではなかった。最終病理
診断はびまん性大細胞型 B 細胞性リンパ腫 (DLBCL) が 4 例、バーキットリン
パ腫が 1 例であった。4 例では針生検が実施され、いずれも DLBCL と診断さ
れたが、切除生検で 1 例はバーキットリンパ腫と判明した。確定診断の目的
で腫瘤切除術が 3 例に施行されたが、腫瘤の大きな 2 例では針生検の診断のみ
でその後に治療に移行している。85 歳以上の高齢である 2 例では切除や照射
のみでの観察としたが、他の 3 例では通常のリンパ腫に準じた化学療法を実
施し、いずれの症例でも再発徴候を認めていない。【考察】乳腺原発悪性リン
パ腫は、臨床所見や画像所見から乳癌と区別できる様な特徴は無く、臨床的
に乳腺悪性リンパ腫と診断される症例は稀であるが、術前細胞診による正診
率は 70 ~ 90% と高い。針生検が施行されれば、種々の免疫染色が可能とな
り組織型もほぼ正確な診断が得られていた。治療は悪性リンパ腫に準じて化
学療法を行うため診断確定目的での腫瘤切除については議論の余地があるが、
針生検での診断と切除検体による診断が異なることもあり、細胞免疫学的検
索を行えば診断精度の向上が望める場合もある。
佐藤 文彦、岡崎 稔、岡崎 亮、渡部 芳樹、山岸 妃早代、米地 貴美子、
石井 沙織、大杉 美幸
乳腺の臨床において、乳癌との鑑別を要す非悪性病変は多々ある。硬化性腺
症もその一つであり、診断過程において乳癌を念頭に強く疑ったにもかかわ
らず、結果硬化性腺症であった症例に時折遭遇する。今回、最終組織診断が
硬化性腺症主体であった症例についてその臨床像を検討した。【対象】平成
23 年 1 月から平成 25 年 12 月までの 3 年間で、乳癌の可能性を考え、組織
生検を行い硬化性腺症の診断であった 45 症例。(外科的生検 13 例、CNB16
例、VAB15 例)【結果】MMG は全例に行われ有所見は 42.2%であり、約半数
の 9 例に FAD を認め 4 例に構築の乱れ、6 例に微細石灰化をみとめた。全例
US で検出可能で、カテゴリ 3 と 4 がそれぞれ 66%、33%であった。穿刺吸
引細胞診を 44 例に行い、要精査率は indeterminate が 56.8%、suspicious
for malignancy が 22.7 % で 合 計 79.5 に % 上 っ た。Gd-MRI は、 当 院 で は
仰臥位・正面視・MIP 処理・ステレオ視でコントラスト中心 20 秒の超早期
相、1 分の早期相、2 分の後期相の 3 相を撮像している。45 例中生検前に 29
例で撮像されており、描出ありが 89.6%(カテゴリ 3 が 55.2%、カテゴリ 4
が 34.% 5)で、至適時相は超早期相が 26.9%、早期相が 65.% 4、後期相は
7.7%であった。時相パターンは、plateau type が 61.% 5、persistent type
が 23.1%、wash out type が 15.4%であった。【まとめ】Gd-MRI においては
時相のパターンは wash out type は少数で、悪性を強く想定する結果ではな
かった。至適時相は超早期相から早期相にかけての比較的早い時相が 92.3%
と多数を占めた。画像や細胞診において硬化性腺症の主な鑑別対象となる硬
癌の至適時相は早期相以降の時相であり、ここに違いはあるものの、正常乳
腺よりも早く描出される傾向はやはり要精査の対象である。このように、硬
化性腺症の中には複数の検査において癌に近似した所見を呈する症例があり、
overdiagnosis を避けるため、画像および組織形態学的な慎重かつ総合的診断
過程を進めることが肝要である。
11964
11331
肉芽腫性乳腺炎 5 例の治療経験
乳癌との鑑別を要した乳腺炎症性疾患の 5 例
GP-1-044-02
1
ポスター掲示
GP-1-044-03
盛岡友愛病院 外科、2 岩手医科大学医学部 病理学講座分子診断学分野
春日井市民病院 外科
多田 隆士 1、松谷 英樹 1、西成 尚人 1、藤井 裕次 1、上杉 憲幸 2
【はじめに】肉芽腫性乳腺炎は稀な良性疾患であるが,乳癌との鑑別,またそ
の治療に難渋することがある.今回,5 例の肉芽腫性乳腺炎を経験したので報
告する.【対象】生検病理組織検査と臨床所見で肉芽性乳腺炎の診断された肉
芽性乳腺炎 5 例.【結果】5 例の発症時年齢は 29 ~ 43 歳で平均 34.4 歳であっ
た.病脳期間は 1 週から 1 ヵ月であった.症状は乳房痛と同部の皮膚の発赤
であった.1 例で両側の膝関節痛を伴っていた.初回治療とステロイド療法を
開始し,初回はプレドニゾロン 20 ~ 30mg/ 日で症状によりプレドニゾロン
を増減した.外科切除施行例は 3 例で,初回から外科切除までの期間は平均 6
か月であった.1 例は再燃を繰り返したがステロイド療法で治癒した.1 例は
ステロイド療法 2 か月減量継続中である.【まとめ】5 例中 2 例はステロイド内
服にて経過観察しているが,3 例はステロイド内服後,外科的治療を施行した.
切除例 3 例全例において再発徴候は認められていない.肉芽腫性乳腺炎のステ
ロイド治療は長期間に及ぶことが多く病変の消失傾向が認められないときは
外科的治療を考慮すべきである.
382
古田 美保、山口 竜三、渡邊 真哉、笹本 彰紀、會津 恵司、井田 英臣、
伊藤 哲、秋田 直宏、中橋 剛一、田口 瑠美子、金井 道夫
2009 年から 2013 年の 5 年間のうち、画像診断を含めた臨床所見で乳癌を疑
い、病理組織診断で乳腺炎症性疾患、特に periductal mastitis(PDM:乳管周
囲炎)、granulomatous mastitis(GNM:肉芽腫性乳腺炎)と診断した 5 例に
ついて検討した。
内 訳 は PDM 4 例、GNM 1 例 で、 年 齢 は PDM 33 歳 ~ 58 歳( 平 均 44 歳 )、
GNM 39 歳であった。受診動機は、PDM では腫瘤自覚 2 例、血性乳頭分泌 1 例、
MMG 検診異常(石灰化)1 例、GNM では腫瘤自覚で、MMG, US, MRI, CT な
どの画像診断で乳癌を疑った。最終的な病理組織診断の方法として PDM では
針生検 (CNB)2 例、マンモトーム (MMT) 2 例、GNM は CNB で行った。
これらの炎症性疾患は比較的稀であるが乳癌との鑑別を要し、また炎症とし
ても難治で、再燃を繰り返しその治療に難渋した症例も報告されている。自
験例では PDM の 2 例と GNM の 1 例に、経過中炎症に対する治療として抗生剤
投与や切開排膿を行った。PDM の 1 例はその後も経時的に経過観察をしてお
り、再燃はしていない。その経過も含めて、文献的考察を加え報告する。
ポスター掲示
10558
10787
当院における Diabetic mastopathy の臨床病理学的検討
乳房温存術における切除断端陽性症例についての検討
GP-1-044-04
GP-1-045-01
1
香川県立中央病院 乳腺・内分泌外科、2 香川県立中央病院 乳腺センター、
3
香川県立中央病院 外科、4 香川県立中央病院 病理部
川崎 賢祐 1、小笠原 豊 1、白岩 美咲 2、治田 賢 3、久保 孝文 3、
田中 則光 3、吉川 武志 3、大橋 龍一郎 3、三竿 貴彦 3、青江 基 3、
中村 聡子 4
Diabetic mastopathy は長期罹患の糖尿病患者に見られる乳腺の良性腫瘤
性病変であるが,臨床所見や画像所見が乳癌と類似しているため鑑別が重要
である.今回我々は当院における 6 症例 8 病変の Diabetic mastopathy につ
いて臨床病理学的検討を行った.
年 齢 は 34 歳 ~ 74 歳( 平 均 62.8 歳 ),IDDM が 1 例,NIDDM が 5 例, 糖 尿
病罹患期間は平均 14.5 年であり,インスリン使用症例は 6 例中 4 例であった.
主訴は乳房腫瘤自覚が 4 例,検診発見が 2 例であり,8 病変の触知腫瘤径は
1cm ~ 6cm(平均 3.2cm)であった.マンモグラフィーでは 8 病変中 1 病変の
み腫瘤影を認め,3 病変が FAD として描出された.超音波検査では全例で辺
縁不整,境界不明瞭な低エコー腫瘤を認め,乳癌との鑑別を要した.穿刺吸
引細胞診では全例において細胞が少ないため確定診断に至らず,針生検を行
い,既往歴聴取と併せることで本症の確定診断が得られていた.病理学的に
は間質結合織における硝子化した膠原線維の増生と,乳管および血管周囲の
リンパ球浸潤を認めた.5 症例については増大傾向や悪性を疑う所見の出現は
なく経過観察中であるが,IDDM の 1 例では診断時より約 2 年で腫瘤が自然消
失した.
乳腺腫瘤の診断において,触診所見や画像所見で乳癌を疑うにもかかわら
ず,病理学的に悪性所見が得られない場合,本疾患を念頭に置いて問診をす
ることが正確な診断において重要であると思われた.
岐阜県厚生連岐北厚生病院 外科
高橋 治海、山本 悟、石原 和浩、田中 秀典、加藤 千佳
(はじめに)切除断端陽性は乳房温存術後の残存乳房内再発の最も重要な危険
因子である。当院での乳房温存術の切除断端に関する治療成績および問題点
について検討したので報告する。(対象と方法)2007 年 1 月から 2012 年 12
月までの 6 年間に手術した原発性乳癌(Stage 4 期を除く)に対し乳房温存術
を施行した 242 病変について、MRI,CT で病変の広がりを検討し、病変から
2cm のマージンを確保してマーキングし手術した。病理断端陽性とは側方切
除断端に癌が露出或いは 5mm 以内に近接している場合を陽性として、それ以
外を陰性とした (
. 結果)最終断端陽性は 36 病変 (14.9%) で追加切除を要した
ものは 17 病変 (7.0%) であり、追加乳腺部分切除が 7 病変((2.9%), 残存乳
房切除が 10 病変 (4.1%) であった。切除部に癌の遺残を認めたものは 10 病変
(4.1%) で追加乳腺部分切除が 3 病変、乳腺切除が 7 病変であった。病理標本
は基本的には乳癌取扱い規約に準じて検索したが、断端陽性の切片数を検討
すると 1 切片のみは 21 症例と最も多く、2 切片陽性は 5 症例、3 切片以上陽性
は 10 症例で切片数が多いほど追加手術の頻度は高くなった。また切除断端陽
性切片での病理所見では、浸潤性乳癌の乳管内伸展が 24 例で最も多く、次い
で DCIS の断端陽性例が 8 例、浸潤癌とたまたま併存した DCIS の断端陽性例
が 3 例、浸潤癌の断端陽性が 1 例であった。断端陽性となった原因について検
討すると、画像診断での拡がりや乳管内伸展が適切に評価できなかった場合
(A)、画像の評価は適切だったが、手術でのマーキングや乳腺切除方法などの
手術での不具合の場合(B)、予想外の病変の存在で断端陽性となった場合(C)
の3群に分けると、A 群 8 例、B 群 13 例、C 群 15 例となり、A 群、B 群での再
検討をすることで断端陽性例の過半数が減ると予想され、今後の重要な課題
であると思われる。
11546
乳腺切除断端の状態と局所再発の関係
当科の乳房温存部分切除術症例における手技と術中病理迅速診
断についての検討
GP-1-045-02
GP-1-046-01
大阪市立大学医学部 腫瘍外科
日本大学医学部 乳腺内分泌外科
川尻 成美、高島 勉、石原 沙江、浅野 有香、呉 幸枝、渡邉 真央、
森崎 珠実、青松 直撥、柏木 伸一郎、野田 諭、小野田 尚佳、仲田 文造、
石川 哲郎、平川 弘聖
(背景)近年早期乳癌において、乳房温存療法および残存乳腺放射線照射は、
標準治療として実施されている。その際、乳房切除断端に癌の露出を認める
と局所再発のリスクが高くなると報告されている。しかし術中断端病理検索
や断端陽性時における追加切除の有用性は明らかではない。今回当科での温
存手術症例を検討し、これらの必要性について考察する。(対象)2007 年 1 月
~ 2012 年 8 月に当科で乳房温存療法を施行された 365 例を対象とし、乳腺
切除断端の状態と局所再発および遠隔再発の関係を、レトロスペクティブに
検討した。当科での治療方針は、まず術前超音波にて乳腺切除範囲を決定し、
術中断端病理検索は施行せず、肉眼的に断端が 10mm 以上あれば術中断端陰
性と術中診断している。また断端陽性時および近接時は追加切除をせずに、
原則断端ブースト照射で対応している。
(結果)年齢は 26-94 歳 ( 中央値 58 歳 )
で、観察期間中央値は 42 ヶ月であった。83 例で術前化学療法がされ、その
内 40 例は病理学的完全奏効であった。また、40 例が腫瘍径 20mm 以上であり、
平均腫瘍径は 13mm であった。63 例に腋窩リンパ節転移を認めた。断端の状
態は、12 例 (3.3%) が断端露出、82 例 (22.5%) が断端近接 ( < 5mm)、271
例 (74.2%) が 断 端 陰 性 で あ っ た。 ま た、7 例 (1.9%) に 局 所 再 発 を、10 例
(2.7%) に遠隔再発を認めた。また、局所再発症例 7 例全例とも浸潤性乳管癌
で、1 例が断端陽性、2 例が断端近接であった。また、7 例中 2 例に遠隔再発
を認めた。断端の状態は有意な局所再発のリスク因子ではなかった (p=0.39)。
腫瘍径・乳管内進展の存在・PgR 陽性および術前療法非施行例が、断端陽性・
近接の危険因子であった。(考察)諸家の報告と比較しても断端陽性率は低く、
術中断端病理検索は、術前超音波によるマーキングと術中の肉眼的検索で代
用できると考える。また乳腺断端陽性率や局所再発率も低く、断端追加切除
の代替として断端ブースト照射は認容である可能性がある。ただし観察期間
が比較的短いため、今後も経過を追う必要があると考える。
平野 智寛、櫻井 健一、原 由起子、和賀 瑛子、松本 京子、萩原 美桜、
前田 哲代、榎本 克久、谷 眞弓、天野 定雄、水沢 ようこ、鈴木 周平、
長島 沙樹
【はじめに】2011 年度乳癌統計では約 6 割が乳房温存部分切除術(Bp)である
が、ガイドライン上で Bp の方法に対する指針はなく、各施設毎に手術を行っ
ている現状がある。【目的】当科では腫瘍辺縁から 2cm のマージンをとり 4 方
向の切除断端を術中病理迅速診断 (gef.) に提出し、過去 3 年の統計で Bp を施
行した 172 例中永久標本で断端陽性は 9 例(5.2%)であった。このデータに基
づき術中 gef. の簡略化の是非、及び手術マージンについて検討することとし
た。【方法】ここ6か月の Bp(2cm) に対し乳頭側断端1方向のみを術中 gef. に
提出し永久標本による断端評価を施行。【結果】術中 gef. にて断端陽性になっ
た症例を除き術前化学療法 (NAC) 施行者5例を含む計 63 例に施行した。断端
陽性は4例 (6.3%) であり、乳頭腺管癌が 2 例、硬癌が 1 例、粘液癌が 1 例で
NAC 症例はなし。硬癌例のみ乳頭側に ductal component(+) で、残りは全
例が断端陽性部に DCIS を認めた。【結語】術中 gef. を1方向に省略しても断
端陽性率は従来の方法とほぼ変わらなかった。現在はこの結果により乳頭側
2cm、他方向 1.5cm で手術施行しており、こちらのデータも追加して報告す
る。
383
一般セッション(ポスター掲示)
10066
ポスター掲示
11653
11209
当院における乳腺センチネルリンパ節の凍結切片作製における
CryofilmR 法導入前後の診断精度の比較検討
原発性乳癌におけるセンチネルリンパ節生検転移陽性症例の検討
GP-1-046-02
1
GP-1-047-01
熊本赤十字病院 乳腺内分泌外科
藤田保健衛生大学医学部 病理診断科、2 藤田保健衛生大学医学部 乳腺外科
桐山 諭和 1、浦野 誠 1、伊藤 幸 2、引地 理浩 2、宮島 慎介 2、小林 尚美 2、
内海 俊明 2、溝口 良順 1、黒田 誠 1
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】乳がん手術においては切除断端やセンチネルリンパ節(SLN)と
いった脂肪組織を多く含む検体の術中迅速診断が増加している。特に SLN
では術中迅速診断での診断精度も求められてきている。凍結切片作製時に
脂肪組織が混入した組織は作製が困難で再現性の良好な方法が確立されて
いない中、当院では標本作製時の artifact を減らした標本作製を可能とする
CryofilmR 法を導入し 3 年が経過した。当院での乳腺センチネルリンパ節の
迅速診断に際しての CryofilmR 法の導入前後の診断精度の比較検討を行った。
【材料・方法】当院では 2010 年 9 月に CryofilmR 法を導入したため、その約 2
年半前の期間、2008 年 4 月 1 日からの 251 件と、導入後約 2 年半の 2012 年
12 月 31 日までの 257 件の計約 5 年間、508 件を対象とした。SLN の適応は、
臨床的に明らかなリンパ節転移を認めない例に対して施行されている。同定
方法は放射性同位元素法と色素注入法とを可能な限り併用した。SLN の扱い
は術中提出されたリンパ節はすべて SLN とし、2mm 細切して凍結切片を作成
した。術後はすべて永久標本を作成し検討した。【結果】SLN 提出個数は 1 ~
10 個、平均 2.7 個であった。SLN 診断結果は SLN508 件のうち導入前は 48 件
の 67 個、導入後は 54 件の 70 個に転移を認めた。術中 SLN 迅速診断時の偽陰
性率は CryofilmR 法導入前後で 12 個(18.2%)と 14 個(19.4%)であり、偽
陽性率は 7 個(1.1%)と 2 個(0.2%)であった。偽陰性としたのは 2mm 以下
の微小転移とされるものが大半であった。【まとめ】CryofilmR 法導入により
artifact の少ない観察の容易な標本が作製でき、術中迅速診断時の病理医のス
トレスは減っている。今回の検討では CryofilmR 法導入前後では微小転移の
検出率や偽陰性率には変化が見られなかったが、やや偽陽性率に改善が見ら
れた。偽陰性例を提示し、診断精度の改善および今後の課題について検討する。
後藤 瞳、川添 輝
【目的】当院で施行した原発性乳癌におけるセンチネルリンパ節生検 (SNB) 転
移陽性症例について検討した。【対象】2009 年 7 月~ 2013 年 11 月に当院で
手術を施行した症例 435 例中、手術先行で SNB を施行した 242 例を対象とし
た。【結果】242 例中、センチネルリンパ節 (SLN) 転移陽性例は 38 例で陽性
率は 15.7% であった。全摘術を選択された症例の SLN 陽性率は 32.7% と、
温存術を選択された症例の 11.1% に比べ有意に高かった (p=0.0004)。 年齢
や組織型、部位、閉経状態による SLN 陽性率の差は認めなかった。OSNA 法
導入後の 2012 年 7 月~ 2013 年 12 月に SNB を施行した症例は 91 例であり、
SLN 転移陽性は 20 例で陽性率は 22.0% であった。OSNA 法導入後も SLN 陽
性率は全摘術の方が温存術を選択された症例よりも有意に高かった(全摘:
42.9%、温存:15.7%、p=0.01)。SLN 陽性症例 20 例中、判定 + は 8 例 (40%)、
++/+i は 12 例 (60%) であった。+ 群で nonSLN へ転移を認めた症例はなく、
++/+i 群では 4 例 (33.3%) であった。症例数も少なく、
有意な差は認めなかっ
たが、nonSLN への転移の有無の状況を予測する因子となる可能性が示唆さ
れた。OSNA にて転移陰性とされたが郭清まで施行された症例は 2 例あり、い
ずれも nonSLN への転移を認めた。2 症例ともに 4 個以上の nonSLN への転移
を認め、術中の触診所見等から郭清まで施行した症例であった。
【結論】SLN
陽性率は全摘術を選択するような腫瘍径の大きい症例では高かった。また、
OSNA 法の判定により nonSLN への転移の有無を判断する因子となる可能性
が示唆された。また、SNB の結果に加え、術前の画像所見、術中所見なども
含め総合的に判断し郭清を省略することも必要と考えられた。
11624
10852
当院における OSNA 法によるセンチネルリンパ節生検の検討
当院における OSNA 法と捺印細胞診についての検討
GP-1-047-02
GP-1-047-03
1
長野赤十字病院 乳腺内分泌外科、2 同 外科、3 同 腫瘍内科、4 同 病理、
5
中澤ウイメンズライフクリニック
浜 善久 1、福島 優子 1、大野 晃一 1、新城 裕里 2、上野 真由美 3、
渡辺 正秀 4、横山 史朗 5
【背景】
OSNA 法は CK19mRNA を定量的に検出することでセンチネルリンパ節
(SLN) の転移を判定し、従来法に比べ迅速性や精密性に優れている。また非
センチネルリンパ節 (non-SLN) との間にも相関があるといわれている。
【目的】
検討 1:SLN の術中診断での OSNA 法の有用性を従来の迅速病理診断法と比較
し、病理診断との間に乖離のある症例を検討した。検討 2:OSNA 法と nonSLN の関係について検討した。【方法】2013 年1月から 12 月までに当院で乳
癌手術を施行した 118 症例中、SLN 生検を行った 86 例 (SLN 施行率 72.9% )。
SLN 生検の適応は cT0-2,N0,M0 の乳癌で、SLN の同定は色素 (ICG) 法で施行
した。従来は SLN を 2mm 間隔で細切し鏡検していたが、当院では同年 6 月よ
り OSNA 法を導入し、SLN は細切した半分を OSNA に使用し、残りを永久標
本として病理診断を行った。SLN 転移陽性の場合は、原則的に腋窩郭清を施
行した。検討 1:OSNA 法の導入前後で背景因子と転移陽性症例数 ( 率 )、導
入後の最終病理診断との比較を行った。検討 2:OSNA 法での転移陽性例で、
non-SLN のリンパ節転移の状況を調べた。【結果】SLN 生検は OSNA 導入前
に 29 例、導入後 57 例に施行された。検討 1:背景因子のうち年齢、SLN 施
行率、SLN 数、DCIS 症例数などは導入前後で差は認めなかった。OSNA 導
入前に SLN に転移を認めたものは 2 例で、1 例は 2mm 以下の微小転移例で、
陽性率は 6.9% (2/29) であった。導入後は 12 例が転移陽性であり、内訳は
(+);2.5x102 ~ 5.0x103copies μ /L が 3 例、(++);5.0x103/ μ L 以上が 9 例で
あり、転移陽性率は 21.1% (12/57) であった。最終病理診断との乖離を認め
た症例は 2 例あり、1 例は ITC 相当、もう 1 例は SLN(3/3),OSNA(++),3100/
μ L であったが病理で癌を認めなかった。組織診断との一致率は 83.3%であっ
た。検討 2: OSNA 法で転移陽性と診断された 12 症例のうち郭清を行い、
non-SLN に転移は 3 例に認められ、平均 copy 数は 158000/ μ L と高値であっ
た。【考察】OSNA 法導入後はリンパ節の癌細胞の分布に関係なく主に微小転
移を検出したと思われる。OSNA 転移陽性例で (+) に関しては腋窩郭清を省
略できる可能性があるが、逆に copy 数の高いものは non-SLN に転移を認め
る傾向が示唆され、慎重な対応が必要であると思われる。【結論】OSNA 法に
よる SLN の術中診断は迅速病理診断法に比べ感度が高く、転移の判定に有用
であった。OSNA(+) 群の予後や高 copy 群の non-SLN への転移については今
後症例を蓄積して検討したい。
東京医科大学病院 乳腺科
上田 亜衣、海瀬 博史、宮原 か奈、河手 敬彦、中村 幸子、木村 芙英、
松村 真由子、小松 誠一郎、山田 公人、河野 範男
【はじめに】分子病理診断法である OSNA 法は従来の術中検査法に比べ、微小
転移や ICT も同定できるため、より正確なリンパ節転移診断が可能となる。
当院では術中迅速診断として OSNA 法と捺印細胞診を併用し、センチネルリ
ンパ節の転移診断を行っている。OSNA 法と捺印細胞診の同時併用の有用性
について検討した。【対象と方法】当院で 2013 年 1 月から 11 月までにセンチ
ネルリンパ節生検を施行した 151 例を対象とした。摘出されたリンパ節は病
理検査室に運ばれ、捺印細胞診を施行する。その後リンパ節は遺伝子検査室
へ運ばれ OSNA 法による転移診断が行われ、その診断結果が手術室へ送られ
るシステムとなっている。手術時、センチネルリンパ節の同定は RI(99mTc
フチン酸 ) と色素 ( インジゴカルミン ) による併用法で行った。摘出したセン
チネルリンパ節は 2mm スライスに分割し、全ての割面でスタンプ標本を作
成した後、リンパ節全てを OSNA 法により測定した。【結果】センチネルリン
パ節の同定率は 100%であった。センチネルリンパ節の平均摘出個数は 1.69
個で、1 個当たりの平均リンパ節重量は 268.9mg であった。OSNA 法の平均
検査所要時間は 26.0 分であった。OSNA 法にて> 2.5 × 102 copies/L で陽性
となったのは 24 例 (OSNA(++);15 例、(+);9 例 ) で陽性率は 15.9%だった。
このうち捺印細胞診で class 3b 以上は OSNA(++);12 例、(+);4 例であった。
OSNA 法と捺印細胞診の一致率は OSNA(++);80.0%、(+);44.4%であった。
偽陽性例は認めなかった。【結論】OSNA 法の導入によってリンパ節全体を探
索可能になり、より正確に転移の有無を診断することが可能となった。捺印
細胞診は簡便であり、かつマクロ転移においては精度も高く、標本の保存が
可能であるという点からも十分に許容される検査法であると思われる。
384
ポスター掲示
10343
11740
OSNA 法による乳癌センチネルリンパ節生検の成績と問題点
OSNA 法と細胞診を併用したセンチネルリンパ節生検転移陽性
症例の検討
GP-1-047-04
GP-1-047-05
1
国立病院機構佐賀病院 外科、2 国立病院機構長崎医療センター 外科、
3
長崎大学大学院生命医科学講座 探索病理学
1
1
1
1
1
1
大久保 仁 、中島 弘治 、福田 正義 、峯 由華 、円城寺 昭人 、
前田 茂人 2、林 洋子 3、山口 淳三 1
栃木県立がんセンター 外科、2 同 臨床検査部、3 同 病理
安藤 二郎 1、北村 東介 1、矢野 健太郎 1、原尾 美智子 1、飯野 望 2、
中野 公子 2、上田 香織 2、星 暢夫 3、五十嵐 誠治 3
(目的)OSNA 法と細胞診を併用したセンチネルリンパ節(SLN)生検転移陽
性症例における non SLN 転移率について検討した。(対象と方法)対象は
2011/9 月 -2013/12 月に色素 +RI 併用法(3D-CT ガイドあり)SLN 生検を行
い、リンパ節転移検索を 2mm 分割の細胞診施行後に全 SLN を OSNA 法で検
討した cN0 乳癌手術症例 280 例である ( 両側 SLN 生検例、術前化学療法例、
SLN 生検不成功例、CK19 陰性例を除外 )。全例に術前の針生検で CK19 の発
現を検討し、CK19 陰性例は OSNA 法の適応外とした(CK19 陰性率:4.4%、
13/293 例)。OSNA 法で SLN 転移陽性例には腋窩 LN 郭清を施行した。
(結果)
OSNA 法で SLN 転移陽性が確認された症例は 52 例、18.6%であった(OSNA
法 1+ 15 例、2+ 27 例、I+ 10 例 )。non SLN 転 移 率 は OSNA 法 1+ 例 で
7%(1/15)、2+ 例 で 30%(8/27)、I+ 例 で は 0%(0/10) で あ っ た。 細 胞 診
陽 性 率 は OSNA 法 1+ 例 で 20%(3/15)、2+ 例 で 85%(23/27)、I+ 例 で は
0%(0/10) であった。(結語)OSNA 法 1+ 症例、I+ 症例に関しては non SLN
転移率は低く、非郭清での対応も考慮されうると考えられた。
10463
10935
OSNA 法による術中センチネルリンパ節生検の検討
閉経後乳癌における exemestane を用いた術前内分泌療法後の
センチネルリンパ節生検の有用性に関する検討
GP-1-047-06
GP-1-047-07
1
駿河台日本大学病院、2 日本大学医学部 乳腺内分泌外科、
3
駿河台日本大学病院 病理、4 日本大学医学部病態病理学系 腫瘍病理学分野
1
埼玉県立がんセンター 乳腺外科、2 埼玉県立がんセンター 病理診断科、
群馬大学医学部 臓器病態外科、4 埼玉県立がんセンター 乳腺腫瘍内科、
5
日本医科大学 乳腺科
3
飯塚 美紗都 1,2、谷 眞弓 1,2、杉山 順子 1、佐藤 一雄 1、渡辺 紀子 3、
絹川 典子 3、榎本 克久 2、櫻井 健一 2、天野 定雄 2、増田 しのぶ 4
センチネルリンパ節生検転移陽性症例において術中迅速病理診断と One-Step
Nucleic Acid Amplification Method (OSNA 法 ) の比較検討を行い、今後の
運用法について検討した。<対象>当院にて 2010 年 11 月から 2013 年 12 月
までに原発性乳癌 cN0 症例に対し施行されたセンチネルリンパ節生検 87 例中
転移陽性の 18 例。対象症例の平均年齢は 55.1 歳(34-80 歳、中央値 54 歳)
<方法>センチネルリンパ節の同定は色素法で施行。OSNA 法の検証のため、
2mm 間隔の組織診と半量を OSNA 法で検索した<結果>提出検体数は平均
2.6 個(中央値 3 個)。センチネルリンパ節生検にて転移陽性は 18 例。このう
ち術中迅速診断と OSNA 法ともに転移陽性は 16 例。2 例が OSNA 法でのみ転
移陽性で術中迅速診断陰性であった。OSNA 法転移陰性で術中迅速診断のみ
陽性例は 0 例であった。OSNA 法のみ転移陽性例は転移判定 2 +と1+各1例
ずつ。いずれも腋窩郭清が施行された。OSNA 法の感度・特異度は各 100%。
術中迅速診断の感度は 88.8%、特異度は 100%、偽陰性率は 11.1%であった。
OSNA 法によるセンチネルリンパ節診断能は従来の術中迅速診断法比しほぼ
同等の結果を有していた。今後 OSNA 法による全標本検索への移行を検討し
ている。
戸塚 勝理 1、松本 広志 1、林 祐二 1、久保 和之 1、黒住 献 1、二宮 淳 1、
小松 恵 1、大庭 華子 2、堀口 淳 3、黒住 昌史 2、大久保 文恵 4、
永井 成勲 4、井上 賢一 4、武井 寛幸 5、竹吉 泉 3
【目的】閉経後ホルモン受容体陽性乳癌に対して術前内分泌療法 (NAE) を行
うことで乳房温存率が向上することが報告されているが、NAE 後のセンチ
ネルリンパ節 (SLN) 生検の有用性についてはまだ十分な情報が得られていな
い。 今 回,exemestane(EXE) を 用 い た NAE 後 の SLN 生 検 の 有 用 性 に つ い
て臨床病理学的に検討を行った。【対象と方法】2003 年から 2013 年までに
EXE を用いた NAE 後に SLN 生検を施行した ER もしくは PgR 陽性の閉経後浸
潤性乳癌 125 例を対象とした.SLN 生検は併用法 ( 色素と RI)を用いた.年
齢 は 49-83( 平 均 64.8) 歳 で あ り, 術 前 病 期 は I:28 例,IIA:86 例,IIB:
8 例,IIIB:3 例であった.投与期間の中央値は 6.3 ヶ月で,観察期間の中
央値は 42.1 ヶ月であった.NAE 後の組織学的効果を grade0+1a( 弱効果 )
群および grade1b-3( 強効果 ) 群に分けて検討した.【結果】SLN の同定率は
96.8%(121/125) であり,当センターの術前治療非施行例の同定率 98% と
ほぼ同等の結果であった.NAE 後の組織学的効果別に SLN 同定率を比較する
と,弱効果群で 98.6%,強効果群で 94.5% であり,強効果群のほうがやや
低かった ( 有意差なし ).最終的な組織診断でリンパ節転移は 46 例 (36.8%)
に認められた.また,術中迅速病理診断で SLN 転移陰性と診断された 90 例の
うち,永久標本で転移陽性となった (intra-operative false negative:IFN)
症 例 は 12 例 (13.3.%) で あ っ た. そ の 内 訳 は isolated tumor cells:1 例,
micrometastasis:7 例,macrometastasis:4 例であった.当センターの術
前治療非施行例の IFN rate は 11.3% であり,NAE 施行例ではやや高い傾向
にあった.NAE 後の組織学的効果別にみた IFN rate は効果によって差は認め
られなかった.IFN 症例では 1 例を除き追加腋窩リンパ節郭清は施行されな
かったが,現在まで腋窩リンパ節再発は認められていない.【結語】EXE を用
いた NAE 後の SLN 生検において,SLN 同定率は術前治療非施行例とほぼ同等
の結果であった.IFN rate もほとんど差はなく,NAE 後の SLN 生検の有用性
が示唆された.
385
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】ACOSOGZ0011 試験において乳癌センチネルリンパ節 (SLN) 転移陽性
例に対する腋窩リンパ節郭清 (ALND) の追加は局所コントロールに影響する
可能性はあるが生存率に有意な影響を示さなかった。OSNA 法は CK19mRNA
をマーカーとした分子病理診断法で従来の病理学的判定法と比較して迅速性、
感度、特異度は劣らず、定量化のメリットを有する。OSNA 法での非センチ
ネルリンパ節転移予測についての報告は少ない。【目的】当院で施行している
OSNA 法による乳癌センチネルリンパ節生検の成績を出すことにより、その妥
当性、問題点、非 SLN 転移予測因子を探る。【方法】2010 年 4 月~ 2013 年 8
月に施行した原発性乳癌手術 247 例中、術前診断で cN0 と判定した乳癌 164
病変に対して行った SLN 生検 156 施行例を対象とした。SLN 生検は色素法(パ
テントブルー ) 単独で同定・摘出し、リンパ節4分割の 2 切片を術中 OSNA 法
で判定し、残りを病理診断に供した。OSNA 法の判定と病理組織学的判定の
一致状況、病理組織学的因子について検討した。【成績】同定率は 95.7%。摘
出リンパ節は平均 1.52 個。OSNA 陽性 19 例 (12.1%) において CK19mRNA
濃度と病理判定結果に相関が見られた。OSNA 陰性・病理陽性5例中 3 例で組
織中の CK19 免疫染色で陰性所見が認められた。OSNA 陽性で ALND を追加し
た 18 例中4例に非 SLN 転移を認めたが、1+ よりも 2+ の方に転移リンパ節
個数が多い傾向を示した。病理組織学的因子では ER、PgR、HER2、核グレー
ドには相関は無かったが、腫瘍径、SLN 転移陽性個数 /SLN 同定個数、脂肪
組織浸潤、脈管浸潤と非センチネルリンパ節転移との間には相関傾向が認め
られた。
【結論】OSNA 法による乳癌センチネルリンパ節生検の問題点として
CK19 陰性乳癌の存在が挙げられ対策が必要。乳癌 SLN 転移陽性患者の臨床
病理組織学的因子のうち、腫瘍径、SLN 転移陽性個数 /SLN 同定個数、脂肪組
織浸潤の有無は非 SLN 転移予測因子となり得ることが示唆された。
ポスター掲示
11859
11598
当院における術前化学療法後のセンチネルリンパ節生検の経験
術中センチネルリンパ節検査における川本法(粘着プラスティッ
クフィルム法)の有用性
GP-1-047-08
GP-1-047-09
1
独立行政法人地域医療機能推進機構久留米総合病院 外科、
2
久留米大学医療センター 病理診断科
1
1
1
1
1
1
大塚 弘子 、山口 美樹 、村上 直孝 、田中 夏樹 、津留崎 早也加 、
西村 太郎 1、田中 眞紀 1、山口 倫 2
新潟市民病院 病理診断科、2 新潟市民病院 乳腺外科
橋立 英樹 1、渋谷 宏行 1、三間 紘子 1、三尾 圭司 1、牧野 春彦 2、
天願 敬 2、辰田 久美子 2
術前化学療法後のセンチネルリンパ節生検について日本乳癌学会の乳癌診療
ガイドラインでは術前 N0 症例においては推奨グレード C1 でセンチネルリン
パ節生検による郭清省略を行うことを考慮しても良いとされている。当院で
も N0 症例において 2009 年 12 月診断症例から 2012 年 2 月診断症例(手術は
2010 年 8 月から 2013 年 8 月まで)まで 12 名、術前化学療法後にセンチネル
リンパ節生検を施行した。術前化学療法のレジメンは FEC のみが 3 例、FECDTX が 1 例、FEC-DH が 5 例、TC が 2 例、nabPTX+Herceptin-FEC( 臨 床 試
験)が 1 例であった。センチネルリンパ節の同定にはリンフォシンチグラフィ
を用い、術中検索では RI 法と色素法との併用法を用いた。センチネルの同定
は 12 例中 11 例で可能であった。センチネルリンパ節に転移を認めたものが
2 例あり、その 2 例には通常通りのリンパ節郭清を施行した。術後治療は摘出
標本の最終病理結果とホルモン感受性や HER2 の発現状況に応じて行い、平
均観察期間 19 ヶ月であるが現在まで 1 例に腰椎転移疑いの所見を認めるのみ
であり腋窩リンパ節再発は認めていない。以上から術前 N0 症例における術前
化学療法後のセンチネルリンパ節生検は実臨床として安全かつ有効である可
能性があると考えられた。
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】術中センチネルリンパ節生検 (SNB) の偽陰性は、主として迅速凍結標
本のクオリティの低さに起因する。川本法は薄切面に薄い粘着性プラスティッ
クフィルムを装着することで、迅速標本のリンパ節組織欠損やしわ・折れ曲
がりを回避しその質を向上させる。SNB と永久標本でみたリンパ節診断結果
を比較検討し、川本法導入後の SNB 偽陰性率の改善を試みた。【材料・方法】
2008 年 1 月~ 2013 年 5 月、新潟市民病院乳腺外科において、術中迅速診断
が行われた乳癌 557 病例(551 症例)を対象とした。SN は 2mm 間隔で全割し
迅速診断を行い、翌日永久標本(H & E のみ、免疫染色は未施行)にて、転移
の有無につき再評価した。2010 年 8 月に川本法を導入し、その前後で SNB の
診断精度を比較検討した。【成績】検索された全リンパ節は 1199 個(1例当た
り 2.2 個)であった。迅速診断で転移陽性は 105 例(18.9%)、永久標本で転
移陽性は 111 例(19.9%)であり、偽陰性は 6 例(1.1%)であった。川本法導
入前後の比較では、導入前 208 例中 SNB 偽陰性は 4 例であったのに対し、導
入後 349 例中 SNB 偽陰性は 2 例であり、導入前後で SNB 検査の sensitivity
91.7 → 96.8%、specificity 100 → 100%、accuracy 98.1 → 99.4%、false
negative rate 8.2 → 3.2% であった。【結語】川本法は SNB 偽陰性の減少に有
効であると考えられた。【考察】乳癌の微小転移・初期転移病巣はリンパ節被
膜直下の周辺洞付近に多い。従来法では全周性にリンパ節被膜直下組織を標
本化することは困難であり、同部に小さな転移巣がある場合は術中迅速診断
で偽陰性となる。川本法はリンパ節と周囲の脂肪組織も標本化することが可
能であるため、リンパ節被膜および被膜直下周辺洞の観察により優れる。川
本法は薄切面に粘着性プラスティックフィルムを装着して薄切し、UV 照射を
必要とするが、1症例あたり平均プラス 5 分程度の所要時間で済み、特別な技
術や大規模な装置導入は必要ない。またカバーグラスをかけることで、半永
久的な標本保存も可能である。川本法導入によりリンパ節辺縁部まで隈なく
標本化できる川本法は SNB 診断において従来法よりも優れており、簡便で1
枚当たりプラス 100 円程度のランニングコストで済む比較的低コストな対策
法である。
10989
11166
細胞検査士による捺印細胞診によるセンチネルリンパ節の術中
診断は妥当か?
乳癌における腋窩センチネルリンパ節同定不能症例の検討
GP-1-047-10
1
3
GP-1-047-11
1
2
秦野赤十字病院 外科、 秦野赤十字病院 病理部、
横浜市立大学 外科治療学教室
金沢医科大学 乳腺・内分泌外科、2 金沢医科大学 一般・消化器外科
中野 泰治 1、森岡 絵美 1、大野 由夏子 1、野口 美樹 1、野口 昌邦 1、
小坂 健夫 2
稲荷 均 1、蓮尾 公篤 1、諸星 利男 2、杉山 朋子 2、中野 友由枝 2、
益田 宗孝 3
【背景、目的】病理医が非常勤のため、当院では、手術時の迅速病理診断が常
にできるわけではない。センチネルリンパ節の術中診断は、病理医不在の時は、
細胞検査士による捺印細胞診で行っており、病理医在院の時は、凍結切片組
織診で行っている。今回我々は、細胞検査士による捺印細胞診と病理医によ
る凍結切片組織診と精度を比較し、細胞検査士による捺印細胞診が妥当かど
うか検討した。【対象と方法】2010 年 4 月より 2013 年 10 月までに、乳房切除
もしくは乳房部分切除センチネル生検(色素法)を施行した症例 88 例を対象と
した。対象症例は、術前診断で、stage0 から stage2A で N0 の乳癌症例であっ
た。捺印細胞診の症例を C 群、凍結切片組織診の症例を H 群とした。術後病
理診断をもとに、C 群、H 群のセンチネルリンパ節の術中診断の精度を比較検
討した。【結果】C 群の症例は、40 例、H 群の症例は、48 例であった。術中に
診断したセンチネルリンパ節は、C 群で 118 個、H 群で 131 個であった。術中
診断で転移陽性であったセンチネルリンパ節は、C 群で 18 個(15%)、H 群で
8 個(6%)であった。術後病理診断で転移陽性であったセンチネルリンパ節は、
C 群で 20 個(17%)、H 群で 12 個(9%)であった。センチネルリンパ節の偽
陰 性 例 は、C 群 で 2 個(1 個 が macrometastasis、1 個 が micrometastasis)、
H 群で、4 個(1 個が macrometastasis、3 個が micrometastasis)であった。
感度は、C 群で 90%、H 群で 66% であった。特異度は両群とも 100% であっ
た。陽性反応的中度は両群とも 100% であった。陰性反応的中度は、C 群で
98%、H 群で 97% であった。統計学的検討では、C 群、H 群の感度 (p=0.2)、
陰性反応的中度 (p=0.87) に有意差はなかった。【考察】今回の検討では、C 群、
H 群の精度は同等と考えられた。
【背景】乳癌手術時にセンチネルリンパ節生検を行うことは重要である.しか
し,ときにセンチネルリンパ節 (SN) が同定できない症例を経験する.これ
までこのような症例には腋窩郭清を行ってきたので検討を行い報告する.【対
象と方法】2002 年 4 月~ 2013 年 6 月に当科で乳癌腋窩のセンチネルリンパ
節検索をおこなった 451 例について検討した.センチネルリンパ節の同定に
は RI リンフォグラフィー,および色素法を併用した.【結果】センチネルリン
パ節が同定できなかったのは 21 例(4.7%)であった.いずれも腋窩リンパ節
郭清が施行された.総摘出リンパ節は5~ 3 1個 ( 平均 16 個 ) であった.病
理組織学的検索では21例中 10 例 (47.6%) に 1 ~ 17 個の腋窩リンパ節転
移を認めた.2009 年より術前腋窩リンパ節転移診断に PET-CT を導入して
おり,PET-CT 導入前と導入後の SN 同定不能症例を比較した.導入前症例は
11 例で,導入後症例は 10 例であった.導入前症例の腋窩リンパ節転移率は
8/11(72.7%) で導入後症例の腋窩リンパ節転移率は 2/10(20.0%) であった.
導入前症例の腋窩リンパ節転移個数は1~ 17 個で,導入後症例の腋窩リンパ
節転移個数は1個であった.【結語】SN 同定不能症例における,腋窩リンパ節
転移率は,PET-CT 導入前の 72.7% から導入後の 20.0% と減少した.
386
ポスター掲示
10373
11099
当院におけるセンチネルリンパ節生検転移陽性例に対する臨床
病理学的因子の検討
定量性のある乳癌原発巣のリンパ管侵襲評価によるとセンチネ
ル・非センチネルリンパ節転移予測の検討
GP-1-047-12
GP-1-047-13
新東京病院
日本赤十字社長崎原爆病院 外科
林 剛、浅川 英輝、村林 亮
柴田 健一郎、畑地 登志子、谷口 英樹
【目的】センチネルリンパ節 (SN) 転移陽性を術前に画像診断以外で判断でき
るものはないか検討した。【方法】2005.7 月から 2013.10 月までに SN 生検
を施行した原発性乳癌手術 129 症例 ( 平均 61.6 歳 ) を対象とした。SN 生検は
2012.12 月までは色素法単独、その後は RI 法を併用して行った。SN 転移の
危険因子として臨床病理学的因子を検討した。【結果】腫瘍径は平均 1.46mm
で、病変占拠領域は C 領域が多かった。術前生検方法は、全例で FNA・CNB
を施行し、バコラ生検 10 例、摘出生検 4 例であった。SN 摘出個数は平均
1.45 個で、陽性 18 例、陰性 111 例であった。陽性 18 例に対して追加で腋窩
郭清を行った結果 non-SLN への転移は 2 例 (11.1%) のみであった。腫瘍径は
陽性群平均 1.86 ± 0.85mm、陰性群 1.39 ± 0.96mm、脈管侵襲陽性が各々
88.9%、14.4% と有意差を認め、年齢、病変占拠領域、ホルモンレセプター
陽性率、HER 陽性率、Ki67 陽性率、SN 摘出個数に有意差はなかった。SN 転
移に関する危険因子の単変量解析では、脈管侵襲は SN 転移の危険因子であっ
たが、腫瘍径・病変領域・ER・HER2・Ki67・SN 摘出個数は危険因子ではな
いと判断された。
【考察】腫瘍径の大きいものは SN 転移陽性の可能性が高いが、
術前の検査のみで SN 転移を予測しうる因子はないと考えられた。
【背景】腋窩リンパ節転移のスクリーニング法としてのセンチネルリンパ節
生検は腋窩郭清に伴う後遺症を防ぐ上でも非常に有益な方法である。また
ACOSOG Z11 や EORTC AMAROS trial などの結果から、適切な補助療法を
加えることを前提にセンチネルリンパ節転移陽性症例においても腋窩郭清は
省略される傾向にある。そのため、腋窩リンパ節転移個数は補助療法決定に
非常に重要であるものの、リンパ節転移の情報が画像以外で得られる機会は
現在以上に減少すると思われる。【目的】乳癌原発巣のリンパ管侵襲像は腋窩
リンパ節の状況を反映していると考えられるが統一された客観性のある評価
法がないという問題点がある。前述の背景から、我々は原発巣のリンパ管侵
襲像を定量的に評価できないか、またその評価法を用いてセンチネルリンパ
節および非センチネルリンパ節転移を予測することができないか検討を行っ
ている。【対象・方法】これまでに cT1-2N0、センチネルリンパ節生検症例 94
例(センチネルリンパ節転移陽性 64 例、陰性 30 例)の乳癌切除標本を用いて、
リンパ管内皮に特異的な抗体である D2-40(Podoplanin) で免疫組織染色を行
い、定量性、再現性のあるリンパ管侵襲評価法を検討した。またその評価法
とセンチネル・非センチネルリンパ節転移との相関も検討した。【結果・まと
め】リンパ管侵襲像評価項目の内、特にリンパ管侵襲細胞数とセンチネルリン
パ節転移の有無には統計学的に有意な相関が認められたが、求められたカッ
トオフ値(侵襲癌細胞数 1 個、感度:0.733 特異度:0.719)の設定にはまだ
検討の余地があると思われた。また今回の検討では非センチネルリンパ節転
移との相関は確認できなかった。今後症例を増やし、検討を進めていく予定
である。
11769
乳癌骨・骨髄転移におけるバイオマーカー発現の検討
当院における乳癌骨転移症例の臨床病理学的検討
GP-1-048-01
GP-1-048-02
国立がん研究センター中央病院
東京医科大学病院
油田 さや子、清水 千佳子、下井 辰徳、椎野 翔、木下 貴之、吉田 正行、
山本 春風、前島 亜希子、田村 研治、藤原 康弘
松村 真由子、上田 亜衣、宮原 か奈、河手 敬彦、中村 幸子、木村 芙英、
小松 誠一郎、山田 公人、海瀬 博史、河野 範男
【背景】乳癌診療ガイドラインでは遠隔転移巣の生検が推奨されている。過去
の報告では、転移巣再生検で ER、PgR、HER2 の変化は各 15、30、7%程度
と報告されているが、骨病変に特化した報告は少ない。今回、乳癌骨・骨髄
転移が病理学的に確定した患者において、バイオマーカーの発現を後方視的
に検討した。
【方法】対象は 2005 年から 2013 年までに骨・骨髄生検により病理学的に乳癌
転移が確定した 63 例中、原発巣・骨病変ともに免疫組織学的検査をされてい
た 20 例。検体は EDTA で脱灰後に免疫染色を実施。ER, PgR は陽性細胞占有
率 1%以上を陽性とした。
【結果】骨生検例 15 例、骨髄生検例 5 例。骨生検は、診断時または最終治療か
ら長期間経過後の症例 9 例 ( 中央値 117 か月 )、病的骨折手術例 3 例、初発時
骨生検例 3 例。骨髄生検は、いずれも血球減少の原因検索目的で実施。全 20
例中 4 例は診断時に原発と骨の生検が同時に実施、他の 16 例中 14 例は薬物
療法歴を有した。原発と転移の HER2 の不一致は認めなかった。20 例中 10
例 (50% ) にホルモン受容体が何らかの変化を認めた。ER( - ) → ( + )2 例、
( + ) → ( - )4 例。PgR( - ) → ( + )2 例、( + ) → ( - )5 例。ER ま た は PgR が
陽性化した 3 例は、骨病変出現以前の内分泌療法歴がなかった。原発・転移
同時生検例のうち 1 例では転移巣において ER、PgR 共に陰性化していた。ま
た、転移巣でホルモン受容体陰性でも全例に生検後に内分泌療法が実施され、
奏効例も認めた。
【考察】骨・骨髄生検施行に至った経緯は様々であり、半数にホルモン受容体
の発現状況の変化を認めた。内分泌療法歴のない症例でホルモン受容体が陽性
化を認めたこと、原発と転移の同時生検例でバイオマーカーの不一致を認め
たことから、発症時より乳癌細胞のバイオマーカー発現状況が heterogenous
であることや、経過中に特定のクローンが骨に残存する可能性が考えられた。
また、原発巣と骨病変を同時に生検例でのホルモン受容体の不一致例や、転
移巣ホルモン受容体陰性例で内分泌療法奏効例を認めたことから、脱灰など
骨転移特有の検体処理過程がホルモン受容体の検査感度を落とす可能性を示
唆された。【結論】骨・骨髄生検標本のバイオマーカー検索の結果の解釈には
注意を要する。大規模な前向き研究と同時に、骨生検検体の適切な処理方法
の検討も望まれる。
【背景】乳癌において骨は初発転移部位として最も多く、進行乳癌で 30-85%
の患者に骨転移を認めるとされている。今回、当科における骨転移症例を
retrospective に検討した。【対象と方法】1997 年 6 月 5 日から 2013 年 12 月
4 日の間に当科にて乳癌骨転移と診断された 223 例を対象とした。初発再発
部位が骨単独であった群(以下 A 群)
、初発再発部位が骨以外であった群(以下
B 群)、骨と骨以外を同時に再発した群(以下 C 群)の 3 群にわけ、観察期間を
60 カ月とし、Kaplan-Meier 法により再発後生存期間、全生存期間、χ 2 乗検
定により病理学的な検討した。また Kaplan-Meir 法により転移臓器数別の再
発後生存期間と全生存期間を検討した。【結果】観察期間中央値である 30 カ月
の生存率は A 群 (n=115) が 86%、B 群 (n=75) が 73%、C 群 (n=28)が 65%
であった。再発までの無病生存期間の中央値は A 群 48.2 カ月、B 群 42.0 カ月、
C 群 42.2 カ月で A 群が最も長かった。病理学的には A 群で ER +が有意に多
かった(p=0.0147)。PgR は p=0.40、Her2 は p=0.093 と有意差はなかった。
サブタイプは p=0.0889 で有意差はなかった。また、転移臓器数別の再発後
生存期間は転移臓器が 1 個の群 (n=107) は 54 カ月、2 個の群 (n=82) は 73 カ
月、3 個の群 (n=20) は 24 カ月、4 個の群 (n=7) は 22 カ月、5 個の群(n=2)
は 12 カ月であった。【考察】観察期間中央値の生存率が A 群が最も高かったこ
と、転移臓器数が 2 個以下であった場合は再発後生存期間が長期であることよ
り、初再発部位が骨転移単独であった場合は長期の生存を見込める。上記に
若干の文献的考察を加えて発表する。
387
一般セッション(ポスター掲示)
11791
ポスター掲示
11252
11948
当科における転移・再発乳癌症例の原発巣と転移巣のサブタイ
プ検討
乳癌転移再発部位での HER2 発現の変化に関する検討
GP-1-048-03
1
GP-1-048-04
愛知医科大学 乳腺・内分泌外科
新潟市民病院 乳腺外科、2 新潟市民病院 病理診断科
藤井 公人、手塚 理恵、安藤 孝人、高阪 絢子、毛利 有佳子、吉田 美和、
中野 正吾、今井 常夫、福富 隆志
辰田 久美子 1、牧野 春彦 1、天願 敬 1、橋立 英樹 2、渋谷 宏行 2
【目的】転移・再発乳癌における原発巣と転移巣のサブタイプ比較【対象・方
法】1997 年から 2013 年までの間に転移・再発乳癌と診断された症例 175 例
のうち、原発巣と転移・再発巣の両方で病理組織検査が行われた 52 例を対象
とし、原発巣と転移・再発巣のサブタイプを比較した。【結果】原発巣のホル
モン受容体陽性例は 36 例であった。補助療法・再発治療を含めて 34 例にホ
ルモン療法が、21 例に化学療法が行われていた(重複を含む)。そのうち 3 例
でホルモン受容体の陰転化を認め、3 例ともホルモン療法が行われていた。原
発巣のホルモン受容体陰性例は 11 例で、そのうち 1 例でホルモン受容体の陽
転化を認め、補助療法として UFT が投与されていた。原発巣の HER2 が検索
されていたものは 37 例あり、HER2 陽性は 4 例、HER2 陰性は 33 例であった。
HER2 の陽転化を 1 例で認め、化学療法・ホルモン療法が行われていた。【結
語】治療、その他の影響により原発巣と転移・再発巣のサブタイプの変化が起
こることがある。転移リンパ節も含めて、各病巣の核グレード、Ki-67 も含め
たサブタイプを比較検討したい。
【目的】乳癌の転移再発時のホルモンレセプターおよび HER2 発現の変化を経
験することがある.我々は再発時に HER2 が陽転化した患者を対象に,その
背景と原発腫瘍および再発腫瘍の病理学的評価を行った.【患者および方法】
当院で転移再発乳癌の治療を受けた 70 人の患者にて,再発時に HER2 発現
が陽転化した 7 例を解析した.HER2 および Ki-67 index を原発および再発
部位において免疫組織学的染色法で評価した.HER2 は免疫組織学的染色法
で 2+ の場合,FISH 法で比 2.2 以上を陽性と判定した.患者背景として組織
型,術後補助療法の内容等を検討項目とした.【結果】手術時で年齢中央値
50.0 歳( 範 囲 34.6 ~ 77.4),Invasive ductal carcinoma 6 例,invasive
micropapillary carcinoma 1 例,全例 Stage II であった.術後補助治療は,
アロマターゼ阻害剤内服のみが 1 例,その他 6 例は化学療法とホルモン治療が
行われていた.無病期間(年)および全生存期間(年)は各々,中央値 2.91,8.44
で,範囲は 1.6 ~ 8.1,3.8 ~ 11.5 であった.転移再発部位は,局所および
リンパ節 5 例,肺 1 例,肝 3 例で Ki-67 index(median, %)は,原発および
再発部位で,各々 13.6,15.1 と上昇傾向を認めた.病理評価にて興味深い点
は,原発や転移リンパ節の HER2 免疫組織学的染色において,陽性細胞の偏
在が確認される事であった.【考察】乳癌の転移再発において腫瘍表現型が変
化することが確認されるが,これは一定量の腫瘍組織が化学療法やホルモン
治療の効果で淘汰された結果と推測される.また,再発後の治療方法の選択は,
病巣の多数を占める腫瘍の表現型を参考とすることが重要であり,その再評
価により治療選択肢が大きく広がる可能性がある.
一般セッション(ポスター掲示)
10815
11748
浸潤性乳癌に対する術前化学療法後の原発巣と転移リンパ節巣
における予後予測因子としての意義
Ki-67 labeling index に影響を与える因子の検討
GP-1-048-05
1
GP-1-049-01
1
2
東北大学 腫瘍外科学、 東北大学 病理部
根本 紀子 1、多田 寛 1、柴原 裕紀子 2、宮下 穣 1、渡辺 みか 2、
石田 孝宣 1、笹野 公伸 2、大内 憲明 1
【背景】乳癌診療では原発巣のバイオマーカーが治療選択の大きな役割を担
う。また手術先行乳癌患者はリンパ節転移の有無が化学療法を追加する選択
対象の一つだが術前化学療法 (Neo adjuvant chemotherapy: NAC) 後に手
術施行、摘出リンパ節に転移を有する患者に対する追加加療の治療戦略は定
まっていない。【目的】NAC 後摘出リンパ節転移陽性症例における原発巣と
転移リンパ節巣の estrogen receptor (ER), progesterone receptor (PgR),
Human epidermal growth factor 2 (HER2), Ki-67 の発現の違いについて
検討し、更に原発巣と転移リンパ節巣それぞれサブタイプ分類を行いいずれ
が予後予測因子となり得るか検討した。【対象と方法】2004 ~ 2010 年に東北
大学病院で手術を行った NAC 症例中リンパ節転移陽性であった 49 症例を対象
とした。NAC 前後の原発巣の変化を検討するために標本作成が可能な 35 例の
針生検検体も検討に加えた。それぞれ ER、PgR、HER2、Ki-67 に関して免疫
組織染色を行い、発現の違い、サブタイプ分類に基づいた予後との関係につ
いて検討した。
【結果】ER, PgR, HER2 の発現は原発巣、転移リンパ節巣、針
生検検体の間に有意な相違は無かった。Ki-67 は原発巣と比較して転移リンパ
節巣の Ki-67 が有意に高値であり、転移リンパ節巣には原発巣と比較して悪性
度の高い癌細胞が残存していることが推察された。サブタイプ分類で原発巣
と転移リンパ節巣に有意差は認めなかったが 18 症例でサブタイプの乖離がみ
られた。無病生存率(disease-free survival rate: DFS)
、全生存率(overall
survival rate: OS)ではリンパ節転移巣における Luminal A 症例は Luminal
B 症例と比較して有意に予後が良好であった。原発巣におけるサブタイプ分
類では OS で Luminal A 症例が有意に予後良好であったが、DFS は LuminalA
症例と LuminalB 症例の間に有意差は見られなかった。サブタイプが乖離症
例ではリンパ節における LuminalA が B より予後良好であったが原発巣では
Luminal A と B の予後が逆転していた。【結論】術前化学療法後にリンパ節転
移が残存した症例は予後不良と考えるが原発巣における TNM 分類やサブタイ
プ分類以外の層別化はなされず術後の治療戦略も一貫したものがない。転移
リンパ節巣におけるバイオマーカーやサブタイプ分類による評価は、原発巣
での評価と比べてより有効な予後予測因子となり、患者の更なる層別化、後
療法の選択の幅が広がることが期待される。
横浜市立みなと赤十字病院 乳腺外科、2 横浜市立みなと赤十字病院 病理科
島 秀栄 1、熊谷 二朗 2、清水 大輔 1
【背景】 St.Gallen 2013 では、” Ki-67 Labeling Index(Ki-67LI) の標準化さ
れた Cut-off 値は確立されておらず、各施設特異的な値が使われるべき” と提
唱されている。施設特異的な値を設定する為、Ki-67LI に影響を与える因子を
知る必要がある。【目的】Ki-67LI に影響を与える因子について検討する。【対
象と方法】当院手術症例を対象に、Ki-67LI に影響を及ぼす因子として 1) ホル
マリン固定時間による差 2) ホルマリン固定までの時間による差 3) 観察部位を
固定した場合の観察者間での差 4) 観察部位を固定しない場合の同一観察者に
よる差について検討した。1) ホルマリン固定方法による差:5 症例で、同一
検体のホルマリン固定時間を 24・48・72・96 時間に分け、Ki-67LI の差を
検証した。2) ホルマリン固定までの時間による差 : 3 症例で、同一検体内で
検体摘出後、固定までの時間を 0・24 時間として標本を作製し、Ki-67LI の差
を検証した。3) 観察部位を固定した場合の観察者間での差:5 症例で、各標
本内の同一部位を 4 名の観察者で評価した。4) 観察部位を固定しない場合の
同一観察者による差:5 症例で、同一観察者が時期を変え 2 回測定し、その差
を検証した。【結果】1) 96 時間固定検体における Ki-67LI は、24 時間固定検
体と比べ 33% ~ 56% の値となり、平均で 46% 低下した。2) 24 時間検体は
0 時間検体に比べ 7%, -0.4%, -7.8% の値となり、一貫した傾向は認めなかっ
たが、24 時間検体で染色性が低下する印象があった。3) 5 例それぞれの平均
値と標準偏差が、9.5:1.18, 10.3:0.97, 35.4:3.32, 37.1:3.86, 63.1:4.53
と Ki-67LI が高い検体でばらつきが大きい傾向があった。4) 2 回目の値が初
回の 8% から 225% までの値となり、平均で 75% の変化を認めた。【考察】 ホルマリン固定時間は長い程 Ki-67LI が低値になる可能性が示唆された。また、
ホルマリン固定までの時間による差は一定の傾向は認めず、症例数を増やし
さらなる検討を行う予定である。評価部位を固定した場合、観察者間での差
は大きくなく、Ki-67LI が大きい程、ばらつきが大きくなる傾向があった。観
察者間での差が大きくなかったことは、染色強度による判定の違いが Ki-67LI
の評価にあまり重要ではない事を示唆する。一方、同一観察者による時期を
変えた検討では値のばらつきが大きく、hot spot の設定が Ki-67LI を決める
重要な因子であることが示唆された。同一検体内での Ki-67LI の分布について
も検討を加え報告する。
388
ポスター掲示
10797
11143
MIB-1 測定法について
手術標本における Ki-67 labeling index は針生検検体で代用
できるか?
GP-1-049-02
GP-1-049-03
1
横浜労災病院 乳腺外科、2 横浜労災病院 腫瘍内科、
3
横浜労災病院 病理診断科、4 横浜市立大学 臨床統計学
1
1
1
2
1
2
山本 晋也 、千島 隆司 、足立 祥子 、戸田 陽子 、有岡 仁 、
長谷川 直樹 3、角田 幸雄 3、坂巻 顕太郎 4
北福島医療センター 乳腺疾患センター、2 川崎医科大学 病理学 2
吉田 一也 1、君島 伊造 1、鹿股 直樹 2、森谷 卓也 2
【背景】様々な臨床研究において、治療前後の Ki-67 の変化で治療効果や予後
との関連などが検討されている。しかし、針生検検体における Ki-67 の発現が、
その腫瘍の Ki-67 の代用となり得るかどうかについて明らかにした研究は少
ない。【目的】術前治療のないホルモン感受性・HER2 陰性乳癌の針生検検体と
手術摘出標本との Ki-67 labeling index(LI) の関係を解析し、術後補助療法と
して相対的に化学内分泌療法が推奨される症例を針生検検体の Ki-67 LI で判
別できるかどうかを評価する。【方法】対象は 2009 年 7 月~ 2012 年 6 月に当
センターで治療を行ったホルモン受容体陽性・HER2 陰性の浸潤性乳癌のうち、
術前薬物療法を施行していない、針生検検体と手術標本の両方が評価可能で
あった症例である。Ki-67 の一次抗体は MIB-1(DAKO) を用いた。判定者は二
名の病理専門医で、判定対象は浸潤癌成分、評価はホットスポットで行った。
1000 個の癌細胞を検索し、LI で評価した。術後補助療法として化学内分泌療
法を推奨する群 (A 群 ) の判定基準は、腋窩リンパ節転移陽性、組織学的グレー
ド 3、広範な脈管侵襲あり、病理学的浸潤径 5cm 超のうち一つでも該当する
ものがある場合、もしくは、組織学的グレード 2、中等度の脈管侵襲、病理学
的浸潤径が 2cm 超 5cm 以下の全ての項目が該当する場合とした。ただし、こ
の群の中で診断時点において化学内分泌療法が推奨されると判断されるもの
( 腫瘍径 5cm 以上 and/or 腋窩リンパ節転移が証明されたもの ) は除外した。
また、内分泌療法単独が推奨される群 (B 群 ) として病理学的浸潤径 1cm 以下
のもの全例と組織学的グレード 1 で脈管侵襲がなく、病理学的浸潤径が 1cm
超 2cm 以下のものを定義した。【結果】71 例の症例が評価可能であった。同一
症例の針生検標本と手術摘出標本の Ki-67 LI には強い相関が認められた ( 相関
係数 0.783)。また、手術摘出標本よりも針生検標本の Ki-67 LI の方が低い傾
向があり、両者の間には有意差を認めた (p=0.002)。前述した定義に従うと、
A 群は 25 例、B 群 26 例、どちらにも属さないもの 8 例に分類された。針生検
標本において、A 群と B 群の Ki-67 LI の間にも有意差を認めた (p=0.015)。
Ki-67 LI が 26%以上の場合には A 群に属する可能性が非常に高かった。
【結論】
ホルモン受容体陽性・HER2 陰性乳癌の Ki-67 LI は針生検検体で評価可能で
あり、この値によって、化学療法の必要性がある程度は判断できる。 10899
11658
Ki-67 発現解析とその意義の検討
ER陽性PgR陰性乳癌における Ki-67 Labeling index の検討
GP-1-049-04
GP-1-049-05
1
九州大学大学院 臨床・腫瘍外科、2 九州大学病院 きらめきプロジェクト、
3
九州大学大学院 形態機能病理学
1
東京医科大学八王子医療センター 乳腺科、
静岡県立静岡がんセンター 女性内科、3 八王子乳腺クリニック、
4
八王子山王病院 乳腺外科、5 ナグモクリニック東京院、
6
東京医科大学八王子医療センター 病理診断部
2
山田 舞 1,2、久保 真 1、森 瞳美 1、倉田 加奈子 1、田中 晴生 1、藤野 稔 1、
松下 章次郎 1、中村 勝也 1、山元 英崇 3、田中 雅夫 1
[ 背景 ] 増殖因子 Ki-67 が乳癌のサブタイプ選別のために有用であるとされて
いるが、日本では統一した評価や基準づくりの途上である。また、免疫染色
では不均一なことも多く、heterogenity の問題も解決しなくてはならない問
題である。[ 方法 ] 我々の施設では、2011 年 12 月より手術切除標本の病理組
織検査に免疫組織化学染色による Ki-67 の評価が導入されている。対象は、原
発性乳癌に対する手術を施行した 172 症例。Ki-67 の発現状況と核グレードな
ど病理学的因子との関係を検討する。 [ 結果 ] Ki-67 labeling index の平均は
18.9( ± 18.5)%、分布は 15% 未満が 77 例
(45%)、15 ~ 39%が 67 例 (39%)、
40%以上が 28 例 (16%) であり、20%以下が 120 例 (70%) を占めた。Ki-67
labeling index は、核グレードとは有意に正の相関を示した (p < 0.0001)。
また、ER、PR 発現とは有意に逆相関した。[ 結論 ] Ki-67 labeling index は
生物学的特性を客観的に表現するのに有効である可能性が示唆されたが、今
後も各施設での評価や施設間の比較検討が必要と考えられる。予後との相関
も含め症例を追加して報告する。
柴崎 ゆかり 1、天谷 圭吾 1、生魚 史子 1、中村 慶太 1、石川 裕子 1、
松尾 聡美 1,2、三坂 武温 1,3、金 慶一 1,4、松永 忠東 1,5、脇谷 緑 6、
塚本 哲 6、芹澤 博美 6、林 光弘 1
【 目 的 】免 疫 組 織 学 的 な Luminal A type は ER and/or PgR 高 発 現、Ki-67
Labeling index(LI) 低値と定義される。しかし、PgR20% 以下の場合、DFS
や OS が 短 い こ と よ り、2013 年 St.Gallen recommendation で は、PgR
低発現の場合は Luminal B に分類することが提唱された。しかし、一方で、
PgR の発現とLIが逆相関しないなら、PgR 低発現は LI の代替指標とはなり
得ないと考えられる。そこで今回我々は、ER 高発現、PgR 陰性(0%)症例と
LI の関連性を検討した。【対象と方法】2009 年 10 月から 2013 年 7 月まで当
院で根治手術が行われた浸潤性乳管癌症例のうち、切除病理標本上、ER 高発
現(50%以上)
、PgR 陰性(0%)、HER2 陰性であった 29 症例を対象とした。
臨床病理学的因子の他に、平均 ER(%)、平均LI(%)、LI高値の頻度を検
討した。
【結果】対象症例の平均年齢 64 歳。ER の平均は 91.6%(50-100%)
、
LI の平均 20%(5-70%)、LI 20%以上を LI 高値とした場合、LI 高値の症例
は 14 例(48.2%)、30%以上とすると 7 例(24.1%)であった。【結論】ER 高
発現、PgR 陰性症例を luminal B と判定すると、従来の Ki-67LI を用いた分類
との一致率は低かった。PgR 低発現を LI の代替指標にするには更なる検討が
必要である。
389
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】化学療法の適応を決めるにあたって日常臨床では Ki67 Labeling Index
(LI) を用いることが多い。その一方で、Ki67 LI は部位によって測定値の不均
一性を認め、検体の採取時期(手術前後)、測定部位(hot spot または average
測定値)に関して標準化されていないのが現状である。【目的】我々は、同一
症例の検体を用い、手術前後で Hot Spot を含む 5 カ所について Ki67 LI を測
定し、検体採取時期と測定部位による不均一性を評価して、Luminal type 乳
癌の術後化学療法の選択に与える影響について検討した。【方法】2013 年 1
月から 2013 年 10 月までに当院で手術を行った原発性乳癌患者 154 例中、術
前化学療法を施行した症例を除外して、手術前後で Ki67 LI を測定し得た 69
例を対象とした。免疫染色には MIB-1 抗体 (Dako) を用い、Hot spot を含
む 5 か所について約 1000 個の腫瘍細胞をカウントして Ki67 LI を算出した。
また、65 例の Luminal type 乳癌症例について、Ki67 LI の cutoff 値を 20%
と想定した場合に、測定値の不均一性が術後化学療法の選択に与える影響に
ついても検討した。【結果】測定値の不均一性をみる Intra class Correlation
Coefficient は術前検体で 0.91(0.88-0.94)、術後検体で 0.98(0.97-0.98) で
あり、Ki67 LI の不均一性は術前検体で強く認めていた。手術前後での Ki67
LI の相関係数は average 測定値で 0.743、hot spot 測定値で 0.713 であり、
測定部位にかかわらず、検体採取時期により Ki67 LI の測定値に差が生じてい
た。Ki67 LI の cutoff 値 20%として術後化学療法の適応を判定した場合、術
前 (hot spot)=58.6%、術前 (average)=46.5%、術後 (hot spot)=51.7%、
術後 (average)=32.7%となり、術前 hot spot と術後 average の間では最大
25.9%で治療方針に変化が生じていた。【結語】Ki67 LI は検体採取時期、測
定部位により測定値の不均一性が強く、Luminal type 乳癌において術後化学
療法の選択に Ki67 LI を用いる場合は、施設ごとに厳密な測定基準を決めてか
ら cutoff 値を決める必要がある。
11360
10871
トリプルネガティブ乳癌における Ki-67 発現解析
Ki67 の Heterogeneity の検討
GP-1-049-06
ポスター掲示
GP-1-049-07
九州大学大学院 臨床・腫瘍外科
1
森 瞳美、久保 真、山田 舞、倉田 加奈子、藤野 稔、松下 章次郎、
中村 勝也、田中 雅夫
氷室 貴規 1、堀本 義哉 1、齊藤 光江 1、荒川 敦 2
[ 背景 ] Ki-67 はよく知られた増殖因子であるが、Luminal タイプの乳癌を A/
B サブタイプに選別するために有用であるとされて脚光を浴びることになっ
た。しかし、免疫染色では不均一なことも多く、heterogenity や Cutoff 値の
問題はまだ解決されてはいない。[ 方法 ] 我々の施設では、2011 年 12 月より
手術切除標本の病理組織検査において、免疫組織化学染色による Ki-67 発現
の評価が導入されている。対象は、術前化学療法を行っていない原発性乳癌
に対する手術を施行した 192 症例。Ki-67 の発現状況と核グレードなど病理
学的因子との関係を、トリプルネガティブ(TNBC)を除く 172 症例: TNBC
20 症例に分けて検討する。[ 結果 ] Ki-67 labeling index の平均は 18.9 ( ±
18.5)%:40.9 ( ± 30.4)%、分布は 15% 未満が 77 例(45%):4 例(20%)、
15 ~ 39 % が 67 例 (39%):5 例(25%)、40 % 以 上 が 28 例 (16%):11 例
(55%)であり、TNBC では分布にばらつきがあるものの高値である傾向を示
した。Ki-67 labeling index は、核グレードとは有意に正の相関を示した (p. <
0.0001)。また、ER、PR 発現とは有意に逆相関した。[ 結論 ] TNBC におい
ても Ki-67 labeling index は生物学的特性のひとつである「増殖活性」を表現
するのに有効である可能性が示唆されたが、今後も各施設での評価や施設間
の比較検討が必要と考えられる。
順天堂大学 乳腺内分泌外科、2 順天堂大学 人体病理病態学
【背景・目的】Ki67 は腫瘍内で最も発現の高い部分によって評価されること
が多いが、発現が比較的均一のものもあれば不均一性が目立つものも存在す
る。不均一性が強い腫瘍ほど判定に用いる視野の選択に病理医間のばらつき
が生じ、判定結果に影響が生じる可能性がある。そこで今回我々はどのよう
な腫瘍で Ki67 の heterogeneity が強いかを明らかにするための検討を行っ
た。【対象・方法】ER 陽性、浸潤径 10 mm上の浸潤性乳管癌 15 例 ( 乳頭腺管
癌が 4 例、充実腺管癌が 6 例、硬癌が 5 例 ) の手術標本(最大割面)から作成し
た Ki67 の染色標本を用いた。各標本上で無作為に5視野(倍率 400 倍)を選び
Ki67 陽性率をカウントし、腫瘍ごとの発現のばらつきを標準偏差を平均値で
割った変動係数の大小によって評価した。なお術前治療を受けた症例は除外
した。【結果】Ki67 の平均値を 0-100% まで 20% 毎に分けて比較したところ、
Ki67 が 60% を超えると heterogeneity が弱い傾向があった。heterogeneity
が強い腫瘍(変動係数が 33% 以上のもの)は 15 例中 9 例あった。本検討では
閉経前の症例が 4 例あったが 4 例ともこの 9 例に含まれ、一方閉経後は 11 例
中 5 例であった。組織型別には乳頭腺管癌が 2/4 例、充実腺管癌が 5/6 例、硬
癌が 2/5 例であった。PgR や HER2 の発現との間には関連性はみとめられな
かった。【まとめ】今回の検討では閉経前や充実腺管癌の症例で Ki67 発現の
heterogeneity が強かった。今後さらに症例を重ね特に heterogeneity の強さ
と患者予後との関連について詳細な検討を進める予定である。
一般セッション(ポスター掲示)
10214
11880
浸潤性乳管癌に対する Ki-67 測定法の標準化に関する検討
Triple positive 乳癌における ER と HER2 の発現分布について
の検討
GP-1-049-08
GP-1-049-09
川崎医科大学 病理学 2
1
森谷 卓也、鹿股 直樹、佐々木 里菜、猪谷 嘉浩
[はじめに]Luminal 型浸潤性乳癌の術後薬物療法の治療選択において Ki-67
の測定が重視されている。しかし , ラベリングインデックス (LI) を評価するた
めの標準的手法が確立されておらず,高低を判断するカットオフ値の明確な
コンセンサスも得られていない。今回、染色済み標本に対する観察者間の測
定誤差について検討した [
. 材料と方法]川崎医科大学附属病院で手術が施行さ
れた原発性乳癌のうち , ホルモン受容体陽性かつ HER2 陰性の浸潤性乳癌 56
例を用いた .Ki-67 の染色は抗 MIB-1 抗体を用い ,DAKO 社および VENTANA 社
の自動免疫染色装置を用いた . 各症例で , 標本内の Ki-67LI が平均的とみられ
る部位を任意に選択し , 同部の強拡大顕微鏡写真を撮影 , プリントアウトして
4 名の観察者に配布した . 必要に応じ HE 染色標本とも対比しながら , プリント
画像の右端から 500 個の浸潤癌細胞を観察し , 陽性率を LI として算定した . そ
の際 , 核に少しでも発色認められれば陽性と判断した [
. 結果]4 名の LI はそれ
ぞ れ 20.4 ± 15.1(2.4 ~ 70.8)%,19.8 ± 14.5(2.0 ~ 65.0)%, 25.5 ± 17.3
(2.2 ~ 82.4)%,23.2 ± 16.4(2.0 ~ 75.8)% であった . 級内相関係数 (ICC)
は 4 人全員では 0.990(95% CI: 0.985-0.994)であった .Ventana 社の機器
で染色した 26 例の検討では 16.2 ± 9.7%,15,5 ± 10.0%,16.1 ± 10.0%,17.7
± 11.1% で ,4 人全員での ICC は 0.991(0.984-0.996)であった . また , 同一
観察者間で 2 社の染色による判定での ICC を調べたところ , それぞれ 0.802,
0.773,0.625,0.625 であった [
. 考察とまとめ]観察する視野を限定する場合 ,
一定の作法を用いて判定すると観察者間での差が少なく , 比較的安定した結果
が得られた . また , プリントアウト法は計測の記録が残るためカウントの詳細
に関する検証を行うことができた . しかし , 間質細胞等を区別しにくい例があ
ること , プリントにより弱陽性核の判断が難しい場合があることなど限界も明
らかになった .2 種類の自動染色装置を用いた染色結果については , 選択視野の
ずれも影響している可能性が考えられた [
. 結語]適切な観察視野が選択されれ
ば安定した Ki-67LI の計測実施が可能である . 次のステップとして視野選択の
標準手法を策定する必要がある .
順天堂大学医学部、2 順天堂大学 病理診断
魚森 俊喬 1、堀本 義哉 1、齊藤 光江 1、中井 克也 1、清水 秀穂 1、
田辺 真彦 1、徳田 恵美 1、毛利 かの子 1、荒川 淳 2
【背景】癌細胞の heterogeneity は、癌の浸潤や転移で進行していくものと想
像されるが、病理標本でその実態が明らかにされているとは言えない。
【目的】
乳癌細胞の heterogeneity が、ER,PgR,Her2 の発現において、一定の局在傾
向を持つのか、triple positive 乳癌を例に取り、明らかにしたいと考えた。他
のマーカーとの関連についても明らかにする。【方法】術前化学療法を行わず
に手術に臨んだ ER 陽性浸潤性乳管癌のうち、HER2 が 3+ の患者 3 例。手術
標本の最大割面について腫瘍辺縁 2mm を辺縁部 (E)、それ以外を中心部 (C)
と定義し、各々ランダムに 3 視野(倍率 x400)を選択して ER 及び HER2 の発
現を調査した。今回の検討は ER 及び HER2 蛋白の発現の一致・不一致を見る
事が目的であるため、ER・HER2 が共に腫瘍全体(> 95%)で陽性の症例は除
外した。
【結果】辺縁と中心部の発現を比較すると、ER は C < E 2 例、C=E 1 例、
C > E 0 例、HER2 はそれぞれ 1, 2, 0 例であった。 次にこの発現のパターン (C
< E、C=E、C > E) を ER と HER2 で比較したところ、パターンが一致したも
のが 2 例、違ったものが 1 例あった。その 1 例は HER2 が C=E を示したのに
対し、ER では C < E を示していた。【結論】今回の検討では、ER と HER2 は共
に、辺縁部での発現が強い傾向が見られた。また同じ細胞で ER・HER2 が共
染するものとそうでないものがあった。中央部分で染色の度合いが低まるの
は、細胞自体の老化とも考えられた。今後は症例を増やし、幹細胞のマーカー
等他の病理学的因子との関連性について解析を進める予定である。
390
ポスター掲示
10795
11632
ナノテクノロジーを応用した HER2 の定量的免疫組織化学診断
法の臨床への応用
乳癌の HER2 過剰発現の判定を DISH 法単独で行えるか否かの
検討
GP-1-049-10
1
GP-1-049-11
東北大学 腫瘍外科、2 東北大学 ナノ医科学講座、3 東北大学病院 病理部
1
2
1
3
1
2
1
多田 寛 、権田 幸祐 、宮下 穣 、渡辺 みか 、石田 孝宣 、
大内 憲明 1
分子標的薬の急速な発展により、標的蛋白質の発現量を高精度診断し、的確
な薬剤奏効性を予測する方法のニーズは近年益々高まっている。DAB染色
を用いた免疫組織化学法は、一定のレベルで蛋白質発現量を調べることがで
きるが、HRP の酵素反応に DAB 染色強度が左右されるため、その定量性は温
度・時間・基質量等の影響を受ける。近年、ナノテクノロジーが様々な医学・
医療研究に応用され始め、創薬分野等で革新的な成果が産まれつつある。我々
は、ナノテクノロジーを使って新たな高輝度蛍光ナノ粒子を開発し、これを
応用することで、汎用蛍光顕微鏡で観察可能な定量的免疫組織化学法の開発
を試みた。本開発では HER2 を標的とし、本ナノ粒子イメージングがどれく
らい既存の診断法の定量性を改良できるか東北大学病院および関連施設の検
体を使って調べた。その結果、我々のナノ粒子イメージングは、FISH スコア
とよく相関し、既存の DAB 染色よりも広範囲なダイナミックレンジで HER2
発現量を高精度診断できることが示唆された。さらに本イメージングの臨床
応用を睨み、HER2 陽性乳癌の術前療法症例に対して針生検における奏功予測
の可能性についても検討したので報告する。
高崎総合医療センター 乳腺内分泌外科、
高崎総合医療センター 病理診断部、3 群馬大学 臓器病態外科
常田 祐子 1、鯉淵 幸生 1、小田原 宏樹 1、小川 晃 2、田中 優子 2、
堀口 淳 3、竹吉 泉 3
11211
11808
乳がん Hercep score の目視判定と自動判定の比較
当院乳癌手術症例におけるサブタイプ分類の再検討
GP-1-049-12
GP-1-049-13
1
国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター 病理診断科、
2
国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター 臨床研究部、
3
国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター 乳腺外科
KKR 斗南病院
齊藤 彰久 1、谷山 清己 1,2、谷山 大樹 1、倉岡 和矢 1、森井 奈央 3、
高橋 寛敏 3、山城 大泰 3
乳癌の治療方針を決定する際には、生物学的特性を考慮したサブタイプ分類
が必要である。本来サブタイプ分類は遺伝子解析によって行うものであるが、
本邦ではコスト面の問題などで広く普及するには至っていない。現在、免疫
組織学的検査による ER、PgR、HER2、Ki-67 を用いてサブタイプ分類を決定
するのが一般的となっている。St.Gallen コンセンサス会議 2013 (2013 年 3
月 ) において、サブタイプ分類の再検討が提案された。従来 Luminal A とされ
ていた症例のうち、PgR 低発現の症例については、Luminal B とすることが
提案された。また Ki-67 labeling index の cut-point に関しては、各施設にて
検討することが求められた。当院乳癌症例における Ki-67 labeling index と
腫瘍径、リンパ節転移、核グレード、脈管侵襲、ER、PgR、HER2 などの従
来の臨床学的因子との関係を解析し、cut-point を検討した。さらに当院乳癌
手術症例のサブタイプ分類の再検討を行い、従来の臨床学的各因子との関係、
再発・予後との関係などについても解析を行った。
川田 将也
【目的】乳癌における HER2 過剰発現は、免疫組織化学的染色標本を目視判定
して、評価されている。今回、我々は Hercep score の目視判定と自動判定を
比較し、HER2 FISH 結果との関連を報告する。
【方法】2005 年~ 2013 年に
生検あるいは切除された浸潤性乳管がんを対象として Hercep score 判定 ( >
30%) を行った。目視判定は 322 例 ( 女 320 例、男 2 例 ) を対象とした。使用
した抗 HER2 抗体は、Dako270/Ventana52 であった。自動判定は 334 例 ( 女
332 例、男 2 例 ) を対象とし、使用抗体は全て Ventana52 であった。自動判
定では、標本をバーチャル顕微鏡 (NanoZoomer 2.0 - HT) で取り込み、画
像解析ソフト (Genie) を用いた。【成績】目視判定では、Hercep score 0/1
+ ;257 例 (79% )、2 + ;47 例 (15% )、3 + ;18 例 (6% ) であり、自動判定
ではそれぞれ 151 例 (45% )、135 例 (40% )、48 例 (14% ) であった。目視
判定では、0 評価が減り ( 目視 -50%、自動 -4% )、1 +以上評価が増えた。
HER2 陽性 (Hercep score 3 +、HER2 FISH 比≧ 2 又は HER2 コピー数≧ 4)
は、目視判定 75 例 (23% )、自動判定 91 例 (27% ) であった。Hercep score
0/1 +で HER2 陽性は、目視判定 29 例 (9% )、自動判定 17 例 (5% ) であっ
た。【結論】再現性と客観性に優れている自動判定では、主観的目視判定より
も HER2 陽性比率が高くなる可能性が示唆された。
391
一般セッション(ポスター掲示)
【背景と目的】HER2 の過剰発現の判定は IHC 法で行い、3+ または 2+ で FISH
陽性の場合に HER2 陽性と判断し、抗 HER2 療法の適応としてきた。2011 年
1 月より DISH 法が保険収載された。FISH 法と異なり、DISH 法は院内で行う
ことが可能で短期間で結果が得られる。IHC 法+ FISH 法に代えて DISH 法単
独で HER2 の判定が可能かどうか臨床試験を行って検討した。【対象と方法】
2013 年 4 月~ 12 月に当院で針生検または手術にて採取した浸潤性乳癌組織
144 例。組織は 10%中性緩衝ホルマリンを用いて、6 - 48 時間固定とした。
全 例 で IHC 法 と DISH 法 を 行 い、IHC 法 で 2+ の 場 合 に FISH 法 を 行 っ た。
DISH 法の判定は、乳癌細胞 20 細胞でのセントロメア 17 シグナル総数に対す
る HER 2シグナル総数の比率を算出し、2.2 をカットオフ値として判定した。
【結果】IHC 法で 0, 1+, 2+, 3+ はそれぞれ 29 例、68 例、32 例、15 例で、そ
れに対応する DISH 法のコピー数は 1、1.1、1.12、5.7 と IHC 法と DISH 法
で相関し、IHC 法 3+ の 15 例は全て DISH 法でも陽性と判定された。IHC 法 0
または 1+ で DISH 法の陽性例はなかった。IHC 法 2+ では FISH 法と DISH 法
の両方を行っているが、表1の通り FISH 法で陽性率が高く、DISH 法で陽性
は1例であった。コピー数の平均値をみても、FISH 法 1.76、DISH 法 1.12 で、
FISH 法で有意(p=0.018)に高かった。【考察とまとめ】IHC 法と DISH 法は相
関しており、DISH 法単独での判定で臨床に導入できると考える。FISH 法と
DISH 法の解離については、DISH 法では光学顕微鏡下に乳癌細胞だけを選ん
で判定できるのに
対し、FISH 法では
蛍光顕微鏡下での
観 察 と な る た め、
癌細胞と間質細胞
を区別して測定す
る こ と が で き ず、
DISH 法 よ り も コ
ピー数が高くなる
可能性が示唆され
た。
11221
11860
同一腫瘤から得られた細胞診及び組織検体における ER, PgR,
HER2 免疫染色の比較検討
術前術後検体によるバイオマーカー変化の検討
GP-1-049-14
ポスター掲示
GP-1-049-15
1
2
1
群馬大学医学部附属病院 病理診断科、
2
群馬大学医学部附属病院 乳腺内分泌外科、
3
群馬大学大学院医学系研究科 臓器病態外科、
4
群馬大学大学院医学系研究科 病理診断学
筑波大学附属病院 乳腺甲状腺内分泌外科、
筑波大学医学医療系 乳腺甲状腺内分泌外科
市岡 恵美香 1、坂東 裕子 2、澤 文 1、古屋 舞 1、田地 佳那 1、齋藤 剛 1、
清松 裕子 1、池田 達彦 2、井口 研子 2、原 尚人 2
星川 里美 1、堀口 淳 2,3、高他 大輔 2,3、六反田 奈和 2,3、長岡 りん 2,3、
佐藤 亜矢子 2,3、時庭 英彰 2,3、内田 紗弥香 2,3、荻野 美里 2,3、小山 徹也 1,4
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】近年、乳癌再発症例において、原発巣と再発巣の subtype が異
なる症例が存在することがわかってきた。それに伴い、転移巣の biomarker
を可能な限り検索し、その結果をもとに治療方針を検討することが望まし
いとされつつある。しかしながら、必ずしも組織生検が可能であるとは限
らず、臓器転移の場合の組織生検は高侵襲である。また胸水や腹水の貯留
のみを認める場合も存在する。このような場合に、細胞診検体による正確な
biomarker 検索が行うことができれば、低侵襲かつ治療の選択肢を広げる上
で重要と考える。
今回我々は、同一病変から採取した細胞診検体 ( 液状細胞診 ) と組織検体を用
いて免疫染色を行い、細胞診検体での免疫染色の評価が可能であるかを検討
したので報告する。
【対象と方法】2013 年 7 月から 12 月までの手術症例のうち、肉眼的に腫瘤形
成を認めた症例で、細胞診検体 ( 液状細胞診 ) が、十分量得られた 20 症例を用
いた。細胞診検体は、腫瘍割面よりガラスで腫瘍を削り落とし液中に浮遊させ、
Thinprep を用い、液状細胞診標本作製を行った。Papanicolaou 染色で腫瘍
細胞を確認後、自動染色装置を用いて免疫染色を行った。症例の内訳は、浸
潤癌が 17 例、DCIS が 3 例であった。
【結果】ER, PgR については、J-score、Allred score を用い、HER-2 について
は ASCO/CAP ガイドラインに準じた判定基準を用いた。
ER, PgR は細胞診検体と組織検体で、J-score では全症例で一致した。Allred
score では score の変動はあったが、判定区分に影響はなかった。HER-2 は、
7 例が一致し、細胞診検体 0 で組織検体 1+ が 4 例、細胞診検体 1+ で組織検体
0 が 1 例、細胞診検体 1+ で組織検体 2+ が 2 例あった。
【考察】細胞診検体における ER, PgR の免疫染色による評価は可能であること
が示唆された。HER-2 については、ISH 検査も含めて検討したい。
目的:乳癌における病理学的評価による subtype の評価は予後予測および
治療効果予測に重要と考えられており、癌の診断時には primary systemic
chemotherapy の適応を考慮するうえでも正確な評価が望ましい。しかし、
針生検から得られる病理学的評価と手術検体を用いた評価の乖離や、術前薬
物療法前後に subtype 評価が異なることを我々は経験しており、その機序お
よび意義については不明な点もある。今回、針生検検体と手術標本の比較検
討および、術前薬物療法前後における病理学的評価による病理学的 subtype
評価の相違を検討する。対象:2006 年 1 月から 2013 年 11 月に当院で原発性
乳癌と診断され、当院で治療を行い、病理学的評価が確認可能であった 1050
例を対象とした。1. 術前薬物療法を行っていない 744 例を対象に乳がん診
断目的の針生検等による病理学的評価(ER,PgR,HER2, 核グレード)と手術検
体を用いた評価の比較、2. 術前薬物療法を行った 306 例 ( 化学療法 273 例
ホルモン療法 33 例 ) を対象に乳がん診断目的の針生検等による病理学的評価
(ER,PgR,HER2)と手術検体を用いた評価の比較をおこなった。各免疫染色
は当施設内で行っており、ER および PgR のカットオフは 1%以上陽性を陽性
とした。HER2 は免疫染色 3 +もしくは FISH 陽性を陽性とした。結果:術前
化学療法群 273 例と術前ホルモン療法群 33 例と術前薬物療法非治療群 744
例を比較検討した。ER の一致率は術前化学療法群 87.5%、術前ホルモン療
法群 100%、術前薬物療法非治療群 97.9%、PgR の一致率は術前化学療法群
76.3%、術前ホルモン療法群 69.0%、術前薬物療法非治療群 90.8%、HER2
の一致率は術前化学療法群 92.3%、術前ホルモン療法群 95.0%、術前薬物療
法非治療群 94.3%、グレードの一致率は術前薬物療法非治療群 73.2% であっ
た。考察:針生検と手術検体の標本の比較では、術前薬物療法を実施してい
ない場合にも各免疫染色および異型度において数%から 10%程度、異型度で
は 27%の相違を認めた。術前ホルモン治療前後の比較では PgR の不一致率が
最大であり 30%程度であった。腫瘍組織内のヘテロジェナイエティー、病理
学的評価に関するテクニカルな因子、治療に伴う腫瘍バイオロジーの変化な
どがバイオマーカーの不一致と関連すると考えられるが、若干の文献学的考
察を加え報告する。
11687
10224
アンドロゲンレセプター陽性乳癌の特徴について
ER 陽性 HER2 陰性乳癌早期再発例に関する検討
GP-1-049-16
1
GP-1-049-17
社会医療法人財団白十字会白十字病院 外科、2 病理
東海大学医学部 外科学系乳腺・内分泌外科学
松尾 文恵 1、大谷 博 2
アンドロゲンレセプター ( 以下 AR) は多くの乳癌で発現を認めるがその機能
は解明されていない。今回われわれは AR と病理型、サブタイプ、その他のバ
イオマーカーを比較し、AR 陽性乳癌の特徴を検討した。【対象・方法】2011
年 7 月から 2013 年 11 月までに当院で診断した乳癌 108 病変 ( 両側 2 例、男性
2 例含む )。AR は免疫染色を行い目測で判定、5%区切りで表記し、10% 未満
を AR( - ) 群 (26 病変 )、10% 以上を AR( + ) 群 (82 病変 ) に分類して解析し
た。
【結果】106 症例の平均年齢は平均 62.8 歳 (32 ~ 97 歳 )。対象を閉経前 (50
歳以下 )、閉経後 (51 歳以上 ) に分類すると、AR の平均値は閉経前 29.2%、
閉経後 42.6% で閉経後のほうが高値であった (P=0.048)。病理型別の AR 平
均値は DCIS66%、硬癌 33%、充実腺管癌 40.1%、乳頭腺管癌 39.9%、浸
潤 性 小 葉 癌 39%、 粘 液 癌 30.7%、 ア ポ ク リ ン 癌 92.5%、 そ の 他 80% で、
アポクリン癌を除く、各病理型の間で AR 平均値の差を認めなかった。サブ
タ イ プ 別 の AR 平 均 値 は LuminalA:34.6%、LuminalB:43.7%、Her2:
34.6%、TNBC45.7% で差はなかった (P=0.429)。AR( - ) 群と AR( + ) 群を
比較すると年齢、腫瘍径、リンパ節転移個数、Her2 陽性に差を認めなかったが、
ER/PgR の 平 均 値 は AR( - ):56.7%/30.43 %、AR( + ):75.6%/53.3%
で AR( + ) の ほ う が 高 値 で あ っ た (P=0.01)。Ki67 は AR( - ):33.79%、
AR( + ):22.45% で AR( + ) の ほ う が 低 値 で あ っ た (P=0.01)。ER 陽 性 群
の Ki67 について AR( - ) と AR( + ) の間に差を認めなかったが、ER 陰性群の
Ki67 平 均 は AR( - ):55.2%、AR( + ):35.9% で AR( + ) の ほ う が 有 意 に
低 か っ た (P=0.018)。TNBC 症 例 を AR80% 未 満 (Low 群 9 例 ) と 80% 以 上
(High 群 7 例 ) で分類比較すると、年齢、腫瘍径、リンパ節転移個数に差はなく、
Ki67 の 平 均 は Low 群 47.7%、High 群 31.7%、p53 は Low 群 60.1%、High
群 29.3%、CK5/6 は Low 群 15.6%、High 群 1.14% であり、いずれも High
群で低い傾向であったが、有意差は認めなかった。【考察】AR は閉経後乳癌で
高く、病理型、サブタイプによる差はなかった。AR( + ) は AR( - ) に比較し
て ER / PgR が高く、Ki67 が低かった。ER 陰性乳癌でも AR( + ) は AR( - )
より Ki67 が低く、AR 陽性乳癌は悪性度の低い一群であることが示唆された。
近年 TNBC の中に AR 高発現群 (LiminalAR) の存在が示された。今回、TNBC
症例の解析では High 群で高悪性度を示すバイオマーカーが低い傾向にあった
が、有意差は認めず、臨床応用のためにはさらなる研究が必要と考えられた。
岡村 卓穂、新倉 直樹、扇屋 りん、大下内 理紗、寺尾 まやこ、
津田 万里、齋藤 雄紀、徳田 裕
【背景】ER 陽性 HER2 陰性乳癌は、一般に比較的予後良好とされ、術後補助療
法として内分泌療法が選択される。しかしながら、早期再発例も散見され、
内分泌療法抵抗性の問題等、再発後の治療に悩まされるケースもある。本検
討は、早期再発例の臨床的特徴を捉え、臨床経過や予後について明らかにす
ることを目的とする。
【方法】1997 年~ 2009 年までに当院において術前・術
後化学療法の有無を問わず、術後補助内分泌療法を施行した ER 陽性 HER2 陰
性乳癌 844 例中、再発症例は 57 例であったが、そのうち術後 3 年未満に再発
した早期再発 36 例を対象とし、臨床病期や組織型、腋窩リンパ節転移の有無、
組織学的グレード、バイオマーカー(Ki-67)等との関連性について、レトロ
スペクティブに検討した。なお、Ki-67 は< 20%を低値、≧ 20% を高値とした。
【結果】ER 陽性 HER2 陰性乳癌早期再発 36 例において、年齢は中央値で 53 歳
(32 ‐ 83 歳)であった。臨床病期は I 期が 1 例、II 期が 18 例、III 期が 17 例で
あった。組織型は、硬癌 18 例(50%)、乳頭腺管癌 9 例(25%)の順に頻度が
高かった。Ki-67 高値(≧ 20%)を示す症例は 11 例(30.6%)認めた。また全
例に術後補助療法として内分泌療法を行い、化学療法も施行した症例は 24 例
(66.7%)であった。その内訳は、術前 14 例(38.9%)、術後 10 例(27.8%)
であり、内分泌療法単独の症例と比較して、腋窩リンパ節転移陽性の症例や
組織学的グレード、Ki-67 が高い症例が多く認められた。また、初発再発部位
は骨が 21 例(58.3%)と最も頻度が高かった。無再発期間(DFI)、全生存期間、
再発後生存期間はそれぞれ中央値で 529 日、1697 日、1105 日であった。な
お DFI は、II 期(663 日)より III 期(344 日)で短く、さらに病期に関わらず、
腋窩リンパ節転移陽性や Ki-67 高値を示す症例では DFI が短縮される傾向に
あった。
【結語】ER 陽性 HER2 陰性乳癌は、一般に比較的予後良好と考えられ
ているが、腋窩リンパ節転移や Ki-67 高値を認め、かつ臨床病期がより高い症
例は術後補助化学療法の有無に関わらず、早期再発に注意が必要であり、予
後不良な症例群であることが示唆された。
392
ポスター掲示
10574
11834
乳癌 solid papillary carcinoma 4 症例の検討-細胞診での術
前診断の可否-
穿刺吸引細胞診による術前腋窩リンパ節転移診断精度の検討
GP-1-050-01
1
GP-1-050-02
1
3
鳥取大学医学部 胸部・乳腺内分泌外科、2 鳥取大学医学部 器官病理
がん研有明病院 乳腺センター外科、2 がん研有明病院 細胞診断部、
がん研有明病院 超音波診断部、4 がん研究会がん研究所 病理部
森園 英智 1、池畑 浩一 2、川島 麻里沙 2、加藤 千絵子 3、富樫 保行 3、
五十里 美栄子 3、何森 亜由美 3、坂井 威彦 1、岩瀬 拓士 1、堀井 理絵 4、
秋山 太 4
荒木 邦夫 1、細谷 恵子 1、城所 嘉輝 1、若原 誠 1、松岡 佑樹 1、
高木 雄三 1、三和 健 1、谷口 雄司 1、中村 廣繁 1、石黒 清介 1、
梅北 善久 2
この 1 年で経験した乳腺 solid papillary carcinoma の 4 手術症例を解析し,
エコー画像と細胞診による術前診断の可否を要点に検討する.4 症例とも女性
で,年齢は 86 歳,49 歳,66 歳,80 歳と幅がみられた.主訴はそれぞれ左乳
房腫瘤,左乳頭血性分泌,右乳頭血性分泌,左乳頭血性分泌+乳房腫瘤であっ
た.エコー所見は,いずれも乳管拡張を疑う低エコー像あるいは嚢胞様病変
内の腫瘤形成像が特徴的であった.術前の乳頭分泌物細胞診を 2 例に行い,1
例は悪性の疑い(浸潤性乳管癌),他 1 例は陰性であった.腫瘤ないし低エコー
病変に対する穿刺吸引細胞診を 3 例に行い,3 例とも悪性と判定されたが,浸
潤性乳管癌の判定に留まっていた.1 例は細胞診を省略してコアニードル生
検を行った結果,solid papillary carcinoma と診断された.各症例で得られ
た細胞診標本を再度鏡検したところ,全ての標本の一部において,緩い結合
性,乏しい核異型,顆粒状の胞体など solid papillary carcinoma に合致する
細胞所見が部分的に確認できたものの,全体像からは他の invasive ductal
carcinoma と鑑別しうる決定的な細胞所見とは成り得ず,細胞診のみで solid
papillary carcinoma を推定することは困難と考えられた.以上より,
低エコー
ないし嚢胞内腫瘤を特徴とするエコー画像の臨床情報をふまえての細胞診断
が,術前 solid papillary carcinoma を推定する鍵となると考えられた.
11691
10878
乳腺手術材料を用いた LBC 検体と組織検体における免疫組織化
学染色の比較検討
乳癌検診における穿刺吸引細胞診の有用性―針生検だけでは効
果的な検診は可能か?―
GP-1-050-03
1
2
GP-1-050-04
1
奈良県立医科大学附属病院 病院病理部、
奈良県立医科大学 病理診断学講座、3 奈良県立医科大学附属病院 乳腺外科
たけべ乳腺外科クリニック、2 高松平和病院 病理検査
安毛 直美 1、綾野 はるな 1、松本 昌子 1、新井 貴士 1、武部 晃司 1、
佐藤 明 2
小関 久恵 1、中井 登紀子 2、小林 豊樹 3
【はじめに】乳腺の穿刺吸引細胞診(Fine-needle aspiration cytology 以下
FNAC)における Liquid-based cytology(以下 LBC)法の有用性は多数報告さ
れている.今回我々は乳腺手術材料を用いて LBC(BD Sure Path TM)検体と
ホルマリン固定後パラフィン包埋検体(以下組織検体)との免疫組織化学染色
の判定結果の比較を行い,FNAC においても LBC 検体を用いた免疫組織化学
染色が実用可能か検討を行った.
【 対 象 と 方 法 】乳 房 切 除 術 あ る い は 部 分 切 除 術 を 施 行 さ れ た 46 例(Noninvasive ductal carcinoma:2 例,Invasive ductal carcinoma:39 例,
Mucinous carcinoma:2 例,Invasive lobular carcinoma:2 例,Papilloma:1
例)を対象に行った.手術検体腫瘍部に対し,FNAC を施行し BD サイトリッ
チ TM レッド保存液に入れ固定し LBC 検体を作製した.それらに E-cadherin,
CK5/6,CK14,生物学的特徴(ER,PgR,HER2/neu)の免疫組織化学染色
を行い,組織検体における染色結果と比較した.
【結果】E-cadherin,ER,PgR では LBC 検体と組織検体とで高い一致率が認め
られた.CK5/6,CK14 では LBC 検体にてシート状に出現する集塊では組織
検体同様に良好な結果が得られたが,重積性の強い集塊では悪性腫瘍におい
ても集塊辺縁に陽性を呈する症例も認められた.また HER2/neu では孤立散
在性もしくは小型シート状に出現する集塊の細胞膜が保たれている症例にお
いては組織検体と同程度の結果が認められたが,中~大型の集塊では組織検
体よりも LBC 検体においてより強い陽性所見が認められた.
【まとめ】今回の我々の検討では,LBC 検体を用いた免疫組織化学染色は組織
検体と完全に一致しない症例も認められた.しかしながら,LBC 検体におけ
る免疫組織化学染色の判定基準を明確に設定すれば,FNAC における補助的診
断や治療効果予測判定に応用することも十分に可能であると考えられる.
「はじめに」乳癌検診の普及や、診断機器の進歩に伴い、初期乳癌、境界病変、
良性病変が多く発見されるようになってきた。精査において、針生検のみを
行う施設が増えているが、検診で見つかるわずかな異常所見を有する病変に
対して、すべて針生検を行うことは現実的ではなく、さらには発見率の低下
に繋がる危険性があると考える。当院では一次検診もすべて MMG/US 併用で
行っており、US ガイド穿刺吸引細胞診 (FNAC) を精査の第一として位置づけ、
良性病変や非触知乳癌、非浸潤性乳管癌 (DCIS)の診断を効率よく行ってきた。
当院の検診の成績からその有用性を発表する。「対象」超音波 (US) 装置をフル
デジタルに、MMG 診断をモニター診断に移行後の 2008 年から 2012 年まで
の高松市検診延べ 17749 名を対象とした。「結果」要精査は 5.9%、FNAC は
5.6%に施行した。無自覚発見乳癌 112 例(0.63%)陽性反応的中度 11.7%と
良好な結果であった。112 例中 4 例は FNAC を施行せず組織診を施行したが、
108 例は US で描出し FNAC で診断した。108 例の MMG は所見なし 36 例、石
灰化 36 例、腫瘤等 36 例であった。所見のない 36 例は US スクリーニングで
拾い上げたわずかな所見を積極的に FNAC 施行したことでがんと診断され、そ
の結果高い発見率につながった。細胞診断は鑑別困難 20%、悪性疑い 14%、
悪性 66%であった。鑑別困難は針生検や切開生検後、手術を施行した。鑑別
困難例はほとんどが非面皰型石灰化 DCIS と MMG で所見のない症例で、画像
所見で強く悪性を疑う症例はなかった。石灰化病変は MMG を読影しながら
US で石灰化を描出し FNAC で診断した結果、ステレオガイドマンモトームは
1 例も行わなかった。また、精査となった症例の良性病変はのう胞、線維腺
腫、乳管内乳頭腫、乳腺症が多くを占めていた。「まとめ」乳癌検診において
FNAC の利点は、明らかな悪性所見を呈さない画像に対して積極的に精査が行
えることである。悪性と診断できなくとも FNAC の鑑別困難は病変の存在を
臨床に伝えることができ、組織診を選択するために検診では意義のある診断
である。また、FNAC は特異度の高い検査であり、検診で多く見つかる良性病
変を良性と診断することができる。乳癌検診における FNAC はわずかな悪性
病変の検出、良性病変の確認という両面から大変有用である。FNAC をやめ針
生検に変えてしまうことは画像所見診断の劣化につながる可能性が高いと考
える。
393
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】術前の腋窩リンパ節転移診断は、治療法選択に寄与する大事な要
素である。当院では、術前に超音波による評価と、リンパ節に対する穿刺吸
引細胞診(以下 LNFNA)を用い診療を行っている。今回、リンパ節の細胞診の
診断精度について検討を行った。【対象と方法】対象は、2012 年 1 月から 10
月に手術を施行した StageI および II の原発性乳癌 639 例中、リンパ節に対し
て当院で超音波検査および LNFNA を施行した 186 例。手術検体のリンパ節転
移の有無との一致を検証した。【結果】LNFNA の精度は感度 66.7%(58/87)
特異度 78.6% (78/99) 正診率 73.1% (136/186) であったが、これは術前薬
物療法(以下 NAC)施行症例において消失した思われる症例も転移なしの評価
で行った。偽陽性となる 21 例は全て NAC 施行症例で 1 例以外が、組織学的薬
物効果が 2a 以上であった。それを考慮した感度は 72.9%、特異度 98.7%、
正診率 83.9%であった。LNFNA が偽陰性となった 29 例のうち 8 例が検体不
適、11 例は転移個数が 1 個であった。画像では悪性が疑われた症例の中で
LNFNA が良性と評価した症例が 20 例あり 16 例は組織学的にも良性であっ
た。また画像上良性の症例の中にも 6 例の転移症例があった。【考察】画像上
良性の評価症例からも転移を見出せること、画像上悪性の評価でも転移のな
い症例も存在することからも LNFNA の価値はあると考える。偽陰性となった
原因の多くは穿刺
部位に転移がない
こ と が 予 想 さ れ、
穿刺部位の工夫と
複数回穿刺が対策
として考えられる。
【まとめ】LNFNA に
よってリンパ節転
移の診断精度を向
上することが可能
であり、的確な治
療法選択に役立つ
ものと考える。
11169
11501
乳腺疾患に対するエコーガイド下穿刺吸引細胞診の真価を再評
価する
発見契機による HER2 陽性乳癌の特徴
GP-1-050-05
ポスター掲示
GP-1-051-01
1
おおえ乳腺クリニック
亀田メディカルセンター幕張、2 亀田メディカルセンター 乳腺センター
原 博子 1、片山 信仁 1、坂本 正明 2、坂本 尚美 2、角田 ゆう子 2、
福間 英祐 2、光島 徹 1
大江 信哉
<はじめに>多数の乳腺患者を日常的に診療する我々にとって、US で病変
を認めた場合まずその病変の良悪性を見極めることが重要である。当院では
乳腺診断の入り口を全てエコーガイド下穿刺吸引細胞診(以下 US-FNA)で
行なっている。今回は、当院での穿刺手技を紹介し、乳腺診断における USFNA の真価を再評価する。< US-FNA の手技と細胞診断> US-FNA は、千葉
大式の穿刺ピストルに 20ml のシリンジをセットし延長チューブと 22G 針を
連結して準備完了。演者が右手に針を持ちピストルは看護師が持つ。演者が
病変を US で確認しながら穿刺し吸引をかけさせる。その後針先を病変内で前
後させながら針を回転させ約 30 秒程穿刺して陰圧を解除し針を抜く。すぐに
延長チューブを外して針をシリンジにつけて針先の細胞をプレパラートに吹
き出す。針の根元に残った細胞は針を逆さにしてプレパラートにたたき出す。
プレパラートは直後に 95%エタノール液で固定を開始する。染色はパパニコ
ロ染色のみで、細胞診断は全て演者が自ら行なう。<細胞診断の精度>月間
約 900 名の外来患者に対して約 250 名 US を行い、その約 10%に対して USFNA を行なっている。当院の細胞診断は年間約 300 件施行しているが、最終
的に病理診断が確定した症例で検討したところ、2012 年度は感度、特異度と
も 95%以上だった。< US-FNA の役割>1)嚢胞性病変の診断、2)数ミリ程
度に拡張した乳管内病変の診断、3)2センチ以下の乳癌を疑う病変の診断、
4)線維腺腫の可能性が高い腫瘤性病変の診断、5)腋窩リンパ節再発を疑う
病変の診断、これらいずれもが US-FNA のみで正確に診断できれば、針生検
は不要と考えられる。またこうした症例が穿刺を必要とする症例の多くを占
めていると考えられることから、精度の高い US-FNA は、乳腺疾患の良悪性
診断の入り口として今後も有効な検査手技であると考える。
【目的】浸潤性乳癌全体の約 20% を占めるとされる HER2 陽性乳癌を、発見契
機により、検診発見乳癌群と検診外発見乳癌群に分け、その特徴を検討する。
【方法】2010 年 1 月から 2012 年 12 月までの 3 年間の間に当院で生検、手術を
施行された浸潤性乳癌のなかで、生検での病理検査で HER2 陽性であったも
のを発見契機から、検診発見群と検診外発見群にわけた。検討項目は、診断
時年齢、腫瘍径、MMG 所見・カテゴリー、US 所見・カテゴリー、組織所見(核
異型度、ER)
、リンパ節転移の有無とした。【結果】浸潤性乳癌は 576 例であり、
そのうち生検検体による病理検査で HER2 陽性が判明している症例は 75 例で
あった。このうち、発見契機が検診であった症例は 22 例、検診外発見症例は
53 例であった。検診発見群と検診外発見群について、各項目について検討し
たところ、腫瘍径で検診発見群は検診外発見群より小さいという結果が得ら
れた(p=0.0040)。その他の検討項目では検診発見群と検診外発見群の間に
有意差は認められなかった。【結論】今回の検討では、発見契機による HER2
陽性乳癌の特徴は、腫瘍径においてのみ検診発見群の方が検診外発見群より
小さいという差が認められた。
一般セッション(ポスター掲示)
11892
11436
異なる抗 HER2 抗体による乳癌針生検標本免疫染色結果と化学
療法に対する組織学的治療効果の比較検討
乳癌の Androgen receptor 発現についての検討
GP-1-051-02
GP-1-051-03
国立国際医療研究センター病院 中央検査部臨床病理室
1
国立がん研究センター中央病院 病理科、2 防衛医科大学校 病態病理学、
3
国立がん研究センター中央病院 乳腺腫瘍内科、
4
国立がん研究センター中央病院 乳腺外科、5 浜松医療センター 乳腺外科
中村 ハルミ、杉浦 良子、安田 秀光、橋本 政典、猪狩 亨
小林 英絵 1,5、吉田 正行 1、清水 千佳子 3、木下 貴之 4、津田 均 2
【背景】乳癌原発巣における HER2 検査は術前全身療法適応決定に重要である
が、使用される免疫染色用試薬は複数あり結果の解離が報告されている。今
回 3 種類の抗体試薬を用いて HER2 陽性率と組織学的治療効果を比較した。
【方法】当院にて 1998 年から 2005 年の間に HER2 陽性と診断され術前化学療
法 (NAC)(AT × 4:32、AC → PTX:4、その他:5)が施行された原発性乳癌
針生検検体 41 例に対し、A 社ポリクローナル (A ポ )、B 社ポリクローナル (B
ポ )、B 社単クローナル抗体 (B モ ) を用いた免疫染色を行った。A ポは用手的
に、
B ポと B モは用手的に抗原賦活を行った後 Dako Autostainer で染色を行っ
た。HER2 判定は 2007 年 ASCO/CAP 基準に従った。【結果】異なる抗体間の
HER2 判定は 24 例 (59% ) で完全一致し、20 例が 3+, 2 例が 2+, 2 例が陰性
であった。17 例で抗体間の判定に差が見られ、A ポと/ B ポ 3+ で B モ 1+ が
8 例、B モ 2+ が 6 例あった。A ポと B ポ間、A ポと B モ間、B ポと B モ間の一
致率は各々 95% (39/41)、59% (24/41)、61% (25/41) であった。治療効
果が quasi-pCR(grade 2b+3) であった頻度は A ポ/ B ポ共通 3+ 群、2+ 群、
陰性群で各々 29%(10/35)、67%(2/3), 0%(0/2) であり、B モ 3+ 群、2+
群、 陰 性 群 で は 38%(8/21)、13%(1/8), 25%(3/12) で あ っ た。 ま た、3
抗体共 3+ の群で 35%(7/20), A ポ/ B ポ 3+ で B モのみ 1+, 2+ の群で各々
30%(3/10), 0%(0/6) であった。【考察】抗体試薬間で陽性率に差異がみられ
た。各抗体 3+ と quasi-pCR 率との間に有意な相関は見られなかった。症例
数追加、染色法検証 ( 今回抗体メーカーと別社の自動染色装置を使用 )、ISH
法や他抗体染色との対比などを重ね、結果の背景を明らかにしていきたい。
394
Androgen receptor (AR) は乳癌の 60 から 70%に発現していることが知られ
ているが、本邦での報告は少ない。今回、術前化学療法を行わず乳癌手術を
受けた 63 例について insintric type 別の AR 発現率について検討した。2013
13th St. Gallen に お い て 提 案 さ れ た 乳 癌 Intrinsic subtype の 代 替 定 義 に
従って、63 例を Luminal A-like (10 例 )、Luminal B-like (Her2 陰性 ) (26
例 )、Luminal B-like (Her2 陽 性 ) (4 例 )、HER2 陽 性 (non luminal) (7
例 )、Triple negative (16 例 ) に分類した。分類の際の Ki-67 のカットオフ値
は 14%とした。PgR のカットオフ値は 20%が提案されているが、今回は簡
便に Allred score 4 点以下とした。AR の免疫染色はクエン酸緩衝液 (pH9.0)
用いた 10 分間のオートクレーブによる賦活化後、一次抗体 (1:100, AR441;
Dako) と 30 分 室 温 で 反 応 を 行 っ た。 そ の 結 果、AR の 陽 性 率 は そ れ ぞ れ
90.0% (9/10)、96.2% (25/26)、100% (4/4)、71.4% (5/7)、75.0% (12/16)
で、陽性率の平均値は 86.5%であった。なお、Triple negative のうち、アポ
クリン癌と診断された症例 (DCIS を含む 9 例 ) の陽性率は 100%であり、ア
ポクリン癌以外の 42.9% (3/7) と大きく異なっていた。この結果から、AR
は ER 陽性乳癌で高めである一方、HER2 陽性 (non luminal) 乳癌では ER 発
現とは無関係に AR 発現を示す症例が多いこと、アポクリン癌を除く Triple
negative 乳癌では AR 発現率が低いことが示唆された。我々の施設では、現在、
手術検体での AR 染色をルーチン化しており、今後も症例数を蓄積してより詳
細な解析を進めていく予定である。
ポスター掲示
11463
10297
当院で確定診断した最小乳癌及び非浸潤性乳管癌の検討
乳腺針生検で癌と診断されたが手術検体で癌が認められなかっ
た聖路加病院における乳癌症例の病理学的解析
GP-1-051-04
1
GP-1-051-05
福岡山王病院 外科、2 福岡山王病院 放射線科、3 福岡山王病院 病理
1
冨永 洋平 1、竹吉 正文 2、金子 修二 2、宇都宮 英綱 2、恒吉 正澄 3
3
2009 年 5 月から 2013 年 8 月までの 4 年 3 ヶ月間、当院で診断を確定した最
小乳癌(腫瘍径 1cm 以下)及び非浸潤性乳管癌(DCIS)の 31 例について今回、
臨床的に解析した。当院で診断した全乳癌の中で最小乳癌と DCIS は 116 例
中 31 例(26.7%)であった。DCIS、T1a、T1b は各々、18 例(58.1%)
、3 例
(9.7%)、10 例(32.3%)であった。年齢は 24 歳から 80 歳で 40 歳代が最も
多く、12 例(38.7%)、ついで 60 歳代、7 例(22.6%)50 歳代、6 例(19.4%)
であった。40 歳以降では、27 例(87.1%)であった。当院を受診した理由は、
検診での異常所見が最も多く 17 例(54.8%)であった。次いで腫瘤触知が 10
例(32.3%)であった。初診から 2 カ月以内に針細胞あるいは針生検などのイ
ンターベンション(IVR)を行った症例は 25 例(80.6%)で残りの症例は、経
過観察後に IVR を行った。吸引式乳腺組織生検(VAB)
は 9 例に行った。手術は、
22 例(71.0%)に乳房温存療法を行い、センチネル LN 生検は 21 例(67.7%)
に行った。乳房全摘し、ティッシュエキスパンダーを挿入した症例は 3 例だっ
た。当院では、腫瘤径 5mm 以上の病変で、縦横比、血流、辺縁の形態等で悪
性を否定できない場合では、IC を行い、なるべく早期に IVR(特に針細胞診)
を行うことを心がけている。また、細胞診や針生検で悪性と診断されない場
合にも、再度 VAB や摘出生検を行い、乳癌と診断した症例も 10 例程度経験し
ている。発表時には文献的考察も含め、より詳細に報告する予定である。
聖路加国際病院 病理診断科、2 聖路加国際病院 乳腺外科、
聖路加国際病院 放射線科、4 東北大学付属病院 病理診断学分野
阿部 江利子 1,4、鈴木 高祐 1、林 直輝 2、楊 陽 1,4、宇野 美恵子 1、
山内 英子 2、角田 博子 3、笹野 公伸 1,4
11553
11730
閉経後高濃度乳腺に発生した乳癌の特徴
乳腺疾患病理診断のための細胞診、針生検、吸引式組織生検役
割の検討
GP-1-051-06
GP-1-051-07
順天堂大学附属順天堂医院
明神 真由、堀本 義哉、齊藤 光江、猪狩 史江、吉田 悠子、毛利 かの子、
徳田 恵美、清水 秀穂、田辺 真彦、中井 克也、岩間 敬子
背景・目的:閉経後の高濃度乳腺は乳癌の発症リスクが高いと言われている
が、その特徴や原因はいまだに不明である。今回我々はその特徴を把握する
ことを目的として当院における手術症例を調査した。対象・方法:対象は
2012 年から 2013 年の約 2 年間に当院で手術を行った閉経後乳癌 179 例 ( 平
均年齢 64.1 歳 (51-86))。全症例の当院で撮影した MMG を後方的に解析した。
乳腺濃度はマンモグラフィにより BI-RADS(Breast Imaging Recording and
Data System)に従い、乳腺濃度 25%未満の脂肪性、25%から 50%の乳腺散
在、50%から 75%の不均一高濃度、75%より濃度が高い高濃度の 4 段階で判
定分類し、臨床病理学的因子を中心に比較検討を行った。 結果:179 例中高
濃度乳腺は 7 例 (0.04% )、不均一高濃度乳腺は 61 例 (34.1% ) であった。患
者の年齢や病期と乳腺濃度には明らかな関連はみとめられなかった。組織型
は高濃度乳腺で小葉癌や非浸潤性乳管癌が有意に多かった (p < 0.01)。また
HER2 陽性が高濃度乳腺 7 例中 6 例と多くみとめられた。MMG の所見として
石灰化や腫瘤影がみとめられる割合は高濃度であっても変わらなかった。考
察:高濃度乳腺における乳癌には組織型やサブタイプの分布に特徴がみられ
た。さらに患者背景や病理学的因子との関連を解析中である。
395
1
3
湘南記念病院 かまくら乳がんセンター、2 さつき台診療所、
東京大学医学部 病理診断部
土井 卓子 1、井上 謙一 1、合田 杏子 1、川崎 あいか 1、堤 千鶴子 1、
井上 俊夫 1、佐々木 毅 3、須田 嵩 2、田中 佳和子 1、嶋田 俊之 1
目的:乳腺疾患は診断確定のため、細胞診、針生検、吸引式組織生検が行わ
れるが、どのような使い分けが良いのかは議論が分かれる。当院での各検査
の施行件数、成績を調べ、その意義を検討した。対象:2011、12 年の 2 年間
の受診者のうち病理学的診断確定のため検査を施行した 1893 件を対象とし
た。方法:細胞診はクラス分類と推定組織診断、針および吸引式生検は組織
診断を行い、その内訳を検討した。重複施行症例はその理由を検討した。結
果:検査の内訳は細胞診が 1118 件、61.1%、針生検が 483 件、24.2%、吸
引式が 292 件、14.7%であった。細胞診の結果は、細胞不十分、27.1%、ク
ラス1、8.1%、主に嚢胞、クラス2、35.1%、主に嚢胞と乳腺症、クラス3、
20.8%、主に線維腺腫と乳頭腫、クラス4、0.3%、癌疑い、クラス5、8.7%、
乳癌であった。針生検は、浸潤癌 43.5%、非浸潤癌 8.3%、線維腺腫 16.6%、
乳腺症 6.4%、その他であった。吸引式は浸潤癌 5.8%、非浸潤癌 14.7%、線
維腺腫 6.2%、乳腺症 30.1%、その他であった。重複施行例は細胞診でクラ
ス3,4となり針生検、または吸引式施行例 31 件とクラス5で確認のため針
生検施行 84 件であった。考察:細胞診は侵襲が少なく多くの症例に施行して
いたが判断がつかない場合も 3 割程度あった。施行症例は線維腺腫、濃縮嚢
胞、乳腺症を想定した症例と 5mm 未満の小病変例が多く、結果も悪性は 7.8%
と少なかった。針生検は癌を疑った症例の大部分に施行しており、浸潤癌が
多かった。線維腺腫の例は本人が良性の確認を希望した場合と画像で悪性が
否定できない場合が半数ずつであった。吸引式は、ステレオガイド下の石灰
化病変と、超音波ガイド下の腫瘤非形成性病変に対して施行されており非浸
潤癌が多く、その他異型乳管過形成が多かった。結論:細胞診は良性の確定、
針生検は乳癌の確定とサブタイプ診断、良性腫瘍の確定、吸引式は非浸潤癌
と乳腺症の確認と ADH の診断という使い分けとなっていた。
一般セッション(ポスター掲示)
【背景と目的】原発病変が極めて小さな乳癌症例の一部では乳腺針生検で確実
に癌が認められたにも関わらず手術標本で病変が認められず、腫瘍径などの
評価で苦心する症例が最近増加してきている。そこで今回我々は手術検体で
生検瘢痕は認めるが腫瘍がみられなかった症例の臨床病理学的背景について
検討した。【対象と方法】2012 年 9 月から 2013 年 8 月までの当院で施行され
た原発乳癌手術検体 949 症例のうち、針生検で癌が同定されたが手術標本で
認められなかった 13 症例を対象とした。手術検体の生検痕の部位で深切り
(600-6000 枚 ) を施行し病変の有無と、針生検標本の病理組織学的所見、及
び術前の画像所見を再評価した。【結果】これら 13 例の平均年齢は 51.3 歳
(31-74 歳 )、吸引式組織生検が 8 例 (61.5%)、針生検が 5 例 (38.5%) であっ
た。針生検の病理組織診断は浸潤癌が 7 例 (53.8%)、非浸潤癌が 6 例 (46.2%)
であった。術前の画像診断における腫瘍径は浸潤癌が平均 0.4cm(0-1cm)、
非浸潤性乳管癌は平均 1.8cm(0.6-2.5cm)、また、針生検での病変の大きさ
は浸潤癌が平均 0.3cm(0.05-0.5cm)、非浸潤癌が平均 1.1cm(0.7-1.5cm)
であった。全摘出術標本は 8 例 (61.5%)、部分切除術標本は 5 例 (38.5%) で
あり、標本の切り出しは、全摘出術標本は 7mm、部分切除術施行例標本は
5mm 間隔で行った。すべての症例において手術標本で生検痕を認めたが、深
切りにより病変が確認できたのは浸潤癌が 1 例 (14.3%)(0.3cm)、非浸潤
癌が 3 例 (50.0%)( 平均 0.4cm)、針生検で浸潤癌であり、手術標本で浸潤
癌は認めなかったが非浸潤癌成分のみ確認できたのは 1 例 (0.02cm) であっ
た。深切りでも腫瘍がみられなかった症例は術前画像診断では浸潤部は平均
0.24cm(0-0.7cm)、非浸潤癌は平均 2.0cm(1.4-2.5cm) であり、針生検で
の浸潤部は平均 0.27cm(0.05-0.5cm)、非浸潤癌は平均 1.1cm(0.8-1.5cm)
であった。【まとめ】針生検で明らかに癌と診断されたが、手術標本で病変が
認められない症例では、生検痕の部分を深切りして検索すると病変を認める
ことがある一方で、術前評価の腫瘍径が小さく生検で十分検体を採取すると
実際に針生検で癌病変が完全に " 摘出” されてしまう症例が実在する事を本研
究では初めて示す事が出来た。
ポスター掲示
11911
10897
ラジオ波焼灼療法 (radiofrequency ablation:RFA) 後非切除
例の病理学的治療効果判定に有用性と問題点 ( 第 2 報 )
乳癌診療における滋賀県病理診断ネットワークシステム(さざな
み病理ネット)の発足と当院での経験
GP-1-051-08
GP-1-051-09
1
1
2
3
国立がん研究センター中央病院 乳腺外科、
国立がん研究センター中央病院 病理臨床検査科、
3
防衛医科大学校 病態病理学講座
新崎 あや乃 1、吉田 正行 2、麻賀 創太 1、岩本 恵理子 1、神谷 有希子 1、
神保 健二郎 1、北條 隆 1、津田 均 3、木下 貴之 1
一般セッション(ポスター掲示)
[背景・目的]RFA 後非切除経過追跡のプロトコール研究では、RFA 後経時的
に針生検を行い、病理組織学的に生存する乳癌細胞の有無を確認している。
RFA 術後針生検検体の病理診断上の問題点について,前回学術集会呈示後の
フォローアップ情報を加え報告する。[方法]超音波検査で腫瘍径 15mm 以
下の限局型乳癌患者 17 例を対象とし、全身麻酔下にセンチネルリンパ節生
検(SLNB)を施行後、Cool-tip RF システムを用いて RFA を施行した。術後放
射線療法を施行し、RFA 施行から 3 か月後および 12 カ月後に超音波ガイド下
吸引式コア針生検による RFA 術後評価を行った。組織切片は凍結ないし固定
後 に nicotinamide adenine dinucleotide (NADH)-diaphorase 染 色、HE 染
色で評価した。[結果]患者年齢中央値は 51 歳、平均腫瘍径は 8.5mm であっ
た。RFA 前の病理組織型は浸潤性乳管癌 13 例(硬癌 6、乳頭腺管癌 4、充実腺
管癌 3)、管状癌が 1 例、非浸潤性乳管癌が 3 例で、全例ホルモン受容体陽性・
HER2 陰性、SLNB は 15 例が陰性、2 例が陽性(OSNA 1+、+I 各 1 例)であった。
術後放射線療法は 16 例に実施された。術後 3 ヶ月の針生検では腫瘍辺縁部、
中央部で平均 7 回穿刺を施行し、17 例中 14 例で残存腫瘍を認めず、腫瘍の凝
固壊死、肉芽組織の形成がみられた。残存腫瘍を認めた、あるいは疑われた
3 例は、その後乳房部分切除を追加した。うち 1 例では、腫瘍中央部は完全に
壊死していたが、辺縁部の乳管内進展成分に残存腫瘍を認めた。他の 2 例は最
終的に乳管上皮の反応性異型と判定された。残存腫瘍を認めなかった 14 例中、
RFA 後 12 ヶ月経過した 13 例について 2 回目の針生検を施行し、腫瘍辺縁部
で平均 5 回、中央部で平均 7 回穿刺を施行した。いずれも viable な細胞を認め
ず、線維性瘢痕あるいは液状変性がみられた。[結語]NADH を用いた RFA 後
の治療効果判定は針生検検体においても有用である。ただし術後 3 か月の段階
では、乳管上皮の反応性異型により病変の良悪性の判断が困難な事例があり、
慎重な判断が求められる。
公立甲賀病院 外科、2 滋賀県立成人病センター研究所、
滋賀医科大学 分子診断病理学、4 済生会滋賀県病院 病理診断科
沖野 孝 1、龍見 謙太郎 1、真鍋 俊明 2、杉原 洋行 3、馬場 正道 4、
加藤 元一 4
「諸言」公立甲賀病院は地域がん診療連係拠点病院であり癌診療における役割
を担うことが期待されているが、常勤の病理医が在籍せず術中迅速病理診断
では非常勤病理医が勤務する時間帯に合わせて行わざるを得ない状況にあっ
た。滋賀県では患者の満足を求めることを目的とし、質の高い病理診断を迅
速にしかも必要とされる時に必要とされる形で提供し、より適切な医療が速
く受けられる環境を構築するために遠隔病理診断 ICT ネットワーク(公募によ
る愛称をさざなみ病理ネットと定められた)を 2013 年に本格稼働を始めたの
で報告する。「対象と方法」乳腺外科医は病理検査技師を通じて前日までに検
査施設に依頼する。当日は検査室でリンパ節あるいは乳腺断端を医師の指示
のもとに標本作製を行う。標本はバーチャルスライドに取込みを行った後に
テレリポーティングシステムに連結、画像と依頼書を専用回線を通じて病理
医のもとに電送する。病理医は少なくとも二人(2 施設)の診断を行い協議する。
この際チャットによる意見交換をおこなうこともある。結論を出したうえで
外科医に手術室へ直接電話連絡する。「結果および考察」現在まで 3 例の乳腺
部分切除症例にこのシステムを応用した。標本提出から返答までの時間は約
45 分であり、従来が約 30 分であったことに比べやや長時間ではあるが実用上
は問題ないものと考えている。また、手術室に専用モニターが設置されており、
外科医は病理医と結果についての確認と相談を行うことが可能である。本来
なら病院に常勤の病理医が在籍することが望ましいのはいうまでもないこと
であるが、バーチャルスライドを使用したシステムは複数の病理医のレビュー
を経たうえでの結果であることも併せ考えると従来よりむしろ安全性が向上
しているということが可能である。今後はさらに他施設の参加を促しネット
ワークを広げることにより病理医の少ない現状でも、組織診断の地域及び施
設間の均てん化につながるものと期待される。滋賀県のみならずネットワー
クをひろげさらに発展させたいと思っている。
10424
11955
乳癌手術材料における検体・前処理の違いによる免疫組織化学
染色の検討
乳癌における病変に応じた術前組織採取方法の検討
GP-1-051-10
1
GP-1-052-01
1
日本赤十字社和歌山医療センター 乳腺外科部、
日本赤十字社和歌山医療センター 放射線科部、
3
日本赤十字社和歌山医療センター 病理部
2
2
最成病院 検査科、 千葉大学大学院医学研究院 分子病態解析学、
3
最成病院 外科、4 千葉大学大学院医学研究院 臓器制御外科、
5
千葉大学附属病院 病理部
川口 佳奈子 1、芳林 浩史 1、矢本 真子 1、西村 友美 1、山田 晴美 1、
嶋田 功太郎 2、小野 一雄 3、加藤 博明 1
梅原 有子 1,2、坂田 治人 3、藤田 和恵 3、長嶋 健 4、中谷 行雄 5
形態学において、施設または技術者間における染色性の違いが診断に影響を
及ぼす可能性がある。今回、乳癌手術材料を用いて病理・細胞診検体を作成
し免疫組織化学染色を行うにあたり、前処理方法の違いによる染色性につい
て検討をおこなった。はじめに手術材料をホルマリン固定する前に、1. 癌部
の組織切片を 5mm 四方切り取りスライドグラスに捺印標本を作製し 100%エ
チルアルコール固定した。次に、残りの手術材料を 15%中性緩衝ホルマリン
固定しパラフィンブロックを作成し、2. 薄切、伸展後 4℃保存、3. 薄切、伸
展後 58℃ 40 分パラフィン溶解後室温保存した 3 種類の検体を用いた。1 ~ 3
を賦活処理から核染までの全工程を同時に免疫組織化学染色した。抗体には、
A. 膜タンパク抗原 (E-cadherin)、B. 核タンパク抗原 (PCNA ; Proliferating
Cell Nuclear Antigen) を標的とした 2 種類を用いた。また、薄切後の経過時
間による染色性の違いをみるために、a. 1ヶ月以内、b. 3ヶ月以内、c. 6ヶ
月以内に同様の条件下で染色を行った。各々の染色結果を光学顕微鏡下で撮
影した写真と共に供覧する。
【背景】乳腺は体表にあるため他臓器に比べ診断的アプローチを比較的行いやすい
臓器である。また従来の細胞診やコア針生検に加え、マンモトーム生検など組織採
取の手技が多彩であり、
切開生検を行わずとも適切な病理診断に至る機会が増えた。
しかしながら画像診断の精度向上に伴い、乳癌と鑑別困難な良性病変、良性病変と
鑑別困難な乳癌など、診断に難渋する症例を少なからず認める。術前診断と手術標
本における術後診断結果を比較し、当センターにおける術前組織採取方法の妥当性
について検討する。
【対象と方法】2009年4月から2013年7月の間に当センターで診断・手術を行った
原発性乳癌367例を対象とした。方法は乳房造影MRIを含む画像診断と組織診を
行ったのちカンファレンスで検討し、外科手術を行った。症例毎の画像診断・術前
病理診断・手術標本の診断について調査し、主に術前組織生検と手術標本における
病理結果の乖離に着目することで、術前組織採取方法の妥当性について検討した。
【結果】最終的な術前病理学的診断方法は、コア針生検(16G)が79%、超音波ガイ
ド下マンモトーム生検(11G)が9%、ステレオガイド下マンモトーム生検(11Gま
たは14G)が9%、切開生検が3%であった。内訳は非浸潤癌が18%、浸潤癌が
82%であった。術前診断は良性病変であったが手術標本で悪性所見を認めた症例
は13例(3.5%)、術前診断が乳腺症であったが手術標本で悪性所見を認めた症例は
7例、術前診断が異型乳管過形成で手術標本で悪性所見を認めた症例は6例であっ
た。悪性所見を認めた症例では、非浸潤癌が85%と大半を占めていた。術前組織
生検と手術標本の乖離を認めた13例中、術前組織診断方法はコア針生検が6例、
超音波ガイド下マンモトーム生検が5例、ステレオガイド下マンモトーム生検が2
例であった。診断に乖離が生じた原因としては、
組織採取量が不十分であることや、
採取部位が異なることなどが考えられた。切開生検に至った症例は、異型乳管過形
成の診断で非浸潤癌の併存が否定できない症例や術前画像で乳癌が否定できない
症例が大半を占めた。
【結語】乳腺領域では病理組織採取の手技は多くあるが、正しい病理診断のために
適正な方法で採取を行うことが必要である。術前画像診断や病理結果により悪性が
否定できないような鑑別困難症例においては、慎重にカンファレンスを行い、再度
診断方法を検討すべきである。
396
ポスター掲示
11724
10693
画像上転移を疑う腋窩リンパ節への針生検の臨床的意義の検討
針生検結果による乳癌初期治療方針決定の妥当性についての検
討
GP-1-052-02
GP-1-052-03
1
静岡県立静岡がんセンター 乳腺外科、
2
静岡県立静岡がんセンター 生理検査科
1
1
1
1
1
3
1
佐藤 睦 、西村 誠一郎 、林 友美 、米倉 利香 、菊谷 真理子 、
高橋 かおる 1、植松 孝悦 2
吉村 吾郎 1、畑 和仁 1、櫻井 照久 2、甚田 恵理 2、梅村 定司 3、
鈴間 孝臣 4
【目的】乳癌初期治療方針決定に際しては,針生検による ER,PgR,HER2,
Ki67 が重要な要素となる.しかし,針生検と手術標本ではこれら結果が不一
致となることがあり,適切な治療選択に悪影響を及ぼす可能性がある.今回,
針生検と手術標本の結果を比較し,針生検結果で治療方針を決定することの
妥当性を検討した。
【対象と方法】2011 年 9 月から 2013 年 11 月に針生検実
施後,術前治療を行わずに手術を施行した浸潤癌 93 例を対象とした.針生検
はバードマグナム・ニードル 14 ~ 16G を用い,ストローク幅 15mm にて 3
~ 4 fire 採取した.針生検と手術標本の ER,PgR,HER2,Ki67 を比較した.
