王益賀大学教育学部紀要 人文科学・社会科学・教育科学

滋 賀 大 学 教育 学 部 紀 要 人 文 科 学 ・社 会 科 学 ・教 育 科 学
No.45 37
pp.37-46,1995
タ イ米 ネズ ミ混 入流 言 の理 論構 造
早 川 洋 行
Rumors of Rats in Thai Rice
Hiroyuki HAYAKAWA
This paper 1994.Ihave is a study on"rumors published paper I discuss the conditions tions of the rumors Ipointed and the relation that the rumors were and to develop sensationalism on theories between fact. There the rumors rumors an ideology. Japan. rumors. background three conditions(objective, and express in the mass rice"in of modern and socio・psychological out that there were the people In-group, were of rats in Thai two papers were Also These This rumors in which and the modern subjective urban discussed rumors
circulated paper is based the rumors journalism and social)at , rumors people in Japan in March,
on those theories
occurred, in Japan
is the fact that the rumors the func-
.
that time which made . In this
what persuaded
up to confirm their
were cultivated by
media.
機 能 を有 してい る こ と は事 実 で あ るω。
1 流言の発 生
(1)は
じめ に
従 来 、 流 言 と はパ ー ソ ナ ル ・コ ミュ ニ ケ ー シ
ョンで あ り、 かつ オ ー ラ ル ・コ ミュ ニ ケ ー シ ョ
実 際 の 事 例 で は、1987年 の 「バ デ ィ君 流 言 」
は 、電 文 や 手 紙 で 伝 わ った し、1989年 の 「当 た
り屋 流 言 」 は、 ワ ー プ ロ文 書 で伝 わ った ②。
筆 者 は以 前2度
に わ た り、 こ う した 現 代 社 会
に お け る流 言 を考 え る た め に は 、 流 言 を 「コ ミ
ンで あ る と考 え られ て 来 た 。 しか し、 こ の規 定
ュニ ケ ー シ ョ ンの 連 鎖 の 中 で、 短 期 間 に 大 量 に
を厳 密 に適 用 す る と現 代 社 会 に生 起 す る流 言 の
発 生 した ほ ぼ 同一 内 容 の 言 説 」 と して 解 す べ き
多 くを とら え きれ な くな っ てい る。
こ と を主 張 し、 そ う と ら えた 際 の流 言 の 分 析 枠
近 年 、 さ ま ざ ま な噂 話 を集 め た 本 が 何 種 類 も
組 に つ い て 一 定 の 提 言 を行 っ だ3)。 こ の 論 文 は
出版 され た り雑 誌 の特 集 が 組 まれ た り して い る
基 本 的 に は こ の 定 義 、 分 析 枠 組 に準 拠 しつ つ 、
が 、 こ う した 活 字 メ デ ィア 、 そ して テ レ ビや ラ
最 近 起 きた 特 定 の流 言 事 件 を と りあ げ 、前 著 で
ジ オ とい っ た映 像 ・音 響 メ デ ィ ア は、 噂 を媒 介
は触 れ な か っ た流 言 の 機 能 や ジ ャーナ リズ ム と
して 伝 えて い る。 ま た 数 年 前 、 パ ソ コ ン通 信 を
の 関係 を も視 野 に入 れ て 、現 代 社 会 に お け る 流
通 じて 噂 が 広 まる とい う ス トー リーの 小 説(い
言 の社 会 学 的 意 味 を解 明 し よ う と した もの で あ
とうせ い こ う 『ノー ラ イ フ ・キ ング」)が 話 題 に
る。
な っ た が 、 実 際 、 パ ソ コ ン通 信 が 、 噂 を伝 え る
以 下 で は この 了解 の 下 に、1994年3月
に発生
早
38
川
洋
行
した 「タ イ 米 に ネ ズ ミが 入 っ て い た 」 と い う言
です が 、 カ ビ な ど被 害粒 につ い て は 一 応 回 収 さ
説 が 広 ま っ た 事 件 を分 析 す るω。 こ の 事 例 を 通
れ 、 ま た 回 収 の 見 込 み とい う こ とな ん で す け れ
して 、現 代 社 会 に お け る流 言 の 発 生 条 件 、 そ の
ど も、 そ の ほか に異 物 もか な り発 見 さ れ て お り
社 会 心 理 的 背 景 、 潜 在 的 機 能 、 そ して 現 代 日本
ます 。 これ につ い て はチ ェ ッ ク も され て い な い
の ジ ャー ナ リ ズ ム との 関 係 につ い て 考 え て み た
し回 収 も され て い な い とい う こ とで す 。/私 、
いo
手 元 に も って お りまず けれ ど も、(資 料 を示 す)
これ は主 食 用 の タ イ米 な ん で す け れ ど も、 大 阪
の あ る精 米 工 場 で 最 初 の 粗 選 機 とい う もの か ら
(2)経 過
2月27日 、 日本 共 産 党 の 機 関 紙 「赤 旗 」 は次
出 た異 物 な んで す けれ ど も、 紙 、 そ れ か ら こ れ
の よ うに 報 じた 。 「緊 急 輸 入 した 主 食用 の コ メが 、
は 明 らか に タ イ の た ば この 吸 い殻 、 ゴキ ブ リ も
カ ル フ ォ ルニ ア 米 に続 いて 、 中 国 産 米 、 タ イ 産
あ り ます 。 ひ も、 木 片 、 チ ョー ク 、 こ うい う も
米 も店 頭 に並 び 、3月 か ら は外 国 産 米 の本 格 的
の が 出 て きて お ります 。 そ れ か ら、 これ も大 阪
な販 売 が 始 ま り ます 。 早 く もカ ビや ネ ズ ミな ど
の精 米 工 場 で石 抜 き機 か ら出 た 、 これ は真 ん 中
異物 の混 入 、 異 臭 な どが 問 題 に な り食 糧 庁 で は 、
あ た りの工 程 な んで す が 、 これ だ け の石 です よ。
回収 を指 示 して い ます 」
そ して 、 こ こ に3セ
この記 事 は、 「
輸 入 米 に カ ビ や 異 物 これ だ け
って お り ます 。 針 金 、小 石 、 く ぎ、 こ れ が発 見
(最近食 糧 事 務 所 な どで 発 見 され た 主 な もの)」
され て い る わ けで す 。 こ うい う大 量 の異 物 が 大
ンチ 近 い く ぎが い っ ぱ い 入
とい う表 を掲 げ 、 タイ米 か ら福 岡 で 、 「ネ ズ ミの
阪 か ら出 て い る。/そ
れ か ら福 岡、 これ は博 多
死 骸 、昆 虫 の死 骸 、『動 物 の 骨 、 た ば この 吸 い 殻 、
港 か ら 出 て きて 、 私 の手 元 にあ る ん で す けれ ど
