第4回 内痔核治療法研究会総会 プログラム・抄録集

第4回 内痔核治療法研究会総会
プログラム・抄録集
平成21年3月15日(日)
松田保秀
当番世話人 共 催
内 痔 核 治 療 法 研 究 会
田辺三菱製薬株式会社
第4回 内痔核治療法研究会総会
日 時:平成21年 3 月15日(日)9:50∼15:35
場 所:ホテルグランドパレス
〒102‐0072 東京都千代田区飯田橋 1‐1‐1
TEL
03‐3264‐1111
会 場: 2 階「ダイヤモンドルーム」
内痔核治療法研究会:
代表世話人:岩 垂 純 一(岩垂純一診療所)
世話人(順不同)
樽 見 研(札幌いしやま病院)
國 本 正 雄(くにもと病院)
菊 田 信 一(きくた肛門科)
加 藤 典 博(ふるだて加藤肛門科・外科クリニック)
紙 田 信 彦(会津西病院)
佐 原 力三郎(社会保険中央総合病院)
松 尾 恵 五(東葛辻仲病院)
松 島 誠(松島病院)
松 田 保 秀(松田病院)
小 原 誠(OHARA MAKOTO大腸肛門科クリニック)
家 田 浩 男(家田病院)
辻
順 行(家田病院)
梅 枝 覚(四日市社会保険病院)
小 杉 光 世(斉藤外科小児科クリニック)
服 部 和 伸(はっとり大腸肛門クリニック)
黒 川 彰 夫(黒川梅田診療所)
斎 藤 徹(大阪北逓信病院)
高 村 寿 雄(昭和病院)
松 田 直 樹(松田肛門科医院)
瀧 上 隆 夫(チクバ外科胃腸科肛門科病院)
坂 田 寛 人(坂田肛門科医院)
日 高 久 光(日高大腸肛門クリニック)
高 野 正 博(高野病院)
徳 嶺 章 夫(あさと大腸肛門クリニック)
共 催:内痔核治療法研究会
田辺三菱製薬株式会社
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会場周辺および会場までの交通機関
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北の丸公園
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半蔵門線・新宿線
3a番口
北の丸スクエア
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中大
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東西線
飯田橋駅
九段下駅
りそな銀行
九段支店
目白通り
ベルサール九段
東西線
7番口(富士見口)
GS
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首都高速5号線
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至水天宮・岩本町
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東京ドーム
【最寄り駅からのご案内】
●地下鉄〔九段下駅〕
東西線7番口(富士見口)より徒歩1分/半蔵門線・都営新宿線3a番口より徒歩3分
●JR・地下鉄〔飯田橋駅〕より徒歩7分
総武線・有楽町線・南北線・都営大江戸線
【東京駅からのご案内】
徒歩
●丸の内地下北口 東西線〔大手町駅〕
〔九段下駅〕
5∼6分
6分
【羽田空港より】
●羽田(地下鉄浅草線京浜急行3
0分)→日本橋駅(地下鉄東西線7分)→九段下駅
【お車ご利用の場合】
●東京駅より10分/上野駅より15分/羽田空港より45分
●首都高速:「西神田ランプ」(5号線)
より1分
「飯田橋ランプ」(5号線)
より5分
「代官町ランプ」(環状線)
より5分
ホテルグランドパレス
〒102‐0
072 東京都千代田区飯田橋1‐1‐1
TEL:0
3‐3264‐1
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会場案内図
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タ
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総会会場
(ダイヤモンド)
エスカレーター
宴
会
事
務
所
化粧室
世話人会・
懇親会会場
(チェリー)
クローク
シルバー
パ
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ル
2階
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宴会・ご婚礼
打合せサロン
お知らせとお願い
Ⅰ.会場の先生方へ
1.内痔核治療法研究会総会に参加される方は、受付にて参加費3,000円をお支払い
下さい。
2.会場では必ず名札をお付け下さい。
Ⅱ.演者の先生方へ
1.口演方法
・ 演者は、発表開始 5 分前までに次演者の席にお着き下さい。
・ 演者は、そのセッション終了までに会場内で待機して下さい。
2.口演時間
・ 口演は 6 分以内でお願いします。
・ 討議は演題毎に行います。
・ 演者は必ず口演時間を厳守して下さい。
3.発表形式
・ 演者は、発表の40分前までに必ず受付にお越しいただき、発表資料をコピーした
記録メディア(USBまたはCD-ROM)またはPC(ご自身のPCで発表の場合)を
ご提出ください。また、動画、音声をご利用になる場合は、事前連絡の有無にか
かわらずご連絡ください。
受付時間: 9 :00∼13:00
*コピーさせていただいた発表データにつきましては、発表終了後に消去処理い
たします。
*ビデオならびにスライドを用いた発表は機器の関係上お受けできかねます。
4.発表用資料
・ 発表資料は、ウインドウズ対応のパワーポイントファイルでご提供ください。
◎ 発表されるファイル名は「(演題番号)(先生のご氏名).ppt」としてご提出くだ
さい。
◎ 万が一の場合に備えて、バックアップデータをお持ちください。
◎ フォントはOS標準のもののみご使用ください。
◎ 動画を使用される場合、Windows Media Playerで動作する形式にて作成いただ
き、発表資料とともにご提出ください。可能な限り、発表ファイルと動画ファイ
ルは同一記録メディアにコピーの上、ご提出ください。
iv
第4回 内痔核治療法研究会総会プログラム
日時:平成21年 3 月15日(日)
9:50∼15:35
場所:ホテルグランドパレス 2 階「ダイヤモンドルーム」
1.第4回内痔核治療法研究会総会 当番世話人挨拶
9:50∼9:5
5
松田病院 松田 保秀・
2.一般演題口演(発表6分、討論3分)
1)一般演題1
9:55∼10:4
0
座長:東葛辻仲病院 松尾 恵五・
演題−1 当院におけるALTA併用症例の検討 ……………………………………… 1
八子医院 八子 直樹・
演題−2 痔核治療法の手術手技別入院期間の検討
………………………………… 2
四日市社会保険病院 外科 大腸肛門病・IBDセンター 梅枝 覚 ほか・
演題−3 ALTA導入後における痔核療法の治療成績と問題点 …………………… 3
(入院手術と日帰り手術を比較して)
医療法人俊和会 寺田病院 大腸肛門科 寺田 俊明 ほか・
演題−4 ALTA注の導入と応用 ………………………………………………………… 4
厚木市立病院 外科 羽田 丈紀 ほか・
演題−5 痔核、直腸脱におけるALTAの使用経験(病理所見も含めて)………… 5
とりごしクリニック 鳥越 義房 ほか・
2)一般演題2
10:4
0∼11:25
座長:四日市社会保険病院 梅枝 覚・
演題−6 ALTA注の外来での治療経験 ……………………………………………… 6
吉田病院 笹口 政利 ほか・
