<実践事例3> Ⅰ Ⅱ 「バリアフリーな町大研究」 第6学年 【福祉】 研究テーマ 総合的な学習の時間における「PISA型読解力」の育成 研究の視点と具体的な方策 「PISA型読解力」を育成する上で重要なことは、思考力を高めていくこと であると考える。これは、フィンランド・メソッドを構成する要素の一つとして も位置付けられている。また、思考力の中でも、特に論理的思考力を高めること が、読解力を育成し探求する力を育てることにつながると考える。 そこで、以下に示したような仮説をもとに、研究の具体的な方策を立て、検証 することとした。 【研究の仮説】 学習のプロセスを工夫するとともに、読解力を育成する上で重要となる思考力 を明らかにし、育成する学習場面を明確に位置付けることで、思考力を高め「P ISA型読解力」を育成することができるであろう。 【研究の方策】 ① 読 解 力 を 育 成 す る 上 で 重 要 で あ る 思 考 力 に つ い て 明 ら か に し 、そ れ ら を 育 成する指導の手立てを考え、学習場面に位置付ける。 ② 思 考 力 や 表 現 力 を 育 成 す る 学 習 場 面 を 設 定 し 、探 究 を 深 め る 学 び の 筋 道 を 明らかにする。 <PISA型読解力育成のための学習のプロセス> 課題をもつ 地域にふれる・体験する 【 7 本 単 元 の 実 践 報 告 (5)① 】 P12 興味・関心のある事実を収集する 【 7 本 単 元 の 実 践 報 告 (5)② 】 P13 情 報 の 取 り 出 し・収 集 収集した情報を整理する 【 7 本 単 元 の 実 践 報 告 (5)③ 】 P13 整理・分析・思考 整理したものについて話し合う 【 7 本 単 元 の 実 践 報 告 (5)④ 】 P15 【 6 本 時 の 実 践 報 告 (5)】 P6 まとめ・表現 共通項を見いだす 【 7 本 単 元 の 実 践 報 告 (5)⑤ 】 P16 論理的に文章等にまとめる 課題をもつ 共通項から新たな課題を見付け出す 【 7 本 単 元 の 実 践 報 告 (5)⑥ 】 P16 繰り返しの探究活動 効果的な社会への参加 総合 事例③- 1 Ⅲ 実践の概要 1 2 3 単 元 名 「 バ リ ア フ リ ー な 町 大 研 究 」( 福 祉 ) 目標 地 域 の バ リ ア フ リ ー の 実 情 と 人 々 へ の 実 際 と を 見 つ め 直 し 、地 域 の 人 々 と の かかわり方について考えていこうとする実践的な態度を育てる。 評価規準 主体的・創造的 な態度 課題設定の力 問題解決の 能力 学び方 ものの考え方 自己の生き方 福祉に関心をも ち、進んで障害 のある方やお年 寄りとかかわる ことができる。 見通しをもち、 繰り返し新た な課題を設定 することがで きる。 自己の課題を 追求する方法 や表現方法を 工 夫 し て 、適 切 に解決してい くことができ る。 調査活動や人 とのかかわり、 話し合い活動 を 通 し て 、自 己 の考え方を深 めることがで きる。 自己の活動を 振 り 返 り 、今 後 の生活に生か そうとすると と も に 、新 た な 視 点 を も ち 、自 己を高めよう としている。 4 単元計画(60時間) <PISA型読解力育成の視点> ①発想力の育成 ②論理的思考力の育成 ③表現力の育成 ④批判的思考力の育成 ⑤コミュニケーション力の育成 過程 学 習 活 動 <主な論理的思考力育成の視点> ア)比較 エ)帰納 イ)分類 オ)演繹 ウ)関係付け カ)類推 ○読解力育成の手立て 数 視点 ○ ○今あるバリアフリーに関する知識を挙げ 1バリアフリーって何かな? 評 価 ※バリアフリ (2) 課題をもつ させ、板書で整理する。① ーに関心を ・障害者のためのもの ○カルタにまとめさせる。① もつことが ・お年寄りにやさしい <研究するテーマを提示する。> できる。 ・人にやさしいこと等 「共に生きよう~バリアフリーな町大研究」 ○気付いたことはメモさせながら散策を行 わせる。① ・バ リ ア フ リ ー に 関 す る も の (8) 情報の取り出し・収集 2校内のバリアフリーを探す。 ○ 校 舎 内 、体 育 館 、校 庭 等 に も 目 を 向 け さ せ をメモする。 ・見付けてきたものを整理。 る。① ○気付いたことはメモさせながら散策を行 3地域のバリアフリーを探す。 ・バ リ ア フ リ ー に 関 す る も の わせる。① ○既習の知識等も活用させる。① ○ 家 族 の 話 、こ れ ま で 経 験 し た こ と 等 も 活 用 をメモする。 させる。① 総合 事例③- 2 ※メモ等から 発想を広げ ることがで きる。 ○ 見 付 け た 場 所 を 分 布 図 に 整 理 さ せ る 。( 模 4整理する。 ・見付けたものを整理する。 造紙→校内、地図→地域)③ せ る 。( 模 造 紙 1 枚 ) ③ み 取 る 。( 話 合 い ) (6) 整理・分析・思考 ○ 見 付 け た も の の 種 類 、数 を グ ラ フ で 整 理 さ 5整理したものから現状を読 ※分かりやす く整理する ことができ る。 ○ 分 布 図 か ら 、意 識 さ れ て 整 備 さ れ て い る こ ・スロープがあるが、数 と 、比 較 的 整 っ て い る こ と 等 を 読 み 取 ら せ は少ない。 る。②-エ) ・点字ブロック・信号音 ○片寄りに気付かせる。②-カ) ・福祉団体の取り組み。 ○ 種 類 や 数 も 、思 っ た 以 上 あ る こ と に 気 付 か ・施設自体も、バリアフ せる。②-オ) リー。 (2) まとめ・表現 6バリアフリーな町について ○読み取ったことを表現の型を参考にして、 ※ バ リ ア フ リ 考えをまとめる。 文章で整理させる。③ ・考えを文章で整理する。 ーの現状を 読み取るこ と が で き る。 ○障害の種について類別させる。