ビー ル の栓 、 針 金 、小 石 な ど」 が 、 また 大 阪 で
も、 まず こ れ は タ イ 米 なん で す が 、 カ ビが 生 え
は、 「針 金 、 小 石 、 ク ギ、 た ば この 吸 い 殻」 が発
て こ うい うふ う に 固 ま って い る もの 、 そ れ か ら
見 さ れ た と伝 え た 。 さ ら にそ の 右 下 に 配 置 され
色 のつ い た 赤 い お 米 だ とか い ろ い ろ な ものが ま
た別 の記 事 で は、 「炊 い た外 米 黒 く変色 」 とい う
ざ つて い る もの が こ う い う ふ う にあ ります 。 そ
見 出 しで 、 ブ レ ン ド米 を炊 い た と こ ろ、 黒 く変
れ か ら これ は、 も う本 当 に私 驚 くん で す け れ ど
色 した粒 が あ った と報 じ、 「近 所 の 知 人 に見 せ る
も、 こ れ も タ イ の た ば この 吸 い 殻 が い っ ぱ い あ
と 「ネズ ミの ふ んで は な い か?』
と一 見 、 見 間
り、 そ れ か ら これ は ケ ン タ ッキ ー フ ラ イ ドチ キ
違 え た ほ どで す 。 色 は真 っ黒 か ら黒 っ ぽ い 褐 色
ン、 鳥 の 骨 で す 。 そ れ か らあ と針 金 、小 石 も入
の粒 も混 じって い ま した。 近所 の 主 婦 ら は、 「3
って お り ます 。 私 こ こ に は とて も持 っ て これ な
月 か ら輸 入米 が 大 量 に 出 回 る とい う矢 先 、 大 変
か っ た ん で す けれ ど も、実 は手 元 に持 って お り
不 安 です 。 安 心 して お い し く食 べ られ るお コ メ
ます 。 こ れ と 同 じ よ う に出 て きた の が 、 写 真 で
が ほ しい」 と話 して い ます 」 と伝 え た。
お 示 しし ます け れ ど も、 ネ ズ ミの死 骸 な んで す 。
こ れ が 「タ イ米 ネ ズ ミ混 入 流 言 」 の 最 初 の情
こ れ まで が 発 見 され て い る とい うこ とで 、 大 臣、
報 で あ った 。 こ れ らの 記 事 で は、 必 ず し も明確
こ ん な もの まで が 含 ま れ て い る とい う点 で 、 も
に は され て い な い もの の 、種 々 の異 物 が 「発 見 」
う 日 本 で は と て も考 え られ な い こ とな ん で す
され たの は、 主 食 用 米 の 中 か らで あ る と読 め る。
ね。」(傍 線 は筆 者)
まず そ の こ と を確 認 して お きた い。
こ の 会 議 録 を読 む と、発 見 され た もの が よ り
28日 、 この 件 に 関 して 共 産 党 の 高 崎 裕 子 議 員
詳 細 に示 され て い る こ とを除 い て も、 「赤 旗 』 の
が 参 議 院 決 算 委 員 会 で 質 問 す る⑤。 国 会 の 会 議
記 事 との食 い違 い に気 付 く。 とい うの は 『赤 旗』
録 に よ れ ば 、議 員 は次 の よ う に質 問 して い る。
の 記事 で は 、 「ネズ ミな ど異物 の混 入」 は食 糧 庁
少一
し長 くな る が 厳 密 さ を確 保 す る た め 引 用 す る
に よ って 発 見 され 回 収 を指 示 さ れ て い る こ とに
こ と に し よ う。
な っ て い るが 、高 崎 議 員 は 「チ ェ ッ ク も さ れ て
「私 は、 大 臣 にぜ ひ お 尋 ね した い の は、 食 糧
庁 が 現 在 把 握 し報 告 を受 けて い る もの だ け で 、
今 後 も同様 にで て くる とい う可 能 性 が あ る わ け
い な い し回 収 もさ れ て い な い」 と述 べ て い る 点
で あ る。 も し高 崎 議 員 の 言 説 が事 実 だ とす れ ば、
『赤 旗 』 の 記 事 は い さ さか 不 安 を煽 る内 容 で あ
タイ米 ネズ ミ混 入流 言 の理論構 造
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つ た と言 わ ざ る を得 な い。 また 、 こ の 高 崎 議 員
こ とに な る。
の 質 問 で も明 示 的 で は ない が 主 食 用 米 に ネ ズ ミ
が 混 入 して い た と と受 け取 れ る こ と、 そ して 議
雑 誌 で は、3月7日
発 売の 『
週 刊 現 代」 が ネ
ズ ミの 写 真 付 きで 報 道 、 主 食 用 と受 け 取 られ る
員 は、 「日本 で は とて も考 え られ な い」 と述 べ て
表 現 も使 う(6)。3月8日
い る こ とに 注 意 した い。
は 、 加 工 用 米 と明 記 して 写 真 付 きで 報 道 ω。3
こ の 質 問 に 対 して、 政府 側 は ど う答 え たの で
月10日 発 売 の 『週 刊 文 春 』 は、 主 食 用 ・加 工 用
発 売 の 「FLASH」
あ ろ うか。 会 議 録 に よれ ば 、 上 野 食 糧 庁 長 官 は
区 別 せ ず 、 編 集(も
事 実 を あ っ さ り認 め て 次 の よ うに述 べ て い る。
「外 国 か らの 輸 入 米 の 中 に、 今 お話 が ご ざい ま
道(8}、3月15日
した よ う な 各 種 の 異 物 が 入 って い る とい うの は
そ の とお りで ご ざ い ま して 、 私 ど も もそ うい う
18日 、 食 糧 庁 は ネ ズ ミの 混 入 に つ い て調 査 し
た が 事 実 を確 認 で き な か っ1たと発 表as。 こ れ に
もの が 流 通 過 程 に乗 らな い よ う に、 あ る い は最
対 して高 崎 議 員 は記 者 会 見 して発 見 著 名 を公 表
終 の 精 米 と して の 製 品 の 中 に は入 らな い よ う に
す る0。
十 分 な注 意 を して 対 応 を してい る と ころ で ご ざ
い ます 」 ま た 畑 農 水 相 も、 事 実 を否 定 す るの で
こ の こ ろ に な る と、新 聞 の 論 調 も変 わ り、 こ
の 日の 『毎 日新 聞』 は 、 記 事 の 中 で 「国 産 の 検
はな く、 「要 は国 民 の 皆 様 方 の 口 に入 る」 こ との
査 米 に もネ ズ ミが 入 って い る こ とは あ る」 と書
な い よ うにす る こ とが大 事 だ と返 答 して い る。
い た 。21日 、 「AERA』
こ の 質 問 と 答 弁 の 内 容 は 、NHKが
当 日の
「ニ ュー ス9」 で 報 じた た め 、 全 国 に広 まる こ
い る コ メ で も、 夏 に な る と、 ム シ が わ い た り、
とに な った。
日、 『中 日新 聞 』 は 、 そ もそ もネ ズ ミが 米 に混 入
3月1日 、 「毎 日新 聞』 は 「タイ米 の 一 部 に異
物 」 とい う見 出 しで 、 前 日の 参 院 決 算 委 員 会 に
して い た こ とが 異 常 な こ とな の か 、 と い う問 題
お い て 「ネ ズ ミや ゴ キ ブ リの 死 体 」 が 緊 急 輸 入
の もの に も疑 問 を な げ か け た 。 そ の 理 由 は 第1
され た 米 に 混 入 して い た こ とが 明 ら か に な っ た
に、 米 袋 の 中 に ネ ズ ミが 入 っ て い た ら船 積 み の
