1 エネルギー必要量と体重管理

国際オリンピック委員会「アスリートの栄養、健康と競技力のための食事実践ガイド」
熟練した測定者による皮下脂肪厚の定期的な測定
1 エネルギー必要量と体重管理
は、体脂肪の変化を知るための有用な情報とな
る。
日々のエネルギー摂取は、当面必要なエネルギー(体
尿中ケトン体は炭水化物の摂取量が少ない場合の
の機能、活動、成長)のを供給するとともに貯蔵エネル
指標となる。
ギーにも影響する。貯蔵エネルギーは運動能力に関係す
筋力や筋持久力の変化を測定することは、筋肉の
る多くのことにとって重要である。それは貯蔵エネルギ
発達の有用な指標となる。
ーが次のことに関係しているからである。
•体格(例えば体脂肪及び筋肉量)
エネルギー摂取を制限した場合に特に懸念されること
•体の機能(例えば筋肉量)
多くのアスリートは、体重と体脂肪を減少させるため
•運動のためのエネルギー(例えば筋肉及び肝臓のグリ
に摂取エネルギーを減らすが、体の機能が障害されるほ
コーゲン)
ど摂取エネルギーを減らすのは危険である。
多くのアスリートが自分のスポーツに役立つように、
「利用可能エネルギー」(energy availability)
これらを適切にコントロールしようとしている。ほとん
=「総摂取エネルギー」­「運動で消費するエネルギ
どの場合、体重を変化させたり、
athletes’ medical information
Energy availability = total dietary energy intake
– energy used in daily activity/exercise
There is good evidence from recent research
that when energy availability drops below
a daily intake of 30 kcal (135 kJ) per
kg fat-free mass (FFM), there are
substantial impairments of
metabolic and hormonal
function, which affect
performance, growth and health.
In females, one outcome of low
energy availability is a disturbance of
reproductive function and menstrual
regularity. Other problems are likely to
occur in male athletes.
Example of low energy availability:
60 kg female with 20% body fat =
48kg FFM
Daily energy intake is restricted to
1800 kcal (7560 kJ)
Cost of daily exercise (1 h/d) =
500 kcal (2100 kJ)
Energy availability = 1800-500 =
1300 kcal (5460 kJ)
Energy availability = 1300/48 or
27 kcal/kg FFM (113 kJ per kg FFM)
ー」
体脂肪を減らしたり、筋肉量を増
やしたり、貯蔵エネルギーを最も
最近の研究で、上記の利用可能エネルギーが30 kcal
よい状態にしたりすることが目標
(135 kJ)/kg除脂肪体重(fat-free mass, FFM)を下回る
である。次のような場合に問題が
と、代謝やホルモン機能が障害され、運動能力や成長、
起こることがある。
✦自分の競技と健康維持の両方に
健康に悪影響があることがわかっている。女性では利用
望ましい目標を見極めることがで
殖機能の障害や月経不順がある。男性アスリートにも悪
きない場合。
✦自分の目標を構成する個々のこ
影響が起きうる。
可能エネルギーが減少することによる影響の一つに、生
とがら(例えば、体重の変化と体
脂肪率の変化を区別できないと
利用可能エネルギーが少ない例
✦ 体重60 kgで体脂肪率20%の女性の除脂肪体重は
か、摂取エネルギーが貯蔵エネル
Athletes requiring advice for weight loss or fat
loss should seek guidance from a sports
nutrition expert such as a sports dietitian.
To avoid irreversible skeletal damage, athletes
with menstrual disorders should be immediately
referred to a medical expert for treatment.
ギーを供給するのに十分かどうか
48kg。
✦ 摂取エネルギーを1,800kcal(7,560kJ)に制限。
✦ 1時間の運動での消費エネルギーは500 kcal(2,100
など)を区別して捉えられない場
合。
✦代謝やホルモン状態を障害する
kJ)。
✦ 利用可能エネルギーは1,800kcal ‒ 50 kcal =
ほど摂取エネルギーを制限した場合。
1,300kcal(5,460 kJ)。
✦ したがって、除脂肪体重1 kgあたりの利用可能エネ
エネルギー摂取とエネルギーバランスの管理法
✦ アスリートは、貯蔵エネルギーとしての体脂肪と炭
ルギーは1300kcal
水化物(筋肉のエネルギー源)、そしてたんぱく質
48kg FFM = 27 kcal/kg FFM
(113 kJ/kg FFM)。
(筋肉量)の摂取量と消費量を、それぞれ管理しな
ければならない。これらの課題は、この小冊子の関
体重や体脂肪を減らすための助言の欲しいアスリート
係する部分で述べられている。
✦ アスリートは、食欲ではなくそれぞれの目標を達成
は、スポーツ栄養士などスポーツ栄養の専門家の協力を
するための計画にそって食べるべきである。この計
月経不順のアスリートは専門の医療担当者に治療につい
画をよりよくするためには、しばしばスポーツ栄養
て相談すべきである。
求めるべきである。不可逆的な骨の障害を防ぐために、
の専門家の協力が必要である。
✦ アスリートは、エネルギーに関係した目標の達成状
況を確認するために、いくつかの評価指標を持って
おくべきである。
体重はエネルギーバランスの指標として信頼性と
正確さに乏しい。アスリートは体重をモニターす
ることに、特に情報が正確に理解されていなかっ
たり、測定結果が誤って解釈されていたりする場
合、しばしばストレスを感じる。
1
国際オリンピック委員会「アスリートの栄養、健康と競技力のための食事実践ガイド」
ト、特に女子では、上記の摂取量ではグリコーゲン
2 トレーニング時及び回復期に
必要なエネルギー
回復のための炭水化物の必要量を満たすことが困難
なことがある。
炭水化物は運動のエネルギーとして重要だが体内の貯
蔵量が少ないため、毎日、炭水化物を含んだ食物を摂っ
特記事項
✦ 炭水化物摂取の指針は、エネルギー摂取量に占める
て再補充する必要がある。アスリートの毎日の食事は、
割合(%)で示されるべきではない。この表示は利
トレーニングのためのエネルギーと、次の運動までに筋
用者に分かりにくく、筋肉で必要なエネルギー量を
肉グリコーゲンを回復するのに十分な炭水化物が摂れる
ように計画しなければならない。一般的に、アスリート
考慮することもできない。
✦ アスリートは回復期にはアルコール飲料を飲みすぎな
の体格やトレーニングでの必要量に応じた炭水化物の必
いようにする。運動後の食事指針を守ろうとする意
要量が目標となる。しかし、実際の必要量は、アスリー
欲が低下するためである。アスリートは常にアルコ
ト一人ひとりによって異なり、総エネルギー必要量、ト
ール飲料の飲み方には注意すべきであるが、特に運動
レーニングのための必要量、そしてトレーニングプログ
後には気をつける。
ラムに応じて調節する必要がある。
グリセミックインデックスの中∼高い食品例
✦ ほとんどの朝食用シリアル
目標炭水化物摂取量
✦ 運動直後の回復(0∼4時間まで):約1g/kg体重/
✦ ほとんどの米食品
✦ 白パン及び黒パン
時を頻繁に分けて摂る。
✦ 中程度の時間及び強度のトレーニングからの回復:
✦ スポーツドリンク、ソフトドリンク
✦ 砂糖、ジャム、蜂蜜
5∼7g/kg体重/日
✦ 中∼高度の持久的なトレーニングからの回復:7∼
✦ 芋
✦ トロピカルフルーツとジュース
12g/kg体重/日
✦ 非常に強度の強い運動(一日4∼6時間以上)からの
回復:10∼12g/kg体重/日
栄養豊富な炭水化物食品と食事の組合せ
✦ 朝食用シリアルと牛乳
炭水化物を含んだ食物の選び方とグリコーゲンの回復を
✦ 味付けしたヨーグルト
最大にする方法
✦ 運動の間隔が8時間以下の場合、回復期間を最大限に
利用するために、現実的に可能な範囲で、1回目の
運動後はできるだけ早く炭水化物の摂取を開始す
athletes’ medical information
athletes’ medical information
る。回復期の初期に軽食を何度も摂ることは、炭水
化物の必要量を満たすのに役立つ場合がある。
✦ 長時間(24時間)の回復では、炭水化物の豊富な食
Fuel needs for training
and recovery
物の種類やタイミングは重要ではなさそうであり、一
Carbohydrate provides an important but
relatively short-lived supply of fuel for exercise
that must be refilled each day from
carbohydrate foods in the diet. The athlete’s
everyday eating plan needs to provide enough
carbohydrate to fuel their training program and
to optimise the recovery of muscle glycogen
stores between workouts. General targets can
be provided for carbohydrate needs, based on
the athlete’s size and the demands of their
training program (see Table below). However,
actual needs are specific to the individual
athlete and need to be fine-tuned with
consideration of the athlete’s total energy
needs, specific training needs and feedback
from their training performance.
than 8 hours, carbohydrate intake should
start as soon as practical after the first
session to maximise the effective recovery
time. There may be some advantages in
meeting carbohydrate targets as a series of
snacks during the early recovery phase.
During longer recovery periods (24 hours),
the pattern and timing of carbohydrate-rich
meals and snacks does not appear to be
critical, and can be organised according to
what is practical and comfortable for each
athlete. There is no difference in glycogen
synthesis when carbohydrate is consumed in
liquid form or as solid foods.
It is valuable to choose nutrient-rich
carbohydrates and to add other foods to
recovery meals and snacks to provide a
good source of protein and other nutrients.
These nutrients may assist in other recovery
processes, and in the case of protein, may
promote additional glycogen recovery when
carbohydrate intake is below targets or when
frequent snacking is not possible.
Carbohydrate-rich foods with a moderate to
high glycaemic index (GI) provide a readily
available source of carbohydrate for
glycogen synthesis, and should be the major
fuel choices in recovery meals.
Adequate energy intake is also important for
optimal glycogen recovery; the restrained
eating practices of some athletes,
particularly females, make it difficult to meet
carbohydrate intake targets and to optimise
glycogen storage from this intake.
人ひとりのアスリートに実施しやすい方法を用いれ
ばよい。グリコーゲンの回復は、炭水化物を液体で
摂った場合も固体で摂った場合も違いはない。
✦ 食事や間食に炭水化物だけでなく、その他の栄養素
も豊富な食物を選んだり、いろいろな食べ物を加え
Targets for carbohydrate intake
Immediate recovery after exercise (0-4
hours): about 1 g per kg BW of the
athlete’s body weight per hour, perhaps
consumed at frequent intervals
Daily recovery from a moderate
duration/low intensity training program:
5-7 g per kg BW per day
Recovery from moderate-heavy
endurance training: 7-12 g per kg BW
per day
Daily recovery from extreme exercise
program (more than 4-6 h+ per day):
10-12 g or more per kg BW per day
たりすると、たんぱく質や他の栄養素の補給に有効
である。これらの栄養素はグリコーゲン以外の回復
過程を促進し、たんぱく質に関しては、炭水化物の摂
取量が必要量より少なかったり頻繁に間食を摂れな
Strategies for choosing carbohydrate foods
and for optimising glycogen recovery
When the period between workouts is less
Special comments:
Guidelines for carbohydrate should not be
かったりする時に、グリコーゲンの回復を促進しう
る。
✦ グリセミックインデックス(GI、血糖指数)の中∼
高い炭水化物の豊富な食品は、グリコーゲン回復の
ための炭水化物補給源として利用できるので、回復期
の主要なエネルギー源として選ぶべきである。
✦ エネルギーを十分に摂ることはグリコーゲン回復に
とって重要である。エネルギー制限しているアスリー
2
provided in terms of percentage
contributions to total dietary energy intake.
