『災害時における共通番号の活用』について

2011 年 6 月 20 日
各 位
『災害時にお
災害時における
における共通番号
ける共通番号の
共通番号の活用』
活用』について
わたしたち生活者
わたしたち生活者のための
生活者のための「
のための「共通番号」
共通番号」推進協議会
「わたしたち生活者のための『共通番号』推進協議会」(代表:北川正恭・早稲田
大学大学院教授、事務局:公益財団法人日本生産性本部)は、この度、生活者の視点
から暮らしの安心や利便性の向上を実現する共通番号制度の導入に資するよう『災害
時における共通番号の活用』に関する提案を発表した。内容は以下のとおりである。
『災害時における共通番号の活用』に関する提案
目 次
『災害時における共通番号の活用』に関する提案 ・・・・・・・・・・・・・2
『災害時における共通番号の活用』に関する提案【概要】・・・・・・・・・・3
『災害時における共通番号の活用』に関する提案【シナリオ編】・・・・・・・4
〔活用シーン 1〕
:避難者名簿の作成(各避難所にて)・・・・・・・・・・・・・5
〔活用シーン 2〕
:被災者データベースの整備 ・・・・・・・・・・・・・・・・6
〔活用シーン 3〕
:被災者データベースの活用と共通番号による情報連携 ・・・・7
〔活用シーン 4〕
:救援活動への共通番号カードの活用 ・・・・・・・・・・・・8
〔活用シーン 5〕
:遺体の身元確認への共通番号の活用 ・・・・・・・・・・・・8
〔活用シーン 6〕
:義援金の配分 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
〔活用シーン 7〕
:行政分野および民間分野での手続き ・・・・・・・・・・・10
〔活用シーン 8〕
:銀行口座等との連携 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
〔活用シーン 9〕
:自治体相互間の情報連携 ・・・・・・・・・・・・・・・・11
〔活用シーン 10〕:ボランティア活動への活用・・・・・・・・・・・・・・・12
〔活用シーン 11〕:資産管理と遺産相続・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
〔活用シーン 12〕:家屋損害への対応・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
【お問合せ先】わたしたち生活者のための「共通番号」推進協議会事務局
公益財団法人日本生産性本部 公共政策推進室
TEL:03-3409-1182 FAX:03-3406-9732 MAIL:[email protected]
1
『災害時における共通番号の活用』に関する提案
『災害時における
の
災害時における共通番号
における共通番号の
共通番号
活用』に関する提案
する提案
概
要活用』
わたしたち生活者
わたしたち生活者のための
共通番号」推進協議会
生活者のための「
のための「共通番号」
■ 被災者データベース
被災者データベースの
データベースの活用と
活用と共通番号による
共通番号による情報連携
による情報連携
1.なぜ、われわれは本提案(共通番号活用シナリオ)を作成したのか
〔活用シーン
活用シーン 3:
3:6 ページ〕
ページ〕
われわれは、このたびの震災によって大変苦労されている被災者、自治体職員、
○ 共通番号により、各避難所に必要な物資を迅速に判断。男性用・女性用物資
医療・介護関係者などのご負担は、共通番号制度が導入されていれば軽減すること
の数量、乳幼児用のおむつや粉ミルクの数量などを的確に把握することがで
ができたと考えている。
きるようになる。
○ 共通番号をキーに医療機関の電子カルテ情報を取得、持病をもつ避難住民に
生活者は、災害時においてどのように共通番号を活用すれば、自らの生命・財産
必要な医薬品を提供、入院患者の適切な受け入れ先病院を選定できるように
を守ることができ、自治体等も含めて被災後の負担を少しでも軽減することができ
なる。
るのか。このことを国民にわかりやすく示し、共通番号実現に向けた国民的合意形
成に資するため、ある被災者を想定した共通番号活用シナリオ『災害時における共
■ 銀行口座との
銀行口座との連携
との連携〔活用シーン
活用シーン 8:
8:6 ページ〕
ページ〕
通番号の活用』を作成した。
○ 自らの共通番号を事前に銀行に告知していれば、共通番号と暗証番号での本
人確認で預金の引き出しに対応してもらえるようになる。
2.社会保障・税番号要綱について
○ 国や自治体からの一時的な融資なども、自らが共通番号を告知した登録済み
われわれはこれまで、共通番号を政府ではなく国民が「使える仕組み」にするこ
の口座へ振り込まれるようになる。
と、共通番号の活用範囲を社会保障と税の分野のみならず民間活用までを視野に入
れたより幅広い分野とすること、共通番号の導入によって国民一人ひとりの状況に
■ 自治体相互間の
自治体相互間の情報連携〔活用シーン
活用シーン 9:
9:6 ページ〕
ページ〕
応じた医療・介護や災害対策を実現すること、等に向けた活動を行ってきている。
○ 被災者データベースに現在の滞在場所を登録し、全国どこにいても適切な行
政サービスが受けられるようになる。
先日公表された政府の「社会保障・税番号要綱」では、共通番号の活用範囲を社会
○ 生活費は共通番号で管理される銀行口座へ振り込まれ、さまざまなお知らせ
保障と税の分野に限定することなく、防災福祉の観点も取り入れている。われわれは、
も滞在先やメールアドレスに的確に届けられるようになる。
共通番号の活用範囲を拡大する方向にあるという点において、「社会保障・税番号要
綱」を評価するものである。しかし、
「要綱」においては「基本方針」で明記されて
■ バーチャル自治体
バーチャル自治体の
自治体の実現〔活用シーン
活用シーン 12:
12:12,15