と伝 え た。 た だ し、 こ の記 事 で は福 岡の 製粉 工
圧 力 で ぺ し ゃん こ に な る し、周 囲 の 米 も汚 れ る
りつ け)し た 写 真 付 きで 報
発売 の
『
週 刊 読 売 」 は、 ス ー
パ ー に行 列 す る人 の 話 と して報 道 して い る(9)。
は 「農 家 で た くわ えて
ネ ズ ミの フ ンが 混 じ っ た りす る」 と指 摘 働。31
と と もに 、 ネ ズ ミが 混 入 して い た とい う事 実 そ
場 で 加 工 用 米 か ら 「ネ ズ ミの 死 体 、 た ば こ の 吸
はず で あ る 。 しか し、 公 表 され た ネズ ミは きれ
い 殻 、 鳥 の 骨 、 輪 ゴ ム な ど」 が 、 大 阪 の 精 米 工
い な ミイ ラで 、米 も汚 れ て い な い の は お か しい 、
場 で 主 食 用 米 か ら 「ゴ キ ブ リ の 死 体 や 釘 、 チ
第2に 、 ネ ズ ミや ゴ キ ブ リは船 倉 に は つ き もの
ョー ク、針 金 」 が 出 て きた 、 と な っ て い る。 ネ
で あ り、 輸 送 中 に外 か ら寄 り付 い た の で は タ イ
ズ ミは 主 食 用 米 か ら加 工 用 米 へ 移 動 した の で あ
米 の 責 任 で は な い 、 とい う もの で あ る。 同 じ く
る。 ち なみ に 「
読 売 新 聞」 と 「朝 日新 聞』 は 、
4月4日
こ の時 点 で は こ の件 につ いて 全 く報 じて い ない 。
摘 し、 も しネ ズ ミ混 入 が 事 実 で あ るな らば、 日
テ レ ビ番 組 で は、 筆 者 が確 認 で きた 限 りで は 、
本 で 混 入 した 可 能性 を否定 で きない 、 と したα3。
テ レ ビ朝 日 の ワ イ ドシ ョー 「こ ん に ち は2時 」
以 上 が 事 件 の概 略 で あ る。 筆 者 は こ の 話 を複
が 報 じて い る。
数 の 友 人 知 人 か ら3月 上 旬 に 聞 い た と記 憶 して
2日 、 「
読 売 新 聞」 は初 め て この 「事件 」 を報
じ、 「畑 英 次 郎 農 水相 は1日 の記 者 会 見 で 『いつ 、
い る。 また 川 上 善 郎 らが3月 下 旬 に行 った 調 査
ど こで そ う した事 実 が あ った の か』 と全 面 否 定 」
て い て不 衛 生 だ」 と い う話 を他 人 か ら 聞 か され
した と伝 え た 。 一 方 、 これ に対 抗 す る形 で 同 日
た り 自分 か ら 話 し た 人 は 、89.2%に
発 売 の 「AERA』
も、 同様 な点 を指
に よ れ ば、 「輸 入 米 に カ ビや ネ ズ ミの フ ンが 入 っ
上 って い
の 「
赤 旗 」 は、 ネ ズ ミ混 入 は 「事 実 」 と ネズ ミ
る圓。 「タ イ米 に ネズ ミが 入 っ て い た」 とい う言
の 死 骸 の写 真 付 きで 報 道 す る と と も に 「福 岡 県
説 は、 マ ス メ デ ィア の 連 鎖 ば か りで な く、 パ ー
内 の 製 粉 工 場 の 労働 者 」 が 発 見 した もの だ と報
ソナ ル な コ ミュ ニ ケ ー シ ョン ・ル ー トで も広 ま
じた 。 「
赤 旗 』 は 、 こ の段 階 で 間接 的 で は あ るが 、
って い た こ とは疑 い 得 な い 。
ネ ズ ミは加 工 用 米 か ら発 見 され た こ と を認 め た
しか し、 既 に 見 て 来 た よ うに 、 この 言 説 が 真
早
40
川
洋
行
実 で あ っ た の か ど うか はか な り怪 しい 。 もち ろ
が 、 不 安 を背 景 に した 流 言 は、 自 己肯 定 的 な言
ん 、 デ マ で あ った と断定 す る こ と はで きない が 、
説 と して あ ら わ れ る もの 、 他 者 肯 定 的 言 説 と し
少 な く と も以 下 の3点
は確 認 さ れ るべ きだ ろ
て あ らわ れ る もの 、他 者 否 定 的 言 説 と して あ ら
う(1$。
① 主 食 用 米 に ネ ズ ミが 混 入 して い た と い
わ れ る もの 、 自己 否 定 的 言 説 と して あ ら わ れ る
う事 実 はな か った 。② 製 粉 工 場 の 労 働 者 が 「発
もの の4種 類 が あ る個。 今 回 の 場 合 は 、 こ の う
見 」 した と さ れ る が 、 行 政 機 関 は この こ と を確
ち の 第1の パ タ ー ンで あ る と言 え よ う。
認 して はい な い 。 ③ こ の ニ ュー ス ・ソ ー ス は ひ
この類型 において、注意 すべ きなのは、それ
とつ で あ り、 発 見 され た と され る ネ ズ ミは1匹
は 第3の 他 者 否 定 的 言 説 と紙 一 重 の違 い しか な
で あ っ た。
い と い う こ とで あ る。 同 様 な 流 言 に1990年 に関
以 下 で は、 この 事 件 が 起 きた 背 景 とそ れ が 提
東 地 域 一 帯 で 発 生 した 「外 国 人 レイ プ 流 言 」 や
起 した 諸 問 題 につ い て 具体 的 に論 じて い くこ と
1984年 長 野 県 で 起 きた 「プ ー ルで 性 病 流 言 」 を
にす る 。
上 げ る こ とが で き る㈹。 前 者 は、 外 国 人男 性 が
日 本 人 女 性 を レ イ プ した と い う 内 容 、 後 者 は
プ ー ル に行 くと東 南 ア ジ ア の 女 性 か ら性 病 を移
2流 言の背景
され る とい う内容 の もの で あ るが 、 「
外 国 人 に注
(1)流
意 しろ」 「あ の プ ー ル に行 くな」 とい う 自己 肯定
言の性格
流 言 を生 み 出 す 社 会 心 理 に は 「不 安 」 と 「飽
的 な 当 為 命 題 は、 外 国 人 に対 す る 差 別 的 言 説 で
き」 が あ る⑯。 そ し て、 不 安 を背 景 に した 流 言
もあ る 。 今 回 の場 合 も、 流 言 が タ イ国 や タイ 人
は、 解 決 流 言 に な りや す く、 飽 き を背 景 に した
に対 す る差 別 と して 受 け取 られ も した。 安 易 な
流 言 は解 釈 流 言 に な りやす い 。 も ち ろ ん 、解 決
自 己肯 定 言 説 は差 別 につ なが る、 とい う こ とは、
に は解 釈 が 必 要 で あ る か ら、解 釈 流 言 は解 決 流
こ の事 件 の残 した教 訓 の ひ とつ で あ ろ う。
言 の上 位 概 念 と して 考 え られ る(図1参
そ れ に して も、 この 言 説 は な ぜ こ れ ほ ど まで
照)。
に 広 ま っ た の だ ろ うか 。 この 点 もち ろ ん 、 マ ス
解釈流言
メ デ ィ アが 伝 え た とい う点 は重 要 で あ る が 、 さ
ら に 「米 」 とい う テ ー マ の 普 遍 性 が影 響 した こ
と を見 逃 す こ と は で きな い 。 流 言 が発 生 す る た
解決流言
め に は 、 そ の 言 説 の テ ーマ に 関心 を持 つ 人 々が
多 数 存 在 しな け れ ば な らな い が 、 この 点 、 日本
人 の主 食 で あ る米 とい うテ ー マ は、恰 好 の もの
で あ った 。 そ して 、 国 家 の 貿 易 統 制 に守 られ て
