第8回 内痔核治療法研究会総会 プログラム・抄録集 平成26年3月9日 (日) 佐原 力三郎 当番世話人 共 催 内 痔 核 治 療 法 研 究 会 田辺三菱製薬株式会社 第 8 回 内痔核治療法研究会総会 ご 挨 拶 先ずは、多数の演題のご応募をいただきありがとうございます。 今回、第 8 回内痔核治療法研究会総会を迎えました。ALTA治療が公認されてか ら 9 年を過ぎようとしています。当初から採用されている先生や途中からの先生も いらっしゃいますが、ALTA療法は、既に国内全域で採用され、内痔核治療法の一 つの選択枝として不動の地位を築いてきております。この間学会や研究会でALTA 療法の適応や合併症について繰り返し議論されてきましたが、各現場、術者ごとに おいてALTA療法の適応や投与法が確立されてきたように思います。そこにスポッ トをあてました。 今回のテーマは「私が行うALTA療法∼適応と工夫とピットフォール、動画を中 心に」です。ALTAを使用してきた各々の現場から、適応・工夫・ピットフォール などの生の声を聞かせていただき、忌憚なき意見交換の場を作りたいと思います。 今回はシンポジウムの形式はありませんが、動画を中心とした口演形式としました。 ご発表お一人ごとに熱い議論を戦わせながらご自分の立ち位置の再確認や新たな ALTA療法への挑戦に資することができれば、今回の総会の目的が適えられるので はないかと思います。 司会、演者のみならず参加者全員の活発な討論を期待します。 第 8 回 内痔核治療法研究会総会 当番世話人 佐原 力三郎 (社会保険中央総合病院 大腸肛門病センター) 第8回 内痔核治療法研究会総会 日 時:平成26年 3 月 9 日(日) 9:30 ∼ 14:50 場 所:ホテルグランドパレス 〒102-0072 東京都千代田区飯田橋1‐1‐1 TEL 03‐3264‐1111 会 場:2 階「ダイヤモンドルーム」 内痔核治療法研究会: 代表世話人:岩垂 純一(岩垂純一診療所) 世話人(順不同) 樽見 研(札幌いしやま病院) 國本 正雄(くにもと病院) 鉢呂 芳一(くにもと病院) 加藤 典博(ふるだて加藤肛門科・外科クリニック ) 菊田 信一(きくた肛門科) 紙田 信彦(会津西病院) 八子 直樹(八子医院) 松尾 恵五(東葛辻仲病院) 小杉 光世(八ヶ崎医院) 佐原 力三郎(社会保険中央総合病院) 寺田 俊明(寺田病院) 松島 誠(松島病院) 松田 保秀(松田病院) 小原 誠(OHARA MAKOTO大腸肛門科クリニック) 家田 浩男(家田病院) 梅枝 覚(四日市社会保険病院) 服部 和伸(はっとり大腸肛門クリニック) 中島 久幸(なかしま大腸・肛門外科クリニック) 松田 直樹(京都民医連中央病院) 黒川 彰夫(黒川梅田診療所) 岡空 達夫(岡空肛門科) 齊藤 徹(大阪北逓信病院) 髙村 寿雄(東神戸病院) 瀧上 隆夫(チクバ外科胃腸科肛門科病院) 宮本 英典(宮本病院) 坂田 寛人(坂田肛門科医院) 日高 久光(日高大腸肛門クリニック) 辻 順行(高野病院) 鮫島 隆志(鮫島病院) 徳嶺 章夫(あさと大腸肛門クリニック) 名誉世話人 高野 正博(高野病院) 共 催:内痔核治療法研究会 田辺三菱製薬株式会社 i 会場周辺および会場までの交通機関 大江戸線 南北線 有楽町線 り 通 宮 神 大 東西線 東京大神宮 東口 飯田橋駅 九段下駅 目白通り ベルサール九段 りそな銀行 東西線 7番口(富士見口) 九段支店 GS 至 至 王 池 子 袋 外堀通り ← 至 大 手 町 首都高速5号線 専修大 至水天宮・岩本町 水道橋駅 GS 至秋葉原・千葉 みずほ銀行 九段支店 東京ドーム 【最寄り駅からのご案内】 ●地下鉄〔九段下駅〕 東西線7番口(富士見口)より徒歩1分/半蔵門線・都営新宿線3a番口より徒歩3分 ●JR・地下鉄〔飯田橋駅〕より徒歩7分 総武線・有楽町線・南北線・都営大江戸線 【東京駅からのご案内】 ●丸の内地下北口 至 高 田 馬 場 N 西口 飯田橋駅 グランドパレス ルーテル教会 和洋女子大 附属高中 交番 千代田区役所 あおぞら銀行 本店 昭和館 ホテル 北の丸スクエア 至四谷 九段教会 半蔵門線・新宿線 3a番口 飯田橋駅 交番 JR総武線 日本歯科大 病院 日本歯科大 都立九段高 靖国神社 新宿線 半蔵門線 早稲田通り 暁星学園高中 日本武道館 至有楽町 至新宿 至新宿 至渋谷 北の丸公園 徒歩 5∼6分 東西線〔大手町駅〕 6分 〔九段下駅〕 【羽田空港より】 ●羽田(京浜急行地下鉄浅草線30分)→日本橋駅(地下鉄東西線7分)→九段下駅 【お車ご利用の場合】 ●東京駅より10分/上野駅より15分/羽田空港より45分 ●首都高速:「西神田ランプ」 (5号線)より1分 「飯田橋ランプ」 (5号線)より5分 「代官町ランプ」 (環状線)より5分 ホテルグランドパレス 〒102‐0072 東京都千代田区飯田橋1‐1‐1 TEL:03‐3264‐1111 ii 会場案内図 エスカレーター 宴会事務所 エレベーター 総会会場 (ダイヤモンド) 化粧室 受付 クローク パール シルバー 2 階 iii 宴会・ご婚礼 打合せサロン 世話人会・ 懇親会会場 (チェリー) お知らせとお願い Ⅰ.参加される先生方へ 1.内痔核治療法研究会総会に参加される方は、受付にて参加費3,000円をお支払い ください。事前登録は不要です。 2.会場では必ず名札をお付けください。 Ⅱ.演者の先生方へ 1.口演方法 ・ 演者は、発表開始 5 分前までに次演者の席にお着きください。 ・ 演者は、そのセッション終了まで会場内で待機してください。 2.口演時間 ・ 口演は 7 分以内でお願いします。 ・ 討論( 5 分)は演題毎に行います。 ・ 演者は必ず口演時間を厳守してください。 3.発表データ提出 ・ 演者は、発表の40分前までに「PC受付」にお越しいただき、発表資料をコピー した記録メディア(USB/DVD-ROM/CD-ROM) 、またはPC(ご自身のPCで発 表の場合)をご提出ください。PC固有のモニター変換ケーブルがある場合は必 ず持参ください。 万が一の場合に備えて、バックアップデータをお持ちください。 