12,15 ページ〕
ページ〕
いた民間活用についての言及がない。今後公表される予定の「大綱」では、民間活用
○ 共通番号により、居住場所と行政サービスとの関係を見直すパラダイムシフ
を明記するとともに、できる限り早い時期での実現に向けた検討を求める。
ト、居住関係に依存しない ICT を活用したバーチャル自治体が実現できる。
○ これにより、避難場所が変わるたびに行政サービスを受けるための手続きが
われわれは、今後も、生活者の視点から暮らしの安心や利便性を実現する共通番
必要となる被災者の負担が軽くなり、被災者を積極的に受け入れている自治
号制度の導入のために、国民各界各層への理解促進活動や政府に向けた提案活動を
体にとっても、事務処理や行政サービスの効率化により負担が軽くなる。
行っていく。
2
『災害時における共通番号の活用』に関する提案
『災害時における共通番号の活用』に関する提案
概
要
概
要
■ 被災者
被災者データベース
データベースの
活用と
共通番号による
による情報連携
データベース
の活用
と共通番号
による
情報連携
■ 被災者データベース
災者データベースの
データベースの活用と
活用と共通番号による
共通番号による情報連携
による情報連携
〔活用シーン
活用シーン 3:
3:6 ページ〕
ページ〕
○ 共通番号によって、避難所ごとに速やかに正確に、被災者の人数・年齢・
○ 共通番号により、各避難所に必要な物資を迅速に判断。男性用・女性用物資
性別などが把握できるような被災者データベースを構築することができ
の数量、乳幼児用のおむつや粉ミルクの数量などを的確に把握することがで
る。
きるようになる。
○ これにより、男性用・女性用物資の数量、乳幼児用のおむつや粉ミルクの
○ 共通番号をキーに医療機関の電子カルテ情報を取得、持病をもつ避難住民に
数量など、各避難所に必要な物資を把握し、避難所ごとに適切な数量を送
必要な医薬品を提供、入院患者の適切な受け入れ先病院を選定できるように
ることができる。
なる。
○ 緊急時対応として、共通番号をキーに医療機関の電子カルテ情報を取得、
持病をもつ被災者に必要な医薬品を提供、入院患者の適切な受け入れ先病
■ 銀行口座との
銀行口座との連携
との連携〔活用シーン
活用シーン 8:
8:6 ページ〕
ページ〕
○
院を選定できるようになる。
自らの共通番号を事前に銀行に告知していれば、共通番号と暗証番号での本
人確認で預金の引き出しに対応してもらえるようになる。
○
国や自治体からの一時的な融資なども、自らが共通番号を告知した登録済み
の口座へ振り込まれるようになる。
■ バーチャル
バーチャル自治体の
自治体の実現
○
義援金について、銀行口座等との連携によって、早期に適切に被災者へ配
■ 自治体相互間の
自治体相互間の情報連携〔活用シーン
活用シーン 9:
9:6 ページ〕
ページ〕
分することができるようになる。
○ 被災者データベースに現在の滞在場所を登録し、全国どこにいても適切な行
○ 被災者が、他の自治体へ一時的に居住地を移すことになっても、面倒な手
政サービスが受けられるようになる。
続きをすることなく行政支援が途切れずに受けられる仕組みを構築する
○ 生活費は共通番号で管理される銀行口座へ振り込まれ、さまざまなお知らせ
ことができる(バーチャル自治体)。
も滞在先やメールアドレスに的確に届けられるようになる。
○ 被災者を受け入れている自治体も、共通番号によって被災者の情報を入手
することができ、手続きを簡潔化・効率化でき、負担を軽くすることがで
■ バーチャル自治体
バーチャル自治体の
自治体の実現〔活用シーン
活用シーン 12:
12:12,15
12,15 ページ〕
ページ〕
○
きる。
共通番号により、居住場所と行政サービスとの関係を見直すパラダイムシフ
ト、居住関係に依存しない ICT を活用したバーチャル自治体が実現できる。
○
これにより、避難場所が変わるたびに行政サービスを受けるための手続きが
必要となる被災者の負担が軽くなり、被災者を積極的に受け入れている自治
体にとっても、事務処理や行政サービスの効率化により負担が軽くなる。
3
『災害時における
災害時における共通番号
における共通番号の
共通番号の活用』
活用』に関する提案
する提案【
提案【シナリオ編
シナリオ編】
〔想 定〕
(被害の
被害の状況)
状況)
M8を越える大地震の発生により、家屋の倒壊や沿岸部における大規模な津波が発生し、地域
によっては壊滅的な状態にある。広域災害の可能性を把握した県知事は、自衛隊へ災害派遣を要
請し、県内に災害非常事態宣言を発した。
(共通番号の
共通番号の普及状況)
普及状況)
日頃、共通番号をよく使用することから、多くの被災者は交通用ICカードやクレジットカー
ドと同様に、共通番号カードを財布に入れていつも携帯していた。また、携帯まではしていなく
ても、自分の共通番号を携帯電話やスマートフォンに記録していたり、あるいはメモ書きした紙
を財布の中に入れたりしていた。
〔登場人物〕
登場人物〕
Aさん
X町に住む会社員のAさんは、大地震発生時、X町の高台にある事務所で仕事をして
いた。大地震でパソコンやキャビネットが倒れ、床にはファイルが散乱した。
必死の思いで、なんとか屋外に避難した。幸いけがはないが、何も持ち出すことはで
きなかった。着の身着のままの状態で高台から沿岸部を眺めると、大津波が町を襲って
いる。
両親と妻は沿岸部の自宅におり、単身の兄は職場の近くで働いていたはずだ。家族の
安否を心配しながらも、なす術がないAさんは、まずは職場の避難ルールに従って、避
難場所に指定されている公民館に向かった。
Bさん
首都圏のY市に住む学生のBさんは、休暇をとって観光地としても有名なX町を訪れ
ていた。地震発生時は、ようやく目的地に到着したところだった。観光地の情報や地図
は愛用のスマートフォンで検索するつもりだったので、何も持ってきていない。
大地震と同時に、すべての通信が停止してしまった。何が起こったのかを調べる術は
