重 心 2005.12.22 重心問題 解法虎の巻 1. 半円・4分円 2. 円弧 3. 扇形 4. 半球殻 5. 半球体 6. 厚みのある半球殻 7. 三角形 8. 円錐 9. 円錐台 10. 穴あき板 11. 空洞のある半球ボール 1 重心問題 解法虎の巻 関西大学工学部物理学教室 齊藤 正 重心を求める場合、2 質点系の重心の求め方が基本。実際の物体では連続体であるので、積分 形式で求める場合が多い。これらの式は 3 次元のベクトル形式で書かれている通り、1 つの式は実際 にはx、y、zに関する 3 つの式を意味している。 ※対称性に注意すると、必ずしもx、y、zに関する3つの式を計算する必要はないことが多い。 2質点系の重心 n質点系の重心 r r r m1r1 + m2 r2 rG = m1 + m2 n r r rG = ∑ mi ri i =1 n ∑ mi i =1 ※組み合わせ構造では、①各部分の重心を求め、②各部分の重心に各々の質量が集中している 多質点系と見なして求める。 ※穴あき構造では、穴の部分をマイナスの質量として扱う。 連続体の重心 r r ρ ( r ) r dV r ∫ rG = r ∫ ρ ( r ) dV (ρは体積密度、dVは微小体積) 座標は、物体の形状に応じて、極座標や円筒座標を用いる。質量が線状分布、面状分布の場 合にはそれぞれ線密度τ、面密度σを使い、dV を ds、dS に置き換えて、線積分、面積分を行う。ただし、 密度が一定な場合には、積分の外に出てしまうので、密度を1として計算してもかまわない。線積分、 面積分、体積積分では、微小長、微小長方形、微小直方体の各辺を積分変数で表して、正しく積 分変数の変換を行うことがポイント。 2 重心(質量中心)を求める 半円・4分円 密度が一様な半径 a の薄い半円および 4 分円の板の質量中心を求めよ。 〔半円〕 質量中心は対称軸(y軸)上にあるから xG =0 である。 x 軸からの距離 yG を求めれば良い。2 次元極座標で面積分を行うと dS = rdrdθ , y = r sin θ yG = y π a 2 ∫ σydS = σ ∫0 r dr ∫0 sin θdθ を得る。 a π σ ∫ rdr ∫ dθ ∫ σdS 0 0 rdθ G(0,yG) X a3 [− cos]π0 4a = 3 2 = 3π a π 2 O dr r dθ a x 〔4 分円〕 対称性から半円と4分円の重心は同じであることがわかるが、計算すると以下のようになる。 図のように置くと y については半円のときと同様に y dS = rdrdθ , y = r sin θ a π /2 ∫ σydS = σ ∫0 r dr ∫0 sin θdθ yG = a π /2 σ ∫ rdr ∫ dθ ∫ σdS 0 0 2 a3 [− cos]π0 / 2 4a 3 = = 3π a2 π 2 2 G(xG,yG) X O a x x と y の対称性を考慮すれば、x についても y と同じになることがわかるが、あえて計算すれば、以 下の通り。 a 2 π /2 ∫ σxdS = σ ∫0 r dr ∫0 cos θdθ xG = a π /2 σ ∫ rdr ∫ dθ ∫ σdS 0 0 = 4a 3π 3 重心(質量中心)を求める 円弧 密度が一様で半径 a,中心角 2φの円弧の重心 G と中心点 O との距離 d を求めよ. 2 次元極座標で線積分する。対象性より重心がx軸上にある(yG=0)のは明確であるから、xGを求め る。 ds = adθ x = a cosθ xG = y ∫ x ⋅ a dθ ∫ a dθ a 2φ xG φ a = 2 ∫ cosθdθ −φ −φ ∴d = 4 a sin φ φ x φ a ∫ dθ = O 2a sin φ 2φ d 重心(質量中心)を求める 扇形 密度が一様で半径 a,中心角 2φの扇形の重心 G と中心点 O との距離 d を求めよ. 2 次元極座標で面積分する。対称性より重心がx軸上にある(yG=0)のは明確であるから、xGを求め る。 