第2回勉強会レジュメ - ICB

2012 年 7 月 6 日
ICB 第二回『知の磁場・読書を通じ国際的レベルの教養を身につける』勉強会
課題図書:ジャレド・ダイアモンド(著)倉骨 彰(訳)『銃・病原菌・鉄 上・下』草思社
=図書選定理由=
o ピューリッツァー賞・朝日新聞 00 年代の 50 冊 No.1・National Geographic で DVD 化
o 社会文明論・文化人類学・生物学など幅広い視点から人類史を捉えている。
o 文庫化され入手しやすくなったこと。
=内容について=
【プロローグ】「世界には、なぜこんなにも格差があるのか」
・人種による優劣
・厳しい環境を生き抜くための努力の結果
・大規模な灌漑施設などの公共施設
『歴史は、異なる人びとによって異なる経路をたどったが、それは、人びとのおかれた環境の差異によるもの
であって、人びとの生物学的な差異によるものではない』
≪第1部≫
人類史概観
【第1章】 700 万年前に猿から分妓してから、約 13000 年前の氷河期に至るまでの人類の進化の歴史
o 更新世の最終氷期が終わり、現在に至る完新世が始まったのが 13000 年前→ここから差は広がった。
o5 万年前の「大躍進」は①何が引き金となり、②どこで起こったか。→アフリカ起源説「出アフリカ」
o 人類の進出と大型動物の絶滅→家畜化
o 人類はなぜ拡散するか?→南北アメリカ大陸でかくも早く北から南の端まで急速な進出
o 人類発展の差は何か?移住・順応・人口増加のサイクル=「大躍進」への淘汰のサイクル
【第2章】 過去 13000 年の間に、それぞれの大陸の環境の差異が、人類社会の歴史にどのような影響をおよ
ぼしたか
o 平和の民(マリオ族)と戦う民(モリオリ族)の分かれ道→1000 年前に同じポリネシア人から分かれた
o 極めて短期間に同じ祖先が異なる環境への適応でどのような差がでたか:ポリネシアは典型的な実験場
o ポリネシアの差は気候・地質・海洋資源・面積・地形・隔絶度による。
o 政治単位の人口規模が大きく人口密度が高いほど技術面や社会構成においてより複雑で専門化。
【第3章】 ピサロ率いるスペイン軍のインカ皇帝軍との戦いを通じ、異なる大陸の民族の衝突への考察
o 近代において人口構成を最も大きく変化させたのはヨーロッパ人による新世界の植民地化
o168 人のスペイン人が 8 万人のインカ軍に守られたインカ皇帝を捕えた。
→鉄製の武器・騎兵・天然痘(インカ帝国の内乱の原因)
→航海術の差(インカ帝国軍はスペインに行けない)
読み書き能力の差(情報格差)
o 銃器・鉄製の武器、騎馬などに基づく軍事技術の差、ユーラシアの風土病・伝染病に対する免疫、ヨーロ
ッパの航海技術、ヨーロッパ国家の集権的な政治機構文字⇒『銃・病原菌・鉄』
≪第2部≫究極の要因の中で最重要な要因
【第4章】 狩猟採集から、農耕や家畜の飼育への移行
o 動植物の栽培化や家畜化→摂取カロリーの増大(余剰食糧)→人口の増加
o 定住化→出産間隔の短縮化→人口の稠密化
o 馬の家畜化と征服戦争
社会の階層化⇒帝国の成立
o 家畜からうつった病原菌⇒伝染病…免疫の有無
o 稠密な人口→読み書きの能力・鉄器の製造技術
この図は草思社様のご好意により、本読書会に限り引用の許諾を得ています。
無断での複写・配布等は法律に反します。
NPO 法人
国際人材創出支援センター
【第5章】 地域による食糧生産の独自な発達
o 農耕に適さない地域がある一方、近年まで農耕が行われなかった地域もある。
o 農耕が野生種から独自に出発した地域とよそから持ち込まれた地域
o 飼育栽培種が持ち込まれたことで人口構成が大幅に入れ替わった地域も
【第6章】 狩猟採集から食糧生産(農耕・牧畜)生活への移行理由
o すべての食糧生産者が狩猟採取者より快適な生活を送っているとは限らない。
o 狩猟採取民は食糧生産の技術(農耕)を段階的に発展させてきた(時間と労力の配分・食糧備蓄のため?)
