833KB - 豆類協会

豆類基金
コーナー
カナダ豆類事情に関する調査結果の概要
(財)日本豆類基金協会
専務理事 伊 藤 洋
(財)日本豆類基金協会では、第45期の海
このため、カナダにおいて豆類は、小麦、
外豆類事情調査を平成21年7月5日から12
大麦、カノーラ、トウモロコシに次ぐ5番
日までカナダを対象に実施しました。私も
目に重要な農作物となっており、作付面積
この調査団の一員として参加しましたので、
で豆類が約7% を占めるまでに至っている。
その概要を報告いたします。
生産地域で見ると、いんげんまめはオン
タリオ州、マニトバ州で主に栽培され、え
1.カナダにおける豆類の生産・流通・消
んどう、レンズまめ、ひよこまめはサスカ
チュアン州で主に栽培されている。また、
費事情
(1)豆類生産の概要
我が国へ輸出される小豆、手亡は、オンタ
カナダにおける豆類(大豆及び落花生を
リオ州において契約栽培されている。
除く。)の作付面積は、世界各国への輸出
の伸びに対応して、1980年以降急速に増加
(2)豆類輸出の概要
し、2008年にはその30倍以上にも当たる
カナダ産の豆類は、生産量の70% 以上が
244万 ha に達している。これに伴い、生
世界140ヶ国へ輸出されている。現在では、
産量も増大し、2008年で480万 t と豆類全
カナダは、レンズまめ、えんどう、ひよこ
体ではインド(1,340万 t)に続く世界第2
まめの世界最大の輸出国となっている。
位の生産国となっており、豆の種類別では
えんどうが世界第1位である。
品目別では、いんげんまめは、生産量の
約85% が輸出され、主に米国、欧州向けで
第1表 カナダにおける豆類生産の推移(1995~2008年)
いんげんまめ
えんどう
レンズまめ
ひよこまめ
計
1995
94
536
303
1
1,098
収穫面積(千 ha)
2000
2004
2006
181
123
178
1,340
1,244
1,261
703
714
516
482
39
129
2,188
2,126
2,084
2008
128
1,617
652
44
2,441
(資料)カナダ農務省
- 68 -
1995
203
1,545
432
1
1,962
収 穫
2000
261
2,864
914
388
3,754
量(千トン)
2004
2006
218
372
3,097
2,520
916
630
51
163
4,298
3,685
2008
266
3,571
920
67
4,824
第2表 カナダの豆類の主要輸出先国(2006年) 順
位
1
2
3
4
5
いんげんまめ
国名
輸出量
米国
102
英国
68
イタリア
23
日本
22
オランダ
14
えんどう
国名
輸出量
インド
896
中国
251
スペイン
169
バングラ
110
アラブ首長国
38
レンズまめ
国名
輸出量
インド
130
アラブ首長国
82
アルジェリア
70
パキスタン
61
コロンビア
54
単位:千t
ひよこまめ
国名
輸出量
パキスタン
17
ヨルダン
15
インド
13
イタリア
8
サウジアラビア
6
(資料)カナダ統計局
ある。えんどうは、生産量の約65% が輸出
豆類消費は、以前は他の欧米諸国同様に少
され、主にインドを始めとしたアジア、南
なかったが、近年、増加傾向にあり、豆類
米の食用向け、欧州の飼料向けである。レ
の大量消費国であるブラジル、メキシコ、
ンズまめは、生産量の約70% が輸出され、
インドとほぼ同様の水準にまで達している。
主にアジア、中東、南米、欧州向けである。
こ の 点 に つ い て、 今 回 の 調 査 の 際 に、
ひよこまめは、アジア、中東、欧州、南米
Pulse Canada の担当者に質したところ、
等に輸出されている。
豆類の消費量が伸びているという事実はな
