提供:三協国際特許事務所 http://www.sankyo-pat.gr.jp 判 例 研 究 資 料 2003.6.12 *事 電気部 平田 晴洋 件;H15. 4.22 東京高裁判決 実用新案権 行政訴訟事件 平成13年(行ケ)第412号 審決取消請求事件 「ストレッチフィルムによるトレー包装体」事件 *当事者;原告=全国農業協同組合連合会 被告=個人出願人 *結 論;審決取消・・・ 「無効審判の請求は成り立たない」とした特許庁の審決を取り消す。 *特許庁における手続きの経緯 昭和54年 4月 4日 実用新案登録出願(実願昭59−161589号) (前特許出願日援用) [原特許出願=特願昭 54−41459 号「ストレッチフィルムによるトレー盛付品の包装方法」の変更出願] 昭和63年 9月 8日 実用新案出願公告(実公昭63−33829号) ◇公決に至るまでに2度の拒絶理由通知に応答 昭和63年12月 6日 異議申立(個人名) 平成 1年 7月18日 公告後補正・・・「全周に亘って切断」を「抵抗線により全周に亘って切断」と減縮 平成 2年 6月20日 登録異議の決定及び登録査定 平成 2年11月14日 設定登録(登録実用新案第1839235号) 平成 6年 存続期間の満了による実用新案権の消滅 4月 4日 平成12年 7月11日 (原告による)無効審判の請求 平成13年 8月 審決(請求不成立) 1日 1 掲載日 2003.7.25 提供:三協国際特許事務所 http://www.sankyo-pat.gr.jp 1.本件考案の概要 (実用新案登録請求の範囲の分節) 構成①;平坦な底板 15a と,底板の周囲から上方に拡開傾斜して一体に延長された 周壁 15b と,周壁の上部外側面全周に形成された接着剤塗布面 15c とを有し, 構成②;未包装状態で多数個を積み重ねたとき,各接着剤塗布面 15c が,上下方向 に連続して露呈して略垂直な面として柱状を呈する如く形成され,その状態 で接着剤 18 を一括して塗布されたトレー15 と, 構成③;上記トレー15 内に置かれた被包装物 19 と, 構成④;上記トレー15 の上面開口部をオーバーラップして被覆し,かつ,トレーの 接着剤塗布面 15c に接着剤 18 を介して接着された周縁を有するストレッチ フイルム 4 とからなり, 構成⑤;上記ストレッチフイルム 4 は,その周縁を,トレーの接着剤塗布面 15c に 接着させた位置に接近した下側で,抵抗線により全周に亘って切断してある ことを特徴とするストレッチフイルムによるトレー包装体。 * 参 考 本件の原特許出願のクレーム 2 掲載日 2003.7.25 提供:三協国際特許事務所 http://www.sankyo-pat.gr.jp 2.審決の判断 (争点) 相違点ア 注;必ずしも原文通りに掲載せず、筆者が要約したり下線を付記した部分がある 本件考案と引用例 1 との相違の要点 特許庁審決の判断 本件考案では、トレーが、「周壁の上部外側面全周に形成さ ・引用例 1 には、そもそも、トレーの周壁の上部外側面全周に接着剤塗布面を設けようとする着想す れた接着剤塗布面を有し、未包装状態で多数個を積み重ね ら全くない。 たとき、各接着剤塗布面が、上下方向に連続して露呈して略 ・引用例2はトレーの内部に被包装物を置くものではなく、包装形態が大きく異なる。引用例2はか 垂直な面として柱状を呈する如く形成されたものである」のに かる包装形態において、熱可塑性合成樹脂フィルム 13 としてポリ塩化ビニリデンフィルムを用いる 対し、引用考案では、トレーが接着剤塗布面を有さず、した 場合には常温下での真空密着包装が可能であるが、そのとき、同フィルム 13 と底部材 11 との間 がって、接着剤塗布面の形状についての言及もない点。 に作られる密封を改良するために、接着剤の薄い塗膜 18 つまり接着剤層を設けることが好ましい ことを教えるにすぎない。