① 大型哺乳類などの減少②栽培化可能な野生種の増大③農耕技術の進歩④人口密度の増加と食糧生産の増
加の相互作用⑤食糧生産者人口(職業軍人の存在)>狩猟採取民
【第7章】 野生の動植物の栽培化・家畜化(毒のないアーモンド・栽培化された植物)
o 排泄場が栽培実験場
o 採取の過程での突然異変種などの選択化
o どんぐり(オーク)が栽培化されない理由
o 自然淘汰と選択淘汰
【第8章】 野生の動植物の栽培化・家畜化(人間の問題 or 植物の問題・栽培化の地域差・食糧生産の差)
o 人間の問題なのか植物の問題なのか
o 栽培化の地域差
o 肥沃な三日月地帯で農耕が発生した理由
o ニューギニアとアメリカ東部の食糧生産
【第9章】 野生の動植物の栽培化・家畜化(家畜化);シマウマが家畜にならなかった理由
o 家畜化可能なのは 14 種(ユーラシア大陸に集中)→家畜化されなかったのは動物側に原因
① 餌の問題
題
【第10章】
②成長速度の問題
③繁殖上の問題
④気性の問題
⑤パニックになりやすい性格の問
⑥秩序性のある集団を形成しない問題
大陸の形状と技術(食糧生産)の伝播速度
o 南北に長い大陸:気候の差が大きい・砂漠の存在
東西に長い大陸:気候環境差が少ない→速い
o 車輪や文字の伝播の差にも(食糧生産システムに間接的に依存)
≪第3部≫直接の要因から究極の要因を探る
【第11章】人口稠密な集団に特有な感染症病原菌の進化
o 動物由来の感染症(病原菌も自然淘汰の産物)→症状は病原菌の策略
o 歴史上、同じ病原菌に繰り返しさらされてきた民族:その病原菌に抵抗力を持った人の割合高い
o 流行病の周期性:抗体を持たない新生児がかかりやすい年齢に達し集団外部から新たな感染者が来るまで
o 農業・都市の勃興により集団感染症増大
o 家畜と人間の共通感染症(人間と動物の密接な接触)
o アメリカ先住民は旧大陸からもたらされた病原菌で人口が激減
→スペインがアステカ帝国・インカ帝国に勝てたのは天然痘
o アメリカ大陸に特有の集団感染症が梅毒を除いてないのは家畜化の対象となる野生動物の少なさに起因
【第12章】食糧生産と文字の発明
o アルファベット・音節文字・表意文字→文字の発明には数千年の食糧生産の歴史が必要
【第13章】文字の伝播と技術の伝播
o 発明の後用途が見つかる(発明は必要の母)
o 技術は非凡な天才が突如出現するのではなく累積的に進歩・完成→技術は自己触媒的に進歩
技術進歩の差
⇒①大陸ごとの面積
②人口
③伝播の容易さ
④食糧生産の開始タイミングの違い
【第14章】余剰食糧の集積による専門職(非生産者階級)による技術の発達
o 小規模血縁集団→部族社会→首長社会→国家
① 疫病を引き起こす病原体
②文字の発明
③技術革新
④集権化された政治組織→「征服」⇒国家
≪第4部≫世界の各大陸と重要な島々の歴史への当てはめ
【第15章】オーストラリア大陸およびニューギニア
o 発展しなかったオーストラリア→白人の入植
o 独自の農耕社会を形成したニューギニア→ヨーロッパ人定住できず
【第16章】アジア本土(中国)
o 中国の「中国化」と南方への拡散
o 食糧生産が複数の地域で独自に起こった可能性
【第17章】太平洋の島々
o オーストロネシア人:中国南部・台湾→マレー・フィリピン・インドネシア→ニューギニア北部
→フィジー→サモア→クック諸島→ニュージーランド・マルケサス諸島→ハワイ諸島・イースター島
o アウトリガーカヌー・ラピタ式土器
o 定住を妨げられたヨーロッパ人
【第18章】ヨーロッパ人とアメリカ先住民の衝突の再検討
o 食糧生産違い→(大型)家畜の有無
o 政治機構
o 免疫の差
o 技術の差(軍事・機械・運輸・航海)
