国際理解教育としての中学校社会科公民的分野 中学校社会科公民的

国際理解教育としての
国際理解教育としての中学校社会科公民的分野
としての中学校社会科公民的分野の
中学校社会科公民的分野の授業実践研究
-世界遺産教育を
世界遺産教育を中心として
中心として-
として-
吉田
剛・宮本 静子・渡邊 淳一
1.はじめに(
はじめに(吉田 剛)
剛)
本稿は、ユネスコが推進している世界遺産を取り上げた国際理解としての中学校社会科公
民分野の授業実践について提示するものである。
最初に、世界遺産を社会科に取り上げる意義について少し考えてみたい。例えば、「なぜ、
ユネスコは世界の自然や文化を世界遺産として登録し保全しなければならないのか」、「なぜ、
人々は身近な自然や文化を世界遺産として登録したいのか」、「なぜ、世界遺産に登録された
自然と文化を重要視しなければならないのか」などの問いが浮かび上がる。筆者は、それら
に対する応えを考えると、最終的に「一市民であるべき人々の身近な自然と文化に対する思
いや願いについて考える」といったところに行き着く。つまり、人々が思い描いている身近
な地域の誇り高い自然と文化についての素晴らしさを世界の人々に認めてもらうといった願
いを考える。ただし本稿が提示する実践は、これらの問いに対する応えから導かれる社会科
目標の公民的資質育成に迫る前段階のものといえる。つまり、世界遺産やユネスコの取り組
みに関する社会認識形成としての導入的な実践である。
本実践の意義は、公民的分野の国際問題の単元で、切り口として世界遺産としての危機遺
産を取り上げ、そして人為的な環境破壊の問題に繋げて考えさせる学習過程に特色をもち、
これまで紛争・戦争などの課題が中心に取り上げられた国際問題の単元の中で、今後、期待
されるべき新たなアプローチといえる点にある。
このような導入から、わが国の世界遺産の指定地などを取り上げ、どのような人々の願い
や誇りあるいは運動から登録に至ったのか、また、そこにある様々な思いや相反する意見に
も目を向けさせ、身近な地域社会や地球の一市民としての資質を考えさせ、社会科目標の公
民的資質育成へと深めていきたい。ところで次頁の表は、世界遺産の登録基準であり、登録
までのプロセスについては、次のとおりである。
各国政府は世界遺産条約を締結した後、国内の暫定リストを作成し、ユネスコ世界遺産セ
ンターに提出する。暫定リストに記載された物件の中から条件が整ったものを原則として1
年につき各国1物件をセンターに提出する。ユネスコ世界遺産センターは推薦書を受理し、
推薦された物件に関して、文化遺産について国際記念物移籍会議、自然遺産については国際
自然保護連合の専門機関に現地調査の実施を依頼する。両専門機関が現地調査を実施し、当
該地の価値や保護・保存状態、今後の保全・保存管理計画などについて評価報告を作成し、
センターに提出する。最後に、その報告書に基づいて世界遺産委員会において世界遺産リス
トへの登録の可否を決定する。
このような登録プロセスおよび下表の登録基準を活用して、社会科、総合的な学習の時間、
HRなどにおいて、擬似的に、身近な地域の自然や文化について考えさせる応用的な学習展開
も考えられるであろう。
最後に、仮に、修学旅行などにおいて世界遺産となる自然や文化財を傷つけたり、破壊し
たりする児童・生徒に出会い、「なぜ、これは傷つけてはいけないか」と問われたとする。
そこで私たち教員は、その問いに対してどのような応えや説明そして諭すことができるので
あろうか。人々と、自然や伝統文化などとの関わりが人間生活において如何なる意味を持ち、
その上で市民性や公共性などがどのようにあるべきかについて、各々自分なりの考え持って
いなければならないはずである。
世界遺産の
世界遺産の登録基準
(ⅰ) 人類の創造的才能を表す傑作である。
(ⅱ) ある期間、あるいは世界のある文化圏において、建築物、技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展における
人類の価値の重要な交流を示していること。
(ⅲ) 現存する、あるいはすでに消滅した文化的伝統や文明に関する独特な、あるいは稀な証拠を示していること。
(ⅳ) 人類の歴史の重要な段階を物語る建築様式、あるいは建築的または技術的な集合体または景観に関する優れ
た見本であること。
(ⅴ) ある文化(または複数の文化)を特徴づけるような人類の伝統的集落や土地・海洋利用、あるいは人類と環境の
相互作用を示す優れた例であること。特に抗しきれない歴史の流れによってその存続が危うくなっている場合。
