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©Larry Ho
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D
Charles 今月のマエストロ
シャルル・デュトワ
意欲みなぎるタクトから表現される
20 世紀の名作に期待
文
伊藤制子
そうそう
N響の歴代の音楽監督には錚々た
る面々が名を連ねているが、スイ
ス・ローザンヌ生まれのシャルル・
個性的なプログラムで
聴かせるフランス近現代作品
デュトワは中でも特別な存在だろう。
彼の名を世界的なものにしたのは
N響はその創生期から、ドイツ・オ
カナダのフランス語圏のモントリオ
ーストリア系の重厚かつ濃密なスタ
ール交響楽団を飛躍的にレヴェル・
イルを得意とする指揮者から薫陶を
アップさせ、フランス近代音楽を得
受けてきた。N響らしい豊穣な響き
意レパートリーとする名集団に生ま
がこういった名匠たちによって培わ
れ変わらせたことだろう。文字通り
れたのは言うまでもない。そこへま
オーケストラを鍛え上げるトレーナ
ったく異なる潜在能力を引き出しに
ー。そんな異名さえふさわしいデュ
かかったのが、1998 年から音楽監
トワをN響側が招聘した背景には、
督に就任したデュトワに他ならない
こういった手腕によって楽団をさら
くんとう
ほうじよう
つちか
(現在は名誉音楽監督)
。
しようへい
に成長させてほしい、そんな願いが
どを聴くことができたのはデュトワ
N響はもとより、ソリストとして
のおかげだと言える。
も選りすぐられた名手たちが揃うオ
世界中の旬のソリストを聴けるの
ーケストラではあるが、デュトワは
もN響定期の醍醐味のひとつなのだ
個々の高い能力を尊重しつつ、そこ
が、加えて、デュトワは日本の若い
から弦楽器群の明度の高い洗練され
世代の奏者との共演に積極的な指
た優美な響きを、そして管楽器群の
揮者のひとりだ。その指揮を通じ
より開放的な華やぎに満ちた音色を
て、私たちがその新たな魅力に開眼
引き出したのである。N響の主要な
したソロ奏者も少なくない。たとえ
レパートリーとは言えなかったフラ
ば、2002 年の定期公演では、今や
ンス近現代の作品を中心とした音楽
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽
を表現するのに、まさに適したトー
団のコンサートマスターとして活躍
ンを構築したのである。
中の樫本大進、さらに俊英の庄司紗
デュトワによってよりレヴェル・
矢香らがデュトワと共演。第 12 回
アップしたサウンドを得たN響。さ
チャイコフスキー国際コンクールで
らにこの時期には個性的なプログラ
女性ピアニストとして初めて優勝し
ムが組まれるようになった。近現代
た上原彩子とは 2004 年定期で、チ
作品が増え、オペラを含めた多彩な
ャイコフスキー《ピアノ協奏曲第 1
声楽作品がしばしば登場するように
番》を演奏した。今や日本を代表す
なった。ほんの一例だけでも挙げれ
る奏者となったこういった若手奏者
ば、ベルリオーズ《キリストの幼
の成長ぶりは、デュトワとN響との
時》、ヤナーチェク《グラゴル・ミ
蜜月の成果とも言えるだろう。
サ曲》、さらにはブリテン《戦争レ
クイエム》、R. シュトラウスのオペ
ラ《エレクトラ》など。さらに最近
では、2012 年定期のストラヴィン
スキーのオペラ《夜鳴きうぐいす》
、
ラヴェルのオペラ《こどもと魔法》
などの秀逸な名演も記憶に新しい。
スイス生まれのデュトワは、フラ
ンク・マルタン、アルテュール・オネ
ゲルなど、故国の作曲家の作品を音
楽監督時代に取り上げている。オー
ケストラの演奏会では常連とは言い
難い作曲家たちではあるが、ピアノ、
ハープ、チェンバロのソロが入るマ
ルタンの洒脱な《小協奏交響曲》な
「むしろ演奏会形式がふさわしい」
《ペレアスとメリザンド》
さて今回の 12 月定期公演は、ラ
ヴェル、ドビュッシー、ベルクなど、
20 世紀の名作を中心にラインナッ
プしており、デュトワの趣向を反映
したものになっているが、中でもA
プロのドビュッシーの名作オペラ、
《ペレアスとメリザンド》の演奏会
形式による上演は最大の目玉である。
オペラ史の中でも異色の作品で、繊
細なオーケストラに乗って、メーテ
ルリンクの美しいテキストが時に語
りのごとく歌われていく。よい意味
Philharmony December 2014
あったのだと推察される。
今月のマエストロ シャルル・デュトワ
でオペラの通念を裏切る作品とも言
えるかもしれない。デュトワはこの
ドビュッシー作品に並々ならぬ意欲
上げた曲は少なくない。今回は名
作《弦楽のためのレクイエム》がC
プロで演奏される。オーケストラの
を示しており、インタビューで語っ
定期にも時々登場する武満の出世作
たところによると、美しい色彩感や
で、独特の色彩やフレージングを巧
鐘の音ひとつに象徴的な意味を込め
みに表現するには作品への深い理解
るような繊細な表現は、むしろ演奏
が必要とされるだろう。デュトワが
会形式がふさわしいのではないかと
そのあたり、どのような指揮振りを
言う。ペレアスのステファーヌ・デ
披露するか、興味は尽きない。Cプ
グー、ゴローのヴァンサン・ル・テク
ロでは近年評価上昇中のアラベラ・
シエなど、適材適所に配された歌手
美歩・シュタインバッハーとベルク
陣にも期待なのだが、中でも比較的
《ヴァイオリン協奏曲》で共演。さ
地味な役柄である乳母ジュヌヴィエ
らにBプロでは優れた若手として頭
ーヴを歌うのがあのナタリー・シュ
角を現しているユジャ・ワンとファ
トゥッツマンというから驚きだ。フ
リャ《交響的印象「スペインの庭の
ランス語の端正な歌唱に長けた陣容
による歌唱をデュトワのタクトがも
り立ててくれるだろう。
また、かねてから彼が力を入れて
きた武満徹作品。《ノスタルジア》
夜」
》
、ラヴェル《ピアノ協奏曲》で
コンビを組む。多彩な個性をもつソ
リストとデュトワがどのような音楽
をつくりあげるのか。12 月定期は
まさに聴き物満載である。
《セレモニアル》《ノヴェンバー・ス
(いとう・せいこ 音楽学)
テップス》など、N響とともに取り
プロフィール
スイスのローザンヌ生まれ。現
新なプログラムで聴衆を魅了してき
在ロイヤル・フィルハーモニー管弦
た。
楽団芸術監督・首席指揮者を務める。 2013 年 8 月の N 響とのヨーロッ
N響では 1996 年から常任指揮者を
パ・ツ ア ー で は 8 月 25 日 の ザ ル ツ
務め、1998 年には音楽監督に就任。 ブルク音楽祭他 4 公演を指揮。細川
現在は名誉音楽監督として、定期的
俊夫の新作《嘆き》の世界初演など
に出演中だ。近代以後の作品や演奏
を含め、N 響の底力を世界に発信す
機会の少ない珍しい曲を積極的に紹
ることに成功した。2013 年 12 月に
介。オペラや劇作品など声楽を含む
続く今回の定期は、ドビュッシーの
》を
ジャンルも、デュトワの得意分野で、《歌劇「ペレアスとメリザンド」
ダルラピッコラ《囚われ人》
、シマ
はじめ、武満、近代フランス音楽が
ノフスキ《ロジェ王》
(日本初演)
、
中心という、デュトワ色の濃いプロ
バルトーク《青ひげ公の城》など斬
グラムとなった。 (伊藤制子)
A
第 1796 回 NHKホール
12/5[金]開演 6:00pm
12/7[日]開演 3:00pm
[指揮]
1796th Subscription Concert / NHK Hall
5th(Fri.)
Dec, 6:00pm
7th(Sun.)
Dec, 3:00pm
シャルル・デュトワ
[conductor] Charles
Dutoit
[ペレアス]
[Pelléas]
[ゴロー]
[Golaud]
ステファーヌ・デグー(バリトン)
ヴァンサン・ル・テクシエ
Stéphane Degout (baritone)
Vincent Le Texier (bass-baritone)
(バス・バリトン)
[アルケル]
[Arkel]
[イニョルド]
[Le petit Yniold]
[医師]
[Un médecin]
フランツ・ヨーゼフ・ゼーリヒ(バス)
カトゥーナ・ガデリア(ソプラノ)
デーヴィッド・ウィルソン・ジョンソン
Franz-Josef Selig (bass)
Khatouna Gadelia (soprano)
(バリトン)
David Wilson-Johnson (baritone)
[メリザンド]
[Mélisande]
[ジュヌヴィエーヴ]
[Geneviève]
カレン・ヴルチ(ソプラノ)
ナタリー・シュトゥッツマン
(コントラルト)
Karen Vourc’h (soprano)
Nathalie Stutzmann (contralto)
[羊飼い]
浅井隆仁(バリトン)
[Un berger]
[合唱]
[chorus]
東京音楽大学
(合唱指揮/阿部 純)
[コンサートマスター]
篠崎史紀
Takahito Asai (baritone)
Tokyo College of Music
(Yasushi Abe, chorus master)
[concertmaster]
Fuminori Shinozaki
ドビュッシー
Claude Debussy (1862-1918)
歌劇「ペレアスとメリザンド」
“Pelléas et Mélisande”, drame lyrique
(全 5 幕・演奏会形式・字幕つき)
(150’)
en 5 actes (concert style)
第1幕
第2幕
第3幕
Acte I
Acte II
Acte III
Philharmony December 2014
Program
Program
休憩 Intermission(30 分)
A
第4幕
第5幕
Acte IV
Acte V
字幕 和田ひでき
字幕操作 イヤホンガイド/
G・マーク
Japanese Supertitle
Hideki Wada /
Earphone Guide Co,. Ltd.
