第4回

Chiba Univ.
Astro. Lab.
天体観測の基礎
宇宙物理学Ⅱ−3
星の明るさと等級 (Magnitude)
宮路茂樹
大学院理学研究科
[email protected]
宇宙物理Ⅱ
1
Chiba Univ.
Astro. Lab.
ハーシェルの等級
紀元前2世紀にギリシアのヒッパルコスが目で見える星の明るさを1等から6等
までの6グループに分けた:肉眼で見える星は1−6等星
その後、1830年にジョン・ハーシェル、1856年ポグソンが定式化した。
ハーシェルの方法
口径Daの望遠鏡で明るさAの星を、Dbの望遠鏡で明るさBの星を見
た時に同じ明るさであったとすると
A×Da2 = B×Db2 したがって、 A / B =Db2 /Da2
等級が1等上がると明るさは約 (1/2.5)倍に落ちることを見出した。
星像
口径:Da
=
宇宙物理Ⅱ
口径:Db
2
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見かけ等級 (apparent magnitude)
地上で観測したときの等級を見か
けの等級(実視等級)という。
F(λ)
logF(λ)
m(λ)
見かけ等級 m の定義
m=−2.5 log10( F / Fo )
F=対象天体のフラックス
log Fo(λ)
λ
Fo=基準天体のフラックス
=見かけ等級 0 のフラックス
=αLyrae(ベガ)のフラックス(に近い)
宇宙物理Ⅱ
3
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等級の基準星
「αLyr (A0型) のフラックス = 0等 」
と1922年のIAU総会で定義
フラックスとは「星の方向に垂直な単位面積を単位
時間に流れるエネルギー流束」
Fν
Fν
(1) 0等星のフラックスはF0
ν
(2) 単位波長当たりのエネルギー:Fλ
(3) 単位周波数当たり: Fν
1Jy = 10-26WHz−2m−2
Fλ
Fλ
λ
F(mag=0,ν)
バ ンド
U
B
V
Rc
Ic
J
H
K
L
M
N Q
λ(µ)
0.366 0.438 0.545 0.641 0.798 1.22 1.63 2.19 3.45 4.8 10.6 21
Fo(Jy) 1790 4063 3636 3064 2416 1590 1020 640 285 170 36 9.4
Bessell, Castelli,Plez 1998
宇宙物理Ⅱ
Rieke,Lebofski,Low 1985
4
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規準星αLyr からの輻射
αLyr のスペクトルは10000Kの黒体輻射に近い。
しかし、次の2点で 黒体輻射からずれる。
IRASが採用した、Fo(ν)を近似する黒体フラックスと比較すると。
FIRAS=1.57×10−16 B(10,000K,ν)=2.09 10^3 [ x 3 /(exp x - 1) ] Jy
x= hν/kT=hc/kλT =1.4388/ λ(µm)(T/104K)
1) UBVバンドでずれが大きい。後で説明する。
2) 下に示すように遠赤外でフラックス超過が見られる。
(ダスト円盤の存在)
バ ンド
λ(µ)
Fo(Jy)
Vega
FIRAS
U
0.366
1790
1736
2420
B
0.438
4063
3941
2887
V
0.545
3636
3527
2951
Rc
0.641
3064
2972
2764
Ic
0.798
2416
2343
2397
宇宙物理Ⅱ
12
25
60
100
41.5 11.0 9.5 7.7
28.3 6.73 1.19 0.43
5
4
B V
log F(ν)
(Jy)
R I
U
3
J
H
Fo(Vega)
F(IRAS)
K
L
2
1
0
-0.5
0
0.5
1
1.5 log λ(µ)
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距離の推定
„
天文単位(地球の公転半径)
¾
¾
„
火星等の惑星を三角測量
金星などをレーダー測量
恒星
¾
¾
¾
¾
年周視差
地上観測では0.1秒程度
ヒッパルコス衛星の観測では1mas程度まで
ヒアデス星団の運動を測定:星団視差
主系列星の明るさで測定
変光星の光度・周期関係
1天文単位(AU) = 1.5×1011m
1パーセック(pc) = 2.1×105AU = 3.1×1016m
宇宙物理Ⅱ
7
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星団視差
„
„
„
„
星団内の各星の運動を視線方
向はスペクトル線の視線速度
で、視線と垂直方向は固有運
動(右図)で測定する。
星団は団体で有る方向に運動
しているので、固有運動には
収束点(向点)が存在する。
