Chapter 7 リアルタイムPCR法 7 193 目 次 7 リアルタイム PCR 法 ページ 7.1 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 195 7.2 リアルタイム PCR のアッセイフォーマット ・・・・・・・・・・・・・・・ 198 7.3 リアルタイム PCR の定量法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 203 7.4 融解曲線分析による PCR 産物の特徴づけとジェノタイピング ・・・・・・・ 207 7.5 ロシュ・アプライド・サイエンスのリアルタイム PCR 装置 ・・・・・・・・ 211 7.6 リアルタイム PCR 試薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 215 7.7 カローセルタイプ LightCycler Ⓡシステムのアプリケーションに関する文献 ・・・ 224 7 194 PCR アプリケーションマニュアル はじめに 7. リアルタイム PCR 法 7.1 はじめに この PCR アプリケーションマニュアルで紹介される文献や記載の大部分では、PCR 産物の解析は PCR 終了後に独 立した操作により行われています。このように通常 30 ∼ 40 サイクルの PCR が完了した後に行われるタイプの解析 方法を「エンドポイント解析(end-point analysis)」と言います。この方法は定性解析を目的として日常的に利用 される他、半定量解析(競合 PCR;competitive PCR)にも用いられます。通常、ゲル電気泳動で目的とする産物の 有無や産物のサイズおよび純度を検討します。ゲル上で産物を可視化させるため、蛍光色素であるエチジウムブロマ イド(EtBr)がもっともよく用いられます。エンドポイント解析を定量化するためには、増幅産物をブロットし、標 識済みプローブを用いて解析する方法が一般的です。 エンドポイント解析は、反応が既にプラトー期に達し指数キネティック増幅することがないことから、定量 PCR に は適しません。プラトー期では反応を数式化することができないため、エンドポイントのシグナルと PCR 開始時の テンプレート量やターゲットのコピー数を直接相関させることは不可能です。さらにプラトー期では反応組成の消費 および阻害物質の蓄積により、PCR 効率は徐々に低下します。この影響はサンプルにより様々であり、結果として 異なるエンドポイントシグナルを生じます。 リアルタイム PCR は、定性および定量解析の変法です。このタイプの解析方法では、1台の装置の単一のチューブ 内でデータをオンラインで記録しながら、増幅と蛍光検出のステップを繰り返すことが可能です。リアルタイム定量 PCR 装置は、増幅反応中に蓄積される PCR 産物を蛍光色素により測定します。PCR と PCR 産物の検出が一つの反応 (容器)内で行われるため、この解析方法を「ホモジニアス PCR(homogeneous PCR)」とも言います。 リアルタイム PCR によるリアルタイム定性解析 重要な PCR アプリケーションでは定性的な結果、つまりサンプル中に特定のターゲットの配列が存在するか否かの みを必要とする場合が多くあります。リアルタイム PCR には、エンドポイント法による定性解析に優る利点があり ます。 ▲ リアルタイム PCR はエンドポイント法に比べて短時間で解析を行なうことができます。その理由は、エンドポイ ント法のように独立した解析ステップを行なう必要がないためです。さらに、増幅完了を待つ必要がなく、より迅 速に(指数増幅域において)「ターゲットの配列の有無」について結果を得る事が可能です。 7 ▲ リアルタイム装置で用いる高度な検出システムはエチジウムブロマイド(EtBr)染色に比べてはるかに高感度であ るため、リアルタイム PCR は非常に信頼性の高い結果をもたらします。 ▲ リアルタイム PCR は、増幅および検出を同一の密封されたチューブ内で行なうため、コンタミネーションの可能 性が最低限に抑えられます。 リアルタイム PCR 法 195 はじめに リアルタイム PCR によるリアルタイム定量解析 高度なリアルタイム PCR 装置と試薬により、PCR はブロッティングでの検出範囲をはるかに上回る高い感度を持つ 定量解析用の強力なツールへと変わりました。PCR サイクルにおけるリアルタイム蛍光解析とはどのようなものか、 このセクションではリアルタイム PCR の原理について解説します。 PCR サイクルのリアルタイム蛍光解析 PCR 産物を蛍光ラベルし、サイクル数に対する蛍光強度をプロットすると、PCR 産物の蓄積を曲線で示すことがで きます。ちょうど細菌培養の増加曲線(growth curve)に似ています。この増幅曲線は 3 つのセグメントに分類さ れます(図 7.1.1)。初期のバックグラウンド期(装置の検出限界以下)、指数増大期(あるいは対数増大期)、そし てプラトー(エンドポイント)期です。バックグラウンド期は、PCR 産物による蛍光シグナルが反応システムのバッ クグラウンドを上回るまで続きます。指数増大期は、十分な PCR 産物の蓄積によりバックグラウンドを上回るシグ ナルが検出された時点から始まり、反応効率が低下した時点で終わります(以後、プラトー期に入ります)。 指数増大期の反応を数学的に表すことができます。 Nn = N0 ×( E const )n (Nn:nサイクルにおける分子数。N0:反応開始時の分子数初期値。Econst:増幅効率定数。n:サイクル数) 通常、40 サイクルの PCR において指数増大を示すのはわずか 4 ∼ 6 サイクルです。指数増大期の後には反応組成 に限界が生じます。指数増大期の間、ターゲットとなる分子数の初期値(N0 )を上記の数式により計算することが できます。 N = N0 ×( Evar )n Evar 値は未知数であるため(Econst 値とは対照的に)、プラトー期に N0 値を計算することはできません(対数増大期 とは対照的)。 バックグラウンド 指数増大期 プラトー期 PCR産物量 7 PCR のプラトー期には反応効率に変動が生じるため、増幅反応は以下の数式により表されます。 サイクル数 図 7.1.1 典型的な増幅曲線 196 PCR アプリケーションマニュアル はじめに リアルタイム PCR による定量解析の簡素化 リアルタイム PCR では、サイクルごとの PCR 産物濃度がデータとしてオンラインで収集されます。リアルタイム PCR 装置はこのデータを増幅曲線(図 7.1.1 を参照)またはその他のグラフィック形式により表示します。反応終 了後、PCR ランの記録を調べることにより指数増大サイクル期を簡単に見つけ出すことができます。さらに、指数 増大期間に存在した PCR 産物量や、各反応におけるテンプレートの初期値の類推にこのデータを利用することがで きます。高度なリアルタイム PCR 装置とソフトウェアにより、指数増大期のデータ解析をシンプルに実行すること が可能です。 エンドポイント法による定量解析の欠点 従来法であるエンドポイント法は、リアルタイム法とは対照的に PCR 反応中の定量はほぼ不可能です。 エンドポイント法では、一般的に PCR 反応がすべて完了した後に蛍光シグナルを検出します(プラトー期における PCR 産物の蛍光解析)。しかし、プラトー期に蓄積される(蛍光シグナルを発する)PCR 産物の量は、反応開始時の テンプレート量の初期値とは相関しません。 図 7.1.1(196 ページ)にこの点が図示されています。図中では、「緑色」のサンプルは「赤色」や「青色」に比べ て反応開始時に含まれるターゲット量の初期値が低いにもかかわらず、プラトー期にはもっとも高いシグナルを示し ています。これは「緑色」の反応系の PCR 効率が「赤色」や「青色」の反応系よりも高かったことによるものと考 えられます。 通常のエンドポイント法でもっとも正確な定量性が得られるのは、指数増大期のみです。エンドポイント法により 40 サイクル中の 4 ∼ 6 サイクルである指数増大期を探し当てるのはほとんど不可能か、可能であっても非常に単調 で長時間の作業を要します。つまり繰り返し PCR のサンプリングを行った後、複数のサンプルを解析することが必 要になります。反応のごく初期に指数増大期がどのサイクルにあるかを知ることができれば、それが唯一の改善方法 になりますが、これも現実的には可能とは言えません。 競合 PCR(competitive PCR)や限界希釈 PCR(limiting dilution PCR)は、PCR ラン完了後の PCR 産物量を決定 するために利用することができます。しかし、これらの方法による産物量決定の正確性は、検出方法(ブロッティン グなど)の感度や、PCR 産物をロスせずに多くの操作ステップを経て処理することのできる技術に依存します。 リアルタイム PCR 法 7 197 リアルタイム PCR のアッセイフォーマット 7.2 リアルタイム PCR のアッセイフォーマット すべてのリアルタイム PCR システムでは蛍光色素を検出し、この蛍光シグナルを反応中の PCR 産物量と相関させま す。PCR 産物を蛍光度測定により検出し評価する方法はいくつかあります。もっとも一般的に使用される蛍光アッ セイ法は、2 種類のクラスに分類されます。配列に依存しない検出アッセイと、配列特異的プローブによる結合アッ セイです。それぞれに有用な面と限界があります。 リアルタイム PCR 検出フォーマットの最新情報は、www.lightcycler.com をご覧ください。 配列に依存しない検出アッセイ この検出アッセイは蛍光分子(SYBR Green I が一般的)に依存します。この蛍光分子は配列に関係なく 2 本鎖 DNA 分子と結合します。 SYBR Green I は溶液中に遊離している時点ではほとんど蛍光を発しません(図 7.2.1)。しかし、2 本鎖 DNA と 結合すると(色素の構造変化により)非常に強い蛍光を発します。したがって、SYBR Green I のシグナルの増加 (530nm にて測定)は、PCR により増幅される産物量と相関します。最良の結果を得るため、蛍光色素の測定は各 伸長反応期の終わりに行なわれます。