平成 25 年 4 月 17 日 Weekly Report 1 中東・北アフリカの政治・治安情勢 (4/8-15,2013) スーダン ・スーダンのバシール大統領は、4 月 12 日、南スーダンが 2011 年に独立し て以降、初めて同国を公式訪問し、サルバ・キール・マヤルディ大統領と 会談した。会談では、石油問題、貿易、両国間の国境問題等について話し 合われた。南スーダンは、これまで 15 か月停止していた石油採掘を4月上 旬に再開したが、これは 3 月に “スーダンを経由した石油輸出”について 両国が合意したことを受けてのことである。4 月 13 日、試験的に汲み上げ られた原油がスーダンのパイプラインを通して送油された。 ・ 4 月 8 日、ダルフールのスーダン人居住地域に支援を行っている諸国によ る会議が、カタールのドーハで開催されたが、同会議では、メンバー国に よるダルフールへの開発資金供出は総額 36 億ドル(当初計画では 72 億ド ル)にとどまることが報告された。このうち、半分以上の 26 億 5000 万ド ルはスーダンが受け持ち、開催国のカタールは 5 億ドルであった。当面の 運転資金として 1 億 7700 万ドルが支出される。この資金は、特に長期に わたる内戦で疲弊した南スーダンの紛争地帯におけるインフラ建設と復 旧、及び農業開発に充てられる。 2 シリア ・ 4 月第 1 週に南部のダラア州、中央部のホムス州、及びダマスカス郊外で 最大級の戦闘が行われた。反政府武装組織は、現在もダマスカスの各所で 迫撃砲などにより政府軍を攻撃している。シリア内戦では、過激派及びイ スラム・テロリスト組織の活動がより顕著になっている。最も強力な組織 は「ジャブハト・アン・ヌスラ」であり、リーダーのアリ・アル・ハジ(別 名アブ・モハメド・アルジュラニ:アルカイダの責任者アイマン・アルザ ワヒリに忠誠を誓ったといわれる)は 4 月 9 日、「我々はイラク・イスラ ム国(ISI)には属しておらず、また、イラクの反政府組織にシリアでの 闘争を支援してもらおうとも考えていない」と述べた。しかし、一方で、 ハジは、イラクの ISI から武器・物資の援助を得ていることは認めている。 ・ シリア外務省は、国連安全保障理事会で、「ジャブハト・アン・ヌスラ」 をアルカイダ関連組織としてリストに掲載するよう要請した。シリアの反 政府組織も、「ジャブハト・アン・ヌスラ」を非難する声明を出し、シリ アに残ってアサド政権に対する攻撃に専念し、シリア人民の解放を目指す よう求めた。 ・ 4 月 12 日、ロンドンで開催された G8 外相会合において、同参加国は、 シリア市民への人道支援を追加することを要請した。これに先立つ 10 日、 ケリー米国務長官とヘーグ英国外相がシリアの反政府勢力の代表と面談 した。同会談では、シリア反政府代表が両国に武器支援を要請したが、 両人はこれを断ったと伝えられる。 ・ 国連の潘基文事務総長は、シリアに化学兵器が存在するか否かを査察する 国連の専門家の入国を申し入れたが、シリア側はこれを拒否した。シリア 外相は、「国連の専門家はまずアレッポに行き、そこで彼らが完全に中立 であることを証明できるなら、その他の施設への出入りも許可されるであ ろう」と述べた。 3 イラク ・ 4 月 12 日、バグダッドの北東 75 キロの地点に所在するカナアンの町のス ンニ派モスクの外で 2 発の爆弾が連続して爆発し、14 人が死亡、40 人以 上が負傷した。また、その数分後には、西バグダッドのシーア派モスク近 くでも爆発が起こり、8 人が負傷した。いずれについても、これまでのと ころ犯行声明は出ていない。 ・ 4 月 15 日、イラクの各所で連続的に爆弾事件が発生し、少なくとも合計で 42 人が死亡し、257 人以上が負傷した。爆発が起こったのは、バグダッド、 アンバル、バベル、キルクーク、サラヘディン、ディヤラ、ナシリヤなど である。その他、各所の検問所、シーア派地区、警察署に対しても攻撃が 行われた。20 日からは地方選挙が行われるが、政治家や候補者、及び当日 の投票所等を狙ったテロが先鋭化する可能性がある。 4 エジプト ・ カタールとリビアは、エジプトに対して資金援助を行うことを決定した。 カタールは、エジプトの国債を 30 億ドル購入することに同意した。一方、 リビアは、エジプトに対して無利子で 5 年間、20 億ドルの貸し付けを行う としている。エジプト政府は、この援助で自国経済は息を吹き返し、IMF からの 50 億ドルのローン交渉にも追い風となると強調している。