ER と PgR は Allred score を用いて,toal score 3 以上を陽性とした.HER2
は Hercep test 3+ あるいは FISH で遺伝子増幅有りを陽性とした.Ki67 は
カットオフ値を 14%と 30%に設定し,low/intermediate/high score と判
定した.さらにこれら結果に基づいて代替 subtype 分類 (2013 年 St.Gallen
会議 ) を行い,針生検と手術標本結果を比較した.【結果】針生検と手術標本
結果の一致率は ER:97%,PgR:93%,HER2:94%,Ki67:60%であっ
た.Ki67 不一致 37 例の内訳は針生検より手術標本高値が 22 例・59%であっ
た.手術標本 Luminal A の 21 例で針生検結果が一致したのは 14 例・67%,
Luminal B HER2 陰性の 55 例では 44 例・80%,Luminal B HER2 陽性の 6
例では 5 例・83%,HER2 陽性の 5 例では 5 例・100%,Triple negative の 7
例では 5 例・71% であった.【結語】針生検と手術標本ではホルモンレセプター
と HER2 の一致率は高いが、Ki67 の一致率が低い.針生検に比べて手術標本
の Ki67 が高値となることが多く,治療方針決定に際してはこの点に配慮する
必要がある.
10025
11565
当院におけるステレオガイド下マンモトーム生検(ST-MMT)と
それでも確定診断に至らなかった症例の検討
当院におけるステレオガイド下マンモトーム生検の検討
GP-1-053-01
1
3
GP-1-053-02
1
5
2
市立貝塚病院 乳腺外科、 市立貝塚病院 放射線科、
市立貝塚病院 臨床検査科、4 市立貝塚病院 看護局
1
1
1
2
2
松本 英一 1、宮原 成樹 1、藤井 幸治 1、早崎 碧泉 1、矢花 正 2、
中村 晴代 3、谷口 正益 4、山村 賢太郎 4、三宅 知宏 5、大西 久司 6
3
中野 芳明 、井上 共生 、西 敏夫 、矢竹 秀稔 、沢井 ユカ 、山崎 大 、
梅本 郁奈子 4、稲治 英生 1
一般に石灰化病変の診断には、マンモトーム生検を行い、確定診断が可能と
なることが多い。しかし、全例が確定診断されるわけではなく、マンモトー
ム生検でも診断できない症例もある。当院における ST-MMT 症例の検討とそ
れでも確定診断に至らなかった症例を検討した。【対象】H19 年 9 月から H25
年 9 月まで ST-MMT を行った 323 例を対象とした。【結果】カテゴリー 2、3、
4、5 のそれぞれの頻度は 6 例 (1.9%)/195 例 (60.3%)/91 例 (28.2%)/31 例
(9.6%) であった。乳癌と診断された症例数と各カテゴリー内での乳癌の頻度
は、 非 浸 潤 癌 は、0 例 /36 例 (18.5%)/38 例 (41.8%)/24 例 (77.4%)、 浸 潤
癌は 0 例 /6 例 (3.1%)/9 例 (9.9%)/5 例 (16.1%) であった。確定診断できな
かった症例は 31 例(全症例の 9.6%)あり、各カテゴリー内での例数と頻度は、
0 例 /19 例 (9.7%)/9 例 (9.9%)/3 例 (9.7%) であった。確定診断できなかっ
た症例のうち、切除生検症例は 19 例あり、非浸潤癌が 8 例、浸潤癌が1例認
められた(アップグレード率 47.4%)。ST-MMT で癌と確定診断できなかった
原因は、8 例が癌と判定するには病変が小さく、ST-MMT の切除範囲以外に主
病変があったためであった。経過観察した症例は 12 例あり、経過観察中 2 例
に乳癌が認められた。1例は経過観察中、約 3 年後に石灰化が増加し、再度
ST-MMT を行い DCIS と診断された。他の 1 例は経過観察中、約 2 年後に STMMT を行なった石灰化の部位の近傍に腫瘤を形成し、細胞診で乳癌と診断さ
れた。【まとめ】ST-MMT は石灰化症例に対する有用な方法であるが、3 以上
のカテゴリーにおいて各カテゴリーで約 10%の症例は確定診断に至らなかっ
た。石灰化をターゲットとした ST-MMT の切除範囲に主病変が含まれないこ
とがあり、経過観察する場合では観察期間は最低 3 年以上必要であることを認
識することが重要と思われた。
伊勢赤十字病院 外科、2 同 病理部、3 同 看護科、4 同 腫瘍内科、
同 薬剤部、6 大西クリニック
【はじめに】検診マンモグラフィ(MMG)で精査が必要とされる微細・微小な
石灰化病変は超音波で認識することが困難な場合も多く、近年ステレオガイ
ド下マンモトーム生検(ST-MMT)が不可欠となってきている。当院でも 2012
年 2 月から側臥位と座位にて生検可能な GE 社 /Senographe DS LaVerite を
導入し ST-MMT を開始している。まだ症例数は少ないが当院での生検成績や
課題につき検討した。【対象】2012 年 2 月から 2013 年 12 月まで石灰化病変に
対して ST-MMT を施行した 24 例(超音波で所見のないカテゴリー 3 以上の微
細・微小石灰化で患者が ST-MMT を希望)【検討項目】石灰化採取率,検査時間,
カテゴリー分類 , 石灰化所見での癌の割合 , 病理学的診断につき検討。【結果】
施行 24 例中 1 例は乳房厚が薄く座位外側よりアプローチを試みたが麻酔後気
分不良となり組織採取せず中止し、6 か月後に US-MMT 施行にて DCIS と診
断。ST-MMT での乳腺組織採取 23 例中石灰化採取率は 22 例で 96%、検査時
間は平均 56 分であった。カテゴリー別での乳癌は,C3(2/16 例:12.5%),
C4(4/8 例:50%)で、石灰化の形状別での乳癌は微小円形(2/9 例:22%),
淡く不明瞭(3/13 例:23%),多形性(1/2 例:50%)で ST-MMT での組織診
断では全て DCIS の判定であった.悪性診断の 6 例は全例手術を施行し非浸潤
癌:5 例(83.3%),浸潤癌:1 例(16.7%)と診断された。【まとめ】当院では
微小円形や淡く不明瞭な石灰化においても ST-MMT 施行の 22% と 23% が乳
癌であった。石灰化採取率は 96%であったが体位や手技の工夫を重ね今後の
成績向上をはかるとともに検査時間の短縮にも取り組みたい。
397
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】原発性乳癌において腋窩リンパ節(AxLN)転移の有無は staging や
治療方針決定のためにも重要な要素である。一般的には画像上 AxLN 転移を
疑う症例に対し穿刺吸引細胞診が行われることが多いが、当院では画像検査
(US・MRI・CT)で AxLN 転移を疑う症例に対し、US ガイド下に AxLN への
CNB(18G 針、3cores)を施行しており、これまでに有害事象は経験していな
い。文献的には各々の陰性的中率は細胞診で 81.7%、CNB で 91.2%との報
告がある。【目的】画像上 AxLN 転移を疑う症例への CNB の有用性を検討する。
【方法】2011 年 1 月~ 2012 年 12 月に当院で手術した原発性乳癌 621 例のう
ち術前に画像上 AxLN 転移を疑い CNB 施行し陰性であった 48 例について後ろ
向きに検討した。(術前化療例、他院生検例は除外。)【結果】LN-CNB 陰性症
例には SNB(色素 RI 併用)が施行され、48 例中 8 例に AxLN 転移を認め、陰性
的中率は 83%であった。うち 7 例で SN を同定でき、2mm 以下の micrometa
が 2 例、macrometa が 5 例で、macrometa 症例の転移大きさ(mm)/LN の
大 き さ(mm)は、2.2/25、2.4/21、2.5/10、3/15、4/40 で あ っ た。 も う
1 例では SN 同定できず、触診で固く触れた LN を術中迅速病理検査に提出し、
10mm 大の LN のほぼ 90%を占める転移を認めた。【考察】LN-CNB 偽陰性 8
例のうち 5 例は 2mm 前後の比較的小さな転移であり、見直した CT・MRI で
も明らかな転移は疑えず、CNB による診断の限界と考えられた。LN のほぼ
全体に転移を認める症例では今回の症例のように SNB で偽陰性になる可能性
があり、CNB で転移の診断をつけたい症例である。この症例の CNB を施行し
た 9mm 大 LN は US 上皮質は厚いがリンパ節門を認め、典型的な転移を疑う
LN ではなかった。CT・MRI では Ax 深部に 7mm 程度の転移を疑う球形の LN
を認め、深部のため US では描出できずに異なった LN の CNB を行ったと考え
られた。CT 等で Ax 深部に転移を疑う LN を認める症例や肥満症例では US で
の LN 描出に限界があり、CNB の対象にすべきでないと考える。【結語】LNCNB の精度はまずまず高いが診断の限界があり、小さな転移の診断は難しい。
AxLN の評価には US・CT・MRI を組み合わせた評価が重要だが、明らかには
転移を疑えない形態、サイズの LN では一対一対応が難しく、SNB と組み合わ
せた AxLN の評価が不可欠である。しかし、LN-CNB 陰性例では比較的小さ
な転移が多く、将来的には放射線療法を併用することで LN-CNB 陰性例への
SNB 省略の可能性もあるかもしれない。
市立岸和田市民病院 乳腺外科、2 和歌山県立医科大学紀北分院 外科、
紀和病院 ブレストセンター、4 串本有田病院
ポスター掲示
11420
10249
当院におけるステレオガイド下マンモトーム生検の検討
ステレオガイド下マンモトーム生検 412 例の検討
GP-1-053-03
GP-1-053-04
1
社会保険山梨病院 乳腺外科、2 社会保険山梨病院 病理診断科、
3
社会保険山梨病院 放射線部
名古屋第二赤十字病院 外科
坂本 英至、長谷川 洋、小松 俊一郎、法水 信治、赤羽 和久、新宮 優二、
稲葉 一樹、田口 泰郎、伊佐治 孝洋、牧野 安良能、渡邊 将広、
三浦 泰智、山東 雅紀、大原 規彰、原 由美子
丸山 孝教 1、野方 尚 1、中村 暢樹 2、小俣 好作 2、望月 亜希子 3
一般セッション(ポスター掲示)
マンモグラフィー検診が普及し精度管理が行われるようになって、非触知乳
癌が多く発見されるようになった。マンモグラフィの特徴的所見である石灰
化のみで発見される乳癌は早期であることが多い。超音波で所見がなく、マ
ンモグラフィの石灰化のみである場合はステレオガイド下マンモトーム生検
( 以下 MMT とする ) が診断に有用である。
2010 年 4 月から 2013 年 3 月に当科にて実施した MMT につて、石灰化の形態・
分布と組織診断の結果を報告する。2010 年 4 月から 2013 年 3 月に 93 例 ( 検
査中止を除き ) の MMT が行われた。年齢は 36 ~ 76 歳 ( 平均 51.9 歳 )。乳癌
の診断は 32 例 (34.4%)、年齢は 40 ~ 76 歳 ( 平均 54.0 歳 ) であった。75 例
が検診で異常を指摘され MMT を行い 28 例 (37.3%) が乳癌であった。残り 18
例 ( 乳癌 4 例、22.2%) は外来経過観察中あるいは他院からの紹介であった。
石灰化の形態と分布から 93 例を分類すると図表のようになる。各カテゴ
リーの乳癌症例数はカテゴリー 3 が 14 例 (26.4%)、カテゴリー 4 が 16 例
(44.4%)、カテゴリー 5 が 2 例 (100%) であった。93 例中 49 例 (52.7%) に
は超音波で所見が認められたが、診断の確実性から MMT が選択された。
病理診断結果は DCIS が 21 例 (65.6%)、T1mic が 3 例、T1a が 6 例、T1b が
2 例であった。いずれも手術が行われ、リンパ節転移は認められず、Stage0
または I であった。全症例、現在まで再発所見は認めていない。
今回の検討からMMT
施行例の34.4%に乳
癌が発見されたが、
いずれも早期乳癌で
あった。ステレオガ
イド下マンモトーム
生検は、エコー下生
検に比べ検査時間が
かかることと出血の
危険が高くなること
が問題であるが、早
期に乳癌を発見する
ためには必要な検査
である。
【目的】ステレオガイド下マンモトーム生検施行例を分析し検査適応,施行方
法を検討する.【対象】過去 6 年間に当科にてステレオガイド下マンモトーム
生検を施行した 412 例を対象とした.平均年齢は 48.2 歳(26-80 歳),対象病
変は石灰化 403 例,FAD 5 例,腫瘤 3 例,構築の乱れ 1 例であった.マンモトー
ムを施行するきっかけとなったのは,検診異常が 291 例(70.6%),当科外来
にて乳房石灰化を follow up 中の石灰化増加が 29 例(7.4%),乳房腫瘤 41 例
(10.0%),乳房痛 18 例(4.4%),乳頭分泌 8 例(1.9%)などであった.【結果】
マンモトームの成功率は 98.8%で,不成功であった 5 例は対象病変が胸壁に
近すぎたり,乳房厚が薄すぎたりしてターゲットに設定できなかった症例が 4
例,対象病変が局麻によって消失してしまった症例(濃縮嚢胞と思われる)が
1 例であった.検査時間(撮影開始から抜針までの時間)は平均 22 分(7-94 分)
であった.採取した標本数は平均 3.8 本(1-18 本)で,標本撮影にて石灰化を
認めたのは平均 2.4 本(0-8 本)であった.61 例には生検後にマイクロマーク
を留置した.検査の合併症としては 3 例(0.7%)が検査当日夜の出血のため再
来院したが止血処置を要するものはなかった.組織診断の結果は浸潤性乳管
癌 が 19 例(4.6 %),DCIS が 88 例(21.4 %), 以 下 線 維 腺 腫 8 例,ADH4 例,
瘢痕組織 3 例などであった.石灰化病変に対してマンモトーム生検を行い,悪
性診断であった 103 例から得た全標本数 408 本のうち,組織学的に標本内に
石灰化と癌を認めたのは 267 本(65%),石灰化はあるものの癌がないものは
16 本(3.9%),石灰化がないが癌があるものが 72 本(18%),石灰化も癌も
ないものは 54 本(13%)であった.【まとめ】ステレオガイド下マンモトーム
生検は安全に施行でき,成功率も満足できるものであった.マンモトーム施
行症例の 26% に癌を認め,21% は DCIS であった.
10433
11311
ステレオガイド下マンモトーム生検の検討
当院におけるステレオガイド下マンモトーム生検の検査件数の
増加と生検精度についての検討
GP-1-053-05
GP-1-053-06
総合上飯田第一病院 乳腺外科
1
窪田 智行、三浦 重人、雄谷 純子、山内 康平
3
【背景】マンモグラフィ検診の普及に伴い、石灰化を指摘され要精査となる症
例が増えている。このような石灰化症例に対して吸引式組織生検術は重要な
診断手段となっている。平成 25 年 6 月に新しい吸引式組織生検装置である
EnCor ENSPIRE( メディコン社 )( 以下エンコア)が発売されたが、その有用
性の報告はまだ少ない。今回我々は、従来の DEVICOR 社のマンモトーム生検
(以下 MMT)と比較検討したので報告する。【方法】平成 25 年 7 月に当院にエ
ンコアが導入されてから石灰化症例に対して使用した 17 例を、同時期に施行
した MMT34 例と比較検討した。
【結果】検査時間(スカウト撮影より生検後撮
影まで)は、エンコア 11 ~ 34 分(平均 15.2 分)に対して MMT 8 ~ 18 分(平
均 11.9 分)で差はなかった。標本数はエンコア 3 ~ 10 本(平均 4.9 本)に対し
て MMT 4 ~ 6 本(平均 4.4 本)と差はなかった。エンコアの標本重量は 1 本あ
たり 12 ~ 227mg(平均 95.4mg)であった。検討期間中に MMT は 3 症例の
みの重量計測した結果であるが 27 ~ 86mg(平均 55.6mg)であった。組織
結果はエンコアで悪性 5 例、良性 12 例、MMT 悪性 8 例、良性 26 例とどちら
も判定困難症例は無かった。【結語】エンコアは操作性、組織結果においても
MMT と同様に検査が行えた。標本 1 本あたりの重さはエンコアの方が重かっ
た。これは組織診断において診断の確実性の向上が期待される結果であった。
398
市立四日市病院 中央放射線室、2 市立四日市病院 乳腺外科、
市立四日市病院 外科、4 ひなが胃腸内科・乳腺外科
稲垣 由美 1、広瀬 美紀 1、水野 豊 2、宮内 正之 3、倉田 信彦 3、
久野 泰 4
<背景>当院は 2007 年 3 月にステレオガイド下マンモトーム生検(以下 ST
- MMT 生検)装置を導入し、US で確認できないカテゴリー 3 以上の症例に対
して ST - MMT 生検を施行しているが、検査件数は近年増加している。その
背景には 2010 年 3 月に MMG のフルデジタル化、2012 年に乳腺外科の立ち
上げなどがある。<目的> ST - MMT 生検の検査件数の増加と、MMG を取り
巻く変化との関係を検討する。また、生検件数が増えたことに伴う生検症例
の陽性適中度の変化も検討する。<方法> 2007 ~ 2012 年度までの経時的
な MMG 撮影件数と ST - MMT 生検件数、陽性適中度を比較検討する。<結果>
MMG 撮影件数はデジタル化に伴う増加は見られなかった。ST - MMT 生検件
数は 2012 年度以降はそれ以前より倍増していた。また ST - MMT 生検では
大部分の症例で目的とする石灰化を採取出来ていたが、陽性適中度は ST -
MMT 生検の件数が増加しても大きな変化は見られなかった。<考察> MMG
のフルデジタル化に伴い、読影もモニター診断に変化し、1対1等倍、拡大、
WW,WL など手元で自由に画像を変化させ、読影することが可能である。そ
のために今まで認識しにくかった淡く不明瞭な石灰化や石灰化自体の形状な
ども確認することができるため、ST - MMT 生検に至ることが多くなったの
ではないかと考える。また、検査件数を経るごとに検査自体の技術も向上し、
より微小でより淡く不明瞭な石灰化さえも、生検出来るようになったのも ST
- MMT 生検が増えた要因と考える。一方、ST - MMT 生検件数が増加してい
るにも関わらず陽性適中度が変化しなかった理由として、当院での過去の結
果から対側にはない密度のあるカテゴリー3の石灰化を積極的に適応として
いるためと考える。<結語>近年の ST - MMT 生検の増加は MMG のフルデジ
タル化も寄与し、精度の高さにもよるものだと確信した。今後は MMG だけで
なく MRI の所見も考慮して適応を決定し ST - MMT 生検を施行すればより生
検精度が高まると思われる。
ポスター掲示
11302
10513
微細石灰化病変に対するステレオガイド下マンモトーム生検の
適応
ステレオガイド下マンモトーム生検における石灰化病変の輝度
と線量の関係
GP-1-053-07
GP-1-053-08
1
北里大学北里研究所病院ブレストセンター 外科、
北里大学北里研究所病院ブレストセンター 放射線科、
3
北里大学北里研究所病院ブレストセンター 生理検査科、
4
北里大学北里研究所病院ブレストセンター 病理科
札幌医科大学附属病院 放射線部
2
杉本 晴美
柳澤 貴子 1、関 大仁 1、浅沼 史樹 1、佐山 春香 2、中嶋 純子 3、
森永 正二郎 4、矢内原 久 2、金田 宗久 1、鈴木 慶一 1、大作 昌義 1、
山田 好則 1
11500
11735
3D マンモグラフィによるステレオガイド下マンモトーム生検ク
リップのズレ評価
ステレオガイド下マンモトーム生検におけるクリップ留置位置
の評価
GP-1-053-09
1
2
GP-1-053-10
1
高崎総合医療センター 乳腺内分泌外科、
高崎総合医療センター 放射線部門、3 群馬大学 臓器病態外科学
2
3
小田原 宏樹 1、鯉淵 幸生 1、常田 祐子 1、藤田 勝也 2、堀口 淳 3
【背景と目的】石灰化病変に対し,マンモトーム生検を施行後にマイクロマー
ククリップ ( 以下クリップ ) を留置している場合,そのクリップが石灰化の中
心部に存在するとは限らない.当院では 2011 年 4 月に 3D マンモグラフィ『ト
モシンセシス』(以下 3D-MG)とステレオガイド下マンモトーム生検(MMT)
装置が導入された.導入後 1 年の時点で,MMT に 3D-MG をどのように活用
してきたかを検討し,ターゲットの石灰化とクリップのズレの把握が容易で
あることを報告した.今回,3D-MG を用いて,クリップのズレ幅を集計し検
討した.【対象と方法】2011 年 4 月から 2013 年 3 月までに当院でマンモトー
ム生検が施行された 79 症例のうち,クリップが留置された 37 症例を対象と
する.クリップの留置方法においては,マンモトーム生検針を 5mm 引き抜
いて(Z 方向に- 5mm)留置した.3D-MG は 1mm スライス厚でスライスイ
ンジゲーターを用いて圧迫乳房の断層表示が可能である.ターゲットとする
石灰化の位置とクリップの位置を「スライスインジゲーターの数値」を用いて
mm 単位で計測した.【結果】3D-MG 画像の MLO もしくは CC 画像いずれかに
おいて,ズレ幅は 0-12mm の範囲で計測されズレの平均は 3.4mm であった.
5mm を超すクリップのズレを認めた症例は 5 例 (13.5%) であった.1cm 以
上のズレを認めた症例は 1 例であった.【まとめ】石灰化病変の切除範囲の決
定は超音波や MRI を使用してもしばしば難渋する.その理由の一つが石灰化
とマンモトーム生検クリップとの位置関係の把握にある.3D-MG ではマンモ
トーム生検の中心部とクリップとの間の距離を計測することが可能であり,
切除範囲の決定に有用である.
市立貝塚病院 乳がん高度検診・治療センター放射線科、
市立貝塚病院 薬剤部、
市立貝塚病院 乳がん高度検診・治療センター乳腺外科
矢竹 秀稔 1、沢井 ユカ 1、亀山 澄子 1、出山 あい 1、谷口 嘉宏 2、
井上 共生 3、中野 芳明 3、西 敏夫 3、稲治 英生 3
【目的】ステレオガイド下マンモトーム生検(ST-MMT)では、採取された石灰
位置の追跡の為にクリップ(商品名マイクロマーク)を留置することがあるが、
その留置精度は低いとする報告が多い。しかし、その評価方法の多くは STMMT 後のマンモグラム上に残存石灰がない症例に対して、石灰があったであ
ろう位置を推測してクリップまでの距離を測定する方法であり、マンモグラ
フィ撮影時のポジショニング次第でマンモグラム上の石灰位置がずれるため、
正確に留置精度を評価できてない可能性がある。今回、我々は採取された石
灰からクリップまでの距離をより正確に評価するために、ST-MMT 後に撮影
されたマンモグラムの CC と ML の両画像上で集簇石灰の残存が確認できる症
例に限定し、採取された石灰からクリップまでの 3 次元距離を求め、留置位
置の精度を遡及的に評価した。【対象と方法】2010 年 1 月から 3 年間に STMMT を行った 303 例中、集簇石灰症例でクリップを留置し、ST-MMT 後に撮
影されたマンモグラムの CC と ML の両画像上で集簇石灰の残存が確認できた
39 例を対象とした。方法は ST-MMT 前に撮影したマンモグラムとの照合によ
り、ST-MMT 後に撮影されたマンモグラム上の残存石灰を目印にして採取さ
れた石灰の範囲を同定し、その中心からクリップまでの距離を CC と ML の画
像上でそれぞれ測定を行った。そして、三平方の定理を用いて採取された石
灰からクリップまでの 3 次元距離を求めた。
【結果】
採取された石灰からクリッ
プまでの 3 次元距離は平均値 3.8mm、中央値 2.7mm、範囲は 0.8mm から
32.8mm、5mm 未満は 33 例(85%)、5mm 以上 10mm 未満は 5 例(13%)、
10mm 以上 20mm 未満は 0 例、20mm 以上は 1 例(3%)であった。【考察と
結論】本研究では石灰が残存している症例に限定して、採取された石灰からク
リップまでの距離を測定したので、マンモグラム上に石灰の残存がないため
に石灰があったと考えられる場所を推測する方法に比べて、より客観的な評
価ができたと考えられる。また 3 次元距離を求めることで、最も長い距離で評
価する事ができたため、2 次元のみの距離測定による過小評価を避ける事がで
きたと考えられる。しかし本研究で評価した症例数は 39 例と少ないため、今
後はこの症例数を増やして評価の信頼性を高める事が必要と考えられる。
399
一般セッション(ポスター掲示)
【背景・目的】MMG 検診で発見された微細石灰化病変に対するステレオガイド
下 MMT 生検 ( 以下、ST-MMT) は乳癌の早期診断方法として有用性の高い手段
である。一方で、ST-MMT は低侵襲な検査として認知されているが、長時間の
乳房圧迫によって苦痛を伴う検査でもあるため、エコーや造影 MRI 所見などを
加味した生検適応の判断が求められる。
【対象・方法】2013 年 4 月から 11 月ま
でに当院で ST-MMT を施行した 43 例を対象に統計学的解析をおこなった。
【結
果】年齢の中央値は 49 歳(33-76 歳)
、閉経前が 25 例(58.1%)
、閉経後が 18 例
(41.9%)であった。乳腺濃度別では高濃度乳腺が 3 例(7%)
、不均一高濃度乳
腺が 36 例(83.7%)
、乳腺散在が 3 例(7%)
、脂肪性が1例(2.3%)であった。
生検の結果、良性は 35 例(81.4%)
、悪性は 8 例(18.6%)であった。悪性と診
断されたもののうち、6 例 (75%) は DCIS であり、2 例 (25%) は浸潤癌であっ
た。悪性の診断率を MMG カテゴリー別に比較すると、C-3 で 10.8%(4/37)
、
C-4 で 50.0% (2/4)、C-5 で 100% (2/2) であり、カテゴリーが高い程有意に
悪性の割合が多かった (p=0.002)。エコーでの随伴所見の有無で比較すると、
悪性の割合はエコー随伴所見ありで 26.1% (6/23)、エコー所見なしで 10.0%
(2/20) であり有意差は認められなかった (p=0.252)。43 例中 41 例は ST-MMT
前に造影 MRI 検査を施行しており、悪性所見との関連性を BI-RADS カテゴリー
別に比較すると、悪性の割合は BI-RADS C-3 以上の症例で 21.7% (3/23) で
あったのに対して、BI-RADS C-2 以下の症例では 16.7% (3/18) であり有意
差は認められなかった (p=0.684)。浸潤癌の2例はいずれも HER2 陽性乳癌
であり、エコー所見では有意な悪性像を認めないものの造影 MRI の BI-RADS
はいずれも C-3 以上であった。非浸潤癌の 6 例のうち low grade が2例であ
り、high grade が 4 例であった。エコー所見ありは low grade で 100% (2/2)、
high grade で 75% (3/4)、また、造影 MRI BI-RADS C-3 以上が low grade で
100% (2/2)、high grade で 50% (2/4) であり、いずれも有意差は認められな
かった (US; p=0.439, MRI; p=0.221)。
【結語】今回の検討では、ST-MMT に
おける乳癌の診断とエコーの随伴所見や MRI 所見に有意な関連性は認められな
かった。現状では、少なくとも MMG で C4 以上と判定された微細石灰化病変に
対しては積極的な ST-MMT 生検が必要である可能性が示唆された。
【背景】ステレオガイド下マンモトーム生検(ST-MMT)は生検時に複数回のス
テレオ撮影を行うため,被ばくが問題となっている.しかし,ターゲッティ
ングはスカウト像の石灰化病変及びステレオ画像に表示されるガイド線を参
考に行うため,石灰化病変の輝度に応じたステレオ画像の線量低減が可能で
ある.【目的】ステレオ画像上の石灰化病変が識別可能な線量を,石灰化病変
の輝度に応じて求め,線量低減について検討することである.【対象・方法】
対象は 2013 年 2 月から 2013 年 10 月までに当院で ST-MMT を行った患者 17
例である.使用装置は Fuji 社製 amulet f,ファントムは 156 ファントム,画
像処理には Image J を用いた.156 ファントムを AEC 撮影し mAs 値を求め
た.その mAs 値を 100 から 10%まで 10%ずつ低下させ 156 ファントムを撮
影し,模擬石灰化試料の 3 番目および 4 番目の判別の可否について視覚評価を
行った.次に,AEC 撮影した 156 ファントム画像の模擬石灰化試料の 3 番目,
4 番目,および ST-MMT でターゲットとなった 17 例の石灰化病変の輝度を
ImageJ で求めた.【結果】模擬石灰化試料の 4 番目は 80%,3 番目は 40%ま
で線量を低減しても識別可能であった.17 例中 13 例で模擬石灰化試料の 4 番
目より輝度が高く,4 例で模擬石灰化試料の 3 番目より輝度が高かった.
【結論】
本結果より ST-MMT のステレオ撮影は,石灰化病変の輝度により撮影線量を
決定することで,被ばく低減が可能であることが示唆された.
ポスター掲示
11935
11950
ステレオガイド下マンモトーム生検のアプローチ方向と手術時
切除範囲の比較検討
当院のステレオガイド下マンモトーム生検施行症例の検討
GP-1-053-11
GP-1-053-12
1
2
1
湘南記念病院 かまくら乳がんセンター、
2
横浜市立大学附属市民総合医療センター 乳腺甲状腺外科、
3
東京大学附属病院 病理診断科、4 杏林大学 保健学部
東京医科歯科大学医学部附属病院 放射線科、
東京医科歯科大学医学部附属病院 乳腺外科、3 大森赤十字病院 放射線科
岡澤 かおり 1、久保田 一徳 1、町田 洋一 1、片山 貴 3、藤岡 友之 1、
佐藤 隆宣 2、中川 剛士 2
田中 佳和子 1、川崎 あいか 1、土井 卓子 1、井上 謙一 1、合田 杏子 1、
成井 一隆 2、佐々木 毅 3、国実 芳子 1、黒木 一典 4、井上 俊夫 1
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】吸引式組織生検は穿刺経路への癌細胞の生着が否定できないと言われ
ている。 【目的】当院では使用装置の特性を把握している放射線技師がステレオガイド
下マンモトーム生検(以下 STMMT 生検)の検査手技を計画しており、最小限
の苦痛で短時間に石灰化を採取することを重視してアプローチ方向(vertical
/ lateral)と検査体位(座位/側臥位)を決定している。今回、穿刺経路が手
術時の切除範囲に含まれていたかどうかを検討した。 【使用装置】GE 社製セノグラフ DS(Up-right type) 【方法】H21 年 6 月から H25 年 11 月の間に STMMT 生検を施行し悪性と診断さ
れた 92 例中当院で手術を施行した 73 例を対象に、MMG における石灰化の位
置と造影 MRI 画像、手術時の切除範囲を照合し、乳腺内の穿刺経路が遺残し
たかどうかを調べた。 【結果】73 例中乳房切除術が施行された症例は 23 例(A 領域:4例,B 領域:
4例,C 領域:12 例,D 領域:3 例)、乳房温存術が施行された症例は 50 例
(A:2 例,B:6 例,C:31 例,D:6 例,AC 境 界 域:2 例,BD 境 界 領 域:2
例,CD 境界域:1 例)であった。STMMT 生検時の穿刺経路が手術範囲に含まれ、
経路遺残が無いと思われた症例は 62 例、経路の一部が遺残していると思われ
た症例は 11 例であった。11 例の内訳は、STMMT 切開部と手術切開部が異なっ
た症例が 10 例(B:2 例,C:4 例,D:2 例,BD 境界領域:1 例,CD 境界領
域:1 例)、切開部は一致し術式が乳房円状部分切除術だった症例が 1 例(C 領
域)であった。遺残の可能性は領域別では A:0%,B:28.6%,C:11.6%,D:
22.2%であり、乳房下部領域の割合が比較的高かった。 【考察】B,D 領域は手術時に乳輪下もしくは乳房下縁から切開されるため、
STMMT 生検の際に乳房の外側又は内側から穿刺すると経路の一部が遺残する
可能性がある。乳房下縁に近い石灰化は、尾側から穿刺しておくと手術の際
に経路を含めて切除できるので、lateral-approach が有用と考える。技師が
工夫することで穿刺経路の遺残症例を減少させることが可能と思われた。
【背景および目的】乳癌検診においてマンモグラフィー併用検診が普及するに
伴い、非触知石灰化病変が増加している。それらの病変のうち超音波検査に
て検出困難な症例に対して、当院では 2007 年 8 月よりステレオガイド下マ
ンモトーム (ST-MMT) 生検装置を導入している。最近の成績を分析したので、
報告する。
【対象】2007 年 8 月~ 2013 年 12 月までに当院で施行した ST-MMT 生検症例
126 例を対象とした。
【結果】患者年齢は 22 ~ 87 歳。126 例中 39 例 (31%) が癌と診断され、特に
最近 3 年間の 57 例では 24 例 (42%) が癌と診断されていた。MMT 生検結果は
DCIS が 34 例 (87%)、浸潤癌が 5 例 (13%) であった。当院で手術した 28 例
のうち、DCIS が 25 例、浸潤癌が 3 例であった。石灰化のカテゴリー (C) 内
訳は C-2: 2 例 (2%)、C-3: 75 例 (60%)、C-4: 42 例 (33%)、C-5: 7 例 (5%)
であった。マンモグラフィーカテゴリー別乳癌頻度は、C2 が 0%(0/2 例 )、
C3 が 19%(14/75 例 )、C4 が 43%(18/42 例 )、C5 が 100%(7/7 例 ) であった。
石灰化の形態別乳癌頻度は、微小円形石灰化は 19%(16/79 例 )、淡く不明
瞭な石灰化は 33%(7/21 例 )、多形性石灰化は 57%(13/23 例 )、線状石灰化
は 100%(3/3 例 ) であった。石灰化の分布別乳癌頻度は、領域性が 8%(1/13
例 )、集簇性が 30%(16/50 例 )、区域性が 35%(22/63 例 ) であった。126 例
中 106 例でエコー検査が施行され、26 例 (25%) で低エコー域や石灰化と思
われる点状高エコーを認めた。有所見の 26 例のうち 6 例が DCIS であった。
126 例中 46 例で造影 MRI 検査が施行され、24 例 (52%) で異常増強域を認め
た。有所見の 24 例のうち、18 例が DCIS で、3 例が浸潤癌であった。
【考察】画像診断の進歩に伴って US や MRI でも多くの DCIS が検出されるよう
になったが、検出できない乳癌も多く存在する。最近は ST-MMT 生検例での
乳癌比率が増加しており、適応を厳しく設定するようになってきたと思われ
るが、大部分が DCIS の段階で検出はできている。今後のマネージメントにつ
いて、十分に考えていく必要があると思われる。
11014
10347
乳癌の切除範囲決定におけるステレオ下マンモトームの有用性
における検討
背景病変を伴わない微細石灰化に対する超音波ガイド下
Vacume-Assisted Biopsy(US-VAB)
GP-1-053-13
GP-1-053-14
1
静岡県立総合病院 乳腺外科
独立行政法人地域医療機能推進機構久留米総合病院 臨床検査科、
独立行政法人地域医療機能推進機構久留米総合病院 外科、
久留米大学医療センター 病理、4 よこやま外科乳腺クリニック、
5
久留米大学 外科
2
高柳 博行、中上 和彦、常泉 道子
3
現在乳房温存療法は乳癌における標準的治療法として普及している。乳癌
は乳管内進展によりその切除範囲の決定に難渋するものもある。ステレオ下
マンモトームは乳房の非触知性石灰化病変の診断に有用である。今回我々は
ステレオ下マンモトームの乳癌の広がり診断における有用性について検討し
た。症例 2011 年 1 月より 2013 年 9 月に当院にてステレオ下マンモトーム
を行った 274 病変のうち、原発巣の乳癌が病理的に診断されており、その広
がりの診断のため離れた石灰化にステレオガイド下マンモトームを行った 28
例。マンモトームでの病理結果、診断への MRI との比較、術式への影響につ
き検討した。結果 28 例の病理結果は浸潤癌 2 例 非浸潤性乳管癌 14 例 FEA 3 例 乳腺症 7 例 血管 1 例 線維腺腫 1 例であった。 MRI では
癌と診断された 16 例のうち 9 例を良性と診断し、他の 12 例中 3 例を悪性と診
断した。術式は、癌(浸潤癌 + 非浸潤性乳管癌)16 例→乳房切除 12 例 部分
切除 4 例 FEA 3例→乳房切除 2 例 部分切除 1 例 良性 計 9 例→ 部分切
除 9 例であった。考察 当院で広がり診断のためステレオガイド下マンモ
トームを行った 28 例のうち 16 例に悪性所見をみとめた。それらは乳房切除
を行ったものが 12 例であり、部分切除を行った 4 例も広範に広がっており術
前に進展範囲を把握していたことが手術に有用であった。また良性の 12 例の
うち FEA を除く 9 例ではすべて部分切除を行うことができた。また MRI では
16 例のうち 7 例しか悪性を疑っておらず残りの 9 例はマンモトーム生検によ
り確定診断をつけることができた。 まとめ 乳癌の進展範囲を決めるのに
石灰化病変に対するステレオガイド下 MMT は有用であった。
400
平井 良武 1、田中 眞紀 2、山口 美樹 2、大塚 弘子 2、山口 倫 3、
横山 吾郎 4、三島 麻衣 5
超音波画像上 ‘腫瘤性病変’ ‘非腫瘤性病変’ などの背景病変を伴わない微細石
灰化 ( 微小点状高エコー ) に対して行った超音波ガイド下 Vacume-Assisted
Biopsy(US-VAB) を検討し成績、問題点を報告する。【対象】2007 年 1 月~
2013 年 8 月までに当院で施行した背景病変を伴わない微細石灰化に対する
US-VAB56 例【適応・方法】MMG カテゴリー 3 以上の症例で超音波で微細石灰
化が MMG に矛盾しない部位と範囲に数個以上、集蔟性もしくは線状・区域性
に描出されるものを対象とし、採取した組織片を軟線撮影にて石灰化を確認
し終了とした。【結果】1.針生検症例に占める割合 2007 年 1 月~ 2013 年 8
月までに当院で施行した超音波ガイド下針生検 3442 例中背景病変を伴わない
微細石灰化 56 例 1.62% 2.超音波検査所見 微細石灰化集簇 53 例 94.64% 微細石灰化線状、区域性に分布 3 例 5.35% 微細石灰化の形状・分布により
良悪性の鑑別、壊死型石灰化・分泌型石灰化・間質型石灰化の鑑別は困難で
あった . 3.石灰化採取率 採取組織に対する軟線撮影では 56 例中 56 例すべ
てに石灰化を確認、病理標本では 55 例 98.2%に石灰化が確認された。壊死型
石灰化 8 例 分泌型石灰化 43 例 間質型石灰化 4 例 石灰化不明 1 例 4.生検成
績 56 例中悪性 12 例 21.42% ( 全例 DCIS) 良性 40 例 71.42% ( 乳腺症 19
例 fibroadenomatosis12 例 bluntductadenosis7 例 ductpapillomatosis2
例 ) 鑑別困難 4 例 7.14% 6.鑑別困難症例 4 例中 3 例に切開生検を施行し 3
例すべて DCIS だった。【考察】近年超音波診断装置の性能向上に伴い、超音波
画像上 ‘腫瘤性病変’ ‘非腫瘤性病変’ などの背景病変を伴わない微細石灰の検出
が可能となった。背景病変を伴わない微細石灰化像は当院統計上 DCIS の超音
波像の 9.5% (2007 年~ 2013 年 DCIS305 例中 29 例 ) を占めており、その
内 8 例 27.5%は US-VAB で診断を確定している。US-VAB は ST-VAB、切開生
検に比較し負担が少なく短時間で行える利点がある。少数例鑑別困難、False
negative は認められるものの病理標本上の石灰化採取率は 98.2%と高く、症
例を限定することにより背景病変を伴わない微細石灰化に対して有効な診断
法と考えられる。
ポスター掲示
10914
10703
石灰化病変の超音波ガイド下生検の普及について
乳腺石灰化病変の診断法 超音波ガイド下とステレオガイド下
吸引組織診の比較
GP-1-053-15
GP-1-053-16
1
あきた乳腺クリニック、2 秋田大学医学部 病理部、
3
秋田赤十字病院 乳腺外科、4 中通総合病院 乳腺・内分泌外科、
5
秋田大学医学部 放射線科、6 秋田大学医学部 第二外科
1
3
工藤 保 1、南條 博 2、鎌田 収一 3、清澤 美乃 4、石山 公一 5、
寺田 かおり 6、伊藤 亜樹 6、南谷 佳弘 6
医療法人丸茂病院 乳腺外科、2 総合上飯田第一病院 乳腺外科、
医療法人丸茂病院 腫瘍内科
竹内 透 1、大久保 雄一郎 1、窪田 智行 2、有吉 寛 3、竹内 新治 1
穿刺吸引組織診の導入により乳腺石灰化病変の診断は向上し、今や乳癌と診
断される全症例の約 1/4 が非浸潤癌である。(平成21年から24 年まで4年
間当院手術症例の24-25%)石灰化病変の病理診断はステレオガイド下
の吸引組織診が用いられる事が一般的であるが、検査の対象となる症例も増
えており、より容易な手技で被検者により負担の少ない検査が望まれる。 超
音波ガイド下吸引組織診ではモニターで病変を確認しながらリアルタイムで
の穿刺を行うのでステレオガイド下吸引組織診より細径(14G)の穿刺針での
検査が可能であり体位も通常のエコー検査と変わらずより短い検査時間で行
えるので被検者の負担を減らす事が可能である。超音波ガイド下の穿刺吸引
組織診は、穿刺細胞診や穿刺組織診と言った他の手技の検査と何ら変わらず、
普段これらの検査を行っている術者にとっては手技の取得は比較的容易であ
る。 腫瘤非形成の石灰化病変の診断におけるステレオガイド下と超音波ガイ
ド下生検の適応につき検討してみた。対象は平成 23 年 1 月より平成 25 年 11
月までに精査を行ったマンモグラフィーにて腫瘤陰影を認めない石灰化病変
173 例で、超音波下に石灰化病変が同定でき穿刺吸引組織診を行なった 63 例
と超音波で石灰化が同定できずステレオガイド下に検査を行った 110 例であ
る。超音波下に石灰化病変を同定しながら 14G の穿刺針を用い穿刺吸引組織
診を行なった後、摘出標本を撮影し石灰化病変の確認を行った。平均5本採
取し2本以上に採取を確認した。この結果、検査を行った 63 病変の内 1 8例
(29%) が DCIS であり、5 例が浸潤がんであった。同時期にステレオガイド下
に検査を行った 110 病変の内 19 例 (17%) が DCIS であり3例が浸潤がんあっ
た。 石灰化病変の内半数が侵襲、負担が少ない超音波下の穿刺吸引組織診で
診断する事が可能であった。石灰化病変の診断にあたっては検査法の適応を
考慮すべきと考える。
10406
10265
超音波ガイド下生検用 VAB 装置 ( マンモトームエリート ) の有
用性の検討
当院における吸引式針生装置マンモトームエリートの適応と現
状
GP-1-053-17
1
3
GP-1-053-18
中野総合病院 外科、2 東京医科歯科大学 腫瘍外科、
東京医科歯科大学 乳腺外科
1
石場 俊之 1,2,3、大野 玲 1、平岡 優 1、吉野内 聡 1、村瀬 秀明 1、永原 誠 3、
中川 剛士 3、佐藤 隆宣 3、杉原 健一 2
【はじめに】2013 年 6 月マンモトームエリートがデヴィコア社より発売され
た。当院では発売当初より仮導入を進め,2013 年 12 月に正式に導入した。
当院でのマンモトームエリートの有用性について症例を提示しながら説明す
る。【方法】使用した超音波ガイド下生検用 VAB 装置はデヴィコア社のマンモ
トームエリートである。針は 13G である。対象は 2013 年 8 月から 12 月に来
院した,触診や画像で乳癌を疑う患者とした。生検はエコー室で乳腺外科医
と超音波を行う放射線科技師と看護師と 3 人で行った。麻酔は全例で皮下を
1% キシロカイン,深部をエピネフリン入り 1% キシロカインにて局所麻酔に
て行った。【結果】対象の期間に 12 例に使用し,6 例で乳癌の診断を得た。皮
下血腫以外の合併症はなかった。DCIS の症例で通常の針生検で病理診断がつ
かなかったが,マンモトームエリートで診断がついた症例を 1 例経験した。
【考
察】乳癌においては正確な診断が求められ,さらにサブタイプ決定に必要な免
疫染色のために,ある程度の組織量を必要とする。そのためには簡便にある
程度の組織量を取れるデバイスが必要である。時に DCIS などで,針生検で診
断が確定しないことがある。以前であれば切除生検などが考慮されたが,超
音波ガイド下生検用 VAB 装置にて十分な組織量を外来のまま採取し,正確な
診断ができる症例を経験した。マンモトームエリートは針の先に刃がついて
おり,病変部まで抵抗なく進められ,正確に病変の採取が可能であったと考
える。エコーにおいて,マンモトームエリートの針は通常の針生検より太く
描出しやすく正確に病変を採取できる。また針が飛び出すわけではないので,
多臓器の損傷は少なく安全に行える印象であった。患者の痛みについては従
来の針生検と変わらない印象であった。検体は組織バスケットに回収され,
そのままホルマリンにつけることも可能で不慣れな看護師でも簡単に検体採
取のサポートをすることができた。問題点としてはコストが高いことである。
乳腺の針生検は 650 点,マンモトームエリートは 6300 点と 10 倍近い。患者
への負担となるが施行前に患者に説明することで,理解は得られている。【結
語】携帯型のマンモトームは準備が簡単でコメディカルの反応も良い。検査の
手技も楽で、確実な診断ができる、マンモトームエリートは有用と思われる。
401
社会保険相模野病院 外科、2 北里大学外科
林 京子 1、押田 小百合 1、羽廣 健仁 1、仙石 紀彦 2、谷野 裕一 2、
渡邊 昌彦 2
当院は 2013 年 7 月吸引式針生検装置 マンモトームエリート(13 G)(以下
エリート)が発売されると同時に導入した.2013 年 7 月から 11 月まで超音波
ガイド下でマンモトームエリートを使用した 26 例について検討した. 26 例
の平均年齢は 51 才,MMGのカテゴリー分類で,カテゴリー(C)1 が 6 例
23%,C 2 が 2 例 7.6%,C 3 が 13 例 50%,C 4 が 5 例 19%だった.超音波
検査で観察できた病変の大きさは 4 - 31 mm(平均 19 mm),腫瘤非形成性
病変が 15 例 58%,腫瘤性病変が 11 例 42%であった.病理は糖尿病性乳腺
症を含む乳腺症 14 例,乳管内乳頭腫 5 例,乳腺線維腺腫 5 例,脂肪壊死 1 例,
浸潤性乳管癌は 1 例と良性が 96%であった.MRIでは全例悪性疾患は疑わ
れなかった.病変の位置はC,Dが多い.内側の病変の穿刺はやや難しい.
エリートはバードの針生検装置と異なり,病変の真下に針の吸引口に誘導す
るため腫瘍より先端を約5mm以上穿刺しなければならない.そのため,内
側病変の穿刺は穿通枝をあてないようにするために穿刺方向を工夫する必要
がある.マンモトームエリートは先端が刃になっていて力のない術者でも糖
尿病性乳腺症などの硬い乳腺組織を容易に穿刺することができる。私たちは
2013 年に発表した針生検時に乳房をテープ固定法を用い,1%E入りキシロ
カイン 10ml を刺入部,病変の背側と皮膚側に注入し超音波ガイド下で病変の
全層を採取している (
. 6 - 15 本)当院におけるエリートの適応は 1. 腫瘤非形
成性病変,2. 前回細胞診断あるいは針生検で鑑別困難症例,3. 乳管内乳頭腫
のような針生検では組織が柔らかく,十分採取できないような病変に使用を
している.反対に針生検装置(バード)は腫瘤性病変(FA や乳癌)が疑われる症
例に使用している.
一般セッション(ポスター掲示)
非触知石灰化病変(石灰化)は、超音波(US)ガイド下に生検できれば、圧
迫や被曝がなく、被験者にとってメリットが大きいが、普及しているとは言
い難い。当施設では、診療放射線及び超音波検査技師と医師が連携した結果、
ステレオガイド(ST)下生検は 13%へと減少し、大半がUSガイド下となっ
たので報告する。
[ 対象 ]2004 年 5 月から 2013 年 9 月までのMMGカテゴリー 3 以上の石灰化
に対しマンモトーム生検(MMT)を行った 574 件。
[ 方法 ]07 年 12 月までを 07 年以前、US下生検が大半となった 08 年 1 月以
降を現在とし、成績を比較する。現在は、MMGの石灰化部位を放射線技師
が図示し、これに基いてUS検査技師が点状高エコー(スポット)の有無を
検査した。MMT時には、US検査技師と医師が協同して当該部位の生検を
行った。US機器はHITACHI EUB-7500 Elastography とALOKA
prosound α 7。
[ 結果 ]07 年以前においては、ST下MMTが 189 件と大半 を占め、US下
は 25 件。癌診断率、及びDCIS比率はST下 13%(24/189)、54%(13/24)。
US下では、それぞれ 20%(5/25)、60%(3/5)。08 年以降の現在は、ST
下 46 件、US下 314 件と、US下が大半を占める。癌診断率及びDCIS比
率は、ST下 15%(7/46)、71%(5/7)。US下ではそれぞれ 24%(76/314)、
59%(45/76)となり、現在のDCIS診断の 90%(45/50)はUSガイド下
となった。USガイド下に診断したDCISのUS画像における目視可能な
石灰(点状高エコー)の個数及び件数は、1 ~ 2 個:8 件、3 ~ 4 個:18 件、5
~ 9 個:14 件、10 個以上:5 件と、3 ~ 4 個が最多。US下生検全体の石灰
採取率 97%であった。
[ 考察と結語 ] 石灰化の生検方法では、当初 100%を占めていたST下生検が
現在では 13%に減少。08年以降の現在のUS下生検では、癌診断率 24%、
DCIS比率 59%で、DCIS(術後病理診断)は全体の 90%がUSガイド
下に診断されている。USガイド下生検においては、診療放射線及び超音波
検査の技師間、並びに医師との連携が大切で、普及のためには、これらのシ
ステム作りも重要と考えられた。
ポスター掲示
10681
10590
微小病変に対する Vacuum-Assisted Breast Biopsy(VAB)
の有用性と問題点
当科における Handheld mobile vacuum assisted biopsy
(VACORA) の検討
GP-1-053-19
1
3
GP-1-053-20
川口市立医療センター 外科、2 川口市立医療センター 検査科、
川口市立医療センター 病理
大阪市立大学大学院 腫瘍外科
徳本 真央、柏木 伸一郎、浅野 有香、呉 幸枝、森崎 珠実、野田 諭、
川尻 成美、高島 勉、小野田 尚佳、平川 弘聖
中野 聡子 1、伊藤 恵理子 1、大塚 正彦 1、壬生 明美 2、生沼 利倫 3、
坂田 一美 3、山本 雅博 3
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】近年、画像診断の進歩により、微少病変に遭遇する機会が多くなり、
画像ガイド下の細胞もしくは組織採取が必要となる。社会情勢から組織診の
必要性が大きくなる一方、細胞診はその存在意義を問われている。当院で微
小病変に対して施行した VAB 症例から微小病変の診断におけるその位置づけ
を 考 え る。【 対 象 】1999 年 6 月 か ら 2012 年 12 月 ま で に Vacuum-Assisted
Breast Biopsy (VAB) を施行した 1383 例のうち、非触知腫瘤性病変 239 例と
非腫瘤性病変 216 例を加えた 455 例。【結果】年齢は、24 ~ 88 歳(平均 52.7
歳)。VAB 施行前に細胞診を行ったのは 248 例(腫瘤:160、非腫瘤 :88)、施
行しなかったのは 207 例(腫瘤:87、非腫瘤 :120)であった。VAB 施行理由は、
画像所見だけでは確定できず 176、細胞診で鑑別困難 99、細胞診と画像所見
の不一致 95、良性病変の確認 25、細胞診で検体不適正 23、良性腫瘍の切除
8、術前治療前の biological marker の確認 7、その他 22 であった。VAB で
採取された検体の病理診断は、浸潤癌:127、乳腺症:90、非浸潤性乳管癌:
72、線維腺腫:48、乳管内乳頭腫:42、過形成:20、その他:56 であった。
VAB 組織診断が良性病変であった 256 例のうち、VAB 後外科的生検施行した
のは 17 例であった。再生検の理由は、8 例 (47.1%) で細胞診にて悪性もしく
は悪性疑いとされていた。また、17 例中 2 例では、切除検体で悪性の診断となっ
た。同一病変に対して VAB を 2 回施行したのは 8 例あり、病変の切除を目的
として行ったものが 5 例(62.5%)であった。経過観察期間は、3-4889 日(平
均 43 ヶ月)であった。【考察】微小病変は画像で描出できても、典型的ではな
く、画像ガイド下の細胞もしくは組織採取が必要となる。今回微小病変に対
して、細胞診が 54.5% に行われ、49.2% で細胞診は決め手にならなかった。
また、VAB 後で良性と診断された症例のうち、6.6% に切除生検が施行され、
その理由は 41.2% で細胞診の overdiagnosis であった。逆に、良性と診断さ
れた 0.78% で切除検体に悪性が認められた。微小病変では組織診を第一選択
とするのがよいが、微小病変であるが故、また、まれな組織型であることも
あるため、画像所見と不一致であった場合には、misdiagnosis の可能性があ
ることは認識し経過観察も行うべきである。
【はじめに】当院ではエコーガイド下吸引式組織生検装置としてマンモトーム
(MMT) の他に VACORA を使用している。今回我々は、当科で行った乳腺病変
に対する吸引式組織生検として用いた VACORA の使用経験を検討した。【対
象】2007 年 11 月から 2013 年 5 月の間に VACORA 生検を行った 243 症例 253
病変を対象とした。硬化性病変や腫瘍非形成性病変などで CNB による組織採
取が困難と予想される病変や CNB 後に画像所見との不一致などで、追加の組
織採取が必要とされた病変が適応となった。【結果】VACORA 前に CNB が施行
された 81 病変のうち良性が 33 病変、悪性が 35 病変で、13 病変が良悪性判定
不能であり、MMT もしくは切除生検により診断された。CNB 非施行例 172 病
変のうち良性が 112 病変、悪性が 45 病変で、14 病変が良悪性判定不能であり、
MMT もしくは切除生検により診断された。1 病変は VACORA にて良性だった
が乳頭部びらんの捺印細胞診で悪性であり Paget 病と診断された。VACORA
生検の感度は 81.6%、特異度 100% であった。全例において処置を必要とす
るような合併症は認められなかった。
【結論】以上より VACORA は携帯可能で、
操作が簡便であるとともに、十分量の検体を採取することができる有用な生
検方法であると考えられた。
10156
11581
Mammotome Elite の使用経験:既存の生検法との比較および
使用上のピットフォール
マンモトーム生検標本におけるリンパ管侵襲とセンチネルリン
パ節転移との相関関係
GP-1-053-21
1
3
GP-1-053-22
横浜旭中央総合病院 乳腺外科、2 横浜旭中央総合病院 外科、
横浜旭中央総合病院 看護部
京都府立医科大学 内分泌・乳腺外科
杉本 里保、中務 克彦、富田 仁美、濱岡 亜紗子、大内 佳美、藤田 佳史、
阪口 晃一、田口 哲也
小野田 敏尚 1、本田 朱麗 1、白畑 敦 2、高坂 佳宏 2、白井 藍 3、
櫻井 修 1
【はじめに】Mammotome Elite(以下 MMT エリート)は、TruVacTM バキュー
ム テ ク ノ ロ ジ ー に よ り 1 回 の 穿 刺 で 複 数 の 検 体 が 採 取 可 能 で あ る。Core
Needle Biopsy (CNB) の簡便さと Mammotome (MMT) の効率性を兼ね備え
た Vacumm Assisted Biopsy System (VAB) であり、本邦での普及が期待
されるが、まだ詳細な報告は行われていない。【対象と方法】当院ではエコー
ガイド下 MMT 生検を累計 1,100 例以上行っているが、外来診療でさらにス
ピーディかつ確実に VAB を施行する目的で、2013 年 6 月より MMT エリート
を導入した。2013 年 12 月までに当院で検査を受けた 40 例を対象に、検査時
間・合併症・病理結果・検査によるトラブルについて検討し、既存の CNB・
VACORA・MMT との比較を行なった。【結果】麻酔開始から組織採取終了、抜
針までいずれの症例も検査時間は 10 分以内であった。検査後に用手的な圧迫
を 5 分間行うだけで、弾性包帯による圧迫は原則として施行しなかったが、い
ずれの症例も広範な皮下出血は確認されなかった。回収に伴う組織の物理的
な変形は、病理診断の妨げとはならなかった。病理結果は 18 例が乳癌、また
2 例が ADH の診断のためエコー下 MMT が再度行われた。また穿刺後の瘢痕が
乳管内成分と鑑別を要する場合があった。一方で、嚢胞内腫瘍のように穿刺
によって形状が変化してしまう症例では、MMT エリートは病変の部位を見失
うことがなく、複数回サンプリングが可能であった。検査によるトラブルと
して、サンプリング不可能な症例が 2 例で、原因としてプライミングを十分確
認しなかったことで、採取した組織片が針の内腔で閉塞したためと考えられ
た。また本体の充電が十分でなかった場合や、採取後に器械本体を置く場所
がなく針先が危険であること、組織バスケットからサンプルを回収する際に
血液を含んだ生食が流れ出る危険があること、採取された組織片は不適切に
折れ曲がっていることが多く、濾紙に伸ばしてからホルマリン固定する必要
があること、検査後にプローブをホルスターから取り外すロックタブが硬く、
扱いにくいことなどが問題点として挙げられた。【まとめ】MMT エリートを行
う際は、初回に十分なプライミングが不可欠である。実際にプライミングを
十分に確認するようにしてから、サンプリング不可能な症例は経験していな
い。当院で経験した MMT エリートに特徴的なピットフォールを列挙し、適切
な使用方法について検討したい。
【背景】腋窩郭清の有無で予後が変化しないとの報告がなされてからも尚、セ
ンチネルリンパ節生検は、乳癌手術においてほぼ必須の検査の立場を退いて
いない。当施設においても、術中センチネルリンパ節生検が行われ、陽性で
あれば腋窩郭清を全例で実施している。センチネルリンパ節生検は低侵襲で
あり、非常に精度の高い検査であるが、手術侵襲が増加するのは間違いない。
センチネルリンパ節転移を術前に予想することが出来れば、手術時間の短縮
や不用意な侵襲を避けることが出来る可能性があると考えられる。【方法】術
前のマンモとトーム生検から、センチネルリンパ節転移の予測が可能か検証
するために、我々は , マンモトーム生検標本のリンパ管侵襲を調べ、実際のセ
ンチネルリンパ節生検との相関関係を調べてみた。【結果】マンモトーム生検
標本でのリンパ癌侵襲を陰性、陽性、強陽性の三段階に分類した。それぞれ
の症例数は 31 例、9 例、2 例であった。31 例のリンパ管侵襲陰性例のうち 5
例は画像上明らかな腋窩リンパ節転移を認めていたため、腋窩郭清を施行し
た。残りの症例にはセンチネルリンパ節生検を施行し、センチネルリンパ節
転移は陰性が 25 例、陽性は 1 例であった。リンパ管侵襲陽性 9 例は腋窩郭清
施行例が 1 例で腋窩リンパ節転移を認めた。センチネルリンパ節施行の転移陰
性が 6 例、陽性が 2 例であった。リンパ管侵襲強陽性は腋窩郭清施行が 1 例で
あり、腋窩リンパ節転移を認めた。もう 1 例はセンチネルリンパ節転移陽性例
であった。【まとめ】マンモトーム生検標本におけるリンパ管侵襲強陽性症例
2 例はともに腋窩リンパ節転移を認めた。したがってリンパ管侵襲強陽性症例
は、センチネルリンパ節生検を省略出来る可能性があることが示唆された。
402
ポスター掲示
10142
11542
摘出生検を施行した乳癌症例の検討
術前 DCIS 症例の術前評価と浸潤癌の有無との検討
GP-1-054-01
GP-1-054-02
1
北九州市立医療センター 外科、2 北九州市立医療センター 放射線科、
3
北九州市立医療センター 病理
亀田メディカルセンター 乳腺センター
佐川 倫子、中川 梨恵、寺岡 晃、池田 奈央子、山城 典恵、坂本 尚美、
坂本 正明、戸崎 光宏、福間 英祐
齋村 道代 1、古賀 健一郎 1、阿南 敬生 1、光山 昌珠 1、小野 稔 2、
豊島 里志 3、中野 徹 1、岩下 俊光 1、阿部 祐治 1、西原 一善 1、
松永 浩明 1、末原 伸泰 1、渡部 雅人 1、田辺 嘉高 1、永井 俊太郎 1、
亀田 千津 1、蔵田 伸明 1
11210
10882
当院における乳癌の診断確定方法の検討
充実性腫瘤に対する組織診と細胞診の比較:Touch smear を
用いた検討
GP-1-054-03
GP-1-054-04
1
公立学校共済組合中国中央病院 乳腺外科、
2
公立学校共済組合中国中央病院 臨床検査科
1
3
大多和 泰幸 1、園部 宏 2、羽原 利幸 2、藤村 紀行 2、海原 恭子 2、
梨木 香里 2
【目的】当院では乳癌の病理学的な確定診断を行うために、穿刺吸引細胞診、
針生検、マンモトーム生検を用いている。針生検は当院では 16G の針を用い
ているが、時に採取量や挫滅により診断が確定しないことがある。今後の改
善点を探すため、検査方法と組織型との関連を後ろ向きに検討した。【方法】
2011 年 1 月から 2013 年 11 月までに当院で手術を行った原発性乳癌の症例を
対象として、初回検査方法、診断確定までに要した検査回数、組織型との関
連などを検討した。【結果】初回に穿刺吸引細胞診を行ったのは 22 例で、この
うち 1 回で診断確定したのは 10 例(45%)であった。1 回で診断確定しなかっ
た症例のうち、次に針生検を行い診断確定したのは 6 例であった。3 回以上の
検査を要したり最終的に手術によって診断確定したものは 6 例で、これらは
DCIS が 4 例、硬癌 1 例、浸潤性小葉癌が 1 例であった。初回に針生検を行っ
たのは 95 例で、このうち 1 回で診断確定したのは 89 例(94%)であった。複
数回の針生検を要したり最終的に手術によって診断確定したものは 6 例で、
DCIS が 1 例、浸潤径 1mm の乳頭腺管癌が 1 例、硬癌が 4 例であった。代表
的な組織型別に 1 回の穿刺吸引細胞診や針生検(マンモトームも含む)で診断
確定した割合は、DCIS は 65%、乳頭腺管癌は 94%、充実腺管癌 96%、硬癌
が 82%、浸潤性小葉癌が 71%であった。【考察】当院の検討では DCIS や、線
維化が強く細胞密度の低い硬癌や浸潤性小葉癌は、他の組織型と比較して 1 回
の検査で診断確定できている割合が低くなっていた。複数回の検査を要する
と、患者の精神的・肉体的・金銭的な負担が大きくなり、また担当医師への
不信感にもつながりかねない。画像的に DCIS、硬癌、浸潤性小葉癌を強く疑
う場合は、針生検であれば 14G の針を用いたり、検査費用の問題はあるが吸
引式組織生検を積極的に行うことを検討すべきと考えられた。
ブレストピアなんば病院、2 がん研究会がん研究所 病理部、
坂元記念クリニック 乳腺病理アカデミー
中原 浩 1、山口 由紀子 1、船ヶ山 まゆみ 1、齋藤 智和 1、山本 隆 1、
前田 資雄 1、古澤 秀実 1、駒木 幹正 1、秋山 太 2、坂元 吾偉 3
【背景】乳腺の充実性腫瘤に対する診断のアプローチは施設間で様々であ
る.今回充実性腫瘤に対する組織診と細胞診を比較した.【対象】2000 年
3 月から 2004 年 2 月の 4 年間に,超音波上充実性腫瘤として検出され,10
年以上経過観察された 332 例を対象とした.【方法】超音波ガイド下で core
needle biopsy(CNB) を施行し,得られた検体をプレパラートに押印し (touch
smear),細胞診検体を作成した.同一検体の組織診と細胞診の結果を比較し
た.【結果】手術,摘出生検を含めた最終診断は,良性 234 例,悪性 91 例,境
界病変 7 例であった.組織診では 217 例が良性と診断され,経過観察中,乳
頭状病変の 1 例 (0.4%) が悪性と判明した.87 例が悪性と診断され,診断の
変更は認められなかった.細胞診では 228 例が良性と診断され,6 例 (2.6%)
が最終診断で悪性であった.80 例が悪性と診断され,1 例 (1.2%) が良性で
あった.上記以外の病変は 10 年間の経過観察中,特に診断の変更は認められ
なかった.【考察】組織診,細胞診とも良好な診断結果が得られたが,細胞診
では若干,悪性例を良性と診断してしまう傾向が認められた.Touch smear
では細胞が多めに得られるため,手技的な問題というより細胞診の限界と思
われた.組織診でも良性とされた病変が経過観察中に悪性と判明した症例が
存在し,画像所見に応じた経過観察が重要と考えられた.
403
一般セッション(ポスター掲示)
(目的)術前の悪性診断においては、どのモダリティを使うのかと、その結果
と画像との整合性が重要である。針生検の増加により診断精度は向上したが、
ときに術前診断に難渋する症例を経験する。今回、当院で摘出生検を施行し
た乳癌症例の臨床病理学的特徴を検討した。(対象)2003 年より 2012 年まで
に当院で手術を施行した原発性乳癌 3156 例のうち、摘出生検をおこなった
55 例 (1.7% )。(結果)年齢は 28-101 歳 ( 平均 60 歳 )、発見契機は、乳房腫
瘤 38 例、検診 11 例、乳頭分泌 5 例、疼痛 1 例であった。エコー所見は、嚢胞
性腫瘤 27 例、低エコー腫瘤 17 例、拡張乳管 8 例、石灰化 2 例、小嚢胞集簇 1
例であった。MMG 所見は、腫瘤 31 例、石灰化 10 例、構築の乱れ 1 例、異常
なし 13 例であった。摘出生検前の診断モダリティは、細胞診 31 例、針生検 3
例、細胞診と針生検 12 例、細胞診とマンモトーム 2 例、針生検とマンモトー
ム 1 例、細胞診と針生検とマンモトーム 1 例、なし 5 例であった。細胞診診断
は、epithelial proliferaive lesion 15 例、papillary lesion 10 例、癌疑い 8 例、
異 型 上 皮 2 例、 乳 管 上 皮 な し 6 例、 そ の 他 5 例、 組 織 診 診 断 は、epithelial
proliferaive lesion 3 例、papillary lesion 2 例、癌疑い 2 例、異型上皮 4 例、
悪性所見なし 5 例、その他 3 例であった。摘出生検後に再手術を施行した症例
は 30 例、摘出生検のみの症例は 25 例であった。最終病理診断は、DCIS 33 例、
乳頭腺管癌 14 例、充実腺管癌 5 例、硬癌 1 例、粘液癌 2 例であった。Tis 33 例、
T1mic 2 例、T1a 10 例、T1b 4 例、T1c 3 例、T2 3 例で、N0 28 例、N1 2
例、Nx 25 例であった。(まとめ)嚢胞性病変や DCIS、良性病変合併例におい
ては、細胞診や針生検、マンモトームで確定診断に至らない症例が存在する。
画像所見や細胞診・組織診で悪性が疑われる場合には、診断モダリティの変更、
再検に加えて、摘出生検も考慮すべきである。
<目的>術前 DCIS 症例は , 手術標本で浸潤部を指摘されることがある . 浸潤
癌の存在は , センチネルリンパ節生検陽性の可能性や , 術後の薬物療法を必要
とすることがある . 当院での術前 DCIS 症例の検討を行った . <方法>当院で
2008/1 ~ 2013/10 の期間に , 原発性乳癌に対して手術を施行した 2208 例の
うち、cStage0(嚢胞内腫瘍をのぞく)と術前診断した 560 例に対して、術前
検査(MMG/US/MRI の所見の有無、生検方法)と原発巣における浸潤の有無
とが関連を検討した . <結果>術後 DCIS の症例は 442 例(79%), 浸潤癌は 118 例(21%)であったそれぞれの因子の関連を検討したところ . 特に、MRI
で所見がなければ浸潤癌は存在しなかったこと、生検時のモダリティが MMG
や MRI の時の浸潤癌の割合はどちらも 12% であったのに対し、US は 25% で
あった . また ,VAB で診断をつけている方が術後も DCIS である傾向にあった
(p=0.047). <結語> MRI で所見がない乳癌は浸潤癌が存在する可能性が低
いことが示唆され,この結果から
MRI で所見がない DCIS では、セン
チネルリンパ節生検の省略も可能
であると考えられる . また , VAB で
検査をした方が術後も DCIS となる
傾向があり , これは VAB の方が検体
採取量が多いことも起因するが、も
と も と CNB が 腫 瘤 性 病 変 を タ ー
ゲ ッ ト と す る こ と が 多 い こ と、
non-mass 病 変 や モ ダ リ テ ィ ー が
MMG や MRI では VAB を使用してお
り , 画像所見から , より DCIS である
可能性が高い可能性があり、一概に
検体採取量のみの問題ではないと
考えられる .
ポスター掲示
11462
11130
術後フォローアップにおける定期腫瘍マーカー測定の意義
乳癌術後再発スクリーニングにおける腫瘍マーカーと PET-CT
の意義
GP-2-055-01
GP-2-055-02
日立製作所日立総合病院 外科
1
伊藤 吾子、三島 英行、周山 理紗、柳谷 昌弘、八代 享、奥村 稔
一般セッション(ポスター掲示)
診療ガイドラインでは初期治療後の定期的な腫瘍マーカー (TM) 測定は推奨さ
れていない。しかし、簡便かつ患者の希望もあることから当院では原則、半
年~ 1 年毎に局所および遠隔転移再発の画像検索とともに TM1-2 種の測定
を行っている。TM と転移再発の関係について検討した。【対象】2002 年 1 月
~2008 年 12 月に当院にて手術施行した Stage1-3 の乳癌患者 692 名のうち
5 年以上の経過観察または原病死までを確認できた 645 名。【方法】術後から
2013 年 12 月までの TM(CEA,CA15-3,NCCST439) の経時値をレトロスペク
ティブに調査し、以下の 3 群に分類、検討した。偽陰性群;遠隔転移再発を
認めたが、継続的に TM 基準値内である。再発 -TM 合致群;遠隔転移再発を
認め、TM 上昇も認める。偽陽性群;以降の経過観察でも転移再発を認めない
が、TM 上昇を認める。再発 -TM 合致群における転移再発の発見契機について、
偽陽性群の原因,特徴についても検討した。【結果】2013 年 12 月までの対象
患者における遠隔転移出現は 81 名 (12.6%) であった。うち偽陰性群は 21 例
(25.9%) であった。再発‐TM 合致群 60 例の再発発見契機は症状出現が 15 例、
定期画像検査が 19 例、TM 上昇が 23 例、TM 上昇 ‐ 定期画像検査同時が 4 例
であった。定期 TM 測定での再発発見は計 27 例 (35.8% ) であり、CEA:12 例、
CA15-3:5 例、NCCST439:12 例 ( 重複あり ) であった。偽陽性群は 48 例であ
り無再発症例の 8.5%であった。偽陽性は NCCST439 が 34 例と最も多く、閉
経前患者の月経周期に伴い上下することが特徴であった。CEA:7 例は体質的
な原因で恒常的に基準値よりやや高く、CA15-3:7 例は間質性肺炎や関節リウ
マチ等を合併していた。
【考察】定期 TM 測定は遠隔転移再発の 35.8% を有症
状よりも早期に発見できた。有症状に比べ患者,家族の再発告知時の受け入
れは良好であった。転移再発の 25.9% は TM の上昇を認めなかった。無再発
症例の 8.5% に TM 高値の偽陽性を認めたが、経時的変化、月経状態、併存疾
患から再発との鑑別は可能であった。【結語】術後定期 TM 測定は遠隔転移の早
期発見には一定の効果があるが、その生命予後、QOL への寄与については今
後検討が必要である。偽陽性については、その原因、特徴を知ることで過剰
な追加検査を避ける必要がある。
新潟市民病院 乳腺外科、2 新潟市民病院 病理診断科
牧野 春彦 1、天願 敬 1、辰田 久美子 1、橋立 英樹 2、渋谷 宏行 2
乳癌術後の再発スクリーニングにおける腫瘍マーカーの有用性と通
常 の 画 像 診 断 で 再 発 が 認 め ら れ な い 症 例 に お け る positron emission
tomography(PET)-CT の 有 用 性 を 検 討 し た。【 対 象 お よ び 方 法 】2007 年
11 月 か ら 2012 年 12 月 ま で に 手 術 が 施 行 さ れ 術 後 1 年 以 上 経 過 観 察 さ れ
た原発乳癌 723 例を対象とした。腫瘍マーカー 4 種類(CEA,CA15-3,NCCST439,HER2-ECD)を 3-12 か月ごとに測定した。腫瘍マーカーの一過性の上
昇、上昇と下降を繰り返し明らかな再発を認めない場合を良性の変動と判定
した。腫瘍マーカーの経時的な連続上昇、あるいは高値で推移する場合は再
発の可能性を考えCT、骨シンチを施行した。腫瘍マーカーが再発を疑う変
動を認め、CT、骨シンチで明らかな転移が認められない症例に PET-CT を
施行した。【結果】723 例中、腫瘍マーカーの上昇が認められなかった症例は
432 例(59.8%)であった。良性の変動は 250 例(34.6%)に認められた。再
発は 40 例(5.5%)に認められた。このうち 31 例(再発症例の 77.5%)は症状、
画像にて再発が診断された。マーカー上昇が先行した症例は 9 例(同 22.5%)
であり、このうち 6 例(15%)はCT,骨シンチで診断可能であった。3例
(7.5%)はCT,シンチにて再発所見が認められなかったため PET-CT を施行
し、3 例全例に転移が認められた。転移部位は症例 1 腋窩~鎖骨上~頸部リン
パ節。症例 2 骨、肝、縦隔リンパ節。症例 3 骨であった。【結語】乳癌術後の
再発スクリーニングとして 1. 腫瘍マーカー、2.CT、骨シンチ、3.PET-CT を
組み合わせることが合理的であり、特に術後早期再発の多い triple negative
乳癌、luminal B-like 乳癌では有用と思われる。これらの症例で再発を早期診
断、早期治療することにより再発に伴う症状を予防できる可能性がある。
10937
10552
乳癌亜型(intrinsic subtype)と各種腫瘍マーカーとの関連 ―特に p53 抗体測定の有用性についてー
骨髄微小転移細胞 (BMM) の検出を基礎とした乳癌の予後予測
と治療選択
GP-2-055-03
1
3
国立病院機構西群馬病院 乳腺甲状腺科、2 群馬健康づくり財団、
群馬大学 臓器病態外科学
GP-2-056-01
東京慈恵会医科大学 乳腺内分泌外科
武山 浩、鳥海 弥寿雄、野木 裕子、加藤 久美子、神尾 麻紀子、三本 麗、
井廻 良美、木下 智樹、内田 賢、森川 利昭
横田 徹 1、遠藤 敬一 2、堀口 淳 3
【目的】乳癌には各種腫瘍マーカーが広く用いられているがその陽性率は高く
ない。一方 p53 蛋白質は細胞周期進行の制御、遺伝子修復酵素の活性化、ア
ポトーシス誘導等によって遺伝子の異常から生体を守る機能を担っているが
乳癌では初期の段階で少なからず p53 遺伝子の突然変異による発がんが生
じ、変異 p53 蛋白質より誘導された p53 抗体が出現することが知られている。
P53 抗体は、2007.11 より乳癌において保険収載されたが文献等による陽性
率は既存の腫瘍マーカーより高いとの結果である。今回初発乳癌、再発乳癌
における p53 抗体を加えた各種腫瘍マーカーについて乳癌亜型との陽性率の
関係を検討した。【方法】初発例:当院での 2009 年以降の 1,2 期の乳癌 386 例
および再発症例 47 例。【腫瘍マーカー測定】p53 抗体は血清 0.3ml を用い、医
学生物学研究所製の MESACUP anti-p53 test を用いて ELISA 法にて測定し
た。基準値は 1.30 U/ml とした。CEA, CA15-3, NCC-ST439 は従来の方法
で測定し , その基準値はそれぞれ 5ng/ml, 25U/ml, 7U/ml とした。【成績】初
発乳癌での各種腫瘍マーカーの陽性率は CEA:10.6%, CA15-3:7.3%, NCCST439:11.8%, p53 抗体 :20.8% で p53 が最も高かった。2 項目検査として
の陽性率は CEA と p53 の組み合わせが 32.4% と最も高かったが両者が陽性
の症例はなかった。乳癌亜型では Luminl-A,B に差はなく p53 が 25.0% と最
も高かった。Luminl-HER2, HER2-rich とも p53 がそれぞれ 20%, 25% と最
も高く Triple negative では NCC-ST439 が 25% で最も高く逆に p53 は 11%
と 低 か っ た。 再 発 乳 癌 に お い て は CEA:68.2%, CA15-3:57.4%, NCCST439:55.6%, p53:18.2% と逆に p53 は低値であった。【結論】以上より
1. 初発乳癌における腫瘍マーカーは p53 が 20.8% と最も高かった。2. 乳癌亜
型では p53 は TN を除いて高かった。3. 逆に再発乳癌では p53 は低く初発乳
癌と不変であり、腫瘍数に依存するものではないと考えられた。またその推
移も抗体である性質上患者の免疫機能に依存するため不安定で治療効果の評
価には不適当と思われた。【最後に】当院で経験した p53 産生乳癌の 2 例につ
いて補足的に提示する。
404
[ 背景 ] 乳癌に対する target therapy としては、使用される治療薬の選択とと
もに乳癌が局所にとどまっているか、あるいは一見小さな癌であっても既に
血流に乗って遠隔部に微小転移を形成している全身疾患なのかを選別するこ
とが必要である。[ 目的 ] 今回我々は乳癌遠隔転移頻度の最も高い骨(骨髄液)
において微量な癌細胞 (Bone Marrow Micrometastasis Cell:BMM) を抗癌剤
治療前後で捕捉することを試み、BMM による微小骨髄転移診断の妥当性を評
価した。 [ 方法 ] 症例は 2005 年 4 月から 2008 年 12 月までに当院を受診した
stageI-III の乳癌 20 例と、非上皮性腫瘍 10 例の合計 30 例である。これら症
例の骨髄液を 0.5ml 採取し BMM を同定した。[ 結果 ]1. 骨髄液中では抗癌剤
治療前の乳癌症例 20 例中 19 例で BMM が 2-58 個検出された。一方対照群 10
例では 6 例で 1-10 個 BMM が検出された。2. 臨床病期別にみると、BMM が
11 個以上であった症例は stage I では 2/5 例、stage II 5/9 例、stage III 4/6 例であった。 3. 2013 年までに 20 例中 6 例に再発、転移が認められた。
そのうちの 5 例(5/6、83.3%)は抗癌剤治療前の骨髄液中 BMM が 11 個以上
であった。4. 20 例中 16 例で抗癌剤治療が施行された。このうち抗癌剤前の
BMM が 11-20 個の症例は 11 例存在した。これら 11 例のうち治療後 BMM10
個以下となった症例は 7 例存在した。5. これら 7 例のうち治療後 BMM10 個
以下となった症例は 5 例(5/7、71.4%)存在した。これら 5 例は術後 5-8 年の
現在まで再発は認められていない。6. 抗癌剤治療前 BMM21 個以上の症例は
5 例存在した。これら 5 例のうち 3 例は治療後も BMM は 10 個以上存在し、3
例とも早期に再発、転移を発症した。また 5 例中 2 例は抗癌剤治療後 BMM10
個以下となったがこのうちの 1 例も後に転移を発症した。(再発転移 4/5,
80.0%)[ 結語 ] 骨髄液中 BMM の検出は症例の再発、転移の予測に有用である。
また抗癌剤治療前に BMM21 個以上の症例では 20 個以下の症例と比較して抗
癌剤投与による再発予防の効果は低い可能性があり、より強力な複合的治療
が必要である。
ポスター掲示
10876
11919
AICS の乳癌スクリーニングにおける有用性の検討
乳癌におけるDJ-1蛋白質の癌組織における発現と血中濃度の関連
GP-2-057-01
GP-2-058-01
1
北村山公立病院 乳腺外科
3
鈴木 真彦
長谷川 翔 1、岩屋 啓一 4、河手 敬彦 2、山岸 陽二 1、山崎 民大 1、
守屋 智之 1、津田 均 4、藤森 実 3、河野 範男 2、山本 順司 1
(はじめに)DJ-1 遺伝子は、細胞の癌化を促進する新規の癌遺伝子として報告
された。そのコードする蛋白質は細胞外に分泌されることが知られ、我々は
乳癌細胞が DJ-1 蛋白質を分泌する現象を報告した。実際に、乳癌患者の約半
数で血中に検出され、乳汁分泌液にも検出されることから、新しい乳癌のマー
カーの候補として期待されている。今回、我々は乳癌患者における血清中の
DJ-1 濃度を測定し癌細胞における DJ-1 蛋白質の発現と比較検討したので報
告する。(対象と方法)平成 24 年 6 月から平成 25 年 8 月までの間、多施設にお
ける乳癌初回手術症例の計 138 症例を対象とした。治療前に採血を行い、速
やかに血清を分離した各々の検体について ELISA 法を用いて血清中の DJ-1 蛋
白質の濃度を測定した。また、針生検材料と手術材料に ELISA 法と同一の抗
DJ-1 抗体を用いた免疫染色を行った。癌組織における DJ-1 蛋白質の発現の
判定基準は河手の報告(Breast Cancer Res Treat 2013;139:51-9)に準拠し
た。(結果)対象とした乳癌患者の年齢は 24 ~ 88 歳で、血清中の DJ-1 蛋白
質濃度の平均値は 39.0 ng/ml であった。DJ-1 の免疫染色を行った 86 例中、
52 例が高発現、34 例が低発現と判定された。DJ-1 が高発現を示した症例に
おける血清 DJ-1 蛋白質濃度の平均値は 23.9 ng/ml であったのに対し、低発
現症例では 66.2 ng/ml であり、低発現症例において有意に高い血清 DJ-1 蛋
白質濃度を認めた(P=0.025)
。また、サブタイプ別での DJ-1 蛋白質濃度の平
均値は Luminal A 22.3 ng/ml (44 例 )、Luminal B 34.9 ng/ml (26 例 )、
Luminal HER2 34.7 ng/ml (21 例 )、HER2 18.4 ng/ml (7 例 )、triple
negative 74.8 ng/ml (12 例 ) であった。(結論)我々の現在までの in vitro お
よび in vivo の検討から、免疫染色で DJ-1 が低発現を示す乳癌細胞は DJ-1 蛋
白質を分泌することが予想される。DJ-1 が低発現を示す乳癌症例で血清 DJ-1
蛋白質濃度が有意に高かった今回の結果は、血中においても癌細胞が分泌す
る DJ-1 蛋白質が測定濃度に影響を与えた可能性が示唆された。
10507
10619
ホルモン受容体陽性の浸潤性小葉癌と浸潤性乳管癌の再発、予
後の比較検討
乳癌プロゲステロン受容体の意義-閉経前と閉経後の比較-
GP-2-058-02
GP-2-059-01
1
愛知県がんセンター中央病院 乳腺科
安立 弥生、藤田 崇史、澤木 正孝、近藤 直人、服部 正也、堀尾 章代、
権藤 なおみ、井戸田 愛、市川 茉莉、石黒 淳子、小谷 はるる、
久田 知可、岩田 広治
浸潤性小葉癌(ILC)の多くは、ホルモン受容体陽性、グレード低値といった
予後良好な特徴を有する。しかし、その予後については、浸潤性乳管癌(IDC)
と比較し良好または不良といった様々な報告がある。当院におけるホルモン
受容体陽性の ILC の再発、予後について luminal type の IDC と比較検討を行っ
た。【方法】2003 年~ 2012 年の手術症例 4117 例中、4 期を除き、術後病理
にて診断されたホルモン受容体陽性 HER2 陰性の ILC139 例と IDC1904 例に
ついて、retrospective に比較検討を行った。【結果】ILC 群の手術施行時の平
均 年 齢 は 55 歳(32 ~ 82 歳 )、 病 期 は Stage1:64 例、2:68 例、3:7 例 で
あり、ILC 群と IDC 群の背景因子は年齢、閉経状況、リンパ節転移の有無に差
は認められなかったが、腫瘍径は ILC 群で大きい傾向にあった(χ 2 検定、p <
0.000)。DFS は ILC 群が有意に不良であったが、OS には有意差を認めなかっ
た。腫瘍径をそろえ検討を行った結果、T1/2 症例は、DFS、OS ともに有意
差を認めなかったが、T3 症例に関しては DFS が ILC 群で有意に不良であり、
有意差は認めなかったが OS も ILC 群が不良傾向にあった。また、リンパ節転
移陰性症例は、DFS、OS ともに有意差を認めなかったが、リンパ節転移陽性
症例に関しては DFS が ILC 群で有意に不良であった。【考察】ホルモン受容体
陽 性 HER2 陰 性 症
例では、原発巣が
進行した癌の場合、
IDC よ り ILC の 方
が予後不良であり、
それに対応した術
後補助療法の選択
が必要である。
福井県立病院 外科、2 福井県立病院 臨床病理
伊藤 朋子 1、石橋 玲子 1、大田 浩司 1、橋爪 泰夫 1、海崎 泰治 2
【背景】ホルモン感受性乳癌においてプロゲステロン受容体(PR)は予後因子と
言われている.PR はエストロゲンにより転写され,発現するが,閉経前後で
はエストロゲンの環境の違いから,PR の発現割合や PR の予後に関する意義
が異なる印象をもった.【目的】閉経前,閉経後のエストロゲン受容体(ER)陽
性乳癌において,PR 発現の違いと,PR が予後に与える影響を比較する.【方法】
2003 年~ 2012 年に当院で手術を施行した 31 歳~ 75 歳の女性でエストロゲ
ン受容体陽性乳癌 390 例を対象とした.31 歳~ 49 歳の症例を閉経前乳癌,
60 歳~ 75 歳の症例を閉経後乳癌に分類し,PR 発現割合と予後を比較した.
【結
果】PR 発現割合の平均は,閉経前乳癌で 65.1%,閉経後乳癌で 33.6%であっ
た.PR 発現割合を 10%ごとに区切って症例の分布をみると,閉経前乳癌では,
PR 陽性率が上昇するのに比例して症例数も増加しており,PR 0%が 4 例と最
も少なく,PR 90%以上が 42 例と最も多くなっていた.閉経後乳癌では,PR
0%と 90%以上の症例が多く,PR 50%付近の症例が最も少ないという,凹型
の分布となっていた.閉経前乳癌では組織学的グレードや,MIB-1index,リ
ンパ節転移によって PR の発現割合に有意な違いはなかったが,閉経後乳癌で
は,組織学的グレード 1 に比べて,グレード 2,3 では有意に PR 発現割合が
低くなっていた(p=0.0017).PR 陽性,陰性における乳癌の無再発生存率は,
閉経前と閉経後で有意差はないものの,閉経前では,PR 陰性乳癌の方が PR
陽性乳癌より良好な傾向を認めた.閉経前乳癌での死亡はなかったが,閉経
後乳癌の死亡は 6 例あった.閉経後乳癌では,PR 陽性症例の方が PR 陰性症例
より全生存率は有意に良好であり(p=0.037),組織学的グレード,リンパ節
転移と比べて PR 発現の有無は有意な予後因子であった(p=0.05).【結論】閉
経前後では PR の発現状況が異なっており,PR の予後因子としての意義も異
なる可能性が示唆された.
405
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】血漿中アミノ酸濃度は、健常者では恒常性によりほぼ一定のレベルを
示す。しかし、癌患者ではこの濃度が変動しそのバランスが変化することが
知られている。アミノインデックスがんリスクスクリーニング (AICS) 検査は、
各種癌患者に特徴的なアミノ酸変化に着目し、各種癌患者と健常者との血漿
中アミノ酸濃度を比較・解析することにより、各種癌の早期スクリーニング
を行うことを目的として開発された新しい検査法である。AICS は現在まで
に、乳癌、胃癌、肺癌、大腸癌、前立腺癌、子宮・卵巣癌の 6 種類の癌のス
クリーニングが可能とされている。【目的】今回当院では、乳癌スクリーニン
グ検査としての AICS の有用性を実証することを目的として、AICS による乳
癌検出能に関する検討をしたので、若干の考察を加え報告する。【対象と方法】
2012 年 7 月から 2013 年 9 月までの間に、当院で AICS 検査を施行した 83 例
の女性に関し、マンモグラフィー検査を含む乳癌スクリーニングを実施した。
検査指標である AICS 値は、血漿中アミノ酸濃度バランスの変化から癌に罹
患している確率を算出した数値であり 0.0 から 10.0 までの値を示す。その数
値が高値であるほど、癌を罹患している確率が高いことを表す。乳癌におけ
る AICS 値は、0.0 から 4.9 までがランク A、5.0 から 7.9 までがランク B、
8.0 から 10.0 までがランク C の 3 つのランクに判定される。開発時の臨床研
究による各ランクでの乳癌罹患確率は、ランク A が 1/1,509、ランク B が
1/556、ランク C が 1/250 だった。【結果】AICS 検査を施行した 83 例中、ラ
ンク A は 57 例、ランク B は 18 例、ランク C は 8 例だった。そして、乳癌
罹患確率が比較的高いとされるランク C 判定者 8 例中の 1 例においてマンモ
グラフィー検査で悪性陰影が指摘され、精査で乳癌の確定診断となり後日手
術が施行された。乳癌罹患確率が比較的低いとされるランク A、ランク B 判
定者の中には乳癌の発見はなかった。【考察】最近の研究によると、癌細胞か
ら分泌される蛋白質 HMGB1 の作用により、正常細胞内の蛋白質がアミノ酸
に分解され、その一部が血液中に漏れ出ることにより、血漿中アミノ酸濃度
バランスが変動する一因になると報告している。血漿中アミノ酸濃度を比較・
解析することにより、各種癌の早期スクリーニングを行う AICS は、乳癌発
見の一助となる簡便なスクリーニング検査として期待できる可能性があると
思われる。
防衛医科大学校 外科学講座、2 東京医科大学病院 乳腺科、
東京医科大学茨城医療センター 乳腺科、4 防衛医科大学校 病態病理学講座
ポスター掲示
11605
11644
当院におけるプロゲステロンレセプター陰性乳癌症例の臨床的
検討
Luminal 乳癌における PgR 発現と予後の関連についての検討
GP-2-059-02
GP-2-059-03
1
1
筑波大学 医学医療系乳腺甲状腺内分泌外科、
2
筑波大学附属病院 乳腺甲状腺内分泌外科
池田 達彦 1、澤 文 2、古屋 舞 2、市岡 恵美香 2、斎藤 剛 2、清松 裕子 2、
井口 研子 1、坂東 裕子 1、原 尚人 1
目的:乳癌組織におけるエストロゲンレセプター(以下 ER)はその発現量
が内分泌療法の感受性因子として広く用いられている。しかし、ER 陽性・
HER2 陰性乳癌において、プロゲステロンレセプター(以下 PgR)は予後予測
因子の 1 つとして有用であり、至適カットオフ値は 20%であると推測される
ことが示されているが、その臨床的意義はいまだ不明な点が多い。また、St.
Gallen International Breast Cancer Conference 2013 で は PgR 低 発 現 の
場合 Luminal B に分類することが提唱された。対象と方法:2010 年 12 月か
ら 2013 年 12 月まで、当院で根治手術が行われた乳がん症例 409 例のうち、
5mm 以上の浸潤癌で、ER 陽性、HER2 陰性であった 207 例を retrospective
に解析した。レセプターの判定基準は免疫染色で 1% 以上の細胞で陽性であれ
ば陽性と判定した。結果と考察:年齢中央値は 56 歳、乳房温存術が 127 例、
乳房切除術が 80 例、術前化学療法を施行した症例が 22 例だった。閉経前が
66 例、閉経後が 141 例だった。PgR 陽性は 175 例、PgR 陰性は 32 例だった。
PgR 陽性例では閉経前が 57 例で閉経後が 118 例だった。核グレード3の症例
は 13 例(7.4%)だった。Ki67 を 14% 以上を陽性とした場合、39 例(22%)
が陽性だった。一方、PgR 陰性例では閉経前が 8 例で閉経後が 24 例だった。
核グレード3の症例が 7 例(22%)で、Ki67 は、10 例(31%)が陽性だった。
従来の分類では Luminal A 158 例、Luminal B 49 例であったが、St. Gallen
2013 の基準を適用すると、Luminal A 136 例、Luminal B 71 例となった。
Luminal A から Luminal B となった症例が 22 例認められた。今後、再発・予
後との相関を確認する必要がある。若干の文献的考察を加えて報告する。
都立駒込病院 乳腺外科、2 都立駒込病院 病理部
宮本 博美 1、山下 年成 1、有賀 智之 1、堀口 和美 1、北川 大 1、
本田 弥生 1、井寺 奈美 1、後藤 理紗 1、堀口 慎一郎 2、黒井 克昌 1
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】2013 年の St.Gallen において luminal A および B の定義に PgR の発現
量が加わり,カットオフ値 20% が提案された.当院症例における luminal 乳
癌の PgR の発現量と予後について検討した.【対象と方法】2001 年 -2011 年
に当院で手術を施行した ER 陽性 HER2 陰性の浸潤性乳癌 1359 例.ER は 1%
以上を陽性とした.【結果】患者年齢は中央値 55 歳(23-89 歳),観察期間中央
値 5.2 年(1-12.3 年)で,遠隔再発(局所再発を除く)は 112 例,乳癌死は 42
例に認められた.PgR のカットオフ値を遠隔再発の ROC 曲線(AUC 0.636)
およびリスク比の最大値(リスク比 2.49,95%CI:1.67-3.80)から 30% と
推定し,PgR30% 以下を低発現群,30% を超えるものを高発現群とした.
PgR 低発現群は 625 例(46%),高発現は 734 例(54%)で,PgR 低発現とな
る予測因子は単変量解析で年齢 55 歳以上(p= < 0.001),腫瘍径 T2 以上(p=
< 0.001), 核 異 型 度 3(p= < 0.001), リ ン パ 節 転 移 陽 性(p=0.004)で あ
り,多変量解析では年齢 55 歳以上,腫瘍径 T2 以上,核異型度 3 が抽出され
た.Kaplan-Meier による 5 年無再発生存率(RFS)は低発現群 89.3%,高発現
群 95.1%,乳癌特異的生存率(CSS)は低発現群 95.6%,高発現群 99.3%で,
低発現群で有意に予後不良であった(ともに log-rank p= < 0.001).RFS と
CSS はともに単変量解析でリンパ節転移陽性,核異型度 3,T2 以上,PgR 低
発現が予後不良因子であり,年齢,BMI(25 以上),脈管侵襲は予後因子とな
らなかった.Cox 比例ハザードでは,RFS において,リンパ節転移陽性(p=
< 0.001),NG3(p= < 0.001), 腫 瘍 径 T2 以 上(p=0.001),PgR 低 発 現
(p=0.017)が予後不良因子として抽出され,CSS においてはリンパ節転移陽
性(p=0.0004),NG3(p=0.0007),PgR 低発現(p=0.018)が抽出された.【考
察】luminal 乳癌において PgR の発現量はリンパ節転移,核異型度,腫瘍径と
ともに予後因子となり,PgR 低発現は高発現に比べ予後不良であった.PgR
の低発現は,腫瘍径,核異型度,年齢と関連しており,特に腫瘍浸潤径が増
すと PgR 発現が低下する傾向があり,PgR の発現量低下は腫瘍の進行に関連
すると考えられた.
10755
11681
リンパ節転移陰性 HER2 陰性 Luminal 乳癌における PgR 発現
の検討
Luminal type における PgR 発現状態と再発リスクについて
GP-2-059-04
GP-2-059-05
順天堂大学医学部附属浦安病院
1
国立がん研究センター研究所 分子細胞治療研究分野、
2
防衛医科大学校 病態病理学講座、
3
国立がん研究センター中央病院 病理科、
4
国立がん研究センター中央病院 乳腺腫瘍内科、
5
国立がん研究センター中央病院 乳腺外科
伊藤 真由子、福永 正氣、李 慶文、菅野 雅彦、永仮 邦彦、飯田 義人、
須田 健、吉川 征一郎、伊藤 嘉智、大内 昌和、勝野 剛太郎、平崎 憲範、
小浜 信太郎、東 大輔、野本 潤
小野 麻紀子 1、津田 均 2、吉田 正行 3、清水 千佳子 4、木下 貴之 5、
田村 研治 4,5
【背景】我々は、HER2 陰性 Luminal 乳癌における Ki-67 labeling index (LI)
の検討を報告し (Ono et al, Breast Cancer 2013)、同コホートで、PgR の検
討を行った。【方法】1996-2000 年に、乳癌手術を行ったリンパ節転移陰性
HER2 陰 性 Luminal 乳 癌 368 例 を 対 象 に PgR の 検 討 を 行 っ た。Ki-67 LI <
14%, ≧ 14% を Luminal A (LA), B (LB)、PgR は PgR636 (DAKO) を 用 い
カットオフ値は 20% とした。【結果】年齢中央値は 54 歳 (27-85), Stage I/
II/III は、275/89/4 例 , LA 群 (n=204), LB 群 (n=164) に お い て、PgR は
149 例 (73%), 103 例 (63%) で陽性であった。Ki-67 LI と PgR は逆相関し、
Ki-67 LI 20% 未満の群 (n=280)、同 20% を越える群 (n=88) の PgR 陽性率
は 74%, 52% と差がみられた (p < 0.001)。予後解析では、LA 群のみ PgR が
予後因子となった。LA/PgR+, LA/PgR - , LB の 12 年無再発生存率 (DFS)
は、94.8, 81.6, 79.7% (p = 0.03), 全 生 存 率 (OS) は、98.4, 97.4,
92.0% (p = 0.05) であった。LA/PgR -では、晩期再発を認め、LA/PgR+
と LA/PgR - は、
術後5年以降で予
後 が 分 か れ た。
LA/PgR - と LB で
は、 ほ ぼ 同 等 の
DFS を 示 し た が、
OS は、LA/PgR -
の方が良好であっ
た。
【結語】LA にお
い て、PgR は、 重
要な予後因子であ
り、LA/PgR - は、
LB と同等の再発率
を示した。
【背景】ER 陽性かつ HER2 陰性乳癌では luminalA と luminalB に分類されるが、
Ki67 の値とともに最近では PgR の発現状態も重要な予後因子になる可能性が
示唆されている。2013St.Gallen のコンセンサス会議でも luminal type での
PgR 低値は luminal B like となった。今回当院における PgR の発現状態と再
発リスクについて検討した。【対象と方法】当院における 2008 年 1 月~ 12 月
までの乳癌手術症例 129 例のうち、初回手術症例 127 例を対象にその予後に
ついて後ろ向きに検討を行った。ER は 1%以上染色されている場合を陽性と
し、PgR10 % 以 下 を luminalB と し た。【 結 果 】Stage0 8 例、Stage141 例、
Stage2A 39 例、Stage2B 32 例、Stage3A 3 例、Stage3B 2 例、Stage3C
2 例 で あ っ た。 ま た luminalA 53 例 (41.7 %)、luminalB HER2 陰 性 25 例
(19.7 % )、luminalB HER2 陽 性 19 例 (15.0%)、Erb-B2 過 剰 発 現 13 例
(10.2%)、Basal-like 17 例 (13.4% ) であった。そのうち再発症例は 9 例で
あ り、luminalA 1 例 (1.9%)、luminalB HER2 陰 性 3 例 (12%)、luminalB
HER2 陽 性 1 例 (11.1% )、Erb-B2 過 剰 発 現 2 例 (15.3%)、Basal-like 2 例
(11.8%) であった。luminalB HER2 陰性 25 例中、化学療法を施行した症例
での再発は 6 例中 1 例で、化学療法なしの症例での再発は 19 例中 2 例であっ
た。今回 luminal type の PgR 陰性症例では再発症例が少なく、化学療法施行
例も少なかったため、有意差はでなかった。しかし Luminal type で PgR 陽性
と陰性について比較したところ、PgR 陰性で再発が多い傾向がみられた。【結
語】PgR の発現状態が予後因子になる可能性が考えられる。
406
ポスター掲示
10686
11263
J-score を用いた PgR 発現は ER 陽性 HER2 陰性乳癌において
再発予後と関連するか。
ER 陽性・HER2 陰性乳癌における PgR 陽性率と予後について
の検討
GP-2-059-06
1
GP-2-059-07
大分県立病院 外科・乳腺外科、2 大分県立病院 臨床検査科
1
1
1
2
1
2
猪狩 史江 1、齊藤 光江 1、中井 克也 1、田辺 真彦 1、堀本 義哉 1、
清水 秀穂 1、徳田 恵美 1、毛利 かの子 1、吉田 悠子 1、荒川 敦 2、
明神 真由 1、岩間 敬子 1、酒田 円佳 1
増野 浩二郎 、野田 美和 、高井 真紀 、和田 純平 、卜部 省吾 、
田代 英哉 1
【背景】近年個別化治療が提唱される中、ER 陽性・HER2 陰性乳癌において
Ki-67 に加え PgR 陽性率の因子が追加され、さらなる細分化が求められてい
る。PgR は従来より汎用されているが、その臨床的意義は明確ではない。今
回我々は ER 陽性・HER2 陰性乳癌において PgR 発現状況と長期的予後との
関連性について検討し、予後予測因子となり得る場合、予後の良悪を分ける
cut off 値を探求した。【対象】2005 年から 2006 年に当院で手術を施行した
浸潤性乳癌のうち ER 陽性・HER2 陰性乳癌 178 例を対象とした。【方法】免疫
染色で ER、PgR 陽性の判定は ASCO/CAP の基準である 1% 以上とし、HER2
3+ は除外した。本検討では、PgR の cut off 値として 10%、Alled score の
proportion score(PS) に基づき、33%(PS 4)、66%(PS 5) の3群に設定し、
Kaplan-Meier 曲線による log-rank 検定を行い、予後との関連性について検討
を行った。さらにリンパ節転移の有無を加味し検討を加えた。【結果】症例の
年齢中央値は 54.5 歳、観察期間中央値は 89 カ月であった。転移再発症例は
13 例。リンパ節転移陽性例は 62 例。33% を cutoff 値とした場合、他の cut
off 値と比較し有意差が見られた (P=0.08)。さらにリンパ節転移陰性例 116
症例でも 3 通りで同検定を行ったが、明らかな有意差はみられなかったもの
の、33% で最も予後を反映していた。【結語】PgR 発現状況は予後を規定する
際の独立した因子として評価可能であると考えられた。さらに cut off 値の
設定を更に詳細に検討したい。また Ki-67 と同様施設間での cut off 値につい
てのコンセンサスが必要であると考える。
10754
10979
ER 陽性 /HER2 陰性乳癌における HER2 score の再評価
HER2 陽性乳癌における ER 発現別の予後に関する検討
GP-2-059-08
GP-2-059-09
九州がんセンター 乳腺科
1
及川 将弘、石田 真弓、中村 吉昭、西村 純子、古閑 知奈美、猿渡 彰洋、
井川 明子、秋吉 清百合、厚井 裕三子、大野 真司
吉田 誠 1、仁尾 万里華 1、皆川 智洋 1、我如古 理規 1、土居 幸司 1、
川上 義行 1、青竹 利治 1、田中 文恵 1、藤井 秀則 1、廣瀬 由紀 1、
太田 諒 2
【背景】乳癌の約 70%を占める ER 陽性 /HER2 陰性乳癌のハイリスク症例を選
別し、適切な補助療法を行うことが乳癌の予後改善には重要である。本研究
では ER 陽性 /HER2 陰性乳癌における HER2 score の意義を再評価した。【方
法】2001 年から 2012 年までに当院で手術を行った原発性乳癌症例のうち、
ER 陽性 /HER2 陰性を対象にした。非浸潤癌、術前治療症例、多発癌、FISH
の再検討により HER2 陽性と診断された症例は除外した。DFS は手術日を起
点に計算し、生存期間の解析は Logrank 検定により行った。Trastuzumab に
よる術後補助療法が保険収載された 2008 年以前(前期)とそれ以降(後期)に
分けて解析した。【結果】症例は 1418 例(前期 747 例、後期 671 例)、平均観
察 期 間 は 1721 日。 観 察 期 間 中、 前 期 で は 79 例 (10.6%)、 後 期 で は 27 例
(4.0%)に再発を認めた。前期の HER2 score は 0 及び 1+ が 537 例(71%)、
2+ が 157 例(21%)、未施行が 63 例(8.4%)で、後期は各々 527 例(79%)、
141 例(21%)、3 例(0.4%)であった。HER2 score 2+ のうち FISH を行っ
た症例の比率は前期では 10.2%、後期では 90% であった。前期における
HER2 score 2+ 症 例 は 0, 1+ 症 例 と 比 べ DFS が 不 良 の 傾 向 を 認 め(P=
0.18)、特にリンパ節転移陽性例においては術後 4 年目以降の再発に差があっ
た(P= 0.022)。後期においては観察期間も短く、その傾向は認めなかった
(各々 P= 0.90, P= 0.63)。【結論】HER2 score 2+ はリンパ節転移陽性症例
の晩期再発に影響する可能性が示唆された。今後、前期の HER2 score 2+ 症
例に対する FISH の再検討が必要である。
福井赤十字病院 外科、2 福井赤十字病院 病理部
【目的】HER2 陽性乳癌において ER 発現別に予後、および再発例での臨床的
因子を比較検討する【方法】2004 年から 2012 年の手術施行 571 例のうち、
HER2 陽性で stageI ~ III 期の 70 例 (12.3%) を対象とし、1)ER 発現の有無
による全生存期間 (OS)、および無再発生存期間 (RFS) を比較した。2) 再発例
について部位、再発までの期間、補助療法、再発後治療などを比較検討した。
【結果】ER 陰性 (H 群 )、陽性 (LH 群 ) ともに 35 例であった。観察期間中央値
は 56.2 ヶ月 (12 ~ 116) で、年齢や病期に両群間で差はなかった。1)OS は
中央値で H 群 69.0 か月、LH 群 50.5 か月、RFS はそれぞれ 66.5 か月、34.5
か月であり、両群間にいずれも有意差を認めなかった。また 5 年生存率はそ
れぞれ 96.3%、90.0%であり、これも有意差はなかった。術後補助療法は H
群で化学療法と trastuzumab の併用、LH 群ではこれに内分泌治療の追加が
標準的であるが、両群とも約 30%は trastuzumab が非投与であった。2) 再
発は H 群 7 例 (20%)、LH 群 9 例 (25%) であった。stageII 以上でリンパ節転
移陽性例に多く、再発までの期間は中央値で H 群 33.4 ヶ月、LH 群 43.8 ヶ月
であったが有意差は認めなかった。部位は局所、骨、内臓 ( 肺、肝 ) など一定
の傾向はなく、両群に差はなかった。このうち H 群 2 例 (28.6%)、LH 群 5 例
(55.6%) は補助療法の trastuzumab が非投与であった。再発後治療は H 群で
ほとんどに trastuzumab 併用化学療法が選択されていたが、LH 群では内分泌
療法± trastuzumab も選択されており、一定期間化学療法を回避することで
QOL 向上に寄与したと考えられた。再発後生存期間は中央値で H 群 32.4 ヶ月、
LH 群 30.3 ヶ月であり有意差を認めなかった。死亡例はそれぞれ 1 例と 4 例
で、全例が補助療法の trastuzumab が非投与であった。【結語】HER2 陽性乳
癌において ER 発現の有無で OS、RFS など予後に差を認めなかった。再発や
死亡は ER 発現の有無にかかわらず補助療法の trastuzumab 非投与例に多く、
stageII 以上、リンパ節転移陽性など再発高リスクと考えられる場合は補助療
法で trastuzumab を投与すべきである。
407
一般セッション(ポスター掲示)
ER 陽性かつ HER2 陰性乳癌では、Ki67 の値によって予後良好な Luminal
A と予後不良な Luminal B に分類されるが、最近では PgR の発現状態も重要
な予後因子になる可能性が指摘されている。その発現量の測定は様々な方法
があるが、今回は日常診療で施行される免疫染色法 (J-score, 以下 JS) での再
発予後と関連する cut off 値を検索した。対象症例は 2005 年から 2011 年ま
でに当院で手術施行されたステージ 1 ~ 3 の乳癌症例。このうち ER 発現 JS3
以 上、Herceptest 0-1+ も し く は 2+ で FISH 陰 性、 浸 潤 径 6 ミ リ 以 上、 組
織型は浸潤性乳管癌(非特殊型)219 例を対象とした。対象症例の PgR 発現
は JS(0,1,2,3) が そ れ ぞ れ 31(14%), 0(0%), 23(10%), 165(76%) 例 で
あった。患者背景は 40 歳以上 60 歳以下が 75 例 (34%)、61 歳以上が 126 例
(58%)、閉経後患者が 148 例 (68%)、乳房温存術施行患者が 172 例 (79%)、
センチネルリンパ節生検単独実施患者は 149 例 (68%)、腋窩リンパ節郭清実
施は 59 例 (27%) だった。病理学的所見は腫瘍径は T1 が 158 例 (72%)、T2
が 45 例 (21% )、N0 が 164 例 (75% )、N1 が 47 例 (21% ) であった。化学療
法を施行した症例は 58 例 (26%)、15 例 (7%) を除いた全例に術後内分泌療
法がなされた。観察期間中央値は 5.16 年であった。PgR 発現を JS 0-2 群 (54
例 ) と JS3 群 (165 例 ) とで分けて予後解析を施行すると Distant meta free
survival(DMFS) と Recurrent free interval(RFI) で有意差(P < 0.05)を認め
た。Overall survival と Cancer specific survival には有意差を認めなかった。
多変量解析で DMFS、RFI にそれぞれ影響する有意な因子を検討したが PgR 発
現量は有意な因子としてあがって来なかった。また ER JS3/PgR JS 0-2 群の
54 例で化学療法の有無での予後を検討したが、有意差は認めなかった。結論
として観察期間約 5 年での検討で ER 陽性 HER2 陰性症例では PgR の JS0-2 の
症例では JS3 の症例と比較して有意に遠隔および局所への再発率が高かった。
よって J-score を用いた PgR 発現は JS2 つまり染色割合 10%を cut off とする
ことで ER 陽性 HER2 陰性乳癌において再発予後と関連があると考えられた。
順天堂大学順天堂医院 乳腺科、2 順天堂大学順天堂医院 病理診断科
ポスター掲示
11034
10896
ER 陽性・HER2 陰性・pStage I-II 乳癌における補助化学療法
選択に有用な病理学的因子の検討
Luminal タイプ乳癌における予後因子としての組織グレードの
意義
GP-2-059-10
1
GP-2-059-11
博愛会相良病院 乳腺外科、2 博愛会相良病院 病理診断科
1
2
1
1
1
国立がん研究センター東病院 乳腺・腫瘍内科、
国立がん研究センター東病院 乳腺外科、
3
国立がん研究センター東病院 臨床開発センター臨床腫瘍病理部
2
1
金光 秀一 、大井 恭代 、四元 大輔 、相良 安昭 、松方 絢美 、
川野 純子 1、寺岡 恵 1、馬場 信一 1、雷 哲明 1、相良 吉昭 1、松山 義人 1、
佐々木 道郎 1、安藤 充嶽 1、相良 吉厚 1
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】ER 陽性・HER2 陰性・pStage I-II 乳癌において、Ki67 を中心とした
補助化学療法選択に有用な病理学的因子を、無病期間 (DFS) での比較で見出
す。【方法】Ki67 の intralaboratory variability を考慮し、固定条件が均一な
免疫染色用検体で評価しえた症例のみを対象とした。2003 年 4 月~ 2013 年
7 月の間に当院で手術を受けた浸潤性乳癌症例より、ER+/HER2-・pStage
I-II (UICC 2009)・術前化学療法未施行・術後内分泌療法施行の 467 例を
抽 出 し た。Ki67 値 に 応 じ、 ≦ 10% (Ki67-low; n=129)・10% < ≦ 30%
(Ki67-mid; n=248)・30% < (Ki67-high; n=90) に層別化した。各層毎に、
Histologic grade, Nuclear grade, 脈管侵襲 (ly, v), ER score, PgR score,
腋窩リンパ節転移(MLN)個数 , pT, pN を比較項目とし、Kaplan-Meier (K-M)
曲線および Log-rank test、Cox proportional ratio を用い DFS を検討した。
【成績】Ki67-low に対し、Ki67-mid および Ki67-high はともに DFS は不良 で
あった (p=0.026, 0.008)。Ki67-low において、観察期間内の再発は 129 例
中 1 例 (0.8%) のみで、比較項目における DFS の差はなかった。Ki67-mid
において pN, ly, MLN 個数は DFS 不良因子であった (p < 0.001, p=0.001,
p=0.002)。いずれも多変量解析で独立した因子ではないが、pN1 全例が ly
陽性、また、MLN 個数で 0 個 (pN0 に相当 ) と 1 個以上 (pN1 に相当 ) との間
で DFS に差があったことから、pN が最も重要な因子と考えた。これより、
Ki67-mid・pN1(n=68) において CTx 施行 (n=44) と CTx 未施行 (n=24) で比
較したところ、有意な差はないものの K-M 曲線で CTx 施行群が上回った。【結
論】Ki67-low では CTx 回避が考慮されて良い。Ki67-mid で pN1 の場合に CTx
が望ましい可能性がある。
佐々木 政興 1、内藤 陽一 1、藤井 誠志 3、細野 亜古 1、松原 伸晃 1、
和田 徳昭 2、米山 公康 2、向井 博文 1
【 目 的 】2013 年 の St.Gallen コ ン セ ン サ ス 会 議 で は Luminl タ イ プ の 乳 癌 を
Ki-67 の値で細分類することが提唱され、Ki-67 低値を中心とする LuminalAlike と Ki-67 高 値 を 中 心 と す る LuminalB-like に 分 け ら れ る。LuminalBlike においては術後補助療法として内分泌療法と化学療法の実施を推奨して
いる。一方、LuminalA-like においては内分泌療法を推奨し、組織グレード
(Histological Grade:HG)3 の症例には化学療法の検討を提起している。HG は
リンパ節転移、病期とは独立した予後因子であることが示されているが、本研
究では Ki-67 低値および高値の各群での予後因子としての有用性を検討した。
【方法】2000 年 1 月から 2008 年 12 月に Luminal タイプの浸潤性乳癌で根治手
術施行された患者について後方視的に診療録の解析を行った。対象は術前薬
物療法が実施されていない病理学的ステージ 1 から 3 の ER 陽性、HER2 陰性
症例とした。Ki-67 の陽性率については St.Gallen コンセンサス会議の合意内
容を参考にして、Ki-67 陽性率 0-19% を low grade, 20% 以上を high grade
と定義した。HG は Nottingham grading system を用いて判定した。各群の
無再発生存期間(Relapse free survival :RFS) は Kaplan-Meier 法を用い分
析した。【結果】対象 606 例で年齢の中央値 58 歳、T 1 が 369 例、T2 以上が
237 例、リンパ節転移陰性が 564 例、リンパ節転移陽性が 42 例。全切除術は
87 例、部分切除等は 519 例。腋窩リンパ節郭清は 196 例、センチネルリンパ
節生検のみは 398 例。術後化学療法施行例は 179 例。Ki-67-low 群 496 例中、
HG1 は 108 例 (21.8%)、HG2 は 339 例 (68.3%)、HG3 は 49 例 (9.9%)。Ki67-high 群 110 例 中、HG1 は 4 例 (3.6%)、HG2 は 51 例 (46.4%)、HG3 は
55 例 (50.0%)。Ki-67-low 群では 5 年 RFS が HG1:92.4%、HG2%:91.0%、
HG3:91.3% で HG 間に有意な差はなかった(p=0.966)。Ki-67-high 群では
5 年 RFS が HG2:89.5%、HG3:75.9% で有意差はないものの HG3 が劣る傾
向が認められた (p=0.151)。【結論】LuminalB-like において HG3 は予後が不
良である傾向が認められたが、LuminalA-like では HG3 が必ずしも予後不良
ではない可能性が示唆された。LuminalA-like において HG のみで化学療法の
適応を判断することには慎重であるべきかもしれない。しかし LuminalA-like
で HG3 症例は少なく、更に症例集積をした検討が必要である。
11036
11722
Luminal B-like (HER2 negative) 乳癌の分類について
リンパ節転移陰性症例群におけるsubtype別再発パターンの検討
GP-2-059-12
1
GP-2-059-13
札幌ことに乳腺クリニック、2 東札幌病院、3 北広島病院、4 札幌医大公衆衛生
熊本市民病院 乳腺内分泌外科
増岡 秀次 1、三神 俊彦 1、堀田 美紀 1、桜井 美紀 1、吉田 佳代 1、
白井 秀明 1、下川原 出 1、浅石 和昭 1、三原 大佳 2、野村 直弘 3、
森 満 4
西山 康之、西村 令喜、大佐古 智文、田嶋 ルミ子、中野 正啓、
藤末 真実子、有馬 信之
【 目 的 】St. Gallen 2013 Recommendations で は、Luminal B-like (HER2
negative) の group は、ER positive, HER2 negative and at least one of :
either Ki-67, PgR ‘negative or low’ Recurrence risk ‘high’ based on
multi-gene-expression assay (if available) とされた。PgR は IHC 法で陽性
細胞占有率 20%を low の cut off 値と提示している。Ki-67 に関しては測定法
や cut off 値など未だ標準化されていない。これまでの報告では核グレードは
Ki-67 と有意な相関関係があるとされている。Multi-gene-expression assay
については高価である。Luminal 乳癌を PgR および N grade を用い分類し妥
当性について検討した。【対象と方法】両側乳癌、非浸潤癌、StageIV、術前
化学療法施行例を除く、IHC 法で ER, PgR, HER2, N grade が測定された
Luminal 乳癌 962 例を解析の対象とした。年齢は 21 歳から 89 歳、平均 57.1
歳である。平均観察期間は 4.29 年である。生存率は Kaplan-Meier 法を、検
定は Logrank (Mantel-Cox) を用いた。【結果と考察】PgR の cut off 値 10%、
20%、30% で検討すると、10%および 30%では、DFS, OS ともに有意差を
認めるが、20% では OS では有意の傾向であった。また N grade では、grade
2 および 3 は同等の OS を示し、1 と 2+3 の2群間では DFS, OS ともに有意差
を 認 め た (p=0.0427, p=0.0002)。PgR の cut off 値 を 20% 以 下、 お よ び
grade 2+3 を
Luminal B-like
(HER2 negative)
と す る と、94 例
(9.8%) が 対 象 と
なる。図に示す通
りこの群の予後は
不良であった (DFS
: P=0.,0212, OS
: P=0.0835)。OS
が有意の傾向で
あ っ た こ と は cut
off値20%の判断は
観 察 期 間 が 短 く、
長期的な観察が必
要である。
[ 目的 ]
近年の乳癌治療は免疫染色(IHC)による subtype に基づいて行われるよう
になった。また、予後を反映する最も重要な因子は腋窩リンパ節転移であ
る。今回我々はリンパ節転移陰性症例において subtype 別の再発パターンを
retrospective に検討した。
[ 結果 ]
1990 年 -2013 年 10 月に手術先行し IHC にて subtype が同定されたリンパ節
転移陰性 1,993 症例を対象とした。LA/Luminal A(ER and/or PR+, HER2, Ki67 < 20%)849 例 /44%、LB/Luminal B(ER and/or PR+, HER2-,
Ki67 ≧ 20%)569 例 /29%、LH/Luminal HER2(ER and/or PR+, HER2+)
206 例 /11%、HER2(ER and PR-, HER2+)149 例 /8%、TN(ER, PR and
HER2-)220 例 /11% であった。
症例全体の 5 年 disease free survival(DFS)は 88% であった。subtype 別の
DFS を比較すると LA が他群と比較して有意に予後良好(p < 0.003)であり、
再発までの中央値は TN が最短(18.6 か月)、以下 HER2、LH、LB、LA(65 か
月)の順であった。術後化学療法 (-) 群では LA は LB、LH、TN と比較して有意
に予後良好であったが、術後化学療法 (+) 群では各群間に差を認めなかった。
初再発部位別の検討では HER2、TN では局所再発が多い傾向にあった。遠隔
転移臓器ではホルモン感受性群(LA、
LB、
LH)において骨転移が多い傾向にあっ
た。
全症例において p53(-) 群と p53(+) 群における DFS を比較すると両群間に差
は認めなかった。その一方で p53(-) 群と (+) 群においてそれぞれ subtype 別
DFS を検討すると、p53(-) 群においては LA が他群と比較して有意に予後良好
(p < 0.016)であったが、p53(+) 群においてはいずれの群間にも差を認めな
かった。
局所再発群で subtype 別の cumulative incidence(CI)を比較すると群間で差
を認めなかった。遠隔再発群で CI を比較すると TN はいずれの群よりも有意
に不良であり、LH、HER2 は LA、LB よりも有意に不良であった。
[ 結語 ]
N0 症例を subtype 別に検討した。Subtype 毎に再発パターンは異なってい
た。また、化学療法付加の有無で再発パターンに違いが見られた。Subtype 別、
術後療法別に術後 surveillance を検討する必要があると思われた。
408
11038
11468
術後補助療法に gene expression profile(MammaPrint) の
結果を考慮したか否かによる予後の比較
予後予測因子としての Ki-67 標識率
GP-2-059-14
GP-2-059-15
1
4
1
順天堂大学 乳腺内分泌外科、2 順天堂大学 放射線科、
3
順天堂大学 人体病理病態学
東北労災病院 乳腺外科、2 仙台乳腺クリニック、3 東北労災病院 腫瘍内科、
東北大学病院 胃腸外科、5 東北大学病院 放射線診断科
柴原 みい 1、豊島 隆 1、大内 明夫 2、丹田 滋 3、武者 宏昭 4、佐谷 望 5
清水 秀穂 1、齊藤 光江 1、三浦 佳代 1、中井 克也 1、田辺 真彦 1、
堀本 義哉 1、徳田 恵美 1、毛利 かの子 1、白石 昭彦 2、荒川 敦 3、
崔 賢美 1、平 郁 1、魚森 俊喬 1、氷室 貴規 1、吉田 悠子 1、猪狩 史江 1、
岩間 敬子 1、酒田 円佳 1、明神 真由 1
乳癌治療において細胞増殖能を反映する Ki-67 標識率は補助療法を決定する
上で重要な因子である。当院で 2001 年 1 月より 2007 年 12 月までに女性の浸
潤性乳癌の初回手術を施行した 512 症例のうち、325 例に対し Ki-67 標識率
を特定した。これらの症例において、腫瘍径、組織型、核異型度、脈管リン
パ管浸襲、リンパ節転移の有無や個数、ER、PgR、HER2 発現の有無などの
病理学的因子と Ki-67 標識率がどのような関連があるのかを検討した。さら
に、Ki-67 標識率を 15%以下、16 ~ 30%、31%以上の 3 群に分類し、5 年
生存率について検討した。Ki-67 標識率 15%以下群 121 例、16 ~ 30%群
116 例、31%以上群 88 例であった。5 年生存率として 15%以下群は 95.4 ±
2.0%、16 ~ 30%群は 89.7 ± 2.9%、31%以上群は 84.0 ± 4.1%とそれぞれ
の群間で有意差が見られた (P < 0.01)。10 年生存率については Ki-67 標識率
を 15%以下、16%以上の 2 群に分類し検討すると、15%以下群は 76.6 ±
11.1%、16%以上群は 62.0 ± 10.0%と有意差が見られた (P < 0.01)。Ki-67
標識率は病理学的因子と関連があり、予後予測因子となる可能性が示唆され
た。
〔背景〕gene expression profile による予後診断を治療方針に取り入れる意義
の多寡は、十分に証明されていない現状がある。〔目的〕MammaPrint(MMP)
の結果を考慮に入れて術後化学療法の適応を決める前向き試験を実施した 50
例と、同じ病期の非 MMP 施行例 229 例の予後を比較検討した。〔対象と方法〕
2009 年 11 月から 2012 年 10 月までに当院で術前化学療法なしで手術を施
行した N0 乳癌症例のうち MMP 実施の同意を得、評価可能であった 50 例と、
2007 年 1 月から 2009 年 8 月までの同じ病期非 MMP 施行例 229 例とを比較検
討した。〔結果〕MMP50 例のうち、MMP の結果を考慮して化学療法を施行し
た症例は 18 例であった。非 MMP 施行例 229 例のうち、化学療法施行は 74 例
であった。2013 年 11 月において、MMP50 例で再発症例は認めなかった。非
MMP 施行例 229 例のうち再発症例は 11 例であった。〔考察〕N0 という Stage
の早い段階の患者が対象のために再発自体が少なく結論的な議論はできない
ものの、MMP50 例で 1 例も再発が起きていない理由の一つとして MMP の結
果に沿って行われた化学療法が再発を予防している可能性がある。
10799
当院における乳がん手術症例の検討~ MIB-1 標識率を中心に
高 Ki67(50% 以上)症例の検討
GP-2-059-16
GP-2-059-17
米沢市立病院 外科、2 米沢市立病院 病理科
1
1
橋本 敏夫 、北村 正敏 、角田 力彌
1
2
愛媛県立中央病院 乳腺内分泌外科、2 愛媛県立中央病院 病理部
佐川 庸 1、松岡 欣也 1、古谷 敬三 2、前田 智治 2、木藤 克己 2
【はじめに】乳癌術前術後療法においてホルモン感受性、HER2 蛋白発現の
有無、MIB-1 標識率は治療を考慮するうえで大変重要な因子となっている。
MIB-1 標識率は 2011 年 St.Gallen 会議の推奨では 14% を cut off としてい
た。2013 年の同会議の推奨では施設間で設定することとなっている。当院
は 2009 年 5 月より乳がん手術症例を対象として MIB-1 標識率を検討してい
る。今回当院の MIB-1 標識率について検討した。【対象】2009 年 5 月から
2013 年 12 月までの当院における乳がん手術症例のうち MIB-1 標識率を測定
した 126 例を対象とした。
【方法】上記期間同症例の乳癌細胞の MIB-1 標識率
について検討した。また ER、PGR、HER2 蛋白発現その他の臨床病理学的因
子について検討した。【結果】MIB-1 標識率を測定した乳癌手術症例 126 例の
平均値は 33%(標準偏差 27.178)であった。ER 発現の有無については ER
陽性(91 例):MIB-1 標識率 24.1%、ER 陰性(35 例):MIB-1 標識率 56.6%
(P < 0.0001)PGR 発現の有無については ,PGR 陽性(74 例):MIB-1 標識率
24.4%、PGR 陰 性(51 例 ):MIB-1 標 識 率 46.6%(P < 0.0001)、HER2 蛋
白発現の有無については HER2 陽性 (26 例 ): MIB-1 標識率 (58.8%、HER2
陰性 (86 例 ) の MIB-1 標識率 (29.2%)(P < 0.0001)、組織学的異型度(SBR
system)Grade 1:MIB-1 標識率 (15.4%)、Grade 2: MIB-1 標識率 (33.8%)、
Grade 3 :MIB-1 標識率 (67.5%)(r=0.758、P < 0.0001)であった。組織
型 で は pap-tub(53 例 ): 標 識 率 (33.1%),Solid-tub(24 例 ):MIB-1 標 識 率
(47.3%), scirrhous (18 例 ):MIB-1 標 識 率 (29.6%),others(31 例 )MIB-1
標識率 (24.7%) であり、Solid-tub 症例の MIB-1 標識率は他の組織型と比較
して有意に高値であった。【結語】当院における MIB-1 標識率は全症例で検
討すると平均値は 33%(標準偏差 27.178)であった。ER 陰性、PGR 陰性、
HER2 陽性、組織学的異型度が高い症例、Solid-tub 症例において MIB-1 標識
率が有意に高かった。ER 陽性症例の MIB-1 標識率は 24.1%、PGR 陽性症例
の MIB-1 標識率 24.4% であり、同数値が Luminal A、B の区別の目安になる
と考えられた。
腫瘍増殖動態を示すマーカーとして有用である Ki67 は、カットオフ値(例:
14%)によって Luminal A / B に分けられ、補助療法選択の目安とされる。
一方で再発・生存予測因子としても注目されてきた。高 Ki67 症例では、諸治
療にもかかわらず早期再発を経験することがあるため、今回、当院における高
Ki67 症例について検討した。対象は 2010 年 7 月から 2013 年 11 月までの手
術症例 377 例中 Ki67:50% 以上の症例 55 例で、サブタイプは Luminal type
(L):17 例(30.9%)、Luminal HER2type(L-H):8 例(14.5%)、HER2
type(H)
:11 例(20.0%)、Triple negative type(TN)
:19 例(34.5%)であっ
た。核(または組織学的)グレードが 3 である割合は L:8 / 17 例(47.1%)、
L-H:2 / 8 例(25.0%)、H:1 / 11 例(9.1%)、TN:2 / 19 例(10.5%)で
あった。55 例中、術後 2 年以内に再発した症例を検討すると、7 例(12.7%)
であった。内訳は初発転移部位:骨転移 1 例、肺転移 1 例、脳転移 3 例、リン
パ節転移 2 例であり、サブタイプ別では H:1 例、L-H:1 例、TN:5 例であっ
た。化学療法は 5 例が EC ⇒タキサンが行なわれ、80 歳以上症例の 1 例が CMF
/ 1 例が無治療であった。【考察・結語】Ki67:50% 以上を呈する症例の約 1
/ 3 は TN であり、早期再発例 7 例中 5 例が TN 症例であった。H および L-H の
早期再発例はともに脳転移であった。TN 乳癌に対する薬物療法の開発ととも
に、(乳癌診療ガイドラインでは、術後定期的な(PET-)CT 検査の有用性は認
められていないが)高 Ki67(50% 以上)症例に対しては個別化したフォローも
考慮されると思われた。
409
一般セッション(ポスター掲示)
11642
1
ポスター掲示
10559
10423
化学療法施行根治可能乳癌の予後 / 治療成績予測マーカーとし
て好中球 / リンパ球比 (NLR) は有用か?