②-イ) ○再整理したものから現状について考えさ ・視覚障害、聴覚障害、 (4) 整理・分析・思考 7整理の仕方を再考する。 せる。②-ウ)オ) 身体障害、情緒障害、 ○読み取ったことを表現の型を参考にして、 知的障害等 ※分かりやす く整理し直 すことがで きる。 文章で整理させる。③ ○ 西 武 地 区 は 、バ リ ア フ リ ー を 意 識 し た 町 づ く り が な さ れ て い る( な さ れ て い な い )こ ・考えを文章で整理する。 とに結論付けさせる。④ (2) 課題をもつ ○ 新 た な 問 題 を 生 じ さ せ る 。必 要 で あ れ ば 意 8新たな問題をもつ。 図的に投げ掛ける。④ 「バリアフリーな町を考えよ ○障害のある方や高齢者の方にかかわって う 。」 ※新たな課題 をもつこと ができる。 みようとする関心をもたせる。④⑤ ・障 害 の あ る 方 や 高 齢 者 の 方 に提案することを知る。 ・ 情 報 収 集 を 行 い 、町 の 実 態 と比較して考える。 (4) 情報の取り出し・収集 9バリアフリーな町を考える。 ・視 覚 障 害 ・養 護 学 校 ・聴覚障害 ・高齢者 ○グループごとに手分けをして情報収集を 行わせる。① ○町の実態と比較させながら考えさせる。 ②-ア)ウ) ○ 見 聞 、図 書 、イ ン タ ー ネ ッ ト 等 を 活 用 さ せ る。① ・身体障害 ※進んで情報 収集を行う ことができ る。 ※メモ等から 発想を広げ ることがで 10 整 理 す る 。 (4) 整理・分析・思考 きる。 ○ そ れ ぞ れ の 障 害 等 の 視 点 か ら 、考 え さ せ る ・バ リ ア フ リ ー な 町 づ く り を ようにする。②-ア)エ) ○分かりやすく、論理的にまとめさせる。 まとめる。 ・画用紙にまとめる。 ②-ウ) ・キーワードに集約する。 総合 事例③- 3 ※分かりやす くまとめる ことができ る。 11 (2) まとめ・表現 障 害 の あ る 方 、ボ ラ ン テ ィ ○分かりやすく説明できるよう促す。③ ア活動を行っている方に ○自分が整理した考えと比較しながら友達 の発表を聞かせる。②-ア)④ 提案する。 ・実態をふまえた話を聞く。 ○ 障 害 の あ る 方 、ボ ラ ン テ ィ ア の 方 に 提 案 を ※障害のある 方の気持ち 聞いてもらい、意見や感想をもらう。 を読み取る ②-ウ)エ)⑤ ことができ ○ 障 害 の あ る 方 、ボ ラ ン テ ィ ア の 方 に ア ド バ る。 (1) 課題をもつ イスをもらう⑤。 12 新 た な 課 題 、情 報 を ふ ま え ○ 今 ま で の 活 動 を 振 り 返 り 、自 分 が 創 造 す る て再整理する。 「バリアフリーな町」を再考する。 ②-ア)エ)オ) ・本 当 の バ リ ア フ リ ー な 町 に ※新たな課題 をもつこと ができる。 ついて考える。 収集(2) 取り出し・ 13 実際にふれ合った活動か ら必要な情報を整理する。 ・実 体 験 に も と づ い た 情 報 か ○ 障 害 の あ る 方 、ボ ラ ン テ ィ ア の 方 か ら ア ド ※自分なりの バ イ ス を 分 析 さ せ 、必 要 な 情 報 を 取 り 入 れ 考えをもつ させる。②-ウ) ことができ る。 ら自分の考えを深める。 14 ○自分の考えを短冊に整理する。③ 考えを整理する。 ○それぞれの短冊を、概念図に整理させる。 整理・分析・思考 ・画用紙にまとめる。 ①②-ア)イ)ウ)エ)オ)カ) ・キーワードに集約する。 ※論理的に整 理すること ができる。 (2) ○ 小 見 出 し を 付 け る 。① ② - ア )イ )ウ )エ ) 15 オ)カ) 概念図に整理し直す。 ○ 自 分 が 整 理 し た 考 え と 比 較 、類 推 等 し な が ・ 概 念 化 シ ー ト を 用 い て 、再 ら 、よ り よ い バ リ ア フ リ ー な 町 に つ い て 話 整 理 す る 。( 話 合 い ) ※自分なりの ・小見出しをつける。 し合わせる。①②-ア)イ)ウ)エ)オ) 考えをもつ ・バ リ ア フ リ ー な 町 に つ い て カ)③④⑤ ことができ ○「 バ リ ア フ リ ー 」と は 、人 々 の 心 が 重 要 で それぞれの視点から考え あることに気付かせる。①④ る 。( 話 合 い ) ・ 障 害 の あ る 方 、ボ ラ ン テ ィ ○実際に障害のある方やボランティアの方 本時 ア活動を行っている方に と ふ れ 合 っ た こ と か ら 再 考 し た こ と を 、表 2/ 2 感想をもらう。 現 の 型 を 参 考 に し て 文 章 で 整 理 さ せ る 。③ (9) まとめ・表現 16 る。 バリアフリーな町づくり ○ 今 ま で の メ タ 教 材 を 分 析 し 、お 礼 と 決 意 の ※今後の自己 に つ い て 、自 分 た ち に は 何 手 紙 を 障 害 の あ る 方 、ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 を の役割につ ができるだろうか。 行っている方に書かせる。③⑤ いて考える ○ バ リ ア フ リ ー な 町 に つ い て 、自 分 た ち に で ・ 障 害 の あ る 方 、ボ ラ ン テ ィ きそうなことを考える。① ア活動を行っている方に ことができ る。 お礼と決意の手紙を書く。 17 ( ) 課題をもつ 12 ○ 今 後 の 自 己 の 生 き 方 に つ い て 、今 ま で の 活 ※自分なりの ・市 長 、市 役 所 、障 害 の あ る 動 を 生 か す と と も に 、キ ャ リ ア 教 育 的 な 視 考えを分か 方や高齢者の方へ提案す 点 も 取 り 入 れ 、論 文 に ま と め さ せ る 。① ~ りやすく伝 る。 ⑤ えることが 自己の考えを提案する。 ○ 自 分 な り の 考 え を 、市 長 、市 役 所 、障 害 の ある方や高齢者の方へ提案させる。