ない。ただ町には津波警報と避難を呼び掛ける放送が鳴り響いている。避難場所がどこ
かも分からないが、ただならぬ事態であることは間違いない。避難する人たちの流れを
追って、とにかく移動することにした。
首都圏の家族にはおおよその目的地は伝えているが、詳細な旅程などは話していな
い。今日、この町にいることも分からないだろう。状況を伝えたいが、まったく通信で
きない。
4
Ⅰ.住民の
住民の避難と
避難と安否確認
〔状 況①〕
自宅の倒壊などにより住民が指定避難所へと集まってくる。しかし、停電し、固定電話や携帯
電話もつながらず、自治体職員や自衛隊などの救援の手も届かない状況にある。救援部隊が来る
までの間、避難した住民達は自分達自身でやれることから作業を始めるしかなく、ぞくぞくと集
まってくる避難者の今後の管理や安否確認に備え、まず避難者名簿の作成を始めた。
〔活用シーン
活用シーン 1〕:避難者名簿の
避難者名簿の作成(
作成(各避難所にて
各避難所にて)
にて)
避難者名簿の作成では、共通番号カードを携帯していた者は、カード表面に記載されている共
通番号と氏名を名簿に記載する。カードが無くても、携帯電話やメモ等に共通番号が記録されて
いれば、それを名簿に記載すればよい。共通番号が全くわからない場合には、その代わりとなる
個人識別情報として、住所・氏名・性別・生年月日を名簿に記載してもらう。
Aさん
九死に一生の思いで職場を飛び出したAさんには、共通番号カードはおろか、上着さ
え持ち出す余裕がなかった。幸い避難場所は職場に近く、職場規定の避難手順に従って、
無事にたどり着くことができた。
共通番号は記憶しておらず、証明する手段も持ち合わせていなかったが、避難者名簿
を作成していた町内会のとりまとめ役である民生委員とは旧知の間柄である。ここで
は、自分の住所・氏名・性別・生年月日を申告し、さらに暫定処理として民生委員の共
通番号を本人確認者として登録した。Aさんには、後日あらためて共通番号と証明書が
交付されることになった。
Bさん
誰も知る人間がおらず、通信手段も遮断されていたが、避難する住民のあとを追って、
Bさんも避難場所にたどり着くことができた。状況からして、一次避難場所に指定され
ている所らしい。
どうやら避難者名簿の作成が始まっているようだ。共通番号を告げ、避難者名簿に載
れば家族に状況が伝わることは知っている。幸い、スマートフォンのオフライン機能は
動作する。Bさんはスマートフォンの共通番号証明画面を呼び出し、避難者登録の列に
並んだ。共通番号証明画面を示すことで、手続きは滞りなく終わった。観光客であるこ
とを知った町の人たちは、みな親切だった。
〔解 説〕
・ 早い段階での被災者の本人確認は、後々の救済措置において重要な意味を持つ。共通番号カ
ードの携帯が一般化すれば、特にこうした緊急事態において非常に有効な本人確認手段とな
る。なお、共通番号カードの利用範囲が狭く制限されており、使用場面が少ないと、それを
携帯する者も少なく、災害時の本人確認手段として活用することは非現実的となってしまう。
〔状 況②〕
被災3日目に、やっと役場の職員が避難場所に到着し、災害対策用の自家発電装置、パソコン、
衛星電話回線が設置され、避難所から災害対策本部のサーバへのアクセス環境が整った。これで
被災地の状況やニーズを本部側に正確に伝え、早急な対策を求めることや、さまざまな情報を集
5
約し、住民にフィードバックすることが可能になった。なお、ここでは避難者数が多く、食料は
あと2日で底をつくし、急いで医薬品が必要な住民もいる。さまざまな物資の調達を急がねばな
らない。
〔活用シーン
活用シーン 2〕:被災者データベース
被災者データベースの
データベースの整備
災害対策本部のサーバ内には、住基ネットから取得した4情報(住所・氏名・生年月日・性別)
と共通番号を中心に構成された被災者データベースが既に構築してある。職員は避難者名簿を見
ながら、共通番号によるデータベースの検索と、その住民に関する安否情報・避難場所情報の記
載をしていく。共通番号が不明な避難者については、氏名をキーにして検索し、避難者名簿に記
載されたその他の情報(住所・生年月日・性別および本人確認者情報)と照合した上で特定する。
こうして住民ごとの災害情報が整備され、被災現場ごとの救護活動や復旧作業に活かされるほ
か、その情報はインターネットでも公開されて、連絡の取れない身内の安否を気遣う人々が利用
している。なお、避難者情報の公開に際しては、住所は町名までしか表示されず、生年月日では
なく満年齢で表示される等、プライバシーに対しても最低限の配慮がなされている。
Aさん
Aさんの4情報についても、災害対策本部の被災者データベースに登録されていた。
職員は4情報を利用して共通番号を検索し、Aさんに告げた。まだ印刷機能はないため、
証明書は発行できないが、簡易発行のパスワードが併せて告げられる。Aさんはそれを
メモした。後日、共通番号カードを取得するためだ。
家族の安否状態も同時に確認することができた。職員によると、両親は別の避難場所
で無事だが、妻と兄が行方不明とのこと。
被災者データベースの連絡用フォルダを使って、家族に対して最低限の連絡ができ
る。職員に依頼して、自分の無事と、移動が可能となったらこちらの避難場所で合流し
たい旨を両親に伝えてもらった。
Bさん
被災地住民ではないBさんの情報は被災者データベースにはないが、職員が共通番号
を入力することで、すぐに必要な情報がそろった。すでに自治体間の非常時情報連携が
機能しているからだ。Bさんの無事についても登録される。
これはインターネットの安否確認ページに公開されることになる。首都圏の家族はイ
ンターネットでBさんの共通番号を入力して検索し、無事を確認することができた。
同時に、Y市に対しても、被災地に同市の市民数十名がいることが通知される。即座
に対策会議が開かれた。
〔解 説〕
・ このような活用シーンにおいては、本来であれば「住民票コード」こそ使われるべきところ
