非常にローノイズで低入力バイアス電流の 広帯域幅・高精度JFETオペアンプ AD8512 特長 ピン配置 高速セトリング・タイム:0.1%まで500ns 8ピンMSOP (RMサフィクス) 低オフセット電圧:最大400μV 低TCVOS:1μV/℃(Typ) 低入力バイアス電流:25pA(Typ) 1 OUT A –1N A +IN A V– 両電源動作:±5〜±15V ローノイズ:8nV/√Hz 8 AD8512 4 5 V+ OUT B –IN B +IN B 低歪み:0.0005% 位相逆転なし 8ピンSOIC (Rサフィクス) 安定したユニティ・ゲイン アプリケーション OUT A 1 計装機器 –IN A 2 多軸フィルタ +IN A 3 高精度電流計測 V– 4 8 V+ AD8512 7 OUT B 6 –IN B 5 +IN B 光ダイオード・アンプ センサー オーディオ 概要 低入力バイアス電流、低オフセット、ローノイズにより、光ダ イオード・アンプ回路で広いダイナミックレンジが得られま す。 AD8512の、ローノイズ、低歪み、高出力電流、優れた動作速 度などの特長は、ステレオ・オーディオ・アプリケーション向 けにも最適です。 多くの旧型JFETアンプとは異なり、AD8512では入力電圧が最 大コモン・モード電圧範囲を超えても、出力位相の逆転が発生 しません。 AD8512は、8ピン狭体SOICパッケージまたは8ピンミニSOICパ ッケージを採用しています。ミニSOICパッケージ製品は、テ ープまたはリールでのみ出荷しています。 AD8512は、拡張工業用温度範囲(−40〜+125℃)で仕様規定 されています。 AD8512は、低オフセット電圧、低入力バイアス電流、低入力 電圧ノイズ、低入力電流ノイズのデュアル高精度JFETアンプで す。 低オフセット、ローノイズ、非常に低い入力バイアス電流とい う特長を併せ持っているので、特に高インピーダンス・センサ ーの増幅、およびシャントを使う高精度電流計測に最適なアン プです。高精度DC、ローノイズ、高速セトリング・タイムな ので、医療用計装機器、電子計測機器、自動テスト装置などで 高性能を提供します。多くの競合するアンプと異なり、 AD8512は非常に大きな容量性負荷でも高速なセトリング性能 を維持します。 容量性負荷での高速スルーレートと優れた安定性により、 AD8512は高性能フィルタ用に最適です。 アナログ・デバイセズ社が提供する情報は正確で信頼できるものを期していますが、そ の情報の利用または利用したことにより引き起こされる第3者の特許または権利の侵害 に関して、当社はいっさいの責任を負いません。さらに、アナログ・デバイセズ社の特 許または特許の権利の使用を許諾するものでもありません。 REV.0 本 アナログ・デバイセズ株式会社 社/東京都港区海岸1-16-1 電話03 (5402)8200 〒105-6891 ニューピア竹芝サウスタワービル 大阪営業所/大阪市淀川区宮原3-5-36 電話06(6350)6868(代) 〒532-0003 新大阪第二森ビル AD8512−仕様 (特に指定のない限り、VS=±5V、VCM=0V、TA=25℃) パラメータ 記号 入力特性 オフセット電圧(Bグレード) VOS 条件 Min Typ Max 単位 0.08 0.4 0.8 0.9 1.8 75 0.7 7.5 50 3 5 +2.5 mV mV mV mV pA nA nA pA nA nA V dB V/mV μV/℃ μV/℃ −40℃<TA<+125℃ オフセット電圧(Aグレード) VOS 0.1 −40℃<TA<+125℃ 入力バイアス電流 IB 21 −40℃<TA<+85℃ −40℃<TA<+125℃ 入力オフセット電流 IOS 5 −40℃<TA<+85℃ −40℃<TA<+125℃ 入力電圧範囲 コモン・モード除去比 大信号電圧ゲイン オフセット電圧ドリフト(Bグレード) オフセット電圧ドリフト(Aグレード) 出力特性 ハイレベル出力電圧 ローレベル出力電圧 ハイレベル出力電圧 ローレベル出力電圧 ハイレベル出力電圧 ローレベル出力電圧 出力電流 電源 電源変動除去比 アンプ1個当たりの電源電流 ダイナミック特性 スルーレート ゲイン帯域幅積 セトリング・タイム THD+ノイズ 位相マージン ノイズ特性 電圧ノイズ密度 ピークtoピーク電圧ノイズ CMRR AVO ΔVOS/ΔT ΔVOS/ΔT VCM=−2.1〜+2.5V RL=2kΩ、VO=−3〜+3V VOH VOL VOH VOL VOH VOL IOUT RL=10kΩ、 −40℃<TA<+125℃ RL=2kΩ、 −40℃<TA<+125℃ RL=600Ω、 −40℃<TA<+125℃ PSRR ISY VS=±4.5〜±18V VO=0V −40℃<TA<+125℃ SR GBP tS THD+N φO RL=2kΩ en en en en enp-p −2.1 86 65 +4.1 +3.9 +3.7 ±40 0.1%まで、0Vから4Vまでのステップ、G=1 1kHz、G=1、RL=2kΩ f=10Hz f=100Hz f=1kHz f=10kHz 0.1〜10Hzの帯域幅 86 100 107 0.9 1.7 +4.3 −4.9 +4.2 −4.9 +4.1 −4.8 ±54 130 1.8 5 10 −4.7 −4.5 −4.2 2.3 2.5 V V V V V V mA dB mA mA 20 8 0.4 0.0005 44.5 V/μs MHz μs % 度 34 12 8.0 7.6 2.4 nV/√ Hz nV/√Hz nV/√ Hz nV/√Hz μVp-p 10 5.2 仕様は予告なく変更されることがあります。 2 REV.0 AD8512 電気的特性(特に指定のない限り、VS=±15V、VCM=0V、TA=25℃) パラメータ 記号 入力特性 オフセット電圧(Bグレード) VOS 条件 Min Typ Max 単位 0.08 0.4 0.8 1.0 1.8 80 0.7 10 75 3 5 +13.0 mV mV mV mV pA nA nA pA nA nA V dB V/mV 5 10 μV/℃ μV/℃ −40℃<TA<+125℃ オフセット電圧(Aグレード) VOS 0.1 −40℃<TA<+125℃ 入力バイアス電流 IB 25 −40℃<TA<+85℃ −40℃<TA<+125℃ 入力オフセット電流 IOS 3.5 −40℃<TA<+85℃ −40℃<TA<+125℃ 入力電圧範囲 コモン・モード除去比 大信号電圧ゲイン CMRR AVO VCM=−12.5〜+12.5V VO=−13.5〜+13.5V RL=2kΩ、VCM=0V オフセット電圧ドリフト(Bグレード) オフセット電圧ドリフト(Aグレード) 出力特性 ハイレベル出力電圧 ローレベル出力電圧 ハイレベル出力電圧 ローレベル出力電圧 ハイレベル出力電圧 ローレベル出力電圧 出力電流 電源 電源変動除去比 アンプ1個当たりの電源電流 VOH VOL VOH VOL VOH VOL IOUT RL=10kΩ、 −40℃<TA<+125℃ RL=2kΩ、 −40℃<TA<+125℃ RL=600Ω、 −40℃<TA<+125℃ PSRR ISY VS=±4.5〜±18V VO=0V −40℃<TA<+125℃ ダイナミック特性 スルーレート ゲイン帯域幅積 セトリング・タイム SR GBP tS RL=2kΩ THD+ノイズ 位相マージン ノイズ特性 電圧ノイズ密度 ピークtoピーク電圧ノイズ ΔVOS/ΔT ΔVOS/ΔT THD+N φO en en en en enp-p 108 196 1.0 1.7 0.1%まで、0Vから10Vまでのステップ、G=1 0.01%まで、0Vから10Vまでのステップ、G=1 1kHz、G=1、RL=2kΩ f=10Hz f=100Hz f=1kHz f=10kHz 0.1〜10Hzの帯域幅 仕様は予告なく変更されることがあります。 REV.0 −13.5 86 115 3 +14.0 +13.8 +13.5 +14.2 −14.9 +14.1 −14.8 +13.8 −14.3 ±45 −14.6 −14.5 −13.8 86 1.9 2.3 2.5 V V V V V V mA dB mA mA 20 8 0.5 0.9 0.0005 52 V/μs MHz μs μs % 度 34 12 8.0 7.6 2.4 nV/√ Hz nV/√Hz nV/√ Hz nV/√Hz μVp-p 10 5.2 AD8512 絶対最大定格1 電源電圧‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥±18V 入力電圧‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ±VS 出力〜GND間短絡時間‥‥‥‥ ディレーティング曲線参照 保管温度範囲 R、RMパッケージ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥−65〜+150℃ 