実際には収束点方向に平行運
動しているのだから、視線速度
と、固有運動の成分比は収束
点方向と一致するはずである。
こうして、ヒアデス星団までの
距離が44.8±0.8pcと決定
された。
宇宙物理Ⅱ
8
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絶対等級 (absolute magnitude)
絶対等級= 天体を距離10pcに置いたときの等級
記号は、見かけ等級: V、 K または、 mV、mK
絶対等級: MV,MK
距離Dの星を10pcに置いたときの等級
F=L/4πD2
F10pc=L/4π(10pc)2
m=−2.5log (F/Fo)
M=−2.5log (F10pc/Fo)
m-M=−2.5log (F/Fo)+2.5log (F10/Fo)
= 2.5 log(D/10pc)2 = 5 log(D/10pc)
m = M + 5 log(D/10pc)
距離指数( Distance Modulus )= (m−M)o =5 log(D/10pc)
途中で光が吸収されると、見かけ等級mはA等大きくなるから、
m=M+5log(D/10pc)+A
宇宙物理Ⅱ
9
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輻射等級
見かけ輻射等級 Apparent Bolometric Magnitude :
mBOL=−2.5 log [∫F(λ)dλ / FoBOL]=−2.5 log (F / FoBOL)
FoBOL : mV=0のF3Vの星の全フラックス
=2.5 10−8 W/m2
通常の等級はA0V星(αLyr)で決めるが、ここだけF3V星が登
場するのは、総放射量が同じ星を比べたときに、写真等級(普通
Vバンド)で最も明るい星がF3V星である為(輻射補正を参照)。
絶対輻射等級 Absolute Bolometric Magnitude
MBOLは10pcから見た輻射等級。
宇宙物理Ⅱ
10
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輻射等級ー2
見かけ輻射等級
絶対輻射等級
総フラックス F=∫Fλdλ と基準フラック
ス Fo との比を等級にする。
距離=10pcに置いたときの見
かけ輻射等級。
基準星はV(0.55µ)=0のF3V型星。
この星はB(0.44µ)=0.38,
R(0.71µ)=-0.36 である。
Fλ
全波長で見かけ等級=0(αLyr)のス
ペクトル(青色)との比較を右に示す。
0
宇宙物理Ⅱ
V
1
λ(µ)
2
11
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測光観測
眼視等級
Hipparcos catalogue 前2世紀
1等=最も明るい星。
Pogson
1856
6等=目で見える最も暗い星。
ma−mb=−2.5log(Ea/Eb)
m=等級
E=入射エネルギー
口径 D m の望遠鏡を覗いた時、何等まで見えるか?
暗い晩の人間の瞳孔径7㎜で6等、D mの口径に入射した全ての光量が
測定できるとすると、
ma = mb−2.5log(7mm/D m)2 =6+2.5log(D2106/49)
=16.8+ 5logD
写真システム 北極星の周りの96星(周極星)のセットが標準星。 (IAU1922)
Pg : photographic magnitude
0.43 µm
Pv : photovisual magnitude
0.54 µm
宇宙物理Ⅱ
12
UBVシステム(最も広く使われていた)
H.L.Johnson and W.W.Morgan, 1953, Ap.J. 117, 313-352
フィルター系
中心波長
U Corning 3384
350
B Corrning 5030 + Schott GG13
+
V Corning 9863
1P21 フォトマル 430 nm
(RCA)
透過率
UBV Response
CurveとA0型星
のスペクトル (
赤色の破線)
nm
550 nm
A0星
U
3,000
B
4,000
V
5,000
λ(A)
6,000
UBVシステムの標準星
ゼロ等の決定 (次ページの
V
αLyr
)
B-V Sp.
V
B-V
Sp.
0.03 0.00
A0V
γUMa 2.45
0.00
A0V
109 Vir 3.75 -0.01
A0V
α CrB 2.23 -0.02
A0V
γ Oph 3.72
A0V
HR 3314 3.89 -0.01
A0V
0.04
B−V=-2.5 log (B出力/V出力)+1.040、
U−B=-2.5 log (U出力/B出力)- 1.120
A0V 6星のカラーの平均値=U−B=B−V=0
UBV Primary Standard Stars
V
α Ari
B-V
(次ページの
Sp.
)
V
B-V
Sp.