であり、現に今回の災害に際しては安否確認への住基情報の活用がある範囲において取り組
まれている。しかし、その範囲を越えた利用への厳しい制限に変わりはない。安否確認に限
らず、救援活動、復旧活動、復興活動と長期にわたる期間における様々な用途に番号を活か
そうとする場合、住基情報とは別の法制度に基づく番号制度が必要となる。
・ 共通番号やそれに付随する個人情報については、平常時はプライバシー保護のため厳格に運
用されているが、非常事態宣言が発せられた場合には、住民の生命、身体又は財産を守るた
6
めに、そうした保護のレベルを下げて運用できることが重要である。
・ また、被災地の混乱した状況では、単純な手順、少ない情報量、様々な通信手段での対応が
不可欠である。共通番号による被災者把握は、被災者支援のための強力な手段となる。例え
ば、回線の状況によっては多くの情報の送信が困難な場合もありうるが、その場合でも、共
通番号をセンターに送信するだけで、各避難場所にいる被災者のリストを送ることが可能と
なる。また、番号を登録するだけなら、パソコンを利用できなくても、携帯電話やスマート
フォンなどの簡易な通信機器を用いて対応することができる。
・ なお、共通番号の活用が税と社会保障に限定されてしまうと、従来の住基ネットを中心とし
たデータベースの構築を余儀なくされ、番号の活用による被災者支援は困難となる。
〔活用シーン
活用シーン 3〕:被災者データベース
被災者データベースの
データベースの活用と
活用と共通番号による
共通番号による情報連携
による情報連携
共通番号を基盤に構築された被災者データベースにより、各避難所へどのような物資をどれだ
け供給すればよいかが迅速に判断されていく。避難所ごとに、避難者の性別や年齢がわかるので、
水や食料の必要量だけでなく、男性用・女性用物資の数量、大人用・乳幼児用おむつの数量、乳
児用粉ミルクの数量なども的確に把握できるからだ。
さらに、共通番号をキーにして医療機関にある電子カルテ情報を取得することで、持病をもつ
避難住民に必要な医薬品を届けたり、入院患者の適切な受け入れ先を探して搬送計画を立てるこ
とができる。
Aさん
Aさんの父は重度の糖尿病であり、インスリンが欠かせない。母も随分沢山の薬を飲
んでいるが、病院に渡されるまま飲んでいる状況で、何の薬が必要かなど説明できると
は思えない。
自分がそばにいない状態で対応できるかどうか心配していたが、共通番号を使って電
子カルテと連携し、必要な薬品が優先的に両親のいる避難場所に供給されたらしい。無
事、必要な薬品を入手しているとの連絡があった。
Bさん
Bさんが避難していることはY市に既に伝わっている。Y市の対策会議で救援方法が
決定された。数名の高齢者が別に避難しており、直接の支援はそちらで限界。Bさんに
は、被災者データベースの連絡用フォルダで連絡するので、移動手段を確保して自力で
帰省してほしい旨の連絡があった
後日、近くの都市まで臨時バスが運行された。そこまでいけば新幹線で帰ることがで
きる。Y市からは、臨時バスの予約方法や、その後の帰京ルートなどが通知された。B
さんはX市に依頼して臨時バスを予約した。バス停に行き、スマートフォンの共通番号
証明画面を見せると、確かに予約がなされていた。Bさんは無事に帰京することができ
た。
〔解 説〕
自分の飲んでいる薬を把握していない被災者も多く存在する。特に高齢者などは、具体的な
薬品名を提示することは困難であろう。機微情報である電子カルテ情報は、プライバシー保
護のために、平常時には本人及びその代理人並びに権限を持つ医療従事者しかアクセスでき
ない。しかし非常時には、医療関係者が共通番号をキーにして電子カルテ情報にアクセスし、
7
避難所ごとに必要な医薬品情報を集約して調達・配布したり、入院患者の搬送計画を立てる
ことができる。たとえば糖尿病患者の多くいる被災地にインスリンが不足することは、直ち
に被災者の生命に関わる。必要な薬品を確実に避難場所に届けることは、二次災害による失
われなくてよい生命を守るための重要なライフラインとなる。
Ⅱ.行方不明者の
行方不明者の捜索
〔状 況〕
消防、警察、自衛隊などによる行方不明者の捜索が開始される。被災者データベースの情報を
使って、どの地区でどれくらいの行方不明者が出ているかが把握されており、それに応じた捜索
体制が整えられた。
〔活用シーン
:救援活動への
活用シーン 4〕
4〕
救援活動への共通番号
への共通番号カード
共通番号カードの
カードの活用
共通番号カードは非接触型 IC カードであることから、捜索隊は電波を送信することで、行方不
明者が近辺にいるか、誰がいるのかを感知し、捜し出すことができる。平時におけるこのような
電波の使い方は違法であるが、災害非常事態宣言が発せられた地域のみ、一定期間許可される。
Aさん
Aさんの妻は専業主婦で、震災時には自宅にいたと思われるが、いまだ行方が不明で
あった。AさんはX町に、妻の4情報と震災時は自宅付近にいたと考えられることを告
げていた。
震災から3日後に、付近に合ったICカードの情報から判断してAさんの妻と考えら
れる方を捜索隊が救助し、X町の病院に搬送したとの連絡があった。
Aさんは、連絡を受けた翌日、その病院に歩いて向かった。妻は少し衰弱していたが、
無事であった。
〔解 説〕
・ 非接触型ICカードにはICチップとアンテナが埋め込まれていて、特定の周波数の電磁波
をそのアンテナで受けると内部の回路に電流を生じ、ICチップが動作する。この機能によ
ってICチップの中に記録されているデータを読み取る(ただし暗号化されている)ことが
できる。
・ 非接触型ICカードは内部電源を必要としないことから、携帯電話やスマートフォンのよう
な電源切れのリスクを伴わず、こうした災害時での携帯に適しているといえる。
〔活用シーン
:遺体の
活用シーン 5〕
5〕
遺体の身元確認への
身元確認への共通番号
への共通番号の