受付時間:総会当日 8:00 ∼ 13:00 ・ 発表資料に動画や音声をご使用される場合、PC受付にて動作確認を必ず行って ください。 ・ コピーしたデータにつきましては、ご発表終了後にパソコンより完全に消去処理 いたします。 4.発表用資料 ・ 発表資料は、原則としてウィンドウズ対応のパワーポイントファイル、キーノー トファイルでご提供ください。 ・ 動画を使用される場合は、ご自身のPCでのご発表をおすすめします。 ・ 発表されるファイル名は(演題番号) (先生のご氏名) .ppt としてご提出ください。 ・ フォントはOS標準のもののみご使用ください。 ・ 動画を使用される場合、Windows Media Playerで動作する形式にて作成いただ き、発表資料とともにご提出ください。可能な限り、発表ファイルと動画ファイ ルは同一記録メディアにコピーの上、ご提出ください。 iv 第8回 内痔核治療法研究会総会プログラム 主テーマ:「私が行うALTA療法∼適応と工夫とピットフォール、動画を中心に」 日時:平成26年 3 月 9 日(日) 9:30 ∼ 14:50 場所:ホテルグランドパレス 2階「ダイヤモンドルーム」 1.第8回内痔核治療法研究会総会 当番世話人挨拶 9:30 ∼ 9:35 社会保険中央総合病院 大腸肛門病センター 佐原 力三郎 2. 一般演題口演(発表 7 分、討論 5 分) 1)一般演題口演Ⅰ 9:35 ∼ 10:23 座長:札幌いしやま病院 樽見 研 演題− 1 粘膜脱症候群を合併した内痔核に対する低侵襲手術……………………… 1 おなかクリニック・おしりセンター 飯田 直子 ほか 演題− 2 4度へのALTA ……………………………………………………………… 2 誠心会 吉田病院 笹口 政利 ほか 演題− 3 硬化療法適応外と考えられた外痔核腫脹症例に対する 積極的ALTA療法 …………………………………………………………… 3 こじま肛門外科三宮フラワーロード診療所 野村 英明 ほか 演題− 4 Dynamic ALTA療法∼あらゆる痔核に対応するために∼ ……………… 4 OHARA MAKOTO 大腸肛門科クリニック 小原 誠 v 2)一般演題口演Ⅱ 10:23 ∼ 11:11 座長:大阪北逓信病院 齊藤 徹 演題− 5 ALTA療法の行き着くところ ……………………………………………… 5 くにもと病院 肛門外科 鉢呂 芳一 ほか 演題− 6 当院におけるALTA療法の実際 …………………………………………… 6 荒川外科肛門科医院 松田 大助 ほか 演題− 7 当院のALTA療法の変遷と現状 …………………………………………… 7 ふるだて加藤肛門科・外科クリニック 加藤 典博 ほか 演題− 8 兵庫県下におけるジオン(ALTA)治療の変遷 ………………………… 8 大澤病院 大澤 和弘 ほか 3)一般演題口演Ⅲ 11:11 ∼ 11:59 座長:鮫島病院 鮫島 隆志 演題− 9 痔核結紮切除術適応患者に対する、 LE群とLE+ALTA併用群との前向き比較試験 …………………………… 9 四日市社会保険病院 外科 大腸肛門病・IBDセンター 梅枝 覚 ほか 演題−10 四段階注射法におけるALTA注の薬物動態 ―ICG蛍光法による可視化とAluminum染色を用いた検討― ……………10 山本醫院 山本 裕 ほか vi 演題−11 ALTA注四段階注射法における二・三段階の意義に関する検討 ……………11 山本醫院 山本 裕 ほか 演題−12 ALTA後の再発予防の一因について(排便姿勢)…………………………12 清涼会 いきめ大腸肛門外科内科医院 柴田 直哉 ほか − 昼 食 − 4)一般演題口演Ⅳ 12:00 ∼ 12:45 12:45 ∼ 13:21 座長: くにもと病院 鉢呂 芳一 演題−13 内痔核治療におけるALTA単独療法の位置付け …………………………13 宮本病院 宮本 英典 ほか 演題−14 ALTA単独療法の適応疾患拡大と有害事象に関する検討 ………………14 そらの内科肛門外科クリニック 大賀 純一 演題−15 私が挑戦したALTA療法の一例 ……………………………………………15 マリーゴールドクリニック 山口 トキコ vii 5)一般演題口演Ⅴ 13:21 ∼ 14:09 座長: はっとり大腸肛門クリニック 服部 和伸 演題−16 エラストグラフィ(組織弾性イメージング超音波検査)による ALTA療法の検討(第3報) …………………………………………………16 寺田病院 大腸肛門病センター 田中 良明 ほか 演題−17 肛門局所麻酔時の冷却による疼痛緩和法 …………………………………17 岡崎外科消化器肛門クリニック 岡崎 啓介 演題−18 当院における外痔切除併用ALTA注の方法 ∼再発を防ぐための外痔切除と排便習慣の指導について∼………………18 呉市医師会病院 外科・大腸肛門科 藤森 雅彦 ほか 演題−19 Anal Cushion LiftingにおけるALTAの有効性 ……………………………19 札幌いしやま病院 石山 元太郎 ほか 6)一般演題口演Ⅵ 14:09 ∼ 14:45 座長: 日高大腸肛門クリニック 日高 久光 演題−20 再発を防ぐためのALTA療法の工夫について ……………………………20 ミネルワ会 渡辺病院 外科 小野 芳人 ほか 演題−21 当院におけるALTA療法 ……………………………………………………21 とやまクリニック 外山 裕二 演題−22 総合病院におけるALTA併用療法 …………………………………………22 社会保険中央総合病院 大腸肛門病センター 岡本 欣也 ほか viii 3.閉会 内痔核治療法研究会 代表世話人挨拶 14:45 ∼ 14:50 岩垂純一診療所 岩垂 純一 共催 内痔核治療法研究会/田辺三菱製薬株式会社 *昼食は、弁当を用意しております。 *総会終了後、懇親のための粗餐(酒餐)を用意しております。懇親会に参加される方は、 マイカーでのご来場をご遠慮下さい。 ix 抄 録 演題− 1 粘膜脱症候群を合併した内痔核に対する低侵襲手術 飯田 直子、羽田 丈紀 おなかクリニック・おしりセンター 【はじめに】肛門外科医がしばしば遭遇する粘膜脱症候群(Mucosal prolapse syndrome 以下、MPS)は、脱肛を主訴とする隆起型が多い。