v
演題−7
ALTA投与後 2 年以上経過症例の再発例に関する検討 …………………… 7
敬愛会 中頭病院 川上 浩司 ほか・
演題−8
ALTA療法後の再発・手術満足度に関するアンケート調査 …………… 8
新潟臨港病院 外科・肛門科 小林 孝 ほか・
演題−9
神戸地区におけるジオン(ALTA)治療の変遷 ………………………… 9
大澤病院 大澤 和弘 ほか・
演題−10 関西地区におけるALTA療法の現況 −合併症対策を中心に− ………10
岡空肛門科 岡空 達夫・
3)一般演題3
11:25∼1
2:20
座長:くにもと病院 國本 正雄・
演題−11 根部結紮を併用するALTA療法(L・ALTA)の試み ……………………11
ときわ病院 外科 出口 浩之・
演題−12 外痔核部分切除、肛門静脈叢結紮症例に対するALTA注の浸潤療法 …12
大井医院 大井 康之・
演題−13 排便時に発生する外痔核にALTAは有効か? ……………………………13
家田病院 辻 順行 ほか・
演題−14 ALTA療法を 1 回に痔核 1 個のみに対して行った結果について …………14
城クリニック 深野 雅彦 ほか・
演題−15 ALTA注治療後の再脱出を減らすための工夫について …………………15
マリーゴールドクリニック 山口トキコ・
演題−16 ALTA投与のための新しい先端形状の肛門鏡 ……………………………16
東葛辻仲病院 松尾 恵五 ほか・
− 昼 食(弁当)−
vi
1
2:20∼1
2:45
4)一般演題4
12:45∼13:3
0
座長:家田病院 辻 順行・
演題−17 内痔核硬化療法(ジオン注)における合併症と内視鏡的検討
…………17
山本クリニック 山本 秀尚 ほか・
演題−1
8 ALTA療法との関連が疑われた非特異性直腸炎の 1 例 ……………………18
嶋田病院 外科 志田誠一郎・
演題−1
9 ALTAによる痔核治療の注射方法と合併症の検討 ………………………19
大腸肛門病センター 高野病院 高野 正太 ほか・
演題−2
0 当院におけるALTA療法の現況 ……………………………………………20
松島病院大腸肛門病センター 肛門科 杉田 博俊 ほか・
演題−2
1 ALTA法の術後直腸肛門機能 ………………………………………………21
大腸肛門病センター くるめ病院 野明 俊裕 ほか・
3.シンポジウム
「対象治療法の選択基準及び投与量と長期経過(再発)
」
座長:岩垂純一診療所 岩垂 純一・
1)演題発表(発表6分)
1
3:30∼14:1
0
演題−S1 ALTA、LEの併用手術による治療効果の検討 ……………………………22
竹迫外科内科医院 柴田 直哉 ほか・
演題−S2 硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸(ALTA)
単独内痔核治療における再発症例の検討
………………………………23
くにもと病院 肛門科 鉢呂 芳一 ほか・
演題−S3 内痔核の根治を期待できる治療法の選択基準 ……………………………24
大阪北逓信病院 外科・肛門科 斎藤 徹 ほか・
vii
演題−S4 内痔核治療におけるLE、ALTA、両者併用療法の比較検討 ……………25
渡辺病院 外科 松本 欣也 ほか・
演題−S5 当院における現在までのALTA療法の現状 ………………………………26
社会保険中央総合病院 大腸肛門病センター 古川 聡美 ほか・
演題−S6 痔核に対するALTA硬化療法の適応の変遷と長期成績 …………………27
松田病院 浅野 道雄 ほか・
2)総合討論
14:10∼14:45
− 休 憩 −
1
4:45∼14:50
4.特別講演
14:5
0∼15:30
座長:松田病院 松田 保秀・
「ALTA療法の経時的な病理学的変化と臨床効果について−実験的検討をふまえて−」
黒川梅田診療所 黒川 彰夫・
5.閉会 内痔核治療法研究会 代表世話人挨拶
1
5:3
0∼15:35
岩垂純一診療所 岩垂 純一・
共催 内痔核治療法研究会 田辺三菱製薬株式会社
*昼食は、弁当を用意しております。総会終了後、懇親のための粗餐(酒餐)を用意しております。
懇親会に参加される方は、マイカーでのご来場をご遠慮下さい。
viii
抄 録
演題−1
当院におけるALTA併用症例の検討
八子 直樹
八子医院
【はじめに】ALTA法の実施にあたっては痔核の正確な診断、適応の検討が最重要であり、
他治療との比較、治療成績や合併症について十分に説明し、治療後の長期経過観察につい
ても同意を得られた場合に行っている。
【手技】ALTA注単独投与については四段階注射原法に準じ、外痔核成分が愁訴となって
いる場合は切除術との併用が必要と考える。
【対象】2009年 1 月まで382症例に対してALTA注を投与した。治療内容についてはALTA
注単独投与が152例、痔核切除術(LE法)と併用した例が198例、痔瘻根治術との併用14例、
PPH法施行時付加投与した例が 3 例、外来少量投与15例であった。今回LE法+ALTA法
併用施行症例198例について投与法、投与量、有効性、について検討した。
【治療成績】〈投与法〉主痔核LE法+副痔核ALTA法(A群)
:81例、主痔核に対してLE法+
ALTA法(B群):101例、主痔核について内痔核成分ALTA法+外痔核成分切除(C群):
16例の各群間について〈ALTA投与量〉A群6.2mL、B群12.0mL、C群23.8mL〈入院期間〉
A群7.5日、B群6.8日、C群0.8日であった。合併症としては発熱 1 例、1 ヵ月以上肛門部痛
1 例、また症状再燃による再投与を 2 例で行った。1 年以上経過後の患者満足度調査では
大変満足73.2%、満足17.9%、わからない3.6%、不満5.3%であった。
【考察】LE法+ALTA法の併用療法により、術後疼痛や出血も軽減され、入院期間の短縮
がはかれる。今後はALTAを投与した内痔核成分の症状再燃や再発についての検討が必要
である。
1
演題−2
痔核治療法の手術手技別入院期間の検討
梅枝 覚、松本 好市、野地みどり、山本 隆行、山崎 学
四日市社会保険病院 外科 大腸肛門病・IBDセンター
痔核治療法は年々手技の多様化と適応が変化してきている。平成20年における手技の選
択と入院期間について検討したので報告する。
主な手技は 1:ALTA(四段階痔核硬化療法)腰椎麻酔、2:LE(結紮切除術)腰椎麻
酔、3:LE+ALTA(四段段階痔核硬化療法+結紮切除術)腰椎麻酔、4:PPH(環状自動
縫合器による根治術)全身麻酔である。1 年間に施行した痔核手術は179例で、年齢は
54.4±16.8歳、男:女は109:70であった。全痔核手術における手技の割合はALTA:25例
14%、LE:46例26%、LE+ALTA:92例51%、PPH:16例 9 %であった。各々の年齢は
ALTA:62.5±21.0歳、LE:54.4±14.8歳、LE+ALTA:53.1±16.6歳、PPH:49.1±10.9歳
であった。また各々の入院期間はALTA:4.3±1.5日、LE:8.3±3.7日、LE+ALTA:
7.2±2.2日、PPH:7.8±2.0日であった。
以上より、年齢分布ではALTAは高齢者に選択される傾向にあり、PPHは若年者に選
択される傾向にあった。また入院期間では、LE+ALTAはLE単独に比べて約 1 日の入院
期間の短縮が得られた。患者のQOLおよび治療費においても、LE+ALTA(四段階痔核
硬化療法 +結紮切除術の併用)は優れた治療法と思われた。
2
演題−3
ALTA導入後における痔核療法の治療成績と問題点
(入院手術と日帰り手術を比較して)
寺田 俊明1)、葛岡健太郎1)、平尾美紀子1)