動作温度範囲‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ −40〜+125℃ 接合温度範囲 R、RMパッケージ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥−65〜+150℃ ピン温度範囲(ハンダ処理、10秒)‥‥‥‥‥‥‥‥ 300℃ 静電放電(HBM)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 2000V パッケージ θJA* θJC 単位 8ピンMSOP(RM) 8ピンSOIC(R) 210 158 45 43 ℃/W ℃/W *θJAは最悪条件、すなわち表面実装パッケージの場合、デバイスを回路ボードにハンダ付けした 状態で規定。 注 1 上記の絶対最大定格を超えるストレスを加えるとデバイスに恒久的な損傷を与えることがあり ます。この規定はストレス定格の規定のみを目的とするものであり、この仕様の動作セクショ ンに記載する規定値以上でのデバイス動作を定めたものではありません。デバイスを長時間絶 対最大定格状態に置くとデバイスの信頼性に影響を与えます。 オーダー・ガイド モデル 温度範囲 パッケージ パッケージ・オプション ブランド AD8512AR AD8512AR-Reel AD8512AR-Reel7 AD8512ARM-Reel AD8512BR AD8512BR-Reel AD8512BR-Reel7 −40〜+125℃ −40〜+125℃ −40〜+125℃ −40〜+125℃ −40〜+125℃ −40〜+125℃ −40〜+125℃ 8ピンSOIC 8ピンSOIC 8ピンSOIC 8ピンMSOP 8ピンSOIC 8ピンSOIC 8ピンSOIC SO-8 SO-8 SO-8 RM-8 SO-8 SO-8 SO-8 B8A 注意 ESD(静電放電)の影響を受けやすいデバイスです。4000Vもの高圧の静電気が人体やテスト装置に容易に帯電し、 検知されることなく放電されることがあります。本製品には当社独自のESD保護回路を備えていますが、高エネル ギーの静電放電を受けたデバイスには回復不可能な損傷が発生することがあります。このため、性能低下や機能喪 失を回避するために、適切なESD予防措置をとるようお奨めします。 4 WARNING! ESD SENSITIVE DEVICE REV.0 代表的な性能特性−AD8512 120 100k VSY = 15V TA = 25 ℃ 10k 入力バイアス電流―pA アンプ1個当たりの電源電流 100 VSY = 5V, 15V 80 60 40 1k 100 10 20 0 0.1 0.2 −0.5 −0.4 −0.3 −0.2 −0.1 0 入力オフセット電圧―mV 特性1 0.3 0.4 1 −40 −25 −10 0.5 入力オフセット電圧の分布 5 特性4 30 20 35 50 温度―℃ 65 80 95 110 125 入力バイアス電流の温度特性 1000 VSY = 15V TA = 25 ℃ AD8512 グレードB 25 入力オフセット電流―pA 100 アンプ数 20 15 10 15V 10 5V 1 5 0 0 1 2 特性2 3 4 TCVOS―μV/℃ 5 0.1 −40 −25 −10 6 TCVOSの分布 特性5 5 20 35 50 温度―℃ 65 80 95 110 125 入力オフセット電流の温度特性 40 30 TA = 25 ℃ VSY = 15V TA = 25 ℃ AD8512 グレードA 25 35 入力バイアス電流―pA 30 アンプ数 20 15 10 25 20 15 10 5 5 0 0 0 1 2 特性3 REV.0 3 4 TCVOS―μV/℃ 5 6 TCVOSの分布 8 13 特性6 5 18 23 電源電圧―(V+−V−) 28 入力バイアス電流 対 電源電圧 33 AD8512 315 70 270 60 1.8 50 1.7 40 180 1.6 30 135 20 90 10 45 1.5 1.4 225 1.3 0 1.2 –10 –45 1.1 –20 –90 1.0 –30 10k 8 特性7 18 23 電源電圧―(V+−V−) 13 28 33 アンプ1個当たりの電源電流 対 電源電圧 100k 1M 周波数―Hz 10M –135 50M オープン・ループ・ゲインと位相の周波数特性 70 VOL VSY = 15V クローズド・ループ・ゲイン―dB VOH 12 10 8 6 VOL VSY = 15V, 5V 60 14 VSY = 5V 4 