Such recommendations are neither userfriendly nor strongly related to the muscle’s
absolute needs for fuel.
The athlete should not consume excessive
amounts of alcohol during the recovery
period since it is likely to interfere with their
ability or interest to follow guidelines for
post-exercise eating. The athlete should
follow sensible drinking practices at all times,
but particularly in the period after exercise.
Examples of carbohydrate foods with
moderate-high Glycaemic Index:
Most breakfast cereals
Most forms of rice
White and brown breads
Sports drinks and soft drinks
Sugar, jam and honey
Potatoes
Tropical fruits and juices
Examples of nutrient-rich carbohydrate
foods and meal combinations
Breakfast cereal with milk
Flavoured yoghurt
Fruit smoothie or liquid meal
supplement
Sandwich with meat and salad filling
Stir-fry with rice and noodles
国際オリンピック委員会「アスリートの栄養、健康と競技力のための食事実践ガイド」
レジスタンストレーニング(筋力トレーニング)をし
3 トレーニングと体づくりに
必要なたんぱく質
ている人では、2∼3g/kg体重/日よりも大量のたんぱく
質を摂っている場合があるが、筋肉量や筋力の増大に、
これほどの量のたんぱく質が必要とする科学的証拠はな
いつの時代にも、たんぱく質はアスリートが競技に勝
い。高たんぱく質食は必ずしも有害ではないが高価であ
つために、最も重要な栄養素と考えられて来た。古代オ
り、また他の栄養素(トレーニングや競技に必要なエネ
リンピックの頃には信じられないほどの大量の肉を食べ
ルギー源など)の不足の原因になることもある。
ていたという記録があるが、今日では、数多くのたんぱ
最近の研究では、持久系とレジスタンス系の両方のト
く質やアミノ酸のサプリメントを利用してたんぱく質を
レーニングに対する急性的な影響に焦点が当てられてい
大量に摂取できる環境にある。
る。回復期には、運動中に増加したたんぱく質分解を合
RECOVERY
たんぱく質は運動において重要な役割を持っている。
成に転じさせ、筋肉の肥大、修復、運動負荷に適応させ
たんぱく質が消化されることで得られるアミノ酸は、新
るために、たんぱく質バランスが増大することが望まし
い。これらの研究によって、たんぱく質と炭水化物をい
たな筋肉づくりの材料となったり、古くなった体の組織
Case study: Sydney Swans and PowerBar
ProteinPlus bars
Players from the Sydney Swans AFL club train numerous times per week.
っしょに摂ると、たんぱく質の回復に効果的なことが明
を修復する材料になったりする。たんぱく質は、体内の
Training sessions consist of football-specific
skills sessions, endurance work
and weight training sessions. Increasing lean muscle mass and strength is one
of the major goals for most players in the pre-season
period. Maintaining this
らかになってきた。運動後は速やかに、たんぱく質と炭
種々の代謝や機能を調整するホルモンや酵素の材料でも
strength and muscle is then important throughout the season.
水化物を摂取することが有効であり、レジスタンス運動
ある。たんぱく質が、筋肉でエネルギー源として使われ
Players who were identified as needing to increase
lean muscle mass were
る量はそれほど多くない。
provided with individualised nutrition plans to complement their weight session
goals. A key strategy for these players was to consume a snack providing
both carbohydrate and protein immediately after weight training. In the past,
a variety of recovery snack options had been tried. As a new strategy, the
Swans were given access to the PowerBar range of products. They selected
PowerBar ProteinPlus bars as an ideal post-weights snack, rating the taste and
convenience of this product highly. They were able to use the bars to provide a
nutritional recipe for refuelling and muscle growth.
では運動直前に摂取しておくことも効果的でありそう
だ。これらの栄養素の適正な摂取量、種類そして摂取タ
✦
イミングの指針を作成し、このような食べ方がトレーニ
持久的な運動でも筋力・パワー系の運動でもたんぱ
く質必要量は1.2∼1.6g/kg体重/日で、一般の人の
Having access to the right type of recoveryング効果を高めることを確認するためには、さらに研究
fuel means that the Swans players
are on the right path to build and maintain their muscular strength and mass
throughout
the
long
footy
season.
が必要である。
必要量である0.8g/kg体
重/日よりも多いとするス
ポーツ科学の専門家もい
今のところ、たんぱく質を大量
る。しかし、一般の人よ
に摂取するよりも、バランスの
りも必要量が多いかどう
とれた食事を摂ることと、たん
かについては明らかでは
ぱく質と炭水化物を含んだ食事
なく、完全に認められて
あるいは軽食の摂取タイミング
いるわけでもない。たん
に気をつけることのほうが大切
といえる。
ぱく質必要量の研究方法
上の問題が、これらの混
Sydney Swans reaping the rewards of PowerBar.
✦
乱の原因となっている。
たんぱく質と炭水化物をどこでも手軽に摂取出来る
サプリメントもあり、これらのものは日頃食べてい
アスリートのたんぱく質必要量が、一般の人よりも多
るものが手に入らなかったり、食事の量が多すぎて
いかどうかを議論する必要はほとんどない。というの
食べきれなかったりする場合には有効に利用出来
も、アスリートを対象にした食事・栄養調査では、ほと
る。しかし、経済的な負担になることを考える必要
んどのアスリートが、たんぱく質のサプリメントなしで
がある。非常に高価なたんぱく質だけのプロテイン
も、1.2∼1.6g/kg体重/日のたんぱく質を摂取しているか
パウダーやアミノ酸のサプリメントが有効だという
らである。したがって、ほとんどのアスリートは意識し
証拠はほとんどない。
てたんぱく質をたくさん摂取する必要はない。むしろ、
いろいろな種類の食べ物を食べていて、エネルギー摂取
たんぱく質の豊富な食品、10gのたんぱく質を摂るに
量が十分ならば(訳者注、体重が維持されていればエネ
ルギー摂取量は十分である)、どんなにトレーニングが
は、
✦ 鶏卵2個/牛乳300mL/脱脂粉乳20g/チーズ30g/
厳しくなって、仮にたんぱく質の必要量が増大した場合
ヨーグルト200g/肉、魚、鶏肉35-50g/パン4切/
でもたんぱく質は十分に摂れている。
朝食シリアル90g/調理したパスタ2カップまたはご
飯3カップ/豆乳400mL/ナッツあるいは種子類
✦
極端に食事量を減らしていたり、食べ物が偏ってい
60g/豆腐120g/豆類150g/ベークトビーンズ200g
たりする場合に、たんぱく質が不足する恐れがあ
/フルーツスムージーまたは流動食サプリメント
る。摂取エネルギーが十分であることも、たんぱく
150mL
質が体づくりに有効に利用されるために必要であ
る。
3
国際オリンピック委員会「アスリートの栄養、健康と競技力のための食事実践ガイド」
4 トレーニングと体調維持のための ビタミン、ミネラル、抗酸化物質
ない食事を解決することは出来ない(鉄の豊富な食品は
下記に紹介)。
カルシウム
長時間の運動や激しいトレーニング、とりわけ有酸素
カルシウムは思春期や女性にとって健全な骨のために
運動は身体に負荷を与える。エネルギー、たんぱく質、
重要なので、カルシウムを十分に摂取することは大切で
鉄、銅、マンガン、マグネシウム、セレン、ナトリウ
ある。最も良い供給源は乳製品である(低脂肪のもので
ム、亜鉛、そしてビタミンA、C、E、B6及びB12は健康
も良い)。アスリートは乳製品を毎日3サービングずつ
や運動能力にとって特に重要である。これらの栄養素
摂るようにする(例、牛乳コップ1杯、チーズ一切、ヨ
は、他の栄養素と同様に、野菜、果物、豆類、穀物、肉
ーグルト1カップ)。成長の活発な時期や思春期、そし
類、油脂、そして炭水化物エネルギーなどの、栄養価に
て妊娠・授乳期には、さらに必要である。カルシウムを
富んだ食品をいろいろと食べることで摂取出来る。食事
強化した大豆食品は、乳製品を摂ることの出来ないアス
調査によると、ほとんどのアスリートは日常の食事から
リートにとってカルシウムの良い供給源となる。
十分な量のビタミンとミネラルを摂取している。ビタミ
いろいろな食べ物を選び、栄養価の高い食事をする方法
✦ 新しい食べ物やレシピを気軽に試してみる
ンやミネラルが不足する恐れのあるのは以下のような人
である。
✦ 旬の食材を利用する
✦ 食事の時に、いろいろ組み合わせてみる
(1)体重減少するために長期間にわたってエネルギー
制限している人
✦ 食べないものを決める時に注意深く考える
✦ 果物と野菜を毎食必ず摂る。果物や野菜で色の濃い
(2)食べられる食品の種類が限られていたり、栄養価
の低い食品ばかり食べていたりする人
ものは、ビタミンや抗酸化栄養素が豊富な印。色の濃
いものを選んで健康の維持に役立つ栄養素をしっかり
最もよい改善方法はスポーツ栄養の専門家のアドバイ
摂るようにする
スを受けることである。食事環境が悪い場合、例えば食
べられるものが見つけにくい地域や国へ遠征した時や、
<鉄を不足させない食事のポイント>
✴ 1週間に3∼5回、赤身の肉(吸収のよい鉄を含
ある特定のビタミンやミネラルが不足していることが明
らかになった場合は、サプリメントが役立つ。サプリメ
む)を適度に食べる。
✴ 朝食用シリアルのように鉄を強化したシリアル製品
ントはスポーツ栄養の専門家のアドバイスを受けてから
利用すべきである。サプリメントを利用する場合は、ま
あるが(例えば鉄欠乏性貧血なら鉄の補給が必要)、食
を選択する。
✴ 野菜など肉類ではないが鉄を多く含む食品(例え
べられる食品の種類が制限されている場合は、一般的に
ば、豆類、シリアル、卵、青菜)は、鉄の吸収を促進
マルチビタミンあるいはマルチミネラルを利用するのが
する食品と組み合わせて食べるとよい。鉄の吸収を
良い方法である。
促進する食品には、ビタミンCや肉類/魚類の成分が
ず不足している栄養素が何かを明らかにしておく必要が
含まれる。賢い組み合わせの一例は、朝食用シリア
ルと果物・果汁ジュース、チリコンカン(豆と肉の煮
抗酸化栄養素
込み料理)である。
激しいトレーニングをすると抗酸化栄養素の必要量が
athletes’ medical information
athletes’ medical information
増大するかどうかは、はっきりしていない。それは、バ
ランスのとれた食事を摂っていれば、身体に備わってい
る防御機構が活発になるからである。抗酸化物質の追加
Vitamins, minerals and anti-oxidants
補給は、有効性に関する根拠がほとんどないことと、摂
for training and staying well
り過ぎが体内の防御機構を低下させることが知られてい
るため、好ましいとは言えない。
特に気をつける必要のあるのは鉄とカルシウム
鉄
Strenuous bouts of prolonged exercise and
heavy training, particularly aerobic exercise,
stress the body. Adequate intakes of energy,
protein, iron, copper, manganese, magnesium,
selenium, sodium zinc, and vitamins A, C, E, B6
and B12 are particularly important to health
and performance. These nutrients, as well as
others, are best obtained from a varied and
wholesome nutrient-rich diet based largely on
vegetables, fruits, beans, legumes, grains,
animal meats, oils and carbohydrate energy.