堀 孝吏1),山田 麻子2)
医療法人俊和会 寺田病院 大腸肛門科1)、同 アイビー大腸肛門クリニック2)
【目的】ALTA導入後における痔核療法の治療成績と問題点をその合併症に注目し入院手
術と日帰り手術で比較した。
【対象】2006年 1 月∼2008年12月までの当法人における痔核関連手術は1,491例であり、そ
のうち術後半年以上経過した1,344例を対象とした。(病院では基本的に腰椎麻酔を基本と
する入院手術、クリニックでは局所麻酔もしくはサドルブロックにおける日帰り手術を施
行している)
【結果】入院における痔核手術は1,012例(ALTA単独:76例,ALTA併用結紮切除(以下
LE+ALTA):286例,結紮切除(以下LE):639例,PPH:11例)であり、日帰りにお
ける痔核手術は332例(ALTA単独:88例,LE+ALTA:68例,LE:176例)であった。
入院手術においてLEとLE+ALTA例は全症例の91.4%を占め平均入院期間は術後4.92日で
あり、日帰り手術におけるALTA単独とLE+ALTA例は全症例の67.2%であった。
術後合併症に関しては
脱肛再発
術後出血
入院
日帰り
入院
日帰り
5 /76
3 /88
1 /76
0 /88
LE+ALTA
2 /286
2 /68
2 /286
0 /68
LE
3 /639
0 /176
9 /639
2 /176
PPH
1 /11
0/0
1 /11
0/0
ALTA単独
そのほか術後狭窄は入院LE例のみ11例(1.2%)、直腸潰瘍は日帰りALTA単独と入院
LE+ALTAで 1 例ずつ認め、膿瘍形成は導入初期の日帰りALTA単独に 1 例認めた。
ALTA注入後切除を必要とした外痔核腫脹は入院手術のALTA単独で 2 例、日帰りALTA
単独で 2 例、日帰りのLE+ALTAで 1 例認めた。
【考察】根治性に関してはLE>LE+ALTA>ALTAの順であり、出血に関しては
ALTA>LE+ALTA>LEの順で安全性が高いと考える。ALTA療法使用における痔核手
術は増加傾向にあり根治性の高い治療をより侵襲の少ない手技として患者に提供できると
考えるが、術後合併症は入院・日帰り手術にかかわらず同程度認められ、術前患者に十分
なインフォームドコンセントを行い治療法の選択をし、合併症に対しては迅速に適切に対
応する必要がある。
3
演題−4
ALTA注の導入と応用
羽田 丈紀、北條 誠至、石山 守、満山 喜宣
金井 秀樹、平林 剛、増渕 正隆
厚木市立病院 外科
当院では2008年 3 月から痔核治療としてALTA注を導入し、50例の痔疾患に対しALTA
注を施行した。対象は49例の内痔核症例と 1 例の直腸脱症例である。
内痔核単独は30例で、他の19例は内痔核以外に何らかの肛門疾患を合併していた。外痔
核を合併した17例のうち、10例は内痔核以外にも外痔核にALTA注を施行した。注入量は
1 箇所当たり 1 mLとし、7 例に 1 箇所、2 例に 2 箇所、1 例に 3 箇所、それぞれ施行した。
2 例に皮下出血と自制内の疼痛を認めた以外は、合併症はなかった。
また11例に対し、結紮切除術(以下LE)を併施した。うち 1 例はLEを施行した痔核に
もALTA注を施行した。
直腸脱は、2 回のGants-三輪法を施行された再々発症例である。注入量は 1 箇所当たり
0.5∼1.0mLとし、40箇所、計34.3mL注入した。翌日から再脱出を認めた。
以上、内痔核に合併する外痔核に対するALTA注は、注入量 1 mL程であれば、大きな
合併症なく治療できると思われた。またALTA注とLEの併施に大きな問題はないと思わ
れる。
Gants-三輪法を施行された再発直腸脱症例に対してALTA注が無効であった理由は、粘
膜下層に対する効果発現過程が類似するためと思われた。
4
演題−5
痔核、直腸脱におけるALTAの使用経験(病理所見も含めて)
鳥越 義房1)、長谷川信吾1)、後藤 友彦2)、永澤 康滋3)
とりごしクリニック1)、升谷医院2)、川崎社会保険病院3)
とりごしクリニックでは平成17年 6 月の講習会以降373例にALTAを経験した。内訳
は:併用332例、単独23例、直腸脱症例18例である。
第 1 回内痔核治療法研究会総会において自験例の標本をHE、EVG染色で検討した結果、
ALTAの作用は病理学的に痔核静脈叢への障害と器質化であると発表した。
その発表内容を根拠として内痔核にはALTA単独、外痔核や肛門ポリープを伴っている
症例には結紮切除やゴム輪結紮を併用している。
その一方、ALTA治療で肛門上方∼直腸の硬化と狭窄が発生する症例も経験した(注射
部位、深さ、量にもよるが)。この状態を直腸脱治療に応用できないかと考えた。ALTA
多点法で意図的に硬化狭窄を作り出す事で直腸脱治療の一部であるMiwa-Gantを行うこと
ができ、その後テフロンテープでThierschを施行すると局所麻酔下に直腸脱の手術が可
能になった。これまで敬遠されていた高齢者、認知症患者に対しても局所麻酔、日帰りで
良い結果を得ている。
今回の発表では併用症例と直腸脱の手術方法、経時的変化そして病理所見を供覧しご批
判を仰ぎたい。
5
演題−6
ALTA注の外来での治療経験
笹口 政利1)、高橋 稔2)
吉田病院1)、千代田医院2)
私(笹口)は、週末は千代田医院で肛門科診療を行っています。当院は平成16年12月か
ら無床診療所に移行し手術症例は激減しました。しかし、ALTA注の登場で外来治療が可
能となりました。昨年の千代田医院における治療経験を報告します。
平成20年 1 月から12月まで、ALTA投与症例は51例。ゴム輪結紮症例と紹介先での手術
症例が21例でした。ALTA投与症例の比率は、71パーセントであり同時期の吉田病院の39
パーセントと比べ大きな開きがありました。投与後に肛門浮腫を生じた方が 1 名いました。
抗血小板剤投与中の方は 4 名で、1 名が投与後一過性脳虚血発作を生じ、専門病院へ数日
入院。1 名に直腸からの出血を認めましたが、保存的加療で改善しました。
肛門鏡診察が痛みなしにできる方には、無麻酔で無痛化製剤を投与、抗生剤投与は当日
はせずALTA投与翌日に発熱した場合にのみ投与しました。術前、術中の管理は痔核手術
に準じて行い、投与後 2 時間経過観察し自尿を確認し帰宅させています。
治療前の説明が功を奏しているのか幸運にも大きなトラブルはありません。
6
演題−7
ALTA投与後2年以上経過症例の再発例に関する検討
川上 浩司 當山 鉄男
敬愛会 中頭病院
【はじめに】脱出性内痔核に対するALTA注の臨床使用開始から 3 年が経過した。これま
で当研究会でも短期の効果、合併症などへの討論が盛んに行われたが、今後長期の成績に
ついての関心が高まるのは必然であると思われる。我々の施設では2005年 3 月よりALTA
の使用を開始しているが、今回投与後 2 年以上経過したALTA単独の症例に関して再発、
合併症の検討を行ったのでこれを報告する。
【対象と内訳】2005年11月より2006年11月までに施行したALTA単独の70例を検討した。
男性50例、女性20例、平均年齢は56歳であった。再発、合併症の判断は当施設の事情およ
び疾患の性質上カルテのレビューと電話連絡にて行った。本人に対して排便に関してなに
か困ったことはないかと質問し、無いと答えた場合は改めて再発に関しては脱出の有無を
質問し、合併症に関しては排便困難、出血、疼痛などの有無をチェックした。
【結果】有効回答数は65例で排便時に脱出すると回答された方は 4 例、排便困難 1 例、出
血は 1 例であった。また電話に出られた患者さんの殆どより感謝の言葉を頂いた。
【考察】電話での確認のみとなったが、前回同じ群の調査に比して脱出を訴える患者さん
