革新的エンジン設計 - 計測エンジニアリングシステム

マル チフィ ジ ックス が 起 爆 剤と なる
革新的エンジン設計
C. Hartwig博士
TRW Automotive Barsinghausen(ドイツ)による寄稿
低燃費が普遍的な目標となる中で有
望視されるシステムの一つに、カムシャ
フトに代わる機構でありバルブ一つ一つ
を個別に制御する電磁バルブトレイン
(EMVT)があります。EMVTシステムの使
用によりスロットルを必要としないエン
ジンでは、カムシャフトで動くエンジン
と比較し18%の燃費節約が可能と考え
られています。さらに、EMVTはディーゼ
ルエンジンでのみ一般的であった低回
転トルクを実現できます。その存在はよ
く知られているにもかかわらず、EMVT
の商品 化はいまだ現 実のものとなって
いません。ドイツ、バルジングハイゼン
のTRW Automotive社では、COMSOL
Multiphysicsを使用したEMTVの電磁石
図1 吸気側に電磁バルブトレイン、排気側にカ
ムシャフトを備えたエンジン(左)は、電磁バルブ
トレインアクチュエータ(右)を採用しています。
の最適化など、革新的なソリューション
アクチュエータの構成品は下から順に、パペット
の開発が行われています。
バルブ、スプリング、開弁電磁石、ステム付きアー
マチャプレート、閉弁電磁石、アッパースプリン
グ。2つ磁石を使ったモデル(右上)では、磁気ポ
テンシャルのφ成分を示しています。
図2 上部電磁石のスイッチを切ってから2ミリ秒後のアーマチャプレートにおける渦電流の分布。通
電された下部電磁石に引き寄せられる直前、2つのコイル内の電流が同方向であるケース(左)および
逆方向であるケース(右)の2つのケースを示しています。グラフの色は電流密度を示します。
EMVTという電気機械式駆動装置
過渡シミュレーションでは、渦
EMVTアクチュエータは、機械的振動子1つとバルブとアーマ
電流および運動方程式、さら
チャの開閉を制御する2つの電磁石で構成されています。開
に両者の組み合わせが計算さ
閉の遷移時間は、スピードの速いエンジンでもバルブのタイ
れることで、アクチュエータへ
ミング調整および制御を可能にするため、短時間でなければ
の電力伝達が解析されます。
なりません。これを可能にするのが軽量設計です。魅力的な
銅損、渦電流損失、機械的損
ソリューションの一つが吸気用電磁バルブトレイン(図1)で、
失の分布を確認できると同時
このトレインでは吸気バルブはすべて個別に制御可能であ
に、さまざまな軟磁性材料に
り、排気バルブはカムシャフトが制御します。このシステムを
材料パラメータがどのような影
使えば、全面的なEMVTの使用で得られる利点の90%を達
響を与えるのかを分析できま
成するとともに最大の短所を回避できます。
す。
しかしながら、シリンダヘッド内の空間は限られているた
もう一つ、興味深い実験をご紹
め、電磁アクチュエータは力密度が高く損失が少なくて、効率
介しましょう。アーマチャは片
のよいものでなければなりません。COMSOL Multiphysicsを
側で解放されもう一方の側に向
使えば静的力-ストローク-電流の特徴を容易に計算すること
かって加速します。アーマチャ
ができ、ここからジオメトリの最適化を行うことができます。
が 受け側の 磁石に近 づ いた
非線形材料パラメータは表や機能から利用でき、この特徴は
時、渦電流はまだ減衰していま
さまざまな軟磁性材料検討の際や試作数低減に非常に役立
せん。受け側磁石の通電には、
ちます。
電流の方向を解放側磁石と同
ダイナミックなシミュレーション
じにする場合と逆にする場合
の2つの方法があります(図
TRW Automotive社の研究技
師であるChristoph Hartwig
氏 は 、電 磁 アクチュ エー タ
の モ デ リン グ、シミュレ ー
ション、設 計を担当していま
す。Har t wig氏はドイツのハ
ノーバー大 学 で 電子工学 を
研 究し 、同 大 学 で D i p l o m
Ingenieur(工学修士)およ
びDoktor Ingenieur(工学博
士)を取得しています。
アクチュエータの磁石に電流を流すと交番磁界が発生すると
2)。一方のケースでは磁場が
ともに電圧が誘起され、損失の原因となったり機構の働きを
ゆっくりと発生します。アーマ
妨げたりする有害な渦電流が発生することがあります。その
チャプレートが高速で接近す
ため、軟磁性コアは渦電流を減少させるための薄板で覆われ
る場合に制御技術者は、電流の向きが機械的な衝撃を減ら
ています。しかし、薄いアーマチャプレートは、機械的剛性を
すようにするでしょう。他方のケースは、シリンダ内の気体の
損なう可能性があるため覆うことができません。渦電流を低
力などによってアーマチャが減速した場合に用いることがで
減する唯一の手段は、材料の電気抵抗を上げ電流を分散さ
きます。
せることです。
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