このようにして、サイクル間の PCR 産物量の増加を観察することが可能にな ります。SYBR Green I アッセイの主な長所は、アッセイのデザインや最適化が比較的簡単なことです。アッセイに 先立ち必要なのは、1 対の PCR プライマーのデザインと、実験による増幅効率と特異性の最適化だけです。したがっ て、SYBR Green I を用いることにより、PCR および RT-PCR 産物のシンプルかつ簡便な定性検出や定量が可能に なります。 7 図 7.2.1 SYBR Green I 存在下での PCR。SYBR Green I 色素は、2 本鎖 DNA(dsDNA)と結合することにより青色光で 励起され蛍光を発します。SYBR Green I は 1 本鎖 DNA には結合しないため、熱変性ステップにおける蛍光は最低限に抑えら れます。2 本鎖が形成され(パネル A)増幅されると(パネル B)、SYBR Green I が 2 本鎖に結合するため、結合した SYBR Green I の発する蛍光シグナル(緑色光)が増加します。伸長反応の終わり(パネル C)にはすべての DNA が 2 本鎖を形成し、 最大量の SYBR Green I がこれに結合することからその PCR サイクルにおいて最大の蛍光シグナルが発せられます。このため、 SYBR Green I が発する蛍光シグナルの測定は、各伸長反応期の終わりに行なわれます。 198 PCR アプリケーションマニュアル リアルタイム PCR のアッセイフォーマット しかし、SYBR Green I はどのような dsDNA にも結合し、SYBR Green I アッセイフォーマットでは dsDNA の種 類を識別することができません。特異的産物、非特異的産物、そしてプライマーダイマーすべてが無差別に検出され ます。いずれの 2 本鎖 PCR 産物もシグナル強度に影響することから、アッセイがターゲット配列の実際の濃度を過 大評価することが考えられます。 この問題を避けるため、アッセイを拡張して融解曲線分析を含めることが可能です。この解析(PCR ランの後に行 なう)により、特異産物、プライマーダイマー、およびその他の副産物が個々の融解温度に基づき速やかに識別され ます。したがって、SYBR Green I を検出に使用する定性 PCR では、常に融解曲線分析を行うことが必要です。 融解曲線分析についての詳細は、セクション 7.4 をご参照ください。 配列特異的結合プローブアッセイ 配列特異的アッセイは、オリゴヌクレオチドプローブをターゲットである PCR 産物中の相補的な配列に結合させ、 特異的な産物のみを検出することを原理とします。一般的に用いられるプローブのフォーマットは加水分解プロー ブ、ハイブリダイゼーションプローブ( ( プローブ)、あるいは 1 種類の物質で標識されたプローブ プローブ)です。プローブに結合した蛍光色素は、リアルタイム PCR 装置により蛍光強度の測定 が可能です。これ以外の検出フォーマットもいくつかありますが、あまり一般的ではありません。 1 種類の物質で標識されたプローブ( )は主に変異検出に用いられます。このフォーマッ トについてセクション 7.4 で詳しく解説します。 蛍光色素で標識された配列特異的プローブを使用する PCR アッセイでは、特異的ターゲットが反応中に存在する場 合にのみ蛍光強度が増加します。したがって、このアッセイは非常に高い特異性を示します。この配列特異性により、 副産物(プライマーダイマーや PCR 副産物など)は検出されません。非特異的 PCR 産物と目的の PCR 産物を区別 するために融解曲線分析を行なう必要はありません。 FRET の原理 配列特異的プローブを用いるフォーマットの大部分は FRET の原理に基づいてデザインされています。蛍光共鳴エ ネルギー転移(Fluorescence Resonance Energy Transfer;FRET)は、蛍光分子(フルオレセインなど)に近接 する他の蛍光分子(LightCycler Ⓡ Red 640 など)にエネルギーを移行させることに基づいています(図 7.2.2)。例 7 えば、フルオレセインは青色光により励起されると、530nm の波長の蛍光を発するか、あるいはそのエネルギーを LightCycler Ⓡ Red 640 分子(青色光により直接影響を受けない)に移行させます。LightCycler Ⓡ Red 640 分子は エネルギーを受けて励起され、640nm の蛍光を発するため、この蛍光を測定することができます。 リアルタイム PCR 法 199 リアルタイム PCR のアッセイフォーマット ドナー 励起波長 アクセプター 励起波長 蛍光波長 蛍光波長 図 7.2.2 FRET の反応原理。光源からの光子がドナーを励起します。続いて、ドナーに吸収されたエネルギーは重複するスペ クトルを持ち近接するアクセプター分子に移行・吸収されます。結果的にアクセプターが発する長波長の蛍光を測定します。エ ネルギーが放出される際に電子はすべて基底レベルに戻るため、次の励起・蛍光サイクルにそのまま再利用されます。 FRET を行なうための基本的な必要事項は、 ▲ ドナー分子とアクセプター分子が近接していること。 ▲ アクセプター分子の励起波長が、ドナー分子が発する蛍光励起スペクトルと重複していること(図 7.2.2)。 ▲ ドナー分子とアクセプター分子の 2 極方向性がほぼ並行していること。 この FRET のプロセスは、PCR 中に配列特異的にシグナルを発するため、様々な方法に利用することができま 7 200 す。加水分解プローブのフォーマットは、ドナー色素の蛍光色素の消光(quenching)に基づいているのに対し、 プローブのフォーマットはアクセプター色素の蛍光励起に基づいています。いずれのフォーマットで も、2 種類の蛍光色素が上述の特性を備えていることが必要です。 PCR アプリケーションマニュアル リアルタイム PCR のアッセイフォーマット フォーマット フォーマットは、定量 PCR および変異(SNP)検出アッセイの両方に適しています。このフォーマッ ト用に特別にデザインされた 2 種類のオリゴヌクレオチドは、PCR のアニーリング期に増幅フラグメント中の配列 上に近接してハイブリダイズします。この 2 種類のプローブ分子にはそれぞれ異なる色素(FRET の過程でドナーと アクセプターになる色素)が標識されています。配列の上流にハイブリダイズするプローブは 3' 末端に、下流にハ イブリダイズするプローブは 5' 末端にそれぞれ標識されています。(5' 末端が標識されるプローブは PCR により 3' 末端から伸長が起こることのないよう、3' 末端がリン酸化されています。)上流のプローブから発せられるドナー色 素のエネルギーは、下流の プローブのアクセプター色素を励起します。励起を受けたアクセプター色 素は異なる波長の蛍光を発し、装置が蛍光を検出します。 ドナーからアクセプターへのエネルギーの移行は、標識された 2 種類の色素の分子間の距離に依存します。これら の分子同士が極めて近接している(1 ∼ 5 ヌクレオチド)場合にのみ、エネルギーの移行が効率よく起こります。こ れらの蛍光ラベル分子は、2 種類のオリゴヌクレオチドがターゲット上の近接する領域にアニールすることによって はじめてお互いに近接し、FRET の発生を可能にします(図 7.2.3)。したがって、FRET により発生する蛍光量は、 PCR により増幅されるターゲット DNA の量と相関します。 図 7.2.3 プローブを用いた解 析。パネル A ∼ C には、各 PCR のステージにおける プロー ブの動態が示されています。例えば、ドナープローブは 3' 末端に蛍光標識されており、アクセプタープローブは、5' 末端に LightCycler Ⓡ Red が標識されています。 (メモ:ドナー色素を 5' 末端およびアクセプター色素を 3' 末端に標識するなど、蛍 光色素の組み合わせを逆にすることも可能です。)PCR の熱変性期にはハイブリダイゼーションは起こりません(パネル A)。未 結合の色素同士には距離があるためにエネルギーの移行が妨げられ、この期間に赤色のアクセプター色素から蛍光が発せられ ることはありません。パネル B に示すように、増幅した DNA フラグメントに 2 種類のプローブが近接してハイブリダイズする ため、それぞれに標識された 2 種類の蛍光色素同士が近接します。青色光によりフルオレセインが励起され、緑色の蛍光を発 します。蛍光により励起されたエネルギーが LightCycler Ⓡ Red 色素を励起します。アニーリング後の伸長反応のため温度が 上昇し、プローブはターゲットから外れます。伸長反応ステップ完了時には PCR 産物は 2 本鎖を形成しますが、ターゲットか ら外れた プローブは溶液中に散在するため、距離の問題から FRET が発生することはありません(パネル C)。 アクセプター色素で標識したプローブにより発せられる赤色蛍光を、各アニーリングステップ完了時に測定します(パネル B)。 これは、アニーリング完了時に蛍光強度がもっとも高くなるからです。 PCR 中にプローブが変化しないことが、この 7 検出フォーマットの 1 つの特性です。PCR が完 了した時点においても、2 種類のプローブとも使用開始時と変わりません。したがって、そのまま(変異検 出や SNP 解析などのための)融解曲線実験に使用することができます。 加水分解プローブフォーマット 加水分解プローブフォーマットの利点は、定量 PCR アッセイにおける性能にあります。加水分解プローブは、Taq DNA ポリメラーゼの 5' エキソヌクレアーゼ活性により加水分解されることで蛍光を発します(図 7.2.4)。このアッ セイは、3' 末端が伸長しない1本のプローブの分解を利用した特異的なターゲット DNA 配列の蓄積を測定する、ホ モジニアスな 5' ヌクレアーゼアッセイです。アッセイに使用するシングルプローブには、レポーター蛍光色素とク エンチャー蛍光色素の両方が近接して標識されています。プローブが未反応の状態では、クエンチャー色素がレポー ター色素に近接しているためレポーターの蛍光シグナルが抑制されます(FRET による消光)。