きた た め に、 多 くの 国 民 は外 国 産 米 に対 す る 不
図1 解釈流言 と解決流言
安 を共 有 す る こ とが で きた。 こ の こ とが 大 規 模
な流 言 の発 生 を可 能 に した と考 え られ る 。
今 回 の 事 件 に お け る 流 言 は 、 「タ イ米 を避 け
要 す る に、 今 回 の 流 言 は 、 国 民 の 外 国 産 米 へ
よ」 とい う命 令 を含 む解 決 流 言 で あ っ た。 こ こ
の不 安 に裏 打 ち され た大 規 模 な 自 己肯 定 型 流 言
か ら、 こ の流 言 を生 み 出 した 心理 と して は 、 「
飽
で あ り、 人 々 に 行 動 を促 す 解 決 流 言 で あ った 、
き」 よ り もむ し ろ タ イ米 の 安 全 性 に対 す る 「
不
と ま とめ られ る。
安」 が は た ら い た と考 え るべ きで あ る働。
こ う した命 令 は、 言 う まで もな く自 らの 安 全
(2)信
じ られ た理 由
を守 ろ う とす る もの で あ る。 た だ し、 不 安 は必
言 説 が 広 範 に広 ま る ため に は 、 テ ー マ が 関 心
ず し もこ うす れ ば 身 を守 れ る、 とい う よ う な言
を集 め る もの で あ る だ けで は な く、信 じ られ る
説 を生 み 出 しは しな い 。 と き に は、 他 者 を否 定
こ とが 必 要 で あ る¢
㊤。 で は、 こ の 言 説 は なぜ 多
す る こ とで不 安 を 静 め よ う とす る こ と もあ る。
くの 人 に信 じられ た の だ ろ うか。
こ の 点 は 以 前 書 い た の で 詳 し くは 繰 り返 さ な い
あ る言 説 が 信 じ られ るか 否 か は、3つ
の観 点
タイ米 ネズ ミ混 入流言 の理 論構 造
か ら考 察 す る こ とが で き る⑳。 第1は
41
、状況 で
ス ター リ ン、 最 近 で は ネ ッシー の 例 で 有 名 で あ
あ る。 す な わ ち 、 人 は伝 達 内 容 に つ い て 自分 の
る鋤。 しか し、 この 方 法 は現 在 も有 効 性 を失 っ
知 識(客
観 的 世 界)と 照 合 して 真 理 性 を検 証 す
る。 そ の 結 果 、 あ りそ うな こ と は事 実 と して 理
て い ない 。 人 々 は 写 真 に対 して 、 見 た ま ま を誠
・
実 に伝 え て い る とい う信 頼 を寄 せ て い る。 そ の
解 さ れ る。 この 流 言 が発 生 した直 前 の 客 観 的 世
結 果 、 写 真 に示 され た もの は信 じて し ま うの で
界 の 有 様 は ど うで あ った だ ろ うか 。
あ る 。 今 回 「発 見 され た」 ネ ズ ミ も多 様 に編 集
まず 第1に
タイ の イ メー ジが け っ して 良 くな
か っ た こ と が指 摘 で きる。3月19日
付 『
朝 日新
聞 夕 刊 」 の 短 評 「素 粒 子 」 は 、 「ア ジ ア な らそ
さ れ 流 布 され た 。 こ の こ と は 「:事
実 」 を よ り以
上 に強 調 す る こ と に な った囲。
ん な事 もあ る さの 声 あ り」 と 「隣 人 蔑 視 」 を 嘆
第2に 、 ワ イ ドシ ョー効 果 を指 摘 した い。 一
般 に ニ ュ ー ス番 組 は、 情 報 の客 観 的 な真 理性 を
い た が 、 カ ンボ ジ アPKO、
重 視 して 伝 達 す る が、 ワイ ドシ ョー番 組 は 、 む
エ イ ズ ・売 春 、 そ
して 米 問 題 の テ ー マ の も と に伝 え られ る タイ の
しろ 出 演 者 の主 観 的 な 誠 実 性 を重 視 した伝 達 を
情 報 は 、 人 々 に予 断 を もた らす の に 十 分 で あ っ
す る。 両 者 は説 得 力 の 質 が 違 うの で あ る 。 そ し
た。 第2に 、2月
中 に似 た 事 件 が 報 じ ら れ た こ
て古 典 的名 著 『大 衆 説 得」 を上 げ る まで もな く、
と。 た と え ば 「主 食 用 ア メ リ カ米 か ら異 臭 」 幽
「主 食 用 中 国 米 か らカ ビ」 ㈱等 で あ る。 第3に
誠 実 性 は 強 力 な説 得 効 果 を発 揮 す る㈲。 こ う し
日本 海 側 の 数 県 で 、 米 をめ ぐるパ ニ ックが 起 き
シ ョー 効 果 と名づ けれ ば、 今 日の 日本 の ニ ュ ー
た こ とが 報 じ られ た こ と図。 第4に
た伝 達 方 法 に よっ て も た ら され る効 果 を ワ イ ド
消 費者団体
ス番 組 の 多 くは、 こ の 効 果 を取 り入 れ よ う と し
に よ っ て ポ ス ト ・八 一 ベ ス ト農 薬 の 問 題 が 指 摘
て い る の は 明 らか だ ろ う。 ワ イ ドシ ョー は米 騒
さ れ、 安 全 性 が 争 点 化 して い た こ と。 第5に
動 を か な りの 時 間 報 道 した3◎
。 ま た ワ イ ドシ
、
緊 急 輸 入 と い う未 経 験 で あ わ た だ しい 事 態 か ら
ョー化 し た ニ ュー ス(ニ
当 然 連 想 さ れ る 検 査 へ の 不 信 感 。 第6に 学 校 給
同様 で あ っ た。 今 回 テ レビ報 道 が 、 誠 実 性 を 強
食 に は 国 産 米 を使 う一 方 、 一 般 に は 国 産 米 の単
調 した 反 面 、 どれ だ け真 理 性 を確 保 で きた の か
品 販 売 を禁 止 した こ と㈲。 第7に 、 マ ス ・メ デ
は疑 問 で あ る。
ュ ー ス シ ョー)番 組 も
ィ ア に よ る 「農 政 批 判 」 や 「タ イ米 の お い しい
第3の
食 べ 方 」 の 報 道 、 ま た曖 昧 な報 道㈲。 こ れ ら の
発 話 者 や 内容 上 の 発 話 者(「 何 々 に よ る と」 の
措 置 や報 道 は 、 もち ろ ん 意 図 さ れ た わ けで は な
何 々)が
観 点 は、 権 威 で あ る。 この 観 点 か ら は
もって い る社 会 的 正 当 性 が 検 証 され る 。
い が 、 人 々 の外 国 産 米 を 「食 べ な け れ ば な ら な
今 回、 この 点 は ど うだ っ たの だ ろ うか 。
い 事 に な っ て し ま っ た」 とい う気 持 ち を強 く さ
まず 、食 糧 庁 長 官 や 農水 相 の 否 定 が 不 徹 底 だ
せ た 。 ま た 第8に1968年
まで輸 入 されて い た
「
外 米」 の あ ま り芳 し くな い イ メ ー ジが あ
っ た。
者 は ネ ズ ミ混 入 を 当初 認 め るか の よ うな 発 言 を
っ た こ とが あ げ られ る 。 先 に述 べ た よ う に、 両
そ して 最 後 に 、現 代 人 が 普 遍 的 に も って い る食
し、 そ の 後 そ れ を 否 定 して い る。 第2に
べ 物 の 安 全 性 に た い す る一 般 的 な不 安 を指 摘 で
方 法 や学 校 給 食 へ の導 入 をめ ぐ って 政 府 方針 が
き る。 現 代 人 は 、 様 々 な 食 品 公 害 事 件 の 経 験 か
二 転 三 転 し た こ と が あ る⑳。 そ して 第3に
ら食 べ 物 に 対 して 臆 病 に な っ て い る の で 、 少 し
