ATP試薬の保管・使用方法

2009/09/08
技術報告書
ニッタ株式会社
事業開発センター
モニタリングシステムG
1. 題名:ATP検出チューブの運用方法(保管方法、使用方法の検証)
2. 目的
ATPチューブの劣化要因を調査し、適切な保管方法について検証するとともに、RLUの再現性
を確保するための最適なる使用方法を提案する。
3. 実験内容
(1)サンプル:牛乳を秤量ピペットで30μL一定量秤量し、チップ管に注入。
(2) 計測条件:反応開始から60秒後に測定開始。3サンプルの平均値を採用。
(3) 測定環境:室温25.4℃、湿度40%
(4)試験パラメーター:
①温度6℃(冷蔵庫での保管温度)
、25℃、35℃以上*の3水準
・劣化試験:
②光照射有/無(25℃と35℃*についてアルミホイルで遮光有/無)
条件①、②で70時間保管しRLU値を計測
・使用運用試験:③拭取り~反応開始時間の検証
④冷蔵庫からの取り出し時間と発光量の関係
*25℃は蛍光灯、35℃以上の条件は直射日光で計測
4・結果および考察
劣化試験の結果(実験項目①、②)の結果を図1に示す。Hygineが推奨する冷蔵庫で保管
200
150.0
発光量 RLU
150
169.0
159.7
100
61.0
50
0.0
0
図1
6℃
1
25℃
2
25℃
3
35℃
4
35℃
5
(冷蔵庫)
光照射
遮光
光照射
遮光
保管環境によるRLUの変化。保管期間は各条件下で70時間
保管後のRLU値を計測。
したサンプルのRLU値は150であった。冷蔵庫で保管した条件と比較した時、遮光した条件した条
件では保管温度に関わらず、RLU値は同等である。これに対して光を照射した場合、25℃では遮光
したときと比較して60%の減少は見られた。ここでは室内の蛍光灯でも、RLU値は減少するため室
内で保管する場合でも、光を遮光する必要がある。さらに直射日光を照射した場合では、発光はまった
く検出されない。しかしながらこの条件でも、アルミ箔で光を遮光すれば、RLUの減少は見られない
ことから、チップ管の劣化メカニズムとして、光の影響が支配的であることが考えられる。したがって、
チップ保管の保管環境としては、温度の影響より、むしろ、光を照射しないことが重要である。
200
発光量 RLU
150
100
50
0
0
1
2
3
4
5
放置時間(時間)
図2
放置時間と発光量の関係。放置時間は拭取り時間を開始
時間とし、反応するまでの時間。
200
発光量 RLU
150
100
50
直後
10分放置
0
0
50
100
150
200
250
300
反応開始からの経過時間(秒)
図3
冷蔵庫から取り出し時間の影響。取り出し直後と10分放置
した時の発光量と反応開始からの経過時間の関係を比較。
次に、試験③拭取り~反応時間の影響についての結果を図2に示す。放置時間が1時間の場合、0時
間と変化は見られなかった。しかしながら4時間程度放置した場合、発光量は17%減少した。現状、
減少するメカニズムについては明らかではないが、(1時間以上)長時間放置した場合の影響は無視で
きない。したがって、拭取り後1時間以内にATP試験をすることを推奨する。
図 3 に試験④:冷蔵庫からの取り出し時間の影響を示す。冷蔵庫から取り出した直後では、反応液は
冷えた状態になっている。この状態で試験をした場合、発光量は10分放置した場合と比較して16%
程度減少する。10分放置したサンプルに関して言えば、発光量は60秒程度までやや増加傾向を示す
が、比較的安定した値を示す。一方、冷蔵庫から取り出した直後の場合、発光量は120秒まで増加傾
向にあり、その後、発光値は安定する。発光量が安定した後では、両者の条件では発光量の差は見られ
ない。このことから、発光量を安定化させるためには、測定環境下でチップを放置することで、あらか
じめ反応液を測定環境温度にしておく必要がある。本試験の結果から言えば、安定した発光量を得るた
めには少なくとも2分程度放置時間を推奨したい。
4. 結論
(1)
保管方法としては、光を十分に遮断する必要がある。70時間、直射日光や室温環境
に放置しても、遮光した環境にすれば劣化しないことから、光を遮断するような梱包形
態であれば通常の運搬方法でも適用可能である。
(2)
拭取り~測定時間を1時間以上にした場合、発光量は減少する可能性があるため、拭
取り~測定時間の時間管理する必要がある。できれば1時間以内にすることを推奨する。
(3)
冷蔵庫からチップを取り出す際、チップをあらかじめ測定環境下に放置し、反応液を
測定環境の温度にする必要がある。本試験によれば2分以上の放置時間を推奨する。