の数は増加しておらず、最長 3 年 2 ヶ月までの効果持続を確認した。またその後わずかに
再発が増加傾向を認めたため、現在は適応を厳格化し脱出を伴う内痔核にALTAを適応し、
外痔を伴い患者さんが外痔に関して気にされている症例は、ALTAの外痔への効果は現時
点で不明であると説明し、LEを追加しているため再脱出の訴えは殆ど経験していない。
【結論】ALTAは適応を厳格化すれば非常に有効で効果の持続も期待できる。
7
演題−8
ALTA療法後の再発・手術満足度に関するアンケート調査
小林 孝、畠山 悟、松澤 岳晃
新潟臨港病院 外科・肛門科
【背景】ALTA療法は非観血的・低侵襲な硬化療法で従来の標準治療法である結紮切除術
(LE)に匹敵する根治的治療といわれているが、第Ⅲ相検証試験で投与後 1 年の再発率は
LEが 2 %であるのに対しALTAは16%で再発率は高いことが示された。
【目的】ALTA施行後1年以上経過した患者の再発と手術満足度を明らかにするためアンケ
ート調査を行った。
【対象】2005年10月から2007年 9 月までにALTA単独治療をした235例を対象とした。男性
161例女性74例、年齢は17歳から86歳まで平均年齢は56.8歳であった。
【結果】235名の患者に郵送法でアンケート調査用紙を送り174名から回答を得た。再発は
79名であった。再発を確認するため再発したと答えた79名に連絡し55名が受診した。その
結果は再発が30名、遺残内痔核が 7 名、外痔核が 7 名で、11名は再発を認めなかった。
ALTAの満足度は127名の患者が満足と回答し不満足は16名であった。再発の有無別の満
足度は、再発のなかった患者の 9 割以上が満足しているのに対し、再発した患者でも 5 割
の患者が満足と回答した。再発してもALTAの満足度が高い理由は簡便な手術が12名、術
後経過良好が 6 名、切らずにすんだが 5 名、痛くないが 1 名であった。
【結語】ALTA療法はLEと比較して再発は多いが低侵襲のため手術満足度が高く内痔核の
治療法の良い選択肢の一つになる。
8
演題−9
神戸地区におけるジオン(ALTA)治療の変遷
大澤 和弘1)、白野 純子1)、石川 稔晃1)、松田 直樹2)
大澤病院1)、松田肛門科医院2)
神戸地区においても、内痔核治療に対するALTA療法が比較的簡単かつ有効であること
が評価され、ますます普及しているが、ALTAをより安全に投与するためには症例の選択
と基本的な四段階注射法の遵守が重要と考えられる。
第 3 回総会において神戸地区におけるジオン(ALTA)治療の現況を報告したが、昨年
に引き続き第 4 回神戸ALTA研究会開催に際し、ALTAを施用している各施設に対して、
使用肛門鏡・麻酔方法・投与段階別投与量・一治療あたりの投与総量・四段階注射法の投
与順・四段階注射法以外の投与方法・他療法との併用の有無についてアンケート調査を実
施した。その結果と今後の課題について検討し、発表する。
9
演題−10
関西地区におけるALTA療法の現況
−合併症対策を中心に−
岡空 達夫
岡空肛門科
第 2 回および第 3 回の本研究会において、成績の向上と合併症の減少に対する工夫を加
えた結果を報告したが、重篤な合併症を減少することは可能であってもなくすことができ
ないという結論であった。そこで関西地区の研究会の了承を得、合併症対策を中心にアン
ケート調査を行なった。今回はその結果を報告する。
アンケートの内容は1)実施状況として①症例数と②単独か併用かに関して尋ねた。
2)具体的な実施方法として、①同意書の取得、②前投薬、③麻酔法、④製剤の種類、
⑤輸液とモニター、⑥肛門鏡の種類、⑦投与の順序、⑧マッサージ、⑨術後投与薬剤に関
して尋ねた。3)合併症としては、①下腹部痛、②血圧低下・徐脈、③出血・潰瘍形成、
④発熱、⑤膿瘍形成、⑥直腸狭窄に関して尋ねた。
その結果、下腹部痛を経験した施設は38%、血圧低下・徐脈を経験した施設が57%にみ
られた。出血・潰瘍形成に関しては73%にのぼり、出血症例の対処として外用薬投与、止
血剤投与、手術との報告があり、潰瘍形成は外用薬で治癒している。発熱は76%の施設が
経験しており、膿瘍形成は27%であった。膿瘍に対しては切開・排膿手術が奏功した。直
腸狭窄は41%に認められ、外用薬のみ、ブジー・用手拡張や切開で対処していた。
合併症は一部の施設に偏ることなく、少数ずつではあるがかなりの施設で経験していた。
また重篤な合併症の報告はなく、工夫を加えた治療により十分対処可能であると考えられ
た。
10
演題−1
1
根部結紮を併用するALTA療法(L・ALTA)の試み
出口 浩之
ときわ病院 外科
痔核根部の上直腸動脈流入部を結紮したうえでALTA療法を行い、良好な結果を得てい
るので報告する。
2008年 6 月から12月に行ったALTA療法55例(全例GoligherⅡ∼Ⅳ度)のうちALTA単
独28例ならびにLE/ALTA4例(ALTA群:A群)32例と10月以降に施行した根部結紮を
併用するALTA療法(L・ALTA群:B群)23例を比較して以下の結果を得た。A,B群
各々の 1 症例あたり・1 主痔核あたりのALTA注入量(mL)はA群では28.2±7.8・10.0±
3.9、B群では11.1±3.6・3.8±1.7であり、B群はA群に比較して 1 症例あたり(p<0.05)な
らびに 1 主痔核あたり(p<0.01)のALTA注入量は有意に少ない量にとどまった。副作用
と合併症はA群において徐脈 5 例、血圧低下 3 例( 2 例は重複)、硬結 4 例であったが、B
群ではまったく認められなかった。なお治療効果は著効(脱出や出血などの症状と疼痛等
の愁訴が消失したもの)A群:78.1%(25/32)、B群:91.2%(21/23)でありいずれも良好
であった。
L・ALTA療法は四段階注射法の第一段階にかえて根部結紮を行うという合目的な手法
により、より確実な血流遮断を図り、かつ、より少ないALTA総投与量で良好な治療成績
を得ることができる合理的な手技であると思われる。また、治療目的部位以外や静脈内へ
のALTA拡散を可及的に防ぐことにより治療目的を達するためのALTA注入量を少なく
抑えることが可能となり、その結果、徐脈や血圧低下などの副作用の発生も抑えられるも
のであると考えられる。
治療前後の症例提示とあわせて私が行っているL・ALTA療法の現状について報告す
る。
11
演題−12
外痔核部分切除、肛門静脈叢結紮症例に対するALTA注の浸潤療法
大井 康之
医療法人 大井医院
当院は、ALTA注の治療は2006年 5 月に開始し、2007年 1 月ごろから必要に応じて、
ALTA注単独例で肛門静脈叢がある場合や、外科的手術併用時に、第 4 段階において、外
痔核に浸透、および少量投与を開始してきた。
治療方法は、粘膜脱を主体とした痔核、および外痔核を主体とした脱肛に対して、
おもに三カ所の主痔核部分で、余剰皮膚(スキンタグ)等が認められた場合には、部分的
な痔核結紮切除手術を行い、また肛門静脈叢や血栓がある場合には、部分的に結紮を行なって、
切除部位の止血効果も期待し、第 4 段階のALTA注を外痔核にも少量投与を行い、内痔核
にはALTA注を施行している。
外痔核の切除の方法は、肛門狭窄が起きない様に、用手にて肛門の伸展をチェックしな
がら行なっている。
外痔核の切除と、少量投与した症例の術後経過は、肛門静脈叢の消失の効果が現れ、
肛門にスキンタグは認めず、肛門周囲はなめらかに治癒している。
粘膜脱、脱肛などの外痔核切除症例、および直腸脱の術中写真を中心にして検証した。
12
演題−1
3
排便時に発生する外痔核にALTAは有効か?
