法的言説におけるイギリス近代国家 梅 川 正 美 Ⅰ.realm 1.realm とそれを修飾する用語 2.realm の意味 Ⅱ.dominion などの従属的地域 Ⅲ.imperial crown Ⅳ.nation Ⅴ.むすびにかえて 本稿の課題は、イギリスの国家観念を支えてきた法的な用語はいかなるものであるのか、こ の点に関して近代形成期の諸法令の用語法を調べ、イギリス近代国家の一面を見ることである。 イギリスの諸法令の用語法はきわめて独特でわかりにくい。そこでまずいくつかの重要な用語 に関して、特に realm、empire、crown、dominion、principality、country、territory、nation な どについて調べてみたいと思う。 Ⅰ.realm 1.realm とそれを修飾する用語 1536年にヘンリーⅧ世がウェールズを併合したときの「イングランドとウェールズの連合法」 Act for the union of England and Wales, 1536 (27 Henry VIII, c. 26) では realm には his という代 名詞がつけられて、「彼の realm の彼の法の完全な秩序と注意点と知識」the perfect order, notice and knowledge of his laws of this his realm と述べられている。このときの his は「君主の」 という意味であり realm が laws とともに、君主の所有物のように考えられる傾向をもってい たことをうかがわせる。同法の文の中では his の語は country や dominion にもつけられており 「彼の前述の」his said country or dominion とされている。 この際の country や dominion については後にまた説明するが、これらは his realm に「編入 され、統合され、接合されている」incorporated united and annexed to のである。また同法の −51− 政策科学8−3,Feb.2001 中で laws が出てくるとき、この laws が his を伴っていないこともあるが realm は通常 his を 伴っている。たとえばウェールズは「彼の realm における全てのそして唯一の自主と自由と権 利と特権と法を享受し継承する」shall have enjoy and inherit all and singular freedoms, liberties, rights, privileges and laws within this his realm と述べられている1)。 これまで述べてきた his realm という言い方とは別に your realm という用語法も1534年の 「神の摂理に関する法」The Dispensations Act 1534 (25 Henry VIII, c. 21) の文の中で発見できる が「陛下の realm における陛下の臣民」your subjects of this your realm と述べられている。こ れはヘンリーⅧ世時代特有のものであったようであり、それ以降は、少なくとも私にはまだ発 見できない。ここでは your の形容詞は subjects にも付けられており、臣民もまた君主のもの と表現されるほど、君主の力が強かったことがうかがわれる。また同法は、ローマ教皇が継続 的に徴収していた様々の課金に関して、ヘンリーⅧ世の your realm から徴収することを禁じ るためのものであるが「これまで受認に耐えないほどの膨大な基金が your realm に課され徴 収されてきたが、今もなお引き続きその請求が行われている」intolerable exactions of great sums of money as have been claimed and taken and yet continually be claimed to be taken out of this your realm… とされ、your realm の「何人も今後一切」ローマ教皇の徴収する諸課金を支 払ってはならないと述べられている2)。 ヘンリーⅧ世の時代以降は his realm はなかなか発見できないが、1624年の「補助金法」The Subsidy Act 1624 (21 & 22 James I, c. 33) にはその用法が見いだされ、「イングランドの your realm の防衛のための」for the defence of this your realm of England 戦争には臣民は誠実に君主 を助けてたたかうとされている。ジェイムズⅠ世は17世紀のはじめスコットランドとイングラ ンドの両方を手中に収め権力拡張に邁進した君主であり、その政権の性格が出ているのかもし れない3)。 しかし realm に対する his や your という語は、ヘンリーⅧ世以降は、別の修飾語に変わる ように思われる。エドワードⅥ世の1549年のウェールズを併合するための「統一法」The Act of Uniformiry 1549 (2 & 3 Edward VI, c. 1) では his などの代わりに his Majesty’s の語が登場す る。「イングランドとウェールズの his Majesty’s realm で行われるあるいは使われる、礼拝にお ける共通で公的な祈祷書と儀式」common and open prayer and administration of the sacraments, to be had and used in his Majesty’s realm in England and in Wales に関する秩序と祭 礼と様式が統一されなければならないと書かれている。his Majesty’s の語は後に述べるように、 君主権力の機能を意味する傾向が強く、君主それ自体ではない。his Majesty’s の権力はのちに 議会に掌握されるが、すでに16世紀において、realm が君主の所有物のように考えられる傾向 が衰退してきている可能性を示唆している4)。 フィリップとメアリーの治世の頃はイングランド君主が再びローマ教皇に傾斜するが、1554 年の「ローマ教皇の権威を復活する法」Act restoring papal authority 1554 (1 & 2 Philip and Mary, c. 8) では、世俗的かつ宗教的な理由によって your Highness’ realms and dominions 「は ローマ教皇に対する服従からはずれてしまい」have swerved from the obedience of the See −52− 法的言説におけるイギリス近代国家(梅川) Apostolic キリスト教の統一から脱落してしまったとされている。従って宗教的にはイングラ ンド教会を否定しつつも、realm に関する表現が his というような君主の直接的な表現をとら ないという意味では、その前後と同じ傾向を示しているのである5)。 2.realm の意味 これまで realm に対する君主の支配権を示唆する形容詞について述べてきたが、realm とは 実際には何を意味していたのであろうか。前にも述べたウェールズとの「統一法」の文章では 「このイングランドとウェールズの realm では」in this realm of England and Wales 教会の儀式 において長い間、異なる祈祷書が使われてきたと述べられているが、このときの realm はイン グランドとウェールズの両方を合わせた地域を指すと思われる。しかし同法では realm に続く 地名については他の例もある。例えば realm のあとに多くの地名を付け「イングランド、ウェ ールズ、カレーその他」this realm of England, Wales, Calais and marches of the same および king’s dominions とも書かれている。ここでは realm が dominion を含まないことがわかるが、 realm は単数で用いられており、同一君主が統治する多くの地域を一括して示していると思わ れる6)。 従って realm の語はその後に of をおき実際の地域の名称を書いて内容を示すのではないか と推察される。このように考えると、ヘンリーⅧ世がイングランド教会を樹立するためにイン グランドからローマへの上訴を禁止した1533年の「上訴禁止法」The Act of Appeals 1533 (24 Henry VIII, c. 12) における this realm of England という表現はイングランドのみを意味すると いうことができる。これは後に述べるように、同法以来現在までの多くの憲法的な諸法が、イ ングランドのみが世界全体で特権的に帝国的支配権を持っていることを決めていることを読み とる上できわめて重要な意味を持ってくる7)。 Ⅱ.dominions などの従属的地域 前にも述べたように、realm とは区別されて dominions がおかれていたが、たとえばヘンリー Ⅷ世が1534年に聖職禄初年度納付金を従来のようにローマ教皇に納付することを禁じてイング ランド教会に納付するように決めた「聖職禄納付金法」The Annates Act 1534 (25 Henry VIII. c. 20) でもイングランドの「この realm またはその他の国王の dominions」within this realm or in any other the King’s dominions というように明確に区別して述べられている8)。 