(ⅵ) 顕著で普遍的な価値をもつ出来事、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または
明白な関連があること(ただし、この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ましい)。
(ⅶ) 類例を見ない自然美および美的要素をもつ優れた自然現象、あるいは地域を含むこと。
(ⅷ) 生命進化の記録、地形形成において進行しつつある重要な地学的過程、あるいは重要な地質学的、自然地理
学的特徴を含む、地球の歴史の主要な段階を代表とする顕著な例であること。
(ⅸ) 陸上、淡水域、沿岸および海洋の生態系、動植物群集の進化や発展において、進行しつつある重要な生態学
的・生物学的過程を代表する顕著な例であること。
(ⅹ) 学術上、あるいは保全上の観点から見て、顕著で普遍的な価値をもつ、絶滅のおそれがある種を含む、生物の
多様性の野生状態における保全にとって、もっとも重要な自然の生育地を含むこと。
(http://www.unesco.jp/contents/isan/decides.htmlより)
2.授業構想 『 単元 :地球社会
地球社会と
地球社会と私達;
私達;「国際問題と
国際問題と地球市民」
地球市民」(公民的分野)
公民的分野) 』
-「文化交流」
文化交流」「相互依存」
相互依存」「市民意識」
市民意識」に照らして-(
らして-(宮本静子
-(宮本静子・
宮本静子・渡邊淳一)
渡邊淳一)
グローバル化が著しく進展している現代社会では、地球温暖化に代表されるような一国で
は解決し得ない多くの問題を抱えている。一方では、宗教や民族の違いが主な原因となって
起こっている国際紛争は、冷戦終結後もいっこうに収まる様子は見えない。それどころかそ
の経過は、複雑に関係する国際間の利害や瞬時に情報がつながる情報化社会を背景に、悪化
している問題も多い。こうした地球上に見られる様々な問題の解決に対して重要なことは、
民族や文化の違いを認め合い互いに尊重し合おうとする精神と、地球市民としてこれらの諸
問題に向かって、連帯して解決していこうとする流れを作ることである。
現在、ユネスコは「持続可能な開発のための教育(ESD)」を推進している。その活動の一
翼を担う学校現場では、ユネスコスクール等の取り組みや、地域に根ざした環境教育などへ
と広がりを見せてきている。これらの教育活動では、「持続可能な社会の構築」のために地
球的な視野に立ち、「持続可能な未来の担い手を育成」していくことが求められている。こ
のような人類共通の課題に、将来の社会の担い手である子供達が主体的に学び行動すること
の意義は大きく、このような教育活動の広がりと高まりは今後ますます期待されていくもの
と考える。
中学校の社会科学習では、「国際社会に生きる民主的、平和的な国家・社会の形成者とし
て必要な公民的資質を養う。」との教科目標を掲げている。公民分野では「各国民が協力し
合うことによって世界平和を維持し・・・国際協調の精神を養うと共に・・・文化を高めて
いくことが大切である。」との目標に掲げ、平和の維持と文化の興隆の意義を強調している。
そこで、この国際協調の精神を高める手だてとして、人類共通の遺産である「世界遺産」
を通して、地球上に見られる諸問題に目を向けその背景と解決に向けての手だてを考えるこ
とにより、世界の国々が互いを理解し合い平和な社会を実現していこうとする国際的資質を
育む上で有効な手だてとしていきたいと考え、本単元を構成した。
2 .1
世界遺産教育とは
世界遺産教育とは
世界遺産とは、1972年のユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の
保護に関する条約」に基づいて世界遺産リストに登録された遺跡や景観など人類が共有すべ
き普遍的な価値を持つものを指す。このきっかけとなったのが、エジプトのヌビア遺跡中で
も有名なアブシンベル神殿である。1960年代、ナイル川流域のアスワンに「アスワン・
ハイ・ダム」の建設計画が持ち上がった時、この遺跡の水没の危機が懸念された。この時、
ユネスコが「ヌビア水没遺跡救済キャンペーン」を開始し、世界60ヶ国の援助の手がさし
述べられた。技術支援、考古学調査支援などが行われ、無事ヌビア遺跡内のアブシンベル神
殿の遺跡が移転された。ここから、人類の遺産として歴史的価値を開発から守ろうとする国