④⑤ 総合 事例③- 4 できる。 5 本時の活動(39/60) (1)目標 「バリアフリーな町とはどのような町であるか」という疑問を解決するために、地域におけるバリアフリー の調査結果と障害のある方の実際の思いや願いとを、比較しながら関係付けて考えを深めることができる。 (2)展開 学 1 習 活 動 支 援(○)評 価(■)読解力育成の要素(※) ○本時の課題を確認させる。 本時の学習課題・活動を確認する。 障害のある方の実際の思いや願いについて話し合おう ・今まで調べてきたことを振り返る。 ■本時の課題を捉え、主体的に活動していこうとする。 2 ○今までの調査結果や障害のある方とのかかわりから、 「バリアフリーな町」について、障害のある方と 実際に関わり考えたことを短文にまとめて示す。 ・2色の画用紙に書いた短文を提示する。 自分なりの考え示した短文を提示しておく。※表現力 ○整理した短文を概念化シートに提示しておく。 実 態 調 査 や 情 報 収 集 か ら 考 え た 意 見( 白 画 用 紙 ) 障 害 の あ る 方 と 関 わ っ て 考 え た 意 見( 青 画 用 紙 ) 3 概念化シートに整理して、類型化する。 ・ 座 標 軸 に( よ い 点 ・ 改 善 点 )、 ( 物 的 環 境・人 的 環 境 ) を置いた概念化シートを用いて整理する。 ○類型化したものにキーワードを付けさせ、分類の根拠 を明確にさせる。※論理的思考力 ○未分類の短文を再整理する。※論理的思考力 ・地域のバリアフリーの実態と、障害のある方の思い や願いとの関連性を明らかにする。 ・小見出し(キーワード)を付けて整理する。 4 小見出し同士を関連付け、考えたことを文章にす る。 ○以下の留意点を意識させながら、考えを書かせる。 ①事実を書かせる。 ※表現力 → 合致している点 ②物的事実と人的事実を関連させて書かせる。 → ズレが生じている点 ③自分なりに事実から読み取ったことを書かせる。 → 改善点 等 ■事実から読み取ったことをもとに、自分なりの考えを 分かりやすく文章に書くことができる。 5 考えを発表し、話し合う。 ○話合いの中から、キーワードや、変容した自分の考え 自分の考えに反応した内容やキーワード等を 等を記録させていくようにする。※表現力 <話合いの留意点> 記録していく。 ・質問し合う。 ①類型化させる。→小見出しを付ける。 ・ゲストティーチャーから意見をもらう。 ②比較させる。→違いを明確化させる。 ③課題を明らかにする。→批判的な思考からコミュ ニケーション的思考へ。 6 活動を振り返る。 ○話合い活動を通しての自分の考えと、障害のある方の ・話合い活動を通して、自分なりの考えをワークシ ートに記述する。 総合 事例③- 5 実際の思いや願いとを関係付ける。※論理的思考力 ■地域におけるバリアフリーの調査結果と障害のある方 の実際の思いや願いとを関係付けることができる。 ○考えを分かりやすくまとめたり、新たな疑問をもって いたりするものを称賛し、紹介していく。 ※表現力 7 ※批判的思考力 新たな課題をもつ。 ・次に考える問題を明らかにする。 6 ○新たな課題をもち、意欲的に取り組めるよう促す。 本時の実践報告 【整理・分析・思考段階でのPISA型読解力の育成】 (1)指導のねらい ○整理・分析・思考段階において「PISA型読解力」を育成するには、思考の 拡散と収束を繰り返させながら、思考力を高めていくことが重要である。そこ で、これまでの活動を通して調べたりまとめたりしてきたものをテキストとし て活用しながら、新たな問題点等を読み取っていく学習を通して、思考力を高 めていくようにする。 (2)読解力 ○バリアフリーについては、障害者や高齢者等、全ての人々が安全で幸せな生活 を送るために必要な物的要素であることはもちろんのこと、そうした人々を支 える気持ちが重要であるという心的要素にまで発展させて読み取り、自分自身 がどのように社会に参加していくべきかといった考えをもつことができる。 (3)テキスト ○これまでの活動から分かった事実、考えたこと等を整理した資料 ○ゲストティーチャーの話 ○振り返りカード (4)読解力育成の手立て ○体験を通して得た自分の意見を、短文にまとめ作業を通して明確にさせる。 ○それぞれの短文を、概念化シートを用いて整理させ、共通項を見いださせる。 ○物的要素と心的要素に分類し2つの事実から本質を読み取らせ、考えを深めさ せる。 ○話合い活動において、心的要素の重要性が明らかになるように発言内容を整理 させ、深まるようにする。 ○収束しかけた話合いに揺さぶりをかけるような短文を抽出しておき、意図的に 投げ掛けるようにする。 ○高齢者や障害のある方を支えるボランティア活動に、長年従事している方から の 、実 践 に 裏 打 ち さ れ た 切 実 感 の あ る 話 を 聞 か せ る こ と で 、考 え を 深 め さ せ る 。 総合 事例③- 6 (5)実践と考察 ①導入段階 概念化シートによる類型化 はじめに、これまでの活動から分かった事実や考えたことを再整理させ、短 文にまとめさせた。その際、ゲストティーチャーとかかわる前後の、自己の考 え方の変容を明らかにさせるため、短文を書く画用紙の色分けをした。この作 業により、自己の思考を収束させ、よりとらえやすくさせることをねらいとし た。 現地調査、資料調査から考えたこと → 白画用紙 ゲストティーチャーから考えたこと → 青画用紙 次に、全児童の短文を提示し、概念化シートに整理させることで物的要素と 心的要素を明らかにさせていった。 ~概念化シート~ (良い点) (人) (物) (改善点) この活動により、児童は他の短文と比較したり、分類したり、関係付けたり しながら整理していった。また、白画用紙と青画用紙に書いた自分の短文を比 較し、自分自身の考え方の変容をとらえ、本質に迫る考えを導き出していった のである。 