2015 年を迎えて

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メッセージ
2015 年を迎えて
ニュース & レポート❶ PREX の環境分野研修の取り組み
ニュース & レポート❷ 成長著しい各国に必要となる「省エネ」について学ぶ
ニュース & レポート❸ 太陽光発電の導入に向けた各国の取り組み~スリランカ、アルジェリア、アフガニスタン、パキスタン~
ニュース & レポート❹ 関係者の声 アジアの環境・省エネビジネスに取り組む Team E-Kansai
企 業 訪 問 テクノグローバル㈱、㈱タナカテック
PREX だより
2015 年を迎えて
PREX 会長 井上義國
あけましておめでとうございます。
業の経営者の経営理念と経営手法を途上国にトランス
PREX はアジア・太平洋地域を中心とした途上国の
ファーすることによって、途上国の人材育成を支援す
発展に資する人材の育成活動を続け、今年 4 月に設
ることです。開発協力大綱では、日本の民間企業のす
立 25 周年を迎えます。
ぐれた点を生かす新しい開発協力を進めることを強調
今年 3 月末で研修受講者の累計は 16,200 名を超え、
しております。PREX の活動分野は拡大し、果たすべ
研修対象国は 144 カ国・地域となる見込みです。途
き役割はますます大きくなります。
上国の経済発展と、人材交流の活発化による関西の発
PREX は引き続き、途上国の人材育成、特に中堅マ
展に貢献できたのではと考えております。
ネジャーの育成に取り組み、今年は新 3 カ年計画を
PREX が成果を上げることができたのは、ひとえに
スタートします。これまで積み重ねてきた人的ネット
関係省庁、政府関係機関、自治体、学界、経済団体、
ワークを活用しつつ、ニーズの変化に対応した企画
企業の方々のご支援とご協力の賜物であり厚くお礼申
提案型の実践的な、新しい研修の拡大をめざします。
し上げます。
PREX の強みを総点検し創意工夫を重ねて、PREX な
PREX を取り巻く環境は変化し続けてきました。昨年
らではの取り組みにチャレンジします。
末には、わが国の対外援助政策の基本方針を定める政
第 2 次中期アクションプランで挑戦してきた中堅・
府開発援助(ODA)大綱が 11 年ぶりに見直されました。
中小企業のグローバル化支援、大学のグローバル人材
新たな開発協力大綱では、ODA を「未来への投資」
育成支援、アジアを中心に進出している日本企業の現
と位置づけ、政府や民間企業など多様な力を結集し、
地幹部育成支援、受入研修以外の人材育成に関する公
日本の持つ強みを活かして援助よりも開発協力を進め
示案件の獲得の取り組みは道半ばであり、これらの継
るとしております。
続を含めて、第 3 次アクションプランを策定します。
また、開発協力は途上国と日本が相互に発展する双
PREX の強みは「ものづくりマネジメント」研修機
方向の関係を築いていく姿勢で、途上国の自助努力を
関としてのすぐれた能力を培ってきたことにありま
促進する理念を明確にしています。この理念を実現す
す。これにさらに磨きをかけ「途上国にとって、関西
るための重点課題のひとつは途上国の人材育成への協
にとってなくてはならない存在になる」という PREX
力です。ODA をこれまで以上に人材育成に配分する
のビジョンの実現をめざし、全職員が一丸となって前
ことも重要です。
進し続けます。関係各位の引き続きのご支援、ご協力
PREX の本務は ODA を活用し、日本のすぐれた企
をお願い申し上げます。
No.229 January 2015 PREX NOW
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ニュース & レポート ❶
PREX の環境分野研修の取り組み
PREX が設立され、研修事業を開始した四半世紀前には、途上国での環境問題はあまり問題視されていません
でした。しかし 2005 年の京都議定書発効などにより地球温暖化問題が世界的に認識されはじめたころから、
