NEWS CLIPPING in April

造船関連海外情報の提供
NO. 235/16 May
BY JETRO SINGAPORE – SHIPBUILDING DIVISION & SHIP MACHINERY DIVISION
NEWS CLIPPING in April
シンガポール
クルーズ船サファイア・プリンセス号、シンガポールを母港に
2014年、世界最大のクルーズ企業の最高級クルーズ船がシンガポールを母港とする。
アジア地域でのクルーズ産業の成長の波に乗るのが狙いだ。サファイア・プリンセス
号はカーニバル・コーポレーションの子会社、プリンセス・クルーズ社所有で、乗客
数2670名、重量11万6000トン。マリーナベイ・クルーズセンターを母港とする。サフ
ァイア・プリンセスは最初のシーズンで、シンガポールからの乗船を4万人と見込ん
でいる。シンガポール人のほか、北米、英国、オーストラリア人などが顧客になる。
クルーズ航路は15種類で、それぞれ3日から21日間の日程だ。シンガポール発着のク
ルーズ料金は1人あたり549ドルから3939ドルになる。
カーニバル・コーポレーションは世界最大のクルーズ客船運航企業で、100隻以上
のクルーズ船を所有している。プリンセス・クルーズ社は、2014年11月の就航から4
ヶ月で、乗員乗客がシンガポールで消費する金額と、物資補給費、旅行会社への仲介
料を含め、シンガポール経済に5000万ドルの経済効果をもたらすと試算している。ま
た、プリンセス・クルーズ社は、3月にシンガポールで東南アジア最初の支社を開設
し、5月よりプリンセス・アカデミー訓練課程を開講して、地元旅行業界向けにクル
ーズ分野の専門知識を提供する。
シンガポールを母港とするクルーズ船は増えており、シンガポール観光局の資料で
は、シンガポールを拠点とするクルーズ船は2012年末で6隻だったが、今年末には計
11隻となる見込み。ロイヤル・カリビアン・インターナショナル社のマリナー・オブ
ザシーズも2013年6月よりシンガポールを拠点とする。乗員乗客数3114名の同船はシ
ンガポールを母港とするクルーズ船の中で最大級。ここ10年でシンガポールを訪れる
クルーズ客数は年率6.5パーセント増加しており、2012年のクルーズ客数は90万7000
人に到達した。2016年には150万人が見込まれている。これはアジアにおけるクルー
ズ産業の活発な成長を反映している。アジア・クルーズ・ターミナル協会のクリステ
k
ィナ・シャウ会長は「利益を得るのはターミナルだけではない。乗客は航海前後にホ
テルや食事、観光など地元で消費する。そしてクルーズ船も物資を補充する。この経
済波及効果は膨大で、アジアの多くの港がクルーズ船の拠点を狙っている。」と語っ
た。マリーナベイ・クルーズセンターは2012年開港、同時期にハーバーフロントの国
際旅客ターミナルも1400万ドルの改装工事を終えた。
シンガポール税関、輸出入手続きの簡易迅速化を推進
シンガポール税関は、税関申告オンラインシステムの合理化を進め、手続きを更に
迅速かつ簡単にしようとしている。業界もこれを歓迎している。
このシステムはトレードネットと呼ばれ、輸出入、積替に関係する全ての政府機関
と企業をオンラインで繋ぎ、情報を一括処理している。税関は更に申告する情報を減
らすなどにより手続きを簡素化することを目指している。また、現在コンテナ貨物に
のみ許可されている「書類なし通関」を、主に陸上・航空輸送で到着する非コンテナ
貨物にも適用しようとしている。世界的運輸大手、TNTエクスプレス社のロック・フ
ィチョン・リージョナルマネージャーは、「トレードネットの更なる手続き簡略化は
我々の時間と手間を省くだろう。申告記載事項はどれもほぼ同じだからだ。」と述べ
た。ロック氏はまた、「申告書類作成は時間と人件費が多くかかり、しかも煩雑であ
る。税関申告最低金額の引き上げも図るべきだ。」とも提案した。貿易業者は金額に
関わらず輸出入許可証を申請しなければならない。しかし、航空便貨物は400ドル以
下であれば、非課税・非統制品に関しては申告不要だ。ジョセフィン・テオ財務兼運
輸担当国務大臣はシンガポール税関の年間業務計画セミナーに来賓として出席し、
「シンガポールの輸出入業は既に1兆ドル近くに達しており、多くの業界が貿易に依
存している。貿易量は経済成長に伴い、増えこそすれ、減ることはない。税関と貿易
会社は、増加する輸出入貨物に対応する新たな方法を見つけなければならない。」と
語った。トレードネットの簡素化はシンガポール税関の戦略的業務計画、カスタム
2015プラスの一部である。カスタム2015プラスは、2010年に外部環境の変化に合わせ
て税関業務を進化させるために発表された戦略、カスタム2015年の修正版。シンガポ
ール税関のフォン・ヨンキアン局長は、この計画はシンガポールの経済競争力を高め
るために貿易業の相互連結を強化すると述べた。加えて、税関は貿易業界が密輸取締
りのための監視団体を2015年までに編成することを希望した。これは港湾運営会社、
貨物取扱会社やその他企業からなる監視団体が、不審な活動を見つけ、関係機関に報
告するというもの。
シンガポール港、港湾使用料値下げ
シンガポール海事港湾庁(MPA)が港湾使用料値下げと、その他の奨励金の導入を発表
した。この措置により業界全体で年間2200万ドルの経費節減が見込まれ、これにより
港湾の競争力向上と停泊地の有効利用を図る。2013年7月より実施され、シンガポー
ルに停泊するコンテナ貨物船のうち最大83%の船が港湾使用料値下げの恩恵を受け
る。2014年6月末までだった港湾使用料の20パーセント減額も、恒久的措置となり、
上記2200万ドルの半分、1100万ドルが港湾使用料の20%減額の恒久措置化によるも
k
の。改定された港湾使用料は停泊期間の短い船舶に有利な制度となっているが、一方、
シンガポールを拠点とする船舶の7パーセントを占める長期停泊船舶の使用料が高く
なる可能性がある。環境に配慮した船舶に対する値引きと奨励金の導入も明らかにし
た。これは1億ドルを投入して2011年に開始したシンガポール海事環境推進計画の一
環。排ガスの少ない燃料を使用する船舶に対する割戻しは現行の15パーセントから25
パーセントに引き上げられる。燃料消費と排出硫黄酸化物量を減らしたシンガポール
籍船舶は、初期登録料を半額から4分の1に減額する。
また、シンガポール地元海事企業が排出物削減10パーセントを達成する環境技術を
導入、もしくは開発した場合は、更なる資金提供を受けられる。一連の動きは先にタ
ーマン・シャンムガラトナム副首相が提唱した海運業界全体の生産性向上につながる
ものだ。荷主は燃料費と人件費の高騰による利益減少に悩まされているが、アジアに
おけるコンテナ量はこの先も増加が見込まれている。海事業界がシンガポールの国内
総生産に占める割合は7パーセントである。
ジャッキアップ・リグ建造で存在感を増す中国
中国の造船所がジャッキアップ・リグ建造でプレゼンスを高めている。2013年は中国
企業のリグ建造受注件数が、現在稼動中の世界のリグの70パーセントを建造したシン
ガポールのケッペル社やセムコープ・マリン社を超える歴史に残る年になるかもしれ
ない。英国の投資銀行のレリガーレ・キャピタル社によると、現時点で中国造船所の
ジャッキアップ・リグ建造受注総額は27億3000万USドル。対するケッペル社とセムコ
ープ・マリン社の総額は19億7000万USドルにしか過ぎない。レリガーレ社のビンセン
ト・フェルナンドアナリストは「中国では造船能力が過剰で、造船受注が大変難しく
なっている。これが彼らをオフショア業界へ進出させた要因だ。」と述べた。バーク
レイズ・リサーチのスコット・ダーリン、クレメント・チェン両アナリストは「2006