人 々の あ い だ に 政 治 家 不 信 が あ った こ とが 指 摘
の 疑 念 に で も敏 感 に反 応 す る。 こ う した 状 況 の
で き よ う。2月 上 旬 に は国 民福 祉 税 騒 動 が あ り、
な か で 「タ イ 米 に ネズ ミが 入 っ て い た」 と い う
下 旬 に は 内 閣 改 造 問題 が起 きた 。 さ らに 、米 騒
言説 は信 じ られ た と考 え られ る。
動 の さな か に前 建 設 相 が 逮捕 され た。
2つ 目 の 観 点 は態 度 で あ る。 こ れ は発 話 者 に
む け て 誠 実 性 を検 証 す る もの で 、 発 話 者 の 主 観
こ う した騒 動 や 事 件 の 結 果 生 まれ た 政 治 家 へ
の 不 信 感 の う え に前 述 の 混 乱 が 加 わ り、 人 々 は
的 世 界 が 問 題 に な る。 この 点 に 関 して 、2点 指
権 力 者 の 言 う こ と は当 て に な らな い とい う心 証
摘 す る こ とが で き るだ ろ う。
を も っ て い た 。 しか し他 方 で、 ネ ズ ミ混 入 が 国
まず 第1は 、 写 真 に よ る説 得 と い う こ とで あ
る。 写 真 が 真 実 を隠 して 来 た こ とは 、 ナ チ ス や
会 で 問 題 に な った とい うこ とは 、 そ れ は そ れ と
、販 売
、
して 情 報 の信 憑 性 を高 め る こ とに な った 。 こ う
早 川 洋 行
42
した権 威 の 揺 ら ぎの 中 で 、 この 流 言 は多 くの 人
伝 統 的 な フ ォー ク ロ ア で は、 動 物 た ち は 「化
に信 じられ た と考 え ら れ る。
か す 」 力 、 超 能 力 を持 っ た存 在 と して 語 られ る
のすべ
こ とが 多 い 。 そ こ に は 、 自然 に対 す る 素 朴 な畏
て に お い て 、 こ の 言 説 を信 じ る ため の 条 件 はそ
怖 が あ る と言 っ て 良 い だ ろ う。 お そ ら く》 昔 の
ろ って い た と言 っ て 良 い 。
人 は、 自分 達 の 科 学 的知 識 で は割 り切 れ ない 現
要 言 す れ ば、 状 況 、 態 度 、権 威 の3点
象 に 出 会 った と き、 そ れ を こ う した動 物 た ち の
(3)ザ
ムザ の恐 怖
力 と して 理 解 した の で は な い だ ろ うか。 そ こ に、
この 流 言 を これ ま で と は別 の角 度 か ら考 え て
昔 の 人 の 自然 や動 物 に対 す る 「お そ れ」 と同 時
み た い。 筆 者 が こ こ で 注 目 し た い の は、 な ぜ
「ネズ ミ」 だ った の か とい う問 題 で あ る。
に 「うや ま い」 を感 じ取 る の は 容 易 で あ る。 ひ
実 は、 近 年 ネ ズ ミ を め ぐる 流 言 は、 この ほ か
る が え って 「ネズ ミを食 べ る」 とい う言 説 に は 、
「お そ れ」 は あ る もの の 「うや ま い」 を感 じ る
に も幾 つ か 起 きて い る。 た と え ば、1992年 、神
こ とは で きない 。 そ こ にあ るの は 、 「そ ん な もの
奈 川 県相 模 原 市 で は ス ナ ッ ク菓 子 か らネ ズ ミが
を食 べ る よ うに は な りた く ない 」 と い う脱 文 明
出 て 来 た と い う 話 が 広 ま っ た し㈱、 ケ ン タ ッ
キ ー ・フ ライ ドラ ッ トの 話 は、 日米 共 通 の 噂 で
化 、 脱 人 間化 す る こ と の恐 怖 、 換 言 す れ ば 自然
へ の恐 怖 で しか ない よ う に思 わ れ る。
あ る㈱。 また 、 「ビル の 屋 上 に あ る貯 水 槽 に は ネ
か つ て カ フ カ は、 「変 身」 の な か で 、文 明社 会
ズ ミの 死 骸 が 浮 か ん で い る」 とい う言 説 は 良 く
か ら取 り残 され て 汚 物 を食 べ る1匹 の 甲虫 に な
聞 く話 で あ る㈱。 こ れ らに 共 通 す るの は 、 い ず
る 人 間 の 姿 を描 い た 。現 代 人 は 、 ま さ に その 主
れ もネズ ミを食 べ る恐 怖 を語 っ て い る 点 で あ ろ
人 公 、 グ レ ゴー ル=ザ ム ザ の よ うに な る こ とに
う。
恐 怖 して い るの で は な か ろ うか 。 お そ ら く現 代
民 俗 学 的 に 言 え ば 、 ネ ズ ミの よ うに夜 行 性 で
人 は、 さ ま ざ ま な文 明 の 利 器 の 中 で 暮 らす こ と
かつ 人 間社 会 の 身 近 な 闇 に棲 む動 物 は、 話 の 中
に慣 れ て しま っ た の で 、 そ れ ら を奪 わ れ た と き
で異 界 との橋 渡 し役 と して 人気 の あ.るキ ャ ラ ク
自分 が い か にか 弱 い 存 在 で あ る か と い う こ と を
ター で あ る。 実 際 日本 の フ ォー ク ロ ア に は 、 ネ
自覚 して い る の だ 。 だ か ら こそ 、 人 工 的 世界 に
ズ ミに限 らず 、 こ う した動 物 、 た とえ ば タ ヌキ 、
執 着 す る。
キ ツ ネ、 イ ヌ、 ネ コ、 ヘ ビ、 な どの 超 能 力 を語
人工 的 世 界 とは 都 市 的 世 界 の こ とで あ る。 こ
った もの が 多 い 。 で は今 回 の 流 言 も、 こ う した
の 点 で 、 今 回 の 「タ イ米 ネ ズ ミ混 入 流 言 」 と オ
伝 統 的 フ ォー ク ロ ア の 延 長 上 に 理 解 す べ きな の
イ ル ・シ ョ ッ クの 際 の トイ レ ッ ト ・ペ ー パ ー 騒
だ ろ うか 。
動 を結 び付 け て 考 え る こ と もで きる だ ろ う。 か
つ て 人 々 は トイ レ ッ ト ・ペ ーパ ーが な くな る と
そ こ で 筆 者 は 、 で き る 限 り 日本 の伝 統 的 フ
ォー クロ ア を調 べ た。 しか し 「ネズ ミを食 べ る」
い う言 説 に過 剰 に 反応 した。 トイ レ ッ ト ・ペ ー
とい う近 年 は や りの 話 に 類 似 す る もの は 出 て こ
パ ー は、 ま さ し く都 市 的 生 活 の 象徴 で あ る。 だ
なか った。 む しろ 、 た とえ ば 「鼠 浄 土」、い わゆ
とす れ ば、 これ ら2つ の言 説 と騒 動 の背 後 に は、
る 「お むす び こ ろ りん」 で 語 られ る ネ ズ ミと ネ
い ず れ も都 市 的 生 活 を 死 守 しよ う とす る気 持 ち
ズ ミを食 べ る と い う現 代 の 流 言 との 問 に は、 根
が 存 在 して い る と考 え られ な い だ ろ うか㈱。 昔 、
本 的 な違 いが あ る よ うに感 じざ る を得 な か った。
と言 って もそ れ ほ ど前 で は な い が 、 子 供 達 は、
「俵 の ネ ズ ミが コ メ 食 っ て チ ュ ー」 と歌 い 、 遊
伝 統 的 な もの か ら この 流 言 を解 釈 で きな い と
す れ ば、 現 代 に 固 有 な 条 件 に そ の意 味 を探 る し
ん だ もの だ。 しか し、 も は や多 くの 現 代 人=都
か な い。 近 年 の 流 言 研 究 で は民 俗 学 的 分 析 が 盛
市 人 の 生 活 に お い て は、 そ う した 自然 との 日常