PREX が実施する研修のテーマとして「環境」分野が含まれるようになり、現在まで継続して研修を実施して
います。今回の PREXNOW は環境をテーマに、研修の様子や関係者の声などをご紹介します。
大気環境改善、水環境改善、省エネ、
太陽光発電などをテーマとした研修を実施
途上国でもすぐに取り入れられる
省エネの工夫や日々のカイゼン
現在、環境問題は世界的に取り組むべき課題となっ
先進的な技術はもちろん、日本の企業が得意とする
ています。
省エネのための様々な工夫や日々のカイゼンの中に
地球温暖化やその原因となる大気汚染、また水質汚
は、大きな投資を必要とせず、すぐに途上国でも取り
染やごみ処理問題など、先進国のみならず急速に発展
入れられるものが多くあり、これらもぜひ紹介したい
する途上国も含め、世界各国での経済活動・経済発展
ということから、PREX の研修では新しい技術やノウ
に伴って環境問題は拡大しています。
ハウを持つ企業との交流会の実施と合わせて、工場な
PREX は、2006 年度のロシアにおける「環境ビジ
ど現場での取り組みも紹介しています。
ネス」現地講座の実施を皮切りに、大気環境改善、水
途上国の急速な経済発展は、国民への経済的な恩恵
環境改善、省エネ、太陽光発電などをテーマとした研
をもたらす一方で、環境に対しては大きな負荷を与え
修を実施してきました。
ることとなります。日本が成長の過程で経験してきた、
これまでに、訪日研修は 36 件、また海外の対象国
また現在直面している環境やエネルギー問題への解決
に専門家を派遣して実施する海外研修は 14 件を実施
策を、途上国の「健全な」発展に役立ててもらうこと
し、参加者数は訪日研修が約 400 人、また海外研修
が、日本の経験が活かされる道です。
は 1250 人に達します。
また、環境問題の特徴は、大気や水など国境に関係
参加国もアジアのみならず、中東、アフリカ、中南米
なく拡散することであり、ある国の問題がその近隣の
と全世界へと広がり、日本でこれまでに積み上げられて
国や全世界の問題となる点でもあります。
きた、環境問題の経験やその解決策、また新しい技術や
そのため、環境問題解決に取り組む人材の育成に貢
ノウハウについて研修プログラムとして紹介しています。
献することは、途上国だけでなく、我々自身の環境保
特に関西は、
高度経済成長期に湖や河川の水質汚染、
全にも活かされるものだと考えます。
工場地帯での大気汚染や廃棄物問題に直面した際に、
(国際交流部 瀬戸口)
各自治体や企業などにより技術開発を進め、経済発展
と環境保護を両立することに取り組んできました。こ
の経験の中で環境、エネルギー関連の優れた技術・ノ
ウハウが生み出され、関西経済連合会などが中心とな
り「環境先進地域・関西」として世界各国にも役立て
る取り組みも進められています。
京エコロジーセンターで京都市の環境保全の取り組みを学ぶ中国・西安市の行政官。
(京都市・西安市「大気環境改善」訪日研修 2014 年 8 月)
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PREX NOW No.229 January 2015
堺太陽光発電所・堺港発電所を見学
(省エネ技術と技術普及のための行政の取り組み研修 2014 年 9 月)
ニュース & レポート ❷
成長著しい各国に必要となる「省エネ」について学ぶ
受入研修
環 境
JICA 省エネ技術と技術普及のための行政の取り組み
世界のエネルギー消費量の伸びに歯止めがかからないなか、成長を続ける新興国、途上国においてはエネルギー消
費の効率化がますます強く求められるようになっています。PREX では今年度から 3 カ年継続事業として「JICA 省エ
ネ技術と技術普及のための行政の取り組み」研修を実施しました。今回の研修のなかで、当初から皆の取りまとめ役
を買って出てくれたエジプトの研修員、Ms. Kobesi(ハラさん)の活躍を中心にご紹介します。
日本の省エネの経験から多くを学ぶ!