PCR 中にポリメラー ゼの 5' ヌクレアーゼ活性によりプローブが分解されると、レポーター色素とクエンチャー色素が離れ、レポーター 色素が蛍光を発します。 リアルタイム PCR 法 201 リアルタイム PCR のアッセイフォーマット 図 7.2.4 加水分解プローブを用いた解析。パネル A ∼ D は PCR 中の加水分解プローブの動態が示されています。プローブは 2 種類の蛍光色素が近接して標識されています。プローブが未反応の状態では、一方(クエンチャー)がもう一方(レポーター) の蛍光を抑制しています。熱変性期 (パネル A) に、ターゲット DNA の 2 本鎖が温度上昇に応じて 1 本鎖に分かれます。アニー リング期(パネル B)に、プライマーとプローブがターゲットの配列に特異的に結合します(加水分解プローブの 3' 末端は伸長 反応を抑えるためにリン酸化されています)。DNA ポリメラーゼによりプライマーから伸長反応が進むと同時に、この酵素の 5' ヌクレアーゼ活性によりプローブが分解され(パネル C)、レポーター色素から緑色蛍光が発せられます。分解後のプローブ の断片はターゲットから外れ、ポリメラーゼ反応による新しいアンプリコンの合成が続けられます(パネル D)。プローブがター ゲットにハイブリダイズした場合にのみ、DNA ポリメラーゼがレポーター色素とクエンチャー色素を切り離します。レポーター 色素から発せられる緑色蛍光の増加をモニタリングすることにより、蓄積された PCR 産物が直接検出されます。レポーター色 素の蛍光シグナルは、各伸長反応期の最後に測定されます(パネル C)。 プローブと異なり、加水分解プローブは PCR 中に分解されます。したがって加水分解プロー ブを PCR 後の融解曲線実験に使用することはできません。このタイプのアッセイでは、変異や SNP 検出に ついて異なる実験アプローチが必要です。ロシュ・アプライド・サイエンスは LightCycler Ⓡ 480 システム とのコンビネーションによる加水分解プローブを用いたジェノタイピングのための製品を発売する予定です (2006 年 10 月現在)。最新情報については www.lightcycler.com をご覧ください。 ユニバーサル プローブライブラリー ロシュ・アプライド・サイエンスの Universal ProbeLibrary は、加水分解プローブを用いた高度なアプリケーショ ンです。この Universal ProbeLibrary は、2 種類の蛍光で標識されたバリデーション済みの 165 種類のリアルタイ 7 ム PCR プローブから成ります。これらのプローブは、ヒト、マウス、ラット、霊長類、ショウジョウバエ、線虫、 およびシロイヌナズナのトランスクリプトームのあらゆる生物の転写物の定量に使用することができます(2006 年 10 月現在)。 生物種に特異的な個々の Universal ProbeLibrary セットにより、目的の生物の転写産物全体の 95 ∼ 99%を検出す ることが可能です。このように転写産物のほぼ全体がカバーされる理由は、Universal ProbeLibrary プローブの長 さ(わずか 8 ∼ 9 ヌクレオチド)にあります。各プローブは、従来の一般的な加水分解プローブ(25 ∼ 35 ヌクレオ チド)に比べてはるかに短いプローブです。プローブがハイブリダイズするために必要とされる特異性、T m やアッ セイの互換性を維持するため、各プローブの配列中には 2 本鎖安定 DNA アナログである LNA (Locked Nucleic Acid)が含まれています。 Universal ProbeLibrary プローブは短いため、1 種類のプローブは約 7,000 種類の転写産物と結合することが可能 です。これに対して各転写産物は約16 種類のプローブにより検出されることになります。しかし、特異性の高い PCR プライマーのセットを選択することにより、1 種類の PCR アッセイから検出される転写産物は 1 つに絞られます。 リアルタイム PCR アッセイのために適切な Universal ProbeLibrary プローブと特異的な PCR プライマーは、 Probe Finder ソフトウェアを用いて、簡単な 2 段階の方法で選択します。このソフトウェアは Assay Design Center(http://www.universalprobelibrary.com)からオンラインでご利用いただけます。 Universal ProbeLibrary を用いたアッセイは、フルオレセイン、FITC、FAM、あるいは SYBR Green I を 検出することのできるすべての装置で使用可能です。Universal ProbeLibrary を用いたアッセイは、カロー セルタイプ LightCycler Ⓡ システム、LightCycler Ⓡ 480 システム、およびその他数社のリアルタイム PCR 装置で成功しています。 202 PCR アプリケーションマニュアル リアルタイム PCR の定量法 7.3 リアルタイム PCR の定量法 増幅反応において、サンプルからの蛍光がバックグラウンドを上回るサイクルを、サンプルのクロッシングポイント (crossing point ; CP)と言います。すなわちクロッシングポイント(CP)は、増幅産物がデータ上初めて確認される 点です。サイクル数に対する蛍光強度のグラフにおいて、サンプルの CP は右上がり急勾配の曲線を描きます。 リアルタイム PCR の定量ではサンプルの CP の決定が必要です。リアルタイム PCR 装置で PCR 産物を定量する場合、 産物の分子数が装置のもつ検出限界を上回る必要があります。(例えば、カローセルタイプ LightCycler Ⓡ システム を用いた反応系の CP では、約 1011 ∼ 1012 分子の産物が存在します)。したがってサンプルの CP はサンプル中に存 在する DNA の初期濃度に依存します。ターゲット DNA の初期濃度が低いサンプルを用いる場合には、CP に到達 するまでより多くの増幅サイクルが求められ、逆に高濃度のサンプルの場合には、多くの増幅サイクルは必要ありま せん。 カローセルタイプ LightCycler Ⓡ システムのソフトウェアでは、2 種類の方法を用いて CP を決定します。 自動法:サンプルの蛍光曲線が急勾配の上昇に切り替わる点をサンプルの CP とします。この変曲点は曲線の二次 ▲ ( ) 導関数の最大値です。したがってこの方法は「2nd Derivative Maximum 法」と呼ばれます。この方法の最大の 利点は、ユーザーによる数値の入力がないことです。 ▲ マニュアル法:PCR が対数直線で増幅する期間に蓄積される蛍光点の測定値をもとに、回帰曲線をプロットする ことにより CP を決定する方法です。CP は、回帰曲線とユーザーにより設定される横軸の交点となります。この 方法は「Fit Points 法」と呼ばれます。 LightCycler Ⓡ 480 ソフトウェア 1.2 以降は、Fit Points 法が完全に自動化されています。 7 リアルタイム PCR 法 203 リアルタイム PCR の定量法 2 つの基本的な定量解析 リアルタイム PCR の定量解析は、絶対定量と相対定量の 2 つの基本的なタイプに分類されます(図 7.3.1)。いずれ のタイプもそれぞれ実験的に決定された CP を用います。 リアルタイム 定量PCR 絶対定量 外部スタンダード (1色) 外部スタンダードと 内部コントロール(2色) 相対定量 標準化された キャリブレーターを 用いる方法 外部スタンダード (キャリブレータなし) PCR効率を考慮する PCR効率を考慮しない 図 7.3.1 リアルタイム PCR の定量法 7 絶対定量(Absolute Quantification) 絶対定量アッセイでは、ターゲット分子の濃度が絶対値(コピー数や µg/µl など)で表されます。絶対定量法では、 既知濃度のスタンダード用外部サンプルをもとに計算された標準曲線を用いて、未知のターゲット分子の濃度を決定 します。したがって、絶対定量アッセイシステムで信頼性のある結果を得るためにはスタンダードと未知のサンプル が同じ効率で増幅かつ検出される必要があります。 標準曲線(図 7.3.2)は、スタンダード用サンプルの濃度がサンプルの CP に対してプロットされます。X 軸はターゲッ トの初期濃度の対数、Y 軸はサイクルの CP を示します。プロットされたデータ値を結ぶ標準曲線は回帰直線になり ます。 外部スタンダード用サンプルはターゲットサンプルとは別の反応中で増幅されますが、両者とも同じリアル タイム PCR ラン内で反応させます。標準曲線の濃度は、未知のターゲットの予想される濃度範囲内に設定 します。定量の精度を高めるためには、統計学的に十分な数のスタンダードを用いて標準曲線を作成する必 要があります。 204 PCR アプリケーションマニュアル リアルタイム PCR の定量法 標準曲線 図 7.3.2 β-グロビンをターゲットとした アッセイのデータから作成した標準曲線(LightCycler Ⓡソフト ウェア 4.x[ x はソフトウェアのバージョン 4.0 以降すべてを表します])。 絶対定量はウイルス学や微生物学など特異的ターゲットのコピー数や遺伝子コピー数の決定が必要な分野のアプリ ケーションに非常に適しています。2色検出で、内部コントロールを絶対定量に組み合わせることにより偽陰性の判 定が可能です。 7 リアルタイム PCR 法 205 リアルタイム PCR の定量法 相対定量(Relative Quantification) 相対定量アッセイでは、ターゲット濃度は絶対値ではなく同一サンプル中のターゲット遺伝子とリファレンス遺伝子 の比で表されます。リファレンス遺伝子とは、すべてのサンプル中で一定のコピー数が検出される発現制御を受けな い遺伝子を指します。 相対定量法は、サンプルの初期量の質的かつ量的な変動、cDNA 合成効率、あるいはサンプルのローディングやピペッ ティングエラーなどを補正します。PCR 効率およびサンプルのクロッシングポイント(CP)のみからターゲットお よびリファレンス遺伝子の量が求められるため、ランごとに標準曲線を作成する必要がありません。 以下の 2 種類のパラメータを採用することにより、相対定量アッセイの精度をさらに高めることができます。 ▲ キャリブレーター中のターゲットとリファレンスの比を求めることにより、サンプル中のターゲットとリファレン スの比を標準化します(この方法により、多くの異なる PCR 実験を比較することが可能になります)。 キャリブレーターはターゲットとリファレンスの間の検出感度の違い(プローブのアニーリング、FRET の効率、 あるいは色素の吸収係数などの違いによる)を補正します。 ▲ ターゲットとリファレンス遺伝子の PCR 効率の違いを補正します。相対定量の結果の精度はターゲットおよびリ ファレンスの PCR 効率の違いの影響を受けます。キャリブレーターは検出感度の誤差は補正しますが、ターゲッ トおよびリファレンス遺伝子の PCR 効率の誤差は補正しません。PCR 効率による誤差を補正するためには、それ ぞれの標準曲線の作成が必要です。 PCR アッセイすべてが最適な PCR 効率(E=2)や一定の PCR 効率を示すとは限らないため、相対定量アッセイ について PCR 効率の誤差の補正を行なうことを強くお勧めします。このようなデータ補正を適用することによっ てはじめて、ターゲットとリファレンス遺伝子の増幅の誤差による計算エラーを大幅に減少させることができます。 相対定量ソフトウェアでは、PCR 効率の補正されたキャリブレーターによる標準化された相対定量を行う ことができます。このソフトウェアはロシュ・アプライド・サイエンスから発売されているすべてのリア 7 206 ルタイム PCR システムに搭載されています(セクション 7.5 でこのシステムについて詳しく解説します)。 (バージョン 3.5 以下のソフトウェアではオプション) 相対定量は遺伝子発現解析や遺伝子発現レベル決定全般のアプリケーションに非常に適しています。 定量リアルタイム PCR 法の詳細や最新情報については、www.lightcycler.com をご覧ください。 PCR アプリケーションマニュアル 融解曲線分析による PCR 産物の特徴づけとジェノタイピング 7.4 融解曲線分析による PCR 産物の特徴づけとジェノタイピング PCR の過程をオンラインでモニターする他、リアルタイム PCR 装置(カローセルタイプ LightCycler Ⓡ システムお よび LightCycler Ⓡ 480 システムを含む)では、温度移行期間中の蛍光の変化をモニターすることも可能です。こ の性能により、核酸のアニーリングと熱変性をリアルタイムで追跡することが可能です。この操作を融解曲線分 析と言い、2 本鎖(dsDNA)特異的結合色素(SYBR Green I など)や配列特異的オリゴヌクレオチドプローブ( や など)のいずれかを使用します。融解曲線分析は、PCR 後に追加として利用する ことが可能です。 融解曲線分析およびジェノタイピング法の詳細や最新情報については、www.lightcycler.com をご覧ください。 SYBR Green I を用いた融解曲線分析 SYBR Green I を用いた融解曲線分析は、PCR 産物に非特異的な副産物が含まれていないかなどを決定するための特 徴づけに使用されます。2 本鎖 DNA 分子はそれぞれ特異的な融解温度(T m)を持つことから、融解曲線分析は PCR 産物の特徴づけに用いられます。T m とは、50%の DNA が 2 本鎖を形成し、残る 50%が 1 本鎖に融解する温度を指 します。融解曲線作成時には、反応混合液を徐々に +95℃まで加熱して 2 本鎖 DNA を融解させます。反応中に存在 する PCR 産物の温度が T m に達すると SYBR Green I の蛍光強度が著しく低下します。LightCycler Ⓡ 装置は継続的 に温度移行期の蛍光をモニターします。ソフトウェアは融解曲線グラフ(温度 T に対する蛍光 F)の形式でデータを 表示します(図 7.4.1 上のグラフ)。 7 図 7.4.1 SYBR Green I 実験の T m Calling 解析による融解曲線とピークのグラフ。この図では、融解温度解析が DNA 産物 の特徴づけにどのように用いられるかについて示します。緑色のサンプルは目的の PCR 産物から得られるピークを示しています。 この DNA 産物の T m は +86℃です。青色のサンプルは同じ +86℃にピークがありますが、これに加えて+77℃にも小さく広がっ たピークが見られます。後者は非特異的な副産物(プライマーダイマーなど)によるものです。 リアルタイム PCR 法 207 融解曲線分析による PCR 産物の特徴づけとジェノタイピング 融解曲線の変曲点から、反応中に存在する PCR 産物の T m を推定することが可能です。T m を見やすくするためにソ フトウェアは、融解ピークの中央値が屈折点に相応する融解曲線の導関数(-dF/dT)をプロットします。PCR が 1 種類のアンプリコンのみを合成する場合、融解曲線分析から検出される融解ピークは 1 つのみです。プライマーダ イマーや他の非特異産物が存在する場合、第 2、第 3 の融解ピークが見られます(図 7.4.1 下のグラフ)。PCR 産物 の T m を確認することは、ゲル電気泳動により PCR 産物の長さを解析することと似ています。 と プローブを用いた SNP 検出およびジェノタイピング カローセルタイプ LightCycler Ⓡ システムや LightCycler Ⓡ 480 システムは正確な温度制御システムを備えているた め、これらの装置では特異蛍光標識されたプローブがターゲットの配列から融解される現象をモニターすることが 可能です。 プローブまたは プローブとターゲット間のハイブリッドなど短い 2 本鎖 の融解をモニターするため融解曲線分析によるアッセイを用いることにより、アンプリコン中のわずか 1 塩基の変 化でも識別することが可能です。したがって、このシステムは一遺伝子多型(Single Nucleotide Polymorphism; SNP)検出あるいはジェノタイピングの理想的なツールです。 加水分解プローブは融解曲線分析には使用できないものの、異なる解析テクニックを用いることにより SNP の検出に使用することが可能です。このテクニックには、それぞれ異なる蛍光色素で標識されたアレル特異 的加水分解プローブが使用されます。LightCycler Ⓡ 480 システム上で加水分解プローブを用いたジェノタ イピングが可能な解析ソフトウェアが、2007 年初めに発売される予定です。ジェノタイピング法の最新情 報については、www.lightcycler.com をご覧ください。 プローブを用いたジェノタイピングにおいて、一方の オリゴヌクレオチドはターゲッ ト配列の変異のない部分にハイブリダイズします。このプローブはアンカープローブ(図 7.4.2)として機能しま す。もう一方の 7 208 オリゴヌクレオチド(変異または検出用プローブ)は変異部分に結合します。この 変異または検出用プローブの T m はアンカープローブの T m に比べて約 5℃低くなります。DNA 増幅が完了した直 後、LightCycler Ⓡ 装置が融解曲線分析を実行し異なる遺伝子型を識別します。この解析の間、温度を徐々に上げな がら(1 秒当たり 0.1 ∼ 0.2℃)継続して蛍光測定が行なわれます。この操作によりアンプリコンに結合している プローブの融解の動態をモニターすることが可能です。温度が上昇するに従い、短い変異プローブか ら融解されていきます。融解により、2 種類の蛍光色素間の距離が離れるため、蛍光シグナルが減少します。プロー ブとターゲットのハイブリッドの T m はプローブの長さや GC 含有量だけでなく、ハイブリッドのホモロジーの程度 にも依存します。したがって、より完全に結合したプローブほど融解の T m が高くなり、安定性に欠くミスマッチを 含む DNA に結合したプローブでは T m が低くなります(図 7.4.3)。 PCR アプリケーションマニュアル 融解曲線分析による PCR 産物の特徴づけとジェノタイピング 変異 変異 蛍光強度 温度 サンプルプロファイルの説明 センサープローブに完全に相補的な アレルによる高い温度におけるピーク (野生型) ▲ 蛍光強度 各サンプルの融解温度は、野生型、変 異型、ヘテロ型の分類を示します。 温度 ヘテロピーク 蛍光強度 蛍光強度 ー (d/dT) ▲ ー (d/dT) ▲ ミスマッチアレルによる低い温度にお けるピーク (変異型) 温度 温度 ホモ (野生型サンプル) ホモ (変異型サンプル) ヘテロ型サンプル 図 7.4.2 (左)または プローブ(右)を用いた変異検出の模式図。A:安定化に欠くミスマッ チは融解温度(T m)の著しい低下を生じます。B:融解曲線。C:導関数による融解ピーク。 リアルタイム PCR 法 7 209 融解曲線分析による PCR 産物の特徴づけとジェノタイピング 蛍光強度の負の一次導関数をプロットしたものです。各サンプルの融解温度はグラフのピークとして表されます。 各ピークのタイプは異なるアレルを示します。右のピークは +66℃で、これは野生型配列(C)になります。また左のピークは +56℃で、これは変異型の配列(T)になります。同時に両方のピークが見られるサンプルは、2 種類のアレルのヘテロを示します。 アッセイと アッセイとは、以下の重要な 2 点に違いがあります。 アッセイでは 2 本のプローブが共働するのに対し、 アッセイでは 1 本のプローブ のみが用いられます(図 7.4.2)。このプローブは SNP を含むターゲットの配列に特異的にハイブリダイズするよ ▲ 7 図 7.4.3 アッセイによるジェノタイピング例(C/T 多型)。上のグラフは温度に対するサンプルの蛍光強度を示 します。温度を上昇させると蛍光シグナルが低下する現象が各サンプルで見られます。下のグラフは、温度に対するサンプルの うデザインされています。 プローブは、ターゲットの配列にハイブリダイズすると、ハイブリダ イズしていない状態よりも強い蛍光を発します。つまり、プローブとターゲットのハイブリダイゼーションの有無 により蛍光強度が変化します。 ▲ 検出フォーマットの原理は、FRET によるものではありません。 プローブが溶液 中でフリーの状態にあると、レポーター色素からの蛍光は特異的な非蛍光性クエンチャーにより抑制されます。