Dietary surveys show that most athletes are
well able to meet the recommended intakes for
vitamins and minerals by eating everyday
foods. Those at risk of sub-optimal intakes of
these micronutrients include:
athletes who restrict their energy intake,
especially over long periods, especially to
meet weight loss goals
athletes who follow eating patterns with
restricted food variety and reliance on foods
with a poor nutrient-density
The best way to correct this situation is to seek
advice from a sports nutrition expert such as a
sports dietitian. When food intake cannot be
adequately improved – for example, when the
athlete is travelling in a country with a limited
food supply – or if an individual is found to be
suffering from a lack of a particular vitamin or
mineral, then supplementation can be
warranted. This should be undertaken with the
advice of a qualified sports nutrition expert. In
general, a broad-range multivitamin/mineral
supplement is the best choice to support a
restricted food intake, although targeted
nutrient supplements may be necessary to
鉄不足のために運動能力が低下しているアスリートが
いる。明らかな理由もなく疲れやすい、特に菜食主義の
アスリートでは検査すべきである。鉄のサプリメントを
日常的に利用するのは良くない。というのも過剰なのは
不足と同じように危険だからである。素人判断で鉄のサ
プリメントを利用しても、疲労の根本的な原因や適切で
4
correct an established nutrient deficiency (e.g.
iron deficiency).
Anti-oxidant nutrients
It is not known whether hard training increases
the need for dietary antioxidants, as the body
naturally develops an effective defence with a
balanced diet. Supplementation with
antioxidants cannot be recommended because
there is little evidence of benefit, while it is
known that over-supplementation can diminish
the body's natural defence system.
Ideas for promoting dietary variety
and nutrient-rich eating
Be open to trying new foods and new
recipes
Make the most of foods in season
Explore all the varieties of different
foods
Mix and match foods at meals
Think carefully before banishing a food
or group of foods from your eating
plans
Include fruits and vegetables at every
meal. The strong colours of many fruits
and vegetables are a sign of a high
content of various vitamins and other
food anti-oxidants. Aim to fill your plate
with highly coloured foods to ensure a
good intake of the range of these
health-promoting dietary
compounds
Special concerns
Iron. Some athletes may develop iron
deficiency and this will impair
performance. Unexplained fatigue,
especially in vegetarian athletes should be
explored. Routine use of iron supplements
is not wise: too much is just as harmful
as too little. Self-medication with iron
supplements may not address the real
causes of an athlete’s fatigue or other
issues of poor eating. See Section 11 for
iron-rich eating strategies.
Calcium. Calcium is important for healthy
bones, especially in adolescents and in
female athletes, so it is important to
ensure adequate calcium intake. The best
sources are dairy produce, including low
fat varieties. Each athlete should aim to
include at least 3 servings of these foods
in their daily eating plans (e.g. glass of
milk, slice of cheese, carton of yoghurt).
Additional daily servings are required
during growth spurts in childhood and
adolescence, and for pregnancy and
lactation. Fortified soy foods may provide
a useful substitute where athletes
cannot consume dairy foods.
国際オリンピック委員会「アスリートの栄養、健康と競技力のための食事実践ガイド」
くでなく、試合の2、3日前からカーボローディングを
5 試合前の栄養・食事
行った場合には、炭水化物は欲しくなければ摂らなくて
もよい。
多くのアスリートは試合や量、質ともに高い練習の前
の2、3日間は、十分な休養と食事が大切なことを認識
アスリートが間違えやすいことに、運動の1∼6時間
している。しかし、「いつ」「何を」「どのくらい」食
前の炭水化物摂取量が少なすぎる(例えば1g/kg体重以
べるかという問題がある。また試合や激しいトレーニン
下など)ことと、その後の運動中に炭水化物を摂らない
グの直前6時間以内に何を食べるかという問題もある。
ことがある。この少量の炭水化物は血液中のグルコース
(血糖)の消費を増大するが、運動を継続するために十
分ではない。
炭水化物がエネルギー源として最も大切な栄養素であ
IMMUNE FUNCTION
り、試合前の数日間とともに試合当日にも適切に摂取し
ておく必要がある。水分や塩分を十分に補給しておくこ
とにも留意しなければならない。しかし、試合の2∼4日
前は、たんぱく質、脂肪とともにその他の栄養素が必要
だが、通常のトレーニング時の必要量を超えることはな
い。
カーボローディング
およそ90分以上の激しい競技をするアスリートには、
2、3日間の炭水化物ローディング(カーボローディン
Kate Bates - National, Oceania, Commonwealth, Cycling Champion.
グ)が効果的である。筋肉のグリコーゲン量を通常より
Nutrition strategies to boost immune function in athletes
Athletes undertaking regular strenuous exercise walk a knife-edge between extreme
physical wellbeing and impaired immune function. Research indicates that athletes are
も多く貯蔵するには、練習量及び時間を減らすとともに
試合前に140gの炭水化物を供給できる5つの食品例
at increased risk of upper respiratory tract infection during periods of heavy training
and 1–2 weeks following competitive events. This increased risk is most likely due to
炭水化物を大量(8∼10g/kg体重/日)に摂取する。ま
the immunosuppressive actions of stress hormones such as adrenaline and cortisol.
(体重70kgの人が2g/kg体重の炭水化物を摂る場合)
Many athletes turn to supplements to boost their immune system. However, research
indicates that immune suppression is multifactorial and no one supplement will
✦ 朝食用シリアル2カップ半+牛乳+バナナ大
た、試合前の週のある時期に中∼高強度の運動を疲労困
address the problem. The athlete should try a range of useful strategies:
憊まで行う。
✦ 大きめのロールパンまたは蜂蜜を厚く塗った厚切りパ
• Manage training loads and daily physical activity associated with work and other
routine activities.
ン3枚
• Manage psychological stress including stress associated with work, family, training
カーボローディングのために一日に630gの炭水化物の
and competition.
摂れる食品例(体重70kgの人が9g/kg体重の炭水化物
✦ ご飯2カップ+パン2枚
• Incorporate sufficient rest.
• Minimise exposure to germs and bugs by practicing good hygiene.
✦ パンケーキ4枚+シロップ
を摂る場合)
✦ 朝食で150g。2カップのシリアルと牛乳+250mLの
✦ スポーツバー60g+流動食サプリメントまたはフルー
• Ensure adequate (quality) sleep.
ツスムージー500mL
フルーツジュース+バナナ1本+ジャムを厚く塗った
厚切りトースト2枚
✦ 昼前に50g。500mLのソフトドリンク
✦ 昼食で150g。大きめのロールパン1つ+中くらいの
これ以外の食品も食事で食べてもよいことに注意。
試合前の水分補給の方法
マフィン1つ+フルーツスムージー
アスリートは試合当日の朝に体内に十分な水分を蓄え
✦ 間食で50g。200gのフルーツヨーグルト+250gのフ
ておくために、試合前日は食事とともに水分を十分に摂
ルーツジュース
る必要がある。試合前のウォーミングアップまでの間、
✦ 夕食で200g。調理したパスタ3カップ+果物サラダ
水分や炭水化物を含んだ飲料の摂取は禁止すべきでな
2カップ+アイスクリーム2すくい+スポーツドリン
く、試合開始60∼90分前におよそ400∼700mL飲用す
ク500mL
ることが勧められる。こうしておけば不要な水分は尿と
✦ 夜食で30g。チョコレート50g
して排泄されるのに十分な時間があるし、トイレを探す
のに慌てなくて良い。試合が1時間以上続き発汗も多く
試合前6時間の炭水化物
試合中に水分補給する機会のない場合は、試合前の15分
アスリートには、試合前に好む食べる物があることが
間に300∼600mLの水分を補給しておくと良い場合が多
ある。それらはエネルギー源を追加補給するだけではな
い。
く空腹感をなくすなど、食べやすいとともに実用的なも
のでもある。疲労困憊したり炭水化物が枯渇したりしな
い競技・種目(例えば体操競技やスキージャンプなど)
では、競技前の食事で炭水化物を中心にして摂る必要は
ない。しかし、激しい競技が60分以上続くような場合は
次の2つのどちらかを選ぶ。(1)試合前6時間の間に
1∼4g/kg体重の炭水化物を摂るか、(2)試合が午後遅
5
国際オリンピック委員会「アスリートの栄養、健康と競技力のための食事実践ガイド」
50%以上含まないシロップ、ブドウ糖)、マルトデキ
6 運動中と運動後に必要な水分、
炭水化物 (糖質)、塩分
ストリンやその他の吸収されやすい炭水化物などが
ある。
✦ 炭水化物を、運動直前や長時間の試合(40分以上)
アスリートは運動中の水分補給が大切なことは認識し
の休憩時に摂り、試合中も1時間あたり20∼60gを継
ており、炭水化物や塩分を加えなければならない場合が
続して摂ると効果的な場合がある。血糖値が維持出来
あることも知っている。次の段階は、運動能力やコンデ
ィションを最高の状態にするために、この知識を実際に
るためである。
✦ ナトリウムは、1∼2時間以上の運動やナトリウムの
応用することである。すなわち、「どのくらい」「どん
損失量が大きな(3∼4g以上)人では飲料に加えるべ
なものを」「どういうタイミング」で飲めばよいか、そ
して「暑いときと寒いとき」にはどのように調整すれば
きである。
✦ 市販の飲料や食品によく含まれているカフェインは、
よいかということである。通常のトレーニングや試合の
持久的な運動の最後の場面で持久力を高める可能性
戦略が個々の選手の個性や好みによって調整されるよう
がある。この効果は、さまざまな国や地域で普通に
に、運動中に摂取したり飲用したりするものも個別に考
摂取されている比較的少量(およそ1.5mg/kg体重。
える必要がある。アスリート、コーチそしてトレーナー
例えば100mLのコーヒーや500∼750mLのコーラ飲
は、以下に勧められていることをもとに勝つために必要
料)で得られる可能性がある。
な補給方法を工夫して作り出すようにする。
発汗・脱水量を知る方法
1.少なくとも1時間の試合や激しいトレーニングと同じ
どのくらい飲めばよいか
条件の、運動の前後で体重を測定する。
運動中や試合中は脱水を防ぐために、出来るだけ発汗
した量と同量を飲用するようにし、体重の減少を最低限
2.体重の測定は、衣類は最小限とし裸足で行う。運動後
に抑える。必ずしも体重が減少しないように飲用する必
はタオルでよく体を拭き、出来るだけ早め(例えば、
要はないかもしれないが、体重の2%以上の脱水はしな
運動後10分以内)に測定する。
3.発汗・脱水量(リットル)=運動前の体重(kg)­運
いようにすべきである(体重50kgの人なら1.0kg、体重
動後の体重(kg)
