Chiba Univ. Astro. Lab. 天体内部構造論 宇宙物理学Ⅱ−6 核反応の基礎 天体核反応と元素合成 宮路茂樹 大学院理学研究科 [email protected] 1 Chiba Univ. Astro. Lab. 元素 周期表 元素の種類: 113種類 安定核 : 〜270種類 不安定核 : 〜8000種類 共鳴状態 : 〜??? 2 Chiba Univ. Astro. Lab. 核図表 3 Chiba Univ. Astro. Lab. 天体内の核反応 4 Chiba Univ. Astro. Lab. 元素合成過程の核反応 基礎方程式 核物理 天体物理 必要な核反応率を実験または理 論的に求め、反応経路と要求さ れる物理条件を明らかにする。 定量的なモデル計算を行い、観 測と比較する。 5 Chiba Univ. Astro. Lab. 核反応 強い相互作用の反応 陽子捕獲 ¾ 中性子捕獲 ¾ 重原子核反応 ¾ 核力の効く距離 〜10−15m 反応の時間尺度 〜10−16〜−22秒 クーロン障壁は大きく(T 〜1010K)、主にトンネル 効果で反応は進む。 弱い相互作用の反応 β崩壊 ¾ 電子捕獲 ¾ 強い相互作用での反応よりも相対 的に遅い。 反応の時間尺度 ≫10−16秒 6 Chiba Univ. Astro. Lab. 原子核 原子核の大きさ 質量数:A 電荷:Z r0 ≈ 1.4 ×10 Coulomb Barrier Vc V −13 1/ 3 A cm Z1 とZ2 の原子核が反応する 際のクーロン障壁の高さは Potential Z1Z 2 e 2 Z1Z 2 Vc = ≈ 1.2 1/ 3 MeV 1/ 3 R ( A1 + A2 ) R r 一方、星の内部の温度は 107−8K〜1−10keV 核反応はトンネル効果で 進行する。 7 Chiba Univ. Astro. Lab. 強い相互作用の反応例(捕獲反応) a+A→B+γ 初期状態 | a+A > から終状態 < f | (B原子核のある状態) へ 2 σ ∝ πλ ⋅ f H a + A ⋅ Pl ( E ) 2 a 幾何学的因子 (反応粒子のde Broglie 波長) h h λ= = p 2mE 反応 matrix element 浸入確率:反応粒子が ターゲット核に達する確率 (反応粒子の角運動量 l とエネルギー E に依存 1 σ ∝ ⋅ f H a+ A E 2 ⋅ Pl ( E ) 8 Chiba Univ. Astro. Lab. 角運動量からの制限 反応粒子は軌道角運動量 L を持つ 古典論: p d Momentum p Impact parameter d L = pd (量子論では反応粒子のL は離散的な値を持つ。) L = l (l + 1) = ここで l=0 l=1 l=2 … s-wave p-wave d-wave wave function の パリティは: (-1)l ターゲット核に対する回転運動の角運動量保存は有 限の角運動量に対してエネルギー障壁となる。 9 Chiba Univ. Astro. Lab. 角運動量障壁の大きさ 古典論での角運動量 L にたいするエネルギー障壁 E L2 E= 2mr 2 量子論では l (l + 1)= 2 Vl = 2 µr 2 µ : 系のreduced mass クーロン障壁と同様に、核同士が接触する半径で ピークとなる Vl [MeV] = 12 l (l + 1) A1 A2 1/ 3 ( A1 + A21/ 3 ) A1 + A2 10 Chiba Univ. Astro. Lab. 直接反応例: s-wave neutron capture Coulomb 力や角運動量の障壁が無い例: Vl=0 VC=0 低エネルギーでは s-wave での捕獲反応が主となる。 しかし、核のポテンシャルの核種による相違により反射を引き起こす。 入力波 透過波 反射波 Potential 透過の確率は E に比例 11 Chiba Univ. Astro. Lab. s波による中性子捕獲反応 Penetrability Cross section : 7Li(n,γ) thermal cross section <σ>=45.4 mb Pl ( E ) ∝ E 1 σ∝ E 又は 1 σ∝ v ~1/v 共鳴状態に よる 1 / v からのずれ 12 Chiba Univ. Astro. Lab. 