年より中国の造船業界はリグ建造を習熟し新規建造を行い、市場シェアを上げてい
る。」と語った。リグ建造分野のトップを目指しているのは中国造船業界だけではな
い。韓国の現代重工業やサムスン重工業、大宇造船海洋各社も、深海掘削船建造を受
注している。シンガポールのリグ建造企業と中国や韓国の同業者との対立は造船不況
が始まった数年前から顕在化していた。しかも、現在は市場シェアを伸ばす好機だ。
世界中の老朽化したリグが交換の必要に迫られている。新興国でのエネルギー消費が
増加しているからだ。世界の500基のジャッキアップ・リグのうち、およそ300基が建
造30年を超過している。ジャッキアップ・リグ新造費用は現在約2億USドル。現在リ
グ建造会社の選択肢はシンガポールや韓国の5大リグ建造企業にとどまらない。コス
コやCIMC・ラッフルズ、大連造船所などの中国企業も競争に加わっている。バークレ
イズ社の試算では、中国の造船所は10年でリグ建造の市場シェアを3パーセントから
30パーセントにまで伸ばした。今後更なる成長が見込まれる。レリガーレ社は、2015
年までに中国リグ企業の建造能力がシンガポールに追いつくと見ている。バークレイ
社は中国企業が今後2年で市場シェアを更に10パーセント伸ばすと予測している。今
までの認識では、中国は比較的単純な均質化したジャッキアップ・リグ建造が専門で、
ケッペル社やセムマリン社とは競合しないと見られていたが、状況が変化している。
k
前出のフェルナンド氏によると「CIMCラッフルズ社は2013年1月にキプロスのフリグ
スタッド・オフショア社から2隻の高機能深海用半潜水型海洋掘削装置を受注した。
このリグはシンガポールで建造中のものより更に高度なものだ。また、中国企業から
のより魅力的な契約条件が発注の決め手となった。」。中国政府による中国造船所へ
の後押しにより、中国の造船所は契約金額の20~30パーセント割引や、頭金1パーセ
ント、引渡時に料金の99パーセント支払などの有利な支払条件をオファーできる。一
方、シンガポールの造船所は目標到達毎払いか、頭金20パーセント、引渡時80パーセ
ント支払のどちらかの支払方法を採用している。しかし、大手証券会社のCIMBによる
と、中国がシンガポールの受注を全て奪うことはないという。「強固な資金調達能力
を持つ老舗の掘削会社は、中国の品質や納期に関してリスクをとるより、シンガポー
ルや韓国企業に契約を発注する方を選ぶ。」実際、2013年4月18日のビジネスタイム
ズ紙によると、中国がリグを受注しているのは、掘削では無名の新興企業や、後から
転売して利益を得ようという投機家筋が多いからだという。名の知れた掘削企業で中
国から調達しているのは、シードリル社だけである。しかし、中国造船所の積極的な
進出は、リグ建造の収益低下につながっている。リグ建造がピークに達していたとき
の粗利は最大20パーセントだったが、現在ケッペル、セムマリン両社は粗利を10パー
セント~13パーセントとしている。「中国、シンガポールに関わらず、造船所は過当
競争により価格決定力が低下している。」とフェルナンド氏。ケッペル・オフショア・
アンド・マリン社のチョウ・ユーユエン最高経営責任者は「リグ建造競争が激化して
いる。しかし、ケッペル・オフショア・アンド・マリン社は技術開発や経験により、
一歩抜きん出ていられる。」と述べた。チョウ氏はまた、「ケッペル社は“市場と顧
客の近くで建造する”戦略により、米国、ブラジル、中国に造船所を設置し、世界中
の石油・ガス業界の顧客を開拓し、それぞれの要求に応えている。」と述べた。セム
マリン社は2013年後半、拠点を現在のジュロンからトアスの新統合造船所に移す。新
造船所では労働力・資材を最小限に抑えることが可能だ。一方、江蘇揚子江造船所の
任元林会長は取材に対し、シンガポールの造船所が中国の造船所に勝つには、両社が
手を結ぶことだと語った。シンガポールの長所はノウハウで、中国側は労働力。シン
ガポール造船所は労働力を切望している。江蘇揚子江造船所はすでにこの戦略を開始
しており、2010年に、セムマリン社の子会社であるPPL造船の株式のうち、ベーカー・
テクノロジー社の投資子会社PPLホールディング社が保有する15パーセントをPPLホ
ールディング社より買収し、セムマリン社との共同株主となった。しかし、この買収
劇は、PPL造船の完全子会社を希望するセムマリン社より売却無効の訴えが起こされ、
係争中である。これは、シンガポール側が、知的財産が簡単に海外競合相手に流出す
ることに不快感を抱いているということである。PPL造船の件を除いても、任会長は
中国造船所との提携はシンガポールの造船業にとっては合理的だと言う。会長は更に
「問題は考え方と、提携する意欲があるかどうかだ。もしシンガポールの造船所が市
場トップの地位を保ちたいなら、中国の造船所との提携も検討するべきだ。」と述べ
た。
ケッペル社、深海海底探査分野に進出
k
ケッペル社は海底採掘という新たな分野に乗り出そうとしている。同社はロッキー
ド・マーチン社の子会社、UK・シーベッド・リソーシス社と提携し、合弁会社オーシ
ャン・ミネラル・シンガポール社(OMS)を設立した。深海底鉱物資源管理を行う国連
機関の国際海底機構(ISA)に採掘許可を申請中だ。ISAは今年7月に審査を行う。許可
が下りれば、OMSは海底より数キロメートルの深さの地中を探索できる。探査対象は
多金属団塊、銅、ニッケル、コバルト、マンガン及びレアアースだ。OMSはケッペル
社完全子会社のオーシャン・ミネラル・シンガポール・ホールディング社が78.1%の
株式を所有し、残りをUK・シーベッド・リソーシス社とシンガポールの民間投資会社、
ライオンシティ・キャピタル・パートナーズ社が保有する。OMSの申請は7月に判断が
下される。ケッペル社はどの地域の海底探査許可を申請したのかは明らかにしなかっ
た。過去にISAが認可した許可証は、通常は期間が15年の多金属団塊採掘だ。また、2
地域での採掘許可実績がある。ハワイ南部、南西部にそれぞれ位置するクラリオン-
クリッパートン両断裂帯、もうひとつは中央インド洋盆地だった。OMSの提携先であ
るUK・シーベッド・リソーシス社も独自にクラリオン-クリッパートン断裂帯の多金
属団塊採掘許可を申請中だ。
石油・ガス探査と同様、鉱物資源探索も陸上資源が希少になるに従い海洋へと移動
している。海底より数キロメートルの深さにある鉱物採取は、かつて不経済という認
識だったが、現在は遠隔操作もしくは自動制御の水中機器、ポンプ、ライザー管とい
う新たな技術開発の組み合わせにより、鉱物の水面への移動が可能だ。採取された金
属は建設、航空宇宙、代替エネルギーの各産業に供給される。ダイアモンドは長年ナ
ミビア沖で採掘されてきたが、海底鉱物採掘は現在のところパプアニューギニア政府
とカナダの鉱山会社、ノーチラス・ミネラル社が合同で採鉱段階を完了したソルワラ
計画のみだ。また、この計画は未解決の金銭問題により中断している。浚渫船、採掘
船、関連機器製造のIHCメルウェデ社は、「海底採掘は陸上より有利な点が多い。陸
上鉱山が固定された恒常的インフラを必要とするのと比べ、採掘船は鉱脈から鉱脈へ
と移動が可能だ。だが、海底採掘の問題点は、採掘した鉱物を海底から水面までの長
距離を大気圧の何倍も水圧に抗して移動しなければならない点だ。」と語った。同社
は海底採掘計画を専門に扱う合弁会社をシンガポールに設立している。DBSビッカー
ズ証券のアナリストは、「ケッペル社のこの新事業は中国・韓国との厳しい競争にさ
らされているオフショア・海洋事業能力を多様化する。だが新事業を評価するには時
期尚早だ。実行可能性が不確かで、情報が限られているからだ。しかし、リスクは高
いが、大きな可能性を秘め、また、ケッペル社の中長期的な成長に貢献するかもしれ
ない。」と述べた。
マレーシア