プ ローブがターゲットにハイブリダイズすると、抑制が減少しレポーター色素が蛍光を発します。 プローブは末端(3'- あるいは 5'- 末端)や内部( 能です。 519 Labeling Reagent を用いて)に標識が可 SNP 解 析 を 目 的 と し て、 異 な る 配 列 存 在 下 で の の 融 解 性 を 検 討 し ま し た( 図 7.4.2)。 プローブとターゲット配列間のハイブリダイゼーションが安定なほど、融解温度も高くなります。 SNPs などの変異により プローブの結合安定性が弱くなります。 210 PCR アプリケーションマニュアル ロシュ・アプライド・サイエンスのリアルタイム PCR 装置 7.5 ロシュ・アプライド・サイエンスのリアルタイム PCR 装置 カローセルタイプ LightCycler Ⓡ システム: 実績あるスタンダードシステム カローセルタイプ LightCycler Ⓡ システムには、リアルタイム PCR のスタンダードとされてきた LightCycler Ⓡ 1.5 装置と LightCycler Ⓡ 2.0 装置があります。この装置は、ハイブリダイゼーションプローブ、融解曲線分析、絶対定 量解析の自動化、および効率補正を伴う相対定量を導入した初めてのシステムです。 カローセルタイプ LightCycler Ⓡ システムには以下のような斬新な特徴があります。 ▲ 特別にデザインされたガラスキャピラリー内で PCR が行なわれます(図 7.5.1)。 このキャピラリーは容量に対する表面積の比が最適化されているため、空気と 反応溶液の間で温度の均質化を急速に行うことが可能です。したがって PCR を 大幅にスピードアップすることが可能です。典型的な増幅サイクルでは、1 サ イクル当たりわずか 30 ∼ 60 秒しか要しません。1 回のランで、32 本のキャピ ラリーを解析することが可能です。 ▲ コンタミネーションを避けるため、キャピラリーは密閉され、解析中に開ける 必要がありません。 ▲ 微量蛍光強度計を用いて、PCR や融解曲線分析で発せられる蛍光をモニターし ます。LightCycler Ⓡ 2.0 および 1.5 装置には、蛍光の励起に青色 LED(470nm) が用いられています。この LED はメンテナンス不要で長寿命の蛍光強度計に欠 かせないパーツの一つです。蛍光はフォトハイブリッドにより検出されます。 図 7.5.1 LightCycler Ⓡキャピラリー このシステムは研究用途に合わせて、2 種類の装置(図 7.5.2)が販売されています。 ▲ LightCycler® 1.5 装置では、20µl のガラスキャピラリー内でサンプルを解析することが可 能で、3 つの蛍光検出チャンネルが搭載されています(530、640、705nm)。1 色または 2 色のみの蛍光色素によるアッセイを必要とする場合に適しています。 7 ▲ LightCycler Ⓡ 2.0 装置では、20µl または 100µl のガラスキャピラリー内でサンプルを解 析することが可能で、6つの蛍光検出チャンネルが搭載されています(530、560、610、 640、670、705nm)。マルチプレックス PCR(4 種類までの異なるターゲットを同時に解 析する)を実行する場合に適しています。 図 7.5.2 LightCycler Ⓡ 1.5(上)および 2.0(下)装置 リアルタイム PCR 法 211 ロシュ・アプライド・サイエンスのリアルタイム PCR 装置 両方の装置に共通の特長 ▲ 応用範囲が非常に広く、定量 PCR および SNP 解析に使用することが可能です。遺伝子発現解析、マイクロアレイ の結果評価、食品中の病原体検出、遺伝子組換え作物のスクリーニングなど多くのアプリケーションが、リアルタ イム PCR で行うことが可能です。 ▲ 非常に短時間でアッセイが完了します。20µl キャピラリー中のサンプルのアッセイおよび解析が 40 分以内で完了 します。 ▲ 非常に高感度です。装置の示すシグナル -ノイズ比が極めて高いため、1 ゲノム相当の DNA 中からシングルコピー の遺伝子を検出することも可能です。 ▲ 非常に正確かつ再現性の高い結果をもたらします(ラン内のサンプルの CV は 0.3%以下です)。 ▲ 1 回のランで幅広いダイナミックレンジのターゲットを解析することが可能です。(システムに応じて 10 ∼ 1010 コピーまで。) カローセルタイプ LightCycler Ⓡ システム用ソフトウェア LightCycler Ⓡ 用ソフトウェアは、LightCycler Ⓡ 機器のプログラムと動作(ラン)を制御し、また高度なデータ 解析を行ないます。LightCycler Ⓡ ソフトウェア 3.5.3 は LightCycler Ⓡ 1.5 機器に添付されます。これに対して LightCycler Ⓡ ソフトウェア 4.x は LightCycler Ⓡ 2.0 機器に添付されます。 オプションとして、LightCycler Ⓡ 1.5 機器を LightCycler Ⓡ ソフトウェア 4.x との組み合わせで使用するこ とも可能です。 ます。この高度なソフトウェアにより、ルーチン解析を自動化したり、最も必要性の高い解析をカスタマイズするこ とも可能です。以下の高度解析モジュールのいずれかを使用することにより、解析を合理化することができます。 定性検出(Qualitative Detection):未知のサンプル中にターゲットの配列が存在するかどうかの判定。 ▲ 絶対定量および相対定量(Absolute and Relative Quantification):スタンダードサンプルの濃度または 2 種類の ▲ 核酸配列の割合の比較に基づき、未知のサンプル中のターゲット DNA または RNA の濃度を算出します。 融解曲線分析(Melting Curve Analysis) :増幅産物から配列情報を得るため、サンプルの融解温度と融解プロファ ▲ 7 LightCycler Ⓡ ソフトウェア 4.x は高度なデータ解析モジュール、効果的なデータ管理、強力なデータ保護を提供し イルを解析します。 ▲ 核酸の定量(Nucleic Acid Quantification):増幅反応を行なわずに核酸濃度を決定します。 LightCycler Ⓡ 1.5 および 2.0 機器の詳細や最新情報については、www.lightcycler.com をご覧ください。 212 PCR アプリケーションマニュアル ロシュ・アプライド・サイエンスのリアルタイム PCR 装置 LightCycler Ⓡ 480 リアルタイム PCR システム:ミディアムスループットからハイスループッ トアプリケーションのための最先端のリアルタイム PCR テクノロジー LightCycler Ⓡ 480 リアルタイム PCR システム(図 7.5.3)は、LightCycler Ⓡ システムの正確性、スピード、およ び用途の広さを、遺伝子発現やジェノタイピング解析におけるミディアムスループットからハイスループットまで幅 広いアプリケーションに向けて拡張しました。 図 7.5.3 LightCycler Ⓡ 480 リアルタイム PCR システム LightCycler Ⓡ 480 リアルタイム PCR システムの特長 ▲ LightCycler Ⓡ 480 リアルタイム PCR 装置はコンパクトかつ汎用性の高いの卓上型機器で、96 ウェルまたは 384 ウェルのマルチウェルプレートが使用可能です。この機器では 2 種類のサーマルブロック(96 ウェルまたは 384 ウェル)を容易に交換することができるため、異なるスループットのニーズに対応することができます。ブロック を交換した後にキャリブレーションを行なう必要はありません。 ▲ LightCycler Ⓡ 480 システムには特別なマルチウェルプレートが用いられます。LightCycler Ⓡ 480 サーマルブロッ クに適切にフィットするこのプレートは、このシステムに不可欠なパーツの一つです。この機器は 5 ∼ 20µl(384 ウェルプレート)または 20 ∼ 100µl(96 ウェルプレート)という非常に幅広いサンプル容量による PCR に対応 しています。そのため、フレキシビリティの高いアッセイデザインが可能です(例えば、ターゲット濃度が低いた め、アッセイの感度に重点をおきたい場合)。 7 ▲ LightCycler Ⓡ 480 システムは、新しいタイプのサーマルブロックを採用しています。このサーマルブロックに搭 載される Therma-Base テクノロジーにより、マルチウェルプレート上のすべてのサンプルに最適な熱伝導と分配 が行われます。この効果的な熱伝導により、ウェル間の温度均一性やウェル間、サイクル間での最大限の再現性が もたらされます。このテクノロジーにより、40 サイクルの PCR ランを 40 分未満(384 ウェルフォーマット)で 完了することが可能です。 ▲ LightCycler Ⓡ 480 システムでは、蛍光励起に光強度の高いキセノンランプを使用しています。この光源の広範囲 のスペクトルにより、多種類の色素を使用することができると同時に、幅広い範囲のアッセイフォーマットに対し て最大の感度が得られます。複数の蛍光色素を使用する際、励起特異性をできる限り高め、チャンネル間のクロ ストークを少なくするため、LightCycler Ⓡ 480 システムには 5 種類の異なる励起フィルター(450、483、523、 558、615nm)と 6 種類の異なる蛍光検出フィルター(500、533、568、610、640、670nm)が搭載されていま す(表 7.5.1)。これらのフィルターを自由に組み合わせ、それぞれの実験に必要なプローブのフォーマットと蛍 光色素に適応させることができます(表 7.5.2)。 