さらに、内痔核と共存することや、 また内痔核との鑑別に苦慮することがあり、 多くの場合、 外科的治療は結紮切除術(ligation & excision以下、LE)がなされることが一般的である。しかしALTA療法の登場により、 低侵襲手術への期待がある。 【目的】MPSを合併した内痔核に対する、より低侵襲な手術法を検討する。 【手術方法】 ① LE ② E on ALTA(excision on ALTA) :内痔核に対しALTA療法を先行し、併存する 肛門病変をドレナージ創から連続的に切除する。 ③ M on ALTA(mucosectomy on ALTA) :内痔核に対しALTA療法を先行し、併 存する直腸粘膜病変のみを切除する。 ④ ALTA療法 【症例・結果】当院および関連施設で、痔核などの手術例706症例中、MPSを合併した内 痔核と診断した12症例を対象とした。12症例に 4 種類の術式が施行されていた。すなわち、 LE、E on ALTA、M on ALTA、ALTA療法である.全症例において主訴は消失し、有 害事象は認められなかった。術前の肉眼診断と術後の病理診断が一致しない症例があり、 大腸腺腫症も含まれていた。 【考察】4種類の術式で、最も低侵襲な術式はALTA療法である。しかし、MPSと術前診 断した症例が腺腫であった事例を鑑みるに、病理組織学的検索は必須と考える。したがっ て、内痔核にALTA療法を施しMPSのみを切除する、M on ALTAが低侵襲性で妥当な術 式と思われる。 M on ALTAにおいて最も重要なことは、MPSの肉眼診断である。Herrmann線近傍か ら口側直腸粘膜にかけての隆起性病変で、赤色調・白色調上皮がまだらに混在すること、 やや硬いことなどがMPSの特徴であり、内痔核や腫瘍との鑑別が重要である。病理組織 学的には、粘膜筋板の粘膜固有層への侵入(fibromuscular obliteration)が特徴的で、線 維化を伴う。ゆえにやや硬い。ALTA注入の際に、膨瘤変化が認められる内痔核領域に比 べ、MPS領域は形状変化があまり認められないことも特徴的である。 また、Herrmann線近傍に発生する場合は、移行帯の上皮を反映し、メラニン顆粒をも たない重層扁平上皮や重層立方上皮と、 単層立方円柱上皮である直腸粘膜が混在するため、 赤色調上皮と白色調上皮がまだらに視認される。 病変の大きさによるが、術前の肉眼診断と生検診断でMPSの診断がなされていれば、 ALTA療法を考慮する。 1 演題− 2 4度へのALTA 笹口 政利、小林 康雄 誠心会 吉田病院 ALTAは 2 度、3 度の内痔核に対する硬化療法剤ですが、患者背景によっては、4 度の 内痔核への投与をすることもありました。1 例目は、昨年示した心臓弁膜症の77歳の女性。 2 例目は、夫の介護のために長期入院ができない抗血小板剤内服中の81歳の女性です。 最初の方は、弁膜症手術の後、脱肛が再発し、初回投与の 3 年半後に腰椎麻酔にて手術 を行いました。次の方は、3 回のALTA投与でも肛門前方の脱出が改善せず、夫の永眠後 に抗血小板剤の処方医に休薬リスクを確認したうえで、私の判断でこれを休薬し、腰椎麻 酔にて手術を行いました。これらの経験から、4度の内痔核へのALTA投与は再発するた め基本的には手術適応としています。 動画で提示する症例は、75歳の男性。脳梗塞のリハビリテーション目的に内科入院中。 抗血小板剤内服中で、治療も順調に進み、退院間際になり、脱肛の訴えがあり肛門科紹介 となりました。肛門前方の 4 度の脱肛でしたが、抗血小板剤の休薬による脳梗塞再発リス クがゼロではないため、脱肛の再発リスクを説明したうえで、私がALTA治療を選択しま した。ALTA治療後脱肛は改善し無事退院しました。排便コントロールを行い 3 カ月後も 再発はありません。 従来、ALTA投与後の再治療率は投与年ごとに後ろ向きに検討していましたが、今後は 適応外投与や 2 期的投与に関しては投与前にこれを宣言して、適応症例の再治療率と別々 に示すべきと考えています。 2 演題− 3 硬化療法適応外と考えられた外痔核腫脹症例に対する 積極的ALTA療法 野村 英明、小島 修司 こじま肛門外科 三宮フラワーロード診療所 【はじめに】当院では有症状の痔核の患者には全例怒責診断をおこない方針を立てており、 ALTA療法の適応は怒責診断で外痔核の腫脹をともなわないか、軽度のものに限定してい る。 しかし、諸事情によりLEを躊躇する患者には外痔核が残存することを十分に説明した 上で適応外でもALTA療法を施行している。 【手技】第 1 段階は通常通りZ式肛門鏡でおこなうが、第2 ∼ 4段階はスリット式肛門鏡を 用いる。 第 2 段階は痔核中央部からではなく、下極部より括約筋に平行に刺入する。この操作に より、直腸筋層に薬液が注入されることを予防する。また一点ではなく前後左右に広角的 に注射する操作により薬液の偏在を予防する。 第 4 段階は内痔核下極のみではなく、肛門管内外痔核にも十分に注射する。この際、特 に圧迫はおこなわない。薬液が肛門外側へ流出しても一時的に外痔核部の発赤・腫脹を認 めるのみで患者は疼痛を訴えることなく、腫脹部はやがて軽快する。 【対象・目的】2012年 4 月から2013年 8 月までの17ヵ月の間に当院でALTA療法をおこなっ た46例中、怒責診断時に外痔核の腫脹が著明でLEの適応だと考えられた症例19例につき、 上記手技で積極的ALTA治療をおこない、特に外痔核の経時的変化を中心に検討した。 3 演題− 4 Dynamic ALTA療法 ∼あらゆる痔核に対応するために∼ 小原 誠 OHARA MAKOTO 大腸肛門科クリニック ALTA療法は、歯状線よりも中枢の内痔核に、薬液を注入し、痔核を筋層に固定し、退 縮させる治療法である。そこには結紮や切除、剥離といった外科的侵襲を加えることなく 施行できるという大きなメリットがある。ALTAの効力が及ばない外痔核を併存する症例 には適宜、歯状線までの外痔核切除を追加することで、あらゆるタイプの痔核に対応する ことが可能となる。 