realm の場合その固有名詞をその語の後に続けて内容の定義をしていたが、dominon の場合 も同じであり、1536年の「イングランドとウェールズの連合法」ではウェールズの語が後に付 加されて his said dominion of Wales と述べられ、ここの「臣民に対して陛下が持っている熱愛 と好意」が強調されている。しかし同法では the said dominion and principality of Wales という 表現もある。これはウェールズに dominion とさらに異なる憲法的位置にあった principality が あったことを示しており、この表現を含む文章では、ウェールズのこれらの地域の「臣民とイ −53− 政策科学8−3,Feb.2001 ングランドの臣民について」語られている。 ところが同法ではさらに the dominion, principality and country of Wales という表現も用いら れており country という単語が現れ、結局 realm の他には三つのカテゴリーがあったと思われ る。また同法では his said country or dominion of Wales が「今後永遠にイングランドの his realm に接合され、統合され、付加される」shall be, stand and continue for ever from henceforth incorporated, united and annexed to and with this his realm of England と述べられて おり、ウェールズはイングランドに従属していたことが示されているし realm は他の三カテゴ リーに対して支配的な地位を持っていたと思われるのである。しかしイングランドの realm が 統治機能を持つ場合には、後に述べる crown を通じる場合が多い。たとえば同法で dominion と principality と country は、イングランドの「帝国的 crown に従属する」subject to and under the Imperial Crown of this realm と決められているのである9)。 1559年にエリザベスⅠ世がイングランド国教会を再確立して、ローマ教皇ではなく女王こそ が教会における最高の権威であることを述べた「至高法」The Act of Supremacy 1559 (1 Eliz., c. 1) においても country は dominion と同じように realm と区別された位置を与えられている。 臣下がエリザベス女王を「至高」の存在であると誓うための文言として、私は女王陛下こそ 「この realm と他の全ての陛下の dominions と countries」this realm and all other her Highness’ dominions and countries において「唯一の至高の総裁であることを」the only supreme governor 私の良心から心より証言し誓います、と書かれているのである10)。 ここで特に country について述べておくが、実はこれが外国を意味する用法がある。1554年 の「ローマ教皇の権威を復活する法」Act restoring papal authority 1554 (1 & 2 Philip and Mary, c. 8) では、ヘンリーⅧ世治世20年以降多くの間違った教義が教えられ、説教され書かれてき たが、これは「一部はイングランドの this realm に生まれ育った種々の臣民によって、そして 一部は様々の他の外国の countries から持ち込まれた」partly by divers the natural - born subjects of this realm, and partly being brought in hither from sundry other foreign countries もの であると述べられている。イングランドに併合されたウェールズの一部が country と呼ばれ外 国と同じ名称を与えられているのであるが、country はイングランドの realm に従属するもの であるから、外国はそもそもイングランドと対等なものであるとは考えられておらず、それに 服従すべきものとして定義されている11)。 このように realm は特権的な位置を持っていたのであるが、このことは、通常市民革命と呼 ばれてきた政治過程によっても、全く影響を受けておらず、同じ意味を持ち続けている。まさ に革命政権が「1649年3月19日にイングランドをコモンウェルスとして確立する法律」Act declaring England to be a commonwealth 19 March 1649 では Commonwealth に関して固有名詞 て明記されているのはイングランドのみであり、それが dominions と territories を従属させて いる。「この現在の議会によって、そしてその権威によって」by this present parliament and by the authority of the same 宣言するとされている内容は「イングランドの人民とイングランドに 付属するところの全ての dominions と territories の人民」the people of England and of all the −54− 法的言説におけるイギリス近代国家(梅川) dominions and territories thereunto belonging が「コモンウェルスと自由国」a Commonwealth and Free State を確立することである。ここでは people の語はその内部に realm の people と dominions などのそれとの上下の違いを含んでおり、階級的な序列をもっている。people は外 に対する同質性と、内における異質性をあわせて持っている二重の用語であった。同じことは nation についても言うことができるのだが、この点は後に述べる12)。 同じ革命政権の別の法律では、「イングランドとスコットランドおよびアイルランド、さら にこれらに付属するところの dominions によりなるコモンウェルスの政府」The government of the Commonwealth of England, Scotland and Ireland and the dominions thereunto belonging とい う言い方もされており、この場合にはスコットランドとアイルランドがイングランドと並べら れている。しかしこの際にも三者には dominions が従属しており、コモンウェルスはその内部 に、三者の支配する機構を内包するものであった。さらに、同じ法律で、「コモンウェルスの 至高の立法権力」the supreme legislative authority of the Commonwealth についても、これは議 会 と 「 一 人 の 人 」 one person に あ る と さ れ て い る が 、 そ の 人 の 地 位 が 「 護 民 官 」 Lord Protector であった。 革命期間中の country の位置についても変化してはいない。1653年の革命政権の法律では、 country and dominion とまとめて論じられており、country は realm に対して従属的な位置に おかれている。まさにその地域の人民に関する「主なる統治権と行政権の行使は」t h e exercise of the chief magistracy and the administration of the government over the said countries and dominions, and the people thereof 「護民官にあった」shall be in the Lord Protector のであ る。彼は dominions などの現地の「13人から21人までの Council によって補佐される」assisted with a Council, the number whereof shall not exceed twenty - one, nor be less than thirteen ことに なっているが、革命政権の護民官による dominions などの統治様式は、実は君主の植民地統治 の形式と同じである。同法律は、実は固有名詞の Oliver Cromwell が「イングランドとスコッ トランドおよびアイルランドの陸海軍の総司令官」Captain - General of the forces of England, Scotland, and Ireland であり「終身」の「護民官」であると述べている13)。しかもその「護民 官」は「陛下」your Highness と呼ばれコモンウェルスの統治権を持っている14)。 名誉革命以降の「1689年の権利章典」The Bill of Rights 1689でもイギリスは内的階級的国家 編成をとっていた。イングランドとフランスおよびアイルランドが kingdom と表現され、そ れに dominions が「付属」belong している。ここでは realm の代わりに kingdom が用いられ てはいるが、これと従属的の地域との関係は同じである。中世も近代もイングランドなどが特 権的地位を維持していることには何の変化もないのである15)。 1701年の「王位継承法」Act of Settlement 1701 でも、kingdom と dominions の関係が非常に 明確に書かれている。