長期成績からみた早期乳癌の病態について
GP-2-059-18
1
ポスター掲示
GP-2-059-19
日本大学医学部 乳腺内分泌外科
群馬県立がんセンター 乳腺科、2 群馬大学大学院病態 総合外科学
鈴木 周平、櫻井 健一、長島 沙樹、天野 定雄、榎本 克久、谷 眞弓、
平野 智寛、前田 哲代、原 由起子、松本 京子、萩原 美桜、和賀 瑛子、
阪上 雅史
宮本 健志 1、藤澤 知巳 1、柳田 康弘 1、桑野 博行 2
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】免疫・炎症性細胞に形成される癌の微小環境が癌の増殖・浸
潤・転移に関与しているという報告がみられる。乳癌においては tumor -
infiltrating lymphocytes が治療の predictive marker になりうるとの報告が
ある。局所のみならず全身の炎症状態の存在も予後因子となるという報告が
種々の癌腫でなされ、その簡便な把握法として好中球 / リンパ球比 (NLR) が
ある。NLR と乳癌長期予後の関係を示唆する報告もある。
【目的・方法】臨床
的に再発リスクが高いと判断される、術前後アンスラサイクリン + タキサン
(A/T) 療法を受けた患者の全身炎症の評価を NLR を用いて行い、再発または
死亡と NLR の関連を明らかとする。【対象】2006 年以降で、当院にて A/T 療
法 (HER2 陽性患者は、基本的に Trastuzumab 併用 ) を受けた患者 448 例。内
訳 は Luminal(L) 212 例、Luminal-HER2(LH) 69 例、HER2-enrich(H) 59
例、Triple negative(TN) 106 例である。このうち再発は 46 例 (L:20, LH:7,
H:4, TN:15) であり、死亡は 28 例 (L:10, LH:5, H:2, TN:11) であった。【結
果】448 例の NLR 平均は 2.19 ± 1.81 であり、無再発生存群 / 再発群= 2.19 ±
1.84/2.19 ± 1.53、生存群 / 死亡群= 2.18 ± 1.81/2.37 ± 1.84 であり、両者
に有意差はみられなかった。また、subtype 別の NLR にも有意差はなかった。
subtype 別の治療成績ごとの検討では、L で、再発・死亡群の NLR が高い傾
向にあったが、他の subtype ではほとんど差がないか、むしろ再発・死亡群
の方が NLR 低値を呈したものもあった。【考察】この検討では、NLR は再発
高リスク乳癌の短期治療成績の予測への有用性は証明されなかった。短期成
績の検討であり長期予後になれば差が出るという仮説と、乳がんにおいては
NLR が何の参考にもならないという二つの仮説が残る。前者に関しては、全
体での NLR のばらつきが小さく、仮に差があったとしてもかなりの症例数と
観察期間を要すると考えられる。後者については、NLR と予後予測について
対象となる癌腫の多くが消化器癌であり、これらは乳癌と比して予後は極め
て悪く、乳癌以上に全身病としての要素が強い。根治可能と判断される乳癌は、
全身病ではあるものの、全身の炎症・免疫バランスにまでは反映していない
と考えられる。まさしく全身病である転移再発乳癌では、NLR は検討の余地
があると思われる。【結語】治可能再発高リスク乳癌においては NLR が短期予
後 / 治療成績予測マーカーとして有用ではないことが示唆された。
【背景】2013 年度に発売された最新の乳癌診療ガイドライン第 17 版において
stage 0 および stage I が早期乳癌と定義された.【目的】長期成績からみた
stage 0 および stage I 乳癌の病態について検討し、stage II 以上の乳癌と比
較することにより、早期乳癌の定義が妥当かどうかを検討した.【対象】1995
年から 2005 年までに経験した原発性乳癌 360 例.【方法】対象症例を stage
0 および stage I の早期乳癌群 (A 群 ) と stage II 以上のその他の乳癌群 (B 群 )
に分類し、無再発生存率、再発形式、再発までの期間、再発後の生存率、術
後累積生存率について検討を行った.統計学的検定はχ 2 乗検定および多変量
分散分析法を用い、p < 0.05 を有意差ありと判定した.【結果】対象症例の平
均年齢は 55.8 歳、全例が女性.閉経前 244 例、閉経後 116 例.内分泌受容
体陽性症例が 225 例 ( 陽性率 62.7%)、HER-2 陽性症例が 11 例 ( 不明 6 例 ).
Stage 0 8 例、Stage I 113 例.Stage II 172 例、Stage III 49 例、Stage
IV 18 例.A 群は 121 例.B 群は 239 例であった.A 群と B 群の背景因子 ( 年齢、
性別、閉経状態、内分泌受容体陽性率 ) に統計学的に差を認めなかった.10
年無再発生存率は、A 群 80.4%、B 群 68.6%、p = 0.013 で有意差を認めた . 再
発症例は A 群 8 例 (6.5%)、B 群 81 例 (34.9%) であり、再発までの期間の中
央 値 は A 群 463.4 週、B 群 142.4 週 . 再 発 後 5 年 生 存 率 は A 群 74.1%、B 群
26.5%、P = 0.0025 で有意差を認めた . 術後累積 10 年生存率は A 群 99.0%、
B 群 61.0%、p ≦ 0.01 で有意に A 群が B 群を上回った.【結語】Stage 0 およ
び Stage I の乳癌は、それ以外の臨床病期乳癌と比較して、無再発生存率、再
発後生存率、術後累積生存率が良好であり、早期乳癌と定義されたことは妥
当であると考えられた.
10837
10804
機能ネットワークからみた乳癌予測因子の探索
乳癌におけるリンパ管侵襲の予後因子としての意義-ことにリ
ンパ節転移個数と対比して
GP-2-059-20
GP-2-059-21
1
日産厚生会玉川病院 外科、2 国際医療福祉大学病院 病理診断科、
3
日産厚生会玉川病院 病理部、
4
東京医科歯科大学大学院 難治疾患研究所 ゲノム応用医学研究部門 分子
遺伝分野
1
3
大石 陽子 1、黒田 一 2、川村 雄大 1、斎藤 賢将 1、野谷 啓之 1、川村 徹 1、
佐藤 康 1、密田 亜希 3、中嶋 昭 1、三木 義男 4
【はじめに】以前、われわれは乳癌の予後を規定する機能ネットワーク上の
mitotic spindle checkpoint に 関 与 す る Stathmin1(STMN1) の 臨 床 学 的 意
義について検討を重ねてきた。今回はさらに apoptosis に関与する遺伝子
(inhibitor of apoptosis;IAP) として知られている survivin(BIRC5) に着目
し予後予測因子としての可能性について検討した。
【対象・方法】対象は 2001
年~ 2007 年までに乳癌手術を施行した 111 例。方法は免疫染色にて発現解
析を行い STMN1 は、染色強度を 1+,2+,3+ の三段階で評価した。BIRC5 に
おいては陽性または陰性のいずれかで評価し、陽性では発現部位(核と細胞質)
についても検討した。この2遺伝子の発現状況と無再発生存期間 (DFS) およ
び全生存期間 (OS) について解析を行なった。【結果】DFS(中央値)は STMN1
(1+) / BIRC5( 核 +);20-108(78.5) ヶ 月 , STMN1 (1+) / BIRC5( 細 胞
質 +);0-115(67) ヶ 月 , STMN1 (1+) / BIRC5(-);0-128(67.5) ヶ 月 ,
STMN1 (2+) / BIRC5( 核 +);40-109(77) ヶ月 , STMN1 (2+) / BIRC5( 細
胞 質 +);14-141(72.5) ヶ 月 , STMN1 (2+) / BIRC5(-);38-131(72) ヶ 月 ,
STMN1 (3+) / BIRC5( 核 +);6-121(46.5) ヶ月 , STMN1 (3+) / BIRC5( 細
胞質 +);45-124(94) ヶ月 , STMN1 (3+) / BIRC5(-);23-89(60) ヶ月であっ
た。STMN1 と BIRC5(核)の両方において高発現の場合、早期再発の傾向が
みられた。OS(中央値)では STMN1 と BIRC5 発現の組み合わせによる差を認
められなかった。【結語】STMN1 と BIRC5 のいずれも anti-apoptosis に作用
するが、STMN1 はミトコンドリアを介してその下流で作用し、BIRC5 は Wnt
signaling を介して作用する。それぞれの発現状況による予後に有意差は認め
なかったが、機能ネットワークの観点から予後因子の探索を行うことは予測
のみならず、新規分子標的薬の開発に重要であり、今後も検討を重ねる必要
性があると思われた。
ブレストピアなんば病院 乳腺科、2 ブレストピアなんば病院 放射線科、
がん研 病理部、4 坂元記念クリニック
駒木 幹正 1、山本 隆 1、船ヶ山 まゆみ 1、山口 由紀子 1、前田 資雄 1、
古澤 秀実 1、中原 浩 2、秋山 太 3、坂元 吾偉 4、阿部 勝則 1
乳癌原発巣におけるリンパ管侵襲 (ly) は予後不良の指標とされるが,リンパ
節転移の状況 (n) が最も予後因子としては普遍的である。今回,n および ly
を含めて予後因子解析を行い,ly のもつ予後因子としての意義を検討した。
【対象】2004 年~ 2012 年の原発性乳癌根治手術例 ( 病期 I ~ III 期で原発巣
の病理学的情報 ,n, ER,PgR 等の詳細が明らかなもの ) から両側・多発性およ
び術前療法例を除いた 1,163 例を対象とした。【方法】予後の指標はすべて術
後無再発生存期間とし,ly は頻度,n は転移個数からそれぞれ 4 段階に分け
た。今回は術後化学療法の内容とレジメン数も予後解析に加えた。予後解析
から ly,n についてハザード比が最大になるよう対象症例を2群に分け,その
組合せから4群に分類し対比検討した。統計学的手法は Cox 比例ハザードモ
デル , Cochran-Armitage trend test 等を用いた。【結果】1) 予後解析で,有
意な予後因子として選択されたものは。n,T 因子 ,ER 状況 , ly であった。2)
ly はその有無で分けたときにハザード比が 153.4 と最大となり,n は 3 個以
下と 4 個以上で分けたときにハザード比が 183.4 と最大となった。3) 前項
の 結 果 か ら(ly-,n ≦ 3)群,(ly+,n ≧ 4) 群 , (ly-, n ≧ 4) 群,(ly+, n ≦ 3)
群の4群で予後の比較を行ったところ,術後 10 年無再発生存率はそれぞれ
98.0%,26.7%,90.8%,88.2% であった。後者の2群間のみに有意差がなかっ
た。4)(ly-, n ≧ 4) 群と (ly+, n ≦ 3) 群で臨床病理学的対比を行ったところ T
因子,PgR 状況,悪性度,化学療法の内容に有意差がみられた。すなわち (ly+,
n ≦ 3) 群に低い T 因子,PgR 陽性,低悪性度,化学療法の軽いものが多い傾
向がみられた。【まとめ】有意な予後因子として n,T 因子 ,ER 状況 , ly が選択さ
れた。リンパ節転移がみられなくても ly が認められるものはリンパ節転移が 4
個以上で ly が認められないものと同等の予後であった。【考案】術後,ly はリ
ンパ節転移が多いものと同等に扱うべきであり,また化学療法を出来る限り
強化することによって予後を改善しうる可能性がある。
410
ポスター掲示
10530
11635
脈管浸潤の評価による乳癌の転移再発予測:vascular invasion
の重要性
N2b 以上のリンパ節転移を認めた症例で腋窩リンパ節の ypN0
が予後予測因子となりうるか?
GP-2-059-22
GP-2-059-23
1
群馬大学大学院医学系研究科 病態総合外科学
がん研有明病院 乳腺センター外科、
がん研有明病院 乳腺センター内科、3 がん研有明病院 画像診断部、
4
がん研有明病院 病理部、5 がん研究会がん研究所 病理部、
6
防衛大学校 外科学講座
2
藤井 孝明、矢島 玲奈、森田 廣樹、堤 荘一、桑野 博行
リンパ節転移は乳癌の重要な予後因子である。リンパ節転移は、癌細胞の増
殖、進展が宿主の免疫に勝っていることを反映していると考えられる。しかし、
リンパ節転移は予後因子ではあるが、リンパ節転移により致命的になること
はなく、あくまで腫瘍そのものの biology を反映しているにすぎない可能性が
あると考えられる。乳癌においては、リンパ節郭清の長期予後改善効果は否
定的であり、リンパ節郭清はいかに省略するか検討する方向にすすんでいる。
リンパ節転移を認めても予後良好である症例はしばしば経験され、予後決定
に重要であるのは、リンパ行性の進展ではなく、血行性転移による重要臓器
への遠隔転移であると考えられる。そこで今回、リンパ行性の転移を反映す
ると考えられる lymphatic invasion(ly) と血行性の転移を反映すると考えら
れる vascular invasion(v) に着目し、乳癌手術症例 262 例を対象として検討
を行った。遠隔転移による再発は 30 例に認められた。ly+ かつ v+(ly+/v-) の
96 例中、再発は 19 例 (19.8%)、ly-/v+ の 3 例中に再発は 1 例 (33.3%) に認
められたが、ly+/v- の 67 例では再発は 5 例 (6.9%) のみであった。ly-/v- の
91 例中、再発 5 例(5.5%)であり、ly+/v- 症例は ly-/v- と同様の再発率であっ
た。またリンパ節転移は 119 例に認められ、そのうち再発は 20 例 (16.8%)
に認められた。リンパ節転移 119 例中、ly+/v- 症例は 40 例(16.8%)であっ
たが、そのうち再発例は 2 例のみ(5.0%)である。ly 因子、v 因子は相関関係
にあるため評価が困難であるが、今回の検討より、ly 因子単独ではリンパ節
転移の予測には有用であるが、遠隔転移、予後に関連するのは v 因子である可
能性があると考えられる。逆にリンパ節転移陽性例でも、v 因子が陰性であれ
ば、予後不良とならない可能性があり、リンパ節転移陽性例でも予後良好な
症例を選別し得る可能性が示唆される。
宮城 由美 1、山崎 希恵子 1、山岸 陽二 1,6、五味 直哉 3、堀井 理絵 4、
秋山 太 5、伊藤 良則 2、高橋 俊二 2、岩瀬 拓士 1
11592
11585
Triple negative 乳癌の予後予測因子に関して
トリプルネガティブ乳癌手術症例の検討
GP-2-059-24
GP-2-059-25
山形県立中央病院 乳腺外科
山形大学医学部 消化器・乳腺甲状腺・一般外科学
蓮沼 綾子、工藤 俊、牧野 孝俊
柴田 健一、鈴木 明彦、鈴木 武文、佐藤 多未笑、木村 青史、木村 理
【目的】Triple negative(以下 TN)乳癌が予後不良であることは周知の事実で
あるが、TN 乳癌の中でも分子遺伝子レベルではさらに細分類され、予後にも
差があると言われてきている。 今回 TN 乳癌の予後不良例にはどのような特
徴があるか、TN 乳癌の再発群(予後不良)と非再発群(予後良好)とを臨床病
理学的に比較検討した。【対象・方法】2004 年から 2010 年の間に当科で手術
を施行した StageI ~ III の TN 乳癌 83 例(特殊型は除外)を対象とした。 再発
の有無別に、年齢・病理学的因子(組織型、腫瘍径、リンパ節転移、Stage、
ly、v、Histological grade(HG))・術式・化学療法の有無や内容に関して
比較検討した。 また再発例の初再発部位と無再発期間や生存期間に関して
も検討した。【結果】TN 乳癌 83 例中 21 例(25.3%)で再発を認めた。Stage
は、 非 再 発 群(62 例 )で I:II:III = 55%:43%:2%、 再 発 群(21 例 )で
I:II:III = 24%:43%:33%(P < 0.0001)と、再発群で有意に Stage が
高い傾向を認めた。このうち腫瘍径の比較では両群に差がなかったが、リン
パ節転移率は、非再発群で n0:n1:n2 以上= 74%:24%:2%、再発群で
n0:n1:n2 以上= 48%:33%:19%(P=0.007)と、再発群で有意にリン
パ節転移率が高い傾向を認めた。同様に ly は、非再発群で ly 陽性 37%、再
発群で ly 陽性 62%(P=0.047)と、再発群で有意に ly 陽性の傾向を認めた。
組織型は、非再発群で paptub:soltub:sci = 42%:39%:12%、再発群で
paptub:soltub:sci = 19%:29%:52%(P=0.012)と、再発群で有意に sci
が多い傾向を認めた。術式は、非再発群で温存:非温存= 74%:26%、再発
群で温存:非温存= 48%:52%(P=0.025)と、再発群で有意に非温存が多
い傾向を認めた。他に年齢、v、HG、化学療法の有無及び内容では有意差を
認めなかった。多変量解析では、Stage(リンパ節転移率)、組織型、術式で
有意差を認めた。再発群の初再発部位は肺(7 例)、局所(6 例)、リンパ節(3 例)、
骨(2 例)、肝臓・対側・心嚢(各 1 例)。平均無再発期間は 666 日(160-1498)。
平均生存期間は 1340 日(241-3343)で、5 年生存率は 34% であった。
【結語】
TN 乳癌において、進行した Stage、ly 陽性やリンパ節転移、sci が予後不良
因子と考えられた。化学療法の内容に関しては今回有意差を認めなかったが、
TN 乳癌への標準治療としてのアンスラサイクリンとタキサン含有レジメンの
有効性の検証については、さらなる解析を進めたい。
411
トリプルネガティブ乳癌は予後不良なサブタイプと考えられおり、補助療法
としては、化学療法が唯一の治療の選択肢となっている。当科におけるトリ
プルネガティブ乳癌の手術症例の治療成績を検討した。対象:2004 年から
2013 年までに当科で手術を施行した StageI、II、III でトリプルネガティブ
と診断された 30 例を対象とし検討した。結果:初診時の年齢は平均 60.4 歳
であった。組織型は乳頭腺管癌が 4 例、充実腺管癌が 15 例、硬癌が 1 例、小
葉癌が 1 例、その他が 7 例であった。T因子は T1 が 10 例、T2 が 15 例、T3
が 3 例、T4 が2例であった。リンパ節転移陽性は 12 例、陰性は 18 例であっ
た。術前化学療法は 6 例で施行されており、2 例でCRが得られたものの、う
ち 1 例で再発をきたした。術後の化学療法は高齢や併存疾患があるもの、本
人より同意が得られなかった症例をのぞく 19 例に施行した。再発をきたした
のは 5 例、死亡が確認されたのは 2 例であった。T2が 4 例、T4が 1 例、リ
ンパ節転移陽性は 4 例、陰性は 1 例であった。再発症例はセンチネルリンパ節
生検はおこなわず、すべて腋窩郭清を施行していた。再発までの平均期間は
18.4 ヶ月であった。再発症例のうち 4 例は術後化学療法が施行されていない
か、内服薬にとどまっていた。近年の症例では、TC 療法あるいは、FEC 療法
に続いてドセタキセルを追加しており、2009 年以降に手術した症例では再発
は見られていない。結語:トリプルネガティブ乳癌の再発例では、十分な補
助療法が行われていない例が多くみられた。トリプルネガティブ乳癌はハイ
リスクとして扱い、十分な補助療法を行う必要があると考えられた。
一般セッション(ポスター掲示)
【 目 的 】術 前 化 学 療 法 (NAC) は、 局 所 進 行 乳 癌 に 対 し て 施 行 さ れ て お り、
subtype 別に効果や意義も異なることがわかっている。NAC 前腋窩リンパ節
転移が腋窩にとどまっている症例は、手術時に原発巣及び腋窩リンパ節郭清
を行うことによりその効果が病理学的に証明されるが、鎖骨上 (SC) や胸骨傍
(PS) リンパ節に転移を認めた症例では、その部分は手術時に切除せずに放射
線治療を追加することが多い。術前に SC や PS に転移を認めた N2b 以上の症
例に対して、腋窩リンパ節の NAC の効果で予後を予測できるか検討を行った。
【対象・方法】当院で 2006 年 1 月から 2009 年 12 月までの間に , NAC 前に細
胞診で PS 及び SC への転移を証明できた、M1 以外の 58 例。再発形式および
DFS、OS について検討をおこなった。観察期間の中央値は 60 か月。【結果】
58 例中、ypN0 となった N- 群が 27 例、腋窩の廓清リンパ節に転移を認めた
N+ 群が 31 例。N- 群の再発は 4 例、初再発部位は全例遠隔転移であった。N+
群では 17 例が再発し、そのうち 6 例は初再発部位が局所及びリンパ節転移で
あ っ た。DFS は N- 群 が N+ 群 と 比 較 し て 優 位 に 良 好 で あ っ た (P=0.007)。
OS は有意差を認めなかったが N- 群が良い傾向にあった。【結語】NAC 前 SC や
PS リンパ節転移を認めた症例は局所コントロールが良好なことより、NAC 後
の腋窩リンパ節の ypN0
で SC や PS リ ン パ 節 転
移消失が予測できると
思われた。また、OS で
有意差は認めなかった
が DFS で 有 意 差 を 認 め
た こ と よ り、 長 期 的 な
経過観察を行うと腋窩
リンパ節の ypN0 が予後
予測因子となりうる可
能性が示唆された。
ポスター掲示
10408
11888
Stage III トリプルネガティブ乳癌に対する治療戦略
当科におけるトリプルネガティブ乳癌の手術症例の検討
GP-2-059-26
GP-2-059-27
1
国立病院機構九州医療センター 乳腺センター、
2
久留米大学医学部 外科学講座
大阪市立総合医療センター 乳腺外科
後藤 航、池田 克実、梶野 智加、出口 惣大、徳永 伸也、西口 幸雄、
小川 佳成
高橋 龍司 1、赤司 桃子 1、井上 有香 1、中川 志乃 1、三島 麻衣 2、
岩熊 伸高 2、唐 宇飛 2
一般セッション(ポスター掲示)
背景:標準的な術前化学療法や術後補助化学療法を施行しても、局所進行ト
リプルネガティブ乳癌の多くは予後不良である。また、術前化学療法による
病理学的完全奏効(pathological CR)が予後予測因子となり得ない可能性も
指摘されている。今回、我々は Stage III トリプルネガティブ乳癌の治療成績
について検討した。目的:Stage III トリプルネガティブ乳癌の臨床病理学的
背景や治療成績について検討する。対象と方法:2002 年 3 月~ 2012 年 6 月
までに当科および久留米大学外科にて手術加療を受けた Stage III トリプルネ
ガティブ乳癌を対象とした。カルテ診療記録に基づいた後ろ向き調査を行い、
臨床病理学的因子や生命予後との相関性について検討した。結果:全 19 例の
女性乳癌患者が対象となり、中央値年齢は 54 歳(33 ~ 95 歳)、病期は Stage
IIIA:Stage IIIB:Stage IIIC = 4 例:11 例:4 例であり、組織型は浸潤性
乳管癌:16 例、紡錘細胞癌:2 例、扁平上皮癌:1 例であった。そのうち 14
例に対してエピルビシン+ドセタキセル併用術前化学療法が施行され、臨
床 効 果 は CR:PR:SD:PD = 1 例:7 例:3 例:3 例、 奏 効 率(CR + PR)は
57%、組織学的効果は Grade 3:Grade 2a:Grade 1b:Grade 0 = 2 例:3 例:
5 例:4 例であった。術前化学療法により腫瘍径が十分縮小化した 3 例に対し
て乳房温存術+術後放射線治療が施行され、乳房切除後の胸壁および領域リ
ンパ節照射は 10 例、術後補助化学療法は 9 例(そのうち術前化学療法施行例
は 6 例;薬剤は経口 5-FU 系抗癌剤が 4 例、エピルビシン+ドセタキセル併用
療法が 2 例)に対して施行された。2013 年 11 月までの観察期間(中央値 19 か
月)中、死亡数は 13 例であり、無再発生存期間の中央値は 14 か月、全生存期
間の中央値は 31 か月であった。初回再発臓器は脳:4 例、肺臓:4 例、肝臓:
1 例、局所:1 例、領域リンパ節:3 例、遠隔リンパ節:2 例であった。術前
化学療法の臨床効果や組織学的効果は予後予測因子に相当せず、年齢 40 歳未
満のみが予後不良因子となった。結語:Stage III トリプルネガティブ乳癌に
対する集学的治療には議論の余地があり、サブタイプ分析や新規抗癌剤の導
入を含めた新たな治療戦略が待ち望まれる。
【はじめに】トリプルネガティブ乳癌 (TN) は他のサブタイプと比較して生物学
的悪性度が高く,化学療法が薬物治療の中心であるが,奏功しなければ予後
不良とされる.今回我々は,TN 乳癌手術症例のうち再発例と,無再発例の 2
群間を比較し,再発例の予後因子を検討した.【方法】2002 年から 2012 年ま
での乳癌手術症例 1332 例中,TN 乳癌 130 例のうち遠隔転移症例 7 例を除い
た 123 例を対象とした.再発は 22 例 ( 予後不良群 ) で,無再発は 101 例 ( 予後
良好群 ) であった.両群の臨床病理学的背景をレトロスペクティブに比較検討
した.【結果】再発例,無再発例間で,平均年齢は各々 54.5 歳,58.8 歳,平
均腫瘍径は 34.3mm,25.6mm で差はなかった.組織型は再発例で乳頭腺管
癌 4.5%,充実腺管癌 31.8%,硬癌 45.5%,無再発例で乳頭腺管癌 21.8%,
充実腺管癌 24.8%,硬癌 30.7% であった.Stage では,再発例,無再発例
で StageI:22.7%,34.7%,IIA:22.7%,42.6%,IIB:27.3%,10.9%,
IIIA:18.2%,3.0%,IIIB:9.1%,4.0%,IIIc:0%,5.0% で 再 発 例 で は 無
再発例に比べ診断時に有意に進行例が多かった.手術術式は再発例で乳房切
除術 68.1%,乳房温存術 31.8% に対し,無再発例で乳房切除術 34.7%,乳
房温存術 63.4% であった.術前化学療法は,再発例 9 例 (40.9%),無再発例
14 例 (13.9%) に施行されたが,CR または PR であった症例は,各々 5 例と
13 例であった.腋下リンパ節転移個数 (n) は,再発例 : 平均 4.3 個,無再発例 :
平均 0.7 個で有意に再発例が多かった.多変量解析ではnのみが独立した再発
の危険因子であった (p=0.015).【結語】腋下リンパ節転移個数は,従来より
強力な予後因子と言われているが,TN 乳癌症例でも再発の危険因子であった.
TN 乳癌の再発リスクを下げるには術前化学療法後に,n を小さくさせること
が重要であると考えられた.
11704
10533
術前化学療法 (PSC) 施行 Triple-negative breast cancer
(TNBC) 予後因子の検討
10 年目以降の晩期再発症例についての臨床病理学的検討
GP-2-059-28
GP-2-059-29
国立がん研究センター中央病院 乳腺外科
1
順天堂大学医学部附属練馬病院 乳腺外科、
2
順天堂大学医学部附属練馬病院 消化器外科、
3
順天堂大学医学部附属練馬病院 放射線科、
4
順天堂大学医学部附属練馬病院 病理診断科、
5
順天堂大学医学部附属練馬病院 臨床検査科
石黒 深幸、神保 健二郎、永山 愛子、神谷 有希子、垂野 香苗、
麻賀 創太、北條 隆、木下 貴之
小坂 泰二郎 1、渡野辺 郁雄 2、北畠 俊顕 1、児島 邦明 1、稲葉 暁子 5、
天野 真紀 3、坂口 亜寿美 4、小倉 加奈子 4、松本 俊治 4、青木 裕志 5
はじめに)TNBC は予後不良乳癌であり、現時点では(細胞障害性)化学療法
のみが日常臨床で再発予防の手段として用いられている。PSC 施行 TNBC
の予後因子に関して検討した。対象)2008.1.1-2010.12.31 の間に組織生
検で TNBC と診断された 63 症例中、PSC を施行し除外基準(両側、特殊型、
StageIV、炎症性乳癌、他癌合併)に当てはまらない原発性乳癌 11 症例。結
果 )平 均 観 察 期 間 1323.8 日 (1059-1736)、 平 均 年 齢 56.1 歳 (41-70)、 全
例 女 性、 閉 経 前 : 後 =3:8、 平 均 腫 瘍 径 35.1mm、Stage I:II:III=2:6:3、
全例浸潤性乳管癌、NG 1:2:3=0:3:8、HG 1:2:3=0:4:7、CE投与後臨
床的効果判定 cCR:cPR:cNC:cPD=0:6:5:0、DOC投与後臨床的効果判定
cCR:cPR:cNC:cPD=2:4:5:0、組織学的効果判定 Grade 0:1:2:3= 2:4:3:2、
PSC 後に組織生検と手術検体で subtype が変わるものは認めなかった。観察
期間中に 4 症例が再発、全例初再発部位は肺転移であり、3例は経過中に脳
転移を認めている。無病生存期間は平均 324.2 日 (156-551)、再発後の化学
療法の投与期間は 1st. line 平均 212.3 日 (85-491)、2nd line 281.3 日(36492)、3rd. line 81.2 日(29-133)であった。まとめ)PSC 後に臨床的治療効
果 cCR、病理学的治療効果 Grade2 以上を認めた症例で観察期間中に再発は認
めなかった。転移臓器は全例肺転移が初発臓器であり、経過中に脳転移を高
率に認めた。再発後の 3rd line からの化学療法投与期間が短縮する傾向が認
められた。考察)今回の検討では、PSC の治療効果判定以外の有効な予後因子
は認めなかった。
412
背景 : 近年再発乳癌に対する様々な治療戦略が検討されている。乳癌の多く
は 5 年以内に再発するが、10 年目以降の再発症例もしばしば認められるよう
になってきた。しかし晩期再発の予測因子に関しては未だ不明な点が多いと
考えられる。今回我々は 10 年目以降の晩期再発症例について臨床病理学的
特徴を検討した。方法:当施設で 1963 年から 2003 年までの手術症例のうち
局所再発もしくは遠隔再発を認めた 1238 症例について後ろ向きに検討した。
Disease free interval(以下 DFI)が 10 年以上の症例 80 例を晩期再発群とし、
DFI が 5 年から 10 年の症例 180 例を中期再発群、DFI5 年未満の症例を早期再
発群とし比較検討した。結果:晩期再発群では早期再発および中期再発群と
比較してホルモン陽性、腫瘍径 5 cm以内、核グレードが 1 もしくは2、リン
パ管侵襲が多い傾向があった。再発部位の傾向に関しては3群間で有意な差
を認めなかった。結論:ホルモン陽性、腫瘍径、核グレード、リンパ管侵襲
が晩期再発の予測因子として成りえる可能性があると考えられる。晩期再発
リスクおよび治療戦略について今後も更なる検討が必要である。
10946
11214
乳癌晩期再発症例の生物学的因子の検討
当院における晩期再発 31 症例の検討
GP-2-059-30
ポスター掲示
GP-2-059-31
北里大学医学部 外科
福岡県済生会福岡総合病院
西宮 洋史、小坂 愉賢、寺岡 冴子、菊池 真理子、南谷 菜穂子、
藁谷 美奈、榎本 拓茂、仙石 紀彦、谷野 裕一、渡邊 昌彦
田尻 和歌子、山口 博志、定永 倫明、江見 泰徳、伊東 啓行、松浦 弘
背景:乳癌は近年増加の一途をたどっており、女性の年齢調整罹患率は大腸
癌を抜いて一位となり死亡率も上昇している。また、乳癌は subtype 別によ
り、予後や治療効果が異なることがあきらかとなっており、ホルモン受容体
や HER2 蛋白発現の有無など、治療効果予測因子に基づいた治療適応の決定
が推奨されている。しかし他の癌と比較して、根治術後 5 年を超えた晩期再発
症例が多いことが知られており、晩期再発に対する診断、治療、予後予測の
議論が交わされている。今回乳癌晩期再発症例の生物学的因子について検討
した。対象と方法:1995 年 4 月から 1999 年 12 月までの間に、当院で手術を
施行した浸潤性乳癌の症例で、術前化学療法施行例、両側乳癌、重複癌を除
いた根治術後に再発を認めた 78 症例を対象とし術後 5 年以内に再発する早期
再発群と術後 5 年を超えて再発を認める晩期再発群に対し、臨床病理学的因
子および分子生物学的因子について検討した。結果:早期再発群は 61 例、晩
期再発群は 17 例(21.8%)であった。早期再発群と、晩期再発群を比較する
と晩期再発群にはホルモン受容体陽性(p < 0.0001)、HER2 陰性(p < 0.05)、
Ki-67 陰性(p < 0.01)例が多かった。Subtype 別にみると Triple negative の
症例は、再発症例 20 例中 19 例(95.0%)が早期再発群にみられた。また晩期
再発群 17 例中 15 例(88.2%)が Luminal A(ホルモン受容体:陽性、HER2:
陰性、Ki-67:陰性)の患者であり、Luminal A の再発症例 37 例中 15 例(40.5%)
が晩期再発であった。考察:乳癌根治術後に晩期再発をきたす症例は、一般
に予後が良いとされる Luminal A の患者が多く含まれた。今後晩期再発を抑
えるためのホルモン剤長期投与や、Breast Cancer Index などの遺伝子診断
ツールによる予後予測の検討が必要と考える。
11959
11378
乳癌根治手術後の再発症例における再発後生存期間の検討
DCIS 症例のリンパ節転移を認める臨床的予後因子について
GP-2-059-32
GP-2-059-33
1
ブレストピアなんば病院 乳腺外科、2 ブレストピアなんば病院 放射線科、
3
がん研 病理部
1
船ヶ山 まゆみ 1、駒木 幹正 1、前田 資雄 1、古澤 秀実 1、山口 由紀子 1、
山本 隆 1、中原 浩 2、秋山 太 3
水沢 容子 1、榎本 克久 1、長島 沙樹 1、鈴木 周平 1、原 由起子 1、
和賀 瑛子 1、堀 京子 1、飯塚 美紗都 2、前田 哲代 1、谷 真弓 2、
櫻井 健一 1、天野 定雄 1
乳癌再発症例の再発後生存期間は術後の無再発生存期間や再発後の効果的治
療の有無に大きく依存すると推定される。今回、根治手術後、再発した症例
における再発後生存期間について検討した。【対象】2004 年~ 2012 年、本
院で根治手術を施行した原発性乳癌うち両側乳癌や術前療法例等を除いた症
例から再発症例 114 例を抽出し、対象とした。【方法】再発後生存期間の予後
解析は Cox 比例ハザードモデル , Kaplan-Meier method 等を用いた。再発後
生存期間を 1 年で区切り、再発後早期死亡群とそれ以外の群に区分した。【結
果】1) 再発後生存期間に対する有意な予後因子としてリンパ節転移個数、ER
および HER2 蛋白発現の状況が選択された。術後の補助療法の内容に関して
予後解析を行ったところ、有意な因子として内分泌療法の有無が選択され
た (p=0.018)。化学療法のレジメン数や内容については有意ではなかった
(p=0.111)。2) 術後無再発生存期間と再発後生存期間との間には有意な相関
はみられなかった (p=0.091)。3) 術後 3 年以内に再発した群とそれ以降に再
発したものについて、判別分析を行ったところ、有意な因子として選択され
たものは T 因子でやや有意な傾向 (p=0.053) がみられたが、他にはなかった。
4) 再発後早期死亡群とそれ以外のものについて、判別分析を行ったところ、
有意な因子としてリンパ節転移個数、ER および HER2 蛋白発現の状況のほか
にリンパ管侵襲の有無が選択された。【まとめ】再発後生存期間は根治手術時
のリンパ節転移状況と癌巣の ER および HER2 蛋白発現の状況に影響される。
すなわち、再発後生存期間は内分泌療法や分子標的治療の治療効果が期待で
きるか否かにかかっていると言える。
413
日本大学医学部 乳腺内分泌外科、2 日本大学 駿河台病院
( はじめに ) 近年乳癌検診の普及に伴い非浸潤性乳管癌(DCIS)と診断される
症例が増加し、早期発見・早期治療が施行されている。また、DCIS は原則、
早期乳癌でありリンパ節転移は認めないと言われている。しかしながら、実
際には、リンパ節転移を認める症例も報告されている。そこで、われわれは、
生検で DCIS であった症例の臨床的検証を行い、報告する。( 対象および方法 )
最近 2 年間で針生検 ( マンモトーム生検を含む ) で DCIS と診断され、手術を
施行した 68 症例を対象とし各因子で比較検討した。( 結果 ) 平均年齢 58 歳。
自覚症状を認めた症例 18 例 (23.5%)。画像診断で石灰化病変を伴った症例
34 例 (50%)。主占拠部位として診断できたものは A area 18 例、B area 5
例であった。術式は Bp 43 症例、Bt 25 症例、SN 64 症例 ( 陽性 2 例 )、Ax 4
症例。最終病理診断で浸潤癌を認めたものは 22 症例 (32.4%) で、リンパ節
転移を認めたものは 2 症例 (2.9% ) であった。拡がり範囲の平均は DCIS では
2.37cm、IDC: では 4.17cm であった。ly(+)、v(+) を認める症例はなかった。
sub type では Luminal A 43 例、
Luminal B 10 例、
TN 1 例、
HER2 14 例であっ
た。最終病理診断で DCIS と診断され、リンパ節転移を認めた症例は、Bp を
施行した症例と Bt を施行した症例であり、Bt を施行した症例でも拡がり範囲
は広範囲ではなかった。( まとめ ) 生検で DCIS と診断されても、最終病理診
断では、浸潤癌を認める症例が多く、その多くは、病変の拡がりも広範囲であっ
た。一方で、DCIS と診断され、リンパ節転移を認めた症例は、拡がり範囲も
平均以下であったことから、病変部位の skip があるのではないかと考えられ
た。その中でも明らかな浸潤部を認めずリンパ節転移を来した症例を経験し
たので、合わせて報告する。
一般セッション(ポスター掲示)
【背景と目的】乳癌は他の固形癌と比べて、術後 5 年以上経過して再発する晩
期再発がしばしばみられ、とりわけ ER 陽性に多いとされている。今回、我々
は当院における晩期再発症例の特徴の検討を行った。【対象】1997 年 1 月~
2006 年 12 月まで、当科にて手術を施行した 645 症例のうち晩期再発 31 症
例を対象とした。【方法】臨床病理学的因子、サブタイプ、adjuvant 別に比較
検討を行い、また転移臓器の特徴について比較した。【結果】晩期再発症例は
5 ~ 7 年:17 例、7 ~ 10 年:13 例、10 年以上:1 例であり、サブタイプの
内訳は、Liminal A:64%(20/31)、Luminal B:25%(8/31)、HER2:5%
(1/31)、Triple negative:6%(2/31)であった。病理組織診断の内訳は硬
癌:66.6%、浸潤性小葉癌:13.3%、乳頭腺管癌:10%、充実腺管癌:0.3%、
DCIS:0.3%、粘液癌:0.3% であった。術式では乳房切除 vs 部分切除は
19 例 vs12 例、n(-)vs n(+)では 20 例 vs 11 例であり、n 陰性で晩期再発
した症例の特徴は病理組織診断で ly 陽性 52%(11/20 例)であった。ER(+)
vs ER(-)は 27 例 vs 4 例、HER2(+)vs HER2(-)は 4 例 vs 27 例であった。
Adjuvant では、放射線療法(乳房照射)
:+ vs -では 10 例 vs21 例、化学療法:
+ vs -は 5 例 vs26 例であった。転移臓器の内訳は骨:29.7%(11/31)、肺:
18.9%(7/31)、局所:13.5%(5/31)、肝:10.8%(4/31)、鎖骨上リンパ節:
10.8%(4/31)、対側乳房:8.1%(3/31)、皮膚、脳、腹膜播種はそれぞれ 2.7%
(1/31)であり、術後 5 ~ 7 年、7 ~ 10 年、10 年以上のいずれの時期におい
ても骨が最多であった。【結語】晩期における転移臓器は骨>肺>局所>肝の
順で多かった。当院の晩期再発症例は ER 陽性が圧倒的に多く(89%)、ER 陰
性症例は術後 8 年目以降の再発は認めなかった。ER 陽性のリスクが高いと考
えられる症例と、リスクの低いと考えられる ER 陰性症例では術後の経過観察
期間において両者に違いを持たせてもいいかもしれないと考えられた。また
晩期再発のリスクが高いと考えられる Luminal タイプ症例においては、晩期
再発の予防の方法の一つとしてホルモン療法の延長や化学療法の併用も検討
する余地があると考えられた。
11162
11046
当院における DCIS 症例の予後に関する検討
非浸潤性乳管癌の治療成績と局所再発例の検討
GP-2-059-34
ポスター掲示
GP-2-059-35
名古屋大学医学部附属病院 乳腺内分泌外科
大阪ブレストクリニック
武内 大、都島 由希子、中西 賢一、林 裕倫、角田 伸行、菊森 豊根
小池 健太、藤田 倫子、住吉 一浩、井口 千景、南 マリサ、山本 仁、
芝 英一
【はじめに】検診精査の技術の向上により非浸潤癌 (Ductal carcinoma in situ:
DCIS) の診断数は増加傾向にあり、全乳癌の 15 ~ 20%を占めるようになっ
ている。DCIS の予後は良い反面、術後の補助療法を含めた治療方針は課題
となっており、治療方針による予後が今後重要となる。【目的】当院における
DCIS 症例の予後を検討することで適切な治療方針を検討する。【方法】当院で
初回手術を実施し DCIS と診断された症例の予後を検討した ( 手術期間 1995
年 4 月から 2008 年 12 月まで、観察期間の中央値 5.8 年 )。【結果】術後、合併
症により死亡した 1 例を除く 112 症例を検討。全摘症例は 51 症例、温存症例
は 61 症例であった。温存症例において 6 例 (10% ) で同側乳房内再発をきた
しており、DCIS 再発は 4 例、浸潤癌再発は 2 例であった。断端陽性は 6 例で
認めたが、局所再発とは無関係だった。乳房内再発初例はいずれも術後残存
乳房への放射線照射は未実施だった。再発の発見方法は、経過観察の MMG で
石灰化の増加から発見された症例が 3 例だった。異時性対側乳癌の発生をき
たした症例は全症例のうち 5 例 (4%) あり、DCIS は 3 例、浸潤癌は 2 例だっ
た。発見方法は腫瘤自覚 2 例、マンモグラフィで石灰化出現 2 例、超音波検査
での腫瘤指摘 1 例であった。遠隔転移をきたした症例は 1 例 (0.8%) あり、術
後 10 年目での再発だった。いずれの症例も現在生存している。郭清を行った
症例は 15 例、郭清を行わなかった症例は 97 例だった ( センチネルリンパ節生
検実施症例は (57 例 )。腋窩リンパ節への再発を起こした症例はなかった。
【考
察】温存症例の非照射症例で同側乳房内再発が多く、温存術後の残存乳房照射
は DCIS においても必要であり、ガイドラインに遵守した診療を行うことが肝
要である。異時性対側乳癌については術後フォロー中の検査で発見される症
例があり、厳重な経過観察が必要と考えられた。
非浸潤性乳管癌の治療の目標は根治であるが、局所再発をきたす症例も稀に
散見する。今回われわれは当クリニックで手術施行した非浸潤性乳管癌の治
療成績と局所再発例での検討を行ったので報告する。症例は 2006.5 月から
2008.12 月までに手術施行した 128 例で、追跡期間は 62 か月(32-82 月)。
術式は乳房温存術 88 例、乳房切除術 13 例、乳頭乳輪皮膚温存乳腺全摘術 27
例で、術後放射線照射を 69 例(53.9%)、ホルモン療法を 62 例(48.4%)に行っ
た。6例に局所(乳房内)再発きたし、全体の 5 年局所無再発生存率は 97%
であった。5mm 以上切除断端が確保できた 76 例の 5 年無再発生存率は 99%
であったのに対し、5mm 未満の切除断端であった 53 例は 94% であった(p
value 0.026)。また Her2 タンパク発現を免疫染色上癌細胞 10% 以上、弱陽
性以上で強弱を評価すると、Her2 タンパク発現が弱かった 73 症例の 5 年無再
発生存率は 100% であったのに対し、Her タンパク発現が強かった 56 例では
93% であった(p value 0.0087)。また今回局所再発来した 6 例全てが切除断
端 5mm 未満、Her2 タンパク発現が強という結果であった。切除断端以外に
も Her2 タンパク発現強弱が非浸潤性乳管癌の局所再発の危険因子になりうる
可能性が示唆された。
一般セッション(ポスター掲示)
10969
11617
当院における再発乳癌の検討
乳癌原発巣と転移・再発巣のバイオマーカー変化とその臨床的
意義
GP-2-059-36
GP-2-059-37
特別医療法人博愛会相良病院
長崎大学大学院 移植・消化器外科
松山 義人、雷 哲明、大井 恭代、相良 吉昭、相良 安昭、馬場 信一、
松方 絢美、四元 大輔、寺岡 恵、金光 秀一、川野 純子、相良 吉厚
当院にて経験した再発乳癌症例について検討した。【対象と方法】2009 年 1 月
~ 2012 年 11 月までに初再発が認められた 191 例。年齢:中央値 52 歳(25
~ 100)。再発は、理学所見、胸部・腹部CT、骨シンチ、腫瘍マーカー(CEA、
CA15-3)、必要時 PET を用いて診断した。Disease free interval(DFI)、初再
発部位、リンパ節転移、ホルモンレセプター(HR)、subtype、Ki67、再発
後治療、再発後生存率について検討した。【結果】DFI 中央値 40.4 カ月、(3 ~
308 カ月)。初再発部位は複数臓器にわたる再発 25.8%(51 例)、骨:17.8%(34
例)、局所リンパ節:9.4%(18 例)、肺:8.3%(16 例)、局所再発(胸壁、
残存乳房)
:8.3%(16 例)、肝:7.8%(15 例)、遠隔リンパ節:6.8(13 例)、
胸膜:6.2%(12 例)、脳:4.7%(9 例)であった。DFI は、複数臓器にわた
る再発、局所、皮膚転移、脳転移が短かった。リンパ節転移は n4 個以上(P =
0.001)、HR 陰性症例(P = 0.003)、subtype 別では Triple negative(TN)症
例(P < 0.001)、HER-2type 症 例(P < 0.001)、Ki67 が 20 % 以 上 の 症 例(P
< 0.001)の DFI が有意に短かった。再発後生存率は、DFI24 ヵ月未満の症例
(P < 0.0001)、複数臓器にわたる再発症例(P < 0.02)、TN 症例(P < 0.0001)、
Ki67 が 20%以上の症例(P < 0.001)で有意に低かった。再発後の治療とし
て、切除可能な症例には、再発巣切除後放射線治療、薬物療法が施行された。
HR 陽性例はホルモン療法、HER-2 陽性例は抗 HER-2 療法、TN 症例は抗癌剤、
骨転移にはゾレドロン酸、デノスマブが原則として用いられた。抗 HER-2 療
法(P = 0.004)を施行された症例の再発後生存率は TN 症例に比べて有意に高
かった。【まとめ】TN 症例、Ki67 が 20%以上の症例は、DFI が短く、再発後
生存率も低くかった。HER-2 陽性例の DFI は短かったが、そのほとんどに抗
HER-2 療法が施行されており、再発後生存率は高かった。【結語】乳癌術後再
発症例の完治は容易ではないが、再発例に対する的確な治療が選択されるこ
とで予後の改善が期待された。
南 恵樹、山之内 孝彰、久芳 さやか、川上 総子、崎村 千香、山下 万平、
林田 直美、金高 賢悟、江口 晋
【緒言】乳癌の治療方針決定には ER、PgR、HER2 が重要であるが、原発巣と
転移・再発巣でその発現が変化することがある。変化したバイオマーカー発
現に応じた治療により予後が改善するかは不明である。【目的】原発巣と転移・
再発巣のバイオマーカーを比較検討し、さらに予後との関連について検討し
た。【対象】2007 年 8 月から 2013 年 12 月までに生検または手術により再発巣
から標本を採取した 13 例。ER、PgR、HER2 を IHC 法で判定し、ER、PgR は
1% 以上を陽性、HER2 は 3+ で陽性とした。HER2 は 2+ の場合は FISH 法で
遺伝子増幅を認めた場合を陽性とした。バイオマーカーに変化がないものを
一致群、変化したものを不一致群とした。【結果】転移・再発巣は、腋窩リン
パ節 4 例、局所再発 3 例、卵巣 2 例、肺 1 例、肝 1 例、脳 1 例、鎖骨上リンパ
節 1 例。観察期間の中央値は 81 ヶ月。不一致群は 5 例(38%)。ER の一致率
は 70%で、陽転率は 15%、陰転率は 15%。PgR の一致率は 70% で、陽転率
0%、陰転率 30%。HER2 の一致率は 92% で、陽転率 8%、陰転率 0%。無
病生存期間(DFI)は一致群 51 ヶ月、不一致群 23.5 カ月。5 年全生存率は一致
群 100%、不一致群 38%(p < 0.05)。ER 陰転例、PgR 陰転例、HER2 陽転例
は予後が悪くなる傾向があった。不一致群で 3 例(23%)に治療方針が変更さ
れていた。ER 不一致後のホルモン療法継続期間は、陽転 16 ヶ月、陰転 2 ヶ月。
PgR 不一致はすべて陰転で、ホルモン療法継続期間中央値は 3 ヶ月。HER2 陽
転 で の 抗 HER2 療
法継続期間は 8 ヶ
月。【結語】原発巣
と転移・再発巣の
バイオマーカーの
不一致はかなりの
頻度で存在し、予
後 が 不 良 で あ る。
不一致例の中に
は、新たな治療法
の選択により病勢
コントロールが得
られる症例が存在
する。
414
ポスター掲示
11133
11783
Ki-67 の標準化と PgR の導入による効率的な Oncotype Dx の
使用について
Luminal タイプ乳癌症例における連続変数としての Ki-67 値の
意義
GP-2-060-01
1
3
GP-2-060-02
東京西徳洲会病院 乳腺腫瘍センター、2 東京西徳洲会病院 病理部、
井上レディースクリニック、4 瀬戸病院
1
3
熊本市民病院 外科、2 熊本市民病院 乳腺内分泌外科、
熊本市民病院 臨床病理科
田嶋 ルミ子 1、藤末 真実子 2、中野 正啓 2、西山 康之 2、大佐古 智文 2、
豊住 康夫 3、有馬 信之 3、西村 令喜 2
【背景】ER 陽性 HER2 陰性乳癌に対する術後補助化学療法の要否決定に Ki-67
がしばしば用いられるが、測定方法の標準化やカットオフ値の設定などいく
つかの問題が指摘される。そこで、予後及び化学療法の効果予測因子として
Oncotype Dx が期待されるが、本邦では未だ保険未収載のため Ki67 値を参
考に限定的な利用が行われている。また、St. Gallen のコンセンサス会議で
は、術後補助療法の決定に際して Ki67 値に PgR 値が加えられた。今回我々は、
その効率的な利用を企図して、Ki67 の標準的測定方法及び PgR 値の導入が、
Oncotype Dx 適応症例のより効率的使用に資するか否かを検討した。【方法】
2011 年 12 月~ 13 年 12 月の間、ER 陽性 HER2 陰性の浸潤性乳管癌に対して
Oncotype Dx を用いた補助化学療法の要否決定を行った症例を対象とした。
尚、Oncotype Dx は原則として患者希望によりを行ったが、15%前後の Ki67
値や診断時の針生検による Ki67 との差異が強く生じたある場合は積極的に
Oncotype Dx に供することとしている。Oncotype Dx を用いた場合、その
RS (recurrence score) が 18 以上の症例においてのみ、化学療法追加の要否
決定を個々に対応しているため、Ki67 の標準化及び PgR の導入により効率的
に RS ≧ 18 の症例が抽出し得るか否かを検討した。そのために、PgR < 20%
と PgR ≧ 20% に最初に分類し、PgR ≧ 20% の群においては Ki67 の再測定
(カットオフ値 14%)を行い、RS ≧ 18 抽出頻度の変化を検討した。【結果】対
象は 28 例(閉経前 13 例、閉経後 15 例)、閉経後の 3 例はリンパ節転移陽性で
あった。そのうち 12 例 (46.2%) が RS ≧ 18 であり、3 例 (11.5%) にのみ化
学療法が施行されていた。PgR < 20% では 10 例中 9 例 (90.0%) が RS ≧ 18
であり有意に RS ≧ 18 抽出頻度の向上を認めた(p < 0.001)。PgR ≧ 20% に
おいては、Ki67 > 14% の 12 例中 3 例 (25.0%) にのみ RS ≧ 18 を認めたが、
Ki67 の標準的測定では Ki67 > 14% の 7 例中 3 例 (42.9%) が RS ≧ 18 であり
RS ≧ 18 抽出頻度が向上する傾向が認められた(p=0.42)。【考察】今回の検
討では、PgR < 20% と標準的 Ki67 測定により RS ≧ 18 抽出頻度がいずれも
改善しており、Ki67 の測定標準化と PgR 値の導入により Oncotype Dx 適応
症例のより効率的な選択が可能であることが示唆された。
はじめに:ER 陽性乳癌は増殖能の低い Luminal A、高い Luminal B(HER2-)
及び HER2 陽性の Luminal HER2+ タイプに分類される。このうち Luminal
A と B の区別に用いる因子として Ki-67 値や PgR 発現等が提言されている
が、Ki-67 の cut-off 値についてはまだ一定の見解は示されていない。今回、
Ki-67 値を連続変数として捉え、臨床病理学的因子および予後との関連につ
いて検討を行った。対象および方法:対象症例は 1997 年 11 月から 2013 年
8 月までに、当院にて手術を施行した luminal 症例のうち、Stage IV 症例
及び luminalHER2+ 症例を除外した 2562 例である。検討項目は ER、PgR、
HER2、p53 発現は免疫染色にて検討し、ER/PgR は連続変数(%)での検討お
よび陽陰性の判定は 1% を用いた。なお、Ki-67 値は hot spot を含んだ領域
で MIB-1 抗体を用い、500 個以上の癌細胞のカウントを行い陽性細胞の割合
を算出した。Ki-67 値については連続変数での検討とともに 5%間隔で症例を
分け、術後の累積生存率について予後因子としての有用性を単変量及び多変
量解析にて行った。観察期間の中央値は 55 ヶ月であり、再発例において手術
日から再発確認日までの日数を DFI(disease-free interval) として検討に用い
た。結果:年齢、腫瘍径の中央値は 56 歳、1.6cm で、閉経後:1529 例であっ
た。Ki-67 の平均値は 21 ± 15%、中央値は 18%であった。ER および PgR 発現%
と Ki-67 値 (%) はともに逆相関関係が見られ、高 Ki-67 例においては ER/PgR
発現は低値となっていた。さらに Ki-67 値と DFI(日数)の検討においても逆相
関の関連性が認められ、高 Ki-67 例において再発までの期間は有意に短く、低
値例では長期経過の後に再発が見られていた。術後累積生存率に関わる因子
の検討を行うと、多変量解析にて Ki-67 値(連続変数)は腫瘍径、リンパ節転
移の有無とともに有意の因子であった。そこで、Ki-67 値を 5% 間隔で分けて
各々において多変量解析を行った。Ki-67 値:20%以下群ではいずれも有意
差はなく、20%から有意差が出現し、50%まで連続的に Hazard ration(HR)
が高値となり以降低下していき、有意性は消失していった。これらのことから、
Luminal タイプ乳癌において予後の相違がまず見られるのは Ki-67:20% 以上
か以下であった。まとめ:Luminal タイプ乳癌において Ki-67 値は有意の予
後因子であり、ER/PgR 発現と逆の相関が見られた。連続変数としての意義も
あるが、cut-off ポイントとして 20% は一つの候補と考えられた。
10597
11668
当院における術後療法決定に対する Oncotype DX の意義
Oncotype DX 再発スコアと臨床病理学的因子の比較による術
後化学療法適応基準に関する探索的研究
GP-2-060-03
GP-2-060-04
市立秋田総合病院 乳腺・内分泌外科
1
片寄 喜久、齊藤 絵梨子、伊藤 誠司
3
【要旨】Oncotype DX(DX)の Recurrence Score(RS) は、ER 陽性、HER2 陰
性乳癌の予後予測と化学療法の効果予測に有用とされている。現在まで 5 例の
患者に DX を使用し、術後療法方針の決定に有用であったので報告する。症例
の平均年齢は 52 歳 (34 ~ 63)、全例術後療法に化学療法を追加するかどうか
既存の結果からは断定しにくい症例であったため、DX を行い検討した。RS
は 6 ~ 46 で、low risk(LR) 1 例、intermediate risk(IR) 1 例、high
risk(HR) 3 例、 全 例 Luminal B Her2( - )(LBH(-)) で あ っ た。HR の 3 例 は
FEC とタキサンによる抗癌剤追加を納得され、治療方針決定に非常に有効で
あった。IR も DX の結果に当初迷いはあったが、化学療法を追加しないこと
を選択した。グラフの症例 3 は免疫染色 (IHC) で Ki-67 index が 48%であっ
たため、年齢も考慮し DX を勧め、結果的に RS 6 の LR であったため、ホル
モン療法のみで経過観察している。LBH(-) は抗癌剤の追加投与がどの程度有
効であるか、既存の評価方法では決定に悩むことが多く、今までは経験的な
方法が優先されていたと思われる。DX は組織学グレード、PgR レベル、Ki67 index との相関する事が知られており、IHC で PgR 陽性でも、DX では陰
性が 3 例認め乖離があることから、今後 PgR の発現の検討も必要と思われた。
DX は高価な検査であり、患者さんは当初 DX の説明に戸惑い検査施行に逡巡
する方がほとんどであったが、術後化学療法を追加するかどうかの決定には
非常に有効であり、最終的には全員納得されていた。適切な症例を選択する
ことでそれなりの対価はあると考えられる。今後 IR の評価なども含めて長期
的な更なる検討が必要と思われた。
横浜労災病院 乳腺外科、2 横浜市立大学 消化器・腫瘍外科、
横浜労災病院 病理診断科、4 東京大学医学部附属病院 病理診断科
千島 隆司 1,2、山本 晋也 1、足立 祥子 1、木村 万里子 2、菅江 貞亨 2、
長谷川 直樹 3、角田 幸雄 3、佐々木 毅 4、石川 孝 2、遠藤 格 2
【背景】Luminal type 乳癌の予後予測因子として、
21 遺伝子解析診断 (Oncotype
DX) の再発スコア (RS) があり、一部の専門施設では術後化学療法を追加す
るための指標として用いられている。
【目的】我々は従来用いられている臨床
病理学的因子と RS を比較することで、Oncotype DX が利用できない環境に
おける術後化学療法適応基準に関して探索的研究を行った。
【方法】2009 年 1
月から 2013 年 12 月までに Oncotype DX によって予後予測を行った Luminal
type 乳癌 40 例のうち、検体不足もしくは非浸潤癌のため検体不適となった 3
例を除く 37 例について、RS スコアと臨床病理学的因子について比較検討し
た。ER、PgR の評価は陽性細胞発現率を用い、Ki67 Labeling Index (LI) につ
いては、自動計測器を用いて Hot Spot 測定値 (HS) と Average 測定値 (AV) を
算出して評価した。RS と各臨床病理学的因子との相関係数は Spearman rank
correlation coefficients を用いて算出した。さらに、有意な相関を示した臨床
病理学的因子に対しては、RS = 25 を化学療法適応の基準値と想定し、ROC
曲線を作成して cutoff 値を設定した。統計学的処理は IBM SPSS Statistics 20
を用いて行った。
【結果】各臨床病理学的因子の中央値は、患者年齢 ; 56 (2972) 歳、腫瘍径 ; 20 (8-60)mm、ER 陽性率 ; 94 (54-98)%、PgR 陽性率 ; 84
(0.5-98) %、Ki67LI-HS 17.1 (5.7-89.4)%、Ki67LI-AV 13.2 (4.9-86.1)%
であった。また、12 例 (32%) でリンパ節転移が陽性であった。RS との相関
係 数 は PgR 陽 性 率 ; -0.556 (p < 0.001)、Ki67LI (AV); 0.268 (p = 0.109)、
Ki67LI (HS); 0.218 (p = 0.194)、 リ ン パ 節 転 移 陽 性 ; 0.178 (p = 0.291)、
ER 陽 性 率 ; -0.158 (p = 0.352)、 核 異 型 度 ; -0.035 (p = 0.836)、 腫 瘍 径 ;
-0.271 (p = 0.104) であり、PgR 陽性率で RS と有意な相関関係を認めていた。
RS = 25 を基準値とした場合、PgR 陽率が示す ROC 曲線は AUC = 0.794 (p
= 0.024)、cutoff 値は 40% ( 感度 73% , 特異度 84% ) であった。cutoff 値を
40%とした場合に偽陰性となったのは、閉経前でリンパ節転移が陽性 (1 個 ) か
つ ER 発現率が低値 (54% ) の 1 例のみであった。
【結論】Oncotype DX が利用
できない環境では、PgR 発現率が 40%以下の症例に対して術後化学療法の追加
を考慮する必要がある。
415
一般セッション(ポスター掲示)
水野 嘉朗 1、渕上 ひろみ 1、竹田 奈保子 1,3、山田 純一 2、阿部 裕明 2、
井上 裕子 3、瀬戸 裕 4、佐藤 一彦 1
10053
11256
Van nuys 分類を用いた DCIS の乳房温存術の治療成績および
照射省略についての検討
乳癌患者における脳転移予測因子の検討
GP-2-060-05
1
ポスター掲示
GP-2-060-06
1
大阪市立総合医療センター 乳腺外科、
3
大阪市立総合医療センター 外科、
大阪市立総合医療センター 臨床腫瘍科、
4
大阪市立総合医療センター 病理部
2
たけべ乳腺外科クリニック、2 高松平和病院 病理科
新井 貴士 1、武部 晃司 1、安毛 直美 1、松本 昌子 1、綾野 はるな 1、
佐藤 明 2
【目的】DCIS の温存術後は原則、放射線治療 (RT) を施行すべきとされ、省略
できるサブグループについての検証もされているが、明確な因子は確定され
ていない。今回、当院にて温存手術を施行した DCIS に対し、臨床病理学的因
子および Van Nuys 分類 (VN) を用いて、予後および RT の省略の可能性につ
いてレトロスペクティブに検討した。【対象】1997 年 6 月から 2009 年 12 月
に当院で温存術を施行した DCIS205 例。手術時年齢中央値 51(32-78)歳。
観察期間中央値 72(11-190)ヶ月。腫瘍径 10mm 以下 60、11-20mm 43、
21-50mm 59、51mm 以上 43 例。切除断端 1mm 未満 16、1-5mm 36、
6mm 以上 153 例。VN1: 158、VN2: 20、VN3: 27 例。VN3 は有意に腫瘍
径が大きく、切除断端陽性率が高い。放射線治療は 100 例 (49%) に施行され
ており、ほとんどの症例にホルモン療法が施行されている。【結果】局所再発
11 例(DCIS 8, 浸潤癌 3)。対側乳癌 8 例(DCIS 4 , 浸潤癌 4)。VN3 の 5 年
局所再発率は 19% と他に比べ有意に高かった。また、VN1+VN2 の 5 年局所
再発率は 1.9% であり、RT 施行群 79(44%) と非照射群 99(56%) を比較した
ところ両群に有意差はなかった。背景因子のバイアスとして非照射群は有意
に高齢者が多く、腫瘍径が小さかった。多変量解析では VN 分類のみが独立し
た予後因子であった。【考察】今回の検討では VN1 および VN2 の局所再発率
は VN3 より有意に低く、術後放射線治療の有無でも差は認められなかった。
DCIS もサブグループにより予後が異なり個別化治療が求められる。今後ます
ます DCIS が数多く発見されることが予測され、特に悪性度の低い DCIS に対
する放射線治療を省略するメリットは高いと考える。さらに症例を増やし長
期に検証する価値があると考えられる。
梶野 智加 1、池田 克実 1、出口 惣大 2、後藤 航 2、日月 亜紀子 1、
徳永 伸也 3、福島 裕子 4、井上 健 4、西口 幸雄 2、小川 佳成 1
【背景】近年の薬物療法の進歩にも関わらず、脳転移に対する治療は十分な効
果が得られていない。脳転移再発を早期に発見し、加療を開始すれば、症状
が発現してから治療を開始する場合と比較して、再発後の QOL は良好に保た
れる可能性が高い。しかし、乳癌症例前全例に定期的に脳 MRI を行うことは
困難であり、術後 follow を効果的に行うためには脳転移高リスク症例の選択
が必要となる。一般に得られる臨床病理学的因子から脳転移予測が可能かど
うかを検討した。【対象と方法】2002 年 -2012 年に当科で手術を施行した乳
癌症例 1341 例の中で,脳転移を認めた 24 症例を対象とした。24 例中初再発
部位が脳であった症例は 8 例であった。脳転移を認めた 24 例の背景・病理組
織診断・subtype・予後について検討した。【結果】24 例の乳癌初発時の年齢
中央値は 55 歳(28-76 歳)。病期は 1 期 4 例、2 期 10 例、3 期 8 例、4 期 2 例。
所属リンパ節転移は、pN0 7 例、pN1 8 例、pN2 4 例、pN3 5 例。組織型
は、乳頭腺管癌 6 例、硬癌 11 例、充実腺管癌 6 例、その他 1 例。ER 陽性率
は 46%(11/24)、PR 陽性率は 21% (5/24)、Her 2 陽性率は 50%(12/24)。
Subtype 別に見ると、luminal type 6 例、luminal HER2 type 5 例、HER2
type 7 例、Triple Negative type 5 例、不明 1 例であった。術前後に薬物療
法を受けなかった症例はなく、再発までの中央値は 24 カ月(3-53 ヶ月)であっ
た。【結語】乳癌脳転移再発はリンパ節転移を認めない早期例でも認められ、
再発までの期間は比較的短い。また、ER 陰性、PR 陰性、Her 2 陽性例が多い
ものの、現状で脳転移高リスク症例を選択するのは困難と思われた。
一般セッション(ポスター掲示)
10273
10174
乳癌の悪性度評価に対する造影超音波検査の有用性について
サンガレン 2013 の PgR20%が実臨牀に与える影響についての
検討
GP-2-060-07
1
GP-2-060-08
広島大学病院 乳腺外科、2 広島大学 腫瘍外科
1
舛本 法生 1、角舎 学行 1、網岡 愛 1、梶谷 桂子 1、恵美 純子 1、
重松 英郎 1、松浦 一生 1、春田 るみ 1、片岡 健 1、岡田 守人 2
3
(方法)対象は臨床病期 I - III の乳癌 56 症例(mean ± SD:58.0 ± 18.2 歳)。
HI VISION ASCENDUS(Hitachi Aloka Medical Co.)超音波診断装置を用い
てソナゾイド R を静注し、腫瘍へ流入するソナゾイド R の造影効果の強度を
測定した。腫瘍内血流の parameter として Peak intensity(PI)= maximum
intensity - baseline intensity を数値化し、臨床病理学的因子との関係を検討
した。(結果)PI に関して、Ki67 高値群(≧ 30)は Ki67 低値群 Ki67(< 30)
より有意(p = 0.008)に高く、また ER negative 群 も ER Positive 群と比べ
有意(p = 0.03)に高かった。 PI は Ki67、および ER Status と関連性が認め
られた。 一方、腫瘍径(T1 vs T2-3, p = 0.94)、腋窩リンパ節転移(positive
vs negative, p = 0.80)、HER2 status(positive vs negative, p = 0.53)、
nuclear grade(NG1-2 vs
NG3, p = 0.22)との関連
性は認めなかった。また
PI は Ki67 と 有 意 な 相 関
(Spearman;r = 0.35,
p= 0.008)を示しており、
特 に Luminal type (r =
0.34, p = 0.04)では強い
相 関 が あ っ た が、HER2
t y p e( r = 0 . 0 6 , P =
0.85)や triple negative
type(r = - 0.48, P =
0.23)で は 相 関 を 認 め な
か っ た。( 結 論 )CEUS に
おける PI を測定すること
により乳癌の悪性度を予
測することが可能である。
特に Luminal type におい
ては、Ki67, PgR などのよ
うな治療方針決定の
surrogate marker になり
得る可能性がある。
KKR 札幌医療センター 外科、2KKR 札幌医療センター 病理、
ジェネティクラボ病理解析センター
田村 元 1、坂本 譲 1、梅本 浩平 1、片山 知也 1、桑原 博昭 1、今 裕史 1、
小池 雅彦 1、赤坂 嘉宣 1、藤澤 孝志 2、岩崎 沙理 2、鈴木 亮 2、
石川 誠 3
【目的】サンガレン 2013 にて、ルミナール A like と B like を区別する指標とし
て、PgR20% が提案された。この提案がどのように実臨牀に影響するか調べ
ることが必要と考えた。【対象と方法】2010.8 より 2013.11.25 までに手術を
した浸潤性乳癌(生検、術前薬物療法後、非浸潤癌、特殊型をのぞく)202 例。
手術標本処理の方法(腫瘍に深く1割を入れるか否か)の違いが、PgR 発現レ
ベルに与える影響を調べた。また 20% を採用することで、A like と B like の
割合がどのように変動するかを調べた。標本は、摘出後1時間以内に注射器
を用い腫瘍周囲に 10%中性緩衝ホルマリンを注入し、その後ホルマリンに浸
漬した。固定時間は72時間以内を目標とした。ER、PgR、Ki67 LI は自動測
定機を用いて測定した(ジェネティックラボ病理解析センター;札幌に外注)。
比較は t 検定、またはカイ二乗検定を用いた (Statmate)。【結果】標本に割を
入れない場合(110 例)の PgR の陰性(1%>)の割合は 28.2%、入れた場合(92
例)は 26.1%であり、差がなかった。PgR 陽性例における 20%未満の割合は、
入れない場合、入れた場合でそれぞれ 16.5%、10.3%で差がなかった。陰性
例を含む PgR の平均値はそれぞれ 45.6%と 50.0%で差がなかった。PgR のヒ
ストグラムを観察すると、20% 付近は、閉経前においては特に、閉経後にお
いても比較的低い度数を示した。ルミナール A Like、B like(ルミナール Her2
を除く)は、PgR20% を取り入れなければ、それぞれ 102 例と 47 例であった
が、PgR20% を採用すると、85 例と 64 例となり、ルミナール like における
B like の割合は、31.5%から 43%と増加した。【考察、結論】腫瘍に深く1割
を入れなければ、実際に癌が固定されるまでの時間は延長すると考えられる
が、そのことが PgR 測定値に与える影響は比較的小さいのかもしれない。ま
た PgR20% 前後の症例の分布は比較的少なく、測定方法の違いによる値の変
動が小さければ、臨牀に与える影響も小さいようである。PgR20%を採用す
ることで B like は 10 ポイント強増加し、術後抗癌剤投与症例の増加につなが
ることが予想された。
416
ポスター掲示
10385
10154
PA1 (PTIP associated protein 1) は、乳癌において独立し
た予後因子である。
トリプルネガティブ乳癌における予後予測因子としての
hERO1-L α発現の意義
GP-2-060-09
1
3
GP-2-060-10
熊本大学 乳腺・内分泌外科、2 熊本大学 乳癌分子標的治療、
University of Florida, Department of Radiation Oncology
1
2
竹下 卓志 1、指宿 睦子 1、大本 陽子 1、山本 豊 2、Zhang Zhenhuan3、
岩瀬 弘敬 1
札幌医科大学医学部 消化器・総合、乳腺・内分泌外科、
札幌医科大学医学部 第一病理
九冨 五郎 1、田村 保明 2、田中 努 2、里見 蕗乃 1、西川 紀子 1、
前田 豪樹 1、島 宏彰 1、鳥越 俊彦 2、佐藤 昇志 2、平田 公一 1
【背景】エストロゲン・プロゲステロン・HER2 レセプターの発現を欠くトリ
プルネガティブ乳癌は生物学的悪性度が高く、予後不良であり、有効な治療
標的が存在しないことから治療に難渋しているのが現状である。我々は以前
human endoplasmic reticulum oxidoreductin 1 like α (hERO1-L α ) が乳
癌において発現の亢進を認め予後予測因子になりうる可能性を報告してきた
が、今回その中でもトリプルネガティブ乳癌に関して hERO1-L αの発現の意
義を検討した。【対象】当科にて手術を行ったトリプルネガティブ乳癌症例を
検討した。【方法】全症例に関して、臨床病理学的因子を検討、さらにトリプ
ルネガティブ乳癌を EGFR, CK5/6 の発現の有無で basal type と non basal
type に分けて比較検討した。またトリプルネガティブ乳がん細胞株の MDA
MB 231 を用いた基礎実験を行った。【結果】トリプルネガティブ乳癌症例は
56 症例であり、basal type (EGFR もしくは CK5/6 のいずれかの染色を認め
る ) は 40 例 (71%)、non basal type(EGFR, CK5/6 のいずれも染色を認めな
い ) は 16 例 (29%) であった。Basal type と no basal type で臨床学的な有意
差は認めなかった。hERO1-L αの発現は強度・分布を考慮し (- ; 染色なし ),
(1+; 10% 未満の染色 ), (2+; 10%-30% 程度の染色 ), (3+; 30% 以上の染
色 ) の ご と く 分 類 し た。basal type で (-) が 5 例、(1+) が 11 例、(2+) が 10
例、(3+) が 14 例であった。一方で non basal type は (-) が 9 例、(1+) が 2 例、
(2+) が 3 例、(3+) が 0 例であった。多変量解析において hERO1-L αの発現の
有無はステージと並び独立した予後規定因子であった (p=0.041)。また MDA
MB 231 に hERO1-L αをノックダウンすると腫瘍増殖能の低下を認めた。【結
語】以上の結果よりトリプルネガティブ乳癌症例においても hERO1-L αの発現
は予後予測因子になりうる可能性が示唆された。
11884
10534
トリプルネガティブ乳癌における年代別の臨床病理学的特徴な
らびに予後の検討
当院における Triple Negative(TN) 乳癌の現状
GP-2-061-01
GP-2-061-02
1
3
東北大学医学部 腫瘍外科
中井 克也 1、アリカム イミティ 2、猪狩 史江 1、吉田 悠子 1、氷室 貴規 1,2、
堀本 義哉 1、田辺 真彦 1、荒川 敦 1、三富 弘之 3、齊藤 光江 1、
岩間 敬子 1、酒田 円佳 1、明神 真由 1、毛利 かの子 1、徳田 恵美 1、
清水 秀穂 1、三浦 佳代 1
宮下 穣、石田 孝宣、鈴木 昭彦、多田 寛、渡部 剛、大内 憲明
【目的】予後不良とされるトリプルネガティブ乳癌 (TNBC) であるが、様々な
研究がなされている一方で未だ目立った予後の改善は認められていない。こ
こでは、過去 13 年間の自験例を年代別に検討し、臨床病理学的特徴ならびに
予後の傾向を探る。【対象と方法】1998 年 1 月から 2010 年 12 月に当院で手
術を施行した初発乳癌 1232 例の中から、ER/PgR/HER2 いずれも陰性とさ
れた TNBC を抽出し、Stage 0-III の 147 例を対象に後ろ向き解析を行った。
データベースより臨床情報を収集し、第 1 期 (1998-2002 年 , 48 例 )、第 2 期
(2003-2006 年 , 48 例 )、第 3 期 (2007-2010 年 , 51 例 ) の 3 年代に分けて臨
床病理学的特徴ならびに予後の検討を行った。【結果】年齢中央値は 1 期:56
歳 , 2 期:57 歳 , 3 期:61 歳。pTis-1/pT2-4 は 1 期:24/24 例 , 2 期:28/20
例 , 3 期:27/24 例 , pN0/pN1-3 は 1 期:23/25 例 , 2 期:28/20 例 , 3 期:
29/22 例 , Stage0-I/StageII-III は 1 期:10/32 例 , 2 期:28/20 例 , 3 期:
29/22 例となり、3 年代で有意な差は認められなかったが、1 期と比較し 2,3
期では小腫瘍径・リンパ節転移陰性例が増加し Stage が低くなる傾向が認め
ら れ た。Histological grade I/II/III は 1 期:3/9/35 例 , 2 期:0/21/23 例 ,
3 期:5/15/27 であり、脈管浸潤は 1 期:15 例 , 2 期:17 例 , 3 期:15 例で
陽性であり、年代間で差は認められなかった。観察期間 ( 中央値は 1/2/3 期で
87/58/44 カ月 ) 内に、47 例に再発が認められ、33 例が死亡していた。3 年代
間で無再発生存期間に有意差は認められなかったが (log-rank test)、5 年無
再発生存率は 1 期:60% , 2 期:66%, 3 期:71% と上昇する傾向にあった。
また、3 年代間で全生存期間に差は認められなかった。【考察】年代別に TNBC
の臨床病理学的特徴ならびに予後の検討を行った。有意な差は認められなかっ
たが 10 年程前と比較し予後はやや改善傾向に認められた。これらの一因に病
期がやや早く発見されていたことが挙げられ、検診の普及が寄与している可
能性がある。また、もう一因に近年では StageI 症例にも積極的に化学療法が
行われるようになったことが挙げられる。一方で近年でも 3 割程度の症例は再
発しており、新たな治療戦略・プラチナ製剤等の導入が必要なのは言うまで
もない。今後は、再発症例での薬剤耐性マーカーの検索を加えて、新たな治
療戦略について検討する予定である。
順天堂大学医学部 乳腺科、2 順天堂大学医学部 人体病理病態学、
獨協医科大学医学部 病理学(人体分子)
(背景)TN 乳癌は Luminal 乳癌と比較して予後不良とされるが,最近の報告で
遺伝子クラスター解析により TN 乳癌も幾つかのサブタイプに分けることがで
き,heterogeneous な集団であることが報告されている.著者らの先行研究
においては,MGMT が化学療法の効果予測因子であることが示唆されたてい
た.(目的)当院における TN 乳癌の現状を確認し今後の臨床経過に役立つ情報
を整理する目的で病理組織学的検討をおこなった.
(対象・方法)当院で 2006
~ 2010 年に原発性乳癌の診断にて手術を行ったステージ I,II の TN 乳癌 73 例
を対象とした.両側乳癌,術前化学療法症例,ステージ III,IV 乳癌は除外と
した.(結果)病理組織学分類では,浸潤性乳癌が 59 例(81%),特殊型 14 例
(19%)であった.病理学的に N0 症例(59 例)の中で 28 例(47%),また N +
症例(14 例)では 9 例(64%)に術後補助化学療法が行われていた.再発まで
の中央値は 23.4 ヶ月 (5.8-32.6),再発後生存期間の中央値は 9.6 ヶ月 (1.043.1) であった.TN 乳癌の予後因子として,basal マーカー (EGFR,CK5/6)
や ,p53,BRCA1 および DNA 修復関連遺伝子(MLH1,MSH2,MGMT)について
検討をおこなったが,今回の検討では N 因子以外に有効な項目は認められな
かった.(考察)術後補助化学療法の有無で生存率に差が認められなかったが,
pN0 症例で術後補助化学療法が行われなかった場合,2/16 例に再発が認めら
れていた.(結語)TN 乳癌の中で予後と治療反応性に基づく細分化が必要と考
えられた.
417
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】PA1 (Pax transactivation domain interacting protein (PTIP)
associated protein 1) は、estrogen receptor (ER)、androgen receptor
(AR)、glucocorticoid receptor (GR) 等の核レセプタースーパーファミリー
の転写活性を調整している新たに見つかったタンパク質である。PA1 は、ER
αと結合し、ER で制御される転写やエストロゲンで賦活される G1/S 細胞周期
移行を調整している。また我々は、PA1 が GR 及び AR の転写活性を制御して
いることを報告している。(Zhang et al. 2013)乳癌においてステロイドレセ
プターは、biology の評価や治療の標的として重要であり、その機能を制御す
る PA1 は、乳癌の臨床でも重要な因子である可能性がある。今回我々は、乳
癌における PA1 の臨床的意義を検討した。【対象と方法】2001 年~ 2009 年の
間、当院で治療を行った原発乳癌 344 例を対象とし、PA1 と臨床病理学的因子、
及び予後(乳癌特異的生存率 (BCSS)、無再発生存率(RFS))について比較検
討した。【結果】Follow up 期間の中央値は 66.1 か月であった。PA1 の発現は、
閉経 (P = 0.0097)、
腫瘍径2cm以下 (P = 0.0025)、Ki67 陰性 (P = 0.02)、
AR 陽性 (P = 0.049)、ER β陽性 (P = 0.0020) と相関していた。Log-rank
検定で、PA1 陽性は、無再発生存期間 (RFS) で有意な予後良好因子であった
が (P = 0.023)、乳癌特異的生存(BCSS)では、有意差を認めなかった (P
= 0.23)。Cox 比例ハザードモデルにおいても同様の結果であった (RFS; P
= 0.03, BCSS; P = 0.20)。さらに N0 症例で検討したところ、PA1 陽性は
RFS において有意な予後良好因子であった (P = 0.025)。【結論】今回我々は、
乳癌患者において、PA1 の発現が無再発生存期間で独立した予後因子となる
ことを示した。
11033
10056
Subtype、再発部位、再発時期における乳癌の術後再発様式の
検討
演題取り下げ
GP-2-061-03
1
ポスター掲示
GP-2-061-04
北海道がんセンター 乳腺外科、2 北海道がんセンター 病理部
富岡 伸元 1、萩尾 加奈子 1、馬場 基 1、佐藤 雅子 1、山城 勝重 2、
渡邊 健一 1、高橋 将人 1
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】乳癌の生物学的 heterogeneity から、その再発パターンも様々である。
腫瘍側因子として Subtype、宿主側因子として再発部位・時期における再発
様式を検討することで、乳癌再発予後の改善に寄与することが期待される。
【対象】1997 年 1 月から 2006 年 12 月までの 10 年間に当科で手術を施行され
た乳癌症例は 1826 症例であり、そのうち再発をきたした 252 例を対象とし
た。再発症例のうち 147 例は腫瘍死している。今回、これら再発症例の臨床
病理学的特徴、初再発部位、再発後予後について、また晩期再発症例につい
ても検討した。Subtype は、ホルモンレセプターと HER2 の免疫染色の結果
から、Luminal、Luminal-HER2、HER2 enriched、Triple Negative(TNBC)
の 4 群 に 分 け た。HER2 検 査 未 施 行 例 は 陰 性 と 見 な し た。【 結 果 】Subtype
の 内 訳 は、Luminal/Luminal-HER2/HER2 enriched/TNBC/ 分 類 不 能:
46/6/11/27/10% であった。Subtype 別無再発生存期間は Luminal 群が有
意に良好で、5 年無再発生存率は 26% であったが、TNBC/Luminal-HER2/
HER2 enriched:11/0/0% であり、HER2 陽性症例に晩期再発例は認めなかっ
た。再発後生存期間は、Luminal 群が TNBC 群に対し有意に予後良好であり(p
< 0.005)、Luminal-HER2 と HER2 enriched 群が中間的予後を示した。初再
発部位の内訳は、温存乳房 / 骨 / リンパ節 / 肺 / 肝 / 脳:5/26/25/17/13/5%
であり、骨転移は Luminal 群が多く、リンパ節転移は TNBC 群が多かった (p
< 0.05)。温存乳房再発以外の他臓器への無再発生存期間は、骨 / リンパ節 /
肺 / 肝 / 脳:2.8/2.5/2.7/2.3/1.7 年(Median survival time:MST)で有意差
を認めなかった。しかし、再発後生存期間は、温存乳房再発は 10 年生存率が
80% だったが、骨 / リンパ節 / 肺 / 肝 / 脳:3.6/4.2/3.8/2.4/1.8 年(MST)で
あり、肝・脳再発で予後不良であった(Log-rank test: p < 0.01)。晩期再発
症例は 51 例あり、初再発好発臓器は骨 / リンパ節 / 肺で 26/35/18% を占め、
局所・脳・肝転移症例は少なかった。骨転移症例ではリンパ節転移陰性症例
が多く(p < 0.05)、リンパ節・肺転移症例では、Luminal 群が多かった(p <
0.01)
。【結語】骨転移症例は晩期再発に限らず Luminal 群が多く、リンパ節・
肺転移症例では、晩期再発に限ると Luminal 群が多かった。従って、再発予
後の改善を目指すためには、特に晩期再発症例に対しては、再発リスクの高
い Luminal 症例の正確な予測と、有効な治療法の開発が重要である。
11186
10863
ER 発現別にみた Luminal B 乳癌に対する術後補助療法の治療
効果
当科における HER-2(+)/HR(-) 乳癌の再発リスクと再発形式
の検討
GP-2-061-05
GP-2-061-06
1
大阪府済生会千里病院 外科
2
吉岡 節子、北條 茂幸、豊田 泰弘、野間 俊樹、松永 寛紀、真貝 竜史、
福永 浩紀、太田 博文、大東 弘明、前浦 義市
【目的】Luminal type 乳癌のうち、Luminal B 乳癌は Luminal A に比較し悪性
度が高く再発リスクも高い。ER、PR 陽性かつ Ki67 index が低い Luminal A
乳癌以外の ER 陽性 HER2 陰性乳癌と位置づけられることから、ER 発現のみ
ならず、PR 発現や悪性度もさまざまな細胞が混在すると考えられる。したがっ
て術後補助療法への感受性も一律ではないと考えられる。Luminal B 乳癌の
ホルモンレセプターの発現と術後補助療法、再発状況について後視的に検討
した。【方法】2005 年から 2013 年までに当院で乳癌手術を行ない、subtype
分類が可能であった 193 例の Luminal B 乳癌を対象とした。subtype 分類
は 2013 年 の St.Gallen international Breast Cancer Conference に 従 っ
た。ER/PR 高 発 現(ER ≧ 50% か つ PR ≧ 20%、Ki67 high ま た は 核 異 型 度
grade2,3)、ER 高 発 現 PR 低 発 現(ER ≧ 50% か つ PR < 20%)、ER/PR 低 発
現(ER < 50% かつ PR < 20%)の 3 群に分け、Ki67 index、核異型度 (NG)、
術後補助療法、再発などについて検討した。【成績】ER/PR 高発現が 96 例、
ER 高 PR 低発現が 72 例、ER/PR 低発現が 15 例であった。Ki67 index が測定
された症例は 41 例であった。各群の術後補助療法の施行状況は、化学療法が
40.6%、37.5%、60%(10 ≦ ER < 50 53.3%、1 ≦ ER < 10 70%)、内分泌
療 法 が 93.8%、91.7%、72%(10 ≦ ER < 50 93.3%、1 ≦ ER < 10 30%)
であった。各群の再発率は 12.5%、13.9%、28.0% と ER/PR 低発現に多く、
10 ≦ ER < 50 で 40%、1 ≦ ER < 10 で 10% であった。内分泌治療のみを行っ
た 10 ≦ ER < 50 の 半 数 (3/6) と 1 ≦ ER < 10 の 1 例 (1/1) が 再 発 し た. 化 学
療法を行った 10 ≦ ER < 50 は 3 例 (3/8) が再発したが、1 ≦ ER < 10 では 7
例中再発を認めなかった。【結論】ER 低発現では化学療法を省略するべきでは
ないが、10 ≦ ER < 50 は他の群と比較し、化学療法、内分泌療法とも効きに
くいことが考えられた。
3
横浜市立大学附属市民総合医療センター 乳腺甲状腺外科、
横浜市立大学附属市民総合医療センター 病理部、
横浜市立大学医学部 消化器腫瘍外科
嶋田 和博 1、石川 孝 1、喜多 久美子 1、成井 一隆 1、清水 大輔 1、
田辺 美樹子 2、佐々木 毅 2、菅江 貞亨 3、市川 靖史 3、遠藤 格 3
【背景】Trastuzumab により HER2 タイプ乳癌の予後は有意に改善され,現在
では Trastuzumab と化学療法併用による術前治療(NAC)も広まっており奏
効例は良好な予後が期待される.一方,予後不良群も存在しており,再発因
子や再発形式に関する更なる検討が求められる.【目的】HER2 タイプ乳癌の
再発リスクと再発形式について検討する.【方法】当科で 2005 年~ 2013 年に
根治手術を施行した HER2 陽性ホルモン受容体陰性乳癌の原発性浸潤性乳管
癌 (IDC)89 例を retrospective に検討した.【結果】年齢中央値は 56(34~91)
歳,観察期間中央値は 60(7~107) か月.腫瘍径平均は 3.3(0.2~11.0)cm,
組 織 型 は 通 常 型 IDC が 80 例 (89.9%), 特 殊 型 IDC が 9 例 (10.1%), リ ン
パ 節 転 移 (LN) は 陽 性 43 例 (48%), 陰 性 46 例 (52%).pStageI/IIA:42 例
(47%),IIB/III:47 例 (53%),NG1/2 が 41 例 (46%),NG3 が 45 例 (50%),
Ki-67 中央値は 32(3-82)%,p53 中央値は 25 (0-100) %,Topoisomerase
II α中央値は 23 (1-97) % であった.化学療法剤は、アンスラサイクリン,
タキサン,Trastuzumab が使用されており、NAC 施行例が 51 症例で Grade3
の pCR が 21 例 (41%),non-pCR が 30 例 (59%).術後補助化学療法の症例
は 27 例,その他 11 症例には薬物治療はされていなかった.89 症例中 15 例
(17%) に再発を認め、再発予測因子として LN 陽性 (p=0.026)、pStageIIB
以上 (p=0.014)、non-pCR(p=0.046) が抽出された.初発再発臓器は LN5 例,
肺 3 例,肝臓 3 例,脳 2 例,骨 2 例であった.pCR 症例の再発は 1 例のみであり、
術後 6 か月と早期に脳転移を生じていた.【結語】HER2 タイプ乳癌において,
pStageIIB 以上の LN 陽性症例や NAC にて pCR が得られなかった症例では比
較的高率に再発を認めるため、今後新たな HER2 阻害剤の Persutuzumab な
どを用いた新たな薬剤の追加が必要である.さらに pCR 症例は予後良好であっ
たが,術後早期の脳転移初発再発も散見され、ハイリスク症例に対する新た
な戦略も考慮すべきである.
418
ポスター掲示
10332
11609
ER 陽性・HER2 陰性乳癌における PI3K/mTOR 経路、MAPK
経路の活性化と予後の検討
再発時期による再発乳癌の検討-晩期再発乳癌の特徴-
GP-2-061-07
GP-2-061-08
1
2
兵庫医科大学 乳腺・内分泌外科
東邦大学医療センター大橋病院 外科、
東邦大学医療センター大橋病院 病理部
岡本 康 1、高橋 亜紗子 1、柴山 朋子 1、有馬 陽一 1、能戸 保光 1、
桐林 孝治 1、西牟田 浩伸 1、萩原 令彦 1、石井 智貴 1、大原関 利章 2
井上 奈都子、柳井 亜矢子、宮川 義仁、西向 有沙、榎本 敬恵、
村瀬 慶子、今村 美智子、八木 智子、高塚 雄一、三好 康雄
11363
11010
閉経後・ER 陽性乳癌晩期再発例の検討 - 早期再発例との比較 -
乳癌の病型分類別に分けた再発時期と病悩期間の検討
GP-2-061-09
GP-2-061-10
1
山梨大学医学部 第 1 外科、2 山梨大学医学部 人体病理、
社会保険山梨病院 外科、4 富士吉田市立病院 外科、
5
市川三郷町立病院 外科
新潟県立がんセンター新潟病院 乳腺外科
3
利川 千絵、佐藤 信昭、金子 耕司、神林 智寿子、本間 慶一
乳癌には 5 年以降(晩期)に再発する症例が存在する。晩期再発の多くは ER 陽
性、HER2 陰性乳癌の中でも再発リスクが低いタイプと報告されているが、再
発予測因子は明らかになっていない。【目的】ER 陽性乳癌の晩期再発例の特徴
を明らかにし治療方針の決定に役立てる。【対象・方法】1998 年 1 月~ 2007
年 12 月の原発乳癌手術 2739 例中、閉経後、ER 陽性、HER2 陰性、n0 ~ 3
個の 920 例を対象とした。両側乳癌、乳房内再発のみの症例は除外した。5
年以降の晩期再発 22 例 (2.4%) と対照として 2 年以内の再発(早期群)9 例
(1.0%)の臨床病理学的因子を比較した。検討項目:年齢、術式、腫瘍径、リ
ンパ節転移、NG、ly、Ki-67、PgR、術後治療、初発再発部位、再発後の初回
治療効果、再発後生存率である。【結果】晩期群 / 早期群の順に、年齢中央値:
63 歳 (49-74)/59 歳 (47-89)、観察期間の中央値:9.1 年 /4.8 年、Bp/Bt 18
例 /4 例、4 例 /5 例、術後治療:晩期群ではホルモン療法 11 例 (SERM/AI 剤 8
例 /3 例 )、TAM + UFT 1 例、無治療 10 例、早期群はホルモン療法 6 例 (SERM/
AI 剤 2 例 /4 例 ))、無治療 3 例。初発再発部位は、局所:3 例(創部 1 例、領
域リンパ節 2 例)/3 例(創部 1 例、領域リンパ節 2 例)。遠隔:19 例 /7 例であ
り、部位では骨転移が晩期群 12 例 ( 単発 3 例 ), 早期群 3 例(全例多発)と最多
であった。再発後1次治療は晩期群 1 例、早期群 2 例を除きホルモン療法が施
行された。晩期群は全例 AI 剤で、早期群は AI 剤 5 例、SERM 2 例であった。
1次治療で 6 ヶ月以上病勢が抑えられたのは、晩期群 10 例(45%)、早期群
6 例 (67%) で、再発後の 2 年 /5 年生存率(OS)は、晩期群 67%/18%、早期
群 67%/33%(p=0.55)と差は認めなかった。晩期群、早期群の腫瘍径(T1/
T2/T3):12 例 /9 例 /1 例、1 例 /8 例 /0 例、pN0/pN1-3:12 例 /10 例、4 例
/5 例、 核 異 型 度 I/II/III :15 例 /0 例 /7 例、3 例 /1 例 /5 例、ly0/1/2:7 例
/15 例 /0 例、1 例 /6 例 /2 例、Ki-67( ≦ 14 % /14 % < ):4 例 /18 例、1 例 /8
例、PgR pos / neg :11 例 /11 例、5 例 /4 例であった。腫瘍径、ly 以外に有
意差を認めなかった。【考察】今回の検討では無治療が両群ともに多かったが、
現在の当科補助療法の方針(pN(+)、65 歳以下、Luminal B type では化学療
法と内分泌療法)に該当する症例は、晩期群 11 例、早期群に 4 例認めた。初
期治療の介入で再発を予防し得た可能性はある。【結語】pN0-3 個、ER 陽性閉
経後乳癌の晩期再発と早期再発では、腫瘍径 ,ly が異なる可能性が示唆された。
井上 慎吾 1、大森 征人 1、井上 亜矢子 1、井上 正行 1、藤井 秀樹 1、
大石 直輝 2、中澤 匡男 2、丸山 孝教 3、小俣 秀雄 4、松田 啓 5
目的:乳癌の病型別にみた再発時期と病悩期間を予測することを目的とした。
対象と方法:術後 5 年から 10 年(中央値 8 年)経過し、臨床経過や病理学的
因子(ER、PR、HER2、NG)が明らかな 278 例を対象とした。検討期間では
まだ Ki67 は測定されていないため、NG(核異型度)を用いた。 以下のように
Luminal-NG1(L-NG 1)、Luminal-NG2、3(L-NG23)、HER2、LuminalHER2
(L-HER2)、TN 群の5病型に分類した。これらの群と再発時期、
病悩期間、
病期との関係を検討した。結果:278 例中 L-NG 1群の症例数は 138 例(50%)
で、うち 4 例(3%)が再発した。無再発期間は約 5 年で、その後 4 例全例とも
治療継続中(1-6 年)である。病期は 2 期 1 例、3 期 3 例であった。L-NG23 群
は 71 例(26%)で、うち 10 例(14%)が再発した。無再発期間は約 3 年で、そ
の後 4 例が死亡(6-25 月)し、1 例は再発後他病死した。残り 5 例は治療継続
中(15-75 月)である。死亡例の病期は 2 期 1 例、3 期 3 例で、治療継続中の病
期は 1 期 1 例、2 期 3 例、3 期1例であった。HER2 群は 21 例(8%)で、うち
4 例(19%)が再発した。無再発期間は 1 年 8 月で、3 例が死亡した(6-32 月)。
病 期 は 3 期 3 例、4 期 1 例 で あ っ た。L-HER2 群 は 16 例 (6 % ) で、 う ち 1 例
(6%)が当初から転移があり治療 7 月で死亡した。TN 群は 35 例(13%)で、8
例(23%)が再発した。無再発期間は約 1 年であった。1 例が再発後他病死し、
6 例が死亡した(2-39 月)。病期は 2 期が 6 例、3 期が 2 例であった。考察:当
科では 3 年以上前の症例の Ki67 値は測定せず、核異型度(NG)を用いて病型
分類した。以前 NG1 は Ki67 低値、NG3 は高値と相関があることを報告した。
Luminal A と考えられる L-NG 1群は予後良好群であった。一方 L-NG23 群は
再発後治療効果の有無が病期で分けられる可能性があった。トラスツズマブ
導入後 HER2 群では病期の進行例のみが再発し、病悩期間も短い傾向があっ
た。TN 群は比較的病期が良いにも関わらず、予後が極めて不良であった。結論:
Ki67 測定以前の症例では、NG を含めた病型分類と病期によってある程度の
予後が推察できる可能性があった。
419
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】ER(エストロゲン受容体 ) 陽性・HER2(ヒト上皮成長因子受容体 2 型) 【背景】ホルモン感受性乳癌に対する内分泌療法は、閉経前後とも最低 5 年が
推奨されているが、治療終了後に晩期再発を認める症例もまれではない。そ
陰性乳癌は、luminal A と luminal B に分類される。そして、増殖能の高い
のため、5 年を超えての内服期間延長の有用性や再発リスク減少の効果が
luminal B 乳癌ではエストロゲンシグナルに加え、PI3K/Akt/mTOR 経路や
報告されている。今回、晩期再発の特徴を明らかにするために、当施設に
MAPK 経路を介した増殖因子シグナルの活性化が関与していると考えられて
おいて手術を施行し、再発を確認できた症例を対象に、再発時期を分けた
いる。我々の検討では、MAPK 経路の活性化より PI3K/Akt/mTOR 経路が、
retsospective な検討を行った。【対象および方法】1990 ~ 2011 年に当院で
Ki67 の発現割合と正の相関を示すことを明らかにしている。そこで、PI3K/
手術を施行した 973 例であった。そのうち再発症例は 145 例(14.9%)で、消
Akt/mTOR 経路と MAPK 経路の活性化が、予後に与える影響を検討した。【対
息不明の 18 例を除外し、予後が判明している 127 例を対象に、再発時期を 2
象と方法】当科で手術切除された ER 陽性・HER2 陰性乳癌 107 例を対象と
年以内(A 群)、2 ~ 5 年以内(B 群)、5 年以後の晩期再発(C 群)に分けて、臨
し、非浸潤癌は除外した。免疫組織染色により、ER, PgR(プロゲステロン
床病理学的検討を行った。【結果】A 群 57 例、B 群 38 例、C 群 32 例で、手術
受容体)、HER2、Ki67 に加え、PI3K/Akt/mTOR 経路の活性化の指標として
時年齢の中央値(A 群/ B 群/ C 群)は、58 歳/ 59.5 歳/ 55 歳、無再発生
pS6( リン酸化 S6) を、また MAPK 経路の活性化の指標として pMAPK( リン酸
存期間中央値(A 群/ B 群/ C 群)は、10 ヵ月/ 37.5 ヵ月/ 82 ヵ月(60 ~
化 p44/42MAPK) の発現を免疫組織学的に検討した。pS6 は細胞質における
176 ヵ月)であった。病期は、A 群・B 群では Stage 3 の割合が多く、Stage
発現割合を、pMAPK は細胞質と核における発現割合をカウントした。Ki67 の
1(A 群/ B 群/ C 群)は、14% / 10.5% / 34.4% と C 群に多く認めた。一
カットオフ値は 15%、pS6 と pMAPK のカットオフ値は 10% とし、高発現群
方、平均リンパ節転移個数(A 群/ B 群/ C 群)は、6.8(0 ~ 34)個/ 2.9(0
と低発現群に分けて検討した。観察期間の中央値 38.6 か月で、11 例が遠隔再
~ 32)個/ 2.3(1 ~ 19)個と、A 群において転移個数を多く認めた。ホルモ
発をきたした。【結果】臨床病理学的因子との相関では、pS6 と pMAPK の発現
ン感受性(A 群/ B 群/ C 群)は、40.4% / 65.8% / 84.4% で、C 群におい
はいずれも腫瘍径、リンパ節転移、核グレードとの相関は認められなかった。
て高率に陽性を示しており、ER(+)・PR(+) の割合は、C 群> B 群> A 群、一
また、ER、PgR の発現割合とも相関しなかった。Ki67 高値群の遠隔無病生存
方、ER(+)・PR(+) は、B 群> A 群> C 群の順であった。また、HER2 測定は、
期間(DDFS)は、低値群より有意に不良であった(log-rank 検定 P=0.01)
。
全群で 56 例に実施され、陽性例は 5 例のみでほとんどが陰性であった。初再
しかし、pS6 および pMAPK の発現に関しては、いずれも DDFS と有意な相関
は認められなかった(pS6: log-rank 検定 P=0.69、pMAPK: log-rank 検定 発部位(局所・リンパ節/乳房内/遠隔臓器)は、A 群:54.4% / 3.5% /
42.1%、B 群:47.4% / 5.3% / 47.4%、C 群:25% / 40.6% / 34.4%
P=0.18)。【考察】今回の検討では、pS6 と pMAPK の発現と予後には有意な
であり、A・B 群では、局所・リンパ節>肺・胸膜>肝で、遠隔転移も多く
相関は認められなかった。pS6 経路や pMAPK 経路の活性化は ER 陽性・HER2
認めたが、C 群では、乳房内再発>局所・リンパ節>肺・胸膜と乳房内再発
陰性乳癌のバイオロジーに影響すると推測されるが、予後因子としては Ki67
の割合が高かった。再発後 50% 生存期間(A 群/ B 群/ C 群)は、17 ヵ月/
の方が優れていると考えられた。
35 ヵ月/ 87 ヵ月(p < 0.0001)と C 群で有意に生存期間が延長していた。
【結
語】晩期再発例は、再発後の長期生存が望め、また、ホルモン感受性陽性例が
多いことより、m-TOR 阻害剤などの登場で、再発後生存期間のさらなる延長
の可能性もある。さらに、より長期の治療の方向性を鑑み、今後も長期的な
再発リスクへの対応が必要と考えられた。
10229
11025
当院の乳癌再発症例検討
DYRK2 は乳癌の予後予測因子になり得るか
GP-2-061-11
ポスター掲示
GP-2-061-12
名古屋大学医学部附属病院 乳腺内分泌外科
福岡大学医学部 呼吸器・乳腺内分泌・小児外科
林 裕倫、都島 由紀子、武内 大、中西 賢一、角田 伸行、菊森 豊根
榎本 康子、吉永 康照、御鍵 寛孝、山下 眞一、岩崎 昭憲
(目的)乳癌術後再発症例の生物学的特徴による分類での検討(対象、方法)
2002 年~ 2010 年まで当院で初回手術を行った原発性乳がん 857 症例を電
子カルテ上で検索。2010 年 8 月現在で乳癌初再発が確認された 74 症例を
検討対象例として解析した。再発形式、ER 陽性群、ER 陰性群、Lumina A,
Luminal B, Luminal B-HER2,HER2,TN 別の再発を検討した。(結果)経時的
に乳癌手術症例数は増加している。観察経過期間がことなるが、手術年次別
の再発数は約 10 症例前後で推移している。乳癌初再発部位は乳房内、胸壁、
リンパ節など局所領域再発が約 40%、脳、肝臓、肺、骨などの遠隔転移再発
が約 60%であった。ER 陽性群と ER 陰性群の比較では、ER 陰性乳がんの再発
症例数は術後 1 年後にピークがあり、その後は減少し、3 年以降の再発は少な
い傾向をしめし、ER 陽性乳がんの再発症例数は術後 2-3 年にピークがあり、
その後は減少傾向であるが、術後 5 年経過後も再発は散見される。サブタイ
プ別の解析では LuminalA タイプでの再発症例は 78% が腋窩リンパ節転移症
例であった。同様に LuminaB タイプの再発症例の内 74% が腋窩リンパ節転
移症例であった。また、LuminalB-HER2 タイプ再発症例では 73% が腋窩ン
パ節転移症例であった。一方、トリプルネガティブの再発症例の 58%は腋窩
リンパ節転移陰性症例であり、HER2 タイプ再発症例の 44%は腋窩リンパ節
転移陰性症例であった。HER2 タイプ乳がんの再発症例約 80%は術後 2 年ま
でにみられた。TN タイプでは約 90%が術後 4 年までに再発を来たした。(考
察)今回の検討から TN 症例で LN 陰性において化学療法がされているにもかか
わらず、術後2-3年で再発をきたしている予後不良という結果が再確認さ
れた。さらに ER 陽性群では再発症例の多くはリンパ節転移陽性症例であった
ことは、今後の術後治療において再発リスクを示唆する重要な要因であるこ
とを再確認できた。
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】DYRK2 は p53 によるアポトーシス誘導に関するチロシンおよびセリン
スレオニンキナーゼの 1 種である。正常乳腺組織と乳癌の免疫組織染色では、
乳癌における DYRK2 の発現は有意に低下していると報告されている。DYRK2
は c-Jun や c-Myc のリン酸化を介して細胞周期制御を行うことで、腫瘍抑制
効果があると言われている。【対象・方法】2000 年 1 月から 2009 年 12 月の間
に当院にて手術を施行した原発性乳癌のうち、ステージ 1 から 2B 期の 275 症
例 ( 術前化学療法施行例は除く ) を対象とした。抗 DYRK2 抗体による免疫組
織染色にて DYRK2 の発現の有無を評価し、再発率との相関を解析した。無再
発期間は Kaplan-Meier 法にて算出し、log-rank test で検討をした。【結果】
平 均 年 齢 51 歳 (30-87)。 ス テ ー ジ 1/2A/2B:59/99/117 例。Histological
grade 1/2/3:118/102/42 例。 サ ブ タ イ プ は、ER+/HER2-:132、ER+/
HER2+:25、ER-/HER2+:15、ER-/HER2-:29、ER+/HER2 不 明:56、
ER-/HER2 不明:18 であった。DYRK2 低発現 / 高発現:190/85 例。再発症
例 は 29 例 ( 全 体 の 10.4%) で、 サ ブ タ イ プ で は、ER+/HER2-:11、ER+/
HER2+:1、ER-/HER2+:2、ER-/HER2-:5、ER+/HER2 不 明:4、ER-/
HER2 不明:3 であった。再発症例のうち DYRK2 低発現症例 26 例 (89.6%)、
高 発 現 症 例 3 例 (10.3%) で あ っ た。5 年 無 再 発 生 存 率 は DYRK2 低 発 現
86.6%、DYRK2 高発現 95.9%。10 年無再発生存率は低発現 80.8%、高発現
95.9%で、低発現
は高発現に比べて、
再発のリスクになる
傾向であることが分
か っ た。(p=0.016)
【考察・結語】DYRK
2の発現低下は再
発のリスク因子で
あると思われる。
DYRK2は予後予測
因子と成り得る可
能性が示唆された。
11571
11719
乳癌脳転移症例におけるGPA(graded prognostic assessment)
の有用性と予後因子の検討
日本人女性における BMI と予後との関係、単施設における後ろ
向き検討
GP-2-061-13
GP-2-061-14
がん・感染症センター都立駒込病院 外科
自治医科大学附属病院 乳腺科
本田 弥生、後藤 理紗、井寺 奈美、堀口 和美、北川 大、宮本 博美、
有賀 智之、山下 年成、黒井 克昌
穂積 康夫、竹原 めぐみ、櫻木 雅子、宮崎 千絵子、上徳 ひろみ、
大澤 英之、芝 聡美、相良 由佳、田中 裕美子、水沼 洋文、塩澤 幹雄
(背景、目的)乳癌脳転移は予後不良とされるが、近年は局所治療の進歩や組
織学的特徴に関連した全身治療を取り入れ徐々に予後が改善しつつある。ま
た GPA(graded prognostic assessment) により脳転移後の予後推測が可能
となってきている。GPA は乳癌脳転移においてどの程度の有用性があるの
かとともに脳転移後の予後因子の検討を行う。(対象、方法)当院で 1996 年
~ 2012 年までに乳癌脳転移と診断された症例 66 例を対象とした。Breast
cancer specific GPA を参考に 66 症例を GPA スコア化し予後の比較を検討
した。また予後因子に関しては年齢(≧ 60, < 60)、DFI( 初回治療から初再
発 ま で ≧ 24 m , < 24 m )、KPS(Karnofsky performance status ≧ 70, <
70)、頭蓋外病変の有無、脳転移数(単発、多発)、原発巣 ER、HER2 発現、
髄膜播種有無で単変量解析(Kaplan-Meier 法での比較)、多変量解析(Cox
proportional hazard model)を行い予後因子の検討を行った。(結果)GPA ス
コアは 0-1 予後不良群は 8 例、1.5-2 は 19 例、2.5-3 は 24 例、3.5-4 予後良
好群は 15 例であった。それぞれの GPA スコア群の脳転移後の生存期間の中央
値をみたところ 3 ケ月 ,8 カ月 ,10 カ月 ,40 カ月となり報告されている Breast
cancer specific GPA と相違ない結果となった。予後因子を検討したところ、
単変量解析では、KPS、HER2 発現、DFI が有意に生存期間に差があった。
( それぞれ p=0.0458, 0.0398, 0.0385, ). 髄膜播種の有無はボーダーライン
であった。 (p=0.052) 多変量解析では KPS, HER2 発現、DFI が予後因子と
なる可能性が示唆された。 (KPS: RR 2.08, 95% CI 1.08-4.07; HER2: RR
2.911, 95% CI 1.396- 6.484; DFI: RR 1.933, 95% CI 0.83-4.102)(考
察)脳転移後も KPS 良好な HER2 陽性乳癌は GPA も高く比較的良好な予後が
期待できる。GPA スコアは脳転移後の予後予測、脳転移治療方針を決定する
うえで有用性があると思われた。
【はじめに】BMI 高値は、乳癌発症のハイリスクであり、さらに乳癌の予後に
影響を与えるとされ、欧米では多くの検討がされてきた。しかし日本人では
乳癌発生及び肥満率が欧米と異なっており、日本人女性にその結果が当ては
まるかは不明であり、さらに日本人を対象にした研究は少ない。今回 BMI が
予後に及ぼす影響について自施設単施設における検討を行った。【対象と方
法】1976 年病院開院から 2008 年までに当院で手術を行った I - III 期の原発
性乳癌 2597 例中、身長・体重が明らかな 2301 例を対象とした。BMI により、
低 体 重(18.5kg/m2 未 満 )、 正 常(18.5-24.9kg/m2)、 過 体 重(25-29.9kg/
m2)、肥満(30.0kg/m2 以上)の 4 群に患者を分類し、年齢で閉経前(45 歳未
満)、閉経期(45-54 歳)、閉経後(55 歳以上)に分け、さらに ER 状況を ER 陰
性と ER 陽性または不明に分けた。BMI、無再発生存期間(DFS)、全生存期間
(OS)の相関を後ろ向きに検討した。【結果と考察】低体重群、正常群、過体重
群、肥満群はそれぞれ 114 人(5.0%)、1260 人(54.8%)、481 人(20.9%)、
128 人(5.6%)となり、欧米と比べて日本人では肥満群の発生率が低かった。
ER の有無、閉経状況と BMI との関連では、低体重群と肥満群の数が極端に少
ないため BMI を 25.0 で区切り、過体重群と低・正常体重群の 2 群に分けて検
討した。ER 陰性においては閉経前・閉経期・閉経後のいずれにおいても過体
重群と低・正常体重群の DFS、OS に差を認めなかった。ER 陽性または不明
において、閉経前で過体重群と低・正常体重群の DFS、OS に差を認めなかった。
しかし、閉経期においては OS では差を認めないものの、過体重群では DFS で
有意に悪く(p < 0.01)、閉経後においても過体重群は OS で有意に劣っていた
(p < 0.05)。今回の研究は単施設の後ろ向き検討で、様々な治療が行われた
患者集団の解析結果ではあるが、日本人女性においても、ホルモン感受性閉
経後乳癌では肥満・過体重が予後に悪影響を与える可能性が示唆された。今
後多施設での前向きコホートや臨床試験のデータを使った検討が必要である。
420
ポスター掲示
10731
11931
乳癌患者における HLA 発現頻度と予後についての検討
当院における乳房切除術後の胸壁再発と予後の検討
GP-2-061-15
1
GP-2-061-16
産業医科大学 胸部呼吸器外科 ( 第 2 外科 )、2 大平メディカルケア病院 外科
がん・感染症センター 都立駒込病院
永田 好香 1、下川 秀彦 1、宗 知子 1、吉田 泰憲 2、浦本 秀隆 1、
花桐 武志 1、田中 文啓 1
大西 舞、宮本 博美、後藤 理紗、本田 弥生、井寺 奈美、北川 大、
堀口 和美、有賀 智之、山下 年成、黒井 克昌
【目的】主要組織適合抗原は抗原を提示して T 細胞による変異細胞の排除に関
わる重要な分子である。これまでに当科で外科的治療を行った非小細胞肺癌
患者を対象に HLA class I と予後との関係について検討し報告している。また、
乳癌において HLA classI 分子の発現低下と HLA classI 分子発現低下症例にお
ける予後不良が報告されている。今回外科的治療を行った乳癌患者を対象に
HLA class I と予後との関係について検討した。【方法】2005 年 4 月~ 2010
年 3 月までに外科的治療を施行した乳癌患者 61 症例を対象とした。患者血清
より HLA selotype を同定し、各 HLA haplotype と生存期間及び DFI との関
係を検討した。有意な因子については多変量解析を行う。【結果】(1) 乳癌患
者の HLA antigen frequency は健常者との比較より HLA-A11, -B7, -B52,
-B62 において高頻度、HLA-A31,-B13,-B51 において低頻度であった。肺癌
患者の場合では、健常者との比較より HLA-A11, -B7, -B52, -B62 において
高頻度、HLA-B13,-B51 において低頻度であった。(2) 乳癌では、HLA-A2,
-A24, -B51,-B52 いずれにおいても予後との相関を認めなかった。肺癌の場
合では、stage I-III では、HLA-B37 陽性症例の OS(術後生存期間)、DFI(無
再発生存期間)において予後不良であった。その他の HLA haplotype では予
後に有意差を認めなかった。Pathological stage 別では、stage I において
OS 及び DFI は HLA-A2 陽性で予後不良であった。(3) 肺癌では多変量解析よ
り各 HLA は独立した予後因子であることが確認されたが、乳癌では有意な因
子を認めなかった。【結語】肺癌症例においては、特定の HLA haplotype が予
後因子となることが確認されたが、今回乳癌患者における DFI と OS について
検討したが、HLA haplotype が予後因子となることが確認できなかった。症
例数を増やして検討することが望まれる。
11694
11509
当院における若年性乳がんの動向~妊孕性温存のとりくみに向
けて~
乳癌における survivin mRNA の発現の検討
GP-2-061-17
1
GP-2-061-18
熊本大学医学部附属病院 乳腺内分泌外科
医療法人博愛会相良病院 乳腺科、2 医療法人博愛会相良病院 病理診断科
奥村 恭博、指宿 睦子、山本 豊、大本 陽子、村上 敬一、稲尾 瞳子、
林 光博、末田 愛子、藤原 沙織、冨口 麻衣、岩瀬 弘敬
川野 純子 1、四元 大輔 1、相良 安昭 1、松方 絢美 1、寺岡 恵 1、
金光 秀一 1、馬場 信一 1、相良 吉昭 1、松山 義人 1、雷 哲明 1、
安藤 充嶽 1、大井 恭代 2、相良 吉厚 1
【はじめに】薬物療法の進歩により治療効果が改善される今日、治療後のサ
バイバーシップにも関心が高まっている。若年性乳がん症例では治療効果
を期待して集学的治療を行うが、同時に妊孕性温存についての情報提示や
取り組みが重要である。【目的】当院における若年性乳がん症例の現状を明
らかにし、治療後の妊娠を許容する時期を検討する。【対象と方法】2002 年
4 月から 2013 年 3 月までに当院で手術を行った 5436 例のうち手術時年齢
35 歳 未 満 で あ っ た 110 例 (2%) に つ い て、Kaplan-Meier 曲 線 お よ び Logrank test を用い DFS を検討した。【結果】観察期間中央値は 49 か月(4-133)
で、110 例のうち 21 例 (19%) に再発がみられた。病理学的には非浸潤癌が
20 例 (18%)、microinvasive が 2 例 (1.8%)、 浸 潤 癌 が 88 例 (80%) で あ っ
た。浸潤癌の subtype は LuminalA type 46 例 (52%)、LuminalB type12 例
(13.6%)、Triple negative type15 例 (17%)、HER2 type8 例 (9%)、Triple
positive type7 例 (7.9%) の順に多かった。全身療法として 62 例に化学療法
が施行され、うち術前化学療法は 10 例(pCR2 例)であった。術式は全摘 54
例(Nipple-sparing9 例、再建 18 例)、部分切除 56 例であった。また、2008
年より開始した遺伝カウンセリングを 14 例が受診し、6 例が遺伝子検査を
行い 3 例で陽性の結果であった。非浸潤癌では再発はみられず、浸潤癌では
subtype による DFS に有意差はなかった。しかしながら HER2 陽性もしくは
Triple negative では再発は 3 年以内に集中し、Luminal type ではその後も再
発がみられる傾向があった。問診情報から出産歴が抽出できた 56 例のうち 20
例は出産歴があり、36 例は出産歴なし、不妊治療歴は 3 例であった。出産歴
による DFS の有意差はなく、subtype 別にみても出産歴がない群の予後は出
産歴がある群に劣らなかった。【まとめ】非浸潤癌では適切な治療後の妊娠は
許容されうると考える。浸潤癌では進行度や subtype を考慮して慎重に妊娠
時期を判断する必要がある。妊孕性温存が比較的重要な出産歴のない群への
適切な情報提供が望まれる。
421
背景:survivin は、成人の正常組織には発現されず、多くの癌細胞に発現する
アポトーシス抑制因子である。乳癌において survivin と予後予測因子として
の評価は必ずしも一定していない。そこで今回我々は real-time RT-qPCR を
使って survivin mRNA と臨床病理学的因子、予後との関係について検討した。
対象と方法:IDC と診断された 245 例と DCIS と診断された 13 例のホルマ
リン固定パラフィン埋包切片を用い、real-time RT-qPCR によって survivin
mRNA を評価した。 結果:年齢中央値は 59 歳で、観察期間中央値は 49.5 ヶ
月であった。survivin mRNA の高発現と臨床病理学的因子の間に有意差を認
めたのは、高核異型度、リンパ節転移陽性、高 stage、ER 陰性、HER2 陽性、
subtype で HR(-)/HER2(+), HR(-)/HER2(-)type、Ki-67 陽性、脈管浸潤陽
性であった。閉経の有無、腫瘍径では有意差は認めなかった。特に survivin
mRNA の発現は、臨床的 stage が進むほど高発現していた。survivin mRNA
の高発現患者は、IDC において relapse-free survival(RFS),distant relapse
free survival(DRFS), breast cancer-specific survival(BCSS) で予後不良で
あった。それぞれの因子のもつ予後に対する影響力では、単変量解析におい
て腫瘍径が大きい、リンパ節転移陽性、高核異型度、Ki-67 陽性、脈管浸潤陽性、
subtype が HR(-)/HER2(+), HR(-)/HER2(-)type、survivin mRNA 発 現 陽
性であることが有意であった。多変量解析においては、subtype、survivin
mRNA 発現が有意な独立した因子であった。そこで Subtype 別に評価した
ところ、survivin mRNA の高発現と臨床病理学的因子の間に有意差を認め
たのは、HR(+)/HER2(-)(n=185) において、高核異型度、リンパ節転移陽
性、Ki-67 陽性、脈管浸潤陽性で、HR(-)/HER2(+)(n=19) において、Ki-67
陽性であった。HR(+)/HER2(+)(n=11),HR(-)/HER2(-)(n=30) において、
survivin mRNA の高発現と臨床病理学的因子との間に有意差は認めなかった。
survivin mRNA の高発現患者は、HR(+)/HER2(-) において、DRFS で予後不
良であった。HR(+)/HER2(-) において、それぞれの因子のもつ予後に対する
影響力では、単変量、多変量解析において survivin mRNA 発現が有意な因子
であった。結論:survivin mRNA の高発現(特に HR(+)/HER2(-) において)は、
乳癌の予後悪化予測因子であった。
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】乳房切除術後の胸壁再発は初発時のステージや治療法が影響し,遠隔
転移の前触れのことが多いとされる.今回,当院における胸壁再発とその予
後について検討した.【対象】当院で 2000 年から 2012 年に乳房切除術を行っ
た 1730 例.このうち初再発部位が同側胸壁であった 25 例(1.4%)について
検討した.初診時 stageIV は除いた.【結果】治療開始時年齢は中央値 59 歳
(36-82 歳).観察期間中央値は 5.2 年(1.0-13.6 年).臨床的腫瘍径 (T 因子 )
は T1/T2/T3/T4 がそれぞれ 4/8/7/6 例,リンパ節 (N 因子 ) は N0/N1/N2/N3
が 4/18/2/1 例であった.組織型は浸潤性乳管癌が 18 例 (72%),浸潤性小葉
癌 が 1 例 (4%), 特 殊 型 が 6 例 (24%) で あ っ た.subtype は,luminal type
が 8 例(32%),luminal-HER2 が 4 例 (16%),HER2 type が 5 例 (20%),
triple negative が 8 例 (32%) であった.術前化学療法は 10 例(40%),術前
ホルモン療法は 1 例(4%)で行われた.手術は 22 例で腋窩郭清が行われ,2
例がセンチネルリンパ節生検のみ,1 例は郭清なしであった.手術時のリンパ
節転移は 0 個が 8 例 (32%),1-3 個が 6 例 (24%),4 個以上が 11 例 (44%) で
あった.術後化学療法は 13 例(52%)で行われ,胸壁照射は 7 例(28%)で行
われた.手術から胸壁再発までの期間は中央値 2.3 年(0.5-10.6 年)で,11 例
(44%)に胸壁再発と同時に遠隔転移が認められ,4 例(16%)で胸壁再発後の
経過中に遠隔転移が出現した.遠隔転移の初再発部位は,骨:5 例,肺:3 例,
癌性胸膜炎 3 例,領域外(対側腋窩・縦隔)リンパ節 3 例,対側乳房転移 1 例で
あった.胸壁再発巣の切除は 8 例(32%)で行われ,このうち遠隔転移を伴わ
ない 3 例(12%)が現在まで無再発生存中である.また,
乳癌死は 14 例(56%),
他病死は 1 例(4%)で認められた.胸壁再発から乳癌死までの生存期間中央
値は 1.5 年(0.5-4.8 年)であり,乳癌死のうち 2 例が遠隔転移を伴わずに胸
壁再発巣の増悪が死因となっていた.【考察】胸壁再発は治療開始時の腫瘍径,
リンパ節転移が高度のものに多く認められた.今回の検討での術後照射率は
28% であり,術前化学療法後で down stage が得られたため照射が行われて
いない症例も認められた.胸壁再発の予後は不良であり,遠隔転移を伴うも
のも多いため,照射の適応についてさらに検討していく必要があると考えら
れた.
ポスター掲示
11928
11801
腫瘍内浸潤 CD45RO 陽性細胞の評価と乳癌再発予後
Triple Negative 乳癌における VEGF-A 発現と Bevacizumab
使用の可能性に関する検討
GP-2-061-19
GP-2-062-01
1
群馬大学大学院 病態総合外科、2 群馬県立がんセンター 外科、
3
群馬県立がんセンター 病理
1
1
1
1
1
2
2
矢島 玲奈 、矢島 俊樹 、藤井 孝明 、桑野 博行 、柳田 康弘 、
藤澤 知巳 2、宮本 健志 2、飯島 美砂 3
ブレストピアなんば病院 病理部、
ブレストピアなんば病院 乳房腫瘍外科、3 がん研究会がん研究所 病理部
冨永 彩夏 1、古澤 秀実 1,2、田中 教子 1、小東 依里 1、外山 裕香 1、
山口 由紀子 2、山本 隆 1、秋山 太 3
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】長期に生体内に存在する免疫記憶を持ったメモリー T 細胞は、感
染免疫において不可欠だが、腫瘍免疫における役割は未だ明らかでない部分
【背景】Luminal A,B-like subtype や HER-2 enrich subtype では分子標的薬
が多い。CD45RO 陽性リンパ球は、抗原刺激を受け活性化された細胞で 一部
物療法の効果が期待できるが,Triple negative breast cancer(TNBC)の多
がメモリー細胞となることが知られている。【目的】今回我々は、乳癌におけ
くが含まれる Basal-like subtype では,予後不良にも関わらず,内分泌,抗
る腫瘍内浸潤リンパ球(TIL)での CD45RO 陽性細胞と乳癌再発予後との関係
体療法の効果は期待できないので化学療法を選択せざるを得ない現状にある.
について解析し、乳癌再発制御にけるエフェクター / メモリーリンパ球の役割
乳癌に対する Bevacizumab の使用に関して,米国 FDA および英国 NICE は
を検討した。【方法】群馬県立がんセンター及び群馬大学病態総合外科におい
Phase III 試験の結果を受けて一旦は承認したものの,その後の追加試験に
て 2006 年 1 月~ 12 月の 1 年間に、術前化学療法なく手術施行し、腫瘍残存
おける PFS の改善が最大3ヶ月程度であったことから承認撤回の適応の経緯
なく、病理にて組織型 scirrous/ papillo-tubular/solid tubular carcinoma で
がある.一方,わが国の PMDA は依然として Bevacizumab の認可を継続して
あった浸潤性乳管癌 99 例を対象とした。CD45RO 陽性細胞は、UCHL1clone
おり,癌種によっては一定の効果が認められることから,保険診療下での使
抗体を用いて免疫染色を行い、400 倍視野で最も細胞密度の高い 5 カ所を選び
用可能なわが国においてこそ利益を得る患者群の選別が急務である.【目的】
カウントを行い、TIL も同様にカウントし、CD45RO 陽性細胞 /TIL の比を中
TNBC を中心にして化学療法に対する感受性の相違から見た癌細胞の VEGF
央値で高発現群、低発現群に分類した。【結果】臨床病理学的因子と CD45RO
発現状況と Bevacizumab 使用の可能性に関する検討.【方法】Retrospective
陽性細胞の高発現群と低発現群の比較では、単変量解析では、腫瘍径が小さく、
研究.IHC にてレセプター状況(RS)の判明している術前化学療法 (NAC) 症
リンパ節転移陽性個数が少なく、pStage が低く、リンパ管浸襲のグレード
例のうち Anthracycline and/or Taxan が行われた 324 例を RECIST に基い
が低い程、CD45RO 高発現となる関係が示されたが、多変量解析では有意な
て cCR~PR, SD から PD の 2 群に分類 . 抗 VEGF-A 抗体(SANTA CRUZ 社製)
関係は認めなかった。CD45RO 低発現群は高発現群と比較して RFS(Relapse
を用いて原発巣の VEGF 発現状況を見た.VEGF は NAC 前後に関わらず,ほ
free survival) において有意に予後不良であったが、独立予後因子にはならな
ぼすべての癌細胞において発現していたので,Bevacizumab 著効症例の染
かった。また OS(Overall survival) では有意差は認められなかった。【考察】 色性を高染色として,低、中,高発現の 3 群に分類した.【結果】TNBC 42 例
CD45RO 陽性エフェクター / メモリー細胞は、乳癌のより早期の症例で高発
で,cCR~PR 66.7%,SD~PD 例は 33.3% であった.術前針生検標本での
現となり、RFS においても有意な関係を認め再発制御に関与している可能性
VEGF 発現は,cCR~PR 群での高、中発現が 78.6%,SD~PD 群での高、中
が示された。文献的考察を加え、報告する。
発現が 78.6% であった.一方,HER-2 陽性かつホルモン受容体(HR)陽性例
および HER-2 陽性かつ HR 陰性例の PD 群に VEGF 高発現例は1例もなかっ
た.【結論】TNBC において,化学療法に対する感受性と VEGF-A 発現の間に
一定の傾向は認められなかった.このことの解釈として,TNBC に対する化
学療法への Bevacizumab の上乗せ効果は,cCR~PR 群と SD~PD 群のいずれ
にも期待できるかまたはいずれにも期待できないである.少なくとも再発例
での Bevacizumab の予後改善効果は低いことが判明しているのであるから,
Neoadjuvant または Adjuvant セッティングにおいて,VEGF-A 以外の因子の
検討,新生血管における VEGFR の発現状況との関係を prospective に見るこ
とが必要である.