∴引用例 1 の加熱軟化熱可塑性合成樹脂フィルムによる真空密着包装 の技術と引用例2のフィルム包装の技術とは少しも結びつかないのである。 ・引用例 3 は予め形成した特定形状の蓋をトレーの所定位置に取付けるものであることから見て、リ ム(縁部)又はフランジの外側平坦面 30 ではなく、蓋の周縁該当部分を接着剤塗布面とする方が かえって好ましいものであると認められる。∴トレーが、未包装状態で多数個を積み重ねたとき、各 外側平坦面が上下方向に連続して露呈して略垂直な面として柱状を呈する如く形成されているも のであったとしても、引用例 1 の包装技術と引用例 3 の包装技術は少しも結びつかない。 ⇒当業者が相違点アをなす構成を想到することは到底できない。 相違点イ 相違点ウ 相違点エ トレーの上面開口部をオーバーラップして被覆するフィルム ・包装体の形成に使用するオーバーラップ用フィルムとしてはストレッチフィルム が、本件考案では、ストレッチフィルムであるのに対し、引用 も周知慣用。 ⇒熱可塑性合成樹脂フィルムに代えてストレッチフィルムを 考案では、熱可塑性合成樹脂フィルムである点。 選択することは、当業者がきわめて容易に想到し得ることである。 トレーの上面開口部をオーバーラップして被覆するフィルム ・相違点アの構成が、他の証拠には記載が無く、トレーがその周壁の上部外側面全 が、本件考案では、トレーの接着剤塗布面に接着剤を介して 周に形成された接着剤塗布面を有することに起因するところの相違点ウ、エの構 接着された周縁を有するのに対し、引用例 1 では、トレーの 成が、これら証拠の記載から当業者がきわめて容易に想到し得るものでもない。 周壁の上部外側面全周に密着させた周縁を有する点。 ⇒相違点ウ、相違点エの構成は当業者がきわめて容易に想到し得るものでも 同フィルムの抵抗線による全周に亘る切断が、本件考案で ない。 は、トレーの接着剤塗布面に接着した位置に接近した下側で 行われるのに対し、引用考案では、トレーの周壁の外側面の 上端部から下側の位置で行われる点。 3 掲載日 2003.7.25 提供:三協国際特許事務所 http://www.sankyo-pat.gr.jp 3.当事者の主張 原告(無効審判請求人)の主張 被告(実用新案権者)の主張 相違点アに ①フィルムとトレーとの密着性を良好にする必要性があることは,引用例1のよう ①引用例 1 はオレフィン系フィルムを 180°折り返してトレーと一体化す 関して なフィルム包装技術に,常に内在している課題である。そこで,密着性を改良 る技術。殊更接着面を大きくする必要はなく、接着剤を用いる必然性も するために,引用例2記載の接着剤層を設けるという真空密着包装の技術を ない。 参考にして,引用例1のトレーの外側上部表面に接着剤層を設ける程度のこと は,当業者にとってきわめて容易な技術的事項にすぎない。 「ストレッチフィルム」といえば,あらゆる食品包装用フィルムの中で最 も軟弱なフィルムである。本件考案では,この軟弱なストレッチフィルム しかも本件明細書の中で、引用例1のものに類似した包装方法を縷々説明した を使用する関係で,いったんはトレーの上周縁に密着しても,力が加わ 上で,本件考案では,接着剤を用いることにより,より完全なシール性が保持さ ると容易に変形するため,接着剤の存在なくしては密着性を保持し得な れる,としているのであるから、審決が「引用例1の真空包装技術と、引用例2の いのである。原告が主張する本件明細書の記載も,このことに基づく。 要するに,引用考案1と本件考案とでは,用いるフィルムの性質が全 フィルム包装技術は結びつかない」とするのは誤り。 く異なり、この点に審決の判断に誤りはない。 ②審決は引用例3につき、接着剤塗布面はトレーよりも蓋に設ける方が好まし ②トレイの外側面平坦面30の全周にあらかじめ塗布されるとすると,接 いと読めるというが、引用例3の「on the outer surface」の「on」は,その前の「by a 着剤層86が外部に露出してしまうことになり,包装体の流通段階など layer of adhesive 86」を修飾するものであるから,引用考案3において,接着剤 で甚だ不都合なことが明らか。