辻 順行、家田 浩男、宮田美智也
太田章比古、森 俊治、赤川 高志
家田病院
ALTAは平成17年に本邦に導入され、初めは内痔核に対する適応であった。その後粘膜
脱、直腸脱にも有効性がある事が確認された。今後新しい適応としては外痔核が検討され
ている。そこで今回外痔核に対する有効性を検討したので報告する。
【対象・方法】平成20年 9 月から10月の期間にALTAを単独で行った症例は18例であった。
内 2 例は怒責検査にて外痔核が主体の内外痔核で有る事が判明し「適応外のIC」を行った
が、本人の希望が強くALTAを行った。今回この 2 例とⅡ度でALTA施行後に再発したた
め怒責診断を行い外痔核の腫脹が再発の原因と判明した 1 症例の計 3 例を対象とし比較検
討した。また方法は内痔核Ⅱ度には 4 段階法で 3−3−1−1 mLの 8 mLを打ち込むが、外
痔核腫脹の症例は 2−2−1−3 mLの 8 mLではあるが外側に多く注入した。なお当院では
脱出を主訴として来院し、問診上の主訴と肛門鏡の所見とに相違がある症例では、怒責診
断を加えて行っている。
【結果】1.注入直後に肛門縁外側に腫脹を認めたが痛みもなく 1 ヶ月後に皮垂に変化した。
肛門縁外側の腫脹は 3・4 段階目にALTAを多く注入した事が原因と判断した。しかし排
便時の外痔核の腫脹は消失した。2.再発した症例は、前後の誤診断と 3・4 段階目の注入
が少ない事が再発につながったと思われた。
【結語】3・4 段階目に多く注入する事で排便時の外痔核の腫脹は予防されたが、術前の診
断が最も重要であった。
13
演題−14
ALTA療法を1回に痔核1個のみに対して行った結果について
深野 雅彦、星 可奈子、城 俊明
城クリニック
内痔核に対するALTA療法は非常に良好な効果をあげているが、一方で合併症について
も報告されている。我々はALTA療法を原則 1 回に痔核 1 個のみ外来で行い良好な結果を
得たので報告する。
【対象】2008年 1 月から12月まで当院でALTA療法を単独で施行した228例を対象とした。
年齢は平均54歳。性別は女性77例、男性151例であった。
【治療方法】〔適応〕GoligheⅡからⅣ度の脱出する痔核を適応とした。〔麻酔〕リドカイン
を用いた局所麻酔で行った。〔肛門鏡〕T式あるいはZ式肛門鏡を使用した。〔方法〕四段
階注射法に則り、1 回に痔核 1 個に硬化療法を行った。
【結果】① 1 症例あたりALTA療法を施行した痔核の個数は 3 個25例、2 個85例、1 個118
例であった。② 1 回のジオン投与量は平均8.0mLであった。③ALTA療法の後、効果が十
分でなく後日手術を行った症例は 3 例であった。④ALTA療法後鎮痛剤を使用した症例は
56例であった。⑥合併症は発熱 6 例、注射局所の粘膜壊死 2 例、痔核嵌頓 1 例であった。
【結語】1 回に 1 個の痔核にALTA療法を行う方法は、効果も十分あり、患者への肉体的
負担や合併症が少なく、外来で安全に行える方法と考えられた。
14
演題−1
5
ALTA注治療後の再脱出を減らすための工夫について
山口トキコ
マリーゴールドクリニック
【目的】第 3 回内痔核治療法研究会総会において再脱出症例の多くが30日以内と治療後早
期で、その原因としてALTAの投与量不足と四段階のうち第 1 、第 4 段階への投与の有無
が関係しているのではないかと発表しました。その後ALTA注治療を行った内痔核につい
て段階毎に投与量を記録することで、再脱出との関係を検討しました。
【対象】2008年 2 月21日から2008年12月15日までの約10ヶ月に脱出性内痔核(粘膜脱 2 例
を含む)に対して初回のALTA注治療を施行した81例を対象としました。男性17例(21.0%)、
女性64名(79.0%)で平均年齢は51.3歳でした。治療法の内訳はALTA単独が46例(56.8%)
、
併用が35例(43.2%)でした。
【結果】経過観察期間は最長で約 9 ヶ月、最短で約30日であるものの再脱出は認めません
でした。ALTA単独46例における総治療個数は111個で、1 例あたりの治療個数は平均2.4個、
ALTA平均投与量は14.3mLでした。111個のうち 2 から 4 段階まで投与した個数は74個
(66.7%)、1 から 4 段階まで投与した個数は20個(18.0%)でした。
【結語】前回発表時と比較してALTA投与量はほぼ同量で、4 段階への積極的な投与が再
脱出の減少につながるのではないかと考えられます。
15
演題−16
ALTA投与のための新しい先端形状の肛門鏡
松尾 恵五、辻仲 康伸、浜畑 幸弘、堤 修、赤木 一成
中島 康雄、高瀬 康雄、新井 健広、指山 浩志、田澤 章宏
星野 敏彦、南 有紀子、角田 祥之、北山 大祐
東葛辻仲病院
【目的】ALTA療法注射時には専用の筒型肛門鏡の使用が推奨されているが使い難い面も
あるため、現在の専用筒型肛門鏡の利点をいかしつつ、より安全・確実にALTAを注射で
きる肛門鏡を開発する。
【肛門鏡の特性】ストランゲ型やスリット付筒型肛門鏡では肛門外から痔核が一望しやす
いが痔核の上極付近が直視しにくいことと、スリットがあるため肛門鏡先端で角度をつけ
られないので注射針の刺入が筋層に対し接線方向になるため筋性抵抗がわかりにくく、ま
た薬液が肛門外に流出する危険が高い。
Z式肛門鏡は視野が狭く痔核膨隆全体の観察がしにくいため痔核の形状・部位が認識し
にくいが、肛門鏡に角度を付けることにより直腸壁固有筋層を圧排して注射針を垂直方向
に近く刺入できるため筋性抵抗がわかりやすい。さらに肛門鏡先端の肛門外側(歯状線)
側を強く圧迫することにより薬液の肛門外側への流出を防ぐ効果があると考えている。
【結果】Z式肛門鏡は先端が正円形断面であるが、より先端による圧迫を有効にする目的
で先端の形状をD型にした。(OからDへ)。
さらに従来のものより円錐部を短く太くした。この新しい先端形状の筒型肛門鏡は円周
の曲線ではなく直線部の辺で先端の圧迫ができるため薬液の肛門外への流出がより発生し
にくいと考えられる。また痔核視認性も向上した。欠点は口径が太いため肛門括約筋が充
分弛緩していないと挿入しにくいと思われる。
16
演題−1
7
内痔核硬化療法(ジオン注)における合併症と内視鏡的検討
山本 秀尚1)、黒川 彰夫2)
山本クリニック1)、黒川梅田診療所2)
H19年 9 月からH20年11月までの14ヶ月で施行したジオン単独治療例641例のうち検証で
きた303例における合併症の検討と内視鏡的な検討を行った。
【結果】対象は19∼92歳で平均52.2歳、1 回のジオン総量は 4 ∼18mLで平均7.2mLであった。
303例中潰瘍が17例:5.6%、痔瘻が 2 例:0.7%、軽度の狭窄が 1 例:0.3%であった。潰瘍
