原子力発電の再開に伴う最近の原発業界動向(2014年5月14日)

BTMU(China)経済週報
2014 年 5 月 14 日 第 203 期
原子力発電の再開に伴う最近の原発業界動向
トランザクションバンキング部
中国調査室
メイントピックス...................................................................................................................... 2
原子力発電の再開に伴う最近の原発業界動向......................................................................................................2
人民元市場動向(2014 年 4 月) ............................................................................................. 7
元安止まらず、約 1 年半振りの元安水準。基準値からの乖離拡大.......................................................................7
稲垣清の経済・産業情報 ........................................................................................................ 8
中信集団(CITIC)の再編と「国際化」......................................................................................................................8
全国情報 ........................................................................................................................... 10
【マクロ経済】 ...........................................................................................................................................................10
1-3 月の規模以上工業企業利益、前年同期比 10.1%増................................................................................10
発改委、軌道交通に 2,000 億元投資 ...............................................................................................................10
李克強総理、長江経済帯の建設を提案...........................................................................................................11
日中韓 3 ヵ国がPM2.5 対策で協力強化 ..........................................................................................................11
【金融】.....................................................................................................................................................................11
1~3 月、経常収支、資本収支がともに黒字.....................................................................................................11
多国籍企業の外貨資金集中管理規定を発表、6 月より実施 ..........................................................................11
【産業】.....................................................................................................................................................................12
増値税改革、通信業に拡大..............................................................................................................................12
2013 年の上場企業決算書が出揃い、純利益は大幅増..................................................................................12
新しい商標法、5 月 1 日より実施 ......................................................................................................................12
地方情報 ........................................................................................................................... 13
【北京】
【上海】
【天津】
【広州】
【青島】
【四川】
PM2.5 の 3 割は周辺地域から ..........................................................................................................13
