骨髄移植により血液型不一致となった一症例

【ポスターセッション】
13:00~13:30 (第 3 会場・国際会議室)
医療技術部門(輸血・血液管理)
-臨床検査部門-
骨髄移植により血液型不一致となった一症例
《演者》
朝霞台中央総合病院
野口 佳那子
【はじめに】
術前検査で血液型は輸血製剤の選択に不可欠である。今回当院初診で既往が不明の為、血液型判定に苦
慮した症例を紹介する。
【内容】
39 歳女性、脳外科を受診。髄膜腫の手術目的で入院予約となる。
術前の血液型検査にてオモテ試験 A 型・ウラ試験 AB 型となり不一致であった。
オモテ試験
抗 A (4+)
抗 B (0)
ウラ試験
抗 D (4+)
A1 血球 (0)
B 血球 (0)
自己血球 (0)
ウラ試験は抗体減少の可能性を考え血清量の増量や、反応条件を変えて 4℃下でも実施したが同じであった。
患者の血液型が AB 型の場合、オモテ試験での赤血球上の B 抗原量減弱の可能性を考え、抗 B 吸着解離試
験を実施した。他に免疫グロブリン IgG・IgM・IgA の定量検査と A・B 転移酵素測定を追加し、血清側の原因も
調べた。
【結果(結論)】
吸着解離試験にて B 抗原は証明されなかった。また患者の免疫グロブリンは正常、A・B 転移酵素は共に認め
た。結果、オモテ試験は A 型、ウラ試験は AB 型であった。不一致となる他の原因を追究すると共に担当医と相
談し、既往歴等を確認することにした。
問診により 12 歳の時に急性骨髄性白血病のため骨髄移植をしていることが判明。患者の移植前血液型は AB
型 Rh(+)、ドナーは A 型 Rh(+)であり、血液型の結果はドナーの幹細胞が完全に定着したことを反映してい
た。
【考察】
今回、骨髄移植により血液型検査のオモテ・ウラ試験不一致となった症例を経験することができた。病態によっ
て、血液型検査でオモテ・ウラ試験不一致が生じることもあり、血球側、血清側の追加精査を進めるとともに患者
の既往や全身状態を把握することが重要である。
第 51 回TMG学会