Soloist
ステファーヌ・デグー
Stéphane Degout
フランスのバリトン。リヨン国立
高等音楽院卒業後、リヨン国立歌劇
場アトリエ・リリック(若手オペラ
れている。オーケストラとの共演も
数多く、2012 年にはムーティ指揮
のシカゴ交響楽団と《カルミナ・ブ
パリ・オペラ座、ベルリン国立歌劇
場、コヴェントガーデン王立歌劇場、
メトロポリタン歌劇場など欧米の歌
ッシーニ《オリー伯爵》ランボー役、
2012 年パリ・オペラ座バスティーユ
のジョルダン指揮《ペレアスとメリ
ザンド》ペレアス役など、豊かで力
強い美しい声と正確なディクション
歌手養成コース)の一員となる。
1999 年エクサン・プロヴァンス音
楽祭に《魔笛》パパゲーノ役でデビ
ュー、国際的な注目を集めた。以後、
劇場に多数出演。ザルツブルク、グ
ラインドボーン、エクサン・プロヴ
ァンスなどの音楽祭にも頻繁に招か
ラーナ》でソリストを務めた。
最近の活動は映像でも広く知られ、
2011 年メトロポリタン歌劇場のロ
で高い評価を得ている。N響とは初
共演。 (柴辻純子/音楽評論家)
ゴロー
ヴァンサン・ル・テクシエ
Vincent Le Texier
フランスを代表するバス・バリト
ン。1986 年から 1988 年、パリのオ
ペラ座のオペラ芸術学校で学び、こ
の時期に初舞台を踏む。以来四半世
いオペラ上演で重用されている。近
年はヒロイックなバリトン役にも挑
戦しており、2009 年にはベルク《ヴ
音楽、喜劇、悲劇、イタリア・オペ
ラ、フランス・オペラ、ドイツ・オペ
ラ等々、あらゆる音楽において素晴
らしい歌を聞かせてくれる。加えて
気品のある舞台姿に極めて高い演技
力も持ち合わせており、演劇性の高
大の当たり役である。1988 年、この
作品のモスクワ初演で初めて歌って
以来、パリやリヨンといったフラン
紀以上にわたって活躍している。
ル・テクシエは広大なレパートリ
ーを誇る歌手で、バロックから現代
ォツェック》のタイトル・ロールを
パリのオペラ座で歌っている。
ドビュッシー《ペレアスとメリザ
ンド》のゴローはル・テクシエの最
スの劇場はもちろん、欧州や新大陸
の劇場で何度も歌っている。N響と
は初共演。(吉田光司/音楽評論家)
Philharmony December 2014
©Julien Benhamou
ペレアス
Soloist
A
©Anne Hoffmann Program
アルケル
フランツ・ヨーゼフ・ゼーリヒ
Franz-Josef Selig
すでに 20 年以上のキャリアを持
つ世界的なバス歌手である。
《パル
シファル》グルネマンツ、
《魔笛》
り、2013 年にも同役と《ワルキュ
ーレ》のフンディングを歌った。そ
の他、ザルツブルク音楽祭でダニ
攻した後、クラウディオ・ニコライ
の声楽クラスで学んだ。そしてエッ
センの劇場で活動した後は、フリー
ランスの歌手としてキャリアを積ん
できた。2012 年にバイロイト音楽
ンはジョナサン・ノット、グスター
ボ・ドゥダメル指揮のもと、ベート
ーヴェン《交響曲第 9 番》のソリス
トを務めた。リートの分野でもシュ
ーベルトの《冬の旅》を歌い、高く
ザラストロ、《後宮からの誘拐》オ
スミンなどを得意としている。
ケルンの音楽大学で教会音楽を専
祭で《さまよえるオランダ人》ダー
ラントを歌って音楽祭デビューを飾
エル・ハーディング指揮の《フィガ
ロの結婚》に出演するなど、世界的
に活躍している。2013/2014 シーズ
評価されている。N響とは初共演と
なる。 (片桐卓也/音楽ライター)
イニョルド
カトゥーナ・ガデリア
Khatouna Gadelia
グルジア生まれの若手ソプラノ。
サンクトペテルブルク音楽院で学び、
2004 年にパリ国立高等音楽院を卒
ヴェルディ《ポッペアの戴冠》アモ
ーレ役やストラヴィンスキー《結婚》
花嫁役など幅広いレパートリーで活
った。トゥールーズ・キャピトル劇
場では 2007 年にドニゼッティ《愛
の妙薬》ジャンネッタ役で出演し、
ここでもバルバリーナをはじめさま
ョルド役は、2011 年パリのシャン
ゼリゼ劇場とロンドンのバービカ
ン・センター、2013 年ニース歌劇場
で歌った。フランス語の静かな響き
業した。2005 年以降、主にフラン
スの劇場で経験を積み、
《魔笛》パ
ミーナ、《フィガロの結婚》バルバ
リーナなどモーツァルトの各役を歌
ざまな役柄で出演している。
その後もヨーロッパ各地でモンテ
躍。2012 年グラインドボーン音楽
祭に大野和士指揮のラヴェル《こど
もと魔法》子供役でデビューした。
《ペレアスとメリザンド》のイニ
と軽やかな声が心地よく響くだろう。
N響とは初共演。 (柴辻純子)
Soloist
デーヴィッド・ウィルソン・ジョンソン
David Wilson-Johnson
40 年ものキャリアを誇るベテラ
ンのバリトン。1950 年英国のノー
サンプトンに生まれ、ロンドンの王
マーラー《一千人の交響曲》、ベー
トーヴェン《第 9》等の記念碑的な
公演にも数多く出演。
楽祭、一流オーケストラに常時招か
れ、ブーレーズ、ブリュッヘン、ジ
ュリーニ、アーノンクール、メータ、
度となく存在感を発揮。N響とは
2008 年、2011 年、2012 年の各定期
で共演しており、前回のデュトワ指
揮によるストラヴィンスキー《夜鳴
きうぐいす》、ラヴェル《こどもと魔
立音楽院で声楽を学ぶ。1976 年英
国ロイヤル・オペラのヘンツェ《わ
れわれは川に来た》でオペラ・デビ
ュー。以来、世界の主要歌劇場や音
プレヴィン、ラトルほか多数の著名
指揮者と共演している。レパートリ
ーはバロックから現代まで幅広く、
2006 年オペラの舞台から引退し
たが、今なお演奏会における「声の
演技力」は比類なく、日本でも幾
法》での好演も記憶に新しい。
(柴田克彦/音楽評論家)
©Cecile Hug
メリザンド
カレン・ヴルチ
Karen Vourc’h
フランスのソプラノ。父はノルウ
ェー人。1999 年、パリ高等師範学
校で理論物理学の専門研究課程を修
了。その後歌手へと転向し、短期間
世紀、21 世紀の近現代作品も得意
にしている。また歌曲も好んで取り
上げており、とりわけ北欧の歌曲は
のモーツァルト《魔笛》のパミーナ
でデビューしている。
ヴルチは古典派からロマン派の
様々な作品で人気を博しており、こ
とにモーツァルトのオペラに定評が
ある。一方、卓越した歌唱力で 20
年に初役、それから僅か 2 年後の
2010 年 6 月、パリのオペラ・コミッ
ク座での新制作上演でメリザンドを
で急速に頭角を現す。トゥールーズ
国際声楽コンクールで 1 位なしの第
2 位を獲得。ベルギーのモネ劇場で
彼女の重要なレパートリーである。
ドビュッシー《ペレアスとメリザ
ンド》のメリザンドは、ヴルチが国
際的名声を獲得した役である。2008
歌い、絶賛を博す。2012 年 7 月に
はロンドンのプロムスでも歌ってい
る。N響とは初共演。 (吉田光司)
Philharmony December 2014
©Annelies van der Vecht
医師
Soloist / Chorus
©Simon Fowler Program
ジュヌヴィエーヴ
ナタリー・シュトゥッツマン
A
Nathalie Stutzmann
現代を代表するコントラルト歌手。
1965 年生まれ。パリ・オペラ座の歌
手だった母に音楽の手ほどきを受け
ンデルスゾーン《エリア》などに出
演。N響とは、2000 年 11 月定期公
演のエルガー《海の絵》で初共演を
2011 年には、サイモン・ラトル&ベ
ルリン・フィルハーモニー管弦楽団
に招かれ、マーラー
《交響曲第 3 番》
の初演 100 周年公演でも歌うなど、
彼女の得意の役柄のひとつである。
近年は、指揮者としても活躍して
いる。2009 年に室内オーケストラ
「オルフェオ 55」を創設。2014 年 1
る。ナンシー音楽院で学ぶ。歌曲で
の活躍が顕著であり、シューマン歌
曲集の録音は特筆される。
マ ー ラ ー 没 後 100 年 に あ た る
と《第 8 番》の独唱者を務めた。日
本では、小澤征爾&サイトウ・キネ
ン・オーケストラと共演を重ね、メ
飾る。
《ペレアスとメリザンド》の
ジュヌヴィエーヴは、2002 年パリ
のオペラ・コミック座での同オペラ
月には水戸室内管弦楽団を指揮した。
(山田治生/音楽評論家)
合唱
東京音楽大学
Tokyo College of Music
創立は、私立の音楽大学では最も
古い 1907(明治 40)年。声楽教育
にも力を入れ、著名な教授陣のもと
に多くのコンクール入賞者、オペラ
ロムシュテット指揮で共演したほ
か、2005 年のハイドン《天地創造》、
2009 年にはメルデルスゾーン《夏
を広上淳一指揮、粟國淳の演出によ
り、同大学 100 周年記念ホールで公
演した。これまでに海外演奏旅行な
ども行っており、実績は数多い。
N響とは 1995 年にベートーヴェ
ン《荘厳ミサ曲》をヘルベルト・ブ
メンバーは声楽専攻の学生を中心
とする。そのなかから数年後にオペ
ラ歌手としてデビューする人もあり、
歌手、声楽家を輩出している。
2012 年 9 月 に は 創 立 105 周 年 記
念オペラ、プッチーニ《ボエーム》
の夜の夢》と度々共演を重ね、2010
