キャリアアップ助成金のご案内(2) 「多様な正社員コース」

<2015.8 月号> 株式会社フォーラムジャパン
東京都千代田区神田小川町 3-20 第 2 龍名館ビル 6F
キャリアアップ助成金のご案内(2)
「多様な正社員コース」
~2015 年度予算でキャリアアップ助成金が制度改正されています!~
【キャリアアップ助成金とは】
「キャリアアップ助成金」は、有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用の労働者の企業内
でのキャリアアップなどを促進するため、正規雇用への転換、人材育成、処遇改善などの取組を実施した事業主に対して助成す
る制度です。キャリアアップ助成金についてはすでに FJ ニュースでもご紹介していますが、平成 27 年 4 月 10 日に制度が改正さ
れました。制度改正に伴い、助成額の増額、対象労働者の範囲変更、訓練コースの追加、またコースの改変(短時間正社員コー
ス→多様な正社員コース)などがあります。そこで再度、キャリアアップ助成金についてご紹介させていただきます。
キャリアアップ助成金には、正規雇用等転換コースをはじめ 6 つのコースが設定されています。今月は、
「多様な正社員コース」
についてご紹介します。なお、この助成金の対象事業主については、FJ ニュース 7 月号をご覧ください。
(1)多様な正社員コースの概要
※4 月 10 日の改定により、
「短時間正社員コース」から変更
以下のいずれかを実施した場合に助成します。
① 勤務地限定正社員制度または職務限定正社員制度を新たに規定し適用した場合
② 有期契約労働者等を、勤務地限定正社員、職務限定正社員または短時間正社員※に転換または直接雇用した場合
③ 正規雇用労働者を短時間正社員に転換または短時間正社員を新たに雇入れた場合
※勤務地限定正社員、職務限定正社員、短時間正社員の定義については次ページの「用語の定義」をご覧ください。
(2)支給額
(
)内は大企業の額
赤字部分は平成 28 年 3 月 31 日までの間、支給額を増額 ⇒来年度以降も恒久化の方針
①勤務地・職務限定正社員制度を新たに規定し適用した場合
⇒ 1事業所あたり40万円(30万円)
②有期・無期労働者を勤務地限定正社員、職務限定正社員、または短時間正社員へ
⇒ 1人当たり30万円(25万円)
③正規雇用労働者を短時間正社員に転換、または短時間正社員の新たな雇入れ
⇒ 1人当たり20万円(15万円)
※注)①は1事業所あたり1回のみ、②及び③は「週所定労働時間延長コース」と合わせて1年度1事業所10人まで
【加算額】
※ ①②について、派遣労働者を派遣先で勤務地限定正社員、職務限定正社員または短時間正社員として
直接雇用した場合に助成額を加算
・ 1人当たり15万円(大企業も同額)
※ ①~③について母子家庭の母等を転換等した場合に助成額を加算(転換した日において母子家庭の母等
である必要がある)
・ 1人当たり10万円(大企業も同額)
キャリアアップ計画(FJ ニュース 7 月号参照)認定後に新規に勤務地限定または職務限定正社員制度を
規定し、対象労働者に適用した場合は①が、認定前から制度があり、認定後に転換または直接雇用を
行った場合は②が適用されます。
(3)多様な正社員の定義
【用語の定義】
1.多様な正社員とは:勤務地限定正社員、職務限定正社員または短時間正社員をいいます。
2.勤務地限定正社員とは
(1)期間の定めない労働契約を締結している労働者であること。
(2)派遣労働者として雇用されている者でないこと。
(3)所定労働時間が同一の事業主に雇用される正規雇用労働者の所定労働時間と同等の労働者であること。
(4)勤務地が、同一の事業主に雇用される正規雇用労働者の勤務地に比べて限定されている労働者であること。
(5)賃金の算定方法及び支給形態、賞与、退職金、休日、定期的な昇給や昇格の有無等の労働条件について、同一の
事業主に雇用される正規雇用労働者の正社員待遇が適用されている労働者であること。
3.職務限定正社員とは:下記以外は、勤務地限定正社員と同じ。
(6)職務が、同一の事業主に雇用される正規雇用労働者の職務に比べて限定されている労働者であること。