コースタル・グループ、4億3400万リンギ分造船受注
コースタル・コントラクツ社の完全子会社、コースタル・オフショア(ラブアン)社と
タウマス・マリン社が総額4億3400万リンギのオフショア船9隻を受注した。コースタ
ル・コントラクツ社のン・チンヘン代表取締役会長によると、受注9隻のうち、7隻が
k
オフショア支援船(OSV)、残る2隻が給油船。ン氏は「2013年から2014年にかけて引渡
予定であり、2013年と2014年の会計年度の売上高と当期純利益に大きく貢献するだろ
う。現時点でコースタル・グループ社はおよそ7億2000万リンギの受注があり、2014
年までに順次引渡予定となっている。」と説明した。この最新の契約は同グループが
2003年8月に上場して以来、最大規模の売上の1つとなった。将来はアフリカ西部やノ
ルウェーなどの新興市場での存在感を増したい考えがある。2013年の石油・ガス業界
の見通しは明るい。石油メジャーは採掘と生産に更なる資本支出を予定している。ン
氏は「コースタル社は更に一歩進んで、厳しい環境にも対応できる最新鋭の技術を備
えた深海向けOSVの建造と販売に注力する。」と述べた。コースタル・コントラクツ
社のグループ全体の売り上げは、2012年12月期で7億6400万リンギ、税引き前利益で1
億1700万リンギだった。
ウエストポーツ社、新コンテナターミナルバース建設開始
マレーシアのクラン港を運営するウエストポーツ社は2013年末までに全長600メート
ルの第7コンテナターミナル(CT7)のうちバース300メートル分の建設完了を予定して
いる。残りのバース建設は2014年初めに完了予定。また、7基のコンテナクレーンと
42基のゴムタイヤガントリークレーン(RTGs)も同時に導入する。同社の発表による
と、全長300メートルの第6コンテナターミナルは4月に完成済。岸壁の全長は計4000
メートルとなり、総取扱可能量は950万TEUに増大した。これで2013年の取扱目標740
万TEUに達成する見通しが立った。2012年度の取扱量691万TEUの7%増だ。ウエストポ
ーツ社のルーベン・エミール・グナナリンガム最高経営責任者によれば、第7コンテ
ナターミナル完成時は、岸壁は総長4600メートルになる。現在は総長4000メートル、
バース数は14。新たに7基の世界最大規模のコンテナクレーンの設置及び17.5mという
世界有数の水深の確保により、世界最大級の1万8000TEU級船舶の取扱が可能になる。
岸壁を長くすることで、年間総取扱能力は1100万TEUに増える。」ウエストポーツ社
は今後5年のコンテナ取扱量を年間7~8%の増加と見込んでいる。
インドネシア
港湾インフラ未整備が物流コスト押し上げの原因
好景気による資本移動と製造業の成長で、物流業界は2013年の成長率14.5パーセン
ト、1634兆ルピア(1683億ドル)の売上を見込んでいる。フロスト・アンド・サリバン
社による最新の調査結果によると、2013年の海運貨物量は10億トンに達する見込み。
2012年は9億4310万トンと比べて6.1パーセント増だ。非陸上輸送貨物の90パーセント
が海運によるもの。
しかし、脆弱なインフラと接続性の悪さが成長を妨げる。インドネシア全国船主協
会(INSA)のアスマリ・ヘリー副会長は「インドネシアの多くの港湾が開発途上にある。
スマラン港のように高潮による洪水のような問題に直面している港も多い。港湾イン
フラ未整備が低効率と輸送費高騰の原因だ。また、取扱量が限界を超えている港が多
く、ほとんどの港にコンテナの揚げ降ろし場所や、保管用倉庫がない。」と述べた。
k
インドネシアの主要港、タンジュン・プリオク港は、年間取扱能力が500万TEUにもか
かわらず、2012年取扱量は620万TEUに達した。2013年の総取扱量は700万TEUに達する
と見られている。国営港湾運営会社ペリンドIIは、プリオク港の負担を軽減するため
に、カリバル港、別名ニュープリオク港を開発中だ。カリバル港の最初のターミナル
は取扱能力150万TEU で、2015年初頭に稼動開始予定。また、へリー氏によると、回
頭水域と接続水路が沈泥で塞がれている港も多く、交通を阻害している。運輸省管轄
の港だけでなく、国営港湾運営会社であるペリンドIからIVの運営する港でも同様の
状況にある。また、港と工業地域間の連絡道路の未整備で、輸送費、特にトラックの
費用が高くなっている。結果として、物流費用は今や国内総生産(GDP)の27パーセン
ト、商品価格の14.08パーセントを占めている。
世界銀行による2012年物流総合評価によると、155カ国の発展途上国と先進国の中
で、インドネシアは第59位。第29位のマレーシア、第38位のタイ、第53位のベトナム
に比べて遅れをとっている。また、インドネシア経営者協会(Apindo)のソフヤン・ワ
ナンディ会長によると、インドネシアの物流コストは製造業コストの17パーセントを
占め、マレーシアの8パーセント、日本の5パーセントに比べてかなり高い。E.E.マン
ギンダーン運輸大臣は、政府は将来の物流需要に対応するべく海運インフラ整備を加
速していると述べた。「我々はインフラ整備を進めている最中だ。2010年から2015年
にかけての全国運輸開発計画に則って、港湾整備だけではなく、港湾への接続道路の
整備も進めている。物流網を更に円滑にする。」運輸省は、53港の拡張、78港の新規
建設工事に、2012年から2013年にかけて総額6兆ルピアを投資した。特に、開発計画
は東部に集中している。公共事業省の高速道路部門のジョコ・ムルジャント長官は、
港への連絡道路を含む国道整備に5兆ルピア投入の用意があると述べた。
PSA、カリバル港ターミナル運営に意欲
PSAインターナショナルはジャカルタ北部に建設中のカリバル港に関して、国営港
湾運営会社ペリンドIIとの提携を望んでいる。ペリンドIIのリノ社長はシンガポール
訪問中に、PSAがカリバル港第2、第3ターミナル建設工事入札に参加予定であること
を明らかにした。入札には大手企業18社が参加し、9月に落札企業を発表予定。リノ
社長によると、インフラ整備以外で最も重要なのは港の効率化で、それが生産性向上
につながる。第2、第3ターミナルの総取扱能力は300万TEU。2016年の稼動を目指す。
ペリンドIIの集計によると、インドネシア最大の港、タンジュン・プリオク港の取扱
能力は500万TEU だが、2011年の取扱量が560万TEU、2012年は620万TEUに達した。カ
リバル港第1ターミナルの取扱能力は150万TEU、三井物産が運営することを決定済だ。
カリバル港建設計画は3期にわたり、24兆ルピアが投入される。PSAグループのタン・
チョンメン最高経営責任者は、「タンジュン・プリオク港は取扱量が増加しているの
で拡張が必要だ。プリオク港に、サウジアラビアのダンマン港のような世界級の大規
模施設を導入したい。」と述べた。タンジュン・プリオク港は5000~6000TEU級の船
舶しか受け入れられない。一方、超大型船は1万2500~1万8000TEUだ。タン会長は、
「PSAはペリンドに2つの利点をもたらすことが可能だ。PSAは政府系企業なので、港
を国全体の経済システムの一部として捉える。」と述べ、利益のみを重視してはいな
k
いことを強調した。PSAは今や世界的港湾会社だが、1997年の民営化以前は港湾公社
兼ターミナル運営公社だった。現在は世界の13港を運営中。もう1つの利点は、PSAが
人材育成で提携できることだ。タン会長は「PSAはペリンドに人材育成と、法人顧客
との業務の方法を教えることができる。」と明らかにした。タン会長によると、アジ
アの貿易の見通しは楽観的。ヨーロッパは先行き不透明で、アメリカはまだ回復途中
にある。一方、アフリカは発展までまだ時間を要する。「だからPSAとペリンドが提