中性子捕獲に於けるエネルギースキーム 2.063 3/2- + 1/2+ 7Li 角運動量とパリティの保存 Ε1 γ +n Ε1 γ 0.981 1+ 入射粒子 7Li +n: l 3/2− + 1/2+ + l(-1) = 1−, 2− ( l=0 for s-wave ) 0 2+ 8Li 生成粒子 8Li +γ: 2+ + ? (photon spin/parity) 光子のパリティは角運動量 L (=multiploarity) に依存 electric transition EL parity (-1)L ←起きやすい magnetic transition ML parity (-1)L+1 結果として、E1(1−)光子が生成される。 13 Chiba Univ. Astro. Lab. 天体に於ける反応率 s-wave 中性子捕獲の反応率 1 σ∝ v なので、 σv = const =< σv > 熱中性子による反応断面積: 反応炉(室温)での中性子捕獲断面積は以下の様に測定されている。 T= 293.6 K (20 0C), kT=25.3 meV 測定された反応断面積は、反応炉で生成された全ての中性子フラックススペクトル Φ(E ) で積分された量であるので、 σ ( E )Φ ( E )dE ∫ < σ >= ∫ Φ( E )dE 熱中性子のスペクトルは Φ( E ) = E e dj dn =v ∝ E e − E / kT dE dE − E kT だから < σ > th σ (E)E e ∫ = ∫Ee − E kT − E kT dE dE 14 Chiba Univ. Astro. Lab. 反応断面積と反応率の関係 < σv >= ここで、 vT = 2 π vT < σ > th = vTσ th 2kT µ 室温の反応炉での値は ( ECM=kT に於ける熱速度) < σv > σ th = < σ > th = vT π 2 中性子捕獲反応では角運動量障 壁のみが効くので、浸入確率は 結果として、 σ ∝E vT=2.20×105 cm/s これが、「熱反率」として 表になっている。 Pl ( E ) ∝ E 1/ 2+l l −1 / 2 15 Chiba Univ. Astro. Lab. 荷電粒子の直接反応 入射粒子の電荷と質量数を Z1, A1 (陽子や α 粒子など)、標的原子核を Z2 , A2とすると、 1 σ ∝ ⋅ Pl ( E ) ⋅ f H a + A E 2 荷電粒子反応では、 Coulomb 障壁を考えなければならないから、 Pl ( E ) ∝ e −2πη ここで、ηはゾンマーフェルトのクー ロン障壁透過率と呼ばれる量で、s 波のクーロン障壁透過確率を与える 1 σ∝ e E b − E η= µ Z1 Z 2 e 2 2E = b = 31.28 ⋅ Z1Z 2 A1/ 2 A1 A2 µ = A= A1 + A2 mU keV 16 Chiba Univ. Astro. Lab. 天文学的Sファクター 1 σ ∝ ⋅ Pl ( E ) ⋅ f H a + A E エネルギーに強く依 存する項 1 -b/ E σ= e S (E) E 2 エネルギーにあまり依存 しない項 天文学的 S-factor として、 核反応の実験値から外 挿するのが一般である。 S(E): keV barn 17 Chiba Univ. Astro. Lab. 荷電粒子反応例 例:12C(p,γ) cross section 荷電粒子反応は高エネル ギー実験で求められる。 天体反応は非常に遅い低 エネルギー反応である。 ここの反応 断面積を求 めたい ! 18 Chiba Univ. Astro. Lab. S-Factor の外挿 ここの値を外挿する HからSiまでの安定核に対する荷電粒子反応に対 するS-Factorの値は NACRE compilation として 与えられている (Angulo et al. Nucl. Phys. A 656 1999) 。 19 Chiba Univ. Astro. Lab. 