際的な機運が生まれ、第17回ユネスコ総会で「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関す
る条約」が満場一致で採択され1975年に正式に発効した。日本は、1992年に批准し
125番目の加盟国となり、2007年の第31回世界遺産委員会で世界遺産は851件に
のぼっている。
ユネスコは、「持続可能な開発のための教育(ESD)」とともに、「世界遺産教育」を推進し
ている。そのねらいとして、これまで人類が守ってきた世界遺産は、人類共通の宝物である
という認識に立ち次の世代の人々に無傷で伝えるべきであるという認識に立ち、かけがえの
ない世界遺産を未来に伝える責任感の育成があげられている。田渕・中澤(2007)は、世界遺
産を通しての教育として、世界遺産をケーススタディにして国際理解、国際協力の重要性に
気づかせ平和や人権の意義を確認させることができる、と指摘している。さらに、世界遺産
教育で重要なのは、知識ではなくものの見方考え方である、とも指摘している。
本研究においては、これら意義をふまえた中学校社会科学習のあり方に検討を加え、国際
理解教育のねらいを深める手だてとして提案していきたい。なお、学習指導案は田渕・中澤
(2007)の「危機遺産を教材化する授業プラン」(奈良教育大学教育実践総合センター研究紀
要第16号pp59~66)を参考に構成した。
2 .2
学習指導計画案
(1)単元目標
・人類が共有すべき普遍的な価値をもつものとして多くの世界遺産が登録されていること
を通して、地球上には様々な文化が存在し、人々はその価値を守ろうと国境を越え互いに
手を取り合い努力していることに関心を持つ。
・世界遺産の中の危機遺産を通して、紛争や環境破壊により危機にさらされている世界遺
産に気づかせ、課題を把握した上で互いの意見を交換し、国際社会を形成する主体者とし
ての資質を高める。
・地球上に見られる諸問題に対して、主体的に関わろうとする態度を培い、国際社会を形
成する主体者としての資質を高め、世界の国々が互いを理解し合い平和な社会を実現して
いこうとする国際的資質を育む。
(2)評価の
評価の観点
社会的事象への関心・
意欲・態度
社会的な思考・判断
資料活用の技能・表
社会的事象について
現
の知識・理解
①・世界遺産について関心
①なぜ世界遺産という取り組 ①どのようなものが
①世界遺産がうまれ
をもち、人々の努力と活
みが必要だったのかについて 世界遺産として登録
た背景を理解し、多
動により多くの世界遺産
考え、今後どのような活動が されているのか、資
くの世界遺産が登録
が守られてきたことに気
考えられるのか、思考する。 料をもとに考える。
され、国境を越えた
づく。
②世界遺産の中でも危機遺産 ②世界遺産の登録に
人々の努力と活動が
②危機遺産を知り、その
となったものがあるのはなぜ よる経済効果にも気
あることを理解す
解決のためにどうすれば
かその背景について自然環境 づき、そこから発生
る。
よいか意欲的に考える。
と人為的活動の両面から考え する新たな問題は何
②危機遺産の分布を
③地球上に見られる諸問
る。
かを考え、その対策
通し、その背景には
題に対して、主体的に関
③危機遺産を守るための手だ について意見交換を
南北問題が内在して
わろうとする態度を養
てを様々な角度から判断し、 する。
いることに気づく。
う。
意見交換をする。
(3)単元指導計画案(
単元指導計画案(2時間)
時間)
時
1
教師による発問・指示
このポスターは何のポスターでしょう
・平泉に行ったことがある人は?
学習活動
資
料
T:発問する
平泉展の ・奥州藤原氏
S:発表する
ポスター ・平泉
・平泉の世界遺産登録が延期になったこと
を知っていますか?
生徒の反応
評価
・浄土信仰
・行ったことがある。
S:発表する
・知っている。
世界遺産について考えよう
・国内の世界遺産を発
・国内の世界遺産で知っているところを
S:予想し発
資料(ユネス
あげてみよう
表する
コのHP)
・どんなところが世界遺産になっている
S:資料をも
界遺産があるのか
だろうか。(予想する)
とに考えプ
・自然が豊かなところ
・国内の世界遺産を分類してみよう
リントに記
・立派な建物
○文化、自然、複合遺産の別を把握する。
入する。
・原爆ドームみたいな
↓
関①
表する。
・国内にはこんなに世
資①
負の遺産。
○登録基準の概要を押さえる。
T:説明する
・世界遺産にも3つの
(平泉落選の理由にも触れる)
S:メモをと
分類があるんだ。
る
・登録の基準は何?