今回は 3 カ年継続事業の初年度の研修で 9 月 21 日か
ら 10 月 18 日にかけて 14 カ国、16 名の行政官が来日し、
日本の省エネの事例を学びました。
参加国は、ブラジル、チリ、ベネズエラ、セント・ビ
ンセント、エジプト、ヨルダン、トルコ、グルジア、カ
ザフスタン、パレスチナ、中国、フィリピン、スリランカ、
パラオです。ほとんどの研修員がエネルギー関連の省庁、
自治体、電力会社等の職員で、自国ですでに省エネ活動
に取り組んでいます。ただ省エネの取り組みの状況は各
「けいはんなエコシティ」を見学、日本の先端技術を
取り入れた省エネの取り組み事例を学びました。
国で大きく異なります。途上国では省エネに関する認知
できることが多くあると確信されたようです。また日本の
度がまだまだ低いのが現状で、予算的な制約もあって本
省エネ活動進展の背景には、日本の文化や日本人の考え
格的な取り組みには至っていないようです。
方が大きく影響しているのではないかと言っていました。
今回の研修では、研修員全員がアクション・プラン
まとめ役となったエジプトからの研修員
を作成しました。皆さんそれぞれ自国に戻って政策等
に反映できるよう努力するものと思います。ハラさん
ハラさんは、エジプトの電力・再生エネルギー省で
は、日本で実効性のあった省エネ関連の法律を参考に、
広報部門の責任者として全国の省エネ・キャンペーン
エジプトでの法制化や、トップランナー制度等の導入
を取り仕切っており、今回の日本での研修にも大きな
を盛り込んだアクション・プランを策定しました。
期待を持って参加しました。エジプトでは省エネ規格
今回の研修員は大変にチームワークよく、オフでも
や省エネ・ラベル制度の導入等、様々な省エネ活動が
充実した時間を過されたようでした。その際にもハラ
推進されていますが、大きな成果を挙げるまでには至っ
さんは持ち前の明るさで皆をまとめていたようです。
ていないとのことです。
研修員の皆さんが帰国後、それぞれの国において省
研修では、日本の行政と民間企業の省エネの取り組み
エネ活動を積極的に推進していくことを大いに期待し
を理解するために、行政および関連機関で講義を受講、
たいと思います。
(国際交流部 瀬戸口、武者)
また多くの民間企業を訪問し省エネの技術や省エネの実
際について学びました。ハラさんは、日本では行政と民
間企業がうまく連携して、省エネ活動を推進し、大きな成
果を挙げている点にとくに感銘を受け、エジプトにも導入
研修概要
コース名
省エネ技術と技術普及のための行政の取り組み
実施期間
2014 年 9 月 21 日~ 10 月 18 日
参 加 者
行政機関などの職員 16 名
委託元機関
JICA 関西
お世話になった方々、企業・団体(敬称略、訪問順)
●こども環境活動支援協会
●備前グリーンエネルギー
●近畿経済産業局
●堺観光コンベンション協会
●省エネセンター
●世界省エネ等ビジネス推進協議会
●パナソニックセンター東京
●日本通運
●三菱電機
●アズビル
●オムロン
●山岡製作所
●けいはんなエコシティ推進会議
●歴史街道推進協議会 ●地球環境センター
関西の中小企業との意見交換会で、ハラさんにエジプトの
省エネ活動の現状について発表していただきました。
No.229 January 2015 PREX NOW
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ニュース & レポート ❸
太陽光発電の導入に向けた各国の取り組み~スリランカ、
アルジェリア、アフガニスタン、パキスタン~
受入研修
環 境
JICA 太陽光発電普及のための計画担当者研修
日本の太陽光発電システムは国内外でもエネルギー資源の多様化、気候変動対策、不足する電力の供給、地
方電化の手段として注目を集めています。PREX では 2009 年度から5年間で 47 カ国 129 名の研修員に対し
て太陽光発電関連の JICA 研修を実施しました。
本研修は、太陽光発電プロジェクトの推進に携わっている担当者に、太陽光発電の基礎技術と利用技術を包
括的に理解してもらい、日本の事例を参考に、自国における太陽光発電導入のための政策・制度・組織の必要性・
あり方・運営手法などを検討するための視点・問題意識を養ってもらうことを目的としており、2013 年度から
3 カ年かけて年 1 〜 2 回実施している研修です。
太陽光発電導入の目的と課題
スリランカの電化率は 96%です。日本と同様に電
力使用量に応じて電気料金が高くなるので、自家消費
