幼児期に躾られたモラルと、成人後の所得、倫理観の調査

定例会見資料4
幼児期に躾られたモラルと、成人後の所得、倫理観の調査
神戸大学社会科学系教育研究府特命教授西村和雄による調査研究
共同研究者:平田純一(立命館アジア太平洋大学)、八木匡(同志社大学)、浦坂純子(同志
社大学)
9 月 13 日に発表された「躾と所得」の調査結果とその後に追加的に明らかになった「躾と
倫理観」の結果について以下に述べる。
1.13 日に発表した結果:「躾と所得」
Goo Research (NTTコム
オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社)を
通じて、2012 年 2 月 20 日から 2 月 24 日にかけてインターネット調査を行った。調査票配
布は Goo Research 社に登録しているモニターの中から無作為に選定した 90000 件に対して
行っており、有効回答数 15949 件であった。男性比率が 52.7%、女性比率が 47.3%、大卒以
上の学歴を持つ者の比率は 49.9%、平均年齢が 43.27 歳。
アンケートの中で、子供のころに、
「子どものころに周りの大人からよく言われたことで、
今でも覚えていること」として、ルールを守る, あいさつをする, 他人に親切にする, 勉
強をする, 親の言うことを聞く, うそをついてはいけない, ありがとうと言う,大きな声
を出す,の言葉について尋ねた(複数回答)。それぞれの言葉について、イエスと答えた人と
ノーと答えた人の平均所得を調べた結果が図 1-1、図で 1-2 である。
図1-1 躾の有無別平均所得
460.0
450.0
440.0
430.0
420.0
410.0
400.0
390.0
380.0
370.0
448.5
414.0
442.7
426.5
398.8
はい
いいえ
413.4
421.2 418.5
図1-2 躾の有無別平均所得
450.0
440.0
430.0
420.0
410.0
400.0
390.0
439.7
423.6
417.5
433.2
418.6
はい
430.4
411.4
415.1
いいえ
図1-1および図1-2で示されているように、労働市場の評価に大きな影響を与える躾は、
「うそをついてはいけない」、「他人に親切にする」、「ルールを守る」、「大きな声を
出す」、「勉強をする」である。ただし、「大きな声を出す」という躾を受けた者は、全
体の1割以下で有り重要な躾とは判断できない。そこで、「うそをついてはいけない」、
「他人に親切にする」、「ルールを守る」、「勉強をする」を「4つの基本的なモラル」
と定義する。この4つのモラルの躾に関して、所得との関連を表2でまとめている。
図2 4つの躾(うそをつかない、他人に
親切にする、ルールを守る、勉強をする)
をすべて受けた者と、少なくとも1つは受
けていないものの平均所得比較
479.6
500.0
415.4
450.0
400.0
350.0
4つすべて受けた(N=842)
少なくとも1つは受けていない(N=12322)
図3 4つの躾(うそをつかない、他人
に親切にする、ルールを守る、勉強をす
る)をすべて受けた者と、1つも受けてい
ない者の平均
479.6
480.0
430.0
393.4
380.0
4つすべて受けた(N=842)
1つも受けていない(N=4020)
以上については、朝日放送
新聞
朝日新聞
西日本新聞
「キャスト」(9 月 13 日)、NHK ニュース(9 月 14 日)、毎日
産経新聞(9 月 14 日)で報道された。
2.新たな分析結果「躾と倫理観」(今回の発表)
先の発表で重要な意味を持つことが分かった 4 つの基本的モラルの躾をすべて受けた人の
グループと、その 1 つから 3 つをうけた人のグループ、1 つも受けていない人のグループに
ついて、
急いでいる場合は、行列の途中に割り込んでもよい
酒を飲んだら絶対に運転してはいけない
年老いた親の面倒は子どもが見るべきである
政治家が利権や不正な資金を入手するのはやむを得ない
不正を発見すれば、速やかに通告すべきである
面倒事にはなるべく関わりたくない
ライバルが困っていても手を差し伸べようとは思わない
脱税行為は許されない
法令順守はどんな場合でも最優先される
の 9 つの行為のそれぞれにどのような判断をするかを調査した
それぞれの行為に、1.そう思わない、2.どちらかと言えばそう思わない、3.どちら
かと言えばそう思う、4.そう思う、といった 4 段階の評価で回答を得て、その回答が「そ
う思う」であれば4、
「どちらかと言えばそう思う」であれば3、
「どちらかと言えばそう思
わない」であれば 2、
「そう思わない」であれば1のように点数化した。更に、その点数を 4
つの基本的モラルの躾をすべて受けた全員について平均する、4 つのうち 1 つから 3 つを受
けた全員について平均する、1 つも受けていない全員について平均すると以下の表と棒グラ
フが得られる。
下の表では、
「政治家が利権や不正な資金を入手するのはやむを得ない」以外は、4 つの
モラルをすべて受けたものが、統計的に強い有意性をもって、他のグループより倫理的な判
断を行っていることが示されている。
その次の棒グラフでは、それぞれの行為に対する倫理的判断と 4 つの基本的モラルが深
く関係していることが見られる。
表
4 つの躾をすべて受けていないもの、1つでも受けていないもの、そしてすべて受けた
ものとの倫理レベル比較
度数
急いでいる場合
