平成12年度 研究報告 大分県産業科学技術センター 木製家具(椅子)に用いられる各種接合法の調査 一強度特性について一 山本幸雄 日田産業工芸試験所 Strength Properties of WoodenJoints System Used for Furniture Yukio YAHAHOTO HitaIndustrialArt Research Division 要旨 机,椅子など木製家具の製造は,日田の主要な産業の一つである.その中でも特に椅子は様々な使われ方をす るため,十分な安全性(強度)が要求される.そこで本研究では,接合部の強度特性についてスギおよびナラを 用い調査した, その結果,モーメント試験においては,スギ,ナラともほその寸法と最大モーメントの間に関係があることが 分かった. 1 はじめに 2 実験 木製家具の製造・販売は,日田の主な産業の一つで 2.1供試材 ある.その内訳は,応接室用テーブル,ソファー,机, 供試材には,大分県産スギ,ナラを用いた。スギに 椅子などが中心である。特に椅子は人が腰掛けたり, ついては,厚さ60または100mm,幅300mm,長さ 踏み台代わりに使われるなど使い方はさまざまであり, その性質上十分な安全性(強度)が要求される.椅子 900mmの三面無節材から,接線方向40mmク半径方 向40mm,繊維方向900mmの角材を84本,ナラに の強度性能を考えると,最も破壊しやすいところは各 ついては厚さ35皿m,長さ2000mmのダラ挽きした 部材の接合部であり,接合部強度を十分考慮した設計 板から,接線方向40m恥半径方向30mm,繊維方向 をしなくてはならない.ところが,現状では,デザイ (長さ)900m皿の角材を41本採取した. ン性を基に設計が進められ,強度という観点からはあ その後スギ,ナラと引こ縦振動法によりヤング率を まり検討されていない. 測定し,ヤング率の高い順に,スギについては4本冒 そこで,本研究では,強度的に過剰でも過小でもな から10本おきに8本を,ナラについては5本日から い最適な設計をするための重要な資料となる,接合部 10本おきに4本を曲げ試験に供した.曲げ試験は3 点荷重で,スパン800mm,荷重速度5m皿血inでお の強度特性について調査することを目標とし研究を進 めた。 Table.1ほぞの寸法 樹種 条件 長(m皿) 高(m皿) 幅(m皿う1 2 スギ 4 F; 4 −114− 40.0 如.0 40.0 30。0 30.2 30。0 40,0 30.三 30.0 20.0 30.0 30.2 40.0 30。2 20−0 30.0 30.2 30,2 30.0 30.0 20.3 40.0 40.0 13,8 30.0 30.0 13.8 平成12年度 研究報告 大分県産業科学技術センタ仙 こなった. 2。2中一 引張試験 ついでタ スギ,ナラともに残りの長さ900mmの材 で字型試験片を治具を用いて試験機に取り付けカ タ を300mmに切断し,縦振動法によりヤング率を測定 ロスヘッドを5mm/m主nで移動させ〉荷重を加えた。 した.そして,ヤング係数の分布の型が同じになりか 2。2。2 モ00メント試験 つ試験体数が弓ほ長試験,モーメント試験,せん断試験 で字型試験片を治具を用いて試験機に取り付け,ク で1:2:1になるようにした。 ロスヘッドを5皿m/血nで移動させク荷重を加えた。 2.1接合部の製作 2。2.3 せん断試験 ほぞの寸法はTablelに示すとおりで,スギは7条 試験片を試験機に取り付けユ タロスヘッドを 件,ナラは4条件とした.ほぞはほぞ穴よりも高さ方 3mm/皿inで移動させ,荷重を加えた. 向で0.1mm大きく,幅方向で0.1皿m小さくした. 2。2 接合部の貢式験 3 結果 接合部の試験には,インストロン社製荷重試験機 5568(最大荷重50kN)を用い,変位は東京測器製変 3。1供書式材 試験に用いた900mmのスギは朗本,含水率は9.0%, 位計CD王)・100(最大変位100mm)またはC工)P・5(最大変 密度は0.3鶴/cm3,ナラは41本夕含水率は8。9%,密 位5mm)を用い測定した。引張試験,モーメント言式験, 度は0.73g/cm3であった.縦振動法により測定した長 せん断試験の模式図をダig.2に示した。 さ900mmと300m皿のスギおよぴナラのヤング率の 分布をFig.3に示す9 また縦振動法によりヤング率を ● 測定した後抜き取った長さ900mmのスギおよびナラ の曲げ試験結果をでa態且e2に示すe スギのヤング率お よび曲げ強度の全国平均は∋6。59馳aと弧6Mpaユ)で あり,本試験で用いたスギの強度は標準的なものであ ると見なして良いことが分かる. 