50 40 A V = 100 30 20 A V = 10 10 0 AV = 1 –10 VOH 2 0 0 特性10 16 出力電圧―V VSY = 15V RL = 2.5k CSCOPE = 20pF φM = 52度 1.9 ゲイン―dB 電源電流―mA TA = 25 ℃ 位相―度 2.0 –20 0 20 10 特性8 30 40 50 負荷電流―mA 60 70 –30 1k 80 出力電圧 対 負荷電流 特性11 2.50 120 2.25 100 10k 100k 1M 周波数―Hz 10M 50M クローズド・ループ・ゲインの周波数特性 2.00 80 15V CMRR – dB アンプ1個当たりの電源電流 VSY = 15V 1.75 5V 60 1.50 40 1.25 20 1.00 −40 −25 −10 特性9 5 20 35 50 温度―℃ 65 80 95 110 0 100 125 アンプ1個当たりの電源電流の温度特性 1k 10k 特性12 6 100k 周波数―Hz 1M 10M 100M CMRRの周波数特性 REV.0 AD8512 120 0 VSY = 5V, 15V VSY = 15V 0 100 0 80 電圧―1μV/DIV PSRR – dB –PSRR 60 40 +PSRR 0 0 0 20 0 0 0 –20 100 1k 10k 特性13 100k 周波数―Hz 1M 10M 0 100M 0 0 0 特性16 PSRRの周波数特性 0 0 0 0 時間―1s/DIV 0 0 0 0 0.1〜10Hzでの入力電圧ノイズ 300 VSY = 15V VIN = 50mV 270 VSY = 5 〜 15V 電圧ノイズ密度―nV/√Hz 出力インピーダンス―Ω 240 210 180 150 AV = 1 120 A V = 100 90 60 A V = 10 30 0 100 1k 10k 100k 10M 1M 0 100M 0 10 20 30 周波数―Hz 特性14 40 50 60 70 80 90 0 0 周波数―Hz 特性17 出力インピーダンスの周波数特性 電圧ノイズ密度 0 VSY = 5 〜 15V VSY = 15V RL = 2kΩ CL = 100pF AV = 1 0 電圧―5V/DIV 電圧ノイズ密度―nV/√Hz 0 0 0 0 0 0 0 0 2.5 5.0 7.5 特性15 REV.0 10.0 12.5 15.0 17.5 周波数―Hz 20.0 22.5 0 25.0 電圧ノイズ密度 0 0 0 0 0 0 0 0 時間―1μs/DIV 特性18 7 0 大信号過渡応答 100 AD8512 120 0 VSY = 15V RL = 2kΩ CL = 100pF AV = 1 0 80 0 CMRR – dB 電圧―50mV/DIV 0 VSY = 5V 100 0 0 60 40 0 20 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 時間―100ns/DIV 特性19 0 0 0 100 0 10k 特性22 小信号過渡応答 50 100k 周波数―Hz 1M 10M 100M CMRRの周波数特性 300 VSY = 15V RL = 2kΩ VSY = 5V VIN = 50mV 270 40 240 出力インピーダンス―Ω オーバーシュート―% 1k +OS 30 20 210 AV = 1 180 150 120 A V = 100 90 –OS 10 60 A V = 10 30 0 1 100 10 0 100 1k 1k 10k 容量―pF 特性20 70 出力インピーダンスの周波数特性 0 225 180 30 135 20 90 10 45 電圧―1μV/DIV 0 40 0 100M 10M VSY = 5V 270 位相―度 50 1M 0 315 VSY = 5V RL = 2.5kΩ CSCOPE = 20pF φM = 44.5度 60 ゲイン―dB 特性23 小信号オーバーシュート 対 容量性負荷 100k 周波数―Hz 0 0 0 0 0 –10 –45 –20 –90 –30 10k 特性21 100k 1M 周波数―Hz 10M 0 –135 50M 0 0 0 0 特性24 オープン・ループ・ゲインと位相の周波数特性 8 0 0 0 0 0 時間―1s/DIV 0 0 0 0.1〜10Hzでの入力電圧ノイズ REV.0 AD8512 0 50 VSY = 5V RL = 2kΩ CL = 100pF AV = 1 0 40 オーバーシュート―% 電圧―2V/DIV 0 VSY = 5V RL = 2kΩ 0 0 0 +OS 30 20 0 –OS 10 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 時間―1μs/DIV 特性25 0 0 0 0 大信号過渡応答 特性27 VSY = 5V RL = 2kΩ CL = 100pF AV = 1 電圧―50mV/DIV 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 時間―100ns/DIV 特性26 REV.0 100 10 1k 容量―pF 0 0 1 0 0 0 小信号過渡応答 9 小信号オーバーシュート 対 容量性負荷 AD8512 アプリケーションについての一般的な情報 入力過電圧保護 AD8512には、電源電圧を1.4Vまで上回る電圧がピンに入力 された場合でも損傷を与えないようにする保護回路が内蔵 されています。 高入力電圧に対しては、入力電流を制限する直列抵抗が必 要です。この抵抗値は次式で得られます。 VIN −VS RS THD+ノイズ AD8512は、総高調波歪みが小さく、かつ優れたゲイン直線 性を持っています。このため、高いクローズド・ループ・ ゲインを持つ高精度回路やオーディオ・アプリケーション 回路に最適のアンプです。 図2は、ゲイン=+1で100kΩの負荷を駆動する場合の AD8512の総歪みが約0.0005%(最悪時)であることを示し ます。 5 mA ソース抵抗を含む総合ノイズ AD8512の入力電流ノイズと入力バイアス電流は小さいた め、大きな入力ソース抵抗を持つ回路向けのアンプとして 最適です。入力オフセット電圧は、室温の場合、ソース抵 抗500Ω当たり15nV未満の割合で増加します。 回路の総合ノイズ密度は次式で得られます。 125℃までで2nA未満の非常に小さいオフセット電流では、 大きな抵抗値を入力に直列に接続することができます。 5kΩの抵抗を使うと、電源電圧より25V高い電圧まで入力を 保護でき、オフセットが10μVしか増加しません。 出力位相反転 位相反転とは、アンプ伝達関数の極性の変化を意味します。 アンプ入力に加えられる電圧が最大コモン・モード電圧を 超えたときに発生します。位相反転が発生すると、デバイ スに永久的な損傷を与えて、システムが動作しなくなって しまうことがあります。AD8512では、入力電圧が電源を超 えても位相反転は発生しません。 2 ここで、 enは、AD8512の入力電圧ノイズ密度。 inは、AD8512の入力電流ノイズ・ノイズ密度。 RSは、非反転ピンでのソース抵抗。 kは、ボルツマン定数(1.38×10−23J/K)。 Tは、絶対温度で表した周辺温度(T=273+℃)。 RS<3.9kΩの場合、enはen,total≒enになります。 0 VSY = 5V AV = 1 RL = 10k 0 電圧―2V/DIV 0 AD8512の電流ノイズは非常に小さいため、R Sが165MΩを 超えない限り(大部分のアプリケーションでこの値を超え ることはありません)、総合ノイズ密度の項が目立つことは ありません。 特定帯域幅での等価総合rmsノイズは次のように表されま す。 VOUT 0 0 VIN 0 enTOTAL = enTOTAL BW 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 時間―20μs/DIV 0 図1 0 0 ここで、BWはHzで表した帯域幅です。 注:上の解析は150Hzを超える周波数に対して有効で、 10kHz以上ではノイズが平坦であると仮定しています。低い 周波数に対しては、フリッカ・ノイズ(1/f)を考慮する必 要があります。 0 位相反転がない セトリング・タイム セトリング・タイムとは、パルスをアンプ入力に加えた後 に、アンプ出力が最終値に到達し、かつその最終値の所定 パーセント値以内に留まるまでに要する時間を意味します。 AD8512は、0Vから10Vへ変化するステップ入力に対して、 ゲイン=+1の場合、900ns以内に0.01%以内に整定します。 このため、セトリング・タイムが1μs(typ)以下のDAC出 力に対するバッファとして最適です。 AD8512のセトリング・タイムとスルーレートが高速である ことに加えて、オフセット電圧ドリフトと入力オフセット 電流も小さいため、全動作範囲で12ビット・コンバータの 精度を維持することができます。 