75kgの人なら1.5kg、体重100kgの人なら2.0kg)。
気温が高い場合は出来るだけ脱水しないようにする。
4.1時間あたりの発汗量に換算するには、発汗量を運動
脱水と強度の高い運動は相乗的に熱中症を引き起こすか
時間(分)で除して60を乗ずる(例えば90分の運動
らである。
で2リットル発汗した時の1時間あたりの発汗量は、
2(リットル)
運 動 中 に 体 重 が 増 加 す る ほ ど 飲 んで は い け な い 。
90(分)
60(分)=1.3リット
ル/時間)。
42kmのマラソンでの必要量も2∼4リットルを超えるこ
とはない。
運動後の水分補給
発汗量が多く30分以上継続する運動で飲水が不可能な
場合は、運動前の15分間に、運動し始めても気分が悪く
発汗で失った水分を補給することは、回復過程で必須
ならないで飲用出来る量(例えば、300∼800mL)を、
なことの一つである。汗で失われた水分と塩分を補給し
前もって試して知っておくと良い。
なければならない。トレーニングや試合での体重減少1
kgあたり1.2∼1.5リットル飲むようにする。何も食べな
い場合には、飲料はナトリウム(汗で失われる主要な塩
分)を含んでいる必要がある。電解質を含んだスポーツ
athletes’ medical information
athletes’ medical information
どんな時に水以外のものが必要か
✦運動能力を高めるということに
飲料は塩分補給の助けになるが、必要な塩分は多くの食
関しては、水分と炭水化物以外に
品から摂ることが出来る。発汗が多い場合、食事の塩分
科学的に証明されたものはない。
IOC Consensus Statement
on Sports Nutrition 2003
References
を少し多めにして塩分補給に役立てることが出来るが、
✦継続時間が1時間以上で疲労困
憊するような運動では、血糖に転
Nutrition for the athlete is based on
information discussed at the IOC Consensus
Conference on Nutrition for Sport, held in
Lausanne in June 2003. The papers presented
at that meeting were published as a Special
Issue of the Journal of Sports Sciences
(Volume 22 No.1. January 2004)
The amount, composition and timing of food
intake can profoundly affect sports
performance. Good nutritional practice will help
athletes train hard, recover quickly and adapt
more effectively with less risk of illness and
injury. Athletes should adopt specific nutritional
strategies before and during competition to
help maximise their performance. Athletes will
benefit from the guidance of a qualified sports
nutrition professional who can provide advice
on their individual energy and nutrient needs
and also help them to develop sport-specific
nutritional strategies for training, competition
and recovery.
A diet that provides adequate energy from
the consumption of a wide range of commonly
available foods can meet the carbohydrate,
protein, fat, and micronutrient requirements of
training and competition. The right diet will help
athletes achieve an optimum body size and
body composition to achieve greater success in
their sport. When athletes restrict their food
intake, they risk nutrient deficiency that will
impair both their health and their performance.
Careful selection of nutrient-dense foods is
especially important when energy intake is
restricted to reduce body and/or fat mass. Fat
is an important nutrient and the diet should
contain adequate amounts of fats.
Athletes should aim to achieve carbohydrate
intakes that meet the fuel requirements of their
training programs and also adequately replace
their carbohydrate stores during recovery
between training sessions and competition. This
can be achieved when athletes eat
carbohydrate-rich snacks and meals that also
provide a good source of protein and other
nutrients. A varied diet that meets energy needs
will generally provide protein in excess of
requirements. Muscle mass is maintained or
increased at these protein intakes, and the
timing of eating carbohydrate and protein may
affect the training adaptation.
A high carbohydrate intake in the days
before competition will help enhance
performance, particularly when exercise lasts
longer than about 60 minutes. Dehydration
impairs performance in most events, and
athletes should be well hydrated before
exercise. Sufficient fluid should be consumed
during exercise to limit dehydration to less than
about 2% of body mass. During prolonged
exercise the fluid should provide carbohydrate.
Sodium should be included when sweat losses
are high especially if exercise lasts more than
about 2 hours. Athletes should not drink so
much that they gain weight during exercise.
During recovery from exercise, rehydration
should include replacement of both water and
salts lost in sweat.
Athletes are cautioned against the
indiscriminate use of dietary supplements.
Supplements that provide essential nutrients
may be of help where food intake or food
choices are restricted, but this approach to
achieving adequate nutrient intake is normally
only a short term option. The use of
supplements does not compensate for poor
food choices and an inadequate diet. Athletes
contemplating the use of supplements and
sports foods should consider their efficacy, their
cost, the risk to health and performance, and
the potential for a positive doping test.
Excessive training and competition are
塩のタブレットを使う場合には注意が必要である。
換されやすい炭水化物を1時間あ
運動後の回復は次の運動のための準備でもある。した
たり20∼60g摂取することが勧め
がって、筋力系やパワー系も含むどんな競技・種目にお
られる。これは通常、運動能力を
いても、運動開始時に十分に給水されていなければ最高
向上させる。
✦炭水化物の濃度が4∼8%(4∼
のパフォーマンスを発揮することは出来ない。
8g/100mL)の市販のスポーツ飲
ちょうど靴のように、これまでおこなったことがない水
料によって、ほとんどの場合に水
分補給法やエネルギー補給法を、大切な試合で使っては
1. Energy balance and body composition in
sports and exercise Anne Loucks
2. Carbohydrates and fat for training and
recovery Louise Burke, Bente Kiens, John Ivy
3. Pre-exercise carbohydrate and fat ingestion:
effects on metabolism and performance Mark
Hargreaves, John A Hawley, Asker E Jeukendrup
4. Fluid and fuel intake during exercise Ed Coyle
5. Fluid and electrolyte needs for preparation and
recovery from training and competition
Susan Shirreffs, Samuel Cheuvront, Lawrence
Armstrong
6. Protein and amino acids Kevin Tipton,
Bob Wolfe
7. Dietary antioxidants and exercise Scott
Powers, Keith C DeRuisseau, John Quindry,
Karyn L Hamilton
8. Dietary supplements Ron Maughan, Doug
King, Trevor Lea
9. Exercise, nutrition and immune function
Mike Gleeson, Bente Pedersen, David Nieman
10. Nutritional strategies to influence adaptations
to training Lawrence Spriet, Marty Gibala
Commentaries
1. Protein and amino acid requirements of
athletes D. Joe Millward
2. Exertional Hyponatraemia Lawrence
E. Armstrong
分と炭水化物の両方の必要量を同
いけない。必ず事前に試してみて自分に適した方法を見
時に摂取出来る。この場合の炭水
つけるようにする。
化物には、糖分(砂糖、果糖を
6
国際オリンピック委員会「アスリートの栄養、健康と競技力のための食事実践ガイド」
筋肉増強に関わる成分には、クロミウム、ボロン、ヒ
7 サプリメントとスポーツ食品
ドロキシメチル酪酸、コロストロム(初乳)などがあ
る。これまでの研究の結果、これらのいずれもアスリー
アスリートはサプリメントに多くの効果を期待してい
トに勧める根拠は乏しい。
て、それらには以下のようなものがある。
(1)トレーニング効果を高めること
(2)エネルギー補給を増やすこと
エネルギー補給の増強
(3)回復を促進することで、より効果的で強度の高い
このカテゴリーにはカルニチン、ピルビン酸、リボー
トレーニングが出来るようになること
ス、そして、多くの珍しいハーブ類等から出来たものが
(4)健康を維持し、怪我や病気、疲労によってトレー
ある。これらのどれも運動能力を高めるようなことはな
ニングが中断されることがないようにすること
く、いろいろな情報があるが信頼出来る証拠は乏しい。
(5)競技能力を高めること
栄養と免疫能
サプリメントは男女を問わずスポーツする人に広く利
激しいトレーニングをしているアスリートは、感染症
用されているが、科学的な裏付けを持っていないものも
や軽い病気に罹りやすい場合のあることが知られてい
ENERGY BALANCEる。通常はそれほど深刻なものではないが、トレーニン
グを中断したり大切な試合に出場出来なくなったりする
少なくなく、なかにはアスリートにとって危険なものも
ある。アスリートはサプリメントを利用する前に、それ
Tips for a achieving a varied diet
らを利用することの危険性と有用性とをよく考えるべき
こともある。トレーニングが免疫能を低下させたり、ス
である。
トレスホルモンを上昇させることで感染に対する防御能
Include wholesome cereal foods such as wholemeal, multi-grain or seeded breads, fibre-rich
cereals, brown rice or wholemeal pasta.
Select a wide variety of fruit and vegetables during the day. Fresh fruit makes an excellent,
portable nutritious snack between training. Add a range of colourful vegetables to stir-fries and
meals — the more colour the better.
Include different salad or vegetable choices on sandwiches. It is easy to fall into the trap of
having plain sandwich fillings at lunch, particularly when you are busy and have numerous
work, study and training commitments.
Plan ahead so you will not have to rely on take-away meals or snacks. Prepare lunch the night
before and pack a variety of portable, nutritious snacks in your training bag.