10670
10314
HER2 陰性乳癌における HER2 activating mutation につい
ての検討
術前化学療法を施行した HER2 陽性乳癌におけるバイオマー
カーの変化の検討
GP-2-063-01
1
3
GP-2-063-02
名古屋市立大学病院 乳腺内分泌外科、2 名古屋市立大学病院 病理部、
北海道大学病院 乳腺外科
1
3
遠藤 友美 1、董 宇 1、吉本 信保 1、浅野 倫子 1、波戸 ゆかり 1、
山下 啓子 3、佐藤 慎哉 2、高橋 智 2、遠山 竜也 1
【背景】HER2 遺伝子の増幅は乳癌における重要な driver gene の一つであり、
治療標的となり、抗 HER2 療法の利益が得られるかどうかを予測する指標で
ある。近年、この HER2 遺伝子の増幅がない乳癌や HER2 蛋白発現がない乳
癌組織において、体細胞変異が存在し、その大半が activating mutation であ
ることが報告された。さらに、細胞実験により、これら HER2 遺伝子の体細
胞変異があると、一部の抗 HER2 療法が奏効することが示唆された。【目的】
日本人においてもこれらの変異が存在するのか、また臨床病理学的所見との
関係を確認することを目的とし、研究を行った。【方法】HER2 の activating
mutation に は 二 か 所 の ホ ッ ト ス ポ ッ ト が 報 告 さ れ て お り、extracellular
domain の 309、310 番アミノ酸と kinase domain の 755 から 781 番アミノ
酸である。今回私たちは、286 人の HER2 陰性乳癌患者の腫瘍組織を用いて、
2 か所のホットスポットのダイレクトシーケンスを行った。【結果】286 の乳癌
組織のうち2つに I767M と D769Y の、それぞれ 1 か所の体細胞変異を見出し
た。いずれも kinase domain であり、今回の検討では extracellular domain
には変異は認めなかった。さらに、予後について検討したところ、この 2 症例
は有意に Disease-free survival が不良であった。【結語】日本人 HER2 陰性乳
癌患者においても、この体細胞変異は非常に稀だが予後予測因子となりうる
ことが示唆された。また、治療標的となるため、これら変異を検討すること
が、オーダーメード治療の助けとなる可能性がある。乳癌治療において重要
な HER2 遺伝子に起こる変異であるため、頻度は少ないものの着目されるべ
きと考える。
兵庫医科大学 乳腺・内分泌外科、2 兵庫医科大学 病院病理部、
兵庫医科大学 放射線科、4 さきたクリニック、5 海の里クリニック
今村 美智子 1、村瀬 慶子 1、宮川 義仁 1、榎本 敬恵 1、西向 有沙 1、
柳井 亜矢子 1、八木 智子 1、高塚 雄一 1、廣田 誠一 2、山野 理子 3、
先田 功 4、畑田 卓也 5、三好 康雄 1
【背景】HER2 陽性乳癌における術前化学療法の治療効果には、治療開始前の
HER2 発現割合が影響することを昨年の総会にて報告した。その原因として、
HER2 陽性乳癌の heterogeneity の関与が推測される。また、heterogeneity
は治療後の残存細胞におけるバイオロジーの変化にもつながる。今回我々
は、治療開始前、治療終了後のバイオロジーの変化を検討した。【対象と方
法】当科で術前化学療法を実施した HER2 陽性乳癌 21 例を対象とした。治
療前の針生検組織、手術時の検体を対象に免疫組織染色を行い、HER2 陽
性 の 細 胞 割 合 ( 膜 が 全 周 性 に 強 く 染 色 さ れ る も の ) と、ER、PgR、Ki67 の
核 の 陽 性 細 胞 割 合 を 計 測 し た。 使 用 し た 薬 剤 は、taxane-FEC が 18 例、
TC(docetaxel+cyclophosphamide) が 3 例 で、 こ の う ち 20 例 で taxane と
trastuzumab が同時投与された。臨床的(RECIST)、病理学的(乳癌取扱い
規約 16 版)治療効果を判定した。【結果】臨床効果において CR 群(6 例)は
non-CR 群(PR 14 例、SD 1 例)に比べて有意に HER2 発現割合(CR:91.7%、
non-CR:54.6%、P=0.01)は高かった。12 例で治療後の残存腫瘍における
検討が可能であった。HER2 発現割合は、化学療法前は 55.8 ± 29.7%( 平均±
標準偏差 ) であったものが、化学療法後は 34.5 ± 34.6% となり、有意に低下
していた(P=0.02)。ER、PgR の発現割合は低下する傾向がみられたが、有
意差はなかった。4 例では HER2 が陰転化したが、ER の陰転化は 1 例であっ
た。HER2 が陰転化した 4 例では全例が腫瘍縮小率 50% 未満で、HER2 の陰
転化しなかった 8 例では 2 例(25%)のみであり、有意差がみられた(P=0.01)
。
HER2 が陰転化した 4 例中 2 例は治療後の PgR が 20% 以上であり、陰転化し
なかった症例は全例 10% 以下であった。【考察】HER2 が陰転化した症例では
術前化学療法における治療効果が劣る可能性が示唆され、一部の症例ではエ
ストロゲン依存性が維持されているものと推測された。
422
ポスター掲示
11599
10527
当院における HER2 陽性乳癌及び Triple Negative 乳癌治療成
績の検討
エストロゲン応答遺伝子 EBAG9 は乳癌におけるタモキシフェ
ン治療抵抗性に関与する
GP-2-063-03
GP-2-063-04
1
1
2
2
東京医科大学茨城医療センター 外科(乳腺)、
東京医科大学 外科学第四講座、3 東京医科大学 病理部、
4
小山記念病院 乳腺外科
埼玉医科大学国際医療センター 乳腺腫瘍科、
埼玉医科大学ゲノム医学研究センター 遺伝子情報制御部門、
3
四国がんセンター 外科、4 防衛医科大学校 病態病理学講座、
5
東京大学大学院医学研究科 抗加齢医学講座、
6
国立がん研究センター中央病院 乳腺腫瘍内科、
7
京都大学大学院医学研究科 標的治療腫瘍学講座、
8
がん・感染症センター都立駒込病院 乳腺外科
西村 基 1、越川 佳代子 1、藤田 知之 1、近藤 亮一 4、森下 由紀雄 3、
田渕 崇文 2、藤森 実 1
重川 崇 1、伊地知 暢広 2、池田 和博 2、宮崎 利明 2、堀江 公仁子 2、
青儀 健二郎 3、津田 均 4、大崎 昭彦 1、佐伯 俊昭 1、井上 聡 2,5、
清水 千佳子 6、佐治 重衡 7,8
【背景と目的】エストロゲン受容体 (ER) 陽性乳癌に対するホルモン療法にお
いて治療抵抗性、補助療法後の晩期再発が臨床的に問題となっている。われ
われはこれまでに MCF-7 ヒト乳癌細胞を用いて新規エストロゲン応答遺伝子
EBAG9(estrogen receptor-binding fragment-associated gene 9) を 同 定
した (Mol Cell Biol. 1998)。EBAG9 はいくつかの癌において発現が上昇し
ており、腫瘍増殖との関連が示唆されていることをこれまでに報告してきた
(Cancer Res. 2005, Int J Cancer. 2009)。今回、ホルモン療法抵抗性に関
与する因子を検討する目的で多施設から症例を集積し本研究を行った。
【方法】
EBAG9 に対するモノクローナル抗体を作成し、術後タモキシフェン (TAM) 補
助療法を施行した ER 陽性乳癌の手術検体を用いて EBAG9 の免疫組織学的検
討を行い、EBAG9 の発現と TAM 治療後の予後の相関について検討した。
【成績】
EBAG9 は乳癌細胞の細胞質において発現を認め、術後 TAM 療法後無再発の
症例に比べて、再発症例においてその発現は有意に上昇していた (P=0.013)。
また、EBAG9 陽性群は陰性群に比べて有意に無再発生存率が不良であった
(P=0.0024)。【結論】腫瘍における EBAG9 発現は TAM 補助療法を受けた ER
陽性乳癌において予後不良と相関を認め、晩期再発との関連が示唆された。
11337
11474
ER 陽性 HER2 陰性乳癌化学療法の治療効果予測に対する Ki-67
の意義
Luminal type 乳癌の術後治療方針決定における Ki67LI の重
要性と問題点
GP-2-063-05
1
GP-2-063-06
自治医科大学 外科学講座一般外科学部門、2 自治医科大学附属病院 乳腺科
1
大澤 英之 1、相良 由佳 2、芝 聡美 2、上徳 ひろみ 2、宮崎 千絵子 2、
櫻木 雅子 2、竹原 めぐみ 1,2、吉澤 浩次 2、水沼 洋文 2、穂積 康夫 1,2
防衛医科大学校 外科学講座、2 防衛医科大学校 病態病理学講座
山崎 民大 1、長谷川 翔 1、坂口 奈々恵 1、山岸 陽二 1、守屋 智之 1、
岩屋 啓一 2、津田 均 2、長谷 和生 1、山本 順司 1
【はじめに】ER 陽性 HER2 陰性乳癌には再発率の低い Luminal A と再発率の
高い Luminal B が含まれており、両者の鑑別に Ki-67 が有用とされている。
Ki67 高発現症例は予後不良であることが明らかにされているが、治療効果の
予測因子としての意義は未だ明確でない。我々は術後化学療法の再発抑制効
果を Ki-67 で予測可能かどうかを検討した。
【方法】2002 年から 2006 年に新規に診断され初回手術を受けた ER 陽性 HER2
陰性浸潤性乳管癌患者のうち、術後薬物療法を施行された 266 名を対象とし
た。Ki67(Clone MIB1) は、腫瘍の辺縁でホットスポットと平均的な部位を撮
影し、画像処理ソフト上で最低 1000 個の腫瘍細胞をカウントして陽性率を算
出した。
【 結 果 】手 術 時 の 年 齢 中 央 値 は 57 歳、179 名(67.3%)が 腫 瘍 径 2cm 未 満、
107 名(40.2%)が リ ン パ 節 転 移 陽 性 で あ っ た。 術 後 薬 物 療 法 は、171 名
(64.3%)が内分泌療法単独 (ET 群 )、95 名(35.7%)は化学療法後内分泌療法
(CT+ET 群 ) を受けた。CT+ET 群の化学療法は 49 名(51.6%)がアンスラサ
イクリン系またはタキサン系単剤、34 名 (35.8%) がアンスラサイクリン系後
タキサン系レジメン、12 名(12.6%)が CMF であった。33 名(12.4%)に再
発イベントがみられた。ホットスポットでの Ki-67 の中央値は 14.7% で、ET
群と CT+ET 群で分布に差はなかった。中央値をカットオフ値として用いた場
合、Ki-67 high 群の 10 年生存率は 77.2%、Ki-67 low 群では 89.6% であり、
有意な差がみられた (p=0.006)。多変量解析では、Ki-67 のみが独立した再
発予測因子であった。Ki-67 high 群と low 群間で化学療法の追加効果を検討
したところ、いずれの群においても化学療法の追加効果は見いだせなかった。
Ki-67 high 群で化学療法を追加した 48 例を用いてタキサンの有無で生存曲線
を比較したが差はみられなかった。
【まとめ】今回の後方視的検討では、Ki-67 に術後化学療法の再発抑制効果の予
測因子としての役割を見いだせなかった。今後は、患者背景を制御した前向
き研究だけでなく Ki67 の評価方法の統一も必要であり、同時に再発率が高い
ER 陽性 HER2 陰性 Ki-67 high 群に絞った新たな治療効果予測因子や治療標的
を探索していく必要がある。
【背景と目的】Luminal type 乳癌に対する術後化学療法の適応に関しては
St.Gallen 2009 以降、Ki67LI を加味した分類法が推奨されている。当院で
も 2009.10 以降 Ki67LI を測定しており、術後の治療方針決定の際の重要な
バイオマーカーと捉えている。しかし、St.Gallen 2011 では Ki67LI 至上主
義の分類が推奨され、St.Gallen 2013 ではその反省からか Cut-off 値が事実
上取り消され PgR 低値も Luminal B type として扱う事が推奨される様にな
り、Ki67LI に対する扱いは変遷し続けている。今回我々は、2011 年 3 月以
前の当院乳癌手術症例を St.Gallen 2009、St.Gallen 2011 および St.Gallen
2013 分類に準じて再分類し、実際に選択された治療法と比較検討し、化学療
法の適応基準や Ki67LI の問題点に関して考察する。【対象・方法】2009 年 10
月から 2011 年 3 月までの当科で施行された原発性乳癌症例 127 例の内、ER
陽性 HER2 過剰発現なしの Luminal type 乳癌で術前化学療法施行例を除い
た 57 例。St.Gallen 2009 分類では、ER と PgR、組織学的グレード、増殖、
リンパ節転移、PVI、pT のパラメーター及び患者の選好に基づき Luminal A
と LuminalB に 分 類。St.Gallen 2011 で は Ki67LI の cut-off 値 を 14 % と し
て 分 類、St.Gallen2013 で は Ki67LI の cut-off 値 を 20 %、PgR 低 値 は Allred
score の染色範囲スコア 2 点以下を採用した。【結果】内分泌療法のみが推奨さ
れた症例は St.Gallen2009, 2011, 2013 分類でそれぞれ 46, 36, 34 例であっ
た。内分泌療法 + 化学療法が推奨された症例はそれぞれ 9, 21, 23 例であっ
た。また 3 つの分類法で常に内分泌療法のみが推奨された症例は 28 例 (49%)、
化学療法を加える事が一貫して推奨された症例は 7 例 (12%) であった。【まと
め】3 つの分類法を再評価した結果、分類の趣旨に反して HER2 過剰発現のな
い Luminal type 乳癌では化学療法の上乗せ治療を推奨される症例が増加する
傾向にある事が窺われた。また推奨された治療と実際に選択された治療の間
に若干の乖離も生じているため、その要因も分析し文献的考察を加えて報告
する。
423
一般セッション(ポスター掲示)
【 背 景 】HER2 陽 性 乳 癌 は、 全 乳 癌 の 約 15-25 % を 占 め、 悪 性 度 が 高 い が、
HER2 を標的とした分子標的治療により治療成績が改善している。Triple
Negative 乳癌は全乳癌の 10-15% を占め、悪性度が高く、化学療法による
治療成績が改善しない症例も存在ずる。今回われわれは HER2 陽性乳癌及び
Triple Negative 乳癌において、当院に乳腺科が発足した 2008 年以前と以降
における治療成績の違いにつき検討した。【対象と方法】2008 年以前の年間
症例数は現在の 4 分の 1 程度であり、2000 年 1 月~ 2007 年 12 月までの全
乳癌症例数は 203 例であった。このうち予後を検索し得た 165 例のうち浸
潤癌は 142 例で、HER2 陽性乳癌と診断されているものは 19 例 (13.3%)、
Triple Negative 乳癌は 18 例 (12.6%) であった。当院に乳腺科が発足した
2008 年 4 月以降 2013 年 3 月までの全乳癌症例 373 例のうち浸潤癌が 302 例
あり、HER2 陽性乳癌は 45 例(15%)、Triple Negative 乳癌が 32 例 (10.5%)
であった。各群の治療成績を検討した。【結果】年代ごとの推移では検診普及
率の上昇や画像診断の進歩に伴い 2008 年以降で Stage0,I 症例の増加を認め
た。HER2 陽性例は、2008 年以前の 19 例では 5 年生存率 63% であったが、
Trastuzumab を投与された 14 例では 5 年生存率 85% と生存期間の延長を
認めた。HER2 陽性乳癌で Trastuzumab を含むレジメンを施行された場合、
2008 年以降の stage 0-III では術後再発は認めておらず、Stage IV において
も抗 HER2 療法を継続することで、良好に病勢をコントロールできた。Triple
Negative 症例では化学療法を施行するも 2008 年以前の 18 例中 10 例 (55%)
が、2008 年以降の 32 例中 7 例 (21%) は 2 年以内に原病死していた。2008 年
以降、N1 症例に対し術前化学療法・分子標的療法を施行し、投与完遂症例に
おいて生存期間の延長を認めた。【まとめ】HER2 陽性乳癌に対し抗 HER2 療法
を行うことで、比較的良好な治療成績が得られた。Triple Negative 乳癌に対
し標準的な化学療法をすることで、治療成績の向上につながるも、治療効果
のない症例は生存率 2 年以内と明らかに予後不良であった。
ポスター掲示
11968
10197
Luminal type 乳がんの CNB における Ki67 と術前化学療法の
組織学的治療効果との関係
ER 陽性 HER2 陰性乳癌における効果予測因子としての Ki67
GP-2-063-07
GP-2-063-08
浜松医科大学 第一外科
1
仙台市医療センター仙台オープン病院 外科、2 同 病理、
3
東北大学病院病理部
細川 優子、滝 由美子、松沼 亮一、井手 佳美、小倉 廣之、椎谷 紀彦
本多 博 1、渡辺 みか 3、佐々木 満 2、加藤 孝子 2、土屋 誉 1
一般セッション(ポスター掲示)
【 背 景・ 目 的 】Luminal type 乳 が ん に 対 し て 化 学 療 法 を 行 う 指 標 と し て
Ki67(Laveling Index) が重要視されているが , 施設・方法による差が指摘
され , cut off 値も定まっていない。当科では , Ki67 の CNB・手術標本での
精度管理に努め , r=0.85 の相関を得られ , cut off 値 30% で一致率 88% と
最大であったことを当総会で発表した。そこで , CNB における Ki67 と術前
化学療法の組織学的治療効果との関係から効果予測が可能か retrospective
に 検 討 し た。【 対 象・ 方 法 】対 象 は , 2006-12 年 に 当 科 に て CNB ・ 術 前 化
学療法後に手術を施行した乳がんのうち , CNB( 平均 2.5 本 ) における ER/
PgR(Allred score)・HER2(Herceptest) で Luminal type( 全 例 ER 陽 性 ,PgR
陰性 6 例 ,HER2 陽性除く ) とされた 26 例 ( 平均 59 才 ) で , Ki67( 抗体は MIB1, hot spot 測 定 ), Histological grade(HG), Nuclear grade(NG) と 手 術 標
本主病巣の Ki67 及び組織学的治療効果 Grade(G) を評価した。化療レジュ
メ は 全 例 FEC 療 法 (EPI 総 量 240-450mg/m2, 平 均 343mg) で DTX(6070mg/m2 × 4) を 7 例 に 追 加 し た。【 結 果 】全 例 の Ki67 は 平 均 30.5%(PgR
陰性 29.5%)。化療効果は各々 G1a/1b/2a/2b=14/9/2/1 例。G1a と G1b2b(12 例 ) の 2 群に分けると , 平均年齢は共に 59 才で , Ki67 は G1a 群 24.3 ±
13.1%(mean ± SD, 4.5-51.2%) 及 び G1b-2b 37.8 ± 25.1%(2.8-78.1%)
で有意に G1b-2b 群が高値であり (p=0.029, t 検定 ), DTX 追加例 ( 各々 3,4
例 ) を除いても各群 22.8% 及び 40.7% と同様に有意であった (p=0.036)。ま
た , 手術標本では各群ともに平均 16.2% 及び 17.0% と同程度まで低下した。
G1b-2b は , Ki67 30% 以 上 で 6/11 例 , 50% 以 上 で 4/5 例 と 増 し た。Ki67
は , HG I/II/III( 各 5/15/6 例 )=12.2/25.5/58.4%, NG 1/2/3( 各 15/5/6
例 )=20.6/27.1/58.4% (HG III は NG3 と 合 致 ) で , HG III の 6 例 中 5 例 が
G1b-2b であった。術前化療の主理由は , LN 転移 11 例 , 腫瘍径 3cm 超 8 例 ,
皮膚 / 胸壁浸潤 5 例 , Ki67 > 50% 2 例で , 皮膚 / 胸壁浸潤は全例 G1b 以上で ,
腫瘍径 3cm 超のうち 3 例に乳房温存手術を施行し得た。【結語】Luminal type
乳がんの Ki67 は HG(NG) と相関し , Ki67 高値 ( 特に 50% 以上 ) で化療効果が
高い傾向であったが , ばらつきも大きいため効果予測は難しく , 化療目的と治
療効果を考慮した症例毎の対応が必要と考えられる。
背景:Ki67 は ER 陽性乳癌の重要な予後因子であるが、術後補助化学療法の効
果予測因子としての意義は不明確である。またサブタイプ分類の精度を上げ
る因子として PR が提唱された。目的:ER 陽性 HER2 陰性乳癌において予後因
子・補助化学療法の効果予測因子となる Ki67 および PR の適切なカットオフ
値を検討する。対象と方法:当科で 2008 年 1 月から 2011 年 12 月の間に初期
治療を開始された乳癌の手術症例 311 人のうち、非浸潤癌、他の悪性疾患の
既往、両側乳癌を除外し、針生検にて Ki67 を測定しえた 177 人を対象とした。
ER 陽性 HER2 陰性乳癌において Ki67 のカットオフ値を 14%、20%、25% と
した際、Ki67 の低い群を LuminalA、高い群を LuminalB とし、補助化学療法
の効果予測因子としての Ki67 のカットオフ値を検討した。さらに PR の Allred
score(Total score:TS) を加えて予後との関係を検討した。結果:177 人の
う ち ER 陽 性 HER2 陰 性 122 人 (69%)、ER 陽 性 HER2 陽 性 18 人 (10%)、ER
陰 性 HER2 陽 性 13 人 (7%)、ER 陰 性 HER2 陰 性 24 人 (14%) で あ り、ER 陽
性 HER2 陰性症例の平均観察期間は 39 か月、Ki67 の値の平均値は 17.1% で
あった。Ki67 のカットオフ値が 14%、20%、25% の時、LuminalA の割合は
57 人 (32%)、77 人 (44%)、92 人 (52%) であった。PR(TS) 別の分布は 8 点
が 37 人 (21%)、7 点 が 25 人 (14%)、6 点 が 16 人 (9%)、5 点 が 14 人 (8%)、
4 点が 6 人 (3%)、3 点が 10 人 (6%)、2 点が 4 人 (2%)、0 点が 10 人 (6%) で
あった。LuminalA と LuminalB における無再発 5 年生存率は Ki67 のカット
オ フ 値 14% で 100% 対 86.9%(P=0.02、log-rank 検 定 )、20% で 98.6%
対 85.0%(P=0.04)、25% で 96.6% 対 83.3%(P=0.4) で あ っ た。Ki67 の 値
の高低とアンスラサイクリン、タキサン系薬剤、CMF による補助化学療法の
有無で 4 群に分けた際、Ki67 のカットオフ値 20% の際の LuminalA におけ
る補助化学療法あり対なしの無再発 5 年生存率は 95.8% 対 100%(P=0.15)、
25% で は 94.1% 対 98.2%(P=0.31) で い ず れ も 有 意 差 を 認 め な か っ た。
LuminalB では補助化学療法を施行した群にリンパ節転移のある症例が有意
に多く含まれ(LuminalB の化学療法施行群対非施行群に対するリンパ節転移
症例の割合は Ki67 のカットオフ値 14% で 60% 対 10%、P < 0.001(t 検定 )、
20% で 61% 対 12%、P < 0.001、25% で 59% 対 8%、P=0.003)、 い ず れ
のカットオフ値でも補助化学療法施行群の予後が不良であった。Ki67 のカッ
トオフ値 25% の LuminalB で PR(TS)6 点以上と 5 点以下の群の無再発 5 年生
存率は 100% 対 41.7%(P=0.028) であった。
11883
11561
トリプルネガティブ乳癌に対する術前化学療法―Ki67 値による
効果の差異についての考察
Luminal 乳癌に対する化学療法効果と予後に関する検討
GP-2-063-09
1
GP-2-063-10
1
2
2
よこはま乳腺・胃腸クリニック、 せやクリニック
久保内 光一 1、川口 正春 1,2、長谷川 恵美子 1、荘 正幸 1
【はじめに】トリプルネガティブ乳癌は、他のサブタイプに比較して予後の悪
い例が多く、周術期全身治療は化学療法のみ適応となる。中には効果が今一
つの症例も見られ、至適な化学療法を見出すことが望まれる。症例数は少な
いが、当院での同タイプに対する術前化学療法症例の治療効果を、Ki67 値の
違いより検討した。【対象】Ki67 をルーチンに染色し始めた 2011 年 4 月より、
当院で術前化学療法を行ったトリプルネガティブ乳癌 13 例を対象とした。化
学療法のレジメンは、EC(100)4 コース後 weekly PTX(80)12 回投与を標準と
したが、PTX の効きが悪く EC(100)4 コース→ weekly PTX(80) → EC(100)
とした症例が 5 例あり、80 歳の 1 例は weekly PTX(80) のみで治療した。【結
果】13 例全体での pCR は 5 例 (38.4%) であり、Grade-2b と G-3 著効例は 8
例 (61.5%) であり、再発が 2 例みられた。Ki67 50% 未満の 4 例では G1a-1
例、G1b-2 例、G-2a 1 例で著効例は無く、50% 以上の 9 例では G-1b 1 例、
G-2b 3 例、G-3 5 例で、今のところ再発症例は無く、Ki67 高値の症例に著効
例が集中していた。【結語】トリプルネガティブ乳癌で Ki67 が 50% 以上の症
例では、アンスラ→タキサンの標準治療で pCR を目指して施行することが良
いと考えられた。Ki67 が 50% 以下では、今のところアンスラ→タキサンが主
であろうが、他の方法も念頭におきより有効な治療法の開発が望まれる。
424
順天堂大学医学部附属練馬病院 乳腺外科、
順天堂大学医学部附属練馬病院 病理診断科
北畠 俊顕 1、宮野 省三 1、小坂 泰二郎 1、渡野辺 郁雄 1、町田 理夫 1、
児島 邦明 1、坂口 亜寿美 2、小倉 加奈子 2、松本 俊治 2
目的 :Luminal 乳癌は化学療法が効きにくいが、必要とする状況も存在する。
今回術前化学療法 ( 以下 PST) 後に手術を施行した症例に対し、病理学的因
子 (NG,HG,PgR,Ki-67L.I.) から化学療法効果予測が可能か、また再発率を検
討する。対象 :2005 年 7 月 ~2013 年 7 月で PST 後手術を施行した患者のう
ち、ホルモン強陽性 (Allred score;PS:5)、Her2 陰性であった症例 68 例。結
果 :NG 別では、NG1,2 が 57 例で病理学的効果は (grade0:1a:1b:2a:2b:3)
が (2:27:14:6:4:4)、NG3 が 10 例 (2:1:1:4:1:1)。 著 効 群 を (grade2b,3)、
非著効群を (grade2a,1b,1a,0) として比較すると、NG1,2 では 8:49、NG3
で は 2:8(N.S.)。HG 別 で は、HG1,2 が 57 例 (3:26:13:7:4:4)、HG3 が 9 例
(1:2:2:3:1:0)。 著 効 群 : 非 著 効 群 は、HG1,2 で は 8:49、HG3 で は 1:8(N.
S.)。PgR 別 で は、PgR の PS2 以 下 が 18 例 (0:9:4:2:1:2)、PS3~4 が 12 例
(0:4:3:2:2:1)、PS5 が 37 例 (4:15:9:6:2:2)。 著 効 群 : 非 著 効 群 は、PS2
以 下 で 3:15、PS3~4 で 3:9、PS5 で 4:34(N.S.)。Ki-67L.I. は 中 央 値 が
18.3%。14% を閾値とすると、14% 未満が 23 例 (3:9:8:1:0:2)、14% 以上
が 34 例 (1:13:6:8:3:3)。著効群 : 非著効群は 14% 未満では 2:21、14% 以
上では 6:28(N.S.)。20% を閾値とすると、20% 未満が 32 例 (3:15:9:2:0:3)、
20% 以 上 が 25 例 (1:7:5:7:3:2)。 著 効 群 : 非 著 効 群 は 20% 未 満 で は
3:29、20% 以 上 で は 5:20(N.S.)。30% を 閾 値 と す る と、30% 未 満 が 48
例 (4:19:13:7:2:3)、30% 以上が 9 例 (0:3:1:2:1:2)。著効群 : 非著効群は
30% 未満では 5:43、30% 以上では 3:6(P=0.10)。術後 5 年無再発生存率は、
NG の比較では差は認めなかった。HG で比較すると、HG1,2 群が 90.4%、
HG3 群が 63.5%と有意に HG3 群に再発率が高かった。PgR 別の比較では差
は認めなかった。Ki-67L.I. での比較は、20%未満群が 95.8%、20%以上群
が 79.8%で、20%以上群に再発率が高い傾向にあった (P=0.06)。PCR と非
PCR の比較では、PCR 群が 100%、非 PCR 群が 85.6%だが有意差はなかった。
結語 :NG、HG の比較では有意差は認めなかった。Ki-67L.I. が 30% 以上の
症例で化学療法効果が高い傾向があるが、有意差は認めなかった。PCR、非
PCR では再発率に差は認めなかった。
ポスター掲示
10831
11970
当院における乳癌の免疫組織学的なサブタイプ分類と術前化学
療法の効果
網羅的遺伝子発現解析による乳癌サブタイプ分類と関連する分
子マーカーの開発
GP-2-063-11
1
2
GP-2-063-12
1
独立行政法人国立病院機構呉医療センター中国がんセンター 乳腺外科、
独立行政法人国立病院機構呉医療センター中国がんセンター 臨床研究部 福島県立医科大学医学部 器官制御外科学講座、2 獨協医科大学 第1外科
阿部 宣子 1、吉田 清香 1、渡邉 久美子 1、安田 満彦 2、大竹 徹 1、
竹之下 誠一 1
森井 奈央 1、山城 大泰 1、高橋 寛敏 1、安井 大介 1、齋藤 彰久 2、
倉岡 和矢 2、谷山 清己 2
【背景】ER、PR、HER2、CK5/6、EGFR などの分子を、免疫組織学的に評価し、
遺伝子プロファイリングによるサブタイプ分類の、代替え指標として使用す
る試みがなされている。また、TOP2A の遺伝子変異が、アンスラサイクリン
含有化学療法の効果と関連することが、複数の臨床試験で示されている。【目
的】これらの分子や遺伝子の発現・変異、他の臨床病理学的指標や、抗腫瘍効
果との関連を評価することにより、治療の個別化の可能性や術前化学療法の
効果予測因子となりうるかを検討すること。【方法】対象は、2008 年 1 月から
2013 年 3 月までに当院で術前化学療法と手術を完了した、全例(90 例)。ER、
PR、HER2、CK5/6、EGFR、TOP2A 蛋白、Ki-67 の発現は、免疫染色自動解
析装置・解析ソフトを用いて、定量化した。【結果】HER2 陽性(FISH > 2.2)
乳癌 32 例中、TOP2A 増幅群(14 例)、TOP2A 非増幅群(14 例)の両群において、
トラスツマブ+タキサンレジメンの方が、アンスラサイクリン含有レジメン
と比較して、画像検査上の腫瘍縮小率が高かった。(TOP2A 増幅群、t-test p
< 0.05、TOP2A 非増幅群、t-test p < 0.05)また、両群間で、縮小率に差を
認めなかった。HER2 陰性乳癌では、ER、CK5/6 および EGFR を用いて分類
す る と basal-like(CK5/6 and/or EGFR 陽 性 )乳 癌 は、normal-like(CK5/6
and EGFR 陰性)乳癌に比べ、Ki-67 や、核グレードが高く、術前化学療法に
よる腫瘍縮小率や、病理学的な効果は、basal-like 乳癌で高い傾向を認めた。
【結
論】CK5/6 や EGFR によって、従来の triple negative 乳癌をより詳細に分類す
ることができる可能性が示唆された。TOPO2A に関しては、アンスラサイク
リン含有レジメンの治療効果を予測できなかった。
【背景】日本人乳癌患者の網羅的遺伝子発現解析により、乳癌のサブタイプ分
類と関連する遺伝子セットについて検討した。【対象と方法】手術可能な原発
乳癌 148 例を用いた。独自開発した合成 DNA マイクロアレイシステムを用い
て約 32,000 種類の遺伝子発現プロファイルを取得した。遺伝子発現プロファ
イルによるクラスタ分類と免疫組織化学染色による intrinsic subtype 分類の
結果を比較検討した。【結果】すべてのサンプルをエストロゲン受容体 (ESR1)
と ERBB2 の 発 現 比 に よ っ て 4 グ ル ー プ に 分 類 し た。ESR1 は 発 現 比 1.8 以
上 を 陽 性、ERBB2 は 発 現 比 1.0 以 上 を 陽 性 と し、ESR1 陽 性 /ERBB2 陽 性、
ESR1 陽 性 /ERBB2 陰 性、ESR1 陰 性 /ERBB2 陽 性、ESR1 陰 性 /ERBB2 陰 性
の 4 グループとした。グループ間で発現比に統計学的有意差のある 134 個の
遺伝子を抽出した(p < 0.05)。134 遺伝子を用いて全症例の遺伝子発現プロ
ファイルのクラスタ解析を行ったところ、ESR1 陽性 /ERBB2 陽性と ESR1 陽
性 /ERBB2 陰性が含まれるクラスタ、ESR1 陰性 /ERBB2 陽性が含まれるクラ
スタ、ESR1 陰性 /ERBB2 陰性が含まれるクラスタの 3 つに分類された。遺伝
子発現プロファイルによるクラスタ分類と免疫組織化学染色による intrinsic
subtype 分類はほぼ一致していた。【考察】遺伝子発現プロファイルによるク
ラスタ分類と免疫組織化学染色による intrinsic subtype 分類が一致しない症
例では、ホルモン療法や分子標的治療の適応をさらに厳密に検討していく必
要がある。【結語】134 遺伝子の発現パターンを総合的に解析することにより、
より適切な乳癌個別治療が導き出せる可能性が示された。臨床情報照合解析
を基盤としたトランスレーショナルリサーチを継続し、より効果的な日本人
乳癌の治療効果予測マーカーの開発が期待される。
10763
免疫組織化学的解析による抗腫瘍剤標的分子発現と抗腫瘍効果
との関連性に関する検討
乳癌術前化学療法における Cleaved caspase 3 の治療効果予
測因子としての検討
GP-2-063-13
1
2
GP-2-063-14
1
高松赤十字病院 胸部・乳腺外科、
香川大学附属病院 呼吸器・乳腺内分泌外科、3 伊藤外科乳腺クリニック 2
法村 尚子 1、紺谷 桂一 2、橋本 新一郎 2、村澤 千沙 2、監崎 孝一郎 1、
環 正文 1、三浦 一真 1、安藝 史典 3、吉澤 潔 1
【背景】乳癌が intrinsic subtype によって分類されるようになり、それぞれ
の population で予後や治療効果が全く異なることが明らかになった。しかし
ながら詳細はいまだ不明のことが多く、個々の薬剤感受性に関連する効果予
測因子は同定されていない。乳癌化学療法においてはアンスラサイクリンと
タキサンが標準レジメンとしては使用されており、それぞれの標的分子とし
て Topoisomerase II alpha (TOP2A) と Beta-tubulin (B-tub) が知られてい
る。しかしながらこれらの分子発現と薬剤感受性に明らかな相関があったと
の報告は少なく、また解析法も確立されていない。今回我々は免疫組織学的
手法によって腫瘍組織内の標的分子発現を解析することによって、その結果
が実際の薬剤抗腫瘍効果に反映するか否かを検討した。【背景】2006 年 6 月
~2013 年 5 月までに当科において、抗腫瘍効果の評価が可能で、アンスラ
サイクリン、タキサンあるいはトラスツズマブを含む化学療法を行った女性
乳癌患者38例を対象とした。平均年齢 55 歳で、臨床病期は 2 期 7 例、3 期
10 例、4 期あるいは再発乳癌 21 例であった。ホルモン陽性は 20 例(53%)、
HER2 陽性は 11 例(20%)であった。免疫組織化学的解析において TOP2A、
TIMP-1、B-tub、HER2 に対するモノクローナル抗体を使用し、腫瘍内の陽
性細胞率を計算した。その結果とアンスラサイクリン、タキサン、トラスツ
マブによる臨床効果との関連を検討した。CR、PR 症例を有効例、SD、PD
症例を無効例とした。【結果】対象症例におけるアンスラサイクリン、タキサ
ン、トラスツズマブの奏功率はそれぞれ 56.5%、50.0%、90.0% であった。
腫 瘍 内 HER2、TOP2A、TIMP-1、B-Tub 陽 性 例 は そ れ ぞ れ 32.3%、9.1%、
31.3%、48.7% であった。薬剤と標的分子発現との関連を検討したところ、
アンスラサイクリン有効例と比較して無効例に TIMP-1 高発現例が有意に多
かった (50% vs. 0%, p=0.019)。またトラスツズマブ無効例は 1 例であった
ため効果比較困難であった。他の分子 TOP2A、B-tub 発現と薬剤効果との関
連はなかった。【結語】比較的簡便な免疫組織学的手法により薬剤標的分子発
現評価が可能であることがわかった。TIMP-1 はアンスラサイクリンの効果予
測因子として重要な分子の1つと考えられた。しかし薬剤感受性には多要因
が関連しているため複数分子の発現解析が必要であろうと予想された。
神奈川県立がんセンター 乳腺内分泌外科、
神奈川県立がんセンター 病理診断科、3 神奈川県立がんセンター 検査科
稲葉 將陽 1、嘉数 彩乃 1、西山 幸子 1、山中 隆司 1、中山 博貴 1、
吉田 達也 1、清水 哲 1、吉田 明 1、横瀬 智之 2、亀田 陽一 2、大金 直樹 3、
梶本 真理 3
【目的】
乳癌の術前薬物療法ではサブタイプにより、その奏効率に差異を生ず
る事が数多く報告されている。術前治療の目的は癌組織の biology を知ると共
に、患者個々にとってより効果の期待できる治療選択肢を早期から提供し全身
治療を開始する事である。その為に治療効果を予測する事は重要である。細胞
増殖マーカーの一つである Ki-67 抗原の発現は腫瘍の悪性度や化学療法の感受
性に関連があるといわれ、サブタイプ分類や治療法選択の指標として用いられ
ており効果予測因子としての有用性もいわれている。一方、Cleaved caspase
3( 以下 C-caspase3) は apoptosis の過程で中心的役割を果たす caspase3 が活
性化したものである。乳癌組織において化学療法の殺細胞効果により apoptosis
が誘導され活性化されるといわれている。今回 Ki-67 と C-caspase3 両者の発現
を調べ術前治療の効果判定予測因子としての可能性につき検討を行った。
【対象】
術前針生検で乳癌と診断され術前化学療法を施行した 49 例を対象とし
た。
【方法】
術前化学療法施行前の乳癌針生検検体のホルマリン固定パラフィン
包埋切片を用いて Ki-67 と C-caspase3 の免疫染色を行い、Ki-67 陽性率の算
出と C-caspase3 の発現の有無を調べた。治療効果の判定は手術の HE 標本で
第 16 版乳癌取り扱い規約に則り行った。Grade0, 1a を治療効果の低い群、
Grade1b, 2 を治療効果の高い群とし、以下の項目について検討を行った。1)
C-caspase3 の発現と組織学的治療効果判定の関連性について 2)Ki-67 陽性
率と C-caspase3 発現の有無を組み合わせた場合の組織学的治療効果判定の有
用性について
【結果】
1)C-caspase3 の発現と治療効果の関連では、治療効果の低い群に比
較して治療効果の高い群において C-caspase3 の発現を認める例が多かった。
2)Ki-67 陽性率と C-caspase3 発現の有無を組み合わせた場合の治療効果との
関連では、治療効果の高い群において Ki-67 高値かつ C-caspase3 発現有りの例
が多く、治療効果の低い群では Ki-67 低値かつ C-caspase3 発現無しの例が多い
傾向を認めた。
【結論】
C-caspase3 は乳癌の術前薬物療法における効果予測因子となりう
ると考えられた。Ki-67 もまた単独で効果予測因子となり得るが、Ki-67 と
C-caspase3 の両者を組み合わせて判定することにより、より一層の効果予測
が可能になると考えられた。
425
一般セッション(ポスター掲示)
11218
ポスター掲示
11747
11276
ER 陽 性 HER2 陰 性 浸 潤 性 小 葉 癌 に お け る Oncotype DXR Assay を用いた再発リスクの予測
ER 陽性かつ HER2 陰性乳癌における Ki-67 と PgR 発現率の相
関性の検討
GP-2-064-01
GP-2-064-02
1
聖路加国際病院 乳腺外科
3
南村 真紀、林 直輝、矢形 寛、吉田 敦、山内 英子
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】ER 陽性 HER2 陰性浸潤性小葉癌 (ILC) において、化学療法の効果は
低い可能性が報告されている。そこで、ER 陽性 HER2 陰性 ILC と浸潤性乳管
癌 (IDC) の Oncotype DXR Assay における予測再発リスクの違いと関連因
子を検討する。【方法】2009 年 6 月から 2013 年 10 月に当院で Oncotype DX
を施行した ILC 16 例と IDC 243 例を対象に recurrence score (RS) による
予測再発リスクを Low risk(Low: RS 1-17 点 ) と、Intermediate/High risk
(Int-High: ≧ 18 点 ) の 2 群に分け、臨床病理学的因子との関連を比較検討し
た。二群間の比較にはχ二乗検定を用いた。【結果】年齢中央値は ILC 52 歳
(35-63 歳 )、IDC 50 歳 (25-74 歳 )。RS 中 央 値 は ILC 15 点 (4-29 点 : Low
12 例、Int 4 例、High 0 例 )、IDC 16 点 (0-63 点 : Low 142 例、Int 73 例、
High 28 例 ) であった。腫瘍径は IDC が ILC に比べ有意に T1 が多かった (p
< 0.001)。ILC では閉経前では 9 例中全症例 (100%)、閉経後は 7 例中 3 例
が Low risk だった (p=0.0192) が、IDC では閉経前後に差を認めなかった
(p=0.737)。PR 発現において、高発現 (Allred score 7,8) では、ILC は 11
例中全症例 (100%) が、低~中等度発現 (score 0-6) では 5 例中 1 例 (20%)
が Low risk だ っ た (p=0.00275)。IDC で は、PR 高 発 現 の 163 例 中 120 例
(73.6%) が Low risk と、低~中等度発現 79 例中 22 例 (27.8%) と比較し有
意に risk が低かった (p < 0.001)。また、ILC では、腫瘍径 (T1 vs T2,3)、核
グレード (NG:1 vs 2, 3)、Ki-67 ( > 20% vs ≦ 20%)、リンパ節転移の有無、
において再発リスクとの関連で差は認めなかったが、IDC では NG と、Ki-67
とで再発リスクとの関連を認めた ( ともに p < 0.001)。【結論】本研究では ER
陽性 HER2 陰性 ILC は、IDC と異なる因子が再発リスクと関連しており、閉経
前、または閉経後でも PR 高発現では化学療法を避けられる可能性が高い可能
性が示された。
福山市民病院 乳腺甲状腺外科、2 福山市民病院 病理診断科、
うだクリニック、4 いしいクリニック、5 かわの医院
河田 健吾 1、池田 雅彦 1、重西 邦浩 2、中本 翔伍 1、突沖 貴宏 1、
山本 真理 1、久保 慎一郎 1、宇田 憲司 3、石井 辰明 4、川野 亮 5
【背景】ER 陽性かつ HER2 陰性乳癌に対して術後補助療法での化学療法の適応
に関しては未だ議論が多い。現在実臨床では Ki-67 等の増殖マーカーを元に
その適応を判断することが主流である。2013 年の St.Gallen 会議では、PgR
発現率が 20% 前後で予後が大きく異なることから Ki-67 に加え新たに PgR 発
現率でも luminal A / B を分類することになった。しかし PgR 発現率が低値
例においての術後化学療法の有効性ついてはエビデンスがない。
【目的】PgR
発現率と、潜在的に化学療法効果予測因子と考えられる Ki-67 との相関性を
検討し、PgR 低値症例の術後療法を考察する。【対象と方法】2009 年 4 月か
ら 2013 年 5 月までに当院で根治手術を施行し ER 陽性かつ HER2 陰性であっ
た浸潤癌 322 例(術前療法例と stageVI 症例を除く)。PgR 発現率を 20% 未
満(低値)と 20% 以上(高値)の 2 群に分け、それぞれの Ki-67 の平均値を調査
した。また Ki-67 を 15% 未満、15 ~ 30%、30% 以上の 3 群に分け、それぞ
れの PgR 発現率の平均値を調査した。【結果】平均年齢 59.4 歳、女性 321 例、
男性1例。PgR 発現率低値例が 92 例(28.6%)、高値例が 230 例(71.4%)で
あった。Ki-67 が 15%未満の症例は 140 例(43.5%)、15 ~ 30%が 120 例
(37.3%)、30%以上が 62 例(19.2%)であった。PgR 発現率低値例と高値例
では Ki-67 の平均値はそれぞれ 22.1%、19.5%で統計学的に有意差を認めな
かった(p=0.108)。一方、Ki-67 で 15%未満、15 ~ 30%、30% 以上の三
群での PgR 発現率の平均はそれぞれ 52.8%、52.7%、43.1% で、Ki-67 が
30%以上の群はその他に比べ PgR 発現率が有意に低値であった(p=0.037)。
【考察】PgR 発現率と Ki-67 の相関性は認められなかった。PgR 発現率が予後
因子であることは既知の事実ではあるが、術後化学療法の効果予測因子にな
りえるかについては今後さらなる検討が必要と考える。一方、Ki-67 が 30%
以上では PgR 発現率が低い傾向にあり、術後化学療法を行うことは妥当と考
えられた。
11709
10105
血清抗p53抗体値の術前化学療法治療効果予測因子としての意義
婚姻状況、妊娠出産歴と乳がんの予後との関連
GP-2-065-01
GP-2-066-01
1
国立病院機構九州がんセンター
宮城県立がんセンター 乳腺科、
宮城県立がんセンター研究所 がん疫学・予防研究部、
3
東北大学大学院医学系研究科 地域保健学、
4
東北大学大学院医学系研究科 腫瘍外科
2
猿渡 彰洋、中村 吉昭、秋吉 清百合、厚井 裕三子、西村 純子、
井川 明子、古閑 知奈美、及川 将弘、石田 真弓、大野 真司
【背景】p53 遺伝子変異に伴い変異 p53 蛋白が蓄積され、血清抗 p53 抗体が産
生される。p53 遺伝子変異を伴う乳癌は術前化学療法において高い病理学的
完全寛解率を示すが、血清抗 p53 抗体と治療効果との相関は明らかになって
いない。【目的】血清抗 p53 抗体高値陽性率と術前化学療法による pCR 率と
の相関を乳癌サブタイプ別に検討する。【対象と方法】2005 年 8 月から 2013
年 3 月までに術前化学療法が施行された StageI-III 乳癌において血清抗 p53
抗体価(MESACUP anti-p53 テスト)が測定可能であった 199 例を対象とし
た。術前化学療法のレジメンは FEC × 4 + docetaxel × 4 を基本とし、2009
年以降は HER2 陽性例に対しては trastuzumab が併用された。術前化学療法
前針生検組織の免疫組織化学法でホルモン受容体(HR)と HER2 を評価し、サ
ブタイプ別に血清抗 p53 抗体値と病理学的完全奏効(pCR)との相関を検討し
た。【 結 果 】199 例 の う ち HR(+)HER2(-) は 105 例、HR(+)HER2(+) は 23
例、HR(-)HER2(+) は 34 例、HR(-)HER2(-) は 37 例であった。サブタイプ
別 の pCR 率 は,HR(+)HER2(-):4.8 %、HR(+)HER2(+):26.1 %、HR(-)
HER2(+):47.1%、HR(-)HER2(-):40.5%で、抗 p53 抗体値が高値である
割合はそれぞれ 9.5%、4.3%、14.7%、16.2% であった。抗 p53 抗体値高
値例と低値例における pCR 率は、HR(+)HER2(-) では 0% と 5.3%、HR(+)
HER2(+) で は 0% と 27.3%、HR(-)HER2(+) で は 60.0 % と 44.9%、HR(-)
HER2(-) では 66.7%と 35.5% であった。【結論】HR 陽性のサブタイプで血清
抗 p53 抗体高値症例では pCR は得にくく、HR 陰性のサブタイプでは血清抗
p53 抗体高値症例のほうが pCR を得られる可能性が高いことが示唆された。
角川 陽一郎 1、西野 善一 2、深町 佳世子 1、河合 賢朗 3,4、南 優子 3
【背景】未婚・未産が乳がん罹患リスクを高めることはよく知られているが、
予後との関連は明らかではない。【目的】乳がん罹患者を追跡し、婚姻状況・
妊娠出産歴と予後との関連を明らかにする。【対象と方法】対象は、宮城県立
がんセンターに 1997 - 2007 年に入院、生活習慣に関する自記式質問紙に回
答した女性乳がん罹患者 880 名から他部位の重複癌罹患 9 名を除外した 871
名である。院内がん登録により 2010 年 12 月まで追跡し、869 名(99.8%)
の生存死亡を把握した。解析項目は診断時の配偶者の有無・出産歴・授乳歴
で、閉経前後・内分泌受容体(ER, PgR)別に Cox 比例ハザードモデルによ
り既知の乳がんリスク因子及び治療内容を調整、全死亡・乳がん死亡それぞ
れのリスクを算出した。【結果】追跡期間中の全死亡は 172 例、乳がん死亡
は 133 例であった。閉経前では各解析項目と全死亡・乳がん死亡リスクとの
関連は明らかではなかったが、閉経後では、「配偶者あり」の者は「配偶者な
し」に比べ有意に全死亡リスクが低く(HR=0.60, 95% CI: 0.39-0.94)、出
産歴のない者で有意に乳がん死亡リスクが上昇していた(HR=2.43, 95%
CI: 1.03-5.75)。閉経前後を併せた内分泌受容体別の解析では、ER+ または
PR+ で有意な関連は認められなかったが、ER - /PR -で、「配偶者あり」で
の全死亡リスクの低下((HR=0.50, 95% CI: 0.24-1.02, p=0.06)及び出産
歴のない者での全死亡リスク・乳がん死亡リスク上昇が認められた(全死亡、
HR=2.96, 95% CI: 1.04-8.47;乳がん死亡、HR=3.11, 95% CI: 0.999.76, p=0.052)。【結論】婚姻状況・出産歴は、乳がんの罹患だけでなく予後
にも影響を与える可能性がある。乳がんの予後改善のためには、配偶者の有
無や出産歴などの患者背景を考慮する必要があると思われる。
426
10002
10095
大阪府における乳癌診断の季節変動
閉経前乳腺濃度の規定因子の検討
GP-2-066-02
ポスター掲示
GP-2-066-03
大阪府済生会千里病院 外科
海老名メディカルサポートセンター
豊田 泰弘、北條 茂幸、吉岡 節子、野間 俊樹、松永 寛紀、吉岡 晶子、
真貝 竜史、福永 浩紀、太田 博文、大東 弘明、前浦 義市
岡本 隆英、伊東 明美、神山 太郎
[ 背景 ] マンモグラフィー (MMG) での高濃度乳腺は乳癌発症のリスク因子と
なると報告されている。乳腺濃度 (MD) と肥満度は負の相関があり、また閉経
前では肥満が乳癌のリスクを減少させる可能性がある。 [ 目的 ] 閉経前におけ
る MD の規定因子を調べるためにこの研究を行った。[ 対象 ]2012 年に当院で
生活習慣病検診と MMG 行った閉経前の受診者 399 例、平均年齢 43.7 ± 4.3
[ 方法 ]MD の評価は放射線科医により MD を BI-RADS により評価。脂肪、散
在性を低濃度群 (LD)、高濃度不均一・高濃度を高濃度群 (HD) と 2 つに分類し
た。LD と HD における、肥満に関係するデータ(BMI、腹囲、体重増加、糖・
脂質)他に年齢や乳癌のリスク因子(乳癌家族歴・授乳期間・初経年齢、飲酒・
喫煙歴、出産歴・初産年齢)を比較検討した。さらに乳癌家族歴を有する者で
Sub Group(FH) を作り同様の検討をおこなった。統計処理は 2 群間の評価を
t- 検定・χ 2 検定 またロジスティック回帰分析による多変量解析をおこなっ
た。[ 結果 ](1)MD の評価 脂肪性 9、散在性 102、高濃度不均一 237、高濃
度 49 例であった。(2)2 群間の比較(表)LD における BMI、腹囲、LDL、TG、
FBS、HbA1c、体重増加例(率)はいずれも HD に比し有意に高かった。また
逆に LD における HDL は HD に比し有意に低かった。 飲酒歴(率)は有意に HD
で高かった。年齢・他のリスク因子はすべて有意差はなかった。(3) 多変量解
析 BMI で調整し評価すると、すべて有意差は減弱した。(4)FH 肥満関連因
子のみが有意な因子であった。[ 結論 ] 閉経前の MD は BMI による肥満度の影
響が最も強
く、 他 の 因
子の関連は
少なかった。
乳癌診断時期に季節変動があることが諸外国より報告されているが、本邦に
おける報告はない。そこで大阪府がん登録を用いて、1976 年より 2005 年ま
での 30 年間における乳癌診断の季節変動を調査した。 四季別の診断件数は
それぞれ 1976-1985 年は春 2,595 例 (26%)、夏 2,739 例 (27%)、秋 2,585
例 (26%)、冬 2,120 例 (21%)、1986-1995 年 は春 4,219 (26%)、夏 4,581
例 (28%)、秋 4,262 例 (26%)、冬 3,466 例 (21%) 、1996-2005 年は春 6,299
例 (25%)、夏 6,852 例 (28%)、秋 6,368 例 (26%)、冬 5,335 例 (22%) であっ
た。すべての年齢階級・すべての罹患年で乳癌診断件数は初夏に多く、冬に
少なかった。約 95%の症例が症状を契機に発見されていた。全体の 5%を占
める検診発見乳癌には上記のような季節変動はみられなかった。諸外国より
の報告では、乳癌診断の季節変動は国によって様々であり、背景に社会的文
化的因子があると思われる。本邦で冬に少ないのは年末年始の休みの影響と
思われるが、11 月より診断数が減る傾向があり、年末年始の休みのみでは説
明できない。また初夏のピークは衣替えの関与があるのかもしれない。2000
年代以後の乳癌検診の普及により、検診発見乳癌の割合が増加しているため、
このような季節変動が今後おきかわってゆく可能性がある。
11657
造血器悪性疾患と乳癌からなる重複癌 当科 19 例の検討
異時性両側乳癌症例の臨床病理学的検討
GP-2-067-01
GP-2-067-02
1
東邦大学医療センター大森病院 血液・腫瘍科、
2
東邦大学医療センター大森病院 乳腺・内分泌外科
1
名取 一彦 1、長瀬 大輔 1、石原 晋 1、斉藤 芙美 2、金澤 真作 2、
酒井 亜紀子 1、緒方 秀昭 2、和泉 春香 1
高畠 大典 1、清藤 佐知子 2、高橋 三奈 2、高嶋 成輝 2、青儀 健二郎 2、
大住 省三 2、高嶋 成光 2
2
〔緒言〕乳癌は知識の普及による早期診断、手術療法の改善と化学療法の工夫、
生物製剤の開発により予後は改善した。それに伴い長期生存が可能となり、
他臓器癌との重複例は増加している。女性に圧倒的な疫学を持つ疾患であり、
治療内容と性により特定の臓器に癌が発生する傾向もある。今回われわれは
乳癌に合併した造血器悪性疾患を検討したので報告する。〔対象及び方法〕
1988 年から 2012 年の期間で当院または他の施設において造血器悪性疾患と
診断された症例 270 例を対象とし、乳癌と病理組織学的に診断された重複癌
を検討した。重複癌の取り扱いについては Warren & Gates の重複癌の定義
に従った。異時性と同時性の鑑別は診断より 6 ヶ月以内を同時性、それ以上
を異時性とした。生存分析は Kaplan-Meier 法により、生存期間は診断日時よ
り死亡までの期間、または最終受診日とした。〔結果〕造血器悪性疾患を含む
重複癌は 270 例、の中で乳癌と病理組織学的に診断され治療を受けた症例は
19 例であった。全例女性、年齢中央値は 76 歳、異時性 17 例、同時性 2 例、2
重癌 18 例、3 重癌 1 例であった。異時性 17 例の間隔は中央値 132 ヶ月 (20324 ヶ月 ) で乳癌先行例は中央値 177 ヶ月 (24-324 ヶ月 )、造血器悪性疾患先
行例は中央値 106 ヶ月 (20-121 ヶ月 ) と乳癌先行例の間隔が有意に長かった。
造血器悪性疾患の内訳は非ホジキンリンパ腫 11 例、骨髄異形成症候群 3 例、
急性リンパ性白血病 2 例、急性骨髄性白血病 2 例、慢性骨髄性白血病 1 例であっ
た。乳癌先行例 13 例、造血器悪性疾患先行例 4 例であった。造血器悪性疾患
の治療内容は治癒目的治療 ( 寛解導入療法 )14 例、補充療法 ( 輸血療法 )3 例、
無治療 1 例で乳癌については全例治癒目的治療が行われていた。生存期間中央
値は 11 ヶ月 (2-84 ヶ月 ) で生存 9 例、死亡 10 例、死因は造血器悪性疾患 9 例、
別死 1 例であり、乳癌による死亡はなかった。〔考察〕乳癌の化学療法は 21 世
紀に入り新規抗癌剤の登場により選択肢が広がり、再発・進行期乳癌症例に
対する化学療法の成績も改善されている。予後が改善され長期生存例は珍し
いものではなくなった副作用として、新たな悪性腫瘍に罹患する症例も増え
てきた。乳癌先行例 13 例中、実に 11 例が他施設で手術を施行され、その中
で 1 例を除き前居住地の施設である。異時性例中 12 例 2009 年以降の重複癌
診断であった。は今後乳癌と診断されたのち、長期に渡って他の悪性腫瘍の
発生を前提に観察する必要がある。
高知医療センター 乳腺甲状腺外科、
独立行政法人国立病院機構四国がんセンター 乳腺外科
【目的と方法】新規乳癌発症患者で手術後対側乳癌の発生をきたす、異時性両
側乳癌症例をしばしば経験する。今回 1995 年から 2011 年度の 4570 例の手
術症例を検討し異時性両側乳癌の発症率、臨床病理学的な検討を行った。異
時性両側乳癌の定義として初発から対側発生までの期間 (DFI) が 1 年以上の症
例とした。【結果】年間手術症例中、術後 5 年以内の異時性乳癌発症率は平均
1.5%、10 年以内の累積発症率は 1.9%、15 年以内では 3.0% であった。発
症時期別に見ると 6 年以降 10 年以下で 1.1%、11 年以上 15 年以下で 2.3%
と経時的にみても対側発症率の上昇が見られた。DFI は中央値で 46 ヶ月で
あった。2000 年以降初発の異時性両側乳癌症例 63 例で臨床病理学的な検討
を行った結果、初発時の subtype と対側発生の subtype が同じであった症例
が 76.9%、異なった症例が 26.9% であった。このうち初発時 Luminal type
で対側発生が non luminal type であったものが 14.3%。初発時 non luminal
type で対側が luminal type であった症例が 47.6% となった。初発治療時の
ホルモン療法の施行により対側発生の subtype が non luminal に変化する割
合がやや増えたが有意差は認めなかった。初発時 Luminal type の症例にお
いて初回治療時のホルモン療法施行別での DFI でも両者に有意差は見られな
かった。また家族歴の有無では DFI に有意差を認めなかった。初発治療時の
化学療法を含めた全身療法の有無でも DFI に有意差は見られなかった。初発
時の閉経状態別では DFI に有意差は見られなかった。BMI と DFI でも有意な
相関は認められなかった。【結論】異時性対側発症に関連する因子としては家
族歴を含めて有意なものは確認できなかった。初発時が luminal type であれ
ば対側発症も多くは luminal type であったが non luminal type で発症する
症例も一部認められた。初発治療後のホルモン療法の施行により対側発症が
non luminal type に変化する割合が増加する可能性は示唆されたが有意では
なかった。対側発症率は経時的にも減少傾向はなく初発治療後長期間経過し
た症例であっても対側乳癌発症には留意する必要がある。
427
一般セッション(ポスター掲示)
11574
11712
11922
妊産褥婦に関わる看護職者の乳がん検診に関する実態調査
乳癌患者の入院前身体活動と運動習慣の調査
GP-2-068-01
ポスター掲示
GP-2-069-01
関西医科大学付属枚方病院
1
西村 和美
池永 千寿子 1、岩松 希美 1、田中 旬子 2
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】 我が国において乳癌は、年齢別発症頻度をみると 30 歳代以降に上
昇し、40 ~ 50 歳でピークとなる。この時期は女性のライフサイクルにおい
て、妊娠・出産の時期とも一部重なっており、女性の社会進出に伴い高齢出
産が増加する現在、乳がん発症時期と重なってくる。Wei T. Yang 准教授ら
のデータによると、妊娠関連乳がんは、3000 人に 1 人罹患すると言われてお
り、妊産褥婦に関わる看護職が妊娠期から乳がん発見に向けた介入を行う為
には、看護職自身の意識が重要であると考え、実態調査を行った。【方法】対
象者:病棟看護師(5N・MFICU・11 N)、外来看護師(女性診療科)計
72 名 方法:調査表による留め書き法無記名自己記入式の調査方法【結果】ア
ンケート回収率は 72.2%であった。対象者の年齢は 20 ~ 30 歳代が最も多
く 80.7%を占めた。既婚者は 25%、未婚者は 65.3%、不明は 9.7%であっ
た。乳がん検診に関する設問「早期発見に効果的である」については「そう思
う」90.3%、「ややそう思う」9.7%であった。また「乳がんの心配がなければ
必要ない」については「そう思う」3.7%、「ややそう思う」1.9%、「あまり思わ
ない」28.3%、「思わない」66%であった。「受診場所がわからない」について
は「そう思う」10%、「ややそう思う」32%、「あまり思わない」18%、「思わな
い」40%であった。乳がん自己検診の有無については「している」39.2%、
「し
たことない」17.6%、「以前はしていたが今はしていない」19.6%、
「今後して
みたい」23.5%であった。その中で「している」の理由については「乳がん発見
に重要」21 名、
「簡単にできる」6 名、
「家族に乳がん患者がいる」4 名であり、
「し
ていない」理由については「触り方がよくわからない」15 名、「今症状がない」
13 名、「自己検診方法がわからない」7 名であった。 【結果】乳がん自己検診
を「している」と答えた人が低値を示しているのは受診行動がとれていないた
めである。常日頃から看護職者自身が自己検診を行えるように、院内の啓発
活動を行い、今後、妊産褥婦にかかわる者として適切な助言ができるように
患者への啓発活動を行っていきたい。 製鉄記念八幡病院 リハビリテーション部、2 製鉄記念八幡病院 外科
【目的】近年、癌発症における一次予防において、生活習慣との関連や運動習
慣や身体活動を推奨する文献が散在する。厚生労働省の健康日本 21 でも生活
習慣の一次予防における運動指針を策定・普及・啓発し、「健康づくりのため
の身体活動基準 2013」では従来の糖尿病・循環器疾患等に加え、癌も身体活
動によりリスクを減少できることを明確化した。そこで、乳癌と診断され手
術治療目的で入院した患者の入院前の運動習慣や身体活動について調査した。
【方法】対象は 2012.2-2013.11 に当院に乳癌と診断され、手術目的で入院
し、理学療法士が介入した女性患者 80 名のうち術前治療を施行していない
77 名 ( 右 30 胸、平均年齢 62.3 ± 12.8 歳、64 歳以下 44 名、65 歳以上 33 名、
BMI23.6 ± 4.0)。評価項目は、運動制限因子として嫌い 1- 好き 5 の段階点数
で質問した運動好嫌と運動器疾患の有無、国民健康栄養調査の「週 2 回以上、
1 回 30 分以上、1 年間継続」に従い入院前の運動習慣の有無、国立健康・栄養
研究所の改訂版『身体活動の METs 表』を用いて運動負荷を抽出し 1 週間の身
体活動量 ( 運動 + 生活活動 ) を算出した。「健康づくりのための身体活動基準
2013」の実施率を算出するため 16-64 歳では 3Mets 以上の強度の 身体活動を
毎日 60 分(23Mets・h / 週)に加えて 3Mets 以上の強度の 運動を毎週 60 分
(4Mets・h / 週)、65 歳以上は強度を問わず、身体活動を毎日 40 分(10Mets・
h / 週)を分類調査した。運動好嫌・運動器疾患の運動習慣への影響も分析し
た (p < 0.05)。
【結果】運動への好嫌:平均 3.2 ± 1.2。運動器疾患の有無:37.7%。入院前運
動習慣の有無:15.6%、身体活動量:60.6 ± 36.8Mets・h/ 週、中等度 (3Mets)
以上身体活動量 : 平均 16.3 ± 19.7Mets・h/ 週。「健康づくりのための身体活
動基準 2013」の実施の有無:65 歳以上 84.8%、65 歳未満 25%。運動好嫌は
運動習慣へ影響した。
【考察】23 年度国民栄養調査では女性の運動習慣は 29.2%に比較して、乳癌患
者の運動習慣は低かった。さらに中等度以上の身体活動量は低く、64 歳以下
の身体活動基準に達している患者も少なかった。今後の治療展開に伴う安静
や疾患への不安による活動制限が予想され、理学療法士として傾聴だけでな
く、運動が嫌い・運動器疾患が既往にある患者に対しての適切な生活活動指
導や運動指導などで 2 次予防への対応が求められる。
10792
11117
インターネットの乳癌情報は正しいか?
人工乳腺による乳房再建の保険導入において、当院で経験した
経済的課題
GP-2-070-01
GP-2-071-01
自治医科大学附属病院 乳腺科
芝 聡美、相良 由佳、宮崎 千絵子、上徳 ひろみ、大澤 英之、櫻木 雅子、
塩澤 幹雄、竹原 めぐみ、水沼 洋文、穂積 康夫
【背景】現代はインターネットの普及によりあらゆる情報が入手可能である。
しかしその情報が常に正確なものとは限らない。臨床現場ではインターネッ
ト等からの不適切な情報に影響され、標準治療を開始できず介入の遅れを来
たしている患者に遭遇することも少なくない。【目的】インターネットで入手
可能な乳癌の情報を、乳癌学会・NCCN ガイドラインと照合し、ガイドライ
ンの情報と異なる情報を発信しているウェブサイトを確認評価する。【方法】
2013 年 12 月 1 日に、Yahoo Japan、Google Japan の検索エンジンを用いて、
「乳癌」
「乳がん」「乳ガン」を検索した。各上位 20 のウェブサイト(のべ 120)
の内容について検討した。検索されたサイトを、1)ニュースグループ、2)情
報、3)広告、4)個人の体験、5)医療施設、6)商業団体、7)NPO・学会、8)
その他で分類した。ガイドラインの内容を踏襲しているサイトを A 適切、踏
襲していない内容を B 不適切とした。どちらにも分類できないものを C 評価困
難とした。【結果】Yahoo で検索すると「乳癌」843 件、「乳がん」846 件、「乳
ガン」901 件検索された。Google では「乳癌」843 件、「乳がん」846 件、「乳
ガン」908 件検索された。実際に 65 件のウェブサイトが対象となった。
「乳癌」
で検索すると、Yahoo・Google いずれも 10 位内に乳癌学会ホームページ・
患者さんのための乳がん診療ガイドラインが検索された。「乳がん」で検索す
ると NCCN ガイドラインが 20 位に検索された。「乳ガン」での検索ではいずれ
のガイドラインにも到達しなかった。内容に関しては「乳癌」で検索すると、1)
7.5%、2)22.5%、4)10%、5)5%、6)7.5%、7)47.5%であった。「乳がん」
では1)10%、2)42.5%、4)2.5%、5)10%、6)5%、7)25%、8)5%であっ
た。「乳ガン」では 2)60%、4)40%であった。B の割合は、
「乳癌」37.5%、
「乳
がん」35%、
「乳ガン」77.5%であった。その内容は民間療法、根拠のない誤っ
た情報が多かった。【考察】「乳癌」「乳がん」に比して「乳ガン」は個人の体験
に関するサイトが多く、内容的にも不適切なものが多かった。インターネッ
トで得られる情報には問題のあるものも多く含まれ、正しい医療情報の啓蒙
活動が必要である。
428
自治医科大学 形成外科
桂木 容子、宇田 宏一、宮崎 邦夫、菅原 康志
2013 年 7 月 に ナ ト レ ル 133 テ ィ ッ シ ュ・ エ キ ス パ ン ダ ー( 以 下 ナ ト レ ル
TE)
、及びナトレルブレストインプラント(以下ナトレル BI)が保険適応になっ
た。これにより患者にとってはより身近なものになったはずであるが、新規
採択するにあたって当科では経済的な課題から難渋する経験をした。社会的
な期待と関心が高まる一方、経費増の問題は置き去りになっているため、具
体的な数値と複数施設からのアンケート結果から現状と今後の課題を分析し
たい。当院ではこれまで PMT(欧和通商)の組織拡張器を使用していた。組織
拡張器の償還価格が一般用 31200 円・乳房用 32100 円である一方、当院にお
ける納入価格は PMT 49980 円、ナトレル TE 89628 円であり、その差額は
PMT 18780 円 ナトレル TE 57528 円 である。年間約 24 例(当院平均)と
して年間経費が 929952 円増となるため、経営部からは、なぜわざわざ経費
増となる材料とするのかと審査は保留となった。これに対し PMT と比較した
ナトレル TE の有用性、現在の人工乳腺に関する医療の流れ、大学病院という
機関施設としての役割、さらに入れ替えの時点で保険申請が可能となった事
で十分逆ザヤが解消されるだけの売り上げが確保できる事 を強調した。3
回に渡る文書による再申請、委員会への出席等の末、1 年間という条件付き
の認定に留まった(1年後に再審査)。次にナトレル BI については、納入価格
が 99713 円であるのに対して償還価格は 69400 円である。乳房再建術(人工
乳房)の保険点数は 42710 点であり、これに加えて麻酔や2泊3日の入院費、
薬剤費の概算は当院の場合約 20 万円であった。術者一人で所要時間が1時間
半でありながら売り上げ 60 万円あまりを出す事から、材料費は▲ 30313 円 /
件であるが、当院においては「逆ザヤが解消」とみなせる。しかしこれまでの
自費診療の場合と比較すると、材料については全て患者負担であったことか
ら 30313 円 x24=727512 円の経費増と試算され、半年という条件付きの認
定にとどまった。更に、非常勤先におけるナトレル TE の留置の場合には、入
れ替えができず逆ザヤが解消されない。このためナトレル TE 留置の条件を満
たしているにも関わらず、それが院内で許されない施設が出現してもおかし
くない。ナトレル TE の利点は専門家にとっては周知の事実かもしれないが、
各施設における導入にあたっては経済的・社会的課題がまだ残されている。
この点について問題提起と討議を行いたい。
ポスター掲示
10976
10146
ERAS と退院後のドレーン自己管理指導を導入した乳癌クリ
ティカルパス
地方都市における乳腺専門クリニックの役割~乳癌早期発見か
ら開放型共同診療システムによる病診連携まで~
GP-2-072-01
1
3
GP-2-073-01
ちばなクリニック ブレストセンター、2 中頭病院 看護部、
中頭病院 乳腺外科
1
3
座間味 さおり 1、鷲頭 真弓 1、真壁 良子 1、井上 あかね 1、高良 淳美 2、
座波 久光 3
井上 博道 1、川口 英俊 2、篠崎 恭子 3、金井 恵巳 1、鎌田 めぐみ 1、
大川 夕子 1、山下 哲子 1、中川 美樹 1、白石 祐希 1
【背景】地域がん医療の向上を目的として、2006 年がん対策基本法が制定さ
れ、全国でがん診療における病診連携が施行されているが、いまだ「がん診療
拠点病院」への患者の集中は改善できておらず、充分な医療サービスを提供で
きていないのが現状である。松山市は愛媛県の県庁所在地で、人口約 51 万人
と四国最大の地方都市である。それにもかかわらず今まで乳腺専門クリニッ
クは存在せず、四国がんセンターなどの大病院中心に乳癌治療が行われてき
た。そこで 2013 年 7 月に松山発の乳腺専門クリニックとして当院を開設し診
療を開始した。【目的】当院を開設するにあたって 2 つの目標を設定した。ひ
とつは「乳癌の早期発見に寄与する検診・診療体制の確立」とし、もうひとつ
は「がん診療拠点病院との開放型共同診療による乳癌治療の連携」とした。こ
の 2 点についての現状と問題点、今後の展望について検証する。【検診・診療
体制の確立】乳癌早期発見に寄与するため、一次検診・二次検診(精密検査)の
どちらも施行できる体制とした。松山市が対象年齢に配布する無料クーポン、
市が助成金を設定し一律 2000 円にて受診できる個別検診の双方に対応可能と
し、また「自費検診」「企業検診」にも対応可能とした。他の検診施設で「要精
査」となった方の二次検診(精密検査)として MMG、乳腺エコー、FNA、CNB
が受診当日にすべて施行できる体制とした。また初診者に対し、検診啓発の
指標とするため当院受診動機のアンケートを行なった。【開放型共同診療によ
る乳癌治療の連携】当院から徒歩圏内にある「松山赤十字病院」と開放型共同診
療の契約を締結し、オープンシステムによる診療体制を確立した。当院で診
断された手術適応の原発性乳癌症例は、癌告知後に市内近郊の癌診療拠点病
院である 4 施設(四国がんセンター、愛媛県立中央病院、愛媛大学医学部附属
病院、松山赤十字病院)を治療施設の選択肢として紹介呈示する。松山赤十字
病院を選択された場合のみ「開放型共同診療」として連携パスを作製、運営し
他の 3 施設を選択された場合は紹介受診とした。【結果・考察】2013 年 7 月 13
日の開業日から 11 月 30 日までの 4 ヶ月 2 週間で発見された原発性乳癌は 21
例であった。そのうち 13 例に対し開放型共同診療による手術を施行し、現在
も当院にて継続治療中である。さらなる症例の蓄積と連携システムの調整が
必要であるが、現時点までの状況と今後の展望について報告する。
11351
11916
無床クリニックにおける乳癌診療 -診断から緩和ケアまで-
病診連携における乳がん看護認定看護師の役割
GP-2-073-02
GP-2-073-03
八柱三和クリニック 乳腺外科
1
渡辺 修
松下 真美子 1、和気 友菜 2
【はじめに】当クリニックは無床ですが、近くの総合病院と連携して診断・治療・
緩和ケアを行っています。診断と化学内分泌療法はクリニックで、手術は総
合病院で私が週 1 ~ 2 日行っています。再発患者は緩和ケア病棟の緩和ケア
チームと連携しながら診ています。【緩和ケア】みさと健和病院 7 階病棟は緩
和ケア病棟で第一、第三木曜日に PCU カンファレンスを行い、その後病棟回
診をします。当クリニックの再発乳癌患者は、原則的にみさと健和病院緩和
ケア外来も受診して 2 科で診ていきます。PCU カンファレンスには当クリニッ
クから私と看護師が参加し、新たな再発患者や継続治療中の再発患者の報告
を行うとともに緩和ケア科からは当クリニックから受診中の患者の状況を報
告してもらい、情報共有します。精神的な問題がある場合は精神科医とカウ
ンセラーが介入します。緩和ケア病棟と連携することによって、疼痛コント
ロールのための一時入院や体調不良時の緊急入院、在宅診療のための支援な
どが可能となるほか、癌性疼痛や向精神薬投与は原則的に緩和ケア外来で行
うことで、より専門性が高い医療を患者が受けられるようになると考えます。
一方で、診断から手術、化学療法と主治医としてやってきた私が、再発した
患者を手放すことなく最後まで主治医として責任もって診ることができると
いう点も重要なことだと思っています。平成 23 年 1 月より連携を開始し、共
有した患者は 21 名、病棟での看取り 14 名、在宅での看取り 2 名です。【まと
め】無床クリニックであっても、緩和ケア病棟と連携することによって進行再
発乳癌患者を診ていくことができ、診断・治療・緩和ケアまで一貫して診療
することが可能となっています。
独立行政法人国立病院機構九州医療センター、2 医療法人うえお乳腺外科
【はじめに】がん対策基本法の施行により、がん治療の均てん化が進んでいる
が、患者の中には、大きな病院での診察を希望される方も多い。今回、自身
の希望で遠隔地より受診した患者に対し、看護師を中心に病診連携を図り、
治療環境の調整を行った。病診連携における乳がん看護認定看護師(以下 CN)
の役割について報告する【看護実践】患者 A 氏 女性 60 歳代 居住地で乳が
ん検診を受け精密検査となる。近医での細胞診で、悪性の診断。患者はホー
ムページで検索し、当院を紹介受診。病院 CN は、初診時から介入開始。 面
談にて、遠隔地への受診理由、病気に対する思い、家族状況など情報収集し
た。患者の気持ちを否定しないよう心がけ、思いを傾聴し、信頼関係の構築
に努めた。患者には、「病気の事を近所に知られたくない」「女性医師の診察
を受けたい」
「乳房再建は近くでは出来ない」
「大きい病院は治療が進んでいる」
という思いがあった。画像検査、針生検で乳がんの確定診断がついた時点で、
主治医と 1. 片道 3 時間の通院時間 2. 病院所在地に身内がいない 3. 乳がんは長
期的な経過観察が必要である状況等を再度検討。患者に居住地近隣での治療
を勧める方針となった。患者、主治医と相談し、患者の希望に沿った病院と
して、信頼できる医師、CN が在籍する診療所を選択し連絡。患者の同意を得て、
情報を共有し、連携を依頼。患者に対して、CNは 1. 患者の身体的、心理的、
社会的側面をアセスメントできる 2. コミュニケーション能力があり、心理サ
ポートができる 3. 治療方針に対する十分な知識がある事を伝え、転院後も必
要時は支援する事を保証した。診療所 CN と電話やメールで連絡を取り合い、
患者が安心して受診できるよう調整を行った。診療所CNは、情報をもとに
支援を継続し、医師も患者の思いを理解し支持的に関わった。【結果】患者は
居住地近隣の診療所での治療を意思決定し、無事に手術を終えた。患者は「先
生も看護師も話しやすかった。安心した」「とても感謝している。近くで手術
が出来て本当に良かった」と評価した。【まとめ】患者のために良い治療環境を
整える事は、CN の役割の一つである。また、病診連携において、CN はコーディ
ネーターとしての役割を持つ。今回は、信頼して連携できるネットワークを
利用し、患者に安心と満足を与えることができたと考える。
429
一般セッション(ポスター掲示)
近年の術前術後管理のパラダイムシフトは、多くの疾患に入院期間の大幅な
短縮をもたらした。当院はベット数 336 床で年間手術症例が 6200 症例を超え
る地域中核急性期総合病院である。全体の入院期間は 9.7 日未満で、乳癌につ
いても緩和ケヤ患者も含め 7.5 日であるが、ベットの空き状況はいっそう厳し
さを増し、入院期間の更なる短縮が求められている。当院における乳癌手術
は 1 例目は前日入院、2 例目以降は当日入院を基本としている。従来はすべて
前日午前 0 時より絶飲食の指導を行っていたが、2012 年 月より ERAS を導
入したことを契機に、術前絶食の見直しを行った。1 例目は前日夕食後より当
日朝 6 時まで OS- 1を飲水することとし、2 例目以降の当日入院患者は予想さ
れる手術開始前 3 時間前まで自宅でスポーツ飲料等の飲水を励行した。必然的
に当日入院患者の ERAS についての説明は、外来看護師が行っているが、ロ渇
期間の短縮が計られ、患者サービスの向上につながっている。また、当院で
は種々のオンコプラスティックサージャリーを導入し、その中で拡大広背筋
皮弁による同時再建術も行っているが、背部のドレーンは少なくとも 1 週間以
上の留置を要している。そのため、入院期間の短縮のためにドレーンを留置
したたまま、退院するパスを作成した。術後、5 日目より入院看護師より患者
と家族に簡易化されたドレーンの管理方法を指導し、術後 7 日目に退院として
いる。退院後は外来看護師により排液量のチェックや皮膚のトラブルも含め
たドレーンの管理を行っている。以上のような入院前、退院後まで含めたク
リティカルパス作成を入院、外来看護師が共同で作成することで、患者指導
と実際の業務の分担がスムーズにおこう行うことができ、患者の満足度を低
下させることなく、入院期間の短縮を更に可能にすることができると考えて
いる。
乳腺クリニック・道後、2 松山赤十字病院 乳腺外科、
松山赤十字病院 看護部
ポスター掲示
10496
10791
乳がん術前術後連携パスを利用した開放型病床共同診療のシス
テムの構築と運用の実際
転移再発乳癌の治療に関する検討と乳癌骨転移地域連携パスの
運用
GP-2-073-04
1
GP-2-074-01
松山赤十字病院、2 乳腺クリニック・道後
1
1
1
1
1
1
磐田市立総合病院 呼吸器乳腺外科乳腺外科、2 とものクリニック
伊藤 靖 1、後藤 圭吾 1、伴野 仁 2
篠崎 恭子 、川口 英俊 、越智 友洋 、橋本 浩季 、村上 通康 、
飛田 陽 1、山下 清美 1、井上 博通 2
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】当院近隣での乳腺クリニック開業を機に、乳がん手術症例をモデルケー
スとして平成 25 年 8 月より開放型病床共同診療(以下共同診療)の運用を開始
した。運用開始前に当院のがん診療推進室が主導で「乳がん術前術後連携パス
(以下連携パス)」を作成した。【目的】連携パスを利用した共同診療のシステム
の構築と運用の実際について検討し、今後の課題を考察する。【結果】平成 25
年 8 月 1 日から 11 月 30 日までの間に共同診療を利用した乳がん手術症例は
13 例であった。連携医療機関の登録医が主導権を握り、術前説明、手術の執
刀を行い、術後管理は当院常勤外科医を担当主治医とし、共同して行う事と
した。システムの構築は、看護師が調整役となり、関連する 11 部門(がん診
療推進室、地域医療連携室、乳腺外科外来、乳腺外科病棟、外来化学療法室、
手術室、放射線科、薬剤部、病理部、医事課、医療情報管理課)と協議を重ねた。
協議事項は、事務関連(契約書、登録医の手続き、同意書、診療記録、入退院
サマリー記録、加算、他科受診の手続き、病理診断書)、治療関連(主治医の
分担、緊急時の対応、検査や治療の分担、術後管理、術後補助療法の決定方法、
術後補助療法の分担、退院指導、服薬指導)、患者関連(患者説明の内容・時期・
ツール、患者負担への対応、パンフレットの共有、看護サマリーの作成と運
用)であった。連携パスの概略は、運用期間については、対象患者の発生時か
ら、術後連携医療機関での病理結果説明、または術後補助療法開始までとし
た。適応規準は、乳がん手術予定、告知あり、PS 0-1、連携パスへの同意あ
り、重篤な内科疾患がない事、とした。連携パスの項目は、達成目標、説明、
連携・連絡、患者持参物、診察・検査とした。患者入院中は、既存の院内ク
リニカルパスを利用した。運用方法は、連携施設が作成した連携パスを紙媒
体で患者に持参していただき、スキャナーにて電子カルテに保存した。【考察】
共同診療のシステムの構築にあたっては、連携パスの利用が効果的であった。
今後の課題は、1. 連携パスの運用の評価と修正、2. 共同診療における連携医
療機関との情報共有 3. 患者・家族、病院、連携医療機関のニーズを充足する
共同診療のシステムの更なる充実だと考える。
【背景】薬物治療の進歩により転移再発乳癌の生存期間は延長しており、骨転
移により移動能力が低下しながら長期に治療を受ける方も増加している。静
岡県中遠遠地区で内分泌療法反応性乳癌を対象に骨転移地域連携パスを作成
し治療の均てん化と QOL の維持を目的に運用を開始している。【目的】当院に
おける最近の転移再発乳癌の治療成績を検討し、問題点を拾い上げ、より質
の高い治療を継続できるように地域連携パスを改良する。【方法】2004 年 1 月
から 2014 年 12 月までに当院で治療を行った遠隔転移を有する原発性乳癌 31
例と、術後再発乳癌 54 例を対象とした。転移再発部位、subtype 及び治療内容、
生存期間、地域連携を行う上で問題となった点を整理し、特に生命に関わる
症状はないものの骨転移のため移動能力が低下した方に対する地域連携計画
に関して検討した。【結果】転移乳癌 31 例の 3 年生存率は 54.1%、生存期間中
央値は 30.5 ヶ月、ER+/HER2-:26 例、ER+/HER2+:2 例、ER-/HER2+:
3 例で、診断時骨転移を認めたものは 17 例、3 例でビスフォスフォネート投
与中顎骨壊死・骨髄炎が生じ、3 例に病的骨折が認められ、2 例は神経症状の
悪化から歩行困難となり療養型病院に転院した。再発乳癌 54 例は 5 年生存率
45.7%、生存期間中央値は 32.5 ヶ月、ER+/HER2-:34 例、ER+/HER2+:
6 例、ER-/HER2+:2 例、ER-/PgR-/HER2-:12 例、再発時骨転移を認めた
ものは 12 例で、4 例は HER2+ であった。骨転移に伴う神経症状が進行して 4
例が歩行困難となり、1 例は療養型病院に転院し、2 例はかかりつけ医に往診
を依頼した。【考察】連携医療機関及び薬局のリスト・地図を作成し、全告知
の上、症状が安定している場合は身近な医療機関で診療していただき、2 ヶ
月に 1 回程度主幹病院で診療する体制を整えているが、地域の歯科との連携、
今後長期化する HER2 陽性乳癌の治療に関する連携を考えていく必要がある。
10887
11042
当院における宮崎県地域連携パス導入後の問題点
山形県乳がん地域連携パスの現状とこれを推進する当科の取り
組みについて
GP-2-074-02
GP-2-074-03
1
県立宮崎病院 外科、2 県立宮崎病院 内科、3 県立宮崎病院 病理診断科、
4
県立宮崎病院 看護科
山形大学医学部 消化器・乳腺甲状腺・一般外科
大友 直樹 1、植田 雄一 1、牧野 裕子 1、大山 真由美 1、石川 恵美 2、
島尾 義也 3、仲田 恵美 4
鈴木 明彦、木村 青史、柴田 健一、佐藤 多未笑、蜂谷 修、木村 理
[ 目的 ] 乳癌患者が一部の施設に集中する傾向がある事は以前より指摘されて
いる。当院でも乳腺外来患者数の増加に対応するため、2008 年より県内の 3
施設にお願いして独自にハーセプチンの地域連携を開始したが、逆紹介率は
20%程度にとどまっていた。近年、地域連携の重要性が認識され、2012 年度
よりがん地域連携パスの整備はがん診療拠点病院の指定要件となった。本県
でも 2011 年 10 月よりがん地域連携パスの利用が開始された。当初は入院中
の地域連携計画書作成が必要とされ、病理結果を待っていると地域連携計画
書の期限内作成が困難で、当院でも半年間で 2 例と地域連携パス適応症例は増
えなかった。2012 年 4 月より、退院後 1 か月以内の治療計画書作成が認めら
れ地域連携パスの利用が飛躍的に増加した。導入後 1 年の時点での問題点を整
理し今後の展望を考察する。[ 方法 ] 地域連携の状況に関して、地域連携パス
導入前の 2010 年 4 月~ 2011 年 3 月までに当院で乳癌の手術を施行した 104
例(2010 年度)と地域連携パスが本格的に導入された 2012 年 4 月~ 2013 年
3 月までの 131 例(2012 年度)を比較した。[ 結果 ]2010 年度は 21%(21 例)
に逆紹介がされ、9%が乳房切除術後の内分泌療法、12%が独自の連携でお
願いしたハーセプチン投与症例であった。一方地域連携パスの本格導入後の
2012 年度は 64%(84 例)に地域連携パスが適応されている。適応外とされ
た 47 症例を分析すると、頻度の高いものから主治医の方針 38%、精神疾患
合併等の患者要因 34%、stageIV 手術例等の再発高リスク 19%、DCIS に対
する乳房切除術後で年に 1 回の対側乳癌検診で良いとされた 9%であった。当
院への紹介元は 32 施設(紹介率91%)に対し逆紹介先は 14 施設で、顔の見
える連携先への逆紹介が多くなる傾向にある。現時点でのバリアンスは 2 例、
再発例と内分泌療法中の高度肝機能障害例であった。[ 結語 ] 地域連携パスは、
がん地域連携指導加算が認められ、拠点病院側だけではなく連携先にもメリッ
トがあり、病診連携は飛躍的に前進した。一方で、手続きが煩雑で、主治医
によっては導入に消極的になっており、今後は手続きの簡素化が重要と考え
る。また、まだ全県下に認知されているとは言えず、連携パスの登録病院に
連携を断られるケースもあり学会発表等による周知が重要と考える、まずは
顔の見える連携から徐々に導入していく方針である。
430
山形県では,平成 22 年度より山形県がん診療連携協議会が中心となって 5
大癌に対してがん地域連携パスを作成し,運用を開始した。山形県乳がん地
域連携パス(以下乳がんパス)は,術後補助療法としてホルモン療法を行う患
者を対象として,かかりつけ医との連携をはかるものである。当科はがん診
療連携拠点病院であり,これを推進する立場から乳がんパスを積極的に運用
してきた。今回,山形県の現状と,これまで当科で行ってきた取り組みにつ
いて報告する。 [ 当科の取り組み ] 1) 入院時,乳がん手術症例のうち,当科
でのフォローを希望する患者以外の全例を乳がんパスの対象とした。2) 運用
に関しては,医師が「乳がんパス」とカルテに記載することで,地域連携セン
ターが患者に説明し同意書及び連携かかりつけ医の選定を行うこととした。3)
医師は,退院時までに手術記録のコピー,紹介状,共同診療計画表(テンプレー
ト),私のカルテへのサインを作成するのみと簡素化した。(がん治療連携計
画策定料を算定) [ 結果 ] 2011 年 6 月から 2013 年 10 月までの 30 ヵ月間
における山形県 7 拠点病院の乳がんパス運用数は 118 件であり,そのうち当
科は 50 件
(42%)
を占めた。
これは 5 大がんパスのなかでも最大件数であった。 [ 乳がんパス運用での変更点 ] 1) ホルモンレセプターの結果が退院時までわ
からないことが多い,またホルモン感受性陰性患者が連携してもバリアンス
になってしまうことから,がんパス適応患者を術後乳がん患者に拡大した。2)
連携医療機関が少ない(2013 年 11 月現在 89 カ所,地域差あり)ことより,登
録医でない医療機関にも連携し,その回は策定料を算定できないが,紹介状
に登録医になっていただくよう依頼する形で,働きかけるようにした。 [ ま
とめ ] 乳腺専門医,学会員の少ない山形県においては,専門機関でのフォロー
には限界があり,乳がんパスによって高血圧などの慢性疾患をフォローする
ように地域で患者を支えていく体制が必要であると考えている。
ポスター掲示
10041
11855
沖縄県離島における乳癌診療の現状 - 石垣島の場合 -
地方のがん拠点病院における乳癌診療の標準化に向けた取り組み
GP-2-074-04
1
GP-2-074-05
石垣島徳洲会病院、2 中部徳洲会病院
函館五稜郭病院 外科
稲田 一雄 1、池原 康一 2、木村 聡 1
早川 善郎、高金 明典、川岸 涼子、大槻 花恵
地方のがん診療拠点病院では、依然として、乳癌診療に携わる医師が少なく、
検診・診断・治療・教育・専門性の面で、不十分なことが多い。医療の標準
化・均等化が求められる現況において、一地方のがん拠点病院における取り
組みについて紹介する。1. 検診・MMG の精度管理 医師のダブルチェッ
クは必須であるが、撮影する放射線技師(すべて読影 A 評価)も読影に加わっ
てもらい、読影経験の少ない医師の不足分を補うようにしている。臨床検査
技師も、読影講習会や MMG 読影カンファレンスに積極的に参加してもらい、
MMG と US での総合検診・診断精度を上げている。2. 院内乳癌キャンサー
ボード 原発・再発乳癌症例の診断・病理・治療の検討だけでなく、メディ
カルスタッフ(放射線技師・臨床検査技師・薬剤師)や他科の医師によるミニ
レクチャーなども行い、モチベーションの向上と知識共有を目指している。3. 地域乳癌キャンサーボード 院内キャンサーボードを発展させ、がん拠点病
院同士や開業医を含め、地域全体での乳癌キャンサーボードを定期的に開催
している。他の病院の医師・メディカルスタッフとの意見交換は、自分一人
での考えになりがちな地方の病院では非常に有意義なことである。4. 乳癌
地域連携パス 函館市では、市内のがん拠点病院と市医師会の間で、5 大がん
の地域連携パスの共同作成・運用を行っている。乳癌地域連携パスも、各病
院から医師・メディカルスタッフ・事務がチームで参加し、乳癌手術を受け
た患者に対する情報提供(薬剤・食生活・自己検診・がん相談支援・患者会情
報 etc)を行い、活用している。 地方の病院での乳癌診療は、一つの病院で
完結することは難しく、地域全体で考えていくことが重要であると思われる。
11026
10457
乳腺クリニックと癌診療拠点病院の間における特別診療連携の
運用実績
乳癌術後患者におけるリンパ浮腫および肩関節可動域制限に対
する連携
GP-2-074-06
GP-2-074-07
1
医療法人社団そらち乳腺・肛門外科クリニック
3
小西 勝人、叶 亮浩
【背景】近年、がん診療連携拠点病院と地域医療機関の間の連携が進められつ
つあるが、現状では、術後の投薬フォローを依頼する後方連携のみの場合が
多い。【目的】患者としては、手術を大きな病院で受ける方が、安心できる場
合が多い一方で、自分の手術を担当した執刀医または主治医に術後もみて欲
しいという思いが強い。【方法・結果】当院とがん診療連携拠点病院の間で、
術前から術後まで、前方・後方トータルの連携を行っおり、実際の手術の執
刀および術後のフォーローまで最初に乳癌と診断したクリニックの医師が責
任をもって関わる事のできる、特別な地域医療連携を行っている。その運用法、
実績、クリニカルパス、問題点について具体的かつ詳細に報告する。
431
安来第一病院 乳腺外科、2 安来第一病院 リハビリテーション科、
安来第一病院 一般科外来
杉原 勉 1、太田 真英 2、福島 菜穂子 3、湯浅 利美 3
2007 年に閣議決定されたがん対策推進基本計画では、5 年以内に 5 大がんに
関するに地域連携クリティカルパス(以下連携パス)を整備することが求めら
れている。このことを受けて島根県松江圏域では 2011 年 4 月より乳がん連携
パスの運用を開始した。当初は比較的再発リスクの少ない Stage0 ~ 2 期患者
にて、無治療あるいは内分泌治療で経過観察をする患者を対象とした。しか
し圏域内における high risk 患者へのパスの拡大の要望もあり 2013 年 11 月の
時点では化学療法中の支持療法連携パスや、化学療法後の術後患者もパスの
対象となっている。連携病院にて術後患者を経過観察する上において再発徴
候の有無確認だけでなく、生活習慣病やその他疾患への対応も求められてい
る。さらに乳癌術後特有の合併症である患側の肩関節拘縮予防やリンパ浮腫
にも注意する必要がある。肩関節拘縮やリンパ浮腫ケアに関してはがん拠点
病院での術後において十分に指導を受けてはいるが、人的・時間的な面から
継続的なケアに限界があることから、連携病院に紹介された際に肩関節可動
域制限が著しいケースや、リンパ浮腫への問題意識が希薄で浮腫が悪化して
いるケースもある。そのため連携病院にて再度リハビリを必要とする事例が
生じている。当院では 2010 年 4 月~ 2013 年 11 月末までの間、がん拠点病
院から紹介された 16 例の患者において術後(非再発転移)連携診療を行ってい
る。その中で 3 例の患者において当院リハビリテーションセンターで肩関節拘
縮やリンパ浮腫に対するケアを行っている。リハビリテーションセンターで
は理学療法士が中心となり 6 ヶ月間、肩関節可動域やリンパ浮腫を評価しな
がら理学的なケアを行っている。また拠点病院受診の際の診療参考になるよ
うに経時的な記録をした評価票を作成し診療情報提供書に添付している。当
院が実施しているリハビリ連携はまだ試行錯誤の段階ではあるが、その取り
組みについて報告する。
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】離島で乳癌診療を行うにあたり医療機関および医師が留意する点を明
確にするために石垣島徳洲会病院における乳癌診療の現状について検討した。
【対象】当院において 1 年間診療を継続した乳癌患者 25 名を対象とした。なお
当院は 2010 年以降 , 乳癌診療従事者が非常勤医として携わっている。【結果】
a) 年齢 ,TNM 分類 , 組織型 ,ER,PgR,HER2 の分布に特記特徴はない。 b) 内訳
は石垣島出身 20 名 , 県外から転入 5 名 . c) 全例手術施行患者であり施行施設
は , 当院 5 例 , 沖縄本島病院 16 例 , 県外病院 4 例 . d) 他院で手術の後 , 当院初診
18 例 . e) 診断・手術ともに石垣島 5 例 , 石垣島で診断・沖縄本島で手術 10 例 ,
診断・手術ともに沖縄本島 5 例 , 県外で診断・沖縄本島で手術1例 , 県外手術 4
例 . f) 初診年度は 2010 年以前 7 例・以降 18 例 , 手術施行年度は 2010 年以前
8 例・以降 17 例 . g) 当院の手術術式内訳は Br+Ax3 例 ,Bp+SNB2 例 . h) 術
前化学療法 3 例 , 術前内分泌療法 1 例 . i) 術後化学療法 9 例 , 術後内分泌療法 11
例 . j) 再発 4 例 ( 沖縄および県外手術症例 ), うち死亡2例 . k) 術後病理学的検
索で断端陽性のため追加切除 1 例 ( 沖縄本島病院 ), SNB 術後病理学的検索で
陽性のため腋窩廓清追加 1 例 ( 当院 )【結語】a)2010 年以降明らかに , 本島に主
治医を持つ乳癌患者のバックアップを含めて当院受診患者が増加している。b)
SNB・切除断端の術中迅速組織診が不可能であるための demerit がある。【考
察】a) 離島でも標準的治療は可能であるが , より専門性を追求する患者には本
島への受診や通院はやむを得ず , 離島患者が安心して治療を受けられるよう ,
両者の担当医の連携を密にすることが重要である。 b) 乳癌の診療ガイドライ
ンは刻々と改訂され , 治療の個別化・多様化が進んでおり , 医師にも専門性が
求められる。離島診療として特別な指針は必要ないが , 常に変化する治療方法
を熟知し , 患者の希望する治療を提供できるよう心がけることが重要である。
c) 今後 , 術中迅速組織診断を避けるための対策として , 乳房手術に先んじて外
来対応の局所麻酔下センチネルリンパ節生検を施行し , 乳房手術の前に腋窩リ
ンパ節廓清の有無の決定や手術治療方針を決定することや乳房温存手術にか
わる皮下乳腺全切除・再建術の採用の考慮も必要と考える。
11548
10928
再発乳がんで外来化学療法中の独居患者のサポートの問題点
女性医師による乳腺クリニックの役割
GP-2-074-08
ポスター掲示
GP-2-075-01
聖マリアンナ医科大学ブレスト&イメージング先端医療センター附属クリ
ニック
ミモザ マンマクリニック
有賀 浩子
今井 陽子、神蔵 奈々、開發 めぐみ、福田 羽衣、松崎 邦弘、川本 久紀、
福田 護
2010年5月に乳腺外科・外科を標榜して乳腺クリニックを開設した。松
本市では女性医師による乳腺外科開設は初めてであったため周囲の理解も乏
しく、市内の開業医による検診業務に加わるのは無理と言われたり、病院勤
務の頃は当然のように検査技師・放射線技師・薬剤師・細胞検査士・理学療
法士など多職種の人たちと関わり合いながら診療ができていたがクリニック
になると看護師と自分だけで診療をすることとなった。チーム医療という時
代と逆行する形で始まったクリニックであるが、現在では関連病院と連携を
とりながらリハビリ・画像検査等を依頼している。又、検診・診察の場合は
女性医師の方がよいとのアンケート結果があるように検診目的の受診者も増
えてきた。スタッフが少ないため密にコミュニケーションをとることができ
乳癌患者1人1人の治療状況を把握し治療に関わっていくことができている。
乳癌治療に関して病院でしかできないこと以外極力対応しているが、夜間・
休日の対応は困難となっている。乳腺クリニックとして開設して更に画像診
断に特化し検診の必要性の啓蒙・受診率の増加・検診精度の上昇に努め、今
後は地域連携も広げる必要があると思われる。
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】身寄りのない独居患者の外来化学療法で 1. 在宅ケアが必要な人に
対する化学療法中のケアの問題 2. 訪問看護師との情報共有の問題 3. 身寄
りがない人が持つ死後の問題があるケースに直面した。このような場合の問
題点を検討する。【症例】首都圏在住の 60 代女性 右乳がん肝転移、両親と夫
は他界、親族とは絶縁。生活は同じ集合住宅の近隣者が食事の差し入れをし
ていた。無職、預金で暮らしている。
【経過】2010 年肝転移にて化学療法を開始、
2013 年より6th Nab-PTX(b-w) を導入している。治療直後より PS の低下が
あり短期間での体重減少や不潔な服装での通院があった。近隣者からも入院
治療の要請があったが、主治医はこのままの治療継続が最善と考えた。そこ
で迅速な在宅ケアのサポートをケアマネージャー、看護師、MSW と検討した。
治療による有害事象のフォローは訪問看護師が行い、同時に生活環境の立て
直しが必要と考え連日のヘルパー派遣を考えた。在宅サポート開始後、訪問
看護師から日常生活が破綻しており整えるには時間がかかること、有害事象
の対応、特に支持療法が上手く活用できないとの報告があった。患者経由で
は情報や指示が適切に伝わらないことが多いため、患者指導と同じ指導箋を
訪問看護師に渡し説明し、支持療法等の処方箋は訪問看護師ステーションに
郵送して対応した。また電話で連絡を取り合いずれが生じないようにしていっ
た。一方で患者死亡後の遺品管理やお墓の問題も浮上し MSW 調整のもと成人
後見人制度の手配も行った。在宅ケア開始約 6 か月始後、自宅で転倒し骨折し
たため入院、その後お亡くなりになった。【考察・まとめ】1. 本人からの申告
だけでは生活環境の全ての把握は難しく訪問看護師と外来看護師の双方向の
情報共有が重要。2. 外来看護師より乳がん治療法の情報提供と有害事象の情
報共有 3. 身寄りがない人の死後の問題は様々であるが、急な容態変化も考え
対処していく。
11379
11586
女性医師のキャリア継続支援に対する労働環境への取り組み
抗凝固薬・抗血小板薬服用中乳癌患者に対する乳腺針生検の現状
GP-2-075-02
GP-2-076-01
自治医科大学 乳腺科
国立病院機構長崎医療センター 外科
竹原 めぐみ、櫻木 雅子、宮崎 千絵子、芝 聡美、相良 由佳、
上徳 ひろみ、大澤 英之、水沼 洋文、穂積 康夫
前田 茂人、渡海 由貴子、遠山 啓亮、森田 道、中島 一彰、伊東 正博
【はじめに】女性医師の増加は近年ますます加速している。ただ、女性医師に
は年齢的にキャリアを積むべき時期と、育児などの時期が重なることが多い
という社会問題も存在する。この時期の女性医師が離職せざるを得ない状況
になることなく、家庭と仕事との両立をはかることが出来る職場環境の整備
が急務である。【当院の支援システムについて】当院では 2007 年に女性医師支
援センターとして立ち上げられた支援システムがあり、2012 年からは男性医
師や大学院生なども対象とした医師・研究者キャリア支援センターが稼働し
ている。主な支援システムは、保育ルームなどによる育児支援(病児保育を含
む)と、時間短縮勤務などの制度である。改善改良を重ねながら、より利用し
やすいシステムを目指している。女性医師にとって、頼れる実家などが近く
にない場合でも、本人の希望に応じてフルタイム勤務や講演会出席なども可
能となっている。また、対象を男性医師にもひろげてから、現在までに4名
の医師が育児休暇の取得や時間短縮勤務を利用している。これらのシステム
について紹介したい。【当科における取り組みについて】当科のスタッフは現
在ほとんどが未就学児の母である。このため、キャリアを継続できるような
システムの構築してきている。主には、当直から宿直体制への移行、各種カ
ンファレンスを早朝夜間におこなわず可能な限り勤務時間内にすることであ
る。これに加えて上記の支援システムを利用することにより、本人の希望に
合わせて産休明けまたは育休明けでも無理なく勤務が継続できるようになっ
ていると考えている。【おわりに】どんなに素晴らしいシステムが整っていて
も、利用できなければ絵に描いた餅に過ぎない。利用しやすい環境を整備す
ることも重要であるが、利用する立場としても権利のみを主張するのではな
く、職場同僚や家族などの理解や協力などの支援あってのものであり、これ
に感謝しつつ出来る範囲で出来るだけの仕事をすることで、自分自身も職場
における重要な戦力であるべく家庭と仕事の両立を目指していくことが重要
である。このようにキャリアを継続できることは、女性医師のみならず男性
医師、ひいては病院全体の労働環境の改善につながっていくと考える。
【背景】乳癌の診断において、乳腺針生検による組織学的評価は不可欠であり、
患者に施行される最初の観血的手技である。一方、脳梗塞や心疾患等のため
抗血栓薬を服用中の乳癌患者に対して、針生検時に抗血栓薬を休薬するか否
かについての一定の見解は得られていない。そこで、抗血栓薬服用中の患者
に対する乳腺針生検の現状を検討した。【対象】2013 年 1 月から 12 月までに、
乳腺腫瘤の患者 140 例 ( 内訳;乳癌 103 例、良性病変 37 例、平均年齢 62 才 )
に対して乳腺針生検を施行した。当院では、2013 年より薬剤師による常用薬
チェックが開始されている。【針生検手技】16G 生検針を用いて超音波ガイド
下に 3 か所以上穿刺し、穿刺後は看護師により約 5 分間の圧迫止血を行ってい
る。【検討項目】1) 抗血栓薬服用例数、2) 抗血栓薬の内訳、3) 針生検直後か
ら 7 日間の出血の有無【結果】1) 140 名中 8 名(平均年齢 75 歳、5.7%)が抗血
栓薬服用中であった。服用原因疾患は、脳梗塞 4 例、労作性狭心症 1 例、閉塞
性血栓症 1 例、高脂血症 2 例であった。 2) 脳梗塞に対して抗凝固薬が 1 例、
その他 7 名には抗血小板薬が投与されていた。3) 生検直後から 7 日間の検討
では、抗血栓薬服用の有無に関わらず生検部の腫脹例や出血例は認められな
かった。【考察とまとめ】循環器病学会、脳卒中学会、消化器内視鏡学会等の
ガイドラインでは、
「『術後出血への対応が容易な体表の小手術例』においては、
ワーファリンや抗血小板薬の服用継続は一般的に同意されている。」と記載さ
れている。今回の検討でも、服用の有無に関係なく出血は認めていないこと
から、抗血栓薬の休止なく乳腺針生検は可能かもしれない。しかし、抗血栓
薬服用患者に対する乳腺針生検のリスクとベネフィット評価について大規模
調査はなされていない。今後、外科学会や乳癌学会等による抗血栓薬服用患
者の乳腺針生検におけるガイドライン等の整備が望まれる。
432
ポスター掲示
11192
10179
当院での乳癌化学療法時の B 型肝炎ウイルススクリーニングの
現状と再活性化対策について
乳癌手術における医療安全とリスクマネージメント
GP-2-076-02
1
GP-2-076-03
千葉大学 臓器制御外科
横浜市立市民病院 検査部、2 横浜市立市民病院 乳腺外科
長嶋 健、榊原 雅裕、三階 貴史、藤本 浩司、鈴木 浩志、大久保 嘉之、
藤咲 薫、椎名 伸充、榊原 淳太、宮崎 勝
千葉 泰彦 1、鬼頭 礼子 2、石山 暁 2
11381
11426
EPUB を用いた診療マニュアルの電子化
幼い子供を抱え夫婦でがんの終末期を迎えた一症例~乳がん看
護外来の役割から検討する~
GP-2-076-04
GP-2-077-01
がん研究会有明病院 乳腺センター
1
飯島 耕太郎、蒔田 益次郎、中島 絵里、坂井 威彦、荻谷 朗子、
森園 英智、何森 亜由美、宮城 由美、岩瀬 拓士
診療を行う場合、診断・治療の判断に各種ガイドラインに準じたものを行う
ことが原則であるが、これ以外に各診療施設でのローカルルール、また診療
や治療に直接関わらない院内規則などに準じることが要求される。近年にな
り、これらがかなり膨大になっていることや、改変がかなり頻繁に行われる
ことが多く、各医師が暗記的に対応を覚えて診療を行うことは困難になって
いる。そのため診療マニュアルや診療指針が各施設でつくられているが、そ
れを記憶しておいたり紙媒体の場合随時携帯参照することは労力の面から実
情にあわなくなっている。最近、電子書籍機器ならびにコンテンツが充実し
てきており、それを診療上のマニュアルとして用いれば更新・携帯・検索参
照を行う上で有利ではないかと考え、電子書籍でのマニュアル構築を検討し
ている。電子機器としては、最近スマートフォンやタブレット、またパソコ
ンなど、種々の機器があるが、多くの場合はやや重量がかさむこと、また
駆動時間の点で問題がある。最近の機器として、電子ペーパーを使った機器
(amazon kindle,kobo 等)はモノクロのみであるが軽量であることや駆動時
間が長いこと、さらに多くの場合は安価であることから、実際に持ち歩きや
大量導入について有利であると思われる。また、電子ファイルとしては、多
くの場合紙媒体の代わりとして ADOBE Acrobat(PDF)を使うことが多い
が、閲覧する端末の大きさが変わってもレイアウトが変わらないなど、視認
性に問題がある場合が否めない。電子書籍のファイル形式として、米国の電
子書籍の標準化団体の 1 つである国際電子出版フォーラムが公開している仕
様(EPUB 形式)が広く用いられており、この形式で作製されたもののレイア
ウトは端末サイズや使用する個人の好みにより自動的に見やすい形状に変更
されるなど、ユーザーにとって使いやすいものにできる。これらの電子ペー
パー機器と EPUB 形式によるコンテンツ作成を行い、マニュアル・指針の実運
用に貢献できるかを検討する。
市立貝塚病院 看護局、2 市立貝塚病院 高度乳がん検診・治療センター
梅本 郁奈子 1、直井 愛子 1、近藤 麻美 1、島 美由紀 1、川崎 京子 1、
西 敏夫 2、稲治 英生 2
【はじめに】当院では平成 24 年 12 月より乳がん看護外来(以下看護外来)を開
設し、乳がん看護認定看護師が平成 25 年 10 月 31 日までのべ 104 名の患者と
の面談を行った。看護外来では患者の生活に密着し時には私的な問題にまで
関わる必要があり、さらに医師や看護師だけでは解決できない問題も多くチー
ム医療の重要性も痛感している。今回夫婦でがんの終末期と診断された乳が
ん患者を看護外来や他職種とのチームでサポートを行ったが非常に難渋し、
終末期乳がん患者に対する看護外来の役割について検討したので報告する。
【事例】40 歳代女性A氏、夫と幼児の子供の 3 人暮らし。X 年に腫瘤を自覚し
受診。術前化学療法後に乳房切除術と腋窩リンパ節郭清施行。この入院をきっ
かけにA氏から副作用や生活や育児に関しての細かい相談を受けその都度対
応していた。手術より 1 年後骨転移・肝転移を伴う転移性乳がんと診断された。
化学療法を行ったが PD となり、姉妹と共に治療選択の相談のため看護外来
を受診した。不安を傾聴し本人の生きる希望は治療を続ける事という強い思
いがあり治療を継続する事になった。同時期に夫がすい臓がんと診断された。
この頃からA氏は強い不安や不眠に襲われるようになり看護外来を窓口に来
院する事も多くなった。緩和ケア認定看護師とがん性疼痛看護認定看護師と
共に不安の傾聴やサポートを保証し、夫や姉妹の精神面の把握も行った。ま
た緩和ケアチームで本人の症状緩和や入院のタイミング等検討した。A氏は
治療を続ける事で生きる希望を見出そうとしていたが副作用や体力の衰えか
ら思うように動けずパニックとなり子供に母親らしくできず悩んでいた。治
療を継続するか友人の看護師や主治医と相談し一旦治療を中止したがその後
も悩み続け、近隣の緩和ケア病院へも情報提供を行い専門的なカウンセリン
グを受け少しパニックは落ち着いた。自宅では友人の訪問や訪問看護や在宅
サービス、育児サポート受け在宅療養を継続している。夫は現在緊急入院し、
病状は悪化している。【考察】近い将来子供を残して死んでしまうという現実
に直面しているA氏と夫、家族の動揺や悲嘆は計り知れずサポートは非常に
困難であった。看護外来には問題が複雑な症例には患者との関わりが長期に
亘る事を意識した多様な情報収集によって直接介入する役割と、職種や病院
を超えたチーム医療の為に情報を整理・共有する間接的な橋渡しの役割があ
ると学んだ。
433
一般セッション(ポスター掲示)
医療事故は、手術室内において最も多く発生すると報告されている。乳癌手
術のような比較的侵襲が少ない手術であっても、その発生は皆無とは言えな
い。手術時に起こるエラーの半数以上は、状況判断の誤りやコミュニケーショ
ン不足等、手術手技以外のノンテクニカルスキル(NOTS)に起因しているこ
とが多い。本邦ではこれまで、手術チーム全員で手術の方針や問題点を確認
するような医療安全文化は定着していなかった。患者安全のための取り組み
の一環として、安全な手術のためのガイドラインが世界保健機構(WHO)より
発表され、多くの医療機関においてこの手術安全チェックリストの導入が進
められている。われわれは 2011 年 4 月から当院用に改変したチェックリスト
の運用を開始した。チェックリスト使用のポイントは、声を出して、職種を
越えて、一旦手を止めて、情報を共有することにより各スタッフ間のコミュ
ニケーションとチームワークを育成して、「起きてはいけないこと」の発生を
回避することにある。麻酔導入前確認(サインイン)は入室時のチェック項目
とし、手術室前に患者本人と外科医、麻酔科医、病棟看護師、手術室看護師
が集合した上で、患者誤認および手術部位誤認がないことを確認後に入室を
許可する方式とした。執刀前確認(タイムアウト)は、患者氏名、手術部位、
手術法、手術時間、予測出血量や輸血準備の有無を確認するとともに、全員
が名前と役割について自己紹介を行うことにした。退出前確認(サインアウト)
は、ガーゼ遺残等の不足が判明した場合に対応できるよう、閉創開始前に実
施する運用とした。左右の乳房の取り違いや切除部位の誤認を避けるために、
術前マーキングは患者とともに複数の医療者でオイフに隠れない部分に行う
べきであり、また乳腺の追加切除や腋窩郭清など術中に方針を変更せざるを
得ない状況が生じた場合には、意思決定を行った時点でチーム全員に変更の
方針が伝わるよう、再度のタイムアウトをすべきである。今回導入した手術
安全チェックリストの使用は、外科医が本来苦手であった手術室内のコミュ
ニケーションを補佐して医療安全を円滑に進めるツールとして、またスタッ
フ全員の情報共有および安全認識のために有用であると考えられた。
【はじめに】
B 型肝炎既往患者が化学療法等を受けることによりウイルスが再活性化する
de novo 肝炎が注目され,「免疫抑制・化学療法により発症する B 型肝炎対策
ガイドライン」に基づく対策が求められるようになった。化学療法の開始前に
HBs 抗原を検査し,陰性の場合には HBs 抗体,HBc 抗体も調べること等が推
奨されている。横浜市立市民病院(以下当院)乳腺外科でも必要性は認識して
いるが対策は十分とは言えない。今回,当院での乳癌化学療法時の B 型肝炎
ウイルススクリーニングの現状を調査し,再活性化対策について検討したの
で報告する。
【対象および方法】
平成24年12月から平成25年11月までの1年間に当院乳腺外科で化学
療法を施行した乳癌患者79名を対象とした。電子カルテの情報から化学
療法前に検査されていた B 型肝炎ウイルスマーカーを調査し,以後の肝機能
チェック状況,B 型肝炎再活性化の有無等について調査し,平行して考えられ
る再活性化対策を実施した。
【結果】
B 型肝炎ウイルスマーカーの検査記録があったのは79例中73例(92.4%)
であった。B 型肝炎キャリアを拾うための HBs 抗原は72例 (91.1%) で検
査されており,結果は全例陰性であった。HBs 抗原陰性例のうち HBs 抗体,
HBc 抗体まで検査されたのは1例で全て陰性であった。肝機能は定期的に検
査されており B 型肝炎の再活性化は認めなかった。
再活性化対策として,院内で de novo 肝炎についての情報共有を行い,HBs
抗原,HBs 抗体検査に加え,新たに HBc 抗体検査も院内で検査できる体制を
整えた。また,患者ごとの電子カルテのトップ画面から HBs 抗原,HBs 抗体,
HBc 抗体検査の実施状況一覧を表示できるようにした。調査結果から再活性
化リスクの評価が不十分と考えられる症例については患者ごとの電子カルテ
上の付箋メモ機能を利用して追加検査を勧奨した。
【考察】
今回の調査から,化学療法前の B 型肝炎ウイルススクリーニングが一部症例
で漏れていた可能性が判明した。また,HBs 抗原陰性症例のほとんどで追加
検査がされていないことが明らかとなり,既往感染の有無を確認するための
追加検査が望まれる。再活性化対策を充実させるためにはスクリーニングや
定期的な肝機能検査等の徹底を主治医任せにするのではなく病院全体のシス
テムとしてチェック漏れを防ぐ取り組みが必要と考えられた。
ポスター掲示
10700
10237
乳がん看護外来でのがんカウンセリング加算の取り組み
離島から沖縄本島へ定期的に通院する乳癌患者の費用、時間、
精神的な負担に関する研究
GP-2-077-02
GP-2-078-01
旭川医科大学病院 外来ナースステーション
1
浦添総合病院乳腺センター、2 那覇西クリニック、
宮良クリニック、4 豊見城中央病院 乳腺科、5 那覇市立病院 乳腺外科、
6
沖縄県立中部病院 外科、7 中頭病院 乳腺科
吉田 美幸
3
当院では H24 年 6 月から乳がん看護認定看護師による「マンマ相談/外来」を
開始し、その取り組みについては、H25 年の乳癌学会で報告している。開始
時に算定可能な診療報酬は「抗悪性腫瘍処方剤管理加算」「リンパ浮腫指導管
理加算」「創傷処置」とし、H24 年 9 月からは「がんカウンセリング加算」も開
始した。開始時には医師や医事課と対象患者・手順・外来診療録への記録内
容など、算定要件について確認し合った。その結果、手術後の病理結果説明
を受ける患者を対象として開始した。乳がん看護認定看護師は説明時に同席
し、同席できない場合でも説明後に患者・家族と面談している。場所は看護
外来の診療ブースを使用し、説明を聞いた今の気持ち・不明な点・聞き漏ら
した事などについて傾聴し補足説明を行っている。手術後の治療についての
質問が多いが、日常生活や疾患への不安を表出する患者・家族も多く、初期
治療開始時の不安対応の効果的な場となっている。不安の強い患者は、看護
外来での継続した面談対応につなげることもできている。乳がん看護認定看
護師が看護外来を行うことでの効果・必要性を周知していくためには、人数
や看護支援内容だけでなく、診療報酬としての効果を可視化していくことも
重要である。このように、看護外来でのがんカウンセリング加算への実践活
動を継続していくなかで見えてきたことを、考察をまじえて報告する。
宮里 恵子 1、玉城 研太朗 2、鎌田 義彦 2、蔵下 要 1、宮良 球一郎 3、
比嘉 淳子 4、宮國 孝男 5、𤘩宮城 正典 6、座波 久光 6、玉城 信光 2、
上原 協 2、小野 亮子 5、上田 真 6、尾野村 麻衣 7
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】沖縄県では 600 人が新たに乳癌と診断されており、うち 60 人は離島の
患者と推測される。島嶼地には乳腺専門医や病理診断医は不在で放射線治療
施設はなく、専門的な治療を求めて本島へ定期的に通院する患者は少なくな
い。離島から本島に通院する乳癌患者における、移動費や宿泊費を含めた経
済的、精神的な負担について調査した。【対象と方法】 対象は、沖縄本島の 7
つの医療機関で過去 5 年間に乳癌の手術を受けた 80 歳未満の患者とした。調
査内容は、年齢、術後経過年数、通院間隔と治療内容、居住地、移動にかか
る費用と時間、日帰り可能かどうか、費用の財源、不安や不公平感の有無を、
アンケート票を郵送して調査した。対象群として、同じ条件の沖縄本島在住
患者に対し同様の調査を行った。精神的な問題に関しては離島群に対しての
み行った。【結果】 離島群 67 名、対象群 75 名から回答を得た。通院の間隔
は対照群は 1-2 か月ごとが多く、離島群は半年ごとが多かった。術後補助療
法は化学療法、放射線療法、ホルモン療法のいずれもの内容に差はなかった。
通院にかかる費用は対象群の 86% が 3000 円以内と答えたのに対し、離島患
者では 67% が 1 万円から 3 万円と答えた。通院時間は対照群で片道 1 時間以
内が 95% だったのに対し、離島群では 60% が1時間以上 3 時間未満と答え
た。また日帰り受診が可能な患者は対照群の 98.6%であったのに対し、離島
は 57.4%であった。主治医と離れていて不安感を有した患者は、離島患者の
77%であった。年齢分布では 60 歳台と 70 歳台、50 歳台と比較すると 60 歳
台の不安が小さかった (p = 0.023、p = 0.052)。不安感と術後経過年数、費
用や時間との関連はなかった。本島在住者に比べ不公平感を有した患者は離
島全体の 79%であったが、年齢等との有意な関連はなかった。【まとめ】 離
島から本島へ通院する患者では本島在住の患者に比べ、約 10 倍の費用がかか
ると推定され、時間も倍以上かかると考えられた。また、移動時間はそれほ
ど長くなくても移動手段が限られているために受診のたびに宿泊を要する患
者がいることが分かった。離島から通院する患者の多くは不安感や不公平感
を有する。不安感と年齢の関係については、子育て世代は金額について、高
齢者は移動の体力に不安を感じている可能性があると考えられた。
11697
10986
進行再発乳癌の治療における社会的課題とその解決策について
の検討
通院による温存術後照射療法の継続が困難な広域医療圏におけ
る亜急性期病床を利用した乳癌診療
GP-2-078-02
1
2
GP-2-078-03
公益社団法人福岡医療団千鳥橋病院 乳腺外科、
公益社団法人福岡医療団千鳥橋病院 病理科
労働者健康福祉機構長崎労災病院 外科
岩田 亨、森内 博紀、前川 妃史、廣田 淳子
高崎 恵美 1、松下 能文 2
乳腺外科を約 4 年ぶりに再開した 2013 年の 1 年間で、針生検によって新たに
乳癌と診断されたのは 20 例であった。うち 5 例 (25%) は Stage3、4 の進行
乳癌、1 例は両側乳癌手術後 ( 他院 ) の再発例であった。さらに外科から引き
継いだ進行 1 例と当院における無料低額診療制度の利用を希望して転院して
きた再発 1 例の合計 8 例の進行再発乳癌の治療を行ってきた。当院は進行再発
乳癌の割合が有意に高いと考えるが、その社会的背景、課題と解決策につい
て検討する。
進行再発乳癌の 8 例は、全例女性、年齢は 37 ー 87 歳で平均が 62.4 歳、初診
断時のステージは 3B と 4 が 4 例ずつ、組織型は乳頭腺管癌 4 例 ( うち 1 例は浸
潤性微小乳頭癌との混合型 )、硬癌 2 例、充実腺管癌 1 例、浸潤性乳管癌 1 例
であった。また、triple negative が 3 例、ホルモン受容体陽性が 3 例、Her2
高発現型が 2 例であった。Triple negative のうち 2 例は 87 歳の Stage3B 例
と 62 歳で体動困難のため救急搬送されて初診した Stage4 例で緩和治療が中
心となった。また、61 歳ホルモン受容体陽性の 1 例は、卵巣癌 Stage4 に合
併した乳癌 Stage4 で、緩和ケア病院で緩和治療を行った。残りの 5 例につい
てはホルモン療法や化学療法を施行した。うち Her2 高発現型の 73 歳 Stage4
の 1 例は PD 後に薬物療法の変更が受け入れられず、約 1 か月半の治療拒否後
に治療を再開したがさらに PD となり、緩和ケア病院へ転院した。
なぜ進行癌が多く集まっているのか。当院が比較的低所得者や生活保護家庭
が多い地域にあり、貧困と理解力の低さによる受診の遅れがあると考える。
また、当院は無料低額診療制度を行っており、経済的に再発治療の継続が困
難になった症例が集まってくる可能性がある。その他、家族や仕事、通院の
手段などの問題もあった。
進行癌を減らす解決策としては、地域で無料の啓蒙活動を行う、検診受診の
すすめ、恐怖心を取り除いて病院受診の敷居を低くする工夫、などが考えら
れる。
初診時から非常に進行していたり病勢の進行により積極的治療が困難となっ
て緩和治療中心になっていく時の患者と家族への伝え方とそのタイミング、
その後のサポートも大切であると考える。また、早い時期からの緩和ケア病院、
診療所、訪問診療、訪問看護との連携も患者の選択枝が広がり、個々の患者
の希望に添った治療や終末期医療に繋がると考える。
434
当院がある佐世保市は長崎県北部の中核市であり、その医療圏は離島を含み
広域である。当院は急性期型、7:1 看護、DPC 参入化に運営されている。当科
は年間 500~550 件の手術、化学療法、終末期医療等を行い、平均在院日数は
約 14 日である。乳癌手術件数は年間約 70 件、乳房温存術の割合は 70~75%
である。放射線治療施設は医療圏全体で当院以外の市内 2 施設のみである。こ
のような環境の中で乳癌の標準治療を受けて頂くためには、毎日の通院によ
る術後照射の継続が困難であることを理由として乳房切除術が選択されるこ
とがないよう、治療環境を整える必要がある。当科では 2009 年から長期入
院可能な亜急性期病床の一部を術後照射目的の入院病床として利用して頂き、
当院からの通院継続による術後照射を行ってきた。今回は 5 年間の治療状況、
副次効果、問題点について報告する。対象と方法:2009 年 1 月から 2013 年
6 月までに当科で施行された乳房温存術 194 例中、通院による術後照射の継続
が困難な場合、亜急性期病床入院の上当院病院車にて治療施設へ通院、全例
で術後照射を完遂した。照射施設の協力を得て、当院からの治療患者は一定
の時間帯内で複数例を連続して治療して頂いた。結果:亜急性期病床利用照
射症例は 73 名で乳房温存術中における割合は 37.6%であった。利用者の年齢
は 39 歳 ~94 歳で平均 64 ± 12 歳、離島からの症例は 28 例であった。複数の
患者が一緒に治療を受ける状況となるため、患者相互の連携・協力・情報の
共有が得られ、自然発生的に患者間の相互援助が形成された。問題点として、
入院基本料金が亜急性期病床は一般病床より一日約 500 点高く、経済的に負
担が大きくなった。結論:亜急性期病床を利用することで、毎日の通院継続
が困難な場合でも標準的な乳房温存術を提供することができた。しかし経費
をはじめとして患者・家族の負担は大きく、社会的な問題点として残されて
いると思われた。
ポスター掲示
10655
11491
地域病院における乳がん診断後の患者行動様式の検討
アンケート調査から、就労支援を必要とする乳がん患者さんを
探る
GP-2-078-04
GP-2-078-05
JA愛知厚生連知多厚生病院 外科
1
群馬県立がんセンター 乳腺科、2 群馬県立がんセンター MSW、
群馬県立がんセンター 看護部、4 群馬県立がんセンター 医事課、
5
群馬大学大学院 病態総合外科学
保里 惠一
3
柳田 康弘 1、藤澤 知巳 1、宮本 健志 1、小池 由美 2、北見 奈菜子 2、
中嶋 美香 2、松沼 晶子 3、長谷 康夫 4、福田 美寿希 4、桑野 博行 5、
松木 美紀 3
【背景】乳がんの罹患のピークは、働き盛りの 40 から 50 歳代にある。女性の
社会進出が進む中で、乳がんに罹患した後も就業継続を希望する者が増加し
ている。また、治療や生活維持のためにも収入確保が必要である。しかし、
退職に至っていることが多いともいわれている。そこで、当院では 2013 年
度よりがん患者への就労相談・情報提供(就労支援)を開始したが、限られた
相談体制の中、重点的に支援すべき対象者を明らかにする必要があると考え
た。【目的】1)乳がん患者さんの就労の現状はどうなっているのか。2)支援の
ニーズがどこにあるのか。【対象と方法】2013 年 10 月のある 2 週間に外来を
受診した乳がん手術後、年齢 20-65 歳、女性、ステージ 0-3、補助療法また
は経過観察中の患者さんを対象とした。アンケートは無記名、手渡し式。診
察待ち時間に受けつけ事務員より 179 名に文書と口頭でお願いして、その場
で記入回収した。回収率 100%。
【結果】乳がんと診断された時の年齢層のピー
クは 45-49 歳であり、78%に配偶者がおり、21%が未婚・離婚・死別によ
り独身であった。職業は、会社員 23%、公務員 6%、非正社員 33%、自営業
13%、主婦・無職 25%。仕事についての考えは、正社員(会社員・公務員)
は、現在の仕事を続けたい 73%、治療に専念したい 23%に対し、非正社員で
は、66%、34%であった。現在の仕事を続けたいと答えた正社員の 18%(7
名)が転退職しており、その理由は、退職推奨 3 名、自主退職 3 名、不明 1 名
であった。非正社員では、38%(15 名)が転退職し、退職推奨 2 名、自主退
職 8 名、不明 5 名であった。転退職者の収入は、正社員で 86% (6/7), 非正社
員では、67%(10/15) で減っており、多くは 4 割以上の減収であった。【考察・
結論】乳がん患者の約 2 割に配偶者がなく、75%が社員・公務員・自営業とし
て働いていた。雇用労働者(正社員、非正社員)の 2/3 以上が現在の仕事を続
けたいと考えているが、約 1/4 が転退職を余儀なくされていた。やむなく転
退職される乳がん患者さんを支援するためには、雇用労働者で現在の仕事を
続けたいと考える方を乳がん診断時に抽出して、アプローチしていくことが
合理的であろう。
11163
11372
産業保健従事者の立場からみたがん経験者の就労支援
当院における乳癌診療の現況と地域差・施設差についての検討
GP-2-078-06
GP-2-078-07
名古屋第二赤十字病院
東京警察病院 外科
赤羽 和久、坂本 英至、小松 俊一郎、法水 信治、新宮 優二、稲葉 一樹、
田口 泰郎、伊佐治 孝洋、牧野 安良能、渡邊 将広、三浦 泰智、
山東 雅紀、大原 規彰、原 由美子、長谷川 洋
鈴木 純子、師田 暁
【はじめに】平成 24 年度から策定されたがん対策推進基本計画では、重点的に
取り組むべき課題のひとつとして、働く世代へのがん対策の充実を掲げ、就
労その他社会的問題への対応を挙げている。我々は、乳癌診療にかかわる医
師の就労支援に対する意識調査や乳がん経験者を対象とした就労調査を行い、
就労に対する医師と経験者の認識の相違に基づき治療スタッフの行うべき就
労支援のありかた検討し取り組みを行ってきた。【目的】産業保健従事者のが
ん経験者に対する就労支援状況を調査し、臨床との相違を検討する。【方法】
2013 年 6 月から 7 月までの間に、産推研東海地方会会員の産業保健従事者を
対象にアンケート形式によるがん経験者の就労支援調査を行った。アンケー
トは産推研東海地方会のメーリングリストを利用して送信し、会員は個々の
判断で回答を行った。【結果】19 名より回答を得た。医師 17 名、保健師 2 名で、
経験年数の中央値は 9 年(範 1-25 年)であった。18 名ががん経験者の職場復
帰や就労についての相談に対応した経験を有していた。就労可・不可の判断
にもっとも強く影響する因子として、作業内容、身体症状、本人の意思を挙
げるものが多かった。主治医から得たい診療情報としては、現在の治療内容、
これから予定される治療内容、日常生活での注意事項の順に回答が多かった。
抗がん剤(乳がん初期治療でのアンスラサイクリン 4 回→タキサン 4 回を想定)
治療中の就労については、条件付きなら就労可とする者が 6 名、就労不可が 4
名、わからないまたは判断できないが 7 名であった。【考察】同じ治療中であっ
ても個々の企業あるいは職種や職場によって就労可否の対応は様々であり統
一された見解はない。抗がん剤治療中の就労に関する医師の回答はアンスラ
サイクリン系で就労不可が 75.5%、タキサン系では 33.1%であり、治療レジ
メンごとに就労可否を判断する傾向にあった。回答者の多くががん経験者の
就労支援を発展させる課題として臨床現場との連携と答えているが、臨床と
産業保健従事者のそれぞれの立場から意見交換する方法としては診療情報の
やり取りしかないのが現状である。治療スタッフは個々の患者、それぞれの
職種により就労支援の在り方が異なることを念頭に置き対応を検討する必要
がある。
【背景・目的】当院は 2008 年 4 月に東京都千代田区から中野区に病院を移転し、
警視庁関連の職域病院としての役割のみでなく、地域の住民のための中核病
院としての役割を担っている。東京都内には乳癌診療を受けることができる
主要な施設が多く存在するが、都内でも地域に根付いた診療をしている当院
では全国の乳癌登録とは異なる傾向もあり、乳癌診療の地域差・施設差、当
院の役割について検討する。【対象・方法】2008 年 4 月から 2013 年 9 月まで
の 5 年半に、当院にて手術した乳癌初発患者 398 症例について臨床・病理学
的特徴と、全国の乳癌登録でみられる傾向との違いを検討した。
【結果】警察
の職域では女性の比率が低いこともあり、当院における乳癌患者層も主に地
域住民の占める割合が高く、60%以上が中野区在住、中野区・杉並区・練馬
区も含めると約 85%がこの地域在住者であった。年齢 26 歳~ 92 歳(median
63 歳)、年齢層は 60 代前半(60-64 歳)が 15.8% で最多、次に 60 代後半(6569 歳)が 14.3%であり、全国的には発症ピークが 40 代後半なのに対し、高齢
者の比率が高い傾向にあった。cStage は 0 期 5.8%、I 期 44.5%、II 期 43%、
III 期 6.5%、IV 期 1.8%であり、非浸潤癌症例が少ないが 0 期・I 期でおよそ
半数をしめる反面、IV 期であっても出血コントロールなどの目的で手術施行
例も多い傾向にあった。サブタイプは Luminal A 49%、Luminal B(HER2 陰
性 ) 30%、Luminal B(HER2 陽性 ) 5%、HER2 タイプ 6%、トリプルネガティ
ブ 10%であり、HER2 陽性乳癌の比率が低く、Luminal タイプの占める割合
が高かった。【考察】他県と比較しても都内には大規模な病院も多く、乳腺専
門医も約 16%が都内勤務である。その中で、当院の所在する中野区には乳腺
専門医は当院勤務の 2 名のみ、杉並区・練馬区あわせても計 5 名のみ、乳癌学
会の認定施設も中野区は当院のみ、杉並区・練馬区あわせても 2 施設のみで
ある(2013 年 12 月現在)。医療環境としては恵まれている都内でも地域差を
認めるが、どの年代の患者にとってもメリットが多い診療を提供できるよう、
癌以外の疾患も含めた他科との連携や受診の利便性、居住地域にて専門病院
と同等の検査・治療が可能な施設がどの地域にも充実していくことが望まれ
る。
435
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】一般の地域病院において、乳がんと診断された後の乳がん患者の
行動様式は様々である。都市部のがんセンターや大学病院など大規模病院で
の治療を希望する者も居れば、標準治療を逸脱した特殊な医療に走る者、通
院はするものの手術を拒否する者など様々である。今回、当院で乳がんと診
断された後に当院での標準治療を受け入れられなかった患者の実態を検討し
た。【対象】当院において、平成 22 年 1 月から平成 25 年 12 月までの 4 年間に
乳がんと診断あるいは治療された症例について検討した。【結果】当院で平成
22 年 1 月から平成 25 年 12 月までに乳がんと診断あるいは治療された症例は
合計 114 例であった。そのうち、当初から当院での治療を希望せず転院した
症例は 17 例(14.9%)であった。転院先の内訳は、がんセンター 7 例(30%)、
大学病院 3 例、一般病院 4 例、個人医院 3 例であった。その他、転院はしなかっ
たが当院での標準治療を受け入れられなかった症例が 7 例あり、その内訳は、
精査中に他の進行がんが見つかり手術適応から除外された症例が 1 例、手術
を拒否して内服治療のみを行っている症例が 2 例、術後に標準治療から逸脱・
転院した症例が 1 例、進行再発乳癌で通院治療中に転院した症例が 2 例、診断
後すべての治療を拒否した症例が 1 例であった。この中で、手術を拒否しなが
らも通院、内服治療をする 2 例の治療が特に問題となった。1 例は内分泌療法
が著効、経過良好であるのに対して、残り 1 例は奏効せず腫瘍が増大、局所の
発赤を生じて治療に難渋している。【考察】がんの治療はその人の一生に大き
く影響するものであり、最良の医療を期待する事は十分に理解できるところ
である。どこの病院でどのような医療を選択するかは多くの患者さんが悩む
ところであるが、その選択はすべて自己責任である。一方、標準的な治療や
手術を素直に受け入れる事が出来ない患者さんが少なからず居る事は、どこ
の病院でも経験する出来事である。これらの患者背景は様々であり、このよ
うな患者さんが地域の病院で安心した医療を速やかに受け入れることが出来
るような、新たなサポート体制の確立が急務と思われた。
ポスター掲示
10638
11111
登録の時代をいかに乗り切るか! 院内がん登録、NCD 症例登
録を円滑に行うための病歴記載の工夫点について
中学生を対象とした乳がん教育プログラムの開発
GP-2-078-08
GP-2-078-09
1
国立がん研究センター中央病院 乳腺・腫瘍内科、
国立がん研究センター中央病院 遺伝相談外来、
3
国立がん研究センター中央病院 乳腺外科、
4
京都大学大学院医学研究科 標的治療腫瘍学講座、
5
防衛医科大学校 病態病理学講座
2
東京共済病院 乳腺科
馬場 紀行、木谷 哲、太田 道治
一般セッション(ポスター掲示)
乳癌学会の症例登録が NCD に完全に移行してから 2 年が経過した。NCD は
2013 年より新しい version に移行するために、一部の施設でその試用が開始
されている。NCD 登録は多くの施設では医師が主導して行われている。理想
的には NCD 登録をデータマネージャー(事務職)に完全に任せることができ
れば、担当医の負担は大いに軽減される。しかし NCD 登録は一般外科と乳腺
専門医とではかなり項目数が異なり、医学的な専門性もより高度となり、事
務系職員や経験年数の少ない若い医師に「丸投げ」することには大いに不安が
ある。筆者は所属する施設の乳癌症例を全て登録しているが、登録を円滑に
行うための病歴記載や手術記録の工夫については前回の乳癌学会総会にて発
表した。新 version についても、いくつかの「癖」を感じながらも 1 症例 5 分以
内で登録できるようになった。NCD に加えて、2017 年からは全ての病院に
院内がん登録が義務化されようとしている。院内がん登録は標準 49 項目に細
目を加えると 60 項目となる。この中から 25 項目を抽出したものが地域がん
登録である。院内がん登録はがん拠点病院では既に講習を受けた登録専門事
務職による登録体制が確立しているところが多いが、わが国の多くの病院は
そのような事務職員がいないと思われる。院内がん登録の事務員を養成する
ための講習は拠点病院が優先されることが多く、これから登録体制を構築し
ようとする病院にとってはかなり不利である。将来的にはがん登録ー保険適
応ー標準治療の励行がリンクされることは容易に予想することができ、多く
の病院にとって「癌の診療」を継続する上で死活問題となる重要な課題である。
これだけ項目が多くなると、事務職員だけで完璧に登録事項を病歴から拾い
上げることは困難である。院内がん登録は担当医と登録職員の協力無くして
は不可能である。筆者は 2007 年から院内がん登録を行っており、登録担当事
務職員が容易にケースファインディングすることを可能とし、登録事項を効
率的に拾いやすいように病歴記載の工夫を重ねてきた。この工夫は NCD 登録
にも有用であり、院内がん登録用のシートを作ることにより種々の登録を円
滑に行うことが可能となる。本学会ではわれわれが試行錯誤を重ねて使用し
ている登録用のシートについて紹介したい。院内がん登録に対する要望点に
ついても述べたい。
前嶋 愛子 1、清水 千佳子 1、菅野 康吉 2、北條 隆 3、佐治 重衡 4、
津田 均 5、藤原 康弘 1
【背景】日本人女性 15 人に 1 人が乳がんに罹患する現在、偏見のない正しい知
識の理解と情報の取捨選択のため若年者への乳がん教育と啓発は必須である。
2012 年度のがん対策推進基本計画にがんに関する知識の普及啓発を進めると
明記されたことを契機に、がん教育を推進する動きが出てきているが、現時
点では学習指導要領や教科書に乳がんに関する具体的な情報はない。【目的と
方法】中学生への乳がん教育の授業と啓発パンフレットの妥当性・有用性を
評価し、教員による乳がん教育の可能性を探索することを目的に授業を行い、
その前後で教職員と生徒に質問紙調査を実施した。授業はシラバスに基づき
教員が行い、がん研究振興財団発行パンフレット「早期発見で治そう 乳がん」
を補助教材として使用した。質問紙では中学生の乳がんに対するイメージ、
知識を授業前後で比較し、男女差や学年差については独立性の検定を用いて
分析した。またパンフレットは平成 24 年度末に全国の中学校 10802 校へ配布
し、内容と使用状況について質問紙調査を行った(回収率 12%)。【結果】乳が
んの知識を問う項目の正答率は授業後には 22% から 65% へ上昇し、男女差
や学年差は認めなかった。授業前は、中学生にとって乳がんは「怖い(55%)」
病気であり、
「治る (42%)」、
「恥ずかしい (12%)」、
「自分に関係がある (29%)」
といった点についてはいずれも「わからない(52%、63%、51%)」という
回答の方が多数だったが、授業後には「怖い (60%)」が、「恥ずかしくない
(47%)」、「治る (61%)」、自分にも「関係がある (52%)」病気へと、イメージ
が明確となっていた。授業やパンフレットの内容については生徒と教員の双
方から肯定的な評価を得られたが、全国調査ではパンフレットを「活用した」
と回答したうち7割が配布のみにとどまり、十分に活用できなかった理由と
して、授業時間の不足や具体的な使用方法がわからないという意見が挙がっ
た。【考察】教員が行う授業により、乳がんに対する生徒の正確な知識の獲得
と関心の喚起が可能となることが示唆された。シラバスや補助教材といった
教育資材を提供することで、継続的な取り組みとして乳がん教育を学校教育
に定着させることができる可能性がある。授業の実施時期は、保健や理科な
ど既存の授業内容と関連がある中学 3 年生がふさわしいことが示唆された。現
場のニーズを踏まえ、今後より活用できる教育資材・授業プログラムの開発
を目指す。
11666
10955
乳癌術後化学放射線療法中に二次性血液腫瘍を来した症例の検討
当院における閉経後内分泌療法中の患者の肥満度について
GP-2-078-10
1
GP-2-078-11
近畿大学医学部 腫瘍内科、2 近畿大学医学部 外科
1
1
1
2
1
3
2
岩朝 勤 、鶴谷 純司 、中川 和彦 、菰池 佳史 、橋本 幸彦 、
安積 達也 2、新崎 亘 2
ちばなクリニック ブレストセンター、2 中頭病院 看護部、
中頭病院 乳腺外科
井上 あかね 1、座間味 さおり 1、鷲頭 真弓 1、真壁 良子 1、高良 淳美 2、
座波 久光 3
【目的】近年の術後放射線化学療法の変化に伴い早期乳癌患者は長期生存が得
られるようになった。しかしながら、これらの治療による晩期合併症に二次
性悪性腫瘍の発生が問題となって来ており、これらは治療関連白血病と総称
されている。その原因としては、化学療法ではアルキル化剤やトポイソメラー
ゼ II 阻害剤が挙げられている。またこれらの発症が乳癌患者の予後や QOL へ
与える影響が大きいと考えられる。今回我々は、早期乳癌術後の放射線化学
療法後に治療関連白血病を来した症例に関して治療内容や予後を含めて検討
を行った。【方法】当院において 2000 年から 2013 年の間、乳癌患者で術後化
学療法施行された患者を対象に二次生血液腫瘍を来した患者 3 名に関して予
後を含めた検討を行った。【結果】性別はすべて女性、年齢中央値 57.7 歳(4266 歳 )、 病 期 診 断 は す べ て stageII、 治 療 内 容 は 化 学 療 法(CAF 療 法、ACTaxane 療法および TC 療法)に加えて全例で放射線療法(50Gy)施行、化学療
法平均コース数 6、治療関連白血病診断までの期間中央値 45.9 ヵ月 (9-76 ヵ
月 )、診断病名 AML2 名、MDS1 名、後治療への移行は全例で施行、重篤な治
療関連合併症の有無に関しては特に認められなかった。また治療成績に関し
ても CR が得られるなど良好であった。【結論】術後化学放射線療法後に治療関
連白血病を来した 3 例ともすべて後治療移行は可能であり、予後に関しても完
解が得られるなど良好であるため、放射線化学治療終了後より厳重な観察が
必要となり、また早期の診断治療も必要と考えられる。
わが沖縄県では肥満が多く、40-69 歳女性の肥満率(BMI;25 以上の人の割合)
は 39.4%と全国一である(全国 26.6%)。※国民健康・栄養調査の概要 H20
年版当クリニックに乳癌で通院中の患者に肥満が多い印象があり、乳癌再発
への悪影響を危惧していた。そこで今回、乳癌で通院中の患者のうち、特に
予後に影響を及ぼすとされる閉経後内分泌療法を受けている人の実態把握の
ため調査を行ったのでその報告をする。 調査対象は、2007-2008 年に当
院で手術を受けた閉経後乳癌患者のうち、術後補助内分泌療法を受けている
122 人とした。これらに対し、手術時の体重、BMI、術後 5 年時の体重、BMI
を調査し、比較検討を行った。この結果、手術時の BMI の割合は 18.5 未満;4%、
18.5 以上 25 未満;30%、25 以上;66%(30 以上;28%)であり、肥満と
される BMI 25 以上の割合が全国乳癌患者の 22.4%(※日本乳癌学会全国乳
がん患者登録調査報告 2010 年次)と比較し高かった。また 5 年間治療経過後
の BMI 25 以上の割合もほぼ横這いであった。当院では肥満傾向のある患者に
対し、診察時の声掛け、患者会での勉強会、栄養士による個別栄養指導を行っ
ているが、実状として不十分であることが分かった。肥満の改善が今後の課
題であるが、既存の患者会の活用や個別支援を含め検討していく。具体的には、
患者会での健康教育の開催、看護外来を立上げ個別への栄養・運動指導など
を通して意識改善を図り、個別に行動目標を設定し、実践・継続できるよう
に支援を行うことを目標としたい。
436
ポスター掲示
11920
11457
乳癌フォーラム「乳がんは遺伝するの?」から発せられた市民の
声―今後の市民教育・啓蒙活動に関する検討―
混合病棟の看護師は乳がん看護についてどう考えているか―地
域がん診療連携拠点病院において
GP-2-078-12
1
GP-2-078-13
社団医療法人養生会かしま病院 看護部、2 乳腺外科
1
2
1
薄井 ひろ子 、鈴木 正明 、荒川 好美 、矢内 真生
1
1
諏訪赤十字病院 看護部、2 佐久総合病院 看護部
倉田 絵理 1、渡邉 純子 2
【背景】乳がん患者を混合病棟で受け入れる病院の場合、病棟看護師は、入院
期間の短縮化と、疾患ごとに多様化する看護業務への対応を余儀なくされる。
昨年、先行調査を行った病院では、混合外科病棟看護師は乳がん看護におい
ても経験の多い外科関連の看護に対する理解度の自己評価は高かったが、化
学療法や内分泌療法の理解度が低く、知識や情報源も限局していることが示
された。【目的】混合病棟看護師は乳がん看護に対してどう考えているのか、
問題点は何かを先行調査の病院と比較することで、混合病棟で乳がん患者を
受け入れる際の病院に特化しない看護師側の問題点を明らかにする。【対象と
方法】2 病棟の混合病棟看護師を対象とし、無記名の半構造化自記式調査票を
用いた全数調査とした。理解度や認識等は 5 段階の数値評価スケール(NAS)
で、課題や不足点は複数選択可能のカテゴリカルデータと自由記載の質的デー
タとして収集した。
【結果】35 人中 32 人から回答が得られ、乳がん看護経験 5
年未満が 23 人であった。混合病棟での乳がん看護は難しいか、がん種に合わ
せた看護を覚えることは大変かについて、1 ~ 5 点の困難度で半数以上が 3 点
以上と回答した。術前後看護、乳房再建、ボディイメージの変容は理解度が
高かった。内分泌療法、補正下着の理解度は低く、化学療法、放射線療法の
理解度は 4 点以上が 2 人であった。先行調査と同様、普段経験することの多い
外科関連看護に対する理解度の自己評価が高いと考えられた。情報源として
は、先輩看護師、乳がん看護認定看護師が多く、製薬会社の冊子やインターネッ
トの活用者は少ない点も同様であったが、内分泌療法、化学療法、放射線療
法については半数以上が文献・テキストを活用しているという違いがあった。
また、退院後の経過や患者に合わせた指導への理解が不十分であると 10 人が
追記し、患者に合わせた看護をしたい、定期的に勉強会をしたいといった乳
がん看護への関心を示していることがうかがえた。【まとめ】昨年の調査に引
き続き、地域がん診療連携拠点病院の別病院で混合病棟看護師を対象に調査
を行ったところ、理解度の傾向と、混合病棟での乳がん看護の困難さを感じ
ながらも個別性のある乳がん看護を深めたいという意欲は同じであった。ま
た、今回の調査病院では、乳がん患者が 2 病棟に入院する点から、院内での共
通理解と情報源の拡大が課題であると考える。
10708
11779
乳癌末期患者の症状緩和について
緩和医療としての化学療法
GP-2-079-01
GP-2-079-02
独立行政法人国立病院機構姫路医療センタ-
1
和田 康雄、小河 靖昌、原田 信子
兼松 清果 1、吉田 秀行 1、岡崎 智 1、神原 達也 1、金 成泰 1、吉田 良 1、
田中 完児 2、權 雅憲 1
(はじめに)乳癌末期においては様々な部位への転移が認められることが多く、
それらに伴って苦痛症状の訴えが異なってくる。当科にて最近2年間のうち
に乳癌で死亡した患者について、その最期に最も苦痛を訴えた症状とその緩
和について検討を加えた。(対象)平成23年1月から平成25年10月まで
に当科へ乳癌末期で入院し死亡した22例を対象とした。死亡直前の主たる
病態および苦痛、使用した薬剤等について検討した。(結果)死亡直前の主た
る病態は、癌性胸膜炎(8例)、肺転移(肺門リンパ節転移を含む)(5例)、肝
不全(6例)、鎖骨上リンパ節転移(1例)、脳転移(1例)、骨転移(1 例)であっ
た。死亡直前の主たる苦痛については、呼吸苦(10例)、全身倦怠感(7例)、
痙攣(1例)、不安感(1例)、疼痛(1例)、なし(2例)であった。ほとんどの
症例でオピオイドの内服薬または貼付剤が投与されていたが、苦痛緩和のた
め最期に塩酸モルヒネ注までを使用した患者は癌性胸膜炎例で5例、肺転移
例で2例、肝不全例で2例であった。苦痛緩和のため最期に鎮静薬を必要と
したのは、癌性胸膜炎例で 1 例、肺転移例で 1 例、肝不全例で 5 例であった。(考
察)死亡直前の症状緩和をみた場合、疼痛に対してはオピオイド内服薬、貼付
剤でほとんどがコントロ-ルされていたが、呼吸苦に対しては最期は塩酸モ
ルヒネ注を必要とすることが多かった。また肝不全による全身倦怠感に対し
ては、最期は種々の鎮静剤を必要としていた。(結語)最近では疼痛コントロ
-ルが比較的良くなっているためか、乳癌終末期の苦痛としては、癌性胸膜
炎による呼吸苦と肝不全による全身倦怠感が多かった。そして、それぞれに
対して、オピオイドの適切な切り替えや鎮静薬の使用が必要と思われた。
関西医科大学 外科、2 リボン・ロゼ田中完児乳腺クリニック
【はじめに】転移再発乳癌は、加療を続ける中で長期化し、腫瘍による全身状
態の悪化とともに、患者の精神状態も不安定となり、化学療法の使用は困難
となってゆく。この場合、患者と相談で症状に対する対処療法が主体となる
ことが多い。しかし、化学療法をうまく組み合わせることで、QOL を改善し
たり維持したりすることが可能となることもある。化学療法を組み合わせる
ことで、症状が改善し退院した症例と、状態を維持し外泊を繰り返した症例
を報告する。【症例1】47歳女性。37歳の時に右乳癌にて手術施行。術後
2年でリンパ節転移出現。以後、ホルモン療法と放射線療法を行うも、右胸
壁再発・骨転移・右癌性胸膜炎が次々と出現した。疼痛と呼吸苦が増強し、
当院に紹介入院となった。再発後8年間の長期治療で悪化してきた為、患者
はこれ以上の苦痛を伴う治療は拒否されたが、相談にてゲムシタビンを開始
した。疼痛と呼吸苦の改善ばかりでなく、右胸壁再発の腫瘍が縮小し、退院
した。通院では、ゲムシタビンを減量することにより治療を継続し、症状を
維持できた。【症例2】53歳女性。51歳の時に左乳癌(T2N1M0)にて術前
化学療法・手術を施行した。術後補助療法中、脊髄転移・肺転移・脳転移・
肝転移を認め、放射線療法・化学療法を施行した。1次治療(カペシタビン+
トラスツズマブ)、2次治療(ペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセル)
が PD となる頃には、両下肢麻痺・右上肢麻痺が出現し、脳転移による頭痛・
嘔吐が著明となった。患者は、これ以上嘔吐が増強する治療は不望であったが、
頭痛の改善となる治療は強く希望された。3次治療は、ベバシズマブ+減量
したパクリタキセルとした。頭痛・嘔吐の改善を見、外泊を繰り返すことが
できるようになった。【考察】転移再発乳癌の末期に化学療法を組み合わせる
ことで、QOL の改善・維持を得た症例を報告した。化学療法をうまく組み合
わせることで、乳癌の末期の QOL を改善すると考える。
437
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】 乳がんだけに限らず、がん検診受診率は伸び悩んでいる。市町村単
位でも普及啓発運動に取り組んでいるが、なかなか受診率向上に繋がってい
ないのが現状である。 今回、乳がん啓発運動の一環として取り組んでいる
市民フォーラムにおいて参加された方へアンケートを実施し、そこから癌に
対しての関心と、それに伴って必要となる活動が明らかになったので報告す
る。【方法】 2013 年 10 月 13 日に開催した市民フォーラムの参加者 119 名を
対象とし、半構成的質問紙を用いた記述式アンケート調査を実施した。得ら
れた回答については、ラベル化し分析を行った。【結果】 回収率 63.8%、有
効回答率 100%。参加動機は<機会があったら参加したと考えていた>が 26
名で最も多く、次いで<自分自身が乳がんである> 21 名、<周囲に乳がんに
なった方がいた> 20 名で上位を占めていた。 講演の感想としては、<遺伝
子医療.検査について大変勉強になった><自己検診の重要性を理解するこ
とができた>などが多かった。今後取り上げて欲しいテーマとしては、生活
の中での注意点<食事.運動.喫煙など>や、他の癌<大腸癌.子宮がん>
に対するものなどが多かった。【考察】 今回発せられた市民の声は、乳がん
市民フォーラム参加者へのアンケート調査から得たものである。参加者の関
心は乳がんだけに留まらず、日常生活での注意点.遺伝子医療.がん難民な
ど多岐に及んでいた。 参加された動機では、<機会があったら参加したい
と考えていた>が最も多く、今後取り上げて欲しいテーマとしても、日常生
活の改善を考えていると推察できる内容であり、がん全般に対する関心の高
さが伺えた。 講演内容の中で<遺伝に関して大変勉強になった>との声が
多かったのは、市民フォーラムのメインテーマ「乳がんは遺伝するの?」に興
味をもち、参加された方が多かったとも推測できる。そう仮定した場合、フォー
ラム開催時における焦点化したテーマの設定は、参加する意思と参加者の満
足度を高める上で実に大切なことだと考えられる。 今回のアンケート結果
から、乳癌受診率向上に向けて、早期発見の重要性を伝えるだけでなく、市
民が関心を示す内容.思いに寄り添いつつ、市民教育と啓蒙活動を展開して
いくことが重要であると感じた。 今後、市民フォーラムの内容を検討する
と同時に、アンケート内容の結果を市内の施設.病院間で共有し今後の活動
に繋げていきたい。
11102
10401
乳癌患者終末期における緩和内科との連携について
止血目的にモーズ軟膏を用いた 5 例の検討
GP-2-079-03
1
ポスター掲示
GP-2-079-04
兵庫県立加古川医療センター 乳腺外科、2 緩和内科
1
佐古田 洋子 1、大林 加代子 2、藤本 由希枝 1、松本 亜希子 1、小松 雅子 1、
石川 泰 1
【はじめに】再発乳癌患者の治療ラインが進み BSC を選択する時期になると緩
和内科との連携が必須となってくる。適切な時期に緩和内科に患者をつなぐ
ことが重要と考えられるが適切な時期は個々の症例によって異なり時に困難
を伴う。今回乳癌患者の終末期における緩和内科との連携について当院の実
態を調査した。【対象と方法】当院緩和病棟開設 2009 年 11 月から 2013 年 11
月までに乳癌原病死を来たし死亡場所、死亡年月日が特定可能であった症例
76 例について終末期の緩和内科との連携について調査した。【結果】死亡 76
例中、当院を含む緩和病棟での死亡は 54 例(71.1%)、一般病棟での死亡 9 例
(11.8% )、在宅死亡 13 例 (17.1% ) であった。緩和内科の初診日と死亡日の
間隔は 3 ~ 1202 日(メディアン 74.5 日)と幅が広く疼痛コントロール困難例
などは早期紹介を受容されるが、死のイメージが強いため緩和内科受診の勧
めに応じることができずに直前まで連携が困難であった例も存在した。再発
後治療ラインは平均 4.5 レジメ(0 ~ 13)であった。再発後の積極的治療を拒
否または不可であった症例は 7 例で再発後何らかの積極的治療を行った 69 症
例の検討では積極的治療終了日から死亡までは 1 ~ 324 日(メディアン 53 日)
であった。最終化学療法から死亡日は 1 ~ 324 日(メディアン 75 日)、最終内
分泌療法から死亡は 3 から 305 日(メディアン 36 日)であり副作用の少ない内
分泌療法は終末期まで投与継続されていることが多かった。【考察】緩和内科
への紹介の時期は個々の症例によって適切なタイミングが異なってくると考
えられる。積極的治療が困難となり患者の気持ちが自然に緩和に向く時期に
紹介することがスムーズな連携につながると考えられるが、患者の状態、治
療の効果予測など情報提供の上、日々変化する患者の思いをとらえ共に治療
選択する姿勢が大切であると考えられる。
淀川キリスト教病院、2 茶屋町ブレストクリニック
國久 智成 1、脇田 和幸 2、水本 紗千子 1
一般セッション(ポスター掲示)
「目的」根治不能な局所進行性乳癌に対し、当院で主に出血コントロールを
目的としてモーズ軟膏を用いた症例について検討する。「症例」2012 年から
2013 年までの間に局所進行乳癌または切除不能乳癌に対してモーズ軟膏を用
いた処置を行った 5 例を検討する。平均年齢は 58 歳。乳癌の進行度はステー
ジ IV が 4 例、胸壁浸潤を伴うステージ III が 1 例であった。腫瘍の組織型は浸
潤性乳管癌が 4 例、扁平上皮癌が 1 例であった。いずれも腫瘍増大に伴い腫瘍
からの出血を頻回に来すようになり、止血目的にモーズ軟膏を使用した。処
置開始前の貧血の程度は平均の Hb で 9.58g/dl(8.2 ~ 11.2g/dl) であった。
使用したモーズ軟膏は院内で調剤した。処置は正常皮膚をワセリンで保護し、
腫瘍の出血部位にモーズ軟膏を塗布したガーゼをあて、その後弱酸性洗剤を
用いてなるだけ軟膏の残存がないように洗い流した。処置の頻度やモーズ軟
膏による固定の時間は腫瘍の大きさ、出血量、疼痛の程度に応じて適宜調節
した。「結果」それぞれの患者にモーズ軟膏用いて行った処置の回数は平均 6.8
回、モーズ軟膏を塗布した時間は平均 17 分、疼痛管理には 3 例で麻薬を使用
し、2 例は NSAIDs のみ使用した。ほぼ全例で一時的な止血効果を得られ、ま
た浸出液も減少が見られた。全例で処置前より鎮痛剤を内服していたが、疼
痛を伴う上に姑息的な処置であることから、2 例は腫瘍切除に加え植皮や皮弁
で皮膚欠損を補填する手術を行うことにより出血の問題は解決した。2 例は転
院により治療が中断となった。1 例は引き続き治療中である。全身状態や本人
の希望により、同時に抗癌剤治療を併用した症例は無く、1 例でホルモン療法
を行った。「考察」モーズ軟膏を用いた処置を行うことによって一時的には全
例出血をコントロールすることができた。しかし扁平上皮癌の 1 例はもとも
と内部に液体を貯留する腫瘍が自壊しており、大量に滲出液を産生していた
為、モーズ軟膏によって固定されていた部位が約 3 日間で剥がれ落ちた。モー
ズ軟膏を用いた止血処置は非常に効果が強いものの、疼痛コントロールが問
題となる。また乳癌自体に対する治療を行わないと一時的に効果があったと
しても、更なる腫瘍の増大から出血を繰り返すことより、可能であればホル
モン療法や抗癌剤治療と併用して行うことが望ましいと思われる。
10118
10383
進行乳癌患者の難治性疼痛に対するオキシコドン注射剤の有用
性の検討
乳房切除後疼痛症候群に対してデュロキセチンの投与経験
GP-2-079-05
GP-2-079-06
千葉県立佐原病院 外科
1
聖マリアンナ医科大学医学部付属病院 乳腺・内分泌外科、
2
聖マリアンナ医科大学ブレスト&イメージングセンター先端医療センター付
属クリニック
黄 哲守、岡田 淑、高山 亘、米山 泰生、角田 慎輔、佐藤 護、
原田 和明
岩重 玲子 1、大井 涼子 1、黒田 貴子 1、永澤 慧 1、小島 聖子 1、
志茂 彩華 1、上島 知子 1、土屋 恭子 1、志茂 新 1、小島 康之 1、
速水 亮介 1、白 英 2、西川 徹 1、矢吹 由香里 1、川本 久紀 2、首藤 昭彦 2、
福田 護 2、津川 浩一郎 1
【背景】進行期の乳癌患者は腫瘍の増大,転移に伴う痛みが遷延して疼痛管理
に難渋することがある。痛みは患者の QOL を大きく障害し,治療自体に支障
を与えることも少なくない。オピオイドの経口投与,経皮投与では十分な疼
痛緩和が得られない症例もあり,特にフェンタニル貼付剤では疼痛コントロー
ルに難渋し、過量投与されている症例を認めることがある。しかし、当院で
はオキシコドン注射剤が使用可能になり、従来よりがオピオイドのタイトレー
ションがスムーズにいくことを経験している。【目的】今回我々は、疼痛コン
トロール不良な当科外来で加療中の進行乳癌を対象に、難治性疼痛に対する
オキシコドン注射剤の有効性、安全性を検討した。【方法】2012 年 10 月 から
2013 年 7 月までの期間中,オキシコドン注射製剤を使用した進行乳癌患者の
中で、疼痛強度の変化と有害事象の発現状況を観察した。【結果】期間中全 23
症例にオキシコドン注射製剤を用いた。うち 11 例は終末期の疼痛コントロー
ル目的に用いその後他界、10 例がオキシコドン注射剤で至適投与量を設定し
たのち経口剤、貼付剤に切り替えることが可能であったが 1 例は嘔気、1 例は
眠気(後述)のためそれぞれ変薬となった。転移の状況は肺 6 例,骨 14 例,リ
ンパ節 4 例,脳 2 例,肝 7 例、髄膜播腫 2 例であった(多発転移例含む)。先行
オピオイドの内訳はフェンタニル貼付剤 12 例,オキシコドン徐放錠 6 例,モ
ルヒネ徐放錠 1 例、先行オピオイド無し4例であった。フェン タニル貼付剤
からの変薬例については 4 例が変薬によって投与量を減量することが可能と
なり、うち 2 例が目安となる換算比の 20%前後の用量で疼痛コントロール可
能であった。オキシコドン注射製剤に変薬後疼痛コントロール不良であった 1
例はケタミンの併用で鎮痛効果が発現したが眠気の副作用のためにモルヒネ
注射剤に変薬され、嘔気が認められた1例は貼付剤に変薬したが症状に変化
は認められなかった。【考察】オキシコドン注射剤では疼痛コントロール不良
な症例も経験したが、そのような症例においては精神的な要素が強い症例も
認められた。しかしフェンタニル貼付剤からの変薬に際しては、オキシコド
ン注射剤を用いることで減量することができた症例も経験した。オキシコド
ン注射剤は進行乳癌患者の難治性疼痛に有用性を期待できる可能性が示唆さ
れた。 【緒言】乳房切除後疼痛症候群(PMPS)は乳癌術後の患側胸部,腋窩,上腕に
現れるヒリヒリ,チクチクした痛みが特徴的な神経障害性疼痛である.多く
の患者がこの痛みを経験し,術後十年近く経過しても約 2 割の患者では難治
性の疼痛となる.多くの神経障害性疼痛のガイドラインにおいて,デュロキ
セチン (DLX) は第 1 あるいは第 2 選択薬に分類され,重要な位置を占めてお
り,本邦でも唯一疼痛疾患に保険適応が認められている抗うつ薬である.今
回我々は PMPS に対して DLX を投与し著効した 2 症例を報告する.【症例 1】
52 歳女性,2011 年 12 月に左乳癌に対して BT+Ax を施行した.術後 1 ヶ月
目より創痛の増強を認め,下着など接触時に電撃痛を感じていた.非ステロ
イド性抗炎症薬 (NSAIDs) 投与後も症状は持続しアセトアミノフェン(APAP)
の追加やプレガバリン(PGB)も併用したが症状は改善しなかった.術後 1 年
2 ヶ月目から DLX60mg/ 日投与を開始したところ症状は著明に改善し,翌日
に最大 Numeric Rating Scale(NRS)3 まで軽減.1 週後に NRS0 に症状は改
善し他の鎮痛剤を中止できた.術後 2 年経過した現在,DLX 単独投与で症状
コントロール良好である.【症例 2】53 歳女性,2011 年 3 月に左乳癌に対し
て BT+Ax を施行.術後 3 ヶ月後から創部痛増悪し日常生活にも支障をきたし
ていた.NSAIDs や PGB 投与も症状の改善なく,術後 2 年 4 ヶ月目から DLX
60mg/ 日投与を開始した.投与開始後,症状は 1 週間で NRS0-1 まで著明に
改善し,術後 2 年 9 ヶ月経過した現在,症状コントロール良好である.