第 1 四半期の貿易総額、前年同期比 8.2%増..................................................................................13
賃金上昇ガイドラインを発表.........................................................................................................13
一般消費者の新エネ車購入に補助金を給付...................................................................................13
2013 年の旅行関連収入、前年比 16%増.........................................................................................13
第 1 四半期の消費小売総額、前年同期比 12.7%増.......................................................................13
BTMUの中国調査レポート(2014 年 4 月~5 月) .................................................................... 14
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BTMU(China)経済週報
2014 年 5 月 14 日 第 203 期
メイントピックス
原子力発電の再開に伴う最近の原発業界動向
国家エネルギー委員会は 4 月 18 日に北京で会議を開催し、会議で李克強総理は原子力発電(以下、原発)
をはじめとするクリーン・エネルギープロジェクトの全面的推進を明らかにした。福島第 1 原発の事故から 3 年
が経過、中国政府が一時的に後退していた原発事業の再開を表明した背景には、エネルギー消費量の急増、
十二・五規画の省エネ・排出削減目標の達成圧力 1 、経済減速圧力などがあるとみられている。
安全上の問題、住民の反対といった問題も残っているが、中国の原発市場が今回の会議を受け急速な成長
期に入ることが期待されている。またその巨大な市場を狙って国内外の各企業も次々と動き出そうとしてい
る。
Ⅰ.李克強総理、クリーン・エネルギーの推進を示唆
李克強総理は会議で、「世界情勢がどんなに変化しても、エネルギーは政治、金融、国家安全の焦点である
ことに変わりはない。またエネルギーは中国現代化の基礎とパワーでもあるが、中国は 1 人当たりエネルギー
保有量が低いことや、エネルギー構造の不均衡といった問題を抱えている。我々はエネルギー生産と消費方
式の変革を推進し、エネルギーのクリーン化、節約、および排出削減を目指し、エネルギーの持続可能な
ルートを開拓し、経済の安定した成長に力強いサポートを提供していくべき」と述べ、原発を含むクリーン・エ
ネルギー発展の必要性を強調した。
¾
原発は世界最高レベルの安全基準を適用
原発は各国、特に先進国のエネルギー構造転換、大気汚染の防止において重要な役割を果たしている。環
境が絶えず悪化している中国にとっては、原発はもはや避けては通れないものである。また原子力発電所の
建設をまず沿海地域で再開することは、海水による冷却の利便性や安全上の考慮によるものと思われ、長期
的(十三・五期間)に経験の蓄積、技術の進歩に伴い、内陸部での原子力発電所の建設も進めていくと見ら
れている。
原子力発電所の安全性について李克強総理は、「世界最高レベルの安全基準を適用し、安全を確保する前
提の下で」と強調した。今までの大きな原子力発電所事故は、福島第一原発事故、チェルノブイリ原発事故、
スリーマイル島原発事故が挙げられる。世界で稼動している原子力発電所が 400 以上あることを考えると多く
はないが、ただ事故が起こった場合の生命、健康、地域経済・生態系への影響に加え、人々をパニックに陥
らせる可能性もあることを考え、「高い安全基準」ではなく、「絶対的な安全」が求められる。
¾
超高圧送電システム
原子力発電のほか、李克強総理は「送電技術を向上し、超高圧送電システムの構築で『西電東送』プロジェク
トを加速し、資源配置のアンバランスを改善していく」方針も示した。中国では、全人口の 6 割以上が国土面
積の約 2 割にあたる東部・沿海地域に集中している。それに対し石炭、風力・太陽光といった資源はほとんど
中・西部地域に遍在している。人口の集中による電力消耗が大きく、それに伴う汚染物は東部地域に深刻な
大気汚染をもたらしている。
このような状況を解消するため、遠距離の送電による資源の再配置が不可欠である。例えば炭鉱の近くで発
1
4月10日に発表した「第十二次五ヵ年規画中期評価」では、2013年末までの4つのエネルギー関連指標は、非石炭・石油燃料の割
合が9.4%(十二・五目標は11.4%)、二酸化炭素排出量が十一・五末より6.6%減(十二・五目標は17%減)、単位GDP当たりエネルギー消
費量は5.5%減(十二・五目標は16%減)、窒素化炭素排出量が同2.8%増(十二・五目標は10%減)といずれも芳しくなかった。
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2014 年 5 月 14 日 第 203 期
電所を建て、発電した電力を東部地域へ送電するなど、東部地域での発電、およびそれに伴う汚染物排出を
減らし、スモッグ天候の改善に寄与することが期待されている。現段階の超高圧送電について、技術的には
まだ向上余地があり、送電施設のメンテナンスなどの問題も多数残っているが、中国政府は環境改善を探り
ながらも急速に進めていくスタンスを示した。
¾
水力発電
水力発電について、中国は三峡ダムといった大型プロジェクトを推進したが、水資源の利用率は先進国と比
べ低い水準にとどまっている。中国の水資源は主に南西部に集中し、交通の不便により割高となったコスト、
および遠距離の送電施設の未整備が主因とされている。水力発電所の建設によりダム湖が形成されるなど生
態上の問題もあるが、石炭に比べれば環境への影響が小さく、超高圧を用いて東部地域へ送電することが実
現すれば、エネルギーの再配置が進むと期待されている。
Ⅱ.原子力発電所
中国原子力協会によれば、2013 年末時点で中国で稼動している原子力発電機は 17 基、総発電容量は
14,834MWe で、全国総発電容量の約 1.19%を占めている。2013 年には、寧徳原発所 1 号機(4 月 15 日稼
動、発電容量 1,089MWe)、紅沿河原発所 1 号機(6 月 6 日稼動、発電容量 1,118MWe)が新規稼動し、送