4.短時間正社員とは:次の(1)から(4)までのすべてに該当する労働者をいいます。
(1)期間の定めのない労働契約を締結している労働者であること。
(2)派遣労働者として雇用されている者でないこと。
(3)所定労働時間が、同一の事業主に雇用される正規雇用労働者の所定時間に比べ短く、かつ、次の(イ)から(ハ)
までのいずれかに該当する労働者であること。
(イ)1日の所定労働時間を短縮するコース
(1時間以上短縮すること)
(ロ)週、月または年の所定労働時間を短縮するコース
(週40時間の場合1割以上短縮すること)
(ハ)週、月または年の所定労働日数を短縮するコース
(週5日の場合1日以上短縮すること)
(4)賃金の算定方法及び支給形態、賞与、退職金、休日、定期的な昇給や昇格の有無等の労働条件について、同一の
事業主に雇用される正規労働者の正社員待遇が適用されている労働者であって、時間当たりの基本給、賞与、退職
金等が、同一の事業主に雇用される正規雇用労働者と比較して同等である労働者であること。
派遣労働者を多様な正社員として直接雇用する事業主要件
派遣労働者を派遣先で多様な正社員として直接雇用した場合助成額が加算されますが、派遣先事業主は、共通
要件(FJ ニュース 7 月号参照)に加え、以下の要件のすべてに該当する必要があります。
★派遣労働者の多様な正社員としての直接雇用★
1)多様な正社員制度※のうち、当該雇用区分を労働協約または就業規則に、当該直接雇用制度を労働協約または就業規則
その他これに準ずるものに規定した事業主であること。
※多様な正社員制度:勤務地限定正社員 制度、職務限定正社員 制度、または短時間正社員制度
2)派遣先の事業所その他派遣就業場所ごとの同一の業務について6ヶ月以上の期間継続して労働者派遣を受け入れていた
事業主であること。
3)多様な正社員制度に基づき、指揮命令の下に労働させる派遣労働者を多様な正社員として直接雇用した事業主であること
4)上記3)により多様な正社員として直接雇用した労働者を直接雇用後6ヶ月以上の期間継続して雇用し、当該労働者に
対して直接雇用後6か月分の賃金を支給した事業主であること。
5)上記3)により直接雇用した日(以下「直接雇用日」
)において、対象労働者以外に正規雇用労働者を雇用していた事業主
であること。
6)支給申請日において当該制度を継続して運用している事業主であること。
7)当該直接雇用日の前日から起算して6ヶ月前の日から1年を経過する日までの間に、当該直接雇用を行った事業所に
おいて、雇用保険被保険者を解雇等事業主都合により離職させた事業主以外の者であること。
8)当該直接雇用日の前日から起算して6ヶ月前の日から1年を経過する日までの間に、当該直接雇用を行った事業所に
おいて、特定受給資格離職者として雇用保険法第13条に規定する受給資格の決定が行われたものの数を、当該事業所
における雇用保険被保険者数で除した割合が6%を超えている事業主以外の者であること。
9)上記1)の制度を含め、雇用する労働者を他の雇用形態に転換する制度がある場合にあっては、その対象となる労働者
本人の同意に基づく制度として運用している事業主であること。
10)当該直接雇用日以降の期間について、当該者を雇用保険の被保険者として適用させている事業主であること。
11)当該直接雇用日以降の期間について、当該者を社会保険の被保険者として適用させている事業主であること。
法律に関するページ
派遣法改正法の概要
6 月 19 日に衆議院を通過した派遣法改正法案ですが、参議院で審議入りしたものの安保法制等の影響を
受けて審議が中断していました。ようやく 7 月 30 日から審議が再開されましたが、ここにきて施行日の延
期が検討されています。新たな施行日は 9 月 30 日となる予定です。いずれにしても短い準備期間で対応し
なければなりません。今月は派遣法改正法の概要をお伝えします。
尚、「労働契約申込みみなし制度」については、予定通り 10 月 1 日から施行されます。
<派遣法改正の趣旨>
平成 24 年改正時の付帯決議等を踏まえ、派遣労働者の一層の雇用の安定、保護等を図るため、すべての労働者派遣事業を