今回は、アフガニスタン、アルジェリア、スーダン
用に住居に太陽光発電システムを設置して電気の購入
から 1 名ずつ、マラウイ、スリランカ、ウルグアイ
量を減らす家庭が増えており、最近では太陽光発電
から 2 名ずつ、
計 6 カ国 9 名の研修員が来日しました。
ブームが起きているそうです。その結果、電力系統に
エネルギーの多様化を進めたい、火力発電用の化石燃
連系されている住居用の太陽光発電システムの設備容
料の使用を減らしたい、配電線から遠い地域をバッテ
量が計 6.6MW まで増えてきています。
リーのついた太陽光発電システムで電化したいなど、
研修員は、日本では住宅用だけではなく産業用の太
各国の異なる事情から太陽光発電を普及させたいと考
陽光発電システムの導入量が多いことを知り、産業用
えています。各国の政策に基づいて途上国でも太陽光
の太陽光発電システムが普及するような政策を考えた
発電システムの導入が進んでいるものの、太陽光発電
いと話してくれました。
システムを構成する各機器や設計・施工・維持管理の
質の悪さが課題となっています。したがって、今年度
の研修では太陽光発電システムの各機器や設計・施工・
維持管理の質を保つための取り組みを理解してもらう
アルジェリア~南部地域での
太陽光発電普及に取り組む
ことに重点を置きました。
アルジェリアは、エネルギーを多様化することと、
研修参加者が研修中に紹介してくれた各国の太陽光
自国での化石燃料使用量を減らして価格設定の良い国
発電導入の状況を報告します。
際マーケットで販売することを目指し、太陽光発電の
導入にとても積極的です。現在のエネルギー政策では、
スリランカ~住居用太陽光発電システムの
設置ブーム
2025 年までに太陽光発電を 1,800MW、集光型太陽
熱発電を 4,200MW 導入することを計画しています。
しかし、集光型太陽熱発電に技術的な課題がみられる
スリランカでの太陽光発電システムの導入は 1980
ため、太陽光発電を重視する方針のようです。
年代に始まりました。政府は 2007 年にエネルギーの
研修員が考えるアルジェリアの課題は、南部の太陽
安全保障と経済的な観点から、再生可能エネルギー
光発電所の推進です。北部はすでに何カ所かの太陽光
を導入していきたいと考えており、再生可能エネル
発電プロジェクトが推進され技術者も揃っています
ギ ー 政 策 を 推 進 す る Sri Lanka Sustainable Energy
が、南部は技術者の育成が必要とのこと。また、南部
Authority を設立しました。
は砂漠地帯で特に気温が高くなるため、暑さに強く長
期間使用できるような太陽光発電技術を探していると
のことでした。
アフガニスタン~民間投資を呼び込むために
研修員と日本人スタッフで研修
打 ち 上 げ に 行 っ た と き の 様 子。
とても仲が良くて大盛り上がり
でした。
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PREX NOW No.229 January 2015
アフガニスタンは長引く内戦によってインフラが破
壊しつくされてしまいましたが、2014 年現在は国全体
TOPIC
帰国後の活動報告
~パキスタン送配電公社タラル・トゥシフさん~
研修中に前年度の参加者から帰国後の活動をテレ
ビ会議で報告してもらう時間を設けました。2013
年度の研修に参加した国営送電配電会社のタラルさ
んがパキスタンの現在の太陽光発電導入の状況や研
修中に作ったアクションプランの進捗について報告
してくれましたので紹介します。
タラルさんは 2013 年 8 ~ 9 月に実施された研
修に参加しました。帰国後の活動として、2016 年
一人一人がとても一生懸命学び、修了式を迎えることができました。研修員は研修
監理員を日本の母、PREX 職員を日本の父と呼び、一つの家族のようになりました。
の電化率が 30%まで上昇してきています。しかし、国
の人口の 75%が住んでいる地方の電化率は依然とし
て 4%にとどまっています。豊富な水資源を活かして、
水力発電・マイクロ水力発電による電化を進めようと
していますが、水力発電資源のある地域から離れた地
域について、アフガニスタン政府は地方電化を太陽光
発電で推進することを考えています。数年前に太陽光
発電による地方電化のプロジェクトが始動しましたが、
太陽光発電システムの品質が悪く、投資家に何の保証
もなされなかったため、頓挫したそうです。研修員は
日本で学んだ知識を活かして、民間投資を呼び込める