リアルタイム PCR 法 213 ロシュ・アプライド・サイエンスのリアルタイム PCR 装置 表 7.5.1:LightCycler Ⓡ 480 システムが対応するアッセイフォーマット キセノン ランプ 励起光 フィルター 検出 フィルター 色素 (例) LightCycler® Cyan 500 SYBR Green I 検出 フォーマット 加水分解 プローブ(R) SYBR Green I Fluorescein (Fluos/FAM) HEX (VIC) LightCycler® Red 610 加水分解プローブ (R) HybProbeプローブ (D) SimpleProbeプローブ (R) LightCycler® Red 640 Cy5 加水分解プローブ (R) HybProbeプローブ (A) 凡例:レポーター (R) 、 ドナー (D) 、 アクセプター (A) 表 7.5.2:LightCycler Ⓡ 480 システムが対応する検出フォーマット、蛍光色素、アプリケーション 蛍光色素 アプリケーション 483 533 SYBR Green I SYBR Green I 定性 定量 483 610 HybProbeプローブ LightCyclerⓇ Red 610 483 640 LightCycler Red 640 定量 SNP 解析 483 670 Cy5 450 500 483 533 FAM 523 568 VIC/HEX 558 610 LightCyclerⓇ Red 610 558 640 LightCyclerⓇ Red 640 615 670 Cy5 483 533 Ⓡ 加水分解プローブ SimpleProbeプローブ LightCyclerⓇ Cyan 500 フルオレセイン 定量 SNP 解析 SNP解析 広角レンズと CCD カメラにより、プレートを通過するシグナルが確実に一様に収集されます。蛍光検出はサンプ ▲ 7 励起波長 (nm) 検出波長 (nm) アッセイのフォーマット ルポジションとはほぼ無関係であるため、リファレンス色素(ROX など)を追加して蛍光強度を 2 次元的に補正 する必要がありません。 ▲ LightCycler Ⓡ 480 システムには、ユーザーによる反応プロトコールのセットアップや絶対定量あるいは融解曲線 分析ランが簡単にできる基本ソフトウェアが含まれます。このソフトウェアは、別売のソフトウェア(相対定量や ジェノタイピング用)へ拡張可能です。 ▲ LightCycler Ⓡ 480 システムは、標準的な LIMS(laboratory information management systems)と接続が可能で、 CFR21 Part11 スタンダードに対応しているため、ワークフローのモニタリングが可能です。 LightCycler Ⓡ 480 システムの詳細および最新情報については、www.lightcycler.com をご覧ください。 214 PCR アプリケーションマニュアル リアルタイム PCR 試薬 7.6 リアルタイム PCR 試薬 低発現の遺伝子発現解析や SNPs その他の変異検出実験には、特異性が高く効率の良い反応条件、最適なプライマー デザイン、コンタミネーションの回避が必要です。このような特異性の高い PCR では、副産物および人工的な産物 の蓄積や、プライマーダイマーの形成を避けなければいけません。 LightCycler Ⓡシステムでは、便利な高速サイクル用マスターミックスのユニークなコンビネーションにより、特異 性の高い PCR を確実に行うことが可能です。このセクションでは、これらリアルタイム PCR 試薬の概要について解 説します。 カローセルタイプ LightCycler Ⓡ システム用 PCR 試薬 ロシュ・アプライド・サイエンスでは、以下の特長をもつ便利なマスターミックスを提供しています。 ▲ ホットスタート反応に適した酵素 FastStart Taq DNA ポリメラーゼが含まれます。 ▲ MgCl2 濃度が最適化されています。 ▲ 調製済みでそのまま実験に使用できるため(Ready-to-use)時間を節約できます。また、試薬をピペットで個々 に加えていく煩雑な操作を行なう必要がありません。 ホットスタート PCR および FastStart Taq DNA ポリメラーゼの一般的な情報に関しては、チャプター 4 を ご参照ください。 LightCycler Ⓡ FastStart DNA Master LightCycler Ⓡ FastStart DNA Master は、調製済み(ready-to-use)のホットスタートマスターミックス(10 ×濃 縮)です。この試薬には および SYBR Green I 検出フォーマット用があります。マスターミックス中 の FastStart Taq DNA ポリメラーゼは、LightCycler Ⓡキャピラリーへの使用に最適化され、高速かつ特異性の高い DNA の増幅を可能にします(図 7.6.1)。LightCycler Ⓡ FastStart DNA Master は、カローセルタイプ LightCycler Ⓡ システム装置上での定量、SNP や変異検出、ツーステップ RT-PCR のアプリケーションに最適化されています。 ���������������������� � � � � �� �� �� �� ��� ��� ����� ���� �� �� � �� �� �� �� �� �� �� �� ���������������� �� �� �� �� �� ���������������� �� �� �� �� �� 7 �� � �� �� �� �� �� 図 7.6.1 LightCycler Ⓡ FastStart DNA Master SYBR Green I を用いたホットスタート反応の効果。ヒトゲノム DNA 各 30ng、300pg、3pg から 316bp のフラグメントを増幅しました。増幅には、特にプライマーダイマーを形成しやすいプ ライマーが選択されました。同一のプロトコールおよびプライマーを用いて LightCycler Ⓡ DNA Master SYBR Green I(パ ネル a)および LightCycler Ⓡ FastStart DNA Master SYBR Green I(パネル b)上で融解曲線を作成しました。PCR グ レードの水をテンプレートに代用したネガティブコントロールを各ランに含めました。LightCycler Ⓡ FastStart DNA Master SYBR Green I では、プライマーダイマーの形成が明らかに減少し、反応感度が高まりました。 リアルタイム PCR 法 215 リアルタイム PCR 試薬 LightCycler Ⓡ FastStart DNA MasterPLUS LightCycler Ⓡ FastStart DNA MasterPLUS( および SYBR GreenI 検出フォーマット用があります)に より、さらに便利かつ高性能のホットスタート PCR が可能です。 ▲ 反応バッファーと酵素は最適化され、PCR 反応阻害を受け難くなっています。 ▲ 多様なターゲットに対して試験された、最適化された濃度の MgCl2 が反応バッファーに含まれます。したがって、 煩雑な MgCl2 濃度の至適化を行なう必要がありません。 ▲ 他のホットスタート PCR マスターミックスに比べ、より収量が多く特異性の高い結果をもたらします(図 7.6.2)。 7 図 7.6.2 他社の PCR マスターと LightCycler Ⓡ FastStart DNA MasterPLUS を用いた、希釈系列(1µl 当たり 106 から 1 コピー)の対するリアルタイム PCR アッセイの結果。 LightCycler Ⓡ FastStart DNA MasterPLUS のマスターミックス(5×濃縮)は、高い感度と正確性を必要とするアプ リケーションに対して理想的です。これらのマスターミックスはカローセルタイプ LightCycler Ⓡ システム上で定量 PCR を行なうためにデザインされていますが、融解曲線分析によるジェノタイピングにも適しています。もちろん、 ツーステップ RT-PCR にも利用することができます。 LightCycler Ⓡ FastStart DNA MasterPLUS は、100µl LightCycler Ⓡキャピラリー反応用に 100µl 容量でも発 売されています。大部分のアプリケーションについて 20µl 反応容量で十分な感度が得られますが、100µl 反応容量では非常に数の少ないターゲットを検出することができます。 216 PCR アプリケーションマニュアル リアルタイム PCR 試薬 LightCycler Ⓡ TaqMan Ⓡ Master LightCycler Ⓡ TaqMan Ⓡ Master は、LightCycler Ⓡ 2.0 および 1.5 装置を使用して加水分解プローブを用いたアッ セイを行なう際に、最適化の必要がない試薬です。この5×濃縮マスターミックスは、カローセルタイプ LightCycler Ⓡ システムの光学ユニットの特性を利用してデザインされ、単色または 2 色のリアルタイム PCR アッセイにおいて高 い感度と特異性をもたらします。このマスターミックスには、以下のような特長があります。 ▲ 加水分解プローブを用いて、カローセルタイプ LightCycler Ⓡ システム上で高感度の定量 PCR または RT-PCR が 可能です(図 7.6.3)。 ▲ 時間がかかる MgCl2 濃度の至適化の必要がありません。 ▲ LightCycler Ⓡ 2.0 および 1.5 装置において、安定した高品質の性能が得られます。 図 7.6.3 LightCycler Ⓡ 2.0 装置上でのヒトサイクロフィリン A(cyclophilin A)の増幅。テンプレートとしてゲノム DNA 希釈系列、遺伝子特異的プライマーのセット、および FAM/TAMRA 標識された加水分解プローブが用いられました。 リアルタイム PCR 法 7 217 リアルタイム PCR 試薬 LightCycler Ⓡ Multiplex Master LightCycler Ⓡ 2.0 装置では、6 つの蛍光検出チャンネルが搭載されているため最大 4 種類の異なるターゲットを検出 するマルチプレックス反応を行うことが可能です (図 7.6.4) 。マルチプレックス反応では、単色あるいは 2 色反応に 比べてより高い特異性と感度が要求されます。競合するパラメータ、異なるターゲット濃度、および特異性の高いプ ライマー / プローブのペアに対して、効果的な酵素 / バッファーシステムを使用することは、信頼性の高い増幅と検 出感度を得るために必要不可欠です。