携して共に成長するのが重要だ。」と語る。マッキンゼー・アンド・カンパニー東南
アジアのシンタ・バガード・マネージングパートナーは、港湾業はネットワークビジ
ネスであり、港湾運営会社は提携する必要があると述べた。シンタ氏によると、物流
業界の成長率は、国内総生産(GDP)の成長率より2~3倍の速さで成長している。例え
ば中国ではGDPが11パーセントの場合、物流業界は25~28パーセント成長しているこ
とになる。バガード氏は「需要を心配する必要はない。逆にインドネシアの供給能力
が追いつかないことを懸念するべきだ。」と述べた。入札にはDPワールドなどの港湾
運営大手も名前を連ねている。
クルーズ船、インドネシアでの寄港増加
アジア諸国が順調な経済成長を続ける中、ここ数年国際的クルーズ船のアジア寄港が
増加している。東南アジア最大の経済規模を誇るインドネシアも例外ではない。観光
創造経済省によると、インドネシアに寄港するクルーズ船数と乗客数は毎年30%ずつ
増加中だ。2013年は前年比54%増の308隻、乗客数は30.1%増の14万7134人を見込ん
でいる。ロイヤル・カリビアン・インターナショナル社のラディエンス・オブザシー
ズ号は2112名の乗客と859名の乗員を乗せ、つい最近バリ島ベノア港に寄港した。観
光創造経済省MICE(会合・研修・国際会議・展示会)観光部門のリズキ・ハンダヤニ・
マーケティング・ダイレクターは「広大な島国であるインドネシアは多くの美しい景
勝地に恵まれている。独自の文化と観光地を持った多くの地域はクルーズ市場に適し
ている。我々は超大型クルーズ船から小規模の探検クルーズ級までそれぞれの乗客に
あった様々な観光資源を提供できる。」と語った。2013年3月に開催された世界のク
ルーズ業界向け見本市「クルーズ・シッピング・マイアミ」では、多くの新しいクル
ーズ会社がインドネシア観光に興味を示した。ポール・ゴーギャン・クルーズとリン
ドブラッド・エクスペディションズは2014年インドネシアへのクルーズ船の寄港開始
を予定している。仏領ポリネシアのポール・ゴーギャン・クルーズは2014年7月から8
月にかけてのシンガポール-オーストラリア間のクルーズの寄港地として、コモド諸
島、バリ島ベノア港、中央ジャワ州のセマラン港を予定している。クルーズ・シッピ
ング・マイアミへの出展以来、2014年にインドネシアに寄港するクルーズ船は320隻、
クルーズ客は20万人が見込まれている。リズキ氏はまた、「この数字は暫定的なもの
で、今年末までにかけて更に多くのクルーズ会社が寄港を確定するだろう。」と述べ
た。インドネシアへの寄港を計画するクルーズ会社が増えているため、観光創造経済
省はクルーズ会社向けの新たな観光地を訪れるツアーを開発中だ。同省はマイアミの
展示会でバンテン州タンジュン・レスン半島をただのビーチリゾートではなく、観光
地としても売り込んだ。クラカタウとウジュン・クロン国立公園の近くに位置するタ
k
ンジュン・レスンは自然とエコツーリズムには理想的な観光地だ。また、アチェ州の
サバン島やスマトラ島のいくつかの場所もクルーズ観光地として売り込む予定だ。リ
ズキ氏は「わが省では2013年にサバン島、パダン、メンタワイ諸島、ベンクル州、バ
ンカ・ベリトゥン諸島などを調査予定だ。調査終了後、販売促進と、旅行ツアーを計
画する。」と明らかにした。また、観光地としての需要が高まるにつれ、未整備の港
湾インフラがインドネシアにおけるクルーズ観光業成長の障害となる懸念も述べた。
ロイヤル・カリビアン社やシーボーン・クルーズ社やプリンセス・クルーズ社のクル
ーズ船は乗客が3000人以上にも上る。このような大型クルーズ船はインドネシア、特
にベノア港には停泊不可能だ。ボイジャー級クルーズ船が安全に入港、停泊するため
には、水深12メートルの連絡水路と、深さ11メートルの回頭水域が必要だ。対してベ
ノア港の連絡水路と回頭水域の深さは10メートルしかない。国営港湾運営会社ペリン
ドIIIのエディ・プリヤント広報担当は、中央政府がクルーズ観光業を梃入れする手
助けとして、2013年に数港の開発計画を明らかにした。また、ベノア港に関しては水
深を11メートル、長さ325メートルまで広げ、大型クルーズ船入港を容易にする。工
事は2013年末に完了予定。エディ氏は「2014年にはベノア港の水深を12メートル、長
さを400mにまで拡張し、近い将来はクルーズハブとして運営したい。」と述べた。ま
た、バリ島のほかにも、中央ジャワ州のタンジュン・エマス港、東ジャワ州のタンジ
ュン・ペラ港、中央カリマンタン州のクマイ港で改良工事を行っている。インドネシ
ア政府は、10億USドルを投じてカイタッククルーズターミナルを開発中の香港とも協
力し、クルーズパッケージを造成していく計画。香港人によるインドネシア訪問も増
えている。
クアラ・タンジュン港2014年建設工事開始
国営港湾運営会社ペリンドI は、2014年、スマトラ島北部でのクアラ・タンジュン港
建設工事を開始する。ペリンドIのエリアンシャー広報担当は、クアラ・タンジュン
港の建設計画概要は既にマンギンダーン運輸相の認可を受けており、詳細設計も完了
済と明らかにした。エリアンシャー広報担当は「現在工事開始に向けて必要な書類や
申請作業に入っている。環境省へのAmdal(環境アセスメント)申請も含まれる。クア
ラ・タンジュン港はインドネシアにとって非常に重要な計画であり、2014年建設開始
に関しては極めて楽観的だ。」と述べた。同港建設許可に関する大統領令は2012年に
公布済み。計画によると、クアラ・タンジュン港建設計画は数期に分かれ、2030年末
までに総取扱能力は2500万TEUに達する予定。港の喫水は17メートルで、大型船の受
入も可能だ。第1期は2015年末完了予定で、取扱能力は100万TEU。エリアンシャー広
報担当は、「2012年マラッカ海峡を通過したコンテナ量が5100万TEUに達しており、
クアラ・タンジュン港は早期の稼動開始が求められている。今後もこの数字は増加す
ると見られ、我々にとっても大きな機会だ。」と述べた。第1期の建設予算は6.5兆ル
ピア(6億6886万USドル)で、国有銀行によるシンジケートローンの借入れでまかなわ
れる。2013年前半に融資合意書の取り交わしが予定されている。加えて、(クアラ・
タンジュン港の近くの)べラワン港の取り扱い能力は年間450万トンだが2011年には
400万トンに達しており、既に飽和状態に近い。そのため、クアラ・タンジュン港建
k
設計画は非常に重要なものとなっている。クアラ・タンジュン港にも第1期工事でク
ルード・オイル・パーム(CPO)用コンテナターミナルを建設予定だ。CPOは国営の第
4農園公社(PTPN Ⅳ)が生産している。運輸省海運部長のボビー・ママヒト将軍による
と、クアラ・タンジュン港建設計画は経済成長促進・拡大基本計画(MP3EI)の一環。
巨大な計画なので、官民提携の枠組みで開発される。
Belawan Port Kuala Tanjung Port タイ
ユニタイ造船所、オースタル社と米船舶修繕で提携
軍用・民間用高速船設計・建造大手のオーストラリア・オースタル社はユニタイ造船
エンジニアリング社と覚書を交わした。アジア太平洋地域における高品質な船舶修繕
事業に関する両社の提携を強化する。ユニタイ造船所はオースタル社指定の米国軍
用・民間用船舶修繕所となる。タイで演習する米海軍の沿海域戦闘艦(LCS)や統合高
速輸送艦(JHSV)などを修繕する。オースタル社は現在103メートル級JHSV10隻を16億
USドル、127メートル級LCS6隻を35億USドルで受注・建造中。既にLCS、JHSV各1隻を
引渡済。オースタル社サービスシステム部門のチャールズ・マックギル最高執行責任