2.00
1.151 K2III
HR 875
5.17
0.084
A1V
β Cnc 3.52
1.480 K4III
η Hya
4.30
-0.185
B3V
β Lib
2.62
-0.111 B8V
α Ser
2.66
1.165
K2III
ε CrB
4.15
1.227 K3III
τ Her
3.89
-0.155
B5IV
HR8832
5.57
1.010
K3V
10 Lac 4.88
-0.203 O9V
UBV 標準星
H.Johnson in Basic Astronomical Data 1963
0
V
1
K2III
2
K2III
B8V
3
K4III
B5IV
4
K3III
B3V
5
O9V
A1V
6
−0.4
0
B-V
K5V
1
1.6
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標準星と色補正
観測システム毎に感度曲線が異なる
感度
A
B
A:標準 (例えばJohnson)
B:例えばハワイ
赤い星 (長波長側が強い)
青い星 (短波長側が強い)
λA
λB
λ
図の赤い星と青い星は、Aシステムでは同じ等級だが、Bシステムでは異なる
等級となる。
Bシステムの観測値をA(標準)システムでの値に直す(色補正)必要がある。
宇宙物理Ⅱ
16
標準星と色補正(2)
mA−mB
感度
A
B
星1
星1
星1
星2
β
星2
λ
λA
λB
mA=mB+α(B−V)A+β
0
1
カラー(B−V)A
普通、1次式を仮定して補正する。
αを決めるためには、 (B−V)Aが青(≒0)と赤(≒1.5)の両方欲しい。
=> 標準星がO,B,A型(青星)とK型(赤星)から選ばれている。
UBVシステムの拡張
RIJKLMN
Johnson/Mitchell 1962 Comm.Lunar Plantary Lab.1,73
Johnson et al. 1966 Comm.Lunar Plantary Lab.4,99
R
I
0.7
0.9
バンド
λc
J
K
L
M
N
1.25
2.2
3.4
4.9
10.2
Cousins 1976, Mem.RAS 81, 25
Rc
Ic
0.638
0.797
バンド
λc
H
1.63
実際の観測にはもっと大きな標準星表を使う。
UBVRcIc
JHK
Landolt 1992、Astron.J. 104,340
Elias et al. 1982、AJ, 87, 1029.
Q
20.0
その他のシステム(1) Stromgren 4-color system
V
透過率
バルマー不連続、
金属量、温度がよ
り正確に測れる。
B
U
uvby
A0星
A−F型星向き
u: 完全にバルマージャンプ
より短波長側。
u
b: メタル吸収の影響をB
ほどは受けない。
0.3
v
0.4
b
y
0.5
0.6
m1=(v−b)−(b−y) :
金属量
λ(µ)
y: 基本的にはVと同じで、
巾が狭い。
c1=(u−v)−(v−y) : バルマー不連続
b―y : 温度
その他のシステム(2) DDO system
主にG,K型星の観測に用いられる。
McClure 1976 AJ 81、182
B
U
35フィルター
38フィルター
透過率
4−colorのu
V
vより金属吸収によい
A0星
48
41フィルター
CNバンド測定
45
38 41
35
42,45,48
42
連続光
0.3
0.4
0.5
(35−38)カラー: バルマージャンプ
(38−42)カラー: 金属量
(42−45)カラーと(45−48)カラー: 重力と温度
0.6
λ(µ)
その他のシステム(3) Thuan-Gunn システム
Thuan/Gunn1976 PASP 88, 543
市街地の水銀線と夜光の[OI]線を避ける事ができる。
B
透過率
U
V
A0星
基準星は。
CD+174708
(G型矮星)
で、この星の
g=9.50
g-r=u-v=v-g=0
と独特の定義。
u
v
g
r
0.3
0.4
0.5
0.6 λ(µ)0.7