カナダの豆類の輸出が伸びた要因として
いし、米国とほとんど変わらないのではな
は、①栽培技術の改善、品種改良や市場調
いか、恐らくは生産量から輸出量を差し引
査に注力し、カナダの気候・土壌に適した
いた国内需要量を人口で除したものを1人
レンズまめ、えんどうの生産を促進したこ
当たり消費量(Per capita consumption)
と、②穀物委員会が品質基準を制定し、基
として算出したものであり、飼料需要も含
準に適合した良質な豆が流通していること、
まれているのではないかとのことであった。
③輸送システムが整備され、輸出港への輸
送が容易なこと等が挙げられ、この結果、
2.主な訪問先での調査概要
世界で最も競争力のある豆類生産国に成長
<マニトバ州>
(1)Pulse Canada
した。
近年は、各国消費者の嗜好に合った新し
カナダ各州の豆類生産者や流通関係者の
い豆類の開発、挽き割り、製粉等の加工技
団体の結集の下に1997年に設立された、比
術の開発、健康訴求素材としてのマーケ
較的新しいカナダ全域を統括する豆類の生
ティング促進等により、産学官連携の下で
産・販売に関しての支援組織。
世界各地への輸出を意識した豆類関連産業
の発展に努めている。
それまで各州の生産者組織が国内・海外
を含め個別に販売促進活動を行ってきたが、
国際市場では戦略上不利な面も多く、生産
(3)豆類消費の概要
が伸び悩んでいたが、本組織の設立以降、
FAO の統計によれば、カナダにおける
統一的・横断的な活動を進めたことにより、
- 69 -
近年になって、急速に輸出が拡大するなど
明があった。
市場拡大に大きく貢献してきている。
先方から Pulse Canada の組織構成と業
(3)CIGI(カナダ国際穀物研究所)
務内容、カナダにおける豆類の生産及び輸
先方から研究所の具体的な業務として、
出状況、本年産の生産見込み、豆類の効用、
①世界中の農業関係者を招待し、カナダ産
カナダにおける豆類作の強み(冷涼な気候
穀類(豆類を含む)に対する教育プログラ
で病害虫が少ない、政府の指導で厳しい栽
ムの実施、②カナダ国内の関係業界に対し、
培基準、減農薬栽培が徹底等)等につき、
農産物加工等の技術指導の実施、③豆類を
説明があった後、意見交換した。
含む穀類の加工技術等に関する調査・研究
豆の需要開拓の方策として、健康によい
の実施、④以上の事業活動成果に関する広
こと、環境に優しいことを訴求すべきとの
報等につき、説明があった後、同建物内の
説明があった。また、ここ数年のカナダに
研究施設を見学。
おける急速な生産及び輸出の伸びは、消費
レンズまめを配合したパスタの試験では、
国のニーズに対応したアイテム(商品形態
混入により栄養バランスが良くなり、10%
も含め)の開発、カナダに適応した品種育
までであれば嗜好的にも大丈夫との結果が
成の成功したことが大きいとの説明があっ
得られたとのこと。
た。
(4)マニトバ大学リチャードソン機能性
(2)CGC(カナダ連邦政府カナダ穀物委
食品・栄養補助食品センター
員会)
州立のマニトバ大学付属の研究センター。
カナダ連邦政府農務省の傘下にある組織
機能性食品や栄養補助食品に関する研究を
で、本部はウイニペグ市に置かれている。
推進している。州の予算のほか、個人・企
職員は組織全体で700人、そのうち200人が
業からの委託研究費や寄附金で運営されて
本部職員、穀物の生産地、積み出し港等全
国に500人が配置されている。主要業務は、
カナダ産穀物の品質管理と品質保証である。
先方から穀物委員会の組織の概要、カナ
ダの穀物輸出における役割、近年の穀物検
査や穀物の品質をめぐる動きについて、説
明があった後、意見交換した。
この中で、穀物検査については、食品の
安全性と輸出品の品質保証を確保するため、