者は「ユニタイ造船所は東南アジア最大の包括的船舶修繕施設の1つだ。健康、安全、
環境に配慮し、納期を守り、顧客サービスの品質も高く、独自の解決方法を提供する
ことで世界的にも定評がある。特に民間、国防、補助艦艇の修繕・改造・保全に関し
ては地域トップクラスの実績を誇る。ユニタイ造船所が高品質の専門的業務を提供す
ることで、顧客のタイでの期待に応えることができると信じている。」と語った。ユ
ニタイ造船所のテーラポン・ユドムカンジャナナン社長は「今回の提携は、ユニタイ
造船所と、世界的防衛請負・造船業のオースタル社と専門知識と経験を共有するとい
う大きな一歩であるだけでなく、タイの造船業を世界に広めるきっかけになる。ユニ
タイ造船所はオースタル社の推薦の元、船舶修繕全般において高品質な業務を提供す
ることを誓う。」と述べた。ユニタイ造船エンジニアリングはタイ最大の造船所で、
レムチャバン港内に立地している。
k
フィリピン
スービック湾都市開発庁、スービック自由港区を拡大
スービック自由港の土地の有効利用のため、スービック湾都市開発庁(SBMA)はスービ
ック自由港区を周辺地域まで拡大し、新規造船所を受け入れようとしている。SBMAの
ロベルト・ガルシア長官は、最新の自由港発展計画の中で「新しいスービックの建設」
という目標に向けての6政策のひとつとして明らかにした。ガルシア長官によると、
ハモサ、バターンで既に行われているスービック自由港区の拡張をレドンド半島でも
行い、新造船所を建設する。他の地域にも拡張予定があり、投資家を呼び込む。スー
ビックには、現在、韓国の韓進重工業フィリピン社が17億ドルを投じた造船所が立地
している。さらに、韓進は将来の拡張用に現在の造船所の近接地に100ヘクタールの
土地を確保している。また、ガルシア長官は、欧州と日本の造船所がスービックで造
船所建設を進めることに期待を寄せている。ガルシア長官による自由港拡張の6政策
は、1.自由港土地の有効利用。2.マニラ港混雑緩和のため、スービック港利用の積極
的推進。3.一般航空、飛行機修繕、チャーター機、その他航空活動向けの空港整備。
4.観光客誘致(MICE誘致、スポーツ、テーマパークなど観光地の整備)。5.SBMAの戦略
的指導性を補完するためのインフラと新設備への投資。6.戦略計画の投資資金を捻出
するためのSBMAの業績の向上。ガルシア長官によると6つの施策のうち観光業発展計
画が先に完了する予定。2013年に予定されている計画のほとんどが観光業関連だ。
2012年12月にガルシア長官は、スービック自由港とザンバレス州全体が観光庁(DOT)
の重点観光地に指定されたこと、理由は国内外から観光客が訪れ、幅広く高品質な設
備を擁していることを述べた。この指定により、2012年の娯楽関係の新規または拡張
計画の数はアヤラランド社によるハーバーポイントモールを筆頭に512パーセント増
加した。
Redondo
peninaular
k
法務省・競争庁、貨物輸送ルート転換に関する公聴会開催
法務省のジェロニモ・サイ次官補兼競争庁長官が、港湾運営会社、港湾利用者、海運
輸送業者、民間企業からの関係者を対象に、マニラ海上貿易の拡大成長における課題
と競争問題に関する公聴会を開いた。サイ次官補は「今回の会議は、港湾業界におけ
る競争問題、特に、国際コンテナ輸送をマニラからバタンガスやスービックに移動す
ることに関して、経験と見解を共有する手段を提供することが目的だ。」と述べた。
会議出席者はこれに先立ち、4月30日までに輸送ルート転換計画におけるそれぞれの
立場を明らかにするよう要求されていた。同計画はJICA(国際協力機構)の推薦により
運輸通信省が策定した。十分に活用されていないバタンガス港やスービック港に増加
する貨物を振り分け、マニラ港の混雑を緩和するべく、民間企業も努力が求められて
いる。アランカダ提言1のジョン・D・フォーブズ・シニア・アドバイザーは、マニラ
国際コンテナターミナル(MICT)と南港は混雑しており、取扱能力を増やすことは好ま
しくないとして、この輸送ルート転換計画への賛成の意を表明済だ。マニラ港の新し
い第6バースはMICTの現在の取扱能力190万TEUから250万TEUに引き上げる。南港のコ
ンテナターミナルは既に100万TEUの取扱能力がある。アランカダによると、マニラ北
港公社(MNHPI)は5億7000万ペソを投じて北港を近代化し、第1期工事では国内貨物取
扱量を3倍の280万TEUに引き上げる。一方、バタンガス港は2009年に完全稼動済で、
スービック港は新第1コンテナターミナル(NCT1)と第2コンテナターミナル(NCT2)も
稼動開始しているにも関わらず、両港の取扱貨物量は少ないままだ。バタンガス港の
年間取扱能力は40万TEU、スービック港の第1,2ターミナルを合わせた取扱能力は60万
TEUだ。インターナショナル・コンテナー・ターミナル・サービス(ICTSI)子会社のス
ービックベイ・インターナショナル・ターミナル社がスービック港NCT1を運営してい
るが、稼働率はわずか5.6%。一方、アジアンターミナル社(ATI)が運営するバタンガ
スコンテナターミナル(BCT)の稼働率はたった4.2%でしかない。ICTSIのクリスチャ
ン・マーティン・ゴンザレス副社長兼ジェネラルマネージャーは、「状況打破のため、
道路網整備基本計画をたて、港湾運営に必要な貨物量増加のために開発が必要だ。輸
送ルート転換が市場構造をも変えるかもしれない。」と述べた。旅行会社大手の2GO
トラベル社のステファン・レイ・タグド最高広報責任者は、「我々にとっては、輸送
ルート転換は顧客に更なる輸送費の負担を強い、追加のトラック輸送費用で貨物費用
を大幅に値上げせざるを得なくなるということだ。」と懸念を表明した。
韓進フィリピン、リオ・ティントにバラ積み船2隻を引渡し
2013年4月16日、韓進重工業フィリピン社はレドンド半島にある30ヘクタールの近代
的な造船所にて新造バラ積み貨物船2隻を同時公開した。2隻はクリストファー・コロ
ンブス、アベル・タスマンという有名な冒険家の名をとって命名された。所有者は世
界的鉱業大手のリオ・ティント海運社。RTMコロンブス号とRTMタスマン号はそれぞれ
「アランカダ・フィリピン 2010」はフィリピンの成長のための 471 の提言を 2010
年に発表したもの。フィリピン合同外国商工会議所(Joint Foreign Chambers of the
Philippines)が中心となって策定した。フィリピン合同外国商工会議所はフィリピン
でビジネスを行う企業がメンバーになっている。
1
k
10万6796トン、ロンドン港を母港とする。2012年1月にも韓進フィリピンはリオ・テ
ィント社にRTMカボット号とRTMドレーク号の2隻を引渡済み。1隻あたりの価格は6000
万USドル。韓進スービック造船所にて行われたRTMコロンブス号とRTMタスマン号の発
表会では、韓進フィリピン社幹部、リオ・ティント幹部のフィッシュバッハ氏、スミ
ス夫妻、マクガー夫妻、そしてロイド船級協会の代表が出席した。2008年以来、韓進
フィリピン社は51隻の船舶を建造、売上金額は30億USドルに上る。顧客は海外の様々
な会社で、主に貿易や海事関係。フィリピンの輸出業に多大に貢献している。韓進フ
ィリピン社のアン・ジンキュ社長は、韓進造船所のハイテク船舶建造能力は今日世界
中の造船業が面している問題に強靭に対応する能力によるところが大きいと述べた。
アン社長は、「我々は継続して我が社の造船能力と資源を最大限に活用し、顧客の信
頼と自信を勝ち取る。これが現在の困難な状況の中で、引き続き商船を輸出する原動
力だ。最先端の技術と高度の能力を持つ熟練工の組み合わせにより、韓進フィリピン
は顧客が求める低コストの生産体系を維持している。」と述べた。しかし、造船業界