必須のビタミンやミネラルが不足していたり、それら
が低下したりする。
を食事から摂ることが出来ない状況下ではサプリメント
免疫能を高めると宣伝されている、グルタミン、亜
が役立つ場合がある。しかし、サプ
鉛、エキナシア、コロストロムなど
リメントを利用することで、食べ物
を含んだサプリメントが市場にある
の選び方が間違っていることや、食
が、これらが有用であるというきち
事が適切でないことが解決出来るわ
んとした証拠はない。高炭水化物食
けではない。多くのアスリートがサ
を摂ることと適切に休息を取ること
プリメントを利用するにあたって、
が、ストレスホルモンを減少させる
それが必要かどうかをよく考えるこ
のに大切なことには信頼出来る証拠
とがなく、必要なかったり危険なほ
がある。
どの量を摂っていたりすることがあ
る。
骨・関節のためのサプリメント
激しいトレーニングは骨、関節等の組織を損傷し、こ
プロテインパウダーなどのサプリメント
れらの組織にとって有用だと宣伝されているサプリメン
プロテインサプリメント、高たんぱく質バー、そして
トが数多くある。骨の健康にはカルシウムとビタミンD
アミノ酸サプリメントはスポーツ栄養の分野で最もよく
の補給が必要である。ほとんどの場合、これらの栄養素
利用されているものの一つである。たんぱく質を適切に
は食事から摂ることが出来る。骨密度が低いアスリート
摂ることは筋肉の肥大や修復に必要不可欠だが、必要な
は、専門家にアドバイスしてもらいスポーツドクターの
たんぱく質は日々の食事で、それほど無理なく摂ること
治療を受けるべきである。
が出来、それ以上のたんぱく質が必要なことはそれほど
グルコサミン、コンドロイチン、メチルスルホニルメタ
多くない(3トレーニングと体づくりのために必要なた
ン(MSM)などを含んだサプリメントは関節の健康増
んぱく質、参照)。
進に役立つ。グルコサミンを長期間(2∼6ヶ月)使用
たんぱく質と炭水化物を含んだサプリメントは、運動
すると変形性関節症の高齢者で、自覚的症状が緩和され
後の回復期の栄養補給に利用出来る場合があるが、たん
るという証拠がある。しかし、健康なアスリートにも有
ぱく質のほうが個々のアミノ酸よりも利用しやすい。
用かどうかはほとんど分かっていない。
体脂肪減少と筋肉づくり
有効な可能性のあるサプリメント
「体脂肪を減少し、筋肉を肥大・増強させる」と宣伝
運動能力を高める可能性のあるサプリメントも存在す
されているサプリメントが非常に多くあり、これらの宣
る。クレアチン、カフェイン、重炭酸、そしてその他の
伝はアスリートにもそうでない人にも魅力的である。
ごく少数のものである
現実には、実際に効果のあるものには、禁止されてい
(1)クレアチン
る物質が含まれていたり、健康を害する危険性があった
クレアチンは筋肉にエネルギーを貯蔵しているクレア
りする。
7
Energy Balance / 8
国際オリンピック委員会「アスリートの栄養、健康と競技力のための食事実践ガイド」
チンリン酸の量を増大して、1回だけ、あるいは数回の
8 サプリメントとドーピング問題
スプリント能力を高めるかもしれない。また、筋肉量を
増大するかもしれないが、この変化が望ましいアスリー
国内や海外での試合でドーピング検査を受ける可能性
トもいればそうでないアスリートもいる。すべてのサプ
のあるアスリートは特に、サプリメントの利用には注意
リメントと同様に、大量に摂れば摂るほど有用というこ
すべきである。
とはない。クレアチンは肉や魚に含まれているが、サプ
サプリメントには非衛生的な環境下で製造されていた
リメントによる摂取量(初めの4∼5日間の負荷期間は
り、胃腸障害を起こすような毒素を含んでいたりするも
10∼20 g/日、その後の維持期間は2∼3 g/日)は、通常
のもある。また、特に高価なものの中にも、ラベルに表
の食事で摂れる量よりも多い。クレアチンは健康には悪
示されている成分が含まれていないものもある。ドーピ
影響はなさそうである。
ングテストで陽性になる物質が混入しているサプリメン
(2)カフェイン
トが広く出回っており、4品目に1品目で陽性になる危
少量のカフェイン(1∼3mg/kg体重)は持久的な運動
険性があるとする調査結果がある。禁止物質を含むこと
で役立つかもしれず、短時間の運動でも役立つかもしれ
はラベルに記載されていないので、禁止物質が含まれて
ない。この程度の量は、日常的に摂取しているコーヒ
いるかどうかをアスリートが知る手立てはない。
ー、コーラ飲料、その他のスポーツ食品(ゼリーなど)
現在のところ、市販のサプリメントが禁止物質を含ま
に含まれている。例えば、100 mgのカフェインはカッ
ないという保証はない。最も確実な方法はサプリメント
プ1杯のコーヒーや750 mLのコーラ飲料に含まれてい
を全く使わないことだが、多くのアスリートは、このア
る。カフェインは大量に摂取すると、さらに効果的だと
ドバイスをすすんで受け入れようとはしない。賢明なア
いうことはなさそうであり、競技後に過剰に覚醒したり
スリートはサプリメントを利用するかどうか決める前
眠れなくなったりするという悪影響があるかもしれな
に、利用する価値が十分にあり、ドーピングテストで陽
い。これは数日間続く競技や、予選と決勝等がある場合
性になる危険性がほとんどないことを知りたいと思うだ
には問題となるだろう。
ろう。
(3)重炭酸
アンドロステンジオンやノルアンドロステンジオンな
激しい運動では、筋肉で乳酸が生成する。これには良
どのプロホルモンが筋肉量や筋力の増大に有効なことを
い面(激しい運動を可能にするエネルギーを供給)と悪
示す証拠はない。これらのプロホルモンは、アスリート
い面(痛みを引き起こし筋肉の動きを妨害する)があ
たちの利用を促すよう宣伝されており、店頭やインター
る。胃酸過多が重炭酸で中和されるのと同様に、運動前
ネットで簡単に入手出来る。しかし、これらを利用する
に重炭酸ナトリウム(およその投与量、0.3g/kg体重)
ことは健康被害につながるとともにドーピングテストで
を摂ると乳酸による悪影響に対処出来るかもしれない。
陽性になることにつながる。
この処方は、1∼8分間ほど続き、疲労困憊する運動で役
ハーブを利用した多くのサプリメントが、テストステ
立つかもしれないが、胃腸の問題を引き起こす危険があ
ロンのレベルを上昇させ、同化作用があると宣伝されて
るので、トレーニング時に試しておく必要がある。
いる。これらのサプリメントには、トリビュラス
(Tribulis)、テレストリス(Terrestris)、クリシン
エネルギーや種々の栄養を、特徴的な組成で手軽に供
(Chrysin)、インドール-3-カルビノール(Indole-3-
給出来るスポーツ食品が数多く開発されている。これら
Carbinol)、ノコギリソウ(Saw)、パルメット
は、食べられるものが入手出来ないような状況で必要な
(Palmetto)、ガンマオリザノール(Gamma-
栄養素を補給するのに役立つ。こういう状況は、試合の
oryzanol)、ヨヒンビン(Yohimbine)、スミラックス
直前、試合中、試合後などにしばしば起きる。役に立つ
(Smilax)、ムミオ(Mummio)などが含まれる。こ
スポーツ食品の例には以下のようなものがある。
れらの宣伝のすべては試験管の中で行われた実験にもと
(1)スポーツ飲料(運動中に水分と炭水化物を補給)
づいていて、どれもヒトで効果があることは示されてい
(2)スポーツゼリー(特に運動中の炭水化物の追加補
ない。アスリートは、これらのサプリメントには注意す
給)
る。
(3)液体(流動)食(試合前の食事、運動後の回復
期、また高エネルギー食で、炭水化物、たんぱく質、ビ
1.アスリートは食べたり飲んだりしたものに責任がある
タミン、ミネラルの補給)
という、厳しい責任主義があることを知っておかなけ
(4)スポーツバー(炭水化物、たんぱく質、ビタミ
ればならない。
ン、ミネラル。多くは固形あるいは液体状)
2.知らなかったということは、ドーピングテストで陽性
もちろん、利用するかどうか決める場合は、スポーツ食
になった場合のいいわけにはならない。
品の価格も考慮することが必要である。
3.医療担当者とともに、すべてのサプリメントをチェッ
クし、疑わしいものは利用しない。
8
国際オリンピック委員会「アスリートの栄養、健康と競技力のための食事実践ガイド」
エネルギー必要量の多いアスリートでは、一日に摂取
9 持久系スポーツの栄養・食事
するものを食事と間食などに分けると有用なことがある
厳しい持久運動のトレーニングでは、1日1回あるい
かもしれない。炭水化物を補給出来る飲料(スポーツド
は2回の練習がある。エネルギーを十分に回復していな
リンク、ソフトドリンク、ジュース類、フルーツスムー
いと、疲労しやすかったりトレーニング効果があがらな
ジー、ミルクセーキ)も少量でエネルギーを再補充出来
かったりする。
る方法である。
体脂肪が少ないことは競技に有利な可能性があるの
体重が軽くて体脂肪が少ない体格を獲得するのに鍵と
で、アスリートの中には体脂肪を少なくすることに異常
なる方法は、脂肪の少ない物を食べ、分量に気を配るこ
なほどに取り組んでいる者がいる。摂取エネルギーや食
とである。間食を一日の中で上手に摂ることは空腹感や
べる食品の種類を極端に制限すると、疲労、栄養素の不
体からエネルギーがなくなってしまうことを防ぎ、次の
足、ホルモン状態のアンバランス、そして摂食障害につ
食事で食べ過ぎることを防止するかもしれない。
ながることがある。
水分とエネルギーを補充することはほとんどの試合で
長時間で高強度のトレーニングで、特に気温が高い場
非常に大切であり、試合の数日前からエネルギーと水分
合は発汗で失われるものが増大する。
を十分に補給しておく。90∼120分以上続く試合では、
激しいトレーニング時には、たんぱく質、ビタミン、
試合の2∼3日前からトレーニング量を徐々に減らし、
ミネラルの必要量が増大する可能性がある。
炭水化物の摂取量を増やす。
試合前の食事はエネルギーと水分を追加補給する最後
試合時の課題
の機会であり、炭水化物の豊富な食べ物を選ぶようにす
試合で疲労困憊する主な原因はエネルギー(炭水化
る。最も望ましい食べ物と飲み物の種類と量、そして試
物)の枯渇と脱水である。これらの原因に対しては、試
合前の食事のタイミングはアスリートによって異なり、
合前、試合中、試合後の食べ方が重要である。
試合中に胃腸の調子が悪くなることがないように前もっ
試合はいくつかの段階、すなわち予選、準決勝、決勝
て試して決めておく。
などで行われることが多い。したがって、決勝で勝つた
長時間の試合では、走っている途中にエネルギーや水
めには試合の間の回復が重要になりうる。
分を摂る必要があったり、その機会があったりする。ス
ポーツドリンクは水分と炭水化物の必要量を摂取出来る
持久系競技者のための食べ方
ようにバランスが調整されているし、飲みやすいように
トレーニングと回復のためのエネルギーを蓄えるため
作られている。アスリートは一人ひとり、予想される発
に必要な量の炭水化物を摂るために、食事や間食は炭水
汗量と実際に飲用出来る量とから、水分補給の計画を練
化物の豊富なものを選ぶ。
っておく。補給する水分量は発汗量を上回らないように
パン、小麦粉製品/米、パスタ、麺類、その他の穀物
する。非常に長時間の試合では、スポーツバー、ゼリ
食品/朝食用シリアル/果物/でんぷんの豊富な野菜や
ー、そして普段から食べている炭水化物食品を摂ること
豆類/味のついた乳製品(例:ヨーグルト)/砂糖を含
で、追加補充が必要な炭水化物を補給出来る。通常は1
んだ食品や飲料
時間あたり20∼60gの補給が望ましいが、一人ひとりの
必要量や経験等から調整する。試合の時の補給法をトレ
栄養密度が高く炭水化物の豊富な食品を選び、たんぱ
ーニング時に試しておくと、そのトレーニングの効果を
く質の豊富な食品と野菜を食事に加えると、エネルギー
高めるとともに、試合時の補給法を微調整出来る。
とその他の栄養素の必要量をバランス良く摂るのに役立
試合や練習の後は回復を促進するために飲食するよう
つ。
にする。携帯出来る軽食は食事までの間の栄養補給に有
砂糖を含んだ食品や飲料は少量で炭水化物を補給出来
用である。
るので、エネルギー必要量が多い時や「かさ」の多い食
Fuelling Up / 18
FUELLING UP
事を摂るのがむずかしい時に、特に有用である。
試合のためのエネルギー源として30gの炭水化物を補給
するための食品例
スポーツドリンク、400∼500mL/炭酸の入っていな
いソフトドリンク、250∼300mL/スポーツゼリー、1
パック/スポーツバー/バナナ 大1本または小2本/ジャ
ム(または蜂蜜)つき食パン1枚/35∼40gのキャンディ
ーまたは菓子
水分補給も必要なことを忘れないこと
Fuel up for training