3 惑塵寮渾 れ︶ スギ 300汀m NOO 228 ㈹E購6.22GPa SDl、5ヰ 2 ▲nhV ワ心 ∧‖V 3 超磯萩辟 ﹁﹁†叫 ハU A7 ・AT ∧U 引張試験模式図 O うー ハリ O ▲l・ 3 4 5 6 7 8 9 て011 ヤング率(GPa) ヤング率(GPa) 一∴ ハリ ﹁、1 = 0 0 戯朝露蟹 戸︹〓 2⊥ ∽▲叫ゆ ∽.Nゆ 卜㌔rl﹁‘r﹂ 3 ヰ 5 6 了 8 9101て 1 ↑ ] ∧U .、 5 7 昏1113151了192て ヤング率(GPa) 」 ¶_j3旦山一⊥ (m) 5 7 9171315171921 ヤング率(GPa) ぎig。3 縦振動法で測定した900mmおよび300m血の モ山メント試験模式図 スギ〉 ナラのヤング率の分布 警aも呈e望 曲げ試験結果  ̄‥【■■−+■− ̄ ̄ ̄I■′ ̄ ̄ 書 チーーは ̄“▲ ̄ ̄ ̄▲ ̄■上さニー;註■仙−’−’l ̄h− ̄−▼▼‘ ̄丁 樹種 スギ ! ナラ ≧ _.... 、_、、___−____.、J 試験本数 (gノcm3) l 密度 標準偏差 喜 最大変位 せん断試験模式図 血 塾頭」 最大応力 Fまg.2 ほぞ試験体の試験方法 平 標準 平均 「葡毒 ≦偏差 ー =+一 44.53 ≡ iわ2.69 1−‥■■ …1 l ./・・ . ・ 平成12年度 研究報告 大分県産業科学技術センター 3.2 接合部の試験 なら試験体では,ほぞの高さが最大モーメントに与 引張試験ク モーメント試験,せん断試験の結果を える影響は,スギ試験体よりも大きいことがわかる。 yig.4およびTable3に示した, 最大モーメント時の変形角は,スギヨ ナラともに 3.2.1引弓長試験 0.03∼0.07radでほぼ同じであることが分かる。これ スギ試験体の場合,最大引張荷重は3.94∼5.15kN らのことは,スギおよびナラの強度の差によるもので で,そのときの変位は0.08∼0.24cmであった.ナラ あると推察できる。 試験体の場合は,最大引張荷重は9.11∼臥ユ施Nで〉 3.2.3 せん断試験 そのときの変位は0,09∼0.13c皿であった。 スギ試験体の場合ヲ 最大せん断荷重とほぞの寸法の スギ試験体およびナラ試験体ともにき最大弓ほ長荷重 間に明確な関係は見られない.しかしナラ試験体ではク とほぞの寸法の間に明確な関係は見られない9しかし) ほぞが高さが低くなると最大せん断荷重も小さくなる スギ試験体においては,ほぞの寸法が小さくなるにつ ことが分かる.またほぞの長さは最大せん断荷重にあ れて最大荷電時の変位も小さくなることが分かる, まれ影響しないことも分かる。 3。2.2 モーメント試験 スギ試験体の場合,はぞの大きさと最大モーメント 4 まとめ の関係について,ほぞの高さが最大モ叫メントに与え スギおよびナラともに引張試験における最大荷重に る影響はき ほぞの長さや幅に比べ小さい事がわかる。 ついてはほぞの長さや幅,高さなどの影響をあまり受 けていないことが分かった.最大荷重時の変位につい スギ引福富式巌 てはスギの場合ほぞの長さが短くなるにつれて変位も ︵彗︶磯艦鰻芯 小さくなるが,ナラについてはほぞ長さの影響を受け ていないことが分かった骨 ばぞの抱転剛性については,スギ試験体の場合ほぞ u、∠ 0.2 C−3 の幅や高さなどに比べ,長さの影響を強く受けること 0,4 がブ ナラの場合》 ほぞの高さが最大モ叫メントに与え 変通(cm) 条件皇☆条件2Ⅶ苛L条件3磁 条件 条件5+条件6⊥〉←条件7」季ト る影響はスギよりも大きいことが分かった。 ほぞのせん断強さではき スギ試験体の場合,ほぞの 寸法と最大荷重の間に明確な関係は無く,ナラ試験体 の場合ヲ ほぞが高さが低くなると最大せん断荷重も小 さくなることが分かった− O 参考文献 0.− 0.2。.。。.ヰ 。。.。2。.。4。.。6。▲。8。.1 条件1☆変饗終2耀・条件3増悪響酌㊦ 1)秋田県農業短期大学木材商度加工研究所編:コンサ イス木材百科う p206−207,財団法人秋田県木材加工 ぎまg−4ほぞ試験結果 推進機構 Tab互e3 ほぞ試験体試験結果 モーメント試験 せん断言式験 せん斬試験 墨)鷹 宇荷重 ∈(kN)章 (立Ⅳ)盲(r鼠郎ぎ僻ヾ・Cm) 望0.13 ト0.03 4.ま5 ぎ 0.04 鼠塁墾 諒有事8,460.¢321妻0。ユ山一望1.53「五首丁臥18盲可巨 弓¢.12羞軌ユ03弧95,028 0,1望F臥5・03且6。?4要0・316◆丁 21.960.02 16.60妻 且5。00 j O廿の3 ⊆16。02 −− ま3.0ユ 姜 0 _ _ _ . 、 【 、 l . て ̄芯抗議 _J▲_Ⅳ_.▼_ −二__′I__一,. _ _ 仙 _ _ ま7.16 ・・∴、 。 ーユ16−
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