ような経済的なインセンティブの準備、太陽光発電導
入の基準や施工ガイドラインの策定、職業訓練校の設
立などの施策を検討する予定です。電化された地域で
は反政府勢力の活動が減少するという話で、電化の推
進が国の政治的安定に貢献するのかもしれません。
11 月までに現在の基幹電力系統に対する太陽光発
電の可能導入量の技術的評価、太陽光発電の系統連
系ガイドラインの策定、再生可能エネルギー政策の
見直しなどを検討するという計画をたてました。現
在の進捗状況としては、計 1,000MW の太陽光発
電を系統連系する際の電力潮流について調査報告書
を作成し、系統運用基準検討委員会などでの議論を
進めています。
パキスタン政府は 2020 年までに計 1,000MW
の太陽光発電を導入するための計画を進めていま
す。太陽光発電事業に参入する民間企業を国際入
札したところ、予定の 1,000MW を大きく超える
5,000MW 分の応札があったとのことです。パキス
タンには適正なレベルの電気料金設定の問題や電力
不足を解消するための火力・水力発電所整備の必要
性という課題もありますが、電力不足軽減と化石燃
料輸入量削減のため、再生可能エネルギーの導入に
力を入れています。
(国際交流部 森、奥村)
研修概要
実施期間 2014 年 9 月 9 日(火)~ 10 月 10 日(金)
研
修 エネルギー政策に従事している行政官・技術者
参 加 者 6 カ国 9 名
委託元機関
JICA 関西
お世話になった方々、企業・団体(敬称略、訪問順)
● JICA 国際協力専門員 林俊行、小川忠之、新関良夫
●吉野コンサルタント事務所 吉野量夫
●開発コンサルタント 林泰子
●歴史街道推進協議会
●有限会社ジオプラス 塩田昭夫
● Zambia Rural Electrification Authority
(ザンビア共和国地方電化庁)
● Wazingwa Mugala
●ゴウダ
●英弘精機
●経済産業省資源エネルギー庁
●電気安全環境研究所
●太陽光発電協会
● PV 施工技術者制度運営センター
●エコリンクス
●関西電力
●浜田
●ジーエスユアサコーポレーション
●エナジーバンクジャパン ●シャープ
9 月 16 日に行われたテレビ会議の様子。研修参加者は、前年度の研修員からの活
動報告を熱心に聞いていました。
No.229 January 2015 PREX NOW
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ニュース & レポート ❹
アジアの環境・省エネビジネスに
取り組む Team E-Kansai
関係者の声
近畿経済産業局 通商部 国際事業課 総括係 村田 喜庸 氏
Team E-Kansai とは
「関西・アジア 環境・省エネビジネス交流推進
2014 年 10 月現在、会員企業数は 145 に上り、アジ
ア諸国の中でも、タイ、中国、ベトナム、インドネシア
を当面の重点地域と位置付け、セミナーやHP、メー
フォーラム」
(Team E-Kansai)は、アジアでのビジ
ルマガジン等による現地の最新情報の提供や、国内外
ネス展開を志向する関西の環境・省エネ関連企業を中
での企業交流会の開催、現地での展示会や商談会等へ
心に、2008 年 11 月に設立されたビジネス交流プラッ
のミッション派遣・受入れ等の活動を行っています。
トフォームです。
PREX をはじめ 28 の支援・協力機関(国の支援機
関 や 地 方 自 治 体、
経済団体等)と連
携 し つ つ、 重 点 地
域ごとに異なる現
地ニーズに対応し
たソリューション
提 供 を 目 指 し、 活
発なフォーラム活
動を行っています。
PREX との連携
Team E-Kansai では、昨年度から PREX と連携し、
修員と発表した Team E-Kansai メンバー企業とで活発
な意見交換が行われ、研修員たちは予定時間のぎりぎ
りまで熱心に質問をしていました。
JICA 研修事業で来日している途上国の省エネ推進や
環境技術支援を担う省庁の職員、製造業の団体幹部等
PREX への期待
と Team E-Kansai メンバー企業との意見交換会を開催
しています。
今回の意見交換会では、研修員にとっては関西企業
今年度は 10 月 15 日 ( 水 ) に地球環境センター研
の先端技術・製品を知ることができ、企業側にとって
修室に於いて、エジプト、ヨルダン、ベネズエラ、フィ
は途上国側のニーズ把握につながったということで双
リピン等からの研修員 16 名と Team E-Kansai メン