今後とも政府機関による対応が必要との説
- 70 -
豆粉利用研究の説明を受ける調査団
おり、研究開発も産学官連携が基本で、新
すると、販売されている豆の種類や加工品
食品の実用化を意識した研究開発課題を設
のアイテム数は限られており、特定の品目
定している。
に限られていると感じた。
先方から、カナダの大学における研究開
例えば、乾燥豆の袋詰めではほとんどが
発プロジェクトの設定方法、本センターの
2kg か750g 入りのものと量り売りのもの
その中で役割、本センターの研究領域(農
に限られ、大型の紙袋(5kg、10kg)入
学、医学、薬学、栄養学の学際的研究の推
りのものはなかった。表記は英語と仏語の
進)、商品化まで目指した研究開発の状況、
みで、米国で多く見かけたスペイン語表記
最近の注目すべき研究開発の成果等につき
は皆無であった。
説明があった後、施設内を見学しながら意
また、缶詰はほとんどが水煮缶で調理済
みの Baked bean や Bean & Rice 等は見
見交換した。
豆類については、ひよこまめ、レンズま
かけなかった。
めの粉を練り込んだマフィンや豆類の繊維
分を添加したヨーグルトの商品化をめざし
<サスカチュワン州>
(1)サスカチュワン大学 CDC(穀物開発
た研究開発を実施中とのことであった。
センター)
(5)スーパーマーケット(ウイニペグ市
郊外)
最初にセンター内の施設(穀物受入・試
料発送施設、資料乾燥施設、種子貯蔵庫)
カナダ全域で1,400店舗のスーパーマー
を見学した後に意見交換した。
ケットを展開するカナダ最大の小売チェー
豆 類 試 験 地 の ほ 場 面 積 は150エ ー カ ー
ン Loblaw Companies 社 の 1 部 門 で あ
(60ha)。豆類育種の実績として、これま
る Real Canadian Superstore。 店 舗 と
で普及品種として80品種を育成し、いずれ
し て Real Canadian Superstore の ほ か、
も Non GMO とのことである。
Superstore、Loblaw Superstore 等 の 名
CDC の組織や事業活動の特徴として、
称が使い分けされており、カナダ全域で
①日本の大学、農業試験場、普及センター
107店舗を展開している。
に相当する3分野を統合した機能を有し、
ウイニペグ市郊外のケナストン店におい
教授は現地に出向き、農家に直接技術指導
て、豆類及びその加工品の販売状況を調査
をする等合理的なシステムであること、②
したが、店長からの写真撮影の許可が出な
育成した登録品種については、州内の生産
かったため、目視で製品毎の販売価格等を
者に無料で許諾していること(これが優良
確認・記録しつつ、調査を行った。
品種の早期普及と国際競争力の強化に貢
乾燥豆の袋詰め及び水煮缶詰が販売され
ていたが、米国での2年前の調査時と比較
献と自負)、③州内1万8千戸の生産者は、
販売価格の1%をサスカチュワン豆類生産
- 71 -
者協会に拠出しているが、CDC は、この
資金の一部を研究費として受託して生産現
(3)豆類集荷選別施設(サスカン・ホリ
ゾン社(アバディーン))
場のニーズに対応した試験研究を推進して
サスカトゥーン市から北東約40km に位
置する Aberdeen の郊外にあるサスカン・
いること等の説明があった。
ホリゾン社を訪問。レンズまめ主体の集荷
(2)サスカチュワン大学農学部
選別施設。
サスカチュワン大学は、サスカトゥーン
施設の作業工程は、受入計量→一時貯留
市にある州立大学で1907年創立で、敷地面
→調製・選別→貯蔵→袋詰・出荷で構成さ
積は3,000エーカー(1,200ha)、うち農学部
れている。出荷先としては、中東方面への
関係は1,400エーカー(560ha)。