dS = dr ⋅ rdθ = rdrdθ x = r cosθ ∫ xσdS ∫ σdS σ r cosθ ⋅ rdrdθ = ∫ σ ∫ rdrdθ y xG = 2φ xG O x φ a ∫ r dr ∫ cosθdθ 2 = a −φ 0 a φ 0 −φ d ∫ rdr ∫ dθ a3 ⋅ 2 sin φ 2a sin φ 3 = ∴d = 2 3 φ a ⋅ 2φ 2 5 重心(質量中心)を求める 半球殻 密度が一様な半径 a の薄い半球殻の質量中心を求めよ。 底面の中心に垂直に z 軸をとると、対称性から、質量中心は z 軸上にある。面密度をσとすると、 dS = a 2 sin θdθdφ , z = a cos θ zG = z ∫ σzdS ∫ σdS π π σa ∫ dφ ∫ sin θ cos θdθ = π π σa ∫ dφ ∫ sin θdθ 3 2 asinθdφ /2 0 θ 0 2 2 0 /2 0 sin 2θ dθ a∫ 0 2 = [- cosθ ]π0 / 2 O π /2 6 a ⎡ − cos 2θ ⎤ 2 ⎢⎣ 2 ⎥⎦ 0 y asinθ x π /2 = adθ = a 2 a dφ asinθdφ 重心(質量中心)を求める 半球体 密度が一様な半径 a の半球体の質量中心を求めよ。 底面の中心に垂直に z 軸をとると、対称性から、質量 z rdθ 中心は z 軸上にある。密度をρとすると、 dr dV = r 2 sin θdrdθdφ , z = r cosθ ρzdV zG = ∫ ∫ ρdV 2π a π /2 ρ ∫ r 3dr ∫ dφ ∫ sin θ cosθdθ = 0 a 0 2π 0 π / 2 ρ ∫ r 2 dr ∫ dφ ∫ sin θdθ 0 0 0 π /2 rsinθdφ θ O rsinθ a x dφ r y rsinθdφ a 4 ⎡ sin 2 θ ⎤ ⎢ ⎥ 4 ⎣ 2 ⎦0 = 3 a [- cosθ ]π0 / 2 3 3a = 8 7 重心(質量中心)を求める 厚みのある半球 外径a、内径bの厚い半球殻の重心を求めよ。 半径aの球と半径bの球の重心を求めればよい。各々 z rdθ 3 3 の重心は半球体の重心であるから、 a, b である。また、 8 8 rsinθdφ 14 2 各々の質量は、密度をρとして、 πρa 3 = πρa 3 、 23 3 θ 14 2 πρb3 = πρb3 である。内球の部分の質量を負として 23 3 扱えば、以下のように重心が求められる。 2 3 2 3 πρa 3 ⋅ a − πρb3 ⋅ b 8 3 8 xG = 3 2 2 3 3 πρa − πρb 3 3 3 4 a − b4 8 = 3 a − b3 3 (a + b ) a 2 + b 2 = 8 a 2 + ab + b 2 ( ) ( 8 ) b O rsinθ a x dφ r rsinθdφ y 重心(質量中心)を求める 三角形 密度が一様な薄い三角形の質量中心を求めよ。 三角形の各頂点の座標を、O(0,0)、A(a,h)、B(b,0)とすると、 OA、 y AB の各直線は、次のようになる。 OA: x = A (a,h) a b−a y, AB : x = b − y h h したがって、積分範囲として、 x : a b−a y→b− y 、 y : 0 → h をとれ h h O B(b,0) x ばよい。また、重心を求める公式の分母は三角形の面積であるから、 bh 2 となる。したがって、 b− bh xG = ∫ xdS = ∫a y 2 h b−a y h h xdx dy 0 ∫ 2 2 b−a ⎞ ⎛a ⎞ ⎤ 1 h ⎡⎛ = ∫ ⎢⎜ b − y ⎟ − ⎜ y ⎟ ⎥dy h 2 0 ⎢⎣⎝ ⎠ ⎝ h ⎠ ⎥⎦ b(b − 2a ) 2 ⎤ 1 h⎡ 2b(b − a ) = ∫ ⎢b 2 − y+ y ⎥dy 0 h 2 ⎣ h2 ⎦ 1⎛ b(b − 2a ) ⎞ h = ⎜ b 2 h − b(b − a )h + h ⎟ = b(a + b ) 2⎝ 3 ⎠ 6 ∴ xG = a+b 3 b− bh yG = ∫ ydS = ∫a y 2 h = b−a h y h dx 0 ∫ b−a a 1 h⎛ b− y− ⎜ ∫ h h 2 0⎝ ydy ⎞ y ⎟ ydy ⎠ h b ⎡h 2 1 3⎤ b ⎛ h3 1 ⎞ bh 2 = ⎢ y − y ⎥ = ⎜⎜ − h3 ⎟⎟ = h ⎣2 3 ⎦0 h ⎝ 2 3 ⎠ 6 ∴ yG = h 3 9 重心(質量中心)を求める 円錐 底面の半径が a、高さが h の密度が一様な直円錐の質量中心を求めよ。 