方にとって意義深いものであったと思います。
バー企業が意見交換を行いました。
途上国では更なる人口増加が予想されており、環境・
意見交換会では、まず5人の研修員が自国における環
エネルギー関連の課題は今後益々大きくなると考えら
境・エネルギー関連の課題や取り組み等についてそれぞ
れます。こうした課題の解決には、当該国における人
れ紹介し、
その後 Team E-Kansai メンバー企業 2 社から、
材育成が急務であり、PREX が行っている人材育成事
メタン発酵を利用した発電システムや外燃型蒸気ロータ
業の重要性も一層高まると思います。
リー発電エンジンを活用した低温廃熱利用システムにつ
Team E-Kansai で は、 今 後 も PREX と 連 携 し、 ア
いて技術プレゼンテーションを行いました。
ジア諸国と関西企
引き続き行わ
業双方にメリット
れたディスカッ
をもたらす幅広い
シ ョ ン で は、 自
フォーラム活動を
国で適用できる
行っていきたいと
取り組みや技術
思います。
を求めている研
研修員によるプレゼンテーション
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PREX NOW No.229 January 2015
Team E-Kansai メンバー企業と研修員の
ディスカッション
PREX では、年間 40 件前後の研修を実施し、多くの企業を訪問させていただ
いています。今年度協力いただいた 2 つの企業を紹介します。
テクノグローバル㈱
㈱タナカテック
ベトナムにも拠点を設け
「想いをカタチにかえる」
会社
徹底した 3S 活動の実践で、
多くの企業のお手本に
八尾市にあるテクノグローバルは、プラスチック製
京都市の「タナ
品設計・支援、施策金型の製造・成形を中心に高い技
カテック」は、創
術力と一貫した生産を強みとする企業です。
業 74 年目を迎え
今年の夏、ベトナムのドンナイ省とホーチミンに工
る製缶板金の会社
場を開設し、その責任者として入社 2 年目のベトナ
で す。「 社 会 に 役
ム人社員を抜擢・派遣しました。
立つ人づくりを目
10 月に実施した「ドンナイ省ものづくり人材育成
指す企業である」
事業 本邦研修」では、ドンナイ省の工業団地管理局
という「企業至誠」
の職員や、大学、職業訓練短大の先生方が同社を訪問
を掲げ、利益を出
し、
日本のものづくり企業の製造現場を見学しました。
すことだけが目的でなく、人々の幸せづくりの実現に
ドンナイ省内でも今年から活動を始めたという話を聞
役立つことが企業の価値であり、そのために正しい価
き、ベトナムからの研修員も今後の協力・連携をでき
値観を持った人づくりができなければ社会に役立つも
るはず、と期待をしています。
のづくりはできない、という考えの下、人づくりのた
PREX が 7 月に実施した「ベトナム人社員向け管理
めに 3S 活動を徹底して推進してきました。
者養成研修」には、前述のベトナム人社員も参加いた
25 年以上取り組まれている3S活動には社員の皆
だき、10 日間みっちり管理者に必要な考え方や他社
さん全員が参加され、現場や事務所の様々な改善につ
での事例を学んでもらいました。
ながっています。
これまでの経験に加えて、研修での学びを現地の運
3S(整理・整頓・清掃)の本質は、人として正しい
営にも役立てていただきたいと思います。
ものの考え方を常に意識して、身につけるための方法
事務所内の見学でも多くの質問が出されました
である、と明確に位置づけ、実直に継続される様子は、
関西の多くの企業が視察に訪れるお手本の企業です。
11 月にカザフスタンの企業幹部・コンサルタント
工場の中を案内い
ただきました。
きれいな現場に皆
さんも感心してい
ます。
が訪問した際には、説明内容から現場視察に至るまで、
研修員からの質問が絶えませんでした。
タナカテックで教えていただいた工夫がカザフスタン
でも導入されるかもしれません。
高田社長(左)と、ドンナイ省の工業団地局ヴァンさん(右)
明るい工場の扉も印象的です。前列左がタナカテックの田中真輝氏
No.229 January 2015 PREX NOW
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西安市出張コラム
11 月 10 日から 15 日まで、京都市と連携した「中
パーなのは測定機器
国・西安市における大気中の浮遊粒子状物量削減事業」専門
だ け で、 こ じ ん ま り