は世界的な海事産業の低迷の中、新造船への需要も少なく、回復には至っていないと
アン社長は語る。社長はまた、「韓進フィリピン社は世界中の造船所との厳しい競争
を勝ち抜くため努力している。現在世界第4位のフィリピン造船業を維持、または更
に躍進させるために、公共分野からの短期長期を問わないどのような形の援助も必要
としている。現在の経済情勢の中で基幹業務を維持するという困難にも関わらず、韓
進は造船所従業員の福利厚生を守り、業務縮小を避ける。」と述べた。韓進フィリピ
ン社は同社の社会的責任(CSR)の一環として、2万人の従業員を対象に住宅供給プロジ
ェクトを立ち上げた。住宅用の土地は韓進が無償で提供。韓進重工業フィリピン社は
2006年に設立された。
アセアン海運統合、フィリピンの厳しいカボタージュ規制が障害に
韓国の国土海洋部が作成したアセアン単一海運市場導入戦略策定に関する最終報告
書の中で、フィリピンのアセアン単一海運市場(ASEAN Single Shipping Market:ASSM)
加入に関して、規制から制度的障壁に至るまで様々な問題点を挙げている。
その1つが、フィリピンのカボタージュ規制だ。報告書は、外国籍船のフィリピン
の寄港を1回に限るカボタージュ政策が非効率性の原因だと指摘している。同国が持
続的に発展するため、更には単一アセアン市場の実現のために、外国籍船舶のフィリ
ピン寄港許可が早急に必要だとも述べている。フィリピンでは国内海運はカボタージ
ュ政策により保護されている。荷主や、輸出業者側からすれば、カボタージュ政策の
撤廃が望まれる。しかし、国内海運業界は現状を維持したい。国内海運市場は地元5
社が市場の90%を占めている。外航海運サービスは、主に外国海運会社がマニラ港か
ダバオ港から、地域ハブ港であるマレーシアのタンジュン・ペラパス港やシンガポー
ル、台湾の高雄港、香港などを経由して、提供される。国内海運会社は概して沿海輸
送や国際不定期便を運営する。
また、韓国の国土海洋部の報告書によると、フィリピンの外航船を支援するため、
裸用船プログラム、船舶・部品輸入に対するインセンティブ、船舶近代化への免税措
k
置などの措置がある。しかし、それでもフィリピン籍の外航船は減少の一途である。
1隻の船の調達費用は5000万ドルと高額な中、新造船の費用も船団維持や改良への資
金も地元の船会社には不足している上、担保法も時代遅れだ。
報告書はまた、米国やヨーロッパ向けに直接輸出するサービスがないことを指摘
し、「非効率的な貨物置き場や浅すぎるバースが、米国・ヨーロッパ向け直接輸出サ
ービスが欠落している原因だ。」としている。
直航便がないため、海運会社はシンガポール、マレーシア、香港、台湾などを積替
えハブとして利用している。そのため、フィリピンからの欧米への輸出は輸送時間が
長くなり、輸送コストも高くなっている。
2013年、アセアンは物流の自由化を目指している。対象は海上荷役業務、貯蔵、倉
庫業務、貨物輸送代理業務、宅配業務、荷積業務、通関業務などだ。また、アセアン
は国際輸送の自由化も目指している。
フィリピンの輸出業者は2012年3月にも、国家競争力委員会と共同で、輸送コスト、
港湾使用料金の値下げを求めていた。フィリピンのシンクタンクや世界銀行の調査に
よると、国内輸送費用が非常に高い。しかし、フィリピンは憲法で国内サービス(海
運を含む)を提供する会社は、60%フィリピン資本でなければならないと定めている。
ベトナム
ベトナム南部大型港、売上が激減
SP-PSA2、TCCT3、SITV4の3港の貨物取扱量が能力を大幅に下回り、売上が激減した。
バリア・ブンタウ省のタンタイン商業地域の不動産業者は「顧客が少なくなっている
ので、港湾使用料が格安になっている。未使用の土地の50年リースの値段は1平方メ
ートル辺りたったの1万ドンだ。建設工事中の土地は1平方メートルあたり4万ドンを
支払わなければならない。」とし、「購入するなら、1ヘクタール当たり50億ドンだ。
これは破格の値段だ。港が発展すれば、かなりの利益を得られる。」と語った。ただ
し、不動産業者は、既に多くの港があるので、停泊する船の数は非常に少ないと警告
した。ベトナム港湾協会のデータによると、カイメップ・チーバイの深水複合港地域
の7つの国際コンテナターミナルの2012年の稼働率は取扱能力の15~20パーセント。
2007年以降、多くの投資家が総額20億USドル程度の資金を深水港開発につぎ込んだ。
対象はSP-PSA、CMIT5、SSIT6、ジェマリンク7、TCCT、TCIT8、SITV、カイメップ・コン
サイゴンポート、およびシンガポールの PSA の合弁会社。2009 年 5 月開港
Tan Cang – Cai Mep Container Terminal。サイゴンニューポート会社の子会社で 2009 年 6 月開港
4 Saigon International Terminals Vietnam。Saigon Trade, Investment and Construction Co.,
Hutchison Ports Mekong Investment による合弁。
5 Cai Mep International Terminal Co., Ltd。サイゴンポート、APM ターミナルの合弁。2009 年 6 月開
港
6 SP-SSA International Container Terminal。SSA Holdings International – Vietnam (米国の SSA
Marine 社子会社)とサイゴンポートの合弁会社。
7 フランスの海運会社 CMA-CGM、韓国・サムワ社と、ベトナムの物流会社 Gemadept Corporation の
合弁会社。
8 Tan Cang Cai Mep International Terminal Co Ltd。商船三井 40%出資。他サイゴンニューポート(ベ
トナム)韓進海運(韓国) 萬海航運(台湾)が出資。
2
3
k
テナ国際港9だ。この「港湾投資熱」は深水港運営社間に港湾利用料値下げ合戦とい
う新たな競争を持ち込んだ。採算ベースにのせるための最低料金は1コンテナあたり
88USドルだが、ベトナム港湾協会によると、現在の平均港湾使用料は1コンテナあた
りたったの32USドル。港湾会社の中には1コンテナあたり23USドルにまで値下げして
いるところもある。CMITとSP-PSAはサイゴン港と外国提携会社との合弁企業で、既に
損失を計上している。ビナラインズによると、2011年末の時点でSP-PSAとCMITは4600
億ドンの赤字に陥っている。CMITのグエン・スアン・カイ副社長は「現在の港湾使用
料の安さでは、SP-PSAとCMITは更なる損失を出すだろう」と述べた。専門家は、現在
の状況が改善されない限り、施設やインフラが急激に劣化するだろうと警告してい
る。苦境を乗り越えるため一時的な措置を取った港もある。TCCTカオ・スアン・ズン
副社長によると、TCCTは2012年8月よりバラ積み貨物、一般貨物、農作物、鉄鋼も受
け入れている。SITVとSP-PSAもそれ以前の2011年後半より、バラ積み貨物やクルーズ
船の受入れを開始している。ジェマリンクはベトナム・ジェマデプト社と韓国・サム
ワ社、フランス・CMA-CGM社が3億4500万USドルを投資した合弁企業で、2012年の株主
総会では、ベトナム経済が上向くまで投資速度を減速することを決定している。専門
家は市内の交通渋滞の緩和のためホーチミン市から港を移動することを提案してい
る。跡地となる市内の一等地を商業地、住宅地の開発に当てられるからだ。
政府、債券保証でビナシン再建を進める
ベトナム財務省はビナシン発行の債券6億2300万ドル、12年満期を保証することを決
定した。国家金融政策諮問委員会委員のカオ・サイ・キエン氏が明らかにした。