電を始めている。
図表1 稼動中原発所リスト
発電容量
(MWe)
発電量
(億kWh)
送電網同期電量
(億kWh)
310
23.03
21.59
1号機
984
74.79
71.5
2号機
984
74.16
70.91
1号機
650
49.42
46.53
2号機
650
51.26
48.19
3号機
660
54.13
50.76
4号機
660
48.89
45.91
1号機
990
71.44
68.42
2号機
990
75.69
72.61
3号機
1086
84.46
79.42
4号機
1086
83.89
78.7
1号機
728
56.53
52.37
2号機
728
62.64
57.93
1号機
1060
84.13
78.69
2号機
1060
82.73
77.41
紅沿河原発所
1号機
1118.79
62.7
57.75
寧徳原発所
1号機
1089
67.2
62.2
14833.79
1107.1
1040.9
原発所名
中核運営第一工場
広東省大亜湾原発所
中核運営第二工場
広東省岭澳原発所
中核運行第三工場
田湾原発所
合計
出所:中国原子力協会により作成
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2014 年 5 月 14 日 第 203 期
2013 年、原子力発電量は前年
比 12.6%増の 1,107 億 kWh、
送電網同期電量は同 12.38%
増の 1,041 億 kWh といずれも
安定的に増加している(図 2)。
ちなみに、この発電量を火力発
電に置き換える場合、約 3,587
万トンの石炭を消耗し、9,397 万
9,500 トンの二酸化炭素、30 万
4,900 トンの二酸化硫黄、26 万
5,400 トン窒素酸化物を排出す
ることとなる。
図表2 発電量と送電網同期電量の推移(GWh)
120,000
110,710
110,000
98,317
100,000
87,201
90,000
80,000
74,741
70,133
82,203
70,000
60,000
104,090
92,614
70,430
66,104
50,000
2009年
2010年
2011年
発電量
2012年
2013年
配電網同期電量
出所:中国原子力協会により作成
ただ全体に占める割合で見た場合、2013 年の全国発電量(5 兆 2,451 億 kWh)のうち、原発が占める割合は
2.11%にとどまっている。これはフランス、韓国、米国などに遠く及ばないだけでなく、同じ BRICs メンバーであ
るインド、ブラジル、南アフリカをも下回り、原発を有する国の中で最低水準である。
図表3 中国発電量の構成比
図表4 世界各国の原発発電量と全体に占める割合
900,000
800,000
700,000
600,000
500,000
400,000
300,000
200,000
100,000
0
30.4
出所:中国原子力協会により作成
18.1
18.4
16.1
3.6
3.1
5.1
インド
台湾
割合(%)
80
70
60
50
40
30
20
10
0
南アフリカ
原発発電容量(GWh)
英国
カナダ
中国
ドイツ
韓国
2.1
ブラジル
火力発電, 80.37%
15.3
19.0
米国
水力発電, 15.04%
74.8
フランス
その他, 2.48%
原子力発電, 2.11%
出所:WIND、各新聞報道により作成
中国政府は 2007 年、「原子力発電中長期発展規画(2005~2020 年)」を発表し、2015 年までに稼動中の原発
発電容量を 24,968MWe、建設中の発電容量を 20,000MWe、2020 年に稼動中を 44,968MWe、建設中を
18,000MWe とする目標を打ち出した。その波に乗って多くの大型原発プロジェクトが実施され、中国は一躍
世界で原発新規増加規模の最も大きい国となった。
2011 年 3 月に起きた東日本大震災後の福島第1原発事故を受け、中国政府は国内すべての原発プロジェク
トを一時期見合わせることとしたが、エネルギー不足、環境汚染などにより国務院常務会議は 2012 年 10 月、
「原子力発電中長期発展規画(2011~2020 年)」を発表し、①原発事業の進行状況を把握し秩序良く推進す
る、②十二・五期間中に内陸部の原発所建設申請を受けず、沿海地域で、かつ十分に論証された原発プロ
ジェクトだけを許可する、②安全基準を高め、第 3 世代原子力発電機の安全基準に符合するといった前提の
下で、限定的に原発プロジェクトの再開を許可した。ただ同規画では、2015 年、2020 年のそれぞれの目標を
大幅に引き上げており(図表 4)、「限定的に再開」とは思えない目標だという声もある。
図表5 原子力発電中長期発展規画(単位:MWe)
期間
(2005~2020年)版
新規建設
期末稼動
(2011~2020年)版
新規建設
期末稼動
十・五期間(2001~2005年)
5,580
6,948
十一・五期間(2006~2010年)
12,240
12,528
十二・五期間(2011~2015年)
20,000
24,968
18,000
40,000
十三・五期間(2016~2020年)
18,000
44,968
30,000
58,000
出所:「原子力発電中長期発展規画(2005~2020年)」、「原子力発電中長期発展規画(2011~2020年)」により作成
今年に入り、原発再開のシグナルはより明白となった。1 月、国家エネルギー局は「2014 年エネルギー工作指
導意見」を発表し、8,640MWe という 2013 年(2,210MWe)の 4 倍弱に当たる新規着工目標を打ち出した。ま
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2014 年 5 月 14 日 第 203 期
た 3 月、全人代の政府工作報告でも、「風力発電、太陽光発電の発展を促し、水力発電、原発事業の開発を
進めていく」方針が示された。これは 2011 年日本福島原子力発電所事故の後、中国政府が初めて「原発事
業の推進」を明確に表明したものである。
このように今回の会議がさらに追い風となり、原子力をはじめとするクリーン・エネルギー産業の発展を後押し
することが期待されている。中誠信国際信用評級(格付)有限責任公司は、これから 2 年間、中国原発関連事
業は高度成長期に入り、新規着工原発の総発電容量が 25,000MWe にも達するという見通しを示している。
Ⅲ.巨大市場に国内・外のメーカーは虎視眈々
国家エネルギー委員会の会議とほぼ同時期、4 月 15 日~18 日に北京で開催された中国国際原子力工業展