年 11 月の定期公演ではマーラー《交
響曲第 2 番「復活」》にマルクス・シ
ュテンツの指揮で出演した。
なかにはトップ・クラスの歌手とし
て活躍する人材も出ている。
(関根礼子/音楽評論家)
1862-1918
ドビュッシー
歌劇「ペレアスとメリザンド」
(演奏会形式)
この作品は、ベルギーの象徴主義
物の話や住む場所がいつどこと限定
の劇作家モーリス・メーテルリンク
されず」
「場所や性格によっていろ
(1862 〜 1949)の戯曲に基づくドビ
いろに流動的な場面を与えてくれる
ュッシー唯一のオペラで、ドラム・
詩、つまり登場人物たちが文句を言
リリック(叙情劇、または歌われる
わず、人生や運命を受け入れるよう
劇の意)に分類される。
な詩があればいい」
。1889 年秋のこ
1880 年代は、フランスにおいて象
ととされる。彼は、最初メーテルリ
徴主義の美学に光があたった時代で
ンクの『マレーヌ姫』
(1890 年上演)
ある。ドビュッシーもその思潮のな
のオペラ化を望んだが叶わず、残念
かでヴェルレーヌや、先駆的な詩人
な思いを抱いているところへ『ペレ
ボードレールの詩によって歌曲を書
アスとメリザンド』の劇上演(1893
いている。濃密ともいえるその音楽
年)を観た。それは、まさに彼の望
は、ワーグナーの影響を色濃く感じ
みどおりの作品だった。物語は、時
させるものであった。ドイツ・ロマ
代も場所もわからない架空のアルモ
ン派の究極の音楽とされるワーグナ
ンド王国の城で展開し、登場人物た
ーの楽劇は、当時音楽家だけでなく
文学者も含むほとんどすべての芸術
家の称賛の的であり、ドビュッシー
もそれに夢中になったひとりである。
ところが彼は、1888 年と 1889 年の
バイロイト音楽祭へワーグナーを聴
きに行くうちに、自分の求める音楽
はワーグナーのやり方では実現でき
ないと気づく。1889 年のパリ万国博
覧会で安南(現ベトナム)の音楽劇
やジャワのガムラン演奏を聴いたこ
とも変化の一因だったようだ。
ドビュッシーは、新たな語法を探
究する過程で、作曲の師ギローとの
対話においてオペラ創作に関する予
言的な言葉を残している。
「登場人
うつそう
ちを取り巻く自然──鬱蒼とした森、
嵐の海、庭園の澄んだ泉、城の地下
よど
ば ら
いばら
かき
道の淀んだ水、薔薇の香り、茨の垣
など──やさまざまな出来事が複雑
に絡み合いながら見えない力となっ
て彼らの行動を決定していく。彼ら
はその力のなすがままである。
この筋立てがドビュッシーを夢中
にさせずにはおかなかった。そこで
友人の詩人アンリ・ド・レニエにメー
テルリンクへの仲介を頼んでオペラ
化を願い出た。すると今度は首尾よ
く 1893 年の夏に許可が得られたの
である。作曲家はすぐに喜び勇んで
《ペレアス》の作曲に取りかかった。
そして 11 月下旬にはメーテルリン
Philharmony December 2014
Claude Debussy
Program
A
クを表敬訪問し、削除部分の貴重な
とされるいくつもの、いわゆるライ
示唆を受けるなど作家と良好な関係
トモティーフを使い、それらが場の
をもった。その後ドビュッシーは出
状況に応じて変化していく手法によ
来上がった部分を少しずつ仲間内で
る。しかしそれは、ワーグナー流の
披露していき、
《ペレアス》上演の
機能和声理論を土台にした交響的、
期待はしだいに高まっていったが、
または従来の展開的な主題労作では
う よき よく せつ
それでもさまざまな紆余曲折があり、
上演にこぎつけるまでに 9 年もかか
った。さらに上演が正式に決まると、
ゆだ
すべてをドビュッシーに委ねると約
束していた作家が、メリザンド役を
自分の愛人にやらせるようにと主張
もんちやく
して譲らずひと悶着起こしたり、ま
た初日 2 日前のオペラ・コミック座
そう げい こ
での総稽古では支持者と敵対者が入
り混じって騒然となるなど、作曲家
の気が休まることはなかった。しか
し 1902 年 4 月 30 日の初演以降、
《ペ
レアス》の真価を理解し支持しよう
とする人々(そのなかにはラヴェル
もいた)の熱意が徐々に浸透してい
しん し
き、聴衆は真摯に耳を傾けるように
なる。そして、初日直後の悪意すら
感じられる酷評の嵐に黙って耐えた
作曲家が、ついに「大成功!」と言
えるほど聴衆の反応が変化していっ
たのである。その結果、シーズン終
わりの 6 月末までに 14 回の公演を
重ねることになった。
ドビュッシーは、5 幕 19 場の原作
から、登場人物の感情や感覚と直接
には関係しないと思われる部分を削
除して事実上 5 幕 15 場とした(楽
譜では 3 場を数に入れず 5 幕 12 場
となっている)
。音楽は、各登場人
物、森、王冠、指輪、泉などを表す
なく、登場人物の内面の変化に即応
したモティーフの柔軟な変容による
ものである。ドビュッシーにとって
登場人物の内面の動きこそが重要で
あり、その流れは音楽側の都合で中
断されたり引き延ばされたりしては
ならないのであった。そのため、ゴ
ローに出会ったときのメリザンドの
恐怖も、嫉妬にかられたゴローの暴
力的な感情も、ペレアスとメリザン
ドの愛の告白も、必要なだけの時間
で誇張なく表現される。オーケスト
ラの音量も控えめで、歌もひとつの
感情に留まって声高く歌ったりしな
い。そうすることで《ペレアス》は
人の魂の動きに完全に寄り添える音
楽を実現できたのである。それが、
長い間自分の語法を探し続けたドビ
ュッシーのひとつの答えであった。
物語の時代 不明
場所 架空のアルモンド王国
登場人物 アルケル(アルモンド王
国の盲目の老王)
、ゴロー(アルケ
ルの孫、ペレアスの異父兄)
、ペレ
アス(アルケルの孫、ゴローの異父
弟)
、メリザンド(ゴローの妻)
、ジ
ュヌヴィエーヴ(ゴローとペレアス
の母)
、イニョルド(ゴローと前妻
の息子)
、医師、羊飼い
誘う。疑念を抑えきれないゴローは、
るいは「過去」を表す)で幕が開く。
息子イニョルドに若い 2 人の行動を
森で狩をしていて道に迷ったゴロー
見張らせようとする。
(木管の 3 連符と付点リズムでゆれ
るモティーフ)は、泉の辺りで泣い
第 4 幕 ペレアスは旅に出ることにな
り、その前にメリザンドと会う約束
ているメリザンド(オーボエとクラ
をする。アルケルが城でのメリザン
リネットによるはかなげなモティー
ドの暮らしを哀れんでいるところへ
フ)に出会い、彼女と結婚して城で
ゴローがやってきて、怒りに任せて
暮らすようになる。
彼女に暴力をふるう。一方、独り遊
第 2 幕 ペレアスの若々しいモティ
びをするイニョルドは、石の下のボ
ーフ(フルート)で始まる。彼と庭
ールが欲しいのに石を持ち上げられ
園の泉を散歩するメリザンドが、過
ない。そこへ羊の群れがにぎやかに
って結婚指輪を水に落としてしまう。
鳴きながらやってくる。羊たちは行
それと同時刻にゴローは落馬して大
きたい道へ行けないことがわかると、
おお
け
が
怪我をする。メリザンドの指輪がな
もう黙って羊飼いにしたがって行く。
いと気づいたゴローは怒り、ペレア
意味深長な場面だ。夜になって約束
スと一緒に探しに行くように命ずる。
どおり盲目の泉のところで会ったペ
メリザンドとペレアスは指輪を求め
レアスとメリザンドはついに愛の告
どうくつ
て月明かりに照らされた洞窟へ行く。
第 3 幕 メリザンドが塔の窓辺で髪
をとかしながら、
「私は日曜日の正
午に生まれた」と古雅な歌をうた
う。塔の下を通りかかったペレアス
が、窓から落ちてきた彼女の長い髪
たわむ
と戯れていると、ゴローがやってき
白をし合う。そこへ嫉妬に狂ったゴ
ローが忍び寄ってペレアスを剣で殺
す。メリザンドは逃げる。
第 5 幕 メリザンドはかすり傷を負っ
ただけなのに死の床に横たわってい
る。ゴローは後悔しながらも、彼女
しつよう
に過ちを犯さなかったかどうか執拗
て 2 人をたしなめる。次の場面への
に問い詰める。アルケルが、彼女の
間奏は、ゴローのモティーフの執拗
魂に静寂をと言ってゴローを諫める。
なリズムによって彼の心に芽生えた
メリザンドは小さな女の子を生んだ
嫉妬心を暗示する。同じ気持ちから
のち、静かに息絶える。
しつよう
彼はペレアスを城の危険な地下道に
作曲年代:1893 〜 1902 年
初演:1902 年 4 月 30 日、オペラ・コミック座、
アンドレ・メサジェ(指揮)
、メアリー・ガーデ
ン(メリザンド)
、ジャン・ペリエ(ペレアス)
楽器編成:フルート 3(ピッコロ 1)、オーボ
エ 2、イングリッシュ・ホルン 1、クラリネッ
いさ
(松橋麻利)
ト 2、ファゴット 3、ホルン 4、トランペット
3、トロンボーン 3、テューバ 1、ティンパニ
1、シンバル、サスペンデッド・シンバル、グ
ロッケンシュピール、トライアングル、ハー
プ 2、弦楽、バンダ:テューブラー・ベル
Philharmony December 2014
第 1 幕 低音のモティーフ(
「森」あ
Program
Program
B
B
第 1798 回 サントリーホール
12/17[水]開演 7:00pm
12/18[木]開演 7:00pm
[指揮]
1798th Subscription Concert / Suntory Hall
17th (Wed.) Dec, 7:00pm