痔核の臨床病期分類として一般的に広く使用されているGoligher分類は、内痔核の脱出 の程度を表すものとしては簡潔で、明瞭な表記法であるが、ALTAの手術法を判断する際 には、それだけでは、やや不十分と言わざるを得ない。よって、Goligher分類に追記する 形で、3 つの主痔核がどのような組織形態で構築されているかを表記する分類法が必要と なる。それぞれの主痔核は 3 つのタイプに分類できる。Type-1は外痔核を併存しない内 痔核、Type-2は肛門管内外痔核を伴う内痔核、Type-3は肛門管内および肛門管外まで連 続した外痔核を伴う内痔核である。 Type-1はALTA単 独、Type-2、Type-3はALTA+外 痔 核 切 除 を 選 択 す る。 た だ し Type-3でも急性の炎症で、浮腫腫脹しているものは、切除の必要はなく、ALTA単独で 手術することができる。 それぞれのタイプに応じた手術法をビデオで供覧し、いかなるタイプの痔核でも、簡便 で低侵襲、かつ根治性の高い手術が可能となることをお示しする。 4 演題− 5 ALTA療法の行き着くところ 鉢呂 芳一、安部 達也、國本 正雄、海老澤 良昭、菱山 豊平、阿部 清秀 くにもと病院 肛門外科 当院ではALTA療法開始当初より、ALTA療法を主体においた痔核治療を施行してき た。2005年時には痔核治療の約 7 割をALTA単独で行っていたが、Goligher分類Ⅳ度症例 や外痔核膨隆が顕著な症例において早期再発を経験するにしたがい、ALTA療法の適応 を厳格化して行った。その後はALTA療法で治療困難と判断した部位についてはLEを行 なうこととし、他の主痔核はALTA単独とした、いわゆるLE+ALTA療法が2006年以降 痔核治療の約7割を占めた。その間ALTA療法における副作用や合併症を克服し、さらに ALTAの投与手技も向上した。しかしながら昨今ALTA療法後 5 年以上の経過症例におい て、外痔核の腫脹を主体とした再発例が散見されてきた。そこで2011年以降、初回治療時 から外痔核の存在を重要視することとし、同一痔核の外痔核部位をexcision(E)し内痔 核部位にALTA(A)を投与するEA法を痔核治療の主体に置き、現在では痔核治療の約7 割にEA法を施行している。 EA法は、外痔核治療に不十分と考えられているALTA療法の欠点を補うだけでなく、 LE法における術後合併症の一つである根部出血を回避しうるものである。EA法は今後 LEに代わる、より安全な痔核根治術として期待される。当院におけるEA法の観察期間は まだ約 3 年に満たないが、今のところEA法部位における再発は経験していない。 5 演題− 6 当院におけるALTA療法の実際 松田 大助、大沢 晃弘、大高 京子、松田 好雄 荒川外科肛門科医院 【はじめに】痔核治療の原則は、出血や脱出などの症状を改善させることである。そのた めには病状の正確な診断と適応を検討し、患者ニーズも考慮して治療方針を決定するこ とが重要である。外科的治療は、これまでLE法が広く行われてきたが、近年、PPH法や ALTA療法の導入により多様化している。 今回我々は、当院で行われている痔核に対する治療をALTA療法中心に報告し、動画を 供覧する。 【治療法】当院では、ALTA導入(2005年 5 月)以前はLE法のみであったが、ALTA導入 後よりLE法、ALTA療法、LE+ALTA併用療法が行われている。 【適応】保存的療法:Goligher1, 2度。ALTA療法:Goligher2, 3度。 LE法:Goligher3, 4度。 脱出の形態によりLE+ALTA併用療法も行う。 【四段階注射法の推移】ALTA導入∼ 2011年 8 月:外来診察室、右側臥位、無麻酔、筒型 肛門鏡。2011年 9 月∼現在:手術室、ジャックナイフ位、腰椎麻酔(または局所麻酔+静 脈麻酔) 、Z式肛門鏡。 【結果および成績】痔核症例は年間約600例で、その 6 割強の症例に対しALTAを投与。術 後合併症として2011年 8 月以前は潰瘍を6.2%認めていたが、現在1.1%まで減少した。 【結語】ALTA療法は、適応症例を見極め、 四段階注射法を遵守することが肝要と思われた。 6 演題− 7 当院のALTA療法の変遷と現状 加藤 典博 ふるだて加藤肛門科・外科クリニック 加藤 久仁之 山本組合総合病院 外科 当院で現在までALTA療法に行ってきた病変単位の術式は、1)ALTAのみ(AL)、2) 結紮切除術のみ(LE)、3)肛門管内・外外痔核を切除・同一内痔核にALTAを施行(EA) の 3 種類で、3)はさらに外痔核を歯状線まで切除したE1Aと内痔核下極まで切除を拡大 したE2Aに分けている。切除には超音波駆動メスを全例に使用している。これらを選択し て行った症例単位の術式はALTA単独療法とALTA併用療法に分けられるが、後者の定義 は 1 個以上の病変にLEあるいはEAによる切除を加えた術式と便宜上規定している。 当院のALTA療法で術式が大きく変化したのは、2008年に前壁病変はLEに代わりEAを 行うようにした事と、2010年にE2Aを取り入れた事である。その理由は前者はLE後の晩 期出血 5 病変全てが前壁のLE根部からの出血であり、これを回避するためには前壁病変 にはLEを行わない事が肝要と考えたためと、後者は再発を少なくするためには切除範囲 を痔核下極まで広げ、痔核の絶対量を減らす事が効率的と考えたためである。実際に2008 年以降の晩期出血とE2A病変の再発は 1 例も経験していない。 今回、過去 9 年間に行ったALTA療法3,004例(単独療法546、併用療法2,458)・9,765病 変(AL:4,432、LE:1,344、EA:3,989(E1A:3,806、E2A:183) )を検討し、当院の術式の変遷 について考察した。 7 演題− 8 兵庫県下におけるジオン(ALTA)治療の変遷 大澤 和弘 大澤病院 (共同発表:兵庫県下アンケート協力者) 兵庫県下においても、内痔核治療に対するALTA療法が比較的簡単かつ有効であること が評価され、ますます普及しているが、ALTAをより安全に投与するためには症例の選択 と基本的な四段階注射法の遵守が重要と考えられる。 