共通番号の活用
災害発生から日が経ち、残念ながら遺体として発見されるケースも増えている。所持品がな
く、遺体の損傷や親族の被災などで身元確認ができない場合でも、行方不明者の共通番号に、家
族が申告した行方不明者の身体的特徴や医療機関で保管されている歯科医のカルテ情報などを紐
づけておけば、迅速に身元確認を行い、被災者データベースに「死亡」の登録をして家族に連絡
することも可能である。
8
Aさん
Aさんの兄は単身で、震災時はX町で働いており、いまだ行方が不明であった。兄の
共通番号や正確な住所はわからない。AさんはX町に対して、兄が行方不明であること
と、おおよその住所、氏名、性別、生年月日、身体的特徴などの情報を登録していた。
震災から7日後に、付近に合ったICカードの情報や登録された身体的特徴などから
判断してAさんの兄と考えられる方を捜索隊が見つけたが、既に亡くなっているとの連
絡があった。急いでその遺体が安置されている場所に向かった。その遺体は、確かに兄
であった。AさんはX町に、火葬の申請を行った。
〔解 説〕
・ 大規模災害では、遺体の損傷や親族の被災などで身元確認ができない場合が多い。共通番号
に身体的特徴や医療情報を紐づけておけば、迅速に身元確認を行い、家族に連絡することが
できる。医療機関が被災し、医療情報が喪失している場合もありうるが、家族が申告した身
体的特徴を共通番号に紐づけておくだけでも、一定程度絞り込むことができる。
Ⅲ.復興へ
復興へ向けて
〔状 況①〕
余震の頻度も少なくなり、避難していた住民も復興へ向けての活動をしていかなくてはならな
い。着の身着のままで避難した人々は、財産も職場も失ったケースが多く、国や自治体による被
災者の支援が急がれる。
〔活用シーン
活用シーン 6〕:義援金
:義援金の
義援金の配分
今回の大災害にあたり、日本国内はもとより世界各国から多額の義援金が寄せられている。こ
れらのお金は、被災者データベースに蓄積されたさまざまな情報に基づき、被災自治体に対して
適切で迅速な配分がなされ、救援物資等のさまざまな形で被災者に届けられている。
また、共通番号の配布に伴い、住民が自らの告知により希望する銀行口座に共通番号を登録す
る制度がスタートしている。そして、公的機関からの現金給付などの振込先に共通番号登録済口
座を指定する振込先指定制度も開始される。これは振込み元の行政にも、金融機関にも、本人に
も安心・安定したサービス基盤を提供するものとなっている。
Aさん
Aさんも家族も命を守ることで精一杯だった。クレジットカードはおろか、財布一つ
持ち出せていない。X町の職員に尋ねると、義援金は全国の自治体窓口で直接受け取る
こともできるが、Aさんが自ら銀行に共通番号を告知して登録し、その口座を振込先と
して事前に指定していれば、Aさんの銀行口座に、Aさんたち家族の義援金がすぐに振
り込まれるとのこと。
Aさんは、すでに振込先指定制度に従い、共通番号登録済口座を指定してあった。口
座番号は分からなかったが、職員に頼んで、共通番号を使って自分の口座情報を調べて
もらうことができた。
9
〔解 説〕
・ 着の身着のままで避難した被災者は、通帳、キャッシュカード、健康保険証、免許証、クレ
ジットカード、国民年金手帳など、すべてを失っている人も多い。しかし、事前に自分の共
通番号を銀行に告知し、共通番号登録済口座を振込先として指定していれば、Aさんの銀行
口座に義援金等を振り込んでもらうことが可能になる。
〔活用シーン
活用シーン 7〕:行政分野および
行政分野および民間分野
および民間分野での
民間分野での手続
での手続き
手続き
共通番号の利用が、多様な行政分野や民間分野に及んでいれば、共通番号による連携でさまざ
まな手続のワンストップ化が実現する。そのおかげで、被災住民の側は必要最小限の手間で済み、
事務処理も迅速に行われる。また、民間分野における各種の手続きにおいても、共通番号カード
を提示することで、正確かつ迅速な本人確認が行われている。
Aさん
家族と再会し、簡易ではあるが兄の葬儀を終えたAさんは、臨時バスが運行している
こともあり、不自由な一次避難場所を離れる決意を固めた。
首都圏のZ市が3ヶ月間限定で空きホテルを避難場所として提供するとの連絡が、連
絡用フォルダにあった。この頃にはすでに携帯電話がある程度つながる。
まだ共通番号カードはないが、以前、民生委員に臨時本人確認をしてもらい告げられ
ていた共通番号と簡易パスワードを入力して、自分でフォルダを確認できる。高齢者の
いるAさん世帯には優先的に連絡が来たようだ。
両親には温かい寝場所が必要である。Aさんはホテルへの移動を希望する旨、入力し
た。
〔解 説〕
・ 共通番号が行政だけではなく、民間分野でも活用可能であれば、共通番号による連携によっ
て様々な手続のワンストップ化が実現し、被災時においても、住民は容易に必要な手続を行
うことができる。それらの手続の際には、本人確認の問題が必ず付きまとう。共通番号カー
ドの携帯が一般的になっていれば、本人確認の問題を最小限に抑えることができる。
・ カードを紛失してしまった人に対しては、本人確認をしてカードの再発行手続きをしなけれ
ばならない。何らかの生体情報を登録してあれば本人確認はすぐにできるが、そうでない場
合は氏名、住所、生年月日、家族の情報についての聞き取り調査、複数の近隣住民の証言な
どによって本人確認をしなければならない。
・ なお、大規模災害時にあっては、被災者の行方を探す家族などによって広く個人情報がイン
ターネットなどに公開される場合が多いため、知っている事実を根拠とする確実性は非常に
低くなることへの配慮が必要になる。
〔活用シーン
活用シーン 8〕:銀行口座等
銀行口座等との連携
との連携
共通番号による民間分野と行政の連携が実現していれば、金融機関では、通帳を無くした住民
に対しても、共通番号カードで本人確認ができれば預金の引き出しに応じる。事前に自ら自分の