0.01 VSY = 5V RL = 10kΩ BW = 22kHz 歪み―% 2 enTOTAL = en + inR S + 4 kTR S 0.001 0.0001 20 100 図2 1k 周波数―Hz 過負荷回復時間 過負荷回復はオーバードライブ回復とも呼ばれることがあ り、アンプ出力が飽和状態から線形領域に回復するために 要する時間を意味します。この回復時間は、大きな過渡電 圧が存在する中で小さい信号を増幅する必要があるアンプ を使うアプリケーションで特に重要になります。 図3に、AD8512の正側の過負荷回復を示します。出力は、 飽和状態から約200nsで回復します。 20k THD+Nの周波数特性 10 REV.0 AD8512 VSY = 15V VIN = 200mV A V = –100 RL = 10kΩ V+ 8 電圧―200mV/DIV 3 1/2 1 VOUT AD8512 200mV RS 2 CL CS 4 V– 図5 0 0 0 図3 0 0 0 時間―2μs/DIV 0 0 0 緩衝回路(スナバー・ネットワーク)の構成 図6に、400mVパルスに対するAD8512の出力応答を示しま す。この回路では、ゲイン=+1(最悪時)、容量性負荷= 500pFに設定してあります。 0 正側の過負荷回復 負側オーバードライブ回復時間(図4)は200ns未満です。 AD8512は高速な回復時間に加えて、正側と負側の回復時間 の優れた対称性も持っています。この対称性は、与えられ た周期で出力信号が歪みを受けることなく、等しく維持さ れるため、過渡信号の反射に対しては重要な機能です。 電圧―200mV/DIV VSY = 15V RL = 10kΩ CL = 500pF 電圧―200mV/DIV VSY = 15V A V = –100 RL = 10kΩ 0 0 図6 0 0 0 0 0 時間―1μs/DIV 0 0 0 0 緩衝回路なしでの容量性負荷の駆動 緩衝回路を使用すると、同じ容量性負荷に対してオーバー シュートが55%から3%以下に削減されます。図7に示すよう にリンギングも実質的に削減されます。 0 時間―2μs/DIV 図4 負側の過負荷回復 VSY = 15V RL = 10kΩ CL = 500pF RS = 100Ω CS = 1nF 電圧―200mV/DIV 容量性負荷の駆動 AD8512は、反転または非反転構成のどちらでも、すべての ゲインで無条件に安定しています。最悪時でゲイン=1の場 合、発振なしに最大1000pFの容量性負荷を駆動できます。 ただし、多くのアンプと同様に、ゲイン=1の設定で大きな 容量性負荷を駆動すると、大きなオーバーシュート、リン ギング、さらに発振も発生する場合があります。 簡単な 緩衝回路(スナバー・ネットワーク) を使って、 オーバーシュートとリンギングを大幅に削減できます。こ の構成の利点は、R Sが帰還ループの外側にあるため、アン プの出力振幅が小さくならないことです。 時間―1μs/DIV 図7 REV.0 11 緩衝回路を使った場合の容量性負荷の駆動 AD8512 RSとCSの最適値は容量性負荷と入力浮遊容量に依存し、経 験的に決定されます。 表Iに、開始点として使用できる幾つかの値を示します。 表I 高精度整流回路 整流回路は多くのアプリケーションで使用されています。 最も広く使われているのは、入力サイン波をユニポーラ出 力電圧に変換するために整流回路を使っている、電源レギ ュレータの設計です。この方法でアンプを使う場合には、 幾つかの問題があります。 入力電圧(Vi)が負になると、出力がゼロになります。Vi の振幅は、オペアンプの入力で2倍にされます。この電圧は 電源電圧を超えることがあります。これにより、アンプに よっては永久的な損傷を受けるものがあります。オペアン プはViが負のとき飽和から抜け出す必要があります。アン プが線形領域に戻るために時間を要するので、出力信号が 遅延されます。 AD8512は非常に高速なオーバードライブ回復時間を持って いるため、過渡信号の整流には最適です。正側と負側の回 復時間の対称性も、出力信号が歪みを受けないようにする ために重要です。 図10に、整流器のテスト回路を示します。回路の初段は半 波整流回路です。入力に加えられるサイン波が正のとき、 出力は入力に追従します。入力が負側サイクルにあるとき、 出力は入力に追従して負側に振れようとしますが、電源に よりゼロに固定されます。 同様に、2段目もサイン波の正側サイクルでは非反転回路と して動作し、負側サイクルでは反転回路として動作します。 