【考察】
DLX は臨床的に「副作用を抑えた三環系抗うつ薬」として位置づけられている
SNRI であり,神経障害性疼痛に対する鎮痛効果の有用性は数多く報告されて
いる.一方,これまでに PGB も神経障害性疼痛に対する有用性の報告がなさ
れているが,DLX は PGB と比べ眠気などの副作用が少なく,忍容性が高い薬
剤であり,他の鎮痛薬との併用薬としても使いやすい特徴を有する.DLX は
PMPS に対し優れた鎮痛効果を有し,副作用もほとんどなく症状緩和に有用で
あると考えられた。
438
ポスター掲示
11971
10664
当院における乳癌緩和患者の現状について
Her2 陽性再発乳癌に対する脱毛を伴わない治療戦略
GP-2-079-07
GP-2-079-08
1
大垣徳洲会病院 乳腺・内分泌外科、2 福岡徳洲会病院 外科、
大垣徳洲会病院 外科、4 やまだクリニック、5 江南厚生病院 外科、
6
小牧市民病院 外科
多根総合病院 外科
3
奥野 潤、森 琢児
目的)当院では 2011 年 3 月新病院移転に伴い緩和病棟を設け、緩和の専門診
療を開始した。今回、緩和病棟開設後当院で加療した乳癌患者について検討
を加えた。対象)2011 年 3 月から 2013 年 12 月までの緩和病棟に入院した進
行再発乳癌患者 39 名を対象とした。結果)年齢は平均 63.7(37-100) 歳、在
院日数は平均 30.3(1-106) 日。4 名が一時退院、5 名が転院、30 名が死亡退
院された。疼痛管理のため緩和加療後オピオイドを 90%、ステロイドを 87%
使用していた。死亡退院された 30 名において、初診日から亡くなるまでは平
均 75.1(1-328) 日であった。また最終的な死因は、12 例が呼吸不全、6 例が
肝不全であり、その他は積極的な検査などがなく確認が難しかった。医師経
過記録、看護経過記録をもとに検討すると、進行再発乳癌において入院後の
患者ならびに家族の不満が少なかった。これは、進行再発乳癌は比較的加療
期間が長期にわっているため、早期に緩和外来を受診することができており、
病状を十分に把握されているためであると考えられた。まとめ)進行乳癌患者
において、十分な病状説明があれば、満足な緩和医療が受けられると考えら
れた。
間瀬 隆弘 1,2、山口 美奈 1、天岡 望 3、山田 二三夫 4、飛永 純一 5、
和田 応樹 6
11438
10181
乳がん患者のための情報提供の場所「コスモスサロン」に関する
実践報告
乳がん患者が治療方法の選択時に必要とする情報
GP-2-080-01
1
GP-2-080-02
済生会兵庫県病院
市立貝塚病院 看護局、2 市立貝塚病院 高度乳がん検診・治療センター
大串 恵理子 1、樋口 利江子 1、谷川 正美 1、高浦 聖乃 1、千川 亜弥子 1、
梅本 郁奈子 1、川崎 京子 1、西 敏夫 2、稲治 英生 2
【はじめに】乳がん患者が人目を気にせずウィッグや補整具のパンフレットや
サンプルを見られるように、従来設置していたデイルームから多目的室の一
角に移動させた。組織の活性化を目的としたフィッシュ哲学を基盤とした活
動をしてきた病棟看護師は、自主的にアイデアを持ち寄り乳がん患者が術前
術後に必要な情報を自由に知ることができるよう展示スペースを作った。平
成 24 年に行った先行の看護研究では「コスモスサロン」の開設をきっかけに病
棟看護師のモチベーションが向上していることが明らかになった。その後も
様々なスタッフのアイデアで患者からだけではなく医療従事者からも好評を
得ることが出来たので報告する。【実践】病棟看護師有志によって平成 24 年 6
月から多目的室の一角を「コスモスサロン」と名付け、補整下着・パット・ウィッ
グのサンプルやパンフレット、治療や薬剤に関するパンフレット等を誰でも
自由に見ることができるようにした。特に化学療法を受ける患者からは経済
的な不安の訴えを聞くことが多く、安価で手軽に準備できるような毛付き帽
子を作成し、希望者には作り方のレクチャーを行った。さらに乳がん患者が
術後患肢のだるさを訴えた時には今までは体位変換用枕を使用していたが、
単調な入院生活を少しでも明るい気持ちにしたいとの思いから、ちょうど良
いサイズでかわいらしい刺繍を施したクッションカバーを作成し貸し出した
ことで、患者からは「入院中も女性らしさを忘れずに過ごせた」と好評であっ
た。これらの手作り作品 2 点は大阪府看護学会の手作り作品展において協会長
賞を受賞している。そして「コスモスサロン」だけではなく、乳がん患者が多
い病棟であるので病棟内もピンクリボンを意識しながら季節感のある装飾を
し、少しでも心癒される空間づくりを行っている。【まとめ】
「コスモスサロン」
の開設をきっかけに病棟看護師による手作りをモットーとした自主的なアイ
デアがかたちとなった。その結果患者が入院中様々な情報を得られるよう積
極的にサロンに足を運ぶ姿をよく見かけるようになった。さらに院外の医療
従事者からも好評を得たことによって病棟看護師の向上心や満足感が高まり、
乳がん患者へのオリエンテーションや日々の看護実践もより具体的に行われ
ている。
439
加藤 由子
乳がんの告知を受けた患者が、どのような情報をもとに、治療方法を自分で
選択したのかを調査し、治療を選択する時に必要な情報提供について検討し
た。当院で手術を受けてから3年以内の患者で、本研究に同意を得た 41 名に
アンケート調査を行った。患者は病名の告知を受けた時点では、
「病気の知識、
治療方法も知らない」「病気の知識はあるが治療方法は知らない」を合わせて
97%で、ほとんどの患者が治療方法についての知識は無かった。患者が治療
を選択する時に参考にした情報は、
「医師の説明」と「検査結果」が共に 73.5%
と多かった。患者がそれらの説明された内容を正しく理解できるよう「乳がん
とはどのような病気なのか」また、「乳がんの標準治療」などの基本知識を情
報提供し、自分に必要な治療は何なのかを選択できるようにする必要がある。
また、患者が「治療を選択したとき一番大切にしたものは何か」に対しては「再
発のリスクを軽減できる治療方法」で 71%あった。そのため、手術・薬物・
放射線療法それぞれの治療の再発予防の効果と副作用について、情報提供す
る必要がある。さらに、「治療中である現時点で、治療方法を選択した時点を
振り返り、必要だったと考える情報」について質問を行った結果、「初めて治
療方法を選択した時点で参考にした情報」と必要としている情報の内容に大
きな差はなかった。しかし、「治療中である現時点で、治療方法を選択した時
点を振り返り、必要だったと考える情報」では、「精神的不安定症状とその緩
和方法」40%、「手術後の乳房の形・傷跡」44%、「仕事・家事への影響」32%
と幅広く情報を必要としていた。このことから、治療方法だけでなく治療の
結果や生活への影響など幅広い情報提供が必要である。アンケートの自由記
載では、放射線療法が当院で受けられない事への不満があった。病院の規模
によっては、すべての治療を同じ病院で受けられるとは限らない。そのため、
その病院で受けられる治療と受けられない治療、さらに受けられない治療方
法に対してどのような対応を行っているかについて情報を提供することが必
要である。そうすることによって、患者が治療方法の選択だけでなく、治療
をどこで受けるかを含めた選択ができるよう援助することが大切である。今
後はこれらの情報を患者にどのように提供していくかを検討する必要がある。
一般セッション(ポスター掲示)
(はじめに)進行・再発乳癌に対する基本的な治療目的は予後の延長と QOL
の向上・維持である。脱毛は緩和ケア領域において身体的苦痛だけではな
く、精神的苦痛、社会的苦痛、スピリチュアルな苦痛つまり全人的な苦痛の
原因となる。今回我々は遠隔転移時に脱毛を伴う治療を頑に拒否された Her2
陽性若年乳癌を経験したので報告する。(症例)手術時年齢 28 歳女性、右乳
癌(T2 N0 M0:Stage IIA)と 診 断 し Bt+SN を 施 行。Scirrhous ca.、 病 理
学 的 最 大 腫 瘍 径 5.0cm、n(0)、Grade 3、ly(+)、v(+)、ER(-)、PgR(-)、
Her2(3+) であった。初期治療として卵巣機能保護を目的とした Goserelin 併
用下の FEC followed by Paclitaxel 後に Trastuzumab 1 年間と右胸壁・鎖骨
上に radiation 50Gy. を施行した。Trastuzumab 終了後 8 ヶ月に右肺転移等
が出現した。生活の維持を第一に考えられ、脱毛を含む副作用の強い治療を
拒否されたため、Trastuzumab 単独療法から開始し PD あるいは副作用が耐
えられなくなる度に併用薬を TS-1、Capecitabine + Cyclophosphamide、
Gemcitabine、Vinorelbine と 続 け た 後、Lapatinib + Capecitabine に 変 更
し、転移に対する治療開始後 40 ヶ月の現在、Lapatinib + Capecitabine +
Trastuzumab を行い、PTA 活動等の日常生活を維持されている。
(考察)進行
再発乳癌に対する治療の evidence で QOL を重視したものは少ない。しかし殆
どの症例で根治は望めない現在、生活の質は非常に重要である。また薬物を
どの順序で行うかではなく、いかにして全てを使い切るかが重要とも言われ
ている。脱毛や強い副作用を拒否されるという制限の中での薬物の選択は困
難であるが、患者と良く話し合い理解し合うことで治療を行っている。今後
は本邦でも Pertuzumab や TDM-1 が使用可能となったので、次の選択肢が得
られその効果を期待している。(結語)脱毛等を拒否された Her2 陽性再発乳癌
を経験した。決して勧められる治療方針ではないが選択肢としては重要であ
ろうと思われる。
11692
10968
演題取り下げ
乳癌術式選択における看護支援体制について
GP-2-080-03
ポスター掲示
GP-2-080-04
1
3
ちばなクリニック ブレストセンター、2 中頭病院 看護部、
中頭病院 乳腺外科
鷲頭 真弓 1、座間味 さおり 1、真壁 良子 1、井上 あかね 1、高良 淳美 2、
座波 久光 3
一般セッション(ポスター掲示)
近年、乳癌治療の多様性と個別化は患者が治療法を選択する場合に、よりいっ
そう複雑さを増している。手術法に関しても、従来の全摘か、もしくは温存
術というような単純な 2 者択一ではなく、種々のオンコプラッスティックサー
ジャリーや再建術の発展により、患者にとって手術方法の選択はますます複
雑かつ困難になってきた。当院では乳腺専門外来開設以来、看護師による患
者の治療法決定に際する支援体制の強化を目指してきた。今回は、手術術式
決定に際する支援体制の取り組みについて報告する。当科における主な乳癌
手術式は、1.温存術 1)通常の温存術 2)Volume displacement type
±対側の縮小術 3)Volume replacement type (広背筋皮弁、その他) 2.
Nipple-sparing mastectomy もしくは Skin-sparing mastectomy 1) エキ
スパンダー(1 次 2 期)→ DIEP もしくはインプラント 2) 広背筋皮弁(1 次 1
期) 3.乳房切除術1)再建なし。もしくは 2 次再建(特に PMRT 症例)2)
エキスパンダー(1 次 2 期)→ DIEP もしくはインプラント上記に加え、センチ
ネルリンパ節生検や腋窩廓清の有無もあり、その組み合わせは多岐にわたる
ことになる。術式を決定するステップとしては、まず医師より個々の患者に
推奨もしくは適応可能な術式の説明の後、看護師は再度面談を行い、経済状
態も含めた患者背景を傾聴し、患者の希望にあった術式を供に検討している。
看護師からも個々の術式の説明を行うが、その際、それぞれの術式の術後写
真(整容性の良好な症例と不良症例や合併症例)を供覧することに時間を割い
ている。その後、患者、医師と看護師で再度相談を行い、適切な術式の選択
に到達できるよう心がけている。今後は乳腺外科医と形成外科医間のトリアー
ジにも積極的に関与し、患者会を通して再建術後患者との面談もスムーズに
行えるシステムの構築も必要と考えている。 11202
10786
患者と医療者が共有する乳がんパンフレットの検討
乳癌患者に対する入院前オリエンテーションについての評価
GP-2-080-05
1
GP-2-080-06
飯田市立病院 看護部、2 乳腺内分泌外科
1
1
1
1
2
平澤 路世 、小池 香代 、吉澤 京子 、伊藤 勅子 、新宮 聖士
2
2
当院は乳がん年間手術件数 70 ~ 80 例程度の地方中核病院であり、手術患者
のほとんどに乳がん手術クリニカルパスを適用している。乳がん患者を受け
入れる病棟では、平成 22 年より A4 サイズ 1 ~ 2 枚程度の資料を使い、患者
に対して入院日に手術に関わる生活について説明し、術後 5 日目にリンパ浮腫
指導、退院前日に退院指導を行っていた。しかし、リンパ浮腫や術後の生活
について『もっと早く説明を受けたかった』という患者の声を聞くことがあっ
た。そこで入院前からそれらの情報を提供することと、患者へ提供する情報
や指導内容を多職種間で共有することを目的として、平成 25 年 4 月より医師、
理学療法士と共に従来の資料を基に病態や治療、リハビリテーションならび
に費用などの情報を加えたパンフレットを作成し、同時に外来での説明を開
始した。今回新たに作成したパンフレットを用いた患者教育・指導について
検討した。
【対象】平成 25 年 4 月以降に当院で乳がん手術を受けた患者。
【方法】
新しいパンフレットを用いて、病棟看護師より説明、指導を受けた患者から、
その内容に関する聞き取り調査を行い、患者にとって有効的な支援について
検討した。【結果】入院するまでに『パンフレットを読むことができなかった』
という患者が複数いた。その理由としては、『がんになったことがショックで
読む気にならなかった』『読むのが怖かった』などであった。一方、そのよう
な患者も、入院中に医療者が機会ごとに一緒にパンフレットを読みながら説
明、指導を行うことで、『自らも読み情報を得た』、『退院後も読み返してみよ
うという気持ちに変化した』との意見が聞かれた。【考察】術前にパンフレット
を読めなかった患者の思いや、パンフレット活用までに至った要因を患者の
意見から分析し、有効的な支援について検討した。看護師は、パンフレット
に沿って説明するだけでなく、入院時や退院時におけるオリエンテーション
で、治療や病気の受け止め方を確認しながら関わり、術式や術後の経過、特
に患者の生活背景を考慮するようになった。さらに患者と医療者がパンフレッ
トを共有しながら使用し、患者が自分自身のパンフレットとして認識できる
ように関わることで、個別性のある退院支援にもつながっていくと考える。
大阪市立大学医学部附属病院 15 階西病棟、
大阪市立大学医学部附属病院 乳腺内分泌外科
長嶋 祐子 1、米原 佐紀子 1、吉本 千鶴 1、中 麻里子 1、川尻 成美 2、
柏木 伸一郎 2
【目的】A 病院では乳癌手術の多くが入院翌日に施行されており、時間的な拘
束から個々人に細やかな配慮を行うことが難しい。そのような患者の術前不
安の軽減を図るため、病棟では入院日より以前にオリエンテーションを実施
している。これが患者にとって有益であるかを評価するとともに、今後の課
題を明確化するため本研究を行った。
【研究方法】期間:2012 年 10 月~ 2013 年 2 月。対象:外来受診時に担当医
師が選抜し、入院前オリエンテーションを実施した乳癌患者 10 名。選抜基準:
年齢・予定術式不問。認知力の低下や精神科疾患がなく言語的コミュニケー
ションが可能。本研究の説明を受け自由意志で参加に同意している。データ
収集方法:独自に作成した質問用紙を用いたアンケート調査(選択式+一部記
述式)。データ分析方法:アンケート結果の単純集計。
【倫理的配慮】研究の趣旨、参加の有無や中断による治療上の不利益はないこ
とを説明し同意を得た。アンケート用紙は個人が特定できないよう回収し、
使用したデータは機密性を保持し一定期間保存ののち破棄することとした。
【結果】対象者 10 名のうちアンケート回収者 9 名、回収率 90.0%、平均年齢
55.6 歳。アンケート結果:術前不安の上位は
「痛み」
「手の動き加減」
「乳房の形」
「傷跡」「手の浮腫み」。入院前オリエンテーションを受けて良かった点の上位
は「手術の必要物品が理解できた」
「手術までのスケジュールが理解できた」
「手
術後にできる傷や入れる管の状態が理解できた」「下着や補正具についての情
報が得られた」。悪かった点は選択式設問・自由記載欄ともに回答無し。満足
度は「非常に満足 8 名」
「やや満足 0 名」「どちらとも言えない 1 名」「やや満足
でない 0 名」
「満足でない 0 名」。後に調査した退院時不安の上位は「傷跡」
「手
の動き加減」「放射線療法」。
【考察】入院前オリエンテーションは、術前準備や術後環境に関する情報提供
の場としては有効と考えられ、患者の満足度は概ね高かった。所要時間や実
施環境に対する不満も無かったため、現在の方法で継続して良いと考える。
今後は、患者が術後の問題に立ち向かう準備ができるよう、精神的なサポー
トを強化したオリエンテーション内容を検討する必要がある。
【結語】入院前オリエンテーションは、患者にとって情報提供の場として有益
である。今後は、予期的な指導を充実させ、精神面のサポートを強化し継続
していく。
440
10930
10469
乳がん術後患者における QOL の検討
若年性乳癌における補助療法と妊孕性について
GP-2-081-01
ポスター掲示
GP-2-082-01
1
1
草野 麻衣 1、又吉 一仁 2、四家 卓也 1
嶋田 恭輔 1、久保内 光一 2、川口 正春 2、中村 威 1、玉川 英史 1、
石川 修司 1、有澤 淑人 1、橋本 光正 1
労働者健康福祉機構福島労災病院 中央リハビリテーション部、
2
労働者健康福祉機構福島労災病院 外科
【目的】乳がん術後患者は、上肢の機能障害と Quality of life( 以下 QOL) の低
下をあわせ持っており、関節可動域や運動面に障害がない場合でも日常生活
動作や手段的日常生活動作における困難感があると報告されている。当院に
おける乳がん術後患者のリハビリテーション介入は退院と同時に終了になっ
ているのが現状である。そのため、今回の研究において、実際に手術を終え
た患者の日常生活動作の制限を把握し、その要因等を考察することを目的と
する。【対象】2013 年 9 月~ 2014 年 3 月に当院で乳がんの手術を施行した患
者。現時点で 6 例。すべて女性 ( 平均年齢 67.6 ± 12.5 歳 )。【方法】対象には
手術前、退院時、手術後 1 か月時にそれぞれ FACT-B( 第 4 版 ) の自己記入を依
頼する。結果はスコアリングガイドラインに基づいて採点し、それぞれの時
期において比較する。また、同時期に関節可動域測定 ( 肩関節屈曲、伸展、外
転、外転位での外旋・内旋 ) も行い、その他病歴などとともに、QOL の変化
について比較検討する。【結果】FACT-B;手術前、退院時、手術後 1 か月 (103.4
± 10.8 点、100.6 ± 23.1 点、103.8 ± 22.6 点 )。 関 節 可 動 域 の 変 化 率 ( 手
術前の数値を 100%とした変化率 );退院時→手術後 1 か月時 ( 屈曲 92.7 ±
7.5%→ 85.9 ± 10.7%、伸展 103.0 ± 12.4%→ 105.4 ± 32.7%、外転 77.2
± 25.3%→ 76.1 ± 27.7%、外転位での外旋 92.6 ± 19.0%→ 88.0 ± 18.6%、
外転位での内旋 98.9 ± 16.8%→ 105.5 ± 9.3% )。【考察】全対象者のデータ
を得次第、それらの結果をもとに、乳がん術後患者の QOL と QOL に影響を及
ぼす要因について考察し、報告する。
川崎市立井田病院 外科、2 よこはま乳腺・胃腸クリニック
乳癌術後の妊孕性に関しては標準とされる定説はなく、本邦報告例も少な
い。今回我々は、乳癌における術前・術後補助療法後に正常妊娠および出産
に至った症例を経験したので報告する。
過去 12 年間に当院および当院関連施設で乳癌治療した 645 例のうち、85
例 (13.2%) が 40 歳以下であり、うち 45 例が独身または既婚出産歴なしで
あった。上記のうち重復を除く 44 例中、内分泌療法単独 21 例(うち 2 例出産)、
化学療法単独 3 例(うち 1 例妊娠するも流産)、化学内分泌療法 13 例(うち 2 例
出産)、補助療法無し 7 例(うち 1 例出産、1 例妊娠中)という内訳であった。
レジメンの内訳は、タキサン系抗癌剤・アンスラサイクリン系抗癌剤によ
る標準的な補助化学療法に加え、タモキシフェンや Gn-RHa による標準的な
補助内分泌療法であった。挙児希望のため術後の補助内分泌療法を標準的な
5 年間投与ではなく 2 年間で中止した症例も含まれるが、出産に至った症例は
いずれも健常児を出産し、患者本人もその後の再発所見を認めていない。
文献的には卵巣機能不全と関係のある乳癌治療に用いられる薬剤は、High
risk に Cyclophosphamide、Intermediate risk に Adriamycin, Paclitaxel、
Low risk に 5-FU が知られている。またそれらによる無月経の発症率は年齢が
若いほど頻度が少ないとされている。また、ホルモン療法についてはあまり
文献がなく、Gn-RHa による卵巣機能保護というのも controversial である。
11742
10895
全乳房照射及び部分照射を用いた乳房温存療法後の整容性に対
する評価方法の比較
乳房温存療法後の患者満足度と整容性の関係
GP-2-083-01
1
4
2
GP-2-083-02
1
3
3
東京西徳洲会病院 乳腺腫瘍科、 井上レディ―スクリニック、 瀬戸病院、
東京西徳州会病院 放射線医学センター
1
1
1
1
太田記念病院 乳腺外科、2 がん研有明病院 乳腺センター、
順天堂大学医学部附属順天堂医院 乳腺科
後藤 與四成 1,2、田辺 真彦 3、照屋 なつき 2、白井 智子 2、蒔田 益次郎 2、
岩瀬 拓士 2
2
渕上 ひろみ 、水野 嘉朗 、竹田 奈保子 、佐藤 一彦 、井上 裕子 、
瀬戸 裕 3、加藤 雅宏 4
【はじめに】近年、オンコプラスチックサージャリーの普及とともに、乳房
温存術後の整容性が重要視されている。また、温存術後は全乳房照射を行う
が、寡分割照射や部分照射も注目され、その有効性のみならず整容性につい
ても報告されている。整容性の評価は、ハーバード整容性スケール(HSC:
Harvard cosmesis scale)がしばしば用いられるが、乳房の大きさの異なる
本邦女性への有用性が危惧される。今回は、全乳房照射及び部分照射後5年
以上経過した症例に対し、整容性解析ソフトを用いた評価を行い、その結果
を HSC と比較した。【対象 / 方法】対象は 2007 年 11 月以降、乳房温存術後に
全乳房照射又は部分照射を受け 5 年以上経過した症例。整容性は、HSC(患
者自身及び医師による評価)と BCCT.CORE SOFTWARE(Breast Research
Group)を用いて評価を行い(Excellent、Good、Fair、Poor)
、結果を比較し
た。更に、整容性解析ソフトでは評価困難と思われる創部の陥凹は、歯科印
象材による体積測定評価を追加した。【結果】対象は 35-73 歳 ( 平均 53 歳 ) の
25 例(全乳房照射 22 例、部分照射3例)。HSC を用いた場合、患者及び医師
による評価はそれぞれ Ex. が 17 例(68%)/15 例(60%)と最も多く、Good 5
例(20%)/5 例(20%)、Fair 2 例(8%)/3 例(12%)、Poor 1 例(4%)/2 例(8%)
あった。一方、BCCT による評価は Good が 12 例(57.1%)と最も多く、Fair
6 例(28.5 %)、Ex. 3 例(14.2 %)、Poor 0 例(0 %)で あ り、Ex./Good 及 び
Fair/Poor と分類した場合、88% と 71.3% と大きな隔たりは認められなかっ
た。平均陥凹体積は 1.2ml で、比較的陥凹の強い 4 例(平均 7.7ml)に対する
HSC は患者・医師それぞれ Fair 2 例 / 2例、Poor 1 例 /2 例といずれも不良で、
BCCT を用いた場合でも全例 Fair と評価されていた。尚、乳頭乳輪合併切除の
1 例は、HBC では Fair であったが、BCCT では Ex. と評価されていた。【考察】
BCCT の評価はデジタル写真を用い、陥凹の評価は不向きと予想されたが、陥
凹の強い症例も整容性は低く評価されていた。今後、症例を重ね異なる照射
方法による整容性評価も検討を加えていく。
441
背景:乳房温存療法を行うことにより整容的に不良な形態が想定される症例
に対しては乳房切除+再建術が行われるようになってきている。がん研有明
病院では再建術の増加に伴い乳房温存率 ( 乳房温存術症例数 / 全手術症例 ) は
2006 年の 69%をピークに、2011 年は 56%と減少してきている。乳癌治療
の選択肢が増える中、乳房温存療法に対する患者満足度と整容性を再評価す
ることが重要と考える。対象と方法:対象は乳房温存療法を施行した1、2、
3年後の患者。外来受診時に上半身裸の写真撮影をし、質問紙を配布する。
満足度は 4 段階 ( 満足、やや満足、やや不満、不満 ) で自己評価し、乳房の大
きさ、乳房の形、瘢痕、乳房の硬さ、乳頭の位置についても自己評価し提出
する。整容性の評価は日本乳癌学会沢井班による温存術後の整容性の評価を
用い、撮影した写真を基に 3 名の評価者が評価を行い excellent、good、fair、
poor の 4 段階に評価した。結果:233 の対象者の内 208 人の患者から研究同
意を得た。総合的に満足であると答えた症例は 140 例 (67%)、やや満足は
49 例 (23%)、やや不満足 16 例 (8%)、不満足 2 例 (1%) であり、約 9 割の患
者はやや満足以上であった。整容性は excellent:52 例 (25%)、good:102 例
(49%)、fair:46 例 (22%)、poor:8 例 (4%) で あ り、 満 足 し て い る 群( 満 足
+やや満足)と不満を感じる群(不満+やや不満)とでは整容性においては有
意差を認めなかった(p=0.058)。満足と感じる症例では整容性が fair 以下は
24%(46 例 ) であったが、不満を感じる症例では 44%(8 例 ) であった。考察:
今回の検討において満足度別では整容性に有意差は認められなかった。しか
しながら、不満を感じる症例のなかでは整容性が低い症例の割合が多く、整
容性を改善することにより満足度があがる可能性も考えられた。
一般セッション(ポスター掲示)
若年性乳癌術後の妊孕性については、これまでも数々の議論がなされてき
ているが、未だ明確なガイドラインなどは作られていない。しかしながら、
若年性乳癌患者は増加しており、妊孕性の問題は無視できないと考える。今
回我々は、乳癌補助療法後に正常妊娠および出産に至った症例を経験したの
で、若干の文献的考察を加え報告する。
ポスター掲示
10872
10740
乳がん患者における化学療法後の発毛満足度について
乳癌術後上肢リンパ浮腫に対するリンパ管静脈側端吻合術の術
後吻合部開存についての検討
GP-2-083-03
GP-2-084-01
広島マーククリニック 乳腺外科
1
中島 三保、脇坂 恵、岩田 美加、舩岡 友里、河井 亜美、金 隆史
( 背景・目的 ) 化学療法の副作用である脱毛は、女性にとって精神的ストレス
を与える要因の1つである。発毛は化学療法治療終了後 2 ~ 3 週間頃から始
まり、1年後にはウィッグを外せると言われている。しかし、1年経過して
もウィッグを使用し続けている患者を多く見かける。私たちは化学療法終了
後の発毛満足度についてアンケート調査を行い、今後の看護指導に役立てた
いと考える。( 対象・方法 ) 2012 年 9 月~ 11 月の期間で化学療法終了後1
年以上の患者 44 名を対象にアンケート調査を行った。平均年齢 50.6 歳 (32
~ 74 歳 )、使用レジメンは、P-FEC 15 例、P/H-FEC 1 例、P → D-FEC 1 例、
D-FEC 9 例、D/H-FEC 2 例、FEC 5 例、TC 9 例、TC/H 1 例 , ECT 1 例であった。
( 結果 ) 治療後1年以上1年半未満の患者では 15%、1年半以上 2 年未満では
40%、2 年以上では 75%が頭髪回復状態に満足していた。満足していない理
由に、前髪の伸びが遅い、全体的に毛髪の量が少ない ( 特に頭頂部 )、くせ毛
や白髪が増えた、毛髪が細く柔らかいなどがあった。1年以上 2 年未満経過し
た患者の発毛満足度は半数にしか満たなかった。ウィッグを外したくても外
せない患者は他患者の発毛状態が気になり、自分だけが元通りに生えてこな
いのではないかという不安を抱えていた。( 考察 ) 患者は頭皮マッサージや育
毛剤、サプリメントなどいろいろ試しているようだが、発毛を促進させる効
果的な方法はない。患者からの相談には個人差や年齢、もともと毛髪量の少
ない方は特に回復しにくいなどの情報提供しか出来ていないのが現状である。
今後は、部分カツラを使って毛髪の少ない部分を補ったり、違う髪型のウィッ
グで気分転換することを指導したり、また発足した患者会への参加を勧める
ことで患者同士が相談、情報交換し少しでも精神的ストレスを軽減させるこ
とが必要である。
横浜市立大学医学部 形成外科、2 東神奈川とさき治療院
前川 二郎 1、北山 晋也 1、松原 忍 1、広富 浩一 1、三上 太郎 1、
戸崎 綾子 2
一般セッション(ポスター掲示)
(はじめに)乳癌術後の上肢リンパ浮腫に対し、当科では既存リンパ流を遮
断する危険性が少ないリンパ管静脈側端吻合(LVSEA)を行っており、今回
LVSEA 後の吻合部開存について検討したので報告する。(方法)2008 ~ 2012
年の間、乳癌治療後の続発性リンパ浮腫の診断で、同一施設で CDP を行い、
術前後でデータが得られた 28 例 28 手術を対象とした。初診時年齢は 33-85
歳、平均 57 歳であった。術前リンパシンチグラフィーで Mikami 分類のタイ
プ I,II が5,III が8,IV が 10、V が 5 例であった。術前 CDP は弾性着衣中
心に行い、手術を行い術後は約半年術前と同様な CDP を行い、可能な例では
CDP を軽減した。術後5ヶ月以上(5- 34 ヶ月、平均9ヶ月)で蛍光赤外線
リンパ管造影を行い、確認可能な範囲で吻合部開存を評価した。
(結果)吻合
数の合計は 114 で吻合部の開存が確認できたのは 25 箇所、開存していない箇
所は 31、開存か非開存か確認し得なかった部位は 58 であった。確認し得た部
位での開存率は約 45%であった。非開存部位では ICG 蛍光リンパ管造影によ
り以下の3つの造影パターンが認められた。1,吻合部でリンパの流れが途
絶える。2,静脈への流入はないがリンパの流れは吻合部を越えていく。3,
吻合部で新たなリンパ網が形成される。(考察)吻合部開存に術直後の吻合部
から静脈への良好な run-off が得られた例が多い。これは吻合のテクニカルな
問題以外に、静脈とリンパ管内圧、リンパ流量の関係が重要であることが示
唆される。また、LVSEA では吻合部が完全に閉塞した場合に静脈側のみの閉
塞であればオリジナルなリンパ流を障害しないことが確認できた(2に相当)
が、吻合部のリンパ管の中枢側が閉塞(テクニカルな問題、1,3に相当)した
場合は新たなリンパ網の形成が成された例があり、術後の浮腫軽減に寄与し
ている可能性がある。
10566
11749
リンパ管静脈吻合手術と複合的理学療法の組み合わせによる乳
がん関連リンパ浮腫の治療に関する統計的考察
乳癌に対するセンチネルリンパ節生検後 3 年のリンパ浮腫頻度
GP-2-084-02
1
GP-2-084-03
1
2
2
東神奈川とさき治療院、 横浜市立大学医学部 形成外科
橋本 紘吉 1、戸崎 綾子 1、松田 奈菜絵 1、前川 二郎 2
【目的】当院は弾性包帯によらず弾性着衣中心でリンパ管機能評価による重症
度に応じた複合的理学療法 (CDT) を行っている。上肢リンパ浮腫のリンパ管
静脈吻合手術 (LVA) と術前後の CDT による浮腫の変化を重症度分類で統計的
に分析したので報告する。
【対象と方法】乳癌治療後に患側上肢 ( 片側性 ) に浮腫を生じ、リンパシンチグ
ラフィーでリンパ浮腫と診断され、同一術者によって LVA を実施した 56 症例
( 初診時平均年齢 54.6 歳 )。重症度は maegawa 分類による Type1 ( 軽症 ) ~
5 ( 重症 ) を用いた。治療プロトコルは CDT による術前排液 LVA、術後早期の
CDT である。基本統計量は浮腫率 ( 健側肢に対する患肢と健側肢との差 )、体
積減少率 ( 変化率、初診時体積に対する初診時との体積の差 ) 及び治療前・後
の体積の差 ( 変化量 ) とした。変化量は前値の大きさの影響を取り除いた変化
量 ( 調整平均値 ) を共分散分析 (ANCOVA) で推定した。7 部位の周径から円錐
台を仮定し前腕と上腕体積に換算し統計用データとした。患者の来院周期の
違いは中心化移動平均法を応用し、初診から 1 年及び LVA を基点に前後 1 年の
推移を観察した。分析は IBM SPSS Ver19、有意水準は 0.05 とした。
【結果】初診時の上肢 ( 前腕+上腕 ) 体積 (mean ± SD) は患肢 (1213 ± 261ml)、
健側肢 (1049 ± 191ml) となり、周径による浮腫率を 7 部位の分布で表すと重
症度と相関がみられた。重症度別の初診時と LVA 後の体積の平均値の差の検
定は Type5 は有意差がなく、他は有意に差が認められた。変化率の平均値は
集中排液後 4.1%、維持期で増減はあるが LVA 前は 4.0%を維持、LVA 後 7.4%
となった。初診時に対して LVA 後の体積減少量は 98.5ml であった。LVA 後
の重症度別の変化率は Type4 > Type3 ≒ Type1,2 > Type5 であった。初診時
と LVA 後の変化量を調整平均値でみた。計測値による変化量は重症度が大の
Type5 が最少で、Type4 > Type3 > Type1.2 と重症度に逆比例するが調整平
均値は Type により異なる変化量を示した。Type 間に有意な差は認めなかっ
た。
【考察】初診時の浮腫率分布から凡そのリンパ管機能の重症度を知ることがで
きた。維持期は集中排液時の体積が維持できるが、CDT は浮腫の軽減に限界
があり LVA により改善された。重症度と CDT 及び LVA の関係が明らかになり、
治療前の体積の大きさの影響を取り除いた変化量 ( 調整平均値 ) は重症度で異
なり、見かけの変化ではなくリンパ管機能がリンパ浮腫の診断と治療に重要
な情報であることを示唆している。
442
がん研究会有明病院 乳腺センター乳腺外科、
国際医療福祉大学三田病院 乳腺センター、3 がん研究会研究所 病理診断科
木村 聖美 1,2、荻谷 朗子 1、中島 絵里 1、坂井 威彦 1、森園 英智 1、
飯島 耕太郎 1、宮城 由美 1、蒔田 益次郎 1、秋山 太 3
[ 背景 ] 乳癌手術に於けるセンチネルリンパ節生検 (SNB) は、低侵襲で信頼性
が高いことが認められ今や標準手技となった。しかしながら腋窩リンパ節郭
清とセンチネルリンパ節生検後の、術後リンパ浮腫頻度に関する前向き比較
研究はいまだ少なく、本邦での成績はまだほとんど報告されていない。[ 目的 ]
センチネルリンパ節生検後の浮腫の頻度を腋窩郭清症例と比較調査する。[ 対
象 ] 2010 年 1 月より 6 月にがん研有明病院にて手術施行した原発性乳癌患者
445 例のうち、両側腋窩手術症例、転院や死亡などにより術後約 3 年目に診察
不可能であった症例を除いた 353 例(SNB のみとサンプリング 236 例、レベ
ル 1 から 3 の郭清 117 例)。[ 方法 ] 術前と術後約3年目の患肢浮腫の有無を周
径の計測と視触診にて調査した。浮腫の判定は肉眼的に明らかな浮腫と、術
前と術後 3 年での両側上肢の腋窩・肘上下 5cm・手関節・手背周囲の計測を
行い対側との周差が 2cm を超えた場合にありと判定した。 [ 結果 ] SNB ある
いはサンプリングを行った 236 例のうち浮腫を認めた症例は 25 例 (10.6%)
でそのうち肉眼的浮腫を認めたのは 5 例 (2.1%)、腋窩郭清を行った 117 例う
ち浮腫を認めた症例は 44 例 (37.6%) でそのうち肉眼的浮腫を認めたのは 29
例 (24.8%) であった。[ 結語 ] SNB あるいはサンプリングを行った症例は、
腋窩郭清を行った症例に比べリンパ浮腫の頻度が少なかった。これまで海外
で様々な測定方法と定義による浮腫の study が行われている。今回 MDACC
の McLaughlin らの浮腫定義を用いて判定を行ったところ、報告された結果よ
り当院の浮腫の頻度は高くなったが、肉眼的浮腫は十分に少なかった。また、
SNB 後に浮腫陽性の判定となった症例について、BMI・摘出リンパ節個数・
年齢・乳房術式・放射線治療有無との関係性についても検討する。
ポスター掲示
10836
10902
リンパ浮腫治療に対する当院の取組み
腋窩リンパ節郭清を施行した乳がん患者のリンパ浮腫に対する
指導管理
GP-2-084-04
GP-2-084-05
リボン・ロゼ田中完児乳腺クリニック
1
田中 完児、中村 伊佐子
3
(目的)乳がんにおける腋窩リンパ節手術では N1 以上の場合は腋窩リンパ節
廓清が行われており、術後リンパ浮腫を認めることが依然としてある。今
回、当院におけるリンパ浮腫治療とその結果を報告する。(材料と方法)I. 対
象:2008 年 6 月~ 2013 年 11 月の間に加療を行った 138 名(右上肢:71 名、
左上肢 67 名)、治療方法:複合理学療法(スキンケア、医療リンパドレナー
ジ、圧迫療法、運動療法、セルフケア指導)及び投薬(茵ちん五苓散、ほか)
II.リンパ浮腫の評価方法:1.超音波装置による表皮の厚さの測定(プロー
べ;14MHz)
、2.測定位置:肘上 10cm、肘下 5cm、手首、III 治療効果の
判定、1.減少値測定;皮膚厚の(最大値)-(最低値)計測(単位 mm)、2.
減少値の grade 分類 (Grade(Gr)5; 2.1mm < , Gr4; 1.6-2.0mm, Gr3; 1.11.5mm, Gr2; 0.6-1.0mm, Gr1; 0.1-0.5mm, Gr0; 効果なしまたは増悪 )
(結果)1. 健側の皮膚の厚さ (mean, SD) (mm):
(右上肢)肘上 10cm; 0.94,
0.29、肘下 5cm; 0.96, 0.27、手首 ; 1.03, 0.22、
(左上肢)肘上 10cm; 0.98,
0.29、肘下 5cm; 1.06, 0.25、手首 ; 1.04, 0.23、2. 治療による表皮の厚さ
の減少 (mean, SD) ( 単位 mm):(右上肢)肘上 10cm; 0.58, 0.57,、肘下
5cm; 0.60, 0.52、手首 ; 0.58, 0.82、(左上肢)肘上 10cm; 0.48, 0.54、
肘下 5cm; 0.46, 0.47、手首 ; 0.42, 0.52、3. 治療による表皮の厚さの減少
(Gr:0,1,2,3,4,5, 順 )(単位:例数)
:
(右上肢)肘上 10cm; 6, 35, 14, 7, 3,
2、肘下 5cm; 4, 34, 18, 8, 1, 2、手首 ; 13, 32, 12, 4, 3, 3、(左上肢)肘
上 10cm; 12, 34, 17, 4,2, 2 、肘下 5cm; 13, 33, 17, 5, 3, 0、手首 ; 16,
32, 15, 4, 3, 1.(結語)複合理学療法と投薬による治療がリンパ浮腫改善に有
効であることが明らかになった。しかし、難治性のものも少数ながら存在し
これに対する治療が今後の問題点であると思われた。
前橋赤十字病院 看護部、2 前橋赤十字病院 乳腺内分泌外科、
群馬大学大学院 臓器病態外科学、4 マンモプラス竹尾クリニック
清水 明子 1、池田 文広 2、木村 公子 1、荻野 美里 3、安東 立正 2、
竹尾 健 4
11640
11566
リンパ浮腫のセルフケアを継続できるための取り組み
腋窩リンパ節郭清後のリンパ浮腫に弾性スリーブが有効だった
1例
GP-2-084-06
GP-2-084-07
市立四日市病院
1
小田橋 英子
2
【背景】当院では平成 22 年 6 月にリンパ浮腫外来を設立し、リンパ浮腫の予防
指導・自己マッサージの指導・弾性着衣等の選択・MLD を行っている。リン
パ浮腫の予防指導は、主にリンパ節切除術を伴った術後の患者指導として実
施している。実際、リンパ浮腫を発症した患者に対しては、日常生活指導を
はじめとして、自己マッサージ方法の指導、患者の生活背景や年齢を考慮し
て弾性着衣の選択を行っている。しかし、同じような内容で患者に合わせて
指導を行っているにもかかわらず、セルフケアが確立している患者と確立し
ていない患者グループが出てきている現状があった。【目的】・リンパ浮腫の
セルフケアを継続できている患者が、なぜ継続できているかを評価し、でき
ていない患者との有意差を明らかにする。・上記の結果を患者指導に活用す
る。【対象・方法】対象:リンパ浮腫外来に通院中の患者方法:外来受診日に、
セルフケアに関する聞き取りを行った【結果】リンパ浮腫を発症し、外来受診
した患者数 37 名のうち、セルフケアが確立できている患者は 21 名であった。
セルフケアは確立できておらず、外来のみ通院中の患者は 2 名であった。ま
た、途中で来院されなくなった患者は 14 名であった。セルフケアが確立でき
ている患者は、外来受診時に MLD を実施している患者グループに多く、また
MLD は受けていないが弾性着衣を装着できている患者グループでも多くみら
れた。その要因として、リンパ浮腫に対する理解度が高く、日常生活におい
て自己マッサージや弾性着衣を装着することが生活の一部になっていた。反
対に、セルフケアが確立できていない患者グループは、経過観察および弾性
着衣を購入したにも関わらず装着できていない患者が多くみられた。【考察】
指導において大切なことは、患者に自分自身の問題であることを如何に認識
してもらうかにある。リンパ浮腫ケアが、人任せや中断してしまわないように、
自身の事として認識できるような関わりが重要となる。それには、患者がリ
ンパ浮腫に対する理解を深めることができ、日常生活に取り入れるような指
導を行っていく必要がある。
443
石川勤労者医療協会城北病院外科 看護師、
石川勤労者医療協会城北病院外科
國久 真央 1、石井 由香里 1、相原 操 1、竹田 由美子 1、鹿島 しのぶ 1、
中村 崇 2
乳癌腋窩リンパ節郭清 ( センチネルリンパ節生検を含む ) 後は、一定の割合で
上肢のリンパ浮腫を誘発する。しかし、症状としては軽度、または一過性の
ことが多く、弾性スリーブを必要とする方は少ない。当院で弾性スリーブを
始めて使用し、有効であった症例を経験したので報告する。50 台女性。受診
1 年前より左乳房の腫瘤を自覚していたが、医療費の問題で受診せずにいた。
受診時には癌が露出し、腋窩リンパ節も容易に触知出来る状態であった。術
前化学療法 (FEC+PTX) を行い、病変はかなり縮小したため手術 (Bt+Ax) を
行った。手術 2 週間後より左上肢が浮腫み始めた。利尿剤で経過を見ても悪化
傾向であったため手術 1 ヵ月後より弾性スリーブの着用を開始した。リンパ
ドレナージの方法・怪我をしないようになど指導を行い、半年経過した所で
浮腫はほとんど見られなくなった。今回の症例を通して、弾性スリーブの現
物とその効果を経験することができた。弾性スリーブは決して安価なもので
はないが、購入に際して補助が出るため患者さんの負担はほとんど無くて済
む場合の方が多い。今後リンパ浮腫が生じた方には早めに導入した方がいい
と思われた。
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】2008 年 4 月「リンパ浮腫指導管理料」が設定され、乳がん腋窩リ
ンパ節郭清術後のリンパ浮腫の予防指導が算定できるようになった。当院で
は、2012 年 3 月、医療リンパドレナージセラピストの資格収得を契機に、同
年 9 月より「リンパ浮腫看護外来」を開設した。今回、外来開設 1 年間の現状
と今後の展望について報告する。【リンパ浮腫指導管理】患者への指導方法は、
術後の乳がんパス(以下パス)にリンパ浮腫指導の項目を新たに組み入れ、病
棟看護師との連携を図ることで漏れなく術後リンパ浮腫指導を行う事にした。
パスへの導入に際しては、病棟看護師と数回の勉強会を行い、リンパ浮腫の
病態や患者指導方法、カルテ記載方法、外来との連携方法についてセラピス
トから指導を行った。病棟では、パスに準じて術後 4 日目に担当医師が患者
に腋窩郭清に伴うリンパ浮腫について説明を行い、「リンパ浮腫指導依頼指示
書」を作成する。セラピストが指示書に不備がない事と患者の同意を確認し指
導の開始としている。病棟看護師の患者への説明は、セラピストが作成した『リ
ンパ浮腫について』のパンフレットを用いて個室で行い、説明後のカルテ記載
は、必要項目のテンプレートを作成することで簡便に行えるようにした。ま
た、退院時には乳腺外来と合わせてリンパ浮腫外来の受診を指導している。
【対
象と結果】対象は、2012 年 10 月から 2013 年 9 月までに腋窩リンパ節郭清を
施行した乳がん患者 24 名である。退院後、リンパ浮腫外来を受診した患者は
21 名(2 名は希望なし、1 名は他医院で経過観察)であった。リンパ浮腫外来
では、セラピストが日常生活の注意点や蜂窩織炎の対処方法を改めて説明し、
患者と一緒にリンパドレナージの手技を行い、リンパ浮腫の初期対応が行え
るよう指導している。乳がんへの不安を抱えている患者も多いため、診療に
は 1 人 30 分以上の時間を費やしている。外来開設 1 年にあたり実施したアン
ケートでは、リンパ浮腫についての理解度が高まっただけではなく、術後の
リハビリ指導、不安の表出場所が出来たことで患者満足度が向上しているこ
とが分かった。【展望】今後は、術直後の患者だけではなく、地域医療連携で
経過を観察している乳がん患者に対しても術後リンパ浮腫の指導管理を行え
る体制を構築していきたい。
ポスター掲示
11728
10834
継続できるセルフケア支援により薬剤誘発性リンパ浮腫が改善
した一例
運動負荷とリンパ浮腫との関係~リンパ節郭清の有無に着目し
て~
GP-2-084-08
1
2
GP-2-084-09
1
独立行政法人国立病院機構東京医療センター 看護部、
独立行政法人国立病院機構東京医療センター 乳腺外科
博愛会病院 リハビリテーション部、2 博愛会病院 乳腺外科
松本 渉 1、渡邉 良二 2、深水 康吉 2
黒川 かおり 1、幸阪 貴子 1、雨宮 愛理 2、平形 侑子 2、笹原 真奈美 2、
松井 哲 2
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】乳癌患者の続発性リンパ浮腫発症要因のうち、薬剤誘発性として
タキサン系薬剤が挙げられる。用量依存性に起こるその浮腫はオレンジピー
ル様と言われ、皮膚硬化と赤み・毛穴が開いた状態等が特徴的で、QOLを
大きく損なう。リンパ浮腫の主な治療方法は複合的治療で、スキンケア・用
手的ドレナージ・圧迫療法(多層包帯法・スリーブ・弾性ストッキング等)・
圧迫下での運動療法・日常生活指導がある。圧迫療法の中で包帯を使用する
多層包帯法は、患肢の状態に応じ圧力を調節し、多重層に弾性包帯を巻いて
行う圧迫療法で、形状変化がみられる浮腫組織を中心軸に寄せ、効果的に排
液をさせることができる。しかし、数種類の包帯を何重にも使用するため複
雑であり、患者の抵抗感は非常に強い。今回、基本的な多層包帯法ではなく、
患者と相談・決定したセルフケアで、浮腫の改善が認められた事例を通し、
ライフスタイルに適したセルフケア方法を取得、負担を軽減し継続すること
が重要であると考え、ここに報告する。【事例】A氏、57歳、女性、子宮体
癌術後1年のフォローCTにて右乳房腫瘤あり乳腺科受診。右乳癌の診断で、
乳房円状部分切除・腋窩リンパ節廓清(レベル 1)術施行し、補助療法として
TC療法(ドセタキセル・シクロフォスファミド)を計6コース投与。放射線
治療(50Gy/25fr)照射施行。5コース終了後より右上肢浮腫を自覚
し、6コース終了時には離握手困難であった。複合的治療の一つとして多層
包帯法を勧めるが拒否あり、A氏と相談しチューブ包帯を代用した簡易的な
多層包帯法を開始した。7日間で効果が現れたことから前向きな発言があり、
一時的にBMIが改善され、包帯種類の変更やウェーブウレタンを取り入れ
ることで、皮膚の色調や軟らかさも戻り、離握手も可能となった。【考察】リ
ンパ浮腫の治療に終わりはなく、正しい知識と継続できるケア方法を習得す
ることはとても重要である。A 氏は当初、治療に対する拒否的なイメージが強
く、本来より簡易的な方法でセルフケアを開始した。その後、効果が現れた
事で本人の意欲が向上し、主体的に取り組むことができるようになった。看
護師は達成体験を得たA氏に言語的説得を続けることで、自己効力感を高め
ることができた。これらがセルフケア支援に繋がり、リンパ浮腫治療に効果
的に働いたと考える。
【目的】我々は,第 48 日本理学療法学術大会にて最大筋力の 50%以下での運
動負荷はリンパ浮腫の発症因子とならない事を報告した。そこで今回リンパ
浮腫の発症は,運動負荷とリンパ節郭清の有無が関係するのかを検討した。
【方法】対象は当院にて乳癌外科的手術を実施した者 109 名 ( 平均年齢 53 歳±
11 歳 ) とした。対象をセンチネル生検を施行し術後に運動負荷を与えた群 34
名 ( 以下,SNB 負荷あり群 ),センチネル生検を施行し術後に運動負荷を与え
なかった群 39 名 ( 以下,SNB 負荷なし群 ),リンパ節郭清を施行し術後に運
動負荷を与えた群 15 名 ( 以下,Ax 負荷あり群 ),リンパ節郭清を施行し術後
に運動負荷を与えなかった群 21 名 ( 以下,Ax 負荷なし群 ) の 4 群に分類した。
リンパ浮腫の評価として,全群における患側,健側の上肢周径5カ所 ( 中指,
手背,手関節,肘頭- 5cm,肘頭+ 8cm) を計測し,術前,退院時,術後1ヶ
月における上肢周径の変化を比較検討した。運動負荷量は,術前にアニマ社
製μ TasF- 1にて最大筋力を測定し最大ピーク値を 2 で除した値として,運動
負荷においては臥位で肩関節屈曲 0°~ 90°までのダンベルを用いた屈曲運動
を両側 15 回の反復課題として実施した。周径値の統計解析には,術前と退院
時,術前と術後1ヶ月の期間毎の Tukey 多重比較を行った。【結果】術前と退
院時の比較では SNB 負荷なし群の健側の手指,患側と健側の肘頭- 5cm,Ax
負荷あり群の患側と健側の手指で有意に減少した (p < 0.05)。術後1ヶ月の
比較では SNB 負荷なし群の患側と健側の手指,SNB 負荷あり群の患側の手
背と患側の肘頭- 5cm,Ax 負荷あり群の健側の手背で有意に減少した (p <
0.05)。【結論】術後1ヶ月の短期間ではあるが , 運動負荷とリンパ節郭清の有
無はリンパ浮腫に影響を及ぼさない事が示唆された。
11520
11567
乳癌関連上肢リンパ浮腫に対する QOL 向上を目指した弾性包帯
を使用しない複合的理学療法
リンパ浮腫難民にしないためのリンパ浮腫指導体制構築に向け
た取り組み
GP-2-084-10
1
GP-2-084-11
東神奈川とさき治療院、2 横浜市立大学 形成外科学教室
1
3
松田 奈菜絵 1、戸崎 綾子 1、橋本 絋吉 1、前川 二郎 2
【はじめに】リンパ浮腫治療に行われている複合的理学療法 (CDT) の圧迫療法
は、集中排液期や維持期夜間において弾性包帯 (Bdg) が推奨されている。し
かし外来通院の多い本邦で患者の Bdg 習得には手間や時間がかかることや、
Bdg 装着での日常生活は継続に困難を伴うことが多く QOL を下げる結果に
なっている。【目的】当院では乳癌関連上肢リンパ浮腫患者の負担をできるだ
け軽減し QOL の向上を目的に、夜間の圧迫は Bdg のかわりに簡易的な補助
具を利用し効果を得ている。今回当院で行っている、患者自らが簡単に装着
できる夜間簡易圧迫補助具と昼間着用する弾性着衣を利用した集中排液、維
持期について報告する。【使用したもの】夜用圧迫具:ウェーブウレタンシー
ト (( 株 ) メディックス )、チュービファースト ( メンリッケヘルスケア ( 株 ))、
チュービコット (( 株 ) アルケア )、チューブ状ネット包帯 (( 株 ) 竹虎 )、【方法】
患者各々に対応した簡易的な圧迫補助具を作成し就寝時に着用してもらった。
昼間は弾性着衣(スリーブ、グローブ着用)を着用し周径減少に合わせてサ
イズを変更した。また国際リンパ学会による重症度分類、リンパシンチグラ
フィーによる MAEGAWA 分類の検討も行った。【結果】夜間圧迫補助具の使用
前後では皮膚状態が柔らかく変化することで周径にも変化が得られた。また
夜間圧迫補助具は簡単に着脱ができるため患者の個体差がなく治療開始当日
から圧迫の継続が容易なため、集中排液期間の短縮ができた。【まとめ】リン
パ浮腫における複合的理学療法の治療は患者自らが継続して行うことで治療
効果が得られる。患者の日常的な負担をできるだけ軽減し、手軽で簡単に継
続できる圧迫の提供は治療の短縮や良好な状態維持に繋がると思われる。
ベルランド総合病院 作業療法室、2 ベルランド総合病院 乳腺センター、
ベルランド総合病院 緩和ケア部、4 ベルランド総合病院 緩和ケアチーム
島崎 寛将 1,4、阿部 元 2、山崎 圭一 2,3,4
【はじめに】乳癌術後のリンパ浮腫指導では、リンパ浮腫の予防・早期発見の
ために、患者がリンパ浮腫の知識や日常生活上の注意点などを理解できるよ
う支援することが重要である。当院では 3 年前より医師・看護師等と作業療法
士が連携し、乳癌術後全患者に対するリンパ浮腫指導体制構築に向けて取り
組んできた。この取り組みの結果を振り返り、今後の課題を検討したので報
告する。
【取り組み】本活動前まで当院では、医師の指示を受け看護師と作業療法士が
それぞれ肩のリハビリテーションおよびリンパ浮腫指導を行ってきた。それ
により、患者への指導が重複する等の弊害が生じていた他、それぞれに不要
な業務負担も生じていた。そのため、看護師と作業療法士が共通の指導用パ
ンフレットを作成し、乳癌術後のリンパ浮腫指導およびリハビリテーション
に関する指導の流れを統一した。また、それぞれの術式に応じた指導を全患
者に行うこととし、看護師と作業療法士が役割を分担し入院から外来まで指
導を行うよう体制を変更、クリニカルパスに組み込んだ。
【結果】クリニカルパス作成後からの 1 年間で乳癌の手術を受けた患者は 72 名
であった。そのうち、腋窩リンパ節郭清を行ったのは 18 名で全患者に対して
看護師によって入院・外来ともにリンパ浮腫指導を実施できていた。また、
外来での問診票の正答率は 78.3%あり、患者が理解できていなかった項目に
ついても外来で再度指導を受け知識の習得を図ることができていた。センチ
ネルリンパ節生検のみであった 54 名についても、作業療法士によって全患
者に指導を行うことができており、リンパ浮腫指導実施率は 100%であった。
リンパ浮腫を発症していた患者は腋窩リンパ節郭清術施行患者の 5.6%であ
り、本活動を開始して以降の 3 年間では 11.4%であった。リンパ浮腫を発症
した全患者は発症後早期より治療が開始されていた。
【考察】本活動を通して指導の定着化が図れ、リンパ浮腫を発症した全患者を
早期発見することができ、早期に治療を開始することができた。しかし、現
在の指導体制を継続していくためには、「新入職員/異動赴任者への教育体制
の確立」「指導内容の更新(質の向上)」が課題であった。今後もスタッフの学
習ツールを作成し、院内でいつでも再学習できるようにするなどの体制を整
え、患者・家族に安心して治療を受けて頂けるよう努めていきたい。
444
ポスター掲示
10743
11238
乳がん術後リンパ浮腫患者について~専門施設のリンパ浮腫治
療を拒む乳がん患者の対応を検討~
地域の中規模病院で行った乳がん診療チームのレベル向上を目
指した取り組みについて
GP-2-084-12
1
3
GP-2-085-01
武蔵野赤十字病院 看護部、2 武蔵野赤十字病院 乳腺科、
武蔵野赤十字病院 外科
1
2
西巻 佳子 1、松田 実 2、嘉和知 靖之 3、鳥屋 洋一 2、篠 美香子 1、
鬼澤 道子 1、信吉 香織 1
医療社団法人昴会日野記念病院 乳腺外科、
医療社団法人昴会日野記念病院 外科
糸井 尚子 1、北村 美奈 2、花澤 一芳 2
当院では平成 24 年 4 月に女性乳腺専門医の赴任に伴い乳腺外科を立ち上げ、
それまで年間1桁であった乳がん患者が 2 倍以上に増えた。診療開始後に乳癌
診療に関する問題点について看護師・薬剤師への聞き取り調査を行ったとこ
ろ、乳癌の知識不足、乳癌患者特有のニーズへの対応の仕方や外来化学療法
に対する不安の存在などが明らかとなった。これを受けて看護師向け勉強会
を、乳癌の基礎知識、周術期のケア、化学療法、精神的なケアなどテーマを
もうけて 2 ~ 3 ヶ月に1回開催した。勉強会時のアンケートをもとに、次回
のテーマや難易度を検討している。外来化学療法においては院内に消化器癌
のレジメンパスは存在したが、乳癌のパスがなかったためにレジメン作成を
行った。支持療法や発熱性好中球減少時の対応などの統一を行い、患者だけ
でなく医療者側の不安の軽減にも努めた。脱毛に対しては化学療法室にカタ
ログの他に試着用ウィッグを導入し、介入しやすいようにした。薬剤師も調
剤だけにとどまらず薬剤指導を毎回行うようにし、現在まで大きなトラブル
なく外来化学療法を施行できている。都市部やがん拠点病院などでは当たり
前となっていることも、地方の中規模病院では一から始めることも多く、人
材も限られている。がん治療の標準化と均てん化が求められているが、質の
高い医療を提供していくためにはチーム全体ひいては地域全体の乳癌診療レ
ベルを向上していく必要がある。
はじめに)当院には、リンパ浮腫の専門外来はなく、術後のリンパ浮腫と診断
された乳がん患者は、乳がん看護認定看護師が対応している。症状によって
は医師と相談の上、専門施設へ治療を依頼することもある。しかし、一部の
患者は、専門施設の治療を拒むこともある。こうした患者の対応について報
告する。対象)リンパ浮腫 2 期以上を発症し、専門施設の治療を拒否された 40
~ 80 歳代乳がん患者 3 例 経過)治療の必要性を理解しながらも拒む理由は
抗がん剤治療など身体的苦痛や高年齢により専門施設の通院が難しい。そこ
で、診療回数を増やし、リハビリ、医師らとチームで対応。必要に応じて連
携の専門施設からアドバイスを求め、リンパドレナージ、皮膚ケアおよび包
帯法、スリーブの着用を施行する。結果)症状の悪化はなく、現状維持または
浮腫の軽減が認められた。現在も経過観察中である。考察)浮腫の改善を図る
ためには、チームでの対応は基より専門施設の情報も含め取り組むことが必
要である。患者の QOL を考慮し、コンプライアンスに相互した意思決定を尊
重した治療を行うことでリンパ浮腫の悪化予防や軽減につながる。まとめ)患
者の背景を考慮することは、治療の放棄や中断を避け、長期となるリンパ浮
腫治療に欠かせないと考える。施設が治療の体制を整え、継続したケアを実
施できることが望ましい。今後は専門施設のリンパ浮腫治療を拒み、悪化予
防や軽減ができない患者の対応が課題となる。
10079
乳腺勉強会についての取り組み検討
当院における乳腺チーム立ち上げについて
GP-2-085-02
GP-2-085-03
1
独立行政法人国立病院機構長崎医療センター 看護部、
2
独立行政法人国立病院機構長崎医療センター 外科
大分県済生会日田病院 乳腺外科
尾崎 邦博、西村 寛、田尻 健亮
村上 摩利 1、森田 道 2、渡海 由貴子 2、前田 茂人 2
【背景】乳癌患者に質の高い治療やケアを提供するために、医師、看護師、薬
剤師、MSW などチームでの勉強会の必要性を感じた。勉強会は、医師による
講義形式で、受動的な学習のスタイルであった。そこで、能動的に学習や問
題提起ができるよう、各職種から取り上げて欲しいテーマを選択し、それぞ
れの職種がその専門性を発揮し、情報を共有できることを目的に方法を検討
した。【方法】2013 年 1 月~ 7 月までに 11 回開催した勉強会において、1 時
間での講義形式を発表 15 分、討議 15 分に変更した。その後、これまでの講
義形式から比較しての自由記載式でアンケート調査をした。【結果】回答は外
来と病棟の看護師 11 名、薬剤師 2 名。テーマの選択では、医師は、疾患や治
療に関すること、看護師は、リンパ浮腫やマンマリハビリ、副作用の看護な
どの直接ケアに関すること、薬剤師は、副作用対策、ホルモン療法など薬剤
に関すること、MSW は医療費に関することであった。勉強会に関して、設問
1: 良かった点として、知識を深めることができた、他職種の業務がわかった、
発表することで自分の勉強にもなった、他部門の専門的な情報を得られたな
どであった。設問 2: 改善点として、勉強会の開始時間を遅らせてほしい、発
表 15 分での伝達の難しさ、発表自体の準備不足、精神的負担、テーマを絞っ
て深く学びたいなどであった。設問 3:重要性については、勉強会により普
段の疑問も解決できる貴重な場となった。15 分の発表で他職種に魅力的な構
成を工夫できた。他職種の発表を聞き、問題のとらえ方・解決方法について
学んだなどであった。【まとめ】1)各職種による勉強会のテーマの選択は、能
動的となり、各専門性を相互に認識し尊重する機会となった。2)重要性を感
じる一方で、精神的負担もうかがえた。3)チーム医療を熟成させるためには、
各職種からの能動的な問題解決および情報共有が大切になる。【今後の課題】
1. 乳腺勉強会の継続とその拡大。2. 各職種の専門性をより発揮できる体制の
整備。3. 各職種間のコミュニケーション能力の向上。
445
当院の位置する日田市は人口約 7 万で、周囲医療圏は約 10 万人が対象となる。
当院は地域がん診療連携拠点病院であるが、これまで乳腺専門医が不在であ
り、一般外科医が乳腺疾患を担当していた。乳癌患者さんの多くは、専門医
を求めて遠方で治療を受けており、術後の通院等問題を抱えていた。これに
対して 2013 年 6 月に乳腺専門医が赴任し、乳腺チームを編成。さらに乳腺専
門外来を設立した。これまでの経過について報告する。乳腺チームの構成は、
がん化学療法認定看護師、病棟看護師 ( 乳癌患者担当 )、薬剤師、マンモグラフィ
認定技師、認定超音波検査士、病理細胞検査士、作業療法士、栄養士、医療
相談員とし、全員女性で編成した。これらのスタッフで乳腺外来設立に向け
て毎月カンファレンスを行ったが、設立後も各部署の情報、知識、理解の共
有を図るために継続している。院外活動は、地元マスコミ取材、患者会、市
民公開講座、医師会での講演、医師会乳癌検診部会への参加等を行った。院
内では勉強会、キャンサーボードへの乳癌患者の積極的紹介、院内での招待
講演会等行い、院内スタッフの知識向上を図った。また、女性技師の他院で
の研修、専門試験受験、新機種購入、造影エコー導入、研究会での発表や学
会参加等を行い、motivation 向上を図った。もちろん形成外科、放射線科、
婦人科、歯科口腔外科との連携はさらに密行った。これまでは各部門がそれ
ぞれに活躍してきたが、乳腺専門医がチームの軸となることで、より良く機
能していると思われた。さらに今後は緩和病棟や連携パス等を計画している。
一般セッション(ポスター掲示)
11415
ポスター掲示
10515
11089
チームパージェタによる安全な医療の構築
外来化学療法室カンファレンスの有用性について考える
GP-2-085-04
GP-2-085-05
1
公益財団法人がん研究会有明病院 乳腺センター乳腺内科、
2
公益財団法人がん研究会有明病院 総合腫瘍科、
3
公益財団法人がん研究会有明病院 乳腺センター乳腺外科、
4
公益財団法人がん研究会有明病院 9 階東病棟、
5
公益財団法人がん研究会有明病院 病理部
静岡済生会総合病院
朝日 恵美
荒木 和浩 1、深田 一平 2、小林 心 1、河合 佑子 1、柴山 智子 1、
蒔田 益次郎 3、武石 優子 4、高橋 俊二 2、岩瀬 拓士 3、伊藤 良則 1、
坂井 威彦 3、荻谷 朗子 3、森園 英智 3、宮城 由美 3、飯島 耕太郎 3、
白井 智子 3、照屋 なつき 3、中島 絵里 3、堀井 理絵 5、秋山 太 5
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】新薬を日常診療で安全に使用することを早期に実現するためには販売
前から多職種からなる専属チームを組織する必要がある。そこでは基礎的な
作用機序から副作用対策までを討議し、院内マニュアル (SOP) を作成する。
ペルツズマブ (Pmab) 販売前に 30 例の治験での使用経験があったが、SOP を
用いた多くの患者に日常臨床現場で対応する体制を構築したので、その安全
性への取り組みを報告する。【対象と方法】チームパージェタ構築の課程と、
Pmab 販売時から 13 年 11 月下旬までに投与を開始した7例の安全性を評価
する。【結果】パージェタは本邦で 13 年 8 月薬価収載、同年 9 月に販売を開始
した。Pmab はトラスツズマブとドセタキセルの併用が基本であるが、本邦で
は様々な抗癌剤との組み合わせが可能で、統一レジメンでの安全性確保が必
要である。そのため 7 月 19 日からチームパージェタ構築に着手した。国内外
で進行中の臨床試験を含めたエビデンスを基に 8 種のレジメンを 8 月 1 日に院
内審査に提出し、8 月末日までに承認を得た。平行してチームパージェタ診療
管理マニュアルを作成し、8 月 12 日に当該科医師、薬剤師、看護師のみなら
ず、医事課も含めて討議を開始した。各部署の実用に合わせるために、上記
のマニュアルには患者支援看護マニュアル、患者指導薬剤部マニュアルに加
え、薬剤費用なども含めた患者指導用の説明文書を追加した。また、11 月か
らチームパージェタ診療管理マニュアルを用いた院外医師、看護師、薬剤師
への教育も開始した。実臨床での初症例が 9 月 18 日に導入され、その投与前
に登録レジメンの全てを早急に導入するのでなく、臨床データが最も確実な
ドセタキセルレジメンのみで開始となった。上記期間の対象患者の年齢は 54
(43-61)歳、HER2 陽性進行乳癌で、4 例がホルモンレセプター陽性であった。
前治療歴は 1 (1-11) レジメンであり、全症例にタキサンとトラスツズマブの
投与がなされていたが、ラパチニブとカペシタビンの併用歴は 2 例のみであっ
た。現在までに最大で 4 コース投与されているが、既知の副作用のみであり、
重篤な有害事象は認められなかった。【結論】限られた症例数であるが、SOP
を用いたチーム医療による院内治療体制を整え、安全性確保のみならず、院
外医療職に対する啓蒙活動も実践できた。
【目的】近年チーム医療の重要性が認識され、とりわけ乳癌領域においての発
展はめざましい。チーム医療を支えるには患者情報の共有と、各職種で高め
たスキルが必要である。当院の外来化学療法室(以下化療室)には、看護師間
で情報共有する場はあったが、多職種で情報共有する機会と看護師への継続
した教育の場が無かった。そこで、がん化学療法看護認定看護師が発信源に
なり、カンファレンスの運営を始めた。その有用性について調査した結果を
報告する。【対象・方法】2013 年 11 月 1 日から同年 11 月 30 日に実施したカ
ンファレスに、複数回参加した医師 5 名、薬剤師 4 名、看護師 5 名に対し独自
に作成した質問紙による調査を実施した。調査にあたり倫理的配慮について
文章による説明を行い、質問紙の回収を以って同意を得たものとした。デー
タ集計は単純集計を行った。【結果】調査用紙回収率は 100%であった。開始
時間(8 時 25 分開始)、開催時間(15 分)、回数(毎朝)については、どの職種
も現状で満足という回答であった。患者情報の共有の有効性、業務への実用
性については 5 段階評価で測定し、2 項目とも 4 以上の高い評価であり職種間
の差異はなかった。自由記載において医師からは「患者の気持ちをより理解し
た上で診察できる」「外来診察では得られない情報を得ることができ診療に反
映できる」などの意見が出た。薬剤師からは「様々な視点で患者をみることが
できるようになった」「別の患者の問題解決の糸口になる」「支持療法の相談、
提案ができる」などの意見が出た。看護師からは「職種間の壁が無く、意見を
言いやすい」「観察の視点が意識できる」「看護の視点がわかりやすい」「勉強
し、調べる良い機会になっている」という意見の一方、「レベルの違いがあり、
内容が難しく看護に生かす所まで到達していない」という意見もあった。【考
察】化療室カンファレンスは多職種間での患者情報共有する上で有用な場に
なっていた。カンファレンスをきっかけに学びの糸口が見えた看護師の存在
は大きな収穫である。今後、化学療法看護歴が浅い看護師に対して、カンファ
レンスで気づいた疑問点を拾い上げ、スキルの底上げを行うことが求められ
る。今後の課題として、カンファレンスの定着があげられる。継続することで、
まだ参加していない医療スタッフへの啓蒙の一助となり、チーム医療の発展
に寄与することが期待できる。
11679
10454
当院における乳腺多職種カンファレンスの評価
-カンファレンスのあり方および今後の課題-
当院における化学療法地域連携パス(トラスツズマブ初回導入パ
スと心機能評価パス)の検討
GP-2-085-06
1
GP-2-085-07
北里大学病院 看護部、2 北里大学病院 医学部
1
社会医療法人寿楽会大野記念病院 外科、
社会医療法人寿楽会大野記念病院 看護部、
大阪市立大学大学院 腫瘍外科、4 大阪市立大学医学部附属病院 看護部、
5
社会医療法人寿楽会大野記念病院 循環器内科
2
児玉 美由紀 1、東海林 ちえみ 1、加藤 牧子 1、谷野 裕一 2、仙石 紀彦 2、
小坂 愉賢 2、藁谷 美奈 2
【はじめに】A 大学病院乳腺外科では、病棟所属の乳がん認定看護師(以下、
BCN)を中心に、乳腺チーム医療の質向上に向けて、患者情報の共有や個々の
スタッフの知識向上を目指して多職種による乳腺カンファレンスを行ってい
る。今回、乳腺カンファレンスの方法を評価し、今後の課題を明らかにした
ため、以下に報告する。
【研究方法】アンケート調査
【倫理的配慮】研究の趣旨を文書にて説明し、無記名式のアンケートを配布し
た。提出を持って研究同意とみなした。
【研究結果】医師、薬剤師、看護師(病棟・外来・化学療法センター・患者支援
センター)MSW、薬剤師 41 名にアンケートを配布し、40 名から回答が得ら
れた(回収率 97.5%)1) 開始時間:ちょうどよい 60%、遅い 40%;業務終了
時間の 1 時間後であり、看護師は開始時間が遅いとの意見があった。2) 開催
時間:ちょうどよい 97.5%、長い 2.5%;30 分程度だと集中できるという意
見が多かった。3) 開催頻度:週 1 回 52.5%、隔週 35%;検討事項や方法を見
直したうえで開催頻度を決定した方がよいという意見が多かった。4) カンファ
レンスの内容:前回の検討事項の進捗確認、患者情報の共有、ミニレクチャー
という構成で、BCN が各医療者の意見を取りまとめて議事進行を行っており、
このままでよいは 75%、変えた方が良いは 22.5%であった。このままでよい
と評価する一方で、<患者情報を知っている人だけが進めている><話し合
いの目的や意図の共有ができていない>と考えていた。5) カンファレンスで
得られた患者情報や知識について:参考になる 82.5%、参考にならない 2.5%
であった。その理由として<主治医の考えがよくわかる><外来通院時の状
況や家族の様子がわかった>などの意見があった。さらに、この場が<他部
署での動きを知る><新たな薬剤情報を知る>きっかけとなり、新しい情報
を得る機会との意見が多かった。6) その他:<カンファレンスの目的を明確
化してほしい><事前に検討事項を把握したうえで、参加の有無を決めたい
>など意見があった。
【考察】アンケート結果から、参加者はカンファレンスの目的や意図を理解し、
主体的な参加を望んでいた。そのため、今後の課題は、他職種から最新の情
報を得ながら、チーム医療の質が向上できるような会を目指し、運営方法を
検討していくことである。
3
水山 陽子 1、神藤 理 1、松谷 慎二 1、有本 裕一 1、山本 博美 2、
土井 早苗 2、谷輪 尚子 2、中野 妙子 4、風 美緒 4、高島 勉 3、中河 宏治 1、
寺柿 政和 5、河野 仁美 5、大野 良興 1
【背景】2008 年 2 月より周術期のトラスツズマブ使用が可能となり、関連大学
病院からトラスツズマブの初回投与の紹介入院の依頼が増加したため、連携
クリニカルパスを作成し導入を行った。化学療法投与前に循環器内科医師に
より心臓超音波検査を行っていたが、治療中に心機能低下にて治療を中断し
た症例があり、2011 年 9 月からはトラスツズマブ治療中および治療後の心毒
性に対し、心機能の評価パスを併せて開始した。【目的】トラスツズマブは初
回投与時に重篤なインフュージョンリアクションを生じる可能性があるため、
大学病院と地域連携パスを作成し、安全かつ効果的な治療の遂行を目指す。
心臓超音波検査による心機能評価を定期的に行うことにより心不全の発症を
早期に発見する。【結果】2008 年 5 月から 2013 年 11 月までに、症例は 81 例
で、年齢は 23 歳から 81 歳、女性 80 例男性 1 例で、平均年齢は 56.7 歳。内訳は、
術後化学療法が 41 例、術前化学療法が 27 例、再発または切除不能症例が 13
例。薬剤は、トラスツズマブ単独が 39 例、パクリタキセル併用が 40 例、そ
の他の併用 2 例であった。中止症例は 1 例で、Grade2 のインフュージョンリ
アクション症例であった。心不全にて治療を中断した症例は 3 例で、うち 2 例
が心機能評価パス導入後であった。【課題】トラスツズマブを含む化学療法の
副作用の心毒性を定期的な心臓超音波検査を行うことにより早期に心機能低
下を診断し、治療継続の是非を評価する。救急病院である施設の特性を生かし、
緊急時や時間外の対応などの支援も広げていく。
446
ポスター掲示
10587
10711
当院における緩和ケアサポートチームが介入した再発・転移乳
癌患者の検討
乳癌診断におけるチーム医療を目指した乳腺画像検討会 10 年の
成果と今後の課題
GP-2-085-08
GP-2-085-09
千葉市立海浜病院 外科
1
塩原 正之、太枝 良夫
蔵下 要 1、宮里 恵子 1、宮良 球一郎 2
【はじめに】正確な乳癌診断を行うにあたって医師と診断部門技師のチーム医
療体制は不可欠である。当院では「画像と病理の整合性」を常にチームで見つ
め直すことをテーマに 2004 年 3 月より乳腺画像検討会を継続してきた。
【目
的】当院におけるこの検討会 10 年の成果と課題を抽出し、今後の方向性を明
らかにする。【検討会の実際】毎月1回開催、参加者は乳腺外科医、超音波検
査技師、放射線技師、病理部検査技師が 20 名前後で、院内だけでなく健診セ
ンターや他施設からも参加している。各部署が持ち回りで症例を提示して、
MMG、MUS、病理の画像を読影し、参加者でディスカッションする形式が主
体で、時にレクチャー形式で行われる。【結果】2013 年 12 月の時点で開催回
数は 104 回であった。検討会を通して、乳腺医と技師、また異なる部署の技
師間における日常診療でのコミュニケーションが密になった。2008 年の電子
カルテ導入後は画像情報の共有化が容易になり、判断の難しい症例において
は初診時から情報のやりとりを行えるようになった。乳腺診断関連の認定資
格を取得できた(精中医 MMG 認定技師:11 名、JABTS 認定 A 判定技師:5 名、
超音波検査士体表部門:6 名)。病院と健診センターの超音波技師間で判定困
難な超音波検診症例の検討が定期的に行われるようになり超音波検診の要精
査率を下げることができた。【考察】技師の知識や技術の向上において乳腺画
像検討会は有用であると思われた。また部署間の良好なコミュニケーション
を維持する上でも重要な役割も果たしていると考えられた。一方で、MMG 検
診での女性技師のニーズが高くなることに伴い、男性放射線技師の参加が減
少しておりモチベーションの低下が懸念された。また認定を取得した技師に
ついては次世代の若い技師を教育していく意識と自信を高めるため、この検
討会が教育トレーニングの場となる様に会のスタイルを見直す必要があると
考えられた。【結語】乳癌診断におけるチーム医療体制の構築を目指した乳腺
画像検討会は一定の成果があったと考えられた。今後とも診断能の向上と人
材育成に少しでも寄与できる様に、また乳癌診断において患者さんにより良
い医療を提供できる様に、この検討会を継続していきたいと考えている。
11301
11313
自壊創を伴った進行乳癌に対するアセスメントツールの有用性
乳房温存術予定患者の整容性理解に対する当院の試み
GP-2-085-10
GP-2-085-11
京都民医連中央病院 乳腺外科
1
名嘉山 一郎、富永 愛、村西 優美
饗場 恵美子 1、堀本 義哉 2、田辺 真彦 2、中井 克也 2、齊藤 光江 2、
水野 博司 1
【緒言】自壊創,すなわち癌性潰瘍および腫瘍露出を伴った進行乳癌に遭遇す
ることは稀ならず経験する。患者本人・家族だけでなくわれわれ医療スタッ
フも困惑することが多い。欧米ではこういった病態を fungating tumor と称
し , 腫瘍によって生じた創部を malignant wound と呼んで集学的治療の対
象としている。今回カナダの malignant wound に対するアセスメントツー
ル,
WRHA Malignant wounds assessment and management algorithm
(以
下,アルゴリズム)を改変して,進行乳癌 3 症例の検討を行った。こういった
病態の患者への治療やケアのあり方について改めて深められた点も多く,若
干の文献的考察を加えて報告する。
【対象】自壊創を伴う進行乳癌 3 例。年齢,病悩期間,intrinsic subtype は,
そ れ ぞ れ 63 歳 /72 歳 /55 歳,2 年 /5 ヶ 月 /3 年,Luminal B(HER-)/ Triple
Negative/ Luminal B(HER+)。
【方法】改変したアルゴリズムを共通のフォーマットとして,主治医がコーディ
ネーターとなって呼びかけた多職種・チームが参加して項目を評価し,病棟
カンファレンスの場で進捗状況を確認した。全身状態の評価は Edmonton
Symptom Assessment Scale (ESAS) を用い,栄養状態は栄養サポートチー
ムが,創の評価は主治医と WOC ナースが,薬物療法については腫瘍内科医と
薬剤師が,精神状態については精神科医が評価・介入を行った。またカンファ
レンスには作業療法士,MSW も参加した。
【結果】ESAS 平均 64 → 31 と改善がみられた。これは疼痛・呼吸困難感が治
療で軽快したこと,入院による安堵感,さらに不安・抑鬱が創処置で不快な
症状が消退し,治療経過の中で改善が実感できたことで軽減されたためと思
われる。栄養状態はプレアルブミン値で入院時平均 18 と低く慢性的な消耗状
態にあることが示唆された。ボディイメージの変容は、精神的なダメージや
羞恥心、周囲とのコミュニケーション障害を起こしやすく、精神面を含めた
ケアが重要であった。 今回の 3 例は自己犠牲的に親族の介護を継続していた
ことが共通していたが,受診行動には本人のキャラクター,家庭環境さらに
は経済的問題も大きく影響を及ぼしていた。
【結語】アルゴリズムは患者に関わる個々人の冷静沈着かつ遺漏ない対応を可
能とし,何をすれば良いかを明らかにした。医療チームには共通のフォーマッ
トを持つことでチームの有機的統合がはかれ治療の全体像を見渡せる一助と
なった。
順天堂大学医学部 形成外科、2 順天堂大学医学部 乳腺内分泌外科
【目的】乳房温存術は切除検体のサージカルマージンが不確定なこと、すべて
の温存術患者に対応するには形成外科のマンパワーが足りないことから、当
院では乳房温存術に対して形成外科が関与する即時再建を行っていない。し
かし、患者に温存術後変形の程度を想像させるのは難しく、「想像より変形が
強かった」として形成外科に修正の依頼がくることがある。だが、乳房温存術
後変形に対する修正術は難しく、患者の満足を得られないことがある。そこ
で当院では、乳房温存術後患者の写真を集め切除部位別に分け、変形の強さ
ごとにグループ分類した写真集を作成した。これを乳房温存術前患者に見せ、
主治医の予想する変形具合と、患者の想像する変形具合を、術前に具体的に
確認しあう作業を開始した。【方法】温存術後患者の了解を得て写真を撮影し、
その写真を切除部位(A,B,C,D,E 領域)ごとに分け、さらに変形の度合いによ
り、重度、中等度、軽度の3つに分け、分類を行った。これを温存術前の患
者に見せながら、主治医の予想する術後変形の程度を具体的に提示する。ま
た患者自身にも、どの程度の変形までなら受け入れられるのか、写真を見せ
ながら問い、患者の整容性に対する感覚を具体的に把握しておく。主治医の
予想する術後変形の程度と、患者の許容しえる変形の程度に大きく乖離があ
る場合には、術後のトラブルが予想されるため、術前に形成外科を紹介して
もらい、皮弁移植術などによる即時再建や全摘に対する乳房再建まで視野に
入れた検討を行う。【結果・考察】当院では年間約 400 例の乳癌手術を行われ
ており、うち 55-60%が乳房温存術である。これまで、形成外科は乳房切除
術予定の患者に対しては乳房再建の説明を行ってきたが、温存術の患者に関
しては全く関与できなかった。この方法を行うことにより、形成外科が関与
すべき症例を的確に抽出でき、術後トラブルの回避に貢献できると考えられ
た。
447
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】当院における緩和ケアサポートチームが介入した再発・転移乳癌
患者について検討した.緩和ケアサポートチームの構成は医師 4 名(外科 1 名,
呼吸器内科 1 名,婦人科 1 名,麻酔科 1 名),看護師 7 名(緩和ケア認定看護師
1 名,がん化学療法看護認定看護師 1 名),薬剤師 1 名,理学療法士 1 名,管
理栄養士 1 名,メディカルソーシャルワーカー 1 名の計 15 名である.主たる
活動は,緩和ケア認定看護師による適宜の回診,週 1 回のチームカンファレ
ンスおよび回診であり,コンサルテーションを受けた患者に対して多職種で
対応し,患者および家族の QOL 向上を目指している.【対象と方法】2012 年 7
月から 2013 年 11 月までに緩和ケアサポートチームが介入した再発・転移乳
癌患者 10 例(7 例が再発,3 例が診断時に遠隔転移あり.)を対象とした.依頼
の時期(診断から初期治療前,がん治療中,積極的がん治療終了後),依頼内容,
依頼時の Performance status(以下 PS)値,介入期間,転帰等について検討
した.
【結果】依頼時期はがん治療中が 5 例,積極的がん治療終了後が 5 例であっ
た.依頼内容は疼痛コントロールが 6 例と最も多く,疼痛以外の身体的症状が
4 例であった.精神症状に関する依頼はなかった.PS 値は 2 が 2 例,3 が 6 例,
4 が 2 例であった.9 例で介入が終了しており,介入期間は最短で 5 日,最長
で 48 日,中央値は 13 日,平均値は 19.4 日であった.転帰は退院(死亡退院,
転院を含まない)が 4 例,死亡退院が 3 例,在宅緩和ケアへの移行が 2 例,介
入中が 1 例であった.退院した 4 例中 3 例で当院緩和ケア外来への移行がなさ
れていた.【考察】近年,早期からの緩和ケアが推奨されているが,診断から
初期治療前までの間に介入依頼のあった症例はなかった.PS 値は 3 以上が 8
例であり,ほとんどの方で PS は不良であった.しかし,死亡例は 3 例のみで
あり,介入時期が決して終末期に限ったものではないことが示唆された.また,
退院後もほとんどの方で当院緩和ケア外来への移行が成されており,入院か
ら外来へのシームレスな対応が行われていた.近年,早期からの緩和ケアの
開始による QOL の向上や生存期間の延長といったエビデンスが発信されてい
ることから考えると,今後は診断から初期治療前の症例数を増やしていくこ
とが重要と考えられた.
浦添総合病院 乳腺センター、2 宮良クリニック
ポスター掲示
10885
11854
乳癌患者の緩和ケア移行期に関する医師 ‐ 看護師への意識調査
乳がん体験者コーディネーターによるピアサポートを活用した
患者支援体制
GP-2-085-12
GP-2-085-13
公立大学法人大阪市立大学医学部附属病院
1
吉本 千鶴、中 麻里子
3
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】
医療者は病状から患者の QOL を考慮して積極的治療から緩和ケアへの移行の
時期を見定めることが必要であると言われている。しかし、時期の判断に医
師 ‐ 看護師間で相違がみられ、病状の変化と治療方針との間で看護師がジレ
ンマを感じる場面がみられていた。そこで今回、現状を明らかにするため医師・
看護師に意識調査を行い、今後の課題を検討した。
【方法】
医師 4 名・A 病棟での勤務経験 5 年目以上の看護師 8 名を対象にアンケート調
査を実施し、結果を分析した。
【結果】
移行の基準を、医師は、積極的治療ができないときや患者が治療を希望しな
いときとし、看護師は、ADL・QOL の低下や死を意識する発言が聞かれたと
きと考えていた。時期を決めることに困難を感じている医師は多く、その理
由として、治療不能と診断してからの経過が長いことや患者の治療への希望
が強いことを挙げていた。多職種との検討は必要であると全員が考えていた
が、看護師の 87.5%は、移行に関する提言を行っても医師に対応してもらえ
ていないと感じ、医師との検討の場を希望していた。また、看護師の 37.5%
が IC に同席していなかったが、医師は看護師の同席を希望していた。75%の
人が患者に最期の時の過ごし方を意思確認していたが、確認時期は、治療効
果がなく症状が進行してきた時が多かった。医師の要望として、外来での積
極的治療中から患者が相談できる窓口があり、利用できるとよいという声が
あがっていた。
【考察・課題】
結果から、医師は治療的側面から、患者の身近で生活援助をしている看護師
は QOL の側面から移行の基準を判断しており、職種の専門性による相違が伺
えた。また、医療者間で十分な話し合いがされていないと看護師は感じてい
たが、その反面、IC場面で立ち会えていない現状がみられていた。緩和ケ
アへの移行は、患者・家族の思いも汲みながら、患者を全人的に捉え検討す
ることが必要となる。両者が持つ情報を共有しながら、患者にとって何が最
適かチームで検討する場が必要不可欠であることが示唆された。今後は、患者・
家族の積極的治療終了に対する不安を軽減し、緩和ケアに意味を見出し、自
分たちの意思で今後の過ごし方を選択できるよう、緩和ケアチームも含め医
療スタッフが連携して支援体制を構築していくことが課題と考える。
横浜労災病院 看護部、2 横浜労災病院 患者サポートセンター、
横浜労災病院 乳腺外科、4 横浜労災病院 腫瘍内科
大椛 裕美 1、八木 智子 2、千島 隆司 3、山本 晋也 3、足立 祥子 3、
有岡 仁 4、浦辺 佳世子 1、田中 一美 1
【はじめに】乳がん患者は治療方法が多岐に渡り、患者は治療に伴う意思決定
や副作用などの様々な問題や苦悩を抱えながら治療に臨むことになるため、
乳がん患者や家族の支援においては多職種による継続した支援が求められる。
当院では乳がん患者や家族の視点から支援し、療養生活の質の向上を図るこ
とを目的とした乳がん体験者によるピアサポートを活用した患者支援を開始
している。
【目的】ピアサポートによる患者相談により、治療に対する不安や療養生活の
質がどのように改善したかについて検討した。
【方法】2012 年 12 月から 2013 年 10 月に当院の乳腺外科、腫瘍内科の受診歴
があり、ピアサポートを希望された患者および家族に対し、NPO 法人キャン
サーネットジャパン公認の乳がん体験者コーディネーターによる相談を実施
した。面談では治療を受けていく過程で障害となる不安、疑問を抽出し、ピ
アサポートとしてどのような対応が必要であったかについて検討した。また、
患者が得られたアウトカムについては、面談終了後に記入式アンケートを行
いピアサポートの効果を調査した。
【結果】相談室の利用件数は 88 件(複数回利用者も含む)、利用 者 は 40 代
(49%)、50 代(30%)であった。相談内容(重複回答)は「疾患や治療に対す
る不安」(59%)が最も多く、次いで「治療に伴う副作用症状」(53%)、「治療
方法の選択」(43%)であり、治療に対する漠然とした不安に関する相談が多
かった。ピアサポートとしての対応方法としては、共感・傾聴(84%)が主であっ
たが、生活上の助言(6%)、医療者とのコミュニケーション(3%)など「乳が
ん体験者ならでは」の対応も含まれていた。患者が得られたアウトカムとして
は、「気持ちを自由に話せる場が得られた」(91%)、「話をして気持ちが落ち
着いた」
(91%)、
「聞いてもらいたいことを十分に話すことができた」
(88%)、
「治療を続けていく勇気が湧いた」(60%)などがあり、満足度調査では「満足
であった」(90%)、「まあまあ満足であった」(10%)と高い評価が得られて
いた。
【結語】ピアサポートは、疾患・治療に伴う多様な悩みを抱える患者および家
族の療養生活の質向上に有用であることが示唆された。また、治療内容に関
する相談が多いことから、認定看護師による看護相談との連携を図りながら、
より充実した支援体制を整備していく必要があると考えられた。
11582
10823
ゾレドロン酸水和物、デノスマブ投与での薬剤師の役割
乳がん患者へのカバーメークと QOL
GP-2-085-14
GP-2-086-01
1
聖マリアンナ医科大学ブレスト&イメージング先端医療センター 薬剤室、
2
聖マリアンナ医科大学ブレスト&イメージング先端医療センター 乳腺外科
1
松崎 邦弘 1、白 英 2、劉 孟娟 2、川本 久紀 2、首藤 昭彦 2、福田 護 2
分田 貴子 1、菊池 弥寿子 1、西岡 琴江 1、辻 英一 1、笹原 麻子 1、
尾辻 和尊 1、多田 敬一郎 2、平家 勇司 1、小川 利久 1
2
【背景】乳がん骨転移に対して、ゾレドロン酸水和物 ( ゾメタ R)、デノスマブ ( ラ
ンマーク R) の使用頻度は高い。2012 年度から、これらの薬剤も外来化学療法
加算が算定できるようになり、適正使用を行うためにも、その投与管理は重
要になっている。現在、これらの薬剤を投与する場合、必ず薬剤師が直近の
腎機能、カルシウム値等を確認している。【目的】薬剤師が腎機能、カルシウ
ム値等の確認を開始した、2012 年 4 月からの上記 2 剤の使用状況と、薬剤師
の関与について後方視的に検討した。腎機能評価は CockCroft-Gault の式で
行っている。【経過・まとめ】2012 年 4 月からは、ゾレドロン酸水和物が 73 名、
デノスマブが 21 名の患者に投与されていた。そのうち 3 名の患者が腎機能低
下(クレアチニンクリアランス 60ml/ 分以下)を確認し、ゾレドロン酸水和物
を減量した。減量した患者のゾレドロン酸水和物は、薬剤室で調製している。
またデノスマブ投与での低カルシウム血症は認めなかった。【考察】ゾレドロ
ン酸水和物、デノスマブの投与には、腎機能、カルシウムの測定が必須であり、
デノスマブについてはカルシウム(デノタス R)の内服も必須となっている。今
回、薬剤師がこの 2 剤の投与管理を開始してから減量となった症例があるよう
に、投与患者の腎機能、検査値、投与量、投与間隔、処方薬を薬剤師が確認し、
一元管理をすることは重要であると考えられる。また適正使用による副作用
防止の面からも、薬剤師が投与管理を行うことにより、より安全に投与ができ、
チーム医療の貢献にも繋がると考える。
448
東京大学医学部 乳腺内分泌外科、
国立がん研究センター 早期・探索臨床研究センター
乳がん治療においては、乳房欠失や脱毛等、大きな外見変化を伴うことが多
い一方、暮らしながら治療する期間や、治療後の期間が比較的長く、補正下
着やウイッグなどの外見ケアが、患者の QOL 維持や精神的・社会的苦痛軽減
のために極めて重要である。当グループでは、外見問題の中でも、特に皮膚
変化を対象とし、「カバーメークとがん治療患者 QOL」臨床研究を進行中であ
る。「カバーメーク」とは、カバー効果の高い化粧クリームを用いて、痣や火
傷痕などを目立たなくするために開発された技術であるが、当グループは、
このカバーメークをがん治療患者に応用した先行研究において、治療に伴う
外見変化を目立たなくすることが、患者 QOL 上昇につながる可能性を示して
いる。なお、この先行研究において得られた「簡単に使えて、水に強いクリー
ムがほしい」という患者の意見が契機となり、耐水性の極めて高い ‘温泉でも
落ちない’ カバー用クリームが開発されている。本研究では、患者の希望に応
じて、薬物治療に伴う顔の色素沈着をカバーするほか、クリームの耐水性を
生かし、乳腺切除創痕や放射線治療による色素沈着部位へのカバーも行う(施
術例写真参照)
。乳房は
平時には露出されない部
位とはいえ、実際には、
温泉入浴や子供に見せる
ことを避けており、「カ
バーメークのおかげで助
かった」と述べる患者も
多 い。 本 発 表 で は、「 カ
バーメークとがん治療患
者 QOL」臨床研究におい
て、当グループが行うカ
バーメークの実際を提示
し、QOL に対するカバー
メークの有用性を、美容
的側面だけでなく、精神
的・社会的側面から示す。
11682
11763
乳がん患者における CV ポート挿入により感じる変化
乳がん術後患者の日常生活に関する実態調査
GP-2-086-02
ポスター掲示
GP-2-086-03
1
日本医科大学多摩永山病院 看護部、
2
日本医科大学多摩永山病院 消化器外科・乳腺外科・一般外科
1
滝澤 聖子 1、椿原(旧姓 兼重) 久美子 1、横山 正 2
光野 薫 1、川田 将也 2、的場 佳子 1、廣田 さゆり 1
2
【目的】A病院では手術を受ける乳がん患者に対し、クリニカルパスをもとに、
術前から術後まで安心して手術を受けられるよう支援している。患者との関
わりの中で、多様な悩みや不安を聞く経験をした。そのため、今後に向けて
より良い支援のあり方を検討するために、アンケートを行い、乳がん患者の
術後に生活するうえでの身体的・精神的・社会的体験を明らかにすることと
した。【方法】A病院通院中に 2013 年 4 月から 11 月の期間に受診した、乳が
ん手術既往のある患者 115 名を対象に無記名のアンケートを実施した。対象
者に対して、研究目的、参加の自由、個人情報保護などを説明し同意を得た。
調査内容は、1) 基本属性(年代、手術時期)2) 手術後の日常生活に関すること
とし、アンケートは自由記載方式とした。質的帰納的手法により、アンケー
ト記載内容の言語をコード化し、類似性に沿ってサブカテゴリー・カテゴリー
化へと抽象化した。【結果】乳がん手術を受けた患者の質的評価より、10 項目
のカテゴリーが抽出された。カテゴリーより、患者は、「今後起こりうる身体
症状に対する不安」
「治療に関する悩みや不安」
「家族に関する悩みや不安」
「身
体症状に関する苦痛」
「精神症状に関する苦痛」
「治療費への不安や負担感」
「仕
事への支障」を体験していることが明らかとなった。それに対し、「他者から
のサポート」「手術を受けたことへの対処行動」を行い、「医療者への支援ニー
ズ」を希望として持っていることが明らかとなった。【考察】退院後、患者は再
発の不安や様々な身体症状の苦痛や経済的問題や社会的問題を持ち続けてい
ることが分かった。一方、病気を乗り越えてより健康的な生活を目指して対
処していること、そのために具体的な医療者への情報提供の希望を持ってい
ることがわかった。今後、患者本来の力を早期に取り戻すため、術後の症状
や日常生活の方法へのより具体的なセルフケア支援と情報提供の内容検討に
活用したいと考える。
11411
10884
人工物での乳房再建術後のオーダー下着の必要性について
乳がん患者の術後機能障害が及ぼす日常生活への影響
GP-2-086-04
GP-2-086-05
1
医療法人社団ブレストサージャリークリニック、
2
株式会社ワコール人間科学研究所
熊本赤十字病院 看護部
松本 華奈、松山 綾、山下 真由
中川 香名子 1、岩平 佳子 1、岡 いずみ 2
【目的】乳房再建後、多くの患者は整容的に満足していても下着について悩み
を抱えている。患者は一般の店舗で店員に相談することに抵抗を感じており、
当院でも実際に患者から下着についての相談を受けることが多い。当院では
人工物での乳房再建術後に院内で下着オーダーシステムを作ったので、利用
した患者の整容性および QOL の変化について報告したい。
【方法】期間:2013年1月~10月。対象:当院で人工物乳房再建を受け
術後下着に関しての悩みがあった患者30名。オーダー下着作成前後を写真
で解析し、満足度を調査した。
【結果】人工物での乳房再建術後の悩みとして1.インプラントの Rippling 2.