したがって、児童は「比較・分類・関係付け・帰納」といった論理的思考力 を 高 め た り 、そ こ か ら 新 た な 発 想 力 を 高 め た り し て い く こ と が で き た の で あ る 。 ②展開1段階 キーワードの作成による共通項の明確化 はじめに、短文の仲間分けをさせるためにキーワードを付けさせた。分類し た短文の視点を明確化させるとともに、共通項を明らかにさせることがねらい である。 次に、キーワード同士を関連付けさせ、考えたことを文章にまとめさせた。 この作業により、事実と事実を重ね合わせ、本質を読み取って表現していくこ とをねらいとした。 総合 事例③- 7 <短文を類型化し、キーワードを付ける> (短文) ・駅を広くする ・車イスを改良 ・タクシーを改良 ・自動スロープ ・聴導犬を増やす ・字を大きくする ・お店にスロープ ・青信号を長く等 ・あいさつをする ・老人ホームで話す ・ふれ合える場 ・お年寄り、障害のある方とふれ合う場 ・昔の遊びを教えてもらう 等 ・見て見ないふりをしない ・素通りをしない ・困っているお年寄りに声をかける ・気もちを考える (キーワード) 便利に改良 ふれ合う 手助け この活動により、分類したものを関係付け、新たに共通したキーワードを浮 かび上がらせることができた。したがって、児童は「分類・関係付け」といっ た 論 理 的 思 考 力 を 高 め た り 、「 発 想 力 」 を 高 め た り す る こ と が で き た の で あ る 。 <キーワード同士を関連付けさせ、考えたことを文章にまとめる> 総合 事例③- 8 この活動により、事実と事実を結び付け、物的要素よりも心的要素の方が重 要なのではないかという考えに至っていったのである。これまで学習してきた 事実に帰納させて考えたり、演繹的に考えたりする等、論理的思考力を高めな が ら 文 章 と し て ま と め 、「 表 現 力 」 を 高 め る こ と に も つ な が っ た の で あ る 。 また、地域のバリアフリーの不十分さを再認識し、言葉だけのバリアフリー に 対 す る 批 判 的 な 考 え 方 も 高 ま り 、批 判 的 思 考 力 も 養 う こ と が で き た の で あ る 。 ③展開2段階 話合い活動における思考力の深まり はじめに、話合い活動を設定することにより、自己の考えを分かりやすく説 明させ、表現力を養う取り組みを行った。また、友達の意見をメモしながら話 し合うことで、常に比較や類推を繰り返しながら考えを深めさせることをねら いとした。 次に、話し合いの中から重要なキーワードをボードに整理し、心的要素が読 み取れるようにまとめていった。 さ ら に 、心 的 要 素 の 重 要 性 に 揺 さ ぶ り を 仕 掛 け る た め 、「 相 手 の 気 持 ち を 読 み 取り、状況や場に応じた親切な対応が大切」という考えを示している児童の短 文を、話し合いの中で意図的に取り上げるようにした。 この活動により、物的要素を整えていくよりも、心的要素を充実させていく ことが本当のバリアフリーにつながるといった考えに収束されていった。 メモを取りながら聞くことで、自分の考えと友達の考えとの関連付けがなさ れ 、 最 終 的 に は 、「 人 の 心 」 が 大 切 で あ る と い う 結 論 に 至 っ た の で あ る 。 文 章 の 中 で M 児 は 、「 物 や 設 備 を 整 え る よ り も 、 声 を 掛 け 合 っ た り 、 手 助 け を し 合 っ た り で き れ ば バ リ ア フ リ ー な 町 は 実 現 で き る 。物 や 設 備 は 必 要 な い 。」と 記 述していた。 <I 児のキーワードを意図的に活用する。> 「人とかかわることが苦手な人 は、親切にされることが迷惑な 場合もある」という意見を意図 的に取り上げ、さらに思考を深 めさせた。 話 し 合 い の 後 半 、こ の キ ー ワ ー ド を 提 示 し た こ と に よ り 、「 人 の 心 = バ リ ア フリー」と収束しかけた考え方が、大きく揺れ動いた。障害のある方の中に 総合 事例③- 9 は、人とかかわることが苦手な人もいる。そうした場合はどうすべきなのか。 新たな問題が生じてきたのである。 さ ら に 、 話 し 合 い が 進 む 中 で 、「 相 手 の 表 情 や 言 動 等 を 見 取 り 、 相 手 が 必 要 と し て い る 程 度 を 考 え て 、 手 助 け を す る 必 要 が あ る 。」 と い う 結 論 に 至 っ た 。 この話し合い活動を通して、論理的思考力や表現力、批判的思考力を高めて いったことはもちろんのこと、コミュニケーションの本質に近づくことができ たのである。 ④まとめ段階 ゲストティーチャーを活用した思考の揺さ振り はじめに、話し合いの方向性を予測し、物的要素から心的要素の重要性に傾 くであろう考え方を、再度、物的要素の重要性も見直させ、両者のバランスが 大切であることに気付かせるよう仕掛けた。そこで、ゲストティーチャーに、 実体験から物的要素の大切さにかかわる話も取り上げてもらうように依頼した。 それを受けて、話合い活動やゲストティーチャーの話を通して、自分の考え を文章に表現する活動を行った。 <ゲストティーチャー> この活動では、ゲストティーチャー3名の方に繰り返しかかわっていただく こととした。 G T 1:障 害 者 手 帳 1 級 を 取 得 さ れ て い る お 年 寄 り 。車 イ ス や 電 動 自 転 車 で の 生 活 、心 臓 手 術 等 の 経 験 を さ れ 、聴 覚 障 害 の あ る 方 で あ る 。し か し な が ら 、現 在 で は 元 気 に 生 活 さ れ 、人 生 を 前 向 き に 生 き る こ と を 信 念 と さ れ て い る 方 で あ る 。し た が っ て 、児 童 に 対 し て 実 体 験 を も と に 、地 域 の 不 便 さ や 不 都 合 さ だ け で は な く 、心 的 な 面 か ら の 重 要 性 に も 応 え て い た だ け る 方 で あ る 。