共通番号を銀行に告知していれば、その口座には共通番号が貼り付けられているからだ。被災者
10
はこのカードで国や自治体から一時的に無利子融資を受けることもできる。申し込みをすれば、
共通番号が付番されている口座に融資資金が振り込まれる。
また、特別に設けられた「被災者支援センター」に共通番号を告げ、本人確認を行えば、悪用
防止のための一時的な利用停止と再発行の手続きも一度で完了する。
Aさん
避難場所では全て配給であるため、現金の持ち合わせを心配することはなかったが、
首都圏にあるZ市に移動すれば、現金がほしくなる。
以前、自らの告知により、共通番号登録済みの銀行口座を振込口座として指定してお
いたので、その口座に義援金が既に振り込まれている旨が職員から告げられた。避難先
の自治体窓口に行き、共通番号カードの発行を受ければ、すぐにも引き出せるとのこと。
これで当面の生活に苦労することはなさそうだ。
クレジットカードの悪用も心配だったが、X町から「被災者支援センター」に連絡し
て、共通番号とそれに紐付いた情報で本人確認をしてもらい、クレジットカードの利用
を一時的に差し止めてもらうことができた。
〔解 説〕
・ 特別に設けられた「被災者支援センター」に共通番号を告げ、本人確認を行えば、悪用防止
のための一時的な利用停止と再発行の手続きも一度で完了する。クレジットカード会社と銀
行は、被災者データベースからの情報をもとに、該当のキャッシュカード、クレジットカー
ドの不正使用の監視を強化することができる。例えば、震災のエリアから遠く離れたところ
で預金を下ろそうとしたり、宝石など被災者は普通買わないだろうと思われるようなものを
購入しようとした時には、アラートが上がる。
・ なお、共通番号の利用範囲が社会保障と税に限定されれば、このような銀行口座等との連携
による被災住民の支援は実現しない。
〔状 況②〕
災害が大規模なことから、復興にはかなり長い期間を要する模様である。被災者は学校や公共
施設等の最寄りの緊急避難場所にはじまり、数週間、数ヶ月、半年と、一定期間仮住まいできる
場所へと移動してゆく。その結果、多くの被災者が複数の自治体、時には県をまたいだ移動を続
けながら仮設住宅などへと移り住んでいく。
〔活用シーン
活用シーン 9〕:自治体相互間の
自治体相互間の情報連携
自治体相互間も共通番号で情報連携されていることから、被災者は、幾度も繰り返さねばなら
ない移動に際しても、その度毎の転出・転入手続きや生活保護申請等の手続きに煩わされること
なく、途切れることのない継続的な行政サービスを受けることができる。
Aさん
避難場所として提供されたZ市のホテルに落ち着いたAさんは、早速、Z市の自治体
窓口を訪れた。
自治体は被災者データベースに接続されている。共通番号と簡易パスワードを告げる
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ことで本人確認が完了した。補足として家族の名前などいくつかの質問がなされた。即
座に新しい共通番号カードが発行される。
そのカードを持って近くの銀行窓口に行くと、まったく問題なく義援金を引き出すこ
とができた。家族に当面必要な物資を買って帰ることができる。
携帯電話から忘れずに避難先住所の登録を行った。これで被災した住所地自治体から
の連絡も確実に届く。その他の住所変更なども連動するように一括申請しておいた。ま
ずはこれでよいはず。
後日、倒壊した自宅あての郵便がホテルに転送されてきた。新しい住所の情報が郵便
局に届き、転送先の指定がなされたからだろう。ここには3カ月しかいられないが、こ
の程度の手間なら、次の移動にも不安はない。
〔解 説〕
・ 共通番号による広範な連携が許容され、共通番号を基盤に被災者データベースが構築されて
いれば、現在の滞在場所を登録しておくだけで、全国どこにいても滞在場所ではなく共通番
号に依拠して行政サービスを受けることも可能である。事前に自ら共通番号を銀行に告知し、
共通番号登録済口座を振込先に指定していれば、義援金などは共通番号に紐づいた銀行口座
に入金されるので安心であるし、さまざまなお知らせや必要な情報は登録した滞在先や連絡
先のメールアドレスなどに届くので、常に最新の情報に基づく行動ができる。なお、共通番
号の利用範囲が限定され、自治体相互間の情報連携が進んでいなければ、被災者は、移動の
度に転出・転入手続きや生活保護申請等の手続きをしなければならないし、途切れることの
ない継続的な行政サービスを受けることもできない。
・ これは被災者を受け入れる自治体にとっても重要な措置となる。受け入れ先自治体の財政的、
人的資源には限界があり、数百、数千人規模の被災者を受け入れる場合、その受入れは容易
にできるものではない。しかし、共通番号を利用し、受け入れ先自治体に代わって県や国が
直接被災者支援に当たれば、受け入れ先自治体は地域としての最低限のサービスを提供する
ことで被災者を救うことが可能となる。
〔活用シーン
活用シーン 10〕
10〕:ボランティア活動
ボランティア活動への
活動への活用
への活用
全国からボランティア等の支援者も被災地に駆けつけている。ボランティアセンターでは共通番
号カードで受付を行い、資格や技能などによって的確に仕事が割り振られている。
Bさん
自宅に戻り落ち着いた生活を送っていたBさんは、避難場所で親切にしてくれたX町
の被災地の人たちのことを思い出していた。Bさんはボランティアとして改めて被災地
に向かう決心を決めた。
ボランティアセンターを訪ねたBさんは、共通番号カードで希望者登録を行った。資
格情報の照会に合意する。車の運転ができること、大学で教員免許資格要件を満たして
いることなどが自動連携される。
Bさんには被災地の子供たちに対する教育支援の依頼が来た。
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〔解 説〕
・ 共通番号カードを用いて、ボランティア希望者が持つ資格等の情報を照会することが可能で