Every meal is important for athletes who train for many hours at a time or have two or
three training sessions in one day. Training and eating become a cycle of preparation
and recovery, with meals and snacks consumed after one session becoming the
pre-event meal for a subsequent workout. Continual replacement of carbohydrate is
essential to reduce the risk of chronic carbohydrate depletion. Low muscle-glycogen
9
国際オリンピック委員会「アスリートの栄養、健康と競技力のための食事実践ガイド」
ヤーは怪我をしやすくなっている。
10 チームスポーツの栄養・食事
チームスポーツのアスリートの食べ方
トレーニング時の課題
✦ 多くのチームスポーツでは試合のシーズンがある。ア
チームスポーツのアスリートは、持久的なアスリート
マチュアレベルではオフシーズンが長く、選手は体力
の食べ方を応用出来る。年間を通じて活動量を維持する
が低下し、食生活についての知識が乏しいために体重
ために、しっかり食べるべきである。以下のことがら
が増加することがしばしばである。同様のことはシ
ーズン中でも怪我をした時に起こることがある。エリ
が、追加項目である。
✦ 多くのチームスポーツには、ずっと自宅で生活してい
ートレベルでは、ほとんどのチームプレーヤーは年間
たジュニア選手たちのチームが併設されている。自分
を通してトレーニングしており、シーズンの間に短期
の能力の可能性を最大限にするために、若い選手が
の休みがあるだけである。
家事や栄養の知識を習得できる、料理や買い物を学
DURING EXERCISE ぶ機会を計画することはチームにとって望ましいこと
✦ 試合と試合の間、そして試合の間に行われるチーム練
である。初めて自分のことを自分でしてみると、チー
習あるいは個人練習からの回復でも、エネルギーの
Power and aesthetic sports (for example, gymnastics, rowing, boxing, judo)
The priority for these sports is to ensure good nutrition throughout day-to-day training
ムの中でうまくやってゆくことが、職場や学校での生
再補充が重要である。多くのチームプレーヤーが伝
and to prepare well for competition. Due to the short nature of the competitive events,
it is usually impractical and unnecessary to take in food or fluids during exercise.
活と同じように難しいことを知ることが出来る。アス
統的に、エネルギー補給は試合の前日か当日の食事
Athletes involved in these sports are often required to compete in several events
throughout the day. In this situation, athletes need to plan their food and fluid intake
in
order
to
maintain
adequate
fuel
and
fluid
stores,
while
avoiding any gastrointestinal
リートのために作られた多くの料理本は、スポーツ
で行っている。しかし、日々のトレーニングに必要な
discomfort.
に必要な栄養のバランスが良く、手早くつくれる食
エネルギーは、毎日エネルギーを補給することによ
Cramping, stitch and gastrointestinal comfort
The causes of cramping and stitch during exercise are still largely unknown. Some things to
consider are:
事のアイディアを提供してくれる。
ってまかなわれる。
1 Timing of fluid intake — start drinking early in exercise, as this is better tolerated when
the fluid deficit is still small. Frequent intake of small amounts of fluid is likely to be better
tolerated than large amounts of fluid.
✦ 試合前の食事は、直前の栄養補給に役立つだけでな
✦ 競技のルール上あるいはポジションによって、体格
2 Fluid type — large amounts of concentrated carbohydrate drinks (>8 per cent) may cause
(体重)が重要なスポーツがあ
gastric discomfort or cramping.
3 Fibre — lower-fibre options of food are typically digested and absorbed more readily during
exercise
く、士気を高め戦術を確認する最
る。多くのチームスポーツのア
後の良い機会となる。試合前の食
スリートにとって、レジスタン
事は、一人ひとりが自分に必要な
ストレーニングの効果を高める
物を選ぶことが出来るビュッフェ
のに適した栄養が必要である。
しばしば、たんぱく質の重要性
(バイキング)方式が好ましい。
✦チームスポーツでは、試合中に
が強調されるが、総摂取エネル
エネルギーや水分を補給する機会
が何度かある。クオーターあるい
ギー量とトレーニング時刻を考
慮した食事や間食の摂取タイミ
は ハ ーフ タイ ム の 休 憩 、 選 手 交
Sydney University Boat Club Members
代、タイムアウトの時などである。
ングのほうが、恐らくもっと重要である。
✦ チームスポーツでは、大量の脱水が気付かないうち
試合が中断している間に、トレーナーが選手に飲み物
に起きていたり、体重を減らすために行われていた
を持って行くことが許可されている競技・種目もあ
り、選手の精神力を高めるために行われたりする。
強度の高い運動では、気温の低い場合でも大量に発
る。チーム毎に望ましい方法を作るようにする。
✦ 試合後やトレーニング後も、チームで栄養補給する良
汗する。気温の高い時や、厚着をしているとき、防具
い機会である。チームスポーツでは試合後にアルコ
等を身につけている時には、特に注意が必要であ
ールを飲むことが多い。しかし、飲み過ぎて必要な
る。
食事が摂れないといけないので勧めるべきではな
い。ゲームの余韻に浸っている間も、試合後に炭水化
物とたんぱく質を含んだ軽食や水分を補給すること
試合時の課題
✦ 試合は毎週行われるリーグ方式、あるいは数日間の
で回復を促進する。
トーナメント方式で行われる。スケジュールに応じて
運動後の回復のための軽食の例
回復できるように調整していく必要がある。
どれも50g程度の炭水化物といろいろな種類のたんぱ
✦ 60分以上継続するチームゲームで、特に動きの激し
く質、そしてその他の栄養素が摂れる。
いポジションや走ることの多い選手では、エネルギ
ーの枯渇が問題となる。炭水化物を多く摂取してゲー
250∼350mLのフルーツスムージーか液体(流動)食
ムのためのエネルギーを補給し、ゲーム中にも追加の
▼60g(1∼2カップ)の朝食用シリアル+牛乳+果物
炭水化物を摂取すると、チームスポーツにおけるパ
1個▼200gパックのヨーグルト+シリアルまたは朝食用
フォーマンスが向上することが示されている。水分補
のバー▼肉またはチーズとサラダのサンドイッチ(ロー
給を適切に行うことも大切である。試合時の栄養
ルパン)+250mLのフルーツジュース▼150gの厚い生地
は、試合の後半も選手がより早くより長時間走れる
のピザ(脂身の少ない肉と野菜のトッピング。チーズは
だけでなく、疲労してもスキルやゲームにおける判断
ほどほどに)▼60gのスポーツバー + 250mLのスポー
を維持出来るようなものが良い。ゲームの勝敗は最後
ツドリンク
の数分間で決まることが多いし、疲労しているプレー
10
During Exercise / 30
国際オリンピック委員会「アスリートの栄養、健康と競技力のための食事実践ガイド」
✦ 最近の研究で、レジスタンストレーニングの直後に良
11 パワー系、スプリント系
スポーツの栄養・食事
質のたんぱく質と炭水化物を食事あるいは軽食で摂
ることが効果的なことが示唆されている。この回復期
に摂る軽食は、トレーニングの直前に摂ったほうがさ
トレーニング時の課題
らに効果的な可能性がある(情報提供者注:運動直
✦ 多くのパワー系あるいはスプリント系のアスリート
前にたんぱく質と炭水化物を含む軽食が効果的とい
は、レジスタンストレーニングで筋肉量や筋力を増大
うことについては注意を要する。運動直前に炭水化
することを目指している。そして、彼らはほとんどの
物を摂ると反動性の低血糖が起きる場合がある。ま
場合、食事ではたんぱく質を摂ることが大切だと信
た、運動直前の食べ過ぎがよくないのはいうまでもな
じている。しかし実際には、レジスタンストレーニ
い。後述の「炭水化物とたんぱく質を供給する食べ
ングを行う場合に、多量のたんぱく質(体重1kgあた
物の組合せ」に示されているものも、運動まで短時間
り2g以上)を摂ることが必要だとか効果的だとかと
しかない場合に食べられないようなものは除外すべ
いう科学的な根拠はない。むしろ、トレーニングの直
きである。運動前の食事は3時間前までに食べ終え
前あるいは直後に、たんぱく質と炭水化物を摂って回
るのが一般的である)。
✦ サプリメントやスポーツ食品にはトレーニングや試合
復を促進することが、トレーニング効果を高めるよう
である。
✦ パワー系、スプリント系のアスリートはトレーニング
で役立つものもある。どれが役立つかを見極めるた
に飲料を持って行かない者が多い。しかし、エネルギ
家のアドバイスを聴き、自分の計画、予算、達成目標
めには、最新の情報を入手し、スポーツ栄養の専門
ーと水分が十分に補給された状態で、最もよいトレ
に適した使い方を見つけることが重要である。
✦ 試合当日は、ちょうど良いと感じる程度の食事を試
Managing Body Composition / 10
ーニングが出来る。スポーツドリンクでエネルギー補
給すると、長時間のトレーニングの終了直前まで重い
負荷を持ち上げることが出来た
合前に摂る。複数の試合がある場合は試合の間に、
MANAGING BODY COMPOSITION
り、よい動きでトレーニングが
炭水化物の豊富な飲み物と軽食で
エネルギーと水分が補給されてい
出来たりする。
✦ 回復の促進、筋肉量の増大、体
るようにする。
脂肪の減少、そしてパフォーマ
大量のエネルギーを摂取する食べ
ンスの向上に効果があるとする
サ プ リメ ン ト が 数 多 く 存 在 す
方
✦単純に食事の量を増やそうとする
る。これらのサプリメントはす
よりも、一日に食べる回数を増や
べてのアスリートにとって魅力
したほうが多くの場合に効果的で
There is considerable variability in the physical characteristics of athletes, even
within the same sport. Genetics, dietary intake and the
conditioning effects of the
的である。とりわけボディービルディングやストレン
ある。例えば食事や軽食を一日に5∼9回程度食べ
sport influence these characteristics. At times it becomes necessary to modify body
composition in order to improve performance. Goals for body mass, body fat and
muscle mass must be consistent with good health, beる。
motivated by performance goals
グストレーニングを行っている人たちにとって魅力的
and involve a realistic time frame.
