第2回「ハンガリー旅の思い出」コンテストの発表 佳作 小澤さんの作品 ハンガリーの旅の思い出 ヨーロッパの言葉に惹きつけられ数多くの諸国、イタリア・ スペイン・ギリシャ・フランス・オランダ・ベルギーなどを回 遊して、次は何処へと・・・。 遠い学生時代には、共産国家に旅に出ようとは考えもし なかった国の一つハンガリー。主人の会社の永年勤続の 褒美で貰った旅行クーポンを、今までと違う欧州への計画 を立て、真冬は2月10日に出発した。 ハンガリー・オーストリア・チェコのブダペスト・ウィーン・プラハと古(いにしえ)のハプスブルク帝国の伝 統文化・音楽・芸術・世界遺産に胸を膨らませての貧乏旅行の始まりです。最初の訪問国ハンガリーの ブダペストヘは、格安航空チケットでアムステルダム経由は14時間程でした。乗継便にての窓の外は厚く 垂れ込めた雲、緯度的に北海道の北はサハリン(樺太)と同じ地域です。景色に一抹の不安が脳裏をか すめ、現地の気侯に関しての甘い認識が・・・。フェリヘジ国際空港はスキポールやシヤルル・ド・ゴール など、他のヨーロッパのハブ空港に比べると、それはもう例えようもなくアットホームな規模。空港からの エアポートミニバスの予約と乗車までの時間も苦にならず、目指すホテルまで一時(ひととき)です。バス の車窓から眺める空は、灰色・ガスの状態が確認出来ない暗闇。ホテル到着は現地午後7時過ぎ、美味 しい夕食と素敵な音楽を聴くことの出来るレストランをと、初日から無謀なリクエストをフロントにお願いす るも厭な表情も見せずアレンジ。チェックインも早々に済ませ、徒歩にて外出した。 地元に来たら名物料理をと名高きグヤーシュと、早速の注文で期待度は最高潮に。運ばれた小さな スープ皿をマジマジと見詰めて、一口食す。納得するものの、少々期待外れで辺りに気付かれぬよう二 人の視線が点点に。ヨーロッパの国々を巡ること幾星霜、狂牛病は怖いけれど矢張りステーキがお薦 め。これは本当、皆さん体力あるうちに是非牛ヒレステーキお試しあれ。日本の霜降り肉の食感とは違う ものの、これ美味間違いなし。ジューシーさが喩え様もなく納得の逸品です。トカイワインでの口直しと自 棄酒にて最初の夜は更けました。 さて2日目、曇天模様の気候は相いも変わらず粉雪ハラ ハラの世界遺産巡りに出発です。今宵のオペレッタと明日 宵のコンサートのブッキングをホテルフロントに頼んでお 気楽に…。だけど非常な寒さが、首筋を非情に撫でて行く に従い足元は浸水します。凍てつく石畳を歩くには、防水 性に優れたブーツの携行は忘れてはなりません。また現 地の人達は傘をほとんど持たず、帽子(毛織物のキャッ プ)で対応しています。くさり橋を抜けて王宮に架かるドナ ウ川は、まるでオホーツクから流れ来る流氷のイメージで 川面を埋め尽くしていました。東洋人らしき観光客の姿な ど殆んど見受けず、ポケットに忍ばせたハンディカイロに 期待しつつも歩くスピードは限り無くスローダウン。だけ ど、項張るゾー! マーチヤーシュ教会・漁夫の砦からのブダペストの街並みは、霧に霞む日本の摩周湖に似て視界300 メートルくらい。冬の東欧は舐めてかかってはいけません。お土産品は矢張りヘレンドがお奨め、余りに 種類が多く悪戯に時だけが虚しく通り過ぎて行きます。でも、一見の価値大いにあり。ホテルに戻り、正 装して劇場へ地下鉄にてお出掛けしました。日本人と思しき数人と出会いましたが、彼等の服装を見て 眩暈(めまい)が。日本でも歌舞伎鑑賞や、クラシックコンサートなどお洒落して行きますよね。彼等の服 装はジャージーにリュックの格好にハンガリー民族の誇りを打ち砕かれたのか、劇場の案内の係の女性 が英語で一言。”あんな格好で来て欲しくないのに・・・。”と悲しげな眼差しが忘れられなかった。時と場 所と目的、国際人としてのマナーは充分に気を配りたいもの。未だ未だ元気な我等中年カップルは、ホテ ルに戻りまたまた我儘リクエスト。