覧会では、中国、米国、フランス、カナダなど 40 ヵ国以上の 200 余りの関連企業が出展し、各自の技術、製品、
サービスについて意見交換を行った。
¾
原発事業者
地場系メーカーの出展品目の目玉は「華龍一号」である。「華龍一号」は中国広核集団有限公司(広核集団)
と中国核工業集団有限公司(中核集団)が共同で開発している第 3 世代原子炉である。当初、広核集団と中
核集団はフランスの原子炉に基づき、それぞれ「ACPR1000+」、「ACP1000」という第 3 世代原子炉を開発し
ていたが、国家エネルギー局は 2013 年初頭、「ACPR1000+」と「ACP1000」はフランスの原子炉がベースと
なっており設計が似ていることから、設計の一本化に乗り出し両社と協議を重ねていた。「華龍一号」という名
称は、広核集団が 2012 年 8 月 6 日に商標申請しており、炉心部分は「ACP1000」を、補助系統では
「ACPR1000」の設計が多数採用されている。「華龍一号」は中核集団の福清 5、6 号機、広核集団の広西防
城港 3、4 号機で採用される見通し。
「華龍一号」のほかも、広核集団と中核集団は自主開発した高速炉、小型加圧水型原子炉、燃料集合体、原
子炉管理システム FirmSys、原子炉専用ロボット、高レベル放射性廃棄物処理庫など 11 項目の研究成果を
公表した。
国家核電技術公司はウェスティングハウス社の第 3 世代炉「AP1000」をベースとして出力をアップした第 3 世
代原子炉「CAP1400」を出展した。「CAP1400」は輸出用の戦略商品としても位置づけられ、今後、「華龍一
号」とともに原子力輸出の 2 本柱として期待されている。その他、AP・CAP のモジュール化建設、原始炉保
護・コントロールシステムなども参観者たちの目を引いている。
¾
在来の電力企業も原発事業に進出
原発事業者のほか、中国電力投資(中電投)グループ、大唐グループ、華能グループといった電力企業も近
年の原発事業への出資、原発所立地探しなどを公表し、原子力発電を積極的に進めていく姿勢を示した。
中電投グループは、2020 年までに建設中の原発発電容量を 1,000MWe、稼動中の発電容量を 1,400MWe
に引き上げる目標を掲げた。各プロジェクトのうち、湖南省小墨山、吉林赤松、重慶涪陵など 11 プロジェクト
に最新型の AP1000 型原子炉を導入する予定という。
華能グループの展示ブースは高温ガス冷却炉がメインとなっていた。華能グループは今、石島湾原発所を計
画しており、最新型高温ガス冷却炉、「CAP1400」を導入する予定。また華能グループは全国各地で原発所
立地探しも積極的に行い、今まですでに 2,000 以上の地域に適合性検査を行ったという。
大唐グループはまだエクイティ投資した原発事業を有していないが、2020 年までに自社の原発発電容量を
1,000MWe に引き上げるという明確な目標を打ち出している。現段階では寧徳原発プロジェクト第 1 期と徐大
堡プロジェクトへの出資が決まったほか、広西省、湖南省、黒龍江省など全国各地で新規原発所の立地場所
の下調べも積極的に進めているという。
¾
原発設備製造に内外の企業が興味津々
原発関連の設備製造について、地場系の各企業は地域単位で出展していた。四川省ブースには、中国第二
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2014 年 5 月 14 日 第 203 期
重型機械製造集団(中国二重)、東方電気、三洲グループ、黒龍江省には中国第一重型機械製造集団(中
国一重)、ハルピン電気集団公司、上海市では上海電気のほか、材料、設備関連の中小企業も多数出展し
ていた。
また、浙江省海塩県は 9 社の原発関連企業をまとめ「核電都市」という名義で出展していた。「海塩県原子力
発電関連企業名簿」を見ると、中国核工業二三建設有限公司、上海原子力工程学院など国有大手と研究機
関のほか、アレウァ(中国)といった名だたるグローバル企業も含まれている。海塩県の関係者によれば、原発
関連の設備製造は地元に確実な利益をもたらし、原発技術の革新に伴い、これから産業、および地方経済
の構造転換も進めていくと話した。
原発再開の合図を受け、国有大手の原発事業者・電力会社のほか、ウェスティングハウス、フランス電力会社
(EDF)などのグローバル企業や、原材料、設備、放射量観測など多岐にわたる外資系企業は今、巨大な中
国市場を狙って動き出そうとしている。今後、外国企業の進出が多くなると予想され、地場系企業との協力が
進められると同時に、厳しい競争に晒されることとなろう。
Ⅳ.住民の反対が新たな問題点
今でも、チェルノブイリ、福島といった原発所事故はまだありありと目に浮かんでいる。そのため、現段階にお
いて原発事業の推進に当たり、どの国においても安全確保を最優先項目としている。ただ最高レベルの安全
基準は絶対的な安全にイコールするわけではないし、住民たちは過去の恐怖になお怯え、原発事業に激しく
反対するケースが最近目立っている。
今回の会議とほぼ同時期に、海峡の向こう側の台湾では、原発所を残すか否かの議論が盛り上がっている。
台湾第四原子力発電所の存続をめぐって、馬英九(民進党)と蘇貞昌(国民党)両氏が激しくぶつかっている。
第四原子力発電所は 20 世紀の 80 年代に建設したもので、その存続問題はことあるごとに話題となっている。
中国でも 2013 年 7 月、広東省江門市鶴山県で核燃料プロジェクトが進めようとされ、政府は当プロジェクトの
安全性は非常に高いと主張しているが、地元住民の強い反対を受け、公示から 10 日間で取りやめとなった。
このように、今日の原発問題は単なるエネルギー問題でも、経済問題でも、環境問題でもなく、より複雑な社
会問題にまでレベルアップしている。より多くの人に認められるためにも、技術力、安全性を向上するほか、関
連情報の適時な開示、および地域の住民とのコミュニケーションも原発プロジェクトの推進における決定的要
因の 1 つとなるだろう。
三菱東京 UFJ 銀行(中国)トランザクションバンキング部
中国調査室 佘兴
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2014 年 5 月 14 日 第 203 期
人民元市場動向(2014 年 4 月)
元安止まらず、約 1 年半振りの元安水準。基準値からの乖離拡大
2 月下旬の人民銀行主導での元急落、3 月中
旬の人民元対米ドル相場の日中変動幅拡大以
降の元安の動きが止まらない。
4月の人民元相場は、人民銀行基準値
6.1503、実勢値 6.2102 で始まった。基準値の元
安シフトが止まったこと、市場で節目と見られてい
た 6.20 まで実勢値の元安が進んだ達成感、等を