・なんで平泉はだめだ
なぜその国だけで守らないのだろう。
○ 自然災害、紛争による破壊など背景を
ったんだろう。
T:説明する
知る
思①
資料(ユネス ・そんな背景があった
コのHP)
のか。
人類全体で守るべき宝がある
○世界遺産の概略を説明する
もっと詳しく知るために、世界遺産の
S:ビデオを
ビデオ
きっかけになったヌビア遺跡を見て人
みて、気づ
資料
関①
・最先端の技術を動員
々の工夫を知ろう
いたことを
して遺跡を救った。
○気づいたことをメモする。
メモする。
・世界中の人達が協力
○教師の説明により確認する
T:説明す
したことはすごい。
○アブシンベル神殿の水没の危機を救うた る。
めの様々な努力や工夫を知る。
感想をまとめる。
S:感想をま
・世界遺産についてわかったことをまと
とめる
めよう。
S:本時のま
く知った。世界遺産は
とめを行う
大切にしたい。
感想を発表しよう
2
知①
・世界遺産について詳し 思①
・これは何でしょう(アンコールワット
T:発問する
の遺跡の仏像の顔が破壊されているパネ
S:考え発表
・破壊されてひどい。
ルを見せる。)
する。
・テレビで見たことが
・なぜ破壊されているのでしょう
T:発問する
危機遺産について考えよう
パネル
S:地図にシ
・戦争で破壊された。
地図
を配布し危機遺産にシールを貼っていく。
危機遺産
・どんなところに危機遺産が多いだろう
T:発問する
の資料
紛争地、自然災害地、発展途上国に多
S:考え発表
地図帳
○実際に危機遺産から脱出した例を紹
介。(イエローストーンのビデオ)
これらの例を参考に、もっと努力すべ
き点について考えよう。
する。
ところがあるのか。
・こんなに危機遺産が
ある。
みて、気づ
ころが多い。
いたことを
・すごいなあ。
メモする。
・行動すれば危機遺産
世界遺産になることで困ることは考え
とめる。
T:発問する
ビデオ
・どんな困ることがあ
関②
思③
資②
るかな。
S:考える
・きっと観光客が増える
発表する。
S:発表する
・京都や奈良など建物の
アンコールワットのゴミの山や観光バスのパネルを見
S:考える
<問題点を考える。>
関②
も守れるんだ。
予想し考える。
る。
思②
・紛争や災害などニュ
ースで知っていると
S:考えま
知②
・世界遺産にもそんな
S:ビデオを
各自意見をまとめる。
られないだろうか。
・何だろう。
ある。
危機遺産についての説明後、班ごとに地図 ールを貼る
いことに気づく。
関①
高さなどに規制がかか
るそうだ。
・観光化による環境破壊。
・ひどいな・ゴミの山だ
・規制による伝統的な生活の危機規制に
S:発表す
よる開発の立ち遅れ
る。
今後どのように世界遺産を守っていく
・登録されたことで困る
ことがおこるなんて矛
盾している。
べきだろうか。
T:発問する
☆市民レベルで取り組めるもの
S:各自考え
関③
☆継続的に取り組めるもの
班で討論し
それぞれが意見にまとめ班で討論し発
意見にまと
表する。
め発表する
2時間の授業を通して考えたこと周り
S:考える
関③
の人達に伝えたいと思うことをまとめ
まとめる
資②
よう→発表
発表する。
思③
○授業設計上のねらいと
授業設計上のねらいと配慮
のねらいと配慮した
配慮した点
した点
本単元では、三年生の公民分野の授業の中で、卒業を間近に控えたという時期をとらえ、
これからの国際社会を形成する主体者としての資質を高めるうえで、「世界遺産」を通して
国際協調の精神を養う手だてとなる授業設計を行った。世界遺産を守るために、人々が国境
を越えて活動している様子に触れることにより、現代社会に見られる諸課題に対して自ら行
動するような市民意識の育成も視野に入れ互いに意見交換する場面を多く設定した。このよ
うに、ESDの概念に触れながら世界遺産教育を実践していくことは、将来の社会の主体者で
ある生徒一人ひとりが地球の未来に目が向けることにも通じていくこととなり、意義が大き
いと考える。
参考資料
社団法人日本ユネスコ協会連盟webサイト「世界遺産活動」http://www.unesco.jp
田渕五十生・中澤静男(2007):
「ESDを視野に入れた世界遺産教育」.-ユネスコの提起する教育をどう受け止めるか-
奈良教育大学教育実践総合センター研究紀要,第16号, pp.59-66.
谷口尚之・田渕五十生(2008):
「ユネスコ東アジア地域世界遺産教育国内ワークショップの報告」.奈良教育大学教育実
践総合センター研究紀要,第17号, pp.325-334.
田渕五十生・谷口尚之・祐岡武志(2007):
「世界遺産教育の教材化の視点と実践報告」-「古都奈良の文化財」と「法
隆寺地域の仏教建造物」を中心にして-.奈良教育大学教育実践総合センター研究紀要,第17号, pp.289-297.