このため LightCycler Ⓡ Multiplex DNA Master には特製の Taq DNA ポリメラーゼ(N- 末端を除去されたリコンビナントの Taq DNA ポリメラーゼ。5'- エキソヌクレアーゼ活性 を持たない)が含まれます。このリコンビナント酵素は、より高い増幅活性と特異性を目的として特別に最適化され ています。最適な酵素および MgCl2 濃度をなどバッファー条件についても、マルチプレックス反応のために特別に デザインされています。 7 図 7.6.4 4 種類のハウスキーピング遺伝子の cDNA 増幅アッセイ。2 種類の異なるヒト細胞株 DAUDI および MCF- 7 を サンプルとし、ハウスキーピング遺伝子:β2 ミクログロブリン(β2M)、ポルフォビリノーゲンデアミナーゼ(PBGD)、ヒポ キサンチンホスフォリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、およびグルコース -6- リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH)をター ゲットとして増幅しました。マスターミックス中の MgCl2 濃度の至適化は行いませんでした。マルチカラー検出システムで、サ ンプルごとに 1 本のキャピラリー中で 4 種類の異なる RNA 量を解析しました。ポジティブコントロールとして、LightCycler Ⓡ h-Housekeeping Gene Selection Set(2006 年末販売中止)に含まれるリファレンスコントロール用 RNA をターゲット 1µl 当たり 103 ∼ 106 コピーに希釈して使用しました。解析の結果、LightCycler Ⓡ Multiplex DNA Master は多様な発現プロファイルをもつ 4 種類のパラメータを 1 回の反応で測定可能であることが分かりました。 カローセルタイプ LightCycler Ⓡ システム用に発売されているリアルタイム PCR キットには dNTP 混合液 が含まれます。この混合液には dTTP の代わりに dUTP が含まれています。したがって、この混合液を熱に 不安定なウラシル -DNA グリコシラーゼとともに使用することにより、PCR 中のキャリーオーバーを防ぐ ことができます。 218 PCR アプリケーションマニュアル リアルタイム PCR 試薬 カローセルタイプ LightCycler Ⓡ システム用 RT-PCR 試薬 カローセルタイプ LightCycler Ⓡ システムを用いた RNA の定量には、ワンステップ RT-PCR またはツーステップ RT-PCR の 2 種類のアプローチがあります。実験に応じ、アプローチごとの利点があります。それぞれのタイプの RT-PCR に対して専用のマスターミックスをご利用ください。 ワンステップ RT-PCR 用マスターミックス ワンステップ RT-PCR の主な利点は、反応セットアップのために必要な操作ステップ数が少ないため、サンプルの ロスおよびコンタミネーションのリスクが最低限に抑えられることです。 LightCycler Ⓡ RNA Master( または SYBR Green I 検出用フォーマットとして発売中)は、Tth DNA Polymerase およびアプタマーを含む調製不要(ready-to-use)のホットスタート反応用混合液です。 Tth DNA Polymerase は、RNA 依存の逆転写酵素活性および DNA 依存のポリメラーゼ活性を持つ耐熱性酵素です。 この理想的な酵素を使用することにより、1 本のチューブ内で RT と PCR の 2 反応が互いに干渉されることなく継 続して行なわれます(図 7.6.5)。このポリメラーゼは反応温度が高いため、GC 含有率の高い配列や二次構造をもつ 配列に対しても、転写反応を効率よく行なうことが可能です。 アプタマーとは、Tth DNA Polymerase の活性中心に結合するオリゴヌクレオチドです。アプタマーが活性中心に 結合することにより、酵素が至適反応温度より低温で核酸ターゲットに付着する現象を防ぎます。アプタマーは高温 では酵素から遊離するため、ホットスタート反応を行なうことが可能です。 7 図 7.6.5 LightCycler Ⓡ RNA Master GA3PDH の検出 リアルタイム PCR 法 を用いた肝臓由来トータル RNA の希釈系列中からの 219 リアルタイム PCR 試薬 ツーステップ RT-PCR 用酵素、キット、マスターミックス 完全長 cDNA を高収量で得るには、ツーステップ RT-PCR によるアプローチが適しています。また、Transcriptor Reverse Transcriptase をこのアプローチの RT ステップに用いる酵素として推奨致します。 Transcriptor Reverse Transcriptase は巻き戻し(unwinding)活性および RNase H 活性を持つ新しいリコンビナ ント酵素で、内在するこれらの酵素活性により RNA:DNA ハイブリッド中の RNA を分解します。したがって、 逆転写反応後に時間のかかる RNase H 処理のステップを追加する必要がなくなります。Transcriptor Reverse Transcriptase は高精度かつ偏りのない RNA 転写反応を提供します。また、困難な配列(GC リッチ、複雑な二次 構造をもつなど)をもつサンプルに対しても、高精度かつ偏りのない酵素反応が得られます。これらの特性により、 Transcriptor Reverse Transcriptase は完全長 cDNA を高収量で合成するために理想的な酵素で、またカローセルタ イプ LightCycler Ⓡ システム上での RT-PCR アッセイに最適です(図 7.6.6 および図 7.6.7) 。 Transcriptor Reverse Transcriptase は、単品の酵素試薬として、あるいは First Strand cDNA Sythesis Kit として 発売されています。このキットにはランダムヘキサマープライマーやアンカーオリゴ(dT)18 プライマーを含む RT のステップで必要なすべての試薬が含まれています。 Transcriptor Reverse Transcriptase および Transcriptor First Strand cDNA Synthesis Kit について詳し くは、チャプター 5 をご参照ください。 カローセルタイプ LightCycler Ⓡ システム PCR 試薬はすべて Transcriptor Reverse Transcriptase により合成され る cDNA サンプルを使用することができます。 図 7.6.6 Transcriptor Reverse Transcriptase を RT ス テ ッ プ に使用したツーステップ RT-PCR。様々な量(5 ∼ 5 ×109 コピー)の in vitro 転 写した ポ ルフォビリノー ゲンデ アミナー ゼ(PBGD)RNA を 使 用 し、Transcriptor Reverse Transcriptase に より 20µl の 反 7 応量で逆転写を行いました。cDNA サンプルからそれぞれ 5µl を取り、 LightCycler Ⓡ FastStart DNA Master に特異的なプライマーと および PBGD プローブを使用して PCR により 増幅を行ないました。 結果:アッセイは直線性かつ、産物が幅広いダイナミックレンジ(キャピラ リー当たり 12 ∼ 1.2 ×109 コピーの PBGD)を示すことから、適切な転 写反応と RNA の初期濃度に対する 108 倍レベルの増幅が得られたこと が示唆されます。 図 7.6.7 Transcriptor Reverse Transcriptase と他 の 逆 転 写 酵 素の比較。多様な量(10 ∼ 1,000ng)のヒト骨格筋由来トータル RNA を、オリゴ(dT)プライマーを用いて、3 種類の逆転写酵素で逆転写しま した(詳しくは以下の凡例をご参照ください)。その後、ヒトジストロフィ ン遺伝子特異プライマーを用いて PCR を行ないました。LightCycler Ⓡ FastStart DNA Master SYBR Green I を用いて、372bp の単一のフ ラグメントが増幅されました。各 PCR に対して Mg2+ 濃度を最適化しま した。すべての反応を 2 重測定しました。 結果:Transcriptor Reverse Transcriptase は、他の逆転写酵 素と 比較して高い蛍光強度と低いクロッシングポイント(CP)をもつ曲線を描 きました。 220 PCR アプリケーションマニュアル リアルタイム PCR 試薬 LightCycler Ⓡ 480 システム用 PCR 試薬 LightCycler Ⓡ 480 システムには主なアプリケーション(遺伝子の同定、定量、タイピング)に応じてテーラーメー ドされたマスターミックスが含まれます(表 7.6.1)。このマスターミックスは室温で長時間安定であるため、自動 化ハイスループットのアプリケーション用として威力を最大に発揮します。各アプリケーションに対して酵素および バッファー条件は入念に選択、最適化されています。 ▲ LightCycler Ⓡ 480 SYBR Green I Master は、プライマーダイマーの形成を最小限に抑えるよう最適化されてい ます。 ▲ LightCycler Ⓡ 480 Probes Master は、加水分解プローブを用いた定量 PCR アッセイのために最適化されています。 ▲ LightCycler Ⓡ 480 Genotyping Master は、 プローブまたは プローブを用いた融解 曲線分析のために最適化されています。 LightCycler Ⓡ 480 PCR マスターミックスはすべて調製済み(ready-to-use)の、1 つの溶液中にまとめられた試薬 です。反応のセットアップに必要とされるのは、テンプレート DNA、プライマー、およびプローブ(SYBR Green I を用いる実験では不用)を加えることだけです。このミックスは異なるタイプの DNA(ゲノム DNA や cDNA など) に使用することができ、96 ウェルまたは 384 ウェルプレートを用いたハイスループットのアプリケーションに理想的で す。