容量性負荷に対する最適値 CLOAD RS(Ω) CS 500pF 2nF 5nF 100 70 60 1nF 100pF 300pF オープン・ループ・ゲインと位相応答 ローノイズ、低オフセット電圧、低オフセット電流に加え て、大きな抵抗負荷と大きな容量性負荷を駆動する場合で もAD8512は優れたループ・ゲインと位相応答を保っていま す。 同じ条件でOPA2132と比較してみます。出力に2.5kΩの負荷 を接続した場合、AD8512の帯域幅は8MHzを超え、位相マ ージンは52゜を超えます。これに対して、同じ条件下での OPA2132の帯域幅は4.5MHzであり、位相マージンは28゜で す。 出力の2kΩ負荷に1nFの容量性負荷を並列接続した場合で も、AD8512の方がOPA2132より優れた応答を示します。 OPA2132の位相マージンは0゜以下に減少し、発振が起こる ことを示しています。 R2 10kΩ 315 VSY = 15V RL = 2.5kΩ CL = 0 60 40 180 30 135 20 90 10 45 –10 –45 –20 –90 100k 図8 1M 周波数―Hz 10M 8 3 1/2 R1 1kΩ AD8512 2 7 AD8512 1 1/2 出力 B (全波) 5 8 4 5V 出力 A (半波) 図10 –135 50M 半波整流と全波整流 AD8512の周波数応答 315 VSY = 15V RL = 2.5kΩ CL = 0 60 50 270 電圧―2V/DIV 70 ゲイン―dB 4 6 Vi 3V p-p 0 0 225 40 180 30 135 20 90 10 45 0 0 –10 –45 –20 –90 –30 10k 5V 225 位相―度 ゲイン―dB 50 270 位相―度 70 –30 10k R3 10kΩ 100k 図9 1M 周波数―Hz 10M 0 0 図11 –135 50M 0 0 0 0 時間―1ms/DIV 0 0 0 0 半波整流された信号(出力A) OPA2132の周波数応答 12 REV.0 AD8512 電圧―2V/DIV ています(図13)。これによりゼロ点がつくられるため、周 波数1/(2(R1Cf))のところに帯域幅が得られます。 R1の値は比V/IDにより決定されます。ここで、Vはオペアン プの出力電圧、IDはダイオード電流です。 例えば、I D が100μAで、希望の出力電圧が10Vの場合、 R1=100kΩになります。Rdは接合抵抗であり、温度が10℃ 上昇する毎に2(typ)だけ減少します。Rdの代表値は 1000MΩです。Rd>>R1であるため、回路の動作は接合抵抗 の影響を受けません。最大信号帯域幅は次式で得られます。 ft 2πR2 Ct fMAX = 0 0 0 図12 0 0 0 時間―1ms/DIV 0 0 0 ここで、ftはアンプがゲイン=1となる周波数(単位ゲイン 周波数)です。 上の例のパラメータを使うと、Cf≒1pFになります。これに より、信号帯域幅は約2.6MHzになります。 0 全波整流された信号(出力B) Cf = I/V変換アプリケーション 光ダイオード回路 I/V変換の一般的なアプリケーションとしては、光ダイオー ド回路があります。この回路では、アンプを使ってアンプ の正側入力ピンに接続されたダイオードから出力される電 流を出力電圧へ変換しています。 AD8512は低入力バイアス電流、広帯域幅、ローノイズなの で、FAX、光ケーブル制御、モーション・センサー、バ ー・コード・リーダーなど、あらゆる光ダイオード・アプ リケーションに最適です。 図13に示す回路では、シリコン・ダイオードをゼロ・バイ アス電圧で使っています。この構成は光電モードと呼ばれ、 全体のノイズを制限するので、計装アプリケーションに適 しています。 ここで、ftはオペアンプの単位ゲイン周波数で、位相マージ ンFmは約45゜になります。 Cfの値を大きくすると、位相マージンを大きくすることが できます。Cfの値を2倍にすると、Fm=約65゜になり、周 波数応答の最大の平坦性が得られます。これにより、最大 の信号帯域幅で50%のコスト削減が可能になります。 信号送信アプリケーション 一般的な信号送信方法の1つとしてパルス幅変調が使用され ています。高いデータ・レートでは、オペアンプではなく 高速なコンパレータが必要になりますが、シャープで歪み のない信号を得るには、リニアなアンプの方が望ましい選 択です。 AD8512を使うと、優れた電圧コンパレータが実現できます。 AD8512は高いスルーレートの他に、非常に高速な飽和回復 時間を持っています。