第10回「ハンガリー旅の思い出」2013年コンテスト作品 柏木吉基(かしわぎよしき)さんの作品 22年の時間旅行 1991年3月、当時大学生だった私の、初めての一人旅行をしました。 いわゆるバックパック旅行というものです。 そこで多くの体験をし、自分の人生に大きく影響を与えたこのルートをそのまま、今度は妻と2人で辿る 旅行を今年7月に実現しました。 気が付けば22年という月日が経っていました。私自身の人生の転機を、いつか妻にも見せたいとずっ と思っていたのです。 当時、東ヨーロッパ、その中でも特に日本人には馴染みのないルーマニアを地方から列車で巡るとい う壮大な旅行に不安いっぱいで出発したことを覚えています。 ルーマニアの地方を回るには、ルーマニアに直接行くのではなく、隣のハンガリーから入るほうが距離 的にも近いことは地図で分かっていました。 当時は今のようにインターネットも、ガイドブックもなく列車の時刻も切符の入手も、とにかく現地にまず 行ってみて、という状況でした。 もちろん、当時は「現地に行ってみて」も、日本のように便利に色々な手配ができたわけではありませ ん。 苦労を重ねたり、現地の人の親切に遭ったりして、何とか予定通りの旅行ができたことを昨日のことの ように思い出します。 今回も、22年前と同様に、ブダペストの主要な観光地を回りました。 当時に比べ物価も上がってはいたものの、それに見合うだけのサービス、旅行の快適性、美味しい食 事は(当時に比べて)極めて簡単に手に入りました。 何より、日本にいながら、事前にホテルの予約、国際列車の切符の手配(これには感動しました)ま で、インターネットでできてしまうのです。 こんな、テクノロジーとEU統合による影響があるにも関わらず、訪れたブダの丘から見える景色、ドナ ウ川の遊覧船から見る景色など全く変わらず、当時の感動をそのままよみがえらせてくれるものがたく さん残っていました。 そして、その感動をそのまま妻にも伝えることができたのは、、「当時のまま残っていてくれてよかった」 と、とてもうれしく感じました。 特に、漁夫の砦から臨むドナウ川の景色は、妻も感動していました(きっとあれは誰でも感動するで しょう)。 これからもずっと、このままの姿を残してほしいですね。 また、当時と比べ、英語が通じる場所や人が増えたこと。美味しい料理が食べられるお店が増えたこ となど、旅行をする上での条件は格段に上がっていました。妻と2人で食べた、グヤーシュとソーセージ の味は格別でした(しかも安い!)。 このように22年前の自分を振り返りながら、当時と同じく、Keleti駅からの寝台夜行に(インターネットで 予約した切符で)乗車。 翌朝には、ルーマニアの地方都市の無事到着しました。 次回は、今回両親に預けた、子ども達を連れて、家族4人で行きたいですね。 そのときも同じ感動がまたできますように。
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