平均値
標準偏差
標準誤差
4 つの躾をすべて受けていない
4886
1.1560
.48120
.00688
4 つの躾の内 1 つから 3 つ受けてい
9908
1.1288
.43512
.00437
1010
1.1158
.44682
.01406
15804
1.1364
.45078
.00359
4 つの躾をすべて受けていない
4920
3.7880
.63379
.00904
4 つの躾の内 1 つから 3 つ受けてい
9955
3.8382
.56719
.00568
1010
3.8584
.56732
.01785
15885
3.8239
.58911
.00467
4 つの躾をすべて受けていない
4653
2.9467
.83285
.01221
4 つの躾の内 1 つから 3 つ受けてい
9533
3.0682
.76865
.00787
977
3.2170
.77750
.02487
15163
3.0405
.79269
.00644
4 つの躾をすべて受けていない
4766
1.3086
.65479
.00948
4 つの躾の内 1 つから 3 つ受けてい
9714
1.2883
.62986
.00639
986
1.2718
.63817
.02032
15466
1.2935
.63822
.00513
は、行列の途中
に割り込んでもよ
い***
る
4 つの躾をすべて受けている
合計
酒を飲んだら絶対
に運転してはいけ
ない***
る
4 つの躾をすべて受けている
合計
年老いた親の面倒
は子どもが見るべ
きである***
る
4 つの躾をすべて受けている
合計
政治家が利権や不
正な資金を入手す
るのはやむを得な
い*
る
4 つの躾をすべて受けている
合計
不正を発見すれ
4 つの躾をすべて受けていない
4646
3.1851
.71713
.01052
4 つの躾の内 1 つから 3 つ受けてい
9548
3.2472
.68553
.00702
974
3.3953
.66076
.02117
15168
3.2377
.69558
.00565
4 つの躾をすべて受けていない
4769
3.1048
.75440
.01092
4 つの躾の内 1 つから 3 つ受けてい
9689
3.0304
.76637
.00779
985
2.9766
.84009
.02677
15443
3.0500
.76856
.00618
4 つの躾をすべて受けていない
4361
2.0695
.83363
.01262
4 つの躾の内 1 つから 3 つ受けてい
9055
1.9679
.77611
.00816
951
1.7918
.78725
.02553
14367
1.9871
.79771
.00666
4 つの躾をすべて受けていない
4808
3.4183
.78017
.01125
4 つの躾の内 1 つから 3 つ受けてい
9784
3.5047
.73073
.00739
993
3.6455
.65779
.02087
15585
3.4870
.74414
.00596
4 つの躾をすべて受けていない
4387
2.7680
.83660
.01263
4 つの躾の内 1 つから 3 つ受けてい
9105
2.8455
.81449
.00854
940
2.9585
.80823
.02636
14432
2.8293
.82227
.00684
ば、速やかに通告
すべきである***
る
4 つの躾をすべて受けている
合計
面倒事にはなるべ
く関わりたくない
***
る
4 つの躾をすべて受けている
合計
ライバルが困って
いても手を差し伸
べようとは思わな
い***
る
4 つの躾をすべて受けている
合計
脱税行為は許され
ない***
る
4 つの躾をすべて受けている
合計
法令順守はどんな
場合でも最優先さ
れる***
る
4 つの躾をすべて受けている
合計
注:*はそれぞれ 10%水準、**は 5%水準、***は 1%水準で統計的にグループ間での差が有意
あることを示している。
急いでいる場合は、行列の途中に割り込んでもよい
1.160
1.150
1.140
1.130
1.120
1.110
1.100
1.090
酒を飲んだら絶対に運転してはいけない
3.880
3.860
3.840
3.820
3.800
3.780
3.760
3.740
年老いた親の面倒は子どもが見るべきである
3.250
3.200
3.150
3.100
3.050
3.000
2.950
2.900
2.850
2.800
政治家が利権や不正な資金を入手するのはや
1.320
1.310
1.300
1.290
1.280
1.270
1.260
1.250
不正を発見すれば、速やかに通告すべきである
3.450
3.400
3.350
3.300
3.250
3.200
3.150
3.100
3.050
面倒事にはなるべく関わりたくない
3.150
3.100
3.050
3.000
2.950
2.900
ライバルが困っていても手を差し伸べようとは思わない
2.100
2.050
2.000
1.950
1.900
1.850
1.800
1.750
1.700
1.650
脱税行為は許されない
3.700
3.650
3.600
3.550
3.500
3.450
3.400
3.350
3.300
法令順守はどんな場合でも最優先される
3.000
2.950
2.900
2.850
2.800
2.750
2.700
2.650