荷電粒子に於ける反応断面積: Gamov ピーク < σv >= 8 πµ (kT ) −3 / 2 ∫ σ (E)E e − E kT dE = 8 πµ (kT ) −3 / 2 ∫ S ( E )e E b - + E kT dE Gamov Peak マックスウェル分 布の裾野(E ≫ kT )に於ける反 応断面積で、中 性子捕獲の場合 とは異なることに 注意! 20 Chiba Univ. Astro. Lab. ガモフピークのピークエネルギー、幅 ガモフピークはガウス 分布で近似できる e ピークエネルギー: E0 、 1/e 幅 ∆E bkT E0 = 2 3/ 2 ( E b − + E kT = 0.12204 Z Z A 2 1 2 2 ( ) 1/ 3 ≈e E − E0 − E ∆ / 2 2 T92 / 3 MeV ) 1/ 6 5 / 6 4 2 2 ∆E = E0 kT = 0.23682 Z1 Z 2 A T9 MeV 3 ここで、 b = 31.28 ⋅ Z1Z 2 A1/ 2 keV A1 A2 µ = A= T9=T [K]/109 A1 + A2 mU 21 Chiba Univ. Astro. Lab. ガモフピークの例:12C(p,γ)13N 反応時の温 度は kT = 2.5 keV 22 Chiba Univ. Astro. Lab. S-factor を用いた核反応率 一般に、ガモフピーク内では S-factor は一定と近似して反応率を求める。 S(E ) = S(E0) 1/ 3 Z1 Z 2 S ( E0 )[MeV barn] e N A < σv >= 7.83 ⋅10 2 AT9 9 1/ 3 Z12 Z 22 A − 4.2487 T 9 (A : reduced mass number ) S(E) をE =0で展開して2次の項まで求めると、 有効S-factor: Seffは S eff S ( E ) = S (0) + ES ' (0) + 1 ES ' ' (0) 2 5 35 1 S ' ' (0) 2 89 S ' (0) = S (0) 1 + + E0 + E0 kT E0 + kT + 36 2 S (0) 36 12τ S (0) ここで、τ = 3 E0 kT 23 Chiba Univ. Astro. Lab. 共鳴状態を経る核反応 反応が複合核の幅の狭い共鳴状態を経る時 の核反応の反応断面積は Briet-Wigner の 式で表すことができる。 Γi Γ f 2J +1 σ ( E ) = πλ 2 2 + 2 1 ( 2 1 ) J + J ( 1 ) 2 ( E − ER ) + ( Γ / 2 ) 2 ここで、J1、J2は反応する2つの原子核のスピン、J は複合核 のスピン、ERは共鳴状態のエネルギー、Γ(= Γi+ Γf)は 全幅、Γiは複合核の形成幅、Γfは崩壊幅である。 24 Chiba Univ. Astro. Lab. 共鳴状態を経る核反応率 マックスウェルーボルツマン分布P(E )は狭い共鳴エネルギー領域では ゆっくりと変化するので、P(E )中のE をERで置き換えて積分の外に出し、 3/ 2 ER 残りを積分すると − 2π < σ v >= µ kT ここで、統計因子 2J +1 ω= ( 2 J1 + 1) (2 J 2 + 1) h ωγ e 2 kT 共鳴の強さ Γi Γ f γ= Γ 共鳴状態がγ線を放出する過程(放射性 捕獲反応)のとき、ガンマ崩壊幅Γγは形 成幅Γiよりはるかに小さい(Γγ≪Γi)。 これは、複合核の形成は強い核力相互作 用で起こるのに比べて、崩壊は弱い電磁 相互作用で起こるからである。このとき、 Γ〜Γγであるから、共鳴強度ωγは小 さなガンマ崩壊幅Γγで決まる。 共鳴強度:ωγ〜ωΓγ 25 Chiba Univ. Astro. Lab. 天体での主な原子核反応 主系列星では中心で水素 核反応が起きている。 主系列星後、中心が十分 に高温、高密度になると3 α反応が起こり、Heから Cができる。 重い星では一番安定な鉄 に至るまで燃焼反応が起 こる。 鉄の芯がさらに重力収縮 すると、吸熱反応の鉄の 光分解が起こる。 巨星殻燃焼層、超新星爆 発時には中性子捕獲反 応が起こり、重元素が合 成される。 燃焼 過程 (燃料) 主な反応 最終 生 成物 H ppチェイン CNOサイクル 4He He 3α → 12C 12C+α → 16O 12C C 12C+12C 20Ne O-Mg 4n核が関わる多くの核反 応 56Ni Ni 56Ni 56Fe → 20Ne+α → 24Mg → 56Co+e++νe 温度 108K 0.15 0.2 1.5 16O 24Mg 56Fe 7 >15 - また、宇宙初期には陽子・中性 子衝突による核反応が起こる。 26 Chiba Univ. Astro. Lab. 宇宙初期の元素合成(BBN ) 9 A few MeV 〜 30keV でおこる ( a few x 0.1 sec 〜 103 sec :自由中性子の寿命) Z 9 宇宙膨張にともなう密度温度が減少する中での融合反応 9 A = 5,8 のギャップにより、Beより 重い元素は合成されない A=8 N A=5 27 Chiba Univ. Astro. Lab. 