児 童 に と っ て は 、こ の 方 の 人 間 性 に ま で 迫 っ て い け る 重 要 な方であるので依頼した。 GT2・3:ボランティア活動に従事されて いる方である。高齢者や障害の ある方を支える立場からの視点 をいただくことで、児童に心的 な要素とキャリア教育的な視点 を与える効用が期待されると考 えたからである。 総合 事例③- 10 【本時のゲストティーチャーの話】 み な さ ん が 話 し 合 っ た と お り 、人 の 気 も ち や 心 が 重 要 で あ る こ と は 間 違 い あ り ま せ ん 。 し か し 、「 バ リ ア フ リ ー 」 と い う の は 、 や り 過 ぎ る と い う こ と は あ り ま せ ん 。色 々 な 方 が い ま す 。例 え ば 、目 に 障 害 の あ る 方 、耳 が 遠 い 方 、足 の 悪 い 方 、 杖 を つ い て い る 方 ・ ・ ・ 。「 バ リ ア フ リ ー 」 は ね 、 人 が 親 切 に す る の は も ち ろ ん の こ と で す 。で も 、専 属 で 一 日 中 そ の 人 に つ い て い ら れ れ ば い い ん で す け ど 難 し い よ ね 。 だ か ら 、「 物 」 で も 最 大 限 に 補 い た い と 私 は 考 え て い ま す。 よ く 中 橋 の ス ロ ー プ の 所 を 、足 が 悪 い 人 を 乗 せ た 車 イ ス を 押 し て い る 人 が い ま す 。私 も 何 度 か 押 し た こ と が あ り ま す が 、あ の ス ロ ー プ で は か な り 押 す の が 厳 し い で す 。ま し て 、車 イ ス の 方 が 自 分 で 上 が る な ん て 無 理 で す 。そ う い う 意 味 で 、「 物 」 で も な る べ く 親 切 に 優 し く 設 置 し て ほ し い と い う の が 私 の 願 い な のです。 <本時の振り返りカードから> (A児) 今日の学習を振り返って思ったことは、機械と人に関することを両立していくと いうことだ。最初は、物を便利にすれば良いと思っていた。次に、清水さんの話を 聞いて、親切にしたり話しかけたりすることの方が大切だと思った。しかし、今日 の話し合いで、親切にしたり話しかけたりすることも大切だけど、絶対に物に頼ら なければならないのだなと思った。したがって、少し、頭が混乱してしまった。 A児は、バリアフリーには、物的要素と心的要素の両立が重要であることに気 付 い て い る 。し か し な が ら 、実 際 に 障 害 の あ る 方 と ふ れ 合 う 中 か ら 、む し ろ 、人 々 の心でしっかりと支え合うことができれば、もはや物などは必要ないのではない かという考えにまで至っていた。 しかしながら、話合い活動の中から、どうしても物に頼らざるを得ない場面が 生じる点や、むしろ物に頼った方がよい場合もあることを理解し、再度、物の重 要性について考えさせられてしまうのである。 文 教 大 学 教 授 ・ 嶋 野 道 弘 氏 は 、「 学 習 が 深 ま っ て い く う ち に 、 分 か ら な く な っ て しまうということがある。しかし、これは、より深く分かるための前兆である。 知 識 を 再 構 成 し て い く こ と で 、よ り 深 く 分 か る こ と が で き る の で あ る 。」と 述 べ ら れ て い る 。 し た が っ て 、 こ こ に 見 ら れ る 「 少 し 、 頭 が 混 乱 し て し ま っ た 。」 と い う 記述は、学びが深まる証なのである。 (B児) 話合い活動から、始めに、機械を増やすことと同時に、人とのかかわりや親切に することが大切だと繰り返し分かりました。次に、人にやさしくすることばかりが いいのではなくて、相手の反応・表情・言動を見て、対応しなければいけないのだ ということも分かりました。でも、私は、機械にも頼りながらも、やっぱり人がか かわれる機会を少しでも増やしていってもいいんじゃないかなと思いました。 B児は、物的要素と心的要素のバランスが重要であることに繰り返し気付いて いる。繰り返し気付くということは、かなり核心に迫っているともいえるのでは ないだろうか。 また、人にただ関わればよいのではなく、相手の反応や表情、言動に応じた関 総合 事例③- 11 わり方を考えなければならないという点にまで気付いている。 さらに、バランスが重要であるとはいっても、最後には私たち人の心の問題で あるという強いメッセージまで表出させているのである。 この活動を通して、児童は今までの地域における実態調査と、障害のある方の 実際の思いや願いをテキストとして、そこから自分自身が今後考えていかなけれ ばならない生涯学習的な視野に立った新たな課題を読み取っていくことができた のである。 また、PISA型読解力で求められている、人とかかわる上で最も重要である 相手の反応・表情・言動を見て応じていかなければならないというコミュニケーショ ン力の基礎となる力まで高めていくことができたのである。 総合 事例③- 12 7 本単元の実践報告 (1)指導のねらい ○ 学 習 の プ ロ セ ス を「 課 題 を も つ 段 階 ― 情 報 の 取 り 出 し・収 集 段 階 ― 整 理・分 析 ・ 思考段階―まとめ・表現段階」と位置付け、このプロセスを繰り返し展開し、 体験的・問題解決的な学習を行う中で、思考力を高めていくことをねらいとす る。 (2)読解力 ○体験的・問題解決的な学習を通して、多くの事実やテキストから本質を読み取 り、生涯を通じての地域へ対する自己の考えを深めていく。 (3)テキスト ○体験的・問題解決的な学習を通して、情報収集から得た事実、考えたこと等 ○事実を整理した資料等 ○ゲストティーチャーとのかかわり ○話し合い活動 ○振り返りカード (4)読解力育成の手立て ○ 学 習 の プ ロ セ ス を「 課 題 を も つ 段 階 ― 情 報 の 取 り 出 し・収 集 段 階 ― 整 理・分 析 ・ 思考段階―まとめ・表現段階」と位置付け、このプロセスを繰り返す。 ○バリアフリーに対するイメージを「カルタ」に整理し、視点を明確化させる。 ○統計資料を活用して整理させ、そのデータから背景を読み取らせる。 ○一度整理した資料等を、メタ教材として再活用していく。 ○話し合い活動を充実させる。 ○ゲストティーチャーの活用。 (5)実践と考察 ①課題をもつ段階 カルタを活用した発想力の育成 は じ め に 、バ リ ア フ リ ー に 対 す る イ メ ー ジ を 、 「 カ ル タ 」に 整 理 し た 。こ れ は 、 フィンランド・メソッドの手法でもあるが、一つのカルタを中心に、その記述 から連想することを枝状にのばしていくものである。従来より活用されてきた イメージマップやウェビングマップにも似ている。この導入により、地域のバ リアフリーに対する発想力を広げ、読解力を構成する要素の一つでもある発想 力を養うことができた。 ノンステップバス 障害のある人 が乗れる車 電光掲示板 エレベーターの 車イス用ボタン 字幕 車イスの人が通れる道 点字ブロック 点字電話 手話 点字の本 点字ポスト 総合 事例③- 13 点字 車イス バリアフリー 次に、発想したカルタの全体図を提示し、類型化を行なった。ある程度、仲 間分けをすることができ、仲間ごとにキーワードを付けて分かりやすくした。 その結果、バリアフリーは、次の5つの視点から調査していけばよいのではな いかという仮説を立てるに至った。この活動により、比較、分類といった論理 的思考力を養っていくことができた。また、自分たちなりの視点を立てること で、今後の活動の見通しをもち、課題意識を高めていくことにもつながったの である。 ①点字に関する物 ②車イスに関する物 ③身を守る物 ④設備や施設に関する物 ⑤その他の物 ②情報の取り出し・収集段階 メモから表現力を育成 はじめに、身近な生活環境から考えていくために学校内のバリアフリーにつ いて調査活動を行い、調査した項目を前回の仮説をもとに、色別シールで校内 マップに整理した。 次に、地域へと調査対象を広げ、調査した項目を色別シールで地域マップに 整理した。 こうした現状調査を行い、数や種類等もメモさせながら、体験を通して、地 域の実情を把握できるような活動を行った。 読解力を育成する上では、メモの取り方も重要である。自分に必要な情報を 取捨選択し、必要な項目に自分の考えを加え、メモとして表現していくのであ る 。 つ ま り 、「 メ モ = 表 現 力 」 と し て と ら え ら れ る の で あ る 。 こ う し た 活 動 か ら も表現力が養えることが明らかになった。 ③整理・分析・思考段階 統計資料・メタ教材を活用した思考力の育成 はじめに、今までの体験をふまえた情報収集により、得た情報を整理する活 動を行った。校内マップ、地域マップに色別シールで再整理を行い、児童全体 の情報が視覚に分かりやすくまとめた。 次 に 、数 や 種 類 等 に つ い て も 分 か り や す く な る よ う に 、算 数 の 統 計 を 活 用 し 、 棒グラフに整理した。 総合 事例③- 14 この結果、バリアフリーには、分布状況にかなりの偏りがあるという事実を つ か む と と も に 、種 類 に つ い て も 片 寄 り が あ る こ と を 理 解 し て い っ た の で あ る 。 この時の児童の振り返りカードでは、以下のような記述が見られた。 (A児) バリアフリーはお店や人が集まる所に多い。また、誰にでも便利に使えること がわかった。 (B児) 人の集まる所にバリアフリーは多い。でも、人々が集まったりしない場所にも 少しは必要。もし、障害のある人が困っても、助けてあげられない。だから、 もう少し増やす必要がある。 A児は、場所や数、種類等から比較・分類を行い、人々が多く集まる場所に 多く集中していることに気付いた。その事実から安心感を覚え、地域には比較 的、整備されているのではないかという考えをもつに至った。 しかしながら、B児は、人が多く集まる場所に多く集中していることに気付 くとともに、人が集まらない場所にも必要なのではないかという、批判的なと らえをしている。 B児は、比較・分類を行った結果、地域の実情を読み取り、さらに批判的思 考力まで高めていくことができたといえる。つまり、発想力や論理的思考力を 高めながら、メモ等における表現力も高める活動を通して地域を見つめ直すこ とで、自然と批判的思考力も高まっていったのである。 し た が っ て 、 こ う し う た 活 動 を 展 開 し て い く こ と で 、「 P I S A 型 読 解 力 」 を 育成する上で必要な要素が育成されていくことが明らかとなった。 さらに、バリアフリーの種類について児童は最初に整理した表では分かりづ らく、当初の仮説で立てた視点では対応できないと判断し、再度整理を行って いった。 視点を変えて 再整理。 総合 事例③- 15 この活動により、当初の仮説であった5つの視点では不十分であるとの見方が 強まり、新たな5つの視点からバリアフリーを見直すことになっていった。 ①点字 ②車イス ③身を守る ④設備や施設 ⑤その他 ①視覚障害 ②聴覚障害 ③身体障害 ④養護施設 ⑤高齢者 このように、新たな視点をもつことで考えが深まり、これまでの活動をもとに して、さらなる追求意欲へとつながっていくのである。また、児童が作成した学 習 資 料 を メ タ 教 材 と し て 生 か し 、さ ら に 考 え て い く こ と で 、思 考 を 高 め て い っ た 。 ①バリアフリーにも、色々な種類があり、その中でも、一番多かったのが、体 に障害のある方に関する物だった。でも、私は、②このままではいけないと思 う。