精神科における多職種チーム医療 日本の精神科医療では、欧米に比べはるかに長い入院期間が問題となって いました。しかし、近年、日本の入院医療においても、集中的に治療やリハ ビリテーションを行い、短期間で退院させる医療に変わってきています。 欧米の精神科医療機関では、入院治療期間の短縮化に大きく貢献し、入 院・通院医療、リハビリテーション等も含めた精神障害者の治療・援助の質 を向上させた大きな要因のひとつとして、多職種チームによる精神科医療や 地域における多職種チームでの援助があげられています。 (図1)多職種チームによる精神科医療 診療・治療方針 薬物療法、副作用の評価 医 看護師 師 精神保健福祉士 患 者 家族との連携・関係調整 社会保障・福祉制度関連援助 権利譲渡関連援助 退院支援、地域ケア計画の調整 薬剤師 入院オリエンテーション 精神看護・心理教育 心理士 作業療法士 医師の服薬説明のサポート 服薬自己管理等についての援助 52 看護師 心理検査・心理面接 各種心理療法 セルフケア、コミュニケー ション能力、作業能力など 各種生活機能の評価とリハ ビリテーション ▶▶ 第1部 精神障害を理解しよう 日本においても、多職種チーム医療は、精神科医療のみならず医療領域全 般において、広く取り入れられてきています。また、精神障害者の社会復帰 関連施設や制度などでも、多職種チームによる援助方法の有効性が注目され てきています。精神科の多職種チームは、各国ごとに職種や編成はさまざま ですが、日本の場合、精神科医、精神科看護師、作業療法士、心理士、精神 保健福祉士などの職種があげられることが多いです。最近の厚生労働省の委 員会などでは、ここに薬剤師も加え、精神科の多職種チーム医療の担い手と しているようです(図1) 。 多職種チーム医療では、本人の希望や意向に沿った問題解決に向けて、多 様な職種が相互に連携しながら、それぞれの専門性を生かして、総合的に援 助を行うことが原則となっています。また、精神医療的な問題のみならず身 体的な治療や社会的、心理的問題などの多様な問題にきめ細かく対応できる ため、本人のニーズに応えて、各職種がその専門的な治療・リハビリテー ション・社会復帰援助等を総合的かつ有機的に提供することができます。地 域においても、多職種チームの形態による援助方法を取り入れていくことに より、その症状や障害について、より多面的なアセスメントを行い、本人の ニーズに合わせた、きめ細かな援助を行うことができるようになってきてい ます(図2) 。 (図2)退院後の多職種チーム、関係機関の連携 地域生活 支援センター 外来面接 精神保健福祉士 訪問援助 看護師 精神保健福祉士 ヘルパー 本 外来診療 医師 人 外来面接 心理士 保健所 外来 作業療法士 福祉事務所 ケースワーカー 地域スタッフ・施設 医療チーム 53
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