✦ フルーツスムージー、液体(流動)食のサプリメン
である。多くのアスリートは、多くのサプリメントの
Increasing muscle mass
To increase body mass and gain lean tissue muscle, an athlete needs to follow a
効果が科学的には証明されていなかったり誇張されて
ト、ミルクセーキ、ジュースなどの飲み物は、かなり
well-structured resistance training program and to consume
a diet providing an energy
intake that is greater than daily energy expenditure (that is, achieve positive energy
balance). Total energy intake should be increased by の量のエネルギー源やその他の栄養素を少量で素早
2000–4000 kilojoules per
いたり、メーカーが法律に従っていなかったりするこ
day (approximately 500–1000 calories), with extra serves of both protein-rich and
とに気付いていない。
carbohydrate-rich food sources. A pattern of frequent meals and snacks is helpful in
achieving additional energy requirements, and in promoting the outcomes of training
by providing key nutrients at important times. The athlete will need to be organised to
achieve such a pattern.
く摂取出来、かさばる食べ物にくらべて胃腸の不快
感を引き起こしにくい。
✦ 砂糖を含んだ食品やスポーツ用に特別に作られた製
試合時の課題
✦ ほとんどのスプリント種目は短時間なので、体の水分
品(ドリンクやバー)は、さらに少量で炭水化物や
や炭水化物のレベルにはほとんど影響しない。しか
その他の栄養素を補給出来る。これらは特にエネル
し、試合では数回にわたる予選、準決勝、決勝があ
ったり、フィールド競技や混成競技などでは競技の間
ギー必要量が多い場合に有用である。
✦ 食事記録をつけると、忙しい日には、いつエネルギ
が長時間あったりする。したがって、試合と試合の間
ーを十分に摂れなかったのかがわかる。このような
の回復や長時間にわたる競技中に、水分とエネルギ
アスリートは携帯出来る軽食や飲み物で補給出来る
ーを補給する必要がある。
ように工夫するようにする。
パワー系、スプリント系のアスリートの食べ方
✦ 筋肉量と筋力を増大するための鍵は十分にエネルギ
炭水化物とたんぱく質を供給する食べ物の組み合わせ
(1)朝食用シリアルと牛乳(2)肉、チーズ、卵のサ
ーを摂取していることである。エネルギーはトレーニ
ンドイッチ(3)肉/魚/鶏肉の炒め物とごはん/麺類
ングに必要な燃料である炭水化物を豊富に含んだ食品
(4)フルーツスムージー、または液体(流動)食のサ
と、筋肉づくりに利用されるたんぱく質とその他の栄
プリメント(5)果物とヨーグルト(6)ドライフルー
養素を豊富に含んだ食物とから摂るようにする。
ツとナッツミックス
11
国際オリンピック委員会「アスリートの栄養、健康と競技力のための食事実践ガイド」
ENERGY BALANCE
12 冬季スポーツの栄養・食事
トレーニング時と試合時の課題
✦ 冬季スポーツには幅広い競技・種目がある。持久的
なものとしてはクロスカントリースキー、チームゲー
ムとしてはアイスホッケー、スプリント種目としては
スピードスケート、そして体重に気をつけるものには
フィギュアスケートがある。これらのスポーツのため
の栄養はほとんどの場合、それぞれの生理的な特徴に
基づいているので、これまでの連載での、それぞれの
Setting the framework
した時には、脱水に応じて水分補給の方法を調整す
Sports nutrition is a science that requires a solid understanding of the nutritional
運動に関する部分で述べられていることが当てはま
factors effecting performance, recovery and health, a knowledge of the nutritional
value of food and fluids, and the necessary skills to implement appropriate nutritional
る必要があるかもしれないので、体の水分が不足して
strategies into daily training and competition.
る。
✦ 冬季スポーツのための栄養関係の課題として付け加え
A key priority for athletes is to establish a well-chosen training diet that can be easily
ないかどうか、より注意してチェックする必要があ
る。
るべきことは、非常に気温が低くて高度の高いとこ
manipulated when special situations emerge (for example, changes to training load,
changing body composition goals, or special competition needs). A good base diet will
provide adequate nutrients and energy to enhance adaptations from training, support
optimal recovery and avoid excessive food-related stress. Heavy training increases
the need for nutrients, particularly carbohydrate, protein and micronutrients (vitamins
and minerals).
✦ 高地では運動中の炭水化物の消費が増加するので、
ろで行われるという環境に関することである。
These increased requirements are usually met when an athlete consumes a diet that:
運動中だけでなく一日を通して、積極的にエネルギー
• provides adequate total energy (kilojoules)
補給することが重要である。
• balances carbohydrate intake with daily exercise loads
気温の低いところでの運動に特徴的な課題
✦ 気温が低い場合に多くのアスリートが忘れやすいこと
• includes a wide variety of nutrient-rich foods including
✦ 高地に移動すると運動中の酸化的ダメージが増えた
protein-containing foods.
り、赤血球の生成が増加したりする。このため、抗
は水分補給である。発汗はごくわずかだと考えるため
酸化物質の豊富な果物や野菜、そして鉄を多く含む食
である。実際には、ある程度、長時間で強度の高い
品をしっかり摂るようにする。
スポーツではかなり発汗するし、運動が繰り返し行
われる時に水分補給しないとパフォーマンスが低下
試合前に摂る高炭水化物食の例
することもある。強度の高い運動を行っている場合
朝食用
は、トレーニングや試合中に補給すべき水分量を調べ
朝食用シリアルと牛乳、生あるいは缶詰の果物/ト
るようにすると良い(調べる方法は、「6運動中と
ーストとジャムまたは蜂蜜/パンケーキとシロップ/
運動後に必要な水分、炭水化物(糖質)と塩分」を
フルーツ味のヨーグルト/ベークドビーンズまたは缶
参照)。
詰のスパゲティをのせたトースト/液体(流動)食サ
✦ 運動中に水分補給するとエネルギーも補給出来る。
プリメントまたはフルーツスムージー
例えば炭水化物を6∼8%含んでいるスポーツドリン
クは、暖かなところで行われるスポーツに必要な量の
昼食用
水分とエネルギーを同時に補給出来る。しかし、気
ご飯もの:リゾット、チャーハン、パエリヤ/パスタ
温が低い場合、同じ運動を暑いところで行った場合
(油濃くないソース)/パン:ロールパンやサンドイ
と比較すると、運動に必要なエネルギーはほぼ同じ
ッチ/果物、果物を使ったデザート/ライスプディン
だが必要な水分量は少ない。したがって、炭水化物濃
グ
度の高い飲料(25%にもなることがある)や炭水化
物を含んだゼリー状のもの、そして固形の食品を試合
胃腸の敏感なアスリートでは、脂肪が少なく、食物繊
時の栄養補給のメニューに加えるアスリートが多い。
維の少ないものが胃腸障害を起きにくくするのに良い場
試合時の補給方法を成功させるためには、トレーニ
合がある。
ング時に試しておくべきである。
✦ 雪や氷の上での運動は陸上での運動よりも複雑で、
鉄を補給するための食べ方
✦ 適量の赤味の肉(吸収されやすい鉄を含む)を週に
怪我や事故の危険性が高い。疲労していると怪我や事
故が多いという証拠もあるので、冬季スポーツのアス
3∼5回食べる
✦ 朝食用シリアルのような、鉄を強化した穀物食品を
リートは長時間の運動や激しいトレーニングを行う時
には、水分とエネルギー源が不足しないように積極
的に補給すべきである。トレーニングは人里離れた場
選ぶ
✦ 肉類以外の鉄を含む植物性食品(豆類、穀類、卵、
所で行われることが多いので、トレーニング中及びト
色の濃い葉菜類)は、鉄の吸収を促進する成分を含
レーニング後の速やかな回復のために、水分とエネル
む物と組み合わせる。鉄の吸収を促進する成分は、
ギーを確実に補給出来るような工夫が必要である。
ビタミンCや獣肉、鶏肉、魚に含まれている。良い組
高地での運動に特徴的な課題
✦ 気温が低く乾燥している高地では、呼気で失われる水
み合わせの例として、果物のジュースあるいは果物と
朝食用のシリアル、チリコンカン(肉と豆の煮物。代
分が増加する。このため、高地では平地よりも多量
表的なテクス・メクス料理)がある。
に脱水する。冬季スポーツのアスリートは高地へ移動
12
国際オリンピック委員会「アスリートの栄養、健康と競技力のための食事実践ガイド」
に近い階級を、目標の階級にすべきである。試合前の最
13 体重に気をつける必要のある
スポーツの栄養・食事
後の減量では、減少量が体重の1∼2%を超えないよう
にし、脱水や絶食等の極端な方法は用いないようにす
る。
トレーニング時の課題
•体重に気をつけるスポーツのアスリートは、他のア
栄養に関して多くのアスリートが関心を持っているこ
スリートや一般の人よりも摂食障害になる危険性が高
とに、体重と体脂肪を減少させることがある。体重や体
いことがある。このような兆候がある場合は、早い段
脂肪が少ないことは、しばしばパフォーマンスに好影響
階で専門家チームのアドバイスを受けるようにする。
をもたらす。主観的な判定を含むスポーツ(体操、飛び
込み、ボディビルディングなど)では、体に贅肉(体脂
体脂肪がなく引き締まった体形を維持するための食べ方
✦ 空腹でもないのに習慣で食べ過ぎることのないよう
肪)がなく引き締まっていると美的アピールが高い。多
くのスポーツで、「絶対条件」とされている一定の体格
や体形があるが、自分の目標体重や減量計画を決める時
に、食事の量を見極める。
✦ 極端な空腹を防ぎ、トレーニングのためのエネルギ
には、アスリート一人ひとりが、それが現実的かどうか
ーを補充しておくために、間食を上手に利用する。
考える必要がある。
しかし、間食は単なる楽しみのために食べないよう
トレーニングでエネルギーをそれほど消費しないアス
にする。間食は食事で足りなかった物を補う目的で
リート、例えばトレーニング時間の大部分がスキルやア
用いられることが多い。
✦ 食べ物を選ぶ時や調理する時に、脂肪を少なくする
ジリティ(敏捷性トレーニング)に関する場合には難題
がある。もともとのエネルギー消費量が少ないか、ある
いは中程度の場合には、体重や体脂肪を減少させるため
ようにする。
✦ 食事や間食ではサラダと野菜を多く食べるようにす
に、エネルギーが不足した状態を作り出すのが難しいか
る。食物繊維の多い食べ物やグリセミックインデッ
らである。
•間違った食事制限や流行のダイエット方法は、体脂
クス*の低い物を摂るようにする。
✦ 食べた物を記録しておくと、実際に食べたものと望
肪の減少に有効というよりもむしろ、脱水やエネルギ
ましい食事内容との違いを見つけるのに役立つ。多
ーの枯渇につながったり、トレーニング時のパフォー
くの人が、食事目標が習慣によって乱されていること
マンスを低下させ怪我や事故の危険性を高めたりする
に気付いていない。
ことにつながる。
*グリセミックインデックス:食べた後にどの程
度、血中ブドウ糖濃度(血糖値)が上昇するかを示
試合時の課題
す指標。この指標が低いものの方が体脂肪の合成が
多 く の 格 闘 技 ( ボク シ ング、 レス リ ング、 武 道 な
低いと考えられている。
ど)、筋力系の競技のいくつか(ウエイトリフティング
など)、そして軽量級ボートでは、試合は競技者の体格
グリセミックインデックスの低い炭水化物食品を食事に
や運動能力を同程度にするために体重階級別で行われ
加える例
✦ 朝食はコーンフレークの替わりにオートミールの粥や
る。これらのスポーツでは通常、試合の数日前(そして
試合前の計量の時)に減量し、普段の体重よりも軽い階
低脂肪朝食用シリアルに食べる
✦ 白パンを未精製の全粒パンや種々の穀類を使った粉
級に出場して、体の小さな選手を相手にして有利に戦お
でできたパンに替える。
✦ パスタのソースやキャセロー
ルギーの枯渇、栄養素の不足、心理的ストレスなど、健
康状態やパフォーマンスに悪影響をもたらす恐れがあ
る。
ルに豆を加える。
✦ 間食をフルーツヨーグルトに
体重に気をつける必要のあるアスリートの食べ方
する。
✦ マッシュポテトを、固めに茹
スポーツ栄養の専門家などのアドバイスは、体重や体
でたパスタやそば粉でできた
脂肪減少の現実的な目標や長期間の望ましい食事計画
ものに替える。
を、アスリートが決める時に役に立つ。
スキル中心のスポーツのアスリートは、トレーニング
athletes’ medical information
うとする。目標体重まで急速に減量すると、脱水、エネ
associated with some negative consequences.