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黒体輻射
温度T、大きさL3=Vの箱の中の熱平衡輻射の強度 B(ν、T)
n(ν, Ω)=周波数ν、進行方向Ωの光子の数密度、つまり、
n(ν, Ω)dνdΩdV=体積dV,周波数dν、方向dΩ(立体角)の範
囲にある光子の数とすると、
B(ν,T)=c・hν・n(ν, Ω) である。
光子密度 n は、量子状態の密度Dと各量子状
態にある光子数s(p)の掛け算で決まる。
n(ν、Ω)dνdΩdV
∆p
=D(ν、Ω)dνdΩdV・<s(p)>=光子数
∆x
p
x
以下では、まず<s(p)>、次にD(p、Ω)を調べる。
フォトンの量子状態は∆p3∆x 3= h3
毎に2(偏光)である。
宇宙物理Ⅱ
22
<s(p)>
まず、 与えられた量子状態に存在する光子の数<s>を調べよう。
cp=hν : 運動量pの光子一つのエネルギー
Es=shν: 光子s個のエネルギー
Ps : その量子状態に光子がs個存在する確率
すると、<s>=∑s・Ps
熱平衡のギブス分布は、Ps∝ exp(-Es/kT)=exp (ーshν/kT)
となるので、ΣPn=1の規格化を課すと、
⎛ shν ⎞
exp⎜ −
⎟
kT
⎝
⎠
Ps =
⎡
⎛ hν ⎞ ⎛ 2hν
+
1
exp
⎜−
⎟ + ⎜−
⎢
⎝ kT ⎠ ⎝ kT
⎣
⎤
⎞
+
K
⎟
⎥
⎠
⎦
⎤
⎡
⎛ hν ⎞
⎛ 2hν ⎞
⎛ 3hν ⎞
K
1
exp
2
exp
3
exp
−
+
−
+
−
+
⎜
⎟
⎜
⎟
⎜
⎟
⎥
⎢
kT
kT
kT
⎝
⎠
⎝
⎠
⎝
⎠
⎦
s = ∑ s ⋅ Ps = ⎣
⎤
⎡
⎛ hν ⎞
⎛ 2hν ⎞
⎛ 3hν ⎞
K
1
exp
exp
exp
+
−
+
−
+
−
+
⎜
⎟
⎜
⎟
⎜
⎟
⎥
⎢
⎝ kT ⎠
⎝ kT ⎠
⎝ kT ⎠
⎦
⎣
この式を計算するため、x=exp(-hν/kT) とおく。 exp(-nhν/kT)=xn なので、
x + 2 x 2 + 3x 3 + ...
x
1
=
=
=
n = ∑ Pn =
2
−1
1 + x + x + ...
1− x x −1
(計算には下の二式を使った)
x + 2 x 2 + 3 x 3 + ...
= x + x 2 + x 3 + x 4 + ...
1
⎛ hν
exp⎜
⎝ kT
⎞
⎟ −1
⎠
x + x 2 + x 3 + ... =
1
(1 − x)
+ x 2 + x 3 + x 4 + ...
+ x 3 + x 4 + ...
+ ...
= x + x 2 + x 3 + ... + x( x + x 2 + x 3 + ...) + x 2 ( x + 2 x 2 + 3 x 3 + ...) + ...
= (1 + x + x 2 + x 3 + ...)( x + x 2 + x 3 + ...)
x
= x(1 + x + x 2 + x 3 + ...) 2 =
(1 − x) 2
こうして振動数νの光子の量子状態1つに存在する光子数の平均が得られた。
<s> = 1/ [ exp (hν/kT)−1]
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Astro. Lab.
量子密度 D(ν、Ω)
次に、大きさL3=Vの箱の中の光子の量子状態密度 D(p, Ω)を考えよう。
一辺Lの箱の中の定常波と考えると、量子状態はΔ(L/λx)(L/λy)(L/λz)
= 1 毎に2つ(光子の偏光があるため)存在する。
したがって、箱の中の量子状態の数は、
ΔN=2・Δ{(L/λx)(L/λy)(L/λz)}
=(2L3Δ{(1/λx)(1/λy)(1/λz)}
=(2V/c3)・∆{(c/λx)(c/λy)(c/λz)}
=(2V/c3) (∆ν)3= (2V/c3)ν2dΩdν
D(ν、Ω)=∆N/(V・∆ν・∆Ω)=2ν2/c3
宇宙物理Ⅱ
25
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Astro. Lab.