18th (Thu.) Dec, 7:00pm
シャルル・デュトワ
Charles
[conductor]
Dutoit
[ピアノ]
[piano]
[コンサートマスター]
[concertmaster]
ユジャ・ワン*
篠崎史紀
Yuja Wang*
Fuminori Shinozaki
ドビュッシー(ラヴェル)
Claude Debussy (1862-1918) / Ravel
「ピアノのために」から「サラバンド」
(5’) “Pour le piano” – Sarabande
ドビュッシー(ラヴェル)
舞曲(6’)
Claude Debussy / Ravel
Danse
ファリャ
Manuel de Falla (1876-1946)
*
交響的印象「スペインの庭の夜」
“Noches en los jardines de España”,
(25’)
impresiones sinfónicas*
Ⅰヘネラリーフェで
Ⅱはるかな踊り
Ⅲコルドバの山の庭で
ⅠEn el Generalife
ⅡDanza lejana
ⅢEn los jardines de la sierra de Córdoba
休憩 Intermission
ラヴェル
ピアノ協奏曲 ト長調(20’)
Maurice Ravel (1875-1937)
Piano Concerto G major
Ⅰアレグラメンテ
Ⅱアダージョ・アッサイ
Ⅲプレスト
ⅠAllegramente
ⅡAdagio assai
ⅢPresto
Ⅰ序奏
Ⅱ火の鳥とその踊り
Ⅲ王女たちの踊り(ホロヴォート舞曲)
Ⅳカッチェイ王の魔の踊り
Ⅴこもり歌
Ⅵ終曲
ⅠIntroduction
ⅡL’oiseau de feu et sa danse
ⅢRonde des princesses (khorovode)
ⅣDanse infernale du roi Kastcheï
ⅤBerceuse
ⅥFinal
Philharmony December 2014
ストラヴィンスキー
Igor Stravinsky (1882-1971)
バレエ組曲「火の鳥」
(1919 年版)
“L'oiseau de feu”, ballet suite
(22’)
(1919 edition)
Soloist
©Felix Broede
Program
ピアノ
ユジャ・ワン
B
Yuja Wang
鮮烈な技巧とステージ上でのカ
リスマ的な存在感により、若い世
アバド、バレンボイム、ドゥダメ
ル、デュトワ、ゲルギエフ、マゼー
り、フィラデルフィアのカーティス
音楽院でゲイリー・グラフマンに師
重ねている。2011 年にはカーネギ
ーホールでのリサイタル・デビュー
代でもっとも注目されるピアニス
ト。1987 年 北 京 生 ま れ。6 歳 よ り
ピアノを始め、北京の中央音楽院で
リン・ユェン、チョウ・グォアンレン
に師事。カナダを経てアメリカに移
事。2006 年には、ギルモア・ヤング・
アーティスト賞を受賞した。
2005 年、ピンカス・ズーカーマン
指揮ナショナル・アーツ・センター管
弦楽団との本格デビューを機に次々
と世界の舞台に招かれ、これまでに
ル、ノリントンらの著名指揮者のも
と、ボストン交響楽団、シカゴ交響
楽団、ニューヨーク・フィルハーモ
ニック、ロサンゼルス・フィルハー
モニック、パリ管弦楽団他と共演を
を果たした。録音では、名門レーベ
ルと専属契約を結んでいる。
N 響 と は 2007 年 1 月、2008 年
12 月以来の共演となる。
(飯尾洋一/音楽ジャーナリスト)
Claude Debussy/Maurice Ravel
「ピアノのために」から「サラバンド」
モーリス・ラヴェルとクロード・ド
バンド》と《舞曲》
)の管弦楽編曲
ビュッシー──近代フランス音楽を
は、成熟したラヴェルによるドビュ
代表する 2 人の作曲家は当時から好
ッシーの音楽へのひとつの反応とし
んで比較されたが、実際の両者の関
て聴くこともできる。ラヴェルはこ
係もなかなかに複雑である。ドビュ
の編曲を通じて、ドビュッシーの音
ッシーの音楽は学生時代のラヴェル
楽に自らの個性を刻みつけたのだ。
の憧れであり、
《牧神の午後への前
《サラバンド》は、ドビュッシー
奏曲》はラヴェルにとって重要な作
初期の終わり頃の小品集《ピアノの
品であり続けた。また後年、自らの
ために》の第 2 曲で、ラヴェルが
《シェエラザード》
(1903 年)にドビ
もともと高く評価していた曲であり、
ュッシーの影響があることを認めて
ドビュッシー夫人宛てのラヴェルの
いる。
書 簡(1922 年 6 月 8 日 ) に は「 非
しかし一方で、ラヴェルはドビュ
常に管弦楽的な曲」と記されている。
ッシーの追随者とみなされることを
ドビュッシーの「荘重でゆったりし
断固拒否した。1922 年のインタビュ
た優雅さをもって」という指示に従
ーでは自らを「反ドビュッシスト」
い、懐古的な響きをまとわせつつも、
と説明し、さらに数年後、自分は音
ラヴェルは弱音器なしのトランペッ
楽にドビュッシー以上の意志と知性
トの使用などにより音の輪郭にメリ
を求めて「古典」の道を選んだと語
ハリを付け、色彩感を引き出してい
っている。こうした言葉はラヴェル
る。ラヴェル自身の管弦楽版《亡き
の美学を示すと同時に、
「ドビュッ
王女のためのパヴァーヌ》
(1910 年)
シー以後」を探究する作曲家の複雑
によく似た弦の平行和音、冒頭のフ
な心情をも明らかにしていよう。そ
レーズの終わりと曲の最後で 2 回だ
のため、ラヴェルが 1922 年に出版
者ジョベールの依頼で行ったドビュ
ッシーの 2 つのピアノ小品(
《サラ
作曲年代:ドビュッシーの原曲《ピアノのため
に》は 1894 〜 1901 年作曲、ラヴェルによる
《サラバンド》の管弦楽編曲は 1922 年 11 月
初演:1923 年 3 月 18 日、ポール・パレ指揮ラ
ムルー管弦楽団、パリのサル・ガヴォーにて
おごそ
け使用されるタムタムの厳かな響き
が、印象的な余韻を残す。
(関野さとみ)
楽器編成:フルート 2、オーボエ 1、イングリ
ッシュ・ホルン 1、クラリネット 2、ファゴッ
ト 2、ホルン 2、トランペット 1、シンバル、
タムタム、ハープ 1、弦楽
Philharmony December 2014
ドビュッシー(ラヴェル)
Program
Claude Debussy/Maurice Ravel
ドビュッシー(ラヴェル)
舞曲
B
1922 年に出版者ジョベールがラヴ
ェルに管弦楽編曲を依頼した、ドビ
ュッシー初期のピアノ小品 2 曲のう
ちの 1 曲。ドビュッシーが 1890 年
に作曲した際は、イタリアの舞曲と
オーストリアの地名が組み合わされ
た《スティリア風タランテラ》とい
うタイトルが付いていたが、1903 年
の再版で《舞曲》に改題された。ラ
格を与えている。
ドビュッシーによるもともとのテ
ンポの指定は「アレグレット」だが、
ラヴェルはその横にメトロノーム記
号を加え、アレグロに近い速さに設
定している。この爽快なスピード感
とともに、旋律の輪郭を明確にし、
リズムに鋭敏さを加えて硬質な音響
に仕上げるラヴェルの楽器法が、ス
ヴェルの管弦楽編曲版のタイトルも
ペイン音楽を思わせるような「光と
これに倣ったと考えられる。
影」をドビュッシーの原曲から引き
ドビュッシーの原曲における民俗
出す。主題を奏でる楽器は、例えば
風の要素は、主題のリズムや 6/8 拍
オーボエやクラリネットの木管から
子と 3/4 拍子の混合によって独創的
即座に低弦へ、そしてまた高音域の
なら
かも
に醸し出されるが、ラヴェルはそれ
木管へといった具合に、時に大胆に
を創意に富んだ楽器法で鮮やかに彩
移り変わる。タンバリンやティンパ
り、強調する。このことが結果とし
ニなどの打楽器を巧みに使用した民
て、ドビュッシーの音楽をラヴェル
俗風のリズムの色彩、軽やかなハー
自身が得意としたスペイン音楽の色
プのグリッサンドの装飾的効果など、
彩に近づけ、原曲の印象を一新させ
すべてが元の音楽に秘められた明と
ているところが非常に面白い。この
暗のコントラストを明らかにし、い
《舞曲》では、ドビュッシーの素材
っそう際立たせる。ドビュッシーの
自体がもつ自由なイマジネーション
原曲の個性的な持ち味が、ラヴェル
せい ち
に富む味わいと、ラヴェル流の精緻
せつしよう
な美学のダイナミックな折衝があり、
それが音楽に意想外のユニークな性
作曲年代:ドビュッシーの原曲《スティリア
風タランテラ》は 1890 年作曲、ラヴェルに
よる管弦楽編曲は 1922 年 12 月
初演:1923 年 3 月 18 日、ポール・パレ指揮ラ
ムルー管弦楽団、パリのサル・ガヴォーにて
ならではの洗練された新しい形で仕
上げられた、不思議に愉快な音楽で
ある。 (関野さとみ)
楽器編成:フルート 2、オーボエ 2、クラリネ
ット 2、ファゴット 2、ホルン 2、トランペッ
ト 2、ティンパニ 1、トライアングル、タンブ
リン、小太鼓、シンバル、サスペンデッド・シ
ンバル、大太鼓、クロタル、ハープ 1、弦楽
1876-1946
ファリャ
交響的印象「スペインの庭の夜」
スペイン南端の都市カディスに生
まれたファリャがパリへ渡ったのは、
ア〉からの影響が色濃い。しかしピ