この点からも,接着剤層86は,むしろ接 は,フランジ28の外側平坦面30に塗布されていると解すべき。 着剤は蓋 14 の内面に塗布されると解するのが合理的。 ③引用例 3 のものを積み重ねると、接着剤塗布面が、ほぼ連続して露呈して垂 ③引用例 3 の図3には環状段部があり、積み重ねても段部の厚さ分だけ フランジ上下に大きな隙間が生じる。 直な面として柱状を呈する。 相違点ウ、 ①引用例3には本件考案と同一のトレーが開示されているから、これを引用例1 ①いずれの引例にも、トレー周壁の上部外側面全周に、接着剤塗布 エに関して に適用すれば、左記構成も容易推考である。 面を形成することは記載されていない。 ②引用例 1 につき、審決はフィルム 25 がトレー30 の周壁の外側面上端部から 下側の位置で、抵抗線 17 で切断されるし認定したが、第 4 図によると、フィルム 25 はトレー30 の周壁の外側面上部に所定の幅をもって密着されている。 ∴本件考案の「切断が、トレーの接着剤塗布面に接着した位置に接近した下 側で行われる」というのはは容易推考。 4 掲載日 2003.7.25 提供:三協国際特許事務所 http://www.sankyo-pat.gr.jp 4.裁判所の判断 結論;実質的に相違点アについてのみ判断を行い、本件考案の容易想到性を認め、審決は誤りであるとした。 (1)引用例の認定 ①引用例1の認定 ②引用例2の認定 引用例1は,肉,魚,加工品及び雑貨等のトレー包装体であって,フィルムは 引用例2は,ボローニヤソーセージ等の感熱材料の包装体であって,同包装体 延伸性を有し,そのためトレー及び被包装物の形態に合わせた形状に延伸さ につき,周縁にリムを有する底部材の中心部に被包装材料(製品)を載置し, れ,フィルムとトレーの上部側面とが密着した包装体であると認められる。そし 過冷ポリ塩化ビニリデンフィルムの即時変形可能性又は可伸性を利用して,同 て,この包装体を形成するに当たって,フィルムとトレーに要求される条件は,フ フィルムを底部材及び製品の表面に倣った形状に変形させ,同時に同フィルム ィルムには延伸性があり,フィルムとトレー側面の密着性が良いことであり,こ と底部材の密着性を利用して包装体を形成すること,及び,同フィルムと底部 れ以外に必要とされる条件は見当たらない。前者の条件を満たすため,引用 材の密着性のみでは,剥取り強度が不十分であるため,底部材のリム終端部 例1においては,フイルムとして熱可塑性合成樹脂フイルムを用い,これを加熱 であるフランジ部に「可塑剤又は感圧接着剤の如き適当な密封剤」を塗布して することを採用しているものと認めることができる。 おくことにより,剥取り強度の点でも問題のない強力な密封を得ることが記載さ れているものと認めることができる。 (2)接着剤塗布面構成の容易想到性について 引用考案1においても,トレーに収納される被包装材料は,「肉,魚,加工品及び雑貨等」とされており,ここに例示された材料中「肉」及び「魚」が,引用 例2にいう「感熱材料」に相当し得ることは明らかである。そして,このような「感熱材料」に,フィルムの延伸性を確保するために加熱を用いる引用考案1を 適用することは,不適当であること,あるいは,少なくとも,他に方法があれば避けるべきであることが明らかであるから,加熱せずに,延伸性及びトレー側面 との密着性を確保できるのであれば,引用考案1を出発点としつつ,これの中の加熱を要する要素の代わりに加熱を要しない要素を有する包装手段を採 用することは,当業者であれば当然試みることということができる。 