黒体輻射強度 B(ν、T)
D(ν、Ω)と<s(ν、T)>より、
B (ν , T ) = c ⋅ hν ⋅ D (ν , Ω ) ⋅ s (ν , T )
2ν 2
= ch ν 3
c
B(ν、Ω、T)=c・hν・ n(ν、Ω、T)
=c・hν・ D(ν、Ω)・ <s(ν、T)>
を計算して、
2 hν 3
=
c2
1
⎛ hν
exp ⎜
⎝ kT
⎞
⎟ −1
⎠
1
⎛ hν ⎞
exp ⎜
⎟ −1
⎝ kT ⎠
黒体輻射強度(Intensity)B(ν、T)は、温度Tの熱平衡輻射が、単位面積を通っ
て、その法線方向に単位立体角、単位時間、単位振動数当たりに流れるエネ
ルギー量とも言える。
宇宙物理Ⅱ
26
レーリー・ジーンズ近似 (hν/kT<<1)
2hν3
1
2hν3 kT
ν 2 2kT
≈ 2
B(T ,ν ) = 2
= 2kT 2 = 2
c exp⎛⎜ hν ⎞⎟ − 1
c hν
λ
c
⎝ kT ⎠
2hc 2
1
2hc 2 λkT 2ckT
= 4
≈ 5
B(T ,λ ) = 5
ch
λ
λ
λ exp⎛⎜ ch ⎞⎟ − 1
⎝ λkT ⎠
ウイーン近似
B(T ,ν ) ≈
(hν/kT>>1)
2 hν 3
⎛ hν ⎞
exp
⎜−
⎟
2
⎝ kT ⎠
c
2hc 2
⎛ ch ⎞
B(T ,λ ) ≈ 5 exp⎜ −
⎟
⎝ λkT ⎠
λ
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黒体輻射のエネルギー密度 U
エネルギー密度Uは、U=∬ε(ν)n(Ω、ν)dνdΩから、
U = 4πB/c
= ( 4π/c)(σ/π)T4
= ( 4 σ /c)T4
= a T4
a = 8π5k4/15c3h3=radiation density constant
= 7.5659 10-16 J/m3/K4
Stefan・Boltzmannの法則
E = σT4
σ:Stefan・Boltzmann constant
5.67 10−8 W/m2/K4
宇宙物理Ⅱ
28
Chiba Univ.
Astro. Lab.
有効温度
I=B(T)
黒体の壁からのフラックス
θ
= ∫B(T)cosθdΩ
= πB(T)
= σT4
L=∫σT4dS
星の表面からの輻射は黒体
とは異なるが、星の表面積S
と光度LからL=SσT4となるT
を求め、星の有効温度Teと
する。
宇宙物理Ⅱ
29
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Astro. Lab.
カラー
F
フラックスの絶対値⇒等級
フラックスの勾配⇒カラー
勾配を指定する方法は幾つも考えられる:
単純にはdF( λ )/dλ、dF( ν )/dν
近接した2波長λ1 、λ2でのフラックスの比、
F( λ1 )/ F( λ2 )を用いてもよい。
λ1 λ2
λ
天文では等級の差、すなわちフラックス比の対数表示(カラー)を採用している。
カラー( λ1 、λ2 )=m(λ1)−m(λ2)
=−2.5 log[F( λ1 )/ F( λ2 )]+2.5 log[Fo( λ1 )/ Fo( λ2 )]
宇宙物理Ⅱ
30
カラーの表現
約束 カラー m(λ1)−m(λ2) では、λ1<λ2
天文でよく使われるバンド:
B=m(0.44µm)
V=m(0.55、µm)
Fo(B)=4063Jy
Fo(V)=3636Jy
1Jy=10-26W/m2/Hz
バンド
フラックス
天体
F(B
)
(Jy)
F(V)
B
カラー
V
B−V
温度
色
(Jy)
シリウス
1.493 ×104 1.356 ×104
−1.44
0.01
9400 白
太陽
1.102×1014 1.804×1014 −26.10 −26.75
0.65
5780 黄
1.50
3370 赤
ベテルギウス
663
2380
一般に、天体の温度が高いと
(1) 短波長側のフラックスが大きい。
(2) 短波長の等級が小さい。
(3) カラーが小さい
−1.43
1.95
0.45
Chiba Univ.
Astro. Lab.
黒体輻射のカラーと温度
黒体輻射のカラー
[B−V]BB=-2.5 log[B(T,B )/ B(T,V )] +2.5 log[Fo(B ) /Fo(V)]
BはBバンドで測った絶対等級(B等級)
Fo,B を ν表示で計算すると、
Fo(ν=B )=4063Jy,Fo(ν=V)=3636 Jy
B(T, ν)=1.3338 10 7 T(K) 3 [ X3 / (expX- 1) ] Jy
X=1.4388/λ(µ)/T4
T4 =T/10,000 (K)
λ(B ) =0.44 λ(V ) =0.55
従って、 [B−V ]BB=−2.5 log[f(XB)/f(XV)]+2.5 log(4063/3636)
f(X)=X3/[exp(X)−1]、 XB=1.4388/ 0.44 T4、
XV=1.4388/ 0.55 T4
[B−V ]BB=-0.83+ 2.5 log{[exp(3.270/T4)- 1] / [exp(2.616/T4)- 1]}
宇宙物理Ⅱ
32
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Astro. Lab.