宇宙初期の陽子・中性子比 粒子安定化後の核種平衡 核反応過程 の初期条件 28 Chiba Univ. Astro. Lab. 星内核反応:水素燃焼過程 : 4H → He 核融合反応:pp-chain 炭素触媒反応:CNO cycle 29 Chiba Univ. Astro. Lab. 太陽で起きているppチェイン 太陽ではppチェインが主 に起きている。 太陽モデルで、各ppチェ インの反応率を求めると、 ¾ ¾ この中で、最も遅い反 応はp(p,e+νe)2H なので、この反応率 で全反応の反応率を 近似できる。 CNOサイクルでは 14N(p,γ)15O 30 Chiba Univ. Astro. Lab. 主系列星の水素燃焼 ppチェインとCNOサイクルではZの大きなCNOが寄与 するCNOサイクルの方がクーロン障壁が高く、高温にな らないと反応しない。しかし、β崩壊でのネックがあるも のの、CNOサイクルは効き始めると高速になるので、高 温ではCNOサイクルが主になる。 <σv>pp ∝T4 種族Ⅰで1.3Mo 種族Ⅱで約4Mo <σv>CNO ∝T17 31 Chiba Univ. Astro. Lab. 太陽ニュートリノの測定 米国サウスダコタ州 の炭坑でDavisらが 初めて測定した。 標準太陽モデルか ら期待できるニュー トリノ量の1/3程度 しか検出できなかっ た。 スーパーカミオカン デの測定で、Davis らの値を追認した。 Davisらの 観測対象 SKの観 測対象 Group 単位 実測値 予測値 Homestake SNU 2.56 8.5 SK 106/cm2/s 2.35 5.79 32 Chiba Univ. Astro. Lab. スーパーカミオカンデで太陽νの観測 到来方向の観測 季節変動の観測 スーパーカミオカンデ Webページより 33 Chiba Univ. Astro. Lab. 4 4 4 He燃焼過程 : He + He + He → 12 C 共鳴状態の不定性 中性子生成反応 : s-processに重要 反応率に不定性 34 Chiba Univ. Astro. Lab. 炭素、ネオン、酸素燃焼 (B2FHの α-process にかわる反応) z Carbon Burning z Neon Carbon Burning z Oxygen Burning 酸素燃焼では、高密度 の場合、電子捕獲が先 行する場合もある。 35 Chiba Univ. Astro. Lab. シリコン燃焼と核種平衡(NSE) z Si Burning ― 28Si + 28Si → 56Ni は起こらない ― Si、S 等の光分解 ― 放出された α、p、n による Mg 以上の核の準平衡 Nuclear Statistical Equilibrium (NSE) ― Mg ↔ Ne、C ↔ O、α ↔ C 等が平衡になり、全ての元素が 化学平衡に達する 36 Chiba Univ. Astro. Lab. 低温・高密度での核反応 低温、高密度では背景粒子のクーロン障壁 に対する寄与が無視できない。 スクリーニング 背景電子の寄与 ¾ イオン・電子プラズマの寄与 ¾ イオン格子(固体)としての寄与 ¾ 核のクーロン場が軌道電子に遮られる(スク リーニング)等電子・陽電子の制動輻射の場 合にも効く 37 Chiba Univ. Astro. Lab. 背景電子によるスクリーニング 一様な背景電子によるスク リーニング補正(Screening Enhancement Factor: f) σws=σ0f(E ) ここで、 f(E )=exp(πηUe/E ) 反応 Ue [keV] d+d 0.041 d+3He 0.119 3He+3He 0.293 p+6Li 0.186 p+12C 0.441 Α+12C 0.965 38 Chiba Univ. Astro. Lab. プラズマによるスクリーニング 高密度では、イオンプ ラズマによるスクリー ニングも無視できない。 背景イオン(Z2)によ り、入射粒子(正電 荷)はターゲットに近 づきやすくなる。 クーロンポテンシャルと熱エネルギーの 比がスクリーニングの強度を決めている。 39 Chiba Univ. Astro. Lab. プラズマの相関強度 クーロンポテンシャルと熱 エネルギーの比:Γによっ て、相関強度を見積もるこ とができる。 ¾ ¾ Γ=1:気相と液相の境界 Γ=135−180:液相と固 相の境界 プラズマのデバイ温度TD 程度になると、ガモフピー クのエネルギーを与える 距離と、粒子間距離の比 が重要となる。 4π Γ = Ze 3 2 1/ 3 n 1 kT n はプラズマの個数密度 hν D TD = k 40 Chiba Univ. Astro. Lab. 弱いスクリーニング 弱いスクリーニングで はクーロンポテンシャ ルVCをデバイポテン シャルVDで近似でき る。 Z1Z 2 e 2 − r / RD VD = e r RD = kT 4π e 2 ∑ Z i2 nZi i r≪RD(太陽中心では RD〜0.022nm)の とき、UD=VCーVDで スクリーニングポテン シャルを定義する。 nZiは電荷Zi種の平 均個数密度 41 Chiba Univ. Astro. Lab. 弱いスクリーニングのf 弱いスクリーニングの エンハンスメント項fw はUDから求めること ができる。 fw = e (U D / kT ) 太陽中心では、e2/RD=14.5/0.22 [eV]=66[eV]だから、7Be(p,γ)8B 反応ではfw〜1.2である。 42 Chiba Univ. Astro. Lab. 強いスクリーニング 強結合プラズマでのス クリーニング効果は、 プラズマ中のイオンの 2体分布関数をモンテ カルロ法で数値的に 得て、近似式を求める 必要がある。 詳しくはIchimaru,S. (1993) Rev. Mod. Phys. 65, 225. 43 Chiba Univ. Astro. Lab. 電子・陽電子の制動輻射 電子(陽電子を含む)は、質量が小さいので原子 核のクーロン場で大きな加速を受け、エネルギー を電磁波として放出する(制動輻射:X線) 核のクーロン場が軌道電子に遮られる(スクリー ニング)の程度により断面積が異なる。 スクリーニングの効果は、電子の運動エネルギー で規定される。 ¾ ¾ 電子の運動エネルギーTが小さい時、スクリーニング は無視できる。 電子の運動エネルギーが大きいとスクリーニングが効 く。 44 Chiba Univ. Astro. Lab. ピクノニュークリアー反応 固相に於いて、格子 間の距離が十分短く なっていると、格子振 動の結果核反応が起 こる場合がある。(ピク ノニュークリアー反応) 例え、温度が0度で あっても、格子の0点 振動で核反応が進む。 白色矮星等の高 密度星内の核反 応で考慮しなけれ ばならない。 45 Chiba Univ. Astro. Lab. 核反応率に対する安定性 スクリーニン グを考慮した 核反応による エネルギー生 成率と、 ニュートリノ冷 却率の兼ね 合いで、核反 応に対する安 定性が決まる。 C He O Strong Screening H Pycno-nuclear 46 Chiba Univ. Astro. Lab. 電子捕獲反応 低温・高密度では、原子 核の電子捕獲反応が核 燃焼反応に先行すること がある。(中質量星の進 化に影響) ¾ フェルミ順位の高い電子 が捕獲されやすいので、 単に平均分子量が変化す るだけでなく、発熱にも寄 与する。 Si燃焼後は核種平衡下 で、種々の電子捕獲分 岐が開く。(鉄コアへ至る 進化) 47 Chiba Univ. Astro. Lab. 中性子捕獲反応 z 鉄より重い元素は中性子捕獲により合成される • 荷電粒子はクーロンバリアーで反応できない • エネルギー的に損 • 中性子が存在する環境が必要 z 中性子捕獲とβ崩壊のタイムスケールの大小関係に応じて 二つの合成ルートがある y β崩壊のほうが速い:s-process – β崩壊に対して安定な領域の端で元素合成が進む – y 中性子捕獲のほうが速い:r-process – β崩壊に対して不安定な領域で元素合成が進む – 48 Chiba Univ. Astro. Lab. 太陽近傍の元素組成とr、s過程元素 太陽近傍組成 核図表 100 82 Z Stable Unstable limit of Tachibana 50 50 126 28 20 82 50 8 8 20 28 -5/s ~ 10 50 0 N 0.0 10 10 10.0 10 100 49 Chiba Univ. Astro. Lab. 高温でのp捕獲反応 CNOサイクルが高温になると、β崩壊がボ トルネックになる。 陽子捕獲反応が次々に起こり、早い中性子 捕獲反応の場合同様に、β崩壊が追いつく (十分早く起こる様になる)まで、陽子捕獲 が進む。 