アノと管弦楽の組み合わせを、
「ピ
1907 年夏のことである。その後第一
アノ協奏曲」の型に全く引きずられ
ぼつ ぱつ
次世界大戦が勃発してマドリードに
ることなく書き上げることは、ドビ
戻る 1914 年までの 7 年間、ファリ
ュッシーもラヴェルもまだできてい
ャはフランス音楽の黄金期にあった
なかった。彼らが技術で表現したス
パリで過ごした。ファリャが紛れも
ペインの律動を、ファリャは本物
なく「スペイン的」だと感じたドビ
の即興的感性で磨き上げた。ピア
ュッシーの《版画》第 2 曲〈グラナ
ノ・パートは時にギターにもカンテ
ダの夕暮れ〉は、1903 年に作曲され、
(歌)にも、あるいは打楽器のリズ
ラヴェルもまた、1908 年に管弦楽の
ムにも感じ取れる。作品はフランス
ための《スペイン狂詩曲》を発表し
初演を担ったスペイン人ピアニスト、
ている。さらにドビュッシーは、管
リカルド・ビニェスに献呈された。
弦楽のための《映像》第 2 曲となる
第 1 曲〈ヘネラリーフェで〉
「ヘネラ
〈イベリア〉を 1908 年に完成させた。
リーフェ」とは、アンダルシア州グ
調や拍をぼやかし異国情緒を表す彼
ラナダのアルハンブラ宮殿に隣接す
らのテクニックは、ファリャにはス
る美しい庭園つきの離宮の名前であ
ペイン民謡の抑揚に、自然に和声を
る。第 2 曲〈はるかな踊り〉場所は
つけたかのように響いた。
定かではないが、イスラム色が強く
《スペインの庭の夜》はこのパリ
残るアンダルシアの地に聞こえてく
の刺激の中で書き始められ、スペイ
る遠い踊りの音風景と思われる。第
ン帰国後に仕上げられている。絵画
3 曲〈コルドバの山の庭で〉コルドバ
的に並べられた 3 曲からなるこの作
もやはりアンダルシアの町で、北方
品は、とりわけドビュッシーの《交
に山脈が連なっている。第 2 曲と第
響 詩「 海 」
》
(1905 年 ) や〈 イ ベ リ
3 曲は続けて演奏される。
(安川智子)
作曲年代:1911 〜 1915 年
初演:1916 年 4 月 9 日、マドリード、テアト
ロ・レアル。ホセ・クビーレスによるピアノ独
奏、エレナンド・アルボス指揮、オルケスタ・
シンフォニカ
楽器編成:フルート 3(ピッコロ 1)、オーボ
エ 2、イングリッシュ・ホルン 1、クラリネッ
ト 2、ファゴット 2、ホルン 4、トランペット
2、トロンボーン 3、テューバ 1、ティンパニ
1、シンバル、サスペンデッド・シンバル、ト
ライアングル、チェレスタ 1、ハープ 1、弦楽、
ピアノ・ソロ
Philharmony December 2014
Manuel de Falla
Program
Maurice Ravel
1875-1937 ラヴェル
ピアノ協奏曲 ト長調
B
第一次世界大戦が終わった後の
ンタビューに、ラヴェルはこの作品
ラヴェルがいかに憔 悴していたか
が「真の意味での協奏曲である。す
は、誰も正確に知ることはできな
なわち、モーツァルトやサン・サー
い。戦争のショックはもちろんのこ
ンスと同じ精神で書かれている」と
と、1917 年に最愛の母親を亡くした
答えている。古典的な形式を備えて
ことでラヴェルの時は止まってしま
いるというだけでなく、
「協奏曲は
った。ラヴェルはパリ近郊のモンフ
あくまで陽気で華麗なもの」とのラ
ォール・ラモリに古い家(ル・ベルヴ
ヴェルの考えに基づいている。実際
ェ デ ー ル ) を 購 入 し、1921 年 5 月
は、ラヴェルの戦後の多くの作品が
から両親の思い出とともに閉じこも
そうであるように、懐古の姿勢が貫
るようになった。グランドピアノが
かれている。すなわち過去の形式や
置かれたこのル・ベルヴェデールで、
戦前の自分自身の書法と、同時代に
ラヴェルは 2 曲のピアノ協奏曲を含
あふれる新しい音楽的潮流との折衷
む後年の傑作群を生み出している。
がみられる。第 1 楽章にはガーシュ
戦後のラヴェルに少しずつ元気を
ウィンからの影響が顕著なジャズの
与えたのは、アメリカのジャズや若
語法と、母の思い出であるスペイン
い世代の活気、そして自身に寄せら
の主題が用いられている。第 2 楽章
れる称賛と名誉であった。1928 年 3
にはサティへのオマージュが感じら
月に北米演奏旅行に出かけたラヴェ
れる。作品はラヴェルに代わって初
ルは、
《ラプソディー・イン・ブルー》
演でピアノ独奏を務めたマルグリッ
で名声を得ていたガーシュウィンに
ト・ロンに献呈されている。
出会う。ラヴェルがト長調のピアノ
第 1 楽章 アレグラメンテ ト長調 2/2
しようすい
協奏曲にとりかかるのは、この北米
演奏旅行後のことである。友人の音
楽批評家カルヴォコレッシからのイ
作曲年代:1929 〜 1931 年
初演:1932 年 1 月 14 日、パリ、サル・プレイ
エル。マルグリット・ロンによるピアノ独奏、
ラヴェル指揮、ラムルー管弦楽団
楽器編成:フルート 1、ピッコロ 1、オーボエ
1、イングリッシュ・ホルン 1、クラリネット
せつちゆう
拍子。第 2 楽章 アダージョ・アッサ
イ ホ長調 3/4 拍子。第 3 楽章 プレ
スト ト長調 2/4 拍子。 (安川智子)
1、Es クラリネット 1、ファゴット 2、ホルン
2、トランペット 1、トロンボーン 1、ティン
パニ 1、トライアングル、小太鼓、サスペン
デッド・シンバル、大太鼓、タムタム、ウッ
ドブロック、ムチ、ハープ 1、弦楽、ピアノ・
ソロ
1882-1971
ストラヴィンスキー
バレエ組曲「火の鳥」
(1919 年版)
せつけん
20 世紀初頭にパリを席巻したロシ
らを起用した舞台美術や衣装は好評
ア・バレエ団。同バレエ団の主宰セ
を博した。火の鳥役のカルサヴィナ
けいがん
ルゲイ・ディアギレフは、その慧 眼
の衣装は、鳥の羽をあしらっており、
によって数々の若き才能を見いだし
エキゾチックなイメージを喚起する
たが、当時パリ在住だったロシアの
ものだった。
イーゴリ・ストラヴィンスキーもそ
物語はロシアに古くから伝わる民
のひとりである。バレエ団のパリで
話である。魔王カッチェイにとらわ
の成功を確固たるものするためには
れている王女たちを、王子が不思議
民族色の濃い作品が必要だと考えて
な力をもつ火の鳥の助けで救い、最
いたディアギレフにとって、このロ
後に結ばれる。本日演奏される 1919
シアの俊英作曲家はうってつけの存
年版は作曲者自身がバレエ版を演奏
在だった。こうして白羽の矢が立っ
会用にまとめたものである。うごめ
たストラヴィンスキーが作曲したの
くような低音の〈序奏〉で始まり、
が、1910 年 に 完 成 さ れ た 全 2 幕 の
〈火の鳥とその踊り〉では、王子の
バレエ音楽《火の鳥》である。民族
前で火の鳥が妖艶な踊りを披露する。
的な題材を採用しながらモダンな音
続く〈王女たちの踊り〉は魔王カッ
響美にもあふれた作品で、当初、自
チェイにとらわれている王女たちに
らの才能に必ずしも自信をもってい
よる舞である。火の鳥の魔法で、魔
なかった若きストラヴィンスキーは、
王とその手下たちが荒々しく踊る
このバレエの成功をきっかけに躍進
場面が〈カッチェイ王の魔の踊り〉
。
への道を手にしたのである。
続くリリカルな〈こもり歌〉が魔王
初演は 1910 年 6 月 25 日パリ。タ
たちを眠りに誘う。そして〈終曲〉
マラ・カルサヴィナ、ミハイル・フォ
は王子と王女の結婚式が華やかに執
ーキンらのダンサー、アレクサン
り行われる場面が描かれている。
ドル・ゴロヴィン、レオン・バクスト
作曲年代:1909 〜 1910 年
初演:1910 年 6 月 25 日、パリ
楽器編成:フルート 2(ピッコロ 1)、オーボ
エ 2(イングリッシュ・ホルン 1)
、クラリネ
ット 2、ファゴット 2、ホルン 4、トランペッ
(伊藤制子)
ト 2、トロンボーン 3、テューバ 1、ティンパ
ニ 1、大太鼓、シンバル、サスペンデッド・シ
ンバル、トライアングル、シロフォン、タン
ブリン、ハープ 1、ピアノ 1(チェレスタ 1)、
弦楽
Philharmony December 2014
Igor Stravinsky
Program
Program
C
C
第 1797 回 NHKホール
12/12[金]開演 7:00pm
12/13[土]開演 3:00pm
[指揮]
1797th Subscription Concert / NHK Hall
12th (Fri.) Dec, 7:00pm
13th (Sat.) Dec, 3:00pm
シャルル・デュトワ
[conductor]Charles
Dutoit
[ヴァイオリン]
[violin]
[コンサートマスター]
[concertmaster]
アラベラ・美歩・シュタインバッハー Arabella Miho Steinbacher
堀 正文
Masafumi Hori
武満 徹
Toru Takemitsu (1930-1996)
弦楽のためのレクイエム(1957)
(10’) Requiem for strings (1957)
ベルク
Alban Berg (1885-1935)
ヴァイオリン協奏曲
Violin Concerto
「ある天使の思い出のために」
(25’)
“Dem Andenken eines Engels”