輸出が中心で、処理能力は、120~150t /
当日は、農学部(College of Agriculture
and Bioresources (AgBio))を訪問し、本
日であり、この地域の集荷選別施設として
は小規模なものとのことであった。
館内にある農作物の品種育成に利用されて
施設運営の考え方としては、この施設で
いる最先端の大規模環境制御室(ファイト
は在庫は持たない方針であり、注文に応じ
トロン:大小100室)を見学した。
て出荷を要請することとし、貯蔵は生産者
本大学では、求められれば日本向けの豆
類の品種育成に取り組むことも可能との発
が分担する方式を採用しているとのことで
ある。
言があった。この施設は、産官学や生産現
場との連携の成果の賜であり、担当教授は、 (4)サスカチュワン豆類生産者協会(SPG)
常に具体的な研究開発成果を求められてい
るとのことである。
先方から生産者協会の組織の概要、サス
カチュワン州の豆類の生産状況、輸出及び
価格の動向について説明があった後に意見
交換した。
説明の内容は、以下のとおり。
①本協会の経費の大半は、州内の豆類生産
者18,000人からの拠出(庭先価格の1%)
でまかなわれており、その予算規模は年
間6~7億円である。
②サスカチュワン州は、南部の米国との国
境地帯が乾燥地帯で、北部は湿潤地帯で
あり、サスカトゥーン市周辺は中間地帯
サスカチュワン大学農学部本館
に位置し、豆類の収量は乾燥地帯の2~
3倍の単収の確保が可能である。
- 72 -
③サスカチュワン州では、えんどう、ひ
施 設 の 処 理 能 力 は、4,000~5,000t / 年
よこまめ、レンズまめが生産されてお
と小規模であるが、高品質で付加価値の
り、特にひよこまめとレンズまめは、カ
高い豆類のみを販売する戦略(この地域
ナダ全体の生産量のほぼ全量(それぞれ
の他の業者が取り扱っていない日本向け
99% のシェア)を生産しており、えんど
Marrowfat 等に照準(アルバータ州のえ
うも77% を占めている。また、えんどう
んどうの銘柄は Yellow 又は Green が主
は、欧州で小麦・大豆への転換で生産が
流))をとっている。
減少しているのに対し、カナダでは依然
として生産が増加傾向にある。
施設内の作業工程は、受入計量→調製・
選別→一次貯蔵→袋詰・パレット積載→出
④サスカチュワン州全体の豆類の生産能力
荷で構成されている。えんどうについては、
は700万 t と推定されるが、現在の生産
トラック便でカルガリーまで、さらに鉄道
実績は約400万 t で、今後さらに生産の
便でバンクーバーまで輸送し、コンテナ船
拡大が可能である。
で日本へ輸出しており、出荷から日本到着
⑤収量水準は、豆類で100ブッシェル/エー
まで10日間を要する。
カーに対し、小麦で30~50ブッシェル/
技術的な課題としては、気候的に乾燥し
エーカーであり、豆類は有利性があり、
ているため、豆類の水分含量が9~10%と
輪作体系上も不可欠な作物である。
過乾燥となり、割れ豆が多く発生すること
⑥カナダは近年世界最大の豆類輸出国に躍
り出ており、輸出量は世界全体の26% と
(この場合、割れ豆は区分けして飼料用と
して出荷)がある。
1/4を占めている。
(2)えんどう栽培ほ場(グラッシーレイ
<アルバータ州>
ク市)
Vauxhall から、さらに南東に40km の
( 1) 豆 類 集 荷 選 別 施 設( コ ロ ン ビ ア・
Grassy Lake に あ る Columbia Seeds 社
シード社(ボークスホール市))
カ ル ガ リ ー 市 か ら 南 東 に 約170km の
Vauxhall にあるコロンビア・シード社を
の契約栽培農場で調査。概要説明の内容は
以下のとおり。
訪問。えんどう主体の集荷選別施設。