さらに、 リビアは、エジプト中央銀行に 20 億ドルの預金をしているが、リビア政 府は一連の支援について、“エジプトの安定はリビアにとっても極めて重 要である”と説明している。 ・ 米国もエジプトに対して軍事援助を継続している。最近エジプトは、米国 の F-16 戦闘機を 4 機受領している。これで、今年到着した同機種は、合 計で 12 機となった。2013 年末までには、さらに 8 機の F-16 が到着する 予定である。 ・ 2010 年に交わした両国の合意文書によれば、米国は、さらなるエジプト への軍事援助として、空軍基地「カイロ・ウェスト」の近代化のために 8300 万ドルを供出して同基地に新着の戦闘機を配備させ、乗員・整備員等の訓 練を行う。他方、陸軍に対しては、M1 主要戦闘戦車を 200 台提供する。 米国務省首脳は、 「これまでも長期にわたって維持してきたエジプトとの軍 事及び政治面での関係を、自らの当地における主要権益を確保するためよ り緊密にしていきたい。我々の軍事協力は、エジプト・イスラエル間の平 和条約の継続にも大きく貢献するものである」と述べている。 ・ 国内治安情勢に関しては、4 月 12 日、カイロとアレクサンドリアにてモル シュ大統領派とムスリム同胞団に反対するデモが行われ、デモ隊と警察・ 治安部隊との衝突に発展した。 5 イラン ・ イラン政府は、ヤズド州にウラニウムの保管施設を 2 か所建設し、核燃料 レベルまで濃縮可能なイエロー・ケーキ(粗製ウラン)製造工場をオープ ンすると発表した。同工場の規模からすると、年間 60 トンほどのイエロ ー・ケーキの生産が可能であるとみられる。また、イラン政府は、「ウラ ニウムの純度 20 パーセントまでの濃縮作業は中断する。したがって、今 やイランでのウラン濃縮の作業は完全に IAEA のコントロール下にある。 西側が憂慮する問題など全くない」と発言している。 6 サウジアラビア ・ サウジアラビアがイエメンとの国境沿いに 2 キロメートルにわたって壁を 建設するという計画は、すでに始まっている。サウジ政府関係者は、この 壁によってイエメンからの不法入国者の侵入や麻薬密輸、アルカイダなど テロリストの侵入も防ぐことができるとしている。 7 イエメン ・ イエメンのハディ大統領は、4 月 12 日、共和国防衛隊司令官のサレハ将軍 (サレハ前大統領の子息)及び第一武装師団長のアレクサンダー・アルア フマル将軍を解任した。さらに、サレハ前大統領の二人の甥も要職から更 迭した。消息筋によれば、サレハ大統領が辞任した後も、同人の家族はイ エメン政府に影響力を行使しているとされる。今回のハディ大統領の人事 は、同国の、特に国軍への自らの支配力を確立させるためとみられる。 8 パレスチナ ・ パレスチナのマフムード・アッバース大統領は、4 月 13 日、ファッヤード 首相の辞任申し入れを承諾した。同首相の辞任理由は、政策運営の方針を めぐってアッバース大統領との間に摩擦が生じていたためといわれてい る。ファッヤード首相は 2007 年から首相職に就いていた。 9 パキスタン ・ パキスタンは、領土内での米国無人機によるミサイル攻撃に関して認可を 与えたが、その条件として、CIA に対してパキスタンの核施設近辺、及び カシミールのキャンプへの攻撃は行わないよう要請した。カシミールのキ ャンプでは、インドに対抗して武装闘争を続ける過激派組織がパキスタン の三軍統合情報部(ISI)の指導下にあるためである。 ・ 同合意によれば、米国の無人飛行機は、タリバンが主要拠点とするパキス タンの部族地域を定期的に飛行することが可能になる。米国は、無人機の 飛行ルートや攻撃対象等に関する情報を決して他に漏らさないことを約 束し、パキスタン側には、領土内における無人機の攻撃について、これま でのような非難をしないよう求めている。 ・ パキスタン軍は、 「パキスタン・タリバン運動」 (TTP)及び同組織と同盟関 係にある北西部のティラハ渓谷を拠点とする武装組織に対して大規模な 掃討作戦を敢行している。軍司令部の発表によると、同作戦で武装組織側 の 135 人を殺害したが、タリバン勢力を同渓谷から一掃することはできな かったとのこと。 ・ パキスタンは、4 月 10 日、通常兵器としても核弾頭搭載の非通常兵器とし ても使用可能な弾道ミサイル、「ハトフ 4」(シャヒーン 1)の打ち上げ実 験に成功した。同ミサイルの射程距離は 900 キロメートル以上とされる。 以 上
© Copyright 2024 Paperzz