Ⅰアンダンテ―アレグレット
Ⅱアレグロ―アダージョ
ⅠAndante – Allegretto
ⅡAllegro – Adagio
休憩 Intermission
ドヴォルザーク
Antonín Dvořák (1841-1904)
交響曲 第 9 番 ホ短調 作品 95
Symphony No.9 e minor op.95
「新世界から」
(42’)
“From the new world”
Ⅰアダージョ―アレグロ・モルト
Ⅱラルゴ
Ⅲスケルツォ:モルト・ヴィヴァーチェ
Ⅳアレグロ・コン・フオーコ
ⅠAdagio – Allegro molto
ⅡLargo
ⅢScherzo: Molto vivace
ⅣAllegro con fuoco
Soloist
アラベラ・美歩・シュタインバッハー
Arabella Miho Steinbacher
ドイツ人の父と日本人の母の間に、
ミュンヘンで生まれる。3 歳でヴァ
とは、2007 年 10 月に、ネヴィル・
マリナーが指揮するベートーヴェ
スペン音楽祭でドロシー・ディレイ
に、パリではイヴリー・ギトリスに
ン協奏曲》はCD録音(共演はアン
ドリス・ネルソンス指揮ケルンWD
イオリンを始め、9 歳から名教師ア
ナ・チュマチェンコに師事する(ほ
ぼ同じ世代のチュマチェンコ門下生
には、リサ・バティアシュヴィリや
ユリア・フィッシャーらがいる)
。ア
学び、
2001 年にはアンネ・ゾフィー・
ムター財団から奨学金を受ける。
2004 年 パ リ で、 急 病 の チ ョ ン・
キョンファに代わり、ベートーヴェ
ン《ヴァイオリン協奏曲》を弾き大
きな成功を収める。NHK交響楽団
ン《ヴァイオリン協奏曲》で初共演。
2009 年 12 月には、シャルル・デュ
トワ指揮でチャイコフスキー《ヴァ
イオリン協奏曲》を弾いた。
今回演奏するベルク《ヴァイオリ
R交響楽団)も残している大切なレ
パートリー。使用楽器は日本音楽財
団貸与のストラディヴァリウス「ブ
ース」
(1716 年製)。
(山田治生/音楽評論家)
Philharmony December 2014
©Jiri Hronik
ヴァイオリン
Program
Toru Takemitsu
1930-1996 武満 徹
弦楽のためのレクイエム(1957)
C
日本を代表する作曲家の武満徹が
全曲を通じて、どこか哀愁を帯びた
亡くなり、20 年近くがすぎようとし
葬送のような雰囲気に包まれている。
ている。彼が亡くなった際、
「日本
全体は単一主題からなる自由な 3
は世界に向けた最高の文化使節のひ
部形式。磨き抜かれた弦楽器アンサ
とりを失ってしまった」と述べたの
ンブルの響きが聴きどころとなって
は、アメリカの著名な日本文化研究
いるが、この曲の最大の特徴は、西
家・評論家ピーター・グリリであるが、
洋音楽的な発想とは異なる、そのゆ
これは武満の影響力の大きさを物語
るやかなテンポと時間感覚である。
る言葉だといえる。
武満は時に邦楽器を用いた作品も書
その創作活動は多岐にわたり、オ
いたものの、純西洋音楽のスタイル
ペラは未完に終わったものの、ソロ、
で、いかに日本人でしかなし得ない
室内楽、オーケストラなど晩年まで
音楽を書くかを模索していた。その
おうせい
旺盛な創作活動を行った武満。中で
答えのひとつが、この曲に隠されて
もオーケストラ作品は、1950 年代か
いるようにも思われる。
ら晩年まで彼がもっとも心血を注い
「主題は波紋のように拡 がるゆる
だジャンルだった。
やかな振幅の内 部に在り、たちあ
1957 年 6 月 20 日に上田仁指揮の
らわれる痙 攣的な形態、あるいは
東京交響楽団で初演された《弦楽の
tempo modéré は水 疱のように突然
ためのレクイエム》は、彼のオーケ
あらわれて、たえずゆるやかな振幅
ストラ作品中、もっともよく知られ
に合流しようとします」
(武満)
。作
た曲のひとつである。
「レクイエム」
曲家自身が設定したレント(Lent)
とはカトリックで死者を悼むための
─ モ デ ラ ー ト(Modéré)─ レ ン ト
ミサ曲。武満いわく、同作は「特
(Lent)という速度は、繊細に振幅
定の人を悼んだ曲ではない」という
しつつ揺れうごいていくような楽想
ものの、早世した作曲家の早坂文雄
にもっともふさわしいものであろう。
いた
は
う
けいれん
すいほう
に想いを馳せつつ完成されたという。
作曲年代:1957 年
初 演:1957 年 6 月 20 日、 上 田 仁 指 揮、 東 京
ひろ
ち
(伊藤制子)
交響楽団
楽器編成:弦楽
1885-1935
ベルク
ヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出のために」
ウィーンの作曲家アルバン・ベル
基本音列で全曲を構成し、無調と後
クは、1935 年夏、ある少女の死に捧
期ロマン派的な浮遊する調性感を巧
げるヴァイオリン協奏曲を書き上げ
みに接続するという、ベルクらしい
る。この曲を献呈された「天使」と
変容の手腕を発揮している。しかし、
は、アルマ・マーラーと彼女の 2 人
その見事な基本音列も、全体の構成
目の夫ワルター・グロピウスとのあ
も、マノンの訃報以前に出来上がっ
いだに生まれた娘マノン・グロピウ
ていたことがベルクの書簡等から明
スであった。ベルク夫妻もたいそう
らかになっている。すると、彼の最
かわいがっていたマノンは、1935 年
初の構想はどのようなものだったの
4 月に病のため 18 歳でこの世を去っ
か。
てしまう。
《協奏曲》は 2 部から構
研究者からは、ベルクが自分の運
成されており、前半は天使のような
命を表す数と考えていた「23」と曲
美しい少女を、後半は襲いかかる病、
の小節数とを関連させることで自身
そして死を描く、というプログラム
の生涯を回顧したのではないか、あ
をベルク自身が示唆している。第 2
るいは最初期のスケッチのメモから
部後半に織り込まれたバッハのコラ
はナチス・ドイツへの拒絶のメッセ
ールの旋律は、マノンへのレクイエ
ージが読み解けるのではないか、と
ムという印象を一層強めている。
いった解釈も出されている。
ベルクがこの曲に着手したのは、
真実は明かされないままに残され
1935 年 2 月のことであった。アルノ
ているが、いくつものモチーフの緻
ささ
ルト・シェーンベルクの下で十二音
技法を学んだベルクは、ヴァイオリ
ンの開放弦をなぞるソ – レ – ラ – ミ
のモチーフと三和音の連鎖とを含む
作曲年代:1935 年
初 演:1936 年 4 月 19 日、 バ ル セ ロ ナ、 国 際
現代音楽協会音楽祭。ヘルマン・シェルヘン
指揮、ルイス・クラスナー独奏
楽器編成:フルート 2(ピッコロ 2)、オーボ
エ 2(イングリッシュ・ホルン 1)
、クラリネ
ット 3(アルト・サクソフォーン 1)、バス・ク
ふ ほう
ち
みつ
密な関係性のなかに秘めた意味を重
ねあわせたその音楽は、謎めいた表
情のままに不思議な魅力を放ってい
る。 (澁谷政子)
ラリネット 1、ファゴット 2、コントラファ
ゴット 1、ホルン 4、トランペット 2、トロン
ボーン 2、テューバ 1、ティンパニ 1、大太鼓、
シンバル、サスペンデッド・シンバル、小太
鼓、タムタム、ゴング、トライアングル、ハ
ープ 1、弦楽、ヴァイオリン・ソロ
Philharmony December 2014
Alban Berg
Program
Antonín Dvořák
1841-1904 ドヴォルザーク
交響曲 第 9 番 ホ短調 作品 95「新世界から」
C
「この国の未来の音楽は、いわゆ
る黒人の旋律を基礎とすべきだと、
今私は考えるに至った」
。
1893 年 5 月 21 日付の『ニューヨ
ーク・ヘラルド』紙において、ドヴ
ォルザークはこのように述べてい
る。前年 10 月にニューヨークのナ
ショナル音楽院の院長に就任して以
来、彼は黒人霊歌をはじめとするア
メリカの土着音楽を熱心に研究し続
けてきた。そのひとつの帰結として、
「黒人の旋律」がアメリカの「国民
音楽」の「基礎」となりうると彼は
確信するようになったのだ。
まさにこの記事が出るのとほぼ同
時期に《第 9 番》が完成しているこ
とからも、ここでの彼のコメントは
重要だろう。同年 12 月 15 日付の同
紙においても、彼は「黒人音楽」と
「インディアン音楽」とを「実質的
に同じもの」とした上で、
《第 9 番》
の中でそれらの音楽の「精神」を再
現しようとしたことを明かしている
ので、作品と彼自身の主張との間の
関連性は明白だ。そして実際にも、
いえ じ
は、ニューヨークの若い弟子達に手
本を示すねらいがあったのかもしれ
ない。
その一方で、たびたび指摘される
ように、この交響曲は「チェコ的
な」様式的特徴も持っている。たと
えば、ドヴォルザークは「黒人音楽
=インディアン音楽」の特色とし
て、音階に旋法的な色合いがあるこ
とを述べているが、同じような音階
が実はボヘミアの民俗音楽にも見ら
れ、それまでの彼の「チェコ的な」
作品においても使われてきたことに
注意が必要だ。また、この作品全体
を通してあらわれる「長・短・短・長」
の符点リズムについても、黒人霊歌
からの影響を示唆する特徴であると
同時に、ヴェルブニュク(ヴェルブ
ンコシュ)のような中欧の民俗音楽