あれば、被災地で必要される技能等を持つボランティア希望者を、必要な場所へ派遣するこ
とが可能となる。なお、共通番号による情報連携が認められていなければ、ボランティア志
願者の技能や資格を簡単に把握する術はないため、適時に的確な仕事を必要な場所へ割り振
ることができない。
Ⅳ.生活の
生活の再建
〔状 況〕
災害時の慌しさもようやく落ち着いてきた頃、自宅を失った住民の生活の再建や災害孤児とな
った子どもたちの受け入れ先の手当てなどをしていかなくてはならない。
役場の職員は家屋の被災状況を調査し、罹災証明を発行する。
〔活用シーン
:資産管理
活用シーン 11〕
11〕
:資産管理と
資産管理と遺産相続
大規模な災害だったことから、一家全員が亡くなる、あるいは子どもだけが取り残されるとい
うケースも多い。このような場合、死亡者の財産を適切に処理しなければならない。事前に自分
で金融機関等に共通番号を告知していれば、預金・保険・証券などの金融資産や土地・家屋など
の固定資産が共通番号によって管理されるため、相続手続きを的確に、しかも効率的に行うこと
ができる。
Aさん
Aさんの滞在するホテルに、Aさんは亡くなった兄の法定相続人の1人であり、相続
に当たって、いつまでにどのような手続をしなければならないかを知らせる郵便が届い
た。
相続手続に必要な情報はすべて把握できたし、必要書類を整えるのもそれほど大変で
はなさそうだった。生活が落ち着いたら、手続を行うことにする。
〔解 説〕
・ 預金・保険・証券などの金融資産や土地・家屋などの固定資産が別々に管理されており、戸
籍が共通番号で管理されていないと、相続人や相続財産を特定し、相続手続を行うことは、
困難を極める。預金・保険・証券などの金融資産や土地・家屋などの固定資産が共通番号に
よって管理され、戸籍情報と連動していれば、的確かつ効率的に相続人や相続財産を特定し、
相続手続きを行うことができる。
〔活用シーン
活用シーン 12〕
12〕家屋損害への
家屋損害への対応
への対応
家屋番号は所有者の共通番号とリンクしており、被災前の情報と被災後の情報を比較すること
が容易であるため、被災者生活再建支援法に基づく支援金、税の減免措置、義援金の配分などが
迅速に決定され、損害保険会社にも通知される。事前に自ら金融機関等に共通番号を告知し、共
通番号登録済口座を振込先に指定していれば、支援金などは共通番号が付番された口座へ振り込
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まれ、損保では被災者からの申請が無くても、保険金を契約者の口座へ支払うことができる。
自宅をあきらめざるを得ない住民は、仮設住宅への入居申請や他地域の空き住宅への入居申請
などを共通番号で行う。番号を使うことで、行政側としても住宅の割り当てを公平にできるとと
もに、今後の仮設住宅建設計画などに役立てることができる。
Aさん
Aさん世帯はすでに避難場所を数回移動していた。移動の手続きは携帯電話から被災
者データベースに移動先を登録するだけで、手間はさしてかからない。
しかし、そろそろ生活再建に取り組まなければならない。X町の被災状況は甚大で、
自宅の再建は中期的な視点でも困難と考えざるを得ない。
まずは仮設住宅に入居して生活再建を優先するという決断を下したAさんは、被災者
データベースからX町の仮設住宅入居情報を検索した。被災した自治体はもちろん、県
や国から各種情報が届いている。
仮設住宅の入居申請を行ったところ、Aさん世帯の状況に応じた物件が優先的に割り
当てられた。罹災状況の判定も終わっており、保証金や各種保険金の支払い準備が完了
したという通知も届いた。
Aさんは仮設住宅の入居申請を行った。新たな生活がスタートする。
〔解 説〕
・ 災害や風評による経済的損害や強制避難に伴う精神的損害について、国や自治体がどのよう
に補償していくかは、まだこれからの課題とされている。補償額を決定するためには、自治
体職員による被災地の現況確認や避難状況の聞き取り調査などが不可欠になるため、迅速な
対応には限界がある。しかし、共通番号によって、個々人の所得に加えて、土地や家屋、償
却資産(船舶や農機具、家畜など)などの地籍や固定資産情報を正確に把握していれば、被
災後の被害状況との比較が容易となるため、より的確に被災地の生活再建計画を立て、より
迅速に被災者支援を行うことができるだろう。
・ 仮設住宅等への入居申請も、共通番号を利用することができれば、手続は容易となる。共通
番号によって、その申込者の属性を把握できることから、被害の大きさに応じて、優先的に
仮設住宅を割り当てるということも可能となる。
以上
【お問合せ先】わたしたち生活者のための「共通番号」推進協議会事務局
公益財団法人日本生産性本部 公共政策推進室
TEL:03-3409-1182 FAX:03-3406-9732 MAIL:[email protected]
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共通番号をキーに医療機関の電子カルテ情
共通番号
報を取得。
持病をもつ避難住民に必要な医薬品を。入
院患者の適切な受け入れ先病院を選定。
〔活用SCENE
11〕
〕:資産管理と
活用
資産管理と遺産相続
死亡者の財産処理に共通番号
共通番号を活用。預金・保険・証券などの
共通番号
金融資産や土地・家屋などの固定資産を特定し、相続手続きを的
確かつ迅速に実施。
〔活用SCENE
12〕
〕家屋損壊への
活用
家屋損壊への対応
への対応
自ら「共通番号」を告知し、共通番号登録済口座
を振込先に指定していれば、その口座を活用し支
援金給付、税の減免措置、義援金の配分を実施。
仮設住宅や空き住宅への入居申請なども共通番
共通番
号で公平に。行政の仮設住宅建設計画にも役立つ。
〔活用SCENE
8〕
〕:銀行口座との
活用
銀行口座との連携
との連携
自らの共通番号
共通番号を事前に銀行に告知していれば、共通番