毎年総会において神戸地区(兵庫県下)におけるジオン(ALTA)治療の現況を報告し ているが、本年も引き続きALTA療法を施用している各施設に対して、使用肛門鏡・麻酔 方法・投与段階別投与量・一治療あたりの投与総量・四段階注射法の投与順・他療法との 併用の有無・ALTA治療後のフォロー等についてアンケート調査を実施した。 また、今回は上記項目に加え、本総会のテーマでもあるALTA療法の適応と工夫・ピッ トフォールとその対処法についても調査を実施した。その結果と今後の課題について検討 し、発表する。 8 演題− 9 痔核結紮切除術適応患者に対する、 LE群とLE+ALTA併用群との前向き比較試験 梅枝 覚、中山 茂樹、馬場 卓也 四日市社会保険病院 外科 大腸肛門病・IBDセンター 【目的】LE(結紮切除術)にALTA(痔核四段階硬化療法)を併用する症例が増加してい るが、併用による有用性の有無を検討した。 【対象】平成23年 8 月より平成24年 9 月までの1年間に、痔核結紮切除術適応の患者を対象 に、A群(LE単独)、B群(LE+ALTA併用)との前向き比較試験を行った、同意を得た 患者に無作為にA群27例とB群31例に割り当てて治療を行った。その中でデータの回収が 可能であったA群の25例とB群26例を検討した。A群25例62.0±11.2歳(男12名、女13名)、 B群26例55.6歳±14.3歳(男13名、女13名)であった。A群B群の患者に、満足度(1 ∼ 5)、 術後 1 日目から13日目までWong-Bakerの疼痛フェーススケール(0 ∼ 5)のアンケートを とった。退院日は、疼痛、下血が軽減し、排便に苦痛なく、自信がつけば退院可とし患者 が決定した。 【結果】全症例術後 1 年以上を経過しているが、再発症例は認められなかった。満足度は A群4.44±0.65、B群4.38±0.75であった。術後疼痛に関して、術後 2 ∼ 3 日目はA群の疼痛 がめだったが、術後4日目以降では差は認められなかった。入院日数はA群8.32±2.04日、 B群7.35±0.75日であり、Unpaired Mann-Whitney U-testではP<0.05で有意差を認めた。 B群はA群に比較して優位に入院期間が短いといえる。 【まとめ】以上より、LE+ALTA併用はLE単独に比べ再発率、疼痛フェーススケール、 満足度では有意差は認められなかったが、入院期間が短縮されるものと思われる。LE+ ALTA併用の手技を動画で供覧する。 9 演題− 10 四段階注射法におけるALTA注の薬物動態 ― ICG蛍光法による可視化とAluminum染色を用いた検証 ― 山本 裕1)、藤井 博史2)、岩川 和秀3)、元井 信4) 山本醫院1)、国立がん研究センタ−東病院臨床開発センタ−2) 国立病院機構福山医療センター 3)、福山市医師会臨床病理センター 4) 内痔核硬化療法であるALTA注四段階注射法は、投与した薬液が内痔核内に留まって薬 理効果を発現することを前提として投与されている。しかし、四段階注射法を遵守して投 与しているにも拘わらず、投与部位での潰瘍、狭窄、壊死、瘻孔のみならず、内痔核組織 より離れた臀部や陰嚢背部等での蜂窩織炎や膿瘍形成などの有害事象が発生している。そ の一因として、ALTA注薬液が、想定を越えて広範囲に拡散し薬理効果を発現している可 能性がある、との仮説を立て、その検証のために以下の基礎的および臨床研究を行った。 ALTA注にindocyanine green(ICG)を混じた薬液を四段階注射法を遵守して内痔核に 注入し、薬液の拡散する状態をICG蛍光法および赤外観察カメラシステムPhotodynamic Eye(以下PDE/浜松ホトニクス社製)を用いてリアルタイムで可視化し観察した。その 結果、蛍光を発する部位は、痔核上極を越えて口側は正常直腸粘膜に、尾側は歯状線を越 えて肛門周囲皮下組織更には臀部∼陰嚢背部等に拡散した。また内・外痔核症例で、切除 した蛍光を発する外痔核組織のAluminum染色を行うと、切除組織内にAluminum陽性部 位を認め、蛍光を発する部位でのALTA注薬液の存在が確認された。ALTA注薬液は、投 与された内痔核組織を越えて、より広範囲に拡散することが示唆された。薬物動態の基礎 となる、薬液の粒子径に関する検討結果と共に、rat皮下注モデルとヒト直腸・結腸組織 を用いたICG+ALTA注薬液の拡散に関する検討結果を合わせて報告する。 10 演題− 11 ALTA注四段階注射法における 二・三段階の意義に関する検討 山本 裕1)、宇都宮 高賢2)、岩川 和秀3)、元井 信4) 山本醫院1)、宇都宮クリニック2)、国立病院機構福山医療センター 3) 福山市医師会臨床病理センター 4) ALTA注は、消痔霊と有効成分が同一であり、投与法も消痔霊の四歩注射法と同一手技 の四段階注射法が基本となる。消痔霊・四歩注射法を開発した史兆岐は、第二・三段階の 根拠として、粘膜筋層(粘膜筋板)の存在を明記している。またALTA注四段階注射法の 講習会においても、粘膜筋板の存在を重視して二・三段階への分割投与が指導されている。 しかし、最近、研究会や学会に於ける発表では、粘膜筋板の存在自体に関する認識・見 解が分かれ、粘膜筋板の存在を根拠とした投与法を否定する意見も少なくない。二・三段 階の意義・目的が曖昧になりつつある現状を鑑み、その意義を再確認・明確化するために、 以下の検討を加えたので報告する。結紮切除術により採取した内痔核組織の病理組織学的 検索を行い、内痔核中央部の二・三段階投与部位に粘膜筋板が存在するか否か、また存在 するならどのような形態を示しているか、等を検討した。 さらにICG蛍光法・赤外観察カメラシステムPhotodynamic Eye(浜松ホトニクス社製) を用いて、注入薬液が拡散する状態をリアルタイムで可視化し検討した。四段階注射法の 各段階の正確な施行は、ALTA注治療の安全性と有効性に直結する最も重要な要素であ る。それを支える明確なevidenceに基づいた各段階の意義のconsensusの確立が急務と考 える。 