との関連性を思い起こさせるもので
あることを、見落としてはならない
だろう。要は、この作品の場合、霊
感の源泉を必ずしもひとつに限定す
ることができないのだ。
以上のことをふまえるならば、
「家 路 」や「遠き山に日は落ちて」
《第 9 番》は「アメリカ的」な音楽か、
章の主要主題をはじめ、黒人霊歌を
どという二者択一的な議論をしてい
のタイトルで親しまれている第 2 楽
思い起こさせる旋律がこの作品の随
所で使われていることは、よく知ら
れている通りである。あるいは彼に
それとも「チェコ的」な音楽か、な
ても、あまり生産性がないことは明
白だろう。むしろ故郷の記憶と「新
世界」の印象とが出会う「移民的
要素と「アメリカ的」な要素が幸福
な一体化をとげているところに、わ
れわれはこの作品の真の独自性をも
とめるべきなのである。
ヴァーチェ ホ短調 3/4 拍子。主部
(A)と 2 つのトリオ(B、C)
、お
よびコーダ(D)からなる。大ま
かにあらわせば、全体の構成はA –
B – A – C – A – B – A – Dとなる
第 1 楽章 アダージョ─アレグロ・モ
だろう。2 番目のトリオ(C)とコ
奏の後、ホルンがさっそうと第 1 主
題が回想される。ドヴォルザーク自
ルト ホ短調 2/4 拍子 ソナタ形式。序
題を奏でる。第 2 主題と結尾主題が
これに続くが、これらの主題では旋
法的な色合いが特に顕著である。展
開部は結尾主題の素材を中心に展開
し、再現部はほぼ型通り。第 1 主題
を素材とする短いコーダがこれに続
く。
ーダ(D)において第 1 楽章第 1 主
身の解説によれば、この楽章も『ハ
イアワサの歌』の中の、先住民が踊
る場面から着想を得た音楽なのだと
いう。
第 4 楽章 アレグロ・コン・フオーコ
ホ短調 4/4 拍子 ソナタ形式。短い序
奏の後、金管楽器が第 1 主題を提示
第 2 楽章 ラルゴ 変ニ長調 4/4 拍子。
する。柔和な第 2 主題と勇ましい結
は《第 9 番》を作曲していた当時、
前の楽章の主要主題を含めた、さま
3 部構成からなる。ドヴォルザーク
ロングフェローの叙事詩『ハイアワ
サの歌』をオペラ化することを考え
ていた。彼にとってこの楽章は、そ
のための「習作」という位置づけだ
ったらしい。中間部はさまざまなエ
ピソードの連鎖からなっており、楽
章の主要主題のほか、第 1 楽章の第
1 主題や結尾主題も姿をあらわす。
第 3 楽章 スケルツォ:モルト・ヴィ
作曲年代:1893 年 1 月 10 日に着手、1893 年
5 月 24 日に完成
初演:1893 年 12 月 16 日、ニューヨークのカ
ーネギー・ホールにおけるニューヨーク・フィ
ルハーモニー管弦楽団の演奏会にて。アント
ン・ザイドルの指揮による
尾主題がこれに続き、展開部では以
ざまな素材が動機として展開してい
く。トロンボーンが主調であるホ短
調で第 1 主題を吹くところからが再
現部だ。コーダではこの楽章の第 1
主題と、以前の楽章の主要主題とが
からみあい、壮大なクライマックス
が築かれる。
(太田峰夫)
楽器編成:フルート 2(ピッコロ 1)、オーボ
エ 2、イングリッシュ・ホルン 1、クラリネッ
ト 2、ファゴット 2、ホルン 4、トランペット
2、トロンボーン 3、テューバ 1、ティンパニ 1、
トライアングル、シンバル、弦楽
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な」文脈において、
「チェコ的」な
名曲の深層を探る
シリーズ 名曲の深層を探る 第 22 回
《ペレアスとメリザンド》の嬰ヘ長調
ドビュッシーによる光のシンボリズム
文
関野さとみ
「先日、とても魅力的な新しい発
見があって、少々打ちのめされて
しまったよ。
《ペレアス》だ。あれ
ほどのものとは思いも寄らなかっ
た!」(プルーストからジョルジュ・ド・ロ
リス伯爵宛ての書簡[1911 年 2 月 21 日よ
り少し後]
)
作家プルーストを魅了した
「嬰ヘ長調」の響き
上記の言葉は、フランスの作家マ
ルセル・プルースト(1871 〜 1922)
が友人宛ての手紙に書いたもので、
ク ロ ー ド・ド ビ ュ ッ シ ー の オ ペ ラ
テアトロフォン。 プル ーストはこ れを 利用 し、自宅
で《 ペ レア スと メリザ ンド 》 を 聴 い た( 図 版 は La
Nature[1892 ]より)
の人々の耳を驚かせた。
《ペレアスとメリザンド》を初めて
《ペレアス》の音楽的特徴につい
聴いた際の感想である。初演から約
て語られる際には、解決しない不協
10 年を経た 1911 年 2 月 21 日、テア
和音をはじめとする独自の和声法や、
トロフォンという劇場と自宅とをつ
旋法の効果的な使用など、この音楽
なぐ音声の中継機器で《ペレアス》
の新しさがどこにあるのか、つまり
の上演に接したプルーストは、その
いかに長・短調に基づく従来の機能
音楽の斬新な響きに感動し、その後
和声から解放されているかに関心が
の公演も熱心に聴き入った。
集中することが多い。しかし、ドビ
象徴主義の劇作家メーテルリンク
ュッシーは決して調性を放棄したわ
(1862 〜 1949)原作の台本に、19 世
けではなく、必要な場面では、むし
紀的な機能和声法を前提としない、
ろその響きを効果的に際立たせてい
暗示力に富んだドビュッシーの音楽
る。最も特徴的な例は「嬰ヘ長調」
が融合したこのオペラは、1902 年の
の使用法で、ドビュッシーは、この
初演以降、プルーストをはじめ多く
ドラマの人間的感情(
「愛」や「許
を、具体的にどのような方法で強調
において、嬰ヘ長調の響きを効果的
しているのか。それらに注目してみ
に強調する。
ると、捉えどころがなく、曖昧で複
ドビュッシーの《ペレアス》に魅
雑な響きともみなされがちな《ペレ
了された前述のプルーストは、別の
アス》の音楽イメージに、新たな一
書簡でオペラの具体的な場面、特に
面を浮かび上がらせることができる
第 3 幕 3 場のペレアスが洞窟を出た
かもしれない。
どうくつ
場面と、第 4 幕 4 場でのペレアスに
よる愛の歌を称賛している。この後
あい まい
ドラマと嬰ヘ長調の関係
者の歌の場面は、ドビュッシーの自
登場人物たちのすべてが無抵抗の
筆譜の段階から、すでに明瞭な嬰ヘ
まま、死というひとつの運命へ向か
長調の響きで書かれている(譜例 1)。
っていくこの凋落のドラマにおいて、
暗闇に射 す嬰ヘ長調の「愛」や
嬰ヘ長調(または異名同音の変ト長
「光」は、夜の闇や薄明りのなかで
調)の「光」のイメージは、ドラマ
さ
進行するこのオペラの夢幻的世界に、
「光」と「闇」のコントラストを与
ちようらく
の「闇」を照らす象徴として対比的
に使用される。例えば第 1 幕 3 場で、
える。嬰へ長調によるドビュッシー
ジュヌヴィエーヴがメリザンドに
の「光」のシンボリズムは、決して
「
(この庭園には)太陽がまったく見
音質が良いとはいえないテアトロフ
えない場所もあるのです」と語る部
ォン越しにオペラを聴いたプルース
分は全音音階で書かれているが、そ
トの耳にも、その印象をはっきり残
れに続く「海からの光」が見えると
したといえよう。
いう部分では、嬰ヘ長調の主和音が
《ペレアス》の嬰ヘ長調は、ドラ
響く。また、第 3 幕 1 場でペレアス
マとの関係において、オペラの中で
がメリザンドの長い髪を抱き、その
どのようにあらわれるのだろうか。
髪で夜の星の輝きを覆い隠す場面で
またドビュッシーは、この調の響き
は、嬰ヘ長調と、嬰ヘ長調と最も遠
譜例 1:《 ペレアスとメリザンド》第 4 幕 4 場 の自筆譜。 ペレアス「君 の声 は 春 の 海 を 渡ってきたみたいだ!(On
dirait que ta voix passé sur la mer au printemps!...)
」の調号 は♯が 6 つの「嬰 ヘ長調」。ドビュッシーが最初
に作曲した場面でもある
Philharmony December 2014
し」
)
、そして「光」に包まれる場面
名曲の深層を探る
い関係にあるハ長調の和音が、交互
律は、変ト長調(=嬰ヘ長調)の第
にくり返される。
4 音(変ハ音)が半音上げられた形
さらに、ドビュッシーは嬰ヘ長調
のリディア旋法で書かれている(譜
の示し方も実に多様で、特徴的な和
例 2)
。ハープと弦によるやわらか
声語法や旋法の使用、管弦楽法、音
な音色、旋法的に変移した変ト長調
域の選択などに工夫が見られる。例
(=嬰ヘ長調)の響きは、昼に輝く
えばオペラの第 2 幕 3 場、真夜中に
太陽のように強く明瞭な光ではなく、
海辺の洞窟へ入り込んだペレアスと
まさに夜の闇を照らす月明かりのイ
メリザンドに月の光が射し込むこの
メージを喚起する。
場面では、月光をあらわすハープの
メリザンドの名はそもそも、原作
グリッサンドと背景で鳴る弦が変ト
者メーテルリンクの構想段階では
長調(=嬰ヘ長調)の響きを奏でる
「光」を表す「クレール(Claire)
」
ほか、フルートとオーボエによる旋
であった。オペラの冒頭、夜の泉の
リディア旋法
全音音階
変ト長調( 嬰 ヘ長調)
譜 例 2:《 ペレアスとメリザ ン
ド》第 2 幕 3 場。ペレアス「お
お! 明 るくな った ……(Oh!...