背景に月初は一時元買戻しの動きも強まり、9 日
には 6.1860 まで元が反発する局面もあった。
【図 1】人民元中間値とドルインデックス
每天 QCNY=CFXS, Q=USD
价格
85
6.24
84
6.21
83
6.18
82
6.15
81
6.12
80
6.09
79
6.06
78
自动
自动
13
然し乍ら、以降は月末に至るまでほぼ連日じり
じりと元安が進行、基準値の元安シフトが最大
100 ポイント程度と実勢値に比べ小幅に留まった
こともあり、月央以降は実勢値が基準値から 1%超
乖離した水準での取引が定着した。月末 30 日に
は一時、元の月間安値となる 6.2676 を付け(約 1
年半振りの元安水準)、基準値からの乖離率も
1.8%手前まで拡大、3 月に拡大された最大値幅
の 2%も近づいている。
2014-1-9 - 2014-5-8 (PEK)
价格
20
27
07
2014 一 月
17
24
03
10
2014 二 月
17
24
31
08
2014 三 月
14
21
28 05
2014 四 月
— 人民元ドル中間値(右側) — ドル index 時間線(左側)
(出所)ロイター
【表 1】為替市場:2014 年 4 月の変動幅
日付
始値
高値
安値
終値
USDCNY 基準値
6.1503
6.1610
6.1490
6.1580
USDCNY 実勢値
6.2102
6.2676
6.1860
6.2593
【図 2】O/N Shibor と 7 日間債券レポ利回り
每天 QCN7DRP=CFXS, QSHICNYOND=
2014-1-10 - 2014-5-8 (GMT)
价格
CNY
6.5
6
5.5
2 月の 1.4%、3 月 1.2%に続き 4 月も元は 0.7%
下落、年初来の下落率は 3.4%に達し、絶対値と
しては昨年を通り越して 2012 年秋、約 1 年半ぶり
の水準まで戻している。
5
4.5
4
3.5
3
2.5
2
1.5
1
市場の関心は、足許の元安がどこまでいつま
で続くのかにあるが、そもそも今回の元安誘導の
目的については、元高期待の投機的な動きの排
除、中国景気に対する為替面からの支援、といっ
たあたりが双璧であるが、ディーラーの予測なども
日増しに混沌ぶりが増幅している印象が強い。そ
の意味では、双方向への変動拡大可能性を打ち
出し、市場参加者の相場観分散を狙った人民銀
の思惑がここまでは成功しているといえよう。
次の節目は 6.30 となるが、同水準まで元安が
進む為には、最大 2%の値幅制限制度下では基
準値が 6.17 台半ばまでシフトする必要があり、人
民銀行の意向を探る上でも、目先基準値の設定
水準の動向を注視したい。
自动
13
20
27
07
2014 一 月
17
24
03
2014 二 月
10
17
24
31
2014 三 月
08
14
21
28 05
2014 四 月
— 7 日間債券レポ利回り — Over Night Shibor 金利
(出所)ロイター
【表 2】資金市場:2014 年 4 月の変動幅(%)
日付
始値
高値
安値
終値
1 日間レポ 1
2.8656
2.9507
1.9536
2.4744
7 日間レポ 1
4.2110
4.2110
2.7033
4.0744
O/N Shibor
2.8660
2.9500
1.9262
2.5000
3 ヶ月 Shibor
5.5000
5.5000
5.4900
5.4950
(注) 1. 加重平均レポ利回り
2. 始値は第 1 営業日の終値
【表 3】人民元為替相場見通し
予想レンジ
2014 年
5 月~6 月
2014 年
7 月~9 月
2014 年
10 月~12 月
2015 年
1 月~3 月
USD/CNY
6.1500-6.3500 6.1000-6.3000 6.0000-6.2000 5.9000-6.1500
JPY/CNY
5.7500-6.3500 5.6000-6.2000 5.3500-6.0500 5.2500-5.9500
(単位;元。JPY/CNY は 100 円当り)
(環球金融市場部市場営業グループ)
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BTMU(China)経済週報
2014 年 5 月 14 日 第 203 期
稲垣清の経済・産業情報
中信集団(CITIC)の再編と「国際化」
【Ⅰ】
CITIC の再編
中国大陸系企業の香港株式市場への上場は、香港経済における「中国化」の一つの大きな指標である。この
ほど、中国最大のコングロマリット(複合企業)である中信集団(CITIC)は、傘下企業である香港の中信泰富
(CITIC パシフィック)に銀行、証券、不動産、インフラ、資源開発などの分野の株式を集約する決定を行っ
た。上場企業である中信泰富は、新株を発行することによって、新たな資金調達を行うことになり、これは、親
会社である CITIC の事実上の「上場」を意味する。また、将来、CITIC の本部を北京から香港に移すことも検
討されているという。今回の CITIC の決定の意味を考えるに当って、まず、改めて、CITIC について紹介して
おこう。
【Ⅱ】
CITIC とは
CITIC の前身は、中国国際信託投資公司であり、1979 年中国が改革・開放政策を決定した鄧小平の発案で、
外資導入の窓口として、設立された。トップに白羽の矢が当ったのが、民族資本家であり、後に国家副主席と
なった栄毅仁である。CITIC は国有企業であり、そのトップは閣僚並み地位であることから共産党中央が指
名する。栄毅仁以降のトップは歴代、高級幹部子弟(俗に言う、“太子党”)が就任してきたが、2010 年、初め
て、CITIC プロパーである常振明(58 歳)氏が就任した。
CITIC の香港法人である中信泰富は CITIC が 58%出資して 1985 年に設立されたが、主席には栄毅仁の息
子である栄智健(ラリーユン)が就任した。中信泰富は、キャセイ航空の株を取得するなど、一時は飛ぶ鳥を
落とす勢いであったが、2009 年、オーストラリア鉱山開発を巡って、巨額な為替差損を生み、栄智健は引責
辞任する形で CITIC パシフィックを去った。これに象徴されるように、CITIC はじめ国有企業大手が改革の一
環として人事刷新が行われ、新たなスタートを切った。
【Ⅲ】
CITIC の「国際化」
中信泰富(CITIC パシフィック)は CITIC 傘下の企業ではあったが、いわば、“赤い資本家”栄智健あるいは
栄ファミリー会社のようであり、「CITIC の一員であって、一員ではなかった」(CITIC 関係者)。CITIC の香港
子会社として再編された中信泰富の今回の株式再編は、2009 年の人事刷新に次ぐものであり、かねてから進