栽培ほ場は、128ha(800m ×800m ×2
本社は、1964年創立で、その後、現社長
面)、灌漑施設(半円型スプリンクラー灌
の Joerg 氏(ドイツ出身)が1997年に買
漑(半径800m))が完備。栽培品種は、え
収し、えんどう、いんげんまめ等の乾燥豆
んどうの Marrowfat 銘柄の”Rhino”(英
の生産・販売に取り組んでいる。現在、日
国で育成されたコンバイン収穫が可能な短
本及びタイの製菓企業にスナック菓子の原
桿小葉型(セミリーフレスタイプ)の新品
料豆を供給している。
種、品質もよく、耐病性に優れている。)。
- 73 -
播種は、作業幅20m のシーダーで、播
ている。
種量は60粒/ m2(6万粒/10a)とかなり
この結果、この地域の農家におけるいん
の密植だが、倒伏している株はほぼ皆無で
げんの栽培規模は、10年前の80ha /戸か
あった。収穫は、直刈りコンバイン(稀に
ら現在は200ha /戸に拡大。
茎葉枯凋剤を散布)で、収穫後の乾燥は必
要なし。単収は、現段階で400~500kg /
10a 程度が予測されるとのこと。
(4)いんげんまめ等栽培ほ場(アルバー
タ豆類生産者協会会長農場)
経営規模は1,500ha で Jan Bennen 会長
(3)豆類集荷選別施設(バイテラ社(テー
バー市))
と弟の2名で共同経営。ほ場は、全てパイ
プラインによる灌漑施設が完備されており、
カナダで最大規模の総合穀物企業
で、本社はサスカチュワン州リジャイナ
年間40ドル/ ha(使用料)を国に支払っ
ているとのこと。
市(Regina)。これまで M&A を繰り返し、
多角化・大型化を推進してきた。
作物の作付割合では、バレイショが最
も大きく1/2(770ha)、次いで小麦が
豆類関係では、アルバータ州内に3ヶ所
1/4(390ha)、残りがカノーラと豆類。
の集荷選別施設を保有。Taber の施設では、
カノーラは、全てF1採種栽培で種苗企業
豆類の銘柄としてこの地域で生産が可能な
からの委託契約による。豆類については、
Pinto、Great Northern、Small Red を中
輪作体系上必要不可欠な作物と認識してい
心に Black、Pink、Yellow も取り扱って
る。
いる。出荷量は、主力3銘柄で2万 t、その
他の銘柄で5千 t、計2万5千 t である。
調 査 し た 豆 類 ほ 場( い ん げ ん ま め の
施設内の作業工程としては、受入→粗選
Pinto, Great Northern)の概要は以下の
→貯蔵→選別→保管→袋詰め→出荷で構成
とおり。
されている。粗選の際に出た夾雑物は農家
<豆類ほ場 No.1(Pinto)>
に返却している。購入重量から除外し、生
ほ場面積―60ha、播種日―5月15日、播
産者への品質管理の指導を徹底している。
種量27,000粒/10a、低温、寡照により現
荷姿は、50kg 袋詰め又は1t のフレコン・
在生育7日遅れ。
バルクの形態で出荷・輸出する。
<豆類ほ場 No.2(Great Northern)>
アルバータ州南部は、灌漑施設さえ整備
ほ場面積―60ha、播種日―5月17~18日、
すれば、日照量、気温などはいんげんの栽
播種量27,000粒/10a、低温、寡照により
培条件に適しており、加えて主力作物であ
現在生育7日遅れ。
る小麦やカノーラなどとの輪作体系を保持
するためにも豆類は必須の作物と認識され
- 74 -
(5)カナダ農務省ボークスホール育種試
験地
テルまで出向いていただき、会議室で意見
交換。内容は以下のとおり
カナダ農務省(Agriculture and Agri-
バンクーバー事務所は、カナダの2ヶ所
Food Canada)のカナダ全域に設置され
ある事務所(もう1ヶ所はトロント)の一
ている育種試験地の一つ。運営は5名体制。