U−Bカラーと2色の特徴
Uバンド(λ=0.36µm)では、
Fo(ν=U )=1790Jy、 XU=1.4388/ 0.36 /T4
[U−B]BB=ー2.5 log[f(XU)/f(XB)]+2.5 log(4063/1790)
=0.890+ 2.5 log{[exp(3.997/T4)- 1] / [exp(3.270/T4)- 1]}
T→∞では、 BνÆ2kT(ν/c)2=2kT/λ2 なので、(レーリージーンズ近似)
[B-V]BB=-2.5log10(0.55/0.44)2+2.5log10(4063/3636)=-0.484+0.121=-0.363
[U-B]BB= -2.5log10(0.44/0.36)2+2.5log10(1790/4063)=-0.436-0.890=-1.326
このように、高温極限ではカラーは−∞ではなく、有限の値でとまる。
T→0では、 BνÆ (2hν3/c2)exp(-hν/kT) なので、(ウイーン近似)
[B-V]BB=-2.5log10(0.55/0.44)3−2.5log10[-0.654/T4]+2.5log10(4063/3636)
[U-B]BB=-2.5log10(0.44/0.36)3−2.5log10[-0.727/T4]+2.5log10(1790/4063)
[B-V]BBも[U-B]BBも∞に発散する。
宇宙物理Ⅱ
33
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二色図 Two Color Diagram
二つのカラーを縦軸、横軸にしたグラフを二色図と呼ぶ。その大きな特徴は、減
光が無いとき、2色図は距離に依らないことである。
[U-B]対[B-V]二色図
B0V
左図ではU-Bの上が
マイナスになっている。
-1
天文の習慣(明るいも
U-B
のほど等級が小さい)
の1つである。
B-Vは黒体輻射と似
て、温度が下がると大
きくなる。。
U-Bは1000Kから7
000Kの間は温度が
下がるとマイナス方
向に小さくなる。
30,000
10,000
6,000
0
A0V
4,000
G0V
黒体輻射
1
主系列星
0
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B-V
3,000
M0V
1
2
34
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モデル t=107 yr Z=0.02 (Bertelli 1994)
Astron.Quan. 2002 主系列星
K-M型主系列星
K-M型赤色巨星
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35
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スペクトル型
天体からの吸収線や輝線の特徴により、スペクトル型を分類
(ハーバード式分類)
„ P:禁制線や水素の輝線
„ O:電離ヘリウム、高電離酸素、窒素、炭素
„ B:水素、中性ヘリウムが最強
„ A:水素が最強、電離金属
„ F:水素、カルシウムH,K、金属
„ G:H,K、金属
„ K:H,K、金属、紫外線強度が弱い
„ M:酸化チタンの吸収線が暗帯
„ R,N(または合わせてC):炭素、シアンの暗帯
„ S:酸化ジルコニウムの暗帯
O−B−A−F−G−K−M
S
宇宙物理Ⅱ
R−N
36
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各スペクトル型の恒星
宇宙物理Ⅱ
37
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色等級図 color magnitude diagram
縦軸に等級、横軸にカラーのグ
ラフを色等級図と呼ぶ。
等級
縦軸:log(L/Lo), logF
横軸:log[F(ν1)/F(ν2)]、
有効温度Te
カラー
などをとる場合も多い。
HR図と呼ぶこともある。
縦軸が示量性、横軸が示強性なので、天体の大きさ(R,L,M,V
など)と強度(T,ρ,vなど)を論じるには都合がよい。
二色図が示強性のカラーだけの図でしたがって距離に依存し
ないのに対し、色等級図は縦軸が示量性で距離に依存
宇宙物理Ⅱ
38
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色等級図の例
最初の色等級図(Russell)
縦軸=絶対等級
横軸=スペクトル型
宇宙物理Ⅱ
39
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太陽近傍星の色等級図
ヒッパルコス衛星によって距離が決
定された12万個の星の色等級図
右下から斜めに延びるのが主系列。
主系列の中ほどから上に赤色巨星
枝が立ち上がっている。