めていた CITIC の「国際化」戦略の一環である。
CITIC は国内的には巨大なコングロマリットであるが、世界的には大手同業者と比べて大きな遅れをとってい
る。とくに、金融部門が弱い。傘下にある中信証券、中信銀行はまだトップ企業には成長していない。CITIC
が目指す金融部門の「国際化」とは、ゴールドマンサックスなどのようにグローバル企業に成長することが目標
である。また、中堅企業においては、CITIC というコングロマリットのメリットを武器に、中国市場に海外投資家
あるいは海外資金を呼び込むことが「国際化」の意味である。そして、その「国際化」をすすめる舞台として演
出を行う場所が香港である。CITIC およびそのグループ企業にとって、香港は最も有効なインターナショナル
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BTMU(China)経済週報
2014 年 5 月 14 日 第 203 期
プラットホームであり、香港を通じて、海外投資家への認知および資金調達を高めることができる。また、香港
を通じて、国際水準のノウハウの取得と人材養成を行い、CITIC 主要各社のグローバル企業としての地位を
築くことができるとの判断である。
CITIC の今回の決定は、中国国内からみると、国有企業改革の一環であり、同時に香港市場の資金調達とし
ての地位の再評価である。そして、それは、香港の「中国化」の進展の一つの道のりでもある。
ところで、CITIC 董事長の常振明氏は北京外国語大学日本語科出身であり、日本の証券会社での研修経験
もある。ニューヨーク勤務の経験を有す中国を代表する国際金融ビジネスマンである。2013 年、日中関係悪
化の中で、中国の代表的国有企業を引き連れて、来日。官房長官と会見するなど、日中関係打開のキーマ
ンでもある。さらに、同氏は囲碁の名手である。CITIC の次の戦略をどう進めていくか、囲碁名人でもある常振
明の次の一手に注目したい。
(本レポートの内容は個人の見解に基づいており、BTMUC の見解を示すものではありません。)
稲垣
清
三菱東京UFJ銀行(中国)顧問
1947 年神奈川県生まれ。慶応義塾大学大学院終了後、三菱総合研究所、三菱 UFJ 証券(香
港)産業調査アナリストを歴任。現在、三菱東京 UFJ 銀行(中国)顧問。著書に『中国進出企業
地図』(2011 年、蒼蒼社)、『いまの中国』(2008 年、中経出版)、『中国ニューリーダーWho’s
Who』(2002 年、弘文堂)、『中国のしくみ』(2000 年、中経出版)など。
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BTMU(China)経済週報
2014 年 5 月 14 日 第 203 期
全国情報
【マクロ経済】
4月の製造業・非製造業PMI、ともに上昇
国家統計局は 5 月 1 日、4 月の製造業・非製造業購買担当者指数(PMI)を発表した。製造業 PMI は 50.4
で前月を 0.1 ポイント上回り、2 ヵ月連続の上昇となった。また景気判断の分かれ目である 50 も 19 ヵ月連続で
上回っている。
項目別では、新規受注指数は前月比 0.6 ポイント上昇の 51.2、生産指数は 0.2 ポイント下落の 52.5、原材料
在庫指数は 0.3 ポイント上昇の 48.1、生産経営活動予期指数は 3.1 ポイント下落の 59.6 となった。
統計局は、需要の回復が PMI を押し上げた主因とみている。また新規受注指数と生産指数の差が直近 7 ヵ
月で最も小さいことから、需給のバランスが改善傾向にあるとの見方も示した。ただ上昇幅は小さく、PMI を後
押しする力は依然として弱い状況にあり、今後も注意深く見守る必要があると指摘した。
4 月の非製造業 PMI は前月比 0.3 ポイント上昇の 54.8 となり、前月のマイナスからプラスに転じた。項目別で
は、新規受注指数は前月と横ばいの 50.8、中間投入価格指数は 0.4 ポイント下落の 52.4、消費価格指数は
0.1 ポイント下落の 49.4、業務活動予期指数は横ばいの 61.5 となった。統計局は需要の伸びが堅調、および
市場に対する企業予期の好転を踏まえ、非製造業 PMI は今後も上昇する可能性が高いとの見方を示した。
(5 月 1 日 国家統計局)
1-3 月の規模以上工業企業利益、前年同期比 10.1%増
国家統計局によれば、1~3 月の規模以上工業企業売上高は前年同期比 8%増の 23 兆 9,554 億元で、伸び
幅は 1~2 月と横ばいとなった。純利益は同 10.1%増の 1 兆 2,942 億元となり、伸び幅は 1~2 月に比べ 0.7
ポイント拡大した。
企業形態別の純利益では、国有企業は 2.9%増の 3,548 億 4,000 万元、集団所有制企業は 1.1%増の 171
億元、株式企業は 9.1%増の 7,550 億 5,000 万元、外資企業(香港・マカオ・台湾系を含む)は 12.5%増の
3,011 億 2,000 万元、私営企業は 14.2%増の 4,191 億 4,000 万元となっている。
業種別で見ると、41 業種のうち、電力・熱エネルギー生産供給業(32.3%増)、電気機械・器材製造業(28.2%
増)、非金属鉱物製品業(26.7%増)など 33 業種は前年同期比増加した一方、石炭開発業(41.2%減)、鉄金
属精錬・加工(19.9%減)、非鉄金属精錬・加工(13.6%減)、石油・天然ガス開発業(6.3%減)など 7 業種は減
益となった。
なお、3 月単月の純利益は前年同月比 10.7%増の 5,131 億 6,000 万元となり、うちコンピューター・通信など
電子設備製造が同 63.4%の大幅増となり、全体の伸びに 3.3 ポイント寄与した。
(4 月 27 日 国家統計局)
発改委、軌道交通に 2,000 億元投資
国家発展改革委員会(発改委)は、今年の全国各地の軌道交通(地下鉄、軽量軌道交通・LRT)向けの投資
額合計は 2,200 億元にも上る見通しを示した。
2013 年末まで、軌道交通を有するのは 19 都市で総距離は 2,366 キロメートルであるが、2020 年にはそれぞ
れ 50 都市、6,000 キロメートルに拡大する見込みである。現段階では軌道交通の建設が承認された都市は計
36 都市で、また年内に着工予定の都市は全国で少なくとも 7 都市以上と見られている。今年 3 月に甘粛省蘭
州市で地下鉄 1 号線が着工したほか、4 月末に新疆ウイグル自治区ウルムチ市で 1 号線、5 月に吉林省長春
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BTMU(China)経済週報