rpプロセス 50 Chiba Univ. Astro. Lab. 星内核反応の問題点 不定性が残る重要な反応率 12 16 ― 3α, C(α, γ) O ― Rauscher & Thieleman の標準反応率には factor 2 の不定性 Rauscher et al. ’00, At. Data Nucl. Data Tables 75, 1 対流によるミキシング の扱い ― semiconvection, overshooting 低温・高密度での反応率 ― 混合元素、液相・固相のスクリーニング ― ピクノ反応の温度依存性 51 Chiba Univ. Astro. Lab. ニュートリノ冷却 星内で生成されるニュートリノは中性子星の場合を除いて、 平均自由行程が星の半径を超えているため、星の内部構 造的には冷却過程として扱えるので、核反応による発熱 過程と同様に評価できる。 核反応に伴うニュートリノ(エネルギー)ロスは、反応によ る生成エネルギーの中に含め、冷却項としては取り扱わ ない。 星の進化で主に効くニュートリノ冷却過程には 以下の5つの過程がある。 ¾ フォトニュートリノ ¾ 電子対ニュートリノ ¾ プラズマニュートリノ ¾ ニュートリノ制動放射 ¾ シンクロトロン放射に伴う 52 Chiba Univ. Astro. Lab. ニュートリノ冷却とWSG理論 ニュートリノ冷却率はWeinbergSalam Grashow 理論(1967)以降、 荷電カレントの寄与で大幅に変わった。 添え字Vはベクト ル成分、Aは軸性 ベクトル成分 θWはワインバーグ角 ニュートリノのフレイ バー:n は3 53 Chiba Univ. Astro. Lab. ニュートリノ冷却過程ー1 ¾ フォトニュートリノ γ+e- → e-+ ν e + ν e Qphoto(erg cm-3 s-1) 詳しくはItoh et al. 1996, ApJS.102,411 54 Chiba Univ. Astro. Lab. ニュートリノ冷却過程ー2 ¾ 電子対ニュートリノ e-+e+ → ν e + ν e 電子対ニュートリノは十 分高温で、放射と電子・ 陽電子対の間に熱平衡 が成り立つ(T 〜1MeV) 時、電子・陽電子対が対 消滅する際に発生する。 Qpair(erg cm-3 s-1) Itoh et al. 1996, ApJS.102,411 55 Chiba Univ. Astro. Lab. ニュートリノ冷却過程ー3 ¾ プラズマニュートリノ過程 プラズモン → ν e +ν e プラズマニュートリノ過程では軸 性ベクトル成分の寄与は無視で きる。しかし、媒質中の電磁波を 量子化したプラズモンには縦波 (Longitudinal)成分と、横波 (Transverse)成分を分けて考 えなければならない。 横波の分散関係は密度 の高い極限で、 ω2=ωp2+k2c2 ωpはプラズマ振動数 エネルギー損失に主に寄与する のは横波の場合である。 56 Chiba Univ. Astro. Lab. ニュートリノ冷却過程ー3の続き ¾ プラズマニュートリノ過程 プラズモン → ν e +ν e |x|>0.7またはy<0ではfxy=1。 他の場合には 57 Chiba Univ. Astro. Lab. ニュートリノ冷却過程ー4 ¾ ニュートリノ制動放射 e− + ( Z , A) → e− + ( Z , A) +ν e +ν e 断面積は光子を放出する普 通の制動放射の断面積に ニュートリノ放出の確率P を掛 けたものになる。 2 1 Gm c E P= α h 3 mc 2 2 4 制動放射の場合同様にスクリーニングの影響がある。 詳しくは Itoh et al. 1996, ApJS.102,411 参 照のこと 58 Chiba Univ. Astro. Lab. 星の進化の上で重要なニュートリノ冷却過程 縮退芯では熱伝導 度が高いので、ほ ぼ等温になってお り、中心の高密度 領域でのニュートリ ノ冷却(プラズマ及 び制動放射)が芯 の温度を決めてい る。 Itoh, N. et al., ApJS, 1996, 102, 411. 59 Chiba Univ. Astro. Lab. 縮退コアの成長 コアが縮退すると、 中心部はプラズマ ニュートリノ過程で 冷やされて行く。 その後の成長はコ アの大きさだけで 決まり、全質量に はよらない。 COコア Heコア Pacynski; Acta Astron.(1970) 60
© Copyright 2024 Paperzz