この赤色巨星枝は老齢の小質量星
であることが分かる。枝分かれ点が
ターンオフである。M=-1、V-I=1付近
の塊が
ターンオフの先に主系列が伸びてい
るのは星形成が継続して続いた証拠
である。
宇宙物理Ⅱ
40
バーデの窓(Baade’s Window)と太陽近傍星のレッドクランプ星
バーデの窓
縦軸は見かけ等級
I
太陽近傍
縦軸は絶対等級
MI
バーデの窓のレッドクランプは太陽近傍よりも赤い。これは平均メタル量が高い
ためと考えられる。両者の等級差が距離指標(Distance Modulus)である。
Paczynski/Stanek 1998 ApJ 494, L219-222
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視野方向による違い
銀極(左)と銀河中心(右)の2方向での赤外色等級図
銀極J-K=0.4で垂直に立ち上がるのはTHICK DISKに属する色々な距離の
レッドクランプ星。
銀河中心方向の色等級図は解釈が難しい。
(0, 0) 10' 16965
4
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
5
6
7
8
9
K
K
b=90 60' 3664 stars
10
11
12
13
14
15
16
-1
-0.5
0
0.5 J-K
1
1.5
2
2.5
3
宇宙物理Ⅱ
-2
-1
0
1
2
3 J-K 4
5
6
7
8
9
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輻射補正
F= ∫F(λ)dλ=共通
logλF(λ)
1
Vバンド
B型
A型
B型
暗い
F
型
A型 やや明るい
F型
明るい
M型
暗い
M
型
0
−1
−0.5
V
0
logλ(µ)
同じ総フラックス同士でV等級をくらべると、F3V型星が最も明るい。
そこで、V=0のF3V星の輻射等級mBOL=0と定めた。
すると、V=0の星のmBOLは全て0より小となる。mBOL(V=0)=BCと呼ぶ。
宇宙物理Ⅱ
43
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輻射補正 Bolometric Correction
定義 :
mBOL = mV+BC
mBOL=見かけ輻射等級 Apparent Bolometric Magnitude
=-2.5log[∫F(λ)dλ/FoBOL]=-2.5log(F/FoBOL)
mV=見かけV等級 Apparent V Magnitude
FoBOL : mV=0のF3Vの星の全フラックス=2.5 10−8 W/m2
BCは、mV とカラー[B−V](か温度T程度)の情報しかない天体の全フ
ラックスを推定するために使用される。
黒体輻射に対する輻射補正BC
mBOL=mv+BC
mBOL=-2.5log[∫F(ν) dν/FoBOL]、 mv= -2.5log[Fv(ν) /FoV]
ただし、 F(ν) =BB(ν、T) ∫F(ν) dν =(σ/π)T4
Fv(ν) =3636Jy、 FoBOL =2.5 10−8 W/m2
宇宙物理Ⅱ
44
BC=mBOL−mv
= -2.5log [∫F(ν) dν/FoBOL] + 2.5 log [Fv(ν) /FoV] から
9.096
2.5 × 10−8
2.388 × 1020
= 2.5 log10
BC = 2.5 log10
⎡
⎛ 2.616 ⎞ 1.805 × 108T 4 × 3636
⎛ 2.616 ⎞ ⎤
4
⎟⎟ − 1
exp⎜⎜
⎟⎟ − 1⎥
T44 ⎢exp⎜⎜
⎝ T4 ⎠
⎝ T4 ⎠ ⎦
⎣
矮星のTeを上式に代入して求めたBC(BB)を加えた表は以下のようになる。
Sp
Te
O5
B0
A0
F0
G0
K0
42,000 30,000 9,790 7,300 5,940 5,150
M0
M5
3,840 3,170
BC (star)
-4.4
-3.16
-0.30 -0.09
-0.18
-0.31
-1.38
-2.73
BC(BB)
-3.68 -2.73
-0.34 -0.12
-0.14
-0.26
-0.89
-1.64
M型、O型で 黒体輻射より大きい補正が必要とされるのは、それぞれのスペ
クトルピーク付近(M型では近赤外、O型では紫外領域)でBBより大きいフ
ラックスを持つことを示唆している。
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有効温度に対する輻射補正
輻射補正
BC(star)
BC(BB)
0
-1
BC
-2
-3
-4
-5
3.5 3.6 3.7 3.8 3.9
4
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4.1 4.2 4.3 4.4 4.5 4.6 4.7
log T
46