「イングランドとフランスおよびアイルランドの kingdom とこれに付属 する dominions」the kingdom of England, France, and Ireland, and the dominions thereunto belonging と述べられており kingdom は dominions を支配する関係であった。しかし「王位継 承法」には kingdom の表現とともに realm の語も併用されており、「イングランドとフランス −55− 政策科学8−3,Feb.2001 およびアイルランドの realms さらにそれらに付属する dominions と territories」the said realms of England, France, and Ireland, with the dominions and territories thereunto belonging と も述べられている。まさにイギリス近代は階層的な国家構造あるいはその世界観によって立ち 上がったのである16)。 Ⅲ.imperial crown ヘンリーⅧ世の時代に戻るが、1533年の「上訴禁止法」には this realm of England is an empire という歴史的な意味を持つ重要な一句がある。this realm とは England のことであり empire とは realm の性格である。すなわちイングランドは、その独立当初から、他のウェー ルズなどと違ってそれに対する支配的権限を持っている、「帝国」なのである17)。 また1536年の「イングランドとウェールズの連合法」ではイングランドの realm の帝国的 crown はウェールズを支配することになっている。ここではウェールズは realm とは表現され ておらず dominion と principality および country であり、そしてそのいずれも、帝国的 crown のもとにあるとされているのである18)。 ヘンリーⅧ世によってイギリスが形成されたとき crown は imperial という形容詞を伴うこ とが多かった。realm はまず国民国家があって、これが膨張して empire になったのではなく、 最初から imperial crown の「権威と資産」the dignity and royal estate を持つ king によって統治 されるものだった19)。 しかもヘンリーⅧ世を教会の至高の長として確立した1534年の「至高法」では crown と関 係の深い king について、彼はこの「地上におけるイングランド教会の唯一の至高の長である」 the only supreme head in earth of the Church of England とされている。しかし歴史的に君主の 権力がもっとも強かったこの時代においてすら、crown は king の付属物とはされていない。 king はあくまでも crown に「接合され結合されてきた」shall have and enjoy annexed and united to the imperial crown of this realm のであり、crown は king とは別の概念として、しか も king とは距離のある概念として扱われている20)。 「連合法」では Imperial Crown と大文字で書かれ、これの持つ機能について述べられてい る。すなわち、それにはウェールズの領地が「これまで接合され、結合され、服従させられて きた」ever hath been incorporated, annexed, united and subject to のである。特に「服従させら れてきた」という表現は、crown の帝国的機能をよく示していると思われる。この論理では、 イギリスは crown によって初めて帝国たりえたのであり、しかももちろん帝国とは、かなら ずしも19世紀以降の世界帝国を意味するのではなく、その世界帝国の論理をすでに内在して いた連合王国そのものであるから、連合王国においてその crown こそが帝国の要となってい る21)。 1559年のエリザベスⅠ世の「至高法」では crown と議会の関係が書かれている。crown の世 俗的かつ宗教的な権力が crown に付属しているのは「議会の権威によって」by authority of −56− 法的言説におけるイギリス近代国家(梅川) this present parliament であると明確に述べられている。crown は imperial の形容詞と結合して 用いられており、実は「議会」そのものが、中世の最初から帝国議会として立ち上がったこと が示されている。議会はたしかに内的には君主を制約するものであったが、外に対しては君主 とともに他者を支配する帝国主義者だったのである22)。 議会の帝国主義的な性格は、いわゆる市民革命によっても全く変化していない。1689年の 「権利章典」では crown には課税権があるとされているが、その権力は「君主が任意に行使」 by pretence of prerogative できるものではなく「議会の許しがなければ」without grant of parliament 「違法」illegal であった23)。 では「権利章典」では crown はどのような権限を意味していたのか。「イングランドとフラ ンスおよびアイルランドの全体およびそれに従属する dominions の King」が行使する crown の権限は「前に述べた kingdoms と dominions」に及ぶと書かれている。君主の領地を述べる 際にも、crown の権限を述べる際にも、イングランドとフランスとアイルランドは kingdoms と述べられ dominions はそれらに「帰属する」belonging ものとされており、この表現は、革 命以前とまったく同様である。従ってこれを支える議会の性格もまた、同様であると言わざる をえないだろう。 「権利章典」は別のところで「君主的権力の唯一で完全な行使」the sole and full exercise of the regal power は「crown と王の権威」にあると述べており crown は君主の権力の行使のこと であると定義している。さらに同法は crown の機能が「この realm の諸問題や諸分裂を防ぐ」 preventing all questions and divisions in this realm ものであり nation の「統一と平和と平穏と安 全」the unity, peace, tranquillity, and safety のためのものであると述べている。また同法は、 「君主的権力と統治力の包括的で完全で十分な行使」the entire, perfect, and full exercise of the regal power and government は「陛下」his Majesty によってされるとしている。 しかし続けて、その権限の行使は「陛下の存命の期間は陛下の名前で」in the names of both their Majesties during their joint lives 行われ、彼の死後は crown が君主の後継者に移行すると 述べられている。従って crown が、君主の統治権力であることはほぼ明らかであると思われ る。ヘンリーⅧ世の時代にすでに君主自身とは区別された概念であった crown は「権利章典」 の時代には、権力概念としての姿をはっきり現しているのである。 しかも「権利章典」で crown は「イングランド、フランス、アイルランドの諸王国、そし てこれらに属している dominions の」crown とされている。この点は以前と同様であるが、こ の crown が、ヘンリーⅧ世のときのように his などの形容詞で君主に接合するのではなく、逆 に「陛下が受け入れる」 their said Majesties did accept ものと述べられており、君主は crown に対して受動的なる者として描かれている24)。 また King が crown を継承する点では以前と変わらないが、1701年の「王位継承法」では、 Act すなわち議会の行為こそが、「臣民の権利と自由」the rights and liberties of the subject を 宣言し、「crown の継承に関して決定する」settling the succession of the crown ものであること が明言されている。crown は君主によってではなく議会によって操作されるわけである。しか −57− 政策科学8−3,Feb.2001 もここでは「crown は陛下であるべきであり、あり続ける」should be and continue to your Majesty と述べられている。前にも述べたように「陛下」とは君主本人ではなく、君主の権限 であり、君主の権限は、君主からは離れ議会によって掌握されている。 「王位継承法」では、君主の側からの crown に対しての接近可能性も大きく制約している。 世襲を基礎にした君主の場合、あるいは実力で権力を掌握した君主の場合、それだけでは crown には接近できないのであって、「ローマ・カソリックの宗教」popish religion と関係する ものは「排除される」should be excluded と書かれている。「crown の継承」the succession of the crown は「プロテスタントであり nation の福祉に貢献し(イングランド教会の)宗教の安 全に貢献」in the protestant line, for the happiness of the nation and the security of our religion し、 「この realm の安全と平和と平穏」the safety, peace, and quiet of this realm のために crown の権 力を行使できる者に限られる。