大きさの違い 3.左右のバランス 4.健側は寄せ上げができるが、再建側
は同様にできない 5.Nipple Sparing Mastectomy で乳輪が変位した結果、
乳輪が下着の外にでてしまう 6.下着をしていないと健側の形も変わり、胸
が外に流れてしまい形が外を向く。が挙げられた。オーダー下着を着用し、
rippling の消失や下着内に胸がおさまりバランスがとれ、圧迫感がなく安定感
があり着用していても苦しくなくなったという患者が多かった。乳癌術後か
らワイヤー入りの下着をつけられなかったが、久しぶりに着用できたとの回
答が得られ、患者からは笑顔がみられた。下着の柄も豊富であり追加購入の
希望も多かった。
【考察】人工物による乳房再建は、シリコンインプラントが既製品であるため、
左右全く同じ形の胸になることは難しい。見た目が良くても、ティッシュエ
キスパンダーで皮膚を伸展させたエンベロープ内でしか動かないため健側と
同様の胸の寄せ上げは不可能である。オーダーにより個々の状態に合わせ左
右のカップの大きさ、位置を変えることで都合のよい収まりが可能になった。
問題点としては価格が高いこと、治療や年齢によって変化する乳房形態に対
し定期的なフィッティングが必要であるが、再建の特徴を理解している下着
コンサルタントがいる販売店はほとんどないことがある。
乳房再建は単に再建するだけでなく、術後 QOL を維持する上でも患者の下着
に対する悩みにも耳を傾け、何らかの方法を考慮することも重要であると思
われた。
【目的】A 病院では看護師がパンフレット・DVDを使用し、術前よりリハビ
リテーション指導を行っている。しかし、患側の肩関節可動域が術前の状態
に回復しないまま退院となることが多く、日常生活に何らかの影響を及ぼし
ているのではないだろうかという疑問が生じた。先行研究では乳がん術後の
心理・社会的側面に焦点をあてたものが多く、身体的側面に関するものが少
ない。そのため術後機能障害が及ぼす日常生活への影響を明らかにし、今後
の乳がん看護の示唆を得るために本研究に取り組んだ。【方法】平成24年8
月~平成25年5月の期間に、乳がん術後6か月間(術後放射線の影響を考慮
し、記憶を振り返られる期間)の40~50歳台の女性3名を対象に半構成的
面接法を行った。逐語録にデータをおこし、得られた要因をカテゴリー化し
分析を行う。【倫理的配慮】研究実施施設の倫理審査で承認を得た。【結果】対
象者の語りから、合計60のコード31のサブカテゴリーから「最初は怖かっ
た」「自然にかばっていた」「生活動作に変化が起きた」「生活するのに不便は
なかった」
「時間の経過とともに出来なかったことができるようになった」
「生
活の中にリハビリ取り入れた」「職場復帰はきつかった」「家族からの支援が
あり楽だった」の8つのカテゴリーが抽出された。【考察】不安や恐怖が軽減す
るように心理的ケアを行っていくと共に、患者自身が具体的な日常生活の動
作について考える場を持つ必要がある。また退院後の日常生活動作への影響・
サポート体制の確認、心理的サポートを行うこと、また肩関節の動きを日常
生活に取り入れることが効果的であり、具体的な説明が必要となる。また、
仕事の継続に支障をきたしていることが明らかとなり職場での社会的サポー
トが不足していることをまずは看護師が理解し、患者の就労の継続に関する
意思決定を支援していく必要がある。退院後も患者はリハビリが必要である
と理解しており、入院中のリハビリ指導は術後機能障害の改善に役立ってい
た。【結論】乳がん患者の術後機能障害が及ぼす日常生活への影響は《日常生活
における心理的影響》《日常生活動作の変化》《リハビリテーションを取り入
れた日常生活の工夫》《職場復帰に対する影響》《術後機能障害は6か月以内
に改善していた》の5つが明らかとなった。
449
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】乳がん患者が皮下埋没型中心静脈ポート(以下、CV ポート)挿入後に感
じている身体的変化と、変化に対する工夫の具体的内容、CV ポート挿入後の
患者の気持ちの変化を明らかにする。【方法】手術後、再発や転移を生じ化学
療法中に CV ポートを挿入した患者を対象に、半構成的面接を実施。面接内容
は CV ポート挿入による身体的変化、日常生活への変化の有無とそれに対する
工夫の内容、心理的な変化とし、面接内容を逐語録として抽出。類似性に従
いカテゴリー化した。【結果】6 名に面接を実施。30 代 1 名、50 代 2 名、60 代
1 名、70 代 2 名であり、CV ポート留置歴は 1 カ月~ 4 年 4 カ月で平均 2 年 2
カ月であった。うち、乳幼児をもつ患者が 1 名、習慣的に運動をする患者が 1
名であった。医療者が CV ポート挿入を勧めた経緯は末梢血管確保困難が 4 名、
抗がん剤の変更に伴う患者が 2 名であった。身体的変化を患者がそれぞれ利
点・欠点として捉えているものに分類。利点は 2 つのカテゴリーに大別でき、
「末梢血管確保からの解放に対する安堵感」
「生活への支障の少なさ」であった。
欠点は 3 つのカテゴリーに大別でき、「外見に関すること」「合併症に関する
こと」「挿入後に生じた症状や感覚に関すること」であった。日常生活への変
化の内容、工夫の内容は 5 つのカテゴリーに大別でき、「挿入部への衝撃に関
すること」「運動に関すること」「衣服の選択に関すること」「持ち物の選択に
関すること」「入浴の際の配慮」であり、全員が衣服や持ち物の選択に影響を
受けていた。心理的な変化としては 4 つのカテゴリーに大別され、「抜去に関
すること」「挿入して安堵する気持ち」
「医療機器としての認識」「CV ポート
挿入とは直接関連しない気持ちの変化」であった。【考察】CV ポートの留置歴、
化学療法の治療歴と挿入による身体的変化に因果関係はみられず、挿入によっ
て末梢血管確保の苦痛から回避されるという変化に対しての満足感が高かっ
た。CV ポート挿入による違和感や、衣服の選択、入浴など日常生活への変化
を生じていたが、患者個々の工夫により対処ができていた。合併症への対処
や、日常生活への変化に関して患者背景に合わせた個別的なオリエンテーショ
ンを実施することで、患者の不安の軽減ができると考えられ、適切な情報収
集と情報提供が望まれる。
KKR札幌医療センター斗南病院 看護部、
KKR札幌医療センター斗南病院 乳腺外科
10130
11352
乳がん治療に伴う心の調査―術後 2 年までの経過を追う
乳癌患者における補助化学療法中の精神障害
GP-2-087-01
ポスター掲示
GP-2-087-02
東京慈恵会医科大学 外科学講座
1
川瀬 和美、神尾 麻紀子、田部井 功、鳥海 弥寿雄、野木 裕子、
加藤 久美子、吉田 和彦、武山 浩
高橋 孝郎 1、柳 亜希子 2
丸山記念総合病院 外科、2 丸山記念総合病院 看護部
癌患者に対して、早期からの緩和ケアを行うことが推奨されているが、特に
精神的なケアは忙しい外来診療あるいは外来化学療法でのケアは十分にされ
ているとはいえない状況である。補助化学療法中には、副作用のつらさに加え、
さまざまな不安がおこり、精神障害を来しやすいと考えられる。今回、補助
化学療法中の患者に対して、うつ、適応障害のスクリーニングを施行し、精
神障害の診断治療をおこないその成績を検討した。【対象】外来化学療法室で
補助化学療法を行った乳癌患者52例。術前24例、術後28例。化学療法
レジメンは、アンスラサイクリン、タキサン、あるいはトラスツズマブを使
用する標準的治療。【方法】看護師が化学療法前の問診をおこない、その際「つ
らさと支障の寒暖計」をもちい精神症状をスクリーニングする。つらさ4支障
4以上の場合には、医師は、DSM-IV-TR のうつ病診断基準で、うつ、適応障
害の診断を行う。治療は支持的精神療法を主とし、必要に応じて薬物療法を
追加する。【結果】精神障害は18例(34.6%)に発症。うつ病1例、適応障害
17例。化学療法開始前に精神障害を来した1例、2コース目までの早期に
来した6例で、3コース以降の後期に発症した例(11例)が多かった。術前
化学療法中と術後化学療法中の比較では、それぞれ 11/24(46%)、7/28(25%)
で、術前化学療法中に発症する方が多かった(カイ二乗検定 p=0.11)。精神
障害をきたしても治療の反応はよく、化学療法の脱落はなかった。【結論】補
助化学療法中に1/3の患者に精神障害をきたしていた。「つらさと支障の寒
暖計」は簡便で有用なスクリーニングツールと考えられた。
【目的】乳癌の診断と治療の経過に伴う心理状態と生活の質 (QOL) を客観的に
評価し、生じやすい要因や遷延要因、相互関係などを検討する。【方法】東京
慈恵会医科大学において本研究の対象となる手術適応の乳癌患者に、同意を
得て社会統計学的項目と精神症状を評価した。精神症状の評価尺度として、
うつ状態自己評価尺度(CES-D)、不安状態特性不安検査 (STAI)、QOL は健
康関連 QOL を測定する包括的尺度 SF-36v2 を用い、術前、術後 1 年、術
後 2 年の状態を検討した。【成績】全経過を追えた 98 例中、術前うつ状態は
31.6%に認められた。2 年の経過でうつ状態の持続は 14.9%に認められ、身
体面、精神面での QOL が有意に低下していたが、うつ状態持続と不安状態の
関連は認められなかった。2 年後のうつ持続に病期や治療法は影響なく、精神
的ショックの経験や独居が有意に影響していた。【結論】乳がんの術後のうつ
状態は明らかに精神的、身体的に QOL を低下させる。精神的なショックの経
験者、独居などの場合は長期的に精神面のケアを持続させる必要がある。
一般セッション(ポスター掲示)
11483
11864
乳癌診療のチーム医療における精神科医の役割
当院における統合失調症合併乳癌 13 症例の検討
GP-2-087-03
GP-2-087-04
1
1
北里大学北里研究所病院 ブレストセンター精神科、
2
北里大学北里研究所病院 ブレストセンター外科、3 北里大学医学部 精神科
国立病院機構金沢医療センター 外科、
国立病院機構金沢医療センター 放射線科、
3
国立病院機構金沢医療センター 臨床検査科
2
中山 愛 1、関 大仁 2、浅沼 史樹 2、山田 好則 2、大作 昌義 2、中野 智仁 1、
宮岡 等 3
近年、癌治療が著しく進歩するにつれて、癌患者における精神科の重要性は
高まりつつある。特に乳癌では、癌という告知が不安や恐怖から睡眠障害や
抑うつ症状を引き起こすばかりでなく、手術による乳房の喪失や化学療法に
よる脱毛などから生じる身体的変化が非常に大きな精神的苦痛をもたらす。
さらに、それらの精神的ストレスが本来の治療を妨げたり、潜在していた精
神疾患を呼び起こす場合もある。当センターでは精神科がチームの一員とし
て積極的に関わり、乳癌治療のサポートにあたっている。今回我々は 2013 年
1 月から同年 12 月までに早い段階での精神科併診が有効であった 3 例を経験
したので報告する。[ 症例 1]49 歳女性。左乳癌(T2N1M0, stage IIB)と診断
され手術を行うも、手術直後より不明言動が出現し当科併診となった。精神
科通院歴はないが、20 歳時より自閉的な生活であった。意識は清明、幻聴、
妄想、考想伝播などの症状から統合失調症と診断し、抗精神病薬(リスペリド
ン)の投与を行い、刺激の少ない個室にて対応、症状の軽快が認められた。退
院後引き続き当科外来で薬剤調整を行い、術後補助療法が継続可能な状態に
までコントロールされている。[ 症例 2]66 歳女性。右乳癌 (T1N0M0,stage I)
に対して手術施行し、経過良好にて退院となった。告知後より落ち込みを訴
えることがあったが術後ホルモン療法開始後、抑うつ気分、希死念慮が出現
し、術後補助療法の継続困難なため当科併診となった。精神科疾患の既往歴
はない。生きている意味がないと虚無的な思考内容から治療を拒否し、
抑うつ、
睡眠障害、食欲低下などの症状からうつ病と診断し、抗うつ薬(セルトラリン
塩酸塩)にて治療を開始した。約3か月後にはうつ病は軽快傾向となり、ホル
モン治療の継続が可能となった。[ 症例 3] 48 歳女性。右乳癌(T2N1M0,stage
IIB)に対して、術前化学療法目的で入院の際、不安症状強く治療を拒否し、
当科受診を勧められるも希望しなかった。がん看護専門看護師が面接し、セ
ンター内で情報を共有し、精神科介入が必要な状態であることから、再度受
診を勧め精神科医との面接を了承された。癌治療に対する不安、緊張、恐怖
心が強かったが、医師、看護師による支持的な面接を行うことで本来の治療
が継続可能となった。【結語】乳癌治療を行う上で、患者の心理面や潜在する
精神疾患にも十分配慮し、精神科医や看護師との連携を密にしたチーム医療
が重要である。
古河 浩之 1、東野 信之介 1、山口 紫 1、森田 晃彦 1、大西 一朗 1、
大山 繁和 1、萱原 正都 1、俵原 真理 2、笠島 里美 3、川島 篤弘 3
【はじめに】統合失調症の生涯有病率は 0.3 ~ 2.0%と報告され、決して稀な
疾患では無い。統合失調症等の精神疾患を合併した乳癌患者においても、本
人や家族等との十分な理解を得た上で精神疾患のコントロール下に標準的な
治療を行うことが理想であるが、実臨床上は困難であることも多い。当院は
精神科入院病棟を有し、また近隣に精神科病院もあることから、乳癌に限ら
ず統合失調症患者を以前から受け入れることが多い。今回当院における統合
失調症を合併する乳癌症例においての特徴を検討した。【対象と方法】2009 年
1 月から 2013 年 12 月に当院で治療を開始した乳癌症例 151 例中、統合失調
症を合併する 13 症例。これらをカルテにて後方視的に検討した。【結果】平均
年齢は 67 歳(全体の平均 66 歳)、乳癌発見の契機は、乳房腫瘤等の自覚 5 例、
他疾患検査の際(CT 等)偶発的に発見 5 例、入所施設等の職員発見 2 例、対側
乳癌術後検診 1 例であったが、乳房腫瘤自覚の中に病脳期間が 5 年・10 年が
1 例ずつ存在し、いわゆる対策型検診での発見は無かった。13 例すべてで手
術が施行されており、乳房切除・乳房温存術がそれぞれ 10・3 例であった。
Stage0・I・II・III・IV が そ れ ぞ れ 0・5・4・3・1 例 ず つ で あ り、Stage0
症例を認めなかったが、StageI 以上では非統合失調症乳癌症例と差はなかっ
た。薬物療法は全症例で行われており、ホルモン療法 10 例・化学療法 5 例(重
複あり)に行っていたが、1 例で化学療法を提示したが理解と同意が得られず、
また 1 例で化学療法中に骨折を起こしたため入院を要したが、その後に統合失
調症のコントロールが不良となり化学療法および予定していた放射線治療の
同意が得られなくなった。手術の拒否症例は無かった。【考察】統合失調症患
者では、検診等によってきわめて早期の癌を発見しがたく、また統合失調症
の状態等によって化学療法の継続が困難となる場合がある。化学療法等の継
続において精神科との密な連携が重要であることは当然であるが、化学療法
自体を可能な限り避ける点から乳癌検診発見例等の割合を増やすことも重要
と考えられた。
450
ポスター掲示
10286
11785
乳がんサポートグループ「おしゃべり会」の歩み
当院における乳がん患者会の検討 -8 年間の経過から -
GP-2-088-01
GP-2-089-01
1
国立病院機構函館病院 外科、2 国立病院機構函館病院 看護部、
3
国立病院機構函館病院 栄養管理室、4 国立病院機構函館病院 MSW
1
小室 一輝 1、伊藤 みずえ 2、木幡 恵子 3、米谷 奈子 4、廣瀬 量平 4、
酒本 清一 4
軽部 真粧美 1、竹原 めぐみ 2、宮崎 千絵子 2、櫻木 雅子 2、中澤 寛仁 3、
塩澤 幹夫 4、穂積 康夫 2
3
平成 22 年 10 月、乳がんの総合的サポートの一環として、同じ悩みや不安を
抱える患者同士が打ち解け合い、前向きな姿勢で治療に臨んでもらうことを
目的とした乳がんサポートグループを設立した。参加者からの希望を聞きな
がら、勉強会やイベントを通じてグループの醸成を図ってきた。開始当初は
2ヶ月に1回、1時間で、ミニ講演会とおしゃべりを行った。また、日帰り
温泉貸し切りツアー、身体に優しい食事を学ぶための調理実習などを、病院
側が企画して行った。開始から1年経過し、「患者同士の交流をもっと行いた
い」との声が上がり、月1回、1時間半の開催と変更した。また次第に、参加
メンバーの中から「協力したい」との声も聞かれるようになってきた。会の運
営方法や方向性を見直す時期に差し掛かっていると考え、サポートグループ
の本来の目的、患者同士が話をすることによって得られる効果など、おしゃ
べり会が患者の生活に与える影響についての勉強会を数回に分けて開催した。
サポートグループの効果を理解いただくことにより、グループ機能が更に醸
成され、患者が主体的となってグループに参加いただけることが期待できる
と考える。設立から3年が経過し、これまでの取り組みと今後の展望につい
て報告する。
自治医科大学附属病院 看護部、2 自治医科大学附属病院 乳腺科、
自治医科大学附属病院 薬剤部、4 新小山市民病院 外科
【はじめに】全国的に乳がん患者会は増えてきている。当院でも、2006 年より
患者会を開催してきた。患者へのアンケート調査結果から、年齢、手術から
の経過年数、参加理由を集計し、「今後の課題」について検討したい。【経過】
2006 年 4 月から年間 5 回の開催。開催場所は自施設内の会議室。医療者が中
心となって運営するサポートグループ形式。開催時間は 2 時間程度。講義と
グループでの茶話会を行うが、コンサートなども行っている。会の周知方法は、
希望する患者への郵送と自施設のホームページで掲載するとともに、乳腺科
外来、がん患者相談室、外来点滴センター、入院病棟、放射線科外来にポスター
掲示した。参加は自由参加形式とした。【結果】参加した延べ人数は約 900 人
であった。アンケートに回答した年齢は、20 代 1%、30 代 9%、40 代 29%、
50 代 35%、60 代 19%、70 代以上 7%であった。手術後の経過年数は、1 年
未満 33%、1 ~ 3 年 39%、4 ~ 6 年 19%、7 ~ 9 年 4%、10 年以上 3%、手
術前 1%、手術はしていない 1%であった。参加理由としては、乳がんの方と
話がしたかった 21%、講義内容に興味があった 19%、不安や悩みを聞いても
らいたかった 17%、医師や看護師など医療者と話がしたかった 17%、治療方
法について知りたかった 13%、日常生活の工夫について知りたかった 13%で
あった。【考察】参加者の年齢は、40 ~ 50 代の患者が最も多かった。手術か
らの経過年数は、3 年未満の患者が全体の 7 割を占めていた。参加理由につい
ては、偏りがなかった。参加したいときに、いつでも参加できるのが、自由
参加形式の利点である。乳がんに罹患したばかりの患者はもちろん、通院す
るすべての乳がん患者が、参加したいときに参加できるように、開催内容に
変化を持たせ継続的に開催することが重要である。
10992
患者会運営の継続を支える ~医療者世話人と患者ボランティ
アのアンケート調査より~
乳房切除術を受けた患者と子どもの生活の実態調査
GP-2-089-02
GP-2-090-01
国家公務員共済組合連合会東北公済病院 乳腺治療・再建センター
大阪 QOL の会
藤本 恭子、脇田 和幸、古谷 義彦、西田 禎宏、小西 宗治、高尾 信太郎、
鈴木 久美、椎野 育恵
【はじめに】 大阪QOLの会は 1999 年に医師の立ち上げで発足し、現在は医
療者世話人 8 名(医師 5 名、看護師 3 名)と患者ボランティア 7 名が相互に運
営に関わり、会を支えている。参加者の増減はあるものの大阪 QOL の会は約
14 年続いてきた。今回その継続の要因となりえるものに焦点をあて明らかに
することを目的とした。【方法】QOL の会の医療者世話人、患者ボランティア
からそれぞれ継続要因となるものを抽出するため質問紙を作成した。医療者
には 1.患者会に関わる意義 2.関わることで得られたこと 3.運営を支
えることを継続している理由 4.運営するにあたって会の良い点と改善点、
患者ボランティアには1.世話人になった動機 2.参加者との関わりの中
で支えになったこと、良かったと思えたこと 3.ボランティアを継続して
いる理由 4.なぜ大阪QOLの会の世話人を選んだか、
また卒業者には 5.
患者会を卒業した理由の項目でアンケート調査を行った。【結果】医療者世話
人4人、患者ボランティア7人(卒業者 1 人を含む)から回答を得た。医療者
世話人は悩みや不安を聞くことで、患者の思いやニーズを知ることができる。
また他の医療者の意見も聞くことができ、日々の実践に役立つ。講演をする
ことで一度に多くの患者に情報提供できるを、
「関わる意義」や「得られたこと」
にあげた。患者ボランティアは、自分の病気の経験を生かし、今、治療中に
ある患者に役立つことなどを「動機」とした。また「支えになったこと、良かっ
たと思えたこと」ついては、会を通して参加者の表情が明るく、前向きになっ
ていく姿を見るこができる。医療者世話人と関わることで最新の情報や、安
心感が得られるなどがあった。「継続している理由」として医療者は患者と話
ができること、患者ボランティアからエネルギーをもらっているなどが理由
となっていた。患者ボランティアは患者会と関わっていることが自身の生活
を保っているなどの意見もあった。さらに大阪QOLの会の開催は、2ヶ月
に1回であり(日時がほぼ決まっている)、開催場所も固定されている(場所の
確保)。仕事場に近い(利便性)。参加できるときだけ参加するというスタイル
で、世話人の負担も少ない(負担の軽減)。また医療者も患者も適度なバラン
スで構成されており、上下関係がないので意見も出やすいなども「継続してい
る理由」「良い点」にみられた。
尾形 良子、小森 まり子
【目的】乳房切除術を受けた患者の親子の生活の実態を明らかにし,看護援助
への示唆を得る。【方法】幼児期・学童期の子どもを持ち,乳房切除術を受け
た患者に対し,半構成的面接を実施。「青少年の生活と意識に関する基本調査
報告書(内閣府)」の家庭生活満足度の調査項目をもとに,退院後の親子の生
活として入浴,遊び,会話・コミュニケーション,スキンシップ,共同行動,
その他を自由に語ってもらった。倫理的配慮としては,倫理審査委員会の承
認後,口頭と文書で説明し同意を得た。【結果】対象者は3名。30~40代
で配偶者がおり,就労していた。子どもは幼児期・学童期であった。病気告
知は,乳がんとは説明せず,おっぱいを病気のため取ると説明していた。術
式のみ説明した理由は,子どもに隠さずありのままの姿を子どもに分かって
もらいたいためと語り,術創部を見せていた。入浴方法の変更はなかった。
スキンシップは,創部を触りたがる,しびれているところを一緒にさする子
どもの行動があった。遊びは母親の創部痛の心配をしつつ,遊びの方法を変
更し,一緒にリハビリをするのが母親との遊びになっていた。会話・コミュ
ニケーションは,メディアの情報から母親と乳がんについて話し,母親を励
ましていた。また,なぜ病気になったかと問うことがあった。母親は退院後
病休を取得したことで,子どもとのコミュニケーションが増え,一緒に過ご
せたという喜びを語った。共同行動は,子どもなりに創部痛のある母親を気
遣い,自主的に家事,荷物の運搬を行い,できるところは自分でしようとし
ていた。学校での様子としては,子どもの変化はなかった。退院後の親子の
生活の変化は,母親にとって子どもの成長に良い影響を与えていると語った。
【考察】子どもを持つ乳がん患者が,手術後に望んでいる退院後の生活は,子
どもとふれあい,母親役割が遂行できることである。患者が子どもに術後の
身体的な変化を説明したことで,親子で話し合う機会となり,患者は子ども
の成長を感じたと考える。患者は子どもとの生活の変化を肯定的に受け止め,
子どもの成長や生活の満足感をがんサバイバーとしての活力としていた。乳
がん患者が,退院後に望む子どもとの生活を送るために,退院前に親子が身
体的変化を話し合えるよう支援してくことが重要と考える。
451
一般セッション(ポスター掲示)
11314
ポスター掲示
10952
11109
外来告知の段階から手術室看護師が介入する取り組み -昨年
からの追加報告-
乳がん患者が親に病気について伝える理由とその内容
GP-2-091-01
GP-2-091-02
1
公益社団法人北部地区医師会病院 手術室
群馬大学大学院 保健学研究科、2 群馬大学大学院 医学系研究科
藤本 桂子 1、神田 清子 1、堀口 淳 2、六反田 奈和 2、竹吉 泉 2
直井 香織、宮城 美千代、野村 寛徳
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】入院患者の不安は入院時や退院後と比べて入院前の外来受診時が
有意に高いとされ、入院前のソーシャルサポートが大きいほど、術後3カ月
までの不安は低い傾向があるとされている。前研究では、外来告知の段階か
ら手術まで1人の手術室看護師が患者と関わる取り組みを行った。結果、告
知から疾患を受容し手術に臨む移行期に関わることができ、医療従事者への
安心感が生まれ、心理的支援という点で有効であるとの考察に至った。そして、
乳癌患者の経時的心理変化を4つの局面として導き出した。しかし前研究で
は、面接調査のサンプル数が少なく、理論的飽和化に至ったとは言い難く概
念の完成度を高める必要性があることが課題となった。そのため本研究では、
面接調査のサンプル数を増やし分析することで、乳癌患者の経時的心理変化
と周術期看護の在り方についての考察を深めることにした。【症例】前研究同
様、対象者に半構成的面接調査を実施した。逐語録を作成し、質的研究方法
「修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ」を用いて分析した。前研究
では、病気を受容し治療を継続するには、家族の存在とサポートが重要であ
り、闘病意欲の向上へ繋がるという結果が出た。しかし、30代の未婚の患
者の症例も追加され、家族と離れ生活する患者もおり、支えの存在となるの
は必ずしも家族だけではないことが本研究で明らかとなった。また手術室看
護師が外来時より関わることで、経済的不安も大きいことを知り、早期にサ
ポートすることが出来た。サンプル数が増加したことで患者の年齢層が広が
り、家族背景も加わり、新たな概念も生まれた。そこから前研究で抽出され
た乳癌患者の経時的心理変化、告知前【乳癌の否定と可能性への意識】告知後
【病気と社会的役割に関する不安】手術前【乳癌であることを受容し向き合う】
手術後【治療への前向きな姿勢と生き方の調整】のコアカテゴリーが再構築さ
れ、完成度を高めることができた。【結語】本研究により、外来時より患者と
関わることで、早い段階から生活状況・ライフスタイルなどの情報が得られ、
必要なサポートの提供が可能になると考察できる。また幅広い年齢層を網羅
し、地域的特徴が加味された乳癌患者の経時的心理変化の上記4つの局面の
飽和化へと近づいた。周術期患者の経時的心理変化を知ることで臨床で目的
に適った活用ができ、本研究は有意義であったと考える。
【目的】本研究の目的は,乳がん患者が乳がんの疑いが生じてから手術を受け
るまでに,実の親に病気について伝える理由と内容を明らかにし,必要な看
護支援についての示唆を得ることである.【方法】対象は初めて乳がんの手術
を受けた女性患者 10 名.半構成的面接法によりデータ収集を行った.分析は,
Bernard Berelson の内容分析の手法を参考にカテゴリ化を行った.本研究
は研究実施施設が組織する倫理委員会による審査において承諾を受け,実施
した.また、データ分析は,共同研究者間による討議を繰り返し行うと共に,
がん看護エキスパートのスーパーバイズを受けた.【結果】対象者は 10 名で,
平均年齢は 44.7 ± 4.08 歳,父母ともに健在の方が 5 名,母親のみ健在の方が
5 名であった.乳がん告知時に実父もしくは実母が同席された方は 2 名であっ
た.なお,各対象者への面接回数は1回で,平均面接時間は 52.2 ± 15.65 時
間であった.乳がん患者が病気を伝える理由は【治療を受けるために親の物理
的・心理的支援が必要である】【親との物理的・心理的距離が近く病気を隠す
ことは困難である】の 2 カテゴリから形成された.伝える内容は【病気に関す
るありのままの情報】【親に与える精神的負担が少ないと考える範囲の情報】
【がんに罹患する事で生じた親との関係性に対する感情】【治療に伴い必要と
なる支援の依頼】【自己の病気について親が他者に伝えて良い範囲】の 5 カテ
ゴリから形成された.【考察】患者が病気について親に伝えるための看護支援
として,乳がん患者が置かれている親子関係への理解と乳がん患者が安心し
て治療に専念できる環境への支援が必要であることが示唆された.
11224
10069
GP-2-091-03
GP-2-091-04
働く女性が「乳がん」について考えること
「市民公開がん医療講座」開催の効果
原町赤十字病院 看護部
埼玉医科大学 国際医療センター
柳澤 ちぐさ、内田 信之
岡部 みどり、小島 真奈美、佐伯 俊昭、大崎 昭彦
【はじめに】乳癌は比較的若い世代から発見されることがひとつの特徴である。
そのため乳癌は患者や家族の社会生活に大きな影響を与えることが多く、こ
の点が他のがんと比べ大きく異なるところである。40 歳代や 50 歳代の女性で
は家庭や職場の中での問題があり、さらに若年層では結婚や妊娠出産などの
問題もある。また、乳癌の治療は長期に及ぶことが多く、最近は「長く付き合
う慢性病」ととらえる見方もある。よって乳癌患者は、乳癌の治療を行いなが
ら長期に社会生活を行っていかなければならないことがしばしばある。この
ことから私たち医療者は、女性が取り巻く環境の全体像の把握や、早期発見
の啓発活動を行うことが重要な役割であると考える。【目的】就業中の女性が
乳がんに対し、どのような知識や関心を寄せているかを知り、乳癌の啓発活
動についての取り組みについて具体化していくこと【方法】産業医になってい
る企業の女性を対象とし講習会を開催。参加者は 22 名、平均年齢は 43.0 歳。
内容は「乳癌の概要」
「自己検診方法や検診について」
「検診で通知が来てしまっ
たら」および当院での受診方法や費用、看護外来の案内。また触診モデルを用
いた体験。終了時のアンケート【結果】アンケートの集計では「乳癌について」
「自己検診について」「定期健診について」「セミナーについて」「看護外来に
ついて」という5つのカテゴリーに分けることができた。「乳癌について」は生
活習慣の見直しや、乳がんの遺伝性や遺伝検査について質問があった。「自己
検診について」は自己検診を行うことの必要性や修得することの積極性に関す
る意見が多くあった。「定期健診について」は自己検診同様に検診を受けると
いうことに対する積極性に関する意見が多くあった。「セミナーについて」は、
とても役に立った、参考になった、参加してよかった、知り合いにも教えた
い、もっと多くの人に参加して欲しいという意見が半数以上であった。「看護
外来について」は、看護外来を活用して話すことで不安を解消し笑顔で過ごし
たい、など看護外来に寄せる期待等があった。【考察】乳癌に対する関心度は
高く、啓発活動の重要性は高いと考える。地域の働く女性を支えていくため
にも、当院の看護外来が活用できる体制を整え情報を提供していくことが重
要である。また今後は就労支援等も視野に入れた援助も考慮していきたい。
【背景】2008 年から乳腺腫瘍科とブレストケアチーム、患者会が中心となり、
毎年「市民公開がん医療講座」を開催している。「市民公開がん医療講座」の目
的は、一般市民に対する乳がんへの関心を高めることや乳がん検診の普及、
そして乳がん患者に対する知識向上である。今回、5 回目の開催を終了し、今
後の開催活動の示唆を得るため、調査を行う必要があると考えた。「市民公開
がん医療講座」の内容は、乳がんに関する 2 講演と医師、看護師、薬剤師、患
者などがパネリストとなり、乳がんに関するディスカッションを行っている。
【目的】参加者に対して、アンケートを行い、乳がんの関心度と参加後の意見
から開催の効果を明らかにし、今後の開催活動への示唆を得る。【方法】参加
者全員に、アンケート用紙を配布し、会場出口に投函箱を設置し、記載後自
由投函とした。回収したアンケート用紙は、データ化し単純計算した。アンケー
ト用紙は無記名とし、参加は自由意思であり、質問紙の回収を持って研究参
加への同意とした。また、データ処理は、個人が特定されないよう配慮した。
【結果】1. 有効回答は 232 名(回答率 87.2%)。内訳は患者が 48.3% で最も多
く、次に一般市民 25.4%、患者家族 16.8%、医療関係者 9.1%、その他 0.4%。
性別では、女性 56.5%、男性 19%、(未記入 24.5%)。年齢は 60 代が最も多
く、続いて 50 代、70 代以上、40 代、30 代、20 代の順であった。2.「乳がん」
についての関心は、『転移・再発』が 33.2%、『診断・治療』18.8%、『予防』
16.9%、
『緩和医療』15.3%、
『検診』14.1%、
『その他』1.7% であった。3. 参
加者の感想は、『来年も参加したい』27%、『理解が深まった』24%、『乳がん
について関心が深まった』15%、『友人に市民公開がん医療講座の事を話そう
と思った』13.1%、『生活スタイルを変えようと思った』9.4%、『今後、乳が
ん検診を受けてみようと思った』6.3%、『家族でがんについて話をしてみよう
と思った』5.2% であった。【考察】乳がんについての関心は、『転移・再発』が
多く、
『予防』や『検診』については低かった。これは、参加者の多くが患者であっ
たためと考える。対象者の参加後の意見は乳がんの理解が深まった者が多く、
「市民公開医療がん講座」の開催が効果的であったと考える。しかし、乳がん
検診の普及については対象者の関心が低いため、今後乳がん検診の普及につ
いての活動内容を検討していく必要がある。
452
ポスター掲示
10622
11832
局所進行乳がん患者の受診に至るまでの心理状態と看護支援の
検討
遺伝性乳癌卵巣癌の遺伝カウンセリング後の問題点 ―遺伝子
検査未実施者に対する対応―
GP-2-091-05
1
GP-2-092-01
さいたま赤十字病院 看護部、2 さいたま赤十字病院 乳腺外科
1
2
2
2
宮入 育子 、田中 裕美子 、上田 宏行 、有澤 文夫 、齋藤 毅
1
2
2
杉本 健樹 1,2、小河 真帆 1、尾崎 信三 1、船越 拓 1、花崎 和弘 1
【背景】遺伝性乳がん卵巣がん(以下、HBOC)の診療の中で遺伝子検査を行い
BRCA1/2 に病的変異を認めた場合は、リスク低減治療やサーベイランスに制
約はあるが、治療法選択や家系員への情報提供に十分な注意が払われている。
一方、遺伝子検査を受けない場合のフォローや家系員の情報提供に関する方
針は明確ではない。【目的】当院で遺伝カウンセリングを受け、遺伝子検査を
受けなかった乳癌患者の現状を通し、遺伝子検査未実施の場合の家系員への
情報提供のあり方を検討する。【対象と方法】2011 年 11 月~当院では HBOC
のカウンセリング・遺伝子検査を開始した。カウンセリングは主に乳腺科医
(臨床遺伝専門医)が行っている。カウンセリングを受けた 51 人中遺伝子検査
を受けたのは 19 人で、未実施者 32 人中家族歴のある乳癌既発症者は 27 人で、
内、当院でフォロー中の 25 人を対象に家系員への情報提供および乳癌検診受
診の状況などを検討した。【結果】遺伝子検査を未実施の理由は、考慮中 8 人、
家族の反対や家族への配慮 6 人、費用が高い 4 人、必要性を感じない 4 人、遺
伝や卵巣癌に対する恐怖 3 人であった。カウンセリングでは家系員への乳癌に
対する注意喚起を行うように全員に伝えたが、家系員に情報を伝え検診等の
勧奨を行っていたのは 7 人であった。検査を受けない原因別では考慮中 8 人中
4 人、費用 4 人中 2 人、家族関連 6 人中 0 人、不要 4 人中 1 人、恐怖感 3 人中 0
人で、検査を考慮中や費用の問題で検査未実施の場合は約半数が家系員に注
意を喚起しているが、家族、不要、恐怖感が原因の場合はほとんど行われて
いなかった。【考察】HBOC では家系員のリスクは近親度に応じて明確で、遺
伝診療側から状況を把握し情報提供や検診への受診勧奨が行える。一方、検
査未実施の場合は、乳腺科医がカウンセリングを行っている当院でも通常の
乳腺外来では家系員に対して十分な配慮が行えていない。【結語】乳癌患者の
家系員に遺伝的リスクがあることは通常の乳癌診療の中で注意喚起すべきで
あるが、遺伝的リスクの高い患者でさえ十分に行えていない現状が確認され
た。今後、配布物の作成等で患者を通して情報提供を行い、特にリスクが高
い場合は遺伝子検査未実施の理由についても配慮しながら家系員への情報提
供や検診受診勧奨を徹底する必要がある。
11746
11407
当院における HBOC 診療への取り組みと現状
家族性乳癌の臨床病理学的検討
GP-2-092-02
GP-2-093-01
1
社会医療法人博愛会相良病院 遺伝相談外来、
2
社会医療法人博愛会相良病院 乳腺科
1
馬場 信一 1,2、西 光代 1、相良 安昭 2、川野 純子 2、松方 絢美 2、
四元 大輔 2、寺岡 恵 2、金光 秀一 2、松山 義人 2、相良 吉昭 2、雷 哲明 2、
相良 吉厚 2
前田 浩幸 1、中澤 雅子 1、田中 麻奈美 1、東 瑞穂 1、小練 研司 1、
五井 孝憲 1、片山 寛次 1、今村 好章 2、米田 誠 3、山口 明夫 1
3
遺伝性乳がん・卵巣がんは、全乳癌の 5 ~ 10%程度と推測されており、発症
には同じ遺伝子変異があることも判明している。原因遺伝子として BRCA1/
BRCA2 が確認されている。また、遺伝子変異があれば若年での乳がん発症や
卵巣がんの罹患率の高さなどが指摘されている。このようなことからハイリ
スク症例に対しては厳重な対応が必要である。しかし、日本では遺伝性腫瘍
の診療を行う医療機関は限られているのが現状である。そこで相良病院では
遺伝性乳がん・卵巣がんへの取り組みを含めた早期発見・早期治療を目的と
して、遺伝相談外来を 2008 年 12 月に開設した。今回、当院での現状及び取
り組みについて報告する。遺伝性腫瘍の診療では、高リスク者が自らの意思
で定期的ながん検診を継続して受けるなど、適切な予防行動につなげるため
には、まずは高リスク者を拾い上げることが必要である。当院において、遺
伝相談外来に紹介されるケースとしては、乳腺科外来受診時に患者や家族か
ら遺伝相談があった例や、主治医が病歴・家族歴から遺伝性を疑い遺伝相談
外来に紹介する例がある。ただ、拾い上げてないケースも存在した。また、
遺伝子検査にて病的変異を認めたケースでの乳癌術式の決定、サーベイラン
ス・予防的内分泌療法・リスク低減手術を含めた HBOC への対応として、当
院独自のアルゴリズムを作成した。HBOC 疑い症例のピックアップ、遺伝相
談外来への依頼経路、HBOC 症例の治療選択などに使用している。カウンセ
リング数、遺伝子検査の数も経年的に増加し、2013.11 までにカウンセリン
グ 39 件、遺伝子検査 25 件を実施している。更に、当院の特徴として術式決
定を目的に遺伝子検査を実施するケースが多かった。
福井大学医学部 第 1 外科、2 福井大学附属病院 病理部、
福井大学附属病院 遺伝診療部
【目的】家族性乳癌患者の臨床病理学的特徴を調べ、遺伝子変異の可能性が高
い乳癌の予測に寄与するか検討した。【方法】2001 年 1 月から 2010 年 12 月
までに当科で治療を行った乳癌 234 例の家族歴を調べ、家族性乳癌患者を同
定し、その乳癌腫瘍の臨床病理学的特徴を調べた。また、BRCA1 遺伝性乳癌
の発癌の際には、BRCA 1遺伝子の発現低下に加えて、p53 の転写機能の低
下を伴うことから、トリプルネガティブ乳癌において BRCA1 発現と p53 の転
写産物である MDM2 発現を家族性乳癌 3 例と散発性乳癌 22 例に分けて免疫染
色を行い、比較検討した。【結果】乳癌、卵巣癌、前立腺癌、対側乳癌などの
家族歴または既往歴を持つ乳癌は、33 例(14.1%)であった。野水らの定義を
満たす家族性乳癌は、7 例(6 家系)(3.0%)で、その平均年齢は 53.3 歳(3772)、平均浸潤径は 15.4mm(1-25)、平均腋窩リンパ節転移個数は、0.14 個
(0-1)、 病 期 は 1 期:4 例、2A 期:2 例、2B 期: 1 例 で あ っ た。ER + Her2
-:4 例、ER - Her2 -:3 例であった。核異型度は1:6 例、3:1 例で、組
織型は pap-tub: 5 例、sol-tub :2 例であった。ER - Her2 -の 3 例の核内
の BRCA1 発現を免疫染色で検討したところ、2 例は1%未満で、1 例は 1 - 9%
であった。また、MDM2 の核内発現は 3 例とも H-score 100 以下で、p53 転
写機能の低下を認めた。乳癌卵巣癌の家族歴がない ER - Her2 -乳癌 22 例で、
BRCA1 と MDM2 の発現を調べたところ、13 例(59%)で、両者の発現低下を
認めた。【結語】ER - Her2 -の表現型を有する家族性乳癌 3 例では、BRCA1
と MDM2 の両者の発現低下を認めたが、これらの発現低下の特徴は、ER -
Her2 -の散発性乳癌の約 6 割にも認められ、家族性乳癌の同定には不十分な
特徴であった。BRCA1 の家族性乳癌の同定には、BRCA 遺伝子検査が必要と
思われた。
453
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】乳がん看護認定看護師(以下 CN)が乳腺外科外来において対応した局
所進行乳がん患者の受診に至るまでの心理状態を分析し、今後の看護支援に
ついて検討する。【方法】対象は 2012 年 6 月~ 2013 年 11 月に乳腺外科外来
で看護相談を行った患者のうち、局所進行乳がんで受診に至るまでの経緯が
記録されている患者とし、データ収集方法はカルテ、及び CN 介入依頼・記録
用紙から患者の年齢、診断名、病状、受診時期、受診までの心理状態、受診
時の心理状態、患者背景、治療方針、対応内容のデータの抽出を行った。ま
た、量的データは単純集計、質的データは心理状態や対応内容を共通した内
容にカテゴリー化し分析を行った。【倫理的配慮】分析に際しては個人が特定
されないように配慮し、A 病院のセキュリティ包括に基づいて管理した。
【結果】
対象は 10 例。患者の平均年齢は 54 歳(38 歳~ 85 歳)。受診が遅れた理由と
しては 1、乳がんの知識不足、2、
「がん」に対する恐怖心、3、多忙、4、羞恥心、
5、家族関係、6、金銭的問題などがあり、受診に至ったきっかけとしては 1、
家族に促された、2、臭いや出血、疼痛への対応困難、3、不安の増強などがあっ
た。対応内容としては 1、傾聴を行い思いの表出を図る、2、病状や今後の経
過についての理解の促し、3、今後の治療に関する情報提供と理解の促し、4、
家族への対応、5、自壊創処置など症状への対応方法や日常生活上の工夫に対
する提案、6、社会資源の情報提供、7、継続支援の保証などがあった。【考察】
患者は、病識や個々の価値観、職歴や既往歴、家族関係や経済的事情など様々
な要因が心理状態に影響し、受診に至るまでに時間を要していた。また、診
断時には病状や今後の治療に対する不安、家族や仕事への不安、治療費への
不安など多岐にわたる苦悩を抱えていた。看護師はこのような患者に対して
十分に時間をかけて関わり、患者の抱える問題を明らかにし、今後の治療を
前向きに考えられるよう支援していく必要がある。病状や治療に対する理解
の促しやセルフケア支援を行うとともに、医師や MSW 等他部署との連携を図
り、患者が安心して治療を受けられるよう継続的にかかわる事が重要である
と考える。
高知大学医学部 外科学講座外科1、
高知大学医学部附属病院 臨床遺伝診療部
ポスター掲示
10270
10321
乳癌患者における家族歴の検討
当院における遺伝性乳癌卵巣癌症候群に対する取り組みと乳癌
遺伝相談外来の現状
GP-2-093-02
GP-2-094-01
茶屋町ブレストクリニック 1
脇田 和幸、鳴海 有
2
【はじめに】近年家族性乳癌あるいは遺伝性乳癌が社会的にも注目されている。
日本での発症リスク,年齢など詳細な報告は少ない。【目的】当院で発見され
た乳癌患者で,年齢と家族歴,サブタイプなど臨床病理学的特徴を調べる。【対
象】当院で 2011 年から 2013 年に乳癌と診断された 335 例(乳癌群)について,
家族歴,年齢,サブタイプを調べた。また同時期に外来受診し乳癌ではなかっ
た症例(一般群)についても家族歴を問診票から拾い上げた。【結果】第二度近
親者までに乳癌がいる人の割合は,乳癌群 13.4%,一般群 12.5% で大きな
差を認めなかった。年齢分布では乳癌群で,20 代 20%, 30 代 15.5%,40 代
12.6%, 50 代 13.3%, 60 代 13.1%, 70 以上 12.5%, とやや 20 代 30 代に多
いが顕著な差はなかった。家族歴のより濃い患者(濃厚群。野水基準=発端者
含めて第一度近親者に3人以上の乳癌など,を満たすもの)は 15 例 4.5% だっ
た。各年齢での濃厚群の割合を見ると,20 代 20%, 30 代 5.2%,40 代 1.6%,
50 代 2.7%, 60 代 9.8%, 70 以上 12.5% で,40 代 50 代に比べて,若年層
と高齢層でともに高かった。濃厚群のサブタイプではトリプルネガティブが
21% で同時期の乳癌の 12%にくらべやや多かった。【考察】若年の乳癌は遺伝
的要素が高いと考えられるが,家族歴保有者が顕著に多いわけではなかった。
また,遺伝性乳癌が強く疑われる濃厚群は若年層でやはり割合が高かったが,
かならずしも若年者だけでなく,60 歳以上でも比較的多く発症していた。遺
伝的影響は若年者にのみ強くかかわるというわけではなさそうである。
聖マリアンナ医科大学 乳腺・内分泌外科、
聖マリアンナ医科大学付属ブレストイメージングセンター
小島 聖子 1、川本 久紀 1,2、大井 涼子 1、黒田 隆子 1、永澤 慧 1、
岩重 玲子 1,2、志茂 彩華 1,2、上島 知子 1,2、土屋 恭子 1、小島 康幸 1、
志茂 新 1、速水 亮介 1、白 英 2、西川 徹 1、矢吹 由香里 1、首藤 昭彦 2、
福田 護 2、津川 浩一郎 1
一般セッション(ポスター掲示)
【 背 景 】乳 癌 全 体 の 約 5-10 % が 遺 伝 性 で あ る と い わ れ て お り、 そ の 中 で
BRCA1 遺伝子または BRCA2 遺伝子に変異を認めるものは乳癌および卵巣癌
を発症するリスクがそれぞれ 50-80%、10-40%と高く、遺伝性乳癌卵巣癌
症候群(HBOC;hereditary breast ovarian cancer syndrome)と称されて
いる。HBOC は遺伝性乳癌の 90%を占め、これらの癌発症に対する対策が必
要である。当院では 2011 年より乳癌遺伝相談外来を開設し、対象者に遺伝子
検査を行っている。【対象】2011 年 6 月から 2013 年 10 月までに当院遺伝相談
外来を受診したのは乳癌発症者 18 例、未発症者 10 例の計 28 名で、20 例に対
して BRCA1 および BRCA2 の遺伝子検査を行った。【結果】受診者の平均年齢
は 44 歳。変異陽性者は 20 例中 5 例(25%)で、全員乳癌発症者であった。陽
性者の罹患年齢の平均は 45.2(31-62)歳で、BRCA1 に病的変異のあった者
が 2 例で subtype は TN と luminal-HER2 type であった。BRCA2 病的変異は
1 例で、luminal type であった 。BRCA1 および BRCA2 の uncertain 変異は
それぞれ 1 例であった。術前に変異ありと診断された症例は 2 例で、乳房切除
術および乳頭乳輪温存乳房切除が選択された。3 例は術後検査であった。【考
察】HBOC に対する認識は近年高まっており、遺伝カウンセリングなどの診療
体制や、変異陽性者に対する発症予防の対策など、本領域へ取り組みが非常
に重要になってきている。乳癌発症者に対しては、患側の術式決定および対
側乳房や卵巣に対するリスク低減手術等の検討が必要であり、また未発症者
の場合は若い年齢から乳房 MRI を含む定期的な検診やリスク低減卵巣卵管切
除等の対策が推奨される。しかし、日本では遺伝子検査や、変異陽性者に対
する検診 MRI およびリスク低減手術等については現在保険適応ではないため、
実際には導入がなかなか進まない状況にある。当院でも発症者に対する対側
乳房および卵管のリスク低減手術等は、準備中ではあるが未だ施行しておら
ず、また高リスク者に対する MRI を含めた検診体制も構築する必要がある。
今後さらに症例を追加し、日本の実情に合わせた早期発見プログラムの構築
を進めていく。
10170
11389
当院における家族性乳癌の傾向 -「遺伝相談室」の役割拡充に
向けて-
遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)における意義不明変異(VUS)
症例のマネージメント
GP-2-094-02
GP-2-094-03
徳島大学 胸部・内分泌・腫瘍外科
国立病院機構岩国医療センター 外科
中川 美砂子、森本 雅美、武知 浩和、田所 由紀子、丹黒 章
田中屋 宏爾、荒田 尚、金谷 信彦、杉本 龍士郎、竹内 仁司
【背景】近年、若年性乳癌が増加傾向にあり、乳腺外来でも遺伝性家系の拾い
上げを行い、遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーによる評価・カウンセリン
グを行うよう勧められている。これにより発端患者の治療選択だけでなく、
家系内未発症例の予防的乳房切除や卵巣切除、スクリーニングに大きく寄与
する。当院にも遺伝相談室は存在するが、遺伝性乳癌についての相談や遺伝
子検査に関しては未だ整備されていない。遺伝相談室の拡充に向けて、当院
おける該当患者の傾向を検討した。【方法】2007 年 1 月から 2013 年 10 月ま
でに当科で治療し、情報を入手し得た 598 例を対象とした。NCCN ガイドラ
インにおける遺伝性乳癌を考慮すべき項目(家族歴、45 歳以下、両側乳癌、
男性乳癌、卵巣癌の既往)を検討した。【結果】家族歴を有する症例は 98 例
(16.4%) であり、第 1 度近親者 74.4%、第 2 度 22.4%、第 3 度 3.6% であっ
た。45 歳以下は 99 例 (16.5%)、両側乳癌は 19 例 (3.2%)、男性乳癌は 5 例
(5.1%)、卵巣癌の既往は1例であった。1項目以上の該当は 194 例 (32.4% )、
2 項目以上の該当は 27 例 (4.5%) であった。【結語】当院における遺伝性乳癌
「一次拾い上げ」の対象となる患者は 32.4% であった。既往歴や家族歴の詳細
な聴取により対象は絞り込めると予想される。遺伝カウンセラーの育成、周
辺の医療機関との連携、患者教育など課題も多い。「遺伝相談室」の役割拡充
に向けた当院の取り組みについて報告する。
【背景】遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)は乳癌と卵巣癌の生涯リスクが高くなる常
染色体優性遺伝性疾患である。原因遺伝子である BRCA1/2 の遺伝子検査に基
づいて、乳癌や卵巣癌に対するサーベイランス、薬物療法やリスク低減手術
などによる、本疾患変異保持者のマネージメントが可能となってきた。しかし、
意義不明変異(variant of uncertain clinical significance : VUS)の場合対策
については、その臨床的意義の評価が困難で、多くの問題が残されている。【対
象と方法】2011 年 12 月より 2013 年 12 月までの期間に、当院で BRCA1/2 の
遺伝子検査を行った症例のうち、VUS を有する症例 no 頻度、変異の種類、臨
床上の問題点などについて検討した。【結果】BRCA1/2 発端者遺伝子検査は、
計 25 症例であった。4 例が陽性、18 例は病的変異を認めなかった。3 例(遺
伝子検査施行例の 12%)に VUS が認められた。3 例とも、BRCA2 で、変異の
種類は、D1728N、S2616F、L2039F であった。SIFT、PolyPhen による in
silico 解析で、いずれも病的変異の可能性が高いとリスクを判定されたため、
現在のところ、陽性者と同等のサーベイランスを行っている。1 例は対策をカ
ウンセリング中である。また、2 例は、遺伝子検査提供機関の行う BRCA1/2
遺伝子の VUS の意義を明らかにするための研究について紹介を行った。【まと
め】VUS への対応は、家系内の発癌状況や、in silico 解析の結果を踏まえ、ク
ライエントの希望に沿って行っているのが実情であり、指針の確立が望まれ
る。
454
ポスター掲示
11194
10599
国立がん研究センター東病院における遺伝診療科 / 家族性腫瘍
外来開設と問題点の提起
当院における遺伝性乳がん卵巣がん診療のための乳癌患者背景 ~ NCCN ガイドライン基準に基づく解析~
GP-2-094-04
GP-2-094-05
1
1
国立がん研究センター東病院 乳腺・腫瘍内科、
国立がん研究センター東病院 遺伝診療科、
3
国立がん研究センター東病院 病理科・臨床検査科、
4
国立がん研究センター東病院 看護部、
5
国立がん研究センター東病院 乳腺外科、
6
国立がん研究センター東病院 小児腫瘍科、
7
日本医科大学付属病院 遺伝診療科
2
がん研有明病院 乳腺センター外科、2 がん研有明病院 遺伝子診療部
中島 絵里 1、芦原 有美 2、喜多 瑞穂 2、荻谷 朗子 1、坂井 威彦 1、
森園 英智 1、宮城 由美 1、飯島 耕太郎 1、蒔田 益次郎 1、新井 正美 2、
岩瀬 拓士 1
内藤 陽一 1、渡邉 淳 2,7、桑田 健 3、中林 友美 4、佐々木 正興 1、
松原 伸晃 1、細野 亜子 6、米山 公康 5、和田 徳昭 5、向井 博文 1、
源 典子 4
10061
10576
当院における若年者乳癌を対象とした遺伝カウンセリング体制
の現状と課題
遺伝性乳がん・卵巣がん症候群に関する医師アンケート調査
GP-2-094-06
GP-2-094-07
1
愛知県がんセンター愛知病院 乳腺科、
愛知県がんセンター愛知病院 看護部、
3
名古屋市立大学大学院医学研究科 産科婦人科学、
4
名古屋大学大学院医学研究科 腫瘍外科学
2
京都府立医科大学 内分泌・乳腺外科
藤田 佳史、杉本 里保、富田 仁美、中務 克彦、阪口 晃一、田口 哲也
【はじめに】当院では 2004 年 1 月から遺伝診療部が開設され、同年 9 月遺伝
相談室が設置された。遺伝相談室では、遺伝疾患などに関するカウンセリン
グ、遺伝性疾患に関する診断・治療についての情報提供など行っている。ま
た、遺伝カウンセリングと合わせて、必要に応じて遺伝子診断も行っている。
乳癌患者の 5 ~ 10% は遺伝性といわれており、遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)に
関連する遺伝カウンセリングおよび検査の要望も高まってきている昨今、当
院も 2013 年 7 月に BRCA1/2 遺伝子検査導入し、HBOC に対する遺伝カウン
セリングおよび検査体制を整えた。日常診療とは別に自費診療で行っている。
2013 年乳癌診療ガイドラインに、「少なくとも野水らの定義を満たしている
ような家系の乳癌、卵巣癌患者に対して、適切な情報提供ができるように配
慮する必要がある」と明記されており、HBOC に対する診療体制の構築の前段
階として、家族性乳癌の定義にある若年者乳癌の拾い上げを行った。【対象】
若年者乳癌を診断時年齢が 40 歳未満とし、2008 年 1 月~ 2013 年 12 月に当
院で診断・手術された若年者乳癌は 86 例 (8%) であった。【結果】発症年齢の
中央値は 37 歳(26 ~ 40 歳)であった。組織型は DCIS19 例、浸潤癌 67 例で、
Intrinsic subtype は luminal type 43 例、luminal HER2 type 14 例、HER2
type 2 例、triple negative 8 例であった。家族歴において第 1 近親者に乳癌
4 例、卵巣癌 1 例、前立腺癌 2 例、膵臓癌 1 例、リンパ腫 1 例認め、第 2 近親
者には乳癌 6 例認めた。両側乳癌は 2 例であった。遺伝カウンセリングの情報
提供を若年者乳癌患者に行ったが、遺伝カウンセリング受診は 1 例、遺伝子検
査は 0 例であった。若年者乳癌以外でカウンセリング受診は 3 例、遺伝子検査
は 2 例行った。【考察】若年者乳癌患者に限定しての拾い上げは、HBOC に対
する診療体制の構築には不十分と考えられた。これらを踏まえた遺伝相談室
の本疾患に対する取り組み、今後の課題を報告する。
村田 透 1、藤井 正宏 1、不破 嘉崇 1、西前 香寿 1、赤羽 和久 1、
榊原 佳子 2、大瀬戸 久美子 3、角田 伸行 4
【背景】遺伝性乳がん・卵巣がん(HBOC)は乳がん全体の 5% 程度と考えられ
ており、ハイリスクグループの特定、そのための遺伝カウンセリング・遺伝
子検査の必要性が指摘されている。一方、わが国で乳癌診療に携わる医師の
HBOC に対する関心は必ずしも高いとは言えない。【目的】乳癌診療に携わる
医師の HBOC への対応の実態(家族歴の聴取など)、遺伝カウンセリングの
あり方への認識などを調査する。【対象と方法】名古屋大学大学院腫瘍外科学
講座関連の乳癌学会認定施設および関連施設で乳癌診療に携わっている医師
175 人を対象。上記医師に乳がん家族歴の聴取の有無、HBOC への対応、乳
癌遺伝カウンセリングの必要性などについて郵送方式で無記名アンケートを
行った。【結果】172 人から回答を得た(回収率 98%)。内訳は、乳腺専門医・
認定医が 30 人(17.4%)、それ以外の医師が 142 人(82.6%)であった。日
常診療で乳腺診療のみあるいは専ら乳腺診療に従事している医師が全体の
10.2%、乳腺と消化器・一般外科とを同様に診療している医師が 54.2%、主
に消化器・一般外科だが時々乳腺診療を担当している医師が 35.6%だった。
乳腺関連で受診した患者すべてに乳癌家族歴を尋ねるとの回答は、全体で
66.9%、専門医・認定医で 30 人中 25 人(83.3%)、それ以外の医師で 142 人
中 90 人(63.4%)であった。HBOC に関して質問されたことがあるか、とい
う問に対して「ある」が 41.5%だった。また、22.8% の医師は外来で HBOC
の説明をしたことがあると答え、その所要時間は「5 ~ 15 分くらい」が最も
多かった(55.2%)。5.4%の医師は、遺伝カウンセリングを受けたいと患者
から申し出られていた。今後、乳癌遺伝カウンセリングの必要性を感じるか、
との問いに対して、66.7%が「はい」と答えた。「いいえ」もしくは「どちらと
もいえない」と答えた理由として「社会的なニーズがまだない」あるいは「医療
保険で行える予防方法がない」が、それぞれ 45.6%と 47.4%と多かった。【考
察】7 割近くの医師が、乳癌家族歴を尋ねていることがわかった。多くの医師
が遺伝カウンセリングの必要性を感じている一方で、社会的ニーズがまだ高
くないこと、医療制度下での予防方法の不備、就職・保険加入などに対する
社会体制の不備、を指摘する意見があった。【まとめ】今回のアンケート結果
を踏まえて、我が国の体制に則した HBOC 対策を検討していきたいと考える。
455
一般セッション(ポスター掲示)
背景乳癌のうち 5-10% は家族性であるとされている。若年発症、トリプルネ
ガティブ乳癌や多発病巣を有する場合、家族歴の濃厚な場合など、特定の条
件を有する乳癌患者及び家族に対しては、遺伝カウンセリングを施行し、希
望者には BRCA1/2 遺伝子検査が行われている。しかしながら、本邦において
遺伝カウンセリングを受けられる施設は限られている。方法 2013 年 2 月より
国立がん研究センター東病院において遺伝診療科家族性腫瘍外来を開設した。
外来受診患者についてカルテベースで情報を抽出し、受診の契機、今後の問
題点について検証する。結果遺伝診療科家族性腫瘍外来立ち上げにあたって、
臨床遺伝専門医が定期的に勤務できる体制を確立し、関連各所の診療科医師、
看護師、薬剤師、医事担当者からなるワーキンググループを立ち上げた。診
療開設にあたって院内でキックオフを行い、またホームページ上に開設を掲
示した。2013 年 4 月より 12 月までに 11 名の新規クライアントが受診した。
内訳は、乳癌 4 名、リンチ症候群疑い、MEN 疑い、家族性大腸腺腫症疑いが
各 1 名、その他の癌患者 4 名であった。受診の契機は、担当医の勧め:5 名、ホー
ムページ閲覧:6 名であった。受診者と診療科ならびに診療科間の連携に、全
体を把握する看護職の役割が重要であった。院内の遺伝子検査体制は外注検
査を整備した。サーベイランス、予防手術については現在も院内で継続審議
中である。結論家族性腫瘍外来開設にあたって、各疾患が複数科にまたがる
ことからもチーム医療として進めていくワーキンググループを組織すること
は重要であった。院内への周知、ホームページ作成はクライアントの外来受
診の契機として有効であった。現在さらに拾い上げを行うため院内患者のス
クリーニングシステム確立を目指したワーキンググループを別途構築して検
討中である。また、遺伝子検査、サーベイランス、予防的手術等については
保険診療外となること、その院内体制整備のみならず国内での体制整備が重
要な課題であることが浮き彫りとなった。HBOC コンソーシアムなどと有機
的連携を行い体制整備を行っていく必要があると考えられる。
【背景】日本人データに基づいた遺伝性乳がんの可能性を考慮する基準や遺
伝子検査基準など明確な基準はまだ存在しない。そのため NCCN ガイドラ
インを参考に各施設で適切と思われる基準で拾い上げを行っているというの
が現状である。【目的】NCCN では遺伝性乳癌家系である可能性を考慮すべ
き状況(一次拾い上げ)を満たすものはいったん拾い上げて二次詳細評価を
すべきという2段階の評価方式を推奨しているが、当院においてもそれが
妥当であるかどうかを検証するため NCCN の基準を当院の症例に当てはめ
た場合の解析を行った。【方法】対象は当院にて 2012 年 1 月~ 12 月に手術
を 施 行 し た 症 例 1080 名。NCCN Breast and/or Ovarian Cancer Genetic
Assessment(ver.4 2013) の 1)CRITERIA FOR FURTHER GENETIC
RISK EVALUATION( 一 次 拾 い 上 げ )2)HEREDITARY BREAST AND/OR
OVARIAN CANCER SYNDROME TESTING CRITERIA(検査基準)の二つの
基準について項目をチェックした。【結果】1)一次拾い上げ ( 全 11 項目 ) を
一つでも満たした人数は計 691 名 (64%)。この基準のうち該当数が多かった
項目は (1) 若年 (50 才以下 ):491 名 (2) 多発乳癌 ( 同時 , 異時や多発 ):131 名
(3) トリプルネガティブ乳癌 :106 名であった。また該当項目数では、1 つの
項目のみに該当した人数 :543 名 , 2 項目 :114 名 , 3 項目以上 :34 名であった。
2)検査基準 ( 全 14 項目 ) を一つでも満たした人数は計 484 名 (45%)。(1)45
才以下 :308 名 (2) 本人が 50 才以下でかつ近親者に年齢を問わず一人以上乳
癌 :110 名 (3) 本人の年齢に関わらず近親者に 50 才以下の乳癌が一人以上 :96
名であった。該当項目数では 1 項目 :348 名 , 2 項目 :81 名 , 3 項目以上 :55 名
であった。また 1080 名のうち結果的に BRCA1/2 に病的変異が確認されてい
るのは 9 名であるが全員がそれぞれの基準を 2 項目以上満たし、この 9 名の該
当項目数の平均は一次拾い上げ基準が 3.6 項目、検査基準は 4.1 項目であった。
【考察】当院では遺伝子診療部が設置され 2 名の認定遺伝カウンセラーも在籍
しているが、詳細な問診を含めたカウンセリングや HBOC についての情報提
供を十分に行っていける人数は、1 年間で 200 名程度(手術患者の 2 割程度)
であると試算している。6 割以上が詳細評価対象となるというこの基準のまま
導入することは困難であり、もう少し基準を絞り込む必要がある。この結果
をふまえた当院での工夫や取り組みについても報告する。
10637
10042
遺伝性乳癌卵巣癌の一次拾い上げ問診からみた乳癌既発症者と
未発症者の比較
当院における家族通院乳癌症例の検討
GP-2-094-08
ポスター掲示
GP-2-094-09
厚生連高岡病院 外科
島田乳腺・外科クリニック
尾山 佳永子、加藤 洋介、吉田 周平
島田 和生
【はじめに】当院では乳腺外来受診者全員に対して遺伝性乳癌卵巣癌の一次拾
い上げ問診(初期リスク評価)を行ってきたが、今回、乳癌既発症者と未発
症者の問診結果を比較検討した。【対象と方法】正確な問診がとれた乳癌症例
413 人と乳癌未発症者 2555 人。NCCN ガイドライン 2010 年第 1 版に沿った
10 項目からなる問診を行った。【結果】1 例の男性乳癌を除き全例女性、40 歳
未満は既発症群 10%、未発症群 25%であり、51 歳以上は既発症群 71%、未
発症群 41%と年齢構成に有意な違いがあった。問診の1項目以上に該当した
のは、既発症群 58%、未発症群 39%と既発症群で多く、特に 40 歳未満では
既発症群 69%、未発症群 26%と差が顕著だった。血縁者の乳癌は、既発症
群で 124 人(52%)、未発症群で 497 人(49%)と差はなかったが、40 歳未満
の既発症者では 62%と、51 歳以上の既発症者の 22%と比べ有意に多かった。
しかし未発症群ではこの傾向は認めなかった。両側乳癌は、既発症群は 44 人
(本人と血縁者を合わせて)と未発症群 36 人に対し有意に多かった。卵巣癌は
両群とも 7%と差はなかった。膵癌は、既発症群 9%、未発症群 4%と既発症
群で多かった。男性乳癌は両群とも差はなかった。父方もしくは母方の家系
に 2 人以上の乳癌がいる家系は、既発症群 6%、未発症群 3%と既発症群で多
い傾向にあった。【結論】以上の結果より、比較的簡便な問診票からでも、未
発症者と比較して乳癌既発症者は遺伝的要因がより関係する可能性がある事
が示唆された。
乳癌は家族集積性が比較的高い癌であるが,わが国における家族性乳癌は 1
~2% と報告され,欧米に比較して頻度は低い.また遺伝子検査も日常臨床
で広く行われる状況ではない.当院のような地方病院では家族で罹患し同時
期に通院される症例を経験する.2005 ~ 2013 年 4 月に当院で加療した乳癌
550 症例中,家族通院の乳がん 12 症例(2.2%)を報告する.症例は 6 組 12 症
例 16 病変,親子が 5 組,姉妹が 1 組.2 組に他の近親者乳癌家族歴をみとめ
た.両側症例が 3 症例,多発が 1 症例.年齢は 41-78 歳,親初発年齢は平均
65 歳 (42-77 歳 ),子は 44.8 歳 (40-50 歳 ),姉妹はともに 59 歳.主訴は自覚
が 9 例 (56% ),検診要精査が 4 例 (25% ).病期は 0:3 例,I:3 例,II:6 例,
III:2 例,IV:1 例.手術は切除が 9 例,温存が 5 例,切除不能が 2 例.病理
組織は乳頭腺管癌 4 例,充実腺管癌 2 例,硬癌 4 例,粘液癌 1 例,ILC1 例.全
例ホルモン受容体陽性で,HER2 陽性は 3 例であった.BRCA 遺伝子検査が行
われた症例はなかった.子の 2 症例で転移再発,1 症例が癌死となった.家族
歴を有する乳癌では子世代の発症は親世代よりも若年であることが稀ではな
いことが推測される.乳癌患者においてはその家族への検診の勧めが早期発
見のためには有用と思われる.また遺伝子検査を行える体制の整備が望まれ
る.
一般セッション(ポスター掲示)
10241
10382
乳房温存療法後の乳房内再発と乳癌家族歴との関係
家族性乳癌とくに遺伝性乳がん卵巣がんにおけるリスク低減予
防手術に関する倫理指針の策定
GP-2-094-10
GP-2-094-11
1
国立病院機構四国がんセンター 乳腺科、
2
国立病院機構四国がんセンター 家族性腫瘍相談室
1
大住 省三 1,2、清藤 佐知子 1,2、高橋 三奈 1,2、原 文堅 1、高嶋 成輝 1、
青儀 健二郎 1,2、金子 景香 2
星総合病院 外科、2 星総合病院 看護部・認定遺伝カウンセラー
野水 整 1、松嵜 正實 1、片方 直人 1、渡辺 文明 1、赤間 孝典 2
背景:遺伝性乳がん・卵巣がん(HBOC)症例では、乳房温存療法後の乳房内
再発率が通常の乳癌症例に比して高いことが示されている。HBOC か否かは
BRCA1,2 の遺伝子検査で病的変異を認めなければ確定はできない。しかし、
術前にこれらの遺伝子検査を行うことは、現実的にはかなり困難である。一方、
HBOC を強く疑う臨床所見として、若年発症と濃厚な家族歴がある。発症年
齢と家族歴から高い乳房内再発率を予測できるかどうかを検討した。対象と
方法:2001 年 1 月より 2010 年 12 月の間に当院で初回手術を受けた女性乳癌
症例のうち、手術時年齢が 50 歳以下で乳房温存術を受けており、手術時に家
族歴の聴取ができていた症例 364 例を対象とした。手術日よりの時間を計算
し、手術した側の乳房内での再発をイベントとした。乳房内再発率を KaplanMeier 法で計算し、2 群間の乳房内再発率の差は Logrank 検定で調べた。結果:
対象症例の年齢は 23 ‐ 50 歳(中央値 44 歳)、観察期間は 4 ‐ 154 ヶ月(中央値
68 ヶ月)。ほぼ全例放射線治療を受けていた。乳房内再発は 13 例(3.6%)に
認められた。5 年乳房内再発率は 1.5%。背景因子別に乳房内再発率を検討し
たところ、手術時年齢、組織学的リンパ節転移、ホルモンレセプター、補助
化学療法では統計学的有意差を認めなかった。しかし、第 1 度あるいは第 2 度
近親者に乳癌患者いる場合(73 例)、そうでない場合に比して乳房内再発率が
高い傾向にあった(5 年乳房内再発率 4.1% vs 0.8% , P=0.067)
。さらに、
第 1 度近親者に乳癌患者がいる場合(32 例)、そうでない場合に比して有意に
乳房内再発率が高かった(5 年乳房内再発率 6.3% vs 1.0% , P=0.029)。
ほかには組織学的断端陽性が乳房内再発と有意に相関していた(P=0.004)。
考察:海外の同様の研究では遺伝子検査の結果ではなく、家族歴の有無で見
た場合乳房内再発率に差を認めない研究が多い。今回、乳癌が若年発症する
ことが HBOC の特徴の一つであるため、対象患者の年齢を 50 歳以下に限定し
た。通常乳房内再発の危険因子とされているものの多くに有意差を認めなかっ
たのは、今回の研究での対象症例数が少なかったのと、全体での乳房内再発
率が低かったからと思われた。結語:若年乳癌患者では家族歴が乳房内再発
の危険因子であることが示唆された。
456
家族性乳癌とくに遺伝性乳がん卵巣がん (HBOC) では、BRCA 変異遺伝子保
有者では乳癌あるいは卵巣癌発生のリスクが一般集団に比較しはるかに高率
である。したがって、1次予防としてリスク低減手術が海外では広く行われ
ているが本邦では端緒に着いたばかりである。リスク低減手術では臨床的に
は正常と思われる臓器を摘出するので、その実施には慎重に対処する必要が
ある。予防手術希望者に適切に対処するために当院では倫理指針を策定した。
その骨子は 1) 家族性乳がんおよび遺伝性乳がん家系の患者および血縁者で、
わが国の保険適応のない未発症臓器の予防切除を希望した場合には、個別に
倫理委員会に申請し承認を得ること。2) 詳細な家族歴を聴取し、NCCN ガイ
ドラインあるいは「野水の臨床的定義」を参考とし、遺伝カウンセリングを行っ
たのち BRCA 遺伝子検査(自費診療)を実施する。3)BRCA 遺伝子検査の結果
をもとに乳がん、卵巣がん、その他の関連がんの発生リスクを評価し、年齢
や挙児希望の有無も考慮の上手術以外のオプションの提示したうえで予防切
除希望者の意志を再確認する。4)BRCA 遺伝子変異陽性は必ずしも必須条件
とはしない。5) 予防切除は現時点では乳房と卵管卵巣に限る。摘出臓器は詳
細な病理検査を実施する。乳腺外科、形成外科、婦人科など関連各科の協力
のもとに行うこと。6) すべて自費診療とし、保険診療での費用を参考に決める。
ただし、病理検査で悪性病変も含め疾患の存在が明らかになった時は、全額
保険診療に切り替える。7) 予防手術希望者の外来窓口は外科「がんの遺伝外来
とする」乳腺外科医、家族性腫瘍コーディネーター、遺伝カウンセラーが対応
する。8)BRCA 遺伝子変異陽性の乳癌患者においては両側乳房を一臓器とみ
なし、十分なカウンセリングのもと両側乳房切除を保険診療内で行なうこと
ができる、乳房再建も保険診療内で行うことができる。卵巣癌患者についても、
保険診療内で両側卵管卵巣切除子宮全摘を行うことができる。9)BRCA 遺伝
子変異陽性が確認されている場合、乳腺、卵巣、子宮に良性病変があり、両
側乳房切除や両側卵管卵巣子宮切除を希望する場合は、十分なカウンセリン
グのもと、保険診療で実施することができる。10) 今後の医学医療の進歩に伴
い、倫理委員会での審議のもとに本指針を改訂することがある。この倫理指
針は当院倫理委員会で承認された。
ポスター掲示
10479
11207
一般病院における遺伝性乳がん・卵巣がん診療体制整備の試み
遺伝性腫瘍を多発する Cowden 病における乳がん診断の留意点
GP-2-094-12
GP-2-094-13
1
石巻赤十字病院 遺伝・臨床研究課、2 石巻赤十字病院 看護部、
3
石巻赤十字病院 乳腺外科
1
公益財団法人田附興風会医学研究所北野病院 乳腺外科、
名古屋市立大学 産科婦人科、3 名古屋市立大学 臨床遺伝医療部、
4
名古屋市立東部医療センター 産婦人科、5 名古屋市立大学 乳腺内分泌外科
2
安田 有理 1、玉置 一栄 2、伊藤 正裕 3、古田 昭彦 3
大瀬戸 久美子 1,2,3、西川 隆太郎 2,3,4、遠藤 友美 5、吉本 有希子 1、
萩原 里香 1、高原 祥子 1、遠山 竜也 5、山内 清明 1
【背景】近年遺伝性腫瘍に対する重要性が注目され始めている。全乳がん
の 5 ~ 10%は遺伝性であると考えられているが、そのうち 50 ~ 60%は
BRCA1/2 の変異に起因する遺伝性乳がん卵巣がん症候群であると言われてい
る。しかし、遺伝性乳がんの診断には他の遺伝子変異を念頭に置いた鑑別も
必要である。Cowden 病は PTEN 遺伝子に変異を認める遺伝性疾患で、特徴
的な皮膚病変や頭部の外形を有し、全消化管に過誤腫性ポリープを来す。多
臓器に腫瘍性病変を合併する事が多く、甲状腺や乳房、子宮内膜に良性もし
くは悪性腫瘍が発症するリスクも高くなる遺伝性疾患である。したがって複
数科における腫瘍発生に対する厳重なフォローが重要となる。今回他疾患治
療中に乳がんを指摘されそれを契機に Cowden 病と診断された症例を経験し
たので報告する。【症例 1】27 歳で血管腫を指摘され、30 歳の時単純子宮全
摘術を施行。31 歳及び 36 歳で甲状腺切除。最終的には甲状腺全摘出術。そ
の後、遺伝学的検査により Cowden 病と診断された。その後の経過観察中の
51 歳で左乳腺腫瘤を自覚し受診。精査の結果左乳がん及び右乳腺腫瘤を診断
され左乳腺部分切除術及び右乳腺腫瘤摘出術を施行。【症例 2】16 歳で甲状腺
右葉部分切除術を施行。25 歳で甲状腺内再発をし、甲状腺全摘術及び両側頚
部廓清術施行。36 歳で左乳がんを指摘され左胸筋温存乳房切除を施行。父が
食道や胃・大腸にポリープがあり、左下極甲状腺結節から Cowden 病を疑わ
れたが肺癌にて死亡。父の主治医より Cowden 病の疑いがあった事を説明さ
れていたので母親と共に遺伝カウンセリングを実施し、既往歴等から本人が
Cowden 病疑いである事を説明。本人の希望により遺伝子検査を実施し PTEN
遺伝子変異を同定し Cowden 病と診断された。【考察】2 症例とも乳がん以外
の疾患により受診し、その疾患に対する治療の後に遺伝性腫瘍が疑われ遺伝
子検査を実施。特に症例 2 に関しては父の死を契機に遺伝カウンセリングを受
診し遺伝子検査の結果 Cowden 病と診断された。このように単発の疾患と考
えられ治療されている症例の中に遺伝性腫瘍を疑う症例が存在することが示
唆される。これらの疾患を家族歴や臨床症状より鑑別し、カウンセリングさ
らには遺伝学的検査の提示に関して日常の診療において考慮する必要性が示
唆された。【結語】Cowden 病に付随した乳がんは遺伝性腫瘍という視点から
診断しなければ単一病変として見逃される可能性がある。
11745
10811
当院における OSNA 法によるセンチネルリンパ節生検の現状
当院における、OSNA 法によるセンチネルリンパ節生検症例の
検討 - 重複癌との関連について
GP-2-095-01
1
GP-2-095-02
日立製作所日立総合病院 外科、2 日立製作所日立総合病院 病理科
総合上飯田第一病院 乳腺外科
周山 理紗 1、伊藤 吾子 1、三島 英行 1、八代 享 1、柳谷 昌弘 1、奥村 稔 1、
菊地 文史 2
【はじめに】OSNA(One-step Nucleic Acid Amplification) 法は,リンパ節中
の CK ( サイトケラチン )19 を増幅し,mRNA のコピー数を定量化すること
で,病理医でなくとも簡便かつ迅速に転移の有無を判定できる.当院は茨城
県北部で唯一の乳癌学会認定施設であり,年間約 140 件の乳癌手術を行って
いるが,地理的条件等から病理医不足に悩んでいる.OSNA 法の導入により,
病理科の業務軽減に繋がるかについて検討した.【対象】当院にて OSNA 法が
試行導入された 2013 年 6 月~ 11 月の 5 ヶ月間にて,センチネルリンパ節生
検を施行した原発性乳癌症例 42 例 (OSNA- 迅速病理併用 35 例,OSNA 単独 7
例 ).【方法】OSNA 法と凍結切片による迅速病理診断の診断一致率,所要時間,
コストについて検討した.【結果】年齢 34 ~ 86 歳(中央値:65 歳),提出検
体数は 1-5 個 ( 中央値:2 個 ) であった.術中迅速診断および OSNA 法ともに
転移陽性の症例は 7 例 (20.0%),ともに転移陰性の症例は 27 例 (77.1%) で
あり,診断一致率は 97.1%であった.SLN 提出から結果連絡までの時間は迅
速病理診断 26-67 分 ( 中央値 39 分 ),OSNA 法 35-55 分 ( 中央値 42 分 ) であっ
た.コスト面では迅速病理診断保険点数 1990 点,OSNA 法保険点数 2400 点,
ランニングコスト約 15000 円であるが,OSNA 法は現時点では包括医療内と
なるため 1 件につき 15000 円の病院負担となった.【考察】凍結切片による迅
速病理診断と OSNA 法の一致率は 97.1%と高く,検査所要時間も差はなかっ
た.技師のみで行え,病理医の他業務を中断する必要がないことから,病理
医の不足している地域中核病院において,OSNA 法単独でのセンチネルリン
パ節生検は十分に有用な方法である.しかし CK19 低発現乳癌における偽陰性
の可能性もあるため,原発巣の術前針生検での CK19 発現状況の検索を検討し
ている.また,コスト面で現行では病院負担が増加した.【まとめ】OSNA 法
導入により病理医の業務は軽減されるが,コスト面で課題が残った.
雄谷 純子、窪田 智行、加藤 万事、佐々木 英二、岡島 明子、山内 康平、
三浦 重人
(背景)OSNA 法は、サイトケラチン(CK)19mRNA を特異的に検出する事に
より、乳癌、大腸癌または胃癌のリンパ節転移診断において有用性が報告さ
れている。ただし、CK19mRNA を標的としているため、原発巣確認はでき
ない。当院では、2010 年 6 月より OSNA 法を導入し、乳癌におけるセンチ
ネルリンパ節生検(SLNB) の診断を行っている。当院での重複癌症例を主体
に、OSNA 法施行症例について検討した。(方法)2010 年 6 月から 2013 年 9
月までに、当院で OSNA 法による SLNB を施行した 198 例を対象とした。適
応は、Clinical N0 症例で、CT lymphography 補助下の色素法で同定した。
(結果)198 例中、陽性例は 27 例(13.6%)であった。198 例の中に、他の悪
性疾患の既往のある症例が 19 例(9.6%)あった。(乳癌 11 例、子宮癌 5 例、
直腸癌 2 例、肺癌 1 例)。重複癌症例の OSNA 陽性例は 2 例(10.5%)であっ
た。今回、OSNA 法症例の検討を行い、興味深い症例を経験したので提示す
る。(症例)73 歳、男性。既往歴に 70 歳時に、直腸癌および盲腸癌に対する
手術歴があった。左乳房の腫瘤を自覚し来院。穿刺吸引細胞診で悪性と診断
され、手術(Bt+SLNB) を施行した。SLN は 2 個摘出し、OSNA 法でともに
転移陽性と診断されたため腋窩郭清を追加した。術後の病理組織学検査で、
gynecomastia(atypical ductal hyperplasia) と診断された。追加郭清したリ
ンパ節には転移を認めなかった。手術の 4 ヵ月後に直腸癌の再発が発見され
た。この経過より、OSNA 法の陽性は直腸癌の CK19mRNA を検出した偽陽性
であったと考えられた。(考察)OSNA 法の適応に関して、進行重複癌の既往
のある症例に対しては慎重に検討する必要があると考えられた。
457
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】乳がん全体のうち、遺伝要因が関係する乳がん(遺伝性乳がん)は
約 5%はとされ、なかでも遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)の頻度が
最も高い。最近では、米国女優の報道もあり、一般市民の間でも BRCA1/2 遺
伝子検査やリスク低減乳房切除術への関心が増しており、HBOC 診療体制の
整備に対する要望は高まっている。【体制整備の経緯】当院では、2011 年 10
月の認定遺伝カウンセラー(CGC) の入職を機に、HBOC 診療体制の整備に取
り組み始めた。取り組み開始当初は、遺伝要因を考慮すべき患者の拾い上げ
方法の確立のみならず、遺伝医療の素地のない状況での遺伝カウンセリング・
遺伝子検査の導入が大きな課題であった。高リスク者の拾い上げに関しては、
新規乳がん患者を対象に、CGC が乳がん術後に病棟での家族歴聴取を行うこ
とから始め、遺伝カウンセリング・遺伝子検査の導入に関しては乳腺外科医
と CGC とで協議を重ねる一方、以前より院内で活動が行われていたカウンセ
リング業務運営委員会による審議を行いながら、遺伝カウンセリング・遺伝
子検査の導入を円滑に進めることができた。現在は、外来での問診票による
拾い上げを行っており、遺伝要因が考慮される場合には、外来の乳がん看護
認定看護師あるいは乳腺外科医から CGC に詳細な家族歴聴取の要請がなされ、
必要があればその後に遺伝カウンセリングを行い、希望者には BRCA1/2 遺伝
子検査を提供している。現在までに、乳腺外科受診者における問診票取得者
は 4,000 例を超え、そのうち 20 例が BRCA1/2 遺伝子検査を受検した。変異
陽性者にはリスクの高さに応じた検診プログラムを提供している。婦人科検
診は地域医療機関と連携して提供可能とした。取り組み開始 1 年目は CGC が
専従で関わることにより乳腺外科医や外来看護師の業務に支障をきたすこと
なく HBOC 診療の導入が図られた。2 年目からは乳腺チーム全体で高リスク
者の拾い上げから対策(検診)までを円滑に進めることができるようになった。
【まとめ】CGC の専従とチーム内での頻回の話し合いにより、早急な HBOC 診
療体制の整備が可能になったと考える。外科的予防法としてのリスク低減手
術の導入が今後の課題である。
ポスター掲示
11148
10258
ICG 蛍光法と OSNA 法を用い微小転移と診断された症例におけ
る非センチネルリンパ節転移の検討
乳腺専門クリニックにおけるセンチネルリンパ節生検と OSNA
法の運用
GP-2-095-03
GP-2-095-04
神鋼病院 乳腺科
1
松本 元、出合 輝行、結縁 幸子、橋本 隆、山神 和彦
金 隆史 1、河井 亜美 1、脇坂 恵 1、岩田 美加 1、中島 三保 1、舩岡 友里 1、
有廣 光司 2
一般セッション(ポスター掲示)
<緒言> IBCSG23-01 試験を根拠に、センチネルリンパ節(SLN)の微小転
移後の追加郭清省略が提唱されている。IBCSG23-01 試験の SLN 単独群の
88.3%は温存術後の放射線治療(RT)が付加されており、乳房切除術で RT
が省略される症例に対しては、郭清省略が可能か疑問である。以上より非セ
ンチネルリンパ節に転移が無い条件を絞り込むことが、より安全性を担保で
きることになる。ICG 蛍光法よるセンチネルリンパ節生検(SLNB)は、SLN
の同定率の高さや、解剖学的なリンパ流に沿った一連の SLN 群として複数
個のリンパ節が採取検索できる点が特徴である。また SLNB の術中迅速病理
診断は、採取されたリンパ節の 1-2 切片のみを検索することが多く、微小転
移の場合、偽陰性となる可能性がある。OSNA 法(One-step Nucleic Acid
Amplification)は、SLN 全体の検索が可能となる。
<目的> ICG 蛍光法により SLNB を行い、OSNA 法にて SLN に微小転移陽性
であった症例において、非センチネルリンパ節(非 SLN)への転移の割合を検
討する。
<対象> 2012 年 02 月から 2013 年 11 月まで当科で施行した乳癌症例におい
て、clinical N0 と診断され手術先行の治療となった 216 例。これらのうち、
切除された SLN が OSNA 法にて微小転移陽性(1+)と診断された 21 例を対象
とした(転移リンパ節の個数は問わないが、同時にマクロ転移陽性(2+)の転
移を認めた症例は除外した)。
<方法> ICG 蛍光法併用にて SLNB を施行、同リンパ節を OSNA 法にて転移
の有無を検討した。これらの症例においてバックアップ郭清で得られた非
SLN への転移の有無について検討した。
<結果>微小転移陽性のリンパ節を認めた 20 例において、切除されたセンチ
ネルリンパ節は平均 2.5 個であった。微小転移リンパ節が 1 個の症例は 15 例、
転移が複数個であったものは 5 例であった。2 個以上の SLN が採取できて、微
小転移が 1 個とした場合、1 例を除いてバックアップ郭清後の非 SLN(郭清リ
ンパ節の平均個数 11.8 個)に転移を認めなかった(13/14、93%)。
<結論> ICG 蛍光法にて SLNB を施行、OSNA 法で微小転移陽性と診断された
症例は、2 個以上の SLN が精査され、転移個数が 1 個ならば非センチネルリン
パ節への転移の割合は少ない。
広島マーククリニック 乳腺外科、2 広島大学病院 病理診断科
[ 背景・目的 ] 乳腺専門クリニックでは , 常駐乳腺病理医が不在のため , 病理
組織検査は外部委託で行っており , センチネルリンパ節生検 (SNB) での術中
迅速検査は行えなかった。そのため , 臨床的腋窩リンパ節転移陰性例 (cN0) で
も 20% 程度に組織学的転移を認めており , 術後追加郭清の可能性もあった。
OSNA 法は , サイトケラチン 19(CK19) mRNA の発現を , mRNA の抽出なく
リンパ節可溶液を希釈し RT-LUMP 反応を介して one step で測定できる検査
法であり , 高精度性 , 永久病理 (H&E) との一致性 , 客観性は報告されている。
今回 , 開院以来施行した SNB と 2013.4 から運用を開始した OSNA 法の有用
性と課題について報告する。[ 対象・方法 ] 2008.6 ~ 2013.10 まで行った
SNB 237 例の内 , 2013.4 ~ 10 で OSNA 法を 25 例に施行した。Stage 0 ~
II, 平均年齢 52.9 歳 (37 ~ 77)。SNB は色素法 ( インジゴカルミン +ICG 併
用 ) で行い , OSNA 法へは SN の half を使用し , 残りの half は H&E へ提出した。
麻酔法は局麻 + 静脈麻酔を用い , 日帰り手術で行った。[ 結果 ] SNB の成績は
SN 同定 233 例 ( 同定率 98.3%), 平均個数 2.6 個 , SN 陽性は 46 例 (19.4%)
に認められ , 追加郭清は 14 例に行い , 32 例は SNB のみであった。両群とも
術後照射 , 補助療法が行われ , 観察期間は 5 年 6 ヶ月 , 腋窩再発は認めていな
い。OSNA 法を施行した 25 例では , OSNA 陽性 7 例 (H&E 陽性 2 例 ), H&E の
み陽性 2 例 (OSNA 陰性 ) であった。H&E のみ陽性 2 例では CK19 の発現は認
められた。平均所要時間 28 分 (1 個 ), 32.5 分 (2 個 ), CK19 mRNA のコピー
数が多いほど non-sn への転移が多い傾向にあった。病理組織学的因子では ,
HER-2 陽性 2 例 , ly 陽性 4 例に認められ , H&E のみ陽性例はいずれも微小転移
であった。[ 考察 ] OSNA 法は , 短時間の SN 転移診断により病理医不在でも術
中意思決定ができ , 転移度に応じた腋窩処理が可能である。リンパ節全体での
評価 , CK19 陰性乳癌の存在を考慮し , 2013.11 より SN 細切後に捺印細胞診
を併用し , whole node で行っている。そのデータも報告したい。
11322
11750
RI 施設を持たない当院での ICG 蛍光法併用による SLNB の検討
色素法と蛍光法を用いた系統的センチネルリンパ節生検の有用
性
GP-2-095-05
GP-2-095-06
埼玉石心会病院 乳腺内分泌外科
1
中村 靖、児玉 ひとみ
2
【はじめに】SLNB(センチネルリンパ節生検)には色素法、ラジオアイソトー
プ(RI)法、併用法などが開発されている。2011 年版の乳癌診療ガイドライ
ンでは RI と色素の併用法が勧められている。しかし、RI 施設を持たない施
設も多く、当院もその1つである。これまでは色素法単独で行っていたが、
2013 年 4 月より Hyper Eye Medical System(HEMS)
(瑞穂医科工業)を用
いた ICG 蛍光法の併用を開始した。ICG 蛍光法併用前後での、当院の SLNB の
治療成績を検討した。【対象】2009 年 4 月から 2013 年 12 月までの乳癌手術
症例のうち、腫瘍径 3cm 以下かつ術前画像評価でリンパ節転移を認めなかっ
た延べ 99 例を SLNB の適応とした。このうちバックアップ郭清が 7 例、色素
法単独が 76 例、ICG 蛍光色素法が 16 例に施行された。【結果】同定率は色素
法単独 90.8%、併用法 100%であった。偽陰性例を色素法単独に 1 例認めた。
色素法単独でリンパ節が染色されず、追加郭清を行ったものが 7 例あり、その
内 6 例はリンパ節転移を認めなかった。蛍光色素法では、迅速診断ですべて陰
性であった。【考察】蛍光法を併用し始めてからの件数が少ないが、色素法単
独よりも同定率が上昇している。カラーモニター上にリンパ節・リンパ管が
発光して見える為、肉眼的に確認がしやすくなった。ICG 蛍光法の併用は RI
施設を持たない施設での SLNB の精度向上に役立つと考えられる。
3
日本赤十字社和歌山医療センター 乳腺外科部、
日本赤十字社和歌山医療センター 放射線科部、
日本赤十字社和歌山医療センター 病理診断科部
芳林 浩史 1、川口 佳奈子 1、矢本 真子 1、西村 友美 1、嶋田 功太郎 2、
則久 佳毅 2、小野 一雄 3、加藤 博明 1
【はじめに】 センチネルリンパ節生検は腋窩リンパ節郭清に変わる腋窩転移
診断法として広く普及してきた。その同定方法としてガイドラインでは RI 法
と色素法の併用法が勧められている。またそれ以外の同定方法として近年、
Indocyanine green(以下 ICG)を用いた蛍光色素法の有用性が報告されてい
るがその摘出方法についての言及は少ない。今回、色素法と蛍光法を用いて
系統的にセンチネルリンパ節(以下 SLN)を摘出することの有用性を検討する。
【対象と方法】 2009 年 4 月から 2013 年 12 月の間、当センターで手術を施
行した原発性乳癌 432 例中、センチネルリンパ節生検を行った 344 例を対象
とした。方法は術前臨床的に腋窩リンパ節転移の可能性が低い症例をセンチ
ネルリンパ節生検の適応とした。全身麻酔後に 2% パテントブルーを患側乳
輪外縁皮内に 1.5ml、執刀直前に ICG を同部位に 1ml を注射する色素法と蛍
光法を用いて SLN を同定した。同定方法は蛍光法により直視化で乳腺外縁か
ら腋窩に向かうリンパ管を同定し、それより最初に乳房から流入する腋窩リ
ンパ節を 1stSLN、それより腋窩静脈側のリンパ節をそれぞれ 2ndSLN、3rd、
4thSLN とした。そして 1stSLN に流入するリンパ管から系統的に 2 個以上、4
個以内を目安に摘出した。この方法により SLN 同定率、摘出個数、SLN の転移、
同側腋窩リンパ節再発について評価した。【結果】
SLN の同定率は 100%、
摘出個数(中央値)は 3 個(1-14 個)であった。リンパ節転移は 344 例中 48 例
(13%)に認め、その内 SLN への転移が 45 例、SLN 以外へのリンパ節転移が 3
例あった。SLN への転移を認めた 45 例中、84%が 1stSLN に転移を認め、系
統的な 2nd、3rdSLN の摘出でそれぞれ 89%、98%、さらに 4thSLN までに
すべてのリンパ節転移を認めた。また、2 個以上の SLN を摘出した中で SLN
に転移を認め、追加郭清をおこなった 27 例において、85%が系統的な転移を
示唆した。フォローアップ期間(中央値)は 26.1 ヶ月であるが、同側腋窩リン
パ節再発は認めていない。【結語】 色素法と蛍光法を用いて系統的にセンチ
ネルリンパ節生検を行うことは腋窩リンパ節転移の評価向上を期待できる可
能性がある。
458
ポスター掲示
11060
11639
ICG 蛍光法とパテントブルーを併用したセンチネルリンパ節生
検後の腋窩再発
ICG 蛍 光 法 に よ る セ ン チ ネ ル リ ン パ 節 生 検 と Body Mass
Index(BMI) の関係について
GP-2-095-07
1
3
GP-2-095-08
市立貝塚病院 乳腺外科、2 市立貝塚病院 放射線科、
市立貝塚病院 検査科病理、4 市立貝塚病院 看護局
山形県立中央病院 乳腺外科
井上 共 1、西 敏夫 1、中野 芳明 1、稲治 英生 1、沢井 ユカ 2、矢竹 秀稔 2、
山崎 大 3、梅本 郁奈子 4
早期乳癌におけるセンチネルリンパ節 (SLN) 生検は標準手技となり、これま
での大規模試験により遠隔再発に対する腋窩手術の効果は否定されてきた。
ACOSOG Z0011 試験では SLN positive であっても腋窩廓清省略の可能性さ
え示唆されるようになった。ガイドラインでは SLN 同定に色素と RI の併用を
推奨されているが、RI の使用は核医学施設がなければ困難である。当院では
2007 年 3 月より PDE (Photodynamic Eye) 下 ICG・パテントブルー併用蛍
光・色素法を施行してきたので、2013 年 11 月までの原発乳癌患者について
腋窩再発を検討した。対象は術前検査でリンパ節転移を認めない症例。色素
は ICG1ml + 1% パテントブルー 2ml を乳輪下に注入し、5 分後 PDE で皮下
リンパ管より腋窩に至る経路を追跡した。腋窩を切開し染色されたリンパ管
をたどり SLN を同定摘出した。この手技を 690 例に施行し同定率は 99.4%
(686/690)、SLN 個 数 は 平 均 2.4 個 (1-7 個 )、non-SLN 個 数 は 平 均 0.60 個
(0-5 個 ) であった。腋窩郭清に移行した 97 例、術後の病理組織検査でも非浸
潤癌と診断された 140 例を除外した 453 例を解析したところ術後平均 36.8 ヶ
月 (0.5 ~ 81.1 ヶ月 ) 経過観察し、腋窩リンパ節再発を 2 例 (0.44%) にのみ
認めた。また、腋窩廓清に移行した 97 例中 55 例 (56.7%) は SLN 以外の腋窩
リンパ節転移を認めなかった。まだ経過観察期間が短いため長期の結果を待
たざるをえないが、この方法が色素・RI 併用法の代用となりうる事が示唆さ
れた。
牧野 孝俊、工藤 俊、蓮沼 綾子
10169
10000
ICG 蛍光法および 3D CT-lymphography 併用によるセンチネ
ルリンパ節生検の有用性
SNB 症例に対する ICG 蛍光法を用いたリンパ浮腫の早期発見の
検討
GP-2-095-09
1
GP-2-095-10
ベルランド総合病院 乳腺センター、2 ベルランド総合病院 外科
1
千葉県がんセンター 乳腺外科、2 千葉県がんセンター 診断病理科
阿部 元 1、山崎 圭一 1、徳田 彩 2、小川 雅生 2、川崎 誠康 2、
亀山 雅男 2
中村 力也 1、山本 尚人 1、吉井 淳 1、味八木 寿子 1、伊丹 真紀子 2、
池部 大 2
センチネルリンパ節生検(SLNB)は RI 法、色素法の併用が推奨されているが、
ICG 蛍光法はリンパ節の染色に加えてリンパルートの確認が可能であり、併
用法の特徴を備えている。一方、3D CT-lymphography(3DCTL)は術前にセ
ンチネルリンパ節位置、個数、リンパルートを把握することができる。今回、
我々は ICG 蛍光法と 3DCTL の併用による SLNB の有用性を検討した。
【対象と
方法】対象は 2013 年 1 月~ 11 月に当院で SLNB を施行した 66 例。3DCTL は
手術前日に胸壁にマーカーを貼付した後、乳輪皮内に水溶性造影剤 4ml と局
所麻酔 0.5ml を注入する。1 分間マッサージ後に CT 撮影を行い、3D vertial
画像を作成して、直上皮膚にマーキングを行った。ICG 蛍光法は術中に ICG
とインジゴカルミンの混合液 0.3ml を乳輪皮内に注入し、近赤外線観察カメ
ラ(PDE neo)にてリンパルートを同定する。3DCTL 画像を参照しながら、蛍
光 mapping を使用してセンチネルリンパ節を同定し、直上に皮膚切開線をお
いて SLNB を行った。【結果】ICG 蛍光法によるリンパルートの描出率、センチ
ネルリンパ節の同定率はともに 100%であり、同定されたリンパルートは平
均 1.3 本、リンパ節の平均個数は 1.5 個であった。3DCTL にてリンパ節が描
出されたものは 62 例(94%)、リンパルートが描出されたものは 58 例(88%)、
平均 1.1 本で、センチネルリンパ節と同定されたリンパ節の平均個数は 1.1 個
であった。【結語】ICG 蛍光法、3DCTL を併用すると、3DCTL 画像と PDE 画
像を並べて表示することでセンチネルリンパ節の検索が容易になり、SLNB を
より簡便に行うことができると考えられた。
はじめに)センチネルリンパ節生検(SNB)は腋窩廓清術 (Ax) と比べリンパ浮
腫の発生頻度は少ないが数%の報告もなされている . 一方 ,SNB 陽性症例にお
いてもリンパ浮腫の発生と治療効果の両面より Ax 省略の方向にあるものの議
論の余地がある . そこでリンパ浮腫の発生を軽減するためには SNB また Ax 時
に , リンパ浮腫の最大の要因となる上肢リンパ節の機能温存または確認が重要
と思われる (
. 対象と方法)今回我々は SNB 症例に対して術中および術後 1 か
月に ICG を患側手背より注入することで ,SNB 後の患側上肢のリンパ流の変化
を検討した . リンパ浮腫の評価は上肢の計測 ( 手背 , 手関節 , 前腕 , 肘関節 , 上腕
の 5 点 ), さらに ICG 蛍光カメラにて行い normal, Splash, Stardust, Diffuse
pattern に分類した .SNB は RI 法と色素法の 2 マッピング法で施行し同定し
た .( 結果 ) 当施設の IRB にて承認された 2013 年 9 月より 11 月に SNB を施行
した 62 名中 , 同意を得られた 46 名 .SNB 転移症例は 3 例認め Ax を施行 .SNB
に ICG の集積を認めた症例は 20 例 (43%). そのうち 1 例で術後 1 か月の ICG
検査法によりリンパ流の変化 (Stardust pattern) を認めたが , 全症例において
主訴および計測上のリンパ浮腫は認めていない . なお Ax を施行した 3 症例の
ICG 集積リンパ節には転移を認めていない .( 結語 )ICG 蛍光法による術後検査
にて顕在化されていないリンパ浮腫の早期発見が可能と思われた . さらなる症
例蓄積を行い SNB 転移陽性症例での ICG 蛍光法の有用性を報告する .
459
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】センチネルリンパ節生検は、現在多くの施設で行われている。同定率
を高くするために、色素法、アイソトープ法併用法が推奨されている。しかし、
アイソトープ併用法でも、センチネルリンパ節同定が困難な症例もあり、そ
の原因のひとつに、Body Mass Index( 以下 BMI) との関係が報告されている。
当院では、インジゴカルミンによる色素法と Indocyanine green( 以下 ICG)
蛍光法の併用によるセンチネルリンパ節生検を行っている。今回、ICG 蛍光法
によるセンチネルリンパ節生検と BMI の関係について検討した。
【対象と方法】
対象は、2012 年 6 月から 2013 年 10 月まで当院にてセンチネルリンパ節生検
(以下 SN 生検)を施行した 132 例。乳頭頭側の乳輪下にインジゴカルミン(原
液)5ml と ICG(ICG25mg を生食 5ml に希釈)0.4 mlを皮下注射し、SN 生検
を施行した。これらを BMI25 以上群(31 例)、BMI25 未満群(101 例)にわけ、
原発乳癌の腫瘍径、SN 陽性率、同定率、摘出までの平均時間、平均 SN 摘出
個数、平均リンパ流の本数を比較検討した。【結果】BMI25 以上群と BMI25 未
満群の主な背景因子では、平均年齢は 62.6 歳と 56.2 歳(p=0.22)、平均腫瘍
径は、1.73cm と 1.58cm(p=0.98)、SN 陽性率は 6.4%と 11.9%(p=0.39)
といずれも有意な差は認めなかった。SN 同定率は、それぞれ 96.6%と 99%
(p=0.95)。摘出までの平均時間は、19.1 分と 16.2 分 (p=0.09)。平均 SN 摘
出個数は、2.8 個と 2.6 個 (p=0.64)。また平均リンパ流の本数は、1.4 本と
1.5 本 (p=0.66) と差がなかった。ただし、内側への平均リンパ流の本数は 0.32
本と 0.15 本 (p=0.03) と BMI25 以上群で、有意に多かった。【考察】ICG 蛍光
法では BMI による同定率には差がなかった。また、平均 SN 摘出個数にも差
がなかった。摘出までの時間は、BMI25 以上群で長い傾向が認められたが、
BMI が高い症例でも ICG 蛍光法により適切に SN 生検を行うことができると考
えられた。またリンパ流についての検討では、全体のリンパ流の本数には差
がなかったが、BMI25 以上群では、比較的、内側へのリンパ流が多い傾向が
あった。BMI25 以上では、一般的に、皮下脂肪が厚い症例が多いと考えられ、
腋窩脂肪の厚みからリンパ管圧が上昇し、内側へのリンパ流が発達し、腋窩
へのリンパ流が減弱している可能性が示唆された。今後、さらに症例を重ね
て検討したい。【結語】ICG 蛍光法では、BMI が高い症例でも、適切に SN 生検
を行うことができると考えられた。
11343
11525
腋窩リンパ節転移症例に対する術前化学療法後のセンチネルリ
ンパ節生検の検討
乳癌術前治療施行後の腋窩リンパ節検索
GP-2-095-11
ポスター掲示
GP-2-095-12
1
1
大阪ブレストクリニック、2 社会保険京都病院 乳腺外科、
3
関西電力病院 病理部
にゅうわ会及川病院、2 黒木クリニック、3 福岡青洲会病院
久松 和史 1、及川 達司 1、小林 美恵 1、黒木 祥司 2、八反田 洋一 3
【目的】術前治療例症例のリンパ節転移検索は、統一された検索方法がな
いのが現状である。今回、当院における術前治療例のリンパ節検索方法を
retrospective に検討し、術前治療例のリンパ節検索方法の現状を評価した。
【対象と方法】2010 年 9 月から 2013 年 11 月までに当院で術前治療後に手術
施行した原発乳癌 70 例を対象とした。当院は、open 病院なので、手術医師
は主として院内 2 名、院外 1 名で、術前治療施行例の腋窩リンパ節検索は、
Doctor’s choice になっている。治療前のリンパ節転移の診断は、臨床(触
診、画像)的評価か超音波ガイド (US) 下にリンパ節細胞診 (LN-ABC) による
評価で行われた。治療前転移陰性例 (LN(-)) のリンパ節検索方法は、手術時
に色素法による赤外カメラガイド下のセンチネルリンパ節生検 (ICG-SNB)
が行われた。治療前転移陽性例 (LN(+)) の手術時リンパ節検索方法は、1)
治療効果にかかわらず全例郭清と 2) 治療効果あり臨床的に転移消失例には
ICG-SNB 施行と手術方法が異なっている。これら腋窩リンパ節検索の現状を
retrospective に評価した。【結果】(I) LN(+)32 例中、Ax が 22 例において行
われ、内 12 例 (54%) は転移陰性、10 例 (46%) が転移残存であった。残り
の 10 例は、手術前検査の CT、US、LN-ABC が施行され転移消失と診断し、
ICG-SNB 施行。8 例 (80%) が SN 転移陰性にて郭清省略し、2 例 (20%) が SN
転移陽性にて Ax 追加施行した。 (II) LN(-)38 症例は、全例手術時 SNB が施
行され、全例 SN 転移陰性 (micrometa 2 例 ) にて、郭清省略がおこなわれた。
追跡期間が最長 3 年 1 月現在、すべての SNB 施行例で再発を認めていない。
【ま
とめ】1) LN(-) 例のリンパ節検索方法としての治療後の ICG-SNB は、同定率
100% で有用な検査方法であり、現在予後の経過観察中である。2) LN(+) 例
で術前治療が奏効した症例に対する ICG-SNB と SN 転移陰性例に対するリン
パ節郭清の省略に関しては、術前画像検査、LN-ABC をおこなうことにより約
8 割で郭清の省略が可能であった。今後、臨床試験の結果を踏まえ郭清の省略
の妥当性を検討していく必要がある。
井口 千景 1、住吉 一浩 1、小池 健太 2、山本 仁 1、広瀬 富貴子 1、
河合 潤 3、芝 英一 1
【背景】現在、当院では、N が 1 以上または腫瘍径 3cm 以上の症例に対し、術
前 化 学 療 法 (NAC;neoadjuvant chemotherapy) 後、 腋 窩 リ ン パ 節 郭 清
(AXLD;axillary lymph node dissection)を行なっている。昨年、我々は 63
例を検討し、HER2 陽性症例では NAC 施行後に SLNB 陰性であれば、AXLD を
省略できる可能性があると報告した。今回症例数を増やし、再検討した。【方
法】2006 年 6 月開院時から 2013 年 8 月までに、当院で、原発性乳癌で N 1以
上と診断後、NAC、根治手術を行った症例のうち SLNB、AXLD を行った 157
例を対象とした。NAC は生検結果のサブタイプに基づき、weekly paclitaxel
± trastuzumab 後、FEC100 を行った。SLNB はパテントブルーを傍乳輪に
皮内注入する色素法を採用した。【結果】SLNB 施行 157 例中、118 例でセン
チネルリンパ節が同定された(同定率 75.2%)。このうち、49 例で AXLD に
リンパ節転移が見られた(陽性率 41.5%)。7 例は SLNB で陰性と診断された
が AXLD では陽性と診断され(偽陰性率 20.6%)、うち 1 例にリンパ節再発を
認めた。偽陰性であった 7 例のうち、5 症例は、摘出リンパ節数が 1 ‐ 2 個と
少なかった。サブタイプは、Luminal A 型 2例、HER2 型 2例、Basal-like
型 1例、Luminal 型(Ki67 測定なし)2例であった。【結語】当初の症例を含
めているため、同定率は低く、偽陰性率は高かった。NAC 後の場合、センチ
ネルリンパ節採取個数を 3 個以上にするなどの工夫により、偽陰性率の低下が
期待される。今回症例数を増やした結果、SLNB 陰性であっても、AXLD 陽性
症例に HER2 陽性症例が含まれていたことより、AXLD は省略し難いと考えら
れた。
一般セッション(ポスター掲示)
11799
10679
術前化学療法 (NAC) 後のセンチネルリンパ節生検 (SNB) によ
る腋窩郭清省略の是非
微小転移の郭清省略に向けたセンチネルリンパ節転移陽性症例
の検討
GP-2-095-13
GP-2-095-14
1
1
2
2
熊本大学 乳腺・内分泌外科、
熊本大学医学部附属病院 乳癌分子標的治療学寄附講座、
3
愛知県がんセンター中央病院、4 名古屋市立大学病院
JA 北海道厚生連札幌厚生病院 外科、
JA 北海道厚生連札幌厚生病院 臨床病理
秦 庸壮 1、高橋 弘昌 1、田中 浩一 1、山上 英樹 1、高橋 周作 1、
谷岡 利朗 1、村岡 俊二 2、後藤田 裕子 2、市原 真 2、岩口 佳史 2
村上 敬一 1、山本 豊 2、稲尾 瞳子 1、冨口 麻衣 1、奥村 恭博 1、
指宿 睦子 1、近藤 直人 3、遠山 竜也 4、岩田 広治 3、岩瀬 弘敬 1
【背景】NAC 後の SNB 単独による郭清省略の判断は、現時点で推奨されていな
い。今回、SNB の結果に加えて、NAC による腫瘍縮小効果など臨床病理学的
因子を考慮することで、郭清省略の判断が可能か検討を行った。【患者・方法】
2004/11/1 ~ 2013/8/31 に、T1-2 で穿刺吸引細胞診でのリンパ節転移陽性
(N+) が確認されており、NAC 後に臨床的に腋窩転移陰性 (ycN-) となり腋窩
郭清 (Ax) を伴う根治手術を施行した症例を対象とした。同意が得られた症例
を対象に、Ax に先行して術中に SNB を行った。【結果】対象は 30 例で、原発
巣の臨床腫瘍効果の完全寛解は cCR は 2 例(6.7%)、病理学的完全寛解 pCR は
5 例(16.7%)、リンパ節の病理学的転移消失 11 例、pCR 全例で転移消失して
いた。同意症例への SNB は 26 例に施行され、同定率 86.7%、感度 88.2%、
特異度 100% 程度、偽陰性 11.8% であった。腋窩転移陽性に関して、HER2、
トラスツズマブ使用例がに有意に負の相関を示した。【考察】N+ 乳癌の NAC
後にリンパ節転移が消失・縮小した症例全てへの SNB の適応は推奨しがたい
ものの、HER2、トラスツズマブ使用例といった臨床病理学的因子と組み合わ
せることで Ax 省略の判断に寄与すると考えられる。
【目的】臨床的に N0 の SLN 転移陽性症例に対しては、現在腋窩郭清の追加が
基本術式となっているが、ACOSOG Z0011 などの報告により、慎重な症例
選択や術後の補助療法選択が必要にしても、今後少なくとも微小転移の郭清
が省略される方向に進むのは間違いないことと考えられる。当科での SLN
転移陽性症例から郭清省略が容認できるかを検討した。【対象】2007 年 3 月
から 2013 年 12 月までの SLN 生検を施行した術前化学療法例を除く女性、
Tis,1,2N0 247 例。【 方 法 】CTlymphography(CTLG) を 術 前 に 併 用 し た 色
素法による SLN 生検。術中迅速病理は 2mm 間隔で、HE 染色で判定。術後に
永久標本で再確認した。【結果】転移陽性は 52 例 (21.1%) に認め、そのうち
SLN 単独転移は 36 例 (69.2%)、nonSLN への転移を 16 例 (30.8%) に認めた。
ITC は 4 例で全て SLN 単独転移であった。微小転移は 14 例で、そのうち 3 例
(21.4%) に nonSLN への転移 ( 最大 2 個 ) を認めた。【結語】ITC は追加郭清の
省略は容認されると考えられる。適切な術後補助療法により残存したリンパ
節転移が実際に再発してくる率はかなり低くなることが報告されていること
から、乳房温存術が照射の追加による局所再発の低下が判明したことで普及
したのと同じく、微小転移の郭清省略も容認されていくと思われる。それに
は N0 の診断精度をさらに上げることも重要と考えられ、CTLG の所見を追加
して判断することによりそれが可能か合わせて報告する。
460
ポスター掲示
10098
11848
センチネルリンパ節生検転移陽性例に対する腋窩郭清省略の検討
cN0 症例に対するセンチネルリンパ節生検の術中迅速検査およ
び陽性時の腋窩郭清の必要性についての検討
GP-2-095-15
GP-2-095-16
三重大学 乳腺外科
柏倉 由実、今井 奈央、澁澤 麻衣、野原 有起、中村 卓、伊藤 みのり、
木村 弘子、山下 雅子、花村 典子、小川 朋子
名古屋大学 乳腺内分泌外科
‘07-12 年当院センチネルリンパ節 (SLN) 転移陽性で腋窩郭清施行 119 例を追
加郭清中に転移が認められた 33 例(陽性群)と認められなかった 86 例(陰性
群)に分け SLN 転移陽性でも腋窩郭清を省略できる可能性の高い群を検討し
た。【検討項目】1) 腫瘍径 2) 転移陽性 SLN 数、LN 転移状況 3) 乳房の術式と放
射線照射 4) ホルモン受容体 (HR)・HER2 発現 5) 術後薬物療法【結果】1) 陰性
群:T1b 12 例 (14%),T1c 37 例 (43%),T2 34 例 (40%),T3 3 例 (3%)。 陽
性 群:T1b 4 例 (12%),T1c 12 例 (36%),T2 13 例 (39%),T3 1 例 (3%),T4
3 例 (9%)。両群平均に有意差なし。2) 平均陽性 SLN は陰性群 1.22 個・陽性
群 1.76 個で有意差あり。micro 転移での陽性は陰性群 12 例・陽性群 1 例。陽
性群の 1 例は LN2 個に micro 転移を認めた。3) 陰性群:Bt59 例 (69%),Bp27
例 (31%)。陽性群:Bt23 例 (70%),Bp10 例 (30%)。放射線照射は陰性群 26
例 (31%)・陽性群 20 例 (61%) に施行。照射の対象は陰性群は Bp 症例、陽性
群は Bp 症例と Bt かつ転移 LN ≧ 4 個症例。転移 LN ≧ 4 個は 16 例全例陽性群
でうち Bp 症例は 2 例であった。4) 陰性群:HR 陽性 76 例 (88%),HER2 陽性
16 例 (19%),TN9 例 (10%)。 陽 性 群:HR 陽 性 30 例 (91%),HER2 陽 性 6 例
(18%),TN 2 例 (6%)。5) ホルモン療法施行:陰性群 75 例 (87%), 陽性群 29
例 (88%)。ハーセプチン施行:陰性群 16 例 (19%), 陽性群 6 例 (18%)。HR
及び HER2 陽性率とほぼ一致していた。化学療法施行:陰性群 63 例 (73%),
陽性群 26 例 (79%)。陽性群 1 例は他院で施行。レジメン選択は陰性群:3 ヶ
月 (AC,TC)27 例 (43%),6 ヶ 月 (AC → T)36 例 (57%)。 陽 性 群:3 ヶ 月 5 例
(20%),6 ヶ 月 20 例 (80%) で 陽 性 群 は 6 ヶ 月 レ ジ メ ン 選 択 率 が 高 か っ た。
HER2・TN は陰性群でも 6 ヶ月レジメン選択率が高かったが、HR 陽性は陰性
群 55 例中 30 例 (55%) が 3 ヶ月レジメン、陽性群 23 例中 18 例 (78%) が 6 ヶ
月レジメンを選択していた。【考察】SLN1 個の micro 転移陽性例は追加郭清中
に転移がある可能性は低く郭清省略可能も、macro 転移・複数個の micro 転
移は追加郭清中に転移がある可能性が高いと考えられた。HR 陽性例での化学
療法のレジメン選択や Bt 症例の放射線照射選択に LN 転移の状況が影響して
いると考えられ、HR 陽性例や Bt 症例での郭清省略は治療選択に影響を及ぼす
可能性が高い。一方、Bp 症例 37 例中追加郭清によって多数個の転移が判明
し治療法が変更になった症例は 2 例 (5%) しかなく、Bp 症例に対しては放射
線照射の効果を考慮し郭清省略を検討してもよいと考えられた。
ACSOG Z0011 試験の結果より乳房温存手術を行い術後照射を行う場合はセ
ンチネルリンパ節(以下 SLN)転移個数が 2 個以下であれば腋窩郭清は省略で
きる可能性があるとされ,2013 年のザンクトガレンにおける投票結果でも約
7 割が省略できると回答した.この結果を実臨床に照らし合わせて検討する.
2004 年から 2013 年までに cN0 の乳癌に対して当院で術中迅速検査にて SLN
生検を行った 1108 例を解析した.当院での cN0 の定義は視触診および画像所
見にて腫大リンパ節を認めないものとし,腫大リンパ節を認める場合には細
胞診を行い転移を認めないものとした.術中迅速検査で SLN に転移を認めた
のは 158 例(14.3%)であった.全症例に腋窩郭清を追加した.158 例中 49
例(31%)で追加郭清したリンパ節に転移を認めた術中迅速検査で SLN 転移個
数が 3 個以上であったのは 8 例(0.7%)であった.また術中迅速検査で転移
を認めず,術後に SLN 転移が判明したのは 24 例(2.2%)であった.この結果
を踏まえると SLN の術中迅速検査は 0.7% の追加郭清の必要性をみるために
2.2% の偽陰性の出る検査となる.SLN 転移個数が 2 個以下は郭清しないとな
ると,迅速検査の必要性に疑問が残る.また術中迅速検査で SLN 転移個数が
2 個以下であったもので追加郭清を行った後の総 LN 転移個数が 3 個以上の群
と,総 LN 転移個数が 2 個以下の群に分けると,遠隔転移の発生率は 3 個以上
の群で有意に多かった.よって追加郭清により得られる総 LN 転移個数は予後
予測因子となり得る.
11248
11686
乳癌に対するセンチネルリンパ節生検転移陽性症例への対応
Two-site-injection を用いた乳癌における非センチネルリンパ
節転移陽性率に関する検討
中西 賢一、武内 大、都島 由季子、角田 伸行、林 裕倫、菊森 豊根
GP-2-095-18
名古屋市立大学病院 乳腺内分泌外科
1
波戸 ゆかり、吉本 信保、遠藤 友美、浅野 倫子、遠山 竜也
2
【背景・目的】ACOSOGZ0011 試験の結果を受け、NCCN ガイドラインでは
cT1-2N0 の原発性乳癌で乳房温存療法を受ける患者ではセンチネルリンパ
節(SN)転移が 2 個以下の場合、腋窩リンパ節(ALN)郭清の省略が推奨され
ている。SN 転移が 2 個以下であっても、非 SN 転移が少なからず存在する
ことが報告されており、Z0011 の結果は、非 SN 転移が存在しても、術後薬
物療法と放射線照射により十分制御可能であること示唆する結果と解釈でき
る。本研究は Z0011 の結果を臨床に適応するにあたり、当院における SN 転
移陽性例の非 SN 転移状況を調査することを目的とする。【対象・方法】2004
年 11 月から 2009 年 12 月までに当科におけるセンチネルリンパ節生検(以後
SNB)施行例 479 例のうち、cN0 乳癌の SN 転移陽性で、腋窩郭清を追加し
た 78 例を対象とし、ALN の転移状況について検討を行った。SNB は 99mTcフチン酸を用いた RI +色素法併用で行った。【結果】年齢中央値 53 歳、全て
女性、閉経前 34 例 (43.6%)、閉経後 44 例 (56.4%) であった。 SN 平均摘
出個数は 2.14 個、腋窩郭清による ALN 平均摘出個数は 12.4 個であった。SN
転移のみは 58 例 (74.4%)、非 SN 転移は 20 例 (25.6%) に認めた。SN 摘
出個数別で非 SN 転移例をみると 1 個:13/32 例 (40.6%)、2 個:3/21 例
(14.3%)、3 個:3/13 例 (23.1%)、4 個:1/7 例 (14.3%)、5 個以上:0/5
例 (0%) であった。非 SN 転移 20 例のサブタイプの内訳は HR+HER2-:18 例、
HR+HER2+:0 例、HR-HER2+:1 例、HR-HER2-:1 例であった。【まとめ】
本検討では SN 転移陽性例の 25.6% に非 SN 転移を認めた。SN 転移個数が 2
個以下であっても約 1/4 に非 SN 転移陽性であったが、非 SN 転移陽性症例の
95% (19/20) は HR+ または HER2+ であり、薬物療法の効果が期待できるサ
ブタイプであった。現在、症例を選択して SN 転移陽性例の非郭清を実施臨床
で行っており、これらのデータについても検討する予定である。
金沢医科大学病院 乳腺・内分泌外科、
金沢医科大学病院 一般・消化器外科
森岡 絵美 1、野口 美樹 1、中野 泰治 1、野口 昌邦 1、小坂 健夫 2
【背景・目的】乳癌手術においてセンチネルリンパ節転移陽性の場合は腋窩郭
清術を追加してきたが,Z0011 試験のように,センチネルリンパ節転移陽性
例であっても腋窩郭清を省略しうるとの研究結果が発表されている.乳輪下
注入と傍腫瘍注入を併用した Two-site-injection を用いて,本来は非センチ
ネルリンパ節だったリンパ節もセンチネルリンパ節として同定した場合,非
センチネルリンパ節における転移陽性率を下げることができるかどうかを検
討した.【方法】対象は 2009 年 4 月~ 2013 年 9 月の間に当院で乳癌手術を受
けた 172 名で,全例,RI コロイドによる傍腫瘍注入法と色素による乳輪下注
入法を併用した.摘出したセンチネルリンパ節は術中迅速病理検査に提出し,
転移陽性の場合は腋窩リンパ節郭清術を追加した.郭清したリンパ節 ( すなわ
ち非センチネルリンパ節 ) について転移の程度を調べた.【結果】センチネルリ
ンパ節は平均 2 個同定された.36 例のセンチネルリンパ節に転移を認め,そ
のうち 25 例で腋窩リンパ節郭清を追加した.25 例中 4 例で非センチネルリン
パ節転移陽性だった.非センチネルリンパ節転移陽性例は傍腫瘍注入で 4 例
(16% ),乳輪下注入で 5 例 (20% ),Two-site injection で 1 例 (4% ) だった.
残り 33 例は非センチネルリンパ節転移陰性だった.【結語】症例の選択は必要
であるが,Two-site-injection によりセンチネルリンパ節の同定率を改善させ
ることで,転移がセンチネルリンパ節までにとどまっている症例を見つける
ことができれば,腋窩郭清術は省略可能と考えられ,Z0011 試験の結果を支
持できるだろう.