つ。所長1名のみの体制で、現地人を数名
本試験地においては、アルバータ州、サ
採用して運営。
スカチュワン州向けのバレイショ、小麦、
主たる業務は、①対日投資の推進、②カ
カノーラ、豆類等の作物品種の商業栽培に
ナダ進出企業への支援、③カナダ情報の収
移行するための最終栽培試験を担当してい
集等である。
る。
対日輸出品のうち農産物としては、第2
この地域は、気候が冷涼で夏期が短く、
いんげんまめの生育期間が100~105日とカ
位の菜種油、第4位の豚肉、第6位の小麦、
第7位の大豆などが上位に挙げられる。
ナダで最も短い地帯であるため、栽培さ
最近の注目される動きとしては、バン
れている銘柄も Pinto、Great Northern、
クーバー市周辺で中国からの移民が天安門
Pink、Small Red、Black 等に限られ(White
事件や香港返還以降急速に増えていること
Pea、Cranberry、Navy、Red Kidney、
であり、中華街だけでなく、新興の衛星都
手亡等は栽培困難)ており、試験もこれら
市である Richmond(空港の周辺)では
の銘柄を対象として新品種育成をめざして
人口の8割を占めるに至っている。
いる。
カナダは、国土の広さの割に人口が少な
試験項目としては、耐候性(早生、耐冷
性)、耐倒伏性(機械収穫適性)、耐病性
く、労働力確保のため、移民には積極的で
あり、毎年40万人を受け入れている。
(茎疫病、菌核病)、均一性(品質)が中心
日本からの対カナダ投資のうち、農業・
である。シストセンチュウは、大豆栽培地
食品関係ではオンタリオ州へのビール会社
帯でない(低温で栽培不可)ため、全く問
(アサヒ、キリン)進出が大きなものであ
題となっていない。
る。ブリティシュ・コロンビア州では、海
最近の有望品種としては、Black 銘柄の
大粒系の Black Diamond が収量性、品質
産物の加工・販売のアズマ・フーズがある
くらいで案件は必ずしも多くない。
を兼ね備えた優良品種として挙げられ、今
後の普及が期待されている。
カナダの食文化については、アメリカと
ほぼ同じだが、カナダ料理といえるような
独自の料理はない。ただし、JETRO の食
<ブリティシュ・コロンビア州>
品展示会では、ワサビ入りのえんどうのよ
(1)JETRO バンクーバー事務所
うなピリっとした味に人気があり、米国の
事務所が手狭であるため、松岡所長にホ
食文化とは少し違うと感じている。
- 75 -
(ウイニペグ市でカナダ政府関係者に
ダの主要生産州における政府機関、大学、
「小倉あん入り最中」を試食してもらった
生産者団体等の豆類関係機関が一体となっ
ところ、皆びっくりしていたとの話をす
た取組が大きく寄与していることが分かっ
ると、)カナダ人は、ヌルヌルやネチャネ
た。
チャしたものが苦手で、例えば、ナガイモ
具体的には、新品種開発から農家への普
や納豆は全く受け入れられていない。豆腐
及指導、生産流通体制の整備、さらには海
の軟らかさがぎりぎりではないか。
外における需要ニーズの把握、新需要分野
ただし、最近、抹茶入りの飲料がコー
の開拓、各種の輸出促進活動に至るまで、
ヒーショップで人気になっており、日本人
多様な取組がなされている。また、関係機
経営の和菓子店も市内にあり、ものによっ
関の間の連携やネットワークも組織が小さ
ては売り込みも可能と思われる。
くて少人数で運営されているにもかかわら
ず、うまく機能していることが明らかと
なった。
3.調査結果のまとめ
カナダにおいては、近年、えんどう、レ
これは、今後我が国における豆類振興方
ンズまめ、ひよこまめ等の豆類の生産量が
策の検討に当たっても、大いに参考とすべ
急速に増加し、今や世界最大の豆類輸出国
きものと考えられる。
となったが、今回の調査で、これにはカナ
- 76 -