11 演題− 12 ALTA後の再発予防の一因について(排便姿勢) 柴田 直哉、柴田 みつみ 清涼会 いきめ大腸肛門外科内科医院 【目的】痔核の性状では滑脱が主体の粘膜脱型痔核とうっ血と滑脱を伴うと思われる結節 型痔核に大きく分類されている。ALTAの作用は無菌性の炎症惹起作用により一時的な止 血効果と永続的な粘膜下層と筋層の固着増強効果である。ALTA後の再発予防には、この 固着の効果をいかに長持ちさせ、滑脱を予防するかが大切である。滑脱に関しては肛門動 態での圧力の強さ、方向も一因と思われ、検討した。 【方法】まず、55名の正常対照群と114名の痔核術前患者群にVector manometryを行っ た。次に痔核患者48例(男性29例、女性19例、平均年齢57.0±14.4歳)を対象として、 GoligherⅢ度以上の症状を呈しLEを行った部位で前方 1 ヵ所切除群(前方群)10名、前 方と後方 1 ヵ所または 2 ヵ所切除群(前後方群)12名、後方のみ 1 ヵ所または 2 ヵ所切除 群(後方群)26名の 3 群に分類した。また排便時姿勢はやや後傾 0 名、直立 9 名、やや前 傾26名、前傾13名と分類し、その 2 群間で相関があるか検討した。 【結果】痔核患者群は肛門縁より 1 cmと 3 cmの部位で後方から前方へ向かう圧力を受けて いた(P<0.001) 。切除部位と排便姿勢においては前方群で他の二群に比べ有意に直立傾向 が強かった(P<0.001)。 以上の結果より、直立での排便は前方に圧が加わりながら脱出するために前方の痔核形 成に関与するのではないかと思われた。そこで排便姿勢が変わると、圧力の向きがどのよ うに変わるか検討が必要と考え、痔核術前患者18人を対象として直立と前傾姿勢で測定し た。直立姿勢では後方から前方に向かう圧力ベクトルを有意に認めたが(P<0.001)、前傾 になるとその圧力ベクトルが認められなかった。 【結果】排便姿勢で直腸、肛門への圧力の向きが変化し、痔核形成、再発に関与するので はないかと思われる。肛門の広さ、便の性状なども考えられるが排便姿勢も一因になると 思われる。 12 演題− 13 内痔核治療におけるALTA単独療法の位置付け 宮本 英典、近清 素也、宮本 英之 宮本病院 【はじめに】2005年にALTA療法が臨床の場に登場して以来、本邦における内痔核治療 の有用な選択肢の 1 つになっている。しかし、痔核治療のclinical reviewでは、硬化療法 はGradeⅠとⅡに対する治療法と考えられている。GradeⅢに対しては、患者さんの主訴 や状態に応じて様々な低侵襲治療法(Doppler guided haemorrhoidal artery ligationや transanal hemorrhoidal dearterializationなど) が選択されている。今回我々は、3 年のフォ ローアップでGradeⅢに対するALTA単独療法の有効性を確認したので報告する。 【対象と方法】2009年 1 月から2013年10月までの間に当院でALTA単独療法を行った130例 を対象とした。初診時の自覚症状、肛門鏡所見、経肛門エコー所見を基にGoligher分類で 臨床病期を判定した。手術手技は型通りの 4 段階注射法を行った(2010年12月以降は痔動 脈の同定を指診ではなくパルスドップラーエコーを使用)。 【結果】GradeⅡ(GⅡ)群は31例、GradeⅢ(GⅢ)群は99例であった。年齢、性別、術 後フォローアップ期間、合併症で 2 群間に有意差はなかった。1 症例あたりのALTA平均 投与量はGⅡ群14.5±6.8mL、GⅢ群19.2±6.3mLでGⅢ群が多く投与されていた(p=0.0004)。 手術時間はGⅡ群17±5分、GⅢ群21±7分でGⅢ群が長くかかっていた(p=0.01)。1 年累 積再発率はGⅡ群3.7%、GⅢ群6.8%、3 年累積再発率はGⅡ群3.7%、GⅢ群10.7%で、2 群間 の再発率に有意差は認められなかった(Log-rank test: p=0.33) 。 【まとめ】ALTA単独療法はGradeⅢまで有効であると考えられた。 13 演題− 14 ALTA単独療法の適応疾患拡大と有害事象に関する検討 大賀 純一 そらの内科肛門外科クリニック ALTAを使用した治療法は2004年 7 月に効能・効果「脱出を伴う内痔核」が承認され、 2005年 3 月に販売開始となって以来、数多くの内痔核に対して施行され根治が期待できる 治療法として評価されつつある。しかし、その適応に関しては未だ曖昧な部分が多く、各 施設によって違いが存在する。 今回、当施設において2012年11月より2013年12月までに肛門疾患(痔瘻や肛門周囲膿瘍 は病態の違いにより除外した)に対して施行したALTA療法を含めた手術症例数は352例 で、 そのうちALTA単独が264例(男147例、女137例)で75%、それ以外の手術症例は88例(内 ALTA併用30例)で25%であり、圧倒的にALTA単独療法の適応疾患が拡大している。 ALTA単独療法の実際としては、外来診察台にてモニター管理下とし、無麻酔Sims体 位で施行。殿裂が深い場合や肛門底筋群の発達した症例、もしくは精神的に不安要素の強 い患者には鎮静剤を使用し軽い筋弛緩を得た状態で行った。ALTA注射法は4段階注射法 を遵守し、平均施術時間は10分、平均投与量は18mLで 1 痔核毎に十分なマッサージを行 い、最後に吸収性ゼラチンスポンジを挿肛する。施行後は1時間程リカバリーで休んで頂 き、状態に変化がないことを確認し帰宅としている。このような方法で内外痔核から粘膜 脱、直腸脱、粘膜脱症候群などに対して適応を拡大させながら施行している。今のところ 成績は良好である一方で、様々な有害事象にも遭遇しているため、適応拡大と併せて問題 点の検討も必要と思われる。 14 演題− 15 私が挑戦したALTA療法の一例 山口 トキコ マリーゴールドクリニック ALTA 療法を導入してから丸 8 年が経とうとしている。ALTA療法は合併症のリスク さえ除けば、出血や疼痛が少なく、患者の満足度も高い治療法である。