ん に 行 わ れ て い るが 、 今 回 の 事 件 に限 れ ば、 む
的 な 触 れ 合 い は希 薄 で あ る。 そ れ ゆ え この 流 言
しろ 、社 会学 あ る い は社 会 心 理 学 的 な 分 析 が 必
は 、 高 崎 議 員 が述 べ た よ う に 「日本 で は とて も
要 だ と思 わ れ る㈲。 で は、 そ う した 文 脈 か ら、
「タイ 米 ネ ズ ミ混 入 流 言」 は 、 どの よ う に と ら
考 え られ な い 」 話 と して 広 ま っ た。 す な わ ち、
え られ る だ ろ うか 。
「タ イ米 ネ ズ ミ混 入 流 言」 は、 現 代 の 都 市 生 活
が 生 み 出 した都 市 流 言 の1つ で あ った の で は な
タイ米 ネ ズ ミ混 入流 言の理 論構 造
い だ ろ う か 働。
43
主義 と も言 うべ きイ デ オ ロ ギ ー を表 出 させ た の
で あ る㈲。
3 流言の伝達
(2)流
(1)流
言 とパ ー ソナ ル ・コ ミュ ニ ケ ー シ ョン
言 と マ ス ・コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン
次 に マ ス ・コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 、 特 に 新 聞 報
以 上 述 べ て 来 た点 以 外 に 「タ イ米 ネズ ミ混 入
道 と の 関 連 で 、 今 回 の 事 件 を考 え て み た い 。
流 言 」 が 我 々 に提 起 した 問 題 に つ い て 、 最 後 に
今 回 の 情 報 の 流 れ を 図 示 し た の が 図2で
2つ の 側 面 か ら考 察 し た い。 第1は
パ ー ソナ
(図2「
あ る
タ イ 米 ネ ズ ミ混 入 流 言 の 流 れ 」 参 照)。
ル ・コ ミ ュニ ケ ー シ ョ ンの 側 面 で あ り、 第2は
マ ス ・コ ミュニ ケ ー シ ョ ンの側 面 で あ る。
マ ス ・メデ ィ アの 報 道 →→ → 視 聴 読 者 の 認 識
ま ず 前 者 。 流 言 は 既 存 の コ ミ ュニ ケ ー シ ョ
ン ・ル ー トを活 性 化 させ る。 しか し、 そ れが 既
↑
↑ 情 報 の出 所B
↑ ↓
t一
←←←←← 視聴読者の行動
存 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン ・ル ー トの 範 囲 だ け に
(国会 質 問)
と ど まっ て い た な らば 、 そ れ は流 言 で は な くて
↑
単 な る噂 に 過 ぎ ない 。流 言 の流 言 た る とこ ろ は、
情 報 の出 所A
通 常 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン ・ル ー トを越 え て 広
(「
発 見 」)
↓
(流言/反 論/忌 避)
ま っ て行 く点 に あ る。 流 言 は噂 の 氾 濫 なの で あ
る。
図2 タイ米 ネ ズ ミ混 入 流 言 の 流 れ
今 回 の 流 言 で 第1に 興 味 深 い の は、 米 を求 め
る行 列 の 中 で こ の 言 説 が 語 られ て い た とい う雑
「タ イ 米 ネ ズ ミ混 入 」 の 報 道 に 関 して
、三大新
誌 報 道 で あ る圏。 シブ タニ は群 衆 状 況(milling)
聞 は際 立 った 違 い を見せ た 。
が 流 言 発 生 を促 す こ と を指 摘 して い るが 、 ま さ
『
毎 日新 聞」 は、3月1日
に行 列 の よ う な不 特 定 の 人 との 直接 的 コ ミュ ニ
根 拠 に 「タ イ米 ネ ズ ミ混 入 」 を事 実 と して 報 道
ケ ー シ ョ ンの 機 会 は、 流 言 の 発 生 に 好 都 合 で あ
した。 『
読 売 新 聞 』 は、2日 、 情 報 の 出所Bを
る㈲。現 代 で は 様 々 な電 子 的 パ ー ソ ナ ル ・メ デ
ぐっ て共 産 党 議 員 と農 水相 双 方 の主 張 を伝 え た。
『
朝 日新 聞』 は、3日 に 「異 物 が 混 入 して い る
ィア が 発 達 して い る。 しか し、 そ れ らで の コ ミ
、 情 報 の 出 所Bを
め
ュ ニ ケ ー シ ョ ンは 、 先 に指 摘 した 言 説 を信 じ る
と され る 問 題 」 につ い て 来 日 中 の タイ 国 商 務 省
3つ の 観 点 の う ち 「態 度 」 の側 面 で 直 接 コ ミ ュ
副 大 臣 の コ メ ン トを伝 え、4日
に は 「ネ ズ ミな
ニ ケ ー シ ョ ンに劣 って い る し、 現 段 階 の 普 及 状
ど異 物 が 見 つ か っ た と取 り上 げ られ た 問 題 」 に
況 で は 広 が る 範 囲 も限 られ て い る。 今 回 の事 件
つ い て バ ン コ ク発 共 同 電 と して、 タイ政 府 の 反
は、 パ ー ソ ナ ル ・コ ミュニ ケ ー シ ョ ンに お け る、
応 を伝 えた 。
直 接 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョンの 力 の 大 き さ を あ らた
こ う した 第 一 報 の 違 い は、 そ の 後 の 各 社 の こ
の問 題 に関 連 した 記事 の報 道 姿 勢 に も連 動 す る。
め て 示 した と言 え る。
第2に 言 え る こ とは 、 こ の 流 言 は 、 イ ン ・グ
ル ー プ の確 認 と拡 大 に役 立 つ と と もに、 イ デ オ
す な わ ち、 『
毎 日新 聞 』 は、 関 連情 報 を積 極 的 に
記 事 に した し、 逆 に 『読 売 新 聞 』 は概 して 抑 制
ロ ギ ー を 顕 在 化 させ た とい うこ とで あ る。 こ の
的で あ った 。 『
朝 日新 聞」 は 、 タイ側 の 反 応 を重
流 言 を語 る 人 々 は 、 国 産 米 を欲 して い る者 同 士
点 的 に報 道 した。
で あ る とい う連 帯 感 を もつ こ とが で きた で あ ろ
こ れ らの 報 道 に 関 して 、 い ず れ の 新 聞 に も言
う し、 また 、 流 言 を語 る こ とに よ って 仲 間が 増
え る こ とは 、 元 々の 情 報 の 出 所Aを 確 認 して い
えて 行 く快 感 を得 る こ とが で きた で あ ろ う。 流
な い とい う こ とで あ る。 この 点 、 当 初 共 産 党 側
言 を語 る こ と よ る集 合 的一 体 感 が コ ミュ ニ ケ ー
が 誰 が ネ ズ ミを発 見 した の か を明 らか に しな か
シ ョ ン行 為 を後押 し した と考 え るの はそ れ ほ ど
っ た こ とは 、 考 慮 さ れ な け れ ば な らな い な らな
無 理 で は な い㈹。 こ の 言 説 は、 こ う して 伝 わ っ
い 。 しか し、 だ か ら と言 って どの よ う な報 道 を
て 行 き、 平 時 に お い て は潜 在 化 して い た 国 産 米
して も良 い とい う訳 で は あ る まい 。 こ う い う場
早
44
川 洋
合 、 メデ ィ ア はい か に報 道 す べ きな の だ ろ うか。
行
た と考 え る こ とが で き る。 この 点 で 、 この 流 言
筆 者 は 、 少 な くと も 「