夕食に賭ける情熱醒めず、次なるレストランの紹介依頼をフロントに要 求、タクシー飛ばして出発です。体力・気力・知力?の無謀なトラベルが深夜まで、延々と続いて行きまし た。 ここで一服、その他お買物情報を。陶器以外の掘出物としては、先ず 毛皮品の類いがグッド。ミンク・テン・チンチラ・ヒョウ・シープスキン・キツ ネなどあらゆる種類が勢揃い。お持帰りの際は、ワシントン条約に抵触 するか否かの確認を。 私も一つ長年のご褒美として、ミンクのハーフコート、それもノースリー ブな形の超軽めのものを奮発。勿論タックス・フリー(何度聞いても、我 等EU以外市民に響きの良い特典。)なる最大限のメリットの行使を忘れ ずに。 次にタペストリー・カーペット等の織物群。流石オスマン帝国の文化を 継承しているためか、絹・羊毛の織成す摩訶不思議な幾何学模様や、生 活にヒントを得た題材のデザインは、その肌触りと相俟って購買意欲を 掻き立てます。 そして誰も気付かない意外な特産品、これは次の訪問国のオーストリ アのホテルに滞在し、その余りにも着心地の良かった羽布団の購入に 走った時のことでした。ウィーンのホテルコンシェルジュの紹介で、訪れ たお店のマダムが懇切丁寧に教えてくれた一言に愕然。何と世界基準 でもトップクラスのダウン(羽毛)は、ハンガリー製がベストと自信たっぷ りと、胸張り云うのでした。もう戻ることのないスケジュールに、地団駄踏 むこと・歯軋りすること、切ない思いで店を後に。 さて3日日、またまたヘレンドの別のお店からお買物スタート。ブダペスト市内にあるお店により品揃え が違う事が歴然と、複数のお店のチェックお奨めします。今宵のコンサートまで時間はたっぷりあるた め、国際列車のチケット購入もあり市内散策に集中。市内移動に便利なもの、それはトラム。初日から購 入していたブダペストカードは、滞在中大いに役立ちます。さて、ヨーロッパはどの街も鉄道駅は、幾つも あります。ブダペストからウィーンまでのユーロシティの乗車券は、どこでも購入可能です。キリスト教の イベントが重なるイースター・クリスマスなどが無ければ、指定席の必要はありません。事実、翌日の列 車はかなりの空席があり、コンパートメントを独占出来ました。市内観光をトラムで過ごし、いよいよクラ シックコンサート会場へと急ぎます。但し、新規に建設された劇場なのか、誰に聞いても場所が判別しま せんでした。タクシーの運転手の方も、地理的にインプットされていないため、少し迷っての到着でした。 ホールに着いて驚くべき建物が、我等を迎えてくれました。ハンガリーは、リスト・バルトーク・コダーイな ど19世紀の偉大な音楽家を育んで来た歴史を、このホールに託されたと感じました。 今後のヨーロッパ、特にEU拡大に気配りした国創りの一端として、威信を賭けた劇場であり抜群の音響 は冷えたカラダを喩えようもなく暖かく包んでくれました。耳奥深層にリフレインする交響詩の余韻に浸り ながら、地元のマダムたちの後を徒歩で会場を去り、トラムの停留所へ。夕刻からの細雪は、みぞれに 変わり、なかなか来ないトラムを待つこと20分以上。会場のスタッフに聞いた通りの道程で、無事ホテル ヘと時計の針は11時半。レストランは殆んど店じまい、お腹が空いては寝られないため、ブダペスト最後 の夜はアメリカ資本のバーガーショップでテイクアウト。素敵な音楽は心を満足させるのか、妙に美味し かったですよ・・・。 最終日、ユーロシティ出発の東駅までタクシーに乗り、 弾丸の痕が残る石造りの建物を眺めながら、平和とは何 と素晴らしい思い出を授けてくれるのかと、来て良かっ た、また再訪の念を強くして・・・。 いつまでも風化させない国土であり続けていて欲しい、 ホスピタリティ溢れる国ハンガリー。また会う機会まで、あ りがとう(クスヌム)! webmaster memo:原稿のリタイプの際、段落の変更をしています。 2005年6月
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