私がおこなってき たALTA療法を振り返ってみると、初めは不安な気持ちと同時にどの位効果があるかを探 る目的でALTA単独療法を中心に行い、投与量は少ない傾向にあった。しかし、治療後半 年以内に再発した症例が多かったことから、投与量の増加や第一、第四段階への積極的投 与を試みた。また、合併症である直腸周囲膿瘍の経験などをきっかけに碓井式とZ式肛門 鏡の併用を始めた。結果として早期の再発や合併症の頻度は減少したが、投与量に関して は著明な増加は認めなかった。このことから投与手技の重要性が示唆された。さらに根治 性を高めようとALTA療法の適応が議論されるようになったことで、適応範囲が狭まるの ではないかと憂慮したが、一方で他の痔核治療と併用することで多様な病態を持つ痔核へ のALTA療法が広がっている。私の症例でも当初より併用療法が増加している。再発を減 らすために肛門管内外痔核の切除が望ましいと考えているが、全例において必要か否か、 その見極め方など私の中で答えは出ていない。 今回は50歳代男性で内痔核Ⅳ度(肛門管内外痔核も認める)に対してLE+ALTA療法を 行った症例を動画で供覧するが、私にとっては挑戦であった。治療後の経過もあわせて発 表する。 15 演題− 16 エラストグラフィ(組織弾性イメージング超音波検査) によるALTA療法の検討(第3報) 田中 良明1)、寺田 俊明1)、葛岡 健太郎1)、髙石 祐子1)、岩本 真帆1)、堀 孝吏1) 山田 麻子2)、髙村 寿雄3)、高林 一彦4)、榎本 俊之4) 寺田病院 大腸肛門病センター 1)、アイビー大腸肛門クリニック2) 東神戸病院3)、東邦大学医療センター大橋病院4) ALTA療法の痔核組織の硬化を生じさせる点に注目し、エラストグラフィ(組織弾性イ メージング超音波検査)による硬さの色調の変化を客観的に検討した結果、第 7 回内痔核 治療法研究会総会(東京)にてALTA四段階注射法における①各段階注射時のエラスト像 の描出②マッサージの効果③術後1日及び1週間のエラスト像の変化について、さらに第 68回日本大腸肛門病学会学術集会にて④術後 1 ∼ 6 ヵ月のエラスト像の変化について報告 した。ALTAによる痔核の硬化退縮及びその後の弾性線維化の変化をエラスト像として描 出できたと考察された。 今回①術後12 ヵ月のエラスト像の経時的変化②術後経過不良例や再発例の検討につい て報告する。装置は日立アロカメディカル社製HIVISION AVIUS EUB-8500、深触子は バイプレーンEUP-533(4 ∼ 10MHZ)を使用した。 症例数、観察期間はわずかであるが、痔核の硬化退縮変化に対するスタンダードなエラ スト画像について検討を重ねることが実際の注射手技の向上、治療効果の判定および長期 経過などALTA療法の確立の一助になるものと考える。 16 演題− 17 肛門局所麻酔時の冷却による疼痛緩和法 岡崎 啓介 岡崎外科消化器肛門クリニック 【目的】日帰り手術を安全確実におこなうには、必要十分で快適な局所麻酔が重要である。 合併症のない症例でのALTA療法においては、術中術後の疼痛は括約筋弛緩のための麻酔 操作のみであり、局所麻酔時の疼痛緩和は日帰り手術の質的向上に寄与する。当院では冷 却による疼痛緩和を取り入れた肛門部局所麻酔法をおこなっているので報告し、ビデオ供 覧する。 【方法】左下側臥位とし、保冷剤(アイスパック)を肛門部に45秒以上圧迫して冷却する。 局所麻酔は 1 %メピバカイン計10mLを25G 2.5cm針を用いて肛門縁から 2 cmの 9 時および 3 時の点から刺入しておこなう。肛門管長軸方向に 2 mL注入、抜針せずに、前方に1.5mL、 後方に1.5mL注入する。その後愛護的にストレッチを行う。 【結果および考察】92例での疼痛NRS(数値的評価スケール)によると、冷却なし6.14点、 冷却あり5.12点であり(Wilcoxon-t検定, two tail, p<0.01)、冷却による疼痛軽減率は16.8% であった。また、本法による麻酔に加え局所麻酔 5 mLの追加で 2 ヵ所までの結紮切除術 が可能であった。追加刺入時の疼痛はごく軽度であり、本法は肛門部手術の基本的麻酔と して有効であった。コールドスプレーと保冷剤を用いた冷却による疼痛緩和効果について は、臨床肛門病学 5: 51-55, 2013を、また各種局所麻酔薬についての考察は、臨床肛門病学 5: 40-42, 2013を参照されたい。 17 演題− 18 当院における外痔切除併用ALTA注の方法 ∼再発を防ぐための外痔切除と排便習慣の指導について∼ 藤森 正彦、住谷 大輔、奥川 浩一、中塚 博文 呉市医師会病院 外科・大腸肛門科 2005年 7 月よりALTA注を行い、8 年が経過した。ALTA注開始後は、約50%前後に対 してALTAを使用しており、ALTA療法のみの症例が多かった。今では80%前後の症例に 使用しており、ALTA療法に痔核切除を追加したものが増加した。 ALTA療法のみで8.6%の再発を認め、結紮切除併用ALTA療法では2.5%、外痔切除併用 ALTA療法では3.5%であった。ALTA療法での再発は、ALTA注施行部でのものは少なく、 肛門管内外痔核を含め外痔核の腫脹による再発を多く認め、再発を減少するためには、外 痔の処理が必要であった。よって手術の際に外痔切除が必要かどうかを、まず見極め、外 痔切除が必要であれば、結紮切除(半閉鎖)に準じて外痔切除を行い、その後ALTA注を 行うこととしている。また再発の 7 割以上が、排便習慣不良であり、再発を防ぐためには 徹底した患者への教育が必要であった。 18 演題− 19 Anal Cushion LiftingにおけるALTAの有効性 石山 元太郎、川村 麻衣子、樽見 研、西尾 昭彦、石山 勇司 札幌いしやま病院 当院では痔核を切除せずに治療する肛門クッション吊り上げ術Anal Cushion Lifting(以 下ACLと表記)を施行している。この術式は内括約筋から痔核組織を剥離して適正な位 置に吊り上げ、吸収糸で内括約筋に縫合固定するというものである。本術式は切除しない ため、術後に肛門狭窄などの機能障害をきたすことはなく、美容的にもすぐれた術式であ るとわれわれは考えている。