キケロ・プロジェクト[成果編]のご紹介

キケロ・プロジェクト[成果編]のご紹介
2005年4月にシステムを導入し本格的なプロジェクトが始動して以降、パリンプセストの
のデジタル化及び解読が進められました。その結果、それまでの研究結果を裏付ける画像
の解析と解読に成功しました。
現在までの成果
システム導入以降、ヴァチカン教皇庁図書館ではスキャ
ナを使用して写本のデジタル化を行うスキャナチームと、
デジタルデータを解析ソフトを使って解読を行うチームと
が連携をとりつつ、プロジェクトを進めてまいりました。
スキャナチームでは、対象ページのデジタル化を行うに
当たって、ページの取得範囲、データの保存方法等の手法
を検討し決定しました。そして解読チームの研究内容に沿
って、指定されたパリンプセストを順次デジタル化を行い
ました。初年度は、システムの使用に関するトレーニング
に始まりデジタル化の方法や整理の仕方の決定に時間を割
かれたものの、約400ページのデジタル化を行ないました。
最終的には所蔵する数百冊の写本(約25,000ページ)のデ
ジタル化を行う予定です。
解読チームは、今回制作されたパリンプセスト解析専用
ソフトウエアを用いて、スキャナでデジタル化されたパリ
ンプセストの白色光画像と紫外線画像を重ね合わせ、現在
見えているテキスト(後から書かれたテキスト)を消し
て、過去に消されたテキストだけを抽出し、より読みやす
い形に画像処理をする事で、解読を行ってます。
パリンプセスト
現在のテキストとは
別に、過去に消され
たテキストが画面上
で縦方向に薄く見え
ている。
※下図の原本ではありません
1)通常光で見た画像 現在のテキストとは別に、薄っすらと
消されたテキストが見える。
研究の成果
Vat. Gr. 1307と呼ばれるヴァチカン所蔵のパリンプセスト
から、12世紀初頭に書き写されたと推定される、10世紀の
ビザンチンの歴史家レオーネ・ディアコノ(Leone Diacono)
の作品の断片が発見されました。
レオーネ・ディアコノの作品はビザンチンの歴史、特に
スラブ民族の起源に関する記述において非常に重要なもの
です。しかし現存している写本は、パリに保管されている
1冊だけです。今回ヴァチカンで発見された断片は、パリ
の写本と比較して大きな違いがある事も確認され、専門家
の注目を大いに集め高く評価されています。この発見は、
2006年5月、ブルガリア共和国の首都ソフィアで開催された
国際会議において、ヴァチカン教皇庁図書館のティモシー・
ヤンツ(Timothy Janz)博士によって発表されました。
研究成果紹介は最初の成果のみですが、今後いっそうの
進展と更なる発見が期待されます。
2)紫外線画像
消されたテキストが浮き上がって見
える。
3)解析画像
現在のテキストを消して、消された
テキストだけになっている。
キケロプロジェクト
キケロプロジェクトは、トッパンとヴァチカン教皇庁図
書館との共同研究プロジェクトです。
C
TOPPAN 2007.8 K I