461
一般セッション(ポスター掲示)
GP-2-095-17
ポスター掲示
10204
10741
乳癌センチネルリンパ節生検における非センチネルリンパ節転
移と臨床病理学的因子との関連
当院での色素法単独によるセンチネルリンパ節生検,特に近傍
の非染色リンパ節の転移状況に関する検討
GP-2-095-19
GP-2-095-20
1
新潟大学 消化器・一般外科 3
小山 諭、坂田 英子、長谷川 美樹、利川 千絵、辰田 久美子、萬羽 尚子、
五十嵐 麻由子、若井 俊文
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】乳癌外科治療において、センチネルリンパ節生検 (SNB) の際,センチ
ネルリンパ節 (SLN) に転移を認めた場合、従来は腋窩郭清を追加することが
標準手技であった。しかし近年の海外からの報告では SLN 転移が2個以内の
場合には腋窩郭清は再発や生存に寄与しないことが示されてきている。今回、
我々は SLN 転移例における非 SLN 転移と臨床病理学的因子との関連について
検討した。【方法】1999 ~ 2013 年の期間の SNB 施行例のうち、SLN 転移陽
性症例を対象とした。SLN 転移あるいは非 SLN 転移と年齢、腫瘍浸潤径、組
織型、組織学的悪性度、脈管侵襲、ホルモン感受性 (ER または PgR 発現 )、
Her2 発現、Ki-67 標識率などの臨床病理学的因子との関連を retrospective
に調べ、SLN 転移と非 SLN 転移との関連について比較・検討した。統計学的
検討は Mann-Whitney U 検定、およびχ 2 検定および多変量解析を用い、P <
0.05 を有意とした。【結果】該当期間の SLN 転移陽性症例は 108 例であり、そ
のうち 46 例 (42.6%) が非 SLN 転移陽性であった。年齢、腫瘍浸潤径、組織
型、組織学的悪性度、脈管侵襲、ER 発現、PgR 発現、Her2 発現、Ki-67 標識
率に関して、非 SLN 転移陽性群と陰性群に有意差を認めなかった。しかし、
非 SLN 転移陽性群では転移陰性群に比し、摘出した非 SLN 個数が有意に多く
(P < 0.01)、さらに SLN も含めた摘出総リンパ節個数も有意に多かった (P <
0.0001)。また、転移 SLN 個数では、非 SLN 転移陽性群が転移陰性群に比し
有意に多かった (2.0 ± 1.3 vs 1.4 ± 0.8, P < 0.01)。SLN 転移個数の中央値
は非 SLN 転移陽性群が2個、転移陰性群が1個であった。【結語】乳癌センチ
ネルリンパ節生検に際し、SLN 転移陽性の場合、年齢、腫瘍浸潤径、組織型、
組織学的悪性度、脈管侵襲、ER 発現、PgR 発現、Her2 発現、Ki-67 標識率な
どの臨床病理学的因子で非 SLN 転移の有無を予測することは困難である。さ
らに SLN 転移 2 個では非 SLN 転移が存在する危険が充分にあるので腋窩郭清
の省略は慎重に考えた方がよい。
東北公済病院 乳腺外科、2 泉中央乳腺クリニック、
川崎医科大学 病理学2、4 東北大学病院 病理部、5 東北公済病院 検査科
平川 久 1、甘利 正和 1、岡 きまこ 1、木村 道夫 2、武田 元博 2、
森谷 卓也 3、渡辺 みか 4、笠島 敦子 4、秋保 信彦 5、長嶋 真紀 5
【目的】当院では施設機能の制約からセンチネルリンパ節 (SN) 生検を色素法単
独で行っている。色素法の欠点を考慮し,視認法の工夫や近傍の非染色リン
パ節を含めた摘出などを行いつつ,2013 年までに約 1800 例に施行した。当
院における色素単独による SN 同定の信頼性を検証し,問題点を明らかにする
目的で最近の症例を検討した。【方法】インジゴカルミン 2ml を乳輪皮下に注
射,腋窩の視認は少なくとも中心腋窩リンパ節領域と胸筋リンパ節領域で行っ
た。解剖学的位置関係や視認されるリンパ管との関連から SN と思われる非染
色リンパ節も摘出した。最近の 400 症例について,転移リンパ節の染色性と
存在部位,原発巣の部位,浸潤径との関連を検討した。SN は 2mm 全割とし,
最終的に HE 染色と AE1/AE3 抗体による免疫染色も加え,転移の判定をおこ
なった。【成績】400 例中 80 例にリンパ節転移を認めた。染色リンパ節に転
移を認めたのは 64 例 (80%) で,非染色リンパ節のみに転移を認めたのが 16
例 (20%) であった。非染色リンパ節のみに転移を認めた症例での腫瘍存在部
位や浸潤径に特徴はなく,さらに臨床病理学的因子との関連を検討中である。
この内 2 例はリンパ節の大きさは小さいが多数の転移を認める症例であった。
染色 SN に転移を認めた症例の検討では,64 例中 14 例で 2 番目以降に摘出さ
れた染色 SN で転移が確認されていた。【考案】当科での腋窩転移の検出におけ
る SN 生検の感度は,染色リンパ節のみを SN と仮定した場合 80% 以下となる
と考えられ,状況による非染色リンパ節の摘出は必要と思われる。また,最
初に見出した染色リンパ節のみを SN とした場合には転移 SN を見落とす可能
性が高く,染色リンパ節 2 個以上の摘出が望ましいが,過剰手術となる可能性
に留意が必要である。検討症例に高度リンパ節転移症例が含まれることから,
術前検査での cN0 判定 (SN 生検施行症例の選択)の精度を上げる必要があると
感じた。色素法単独による SN 同定は,術者の熟練度にも配慮し,慎重に行う
べき手技であると思われる。
10019
11283
術前診断が非浸潤性乳管癌(DCIS)であった症例に対するセン
チネルリンパ節生検省略の可能性についての検討
非浸潤性乳管癌におけるセンチネルリンパ節生検の意義につい
ての検討
GP-2-095-21
GP-2-095-22
三井記念病院 乳腺内分泌外科
1
辻 宗史、稲垣 麻美、太田 大介、加藤 孝男、小原 孝男、竹内 昌、
西 常博、福内 敦
毛利 かの子 1、岩間 敬子 1、酒田 円 1、明神 真由 1、猪狩 史江 1、
吉田 悠子 1、徳田 恵美 1、清水 秀穂 1、堀本 義哉 1、中井 克也 1、
齊藤 光江 1、荒川 敦 2
【緒言】非浸潤性乳管癌(DCIS)症例に対し、理論的にはセンチネルリンパ節生
検(SLNB)は不要であるが、術前針生検(CNB)で DCIS と診断されても、術
後の最終病理診断で浸潤癌に up stage されたり、センチネルリンパ節(SN)
転移陽性となることがあるため、SLNB を施行せざるを得ないのが現状であ
る。一方、SLNB においてはリンパ浮腫を発症する可能性があるとの報告もみ
られるため、可能であれば SNLB を省略したい。今回、術前診断 DCIS 症例に
対しいかなる症例が SLNB 省略可能なのか検討を行ったので報告する。
【対象】
2004 年 6 月~ 2013 年 8 月に術前 CNB あるいはステレオガイド下マンモトー
ム生検(ST-MMT)で DCIS と診断され、当院で手術施行した 217 例。【方法】
最終病理診断で浸潤癌に up stage される予測因子を多変量解析を用いて検討
した。
【結果】年齢中央値 54 歳(32-84 歳)、術式は乳房温存術 81 例(37%)、
全摘術 136 例(63%)で全例 SLNB を施行した。最終病理診断は DCIS:119
例(55%), 浸潤性乳管癌(IDC): 95 例(44%)、粘液癌 : 3 例(1%)であった。
SN 転移陽性は 9 例(4%)に認め、全例腋窩郭清を併施した。SN 転移陽性症例
の内訳をみると、乳頭腺管癌 :8 例、硬癌 :1 例で、ER 陽性 :8 例、ER 陰性 :1 例、
pT1:5 例、pT2:3 例、pT3:1 例、核グレード (NG)1:5 例、NG2:3 例、NG3:1
例であった。浸潤癌に up stage される予測因子を検討するために、年齢(<
50、≧ 50)、閉経(前、後)、同時性もしくは異時性両側乳癌(無、有)、初診
時腫瘤触知(無、有)、血性乳汁分泌(無、有)、MMG カテゴリー所見(1+2、
3+4+5)
、腫瘍経(< 2 cm、≧ 2 cm)、生検方法(CNB、ST-MMT)ER(+、―)、
NG(1、2+3)を評価項目として多変量解析を行ったところ、MMG カテゴリー
と核グレードが有意な予測因子となった。【結語】術前 DCIS と診断された症例
において、MMG カテゴリー 3 以上、NG2 以上の場合は、SLNB を省略すべき
ではない。
462
順天堂大学 乳腺内分泌外科、2 順天堂大学 病理診断科
非浸潤性乳管癌 (DCIS) に対するセンチネルリンパ節生検 (SNB) の適応につい
てはいまだ一定の見解がなく、乳癌診療ガイドラインでも推奨グレード B で
ある。術前に DCIS と診断され SNB を併用した術式を施行した症例において、
SNB の意義について検討した。対象は 2012 年 7 月から 2013 年 11 月に当院
で手術施行した原発性乳癌のうち術前に DCIS と診断された 100 例で、術後の
病理組織学的結果、リンパ節転移に関して retrospective に検討した。術後病
理結果で浸潤巣ありと診断されたもの(微小浸潤含む)が 40 例 (40%)、純粋
な DCIS のみは 60 例 (60%) であった。SNB は 96 例に施行され、そのうち 3
例 (3.1%) はセンチネルリンパ節に転移を認めた。3 例中 2 例で術中に腋窩リ
ンパ節郭清が追加され、いずれもセンチネルリンパ節以外に転移を認めなかっ
た。また 1 例は術中 SNB 転移陰性であり、術後病理で N1mic と診断された。
術後病理でも DCIS だった症例はすべて SNB 転移陰性であった。SNB を併用
しなかった 4 例のうち 3 例は術前にリンパ節転移の診断がされており、腋窩リ
ンパ節郭清を施行し、術後病理で浸潤巣の存在が確認されている。術後病理
で純粋 DCIS と浸潤巣を認めたものを比較すると、核異型度 (NG)3 がそれぞ
れ 8.3%,12.5% と、NG が高いものに浸潤巣を認める割合が高かった。また、
非浸潤部の腫瘍径はそれぞれ 28.0mm,39.05mm と、大きい腫瘍径の症例で
浸潤巣の存在が考えられた。症例を増やし検討中である。DCIS では最終病理
診断で 8 ~ 38% に浸潤巣を認めるとされるため、SNB が併用されることが多
い。今回の検討では、術前に DCIS,n0 と診断された症例においては浸潤巣の
有無にかかわらずセンチネルリンパ節以外の転移を認めず、SNB が転移陽性
であっても腋窩郭清を省略できる可能性が示唆された。また、術後も DCIS の
診断となった症例ではリンパ節転移を認めず、小さい腫瘍径、低異型度など
浸潤巣の可能性が低い症例においては SNB そのものの省略の可能性が示唆さ
れた。
ポスター掲示
11068
10903
温存乳房内再発に対する 2nd センチネルリンパ節生検の成績
温存乳房内再発に対するセンチネルリンパ節生検を用いた腋窩
郭清の省略
GP-2-095-23
GP-2-095-24
1
がん研有明病院 乳腺センター乳腺外科、
2
がん研有明病院 画像診断センター核医学部、3 がん研有明病院 病理部、
4
がん研究会がん研究所 病理部、5 国際医療福祉大学三田病院 乳腺センター
慶應義塾大学医学部 外科
松本 暁子、高橋 麻衣子、林田 哲、神野 浩光、北川 雄光
佐藤 綾花 1、坂井 威彦 1、師尾 典子 1、木村 聖美 1,5、小泉 満 2、
堀井 理絵 3、秋山 太 4、岩瀬 拓士 1
11616
11373
乳腺部分切除術、センチネルリンパ節生検後に発生した同側乳
癌に対する再センチネルリンパ節生検の経験
乳房温存手術後乳房内再発に対するセンチネルリンパ節生検
GP-2-095-25
1
GP-2-095-26
順天堂大学医学部附属浦安病院 外科
九州中央病院 乳腺外科、2 外科
須田 健、福永 正氣、菅野 雅彦、永仮 邦彦、吉川 征一郎、伊藤 嘉智、
勝野 剛太郎、伊藤 真由子、平崎 憲範、東 大輔
寺本 成一 1、北川 大 2、中村 俊彦 2、庄司 文裕 2、長谷川 博文 2、
椛島 章 2、根東 順子 2、舟橋 令 2、池田 陽一 2
2011 年の全国乳がん患者登録調査報告によると乳腺部分切除術(Bp)症例が
58.8%、センチネルリンパ節生検(SN)症例が 59.2%となっており、Bp +
SN が乳癌症例の標準術式と考えられる。SN は 2010 年に保険収載されたが
実際には 2003 年には先進医療として行われており経過観察中に同側乳癌が
発症する可能性は否定できない。そこで今回当院では 2003 年より SN を先進
医療して開始し当院で乳癌の治療として Bp+SNB 施行し、その後同側乳癌を
認めた 3 例に対して RI +色素法による再 SN を施行したので報告する。症例
1 40 代女性。左乳癌に対して Bp+SN 施行(D 領域、SN:2 個、術後 RT +
ホルモン治療)。8 年後に左 A 領域乳癌 リンパ節シンチグラフィー:1箇所
hot spot SN:2 個(RI 集積あり色素なし)症例 2 60 代女性。右乳癌に対
して Bp+SN 施行(C 領域、SN:1個、術後ホルモン治療)。5 年 5 か月後に右
AC 領域乳癌 リンパ節シンチグラフィー:2 箇所 hot spot SN:2 個(RI
集積あり色素あり)症例 3 50 代女性。左乳癌に対して Bp+SN 施行(C 領域、
SN:1個、術後 RT +ホルモン治療)。10 年後に左 E 領域乳癌 リンパ節シン
チグラフィー:3 箇所 hot spot SN:4 個(RI 集積+色素あり 2 個 RI 集積
+色素法なし 2 個)
。再 SN 施行し RI で確認できたリンパ節は 8 個であり、そ
のうち色素法で確認できたリンパ節は 4 個のみであった。3例ともに SN 陰性
であり腋窩郭清は省略した。まとめ 今後 Bp+SN 施行後に同側乳癌症例を経
験する機会は増加すると考えられ、再 SN 施行する際には色素単独法よりも併
用療法が優れているのではないかと考えられた。
<目的>乳房温存術後の乳房内再発症例に対する所属リンパ節に対する治療、
特にセンチネルリンパ節生検(SLNB)の有用性に関してはまだ十分に確立さ
れていない。乳癌診療ガイドラインでも初回手術時腋窩リンパ節郭清なしの
症例では推奨グレード C1、腋窩リンパ節郭清ありの場合は推奨グレード C2
である。今回、当院で行った乳房内再発例でのセンチネルリンパ節生検につ
いて検討した。<対象と方法>当院での 2009 年 1 月から 2013 年 11 月までの
乳癌手術例 632 例中,乳房温存手術後の乳房内再発(新病変を含む)に対する
手術は 15 例で、そのうちセンチネルリンパ節生検を行った 9 例を対象とし検
討した。初回術式は 8 例は乳房温存術、1 例が乳頭温存乳腺切除術で、SLNB
は 6 例(66.7%)、腋窩リンパ節郭清(Ax)は 3 例(33.3%) であった。再発時
の術式は全例で乳房切除を行った。センチネルリンパ節(SLN)の同定法は RI
(フチン酸テクネシウム)と色素(インジゴカルミン)による併用法で投与部位
は乳輪への皮内投与で行った。<結果>再発時 SLN は SLNB 後の 6 例,Ax 後
の 3 例全ての症例で同定可能であった。RI での同定率は 100% であったが色
素法では 77.8% であった。SLN の同定部位は同側腋窩が 7 例(77.8%)、同側
胸筋間が 1 例、同側胸筋間と対側腋窩に認めた症例が 1 例であった。腋窩以外
に SLN を認めた症例はいずれも初回手術時に腋窩郭清を行った症例であった。
いずれも RI のみの集積であった。SLN に転移を認めた症例が 2 例(22.2%) で
いずれもリンパ節郭清を行ったが非 SLN には転移は認めなかった。15.2 か月
の平均追跡期間中再手術後の領域リンパ節転移は認めていない。<まとめ>
局所再発症例における SLN 同定率 100% で、初回術式により差は認められな
かった。SLN の同定法としては腋窩以外にも SLN が存在することより RI によ
るマッピングが有用であると考えた。SLN への転移陽性例も存在するため温
存術後の SLNB は局所制御も含めた治療的意義がある可能性が示唆されるが、
SLN 転移陽性でのリンパ節郭清の必要性など今後も検討が必要であると考え
た。
463
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】乳房温存手術後の温存乳房内癌 (IBTR) に再センチネルリンパ節生検
(2nd SNB) を行うことについて、様々な報告がされてきた。2nd SNB を行
うことで IBTR の術後治療方針決定に有用な情報が得られると考え、当院では
以前より 2nd SNB を積極的に行ってきた。その成績について報告する。【対
象、方法】当院で初回乳癌に乳房温存手術を行い、2005 年 3 月~ 2013 年 8
月の間に IBTR と診断され、IBTR 手術時に 2nd SNB を施行した 133 例を対
象とした。2nd SNB は RI 法を用い、手術前日にフチン酸コロイドを用いて
99m-Technetium を腫瘍直上皮内と腫瘍辺縁皮下に注入し、2 分間マッサー
ジした。約 1 時間後にリンフォシンチグラフィを撮像し、2nd センチネルリン
パ節 (2nd SN) の位置を確認した。初回手術、IBTR 手術の臨床病理学的項目
を合わせて検討を行った。
【結果】IBTR 手術時にリンフォシンチグラフィが施
行された 98 例中、85 例 ( 描出率 86.7% ) で 2nd SN の描出を認めた。初回に
腋窩郭清をしなかった 48 例では 44 例 (95.7% ) で 2nd SN の描出があり、同
側腋窩のみ 33 例 (68.8%)、同側腋窩とそれ以外 7 例 (14.6%)、同側腋窩以
外の部位のみ 4 例 (8.3%) であった。同側腋窩に描出を認めた 40 例すべてで
生検を施行でき、4 例 (10%) に転移を認めた。4 例中 3 例で腋窩郭清が追加さ
れ、1 例で sampling が追加された。4 例中 2 例で、術後に化学療法と放射線
療法が追加された。同側腋窩以外には傍胸骨 (PS)3 例、対側腋窩 5 例、乳房内
1 例で生検を施行したが、いずれも転移陰性であった。初回手術時に腋窩リン
パ節郭清を施行した 50 例では、41 例 (82%) で 2nd SN 描出があり、同側腋
窩のみ 14 例 (28%)、同側腋窩とそれ以外 13 例 (26%)、同側腋窩以外の部位
のみ 14 例 (28%) であった。同側腋窩に描出を認めた 27 例中 22 例で生検を
施行でき、そのうち 4 例 (18.2%) に転移を認めた。4 例中 2 例は PS でも転移
陽性であった。4 例中 3 例に腋窩郭清が追加された。4 例すべてに術後化学療
法と放射線療法が追加された。同側腋窩以外にも 15 例に生検を施行したが、
転移陽性は PS2 例のみであった。【結論】初回に腋窩非郭清群の IBTR では、約
90% で同側腋窩に 2nd SN が描出され、その 10% に転移を認めた。初回腋窩
郭清群の IBTR では同側腋窩が 2nd SN となるのは約 50% であったが、18%
に転移を認めた。IBTR 術後治療に化学療法や放射線療法の追加治療が考慮さ
れており、2nd SNB を施行することで術後の治療方針決定に有用な情報が得
られる可能性がある。
【目的】センチネルリンパ節生検(SLNB)は、早期乳癌において腋窩郭清(Ax)
にかわる標準的診断法として確立されている。乳房温存術では、約 5 ~ 10%
に温存乳房内再発(IBTR)が認められるが、IBTR 症例においては(特に初回手
術が SLNB の場合)、腋窩リンパ節転移の再評価が必要となる。しかし、IBTR
に対する SLNB 再施行(2nd SLNB)については未だ一定の見解が得られてい
ない。今回我々は、当院にて施行された 2nd SLNB の有用性について検討した。
【 対 象 と 方 法 】2008 年 9 月 か ら 2013 年 11 月 ま で に IBTR に 対 し て、2nd
SLNB を施行した 26 例を対象とした。センチネルリンパ節(SLN)の同定は、
RI と色素または蛍光と色素による併用法を用いた。
【結果】初回手術から再手術までの期間の中央値は 66.5 か月で、再手術の術
式は、胸筋温存乳房切除術が 12 例、乳房温存術が 6 例、乳頭温存乳房切除術
が 8 例であった。初回手術時に SLNB 施行は 21 例、Ax 施行は 5 例で、平均
摘出リンパ節個数はそれぞれ 2.8 個、21.7 個であった。初回 SLNB 群の 2nd
SLNB 同定率は 90.5%(19/21)であり、平均 SLN 個数は 1.5 個だった。同
定不能 2 例には Ax を施行したが 2 例とも腋窩転移は認められなかった。SLN
の局在は同側腋窩が 18 例、胸骨傍リンパ節が 1 例だった。初回 SLNB 群のう
ち 1 例のみに腋窩 SLN にマクロ転移を認め、Ax を追加したところ、non-SLN
への転移も確認された(2/21)。一方、初回 Ax 群の 2nd SLNB 同定率は 80%
(4/5)であり、平均 SLN 個数は 2.2 個だった。SLN の局在は同側腋窩が 2 例、
胸骨傍リンパ節が 1 例、対側腋窩が 1 例だった。初回 Ax 群では、1 例のみ対
側腋窩 SLN に微小転移を認めたが、対側 Ax は省略した。再手術後、化学療法
が 30.8%に、内分泌療法が 53.8%に施行された。術後観察期間中央値 18.1
か月において、2nd SLNB により腋窩を再温存した症例に腋窩再発は認めて
いない。
【結語】初回手術時 SLNB 施行例では、2nd SLNB により約 9 割の症例において
SLN 同定および腋窩温存が可能であった。2nd SLNB は IBTR に対する腋窩評
価の選択肢になりえると考えられる。
ポスター掲示
11766
11612
3D-CT リンフォグラフィの有用性
CT lymphography(CTLG)によるリンパ節転移診断の評価
GP-2-095-27
GP-2-095-28
島根大学医学部 消化器・総合外科
徳島大学医学部 胸部内分泌腫瘍外科
百留 美樹、象谷 ひとみ、板倉 正幸、田島 義証
田所 由紀子、森本 雅美、中川 美砂子、武知 浩和、丹黒 章
【目的】乳癌センチネルリンパ節生検(SNB)では真のセンチネルリンパ節
(SLN)のみを摘出することが、その低侵襲性を活かすことにつながる。しか
し実際は SLN 周辺の非 SLN を摘出することも多く、これが不要な侵襲の一因
となっている。そこで我々は術前に 3D-CT リンフォグラフィ(3D-CTLG)を
行うことで、より低侵襲な SNB を行うことができるか検討した。【方法】対象
は 2011 年 1 月から 2013 年 11 月に SNB を行った 112 例。3D-CTLG 導入前の
34 例(蛍光色素法・RI 法併用群:A 群)と導入後の 78 例(蛍光色素法・RI 法・
3D-CTLG 併用群:B 群)にわけ、摘出したリンパ節のうち、蛍光色素法陽性
もしくは RI 法陽性のものを SLN、いずれも陰性のものを非 SLN とし、非 SLN
数についてレトロスペクティブに比較検討した。3D-CTLG は乳輪皮内にイオ
パミロン 4cc を注入後、CT 撮影し 3D 画像を作成。リンパルート、リンパ節
個数を術前に把握し、リンパ節は US で確認し体表にマーキングした。【結果】
SLN 同定率は、A 群で 97.1%、B 群で 98.7%であった。非 SLN 数は A 群で平
均 0.29 個、B 群で平均 0.19 個であった。有意差はないものの、3D-CTLG 群
で非 SLN 数が少ない傾向が認められた。さらに、B 群を 3D-CTLG 導入後、前
半の 39 例と後半の 39 例にわけ、比較検討したところ、非 SLN 数は前半で 0.33
個、後半で 0.05 個であった。3D-CTLG 手技の改良に伴い、最適なタイミン
グで CT を撮像し、リンパルートとリンパ節を描出できるようになったことが、
その有用性の改善に寄与していると思われる。【結語】3D-CTLG は、術前に
SLN の個数、位置を確認することができることから、より低侵襲な SNB を行
うために有用な方法であると考えられる。
【はじめに】ACOSOG Z-0011 以来、T2 以下かつ転移個数 2 個以下の症例に
ついてセンチネルリンパ節 (SLN) 陽性でも腋窩郭清を省略することについて
の是非が検討されている。画像診断で SLN 転移個数 2 個以下と予測できれば
郭清の省略、SLN 陰性と予測可能であれば SLN 生検省略も可能となりうる。
今まで我々は、CTLG は SLN の転移診断に有用であることを報告してきた。
CTLG を用いた腋窩リンパ節転移診断に関する成績を検討した。【対象と方法】
2005 年 1 月から 2013 年 10 月までに当科で CTLG 後、手術を施行した術前化
学療法症例を除く T2 以下の原発性乳癌 471 例を対象とした。【結果】CTLG で
転移なしとしたのは 407 例、そのうち病理診断で転移なしが 367 例、転移あ
りが 40 例だった。40 例中 36 例(90%)は微小転移を含む転移個数 2 個以下で
あった。CTLG 上、リンパ管の停滞、迂回やリンパ節の欠損像などから転移を
疑われたものが 64 例、そのうち病理診断で転移ありが 32 例だった。正診率
は 84.7%、感度 50%、特異度 90.2%、陽性的中率 44.4%、陰性的中率 92%
であった。【結語】術前の CTLG での SLN 診断は、転移リンパ節遺残回避のた
めの SLN 以外の摘出リンパ節個数の決定、SLN 陽性時の郭清省略の判断に有
用であると考える。2013 年 11 月からは CTLG の評価を完全陰性(転移なし)、
判定困難(転移陰性、転移があっても 2 個以下)、完全陽性(転移あり)と 3 つ
に分類しさらなる精度の高い診断に挑戦している。
一般セッション(ポスター掲示)
11538
10026
CT ガイド下センチネルリンパ節穿刺吸引細胞診の有用性につい
ての検討
SPECT / CT におけるセンチネルリンパ節集積部位とリンパ節
転移についての検討
GP-2-095-29
1
3
GP-2-095-30
小山記念病院 乳腺外科、2 東京医科大学茨城医療センター 外科 ( 乳腺科 )、
千葉細胞病理診断センター
1
札幌医科大学 消化器・総合、乳腺・内分泌外科、
昭和大学病院 乳腺外科、3 聖隷浜松病院 乳腺科、
東札幌病院ブレストケアセンター、5 札幌医科大学 公衆衛生学講座、
6
札幌医科大学 放射線診断科、7 札幌医科大学 病理部
2
4
近藤 亮一 1,2、越川 佳代子 2、西村 基 2、藤田 知之 2、亀田 典章 3、
藤森 実 2
われわれは術前あるいは術前化学療法 ( 化療 ) 前に CT ガイド下センチネルリン
パ節 (SN) 穿刺吸引細胞診 (FNAC) を施行し SN への転移の有無を診断、治療法
を検討している。今回、ACOSOG Z0011 の条件を満たす場合は腋窩リンパ節
郭清を省略できる可能性があることから加療前 CT ガイド下 SN・FNAC の有用
性について検討した。
【対象】2008 年 2 月~ 2013 年 11 月までに、3D-CT リン
パ 管 造 影 (LG) 時 CT ガ イ ド 下 SN・FNAC を 施 行 し た 68 例 と し た。
【結果】
FNAC にて良悪性の診断を得たのは、68 例中 28 例、41%であった。手術施行
例は 18 例であり、FNAC にて ClassI・II と診断した 17 例のうち 14 例はセンチ
ネルリンパ節生検 (SNB) を、3 例は SN を含めた部分郭清を施行した。1 ~ 7
個のリンパ節 ( 平均 2.2 個 ) を切除し、病理学的に全例転移陰性と診断され、
FNAC を併用した転移診断の正診率は 100%であった。ClassIII と診断した 1
例は、SNB にて病理学的に転移陽性と診断され、正診率は 100%であった。術
前化療症例は 10 例で手術施行した9例のうち、術前化療前 FNAC にて ClassI・
II と診断した 8 例は SNB にて病理学的に転移陰性と診断され、正診率は 100%
であった。1 例は ClassIII と診断し、SNB にて転移陽性と診断され、正診率は
100 %、1 例 は 術 前
化療を継続中であっ
た。以上の結果より
CT ガ イ ド 下 SN・
FNAC にて転移なし
と診断された症例で
はセンチネルリンパ
節 生 検 で も macro
転移を認めないこと
が考えられるため、
ACOSOG Z0011 の
結果によりセンチネ
ルリンパ節生検の術
中迅速病理診断は不
要で、腋窩リンパ節
郭清が省略できる可
能性が示された。
島 宏彰 1、九冨 五郎 1、里見 蕗乃 1、高丸 智子 2、前田 豪樹 1、
鈴木 やすよ 3、亀嶋 秀和 4、大村 東生 4、森 満 5、畠中 正光 6、
長谷川 匡 7、平田 公一 1
【背景】乳癌センチネルリンパ節生検 (SNB) の際、SPECT/CT によりセンチネ
ルリンパ節 (SN) の解剖学的に具体的な局在を知ることが可能となった。ほと
んどの症例で腋窩に集積することが知られているが、非典型的な集積を示す
症例も一部に存在し、SNB の際に SN 摘出範囲決定に悩むことがある。今回わ
れわれは Level II 以深の hot node の有無に着目し検討した。【対象】2012 年
6 月から 2013 年 8 月に SNB に伴い SPECT/CT を実施した Stage 0 ~ IIA 乳癌
92 例を対象とした。【方法】SPECT/CT における集積部位を乳癌取扱い規約第
17 版に準じ Level I、II ~ III に分けた。Level II/III の集積の有無で 2 群に分
け、リンパ節転移の有無について検討した(χ二乗検定)。また、リンパ節転移
に影響する因子を解析した(多変量解析)。SN 転移陽性で腋窩郭清を実施した
13 例について、SPECT-CT における Level II/III の集積の有無で 2 群に分け、
Level II/III 領域の病理組織学的なリンパ節転移の有無についても検討した(χ
二乗検定)。【結果】平均年齢は 59.9 歳で、cStage 0、I、IIA それぞれ 20 例、
45 例、27 例であった。SNB にて採取したリンパ節は平均 1.75 個で、12 例で
SN 転移陽性であった。SPECT/CT では全例で同側腋窩 Level I 領域に少なく
とも 1 カ所以上の集積を認め、胸骨傍領域への集積は 1 例も見られなかった。
11 例で Level II/III に集積を認め、81 例で認めなかった。両者を比較すると
Level II/III に集積を認める場合に、有意にリンパ節転移を認めた (p=0.045)。
また、多変量解析ではリンパ節転移に対して ly(p < 0.0001)、Level II/III
の集積 (p=0.042) の関与が示唆された。腋窩郭清施行 12 例について見ると、
Level II/III に集積あり 4 例、なし 8 例であった。Level II/III に集積を認めた
4 例では病理組織学的に Level II/III 領域のリンパ節転移を 2 例に認めたが、
Level II/III に集積を認めなかった 8 例では Level II/III に転移を認めなかっ
た (p=0.056)。【考察】乳腺からのリンパ流については、複数のリンパ流の存
在が諸家より報告されている。SPECT-CT にて Level II/III 領域の集積の有無
は、治療方針選択の上で有用な情報となり得ると考えられた。
464
ポスター掲示
10949
10913
SPECT/CT を用いたセンチネルリンパ節生検の有用性について
乳癌に対する SPECT/CT fusion mapping を用いたセンチネ
ルリンパ節生検についての検討
GP-2-095-31
GP-2-095-32
新東京病院 外科
熊本大学医学部附属病院 乳腺・内分泌外科
浅川 英輝、村林 亮、林 剛
<緒言>当院では乳癌手術症例において、2005 年よりセンチネルリンパ節生
検 ( 以下 SLNB) を色素法単独にて施行してきたが、診断精度向上等を目的と
し、2013 年 1 月より SPECT/CT を用いた色素 +RI 法併用による SLNB を導入
した。SPECT/CT では視覚的にセンチネルリンパ節 ( 以下 SLN) の位置を確認
できるため、体型の如何にかかわらず、術前の SLN の局在診断として非常に
有用である可能性がある。<目的> SPECT/CT の実臨床での有用性について
検討する。<対象>当院での乳癌手術症例のうち、2013 年 1 月 ~12 月に色素
+RI 法併用の SLNB を施行した 21 例を対象とした。<方法>手術前日午後に
99m
Tc-phytate 74MBq 調整液 2ml を乳輪皮下へ注入し、2 時間後に SPECT/
CT を施行した。fusion 画像を作成し術前の SLN の局在診断を行った。手術で
はさらに patent blue を乳輪下へ皮下注し、色素 +RI 法併用により SLNB を施
行した。施行症例における臨床病理学的特徴についても検討を加えた。
<結果及び考察>症例の平均年齢は 65.4 ± 12.8 歳、平均 BMI 23.5 ± 3.1、
術中迅速病理検査へ SLN を提出するまでの所要時間は 13.0 ± 4.8 分であった。
SLN 個数は 1.9 ± 1.3 個、SLN 同定率は 100% であった。特に有害事象は認め
ず、従来の SLNB と比較し高い精度と確実性、安全性を確認した。<結語>
SPECT/CT による SLN の fusion 画像を得ることにより、術前に正確な SLN の
位置を把握でき、安全かつ確実に SLNB を施行することが可能になると考えら
れた。
冨口 麻衣、指宿 睦子、山本 豊、山本 聡子、藤原 沙織、末田 愛子、
稲尾 瞳子、奥村 恭博、林 光博、大本 陽子、村上 敬一、岩瀬 弘敬
11879
10710
当科における乳癌センチネルリンパ節生検の現況
センチネルリンパ節生検後に腋窩リンパ節再発をきたした 4 例
の検討
GP-2-095-33
GP-2-095-34
1
東京大学医学部 乳腺内分泌外科、2 東京大学医学部 病理部、
3
国際医療福祉大学三田病院 乳腺センター
1
2
辻 英一 1、多田 敬一郎 1、尾辻 和尊 1、山村 純子 1、分田 貴子 1、
菊池 弥寿子 1、倉林 理恵 1、西岡 琴江 1、池村 雅子 2、小川 利久 1、
内田 惠博 3
乳癌手術におけるセンチネルリンパ節生検(以下 SNB と略す)は、現在で
は広く普及した手技となってきている。当科においても、2005 年に色素法に
よる SNB を導入して以来、2010 年からは RI 法も併用し、その施行症例数
は年々増加している。今回我々は、当科において最近1年間に施行した乳癌
SNB 症例について統計的に検討し、若干の文献的考察を加えた。【対象】平成
25 年1月~ 12 月に SNB が施行された、乳癌初回手術症例 94 例。SNB の適
応は “腫瘤径<4cm かつ、術前検査で腋窩リンパ節転移が確認されていない”
症例とした。
【方法】術前日腫瘤部皮内に 99mTc-phytate 500 μ Ci を注入する
RI 法と、執刀 15 分前に乳輪部皮内にインジゴを注入する色素法を、可能な
限り併用した。【結果】従来施行されてきた色素法単独での SN 同定率は 88%
であったが、RI 法では単独でも 100%同定可能であった。また、94 例中 SN
に癌転移が認められた症例は 10(11%)あり、うち3例は micrimetastasis
のみで郭清追加とはしなかった。SN 転移陽性の危険因子としては、“腫瘍径
>3cm” 及び “組織型(micropapillary ca.)
” 等が有意と考えられた。
3
近畿大学医学部 乳腺・内分泌外科、
大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター 消化器・乳腺外科、
近畿大学医学部 放射線科
新崎 亘 1、平木 洋子 1、濱田 美佳 1、藤島 成 2、安積 達也 1、乾 浩己 1、
北條 敏也 1、大和 宗久 1、金森 修一 3、菰池 佳史 1、橋本 幸彦 1
【背景】乳癌のセンチネルリンパ節生検(SNB)での腋窩リンパ節郭清(ALND)
省略例の報告では、腋窩リンパ節(Ax)再発は 0.4 ~ 0.7% とされている。
ALND 後の Ax 再発は頻度が低く予後不良とされるが、SNB による ALND 省略
後の Ax 再発例に対する頻度や予後などの臨床的特徴についての報告はまだま
だ少なく、不明な点が多い。【対象】2006 年 1 月から 2012 年 12 月までに、乳
癌に対して SNB を行い ALND を省略した 882 例のうち、Ax 再発がみられた
4 例(0.45%)について、それらの背景因子と再発後の治療と予後について検
討した。【結果】SNB の手技は RI と色素(ICG)の併用法で行い、診断は 3 例
が Papanicolaou 染色と免疫組織化学染色の併用(2010 年 4 月以前)、1 例が
OSNA 法(2010 年 5 月以降)で行われた。摘出した SLN の個数は平均 1.5 個で、
SLN はすべて RI あるいは色素が検出され、手技的な問題はなかった。術前に
造影 CT にて腋窩リンパ節転移診断を行っているが、摘出された SLN 以外に
転移を疑わせるリンパ節の遺残はないと判断された。原発巣の病理学的悪性
度は 3 例が核グレード 3 で、2 例にリンパ管侵襲を認めた。生物学的特徴につ
いては ER 陽性・PgR 陽性・HER2 陰性が 2 例、ER 陽性・PgR 陰性・HER2 陰
性が 1 例、トリプルネガティブが 1 例であった。原発巣の術後治療は 2 例がホ
ルモン療法のみ、2 例が化学療法のみで、温存手術の 3 例は RT を行った。再
発までの期間は平均 24.3 ヶ月(12-48 ヶ月)。Ax 再発に対する治療は 2 例に
ALND を行い、もう 2 例は乳房内再発や鎖骨上・縦隔リンパ節再発を伴ってい
たため、薬物療法のみを行った。ALND を行った 2 例ではリンパ節転移が 11
個、5 個といずれも多数みられ、鎖骨上リンパ節領域への放射線照射、化学療
法を追加した。全症例に遠隔臓器再発がみられた(Ax 再発後 1 年 3 ヶ月骨転移、
1 年 7 ヶ月多発肺転移、3 年 11 ヶ月と 4 年 8 ヶ月肺転移と肝転移、4 年 7 ヶ月
脳転移)。いずれも現在薬物療法を行っている。【考察】SNB 後の Ax 再発例は
他の報告と同様に低頻度であった。また原発巣の核グレードが高く、リンパ
管侵襲を認めるなど病理学的悪性度の高い症例が多かった。これらの症例は
すべて Ax 再発後に遠隔臓器再発をきたした。【結語】SNB による ALND 省略
後の Ax 再発例は、ALND 後の Ax 再発と同様に全身再発の一環であることが多
く、全身療法を含めた集学的治療が必要であると考えられた。
465
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】乳癌に対するセンチネルリンパ節生検 (SNB) でセンチネルリンパ節
(SN) 転移陰性症例は腋窩郭清が省略可能である。当院では SPECT/CT を用い
た生検前 SN mapping により SN の解剖学的位置や個数を術前に把握すること
が可能である。【対象と方法】2004 年 10 月から 2011 年 3 月に当院で臨床的
N0 原発乳癌に対し SNB を施行した 381 症例を対象とした。SN 転移の有無を
予測する因子を同定するため、SPECT/CT(SN mapping 数を a 群:1 個、b 群:
2 個、c 群:3 個以上もしくは 0 個 )、Planar 画像、術中γ -probe による SN 検
出個数、実際の摘出個数および各モダリティによる SN 局在部位について SN
転移を指標としてロジスティック解析を行った。【結果】SN 転移陰性は 298 症
例 (78.2% )、転移陽性は 83 症例 (21.7% ) であった。SN 局在は Level I に存
在するものが 474 個 (94.8% )、その他の部位が 20 個 (4.0% ) であった。6 例
(1.2% ) は SPECT/CT で描出されなかった。単変量解析では、SPECT/CT で
Level I での検出個数が 3 個以上もしくは 0 個の場合に SN 転移が有意に多いと
いう結果となった (a 群 vs b 群 , a 群 vs c 群 , OR:1.80, 3.31, 95% CI:1.043.11, 1.49-7.18; p = 0.0048)。SPECT/CT による検出個数は (a 群 vs b 群 ,
a 群 vs c 群 , OR:1.79, 2.83, 95% CI:1.03-3.08, 1.29-6.00; p = 0.0112)、
Planar 画 像 に よ る 検 出 個 数 (p = 0.0112)、 γ -probe に よ る 検 出 個 数 (p =
0.0116)、実際の摘出個数 (p = 0.0397) であった。多変量解析では統計学的
に独立した因子は見いだせなかったが、SPECT/CT による Level I の検出個数
は modality に比較してもっとも SN 転移予測に関連していた (p = 0.33、他 p
= 0.36 ~ p = 0.99)。【結論】SN の個数やその局在の変化はリンパ節の転移
巣もしくは癌細胞によるリンパ管の閉塞によって正常リンパ経路の破綻が起
きることに起因すると考えられる。SPECT/CT で描出されたリンパ節の個数
が多い、もしくは描出されない場合には SN 転移陽性の可能性が示唆される。
ポスター掲示
10906
10705
センチネルリンパ節転移陰性、腋窩郭清省略し腋窩リンパ節再
発をきたした症例の検討
電動マッサージ機を乳房マッサージに使用したセンチネルリン
パ節生検
GP-2-095-35
1
3
GP-2-095-36
群馬大学 臓器病態外科学、2 群馬大学 病理診断学、
国立病院機構沼田病院
1
本庄総合病院 外科、2 日本大学医学部 乳腺内分泌外科
小関 淳 1、新井 徹 1、村上 絵里子 1,2、小澤 直行 1、五十嵐 誠悟 1、
天野 定雄 2、加部 吉男 1、石原 通臣 1
坪井 美樹 1、堀口 淳 1、高他 大輔 1、長岡 りん 1、六反田 奈和 1、
佐藤 亜矢子 1、時庭 英彰 1、樋口 徹 1、内田 紗弥香 1、荻野 美里 1、
菊池 麻美 1、前村 道生 3、小山 徹也 2、竹吉 泉 1
現在の乳癌治療において腋窩リンパ節転移の状況は最も重要な予後規定因子
であり、術後補助化学療法の選択基準となるため、腋窩リンパ節転移の状況
を正確に把握することが非常に重要になってくる。術前または術中にリンパ
節転移の有無の評価を行って、腋窩郭清を省略することができるセンチネル
リンパ節生検(sentinel node biopsy:SNB)が今や標準治療になっている。
SNB の色素法では、使用する色素、色素の注入部位、色素の投与時間などは、
各施設ごとに試行錯誤し報告されているのが現状である。今回、我々は、色
素注入後の乳房マッサージ法に関して、電動マッサージ機を用手的乳房マッ
サージに代用し SNB を施行し、用手的乳房マッサージと同様にセンチネルリ
ンパ節は同定出来た。SNB の色素法のリンパ節同定率の向上のためには、色
素法手技の習熟性に乳房マッサージ手技も重要と考えられ、電気マッサージ
機を使用する事で術者間の乳房マッサージ手技の習熟度に差異がなくなると
思われたので報告する。当施設では今後も症例を重ねていきたいと思う。
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】N0 乳癌症例に対してのセンチネルリンパ節 (SLN) 生検を施行し、
SLN 転移陰性であれば腋窩郭清を省略する事は標準治療となっている。日
本乳癌学会乳癌診療ガイドライン2013年版ではセンチネルリンパ節生検
後腋窩温存した同側腋窩リンパ節単独再発に対しては完治を目指した外科
的切除が推奨グレード B として勧められている。今回、当院で施行した SLN
陰性で腋窩を温存した症例の予後を検討した。【対象と方法】2004 ~ 2010
年に当院で術前に N0 と診断され SLN 生検を施行し SLN 陰性で腋窩郭清を
省略した原発性乳癌 734 例の臨床病理学的因子、腋窩再発率、生存率を検
討した。術前化学療法を施行した症例は除外した。【結果】観察期間中央値
66 か月で、734 例中 8 例 (1%) が腋窩リンパ節再発をきたした。年齢は平均
58.5(31~82) 歳。DFI は 6 ~ 61 か月で中央値 38.4 か月であった。SLN 摘出
個数は平均 2.3(1~6) 個。術式は乳房温存術が 2 例、乳房切除術 4 例、皮下乳
腺全摘術が 2 例。乳房照射は乳房温存術後の 2 例のみに施行され他 6 例は照射
なしだった。ER/PgR 陽性 HER2 陰性が 6 例、トリプルネガティブが 2 例。補
助療法はホルモン療法単独が 6 例、化学療法が 1 例、無治療が 1 例。腋窩リン
パ節再発発見契機は CT または PETCT5 例、触診(本人自覚なし)2 例、乳房再
建時に腋窩脂肪織にリンパ節を認め迅速病理診断で転移と判定された症例が 1
例であった。全例腋窩郭清を施行し、10 個以上のリンパ節転移を認めたもの
が 6 例あった。腋窩郭清後 5 例は局所へ照射を追加した。再発後治療として化
学療法が 6 例に施行され、内分泌反応性のある症例には内分泌療法も追加施行
された(2 例は内分泌療法のみ)。8 例中 1 例 (12.5%) は腋窩リンパ節郭清施行
後、化学療法を施行したが、12 か月で肺転移をきたし、22 か月後に死亡した。
腋窩リンパ節再発を認めていない 726 例中、遠隔転移をきたし死亡した症例
は 4 例 (0.5%) であり、腋窩再発症例の予後は腋窩再発群に比べて有意に予後
不良であった(P=0.0002)。
【結語】SLN 生検後の腋窩リンパ節再発は予後に
影響する因子であり、腋窩リンパ節再発を早期に発見し、早期の局所コント
ロール、適切な全身治療で遠隔転移をきたさないようにすることが重要であ
る。
11778
10065
リンパ節転移診断精度に関する検討
センチネルリンパ節生検先行による乳癌腋窩ステージング法の
検討
GP-2-095-37
1
GP-2-095-38
岩手県立中央病院 乳腺・内分泌外科、2 岩手県立中央病院 病理科
大阪市立大学大学院 腫瘍外科
宇佐美 伸 1、梅邑 明子 1、佐藤 未来 1、渡辺 道雄 1、大貫 幸二 1、
小野 貞英 2
【背景】臨床病期を決定するリンパ節転移Nは触診と画像診断によりなされる
とされているが、明確な診断基準は存在しない。【目的】画像診断と穿刺吸引
細胞診を用いたリンパ節転移診断精度を明らかにする。【対象】2010 年 8 月
から 2013 年 11 月当院において施行された初発乳癌根治術のうち術前薬物
療法施行症例・乳房部分切除のみが施行された症例を除いた連続する 401 例
【方法】転移の有無の診断は触診・超音波検査・造影 CT 検査を行った上で明
らかに転移あり(硬く触知,脂肪を含まない腫大,健側と比較して有意に強
い造影効果等)と診断した場合 N1 以上、転移疑いの場合には超音波ガイド下
に穿刺吸引細胞診を施行し N0 か N1 以上かを決定した。センチネルリンパ節
生検は色素法単独で、その病理検索はリンパ節を最大割面で半割し捺印細胞
診と凍結切片で診断。その後パラフィン包埋して永久標本にて最終診断がな
された。【結果】401 例中 48 例(12%)が N1 以上,353 例(88%)が N0 と判
断された。最終的に転移陽性(微小転移・Isolated Tumour Cells も含む)は
117 例(29%),陰性は 284 例(71%)であり,診断精度は感度 38%,特異度
99%,正診率 81%であった。穿刺吸引細胞診(2 例は針生検)は 39 例に対し
てのべ 41 回施行されており、うち転移陽性は 29 例 (74%) で感度 68%,特異
度 100%,正診率 76%と算出されたが、正診率は施行医師によってばらつき
(46 ~ 100% ) がみられた。センチネルリンパ節生検は 350 例に施行され同
定率は 97%(341 例 ) で、同定できなかった 9 例は郭清またはサンプリングを
行い全例転移なしであった。最終診断で転移陽性は 70 例 (20%) で、うち 6 例
(2%) は凍結切片では転移陰性、永久標本で転移 ( うち微小転移 1,ITC s 3)が
明らかとなった。また 1 例は捺印細胞診でのみの陽性であった。70 例中 63 例
に郭清を追加し非センチネル転移は 20 例(31%)に認められた。【考察】画像
診断のみで転移巣の有無を判断することに限界があることは以前から指摘さ
れている。センチネルリンパ節転移陽性例に対しての郭清省略についての議
論を行う上で臨床的 N0 の信頼性について検討することは重要であるが、特に
超音波検査による転移診断さらには穿刺吸引細胞診の精度は検者の技量に依
存し客観性が低いため各施設(あるいは各医師)毎に精度を評価することが重
要と考えられた。
森崎 珠実、柏木 伸一郎、石原 沙江、浅野 由香、呉 幸枝、倉田 研人、
徳本 真央、野田 諭、川尻 成美、高島 勉、小野田 尚佳、平川 弘聖
【目的】乳房温存手術 (Bp) とセンチネルリンパ節生検 (SNB) は通常一期的
に行われるが,われわれは外来日帰り手術で局所麻酔下に SNB を行い,組織
学的な診断をつけた上で化学療法や内分泌療法へと治療を進め,Bp を施行す
るといった遂次療法を行っている.ACOSOG Z0011 や AMAROS 試験の結果
などから腋窩リンパ節郭清 (ALND) 省略が提唱されている現在でも,正確な
腋窩ステージングを決定することは局所制御の観点から重要である.局所麻
酔下での SNB を先行させる意義は,SNB 標本を永久標本として病理診断する
ために迅速診断に伴う偽陰性が防げる,また pN0 が確定していれば術前薬物
療法を行った症例においても ALND の省略が可能などの利点があることであ
る.一方で,複数回の手術が必要となることや,pN1(sn) 症例において術前
薬物療法によってリンパ節転移が陰転化した症例でも ALNB を施行してしま
うなどのデメリットも考慮される.これらの経験からセンチネルリンパ節生
検先行による腋窩ステージング法の検討を行った.【対象と方法】術前に針生
検により乳癌の確定診断を得られた 56 例を対象とした.造影 CT にて腋窩リ
ンパ節転移の有無を確認した cT1-2, N0, M0 の症例を対象とし,局所麻酔下
に SNB の同定,腋窩ステージングを行った.【成績】症例はすべて女性,年齢
中央値は 59 ± 12 歳,部位は左側 25 例・右側 31 例であった.摘出した SN 個
数は平均 1.9 ± 1.1 個であった.全例で SN の同定が可能であり,6 例 (10.7%)
で転移が確認された.転移陽性と判断された 6 例の SN はいずれも macro 転移
で,転移巣の長径の中央値 7.0 ± 2 であった.さらに micro 転移は 5 例 ( 長径
中央値 0.60 ± 0.23mm),ITC は 6 例 ( 長径中央値 0.14 ± 0.06mm) に認めら
れたが,転移陰性と判定した.組織学的腋窩リンパ節転移の有無を確定した
上で,それぞれの intrinsic subtype に対応した術前薬物療法が行われ,二期
的に Bp を施行した.SNB 陽性症例は,二期的手術の際に腋窩リンパ節郭清を
追加した.生検中に処置を有する合併症はなく,生検後のリンパ漏なども認
められなかった.【結論】今後の更なる症例の蓄積を待ち,解析を進めていき
明確な適応基準を定め,その有用性・忍容性について検討していく必要がある.
しかしながら,治療前に外来で局所麻酔下に SNB を行い,組織学的確定診断
をつけることで SNB の偽陰性を未然に防ぐことが可能であり,正確な腋窩ス
テージングへの寄与が期待できる.
466
11603
11365
サブタイプ別に見たセンチネルリンパ節生検症例の予後
当科におけるセンチネルリンパ節生検の検討
GP-2-095-39
1
ポスター掲示
GP-2-095-40
福岡大学医学部 呼吸器乳腺内分泌小児外科、2 福岡大学医学部 放射線科
1
吉永 康照 1、榎本 康子 1、御鍵 寛孝 1、山下 真一 1、岩崎 昭憲 1、
藤光 律子 2
嬉野医療センター 外科、2 嬉野医療センター 病理
佐藤 綾子 1、近藤 正道 1、岡 忠之 1、内藤 慎二 2
当院では 2009 年 1 月から 2013 年 8 月まで 114 例にセンチネルリンパ節生検
を施行した . 施行当初より色素法単独で ,2013 年 8 月からは RI 法と色素法併
用で施行している . センチネルリンパ節を同定できずに腋窩郭清を施行したも
のが 1 例であった . 術中迅速病理検査でセンチネルリンパ節に転移を認めたも
のは 13 例あり , すべてに腋窩郭清を施行した . 郭清リンパ節のうち非センチネ
ルリンパ節に転移を認めたものは 2 例であった .1 例において術後 19 ヶ月で遠
隔転移をきたした .1 例で偽陽性であった . 術中迅速病理検査でセンチネルリ
ンパ節に転移を認めず腋窩郭清を省略した症例は 100 例であった .2 例で術後
19 ヶ月以降に腋窩リンパ節転移を認め , 腋窩郭清を施行した . いずれも triple
negative 症例であった .1 例で遠隔転移を認め , 原病死した . この症例も triple
negative 症例であった . 偽陰性であった症例は 8 例あった . 微小転移は 4 例で
あった .6 例で腋窩郭清を施行した . 郭清リンパ節のうち 2 例で非センチネルリ
ンパ節に転移を認めた . 転移を認めたものの 1 例は微小転移であった . 偽陰性
症例のうち現在再発転移を認めた症例はない .Triple negative 症例では術後注
意深い観察が必要と思われた . また微小転移でも非センチネルリンパ節に転移
を有することがあり , 追加郭清が必要と思われた .
11383
10658
当院におけるセンチネルリンパ節生検適応例の治療成績につい
ての検討
T1乳癌における乳頭腫瘍間距離と腋窩リンパ節転移陽性率の検討
GP-2-095-41
GP-2-095-42
長野県厚生連長野松代総合病院 乳腺内分泌外科
1
虎の門病院 乳腺・内分泌外科、2 虎の門病院 臨床腫瘍科、
3
虎の門病院 病理部、4 中澤プレスセンタークリニック、5 癌研究所 病理部
原田 道彦、小野 真由、春日 好雄、大場 崇旦、家里 明日美
門脇 正美 1、川端 英孝 1、小林 蓉子 1、田村 宜子 1、三浦 大周 1、
中澤 英樹 1,4、下村 昭彦 2、高野 利実 2、木脇 圭一 3,5、藤井 丈士 3
【はじめに】センチネルリンパ節生検 (SLNB) は、現在、腋窩リンパ節転移陰性
乳癌に対して腋窩リンパ節郭清 (ALNB) を省略した標準的術式として広く施行
されている。2010 年に発表された ACOSOG Z0011 試験結果より、センチネ
ルリンパ節 (SLN) に macro 転移を認める症例における ALNB の是非も問われ
るようになった。今回、当院にて SLNB 陽性例に対して原則 ALNB が施行され
た 2010 年までの SLNB 症例について retrospective に検討した。
【対象と方法】
対象は当院にて 2006 年 9 月から 2010 年 12 月までに SLNB を施行した 682
例。同定法は色素法と RI 法の併用し、SLN 転移陽性例には原則 ALNB を実施。
682 例の内訳は Tis 95、T1 372 例、T2 201 例、T3 14 例であった。【結果】
SLN 転移陽性は Tis 95 例中 0 例 (0%)、T1 372 例中 62 例 (16.7%)、T2 201
例 中 59 例 (29.4%)、T3 14 例 中 6 例 (42.9%) で あ り、 全 682 例 中 126 例
(18.5%) に微小転移を含む転移を認め、浸潤癌では 587 例中 126 例 (21.5%)
に転移を認めた。SLN 転移陽性例の内、2 個以上の転移を認めたものは T1 61
例中 20 例 (32.8%)、T2 59 例中 27 例 (45.8%)、T3 6例中 3 例 (50%)、計
126 例中 50 例 (39.7%) であった。SLN 転移陽性例の内、non-SLN にも転移
を認めたのは T1 61 例中 15 例 (24.6%)、T2 59 例中 20 例 (33.9%)、T3 6
例中 3 例 (50%)、計 126 例中 38 例 (30.1%) であった。更に ACOSOG Z0011
試験適格例 (T1 又は T2、乳房温存例、SLN 転移 2 個以下 ) は 71 例あり、内 18
例 (25.4%) に non-SLN に転移を認め、この割合は Z0011 試験の結果をはじ
め諸家の報告に近似するものであった。全 682 例中で経過観察がされた 662
例 ( 平均観察期間 4.6 年 ) において、乳癌再発が 21 例 (3.2%)、他癌 25 例、癌
以外の他病死 2 例あり、これらを合わせた event を 48 例 (7.3%) に認めた。
乳癌再発 21 例中で遠隔転移 14 例、腋窩再発 4 例 (0.6%) であったが、内訳は
腋窩単独再発 2 例 (0.3%)、胸壁 / 腋窩再発 1 例、遠隔転移に腋窩再発を伴う
もの1例であった。この 4 例はいずれも初回手術で SLN 転移陰性例であった。
SLNB 転移陽性 126 例に関して、乳癌再発 4 例 ( 遠隔転移 3 例、乳房内再発 1
例 )、他癌 4 例 ( 卵巣癌 2 例、肺癌 1 例、皮膚癌 1 例 ) を認めたが、腋窩再発は
認めなかった。【結語】SLNB 適応例の腋窩制御率は 99.4% と高率であり、腋
窩治療が患者の生存率に影響を与える可能性は少ないと推察され QOL 改善を
念頭においた術式選択が妥当と考えられた。
当科において乳癌におけるセンチネルリンパ節生検(SNB)は腫瘍径 3cm 以下
の N0 症例を対象として行っているが、T1 症例であっても腋窩リンパ節転移
陽性であることがしばしば経験される。また、腫瘍径の増大とともに腋窩リ
ンパ節転移陽性率が増加することは知られているが、検索した範囲では乳頭
腫瘍間距離 (NT) と腋窩リンパ節転移陽性率との関係についての報告は認めな
かった。今回われわれは比較的腋窩リンパ節転移陽性率が低いとされる T1 症
例について、NT と腋窩リンパ節転移陽性率について検討したので、若干の文
献的考察を加えて報告する。【対象】2010 年 9 月~ 2013 年 8 月の 3 年間に乳
癌の診断で当科にて手術を施行した T1 症例 73 例。全例女性で平均年齢 61.0
± 12.6 歳であった。その内訳は T1a 3 例、T1b 22 例、T1c 48 例であった。
【方法】腫瘍径、NT は術前検査の MRI を用いて算出した。腋窩リンパ節転移陽
性群(N+ 群)と陰性群(N -群)に分け、年齢、腫瘍径、NT、核異型度、脈管
侵襲、ホルモン感受性、HER2 について比較検討した。統計学的検討はχ 2 検
定と Student t 検定、Mann-Whitney U 検定を用い、5% 未満を有意とした。
【結果】腋窩リンパ節転移陽性率は T1a 0/3 例(0%)、T1b 4/22 例 (18%)、
T1c 14/48 例 (29%) であり、Silverstein らの報告(T1a 5%, T1b 16%, T1c
28%)とほぼ同等であった。N+ 群と N -群での単変量解析では NT とリンパ
管浸潤で有意差を認めたが、他の項目では有意差は認めなかった。N +群の
NT は 26.6 ± 11.9mm で あ っ た。 そ こ で NT > 3cm と NT ≦ 3cm の 2 群 で 比
較したところ、NT > 3cm では腋窩リンパ節転移陽性率は 16% (7/43 例 ) で
あったが、NT ≦ 3cm では陽性率は 37%(11/30 例)と有意に高率であった。
【考
察】乳腺組織内のリンパ管は乳輪下リンパ叢に集まり、そこから太いリンパ管
によって腋窩へ向かうとされている。このため乳輪下リンパ叢に浸潤癌が存
在する場合は、直ちに腋窩へ向かう太いリンパ管に浸潤する可能性が高くな
り腋窩リンパ節転移陽性率が高くなると考えられた。SNB の際には T1 症例で
あっても NT ≦ 3cm の場合は腋窩リンパ節転移陽性率が高いことを念頭に複
数個のリンパ節を摘出する等、慎重に対応することが必要であると考えられ
た。
467
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】センチネルリンパ節 (SLN) 生検は長期予後も報告され、N0 乳癌に対す
る標準的な手術となっている。一方乳癌の生物学的な性質が解明されて種々
のサブタイプに分類されるようになってきた。今回当施設で行った SLN 生検
の結果とサブタイプ別の予後との関係を解析して、その結果を考察した。【対
象と方法】2001 年 6 月より 2013 年 8 月までに当施設で行われた原発性乳癌
手術症例のうち、T1-2N0 で SLN 生検が行われ同定できた症例を対象とし
た。非浸潤癌と術前治療施行例は除外した。サブタイプは免疫染色 (ER, PR,
HER2, MIB-1) と FISH(HER2 2+ に対して ) ならびに組織グレードを用いて
分 類 し た。Luminal A (LA)223 例、Luminal B HER2 陰 性 MIB-1 高 値 ( ≧
20) ま た は グ レ ー ド III(LBH-)30 例、Luminal B HER2 陽 性 (LBH+)34 例、
ER 陰性 HER2 陽性 (H2)21 例、ER 陰性 HER2 陰性 (TN)30 例であった。観察
期間中央値 1174 日。生存率は Kaplan-Meier 法で計算し、Cox 比例ハザード
法で検定した。【結果】SLN 転移症例数は LA、LBH -、LBH+、H2、TN それ
ぞれ 45、9、9、4、3 例で、転移陽性率は 20.2%、30%、26.5%、19.0%、
10.0%であった。再発は LA8 例(遠隔 6 例、領域リンパ節 1 例、残存乳房 1 例)、
LB-2 例(遠隔 2 例)、LB+1 例(遠隔)、H2 なし、TN3 例(遠隔 3 例)で、LB+、
H2、TN には SLN 転移症例に再発は無かった。5 年無再発生存率はそれぞれ、
94.4%、68.8%、100%、100%、87.8%で、LH- は LA や LB+ に対して有
意に不良であった。Cox 比例ハザード法では、LA のみ腫瘍サイズやリンパ節
転移個数が無再発生存率と相関を認めたが、他のタイプでは認めなかった。
【結
語】SLN 生検を行う早期乳癌症例を対象とした今回の検討では、サブタイプに
よって SLN 転移率に差はなく、SLN 転移の有無や SLN 転移巣の大きさは予後
不良因子となっていなかった。無再発生存率からみると LB -が不良で、LA で
は腫瘍サイズや転移リンパ節個数が相関していた。
ポスター掲示
10300
11861
遠隔診断システムを用いたセンチネル生検の検討
当院における腋窩郭清後の腋窩リンパ節再発症例の検討
GP-2-095-43
1
GP-2-096-01
柏崎総合医療センター、2 新潟県厚生連病理センター
1
4
植木 匡 1、五十嵐 俊彦 2
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】病理医の数は限られており新潟県内で病理医常勤病院は多くない。ま
た、新潟県は総面積が全国 5 位であり、本州の海岸線は 331 kmであること
から検体の輸送に時間がかかる病院も多い。新潟県厚生連は 17 の病院よりな
り、中核病院に病理センターを置き遠隔診断システム(テレパソロジー)を構
築している。当院でも 2001 年に導入し、センチネル生検(以後 SNB)を行っ
たので、評価する目的で検討を加えた。【対象と方法】2006 年より、臨床的
n0 の 31 例にバックアップ郭清を伴う SNB の遠隔診断を行なう習熟を経て
2009 年より SNB を開始した。SNB は、臨床的 n0 に対し染色法で行った。標
本を当院にて技師が作製、技師が顕微鏡を操作し病理センターへ電送し、モ
ニターにて病理医が診断を行う。【結果】検討期間約5年間で、乳癌総手術数
は 140 例、SNB は 67 例で 48% であった。症例は、全例女性、全例に術前 CT
検査がなされていた。浸潤型が 60 例、非浸潤型 7 例であった。術前化学療法
施行例はなかった。迅速診断にて SN 転移陽性は 4 例で、いずれも一期的に
AX を追加していた。迅速診断にて SN 陰性であったが永久標本で転移陽性と
なったのは 2 例で、1 例は微小転移であった。微小転移例は AX を追加せず、
もう 1 例は AX を追加した。AX 追加の 5 例中、SN 以外のリンパ節に転移があっ
たのは 2 例であり、SN 以外の転移率は 40% であった。SN 転移陽性の 6 例は、
luminalA か B type が 3 例ずつであった。2013 年末での再発例は 1 例のみで
あった。再発例は、58 歳の女性で SNB 開始後 4 例目、統合失調症にて精神科
入院中であった。初回手術は、Bp+SN を施行し triple negative、n0(0/2) の
病理結果で、家族の希望にて術後補助療法は施行しなかった。初回術後 6 ヶ
月後に同側のリンパ節一個の腫大を認め、AX を追加したが (1/10) であった。
その後も未治療にて経過し、AX 切除後 10 ヶ月目に脳転移出現、13 ヶ月目に
全身転移出現し 14 ヶ月目に死亡した。【考察】テレパソロジーによる術中病理
組織標本診断には施設基準があるが、送信側に熟練した技師の配置、受診側
が臨床研修指定病院であることなどが必要であるが取得は困難ではない。長
所は、輸送手段の省略と診断時間の短縮である。欠点は、センチネル生検の
保険手技料が請求できないことである。
【結語】テレパソロジーによる SNB 手
術例の再発は、短期成績であるが術後無治療の 1 例のみであった。今後も症例
を蓄積し評価と検討を行って行きたい。
静岡県立静岡がんセンター 乳腺外科、2 同 女性内科、3 同 生理検査科、
同 乳がん集学治療科
林 友美 1、西村 誠一郎 1、佐藤 睦 1、米倉 利香 1、松尾 聡美 2、
菊谷 真理子 1、植松 孝悦 3、渡邉 純一郎 2、山崎 誠二 4、高橋 かおる 1
【背景・目的】腋窩リンパ節郭清 (ALND) が生存率を有意に延長させるという
エビデンスはない。しかし近年、局所制御の向上により生命予後が改善する
可能性も示唆されており、遺残のない ALND を行うことは非常に重要とされ
ている。当院での ALND 後の局所制御率およびリスク因子を検討する。【対
象・方法】2003 年 1 月から 2006 年 12 月までに手術が施行された原発性乳
癌 1070 例 の う ち、75 才 以 上・NAC 施 行・ 他 院 生 検 後・ n 0 等 を 除 く 160
例を対象とし、腋窩リンパ節再発 (AxF) について検討を行った。観察期間
は 2003 年 1 月 か ら 2013 年 12 月 ( 中 央 値 8 年 1 ヶ 月、5 年 f/u 率 80.7%) と
し、Kaplan-Meier 法を用いて累積腋窩再発率、再発後生存率を算出した。ま
た、AxF リスク因子として、術後化学療法 (CT+/-)・放射線照射 (RT+/-)、
術式 (BCT / Bt)、BMI( < 22 / 22-28 / > 28)、リンパ節転移数 (pN1 / 2
/ 3)、ER(+/-)、HER2(+/-)、HG(1 / 2 / 3)、p N 毎の RT(+/-) について、
【結果】160例の郭清範囲はLeve11;0
χ 2 検定を用いて単変量解析を行った。
例、Level2;93例、Level3;67例、リンパ節転移はpN1;112例、pN2;26例、
pN3;22例だった(郭清数4-50個、中央値19個)。CT(EC/FEC)は135例(84.4%)
に施行。AxFは7例(4.3%)に認めた(腋窩以外の領域リンパ節再発は9例(5.6%)、
遠隔再発21例(13.1%))。7例の郭清範囲はLevel1;3例、Level2;4例、リンパ
節転移はpN1;4例、pN2;3例、pN3;0例だった(郭清数11-30個(中央値24個))。
CT(EC/FEC)は6例(85.7%)施行。累積腋窩再発率は5年 2.7%、10年 6.1%だっ
た。AxF7例全て郭清範囲内における再発で(DFS4年5か月)、
5例が遠隔再発を伴っ
ていた(再発後3年生存率57.1%)。AxFリスク因子はCT(p=0.29)、RT(p=0.78)、
術式(p=0.65)、BMI(p=0.87)、pN(p=0.11)、ER(p=0.92)、HER2(p=0.20)、
HG(p=0.38)、pN別ly(N1p=0.3、N2p=0.8)、pN別RT (N1p=0.54、N2p=0.83)、
BCT時のRT((p=0.77)、Bt時のPMRT(p=0.17)、いずれも有意差を認めなかった。
【結語】文献によるとn+ALNDのAxF率は3.6%(0-6.2%)で、有意なリスク因子は認
めない。今回の当院の結果は文献と同等であったが、AxF症例数が少ないこと、再
発後のfollow up期間が短いことから、引き続き症例を蓄積し検討する必要がある。
AxFの74.1%が遠隔病変を併発していたが、AxFの中でも孤立性再発の2例は再切除
後無再発で経過しており、限局するものに関しては再切除により予後改善が期待で
きるかもしれない。
10185
10016
当院における腋窩リンパ節郭清時の視野展開の工夫
ARM (Axillary Reverse Mapping) から得られる乳癌腋窩郭
清術後上肢リンパ浮腫発症リスク因子の探索
GP-2-096-02
GP-2-096-03
独立行政法人地域医療機能推進機構九州病院 外科
村上 聡一郎、相良 亜希子、宗崎 正恵、三好 圭、梅田 修洋、石川 幹真、
内山 明彦
1
センチネルリンパ節生検の普及や術前・術後全身療法の確立、縮小手術傾向
へのながれなどから近年乳癌手術において LevelII-III までの徹底した腋窩郭
清を行う機会は減ってきた。しかし、初診時 LevelI・II リンパ節に転移を認
め遠隔転移を伴わなかった症例に対して術前全身療法を行った後に LevelIIIII まで腋窩郭清を行う症例も依然存在する。LevelII-III までの腋窩郭清は過
去には Halsted 法に代表される胸筋合併切除や胸筋は温存するものの一部切
離が必要な児玉法などの術式も行われてきたが、機能温存の観点から近年は
胸筋を犠牲にする術式を選択する機会は稀になってきている。しかし胸筋を
完全温存しての徹底郭清は視野の維持など困難な問題も生じてくる。当院で
はそれらを克服するためにオクトパス万能開創器やエネルギーデバイスを用
いて大小胸筋を温存したまま良好な視野展開を維持して、安全な郭清手技を
行う工夫をしている。今回我々の施設における視野展開の工夫を報告する。
池田 克実 1、小川 佳成 1、荻沢 佳奈 5、梶野 智加 1、出口 惣大 2、
森 至弘 2、井上 透 2、西口 幸雄 2、徳永 伸也 3、福島 裕子 4、井上 健 4
2
4
大阪市立総合医療センター 乳腺外科、
3
大阪市立総合医療センター 外科、
大阪市立総合医療センター 臨床腫瘍科、
大阪市立総合医療センター 病理部、5 育和会記念病院 外科
【 背 景 】ARM (Axillary Reverse Mapping) は、 腋 窩 郭 清 後 上 肢 リ ン パ 浮 腫
(LE)を軽減する目的で臨床応用が検討されている。今回 ARM で得られた各
parameter と LE 発症との関連性を検討した。【方法】2010 年 1 月~ 2012 年
12 月の期間で腋窩郭清を必要とし(N1 ならびに N0 でセンチネルリンパ節生
検にて転移陽性例)、ARM に同意された乳癌患者 96 例のうち、術中 ARM に
よって描出された上肢由来のリンパ節(ARM リンパ節)が確認でき、かつ術後
6カ月以上経過観察可能であった76 例を対象とした。郭清前に、ICG 試薬を
0.5 - 1ml 患側上腕内側皮内に注射し、PDE カメラ (Photo Dynamic Eye, 浜
松フォトニクス社 ) で ARM リンパ節・リンパ管を観察し、これらが郭清領域
内に存在する場合には、通常と同様に切除し、郭清領域外の場合には温存し
た。LE 発症は、観察期間中央値 24 か月で、対象の 24 例(32%)に認めた。
LE 発症 24 例(LE+ 群)とLE未発症 52 例 (LE -群 ) 間において、臨床病理学
的因子[年齢、BMI (body mass index)、ドレーン排液量、術式、病期、術
者間、術前薬物治療(PST)、術後放射線治療(RT)
、採取リンパ節個数、リン
パ節転移個数など]と、ARM によって得られた情報[ARM リンパ節の存在部位、
転移状況、同定個数および温存状況など]を比較検討した。【結果】LE+ 群は、
LE -群に比して若年で(平均 55 vs 61 歳)、術後放射線照射例が多い(54 vs
31%)傾向があり、LE+ 群では、摘出した ARM リンパ節個数が有意に多く(平
均 1.9 個 vs 1.6 個 , p < 0.001)、また ARM リンパ節への転移率が有意に高率
であった(43 vs 13%:p < 0.05)。LE- 郡では、腋窩静脈に沿って走行する
リンパ管(cranial collector)が多く確認された(44 vs 21%::p < 0.05)。
多変量解析では、ARM リンパ節摘出個数(オッズ比:2.3, p < 0.05)、ARM
リンパ節転移が独立したLE発症のリスク因子(オッズ比:5.0, p < 0.01)で
あった。また、cranial collector の存在は、独立したLE発症リスク減弱因子
であった(オッズ比:0.18, p < 0.05)。【考察】ARM によって同定される ARM
リンパ節 / リンパ管の情報は、腋窩郭清後のリンパ浮腫発症リスクの予測因子
になる可能性が示唆された。
468
ポスター掲示
11193
10427
センチネルリンパ節転移陽性症例におけるセンチネル及び郭清
リンパ節転移状況の検討
当院におけるセンチネルリンパ節生検の ACOSOG Z0011 試験
による影響の検討
GP-2-096-04
1
2
GP-2-097-01
1
京都ブレストセンター沢井記念乳腺クリニック、
京都府立医科大学 病理学教室人体病理学部門
福岡県済生会福岡総合病院 乳腺外科、2 福岡県済生会福岡総合病院 外科
山口 博志 1、田尻 和歌子 1,2、定永 倫明 2、江見 泰徳 2、伊東 啓行 2、
松浦 弘 2
今井 文 1、田中 彰恵 1、新蔵 信彦 1、小西 英一 2
【目的】センチネルリンパ節(以下 SLN)転移陽性にて腋窩リンパ節郭清を施行
した症例について、非 SLN 転移の有無を予測可能な因子について当施設症例
で検討する。【方法】2006 年 6 月から 2013 年 12 月に乳癌に対して SLN 生検
を施行し SLN 同定可能であった症例 753 例中、SLN 転移陽性にて腋窩郭清を
施行した 88 例について、SLN の病理学的所見と非 SLN 転移の有無について検
討した。【結果】今回検討した 88 例での SLN 個数は 1 ~ 4 個(平均 1.82 個)
、
SLN に微小転移を認めたのは 24 例、macrometastasis を認めたのは 64 例で、
微小転移例の非 SLN 転移率は 16.7%、macrometastasis 例の非 SLN 転移率
は 34.4% であった。SLN 転移にリンパ節外の脂肪織浸潤を伴うものは 25 例
あり、脂肪織浸潤を伴う群での非 SLN 転移率は 72% と比較的高率であった。
【考察】SLN 転移にリンパ節外の脂肪指揮浸潤を伴う群は非 SLN 転移率が高い
ことが予測される。
10028
11492
SLNB陽性例に対して、どんな時にALNDが省略可能か?
-安心してALNDを省略するために-
センチネルリンパ節転移の予測式による腋窩郭清省略の可能性
についての検討
GP-2-097-02
GP-2-097-03
大阪医科大学 一般・乳腺・内分泌外科
上都賀総合病院 外科
田中 覚、岩本 充彦、木村 光誠、高橋 優子、藤岡 大也、佐藤 七夕子、
寺沢 理沙、碇 絢菜、冨永 智、前沢 早紀、内山 和久
井原 啓佑、佐野 渉、林 達也、橋場 隆裕、知久 毅、十川 康弘
[背景]センチネルリンパ節生検(SLNB)陽性であれば腋窩郭清(ALND)
を行うことが標準治療として勧められているが、ACOSOG Z0011
やIBCSG 23-01の結果を受け、SLNB陽性であっても個々の症
例に応じてALNDを省略しうる可能性もある。その一方で、ALNDを省
略が省略可能な症例の選別が重要で、例えばこれまでにいくつかのSLNB
陽性例における非SLNBへの転移予測モデルが存在するが、未だ広く臨床
応用されているものは存在しない。そこで今回われわれは、単施設における
SLNB陽性例において非SLN転移に影響を及ぼす因子を同定し、AL
NDが省略可能な症例選別の可能性につき検討した。[方法]2008年1
月から2013年8月までに、術前薬物治療を行わずにSLNDを施行し
た475例中、術中病理検索でSLNB陽性と診断されALNDを追加した
102例を対象とした。SLNの同定は色素法単独もしくはRI法との併用
で行った。摘出されたSLNは2mmの連続切片で、非SLNは長軸方向の
1切片でいずれもHE染色にて転移検索を行った。 102例における臨床病
理学的因子と非SLN転移有無の関係につき検討した。[結果]非SLNへの
転移を認めたのは32例(31%)であった。原発巣の病理学的腫瘍径、SL
Nの腫瘍径が大きければ、有意に非SLNへの転移を認める症例が多く存在
した。さらに、SLNの腫瘍径に関わらず原発巣の病理学的腫瘍径が2cm
を超えるか(pT2以上)、あるいは、原発巣の病理学的腫瘍径に関わらずS
LNの腫瘍径が2mmを超えていれば(macrometastasis)、
非SLN転移を認める症例が存在した。他の病理組織学的因子と非SLN転
移との関連は認められなかった。一方、SLN転移個数/SLN摘出個数と、
非SLNへの転移の有無とは有意な差は認めなかったが、その割合が1/3
を下回れば、原発巣と非SLNへの転移は認められなかった。[考察]SLN
B陽性例における非SLNへの転移は、腫瘍量に大きく影響されると考えら
れた。一方、今回の結果からは、原発巣とSLNの腫瘍量に関わらず、4個
のSLNBを行い1個以下の転移であれば、非SLNへの転移は認めない可
能性があると考えられた。
【目的】ACOSOG Z0011 試験の結果によりセンチネルリンパ節転移陽性症例
でも症例を選べば追加郭清が省略できる可能性が示唆されるようになってき
た.また 2011 年の PLOS ONE で Fabien らの 2654 例の報告によりセンチネ
ルリンパ節転移予測式が報告された.予測式は多変量解析により定義され,
腫瘍のホルモン感受性と HER2 によるサブタイプ,腫瘍径,リンパ管脈管侵
襲,年齢といったわずか4項目で計算される.今回,我々は当院で手術を受
けた患者でこの予測式の妥当性を retrospective に検討した.
【方法】上述した
センチネルリンパ節陽性の予測式を自験例と照らし合わせ,センチネルリン
パ節陽性の予測値を計算した.予測式は腫瘍径やサブタイプにより対応する
値を求めるノモグラムからなり,各対応値の合計スコアによってセンチネル
リンパ節転移の予測%が導かれる.【結果】2009 年から 2013 年の間に当院で
乳癌の診断で手術を施行された 110 名のうち,非浸潤癌と診断された 14 名を
除いた 96 名を対象とした.計算されたセンチネルリンパ節陽性の予測値と実
際にリンパ節転移陽性となった患者数は,0 ~ 10% までが 12 例中 0 例,11
~ 20% の間が 20 例中 2 例,21 ~ 30% の間が 22 例中 3 例,31 ~ 40% の間
が 13 例中 6 例,41 ~ 50%の間が 15 例中 10 例,51 ~ 60% の間が 8 例中 4 例,
61 ~ 70% の間が 6 例中 4 例という結果になった.【考察及び結論】予測値が
20%未満の 32 症例で腋窩に転移を認めたのはわずか2例であった.またこの
2例ではいずれも転移個数が2個以内であった.将来,ACOSOG Z0011 試験
の解析がすすみ,追加郭清不要群が明らかにされると思われるがこの予測式
を用いることにより術中のセンチネルリンパ節の迅速診自体が省略できる可
能性も考えられる.
469
一般セッション(ポスター掲示)
【背景と目的】ACOSOG Z0011 試験 (Z0011) においてセンチネルリンパ節
(SLN) に転移が 2 個まで陽性ならば腋窩リンパ節郭清 (Ax) を省略しても予
後に差はないという結果が報告され、腋窩リンパ節の外科治療に影響を及ぼ
しつつある。今回われわれは当院におけるこの試験の実地臨床における影響
を後ろ向きに検討することを目的とした。【対象と方法】Z0011 が publish さ
れ た 2011 年 2 月 よ り 前 の コ ホ ー ト (2009 年 2 月 か ら 2011 年 1 月 ま で ) と
Z0011 後のコホート (2011 年 2 月から 2013 年 1 月まで ) において、Z0011
の適格基準に該当する症例を集積し、両群間の臨床病理学的因子について比
較検討した。【結果】cT1-2、N0 で乳房温存術を施行し、術後に放射線治療を
予定された適格基準に該当する症例は 102 例で、Z0011 前が 53 例、Z0011
後 が 49 例 で あ っ た。SLN 転 移 陽 性 症 例 は Z0011 前 が 3 例 (5.7%)、Z0011
後 が 12 例 (24.5%) で あ っ た (p < 0.05)。Z0011 前 で は SLN 転 移 陽 性 症 例
の 100%(3/3) に Ax が 施 行 さ れ、Z0011 後 で は 83%(10/12) に Ax が 施 行
されていた。Ax を行った症例のうち non-SLN に転移を認めたのは Z0011 前
が 33%(1/3)、Z0011 後 が 60%(6/10) で あ っ た。SLN 転 移 陽 性 で Ax を 省
略 し た 2 例 は い ず れ も 浸 潤 径 20mm 以 下、histological grade 1、ER(+)、
HER2(-) で あ っ た。 両 群 間 で SLN の 術 中 迅 速 病 理 組 織 診 断 実 施 率 に 全 く
差 は な か っ た。 化 学 療 法 の 施 行 率 は Z011 前 が 24.5%(13/53)、Z0011 後
が 55%(27/49) であった。放射線治療の照射方法 ( 全乳房への 接 線 照 射:
2GyX25 or 30 回 ) は同じで、腋窩や鎖骨上窩への照射も行われていなかった。
【結語】Z0011 試験による影響は当院における腋窩の外科治療に影響を及ぼし
はじめている。今後は治療効果予測因子や生物学的因子を加味して、さらに
適応を拡大可能か検討が必要であろう。
ポスター掲示
11382
10690
センチネルリンパ節転移陽性での追加リンパ節転移陽性予測式
の作成
乳房温存手術症例に対する腋窩マネジメントの検討と報告
GP-2-097-04
GP-2-097-05
1
東北大学 乳腺内分泌外科
渡部 剛、石田 孝宣、鈴木 昭彦、多田 寛、宮下 穰、大内 憲明
【目的】ACOSOG Z-001 でセンチネルリンパ節転移陽性時の腋窩郭清省略の
可能性が示され、臨床病理因子を用いた郭清省略の検討もされている。しか
しながら画像評価も加味した評価は少ない。今回臨床病理因子に加え、US、
CT、MRI におけるリンパ節評価も検討し追加リンパ節転移の予測式を作成し
た。【方法】2008 年 10 月から 2013 年 8 月までセンチネルリンパ節生検を施行
した 397 例のうちセンチネルリンパ節陽性で追加郭清を施行した 54 例を対象
とした。年齢、腫瘍径、NG、脈管浸潤、ER、PR、HER2、Ki67、SN 転移個数、
非転移 SN の有無・転移率、SN 浸潤径、US でのリンパ節皮質肥厚、2 層性の
欠如、CT と MRI でのリンパ節造影あり、左右差リンパ節 1 個、もしくは複数
個、形状不整、サイズ 1cm 以上の各因子と追加リンパ節転移の関連を JMP11
を用いて、単変量解析で検討し、有意であった因子をステップワイズ法で因
子選択(p=0.2)し多重ロジスティック回帰分析にて転移予測式を作成した。
【結果】追加リンパ節に 18 例で転移を認めた(33.3%)
。単変量解析では年齢、
腫瘍径、NG、ER、PR、HER2、Ki67 と追加リンパ節転移との相関は認めな
かった。A. 脈管浸潤(p=0.037)、B. SN 転移個数(p=0.0342)、C. SN 浸潤
径(p = 0.0087)に有意な相関を認めた。画像検査では有意差を認めたのは
D. 左右差リンパ節1個を認めた CT(p = 0.0423), E. 複数個左右差を認めた
CT(p=0.0040) と F. 複数個左右差のある MRI(p=0.0007) であった。因子選
択では A、F が選択され Logit(p) = 0.58 + 0.68 × A+1.60 × F で p=0.0003,
AICc は 53.5, R2 乗 0.26 であった。本症例にあてはめると感度 44.4%、特異
度 96%、陽性的中率 88.9%であった。【考察】本研究での予測式は陽性の場合
はほぼ信頼できる結果であった。しかし感度が悪いためこの予測式を用いて
追加郭清省略はできない。今後も症例を集積し、再検討する予定である。
昭和大学 乳腺外科、2 昭和大学 病理学講座、3 昭和大学 放射線科
橋本 梨佳子 1、中村 清吾 1、渡辺 知映 1、桑山 隆志 1、吉村 亮一 3、
広田 由子 2、榎戸 克年 1,3、沢田 晃暢 1、加賀美 芳和 3、明石 定子 1、
中島 恵 1、金田 陽子 1、池田 紫 1、高丸 智子 1、吉田 玲子 1、大山 宗士 1、
森 美樹 1
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】乳癌手術における腋窩リンパ節郭清(以下 ALND)の臨床的意義は、
いまだ不明瞭な点が多い。現在センチネルリンパ節生検(以下 SLNB)を行い、
転移陰性であれば ALND を省略する妥当性は広く認められている。近年では
ACOSOG 0011 試験の結果から世界的に乳房温存手術に術後放射線治療を前
提とした症例を中心に、腋窩マネジメントの縮小化が始まっている。今回我々
は ACOSOG 0011 試験に基づき、以下の対象症例に対して術前より ALND の
省略を方針として手術を施行したので報告する。【対象】当院で 2013 年 4 月か
ら 10 月に乳房温存手術と SLNB を行った 59 症例 62 乳房。ACOSOG 0011 試
験に基づき、術前の評価として乳房内主病巣が臨床的 Tis もしくは T1-2、N0
で乳房温存手術の症例に対して、腋窩手術は SLNB のみ行う方針とした。ま
た術前化学療法を行った症例は除外し、SLN の判定は術後 HE+CKAE1/3 にて
行った。放射線治療は、SLNB 転移陰性であれば温存乳房にのみ照射を行い、
2 個までの転移陽性例に対しては照射範囲を腋窩リンパ節、鎖骨上リンパ節ま
で拡大して行う事とした。【結果】対象年齢中央値は 54 歳。手術を行った 62
乳房の乳癌組織型は DCIS が 8 例 (13%)、浸潤癌の浸潤径中央値は 1.3cm で
あった。免疫組織学的には、ER 陰性が 3 例、HER2 陽性が 1 例。SLNB の結果
は転移陽性が 4 例 (6%) であり、うち転移個数 1 個が 3 例、2 個が 1 例であり
現時点で追加郭清実施症例はいない。術後薬物療法として化学療法を施行し
たのは 3 例、断端陽性にて温存乳房切除を施行したのは 1 例であった。【考察】
腋窩リンパ節転移は重要な予後規定因子であり術後薬物療法の決定に欠かせ
ない情報である。しかし予後は、癌そのものの Intrinsic subtype や術後薬物・
放射線治療により大きく修飾される。今回 ACOSOG 0011 試験結果に基づき
術前より ALND 省略を決定し , 腋窩に対する低侵襲手術の拡大と手術時間の短
縮に踏み切った。しかし、現時点で長期的な DFI や OS の検討結果はなく、今
後も慎重な経過観察と長期予後の検討が必要である。
10704
11806
OSNA 法によるセンチネルリンパ節転移陽性乳癌に対する腋窩
治療戦略
生検検体による非センチネルリンパ節転移予測 ‐ D2-40 抗体を
用いた検討
GP-2-097-06
1
2
GP-2-097-07
1
新潟県立がんセンター新潟病院 乳腺外科、
新潟県立がんセンター新潟病院 病理部
2
神林 智寿子 1、佐藤 信昭 1、金子 耕司 1、利川 千絵 1、本間 慶一 2
【背景】OSNA 法 (One-step Nucleic Acid Amplification) はリンパ節全体を溶
解し CK19mRNA を測定するため現行法と比しセンチネルリンパ節 (SLN) 転
移診断が高精度で、CK19mRNA 半定量が可能なため転移腫瘍量の評価がで
きる。ACOSOG Z0011 の報告では SLN 転移個数の規定はあるが、転移量は
検討されていない。【目的】SLN 転移陽性でも non-SLN 転移陰性であれば腋窩
郭清省略が可能と考え、OSNA 法による SLN 転移陽性乳癌に対する郭清省略
の可能性を検討した。【対象・方法】2010 年 10 月~ 2013 年 7 月の OSNA 法
で SLN 生検を施行した 523 例中、SLN 転移陽性 121 例 (23.1%) を対象とし
た。SLN 転移陽性の合計 CK19mRNA のコピー数 ( TTL: total tumor load )
の cut off 値を ROC 曲線から導き、non-SLN 転移陽性の危険因子を検討した。
【結果】TTL 5.1 × 104 copies/ μ L(以下単位略)を cut off 値とすると、nonSLN の negative predict value(NPV) 92.5%,positv predict value(PPV)
39%,sensitivity 72.7%,specificity 74.7%, と 高 い NPV を 得 た(AUC
0.753)。TTL を含めた臨床病理学的な non-SLN 陽性例の有意な危険因子は
(1)SLN ++: macro meta( p=0.009 )(2)TTL 5.1 × 104 以上 (p < .0001)
(3)SLN 陽性率 66% 以上(p=0.01):SLN 陽性率=陽性個数 / 切除個数 ( 例:
1/1 や 2/2 は陽性率 100% , 2/3 は 66.6% ,1/2 は 50% )(4)SLN 捺印細胞診
陽性であった (p < .0001)。年齢、閉経状況、腫瘍径、NG、ER、ly、HER2、
Ki67, サブタイプとは関連なし。多変量解析では、TTL 5.1 × 104 以上と SLN
陽性率 66%以上が有意な危険因子であった。TTL と SLN 陽性率の両方が高値
の場合 non-SLN 陽性は 46%、いずれかが高値の場合約 20%、両方とも低値
の場合 2%であった。【結語】OSNA 法による SLN +:マイクロ転移や、SLN
++ のマクロ転移であっても TTL が 5.1 × 104 未満であれば、non-SLN 陽性
の可能性は低く、SLN 陽性率などの条件に留意することにより腋窩郭清省略
の可能性が示唆された。
京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・乳腺外科学、
京都府立医科大学 病理学教室人体病理学部門
大内 佳美 1、杉本 里保 1、富田 仁美 1、濱岡 亜紗子 1、中務 克彦 1、
藤田 佳史 1、阪口 晃一 1、山崎 早苗 2、小西 英一 2、田口 哲也 1
【背景】乳癌の手術ではセンチネルリンパ節 (SN) 生検において転移陽性の場
合、腋窩リンパ節郭清を追加するのが現在の標準治療である。しかしその中
で非センチネルリンパ節 (non-SN) に転移を認めない群では過大侵襲となるこ
とから、近年手術侵襲の縮小を目指した検討が進められている。
【目的】生検
検体を用いて腫瘍のリンパ管侵襲の程度の評価を行い、non-SN 転移予測の指
標となり得るかを検討する。【方法】2009 年から 2013 年 12 月までに当科で
SN 生検の術中迅速診断を行った 731 例のうち、当科で生検を行い cT1 かつ術
前治療を行っていない症例のなかで、SN 転移陽性と診断され腋窩郭清を追加
で施行した全 19 例について、生検検体に関して D2-40 抗体を用いてリンパ管
を同定し、腫瘍のリンパ管侵襲の程度を 0 ~ 3+ の 4 段階で評価して、nonSN への転移の有無との関係を検討した。【結果】non-SN に転移を認めた症例
は 8/19 例 (42%) であった。生検検体における腫瘍のリンパ管侵襲の程度は
それぞれ、0; 15 例、1+; 2 例、2+; 1 例、3+; 1 例であった。腫瘍のリンパ
管侵襲を認めた場合、これを認めなかった場合と比較して non-SN への転移
が有意に増加した (4/4 vs 4/15、p=0.018)。【考察】生検検体において腫瘍
のリンパ管侵襲を認める場合、non-SN への転移は有意に増加することが示さ
れた。反対に生検検体でリンパ管侵襲が認められなかった場合でも non-SN
への転移を認める症例が含まれ (4/15、26.7%)、今回の検討では生検検体で
のリンパ管侵襲の有無のみで non-SN 郭清省略を推し進めることは難しいと
考えられた。今後は引き続きさらに症例を重ねて検討を行うとともに、腋窩
郭清が不要と確実に予測することが可能となる指標を検索する必要があると
考える。
470
ポスター掲示
11349
11648
cN( + ) 乳癌に対する腋窩非郭清・腋窩照射の成績
センチネルリンパ節生検にて腋窩郭清省略時の 5 年腋窩無再発
予後について
GP-2-097-08
1
GP-2-097-09
大船中央病院 乳腺センター 外科、2 大船中央病院 放射線治療室
長崎大学大学院 腫瘍外科学
大渕 徹 1、武田 篤也 2、島 知江 1、山上 良 1、小野 正人 1、緒方 晴樹 1、
畑山 純 1、雨宮 厚 1
矢野 洋、松本 恵、大坪 竜太、進藤 久和、福嶋 絢子、永安 武
【目的】cN(+) 乳癌に対する照射による腋窩制御の有効性・安全性を検討する.
【 対 象 と 方 法 】2013 年 6 月 ま で に 当 院 を 訪 れ た cN(+) の II - III 期 の乳癌
患者は1156 例 (IIA 期:87 例,IIB:640 例,IIIA:289 例,IIIB:55 例,
IIIC:85 例 ),(N1:1024 例,N2:47 例,N3:85 例).治療内容別に次の
4 群に分けた.外科的腋窩郭清に代えて腋窩照射を行ったのは 576 例でこの
うち,術前化療を行ったが腋窩手術を全く行っていない C 群:177 例 (II 期:
100 例,III 期:77 例 ), 臨床的に腋窩転移個数が 1 個で術前化療を行わず腋窩
サンプリングを行った S 群:218 例 (II 期:200 例,III 期 18 例 ), 術前化療後
に腋窩サンプリング行った CS 群:181 例 (II 期:112 例,III 期 69 例 ).一方,
Level I 以 上 の 外 科 的 腋 窩 郭 清 を 行 っ た D 群:564 例 (II 期:306 例,III 期
258 例 ). 治療後の腋窩再発,領域再発,遠隔再発および全生存率を KaplanMeier 法で計算した.
【結果】観察期間中央値:54 ヶ月 (2-256 ヶ月 ),腋窩再発 (5 年累積 %);C 群:
14 例 (10%),術前化学療法で CR 例:27 例中 2 例 (13%),S 群:12 例 (6%),
CS 群:8 例 (5%),D 群:10 例 (2%). 領 域 再 発 (5 年 累 積 %);C 群:37 例
(22%),術前化学療法で CR 例:27 例中 3 例 (17%),S 群:26 例 (9%),CS 群:
16 例 (11%),D 群:89 例 (17%).5 年 遠 隔 無 再 発 生 存 率;C 群:62%(II
期 : 72%, III 期 : 50%),術前化学療法で CR 例:61%(II 期 : 64%, III 期 :
58%),S 群:82%(II 期 : 83%, III 期 : 74%),CS 群:76%(II 期 : 80%, III 期 :
71%),D 群:64%(II 期 : 74%, III 期 : 52%).5 年 生 存 率;C 群:76%(II
期 : 87%, III 期 : 62%),術前化学療法で CR 例:81%(II 期 : 88%, III 期 :
77%),S 群:89%(II 期 : 89%, III 期 : 87%),CS 群:85%(II 期 : 90%, III 期 :
77%),D 群:77%(II 期 : 84%, III 期 : 68%).
【結語】cN( + ) 乳癌に対する腋窩非郭清・腋窩照射は,腋窩再発率はやや高い
ものの領域再発,遠隔再発,生存率は劣ることはなく,転移個数が少数の場
合や術前化学療法により Down Staging が得られた場合は治療選択肢として
考慮されるべきであろう.
当科では術前 N0 症例に対するセンチネルリンパ節転移陰性例における郭清省
略を 2005 年 4 月より開始した。【目的】当科でのセンチネルリンパ節生検陰性
例における郭清省略の妥当性について検討する。【方法】術後 5 年以上経過し
た 2005 年 4 月から 2008 年 12 月までの 123 例の原発性乳癌症例のうち、セ
ンチネルリンパ節生検症例 94 例の腋窩無再発生存率を調査する。【成績】94
例中、56 例は転移陰性で郭清省略した。非浸潤性乳管癌が 7 例。他病死 5 例、
局所再発 2 例(腋窩再発 1 例、鎖骨上再発 1 例 ) でいずれも遠隔転移を伴って
おり、遠隔転移のみ 1 例であった。非浸潤性乳管癌を除いた 49 例での 5 年局
所無再発生存率は 98%(48/49) であった。腋窩再発した 1 例はセンチネルリ
ンパ節が色素で検出できなかったが、T1b であり高齢のためサンプリングを
行い陰性であったために郭清省略した症例であった。局所および遠隔再発 2 例
はいずれも Luminal type、遠隔転移のみの 1 例は Her2 type であった。
【結論】
腋窩リンパ節省略症例の 5 年腋窩無再発生存率は 98%と高率であり、安全に
施行できていると考えられた。
10281
腋窩下部部分切除術-乳癌手術において腋窩リンパ節郭清は必
要か
腋窩リンパ節転移陽性例に対する術前化学療法後のセンチネル
リンパ節生検の検討
GP-2-097-10
1
GP-2-098-01
乳腺クリニック児玉外科、2 京都大学医学部 乳腺外科
愛知県がんセンター中央病院
三瀬 圭一 1、児玉 宏 1、菅 典道 1、佐藤 史顕 1,2、松本 純明 1,2
【緒言】1980 年代より行われた多くの臨床試験結果から、乳癌手術における腋
窩リンパ節郭清は患者の生命予後に寄与しないことが明らかとなった。しか
し、センチネルリンパ節生検では、リンパ節転移のない場合は腋窩郭清を省
略するが転移のある場合には郭清する、すなわち転移リンパ節は切除すべき
であるという前提に立って腋窩郭清が行われてきた。最近、微小リンパ節転
移のみの場合やリンパ節転移個数 1 ~ 2 個の場合には、腋窩郭清の省略が試
行されているが、転移リンパ節の遺残を危惧するためか、センチネルリンパ
節生検時の非センチネルリンパ節の切除、乳癌術後の腋窩領域の照射等の追
加治療が行われている現状である。我々は、腋窩郭清は患者の生命予後に寄
与しないという前提に立って、腋窩郭清の意義であるリンパ節転移の情報を
取得することと腋窩再発の制御を低率に抑えることを達成し、かつ郭清に伴
う術後合併症を軽減する手術手技として、腋窩郭清を省略する腋窩下部部分
切除術を考案し実践してきたので、予後と QOL の観点から、その有用性につ
き報告する。【対象および方法】腋窩下部部分切除術は、乳房切除術・乳房部
分切除術にかかわらず、第 2 肋間上腕神経より下部の腋窩組織のみを結紮切除
する方法である。この手技により、遺された上部の腋窩組織より下方へのリ
ンパ液漏出を防ぐとともに、腋窩静脈周囲に操作が及ばないため術後の術側
上肢のリンパ浮腫発生を防止することができる。2001 年~ N0 症例全例に本
術式を施行、2004 年~ N1 症例に対してもほぼ全例に適応し、現在までの自
験例は N0 症例 1593 例、N1 症例 211 例である。転移リンパ節陽性症例に対
する追加の腋窩郭清や腋窩領域の照射は施行しなかった。【結果】腋窩下部部
分切除術後の腋窩再発を N0 症例で 10 例 (0.6%)、N1 症例で 4 例 (1.9%) に認
めた。N0 症例の健存率は 5 年 91.4%、10 年 85.4%、生存率は 5 年 95.9%、
10 年 89.2% であり、従来の腋窩郭清症例と比較して治療成績は遜色なく良好
である。術後 QOL として、術側上肢のリンパ浮腫発生は少数例に軽度一過性
に認めるのみで、術後リンパ液貯留は著明に減少しドレーンの留置が不要と
なった。【結語】転移リンパ節の遺残にこだわることなく腋窩郭清を省略する
腋窩下部部分切除術は、センチネルリンパ節生検が不要であり、乳癌患者の
予後と QOL の観点から、腋窩リンパ節郭清と比較して遥かに利益のある術式
と云える。
市川 茉莉、堀尾 章代、藤田 崇史、澤木 正孝、服部 正也、近藤 直人、
権藤 なおみ、井戸田 愛
【背景】術前化学療法 (NAC) 前に腋窩リンパ節転移陽性の症例におけるセン
チネルリンパ節生検 (SLNB) の有用性は明らかでなく、乳癌診療ガイドライ
ンでも推奨されてはいない(推奨グレードC 2)。しかし術前化学療法で腫瘍
縮小効果が十分にあった場合にはリンパ節の転移が消失している可能性があ
り、これを SLNB で評価できれば、腋窩廓清 (ALND) を省略できる可能性があ
る。【目的】腋窩リンパ節転移陽性の乳癌患者で、NAC によって画像上リンパ
節転移陰性となった患者を対象として、SLNB によってリンパ節転移の有無を
評価できるかを検討した。【方法】2003 年 3 月から 2013 年 11 月までに当院
で NAC 後に手術を施行した 300 例のうち、画像上または細胞診で NAC 前腋
窩リンパ節転移陽性と診断し、NAC によって術前臨床的に陰性となり SLNB
と ALND を施行した 41 例を後方視的に検討した。NAC はサブタイプに基づき
Anthracycline+Taxane ± Trastuzumab を行った。SLNB は色素法と RI 法を
併用し、術前にリンフォシンチグラフィーを行った。【結果】41 例中 37 例で
センチンルリンパ節が同定された ( 同定率 90.2% )。SLNB 陰性は 23 例であり、
そのうち 16 例は非センチネルリンパ節(NSLN)も陰性であったが、7例で
は NSLN に転移を認めた(偽陰性率 FNR:33.3%)。Luminal type、Luminal
HER2、pureHER2、Triple Negative で FNR は そ れ ぞ れ 46.7%(5/17)、
50%(1/2)、0%(0/1)、100%(1/1) であった。(腋窩リンパ節転移が消失し
た 16 例と転移が残っていた 21 例の原発巣の治療効果を比較すると、術前 US
での原発巣の縮小率の平均は 70.4% と 49.5%であり、病理学的治療効果が
2a 以上の割合は 87.5%、57.1% であった。)【結論】術前化学療法前に腋窩
リンパ節転移陽性の症例におけるセンチネルリンパ節生検は偽陰性率が高く、
SLNB による腋窩リンパ節転移の評価は難しいと考える。
471
一般セッション(ポスター掲示)
10522
ポスター掲示
11777
11072
腋窩リンパ節転移陽性で化学療法後 cN0 に conversion した症
例における SNB を含めた至適腋窩マネジメントは?
当院にて術前化学療法後に術中センチネルリンパ節生検を行っ
た症例の検討。
GP-2-098-02
GP-2-098-03
国家公務員共済組合連合会横浜南共済病院 乳腺外科
1
加藤 直人、松川 博史、松浦 仁、小島 いずみ、加藤 綾
天願 敬 1、辰田 久美子 1、橋立 英樹 2、渋谷 宏行 2、牧野 春彦 1
【背景】cN( + ) で neoadjuvant chemotherapy(NAC)後 N( - ) となった状況
では多くの症例で腋窩縮小手術が可能と思われる。原発巣における抗腫瘍効
果、subtype との関連性にも着目し、SNB を含めた腋窩マネジメントについ
て後ろ向き解析を行った。【対象】2006. 1 から 2013. 12 にかけて cN( + ) で
NAC 後 N( - ) となった clinical stage T1-4, N1-2(non-inflammatory), M0
症例 44 例(luminal-A 4, B 9, luminal-HER2 11, HER2 12, triple negative
8、SNB 施行は 21 例)。N( + ) は FNA または PET-CT、N( - ) は US にて確認【結
果 】ypN0 は 35/44 例 (80%)。Primary tumor site(cCR 23, cPR 19, cNC
2)が pCR(21) で は 95%, non-pCR(23) に お い て は 65%(pN0 conversion
rate; luminal-A 0%, luminal-B 83%, luminal-HER2 80%, HER2 50%,
triple negative 100%) で あ っ た。SNB は 併 用 法 に て 施 行、 平 均 摘 出 個 数
1.9、detection rates 100%。転移陰性 13 例(62%)、7 例は追加腋窩郭清
を行わず(観察期間 3y で再発なし)。郭清 6 例はいずれも non-SN に転移なし
(false-negative rate 0%)。転移陽性 8 例 (38%) 中 1 例は郭清なし(6y 再発
なし)、7 例は郭清施行、5 例に non-SN 転移あり(いずれも non-pCR 症例)。
SNB を行わず、郭清施行例では 22/23 例 (96%) が ypN0 となった。【総括】
Primary tumor site が pCR を得られれば、axillary surgery は省略可能(ある
いは SNB)、non-pCR であれば subtype を考慮し luminal A、HER2 type は
residual node metastasis の可能性がより高い。Imaging、biomarker の組
み合わせで response を評価し、targeted axillary surgery の planning を至
適化できる可能性がある。
新潟市民病院 乳腺外科、2 新潟市民病院 病理診断科
一般セッション(ポスター掲示)
2013 年版乳癌診療ガイドラインによると、術前化学療法(NAC)後にセン
チネルリンパ節生検(SNB)による腋窩リンパ節郭清の省略に関しては推奨
グレード C1(NAC 前に N0 の症例においては SNB による郭清省略を考慮し
てもよい)とされている。今回当院において、電子カルテ上検索可能であっ
た 2008 年 12 月~ 2013 年 12 月 1 日までの期間に NAC 後手術を施行された
117 症例のうち、術中 SNB が実施された7症例(男性乳癌の1症例を含む)に
ついての検討を行った。年齢は 43 ~ 75 歳(中央値 :60 歳)NAC 前の触診所
見では 4.4cm ~ 6.9cm(中央値 :6.0cm)の腫瘤を触知。NAC のレジメンと
しては全例に FEC → DTX を選択。NAC 後の触診所見では触知不能~ 5.0cm
(中央値 :2.6cm)へ縮小。NAC → SNB の実施率は 5.98%であった。当院で
はセンチネルリンパ節の同定に RI 及びインジゴカルミンの併用法を採用し
ている。1 症例で術中のナビゲーターにてセンチネルリンパ節を同定できず
に SNB から腋窩リンパ節郭清へ変更となった。その他は予定どおり SNB を
施行。郭清となった症例ではリンパ節転移が認められたが、その他の症例で
は SNB の迅速病理診断の結果転移陰性であったため、リンパ節郭清を省略
した。永久標本の病理結果もすべてのセンチネルリンパ節で転移陰性であっ
た。組織分類別では、Scirrhous carcinoma 5 例、Mucinous carcinoma 1
例、Invasive micropapillary carcinoma 1 例。NAC による治療効果判定の
内 訳 は grade3(1 例 )、grade2b(1 例 )、grade2a(1 例 )、grade1b(2 例 )、
grade1a(2 例 ) であった。NSABP B-27 の後ろ向き解析では NAC 後のセンチ
ネルリンパ節の同定率は 84.9%、偽陰性率 10.7%と報告されている。症例数
が少ないため比較には及ばないが、当科においての同定率は 85.7%とほぼ同
様の結果であった。偽陰性率に関しては今回の集計結果では 0%であった。ガ
イドラインの解説では【NAC 後の SNB は NAC 前の N0 症例において良好な同
定率、偽陰性率を示しており、外科医、病理医、及び放射線科医から構成さ
れた熟練チームによって細心の注意を払って行われれば、SNB による腋窩リ
ンパ節郭清の省略は可能である】と追記されている。当科でも週に 1 度、病理
医、放射線科医同席のもと手術前後の症例検討を行い、術式の選択はもとより、
術後の治療方針の決定を行なっている。
11577
10150
CT lymphography を用いた術前治療施行後乳癌患者に対する
センチネルリンパ節生検の有用性の検討
当科における術前化学療法後のセンチネルリンパ節生検の検討
GP-2-098-04
1
GP-2-098-05
1
2
青森県立中央病院 がん診療センター外科、 青森県立中央病院 看護部
岩手医科大学 外科、2 岩手医科大学 病理学講座分子診断病理学分野
小松 英明 1、柏葉 匡寛 1、石田 和茂 1、川岸 涼子 1、松井 雄介 1、
大槻 英恵 2、上杉 憲幸 2、石田 和之 2、菅井 有 2、若林 剛 1
橋本 直樹 1、久留島 徹大 1、赤石 隆信 1、木村 俊郎 1、鈴木 大和 1、
高橋 礼 1、谷地 孝文 1、米内山 真之介 1、中井 款 1、十倉 知久 1、
梅原 豊 1、西川 晋右 1、高橋 賢一 1、岡林 孝弘 1、森田 隆幸 1、
成田 富美子 2
【 目 的 】当 科 で は 乳 癌 患 者 に 対 し Computed tomographic lymphography
(CTLG) を術前日に行い、手術時に色素法を併用しセンチネルリンパ節生検
(SLNB)を行っている。術前治療が施行された乳癌患者に対する SLNB は、リ
ンパ流が変化し偽陰性が増加する可能性が示唆されており、現時点では明確
なコンセンサスが得られていない。術前治療施行後乳癌患者に対する SLNB に
おける CTLG の有用性に注目し、2010 年 6 月から 2012 年 3 月まで feasibility
study を施行したところ、術前 N0 症例に関しては偽陰性例を認めず有用と考
えられた。2012 年 4 月以降は術前 N0 症例に限って郭清を省略したため、そ
の成績を報告し考察する。【方法】2012 年 4 月から 2013 年 12 月まで術前治療
が施行された乳癌患者 85 例を対象とし、SLNB は CTLG と色素法を併用して
行い、原発巣切除と level 1 腋窩郭清(バックアップ郭清)を行った。術前 N0
症例に対してはバックアップ郭清を省略し、SLNB 陽性時のみ level 1 腋窩郭
清を施行した。術前治療前後での SLN に対する CTLG の比較を行った。
【結果】
平均年齢は 56.8 ± 13.1 歳。治療開始前病期は、StageI:37 例、StageIIA:16 例、
StageIIB: 18 例、StageIIIA: 9 例、StageIIIB: 4 例、StageIIIC: 1 例であっ
た。術前治療の臨床的治療効果判定は CR3 例、PR52 例、SD27 例、PD3 例で
あった。CTLG での SLN 描出不良は 27 人 (32% )、58 人 (68% ) は描出良好
であった。術中 SLN 同定率は 96.4% (82/85 例 )、SLN 同定不能だった 3 例は
全て CTLG で描出不良であった。26 人 (31% ) が SLN 転移陽性で、59 人 (69% )
が SLN 転移陰性であり、SLN 陰性例のうち 3 例で level 1 リンパ節に転移を認
めた。偽陰性率は 10.3% (3/29)、感度 89.7% (26/29)、正診率 96.5% (82/85)
であった。術前 N0 症例は 55 例あったが、そのうち 10 例 (18.2% ) は SLN 転
移陽性で 6 例に対し Level1 郭清を行ったが、偽陰性例は認めなかった。また、
術前治療施行前後での CTLG の比較では、比較可能であった 21 例のうち 1 例
のみで化学療法施行後に CTLG の SLN 描出の改善が認められ、pCR が得られ
た症例であった。4 例で描出不良化がみられた。【結論】術前治療後の症例でも
術前 N0 症例に対しては SLNB の妥当性が示唆された。術前治療が著効すると
CTLG の SLN 描出が改善する可能性があり、術前治療後の SLNB に対し CTLG
は有用と思われるが、今後症例を重ね、結果の検討をしていきたい。観察期
間も短いことから長期成績については今後も経過を観察していく必要がある。
【はじめに】術後の機能温存、QOL の改善を目指し、乳癌手術では乳房温存療
法+乳房照射、センチネルリンパ節生検(Sentinel lymph node biopsy, 以
下 SNB)が標準治療となっている。また、温存率向上と薬剤感受性・予後予
測の個別化から術前化学療法(primary systemic therapy, 以下 PST)も臨床
的オプションになったが PST 後 SNB については議論がつきない。【目的】当科
における術前化学療法後の SLB 施行症例に対し、後方視的に忍容性を検討し
た。【対象】2010 年 11 月 ~2012 年 7 月までに当科で行った原発性乳癌手術症
例 (Stage I ~ IIIC) の 39 例を対象とし、PST 後の SNB の年齢中央値は 49 歳
(31 ~ 67 歳)、全患者の観察期間中央値は 21 ヶ月(3 ~ 36 ヶ月)、腋窩リン
パ節の状態は cN0;18 例、cN1-2;21 例、Tracer は RI 単独;34 例、色素+
RI 併用;5 例だった。【結果】PST 後 SNB の同定率は 100% であった。PST 前
に cN0 かつ SNB 陰性の場合には腋窩リンパ節郭清は省略、N +では SNB 陰性
の場合には Level I までの郭清と規定したが各々 18 例、15 例であった。前者
は全て再発を認めず、また後者は Level I までの郭清においては全症例におい
てリンパ節転移は陰性であった。また Disease free survival(以下、DFS)は
21 ヶ月であり、そのうち再発例は 2 例(それぞれ皮膚、
小脳)であった(2/15 例、
13.3%)。【考察】「乳癌診療ガイドライン 2013 年度版」では、PST 前に cN0
で会った症例では腋窩リンパ節郭清の省略は推奨グレード C 1,cN1 症例で
C2、また ASCO ガイドラインでは PST 前 SNB が妥当とされ、PST 後は cN0 で
あった症例が推奨されている。当科における SLB の同定は高率であり、また
腋窩リンパ節の局所再発は現在までに認められておらず、術前化学療法の有
無にかかわらず SNB の実施は可能と考えられた。他の臨床病理学的因子との
相関および文献学的考察と共に報告する。
472
ポスター掲示
11606
10114
演題取り下げ
色素法を用いた術前化学療法後のセンチネルリンパ節生検の検討
GP-2-098-06
GP-2-098-07
1
やまかわ乳腺クリニック、2 厚生年金高知リハビリテーション病院
山川 卓 1、上田 裕子 1、菊池 純子 1、前田 久美子 1、井関 恒 2
【目的】早期乳癌におけるセンチネルリンパ節(SLN)生検は標準治療である
が、術前化学療法(Neo)後の SLN 生検の妥当性はいまだ不明瞭である。今回、
当院での Neo 後の SLN 生検を検討した。【対象と方法】対象は 2004 年 4 月~
2013 年 9 月、当院で経験した乳癌手術例 924 例のうち、Neo(87 例)を行い、
SLN 生検後に腋窩郭清(Level1)を追加した 61 例。SLN 生検はすべて色素法
単独(インジゴカルミン使用)にて行い、摘出リンパ節は迅速組織診、永久標
本(HE 染色)の各々 2 片、計 4 切片で評価した。Neo のレジメンは EC、DTX
各々 4 サイクルであり、Her2 陽性例にはハーセプチンを追加した。【結果】
平均年齢:51.6 ± 10.7 歳、平均腫瘤径:Neo 前 3.6 ± 1.8cm、Neo 後 1.6 ±
1.3cm、N0:26 例、N1 以上(細胞診陽性例)35 例、SLN を含む組織学的腋
窩リンパ転移陽性 37 例、陰性 24 例。SLN 同定率 100%(61/61)、平均 SLN
個数 1.3 ± 0.7 個(1 ~ 4 個)、SLN 転移陽性率 54.1%(33/61)、SLN 単独転
移率 43.2%(16/37)であり、感度 89.2%、特異度 100%、正診率 93.4%、
偽陰性率 10.8%、陽性反応適中度 100%、陰性反応適中度 85.7%であった。
N0 と N1 以上の 2 群間の比較では、SLN 転移陽性率には差を認めたが(34.6%
vs 68.6%、P < 0.05)、SLN 同定率、SLN 個数、偽陰性率には差を認めなかっ
た。なお、N1+ 以上 35 例のうち 8 例に組織学的リンパ節転移の陰性化を認め、
いずれも著効例(CR7 例、PR1 例)であった。 また、同期間中の非 Neo 例で
の SLN 生検(色素法単独)の結果は SLN 同定率 98.5%(764/775)、SLN 個数
1.5 ± 1.0 個、SLN 転移陽性率 17.0%(132/775)、SLN 単独転移率 47.2%
(68/144)、偽陰性率 8.3%(12/144)であり、SLN 転移陽性率以外は今回の
Neo 例と同様の結果であった。【結語】Neo 後の SLN 生検は、通常の乳癌例と
同様に妥当である可能性が高く、N0 例あるいは著効した N1 以上では腋窩郭
清を省略できる可能性も示唆された。
11216
乳がん N1 症例における術前化学療法後の n0 は US を用いて診
断可能か?
術前化学療法後乳癌における腋窩リンパ節転移の予後因子とし
ての意義;NAC 後 SNB の偽陰性は許容されうるか?
GP-2-098-08
GP-2-098-09
三井記念病院 乳腺内分泌外科
信州大学医学部附属病院 乳腺内分泌外科
太田 大介、西 常博、加藤 孝男、竹内 昌、辻 宗史、稲垣 麻美、
福内 敦
前野 一真、大場 崇旦、家里 明日美、岡田 敏宏、花村 徹、渡邉 隆之、
伊藤 勅子、金井 敏晴、伊藤 研一
目的:術前化学療法(Primary Systemic Therapy: PST)は術後に化学療法を
受ける乳がん患者において標準的治療の一つである。しかし、N1 症例におい
て、PST 後に安全にセンチネルリンパ節生検(SLN)が行えるかどうかは議論
の余地がある。PST 前に N1 と診断され、PST 後に n0 と診断可能かどうか US
を使用して検討した。対象と方法:2009 ~ 2013 年までに当院で N1 の診断
を受け、PST を行いその後に手術した 49 例をレトロスペクティブに検討した。
全例乳房内腫瘍に対しては針生検にて浸潤がんの診断がされており、ホルモ
ン感受性、HER2 も検索している。N1 の診断は US にて、患側の腋窩リンパ
節 (Ax) のリンパ節門が消失もしくは皮質の肥厚があった症例で fine needle
aspiration が施行され悪性が証明されている、または同様の所見で術後にリ
ンパ節転移が残存していた、化学療法で明らかにリンパ節が縮小した症例を
N1 と診断した。US は PST 前と全行程を終了した後に施行し比較検討してい
る。結果:Allred score で estrogen receptor 4 点以上のホルモン高感受性乳
がん(HR+)は 31 例、3 点以下のホルモン低感受性乳がん(HR low/-)は 18 例、
HER2 陽性は 10 例であった。細胞診で Ax 転移陽性と診断されているのは 24
例、T4 は 5 例、核グレード3は 14 例であった。乳房内腫瘍に対する効果は、
全体において pCR が 6 例で、3 例が HR+ でその内 2 例が Ax 転移は残存、3 例
が HR low/- であった。Ax の効果は全体で pCR は 19 例、その内 HR+ は 7 例、
HR low/- は 12 例であった。PST 終了後にリンパ節門が出現したものもしく
は皮質の肥厚が消失し正常の形態に変化した、かつ画像所見における乳房内
腫瘍が PR 以上の効果を示した症例を Ax 転移陰性と仮定した。全体の症例で
は Ax 転移が消失した症例 19 例中 13 例に診断可能で、感度は 68.4%、特異度
は 76.7% であった。さらに、HR low/- の症例 18 例に限ると Ax 転移が消失
した症例 12 例中 9 例がこの方法で診断可能で感度 75%、特異度は 100% で
あった。結論:HR low/- では上記方法にて高率に PST 後の Ax 転移の状況の
予測でき、SLN 生検が安全に行うことができる可能性が示唆された。
【背景・目的】進行乳癌に対する術前化学療法 (NAC) の良好な治療成績に伴
い ,NAC 後 cN0 症 例 に 対 す る セ ン チ ネ ル リ ン パ 節 生 検 (SNB) の feasibility
study が報告されつつある . しかしながら NAC 後 SNB を想定した場合 SN 転移
陰性かつ非 SN 転移陽性の偽陰性率が高い報告が多く ,SN 転移陰性例に対し腋
窩廓清を省略した場合 ,NAC 未施行例に比し Axillary status の評価を見誤る
可能性が高くなると考えられる . 偽陰性上昇が予後に及ぼす影響を考察するた
めに ,NAC 後の腋窩リンパ節転移の有無の予後因子としての意義を後方視的
に検討した 【
. 対象・方法】当科では cN1 以上の乳癌を NAC の主な対象例とし
ている .2004 年 10 月から 2012 年 10 月までの DCIS を除く NAC 未施行 511
例および NAC 後乳癌 95 例を対象とし ,NAC 未施行の pN0,pN1 以上 , および
NAC 後の ypN0,ypN1 以上の予後を検討した . さらに SNB の対象となりうる
NAC 後 cN0 症例を ypN0 と ypN1 以上で予後を比較検討した 【
. 結果】NAC 未
施 行 511 例 中 pN0 は 321 例 (62.8%),pN1 以 上 は 190 例 (37.2%) で ,NAC 後
95 例中 ypN0 52 例 (54.7%),ypN1 以上 43 例 (45.3%) であった .pN1 以上の
DFS および OS は pN0 に比し有意に不良であった (p < 0.05). また pN1 以上と
ypN0 とで DFS, OS に有意差は認められなかったが ,ypN1 以上の DFS は pN1
以上および ypN0 より有意に不良であった (p < 0.05). さらに ypN1 以上の OS
は pN1 以上よりも有意に不良で (p < 0.05),ypN0 に対しても不良な傾向が
認 め ら れ た (p=0.2). 一 方 NAC 後 cN0 は NAC 後 乳 癌 95 例 中 68 例 (71.6%)
で , このうち ypN0 は 45 例 (66.2%),ypN1 以上は 23 例 (33.8%) で , 両群間で
DFS,OS 共に有意差を認めず , 特に OS では両群ほぼ同等であった 【
. 考察】NAC
後腋窩リンパ節転移陽性は NAC 前に腋窩リンパ節転移陽性の乳癌の中でも予
後不良群であることを示唆しうる可能性があるが ,NAC 後 cN0 が得られるほど
NAC が奏効した乳癌では ypN1 以上が予後不良因子としての有効性は低下す
るため ,NAC 後 cN0 における SN 同定の偽陰性率上昇は NAC 未施行例に比し許
容されうるかもしれない .
473
一般セッション(ポスター掲示)
10082
ポスター掲示
10669
11297
乳房温存療法後乳房内再発に対するセンチネルリンパ節生検の
経験
乳癌腋窩再発症例から見た初回腋窩照射指針の検討
GP-2-099-01
1
GP-2-099-02
1
佐久総合病院 乳腺外科、2 佐久医療センター、3 昭和大学 乳腺外科
金沢大学 消化器・乳腺・移植再生外科、2 金沢大学附属病院 乳腺科
井口 雅史 1,2、石川 聡子 1,2、高村 博之 1、二宮 致 1、北川 裕久 1、
伏田 幸夫 1、藤村 隆 1、太田 哲生 1、川島 博子 2
石毛 広雪 1,2、半田 喜美也 1,2、工藤 恵 1,2、橋本 梨佳子 1,2,3
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】乳房温存療法後の乳房内再発に化学療法が有効であることが明ら
かになった。化学療法を行うかどうかには、再発後のリンパ節転移の有無も
考慮される。また温存療法後は腫瘍からのリンパ流が変わることが報告され
ている。乳房内再発後のセンチネルリンパ節生検 (SLNB) 施行例において、そ
の結果が治療の変更につながるかどうかを検討した。
【対象と方法】乳房温存療法後乳房内再発に対して当院で SLNB を施行した 4 例
において、背景、SLN 同定部位、転移の有無、その後の治療を調べた。
【結果】全例乳房部分切除術後に温存乳房に対する放射線療法が行われた。腋
窩に対しては 2 例に SLNB に、2 例に郭清が施行された。再発後の SLNB では、
初回手術で SLNB を行った 2 例では SLN が同定されたが、初回手術で郭清を
行った 2 例では同定できなかった。同定部位は 1 例では同側腋窩、胸骨傍、対
側腋窩であり、もう 1 例では対側腋窩であった。いずれも RI で同定され、色
素染色はみられなかった。前者では転移は認められず、後者では同側腋窩に
2 個、対側腋窩に 2 個転移が認められた。転移のなかった症例は、微小浸潤で
あったため、化学療法はせずにホルモン療法のみとした。転移のあった症例は、
再発後に既に化学療法が済んでいたためホルモン療法、両側鎖骨上への放射
線療法を行うことにした。
【考察】乳房内再発後に有効である化学療法の適応を決めるには、腫瘍の生物
学的な特性だけでなく、リンパ節転移の有無も重要である。また乳房内再発
後の SLNB では、腋窩以外に SLN が同定されることが多く報告されている。
今回 SLN を同定できたのは 2 例のみであるが、2 例ともに同側腋窩以外の SLN
が認められた。転移の有無を正確に知るには、SLN を正確に同定すること、
つまり SLNB を行う必要があると思われる。SLN 同定後の治療に関しては、1
例目においては同側腋窩、胸骨傍、対側腋窩の SLN いずれにも転移がなかっ
たため、化学療法をしない方針となった。また 2 例目においては対側腋窩転
移が放射線療法を行うかどうかの参考になり、2 例とも後療法の決定に関与す
ることになった。乳房内再発後の SLNB がその後の治療変更に寄与するのか、
症例を集積して検討する必要があると思われる。
【結語】乳房内再発 4 例に SLNB が施行され、2 例に SLN が同定された。2 例と
も同側腋窩以外の SLN が認められ、SLN の転移の有無がその後の治療の決定
にかかわった。
(目的)Z0011,IBCSG23-01,AMAROS 試験の結果を受け、乳癌腋窩治療は手
術の縮小と腋窩照射への移行期に入ってきたが,どの症例に腋窩照射を行う
べきかは不明である。当院の腋窩再発症例を検討し、適切な腋窩照射につき
考察した。(対象)当院にて経験した乳癌術後の腋窩再発症例 23 例。初発年齢
中央値 54 歳 (29-79 歳 )、初発 stage は 1:5 例 ,2:10 例 ,3:7 例、不明 1 例
であった。(結果)初回治療:初回乳房手術は温存手術:11 例 (48%)、乳房切
除:12 例,腋窩手術はセンチネルリンパ節生検 (SNB):6 例 (26%),腋窩リ
ンパ節郭清 (Ax)(郭清個数中央値 16 個)
:17 例 (74%) であった。リンパ節 (LN)
転移個数は ,0 個:8 例 (35%)、1-3 個 :5 例、4 個以上:5 例、( 不明 4 例 ) であっ
た。薬物療法は 21 例 (91%) に施行。放射線療法 (RT) は 14 例 (61% ) に施行
されるも腋窩を照射野とした症例はなく,Stage3 で RT 未施行症例が 4 例存
在した。腋窩再発時:腋窩再発までの期間の中央値は 3.6 年 (1-20.2 年 )、腋
窩単独再発が 10 例 (43% ) であった.腋窩再発部位ではリンパ節 18 例 (78%)
(level1:12 例 , 2:3 例 , 3:3 例 ),リンパ節ではない腋窩の軟部組織再発を 4 例
に認めた.手術は 13 例 (59% ), 腋窩照射は 5 例に施行された.腋窩再発後の
観察期間中央値は 35.8 か月 (2-112 か月 ) で再発死亡例 7 例 (30%) であった.
リンパ浮腫発症:初回手術後にリンパ浮腫を発症した症例は 4 例で Ax 症例中
の 23.5%(4/17 例 ) であった.一方,再発後のリンパ浮腫の発症は 11 例 (48%)
と増加し,その原因は腋窩再発の増悪が 7 例,腋窩術後合併症が 2 例,初回術
後の遷延が 2 例であった.(まとめ)1)腋窩再発症例は SNB 症例よりも Ax 症
例の方が多かった.2)術後の腋窩照射例はなく,適切な照射が腋窩再発を抑
えられた可能性がある.3)腋窩再発の約 8 割は初回手術時の LN の取り残し
であった.4)リンパ浮腫の発生率は再発後に初回手術後の 3 倍に増加した.
その要因は腋窩再発と腋窩郭清であった.(結語)腋窩再発症例の中には初回
治療によって腋窩再発を予防できたと思われる症例が存在した.SN 転移陽性
例だけでなく,ハイリスクの Ax 症例も腋窩照射の対象とするべきである.適
切な腋窩照射の選択によって腋窩再発と腋窩郭清を減らすことがリンパ浮腫
を減少させると思われる.
10819
11122
仰臥位 MRI マーキングの有用性について
演題取り下げ
GP-2-100-01
GP-2-100-02
亀田メディカルセンター 乳腺センター乳腺科
山城 典恵、戸崎 光宏、寺岡 晃、佐川 倫子、池田 奈央子、坂本 尚美、
角田 ゆう子、坂本 正明、淺野 裕子、福間 英祐、中川 梨恵、
冲永 昌悟
【はじめに】手術時の切除範囲のマーキングには US あるいは MMG が用いられ
ることが多い。しかし MRI でしか病変の正確な広がりを同定できない症例も
あり、そのような症例に対して当院では 2007 年 3 月より仰臥位MRIガイド
下マーキングを施行しており、その有用性について検討し報告する。【対象】
2007 年 3 月から 2013 年 12 月までの間に施行した術前仰臥位マーキング症
例 48 例【方法】検査前にUSを指標にマーキングを施行し、それに沿ってマー
カー(ペンローズドレーン内にブレスケアを 2cm 間隔に挿入したもの)を留
置した。仰臥位 MRI 検査を施行し、通常の腹臥位 MRI の画像を参照にしなが
ら病変の範囲を同定し、マーキングの修正を行った。【結果】48 例中 DCIS35
例 (73%)、浸潤癌 9 例 (19%)、前癌病変 (ADH,FEA など )4 例 (8%) であった。
浸潤癌 9 例のうち 3 例は術前化療症例であった。48 例中実際に温存手術を施
行したのは 44 例で 4 例は広がりが広範なため全摘術に変更となった。44 例中
断端陰性は 40 例 (91%)、断端陽性は 4 例 (9%) であった。断端陽性4例はす
べて DCIS で、下垂が強い乳房が1例、完全に病変とマーキングの位置がずれ
ていた症例が1例、遠位側および乳頭側断端陽性がそれぞれ1例であった。
【ま
とめ】仰臥位 MRI マーキングは DCIS などの non-mass lesion 症例や術前化療
症例などの術前マーキングに有用であると思われた。
474
ポスター掲示
11410
11662
DCIS に対する温存術後の乳房内再発および対側乳癌発症例の
検討
切除断端が非浸潤癌陽性となった乳癌症例の検討
GP-2-100-03
1
GP-2-100-04
1
3
市立豊中病院 外科、2 市立豊中病院 病理診断科
公立昭和病院 乳腺内分泌外科、2 公立昭和病院 病理診断科、
公立昭和病院 外科
丹羽 隆善 1、金内 一 1、岡田 尚子 1、清水 誠一郎 2、森田 恒治 3、
照屋 正則 3、上西 紀夫 3
赤木 謙三 1、大島 一輝 1、土井 玲子 2、木村 勇人 2、足立 史朗 2、
北田 昌之 1
【はじめに】マンモグラフィー検診の普及により、乳癌における非浸潤性乳管
癌(以下 DCIS)の割合が増加してきている。同時に、整容性にも配慮して、乳
房温存手術が選択される機会も増加している。根治性を損なわず、整容性に
も配慮した適切な切除範囲の設定や適応が重要と考えられる。
今回、当院で経験した DCIS 断端陽性症例(浸潤癌で、DCIS 成分の遺残を伴
う症例を含む)について、術前の各種画像検査所見を比較検討した。
【対象と方法】平成24年1月から平成25年11月までに当院で経験し
た乳癌のうち、断端陽性症例6例を対象とした。これらの超音波所見を
retrospective に、1)拡張乳管集合型、2) 扁平不整形低エコー型、3)乳管
内腫瘍型、4)のう胞内腫瘍型、5)充実性腫瘤型、の5グループに分類し、
超音波所見を中心に、CT 所見、マンモグラフィー所見を比較検討した。
【結果】病変を触知しない乳癌は 1 例、非浸潤癌と術前診断した症例は1例の
みであった。超音波所見では、扁平不整形低エコーを呈する症例が 3 例、乳管
内腫瘍型が 2 例、充実性腫瘤型が1例であった。今回集積した症例では、MRI
撮影されているのは1例のみであり、病変を描出できず、MRI 陰性例であった。
また、患者要因により MRI、CT ともに術前評価が施行できなかった症例が 1
例、アレルギー体質により造影を伴う検査が施行できなかった症例が1例み
られた。
【結語】当院における断端陽性症例を検討した。今回集積した断端陽性症例に
おいては、比較的高齢症例が多く、術前画像診断が十分におこなえなかった
症例が散見された。社会の高齢化に伴い、より合併症を多く持ち、術前画像
診断がおこなえない症例も増加する可能性があり、そのような症例では特に
慎重な診断が求められると考えられた。
11702
10830
マンモトーム生検で診断された非浸潤性乳管癌における癌病変
の広がりと病理的因子の検討
外側胸動静脈を温存した Lateral tissue flap による整容性の向
上の取り組み
GP-2-100-05
GP-2-101-01
東北大学医学部 腫瘍外科
1
江幡 明子、石田 孝宣、鈴木 昭彦、多田 寛、渡部 剛、宮下 穣、
森 奈緒子、大内 憲明
田邊 匡 1、武者 信行 1、石原 法子 2
【緒言】ステレオガイド下マンモトーム生検 (MMT) で非浸潤性乳管癌 (DCIS)
と診断された症例は、CT、MRI、超音波などでの広がり診断が難しく、切除
範囲設定に難渋することがある。【目的】MMT-DCIS における適切な切除範囲
設定のために、石灰化と癌病変の広がりを比較することを目的とした。【対象
と方法】東北大学病院で 2008 年 1 月から 2012 年 12 月までに、MMT で DCIS
と診断された 65 例のうち乳房部分切除術を施行した 30 例について、乳頭方
向に対する標本マンモグラフィ上の石灰化の広がり ( 石灰化長径 ) とマッピン
グ上で乳管内癌病変の広がり ( 腫瘍長径 )、MRI 上の癌病変の広がり (MRI 長
径 ) を測定した。また、病理的因子 ( コメド壊死の有無 ,ER,PR,HER2) につい
ても検討した。
【結果と考察】石灰化長径は腫瘍長径や MRI 長径と正の相関関
係にあった ( 各々 p=0.0006,p=0.0274)。はみ出し長径 (= 腫瘍長径 - 石灰化
長径 ) を定義すると、最小値 - 最大値は -24-47mm、中央値 11.35mm であり、
マージンを 40mm つけると 28 例 /30 例 (93%) は腫瘍も含め取りきれること
になる。また、はみ出し長径は石灰化長径と負の相関関係にあった ( 図1,
p=0.0035) ため、石灰化長径 30mm 以下の症例であってもマージンを十分設
定する必要がある
ことが分かる。ま
た、コメド壊死有
り 群 (17 例 ) で は、
HER2 陽 性 率 が 有
意に高く(p=0.0174)、
はみ出し長径は長
い可能性があった
(p=0.2496) ため、
切除範囲を広めに
とってもよい可能
性がある。
475
済生会新潟第二病院 外科、2 済生会新潟第二病院
当科では乳房外側病変の温存療法時に Lateral tissue flap(LTF) を用いた欠損
部充填を行い整容性の向上を図っている。また、LTF 作成時には外側胸動静
脈 (LTA・V) を確認温存し、LTF の良好な血流を確保している。【方法】乳房 [C]
~ [D] 領域の部分切除後に LTF を作成・充填した 40 例 (LTF 群 ) と残存乳腺の
剥離・授動のみ行った 28 例 ( 対照群 ) 計 68 例につき検討した。センチネルリ
ンパ節生検例 (SNB 例 )、腋窩郭清例 (Ax 例 ) は LTF 群で 22 例と 18 例、対照群
で 15 例と 13 例であった。LTF 群では可能な限り乳房外側切開、対照群では腫
瘍直上の皮膚切開で手術を施行、LTF 群では外側胸動静脈を確認・温存した。
ドレーンは Ax 例では全例に留置、SNB 例では術中に要否を判断した。整容
性評価には日本乳癌学会沢井班の評価法を用いた。【結果】LTF 群は平均腫瘍
径 22.8mm(対照群 23.3mm)、平均手術時間 167 分(Ax 例 173 分、SNB 例
161 分)、対照群 121 分(Ax 例 132 分、SNB 例 111 分)、平均出血量 54ml(Ax
例 67ml、SNB 例 43ml)、対照群 45ml(Ax 例 74ml、SNB 例 19ml)、術後平
均在院日数は Ax 例 5.9 日(対照群 5.5 日)、SNB 例 5.3 日(対照群 2.8 日)であっ
た。センチネルリンパ節 (SN) と LTA・V の位置関係は 15 例で確認され、SN
が LTA・V 本幹近傍にある例が 6 例、SN に LTA・V 分枝の流入する例が 3 例、
SN が LTA・V 本幹近傍にあり分枝も流入する例が 5 例、両者が近接していな
い例が 1 例であった。LTF 群の整容性評価総点数は平均 9.2 点(対照群 8.3 点)、
このうち患者による主観的評価は平均 7.6 点(対照群 7.3 点)、計測による客観
的評価は平均 1.7 点(対照群 1.0 点)であった。LTF 群の 1 例で術後出血による
再手術を要し、2 例で血腫の穿刺、LTF 群と対照群の各 3 例で貯留リンパ液の
感染を生じて穿刺と服薬を要した。【結論】SN は LTA・V と近接している場合
が多く、SNB 時の損傷に注意が必要である。LTA・V を温存し、LTF を用いた
欠損部充填を行う術式では、術中出血量の増加、手術時間の延長と SNB 例に
おける術後在院日数の延長を認めたが、血流良好で軟らかな有茎脂肪弁を作
成可能で、整容性に関する主観的及び客観的評価が向上した。
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】近年、マンモグラフィーの普及により DCIS は増加傾向にある。乳
管内病変は切除範囲が問題となることがあるが、術前画像診断能の発達と術
中病理検索により乳房温存が選択される。しかしながら術後病理診断で断端
陽性となる場合も多く、その際遺残が多いと考えられる場合は再手術となる
が、数本の乳管内病変であれば放射線照射にて対処される。また DCIS 術後の
薬物療法の追加は局所再発や対側乳癌の発症を減少させるという報告がある。
今回、我々は DCIS に対して乳房温存術後に生じた乳房内再発さらに対側乳癌
発症例を検討した。【対象及び方法】2008 年 10 月~ 2013 年 9 月までの過去
5 年間に DCIS 温存術後に再発が認められた 13 例を対象とした。全例乳房内
再発、新生多発あるいは対側乳癌発症で、局所皮膚、リンパ節、遠隔転移な
どは認められなかった。全例術中に迅速病理検査にて断端を確認されている
が、術後の病理結果にて断端陽性の場合、遺残が少ないと考えられる場合は
放射線治療で対処した。一方遺残が多いと考えられ、再手術で乳房切除となっ
た症例は今回の検討から除外した。【結果】13 例の初回手術は 2001 年 12 月~
2008 年 11 月までの 7 年間で、同期間の DCIS に対する温存施行は 86 例、従っ
て発現頻度は 15.1%で観察期間中央値は 104 カ月(59 ~ 144 カ月)であった。
13 例の発現までの期間中央値は 61 カ月(23 ~ 139 カ月)で、内訳は乳房内再
発 7 例、新生多発 2 例、対側乳癌 4 例で全体(86 例)に占める割合はそれぞれ、
8.1%、2.3%、4.7%であった。術後照射は 13 例中 11 例に施行され、薬物療
法施行は 1 例のみ、12 例は無治療であった。乳房内再発の 7 例中 4 例は術後
断端陽性で、うち 3 例は ER 陽性であった。新生多発の 2 例中 1 例、対側乳癌
の 4 例中 2 例は ER 陽性であった。全例手術が施行され、無再発生存中である。
【考察】症例数は少ないが、術後 15.1%の発現頻度は諸家の報告と比べて遜色
のない結果であった。今回ほとんどの症例で術後薬物療法は施行されていな
いが、半数以上で ER 陽性であり、個々の症例によっては術後薬物療法の追加
は有効である可能性があるものと考えられた。再手術後の病理結果に関して
も検討する。
10531
10579
GP-2-101-02
ポスター掲示
GP-2-101-03
Lateral mammoplasty と Shutter technique を用いた乳房
温存術
乳房縮小固定手技を導入した Oncoplastic breast surgery
(乳腺部分切除+乳房縮小固定術)
中頭病院 乳腺外科
鹿児島大学 消化器・乳腺甲状腺外科学
座波 久光
喜島 祐子、吉中 平次、平田 宗嗣、新田 吉陽、江口 裕可、野元 優貴、
中条 哲浩、有馬 豪男、夏越 祥次
一般セッション(ポスター掲示)
はじめに : 外側領域の温存療法後の変形で最も多くみられるのは,乳頭乳
輪 の 外 側 方 向 へ の 変 位 や 変 形 で あ る. 我 々 は そ の 対 応 策 と し て,lateral
mammoplasty (LMP) や shutter technique (ST) を 使 用 し て き た の で、 実
際の術式の紹介とその成績について報告する.対象と方法 :2009 年 3 月か
ら 2013 年 5 月までに当院で施行した LMP と ST を利用した乳房温存術 30 例
について検討を行った.観察期間の中央値は 2 年 5 ヶ月であった.主な適応
は,外側領域の温存療法後に乳頭乳輪の変位や変形が予想される症例で,禁
忌は乳頭乳輪直下の組織厚が 5mm 以上,確保できない症例とした.LMP と
ST とも腫瘍直上の皮膚ごと 20% 以上の部分切除を行い,乳頭乳輪の移動
(recentralization)をともなう remodelling を行った.整容性は日本乳癌学会
沢井班による整容性評価を実施し,11-12 点を Excellent,9-10 点を Good,
7-8 点を Fair,6 点以下を Poor として集計した.結果 : 病理学的腫瘍径の中央
値は 1.8cm,乳管内成分の広がりを加えると中央値 3.1cm であった.切除重
量の中央値は 58.5g,手術時間の中央値は 95 分であった.5mm 定義の断端
陽性は 9 例 (30.0%) と高かったが,そのほとんどが乳頭側での極少量の乳管
内病変で,2mm 未満は 4 例 (13.3%),断端面へ露出していたのは 1 例 (3.3%)
であった.合併症は 4 例 (13.3%) に認めたが、いずれも保存的に軽快し,再
手術を要した症例はなかった.整容性評価では,70% が Good 以上であったが,
長い創を伴うため Excellent 症例は少なかった.一般的に形態は良好であり,
乳頭乳輪の変位や変形をきたした症例はなかった.ただし,長い創の一部が
肥厚性瘢痕を形成した症例や,切除容量が多い場合の左右差が問題となる.