このような条件は、自己の血縁関係のように簡単に立証できる ものではなく、君主在位中においてもなお日々君主にその素質を問いかけるものである。 同じ「王位継承法」では England の nation と、crown および Parliament の関係も述べられ ている。まず crown が二重の意味で使われている。「この realm の帝国的権威および crown」 と述べられているとき「これが England 以外の君主に属した場合」not being a native of this kingdom of England を想定しているので、このときの crown はイングランド固有のものではな く、帝国全体のものと考えられる。しかしこの場合には、「イングランドの nation」は「イン グランドの crown に属さないいかなる dominions や territories のための防衛戦については、こ れに従軍する義務を持たない」と述べている。 このときの the crown of England は、イングランドのみの crown であり、前のものとは違う。 しかも二つの crown の利害が対立するときのことを想定しており、その際にはイングランド がどうすべきかは「議会」Parliament が決定権を握ることになっている。しかし他方で、議会 はウェストミンスターに限定されているのであり、結局イングランドが帝国を左右する。ここ では、前に「イングランドは帝国である」と定義したヘンリーⅧ世の時代の国家構造が、実は 議会という弁証機関を立ち上げることによって、さらに普遍化され強化されている。しかもイ ングランドの実体が nation と述べられていることも重要である。ここではまさに nation は支 配権の表現なのである25)。 1720年の「陳述法」The Declaratory Act (Ireland) 1720 (6 George I, c. 5) では「アイルランド の kingdom はグレイト・ブリトゥン帝国の crown に従属し依存する」the said kingdom of Ireland hath been, is, and of right ought to be subordinate unto and dependent upon the imperial crown of Great Britain とされている。その際イングランドがアイルランドを直接統治するとい う表現はさけられており、そのかわりイングランドの「議会」である「ウェストミンスターが、 アイルランドの kingdom と人民を拘束するために、十分に強力で有効な法と法令を作るため の完全な権力と権威を持っていたし、持っているし、持つ権限がある」Westminster had, hath, and of right ought to have full power and authority to make laws and statutes of sufficient force and validity, to bind the kingdom and people of Ireland と書かれている。ここでも、議会こそが −58− 法的言説におけるイギリス近代国家(梅川) イングランド帝国の非合理的な構造を隠蔽する装置であったことがわかるのである26)。 Ⅳ.nation nation は、少なくとも管見の限りでは17世紀になって初めて発見できる用語である。1642 年の「長期議会解散法」The Act against dissolving the Long Parliament without its own assent 1642 (17 Charles I, c. 7) において、「イングランドとスコットランドの間の強固な和平」a firm peace between the two nations of England and Scotland という用語が出てくるが、このとき、イ ングランドとスコットランドがそれぞれ nation と書かれている。これは従来であれば realm や kingdom とされるところである27)。 さらに革命政権による1649年の「君主制廃止法」Act abolishing the office of king, 17 March 1649においても、イングランドの「nation とアイルランドにおける国王の職、ならびにその職 を一人の人物が掌握することは不要なことであり、重荷であり、人民の自由と安全と公益にと って危険である」the office of a king in this nation and Ireland, and to have the power thereof in any single person is unnecessary, burdensome, and dangerous to the liberty, safety and public interest of the people とされ、イングランドが nation と言われている。 この場合の nation も従来 realm と呼んでいたものをそのまま言い換えていると考えること ができる。nation には諸個人の結合などの意味があると解釈できる根拠は見いだせない。君主 を廃止するわけであるから、君主の領土としての realm の用語が使いにくかったと思われる。 しかし「護民官」が君主とほぼ同様の権力を持っていたのであるから、nation は君主なき君主 国であったと思われる。 同法ではさらに、「この nation における国王職は今後いかなる一人の人に与えられることも なく一人の人に行使されることもない」the office of a king in this nation shall not henceforth reside in or be exercised by any one single person と書かれているが、この際も国王をいただい ていたものとして nation といわれているわけであるから、従来の realm の語にあたるものと 思われる28)。 さらに前述の「イングランドをコモンウェルスと宣言する法」は「この nation の至高の権 威」the supreme authority of this nation と「議会における人民の権威」the representatives of the people in parliament とを並べており、nation とは実は議会によって代表される人間集団で あるとされている。もちろん属領の者たちも議会に代表されていると言うこともできるが、実 際に選出行為のできる範囲は一部に限られていたことは明らかだから、nation は形式的には広 い範囲を指しながらも、実質的には支配的な一部の集団を意味していた。もちろん dominions や territories の現地人が自ら参加するかたちでの議会代表は考えられない。 1653年の革命政権の法律によれば、クロンウェルである「護民官が課税権、および nations の平和と福祉のための立法権などを掌握する」the Lord Protector ….. shall have power….. to raise money for the purposes aforesaid ; and also to make laws and ordinances for the peace and −59− 政策科学8−3,Feb.2001 welfare of these nations とした法律である。ここでは nations という言い方がされているが、こ れはイングランドのみならずスコットランドやアイルランドを含んでおり、従来 realm と呼ば れてきた地域である29)。 名誉革命後の前述の「権利章典」でも「nation の十分で自由な代表として集合した貴族院と 庶民院」the said lords … and commons… assembled in a full and free representative of this nation と述べられ nation は議会議員によって代表される主体として表現されている。従って nation は当時の臣民の総体と考えることもできる。しかし「権利章典」の時代には、君主制が 復活しているわけであるから、realm の語もまた復活している。前に引用した部分においても、 一方で「realm の全ての諸問題と分裂を防ぐ」preventing all questions and divisions in this realm と言われ、他方で「nation の統一と平和と平穏と福祉」the unity, peace, tranquillity, and safety of this nation という言い方がされている。 また前述の「王位継承法」でも「realm の安全と平和と平穏」the safety, peace, and quiet of this realm とされ、「nation の福祉」the happiness of the nation と書かれている。従って nation は realm よりも臣民の人的集団の傾向が強く、realm には人民の容器としての国家的な意味が 強くなっているのではないかと思われる。しかし nation と realm が連携しながら使われてい ることは、このときの nation には特権的な意味合いが込められていると言わざるをえないの である。 