2014 年 5 月 14 日 第 203 期
市で 2 号線をそれぞれ着工する予定となっている。
また 2020 年までには軌道交通向けの投資額が 4 兆元にも上る見通しであるが、地方政府の債務が表面化し
つつある今、地方政府は建設に向けて慎重に調査を行う必要があるとの声があった。
(4 月 28 日付け 経済参考報)
李克強総理、長江経済帯の建設を提案
李克強首相は 28 日、長江流域の各省・直轄市を対象とする「長江経済帯」の建設を進めていく方針を示した。
長江経済帯は上海市、浙江省、江蘇省、安徽省、江西省、湖北省、湖南省、四川省、重慶省、雲南省、貴州
省の 11 省・直轄市からなり、面積は中国全土の 5 分の 1、人口は約 6 億人である。長江経済帯は沿海部か
ら中西部への産業移転を促し、就業の拡大、収入の増加につながるほか、「京津冀(北京市・天津市・河北
省)一体化」構想とともに、中国経済の成長を支える新たな原動力となることも期待されている。
李克強総理は、行政の障害を取り払い、開放された統一の市場体系を形成させ、産業構造の改善や産業移
転の推進、新型都市化の発展、内需拡大など各地方政府に協力を求めた。なお、長江経済帯の関連政策は
早ければ年内にも発表される見通し。
(4 月 30 日付け 上海文匯報、ほか)
日中韓 3 ヵ国が PM2.5 対策で協力強化
韓国大邱で行われた日中韓 3 ヵ国環境部長会合は 29 日、微小粒子状物質「PM2.5」などによる大気汚染に
対し、各国が汚染物質の削減技術提供や優れた防止事例の紹介など、協力関係の強化を明記した共同声
明を採択し、閉幕した。共同声明は、3 ヵ国が大気汚染対策で連携し、効果的に取り組む必要性を強調した
ほか、水・海洋環境の保護、生物多様性などの項目も盛り込まれている。
ただ予定していた日中間の 2 国間会談は中国側の都合で見送られ、日中関係が依然として冷え込んでいる
ことが示唆された。
(4 月 30 日 環境保護部、ほか)
【金融】
1~3 月、経常収支、資本収支がともに黒字
国家外貨管理局によれば、1~3 月の経常収支は 72 億米ドルの黒字を記録した。そのうち貿易収支は 404
億ドルの黒字、サービス収支は 328 億ドルの赤字、所得収支は 35 億ドルの黒字、経常移転収支は 38 億ドル
の赤字となった。資本収支は 1,183 億米ドルの黒字となり、うち直接投資は 512 億ドルで、資金の流入が続い
ていることが明らかとなった。
経常収支、資本収支がともに黒字となるのは 2012 年第 4 四半期以来 6 四半期連続となった。国家外貨管理
局は今年の国際収支について、一定規模の経常黒字を維持すると予測したが、国際収支の安定化に向けて
資金流入に伴うリスク対応に力を入れる方針も示した。
(4 月 26 日付け 上海証券報)
多国籍企業の外貨資金集中管理規定を発表、6 月より実施
国家外貨管理局は 4 月 25 日、「外貨資金集中運営管理に関する規定」を発表、6 月 1 日より実施することを
発表した。当規定では、①新たな口座体制の構築、②関連手続きの簡素化、③資金融通の利便性向上、④
資本金・外債の決済に対するネガティブリストの作成、⑤リスク防止に向けた管理強化といった方針を打ち出
し、多国籍企業の資金運用の利便性向上や財務コストの低減を図るほか、今回のパイロットを通じ人民元の
資本項目自由化に向けた体制作りを進める狙いもあると思われる。詳細は外貨管理局ホームページ、および
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BTMU(China)経済週報
2014 年 5 月 14 日 第 203 期
当行の実務ニュースレターを参照。
(https://reports.btmuc.com/fileroot_sh/FILE/information/140428_01.pdf)
(4 月 26 日付け 上海証券報)
【産業】
増値税改革、通信業に拡大
財政部は 4 月 30 日、通信業を増値税改革(営業税を増値税に変更する税制改革、「営改増」ともいう)の対象
に含め、6 月 1 日より実施することを発表した。税率については、通話サービスや通信網の賃貸など基礎通信
サービス業は 11%、ショートメッセージサービス(SMS)や、データ応用サービス、インターネット接続サービス
など付加価値通信サービスは 6%とされている。ただ国内の企業や個人が海外の企業などに提供する通信
サービスは増値税免除とされた。詳細は財政部ホームページを参照。
増値税改革は 2012 年 1 月から上海市で導入され、対象業種は一部の交通運輸業と現代サービス業であっ
たが、昨年 8 月には対象地域が全国に拡大し、今年 1 月に鉄道運輸業と郵政サービス業も増値税改革の対
象とされた。財政部によれば、2012 年 1 月の増値税改革以降、増値税改革による累計減税額はすでに 2,203
億元に達したという。
(4 月 26 日付け 上海証券報)
2013 年の上場企業決算書が出揃い、純利益は大幅増
4 月 29 日、上海、深セン両証券取引所で上場する 2,473 社の上場企業 2013 年決算報告書が出そろった。
WIND 資訊の集計によれば、2013 年の上場企業純利益合計は前年比 14.7%増の 2 兆 2,400 億元となり、
伸び率は前年の 2.6%から大幅に拡大した。そのうち、特にテクノロジー、メディア、通信、自動車、医薬品な
どの伸びが堅調であった。
また 4 月 30 日までに 2,384 社の上場企業は第 1 四半期決算報告書を発表し、純利益合計は前年同期比
8.92%増の 4,918 億元となり、伸び幅は前年同期の 2 桁増から縮小している。
(4 月 30 日付 中国証券報)
新しい商標法、5 月 1 日より実施
2013 年 8 月に採択された「中華人民共和国商標法」第 3 回改正案が 5 月 1 日より正式に実施されている。
商標法は 1983 年に発表され、今回の改正で 3 回目となる。今回の改正では計 53 項目が改正されたほか、
審査期間の明確化、「馳名商標」の適正化、商標の悪意な横取り登録 2 に対する規制の厳格化、商標侵害行
為への罰則の強化、音声商標の登録許可、出願手続の簡素化などが新しい項目も盛り込まれた。
国家工商総局商標局によれば、2013 年末までの全国有効商標登録件数は 623 万 8,491 件で、このうち 2013
年の商標出願受理件数は 172 万 3,517 件、登録件数は 89 万 8,994 件となった。
中国の年間商標登録件数は 12 年連続で世界一となる一方、外資企業と中国企業の間では商標をめぐる係
争が絶えなかった。網易財経によれば、2013 年の商標侵害行為による被害総額は 11 億 2,100 万元にも上る