なぜかというと、③その他の障害に関する物が少ないからだ。私は④体に 障害のある方に関する物を作るぶんにはいいと思う。だが、⑤他の障害のある 人にも気を配り、その人に関係のある物もたくさん作ってほしい。そのことに より、人々が安全に暮らせる社会を作っていけると思う。 この振り返りカードからは、より多くの思考力の高まりが見られる。波線①の 文章では、比較・分類といった論理的思考力を活用した記述になっている。波線 ②では、現状に対する批判的な見方が高まり、批判的思考力が高まっている。波 線③では、多面的な見方が高まり、関係付けといった論理的思考力を活用した記 述になっている。波線④では、現状のよさを認めつつも、さらなる問題意識を高 めている。ここでは、帰納させて考えるといった論理的思考力が高まっている。 波線⑤では、何を考えていくことが望ましいのか、発想力を生かした今後の課題 へとつながる記述がなされているのである。 したがって、一度整理した内容をメタ教材として再整理させることでも、よ り 多 く の 思 考 力 を 高 め 、「 P I S A 型 読 解 力 」 を 育 成 す る 要 素 が 育 成 さ れ て い く 。 総合 事例③- 16 意 見 を 述 べる と き の 組 み 合 わ せ ○ 理 由 や根 拠 を 伝 えると き ・ その 理 由 は ・ な ぜか と 言 う と ・ な ぜな ら ・ 例 え ば ・ 第 一に… ・ ま ず ○ 理 由 や根 拠 を 付 け 足 すと き ・ さ らに ・また ・つま り ・ 言い 換 え れ ば ・ それに ・ 付 け 足 すと ・ 何よ りも ○ 結 論 を 伝 えると き ・ こ のよ う に ・ 以 上 のよ う に ・ だか ら ・ よっ て ・ し た がっ て ・ 以 上 を 考 え 合わせると わか り や す く 説 明し よ う ! ○ 考 え た 方 法 や 使っ た こ と を 述 べる 。 「~の問題を解決 するため に、 ・・ の 方 法 で( を 使っ て ) 考 え ま し た 。」 ○ 詳 し い 内 容 を 順 序 よ く 述 べる 。 は じ め に 、( 第 1 に )・ ・ ・ 。 次 に 、( 第 2 に )・ ・ ・ ・ ・ 。 最 後 に 、( 第 3 に )・ ・ ・ ・ 。 ○ 結 論 を 述 べる 。 という こ と が 分 か り ま し た 。 という 答 え に な り ま し た 。 であ る と 考 え まし た 。 ④まとめ・表現段階 話合い活動による可視化 はじめに、今までの活動から考えたことをそれぞれ文章に整理させ、活動を振 り返りながらまとめさせた。 次に、それぞれの考えをもとに、話合い活動を行った。話合い活動の中から、 もっと多くの物的要素を充実させることが必要であることを理解していった。 話し合いを深めさせるために、以下のような基本話型を用意して活用した。 この話し合い後の振り返りカードには、以下のような記述が見られた。 バ リ ア フ リ ー っ て 、何 だ ろ う と 思 っ て 少 し 不 安 に な っ た け ど 、調 べ て い く う ち に 楽 し く な っ て き た 。た く さ ん 調 べ て 便 利 な 道 具 を 作 っ て い き た い 。は じ め に 、今 日 の 話 し 合 い で は 具 体 例 が 多 い と 思 っ た 。次 に 、色 々 な 発 想 が 出 て き た け ど 、ま と め る と ま だ ま だ 少 な い な と 思 っ た 。最 後 に 、色 々 な 道 具 や 便 利な物を作り上げて、私たちの町に安心感をもてればいいと思いました。 バリアフリーを調べていくうちに、学びの充実感や満足感を覚え、さらに、バ リアフリーの物的要素に関心をもちはじめていくことが分かる記述がなされてい る。もっと、具体的に実現できるバリアフリーについて、考えていかなければな らないという新たな課題意識も生じてきているのである。 話し合い活動では、基本話型に準じて整理して表現することで、自分の考えを 論 理 的 に 整 理 し て 話 す こ と が で き る よ う に な っ た 。話 し 合 い の 視 点 も 明 確 化 さ れ 、 深まった話し合い活動を展開することができたのである。その結果、今以上に物 的要素を充実していく必要性があるという結論に至ったのである。 そこで、今度はバリアフリーを実際に活用している障害のある方やお年寄りと かかわり、その効果について考えていく必要性を意図的に投げ掛けた。実際に かかわる中で、心的要素にも迫らせたいという意図のもとに、ふれ合う活動を取 り入れることとした。 ⑤課題をもつ段階2 新たな課題の明確化→繰り返しの探究的活動 これまでの活動をもとに、児童は新たに障害のある方やお年寄りはどのように 考えているのだろうという課題意識を高めていった。 そこで、地域のバリアフリーをどのように感じているのか、質問事項等をまと めさせた。 ⑥情報の取り出し・収集段階2 繰り返しのかかわりから真意に迫る 地域の中で生活されている障害のある方、ボランティア活動に従事されている 方をゲストティーチャーとして招き、実際にふれ合う中から、バリアフリーの効 果についての情報収集を行ったり、思いや願いを汲み取ったりしていったのであ る。 1回ふれ合うだけでは、その関係性が希薄なため、3回はふれ合うことのでき る機会を設けるようにした。また、給食を一緒に食べたりする機会も取り入れな がら、ふれ合う回数を重ねたところ、親密な関係が築かれ、その方の生き方にま で迫る質問等が投げ掛けられるようになっていったのである。 以上のようにして、繰り返しの学習のプロセスを「課題をもつ段階―情報の取 り出し・収集段階―整理・分析・思考段階―まとめ・表現段階」を繰り返し展開 し、問題解決的・探究的な学習を行うことで、思考力を高めていくことができ、 「PISA型読解力」の育成につながったのである。 