債券には6億ドルの債務と、未払い利息2300万ドル、Accretion rate 1パーセント/
年が含まれるが、利息は0%である。ビナシンの債権者の過半数が同社債務を政府保
証の債券に変換することに賛成した。キエン氏によれば、これは市場でもよく適用さ
れる有効な事業再構築方法だ。債権者も政府の保証つきで12年後には債務が完済され
るなら受け入れやすい。
キエン氏は更に「新規の投資家もビナシンの債券を格安で購入できる。どちらかとい
うと彼らにとって魅力的な投資ではないか。」と述べた。今回の措置は、ビナシンの
事業再構築計画を加速させ、債務不履行問題を解決して、銀行の不良債権を減らす助
けとなる。しかし、ビナシンが債券償還不能に陥る危険性もある。政府はビナシンの
返還不能となった債務の代わりに新規債券を発行する保証をするだけで、債券償還の
肩代わりはしない。ビナシンが債券償還不能に陥った場合、破産を申請しなければな
らず、その場合は破産手続きに従って処理を進める。その際、政府はそれを受けてビ
ナシンと他の会社の合併を検討するかもしれない。ただし、破産は最後の手段だ。債
券の発行に伴い、ビナシンは事業を回復し、債務を返済する機会を得る。政府は「破
産は最後の手段だ」としている一方、経済マネージメント研究所のボー・トリ・タン
副所長は、ビナシンが事業を継続するためには、債務を再建してを、バランスシート
を改善し、融資者の役割を決め、新たな経営陣と新たなガバナンスシステムを取り入
9
ベトナム運輸省が事業主体。国際協力銀行が円借款。
k
れる必要があると指摘する。同副所長はビナシンを再建するために実施すべきこと
は、政府は債権を保証するのではなくビナシンを倒産させたあとで、再建することだ
という。現在、債権を保証しても、ビナシンに債権償還が可能になるかは分からず、
政府がリスクを負うことでその支払いは国民の税金から賄われることになる、と指摘
している。
オーストラリア
オーストラリア最大の港、50億ドルで民営化
港湾の民営化をすすめているオーストラリアで、クイーンズランド州のブリスベン
港、ビクトリア州のポートランド港、サウスオーストラリア州のフリンダース港に続
き、ニューサウスウェールズ州(NSW)でシドニーのボタニー港とイラワラのケンブラ
港が民営化される。2港の99年リース契約金額は50億7000万ドルで、オーストラリア
の年金基金数社とアラブ首長国連邦のアブダビを含む多国籍コンソーシアムが受託
した。契約金額は当初の試算の約2倍となり、他の国有資産も投資家にとっては現在
の試算より価値がある可能性を示唆した。ニューサウスウェールズ州のマイク・ベア
ード長官は、2港の民営化で得た収入のうち、債務返済後の残額43億ドルがインフラ
整備基金に入ると発表した。そのうち、18億ドルが100億ドルで建設されるウェスト
コネックス高速道路に投入される。同高速道路はシドニー西部を通りM4の延長とな
る。ベアード長官は「パシフィック・ハイウェイに4億ドル余り、プリンセス・ハイ
ウェイに1億7000万ドル、橋梁保全計画に1億3500万ドル、そして1億ドルをNSWが近々
策定するイラワラ郡の新しいインフラ整備に投じる。」と述べ、「年金運用基金は成
長地域における国防資産、長期インフラ資産、安定して確実な投資を求めている。」
とも語った。野党財務担当のマイケル・ダーレー広報は今回の収入はインフラ整備費
用と比べて「雀の涙」と批判し、民営化で料金が上がれば石油・ガス会社がガソリン
代・ガス代を大幅値上げする可能性があると指摘した。ダーレー氏は政府が港湾取扱
貨物の限度量を撤廃したことを批判し、「ボタニー港と空港周辺のトラックの交通量
が激増する」と予想した。ベアード長官はボタニー港民営化の後の交通渋滞を防ぐ保
証は拒否したが、ウェストコネックスのインフラ整備と、「ピンチポイント」と呼ば
れる交通政策が問題の解決につながると協調した。港の年間リース支払の500万ドル
と、コンテナ取扱量に応じた追加徴収も地方道路整備に投入される。今回の契約を落
札したコンソーシアムのまとめ役のインダストリー・ファンド・マネジメント社のブ
レット・ヒンバリー最高責任者は、「地域社会の需要と影響に対して細心の注意を払
っている。確かに港の民営化により交通量増加が予想される。投資家にも還元ができ
る。地域社会も総じて満足するはずだ。」と語った。ハンター商工会議所のクリステ
ン・キーガン会頭は、落札金額が50億ドルだったということは、ニューキャッスル港
民営化にも大きな利益がある可能性があると述べたが、民営化の動きがあるかに関し
ては明言を避けた。ベアード長官は、州政府はニューキャッスル港民営化の予定はな
いと述べた。コンソーシアムのうち、アラブ首長国連邦のアブダビ投資公社の100%
k
子会社、タウリード・インベストメンツ社が20パーセントの株式を保有している。シ
ドニー港湾公社、ケンブラ港湾公社の従業員で新会社に引き継がれるのは少数。
インド
インド海運公社、イラノ・ヒンド社を閉鎖し、保有船舶7隻引き受け
インド政府は、2013年4月3日、国営のインド海運公社(SCI)とイラン国営のイラン国
営海運会社(IRISL)が38年前に合弁で設立した、イラノ・ヒンド海運社(IHSC)の閉鎖
を決めた。これは、欧米によるイラン経済封鎖の影響を受け、業務に支障をきたした
ため。この解散を受け、SCIはIHSC の債務を返済する義務を負い、その見返りとして、
IHSCより7隻の貨物船を取得する。海運省高官によると、SCIはIHSCが所有していた4
隻の石油タンカーと4隻のバラ積み船のうち、7隻を引き継ぎ、インド籍で登録し直す。
債務残額は8800万USドルである。IHSCは1975年に当時のイラン国王のパーレビ国王
と、インドのインディラ・ガンジー首相との間で両国の友好の形として設立した。SCI
はIHSCの株式49パーセント、IRISLは残りの51パーセントを保有していた。IHSCの資
産にはクルードタンカー4隻と、乾貨物バラ積み船4隻が含まれる。2012年度のSCIの
年次報告書によると、イランの年末にあたる2012年3月19日時点のIHSCの税引後純利
益は4300億2600万リヤル(3508万USドル)だった。同時点でのIHSCの保有船団は7隻で、
総計6万6000DWT。国連安保理に加え米国、EUも経済制裁を発動したため、IHSCと子会
社はUSドルやユーロでの決済ができなくなった。その上、USドル又はユーロ決済の保
険会社の保険の適用も補償も受けられなくなった。DVB銀行とコメルツ銀行はIHSCと
グループ各社に「繰上弁済通告書」を発行、全ての融資約8800万USドルと未払い利息
を即座の返済を要求した。イラノ・ヒンド社は米国と連合国がテヘランに対して核開
発計画中止を求めて圧力をかけた経済制裁下、イラン国営海運会社も核開発に協力し
ている疑いで2010年に国連安保理による制裁対象となった。
コチ造船所、ラクシャディープ諸島の船舶修繕へ
コチ造船所(CSL)はラクシャディープ諸島連邦直轄政府(UTL)所有の船舶修繕を請負
うことになった。ラクシャディープ諸島は、インド西部のケララ州の沖合にある島々
である。CSLと、ラクシャディープ直轄政府、ラクシャディープ開発公社(LDCL)はニ
ューデリーで覚書を交わした。UTLは25隻の船舶を保有。内訳は客船17隻、貨物船4隻、
タグボート2隻、タンカー、LPCタンク運搬船各1隻づつ。これらの船舶はラクシャデ
ィープ諸島の人々にとって生命線である。UTL所有の全ての船舶は現在LDCLが運航し
ている。コチ造船所は1983年より部分的修理や乾ドック修繕などを引き受けていた。
予定通りに修理を完了し、島民が必要なときに常に船を使えるよう、海運大臣はUTL、
LDCL、CSLに指示を出し、CSLで常に船舶を即時修理する指示した。CSL広報によると、