z 底面の中心を原点とし、右図のように各座標を設定する。対称 h 性から重心はz軸上にあることは明らか。高さzの位置でz軸に垂直 に切ったときの切り口の円の半径を r0 とすると、 r0 = a (h − z ) h dz である。円筒座標で考えると、 θ したがって、重心のz座標 zG は以下のように求まる。 ρzdV ∫ zG = ∫ ρdV 2π h ∫ rdr ∫0 dθ ∫0 zdz = 0r h 2π 0 ∫0 rdr ∫0 dθ ∫0 dz r0 2 ∫0 2/ ⋅ 2π ⋅ zdz = 2 hr 0 ∫0 2 ⋅ 2πdz 2 ha 2 ∫0 h2 (h − z ) ⋅ zdz = 2 ha 2 ∫0 h2 (h − z ) dz h h = 10 ⎡ h 2 z 2 2hz 3 z 4 ⎤ − + ⎥ ⎢ 2 3 4 ⎦0 ⎣ h ⎡ 2 z3 ⎤ 2 ⎢h z − hz + ⎥ 3 ⎦0 ⎣ rdθ O dV = rdrdθdz r0 dr z 1 2 1 − + 1 = 2 3 4h= h 1 4 1−1+ 3 x r y 重心(質量中心)を求める 多角錐 高さが h の密度が一様な多角錐の質量中心が底面から h/4 にあることを示せ。 底面上に原点をとり、右図のように各座標を設定する。底面積を S 、 z 高さzの位置でz軸に垂直に切った断面積を S ' とすると、 h 2 ⎛h−z⎞ S'= ⎜ ⎟ S ⎝ h ⎠ z である。重心のz座標 zG は以下のように求まる。 S’ h zG = ∫0 S ' zdz h ∫0 S ' dz O y S 2 −z⎞ ∫0 ⎜⎝ h ⎟⎠ Szdz = 2 h⎛ h − z ⎞ ∫0 ⎜⎝ h ⎟⎠ Sdz 1 h 2 h z − 2hz + z 3 dz 2 ∫0 = h h 3 h = 4 h⎛ h ( x ) 11 重心(質量中心)を求める 円錐 底面の半径がa、高さがhの直円錐の頂点からh/2切り取った円錐台の重心を求めよ。 〔解答1〕 z 底面の中心を原点とし、右図のように各座標を設定する。対称性 h から重心はz軸上にあることは明らか。高さzの位置でz軸に垂直に切 ったときの切り口の円の半径を r0 とすると、 r0 = h/2 z a (h − z ) h dr dz rdθ O である。円筒座標で考えると、 θ r y dV = rdrdθdz したがって、重心のz座標 zG は以下のように求まる。 zG = r0 = x ∫ ρzdV ∫ ρdV 2π rdr ∫ dθ ∫ h/2 ∫0 0 0 zdz r0 2π h/2 θ r rd d ∫0 ∫0 ∫0 dz 2 r ∫0 02 ⋅ 2π ⋅ zdz = 2 h/2 r 0 ∫0 2 ⋅ 2πdz 2 h/2 a 2 ∫0 h2 (h − z ) ⋅ zdz = 2 h/2 a 2 ∫0 h2 (h − z ) dz h/2 h/2 = ⎡ h 2 z 2 2hz 3 z 4 ⎤ − + ⎥ ⎢ 3 4 ⎦0 ⎣ 2 h/2 ⎡ 2 z3 ⎤ 2 ⎢h z − hz + ⎥ 3 ⎦0 ⎣ 1 1 1 − + 11 = 8 12 64 h = h 1 1 1 56 − + 2 4 24 〔解答2〕 高さhの円錐の重心は底面からh/4の位置にある。円錐台を大きな円錐から小さな円錐を切り取っ たと考えて、2物体の重心を合成して求めることが出来る。 小円錐の質量をmとすると大円錐の質量は8mとなる。円錐台の底面の中心を原点とすると、大 円錐の重心は(0,0,h/4)、小円錐の重心は(0,0,5h/8)となる。