総合 事例③- 17 Ⅳ 成果と課題 ○ 「 情 報 の 取 り 出 し ( I N P U T )」 段 階 で は 、 テ キ ス ト と し て の 体 験 活 動 や 整 理 し た 資 料 を 自 分 の も の と し て と ら え 、目 的 意 識 を 高 め 、学 習 の 方 向 性 も 見 い だ す こ と が で き た 。実 際 に 地 域 の バ リ ア フ リ ー を 体 感 し た り 、自 分 の 経 験 に 照 ら し 合 わ せ た り し な が ら 、気 付 い た こ と を 文 章 や 図 、 表 等 に 整 理 し 、 明 確 化 さ せ た こ と で 、 見 通 し や 予 想 を も っ て 活 動 し て い く こ と が で き た 。と く に 、発 想 力 を 大 き く 高 め る こ と ができた。 ○ 「 テ キ ス ト の 解 釈 ( P R O C E S S )」 段 階 で は 、 整 理 し た り 、 収 集 し た り し た よ り 多く の 情 報 を、多 様 な 観点 か ら 読 み取 り 、考 える こ と が でき た 。と くに 、自 分 の 意 見 や 考 え を 述 べ た り 、論 理 的 に 表 現 し た り 、文 章 に ま と め た り 、 話 合 い 活 動 で 表 現する等の活動を通して、以下に示したような思考力を高めることができた。 本実践において、育成された思考力 ①発想力 ②論理的思考力 (比較・分類・関係付け・帰納・演繹・類推) ③表現力 ④批判的思考力 ⑤想像力 ○ 「 熟 考 ・ 評 価 ( O U T C O M )」 段 階 で は 、 整 理 し た り 、 表 現 し た り し た こ と 等 、 自 己の 課 題 と 関連 付 け 、適 切 に 表 現 でき る よ う にな っ た 。実 際 に、障 害が あ る 方 や お 年 寄 り 等 と ふ れ 合 う 活 動 を 通 し て 、考 え を 聞 い て も ら っ た り 、 適 切 な か か わ り 方 に つ い て 自 己 の 考 え を 深 め る こ と が で き た 。相 手 の 立 場 に 立 っ た 心 情 の 読 み 取 り と 、 深い解釈もできるようになり、コミュニケーション力の基礎を養うことができた。 ○本実践研究により、学習のプロセスを工夫するとともに、コミュニケーション 力を育成する上で重要な思考力を明らかにし、育成する学習場面を明確に位置 付 け る こ と で 、「 P I S A 型 読 解 力 」を 育 成 す る こ と が 可 能 と な る こ と が 明 ら か になった。 総合 事例③- 18 Ⅴ 学習指導案・資料等 地球タイム学習カード 月 日( ) 白画用紙から選んだキーワード (いくつでも) 名前 青画用紙から選んだキーワード (いくつでも) 清水さんの思いや 願 い を 考 え て・・・! 自分の考えをわかりやすくまとめよう。 話し合いメモ 総合 事例③- 19 バリアフリーな町・概念化シート バリアフリーな町 心的な面 物的な面 改 総合 事例③- 20 善 1 発表者 ・・ ・ ぼく(わたし)は、○○の問題を解決するために、Aの方法・Bの方法・Cの方 法・・・で考えました。 A の 方 法 で 調 べ た 結 果 、・・・・・で し た 。わ か っ た こ と は △ △ と い う こ と で す 。 B の 方 法 で 調 べ た 結 果 、・・・・・で し た 。わ か っ た こ と は △ △ と い う こ と で す 。 C の 方 法 で 調 べ た 結 果 、・・・・・で し た 。わ か っ た こ と は △ △ と い う こ と で す 。 こ れ ら の 結 果 か ら 、「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」 だ と 考 え ま す 。( 思 い ま す 。) みなさんは、どう思いますか。 2 質問する場合 ・どうして・・・なのですか。教えてください。 ・~を、もう一度説明してください。 3 意見や感想を述べる場合 受容の場合 質問者 → 「 ~ は 、 … と 思 い ま す 。」 発表者 「 た ぶ ん 、 ~ だ と 思 い ま す 。」 異論の場合 質問者 → 「 ~ は 、 … な の で は な い で す か 。」 発表者 「 で も 、 ~ だ と 思 い ま す 。」 総合 事例③- 21 ○話し合いをしたり、文章を書くときの参考にしましょう。 意 見 を 述 べる と き の 組 み 合 わ せ ○ 考 え た 方 法 や 使った こ と を 述 べる 。 わか り や す く 説 明し よ う ! ・例えば ○ 詳 しい内 容 を 順 序 よ く 述 べる 。 考 え ま し た 。」 「 ~ の 問 題 を 解 決 す る た め に 、・ ・ の 方 法 で ( を 使って ) ○ 理 由 や根 拠 を 伝 えると き ・な ぜな ら ・ま ず ・ そ の 理 由 は ・ な ぜか と 言 う と ・第 一に… ・また 最 後 に 、( 第 3 に )・ ・ ・ ・ 。 次 に 、( 第 2 に )・ ・ ・ ・ ・ 。 は じ め に 、( 第 1 に )・ ・ ・ 。 ・ さ らに ・ 言い 換 え れ ば ○ 理 由 や根 拠 を 付 け 足 すと き ・つま り ・ 付 け 足 すと ○ 結 論 を 述 べる 。 ・ そ れに という こ と が 分 か り ま し た 。 であ る と 考 え ま し た 。 ・ 何よ り も ・ 以 上 のよ う に という 答 え に な り ま し た 。 ・ こ のよ う に ・ よって ○ 結 論 を 伝 えると き ・ だか ら ・ し た がって ・ 以 上 を 考 え 合 わせると 事例③- 22 総合
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