Voici la clarté...)
」
ほとりで出会ったメリザンド(つま
らかだろう。しかし、嬰ヘ長調によ
り「光」
)へのゴローの叶わぬ接近
るドビュッシーの明暗法は、コント
が、解決されない不協和音や、嬰ヘ
ラストの単純な強調だけでなくニュ
短調、全音音階によって表されるの
アンスに富んだ陰影を生み出すもの
は、この故であろうか。ドビュッシ
でもあり、それらはオペラにおいて、
ーはメリザンドを嬰ヘ長調であらわ
何よりもまず登場人物たちの内面の
すことが多く、例えば、第 4 幕 4 場
微妙な動きに寄り添うものとしてあ
の自筆譜(初稿)では、彼女の歌い
らわれている。そこには、伝統的な
出しに、嬰ヘ長調をあらわす「Fa♯」
手法と 20 世紀的な斬新さの両方を
がはっきり書き込まれている(譜例
併せ持つ、まさに世紀転換期のフラ
3)
。
ンス音楽を体現する《ペレアス》の、
4
ゆえ
オペラの音楽表現としての
ドビュッシーの「明暗法」
オペラにおける新しい音楽表現の論
理が示されているといえよう。
ドビュッシーはもともと初期の作
参考文献
品から、夜の世界にきらめく光(月
Abbate, Carolyn. Tristan in the composition
、ある
光、星、ときには瞳 の輝き)
of Pelléas. Nineteenth century music, 5-2, 1981,
pp.117-141.
ひとみ
いは内面における愛の高揚や官能と
D e b u s s y, C l a u d e . Es q u i s s e s d e Pe l l é a s e t
Mélisande (1893-1895). Publiées en fac-similé
いった詩的想像力に、嬰ヘ長調(変
avec une introduction par François Lesure,
ト長調)の響きを好んで使用してい
Proust, Marcel. Correspondance X, Texte établi,
た。
《ペレアス》の嬰ヘ長調もその
延長上にあるといえるが、少なくと
もドビュッシーの音楽の構想におい
て、
《ペレアス》の世界に決して曖
昧なイメージはなく、
「闇」と「光」
の世界を軸とした効果的なコントラ
ストの形成が図られていたことは明
Éditions Minkoff, Genève, 1977.
présenté et annoté par Philip Kolb. Paris, Plon,
1983.
S m i t h , R i c h a r d L a n g h a m . «To n a l i t i e s o f
darkness and light.» Claude Debussy: Pelléas et
Mélisande, Cambridge University Press, 1989,
pp.107-139.
関野さとみ(せきの・さとみ)
桐朋学園芸術短期大学(音楽学)非常勤講師、
一橋大学大学院言語社会研究科在籍。
Philharmony December 2014
譜例 3:《 ペレアスとメリザンド》第 4 幕 4 場 の自筆譜。 ペレアスに応 えるメリザンド「 あなたを見つめているから
……(C est que je te regarde...)
」の歌い出しの部分(初稿)。小節の左横にドビュッシーが「Fa ♯」と書き込 ん
でいる(自筆譜 ファクシミリの原本 では第 4 幕 3 場 のスケッチとされているが、 アバテが「第 4 幕 4 場」 と指摘し
ており[Abbate, 1981, pp.129-132]
、本稿 もこの論 に従った)
A
*1 月定期公演の聴きどころ*
Program
1 月の定期公演は、イタリアの実
曲の《第 2 番》を鮮烈に奏でた彼の、
力派ジャナンドレア・ノセダが全プ
清新なアプローチが聴きもの。
ログラムを指揮する。彼は、2005 年、
後半はベートーヴェン《交響曲第
2008 年、2012 年にN響へ客演。前
5 番「運命」》。ノリントンのシリー
み
進的なリズムやカンタービレに充ち
ズ終了直後に、この有名曲が登場す
た、生命力あふれる音楽作りで聴衆
るのは実に面白い。ノセダは、全楽
を魅了している。今回もまずはその
器を存分に鳴らした、生気と気迫み
点が楽しみだ。加えて、プログラム
なぎる《運命》を聴かせるはず。こ
の流れにこだわる彼ならではの、名
れもまたベートーヴェンの醍醐味だ。
曲や秘曲にロシアの協奏作品を挟ん
だ構成も興味をそそる。
だい ご
み
「改革者」が並ぶ、入魂のBプロ
Bプロは、リスト、ラフマニノフ、
新しさと驚きのAプロ
カセルラという、ノセダが「改革
Aプロは、フォーレ、プロコフィ
者」として重視し、CD全集も録音
エフ、ベートーヴェン。ノセダは
している 3 人が並んだ、入魂のプロ
「 3 人の共通点は、新しさや驚きを
グラム。
用いて『音楽の中心』を探求したこ
幕開けはリスト《レ・プレリュー
と」だと語る。ここはその真意を体
ド》
。
「交響詩の創始者」を代表する
感したい。
同曲では、オペラで培ったノセダの
まずはフォーレ《組曲「ペレアス
ドラマチックな表現が耳を惹き付け
とメリザンド」》で、近代フランス
る。
の叙情が広がる。同曲は 12 月定期
ラフマニノフ《パガニーニの主題
のドビュッシー作品との比較も妙味
による狂詩曲》は、有名旋律を用い
だ。
てピアノ協奏曲と変奏曲を融合させ
プロコフィエフ《ピアノ協奏曲第
た点が斬新だ。ピアノのアレクサン
3 番》は、20 世紀ロシア屈指の名
ダー・ロマノフスキーは、17 歳でブ
作。ピアノのアレクサンダー・ガヴ
ゾーニ国際ピアノコンクールを制し、
リリュクは、2000 年浜松国際ピア
巨匠ジュリーニに「途方もない才能」
ノコンクール優勝時に「20 世紀後
と賞されたウクライナ出身の逸材。
半最高の 16 歳」と賞され、その後
N響との初共演で、気品とナイーヴ
プロコフィエフのピアノ協奏曲全集
カセルラは 20 世紀イタリアの器
を録音し、2011 年N響定期でも難
楽復興を担った作曲家。ノセダは
まいしん
も世界的名手への道を邁進している。
つちか
ひ
たた
さを湛えたピアニズムに光が当たる。
法が融合した音楽は、誰もが楽しめ
響曲第 2 番》でインパクトを与えた
るに違いない。
が、今度は《交響曲第 3 番》でさら
プロコフィエフ《ヴァイオリン協
なる真髄を披露する。シカゴ交響楽
奏曲第 2 番》も、民族性とモダニズ
団創立 50 周年の委嘱作として 1941
ムが絶妙に溶け合った名品。ソリス
年に初演された同曲は、古風な「シ
トのジェームズ・エーネスは、「現代
ンフォニア」の題を併せ持ち、ショ
のハイフェッツ」と賞されたカナダ
スタコーヴィチばりの推進力と随所
の名手だが、欧米での名声に比して
での美しさが光る魅力作。今回は自
日本で聴く機会は少なく、N響定期
国作品に思いをこめたノセダの熱演
にも 2004 年 6 月以来の登場。しか
でこれを知る貴重な機会となる。
も彼は、2013 年にプロコフィエフ
ロシアのプログラムがそろった
Cプロ
のヴァイオリン曲全集を録音し、協
奏曲ではノセダと共演している。そ
れゆえ今回は、タイムリーかつ大注
Cプロは、外国人では初めてマリ
目のステージとなる。
インスキー劇場首席客演指揮者を務
後半はムソルグスキー(ラヴェル
めたノセダの、面目躍如たる「ロシ
編)の《展覧会の絵》。これはもう、
アもの」
。
N響の妙技とノセダの雄弁な語り口
最 初 は リ ム ス キ ー・コ ル サ コ フ
《 組 曲「 見 え な い 町 キ ー テ ジ の 物
語」
》
。民族的な哀愁と色彩的管弦楽
ち みつ
が相まった、壮麗かつ緻密な快演必
至だ。 (柴田克彦/音楽評論家)
*1 月の定期公演*
◉ 1/10(土)6:00pm、1/11(日)3:00pm (Aプロ)NHKホール
指揮:ジャナンドレア・ノセダ
ピアノ:アレクサンダー・ガヴリリュク
フォーレ/組曲「ペレアスとメリザンド」作品 80
プロコフィエフ/ピアノ協奏曲 第 3 番 ハ長調 作品 26
ベートーヴェン/交響曲 第 5 番 ハ短調 作品 67「運命」
◉ 1/21(水)7:00pm、1/22(木)7:00pm (Bプロ)サントリーホール
指揮:ジャナンドレア・ノセダ
ピアノ:アレクサンダー・ロマノフスキー *
リスト/交響詩「レ・プレリュード」
ラフマニノフ/パガニーニの主題による狂詩曲 作品 43*
カセルラ/交響曲 第 3 番 作品 63
◉ 1/16(金)7:00pm、1/17(土)3:00pm (Cプロ)NHKホール
指揮:ジャナンドレア・ノセダ
ヴァイオリン:ジェームズ・エーネス
リムスキー・コルサコフ/組曲「見えない町キーテジの物語」
プロコフィエフ/ヴァイオリン協奏曲 第 2 番 ト短調 作品 63
ムソルグスキー(ラヴェル)/組曲「展覧会の絵」
Philharmony December 2014
2012 年客演時にもカセルラの《交
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