小円錐の質量を負と考えて合成する 12 と、 zG = = 5 h − m⋅ h 4 8 8m − m 8m ⋅ 11 h 56 13 重心(質量中心)を求める 穴あき板 (i) 半径 a ,面密度 ρの一様な円板の中心から距離 d の点を中心とし,半径 b (2 b<a)の円形の穴をつくるとき重心の位置を求めよ. (ii)穴の部分に面密度σの円板をうめこむとどうなるか. (i) 穴の部分の質量を負と考えればよい。 y 2 質点の重心の公式は xG = m1x1 + m2 x2 m1 + m2 ここで、原点Oのx座標をx1とすれば、 (x2,0) a x O m1 = πρa 2 b m2 = πρb 2 x1 = 0 d x2 = d となり、 − πρb 2 d xG = πρ a 2 − b 2 ( =− ) b 2d a 2 − b2 (ii) 同様に、穴の部分に別の重さ(面密度 σ)のものが入ったのであるから、穴が開いた状態の重心 位置と穴の中心位置に 2 質点があると考えて、 ( ) ⎛ b2d ⎞ ⎜ πρ a − b ⎜ − 2 2 ⎟⎟ + πσb 2 d ⎝ a −b ⎠ xG = πρ a 2 − b 2 + πσb 2 2 2 ( = 14 b d (σ − ρ ) ρ a 2 − b 2 + σb 2 ( 2 ) ) 重心(質量中心)を求める 空洞のある半球ボール 密度ρの材料でできた半径 a の球形ボールの中に球状の空洞が空いている。ボールを水中に 入れたときに鉛直となる方向を z 軸とし、ボールの中心を原点として z 軸と直交するように x、y 軸を ( ) 設定する。ボールを xy 面で切断して半球状としたとき、ボールの質量が 4πρ a 3 2 − b3 3 であった。 半球体の底面の縁にある点 P で吊るしたところ、底面と鉛直のなす角は θ であった。ボールの中心 と空洞の中心との距離 l を求めよ。 空間のない半球体ボールの質量 m1 を、空洞と同じ大きさ z のボールの質量 m2 をとすると、 (0,0,l) 2 4 m1 = πρa 3 、 m2 = πρb3 3 3 重心の座標を (0, zG ) とすると、吊るしたときの鉛直面と底 O a y 面とのなす角から、 zG = a tan θ x P 3 また、この重心は m1 と − m2 の重心と考えると、半球体の重心が a であるか 8 ら 3 m1 a − m2l zG = 8 m1 − m2 2a θ 3 m1a − (m1 − m2 )zG 8 ∴l = m2 = 3 m1 m − m2 zG a− 1 8m2 m2 2 2 4 πρ a 3 πρ a 3 − πρ b 3 3 a− 3 zG = 3 4 4 3 3 8 πρ b πρ b 3 3 3a 4 a 3 − 2b 3 a tan θ = − 16 b 3 2b 3 3 15 重心(質量中心)を求める 空洞のあるボール 密度ρの材料でできた半径 a の球形ボールの中に球状の空洞が空いている。ボールを水中に 入れたときに鉛直となる方向を z 軸とし、ボールの中心を原点として z 軸に直交するように x、y 軸を ( ) 設定する。ボールの質量が 4πρ a 3 − b3 3 であり、重心の位置が (0,0, zG ) であるとき、ボールの中 心と空洞の中心の距離 l を求めよ。 空間のないボールの質量 m1 を、空洞と同じ大きさのボ z ールの質量 m2 をとすると、 4 4 m1 = πρa 3 、 m2 = πρb3 3 3 (0,0,l) 空洞の中心を (0,0, c ) とすると、 zG = ∴c = − m2c m1 − m2 m2 − m1 zG m2 4 4 πρb3 − πρa 3 3 = 3 zG 4 πρb3 3 ⎛ a3 ⎞ = ⎜⎜1 − 3 ⎟⎟ zG ⎝ b ⎠ ⎛ a3 ⎞ l = c = ⎜⎜ 3 − 1⎟⎟ zG・・・(Q a > b ) ⎝b ⎠ 16 O x a y
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