各マスターミックスの MgCl2 濃度は最適化され、ほとんど全てのプライマーのコンビネーションに対して使用す ることができます。異なる配列を増幅する際に MgCl2 濃度を調整する必要がありません。LightCycler Ⓡ 480 PCRマ スターミックスはすべて、ホットスタートのプロトコールが使用可能な酵素を使用しています。LightCycler Ⓡ 480 マス ターミックスは、ツーステップ RT-PCR のアプリケーションに使用可能です(Transcriptor Reverse Transcriptase を用いるなど)。 LightCycler Ⓡ 480 マスターミックスは、LightCycler Ⓡ 480 システムの高速サイクルと、サポートされて いるプローブに対応しています。したがって、これらのミックスは LightCycler Ⓡ 480 システムで用いて 最適な実験結果をもたらします。機器のデザイン(特性や材質)の違いにより、LightCycler Ⓡ システム (LightCycler Ⓡ 480 システムあるいはキャピラリーを用いるカローセルタイプ LightCycler Ⓡ システム)ご とにテーラーメードされた試薬を他のシステムに使用することはできません。 リアルタイム PCR 法 7 221 リアルタイム PCR 試薬 LightCycler Ⓡ 480 システム用 PCR 試薬の概要について、表 7.6.1 をご参照ください。 表 7.6.1: LightCycler Ⓡ 480 システム用マスターミックス試薬 製品名 主なアプリケーション 酵素 使用可能なプローブのフォーマット LightCycler 480 SYBR Green I Master (2 濃縮) 遺伝子の定性検出および 絶対定量 FastStart Taq DNA ポリメラーゼ SYBR Green I LightCycler Ⓡ 480 Probes Master (2 濃縮) 遺伝子の絶対定量およ び相対定量 FastStart Taq DNA ポリメラーゼ Ⓡ ▲ 加水分解性プローブに最適化さ れています(Universal ProbeLibrary プローブなど)。 ▲ 他のプローブフォーマットにも 対応可能です(HybProbe プロー ブ、Molecular Beacon、および Scorpion など)。 ▲ SNPジェノタイピング と変異の解析 ▲ マルチプレックス解析 に推奨 耐熱性リコンビナン トTaq DNAポリメ ラーゼ。5'-エキソヌ クレアーゼ活性をも たずN-末端が欠損。 HybProbe プローブ ▲ ▲ 融解曲線に基づくジェ ノタイピング ▲ LightCycler Ⓡ 480 Genotyping Master (5 濃縮) SimpleProbe プローブ この試薬は加水分解性プロー ブには使用できません。 LightCycler Ⓡ 480 シ ス テ ム 上 で RT-PCR 反 応 を 行 な う 場 合、LightCycler Ⓡ 480 シ ス テ ム PCR 試 薬 と Transcriptor First Strand cDNA Synthesis Kit( ま た は 単 一 の 酵 素 試 薬 Transcriptor Reverse Transcriptase)を組み合わせて使用します。LightCycler Ⓡ 480 システム PCR 試薬は、Transcriptor Reverse Transcriptase を用いて合成された cDNA サンプルに対応しています。LightCycler Ⓡ 480 システム 用ワンステップ RT-PCR 試薬類は、2007 年に発売されます。 FastStart TaqMan Ⓡ Probe Master および FastStart SYBR Green Master は調製済み(ready-to-use)の試薬混合液 で、これらのマスターミックスを用いることにより定量 PCR(qPCR)や定量 RT-PCR(qRT-PCR)用サンプルの調 製をシンプルに行うことができます。これらのマスターミックスは(LightCycler Ⓡ機器以外の)ほとんどの他社製 のリアルタイム PCR 機器に使用可能です。マスターミックスは、ROX Reference Dye を含むものと含まない 2 種 類が発売されています。マスターミックスは 2 ×濃縮液で、以下のような特長があります。 定量を目的としたリアルタイム PCR アッセイに必要なすべての試薬(プライマー、テンプレートおよびプローブ ▲ 7 LightCycler Ⓡシステム以外の他社製のリアルタイム PCR システムを対象とする PCR 試薬 を除く)が含まれます。 ▲ 500bp までの長さの GC リッチな配列を含むどのような DNA または cDNA ターゲットの増幅および検出にも適 しています。 ▲ MgCl2 を加える必要がありません。したがって反応最適化のステップに要する時間を節約することができます。 ▲ dTTP の代わりに dUTP を含み、ウラシル -DNA グリコシラーゼとともに使用すると、キャリーオーバーコンタ ミネーションによる偽陽性シグナルを防ぐことが可能です。 ▲ テンプレート、プライマー(およびプローブ)と混合した後、室温で 24 時間は安定です。 この安定性は、ロボットにより反応セットアップが行なわれる実験系に特に重要です。自動化セットアップ には、反応混合液が一定の時間安定であることが必要とされます。 222 PCR アプリケーションマニュアル リアルタイム PCR 試薬 図 7.6.8 FastStart TaqMan Ⓡ Probe Master を 用 い て 調 製 した反応混合液の安定性。調製後の反応混合液を小分けし、室温で 1 時間∼ 24 時間放置してから Applied Biosystems 7500 RealTime PCR System を用いて解析を行ないました。 このマスターミックスと Transcriptor First Strand cDNA Synthesis Kit を組み合わせると、優れた結果をもたらす ツーステップ定量 RT-PCR システムが構築できます(図 7.6.9)。Transcriptor First Strand cDNA Synthesis Kit は 定量 PCR(qPCR)用にデザインされ、その性能を試験されています。このキットはすべてのリアルタイム PCR 装 置に効果的です。 図 7.6.9 FastStart SYBR Green Master を用いた異なるラッ ト組織中のチューブリン遺伝子の定量。Transcriptor First Strand cDNA Synthesis System を用い mRNA を逆転写し、cDNA 産物 を Applied Biosystems 7500 Real-Time PCR System により増 幅しました。 ROX Reference Dye 水溶液のストック溶液(1mM)が別売されています。この溶液は qPCR やツーステップ qRTPCR など定量リアルタイム DNA 検出アッセイにおける添加剤として使用されます。このリファレンス色素は反応 中のウェル間の蛍光強度の差異の補正に使用されます。この色素の濃度は PCR により変化せず、常に一定した蛍光 7 シグナルを発します。このシグナルが安定した基底値になり、サンプルを標準化します。 ウェル間の蛍光シグナルの差異は、装置のデザインやピペッティングのエラーによるものです。しかし、 LightCycler Ⓡ システムではウェル間の差異を最小限に抑えるようデザインされているため、LightCycler Ⓡ システムの装置を使用する場合には、ROX Reference Dye を反応中に加える必要はありません。 リアルタイム PCR 法 223 カローセルタイプ LightCycler Ⓡ システムのアプリケーションに関する文献 7.7 カローセルタイプ LightCycler Ⓡ システムの アプリケーションに関する文献 LightCycler Ⓡシステムおよびリアルタイム PCR アッセイフォーマットの信頼性と多方面への活用性に関する論文が 続々と発表されています。以下は、ロシュ・アプライド・サイエンスの提示するリアルタイム PCR 法および装置が 使用された論文の一部を紹介したものです。 Albanese, E., Yang, X.Y. and Fernandes, H.(2003)Identification of Cytokine SNPs Using LightCycler Ⓡ Hybridization Probes and Melting Curve Analysis. 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No. 04 340 019 001)については免責事項 No. 7、No. 8、 No. 9 をご参照ください。 LightCycler Ⓡ RNA Masters, HybProbe(Cat No. 03 018 954 001)については免責事項 No. 7、No. 8、No. 9、 7 No. 12 をご参照ください。また、SYBR Green I(Cat No. 03 064 760 001)については免責事項 No. 7、No. 8、 No. 11、No.12 をご参照ください。 LightCycler Ⓡ 480 SYBR Green I Master(Cat. No. 04 707 516 001)については免責事項 No. 7、No. 8、No. 11 をご参照ください。 LightCycler Ⓡ 480 Probes Master(Cat. No. 04 707 494 001)については免責事項 No. 7、No. 8、No. 10 をご参 照ください。 LightCycler Ⓡ 480 Genotyping Master(Cat. No. 04 707 524 001)については免責事項 No. 7、No. 8、No. 9 を ご参照ください。 226 PCR アプリケーションマニュアル
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