毎 日新 聞』 と 「朝 日新
は、 オ イ ル ・シ ョ ック 時 の トイ レ ッ ト ・ペ ー
聞」 の 報 道 につ い て は 、疑 問 を感 じざ る を得 な
パ ー 騒 動 と通 底 して い る。 す な わ ち 、 現 代 都 市
い。 なぜ な ら 「毎 日新 聞」 は、 当初 、情 報 の 出
社 会 が 生 み 出 した都 市 流 言 で あ っ た と考 え られ
所Aを 十 分 確 認 しな い ま ま議 員 の 発 言 を事 実 断
る。
定 的 に報 道 した と考 え られ るか らで あ り、 「
朝日
③ 流 言 の 潜 在 的機 能 につ い て 。 電 子 メ デ ィ ア
新 聞」 の 報 道 は、 自 らの新 聞 が 報 道 して い な い
が 発 達 した 現 代 社 会 に お い て も、 直接 的 な コ ミ
こ と につ い て の 外 国 の 反 応 を伝 え る こ とで 、 結
ュ ニ ケ ー シ ョ ンは 健 在 で あ る。 流 言 は 、 メ デ ィ
果 と して 白紙 の 読 者 に 曖 昧 な情 報 を与 え、 不 安
ア の 介 在 の有 無 を問 わず 、 既 存 の コ ミ ュニ ケ ー
を煽 った 可能 性 が あ る か らで あ る。
シ ョ ン ・ル ー トを活 性 化 させ た り、 新 た な コ ミ
マ ス ・メ デ ィ アが 報 道 す る こ とで 流 言 が 拡 大
ュ ニ ケ ー シ ョ ン ・ル ー トを 開拓 し た りす る。 た
し、 そ の こ と、 あ る い はそ の こ とに よ っ て引 き
だ し、 そ れ は 開 か れ た ネ ッ トワー キ ン グ で は な
起 こ さ れ た 事 件 を また マ ス ・メ デ ィ アが 取 り上
い。 流 言 は、 イ ン ・グ ル ー プ の 確 認 と拡 大 に貢
げ る とい う相 互 作 用 は、 近 年 の都 市 流 言 に は よ
献 す る と と も に、 そ の こ と を 通 し て イ デ オ ロ
くみ られ る パ タ ー ンで あ る。 図 を使 って言 え ば、
ギ ー を表 出 させ る潜 在 的 機 能 を もっ て い る。
情 報 は右 側 の 環 の なか で 自 己 増 殖 を繰 り返 す 。
④ ジ ャー ナ リズ ム との 関 連 につ い て 。 情 報 が
こ う した 過 程 に お い て 特 徴 的 な の は、 情 報 の そ
伝 達 さ れ る過 程 で 、 当初 マ ス ・メ デ ィア の な か
もそ もの 出 発 点 が 曖 昧 に さ れ る こ とで あ る。 今
に 「事 実 は何 か 」 と い う問 い よ り も、 セ ンセ ー
回 の流 言 にお い て も同 様 で あ った 。
シ ョナ リズ ム や 視 聴 読 者 の 不 安 を煽 る 報 道 傾 向
この 点 、 「事 実 は何 か」 とい う問 い か けが メデ
が あ っ た 。 こ う した ジ ャー ナ リズ ム の 姿 勢 に よ
ィア側 に も、 視 聴 読 者 側 に も希 薄 だ っ た と言 っ
って 、流 言 は増 幅 す る こ と にな った 。
て 良 い だ ろ う。 しか し、責 任 は 視 聴 読 者 よ り も
注
メ デ ィ ア側 に 大 で あ る 。 な ぜ な ら、 情 報 量 が 増
大 し、 メデ ィア 依 存 が 高 ま って い る今 日の 社 会
で は、 視 聴 読 者 に批 判 的態 度 を要 求 す る に もお
(1)
ご う した噂 を テ ーマ に した本 は、 木 下 富 雄 「
現代
の ず と限度 が あ る か らで あ る。 マ ス ・メ デ ィア
の 噂 か ら 口頭 伝 承 の 発 生 メ カニ ズ ム を探 る ∼ 「マ
に携 わ る 人 に は 、冷 静 に事 実 を 追 及 す る、 よ り
一 層 の ジ ャー ナ リ ズ ム 精神 が 求 め られ て い る と
噂 」(木 下 富 雄/吉
言 え る。 今 回 の 流 言 事 件 は、 こ の点 で も学 ぶ べ
科 学 」 福 村 出版 、1994年)で
き素 材 を提 供 した と考 え られ る㈱。
い るが 、 そ れ以 後 も池 田加 代 子 他 「ピア ス の 白 い
ク ドナ ル ド ・ハ ンバ ー ガー」 と 「口 裂 け 女 」 の
田 民 人 編 「記号 と情 報 の行 動
糸 」(白 水 社 、1994年)等
4 結び
、 か な り紹 介 され て
、多 数 出版 さ れ て い る。
しか し、紙 幅 の 関係 上 こ こで そ れ ら を紹 介 す るの
は割 愛 させ て い た だ く。電 子 的パ ー ソナ ル ・メデ
ィ ア の メ デ ィア特 性 につ い て は 、本 稿 第3章 第1
最 後 に本 論 文 の 要 点 を ま とめ る こ とに しよ う。
節 で 簡 単 に触 れ た 。
① 流 言 の 発 生 条 件 につ い て。 タ イ米 に ネ ズ ミ
が本 当 に入 って い たの か ど うか は 定 か で は な い。
「
朝 日新 聞」1987年7月1日
(2)
。「
読 売 新 聞 」1989
しか し、 こ の 曖 昧 な 情 報 は急 速 に全 国 的 に広 ま
年 、6月26日
った。 そ の 理 由 は、 テ ーマ と して の 米 が 普 遍 的
て は 、筆 者 も同 年9月 に神 奈 川 県 川 崎 市 で 回覧 板
な もの で あ り、共 有 さ れ る不 安 が あ っ た こ との
や張 り紙 で伝 わ った こ と を確 認 して い る 。
。 この うち 「当 た り屋 流 言 」 につ い
ほ か に、 そ の 言 説 を真 実 と受 け とめ やす い3つ
(3)拙
の 条件(客 観 的 世 界 、 主 観 的 世 界 、社 会 的 世界)
会編 「
社 会 運 動 の統 合 をめ ざ して 」 成 文 堂 、1990
が備 わ って い た か らで あ る。
年)、 「流 言 の 根 底 に あ る もの」(社 会 運 動 論 研 究
会編 「
社 会運 動 の現 代 的 位 相」 成 文 堂 、1994年)。
② 都 市 と の 関 連 に つ い て 。 こ の 流 言 は、 人 々
が 都 市 生 活 で抱 か ざ る を得 ない 不 安 か ら発 生 し
(4)こ
稿 「
現 代 社 会 に お け る流 言 」(社 会 運 動 論 研 究
の 論 文 は、 い わゆ る米 騒 動 と流 言 との 因 果 関係
タイ米 ネ ズ ミ混 入流 言 の理論構 造
を主 張 す る もの で はな い 。 た だ し、 こ の流 言 が タ
㈲ 食 糧 庁 は 当初 学 校 給 食 に は 国 産 米 を使 用 す る と し
イ 米 忌 避 を招 い た と い う 報 告 は 、 「
朝 日新 聞 夕
て い た が 、3月17日
刊」(道 内 版)3月4日
また食 糧 庁 は3月7日
「
毎 日新 聞」3月18日
(5)
45'
、「
朝 日新 聞 」3月26日
、
に見 受 け ら れ る
。
「
参 議 院 決 算 委 員 会 会 議 録 第1号 平 成6年2月
に 市 町 村 の 自主 判 断 を認 め た 。
に 国 産 米 の 単 品 販 売 を禁 止
し、 ブ レ ン ドを 奨励 した が 、11日 に セ ッ ト販 売 を
認 め た。
㈲ ω ㈲ ㈲ ⑩ oo ㈱ ⑯ ⑯
28日 」
㈲ 曖 昧 な報 道 に つ い て は 第3章 第2節 を参 照 。
「
週 刊現 代 」3月19日
号
「FLASH」3月22日
。
鋤 「
朝 日新 聞」3月17日
号。