o 文字
南北に長い大陸→①食糧生産の開始時期
③発明や技術が拡散する際の障壁の差
②家畜化・栽培化できる動植物の差
④人口の稠密な集団が規模的に小さかったり、他集団から孤立
o ヨーロッパからの入植者の結果、先住民は激減
【第19章】サハラ砂漠以南のアフリカ大陸の歴史
o アフリカ大陸内:黒人(バンツー族など)の拡大⇔アフリカピグミー族・コイサン族の減少
o バンツー族の拡大も動植物の飼育・栽培(免疫の発達・発明や技術革新・政治機構)
o アフリカでもっとも早い食糧生産は湿潤だった頃のサハラ
o オーストロネシア人のマダガスカル島への拡散
o 南北に長い陸塊:農作物や家畜の拡散の障害
【エピローグ】まだ解き明かされていない謎
① 栽培化や家畜化の候補となる動植物の分布状況が大陸によって異なっていた。→余剰作物蓄積可
② 伝播や拡散の速度が大陸ごとに大きく異なった。(東西に長いか、南北に長いか)
③ 異なる大陸間での伝播に影響を与えるもの
④ それぞれの大陸の大きさや総人口の差
⇒上記4要因の定量分析の必要性
o なぜ中国ではなくヨーロッパが主導権を握ったのか?(なぜイギリスで産業革命が起こったのか?)
o 文化の特異性について
o 歴史に影響を与える「個人」について
o 科学としての人類史
≪参考図書など≫
ジャレド・ダイアモンド(著) 楡井 浩一(訳)
『文明崩壊
TED 「ジャレド・ダイアモンド
上・下』草思社
文明崩壊は何故起こるのか」
http://tr.loopshoot.com/id/365
DVD
ナショナル・ジオグラフィック
http://nationalgeographic.jp/nng/shop/detail.php?id=297
NHK スペシャル取材班『Human』角川書店
NHK スペシャル
ヒューマン
なぜ人間になれたのか
第1集
旅はアフリカからはじまった
http://www.nhk.or.jp/special/detail/2012/0122/index.html
NHK スペシャル
ヒューマン
なぜ人間になれたのか
第2集
グレートジャーニーの果てに
http://www.nhk.or.jp/special/detail/2012/0129/index.html
NHK スペシャル
ヒューマン
なぜ人間になれたのか
第3集
大地に種をまいたとき
http://www.nhk.or.jp/special/detail/2012/0219/index.html
NHK スペシャル
ヒューマン
なぜ人間になれたのか
第4集
そしてお金が生まれた
http://www.nhk.or.jp/special/detail/2012/0226/index.html
マット・リドレー(著)柴田
TED
マット・リドリー:
裕之、 大田 直子(訳)『繁栄』早川書房
アイディアがセックスするとき
http://tr.loopshoot.com/id/915
グレゴリー・コクラン、ヘンリー・ハーペンディング(著)古川奈々子(訳)
『一万年の進化爆発』日経 BP 社
グレゴリー・クラーク(著)久保 恵美子(訳)
『10 万年の世界経済史』日経 BP 社
ナヤン・チャンダ(著)友田 錫、 滝上 広水(訳)『グローバリゼーション
人類5万年のドラマ
上・下』
NTT 出版
ウィリアム・バーンスタイン(著)徳川 家広(訳)『「豊かさ」の誕生』日本経済新聞出版社
ウィリアム・バーンスタイン(著)鬼澤 忍(訳)『華麗なる交易』日本経済新聞出版社
ディビッド・モントゴメリー(著)片岡夏実(訳)『土の文明史』築地書館
ニコラス・ウェイド(著)沼尻 由起子(訳)安田 喜憲(監修)『5万年前』イースト・プレス
担当:早坂房次