Ⅴ.むすびにかえて 私が本稿で述べようとしたことは、イギリス国家はその成立の時点から内的にも外的にも帝 国であったということである。しかもこの点に関しては、従来日本で市民革命といわれてきた 政治変動によってむしろ強められてきた。しかもここで取り上げた諸法律のうち特に「権利章 典」や「王位継承法」は過去の法ではなく、現行法である。従って現代もなお封建的で帝国的 な国家によって、イギリスは引き続き悩まされている。これまでイギリスにおける民主主義を 過度に強調してきた日本の論調は、この重要な問題を理解しようとしないものである。市民革 命後はその君主制すら近代的になったかのような議論が、行われてきたのである。 もちろん帝国的な国家制度の力は希薄化してきている。しかし、国家の内的編成までが帝国 的であるということは、イングランドを中心とした君主制でなければ、イギリス連合王国の統 一が保てないことを意味している。イギリスには19世紀末に一部で論じられたような連邦制の 可能性はあまりないと思われる。これを行うためには、国家の基本構造を中途半端に変えなけ ればならず、そのリスクはあまりに大きい。 現在、北アイルランドはイギリスの領土でありながら、すでにイギリス政府の単独支配の地 域ではなくなっている。スコットランドの SNP の成長も著しい。労働党政府は地方議会を含 む分権に踏み込んだが、これは女王の言葉にもあるように「新しい憲法の時代」の幕開けを意 味している。イギリスが今後どのような道をたどるかはわからないが、もっとも簡単なシナリ −60− 法的言説におけるイギリス近代国家(梅川) オは、イングランドのみが残って細々と君主制を維持することである。 しかしもはや外的な帝国的要素を失ってしまえば、君主制の使用価値は基本的にはなくなる と思われる。そのときイングランドの君主制的抑圧的制度と、これまでこれとたたかってきた 民主主義的力との均衡は崩れ、膨大なイングランド法を含む法制度のほぼ全面的な改革を始め ざるをえないだろう。いずれにしても21世紀のイギリスは、根本的な近代化の課題に直面して いるのであり、経済や社会一般に関してもこの問題は及んでいる。 注 1)本稿の注は、本文で引用した諸法律の文をある程度まとめて掲載し、本文での引用箇所が法律の中で しめる位置を見る上で参考となることを目的としている。 His Highness therefore, of a singular zeal, love and favour that he beareth towards his subjects of his said dominion of Wales, minding and intending to reduce them to the perfect order, notice and knowledge of his laws of this his realm, and utterly to extirp all and singular the sinister usages and customs differing from the same… hath… enacted and established that his said country or dominion of Wales shall be, stand and continue for ever from henceforth incorporated united and annexed to and with this his realm of England; and that all and singular person and persons, born or to be born in the said principality . .. of Wales shall have enjoy and inherit all and singular freedoms, liberties, rights, privileges and laws within this his realm, and other the king’s dominions, as other the king’s subjects naturally born within the same have, enjoy and inherit (Act for the union of England and Wales 1536 : 27 Henry VIII, c. 26) 2)Most humbly beseech your most royal Majesty your obedient and faithful subjects the Commons of this your present parliament assembled… , that where your subjects of this your realm… by many years past have been and yet be greatly decayed and impoverished by such intolerable exactions of great sums of money as have been claimed and taken and yet continually be claimed to be taken out of this your realm ….. by the bishop of Rome, called the Pope, and the see of Rome…[that it be ordained and enacted] by the assent of your Lords spiritual and temporal and the Commons in this your present parliament assembled and by authority of the same, that no person or persons of this your realm.. shall from henceforth pay any pensions, censes, portions, Peter’s pence or any other impositions to the use of the said bishop or of the see of Rome (The Dispensations Act 1534 : 25 Henry VIII, c. 21) 3)…..dutiful affections and sincere intentions to assist you therein for the maintenance of that war that may hereupon ensue, and more particularly for the defence of this your realm of England, the securing of your kingdom of Ireland, the assistance of your neighbours the states of the United Provinces and other your Majesty’s friends and allies, and for the setting forth of your royal navy, we have resolved to give… three whole fifteenths and tenths. (The Subsidy Act 1624 : 21 & 22 James I, c. 33) 4)…. should draw and make one convenient and meet order, rite and fashion of common and open prayer and administration of the sacraments, to be had and used in his Majesty’s realm in England and in Wales; 1549 (The Act of Uniformiry 1549 : 2 & 3 Edward VI, c. 1) 5)….by reason whereof as well the spiritually as the temporally of your Highness’ realms and dominions have swerved from the obedience of the See Apostolic and declined from the unity of Christ’s Church, and so have continued, until such time as your Majesty being first raised up by God and set in the seat royal over us, and −61− 政策科学8−3,Feb.2001 then by… (Act restoring papal authority 1554 : 1 & 2 Philip and Mary, c. 8) 6)…Where of long time there hath been had in this realm of England and Wales divers forms of common prayer commonly called the service of the Church, that is to say, the use of Sarum, of York, of Bangor and of