帰還がない場合は、アンプはオープ ン・ループ・モードにあります(ゲインが非常に大きい)。 この動作モードでは、大部分の時間が飽和状態にあります。 図14に示す回路では、異なる周波数の2つの信号(100Hzの サイン波と1kHzの三角波)が比較されます。図15に、出力 波形を示します。出力電圧が正側レールまで届く必要があ る場合には、5kΩ(typ)のプルアップ抵抗を出力とV CCの 間に接続できます。この場合の代償は、消費電力が大きく なってしまうことです。 Cf R1 VEE 2 4 1/2 1 AD8512 Rd Ct 3 Ct 2πR2 ft 8 +15V VCC 図13 プリアンプ光ダイオードの等価回路 3 8 1/2 1 AD8512 V1 出力ノイズの増加を許容すると信号帯域幅を広げることが できます。合計入力容量(Ct)は、ダイオード容量(3〜 4pF(typ))の和と外部寄生容量を含むアンプの入力容量 (12pF)から構成されます。Ctは周波数応答でシステムが不 安定になる極を構成します。安定性と信号帯域幅の最適性 を保証するため、回路の帰還ループにコンデンサを接続し REV.0 2 V2 図14 13 4 –15V パルス幅変調器 VOUT AD8512 電圧―5V/DIV 高精度電流監視 AD8512は低オフセット電圧で低入力バイアス電流なので、 高精度電流検出アプリケーションに最適です。 図17に示す回路は、ローサイド電流の監視回路です。 RSENSE両端の電圧降下は、負荷電流に比例します。この電圧 がオペアンプの反転ノードに入力されると、R2を流れる電 流が発生します。 出力電圧の式は次のように表されます。 VOUT = I L ×RSENSE × R2 R1 VIN = 2.5V 0 0 0 0 0 0 時間―2ms/DIV 図15 0 0 0 0 RSENSE 0.1 IL 負荷へ パルス幅変調 5V R1 100Ω クロストーク チャンネル・セパレーションとも呼ばれるクロストーク仕 様は、1つのチャンネルから同じIC内の別のチャンネルへ混 入する信号の大きさを表します。 AD8512は、20kHzまでの周波数に対して−140dBを超える チャンネル・セパレーションを、10MHz.までの周波数に対 しては−130dBを超えるチャンネル・セパレーションを、そ れぞれ実現します。 3 IOUT 8 1/2 1 AD8512 VOUT 2 4 R2 1kΩ 0 チャンネル・セパレーション―dB –20 図17 –40 ハイサイドの電流監視回路 –60 –80 –100 –120 –140 –160 100 1k 図16 10k 100k 周波数―Hz 1M 10M 100M チャンネル・セパレーション 14 REV.0 AD8512 外形寸法 サイズはインチと(mm)で示します。 8ピンMSOP (RMサフィックス) 0.122 (3.10) 0.114 (2.90) 8 5 0.199 (5.05) 0.187 (4.75) 0.122 (3.10) 0.114 (2.90) 1 4 ピン1 0.0256 (0.65) BSC 0.120 (3.05) 0.112 (2.84) 0.120 (3.05) 0.112 (2.84) 0.043 (1.09) 0.037 (0.94) 0.006 (0.15) 0.002 (0.05) 0.018 (0.46) 0.008 (0.20) 実装面 0.011 (0.28) 0.003 (0.08) 33° 27° 0.028 (0.71) 0.016 (0.41) 8ピンSOIC (Rサフィックス) 0.1968 (5.00) 0.1890 (4.80) 0.1574 (4.00) 0.1497 (3.80) 8 5 1 4 0.2440 (6.20) 0.2284 (5.80) ピン1 0.0196 (0.50) × 45° 0.0099 (0.25) 0.0500 (1.27) BSC 0.0098 (0.25) 0.0040 (0.10) 実装面 REV.0 0.102 (2.59) 0.094 (2.39) 8° 0.0098 (0.25) 0° 0.0500 (1.27) 0.0160 (0.41) 0.0075 (0.19) 0.0192 (0.49) 0.0138 (0.35) 15 PRINTED IN JAPAN TDS04/2002/1000 AD8512 このデータシートはエコマーク認定の再生紙を使用しています。 16 REV.0
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