形成した部位のジオン投与量は 2 ∼10mL、平均4.3mLで、潰瘍形成部位については 0 時が
最も頻度が高かった。痔核内での潰瘍の位置は 1 ,3 ,4 段階すべてに発生し差はなかっ
た。再発例は 5 例(1.7%)で再投与で改善した。ジオン硬化療法施行例に下部大腸内視鏡
施行したのは303例中144例(47.5%)で、癌は 3 例(2.1%)、ポリープは62例(43.5%)、そ
のうちポリペクを行ったのは21例(14.6%)であった。
【考察】潰瘍形成している症例の約半数は出血症状がないまたは肛門鏡で潰瘍が確認しに
くい症例であった。潰瘍ができる原因は必ずしもジオンの量が多いとは限らず、今後注入
方法の工夫が必要であると考えられた。また大腸病変も多く潜伏している可能性があり、
今後肛門疾患の治療にあたっては大腸内視鏡検査も含めた検討の余地があると考えられ
た。
17
演題−18
ALTA療法との関連が疑われた非特異性直腸炎の1例
志田誠一郎
嶋田病院 外科
ALTA療法の合併症の中で直腸潰瘍と出血の報告例は散見される。当院で潰瘍を伴わな
い広範囲に及ぶ直腸炎を経験したので報告する。
【症例】70歳男性。主訴:肛門出血。痛みや脱出の訴えはなかった。肛門診にて 3 ,7 ,
11時方向の 3 か所にGoligher分類でⅡ、Ⅰ、Ⅰ度の内痔核を認めたため、それぞれ 9 ,6 ,
6 mLのALTAを注入した。その後は特に問題なく 2 日後に退院した。
【経過】退院 1 週間後再来したが、頻便と排便時の出血を訴えた。肛門診にて 7 時方向の
ALTA注入部に一致した圧痛あり。しかし明らかな出血は認めなかった。内服薬と軟膏に
て経過を追ったが軽快せず。退院28日後に大腸内視鏡検査施行。AV20cmまでの直腸粘膜
に地図状の不整形な発赤あり。生検にて非特異的炎症あり。しかし明らかな潰瘍形成はな
かった。ALTA注入部は硬結隆起が見られたが、粘膜面の炎症はなかった。その後内服薬
を変更しつつ外来フォローした。退院35日後には出血や排便回数の減少あり。50日後には
肛門違和感のみで出血は止まった。しかしその後排便回数が再上昇し、65日後には出血も
再度見られた。程度は経度であり、100日後には疼痛は消失。出血もほぼなくなった。123
日後治癒と判断した。
【結語】ALTAがきっかけと思われた直腸炎症例であるが、その後の長い経過と病変が広
範囲であり、直接の原因とも考えにくい事例であった。
18
演題−1
9
ALTAによる痔核治療の注射方法と合併症の検討
高野 正太、久野 三朗、緒方 俊二、佐伯 泰槇、福永 光子
田中 正文、坂田玄太郎、眞方紳一郎、山田 一隆、高野 正博
大腸肛門病センター 高野病院
【はじめに】ALTAを用いた注射方法は四段階注射法講習会にて投与法が定められている。
しかし、使用する器具などは施設、医師によって工夫がなされているのが現状であり、特
に肛門鏡に関しては講習会テキストでも数種類のタイプが紹介され悩むところである。当
院においては筒型であるZ式とケリー型である辻式の 2 つの肛門鏡を用いている。今回は
四段階注射後の合併症をそれぞれの肛門鏡で比較した。
【対象と方法】2005年 7 月から2008年 3 月まで当院にて四段階注射法にて治療を行った痔
核および直腸粘膜脱症例915例中、手技的に安定してきたと考えられる2007年 1 月以降の
519例を対象とした。Z式を使用した群を筒型群、辻式を使用した群をケリー型群とし、
疼痛、出血などの症状を有した潰瘍や排便障害などに関し比較検討した。
【結果】合併症は筒型群、ケリー型群でそれぞれ潰瘍0.8%、1.9%、排便障害0.4%、1.5%、
肛囲膿瘍 0 %、0.3%であった。
【考察および結語】ケリー型は痔核を上極から下極まで縦方向に観察できる利点があるが、
斜め方向に針を刺入するため予想以上に浅い層に注入する傾向がある。そのため潰瘍など
の合併症が比較的多く認められたと考えられる。一方筒型は痔核全体の観察が一度にはで
きないが、痔核を正面から観察できるため刺入深度の調節が容易であり、比較的安全に治
療が行われると考えられる。
19
演題−20
当院におけるALTA療法の現況
杉田 博俊、下島 裕寛、香取 玲美、岡本 康介
田中 良明、鈴木 裕、鈴木 和徳、松島 誠
松島病院大腸肛門病センター 肛門科
当院では痔核根治治療は結紮切除を標準的治療法と考えている。ALTAは内痔核主体の
痔核に対して、患者には結紮切除と比較して説明をした上で、ALTAを希望された症例に
行っている。
当院で平成18年 5 月から平成20年12月の間のALTA施行114症例(観察期間は 1 ヶ月∼
32ヶ月)について、その実施状況と経過を検討した。
症例は男性88例(平均年齢57.5歳)、女性26例(平均年齢62.5歳)で、ほとんどの症例は
腰椎麻酔下、腹臥位で行った。施行後は基本的に 2 ∼ 4 日入院させ経過観察とした。
術後合併症は直腸潰瘍が 5 例(4.4%)、血栓性内痔核が 3 例(2.6%)、血栓性外痔核が
5 例(4.4%)、外痔核腫脹が 5 例(4.4%)、他に原因の見つけられない肛門痛が 1 例、狭窄
はなかった。疼痛の強い内外痔核腫脹の 3 例に対しては結紮切除を行った。ALTA後の再
発は 5 例に認められ、再ALTA施行は 3 例(2.6%)、保存的治療にて経過観察中は 2 例
(1.8%)であった。
当院で行ったALTA症例における効果と合併症について、術前の痔核の状態とALTA
施行の状況と術後の経過を再評価し今後の治療に活かしていきたい。
20
演題−2
1
ALTA法の術後直腸肛門機能
野明 俊裕、荒木 靖三、藤 勇二、中川 元典、岩谷 泰江
小篠 洋之、豊永 敬之、鍋山健太郎、高野 正博
大腸肛門病センター くるめ病院
【背景】ALTAによる硬化療法合併症の一つとして肛門狭窄や肛門異物感などALTAによ
る組織の硬化に伴うものが存在する。
【目的】ALTA術後 3 ヶ月以上経過した症例の直腸肛門内圧を測定し、結紮切除術と比較
検討し、ALTAによる障害の有無について検討した。
【対象・方法】2005年 4 月から2008年 9 月までに当院で痔核手術を受けた内痔核もしくは
粘膜脱の症例は821例。このうち術前後に直腸肛門機能検査を施行できたALTA単独療法
10例、結紮切除術単独療法(以下LE)25例を対象とした。
【結果】術前の最大静止圧の平均値はALTA/LE:83.0/86.0cmH 2Oと差は無く、術後も
ALTA/LE:90.5/90.4cmH 2Oと差は認められなかった。一方最大収縮圧は術前ALTA/
LE:265/201cmH2OとややALTAで高値を示し、術後ALTA/LE:281/195cmH2OとLEで
有意に低値を示した(P=0.0144)。肛門管長、直腸感覚閾値、直腸最大耐容量は術前後と