Lincoln;…….all and singular ministers in any cathedral or parish church, or other place within this realm of England, Wales, Calais and marches of the same, or other the king’s dominions, (The Act of Uniformiry 1549 : 2 & 3 Edward VI, c. 1) 7)Where by divers sundry old authentic histories and chronicles it is manifestly declared and expressed that this realm of England is an empire, and so hath been accepted in the world, governed by one supreme head and king having the dignity and royal estate of the imperial crown of the same (The Act of Appeals 1533 : 24 HenryVIII, c. 12) 8)…. no person nor persons…….within this realm or in any other the King’s dominions nor shall send nor procure there for any manner of bulls, briefs, palls or other things requisite for an archbishop or bishop, (The Annates Act 1534 : 25 Henry VIII.c. 20) 9)Albeit the dominion principality and country of Wales justly and righteously is and ever hath been incorporated, annexed, united and subject to and under the Imperial Crown of this realm, as a very member and joint of the same, whereof the king’s most royal majesty… is very head, king, lord and ruler; yet notwithstanding, because that in the same… principality… divers rights, wages, laws and customs be far discrepant from the laws and customs of this realm, and also because that the people of the same dominion have and do daily use a speech nothing like nor consonant to the natural mother tongue used within this realm, some rude and ignorant people have made distinction and diversity between the king’s subjects of this realm and his subjects of the said dominion and principality of Wales, whereby great discord, variance, debate, division, murmur and sedition hath grown between his said subjects; His Highness therefore, of a singular zeal, love and favour that he beareth towards his subjects of his said dominion of Wales, minding and intending to reduce them to the perfect order, notice and knowledge of his laws of this his realm, and utterly to extirp all and singular the sinister usages and customs differing from the same… hath… enacted and established that his said country or dominion of Wales shall be, stand and continue for ever from henceforth incorporated united and annexed to and with this his realm of England (Acts for the union of England and Wales 1536 : 27 Henry VIII, c. 26) 10)I, A. B., do utterly testify and declare in my conscience that the Queen’s Highness is the only supreme governor of this realm and all other her Highness’ dominions and countries, as well in all spiritual or ecclesiastical things or causes as temporal, (The Act of Supremacy 1559 : 1 Eliz., c. 1) 11)Whereas since the 20th year of King Henry VIII of famous memory, father unto your Majesty our most natural sovereign and gracious lady and queen, much false and erroneus doctrine hath been taught, preached and written partly by divers the natural-born subjects of this realm, and partly being brought in hither from sundry other foreign countries hath been sown and spread abroad within the same; (Act restoring papal authority 1554 : 1 & 2 Philip and Mary, c. 8) 12)Be it declared and enacted by this present parliament and by the authority of the same, that the people of England and of all the dominions and territories thereunto belonging, are and shall be, and are hereby constituted, made, established and con- firmed to be a Commonwealth and Free State, and shall from henceforth be governed as a Commonwealth and Free State by the supreme authority of this nation, the representatives of the people in parliament, and by such as they shall appoint and constitute as officers and −62− 法的言説におけるイギリス近代国家(梅川) ministers under them for the good of the people, and that without any king or young of Lords. (Act declaring England to be a commonwealth 19 March 1649) 13)The government of the Commonwealth of England, Scotland and Ireland and the dominions thereunto belonging……….