共通番
共通番号
号と暗証番号での本人確認で預金の引き出しに対応しても
共通
らえる。国や自治体からの一時的な融資なども、自らが共通
番号を告知した登録済みの口座へ振り込まれる。
番号
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All Rights Reserved, Copyright (C)わたしたち生活者のための共通番号推進協議会 2011
※本資料は、「災害時における共通番号の活用シナリオ」(4つの場面、12の活用シーン)に基づき、簡略版として作成したものです。
〔活用SCENE
9〕
〕:自治体相互間の
活用
自治体相互間の情報連携
被災者データベースに現在の滞在場所を登録し、全国どこにいて
も適切な行政サービスが受けられる。
共通番号で管理される銀行口座へ振り込まれ、さまざま
生活費は共通番号
共通番号
なお知らせも滞在先やメールアドレスに的確に届けられる。
Ⅳ.生活の再建
Ⅲ.復興へ向けて
※復興および生活の再建に向け、この時点で共通番号の媒体(カードや携帯電話)を紛失した被災者に対して番号・媒体の再発行を行う。
共通番号により、各避難所に必要な物資を
共通番号
迅速に判断。
男性用・女性用物資の数量、乳幼児用の
おむつや粉ミルクの数量などを的確に把握。
【前提条件】日頃、共通番号
共通番号をよく使用することから、多くの被
共通番号
災者はPASMOカードやクレジットカードと同様に共通番号カー
ドを財布に入れたり、携帯電話を共通番号の媒体として携帯し
ていた。
〔活用SCENE
3〕
〕:被災者データベース
活用
被災者データベースの
データベースの活用と
活用と共通番号による
共通番号による情報連携
による情報連携
【想定】M8を越える大地震発生。
家屋の倒壊、大規模な津波発生、壊滅的な状態。
県知事は、災害非常事態宣言発令、自衛隊へ災害
派遣を要請。
Ⅰ.住民の避難と安否確認
災害発生
今回の大震災は、現在検討している共通番号が災害時にどのような機能を持つべきかという問いを、我々に投げかけているようにも思える。二度とこのような災
害に遭遇しないことを祈るばかりであるが、災害時における共通番号のあり方について議論しておくことも将来的には有益であろうとの考えから、災害時における
共通番号の活用シミュレーションを行った。本提案が今後の共通番号や復興計画の議論に役立つことを祈念している。
2011年6月 わたしたち生活者のための共通番号推進協議会
災害時における
災害時における共通番号
における共通番号の
共通番号の活用について
活用について(
について(簡略版
簡略版) ー 共通番号の
共通番号の活用を
活用を想定した
想定した災害発生時
した災害発生時の
災害発生時のシナリオ
被災者の
被災者の生活再建
2011年6月 わたしたち生活者のための共通番号推進協議会
バーチャル自治体
バーチャル自治体の
自治体の実現に
実現に向けて
初動 共通番号による被災者の把握
官民連携による復興支援をワンストップに実現。
手続きに関する被災者負担を軽減。
義捐金振込口座開設、無利子融資、優遇措置…
共通番号により
共通番号により連携
により連携した
連携した支援
した支援
正確な状況把握に基づく復興計画立案が必須。
被災民の総数、避難状況など統計的に把握可能。
迅速な義捐金配布、ボランティアなど資源配置。
ネット専業自治体があっても…
たとえば、店舗のないネット専業の
オンライン銀行があるように、
16
1028 3886 4126
共通番号カー ド
長期にわたる避難が必要になる。全国の受け入れ先を転々と移動する被災者。
居住場所の移動で支援が途切れてはならない。故郷とのつながり、住民同士のつながりを失わないよう。
全国どこにいてもつながり続ける、共通番号による連携を活用した新たな行政サービスのあり方、
「バーチャル自治体」の構築。
税制も一体となった新たな社会システムを構築する。
地域コミュニティ
コミュニティを
バーチャル自治体内にSNSなどの地域
地域
コミュニティ
を形成
し、住民同士
住民同士のつながり
住民同士のつながりや地域の文化を継承する。
のつながり
共通番号を用いた本人確認を活用し居住先自治体と住
住
民本位(
(シチズンセントリック)
民本位
シチズンセントリック)の協力関係を構築する。
協力関係
避難住民の生活支援、社会保障はバーチャル
バーチャル自治体
バーチャル自治体が
自治体が
直接担う
直接担う。
「バーチャル自治体
バーチャル自治体」
自治体」は被災地自治体がネット上に展開し
てもよいし、あらたな組織として立ち上げてもよい。
居住場所に
居住場所に依存しない
依存しない行政
共通番号を活用した
活用したバーチャル
しない行政サービス
行政サービスの
サービスの提供 共通番号を
したバーチャル自治体
バーチャル自治体の
自治体の実現
再建 長期的生活支援、バーチャル自治体へ
正確な名簿をもとに共通番号で住基ネットや電子カルテ
などの情報と連携。
被災者の年齢、性別などに応じた救援物資、必要な医薬品、
入院先の確保など具体的な救援
正確な
正確な被災者名簿による
被災者名簿による確実
による確実な
確実な救援
混乱する現場で、簡単で確実な被災者確認、登録の
仕組みが必須。
共通番号で正確な本人確認。簡単、確実な名簿作成。
共通番号による
共通番号による復興計画立案
による復興計画立案
復興 共通番号による計画的な復興
共通番号の
共通番号の活用で
活用で、「正確な
正確な被災者把握、
被災者把握、適切な
適切な復興計画策定、
復興計画策定、長期ビジョン
長期ビジョンにたった
ビジョンにたった生活再建支援
にたった生活再建支援」
生活再建支援」 が可能に
可能に。
共通番号による
共通番号による被災者名簿
による被災者名簿の
被災者名簿の作成
生活再建
に向けて
災害時における
災害時における共通番号
における共通番号の
共通番号の活用について
活用について ー