Robust immunity and reduced risk of infection
can be achieved by consuming a varied diet
adequate in energy and micronutrients,
ensuring adequate sleep and limiting other life
stress. Attention to dietary intake of calcium
and iron is important in athletes at
risk of deficiency but use of large
amounts of some micronutrients
may be harmful. Female athletes
with menstrual disorders
should be promptly referred
to a qualified specialist
physician for diagnosis
and treatment.
Food can contribute not
only to the enjoyment of life,
but also to success in sport.
Lausanne, 18 June 2003
に支障のない範囲で有酸素的な運動を取り入れてくれる
ようコーチに頼んで、エネルギー消費量を高めるように
するとよい。日常生活の中での活動や運動を増やすよう
に、ライフスタイルを変えることも一つの方法である。
体重階級制のある競技のアスリートは、安全で健康に
悪影響を及ぼさないで達成可能なトレーニング時の体重
13
国際オリンピック委員会「アスリートの栄養、健康と競技力のための食事実践ガイド」
い。
14 遠征時の栄養と食事
環境面での危険性が高い場合は、信頼出来るホテルか
有名レストランの食事を摂るようにする。本場の食文化
多くのアスリートは、試合や特別なトレーニングの出
を経験することは魅力的だが、地元の屋台や売店、市場
来る環境のために、自宅から遠く離れたところに移動す
などの食べ物は避ける。
る経験豊かな旅行者である。チームスポーツでは、レベ
十分に調理された物を食べるようにし、サラダや果物
ルの高い試合は国内や地域内を毎週あるいは隔週で移動
を皮をむかないで食べることは、現地の水や土壌に触れ
し、リーグ戦として行われることが多い。頻繁な移動に
ていたことがあるので避ける。
はさまざまな問題がある。
✴ 旅行中は、いつものトレーニングや生活スタイルが乱
4 現地の料理やサプリメント、そして持参した保存出来
れる。
る食品から適切に選択する
✴ 気候や環境の変化に伴って必要な栄養が変わる。
✴ 時差ぼけ。
5 レストラン、バイキング方式の食堂や持ち帰り食品を
✴ 食べ物が変わり、大切なものや普段食べているもの
賢く利用する方法
が手に入らないことがある。
何を食べるかは、自宅で普段食べているもの、あるい
✴ 自宅で調理・準備する代わりに、ホテルやレストラ
は新たに必要になった物に基づいて決め、メニューや並
ン、持ち帰り食品に頼ることになる。
べられている物に誘惑されないようにする。
✴ 初めての食べ物や食文化に接することがある。
✴ 選手村ではバイキング形式で「食べ放題」の誘惑があ
自分に必要な食べ物、例えば脂肪の少ない調理法にす
る。
はっきりと依頼する。
✴ 衛生状態が良くない食べ物や水によって胃腸障害を起
レストランや食堂の中を、ど
Special needs for the
こす危険がある。
んな物があるか見ようと思って歩
travelling athlete
✴ 初めての環境で興奮したり落ち着かなかったりする。
き回らないようにする。食べる
Most elite athletes are well-seasoned travellers,
seeking competition or specialised training
environments far away from home. In many
team sports, high-level competition is organised
in a national or regional league that requires
weekly or biweekly travel to matches. Frequent
travel can pose a number of challenges:
Disruptions to the normal training routine
and lifestyle while the athlete is en route
Changes in climate and environment that
create different nutritional needs
Jet lag
Changes to food availability including
absence of important and familiar foods
Reliance on hotels, restaurants and
takeaways instead of home cooking
Exposure to new foods and eating cultures
Temptations of an “all you can eat” dining
hall in an Athletes’ Village
Risk of gastrointestinal illnesses due to
exposure to food and water with poor
hygiene standards
Excitement and distraction of a new
environment
supplies (e.g. airline catering, restaurants en
route) as well as self-supplied snacks.
athletes’ medical information
athletes’ medical information
るとか炭水化物を多くするなど、
Ideas for portable supplies for the
travelling athlete
Breakfast cereal and powdered milk
Cereal and breakfast bars
Rice cakes
Spreads – honey, jam, peanut butter
Powdered sports drinks and liquid
meal supplements
Sports bars
Dried fruit and nuts
予定になかった物や、必要ない物
移動中の食べ方のポイント
1 事前の準備
を食べてしまうことになりがち
なためである。
出かける前に目的地で食べられる物や入手出来る物を
調べておくと、現地でなければ困るものや大切なものの
うち、何を持参するか計画することが出来る。
3. Be wary of food and water hygiene
Find out whether it is safe to drink the local
water supply. If risky, stick to sealed bottles
of water and other drinks or hot drinks. Be
wary of ice added to drinks – it is often made
from tap water.
In high-risk environments stick to food
produced in good hotels or well-known
restaurants. Avoid eating food from local stalls
and markets, however tempting it is to have an
“authentic cultural experience”.
Stick to food that has been well-cooked, and
avoid salads or unpeeled fruit that has been in
contact with local water or soil.
5. Use clever tactics in restaurants, all you
can eat dining halls and when choosing
takeaways
Stick to an eating plan based on what is
normally eaten at home, or what meets new
nutritional needs, rather than being mesmerised
by all the food on offer.
Be assertive in asking for foods to be
prepared to your needs – for example, with low
fat cooking methods, or with an added
carbohydrate serving.
Avoid hanging around in restaurants or
dining halls for entertainment – it can often
lead to unplanned and unnecessary eating.
Remember that your normal eating patterns
probably involve well-timed and well-chosen
snacks. If your new catering arrangements
provide only for main meals, ensure that the
menu at meals includes some items that can
be taken away for snack needs.
普段の食生活では多分、適切
に選んだ間食をタイミング良く摂
The keys to eating well while travelling are:
1. Planning ahead
Investigate food patterns and availability at your
destination before you leave home. This may
help you to plan useful food supplies to take on
your travels that can replace missing and
important items.
Contact the catering organisers at your
destination to let them know of your needs for
meal timing and menus.
Make an eating plan for travel that
incorporates the best of the available food
現地のケータリング業者(仕出し業者)に食事のタイ
ミングやメニューを知らせておく。
2. Eat and drink well while on the move
Recognise that enforced rest while travelling
will reduce energy needs, but create more
opportunities for high energy intake if the
athlete succumbs to “boredom eating”. Be
aware of eating to real need.
When moving to a new time zone, adopt
eating patterns that suit your destination as
soon as the trip starts. This will help to adapt
your body clock.
Be aware of unseen fluid losses in air
conditioned vehicles and pressurised plane
cabins. Have a drink plan that keeps you well
hydrated.
っている。もし、ケータリングの
メニューが食事だけで間食が含
4. Choose well from local cuisine and
supplement with non-perishable food
supplies brought from home
自分で持って行く軽食とともに、移動中に食べられる
まれていない場合は、その食事の
物(機内食、移動途中のレストランなど)をうまく利用
中に後で間食として食べられるも
するための計画を立てる。
のがあったら確保しておく。
2 移動中もきちんと飲食する
移動中、携帯出来る食べ物の例
✴ 朝食用シリアルと粉末ミルク
移動中は、じっとしていなければならないのでエネル
ギー必要量は減少する。しかし、退屈しのぎに食べてし
✴ シリアルと朝食用のバー
✴ 餅
まうとエネルギーの摂り過ぎになりやすいことを認識し
ておく。本当に必要なものだけ食べるように注意する。
✴ 蜂蜜、ジャム、ピーナツバターなどパンに塗るもの
✴ スポーツドリンクの粉末や液体(流動)食のサプリメ
時差のある地域へ移動する時は、移動開始後、出来る
だけ早く、食事パターンを目的地の時刻に合わせると体
ント
✴ スポーツバー
内時計の調整に役立つ。
空調の効いた車内や気圧が調整された飛行機の機内で
は、気付きにくいけれど脱水することに注意が必要であ
る。脱水しないように水分補給を計画する。
なら必ず栓の開いていないボトルの水や飲料、あるいは
Nutrition for athletes. A practical guide to eating for
health and performance. Prepared by the Nutrition
Working Group of the Medical Commission of the
International Olympic Committee. Based on an
International Consensus Conference held at the IOC in
Lausanne in June 2003.
煮沸した物を飲むようにする。飲み物に入っている氷
訳/大阪体育大学運動栄養学研究室
3 食べ物や水の衛生状態に気をつける
現地の水が飲用出来るかどうか確認する。危険なよう
も、水道水で作られているので気をつけなければならな
14