[ I ] That the supreme legislative authority of the Commonwealth of England, Scotland, and Ireland, and the dominions thereunto belonging, shall be and reside in one person, and the people assembled in parliament: the style of which person shall be the Lord Protector of the Commonwealth of England, Scotland, and Ireland. [ II ]That the exercise of the chief magistracy and the administration of the government over the said countries and dominions, and the people thereof, shall be in the Lord Protector, assisted with a Council, the number whereof shall not exceed twenty-one, nor be less than thirteen………[XXXIII] That Oliver Cromwell, Captain-General of the forces of England, Scotland, and Ireland, shall be, and is hereby declared to be, Lord Protector of the Commonwealth of England, Scotland, and Ireland, and the dominions thereto belonging, for his life. (The Instrument of Government 1653) 14)1. That your Highness will be pleased, by and under the name and style of Lord Protector of the Commonwealth of England, Scotland and Ireland, and the dominions and territories thereunto belonging, to hold and exercise the office of chief magistrate of these nations (The Humble Petition and Advice 1657) 15)II …be declared, King and Queen of England, France and Ireland, and the dominions thereunto belonging, to hold the crown and royal dignity of the said kingdoms and dominions … (The Bill of Rights 1689) 16)An act for declaring the rights and liberties of the subject, and for settling the succession of the crown…….the crown and regal government of the kingdom of England, France, and Ireland, and the dominions thereunto belonging, should be and continue to your Majesty………all and every person and persons …..popish religion ….should be excluded, and ……uncapable to inherit, possess, or enjoy the crown and government of this realm, and Ireland , and the dominions thereunto belonging …. …..the succession of the crown in the protestant line , for the happiness of the nation and the security of our religion; and it being absolutely necessary for the safety, peace, and quiet of this realm,……be and is hereby declared to be the next in succession, in the protestant linde, to the imperial crown and dignity of the said realms of England, France, and Ireland, with the dominions and territories thereunto belonging …. (Act of Settlement 1701 : 12 and 13 William III, c. 2) 17)Where by divers sundry old authentic histories and chronicles it is manifestly declared and expressed that this realm of England is an empire, (The Act of Appeals 1533 : 24 HenryVIII, c. 12) 18)Albeit the dominion principality and country of Wales justly and righteously is and ever hath been incorporated, annexed, united and subject to and under the Imperial Crown of this realm, (Act for the union of England and Wales 1536 : 27 Henry VIII, c. 26) 19)…..this realm of England ……hath been accepted in the world, governed by one supreme head and king having the dignity and royal estate of the imperial crown of the same, (The Act of Appeals 1533 : 24 HenryVIII, c. 12) 20)…the king our sovereign lord, his heirs and successors, kings of this realm, shall be taken, accepted and reputed the only supreme head in earth of the Church of England, called Anglicana Ecclesia, and shall have and enjoy annexed and united to the imperial crown of this realm as well the title and style thereof, (The Act of Supremacy 1534 : 26 Henry VIII, c. 1) 21)Albeit the dominion principality and country of Wales justly and righteously is and ever hath been incorporated, annexed, united and subject to and under the Imperial Crown of this realm, as a very −63− 政策科学8−3,Feb.2001 member and joint of the same, whereof the king’s most royal majesty… (Act for the union of England and Wales 1536 : 27 Henry VIII, c. 26) 22)…such jurisdictions, privileges, superiorities and preeminences spiritual and ecclesiastical, ………. shall for ever by authority of this present parliament be united and annexed to the Imperial crown of this realm…… (The Act of Supremacy 1559 : 1 Eliz., c. 1) 23)Levying money for… the use of the crown, by pretence of prerogative, without grant of parliament… is illegal. (The Bill of Rights 1689) 24)II ……the sole and full exercise of the regal power be only in ,and executed by the said prince of Orange, …,after their deceases, the said crown and royal dignity of the said kingdoms and dominions to be the heirs.. Ⅳ…their said Majesties did accept the crown and dignity of the kingdoms of England, France, and Ireland, and the dominions thereunto belonging, …. Ⅷ…for preventing