肥厚性瘢痕は照射を省略した症例が顕著になる傾向があった.結語:LMP と
ST を用いた温存術は創が長くて目立つという欠点があるが,切除容量の増加
と良好な形態を維持することが可能な術式である.乳頭側断端への配慮が必
要だが,日本人においても外側領域の腫瘍に対して,特に脂肪性乳腺の場合
は有用な術式である.
乳房下垂の有無別に一期的に乳房外組織補填や乳房縮小固定手術を応用した
Oncoplastic Breast Surgery(OBS) を実施している.乳房下垂を有する症例
の乳房温存術に対する (OBS) の結果を報告する.
【対象と方法】'06/3-'13/12
に乳房温存術適応の下垂乳房 46 例 (46-85, 平均 64.4 歳 ) に対し,病変部切
除と乳頭乳輪の位置固定を伴う OBS を実施した.腫瘍占居部位別に術式を選
択 し た.J-mammoplasty ( 以 下 MP)15 例,lateral MP 9 例,peri-areolar
MP 9 例,inverted T-MP 5 例,vertical-scar MP 2 例 , horizontal MP2 例,
amputation, radial MP, free grafting of NAC を各 1 例に実施.左右対称性
を得るための対側乳房への手術は IC を得られた 32 例に実施.両側実施症例を
中心に報告する.【結果】1) 両側手術症例 (n=32) の平均手術時間は 162 (96295) 分 2) 患側手術症例 (n=14) の平均手術時間は 49(31-66) 分 3) 摘出乳腺
の重量は患側:対側= 178g(30~357):189(37~368) 4) 乳輪乳頭の血流不
全を 7 例に認めたが,全例保存的に良好な上皮化を得られた.5) 観察期間中
央値 45 月(6-94)にて片側手術1例にリンパ節再発.6) 術後に MMG,US 上,
明らかな瘢痕像は認められず,局所再発・新生癌発見を妨げる所見は認めない.
7) 整容性評価では両側手術例の 88%,片側手術の 72%が good-excellent【結
語】
下垂乳房の乳癌症例では,
余剰な皮膚・組織を合併切除する OBS が 有効で,
とくに両側手術により良好な結果が得られた.
10366
10525
下部領域乳癌に対する乳房温存術時の乳房形成方法
温存乳房内再発の減少と温存乳房の整容性を両立させる乳房温
存療法の工夫
GP-2-101-04
GP-2-101-05
三重大学医学部乳腺センター
1
花村 典子、山下 雅子、木村 弘子、伊藤 みのり、中村 卓、柏倉 由実、
野原 有起、今井 奈緒、澁澤 麻衣、小川 朋子
【目的】乳房下部領域の乳房温存術における整容性は、一般的に不良とされて
いる。この領域の整容性を向上させるためには、症例に応じた乳房形成の方
法を選択することが重要である。当科で経験した下部領域乳癌の術式につい
て検討した。【対象】2006 年 4 月~ 2013 年 10 月に同一術者が温存術を施行
した下部領域乳癌 28 例。【結果】I 法 : 下溝線部脂肪筋膜弁による充填法 13 例、
II 法 : 縮小術 8 例、III 法 : 背部穿通枝皮弁 3 例、IV 法 :modified round block
technique(MRBT)+abdominal advancement flap(AAF) 1 例、その他 3 例。
平 均 手 術 時 間 :I 法 148 分 (Ax 2 例 含 む )、II 法 108 分 (Ax 2 例 含 む )、III 法
196 分、IV 法 111 分。平均出血量 :I 法 59g、II 法 30g、III 法 27g、IV 法少量。
平均切除量 :I 法 22%、II 法 21%、III 法 38%、IV 法 15%。【合併症】I 法 : 脂
肪壊死 3 例。脂肪硬化 2 例。2008 年までの症例は全例、下溝線部脂肪筋膜弁
で施行しており、下垂した脂肪性の乳腺の場合、これらの合併症が多かった。
2009 年より適応を考え、下垂した脂肪性の乳腺に対しては、本手技は施行せ
ず、脂肪壊死の合併症はなくなった。II 法 : 無し。II 法 : 術後出血 1 例。IV 法 :
無し。【整容性】I 法 :Excellent(E)1 例、Good(G)4 例、Fair(F)4 例、Poor(P)4
例 ( 内 3 例が脂肪壊死症例 )。II 法 :G 5 例、F 2 例、P 1 例。III 法 :E 1 例、G 1 例、
P 1 例。IV 法 :E 1 例。【考察】初期の症例は適応をあまり考えずに手術を施行
していたため、合併症が多く、合併症を起こした症例は整容性も不良となっ
ていた。乳房の形態や切除量を考慮して術式を選択する事が重要と考えられ
た。【現在の適応】I 法 : 高濃度~不均一高濃度症例、II 法 : 下垂した脂肪性乳
房症例、III 法 : 腫瘍が外側に存在し、30% 以上の広範囲切除例。IV 法(AAF
と MRBT など volume displacement technique との組み合わせ):AAF は比較
的どの形態の乳房に対しても、皮弁の血流が安定しており合併症が起りにく
いので、AAF が施行できる良好な視野が確保でき、15% までの切除例では第
一選択としている。【まとめ】下部領域乳癌の乳房温存術時に、合併症なく良
好な整容性を得るには、乳房の形態と切除量を考慮した術式選択が重要であ
る。
乳腺クリニック 児玉外科、2 京都大学医学部 乳腺外科
児玉 宏 1、三瀬 圭一 1、菅 典道 1、佐藤 史顕 1,2、松本 純明 1,2
【緒言】我々は、1987 年から乳房温存療法 ( 術後照射を併用する乳房温存手術 )
を開始し、25 年余りが経過した。この間、乳房温存療法の適応を拡大しつつ、
乳腺切除範囲の縮小を行ってきたが、その良好な長期予後が確認されるとと
もに、温存乳房内再発も低率で推移している。今回、自験乳房温存症例をも
とに、温存乳房内再発の減少と温存乳房の整容性を両立させる乳房温存療法
の工夫につき報告する。【手術】乳房温存手術の術式は、当初 60 度の乳房扇状
部分切除を、1992 年以降は 2.0cm マージンの乳房円状部分切除を主に行い、
2008 年からはそのマージンを 1.5cm に縮小している。多発腫瘤症例や乳管
内癌広範症例に対しては複数の円状部分切除あるいは扇状部分切除で対応し
ている。術後の整容性として、術創の大きさよりも乳房全体の形状や乳頭の
変位等を重視し、皮切は乳頭レベルの外側横切開や乳房外縁に沿った切開を
用いて、乳頭直下を横断する広範囲の厚皮弁を作成のうえ、温存乳房組織に
よる乳腺欠損部の充填を行っている。【断端検索】術中に切除断端の乳頭側、
乳頭対側、側方の 4 ヶ所をチタン製クリップの数と大きさを変えてマーキン
グを行い、同時に乳房部分切除標本の軟線撮影を施行している。術後に 5mm
全割ではなく腫瘍中心から断端方向へ放射状切り出しによる断端の病理検索
を行っている。【術後照射】断端陰性例には CT シミュレーションのうえ全乳房
照射 50Gy を、5mm 以内の断端陽性例に対して再手術は全くせず、全乳房照
射 50Gy に加えて boost 照射 10Gy を施行した。乳房温存療法開始当初は腫瘍
床を中心とした boost 照射野を設定していたが、1994 年以降は前述の断端ク
リップを標的とした boost 照射を施行している。【温存乳房内再発】乳房温存
療法後 5 年以上経過した 2194 例を対象とした。再発症例を 387 例 (17.6%)
に認め、うち初再発が温存乳房内再発の症例は 76 例 (3.5%) で、その無再発
期間の中央値は 79 ヶ月であった。断端陽性率は 30.3% で、断端陽性 665 例
中 28 例 (4.2%)、断端陰性 1529 例中 48 例 (3.1%) に温存乳房内再発を認め
た。断端クリップを標的とした boost 照射施行以降の乳房内再発は、断端陽
性 575 例中 15 例 (2.6%)、断端陰性 1246 例中 32 例 (2.6%) であり、断端状
況にかかわらず低率に抑えられている。【結語】手術手技の工夫、断端の詳細
な病理検索、および適確な術後照射により、温存乳房内再発を低率に制御し、
かつ温存乳房の良好な整容性を保つことは可能である。
476
ポスター掲示
10027
11621
乳腺部分切除術後、断端陽性例に対する手術についての検討
当科における乳房温存手術・断端陽性症例の検討
GP-2-101-06
1
GP-2-101-07
JR 東京総合病院 外科、2JR 東京総合病院 臨床検査科
1
長野赤十字病院 外科、2 長野赤十字病院 乳腺内分泌外科、
長野赤十字病院 血液内科、4 中澤ウィメンズライフクリニック、
5
長野赤十字病院 病理部
3
尾身 葉子 1、石橋 祐子 1、平田 勝 1、関 邦彦 2
病理組織学的断端陽性は、乳房部分切除後の局所再発のリスク因子であるた
め、切除断端陰性が望ましいとされている。切除断端が陽性例に対しては、
追加切除を行う、あるいは放射線照射で対処することが多い。しかし追加で
採取された検体には、癌が認められないことをしばしば経験する。今回我々
は、乳腺部分切除を行い、断端陽性となったため追加切除を行った症例のうち、
追加切除検体に癌の遺残を認めた症例の特徴について検討した。対象は 2010
年 1 月から 2013 年 10 月までに乳癌に対して乳房部分切除術後に、追加切除
を行った 20 例。15 例に追加部分切除が行われ、5 例に残存乳房全摘が行われ
た。追加切除検体に癌が残存していた症例は 10 例で残りの 10 例には追加検
体に癌は認められなかった。断端までの距離は、癌が露出しているものから、
真の断端に最も近い割面に癌が存在するもの(5mm 以内)まであった。断端
陽性となっている部分が乳管内病変でなく浸潤癌である 2 例、多発病変のため
断端陽性となっている 2 例ではいずれも、追加検体に癌が存在した。主病変の
一部が断端陽性となっている症例について、癌露出の有無、切除検体と腫瘍(乳
管内成分を含む)の長径の比、面積比、断端陽性部分の大きさについて検討し
た。残存乳腺に癌を認めた症例では、長径の比が有意に高かった(0.59 ± 0.12
v.s. 0.72 ± 0.13: p=0.039)であったが、その他の因子では有意差を認めな
かった。浸潤癌が断端に存在する、多発病変のため断端が陽性、切除した乳
腺に対して腫瘍径が大きい症例では、断端を陰性にするために追加切除が必
要である可能性が高いと考えられた。一方で半数が追加切除検体に癌が確認
できず、断端組織の焼灼や、遺残した癌が微小であることが原因と考えられた。
追加切除を行う患者には、このような症例が存在することを説明しておくこ
とが重要であると考えられた。
新城 裕里 1、大野 晃一 2、福島 優子 2、浜 善久 2、上野 真由美 3、
横山 史朗 4、渡辺 正秀 5
【目的】当科で原発性乳癌と診断され乳房温存手術を施行し断端陽性となった
症例について検討した。
【方法】2003 年から 2012 年までの 10 年間に当科で乳
房温存手術を施行した 431 例中、断端陽性症例 44 例(断端より 5mm 以内を
含む)について、臨床病理学的因子を検討した。
【結果】平均年齢 52.1 歳 (32~78
歳 )、 臨 床 病 期 は 0 期 10 例、I 期 19 例、IIA 期 6 例、IIB 期 5 例、IIIA 期 3
例、IIIB 期 1 例であった。術式は、Bp 31 例、Bq 13 例で、一期的再建を施行
したのは 14 例であった。組織型は、DCIS 10 例、硬癌 15 例、乳頭腺管癌 7
例、充実腺管癌 2 例、特殊型 10 例 ( うち粘液癌 2 例、小葉癌 6 例、浸潤性微小
乳頭癌 1 例、神経内分泌 1 例 ) で、サブタイプ別では、luminalA/B 35/1 例、
HER2 1 例、トリプルネガティブ 7 例とホルモン陽性乳癌が多く、リンパ節転
移は 9 例で認めた。病理学的に乳管内進展を 26 例 (59%) で認め、とくに乳頭
側断端では 27 例 (61%) が陽性となった。追加切除は 18 例 (40.9%) に施行し、
追加切除検体の病理組織は DCIS2 例、浸潤癌 6 例、癌遺残なしは 8 例であった。
全乳房照射を 40 例に行い、うち 21 例では boost 照射を追加した。ホルモン
陽性例では内分泌療法を行い、トリプルネガティブ例では術後化学療法を施
行した。断端陰性症例では再発 14 例 (3.62%)、うち局所再発を 3 例に認め
たが、断端陽性症例では再発 1 例(2.27%、2 年後に肺転移)、局所再発は認
めなかった。【考察】乳管内進展を伴う症例で断端陽性が多く、術前検査で乳
管内進展が疑われるものは乳頭側の切除範囲に特に注意すべきと考えられた。
予後に関しては、断端陽性症例においても、その範囲によっては追加切除を
行わず、放射線治療や薬物療法で制御可能と考えられた。
10442
乳房部分切除術施行症例における乳頭側 surgical margin の検
討
Breast conserving surgery after primary systemic
chemotherapy in cT3-4 breast cancer patients
GP-2-101-08
1
2
GP-2-101-09
東京女子医科大学東医療センター 乳腺科、
東京女子医科東医療センター 病院病理科
国立がん研究センター中央病院 乳腺外科
小倉 薫 1、平野 明 1、服部 晃典 1、井上 寛章 1、宮本 礼子 1、上村 万里 1、
中安 靖代 1、大久保 文恵 1、木下 淳 1、藤林 真理子 2、清水 忠夫 1
(はじめに)当院では 1987 年から乳房温存術を開始し、現在では約 6 割の症例
に乳房温存術を施行している。方法は乳頭側への乳管内進展を考慮し超音波
を用いて腫瘤から乳頭側 2cm 他側 1cm の surgical margin をつけて行う乳房
部分切除術 (Bp) である。しかし、画像診断の進歩に伴い乳管内進展の術前評
価が正確になったことから、画像診断に基づいた切除範囲の決定は安全性お
よび整容性の面からも望まれる。今回、乳頭側 surgical margin の妥当性につ
いて retrospective に検討した。(対象)2010 年 1 月から 2011 年 12 月までに
Bp を施行し、かつ乳頭腫瘤間距離が 1cm 以上あった 116 例を対象とした。術
前薬物療法施行例、同側多発例は除外した。(方法)術前に造影 MRI にて乳管
内進展の術前評価を行った。Surgical margin は原則として乳頭側 2cm 他側
1cm であるが、乳管内進展の術前評価をもとに 1cm、1.5cm、2cm、2.1cm
以上とした。病理学的検索は規約に則り行い、癌の広がりをマッピングした。
切除断端 5mm 以内に癌を認める場合を断端陽性とし、切除範囲と切除断端陽
性率について検討した。(結果)乳頭側 surgical margin は 1cm 12 例、1.5cm
19 例、2cm 72 例、2.1cm 以上 13 例であった。断端癌陽性は 29 例 (25%)
あり、浸潤巣が 3 例、非浸潤巣が 25 例であった。乳頭側で癌陽性は 6 例 (5%)
で、1 例が浸潤巣、4 例が非浸潤巣、挫滅で評価不能が 1 例であった。乳頭側
断端癌陽性は 2.1cm 以上が 3 例 (23%)、2cm が 3 例 (4%)、1.5cm、1cm は
ともに 0 例 (0% )、2cm 未満で有意に少なかった (p=0.04)。全方向での切除
断端陽性率は 1cm 3 例 (25%)、1.5cm 5 例 (20%)、2cm 15 例 (20%)、2.1cm
以上 6 例 (46%) で差はなかった (p=0.33)。(まとめ)画像診断に基づいた切
除範囲の決定は概ね妥当であり、病変が限局していると判断される症例では
乳頭側 surgical margin は 1cm でも問題ないと思われた。しかし、広がりの
ある症例においては surgical margin を広げても断端陽性になること、乳頭側
以外の断端陽性も高いことなどから切除範囲の決定には注意を払い慎重に行
うことがあらためて必要と考えられた。
477
神保 健二郎、小倉 拓也、垂野 香苗、麻賀 創太、北條 隆、木下 貴之
Background Breast conserving surgery (BCS) after primary systemic
chemotherapy (PST) is widely accepted for the treatment of advanced
operable breast cancer, sometimes even in the tumor size more than
5 cm (cT3) or tumors with direct extension to chest wall or skin (cT4).
The aim of this study is to retrospectively assess the oncologic safety
of BCS after PST in terms of local recurrence (LR) in cT3-4 patients.
Patients and Methods Subjects comprised of 169 consecutive patients
with cT3-4 primary breast cancer who underwent surgery from 2004
to 2011 in our institution. 22 patients underwent surgery first, and 147
patients underwent surgery after PST (mastectomy; 99 patients, BCS;
48 patients). LR-free survivals between each group were analyzed with
Kaplan-Meier analysis, and evaluate the predictive factors with Cox
proportional hazards modeling for LR in patients after PST. Results The
5-year LR-free survival rates were 95.2% in the initial surgery group
and 92.2% in the PST group (P =0.673). In the PST group, the 5-year
LR-free survival rates were 90.6% in the BCS group and 93.2% in the
mastectomy group (P=0.726). In a multivariate Cox regression model,
histological type (special type to invasive ductal: Hazard ratio, 20.5;
P = 0.016), lymphovascular invasion (positive to negative: Hazard
ratio, 7.9; P = 0.046), and higher histological grade (grade 3 to grade
1-2: Hazard ratio, 49.0; P = 0.008) were identified as independent
predictors for LR in PST. Conclusions Despite some limitations,
our findings suggested that cT3-4 breast cancers are oncologically
acceptable for BCS after PST in terms of LR. Biological characters
including histological type, lymphovascular invasion and histological
grade are predictive factors for LR in PST.
一般セッション(ポスター掲示)
10571
ポスター掲示
11809
11485
術前薬物療法後の乳房温存術を安全に行うための virtual
navigation technique
乳房部分照射と全乳房照射を用いた乳房温存療法の予後と冠疾
患に及ぼす影響について
GP-2-101-10
GP-2-101-11
1
帝京大学ちば総合医療センター 外科
東京西徳洲会病院 乳腺腫瘍センター、
東京西徳洲会病院 放射線医学センター、3 井上レディースクリニック、
4
瀬戸病院
2
鈴木 正人、山崎 将人、首藤 潔彦、小杉 千弘、松尾 憲一、平野 敦史、
白神 梨沙、田中 邦哉、幸田 圭史
一般セッション(ポスター掲示)
術前薬物療法(PST)後の乳房温存術は切除範囲の決定が難しい場合が少なく
無い。また整容性を確保するためには、事前に切除量の予測は不可欠である。
術者の経験に基づく術前評価だけでは安全かつ確実な手術は一般化しない。
現在の医療現場はオーダリングシステムをはじめとして電子カルテや PACS
(Picture Archiving & Communication System)など多くのデジタル情報で
成り立っており、特に画像診断はほぼ全てがデジタル化されている。その画
像には DICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine) という規
格が用いられている。当施設では乳癌全例に MD - CT による評価をしている
が、 通 常 の 2 次 元 画 像 に 加 え、 外 科 医 が 自 分 の コ ン ピ ュ ー タ(PC)上 で
DICOM 画 像 を 3 次 元 構 築 し 手 術 の 補 助 と し て い る。OsiriX と い う open
source software を利用する事によってコストをかけず、なおかつ容易(one
click の み )に 精 緻 な 3 次 元 画 像 を 作 成 し、 そ の 画 像 を 患 者 の 体 表 に
superimpose する virtual navigation surgery を考案し報告してきた。しか
し、体表という立体に画像を投影すると腫瘍の部位によっては誤差が生じる。
それを補完するために projection mapping の技法を応用することを考えた。
より精密な mapping のためには高価な software と機器が必要になるが、安
価な application software と小型 projector での環境構築を現在試行中であ
る。PST 後の温存術の場合、PST を行う前の画像を用いて virtual navigation
すれば本来腫
瘍が存在した
場所を同定で
き る。OsiriX
を用いて予定
切除量の計測
も可能である
た め、 欠 損 部
の充填にあて
る組織を事前
に検討できる。
それらについ
て供覧する。
佐藤 一彦 1、渕上 ひろみ 1、水野 嘉朗 1、竹田 奈保子 1,3、下 貴裕 2、
窪田 淳 2、井上 裕子 3、瀬戸 裕 4、加藤 雅宏 2
【はじめに】乳房温存術後の照射には、その期間短縮を企図した部分照射
(PBI:Partial Breast Irradiation) が 期 待 さ れ、 い く つ か の 大 規 模 臨 床 試
験においてその有用性が報告されている。一方で、標準的な全乳房照射
(WBI:Whole Breast Irradiation) による心臓への照射が冠疾患のリスク増加
に関与することも報告されており、今後は症例ごとに術後照射の方法を検討
する必要があると思われる。我々は院内倫理委員会承認のもと小線源を用い
た PBI を試みているが、今回はその比較的長期の予後と左冠動脈領域への照
射量を同期間の WBI 症例と比較した。【方法】原則として温存術後には全例
WBI を行うが、センチネルリンパ節転移陰性、40 歳以上、腫瘍径3cm以
下で患者が希望する場合には PBI を施行している。温存術中に術前の CT によ
る照射計画を参考にアプリケーターを刺入し、小線源を用いて照射を行った。
術直後に再度治療計画を立てるが、標的は cavity 周囲より 1-1.5cm 外側に設
定し、術当日より 1 回 4Gy を 5-6 日間で総線量 32 Gyを照射している。WBI
は 1 回 2Gy 総線量 50Gy 照射した。若年者や断端陽性例においては適宜 10Gy
の boost 照射を腫瘍床に追加し、更にリンパ節転移 4 個以上の症例には、腋窩
及び鎖骨部位に RNI を追加した。術後は年1回のマンモグラフィー及び乳房
MRI により詳細な経過観察を行っている。尚、術前化学療法例は本解析から
除外した。【結果】2007 年 9 月~ 2013 年 12 月に温存手術を施行した 353 例
( 観察期間中央値 3.0 年 ) を対象とした。PBI は 212 例 ( 平均 57.1 歳 ) に施行さ
れ、局所再発 3 例 (1.4%)( 鎖骨上 1 例、同側乳房 2 例 )、他病死 1 例であった。
WBI は 141 例 ( 平 均 50.7 歳 ) に 施 行 さ れ 局 所 再 発 3 例 (2.1%)( 鎖 骨 上 1 例、
同側乳房 2 例 )、遠隔転移 3 例 ( 癌死 1 例 ) と、局所再発率に有意な差は認めな
かった (p=n.s.)。また、左冠動脈前下行枝 (LAD) 領域への照射は、右乳癌症
例において PBI では認められず、WBI では平均 38.3cGy。左乳癌症例におい
ては PBI で平均 19.6cGy( 内側 30.6cGy、外側 10.8cGy) に対して WBI では平
均 201.2cGy と明らかな差を認めた (p < 0.0001)。【結語】適切な症例選択に
より温存術後の照射として、PBI は WBI に代わりうる可能性があり、更に冠
疾患のリスク増加が危惧される症例にはより有用な手段となりうることが示
唆された。
11714
11312
乳房温存術後の乳房内再発に対して術式は?また術後化学療法
は必要か?
乳房温存術後局所再発例の検討
GP-2-102-01
1
GP-2-102-02
JA 長野厚生連佐久総合病院 乳腺外科
広島市立広島市民病院 乳腺外科、2 広島市立広島市民病院 腫瘍内科
大谷 彰一郎 1、吉村 友里 1、梶原 友紀子 1、河内 麻里子 1、河野 美保 2、
伊藤 充矢 1、檜垣 健二 1
[ はじめに ] 乳房温存手術はすでに標準治療法として確立されているが、乳房
温存術後の乳房内再発に関する標準術式は乳房切除術が基本とされているが
まだエビデンスが少なく検討の余地を要している。また乳房内再発に対して
手術すれば予後は同じといわれているが術後治療の影響もあまり検討されて
いない。[ 対象と方法 ]1988 年より 2012 年までに当院で施行した乳房温存手
術 3310 例中、乳房内再発をきたした 102 例 (3.1%) を対象とし治療成績に
関して検討を行った。[ 結果 1] 炎症性乳癌型以外の乳房内再発に対してサル
ベージ手術として乳房切除術(Bt)を 48 例に再度乳房温存術(Bp)を 47 例に
施行した。術式別のサルベージ手術後の 5 年生存率は Bt 群が 86%、Bp 群が
89% と有意差はなく良好であった。ただし再発後 Bp を施行した 47 例のうち
19 例に再々発を認め、乳房温存術後の再発に対する再度温存術は厳重なフォ
ローアップが必要であると考えられた。[ 結果 2] 術後治療として化学療法を
施行した症例は 32 例、化学療法非施行例が 63 例でありそれぞれの 5 年生存率
は化学療法施行群で 84%、非施行群で 77% と有意差(p=0.042)をもって化
学療法施行群で良好であった。また ER 陽性群では化学療法施行例と非施行例
では 5 年生存率に有意差を認めなかったが、ER 陰性群では化学療法施行例の
5 年生存率は 77%、非施行例は 55%と有意差 (p=0.021) をもって化学療法
施行群で良好であった。[ 結語 ] 乳房内再発症例に対する再度温存術は一つの
治療選択肢になりうると、また乳房内再発で ER 陰性症例には術後に化学療法
追加が予後の改善に寄与すると考えられた。
半田 喜美也、石毛 広雪
乳房温存術 ( 以下、Bcs) 後の同側乳房内再発 ( 以下、IBTR) は術前画像診断に
おける乳管内進展や副病変の把握、術中迅速病理診断により断端陽性が回避
されるようになっている。一方で IBTR 症例は現実的に存在し、治療の如何に
よっては予後へも影響するとされる。1992 年 1 月~ 2013 年 12 月までに当
院で行った Bcs 症例のうち同側乳房内再発(以下、IBTR)23 例を後ろ向きに
検討した。対象は年齢 28 歳~ 89 歳(中央値:49 歳)、Stage 別では 0:15 例
(65.3%)、1:4 例(17.3%)、2A:2 例(8.7%)、2B:2 例(8.7%)、組織型
で は DCIS 9 例 (39.1%),papillotubular ca.3 例 (13%),solid-tubular ca.
3 例 (13%),scirrhous ca. 5 例 (22%),invasive lobular ca.1 例,Paget 病
1 例 (4.3%),malignant phyllodes tumor 1 例 (4.3%) で あ っ た。Bcs 後 放
射線治療は照射 12 例 (52%),非照射 11 例 (48%) であった。21 例 (91%) は
IBTR 単独の再発であったが,3 例(13%)は遠隔再発を伴っており、原発巣
はいずれも invasive ca. であった。再発時期は術後平均 6 年(中央値:5 年)
で、初回手術後照射例と補助薬物療法施行例では晩期再発の傾向が見られた。
IBTR 後の治療においては、残存乳房切除と subtype に見合った薬物治療にて、
その後の遠隔再発は概ね回避されている。IBTR と同時期に遠隔再発をきたし
ているものは予後不良であった。整容性の問題に対しては検討の余地がある。
IBTR 症例に対する治療の現状につき,若干の文献的考察を含め報告する。
478
ポスター掲示
11255
11452
乳癌術後温存乳房内再発あるいは同側異時性乳腺悪性腫瘍 14 例
の検討
術前薬剤治療後の乳房温存手術における乳房内再発の検討
GP-2-102-03
GP-2-102-04
1
3
釧路労災病院 外科
小笠原 和宏、河合 朋昭、小林 清二、島田 慎吾、小林 篤寿、徳渕 浩、
小柳 要、木井 修平、草野 満夫
【目的】乳房温存療法の術後に同側異時性に発生する悪性腫瘍は、局所遺残に
起因する真の再発 (TR) と多発の原発腫瘍 (NP) が考えられるが、両者を明確
に分けることは困難とされる。その臨床的特徴と治療成績について検討した。
【対象】2001 ~ 2013 年に当科で手術した乳腺悪性腫瘍 933 例のうち、既往
に乳癌の同側乳房温存療法を受けた 14 例を対象とした。同期間に観察され
た両側異時乳癌は 42 例、両側同時乳癌は 9 例であった。初回手術の断端と第
二腫瘍の病理所見から TR6 例と NP8 例に分類した。【結果】第二腫瘍は乳癌
が 13 例(硬癌 4 例、充実腺管癌 4 例、乳頭腺管癌 2 例、浸潤性小葉癌 1 例、紡
錘細胞癌 1 例、非浸潤性乳管癌 1 例)、血管肉腫が 1 例で、第一腫瘍と組織型
が異なる症例は 9 例であった。初回手術時平均年齢は 49 歳であった。第一腫
瘍 の Stage は I が 8 例、IIA が 4 例、IIB が 2 例 で あ っ た。ER は 12 例 で 陽 性、
HER2 陽性例は認めなかった。初回術後の放射線照射は 9 例に実施された。初
回手術と第二手術の間隔は中央値 76 ヶ月(33 ~ 137)で、TR の平均 52 ヶ月
は NP の平均 94 ヶ月に比べて短かった。第二手術の術式は、Bt13 例、Bp1 例
であった。センチネルリンパ節生検は行われなかった。遠隔転移再発は 7 例
(TR5 例、NP2 例)にみられ、うち 6 例は癌死した。初回手術からの生存期間
中央値は 112 ヶ月(44 ~ 244)であった。【結論】同側異時性乳腺悪性腫瘍は、
乳房外遠隔転移が多く予後不良であった。Luminal type が多く、放射線照射
と内分泌療法の効果により再発までの期間が長い傾向(10 年以上が 2 例)が見
られた。ただし、断端陽性の TR では 3 年前後で再発が多く、厳重な観察が必
要であった。
埼玉県立がんセンター、2 埼玉県立がんセンター 病理診断科、
埼玉県立がんセンター 乳腺腫瘍内科、4 群馬大学医学部 臓器病態外科学
松本 広志 1、林 祐二 1、戸塚 勝理 1、黒住 献 1、小松 恵 1、久保 和之 1、
井上 賢一 3、永井 成勲 3、堀口 淳 4、黒住 昌史 2、二宮 淳 1、大庭 華子 2、
大久保 文恵 3、竹吉 泉 4
10196
11022
乳房内再発後の領域リンパ節再発 ―頻度とリスク因子―
小径乳癌に対する経皮的凍結治療の有用性に関する臨床病理学
的検討
GP-2-102-05
GP-2-103-01
大阪府立成人病センター 乳腺・内分泌外科
石飛 真人、松下 亜子、中山 貴寛、元村 和由、小山 博記、玉木 康博
1
(背景)乳房温存手術後の乳房内再発(以下、IBTR)は予後不良であることが知
られており、遠隔再発や局所再再発のリスク因子に関する検討が報告されて
いる。一方、領域リンパ節再発のリスク因子についての報告はほとんどない。
近年 IBTR に対するリピート・センチネルリンパ節生検の検討から、IBTR 手
術時に領域リンパ節転移が少なからず存在することがわかってきたが、その
臨床的意義は不明である。そこで、IBTR 後のリンパ節再発のリスク因子を
検討した。(対象)当院で 2011 年までに IBTR に対する手術時に領域リンパ節
に臨床的に転移を認めず、リンパ節に対する治療(手術および放射線照射)を
行わなかった 102 例。IBTR 手術後の領域再発率およびそのリスク因子につ
いて検討した。領域リンパ節再発は、同側腋窩、鎖骨上・下、内胸、胸筋間
リンパ節の再発と定義し、遠隔再発と同時あるいは以後に出現した場合イベ
ントとみなさなかった。また、局所再再発出現例でも再発巣が切除された場
合、それ以降に領域リンパ節再発があった場合はイベントとみなした。さら
に、対側のリンパ節、遠隔、局所再再発率についても検討した。(結果)IBTR
手術からの観察期間中央値 3.7 年(0.1~18.9 年)において、9 例(8.8%)に領
域リンパ節再発、3 例(2.4%)に対側リンパ節再発を認めた。再発部位は、同
側腋窩 4 例、同側鎖骨上 4 例、同側内胸 1 例、対側腋窩 3 例であった。5 年領
域リンパ節、遠隔、局所再再発率は 10.9, 28.1, 18.5% であった。IBTR 切除
標本におけるエストロゲン受容体陰性、脈管侵襲陽性がそれぞれ独立した領
域リンパ節再発のリスク因子であった(p=0.04 および 0.02, コックス比例ハ
ザードモデル)。これら2つのリスク因子のうち、リスク因子を 0, 1, 2 個有
する患者群(各 40, 36, 17 例)の 5 年領域再発率は 0, 19.0, 39.7% であった
(p=0.001, ログランク・テスト)
。(結語)IBTR 後の領域リンパ節再発は他の
再発よりも頻度は少ないが決して稀ではなく、リスク因子を有する患者への
対策の必要性が示唆された。一方、リスクを有さない患者にはリピート・セ
ンチネルリンパ節生検も不要である可能性が考えられる。
3
東京慈恵会医科大学附属柏病院 外科、
東京慈恵会医科大学附属柏病院 放射線科、
東京慈恵会医科大学附属柏病院 病理部、
4
東京慈恵会医科大学 乳腺内分泌外科
2
479
木下 智樹 1、原田 潤太 2、金綱 友木子 3、伏見 淳 1、榎本 浩也 1、
京田 茂也 1、平野 明夫 1、秋葉 直志 1、内田 賢 4、武山 浩 4
21 世紀の現在,乳癌に対する外科手術は,全身治療の一環としての局所制御
が主目的となり,温存手術(BCS:Breast Conserving Surgery)が主流となっ
ている.癌の根治性と残存乳房の整容性の維持が究極の目標ではあるが両者
は対極に位置する場合がしばしば存在する.とりわけ病変の存在部位によっ
ては乳房が醜悪なまでの変形を来すことも稀ではなく,相応の術創が存在す
ることは避けられない.凍結治療は生体組織の一部を凍結・壊死させる治療
法である.凍結による組織破壊の機序は細胞内液・外液の氷結、凍結部位の
微小血管の血栓形成である.欧米においてはすでに 10 年以上の臨床実績があ
り,腎がん,肝がん,乳がん,肺がん,子宮筋腫,骨腫瘍などで臨床応用が
進んでいる.わが国では 2010 年 1 月に凍結治療器「CryoHit」が小径腎がんの
経皮的治療および腹腔鏡下手術に使用可能な装置として薬事承認され,続い
て 2011 年 7 月 1 日付けで保険収載された。今回、われわれは、学内倫理委員
会の承認の下、本邦初となる同機器を用いた、乳癌に対する凍結治療を行っ
たのでその初期経験について報告する。【対象】2013 年 1 月から 4 月に、長径
2cm 以下、臨床的に管内進展・リンパ節転移・遠隔転移が明らかでなく、文
書による同意の得られた 5 例を対象とした.【方法】超音波ガイド下に凍結針
を穿刺し,凍結 10 分・自然解凍 5 分・再凍結 10 分で実施する.凍結中の ice
ball は MRI にて monitoring を行う.凍結治療の約 1 ヶ月後に通常の手術を
予定する.その後,手技的成功率・合併症・治療前後の画像変化・病理組織
学的所見について評価する.【結果】5 例の平均年齢は 56.6 歳,平均最大腫瘍
径は 14.4mm,手技的成功率 100%(5/5)であった.凍結部位直上皮膚の軽
~ 中等度の凍傷と軽度の疼痛の他に有意な合併症を認めず,凍傷は半年後に
はほぼ完全に回復した.画像上,治療範囲の造影効果は完全に消失していた.
病理組織上,凍結範囲内では核を喪失し細胞死に陥った領域と出血壊死の混
在した領域の辺縁に脂肪織炎を呈する領域が存在していた.また MRI で ice
ball として確認できた範囲よりも細胞死の範囲が広い傾向が認められた.なお
1 例で凍結領域から外れた周辺部に in situ の存在が確認された.
【結語】凍結
療法は小径乳癌の局所制御に関し大いに期待が持てるが,その適応と安全性
の確立には更なる検討が必要と考えられた.
一般セッション(ポスター掲示)
乳房温存術後の乳房内再発 (IBTR) は遠隔転移再発の危険因子であり、予後
増悪に影響する。IBTR の予防のためには切除断端陰性化、放射線治療、術後
補助療法の施行が重要である。また、術前薬剤治療 (PST) 非施行例において
True Recurrence (TR) は遠隔転移再発の危険因子となるが、New Primary
はならなかった。TR は温存乳房に遺残した乳癌からの IBTR であり、ここか
ら遠隔転移が誘発される可能性が示唆され、特に TR を予防することが重要と
思われる。subtype による IBTR 発生の有意差は明らかでない。しかし IBTR
の重要性は subtype により異なる可能性がある。今回、HER2 陽性乳癌症例
(HER 群 ) と Triple Negative 乳癌症例 (TNBC 群 ) において、PST 施行例の病
理組織学的効果と術後 IBTR について検討した。【対象と方法】PST 後、2005
年 6 月~ 2010 年 12 月に手術をした HER 群、TNBC 群において、臨床病理学
的検討を加えた。TNBC 群に対しては術前に化学療法 ( アンスラサイクリン
+ タキサン ) を施行し、HER 群に対しては分子標的治療(トラスツズマブ)と
化学療法を施行した。【結果】HER 群では PST 後の pCR、non pCR に関わら
ず、ER 陰性例では IBTR が比較的多く、ER 陽性例では少なかった。ER 陰性
HER2 陽性乳癌は一般に pCR 率が高く、pCR を獲得したものは予後が良好だ
が、pCR でも IBTR を生じるため局所制御、評価の再検討が必要な可能性が示
唆された。TNBC 群では、PST 後 non pCR 症例において IBTR を比較的多く認
めた。TNBC では薬剤治療後の癌遺残は MRI 等の画像診断でほぼ診断可能で
あり、遺残の疑わしい TNBC においては局所遺残の完全制御を特に重視すべ
きことが示唆された。【結語】乳房温存術後 IBTR の問題を考えるにあたって、
腫瘍の特性も一つの重要な要素と思われる。
ポスター掲示
10609
11460
乳癌ラジオ波焼灼療法 (RFA) 施行後 3 年以上経過した症例の検
討
早期乳癌に対するラジオ波焼灼療法、臨床試験への参加。地方
中規模病院の試み
GP-2-103-02
1
GP-2-103-03
東京医科歯科大学 乳腺外科、2 放射線科、3 腫瘍外科学分野
沖縄赤十字病院 外科
佐藤 隆宣 1、中川 剛士 1、永原 誠 1、細矢 徳子 1、久保田 一徳 2、
町田 洋一 2、杉原 健一 3
長嶺 信治、豊見山 健、宮城 淳、大嶺 靖、知花 知美
はじめに:乳癌治療の進歩は目を見張るものがあり、エビデンスに基づく乳
癌診療ガイドラインも 2 年に 1 回の改訂と驚く速さであるが、大規模臨床試験
はほとんどが海外で行われたもので、日本人を対象に行われたものは非常に
少ない。更に外科手術に関しては皆無に等しい。乳癌手術の歴史は拡大手術
から縮小手術へ変遷し、ASCO Z0011 では腋窩リンパ節廓清の省略が可能
との報告もされている。また日本人やアジア人は欧米人に比較して小さな乳
房であり、乳房温存術を行っても腫瘍の存在部位によって大きく変形するこ
とも多く、患者さんの満足度には程遠い症例も多い。乳癌学会の低侵襲性研
究会の中で、7 年間の議論や後ろ向き試験の結果に基づいて今年から早期乳癌
に対するラジオ波焼灼療法の臨床試験が始まった。地方の中規模病院である
当院も臨床試験に参加し、症例を登録することが出来た。その経緯、短期間
の結果を報告したい。結果:後ろ向き試験の結果 520 例が登録がなされ、平
均観察期間は 45.4 ヶ月、合併症は皮膚の火傷が 15 例 2.9%認めた。局所再発
は 25 例 4.8%に認めたが、再発症例は 2 cm以上の腫瘍、ER 陰性例、Her2
陽性例、リンパ節転移例、術前化学療法例に多く認めた。適応症例をきちん
と絞り込めばほとんど局所再発は制御できる可能性がある。これらの結果を
踏まえて当院でも T1、T0 の明らかな乳管進展がない早期乳癌に対して平成
25 年より 6 例の症例に対して臨床試験を行った。全例が女性、年齢は 43 歳~
80 歳、平均 50.3 歳。2 例が DCIS、
4 例は IDC であった。全例 Luminal A であっ
た。MRI での腫瘍径は 8 mm~ 14 mm、平均 11 mm。焼灼時間は 6 ~ 15 分、
平均 10 分 10 秒。焼灼後の先端温度は 80 ~ 92 度、平均 86 度であった。合併
症はなく、術後の在院日数は 1.5 日であった。整容性に対しては全例で非常
に満足との回答を得た。まとめ:臨床試験を始めるに際し、当院の倫理委員
会に申請し厳正な審査の結果、参加が認められた。地方中規模病院であるが、
臨床試験に参加することにより院内の活性化にもつながり、今後の日本にお
ける臨床試験の一助になればと思う。
最近の乳癌の手術は縮小化する傾向にあり、当科でも院内倫理委員会の承認
を得て、広範な乳管内進展のない 2cm 以下の乳癌を対象に、2008 年 6 月よ
りラジオ波熱凝固療法を開始した。ここで 3 年を経過した 8 症例についての成
績を報告する。follow up は 3 ヶ月ごとの通院で問診と触診を行った。局所に
関しては、半年ごとの乳腺エコーと 1 年ごとの MRI で厳重に行った。観察期
間中央値 63 ヶ月(38 ~ 66 ヵ月)で、局所再発及び遠隔転移は認めていない。
慢性的な疼痛の訴えが 2 例 (25%)、圧痛は 3 例 (38%) に認め、症状は消失し
ていない。RFA にて焼灼した部位の硬結のしこりは、6 例(75%)に認めいず
れも消失していない。整容性においては、時間の経過とともに変形を起こし
たものが 2 例(25%)認めた。現時点で局所再発を起こした症例はなく、RFA
による局所制御は成功しているが、多くの症例に硬結のしこりを残し、さら
に疼痛等の自覚症状も認めている。整容性に関しては、多くの症例で十分に
満足のいく結果であったが、時間の経過とともに変形を起こしてきた症例も
あり、さらに長期経過を追跡する必要がある。また、施行するにあたっては、
トラブルにならないように患者へは、こうした情報の説明をしっかりと行う
必要があると考えられた。
一般セッション(ポスター掲示)
10584
10583
MR ガイド下集束超音波手術 (MRgFUS) 中の患者のストップボ
タンについての検討
MR ガイド下集束超音波手術における乳房ポジショニングテク
ニック
GP-2-103-04
1
2
GP-2-103-05
1
ブレストピアなんば病院 乳房腫瘍外科、
ブレストピアなんば病院 放射線診断科
2
平原 恵美子 1、古澤 秀実 1、猪股 益子 1、牧 悠 1、岩切 三枝子 1、
志戸岡 純一 2、中原 浩 2、山口 由紀子 1
【背景】当院では乳癌の局所治療として MRgFUS+ 放射線治療による臨床試
験を進行中である . 本治療は全身及び局所麻酔は用いず , セデーション下で行
われている.治療中 , 患者が自らストップボタンを押すことで治療が中断で
きる 【
. 目的】治療中の患者がストップボタンを押す理由についての検討 【
. 方
法】初期計画を完遂した患者のうち MRgFUS 中にストップボタンを押した際
の患者の訴え , 治療の条件及び状況をカルテ及びドキュメントファイルから
検討.【結果】治療計画終了患者は述べ 75 名であった . そのうち MRgFUS 中に
ストップボタンを押した患者は 4 名であった . ストップボタンを押した回数
は 2 名が 1 回 , 他の 2 人は 3 回と 4 回であった . ストップボタンを押す毎に治療
の治療継続意思の確認を行ったが , 治療中断を希望した患者はいなかった . ス
トップボタンを最初に押した時間帯は 4 名とも治療開始後 10 分以内であり ,
セデーションから 10 分以内であった . 1 回のみ押した患者は 2 人とも dose
verification( 徐々に高エネルギー慣れさせる時間帯)中に押しており , 他の2
名も 9 回中 6 回は dose verification 中に押されていた . ストップボタンを押
したときの治療スポットの皮膚までの距離 , 超音波通過区域と乳頭の位置につ
いて調べてみたが , 一定の傾向を見出すことはできなかった . ストップボタン
を押した時に患者に声掛けその理由について問うと 4 名中 3 名が「熱さ」を訴
え , うち 2 名は「皮膚側の熱さ」を訴えた . 治療後にセデーションが覚めた状態
の患者に「治療中の痛み」の確認を行ったところ ,4 名中 3 名が「中位の痛みが
あった」と答えたが ,1 名は「痛みはなかった」と答えた .【結論】ストップボタ
ンを押したときのスポット及び超音波通過区域との間に一定の関係が見いだ
せないことから,治療前の患者への説明時に重篤な合併症のひとつとして熱
傷を説明しているため , 皮膚側の熱さに対し過剰に患者が反応したことが要因
のひとつと推測される.このことはストップボタンを押した時間帯が実際の
治療前の dose verification の際に多いことからも患者の過剰な反応によるこ
とが示唆される.また、セデーション後 10 分以内にストップボタンを押した
原因は , 急速なセデーション効果が患者の自制力を抑制するからではないかと
考えられた 【
. 考察】MRgFUS 中に患者がストップボタンを押した際にも治療
を中断する程の苦痛は伴っておらず,患者に直接確認することで計画治療を
最後まで継続できる可能性が高い.
ブレストピアなんば病院 放射線科、
ブレストピアなんば病院 乳房腫瘍外科
志戸岡 純一 1、古澤 秀実 2、平原 恵美子 2、緒方 真紀子 1、藤本 京子 1、
猪股 益子 2、中原 浩 1、山口 由紀子 2、山本 隆 2、前田 資雄 2、
駒木 幹正 2、日高 忠治 1
【背景】MR ガイド下集束超音波手術 (MRgFUS) では治療適応が腫瘤皮膚側辺
縁と皮膚までの距離 (TSD) に左右されるため , 可及的に TSD が長く取れ , 超音
波照射範囲に乳頭が入らないようポジショニングを工夫する必要がある.【目
的】MRgFUS における TSD の確保と超音波通過部からの乳頭回避の最適なポ
ジショニングテクニックの模索 【
. 対象・方法】MRgFUS を行った 130 症例 . 経
験的に得たポジショニングテクニックの論理的な検討 【
. 結果】I.10mm 以上
の TSD を確保するためのポジショニングテクニック a.テープ固定法 腹
臥位で乳房を潰すとき周囲へ逃げる脂肪を留めるためテープを乳房周囲に貼
る .TSD の短い症例や small breast に効果が高い . 乳房の全周囲を囲う場合
や脂肪を集めたい一部だけ貼らない場合もある .b.押し寄せ法 熱傷の危険
性の高い箇所に乳房を押し寄せて脂肪を集める手法 .small breast や dense
breast では乳房可動域が小さいため効果が低い . 寄せる事で乳頭が照射範囲
に入ってくる場合もある.c.過圧迫法 過度圧迫させて TSD の短い箇所に
脂肪を寄せる手法 . 乳頭側に脂肪が多くある症例で適応できるが , 押し潰しす
ぎると乳頭側の TSD が短くなり熱傷の危険性が高くなる.II. 超音波通過部か
らの乳頭回避のためのポジショニングテクニック a.引っ掛け法 乳頭をコ
イルの縁に引っ掛けることにより超音波照射範囲から外す .large breast に有
利.引っ張りすぎると TSD が短くなる場合がある.可動領域が小さい small
breast や dense breast では適応できないことが多く , 陥没乳頭症例や乳頭の
小さい症例ではコイルに引っ掛けることができないため向かない.b.コイル
押し付け法 コイルの縁の上に乳房を乗せて押し潰すことにより , 押し潰され
た方向へ乳頭が牽引されることで超音波照射範囲から外す手法 . コイルの縁で
痛みを訴える場合がある . c.斜位法 標的とする腫瘍が外側に位置する場合 ,
対側の肩を上げることで超音波照射範囲内に入れることが可能となる . この方
法が spot- 皮膚間距離を長くし安全性を増す症例がある .Small breast では角
度をつけると逆に乳房が浮いてしまう場合がある . また傾ける角度が大きすぎ
ると患側に重量がかかり治療中に患者が動いてしまう危険性もある.内側に
腫瘤が存在する場合は , この方法は適応できない 【
. 結論】経験的に獲得したポ
ジショニングテクニックは論理的で ,TSD の確保と超音波通過部からの乳頭回
避が可能となる症例は少なくない.
480
10869
10274
当院における気嚢法、内視鏡下乳房部分切除の検討
Moving Window 法による乳房温存術
GP-2-103-06
ポスター掲示
GP-2-103-07
原三信病院 外科
1
小原井 朋成、小川 尚洋、豊田 秀一、成富 元、廣田 伊千夫、江口 徹
大野 由夏子 1、森岡 絵美 1、野口 美樹 1、中野 泰治 1、野口 昌邦 1、
小坂 健夫 2
【はじめに】乳腺内視鏡手術は整容性と根治性を両立させる優れた手術方法で
ある。当院では 2012 年 8 月より、腋窩と傍乳輪に小切開をおく気嚢法による
乳腺内視鏡手術を導入し、これまでに 18 例の乳癌患者に施行してきた。【適
応】占拠部位は問わず、皮膚、乳輪、大胸筋に浸潤を認めない温存可能症例。
【手術方法】患側腋窩に約 3cm の小切開を置き、通常どおりセンチネルリンパ
節生検を施行。この切開創より大胸筋前面の層に入り、PDB バルーンを挿入。
パンピングを行い、大胸筋前面にワーキングスペースを確保。創縁にラップ
プロテクト +EZ アクセスを装着し、送気下、内視鏡下に広く剥離。続いて、
腫瘍周囲 2cm の部位にてマーキングを行う。腫瘍占拠部の傍乳輪に 3cm の
切開を置き、皮下に入り、送気下、内視鏡下に皮弁を形成。マーキングライ
ンに沿い乳腺を扇状に部分切除。直視下に残存乳腺を縫合し乳房を形成。乳
房下縁より SB drain を留置。【結果】平均年齢 53 歳。平均手術時間は 186 分、
平均出血量 53ml であった。合併症は初期の症例に熱傷を 2 例、創感染 1 例、
術後出血 1 例、皮下気腫 1 例を認めた。整容性は容認できるものであり、満足
度も高かった。【結語】気嚢法による内視鏡下乳房部分切除は、整容性と根治
性を両立させる有用な手技である。
金沢医科大学 乳腺・内分泌外科、2 金沢医科大学 一般・消化器外科
乳房温存術は局所における癌の根治と整容性が重要である。私共は、乳輪周
囲や腋窩の目立たない小さな皮膚切開創からウーンドリトラクターを装着し、
それを移動させながら直視下手術(Moving Window 法)を行うと共に、正常
乳腺組織をできるだけ温存するため、画像診断による癌の進展範囲より 1cm
離した乳腺部分切除を行っている。2009 年 4 月~ 2013 年 11 月まで当院で施
行した 161 症例について検討した。術前にマーキングした腫瘍径から 1cm の
margin をとり、乳房部分切除を施行した。術中、切除組織の全周断端を凍結
組織検査した結果、断端陽性は 39 症例 (23%) で認め、陽性となった部位に
幅 1cm の追加切除を加えた。その結果、術後断端陽性は 21 例 (13%) であり、
その後、再手術を 14 例 (9%)( 乳房切除術 9 例、再追加切除 5 例)に行い、最
終的断端陽性症例は乳管内癌をわずかに残した 7 例 (4% ) であった。再手術を
施行した 14 例中 6 例 (4%) に追加切除組織内に癌を認めた。手術時間と出血
量は乳輪周囲切開による方法では手術時間 152 分、出血量 34ml であった。ま
た、腋窩切開による方法では手術時間 162 分、出血量 33ml であった。乳房温
存術症例は、術後、すべて乳房への放射線療法を行った。乳房の整容性(主観
的判断)は 135 症例 (84%) で excellent ~ good な整容性が得られ、追加切除
で乳腺組織の欠損部が大きくない限り、良好であった。観察期間は 29.2 ヶ月
( 中央値 ) と短いが、骨転移 1 例・肺転移 1 例を認める以外は乳房内再発を認
めなかった。Moving Windows 法は癌の根治と整容性が両立できる方法と考
えられるが、局所再発については術後経過観察期間が短く、さらなる検討が
必要と思われる。
10855
術後断端陽性と診断された乳房温存手術施行乳癌患者における
外科的切除症例の検討
乳癌切除断端陽性症例の検討
GP-2-104-01
GP-2-104-02
湘南記念病院 かまくら乳がんセンター
長門総合病院 外科
合田 杏子、土井 卓子、井上 謙一、堤 千寿子、井上 俊夫、川崎 あいか、
田中 佳和子、山中 千草、佐々木 毅
久我 貴之、平田 健、尼崎 陽太郎
[目的]乳房温存手術(以下 BCS)における断端陽性(以下 PM)は局所再発のリ
スク因子の一つである。PM 症例において乳癌診療ガイドラインでは外科的
切除は推奨グレード B あるいは C1 である。当科で BCS 術後 PM と診断された
症例について検討したので報告する。[対象と方法]対象は 2006 年 1 月より
2013 年 11 月までに当科で BCS を施行し術後 PM と診断された 10 例である。
当科では PM の定義を 2005 年乳房温存療法ガイドラインに沿って切除断端か
ら 5mm 以内に癌細胞があるものとしている。初回手術時、術中迅速病理組織
検査で 4 方向の乳腺部位における断端癌細胞の有無の検査を全例実施してお
り、術中迅速検査では全例陰性であった。対象例において臨床病理学的所見、
初回手術術式、PM 形態、再手術術式、PM 後の治療経過、再発および予後等
について検討した。[結果]年齢は 36-69 歳(平均 51 歳)。全例女性。職業は
医療関係者 3 例、会社員 3 例、主婦 4 例。部位は A:5 例、C:3 例、BD:1 例、D:
1 例。組織学的分類は硬癌 8 例、乳頭腺管癌 1 例、充実腺管癌 1 例。術前腫瘍
径は 11-32mm(平均 15.5mm)。皮膚切開法は腫瘍直上:7 例、外側アプロー
チ:3 例。切除形態:円形:5 例、扇形:5 例。切除長径は 5.7-11cm(平均
9.7cm)。全例ホルモンレセプター陽性例。HER2 増幅陽性例は 3 例。Grade3
が 5 例。EIC 陽性例 8 例。PM 形態は間質浸潤 + 乳管内進展:3 例、間質浸潤:
3 例、乳管内進展:4 例。後治療における患者希望は全例外科的切除希望。再
手術では部分切除 7 例、全摘術 3 例。全摘術のうち 1 例で 2 期的再建手術施行。
再手術後の標本に癌細胞遺残を認めた症例は 6 例 (60%) であった。癌細胞遺
残例と非遺残例を比較して、腫瘍径、病理組織学的因子、手術アプローチ、
切除径、PM 形態において両群間に有意差はなかった。術後化学療法は EC:5 例、
EC+DTX:3 例。トラスツズマブ補助療法 3 例。術後内分泌治療法は LHRH ア
ゴニスト +TAM:4 例、AI 剤:6 例。術後放射線治療は再手術で温存手術を
行った 7 例全例で施行。2013 年 12 月現在全例局所および遠隔再発なく生存
中。生存日数は 2013 年 12 月 12 日現在 549-2698 日。[まとめ]PM と診断さ
れた BCS 施行乳癌症例において、特徴的な臨床病理学的所見はなかった。患
者サイドからは PM 例では全例外科的切除希望であった。特徴的所見がないこ
とから PM を減少させる手段としては、術前化学・内分泌療法の施行が必要と
考えられた。
481
当院 2008 年 8 月から 2013 年 12 月までの乳癌手術症例計 1024 症例におい
て、永久標本の病理診断において断端陽性であった 47 例について検討を行っ
た。当院手術症例は部分切除術が 535 例、全切除術が 394 例、皮下乳腺全摘
術が 95 例であった。断端陽性症例は全て女性、部分切除術が 32 例、全切除
術が 10 例、皮下乳腺全摘術が 5 例であった。断端陽性部位の組織型は浸潤癌
が 22 例、非浸潤癌が 25 例であった。検体の病理学的悪性所見からは、浸潤
癌から非浸潤癌が進展しているもの、非浸潤癌が散見されるもの、深部大胸
筋側に浸潤があるものなどが認められた。断端陽性症例の中で術前化学療法
が施行された症例は 1 例であった。対象症例の CT, MRI からは拡がりが予想
されたものと画像では予想に至らなかったものも認められた。術後放射線療
法を行った症例が 7 割であり、追加切除を行った症例が 3 割であった。術後平
均観察期間は 3 年 1 か月で、ホルモン療法を行った症例が 7 割、化学療法を行っ
た症例が 9 例あった。現在、術後局所再発は認めらていない。また、全身転移
の後死亡した症例が 2 例であった。文献的考察もあわせ、これらの症例に関し
て検討し報告する。
一般セッション(ポスター掲示)
10206
11253
11310
音響陰影を用いた乳腺切除範囲マーキングの工夫
スパイラルマーク針を用いた乳腺部分切除
GP-2-104-03
ポスター掲示
GP-2-104-04
1
勤医協中央病院 乳腺センター、2 勤医協中央病院 呼吸器センター、
3
勤医協札幌病院 外科
1
後藤 剛 1、中村 祥子 1、川原 洋一郎 2、細川 誉至雄 3、鎌田 英紀 1
唐木 芳昭 1、橋都 透子 1、中山 俊 1,2、大森 隼人 1、井出 大志 1、
中村 将人 1、丸山 正幸 1,3、田内 克典 1
相沢病院 外科、2 中山外科内科、3 丸山クリニック
一般セッション(ポスター掲示)
乳房温存手術における乳腺切除範囲はマンモグラフィ、超音波、MRI など複
数のモダリティで癌の広がりを評価して決定される。触知可能な症例では術
中に触診で切除範囲の修正が可能であるが、近年の乳癌に対する画像診断と
検診の進歩により DCIS に代表される非腫瘤性病変の割合も増加しており、手
術に際しては想定される癌の広がりにマージンを加えた切除予定線を術野で
正確にマーキングすることが求められる。画像診断から切除範囲をマーキン
グする手法としては、これまで熱可塑性シェル+ MDCT を用いる方法、RVS
を用いる方法、MRI や CT 画像を体表に投影する方法などが報告されているが、
必要な機材や仰臥位 MRI を要するなど実施にはいくつかの制約がある。広く
行われているマーキング法は、画像診断を元に術前超音波で病変を体表にマー
クした後にマージンをとって切除予定線をペンで皮膚に描画する方法である
が、画像とペンの間に誤差が生じていても検出が難しい点が気に掛かってい
た。皮膚のマーキングが超音波で見えれば、より正確に切除範囲を決定でき
るのではないかと考えて探求した結果、細いマスキングテープを体表に貼付
することで音響陰影が生じ、超音波マーカーとして利用できることが判明し
た。2 ないし 3mm 幅のテープを皮膚に貼り付けてプローブを当てると、切除
断端に相当する垂線が Acoustic shadow として描出され、切除範囲を超音波
画像上で視認することができる。病変と切除予定線との距離の測定も可能で
あり、適切なマージンを確認した上で体表にペンでマーキングを行った後に
テープは剥がせばよい。マスキングテープは文房具として安価に市販されて
おり、入手も容易である。特別な機器を必要とせず、安全かつ簡便に実施で
きるマーキング法のひとつと考えられたので報告する。
われわれは、乳腺部分切除時の乳腺組織内への色素注入によるマーキングの
不確実性を克服するために、スパイラルマーク針(S 針)を考案し第 17 回総会
で発表したが、その後 S 針を用いて部分切除を行った症例を重ねたので報告
する。本研究は院内倫理委員会で臨床研究として承認され、使用に当たって
は、患者、家族に説明同意を得ている。[ 方法および症例 ] 全身麻酔下に通常
の色素注入によるマーキング後、色素注入点から垂直にS針を回転刺入する
が、あらかじめ皮膚、脂肪、乳腺の厚さや乳房の可動性を把握しておき、刺
入の深さを調節する。部分切除切離面には3本から5本刺入する。刺入後皮
膚面でこれを切断しておく。皮膚切開後皮弁を形成しつつ、視、触診でS針
を確認し、皮下に落とし、S針の外縁に沿って切離する。現在までに乳腺部
分切除 45 例 46 乳房に試みた。[ 結果および考察 ] 乳腺部分切除における切除
に際しては、超音波検査等で病変を把握し、乳房組織の切除予定垂直面に色
素でマーキングし、これを目印に切除するなどの工夫がされているが、色素
法でのセンチネルリンパ節生検の色素とマーキングのための色素によるの重
なりや、切除時、乳腺が厚かったり変形し易いなどの理由により、予定切離
面はしばしば不正確になりやすい。この点、S針を用いる切除は切除操作中
に抜けがたく、切離予定線の過不足ない切離ができ、これによる合併症もなく、
術後、刺入部位の皮膚瘢痕はほとんど目立たない。[ 結論 ] 乳腺部分切除を的
確に行うためのS針は有用である。
10083
11101
乳房部分切除術における術中標本撮影(Specimen
Mammogtaphy)の有用性の検討
異常乳頭分泌や石灰化病変等の非触知乳癌に対する CT
segmentectomy の成績
GP-2-104-05
GP-2-104-06
1
愛知県がんセンター中央病院 乳腺科
久田 知可、澤木 正孝、安立 弥生、石黒 淳子、小谷 はるる、市川 茉莉、
井戸田 愛、権藤 なおみ、堀尾 章代、近藤 直人、服部 正也、藤田 崇史、
岩田 広治
【目的】乳房部分切除術 (Bp) における断端評価は局所再発に関わる因子である
ため重要である。当院では Bp に対して、原則全例に術中標本撮影 (Specimen
Mammography;以下 SMMG) を行い断端評価の一助にしている。しかし
SMMG の有効性について少数の後ろ向き解析のみ報告されており本解析を
行った。【方法と対象】2006 年に当院で施行した原発性乳がん手術症例 426 例
中、乳房部分切除および SMMG を施行した 174 例を対象とし、後ろ向きに解
析 し た。SMMG は 2 人 の 医 師 で 独 立 し て 読 影 し た。 読 影 基 準 は 1) 陰 性;
5mm 以内に癌を認めないことが予想される場合、2) 陽性;5mm 以内に癌を
認める可能性が高いと判断される場合、3) 評価困難;病変の同定が困難な場
合、とした。病理の断端評価については、5mm 以内に癌細胞 (in situ 含む )
が存在するものを陽性とした。標本撮影の有用性は、SMMG の読影結果と病
理の断端評価を比較検討した。【結果】SMMG の読影結果:断端陽性 17 例
(10%)、陰性 146 例 (84%)、評価困難 11 例 (6%)。評価困難、追加切除症
例を除く 141 例を検討すると、検査の感度は 20.6%、特異度は 94.6%、陽性
的中率は 50%、陰性的中率は 82.2% であった。サブ解析では、石灰化を含
む症例 (n=37) においての感度は 44.4%、特異度は 89.2%、年齢 50 歳以上
の症例 (n=91) においてはそれぞれ 6.7%、94.7% であった。組織別では、
IDC (n=103) で 10%、95%、DCIS (n=22) では 75%、100% であった。【結
論と考察】本解析において、術中 SMMG の感度は低く意義が少ないと思われた。
DCIS 症例では有用性が示唆された。前向き試験での有用性の評価が必要であ
る。
482
3
がん研有明病院 乳腺センター、2 がん研有明病院 画像診断部、
がん研有明病院 病理部
柳 裕代 1、蒔田 益次郎 1、五味 直哉 2、立川 智弘 2、荻谷 朗子 1、
坂井 毅彦 1、森園 英智 1、宮城 由美 1、秋山 太 3、岩瀬 拓士 1、
堀井 理絵 3、飯島 耕太郎 1、中島 絵里 1、石田 直子 1、佐藤 綾花 1、
山崎 希恵子 1、師尾 典子 1、小野 寿子 1、白井 智子 1、鈴木 えりか 1
乳頭分泌や、微細石灰化などの非触知乳癌に対して部分切除を行う場合、切
除範囲の決定に苦慮する。当科では US で同定できない場合、熱可逆的プラス
ティック(シェル)を用いて病変の同定の一助とし、CT segmentectomy(以
下 CTsg)を施行してきた。治療成績について報告する。[対象、方法]2002
年から 2010 年までに CTseg を施行した 283 例と、同時期 T 1乳がんで部分
切除を施行した 524 例を対象とした。CTseg は CT 検査時にシェルで乳房の
型をとり、三次元画像から広がり診断を行い切除線をデザインし、術直前に
シェルを患者の胸部に再装着して切除範囲を点墨し、乳房部分切除を施行し
ている。T1 部分切除症例では触知する腫瘤、あるいは US で確認できる腫瘤
像から MRI を参考に広がり診断を行い、病変を同定し部分切除を施行してい
る。この 2 つの方法における断端陰性率、温存乳房切除率、局所再発率、放
射線治療施行率、遠隔再発等を比較した。[結果]石灰化と乳頭分泌症例で
CT segmentectomy を施行した 283 例では断端陰性は 166 例 59%で、T1 部
分切除施行した症例では断端陰性 316 例 60% であった (n.s)。次に残乳房切
除症例は CTseg10 例 5%に対し、T1 部分切除では 59 例 11%であった(P =
0.0034)。また放射線治療を施行した症例は Ctseg では 135 例 48%、T1 乳
癌では 201 例 38%であった(n.s)。局所再発は Ctseg では 7 例 2.4%、T1 部
分切除では 23 例 4.4% (P=0.004) であった。また乳頭分泌、石灰化病変で
Ctseg を施行した症例と T1 乳がんで部分切除を施行した症例を Kaplan-Meier
method 法で検討したところ、局所再発、遠隔再発ともに差がなかった。
[結論 ]
Ctsegmentectomy は US などの他のモダリティにより病変を同定した部分切
除より残乳房切除、局所再発ともに優位に少なかった。[まとめ]乳頭分泌や
微細石灰化の非触知乳がんの部分切除に CT segmentectomy は有用である。
ポスター掲示
11394
11450
画像診断で指摘されなかった乳頭乳輪部に存在する癌巣の特徴
原発性乳癌に対する乳頭温存乳房切除術の安全性の検証
GP-2-104-07
GP-2-104-08
1
がん研究会有明病院 病理部、2 がん研有明病院 乳腺センター乳腺外科、
3
がん研有明病院 画像診断部
慶應義塾大学病院 一般・消化器外科
関 朋子、高橋 麻衣子、林田 哲、神野 浩光、北川 雄光
照屋 なつき 1、坂井 威彦 2、五味 直哉 3、堀井 理絵 1、岩瀬 拓士 2、
秋山 太 1
11466
11294
当科における乳頭温存乳房切除症例の検討
異時性同側乳癌の検討~臨床病理学的特徴からみた予防的乳房
切除へのアプローチ~
GP-2-104-09
GP-2-104-10
1
埼玉県立がんセンター 乳腺外科、2 埼玉県立がんセンター 病理診断科、
3
日本医科大学 乳腺科
1
3
久保 和之 1、松本 広志 1、林 祐二 1、二宮 淳 1、戸塚 勝理 1、黒住 献 1、
黒住 昌史 2、大庭 華子 2、武井 寛幸 3
【諸言】乳頭温存乳房切除術(nipple sparing mastectomy: NSM)は、従来の
乳房切除と比較し乳房再建後の整容性に優れていることに加え根治性も劣ら
ないとされ、現在広く行われている。一般的には術前の画像所見(腫瘍径・腫
瘍乳頭間距離・乳管内病変の広がり等)に基づいて手術症例が選択されるが、
確立された適応基準はない。また、慎重に適応を選んだとしてもある程度の
割合で癌の乳頭への進展が存在するため、乳頭に潜在的な癌の遺残が存在す
る可能性がある。さらに、温存した乳頭は新たな乳癌の発生母地となりうる
ため、乳頭部再発について十分検討する必要がある。当科における NSM 症例
の検討を行ったため文献的考察を加えて報告する。【対象・方法】埼玉県立が
んセンターで 2005 年 9 月~ 2013 年 1 月の期間に NSM を施行した 69 例を対
象とした。術後観察期間の中央値は 47 ヵ月であった。術前薬物療法施行症例、
部分切除後の再発や切除断端陽性による残存乳房切除症例は除外した。対象
症例の、術前画像所見・病理結果・乳頭部再発について検討した。【結果】術
前画像所見: 術前画像所見をおおまかにまとめると、A. びまん~区域性の非
腫瘤性病変 B.周囲への乳管内進展が疑われる腫瘤 C. 多発腫瘤 の 3 つに
分類されると考えられた。造影 MRI を撮影した 52 例中、29 例(55.8%)で腫
瘍乳頭間距離が 5mm 未満と診断されていた。病理結果: 術後病理診断で乳
頭側断端が陽性と診断された症例は 13 例(18.8%)であった。このうち浸潤
部で断端陽性となった症例が 4 例、乳管内成分は 9 例であった。乳頭部再発:
乳頭部再発を 2 例(2.9%)に認めた。1 例は ER・PgR 陰性の非浸潤癌の症例で、
もう 1 例はトリプルネガティブの浸潤癌の症例であった。それぞれ術後約 29
カ月・28 か月で乳頭部再発と診断された。2 例とも NSM の際の切除断端は陰
性であり、Paget 型の再発であった。【考察】今回の乳頭部再発率を過去の報
告と比較した場合、やや高めであるものの大きな差はなかった。 subtype に
より NSM 後の Paget 再発率が異なるという報告があり、今回乳頭部再発をき
たした 2 症例もいずれも ER 陰性であった。NSM の適応に関しては、術前の画
像所見だけではなく多角的な評価が必要であると考えられる。
ブレストピアなんば病院、2 癌研究会癌研究所 病理部、
坂元記念クリニック
山口 由紀子 1、山本 隆 1、齋藤 智和 1、船ケ山 まゆみ 1、中原 浩 1、
前田 資雄 1、古澤 秀実 1、駒木 幹正 1、秋山 太 2、坂元 吾偉 3
【背景・目的】近年、乳癌罹患者数の増加に伴い、国内でも遺伝性乳癌および
予防的乳房切除への関心が高まってきている。しかし現在、日本国内で遺伝
性乳癌に関する検査及び一連の医療行為 ( 予防的乳房切除術 ) は保険診療下で
は行えないため、過去に経験した異時性重複癌の臨床病理学的特徴から、遺
伝子的要因の他に、初回手術で乳房切除を推奨すべき症例が抽出可能かを検
討した。【対象】1991 年 6 月から 2013 年 12 月までに当院で手術を施行した原
発性乳癌 5843 例中、乳房部分切除術を施行した症例 2550 例。【結果】初回手
術後、術側に新たに病変の出現した症例は 61 例 (2.3%) で、病理組織学的に
局所再発と診断した症例は 18 例、第 2 癌 ( 異時性重複癌 ) は 43 例 (1.7%) で
あった。異時性重複癌症例における発症年齢の平均は、第 1 癌 :51.9 歳 (2879)、第 2 癌 :56.5 歳 (35-81) で、第 2 癌までの発症間隔は 5.77 年 (0.8-15) で
あった。病巣の病理組織型は、第 1 癌で、非浸潤性乳管癌 :11 例、乳頭腺管癌 :15
例、充実腺管癌 :3 例、硬癌 :10 例、粘液癌 :2 例で、第 2 癌は、非浸潤性乳管
癌 :9 例、乳頭腺管癌 :6 例、充実腺管癌 :11 例、硬癌 :10 例、粘液癌 :2 例で、
病理組織型が一致したものは、11 例 ( 非浸潤癌 :4 例、乳頭腺管癌 :1 例、硬癌 :5
例、粘液癌 :1 例 ) であった。ホルモンレセプターの発現は、第 1 癌で ER/PgR
陽性 :20 例、ER/PgR 陰性 :5 例。第1癌と第 2 癌で一致していたものは、ER/
PgR 陽性 :13 例、ER/PgR 陰性 :2 例で、第1癌ホルモンレセプター陽性例の
中で、内分泌療法中に第 2 癌を発症した症例は 3 例あった。第 2 癌が発見さ
れた際の腫瘍径は 1.5cm 以内がほとんどで、初発癌のみの症例と比べ、再発
生存率に有意差はなかった。【結語】臨床病理学的特徴で予防的乳房切除の可
否判断は困難であり、遺伝的背景を考慮した上で術式を選択すべきであるが、
第 2 癌発見が早期であれば、予後に左右されないため、予防的乳房切除術が必
須となりうるとは限らない。
483
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】人工物を用いた乳房再建が保険適用となり、乳房切除術時に再建希望
例が増加している。乳房切除術の中でより整容性を意識した術式として乳頭
温存乳房切除術 Nipple Sparing Mastectomy(以下 NSM)があり、普及傾向
にある。当院では画像診断(MMG,US,MRI)で病変の広がりが広範な症例
を除き、乳頭 - 腫瘤間距離がある程度保たれ、術中迅速診断で乳頭直下断端が
陰性である症例を NSM の適応としているが、最終病理診断で術前の広がり診
断以上に乳頭乳輪部(Nipple-areolar complex;以下 NAC)に癌が認められる
ことがある。【目的】術前の画像診断では指摘されなかった NAC 内に存在する
癌病変の実態調査を目的とした。【対象と方法】2012 年 1 月から 12 月に当院
で施行された乳房切除術 523 例、乳頭合併乳房部分切除術 5 例の中で、温存
乳房内の真の再発症例 1 例、他院で主病変の摘出生検が施行された 1 例、術前
薬物療法が施行された 82 例を除外した。これらの症例の中で当院にて MRI が
撮影されたのは 365 例であった。まず乳頭・乳輪部皮膚から垂直方向 5mm
の範囲に癌を認めるものを「NAC 内癌巣あり」と定義し、病理報告書のマッピ
ングに基づいて NAC 内における癌巣の有無を調査した。NAC 内癌巣ありと判
定された症例は 152 例であった。術前画像診断にて NAC 内癌巣ありと判断さ
れた症例は 110 例(72%)、なしと判断されたのは 42 例(28%)であった。今
回、この 42 例を対象とした。【結果】NAC 内癌巣なしと判定された 42 例の中
で、NAC 内の癌巣量が軽度であったものは 19 例(45%)、中等度 11 例(26%)、
高度 12 例(29%)であった。癌巣量が高度であった 12 例の NAC 内の癌巣の内
訳は、非浸潤巣のみ:2 例、間質浸潤巣のみ:3 例、非浸潤巣+間質浸潤巣:
4 例、間質浸潤巣+リンパ管侵襲:2 例、リンパ管侵襲+皮膚リンパ管侵襲:
1 例であった。【結語】画像診断で乳頭・乳輪部に癌巣が指摘されない症例に
おいても、非浸潤巣に限らず間質浸潤巣、リンパ管侵襲が存在することがあり、
NSM の際には細心の注意が必要である。
【背景】乳頭温存乳房切除術は標準的な乳房切除術に代わる整容性の高い術式
として近年試みられているが、その安全性については未だ議論がなされてい
る。今回我々は当院において乳頭温存乳房切除術を施行した乳癌症例におけ
る局所再発率につき検証したので報告する。【対象と方法】当院において 2001
年 1 月より 2013 年 7 月までに Stage 0-3 と診断され乳頭温存乳房切除術を施
行した症例 121 例を対象とした。乳頭温存乳房切除術の適応については、術
前画像で明らかな皮膚浸潤を認めないこと、乳房温存術が困難であると判断
した症例、さらに術中迅速病理診断を行い乳頭直下断端に腫瘍の進展を認め
ないものとした。乳頭直下断端陽性の場合は乳頭乳輪切除を追加した。同時
期に乳房切除術を施行した症例 557 例を対照群として再発率を比較検討した。
【結果】平均年齢は 46 歳 (29 - 68 歳 ) であった。臨床的平均腫瘍径は 2.8 ±
1.2cm であり、平均乳頭腫瘍間距離 (DNT) は 2.5 ± 1.7cm であった。中央観
察期間 27.3 カ月において乳頭温存乳房切除術群の 11 例 (9.1%) に再発を認め
た。全再発のうち 5 例 (4.1%) が局所再発であり、6 例 (5.0%) が遠隔転移で
あった。5 年局所無再発生存率は 92.4% であり、乳房切除群の 96.0% と有意
差を認めなかった。(p=0.233) 乳頭乳輪切除となった症例は 6 例 (5.0% )
であり、3 例 (2.5% ) に表皮壊死を認めた。【結語】今回の検証では乳頭温存乳
房切除術における局所再発率は乳房切除術と同等であったことから、慎重に
適応を選ぶことで腫瘍学的にも安全な術式であると思われる。
ポスター掲示
11198
11359
内側領域乳癌における手術療法の工夫と整容性の検討
乳房温存術の整容性評価:内視鏡下手術の有用性
GP-2-104-11
GP-2-104-12
1
日本大学医学部 乳腺内分泌外科
和賀 瑛子、榎本 克久、水沢 容子、長島 沙樹、鈴木 周平、松本 京子、
村上 絵里子、飯塚 美紗都、原 由起子、前田 哲代、平野 智寛、
櫻井 健一、谷 眞弓、天野 定雄
近 年 乳 癌 手 術 に お い て 腫 瘍 切 除 と 整 容 性 の 療 法 を 追 求 す る oncoplastic
suegery という概念が浸透している。内側領域の手術は乳腺量や脂肪量も少
なく、術後の変形も多い。今回内側領域乳癌における手術療法の工夫と整容
性について検討した。( 対象 )2011 年 11 月~ 2013 年 11 月までに内側領域
(A,B 含む ) の乳房部分切除を行った Stage は 0 ~ 2A の患者 91 例。( 方法 ) 術
式は Bp、Bp + SN、Bp + Ax。乳房切除範囲は腫瘍外縁をより 1 ~ 2cm 離し
て切除した。陰圧式ドレーンを留置したものと留置しなかったものの術後の
経過、入院日数、整容性、について比較検討した。術後のガーゼ圧迫は術後 1
日目に解除し、ドレーンを挿入したものは排液が 50ml 以下で 2 日以上続いた
とき、もしくは感染が疑われたときに抜去した。術後在院日数、合併症、基
礎疾患の有無、BMI、創部の圧迫解除~退院時、外来経過観察時の乳房の変
形の経過を追った。( 結果 ) ドレーン挿入したもの (D 群 ) は 60 例。ドレーン
を挿入しなかったもの (ND 群 ) は 31 例。平均年齢は D 群で 64.8 歳、ND 群は
61.5 歳。平均 BMI は D 群で 23.1、ND 群で 21.5。平均術後入院日数は D 群で
6.7 日、ND 群で 3.8 日。D 群のドレーン留置日数は平均 3.6 日であった。術
後合併症として穿刺が必要になったものは D 群で 0 例、ND 群で 2 例。感染を
起こしたものは D 群 3 例、ND 群 2 例であった。乳房の変形は術後経過。ND
群に比べ D 群においてより強く認められた。( 考察 ) 内側領域乳癌における乳
房部分切除術のドレーン挿入はドレーンを挿入しないものと比較して合併症
のリスクはほとんど変わらず、ドレーン挿入しないことによる入院日数の減
少や術後の乳房の変形の減少は患者の満足度の上昇につながる一つの選択肢
と考えられた。
3
産業医科大学 第一外科、2 青葉台病院、
つるどめ乳腺・大腸・肛門クリニック
勝木 健文 1、井上 譲 1、永田 貴久 2、鶴留 洋輔 3、山口 幸二 1
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】当科では温存術可能な乳癌に対し,1996 年より直視下の乳房部分
切除術を導入し、2012 年からは温存術では内視鏡下手術を第一選択としてい
る。直視下手術と内視鏡下手術の術後整容性を比較検討した。【対象と方法】
温存術を施行し,術後 1 年以上経過した時点で整容性評価が施行できた 75 例
(両側乳癌は除外)について,内視鏡使用の有無と整容性との関連を評価した。
整容性評価は日本乳癌学会沢井班の基準(乳房の大きさ,乳房の形,瘢痕,乳
房の硬さ,乳頭乳輪の大きさ・形,乳頭乳輪の色調,乳頭の位置,乳房最下
垂点の位置を評価し,合計点 0-12 点を総合評価とする)に従って行った。ま
た患者本人の満足度を 10 点満点で評価してもらい,整容性と比較した。【結
果】平均年齢は 60.5 歳。腫瘍の主な局在は,A 領域 15 例 (20.0%),B 領域 7
例 (9.3%),C 領域 46 例 (61.3%),D 領域 6 例 (8.0%),E 領域 2 例 (2.7%) で,
平均腫瘍径は 16.4mm であった。手術を直視下に行ったのは 63 例 (84.0%),
内鏡視下に行ったのは 12 例 (16.0%) であった。術後合併症を 14 例 (18.7%)
に認め内訳は後出血 6 例,皮弁壊死 5 例,漿液腫 3 例であったが,直視下群と
内鏡視下群との間に有意差は認めなかった。整容性の総合評価は平均 7.5 点
で,患者満足度は平均 7.6 点だった。総合評価に影響を与える因子を検討する
と,腫瘍の局在が上部乳腺 (A, C) であった群,内視鏡群で有意に整容性が良
好であった。直視群と内視鏡群を項目別に比較すると,乳房の大きさ,瘢痕,
乳房の硬さ,乳頭乳輪の色調,乳頭の位置は有意差を認めなかったが,乳房
の形と乳房最下垂点の位置は内視鏡群で有意に良好であった。これは内視鏡
で広範な剥離と乳腺受動ができることが理由と考えられる。また整容性と満
足度に正の相関を認めた (r=0.75)。【結語】内視鏡下手術をさらに適応してい
くとともに,局在が下部乳腺の場合の再建方法についても検討する必要があ
る。
10459
10283
当院における乳房温存術症例についての検討
乳癌術式の最近の傾向
GP-2-104-13
GP-2-104-14
兵庫県立がんセンター 乳腺外科
自治医科大学附属病院 乳腺科
三木 万由子、松尾 容子、田根 香織、廣利 浩一、高尾 信太郎
上徳 ひろみ、相良 由佳、芝 聡美、宮崎 千絵子、櫻木 雅子、
竹原 めぐみ、大澤 英之、水沼 洋文、塩澤 幹雄、穂積 康夫
【はじめに】乳房温存術は、術後に残存乳房照射を行えば乳房切除術と比較し
て全生存率に有意差がないとされており、整容性が保たれれば患者の満足が
得られる有用な術式である。しかし、術後断端陽性が判明した場合、再手術
や追加治療が必要となる可能性がある。【目的】当院における乳房温存術症例
について、乳房温存術の適応とその後の治療について考察する。
【対象と方法】
2003 年 6 月から 2011 年 12 月の間に当院で乳房温存術を施行された 783 例
を対象とした。患者背景・術前治療、また乳房温存術後の治療についてレト
ロスペクティブに検討した。【結果】上記期間に温存術を施行された 783 例の
うち、他院摘出生検後症例や、同時・異時両側乳癌、異時同側乳癌は除外し、
688 例について検討した。患者の年齢中央値は 56(25-89) 歳で腫瘍径の中央
値は 20 mmであった。ホルモン受容体陽性は 532 例・陰性は 150 例・不明が
6 例であった。HER2 タンパク陽性は 134 例・陰性は 548 例・不明は 6 例であっ
た。5 例は術中迅速検査で広範な断端陽性のため乳房切除術に術式変更された
ため、温存症例は 685 例となった。断端より 5 mm以内に癌細胞が存在した
ものを断端陽性と定義すると、104 例 (15.2%) が断端陽性であった。そのう
ち、温存乳房照射± Boost 照射を行ったのが 69 例、後日乳房切除術を施行し
た症例は 35 例であった。全体での乳房温存完遂率は 650 例・94.5% であっ
た。患者年齢、閉経状況、ホルモン受容体発現状況、HER2 タンパク発現状
況、stage、術前化学療法施行の有無については術後断端診断結果に有意差が
みられなかった。断端陽性のリスクとして有意差が見られたのは組織型のみ
で、DCIS、浸潤性小葉癌は浸潤性乳管癌に比べて優位に断端陽性率が高かっ
た。650 例中 547 例が温存乳房照射を施行され、そのうち 83 例が Boost 照射
を施行されていた。103 例は年齢や患者拒否等の理由で放射線治療を施行さ
れなかった。温存乳房再発は 7 例 (1.1%)。すべて断端陰性症例で、うち 2 例
は Paget 病であった。術後放射線療法・化学療法・内分泌療法の有無で温存
乳房再発に有意差はみられなかった。【考察】温存術を施行する際には、術後
標準的治療を行うことを前提としたうえで、組織型を考慮し、DCIS や浸潤性
小葉癌、Paget 病では慎重に適応を決める必要がある。
【はじめに】乳房温存療法が標準療法となり、全国的に乳房全摘出術より多く
行われるようになった。しかし近年当院においては再び全摘術の施行割合が
増加しており、その背景について検討が必要と考えた。【目的】当院における
近年の乳房全摘出術の施行割合と術式決定理由について検討を行う。【方法】
対象は 2008 年 1 月 1 日から 2013 年 9 月 30 日に当院で乳癌根治術を施行し
た 1238 乳房。このうち、男性乳癌症例、他院で摘出生検施行症例、温存乳
房内再発症例を除いた 1212 乳房を今回の検討対象とした。これらの症例に
ついてカルテのデータをもとに後ろ向きに解析を行った。術式決定理由は主
に MRI での画像評価に基づき A:浸潤径/多発癌/占拠部位で温存不可、B:
広範な乳管内進展で温存不可、C:温存可能だが整容性担保困難、D:温存
可能だが患者の希望、E:温存可能だが初診時より再建希望と分類して検討
を行った。【結果】各年の乳房全摘数/総手術症例数(割合)は 2008 年 74 /
236(31.4%)、2009 年 65 / 199(32.7%)、2010 年 71 / 189(37.6%)、
2011 年 80 / 210(38.1%)、2012 年 101 / 225(44.9%)、2013 年 77 /
153(50.3%)だった。術式決定理由については(A/B/C/D/E(%))2008 年
32/41/8/18/1 (%)、2009 年 29/43/18/9/0 (%)、2010 年 18/49/24/8/0
(%)、2011 年 35/33/19/11/3 (%)、2012 年 34/37/20/7/3 (%)、2013
年 31/30/14/22/3 (%) だった。また、乳房再建 ( 一期的、二期的、自家、
他家組織を含む ) を受けた症例は各年の全摘症例中 2008 年 11%、2009 年
14%、2010 年 31%、2011 年 16%、2012 年 22%、2013 年 8% だった。【ま
とめ】過去 6 年間で乳房温存率は約 20% 減少したが、その理由は腫瘍要素か
らは推定が困難だった。乳房再建が一定の割合を占め、温存率減少に寄与す
ると考えられるが、年齢、詳細な占拠部位等の検討を加えて報告する。
484
ポスター掲示
11953
10988
乳房温存手術に対する筋体温存広背筋皮弁を用いた乳房再建術
の検討
シリコンインプラント不要な整容性のある広背筋皮弁による乳
房再建
GP-2-105-01
1
2
GP-2-105-02
1
順天堂大学医学部附属浦安病院 形成外科・美容外科、
順天堂大学医学部附属浦安病院 外科
3
小泉 拓也 1、松本 茂 1、新行内 芳明 1、望月 真理子 1、上田 晃子 1、
小室 裕造 1、須田 健 2、徳田 恵美 2、伊藤 真由子 2、福永 正氣 2
医療法人財団博愛会博愛会病院、2 国際医療福祉大学三田病院、形成外科、
田中病院、4 白水乳腺クリニック
渡邉 良二 1、酒井 成身 2、田中 千晶 3、森 寿治 1、深水 康吉 1、
白水 光紀 4
(はじめに)一般に広背筋皮膚弁による乳房再建は、ボリューム不足により満
足のいく再建ができないと判断され、シリコンインプラントを併用されるこ
とがある。当院では、熟練した形成外科医により乳房再建が施行され、対側
が下垂した大きな乳房でも拡大広背筋皮弁による再建をすることにより、シ
リコンインプラントを併用せず、良好な整容性を得られているので、工夫を
含めて報告する。(対象と方法)期間:2010 年4月から 2013 年 12 月、対象:
乳房切除症例(1例、乳頭乳輪温存)に対し、2期的に広背筋皮弁による乳房
再建を施行した 14 症例。検討項目:出血量、手術時間、合併症、整容性、工夫。
(結
果)出血量:27-220ml( 平均 130ml)、全員無輸血で施行。手術時間 3 時間 -4
時間 59 分(平均:3 時間 56 分)。合併症:感染 1 例、背部皮膚部分壊死:1例、
いずれも軽微で保存的に改善。移植皮弁の壊死:0例。整容性:全例、ボリュー
ム不足や乳房委縮は見られず良好な整容性が得られた。工夫:大きな乳房に
対しては、拡大広背筋皮弁(広背筋の範囲を超えて前方と足側に脂肪を多く含
み、大きなマウンドを作成)を施行し、対側の下垂が顕著なものには、対側の
乳頭乳輪を挙上し対応した。(結語)広背筋皮弁による乳房再建は、熟練した
形成外科医が行えば手術侵襲も少なく、十分な整容性が得られ、乳房再建の
一つの有用な方法として考慮されるべき術式である。
11907
11236
乳腺外科医による広背筋皮弁を用いた体位非転換一期的乳房再建
皮下乳腺全摘 (nipple sparing mastectomy) 後の広背筋皮弁
を用いた一期的乳房再建症例の検討
GP-2-105-03
GP-2-105-04
和歌山県立医科大学 第一外科
山口大学大学院 消化器・腫瘍外科学
尾浦 正二、吉増 達也、粉川 庸三、川後 光正、平井 慶充、清井 めぐみ、
西口 春香、松谷 雅子、本田 麻里子、岡村 吉隆
【目的】乳腺外科医による体位変換を伴わない側臥位での乳腺全切除と(拡大)
広背筋による一期的乳房再建術の初期成績を検討した。【方法】2010 年 9 月以
降に手術を実施した 66 例。外来センチネルリンパ節生検で転移陰性ないし微
小転移症例を基本的対象とした。乳腺全切除は、皮膚切除を伴わない外惻皮
切で行い乳頭下組織の迅速組織診を行い断端陽性の場合は、追加切除を実施
した。微小転移例では腋窩郭清も実施した。広背筋の採取は肩甲骨下角内下
方から上前腸骨棘近傍までの紡錘状皮切で行い初期の症例を除き腸骨陵近傍
までの脂肪を採取する拡大広背筋皮弁を使用した。ドレーンは、前胸部と背
部に 2 本留置し、背部ドレーンは 1 日量が 30mL 以下になるか術後 14 日目に
抜去した。【成績】1. 手術時間:117-276 分(中央値 183 分)。2. 出血量:10290mL(中央値 60mL)。3. 入院日数:10-24 日(中央値 16 日)。4. 再建容量:
健側と同等以下の再建容量となったのは 4 例のみ。5. 合併症:seroma は全例
に認めたが長期に持続したのは 1 例のみ。乳頭表皮壊死、創治癒不全、創近傍
の皮疹を各 3 例、創部感染と血腫を 2 例、内側皮弁逸脱および整容性に影響を
与える脂肪壊死を 1 例に認めた。【結論】(拡大)広背筋皮弁による一期的乳房
再建は、背部創が大きく入院が比較的長期になるという欠点を有するが手術
時間も短く、比較的乳房の小さな症例を選択すれば外科医にも容易に実施し
える有用な治療選択肢と思われる。
前田 和成、井上 由佳、北原 正博、徳光 幸生、兼清 信介、前田 訓子、
吉村 清、山本 滋、岡 正朗
【目的】我々はこれまで、皮下乳腺全摘 (nipple sparing mastectomy; NSM)
後の乳房再建は、形成外科と連携しながら広背筋皮弁を用いた乳房再建を行っ
てきたが、乳房再建用エキスパンダーとインプラントの保険収載に伴い、今
後患者がインプラントを使用した乳房再建を希望する場合があることが見込
まれる。今後 NSM 後の再建方法を提案する際にインプラントを使用した乳房
再建と対照となる、広背筋皮弁を用いた一期的乳房再建症例の術後経過につ
いて検討したので報告する。【対象と方法】対象は 2007 年 3 月から 2013 年 9
月までの間に、当科で NSM 後に広背筋皮弁を用いた乳房再建を施行した 4 症
例で、術後合併症の有無と整容性の評価を、手術時期で症例を半数ずつ前期
と後期に分けて検討した。整容性の評価は日本乳癌学会研究班澤井班におけ
る整容性評価のスコアを用いて行った。さらに、術後 CT 評価が可能であっ
た 2 例に対して、CT ボリュームメトリーにて左右差を評価した。【結果】年齢
中央値は 44.5 歳、観察期間中央値は 37.7 カ月、手術時間の中央値は 439.5
分であった。前期の 2 例では共に SSI を認め、うち 1 例は採取部位に皮膚移
植を要し、入院期間は平均 57 日間であった。後期の 2 例では、1 例で術直
後に広背筋皮弁の虚血を認めたため再手術による虚血部位の切除を施行した
が、入院期間は平均 16.5 日間であった。乳房再建後の整容性評価は、前期
は excellent 1 例、poor 1 例で、後期は excellent 1 例、good 1 例であった。
CT ボリュームメトリーは、いずれも再建側が小さく、左右差の測定はそれぞ
れ 17ml、72ml であった。【結語】NSM 後の広背筋皮弁を用いた乳房再建は、
合併症を認めた症例では整容性が不良となることがあり、細心の注意を要す
る。後期の症例では、整容性を含め経過は比較的良好であった。CT ボリュー
ムメトリーによる左右差の測定は、新たな客観的な評価方法となりうる。
485
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】乳房温存手術に対する一次再建手術の選択肢に広背筋皮弁移植術があ
る。広背筋皮弁は、皮弁の血行が安定しており、皮弁挙上が煩雑でなく、皮
弁採取部が背部となるため患者には目立ちにくい。われわれの施設では、広
背筋皮弁移植術をより低侵襲にする目的で、乳房温存手術に対する乳房再建
術の手段として、筋体温存広背筋皮弁移植術(muscle-sparing latissimus
dorsi flap 以下、MS-LD)を行っているため、その有用性について報告す
る。【方法】当院にて施行された乳房温存手術に対し、一次再建の手段として
MS-LD 移植術を行った。手術は、全身麻酔下、仰臥位で当院外科によりセン
チネルリンパ節生検術、乳房部分切除術を行った。切除断端の陰性を確認後、
体位を側臥位に変換し当科で再建を行った。摘出検体量、大きさを計測し、
背部に一次縫縮が可能な大きさの皮弁をデザインした。皮弁は、胸背動脈の
下行枝を茎として挙上し、横行枝は温存した。腫瘍の切除量が多い場合には
腰部や側胸部の脂肪織を含めて挙上した。皮弁採取部を閉創し、体位を仰臥
位に変換した。坐位にて乳房の左右差を確認しながら皮弁の充填を行った。
【結
果】乳房部分切除術に対し MS-LD 移植術を 6 例に施行した。摘出標本は、平
均縦 7.6cm ×横 8.4cm ×高さ 2.7cm、重量 81.4 g であった。挙上した皮弁の
大きさは、平均縦 14.5cm ×幅 6.3cm であった。ドレーン留置期間は、平均
12 日であった。小さな欠損に対し皮弁のみで再建した 3 例では、摘出標本の
重量は平均 40g で、ドレーンの留置期間は平均 7 日であった。大きな欠損に
対し皮弁周囲の脂肪組織を含めた3例では、摘出標本の重量は平均 109g であ
り、ドレーンの留置期間は平均 17 日であった。術後皮弁採取部に遷延する漿
液腫は認めなかった。皮弁移植部においては、移植した皮弁の壊死や感染な
どの合併症は認めなかった。【結論】乳房温存手術に対する筋体温存広背筋皮
弁移植術は、筋皮弁の血流が良好であるため術後放射線照射による萎縮や変
形を軽減できること、比較的大きな組織欠損に対しても腰部や側胸部の脂肪
組織を含むことで十分な組織量を補うことができること、などの利点があげ
られる。また、皮弁採取部においても、遷延する漿液腫を軽減する可能性が
あると考えられた。
ポスター掲示
10562
10497
局所有茎穿通枝皮弁による再建を併用した乳房温存術
乳房再建における乳頭・乳輪の変形・位置異常の修正
GP-2-105-05
1
GP-2-105-06
千葉大学 臓器制御外科、2 千葉大学 形成外科
1
藤本 浩司 1、長嶋 健 1、榊原 雅裕 1、三階 貴史 1、鈴木 ティベリウ浩司 1、
大久保 嘉之 1、椎名 伸充 1、藤咲 薫 1、榊原 淳太 1、宮崎 勝 1、
窪田 吉孝 2
一般セッション(ポスター掲示)
【緒言】当院では、切除のみの温存術では十分な整容性を得ることが困難な症
例に対し、乳房周囲の有茎穿通枝皮弁による乳房同時部分再建により整容性
の向上を試みているので報告する。【対象と方法】対象は従来法では整容性を
得るのが難しいと思われた乳房温存術症例。部分切除後、外側の欠損に対し
ては胸背もしくは外側肋間動脈穿通枝皮弁(TAP/LICAP)、内下方の欠損に対
しては前肋間動脈穿通枝皮弁(AICAP)を用い、術後は通常の放射線照射を施
行した。これら部分再建を併用した温存術症例について同時期の再建を伴わ
ない従来法症例と切除量、整容性の比較を行った。【結果】現在まで 15 症例に
対し、同手術を施行。患者年齢平均は 42 歳、臨床病期は Stage 0: 5 例、I: 4
例、II: 6 例であった。全ての症例でホルモンレセプター陽性であり、最終病
理でリンパ節転移を 3 例に認めた。使用した穿通枝皮弁の内訳は TAP/LICAP
flap:12 例、AICAP flap:3 例、平均皮弁重量は 132.9g、皮弁に含めた穿通
枝は各々平均 1.8 本、1.3 本であった。部分再建併用例の平均切除標本体積は
104.6ml であり、従来法における平均体積 47.3ml を有意に上回っていた。全
乳房体積に占める部分切除率は従来法の 12.0%に対し、再建併用群では
29.7%と 2.4 倍増加していた。また、従来法では切除率が増加するにつれ整
容性は低下し、切除率が乳房全体の 10%を超えると 3 割以上の症例で整容性
の低下がみられるのに対し、部分再建併用群では 15%以上の切除でも良好な
整容性を保つことが可能であった(図参照)。術後 CT でも経時的に大きな体積
減少は認めな
い。【 考 察 】本
法は従来法では
整容性保持困難
な温存希望症例
に対する選択肢
の一つと考えら
れた。
国際医療福祉大学三田病院 形成外科、2 京都大学 再生医科学研究所
酒井 成身 1、種子田 紘子 1、酒井 成貴 2
【目的】 乳癌手術において、乳房温存などで出来るだけ形態よく残存組織を
残したいものである。しかし乳頭・乳輪を残して乳癌切除された場合はほと
んどのケースで残存乳頭・乳輪は腋窩方向に偏位していて、左右対称にする
にはこれらを引き下げなければならない。乳頭・乳輪下の組織が薄い場合は
それを用いようとしても剥がすと壊死に陥る場合も多い。これらを修復する
種々の方法を工夫した。【方法】1)乳頭・乳輪が腋窩方向に大きく偏位して
いる場合で乳房の欠損の大きい場合は大きな筋皮弁を用い乳房再建とともに
その皮島の幅で乳頭・乳輪を足側へひき戻す。2)乳頭・乳輪の大きさくらい
の位置偏位があり乳房自体はほとんど残っているか、ティッシュ・エクスパ
ンダーで伸展してある状態で乳頭・乳輪周囲の皮下組織が厚ければZ形成で
皮弁を入れ替え引き下げる。3)乳頭・乳輪の偏位が腋窩・外側方向でそれほ
ど大きくなく、乳房切除の創が乳房外側に縦切開である場合は乳頭・乳輪を
回転皮弁で移動し、周囲の皮膚を V-Yadvancement して音符状の皮弁を用い
て修正する。4)瘢痕の方向がZ形成に適していない状態で、乳頭・乳輪の皮
弁を剥離しても壊死に陥らない厚さがあり、乳頭・乳輪皮弁採取部を縫縮で
きるような場合は V-Yadvancement で移動する。5)乳頭・乳輪の位置や変
形が少ないが、放射線治療などで一部乳輪が欠損した状態には、乳輪の皮膚
の一部を採取し移動したり、大腿内側基部から色素の濃い皮膚を採取し移植
する。【成績】これらの方法により乳頭・乳輪がほとんど対称な位置になり良
好な結果を得た。【結論】1)では放射線治療されていて乳頭・乳輪の下の組
織が薄い場合には乳頭・乳輪の壊死に対する注意が必要である。2)は瘢痕の
位置方向がZ形成の一辺と一致していることが条件となり、その瘢痕を一辺
としたZ形成をデザインしてみて、この移動でよい位置に移動できる場合が
適応となる。3)は外側瘢痕の位置により適応は限られる。4)では乳頭・乳
輪を壊死に陥らせないで移動することは非常に難しく、乳頭・乳輪皮弁採取
部を縫縮できるような場合がよい適応となる。5)では乳輪の小部分で足りる
場合が適応となる。そのような場合は不足部分と余剰部分を鑑み、余剰部分
があればそこから採取移植する。これら適応が非常に重要な要素となる。こ
れら手術手技や結果を報告する。
11403
11789
反復脂肪注入による全乳房再建 Expander/Step CAL
遊離皮弁による乳房再建後に BravaR を併用した遊離脂肪移植
による修正術について
GP-2-105-07
GP-2-105-08
セルポートクリニック横浜
1
辻 直子、青井 則之、吉村 浩太郎、波利井 清紀
【はじめに】乳房再建において、近年は脂肪注入がインプラント法に併用して
整容性を高める方法として広く認知されているが、生着率の問題からあくま
で他の方法での再建に併用して用いられることが多い。近年我々は、脂肪注
入を複数回行い全乳房を再建する反復脂肪注入 Multiple Fat Graft を行ってお
り、良好な治療成績を得ているので報告する。【方法】2012 年 6 月より 2013
年 10 月までに乳房切除後に脂肪注入を複数回施行し再建を行った 15 症例に
ついて検討した。このうち 3 例は乳房インプラントによる再建後に自家脂肪へ
の置き換えを希望した症例であった。脂肪注入に先立って大胸筋下に Tissue
Expander( 以下 TE)を挿入して皮膚を拡張し、4-6 か月後より皮下への脂肪
注入(幹細胞付加脂肪移植、Cell-assisted lipotransfer、以下 CAL)を 3 ヶ月
以上の間隔をあけて健側と同等のボリュームが得られるまで step by step で
行った。【結果】再建終了までの CAL 回数は平均 2.6 回、平均脂肪注入量は 1
回目 258ml、2 回目 209ml、3 回目 138ml であった。終了までの期間は平均 8 ヶ
月であった。1 例で TE 感染のため TE 抜去し、炎症鎮静後に TE なしでの CAL
を施行した。嚢胞形成は 4 例に認めた。術後の整容性は良好で自然な下垂する
乳房形態が得られ、柔らかく違和感も少ないため患者の満足度は高かった。
【考
察】乳房再建患者にとっては自然な柔らかい乳房を再建したいが長期入院や侵
襲の大きい手術は避けたいという希望もある。乳房インプラントを選択した
場合、固さや違和感のために不満が残る場合も多い。そこで我々は低侵襲な
自家組織移植である脂肪注入(CAL 法)のみを用いて再建を行い良好な結果を
得た。TE と併用することで患者の日常生活は保ちながら注入時には十分な皮
膚のゆとりが得られた。ただし、1 回の脂肪注入では 1 - 1.5cm 程度しか組
織の増大が得られないため 2 - 3 回の施術が必要であり期間もかかることを十
分に説明する必要がある。一方、本法は低侵襲な自家組織再建法として患者
の満足度は高く、今後乳房再建の選択肢の 1 つとなり得ると思われるので報告
する。
2
横浜市立大学附属市民総合医療センター 形成外科、
横浜市立大学学術院医学群 形成外科学
佐武 利彦 1、黒田 真由 1、竹澤 優佳 1、小川 真里奈 1、渋谷 麻衣 1、
黄 聖琥 1、安村 和則 1、前川 二郎 2
【はじめに】乳癌術後の自家組織による乳房再建後に,再建乳房の容量不足を
経験することがある.わずかな不足であれば少量の遊離脂肪移植 (FFG) のみ
で形態の回復が期待できる.局所的な不足分量が大きい場合に大容量の FFG
を行うと,術後の脂肪壊死や嚢腫が危惧されるため,少量の FFG を繰り返す
ことも選択肢の一つである.今回,遊離皮弁による乳房再建後に,移植組織
不足のために著しい左右差を呈した症例に対し,BravaR を術前後に併用し
て FFG を行った症例を経験した.FFG 手技の詳細,BravaR の装着状況,治
療結果について検討した.【対象症例と方法】2012 年 3 月から現在まで,遊離
穿通枝皮弁による乳房再建術を施行した 11 例が対象であり,全例とも再建乳
房の容量不足から著しい左右差を認めた症例である.再建術後 6 か月以上経過
して形態や大きさの変化が落ち着いてから FFG による修正術を行った.術前
後に BravaR を 1 日計 10 時間 4 週間の着用を指示した.健側乳房と形態,大
きさに関して対称性が得られるように,部分的な組織不足を呈する症例への
FFG が 7 例,再建乳房全体の組織不足を呈する症例への FFG が 2 例に対して行
われた.大腿部もしくは腹部より手動式脂肪吸引後に,遠心分離して得られ
た脂肪を,不足部位の大胸筋下,大胸筋内皮弁内から乳房皮下に,Coleman
technique にて注入した.また皺や凹凸の目立つ部位では FFG をある程度行っ
た後に,V 字型に折り曲げた 14 ~ 18G 針で Rigotomy を追加した.【結果】
患者の平均年齢は 47 歳 (30 ~ 70 歳 ) で乳房再建の手術時期および回数は一次
一期再建 7 例 , 二次一期再建 3 例 , 二次二期再建 1 例であった . 皮弁の内訳は
深下腹壁動脈穿通枝皮弁 (DIEP flap)6 例,下臀動脈穿通枝皮弁 (I-GAP flap)4
例,後内側大腿穿通枝皮弁 (PMT flap)1 例であった.FFG は平均 163.2ml で
あり,同時に健側への手術操作を 2 例 (FFG による増量 1 例,脂肪吸引によ
る減量 1 例 ) に追加した.術後の平均観察期間は 10.1 か月で,術後は感染や
触知できるような脂肪壊死,嚢胞形成等の主な合併症は認めなかった.【考
察】全例で容量の改善を認めた.ほぼ全例で BravaR 装着による接触性皮
膚炎を認めた.局所的な不足が大きく左右差が目立つ症例でも,Coleman
technique と術前後に BravaR を併用することで,大容量の FFG による修正
が可能であった.
486
ポスター掲示
11937
11897
BravaR を併用した脂肪注入による乳房再建術
当院におけるエキスパンダーと denuded flap を用いた自家組
織二期再建
GP-2-105-09
GP-2-105-10
1
横浜市立大学附属市民総合医療センター 形成外科、
2
横浜市立大学附属市民総合医療センター 乳腺外科、
3
横浜市立大学 形成外科
1
群馬大学大学院医学系研究科 顎口腔科学分野、2 群馬大学 臓器病態外科学
牧口 貴哉 1、堀口 淳 2、高他 大輔 2、六反田 奈和 2、長岡 りん 2、
佐藤 亜矢子 2、時庭 英彰 2、内田 沙弥香 2、荻野 里美 2、横尾 聡 1、
竹吉 泉 2
黒田 真由 1、佐武 利彦 1、竹澤 優佳 1、小川 真里奈 1、渋谷 麻衣 1、
菅原 順 1、黄 聖琥 1、安村 和則 1、石川 孝 2、前川 二郎 3
【はじめに】乳腺全切除もしくは乳房切除後の乳房再建において,保険適応承
認により,人工乳房による再建が増加してきた.しかし,皮弁を用いた自家
組織による乳房再建はその長所から未だ workhorse の一つである.自家組織
を用いた二期再建においては,皮弁の皮島が再建乳房に露出すると,パッチ
ワーク状外観や color match,
texture match 相違の問題が生じることがある.
これらを克服するために,エキスパンダーを挿入した後に自家組織移植を行
うことは有用な一法である.乳腺全切除,乳房切除後の自家組織二期再建に
おいて,エキスパンダーと denuded flap を用いた再建の当院における経験に
ついて報告する.【対象・方法】2012 年 1 月から 2013 年 11 月までに群馬大学
附属病院で行ったエキスパンダーと denuded flap を用いて再建を行った二期
再建 21 例を対象とした.
一次二期再建が 8 例,
二次二期再建が 13 例であった.
【結果】TE の挿入部位は大胸筋上が 5 例,大胸筋下が 16 例であった.用いた
denuded flap は腹直筋皮弁 9 例,広背筋皮弁 12 例であった.腹直筋皮弁 9 例
中,有茎 TRAM flap+ 血管吻合付加が 6 例,有茎 TRAM flap2 例,DEIP flap1
例であった.全例,エキスパンダーによる,感染,異物反応は認められなかっ
た.エキスパンダー挿入後,seroma が 1 例に認められたが,穿刺吸引により
治癒した.皮弁は全例,全生着し,胸部に皮膚壊死は認められなかった.腹
直筋皮弁再建 1 例(血管吻合付加なしの症例)において,小範囲ではあるが術
後残存する硬結が認められた.皮弁採取部合併症として,創縁部分壊死によ
る治癒遅延 2 例,seroma2 例(広背筋皮弁)が認められた.整容面の患者評価は,
5 点満点中平均 4.2 であった.【まとめ】エキスパンダーと denuded flap を用
いた自家組織による再建は組織移植まで 2 回の手術,および生食注入のための
外来通院を要する短所はある.しかし,エキスパンダーの合併症頻度は高く
ないことを考慮すると,皮島を露出する再建法より,最終的には整容面で良
好な結果が得られる有用な一法と考えている.
10879
11698
GP-2-105-11
GP-2-106-01
単孔式内視鏡補助下乳房温存術における新たな工夫(hatchet
flap を応用した充填再建法)
Nipple sparing mastectomy(NSM)+ Tissue Expander
(TE)留置による一次再建の有用性と課題
東京都済生会中央病院 外科
1
越田 佳朋、及川 明奈
上尾 裕昭 1、渋田 健二 1、甲斐 裕一郎 1、久保田 陽子 1、福永 真理 1、
早川 宏司 2、上尾 裕紀 3
【背景】乳癌領域において Oncoplastic surgery の概念の基、根治性はもとよ
りより整容性の優れた乳癌手術がなされている。我々は単孔式内視鏡補助下
乳房温存術(気嚢・吊り上げ併用法)を考案し、その有用性を報告してきた。
現在では更なる工夫としておもに内側または下方症例に対し欠損部の充填を
hatchet flap を応用した再建を行っているので報告する。【症例・方法】腫瘤
占拠部位は主に内側、下方症例で皮膚・乳頭および大胸筋に浸潤のなく温存
可能症例。腋窩の小切開創に創縁保護用プロテクターを装着。直視下にて色
素法センチネルリンパ節生検後大胸筋より乳腺を剥離。次に皮下の剥離およ
び乳腺を切離し直視下での操作困難となった時点で鏡視下に切り換え手術を
継続した。腹腔用単孔式手術に開発されたシリコンキャップに 5mm トロッ
カー 3 本挿入後プロテクターに装着。8mmHgCO2 にて送気後プロテクター
を吊り上げる事により十分なワーキングスペースおよび視野を確保。鏡視下
にて追加の皮下剥離、乳房部分切除を施行した。皮膚剥離・乳腺切離は主にメッ
ツエンバウム剪刃・エンドシザーズを用いた。欠損部は腫瘤占拠部位に応じ
た hatchet flap を作成し充填した。
【結果】平均腫瘍径 1.9cm・手術時間 154 分・
出血量 20cc。術中・術後合併症なし。【考察】気嚢法および吊り上げ法を併用
する事で十分なワーキングスペースを確保する事が可能となった。現在 12 症
例に行っているが安全性、整容性ともに容認できるものであった。【結語】本
術式は比較的簡便でありかつ有効な術式であると考える。
うえお乳腺外科、2 白山クリニック、3 九州大学病院別府病院外科
【はじめに】乳癌患者が乳房切除を受容できずに術後の整容性の保持を強く希
望する場合の一つのオプションとして、乳頭・乳輪・皮膚を温存する Nipple
sparing mastectomy(NSM)と同時に Tissue Expander(TE)を留置する一
次再建が挙げられる。当院で過去 10 年間で本法を行った乳癌 71 例の転帰を
解析し、根治性と整容性のバランスを図る上での本法の有用性と課題を検証
した。【適応基準】乳房切除を受け入れられない女性の中で、病変の位置から
みて乳頭・乳輪、腫瘍直上皮膚の温存が可能と思われた Stage II 以下の症例で、
充分な IC の後に本術式を希望した場合。通常の部分切除適応例(病変 3cm 以
下)や乳房切除を受容できる患者は対象外とした。なお、2010 年以降は「原則
として術前診断が非浸潤癌(DCIS)」の症例に適応を狭めた。【対象】術後 1 年
以上が経過した 71 例。術後病理診断別に分けると、浸潤癌:43 例、乳管内
成分(DCIS)が優位の浸潤癌:12 例、DCIS:15 例、潜在癌(腋窩リンパ節転
移):1 例。【手術】術前に患者は形成外科を受診して IC を受けるとともに適切
なサイズの TE を選択。手術は乳腺外科医と形成外科医が一緒に行った。乳房
外側~下縁の皮膚切開で直視下に NSM を施行し、術中迅速病理診断で乳頭直
下を検索して乳頭温存の可否を判定。TE(スムーズタイプ)は通常は大胸筋後
面に留置したが、次のようなケースでは皮下に留置した( 術後の化学療法や
照射の必要性が推測された症例、形成外科医が手術時に不在の場合、自家組
織での再建希望の症例)。TE による拡張の後は形成外科クリニックで TE を除
去してインプラントに入れ替えた。【結果】全例で満足できる整容性が得られ、
「DCIS」「DCIS 優位の浸潤癌」の 28 例では再発はなかったが、術後非照射の
時期の浸潤癌では 38 例中 5 例(13.2%)に局所の皮膚再発を認めた。再発例の
プロフィルをみると 5 例とも Grade 2 以上で、2 例は ly3 であったため、現在
は術前の針生検の結果から本術式の不適応例を選別している。また、2010 年
から原則として浸潤癌は本法の適応外とし、術後病理診断で浸潤巣を認めた
場合には乳房皮膚に照射を行っている。【まとめ】本術式は整容性オプション
として有用であるが、その適応決定には根治性に対する細やかな配慮が望ま
れる。
487
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】脂肪注入による乳房再建は、近年 coleman technique の普及や、注
入前後に Brava(体外式エキスパンダー)を併用することにより、従来よりも
注入脂肪の高い生着率が見込めるようになり、欧米では乳房再建術の選択肢
となりつつある。2012 年 3 月よりわたしたちは R.Khouri の方法に準じて、
Brava を用いた external expansion を術前後に併用して、脂肪注入による乳
房切除後の乳房再建を開始している。症例の多くが治療中であるが、これま
でに経験した 18 例の短期成績、問題点などについて報告する。【対象および
方法】2012 年 3 月から現在までに Brava を併用して脂肪注入による乳房再建
を行った 21 例が対象である。症例の内訳は、1)乳房切除後の 2 次乳房再建
19 例、2)乳房切除後の 1 次乳房再建 2 例であった。2 次乳房再建例は術後 1
年以上経過しており、放射線照射は施行しておらず、乳癌のコントロールが
良好な症例を対象とした。また A から B cup の乳房サイズが比較的小さく、
切除後の乳房ベースラインの皮下脂肪が残存している症例で、計 2 ~ 3 回の
脂肪注入にて乳房マウントの完成が見込まれる症例より開始した。術前後の
1 ヶ月間、1 日 10 時間の Brava 装着を指示した。腹部または大腿より手動式
吸引により採取した脂肪を、遠心分離後に皮下から大胸筋内へ注入した。皮
下瘢痕が強い部位は注入前後にカテラン針での剥離を併用した。【結果および
考察】周術期の主だった合併症は認めなかった。Brava 装着部の接触性皮膚炎、
色素沈着は半数の症例で認められた。また小腫瘤を形成した脂肪壊死を 1 例で
認めた。術前後に適切な Brava 装着ができ皮下瘢痕が強くない症例では、注
入脂肪の定着による容量の回復が確認できた。照射例、瘢痕の強い症例など
を含めた適応症例の選択、乳房形態のコントロールが今後の課題である。
ポスター掲示
10369
11925
Nipple-sparing mastectomy 後の乳房再建における合併症
とその要因の検討
ティッシュエキスパンダーを用いた乳房一期再建術術後ドレー
ン管理についての報告
GP-2-106-02
GP-2-106-03
ブレストサージャリークリニック
1
猪股 直美、岩平 佳子、小宮 貴子
佐藤 大樹 1、桑山 隆志 1、高丸 智子 1、大山 宗士 1、吉田 玲子 1、
榎戸 克年 1、澤田 晃暢 1、明石 定子 1、門松 香一 2、中村 清吾 1、
池田 紫 1、金田 陽子 1、中島 恵 1、奥山 裕美 1、渡邊 知映 1、森 美樹 1、
橋本 梨佳子 1
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】Nipple-sparing mastectomy(以下 NSM)は、乳輪乳頭および乳房部
皮膚を温存しながら乳腺を全切除する手術で、特に同時にエキスパンダーを
挿入する一次再建は優れた整容性が得られる術式であるためこれを希望する
患者は多い。しかし、術後乳輪乳頭壊死、位置の非対称が起こることもまれ
でない。これまで再建を行った NSM の合併症と要因を検討した。
【方法】NSM 後にティッシュエキスパンダー / インプラント法で乳房再建術を
施行し、2011 年 1 月から 2013 年 9 月までにインプラント入替えまで完了し
た 78 例について、乳輪乳頭壊死、乳輪乳頭位置異常、皮切部壊死の有無を評
価した。さらに、影響を与える因子を検討するため、乳癌の位置・種類、乳
房の大きさ、補助療法など影響すると思われる因子について解析した。
【結果】全 78 例中、上記の合併症を認めない症例は 27 例 (34.6% ) であった。
乳輪乳頭壊死は 10 例 (12.8% ) に認め、うち 7 例が C あるいは AC 領域の乳癌
であった。乳房部皮膚の発赤や炎症後色素沈着は 5 例 (6.4% ) に認め、2 例
が放射線照射例、2 例が人工物感染合併例であった。30 例 (37.5% ) におい
て、乳輪乳頭位置が対側と比較して乳輪 1/2 個分以上の差がみられ、対側よ
り上方・外側に変位することが多かった。特に乳輪 1 個分以上の差があるもの
は、C 領域の乳癌や挿入したインプラントが 300cc 以上群に多かった。下垂
した乳房では、対称性を得るために健側に挙上術や豊胸術を要する場合があっ
た。乳房下溝および側胸部の皮切部周囲皮膚に広範な発赤を認めたのが 10 例
(12.8% ) で、その中の 2 例で創縁が壊死に至り、1 例でティッシュエキスパ
ンダーが露出した。
【考察】NSM 後の乳房再建では、術後合併症として乳輪乳頭位置異常の頻度が
高く、対側より上方・外側に変位しがちである。また、乳輪乳頭や皮切部が
壊死に至ると、長期的に乳輪乳頭の変形や乳房の非対称、色素沈着をきたす
ため、これらのリスクである AC 領域の術後や大きな乳房、放射線照射例では
注意を要する。NSM 後の乳房再建では、乳房および乳輪乳頭の対称性は温存
されると期待されがちであるが、起こりうる合併症とそのリスク要因を十分
に理解したうえで、NSM の適応を慎重に検討すべきと考える。
昭和大学 乳腺外科、2 昭和大学 形成外科
【背景】2013 年 7 月より乳房用ティッシュエキスパンダー (T/E) が保険適用と
なり、T/E を用いた一期再建手術が広まり、それに伴い同手術を選択する患者
数の増加が見込まれる。当院でも 2013 年 7 月より保険収載となった T/E を用
いた一期再建手術を形成外科と連携して行っている。また、これまで当院で
は乳房再建専門クリニックとの連携で同様の手術を行ってきた。T/E を用いた
一期再建手術の術後管理、特にドレーン管理については、早期に抜去すれば
後日、リンパ液貯留に対して穿刺排液が必要となり、感染のリスクが高まる
懸念がある等の理由で、抜去の基準が、各施設、主治医によって異なる。今
回当院で形成外科及び乳房再建専門クリニックと連携して行った症例におい
て、術後のドレーン排液量とドレーン抜去までの日数などを検討したので報
告する。【対象】2013 年 1 月~ 6 月までに乳房再建専門クリニックと連携し T/
E を用いた一期再建を行った 26 症例 28 乳房と、2013 年 7 月~ 12 月までに当
院で形成外科と連携し T/E を用いた一期再建を行った 29 症例 32 乳房。ドレー
ン抜去の基準となる排液量は、クリニックとの連携を行った患者では 50ml/
day 以下を原則とし(定量抜去群)、当院形成外科との連携患者では、目標は
10ml/day 以下とし、但し、ドレーン留置期間が 2 週間を越えないようにし
て抜去した。(期間限定抜去群)【結果】ドレーン抜去時の排液量は定量抜去
群で中央値 35ml/day(6 ~ 58ml/day)
、期間限定抜去群で 20ml/day(1 ~
52ml/day)、ドレーン抜去までの日数は定量抜去群で中央値 8 日(3 ~ 15 日)、
期間限定抜去群で 11 日(5 ~ 16 日)と、期間限定抜去群の方が長期留置され
ていた。30ml/day 以下となり、ドレーンを抜去した症例は定量抜去抜去群で
は 11 例(39.3%)、期間限定抜去群では 27 例(84.4%)が、術後 2 週間の時点
で 10ml 以下とはならず抜去されていた。期間限定抜去群において 10ml/day
以下となり抜去された症例は 11 例(34.4%)であった。入院期間中の合併症
に関しては、両群間に有意差を認めなかった。【考察】期間限定抜去群の、留
置期間が明らかに延長した。また、術後の穿刺回数や合併症等の退院後の経
過も合わせて、T/E による一期再建でのドレーン抜去の最良のタイミングにつ
いて検討した結果を報告する。
11850
11469
ティッシュエキスパンダーを用いた乳房再建術、一次再建と二
次再建の比較検討、どちらを勧めるか?
外側胸脂肪組織を用いた乳房一次再建~ Modified lateral
tissue flap によるティッシュエキスパンダー被覆法
GP-2-106-04
1
3
GP-2-106-05
獨協医科大学越谷病院 形成外科、2 筑波メディカルセンター病院 乳腺科、
獨協医科大学 形成外科
堂後 京子 1,2、植野 映 2、森島 勇 2、梅本 剛 2、朝戸 裕貴 3
【背景】ティッシュエキスパンダーを用いた乳房再建法は患者の乳房本来の皮
膚による再建を可能にする方法として有用である。昨年、テクスチャードタ
イプのエキスパンダー使用が承認され、患者の身体的負担が少なく挿入手技
も比較的簡便な本術式が広く行われるようになることが予想される。乳癌手
術と同時にエキスパンダーを挿入する一次乳房再建は、術後の乳房喪失感が
軽減されること、手術が一回少なくて済むことなどのメリットがあり有用な
方法である。しかし、二次再建と比較し合併症の出現頻度は高いとされており、
合併症を生じた場合はむしろ患者の QOL 低下や再建結果に及ぼす影響が懸念
される。当院で行った症例について検討した。
【方法】2009 年 6 月から 2013 年 12 月の 4 年 6 ヶ月の間に、乳房切除術を行っ
た患者に対して、当院でティッシュエキスパンダーを用いた一次乳房再建術
を行った 61 例と、二次乳房再建術を行った 12 例を対象とした。術後有害事
象発生の内訳とそれに起因した弊害について調査し比較検討した。
【結果・考察】エキスパンダー挿入後、予定外の抜去を要した症例は、一次再
建で 11 例(18.0%)、二次再建で 0 例(0%)であった。その内訳は、感染 7 例
(63.6%)破損 3 例(27.3%)疼痛 1 例(0.09%)であった。一時再建では重篤
な有害事象発生が二次再建と比較して有意に多かった。特に皮膚壊死、創傷
治癒遅延から感染、疼痛等の合併症を引き起こす症例が多く、結果として、
乳房再建が完遂できなかった、あるいは満足な結果が得られていない等の大
きな問題となっていた。一方、二次再建では被膜拘縮、乳頭位置異常が必発
であった。しかし、これに対しては最終的な再建方法の選択、エキスパンダー
抜去時、その後の修正術によって修復が可能である。乳房再建の説明をする
際には、一次再建と二次再建のメリットとデメリットをよく把握した上で行
うことが重要であると考える。
1
岩手医科大学医学部 形成外科、2 岩手医科大学医学部 外科
細谷 優子 1、柏葉 匡寛 2、若林 剛 2
【目的】人工物での乳房一次再建では、安全性を高めるために筋弁などを用い
てティッシュエキスパンダー(以下 TE)を被覆する方法が報告されている。
我々は、Ohuchi らが乳腺円状部分切除術後の形成術に使用している Lateral
tissue flap を、中腋窩線側を茎とするランダムパターンの脂肪弁 (Modified
lateral tissue flap 以下 MLTF と称す ) として挙上し、TE 被覆に用いているの
で報告する。【方法】2011 年 1 月より 2013 年 12 月まで、当院関連施設におい
て TE を用いた一次再建を施行した症例は 43 例であった。TE を被覆する材料
として、MLTF を用いた症例は 22 例であった。MLTF は、術前に立位で中腋
窩線をマークし、臥位になった状態で中腋窩線が背側へ湾曲した症例に用い
ている。乳房切除の際、乳腺組織と外側皮下脂肪の境界を胸壁方向へ向かっ
て垂直に切離し、切離断端に牽引糸をかけ、脂肪弁として挙上する。TE 挿入
後、前進させ大胸筋と縫合し、TE を被覆する。【結果】MLTF の挙上は分層前
鋸筋弁と比較して、出血も少なく簡便に挙上ができた。術中注入量は 60ml か
ら 500ml、平均 147ml であり伸展も良好であった。合併症は胸部皮弁広範囲
壊死、胸部皮弁部分壊死、創離開、TE 破損後がそれぞれ 1 例ずつであったが、
明らかに MLTF に起因する合併症は認めなかった。【考察】人工物による乳房一
次再建では、二次再建と比較すると合併症が増加するという報告があり、安
全のため前鋸筋を用いる方法や分層前鋸筋弁を用いた Muscular pocket 法な
どが報告されている。我々は、以前より臥位になった際、背側へ移動した外
側胸脂肪組織を骨膜に縫合して修正を行っていたが、これを TE 被覆の材料と
して用いることで、安全性を高めるだけではなく外側胸脂肪組織による術後
変形の予防にもつながる。合併症も、明らかに MLTF に起因するもの認めず、
安全性も高いと思われた。今後は症例数を重ね、問題点の検討をしていきたい。
488
ポスター掲示
10850
10239
Acellular Dermal Matrix の代用として自家真皮移植を行った
エキスパンダー / インプラントによる乳房再建
大胸筋と前鋸筋による皮下ポケットをティッシュエキスパン
ダー挿入に利用した乳房再建方法の検討
GP-2-106-06
GP-2-106-07
1
森之宮病院 形成外科、2 大阪大学医学部 形成外科、
森之宮病院 乳腺内分泌外科、4 市立吹田市民病院 外科、
5
ふるかわクリニック
姫路赤十字病院
3
1
2
3
3
大塚 翔子、渡辺 直樹、下島 礼子、佐々木 陽子
4
藤原 貴史 、矢野 健二 、丹治 芳郎 、長田 陽子 、柳沢 哲 、
古川 順康 5
11932
11531
当科における遊離脂肪移植を併用したインプラント乳房再建の
検討
エキスパンダーを用いた乳房再建 1000 例 ―サイズ選択とそ
の変遷―
GP-2-106-08
GP-2-106-09
1
1
横浜市立大学附属市民総合医療センター 形成外科、
横浜市立大学附属市民総合医療センター 乳腺甲状腺外科、
3
横浜市立大学 形成外科
2
がん研有明病院 形成外科、2 がん研有明病院 乳腺センター外科
棚倉 健太 1、澤泉 雅之 1、前田 拓摩 1、川上 順子 1、今井 智浩 1、
岩瀬 拓士 2
小川 真里奈 1、佐武 利彦 1、竹澤 優佳 1、黒田 真由 1、渋谷 麻衣 1、
菅原 順 1、黄 聖琥 1、安村 和則 1、石川 孝 2、前川 二郎 3
【目的】シリコンインプラントによる乳房再建は、簡便さや侵襲の少なさから
乳房再建における選択肢の一つであるが、乳房切除後の皮下組織が薄いこと
などにより、周囲陥凹の残存、rippling、インプラント周囲が浮き出るといっ
た contour deformities が生じ、充分な整容性が得られないことが問題とされ
てきた。一方遊離脂肪移植による乳房再建は、Coleman technique の普及な
どでより高い生着率を得られるようになってきたが、痩せた症例では十分な
注入用脂肪を得にくかったり、満足の得られる大きさになるまでに複数回の
手術を要したりと、単独での再建には難しい点もある。今回われわれは、イ
ンプラントおよび遊離脂肪移植を併用して乳房再建を行ったため、検討し報
告する。
【対象・方法】2012 年 3 月から 2013 年 12 月までにインプラントと遊離脂肪移
植を併用して乳房再建を行った 10 例。インプラントを従来より一段階小さい
サイズを選択し、インプラント挿入時に腹部または大腿部より手動式吸引に
より採取した脂肪を、遠心分離後に皮膚とカプセルの間の組織内に注入した。
術後 6 か月を経過した時点での整容性、合併症の有無を検討した。
【結果】当科で経験した 10 例のうち、9 例が乳房全摘後、1 例が豊胸術後であっ
た。年齢は 38 ~ 55 歳(平均 45 歳)、乳癌手術から再建までの期間は 222 ~
1203 日(平均 462 日)であった。注入脂肪は 62 ~ 138ml(平均 96.9ml)であっ
た。大きな合併症は全例にて認められなかった。
【考察】シリコンインプラントが保険適応となり、今後インプラントによる再
建を希望する患者は増加すると思われる。少ない回数の手術でより整容性の
高い乳房再建とするために、インプラントと遊離脂肪移植の併用は一つの有
効な方法であると考えられた。今後症例数を増やし、長期的な経過も含めた
結果を検討していきたい。
489
目的
当施設では 2005 年に人工物による乳房再建を開始して以来、Allergan 社製
の乳房再建用でアナトミカルタイプのティシューエキスパンダー ( 以下 TE)
Natrelle 133 を使用してきた。これまでにその件数は 1000 例を超える。その
サイズ選択の方法及び結果、変遷ついて報告する。
方法
2005 年 12 月より 2013 年 10 月までに当施設で同 TE を挿入された症例につい
て、そのサイズを調査し検討した。
結果
対象は 1020 例であった。形態別では最多が MV:716 例、次いで FV:135
例、MX:119 例、であった。幅では 11cm が 358 例で最多であり、次いで
12cm:315、13cm:192 例となり、大きくなるにつれて減少する結果となっ
た。製品別では MV11 が 291 例で最多となり、以下 MV12:242 例、MV13:
121 例、MV14:54 例、MX13:37 例、MX12:35 例等となった。
考察
TE の選択では、健側乳房を参考に製品が決定される。今回の調査では、TE の
幅は 11cm が最多で、広くなるほど減少するという結果であった。Natrelle
133 には、7 種の形態が発売されているものの、使用は 5 種に限られていた。
この 5 種はすべて類円形ないし楕円形であり、喪失感のない一次再建