加熱を用いない包装手段が引用例2に記載されており,それは,フランジ16の外側表面に感圧接着剤等の薄い塗膜を設ける,というのものであるから, 引用考案1において,感熱材料を包装する場合に,フイルムとして引用例2記載の過冷ポリ塩化ビニリデンフイルムを採用することとし,これに伴い,密封性, すなわち,フイルムとトレーの密着性を改良するため,接着剤を用い,これをトレー外側側面の一部に塗布する構成を採用することは,当業者がきわめて容 易に想到できることというべきである。 *この他、引用例 1 と引用例2の包装形態について、「フィルムと底部材フランジ部(引用考案1の「トレー側面」に相当する。)の密着性が良いこと,フイル ムには延伸性があることが条件とされている点において,引用考案2と引用考案1との間に格別差異はない」として、審決の認定は誤りとしている。 5 掲載日 2003.7.25 提供:三協国際特許事務所 http://www.sankyo-pat.gr.jp (3)本件形状構成の容易想到性について 甲7刊行物に係る実用新案の出願当時(昭和51年9月21日),同刊行物6図(別紙図面7参照)のような形態のトレーを積み重ねた際,それ同士が密着 して分離しにくくなるという技術課題があり,これが周知であったことは明らかであるというべきである。この技術課題を解決するためには,要するに,積み重 ねたとき,トレー同士が密着しないようにすればよいことは自明であり,そのための方法として,トレーの周辺に耳部を設け,積み重ねた状態で,上のトレ ーの耳部の下部が,直下のトレーの耳部の上部に接触して積み重なるようにすることは,当業者にとってきわめて容易に想到できることであるというべきで ある。 ・・・そして,この耳部を,トレーを積み重ねた際離間せずに連続するようにすること,耳部の一面を底面に対して垂直な面とし,かつ平面にすること(すな わち,連続した耳部が,略垂直な面となり柱状となるようにすること)は,トレーに設けられる耳部の形態の最も基本的なものの一つと認められるから,結 局,トレーの形状として,耳部を設け,トレーを積み重ねた際,耳部の外面が上下方向に連続して露呈して略垂直な面として柱状を呈する形状を採用する ことも,当業者であれば当然することというべきである。 (4)結論 以上のとおり,引用考案1は,本件接着剤塗布面構成及び本件形状構成の,いずれも採用し得るものであり,かつ,これらは,互いに排斥し合うものでも, 一つを前提にのみ他方を採用し得るというものでもないから,甲7刊行物から認定できる周知の技術事項を同時に勘案しつつ,引用考案1及び引用考案 2に接するとき,本件接着剤塗布面構成及び本件形状構成を同時に採用することは,当業者であればきわめて容易に想到することである。 そして,本件接着剤塗布面構成と本件形状構成を同時に採用するとき,接着面として,トレー外側面のうち,底面と垂直をなす平坦面を選択することは, 作業の容易性や接着強度の確保等を考慮するときは,むしろ,当然のことといい得る範囲の事項である。すなわち,前記周知技術事項を前提に,引用考 案1,同2に接した当業者が,そこから本件接着剤塗布面構成及び本件形状構成を読み取り,これらを組み合せて,相違点アに係る本件考案の構成を想 到することは,きわめて容易であるというべきである。 * 相違点ウ、エについても「念のため」容易想到性を検討しているが、結局「相違点ウ及び相違点エは,相違点アとは別途独立した相違点として 検討しなければならない相違点ですらないというべき」として一蹴している。 6 掲載日 2003.7.25 提供:三協国際特許事務所 http://www.sankyo-pat.gr.jp 5.研 究(私見) (1)容易想到性の導き方の妥当性について 本判決では、次のように二段に「当業者ならば」という評価を行う論理構成をしている。 しかし被包装物が感 引用例1は 熱材料ならば、加熱 加熱包装を しないで包装する方 採用 法を当業者なら当然 試みる 引用例2に 接着剤を用いる場合、トレ は接着剤の ーの外側側面の一部に塗 適用の開示 布することは、当業者なら がある 当然考える 本件考案は 容易想到 このような二段評価は、考案の「きわめて容易に」という要件を評価するにあたり、些か厳しすぎるのではないかと思われる。