も両者に差は認められなかった。
【考察】ALTAでは直腸耐容量が低下することが予想されたがLEとの差は認められなかっ
た。一方LEで最大収縮圧が低下しており手術による障害の検証が必要と考えられた。
21
演題−S1
ALTA、LEの併用手術による治療効果の検討
柴田 直哉、淵本 倫久
竹迫外科内科医院
【目的】元来、痔核手術に対してはLEが主体である。ALTA登場以来、効果、合併症など
の指針が示されている。今回我々はLEにALTAを併用し、切除箇所を減らすことで在院
日数、鎮痛剤使用日数に効果があるか、また合併症及び再発率について検討した。
【症例】当院で06年 6 月から08年11月までに内外痔核と診断し、結紮切除のみ、ALTAの
み、結紮切除とALTA併用を行った358例(男性226例、女性132例)、平均年齢は52±11歳
(18∼90歳)を対象とした。結紮切除のみ症例は43例でALTAのみ症例が121例、併用手術
症例が194例であった。
【方法】術後の退院日数と、退院後の鎮痛剤の使用状況を外来受診時に確認し、また術後
最長 2 年 4 ヶ月での合併症、再発率を再受診時に確認し比較検討した。
【結果】退院日数、鎮痛剤使用日数は結紮切除のみに比べALTA、併用手術症例が有意な
減少を認めた。(p<0.001)。合併症は結紮切除症例で 1 例術後出血を認めた。ALTA症例
では直腸潰瘍を 1 例、熱発を 1 例認めた。併用手術では術後出血が 1 例認められた。狭窄
は全例に認めなかった。再発はALTA症例に 2 例認めたのみで特に有意差は認めなかった。
【考察】痔核は全周性以外は 3 ヶ所出現するが、どれも同じ大きさ、形である場合は少な
い。診察時に 2 度であればALTAを第一選択とし、STを伴う場合はST切除を、外痔核が
発達している場合は外痔核のみ切除している。3 度の痔核でも同様であるがST、外痔核の
大きなものを伴う場合は結紮切除を考慮し、出来るだけ切除個数を減らすことがQOLに
も医療経済的にも有効性が高いと思われる。
22
演題−S2
硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸(ALTA)
単独内痔核治療における再発症例の検討
鉢呂 芳一、安部 達也、國本 正雄
くにもと病院 肛門科
【目的】硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸(ALTA)単独内痔核治療の中期・長期
成績より、再発症例を以下の(1)技術の向上(前期・後期に分けて)、(2)再発症状出現
までの期間、(3)ALTA投与量、の視点から検討した。
【症例】05年 4 月より08年12月までに施行したALTA単独内痔核症例は714例で、再発症状
を46例(6.4%)に認めた。
【結果】(1)ALTA治療の適応ならびに手技が安定した06年 4 月までを前期(A群292例)、
それ以降を後期(B群422例)とした場合、再発症状はA群36例(12.3%)
、B群10例(2.4%)
に認めた。(2)ALTA治療後 6 か月以上経過した後に再発症状を認めたのは、A群では14
例(4.8%)、B群では 6 例(1.4%)であった。(3)再発例47例のALTA投与量は24.4mLで、
その他の665例29.1mLと比較して有意に少なかった。なお、初年度の一時期において一つ
の主痔核に対しALTA投与量を 4 mL以下と制限した時期に限っては、47例中17例(36.2%)
に再発症状を認めている。
【結語】ALTA内痔核治療においては、技術の向上ならびに適応を厳格にすることで治療
成績は向上した。再発と判断する時期をALTA治療後 6 か月以降と定義すると、再発は非
常に少数であった。ALTA投与量が不十分であった場合、再発のリスクが高まるものと思
われた。
23
演題−S3
内痔核の根治を期待できる治療法の選択基準
斎藤 徹、佐々木宏和、徳永 行彦
大阪北逓信病院 外科・肛門科
当院では脱肛する内痔核に結紮切除術(以下LE)、ALTA注射(以下ALTA)、Circular
staplerを用いた痔核手術(以下PPH)を施行している。2005年 9 月から2008年 9 月までに
各治療法を施行した症例数は、LEが483例(32%)、ALTAが894例(60%)、PPHが121例
( 8 %)である。
治療法の選択に影響を及ぼした因子には、局所因子として、脱肛する内痔核の個数、静
脈成分の多寡(少ないと直腸粘膜脱に近い脱出の形態になる)、随伴して脱出する外痔核
の大きさ・形態(器質化の程度)、随伴して連動する皮垂の有無などが挙げられ、患者因
子として、痛みの少ない治療法の希望、外痔核や皮垂切除などの併施の選択、外来治療の
希望が挙げられる。
治療形態は、LEやPPHにALTAを併用した症例を除けば、ALTAは100%外来治療になり、
LEは25%が外来治療、75%が入院治療であるが、PPHだけは局所麻酔下では困難であり、
100%入院治療である。
再発は、LEでは皆無であるが、既往歴からは全周性の粘膜脱型脱肛症例に限られ、
PPHの再発もわずか 1 例であった。ALTAでは約 5 %の症例に再発を認め、7 mL以下の投
与量が少ない症例、粘膜脱型の脱肛症例、大きな皮垂・外痔核、器質化した外痔核を伴う
症例が主であった。ALTAの合併症として肛門周囲の疼痛と腫脹、発熱、出血などを認め
たが、重篤な合併症は認めなかった。
24
演題−S4
内痔核治療におけるLE、ALTA、両者併用療法の比較検討
松本 欣也、中川 建夫、友澤 滋
小野 芳人、串畑 史樹、渡辺 英生
渡辺病院 外科
平成15年 1 月から平成20年12月までに当院で外科的治療(PPH以外)を行った内痔核症
例の検討を行った。
対象はLEのみ335例、ALTA療法のみ197例、両者併用療法(LE+ALTA)240例、合
計772例であった。これらの治療法の年次推移を見ると、平成15年ではLE 78.9%、ALTA
療法16.7%、LE+ALTA 4.4%であったが、次第にLEのみが減少し、ALTA療法および
LE+ALTAが増加し、平成20年ではLE 4.6%、ALTA療法42.4%、LE+ALTA 53.0%とな
った。これらの群について、術後出血、狭窄、再発率を比較検討した。
術後出血に関しては腰椎麻酔下に止血した症例はLE 11例(3.3%)、ALTA療法 0 例( 1
例出血入院したが止血せず)、LE+ALTA 3 例(1.3%)であった。狭窄にてブジーあるい
は手術をした症例はLE 5 例(1.5%)、ALTA療法 0 例、LE+ALTA 1 例(0.4%)であっ
た。術後 1 年目の再発(再脱肛)はLE 0 例、LE+ALTA 0 例、ALTA療法14例(7.1%)