㈱
。
た と えば 「
週 刊 文春 」3月17日
号 を参 照 。
「
週 刊 文春 」3月17日
号。
RO . K. Merton, Mass Persuasion:The Social
「
週 刊 読売 」3月20日
号。
Psychology of War Bond Drive,1946(柳
井道夫
「
朝 日新 聞 夕 刊 」3 .月19日。
「
赤 旗」3月19日
訳 「
大 衆 説得 』 桜 楓 社 、1973年)
。
㈹ ワ イ ドシ ョーが 米 騒 動 を放 映 した時 間 は 、3月6
「AERA」3月28日
号
「AERA」4月11日
号
。
日か ら12日 まで が6時 間45分15秒 で 各 話 題 の 中で
。
1位 。13日 か ら19日 まで が4時 間13分52秒 で2位 、
うわ さ とニ ュ ース の 研 究 会(代 表 川 上 善 郎)「 平
20日 か ら26日 まで が3時 間7分11秒
成 米 騒 動 ∼ お 米 と うわ さの 調 査 報 告 書」 文 教 大 学
た 。TBS「
情 報 学 部 、1994年 。
01)注 ㈲ を参照 。
(19 あ る 言 説 が 真 実 で あ る か 否 か は、 す ぐ分 か る場 合
もあ れ ば 、 時 間 が 経 って も分 か らな い 場 合 もあ る。
した が っ て 、 虚 偽 性 を も って 流 言 を特 徴 づ け るの
は 適 切 で は ない 。 この 点 は、 前 掲 拙 稿 「現 代 社 会
に お け る 流 言」 参 照 。
で2位 で あ っ
ブ ロ ー ド ・キ ャス ター」 資料 。
㈱ 「朝 日新 聞」(さ が み野 版)1992年5月22日
㊤⇒ J.H. 。
Brunvand, The Vanishing Hitchhiker:
American Urban Legends and Their Meanings,
1981(大
月 隆 寛 、 菅 谷 裕子 、 重信 幸 彦 訳 「
消え る
ヒ ッチ ハ イ カ ー
新 宿 書 房 、1988年)
⑯ 拙稿 「
流 言 の根 底 に あ る もの」 参 照 。
図 重 信 幸 彦 「噂 的 な 言 葉 の 力 」 「週 刊 読 書 人」1993
(切 も っ と も、 「不 安 」 の 背 後 に 「
飽 き」 を想 定 す る
年10月29日 。
こ とは 可 能 で あ る。 そ れ を示 唆 す る 資 料 と して 、
絢 民 俗学 的 手 法 を取 り入 れ た 流 言研 究 と して 、前 掲
あ る 主 婦 は、 米 を求 め る人 々 に 悲 壮 感 は 感 じ られ
木 下 富 雄 の 論 文 、 また 三 隅 譲 二 「
都 市 伝 説一
ず 、 む しろ 情 報 交 換 を楽 しん で い る よ うだ った と
言 と し て の 理 論 的 考 察 」(「社 会 学 評 論 」165、
記 して い る 。 「SAPIO」5月26日
1991年)が
号。
流
あ る。
㈹ 拙 稿 「流 言 の根 底 に あ る もの 」 参 照 。
岡
⑯ 「
外 国 人 レイ プ流 言 」 につ い て は、 市 川 孝 一 「外
い。 一 方 で 自然 へ の ロ マ ン主 義 的 感 情 も生 み出 す 。
国 人 に よ る婦 女 暴 行 デ マ と そ の 背 景 」 「
生活科 学
現 代 の ア ウ ト ドア ・レジ ャ ーへ の 関 心 の 高 さ は、
研 究 」 文 教 大 学 生 活 科 学 研 究 所 紀 要)第14集
、
そ れ を証 明す る もの だ ろ う。 しか し、そ の場 合 の
1992年 。 「プ ー ル で 性 病 流 言 」 に つ い て は 、 「朝 日
ア ウ ト ドア と は、 制 御 され た 自然 で しか ない こ と
新 聞」1984年9月14日
に留 意 した い 。
。
都 市 生 活 は 自然 へ の恐 怖 を醸 成 す る ばか りで は な
⑫◎ 拙 稿 「
現 代 社 会 にお け る流 言 」 参 照 。 また 、川 上
働 都 市 が い か に ネ ズ ミを排 除 して 来 た か つ いて は、
善郎 はエ イズ 流 言 に つ い て この 点 を実 証 的 に 明 ら
佐 藤 健 二 「
風 景 の生 産 ・風 景 の 解 放 」 講 談 社 選 書
か に して い る。 川 上 善 郎 「エ イ ズ と うわ さ ∼ うわ
メ チエ 、1994年 参 照 。 民 俗 学 的 研 究 で は 、 現 代 の
さへ の接 触 、 うわ さの 伝 達 を促 進 す る要 因 につ い
流 言 を 「
都 市 伝 説 」(Urban Legends)と
て」 文 教 大 学 情 報 学 部 「
情 報 研 究」 第15号 、1994
とが 多 いが 、 こ れ は不 適 当 な ネー ミング で あ る 。
年。
なぜ な ら伝 説 は 時 代 を経 て 言 い 伝 え られ る もの な
㈲
拙 稿 「現 代 社 会 に お け る流 言」 参照 。
呼ぶこ
の に対 して 、 今 日話 題 に な る もの の 多 くは 短 命 だ
㈱ 「
朝 日新 聞」2月19日
。
か らで あ る。 この 点 は 拙 稿 「流 言 の 根 底 に あ る も
㈱ 「
朝 日新 聞」2月26日
。
の 」 参照 。
㈱ 「
朝 日新 聞」2月19日
。
岡 「週 刊 読売 」3月20日
号 。 注(14)参
照。
早 川 洋 行
46
働 丁.Shibutani, Improvised News:ASociological
Study of Rumor,1966(広
井 脩、橋元 良明、後藤
将 之 訳 「流 言 と社 会 』 東 京 創 元 社 、1985年)146
頁。
㈹ 注㈲参照。
㈲ シ ブ タニ 前 掲 書 、210頁 参 照 。 ユ ング は噂 に よ っ
て無 意 識 の もの が 意 識化 され る と述 べ て い る。C.
G.Jung, Moderner Mythus=von Dingen,die am
Himmel gesehen werden,1985(松
代 洋一 訳 「
空
飛 ぶ 円盤 」 朝 日出版 社 、1976年)23,4頁
。
幽 この 点 で オ イル ・シ ョ ッ ク時 の 教 訓 が 活 か さ れ た
の か 疑 問 で あ る 。 あ る 新 聞 記 者 は トイ レ ッ ト ・
ペ ー パ ー騒 動 の 後 、次 の よ うに 書 い て い る。 「問
題 は、 そ の 後 の報 道 姿 勢 で あ ろ う。 あ ち こ ちで ト
イ レ ッ ト ・ペ ーパ ー ・パ ニ ックが 起 き始 め た 時 、
自分 達 の 報 道 が結 果 的 にせ よ、 パ ニ ック を あ お り
立 て て い る こ と に気 が つ か な け れ ば ウ ソで あ っ た。
実 態 は む し ろ 逆 で あ っ た 。 「異 常 事 態 を見 た まま
に、 正 確 に報 道す る」 だ け で い い の か 。 沈 静化 に
向 けて の報 道 に主 眼 を置 くべ きで は な か った の か 。
報 道 機 関へ の 反省 を迫 る材 料 で もあ った 」松 井 義
雄 「
経 済 と情 報 」(富 田信 男/加 藤 博 久 編 「
情報
と社 会 変 動 」 北 樹 出 版 、1989年)98頁
付
。
記
・新 聞 、雑 誌 で と くに 年 を示 さな か った 場 合 は、 す べ
て1994年 で あ る 。
・この 論 文 は1994年6月12日
第42回 関 東 社 会 学 会 大 会
にお い て 報告 した もの を加 筆 修 正 した もの で あ る 。