これらの船舶の修繕はCSLが最近コチ港より入手したウェリントン島の船舶修繕施設
で行われる。CSLは船舶修理で年間5~6億ルピーの収益を見込んでいる。覚書による
と、LDCLは毎年11月までにCSLに対して船舶修理予定表を提出し、翌年の船舶修理期
間を告知する。その後CSLはこの予定表の検査・航海予定にあわせて修繕場所を確保
k
する。定期検査と乾ドック修繕に加え、CSLは法廷当局や船級協会の規定に即した緊
急・海上修理に参加する義務がある。
バラパタムターミナルを避けるインド海運会社
インド海運公社(SCI)は国際コンテナ業務を行うインド唯一の海運会社であるが、コ
チ港のバラパダムコンテナ積替えターミナルを利用していない。コチの海運関係者
は、SCIが国営海運会社にも関わらずバラパダムターミナルを避け、ヨーロッパ向け
貨物積替えをコロンボ港で行っていると言う。SCIが年間コロンボ港で積み替える貨
物量は17万TEU。しかしカボタージュ政策の緩和により積替ハブとして脚光を浴びつ
つあるバラパダムでも同じ業務が行える。そもそもバラパダムターミナルは隣国コロ
ンボ港で積み替えられるインド貨物向けに開発された。バラパダムターミナルは、コ
ロンボと同等の料金を提供するため、フィーダー船については規定料金の30%、コチ
から中東と東南アジアに30日間に2便を運航する船には50%、さらに6万GRT以上の幹
線航路を運航する船で、ターミナルに12時間寄港する場合は86%の割引を与えてい
る。こうした積替え費用やその他優遇措置を提示されているにも関わらず、SCIは依
然としてコロンボ港を利用している。バラパダムとコチとの料金提携はSCIにインド
東部と西部をバラパダムで結ぶことができ、真のインド貨物の積替えハブにする。そ
れによりバラパダムを利用する海運会社も増え、地域の積替えハブとなると見込まれ
ている。
港湾工事入札資格、アダニ、ギャモン、パンジャ・ロイド各社安全審査通過へ
2013年にはJNPTの第4コンテナターミナル、チェンナイの大型コンテナターミナル、
ビシャカパトナム港のコンテナターミナル拡大工事などの大規模港湾開発計画の入
札が予定されている。ここ3年、アダニ港湾経済特区開発、ギャモン・インフラ、パ
ンジャ・ロイドなどの多くの会社が、安全審査を通らず、入札に参加できなかったが
ようやく状況の改善が見込まれている。インドにて港のターミナルを建設又は運営を
希望する会社は、外務省、防衛省、内務省などの政府関係各省庁の安全基準審査の通
過が義務付けられている。最終判断は各省庁からの審査結果を受けて海運省が行う。
アダニやギャモンなどは既にムンドラ、カンドラ、モルムガオ、ビシャカパトナム各
港の運営経験があるにもかかわらず安全審査に通らなかった。匿名希望の政府関係者
によると、現在の内務省の安全審査基準は以前ほど厳しくなくなっているので、海運
省、州政府、港湾公社は安全審査基準通過に対して楽観的な見方をしている。実際、
5月3日の報道によると、アダニはようやく安全審査基準を通過し、インド国内どこの
港湾プロジェクトでも入札できるようになった。5月3日時点では同社はまだ海運省か
ら正式な通知を入手していなかったが、海運省の担当官が新聞へのインタビューで開
示した。その他の各社も近々内務省の安全審査を通過し、港湾拡張計画への入札へ一
歩前進するとみられている。2012年12月海運省は安全審査基準を一新した。この改定
では、審査にかかる期間を明確にした。また、経営陣の交代や、所有権の10%以上が
k
変わらない限りは安全認可の有効期限が3年であることとした。1年前、G.K.バサン海
運大臣も安全審査の遅延や判断保留に関して懸念を表明していた。
スリランカ
MSクイーン・ビクトリア号、コロンボ港初寄港
2013年3月31日、キュナード・ライン社運航のクルーズ船、MSクイーン・ビクトリア
号がコロンボ港のユニティ・コンテナターミナルに初入港した。2013年1月クイーン・
ビクトリア号は105日間世界一周の旅に就航、マレーシアのポート・クランからコロ
ンボに到着した。4月1日夜にはコロンボを離れ、インドのムンバイへ向かった。
MSクイーン・ビクトリア号は全長294メートル(964フィート)、総デッキ数16。2012年
3月にスリランカに初寄港したクイーン・エリザベス号とほぼ同型船だ。クイーン・
ビクトリア号は伊フィンカンティエリ社マルゲーラ造船所で建造、2007年12月にコー
ンウォール公爵夫人(カミラ夫人)が命名した。クイーン・ビクトリア号はレストラン
7軒とバー13軒、プール3カ所、ボールルームと劇場を備えている。
コロンボ港初寄港を記念して、船上で式典が行われ、クイーン・ビクトリア号船長と、
コロンボ側はスリランカ港湾庁、現地代理店シッピング・エージェンシー・サービス
社両代表が額を交換した。その後1000名を越える乗客がキャンディ、ピンナワラ、シ
ギリヤ、コロンボ市内を観光した。シッピング・エージェンシー・サービス社のL.N.
ジャヤソーリヤ大尉は、「現地正規代理店として、定評のあるクルーズ会社の代理と
なったことはこの上ない誇りであり、クルーズ船の寄港によってスリランカ経済に貢
献できるのは幸いだ。我が社は2014年も引き続きクルーズ船が寄港することを期待し
ている。クルーズ会社がスリランカがクルーズの訪問地として魅力的であると考えて
いることの現われだからだ。また、クルーズ会社にはハンバントタ港への寄港も薦め
ており、将来は大型船の停泊も可能になるだろう。」と述べた。英国カーニバル社は
長期にわたる中断の後、2012年に再びクルーズ船をスリランカに寄港することを決定
し、同年、アルカディア号、オーロラ号、クイーン・エリザベス号がコロンボに寄港
した。2013年はクイーン・メアリ2世号、クイーン・ビクトリア号がコロンボ港に入
港。2014年は5隻がコロンボ港への寄港を予定しており、1隻がゴールに寄港する。4
月は、他に、ロイヤル・カリビアン社のレジェンド・オブ・ザ・シー号もスリランカ
に初寄港している。
アラブ首長国連邦
DPワールド、2013年第1四半期取扱貨物量は1280万TEU
DPワールドは2013年4月25日の年次総会で、2013年第1四半期の業績を発表した。それ
によると、2013年第1四半期の状況は2012年第4四半期に引き続き厳しい状況だ。DPワ
ールドの2013年第1四半期の取扱貨物量は全世界で1280万TEU、前年同期比7%減とな
った。投資引揚や事業売却などの調整後は正味3.5%減となる。コンテナ量減少の原
因はアジア太平洋地域、インド亜大陸地域、ヨーロッパ、中東、アフリカ地域での貨
物量減少に起因している。アジア太平洋地域とインド亜大陸地域では引き続き少量で
k
も利益率の高いコンテナの取扱に重点を置く。ヨーロッパ、中東地域では厳しいマク
ロ経済環境の中での運営を続けなければならない。アラブ首長国連邦での取扱量は
310万TEUだった。これらの取扱貨物量の減少はアメリカ、オーストラリア地域での好
成績で軽減されている。DPワールド直営ターミナルの取扱量は2013年第1四半期で620
万TEU。前年同期比6.4%減だった。正味ベースでは5.1%減。2013年のコンテナ取扱
量は、低迷する市場状況、厳しいマクロ経済だが、2012年と同じように、成長著しい
新興経済市場や、安定した地域の貨物に期待している。長期的な業績予測に関しては
極めて楽観的だ。2013年後半に稼動予定の拡張工事計画も続行する。
本ニュースは、日本財団からの支援を得て、(一財)日本船舶技術研究協会が実施している造船・舶用
機器関連海外情報の提供の一環として、(一社)日本中小型造船工業会及び(一社)日本舶用工業会が
(独)日本貿易振興機構と共同で運営しているJETRO シンガポール事務所船舶部及び舶用機械部にお
いて収集した海事情報をまとめたものです。
k