一方で、再発のリスクが結紮切除術に比べて高いというデメ リットも存在する。この欠点を補うことを目的に、吊り上げた痔核にALTAを施行する ACLとALTAの併用療法(ACL+ALTA)も近年になって施行している。今回、この二つ の術式の治療成績について調査し、ACLにおけるALTAの有効性について検討した。 【対象】2008年 8 月から2011年 7 月に当院で施行した痔核手術症例4,099例のうち、ACL症 例:353例、ACL+ALTA症例:1,136例を対象とした。観察期間は2013年12月までとした。 【結果・結語】再発により再手術を施行した症例はACL群で13例(3.7%)、ACL+ALTA 群で28例(2.5%)であり、ALTAを併用することで再発率が低下する可能性が示唆され た。一方で、術後出血はACL群で 3 例(0.8%)、ACL+ALTA群で12例(1.1%)であり、 ALTAの使用は術後出血低減に関与していない可能性が考えられた。 19 演題− 20 再発を防ぐためのALTA療法の工夫について 小野 芳人、竹田 正範、友澤 滋、松本 欣也、渡辺 学、渡辺 英生 ミネルワ会 渡辺病院 外科 ALTA療法は内痔核に対して非常に有効な治療法である。血管の狭小作用と組織の線維 化作用があるため、血管成分が豊富で、軟らかい脱肛性内痔核に特に効果が期待できる。 当院でもALTAを使用した痔核治療が中心となっているが、当院の統計上「内痔核部分が 3 cc以上の容量で外痔核成分を伴う痔核」は、ALTA単独療法では再発し易いため、充分 説明の上、本人の希望も考慮して術式を決定する。 手術は、痔核ごとにLEするか、ALTA単独で良いか、ALTA+外痔核切除術を行う か検討して手術を行うが、外痔核成分を伴う痔核は再発防止のため、積極的にLEまたは ALTA+外痔核切除で切除するようにしている。手術中にも肛門は変化するため、麻酔後 手術前に写真を撮っておき、痔核を評価し、LE+ALTAの場合はLEを先行し、ALTA+ 外痔核切除の場合はALTAを先行する。ALTAは基本的に四段階注射を遵守するが、間の 副痔核に対しても積極的に注射することで引き込みが良くなる。外痔核切除を追加する場 合、術前写真を参考にして、ALTAによる引き込みや縮小の具合をみて切除範囲を決定す る。硬化した皮膚や皮垂も切除しつつ、通常は歯状線まで結紮切除する。これにより再発 を抑制でき、治癒後の創部も軟らかく平らになり易いと考えている。移行上皮部分の痔核 が大きい場合や硬い場合はHerrmann線付近まで結紮切除するようにしている。当院で基 本としている適応と手術手技を写真と動画にて提示する。 20 演題− 21 当院におけるALTA療法 外山 裕二 とやまクリニック 【背景】ALTA療法の適応は脱出を伴う内痔核とされている。内外痔核に対しては結紮切 除を選択する施設が多いと思われるが、近年、内痔核に対してALTA療法を行い、外痔核 やSTは切除するという術式を選択する施設も少なくない。 【対象】2005年 3 月から2013年 7 月までに当院で経験したALTA療法581症例(男性243症例、 女性338症例) 。 【方法】麻酔法は無麻酔あるいは局所麻酔が182症例、仙骨硬膜外ブロックが176症例、低 位腰椎麻酔が218症例であった。 術式は内痔核に対してはALTA療法(四段階注射法) 、外痔核やSTは超音波メスで切除 している。 581症例に対してアンケート調査を行い、術式の評価を行った。 【成績】581症例中33症例(5.7%)に再手術が行われた。 再手術症例ではALTA使用量が少なく(再手術症例18mL、全症例24mL p<0.0001)、麻 酔法では無麻酔あるいは局所麻酔症例が多く、初期の症例が多かった(2011年以降は再手 術の経験は無し) 。 術後のアンケートでは56%の症例が 1 週間以内に仕事(日常の生活)に復帰し、平均8.6 日目に仕事に復帰していた。手術の満足度では満足が70%、まあまあ満足が25%であった。 【まとめ】ALTA療法の社会復帰は早く、満足度も比較的良好であった。 ALTA療法の成績向上には、ある程度の経験を持つ術者が、充分な麻酔で良好な視野のも と、充分量のALTAを用いることが重要と考えられた。 21 演題− 22 総合病院におけるALTA併用療法 岡本 欣也、佐原 力三郎、山名 哲郎、古川 聡美、岡田 大介、西尾 梨沙、森本 幸治 高橋 聡、左雨 元樹、仕垣 幸太郎、助川 晋作 社会保険中央総合病院 大腸肛門病センター 近年、痔核の手術はLEとALTAを併用する術式が主流となってきている。併用療法の 背景にはLE主体の医師、ALTA主体の医師共に単独では満足いかない点があり、それを 補うために併用に至ったと考えられる。LEのメリットは根治性であるが、デメリットと して手技に熟練を要する点、晩期出血、疼痛などがある。 一方、ALTA注は低侵襲で疼痛のない術式だが外痔核に無効な点、用量依存による再発 例の存在、重篤な有害事象、排便時の違和感、排便困難がある。総合病院での治療を考え た際、入院診療でスタッフに恵まれている点からもLEを主体とし、ALTAを補助的に使 用するLE主体型が根治性と合併症のバランスを考えた際、妥当な術式と考える。 2006年 1 月より試みてきたALTA併用療法の手技を以下に述べる。まず腰椎麻酔下に内 痔核、外痔核の状態を観察する。どの痔核を①LE単独②LE+ALTA③ALTA単独で行う かを選別しLE中心に手術をすすめる。連続した内外痔核、外痔核主体の痔核にはLE、外 痔核、内痔核がseparateしている痔核には外痔核をLE、内痔核をALTA、内痔核のみに はALTAを使用する。また、④後出血予防としてLEの根部に使用⑤切除デザインの簡略 化を目的にLEのsideにも使用する。 最近ではよりLE主体とする傾向にある。上記のLE+ALTAとしていた痔核に対しても LEへshiftしている。現在行なっているALTA併用の痔核は内痔核が末広がりとなり、環 状に連なるような巨大なcaseが最もよい適応と考える。 22
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