祐岡武志・田渕五十生(2007):
「世界遺産教育実践の事始め」-ユネスコ『教師用世界遺産教育教材』を素材として-
奈良教育大学教育実践総合センター研究紀要,第16号, pp.207-215.
中澤静男・田渕五十生・(2006):
「奈良における世界遺産教育」-シルクロードの文化を中心にして-.
奈良教育大学教育実践総合センター研究紀要,第15号, pp.145-153.
パネル:世界遺産「守ろう地球のたからもの」日本ユネスコ協会連盟
ビデオ:
「世界遺産知ってる?」「世界遺産・ともに生きる人たち」 日本ユネスコ協会連盟
2.3 授業記録 (第1時
教
師
の
1/ 2 )
働
き
か
け
生
徒
の
反
応
1.資料をもとに
資料をもとに考
をもとに考えさせる。
えさせる。
※「平泉展」のポスターを掲示する。
(世界遺産と浄土思想の字は紙で隠す。)
答:中尊寺、松尾芭蕉、
問:このポスターを見てください。この写真はどこか分かりますか。
問:そうです。これは、平泉にある金色堂です。
奥州藤原氏 、平泉
答:クラスの半分くらい
行ったことがある人は?
挙手。
問:ずいぶん行ったことがあるんですね。ではこの紙である言葉が隠 答:世界遺産(浄土思想
されていますが何だと思いますか
は出ない)
問:そう、世界遺産です。では、平泉が世界遺産登録を目指していた 答:10人くらい挙手。
ことを知っている人は?
2.本時の
本時の確認をする
確認をする。
をする。
今日は、世界遺産について考えてみたいと思います。(ワークシート
を配布し、授業テーマを記入させる。)
問:日本国内には、どんな世界遺産があるか知っていますか。
3.世界遺産の
世界遺産の分類と
分類と概要を
概要を知る。
答:石見銀山、厳島神社、
問:そうですね。こんなに日本国内に世界遺産はあります。では、何
が優れていると世界遺産として登録されているのでしょうか。
問: そうですね。では、世界遺産を幾つかに分類してみましょう。
問:そう、自然については「自然遺産」法隆寺など
文化的価値の高
法隆寺、白神山地、
屋久島、清水寺、姫路城
答:自然が豊かなところ。
建物が立派なところ。
いものは「文化遺産」として分類されています。その二つの価値をも
つものは複合遺産といいます(板書しワークシートに記入させる。)
では、国内の世界遺産をそれぞれの分類の下に記入してみましょう。
答:白神山地や屋久島は自
然。
このような世界遺産は、国連の中の「ユネスコ(国連教育科学文化機 答:法隆寺などは建物だ。
関)」が、特に優れた人類共通の宝物を次の世代に伝えるために条約
によって保護しています。特に優れているかどうかは、選考の基準に
照らして審議されますが、平泉の場合は「浄土思想」という考えが、
世界の中ではあまり一般的ではなかったということで登録は延期され
たようです。さきほどの隠れていた言葉は「浄土思想」です。
問:では、なぜその国だけで守れないのでしょう。どうして、国際
的に守らなければならないのでしょうか。
4.世界遺産の
世界遺産の背景を
背景を知る。
なるほど、その通りです。では、このような世界遺産が生まれるきっ
かけになったことを紹介したいと思います。
※世界遺産のパネルでアブシンベル神殿を見る。
答:守るのにお金がかかる
国が貧しいから。
問:見たことがある人はいますか。
答:15人くらい挙手。
これは、エジプトの「ヌビア遺跡」という遺跡のアブシンベル神殿で (メモをしながら、ビデオ
す。実は、初めて世界遺産という考えが生まれたのはこの遺跡を守ろ
を見る。)
うという運動からなのですが、今からまだ50年ほど前のことです。
これから、その様子をビデオで見ますから、分かったことや気づいた
ことをメモしながら見ていきましょう。
※「世界遺産知ってる?」と「世界遺産・ともに生きる人たち」の
一部を見る。
5.世界遺産について
世界遺産について、
について、分かったことや感想
かったことや感想をまとめる
感想をまとめる。
をまとめる。
問:アブシンベル神殿の水没の危機を救おうと世界中の人々が協力し
答:世界中の人たちが協力
て、現在の遺跡を見ることができるのですね。では、ビデオの感想と
したことはすごいことだ
「世界遺産」について分かったことや考えたことをまとめましょう。
答:世界遺産に国境という
考えがないことはすごい
問:感想を発表しましょう。
と思った。
○授業後
の生徒
の感想
-
宮城教育大学
-
宮城教育大学大学院
-
宮城教育大学附属中学校
准教授
吉田
剛
-
院生
宮本静子
-
教諭
渡邊淳一
-