で、ALTA療法の再発例は治療初期の症例が多かった。LEにALTA療法を併用すること
により術後合併症を減らすことができ有用な方法と思われた。またALTA療法は術後合併
症は少ないが再発率は他の治療法に比べて多く、今後の検討課題と思われた。
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演題−S5
当院における現在までのALTA療法の現状
古川 聡美、佐原力三郎、山名 哲郎、岡本 欣也
岡田 大介、金古 康、西尾 梨沙、田中 浩司
森本 幸治、黒木 ゆり、小野朋二郎
社会保険中央総合病院 大腸肛門病センター
当院では2005年 4 月のALTA発売を受けて同年 7 月よりALTA療法を開始している。今
回、開始から2007年12月までにALTAを施行された症例について検討した。
この期間に痔核に対し何らかの外科的治療を施行した例は2,482例、そのうちALTA療
法を加えたものが554例であった(22.3%)。ALTA療法のみ施行した例は166例(6.7%)で
あった。
1 . ALTA療法のみ施行した症例の検討を行った。腰椎麻酔下施行が155例、局所麻酔下
が11例であった。平均年齢59.3歳、男性122例:女性44例(2.77:1 )、術後の平均観察
日数は167.3日。術後再発した例は20例(12.0%)、うち再手術は11例(6.6%)、再度
ALTA療法を施行した例は 4 例(2.5%)であった。
2 . ALTAに加え痔核手術を施行する場合、当院では、①主痔核を結紮切除し副痔核に
ALTAを投与する場合、②内痔核にALTAを加え外痔核を切除する場合の二通りが
行われている。症例数では①98例、②268例であった。①において再発が 1 例あった
が投薬のみで経過観察中である。②においては再発が 5 例あり(1.9%)、2 例が手術、
1 例が同様の手技におけるALTA投与、1 例が経過観察であった。
3 . 痔核以外の肛門疾患とALTAの併用例もあった。痔瘻手術に28例、裂肛・肛門狭窄手
術に23例、肛門ポリープ切除に10例、膿皮症手術に 2 例であった。痔核再発例はなか
った。
ALTA療法開始から 3 年を経たが、初期のころの手術手技においては不安定であったこ
ともあり、ALTA単独使用において再発率は高かった。また手技の性格上、施術後の通院
が短く、今回の成績をもって長期成績としてよいかどうか不明である。
一方、痔核のみでなくその他の肛門疾患との併用も多数施行しており、ALTAの使用は
多岐にわたって行えるといえた。
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演題−S6
痔核に対するALTA硬化療法の適応の変遷と長期成績
浅野 道雄、川上 和彦、中井 勝彦、木村 浩三
野中 雅彦、田中 荘一、矢野 孝明、松田 保秀
松田病院
【適応患者の内訳】2008年12月までに、606人に対し延べ620回のALTA硬化療法を施行し
た。痔核症例580例、直腸脱・WhiteHead肛門24例、痔瘻・裂肛手術時の併用15例であった。
同期間の全痔核手術は2,777件で、ALTA硬化療法は21.4%であった。直腸脱・WhiteHead
肛門に対するALTA硬化療法は、2006年までに22例、2007年以降は 2 例であった。外痔核
成分のある症例は2005年の37.7%から2008年61.1%へと増加していた。
【治療法の内訳】痔核に対し、硬化療法単独で治療した症例は457例、他の観血的治療に併
用したものが123例(20.7%)であった。併用術式はLE1-2、皮垂切除の順に多かった。併
用例は、2008年には26.1%と増加傾向にあった。
【成績】観察期間の中央値190日。再発に対する再手術は25例(4.3%)で、無再手術率は 1 年、
3 年で各々97.0、95.8%であった。2005年の再手術率は9.8%であったが、2006年以降2.8−
4.0%と半減していた。1 箇所あたりの硬化剤注射量は、再発例、無再発例に差を認めなか
った。
【まとめ】ALTAの使用当初に比して、外痔核成分を持つものを適応に広げていながら、
再発症例は減少していた。治療成績の向上には、LE・皮垂切除などの併用により適切な
適応を選択することが重要である可能性が示唆された。
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特別講演
ALTA療法の経時的な病理学的変化と臨床効果について
−実験的検討をふまえて−
黒川 彰夫
黒川梅田診療所
「ALTA療法の病理学的検討−実験的解析−」
Pathological Study of Sclerosing Treatment
with Aluminum Potassium Sulfate Hydrate Tannic Acid(ALTA)
黒川彰夫1) 池田五子2)
高木司郎2)
1)黒川梅田診療所 2)田辺三菱製薬株式会社
痔核の最新療法の中でALTA療法は、4 年近くで80,000例を超す圧倒的な症例があり、
術後成績の解析も丁寧に為されている。元来、注射硬化療法は保存療法と手術療法の中間
的治療法とされ、根治性については否定的であったが、ALTA注射の出現によって、最近
では注射硬化療法を痔核に対して根治目的で実施するようになった。ALTA注射は肛門科
専門医にとって痔核治療に不可欠な方法となってきているのが現状である。その結果、
「痔核の根治」の概念についても変化を齎してきている。しかし、一方ではALTA療法の
安全性を危惧する術者も少なからず存在するのも事実である。
そこで筆者らは、動物実験で病理学的変化を経時的に解析し、ALTA療法の根治性と安
全性について検討したので報告する。
【実験】ALTAラット単回皮下注射後、52週に亘って長期間のALTAによる病理組織学的
変化を観察した。その結果、4 週頃にALTAを貪食したマクロファージからなる肉芽腫
(非乾酪性類上皮細胞肉芽腫)が形成された。肉芽腫は時間の経過とともに線維組織に置
換され、縮小した。しかし、52週後においても、投与局所に線維化、マクロファージの浸
潤、ALTAの残存が認められた。
【結果】実験の病理学的知見を踏まえた結果をまとめると次のようになる。
1 )ALTA注射は周囲組織への浸潤性が少ない安全な薬剤である。
2 )ALTA注射による炎症は初期に筋層にまで達し、様々な変性をもたらすが、この変化
は痔核に効果的に働く作用である。
3 )ALTA注射による組織学的な線維化には少なくとも13週を要することが判明した。
4 )ALTAによる線維化は病理組織学的に 1 年後にも残存する。この所見はALTAの効果
が長期に持続することを示唆した。
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