という。今回の「商標法」の改正をはじめ、中国政府は知的財産の保護に一段と力を入れていく姿勢を示した
が、意識変化を浸透させるには時間がかかり、商標をめぐる問題については長期間にわたり見守る必要があ
ると思われる。
(国務院法制弁公庁、国家工商総局ほか)
2
商標の悪意な横取り登録とは、外国で名だたるブランドを先に国内で商標登録し、そのブランドが中国に進出しようとしたとき、商標
の売却料や紛争があったときの仲裁料などを狙う行為をいう。
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BTMU(China)経済週報
2014 年 5 月 14 日 第 203 期
地方情報
【北京】 PM2.5 の 3 割は周辺地域から
【上海】 第 1 四半期の貿易総額、前年同期比
8.2%増
北京市環境保護局の PM2.5 発生源調査によれ
ば、北京市の PM2.5 のうち、64~72%は市内の交
通や産業活動で発生し、残りの 28~36%は京津冀
地域内の他都市で発生し、風で北京に流れ込んで
いることが明らかとなった。北京市環境保護局の陳
添介局長は、北京の大気改善には北京だけでな
く、京津冀地域の各都市の協力が不可欠であると
指摘した。なお、北京市内の発生源について、自
動車(31.1%)、火力発電(22.4%)、工業生産
(18.1%)が上位 3 位となっている。
上海市統計局によれば、上海市の第 1 四半期
の貿易総額は前年同期比 8.2%増の 1,095 億
4,200 万米ドルで、伸び幅は四半期ベースでは
直近 3 年の最高を記録した。そのうち、輸出は
2%減の 475 億 9,100 万米ドル、輸入は 17.5%
増の 619 億 5,100 万米ドルとなった。
なお、日本向けの輸出は 1.2%減の 60 億 700
万米ドル、輸入は 5.2%増の 71 億 200 万米ドル
となっている。
(4 月 28 日付 人民日報)
(5 月 7 日 上海市統計局)
【天津】 賃金上昇ガイドラインを発表
【広州】 一般消費者の新エネ車購入に補助金を
給付
天津市政府は 28 日、2014 年の賃金上昇ガイドライ
ンを発表し、賃上げ率の基準ラインは 13%、下限ラ
インは 4%、上限ラインは 22%とそれぞれ設定した。
2013 年のガイドラインと比べ、今年の基準ラインと下
限ラインはそれぞれ 3 ポイント引き下げられた。
広州市政府は 4 月 28 日、「広州市新能源汽車
推広応用工作方案」を発表し、新エネ車の購入
に対し、1 台当り 3.5 万~6 万元の補助金を給付
する方針を示した。
同ガイドラインに法的拘束力はないが、天津市政府
は、企業が賃上げを行う際の目安として、各社の業
績を加味しながら上限と下限の範囲内で賃上げを
実施するよう求めている。
広州市発展改革委員会によれば、一般消費者
の新エネ車購入には国と地方がそれぞれ同じ
割合で補助金を給付する。補助額は車種によっ
て異なるが、最大で 1 台当たり 12 万元の補助金
を給付することとなる。
(4 月 28 日付 天津日報)
(4 月 29 日付 新快報)
【青島】 2013 年の旅行関連収入、前年比 16%増
【四川】 第 1 四半期の消費小売総額、前年同期
比 12.7%増
青島市旅遊局によれば、青島市の 2013 年旅行関
連収入は前年比 16%増の 937 億元で、青島市
GDP の約 11.7%に相当する。また、旅客数は 10%
増の延べ 6,289 万人で、1 人当たり消費金額は平均
約 1,500 元となった。
四川省商務庁によれば、四川省の第 1 四半期
社会消費小売総額は前年同期比 12.7%増の
2,677 億 800 万元となり、伸び率は全国平均を
0.7 ポイント上回ったが、前年同期対比 1.2 ポイ
ント低下、勢いが鈍化している。
旅客のうち国外客は 1%増の延べ 128 万 3,000 人
で観光収入(外貨)は 8 億 2,000 万ドルとなり、国内
客は延べ 6,161 万 3,100 人で、観光収入は 886 億
700 万元となった。
商務庁によれば、第 1 四半期の元旦、春節、元
宵節などの祝日に合わせ、地元販売会社が大
規模な販売促進活動を行ったのは消費小売総
額を押し上げる主因と見られている。
(4 月 29 日付 半島都市報)
(4 月 29 日付 新民網)
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BTMU(China)経済週報
2014 年 5 月 14 日 第 203 期
BTMU の中国調査レポート(2014 年 4 月~5 月)
„
経済レビュー
中国:理財・信託商品に係わる金融リスクの現状評価と見通し
https://reports.btmuc.com/fileroot_bj/FILE/jpreport_chinese/140430_01.pdf
経済調査室
„
経済マンスリー(2014年4月)
中国~景気は低調な状態が続くも、政策対応は限定的~
http://www.bk.mufg.jp/report/ecomon2014/index.htm
経済調査室
„
ニュース・フォーカス 第7号
中国財政省・国家税務総局「前海深港現代サービス業協力区・企業所得税優遇目録」を発表
https://reports.btmuc.com/fileroot_bj/FILE/jpreport_chinese/140424_01.pdf
香港支店業務開発室
„
経済レビュー
PM2.5問題に伴う中国の環境政策の強化と日本企業への示唆
https://reports.btmuc.com/fileroot_bj/FILE/jpreport_chinese/140423_01.pdf
経済調査室
„
海外経済フラッシュ 第2号
中国:2014年1-3月期GDPについて~実質成長率は前年比+7.4%へ減速
https://reports.btmuc.com/fileroot_bj/FILE/jpreport_chinese/140416_01.pdf
経済調査室
„
BTMU 中国月報 第99号(2014年4月)
http://www.bk.mufg.jp/report/inschimonth/114040101.pdf
国際業務部
以上
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三菱東京 UFJ 銀行(中国)有限公司トランザクションバンキング部 中国調査室
北京市朝陽区東三環北路 5 号北京発展大厦 4 階 照会先:石洪 TEL 010-6590-8888ext. 214
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