特に一段目の 評価については、加熱しつつ被包装物に影響を与えない代替包装方法もたぶん存在するだろうから、 「加熱しないで包装する方法を当然試みる」 と直結するのは少々論理が飛躍しすぎているようにも思われる。この手の進歩性欠如の主張は、異議申立等において、「弱い証拠」しかないと きにしばしば行われるが、一般的に容認されるケースは少ないのではなかろうか。また、審決が包装形態の違いを根拠に否定した引用例1と引 用例2のコンビネーションを、本判決では被包装物が共に「感熱材料」であることや、共に延伸性のフィルムを用いている等の「遠因」と解さ れる点に依拠してこれを容認し進歩性を否定している。これらの点を考慮すると、少しばかり「やりすぎ」の感を否めないと思量される。被告 が訴外で原告に対して権利濫用的な権利行使を行うなどのふるまいをなしていたなど、「原告を勝たせるべき特殊事情」があったなら格別、そ うでないなら妥当な判断とは思えない。 (2)被告の敗因について なぜ被告は負けたか。引用例1には接着剤を用いることの開示がないこと、審決が引用例1と2は「少しも結びつかない」と強くコンビネー ションを否定していたことに安寧し、ダメ押しが足りなかった、と本件被告代理人は世間的に評価されてしまうのだろう。被告の主張は妥当と 思うが、あえて難点を挙げるなら、本件考案は「ストレッチフィルム」を用いるがゆえに接着剤が必要との主張を、被告が前面に押し出して展 開した点ではないだろうか。この点については、審決でも「ストレッチフィルム」と引用例1の「熱可塑性合成樹脂フィルム」との代替容易性 を認めており、フィルムの違いを拠り所にした主張は、裁判所へのアピール力が乏しかったのかも知れない。 (3)引用例3について 7 掲載日 2003.7.25 提供:三協国際特許事務所 http://www.sankyo-pat.gr.jp 推定や主観を盛り込んだ証拠はなかなか採用してくれない。引用例3の英文文言解釈や、トレーの積層状態に対する双方の主張は、結果的に 徒労に終わってしまった。結局、裁判所は引用例3に比較して客観性が高いと言える甲7刊行物を採用した。裁判する側からすると、双方の主 観及び推定が加味された主張が甲乙つけ難い場合は、これを採用せずに客観的な別の証拠に基づいて判断を行う方が公正、という言い分に帰着 するのだと思う。 本判決では、引用例3には触れず審決ではさらりと流した甲7刊行物に基づいて、「耳部付きのトレーを積み重ねた際、耳部の外面が上下方 向に連続して露呈して略垂直な面として柱状を呈する形状」は「周知慣用の技術」と認定した。「引用例3に図示されたトレーを積み重ねると 本件考案の構成になるハズだ」の如き我田引水的な面が際立ってしまう主張よりは、あっさり「周知慣用」を強調する方が効率的・効果的な主 張であると言わざるを得ない。 [付記]本件考案のクレームについての所感 本件考案は、被包装物とストレッチフィルムまでクレームの構成要件としている。このようなクレームで、果たして権利行使が実質的に行え るのかが疑問である。本件登録は個人名義であるが、例えばトレーメーカーが権利者の場合、直接侵害がなされるのはトレーを納入する顧客で あるところの、スーパーや惣菜屋となろう。競合トレーメーカーに対しては、せいぜい立証負担の重い間接侵害が問えるか否かである。 我々代理人は、クライアントに対して委任契約に基づく善管注意義務(民法 644 条)を負う。従って、 「特許は取れるが事実上権利行使でき ない」クレームのみを起こして出願してはならないことに常に留意すべきである。 以 8 上 掲載日 2003.7.25
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