all questions and divisions in this realm, by reason of any pretended titles to the crown , and for preserving a certainty in the succession thereof , in and upon which the unity, peace, tranquillity, and safety of this nation doth ,…. …the entire, perfect, and full exercise of the regal power and government be only in, and executed by his Majesty, in the names of both their Majesties during their joint lives; and after their deceases the said crown…shall be and remain to the heirs of the body of her Majesty; and for default of such issue, to…the princess Anne of Denmark, and the heirs of her body; and for default of such issue, to the heirs of the body of his said Majesty Ⅹ…every King and Queen of this realm, who at any time hereafter shall come to and succeed in the imperial crown of this kingdom, ….. (The Bill of Rights 1689) 25)An act for declaring the rights and liberties of the subject, and for settling the succession of the crown…….the crown and regal government of the kingdom of England, France, and Ireland, and the dominions thereunto belonging, should be and continue to your Majesty…… ….all and every person and persons …..popish religion ….should be excluded, and ……uncapable to inherit, possess, or enjoy the crown and government of this realm, and Ireland , and the dominions thereunto belonging …. …..the succession of the crown in the protestant line , for the happiness of the nation and the security of our religion; and it being absolutely necessary for the safety, peace, and quiet of this realm,…. ….be and is hereby declared to be the next in succession, in the protestant linde, to the imperial crown and dignity of the said realms of England, France, and Ireland, with the dominions and territories thereunto belonging …. Ⅱ…every King and Queen of this realm, who shall come to and succeed in the imperial crown of this kingdom, ….. Ⅲ….in case the crown and imperial dignity of this realm shall hereafter come to any person, not being a native of this kingdom of England, this nation be not pbliged to engage in any war for the defence of any dominions or territories which do not belong to the crown of England, without the consent of parliament……. (Act of Settlement 1701 : 12 and 13 William III, c. 2) 26)….the said kingdom of Ireland hath been, is, and of right ought to be subordinate unto and dependent upon the imperial crown of Great Britain, as being inseparably united and annexed thereunto, and that Westminster had, hath, and of right ought to have full power and authority to make laws and statutes of −64− 法的言説におけるイギリス近代国家(梅川) sufficient force and validity, to bind the kingdom and people of Ireland. (The Declaratory Act (Ireland) 1720 : 6 George I, c. 5) 27)this present parliament may be adjourned, prorogued, or dissolved, before justice shall be duly executed upon delinquents, public grievances redressed, a firm peace between the two nations of England and Scotland concluded, and before sufficient provision be made for the repayment of the said monies so to be raised; (The Act against dissolving the Long Parliament without its own assent 1642 : 17 Charles I, c. 7) 28)And whereas it is and hath been found by experience that the office of a king in this nation and Ireland, and to have the power thereof in any single person is unnecessary, burdensome, and dangerous to the liberty, safety and public interest of the people, and that for the most part, use hath been made of the regal power and prerogative to oppress and impoverish… …..the office of a king in this nation shall not henceforth reside in or be exercised by any one single person; and that no one person whatsoever shall or may have or hold the office, style, dignity, power, or authority of king of the said kingdoms and dominions, or any of them, or of the prince of Wales. (Act abolishing the office of king 17 March 1649) 29)the Lord Protector, ….., shall have power, ….. to raise money for the purposes aforesaid; and also to make laws and ordinances for the peace and welfare of these nations where it shall be necessary, which shall be binding and in force, until order shall be taken in parliament concerning the same. (The Instrument of Government 1653) −65−
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