許可制とするとともに、派遣労働者の正社員化を含むキャリアアップ、雇用継続を推進し、派遣先の事業所等ごとの派遣期
間制限を設ける等の措置を講じる。
<派遣法改正の基本的な考え方>
①特定労働者派遣事業(届出制)と一般労働者派遣事業(許可制)の区別を廃止し、すべての労働者派遣事業
を許可制とする。
②派遣労働者や派遣元・派遣先によりわかりやすい派遣期間規制へ見直しを図る。
③キャリアアップや直接雇用の推進を図り、派遣労働者の雇用安定と処遇改善を進める。
④派遣労働者の均衡待遇を強化する。
まず、派遣法改正の基本的な考え方の中から①について解説したいと思います。
【労働者派遣事業は、すべて「許可制」となります】
(3年の経過措置あり)
リーマンショック後、事業の安定性を図るため一般労働者派遣事業の許可基準が引き上げられました。その結果、許可要
件を満たせない事業所が届出だけで派遣事業が行える、特定労働者派遣事業に転換しその件数が増え始めました(図1)
。
しかし、中には、一般労働者派遣事業にしか認められていない常用雇用労働者以外の労働者を派遣したり、抵触日の通知を
受けずに派遣しているケースやその結果期間制限違反をおかしているケース、偽装請負や二重派遣を行っているケースなど、
法違反をおかしている事業所が増えていることが指摘されています(図2「一般・特定別行政処分件数の推移」参照)。
そのため、特定を廃止し、すべて許可が必要な一般労働者派遣事業に統一されます。尚、法施行後3年間は、今まで通り特
定労働者派遣事業者として常用雇用労働者を派遣することができる経過措置がとられています。
<お客様への影響>
現在の一般派遣事業の資産要件や、新たなキャリア形成支援制度の構築などの許可要件を満たす必要があります。しかし、
中には、要件を満たすことができずに事業の継続が困難な派遣会社が出てくることが予想されます。許可を取得することが
できなければ、派遣事業を継続することはできません。
その場合、取引派遣会社の見直しが必要になる可能性があります。
尚、特定労働者派遣事業者が常用雇用労働者以外の労働者を派遣した
場合、無許可派遣となり、10 月 1 日から施行される「労働契約申込み
みなし制度」の対象となるため、派遣先の皆様は、十分注意する必要が
あります。
(図1:労働者派遣事業所数の推移)
(図2:一般・特定別行政処分件数の推移)
次に、派遣受入期間制限の在り方が変わることについて解説したいと思います。
【派遣受入期間の制限が業務単位から個人・事業所単位に変更されます】
1.業務による派遣受入期間制限が見直されるため、26業務を撤廃します。
ただし、令4条の業務区分(17.5業務)については、日雇派遣禁止の例外業務として改正後も存続
2.新たな派遣期間は、個人単位と派遣先単位それぞれに設定されます。
(1)個人単位の期間制限
同一の組織単位※において3年を超えて継続して同一の派遣労働者を受け入れてはならない。
同一の組織単位でなければ、3年を超えて同一事業所内(別の組織)での派遣就業は可能です。ただし、派遣先
から派遣労働者を指名するなど、特定行為に当たらないよう注意が必要です。
※同一の組織単位とは?
業務のまとまりがあり、かつ、その長が業務の配分及び労務管理上の指揮監督権限を有する単位として派遣契約上
明確にしたもの(「課」レベルを想定)とする。
※個人単位の期間制限を設けた狙い
同一就業場所で同一業務のみ経験するのではなく、3年単位で複数の部署や業務を経験することで、派遣労働者の
キャリアを形成し、業務スキルを高め仕事に幅を広げることで、キャリアアップを図り、正規雇用へ転換しやすくなる。
(2)派遣先単位の期間制限
派遣先は、同一の事業所において3年を超えて継続して派遣労働者を受け入れてはならない。
派遣先が、事業所における派遣労働者の受入開始から3年を経過するときまでに、当該事業所における過半数労働組合
等から意見聴取した場合には、さらに3年間派遣労働者を受け入れることができ、その後さらに3年が経過したとき以降
も同様とされています。
(3)期間制限の例外
派遣元に無期雇用されている派遣労働者、60歳以上の高齢者などの派遣社員を受け入れる場合、期間制限は発生しません。