家派遣で西安市に出張しました。様子を一部ご紹介します。
したところでした。 主に研究用の施設で、学生さんが実
習に来られていました。 市内 20 カ所の測定局を 10 名で
懐かしい研修員との再会
担当しており、職員の負担は結構重いとのことでした。
訪問先の自動車排ガスのセンターでは、2008 年(一番
すべてアメリカ製の測定器が導入されていて、日本製品の
初めの研修)に参加した研修員が昇進し、センターのトッ
参入の余地は機器更新の 8 年後以外はなさそうです。
プに就任しており懐かしい再会となりました。当センター
2 カ所目の測定局は、先月開設されたばかりの測定局で
からは、2008 年の研修に主任が、6 年間の締めくくりの
す。 ハイテク区が広がったため、もう 1 カ所つくること
2014 年の研修には副主任が参加しており、ぜひとも自動
にしたとのこと。 市内より 1 時間もかかる場所でした。
車排ガス対策に特化した内容での協力を引き続きお願い
この日は西安到着後最も大気の状態が悪く、2 カ所目の測
したいと希望しておられました。
定局では PM2.5 の濃度は
西安では自動車保有台数が 200 万台を突破し、この 3 年
112 μ g/m³ でした。 どれ
間 年率 25% の勢いで増加しているそうです。 エコカー補
くらいの値かといいます
助金や、
古い車の淘汰、
車に乗らない日(9 月 22 日)の提唱、
と、京都では通常 10-20 く
レンタル自転車(登録制で 30 分無料、乗り捨て可)8000
らい、70 を超えたら警報レ
台投入、新エネルギー車開発促進など、いろいろと力を入
ベルです。 それでも、ま
れているようですが 車が増えていること、ガソリンの質
だ「まし」な印象でした。
が悪いことなどにより、なかなか難しさがあるようです。
ご参考に、飛行機雲も美し
い青空の日(上)と、スモッ
大気環境測定局を視察
グがなければ美しい連峰
西安では、2 カ所の測定局を視察しました。 1 カ所目の
が見れただろうに残念な日
測定局は通称「スーパー測定局」といわれているところで、
の空の写真(下)です。
どんなにスーパーなのかと期待していたのですが、スー
(国際交流部 酒井)
PREX シンポジウムのご案内
ワン・ワールドフェスティバルにブース出展
2015 年 3 月 20 日(金)午後、関西企業のグロー
ワン・ワールド・フェス
バル化と人材育成・人材交流のあり方をテーマとした
ティバルは、年 1 回関西で
シンポジウムを開催します。詳細、申込みは PREX ウェ
開催される国際協力のお
ブサイトをご覧ください。
祭りで す。今 年は、2015
「関西の国際化と途上国の人材育成の意義
~関西企業のグローバル化と人材育成・人材交流~」
開催日 3 月 20 日(金)14:00 ~ 17:00
場 所 大阪産業創造館 4 階 イベントホール
(大阪市中央区本町 1-4-5 地下鉄中央線・堺筋線「堺筋本町駅」下車、
徒歩約 5 分)
基調講演・コーディネーター
大野泉氏(政策研究大学院大学教授、
アジア太平洋研究所 主席研究員)
パネリスト
柳 善朗氏(南海金属㈱ 代表取締役)
西島大輔氏(㈱中農製作所 取締役社長)
藤本悌志氏(松栄堂 執行役員)
PREX の研修実績
(1990 〜)
研修
研修員
年 2 月 7 日(土)
、
8 日(日)
に関西テレビ扇町スクエ
2013 年度ワン・ワールド・フェスティ
バルの様子
ア・北区民センター・扇町公園で開催されます。PREX は
ブースを出展するほか、JICA 関西と以下のプログラムを
実施します。
JICA 関西× PREX 日本企業の底力
「これで途上国の問題を解決!」
開催日 2 月 7 日(土)15:30 ~ 16:50
場 所 北区民センター
(大阪市北区扇町 2-1-27、地下鉄堺筋線「扇町」
JR 環状線「天満」下車すぐ)
受入研修
629 コース 144 カ国・地域 16,195 名 5,685 名
海外研修
10,510 名
2014 年 12 月 1 日現在
PREX NOW 第 229 号
2015 年 1 月発行
8
編集・発行 : 公益財団法人 太平洋人材交流センター 専務理事 北村耕一
〒 543-0001 大阪市天王寺区上本町 8-2-6 大阪国際交流センター 2 階 TEL:06-6779-2850 FAX:06-6779-2840
ホームページ :http://www.prex-hrd.or.jp/ E-mail:[email protected]
PREX NOW No.229 January 2015